(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】治療上有効な量のレナリドミドまたは他の免疫調節剤を投与するための経皮薬物送達システム
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20240517BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20240517BHJP
A61K 31/45 20060101ALI20240517BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20240517BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240517BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240517BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240517BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240517BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240517BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20240517BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20240517BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20240517BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240517BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240517BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20240517BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240517BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240517BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K9/70 401
A61K31/45
A61K31/5377
A61K47/32
A61K47/34
A61K47/38
A61K47/12
A61K47/10
A61K47/14
A61K47/22
A61K47/20
A61K47/18
A61K47/26
A61K47/06
A61P37/02
A61P35/02
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565420
(86)(22)【出願日】2022-06-03
(85)【翻訳文提出日】2023-10-24
(86)【国際出願番号】 US2022032090
(87)【国際公開番号】W WO2022260940
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521460332
【氏名又は名称】スタートン セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プラコジャニス、フォーティオス
(72)【発明者】
【氏名】ハートウィグ、ロッド・エル
(72)【発明者】
【氏名】モディ、ニサーグ
(72)【発明者】
【氏名】レイザー、タマンナ
(72)【発明者】
【氏名】レヴィントーヴァ、ユリヤ
(72)【発明者】
【氏名】ボロヴィンスカヤ、マリーナ
(72)【発明者】
【氏名】セラノ-バティスタ、アルトゥーロ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA73
4C076AA95
4C076BB31
4C076CC07
4C076CC27
4C076DD01N
4C076DD07
4C076DD34
4C076DD37N
4C076DD38
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4C076DD41N
4C076DD43
4C076DD44N
4C076DD45
4C076DD52
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4C076DD60
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4C086AA01
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4C086GA07
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4C086MA01
4C086MA04
4C086MA32
4C086NA13
4C086ZB07
4C086ZB26
4C086ZB27
(57)【要約】
本開示によれば、経皮薬物送達システム及びそれを作製する方法が提供される。経皮薬物送達システムに含まれる医薬品有効成分は、レナリドミドまたは他の免疫調節剤であり得る。より詳細には、本開示は、レナリドミドまたは他の免疫調節イミド化合物の溶解性を改善して、それらの皮膚透過性を向上させることに関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経皮薬物送達システムであって、
医薬品有効成分を含有する可溶化薬物含有接着性層を含み、
前記医薬品有効成分は、免疫調節剤、感圧性接着剤、結晶化阻害剤、及び任意選択で極性非プロトン性溶媒を含み、
前記免疫調節剤は、前記可溶化薬物含有接着性層中に均一に溶解し、前記可溶化薬物含有接着性層中に、該接着性層の乾燥重量に基づいて約0.1~50重量%の量で含有され、かつ、
当該経皮薬物送達システムは、単層構造、二層構造、または多層構造を有する、経皮薬物送達システム。
【請求項2】
請求項1に記載の経皮薬物送達システムであって、
前記免疫調節剤は、レナリドミド、ポマリドミド、イベルドミド、またはサリドマイドを含む、経皮薬物送達システム。
【請求項3】
請求項1に記載の経皮薬物送達システムであって、
前記感圧性接着剤は、アクリレートコポリマー、ポリイソブチレン、シリコーン、またはそれらの任意の組み合わせを含む、経皮薬物送達システム。
【請求項4】
請求項3に記載の経皮薬物送達システムであって、
前記感圧性接着剤は、アクリレートコポリマーを含む、経皮薬物送達システム。
【請求項5】
請求項1に記載の経皮薬物送達システムであって、
前記結晶化阻害剤は、ポリビニルピロリドンを含む、経皮薬物送達システム。
【請求項6】
請求項1に記載の経皮薬物送達システムであって、
増粘剤をさらに含む、経皮薬物送達システム。
【請求項7】
請求項6に記載の経皮薬物送達システムであって、
前記増粘剤は、セルロース、セルロース誘導体、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アクリレート、アクリレート誘導体、またはそれらの任意の組み合わせを含む、経皮薬物送達システム。
【請求項8】
請求項1に記載の経皮薬物送達システムであって、
皮膚透過促進剤をさらに含む、経皮薬物送達システム。
【請求項9】
請求項8に記載の経皮薬物送達システムであって、
前記皮膚透過促進剤は、脂肪酸もしくはその誘導体、脂肪アルコールもしくはその誘導体、脂肪エステルもしくはその誘導体、界面活性剤、可溶化剤、可塑剤、皮膚軟化剤、皮膚刺激低減剤、緩衝剤、またはそれらの任意の組み合わせを含む、経皮薬物送達システム。
【請求項10】
請求項1に記載の経皮薬物送達システムであって、
皮膚改質剤をさらに含み、
前記皮膚改質剤は、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、没食子酸、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、乳酸、サリチル酸メチル、サリチル酸、またはそれらの任意の組み合わせを含む、経皮薬物送達システム。
【請求項11】
請求項1に記載の経皮薬物送達システムであって、
極性非プロトン性溶媒をさらに含み、
前記極性非プロトン性溶媒は、n-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド、ジメチルイソソルビド、またはそれらの任意の組み合わせを含む、経皮薬物送達システム。
【請求項12】
請求項1に記載の経皮薬物送達システムであって、
当該経皮薬物送達システムの外面を形成するバッキング層と、
前記可溶化薬物含有接着性層の皮膚接触面に隣接して配置される剥離ライナーと、をさらに含み、
前記可溶化薬物含有接着性層は、当該経皮薬物送達システムの重量に基づいて約0.1~50重量%の量で含有される、経皮薬物送達システム。
【請求項13】
経皮薬物送達システムであって、
医薬品有効成分を含有する固体分散体薬物含有接着性層を含み、
前記医薬品有効成分は、免疫調節剤、感圧性接着剤、架橋ポリビニルピロリドン、及び皮膚透過促進剤を含み、
前記皮膚透過促進剤は、界面活性剤を含み、
前記免疫調節剤は、前記固体分散体薬物含有接着性層中に均一に分散し、前記固体分散体薬物含有接着性層中に、該接着性層の乾燥重量に基づいて約0.1~25重量%の量で含有され、かつ、
当該経皮薬物送達システムは、単層構造、二層構造、または多層構造を有する、経皮薬物送達システム。
【請求項14】
請求項13に記載の経皮薬物送達システムであって、
前記免疫調節剤は、レナリドミド、ポマリドミド、イベルドミド、またはサリドマイドを含む、経皮薬物送達システム。
【請求項15】
請求項13に記載の経皮薬物送達システムであって、
前記感圧性接着剤は、アクリレートコポリマー、ポリイソブチレン、シリコーン、またはそれらの任意の組み合わせを含む、経皮薬物送達システム。
【請求項16】
請求項13に記載の経皮薬物送達システムであって、
前記架橋ポリビニルピロリドンは、前記固体分散体薬物含有接着性層中に、該接着性層の乾燥重量に基づいて約0.1~40重量%の量で含有される、経皮薬物送達システム。
【請求項17】
請求項13に記載の経皮薬物送達システムであって、
前記架橋ポリビニルピロリドンと前記免疫調節剤との比は、約1:10~4:1である、システム。
【請求項18】
請求項13に記載の経皮薬物送達システムであって、
分散剤をさらに含み、
前記分散剤は、鉱油、シリコーン液、脂肪酸エステル、またはそれらの任意の組み合わせを含む、経皮薬物送達システム。
【請求項19】
請求項13に記載の経皮薬物送達システムであって、
前記皮膚透過促進剤は、脂肪酸もしくはその誘導体、脂肪アルコールもしくはその誘導体、脂肪エステルもしくはその誘導体、可溶化剤、可塑剤、皮膚軟化剤、皮膚刺激低減剤、緩衝剤、抗酸化剤、防腐剤、またはそれらの組み合わせをさらに含み、
前記界面活性剤は、非イオン性界面活性剤を含む、経皮薬物送達システム。
【請求項20】
請求項19に記載の経皮薬物送達システムであって、
前記界面活性剤は、ポリオキシエチレンまたはポリエチレングリコールエーテルの脂肪誘導体を含み、
前記脂肪誘導体は、オレイン酸もしくはオレイルアルコール誘導体、ラウリン酸もしくはラウリルアルコール誘導体、セチルもしくはセテアリルアルコール、ステアリン酸もしくはステアリルアルコール、ポリオキシエチレンの類似の脂肪誘導体、ポロキサマー、またはそれらの任意の組み合わせを含む、経皮薬物送達システム。
【請求項21】
請求項13に記載の経皮薬物送達システムであって、
皮膚改質剤または接着改質剤をさらに含み、
前記皮膚改質剤または前記接着改質剤は、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、没食子酸、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、乳酸、サリチル酸メチル、サリチル酸、またはそれらの任意の組み合わせを含む、経皮薬物送達システム。
【請求項22】
請求項13に記載の経皮薬物送達システムであって、
極性非プロトン性溶媒をさらに含み、
前記極性非プロトン性溶媒は、n-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド、ジメチルイソソルビド、またはそれらの任意の組み合わせを含む、経皮薬物送達システム。
【請求項23】
請求項13に記載の経皮薬物送達システムであって、
当該経皮薬物送達システムの外面を形成するバッキング層と、
前記固体分散体薬物含有接着性層の皮膚接触面に隣接して配置される剥離ライナーと、をさらに含み、
前記固体分散体薬物含有接着性層は、当該経皮薬物送達システムの重量に基づいて約0.1~50重量%の量で含有される、経皮薬物送達システム。
【請求項24】
経皮薬物送達システムであって、
感圧性接着剤を含有する薬物非含有接着性層と、
免疫調節剤、結晶化阻害剤、及び任意選択で極性非プロトン性溶媒を含有する薬物含有ポリマー層と、を含み、
前記免疫調節剤は、前記薬物含有ポリマー層中に均一に溶解及び/または分散し、前記薬物含有ポリマー層中に、該ポリマー層の乾燥重量に基づいて約0.1~50重量%の量で含有され、かつ、
当該経皮薬物送達システムは、単層構造、二層構造、または多層構造を有する、経皮薬物送達システム。
【請求項25】
請求項24に記載の経皮薬物送達システムであって、
前記感圧性接着剤は、アクリレートコポリマー、ポリイソブチレン、シリコーン、またはそれらの任意の組み合わせを含む、経皮薬物送達システム。
【請求項26】
請求項25に記載の経皮薬物送達システムであって、
前記感圧性接着剤は、アクリレートコポリマーを含み、
前記免疫調節剤は、前記アクリレートコポリマーに対して約0.5mg/mL未満の溶解度を有する、経皮薬物送達システム。
【請求項27】
請求項24に記載の経皮薬物送達システムであって、
前記免疫調節剤は、レナリドミドを含む、経皮薬物送達システム。
【請求項28】
請求項24に記載の経皮薬物送達システムであって、
前記結晶化阻害剤は、ポリビニルピロリドンを含む、経皮薬物送達システム。
【請求項29】
請求項24に記載の経皮薬物送達システムであって、
前記薬物含有ポリマー層は、増粘剤をさらに含む、経皮薬物送達システム。
【請求項30】
請求項29に記載の経皮薬物送達システムであって、
前記増粘剤は、セルロース、セルロース誘導体、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アクリレート、アクリレート誘導体、またはそれらの任意の組み合わせを含む、経皮薬物送達システム。
【請求項31】
請求項24に記載の経皮薬物送達システムであって、
前記薬物含有ポリマー層は、皮膚透過促進剤をさらに含む、経皮薬物送達システム。
【請求項32】
請求項31に記載の経皮薬物送達システムであって、
前記皮膚透過促進剤は、脂肪酸もしくはその誘導体、脂肪アルコールもしくはその誘導体、脂肪エステルもしくはその誘導体、界面活性剤、可溶化剤、可塑剤、皮膚軟化剤、皮膚刺激低減剤、緩衝剤、またはそれらの任意の組み合わせを含む、経皮薬物送達システム。
【請求項33】
請求項24に記載の経皮薬物送達システムであって、
前記薬物含有ポリマー層は、皮膚改質剤をさらに含み、
前記皮膚改質剤は、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、没食子酸、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、乳酸、サリチル酸メチル、サリチル酸、またはそれらの任意の組み合わせを含む、経皮薬物送達システム。
【請求項34】
請求項24に記載の経皮薬物送達システムであって、
極性非プロトン性溶媒をさらに含み、
前記極性非プロトン性溶媒は、n-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド、ジメチルイソソルビド、またはそれらの任意の組み合わせを含む、経皮薬物送達システム。
【請求項35】
請求項24に記載の経皮薬物送達システムであって、
当該経皮薬物送達システムの外面を形成するバッキング層と、
前記薬物含有ポリマー層の皮膚接触面に隣接して配置される剥離ライナーと、をさらに含む、経皮薬物送達システム。
【請求項36】
患者の皮膚への免疫調節剤の透過を促進するための前処理製剤であって、
極性非プロトン性溶媒と、
保湿剤と、
有機酸と、
増粘剤と、を含む、前処理製剤。
【請求項37】
請求項36に記載の前処理製剤であって、
前記極性非プロトン性溶媒は、n-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド、ジメチルイソソルビド、またはそれらの任意の組み合わせを含む、前処理製剤。
【請求項38】
請求項36に記載の前処理製剤であって、
前記保湿剤は、グリセリン、グリコール、グリコール誘導体、ポリグリコール、ポリエチレングリコール、クエン酸トリエチル、トリアセチン、界面活性剤、透過促進剤、またはそれらの任意の組み合わせを含む、前処理製剤。
【請求項39】
請求項36に記載の前処理製剤であって、
前記有機酸は、レブリン酸、オレイン酸、乳酸、サリチル酸、またはそれらの任意の組み合わせを含む、前処理製剤。
【請求項40】
請求項36に記載の前処理製剤であって、
前記増粘剤は、セルロース、セルロース誘導体、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アクリレート、アクリレート誘導体、またはそれらの任意の組み合わせを含む、前処理製剤。
【請求項41】
請求項36に記載の前処理製剤であって、
患者の皮膚に、約1分~72時間の期間にわたって接触させられる、前治療組成物。
【請求項42】
キットであって、
経皮薬物送達システムと、
請求項36に記載の前処理製剤と、を含む、キット。
【請求項43】
請求項42に記載のキットであって、
前記前処理製剤を、患者の皮膚に、約1分~72時間にわたって接触させる、キット。
【請求項44】
経皮薬物送達システムであって、
医薬品有効成分を含有する可溶化薬物含有接着性層を含み、
前記医薬品有効成分は、免疫調節剤、感圧性接着剤、結晶化阻害剤、及び任意選択で極性非プロトン性溶媒を含み、
前記免疫調節剤は、前記可溶化薬物含有接着性層中に均一に溶解し、前記可溶化薬物含有接着性層中に、該接着性層の乾燥重量に基づいて約0.1~50重量%の量で含有され、
当該経皮薬物送達システムは、単層構造、二層構造、または多層構造を有し、かつ、
前記可溶化薬物含有接着性層に隣接して請求項36に記載の前処理製剤が配置されている、経皮薬物送達システム。
【請求項45】
請求項44に記載の経皮薬物送達システムであって、
患者の皮膚に、前記可溶化薬物含有接着性層を接触させる前に、
前記前処理製剤を、患者の皮膚に、約1分~72時間にわたって接触させる、経皮薬物送達システム。
【請求項46】
経皮薬物送達システムであって、
医薬品有効成分を含有する固体分散体薬物含有接着性層を含み、
前記医薬品有効成分は、免疫調節剤、感圧性接着剤、架橋ポリビニルピロリドン、及び皮膚透過促進剤を含み、
前記皮膚透過促進剤は、界面活性剤を含み、
前記免疫調節剤は、前記固体分散体薬物含有接着性層中に均一に分散し、前記固体分散体薬物含有接着性層中に、該接着性層の乾燥重量に基づいて約0.1~25重量%の量で含有され、
当該経皮薬物送達システムは、単層構造、二層構造、または多層構造を有し、かつ、
前記固体分散体薬物含有接着性層に隣接して請求項36に記載の前処理製剤が配置されている、経皮薬物送達システム。
【請求項47】
請求項46に記載の経皮薬物送達システムであって、
患者の皮膚に、前記固体分散体薬物含有接着性層を接触させる前に、
前記前処理製剤を、患者の皮膚に、約1分~72時間にわたって接触させる、経皮薬物送達システム。
【請求項48】
経皮薬物送達システムであって、
感圧性接着剤を含有する薬物非含有接着性層と、
免疫調節剤、結晶化阻害剤、及び任意選択で極性非プロトン性溶媒を含有する薬物含有ポリマー層と、を含み、
前記免疫調節剤は、前記薬物含有ポリマー層中に均一に溶解及び/または分散し、前記薬物含有ポリマー層中に、該ポリマー層の乾燥重量に基づいて約0.1~50重量%の量で含有され
当該経皮薬物送達システムは、単層構造、二層構造、または多層構造を有し、かつ、
前記薬物含有ポリマー層に隣接して請求項36に記載の前処理製剤が配置されている、経皮薬物送達システム。
【請求項49】
請求項48に記載の経皮薬物送達システムであって、
患者の皮膚に、前記薬物含有ポリマー層を接触させる前に、
前記前処理製剤を、患者の皮膚に、約1分~72時間にわたって接触させる、経皮薬物送達システム。
【請求項50】
請求項1、13、24、42、44、46、または48のいずれかに記載の経皮薬物送達システムであって、
前記免疫調節剤は、慢性リンパ性白血病または多発性骨髄腫を治療するためのものである、システム。
【請求項51】
請求項1、13、24、42、44、46、または48のいずれかに記載の経皮薬物送達システムであって、
白血病または多発性骨髄腫を治療するための前記免疫調節剤の治療濃度を提供する、経皮薬物送達システム。
【請求項52】
請求項1、13、24、42、44、46、または48のいずれかに記載の経皮薬物送達システムであって、
約1~100ng/mLの血漿濃度が達成されるように、前記免疫調節剤が皮膚を介して送達される、経皮薬物送達システム。
【請求項53】
請求項1、13、24、42、44、46、または48のいずれかに記載の経皮薬物送達システムであって、
約1~15日間の期間にわたって、前記免疫調節剤の持続的送達を提供する、経皮薬物送達システム。
【請求項54】
経皮薬物送達システムであって、
免疫調節剤と、
患者の皮膚を介して前記免疫調節剤を送達するための送達手段と、を含み、
前記送達手段は、局所製剤、ゲル、ローション、スプレー、定量経皮スプレー、エアロゾル、座薬、懸濁液、経皮パッチ、二層マトリクスパッチ、多層マトリクスパッチ、接着剤を含むまたは含まないモノリシックマトリクスパッチ、薬物含有接着性パッチ、マトリクスリザーバパッチ、マイクロリザーバパッチ、ヒドロゲルマトリクスパッチ、粘膜接着性パッチ、接着性システム、経皮適用テープ、マイクロニードル、またはイオントフォレーシスシステムを含む、経皮薬物送達システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2021年6月6日出願の米国仮特許出願第63/197,427号に基づく優先権を主張するものである。上記出願の開示内容の全体は、参照により本明細書中に援用される。
【0002】
(技術分野)
本開示は、レナリドミドまたは他の免疫調節剤を投与するための経皮薬物送達システムに関する。より詳細には、本開示は、レナリドミドまたは他の免疫調節イミド化合物の溶解性を改善して、それらの皮膚透過性を向上させることに関する。
【背景技術】
【0003】
免疫調節イミド化合物としては、サリドマイドやサリドマイド類似体(サリドマイド化合物ファミリーと総称する)が挙げられ、これらは、免疫調節作用、抗血管新生作用、抗炎症作用、抗増殖作用などの多面的な抗骨髄腫特性を有している。サリドマイド類似体としては、レナリドミド、ポマリドミド、イベルドミドなどが挙げられる。
【0004】
レナリドミド(3-(4-アミノ-1-3-ジヒドロ-1-オキソ-2H-イソインドール-2イル)-2、6-ピペリジンジオン)またはLLDは、経口カプセル剤の形態で入手可能なFDA承認薬である。レナリドミドは、例えば、デキサメタゾンとの併用による多発性骨髄腫(MM)の治療、自家造血幹細胞移植(自家HSCT)後の維持治療としての多発性骨髄腫(MM)の治療、追加の細胞遺伝学的異常を伴うまたは伴わない5q欠失異常を伴う低リスクまたは中等度1リスクの骨髄異形成症候群(MDS)に起因する輸血依存性貧血の治療、マントル細胞リンパ腫(MCL)の治療であって、ボルテゾミブ製剤とリツキシマブ製剤との併用による濾胞性リンパ腫(FL)または辺縁帯リンパ腫(MZL)の前治療歴を含む2つの前治療後に疾患が再発または進行した患者の治療、または、慢性リンパ性白血病(CLL)の治療に適用される。レナリドミドは、2.5mg、5mg、10mg、15mg、20mg、または25mgの力価の経口剤形として入手可能である。
【0005】
ポマリドミド(4-アミノ-2-(2、6-ジオキソピペリジン-3-イル)イソインドリン-1、3-ジオン)は、経口カプセル剤の形態で入手可能なFDA承認薬である。ポマリドミドは一般的に、前治療歴(例えばレナリドミドなどによる)を有し、前回の治療の終了時(またはそのすぐ後に)に疾患の進行が認められた多発性骨髄腫患者に対して、多くの場合はデキサメタゾンと組み合わせて使用される。ポマリドミドは、1mg、2mg、3mg、または4mgの力価の経口剤形として入手可能である。
【0006】
サリドマイド(2-(2、6-ジオキソピペリジン-3-イル)イソインドール-1、3-ジオン)は、経口カプセル剤の形態で入手可能なFDA承認薬である。サリドマイドは一般的に、多発性骨髄腫と新たに診断された患者の治療に、多くの場合はデキサメタゾンと組み合わせて使用される。サリドマイドには、50mg、100mg、150mg、または200mgの力価の経口剤形として入手可能である。
【0007】
イベルドミド((3S)-3-[7-[[4-(モルホリン-4-イルメチル)フェニル]メトキシ]-3-オキソ-1H-イソインドール-2-イル]ピペリジン-2、6-ジオン)は、難治性多発性骨髄腫の治療薬として開発中である。
【0008】
残念ながら、これらの免疫調節イミド化合物は、水溶性が非常に低い。例えば、レナリドミド(LLD)は、レブリミド(Revlimid)の処方情報に「溶解度は、酸性度の低い緩衝液では非常に低く、約0.4~0.5mg/mLの範囲である」と記載されているように、水溶性が非常に低い。最近の研究では、この薬物は、水性溶液や一般的な医薬品として認められている有機溶媒のほとんどに対して、非常に限られた溶解性しか示さないことが明らかになった。
【0009】
現在承認されている製剤は、粉末を充填したカプセルとして提供される経口固形製剤である。そのため、この薬物は、固体状態で維持される。レブリミドは製造日から24ヵ月の室温保存期間で提供されるため、現在の剤形では固体状態で非常に良好な安定性を示す。
【0010】
しかしながら、経口固形製剤の経口投与は、経口投与によって引き起こされる薬物濃度の高低サイクルをもたらし、不快な、しばしば患者を衰弱させる副作用を伴う。例えば、レナリドマイドの経口投与を受けた高リスクSMM患者では、91%が3年無増悪生存を達成したにもかかわらず、40%が薬物関連の副作用のために治療を中断した。なお、積極的な治療(現在の標準治療)を受けずに経過観察を受けた患者では、3年無増悪生存を達成したのは66%であった。
【0011】
一方、経皮薬物送達システムは、通常、最も単純な製剤では、可溶化薬物含有接着性製剤として利用可能である。溶解度が極めて低く、かつ皮膚に対する透過(浸透)が要求される薬物では、溶液中で薬物を維持し、薬物分子の皮膚透過性を高めるために、適用時に溶解への代替経路及び/または特異的な透過促進剤を提供するために、製剤の改善が求められている。例えば、レナリドマイド(LLD)の経皮製剤は、その融点が約270℃と高く、またその結晶性も高いことに起因して、溶液中での溶解度が0.4~0.5mg/mL未満と非常に低いため、製剤化が困難である。さらに、レナリドマイドのlogP値が0.4と低いことは、薬物分子が角質層に透過しにくいことを示している。
【0012】
上述の問題点を鑑みて、レナリドミド(LLD)を含有する免疫調節剤の溶解性を改善し、皮膚を介した薬物の送達を向上させた経皮薬物送達システムが求められている。また、長期間にわたって放出制御された形態で送達することができる免疫調節剤も求められている。さらに、免疫調節剤の高用量経口投与に伴う副作用を軽減することも求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施形態によれば、経皮薬物送達システムが開示される。本開示の経皮薬物送達システムは、医薬品有効成分を含有する可溶化薬物含有接着性層を含み、医薬品有効成分は、免疫調節剤、感圧性接着剤、結晶化阻害剤、及び任意選択で極性非プロトン性溶媒を含み、免疫調節剤は、可溶化薬物含有接着性層中に均一に溶解し、可溶化薬物含有接着性層中に、該接着性層の乾燥重量に基づいて約0.1~50重量%の量で含有される。また、本開示の経皮薬物送達システムは、単層構造、二層構造、または多層構造を有する。
【0014】
一態様では、免疫調節薬は、レナリドミド、ポマリドミド、イベルドミド、またはサリドマイドを含む。また、一態様では、感圧性接着剤は、アクリレートコポリマー、ポリイソブチレン、シリコーン、またはそれらの任意の組み合わせを含む。別の態様では、感圧性接着剤は、アクリレートコポリマーである。さらに別の態様では、結晶化阻害剤は、ポリビニルピロリドンである。
【0015】
それに加えてまたはその代わりに、一態様では、経皮薬物送達システムは、増粘剤をさらに含む。一態様では、増粘剤は、セルロース、セルロース誘導体、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アクリレート、アクリレート誘導体、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0016】
さらに別の態様では、経皮薬物送達システムは、皮膚透過促進剤をさらに含む。一態様では、皮膚透過促進剤は、脂肪酸もしくはその誘導体、脂肪アルコールもしくはその誘導体、脂肪エステルもしくはその誘導体、界面活性剤、可溶化剤、可塑剤、皮膚軟化剤、皮膚刺激低減剤、緩衝剤、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0017】
さらに、一態様では、経皮薬物送達システムは、皮膚改質剤及び/または極性非プロトン性溶媒をさらに含む。皮膚改質剤は、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、没食子酸、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、乳酸、サリチル酸メチル、サリチル酸、またはそれらの任意の組み合わせを含む。極性非プロトン性溶媒は、n-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド、ジメチルイソソルビド、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0018】
一態様では、経皮薬物送達システムは、該経皮薬物送達システムの外面を形成するバッキング層と、可溶化薬物含有接着性層の皮膚接触面に隣接して配置される剥離ライナーと、をさらに含み、可溶化薬物含有接着性層は、当該経皮薬物送達システムの重量に基づいて約0.1~50重量%の量で含有される。
【0019】
本発明の別の実施形態によれば、別の経皮薬物送達システムが開示される。本開示の経皮薬物送達システムは、医薬品有効成分を含有する固体分散体薬物含有接着性層を含み、医薬品有効成分は、免疫調節剤、感圧性接着剤、架橋ポリビニルピロリドン、及び皮膚透過促進剤を含み、皮膚透過促進剤は、界面活性剤を含み、免疫調節剤は、固体分散体薬物含有接着性層中に均一に分散し、固体分散体薬物含有接着性層中に、該接着性層の乾燥重量に基づいて約0.1~25重量%の量で含有される。また、本開示の経皮薬物送達システムは、単層構造、二層構造、または多層構造を有する。
【0020】
一態様では、免疫調節薬は、レナリドミド、ポマリドミド、イベルドミド、またはサリドマイドを含む。さらに、一態様では、感圧性接着剤は、アクリレートコポリマー、ポリイソブチレン、シリコーン、またはそれらの任意の組み合わせを含む。別の態様では、感圧性接着剤は、アクリレートコポリマーである。さらに別の態様では、結晶化阻害剤は、ポリビニルピロリドンである。
【0021】
さらに、一態様では、架橋ポリビニルピロリドンは、固体分散体薬物含有接着性層中に、該接着性層の乾燥重量に基づいて約0.1~40重量%の量で含有される。さらに別の態様では、架橋ポリビニルピロリドンと免疫調節剤との比は、約1:10~約4:1である。
【0022】
それに加えてまたはその代わりに、一態様では、本開示の経皮薬物送達システムは、分散剤をさらに含み、分散剤は、鉱油、シリコーン液、脂肪酸エステル、またはそれらの組み合わせであり得る。一態様では、皮膚透過促進剤は、脂肪酸もしくはその誘導体、脂肪アルコールもしくはその誘導体、脂肪エステルもしくはその誘導体、可溶化剤、可塑剤、皮膚軟化剤、皮膚刺激低減剤、緩衝剤、抗酸化剤、防腐剤、またはそれらの組み合わせをさらに含み、界面活性剤は、非イオン性界面活性剤を含む。
【0023】
さらに、一態様では、界面活性剤は、ポリオキシエチレンまたはポリエチレングリコールエーテルの脂肪誘導体を含み、脂肪誘導体は、オレイン酸もしくはオレイルアルコール誘導体、ラウリン酸もしくはラウリルアルコール誘導体、セチルもしくはセテアリルアルコール、ステアリン酸もしくはステアリルアルコールあるいはポリオキシエチレンの類似の脂肪誘導体、ポロキサマー、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0024】
さらに別の態様では、本開示の経皮薬物送達システムは、皮膚改質剤または接着改質剤をさらに含み、皮膚改質剤または接着改質剤は、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、没食子酸、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、乳酸、サリチル酸メチル、サリチル酸、またはそれらの任意の組み合わせを含む。さらに、一態様では、本開示の経皮薬物送達システムは、極性非プロトン性溶媒をさらに含み、極性非プロトン性溶媒は、n-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド、ジメチルイソソルビド、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0025】
一態様では、本開示の経皮薬物送達システムは、当該経皮薬物送達システムの外面を形成するバッキング層と、固体分散体薬物含有接着性層の皮膚接触面に隣接して配置される剥離ライナーと、をさらに含み、固体分散体薬物含有接着性層は、当該経皮薬物送達システムの重量に基づいて約0.1~50重量%の量で含有される。
【0026】
本発明のさらに別の実施形態によれば、さらに別の経皮薬物送達システムが開示される。本開示の経皮薬物送達システムは、感圧性接着剤を含有する薬物非含有接着性層と、免疫調節剤、結晶化阻害剤、及び任意選択で極性非プロトン性溶媒を含有する薬物含有ポリマー層と、を含み、免疫調節剤は、薬物含有ポリマー層中に均一に溶解及び/または分散し、薬物含有ポリマー層中に、該ポリマー層の乾燥重量に基づいて約0.1~50重量%の量で含有される。また、本開示の経皮薬物送達システムは、単層構造、二層構造、または多層構造を有する。
【0027】
一態様では、感圧性接着剤は、アクリレートコポリマー、ポリイソブチレン、シリコーン、またはそれらの任意の組み合わせを含む。別の態様では、感圧性接着剤は、アクリレートコポリマーを含み、免疫調節剤は、アクリレートコポリマーに対して約0.5mg/mL未満の溶解度を有する。さらに別の態様では、結晶化阻害剤は、ポリビニルピロリドンを含む。また、一態様では、免疫調節薬は、レナリドミドを含む。
【0028】
それに加えてまたはその代わりに、一態様では、本開示の経皮薬物送達システムは、増粘剤をさらに含む。一態様では、増粘剤は、セルロース、セルロース誘導体、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アクリレート、アクリレート誘導体、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0029】
さらに別の態様では、本開示の経皮薬物送達システムは、皮膚透過促進剤をさらに含む。一態様では、皮膚透過促進剤は、肪酸もしくはその誘導体、脂肪アルコールもしくはその誘導体、脂肪エステルもしくはその誘導体、界面活性剤、可溶化剤、可塑剤、皮膚軟化剤、皮膚刺激低減剤、緩衝剤、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0030】
また、一態様では、経皮薬物送達システムは、皮膚改質剤をさらに含み、皮膚改質剤は、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、没食子酸、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、乳酸、サリチル酸メチル、サリチル酸、またはそれらの任意の組み合わせを含む。さらに、一態様では、経皮薬物送達システムは、極性非プロトン性溶媒をさらに含み、極性非プロトン性溶媒は、n-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド、ジメチルイソソルビド、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0031】
一態様では、本開示の経皮薬物送達システムは、当該経皮薬物送達システムの外面を形成するバッキング層と、薬物含有ポリマー層の皮膚接触面に隣接して配置される剥離ライナーと、をさらに含む。
【0032】
本発明のさらに別の実施形態によれば、患者の皮膚への免疫調節剤の透過を促進するための前処理製剤が開示される。本開示の前処理製剤は、極性非プロトン性溶媒と、保湿剤と、有機酸と、増粘剤と、を含む。
【0033】
一態様では、極性非プロトン性溶媒は、n-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド、ジメチルイソソルビド、またはそれらの任意の組み合わせを含む。さらに別の態様では、保湿剤は、グリセリン、グリコール、グリコール誘導体、ポリグリコール、ポリエチレングリコール、クエン酸トリエチル、トリアセチン、界面活性剤、透過促進剤、またはそれらの任意の組み合わせを含む。それに加えてまたはその代わりに、一態様では、有機酸は、レブリン酸、オレイン酸、乳酸、サリチル酸、またはそれらの任意の組み合わせを含む。さらに別の態様では、増粘剤は、セルロース、セルロース誘導体、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アクリレート、アクリレート誘導体、またはそれらの任意の組み合わせを含む。さらに、一態様では、本開示の前処置製剤は、患者の皮膚に、約1分~約72時間の期間にわたって接触させられる。
【0034】
また、本開示は、上記の1以上の態様のいずれかの経皮薬物送達システムと、前処理製剤とを含むキットに関する。一態様では、前処理製剤を、患者の皮膚に、約1分~約72時間にわたって接触させる。
【0035】
本発明の一実施形態によれば、別の経皮薬物送達システムが開示される。本開示の経皮薬物送達システムは、医薬品有効成分を含有する可溶化薬物含有接着性層を含み、医薬品有効成分は、免疫調節剤、感圧性接着剤、結晶化阻害剤、及び任意選択で極性非プロトン性溶媒を含み、免疫調節剤は、可溶化薬物含有接着性層中に均一に溶解し、可溶化薬物含有接着性層中に、該接着性層の乾燥重量に基づいて約0.1~50重量%の量で含有される。また、本開示の経皮薬物送達システムは、単層構造、二層構造、または多層構造を有し、かつ、可溶化薬物含有接着性層に隣接して上記のいずれかの態様の前処理製剤が配置されている。
【0036】
さらに別の態様では、患者の皮膚に、可溶化薬物含有接着性層を接触させる前に、前処理製剤を、患者の皮膚に、約1分~約72時間にわたって接触させる。
【0037】
本発明の別の実施形態によれば、別の経皮薬物送達システムが開示される。本開示の経皮薬物送達システムは、医薬品有効成分を含有する固体分散体薬物含有接着性層を含み、医薬品有効成分は、免疫調節剤、感圧性接着剤、架橋ポリビニルピロリドン、及び皮膚透過促進剤を含み、皮膚透過促進剤は、界面活性剤を含み、免疫調節剤は、固体分散体薬物含有接着性層中に均一に分散し、固体分散体薬物含有接着性層中に、該接着性層の乾燥重量に基づいて約0.1~25重量%の量で含有される。さらに、界面活性剤は、保湿剤、透過促進剤、可溶化剤、可塑剤、またはそれらの任意の組み合わせと組み合わせて使用することができる少なくとも1つの非イオン界面活性剤を含み得る。また、経皮薬物送達システムは、単層構造、二層構造、または多層構造を有し、固体分散体薬物含有接着性層に隣接して上記のいずれかの態様の前処理製剤が配置されている。
【0038】
このような一態様では、患者の皮膚に、固体分散体薬物含有接着性層を接触させる前に、前処理製剤を、患者の皮膚に、約1分~約72時間にわたって接触させる。
【0039】
本発明のさらに別の実施形態によれば、別の経皮薬物送達システムが開示される。本開示の経皮薬物送達システムは、感圧性接着剤を含有する薬物非含有接着性層と、免疫調節剤、結晶化阻害剤、及び任意選択で極性非プロトン性溶媒を含有する薬物含有ポリマー層を含み、免疫調節剤は、薬物含有ポリマー層中に均一に溶解及び/または分散し、薬物含有ポリマー層中に、該ポリマー層の乾燥重量に基づいて約0.1~50重量%の量で含有される。また、本開示の経皮薬物送達システムは、単層構造、二層構造、または多層構造を有し、薬物含有ポリマー層に隣接して上記のいずれかの態様の前処理製剤が配置されている。
【0040】
さらに別の態様では、患者の皮膚に、薬物含有ポリマー層を接触させる前に、前処理製剤を、患者の皮膚に、約1分~約72時間にわたって接触させる。
【0041】
それに加えてまたはその代わりに、上記のいずれかの態様の免疫調節剤は、慢性リンパ性白血病または多発性骨髄腫を治療するためのものである。それに加えてまたはその代わりに、上記のいずれかの態様の免疫調節剤は、白血病または多発性骨髄腫を治療するための治療濃度で経皮薬物送達システムに提供される。さらに別の態様では、約1~100ng/mLの血漿濃度が達成されるように、上記のいずれかの態様の免疫調節剤が皮膚を介して送達される。さらに、一態様では、上記のいずれか1以上の態様の経皮薬物送達システムは、約1~15日間の期間にわたって、免疫調節剤の持続的送達を提供する。
【0042】
本発明のさらに別の実施形態によれば、別の経皮薬物送達システムが開示される。
本開示の経皮薬物送達システムは、免疫調節剤と、患者の皮膚を介して免疫調節剤を送達するための送達手段と、を含み、送達手段は、局所製剤、ゲル、ローション、スプレー、定量経皮スプレー、エアロゾル、座薬、懸濁液、経皮パッチ、二層マトリクスパッチ、多層マトリクスパッチ、接着剤を含むまたは含まないモノリシックマトリクスパッチ、薬物含有接着性パッチ、マトリクスリザーバパッチ、マイクロリザーバパッチ、ヒドロゲルマトリクスパッチ、粘膜接着性パッチ、接着性システム、経皮適用テープ、マイクロニードル、またはイオントフォレーシスシステムを含む。
【0043】
本発明の他の特徴及び態様は、以下に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
当業者を対象にした本発明の完全かつ実現可能な開示(ベストモードを含む)が、添付図面を参照して、本明細書の残りの部分により詳細に説明される。
【0045】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態による経皮薬物送達システムの断面図であり、本実施形態の経皮薬物送達システムは、安定的な可溶化薬物含有接着性製剤を含む。
【
図2】
図2は、本開示の別の実施形態による経皮薬物送達システムの断面図であり本実施形態の経皮薬物送達システムは、安定的な固体分散体薬物含有接着性製剤を含む。
【
図3】
図3は、本開示の別の実施形態による経皮薬物送達システムの断面図である。本実施形態の経皮薬物送達システムは、ポリマーマトリクスからの制御された薬物放出を提供するための、接着性層と薬物含有ポリマー層とを含む多層型のポリマーマトリクス製剤を含む。
【
図4A】
図4Aは、前処理製剤と、
図1~3の経皮薬物送達システムのうちの1つとを含むキットの断面図である。
【
図4B】
図4Bは、本開示の一実施形態による経皮薬物送達システムの断面図であり、本実施形態の経皮薬物送達システムは、安定的な薬物含有接着性製剤と、前処理溶液とを含む。
【
図4C】
図4Cは、本開示の別の実施形態による経皮薬物送達システムの断面図であり、本実施形態の経皮薬物送達システムは、安定的な固体分散体薬物含有接着性製剤と、前処理溶液とを含む。
【
図4D】
図4Dは、本開示の別の実施形態による経皮薬物送達システムの断面図であり、本実施形態の経皮薬物送達システムは、ポリマーマトリクスからの制御された薬物放出を提供する、接着性層と薬物含有ポリマー層とを含む多層型のポリマーマトリクス製剤と、前処理溶液とを含む。
【
図5】
図5は、
図1の経皮薬物送達システムの作製方法を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、
図2の経皮薬物送達システムの作製方法を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、
図3の経皮薬物送達システムの作製方法を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、
図4Aの経皮薬物送達システムを含むキットの使用方法を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、様々な溶媒を使用して形成されたレナリドミド溶液についての、ヒト死体皮膚に対するレナリドマイド透過レベルを示すグラフである。
【
図11】
図11は、様々な透過促進剤を使用して形成されたレナリドミドゲルについての、ヒト死体皮膚に対するレナリドマイド透過レベルを示すグラフである。
【
図12】
図12は、様々な透過促進剤を使用して形成されたレナリドミドゲルについての、ヒト死体皮膚に対するレナリドマイド透過レベルを示す別のグラフである。
【
図13】
図13は、皮膚にパッチを貼付する前に前処理ゲル製剤で皮膚を前処理した場合の、様々な薬物含有接着性マトリクスパッチ製剤についての、ヒト死体皮膚に対するレナリドマイド透過レベルを示すグラフである。
【
図14】
図14は、様々な安定的な固体分散体薬物含有接着性製剤についての、ヒト死体皮膚を透過するレナリドマイドの流束(μg/cm
2/時間)を示すグラフである。
【
図15】
図15は、様々な安定的な固体分散体薬物含有接着性製剤についての、ヒト死体皮膚を透過するレナリドマイドの累積流束(μg/cm
2)を示すグラフである。
【
図16】
図16は、本開示の一実施形態による前処理製剤で皮膚を前処理した場合の、ヒト死体皮膚を透過するレナリドミドの流束を示すグラフである。
【
図17】
図17は、薬物含有接着性マトリクスパッチにおける、様々な濃度のサリチル酸前処理ゲル製剤が、ヒト死体皮膚を透過するレナリドミドの流束に与える影響を示したグラフである。
【
図18】
図18は、薬物含有接着性マトリクスパッチにおける、様々な濃度の前処理ゲル製剤が、ヒト死体皮膚を透過するレナリドミドの流束に与える影響を示したグラフである。
【
図19】
図19は、皮膚を前処理した1時間後の、5種類の薬物含有接着性マトリクス及び薬物含有ポリマーパッチにおける、ヒト死体皮膚を透過するレナリドミドの流束を示すグラフである。
【
図20】
図20は、ウサギモデルにおける、様々な経皮薬物送達システムを介して168時間にわたって送達された4種類のレナリドミド含有製剤の平均累積曲線下面積(AUC)を比較したグラフである。グループ2は、前処理は行わず、固体分散体薬物含有接着性層を適用した。グループ3は、DMSOによる前処理後に固体分散体薬物含有接着性層を適用した。グループ4は、前処理製剤による前処理後に接着性マトリクスを適用した。グループ5は、前処理製剤による前処理後にポリマーフィルムを適用した。
図20に示すように、前処理製剤で前処理した場合は、いずれも特徴的な経口投与または静脈内投与の送達プロフィールを示した。一方、前処理を行わなかった場合、または、DMSOによる前処理を行った場合には、固体分散体薬物含有接着性層は、持続的な略一次の送達プロファイルを示した。このことは、本発明によって意図される経皮薬物送達システムを使用することにより、最大3日間にわたる長期間の送達プロファイルが可能であることを示唆している。
【
図21】
図21は、
図20に示した4つの製剤の平均流束を72時間にわたって比較したグラフである。
【
図22】
図22は、透過する唯一の製剤であることが示された対照製剤を使用した、レナリドマイドのStrat-Mメンブレンに対する透過を示すグラフである。
【
図23】
図23は、オレス系界面活性剤とポロキサマー系界面活性剤との両方を含む非イオン界面活性剤を含む場合の、Strat-Mメンブレンを介したレナリドミドの透過性の改善を示すグラフであり、オレス系界面活性剤を単独で含む場合と比較して、透過性が改善されたことを示す。図示のように、透過性の改善だけでなく、利用可能なレナリドミドの増加によるAUCの有意な増加が認められた。これにより、ポロキサマー(例えば、P407)は水の存在下でのレナリドミドの溶解性を改善し、オレスは固体中の利用可能なレナリドミドの透過性を改善すると考えられる。したがって、この実施例は、ポロキサマー(具体的にはP407)を含有する場合に、水の存在下でのレナリドマイドの溶解度が有意に改善され、オレスを含有する場合に、利用可能なレナリドマイドの透過が改善されたことを実証した。
【0046】
本明細書及び図面において繰り返し使用される参照符号は、本発明の同一または類似の特徴または要素を表すことを意図している。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本開示が例示的な実施形態の説明にすぎず、本発明のより広範な態様を限定することを意図するものではないことは、当業者には理解されるであろう。
【0048】
概して、本発明は、皮膚に貼付され、レナリドミドなどの免疫調節剤を承認された経口製剤よりも低用量で持続的に送達する薬物含有接着性パッチに関する。本発明の製剤は、免疫調節剤の溶解性及び安定性を高め、経口投与によって引き起こされる薬物濃度の高低サイクルを回避することを可能にし、これにより、副作用を少なくすること及び有効性を高めることが期待される。
【0049】
本開示の製剤は、骨髄腫治療の標準治療を拡大する可能性がある。例えば、レナリドマイドの経口投与を受けた高リスクSMM患者では、91%が3年無増悪生存を達成したにもかかわらず、40%が薬物関連の副作用のために治療を中断した。なお、積極的な治療(現在の標準治療)を受けずに経過観察を受けた患者では、3年無増悪生存を達成したのは66%であった。また、本発明によって意図される製剤は、慢性リンパ性白血病(CLL)に有効性を示したにもかかわらず、以前は用量依存性の副作用によって経口レナリドミド製剤の成功が制限されていた寛解維持を助けるための最初の維持療法としての治療にも使用することができる。
【0050】
可溶化薬物含有接着性層を含む経皮薬物送達システム
【0051】
一実施形態では、本発明は、皮膚を介して免疫調節剤を送達するための経皮薬物送達システムに関する。或る特定の実施形態では、免疫調節剤は、レナリドミドであり得るが、別の実施形態では、本開示の経皮薬物送達システムにおいて任意の他の免疫調節剤を使用できることを理解されたい。本開示の経皮薬物送達システムは、可溶化薬物含有接着性層を含み、可溶化薬物含有接着性層は、免疫調節剤(例えば、レナリドミド)、感圧性接着剤、及び溶解補助剤または結晶化阻害剤を含む。また、本開示の経皮薬物送達システムは、皮膚透過促進剤として機能する可塑剤または保湿剤、増粘剤、充填剤などの皮膚改質剤及び/または接着改質剤、保護剤、抗酸化剤、免疫調節剤の放出を改善する添加剤、または、それらの任意の組み合わせをさらに含み得る。さらに、可溶化薬物含有接着性層は、1種以上の極性非プロトン性溶媒を使用して、免疫調節剤を溶解させ、可溶化薬物含有接着性層内に均一に分布させることができる。本開示の経皮薬物送達システムにおいて、1種以上の極性非プロトン性溶媒は、プロセス溶媒として使用される場合には、約530ppm(parts per million)未満、または約0.053重量%(wt.%)未満の量で含まれ、添加剤として使用される場合には、約530ppm以上、または約0.053重量%以上の量で含まれ得る。特定の理論によって限定されることを意図しないが、本願発明者は、可溶化薬物含有接着性層の特定の成分、及び、可溶化薬物含有接着性層に免疫調節剤を溶解させる特定の方法によって、混合物における溶解性を向上させることができ、その結果、皮膚への透過性が向上することを見出した。
【0052】
図1を参照して、或る特定の実施形態によれば、本開示の経皮薬物送達システム100は、バッキング層120と、剥離ライナー130と、それらの間に配置された可溶化薬物含有接着性層110とを含む。バッキング層120は、経皮薬物送達システム100の使用中に周囲環境に曝される外面140を有している。一方、剥離ライナー130は、可溶化薬物含有接着性層110の皮膚接触面150に配置される。剥離ライナー130は、経皮薬物送達システム100の使用中に可溶化薬物含有接着性層110を皮膚上に直接配置することができるように、剥離可能である。本願発明者は、可溶化薬物含有接着性層の構成要素、例えば特定の極性非プロトン性溶媒、溶解補助剤、結晶化阻害剤などの特定の組み合わせ、並びに、使用される構成要素の特定の重量%及び比率の結果として、本開示の経皮薬物送達システム100が、皮膚接触面を形成する均質な可溶化薬物含有接着性層を含むことができ、これにより、免疫調節剤(すなわち、医薬品有効成分またはAPI)の制御された方法での送達が容易になることを見出した。例えば、免疫調節剤の溶解度は、少なくとも2ミリグラム/ミリリットル(mg/mL)または2重量%、例えば、約4mg/mLまたは4重量%~約70mg/mLまたは7重量%に改善することができる。これは、水性緩衝液へのレナリドミドの既知の溶解度の少なくとも約8~140倍の増加である(例えば、pH7.2、DMF:PBSの1:1溶液中で)。
図1に示すように、経皮薬物送達システム100の可溶化薬物含有接着性層110は、医薬品有効成分が可溶化薬物含有接着性層の全体に均一に分散されるように、単層の形態とすることができる。ただし、経皮薬物送達システム100は、別の可溶化薬物含有接着性層を含むことができることを理解されたい。
【0053】
経皮薬物送達システム100の様々な構成要素について、以下に詳細に説明する。
【0054】
I.可溶化薬物含有接着性層
【0055】
a.医薬品有効成分
【0056】
本開示の経皮薬物送達システムの可溶化薬物含有接着性層を形成するために使用されるポリマー混合物は、免疫調節剤として機能する任意の適切な薬物または医薬品有効成分(API)を含み得る。例えば、免疫調節剤は、免疫調節イミド化合物(サリドマイド、レナリドミド、ポマリドミド、及びイベルドミド、またはそれらの類似体など)のすべての薬学的に許容される形態、例えば、遊離塩基、塩、多形体、溶媒和物、溶液、異性体、非晶質、結晶、共結晶、固溶体、プロドラッグ、類似体、誘導体、代謝物、及びそれらの任意の組み合わせを含み得る。免疫調節イミド化合物は、酸付加塩や塩基塩などの薬学的に許容される塩、またはその水和物を含む溶媒和物の形態であってもよい。好適な酸付加塩は、非毒性の塩を形成する酸から形成され、そのようなものとしては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、コハク酸塩、サッカラート、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、及び、パモ酸塩などがある。
【0057】
医薬品有効成分(API)として使用される特定の免疫調節剤にかかわらず、可溶化薬物含有接着性層に含有されるAPIの量は、可溶化薬物含有接着性層の乾燥重量に基づいて、約0.1~50重量%、例えば約0.5~25重量%、または例えば約0.75~10重量%の範囲であり得る。さらに、免疫調節剤は、可溶化薬物含有接着性層中にこのような高濃度で含有されるにもかかわらず、可溶化薬物含有接着性層中に均一に溶解されることを理解されたい。
【0058】
b.感圧性接着剤
【0059】
本開示の経皮薬物送達システムの可溶化薬物含有接着性層は、1種以上の適切な感圧性接着剤(PSA)をさらに含む。接着性ポリマーは、プラスチック、ポリマー、感圧性接着剤、自己接着システムを含む様々な材料から作製することができ、また、感圧特性を得るために追加の添加剤を必要とすることができる。基本的な接着剤系は、ポリアクリル、シリコーン、ポリイソブチレン、ゴム、及び、物理的な混合または共重合によるそれらの任意の組み合わせから選択される。これらの材料は、溶媒性、水性、物理的な混合、押出、共押出、ホットメルト、または他の方法で重合材料または非重合材料として形成されたものから得ることができる。
【0060】
一実施形態では、感圧性接着剤(PSA)は、アクリルポリマーであり得る。有用なアクリルポリマーとしては、架橋型、架橋可能型、未架橋型、未架橋可能型、グラフト型、ブロック型、硬化型、または非硬化型の感圧性接着剤(PSA)としての、アクリル酸及びその誘導体の様々なホモポリマー、コポリマー、ターポリマーなどが挙げられる。これらのアクリルポリマーには、アクリル酸アルキルまたはメタクリル酸エステルのコポリマーが含まれる。ポリアクリレートには、アクリル酸、メタクリル酸、それらの誘導体、これに限定しないが、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、メタクリル酸n-ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2-エチルブチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸デシル、メタクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸トリデシル、メタクリル酸トリデシル、酢酸ビニル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸グリシジル、または、オクチルアクリルアミドが挙げられる。アクリルポリマーは、ヒドロキシル部分またはカルボキシル部分またはそれらの組み合わせのレベルを持つ官能性種、官能性部分を有さない非官能性種、あるいは、メチル、エチル、プロピルまたはブチルキャップドアクリルアミドなどのヒドロキシル部分またはカルボキシル部分よりも反応性の低い部分を持つ非反応性種であり得る。例示的なアクリル系PSAとしては、これに限定しないが、Duro-Tak(登録商標)87-900A、Duro-Tak87-9301(官能基を持たず、粘度が約9500センチポアズの36.5%固体含有アクリレートポリマー)、Duro-Tak(登録商標)87-4098、Duro-Tak(登録商標)387-2510/87-2510、Duro-Tak(登録商標)387-2287/87-2287、Duro-Tak(登録商標)87-4287、Duro-Tak(登録商標)387-2516/87-2516、Duro-Tak(登録商標)87-2074、Duro-Tak(登録商標)87-235A、Duro-Tak387-2353/87-2353、Gelva(登録商標)GMS9073、Duro-Tak(登録商標)87-2852、Duro-Tak(登録商標)387-2051/87-2051、Duro-Tak(登録商標)387-2052/87-2052、Duro-Tak(登録商標)387-2054/87-2054、Duro-Tak(登録商標)87-2194、または、Duro-Tak(登録商標)87-2196が挙げられる。また、本開示は、開示されたモノマーを構成する既知及び未知の命名規則を組み込んでいることも理解されたい。
【0061】
或る特定の実施形態では、本願発明者は、-COOHまたは-OH官能基を有するアクリレートコポリマーを含む、感圧性接着剤(PSA)の使用が、可溶化薬物含有接着性層に含まれる免疫調節剤の溶解性の向上に寄与することを見出した。さらに、約30~55%、例えば約35~50%、または例えば約36~45%の範囲の固形分を有するアクリレートコポリマーも、免疫調節剤の溶解性の向上に寄与することも見出された。加えて、約6500センチポアズ未満、例えば約2000~5000センチポアズ、または例えば約2500~4500センチポアズの粘度を有するアクリレートコポリマーも、免疫調節剤の溶解性の向上に寄与し得る。なお、粘度は、可溶化薬物含有接着性層中の薬物を形成するために使用されるポリマー混合物中の成分の含有量に影響を与える。さらに、酢酸ビニルを含むアクリレートコポリマーも有益であり得る。具体的な例としては、Duro-Tak(登録商標)387-2516/87-2516(酢酸ビニル;-OH官能基;固形分は41.5%;粘度は4350センチポアズ)、Duro-Tak(登録商標)387-2052/87-2052(酢酸ビニル;-COOH官能基、固形分は47.5%;粘度は2750センチポアズ)、または、Duro-Tak(登録商標)87-4098(酢酸ビニル;官能基を持たない固形分は38.5%;粘度は6500センチポアズ)などが挙げられる。
【0062】
或る特定の実施形態では、本願発明者は、可溶化薬物含有接着性層に、官能基を持たないアクリレートコポリマーを含む感圧性接着剤(PSA)を使用することが特に有益であることを見出した。そのようなPSAとしては、Duro-Tak(登録商標)87-9301やDuro-Tak(登録商標)87-4098が挙げられる。
【0063】
さらに別の実施形態では、感圧性接着剤(PSA)は、シリコーンを含み得る。適切なシリコーン接着剤としては、シリコーンポリマーと樹脂とから作られた感圧性接着剤が挙げられる。ポリマーと樹脂との比率を変えることにより、様々なレベルのタック(粘着性)を実現することができる。市販されている有用なシリコーン接着剤の具体例としては、ダウコーニング社(Dow Corning)製の標準的なBIO-PSA(登録商標)シリーズ(7-4400、7-4500、7-4600シリーズ)、及び、アミン適合性(エンドキャップ)BIO-PSA(登録商標)シリーズ(7-4100、7-4200、7-4300シリーズ)が挙げられる。好ましい接着剤としては、BIO-PSA(登録商標)7-4101、7-4102、7-4201、7-4202、7-4301、7-4302、7-4401、7-4402、7-4501、7-4502、7-4601、及び7-4602が挙げられ、製品番号の末尾が1のPSAはヘプタンをプロセス溶媒とするものであり、製品番号の末尾が2のPSAは酢酸エチルをプロセス溶媒とするものである。
【0064】
さらに別の実施形態では、PSAは、ポリイソブチレンを含み得る。適切なポリイソブチレン系接着剤は、感圧性であり、適切なタック(粘着性)を有するものである。ポリイソブチレンは、高分子量及び中分子量のポリイソブチレン、ポリブテン、及び鉱物油の混合物を含み得る。具体的には、高分子量ポリイソブチレンとは、分子量が約425,000以上のものである。中分子量ポリイソブチレンとは、分子量が40,000以上かつ425,000未満のものである。低分子量ポリイソブチレンとは、分子量が100以上かつ約40,000未満のものである。市販されている有用なポリイソブチレン系接着剤の具体例としては、BASF社製のOppanol(登録商標)高分子量Nグレード50、50SF、80、100、及び150、並びに、Oppanol(登録商標)中分子量Bグレード10N、10SFN、11SFN、12SFN、12N、13SFN、14SFN、15SFN、及び15Nが挙げられる。ポリブテンの具体例としては、ソルテックス(Soltex)社から様々な分子量のポリブテンとして、また、イネオス(Ineos)社から様々な分子量のIndopol及びPanalaneとして市販されているものが挙げられる。市販されている有用なポリイソブチレン系接着剤の具体例としては、Duro-Tak(登録商標)87-6908が挙げられる。
【0065】
ゴムブロックコポリマーから得られる他の感圧性接着剤、例えば、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)、またはスチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)をベースとする接着剤も本発明によって意図される。
【0066】
使用される特定のPSAにかかわらず、感圧性接着剤は、可溶化薬物含有接着性層の乾燥重量に基づいて、約1~99重量%、例えば約20~98.5重量%、または例えば約40~98重量%の範囲の量で含有され得る。
【0067】
c.溶解補助剤/結晶化抑制剤
【0068】
本開示の経皮薬物送達システムの可溶化薬物含有接着性層は、非架橋PVPなどのポリビニルピロリドン(PVP)を含む、1種以上の溶解補助剤または結晶化阻害剤をさらに含み得る。特定の理論によって制限されることを意図しないが、本願発明者は、非架橋PVPが、ポリマーが特定の配置で第3級アミン及びケトンを有する5員環を含む構造によって極性非プロトン性で機能し得ることを見出した。したがって、このタイプのポリマーは、アルコール(-OH)基の添加剤の使用を回避しながら、本質的に極性非プロトン性の構造を提供する。BASF社から提供されるPVPの適切な可溶化グレードとしては、Kollidon(登録商標)グレードK-12(分子量2,000~3,000;pH4.63)、K-17(分子量7,000~11,000;pH4.64)、K-25(分子量28,000~34,000;pH4.00)、K-30(分子量44,000~54,000;pH4.10)、及び、K-90(分子量1,000,000~1,500,000;pH5.68)が挙げられる。他の機能性ポリマーとしては、Kollidon(登録商標)VA64(分子量45,000~70,000、pH4.51)、または、別の供給業者から提供される他のポビドン及びそのコポリマーが挙げられる。本願発明者は、レナリドマイドの存在下でポリビニルピロリドンを使用することにより、レナリドマイドの溶解性及び安定性が向上することを見出した。また、これに限定しないが乳酸やレブリン酸などの酸がレナリドミド溶解補助剤として機能し得ることも理解されたい。
【0069】
可溶化薬物含有接着性層に含有されるポリビニルピロリドンの量は、可溶化薬物含有接着性層の乾燥重量に基づいて、約0.5~50重量%、例えば約0.75~25重量%、または例えば約1~15重量%の範囲であり得る。
【0070】
d.増粘剤
【0071】
本開示の経皮薬物送達システムの可溶化薬物含有接着性層は、1種以上の増粘剤をさらに含み得る。1種以上の増粘剤としては、天然ポリマー、多糖類及びその誘導体、これに限定しないが、例えば、寒天、アルギン酸及びその誘導体、カシアトラ(cassia tora)、コラーゲン、ゼラチン、ゲランガム、グアーガム、ペクチン、カリウム、またはカラギーナンナトリウム、トラガカント、キサンタム、ガムコパル、キトサン、樹脂、半合成ポリマー及びその誘導体、これに限定しないが、例えば、セルロース及びその誘導体(メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(Klucel(登録商標)HF)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートなど)、合成ポリマー及びその誘導体、これに限定しないが、例えば、カルボキシビニルポリマーまたはカルボマー(カルボポール(登録商標)940、カルボポール(登録商標)934、カルボポール(登録商標)971pNF)、ポリエチレン及びそのコポリマー、粘土、これに限定しないが、ケイ酸塩及びベントナイト、二酸化ケイ素、ヒュームドシリカ(Aerosil(登録商標))、ポリビニルアルコール、アクリルポリマー(Eudragit(登録商標))、アクリル酸エステル、ポリアクリレートコポリマー、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドンホモポリマー及びポリビニルピロリドンコポリマー(これに限定しないが、例えば、PVP、Kollidon(登録商標)30、ポロキサマー)、イソブチレン、酢酸エチルビニルコポリマー、天然ゴム、合成ゴム、ホットメルト接着剤、スチレン-ブタジエンコポリマー、ベントナイト、すべての水及び/または有機溶媒の膨潤性ポリマー、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0072】
使用される特定の増粘剤にかかわらず、可溶化薬物含有接着性層を形成するために使用されるポリマー混合物に含有される増粘剤の量は、可溶化薬物含有接着性層の乾燥重量に基づいて、約0.1~50重量%、例えば約0.5~25重量%、または例えば約0.75~15重量%の範囲であり得る。
【0073】
e.皮膚透過促進剤
【0074】
本開示の経皮薬物送達システムの可溶化薬物含有接着性層は、経皮薬物送達システムの使用中に免疫調節剤の皮膚への透過を向上させるための皮膚透過促進剤として機能する、1種以上の適切な界面活性剤(例えば、非イオン界面活性剤)、可塑剤、保湿剤、またはそれらの任意の組み合わせをさらに含み得る。或る特定の実施形態では、可塑剤として、様々な脂肪アルコール、脂肪酸、及び/または脂肪エステル誘導体、これに限定しないが、例えば、オレイン酸、オレイルアルコール、オレイン酸エチル、オレイン酸オレイル、モノラウリン酸プロピレングリコール、エタノール酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスタルアルコール、モノオレイン酸グリセリン、乳酸ラウリル、ラウリン酸メチル、フタル酸エステルまたはその誘導体、オレイルアルコールのポリエチレングリコールエーテル、ドデカノール、リノール酸、ラウリン酸、ラウリルアルコール、パルミチン酸イソプロピル、クエン酸トリエチル、トリアセチン、または、保湿剤、例えば、グリセリン、グリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、あるいはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。或る特定の実施形態では、皮膚透過促進剤は、非イオン性界面活性剤であり得る。非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンの脂肪誘導体を含み得る。一例は、3つのエチレンオキシド単位を有するオレイルアルコールのポリエチレングリコールエーテルであるオレス-3であるが、他のオレス(例えば、-2、-4、-5、-6、-7、-8、-9、-10、-11、-12、-15、-16、-20、-23、-25、-30、-40、-44、及び50)も、単独でまたはそれらの任意の組み合わせで考えられる。他に考えられる非イオン性界面活性剤は、ポロキサマーである(例えば、P181、P188、P338、P407、またはそれらの任意の組み合わせであり、Kolliphor(登録商標)、Pluronic(登録商標)、または、Lutrol(登録商標)として市販されている)。使用可能な他の非イオン性界面活性剤としては、ラウレス、セテス、セテアレス、及びステアレスが挙げられ、これらは単独で、または互いに組み合わせて、あるいは上記のオレス及び/またはポロキサマーの1種以上と組み合わせて使用され得る。
【0075】
別の実施形態では、皮膚透過促進剤としては、脂肪酸、これに限定しないが、例えば、カプリン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、リノール酸、ステアリン酸、パルミチン酸など、界面活性剤型促進剤、これに限定しないが、例えば、Brij(登録商標)、Tween(登録商標)、Span(登録商標)、ポリソルベート、ソルビタン脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウムなど、ポロキサマー、または、サリチル酸などの酸が挙げられる。
【0076】
使用される特定の界面活性剤、可塑剤、保湿剤、またはそれらの任意の組み合わせにかかわらず、可溶化薬物含有接着性層を形成するために使用されるポリマー混合物に含有される皮膚透過促進剤の量は、経皮薬物送達システムの可溶化薬物含有接着性層の乾燥重量に基づいて、約1~80重量%、例えば約5~60重量%、または例えば約10~40重量%の範囲であり得る。或る特定の実施形態では、皮膚透過促進剤は、オレイン酸とパルミチン酸イソプロピルとの組み合わせを含むことができ、その場合、オレイン酸とパルミチン酸イソプロピルとの比は、約1.1:1~3:1、例えば約1.25:1~2.5:1、または例えば1.5:1~2:1の範囲であり得る。
【0077】
f.皮膚改質剤または接着改質剤
【0078】
本開示の経皮薬物送達システムの可溶化薬物含有接着性層は、1種以上の皮膚改質剤、接着改質剤、充填剤、保護剤、抗酸化剤、加水分解を低減または防止することができる成分、脱酸素剤、脱湿剤、または他の材料をさらに含み得る。適切な皮膚改質剤または接着性改良剤としては、鉱油、シリコーン流体、脂肪エステル誘導体、フタル酸誘導体、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、没食子酸、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、乳酸、サリチル酸メチル、サリチル酸、それらの誘導体、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0079】
可溶化薬物含有接着性層を形成するために使用されるポリマー混合物に含有される1種以上の皮膚改質剤、接着改質剤、充填剤、保護剤、抗酸化剤、または他の材料にかかわらず、これらは、経皮薬物送達システムの可溶化薬物含有接着性層の乾燥重量に基づいて、可溶化薬物含有接着性層に、約0.5~30重量%、例えば約1~25重量%、または例えば約1.5~20重量%の範囲の総量で含有され得る。
【0080】
g.極性非プロトン性溶媒
【0081】
本開示の経皮薬物送達システムの可溶化薬物含有接着性層を形成するポリマー混合物は、ポリマー混合物における免疫調節剤の溶解性及び免疫調節剤の皮膚を介した送達を補助する1種以上の極性非プロトン性溶媒をさらに含み得る。極性非プロトン性溶媒とは、酸性プロトンを欠き、極性を有する溶媒のことである。このような溶媒は、ヒドロキシル基やアミン基を欠いている。これらの溶媒は、水素結合においてプロトン供与体としては機能しないが、プロトン受容体としては機能する。本発明によって意図される具体例としては、極性非プロトン性溶媒としては、n-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルイソソルビド、酢酸エチル、またはそれらの任意の組み合わせを挙げることができる。なお、他の極性非プロトン性溶媒、これに限定しないが、例えば、アセトン、アセトニトリル、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド、DMPU、及びテトラヒドロフランなども、本発明によって意図されることを理解されたい。
【0082】
使用される特定の極性非プロトン性溶媒または極性非プロトン性溶媒の組み合わせにかかわらず、可溶化薬物含有接着性層を形成するために使用されるポリマー混合物に含有される極性非プロトン性溶媒は、経皮薬物送達システム中に、製剤中の残留溶媒ガイドラインのICH Q3C不純物未満の総量で含有され得る。プロセス溶媒がNMPである場合、可溶化薬物含有接着性層中に含有される極性非プロトン性溶媒の総量は、可溶化薬物含有接着性層の乾燥重量に基づいて、約530ppm未満または約0.053重量%未満、例えば約390ppm未満または約0.039重量%未満であり得る。なお、極性非プロトン性溶媒は、可溶化薬物含有接着性層の形成中、及び、蒸発または乾燥の前に、より大きな重量%で導入されることを理解されたい。さらに、添加剤として使用される場合、1種以上の極性非プロトン性溶媒は、製剤中の残留溶媒ガイドラインのICH Q3C不純物よりも多い量で含有され得る。プロセス溶媒がNMPである場合、可溶化薬物含有接着性層中に含有される極性非プロトン性溶媒の総量は、可溶化薬物含有接着性層の乾燥重量に基づいて、約390ppm以上または約0.039重量%以上、例えば約530ppm以上または約0.053重量%以上であり得る。
【0083】
使用される特定の極性非プロトン性溶媒または極性非プロトン性溶媒の組み合わせにかかわらず、可溶化薬物含有接着性層を形成するために使用されるポリマー混合物に含有される極性非プロトン性溶媒の総量は、経皮薬物送達システムの可溶化薬物含有接着性層の乾燥重量に基づいて、約530ppm未満または約0.053重量%未満、例えば約390ppm未満または約0.039重量%未満であり得る。なお、極性非プロトン性溶媒は、可溶化薬物含有接着性層の形成中、及び、蒸発または乾燥の前に、より大きな重量%で導入されることを理解されたい。さらに、添加剤として使用される場合、可溶化薬物含有接着性層中に含有される1種以上の極性非プロトン性溶媒の総量は、可溶化薬物含有接着性層の乾燥重量に基づいて、約390ppm以上または約0.039重量%以上、例えば約530ppm以上または約0.053重量%以上であり得る。
【0084】
別の実施形態では、使用される特定の極性非プロトン性溶媒または極性非プロトン性溶媒の組み合わせにかかわらず、可溶化薬物含有接着性層を形成するために使用されるポリマー混合物に含まれる極性非プロトン性溶媒の総量は、経皮薬物送達システムの乾燥重量に基づいて、約20,000ppm未満または約2.0重量%未満、例えば約10,000ppm未満または約1.0重量%未満であり得る。なお、極性非プロトン性溶媒は、可溶化薬物含有接着性層の形成中、及び、蒸発または乾燥の前に、より大きな重量%で導入されることを理解されたい。さらに、添加剤として使用される場合、可溶化薬物含有接着性層中に含有される1種以上の極性非プロトン性溶媒の総量は、可溶化薬物含有接着性層の乾燥重量に基づいて、約530ppm以上または約0.053重量%以上、例えば約10,000ppm以上または約1.0重量%以上、または例えば約20,000ppm以上または約2.0重量%以上であり得る。
【0085】
II.バッキング層
【0086】
再び
図1を参照して、本開示の経皮薬物送達システム100は、可溶化薬物含有接着性層110に加えて、経皮薬物送達システム100の外面140を形成するバッキング層120をさらに含む。バッキング層120は、ポリマー層(及び存在する他の層)を密封して環境から保護し、これにより、使用中の薬物の損失及び/または他の成分の環境への放出を防ぐことができる。バッキング層としての使用に適した材料は、当該技術分野でよく知られており、そのような材料としては、ポリエステル、ポリエチレン、酢酸ビニル樹脂、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリウレタンなどのフィルム、金属箔、不織布、布、及び市販のラミネートが挙げられる。バッキング層は、一般的に、2~1000マイクロメートルの範囲の厚さを有する。例えば、3M社製のScotchpak(登録商標)、これに限定しないが、1012または9732(エチレン酢酸ビニルコポリマーのヒートシール層を有するポリエステルフィルム)、9723(ポリエチレンとポリエステルとのラミネート)、9733、9735、9738、または9754、またはCoTran(登録商標)9720(ポリエチレンフィルム)が、Dow(登録商標)BLF2050(エチレン酢酸ビニル層とSARAN(登録商標)内側層とを含む多層バッキング)などのDow(登録商標)バッキング層フィルムと同様に、本開示の経皮薬物送達システムに有用である。
【0087】
III.剥離ライナー
【0088】
引き続き、
図1を参照して、本開示の経皮薬物送達システム100は、可溶化薬物含有接着性層110及びバッキング層120に加えて、経皮薬物送達システム100の皮膚接触面150に配置された剥離ライナー130をさらに含む。剥離ライナー130は、経皮薬物送達システム100の可溶化薬物含有接着性層110を患者の皮膚に適用する準備が整うまで、可溶化薬物含有接着性層110を保護する役割を果たす。皮膚接触面150から剥離ライナー130を剥離した後に、経皮薬物送達システム100の皮膚接触面150が患者の皮膚に適用される。剥離した剥離ライナー130は廃棄される。剥離ライナーとしての使用に適した材料は、当該分野ではよく知られており、そのような材料としては、ダウコーニング社製のBio-Release(登録商標)ライナー及びSyl-off(登録商標)7610、ロパレックス社(Loparex)製のPET剥離ライナー(シリコーンコーティング)、サンゴバン社(Saint Gobain)製の9011ライナー(フルオロシリコーンコーティング)または他のライナー、及び、3M社製の1020、1022、9741、9744、9748、9749、及び9755スコッチパック(登録商標)ライナー(フルオロポリマーでコーティングされたポリエステルフィルム)などが挙げられる。
【0089】
IV.経皮薬物送達システムの作製方法
【0090】
一般に、本開示の可溶化薬物含有接着性層は、その構成要素を特定の順序で組み合わせることにより作製され、その結果、免疫調節剤の溶解性及び皮膚透過性が向上した可溶化薬物含有接着性層を含む経皮薬物送達システムを形成することができる。
図5を参照して、本開示の可溶化薬物含有接着性層を形成するために使用されるポリマー混合物を作製する方法500が示されている。まず、ステップ501では、API(例えば、免疫調節剤)を用意する。続いて、ステップ502では、APIを極性非プロトン性溶媒に加えて溶液を形成する。次に、ステップ503では、可塑剤または皮膚透過促進剤を加え、必要に応じて揮発性溶媒も加える。次いで、ステップ505では、増粘剤を加える。そして、ステップ506では、感圧性接着剤を加える。続いて、ステップ507では、結晶化抑制剤とも称される溶解補助剤を溶液に加える。次に、ステップ508では、ステップ502で得られたAPI溶液を加える。次いで、ステップ508では、上記の構成要素を混合した後、得られた薬物含有接着性層の一方の面に剥離ライナーを適用して乾燥させ、その後、存在する揮発性溶媒を蒸発させる。最後に、ステップ509では、可溶化薬物含有接着性層の他方の面に、バッキング層を適用する。なお、本開示の方法500では、バッキング層及び剥離ライナーの適用前に、均質な薬物含有接着性層が形成される限り、薬物含有接着性層の1以上の構成要素を上記とは異なる順序で加えてもよい。
【0091】
固体分散体薬物含有接着性層を含む経皮薬物送達システム
【0092】
別の実施形態では、本発明は、皮膚を介して免疫調節剤を送達するための経皮薬物送達システムの別の構成に関する。或る特定の実施形態では、免疫調節剤は、レナリドミドであり得るが、別の実施形態では、本開示の経皮薬物送達システムにおいて任意の他の免疫調節剤を使用できることを理解されたい。本開示の経皮薬物送達システムは、固体分散体薬物含有接着性層を含み、固体分散体薬物含有接着性層は、免疫調節剤(例えば、レナリドミド)、感圧性接着剤、及び溶解補助剤または結晶化阻害剤を含む。また、本開示の経皮薬物送達システムは、皮膚透過促進剤として機能する可塑剤または保湿剤、分散剤、充填剤などの皮膚改質剤及び/または接着改質剤、保護剤、抗酸化剤、または、それらの任意の組み合わせをさらに含み得る。さらに、薬物含有接着性層は、溶液内で薬物が分子的に分散させてKollidon(登録商標)CL-Mなどの基質粒子への吸着を可能にする1種以上の極性非プロトン性溶媒を使用して、免疫調節剤を溶解させ、薬物含有接着性層内に均一に分布させることができる。n-メチル-2-ピロリドンなどの極性非プロトン性溶媒は、プロセス溶媒として使用される場合には、約530ppm未満、または約0.053重量%未満の量で含まれ、添加剤として使用される場合には、約530ppm以上、または約0.053重量%以上の量で含まれ得る。他の極性非プロトン性溶媒も、製剤中の残留溶媒ガイドラインICH Q3Cに基づいて設定された残留溶媒含量とすべきである。特定の理論によって限定されることを意図しないが、本願発明者は、固体分散体薬物含有接着性層の特定の成分、及び、固体分散体薬物含有接着性層に免疫調節剤を均一に分散させる特定の方法によって、その有効性が向上するとともに、皮膚への透過性が向上することを見出した。
【0093】
図2を参照して、或る特定の実施形態によれば、本開示の経皮薬物送達システム200は、バッキング層220と、剥離ライナー230と、それらの間に配置された固体分散体薬物含有接着性層210とを含む。バッキング層220は、経皮薬物送達システム200の使用中に周囲環境に曝される外面240を有している。一方、剥離ライナー230は、固体分散体薬物含有接着性層210の皮膚接触面250に配置される。剥離ライナー230は、経皮薬物送達システム200の使用中に固体分散体薬物含有接着性層210を皮膚上に直接配置することができるように、剥離可能である。本願発明者は、固体分散体薬物含有接着性層の構成要素、例えば特定の極性非プロトン性溶媒及び架橋ポリビニルピロリドン、並びに、使用される構成要素の特定の重量%及び比率の結果として、本開示の経皮薬物送達システム200が、皮膚接触面を形成する安定的な固体分散体薬物含有接着性層210を含むことができ、これにより、免疫調節剤(すなわち、医薬品有効成分またはAPI)の制御された方法での送達が容易になることを見出した。例えば、免疫調節剤の皮膚透過性は、結合剤(例えば、架橋ポリビニルピロリドン)と免疫調節剤との比率に基づいて決定される。
図2に示すように、経皮薬物送達システム200の固体分散体薬物含有接着性層210は、医薬品有効成分が固体分散体薬物含有接着性層の全体に均一に分散されるように、単層の形態とすることができる。ただし、経皮薬物送達システム200は、別の固体分散体薬物含有接着性層を含むことができることを理解されたい。
【0094】
経皮薬物送達システム200の様々な構成要素について、以下に詳細に説明する。
【0095】
I.固体分散体薬物含有接着性層
【0096】
a.医薬品有効成分
【0097】
本開示の経皮薬物送達システムの固体分散体薬物含有接着性層を形成するために使用されるポリマー混合物は、免疫調節剤として機能する任意の適切な薬物または医薬品有効成分(API)を含み得る。例えば、免疫調節剤は、免疫調節イミド化合物(サリドマイド、レナリドミド、ポマリドミド、及びイベルドミド、またはそれらの類似体など)のすべての薬学的に許容される形態、例えば、遊離塩基、塩、多形体、溶媒和物、溶液、異性体、非晶質、結晶、共結晶、固溶体、プロドラッグ、類似体、誘導体、代謝物、及びそれらの任意の組み合わせを含み得る。免疫調節イミド化合物は、酸付加塩や塩基塩などの薬学的に許容される塩、またはその水和物を含む溶媒和物の形態であってもよい。好適な酸付加塩は、非毒性の塩を形成する酸から形成され、そのようなものとしては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、コハク酸塩、サッカラート、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、及び、パモ酸塩などがある。
【0098】
医薬品有効成分(API)として使用される特定の免疫調節剤にかかわらず、固体分散体薬物含有接着性層の形成に使用されるポリマー混合物に含有されるAPIの量は、固体分散体薬物含有接着性層の乾燥重量に基づいて、約0.1~25重量%、例えば約0.5~20重量%、または例えば約0.75~15重量%の範囲であり得る。
【0099】
APIは固体分散液に組み込む前は非晶質であってもよいし、または、極性非プロトン性溶媒(例えば、レナリドマイドの場合はn-メチル-2-ピロリドン)などのAPIに適した溶媒にポリマー混合物中の最終濃度よりも高い濃度で溶解させてもよい。例えば、固体分散体薬物含有接着性層などの最終製品中のAPIの重量割合を約0.5~20重量%にするためには、溶媒中のAPIの湿重量に基づいて、NMP溶液中のLLDの量は約10~50重量%とすることができる、この場合、飽和はNMP中のLLDの約5重量%よりも大きい。
【0100】
b.感圧性接着剤
【0101】
本開示の経皮薬物送達システムの固体分散体薬物含有接着性層は、1種以上の適切な感圧性接着剤(PSA)をさらに含む。接着性ポリマーは、プラスチック、ポリマー、感圧性接着剤、自己接着システムを含む様々な材料から作製することができ、また、感圧特性を得るために追加の添加剤を必要とすることができる。基本的な接着剤系は、ポリアクリル、シリコーン、ポリイソブチレン、ゴム、及び、物理的な混合または共重合によるそれらの任意の組み合わせから選択される。これらの材料は、溶媒性、水性、物理的な混合、押出、共押出、ホットメルト、または他の方法で重合材料または非重合材料として形成されたものから得ることができる。
【0102】
一実施形態では、感圧性接着剤(PSA)は、アクリルポリマーであり得る。有用なアクリルポリマーとしては、架橋型、架橋可能型、未架橋型、未架橋可能型、グラフト型、ブロック型、硬化型、または非硬化型の感圧性接着剤(PSA)としての、アクリル酸及びその誘導体の様々なホモポリマー、コポリマー、ターポリマーなどが挙げられる。これらのアクリルポリマーには、アクリル酸アルキルまたはメタクリル酸エステルのコポリマーが含まれる。ポリアクリレートには、アクリル酸、メタクリル酸、それらの誘導体、これに限定しないが、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、メタクリル酸n-ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2-エチルブチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸デシル、メタクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸トリデシル、メタクリル酸トリデシル、酢酸ビニル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸グリシジル、または、オクチルアクリルアミドが挙げられる。アクリルポリマーは、ヒドロキシル部分またはカルボキシル部分またはそれらの組み合わせのレベルを持つ官能性種、官能性部分を有さない非官能性種、あるいは、メチル、エチル、プロピルまたはブチルキャップドアクリルアミドなどのヒドロキシル部分またはカルボキシル部分よりも反応性の低い部分を持つ非反応性種であり得る。例示的なアクリル系PSAとしては、これに限定しないが、Duro-Tak(登録商標)87-900A、Duro-Tak87-9301、Duro-Tak(登録商標)87-4098、Duro-Tak(登録商標)387-2510/87-2510、Duro-Tak(登録商標)387-2287/87-2287、Duro-Tak(登録商標)87-4287、Duro-Tak(登録商標)387-2516/87-2516、Duro-Tak(登録商標)87-2074、Duro-Tak(登録商標)87-235A、Duro-Tak387-2353/87-2353、Gelva(登録商標)GMS9073、Duro-Tak(登録商標)87-2852、Duro-Tak(登録商標)387-2051/87-2051、Duro-Tak(登録商標)387-2052/87-2052、Duro-Tak(登録商標)387-2054/87-2054、Duro-Tak(登録商標)87-2194、または、Duro-Tak(登録商標)87-2196が挙げられる。また、本開示は、開示されたモノマーを構成する既知及び未知の命名規則を組み込んでいることも理解されたい。
【0103】
或る特定の実施形態では、本願発明者は、-COOHまたは-OH官能基を有するアクリレートコポリマーを含む、感圧性接着剤(PSA)の使用が、固体分散体薬物含有接着性層に含まれる免疫調節剤の溶解性の向上に寄与することを見出した。さらに、約30~55%、例えば約35~50%、または例えば約36~45%の範囲の固形分を有するアクリレートコポリマーも、免疫調節剤の溶解性の向上に寄与することも見出された。加えて、約6500センチポアズ未満、例えば約2000~5000センチポアズ、または例えば約2500~4500センチポアズの粘度を有するアクリレートコポリマーも、免疫調節剤の溶解性の向上に寄与し得る。なお、粘度は、固体分散体薬物含有接着性層中の薬物を形成するために使用されるポリマー混合物中の成分の含有量に影響を与える。さらに、酢酸ビニルを含むアクリレートコポリマーも有益であり得る。
【0104】
具体的な例としては、Duro-Tak(登録商標)387-2516/87-2516(酢酸ビニル;-OH官能基;固形分は41.5%;粘度は4350センチポアズ)、Duro-Tak(登録商標)387-2052/87-2052(酢酸ビニル;-COOH官能基、固形分は47.5%;粘度は2750センチポアズ)、または、Duro-Tak(登録商標)87-4098(酢酸ビニル;官能基を持たない固形分は38.5%;粘度は6500センチポアズ)などが挙げられる。
【0105】
さらに別の実施形態では、感圧性接着剤(PSA)は、シリコーンを含み得る。適切なシリコーン接着剤としては、シリコーンポリマーと樹脂とから作られた感圧性接着剤が挙げられる。ポリマーと樹脂との比率を変えることにより、様々なレベルのタック(粘着性)を実現することができる。市販されている有用なシリコーン接着剤の具体例としては、ダウコーニング社(Dow Corning)製の標準的なBIO-PSA(登録商標)シリーズ(7-4400、7-4500、7-4600シリーズ)、及び、アミン適合性(エンドキャップ)BIO-PSA(登録商標)シリーズ(7-4100、7-4200、7-4300シリーズ)が挙げられる。好ましい接着剤としては、BIO-PSA(登録商標)7-4101、7-4102、7-4201、7-4202、7-4301、7-4302、7-4401、7-4402、7-4501、7-4502、7-4601、及び7-4602が挙げられる。
【0106】
さらに別の実施形態では、PSAは、ポリイソブチレンを含み得る。適切なポリイソブチレン系接着剤は、感圧性であり、適切なタック(粘着性)を有するものである。ポリイソブチレンは、高分子量及び中分子量のポリイソブチレン、ポリブテン、及び鉱物油の混合物を含み得る。具体的には、高分子量ポリイソブチレンとは、分子量が約425,000以上のものである。中分子量ポリイソブチレンとは、分子量が40,000以上かつ425,000未満のものである。低分子量ポリイソブチレンとは、分子量が100以上かつ約40,000未満のものである。市販されている有用なポリイソブチレン系接着剤の具体例としては、BASF社製のOppanol(登録商標)高分子量Nグレード50、50SF、80、100、及び150、並びに、Oppanol(登録商標)中分子量Bグレード10N、10SFN、11SFN、12SFN、12N、13SFN、14SFN、15SFN、及び15Nが挙げられる。ポリブテンの具体例としては、ソルテックス(Soltex)社から様々な分子量のポリブテンとして、また、イネオス(Ineos)社から様々な分子量のIndopol及びPanalaneとして市販されているものが挙げられる。市販されている有用なポリイソブチレン系接着剤の具体例としては、Duro-Tak(登録商標)87-6908が挙げられる。
【0107】
ゴムブロックコポリマーから得られる他の感圧性接着剤、例えば、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)、またはスチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)をベースとする接着剤も本発明によって意図される。
【0108】
使用される特定のPSAにかかわらず、感圧性接着剤は、固体分散体薬物含有接着性層の乾燥重量に基づいて、約1~99重量%、例えば約20~99重量%、または例えば約40~98重量%の範囲の量で含有され得る。
【0109】
c.結合剤
【0110】
本開示の経皮薬物送達システムの固体分散体薬物含有接着性層は、接着性層中の固体多孔性基材へのAPの分子吸着を可能にする微粉化架橋ポリビニルピロリドン(PVP)、例えばN-ビニル-2-ピロリドンの架橋ホモポリマーなどの結合剤をさらに含み得る。或る特定の実施形態では、架橋PVPは、水不溶性粉末の形態である。このような架橋PVPは、BASF社からKollidon(登録商標)という名称で市販されている。本発明での使用が意図されている架橋PVPの具体例は、Kollidon(登録商標)CL-Mである。使用可能な他の架橋PVPとしては、Kollidon(登録商標)CL-SF及びCL-Fが挙げられる。架橋PVPは、微粉化することができ、約1~40μm、例えば約2~30μm、または例えば約3~10μmの範囲の平均粒径を有し得る。加えて、或る特定の実施形態では、使用される粒子の90%超が、約15μm未満の粒子サイズを有し得る。したがって、本開示の薬物含有接着性層での使用が考えられる架橋PVPの粒径は、最大で150μmの粒径を有する一般的な架橋PVPよりも小さい。特定の理論によって制限されることを意図しないが、本願発明者は、90%超の粒子が約15μm未満の粒径を有する架橋PVPを使用することにより、APIが均一な懸濁液中に維持され、沈降が最小限に抑えられる、固体分散体薬物含有接着性層の形成に使用される安定的なポリマー混合物を形成できることを見出した。これにより、薬物含有接着性層中のAPIを均一に分散させることができ、その結果、経皮薬物送達システムは、皮膚を介して制御された方法でAPIを送達することができる。
【0111】
さらに、本発明での使用が意図される架橋PVP粒子は、約0.10~0.40g/mL、例えば約0.125~0.35g/mL、または例えば約0.15~0.25g/mLの範囲の嵩密度を有し得る。さらに、架橋PVP粒子は、約0.5~20m2/g、例えば約1~15m2/g、または例えば約1.5~10m2/gの範囲の表面積を有し得る。本発明において使用が意図される架橋PVP粒子の大きな表面積は、固体分散体薬物含有接着性層の全体にわたって均一、均質な方法でAPIの分散を促進することができ、これにより、APIを一定の速度で送達することが可能になる。
【0112】
固体分散体薬物含有接着性層に含まれる架橋ポリビニルピロリドンの量は、固体分散体薬物含有接着性層の乾燥重量に基づいて、約0.1~40重量%、例えば約1.5~20重量%、または例えば約2~15重量%の範囲であり得る。さらに、本願発明者は、免疫調節剤と架橋ポリビニルピロリドンとの比が固体分散体の形成に影響し、免疫調節剤と架橋ポリビニルピロリドンとの比が約1:10~4:1、例えば約1:5~2:1、または例えば約1:3~1:1の範囲である場合に、固体分散体の形成が促進されることを見出した。別の実施形態では、免疫調節剤と架橋ポリビニルピロリドンとの比が、約1:1~約1:6、例えば約1:1.5~約1:4、または例えば約1:2~1:3の範囲の場合に、皮膚を透過する免疫調節剤の流束の増加をもたらす。
【0113】
d.分散剤
【0114】
本開示の皮薬物送達システムの固体分散体薬物含有接着性層は、1種以上の分散剤をさらに含むことができる。1種以上の分散剤としては、免疫調節剤に対して溶解性を示さないものを挙げることができる。例えば、分散剤としては、鉱油、シリコーン液体、脂肪酸エステル、またはそれらの任意の組み合わせを挙げることができる。
【0115】
使用される特定の分散剤にかかわらず、固体分散体薬物含有接着性層に含有される分散剤の量は(存在する場合)、固体分散体薬物含有接着性層の乾燥重量に基づいて、約0.1~25重量%、例えば約0.5~20重量%、または例えば約0.75~15重量%の範囲であり得る。
【0116】
e.皮膚透過促進剤
【0117】
本開示の経皮薬物送達システムの固体分散体薬物含有接着性層は、経皮薬物送達システムの使用中に免疫調節剤の皮膚透過性を向上させるための皮膚透過促進剤として機能する、1種以上の適切な界面活性剤(例えば、非イオン界面活性剤)、可塑剤、保湿剤、またはそれらの任意の組み合わせをさらに含み得る。
【0118】
或る特定の実施形態では、皮膚透過促進剤は、これに限定しないが、非イオン性界面活性剤などの界面活性剤であり得る。或る特定の実施形態では、非イオン性界面活性剤は、様々な脂肪アルコール、脂肪酸、及び/または脂肪エステル誘導体、これに限定しないが、例えば、オレイン酸、オレイルアルコール、オレイン酸エチル、オレイン酸オレイル、オレイルアルコールのポリエチレングリコールエーテル、リノール酸、ラウリン酸、ラウリルアルコール、乳酸ラウリル、ミリスチン酸アルコール、パルミチン酸イソプロピルなど、または、保湿剤(グリセリン、クエン酸トリエチル、トリアセチン、グリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、PEGなど)、あるいはそれらの任意の組み合わせを含み得る。特定の理論によって制限されることを意図しないが、オレスは流束の増加に寄与して、本システムの能力を高め、これにより、本システムを皮膚に適用してから24時間後に流束が低下するという限界を克服できると考えられる。
【0119】
使用される特定の界面活性剤、可塑剤、保湿剤、またはそれらの任意の組み合わせにかかわらず、可固体分散体薬物含有接着性層を形成するために使用されるポリマー混合物に含有される皮膚透過促進剤の量は、経皮薬物送達システムの固体分散体薬物含有接着性層の乾燥重量に基づいて、約1~60重量%、例えば約5~40重量%、または例えば約10~30重量%の範囲であり得る。或る特定の実施形態では、皮膚透過促進剤は、約0.5~30重量%、例えば約2.5~25重量%、または例えば約5~20重量%の第1の非イオン性界面活性剤(例えば、オレス-3とオレス-2、-5、-10、及び/または-20との組み合わせ、または、オレス-5とオレス-2、-3、-10、及び/または-20との組み合わせなどの、オレイルアルコールのポリエチレングリコールエーテル)と、約0.5~30重量%、例えば約2.5~25重量%、または例えば約5~20重量%の第2の非イオン性界面活性剤(例えば、P407などのポロキサマー)とを含み、このような皮膚透過促進剤の組み合わせの使用により、APIの有意に持続的な送達を可能にする経皮薬物送達システムが得られることが見出された。
【0120】
f.皮膚改質剤または接着改質剤
【0121】
本開示の経皮薬物送達システムの固体分散体薬物含有接着性層は、1種以上の皮膚改質剤もしくは接着改質剤、充填剤、保護剤、抗酸化剤、または他の材料をさらに含み得る。適切な皮膚改質剤もしくは接着改質剤としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、没食子酸、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、乳酸、サリチル酸メチル、サリチル酸、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0122】
固体分散体薬物含有接着性層を形成するために使用されるポリマー混合物に含有される1種以上の皮膚改質剤、接着改質剤、充填剤、保護剤、抗酸化剤、または他の材料にかかわらず、これらは、経皮薬物送達システムの固体分散体薬物含有接着性層の乾燥重量に基づいて、固体分散体薬物含有接着性層に、約0.25~10重量%、例えば約0.5~7.5重量%、または例えば約1~5重量%の範囲の総量で含有され得る。
【0123】
g.極性非プロトン性溶媒
【0124】
本開示の経皮薬物送達システムの固体分散体薬物含有接着性層を形成するポリマー混合物は、感圧性接着剤の固体含有量を調整するのに使用され、薬物含有ポリマー混合物中の免疫調節剤の分散、及び、免疫調節剤の皮膚を介した送達を補助する1種以上の極性非プロトン性溶媒をさらに含み得る。本願発明者は、免疫調節剤(LLD)を添加する前に免疫調節剤(LLD)を可溶化しなければ、架橋ポリビニルピロリドンへの沈殿が起こらず、薬物の透過ができないことを見出した。
【0125】
極性非プロトン性溶媒とは、酸性プロトンを欠き、極性を有する溶媒のことである。このような溶媒は、ヒドロキシル基やアミン基を欠いている。これらの溶媒は、水素結合においてプロトン供与体としては機能しないが、プロトン受容体としては機能する。本発明によって意図される具体例としては、極性非プロトン性溶媒としては、n-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルイソソルビド、酢酸エチル、またはそれらの任意の組み合わせを挙げることができる。なお、他の極性非プロトン性溶媒、これに限定しないが、例えば、アセトン、アセトニトリル、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド、DMPU、及びテトラヒドロフランなども、本発明によって意図されることを理解されたい。
【0126】
使用される特定の極性非プロトン性溶媒または極性非プロトン性溶媒の組み合わせにかかわらず、固体分散体薬物含有接着性層を形成するために使用されるポリマー混合物に含有される極性非プロトン性溶媒は、経皮薬物送達システム中に、製剤中の残留溶媒ガイドラインのICH Q3C不純物未満の総量で含有され得る。プロセス溶媒がNMPである場合、固体分散体薬物含有接着性層中に含有される極性非プロトン性溶媒の総量は、固体分散体薬物含有接着性層の乾燥重量に基づいて、約530ppm未満または約0.053重量%未満、例えば約390ppm未満または約0.039重量%未満であり得る。なお、極性非プロトン性溶媒は、固体分散体薬物含有接着性層の形成中、及び、蒸発または乾燥の前に、より大きな重量%で導入されることを理解されたい。さらに、添加剤として使用される場合、1種以上の極性非プロトン性溶媒は、製剤中の残留溶媒ガイドラインのICH Q3C不純物よりも多い量で含有され得る。プロセス溶媒がNMPである場合、固体分散体薬物含有接着性層中に含有される極性非プロトン性溶媒の総量は、固体分散体薬物含有接着性層の乾燥重量に基づいて、約390ppm以上または約0.039重量%以上、例えば約530ppm以上または約0.053重量%以上であり得る。
【0127】
別の実施形態では、使用される特定の極性非プロトン性溶媒または極性非プロトン性溶媒の組み合わせにかかわらず、固体分散体薬物含有接着性層を形成するために使用されるポリマー混合物に含まれる極性非プロトン性溶媒の総量は、経皮薬物送達システムの乾燥重量に基づいて、約20,000ppm未満または約2.0重量%未満、例えば約10,000ppm未満または約1.0重量%未満であり得る。なお、極性非プロトン性溶媒は、固体分散体薬物含有接着性層の形成中、及び、蒸発または乾燥の前に、より大きな重量%で導入されることを理解されたい。さらに、添加剤として使用される場合、固体分散体薬物含有接着性層中に含有される1種以上の極性非プロトン性溶媒の総量は、固体分散体薬物含有接着性層の乾燥重量に基づいて、約530ppm以上または約0.053重量%以上、例えば約10,000ppm以上または約1.0重量%以上、または例えば約20,000ppm以上または約2.0重量%以上であり得る。
【0128】
II.バッキング層
【0129】
再び
図2を参照して、本開示の経皮薬物送達システム200は、固体分散体薬物含有接着性層210に加えて、経皮薬物送達システム200の外面240を形成するバッキング層220をさらに含む。バッキング層220は、ポリマー層(及び存在する他の層)を密封して環境から保護し、これにより、使用中の薬物の損失及び/または他の成分の環境への放出を防ぐことができる。バッキング層としての使用に適した材料は、当該技術分野でよく知られており、そのような材料としては、ポリエステル、ポリエチレン、酢酸ビニル樹脂、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリウレタンなどのフィルム、金属箔、不織布、布、及び市販のラミネートが挙げられる。バッキング層は、一般的に、2~1000マイクロメートルの範囲の厚さを有する。例えば、3M社製のScotchpak(登録商標)、これに限定しないが、1012または9732(エチレン酢酸ビニルコポリマーのヒートシール層を有するポリエステルフィルム)、9723(ポリエチレンとポリエステルとのラミネート)、9733、9735、9738、または9754、またはCoTran(登録商標)9720(ポリエチレンフィルム)が、Dow(登録商標)BLF2050(エチレン酢酸ビニル層とSARAN(登録商標)内側層とを含む多層バッキング)などのDow(登録商標)バッキング層フィルムと同様に、本開示の経皮薬物送達システムに有用である。
【0130】
III.剥離ライナー
【0131】
引き続き、
図2を参照して、本開示の経皮薬物送達システム200は、固体分散体薬物含有接着性層210及びバッキング層220に加えて、経皮薬物送達システムの皮膚接触面250に配置された剥離ライナー230をさらに含む。剥離ライナー230は、経皮薬物送達システム200の固体分散体薬物含有接着性層210を患者の皮膚に適用する準備が整うまで、固体分散体薬物含有接着性層210を保護する役割を果たす。皮膚接触面250から剥離ライナー230を剥離した後に、経皮薬物送達システム200の皮膚接触面250が患者の皮膚に適用される。剥離した剥離ライナー230は廃棄される。剥離ライナーとしての使用に適した材料は、当該分野ではよく知られており、そのような材料としては、ダウコーニング社製のBio-Release(登録商標)ライナー及びSyl-off(登録商標)7610、ロパレックス社(Loparex)製のPET剥離ライナー(シリコーンコーティング)、サンゴバン社(Saint Gobain)製の9011ライナー(フルオロシリコーンコーティング)または他のライナー、及び、3M社製の1020、1022、9741、9744、9748、9749、及び9755スコッチパック(登録商標)ライナー(フルオロポリマーでコーティングされたポリエステルフィルム)などが挙げられる。
【0132】
IV.経皮薬物送達システムの作製方法
【0133】
一般に、本開示の固体分散体薬物含有接着性層は、その構成要素を特定の順序で組み合わせることにより作製され、その結果、免疫調節剤の皮膚透過性が向上した固体分散体薬物含有接着性層を含む経皮薬物送達システムを形成することができる。
図6を参照して、本開示の固体分散体薬物含有接着性層を形成するために使用されるポリマー混合物を作製する方法600が示されている。まず、ステップ601では、API(例えば、免疫調節剤)を用意する。続いて、ステップ602では、APIを極性非プロトン性溶媒(例えば、n-メチル-2-ピロリドン)に加えて溶液を形成する。次に、ステップ603では、API/極性非プロトン性溶媒溶液を、追加の溶媒(例えば、酢酸エチル)中の架橋ポリビニルピロリドン溶液に加える。次いで、ステップ604では、感圧性接着剤を加える。そして、ステップ605では、皮膚改質剤または接着改質剤を加える。続いて、ステップ606では、皮膚透過促進剤を加える。次に、ステップ607では、分散剤を加える。なお、ステップ602~607は、任意の適切な順序で実施してもよいことを理解されたい。次いで、ステップ608では、上記の構成要素を混合した後、得られた固体分散体薬物含有接着性層の一方の面に剥離ライナーを適用して乾燥させる。その後、ステップ609では、存在する有機溶媒を蒸発させる。そして、ステップ610では、固体分散体薬物含有接着性層の他方の面に、バッキング層を適用する(例えば、ラミネート加工する)。なお、バッキング層は本質的に閉塞性であるべきであることを理解されたい。最後に、個々の経皮薬物送達システムは、患者への接着を確実にする固有のオーバーレイシステムの有無にかかわらず、形成された経皮薬物送達システムの大きなシートからダイカットされる。固有のオーバーレイシステムは、薬物を含有しておらず、本質的に不織布/非閉塞性または閉塞性であることを理解されたい。なお、本開示の方法600では、バッキング層及び剥離ライナーの適用前に、均質な薬物含有接着性層が形成される限り、薬物含有接着性層の1以上の構成要素を上記とは異なる順序で加えてもよい。
【0134】
別個の接着性層及び薬物含有ポリマー層を含む経皮薬物送達システム
【0135】
副作用を最小限に抑えながら治療効果を得るためには、レナリドミドや他の免疫調節剤を持続的に送達することが必要であると考えられている。一実施形態では、本発明は、最大約7日間にわたって、経皮経路を介してLLDを連続的に送達するための別個の接着性層及び薬物含有ポリマー層を含む多層型のマトリクス製剤を意図している。平均流束は、最大約72時間にわたって、約1.5~6マイクログラム/平方センチメートル/時、例えば約1.75~5.5マイクログラム/平方センチメートル/時、または例えば約2~5マイクログラム/平方センチメートル/時の範囲とすることができる。
【0136】
一実施形態では、本発明は、皮膚を介して免疫調節剤を送達するための経皮薬物送達システムに関する。或る特定の実施形態では、免疫調節剤は、レナリドミドであり得るが、別の実施形態では、本開示の経皮薬物送達システムにおいて任意の他の免疫調節剤を使用できることを理解されたい。本開示の経皮薬物送達システムは、別個の接着性層及び薬物含有ポリマー層を含む。接着性層は、感圧性接着剤を含む。薬物含有ポリマー層は、免疫調節剤(例えば、レナリドミド)、及び溶解補助剤または結晶化阻害剤を含む。また、薬物含有ポリマー層は、皮膚透過促進剤として機能する可塑剤または保湿剤、増粘剤、充填剤などの皮膚改質剤、保護剤、抗酸化剤、または、それらの任意の組み合わせをさらに含み得る。さらに、薬物含有ポリマー層は、1種以上の極性非プロトン性溶媒を使用して、免疫調節剤を溶解させ、薬物含有ポリマー層内に均一に分布させることができる。本開示の経皮薬物送達システムにおいて、1種以上の極性非プロトン性溶媒は、プロセス溶媒として使用される場合には、約530ppm未満、または約0.053重量%未満の量で含まれ、添加剤として使用される場合には、約530ppm以上、または約0.053重量%以上の量で含まれ得る。特定の理論によって限定されることを意図しないが、本願発明者は、接着性層及び薬物含有ポリマー層の特定の成分、及び、薬物含有ポリマー層に免疫調節剤を溶解させる特定の方法によって、混合物における溶解性を向上させることができ、その結果、皮膚への透過性が向上することを見出した。
【0137】
図3を参照して、或る特定の実施形態によれば、本開示の経皮薬物送達システム300は、バッキング層320と、剥離ライナー330と、それらの間に配置された薬物含有ポリマー層310とを含む。さらに、バッキング層320と、薬物含有ポリマー層310との間に接着性層305が配置されている。バッキング層320は、経皮薬物送達システム300の使用中に周囲環境に曝される外面340を有している。一方、剥離ライナー330は、薬物含有ポリマー層310の皮膚接触面350に配置される。剥離ライナー330は、経皮薬物送達システム300の使用中に薬物含有ポリマー層310を皮膚上に直接配置することができるように、剥離可能である。
【0138】
本願発明者は、薬物含有ポリマー層の構成要素、例えば特定の極性非プロトン性溶媒、溶解補助剤、結晶化阻害剤などの特定の組み合わせ、並びに、使用される構成要素の特定の重量%及び比率の結果として、本開示の経皮薬物送達システム300が、
薬物非含有接着性層及び薬物含有ポリマー層(皮膚接触面を形成するリザーバとして機能する)を含むことができ、これにより、免疫調節剤(すなわち、医薬品有効成分またはAPI)の制御された方法での送達が容易になることを見出した。
図3に示すように、経皮薬物送達システム300の薬物含有ポリマー層310は、医薬品有効成分が薬物含有ポリマー層の全体に均一に分散されるように、単層の形態とすることができる。ただし、経皮薬物送達システム300は、別の薬物含有ポリマー層を含むことができることを理解されたい。
【0139】
経皮薬物送達システム300の様々な構成要素について、以下に詳細に説明する。
【0140】
I.薬物非含有接着性層
【0141】
a.感圧性接着剤
【0142】
本開示の経皮薬物送達システムの薬物非含有接着性層は、1種以上の適切な感圧性接着剤(PSA)をさらに含む。接着性ポリマーは、プラスチック、ポリマー、感圧性接着剤、自己接着システムを含む様々な材料から作製することができ、また、感圧特性を得るために追加の添加剤を必要とすることができる。基本的な接着剤系は、ポリアクリル、シリコーン、ポリイソブチレン、ゴム、及び、物理的な混合または共重合によるそれらの任意の組み合わせから選択される。これらの材料は、溶媒性、水性、物理的な混合、押出、共押出、ホットメルト、または他の方法で重合材料または非重合材料として形成されたものから得ることができる。
【0143】
一実施形態では、感圧性接着剤(PSA)は、アクリルポリマーであり得る。有用なアクリルポリマーとしては、架橋型、架橋可能型、未架橋型、未架橋可能型、グラフト型、ブロック型、硬化型、または非硬化型の感圧性接着剤(PSA)としての、アクリル酸及びその誘導体の様々なホモポリマー、コポリマー、ターポリマーなどが挙げられる。これらのアクリルポリマーには、アクリル酸アルキルまたはメタクリル酸エステルのコポリマーが含まれる。ポリアクリレートには、アクリル酸、メタクリル酸、それらの誘導体、これに限定しないが、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、メタクリル酸n-ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2-エチルブチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸デシル、メタクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸トリデシル、メタクリル酸トリデシル、酢酸ビニル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸グリシジル、または、オクチルアクリルアミドが挙げられる。アクリルポリマーは、ヒドロキシル部分またはカルボキシル部分またはそれらの組み合わせのレベルを持つ官能性種、官能性部分を有さない非官能性種、あるいは、メチル、エチル、プロピルまたはブチルキャップドアクリルアミドなどのヒドロキシル部分またはカルボキシル部分よりも反応性の低い部分を持つ非反応性種であり得る。例示的なアクリル系PSAとしては、これに限定しないが、Duro-Tak(登録商標)87-900A、Duro-Tak87-9301、Duro-Tak(登録商標)87-4098、Duro-Tak(登録商標)387-2510/87-2510、Duro-Tak(登録商標)387-2287/87-2287、Duro-Tak(登録商標)87-4287、Duro-Tak(登録商標)387-2516/87-2516、Duro-Tak(登録商標)87-2074、Duro-Tak(登録商標)87-235A、Duro-Tak387-2353/87-2353、Gelva(登録商標)GMS9073、Duro-Tak(登録商標)87-2852、Duro-Tak(登録商標)387-2051/87-2051、Duro-Tak(登録商標)387-2052/87-2052、Duro-Tak(登録商標)387-2054/87-2054、Duro-Tak(登録商標)87-2194、または、Duro-Tak(登録商標)87-2196が挙げられる。また、本開示は、開示されたモノマーを構成する既知及び未知の命名規則を組み込んでいることも理解されたい。一実施形態では、感圧性接着剤は、官能基を持たない、約6000センチポアズ超、例えば、約6500~10000センチポアズの粘度を有するアクリレートコポリマーであり得る。そのような感圧性接着剤は、それのLLDとの低い溶解性、及び、それの高親水性薬物含有ポリマー混合物/層との適合性に基づいて使用され得る。或る特定の実施形態では、感圧性接着剤は官能基を持たない、約9500センチポアズの粘度を有するアクリレートポリマーであるDuro-Tak(登録商標)87-9301であり得る。
【0144】
具体的な例としては、Duro-Tak(登録商標)387-2516/87-2516(酢酸ビニル;-OH官能基;固形分は41.5%;粘度は4350センチポアズ)、Duro-Tak(登録商標)387-2052/87-2052(酢酸ビニル;-COOH官能基、固形分は47.5%;粘度は2750センチポアズ)、または、Duro-Tak(登録商標)87-4098(酢酸ビニル;官能基を持たない固形分は38.5%;粘度は6500センチポアズ)などが挙げられる。
【0145】
さらに別の実施形態では、感圧性接着剤(PSA)は、シリコーンを含み得る。適切なシリコーン接着剤としては、シリコーンポリマーと樹脂とから作られた感圧性接着剤が挙げられる。ポリマーと樹脂との比率を変えることにより、様々なレベルのタック(粘着性)を実現することができる。市販されている有用なシリコーン接着剤の具体例としては、ダウコーニング社(Dow Corning)製の標準的なBIO-PSA(登録商標)シリーズ(7-4400、7-4500、7-4600シリーズ)、及び、アミン適合性(エンドキャップ)BIO-PSA(登録商標)シリーズ(7-4100、7-4200、7-4300シリーズ)が挙げられる。好ましい接着剤としては、BIO-PSA(登録商標)7-4101、7-4102、7-4201、7-4202、7-4301、7-4302、7-4401、7-4402、7-4501、7-4502、7-4601、及び7-4602が挙げられる。
【0146】
さらに別の実施形態では、PSAは、ポリイソブチレンを含み得る。適切なポリイソブチレン系接着剤は、感圧性であり、適切なタック(粘着性)を有するものである。ポリイソブチレンは、高分子量及び中分子量のポリイソブチレン、ポリブテン、及び鉱物油の混合物を含み得る。具体的には、高分子量ポリイソブチレンとは、分子量が約425,000以上のものである。中分子量ポリイソブチレンとは、分子量が40,000以上かつ425,000未満のものである。低分子量ポリイソブチレンとは、分子量が100以上かつ約40,000未満のものである。市販されている有用なポリイソブチレン系接着剤の具体例としては、BASF社製のOppanol(登録商標)高分子量Nグレード50、50SF、80、100、及び150、並びに、Oppanol(登録商標)中分子量Bグレード10N、10SFN、11SFN、12SFN、12N、13SFN、14SFN、15SFN、及び15Nが挙げられる。ポリブテンの具体例としては、ソルテックス(Soltex)社から様々な分子量のポリブテンとして、また、イネオス(Ineos)社から様々な分子量のIndopol及びPanalaneとして市販されているものが挙げられる。市販されている有用なポリイソブチレン系接着剤の具体例としては、Duro-Tak(登録商標)87-6908が挙げられる。
【0147】
ゴムブロックコポリマーから得られる他の感圧性接着剤、例えば、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)系接着剤、または、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)系接着剤も本発明によって意図される。
【0148】
使用される特定のPSAにかかわらず、感圧性接着剤は、薬物含有ポリマー層の乾燥重量に基づいて、約1~99重量%、例えば約20~98.5重量%、または例えば約40~98重量%の範囲の量で含有され得る。
【0149】
II.薬物含有固体ポリマーフィルム層(薬物含有ポリマー層)
【0150】
a.医薬品有効成分
【0151】
本開示の経皮薬物送達システムの薬物含有ポリマー層を形成するために使用されるポリマー混合物は、免疫調節剤として機能する任意の適切な薬物または医薬品有効成分(API)を含み得る。例えば、免疫調節剤は、免疫調節イミド化合物(サリドマイド、レナリドミド、ポマリドミド、及びイベルドミド、またはそれらの類似体など)のすべての薬学的に許容される形態、例えば、遊離塩基、塩、多形体、溶媒和物、溶液、異性体、非晶質、結晶、共結晶、固溶体、プロドラッグ、類似体、誘導体、代謝物、及びそれらの任意の組み合わせを含み得る。免疫調節イミド化合物は、酸付加塩や塩基塩などの薬学的に許容される塩、またはその水和物を含む溶媒和物の形態であってもよい。好適な酸付加塩は、非毒性の塩を形成する酸から形成され、そのようなものとしては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、コハク酸塩、サッカラート、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、及び、パモ酸塩などがある。
【0152】
医薬品有効成分(API)として使用される特定の免疫調節剤にかかわらず、薬物含有ポリマー層に含有されるAPIの量は、薬物含有ポリマー層の乾燥重量に基づいて、約0.1~50重量%、例えば約0.5~35重量%、または例えば約0.75~20重量%の範囲であり得る。
【0153】
b.溶解補助剤/結晶化抑制剤
【0154】
本開示の経皮薬物送達システムの薬物含有ポリマー層は、非架橋PVPなどのポリビニルピロリドン(PVP)を含む、1種以上の溶解補助剤または結晶化阻害剤をさらに含み得る。特定の理論によって制限されることを意図しないが、本願発明者は、非架橋PVPが、ポリマーが特定の配置で第3級アミン及びケトンを有する5員環を含む構造によって極性非プロトン性で機能し得ることを見出した。したがって、このタイプのポリマーは、アルコール(-OH)基の添加剤の使用を回避しながら、本質的に極性非プロトン性の構造を提供する。BASF社から提供されるPVPの適切な可溶化グレードとしては、Kollidon(登録商標)グレードK-12(分子量2,000~3,000;pH4.63)、K-17(分子量7,000~11,000;pH4.64)、K-25(分子量28,000~34,000;pH4.00)、K-30(分子量44,000~54,000;pH4.10)、及び、K-90(分子量1,000,000~1,500,000;pH5.68)が挙げられる。他の機能性ポリマーとしては、Kollidon(登録商標)VA64(分子量45,000~70,000、pH4.51)、または、別の供給業者から提供される他のポビドン及びそのコポリマーが挙げられる。本願発明者は、レナリドマイドの存在下でポリビニルピロリドンを使用することにより、レナリドマイドの溶解性及び安定性が向上することを見出した。
【0155】
薬物含有ポリマー層に含有されるポリビニルピロリドンの量は、薬物含有ポリマー層の乾燥重量に基づいて、約0.5~50重量%、例えば約0.75~25重量%、または例えば約1~10重量%の範囲であり得る。
【0156】
c.増粘剤
【0157】
本開示の経皮薬物送達システムの薬物含有ポリマー層は、1種以上の増粘剤をさらに含み得る。1種以上の増粘剤としては、天然ポリマー、多糖類及びその誘導体、これに限定しないが、例えば、寒天、アルギン酸及びその誘導体、カシアトラ(cassia tora)、コラーゲン、ゼラチン、ゲランガム、グアーガム、ペクチン、カリウム、またはカラギーナンナトリウム、トラガカント、キサンタム、ガムコパル、キトサン、樹脂、半合成ポリマー及びその誘導体、これに限定しないが、例えば、セルロース及びその誘導体(メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(Klucel(登録商標)HF)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートなど)、合成ポリマー及びその誘導体、これに限定しないが、例えば、カルボキシビニルポリマーまたはカルボマー(カルボポール(登録商標)940、カルボポール(登録商標)934、カルボポール(登録商標)971pNF)、ポリエチレン及びそのコポリマー、粘土、これに限定しないが、ケイ酸塩及びベントナイト、二酸化ケイ素、ヒュームドシリカ(Aerosil(登録商標))、ポリビニルアルコール、アクリルポリマー(Eudragit(登録商標))、アクリル酸エステル、ポリアクリレートコポリマー、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドンホモポリマー及びポリビニルピロリドンコポリマー(これに限定しないが、例えば、PVP、Kollidon(登録商標)30、ポロキサマー)、Eudragit(登録商標)L100-55、Eudragit(登録商標)RL、Eudragit(登録商標)S-100、Eudragit(登録商標)L-100、Plastoid(登録商標)B、Eudragit(登録商標)EPOなどのアクリルポリマー、イソブチレン、酢酸エチルビニルコポリマー、天然ゴム、合成ゴム、ホットメルト接着剤、スチレン-ブタジエンコポリマー、ベントナイト、すべての水及び/または有機溶媒の膨潤性ポリマー、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0158】
使用される特定の増粘剤にかかわらず、薬物含有ポリマー層を形成するために使用されるポリマー混合物に含有される増粘剤の量は、薬物含有ポリマー層の乾燥重量に基づいて、約0.1~75重量%、例えば約0.5~50重量%、または例えば約0.75~25重量%の範囲であり得る。
【0159】
d.皮膚透過促進剤
【0160】
本開示の経皮薬物送達システムの薬物含有ポリマー層は、経皮薬物送達システムの使用中に免疫調節剤の皮膚への透過を向上させるための皮膚透過促進剤として機能する、1種以上の適切な界面活性剤、可塑剤、保湿剤、またはそれらの任意の組み合わせをさらに含み得る。或る特定の実施形態では、可塑剤として、様々な脂肪アルコール、脂肪酸、及び/または脂肪エステル誘導体、これに限定しないが、例えば、オレイン酸、オレイルアルコール、オレイン酸エチル、オレイン酸オレイル、オレイルアルコールのポリエチレングリコールエーテル、リノール酸、ラウリン酸、ラウリルアルコール、乳酸ラウリル、ミリスチン酸アルコール、パルミチン酸イソプロピルなど、または、保湿剤(グリセリン、クエン酸トリエチル、トリアセチン、グリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、PEGなど)、あるいはそれらの任意の組み合わせを含み得る。或る特定の実施形態では、皮膚透過促進剤は、非イオン性界面活性剤であり得る。非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンの脂肪誘導体を含み得る。一例は、3つのエチレンオキシド単位を有するオレイルアルコールのポリエチレングリコールエーテルであるオレス-3であるが、他のオレス(例えば、-2、-4、-5、-6、-7、-8、-9、-10、-11、-12、-15、-16、-20、-23、-25、-30、-40、-44、及び50)も、単独でまたはそれらの任意の組み合わせで考えられる。特定の理論によって制限されることを意図しないが、オレスは流束の増加に寄与して、本システムの能力を高め、これにより、本システムを皮膚に適用してから24時間後に流束が低下するという限界を克服できると考えられる。他に考えられる非イオン性界面活性剤は、ポロキサマーである(例えば、P181、P188、P338、P407、またはそれらの任意の組み合わせであり、Kolliphor(登録商標)、Pluronic(登録商標)、または、Lutrol(登録商標)として市販されている)。使用可能な他の非イオン性界面活性剤としては、ラウレス、セテス、セテアレス、及びステアレスが挙げられ、これらは単独で、または互いに組み合わせて、あるいは上記のオレス及び/またはポロキサマーの1種以上と組み合わせて使用され得る。
【0161】
或る特定の実施形態では、皮膚透過促進剤は、ポリエチレングリコール、ラウリン酸メチル、乳酸ラウリル、及びBrij(登録商標)O10などのポリオキシエチレンオレイルエーテルの組み合わせを含み得る。
【0162】
使用される特定の可塑剤、保湿剤、またはそれらの組み合わせにかかわらず、本開示の経皮薬物送達システムの薬物含有ポリマー層に含まれる皮膚透過促進剤の量は、薬物含有ポリマー層の乾燥重量に基づいて、約1~80重量%、例えば約5~60重量%、または例えば約10~40重量%であり得る。
【0163】
e.皮膚改質剤
【0164】
本開示の経皮薬物送達システムの薬物含有ポリマー層は、1種以上の皮膚改質剤、充填剤、保護剤、抗酸化剤、または他の材料をさらに含み得る。適切な皮膚改質剤としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、没食子酸、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、乳酸、サリチル酸メチル、サリチル酸、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0165】
薬物含有ポリマー層を形成するために使用されるポリマー混合物に含有される1種以上の皮膚改質剤、充填剤、保護剤、抗酸化剤、または他の材料にかかわらず、これらは、経皮薬物送達システムの薬物含有ポリマー層の乾燥重量に基づいて、薬物含有ポリマー層に、約0.5~50重量%、例えば約1~25重量%、または例えば約1.5~15重量%の範囲の総量で含有され得る。
【0166】
f.極性非プロトン性溶媒
【0167】
本開示の経皮薬物送達システムの薬物含有ポリマー層は、薬物含有ポリマー層における免疫調節剤の溶解性及び免疫調節剤の皮膚を介した送達を補助する1種以上の極性非プロトン性溶媒をさらに含み得る。極性非プロトン性溶媒とは、酸性プロトンを欠き、極性を有する溶媒のことである。このような溶媒は、ヒドロキシル基やアミン基を欠いている。これらの溶媒は、水素結合においてプロトン供与体としては機能しないが、プロトン受容体としては機能する。本発明によって意図される具体例としては、極性非プロトン性溶媒としては、n-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルイソソルビド、酢酸エチル、またはそれらの任意の組み合わせを挙げることができる。なお、他の極性非プロトン性溶媒、これに限定しないが、例えば、アセトン、アセトニトリル、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド、DMPU、及びテトラヒドロフランなども、本発明によって意図されることを理解されたい。
【0168】
使用される特定の極性非プロトン性溶媒または極性非プロトン性溶媒の組み合わせにかかわらず、薬物含有ポリマー層を形成するために使用されるポリマー混合物に含有される極性非プロトン性溶媒は、経皮薬物送達システム中に、製剤中の残留溶媒ガイドラインのICH Q3C不純物未満の総量で含有され得る。プロセス溶媒がNMPである場合、薬物含有ポリマー層中に含有される極性非プロトン性溶媒の総量は、薬物含有ポリマー層の乾燥重量に基づいて、約530ppm未満または約0.053重量%未満、例えば約390ppm未満または約0.039重量%未満であり得る。なお、極性非プロトン性は、薬物含有ポリマー層の形成中、及び、蒸発または乾燥の前に、より大きな重量%で導入されることを理解されたい。さらに、添加剤として使用される場合、1種以上の極性非プロトン性溶媒は、製剤中の残留溶媒ガイドラインのICH Q3C不純物よりも多い量で含有され得る。プロセス溶媒がNMPである場合、薬物含有ポリマー層中に含有される極性非プロトン性溶媒の総量は、薬物含有ポリマー層の乾燥重量に基づいて、約390ppm以上または約0.039重量%以上、例えば約530ppm以上または約0.053重量%以上であり得る。
【0169】
別の実施形態では、使用される特定の極性非プロトン性溶媒または極性非プロトン性溶媒の組み合わせにかかわらず、薬物含有ポリマー層を形成するために使用されるポリマー混合物に含まれる極性非プロトン性溶媒の総量は、経皮薬物送達システムの乾燥重量に基づいて、約20,000ppm未満または約2.0重量%未満、例えば約10,000ppm未満または約1.0重量%未満であり得る。なお、極性非プロトン性溶媒は、薬物含有ポリマー層の形成中、及び、蒸発または乾燥の前に、より大きな重量%で導入されることを理解されたい。さらに、添加剤として使用される場合、薬物含有ポリマー層中に含有される1種以上の極性非プロトン性溶媒の総量は、薬物含有ポリマー層の乾燥重量に基づいて、約530ppm以上または約0.053重量%以上、例えば約10,000ppm以上または約1.0重量%以上、または例えば約20,000ppm以上または約2.0重量%以上であり得る。
【0170】
II.バッキング層
【0171】
再び
図3を参照して、本開示の経皮薬物送達システム300は、薬物含有ポリマー層310に加えて、経皮薬物送達システム300の外面340を形成するバッキング層320をさらに含む。バッキング層320は、ポリマー層(及び存在する他の層)を密封して環境から保護し、これにより、使用中の薬物の損失及び/または他の成分の環境への放出を防ぐことができる。バッキング層としての使用に適した材料は、当該技術分野でよく知られており、そのような材料としては、ポリエステル、ポリエチレン、酢酸ビニル樹脂、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリウレタンなどのフィルム、金属箔、不織布、布、及び市販のラミネートが挙げられる。バッキング層は、一般的に、2~1000マイクロメートルの範囲の厚さを有する。例えば、3M社製のScotchpak(登録商標)、これに限定しないが、1012または9732(エチレン酢酸ビニルコポリマーのヒートシール層を有するポリエステルフィルム)、9723(ポリエチレンとポリエステルとのラミネート)、9733、9735、9738、または9754、またはCoTran(登録商標)9720(ポリエチレンフィルム)が、Dow(登録商標)BLF2050(エチレン酢酸ビニル層とSARAN(登録商標)内側層とを含む多層バッキング)などのDow(登録商標)バッキング層フィルムと同様に、本開示の経皮薬物送達システムに有用である。
【0172】
III.剥離ライナー
【0173】
引き続き、
図3を参照して、本開示の経皮薬物送達システム300は、薬物含有ポリマー層310及びバッキング層320に加えて、経皮薬物送達システム300の皮膚接触面350に配置された剥離ライナー330をさらに含む。剥離ライナー330は、経皮薬物送達システム300の薬物含有ポリマー層310を患者の皮膚に適用する準備が整うまで、薬物含有ポリマー層310を保護する役割を果たす。皮膚接触面350から剥離ライナー330を剥離した後に、経皮薬物送達システム300の皮膚接触面350が患者の皮膚に適用される。剥離した剥離ライナー330は廃棄される。剥離ライナーとしての使用に適した材料は、当該分野ではよく知られており、そのような材料としては、ダウコーニング社製のBio-Release(登録商標)ライナー及びSyl-off(登録商標)7610、ロパレックス社(Loparex)製のPET剥離ライナー(シリコーンコーティング)、サンゴバン社(Saint Gobain)製の9011ライナー(フルオロシリコーンコーティング)または他のライナー、及び、3M社製の1020、1022、9741、9744、9748、9749、及び9755スコッチパック(登録商標)ライナー(フルオロポリマーでコーティングされたポリエステルフィルム)などが挙げられる。
【0174】
IV.経皮薬物送達システムの作製方法
【0175】
一般に、バッキング層と剥離ライナーとの間に配置された薬物非含有接着性層及び薬物含有ポリマー層を含む経皮薬物送達システムは、その構成要素を特定の順序で組み合わせることにより作製され、その結果、免疫調節剤の長期間の制御放出を可能にし、かつ、免疫調節剤の皮膚透過性が向上した経皮薬物送達システムを形成することができる。
図7を参して、本開示の薬物含有ポリマー層を形成するために使用されるポリマー混合物を作製する方法700が示されている。まず、ステップ701では、API(例えば、免疫調節薬)を用意する。続いて、ステップ702では、極性非プロトン性溶媒に皮膚透過促進剤を加える。次に、ステップ703では、皮膚改質剤を加える。次いで、ステップ704では、結晶化防止剤とも称される可溶化剤を加え、5分~1時間攪拌する。そして、ステップ705では、免疫調節剤を加え、約5分から約1時間攪拌する。その後、ステップ706では、増粘剤を加え、溶液を約12~24時間撹拌してポリマーを溶解させた後、約15~30分間超音波処理して気泡を除去する。なお、本開示の方法700では、薬物非含有接着性層の適用前に、均質な薬物含有ポリマー層が形成される限り、薬物含有ポリマー層の1以上の構成要素を上記とは異なる順序で加えてもよい。
【0176】
いずれにせよ、本発明は、免疫調節剤及び少なくとも1つの添加剤を含む活性物質領域、不透過性のバッキング層、及び、任意選択で、剥離可能なバッキング層によって覆われた放出膜を含む、LLD投与のための経皮薬物送達システムを提供する。また、本発明は、活性物質領域またはリザーバがポリマーマトリクスシステムとして構成される経皮薬物送達システムを提供する。
【0177】
例えば、水溶性ポリマーを使用して活性物質マトリクスを構築し、それに接着性層をコーティングした経皮薬物送達システムが考えられる。さらに、活性物質リザーバをポリマーマトリクスとして作製することもできる。加えて、活性物質リザーバは、経皮薬物送達システムの皮膚に面する側を活性物質透過性膜で、皮膚と反対側の面を活性物質不透過性層及び接着性層で封止することができる。
【0178】
また、本発明は、活性物質マトリクス含有領域が二層または多層の活性物質マトリクスである経皮薬物送達システムを提供する。別の実施形態では、活性物質であるLLDは、最も単純な場合、ベースポリマーの溶液または溶融物中に、粗く、コロイド状または分子状に分散されている。さらなる経皮薬物送達システムの作製技術では、LLDは、過飽和溶液、ナノエマルジョンまたはナノ懸濁液、非晶質、結晶、共結晶の形態であり、ベースポリマーでコーティングされるか、またはホットメルト押出プロセスを用いてポリマーに溶解される。
【0179】
また、本発明は、LLDマトリクスが二層構造または多層構造を有する、マルチラミネート薬物含有接着性パッチとも称される実施形態も含む。例えば、様々なマトリクス層は、上記のポリマーから構成されたポリマーを含み得る。この場合、マトリクス層は、ポリマー、感圧性ポリマー、またはホットメルトポリマーの組成物、LLD濃度、透過促進剤または可溶化剤の点で互いに異なる。これらの層は、1つのバッキング層の下の2つの異なる薬物含有接着性層または多層の薬物含有接着性層の間に設けられた半透過性膜を使用して分離することができる。ポリマーフィルムという用語は、いかなる制限もなく、感圧性接着剤及び/または非接着性ポリマーを含む。
【0180】
一態様では、本発明はさらに、LLD及びポリマービヒクル系を含むポリマーマトリクス製剤を提供する。ビヒクル系は、溶媒(例えば、可溶化剤)、透過性を高める添加剤及びポリマーまたはゲル化剤または増粘剤、必要であればpH調整のための酸または塩基を含むことができる。
【0181】
前処理製剤及びその使用方法
【0182】
薬物の透過を促進するために、角質層のバリア性を低下させるための様々なアプローチが用いられてきた。化学透過促進剤を使用した前処理は、採用されている技術の1つである。この前処理は、皮膚の最外層を可逆的に調節し、薬物の取り込みを促進することができる。透過促進剤は、脂質領域及びタンパク質領域の組み合わせに対して、または各領域に対して作用する。
【0183】
透過促進剤は、上述の製剤(例えば、薬物含有接着性層を含む経皮薬物送達システム、別個の接着性層及び薬物含有層を含む経皮薬物送達システム)に組み込むことができるが、組み込んだ構成要素内で何らかの不適合や相互作用を引き起こす可能性がある。そこで、本発明は、パッチ適用前に、1種以上の透過促進剤によって皮膚を前処理することによって、皮膚への透過を促進する方法を提供する。
【0184】
本開示の前処理は、パッチであることを意図した薬物含有製品の適用前に、ゲル/スプレー/溶液/湿潤剤/浸漬綿球/浸漬ガーゼを皮膚に適用することを含む。しかし、前処理製剤には、別の局所剤形、溶液ゲル、クリームなどが含まれることを理解されたい。例えば、前処理製剤は、Curad Mediplastなどの個々のパッチ、40%サリチル酸パッチ、または、アクリル、シリコーン、またはPIB接着剤などの不揮発性成分を含むプラシーボパッチであり得、任意選択で、医薬品有効成分の皮膚を介した送達を促進するための皮膚透過促進剤が添加される。
【0185】
本発明は、透過促進剤が、溶液、ゲル、クリーム、スプレー、湿潤剤、浸漬綿球、及び浸漬ガーゼとして、局所剤形の形態で組み込まれた前処理製剤を提供する。さらに別の実施形態では、好ましくは、ゲルに限定されないが、前処理製剤はリザーバパッチに組み込むことができる。
【0186】
I.前処理製剤
【0187】
a.極性非プロトン性溶媒
【0188】
本開示の経皮薬物送達システムの前処理製剤は、ポリマー混合物における免疫調節剤の溶解性及び免疫調節剤の皮膚を介した送達を補助する1種以上の極性非プロトン性溶媒をさらに含み得る。極性非プロトン性溶媒とは、酸性プロトンを欠き、極性を有する溶媒のことである。このような溶媒は、ヒドロキシル基やアミン基を欠いている。これらの溶媒は、水素結合においてプロトン供与体としては機能しないが、プロトン受容体としては機能する。本発明によって意図される具体例としては、極性非プロトン性溶媒としては、n-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルイソソルビド、酢酸エチル、またはそれらの任意の組み合わせを挙げることができる。なお、他の極性非プロトン性溶媒、これに限定しないが、例えば、アセトン、アセトニトリル、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド、DMPU、及びテトラヒドロフランなども、本発明によって意図されることを理解されたい。
【0189】
使用される特定の極性非プロトン性溶媒または極性非プロトン性溶媒の組み合わせにかかわらず、前処理製剤に含有される極性非プロトン性溶媒の総量は、約25~95重量%、例えば約30~90重量%、または例えば約60~80重量%の範囲であり得る。さらに、2種以上の極性非プロトン性溶媒を使用する場合、n-メチル-2-ピロリドン及びジメチルスルホキシドを使用することができ、その場合、n-メチル-2-ピロリドンとジメチルスルホキシドとの比率は、約1.4:1~2:1、例えば約1.5:1~1.9:1、または例えば約1.6:1~1.8:1の範囲であり得る。
【0190】
b.保湿剤
【0191】
本開示の経皮薬物送達システムの前処理製剤は、担体として作用する1種以上の保湿剤をさらに含み得る。本発明によって意図される具体例としては、グリセリン、ポリグリコール、ポリエチレングリコール(例えば、PEG400または他の分子量)、クエン酸トリエチル、トリアセチンなどが挙げられる。
【0192】
使用される特定の保湿剤にかかわらず、前処理製剤に含有される保湿剤の総量は、約1~80重量%、例えば約2~25重量%、または例えば約3~20重量%の範囲であり得る。
【0193】
c.弱有機酸/1以上炭素鎖含有酸
【0194】
本開示の経皮薬物送達システムの前処理製剤は、1種以上の弱有機酸または1種以上の1以上炭素鎖含有酸をさらに含み得る。本発明によって意図される具体例としては、レブリン酸、オレイン酸、乳酸、サリチル酸、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0195】
使用される特定の酸にかかわらず、前処理製剤に含有される酸の総量は、約1~40重量%、例えば約2~35重量%、または例えば約3~30重量%の範囲であり得る。さらに、サリチル酸が使用される場合、驚くべきことに、サリチル酸の量が10重量%未満、例えば約1~7重量%、例えば約1.5~6重量%、または例えば約2~5重量%の場合には、サリチル酸の量が10重量%超の場合と比較して、流束が増加することが見出された。
【0196】
d.増粘剤
【0197】
本開示の経皮薬物送達システムの前処理製剤は、1種以上の増粘剤をさらに含み得る。1種以上の増粘剤としては、天然ポリマー、多糖類及びその誘導体、これに限定しないが、例えば、寒天、アルギン酸及びその誘導体、カシアトラ(cassia tora)、コラーゲン、ゼラチン、ゲランガム、グアーガム、ペクチン、カリウム、またはカラギーナンナトリウム、トラガカント、キサンタム、ガムコパル、キトサン、樹脂、半合成ポリマー及びその誘導体、これに限定しないが、例えば、セルロース及びその誘導体(メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(Klucel(登録商標)HF)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートなど)、合成ポリマー及びその誘導体、これに限定しないが、例えば、カルボキシビニルポリマーまたはカルボマー(カルボポール(登録商標)940、カルボポール(登録商標)934、カルボポール(登録商標)971pNF)、ポリエチレン及びそのコポリマー、粘土、これに限定しないが、ケイ酸塩及びベントナイト、二酸化ケイ素、ヒュームドシリカ(Aerosil(登録商標))、ポリビニルアルコール、アクリルポリマー(Eudragit(登録商標))、アクリル酸エステル、ポリアクリレートコポリマー、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドンホモポリマー及びポリビニルピロリドンコポリマー(これに限定しないが、例えば、PVP、Kollidon(登録商標)30、ポロキサマー)、イソブチレン、酢酸エチルビニルコポリマー、天然ゴム、合成ゴム、ホットメルト接着剤、スチレン-ブタジエンコポリマー、ベントナイト、すべての水及び/または有機溶媒の膨潤性ポリマー、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0198】
使用される特定の増粘剤にかかわらず、前処理製剤に含有される増粘剤の量は、前処理製剤の乾燥重量に基づいて、約0.1~50重量%、例えば約0.5~25重量%、または例えば約0.75~15重量%の範囲であり得る。
【0199】
e.揮発性キャリア溶媒
【0200】
本開示の経皮薬物送達システムの前処理製剤は、1種以上の揮発性キャリア溶媒をさらに含み得る。本発明によって意図される具体例としては、水、エタノール、イソプロピルアルコール、及び同様の溶媒が挙げられる。
【0201】
使用される特定の揮発性キャリア溶媒にかかわらず、前処理製剤に含有される揮発性キャリア溶媒の総量は、約1~99重量%、例えば約2~98重量%、または例えば約3~97重量%の範囲であり得る。
【0202】
図4Aを参照して、一実施形態では、前処理製剤410は、パッチの形態の詳細については上述した経皮薬物送達システム100、200、または300を含むキット400Aの一部とすることができる。
【0203】
別の実施形態では、
図4Bを参照して、前処理製剤410は、バッキング層120と剥離ライナー130との間に配置された可溶化薬物含有接着性層110内を含む経皮薬物送達システム400Bの一部とすることができ、前処理製剤410は、可溶化薬物含有接着性層110と剥離ライナー130との間に配置される。バッキング層120は、経皮薬物送達システム400Bの使用時に周囲環境に曝される外面140を有する。一方、剥離ライナー130は、可溶化薬物含有接着性層110の皮膚接触面150に配置される。剥離ライナー130は剥離可能であり、これにより、経皮薬物送達システム400Bの使用時に前処理製剤410を皮膚上に直接配置することができる。
【0204】
さらに別の実施形態では、
図4Cを参照して、前処理製剤410は、バッキング層220と剥離ライナー230との間に配置された固体分散体薬物含有接着性層210を含む経皮薬物送達システム400Cの一部とすることができ、前処理製剤410は、固体分散体薬物含有接着性層210と剥離ライナー230との間に配置される。バッキング層220は、経皮薬物送達システム400Bの使用時に周囲環境にさらされる外面240を有する。一方、剥離ライナー230は、固体分散体薬物含有接着性層210の皮膚接触面250に配置される。剥離ライナー230は剥離可能であり、これにより、経皮薬物送達システムCの使用時に前処理製剤410を皮膚上に直接配置することができる。
【0205】
さらに別の実施形態では、
図4Dを参照して、前処理製剤410は、バッキング層320と剥離ライナー330との間に配置された薬物含有ポリマー層310を含む経皮薬物送達システム400Dの一部とすることができ、前処理製剤410は、薬物含有ポリマー層310と剥離ライナー230との間に配置される。さらに、薬物含有ポリマー層310とバッキング層320との間には、接着性層305が配置されている。バッキング層320は、経皮薬物送達システム400Dの使用時に周囲環境に曝される外面340を有する。一方、剥離ライナー330は、薬物含有ポリマー層310の皮膚接触面350に配置される。剥離ライナー330は剥離可能であり、これにより、経皮薬物送達システムDの使用時に前処理製剤410を皮膚に直接配置することができる。
【0206】
II.使用方法
【0207】
一実施形態では、上記の前処理製剤は、上記の経皮薬物送達システムのいずれかの薬物含有層を皮膚に適用または接触させる約1~5時間前、例えば約30分~10時間前、または約1分~約72時間前に皮膚に適用するように設計され得る。本発明によって意図される前処理製剤の適用量は、約10~1000mg/cm2、例えば約100~800mg/cm2である。
【0208】
例えば、
図4A及び
図8を参照して、前処理製剤410は、キットの一部であってもよし、または、単独の製剤であってもよい。いずれの場合でも、前処理製剤を使用する方法800は、経皮薬物送達システムを用意するステップ801と、皮膚の表面に前処理製剤を適用するステップ802と、所定の時間(例えば、約1分~約72時間)の経過後に、経皮薬物送達システムを皮膚に適用するステップ803と、を含む。なお、前処理製剤は皮膚から除去することができ、経皮薬物送達システムは、前処理製剤を除去した直後に適用できることを理解されたい。他の実施形態では、前処理製剤の少なくとも一部は、蒸発するか、または、除去を必要としないように患者の皮膚上にほとんど残留しない。
【0209】
あるいは、
図4B~4D、
図5~7、及び
図9を参照して、別の方法900は、方法500、600、または700に従って経皮薬物送達システムを形成するステップ901と、皮膚の表面に前処理製剤を適用するステップ902と、経皮薬物送達システムを皮膚に適用する準備ができたら剥離ライナーを除去するステップ904と、経皮薬物送達システムを皮膚に適用するステップ905と、を含む。なお、経皮薬物送達システムは、前処理製剤410と、可溶化薬物含有接着性層110、固体分散体薬物含有接着性層210、または薬物含有ポリマー層310との間に配置されたバリアライナー(図示せず)を含んでもよい。その場合、前処理製剤410を皮膚に適用するべく皮膚上に配置された経皮薬物送達システムを皮膚から取り外し、バリアライナーから前処理製剤410を剥がした後に、再び、経皮薬物送達システムは、直ちに、可溶化薬物含有接着性層110、固体分散体薬物含有接着性層210、または薬物含有ポリマー層310が皮膚に直接適用されるようにして皮膚に適用されることを理解されたい。
【0210】
いずれの場合でも、本発明は、1種以上の皮膚透過促進剤を含む前処理製剤及び/または単一の製剤を提供する。皮膚透過促進剤としては、これに限定しないが、水、スルホキシド及び同様の化学物質(これに限定しないが、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、デシメチルスルホキシド、ジメチルイソソルビドなど)、アゾン、ピロリドン類(これに限定しないが、例えば、n-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドンなど)、エステル類(これに限定しないが、例えば、モノラウリン酸プロピレングリコール、エタン酸ブチル、エタン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、エタン酸メチル、オレイン酸デシル、モノオレイン酸グリセロール、モノラウリン酸グリセロール、ラウリン酸ラウリル、ラウリン酸メチルなど)、脂肪酸(C3以上)(これに限定しないが、例えば、乳酸、サリチル酸、カプリン酸、カプリル酸、ラウリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、リノール酸、ステアリン酸、パルミチン酸など)、Brij(登録商標)(これに限定しないが、例えば、Brij(登録商標)O5、Brij(登録商標)O10、O3など)、アルコール類、脂肪アルコール類、グリコール類(これに限定しないが、例えば、オレイルアルコール、エタナール、ドデカノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロールなど)、揮発性化学物質(例えば、エタノール、イソプロピルアルコールなど)、エーテル類(これに限定しないが、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル)、尿素、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、脂肪アルコールのエステル、メチル、エチルもしくはイソプロピルアルコールとの長鎖脂肪酸とのエステル、脂肪アルコールと酢酸、乳酸もしくはオレイン酸とのエステル、ジエタノールアミン、精油、テルペン及びテルペノイド類(これに限定しないが、例えば、エルピネオール、リモネン、チモール、シネオールなど)、界面活性剤系エンハンサー(例えば、ポリソルベート80、ポリソルベート20など)、リポソーム、ニオソーム、トランスフェソーム、エタノソーム、及び、文献「Percutaneous Penetration Enhancers" (Eric W. Smith, Howard I. Mailbach, 2005. Nov, CRC press)」で言及されているすべての透過促進剤または透過促進剤が挙げられる。上記の透過促進剤は、単独で添加してもよいし、複数種類の混合物として添加してもよい。
【0211】
本発明は、以下の実施例を参照することによって、より良く理解できるであろう。
【0212】
実施例1
【0213】
実施例1は、安定的な可溶化薬物含有接着性製剤の開発に焦点を当てたものである。
【0214】
レナリドミドH1の溶解度を、50種以上の溶媒及びポリマーで調べた。レナリドミドの溶解度が5%を超えた溶媒は4種類のみであった。N-メチル-2-ピロリドン(NMP)とジメチルスルホキシドとの2つの極性非プロトン性溶媒においてレナリドマイドの20%以上の溶解度が観察され、乳酸とレブリン酸の2つの有機酸においてレナリドマイドの5%以上の溶解度が観察された。レナリドミドのグリコールへの溶解度は2%未満であり、エステルへの溶解度は0.5%未満であった。レナリドミドのKollidon(登録商標)(ポリビニルピロリドン)及び溶媒系(メタノール:アセトン)への溶解度は、約1.5~2%であった。レナリドマイドは、一般的に使用される溶媒への溶解性が低く、レナリドマイドを溶解させることは困難であった。
【0215】
【0216】
【0217】
【0218】
【0219】
【0220】
【0221】
レナリドマイドの透過促進剤を特定するため、ヒト死体皮膚を透過するレナリドマイドのインビトロ透過性を、インビトロのフランツ拡散細胞を用いて調べた。ドナーコンパートメントに、レナリドミド溶液またはゲルを充填した。
【0222】
溶液製剤
【0223】
レナリドミドH1溶液を、乳酸、ジメチルスルホキシド、NMP、レブリン酸、超精製PEG400、Tween40、ポリソルベート80などの様々な溶媒で調製した。
図10に示すように、レナリドミドの透過率は、乳酸で最も高く、次いで、NMP、DMSOの順であった。レブリン酸ではほとんど透過せず、SR PEG400(超精製PEG400)、TWEEN40、及びポリソルベート80では、まったく透過しなかった。したがって、
図10に示すように、乳酸、NMP、及びDMSOはレナリドミドの透過促進剤であり、レナリドミドの皮膚透過性を促進すると考えられる。
【0224】
ゲル製剤
【0225】
次の溶媒系組成物を用いてレナリドマイドゲルを調製した(表7)。ゲルは10種類の透過促進剤を用いて調製した。
【0226】
【0227】
図11~12に示すように、レナリドミドの透過性は、乳酸を含むゲルで最も高く、次いで、ラウリン酸メチル、乳酸ラウリル、Brij(登録商標)O10の順であった。一方、LLDG_001と比較して、オレイン酸、オレイルアルコール、モノオレイン酸グリセリル(GMO)、トリアセチン、Brij(登録商標)O3、Brij(登録商標)O5を含有するゲルでは、LLDの透過性は改善されなかった。驚くべきことに、乳酸を含むゲルにおいて、レナリドマイドの非常に高い透過性が認められた。
【0228】
次に、シリコーンポリマー系感圧性接着剤及びアクリルポリマー系感圧性接着剤に対するレナリドミドH1の溶解度を調べた。ポリマー系感圧性接着剤は、感圧性接着剤を含む接着性マトリクスパッチ製剤の主要構成要素であり、一般的に、パッチ製剤の50~85%を構成する。下記の表8に示すように、感圧性接着剤へのレナリドミドの溶解度が低いため、レナリドミド含有接着性マトリクスパッチ製剤を作製することが課題となった。
【0229】
【0230】
下記の表9に示すように、ポビドン(PVP)及びNMPの添加は、接着性マトリクスパッチ製剤におけるレナリドミド半水和物の可溶化に役立つ。ポビドンの例としては、Kollidon(登録商標)30LPやKollidon(登録商標)VA64などが挙げられる。
【0231】
NMPは、接着性マトリクスパッチ製剤におけるレナリドマイドの溶解性を改善する
【0232】
NMPは、接着性マトリクスパッチ製剤の混合物に加えられるが、その大部分はコーティングされたラミネートをオーブンで乾燥させる間に蒸発する。NMPの70%以上が乾燥中に失われ、より好ましくはNMPの80%以上が乾燥中に失われる。NMPは、乾燥ラミネート中に、約0.04~2%の範囲で含有され得る。乾燥中のNMPの損失が大きいため、レナリドミド含有接着性マトリクスパッチ製剤のこの段階では、NMPはプロセス溶媒として扱う必要がある。
【0233】
LLD MT 193:LLD MT 193は、NMPを含有せず、2%のレナリドミドを混合物中に完全に溶解できなかった。混合物は未溶解粒子を有し、このことは、不溶性のレナリドミドの存在を示す。
【0234】
LLD MT 187:LLD MT 187は、NMPを含有しており、3%のレナリドミドを混合物中に溶解させることができた。LLDMT187は、接着性マトリクスパッチ製剤の混合物におけるレナリドミドの可溶化におけるNMPの重要性を示す。
【0235】
PVPは、接着性マトリクスパッチ製剤におけるレナリドミドの溶解性を改善する
【0236】
LLD MT 192:LLD MT 192は、NMPを含有するがPVPは含有せず、レナリドミド4%を混合物中に溶解できなかった。混合物は白っぽい外観を呈し、このことは、レナリドミドが混合物に完全に溶解していないことを示す。
【0237】
LLD MT 165及びLLD MT 169:LLD MT 165及びLLD MT 169は、NMP及びPVPの両方を含有し、4%のレナリドミドを混合物中に溶解させることができた。この両製剤の混合物は、半透明の外観を呈した。LLD MT 165及びLLD MT 169は、PVPが、接着性マトリクスパッチ製剤の混合物中のレナリドミドの可溶化に役立つことを示す。
【0238】
【0239】
次に、ポビドン、接着性ポリマー、セルロースポリマー、一般的に知られている透過促進剤などの添加剤の様々な組み合わせを用いて、レナリドミド含有接着性マトリクスパッチ製剤を作製した。
【0240】
レナリドミド含有接着性マトリクスパッチ製剤からのレナリドミドの放出に対する添加剤の影響を調べるために、マトリクスパッチ製剤からのレナリドミドの放出試験を実施した。放出試験は、ローラーを使用して実施した。マトリクスパッチ製剤を、培地を含むガラス製のシンチレーションバイアルに添加した。シンチレーションバイアルの各パッチをローラー上で約20~24時間混合した。試験終了後、各シンチレーションバイアルからアリコートを採取し、HPLCで分析し、マトリクスパッチ製剤から放出されたレナリドマイドの量を測定した。様々な感圧性接着剤に関する結果を、表10及び表11を参照して以下に説明する。
【0241】
放出試験:PSA Duro-Tak(登録商標)387-2516を含有するレナリドミド含有接着性マトリクスパッチ製剤(表10)
【0242】
LLD MT 9、LLD MT 60、LLD MT 65:ポビドンの有無にかかわらず、Duro-Tak(登録商標)387-2516を含有するマトリクスパッチ製剤から、1μg/cm2/時のレナリドミドが放出された。ポリマーがマトリクスパッチ製剤内でレナリドミドを保持することにより、レナリドミドの放出速度を遅らせている。
【0243】
LLD MT 128:LLD MT 128は、LLD MT 9、LLD MT 60、LLD MT 65と比較して、レナリドミドの放出量の約4倍の増加が認められた。オレイン酸、パルミチン酸イソプロピル、及びエチルセルロースN50の添加は、接着性マトリクスパッチ製剤からのレナリドミドの放出に有効であった。これにより、接着性マトリクスパッチ製剤からのレナリドミドの放出が大幅に改善された。
【0244】
【0245】
放出試験:PSA Duro-Tak(登録商標)87-4098を含有するレナリドミド含有接着性マトリクスパッチ製剤(表11)
【0246】
LLD MT 16、LLD MT 52、LLD MT 113:ポビドンの有無にかかわらず、Duro-Tak(登録商標)87-4098を含むパッチから、1μg/cm2/時未満のレナリドミドが放出された。
【0247】
LLD MT127は、LLD MT 127:LLD MT 52と比較して、レナリドミドの放出量の約6倍の増加が認められた。オレイン酸、パルミチン酸イソプロピル、及びエチルセルロースN50の添加は、接着性マトリクスパッチ製剤からのレナリドマイドの放出に有効であった。これにより、接着性マトリクスパッチ製剤からのレナリドミドの放出が大幅に改善された。
【0248】
【0249】
次に、各製剤の添加剤(オレイン酸、パルミチン酸イソプロピル、エチルセルロース n50、Kollidon(登録商標)30LP)は変更せず、感圧性接着剤ポリマーを変更して、レナリドミド含有接着性マトリクスパッチ製剤の混合物を調製した。感圧性接着剤としては、アクリル系PSAポリマー(Duro-Tak(登録商標)387-2516、Duro-Tak(登録商標)87-9301、Duro-Tak(登録商標)87-4098、Duro-Tak(登録商標)87-2194、Duro-Tak(登録商標)87-2052)やポリイソブチレン(Duro-Tak(登録商標)6908)などの様々な感圧性接着剤を使用した。しかしながら、Duro-Tak(登録商標)87-9301、Duro-Tak(登録商標)87-4908、またはDuro-Tak(登録商標)87-6908を使用した場合、均質な混合物が得られなかった。混合物(LLD MT 126、LLD MT 127)中に、レナリドミドまたはポビドンの微粒子が見られた。壊れた混合物(LLD MT 130)は、添加剤の不混和性を示している。均質な半透明の混合物を形成した接着剤としては、LLD MT 128(アクリレートコポリマー系接着剤であるDuro-Tak(登録商標)387-2516)、及び、LLD MT 131(アクリレートコポリマー系接着剤であるDuro-Tak(登録商標)87-2052)が挙げられる。
【0250】
【0251】
さらに、3種類のレナリドミド含有接着性マトリクスパッチ製剤(表13に示す製剤)からのヒト死体皮膚に対するインビトロ透過性を、インビトロのフランツ拡散細胞を用いて調べた。ヒト死体皮膚は、フランツ拡散細胞内で、PT 001前処理ゲルによって約1時間前処理した。約1時間後、PT 001(表14に示す製剤)を優しく拭き取って皮膚から除去した。次に、
図4に示すように、PT 001を拭き取った皮膚にレナリドミド含有接着性マトリクスパッチを適用し、レナリドミドの透過量を測定した。
【0252】
【0253】
【0254】
実施例2
【0255】
実施例2は、安定的な固体分散体薬物含有接着性層の開発に焦点を当てたものである。
【0256】
医薬品、とりわけ経皮製剤や局所製剤に一般的に使用される様々な有機溶媒や添加剤へのレナリドミドの溶解性を調べるために多大な努力を払った。その結果、NMPはレナリドマイドに対する顕著な親和性を示し、他のすべての試験物質の室温で観察された溶解度と比べて2倍以上の溶解度を示すことがわかった。NMPは、レナリドマイドを約30重量%まで溶解させることができ、NMPに最も近い溶解度を示す添加剤のDMSOは、約10~20重量%まで溶解させることができる。特に興味深いのは、極性非プロトン性溶媒である。具体的には、NMPとレナリドマイドとの構造は類似しており、NMPの構造はレナリドマイドの中心部と酷似している。
【0257】
可溶化薬物プラットフォームはすでに検討されていたため、接着性マトリクスパッチ製剤中に固溶体または固形懸濁液としてAPIを結晶レベルまたは分子レベルで懸濁させ、分散微粒子、固体分散液、微小分散液、または他の概念設計で含めるために、薬物及び添加剤とともにPSAを含む感圧性接着剤(PSA)プラットフォーム製剤を追求した。製剤ストラテジーは、バッキング層と使い捨て式剥離ライナーとの間に、単層の薬物含有接着剤系を設けることであった。驚くべきことに、n-メチル-2-ピロリドン(NMP)を含むプロセス溶媒を蒸発させた後に溶液に薬物を添加して、一貫した均質なポリマー混合物とラミネートを形成するためには、n-メチル-2-ピロリドン(NMP)で可溶化した形態の薬物を添加する必要があることが見出された。
【0258】
架橋ポビドン(PVP)であるクロスポビドンの微粉化グレードを組み込むことにより、固体多孔質基材への分子吸着が可能になった。なお、他の基材をマトリクス中に分散させることにより、APIの結晶及び分子分散を親和させることができる。
【0259】
初期の製剤ストラテジーは、固体分散体薬物含有接着性製剤にレナリドミドを組み込むことから開始された。
【0260】
下記の表15に示すように、ヘプタンはレナリドマイドに対する既知の抗溶媒であるため、ポリイソブチレン及びヘプタン溶媒系における抗溶媒組成物を含む分散体を評価するために、初期製剤を作製した。
【0261】
【0262】
上記の製剤(3-2-1)中のNMP組成物の極性に起因して、均質なポリマー混合物を形成することは困難であった。上記の製剤(3-2-2)は、均質な混合物及びラミネートを形成することができ、さらに追求した結果、下記の表16に示す製剤が得られた。
【0263】
【0264】
製剤の均質性(すなわち、均質な混合)を維持するためには、製剤の成分を添加する順序が重要であることが見出された。添加順序は、NMPの存在下でLLDを溶解し、その後に、酢酸エチルに分散させたKollidon(登録商標)CLMに添加するという順序である。分散液が形成された後、混合を実施する。最終的な添加工程で他の添加剤及び/または接着剤を添加し、その後混合して均質化する。
【0265】
また、NMPは、ヘプタンを除去するための乾燥工程で部分的に蒸発するため、ヘプタンの存在下では、製剤中に既知の制御可能な濃度で存在し続けることはできず、添加剤には適していないことも見出された。したがって、NMPは、製剤のこの段階では、予測不能な蒸発を伴う添加剤としてではなく、この特定の組成物のプロセス溶媒として取り扱うべきである。
【0266】
NMPの極性に起因して、製剤の焦点は、シリコーン系PSA及び酢酸エチルを主要な処理溶媒とする、薬物を含有するシリコーンベースの感圧性接着剤製剤の評価にシフトされた。なお、シリコーン系PSA及び酢酸エチルは従来の製剤中にクロスポビドンの分散液に組み込まれている。下記の表17に、シリコーン系PSAを使用した初期製剤を示す。
【0267】
【0268】
表17に示す製剤は、クロスポビドンの濃度、及び、シリコーン系PSAマトリクスの存在下でのLLD:クロスポビドンの比を評価したものである。
【0269】
薬物含有マトリクスパッチ製剤からの薬物の放出、及び、マトリクスパッチ製剤から放出された薬物のヒト死体皮膚の角質層を介した皮膚透過を評価するための試験を実施した。
【0270】
迅速な溶解:溶液からの薬物放出の可能性を評価するための試験を、小規模かつ効率的な手法で実施した。一定の単位サイズのサンプルを、培地を含む20mLバイアルに入れた。各パマトリクスパッチ製剤からの薬物の放出量(mg/mL及び%)を評価するために、24時間後にHPLCによる分析を実施し、その結果を下記の表18にまとめた。
【0271】
【0272】
上記の表18の製剤は、既知の溶解性の懸念がこのAPIの明らかであったため、乾燥接着剤製剤の1重量%のLLDを含有していた。これらの製剤における、LLDがヒト死体皮膚を透過する流束を、
図14及び
図15に示す。
【0273】
図14及び
図15のグラフは、製剤アプローチをいくつか変更するだけで、流束が明確に増加することを示している。すなわち、
1.製剤中にOleth-3を組み込むことにより、流束は有意に増加する。
2.LLDとクロスポビドンとの比率が低いほど流束は増加し、1:7.5及び1:10の比率と比較して、1:5の比率は流束が大きい。
3.Oleth-3は、24時間後に流束が低下するという限界を克服する。
4.約2~5μg/cm
2/時の目標流束を達成するための有意な流束レベルではないが、固体分散体からの皮膚を介したレナリドミドの薬物送達のコンセプトが可能であることが示された。
【0274】
驚くべきことに、負のlogPを有する高融点薬物は、固体分散体マトリクスに組み込まれる能力を有し、レナリドマイドの皮膚透過を達成する能力を提供する。
【0275】
最近の研究では、マトリクス感圧性接着剤及びクロスポビドン中の固体分散体については、可溶化薬物を分散させることなく、マトリクス中に分散した固体薬物としてゼロが示されている。したがって、概念的には、固体分散体の調製前に薬物を可溶化せずに、同様のマトリクスに固体薬物体を組み込んでも、測定可能な速度での皮膚透過性を示さない場合でも、Kollidon(登録商標)CLMなどの基質上または基質内に薬物を沈殿させることによって、可溶化薬物を組み込むことが可能である。
【0276】
仮説ではあるが、界面活性剤を系に添加することにより、レナリドマイドの分散及び溶解性がより良好になることが考えられる。この場合、閉塞下での水和時に媒体からの水分が皮膚から接着性マトリクスに入り、それによって薬物が放出され、その結果、界面活性剤が皮膚上での薬物の溶解性を改善することが考えられる。
【0277】
実施例3
【0278】
実施例3は、別個の接着性層と薬物含有ポリマーマトリクス層とを含む経皮薬物送達システムの開発に焦点を当てたものである。
【0279】
下記の表19は、薬物含有ポリマーマトリクス層について試験した2つの初期製剤を示す。流束/透過試験の結果を表19に示す。
【0280】
【0281】
混合物の作製
【0282】
上記の材料(NMP、DMSO、乳酸、PEG-400、ラウリン酸メチル、乳酸ラウリル、Brij(登録商標)O10、及びAerosil(登録商標))を30分間混合した。必要量のPVPK-90を上記の溶液に溶解させた。ポリマーの溶解後、LLDを添加し、30分間撹拌した。残りの添加剤であるHPMCAS-MF及び/またはKlucel HFを加え、ポリマーを溶解させるために製剤を18時間撹拌した。18時間の混合後、混合によって生じた気泡を除去するために、混合製剤を30分間超音波処理した。
【0283】
コーティング
【0284】
このポリマー混合物は本質的に親水性が高いため、バッキング層にコーティングするためには親水性の基材を必要とした。Duro-Tak(登録商標)9301は、LLDに対する溶解度が最も低く、かつポリマー混合物との適合性を有することに基づいて選択された。0.1mmのDuro-Tak(登録商標)9301を剥離ライナーScotchpak(登録商標)9744上にコーティングし、10分間の室温での乾燥後、85℃で10分間乾燥させた。バッキング層に接着性層を結合させるために、乾燥した接着性ラミネートにバッキング層を適用した。0.2mmのポリマー混合物を接着性層(総厚さ0.3mm)に適用し、85°Cで15分間乾燥させた後、10分間室温乾燥させた。剥離ライナーScotchpak(登録商標)9744をポリマーマトリクスの表面に適用した。円形の抜き型を使用して、その後の試験のためにパッチ(7平方cm)をカットした。乾燥後の薬物含有接着性マトリクスは、2~30mg/cm2の表面密度を有し、1~20重量%のLLDを含有していた。
【0285】
インビトロ透過試験
【0286】
次に、作製した経皮製剤を以下のように流束測定試験に供した。-80℃で保存したヒト死体皮膚をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で室温にて解凍し、試験に使用する前に欠陥がないか目視で検査した。次に、円筒形のドナーコンパートメントと、容量13mLのウォータージャケット付きの円筒形レセプタコンパートメントとから構成される標準的なフランツ拡散セルを使用して、経皮流束を測定した。ヒト死体皮膚は、真皮をレセプタコンパートメントに向けて、2つのコンパートメントの間にクランプした。ヒト死体皮膚をフランツ拡散セルにマウントした後、400mg/cm2のゲル(PT001)を入れて1時間前処理した。レセプタコンパートメントにレセプタ媒体を充填し、一定温度に保ち、600rpmで常に撹拌した。1時間後、Kimwipes(登録商標)を使用してヒト死体皮膚からゲル製剤を拭き取り、その後、上記の製剤をゲル製剤が拭き取られた皮膚に適用し、フランツ拡散セル上に再びマウントした。皮膚を透過してレセプタコンパートメントに拡散したLLDを測定するために、レセプタ媒体を収集した。レセプタ液が常に皮膚に接触していることを確認することが重要である。LLDを測定するために、24時間間隔でレセプタコンパートメントを空にし、新鮮なレセプタ液と交換した。レセプタコンパートメントのシンク状態を維持するためには、レセプタコンパートメントのLLD濃度を溶解度の10%未満に保つことが重要である。試験条件を下記の表20に示す。
【0287】
【0288】
ヒト死体皮膚を透過するLLDの流束を最低72時間(3日間)にわたって測定し、その結果を上記の表19の最後の4行に示した。
【0289】
実施例4
【0290】
実施例4は、上記の実施例1~3と共に使用するための前処理製剤の開発に焦点を当てたものである。ここでは、ゲル/スプレー/溶液/湿潤剤などの前処理製剤を、パッチであることを意図した薬物含有製品の適用前に皮膚に適用し、薬物の皮膚透過を改善できるかどうかを調べた。なお、薬物含有製品は、他の局所剤形、溶液ゲル、クリームなど(または上記の経皮薬物送達システムのいずれかの層)であってもよい。
【0291】
皮膚の前処理とインビトロ透過性
【0292】
様々なレナリドミド含有接着性マトリクスパッチ及びレナリドミド含有ポリマーマトリクスパッチのインビトロ透過性を、前処理製剤で前処理したヒト死体皮膚で調べた。
【0293】
ヒト死体皮膚の前処理
【0294】
ヒト死体皮膚を、インビトロのフランツ拡散細胞のドナーコンパートメントとレセプタコンパートメントとの間にマウントした。レセプタコンパートメントにレセプタ媒体を充填した。ドナーコンパートメントに既知量の前処理製剤を所定時間(通常は約1時間)ロードした後、前処理製剤をワイパで拭き取った。前処理製剤を拭き取った後直ちに、前処理製剤が拭き取られた皮膚に、レナリドミド含有接着性マトリクスパッチ製剤またはレナリドミド含有ポリマーパッチ製剤を適用した。レセプタコンパートメントにおけるレナリドミドの透過性を特定の時間間隔で測定した。
【0295】
表21及び表22は、前処理製剤及びLLD含有接着性マトリクスパッチ製剤を示し、
図16は、ヒト死体皮膚に前処理製剤を1時間、5時間、または24時間適用した場合の流束の改善を示すグラフである。ヒト死体皮膚に前処理製剤を1時間、5時間、24時間適用した後、皮膚から前処理製剤をワイプで拭き取った。その後直ちに、前処理製剤で前処理された皮膚に、LLD含有接着性マトリクスパッチ製剤を適用した。
【0296】
【0297】
【0298】
表23~26は様々な前処理製剤の構成要素を示し、表27はLLD製剤の構成要素を示す。
図17は、前処理製剤を適用した場合の流束の改善を示すグラフである。ヒト死体皮膚に前処理製剤を約1時間適用し、その後、皮膚からワイプで拭き取った。その後直ちに、前処理製剤で前処理された皮膚に、LLD含有接着性マトリクスパッチ製剤を最大72時間適用したところ、DMSO、NMP、PEG400、乳酸、サリチル酸、及びKlucel HFを含有する前処理製剤(PT012)は、対照(前処理製剤PT001)と比較して、透過性の改善が認められた。また、エタノール、サリチル酸、及びKlucel HFのみを含有する前処理製剤(前処理製剤PT015)では、サリチル酸を3重量%含有する場合は、サリチル酸を10重量%含有する場合と比べて、透過性の改善が認められた。
【0299】
【0300】
【0301】
【0302】
【0303】
【0304】
表28は、別のLLD含有接着性マトリクスパッチ製剤の構成要素を示し、表29~30は、様々な前処理製剤の構成要素を示す。
図18は、前処理製剤の適用による流束の改善を示すグラフである(前処理製剤を皮膚に約1時間適用した)。皮膚に前処理製剤を1時間後適用後、皮膚からワイプで拭き取った。その後直ぐに、前処理製剤で前処理された皮膚に、LLD含有接着性マトリクスパッチ製剤を最大168時間適用したところ、DMSO、NMP、PEG400、乳酸、及びKlucel HFを含有する前処理製剤は、対照及びDI水及びKlucel HFのみを含有する前処理製剤と比較して、透過性の改善が認められた。
【0305】
【0306】
【0307】
【0308】
次に、表31及び表32は、3種類の薬物含有接着性マトリクスパッチ製剤(表31)及び2種類の薬物含有ポリマー製剤(表32)の構成要素を示す。これらのマトリクスパッチ製剤を、前処理製剤PT-001で皮膚を1時間前処理した後に、前処理された皮膚に適用した。約168時間までのLLDの流束の結果を
図19に示す。流束のピークは約24時間で発生し、流束は、3種類の薬物含有接着性マトリクスパッチ製剤と比べて2種類の薬物含有ポリマー製剤の方が高いことが観察された。
【0309】
【0310】
【0311】
実施例5
【0312】
実施例5は、ニュージーランド白ウサギ動物モデルを用いた非臨床試験に関するものである。5つのグループを様々な製剤で治療した。グループ1は、レナリドミドの静注液で処置し、グループ2~5は、レナリドミドを含有する様々な経皮薬物送達システム(パッチ)で処置した。グループ2は、薬物含有接着性層製剤で処置した(製剤A及び製剤B、下記の表33及び表34を参照)。グループ3は、固体分散体含有接着性層製剤で処置した(製剤A及び製剤B、下記の表33を参照)。グループ4は、接着性マトリクスパッチ製剤で処置した(製剤C及び製剤D、下記の表34を参照)。グループ5は、ポリマーフィルムパッチで処置した(製剤E及び製剤F、下記の表35を参照)。
【0313】
【0314】
【0315】
【0316】
この研究では、動物ごとに4つの経皮適用部位を設定した(プラセボが1つ、有効パッチが3つ)。グループ1及びグループ2はパッチ適用前に前処理を施さず、グループ3は非接着性パッドに1mLのDMSOを適用した前処理製剤による前処理を1時間施し、グループ4及びグループ5は前処理製剤Hによる前処理を1時間施した。前処理製剤Hは、PT-001(上記の表21及び29を参照)を綿パッドに浸して作製した。各綿パッドは、3.5cm×3.5cmの略サイズを有し、約3.8gのPT-001を含ませた。各前処理製剤及びパッチを、PatchProtectオーバーレイシステムによりウサギに固定した。
【0317】
図20は、ウサギモデルにおいて168時間にわたって様々な経皮薬物送達システムを介して送達されたレナリドミド含有製剤A~Dの平均累積曲線下面積(AUC)を示す。グループ2は、前処理は行わず、固体分散体薬物含有接着性層製剤Aを適用した。グループ3は、DMSOによる前処理の後に固体分散体薬物含有接着性層製剤Aを適用した。グループ4は、PT-001による前処理の後に接着性マトリクス製剤Cを適用した。グループ5は、PT-001による前処理の後にポリマーフィルム製剤Eを適用した。
図20に示すように、PT-001製剤で前処理した場合(グループ4、グループ5)は、いずれも特徴的な経口投与または静注投与の送達プロファイルを示した。一方、前処理を行わなかった固体分散体薬物含有接着性層(グループ2)製剤、及びDMSOによる前処理を行った固体分散体薬物含有接着性層(グループ3)製剤は、持続的な略一次の送達プロファイルを示した。このことは、本発明によって意図される経皮薬物送達システムを使用することにより、最大3日間にわたる長期間の送達プロファイルが可能であることを示唆している。
【0318】
一方、
図21は、
図20に示した4つの製剤の平均流束を72時間にわたって比較したグラフであり、本発明が意図する固体分散体薬物含有接着性層を含むレナリドミド経皮薬物送達システムは、接着性マトリクスまたはポリマーフィルムタイプの送達システムと比較して、持続的な送達を示すことがさらにわかる。
【0319】
実施例6
【0320】
次に、オレス系非イオン性界面活性剤、または、オレス系非イオン性界面活性剤(例えば、オレス-3)とポロキサマー系非イオン性界面活性剤(例えば、P407)との組み合わせを含む、固体分散体薬物含有接着性層製剤を作製した。オレス系非イオン界面活性剤の量は7.5~20重量%の範囲である(
図22参照)。一方、ポロキサマー系非イオン界面活性剤の量は0~15重量%の範囲である(
図23参照)。
【0321】
Strat-Mメンブレンを介したレナリドマイドの透過を示すグラフである
図22に示すように、オレス-3の重量%が7.5重量%から20重量%に増加するに従って、レナリドマイドの固体分散体含有接着性層製剤は、最大に約144時間にわたって改善された持続的な送達を示した。
【0322】
一方、
図23は、オレス系非イオン性界面活性剤とポロキサマー系非イオン性界面活性剤との両方を含む場合の、Strat-Mメンブレンを介したレナリドミドの透過性の改善を示すグラフであり、オレス系を単独で含む場合と比較して、透過性が改善されたことを示している。図示のように、透過性の改善だけでなく、利用可能なレナリドミドの増加によるAUCの有意な増加が認められた。これにより、ポロキサマー(例えば、P407)は水の存在下でのレナリドミドの溶解性を改善し、オレスは固体中の利用可能なレナリドミドの透過性を改善すると考えられる。したがって、この実施例は、ポロキサマー(具体的にはP407)を含有する場合に、水の存在下でのレナリドマイドの溶解度が有意に改善され、オレスを含有する場合に、利用可能なレナリドマイドの透過が改善されたことを実証した。
【0323】
実施例7
【0324】
次に、異なる薬物濃度及び乾燥温度がレナリドミドの流束プロファイルに与える影響を評価した。試験した様々な製剤を表36に示す。フランツ拡散セルを使用して各製剤の経皮流束を測定した。レセプタコンパートメントにレセプタ媒体を充填した。次に、ヒト死体皮膚を、表皮側がドナーコンパートメントに向くようにしてセル上に配置した。その後、接着性マトリクスを皮膚に適用し、皮膚を透過した薬物の量を測定するためにレセプタ培地をサンプリングした。なお、SD001は固体分散体薬物含有接着性層であり、他の例は可溶化薬物含有接着性層である。
【0325】
【0326】
さらに、上述の経皮薬物送達システムには、所望の粘度の液体または半固体の形態、例えば、ポリマーフィルム、溶液、懸濁液、ナノ懸濁液、マイクロ懸濁液、分散液、エマルジョン、マイクロエマルジョン、ナノエマルジョン、ゲル、軟膏、クリーム、ペースト、ローション、ムース、またはバームなどの形態をとることができる2層経皮製剤が含まれる。あるいは、経皮製剤は、経皮製剤を構成するTDS(経皮薬物送達システム)の一部を形成してもよい。例示的なTDSとしては、局所製剤(例えば、皮膚または粘膜への閉塞または非閉塞的な適用の場合)、ゲル、ローション、スプレー、定量経皮スプレー、エアロゾル、坐剤、懸濁液、経皮パッチ、二層マトリクスパッチ、多層マトリクスパッチ、接着剤を含むまたは含まないモノリシックマトリクスパッチ、ドラッグインアドヒーシブパッチ、マトリクスリザーバ(任意選択で、接着剤で囲まれた別個のマトリクスリザーバを有する)、マイクロリザーバパッチ、ヒドロゲルマトリクスパッチ、接着性パッチ、接着性システム、経皮適用テープ、マイクロニードルシステム、イオントフォレーシスシステム、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。さらなる実施形態では、本開示の製剤は、製剤中の活性成分を安定的に保存可能な製剤を提供する。例えば、製剤は常温保存可能であり、標準的な周囲条件下で保存した場合、所定の期間にわたってその活性の少なくとも90%を維持することができる。さらなる実施形態では、製剤は、少なくとも3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、1年、またはそれ以上の期間にわたって、常温保存可能である。
【0327】
当業者に既知のパッチ形態、これに限定しないが、例えば、リザーバパッチ、マトリクスパッチ、ドラッグインアドヒーシブ、経皮フィルムなどのパッチ形態の本開示の経皮薬物送達システムを作製するための材料としては、これに限定しないが、ポリマー、コポリマー、誘導体、バッキングフィルム、剥離膜、剥離ライナー、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。感圧性接着剤としては、これに限定しないが、例えば、シリコーンポリマー、ゴム系接着剤、アクリルポリマー、アクリルコポリマー、ポリイソブチレン、アクリル酸-イソオクチルアクリレートコポリマー、ホットメルト接着剤、ポリブチレンなどが挙げられる。バッキングフィルムとしては、これに限定しないが、例えば、エチレン酢酸ビニルコポリマー、酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、金属箔、ポリエステル、アルミナイズドフィルム、ポリエチレンなどが挙げられる。剥離膜としては、これに限定しないが、例えば、微多孔性ポリエチレンフィルム、微多孔性ポリプロピレンフィルム、速度制御性エチレン酢酸ビニルコポリマーフィルムなどが挙げられる。剥離ライナーとしては、これに限定しないが、例えば、シリコーン化ポリエステルフィルム、フッ素樹脂コーティングポリエステルフィルム、ポリエステルフィルム、シリコーン化ポリエチレンテレフタレートフィルムなどが挙げられる。
【0328】
さらに製剤中の薬物分子の安定性及び/または溶解性を高めるために、様々な技術及び成分を用いることができ、そのようなものとしては、これに限定しないが、例えば、コーティング、カプセル化、マイクロカプセル化、ナノカプセル化、凍結乾燥、キレート剤、錯化剤などが挙げられる。
【0329】
加えて、本開示の各経皮薬物送達システムは、上記の製剤に加えてまたはその代わりに、添加剤として機能する成分を含むことができる。
【0330】
溶媒
【0331】
本開示の経皮製剤及び/または局所製剤は、当業者に知られている溶媒を単独でまたは複数種類の溶媒を組み合わせて含むことができる。そのような溶媒としては、これに限定しないが、例えば、アルコールC1~C20(これに限定しないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、プロパノールなど)、多価アルコール、グリコール(これに限定しないが、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ブチレングリコール、グリセリンなど)、グリコールの誘導体、ピロリドン類(これに限定しないが、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドンなど)、
スルホキシド(これに限定しないが、例えば、ジメチルスルホキシド、デシメチルスルホキシドなど)ジメチルイソソルビド、鉱物油、植物油、水、極性溶媒、半極性溶媒、非極性溶媒、マトリクスパッチの作製に使用することができる揮発性化学物質(これに限定しないが、例えば、エタノール、プロパノール、酢酸エチル、アセトン、メタノール、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、IPA)、酸(これに限定しないが、例えば、酢酸、乳酸、レブリン酸)、塩基などが挙げられる。このような溶媒は、製剤中に、約0.01~95重量%(w/w%またはw/v%)の範囲の量で含有され得る。
【0332】
増粘剤
【0333】
本開示の経皮製剤及び/または局所製剤は、ゲル化剤、増粘剤、懸濁剤、ポリマー、接着性ポリマー、及び、当業者に既知の感圧性接着性ポリマーを、単独でまたは任意の組み合わせで含むことができる。そのようなものとしては、これに限定しないが、例えば、天然ポリマー、多糖類またはその誘導体(これに限定しないが、例えば、寒天)、アルギン酸またはその誘導体、カシアトラ、コラーゲン、ゼラチン、ゲランガム、グアーガム、ペクチン、カリウム、カラギーナンナトリウム、トラガカント、キサンタム、ゴムコパル、キトサン、樹脂など;半合成ポリマーまたはその誘導体、これに限定しないが、例えば、セルロースまたはその誘導体(メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど);合成ポリマーまたはその誘導体、これに限定しないが、例えば、カルボキシビニルポリマーまたはカルボマー(カルボポール(登録商標)940、カルボポール(登録商標)934、カルボポール(登録商標)971pNF)、ポリエチレンまたはそのコポリマー;粘土、これに限定しないが、例えば、ケイ酸塩、ベントナイト;二酸化ケイ素、ポリビニルアルコール、アクリルポリマー(ユードラギット(登録商標))、アクリル酸エステル、ポリアクリレートコポリマー、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドンホモポリマー、ポリビニルピロリドンコポリマー、これに限定しないが、例えば、PVP、コリドン30、ポロキサマーなど;イソブチレン、酢酸ビニルコポリマーエチル、天然ゴム、合成ゴム、感圧性接着剤ポリマー、例えば、シリコーンポリマー(これに限定しないが、例えば、BIO-PSA4302、BIO-PSA4202など);アクリル酸系感圧接着性ポリマー、これに限定しないが、例えば、Duro-Tak(登録商標)87-2156、Duro-Tak(登録商標)387-2287、Duro-Tak(登録商標)87-9301、Duro-Tak(登録商標)387-2051など;ポリイソブチレン、これに限定しないが、低分子量ポリイソブチレン、中分子量ポリイソブチレン、ポリイソブチレン35000MWなど;アクリル系コポリマー、ゴム系接着剤、ホットメルト接着剤、スチレン-ブタジエンコポリマー、ベントナイト、すべての水及び/または有機溶媒の膨潤性ポリマーなどが挙げられる。このような増粘剤は、製剤中に、約0.1~90%重量%(w/w%またはw/v%)の範囲の量で含有され得る。
【0334】
皮膚透過促進剤
【0335】
本開示の経皮製剤及び/または局所製剤は、当業者に既知の皮膚透過促進剤を単独でまたは複数種類の組み合わせで含むことができる。そのような皮膚透過促進剤としては、これに限定しないが、例えば、スルホキシドまたはそれに類似する化学物質、これに限定しないが、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、デシメチルスルホキシド、ジメチルイソソルビドなど;アゾン、ピロリドン、これに限定しないが、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドンなど;エステル、脂肪酸エステル、これに限定しないが、例えば、プロピレングリコールモノラウレート、エタノール酸ブチル、エタノール酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、エタノール酸メチル、デシルオレアート、グリセロールモノオレアート、グリセロールモノラウレート、ラウリルラウレートなど;脂肪酸、これに限定しないが、例えば、カプリン酸、カプリル酸、ラウリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、リノール酸、ステアリン酸、パルミチン酸など;アルコール、脂肪性アルコール及びグリコール、これに限定しないが、例えば、オレイルアルコール、ナタノール、ドデカノール、プロピレングリコール、グリセロールなど;エーテルアルコール、これに限定しないが、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなど;尿素、トリグリセリド、これに限定しないが、例えば、トリアセチン、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、脂肪アルコールのエステル、精油、ヒドラモール、界面活性剤型エンハンサー、これに限定しないが、例えば、Brij(登録商標)、ラウリル硫酸ナトリウム、トゥイーン、ポリソルベートなど;テルペン、テルペノイド、及び、文献(Eric W. Smith, Howard I. Maibach, 2005. Nov, CRC press)で言及されているすべての透過促進剤または透過促進剤が挙げられる。このような増粘剤は、製剤中に、約0.1~95重量%(w/w%またはw/v%)の範囲の量で含有され得る。
【0336】
可塑剤
【0337】
本開示の経皮的製剤及び/または局所的製剤は、当業者に既知の可塑剤を単独でまたは複数種類の組み合わせで含むことができる。そのような可塑剤としては、グリセロールまたはそのエステル、リン酸エステル、グリコール誘導体、糖アルコール、セバシン酸エステル、クエン酸エステル、酒石酸エステル、アジピン酸塩、フタル酸エステル、トリアセチン、オレイン酸エステルのように、文献(Eric W. Smith, Howard I. Maibach, 2005. Nov, CRC press)で言及されている経皮薬物送達システムに使用すべての可塑剤が挙げられる。このような可塑剤は、製剤中に、約0.1~95重量%(w/w%またはw/v%)の範囲の量で含有され得る。
【0338】
他の構成要素/添加剤
【0339】
本開示の経皮製剤及び/または局所製剤は、皮膚軟化剤、保湿剤、皮膚刺激低減より良く剤及び当業者に既知の類似の化合物または化学物質を、単独でまたは複数種類の組み合わせで含むことができる。そのようなものとしては、これに限定しないが、例えば、ペトロラタム、ラノリン、鉱油、ジメチコン、酸化亜鉛、グリセリン、プロピレングリコールなどが挙げられる。このような構成要素は、製剤中に、約0.1~95重量%(w/w%またはw/v%)の範囲の量で含有され得る。
【0340】
本開示の経皮的製剤及び/または局所的製剤は、可溶化剤、界面活性剤、乳化剤、分散剤、及び当業者に既知の類似の化合物または化学物質を、単独でまたは複数種類の組み合わせで含むことができる。そのようなものとしては、これに限定しないが、例えば、ポリソルベート、これに限定しないが、例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80など;スパン、これに限定しないが、例えば、スパン80、スパン20など;界面活性剤、例えば、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性のもの;プロピレングリコールモノカプリレートI型、プロピレングリコールモノカプリレートII型、プロピレングリコールジカプリレート、中鎖トリグリセリド、プロピレングリコールモノラウレートII型、リノレオイルポリオキシル-6グリセリド、オレオイルポリオキシル-1-6-グリセリド、ラウロイルポリオキシル-6-グリセリド、ポリグリセリン1-3-ジオレアート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノラウレートI型、ポリグリセリン-3-ジオレアート、カプリロカプロイルポリオキシル-8グリセリドなど;シクロデキストリンなどが挙げられる。このような構成要素は、製剤中に、約0.1~95重量%(w/w%またはw/v%)の範囲の量で含有され得る。
【0341】
本開示の経皮製剤及び/または局所製剤は、製剤の適切なpHを好ましくは4.0~8.0の範囲に維持するのに役立つ補助的なpH緩衝剤及びpH安定剤並びに当業者に既知の類似の化合物を、単独でまたは複数種類の組み合わせで含むことができる。そのようなものとしては、これに限定しないが、例えば、リン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤など、塩基(これに限定しないが、例えば、カルボン酸、無機酸、スルホン酸、ビニルカルボン酸など)、塩基(これに限定しないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、トリエチルアミン、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなど)が挙げられる。このようなpH調整剤は、製剤中に、約0.1~30重量%(w/w%またはw/v%)の範囲の量で含有され得る。
【0342】
本開示の経皮製剤及び/または局所製剤は、安定剤(これに限定しないが、例えば、メタ重亜硫酸ナトリウム、クエン酸、アスコルビン酸、BHA、BHT)、酸化剤、安定剤、変色剤、防腐剤、脱湿剤、脱酸素剤、加水分解を遅延または防止する添加剤、酸化を遅延または防止する添加剤、及び、製剤の安定性を改善することが当業者に知られている類似の化合物または化学物質などを、単独でまたは複数種類の組み合わせで含むことができる。このような安定剤は、製剤中に、約0.1~50重量%(w/w%またはw/v%)の範囲の量で含有され得る。
【0343】
本発明はその趣旨から逸脱しない範囲で様々な変更または変形が可能であることは、当業者であれば理解できるであろう。加えて、様々な実施形態の態様は、その全体またはその一部を相互に交換できることを理解されたい。さらに、当業者であれば、上記の詳細な説明及び実施例は説明のみを目的としており、添付の特許請求の範囲に記載されている本発明の範囲をいかなる意味でも限定することを意図していないことを理解できるであろう。
【国際調査報告】