(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】予測モデルを使用して医療介入を最適化するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G16H 50/00 20180101AFI20240517BHJP
【FI】
G16H50/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568662
(86)(22)【出願日】2022-06-06
(85)【翻訳文提出日】2023-12-28
(86)【国際出願番号】 US2022072784
(87)【国際公開番号】W WO2022261622
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523421351
【氏名又は名称】ダシシミュレーションズ、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダシ、ラクシュミ プラサード
(72)【発明者】
【氏名】サーセット、テレサ エル.
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA04
(57)【要約】
最適化された医療介入を処方するためのコンピュータ実現方法は、患者の更新済み電子医療記録EMRを検索するステップと、定義済み閾値スコアを超えるスコアに基づいて複数の可能医療介入選択を選択するために、患者の診断を医療治療データベースにマッピングするステップとを含む。方法は、医療予測アルゴリズムによって実行された選択毎のシミュレーション結果を選択された可能医療介入の各々の間のそれぞれの選択に対して比較することにより、選択された複数の医療介入選択のランク順位を決定するステップを含む。方法は、患者の内科医又は患者の電子医療記録データベースが、可能オプション、及びシミュレートされた結果の受け入れられたレベルに基づく関連するメトリクスを含む、推奨された医療介入選択のランク順位を受け取るステップを同じく含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
最適化された医療介入を処方するためのコンピュータ実現方法であって、
サーバの中の少なくとも1つのプロセッサによって、メモリに記憶されている、診断に従って最適化された医療介入を処方するための医療予測アルゴリズムを実行する
ステップを含み、前記最適化された医療介入を処方するステップが、
患者データベースから、患者の人口統計学データ、病的症状、生徴候、投薬、外科履歴、家族医療履歴、遺伝データ、研究室試験データ、疾病記録、アレルギー、X-線画像又はコンピュータ生成断層撮影画像及び医療保険情報のうちの少なくとも2つ以上を含む患者の更新済み電子医療記録(EMR)を検索するステップと、
定義済み閾値スコアを超えるスコアに基づいて複数の可能医療介入選択を選択するために、前記患者の前記診断を医療治療データベースにマッピングするステップであって、前記スコアが、治療継続期間、総治療費、治療の危険因子、治療の計画された平均余命、治療の成功率、リハビリテーション継続期間、外来患者リハビリテーション費、治療後の寿命指数の質、インプラント・デバイス耐用年数、設備定格及び保険業者からの償還可能費のうちの少なくとも1つ以上を含む複数の目的関数の各々に割り当てられる個別のスコアの線形又は非線形の組合せである、ステップと、
前記医療予測アルゴリズムによって実行された選択毎のシミュレーション結果を前記選択された可能医療介入の各々の間のそれぞれの選択に対して比較することにより、前記選択された複数の医療介入選択のランク順位を決定するステップと、
前記患者の内科医又は患者の電子医療記録データベースが、可能オプション、及びシミュレートされた結果の受け入れられたレベルに基づく関連するメトリクスを含む、推奨された医療介入選択のランク順位を受け取るステップと
を含む、コンピュータ実現方法。
【請求項2】
前記シミュレーション結果が、訓練された人工ニューラル・ネット・モデル、生物機械モデル、統計的モデル、低次元化モデル、又は他の準実験的又は実験的モデルを含む複数の予測モデルのうちの少なくとも1つ、又はそれらの組合せを使用して、前記選択された複数の可能医療介入選択をシミュレートする際の確率データを含む、請求項1に記載のコンピュータ実現方法。
【請求項3】
推奨される医療介入選択の前記ランク順位が、前記複数の目的関数のうちの1つ又は複数の確率を設定された閾値より大きくなるように、或いは小さくなるように最大化又は最小化することに基づく、請求項1に記載のコンピュータ実現方法。
【請求項4】
前記医療予測アルゴリズムが、医療介入毎に一組の不利な結果即ち合併症を決定し、且つ、医療介入毎に生じる個々の不利な結果即ち合併症の確率を決定する、請求項2に記載のコンピュータ実現方法。
【請求項5】
前記医療予測アルゴリズムが、目的関数毎に事前計算済み結合及び個別の確率密度関数を有する、請求項2に記載のコンピュータ実現方法。
【請求項6】
前記事前計算済み予測アルゴリズム及び結合並びに個別の確率密度関数が、不利な結果の組合せを使用して、或いは使用することなく条件付けられる、請求項5に記載のコンピュータ実現方法。
【請求項7】
前記事前計算済み予測アルゴリズム及び結合並びに個別の確率密度関数が、患者の人口統計学データ、病的症状、生徴候、投薬、外科履歴、家族医療履歴、遺伝データ、研究室試験データ、疾病記録、アレルギー、病院、地理上の領域のうちの少なくとも1つで条件付けられる、請求項5に記載のコンピュータ実現方法。
【請求項8】
前記医療予測アルゴリズムが、所与の確率密度関数に引き続いて乱数発生器によって駆動されるMonte-Carloタイプ・シミュレーションを使用する、請求項1に記載のコンピュータ実現方法。
【請求項9】
最適化された医療介入を処方するためのシステムであって、メモリに記憶されている、診断に従って最適化された医療介入を処方するための医療予測アルゴリズムを実行する、サーバの中の少なくとも1つのプロセッサを備え、前記最適化された医療介入を処方するステップが請求項1に記載のステップを実行するステップを含む、システム。
【請求項10】
医療予測アルゴリズムのプログラム・コードをメモリに記憶した非一時的コンピュータ可読媒体であって、機械の少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、前記医療予測アルゴリズムが、最適化された医療介入を処方するための、請求項1に記載のステップを含むステップを前記機械に実施させる、非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、2021年6月7日に出願した米国仮特許出願第63/197,807号の優先権を主張するものである。
【0002】
本開示は、一般に、予測モデルを使用して医療介入を最適化するためのシステム及び方法に関し、より詳細には、予測モデル・ベース指針に基づいて医療療法決定を最適化するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
医療療法は、患者を評価する際の、医師などの臨床医家によってなされる決定を含む。医師によってなされる誤った決定が患者の生命即ち死を意味し得ることは驚くべきことではない。誤った(又は最適ではない)決定には、診断の失敗又は誤診、或いは利用可能な複数のオプションからの、患者及び医師が最適ではない結果をもたらす道を歩むことになり得る治療計画オプションの選択を含み得る。一次利害関係者は、平均余命の最長化及び寿命の質の最良化を希望する(特定の費用又は最低の費用或いは手ごろな費用で)患者である。二次利害関係者は、利益及び評判を倫理的に最大化することを希望する治療臨床医家及び機関/病院である。
【0004】
長年にわたり、医学会は、流行している個々の疾病の人口レベル経験に基づいて、或いは利用可能になる有望で、且つ、有効な新しい治療が存在すると、流行しているほとんどすべての疾病のための治療指針を提供し、作成し、且つ、更新しているが、これらの指針は、すべての個別の患者に対して必ずしも最適結果を提供し得ないことはよく知られている。通常、これらの指針の中で提供される治療オプションは、患者を意思決定過程に巻き込む共有意思決定を含み得る。人口誘導指針が日常的であるため、現在の医療実践では、個別の患者に対する最も最適な結果を保証することができない指針に従って、患者の特定の遺伝的、生物学的、解剖学的及び/又は生理学的特性のすべての詳細を考慮することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/0298450号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
最適化された医療介入を処方するためのコンピュータ実現方法は、サーバの中の少なくとも1つのプロセッサによって、メモリに記憶されている、診断に従って最適化された医療介入を処方するための医療予測アルゴリズムを実行するステップを含む。
【0007】
最適化された医療介入を処方するためのシステムは、メモリに記憶されている、診断に従って最適化された医療介入を処方するための医療予測アルゴリズムを実行する、サーバの中の少なくとも1つのプロセッサを含む。
【0008】
非一時的コンピュータ可読媒体は、医療予測アルゴリズムのプログラム・コードをメモリに記憶し、機械の少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、医療予測アルゴリズムは、最適化された医療介入を処方するためのステップを機械に実施させる。
【0009】
最適化された医療介入を処方するステップは、患者データベースから、患者の人口統計学データ、病的症状、生徴候、投薬、外科履歴、家族医療履歴、遺伝データ、研究室試験データ、疾病記録、アレルギー、X-線画像又はコンピュータ生成断層撮影画像及び医療保険情報のうちの少なくとも2つ以上を含む患者の更新済み電子医療記録(EMR:electronic medical record)を検索するステップを含む。
【0010】
最適化された医療介入を処方するステップは、定義済み閾値スコアを超えるスコアに基づいて複数の可能医療介入選択を選択するために、患者の診断を医療治療データベースにマッピングするステップを含む。スコアは、治療継続期間、総治療費、治療の危険因子、治療の計画された平均余命、治療の成功率、リハビリテーション継続期間、外来患者リハビリテーション費、治療後の寿命指数の質、インプラント・デバイス耐用年数、設備定格及び保険業者からの償還費のうちの少なくとも1つ以上を含む複数の目的関数の各々に割り当てられる個別のスコアの線形又は非線形の組合せである。
【0011】
最適化された医療介入を処方するステップは、医療予測アルゴリズムによって実行された選択毎のシミュレーション結果を選択された可能医療介入の各々の間のそれぞれの選択に対して比較することにより、選択された複数の医療介入選択のランク順位を決定するステップを含む。最適化された医療介入を処方するステップは、患者の内科医又は患者の電子医療記録データベースが、可能オプション、及びシミュレートされた結果の受け入れられたレベルに基づく関連するメトリクスを含む、推奨された医療介入選択のランク順位を受け取るステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】デシジョン経路毎の期待寿命、費用及び寿命指数の質を含むデシジョン・ツリー/経路毎の患者と病院の両方に対する健康管理含意を予測するための人工知能/機械学習(AI/ML:Artificial Intelligence/Machine Learning)アルゴリズムの使用の実例例証を示す図である。
【
図1B】デシジョン経路毎の期待寿命、費用及び寿命指数の質を含むデシジョン・ツリー/経路毎の患者と病院の両方に対する健康管理含意を予測するための人工知能/機械学習(AI/ML)アルゴリズムの使用の実例例証を示す図である。
【
図2】人工知能駆動指針システムを使用して、心臓弁の置換を必要とする患者のための最適治療経路を開発する実例方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、患者が利用することができる治療オプションに対する知られている危険の予測であってもよい患者特化情報を考慮することによって人口誘導指針を個人化するための追加ステップを提供する。人工知能、機械学習、ビッグ-データ及び計算シミュレーションの何らかの組合せを使用した予測モデルの出現は、これらのモデルが患者の特定の遺伝的、生物学的、解剖学的及び/又は生理学的特性の考慮を開始すると、また、これらを考慮すると、何らかの確実性(又は不確実性)で、患者に生じ得る時間的推移を予測することができる可能性をもたらしている。
【0014】
本開示は、ここでは、弁修復及び置換などの構造的心臓治療のための意思決定を最適化するためのシステムであってもよい。当業者は、システムは、ロボット手術又は介入を含む、外科又はカテーテルをベースとする介入を必要とする他の心臓又は非心臓外科治療で働くように構成することができることを認識し得る。
【0015】
また、システムは、複数の治療オプションが存在するあらゆる疾病の治療に一般化することも可能である。
【0016】
例えば大動脈、僧帽弁、肺及び三尖弁のための経カテーテル弁修復又は置換(TVR:transcatheter valve repair or replacement)は、従来の直視下心臓手術を施すことができない、重大な弁疾病を抱えている患者、及び様々な併存疾患を抱えている高リスク患者に治療を提供することができる。TVRと関連付けられた利点にもかかわらず、例えば伝導異常、重大な残留逆流又は漏れ、組織破損、弁血栓症、弁塞栓症及びフロー障害並びに他の脳血管性事象などの合併症が依然として生じ得る。合併症事象は、冠障害、人工弁周囲逆流及び血栓症を含み得る。他の合併症は、血管損傷、又は狭くなる血管中でナビゲートするデリバリー・カテーテルの不能などのデリバリー過程から生じる合併症を含む。直視下心臓手術などのより侵襲的な手順とは異なり、患者にTVRを施すための決定は複雑であり、多くの要因に依存し得る。これらの要因には、年齢、性別医療条件、弱さ、患者の胸部外科医協会(STS:Society of Thoracic Surgeons)危険スコア、構造的心臓手順に関連する先行する履歴、カテーテルからのデリバリー・ルートの複雑性、直視下心臓手術からの患者の回復能力、等々がある。
【0017】
心臓弁修復及び置換のための治療戦略を推奨しているアメリカ心臓協会及びアメリカ心臓病学カレッジ又は他の協会による現在の指針は、場合によっては、様々な心臓構造を苦しめている病変又は複数の混合病変の遺伝的、生物学的、解剖学的及び/又は生理学的特性などの関連する患者特化要因を無視する人口ベース危険評価に単に頼っているにすぎない。STS死亡率予測危険(PROM:Predicted Risk of Mortality)スコアなどの危険計算器がしばしば使用されているが、これらの計算器は、病変又は混合病変の遺伝的、生物学的、解剖学的及び/又は生理学的特性を考慮していない。危険計算器は、典型的には、特定の手順を実施するあらゆる部位にわたって編集された国家登録データに基づく統計的モデルの上に立っている。予測容量は、典型的には年齢、性別、及び併存疾患、基本生活及び代謝パラメータ(例えば腎臓機能、肺機能、等々)などの他の医療要因などの一般的なパラメータしか含んでいない、記録されているパラメータに限られている。詳細な解剖学的情報は、通常はこれらのモデルに含まれていない。
【0018】
実例では、計算モデルを利用して、経カテーテル弁置換又は修復手順をシミュレートし、且つ、外科手術時に生じ得る、更には外科手術から数カ月を経過した後に生じ得るいくつかの不利な結果(例えば弁血栓症)の危険を評価する可能性を保持することができる。更に、これらのモデルを使用して、現在の介入デバイスが失敗した時の介入の将来の危険を予測することも可能である(例えば弁中の将来の弁、即ちTAVR手順の内側のTAVR)。これらのモデルの実例は、「SYSTEMS AND METHODS FOR PREDICTIVE HEART VALVE SIMULATION,」という名称の米国特許出願公開第2019/0298450号に見出すことができ、この特許出願公開は、パラメータ解析エンジンを使用して、TAVステント開発におけるギャップ・サイズα2D距離をモデル化しており、冠リーフレットの先端と冠動脈の冠動脈口の間のギャップ・サイズα2D距離は、冠障害の危険と相関させることができる。冠障害危険レベルを有するギャップ・サイズα2Dを使用した何人かの患者の臨床状態の要約が表1に作成されている。
【0019】
【0020】
これらのシミュレーションは、場合によっては、患者の医療画像からの3Dモデルを生成し、それに引き続いてその3Dモデルを、構造応答並びに血行力学性能及び他のフロー・パラメータ及びフロー・パターンを予測することができる計算フレームワークを使用したTAVのシミュレーションの対象にすることで開始する必要がある。したがって危険スコアを個人化しようと思えば、個別のレベル予測を計算に加えることにより、既に開発済みの危険スコアを個人化することが今は可能である。人口ベース予測を個人化されたシミュレーションと組み合わせて特定の不利な結果(現在及び将来の介入の)を予測する新しい危険計算器を使用することにより、より正確な危険計算が個人のレベルで得られ、それにより意思決定が最適化される。不利な結果の個人化された予測に含まれる個人化された画像、遺伝的データ又は生理学的データが多ければ多いほど、所与の医療治療即ち介入に対する個人化された危険を予測する際の結合モデルの精度が高くなる。
【0021】
個別の不利な結果をふるいにかけるためにコンピュータ・シミュレーションを有することは有用であり得るが、患者のための最適決定には、すべてのオプション(侵襲的治療対経カテーテル治療対医療管理)が考慮されるより多くの全体論的な写真が必要である。考慮されるオプション毎に、患者並びに治療センター(例えば病院)に対する様々な不利な結果の潜在的含意と共に生じ得るその不利な結果の危険を識別することが重要である。患者にとっては、含意は期待寿命、寿命の質及び費用を取り扱う。病院にとっては、含意は、患者の入院期間、及び病院によってもたらされることになる追加費用、並びに評判の変化をもたらす。これらの含意の考慮に加えて、患者に対する別のセットの含意は、個々の決定は、将来なされることになる他の決定のためのステージを設定し得ることである。例えば補綴弁を、今、インプラントする決定が考慮されている場合、患者が別の弁を約10年以内に必要とすることになることを同じく予想すべきである。更に、患者が将来的に冠介入を必要とすることになる場合(冠動脈疾病の予知に基づいて)、コンピュータ化断層撮影(CT:Computerized Tomography)走査画像から観察される患者の冠動脈疾病の進行の程度に基づく現在の決定には、冠へのアクセスも必ず決定要因になるはずである。
【0022】
このタイプの全体論的図は、医師からの、或いは心臓チーム・グループによる早期決定を患者と病院の両方のための結果にマップ・アウトする。実例として、直視下心臓手術の場合とは異なり、TVRを使用した、より若い低リスク患者に対する治療の決定(STSスコアのみに基づく)は、将来の追加経カテーテル又は直視下心臓手術など将来の介入の確実性を意味し得る。プレーヤが将来の移動を考慮することができ、また、対抗移動がより良好な勝つ確率を有するチェスのゲームと似ている。同様に、最良結果のための最良デシジョン経路を選択するために、個々の決定点からのすべての含意を定量的方法でレイ・アウトする医療決定サポート・システムも重要である。このような最適決定は、システム・レベル計画立案及び知能駆動指針システムなしにはなされ得ない。上で説明したように、このようなシステムはすべてのセンターからほぼ実時間でデータを収集し、これは、良くなる一方の精度で人口ベース予測モデルを更新して、データ収集に遺伝的、解剖学的及び他の生理学的パラメータを含む。また、システムは、すべての可能治療オプション(現在の介入及び将来の予測された介入)を考慮している間、患者内におけるデバイスの生物機械相互作用をシミュレートし、次に治療経路毎の正確な危険スコアを計算するシミュレーション能力から同じくなっている。システムは、デシジョン・ツリー又はマップをディスプレイ(例えばタッチ・スクリーン・デバイス又は仮想現実感ディスプレイ・デバイス或いは拡張現実感デバイス)に視覚対話表示し、且つ、最適化変数(例えば費用、患者寿命、等々)の各々毎に最も最適な1つ又は複数のデシジョン経路を強調するように構成することができる。このようなシステムは知能として働くことになり、また、総合的に選択した治療計画の実行について、臨床医家がチーム並びに患者及び家族と相談するための最良のオプションに正当化を提供することになる。サービス又はクラウド計算プラットフォームを使用して集中的に実行することができるこのようなシステムは本開示の主題である。更に、すべての患者は、システムに接続されている自分の個人のデバイスにアプリケーションをインストールすることができ、システムは患者の平均余命を実時間で表示することになり、この平均余命は、患者電子医療記録が変化する毎に更新することができる。更に、アプリケーションは、システムの予測アルゴリズムの中に同じく使用されることになる更新された生物学的データ、生理学的データ、認知データ、精神的データ及び他のバイオマーカ・データを同じく供給することができる着用可能センサに接続することも可能である。このようなアプリケーションは、患者が自分のライフスタイルを調整して、自分の平均余命を最長化し、且つ、寿命の質を最大化することができるため、有用であろう。
【0023】
本開示では、機械学習及び/又は人工ニューラル・ネットワーク或いは深層学習アルゴリズムが訓練され、且つ、一定の時間インターバルで更新されて、入院期間、介護の費用、介護中に使用された供給品の明細リスト(杖、生理食塩水バッグ、付属品、等々)、弁耐久性、平均余命、及び国家レベル、地域レベルからセンター/病院特化レベルに至るまでの合併症の確率などの患者健康管理パラメータ及び結果が追跡される。例えば機械学習アルゴリズムは、TAVRが実施され、且つ、永久ペースメーカが取り付けられることになった患者のための入院期間、費用及び計画寿命を予測することができることになる。これらのアルゴリズムは、直視下心臓手術などの構造的心臓手順又は経カテーテル手順が施された患者のために、利用可能なすべての医療データからの懐古的データ上で訓練することができる。
【0024】
これらのAI/MLアルゴリズムは、次に計算予測モデルと結合され、患者のためのあらゆる可能な時間的推移にわたる、現在及び将来のすべての可能オプションをモデル化するためのシステム最適化手法即ちソフトウェアが形成される。例えば大動脈弁狭窄症と診断された患者は、直視下心臓手術又は経カテーテル弁置換などのあらゆるオプションが施されることになる。計算シミュレーションは、オプション毎に、オプションのために利用することができる個々のデバイスで生じる不利な結果の危険を予測することになる。計算シミュレーションは、不利な結果の確率を予測するためのデバイスを展開している間、不確実性を組み込むためにMonte-Carloシミュレーションを含むことができる。選択されたデバイス毎に、弁デバイス・シミュレーションにおける将来の弁は、同様の方法で同じく実施されることになる。また、シミュレーションは、心臓構造の予測再モデル化(データ収集からのAI/ML訓練から学習された)を含むことも可能であり、また、同様に、冠動脈疾病などの他の構造的心臓疾病の予測増加を含むことも可能である。AI/MLアルゴリズムは、デシジョン・ツリー/経路毎に、デシジョン経路毎の期待寿命、費用及び寿命指数の質を含む、患者と病院の両方に対する健康管理含意を予測することになる。この概念は、
図1A及び
図1Bに示すことができる。
【0025】
システムは、中間経路を含む最良経路及び最悪経路を強調した視覚マップとしてデシジョン経路を表示することができる。経路をクリック・オンすると、平均余命、費用、寿命の質、並びに潜在的費用節約及び利益性などの病院にとって重要なパラメータを表示することになる。
【0026】
図2は、人工知能駆動指針システムの実行されるステップのいくつかの実例を示したものである。詳細には、
図2は、心臓弁の置換を必要としている患者のための最適治療経路を開発する実例を使用した最適化システムの構築を示したものである。
【0027】
実例では、50代の女性患者が、石灰化した既存の生体弁で大動脈弁狭窄症を患っている。最低1つの層及び最低1つのニューロンを有する(人工ニューラル・ネットワーク:Artificial Neural Network)ANNモデルが、現在の心臓状態に基づいて個人の平均余命を出力するように訓練される。訓練データセットは、様々な状態及び個々の状態の重大性などの医療健康パラメータを含む患者の電子医療履歴のデータベースを含むことができる。データベースは、10年以上であることが好ましい最大可能範囲に及び得ることが好ましい。モデルは、新しいデータが加わっている医療機関と同期すると、毎週、訓練することができる。モデルは、個人的な識別子は一切不要であり得る。しかしながらモデルは、遺伝、人種、性別、地理上の場所を含む関連する情報、及び腎臓、肺、肝臓、血液コレステロール、等々の関連する生活機能状態を含むことができる。家族履歴及びすべての過去の診断並びにそれらの治療状態。ANNモデルは、死亡時に予測される年齢並びに残されている寿命年数の形で平均余命を出力することができる。また、モデルは、当該疾病の状態がモデルから隠されると平均余命を出力することも可能である。これは、モデルが、現在の疾病が存在しないこと、及びモデルの出力は新しい診断がないときの平均余命であり得ることを仮定し得ることを意味し得る。
【0028】
この訓練された予測平均余命モデルは、治療されない場合、たったの1年であることを予測することができる。また、アルゴリズムは、大動脈弁狭窄症がない同じ患者の平均余命を85歳に同じく予測することができる。システムは、治療経路を開発する可能な最良事例シナリオは、期待平均余命に34歳を追加することを試行することであることを認識し得る。システムは、51歳から85歳までの平均余命をもたらすことになる治療経路を選択するべく目標を設定することができる(即ち34の期待追加年を加える)。
【0029】
システムは、不全になるまでの弁の持続年数を出力するように訓練された別のANNモデルを有している。このモデルは既に説明したANNモデルと同様であり、置換弁を受け取ったすべての患者からなる医療記録上で訓練されている。モデルは、患者の年齢に基づいて、また、それには限定されないが腎機能を含むあらゆる生命パラメータに基づいて、市場におけるすべての弁の予測有効寿命を出力するように訓練することができる。
【0030】
患者の実例に対して、モデルは、10年長持ちする、Edwards Lifesciencesから入手することができる新しいSapien弁(以下「Sapien」)を見積もることができ、一方、新しいEvolut弁(例えばMedtronic Evolut(商標)TAVR、以下「Evolut」)は、6年長持ちさせることができる。また、モデルは、16年長持ちする新しいCarpentier Edwards Perimount弁(以下「Perimount」)、14年長持ちするMagna弁、12年長持ちするMitroflow(例えばMitroflow大動脈弁)を同じく見積もることができる。
【0031】
システムにおける次のステップは治療経路生成器であってもよい。これは、利用可能なオプションを考慮し、且つ、医療管理のみの経路を含むすべての可能治療経路をレイ・アウトするアルゴリズムであってもよい。これらの治療経路は医療介入と呼ぶことも可能である。アルゴリズムは、治療経路即ち医療介入選択が、経路中のデバイスのすべてを結合した有効寿命が患者の最長可能平均余命より長くなり得るようにレイ・アウトされていることを保証する。医療介入は、弁の埋込の異なる深さ、異なるサイズ化(設定された量による過大サイズ化又は過小サイズ化)、ガイドワイヤがインプラントを大動脈根中に置くことができる方法の変化に起因する異なる展開の角度、等々などの変化を同じく含むことができる。
【0032】
実例では、以下の医療介入選択を生成することができる。
選択No.1: 医療管理。
選択No.2: Perimountを使用した直視下心臓弁置換、それに後続するPerimountを使用した直視下心臓弁置換、それに後続するPerimount=総有効寿命16+16+16=48年を使用した直視下弁置換。
選択No.3: Perimountを使用した直視下心臓弁置換、それに後続するEvolutを使用したTAVR弁-イン-弁(ViV:Valve-in-Valve)置換、それに後続するSapien=総有効寿命16+6+10=32年を使用した弁-イン-弁-イン-弁(ViViV:Valve-in-Valve-in-Valve)置換。
【0033】
次に、すべての医療介入を次のアルゴリズムの上に通過させることができる。次のアルゴリズムは、医療介入毎に34年以上の平均余命の総合確率を評価し、且つ、選択を最大確率から最小確率に分類することができる。
【0034】
このアルゴリズムは、加わっている機関/病院、等々からのデータに基づく訓練からの情報を含むことができ、この情報は、新しいデータが利用可能になる毎に更新することができる。直視下心臓手術後の平均余命の事前計算済み確率分布関数を有するアルゴリズムは、患者の選択された弁、地理上の場所、手術時の患者の年齢、併存疾患及び他の医療情報(現在及び将来のために計画された)で条件付けることができる。別の条件は不利な結果が生じないことである。
【0035】
経カテーテル弁置換後の平均余命の事前計算済み確率分布関数を有するアルゴリズムは、患者、等々の選択された弁、地理上の場所、手術時の年齢、併存疾患及び他の医療情報(現在及び将来のために計画された)で条件付けることができる。別の条件は不利な結果が生じないことである。
【0036】
不利な結果毎に(及び任意の組合せで)条件付けられた平均余命の事前計算済み確率分布関数を有するアルゴリズムは、少なくとも、根破損、人工弁周囲逆流レベル、患者補綴不整合、弁血栓症、冠障害、弁塞栓症、永久ペースメーカの配置、拍動、組合せ(例えば患者補綴不整合+弁血栓症)、等々によって生じ得る。
【0037】
アルゴリズムは、患者の医療画像に基づいて生物機械予測シミュレーションを走らせることによって治療経路における個々の手順で生じる個々の不利な結果の確率を計算することができる。個々の治療経路をシミュレートすることができる。生物機械予測モデルは、(1)弁及び患者特化解剖及び血行力学パラメータに基づく経カテーテル大動脈弁(TAV:transcatheter aortic valve)置換(TAVR:transcatheter aortic valve replacement)後の血栓症の可能性を予測するため、並びに(2)血栓症の可能性を最小にするための個々の患者のための最適弁及び配置を選択するために使用することができるアルゴリズムを含むことができる。アルゴリズムは、人工弁の近傍に血液凝塊形成をもたらし得る血流停滞の領域又は血流停滞の程度を速やかに予測し、次に、治療経路における個々の段階で生じる個々の不利な結果の確率を出力するために、実験的及び準実験的モデル化の等級を有する弁及び患者特化パラメータを組み込むように設計することができる。
【0038】
アルゴリズムは、個々の治療経路に対する平均余命の総確率関数を計算するために、確率密度関数及び条件付き確率密度関数を使用して個々の治療経路に生じる個々の不利な結果の個別の確率が与えられると、医療介入毎にMonte-Carloシミュレーションを走らせることができる。これらのMonte-Carloタイプ・シミュレーションは、所与の確率密度関数及び確率に引き続いて乱数発生器によって駆動することができる。
【0039】
アルゴリズムは、最終確率密度関数を使用して、34年以上の平均余命の確率を予測することができる。例えばモデルは、最大確率から最小確率の順で医療介入を出力することができる。
【0040】
別のアルゴリズムは、治療経路毎の入院期間、予測病院費、償還可能費及び非償還可能費を表示することができる。このアルゴリズムは、加わっている病院、等々からの、入院期間及び費用情報を含むことができるデータ上で訓練されたANNモデルであってもよい。
【0041】
以上の説明は実例である。当然、構成要素又は方法の想定可能なすべての組合せを説明することは不可能であるが、多くのさらなる組合せ及び置換が可能であることは当業者には認識されよう。したがって本開示には、添付の特許請求の範囲を含む本出願の範囲の範疇であるすべてのこのような代替、修正及び変更を包含することが意図されている。更に、本開示又は特許請求の範囲が、「単数表現」の要素、「第1の」要素又は「別の」要素、或いはそれらの等価物を記載している場合、それは、2つ以上のこのような要素を必要としない、或いは除外しない場合であっても、1つのこのような要素以外の1つ又は複数の要素を含むものとして解釈されたい。本明細書において使用されているように、「含む」という用語は、含むがそれには限定されないことを意味しており、また、「含んでいる」という用語は、含んでいるがそれには限定されないことを意味している。「に基づく」という用語は、少なくとも部分的に基づくことを意味している。
【国際調査報告】