(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】薄膜の形成方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20240517BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20240517BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240517BHJP
C30B 29/38 20060101ALI20240517BHJP
C23C 16/34 20060101ALI20240517BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20240517BHJP
C30B 25/14 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
H01L21/205
H01L29/78 618B
H01L29/78 618A
H01L29/78 618E
C30B29/38 D
C23C16/34
C23C16/455
C30B25/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023569635
(86)(22)【出願日】2022-03-11
(85)【翻訳文提出日】2023-11-09
(86)【国際出願番号】 KR2022003477
(87)【国際公開番号】W WO2022239948
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】10-2021-0060988
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504210651
【氏名又は名称】ジュスン エンジニアリング カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘオ ジョン
(72)【発明者】
【氏名】キム ダク ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】マ チャン ス
(72)【発明者】
【氏名】パク チャン キュン
(72)【発明者】
【氏名】リ ヨン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】ファン チュル ジュ
【テーマコード(参考)】
4G077
4K030
5F045
5F110
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
本発明は、薄膜の形成方法に関し、より詳細には、窒化ガリウム薄膜を形成するための薄膜の形成方法に関する。本発明の実施形態に係る薄膜の形成方法は、チャンバーの処理空間に基板を搬入するステップと、前記基板の上に窒化ガリウム薄膜を形成するステップと、を含み、前記窒化ガリウム薄膜を形成するステップは、前記基板の上にガリウムを含有するソースガスを供給するステップと、前記基板の上に窒素を含有する反応ガスを供給するステップと、前記反応ガスが供給された基板の上に水素を含有する後処理ガスを活性化させて供給するステップと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバーの処理空間に基板を搬入するステップと、
前記基板の上に窒化ガリウム薄膜を形成するステップと、
を含み、
前記窒化ガリウム薄膜を形成するステップは、
前記基板の上にガリウムを含有するソースガスを供給するステップと、
前記基板の上に窒素を含有する反応ガスを供給するステップと、
前記基板の上に水素を含有する後処理ガスを活性化させて供給するステップと、
を含む、薄膜の形成方法。
【請求項2】
前記窒化ガリウム薄膜を形成するステップは、
前記処理空間を600℃以下の温度に制御して行われるものである、請求項1に記載の薄膜の形成方法。
【請求項3】
前記反応ガスを供給するステップは、
前記ソースガスとは異なる供給ルートを介して前記基板の上に前記反応ガスを供給するものである、請求項1に記載の薄膜の形成方法。
【請求項4】
前記反応ガスを供給するステップは、
前記反応ガスを活性化させて供給し、
前記窒化ガリウム薄膜を形成するステップは、
前記処理空間を350℃以下の温度に制御して行われるものである、請求項1に記載の薄膜の形成方法。
【請求項5】
前記窒化ガリウム薄膜を形成するステップは、
前記反応ガスを供給するステップの前に、前記基板の上に水素を含有する前処理ガスを活性化させて供給するステップをさらに含む、請求項1に記載の薄膜の形成方法。
【請求項6】
前記窒化ガリウム薄膜を形成するステップは、
前記前処理ガスを活性化させて供給するステップの前に、前記ソースガスをパージするステップをさらに含む、請求項5に記載の薄膜の形成方法。
【請求項7】
前記窒化ガリウム薄膜を形成するステップは、
前記後処理ガスを活性化させて供給するステップの前に、前記反応ガスをパージするステップをさらに含む、請求項1に記載の薄膜の形成方法。
【請求項8】
前記ソースガスはトリメチルガリウム(TMGa:Trimethyl Gallium)ガスを含み、
前記反応ガスはアンモニア(NH
3)ガスを含み、
前記後処理ガスは水素(H
2)ガスを含む、請求項1に記載の薄膜の形成方法。
【請求項9】
前記窒化ガリウム薄膜を形成するステップの前に、前記基板の上にバッファー層を形成するステップをさらに含み、
前記バッファー層は窒化アルミニウム薄膜を備える、請求項1に記載の薄膜の形成方法。
【請求項10】
前記窒化ガリウム薄膜を形成するステップは、
前記ソースガスを供給するステップと、前記反応ガスを供給するステップ及び前記後処理ガスを活性化させて供給するステップを含むプロセスサイクルを複数回で行うものである、請求項1に記載の薄膜の形成方法。
【請求項11】
前記窒化ガリウム薄膜を形成するステップは、
前記基板の上にドーパントガスを供給するステップをさらに含み、
前記ドーパントガスを供給するステップは、
前記ソースガスを供給するステップと同時に、又は前記ソースガスを供給するステップの後に前記ドーパントガスを供給するものである、請求項1に記載の薄膜の形成方法。
【請求項12】
前記ドーパントガスは、p型ドーパントガス又はn型ドーパントガスを含み、
前記p型ドーパントガスは、ビス-シクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2Mg:bis-cyclopentadienylmagnesium)ガスを含み、
前記n型ドーパントガスは、ジイソプロピルアミノシラン(DIPAS:diisopropylaminosilane)ガスを含む、請求項11に記載の薄膜の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜の形成方法に関し、より詳細には、窒化ガリウム薄膜を形成するための薄膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜トランジスター(TFT:Thin Film Transistor)は、半導体素子やディスプレイ装置においてスイッチング回路として用いられる。このような薄膜トランジスターの活性層は、ゲート電極と、ソース電極及びドレイン電極の間においてチャンネル領域を形成する。
【0003】
従来には、薄膜トランジスターの活性層をアモルファスシリコン(Amorphous Silicon)又は結晶性シリコン(crystalline silicon)を用いて形成していた。しかしながら、結晶性シリコンを活性層として用いる場合、反応速度が相対的に遅く、活性層を形成するための基板としてガラス基板を用いることを余儀なくされるが故に重量が高いのみならず、撓まないが故に可撓性の表示装置として用いることができないという欠点がある。この理由から、高速素子の実現、すなわち、可動性(mobility)を向上させるために電荷濃度(carrier concentration)が高く、しかも、電気伝導度に優れた窒化ガリウム薄膜を薄膜トランジスターの活性層として用いるための取り組みが盛んに行われている。
【0004】
窒化ガリウム薄膜を形成するためには、一般に、有機金属化学気相蒸着(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)方法を利用する。このような有機金属化学気相蒸着方法においては、基板の温度を約1200℃の高温に調整した状態で、窒化ガリウム薄膜を蒸着することになる。すなわち、基板が約1200℃の高温に保たれるとき、基板の上に窒化ガリウム薄膜が蒸着されることが可能になる。
【0005】
ところが、このように基板を高温に加熱した状態で窒化ガリウム薄膜を形成することに伴い、基板又は前記基板の上に形成された薄膜にダメージが生じてしまうという問題が生じる。これは、薄膜トランジスターの機能を低下させたり不良を引き起こしたりする要因として働き、特に、安定したスイッチング動作が伴われなければならない半導体素子やディスプレイ装置の品質及び信頼性を大幅に低下させてしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】大韓民国公開特許第10-2017-0120443号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、低温において窒化ガリウム薄膜を形成することのできる薄膜の形成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態に係る薄膜の形成方法は、チャンバーの処理空間に基板を搬入するステップと、前記基板の上に窒化ガリウム薄膜を形成するステップと、を含み、前記窒化ガリウム薄膜を形成するステップは、前記基板の上にガリウムを含有するソースガスを供給するステップと、前記基板の上に窒素を含有する反応ガスを供給するステップと、前記基板の上に水素を含有する後処理ガスを活性化させて供給するステップと、を含む。
【0009】
前記窒化ガリウム薄膜を形成するステップは、前記処理空間を600℃以下の温度に制御して行われてもよい。
【0010】
前記反応ガスを供給するステップは、前記ソースガスとは異なる供給ルートを介して前記基板の上に前記反応ガスを供給するものであってもよい。
【0011】
前記反応ガスを供給するステップは、前記反応ガスを活性化させて供給し、前記窒化ガリウム薄膜を形成するステップは、前記処理空間を350℃以下の温度に制御して行われるものであってもよい。
【0012】
前記窒化ガリウム薄膜を形成するステップは、前記反応ガスを供給するステップの前に、前記基板の上に水素を含有する前処理ガスを活性化させて供給するステップをさらに含んでいてもよい。
【0013】
前記窒化ガリウム薄膜を形成するステップは、前記前処理ガスを活性化させて供給するステップの前に、前記ソースガスをパージするステップをさらに含んでいてもよい。
【0014】
前記窒化ガリウム薄膜を形成するステップは、前記後処理ガスを活性化させて供給するステップの前に、前記反応ガスをパージするステップをさらに含んでいてもよい。
【0015】
前記ソースガスはトリメチルガリウム(TMGa:Trimethyl Gallium)ガスを含み、前記反応ガスはアンモニア(NH3)ガスを含み、前記後処理ガスは水素(H2)ガスを含んでいてもよい。
【0016】
前記窒化ガリウム薄膜を形成するステップの前に、前記基板の上にバッファー層を形成するステップをさらに含み、前記バッファー層は窒化アルミニウム薄膜を備えていてもよい。
【0017】
前記窒化ガリウム薄膜を形成するステップは、前記ソースガスを供給するステップと、前記反応ガスを供給するステップ及び前記後処理ガスを活性化させて供給するステップを含むプロセスサイクルを複数回で行うものであってもよい。
【0018】
前記窒化ガリウム薄膜を形成するステップは、前記基板の上にドーパントガスを供給するステップをさらに含み、前記ドーパントガスを供給するステップは、前記ソースガスを供給するステップと同時に、又は前記ソースガスを供給するステップの後に前記ドーパントガスを供給するものであってもよい。
【0019】
前記ドーパントガスは、p型ドーパントガス又はn型ドーパントガスを含み、前記p型ドーパントガスは、ビス-シクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2Mg:bis-cyclopentadienylmagnesium)ガスを含み、前記n型ドーパントガスは、ジイソプロピルアミノシラン(DIPAS:diisopropylaminosilane)ガスを含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の実施形態によれば、低温工程により窒化ガリウム薄膜を形成して基板又は窒化ガリウム薄膜が高温の熱によってダメージを受けることを防ぐことができる。また、窒化ガリウム薄膜を形成するために基板を昇温する時間を節減することができ、これにより、半導体素子又はディスプレイ装置の製造時間を短縮することができる。
【0021】
また、本発明の実施形態によれば、低温工程により電荷濃度が高く、しかも、電気伝導度に優れた結晶構造を有する窒化ガリウム薄膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係る蒸着装置を概略的に示す図。
【
図2】本発明の実施形態に係る薄膜の形成方法を概略的に示す図。
【
図3】本発明の実施形態に係る薄膜の形成方法のプロセスサイクルを説明するための図。
【
図4】本発明の実施形態に従い製造された薄膜トランジスターの様子を概略的に示す図。
【
図5】本発明の実施形態に従い製造された半導体素子の様子を概略的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態についてより詳しく説明する。しかしながら、本発明は以下に開示される実施形態に何ら限定されるものではなく、異なる様々な形態に具体化されることが可能なものであって、以下の実施形態は、単に本発明の開示を完全たるものにし、通常の知識を有する者に発明の範ちゅうを完全に知らせるために提供されるものである。
【0024】
本願の明細書の全般に亘って、層、膜、領域又は基板などといったように、ある構成要素が他の構成要素の「上に」位置すると言及するときには、前記ある構成要素が直接的に他の構成要素の「上に」接触したり、これらの間に介在するさらなる構成要素が存在する可能性があると解釈されてもよい。
【0025】
また、「上部」又は「下部」などの相対的な用語は、図面に示されるように、他の要素に対する要素の相対的な関係を述べるためにここで用いられてもよい。相対的な用語は、図面において描かれる方向に加えて、素子の他の方向を含むことを意図するものと理解されてもよい。発明を詳しく説明するために図面は誇張されて示されていてもよく、図中、同一の符号は、同一の要素を指し示す。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係る蒸着装置を概略的に示す図である。
【0027】
図1を参照すると、本発明の実施形態に係る蒸着装置は、薄膜、すなわち、窒化ガリウム薄膜を蒸着するための装置であって、チャンバー10と、前記チャンバー10内に設けられ、前記チャンバー10内に配設される基板を支持するための基板支持部20と、前記基板支持部20と対向して配置されるように前記チャンバー10内に設けられ、前記基板支持部20に向かってプロセスガスを噴射するためのガス噴射部30、及び前記チャンバー10内にプラズマを生じさせるように電源を供給するRF電源50を備える。また、前記蒸着装置は、ガス噴射部30にガスを与えるためのガス供給部40をさらに備えていてもよく、これらに加えて、前記RF電源50を制御する制御部(図示せず)をさらに備えていてもよい。ここで、ガス噴射部30には、第1のガス、例えば、ソースガスを供給するための第1のガス供給ルートと、第2のガス、例えば、反応ガスを供給するための第2のガス供給ルートとが分離されて形成される。
【0028】
チャンバー10は、所定の処理空間を設け、これを気密に保持する。チャンバー10は、概ね円形の形状又は四角い形状の平面部及び平面部から上向きに延びた側壁部を備えて所定の処理空間を有する胴体12と、概ね円形の形状又は四角い形状に胴体12の上に位置してチャンバー10を気密に保持する蓋体14と、を備えていてもよい。しかしながら、チャンバー10はこれに何ら限定されるものではなく、基板の形状に対応する様々な形状に作製されることが可能である。
【0029】
チャンバー10の下面の所定の領域には排気口(図示せず)が形成され、チャンバー10の外側には排気口と連絡される排気管(図示せず)が設けられてもよい。また、排気管は排気装置(図示せず)と連絡されてもよい。排気装置としては、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプが使用可能である。したがって、排気装置によりチャンバー10の内部を所定の減圧雰囲気、例えば、0.1mTorr以下の所定の圧力まで真空引きすることができる。排気管は、チャンバー10の下面のみならず、後述する基板支持部20の下側のチャンバー10の側面に配設されてもよい。また、排気される時間を短縮するために、多数本の排気管及びそれらに伴う排気装置がさらに配設されてもよいということはいうまでもない。
【0030】
一方、基板支持部20には、薄膜の形成工程のためにチャンバー10内に配設された基板が載置されてもよい。ここで、基板は、窒化ガリウム(GaN)薄膜を形成するための多種多様な基板を備えていてもよい。例えば、基板は、サファイア(sapphire)基板、ガラス(glass)基板、シリコンウェーハのいずれか一種であってもよい。基板支持部20は、基板が載置されて支持できるように、例えば、静電チャックなどが設けられて基板を静電力により吸着保持してもよいし、真空吸着や機械的な力により基板を支持してもよい。
【0031】
基板支持部20は、基板の形状と対応する形状、例えば、円形の形状又は四角い形状に設けられてもよい。基板支持部20は、基板が載置される基板支持台22及び前記基板支持台22の下部に配置されて基板支持台22を昇降動させる昇降器24を備えていてもよい。ここで、基板支持台22は基板よりも大きく作製されてもよく、昇降器24は、基板支持台22の少なくとも一つの領域、例えば、中心部を支持するように設けられ、基板支持台22の上に基板が載置されれば、基板支持台22をガス噴射部30の近くに移動させることができる。また、基板支持台22の内部にはヒーター(図示せず)が配設されてもよい。ヒーターは、所定の温度で発熱して基板支持台22及び前記基板支持台22に載置された基板を加熱して、基板に一様に薄膜が蒸着されるようにする。
【0032】
ガス供給部40は、チャンバー10の蓋体14を貫通するように配設されてもよく、第1のガス及び第2のガスをそれぞれ前記ガス噴射部30に与えるために第1のガス供給器42及び第2のガス供給器44を備えていてもよい。薄膜蒸着工程において、前記第1のガスはソースガスを含んでいてもよく、第2のガスは、反応ガスを含んでいてもよい。しかしながら、第1のガス供給器42及び第2のガス供給器44はそれぞれ必ずしも単一種のガスを与えるとは限らず、第1のガス供給器42及び第2のガス供給器44はそれぞれ複数種のガスを同時に供給したり、複数種のガスのうちから選択されたガスを供給したりするように構成されてもよい。
【0033】
例えば、第1のガス供給器42は、ソースガスとしてガリウム(Ga)を含有するガスを供給するように構成されてもよく、第2のガス供給器44は、反応ガスとして窒素(N)を含有するガスを供給してもよい。ここで、ソースガス、すなわち、ガリウムを含有するガスは、トリメチルガリウム(TMGa:Trimethyl Gallium)ガスを含んでいてもよく、反応ガス、すなわち、窒素を含有するガスは、アンモニア(NH3)ガスを含んでいてもよい。
【0034】
ガス噴射部30は、前記チャンバー10の内部、例えば、蓋体14の下面に配設され、ガス噴射部30の内部には、第1のガスを基板の上に噴射して供給するための第1のガス供給ルートと、第2のガスを基板の上に噴射して供給するための第2のガス供給ルートとが形成される。前記第1のガス供給ルート及び第2のガス供給ルートは互いに独立していて分離されるように形成されて、前記第1のガス及び前記第2のガスがガス噴射部30内において混合されないように分離して基板の上に供給してもよい。
【0035】
前記ガス噴射部30は、上フレーム32及び下フレーム34を備えていてもよい。ここで、前記上フレーム32は、前記蓋体14の下面に着脱自在に結合されるとともに、上面の一部、例えば、上面の中心部が前記蓋体14の下面から所定の距離だけ離れる。これにより、前記上フレーム32の上面と前記蓋体14の下面との間の空間において第1のガス供給部42から第1のガスが広がることができる。また、前記下フレーム34は、前記上フレーム32の下面に一定の間隔を隔てて配設される。これにより、前記下フレーム34の上面と前記上フレーム32の下面との間の空間において第2のガス供給部44からの第2のガスが広がることができる。前記上フレーム32と前記下フレーム34は外周面に沿って連結されて内部に離隔空間を形成して一体に形成されてもよく、別途の密封部材によって外周面を密閉するような構造となっていてもよいということはいうまでもない。
【0036】
前記第1のガス供給ルートは、第1のガス供給部42からの第1のガスが前記蓋体14の下面と前記上フレーム32との間の空間において広がって、前記上フレーム32及び前記下フレーム34を貫通してチャンバー10の内部に供給されるように形成されてもよい。また、前記第2のガス供給ルートは、第2のガス供給部44からの第2のガスが前記上フレーム32の下面と前記下フレーム34の上面との間の空間において広がって前記下フレーム34を貫通してチャンバー10の内部に供給されるように形成されてもよい。前記第1のガス供給ルート及び前記第2のガス供給ルートは互いに連通していなくてもよく、これにより、前記第1のガス及び第2のガスは、前記ガス供給部40からガス噴射部30を経て前記チャンバー10の内部に分離されて供給されることができる。
【0037】
前記下フレーム34の下面には、第1の電極38が配設されてもよく、前記下フレーム34の下側及び第1の電極38の外側には、所定の間隔を隔てて第2の電極36が配設されてもよい。このとき、下フレーム34と第2の電極36は外周面に沿って連結されて形成されてもよく、別途の密封部材によって外周面を密閉するような構造となっていてもよいということはいうまでもない。
【0038】
このように、第1の電極38及び第2の電極36が配設される場合、第1のガスは、第1の電極38を貫通して基板の上に噴射でき、第2のガスは、第1の電極38と第2の電極36との間の離隔空間を介して基板の上に噴射できる。
【0039】
下フレーム34と第2の電極36のうちのどちらか一方には、RF電源50からRF電力が印加されてもよい。
図1においては、下フレーム34が接地され、第2の電極36にRF電力が印加されるような構造を例にとって示している。下フレーム34が接地される場合、同様に、前記下フレーム34の下面に配設された第1の電極38も接地される。したがって、第2の電極36にRF電源50が供給される場合、前記ガス噴射部30と前記基板支持部20との間には第1の活性化領域、すなわち、第1のプラズマ領域が形成され、前記第1の電極38と前記第2の電極36との間には第2の活性化領域、すなわち、第2のプラズマ領域が形成できる。
【0040】
したがって、第2のガスが第1の電極38及び第2の電極36の間の離隔空間を介して噴射される場合、前記第2のガスは、ガス噴射部30の内部に相当する前記第1の電極38と前記第2の電極36との間、すなわち、第2のプラズマ領域から第1のプラズマ領域までの領域にわたって活性化される。したがって、本発明の実施形態に係る蒸着装置においては、第2のガスをガス噴射部30の内部において活性化させて基板の上に噴射することができる。また、第1のガスを供給するための第1のガス供給ルートと第2のガスを供給するための第2のガス供給ルートとが分離されて形成されることにより、例えば、ソースガス及び反応ガスを薄膜を蒸着するための最適な供給ルートにて分配して噴射することができる。
【0041】
以下では、
図2及び
図3を参照して本発明の薄膜の形成方法について詳しく説明する。本発明の実施形態に係る薄膜の形成方法について説明するに当たって、前述した蒸着装置に関する説明と重複する説明は省略する。
【0042】
図2は、本発明の実施形態に係る薄膜の形成方法を概略的に示す図であり、
図3は、本発明の実施形態に係る薄膜の形成方法のプロセスサイクルを説明するための図である。
【0043】
図2及び
図3を参照すると、本発明の実施形態に係る薄膜の形成方法は、チャンバー10の処理空間に基板を搬入するステップ(S100)及び前記基板の上に窒化ガリウム薄膜を形成するステップ(S200)を含み、前記窒化ガリウム薄膜を形成するステップ(S200)は、前記基板の上にガリウムを含有するソースガスを供給するステップ(S210)と、前記基板の上に窒素を含有する反応ガスを供給するステップ(S240)、及び前記基板の上に水素を含有する後処理ガスを活性化させて供給するステップ(S260)を含む。
【0044】
基板を搬入するステップ(S100)は、チャンバー10の処理空間に基板を搬入する。処理空間に搬入された基板は、基板支持部20に載置されてもよい。ここで、基板は、窒化ガリウム薄膜を形成するためのサファイア(sapphire)基板、ガラス(glass)基板、シリコンウェーハのうちのいずれか一種であってもよいということは前述した通りである。また、基板を搬入するステップ(S100)は、所定の機能層が形成されている基板を搬入して行われてもよい。例えば、基板を搬入するステップ(S100)において、基板は、上面にゲート電極が形成され、ゲート電極を覆うように基板及びゲート電極の上にゲート絶縁膜が形成されている基板を搬入してもよい。ここで、基板支持部20は、基板が載置されて支持できるように、例えば、静電チャックなどが設けられて基板を静電力により吸着保持してもよいし、真空吸着や機械的な力により基板を支持してもよい。
【0045】
窒化ガリウム薄膜を形成するステップ(S200)は、チャンバー10の処理空間に搬入された基板に窒化ガリウム薄膜を形成する。ここで、窒化ガリウム(GaN)薄膜は、半導体素子やディスプレイ装置においてスイッチング回路として用いられる薄膜トランジスター(TFT:Thin Film Transistor)の活性層の少なくとも一部を形成してもよい。例えば、窒化ガリウム薄膜は、薄膜トランジスターのゲート電極と、ソース電極及びドレイン電極の間においてチャンネル領域を形成してもよい。
【0046】
本発明の実施形態においては、窒化ガリウム薄膜を形成するステップ(S200)を600℃以下の低温工程にて行ってもよい。すなわち、窒化ガリウム薄膜を形成するステップ(S200)は、チャンバー10の処理空間を250℃以上、600℃以下の温度に制御して行われてもよい。窒化ガリウム薄膜は、原子層成長(ALG:Atomic Layer Growth)工程によって250℃~600℃の低温工程にて形成されてもよいが、以下では、この詳細について説明する。
【0047】
ソースガスを供給するステップ(S210)においては、基板の上にガリウムを含有するソースガスを供給する。ここで、ソースガスを供給するステップ(S210)においては、前述した蒸着装置の第1のガス供給ルートを介して基板の上にガリウムを含有するソースガスを供給する。このとき、ガリウムを含有するソースガスは、ガリウムを主成分として含有するトリメチルガリウム(TMGa:Trimethyl Gallium)ガスを含んでいてもよい。ソースガスを供給するステップ(S210)においては、基板の上にガリウムを含有するソースガスを噴射して吸着させる。このとき、ソースガスを供給するステップ(S210)は、電源を供給せずとも行われてもよい。
【0048】
図2及び
図3に示されてはいないが、ソースガスを供給するステップ(S210)と同時に、又はソースガスを供給するステップ(S210)の後には、前記基板の上にドーパントガスを供給するステップが行われてもよい。前述したように、窒化ガリウム薄膜は、活性層の少なくとも一部を形成するが、このような活性層は、種類に応じて、p型活性層やn型活性層として形成される必要がある。したがって、ソースガスを供給するステップ(S210)と同時に、又はソースガスを供給するステップ(S210)の後には、前記基板の上にp型ドーパントガスを供給するステップ又はn型ドーパントガスを供給するステップが行われてもよい。ドーパントガスは、第1のガス供給ルート及び第2のガス供給ルートのうちの少なくともどちらか一方のルートを介して供給されてもよく、ここで、p型ドーパントガスは、ビス-シクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2Mg:bis-cyclopentadienylmagnesium)ガスを含んでいてもよく、n型ドーパントガスは、ジイソプロピルアミノシラン(DIPAS:diisopropylaminosilane)ガスを含んでいてもよい。このように、ソースガスを供給するステップ(S210)と同時に、又はソースガスを供給するステップ(S210)の後にp型ドーパントガス又はn型ドーパントガスを供給することにより、p型窒化ガリウム薄膜又はn型窒化ガリウム薄膜を形成することが可能になる。
【0049】
ソースガスを供給するステップ(S210)の後には、ソースガスをパージするステップ(S220)が行われてもよい。ソースガスをパージするステップ(S220)においては、チャンバー10の処理空間に残留するソースガスを取り除くことができる。このようなソースガスをパージするステップ(S220)は、処理空間に不活性ガス、例えば、アルゴン(Ar)ガスを供給して行われてもよく、アルゴン(Ar)ガスは、第1のガス供給ルート及び第2のガス供給ルートのうちの少なくともどちらか一方のルートを介して供給されてもよい。このとき、ソースガスをパージする間には、RF電源50が供給されなくてもよい。
【0050】
ソースガスをパージするステップ(S220)の後には、基板の上に水素を含有する前処理ガスを活性化させて供給するステップ(S230)が行われてもよい。前処理ガスを活性化させて供給するステップ(S230)においては、水素を含有する前処理ガス、例えば、水素(H2)ガスを基板の上に供給し、RF電源50を供給して基板の上に水素プラズマを生じさせることができる。ここで、水素(H2)ガスは、第1のガス供給ルート及び第2のガス供給ルートのうちの少なくともどちらか一方のルートを介して供給することができ、このように、ソースガスの供給によって原料物質が基板に吸着された後に、水素を含有する前処理ガスを活性化させて供給するステップ(S230)が行われれば、水素プラズマにより基板に吸着された原料物質に含まれている不純物を取り除くことができ、原料物質を基板にさらに強固に吸着させることができる。
【0051】
水素を含有する前処理ガスを活性化させて供給するステップ(S230)の後には、反応ガスを供給するステップ(S240)が行われる。反応ガスを供給するステップ(S240)においては、基板の上に窒素を含有する反応ガスを供給する。ここで、反応ガスを供給するステップ(S240)においては、前述した蒸着装置の第2のガス供給ルートを介して基板の上に窒素を含有する反応ガスを供給する。このとき、窒素を含有する反応ガスは、窒素を主成分として含有するアンモニア(NH3)ガスを含んでいてもよい。原料物質が吸着された基板の上に反応ガスを供給すると、原料物質は、反応ガスに含まれている反応物質と反応することになる。
【0052】
このとき、反応ガスを供給するステップ(S240)においては、窒素成分をガリウム成分と効果的に反応させるために、反応ガスを活性化させてプラズマが生じるように処理空間にRF電源50を供給してもよい。このように、反応ガスを供給するステップ(S240)において、反応ガスを活性化させて供給することにより、供給される窒素含有ガスを窒素ラジカルで活性化させてガリウム成分と反応させ、基板の上に窒化ガリウム薄膜をより低い工程温度において形成することが可能になる。すなわち、反応ガスを活性化させて基板の上に供給する場合、窒化ガリウム薄膜を形成するステップ(S200)は、チャンバー10の処理空間を250℃以上、350℃以下の低温に制御して行われてもよい。
【0053】
反応ガスを供給するステップ(S240)の後には、反応ガスをパージするステップ(S250)が行われてもよい。反応ガスをパージするステップ(S250)においては、チャンバー10の処理空間に残留する反応ガスを取り除くことができる。このような反応ガスをパージするステップ(S250)は、ソースガスをパージするステップ(S220)と同様に、処理空間に不活性ガス、例えば、アルゴン(Ar)ガスを供給して行われてもよく、アルゴン(Ar)ガスは、第1のガス供給ルート及び第2のガス供給ルートのうちの少なくともどちらか一方のルートを介して供給されてもよい。
【0054】
反応ガスをパージするステップ(S250)の後には、基板の上に水素を含有する後処理ガスを活性化させて供給するステップ(S260)が行われてもよい。後処理ガスを活性化させて供給するステップ(S260)においては、水素を含有する後処理ガス、例えば、水素(H2)ガスを基板の上に供給し、RF電源50を供給して基板の上に水素プラズマを生じさせることができる。ここで、水素(H2)ガスは、第1のガス供給ルート及び第2のガス供給ルートのうちの少なくともどちらか一方のルートを介して供給されてもよい。
【0055】
ソースガス及び反応ガスが噴射されて基板の上に窒化ガリウム薄膜が形成された後、基板の上に水素を含有する後処理ガスを活性化させて供給すると、水素プラズマによりアモルファスの窒化ガリウム薄膜を結晶化させることができる。単にソースガス及び反応ガスを噴射して窒化ガリウム薄膜を形成する場合、窒化ガリウム薄膜はアモルファスの状態で基板の上に蒸着されるが、本発明の実施形態でのように、反応ガスをパージするステップ(S250)の後には、基板の上に水素を含有する後処理ガスを活性化させて供給するステップ(S260)を行うと、アモルファスの窒化ガリウム薄膜を多結晶又は単結晶の構造を有するように結晶化させることができる。また、チャンバー10の内部又は基板の温度が低温である場合、例えば、250℃~600℃の低温や、反応ガスを活性化させて供給する場合、250℃~600℃の極低温の状態で窒化ガリウム薄膜を形成してもよい。のみならず、基板の上に水素を含有する後処理ガスを活性化させて供給するステップ(S260)によってチャンバー10の内部に残留する不純物や窒化ガリウム薄膜に含まれている不純物を効果的に取り除くことができるということはいうまでもない。
【0056】
ここで、本発明の実施形態に係る薄膜の形成方法においては、ソースガスを供給するステップ(S210)及び反応ガスを供給するステップ(S240)を含むプロセスサイクルを複数回で行ってもよい。このとき、水素を含有する前処理ガスを活性化させて供給するステップ(S230)及び後処理ガスを活性化させて供給するステップ(S260)のうちの少なくともどちらか一方は、
図3に示されるように、各プロセスサイクルに含まれて、プロセスサイクルごとに前処理ガスを活性化させて供給するステップ(S230)及び後処理ガスを活性化させて供給するステップ(S260)が行われてもよいし、あるいは、各プロセスサイクルの一部に含まれて一部のプロセスサイクルにおいてのみ前処理ガスを活性化させて供給するステップ(S230)及び後処理ガスを活性化させて供給するステップ(S260)のうちの少なくともどちらか一方が行われてもよい。
【0057】
例えば、前処理ガスを活性化させて供給するステップ(S230)及び後処理ガスを活性化させて供給するステップ(S260)が各プロセスサイクルに含まれる場合、本発明の実施形態に係る薄膜の形成方法においては、ソースガスを供給するステップ(S210)と、ソースガスをパージするステップ(S220)と、水素を含有する前処理ガスを活性化させて供給するステップ(S230)と、反応ガスを供給するステップ(S240)と、反応ガスをパージするステップ(S250)、及び後処理ガスを活性化させて供給するステップ(S260)は一つのプロセスサイクルをなすことになり、前記プロセスサイクルは、基板の上に所望の膜厚の窒化ガリウム薄膜が形成されるまで繰り返して行われてもよい。
【0058】
図4は、本発明の実施形態に従い製造された薄膜トランジスターの様子を概略的に示す図である。すなわち、
図4は、本発明の実施形態に係る薄膜の形成方法により窒化ガリウム薄膜を有する活性層を形成して製造された薄膜トランジスターの様子を示す。
【0059】
図4を参照すると、本発明の一実施形態に係る薄膜トランジスターは、ゲート電極110と、前記ゲート電極110の上部又は下部に配置され、水平方向に互いに離れ合うソース電極142a及びドレイン電極144aと、前記ゲート電極110、ソース電極142a及びドレイン電極144aの間に配置される活性層130と、前記ゲート電極110と活性層130との間に配置されるゲート絶縁膜120と、を備え、前記活性層130は、少なくとも一部が窒化ガリウム薄膜として形成される。
【0060】
ここで、本発明の一実施形態に係る薄膜トランジスターは、
図4に示されるように、基板100の上に形成されるゲート電極110と、ゲート電極110の上に形成されるゲート絶縁膜120と、ゲート絶縁膜120の上に形成される活性層130と、活性層130の上に互いに離れ合うように形成されるソース電極142及びドレイン電極144を備えるボトムゲート(bottom gate)型の薄膜トランジスターであってもよいが、これとは異なり、ゲート電極110が上部に配置されるトップゲート(top gate)型の薄膜トランジスターにも同様に適用可能であるということはいうまでもない。
【0061】
ここで、基板100は、窒化ガリウム(GaN)薄膜を形成するための多種多様な基板を備えていてもよく、例えば、基板は、サファイア(sapphire)基板、ガラス(glass)基板、シリコンウェーハのうちのいずれか一種であってもよい。のみならず、基板としては、これに加えて、透明基板又は可撓性基板など多種多様な基板が使用可能であるということはいうまでもない。
【0062】
ゲート電極110は、導電物質を用いて形成することができるが、例えば、アルミニウム(Al)、ネオジウム(Nd)、銀(Ag)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)及び銅(Cu)のうちの少なくともいずれか一種の金属又はこれらを含む合金から形成してもよい。また、ゲート電極110は、単層のみならず、複数の金属層からなる多層に形成してもよい。すなわち、物理化学的な特性に優れたクロム(Cr)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)などの金属層と、比抵抗の小さなアルミニウム(Al)系、銀(Ag)系又は銅(Cu)系の金属層と、を含む二層に形成してもよい。
【0063】
ゲート絶縁膜120は、ゲート電極110の上に形成される。すなわち、ゲート絶縁膜120は、ゲート電極110の上部及び側部を含む基板100の上に形成されてもよい。ゲート絶縁膜120は、金属物質との密着性に優れており、しかも、絶縁耐圧に優れたシリコンオキサイド(シリコン酸化膜)(SiO2)、シリコンナイトライド(シリコン窒化膜)(SiN)、高誘電率(high-K)誘電体及びアルミニウムオキサイド(酸化アルミニウム)(Al2O3)のうちのいずれか一種又はそれ以上の絶縁物質を用いた薄膜から形成してもよい。ここで、高誘電率(high-K)誘電体は、シリコンオキサイド(シリコン酸化膜)(SiO2)よりも高い誘電率を有する誘電体であって、ハフニウムオキサイド(酸化ハフニウム)(HfO2)、ジルコニウムオキサイド(酸化ジルコニウム)(ZrO2)などを含んでいてもよい。
【0064】
活性層130は、ゲート絶縁膜120の上に形成され、少なくとも一部がゲート電極110と重なり合うように形成される。活性層130は、窒化ガリウム薄膜を備えて形成されてもよいが、このような窒化ガリウム薄膜は、前述した通り、チャンバー10の処理空間に基板を搬入するステップ(S100)及び前記基板の上に窒化ガリウム薄膜を形成するステップ(S200)を含み、前記窒化ガリウム薄膜を形成するステップ(S200)は、前記基板の上にガリウムを含有するソースガスを供給するステップ(S210)と、前記基板の上に窒素を含有する反応ガスを供給するステップ(S240)、及び前記反応ガスが供給された基板の上に水素を含有する後処理ガスを活性化させて供給するステップ(S260)を含む本発明の実施形態に係る薄膜の形成方法により形成することができる。
【0065】
図4に示されてはいないが、このような窒化ガリウム薄膜は、ゲート絶縁膜120の上に直接的に形成されてもよいが、ゲート絶縁膜の上にバッファー層を形成し、バッファー層の上に窒化ガリウム薄膜を形成してもよいということはいうまでもない。ここで、バッファー層は、窒化ガリウム薄膜を形成するために窒化ガリウム薄膜よりも先に形成される層であって、窒化ガリウム薄膜がさらに効果的に結晶化できるように補助するシード層(seed layer)であってもよい。すなわち、バッファー層は、窒化ガリウム薄膜を形成する際に、窒化ガリウム薄膜がさらに容易に結晶化できるようにするシード層であってもよい。このようなバッファー層は、窒化アルミニウム(AlN)薄膜から形成されてもよく、原子層蒸着方法や化学気相蒸着方法など多種多様な薄膜形成工程によって形成できる。
【0066】
ソース電極142及びドレイン電極144は、活性層130、すなわち、窒化ガリウム薄膜の上部に形成され、ゲート電極110と一部が重なり合ってゲート電極110を挟んでソース電極142とドレイン電極144とが互いに離れ合うように形成されてもよい。ソース電極142及びドレイン電極144は、互いに同一の物質を用いた同一の工程により形成してもよいし、あるいは、導電性物質を用いて形成してもよいが、例えば、アルミニウム(Al)、ネオジウム(Nd)、銀(Ag)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)及びモリブデン(Mo)のうちの少なくともいずれか一種の金属又はこれらを含む合金から形成してもよい。すなわち、ゲート電極110と同一の物質から形成してもよいが、ゲート電極110とは異なる物質から形成してもよい。また、ソース電極142及びドレイン電極144は、それぞれ単層のみならず、複数の金属層の多層に形成してもよいということはいうまでもない。
【0067】
図5は、本発明の実施形態に従い製造された半導体素子の様子を概略的に示す図である。すなわち、
図5は、本発明の実施形態に係る薄膜の形成方法によりp型窒化ガリウム薄膜を備えるp型活性層及びn型窒化ガリウム薄膜を備えるn型活性層のうちの少なくとも一方を形成して製造された半導体素子の様子を示す。
【0068】
図5を参照すると、本発明の一実施形態に係る半導体素子は、第1の領域Aと第2の領域Bを有する基板100と、前記第1の領域Aに配設され、p型活性層130aを有する第1の薄膜トランジスター、及び前記第2の領域Bに配設され、n型活性層130bを有する第2の薄膜トランジスターを備える。
【0069】
ここで、本発明の一実施形態に係る半導体素子は、
図5に示されるように、ゲート電極の上に活性層が位置するボトムゲート(bottom gate)型の薄膜トランジスターを備えていてもよい。しかしながら、半導体素子は、活性層の上にゲート電極が位置するトップゲート(top gate)型の薄膜トランジスターを備えていてもよいということはいうまでもない。
【0070】
ここで、基板100は、
図4において薄膜トランジスターと関連して前述した内容がそのまま適用可能である。一方、基板100は、第1の領域A及び前記第1の領域Aとは異なる第2の領域Bを有する。ここで、第1の領域Aは、後述する第1の薄膜トランジスターが形成される基板100上の領域を意味し、第2の領域Bは、後述する第2の薄膜トランジスターが形成される基板100上の領域を意味する。
図5においては、第1の領域Aと第2の領域Bとが隣り合うように配置されることを示しているが、第1の領域Aと第2の領域Bは所定の間隔を隔てて配置されるなど、第1の薄膜トランジスターと第2の薄膜トランジスターを形成するために基板100上において画定された様々な位置を有することができるということはいうまでもない。
【0071】
第1の薄膜トランジスターは、基板100の第1の領域Aに配設され、p型活性層130aを有する。すなわち、第1の薄膜トランジスターは、活性層としてp型活性層130aを有するp型薄膜トランジスターであってもよい。また、第2の薄膜トランジスターは、基板100の第2の領域Bに配設され、n型活性層130bを有する。すなわち、第2の薄膜トランジスターは、活性層としてn型活性層130bを有するn型薄膜トランジスターであってもよい。
【0072】
ここで、第1の薄膜トランジスターと第2の薄膜トランジスターは、それぞれ第1のゲート電極110aと第2のゲート電極110b、ゲート絶縁膜120、第1のソース電極142a及び第1のドレイン電極144aと第2のソース電極142b及び第2のドレイン電極144bを備える。前述した通り、本発明の一実施形態に係る半導体素子は、ボトムゲート型の薄膜トランジスターを備える。したがって、第1の薄膜トランジスターは、基板100の上に形成される第1のゲート電極110a、前記第1のゲート電極110aの上に形成されるゲート絶縁膜120、前記ゲート絶縁膜120の上に形成されるp型活性層130a、前記p型活性層130aの上に互いに離れ合うように形成される第1のソース電極142a及び第1のドレイン電極144aを備えていてもよい。また、第2の薄膜トランジスターは、基板100の上に形成される第2のゲート電極110b、前記第2のゲート電極110bの上に形成されるゲート絶縁膜120、前記ゲート絶縁膜120の上に形成されるn型活性層130b、前記n型活性層130bの上に互いに離れ合うように形成される第2のソース電極142b及び第2のドレイン電極144bを備える。ここで、
図5に示されるように、ゲート絶縁膜120は、第1の薄膜トランジスターと第2の薄膜トランジスターに共有されてもよい。
【0073】
第1のゲート電極110a及び第2のゲート電極110bは、それぞれp型活性層130a及びn型活性層136に少なくとも一部が重なり合うように配置されてもよい。第1のゲート電極110a及び第2のゲート電極110bに関しては、
図4において薄膜トランジスターと関連して前述した内容がそのまま適用可能であるため、重複する説明は省略する。
【0074】
ゲート絶縁膜120は、第1のゲート電極110a及び第2のゲート電極110bの上部に形成される。すなわち、ゲート絶縁膜120は、第1のゲート電極110a及び第2のゲート電極110bが形成された基板100の上に形成されてもよい。ゲート絶縁膜120に関しても、
図4において薄膜トランジスターと関連して前述した内容がそのまま適用可能であるため、重複する説明は省略する。
【0075】
ゲート絶縁膜120と、第1のソース電極142a及び第1のドレイン電極144aの間には、第1の薄膜トランジスターの活性層としてp型活性層130aが形成され、ゲート絶縁膜120と、第2のソース電極142b及び第2のドレイン電極144bの間には、第2の薄膜トランジスターの活性層としてn型活性層130bが形成される。
【0076】
ここで、p型活性層130aは、p型窒化ガリウム薄膜を備えていてもよい。すなわち、p型活性層130aは、マグネシウムがドープされたp型窒化ガリウム薄膜を備えていてもよい。一方、n型活性層130bは、n型窒化ガリウム薄膜を備えていてもよい。すなわち、n型活性層130bは、シリコンがドープされたn型窒化ガリウム薄膜を備えていてもよい。しかしながら、n型活性層130bは、n型窒化ガリウム薄膜に加えて、Zn系酸化物(ZnO、Znを含む2元系、3元系又は4元系酸化物など)、In系酸化物(InO、Inを含む2元系、3元系又は4元系酸化物など)、及びGa系酸化物(GaO、Gaを含む2元系、3元系又は4元系酸化物など)のうちの少なくともいずれか一種を含んでいてもよい。これらに加えて、n型活性層130bは、インジウム-亜鉛酸化物(IZO)と、In-Zn-O又はインジウム-ガリウム-亜鉛酸化物(IGZO)と、In-Ga-Zn-Oと、を含んでいてもよい。
【0077】
一方、本発明の一実施形態に係る半導体素子において、p型活性層130a及びn型活性層130bは、それぞれ多層構造に形成されてもよい。すなわち、p型活性層130aは、第1のp型活性層及び第2のp型活性層を備える多層構造に形成され、n型活性層130bは、第1のn型活性層及び第2のn型活性層を備える多層構造に形成されてもよい。このとき、第1のp型活性層は、マグネシウムがドープされていない(undoped)窒化ガリウム薄膜を備えていてもよく、第2のp型活性層は、マグネシウムがドープされた(doped)窒化ガリウム薄膜を備えていてもよい。また、第1のn型活性層は、シリコンがドープされていない(undoped)窒化ガリウム薄膜を備えていてもよく、第2のn型活性層は、シリコンがドープされた(doped)窒化ガリウム薄膜を備えていてもよい。
【0078】
ここで、本発明の一実施形態に係る半導体素子において、p型活性層130a及びn型活性層130bは、前述した本発明の実施形態に係る薄膜の形成方法により形成されてもよい。すなわち、p型活性層130a及びn型活性層130bは、ドープされた窒化ガリウム薄膜を備えて形成されてもよいが、このようなドープされた窒化ガリウム薄膜は、前述した通り、チャンバー10の処理空間に基板を搬入するステップ(S100)及び前記基板の上に窒化ガリウム薄膜を形成するステップ(S200)を含み、前記窒化ガリウム薄膜を形成するステップ(S200)は、前記基板の上にガリウムを含有するソースガスを供給するステップ(S210)と、ソースガスとともに、又はソースガスの供給の後に前記基板の上にドープガスを供給するステップ、前記基板の上に窒素を含有する反応ガスを供給するステップ(S240)及び前記反応ガスが供給された基板の上に水素を含有する後処理ガスを活性化させて供給するステップ(S260)を含む薄膜の形成方法により形成されてもよい。
【0079】
第1のソース電極142a及び第1のドレイン電極144aは、p型活性層130aの上部に形成され、第2のソース電極142b及び第2のドレイン電極144bは、n型活性層130bの上部に形成される。このとき、第1のソース電極142a及び第1のドレイン電極144aは、p型活性層130aに少なくとも一部が接続されるように互いに離れ合うように形成されてもよく、第2のソース電極142b及び第2のドレイン電極144bは、n型活性層130bに少なくとも一部が接続されるように互いに離れ合うように形成されてもよい。第1のソース電極142a及び第1のドレイン電極144aと第2のソース電極142b及び第2のドレイン電極144bに関しても、
図4において薄膜トランジスターと関連して前述した内容がそのまま適用可能であるため、重複する説明は省略する。
【0080】
第1のソース電極142a及び第1のドレイン電極144aと、第2のソース電極142b及び第2のドレイン電極144bの上には、パッシベーション層150が形成されてもよい。すなわち、パッシベーション層150は、p型活性層130a、第1のソース電極142a及び第1のドレイン電極144aと、n型活性層130b、第2のソース電極142b及び第2のドレイン電極144bを備えるゲート絶縁膜120の上に形成されてもよい。ここで、パッシベーション層150は、半導体素子の表面の腐食を防ぎ、半導体素子を外部の環境から保護するために形成されてもよく、シリコンオキサイド(シリコン酸化膜)(SiO2)及びシリコンナイトライド(シリコン窒化膜)(SiN)のうちのどちらか一方又はそれ以上の絶縁物質を用いて形成してもよい。
【0081】
このように、本発明の実施形態によれば、低温工程により窒化ガリウム薄膜を形成して基板又は窒化ガリウム薄膜が高温の熱によってダメージを受けることを防ぐことができる。また、窒化ガリウム薄膜を形成するために基板を昇温する時間を節減することができ、これにより、半導体素子又はディスプレイ装置の製造時間を短縮することができる。
【0082】
また、本発明の実施形態によれば、低温工程により電荷濃度が高く、しかも、電気伝導度に優れた結晶構造を有する窒化ガリウム薄膜を形成することができる。
【0083】
以上、本発明の好適な実施形態が特定の用語を用いて説明及び図示されたが、これらの用語は、単に本発明を明確に説明するためのものに過ぎず、本発明の実施形態及び記述された用語は、特許請求の範囲の技術的思想及び範囲から逸脱することなく、種々の変更及び変化が加えられるということは明らかである。これらの変形された実施形態は、本発明の思想及び範囲から個別的に理解されてはならず、本発明の特許請求の範囲内に属するものといえるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバーの処理空間に基板を搬入するステップと、
前記基板の上に窒化ガリウム薄膜を形成するステップと、
を含み、
前記窒化ガリウム薄膜を形成するステップは、
前記基板の上にガリウムを含有するソースガスを供給するステップと、
前記基板の上に窒素を含有する反応ガスを供給するステップと、
前記基板の上に水素を含有する後処理ガスを活性化させて供給するステップと、
を含む、薄膜の形成方法。
【請求項2】
前記窒化ガリウム薄膜を形成するステップは、
前記処理空間を600℃以下の温度に制御して行われるものである、請求項1に記載の薄膜の形成方法。
【請求項3】
前記反応ガスを供給するステップは、
前記ソースガスとは異なる供給ルートを介して前記基板の上に前記反応ガスを供給するものである、請求項1に記載の薄膜の形成方法。
【請求項4】
前記反応ガスを供給するステップは、
前記反応ガスを活性化させて供給し、
前記窒化ガリウム薄膜を形成するステップは、
前記処理空間を350℃以下の温度に制御して行われるものである、請求項1に記載の薄膜の形成方法。
【請求項5】
前記窒化ガリウム薄膜を形成するステップは、
前記反応ガスを供給するステップの前に、前記基板の上に水素を含有する前処理ガスを活性化させて供給するステップをさらに含む、請求項1に記載の薄膜の形成方法。
【請求項6】
前記窒化ガリウム薄膜を形成するステップは、
前記前処理ガスを活性化させて供給するステップの前に、前記ソースガスをパージするステップをさらに含む、請求項5に記載の薄膜の形成方法。
【請求項7】
前記窒化ガリウム薄膜を形成するステップは、
前記後処理ガスを活性化させて供給するステップの前に、前記反応ガスをパージするステップをさらに含む、請求項1に記載の薄膜の形成方法。
【請求項8】
前記ソースガスはトリメチルガリウム(TMGa:Trimethyl Gallium)ガスを含み、
前記反応ガスはアンモニア(NH
3)ガスを含み、
前記後処理ガスは水素(H
2)ガスを含む、請求項1に記載の薄膜の形成方法。
【請求項9】
前記窒化ガリウム薄膜を形成するステップの前に、前記基板の上にバッファー層を形成するステップをさらに含み、
前記バッファー層は窒化アルミニウム薄膜を備える、請求項1に記載の薄膜の形成方法。
【請求項10】
前記窒化ガリウム薄膜を形成するステップは、
前記ソースガスを供給するステップと、前記反応ガスを供給するステップ及び前記後処理ガスを活性化させて供給するステップを含むプロセスサイクルを複数回で行うものである、請求項1に記載の薄膜の形成方法。
【請求項11】
前記窒化ガリウム薄膜を形成するステップは、
前記基板の上にドーパントガスを供給するステップをさらに含み、
前記ドーパントガスを供給するステップは、
前記ソースガスを供給するステップと同時に、又は前記ソースガスを供給するステップの後に前記ドーパントガスを供給するものである、請求項1に記載の薄膜の形成方法。
【請求項12】
前記ドーパントガスは、p型ドーパントガス又はn型ドーパントガスを含み、
前記p型ドーパントガスは、ビス-シクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2Mg:bis-cyclopentadienylmagnesium)ガスを含み、
前記n型ドーパントガスは、ジイソプロピルアミノシラン(DIPAS:diisopropylaminosilane)ガスを含む、請求項11に記載の薄膜の形成方法。
【請求項13】
チャンバーの処理空間に基板を搬入するステップと、
前記基板の上に窒化ガリウム薄膜を形成するステップと、
を含み、
前記窒化ガリウム薄膜を形成するステップは、
前記基板の上にガリウムを含有するソースガスを供給するステップと、
前記基板の上に窒素を含有する反応ガスを供給するステップと、
を含み、
前記窒化ガリウム薄膜を形成するステップは、
前記処理空間を600℃以下の温度に制御して行われるものである、薄膜の形成方法。
【請求項14】
前記ソースガスを供給するステップの後に、前記基板の上に水素を含有するガスを活性化させて供給するステップをさらに含む、請求項13に記載の薄膜の形成方法。
【請求項15】
前記反応ガスを供給するステップは、
前記反応ガスを活性化させて供給し、
前記窒化ガリウム薄膜を形成するステップは、
前記処理空間を350℃以下の温度に制御して行われるものである、請求項13に記載の薄膜の形成方法。
【請求項16】
チャンバーの処理空間に基板を搬入するステップと、
前記基板の上に窒化ガリウム薄膜を形成するステップと、
を含み、
前記窒化ガリウム薄膜を形成するステップは、
前記基板の上にガリウムを含有するソースガスを供給するステップと、
前記基板の上に窒素を含有する反応ガスを活性化させて供給するステップと、
を含む、薄膜の形成方法。
【請求項17】
前記ソースガスを供給するステップの後に、前記基板の上に水素を含有するガスを活性化させて供給するステップをさらに含む、請求項16に記載の薄膜の形成方法。
【国際調査報告】