(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】殺生物特性を有する多孔性媒体
(51)【国際特許分類】
A01N 33/04 20060101AFI20240517BHJP
A01N 37/18 20060101ALI20240517BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20240517BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240517BHJP
A01N 25/10 20060101ALI20240517BHJP
D21H 21/16 20060101ALI20240517BHJP
D06M 13/13 20060101ALI20240517BHJP
D06M 13/425 20060101ALI20240517BHJP
D06M 13/46 20060101ALI20240517BHJP
D06M 15/267 20060101ALI20240517BHJP
D21H 21/36 20060101ALN20240517BHJP
【FI】
A01N33/04
A01N37/18 Z
A01P1/00
A01P3/00
A01N25/10
D21H21/16
D06M13/13
D06M13/425
D06M13/46
D06M15/267
D21H21/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023570294
(86)(22)【出願日】2022-05-13
(85)【翻訳文提出日】2024-01-12
(86)【国際出願番号】 EP2022063027
(87)【国際公開番号】W WO2022243189
(87)【国際公開日】2022-11-24
(32)【優先日】2021-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522242351
【氏名又は名称】オベルチュール フィドゥキエール サス
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【氏名又は名称】加藤 由加里
(72)【発明者】
【氏名】ロセ,アンリ
【テーマコード(参考)】
4H011
4L033
4L055
【Fターム(参考)】
4H011AA03
4H011AA04
4H011BA06
4H011BB04
4H011BB06
4H011BB19
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4H011DH10
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4L033AC10
4L033BA85
4L033CA19
4L033DA02
4L055AG05
4L055AG08
4L055AG10
4L055AG19
4L055AG26
4L055AG27
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4L055AG46
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4L055EA10
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4L055FA19
4L055FA30
4L055GA05
4L055GA15
4L055GA19
4L055GA47
(57)【要約】
本発明は、多孔質基材の表面処理の為の殺生物性組成物であって、少なくとも1つの親水性バインダー、四級アンモニウムをベースとする少なくとも1つの殺生物性化合物、及び少なくとも1つのカチオン性サイズ剤を含む上記の殺生物性組成物に関する。本発明は更に、多孔質基材に、殺生物特性、特に抗ウイルス特性、を与える為に、そのような組成物を使用する方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質基材の表面処理の為の殺生物性組成物であって、
少なくとも1つの親水性バインダー、
下記の式:(CH
3)
2A
2N
+X
-の非ポリマー性の第四級アンモニウム塩から選択される、第四級アンモニウムをベースとする少なくとも1つの殺生物性化合物、ここで、
Aは、同じであってもよく又は異なっていてもよく、直鎖のC
6~C
20アルキル基を表す、及び、
X
-は、ハロゲン化物アニオン及びスルホン酸アニオンから選択されるアニオン、並びに、
少なくとも1つのカチオン性サイズ剤、特には、アルケニルケテン二量体(AnKD)、アルキルケテン二量体(AKD)、スチレンアクリレート(SAE)、ロジン、アルケニルコハク酸無水物(ASA)、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つのカチオン性サイズ剤
を含む、前記殺生物性組成物。
【請求項2】
少なくともジデシルジメチルアンモニウムクロリド(DDAC)、ジオクチルジメチルアンモニウムクロリド、又はオクチルデシルジメチルアンモニウムクロリドを含み、好ましくは少なくともジデシルジメチルアンモニウムクロリド(DDAC)を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が少なくとも1つのカチオン性サイズ剤を含み、該少なくとも1つのカチオン性サイズ剤が、アクリロニトリル、アルケニルケテン二量体(AnKD)、アルキルケテン二量体(AKD)、スチレンアクリレート(SAE)、ロジン、アルケニルコハク酸無水物(ASA)及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの化合物を含み、好ましくは少なくとも1つのアルキルケテン二量体(AKD)及び/又は1つのスチレンアクリレート(SAE)を含み、より好ましくは少なくとも1つのアルキルケテン二量体(AKD)を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記カチオン性サイズ剤が、少なくとも1つのスチレンアクリレート(SAE)を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が少なくとも1つの親水性バインダーを含み、該親水性バインダーが、ポリビニルアルコール、デンプン、ラテックス、特にはアクリルラテックス又はアクリルコポリマーラテックス、ヘミセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ガラクトマンナン、ゼラチン、ポリウレタン分散物、及びそれらの組み合わせから選択され、好ましくは少なくとも1つのポリビニルアルコール及び/又は1つのデンプンを含み、より好ましくは少なくとも1つのデンプンを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
1以上の親水性バインダーを、該組成物の総重量に対して、乾燥重量で1%~50%、好ましくは乾燥重量で2%~40%、より好ましくは乾燥重量で2%~20%、含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
第四級アンモニウム、特にはジデシルジメチルアンモニウムクロリド、をベースとする1以上の殺生物性化合物を、該組成物の総重量に対して、乾燥重量で0.05%~2.5%、好ましくは乾燥重量で0.25%~1.5%、より好ましくは、乾燥重量で0.25%~1%、含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
1以上のカチオン性サイズ剤を、該組成物の総重量に対して、乾燥重量で0.08%~1.5%、好ましくは乾燥重量で0.17%~1.2%、より好ましくは乾燥重量で0.17%~0.9%、含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が、少なくとも1つの鉱物充填剤、特には、コロイド状シリカ、ケイ酸ナトリウム、アルミノ珪酸ナトリウム、天然又は析出した炭酸カルシウム、タルク、天然又は焼成されたカオリン、アルミナ水和物、二酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、硫酸バリウム、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの鉱物充填剤、を更に含み、好ましくは少なくとも炭酸カルシウムを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
1以上の充填剤、特には1以上の鉱物充填剤、を、該組成物の総重量に対して、0.1重量%~5重量%、好ましくは0.1重量%~1重量%、含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
第四級アンモニウムをベースとする殺生物性化合物以外の、1以上の静菌剤、1以上の殺菌剤、1以上の静真菌性剤、1以上の殺真菌性剤、1以上の静殺ウイルス剤、又は1以上の殺ウイルス剤を更に含み、好ましくは、p-[(ジヨードメチル)スルホニル]トルエン、ブチルカルバミド酸3-ヨード-2-プロピニル、1H-ベンズイミダゾール-2-イルカルバミド酸メチル、モノラウリン、イソチアゾリン誘導体若しくはイソチアゾロン誘導体をベースとする化合物、キトサン若しくはキチン誘導体をベースとする化合物、亜鉛ゼオライトをベースとする化合物、銀イオンをベースとする化合物、特には、塩化銀をベースとする化合物、担持された粒子形態での銀をベースとする化合物、及びトリクロサンをベースとする化合物、並びにそれらの組み合わせから選択され、より好ましくは、少なくとも3-ヨード-2-プロピニルブチルカルバミド酸(IPBC)を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
水を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
多孔性媒体、特には繊維性媒体、であって、表面殺生物特性を有し、及びその外表面の少なくとも1つの全部又は一部に表面処理、好ましくは請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物から形成されたコーティング、を有する、前記多孔性媒体。
【請求項14】
標準ISO 535:2014に従って実施されるCobb試験で60秒間にて測定される、50g/m
2以下、好ましくは20~40g/m
2、のCobb値を有する、請求項13に記載の多孔性媒体。
【請求項15】
前記多孔性媒体が、繊維質、特には紙又は厚紙タイプのもの、特には包装用厚紙を形成することを意図された厚紙であり、ここで、前記厚紙は、バージン繊維で形成されており、又は好ましくは少なくとも一部又は全部が再生繊維で形成されている、
請求項13又は14に記載の多孔性媒体。
【請求項16】
請求項13~15のいずれか1項に記載の、表面殺生物特性を有する多孔性媒体を製造する方法であって、
a)多孔質基材、特には繊維質基材、好ましくは再生繊維から少なくとも部分的に形成された多孔質基材、を提供すること、
b)前記多孔性基材の外表面の少なくとも1つの全部又は一部を、その上に前記組成物の堆積物を形成することを助長する条件下で、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物と接触させること、及び、
c)前記堆積物を乾燥して、殺生物特性を備えた多孔性媒体を形成すること
の工程を少なくとも含む、前記方法。
【請求項17】
多孔質基材、特には繊維質基材、に、殺生物特性、特に抗ウイルス特性、を与える為に、請求項1~12のいずれかに記載の組成物を使用する方法。
【請求項18】
多孔質基材、特には繊維質基材、の疎水性を高める為に、請求項1~12のいずれかに記載の組成物を使用する方法。
【請求項19】
紙幣若しくはセキュリティシート、又は印刷の為の紙、筆記の為の紙若しくは複写用の為の紙を製造する為に、請求項13~15のいずれか1項に記載の多孔性媒体を使用する方法。
【請求項20】
包装用厚紙を製造する為に、請求項13~15のいずれか1項に記載の多孔性媒体を使用する方法。
【請求項21】
紙、不織布材料、及び織物、筆記用紙及び印刷用紙、コート紙、及びコピー用紙を製造する為に、請求項13~15のいずれか1項に記載の多孔性媒体を使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺生物特性を有する多孔性媒体の分野、特にはシート材料の分野、より特には、繊維質材料、例えば、紙、不織布材料及び織物、の分野、特には筆記用紙及び印刷用紙;コート紙;コピー用紙;バージン繊維及び/又は再生繊維から製造された包装用厚紙(packaging cardboards);皮革;木材;セキュリティ用紙;セキュリティ文書;並びに、紙幣の為の媒体に関する。
【0002】
本発明の特定の目的は、表面上に殺生物活性を付与し且つこれらの媒体が由来する多孔質基材における疎水性を確保する為の有用である組成物及び方法を提供することである。
【背景技術】
【0003】
現代社会において、情報の伝達を意図された紙媒体、とりわけ紙幣、だけでなく、包装を意図された紙媒体、例えば厚紙(cardboards)、の媒体が増え続けており、多くの人々によって毎日頻繁に扱われている。
【0004】
しかしながら、これらの人々の中には、1以上の病原性微生物を保有している可能性があり、従って、これらの人々によって扱われる媒体は、汚染の媒介物となり、そして、様々な深刻さの流行病及びパンデミック病の発生源となる。この点に関して、セルロース繊維素材、例えば紙幣又は厚紙、は一般的に湿気を吸収する傾向があり、それにより、明らかにそれらの中の微生物の展開を促進すること及び/又は微生物の生存を維持することに役立つということを指摘しておくことはまた重要である。
【0005】
繊維質材料、一般的にはセルロース、の微生物、細菌、真菌及び/又はウイルス汚染のこの問題は新しいものではなく、及びそれらの大量の取り扱いに伴う微生物、細菌、真菌及び/又はウイルスの感染リスクを克服しようとする解決策が既に開発されている。
【0006】
最も一般的な解決策は、当該媒体、より一般的にはセルロース材料から形成されたそれらのベース基材を、少なくとも1つの殺生物剤で処理することからなる。ベース基材への1以上の殺生剤の組み込みは、該基材を該殺生剤の溶液に浸漬することによって、又は該殺生物剤を含有する溶液を該基材に噴霧、表面処理、又はコーティングすることによって達成されうる。
【0007】
これらの目的のために慣用的に使用されている殺生剤の例は特には、p-[(ジヨードメチル)スルホニル]トルエン、ブチルカルバミド酸3-ヨード-2-プロピニル、1H-ベンズイミダゾール-2-イルカルバミド酸メチル、モノラウリン、イソチアゾリン誘導体若しくはイソチアゾロン誘導体をベースとする化合物、キトサン、第四級アンモニウム塩、特にはジデシルジメチルアンモニウムクロリド、銀亜鉛ゼオライト等を包含する。しかしながら、これらの殺生剤はしばしば、主に特定の殺生物活性、すなわち殺菌活性(bactericidal activity)、殺真菌性活性(fungicidal activity)又は殺ウイルス活性(virucidal activity)しか有しておらず、従って、広域的な殺生物効果を得る為には、それらを組み合わせる必要がある。これらの殺生剤を使用する条件は常に同じとは限らないので、勿論、これは更なる制約である。この点において、第四級アンモニウムをベースとする化合物、特にはジデシルジメチルアンモニウムクロリド(DDAC)、は、複数の殺生物特性、特には抗菌性、抗真菌性及び抗ウイルス性、を有する故に、特に有利な殺生剤であることが知られている(欧州特許EP2457440B号明細書)。
【0008】
残念なことに第四級アンモニウムをベースとする化合物はまた、強いカチオン性化合物であるという特異的な特徴も有し、及びそれらが組み込まれる基材を強く親水化する傾向がある。従って、DDACが、親水性バインダー、例えばポリビニルアルコール又はデンプン、と共に使用され、及びセルロース基材に施与されるときに、Cobb吸水試験によって定量化されることができるこの基材の疎水性が低下し、例えば、筆記用紙及び印刷用紙の為に又は包装用紙の為に要求される20~40g/m2の要求される標準を達成することがもはやできなくなる。リサイクルから得られるセルロース媒体は、高級セルロース媒体よりも疎水化しにくいという特別な特徴を有することにまた留意されるべきである。その上、該セルロース媒体には残留デンプンベースの生成物が多く含まれ、そして、微生物の展開又は生存を助長する。従って、第四級アンモニウムをベースとする殺生物性化合物、例えばDDAC、での処理はこの問題を悪化させ、そして、このことにより、この化合物によって追求される汚染のリスクを低減するという目的を台無しにするのに十分であり、それは水分が微生物の展開に好都合であるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それ故に、多孔質基材、特にはセルロース基材の為に、それらの疎水性を変化させること無しに殺生物特性を付与することを可能にする表面処理、特にはコーティング、の必要性が依然としてある。
【0010】
同様に、高級繊維質基材のリサイクルから結果として生じる繊維質基材に、殺生物特性と有意な疎水性とを同時に付与することができる表面処理、特にはコーティング、の必要性が依然としてある。
【0011】
本発明の目的は特には、大量包装を意図された基材の為に経済的に受け入れられるところの殺生物保護を提供することである。
【0012】
別の目的は、食品との接触を承認された殺生物製品リスト中に含まれる殺生剤の使用を提供することである。
【0013】
更なる目的は、抗菌活性を持続させることを保証することである。
【0014】
最終目的は、所望の殺生物性の性質に加えて、特には、大量包装を又は筆記用紙及び印刷を意図された基材の為に、満足のいく疎水性を提供することが可能である解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
従って、本発明は、基材の表面処理の為の新規な殺生物性組成物を提案する。
【0016】
従って、その観点の一つに従うと、本発明は、多孔質基材の表面処理の為の殺生物性組成物であって、
少なくとも1つの親水性バインダー、
第四級アンモニウムをベースとする少なくとも1つの殺生物性化合物、特には第四級アンモニウム塩、特にはジデシルジメチルアンモニウムクロリド(DDAC)、及び、
少なくとも1つのカチオン性サイズ剤
を含む上記の殺生物性組成物に関する。
【0017】
特には、該殺生物性組成物は、ポリマー性又は非ポリマー性の第四級アンモニウム塩から選択される少なくとも1つの第四級アンモニウムをベースとする殺生物性化合物、特には非ポリマー性の第四級アンモニウム塩から選択される少なくとも1つの第四級アンモニウムをベースとする殺生物性化合物、を含み、より特には少なくともジデシルジメチルアンモニウムクロリド(DDAC)を含む。
【0018】
より特には、本発明は、多孔質基材の表面処理の為の殺生物性組成物であって、
少なくとも1つの親水性バインダー、
下記の式:(CH3)2A2N+X-の非ポリマー性の第四級アンモニウム塩から選択される、第四級アンモニウムをベースとする少なくとも1つの殺生物性化合物、ここで、
Aは、同じであってもよく又は異なっていてもよく、直鎖のC6~C20アルキル基を表す、及び、
X-は、ハロゲン化物アニオン及びスルホン酸アニオンから選択されるアニオン、並びに、
少なくとも1つのカチオン性サイズ剤、特には、アルケニルケテン二量体(AnKD)、アルキルケテン二量体(AKD)、スチレンアクリレート(SAE)、ロジン、アルケニルコハク酸無水物(ASA)、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つのカチオン性サイズ剤
を含む、上記の殺生物性組成物に関する。
【0019】
特には、該第四級アンモニウムをベースとする殺生物性化合物は、少なくともジデシルジメチルアンモニウムクロリド(DDAC)を含む。
【0020】
本発明の目的の為に、「表面処理」は、基材の表面上に組成物の堆積物を形成すること、従って、このようにして得られた媒体が所望の表面殺生物特性と疎水性とを有することを云う。特には、本発明に従って得られる表面処理は、該媒体の表面上の及び/又は該媒体の厚さの表面部分における局所化されたコーティングの形成を結果として生じる。
【0021】
本発明の目的の為に、語「殺生剤」(biocidal agent)又は「殺生物剤」(biocidal)(それらは、語「抗菌剤」(antimicrobial agent)と同等である)は一般的に、微生物、例えば、ウイルス、真菌、細菌及び/又は酵母等、の増殖を調節及び/又は阻害及び/又は密度を減少させることにおいて有効である任意の剤を示す。
【0022】
本発明の目的の為に、「カチオン性サイズ剤」(cationic sizing agent)は、カチオン性エマルション、カチオン性溶液又はカチオン性分散液の形態で製剤化されたサイズ剤を云う。エマルション製剤及び分散製剤において、カチオン性サイズ剤の液滴又は粒子の表面は正に帯電している。カチオン性サイズ剤は、正のゼータ電位測定によって特徴付けられることができる。該ゼータ電位は、電気泳動移動度を測定する為の装置を用いて測定されることができる。カチオン性サイズ剤はまた、特にはアニオン性電解質、例えばアニオン性ポリアクリルアミド、とのカチオン性サイズ剤の滴定によって特徴付けられることができる。該滴定は、Mutek PCD装置を用いて測定されることができる。
【0023】
下記の実施例から分かるように、本発明者等は、第四級アンモニウムをベースとする殺生物性化合物、特にはDDAC、と併用して、表面処理において特定のタイプのサイズ剤を使用することにより、第四級アンモニウムをベースとする殺生物性化合物の期待される殺生物特性はそのままに、多孔質基材、特にはこのように処理された繊維質基材、において有意な疎水性を確保することが、あらゆる予想に反して可能になることを見出した。
【0024】
その別の観点に従うと、本発明は、多孔性媒体、特には繊維性媒体、であって、該多孔性媒体は、表面殺生物特性を有し、及びその外表面の少なくとも1つの全部又は一部に、本発明に従う組成物から形成された表面処理、好ましくはコーティング、を有する上記の多孔性媒体に関する。特には、この多孔性媒体は、紙及び厚紙、特には包装用厚紙、特には平らな厚紙(flat cardboards)又はひだのついた厚紙(corrugated cardboards)、を形成することを意図された厚紙、から選択され、例えば、再生繊維から少なくとも部分的に形成される紙及び厚紙から選択される。
【0025】
更にその別の観点に従うと、本発明は、表面殺生物特性を有する多孔性媒体を本発明に従って製造する方法であって、
a)多孔質基材、特には繊維質基材、好ましくは再生繊維から少なくとも部分的に形成された多孔質基材、を提供すること、
b)該多孔性基材の外表面の少なくとも1つの全部又は一部を、その上に該組成物の堆積物を形成することを助長する条件下で、本発明に従う組成物と接触させること、
c)該堆積物を乾燥して、殺生物特性を備えた多孔性媒体を形成すること
の工程を少なくとも含む上記の方法を目的とする。
【0026】
更にその別の観点に従うと、本発明は、多孔質基材、特には繊維質基材、に殺生物特性、特には抗ウイルス特性、を与える為に、本発明の組成物を使用する方法を提供する。
【0027】
更にその別の観点に従うと、本発明は、多孔質基材、特には繊維質基材、特には再生繊維から少なくとも部分的に形成された基材、の疎水性を高める為に、本発明に従う組成物を使用する方法を提供する。
【0028】
更にその別の観点に従うと、本発明は、紙幣若しくはセキュリティシート、又は印刷の為の紙、筆記の為の紙若しくは複写用の為の紙の製造の為に、本発明に従う多孔性媒体を使用する方法を提供する。
【0029】
更にその別の観点に従うと、本発明は、厚紙の包装材(cardboard packaging)を製造する為に、本発明に従う多孔性媒体を使用する方法を提供する。
【0030】
更にその別の観点に従うと、本発明は、紙、不織布材料、及び織物、筆記用紙及び印刷用紙、コート紙、及びコピー用紙を製造する為に、本発明に従う多孔性媒体を使用する方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明に従う組成物
【0032】
第四級アンモニウムをベースとする殺生物性化合物
【0033】
第四級アンモニウムをベースとする化合物、特には第四級アンモニウム塩、は、抗菌剤(antimicrobial agent)及び/又は殺微生物剤(microbicidal agent)として知られており、より特には、静菌剤(bacteriostatic agent)(又は抗菌剤(bactericidal agent))及び/又は殺菌剤(bactericidal agent)及び/又は静真菌剤(fungistatic agent)(又は抗真菌剤(antifungal agent))及び/又は殺真菌剤(fungicidal agent)として知られている。
【0034】
それらは、より特には、ポリマー性又は非ポリマー性の第四級アンモニウム塩である。
【0035】
第四級アンモニウム塩は一般的に、好適なアニオンX-を有する少なくとも1つの第四級アンモニウムカチオンを含む。
【0036】
該カチオンは、より特には下記の式である。
【化1】
ここで、R
1、R
2、R
3、及びR
4は、異なる種であってもよい。例えば、R
1、R
2、R
3、及びR
4は、互いに独立して、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、シクロアルキル基、芳香族若しくは非芳香族の複素環基、又はアルケニル基から選択されてもよく、ここで、該基は、置換若しくは非置換、直鎖状若しくは分枝状であり、及び任意的に、1以上のヘテロ原子、例えば1以上の酸素原子、又は1以上のホスフィン酸基、によって介在されることが可能である。
【0037】
代替的には、2以上のR1基、R2基、R3基、及びR4基は、それらを有する窒素原子と共に、置換又は非置換の複素環を形成してもよい。
【0038】
特定の実施態様に従うと、R1基、R2基、R3基、及びR4基は、アルキル基、好ましくは直鎖状のアルキル基、特にはC1~C20のアルキル基、である。特には、R1基、R2基、R3基、及びR4基は、飽和、好ましくは飽和、好ましくは直鎖、特にはC1~C20、のアルキル基である。
【0039】
R1基、R2基、R3基、及びR4基は合わせて、少なくとも4個の炭素原子を含む。特には、R1基、R2基、R3基、及びR4基における炭素原子の総数は、少なくとも10であってよい。好ましくは、R1基、R2基、R3基、及びR4基のうちの少なくとも1つ、特にはR1基、R2基、R3基、及びR4基のうちの2つは、6~20個の炭素原子、特には8~18個の炭素原子、を含む。
【0040】
第四級アンモニウム塩のアニオンX-は特には、ハロゲン化物アニオン、例えば塩化物、フッ化物、臭化物又はヨウ化物、及びスルホン酸アニオン、から選択されうる。特には、第四級アンモニウム塩のアニオンは、ハロゲン化物アニオンから選択されうる。好ましくは、第四級アンモニウム塩のアニオンは塩化物でありうる。
【0041】
非ポリマー性の第四級アンモニウム塩はより特には、下記の式でありうる。
(CH3)n(A)mN+X-
ここで、Aは、R1、R2、R3、及びR4について上記で提案された定義を有し、X-は、上記で定義されたアニオンであり、nは、1~3の整数、好ましくは2又は3であり、mは、1~3の整数、好ましくは1又は2であり、但し、n+mの合計は4に等しい。mが2又は3である場合、A基は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、特には同一である。
【0042】
好ましくは、本発明に従う抗菌剤として使用される第四級アンモニウム塩は、下記の式:(CH3)n(A)mN+X-であってもよく、ここで、nは2であり、mは2であり、Aは、同じであってもよく又は異なっていてもよく、R1、R2、R3及びR4について上記で定義された通りである。
【0043】
特には、Aは、同じであってもよく又は異なっていてもよく、特には同一であってもよく、直鎖のC6~C20、特にはC8~C18、特にはC8~C12、のアルキル基、であってもよい。
【0044】
特には、Aは、同じであってもよく又は異なっていてもよく、特には同一であってもよく、直鎖状飽和C6~C20、特にはC8~C18、特にはC8~C12、のアルキル基であってもよい。
【0045】
例は、ジデシルジメチルアンモニウムクロリド(DDAC)、ジオクチルジメチルアンモニウムクロリド、及びオクチルデシルジメチルアンモニウムクロリドを包含する。
【0046】
第四級アンモニウムをベースとする殺生物性化合物はまた、ポリマー性の第四級アンモニウム塩、すなわち、繰り返し「第四級アンモニウム」単位を含むところの化学式を有する化合物であってもよい。
【0047】
そのような「ポリマー性の」第四級アンモニウム塩は、R1、R2、R3、及びR4のうちの少なくとも1つが重合性官能基(polymerizable function)、特には、1以上のエチレン性不飽和を含む官能基、より特には(メタ)アクリレート官能基及びアリル官能基から選択される官能基、を有する式(I)のうちの少なくとも1つの化合物から誘導されてもよい。
【0048】
特には、第四級アンモニウムをベースとするこの「ポリマー性の」化合物は、式(I)のうちの少なくとも1つの前述された第四級アンモニウム塩を重合することによって得られてもよく、ここで、式中、R1、R2、R3及びR4のうちの2つはアリル官能基を有する基であり、特にはアリル基であり、他は好ましくはアルキル基であり、特にはC1~C6、特にはC1~C4、特にはメチル基、である。
【0049】
特定の実施態様に従うと、第四級アンモニウムをベースとするこのポリマー性の化合物は、ジアリルジアルキルアンモニウムクロリドのホモポリマーである。特には、それは、polyDADMACと称されるジアリルジメチルアンモニウムクロリドのポリマーでありうる。polyDADMACは、触媒としての過酸化物の存在下、DADMACのフリーラジカル重合によって合成されてもよく、又はそれは市販されているものであってもよい。
【0050】
特定の実施態様に従うと、本発明に従う殺生物性組成物は、少なくとも塩化ジデシルジメチルアンモニウム(DDAC)を用いる。
【0051】
上記されているように、本発明の殺生物性組成物は、該組成物の総重量に対して、乾燥重量で0.05%~2.5%、好ましくは乾燥重量で0.25%~1.5%、より好ましくは乾燥重量で0.25%~1%、の第四級アンモニウムをベースとする1以上の殺生物性化合物、特には、ポリマー性又は非ポリマー性の第四級アンモニウム塩から選択される、特には非ポリマー性の第四級アンモニウム塩から選択される、より特にはジデシルジメチルアンモニウムクロリド(DDAC)から選択される、第四級アンモニウムをベースとする1以上の殺生物性化合物、を含む。
【0052】
本発明の目的の為に、「乾燥重量」はまた、「有効成分の重量」とも云われ、特に断らない限り、配合される任意の揮発性溶媒、例えば水、を含まない該化合物の重量含有量を示す。
【0053】
特には、第四級アンモニウムをベースとする1以上の殺生物性化合物、特にはDDAC、の量は、表面処理、好ましくは組成物から形成されるコーティング、が、その総乾燥重量に対して、乾燥重量で10%未満、好ましくは乾燥重量で5%未満、の第四級アンモニウムをベースとする1以上の殺生物性化合物、特にはDDAC、を含むように、該組成物中で調整される。
【0054】
本明細書の下記の実施例から分かるように、本発明に従って得られる多孔性媒体は有利には、標準ISO 21702:2019又はASTME 1093に従うヒトコロナウイルス株HcoV-229EとHcoV-OC43との5時間の接触時間後、標準ISO 18184:2019-06、附属書5の基準に従う良好~優れた抗ウイルス活性を有し、特には、エンベロープ化されたウイルス科(enveloped virus family)のウイルスに対して非常に強い抗ウイルス活性を有し、その活性は、ウイルス力価で2.5-及び3-1-logの活性低下を示した。
【0055】
カチオン性サイズ剤
【0056】
以下に詳述されているように、そのようなサイズ剤と第四級アンモニウムをベースとする殺生物性化合物、特には第四級アンモニウム塩、例えばDDAC、との組み合わせは、処理されるべき多孔質基材の疎水性に対する第四級アンモニウムをベースとする該化合物の負の効果を有意に中和することを可能にする。
【0057】
疎水性は水の浸透に対する抵抗として特徴付けられ、それ故に、Cobb試験(60秒)を用いて測定される。これは、円筒形の含浸テンプレートを用いて、60秒間にわたって媒体中に吸収された水の量をg/m2で表したものである。この試験は、紙の吸収性を特性評価する為に紙業界において慣用的に使用されている試験である。
【0058】
特には、該カチオン性サイズ剤は、アクリロニトリル、アルケニルケテン二量体(AnKD)、アルキルケテン二量体(AKD)、スチレンアクリレート(SAE)、ロジン、アルケニルコハク酸無水物(ASA)、及びそれらの組み合わせから選択されうる。
【0059】
特には、該カチオン性サイズ剤は、少なくとも1つの化合物、特には、アクリロニトリル、アルケニルケテン二量体(AnKD)、アルキルケテン二量体(AKD)、スチレンアクリレート(SAE)、ロジン、アルケニルコハク酸無水物(ASA)、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの化合物、を含んでいてもよい。
【0060】
より特には、該カチオン性サイズ剤は、少なくとも1つのアルキルケテン二量体(AKD)及び/又は1つのスチレンアクリレート(SAE)を含み、より好ましくは、少なくとも1つのアルキルケテン二量体(AKD)を含む。
【0061】
特には、該カチオン性サイズ剤は、少なくとも1つのスチレンアクリレート(SAE)を含む。
【0062】
これは特には、カチオン性アルキルケテン二量体タイプの表面サイズ剤、例えば、SolenisによってAquapel商標 J 215(AKD)の名称下で販売されている表面サイズ剤、又は代替的には、カチオン性スチレンアクリレート(SAE)タイプの表面サイズ剤、例えば、SolenisによってBasoplast 270Dの名称下で販売されているタイプの表面サイズ剤、であってもよい。
【0063】
特には、該カチオン性サイズ剤は、本発明に従う組成物において使用される、第四級アンモニウムをベースとする殺生物性化合物とは異なる。特には、該カチオン性サイズ剤は、第四級アンモニウム塩と異なる。
【0064】
本発明に従う組成物は特には、該組成物の全体に対して0.5重量%~5重量%、好ましくは1重量%~4重量%、より好ましくは1重量%~3重量%、の市販の1以上のカチオン性サイズ剤製品を含んでいてもよい。
【0065】
特には、第四級アンモニウムをベースとする殺生物性化合物、好ましくはジデシルジメチルアンモニウムクロリド、と1以上のカチオン性サイズ剤とが、第四級アンモニウムをベースとする1以上の化合物の乾燥重量/市販の1以上のカチオン性サイズ剤製品の重量の重量比が、0.1~0.5、好ましくは0.25~0.375、より好ましくは0.25~0.33、の範囲で、本発明に従う組成物において使用されうる。
【0066】
特定の実施態様に従うと、本発明に従う組成物は、該組成物の総重量に対して、乾燥重量で0.08%~1.5%、好ましくは乾燥重量で0.17%~1.2%、より好ましくは乾燥重量で0.17%~0.9%、のカチオン性サイズ剤を含んでいてもよい。
【0067】
特定の実施態様に従うと、第四級アンモニウムをベースとする殺生物性化合物、好ましくはジデシルジメチルアンモニウムクロリド、と1以上のカチオン性サイズ剤とが、第四級アンモニウムをベースとする1以上の化合物の乾燥重量/1以上のカチオン性サイズ剤の乾燥重量の重量比が0.25~5.9、特には0.3~3.6、好ましくは0.8~2.5、より好ましくは0.8~2.2、である。
【0068】
本明細書の下記の実施例から分かるように、本発明に従って得られる多孔性媒体は有利には、標準ISO 535:2014に従って実施されるCobb試験で60秒間にて測定される、50g/m2以下、好ましくは20~40g/m2、のCobb値を有する。
【0069】
結合剤
【0070】
第四級アンモニウムをベースとする殺生物性化合物、特には上記で定義されたもの、特には第四級アンモニウム塩、例えばDDAC、と少なくとも1つのカチオン性サイズ剤、特には上記で定義されたもの、とに加えて、本発明に従う組成物は、少なくとも1つの親水性バインダーを含む。このバインダーは、水についてのその親和性、それ故に水性媒体についての親和性、を考慮して親水性と呼ばれる。
【0071】
特には、この結合剤は、ポリビニルアルコール、デンプン、ラテックス、特にはアクリルラテックス又はアクリルコポリマーラテックス、ヘミセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ガラクトマンナン、ゼラチン、ポリウレタン分散物、及びそれらの組み合わせから選択されうる。
【0072】
より特には、この結合剤は少なくとも1つのポリビニルアルコール及び/又は1つのデンプンを含み、より好ましくは少なくとも1つのデンプンを含む。
【0073】
これは例えば、馬鈴薯デンプン、特には酸化された馬鈴薯デンプン、小麦デンプン又はトウモロコシデンプンでありうる。
【0074】
従って、本発明に従う組成物は、該組成物の総重量に対して、乾燥重量で1%~50%、好ましくは乾燥重量で2%~40%、より好ましくは乾燥重量で2%~20%、の1以上の親水性バインダーを含んでいてもよい。
【0075】
これらの3つの必須化合物に加えて、本発明に従う組成物は勿論、水性溶媒、特には水、及び多孔質基材の表面処理の為に慣用的に考慮されている他の任意の化合物を含んでいてもよいが、本発明に従って所望される殺生物活性に関しても同様である。
【0076】
補助殺生物剤(Auxiliary biocidal agent)
【0077】
従って、本発明に従う組成物は、第四級アンモニウムをベースとする殺生物性化合物以外の1以上の静菌剤(bacteriostatic agent)、殺菌剤(bactericidal agent)、静真菌性剤(fungistatic agent)、殺真菌性剤(fungicidal agent)、静殺ウイルス剤(levuricidal agent)又は殺ウイルス剤(virucidal agent)を含んでいてもよい。
【0078】
これらの薬剤は勿論、本発明に従う使用条件下でヒトに対して無害であることをまた考慮して選択される。
【0079】
これらの1以上の補助バイオサイド(auxiliary biocides)は特には、p-[(ジヨードメチル)スルホニル]トルエン、ブチルカルバミド酸3-ヨード-2-プロピニル、メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イルカルバメート、モノラウリン、イソチアゾリン誘導体若しくはイソチアゾロン誘導体をベースとする化合物、キトサン誘導体若しくはキチン誘導体をベースとする化合物、亜鉛ゼオライトをベースとする化合物、銀イオンをベースとする化合物、特には、塩化銀をベースとする化合物、担持された粒子形態での銀をベースとする化合物、及びトリクロサンをベースとする化合物、並びにそれらの組み合わせから選択されうる。
【0080】
1つの変形に従うと、本発明に従う組成物は、キトサン誘導体若しくはキチン誘導体をベースとする化合物、亜鉛ゼオライトをベースとする化合物、銀イオンをベースとする化合物、担持された粒子形態での銀をベースとする化合物、及びトリクロサンをベースとする化合物、並びにそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの静真菌性剤及び/又は殺真菌性剤を含む。
【0081】
1つの変形に従うと、本発明に従う組成物は、イソチアゾリン誘導体若しくはイソチアゾロン誘導体をベースとする化合物、キトサン誘導体若しくはキチン誘導体をベースとする化合物、亜鉛ゼオライトをベースとする化合物、銀イオンをベースとする化合物、担持された粒子形態での銀をベースとする化合物、及びトリクロサンをベースとする化合物から選択される少なくとも1つの殺菌剤及び/又は殺真菌剤を含む。
【0082】
1つの変形に従うと、本発明に従う組成物は、p-[(ジヨードメチル)スルホニル]トルエンをベースとする少なくとも1つの静真菌性剤及び/又は殺真菌性剤を含む。
【0083】
1つの変形に従うと、本発明に従う組成物は、メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イルカルバメートをベースとする少なくとも1つの静真菌性剤及び/又は殺真菌性剤を含む。
【0084】
1つの好ましい変形に従うと、本発明に従う組成物は、少なくともブチルカルバミド酸3-ヨード-2-プロピニル(IPBC)を含む。
【0085】
他の変形に従うと、本発明に従う組成物は、少なくとも1つの殺ウイルス剤(virucide)、特には天然由来の殺ウイルス剤、を含む。
【0086】
本発明の目的の為に、語「殺ウイルス剤」(virucide)は、ウイルスを殺傷又は阻害する能力を有する化合物を意味する。
【0087】
本発明に従う殺ウイルス剤はより特には、哺乳動物、より特にはヒト、に対して病原性であるウイルスを殺傷及び/又は阻害することを目的とする。
【0088】
そのようなウイルスは、エンベロープ化されていないウイルス(non-enveloped virus)とエンベロープ化されたウイルス(enveloped virus)がありうる。
【0089】
ヒトに対して病原性であり且つ本発明に従って考慮されうるところのウイルスの例はより特には、レトロウイルス(retroviruses)、サイトメガロウイルス(cytomegaloviruses)、ロタウイルス(rotaviruses)、パラミクソウイルス(paramyxoviruses)、ポリオウイルス(polioviruses)、ハンタウイルス(hantaviruses)、コクサッキーウイルス(coxsackie viruses)、脳心筋炎ウイルス(encephalomyocarditis virus)、ピコルナウイルス(picornaviruses)、例えばライノウイルス(rhinoviruses)を包含する上記のピコルナウイルス、DNA又はRNAウイルス、特にはフラビウイルス科(flaviviridae)、エイズウイルス、インフルエンザウイルス(flu viruses)、特にはH1N1、コロナウイルス、特にはヒトコロナウイルスHcov-229E、Hcov-0C43、SARS-COV-2、天然痘ウイルス(smallpox virus)、黄熱ウイルス(yellow fever virus)、C型肝炎ウイルス(hepatitis C virus)、エボラウイルス(Ebola viruses)、ヘルペスウイルス(herpes viruses)、エプスタイン-バーウイルス(Epstein-Barr virus)、水痘帯状疱疹ウイルス(varicella zoster virus)、風疹ウイルス(rubella virus)、シミアンウイルス(simian virus)40、すなわちSV40、を包含する。
【0090】
「天然由来の殺ウイルス剤」は、自然界に既に存在する任意の殺ウイルス剤、又は自然界に存在する天然化合物から合成されることができる任意の殺ウイルス剤を云う。
【0091】
従って、本発明の文脈において使用されることができる天然由来の殺ウイルス剤は、それらを含む天然媒体からの抽出及び精製によって、又は天然化合物から合成することによって得られることができる。
【0092】
そのような殺ウイルス剤の例は、特にはモノラウリンを包含し、それはグリセロールとラウリン酸とから合成することによって得られることができる。
【0093】
本発明の目的の為に、語「モノラウリン」は、天然に予め存在するモノラウリン、及びグリセロールとラウリン酸とから合成することによって得られるモノラウリンの両方を云う。
【0094】
1つの実施態様に従うと、天然由来の殺ウイルス剤は特には、モノラウリン、ラクトフェリン、及び抗ウイルス活性を有する精油、例えば月桂樹の精油、から選択されうる。
【0095】
例示すると、本発明の組成物は、該組成物の総乾燥重量に対して、乾燥重量で0.1%~2.0%、例えば乾燥重量で0.5%~1.5%、の天然由来の1以上の殺ウイルス剤を含んでいてもよい。
【0096】
好ましい実施態様において、該補助バイオサイドは少なくともモノラウリンである。
【0097】
別の特定の実施態様に従うと、本発明に従う組成物は、少なくとも1つの充填剤、特には鉱物充填剤、を含む。
【0098】
そのような成分は、本発明に従う組成物によって形成される表面処理上で高められた表面品質を与える為に、特には摩擦係数を改善する為に、特には有利である。
【0099】
この充填剤は、鉱物充填剤から選択され、特には、コロイド状シリカ、ケイ酸ナトリウム、アルミノ珪酸ナトリウム、天然又は析出した炭酸カルシウム、タルク、天然又は焼成されたカオリン、アルミナ水和物、二酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、硫酸バリウム、及びそれらの組み合わせから、並びに有機充填剤、特にはプラスチック充填剤又は顔料、から選択されることができる。好ましくは、本発明に従う組成物は、少なくとも1つの鉱物充填剤、特には炭酸カルシウム、を含む。
【0100】
従って、本発明に従う組成物は、該組成物の総重量に対して0.1重量%~5重量%、好ましくは0.1重量%~1重量%、の充填剤、特には鉱物充填剤、を含んでいてもよい。
【0101】
本発明に従う多孔質媒体及びその製造方法
【0102】
多孔性媒体
【0103】
上記からわかるように、本発明はまた、その外表面の全部又は一部が本発明の組成物で処理されている、特にはその上にコーティングを形成するように処理されている、ところの多孔性媒体を提供する。
【0104】
この多孔性媒体は有利には、繊維質、特には紙又は厚紙タイプのもの、特には包装用厚紙を形成することを意図された厚紙であってもよく、ここで、該厚紙は、バージン繊維で形成されており、又は好ましくは少なくとも一部又は全部が再生繊維で形成されている。
【0105】
この媒体を製造する為に適した繊維質基材は、特には、天然、人工及び/又は合成の繊維から形成される。該繊維質基材はまた、鉱物充填剤を含んでいてもよい。
【0106】
本発明の1つの実施態様に従うと、該基材の該組成物において使用される繊維は天然繊維を含む。
【0107】
天然繊維は、セルロース繊維、例えば木繊維(wood fibers)、例えば広葉樹繊維(hardwood fibers)、針葉樹繊維(softwood fibers)又はそれらの組み合わせ、綿繊維、竹繊維、わら繊維、アバカ繊維(abaca fibers)、エスパルト繊維(esparto fibers)、麻繊維(hemp fibers)、ジュート繊維(jute fibers)、亜麻繊維(flax fibers)、サイザル繊維(sisal fibers)、及びそれらの組み合わせ、を包含する。
【0108】
紙又は厚紙を形成する為に使用される紙パルプは、漂白された、半漂白された、又は漂白されていないのいずれであってもよく、一般的に夫々、漂白繊維(bleached fiber)、半漂白繊維(semi-bleached fiber)、非漂白繊維(non-bleached fiber)と云われうる。
【0109】
好ましくは、該基材の該組成物において使用される繊維は、セルロース繊維、特には綿繊維、を含む。
【0110】
特には、該セルロース繊維は、綿繊維と木質繊維との混合物である。
【0111】
有利な変形例に従うと、この基材は、少なくとも部分的に、又は大部分において再生繊維、例えば古紙のトリチウム化に由来する繊維、で形成されている。
【0112】
本発明の別の実施態様に従うと、該基材の該組成物において使用される繊維は、合成繊維を含みうる。本発明に従う基材中にセルロース繊維とブレンドされた合成繊維が存在することにより、該基材の耐引裂特性を向上させることが可能になる。
【0113】
これらの繊維に加えて、多孔質、より特には繊維質、の基材は勿論、紙又は厚紙の産業において一般的に使用され、特には保湿剤、例えばポリオールタイプの化合物、例えばグリセロール(グリセリンとも呼ばれる)、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ブチレングリコール、グリセリルトリアセテート、又はソルビトールから選択される他の成分;充填剤、特には上記で定義されたもの、及びアニオン性又はカチオン性のバルクサイズ剤、例えば完成した基材の疎水性の一部を発現させることを意図されたもの、を含んでいてもよい。
【0114】
好ましい実施態様において、本発明に従って得られる多孔性媒体は、紙幣又はセキュリティ文書の為の繊維質紙又は厚紙媒体、又は包装用紙、又はコピー用紙、又は包装用厚紙の製造の為のカード支持体(card support)、特には包装用厚紙(packaging cardboards)、特には平らな厚紙(flat cardboards)又はひだのついた厚紙(corrugated cardboards)を形成することを意図された厚紙、である。該多孔性媒体はまた、本発明に従って処理された皮革又は木材表面であってもよい。
【0115】
多孔性媒体を製造する為の方法
【0116】
本発明に従う方法において、関係する多孔性基材の外表面のうちの少なくとも1つが、その上に該組成物の堆積物を形成することを助長する条件下で、本発明に従う組成物と接触させ、そして、このようにして得られた堆積物が乾燥されて、期待される多孔性媒体を形成する。
【0117】
乾燥工程は特には、80℃以上、例えば90℃以上、好ましくは100℃以上、の温度で実行されうる。
【0118】
この接触工程は、様々な変形に従って実行されてもよい。
【0119】
堆積物の形成は、該組成物の異なる適用方法に従って実行されてもよい。
【0120】
1つの実施態様に従うと、該繊維質基材は、少なくとも本発明に従う組成物を含む溶液中に浸漬される。
【0121】
別の実施態様に従うと、少なくとも本発明に従う組成物を含む溶液が、該基材の少なくとも側の表面上に噴霧される。
【0122】
別の実施態様に従うと、該基材の外表面のうちの少なくとも1つは、少なくとも本発明に従う組成物を含有するコーティング溶液を用いてコーティングされる。該コーティングは、エアナイフシステム(air knife system)、カーテンコーター(curtain coater)によって、ペンシル(pencil)、ナイフ(knife)又はドクターブレードシステム(doctor blade system)によって、ローラー、特にはプレドーズドローラー(predosed roller)、彫刻ローラー(engraved roller)又は転写ローラー(transfer roller)、によって、サイズプレス(size press)によって、含浸器(impregnator)によって、又はフィルムプレス(film press)によって、行われてもよい。
【0123】
別の実施態様に従うと、該基材の外表面のうちの少なくとも1つは、少なくとも本発明に従う組成物を含む表面処理浴で表面処理される。
【0124】
別の実施態様に従うと、該多孔質基材は、事前のコーティング及び/又は表面加工を受けた後に、少なくとも本発明に従う組成物を含むインクを用いて、その表面の一部又は全部上に印刷される。
【0125】
別の実施態様に従うと、本発明に従う少なくとも1つの組成物を含むオーバープリントワニスが、好ましくは、これが事前のコーティング及び/又は表面加工及び印刷を受けた後に、該多孔性基材の外面の少なくとも1つに塗布される。これは、フレキソ印刷、グラビア印刷又は噴霧によって施与されることができる。
【0126】
これらの実施態様は、それらの実施が、多孔性媒体、特には繊維性媒体、特には紙タイプの多孔性媒体、を製造する為の慣用的な方法に適合する限りにおいて、すなわち慣用的な製造工程と同時に適合する限りにおいて、特には有利である。
【0127】
それ故に、有利なことに、該媒体の製造の為に要な工程以外の追加の工程を必要としない。
【0128】
該組成物を、処理されるべき基材の1以上の外表面と接触させるこれらの異なる方法は勿論、適切な場合に組み合わせられることができる。しかしながら、そのような組み合わせは、所望の殺生物活性と疎水性とを示す基材に適合していなければならない。
【0129】
応用
【0130】
本発明は、紙を製造する為に、カバー(クラフトライナー(kraftliner)又はテストライナー(testliner))及び/又は包装用厚紙の構成において使用されるひだのついた材料(corrugated material)の為の紙を製造する為の、多孔性媒体、特には本発明に従う繊維性媒体、を使用する方法に関する。
【0131】
本発明はまた、紙幣又はセキュリティ文書を製造する為の、本発明に従う多孔性媒体の使用に関する。
【0132】
本発明に従う紙幣、セキュリティ文書又は厚紙包装は、本発明に従う多孔性媒体と同じ特性を有し、この繊維性媒体について定義された特性評価方法に従って測定される。
【0133】
本発明はまた、紙、不織布材料及び織物、筆記用紙及び印刷用紙、コート紙及びコピー用紙を製造する為に、本発明に従う多孔性媒体を使用する方法に関する。
【0134】
1つの実施態様に従うと、本発明に従う多孔性媒体は、該シートの認証を可能にする少なくとも1つのセキュリティ要素を組み込んだところのセキュリティシートを形成する為に意図されたものである。特には、該セキュリティ要素は、視覚的デバイス、特には光学可変デバイス(optical variable devices)(OVDと云われる)、ホログラム(holograms)、レンチキュラーデバイス(lenticular devices)、干渉効果(interference effect)を有する要素、特には虹色要素(iridescent elements)、液晶、磁気的に配向可能な効果を有する顔料、及び多層干渉構造から選択される。これらの光学可変装置は、繊維質基材内に組み込まれたセキュリティスレッド上、又は繊維質基材上に貼付又は印刷されたストリップ又はパッチ上に存在してもよい。他の視覚的セキュリティ要素は、繊維質基材を製造する為の工程の間に作成される透かしを包含する。特には、該セキュリティ要素は、発光要素(luminescent elements)として知られているものから選択される;これらの発光要素は、UV又はIR下で明らかにされることができ、及び繊維質基材の少なくとも一部内に組み込まれたセキュリティ粒子(security particles)、セキュリティファイバーレット(security fibrets)、セキュリティプランシェット(security planchets)若しくはセキュリティスレッド(security thread)、又は繊維質基材上に貼付若しくは印刷されたストリップ若しくはパッチの形態であってもよい。特には、該セキュリティ要素は、自動化された方法において、特には光学的又は磁気的に、検出されることができるところの要素から選択され、ここで、これらの検出可能な要素は一般的に、マーカー又はタガント(taggants)と呼ばれ、繊維状媒体内に又は視覚的若しくは発光性のセキュリティ要素内に組み込まれる。セキュリティシートはまた、無線周波数識別装置(radio frequency identification device)(RFIDと云われる)を含んでいてもよく、それはまた、セキュリティシートに識別及びトレーサビリティーの機能を提供する。
【0135】
1つの実施態様に従うと、本発明に従って考慮されるセキュリティシートは、セキュリティ文書であり又はその一部を形成する。好ましくは、本発明に従って考慮されるセキュリティ文書は、公的文書、特にはID文書、パスポート、居住許可証又はビザ、である。
【0136】
別の実施態様に従うと、本発明に従う多孔性媒体は、運転免許証、アクセスカード、ポイントカード(loyalty card)、コピーカード(photocopy card)、食堂カード(canteen card)、トランプカード(playing card)、コレクターズカード(collector’s card)、支払手段、特には支払カード、紙幣、バウチャー又は領収書、文化的又はスポーツ的イベントの為のチケット、真正証明書(certificate of authenticity)、書籍又は雑誌を形成する為のものであってもよい。
【0137】
下記の非限定的な実施例により、本発明をどのように実施することができるか、及びその利点をよりよく理解することができるようになる。
【0138】
実施例
【0139】
材料及び方法
【0140】
下記の原材料が使用された:
AvebeによってPerfectamyl P 255SHの名称下で販売されている、8%又は10%のAI含有量を有するカルボキシル化された馬鈴薯デンプンの浴;
小麦デンプン;
トウモロコシデンプン;
KemiraによってFennosize KD 860Dの名称下で販売されている、26.5%の有効成分含有量を有するカチオン性スチレンアクリレートタイプのバルクサイズ剤(bulk sizing agent);
SolenisによってBasoplast 270Dの名称下で販売されている、30%の有効成分含有量を有する、カチオン性スチレンアクリレート(SAE)タイプの表面サイズ剤(Surface sizing agent);
SolenisによってAquapel商標 J 215(AKD)の名称下で販売されている、15%含有量の有効成分AKDを有する、カチオン性アルキルケテン二量体タイプの表面サイズ剤、;
Thor、Stepan Europe及びLonzaによって、50%含有量の有効成分DDACを有する溶液として販売されているジデシルジメチルアンモニウムクロリド(DDAC);
Thorによって販売されている、20%含有量の有効成分IPBCを有するブチルカルバミド酸3-ヨード-2-プロピニル(IPBC)の溶液;
OmyaによってHydrocarb 90 OGの名称下で販売されている炭酸カルシウム。
【0141】
下記の実施例において、重量%は、特には断らない限り、本発明に従う化合物の供給源である市販品の重量ペーセンテージとして表される。
【0142】
1.疎水性を評価する為の試験
【0143】
ISO 535:2014に従って実施される、60秒間に渡るCobb試験により、試料による水の吸収を特性評価することを可能にする。
【0144】
2.ウェット回収を評価する為の試験
【0145】
この試験のこの目的は、乾燥は行うこと無しに、コーティング/表面加工の前後で紙を秤量することによって、コーティング/表面加工の間に取り込まれた浴の重量を測定することである。単位面積(m2)当たりの施与されたウェットコーティングのグラム数、又は重量%で表される。
【0146】
3.抗真菌特性の試験
【0147】
これらは、アスペルギルス・ニガー・ファン・チエジェム(Aspergillus niger van Thiegem)(DSM 1957)を使用した繊維製品規格AATCC-30試験3、及び10菌株の混合物を使用したAFNOR規格NFX41517に準拠した、接触時間14日間の静真菌性剤対照によって特性評価される。
【0148】
4.抗ウイルス特性の試験
【0149】
コロナウイルス株HcoV-229Eを用いて実施された全ての試験は、標準ISO 21702:2019に従って実施されるが、接触時間は5時間である。
【0150】
コロナウイルスOC43株(ATCC VR-1558)を用いて実施された全ての試験は、標準ASTM E1053に従って実施されるが、接触時間は5時間である。
【0151】
バクテリオファージMS2を用いて実施された全ての試験は、標準ISO18184:2019-06に従って実施されるが、接触時間は18時間である。
【0152】
結果は対数値で表され、抗菌剤処理無しの基準に対して、個々の接触時間についてのウイルス量の減少に対応する。
【0153】
5.摩擦係数の測定
【0154】
摩擦係数は、1984年3月NF Q03-082に従って決定される。
【0155】
実施例1:本発明及び非発明の殺生物性組成物の製造
【0156】
デンプン浴が、カルボキシル化された馬鈴薯デンプンタイプの水性デンプン組成物(Perfectamyl P 255SH)を90℃で20分間調理することによって製造された。
【0157】
本発明の組成物1及び2が、このデンプン浴中に個々の表面サイズ剤が混合されて、このデンプンから製造される。均一な混合物が得られると、DDAC、及び必要に応じてIBPCが、該浴に添加された。
【0158】
対照組成物3~5が、同様に製造された。
【0159】
使用された比が、下記の表1において示されている。
【0160】
【0161】
実施例2:再生パルプをベースとする基材の処理による本発明の多孔性媒体及び本発明でない多孔性媒体の製造
【0162】
多孔質基材は、100%再生厚紙繊維からなる再生パルプから、カチオン性スチレンアクリレートタイプのバルクサイズ剤Fennosize KD 860Dを配合した又は配合しない慣用的な紙の製造方法に従って製造され、その含有量は、再生パルプの乾燥物重量に対する市販製品の重量%として下記の表2において示されている。基材は、160g/m2の秤量を有する。
【0163】
得られた基材は、実施例1において詳述されているように、様々な組成を有するサイズプレス(size press)で表面処理が施された。
【0164】
【0165】
以下に詳述されているこれらの結果から判るように、本発明の組成物、例えば、試験A及び試験Bにおける組成物、は、紙の疎水性特性と殺生物活性との間の有利なトレードオフを得ることを可能にする。
【0166】
従って、対照試験Cと対照試験Dとを比較すると、DDACが繊維質基材を表面処理する為に使用される組成物中に存在するときに、Cobb値が30g/m2~186g/m2に急激に増加することがわかり、それ故に、それは、DDACによる繊維質基材の親水化を示している。
【0167】
しかしながら、試験Aと対照試験Dとを比較すると、本発明の組成物1を使用することにより、Cobb値が有意に低下し、それ故に、再生紙についての疎水性が向上することがわかる。この同じ有利な結果が、試験Bでも検証された。
【0168】
その上、試験A及び試験Bに従って得られた2種類の培地は、エンベロープ化されたウイルスの代表株であるコロナウイルスHcoV-229Eに対して非常に強い抗ウイルス活性を示し、その値は2.5logであった。
【0169】
最後に、試験A及び試験Bに従って得られた培地を比較すると、IPBCが組成物Aに添加されたときに、抗真菌活性(antifungal activity)における向上を実証した。
【0170】
実施例3:再生パルプをベースとする基材からの、本発明の多孔性媒体及び本発明でない多孔性媒体の製造
【0171】
繊維状基材が、80%の漂白針葉樹繊維と20%のユーカリクラフトパルプとからなる高品位パルプであって、から製造され、ここで、該高品位パルプ中にカチオン性スチレンアクリレートタイプのバルクサイズ剤Fennosize KD 860Dを配合しており又は配合しておらず、その含有量は再生パルプの乾物重量に対する市販品の重量%として表3において示されている。こうして得られた基材は、下記の表3において詳述されている組成物のうちの1つを用いて、実施例2において記載された工程に従って表面処理が施された。
【0172】
【0173】
本発明に従う試験F及び試験Gと対照試験Hとを比較することにより、本発明の組成物1及び組成物2で処理された基材は、DDACの存在にかかわらず、表面処理をしていない基材のCobb値と同一のCobb値を有することが示されている。従って、表面サイズ剤、例えばカチオン性スチレンアクリレート、とDDACとの組み合わせにより、DDACを含まない繊維質基材の疎水性を回復させることが可能になる。
【0174】
本発明に従う試験と対照試験とを比較することにより、AATCC30規格及びNFX41517規格の両方に従って、繊維質基材を本発明の組成物で表面処理することによって得られる抗真菌活性の改善がまた実証される。該抗真菌活性は、試験Gによって実証されたように、本発明に従う組成物中のIPBCの存在によって更に改善されることにまた留意されたい。
【0175】
実施例4:本発明の殺生物性組成物及び非発明の殺生物性組成物の製造
【0176】
続く組成物6~組成物10は、調理済みの小麦デンプンを用いて、実施例1において既に規定されたプロトコルに従って製造され、表4はそれらの様々な成分の割合を示す。
【0177】
本発明組成物10の場合、他の化合物を添加する前に、まずCaCO3がデンプン浴内に取り込まれ、そして、分散するまで攪拌が延長された。
【0178】
該組成物の各々は、非リサイクルパルプをベースとした160g/m2の秤量を有し且つバルクサイジング(bulk sizing)を有する繊維質紙基材の片面に施与される。そのような基材は、慣用的に、包装用厚紙の為に使用されている。表面処理は、鉛筆塗布方法(pencil application process)に従って実施される。コーティングの各々は、上記されているようにその疎水特性に関して分析され、そして、測定された値は下記の表4において示されている。
【0179】
【0180】
これらの結果により、疎水性にタイするDDACの存在の影響(対照J 対 対照I)、及びこの疎水性を回復させる際のカチオン性サイズ剤の有効性(試験K~M 対 対照試験)が確認された。
【0181】
抗ウイルス活性は、上記の材料及び方法の項において記載された方法に従って、コロナウイルスOC43株を用いた試験Mについて測定された。得られたウイルス量の減少は、抗菌剤処理無しの基準繊維質基材に対して3.1-logであった。それ故に、本発明に従う組成物は、繊維質基材に有効な抗ウイルス保護を与えることが判明した。
【0182】
試験Mはまた、炭酸カルシウムをまた含む組成物10で処理された媒体が、試験Kで観察された摩擦係数と比較して、有利に改善された摩擦係数を有することを明らかにした。
【0183】
実施例5:本発明の殺生物性組成物の製造
【0184】
まず11.4重量%の調理済みトウモロコシデンプンから水性デンプン浴が作られ、そして、均質な混合物が得られるまで、全体が65℃に加熱された。
【0185】
この浴の96.5重量%の調理済みトウモロコシデンプンと、15重量%のAI含量を有する3.9重量%の表面サイズ剤Aquapel J 215と、50重量%のDDAC含量を有する0.5重量%のDDAC溶液とを含む組成物11が、実施例1において記載されたプロトコルと同様のプロトコルに従って製造された。
【0186】
この組成物11は、190g/m2の再生パルプ紙上にサイズプレスで表面処理することによって堆積された。乾燥堆積量は9.5g/m2であった。
【0187】
上記の材料及び方法の項において詳述された方法に従って得られたCobb値は49.2g/m2であった。コロナウイルスHCoV-229E株によるウイルス量の減少は、抗菌剤処理無しの基準繊維質基材に対して1.6-logであった。
【0188】
期待された抗ウイルス性と疎水性とが確かに観察された。
【0189】
実施例6:本発明の殺生物性組成物の製造
【0190】
7.8重量%のポリビニルアルコール含有量を有する市販品Mowiol 10-98を96重量%と、80重量%のDDAC含量を有するDDAC溶液を2重量%と、30重量%のAI含有量を有するBasoplast 270D表面サイズ剤を1.5重量%と、市販品Fennostrength XO(PAE樹脂)を0.5重量%とを含む組成物12が製造される。
【0191】
このようにして形成された組成物12が、次に、未漂白のクラフトパルプ(unbleached kraft pulp)から製造された115g/m2の紙上に、サイズプレスで表面処理することによって堆積された。乾燥堆積量は1.8g/m2であった。
【0192】
上記の材料及び方法の項において詳述された方法に従って測定されたCobb値は42g/m2であった。上記された方法に従ってコロナウイルスOC43株で評価したウイルス量は、抗菌剤処理無しの基準繊維状基質に対して3-log以上であった。
【0193】
期待された抗ウイルス保護及び疎水性が確かに観察された。
【国際調査報告】