(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】超高純度フッ化水素の精製方法および装置
(51)【国際特許分類】
C01B 7/19 20060101AFI20240517BHJP
B01D 3/14 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
C01B7/19 C
B01D3/14 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571429
(86)(22)【出願日】2022-01-27
(85)【翻訳文提出日】2023-11-16
(86)【国際出願番号】 KR2022001423
(87)【国際公開番号】W WO2022255586
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】10-2021-0072104
(32)【優先日】2021-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515103674
【氏名又は名称】ラムテクノロジー株式会社
【氏名又は名称原語表記】RAM TECHNOLOGY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】285,Jubuk-ro,Yangji-myeon,Cheoin-gu,Yongin-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ギル ジュン-イン
(72)【発明者】
【氏名】チャン ヨン-ス
(72)【発明者】
【氏名】イ ファン-ピョン
【テーマコード(参考)】
4D076
【Fターム(参考)】
4D076AA16
4D076AA22
4D076BB03
4D076BB23
4D076EA02Y
4D076EA03X
4D076EA08Z
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4D076EA14Z
4D076EA20X
4D076EA20Y
4D076HA03
(57)【要約】
本発明は、フッ化水素の代わりに粗フッ化水素をそのまま多段蒸留塔に投入して連続蒸留工程により精製しかつ、不純物であるヒ素フッ化物の含有量に応じてF
2ガスの濃度が自動制御されたフッ素ガスとの接触によりフッ化水素中の不純物を除去する超高純度フッ化水素の精製方法および装置を開示する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料供給部から粗(crude)フッ化水素を提供するステップと、
前記粗フッ化水素を多段蒸留塔に供給して分別蒸留後、蒸留塔内の不純物を抽出除去し、蒸留されたフッ化水素は次の多段蒸留塔に搬送する連続式蒸留工程を行うステップと、
前記粗フッ化水素が投入された多段蒸留塔に不純物中のAsF
3の除去のためのF
2ガスと不活性ガスとを含むガスストリームを注入するステップと、を含み、
前記ガスストリームは、前記多段蒸留塔を通過したフッ化水素ガス中に含有されたAsF
3の含有量に応じて濃度が調節されたものを使用する、超高純度フッ化水素の精製方法。
【請求項2】
前記粗フッ化水素は、前処理工程が行われないものである、請求項1に記載の超高純度フッ化水素の精製方法。
【請求項3】
前記粗フッ化水素は、液体または気体状態で投入される、請求項1に記載の超高純度フッ化水素の精製方法。
【請求項4】
前記ガスストリームは、F
2ガス:不活性ガスが10:90~90:10重量%含まれる、請求項1に記載の超高純度フッ化水素の精製方法。
【請求項5】
前記不活性ガスは、He、N
2、およびArからなる群より選択された1種以上である、請求項1に記載の超高純度フッ化水素の精製方法。
【請求項6】
追加的に、前記F
2ガスと不活性ガスとを含むガスストリームは、粗フッ化水素が投入されない他の多段蒸留塔にも注入される、請求項1に記載の超高純度フッ化水素の精製方法。
【請求項7】
前記超高純度フッ化水素中のAsF
3がppt以下で存在する、請求項1に記載の超高純度フッ化水素の精製方法。
【請求項8】
追加的に、前記ガスストリームは、残りの多段蒸留塔にも投入する、請求項1に記載の超高純度フッ化水素の精製方法。
【請求項9】
粗(crude)フッ化水素原料供給のための原料供給部と、
連続式蒸留工程を行うための複数の多段蒸留塔を備えた蒸留精製部と、
前記多段蒸留塔内のF
2ガスと不活性ガスとを含むガスストリームを供給するためのガス供給部と、
超高純度フッ化水素を回収するための回収部と、
連続的な工程が可能に工程制御のための高度工程制御部とを備え、
前記高度工程制御部により、前記多段蒸留塔を通過したフッ化水素ガス中に含有されたAsF
3の含有量に応じて濃度が調節されたガスストリームを、粗フッ化水素の投入された多段蒸留塔に供給する、超高純度フッ化水素の精製装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超高純度フッ化水素を製造できる精製方法および装置を開示する。
【背景技術】
【0002】
フッ化水素(HF)は多様な産業分野で使用されている。前記フッ化水素はフッ素化合物の中で最も普遍的に生産されており、無水(anhydrous)形態のフッ化水素および超純水が含まれた水溶液(hydrous)状態のフッ酸状態で供給される。
【0003】
フッ酸は、フッ化水素原料を用いた蒸留法、電気分解法、吸着法、そして膜分離法などの多様な精製工程により生産され(特許文献1~3)、この中でも分別蒸留工程を用いた蒸留法が広く使用されている。
【0004】
フッ化水素は、蛍石(CaF2)に硫酸を添加すると同時に加熱する過程により製造する。前記反応により生産された粗(crude)フッ化水素は、フッ化水素のほか、SO2と極微量のAsF3、BF3、PF5、SiF4、FeF3、SF6などの多様な不純物を含む。前記不純物は前処理工程を含む多様な精製工程により除去されて、通常、99.9%純度のフッ化水素を用いて工業用フッ酸の生産が可能である。
【0005】
工業用フッ酸のような低純度フッ酸は工業用途に使用されており、半導体とディスプレイのエッチングおよび洗浄用途においては超高純度のフッ酸が必要である。
【0006】
エッチングおよび洗浄用途に使用される超高純度フッ酸の場合、無水フッ酸を一定の比率で超純水で希釈したフッ酸を使用し、このような半導体製造工程用フッ酸に不純物が存在すれば、エッチングおよび洗浄時にウエハに残留してパターン形成欠陥(Defect)発生の原因になり、半導体生産の歩留まりを低下させる。そこで、不良率を低下させるために、超高純度フッ化水素、なかでも金属不純物の濃度が数pptに制御された超高純度フッ化水素を使用している。しかし、フッ化水素の純度を高めるほど精製費用が増加し、保管および取扱中の汚染に対する注意が要求され、生産効率および高純度フッ化水素への製品転換率が低いというデメリットがある。
【0007】
フッ化水素中に含有された不純物は大部分蒸留精製により除去が可能であるが、不純物のうちヒ素(As)のような不純物は無水フッ酸中の三フッ化ヒ素(AsF3)として存在し、このような不純物は沸点が57.13℃でフッ酸(HF)の沸点である19.5℃と差が大きくなく、共沸点(azeopropic)を形成することから蒸留精製による分離が容易でない。
【0008】
ヒ素フッ化物は、半導体素子の特性への悪影響だけでなく、装置腐食および環境的な面での問題を誘発するので、超高純度フッ化水素製造工程中に必ず除去することが好ましい。
【0009】
かつて過酸化水素や過マンガンカリウムなどの酸化剤水溶液をフッ化水素と混合して、前記フッ化水素中のヒ素フッ化物を除去して高純度フッ化水素を製造する方法が提案された。しかし、このような方法は、使用される酸化剤水溶液の水にフッ化水素が一部溶解して生産量のロス(loss)および大量の反応副生物が発生し、前記水分が含まれたフッ化水素は腐食性がフッ化水素に比べて急激に増加し、生産設備のPM(preventive maintenance)周期が早くなって工程の生産性が低下するなど、工程上の問題およびフッ化水素による安定性の問題が一緒に生じる。
【0010】
さらに、ヒ素のような不純物除去の前処理工程は、フッ化水素からフッ酸の生産工程前に行い、前処理工程による装置の追加および工程費用の増加をもたらす。また、前処理を行ってもフッ化水素中に残留する不純物は精製工程で容易に除去されないため、高純度、特に超高純度のフッ化水素の生産が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】大韓民国公開特許第10-2006-0014138号
【特許文献2】大韓民国公開特許第10-2013-0141402号
【特許文献3】日本国特開第1994-144805号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
既存の技術でフッ化水素の場合は蛍石(CaF2)から製造するが、大量の環境性廃棄物の発生により生産費用が大きく増加しうるという問題点を解決すべく、超高純度フッ化水素の生産に関連する研究を続けてきた。
【0013】
超高純度フッ化水素を生産するための工程は、粗フッ化水素の前処理工程および精製工程の順に行われるが、本発明では、前処理工程を除いて粗フッ化水素を原料として精製工程を行うことにより、超高純度フッ化水素を製造できる方法を提案する。また、本発明は、前処理工程なくても超高純度フッ化水素を生産するために多角的な研究を行ってきた結果物である。
【0014】
その結果、気体状と液体状に共存する多段蒸留塔内部の粗フッ化水素中の不純物を酸化させて除去できるガスストリームを投入しかつ、投入工程プロセッサとして高度工程制御(Advanced Process Control、APC)モジュールを適用して、原材料である粗フッ化水素の品質に応じて即刻精製工程に適用して、超高純度フッ化水素を高い量産転換率で連続的に製造することができた。
【0015】
したがって、本発明は、粗フッ化水素を原料として超高純度フッ化水素を製造できる精製方法および装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するために、本発明は、
原料供給部から粗(crude)フッ化水素を提供するステップと、
前記粗フッ化水素は多段蒸留塔に供給して分別蒸留後、前記蒸留塔内の不純物を抽出除去し、蒸留されたフッ化水素は次の多段蒸留塔に搬送する連続式蒸留工程を行うステップと、
前記粗フッ化水素が投入された多段蒸留塔に不純物中のAsF3の除去のためのF2ガスと不活性ガスとを含むガスストリームを注入するステップと、を含み、
前記ガスストリームは、前記多段蒸留塔を通過したフッ化水素中に含有されたAsF3の含有量に応じて濃度が調節されたものを使用する、超高純度フッ化水素の精製方法を提供する。
【0017】
追加的に、前記F2ガスと不活性ガスとを含むガスストリームは、粗フッ化水素が投入されない他の多段蒸留塔にも注入される。
【0018】
また、本発明は、
粗(crude)フッ化水素原料供給のための原料供給部と、
連続式蒸留工程を行うための複数の多段蒸留塔を備えた蒸留精製部と、
前記多段蒸留塔内のF2ガスと不活性ガスとを含むガスストリームを供給するためのガス供給部と、
超高純度フッ化水素を回収するための回収部と、
連続的な工程が可能に工程制御のための高度工程制御部とを備え、
前記高度工程制御部により、前記多段蒸留塔を通過したフッ化水素中に含有されたAsF3の含有量に応じて濃度が調節されたガスストリームを、粗フッ化水素の投入された多段蒸留塔に供給する、超高純度フッ化水素の精製装置を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明による超高純度フッ化水素の精製工程は、連続供給で行われ、生産設備の点検やPM(preventive maintenance)が必要な場合、フッ化水素の流れが停止する必要があって中断されるまで前記工程は連続的に繰り返し行われることが可能である。
【0020】
また、原料として使用するフッ化水素の前処理なしに粗フッ化水素を使用することにより、工程が簡素化されると同時に前処理費用が低減される。特に、粗フッ化水素が導入される一番目の多段蒸留塔内にガスストリームを導入して不純物を最小化することができる。
【0021】
さらに、粗フッ化水素中の不純物の組成や含有量が一定でなくても高い効率で品質が均一な超高純度フッ化水素の製造が可能である。
【0022】
このような方法は、精製工程が簡素化されて経済的かつ効率的に超高純度フッ化水素の生産を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明による超高純度フッ化水素精製のために使用する模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態によるフッ化水素精製のための装置を示す模式図である。
【
図3】APCモジュールによるF
2ガス濃度の制御の手順を示す。
【
図4】本発明の他の実施形態によるフッ化水素精製のための装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、原料供給部から粗(crude)フッ化水素を提供するステップと、
前記粗フッ化水素は多段蒸留塔に供給して分別蒸留後、前記蒸留塔内の不純物を抽出除去し、蒸留されたフッ化水素は次の多段蒸留塔に搬送する連続式蒸留工程を行うステップと、
前記粗フッ化水素が投入された多段蒸留塔に不純物中のAsF3の除去のためのF2ガスと不活性ガスとを含むガスストリームを注入するステップと、を含み、
前記ガスストリームは、前記多段蒸留塔を通過したフッ化水素中に含有されたAsF3の含有量に応じて濃度が調節されたものを使用する、超高純度フッ化水素の精製方法に関する。
【0025】
また、本発明は、粗(crude)フッ化水素原料供給のための原料供給部と、
連続式蒸留工程を行うための複数の多段蒸留塔を備えた蒸留精製部と、
前記多段蒸留塔内のF2ガスと不活性ガスとを含むガスストリームを供給するためのガス供給部と、
超高純度フッ化水素を回収するための回収部と、
連続的な工程が可能に工程制御のための高度工程制御部とを備え、
前記高度工程制御部により、前記多段蒸留塔を通過したフッ化水素中に含有されたAsF3の含有量に応じて濃度が調節されたガスストリームを、粗フッ化水素の投入された多段蒸留塔に供給する、超高純度フッ化水素の精製装置に関する。
【実施例】
【0026】
本明細書において、用語「超高純度フッ化水素」は、99.9999%(6N)以上の純度の気体を意味するものと当業界で認識される。前記超高純度フッ化水素は、十億分の一(ppb、part per billion、109)以下、好ましくは、一兆分の一(ppt、part per trillion、1012)、千兆分の一(ppq、part per quadrillion、1015)水準に特定の不純物を除去する。
【0027】
本発明で言及する「超高純度フッ化水素中の不純物」は、HF以外のすべての組成を意味し、主要不純物としては、SO2、AsF3、BF3、SiF4、FeF3、SF6、およびPF5を含む。
【0028】
この時、多段蒸留によりフッ化水素中のAsF3を除いた不純物は除去が容易なため、当該発明により低減しようとする不純物は、実質的にAsF3である。
【0029】
すなわち、本発明のガスストリームを用いた不純物の除去において実質的な不純物はAsF3と見なされる。この時、AsF3は3価のヒ素フッ化物であり、その酸化形態であるAsF5は5価のヒ素フッ化物である。
【0030】
本発明は、原料として粗(crude)フッ化水素を投入して24時間連続的に精製工程が可能であり、自動制御によりppt以下、好ましくは、ppq水準に不純物が除去された超高純度フッ化水素を生産できる精製方法および精製装置を提示する。
【0031】
以下、図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。実施例の説明において同一の構成については同一の参照符号を付し、場合によっては、同一の参照符号に関する説明は省略する。
【0032】
図1は、本発明による超高純度フッ化水素精製のために使用する模式図である。
【0033】
図1をみると、超高純度フッ化水素の精製は、粗(crude)フッ化水素原料供給のための原料供給部100と、連続式蒸留工程を行うための複数の多段蒸留塔を備えた蒸留精製部200と、前記多段蒸留塔にガスストリームを供給するためのガス供給部300と、超高純度フッ化水素を回収するための回収部400と、連続的な工程が可能に工程制御のための高度工程制御部500とを備える。
【0034】
原料供給部100は、超高純度フッ化水素の原料になる粗(crude)フッ化水素を供給するための装置であり、蛍石と硫酸との反応によって生産された粗フッ化水素を含む貯蔵タンクを備える。
【0035】
従来のフッ化水素精製のための原料のフッ化水素は、前処理により不純物がppm水準に除去された原料を使用しているが、本発明では、フッ化水素精製のために原料供給部100内に投入された原料は粗フッ化水素を使用する。前記粗フッ化水素は、蛍石と硫酸との反応によって得られた粗フッ化水素および過剰の不純物(%水準)を含むもので、別の前処理を行わない原料である。このような粗フッ化水素の使用により、従来のフッ化水素に比べて原料の需給費用を大きく低減し、前処理工程を排除することにより、工程の単純化および生産コストの低減を図ることができる。
【0036】
原料供給部100の粗フッ化水素は、液体状態で次の蒸留精製部200に直接供給されるか、気体状態に気化させて供給される。この時、気体状態での供給は性状変化のみあるもので、別の前処理工程の用語は含まない。
【0037】
蒸留精製部200は、分別蒸留工程により粗フッ化水素中の不純物を除去し、超高純度フッ化水素を得るための装置である。
【0038】
分別蒸留工程は、回分式蒸留工程と連続式蒸留工程が可能であり、この中でも連続式蒸留工程、なかでも2個以上の蒸留段を有し、連続蒸留が可能な連続多段蒸留塔を通過させる連続式蒸留工程で行う。
【0039】
連続式蒸留工程は、粗フッ化水素を気化させて濃縮精製を行う多段蒸留塔と、粗フッ化水素を加熱してフッ化水素蒸気を発生させる再沸器(reboiler)とを備える。
【0040】
多段蒸留塔は、2~50個の理論段(theoretical stage)を有し、一例として、3~40段の理論段を有する。再沸器によって加熱されると、多段蒸留塔内には液体状態の粗フッ化水素とともに気体状態のフッ化水素および不純物が共存し、前記気体状態の組成は、多段蒸留塔の塔頂領域、中間領域および塔底領域に分離される。低沸点の不純物は塔頂領域に搬送して排出され、高沸点の不純物は塔底領域に搬送されて排出される。フッ化水素は中間領域に位置して、連続的に次の多段蒸留塔に搬送される。
【0041】
蒸留精製部200は、2個以上、3~40個、4~25個の多段蒸留塔が連結され、前記多段蒸留塔の連続的な通過により超高純度フッ化水素の製造が可能である。前記多段蒸留塔は互いに配管連結され、これらは直列、並列またはこれらの混合された状態で整列可能であり、好ましくは、直列状態で連結されたものであってもよい。
【0042】
ガス供給部300は、粗フッ化水素中の不純物、特にAsF3を除去するためのガスストリームを供給するための装置である。ガスストリームは、F2ガスとこれを搬送および希釈するための不活性ガスとを含む。
【0043】
F2ガス(フッ化ガス)は、フッ化水素の電気分解によって製造されて価格が非常に高いガスであり、これを使用する時、どれだけ効果的な方法で使用するかによって超高純度フッ化水素のコストが異なる。
【0044】
従来のJP2005-281048号において、フッ化水素にF2ガスを5分以上混合後にフッ化水素を精製する方式が提示されたが、この方法は、バッチ式に限定されたもので、連続工程によるフッ化水素の精製に好適でなく、適用するとしてもF2ガスを過度に使用する恐れがある。
【0045】
本発明は、下記に説明する高度工程制御部500のAPCモジュールの適用によりF2ガスを連続工程に適用しかつ、最も効果的な投入方式を設計した。F2ガスは不活性ガスと混合して使用し、精製しようとする対象である粗フッ化水素中のAsF3の濃度に応じて前記F2ガスの投入量を決定する方式で行う。
【0046】
ガス供給部300から供給されるF2ガスは、粗フッ化水素中の高沸点のAsF3と酸化反応して低沸点のAsF5に変換されてガス形態で塔頂部で除去され、このような反応以外にも追加的にAsF5とともに存在するHFとのイオン反応により沸点の高いHAsF6に変換されて塔下部で容易に除去することができる。
【0047】
粗フッ化水素中に含有された不純物の大部分は、フッ化水素に比べて低沸点および高沸点に分けられ、これによって多段蒸留塔での蒸留工程で大部分除去されるが、3価のヒ素フッ化物(AsF3)の場合にその除去が非常に難しい。すなわち、高純度フッ化水素中に極微量含まれているAsF3(bp=62.8℃)などはそれ自体の沸点が高いが、フッ化水素と錯化物を形成して沸点が低くなってフッ化水素と類似していたりこれと共沸点(azeopropic)を形成して、分離が非常に難しい。
【0048】
フッ化水素中に含有された不純物の中で最も問題とされる3価のヒ素フッ化物を除去するためにF2ガスを注入する場合、下記の反応式のような酸化反応が起こる。
【0049】
[反応式1]
AsF3+F2→AsF5
[反応式2]
AsF5+HF→HAsF6
前記酸化反応により、3価のヒ素フッ化物であるAsF3は、F2ガスと反応して5価のヒ素フッ化物であるAsF5に転換される。この5価のヒ素フッ化物はbpが-52.8℃で、フッ化水素のbp(19.5℃)と沸点の差があって蒸留工程で分離が可能であり、また、HFと反応して高沸点錯化物を形成して分離がさらに容易になる。
【0050】
実質的に、一番目の多段蒸留塔に投入される粗フッ化水素中のAsF3の含有量はppm水準で、純粋な100%のF2ガスを使用する場合、フッ化水素と沸点の差が激しくて十分な反応条件を整えにくく、これによって工程費用が大きく増加する。そこで、本発明では、低費用高効率を得るために、F2ガスを不活性ガスで希釈した混合ガスを使用する。
【0051】
一番目の多段蒸留塔に液体状態または気体状態の粗フッ化水素が投入されると、再沸器によって気体状態に転換され、この時、気体状態の粗フッ化水素とF2ガスとの接触、すなわち気体-気体接触による酸化反応が起こる。また、液体状態の粗フッ化水素とF2ガスとの接触、すなわち液体-気体接触による酸化反応が起こる。このような2つの反応が同時に起こり、前記反応式1のような酸化反応を極大化することができる。
【0052】
F2ガスの投入は、粗フッ化水素が投入される多段蒸留塔、または追加的に残りのすべての多段蒸留塔に投入される。各多段蒸留塔内のヒ素フッ化物の含有量に差があって、少量で最上の効果を確保するために、前記残留するヒ素フッ化物の含有量に対応してF2ガスを所定の濃度に希釈した状態で多段蒸留塔に投入する。
【0053】
本発明のガスストリームの不活性ガスは、He、N2、およびArのいずれか1つ以上のガスであり、好ましくは、N2を使用する。
【0054】
ガスストリームのF2ガス:不活性ガスは、10:90~90:10重量%の範囲内で多様に濃度を調節することができる。F2ガスの含有量が増加するほどAsF3のAsF5への酸化反応参加の可能性が高まるが、多段蒸留塔に粗フッ化水素の滞留時間を考慮する時、AsF3とF2ガスとの接触に制限がある。このため、費用的な面を考慮する時、F2ガスは、粗フッ化水素の不純物の濃度に応じて調節することが好ましい。
【0055】
前記ガスストリームのF2ガスと不活性ガスは、多段蒸留塔に同時に投入するか、その前に混合して混合ガス形態で投入される。
【0056】
一実施形態として、一番目の多段蒸留塔を通過したフッ化水素中のAsF3の含有量が100ppm以上の場合、投入されるF2ガスの濃度は0.1~0.2%の含有量となるようにし、10~100ppbの場合には、0.005~0.01%の濃度となるようにする。
【0057】
回収部400は、蒸留精製部200を通過して精製された超高純度フッ化水素を回収するための装置である。超高純度フッ化水素は、最後の多段蒸留塔を通過した後、気体状態で回収されるか、凝縮器を経て液化された液体状態で回収される。
【0058】
前記原料供給部100、蒸留精製部200、ガス供給部300および回収部400による粗フッ化水素から超高純度フッ化水素の精製は、連続的な工程が可能に工程制御のために高度工程制御部500で自動制御される。
【0059】
高度工程制御部500は、高度工程制御(Advanced Process Control、以下、「APC」という)モジュールを含む装置である。
【0060】
APCモジュールとは、多くの工程運転変数間の動特性の関係を同時に考慮した数学的モデルで構成されて、安定的で経済的な最適な運転条件を維持するように制御する多変数予測制御技術を意味する。前記APCモジュールは、工場の設備補強ではない、Softwareを用いて工場全体の効率性および運転の便宜性を高める技術である。
【0061】
粗フッ化水素から超高純度フッ化水素の精製工程をAPCモジュールで制御することにより、製品の歩留まり向上およびアップグレードが行われ、運転費用およびGivewayが減少する。また、原料として使用する粗フッ化水素の品質が互いに異なっていても、最終的に得られる超高純度フッ化水素の品質を均一化することができ、運転上の柔軟性(Flexibility)を向上させることができる。これとともに、工程の効率性を増大させることにより、生産量と処理量を高めながらもエネルギー使用量の減少といった利益を創出することができる。
【0062】
化学工程は、工程の特性上、1つの調節変数を動かす時、1つの目的変数のみを考慮するのではなく、様々な状況を同時に考慮しなければならず、このために、運転に必要な調節変数と目的変数との相関関係を知っていなければならない。この相関関係を表現する動特性モデルがAPCモジュールの内部に含まれており、工程をより安定的で経済的に維持できるように制御するComputerを用いた多変数予測制御(Multi-Variable Predictive Control)技術である。前記多変数予測制御技術は、様々な調節変数が他の制御変数に及ぼす影響を同時に考慮して前記制御変数のそれぞれの目標値を満足できるように調節変数を同時に制御する技術である。実際に、運転Dataを用いて工程の操作変数(入力変数、調節変数、外乱変数)と制御変数(出力変数)の関係を表現するDynamic Modelを構成し、このDynamic Modelを活用して操作変数と制御変数の未来の動きを予測して制御することが可能になる。
【0063】
本発明の精製方法および装置を構成するにあたり、APCモジュールによる工程制御の最も大きな変数は、不純物の濃度といえる。
【0064】
原料供給部100は、高度工程制御部500により開閉信号を受信し、蒸留精製部200の開状態で粗フッ化水素を多段蒸留塔に供給する。前記多段蒸留塔によって精製処理されたフッ化水素は、連続的に搬送ラインを経て、次の多段蒸留塔に搬送する。前記多段蒸留塔にガス供給部300からガスストリームを供給して不純物を除去する。
【0065】
この工程で、多段蒸留塔に存在する粗フッ化水素、およびフッ化水素中の不純物の含有量に応じてガスストリームの処理の有無、処理されるガスストリームの濃度、ガスストリームの噴射量などが異なる。前記不純物の含有量は、多段蒸留塔内に存在する不純物の濃度の測定により得られる。
【0066】
濃度分析のために、これらのそれぞれに濃度測定のためのセンサが装着され、これは分析装置を介して高度工程制御部500に連結されたディスプレイに表示される。
【0067】
濃度分析方法は、不純物の種類によって区分されて、1つ以上の分析機器で測定され、本発明において特に限定しない。
【0068】
金属不純物は、誘導結合プラズマ質量分析器の設備Damageを考慮して、不純物の汚染がなく、均一な濃度で前処理可能な特殊装置により分析され、水分とイオン不純物はFT-IR、そしてガス形態の不純物はGCにより精密に分析する。
【0069】
不純物の濃度に適切なガスストリームを設計し、前記測定された不純物の濃度をAPCモジュールに送り、不純物の濃度の設定値に応じて一次ガスストリーム投入、二次ガスストリーム投入およびn次ガスストリーム投入時のガスストリームの組成、処理時の噴射量などを変更する。このような変更方式により、原料として使用する粗フッ化水素の品質が異なっていても、最終的に得られるフッ化水素は均一な品質の超高純度物質として得ることができる。
【0070】
特に、本発明による精製方法および精製装置は、連続工程が可能であり、APCモジュールで工程を制御することによって自動制御による24時間運転が可能であって、低費用で超高純度フッ化水素の生産量および処理量を向上させることができるというメリットがある。
【0071】
前述した構成を用いて、本発明による超高純度フッ化水素の生産工程を図面を参照して詳しく説明する。
【0072】
前記それぞれの装置は示さないが、流量調節器、圧力制御器、圧縮機、冷却器、凝縮器、貯蔵タンク、供給量調節バルブ、気液分離器、流量計、分析装置、分析試料採取装置、漏れ防止器、液体または気体搬送ポンプ、排気装置、過圧防止装置、自動化装置、各種センサ、温度計、質量計、圧力計、体積計測器などを追加的に含むことができる。
【0073】
図2は、本発明の一実施形態による超高純度フッ化水素の生産のための装置を示す模式図である。この時、多段蒸留塔は3個を示したが、これは説明のための一つの例示に過ぎず、実際の工程に適用するための多段蒸留塔の個数および配列方式は多様に変形可能である。
【0074】
以下、工程を説明する。
【0075】
原料である粗フッ化水素は、粗フッ化水素貯蔵タンク110から搬送ポンプ(図示せず)のポンピングまたは不活性ガスの加圧により搬送ライン122を経て、第1蒸留塔210の底部に搬送する。
【0076】
粗フッ化水素貯蔵タンク110内の粗フッ化水素は、液体状態で第1蒸留塔210に投入されるか、蒸発器600を経て気体状態で第1蒸留塔210に投入される。前記蒸発器600を用いた粗フッ化水素の気体状態の導入は、蒸発器600の下部に高濃度不純物が残留することから不純物除去効果がある。
【0077】
第1蒸留塔210に投入された粗フッ化水素は、分別蒸留により、低沸点および高沸点の不純物はそれぞれ塔頂および塔底領域の排出ライン218、219に沿って排出される。前記第1蒸留塔210から排出されたガスは、冷却器C1および回収器R1を経た後、不純物が一次的に除去されたフッ化水素が搬送ライン212に沿って第2蒸留塔220に搬送される。この時、第1蒸留塔210から供給された不純物は、冷却器C1および回収器R1を経た後、塔頂の排出ライン218を介して排出される。
【0078】
第1蒸留塔210内で分別蒸留により粗フッ化水素中のSO2をはじめとしてAsF3、BF3、PF5、SiF4、FeF3、SF6などの不純物の大部分が除去される。
【0079】
このうち、分離が難しいAsF3を除去するために、ガスストリーム貯蔵タンク310からF2ガス/不活性ガスの混合ガス、すなわちガスストリームを注入して酸化反応を行う。
【0080】
ガスストリームの注入は、上部から下部側へ噴射する下方噴射式方式、または下部から上部側へ噴射する上方噴射式方式とも使用可能である。このような方式は、設備工程に応じて異なり、粗フッ化水素とF
2ガスとの接触機会を高められる方式で行われる。
図2には、便宜上、下方噴射式方式を示した。
【0081】
ガスストリーム中のF2ガス/不活性ガスの投入は、APCモジュールによって一番目の蒸留塔で粗フッ化水素中に含有されたAsF3の除去濃度の測定により行われる。
【0082】
すなわち、第1蒸留塔210を通過したフッ化水素中に含有されたAsF3の濃度を測定して、これを最小化する方向に一番目の蒸留塔に投入されるF2ガスの濃度を制御する。
【0083】
図3は、APCモジュールによるF
2ガス濃度の制御の手順を示す。
【0084】
図3をみると、第1蒸留塔210に粗フッ化水素とF
2ガスを投入する。
【0085】
本工程におけるAPCモジュールの設定において、操作変数は、第1蒸留塔210に投入されるF2ガスの濃度になり、制御変数は、第1蒸留塔210を通過するAsF3の含有量に設定され、これら2つが最適化された定常値(steady state values)のセットをシミュレーションなどにより計算する。
【0086】
続いて、第1蒸留塔210を通過したフッ化水素中のAsF3の含有量を測定する。前記AsF3の含有量の測定は、第1蒸留塔210と搬送ライン212との連結部位に位置した排出口または搬送ライン212のいずれか1つの地点で測定される。この時、測定は、分析のための前処理による誘導結合プラズマ質量分析器などで測定可能である。
【0087】
測定されたAsF3の含有量はAPCモジュールに返信し、設定値以下(YES)の場合、工程を続ける。
【0088】
測定値が設定値より高い場合(NO)、APCモジュールによって第1蒸留塔210に投入されるF2ガスの濃度を調節する。前記APCモジュールの信号によって第1蒸留塔210に投入するガスストリーム混合装置310に連結されたF2ガス貯蔵タンク301および不活性ガス貯蔵タンク302の流量を流量制御器(図示せず)で調節して、ガスストリーム混合装置310に投入する。この時、濃度値が伝達されて流量制御値に入力されるまでAPCモジュールには実験またはシミュレーションにより得たデータテーブル、流量制御値計算のためのアルゴリズムなどが予め格納されていてもよい。
【0089】
このように、APCモジュールによって制御変数の設定値(setpoints)、上限値/下限値(hi/lo limits)、およびシステム撹乱(system disturbances)を含むパラメータを考慮して、前記定常値のセットと互換可能に操作変数を最適化して第1蒸留塔での蒸留工程を行う。
【0090】
その結果、APCモジュールを介して、工程中のフッ化水素中のAsF3の持続的な濃度変化に対して投入されるF2ガスの濃度に関連する即刻かつ能動的な迅速な対応が可能である。
【0091】
第1蒸留塔210の運転条件は、0.1~3barの圧力で10~60℃ の温度条件で行い、滞留時間は1~30分間行う。本発明では、前処理なしに粗フッ化水素を直接蒸留塔に投入するので、第1蒸留塔210での工程条件は、他の蒸留塔の工程条件とは異なる条件下で行う。
【0092】
F2ガスの投入によって第1蒸留塔210内では粗フッ化水素とF2ガスとが気体-気体接触および液体-気体接触による酸化反応が起こり、前記F2ガスの投入による効果を極大化することができる。このような技術は、気体状態のフッ化水素中のAsF3の除去のためにF2ガスを投入する場合、気体-気体接触による酸化反応のみ行うのとは異なり、液体-気体接触が同時に起こることが可能で、酸化反応を極大化できるというメリットがある。
【0093】
一方、
図3に示さないが、上方噴射式方式を用いる場合、噴射ノズル(図示せず)は、下部から上部側へガスストリームが噴射できるように配置する。前記噴射ノズル(図示せず)から噴射されたガスストリームは、下部から上部へ増加するにつれて噴射圧力が高いという利点がある。前記噴射ノズル(図示せず)から噴射されたガスストリーム中のF
2ガスは、下部から上部へ噴射する軌跡と、上部から下部へ重力によって落ちる液体状態の粗フッ化水素との接触機会が増加して、前記F
2ガスの投入による精製効果をさらに高めることができる。
【0094】
次に、一次蒸留および酸化工程が完了したフッ化水素は、二次蒸留を行うために、第2蒸留塔220に投入される。
【0095】
第2蒸留塔220に投入されたフッ化水素は、分別蒸留により、高沸点の不純物は塔底領域の排出ライン229に沿って排出される。また、精製されたフッ化水素は冷却器C2および回収器R2を経た後、前記精製されたフッ化水素は第3蒸留塔230に投入され、低沸点の不純物は塔頂の排出ライン228を介して排出される。この時、フッ化水素の一部は第2蒸留塔220に回収されて循環する。
【0096】
次に、二次蒸留工程が完了したフッ化水素は、三次蒸留を行うために、第3蒸留塔230の中間領域に投入される。
【0097】
第3蒸留塔230に投入されたフッ化水素は、分別蒸留により、高沸点の不純物は塔底領域の排出ライン239に沿って排出される。また、フッ化水素および低沸点の不純物は冷却器C3および回収器R3を経た後、前記フッ化水素は貯蔵ライン422を介して最終的に超高純度フッ化水素貯蔵タンク410に搬送され、低沸点の不純物は塔頂の排出ライン238を介して排出される。この時、フッ化水素の一部は第3蒸留塔230に回収されて循環する。
【0098】
前記第3蒸留塔230の不純物が除去された超高純度状態のフッ化水素は、落差による重力を利用して貯蔵ライン422に沿って超高純度フッ化水素貯蔵タンク410に搬送される。
【0099】
超高純度フッ化水素貯蔵タンク410内には、不純物がppq水準に含有された超高純度フッ化水素が充填され、この時、前記超高純度フッ化水素は保管温度を沸点以下として液体状態で保管する。
【0100】
F2ガスの注入は、上記で説明したように、粗フッ化水素が投入される一番目の多段蒸留塔だけでなく、残りの多段蒸留塔にも投入してフッ化水素の精製効果をさらに高めることができる。
【0101】
本発明の他の実施形態による超高純度フッ化水素の精製方法および装置を提示する。
【0102】
図4は、本発明の他の実施形態による超高純度フッ化水素の生産のための装置を示す模式図である。
【0103】
図4を参照すれば、追加のガスストリーム混合装置310、320、330が第1蒸留塔210、第2蒸留塔220と第3蒸留塔230にそれぞれ連結される。これらは、
図2のように、F
2ガス貯蔵タンク(図示せず)および不活性ガス貯蔵タンク(図示せず)とそれぞれ配管連結される。前記それぞれのF
2ガス/不活性ガスの貯蔵タンクは、流量制御のためのそれぞれの流量バルブおよび流量制御器とともにAPCモジュールに連結される。別途に示さないが、F
2ガスおよび不活性ガスの供給はそれぞれ独立に、または1つの貯蔵タンクに連結されていてもよいし、これらの不活性ガスはそれぞれの供給ラインL1、L2、L3を介して、F
2ガスはそれぞれの供給ラインM1、M2、M3を介して供給される。
【0104】
図4にて、第1蒸留塔210から通過したフッ化水素は、搬送ライン212を介して第2蒸留塔220を経て蒸留工程を行い、搬送ライン222を介して第3蒸留塔230に搬送されて連続的な蒸留工程を行う。
【0105】
この時、第1蒸留塔210は、搬送ライン212から供給された粗フッ化水素中のAsF3の含有量を測定して、APCモジュールに信号を印加して前記AsF3の含有量が設定値を超える場合、F2ガス供給ラインM1および不活性ガス供給ラインL1の流量バルブを調節して、第1ガスストリーム混合装置310内のF2ガスの濃度を調節する。このように調節された濃度を有するガスストリームを第1蒸留塔210に投入して反応工程を行う。
【0106】
このような工程は、第2蒸留塔220および第3蒸留塔230においても同様に行う。
【0107】
第1蒸留塔210、第2蒸留塔220および第3蒸留塔230におけるF2ガスの投入は、気体状態のフッ化水素ガスと気体-気体接触反応による酸化反応が起こる。この時、酸化反応を高めるために、第1蒸留塔210、第2蒸留塔220および第3蒸留塔230の内部は渦流を形成可能な渦流発生器(図示せず)を設けたり、ガスストリームの噴射方式を異ならせて、前記酸化反応を最大化できるようにする。
【0108】
本発明による超高純度フッ化水素の精製工程は、原料およびガスストリームの連続供給で行われ、生産設備の点検やPMが必要な場合、フッ化水素の流れが停止する必要があって中断されるまで前記工程は連続的に繰り返し行われることが可能である。
【0109】
また、従来原料として使用するフッ化水素の前処理なしに、蛍石と硫酸との反応により製造された粗フッ化水素を使用することにより、工程が簡素化されると同時に前処理費用が低減される。
【0110】
これとともに、粗フッ化水素中の不純物の組成や含有量が一定でなくても、高い効率で超高純度フッ化水素の製造が可能である。このように製造された超高純度フッ化水素水分の濃度が最小化されて安定度が非常に優れるという利点がある。
【0111】
本発明により回収されるフッ化水素不純物(特に、ヒ素フッ化物)の含有量がppq水準を有する超高純度フッ化水素であって、半導体とディスプレイのエッチングおよび洗浄用途のような高純度のフッ化水素とフッ酸が要求される分野に好ましく適用可能である。
【0112】
[実施例]
以下、本発明の実施例について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0113】
実施例1
連続多段蒸留塔として、
図1に示すように、3個の多段蒸留塔が直列連結された装置を用いた。
【0114】
原料として中国のA社からの粗フッ化水素を購入して、第1蒸留塔に連続的に2.19トン/時間で供給し、分別蒸留を行った。
【0115】
塔底部の温度は32℃、塔頂部の温度は30℃となるように設計し、塔頂部の圧力は0.5bar、還流比1:3の条件下で連続的に蒸留を行った。この時、第1蒸留塔でF2/N2ガスが90:10%の混合ガスを1kg/時間で蒸留塔の下端に連続的に供給して酸化反応を行い、低沸点および高沸点不純物は0.066トン/時間で連続的に抽出した。
【0116】
塔頂部で酸化反応および精製されて冷却されたフッ化水素は2.124トン/時間の速度で搬送ラインを経て、第2蒸留塔側に搬送した。
【0117】
この時、第2蒸留塔の運転条件は第1蒸留塔と同様に行い、低沸点および高沸点不純物は0.044トン/時間で連続的に抽出した。
【0118】
第2蒸留塔を通過したフッ化水素は2.08トン/時間の速度で第3蒸留塔に供給して分別蒸留を行った。この時、蒸留塔の運転条件は第1蒸留塔と同様に行い、低沸点および高沸点不純物は0.043トン/時間で連続的に抽出した。
【0119】
第3蒸留塔を通過したフッ化水素は搬送ラインを介して2.037トン/時間の速度で連続的に貯蔵タンクに貯蔵した。
【0120】
このような条件で長期間の連続運転を行い、500時間後、2000時間後、4000時間後、5000時間後、6000時間後の1時間あたりの超高純度フッ化水素の製造量は2.037トン、2.037トン、2.037トン、2.037トン、2.037トンと非常に安定していた。
【0121】
実施例2
前記実施例1と同様の工程で行い、粗フッ化水素は第1蒸留塔に投入する前に蒸発器を通過させて気体状態で第1蒸留塔に投入した。
【0122】
実施例3
前記実施例1と同様の工程で行い、第2蒸留塔および第3蒸留塔にF2/N2ガスが4:6%、2:8%の混合ガスをそれぞれ1kg/時間で供給した。
【0123】
比較例1
F2/N2ガスの注入なしに、実施例1と同様の方法で行ってフッ化水素を精製した。
【0124】
比較例2
実施例3と同様に行い、F2/N2ガスを第1蒸留塔を除いた第2蒸留塔および第3蒸留塔にのみ注入してフッ化水素を精製した。
【0125】
試験例1
実施例および比較例で精製されたフッ化水素中の不純物の含有量を測定し、その結果を下記表1に示した。この時、不純物は前処理後、超純水で希釈してフッ酸49%の状態でイオンクロマトグラフィー質量分析法、誘導結合プラズマ質量分析方法で測定した。
【0126】
【表1】
前記表を参照すれば、本発明により、粗フッ化水素が投入された多段蒸留塔にF
2ガス/不活性ガスのガスストリームを注入して処理する場合、最終フッ化水素中にppt以下の水準、すなわちppq水準に含まれることが分かる。
【0127】
また、比較例1および2の場合、第3蒸留塔精製後の結果をみると、B、Ti、CaおよびFeの含有量はある程度低下させることができたが、Asの含有量が非常に高くて、Asの除去のためには、実施例1~3の工程で進行させることが好ましいことが分かる。
【0128】
特に、実施例1~3の場合、一番目の多段蒸留塔でF2ガス/不活性ガスを投入することにより、Asの含有量が比較例1および2に比べて大きな数値に低くなることが分かった。これとともに、実施例3のように、第2および第3蒸留塔にガスストリームを注入する場合、最も優れた試験結果を示した。
【符号の説明】
【0129】
100:原料供給部
200:蒸留精製部
300:ガス供給部
400:回収部
500:高度工程制御部
600:蒸発器
110:粗フッ化水素貯蔵タンク
122:原料搬送ライン
210:第1蒸留塔
220:第2蒸留塔
230:第3蒸留塔
218、219、228、229、238、239:排出ライン
301:F2ガス貯蔵タンク
302:不活性ガス貯蔵タンク
310:第1ガスストリーム混合装置
320:第2ガスストリーム混合装置
330:第3ガスストリーム混合装置
410:超高純度フッ化水素貯蔵タンク
422:貯蔵ライン
C1、C2、C3:冷却器
R1、R2、R3:回収器
L1、L2、L3:不活性ガス供給ライン
M1、M2、M3:F2ガス供給ライン
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明により、回収されるフッ化水素中の不純物(特に、ヒ素フッ化物)の含有量がppq水準を有する超高純度フッ化水素であって、半導体とディスプレイのエッチングおよび洗浄用途のような高純度のフッ化水素およびフッ酸が要求される分野に好ましく適用可能である。
【国際調査報告】