(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】低損失磁気誘電材料
(51)【国際特許分類】
C04B 35/26 20060101AFI20240517BHJP
C01G 49/00 20060101ALI20240517BHJP
H01F 1/34 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
C04B35/26
C01G49/00 C
C01G49/00 E
H01F1/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571677
(86)(22)【出願日】2022-05-16
(85)【翻訳文提出日】2023-11-17
(86)【国際出願番号】 US2022029361
(87)【国際公開番号】W WO2022245686
(87)【国際公開日】2022-11-24
(32)【優先日】2021-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521138305
【氏名又は名称】ロジャーズ・コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヤジエ・チェン
(72)【発明者】
【氏名】ランス・ヤング
(72)【発明者】
【氏名】キファン・リ
(72)【発明者】
【氏名】メーガン・ホット
【テーマコード(参考)】
4G002
5E041
【Fターム(参考)】
4G002AA08
4G002AA10
4G002AB01
4G002AD04
4G002AE05
5E041AB11
5E041AB19
5E041BB03
5E041BD12
5E041CA08
5E041NN02
5E041NN06
5E041NN18
(57)【要約】
一態様では、Co2Z型フェライトは、少なくともMe、Co、Mo、Li、及びFeの酸化物を含み、Meは、Ba又はSrのうちの少なくとも1つである。別の態様では、Co2Z型フェライトは、ある量のモリブデン酸リチウムを含むZ型ヘキサフェライトを含む。別の態様では、Co2Z型フェライトは、式Li2MoO4BaxSr3-xCo2+y-zMe’yMe”zFe24-2y-mO41を有し、Me’は、Ti、Mo、Ru、Ir、Zr、又はSnのうちの少なくとも1つであり、Me”は、Zn、Mn、又はMgのうちの少なくとも1つであり、xは、0~3であり、yは、0~1.8であり、zは、0~1.8であり、mは、-4~4である。更なる別の態様では、Co2Z型フェライトを製造する方法は、初期Co2Z型フェライト及びLi2MoO4を粉砕して混合フェライトを形成する工程、並びに混合フェライトを焼成してCo2Z型フェライトを形成する工程を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともMe、Co、Mo、Li、及びFeの酸化物
を含み、
Meが、Ba又はSrのうちの少なくとも1つである、
Co
2Z型フェライト。
【請求項2】
Co
2Z型フェライトが、式Li
2MoO
4・Ba
xSr
3-xCo
2+y-zMe’
yMe”
zFe
24-2y-mO
41を有し、Me’が、Ti、Mo、Ru、Ir、Zr、又はSnのうちの少なくとも1つであり、Me”が、Zn、Mn、又はMgのうちの少なくとも1つであり、xが、0~3であり、yが、0~1.8であり、zが、0~1.8であり、mが、-4~4である、請求項1に記載のCo
2Z型フェライト。
【請求項3】
xのうちの少なくとも1つが、0.1~3、若しくは0.8~2、若しくは1~2、若しくは3であるか、
yが、0、若しくは0.1~1.5、若しくは0.5~1であるか、
zが、0、若しくは0.1~1.5、若しくは0.5~1であるか、又は
mが、-3~3、若しくは0~4、若しくは2~3である、
請求項2に記載のCo
2Z型フェライト。
【請求項4】
Co
2Z型フェライトが、Li
2MoO
4・Ba
xSr
3-xCo
2Fe
24-mO
41の式を有し、xが、0~3、又は0.1~3、又は0.8~2、又は1~2、又は3であり、mが、-4~4、又は0~4、又は2~3である、請求項2又は3に記載のCo
2Z型フェライト。
【請求項5】
Li
2MoO
4が、Co
2Z型フェライトの総質量に基づいて、0.1~1質量パーセントの量で存在する、請求項2から4のいずれか一項に記載のCo
2Z型フェライト。
【請求項6】
Co
2Z型フェライトが、
式Ba
xSr
3-xCo
2+y-zMe
yMe’
zFe
24-2y-mO
41を有する磁性相を含み、Me’が、Ti、Mo、Ru、Ir、Zr、又はSnのうちの少なくとも1つであり、Me’が、Zn、Mn、又はMgのうちの少なくとも1つであり、xが、0~3であり、yが、0~1.8であり、zが、0~1.8であり、mが、-4~4であり、
誘電相が、式Li
2MoO
4を有する、
請求項1から5のいずれか一項に記載のCo
2Z型フェライト。
【請求項7】
Co
2Z型フェライトが、2~10マイクロメートルのD
50粒径、又はCo
2Z型フェライトの総体積に基づいて0~50体積パーセント若しくは20~45体積パーセントの多孔度のうちの少なくとも1つを有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のCo
2Z型フェライト。
【請求項8】
Co
2Z型フェライトが、0.5~2ギガヘルツの周波数で、2以上、又は3以上、又は2~10、又は2~3の透磁率を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載のCo
2Z型フェライト。
【請求項9】
Co
2Z型フェライトが、0.5~2ギガヘルツの周波数で、0.3以下、又は0.1以下、又は0.001~0.2の磁気損失正接tanδ
μを有する、請求項1から8のいずれか一項に記載のCo
2Z型フェライト。
【請求項10】
Co
2Z型フェライトが、0.5~2ギガヘルツの周波数で、8以下、又は7以下、又は5~7の誘電率を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載のCo
2Z型フェライト。
【請求項11】
Co
2Z型フェライトが、0.5~2ギガヘルツの周波数で、0.01以下、又は0.007以下、又は0.001~0.007の誘電損失正接tanδ
εを有する、請求項1から10のいずれか一項に記載のCo
2Z型フェライト。
【請求項12】
ポリマー及び請求項1から11のいずれか一項に記載のCo
2Z型フェライトを含む、複合材料。
【請求項13】
ポリマーが、フルオロポリマー、ポリウレタン、シリコーンポリマー、液晶ポリマー、ポリケトン、ポリスルホン、又はポリオレフィンのうちの少なくとも1つを含む、請求項12に記載の複合材料。
【請求項14】
請求項1から12のいずれか一項に記載のフェライト組成物又は請求項12若しくは13に記載の複合材料を含む、物品。
【請求項15】
物品が、アンテナ、フィルター、インダクター、サーキュレーター、又はEMIサプレッサーである、請求項14に記載の物品。
【請求項16】
初期Co
2Z型フェライト及びLiMoO
4を粉砕して混合フェライトを形成する工程、並びに
混合フェライトを焼成してCo
2Z型フェライトを形成する工程
を含む、(任意選択的に請求項1から11のいずれか一項に記載の)Co
2Z型フェライトを製造する方法。
【請求項17】
粉砕が、1.5時間以上にわたって、又は300毎分回転数以上の混合速度で行われる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
Me、Co、Me’、Me”、及びFeの酸化物を含むフェライト前駆体化合物を粉砕して磁性酸化物混合物を形成する工程であって、Meが、Ba又はSrのうちの少なくとも1つを含み、Me’が、Ti、Mo、Ru、Ir、Zr、又はSnのうちの少なくとも1つであり、Me”が、Zn、Mn、又はMgのうちの少なくとも1つである、工程;
磁性酸化物混合物を酸素又は空気雰囲気中で焼成して、式Ba
xSr
3-xCo
2+y-zMe’
yMe”
zFe
24-2y-mO
41を有する初期Co
2Z型フェライトを形成する工程であって、Me’が、Ti、Mo、Ru、Ir、Zr、又はSnのうちの少なくとも1つであり、Me”が、Zn、Mn、又はMgのうちの少なくとも1つであり、xが、0~3であり、yが、0~1.8であり、zが、0~1.8であり、mが、-4~4である、工程
を更に含む、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
Li
2CO
3及びMoO
2を粉砕して誘電酸化物混合物を形成する工程、並びに誘電酸化物混合物を酸素又は空気雰囲気中で焼成してLi
2MoO
4を形成する工程を更に含む、請求項16から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
混合フェライトの焼成が、800~1,300℃若しくは900~1,200℃の焼成温度で、又は0.5~20時間若しくは1~10時間の焼成時間にわたって行われる、請求項16から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
Co
2Z型フェライト及びポリマーを含む複合材料を形成する工程を更に含む、請求項16から20のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年5月17日に出願された米国仮特許出願第63/189,431号の利益を主張するものである。関連出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、リチウムを含むZ型ヘキサフェライトに関する。
【背景技術】
【0003】
様々な商業的及び防衛関連産業において特に関心の高い、超高周波用途で使用されるデバイスの高まり続ける需要を満たすためには、改善された性能及び小型化が必要である。レーダー及び最新の無線通信システムの重要な構成要素として、コンパクトなサイズを有するアンテナ素子が常に開発されている。しかしながら、大部分のフェライト材料は、高周波数で比較的高い磁気損失を呈するため、そのような高周波用途における使用のためのフェライト材料を開発することは困難であった。
【0004】
一般に、六方晶フェライト又はヘキサフェライトは、六方晶の結晶構造を有し、かつ磁気特性を呈する、酸化鉄セラミック化合物の一種である。Z型フェライトBa3Me2Fe24O41及びY型フェライトBa2Me2Fe12O22を含むいくつかの種類のヘキサフェライト族が知られており、Meは、Co、Ni、又はZn等の小さな2+カチオンであってよく、SrでBaを置換してよい。他のヘキサフェライトの種類は、M型フェライト((Ba,Sr)Fe12O19)、W型フェライト((Ba,Sr)Me2Fe16O27)、X型フェライト((Ba,Sr)2Me2Fe28O46)、及びU型フェライト((Ba,Sr)4Me2Fe36O60)を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高い磁気結晶異方性場を有するヘキサフェライトは、これらが、高い磁気結晶異方性場を有し、それによって、高い強磁性共鳴周波数を有するため、ギガヘルツアンテナ基板についての良好な候補である。Co2Zヘキサフェライト(Ba3Co2Fe24O41)材料が一部のアンテナ用途のために開発されているが、その一方で、低周波用途における使用のための改善されたZ型フェライトが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書では、Co2Z型ヘキサフェライトが開示されている。
【0007】
一態様では、Co2Z型フェライトは、少なくともMe、Co、Mo、Li、及びFeの酸化物を含み、Meは、Ba又はSrのうちの少なくとも1つである。
【0008】
別の態様では、複合材料は、Co2Z型フェライトを含む。
【0009】
更なる別の態様では、Co2Z型フェライトを製造する方法は、初期Co2Z型フェライト及びLiMoO4を粉砕して混合フェライトを形成する工程、並びに混合フェライトを焼成してCo2Z型フェライトを形成する工程を含む。
【0010】
上記及び他の特徴は、以下の図面、詳細な説明、及び特許請求の範囲によって例示されている。
【0011】
以下の図は、本開示を説明するために提供される例示的な実施形態である。これらの図は、実施例を説明するものであり、本開示に従って製造されるデバイスを本明細書に記載されている材料、条件、又は方法パラメータに限定することを意図してはいない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1~7についての、異なる周波数でのリチウム濃度に対する透磁率のグラフ説明である。
【
図2】実施例1~7についての、異なるリチウム濃度での周波数に対する透磁率のグラフ説明である。
【
図3】実施例1~7についての、異なる周波数でのリチウム濃度に対する磁気損失のグラフ説明である。
【
図4】実施例1~7についての、異なるリチウム濃度での周波数に対する磁気損失のグラフ説明である。
【
図5】実施例1~7についての、異なる周波数でのリチウム濃度に対する誘電率のグラフ説明である。
【
図6】実施例1~7についての、異なるリチウム濃度での周波数に対する誘電率のグラフ説明である。
【
図7】実施例1~7についての、異なる周波数でのリチウム濃度に対する誘電損失のグラフ説明である。
【
図8】実施例1~7についての、異なるリチウム濃度での周波数に対する誘電損失のグラフ説明である。
【
図9】実施例8~11についての、異なる周波数でのリチウム濃度に対する透磁率のグラフ説明である。
【
図10】実施例8~11についての、異なる周波数でのリチウム濃度に対する磁気損失のグラフ説明である。
【
図11】実施例8~11についての、異なる周波数でのリチウム濃度に対する誘電率のグラフ説明である。
【
図12】実施例8~11についての、異なる周波数でのリチウム濃度に対する誘電損失のグラフ説明である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
モリブデン酸リチウム等の低誘電損失材料をCo2Z相ヘキサフェライトに組み込むことによって、磁気特性を維持しながら、容易に調整可能な誘電特性を有する組成物を得ることができることが発見された。理論に縛られることを望むものではないが、多くの実験から、モリブデン酸リチウム(本明細書では誘電相とも称される)の添加によって、Co2Z型フェライトの主相の誘電場を変更することができると考えられる。
【0014】
Co2Z型フェライトの正確な結晶学的構造は、完全には理解されていないが、その一方で、Co2Z型フェライトは、Co2Z型フェライトの磁性相、及びモリブデン酸リチウムを含む別個の誘電相を含んでいてよいと考えられている。逆に、Co2Z型フェライトの単一の結晶学的構造が存在する可能性があり、このことは、それぞれの相の完全な混合を示している。言い換えるなら、それぞれの相の磁気構造又は結晶構造を必ずしも分離することは可能ではないであろう。したがって、最終的な構造は、成分の固溶体、2つ以上の相が何らかの形で互いに絡み合っているか若しくは互いに絡み合っていない識別可能な多相構造、又はそれらの組み合わせのいずれかであってよい。したがって、本明細書で使用されるCo2Z型フェライトの用語は、識別可能な多相形態を有するフェライト、フェライトの固溶体、又はそれらの組み合わせを含むことに留意されたい。Co2Z型フェライトの正確な構造は知られていないため、Co2Z型フェライトについて本明細書で提示されている式は、一般に、Co2Z型フェライトの調製中に形成される混合フェライトに従って記述されており、モリブデン酸リチウムLi2MoO4は、分かりやすくするために分けられている。しかしながら、これらの式は、Co2Z型フェライトの結晶学的構造を限定するものではなく、得られるCo2Z型フェライトは、2つの別個の相、単相、又はその間のものを含んでいてよいと理解される。
【0015】
Co2Z型フェライトは、少なくともMe、Co、Mo、Li、及びFeの酸化物を含み、Meは、Ba又はSrのうちの少なくとも1つである。Co2Z型フェライトは、式(1)を有していてよい。
Li2MoO4・BaxSr3-xCo2+y-zMe’yMe”zFe24 -2y-mO41 (1)
Me’は、Ti、Mo、Ru、Ir、Zr、又はSnのうちの少なくとも1つであってよい。Me”は、Zn、Mn、又はMgのうちの少なくとも1つであってよい。変数xは、0~3、0.1~3、又は0.8~2、又は1~2、又は3であってよい。変数yは、0~1.8、0、又は0~1.5、又は0.1~1.5、又は0.5~1であってよい。変数zは、0~1.8、0、又は0~1.5、又は0.1~1.5、又は0.5~1であってよい。変数mは、-4~4、-3~3、又は0~4、又は-3~4、又は2~3であってよい。
【0016】
Co2Z型フェライトは、式(2)を有していてよい。
Li2MoO4・BaxSr3-xCo2Fe24-mO41 (2)
変数xは、0~3、又は0.1~3、又は0.8~2、又は1~2、又は3であってよい。変数mは、-4~4、又は0~4、又は2~3であってよい。
【0017】
Co2Z型フェライトは、式(3)を有していてよい。
(n)Li2MoO4・(1-n)BaxSr3-xCo2+y-zMe’yMe”zFe24-2y-mO41 (3)
nは、Co2Z型フェライト中のLi2MoO4の相対量を示す。変数nは、0超~0.05でありえ、残りの変数は、先に定義されている。
【0018】
Li2MoO4は、Co2Z型フェライト中に、Co2Z型フェライトの総質量に基づいて、0.005~1質量パーセント(wt%)、又は0.01~1wt%、又は0.01~0.5wt%の量で存在していてよい。Li2MoO4は、Co2Z型フェライト中に別個の相として存在していてよいか、又はCo2Z型フェライト中に分散されていてよい。
【0019】
Co2Z型フェライトは、Z型フェライトの磁性相を含んでいてよい。磁性相は、式BaxSr3-xCo2+y-zMeyMe’zFe24-2y-mO41を有していてよく、変数は、先に定義されている。
【0020】
Co2Z型フェライトは、微粒子の形態(例えば、球形の又は不規則な形状を有する)又は小板、ウィスカー、フレーク等の形態であってよい。微粒子状のCo2Z型フェライトの体積によるD50粒径は、0.5~50マイクロメートル又は1~10マイクロメートルであってよい。Co2Z型フェライトの小板は、0.1~100マイクロメートルの平均最大長さ及び0.05~1マイクロメートルの平均厚さを有していてよい。Co2Z型フェライトは、Co2Z型フェライトの総体積に基づいて、0~50体積パーセント(vol%)又は20~45体積パーセントの多孔度を有していてよい。Co2Z型フェライトは、走査型電子顕微鏡を使用して測定して、1~20マイクロメートル又は5~15マイクロメートルの平均粒径を有していてよい。
【0021】
Co2Z型フェライトは、ギガヘルツ範囲の透磁率(μ’)値及び低磁気損失正接(tanδμ、μ”/μ’)のうちの少なくとも1つを有していてよい。Co2Z型フェライトの透磁率は、0.5~3ギガヘルツ又は0.5~1.2ギガヘルツの周波数で、2~10であってよい。Co2Z型フェライトの透磁率は、0.5~2ギガヘルツ又は0.5~1.2ギガヘルツの周波数で、2以上、又は3以上、又は2~10、又は2~3であってよい。Co2Z型フェライトの磁気損失正接は、0.5~2ギガヘルツ又は0.5~1.2ギガヘルツの周波数で、0.3以下、又は0.1以下、又は0.001~0.2であってよい。Co2Z型フェライトの磁気損失正接は、1~6ギガヘルツ又は0.5~1.2ギガヘルツの周波数で、0.02~0.1又は0.05~0.1であってよい。
【0022】
Co2Z型フェライトは、ギガヘルツ範囲での良好な誘電率(ε’)値及び低磁気損失正接(tanδε、ε”/ε’)のうちの少なくとも1つを有していてよい。Co2Z型フェライトの誘電率は、1~10ギガヘルツ又は0.5~1.2ギガヘルツの周波数で、8以下、又は6以下、又は2~8、又は6~10であってよい。Co2Z型フェライトの誘電率は、1~10ギガヘルツ又は0.5~0.2ギガヘルツの周波数で、8以下、又は7以下、又は5~7であってよい。Co2Z型フェライトは、1~10ギガヘルツ又は0.5~2ギガヘルツの周波数で、0.01以下、又は0.007以下、又は0.001~0.007の誘電損失正接tanδεを有していてよい。Co2Z型フェライトは、1~10ギガヘルツ又は0.5~1.2ギガヘルツの周波数で、0.005以下の誘電損失正接tanδεを有していてよい。
【0023】
Co2Z型フェライトは、2以下の透磁率、6以下の誘電定数、及び1.0~1.6GHzで0.008以下の誘電損失正接を維持しながら、0.03以下の低磁気損失正接を有していてよい。Co2Z型フェライトは、2.7以下の透磁率、6.8以下の誘電定数、及び1.0~1.6GHzで0.005以下の誘電損失正接を維持しながら、0.13以下の低磁気損失正接を有していてよい。
【0024】
本明細書で使用される場合、「の周波数で」という語句は、その範囲内の単一の周波数値にあること、又は周波数範囲全体にわたることを意味しうる。例えば、「透磁率は、0.5~3ギガヘルツの周波数で、2~10であってよい」という語句は、透磁率が、0.5~3の範囲の単一の周波数、例えば1ギガヘルツで、2~10の範囲の単一の値、例えば3であること、又は透磁率が、0.5~3ギガヘルツにわたる周波数範囲全体にわたって2~10の範囲で定義される値(例えば、周波数によってこの範囲で変化する)であってよいことを意味しうる。
【0025】
フェライトの磁気特性及び誘電特性は、0.1~18ギガヘルツの周波数にわたって、Nicholson-Ross-Weir(NRW)法で、ベクトルネットワークアナライザー(VNA)によって同軸エアラインを使用して測定することができる。
【0026】
Co2Z型フェライトの動作周波数は、6ギガヘルツ、又は0.5~2ギガヘルツもの高さであってよい。
【0027】
Co2Z型フェライトは、少なくともMe、Co、Mo、Li、及びFeの酸化物を含んでいてよく、Meは、Ba又はSrのうちの少なくとも1つである。Co2Z型フェライトは、式Li2MoO4・BaxSr3-xCo2+y-zMe’yMe”zFe24-2y-mO41を有していてよい。Co2Z型フェライトは、Li2MoO4・BaxSr3-xCo2Fe24-mO41の式を有していてよい。Co2Z型フェライトは、式BaxSr3-xCo2+y-zMeyMe’zFe24-2y-mO41を有する磁性相及び式Li2MoO4を有する誘電相を含んでいてよい。Li2MoO4は、Co2Z型フェライトの総質量に基づいて、0.1~1質量パーセントの量で存在していてよい。Me’は、Ti、Mo、Ru、Ir、Zr、又はSnのうちの少なくとも1つであってよい。Me”は、Zn、Mn、又はMgのうちの少なくとも1つであってよい。変数xは、0~3であってよい。変数xは、0.1~3、又は0.8~2、又は1~2、又は3であってよい。変数yは、0~1.8であってよい。変数yは、0、又は0.1~1.5、又は0.5~1であってよい。変数zは、0~1.8であってよい。変数zは、0、又は0.1~1.5、又は0.5~1であってよい。変数mは、-4~4であってよい。変数mは、-3~3、又は0~4、又は2~3であってよい。Co2Z型フェライトは、2~10マイクロメートルのD50粒径を有していてよい。Co2Z型フェライトは、Co2Z型フェライトの総体積に基づいて、0~50体積パーセント又は20~45体積パーセントの多孔度を有していてよい。Co2Z型フェライトは、0.5~2ギガヘルツの周波数で、2以上、又は3以上、又は2~10、又は2~3の透磁率を有していてよい。Co2Z型フェライトは、0.5~2ギガヘルツの周波数で、0.3以下、又は0.1以下、又は0.001~0.2の磁気損失正接tanδμを有していてよい。Co2Z型フェライトは、0.5~2ギガヘルツの周波数で、8以下、又は7以下、又は5~7の誘電率を有していてよい。Co2Z型フェライトは、0.5~2ギガヘルツの周波数で、0.01以下、又は0.007以下、又は0.001~0.007の誘電損失正接tanδεを有していてよい。
【0028】
Co2Z型フェライトは、任意の適切な方法を使用して調製してよい。一般に、Co2Z型フェライトは、初期Co2Z型フェライト及びモリブデン酸リチウムLiMoO4を粉砕して混合フェライトを形成する工程、並びに混合フェライトを焼成してCo2Z型フェライトを形成する工程によって形成してよい。粉砕は、1.5時間以上にわたって行ってよい。粉砕は、300毎分回転数(rpm)以上又は300~1,000rpmの混合速度で行ってよい。混合フェライトの焼成は、800~1,300℃又は900~1,200℃の焼成温度で行ってよい。混合フェライトの焼成は、0.5~20時間又は1~10時間の焼成時間にわたって行ってよい。
【0029】
初期Co2Z型フェライトは、例えば少なくともMe、Co、Me’、Me”、及びFeの様々な酸化物(Meは、Ba及びSrのうちの少なくとも1つである)を含む前駆体化合物を含む混合物を形成して磁性酸化物混合物を形成する工程、並びに磁性酸化物混合物を酸素又は空気雰囲気中で焼成してCo2Z型フェライトを形成する工程によって形成してよい。得られる初期Co2Z型フェライトは、式BaxSr3-xCo2+y-zMe’yMe”zFe24-2y-mO41を有していてよく、Me’は、Ti、Mo、Ru、Ir、Zr、又はSnのうちの少なくとも1つを含んでいてよく、Me”は、Zn、Mn、又はMgのうちの少なくとも1つを含んでいてよく、xは、0~3であってよく、yは、0~1.8であってよく、zは、0~1.8であってよく、mは、-4~4であってよい。粉砕は、1.5時間以上にわたって行ってよい。粉砕は、300rpm以上又は300~1,000rpmの混合速度で行ってよい。混合フェライトの焼成は、800~1,300℃又は900~1,250℃の焼成温度で行ってよい。混合フェライトの焼成は、0.5~20時間又は1~10時間の焼成時間にわたって行ってよい。焼成されたフェライトは、1~10マイクロメートルの体積によるD50粒径を有していてよい。
【0030】
モリブデン酸リチウムは、Li2CO3及びMoO2を粉砕して誘電酸化物混合物を形成する工程、並びに誘電酸化物混合物を酸素又は空気雰囲気中で焼成してLi2MoO4を形成する工程によって調製してよい。焼成は、400~600℃又は500~600℃の温度で行ってよい。焼成は、1~6時間にわたって行ってよい。焼成は、空気又は酸素中で行ってよい。焼成されたLi2MoO4を粉砕するか又は別の方法にかけて、得られたLi2MoO4の粒径を、例えば0.5~5マイクロメートル又は1マイクロメートル以下の体積によるD50粒径を有するように縮小してよい。
【0031】
それぞれの焼成工程の昇温速度は、特に制限されることはなく、毎分1~5セルシウス度(℃/分)又は2~4℃/分の昇温速度及び冷却速度で行ってよい。それぞれの焼成工程は、空気又は酸素環境中で、例えば毎分0.1~10リットルの流量の酸素流下で行ってよい。
【0032】
それぞれの焼成工程後に、焼成されたフェライトを粉砕及びスクリーニングして粗粒子を形成してよい。粗粒子は、0.1~20マイクロメートル、又は1~20マイクロメートル、又は0.1~1マイクロメートルの体積によるD50粒径に粉砕してよい。粒子は、例えば、湿式プラネタリーボールミル内で、600rpm以下又は400~500rpmの粉砕速度で2~10時間又は4~8時間にわたって混合することによって粉砕することができる。例えば混合Co2Z型フェライトの粉砕された混合物は、例えば10~300#ふるいを使用して任意選択的にスクリーニングしてよい。粉砕された混合物をポリ(ビニルアルコール)等のポリマーと混合して顆粒を形成することができる。顆粒は、50~300マイクロメートルの体積による平均D50粒径を有していてよい。粉砕された混合物は、例えば1平方センチメートル当たり0.2~2メガトンの圧力で圧縮することによって、造形又は形成することができる。微粒子状であるか又は形成されている粉砕された混合物は、50~500℃、200~1280℃、又は100~250℃の温度で加熱してよい。微粒子状であるか又は形成されている粉砕された混合物は、900~1,275℃又は1,200~1,250℃のアニーリング温度でポストアニールしてよい。加熱又はアニーリングは、1~20時間、又は4~6時間、又は5~12時間にわたって行ってよい。アニーリングは、空気又は酸素中で行ってよい。Co2Z型フェライトは、固溶体又は二相の形態であってよく、得られる構造は、磁性相及び誘電相の比率又は形成条件、例えば、粉砕の程度又はアニーリング条件によって部分的に決定することができる。
【0033】
Co2Z型フェライト粒子は、Co2Z型フェライト及びポリマー等を含む複合材料を製造するために使用してよい。ポリマーは、熱可塑性又は熱硬化性のものを含んでいてよい。本明細書で使用される場合、「熱可塑性」という用語は、可塑性又は変形可能であり、加熱されると溶融して液体になり、十分に冷却されると凍結して脆いガラス状態になる、材料を指す。使用することができる熱可塑性ポリマーの例は、環状オレフィンポリマー(ポリノルボルネン類、及びノルボルネニル単位含有コポリマー、例えば、ノルボルネン等の環状ポリマーとエチレン又はプロピレン等の非環状オレフィンとのコポリマーを含む)、フルオロポリマー(例えば、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ素化エチレン-プロピレン(FEP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ(エチレン-テトラフルオロエチレン(PETFE)、又はペルフルオロアルコキシ(PFA))、ポリアセタール類(例えば、ポリオキシエチレン又はポリオキシメチレン)、ポリ(C1~6アルキル)アクリレート類、ポリアクリルアミド類(非置換及びモノ-N-又はジ-N-(C1~8アルキル)アクリルアミド類を含む)、ポリアクリロニトリル類、ポリアミド類(例えば、脂肪族ポリアミド類、ポリフタルアミド類、又はポリアラミド類)、ポリアミドイミド類、ポリ無水物類、ポリアリーレンエーテル類(例えば、ポリフェニレンエーテル類)、ポリアリーレンエーテルケトン類(例えば、ポリエーテルエーテルケトン類(PEEK)又はポリエーテルケトンケトン類(PEKK))、ポリアリーレンケトン類、ポリアリーレンスルフィド類(例えば、ポリフェニレンスルフィド類(PPS))、ポリアリーレンスルホン類(例えば、ポリエーテルスルホン類(PES)又はポリフェニレンスルホン類(PPS))、ポリベンゾチアゾール類、ポリベンゾオキサゾール類、ポリベンゾイミダゾール類、ポリカーボネート類(ホモポリカーボネート類、又はポリカーボネート-シロキサン類、ポリカーボネート-エステル類若しくはポリカーボネート-エステル-シロキサン類等のポリカーボネートコポリマーを含む)、ポリエステル類(例えば、ポリエチレンテレフタレート類、ポリブチレンテレフタレート類、ポリアリレート類、又はポリエステルエーテル類等のポリエステルコポリマー)、ポリエーテルイミド類(例えば、ポリエーテルイミド-シロキサンコポリマー等のコポリマー)、ポリイミド類(例えば、ポリイミド-シロキサンコポリマー等のコポリマー)、ポリ(C1~6アルキル)メタクリレート類、ポリアルキルアクリルアミド類(例えば、非置換及びモノ-N-又はジ-N-(C1~8アルキル)アクリルアミド類)、ポリオレフィン類(例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)又は直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等のポリエチレン類、ポリプロピレン類、又はそれらのハロゲン化誘導体(ポリテトラフルオロエチレン類等)、又はそれらのコポリマー、例えば、エチレン-アルファ-オレフィンコポリマー)、ポリオキサジアゾール類、ポリオキシメチレン類、ポリフタリド類、ポリシラザン類、ポリシロキサン類(シリコーン類)、ポリスチレン類(例えば、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)又はメチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン(MBS)等のコポリマー)、ポリスルフィド類、ポリスルホンアミド類、ポリスルホネート類、ポリスルホン類、ポリチオエステル類、ポリトリアジン類、ポリ尿素類、ポリウレタン類、ビニルポリマー(例えば、ポリビニルアルコール類、ポリビニルエステル類、ポリビニルエーテル類、ポリビニルハロゲン化物類(例えば、ポリ塩化ビニル)、ポリビニルケトン類、ポリビニルニトリル類、又はポリビニルチオエーテル類)、パラフィンワックス等を含む。前述の熱可塑性ポリマーのうちの少なくとも1つを含む組み合わせを使用してよい。
【0034】
熱硬化性ポリマーは、熱によって又は照射(例えば、紫外光、可視光、赤外光、又は電子ビーム(e-ビーム)照射)への曝露によって引き起こすことができる重合又は硬化で不可逆的に硬化して不溶性になる熱硬化性モノマー又はプレポリマー(樹脂)から誘導される。熱硬化性ポリマーは、アルキド類、ビスマレイミドポリマー、ビスマレイミドトリアジンポリマー、シアネートエステルポリマー、ベンゾシクロブテンポリマー、ベンゾオキサジンポリマー、フタル酸ジアリルポリマー、エポキシ類、ヒドロキシメチルフランポリマー、メラミンホルムアルデヒドポリマー、フェノール樹脂(ノボラック及びレゾール等のフェノールホルムアルデヒドポリマーを含む)、ベンゾオキサジン類、ポリブタジエン類等のポリジエン類(そのホモポリマー又はコポリマー、例えば、ポリ(ブタジエンイソプレン)を含む)、ポリイソシアネート類、ポリ尿素類、ポリウレタン類、トリアリルシアヌレートポリマー、トリアリルイソシアヌレートポリマー、特定のシリコーン、及び重合性プレポリマー(例えば、不飽和ポリエステル類、ポリイミド類等のエチレン性不飽和を有するプレポリマー)等を含む。プレポリマーは、例えば、スチレン、アルファ-メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、アクリル酸、(メタ)アクリル酸、(C1~6アルキル)アクリレート、(C1~6アルキル)メタクリレート、アクリロニトリル、酢酸ビニル、酢酸アリル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、又はアクリルアミド等の反応性モノマーと、重合、共重合、又は架橋させることができる。
【0035】
ポリマーは、フルオロポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE))、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン又はポリプロピレン)、ポリウレタン、シリコーンポリマー、液晶ポリマー、ポリケトン(例えば、ポリ(エーテルエーテルケトン))、又はポリスルホンのうちの少なくとも1つを含んでいてよい。ポリエチレンは、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、又は直鎖状低密度ポリエチレンのうちの少なくとも1つを含んでいてよい。
【0036】
Co2Z型フェライト複合材料は、Co2Z型フェライト複合材料の総体積に基づいて、5~95体積パーセント又は50~80体積パーセントのCo2Z型フェライトを含んでいてよい。Co2Z型フェライト複合材料は、Co2Z型フェライト複合材料の総体積に基づいて、5~95体積パーセント又は20~50体積パーセントのポリマーを含んでいてよい。Co2Z型フェライト複合材料は、圧縮成形、射出成形、反応射出成形、積層、押出、カレンダー加工、鋳造、圧延等によって形成することができる。複合材料は、Co2Z型フェライトの多孔性が存在する場合には、これ以外の空隙を含んでいなくてよい。
【0037】
物品は、Co2Z型フェライトを含んでいてよい。物品は、アンテナ又はインダクターコアであってよい。物品は、ギガヘルツ範囲での、例えば、0.5~6ギガヘルツの範囲、0.5~5ギガヘルツの範囲、又は0.5~2ギガヘルツの範囲にわたる使用のためのものであってよい。この物品は、高周波若しくはマイクロ波アンテナ、フィルター、インダクター、サーキュレーター、又は位相シフター等の超高周波数範囲内で動作可能な様々なデバイスに使用することができる。この物品は、アンテナ、フィルター、インダクター、サーキュレーター、又はEMI(電磁妨害)サプレッサーであってよい。そのような物品は、商業及び軍事用途、気象レーダー、科学通信、無線通信、自律車両、航空機通信、宇宙通信、衛星通信、又は監視に使用することができる。
【0038】
以下の実施例は、本開示を説明するために提供される。これらの例は、単に説明のためのものであり、本開示に従って製造されるデバイスを、ここに記載されている材料、条件、又は方法パラメータに限定することを意図してはいない。
【0039】
(実施例)
フェライトの導磁率及び磁気損失は、0.1~18ギガヘルツ(GHz)の周波数にわたって、Nicholson-Ross-Weir(NRW)法で、ベクトルネットワークアナライザー(VNA)によって同軸エアラインにおいて測定した。
【0040】
(実施例1~7):Co2Z型フェライトでの磁気特性に対するモリブデン酸リチウムの影響
初期Co2Z相を、Z型ヘキサフェライト組成物を形成する量のBaCO3、CO3O4、Fe2O3、MoO2、及びSrCO3を混合することによって調製した。酸化物混合物を、湿式プレナリーボールミル内で350毎分回転数(rpm)で2時間にわたって混合し、100℃の炉内で乾燥させ、40#ふるいに通してスクリーニングして、粗粒子を形成した。次いで、粗粒子を、空気中で4時間の浸漬時間にわたって1,240℃の温度で焼成して、式Sr1.5Ba1.5Co2.12Mo0.12Fe22.16O41を有する初期Co2Z相を形成した。次いで、初期Co2Z相を200#スクリーンに通してジョークラッシャーで処理して粉末にした。
【0041】
Li2MoO4(LMO)相を、Li2CO3及びMoO2を混合することによって調製した。この混合物を、空気中で2~4℃/分の昇温速度及び冷却速度で2時間にわたって540℃で焼成した。焼成されたLMO相を、400rpmのプラネタリーボールミル内で0.5~4時間にわたって粉砕した。得られたLMO相は、0.5~5マイクロメートルのD50粒径を有していた。
【0042】
初期Co2Z相及びLMO相を混合して、表1に示されているような様々な量のLMO相を有する混合物を形成し、xは、初期Co2Z相及びのLMO相の総質量に基づいてwt%のLMO相の量である。混合物を、400rpmのプラネタリーボールミル内で2.5時間にわたって混合し、200℃で乾燥させた。乾燥した混合物を、10wt%のポリ(ビニルアルコール)溶液と混合し、40#スクリーンに通してふるいにかけて、顆粒を形成した。この顆粒を1,800ポンド(8キロニュートン(kN))の力でプレスすることによってプレスして、7ミリメートル(mm)の外径、3mmの内径、及び3~4mmの高さを有する環状体にした。環状体を200℃で4~6時間にわたってベーキングして、いずれの残留液体も除去した。40体積パーセントの多孔度を有する多孔質セラミックが形成された。
【0043】
実施例1~7の磁気特性は、表1、様々な周波数での増加するLMO濃度に対する透磁率を示す
図1、様々なLMO濃度での周波数に対する透磁率を示す
図2、様々な周波数での増加するLMO濃度に対する磁気損失を示す
図3、及び様々なLMO濃度での周波数に対する磁気損失正接tanδ
μを示す
図4に示されている。
【0044】
実施例1~7の誘電特性は、表2、様々な周波数での増加するLMO濃度に対する誘電率を示す
図5、様々なLMO濃度での周波数に対する誘電率を示す
図6、様々な周波数での増加するLMO濃度に対する誘電損失を示す
図7、及び様々なLMO濃度での周波数に対する誘電損失正接tanδ
εを示す
図8に示されている。
【0045】
【0046】
【0047】
データは、実施例2~7におけるLMO相の存在によって、磁気特性を維持しながら得ることができる容易に調整可能な誘電特性が生じることを示す。
【0048】
(実施例8~11):LMO-Co2Z型フェライトを含むポリマー複合材料
4つのポリマー複合材料を、それぞれ実施例1、3、4、及び5のCo2Z型フェライトを使用して調製した。複合材料は、先の実施例に従ったCo2Z相及びLMO相を、400rpmのプラネタリーボールミル内で2.5時間にわたって粉砕し、続いて、200℃で乾燥させることによって形成した。得られた粉末を、管状炉内で毎分0.7リットル(L/m)の流量の酸素中で2時間にわたって920℃でアニールした。アニールされたフェライトは、3~4マイクロメートルのD50粒径を有していた。アニールされたフェライトをパラフィンワックスと混合して、53体積%のLiZフェライト及び47体積%のパラフィンワックスを含む複合材料を形成した。
【0049】
【0050】
【0051】
データは、実施例9~11におけるLMOの存在によって、磁気特性を維持しながら得ることができる容易に調整可能な誘電特性を有する複合材料が生じることを示す。
【0052】
(実施例12):LMO-Co2Z型フェライトの元素分析
3つの粉末サンプルについてのX線光電子分光分析を実施し、結果を表5に示す。表5は、LMO相の量が増加するにつれて鉄、コバルト、及びモリブデンの様々な形態の比率が変化することを示しており、Co2Z型フェライト中に存在する別個のLMO相があることを示している。
【0053】
【0054】
本開示の非限定的な態様が以下に記載されている。
【0055】
態様1:少なくともMe、Co、Mo、Li、及びFeの酸化物を含み、Meが、Ba又はSrのうちの少なくとも1つである、Co2Z型フェライト。
【0056】
態様2:Co2Z型フェライトが、式Li2MoO4・BaxSr3-xCo2+y-zMe’yMe”zFe24-2y-mO41を有し、Me’が、Ti、Mo、Ru、Ir、Zr、又はSnのうちの少なくとも1つであり、Me”が、Zn、Mn、又はMgのうちの少なくとも1つであり、xが、0~3であり、yが、0~1.8であり、zが、0~1.8であり、mが、-4~4である、態様1に記載のCo2Z型フェライト。
【0057】
態様3:xのうちの少なくとも1つが、0.1~3、若しくは0.8~2、若しくは1~2、若しくは3であるか、yが、0、若しくは0.1~1.5、若しくは0.5~1であるか、zが、0、若しくは0.1~1.5、若しくは0.5~1であるか、又はmが、-3~3、若しくは0~4、若しくは2~3である、態様2に記載のCo2Z型フェライト。
【0058】
態様4:Co2Z型フェライトが、Li2MoO4・BaxSr3-xCo2Fe24-mO41の式を有し、xが、0~3、又は0.1~3、又は0.8~2、又は1~2、又は3であり、mが、-4~4、又は0~4、又は2~3である、態様2又は3に記載のCo2Z型フェライト。
【0059】
態様5:Li2MoO4が、Co2Z型フェライトの総質量に基づいて、0.1~1質量パーセントの量で存在する、態様2から4のいずれか一つに記載のCo2Z型フェライト。
【0060】
態様6:Co2Z型フェライトが、式BaxSr3-xCo2+y-zMeyMe’zFe24-2y-mO41を有する磁性相を含み、Me’が、Ti、Mo、Ru、Ir、Zr、又はSnのうちの少なくとも1つであり、Me’が、Zn、Mn、又はMgのうちの少なくとも1つであり、xが、0~3であり、yが、0~1.8であり、zが、0~1.8であり、mが、-4~4であり、誘電相が、式Li2MoO4を有する、態様1から5のいずれか一つに記載のCo2Z型フェライト。
【0061】
態様7:Co2Z型フェライトが、2~10マイクロメートルのD50粒径、又はCo2Z型フェライトの総体積に基づいて0~50体積パーセント若しくは20~45体積パーセントの多孔度のうちの少なくとも1つを有する、態様1から6のいずれか一つに記載のCo2Z型フェライト。
【0062】
態様8:Co2Z型フェライトが、0.5~2ギガヘルツの周波数で、2以上、又は3以上、又は2~10、又は2~3の透磁率を有する、態様1から7のいずれか一つに記載のCo2Z型フェライト。
【0063】
態様9:Co2Z型フェライトが、0.5~2ギガヘルツの周波数で、0.3以下、又は0.1以下、又は0.001~0.2の磁気損失正接tanδμを有する、態様1から8のいずれか一つに記載のCo2Z型フェライト。
【0064】
態様10:Co2Z型フェライトが、0.5~2ギガヘルツの周波数で、8以下、又は7以下、又は5~7の誘電率を有する、態様1から9のいずれか一つに記載のCo2Z型フェライト。
【0065】
態様11:Co2Z型フェライトが、0.5~2ギガヘルツの周波数で、0.01以下、又は0.007以下、又は0.001~0.007の誘電損失正接tanδεを有する、態様1から10のいずれか一つに記載のCo2Z型フェライト。
【0066】
態様12:ポリマー及び態様1から11のいずれか一つに記載のCo2Z型フェライトを含む、複合材料。
【0067】
態様13:ポリマーが、フルオロポリマー、ポリウレタン、シリコーンポリマー、液晶ポリマー、ポリケトン、ポリスルホン、又はポリオレフィンのうちの少なくとも1つを含む、態様12に記載の複合材料。
【0068】
態様14:態様1から12のいずれか一つに記載のフェライト組成物又は態様12若しくは13に記載の複合材料を含む、物品。
【0069】
態様15:物品が、アンテナ、フィルター、インダクター、サーキュレーター、又はEMIサプレッサーである、態様14に記載の物品。
【0070】
態様16:初期Z型フェライト及びLiMoO4を粉砕して混合フェライトを形成する工程、並びに混合フェライトを焼成してCo2Z型フェライトを形成する工程を含む、(任意選択的に態様1から11のいずれか一つに記載の)Co2Z型フェライトを製造する方法。
【0071】
態様17:粉砕が、1.5時間以上にわたって、又は300毎分回転数以上の混合速度で行われる、態様16に記載の方法。
【0072】
態様18:Me、Co、Me’、Me”、及びFeの酸化物を含むフェライト前駆体化合物を粉砕して磁性酸化物混合物を形成する工程であって、Meが、Ba又はSrのうちの少なくとも1つを含み、Me’が、Ti、Mo、Ru、Ir、Zr、又はSnのうちの少なくとも1つであり、Me”が、Zn、Mn、又はMgのうちの少なくとも1つである、工程、磁性酸化物混合物を酸素又は空気雰囲気中で焼成して、式BaxSr3-xCo2+y-zMe’yMe”zFe24-2y-mO41を有する初期Co2Z型フェライトを形成する工程であって、Me’が、Ti、Mo、Ru、Ir、Zr、又はSnのうちの少なくとも1つであり、Me”が、Zn、Mn、又はMgのうちの少なくとも1つであり、xが、0~3であり、yが、0~1.8であり、zが、0~1.8であり、mが、-4~4である、工程を更に含む、態様16又は17に記載の方法。
【0073】
態様19:LiCO2及びMoO2を粉砕して誘電酸化物混合物を形成する工程、並びに誘電酸化物混合物を酸素又は空気雰囲気中で焼成してLi2MoO4を形成する工程を更に含む、態様16から18のいずれか一つに記載の方法。
【0074】
態様20:混合フェライトの焼成が、800~1,300℃若しくは900~1,200℃の焼成温度で、又は0.5~20時間若しくは1~10時間の焼成時間にわたって行われる、態様16から19のいずれか一つに記載の方法。
【0075】
態様21:Co2Z型フェライト及びポリマーを含む複合材料を形成する工程を更に含む、態様16から20のいずれか一つに記載の方法。
【0076】
代替的に、組成物、方法、及び物品は、本明細書に開示されている任意の適切な材料、工程、又は成分を含んでいてよいか、これらからなっていてよいか、又はこれらから本質的になっていてよい。追加的又は代替的に、組成物、方法、及び物品は、組成物、方法、及び物品の機能又は目的を達成するのに他の場合では必要ない、いずれの材料(又は種)、工程、又は成分もないように、又は実質的に含まないように配合することができる。
【0077】
本明細書で使用される場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」、及び「少なくとも1つの」は、量の制限を示すものではなく、特に文脈から明確に示されない限り、単数形及び複数形の両方を包含することを意図している。例えば、特に文脈から明確に示されない限り、「要素」は、「少なくとも1つの要素」と同じ意味を有する。「組み合わせ」という用語は、ブレンド、混合物、合金、反応生成物等を含む。また、「のうちの少なくとも1つ」は、一覧が各要素を個別に含むこと、並びに一覧の2つ以上の要素の組み合わせ、及び一覧の少なくとも1つの要素と挙げられていない類似要素との組み合わせを意味する。
【0078】
「又は」という用語は、文脈によって明確に示されない限り、「及び/又は」を意味する。本明細書全体での「1つの態様」、「別の態様」、「いくつかの態様」等への言及は、この態様に関連して説明されている特定の要素(例えば、特徴、構造、工程、又は特色)が、本明細書に記載されている少なくとも1つの態様に含まれており、他の態様に存在していてもそうでなくてもよいことを意味する。更に、説明されている要素は、様々な態様において任意の適切な手法で組み合わせることができると理解されたい。
【0079】
本明細書で特段の指定がない限り、すべての試験規格は、本出願の出願日の時点で、又は優先権が主張されている場合には、この試験規格が見られる最も早い優先出願の出願日の時点で施行されている最新の規格である。
【0080】
同じ成分又は特性に向けられたすべての範囲の端点は、端点を含み、独立的に組み合わせ可能であり、すべての中間点及び範囲を含む。例えば、「最大25wt%又は5~20wt%」の範囲は、端点及び「5~25wt%」の範囲のすべての中間値、例えば10~23wt%等を含む。
【0081】
特に定義されない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野における当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を有する。
【0082】
すべての引用されている特許、特許出願、及び他の参考文献は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。しかしながら、本出願の用語が、組み込まれている参考文献の用語と相反又は矛盾する場合、本出願の用語が、組み込まれている参考文献の矛盾する用語よりも優先される。
【0083】
特定の実施形態について説明してきたが、出願人又は当業者であれば、現在予見されていない又は予見できない代替、修正、変形、改善、及び実質的均等物を思い付くであろう。したがって、出願されている添付の特許請求の範囲及び補正される可能性のある添付の特許請求の範囲は、そのようなすべての代替、修正、変形、改善、及び実質的均等物を包含することを意図している。
【国際調査報告】