IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アモテック・カンパニー・リミテッドの特許一覧

特表2024-520361積層セラミックキャパシタ用誘電体組成物、これを含む積層セラミックキャパシタおよびその製造方法
<>
  • 特表-積層セラミックキャパシタ用誘電体組成物、これを含む積層セラミックキャパシタおよびその製造方法 図1
  • 特表-積層セラミックキャパシタ用誘電体組成物、これを含む積層セラミックキャパシタおよびその製造方法 図2
  • 特表-積層セラミックキャパシタ用誘電体組成物、これを含む積層セラミックキャパシタおよびその製造方法 図3
  • 特表-積層セラミックキャパシタ用誘電体組成物、これを含む積層セラミックキャパシタおよびその製造方法 図4
  • 特表-積層セラミックキャパシタ用誘電体組成物、これを含む積層セラミックキャパシタおよびその製造方法 図5
  • 特表-積層セラミックキャパシタ用誘電体組成物、これを含む積層セラミックキャパシタおよびその製造方法 図6
  • 特表-積層セラミックキャパシタ用誘電体組成物、これを含む積層セラミックキャパシタおよびその製造方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】積層セラミックキャパシタ用誘電体組成物、これを含む積層セラミックキャパシタおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/468 20060101AFI20240517BHJP
   H01G 4/12 20060101ALI20240517BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
C04B35/468
H01G4/12 270
H01G4/30 515
H01G4/30 517
H01G4/30 201L
H01G4/30 311Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571947
(86)(22)【出願日】2022-04-27
(85)【翻訳文提出日】2023-11-17
(86)【国際出願番号】 KR2022006026
(87)【国際公開番号】W WO2022245005
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】10-2021-0064586
(32)【優先日】2021-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517428551
【氏名又は名称】アモテック・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホン,ソンジン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ジェウ
(72)【発明者】
【氏名】マ,ソンウン
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE04
5E001AJ02
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082PP03
5E082PP09
(57)【要約】
積層セラミックキャパシタ用誘電体組成物、これを含む積層セラミックキャパシタおよびその製造方法を提供する。本発明の積層セラミックキャパシタ用誘電体組成物は、バリウム系化合物、酸化ガドリニウム(Gd)、マンガン酸化物(Mn)および炭酸マグネシウム(MgCO)を含む。これによれば、信頼性に優れているだけでなく、性能にも優れている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バリウム系化合物、酸化ガドリニウム(Gd)、マンガン酸化物(Mn)および炭酸マグネシウム(MgCO)を含み、
前記バリウム系化合物は、ジルコン酸バリウム(BaZrO)およびチタン酸バリウム(BaTiO)を含むことを特徴とする積層セラミックキャパシタ用誘電体組成物。
【請求項2】
前記バリウム系化合物は、ジルコン酸バリウム(BaZrO)およびチタン酸バリウム(BaTiO)を1:2~6モル比で含むことを特徴とする請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ用誘電体組成物。
【請求項3】
前記誘電体組成物は、バリウム系化合物100モル部に対して、
酸化ガドリニウム(Gd)2~6モル部、マンガン酸化物(Mn)粉末0.01~1モル部および炭酸マグネシウム(MgCO)2~6モル部を含むことを特徴とする請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ用誘電体組成物。
【請求項4】
前記誘電体組成物は、下記条件(1)~(3)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ用誘電体組成物。
(1)D10≦60nm
(2)150nm≦D50≦350nm
(3)D90≦2,000nm
前記条件(1)~(3)において、D10、D50およびD90は、それぞれ、誘電体組成物粒度の体積累積分布で最大値に対して10%、50%、90%に該当する粒度をいう。
【請求項5】
請求項1に記載の誘電体組成物が焼結されたセラミック胴体と内部電極が交互に積層されたキャパシタ本体と、
前記キャパシタ本体の外部面に形成され、前記内部電極と電気的に連結される外部電極と、を含むことを特徴とする積層セラミックキャパシタ。
【請求項6】
積層セラミックキャパシタ用誘電体組成物を準備する第1段階と、
前記誘電体組成物にバインダーおよび有機溶媒を混合し、セラミックスラリーを製造する第2段階と、
前記セラミックスラリーをキャスト(casting)し、セラミックグリーンシートを形成する第3段階と、
前記セラミックグリーンシートの一面に内部電極を印刷し、これを複数枚積層し、グリーンチップを製造する第4段階と、
前記グリーンチップに脱脂工程および焼結工程を行い、キャパシタ本体を製造する第5段階と、
前記キャパシタ本体の外部面に内部電極と電気的に連結される外部電極を印刷し、積層セラミックキャパシタを製造する第6段階と、を含み、
前記積層セラミックキャパシタ用誘電体組成物は、バリウム系化合物、酸化ガドリニウム(Gd)、マンガン酸化物(Mn)および炭酸マグネシウム(MgCO)を混合したことを特徴とする積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項7】
前記バリウム系化合物は、ジルコン酸バリウム(BaZrO)およびチタン酸バリウム(BaTiO)を1:2~6モル比で混合したことを特徴とする請求項6に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項8】
前記誘電体組成物は、バリウム系化合物100モル部に対して、
酸化ガドリニウム(Gd)2~6モル部、マンガン酸化物(Mn)粉末0.01~1モル部および炭酸マグネシウム(MgCO)2~6モル部で混合したことを特徴とする請求項6に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項9】
前記第2段階は、誘電体組成物にバインダーおよび有機溶媒を混合し、粉砕した後、脱泡およびエイジング工程を行うことによって、下記条件(1)~(3)を満たし、100~500cpsの粘度を有するセラミックスラリーを製造することを特徴とする請求項6に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。
(1)D10≦60nm
(2)150nm≦D50≦350nm
(3)D90≦2,000nm
前記条件(1)~(3)において、D10、D50およびD90は、それぞれ、セラミックスラリー粒度の体積累積分布で最大値に対して10%、50%、90%に該当する粒度をいう。
【請求項10】
前記バインダーは、ポリビニルブチラール(Polyvinyl butyral)、エチルセルロース(Ethyl cellulose)、ポリビニルアルコール(Polyvinyl Alcohol)およびアクリル(acryl)の中から選ばれた1種以上を含むことを特徴とする請求項6に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミックキャパシタ用誘電体組成物、これを含む積層セラミックキャパシタおよびその製造方法に関し、より詳細には、信頼性に優れているだけでなく、性能にも優れた積層セラミックキャパシタ用誘電体組成物、これを含む積層セラミックキャパシタおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
キャパシタ、インダクター、圧電素子、バリスタ、またはサーミスタなどのセラミック材料を使用する電子部品は、セラミック材料からなるセラミック本体と、本体の内部に形成された内部電極と、前記内部電極と接続されるようにセラミック本体の表面に設置された外部電極と、を備える。
【0003】
セラミック電子部品のうち、積層セラミックキャパシタは、積層された複数の誘電体層と、1つの誘電体層を間に置いて対向配置される内部電極と、前記内部電極に電気的に接
続された外部電極と、を含む。
【0004】
積層セラミックキャパシタは、通常、内部電極用ペーストと誘電体層用ペーストをシート法や印刷法などによって積層し、同時焼成して製造される。
【0005】
従来の積層セラミック高容量キャパシタなどに用いられる誘電体材料は、チタン酸バリウム(BaTiO)に基づく強誘電体材料であり、常温で高い誘電率を有し、損失率(Dissipation Factor)が比較的小さく、絶縁抵抗特性に優れた特徴を有する。
【0006】
しかしながら、自動車の電子制御の進化に伴い、セラミック材料を使用する電子部品の性能および信頼性に対する要求が高まっており、従来使用されたチタン酸バリウム(BaTiO)に基づく誘電体材料は、進化する電子部品の信頼性が保証されないだけでなく、優れた性能も保証されないという問題があった。
【0007】
また、既存の一般的な積層セラミック高容量キャパシタを製造する方法においても、進化する電子部品の信頼性が保証されないだけでなく、優れた性能も保証されないという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前述のような点に鑑みてなされたものであって、その目的は、寿命に対する信頼性に優れた積層セラミックキャパシタ用誘電体組成物、これを含む積層セラミックキャパシタおよびその製造方法を提供することにある。
【0009】
また、本発明の他の目的は、低い等価直列抵抗とリーク電流を有するだけでなく、高い品質係数と直流絶縁抵抗を有する積層セラミックキャパシタ用誘電体組成物、これを含む積層セラミックキャパシタおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、バリウム系化合物、酸化ガドリニウム(Gd)、マンガン酸化物(Mn)および炭酸マグネシウム(MgCO)を含む積
層セラミックキャパシタ用誘電体組成物を提供する。
【0011】
また、バリウム系化合物は、ジルコン酸バリウム(BaZrO)およびチタン酸バリウム(BaTiO)を含んでもよい。
【0012】
また、バリウム系化合物は、ジルコン酸バリウム(BaZrO)およびチタン酸バリウム(BaTiO)を1:2~6モル比で含んでもよい。
【0013】
また、誘電体組成物は、バリウム系化合物100モル部に対して、酸化ガドリニウム(Gd)2~6モル部、マンガン酸化物(Mn)粉末0.01~1モル部および炭酸マグネシウム(MgCO)2~6モル部を含んでもよい。
【0014】
また、誘電体組成物は、下記条件(1)~(3)を満たすことができる。
(1)D10≦60nm
(2)150nm≦D50≦350nm
(3)D90≦2,000nm
【0015】
前記条件(1)~(3)において、D10、D50およびD90は、それぞれ、誘電体組成物粒度の体積累積分布で最大値に対して10%、50%、90%に該当する粒度をいう。
【0016】
なお、本発明は、セラミック胴体と内部電極が交互に積層されたキャパシタ本体と、キャパシタ本体の外部面に形成され、内部電極と電気的に連結される外部電極と、を含む積層セラミックキャパシタを提供する。
【0017】
また、セラミック胴体は、本発明の誘電体組成物が焼結されたものであってもよい。
【0018】
さらに、本発明は、積層セラミックキャパシタ用誘電体組成物を準備する第1段階と、誘電体組成物にバインダーおよび有機溶媒を混合し、セラミックスラリーを製造する第2段階と、セラミックスラリーをキャスト(casting)し、セラミックグリーンシートを形成する第3段階と、セラミックグリーンシートの一面に内部電極を印刷し、これを複数枚積層し、グリーンチップを製造する第4段階と、グリーンチップに脱脂工程および焼結工程を行い、キャパシタ本体を製造する第5段階と、キャパシタ本体の外部面に内部電極と電気的に連結される外部電極を印刷し、積層セラミックキャパシタを製造する第6段階と、を含む積層セラミックキャパシタの製造方法を提供する。
【0019】
また、積層セラミックキャパシタ用誘電体組成物は、バリウム系化合物、酸化ガドリニウム(Gd)、マンガン酸化物(Mn)および炭酸マグネシウム(MgCO)を混合したものであってもよい。
【0020】
また、バリウム系化合物は、ジルコン酸バリウム(BaZrO)およびチタン酸バリウム(BaTiO)を1:2~6モル比で混合したものであってもよい。
【0021】
また、誘電体組成物は、バリウム系化合物100モル部に対して、酸化ガドリニウム(Gd)2~6モル部、マンガン酸化物(Mn)粉末0.01~1モル部および炭酸マグネシウム(MgCO)2~6モル部で混合したものであってもよい。
【0022】
また、積層セラミックキャパシタの製造方法の第2段階は、誘電体組成物にバインダーおよび有機溶媒を混合し、粉砕した後、脱泡およびエイジング工程を行うことによって、下記条件(1)~(3)を満たし、100~500cpsの粘度を有するセラミックスラ
リーを製造することができる。
(1)D10≦60nm
(2)150nm≦D50≦350nm
(3)D90≦2,000nm
【0023】
前記条件(1)~(3)において、D10、D50およびD90は、それぞれ、セラミックスラリー粒度の体積累積分布で最大値に対して10%、50%、90%に該当する粒度をいう。
【0024】
また、バインダーは、ポリビニルブチラール(Polyvinyl butyral)、エチルセルロース(Ethyl cellulose)、ポリビニルアルコール(Polyvinyl Alcohol)およびアクリル(acryl)の中から選ばれた1種以上を含んでもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の積層セラミックキャパシタ用誘電体組成物、これを含む積層セラミックキャパシタおよびその製造方法によれば、寿命に対する信頼性に優れているだけでなく、等価直列抵抗とリーク電流が低く、品質係数と直流絶縁抵抗が高い。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、実施例1で製造された積層セラミックキャパシタとMurata社の積層セラミックキャパシタであるX7Rの30kHz、100kHz、300kHzの周波数でリップル電流に対する温度をそれぞれ示すグラフである。
図2図2は、実施例1で製造された積層セラミックキャパシタとMurata社の積層セラミックキャパシタであるX7Rの周波数に対する等価直列抵抗をそれぞれ示すグラフである。
図3図3は、実施例1で製造された積層セラミックキャパシタとMurata社の積層セラミックキャパシタであるX7Rの周波数に対する品質係数をそれぞれ示すグラフである。
図4図4は、実施例1で製造された積層セラミックキャパシタとMurata社の積層セラミックキャパシタであるX7Rの150℃の高温での時間に対する直流絶縁抵抗をそれぞれ示すグラフである。
図5図5は、実施例1で製造された積層セラミックキャパシタとMurata社の積層セラミックキャパシタであるX7Rの150℃の高温での電圧に対するリーク電流を示すグラフである。
図6図6は、実施例1で製造された積層セラミックキャパシタとMurata社の積層セラミックキャパシタであるX7RのDCバイアスの電圧増加に対する端子自己発生容量変化量をそれぞれ示すグラフである。
図7図7は、本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタの細部構成を示す端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態に対して本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。本発明は、様々な異なる形態で具現することができ、ここで説明する実施例に限定されない。図面において本発明を明確に説明するために、説明と関係ない部分を省略し、明細書全体にわたって同一または類似の構成要素に対しては、同じ参照符号を付加する。
【0028】
本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタは、図7に示されたように、セラミック胴体111と内部電極121、122が交互に積層されたキャパシタ本体110と
、内部電極121、122と電気的に連結される外部電極131、132と、を含んでもよい。言い換えれば、キャパシタ本体110の外部面または両端部には、キャパシタ本体110の内部に交互に配置された第1および第2内部電極121、122と各々導通、言い換えれば電気的に連結される第1および第2外部電極131、132が形成されてもよい。
【0029】
キャパシタ本体110の形状には、特に制限はないが、一般的に六面体形状であってもよい。また、その寸法も、特に制限がなく、用途に応じて適切な寸法に設計することができる。一例として、長さ0.5~8.0mm、幅0.5~8.0mm、厚さ0.2~5.0mmの寸法を有するように設計することができる。
【0030】
セラミック胴体111の厚さは、積層セラミックキャパシタの容量設計に合わせて任意に変更可能であり、本発明の一実施形態においてセラミック胴体111の厚さは、1枚当たり5~100μm、好ましくは、15~50μmであってもよい。あまり薄い厚さのセラミック胴体111は、1枚内に存在する結晶粒の数が小さいため、信頼性に悪い影響を及ぼすので、セラミック胴体111の厚さは、5μm以上であってもよい。
【0031】
内部電極121、122は、各端面がキャパシタ本体110の対向する両端部にそれぞれ露出するように積層してもよい。
【0032】
外部電極131、132は、キャパシタ本体110の両端部に形成され、内部電極121、122の露出端面に電気的に連結され、キャパシタ回路を構成する。
【0033】
内部電極121、122に含有される導電性材料は、特に限定されないが、好ましくは、ニッケル(Ni)を主成分として含んでもよい。
【0034】
内部電極121、122の厚さは、用途などに応じて適宜設計することができ、本発明の一実施形態において内部電極121、122の厚さは、0.1~50μm、好ましくは、0.1~10μmであってもよい。
【0035】
外部電極131、132に含有される導電性材料は、特に限定されないが、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、またはこれらの合金を主成分として含んでもよい。
【0036】
なお、セラミック胴体111は、後述する本発明の積層セラミックキャパシタ用誘電体組成物が焼結されたものであってもよい。
【0037】
本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタ用誘電体組成物は、バリウム系化合物、酸化ガドリニウム(Gd)、マンガン酸化物(Mn)および炭酸マグネシウム(MgCO)の中から選ばれた1種以上を含んでもよいし、好ましくは、バリウム系化合物、酸化ガドリニウム(Gd)、マンガン酸化物(Mn)および炭酸マグネシウム(MgCO)を含んでもよい。
【0038】
具体的には、本発明の積層セラミックキャパシタ用誘電体組成物は、バリウム系化合物100モル部に対して、酸化ガドリニウム2~6モル部、好ましくは、3~5モル部、より好ましくは、3.5~4.5モル部を含んでもよいし、もし、酸化ガドリニウムを2モル部未満で含むと、温度およびDCバイアス(bias)等の特性が低下する問題があり得、6モル部を超えて含むと、誘電体組成物が焼結しない問題があり得る。
【0039】
また、本発明の積層セラミックキャパシタ用誘電体組成物は、バリウム系化合物100モル部に対して、マンガン酸化物0.01~1モル部、好ましくは、0.05~0.5モ
ル部、より好ましくは、0.07~0.13モル部を含んでもよいし、もし、マンガン酸化物を0.01モル部未満で含むと、信頼性が低下する問題があり得、1モル部を超えて含むと、特性が低下する問題があり得る。
【0040】
また、本発明の積層セラミックキャパシタ用誘電体組成物は、バリウム系化合物100モル部に対して、炭酸マグネシウム2~6モル部、好ましくは、3~5モル部、より好ましくは、3.5~4.5モル部を含んでもよいし、もし、炭酸マグネシウムを2モル部未満で含むと、温度特性を満足しない問題があり得、6モル部を超えて含むと、素体の誘電率が低下する問題があり得る。
【0041】
なお、バリウム系化合物は、ジルコン酸バリウム(BaZrO)およびチタン酸バリウム(BaTiO)の中から選ばれた1種以上を含んでもよいし、好ましくは、ジルコン酸バリウム(BaZrO)およびチタン酸バリウム(BaTiO)を含んでもよい。
【0042】
この際、バリウム系化合物は、ジルコン酸バリウム(BaZrO)およびチタン酸バリウム(BaTiO)を1:2~6モル比、好ましくは、1:3~5モル比、より好ましくは、1:3.5~4.5モル比で含んでもよいし、もし、モル比が1:2未満であれば、素体が焼成しない問題があり得、1:6を超えると、温度およびDCバイアス(bias)等の特性が低下する問題があり得る。
【0043】
さらに、本発明の積層セラミックキャパシタ用誘電体組成物は、下記条件(1)~(3)を満たすことができ、もし、下記条件(1)~(3)を満たさない場合、焼結後に均一なグレーンサイズの確保が困難な問題があり得る。
(1)D10≦60nm、好ましくは、1nm≦D10≦50nm、より好ましくは、3nm≦D10≦50nm
(2)150nm≦D50≦350nm、好ましくは、200nm≦D50≦300nm、より好ましくは、220nm≦D50≦280nm
(3)D90≦2,000nm、好ましくは、500nm≦D90≦1,500nm、より好ましくは、700nm≦D90≦1,000nm
【0044】
前記条件(1)~(3)において、D10、D50およびD90は、それぞれ、本発明の積層セラミックキャパシタ用誘電体組成物粒度の体積累積分布で最大値に対して10%、50%、90%に該当する粒度をいう。
【0045】
本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタの製造方法は、第1段階~第6段階を含む。
【0046】
まず、本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタの製造方法の第1段階は、積層セラミックキャパシタ用誘電体組成物を準備することができる。準備した積層セラミックキャパシタ用誘電体組成物は、バリウム系化合物、酸化ガドリニウム(Gd)、マンガン酸化物(Mn)および炭酸マグネシウム(MgCO)の中から選ばれた1種以上を混合したものであってもよく、好ましくは、バリウム系化合物、酸化ガドリニウム(Gd)、マンガン酸化物(Mn)および炭酸マグネシウム(MgCO)を混合したものであってもよい。具体的には、本発明の積層セラミックキャパシタ用誘電体組成物は、バリウム系化合物100モル部に対して、マンガン酸化物0.01~1モル部、好ましくは、0.05~0.5モル部、より好ましくは、0.07~0.13モル部、炭酸マグネシウム2~6モル部、好ましくは、3~5モル部、より好ましくは、3.5~4.5モル部および酸化ガドリニウム2~6モル部、好ましくは、3~5モル部、より好ましくは、3.5~4.5モル部で混合したものであってもよい。また、バリウム系化合物は、ジルコン酸バリウム(BaZrO)およびチタン酸バリウム(BaTiO)を混合したものであってもよく、好ましくは、ジルコン酸バリウム(BaZrO)およびチタン酸バリウム(BaTiO)を1:2~6モル比、好ましくは、1:3~5モル比、より好ましくは、1:3.5~4.5モル比で混合したものであってもよい。
【0047】
次に、本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタの製造方法の第2段階は、第1段階で準備した積層セラミックキャパシタ用誘電体組成物にバインダーおよび有機溶媒を混合し、セラミックスラリーを製造することができる。
【0048】
具体的には、本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタの製造方法の第2段階は、第1段階で準備した積層セラミックキャパシタ用誘電体組成物にバインダーおよび有機溶媒を混合し、粉砕した後、脱泡(defoamation)およびエイジング(aging)工程を行うことによって、下記条件(1)~(3)を満たし、100~500cps、好ましくは、200~400cpsの粘度を有するセラミックスラリーを製造することができる。もし、粘度が100cps未満であるか、500cpsを超えると、シート製作工程に困難をもたらす問題があり得る。
(1)D10≦60nm、好ましくは、1nm≦D10≦50nm、より好ましくは、3nm≦D10≦50nm
(2)150nm≦D50≦350nm、好ましくは、200nm≦D50≦300nm、より好ましくは、220nm≦D50≦280nm
(3)D90≦2,000nm、好ましくは、500nm≦D90≦1,500nm、より好ましくは、700nm≦D90≦1,000nm
【0049】
前記条件(1)~(3)において、D10、D50およびD90は、セラミックスラリー粒度の体積累積分布で最大値に対して10%、50%、90%に該当する粒度をいう。
【0050】
第2段階で使用されるバインダーは、ポリビニルブチラール(Polyvinyl butyral)、エチルセルロース(Ethyl cellulose)、ポリビニルアルコール(Polyvinyl Alcohol)およびアクリル(acryl)の中から選ばれた1種以上を含んでもよいし、好ましくは、ポリビニルブチラールおよびアクリル(acryl)の中から選ばれた1種以上を含んでもよいし、より好ましくは、ポリビニルブチラールを含んでもよい。また、第2段階で使用されるバインダーは、第1段階で準備した積層セラミックキャパシタ用誘電体組成物100重量部に対して3~20重量部、好ましくは、6~11重量部、より好ましくは、7~10重量部で混合することができる。
【0051】
第2段階で使用される有機溶媒は、当業界において有機溶媒として使用される有機溶媒であれば、何でも含めて使用することができ、好ましくは、エタノール、トルエン、メチルエチルケトンおよびキシレンの中から選ばれた1種以上を含んでもよい。また、第2段階で使用される有機溶媒は、第1段階で準備した積層セラミックキャパシタ用誘電体組成物100重量部に対して45~95重量部、好ましくは、55~85重量部、より好ましくは、65~75重量部で混合することができる。
【0052】
また、第2段階で粉砕は、当業界において一般的に行うことができる粉砕工程であれば、何でも行うことができ、一例として、ボールミリング(ball milling)を用いて行うことができ、使用されるボールとしては、0.1~0.5mmのジルコニアビーズを用いることができる。
【0053】
また、第2段階で脱泡およびエイジング工程は、当業界において一般的に行うことができる脱泡およびエイジング工程であれば、何でも行うことができる。
次に、本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタの製造方法の第3段階は、第2段階で製造したセラミックスラリーをキャスト(casting)し、セラミックグリーンシートを形成することができる。具体的には、キャスト(casting)は、当業界において一般的に行うことができるキャスト工程であれば、何でも行うことができ、一例として、PETフィルム上に滴下し、コンマロール方式のキャスト装置を用いてセラミックグリーンシートを形成することができる。
【0054】
次に、本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタの製造方法の第4段階は、第3段階で形成したセラミックグリーンシートの一面に内部電極を印刷し、これを複数枚積層し、グリーンチップを製造することができる。この際、内部電極としては、Niを主成分として含む導電性ペーストを使用することができ、印刷は、当業界において一般的に行うことができる印刷工程であれば、何でも行うことができ、一例として、スクリーンプリント法を行って印刷することができる。また、セラミックグリーンシートは、5~200層、好ましくは、10~100層、より好ましくは、10~60層、より一層好ましくは、20~50層、さらに好ましくは、30~40層を積層してもよい。
【0055】
さらに、複数枚積層後には、40~120℃、好ましくは、60~100℃の温度で熱間等方圧プレス(hot isostatic press)した後、所定の寸法に切断した後に、グリーンチップを製造することができる。
【0056】
次に、本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタの製造方法の第5段階は、第4段階で製造したグリーンチップに脱脂工程および焼結工程を行い、キャパシタ本体を製造することができる。具体的には、第4段階は、2回の脱脂工程と1回の焼結工程を順次に行い、キャパシタ本体を製造することができ、一例として、グリーンチップを200~400℃、好ましくは、250~350℃の温度および酸化雰囲気で60~300分、好ましくは、120~240分間一次脱脂工程(Debinding)を行い、800~1000℃、好ましくは、850~950℃の温度および窒素雰囲気で30~120分、好ましくは、45~90分間二次脱脂工程を行った後、脱脂工程を行ったグリーンチップを1000~1400℃、好ましくは、1100~1300℃の温度および窒素-水素混合ガス雰囲気で60~300分、好ましくは、120~240分間焼結し、キャパシタ本体を製造することができる。脱脂は、当業界において一般的に行うことができる脱脂工程であれば、何でも行うことができ、一例として、雰囲気脱脂炉を用いて行うことができる。
【0057】
また、焼結は、当業界において一般的に行うことができる焼結工程であれば、何でも行うことができ、一例として連続炉を用いて行うことができる。
【0058】
最後に、本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタの製造方法の第6段階は、第5段階で製造したキャパシタ本体の外部面または両端面に内部電極と電気的に連結される外部電極を印刷し、積層セラミックキャパシタを製造することができる。この際、外部電極としては、Cuを主成分として含む導電性ペーストを使用することができ、印刷は、当業界において一般的に行うことができる印刷工程であれば、何でも行うことができ、一例として、ディッピング法を行って印刷することができる。
【0059】
実施例1:積層セラミックキャパシタの製造
(1)バリウム系化合物粉末100モル部に対して、酸化ガドリニウム(Gd)粉末4モル部、マンガン酸化物(Mn)粉末0.1モル部および炭酸マグネシウム(MgCO)4モル部を混合した積層セラミックキャパシタ用誘電体組成物を製造した。この際、バリウム系化合物粉末としてジルコン酸バリウム(BaZrO)粉末およびチタン酸バリウム(BaTiO)粉末が1:4モル比で混合したものを使用した。
(2)製造した積層セラミックキャパシタ用誘電体組成物にバインダーおよび有機溶媒を混合し、0.2mmのジルコニアビーズを用いたボールミリング(ball milling)を行って粉砕した後、脱泡(defoamation)およびエイジング(aging)工程を行い、D10 45nm、D50 250nm、D90 900nmの粒度および300cpsの粘度を有するセラミックスラリーを製造した。この際、バインダーとしてポリビニルブチラール(Polyvinyl butyral)を使用し、有機溶媒としてトルエンを使用し、D10、D50およびD90は、それぞれ、セラミックスラリー粒度の体積累積分布で最大値に対して10%、50%、90%に該当する粒度をいう。
(3)製造したセラミックスラリーは、PETフィルム上に滴下し、コンマロール方式のキャスト装置を用いてシート状に成形し、30μmの厚さを有するセラミックグリーンシートを製造した。
(4)製造したセラミックグリーンシートの一面に内部電極として使用されるNiを主成分として含む導電性ペーストをスクリーンプリント法で印刷した後、これを複数枚積層した。具体的には、Niを主成分として含む導電性ペースト領域が対向電極を形成するように交互にセラミックグリーンシートを積層し、その後、80℃の温度で熱間等方圧プレス(hot isostatic press)した後、所定の寸法に切断し、グリーンチップを製造した。この際、セラミックグリーンシートは、33層で積層し、対向電極の面積は、20mmであった。
(5)製造したグリーンチップを300℃の温度および酸化雰囲気で120分間一次脱脂工程(Debinding)を行い、900℃の温度および窒素雰囲気で60分間二次脱脂工程を行った。脱脂工程を行ったグリーンチップを1200℃の温度および窒素-水素混合ガス雰囲気で120分間焼結して、キャパシタ本体を製造した。
(6)製造したキャパシタ本体の両端面に外部電極として使用されたCuを主成分として含む導電性ペーストをディッピング法で印刷し、焼付し、内部電極と電気的に接続された外部電極を有する、外形寸法が長さ5.7mm、幅5.0mm、厚さ2.0mmの積層セラミックキャパシタを製造した。
【0060】
実験例:積層セラミックキャパシタの物性の測定
実施例1で製造された積層セラミックキャパシタ、Murata社の積層セラミックキャパシタであるX7Rに対して下記のような測定条件で物性を測定した。
(1)Input:関数発生器(Function generator)
(2)Amplifier:DC~1MHz、約3~4A、CV Type
(3)Output:オシロスコープ(oscilloscope)、電流プローブ(current probes)
(4)その他:熱電対、温度測定プログラム
【0061】
実験例1:30kHz、100kHz、300kHzの周波数でリップル電流に対する温度の測定
実施例1で製造された積層セラミックキャパシタ(=X7T)とMurata社の積層セラミックキャパシタであるX7R(=チタン酸バリウム(BaTiO)100モル部に対して、マグネシウム(Mg)3.9~9.0モル部、ガドリニウム(Gd)11.3~14.7モル部、ジルコニウム(Zr)10.3~14.1モル部、マンガン(Mn)1.5~2.8モル部、カルシウム(Ca)29.3~32.3モル部およびケイ素(Si)4.4~8.2モル部で含む組成を有する)の30kHz、100kHz、300kHzの周波数でリップル電流に対する温度をそれぞれ測定し、これに対する測定値を表1に示し、測定グラフを図1に示した。表1および図1を参照すると、実施例1で製造された積層セラミックキャパシタは、Murata社の積層セラミックキャパシタであるX7Rよりも低い温度を示し、寿命に対する信頼性に優れていることを確認することができた。
【0062】
【表1】
【0063】
実験例2:周波数に対する等価直列抵抗(Equivalent Series Resistance,ESR)の測定
実施例1で製造された積層セラミックキャパシタ(=AMO)とMurata社の積層セラミックキャパシタであるX7R(=MURATA)の周波数に対する等価直列抵抗を測定し、これに対する測定グラフを図2に示した。図2を参照すると、実施例1で製造された積層セラミックキャパシタは、Murata社の積層セラミックキャパシタであるX7Rよりも低い等価直列抵抗を有することを確認することができた。
【0064】
実験例3:周波数に対する品質係数(Q)の測定
実施例1で製造された積層セラミックキャパシタ(=AMO)とMurata社の積層セラミックキャパシタであるX7R(=MURATA)に対する品質係数を測定し、これに対する測定グラフを図3に示した。図3を参照すると、実施例1で製造された積層セラミックキャパシタは、Murata社の積層セラミックキャパシタであるX7Rよりも高い品質係数値を有することを確認することができた。
【0065】
実験例4:高温での時間に対する直流絶縁抵抗(hot-IR)の測定
実施例1で製造された積層セラミックキャパシタ(=AMO)とMurata社の積層セラミックキャパシタであるX7R(=MURATA)の150℃の高温での時間に対する直流絶縁抵抗を測定し、これに対する測定グラフを図4に示した。図4を参照すると、実施例1で製造された積層セラミックキャパシタは、Murata社の積層セラミックキャパシタであるX7Rよりも高い直流絶縁抵抗を示し、優れた信頼性を有することを確認することができた。
【0066】
実験例5:高温での電圧に対するリーク電流(IL)の測定
実施例1で製造された積層セラミックキャパシタ(=AMO)とMurata社の積層セラミックキャパシタであるX7R(=MURATA)の150℃の高温での電圧に対するリーク電流を測定し、これに対する測定グラフを図5に示した。図5を参照すると、実施例1で製造された積層セラミックキャパシタは、Murata社の積層セラミックキャパシタであるX7Rよりも低いリーク電流を示し、優れた信頼性を有することを確認することができた。
【0067】
実験例6:DCバイアスに対する端子自己発生容量変化量(△Cp)の測定
実施例1で製造された積層セラミックキャパシタ(=X7T)とMurata社の積層セラミックキャパシタであるX7RのDCバイアスの電圧増加に対する端子自己発生容量変化量を測定し、これに対する測定グラフを図6に示した。図6を参照すると、実施例1で製造された積層セラミックキャパシタは、Murata社の積層セラミックキャパシタであるX7RよりもDCバイアス特性に優れていることを確認することができた。
【0068】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の思想は、本明細書に提示される実施形態に制限されず、本発明の思想を理解する当業者は、同じ思想の範囲内で、構成要素の付加、変更、削除、追加などによって他の実施形態を容易に提案できるが、これも、本発明の思想範囲内に入ると言える。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、積層セラミックキャパシタ用誘電体組成物、これを含む積層セラミックキャパシタおよびその製造方法に関し、より詳細には、信頼性に優れているだけでなく、性能にも優れた積層セラミックキャパシタ用誘電体組成物、これを含む積層セラミックキャパシタおよびその製造方法に関する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】