(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体およびポリマー配合物におけるその使用
(51)【国際特許分類】
C01B 33/12 20060101AFI20240517BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240517BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20240517BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240517BHJP
C01G 39/00 20060101ALI20240517BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
C01B33/12 A
C08L101/00
C08K3/22
C08K3/36
C01G39/00 Z
H05K1/03 610H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571990
(86)(22)【出願日】2022-05-20
(85)【翻訳文提出日】2023-12-14
(86)【国際出願番号】 US2022030292
(87)【国際公開番号】W WO2022251063
(87)【国際公開日】2022-12-01
(32)【優先日】2021-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501449816
【氏名又は名称】ジェイ・エム・フーバー・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100195556
【氏名又は名称】柿沼 公二
(72)【発明者】
【氏名】アレクセイ イサロフ
(72)【発明者】
【氏名】ユー リウ
(72)【発明者】
【氏名】ピーター チャールズ ホール
(72)【発明者】
【氏名】ロビン ブランビー ヘルムズ
【テーマコード(参考)】
4G048
4G072
4J002
【Fターム(参考)】
4G048AA03
4G048AB02
4G048AC07
4G048AD04
4G048AE05
4G072AA38
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4G072TT01
4G072TT02
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4J002AA011
4J002AA01W
4J002AA021
4J002AA02W
4J002BD031
4J002BD03W
4J002CD051
4J002CD05W
4J002DE096
4J002DE106
4J002DJ016
4J002FD136
4J002FD176
4J002GQ01
4J002GQ05
(57)【要約】
担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体の製造方法は、亜鉛化合物(酸化亜鉛など)と三酸化モリブデンとを水系において反応させて反応混合物を形成するステップと反応混合物をシリカと接触させて担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体を形成するステップとを含む。得られた二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体は、シリカと3~20wt%の範囲の量の二モリブデン酸亜鉛水酸化物とを含有し、概して、少なくとも80wt%の二モリブデン酸亜鉛水酸化物は、Zn3Mo2O8(OH)2の形で存在する。これらの担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体は、PVCベースおよびエポキシベースの配合物などのポリマー組成物に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体の製造方法であって、
(i)亜鉛化合物と三酸化モリブデン(MoO
3)とを水系において反応させて反応混合物を形成するステップと、
(ii)前記反応混合物をシリカと接触させて、前記担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体を形成するステップと、
を含む、担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体の製造方法。
【請求項2】
ステップ(i)およびステップ(ii)は、20℃~95℃の範囲の温度で独立して行われ、
前記亜鉛化合物は、酸化亜鉛を含み、
前記酸化亜鉛と前記三酸化モリブデンとは、1:1~2:1のZn:Moのモル比で反応する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体の製造方法であって、
二モリブデン酸亜鉛水酸化物とシリカとを水系中で接触させて、前記担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体を形成するステップと、
を含む、担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体の製造方法。
【請求項4】
前記担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体は、15℃~95℃の範囲の温度で形成される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体を水から除去するステップをさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体を乾燥するステップ、
前記担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体を解凝集するステップ、
前記担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体を粉砕するステップ、または、
それらの任意の組み合わせをさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法によって製造される、前記担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体。
【請求項8】
(a)シリカと、
(b)担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体の総重量に基づいて3~20wt%の範囲の量の亜鉛を含む二モリブデン酸亜鉛水酸化物と、
を含み、
前記二モリブデン酸亜鉛水酸化物の少なくとも80wt%は、結晶形Zn
3Mo
2O
8(OH)
2として存在する、担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体。
【請求項9】
前記シリカは、
0.2~5μmのd50粒径と、
0.6~10μmのd100粒径と、
0.08~1μmのd10粒径と、
2~20m
2/gのBET表面積と、
を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法または複合体。
【請求項10】
前記シリカは、溶融シリカであるか、
前記シリカは、球状シリカであるか、
またはその両方である、
請求項1から9のいずれか一項に記載のプロセスまたは複合体。
【請求項11】
前記担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体は、4~16wt%の亜鉛を含有し、
前記担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体は、3~20wt%のモリブデンを含有し、
前記二モリブデン酸亜鉛水酸化物の少なくとも90wt%は、Zn
3Mo
2O
8(OH)
2として存在する、
請求項1から10のいずれか一項に記載のプロセスまたは複合体。
【請求項12】
前記担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体は、
0.3~6μmのd50粒径と、
1~12μmのd100粒径と、
0.1~1.5μmのd10粒径と、
1.5~5のスパン((d90-d10)/d50)と、
3~20m
2/gのBET表面積と、
を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載のプロセスまたは複合体。
【請求項13】
前記担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体は、球状である、請求項1から12のいずれか一項に記載のプロセスまたは複合体。
【請求項14】
(a)ポリマーと、
(b)請求項7~13のいずれか一項に記載の前記担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体と、
を含むポリマー組成物。
【請求項15】
前記ポリマーは、熱可塑性ポリマーを含む、請求項14に記載のポリマー組成物。
【請求項16】
前記ポリマーは、熱硬化性ポリマーを含む、請求項14に記載のポリマー組成物。
【請求項17】
前記ポリマーは、硬質PVCまたは軟質PVCを含む、請求項14に記載のポリマー組成物。
【請求項18】
前記ポリマーは、エポキシ樹脂を含む、請求項14に記載のポリマー組成物。
【請求項19】
前記担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体の量は、1~50phrの範囲である、請求項14~18のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項20】
前記ポリマー組成物は、添加剤をさらに含み、前記添加剤は、安定剤、潤滑剤、無機難燃剤、充填材、着色剤、硬化剤、触媒または促進剤、繊維、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項14~19のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項21】
請求項14から20のいずれか一項に記載のポリマー組成物を含む製造物品。
【請求項22】
前記物品は、ワイヤまたはケーブルを含む、請求項21に記載の物品。
【請求項23】
前記物品は、プリント回路基板を含む、請求項21に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年5月25日に出願された米国仮特許出願第63/192,634号の利益および優先権を主張し、その開示内容全体を参照によって本明細書に援用する。
【0002】
(技術分野)
本発明は、概して二モリブデン酸亜鉛水酸化物材料に関し、より具体的には、難燃性の向上および摩損性の低減のためにポリマー組成物に使用され得る担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体に関する。
【発明の概要】
【0003】
この概要は、下記の詳細な説明でさらに説明される、簡略化された形式で概念の選択を紹介するために提供される。この概要は、主張される主題の必要な特徴または必須の特徴を特定することを意図したものではない。また、この概要は、主張される主題の範囲を制限するために使用されることを意図したものではない。
【0004】
担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体の製造方法が本明細書に開示および記載される。このようなプロセスの1つは、(i)亜鉛化合物(例示的な例は酸化亜鉛である)と三酸化モリブデン(MoO3)とを水系において反応させて反応混合物を形成すること、および(ii)反応混合物をシリカと接触させて(またはスラリー化して)担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体を形成することを含み得る。担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体を製造するための別のプロセスは、二モリブデン酸亜鉛水酸化物とシリカとを水系中で接触(またはスラリー化)して、担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体を形成することを含み得る。
【0005】
担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体もまた、本明細書に開示および記載されており、これらの複合体は、(a)シリカと、(b)担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体の総重量に基づいて3~20wt%の範囲の量の亜鉛を含む二モリブデン酸亜鉛水酸化物と、を含み得る。概して、少なくとも80wt%(多くの場合90~100wt%)の二モリブデン酸亜鉛水酸化物は、結晶形Zn3Mo2O8(OH)2として存在する。
【0006】
ポリマー組成物もまた、本明細書で提供され、そのような組成物は、ポリマーと、本明細書に開示される任意の担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体(例えば、本明細書に開示されるプロセスのいずれかによって製造される)と、を含み得る。組成物中のポリマーと担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体との相対量は特に限定されず、ポリマーの種類も限定されないが、担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体は、PVCおよびエポキシベース配合物での使用に特によく適している。
【0007】
前述の概要および下記の詳細な説明は両方とも例を提供するものであり、単に説明を目的とする。したがって、上記の概要および下記の詳細な説明は、限定的なものであると考えられるべきではない。さらに、本明細書に記載されたものに加えて、特徴または変形が提供され得る。例えば、特定の態様は、詳細な説明で説明されるさまざまな特徴の組み合わせおよび副組み合わせを対象とし得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1で使用した球状溶融シリカ成分の走査型電子顕微鏡写真である。
【
図2】実施例1の担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体の走査型電子顕微鏡写真である。
【
図3】比較例Aの担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体の走査型電子顕微鏡写真である。
【
図4】実施例12~15の難燃性ポリマー組成物の発熱速度(HRR)曲線のプロットを示す。
【
図5】実施例16~17のエポキシプラークを穴あけする前後のドリルビットの写真である。
【
図6】実施例18~19のエポキシプラークを穴あけする前後のドリルビットの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(定義)
ここで使用される用語をより明確に定義するために、次の定義を提供する。特に明記しない限り、下記の定義を本開示に適用する。用語が本開示で使用されているが本明細書で特に定義されていない場合、その定義が適用される他の開示または定義と矛盾しない限りまたはその定義が適用される請求項を不確定または無効にしない限り、IUPAC Compendium of Chemical Terminology、第2版(1997)の定義が適用され得る。参照によって本明細書に援用される文書によって提供される任意の定義または使用法が本明細書において提供される定義または使用法と矛盾する場合には、本明細書において提供される定義または使用法が優先される。
【0010】
本明細書では、特定の態様において、異なる特徴の組み合わせが想定され得るように、主題の特徴が説明される。本明細書に開示されるあらゆる態様およびあらゆる特徴について、本明細書に記載される設計、組成物、プロセス、または方法に悪影響を及ぼさないすべての組み合わせが企図されており、特定の組み合わせの明示的な説明の有無にかかわらず、交換され得る。したがって、明示的に別段の記載がない限り、本明細書に開示される任意の態様または特徴を組み合わせて、本開示と一致する発明の設計、組成物、プロセス、または方法を説明し得る。
【0011】
組成物および方法は、本明細書では様々な成分またはステップを「含む」という観点から記載されるが、別段の記載がない限り、組成物および方法は、様々な成分またはステップを「実質的に含む」または「からなる」場合もあり得る。
【0012】
「a」、「an」、および「the」という用語は、別段の指定がない限り、複数の選択肢、例えば少なくとも1つを含むことを意図している。
【0013】
概して、元素のグループは、Chemical and Engineering News,63(5),27,1985に掲載されたバージョンの元素周期表に示されている番号付けスキームを使用して示される。場合によっては、元素のグループは、グループに割り当てられた共通名、例えば、第1族元素の場合はアルカリ金属、第2族元素の場合はアルカリ土類金属などで示される。
【0014】
「接触させる」という用語は、本明細書では、ブレンド、混合、スラリー化、溶解、反応、処理、配合、あるいは何らかの他の方法または任意の適切な方法によって接触または組み合わせられ得る材料または成分を指すために使用される。別段の指定がない限り、材料または成分は、任意の順序、任意の方法、任意の長さの時間、共に接触させられ得る。
【0015】
三酸化モリブデン(MoO3)は、しばしば三酸化モリブデン、酸化モリブデン(VI)、無水モリブデン(または無水モリブデン酸)と呼ばれ得る。当業者であれば容易に認識するように、(酸性)水性環境では、三酸化モリブデンは、モリブデン酸、ならびに水和物およびモリブデン酸塩などの他の種を形成し得る。したがって、水性混合物または水性系における三酸化モリブデンの使用が本明細書に開示されるとき、これは、モリブデン酸、水和物、モリブデン酸塩など、およびそれらの組み合わせなど、水性環境に存在するあらゆる形態のモリブデン種または複合体を包含することを意味する。
【0016】
本明細書に記載のものと類似または同等の任意の方法および材料を本発明の実施または試験に使用することができるが、本明細書では通常の方法および材料を説明する。
【0017】
本明細書で言及されるすべての刊行物および特許は、例えば、現在記載されている発明に関連して使用され得る刊行物に記載されている構成および方法論を説明および開示する目的で、参照によって本明細書に援用される。
【0018】
本発明では、いくつかのタイプの範囲が開示される。任意のタイプの範囲が開示または請求されるとき、その意図は、その範囲の終点、ならびに任意の副範囲およびその中に含まれる副範囲の組み合わせを含む、その範囲が合理的に包含し得る各可能な数値を個別に開示または請求することである。代表的な例として、シリカのd50粒径は、本発明の様々な態様において特定の範囲内にあり得る。d50粒径が0.2~5μmの範囲にあり得るという開示によって、その意図は、d50がその範囲内の任意の粒径であり得ること、例えば、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、または5μmであり得ることを示す。さらに、d50粒径は、0.2~5μm、例えば0.2~2.5μm、0.2~1μm、または0.25~0.8μmなどの任意の範囲または範囲の組み合わせであり得る。同様に、本明細書に開示される他のすべての範囲は、この例と同様の方法で解釈されたい。
【0019】
概して、量、サイズ、配合、パラメータ、範囲、または他の量または特徴は、明示的に記載されているか否かにかかわらず、「約」または「おおよそ」である。「約」または「おおよそ」という用語によって修飾されるかどうかにかかわらず、特許請求の範囲には量または特性と同等のものが含まれる。
【0020】
(発明の詳細な説明)
本明細書では、主に結晶形Zn3Mo2O8(OH)2を含有する担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体、担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体の製造方法、ならびに担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体を含有するポリマー組成物および製造物品が開示される。
【0021】
(担持された複合体の製造プロセス)
担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体を製造するための様々なプロセスが本明細書で提供される。第1のプロセスは、(i)亜鉛化合物と三酸化モリブデン(MoO3)とを水系中で反応させて反応混合物を形成することと、(ii)反応混合物をシリカと接触させて(またはスラリー化させて)、担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体を形成することと、を含み得る(または実質的にこれらからなり得る、またはこれらからなり得る)。担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体を製造するための第2のプロセスは、水系中で二モリブデン酸亜鉛水酸化物とシリカを接触(またはスラリー化)させて、担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体を形成することを含み得る(または実質的にこれらからなり得る、またはこれらからなり得る)。
【0022】
概して、本明細書に開示されるプロセスのいずれかの特徴(例えば、亜鉛化合物、三酸化モリブデン(MoO3)、二モリブデン酸亜鉛水酸化物、シリカ、水系、および任意のステップが実施される温度および圧力条件、など)は、本明細書では独立して説明されており、開示されるプロセスをさらに説明するために、これらの特徴を任意の組み合わせで組み合わせ得る。さらに、別段の記載がない限り、開示されるプロセスに列挙されたステップのいずれかの前、途中、および/または後に、他のプロセスステップを実施し得る。さらに、開示されるプロセスのいずれかに従って製造された任意の担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体は、本開示の範囲内にあり、本明細書に包含される。
【0023】
ここで第1のプロセスを参照すると、ステップ(i)およびステップ(ii)は、通常20℃~95℃の範囲内、例えば50℃~95℃、70℃~95℃、75℃~90℃、または80℃~90℃であるがこれらに限定されない、温度で独立して実施され得る。これらおよび他の態様において、これらの温度範囲は、ステップ(i)および/またはステップ(ii)がそれぞれの範囲内にある単一の固定温度ではなく一連の異なる温度で行われる状況を包含することも意味する。ステップ(i)およびステップ(ii)が実施される圧力は、特に限定されないが、独立して、高圧(例えば、5psig~100psig)、大気圧、または任意の適切な大気圧より低い圧力であり得る。場合によっては、ステップ(i)およびステップ(ii)は大気圧で実施され、加圧容器の必要性ならびにそれに関連するコストおよび複雑さが排除される。独立して、ステップ(i)およびステップ(ii)は、15分~24時間、30分~12時間、または90分~6時間などであるがこれらのみに限定されない、広範囲の時間にわたって実施され得る。他の適切な温度、圧力、および時間範囲は、本開示から容易に明らかになる。
【0024】
ステップ(i)では、亜鉛化合物を水系中で三酸化モリブデンと反応させて、反応混合物を形成する。酸化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛などの任意の適切な亜鉛化合物を使用し得る。酸化亜鉛は、後で除去する必要があり得る他の元素(ハロゲンまた窒素など)をプロセスに導入しないため、しばしば使用される。亜鉛化合物と三酸化モリブデンとは、各反応物の総量に基づいて、添加順序、反応物の接触、または使用される添加方法に関わらず、通常1:1~2:1の範囲内に入るZn:Moのモル比で接触または反応され得る。例えば、三酸化モリブデン(例えば、水中のスラリー)を、任意の適切な添加速度で、任意の適切な時間をかけて酸化亜鉛(例えば、水溶液)にゆっくりと添加し得る。当業者であれば容易に理解できるように、Zn:Moのモル比は、反応が進行するにつれて変化し得る。したがって、開示されるモル比の範囲は、ステップ(i)における反応および反応混合物の形成中に遭遇するあらゆるモル比を包含する。本発明のさらなる態様では、Zn:Moの比は、1.2:1~1.8:1、1.3:1~1.7:1、または1.4:1~1.6:1であり得る。例えば、Zn:Moのモル比は、化学式Zn3Mo2O8(OH)2を有する二モリブデン酸亜鉛水酸化物が得られることを反映して、1.5:1(+/-10%)の化学量論比であり得る。
【0025】
第1のプロセスのステップ(ii)では、反応混合物(水系)をシリカと接触(またはスラリー化)して、担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体を形成する一方、第2のプロセスでは、水系中で二モリブデン酸亜鉛水酸化物をシリカと接触させて(またはシリカでスラリー化させて)、担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体を形成する。両方のプロセスにおいて、水系は水を含み得る(または実質的に水からなり得る、または水からなり得る)。水系のpHは特に限定されず、当業者であれば容易に認識されるように、水系のpH、および担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体が形成されるpHは、反応の進行につれて変化し得る。所望であれば、水性系は、第1のプロセスおよび/または第2のプロセス中にpHを修飾するか、またはpHを特定の範囲に制御するために、酸または塩基を含み得る。
【0026】
ここで第2のプロセスを参照すると、担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体は、通常15℃~95℃の範囲内、例えば15℃~50℃、または20℃~35℃であるがこれらに限定されない、温度で形成され得る。これらおよび他の態様において、これらの温度範囲はまた、担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体が、単一の固定温度の代わりに、それぞれの範囲内にある一連の異なる温度で形成される状況を包含することを意味する。担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体が形成される圧力は、特に限定されないが、高圧(例えば、5psig~100psig)、大気圧、または任意の適切な大気圧より低い圧力であり得る。場合によっては、担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体は大気圧で形成されるため、加圧容器の必要性ならびにそれに伴うコストおよび複雑さが不要になる。概して、担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体は、15分~24時間、30分~12時間、または2時間~6時間などであるが、これらだけに限定されない、広範囲の時間にわたって形成され得る。他の適切な温度、圧力、および時間範囲は、本開示から容易に明らかになる。
【0027】
必要に応じて、担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体を製造するための第1および第2のプロセスは、任意の適切な分離技術を使用して、担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体を水から除去するステップをさらに含み得る。例えば、濾過または遠心分離、ならびにこれらの技術の組み合わせも使用され得る。
【0028】
必要に応じて、担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体を製造するための第1および第2のプロセスは、任意の適切な乾燥条件を使用して担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体を乾燥するステップをさらに含み得る。例えば、50℃~200℃、または100℃~150℃の範囲の乾燥温度を使用し得、乾燥は大気圧または任意の適切な大気圧より低い圧力、例えば150Torr未満、または50Torr未満の圧力で行い得る。
【0029】
所望であれば、担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体を製造するための第1および第2のプロセスは、担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体を解凝集するステップをさらに含み得、担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体を粉砕するステップをさらに含み得、あるいは、解凝集ステップと粉砕ステップの両方をも利用し得る。
【0030】
(担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体)
本発明の態様と一致して、本明細書に記載の担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体(または本明細書に開示のプロセスのいずれかに従って製造された担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体)は、有益な性能特性を備えたさまざまなポリマー配合物に使用され得る。一態様では、担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体は、(a)シリカと、(b)担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体の総重量に基づいて3~20wt%の範囲の量の亜鉛を含む二モリブデン酸亜鉛水酸化物と、を含み得る。少なくとも80wt%の二モリブデン酸亜鉛水酸化物は、結晶形態のZn3Mo2O8(OH)2として存在し得る。
【0031】
担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体のシリカ成分(または担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体を製造するプロセスで使用されるシリカ)は、多くの場合、0.2~5μm、0.2~25μm、0.2~1μm、または0.25~0.8μmの範囲のメジアン粒径(d50)を有し得る。加えて、または代わりに、シリカのd100粒径は、0.6~10μm、0.6~5μm、0.6~4μm、0.7~4μm、または0.7~3.5μmの範囲であり得る。加えて、または代わりに、シリカのd10粒径は、0.08~1μm、0.08~0.5μm、0.1~0.5μm、または0.1~0.4μmの範囲であり得る。加えて、または代わりに、シリカは、2~20m2/g、4~15m2/g、4~12m2/g、5~15m2/g、または5~13m2/gの範囲内のBET表面積であり得る。他の適切な粒径および表面積は、本開示から容易に明らかである。
【0032】
これらに限定されないが、本発明のいくつかの態様では、シリカは、フュームドシリカおよび沈降シリカとは対照的に、溶融シリカであり得る。概して、シリカはまた、球状シリカである。したがって、特定の態様では、担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体のシリカ成分(または担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体の製造方法で使用されるシリカ)は、球状溶融シリカである。シリカは、平均アスペクト比が1:1~1.4:1の範囲にある場合に球状であるとみなされ、より多くの場合は、平均アスペクト比が1:1~1.25:1、または1:1~1.1:1である。アスペクト比は、本明細書では、2次元SEM画像(例えば、
図1)で見たときの最長(測定可能な)粒子寸法を最短寸法で割ったものとして定義される。平均アスペクト比は、SEM画像からの10個の(測定可能な)粒子のアスペクト比の平均である。
【0033】
本明細書に記載の担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体(または本明細書に記載の任意のプロセスによって製造された担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体)は、担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体の総重量に基づいて3~20wt%の範囲の量の亜鉛を含む二モリブデン酸亜鉛水酸化物と、を含有し得る。別の態様では、担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体は、3~18wt%の亜鉛を含有し得、別の態様では、4~16wt%の亜鉛、さらに別の態様では、5~15wt%の亜鉛を含有し得る。加えて、または代わりに、担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカは、例えば3~18wt%のモリブデン、4~16wt%のモリブデン、または5~15wt%のモリブデンなどの、3~20wt%のモリブデンを含有し得る。
【0034】
これらに限定されないが、本明細書に記載の担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体(または本明細書に記載の任意のプロセスによって製造された担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体)は、多くの場合、0.3~6μm、0.3~2μm、0.4~1.8μm、または0.5~1.7μmの範囲のメジアン粒径(d50)を有し得る。さらに、または代わりに、担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体のd100粒径は、1~12μm、1~8μm、1.5~7μm、2~7μm、または2.5~6μmの範囲であり得る。さらに、または代わりに、担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体のd10粒径は、0.1~1.5μm、0.1~0.8μm、0.1~0.7μm、または0.2~0.6μmの範囲であり得る。さらに、または代わりに、担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体のスパン((d90-d10)/d50)は、1.5~5、1.5~4.5、または2~4の範囲であり得る。追加的または代替的に、担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体は、3~20m2/g、3~15m2/g、3~12m2/g、4~13m2/g、または4~10m2/gの範囲のBET表面積である。担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体の他の適切な粒径および表面積は、本開示から容易に明らかである。
【0035】
シリカと同様に、本明細書に記載の担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体(または本明細書に記載の任意のプロセスによって製造された担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体)は、球状(平均アスペクト比は1:1~1.4:1の範囲であり、より多くの場合、平均アスペクト比は1:1~1.25:1、または1:1~1.1:1)であり得る。
【0036】
ここで、少なくとも80wt%の二モリブデン酸亜鉛水酸化物は、結晶形態のZn3Mo2O8(OH)2として存在し得る。例えば、少なくとも80wt%、少なくとも85wt%、少なくとも90wt%、または少なくとも95wt%、Zn3Mo2O8(OH)2として存在し得る。したがって、二モリブデン酸亜鉛水酸化物の実質的にすべて(98~99.5wt%)またはすべて(100wt%)が、結晶形態のZn3Mo2O8(OH)2として存在し得る。亜鉛/モリブデン化合物の他の形態には、ZnMoO4・0.8H2OおよびZnMoO4(モリブデン酸亜鉛)が含まれる。
【0037】
(ポリマー組成物)
本発明はまた、本明細書に開示される担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体のいずれかを含有する任意の組成物、配合物、複合体、および製品(およびそれらのそれぞれの特性または特徴、例えば表面積、粒径、亜鉛の量、モリブデンの量、結晶形など)をも対象とし、それらを包含する。本発明の特定の態様では、ポリマー組成物が開示され、この態様では、ポリマー組成物は、任意の適切なポリマー(1つ以上)および本明細書に開示される任意の担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体(または本明細書に記載の任意のプロセスによって製造された担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体)を含み得る。
【0038】
一態様では、ポリマー組成物中のポリマーは熱可塑性ポリマーを含み得、別の態様では、ポリマーは熱硬化性ポリマーを含し得る。別の態様では、ポリマーは、単独でまたは任意の組み合わせのいずれかで、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩素化ポリ塩化ビニル(CPVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、および/またはエチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)を含み得る。さらに別の態様では、ポリマーは、可塑化PVCまたは非可塑化PVCを含み得る。さらに別の態様では、ポリマーは硬質PVCを含み得、あるいはポリマーは軟質PVCを含み得る。概して、硬質PVCは、非可塑化PVCと呼ばれ得、軟質PVCは、可塑化PVCと呼ばれ得る。
【0039】
当業者であれば容易に認識するように、PVDCは、ポリ塩化ビニリデンと呼ばれ得、また、ポリ(塩化ビニリデン)とも呼ばれ得る。同様に、PVCはポリ塩化ビニルと呼ばれ得、また、ポリ(塩化ビニル)とも呼ばれ得る。
【0040】
一態様では、ポリマーは、エポキシ樹脂を含み得る。例えば、ポリマーは、単独でまたは任意の組み合わせのいずれかで、ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂、ビスフェノールSエポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラックエポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラックエポキシ樹脂、ジフェニルエチレンエポキシ樹脂、トリアジン骨格を有するエポキシ樹脂、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂、トリフェニルメタンエポキシ樹脂、ビフェニルエポキシ樹脂、キシリレンエポキシ樹脂、ビフェニルアラルキルエポキシ樹脂、ナフタレン系エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン系エポキシ樹脂、および/または脂環式エポキシ樹脂等を含み得る。
【0041】
これに限定されないが、ポリマー組成物中の担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体の量は、多くの場合、1~50phr(樹脂100部当たりの重量部)の範囲であり得る。したがって、ポリマー組成物中の担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体の例示的かつ非限定的な量として、5~50phr、2~40phr、5~40phr、10~50phr、10~40phr、10~30phr、または15~40phrの範囲が挙げられる。ポリマー組成物中の担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体の量の他の適切な範囲は、本開示から容易に明らかになる。
【0042】
任意に、ポリマー組成物は、任意の適切な添加剤をさらに含み得、その非限定的な例としては、安定剤、潤滑剤、無機難燃剤(例えば、アルミニウム三水和物または水酸化マグネシウム)、充填材、着色剤、硬化剤、触媒もしくは促進剤、または繊維(例えば、ガラス繊維、炭素繊維、紙繊維、不織布繊維)など、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0043】
製品は、本明細書に記載されるポリマー組成物のいずれかから形成され得、および/または任意のポリマー組成物を含み得る。一態様では、製品はワイヤまたはケーブルを含み得、別の態様では、製品はプリント回路基板を含み得る。他の適切な製品および最終用途は、本開示から容易に明らかになる。
【0044】
例えば、球状二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体は、工業用複合プリプレグの少なくとも3つの用途に利用され得、ならびに、マイクロエレクトロニクス製造にも利用でき、最終製品の特性向上および製造プロセスの改善に利点をもたらすために利用され得る。第1の用途はプリント基板(PCB)であり、第2の用途はマイクロチップパッケージングなどのエポキシモールディングコンパウンド(EMC)であり、第3の用途は難燃性と穴あけ加工が必要とされる航空宇宙産業および自動車の最終用途などの工業用複合プリプレグである。
【0045】
プリント回路基板(PCB)は、テレビ、携帯電話、コンピューターなどの消費者製品や工業製品のエレクトロニクスに広く普及している。メーカーは通常、火災安全性を確保するために難燃性の化学薬品を使用して回路基板を製造する。難燃剤は、火災の発生を完全に防止し、またはフラッシュオーバーの開始を遅らせて火災の拡大段階を遅らせそれによって避難時間枠を延長し得る。いずれの場合も、難燃剤は火災による死亡事故のリスクを軽減するという主な目的を果たす。しかし、一部の難燃性化学物質は、環境中に放出された場合の結末および毒性についての懸念が高まっている。テトラブロモビスフェノールAまたはTBBPAがこれに当てはまる。TBBPAは、PCBに最も広く使用されている難燃剤である。ここで、単一の組成物は、ハロゲンフリー難燃性、穴あけ加工の改善、熱膨張制御、寸法安定性などのいくつかの利点を提供する。
【0046】
基本的なPCBは、基板に積層された絶縁材料の平らなシートと銅箔の層とからなる。化学エッチングによって、銅が、トラックまたは回路トレースと呼ばれる個別の導電線、接続用のパッド、銅の層間の接続を通過させるためのビア、および電磁シールドまたはその他の目的のための固体導電領域などの特徴に分割される。プリント基板は複数の銅層を有し得る。2層基板は、両面に銅を有し、多層基板は、絶縁材の層の間に追加の銅層を挟む。異なる層上の導体は、絶縁基板を通る電気トンネルとして機能する銅メッキの穴であるビアで接続される。貫通穴構成要素のリード線もまた、しばしばビアとして効果的に機能する。「貫通穴」構成要素は、基板を通過するリード線によって取り付けられ、反対側のトレースにはんだ付けされる。貫通穴の製造では、多くの穴を正確に開ける必要があるため、基板のコストが増加する。直径76.2マイクロメートルを超えるPCBの穴は、通常、ソリッドコーティングされた炭化タングステン製のドリルビットを使用して開けられる。有益なことに、開示される組成物は高い熱安定性を有し、鉛フリーはんだ付けに適している。
【0047】
重要な特性は、積層の難燃性のレベル、誘電率(er)、損失係数(tδ)、引張強さ、せん断強さ、ガラス転移温度(Tg)、およびZ軸膨張係数(温度によって厚さがどれだけ変化するか)である。熱膨張は、特にボールグリッドアレイ(BGA)およびネイキッドダイテクノロジーでは重要な考慮事項であり、概してガラス繊維が最高の寸法安定性を提供する。基板の寸法が縮小し、周波数が増加するにつれて、グラスファイバーまたはその他の充填材の不均一な分布、厚さのばらつき、樹脂マトリックス内の気泡などの小さな不均質性およびそれに関連する誘電率の局所的なばらつきの重要性が増している。開示された担持された複合体の粒径が小さいことは、これらの懸念と一致する。
【0048】
本明細書に記載の複合体は、エポキシ成形コンパウンド(EMC)の充填材として使用され得る。エポキシ成形材料は、高い機械的強度および高い生産性などの優れた特性のため、半導体デバイスの封止に広く使用されている。概して、その際、液体エポキシポリマーが回路上に注入され、保護のために硬化して固体になる。ここで、担持された複合体は、製造プロセス中に粘度を大幅に上昇させることなく、半導体デバイスのパッケージングに極めて低い熱膨張係数(CTE)、良好な寸法安定性、および難燃性を付与する。
【0049】
産業用複合プリプレグの用途を指す場合、プリプレグは「事前含浸」複合繊維を表す。より具体的には、プリプレグは、強化繊維に熱可塑性または熱硬化性樹脂マトリックスが予め含浸されている複合材料である。これは、最終的な完全に硬化した部品への追加の変換または製造が必要な複合材料形態である。エポキシ樹脂は、最も一般的な熱硬化性ポリマーマトリックス材料である。繊維は織物の形をとることが多く、マトリックスは製造中にそれらを一緒に接着したり、他の構成要素に接着したりするために使用される。熱硬化性マトリックスは部分的にのみ硬化されているため、取り扱いが容易である。この部分的に硬化したエポキシ材料は、Bステージ材料とも呼ばれ得る。複合プリプレグは、さまざまな産業分野での高性能用途にますます使用されている。プリプレグの使用例としては、航空機内装品、航空宇宙部品、航空機床材、貨物ライナー、自動車部品および構成要素、工具、防弾パネル、電子伝送用途、スポーツ用品、高層床材、高衝撃床面、ローターブレード風力タービン、ならびに装具および義肢における整形外科技術などである。充填材として添加される、本明細書に記載の担持された複合体は、必要な難燃性、非常に低い熱膨張係数(CTE)、および良好な寸法安定性を提供する。複合材料の穴あけが必要な用途では、担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体によって、穴あけ欠陥が減少し、ドリルビットの寿命が延長され、ダウンタイムが短縮されるため、穴あけ加工性も向上する。
【0050】
担持された複合体は、高い熱伝導率と粒子の球形による低い粘度によって、サーマルインターフェースマテリアルにも使用され得る。担持された複合体(またはシリカ、または担持された複合体とシリカとの両方)はまた、シランおよび/または他の界面活性剤、例えばエポキシシラン、フェニルアミノシラン、メタクリルシラン、イソシアネートシランなどで表面処理され得る。表面処理後、コンパウンドの特性を向上させ得る。利点としては、樹脂コンパウンドの粘度が低くなり、ポリマー樹脂との相溶性が向上し、凝集が少なくなることが挙げられる。
【0051】
必要に応じて、例えば、単一の粒径分布ではなく、より大きなシリカ粒子とより小さなシリカ粒子との組み合わせ(例えば、二峰性の粒径分布)などの密閉充填技術を、担持された複合体に適用し得る。これによって、非常に高い添加レベル(最大80wt%、またはそれ以上)でのコンパウンドの粘度を向上させ得る。
【実施例】
【0052】
本発明を下記の実施例によってさらに説明するが、これらの実施例は本発明の範囲に限定を課すものとして決して解釈されるべきではない。本明細書の説明を読んだ後、当業者には、本発明の精神または添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、様々な他の態様、修正、およびその均等物が示唆されるであろう。
【0053】
d50粒径、またはメジアン粒径は、サンプルの50重量%がより小さい径を有し、サンプルの50%がより大きい径を有する、粒径を指す。粒径測定値(d10、d50、d90、およびd100を含む)を、Beckman Coulter LS 13 320単一波長レーザー回折粒径分析装置を使用し、ISO 13320に従ってレーザー回折によって決定した。
【0054】
BET表面積は、Brunauerら、J.Am.Chem. Soc.,60、309(1938)では、Micromeritics TriStar II表面積および空隙率分析器を使用した。
【0055】
(実施例1~11および比較例A)
実施例1では、撹拌機および温度調節器を備えた反応容器に酸化亜鉛(0.31μmのd50、Zochem社製)161.8g(1988mmol)と脱イオン水1.25Lとを入れ、撹拌しながら85℃で加熱した。別途、三酸化モリブデン(Langeloth Metallurgical Company)191.2g(1328.4mmol)と脱イオン水382.5gとをビーカーに加えて85℃でスラリーを作製した。両方をよく混合し、三酸化モリブデンのスラリーを、蠕動ポンプを用いて、酸化亜鉛溶液を含有する反応容器に30mL/minで注入した。次いで、反応混合物を85℃で1時間撹拌した後、球状溶融シリカ(0.6μmの公称d50、0.3μmのd10、3μmのd100、および、6.2m
2/gのBET表面積;デンカ株式会社;
図1は、溶融シリカの球形度を示す)1412gを添加し、次いでさらに6時間撹拌した。次いで、生成混合物をガラスパンに注ぎ、120℃のオーブンで一晩乾燥させた。乾燥生成物をヘンシェル内で1800rpmで3分間解凝集し、続いてハンマーミル粉砕によって特定の粒径分布まで小さくした。
【0056】
実施例2Aでは、酸化亜鉛(0.31μmのd50)323.6g(3976mmol)と脱イオン水2.5Lとを反応容器に入れ、撹拌しながら85℃で加熱した。別途、三酸化モリブデン382.4g(2656.7mmol)と脱イオン水765gとをビーカーに加えて85℃でスラリーを作製した。両方がよく混合されたら、三酸化モリブデンのスラリーを、蠕動ポンプを用いて、酸化亜鉛溶液を含む反応容器に30mL/minで注入した。次いで、反応混合物を85℃で1時間撹拌した後、球状溶融シリカ(0.4μmの公称d50、0.2μmのd10、0.8μmのd100、11.3m2/gのBET表面積;デンカ株式会社)2824gを添加し、さらに6時間撹拌した。次いで、生成混合物をガラスパンに注ぎ、120℃のオーブンで一晩乾燥させた。乾燥生成物をヘンシェル内で1800rpmで3分間解凝集し、続いてハンマーミル粉砕して特定の粒径分布まで小さくした。
【0057】
実施例2Bでは、酸化亜鉛(0.31μmのd50)323.6g(3976mmol)と脱イオン水2.5Lとを反応容器に入れ、撹拌しながら85℃で加熱した。別途、三酸化モリブデン382.4g(2656.7mmol)と脱イオン水765gとをビーカーに加えて85℃でスラリーを作製した。両方がよく混合されたら、三酸化モリブデンのスラリーを、蠕動ポンプを用いて、酸化亜鉛溶液を含む反応容器に30mL/minで注入した。次いで、反応混合物を85℃で1時間撹拌した後、球状溶融シリカ(0.4μmのd50)1059gを添加し、さらに6時間撹拌した。次いで、生成混合物をガラスパンに注ぎ、120℃のオーブンで一晩乾燥させた。乾燥生成物をヘンシェル内で1800rpmで3分間解凝集し、続いてハンマーミル粉砕して特定の粒径分布まで小さくした。
【0058】
実施例3では、酸化亜鉛(0.12μmのd50、Zochem Inc.)50g(614.3mmol)と脱イオン水2.4Lとを反応容器に入れ、撹拌しながら85℃で加熱した。別途、三酸化モリブデン62.5g(434.2mmol)と脱イオン水125gとをビーカーに加えて85℃でスラリーを作製した。両方がよく混合されたら、三酸化モリブデンのスラリーを、蠕動ポンプを用いて、酸化亜鉛溶液を含む反応容器に10mL/minで注入した。次いで、反応混合物を85℃で1時間撹拌した後、球状溶融シリカ(4.12μmのd50、Imerys)535gを添加し、さらに2時間撹拌した。次いで、生成混合物をガラスパンに注ぎ、120℃のオーブンで一晩乾燥させた。乾燥生成物をヘンシェル内で1800rpmで3分間解凝集し、続いてハンマーミル粉砕して特定の粒径分布まで小さくした。
【0059】
実施例4では、酸化亜鉛(0.12μmのd50)25g(307.2mmol)と脱イオン水2.4Lとを反応容器に入れ、撹拌しながら85℃で加熱した。別途、三酸化モリブデン31.3g(217.5mmol)と脱イオン水125gとをビーカーに加えて85℃でスラリーを作製した。両方がよく混合されたら、三酸化モリブデンのスラリーを、蠕動ポンプを用いて、酸化亜鉛溶液を含む反応容器に10mL/minで注入した。次いで、反応混合物を85℃で1時間撹拌した後、球状溶融シリカ(4.12μmのd50、Imerys)535gを添加し、さらに2時間撹拌した。次いで、生成混合物をガラスパンに注ぎ、120℃のオーブンで一晩乾燥させた。乾燥生成物をヘンシェル内で1800rpmで3分間解凝集し、続いてハンマーミル粉砕して特定の粒径分布まで小さくした。
【0060】
実施例4では、酸化亜鉛(0.12μmのd50)28g(344mmol)と脱イオン水2.4Lとを反応容器に入れ、撹拌しながら85℃で加熱した。別途、三酸化モリブデン31.3g(217.5mmol)と脱イオン水125gとをビーカーに加えて85℃でスラリーを作製した。両方がよく混合されたら、三酸化モリブデンのスラリーを、蠕動ポンプを用いて、酸化亜鉛溶液を含む反応容器に10mL/minで注入した。次いで、反応混合物を85℃で1時間撹拌した後、球状溶融シリカ(0.6μmのd50、Imerys)535gを添加し、さらに2時間撹拌した。次いで、生成混合物をガラスパンに注ぎ、120℃のオーブンで一晩乾燥させた。乾燥生成物をヘンシェル内で1800rpmで3分間解凝集し、続いてハンマーミル粉砕して特定の粒径分布まで小さくした。
【0061】
実施例6では、酸化亜鉛(0.12μmのd50)28g(344mmol)と脱イオン水2.4Lとを反応容器に入れ、撹拌しながら85℃で加熱した。別途、三酸化モリブデン31.3g(217.5mmol)と脱イオン水125gとをビーカーに加えて85℃でスラリーを作製した。両方がよく混合されたら、三酸化モリブデンのスラリーを、蠕動ポンプを用いて、酸化亜鉛溶液を含む反応容器に10mL/minで注入した。次いで、反応混合物を85℃で1時間撹拌した後、球状溶融シリカ(0.6μmのd50、Imerys)535gを添加し、さらに6時間撹拌した。次いで、生成混合物をガラスパンに注ぎ、120℃のオーブンで一晩乾燥させた。乾燥生成物をヘンシェル内で1800rpmで3分間解凝集し、続いてハンマーミル粉砕して特定の粒径分布まで小さくした。
【0062】
実施例7では、酸化亜鉛(0.12μmのd50)28g(344mmol)と脱イオン水2.4Lとを反応容器に入れ、撹拌しながら85℃で加熱した。別途、三酸化モリブデン31.3g(217.5mmol)と脱イオン水125gとをビーカーに加えて85℃でスラリーを作製した。両方がよく混合されたら、三酸化モリブデンのスラリーを、蠕動ポンプを用いて、酸化亜鉛溶液を含む反応容器に10mL/minで注入した。次いで、反応混合物を85℃で1時間撹拌した後、球状溶融シリカ(0.6μmのd50、Imerys)1070gを添加し、さらに6時間撹拌した。次いで、生成混合物をガラスパンに注ぎ、120℃のオーブンで一晩乾燥させた。乾燥生成物をヘンシェル内で1800rpmで3分間解凝集し、続いてハンマーミル粉砕して特定の粒径分布まで小さくした。
【0063】
実施例8では、酸化亜鉛(0.12μmのd50)50g(614.3mmol)と脱イオン水2.4Lとを反応容器に入れ、撹拌しながら50℃で加熱した。別途、三酸化モリブデン62.5g(434.2mmol)と脱イオン水125gとをビーカーに加えて50℃でスラリーを作製した。両方がよく混合されたら、三酸化モリブデンのスラリーを、蠕動ポンプを用いて、酸化亜鉛溶液を含む反応容器に10mL/minで注入した。次いで、反応混合物を50℃で1時間撹拌した後、球状シリカ(0.6μmのd50、Imerys)535gを添加し、さらに6時間撹拌した。次いで、生成混合物をガラスパンに注ぎ、120℃のオーブンで一晩乾燥させた。乾燥生成物をヘンシェル内で1800rpmで3分間解凝集し、続いてハンマーミル粉砕して特定の粒径分布まで小さくした。
【0064】
実施例9では、酸化亜鉛(0.12μmのd50)50g(614.3mmol)と脱イオン水2.4Lとを反応容器に入れ、室温で撹拌した。別途、三酸化モリブデン62.5g(434.2mmol)と脱イオン水125gとをビーカーに加えて室温でスラリーを作製した。両方がよく混合されたら、三酸化モリブデンのスラリーを、蠕動ポンプを用いて、酸化亜鉛溶液を含む反応容器に10mL/minで注入した。次いで、反応混合物を室温で1時間撹拌した後、球状シリカ(0.6μmのd50)1070gを添加し、さらに6時間撹拌した。次いで、生成混合物をガラスパンに注ぎ、120℃のオーブンで一晩乾燥させた。乾燥生成物をヘンシェル内で1800rpmで3分間解凝集し、続いてハンマーミル粉砕して特定の粒径分布まで小さくした。
【0065】
実施例10では、実施例1と同様の方法で二モリブデン酸亜鉛水酸化物を製造したが、反応混合物スラリー(シリカを添加せず)をフラッシュ乾燥し、その後、Micro ACM空気分級機で解凝集して、3.3μmのd50で二モリブデン酸亜鉛水酸化物を形成した。次いで、二モリブデン酸亜鉛水酸化物100g、球状溶融シリカ(0.6μmのd50)400gと、脱イオン水700gとを、粉砕媒体なしでアトライターミルの粉砕タンクに入れた。次いで、スラリー混合物を600rpm、約22℃で6時間撹拌した。生成混合物をガラスパンに注ぎ、110℃のオーブンで一晩乾燥させた。乾燥生成物をヘンシェル内において1800rpmで3分間解凝集し、続いてハンマーミル粉砕して特定の粒径分布まで小さくした。
【0066】
実施例11では、二モリブデン酸亜鉛水酸化物(実施例10と同様の方法で製造、3.3μmのd50)20gと球状溶融シリカ(0.6μmのd50)80gをポリプロピレンボトルに入れ、ボトルを改造したBlue Mオーブンに入れ、約22℃で一晩回転させた。
【0067】
実施例1~11で製造された球状二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体は、概して、0.3~0.5μmの範囲のd10粒径、0.6~1.5μmの範囲のd50粒径、4~5μmの範囲のd100粒径、2.5~3の範囲の粒径スパンおよび、5.5~9m2/gの範囲のBET表面積を有していた。これらの複合体はまた、亜鉛およびモリブデンの含有量は独立して約14wt%である実施例2Bを除いて、約7wt%の亜鉛含有量および約7wt%のモリブデン含有量をも有していた。
【0068】
比較例Aは、実施例1と同じシリカを用いて製造したが、米国特許第6,190,787号明細書に記載の手順に従い、最初に三酸化モリブデンとシリカを混合し、続いて酸化亜鉛を添加した。比較例Aで得られた複合体を、XRD分析を使用して実施例1(および他の実施例の代表)と比較して、結晶構造の違いを決定した。粉末サンプルを、45KV/40mAのCu放射線を使用してPanalytical X’pert MPD回折計に装填した。スキャンを、6°~80°の範囲、0.0131°のステップサイズ、ステップあたり250秒のカウント時間で実行した。回折パターンが得られた後、国際回折データセンターが発行する粉末回折ファイルまたは無機結晶構造データベースを利用して相を特定した。XRDデータは、シリカによる非晶質相の約25wt%を示し、これを差し引いた結果、表Iに示す結晶相の内訳が得られた。驚くべきことに、実施例1は事実上すべて(約99wt%)二モリブデン酸亜鉛水酸化物(Zn3Mo2O8(OH)2)であったのに対し、比較例Aには約60wt%のZn3Mo2O8(OH)2、加えて約15wt%の水和物(ZnMoO4・0.8H2O)および25wt%の未知の結晶相のみが含まれた。
【0069】
亜鉛およびモリブデン含有化合物は、シリカ基材上に十分に付着させることが難しい場合があり得る。本明細書に開示する改良点を示すため、
図2は、実施例1の担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体の走査型電子顕微鏡写真(SEM)であり、一方、
図3は、比較例Aの複合体のSEMである。有益なことに、基材のシリカ担体に結合していない担持されていないモリブデン酸亜鉛粒子がはるかに多く存在する
図3とは対照的に、
図2は、二モリブデン酸亜鉛水酸化物がシリカにさらに多く付着していることを示している。
【0070】
(実施例12~15)
実施例13~15では、二段階溶融ブレンド配合プロセスを使用して、二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体を可塑化ポリ塩化ビニルに組み込んだ。第1のステップでは、PVC、可塑剤、安定剤、潤滑剤、三酸化アンチモン、ATH、およびMgOH2を、ヘンシェルミキサーを使用して90℃の温度で混合し、表IIに示す組成を有するPVC予混合物を形成した。第2のステップでは、24.64gの二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体を350.36gのPVC予混合物に添加し、次にローラーブレード付きBrabender Intelli-Torque Plasti-Corderミキサーを使用して165℃、45rpmで5分間混合した。分析用のサンプルを、Givin PHI油圧プレスを使用して、圧力78.3bar、温度196℃で材料をプレスすることによって調製した。実施例12はPVC予混合物のみを利用したが、実施例13~15は、それぞれ実施例9~11の二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体を利用した。表IIIは、実施例12~15をphrでの値とともに要約する。
【0071】
ASTM E 1354に記載されている手順に従って、サンプルの難燃性試験にコーン熱量計(DEATAK CC-2)を使用した。100mm×100mm×0.635mmの試験片を水平方向に曝露した。実験には50kW/m2の外部熱流束を使用した。測定パラメータには、持続点火までの時間、最大発熱速度(PHRR)、60秒間の平均発熱速度(RHR)、総発熱量(THR)、平均有効燃焼熱量、初期質量、最終質量、サンプル質量損失、平均質量損失速度(10%~90%)、平均SEA、最大平均発熱速度(MARHE)、総煙生成量、および平均公称総煙生成量が含まれる。報告したデータは3回の実験の平均であった。
【0072】
図4は、実施例12~15の4つの難燃性ポリマー組成物の発熱速度(HRR)曲線を示し、表IVは(
図4からの)難燃特性を要約する。有益なことに、かつ予想外なことに、実施例13~15の難燃剤組成物(二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体を含有する)は各々、実施例12よりも低い最大発熱速度(PHRR;実施例13が最も低いPHRRを有していた)、総発熱量(THR;実施例15が最も低いTHRを有していた)および最大平均発熱速度(MARHE;実施例14が最も低いMARHEを有していた)の値を有していた。さらに、総煙生成量および平均公称総煙生成量は、実施例12よりも実施例13~15の方が著しく低かった。
【0073】
(実施例16~19)
実施例16~19では、シリカまたは二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体を、表Vに示す組成(phrでの値)でエポキシ樹脂に組み込んだ。実施例17~19は、それぞれ実施例1、2B、および2Aの二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体を利用した。実施例16ではシリカのみを使用した。各例について、100×100×7mmの寸法の10個のプラークを、厚さ2mmのプラーク層を除去する際の粉砕/ドリルビットに対する磨耗および摩損性についてテストした。
【0074】
図5は、実施例16(符号1)および実施例17(符号2)のエポキシプラークを穴あけする前(上)と穴あけ後(下)のドリルビットを示す。一方、
図6は、実施例18(符号3)および実施例19(符号4)のエポキシプラークの穴あけ前(上)および穴あけ後(下)のドリルビットを示す。予想外かつ有益なことに、下方の(粉砕後)画像は、5phrの球状シリカおよび25phrの担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体(実施例17~19)を充填したエポキシプラークが、穴あけ加工性の点で、30phrの球状シリカを充填したエポキシプラーク(実施例16)よりもはるかに優れた性能(摩耗が少なく、摩損性が低い)を示すことを示している。最も摩損性の高いものから最も摩損性の低いものへ並べると、実施例16(符号1)、次に実施例17(符号2)及び実施例19(符号4)、次に実施例18(符号3)である。摩損性は、亜鉛/モリブデンの含有量と相関しており、実施例16では全く含有せず、最も摩損性が高かったが、実施例18では最も多く含有し、最も摩損性が低かった。実施例17および19は、同量の亜鉛/モリブデンを含有するが、シリカ粒径が異なっていた。したがって、エポキシ形成中の亜鉛/モリブデンの量と比較して、粒径は摩損性にほとんど影響を与えなかった。
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
本発明を、多数の態様および特定の例を参照して上記に説明した。当業者であれば、上記の詳細な説明を考慮して多くの変形例が思い浮かぶであろう。このような明らかな変形はすべて、添付の特許請求の範囲の意図する完全な範囲内に含まれる。本発明の他の態様としては、下記のものが挙げられるが、これらに限定されない(態様は「含む」として説明されるが、あるいは、「実質的に~からなる」または「~からなる」であり得る)。
【0081】
態様1.担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体の製造方法であって、(i)亜鉛化合物(例:酸化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛)と三酸化モリブデン(MoO3)とを水系において反応させて反応混合物を形成するステップと、(ii)反応混合物をシリカと接触させて(またはスラリー化させて)、担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体を形成するステップと、を含む、担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体の製造方法。
【0082】
態様2.ステップ(i)およびステップ(ii)は、任意の適切な範囲内、または本明細書に開示される任意の範囲内、例えば20℃~95℃、50℃~95℃、75℃~90℃、または80℃~90℃の、温度で独立して実施され得る、態様1に記載の方法。
【0083】
態様3.亜鉛化合物と三酸化モリブデンとは、任意の適切な範囲のZn:Moのモル比で、または本明細書に開示されるZn:Moの任意の範囲、例えば各反応物の総量に基づいて、1:1~1:1~2:1、1.2:1~1.8:1、1.3:1~1.7:1、または1.4:1~1.6:1の範囲で、反応する、態様1または2に記載の方法。
【0084】
態様4.ステップ(i)およびステップ(ii)は、任意の適切な範囲の圧力、または本明細書に開示される任意の範囲の圧力、例えば5psig~100psig、大気圧、または大気圧より低い圧力で、独立して行われる、先行する態様のいずれか1つに記載の方法。
【0085】
態様5.担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体を製造する方法であって、水系中で二モリブデン酸亜鉛水酸化物とシリカとを接触(またはスラリー化)して、担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体を形成することを含む、方法。
【0086】
態様6.担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体は、任意の適切な範囲、または本明細書に開示される任意の範囲、例えば、15℃~95℃、15℃~50℃、または20℃~35℃の温度で、形成される、態様5に記載の方法。
【0087】
態様7.担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体は、任意の適切な範囲、または本明細書に開示される任意の範囲の圧力、例えば、5psig~100psig、大気圧、または大気圧より低い圧力で、形成される、態様5または6に記載の方法。
【0088】
態様8.任意の適切な技術、または本明細書に開示される任意の技術、例えば濾過または遠心分離、ならびにそれらの組み合わせを使用して、担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体を水から除去するステップをさらに含む、先行する態様のいずれか1つに記載の方法。
【0089】
態様9.担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体を、任意の適切な乾燥条件、または本明細書に開示される任意の乾燥条件下、例えば、50℃~200℃、または100℃~150℃の範囲の乾燥温度下で乾燥させるステップおよび大気圧または大気圧より低い圧力、例えば150Torr未満、または50Torr未満で、乾燥させるステップをさらに含む、先行する態様のいずれか1つに記載の方法。
【0090】
態様10.担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体を解凝集するステップ、担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体を粉砕するステップ、またはその両方をさらに含む、先行する態様のいずれか1つに記載の方法。
【0091】
態様11.態様1から10のいずれか一項に記載の方法によって製造された、担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体。
【0092】
態様12.(a)シリカおよび(b)担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体の総重量に基づいて、3~20wt%の範囲の量の亜鉛の二モリブデン酸亜鉛水酸化物を含み、二モリブデン酸亜鉛水酸化物の少なくとも80wt%は、結晶形Zn3Mo2O8(OH)2として存在する、担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体。
【0093】
態様13.シリカは、任意の適切なメジアン粒径(d50)、または本明細書に開示される任意の範囲、例えば0.2~5μm、0.2~25μm、0.2~1μm、または0.25~0.8μm、のメジアン粒径(d50)によって特徴付けられる、先行する態様のいずれか1つに記載の方法または複合体。
【0094】
態様14.シリカは、任意の適切なd100粒径、または本明細書に開示される任意の範囲のd100粒径、例えば、0.6~10μm、0.6~5μm、0.6~4μm、0.7~4μm、または0.7~3.5μmのd100粒径によって特徴付けられる、先行する態様のいずれか1つに記載の方法または複合体。
【0095】
態様15.シリカは、任意の適切なd10粒径、または本明細書に開示される任意の範囲、例えば、0.08~1μm、0.08~0.5μm、0.1~0.5μm、または0.1~0.4μmの、d10粒径によって特徴付けられる、先行する態様のいずれか1つに記載の方法または複合体。
【0096】
態様16.シリカは、任意の適切なBET表面積、または本明細書に開示される任意の範囲、例えば、2~20m2/g、4~15m2/g、4~12m2/g、5~15m2/g、または5~13m2/gの、BET表面積によって特徴付けられる、先行する態様のいずれか1つに記載の方法または複合体。
【0097】
態様17.シリカは、溶融シリカ、または球状シリカ、または球状溶融シリカである、先行する態様のいずれか1つに記載の方法または複合体。
【0098】
態様18.担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体は、任意の適切な亜鉛の量、または本明細書に開示される任意の範囲の量、例えば3~20wt%、3~18wt%、4~16wt%または5~15wt%の亜鉛を含有する、態様11から17のいずれか1つに記載の担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体。
【0099】
態様19.担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体は、任意の適切な量のモリブデン、または本明細書に開示される任意の範囲の量、例えば3~20wt%、3~18wt%、4~16wt%、または5~15wt%のモリブデンを含む、態様11から18のいずれか1つに記載の担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体。
【0100】
態様20.任意の適切な量、または本明細書に開示される任意の範囲の量、例えば少なくとも80wt%、少なくとも85wt%、少なくとも90wt%、または少なくとも95wt%、の二モリブデン酸亜鉛水酸化物が、Zn3Mo2O8(OH)2として存在する、態様11から19のいずれか1つに記載の担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体。
【0101】
態様21.担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体は、任意の適切なメジアン粒径(d50)、または本明細書に開示される任意の範囲、例えば、0.3~6μm、0.3~2μm、0.4~1.8μm、または0.5~1.7μmの、メジアン粒径(d50)によって特徴付けられる、態様11から20のいずれか1つに記載の担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体。
【0102】
態様22.担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体は、任意の適切なd100粒径、または本明細書に開示される任意の範囲、例えば、1~12μm、1~8μm、1.5~7μm、2~7μm、または2.5~6μm、のd100粒径によって特徴付けられる、態様11~21のいずれか1つに記載の担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体。
【0103】
態様23.担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体は、任意の適切なd10粒径、または本明細書に開示される任意の範囲、例えば、0.1~1.5μm、0.1~0.8μm、0.1~0.7μm、または0.2~0.6μmの、d10粒径によって特徴付けられる、態様11から22のいずれか1つに記載の担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体。
【0104】
態様24.担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体は、任意の適切なスパン((d90-d10)/d50)、または本明細書に開示される任意の範囲、例えば、1.5~5、1.5~4.5、または2~4、のスパンによって特徴付けられる、態様11から23のいずれか1つに記載の担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体。
【0105】
態様25.担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体は、任意の適切なBET表面積、または本明細書に開示される任意の範囲、例えば、3~20m2/g、3~15m2/g、3~12m2/g、4~13mm2/g、または4~10m2/gのBET表面積によって特徴付けられる、態様11から24のいずれか1つに記載の担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体。
【0106】
態様26.担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体は、球状である、態様11から25のいずれか1つに記載の担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体。
【0107】
態様27.(a)ポリマーと(b)態様11から26のいずれか1つに記載の担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体とを含むポリマー組成物(または配合物)。
【0108】
態様28.担持された二モリブデン酸亜鉛水酸化物/シリカ複合体の量は、任意の適切な量、または本明細書に開示される任意の範囲の量、例えば、1~50phr、5~50phr、2~40phr、5~40phr、10~50phr、10~40phr、10~30phr、または15~40phrである、態様27に記載のポリマー組成物。
【0109】
態様29.ポリマーは、任意の適切なポリマー、または本明細書に開示される任意のポリマー、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、またはそれらの組み合わせを含む、態様27または28に記載のポリマー組成物。
【0110】
態様30.ポリマーは、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩素化ポリ塩化ビニル(CPVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、またはそれらの任意の組み合わせを含む、態様27または28に記載のポリマー組成物。
【0111】
態様31.ポリマーは、硬質PVCを含む、態様27または28に記載のポリマー組成物。
【0112】
態様32.ポリマーは、軟質PVCを含む、態様27または28に記載のポリマー組成物。
【0113】
態様33.ポリマーは、可塑化PVCまたは非可塑化PVCを含む、態様27または28に記載のポリマー組成物。
【0114】
態様34.ポリマーは、エポキシ樹脂を含む、態様27または28に記載のポリマー組成物。
【0115】
態様35.ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂、ビスフェノールSエポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラックエポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラックエポキシ樹脂、ジフェニルエチレンエポキシ樹脂、トリアジン骨格を有するエポキシ樹脂、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂、トリフェニルメタンエポキシ樹脂、ビフェニルエポキシ樹脂、キシリレンエポキシ樹脂、ビフェニルアラルキルエポキシ樹脂、ナフタレン系エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン系エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、またはこれらの組み合わせを含む、態様27または28に記載のポリマー組成物。
【0116】
態様36.ポリマー組成物は、添加剤をさらに含み、添加剤は、安定剤、潤滑剤、無機難燃剤(例えばアルミニウム三水和物または水酸化マグネシウム)、充填材、着色剤、硬化剤、触媒もしくは促進剤、または繊維(例えば、ガラス繊維、炭素繊維、紙繊維、不織布繊維)、ならびにそれらの任意の組み合わせを含む、態様27から35のいずれか1つに記載のポリマー組成物。
【0117】
態様37.複合体、シリカ、または複合体とシリカとの両方は、表面処理(例えば、シラン表面処理)を含む、態様1から36のいずれか1つに記載のプロセス、複合体、または組成物。
【0118】
態様38.態様27から37のいずれか1つに定義されたポリマー組成物を含む製造物品。
【0119】
態様39.物品は、ワイヤまたはケーブルを含む、態様38に記載の物品。
【0120】
態様40.物品は、プリント回路基板を含む、態様38に記載の物品。
【国際調査報告】