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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】選択的溶存気体含量を含む容器
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/05 20060101AFI20240517BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20240517BHJP
   A61K 33/04 20060101ALI20240517BHJP
   A61K 33/06 20060101ALI20240517BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240517BHJP
   A61K 31/22 20060101ALI20240517BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20240517BHJP
   A61K 31/70 20060101ALI20240517BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240517BHJP
   A61J 1/10 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
A61J1/05 351
A61P3/02
A61K33/04
A61K33/06
A61P43/00 121
A61K31/22
A61K31/198
A61K31/70
A61K9/08
A61J1/10 333C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023572178
(86)(22)【出願日】2022-05-23
(85)【翻訳文提出日】2023-11-21
(86)【国際出願番号】 US2022072505
(87)【国際公開番号】W WO2022251810
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】17/330,070
(32)【優先日】2021-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591013229
【氏名又は名称】バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
(71)【出願人】
【識別番号】501453189
【氏名又は名称】バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】Baxter Healthcare S.A.
【住所又は居所原語表記】Thurgauerstr.130 CH-8152 Glattpark (Opfikon) Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】デスブロセス, フレディ
(72)【発明者】
【氏名】パドゥーラ, ピエルパオロ
(72)【発明者】
【氏名】デュポン, カロリーヌ ロズリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】デュムリエ, マラン アン-トゥアン
(72)【発明者】
【氏名】ブレスク, ゾアウィ
【テーマコード(参考)】
4C047
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C047AA14
4C047CC05
4C047CC21
4C047DD11
4C076AA11
4C076BB13
4C076CC21
4C076FF63
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA01
4C086HA02
4C086HA04
4C086HA08
4C086HA15
4C086HA21
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA66
4C086NA03
4C086NA05
4C086ZC21
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206DB06
4C206DB48
4C206FA53
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA10
4C206MA37
4C206MA86
4C206NA03
4C206NA05
4C206ZC21
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、安定なままにするための選択的気体要件を有する医薬生成物の少なくとも1種の化合物を安定化させるための選択的溶存気体含量を有するフレキシブルな容器/マルチチャンバー容器であって、少なくとも1種の化合物を含む溶液と、そこから容器が作製される充填材料とを含んで前記気体の高い気体障壁を提供する容器に関する。少なくとも1種の化合物は、Se(IV)の形態のセレンであってもよく、好ましくは亜セレン酸ナトリウム、亜セレン酸、および二酸化セレンからなる群から選択される。選択的気体は酸素であってもよく、酸素のヘッドスペースは、溶存酸素(DO)を0.5ppmから8ppmのレベルで含むように溶液を維持する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬生成物の少なくとも1種の化合物を安定化させるための選択的溶存気体含量を有するフレキシブルな容器であって、
(a)選択的溶存気体要件を有する少なくとも1種の化合物を含む溶液と、
(b)前記気体のヘッドスペースと
を含む、フレキシブルな容器。
【請求項2】
前記少なくとも1種の化合物が、高レベルの酸素を必要とする化合物であり、前記選択的溶存気体が酸素である、請求項1に記載のフレキシブルな容器。
【請求項3】
前記少なくとも1種の化合物が、高レベルの二酸化炭素を必要とする化合物であり、前記選択的溶存気体が二酸化炭素である、請求項1に記載のフレキシブルな容器。
【請求項4】
前記容器が、少なくとも1つのチャンバーを含むマルチチャンバーバッグであり、前記選択的溶存気体要件を有する化合物が位置される、請求項1に記載のフレキシブルな容器。
【請求項5】
前記ヘッドスペースの体積が、前記フレキシブルな容器内の前記溶液の体積の約5%から約100%である、請求項1に記載のフレキシブルな容器。
【請求項6】
前記ヘッドスペースの体積が、前記フレキシブルな容器内の前記溶液の体積の約35%から約45%である、請求項1に記載のフレキシブルな容器。
【請求項7】
前記容器が、最終的に加熱滅菌される、請求項1に記載のフレキシブルな容器。
【請求項8】
前記少なくとも1種の化合物が、Se(IV)の形態のセレン化合物である、請求項1に記載のフレキシブルな容器。
【請求項9】
前記少なくとも1種のセレン化合物が、亜セレン酸ナトリウム、亜セレン酸カリウム、亜セレン酸リチウム、亜セレン酸カルシウム、亜セレン酸マグネシウム、亜セレン酸、および二酸化セレンからなる群から選択される、請求項8に記載のフレキシブルな容器。
【請求項10】
前記溶液が、前記医薬生成物の保存寿命全体にわたり0.5ppmに等しいかまたはそれより多い溶存酸素(DO)を含む、請求項2に記載のフレキシブルな容器。
【請求項11】
前記溶液が、約0.5ppmから約8ppmの溶存酸素(DO)を含む、請求項2に記載のフレキシブルな容器。
【請求項12】
前記溶液が、1ppmに等しいかまたはそれより多い溶存酸素(DO)を含む、請求項2に記載のフレキシブルな容器。
【請求項13】
滅菌時の前記溶液中の溶存酸素(DO)の濃度が、少なくとも6ppmである、請求項9に記載のフレキシブルな容器。
【請求項14】
前記気体のヘッドスペースが、少なくとも1種の化合物を、約1℃から約30℃の間の温度で保存したときに、少なくとも3カ月、少なくとも6カ月、少なくとも12カ月、少なくとも18カ月、および少なくとも24カ月からなる群から選択される時間にわたり安定化させる、請求項1に記載のフレキシブルな容器。
【請求項15】
約18℃から約25℃の間の温度で保存される、請求項14に記載のフレキシブルな容器。
【請求項16】
前記溶液が、約1から約4、好ましくは約2.5から約3.2の範囲の酸性pH値を有する、請求項8に記載のフレキシブルな容器。
【請求項17】
前記マルチチャンバー容器が、少なくとも2個のチャンバーを含む、請求項4に記載のフレキシブルな容器。
【請求項18】
前記マルチチャンバー容器が、2チャンバー容器、3チャンバー容器、4チャンバー容器、5チャンバー容器、6チャンバー容器、7チャンバー容器、および8チャンバー容器からなる群から選択される、請求項4に記載のフレキシブルな容器。
【請求項19】
前記マルチチャンバー容器が、
(a)炭水化物製剤を含有する第1のチャンバー、
(b)アミノ酸製剤を含有する第2のチャンバー、
(c)脂質製剤を含有する第3のチャンバー、および
(d)選択的溶存気体要件を有する化合物を含む溶液を含有する第4のチャンバー
を含む、請求項4に記載のフレキシブルな容器。
【請求項20】
前記第4のチャンバーに含有される溶液が、少なくとも1種のセレン化合物を含み、前記ヘッドスペースが、周囲空気、酸素に富む周囲空気、または酸素で満たされる、請求項19に記載のフレキシブルな容器。
【請求項21】
5cc/m/日未満の酸素障壁を有する材料で作製される、請求項1に記載のフレキシブルな容器。
【請求項22】
選択的溶存気体要件を有する化合物が位置される前記チャンバーが、ポートチューブを含まない、請求項4に記載のフレキシブルな容器。
【請求項23】
医薬生成物の少なくとも1種の微量栄養素を安定化させるための選択的溶存気体含量を有するマルチチャンバー容器であって、
(a)炭水化物製剤、アミノ酸製剤、または脂質製剤を含む第1のチャンバー、
(b)選択的溶存気体要件を有する前記少なくとも1種の微量栄養素を含む溶液を含む第2のチャンバー;および前記気体のヘッドスペース
を含む、マルチチャンバー容器。
【請求項24】
前記少なくとも1種の微量栄養素が、Se(IV)の形態のセレンである少なくとも1種の微量栄養素の化合物であり、前記溶存気体が溶存酸素(DO)である、請求項23に記載のマルチチャンバー容器。
【請求項25】
少なくとも5個のチャンバーを含む、請求項23に記載のマルチチャンバー容器。
【請求項26】
前記少なくとも1種のセレン化合物が、亜セレン酸ナトリウム、亜セレン酸、および二酸化セレンからなる群から選択される、請求項23に記載のマルチチャンバー容器。
【請求項27】
前記少なくとも1種のセレン化合物が、亜セレン酸ナトリウムまたは二酸化セレンである、請求項23に記載のマルチチャンバー容器。
【請求項28】
前記第2のチャンバーの溶液が、前記医薬生成物の保存寿命全体にわたり0.5ppmに等しいかまたはそれより多い溶存酸素(DO)を含む、請求項23に記載のマルチチャンバー容器。
【請求項29】
前記第2のチャンバーの溶液が、約0.5ppmから約8ppmの溶存酸素(DO)を含む、請求項23に記載のマルチチャンバー容器。
【請求項30】
前記第2のチャンバーの溶液が、1ppmに等しいかまたはそれより多い溶存酸素(DO)を含む、請求項23に記載のマルチチャンバー容器。
【請求項31】
前記容器が、最終的に加熱滅菌される、請求項23に記載のマルチチャンバー容器。
【請求項32】
滅菌時の前記溶液中の溶存酸素(DO)の濃度が、少なくとも6ppmである、請求項32に記載のマルチチャンバー容器。
【請求項33】
前記ヘッドスペースの体積が、前記マルチチャンバー容器内の溶液の体積の約5%から約100%である、請求項23に記載のマルチチャンバー容器。
【請求項34】
前記酸素のヘッドスペースの体積が、前記フレキシブルな容器内の溶液の体積の約35%から45%である、請求項23に記載のマルチチャンバー容器。
【請求項35】
前記気体のヘッドスペースが、前記少なくとも1種の微量栄養素を、約1℃から約30℃の間の温度で保存したときに、少なくとも3カ月、少なくとも6カ月、少なくとも12カ月、少なくとも18カ月、および少なくとも24カ月からなる群から選択される時間にわたり安定化させる、請求項23に記載のマルチチャンバー容器。
【請求項36】
約18℃から約25℃の間の温度で保存される、請求項36に記載のマルチチャンバー容器。
【請求項37】
前記マルチチャンバー容器が、0.5cc/m2/日未満の酸素障壁を有する材料で作製される、請求項23に記載のマルチチャンバー容器。
【請求項38】
前記フレキシブルな容器が、2cc/m2/日未満の酸素障壁を有する材料で作製される、請求項21に記載のフレキシブルな容器。
【請求項39】
前記フレキシブルな容器が、1cc/m2/日未満の酸素障壁を有する材料で作製される、請求項21に記載のフレキシブルな容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
説明
本発明は、一般にIV溶液の分野に関し、特に臨床栄養および対応する医薬生成物の分野に関する。
【0002】
本発明は、選択的なおよび制御可能な溶存気体(例えば、酸素)含量をそれぞれのチャンバーが有する多数のチャンバーを、好ましくは有する医薬生成物に関する。
【0003】
ある特定の実施形態では、本発明は、フレキシブルな容器またはマルチチャンバー容器であって、選択的溶存気体含量が1つまたは複数の区画に含まれて、気体のレベルに感受性のある少なくとも1種の化合物を安定化させるものに関する。ある特定の実施形態では、そのような化合物は、例えばある特定のビタミンまたは微量栄養素など、静脈内から提供される化合物とすることができる(例えば、Se(IV)の形態のセレン化合物)。ある特定の実施形態では、本発明は、フレキシブルな容器またはマルチチャンバー容器であって、選択的溶存気体含量が1つまたは複数の区画に入っており、ある特定の気体要件を有する区画のヘッドスペースが、必要とされる気体(例えば、周囲空気、酸素に富む空気、または酸素)で満たされるものに関する。セレンの場合、Se(IV)の形態のセレン化合物は、亜セレン酸ナトリウム、亜セレン酸、および二酸化セレンからなる群から好ましくは選択され、セレンを含む溶液を含有する区画のヘッドスペースは、周囲空気、酸素に富む周囲空気、または酸素の部分として酸素を含み、それによって例えば溶存酸素(DO)の溶液中でのレベルが意図されるレベルに、例えば酸素が0.5ppmから8ppmなどに維持される。特定の気体要件を有するその他の化合物を思い描くことができる。
【0004】
本発明のある特定の実施形態では、本発明の医薬生成物の溶液は、例えばセレンなど、少なくとも1種の追加の微量元素を含む。本明細書で使用される「医薬生成物」という表現は、IV溶液ならびに非経口および栄養溶液を包含する。「非経口栄養溶液」という表現は、血流を介して、IVポンプで静脈内から完全に与えられる栄養支援を提供するための溶液を指す。溶液は、アミノ酸、炭水化物、脂質、電解質、ビタミン、および/またはミネラルを含有する。医薬溶液は、すぐに使える状態にあってよい。溶液は、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、またはそれよりも多くのチャンバーを有するマルチチャンバー容器の1つのチャンバーに含有されてもよい。溶液はモノバッグに含有させることもできる。マルチチャンバーバッグに含有される複数の溶液は、高い酸素レベルなどの特定の気体要件を有していてもよく、これは例えば特に低いレベルの酸素を必要とし得るマルチチャンバーバッグの残りの区画とは異なっていてもよい。さらに本発明は、本発明によるマルチチャンバー容器で、または可能であるなら本発明によるモノバッグで医薬生成物を提供するための方法に関する。
【背景技術】
【0005】
発明の背景
非経口栄養(PN)生成物を含む、静脈内投与のための溶液は、ある特定の化合物を静脈アクセスによって患者に供給することを目的とする。例えば非経口栄養生成物は、多量栄養素(脂質、アミノ酸、またはタンパク質、およびデキストロース、または炭水化物)、微量栄養素(ビタミンおよび微量元素)、および/または電解質から構成することができる。IV溶液およびPN生成物は、種々の体積を有するフレキシブルバッグでしばしば提供される。特にPN生成物は、言及される脂質製剤、炭水化物製剤、またはアミノ酸製剤などの種々の製剤を、安定なままになるように、生成、充填、滅菌、および保存中に互いに別々に保持しなければならないので、マルチチャンバーバッグでしばしば提供される。様々な製剤は、例えばpH、安定性に影響を及ぼしまたは互いに相互作用し得るある特定の活性成分または賦形剤の存在、ならびにある特定の気体、例えば多くの薬学的に活性な成分と反応する傾向にあり不活性にする傾向にある酸素などの存在または不在に関して、種々の要件をしばしば有する。
【0006】
さらに、種々の製剤は、例えば非経口栄養で典型的に使用されるようなマルチチャンバーバッグの種々の区画に配置されてもよいが、同じMCBの種々の製剤中に存在しなければならないまたは存在してはならない特定の気体に関する種々の要件は、実現するのが難しい。容易に理解されるように、マルチチャンバーバッグは、1種のフィルム材料から調製される。種々の区画は、(部分的に)永続的なまたは例えば手の圧力で剥がすことができる種々の区画の間の溶接封止によって導入される。したがって、製剤の1種または複数が、ある特定のフィルム材料、例えば、酸素レベルを前記製剤中で低く保つためにオーバーパウチ内に酸素吸収剤を用いて酸素を所与の製剤からゆっくり除去させる酸素半透過性フィルム材料の使用を必要とする場合、例えば高酸素レベルを必要とする区画および製剤、および結果として、特にオーバーパウチ内に酸素吸収剤も存在する場合には、酸素が区画を離れるのを回避する高酸素障壁フィルムを、収容することも難しい。
【0007】
さらなる難題は、高い溶存酸素レベルを必要とする化合物など、化合物がその安定性のために選択的気体要件を有する場合に生じる。酸素は、製剤の成分によって消費されてもよく、および/またはフィルムを通した拡散による高酸素障壁材料を使用する場合にも失われてもよい。これは特に、MCBのオーバーパウチに配置させることができる酸素吸収剤の存在下で顕著であり、高酸素障壁材料の場合にも溶解した酸素の溶液をゆっくり枯渇させることになる。酸素が区画から失われたら、化合物は、安定性を失い始めることになり、分解することになる。したがって、容器を通して溶液からのDOの損失を低減させるのに高酸素障壁を有する容器用のフィルム材料を使用することだけでは、長期間にわたるそのような化合物の問題、即ち一般に最高25℃の温度で少なくとも6、12、18、または最良で24カ月であるべきすぐに使える状態の医薬製剤に関する典型的な保存寿命要件に対処するのに、十分ではない可能性がある。
【0008】
また1種または複数の溶液の形態のような非経口栄養溶液も、電解質と共にもしくは電解質なしでグルコース、アミノ酸、もしくは脂質を含有しまたは例えばビタミンおよび/または微量元素を含有してもよく、投与前に一緒に混合できる任意のその他の溶液を含有する単一のフレキシブルバッグの形態、あるいはすぐに使える状態のフォーマットにある個別の多量栄養および電解質を提供する上述のマルチチャンバーのフレキシブルバッグの形態の、いずれかであるフレキシブルバッグの形態で提供することができる。したがって、種々の製剤における不適合な気体レベル要件の同じ課題も、非経口栄養製剤を提供するMCBでも生じ得る。
【0009】
そのようなヘッドスペースは、液体組成物が容器内に、例えば本明細書で論じられる容器内に導入されたときに創出されることが公知であり、これは容器が密閉される前に容器の最上部に空気が捕捉されることを意味する。一般に、産業の目標は、様々な理由でヘッドスペースを低減させることである。方法は、酸素感受性生成物の安定性および効力を確実にする要件が生じるプレフィル型容器のヘッドスペースの酸素レベルをモニターするために開発され、例えばヘッドスペース酸素分析(HOA)または非破壊レーザー系ヘッドスペース検査など、完成した滅菌生成物の検査のために使用される方法である。WO2009021094A1にも記載されるように、ヘッドスペースは、容器の最上部に空気が残らないようにするための十分な量の組成物による容器の「トッピングオフ」または液体で満たされた容器の排気を含む、様々な方法によって低減させることができる。別の技法は、精巧な通路をクロージャーに設け、それによって気体がシステムから離れることができるが液体の損失は最小限に抑えられることである。別のシステムは、材料を気体に対して透過性にするゴム、金属、またはプラスチックのダイアフラム内の1つまたは複数の小さいオリフィスを利用する。一般的なケースであるヘッドスペースを完全に回避することができない場合、ヘッドスペースは窒素などの不活性ガスで満たされる。
【0010】
まとめると、例えば薬剤溶液用の容器内の従来技術のヘッドスペースは、低減されまたは回避されることのいずれかが求められ、または可能であれば酸素などの任意の不活性ガスの存在を回避するような方法で制御されることが求められる。
【0011】
非経口栄養溶液に使用されるものを含む典型的な医薬溶液容器は、柔軟性、透明性、気体障壁性、薬物適合性、加熱滅菌耐性、落下衝撃耐性などを含むいくつかの性能基準を満たさなければならない。様々なタイプの医薬溶液容器は現在、例えば内側バッグおよび外側バッグを有する二重バッグが入手可能であり、この内側バッグは機能性医薬溶液を含有し、外側バッグ(「オーバーパウチ」とも呼ぶ)は内側バッグを覆い、気体または酸素遮断機能を有する。
【0012】
バッグは、典型的には合成またはプラスチック材料で、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、エチレン-酢酸ビニル(EVA)、および全ての可能性があるコポリマーなどの材料で、本質的には投与される成分を含有するのに適した任意の合成材料で作製される。
【0013】
上述のように現況技術では、MCBの区画の1つに安定して配合することができないので、典型的には、微量栄養素であるがある特定の薬物でもあるものが投与前に栄養バッグに直接添加される。この目的のため、ビタミンを、栄養/輸液バッグに再構成されるおよび/または混合されることになる凍結乾燥物または溶液の形態でガラスバイアルに提供することができる。微量元素も、投与前に輸液バッグ中で混合されることを意味するガラスバイアルまたはポリプロピレンアンプルで提供される。同様のことが、投与用の非経口栄養溶液に典型的に添加することができるまたは添加する可能性のある、ある特定の薬物に関しても言える。
【0014】
使用前、患者への製剤の投与開始に言及すると、微量栄養素または薬物は時々、混合物もしくは多量栄養素に容器もしくはバッグ(セプタム)の注入ポートを介して添加され、またはY型コネクターを介して輸液ラインに添加される。このプロセスは、時間およびいくつかの取扱いステップを要し、誤差または汚染のリスクが増大する。
【0015】
これらの潜在的な問題を回避するために、例えばいくらかの微量元素を栄養マルチチャンバーバッグ内に既に含有する生成物が開発されてきた。例えばPediaven、即ち幼児、児童、および思春期向けの非経口栄養二成分溶液は、微量元素をグルコースチャンバー内に含有する。しかしながら、生成物中で二酸化セレンとして提供される微量元素セレンは、2014年7月に発表されたように(http://www.pharmacovigilance-tours.fr/490.html)、おそらくは分解に起因して、完成生成物中に不在であることが報告されてきた。別の生成物、即ち大塚製薬製のElneopaは、ある特定の微量元素を、マルチチャンバーバッグの一部として小さい専用のチャンバー内に含有する。しかしながらこの生成物はセレンを含有しない。
【0016】
例えばEP2080501A1は、水蒸気滅菌プロセスまたは温水滅菌プロセス後12時間以内に、25℃の温度、60%RHの湿度で、200cm/m・24時・atm以上の酸素透過性を有する、および25℃の温度、60%RHの湿度で、100cm/m・24時/atm以下の定常状態の酸素透過性を有する、プラスチック材料を使用することによって、製剤中の溶存酸素含量を低減させることを求める微量栄養素(微量元素)も含む非経口栄養のための製剤を含む、マルチチャンバーバッグを開示する。そのような場合、溶存酸素レベルは、時間と共に、特に保存寿命と共に著しく低減されることになり、酸素傾向成分に有益であるが、微量栄養素として存在する場合にはSe(IV)の分解をもたらす可能性がある。
【0017】
KR10-2019-0105737は、脂溶性ビタミンおよび微量元素を含有する輸液溶液調製物に関し、より詳細には、複数のチャンバーを内部に含む、したがって還元糖、アミノ酸、脂質、および脂溶性ビタミン、および微量元素を別々に保存する、輸液溶液調製物に関する。刊行物は、マルチチャンバー栄養生成物のチャンバーに含有されたその他の微量元素の中でも、セレンイオン、およびセレンカチオンに対して3μg/mLから7.0μg/mlの好ましい濃度について述べている。特定のイオンまたはそのようなセレンイオンを製剤中で安定化させる方法は、述べていない。
例えばセレン、ヨウ素、および銅は-特に組合せで-栄養バッグ内に含むことが難しいことが当技術分野で公知であり、それは化学反応を受ける可能性があるからであり、特に、加熱滅菌および長期保存寿命などの極限条件を受けなければならないからである(例えば、Allwood et al. Compatibility and Stability of Additives in Parenteral Nutrition Admixtures. Nutrition 1998, Vol. 14, No. 9, pp. 697-706; Eisenberg et al. Stability of selenium sources reviewed. Feedstuffs, June 18, 2012)。
さらに様々な製剤研究では、栄養マルチチャンバーバッグ内への微量元素の導入を試みるとき、深刻な安定性の問題が経験されており、特にセレンの損失が観察された。このことは、Se(IV)の形態のセレン、特に亜セレン酸ナトリウム、亜セレン酸、または二酸化セレンの形態のセレンが例えばプラスチック材料または酸化鉄に吸着する傾向にあり;アスコルビン酸のような還元剤の存在下で金属セレンに還元される可能性があり;揮発性物質であるセレン化水素に還元される可能性があり;および/またはある特定の条件下で揮発性物質でもある二酸化セレンに低pHで変換される可能性があるという事実に起因し得る。要するに、セレナイトなどのある特定の化合物に関する条件は、安定した手法で提供するのにMCBにおいて適切ではない。そのような課題は現在、本明細書で開示されるように対処することができる。本明細書でなされた開示の結果、同じMCB中のその他の製剤の要件とはさらに対照的になり得る選択的気体要件を有する化合物を含む、それを必要とする患者への非経口投与用の溶液を含む非経口投与に向けたものを含む、すぐに使える状態の医薬生成物または医薬生成物用のフレキシブルな容器/マルチチャンバー容器を、ついに安定して提供することが可能になる。例えばSe(IV)の形態のセレンはついに、長期間にわたり安定して提供することができる。本明細書で開示される技術は、特に、溶液中の様々な気体レベルに関して矛盾のある要件を有する製剤を含むマルチチャンバーバッグの文脈において、選択的気体要件を有するその他の化合物または化合物の組合せに関して使用することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】国際公開第2009021094A1号
【特許文献2】欧州特許出願公開第2080501A1号明細書
【特許文献3】韓国特許出願公開第10-2019-0105737号明細書
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Allwood et al. Compatibility and Stability of Additives in Parenteral Nutrition Admixtures. Nutrition 1998, Vol. 14, No. 9, pp. 697-706
【非特許文献2】Eisenberg et al. Stability of selenium sources reviewed. Feedstuffs, June 18, 2012
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
したがって、選択的気体を製剤中に、特に種々の気体レベル要件を有するさらなる製剤を包含するMCBの一部である製剤中に、存在させることを必要とする感受性化合物を収容させる溶液を提供することが、依然として求められている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
発明の要旨
一態様では本発明は、安定なままにするための選択的気体要件を有する医薬生成物の少なくとも1種の化合物を安定化させるため、選択的溶存気体含量を有するフレキシブルな容器に関し、このフレキシブルな容器は:少なくとも1種の化合物を含む溶液;そこから容器が作製され、前記気体に関して高い気体障壁を提供するフィルム材料;および気体のヘッドスペースを、含むものである。
【0022】
別の態様によれば、本発明は、医薬生成物の少なくとも1種の化合物を安定化させるための選択的溶存気体含量を有するフレキシブルな容器に関し、このフレキシブルな容器は:
(a)選択的溶存気体要件を有する少なくとも1種の化合物を含む溶液;および
(b)気体のヘッドスペース
を含む。
【0023】
別の態様によれば、少なくとも1種の化合物は、高レベルの酸素を必要とする化合物であり、選択的溶存気体は酸素である。
【0024】
別の態様によれば、フレキシブルな容器は、少なくとも1つのチャンバーを含むマルチチャンバーバッグであり、そこに選択的溶存気体要件を有する化合物が配置されている。
【0025】
別の態様によれば、フレキシブルな容器は、フレキシブルな容器内の溶液の体積の約5%から約100%のヘッドスペースの体積を有する。
【0026】
別の態様によれば、ヘッドスペースの体積は、フレキシブルな容器内の溶液の体積の約35%から45%である。
【0027】
別の態様によれば、容器は、最終的に加熱滅菌される。
【0028】
別の態様によれば、少なくとも1種の化合物は、Se(IV)の形態のセレン化合物である。
【0029】
別の態様によれば、少なくとも1種のセレン化合物は、亜セレン酸ナトリウム、亜セレン酸、および二酸化セレンからなる群から選択される。
【0030】
別の態様によれば、溶液は、医薬生成物の保存寿命全体を通して、0.5ppmに等しいかまたはそれより多い溶存酸素(DO)を含む。
【0031】
別の態様によれば、溶液は、約0.5ppmから約8ppmの溶存酸素(DO)を含む。
【0032】
別の態様によれば、溶液は、1ppmに等しいかまたはそれより多い溶存酸素(DO)を含む。
【0033】
別の態様によれば、滅菌時の溶液中の溶存酸素(DO)の濃度が少なくとも6ppmである。
【0034】
別の態様によれば、気体のヘッドスペースは、約1℃から約40℃の間の温度で保存したとき、少なくとも3カ月、少なくとも6カ月、少なくとも12カ月、少なくとも18カ月、および少なくとも24カ月からなる群から選択される期間で、少なくとも1種の化合物を安定化させる。
【0035】
別の態様によれば、フレキシブルな容器は、約18℃から約30℃の間の温度で保存される。
【0036】
別の態様によれば、溶液は、約1から約4、好ましくは約2.5から約3.2の範囲の酸性pH値を有する。
【0037】
別の態様によれば、マルチチャンバー容器は少なくとも2つのチャンバーを含む。
【0038】
別の態様によれば、マルチチャンバー容器は、2チャンバー容器、3チャンバー容器、4チャンバー容器、5チャンバー容器、6チャンバー容器、7チャンバー容器、および8チャンバー容器からなる群から選択される。
【0039】
別の態様によれば、マルチチャンバー容器は:
(a)炭水化物製剤を含有する第1のチャンバー;
(b)アミノ酸製剤を含有する第2のチャンバー;
(c)脂質製剤を含有する第3のチャンバー;および
(d)選択的溶存気体要件を有する化合物を含む溶液を含有する第4のチャンバー
を含む。
【0040】
別の態様によれば、第4のチャンバーに含有される溶液は少なくとも1種のセレン化合物を含み、ヘッドスペースには周囲空気、酸素に富む周囲空気、または酸素が満たされる。
【0041】
別の態様によれば、フレキシブルな容器は、1cc/m/日未満、好ましくは0.5cc/m/日未満の酸素障壁を有する材料で作製される。
【0042】
別の態様によれば、選択的溶存気体要件を有する化合物が位置されるフレキシブルな容器の区画は、気密ポートチューブを含みまたはポートチューブがない。
【0043】
別の態様によれば、本発明は、医薬生成物の少なくとも1種の微量栄養素を安定化させるための選択的溶存気体含量を有するマルチチャンバー容器に関し、このマルチチャンバー容器は:
(a)炭水化物製剤、アミノ酸製剤、または脂質製剤を含む第1のチャンバー;
(b)選択的溶存気体要件を有する少なくとも1種の微量栄養素を含む溶液;および気体のヘッドスペースを含む、第2のチャンバー
を含む。
【0044】
別の態様によれば、少なくとも1種の微量栄養素は、少なくとも1種の微量栄養素化合物であり、Se(IV)の形態のセレンであり、溶存気体は溶存酸素(DO)である。
【0045】
別の態様によれば、マルチチャンバー容器は、少なくとも5つのチャンバーを含む。
【0046】
別の態様によれば、少なくとも1種のセレン化合物は、亜セレン酸ナトリウム、亜セレン酸、および二酸化セレンからなる群から選択される。
【0047】
別の態様によれば、少なくとも1種のセレン化合物は、亜セレン酸ナトリウムまたは二酸化セレンである。
【0048】
別の態様によれば、第2のチャンバーの溶液は、医薬生成物の保存寿命全体を通して0.5ppmに等しいかまたはそれより多い溶存酸素(DO)を含む。
【0049】
別の態様によれば、第2のチャンバーの溶液は、約0.5ppmから約8ppmの溶存酸素(DO)を含む。
【0050】
別の態様によれば、第2のチャンバーの溶液は、1ppmに等しいかまたはそれより多い溶存酸素(DO)を含む。
【0051】
別の態様によれば、容器は、最終的には加熱滅菌される。
【0052】
別の態様によれば、滅菌時の溶液中の溶存酸素(DO)の濃度は少なくとも6ppmである。
【0053】
別の態様によれば、ヘッドスペースの体積は、マルチチャンバー容器内の溶液の体積の約5%から約100%である。
【0054】
別の態様によれば、酸素のヘッドスペースの体積は、フレキシブルな容器内の溶液の体積の約35から約45%である。
【0055】
別の態様によれば、気体のヘッドスペースは、約1℃から約30℃の間の温度で保存したとき、少なくとも1種の微量栄養素を、少なくとも3カ月、少なくとも6カ月、少なくとも12カ月、少なくとも18カ月、および少なくとも24カ月からなる群から選択される時間にわたり安定化させる。
【0056】
別の態様によれば、マルチチャンバー容器は、約18℃から約25℃の間の温度で保存される。
【0057】
別の態様によれば、マルチチャンバー容器は、1cc/m/日未満、好ましくは0.5cc/m/日未満の酸素障壁を有する材料で作製される。
【0058】
本発明はさらに、以下の図により記述される。これらは本発明の範囲を限定するものではなく、本明細書に記述される本発明のより大きな例示のために提供される本発明の態様の好ましい実施形態を表す。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1図1は、EU-2Sバッチ(半透過性)およびEU2-Fバッグ(酸素不透過性)の試料に関し、40℃で時間を経た溶存酸素(DO)の変動を示す、一組のグラフである。
【0060】
図2A図2図2Aおよび図2B)は、セレナイトバッチEU2-S(半透過性フィルム)(図2A)およびセレナイトバッチEU2-F(酸素不透過性フィルム)(図2B)のセレナイト回収レベルを示す、一組のグラフである。
図2B図2図2Aおよび図2B)は、セレナイトバッチEU2-S(半透過性フィルム)(図2A)およびセレナイトバッチEU2-F(酸素不透過性フィルム)(図2B)のセレナイト回収レベルを示す、一組のグラフである。
【0061】
図3図3は、ヘッドスペースおよびポートチューブの存在を酸素不透過性バッグと組み合わせた影響の分析を示す、一組のグラフである。
【0062】
図4図4は、ヘッドスペースの体積の影響に対する、時間を経た溶存酸素(DO)の変動を示す一組のグラフである。
【0063】
図5図5は、例示的なマルチチャンバー容器を示す図である。
【0064】
図6図6は、図5のマルチチャンバー容器のチャンバーCに関する、40℃で時間を経た溶存酸素(DO)の変動を示すグラフである。
【0065】
図7図7は、5mLの空気のヘッドスペースがチャンバーCに付加された後の、図5のマルチチャンバー容器のチャンバーCに関する40℃で時間を経た溶存酸素(DO)の変動を示すグラフである。
【0066】
図8図8は、図5の場合に類似するがチャンバーCから任意の充填チューブを単離するよう封止材が付加された、別の例示的なマルチチャンバー容器を示す図である。
【0067】
図9図9は、図8のマルチチャンバー容器のチャンバーCに関して40℃で時間を経た溶存酸素(DO)の変動を示し、溶存酸素のレベルが40℃で6カ月の保存後に依然として5から6ppm付近であることを示すグラフである。
【0068】
図10図10は、高障壁一次フィルム、空気の小さいヘッドスペース(5ml)を有し、ポートチューブが除去された(操作5)、40℃で6カ月の保存後に溶存酸素のレベルが依然として5超であることを示す、40℃で時間を経た溶存酸素(DO)の変動を示す一組のグラフである。
【0069】
図11図11は、低溶存酸素媒体で満たされているチャンバー内の低レベルの溶存酸素の安定性を示す、一組のグラフである。
【0070】
図12図12は、酸素を全体として含まない媒体での、これらの揮発性種におけるSeOの変換を示す、pH/酸化還元図である。
【0071】
図13図13は、Se投与量とlog酸素含量との間の当て嵌め線プロットを示すグラフである。図13は、Se投与量とlog酸素含量との間に約80%の当て嵌めを示す。
【発明を実施するための形態】
【0072】
発明の詳細な説明
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野の当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で使用される以下の用語は、以下の意味を有する。
【0073】
本明細書で使用される「含んでいる(comprising)」または「含む(comprises)」という用語は、組成物および方法が列挙される要素を含むがその他を除外するものではないことを、意味するものとする。
【0074】
「約」という用語は、数値表示、例えば温度、時間、量、および濃度であって範囲を含めたものの前に使用されるとき、(+)または(-)10%、5%、または1%変化し得る近似値を示す。
【0075】
本発明の文脈において、「フレキシブルバッグ」および「フレキシブルな容器」という用語は同義で使用され得る。「溶液」および「製剤」という用語も、本発明の文脈において同義で使用される。
【0076】
本明細書で使用される「微量栄養素」という用語は、健康を維持するのにある範囲の生理学的機能を調整するための、寿命の全体を通した様々な量の、生物に必要とされる任意の必須元素を指す。重要な微量栄養素には、ヨウ素、鉄、亜鉛、カルシウム、セレン、フッ素、銅、クロム、モリブデン、マンガン、ならびにビタミンA、B、B12、B、B、B、B、B、K、D、E、およびCが含まれる。ヒトの栄養に関し、微量栄養素要件は、一般に1日当たり100ミリグラム未満の量にある可能性があり、それに対して多量栄養素は、毎日グラム量で必要とする可能性がある。カルシウムは、場合によっては電解質とも呼ばれる。
【0077】
本明細書で使用される「多量栄養素」という用語は、ビタミンおよびミネラルと比べて比較的大量にヒトが消費し、ヒトにエネルギーを与える、化合物の種類を指す。3つの主要な種類の多量栄養素:炭水化物、タンパク質、および脂肪がある。
【0078】
本明細書で開示される「医薬生成物」という用語は、医療目的で、好ましくは臨床栄養の目的で使用されることが意図される任意の生成物に関する。本発明の医薬生成物は、患者におけるセレン欠乏症を予防しまたは正す医療目的が意図され設計される。
【0079】
本明細書で開示される「溶存酸素」(DO)という用語は、水またはその他の液体もしくは溶液中、例えば非経口栄養素のための溶液に存在する、遊離した非化合物酸素のレベルを指す。酸素飽和度(記号SO)は、その媒体に溶存できる最大濃度の割合として、所与の媒体中に溶解しまたは保持される酸素の濃度の相対尺度である。液体媒体中、通常は水中で、酸素センサーまたはオプトードなどの溶存酸素プローブで測定できる。
【0080】
溶存酸素は通常、リットル当たりのミリグラム数(mg/L)でまたは空気飽和のパーセントとして報告される。しかしながら研究は、百万分率(ppm)でまたはマイクロモル(μmol)でもDOを報告する。1mg/Lは1ppmに等しい。mg/Lと空気飽和%との間の関係は、水の温度、圧力、および塩分濃度と共に変化する。酸素の1マイクロモルは、0.022391ミリグラムに等しい。したがって100μmol/LのOは、2.2mg/LのOに等しい。溶存酸素濃度を空気飽和度から計算するには、試料の温度および塩分濃度を知ることが必要である。大気圧は、空気飽和度パーセントに関与する酸素の分圧として既に考慮されている。次いで塩分濃度および温度をヘンリーの法則で使用して、100%の空気飽和度でDO濃度がどのようになるか計算することができる。しかしながら、酸素溶解度チャートを使用することがより容易である。これらのチャートは、様々な温度、および塩分濃度での、100%空気飽和度での溶存酸素濃度を示す。次いでこの値に、測定された空気飽和パーセントを乗じて、溶存酸素濃度を計算することができる[Fondriest Environmental, Inc. "Dissolved Oxygen." Fundamentals of Environmental Measurements. 19 Nov. 2013.]。
【0081】
液体の酸素化は、例えば酸素を含有する気体への液体の曝露を通して生じる。例えば、約21%のOを含む雰囲気への液体試料の曝露は、液体中への気状酸素の拡散を通して酸素化をもたらす。このプロセスは、例えば撹拌、液体に酸素含有気体をフラッシングさせること、または当業者に公知の類似の技法によって、加速させることができる。
【0082】
溶存酸素濃度を測定するための、当技術分野で利用可能ないくつかの方法がある。現代の技法は、電気化学または光学センサーのいずれかを含み、溶存酸素センサーがメーターに取着されてスポットサンプリングおよび実験室の適用例がなされ、またはデータロガー、プロセスモニター、またはトランスミッターに取着されて展開された測定およびプロセス制御に用いられる。例は、気状および溶存O用の、PreSens Precision Sensing GmbH(ドイツ)製の光ファイバー酸素メーターMicrox TX3である。比色法は、試料中の溶存酸素濃度の基本的な近似を提供する。高範囲および低範囲の溶存酸素濃度に関して設計された2つの方法がある。これらの方法は、基本的なプロジェクトに関して迅速で安価であるが、範囲が限定され、水中に存在し得るその他の酸化還元剤に起因して誤差を受け易くなる。伝統的な方法は、ウィンクラー滴定である。
【0083】
本明細書で使用される「保存寿命」という用語は、本発明のフレキシブルな容器/マルチチャンバー容器内の医薬生成物を、封止および滅菌後に定められた保存条件で使用しまたは消費するのに不適合になることなく、保存することができる時間の長さに関する。保存条件に応じて、保存寿命が変化してもよい。
【0084】
本明細書で使用される「安定な」、「安定に」、または「安定性」という用語は、生成されたときに生成物中に提供された、成分、特に選択的気体要件を有する化合物の量の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、または少なくとも80%が、好ましくは最終加熱滅菌後も、少なくとも6カ月間、好ましくは少なくとも12カ月間、より好ましくは少なくとも18カ月間、さらにより好ましくは少なくとも24カ月間、1℃から40℃の温度、例えば1℃から30℃の温度で、依然として利用可能であることを意味する。好ましくは、成分の少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、および少なくとも95%は、生成されたときに、好ましくは最終加熱滅菌後も、少なくとも6カ月間、好ましくは少なくとも12カ月間、1℃から40℃の温度で、および/または少なくとも18カ月間、好ましくは少なくとも24カ月間、1℃から30℃の温度で依然として利用可能である。「生成されたとき」という表現は、最終加熱滅菌直前の時間を指す。
【0085】
従来技術に照らし、本発明の根底にある技術的問題は、そのような選択的気体要件を有する少なくとも1種の化合物(例えば、Se(IV)の形態の前述のセレン化合物)を安定化させるための選択的溶存気体含量を有する、少なくとも1種の溶液を含むフレキシブルな容器/マルチチャンバー容器を提供することである。特に、問題は、そこに含まれる製剤または化合物のそれぞれの安定性のため、例えば非常に低レベルの気体を長時間にわたって維持する要件を有するもの、および高いまたはより高いレベルの同じ気体を長時間にわたって維持する要件を有するその他のものなど、種々の溶存気体要件を有する少なくとも2種の製剤を含むマルチチャンバーバッグを提供することに関する。上述のように、MCBは一般に、前記多様な気体要件に個々に適応できない1種のフィルム材料から調製される。したがって、ある特定の場合には、フィルム材料は、気体を製剤から拡散させて、一次容器の外側に配置されたスカベンジャー、例えば酸素が望まれない製剤中にある程度まで依然として存在する酸素を消費することになる酸素スカベンジャーなどにより、捕捉できるように選択されることになる。しかしながら、このことは、おそらくは同じ気体を、例えば前記区画内に含有される少なくとも1種の化合物が安定なままであることを保証するためにある特定の濃度閾値にわたって残っていなければならない酸素を、第2の区画で保持する必要性とは相対することである。
【0086】
製剤を1つのマルチチャンバーバッグに収容するという種々の選択的気体要件のこの課題は、従来技術においてこれまで対処されず解決されなかった。したがって、別の製剤の要件とは反対の、製剤中に選択的溶存気体含量を必要とする化合物は、1種のMCBで提供されず、一般には再構成後および患者への投与前に一般にはMCBに添加され、または第2の医薬溶液で提供される。
【0087】
この問題は、独立クレームの特徴によって解決される。本発明の好ましい実施形態は、従属クレームによって提供される。
【0088】
上述の容器内の、ある特定の選択的気体要件を有する化合物を安定化させる、比較的単純であるが非常に効率的な方法があることが見出された。方法は、硬質、半硬質、またはフレキシブルな容器から作製されるモノバッグに使用することができ、そのような選択的気体に関する非常に異なる要件を有する製剤が保存されるマルチチャンバー容器に特に適している。
【0089】
したがって本発明は、容器/マルチチャンバー容器のその区画(単数または複数)または1つに含まれる医薬生成物の少なくとも1種の化合物を安定化させるための、選択的溶存気体含量を有するフレキシブルな容器/マルチチャンバー容器に関し、この容器は、問題になっている選択的溶存気体に関する気体障壁フィルム材料と、前記気体を含むヘッドスペースとから調製され、気体のヘッドスペースは、容器内で安定化される少なくとも1種の化合物により必要とされる気体のリザーバーとして働く。
【0090】
本明細書で使用される「ヘッドスペース」という表現は、液体または固体を保持する容器内の満たされていない空間を指す。
【0091】
従来技術のヘッドスペース、例えば医薬溶液用の容器内のヘッドスペースは低減され回避されることが求められ、可能な場合には、酸素などの任意の非不活性ガスの存在を回避する方法で制御することが求められる。
【0092】
したがって、特に例えば酸素吸収剤などの気体スカベンジャーを使用して同じMCB中に配置させることができるその他の製剤のニーズを満たす場合、例えばフィルム材料を通して失われた前記溶存気体を補充できるリザーバーガスで満たされた、意図的に創出されたヘッドスペースを有する容器または容器の区画に含まれる溶液でそれらを提供することにより、安定性のためにある特定の溶存気体レベルを必要とする化合物を安定化させることは、非常に異なる非自明の手法である。
【0093】
必要とされる気体または気体の混合物で満たされたヘッドスペースは、有利には、問題の気体に対して高い障壁を有するフィルム材料と組み合わせることができる。一実施形態によれば、フレキシブルな容器/マルチチャンバー容器は5cc/m/日未満、2cc/m/日未満、1cc/m/日未満、好ましくは0.5cc/m/日未満、例えば0.2cc/m/日未満、0.3cc/m/日未満、または0.4cc/m/日未満などの酸素または二酸化炭素障壁を有する酸素不透過性材料で作製される。フィルム材料がいくらか低い酸素または二酸化炭素障壁を有する場合、対応するヘッドスペースおよび/または選択的気体の濃度は、選択的気体のより多くを保存して、溶存気体レベルを長時間にわたって所望の閾値よりも上に保つように、増大させることができる。より高い酸素障壁を有するフィルム材料を使用することにより、ヘッドスペースおよび/またはヘッドスペース内の選択的気体の濃度を低減させ得る。
【0094】
特に、容器内、例えば少なくとも2つの区画を有するマルチチャンバー容器などに、安定性のための気体を必要とする化合物を含む溶液中の使い切った溶存気体を補充することができる必要とされる気体または気体混合物のリザーバーとして働くヘッドスペースの意図的な使用によって、選択的気体要件を有する1種または複数の製剤を収容することが可能であり、それと同時に、フィルムは、前記気体に関して低い透過性を有する容器を生成するために、特に容器が低いまたは少なくともより低いレベルの同じ気体を必要とするさらなる区画および製剤を含有する場合に使用され、したがってしばしば、気体スカベンジャーをパッケージ内部に含み、例えば前記様々な製剤を含有する一次容器を包み込むオーバーパウチ内に含む。
【0095】
容易に理解されるように、一部の気体は、材料が高い気体障壁を創出する場合であっても、長時間にわたって使用される容器フィルムを透過することになる。これは容器が、溶存気体を利用する気体スカベンジャーを含むオーバーパウチを有するときに、さらになお顕著である。このことは、ある特定の範囲まで望ましいとも考えられ、MCB中のその他の製剤がその気体を必要とする場合、例えば時間と共に製剤中に生成された酸素を含む酸素などは、酸素を障壁に通過させ、そのようなスカベンジャーにより吸収することによって溶液から除去しなければならない。
【0096】
一実施形態によれば、選択的溶存気体は酸素であり、これは通常、含まれる活性成分の酸化および分解をもたらし得るので、医薬溶液中の溶存気体として回避されるものである。しかしながら本発明は、医薬溶液中に提供される化合物の安定性を維持するのに必要とされるその他の選択的気体に、等しく十分に適用することができる。本発明は明らかに、任意の非不活性ガスを置き換えるのに使用される窒素またはその他の不活性ガスなどの溶存気体を指さずおよび/または包含しない。したがって本発明は、明らかに窒素を否定する。好ましい実施形態では、選択的溶存気体は酸素である。
【0097】
当業者なら、水中の溶存酸素(DO)の濃度は、水温、塩分濃度、および大気圧を含むいくつかの要因に影響を受けることに気付くであろう。表Iは、酸素の溶解度を、温度の関数としてppmで提供する(760mmHg、塩分濃度=0.0ppt)。したがって、約8ppmのDO濃度は、ほぼ室温(約21℃)で酸素で飽和される溶液に対応する。
【0098】
本発明の一実施形態によれば、医薬溶液中のDOは6ppmよりも上であり、好ましくは充填時および滅菌前に6ppmから約8ppmであり、溶液は、約18℃から約25℃、好ましくは約21℃の温度を有する。
【表1】
【0099】
ある特定の実施形態によれば、本発明により安定化されることになる化合物は、そのSe(IV)の形態のセレンである。特にそのSe(IV)の形態のセレンは、非経口栄養のための医薬溶液中に提供され得る。当技術分野では、例えばセレン、ヨウ素、および銅は、加熱滅菌ステップなどの特に極端な条件下でおよび保存寿命中に化学反応を受ける可能性があるので、栄養バッグに含むことが難しいことが公知である。例えば、Allwood et al. Compatibility and Stability of Additives in Parenteral Nutrition Admixtures. Nutrition 1998, Vol. 14, No. 9, pp. 697-706; Eisenberg et al. Stability of selenium sources reviewed. Feedstuffs, June 18, 2012を参照されたい。したがって一実施形態では、少なくとも1種の化合物は、Se(IV)の形態のセレンであり、好ましくは亜セレン酸ナトリウム、亜セレン酸、および二酸化セレンからなる群から選択され、酸素のヘッドスペースは、溶存酸素(DO)を0.5ppmから8ppmのレベルで含むように溶液を維持する。
【0100】
一実施形態では、本発明は、非経口投与用の酸素不透過性のフレキシブルな容器で提供された溶液を含み、少なくとも1種のセレン化合物を、好ましくは亜セレン酸ナトリウム、亜セレン酸、および二酸化セレンからなる群から選択されるSe(IV)の形態で含み、溶液が溶存酸素(DO)を好ましくは0.5ppmから8ppm DOで含むことを特徴とする、患者のセレン欠乏症を予防しまたは正すためのフレキシブルな容器/マルチチャンバー容器内の医薬生成物にも関する。
【0101】
本発明のある特定の実施形態では、本発明によるセレン化合物に加え、微量元素またはビタミンなどのその他の酸素感受性化合物が前記セレンとして同じ区画に存在するとき、0.5から2.0ppmの酸素範囲を目標とすることが好ましいと考えられる。ある特定の実施形態では、1.0ppmから2.0ppmの酸素範囲は、本発明による組成物を安定して製剤化するのに好ましいと考えられる。
【0102】
本発明のある特定の実施形態では、本発明の医薬生成物の溶液は、亜セレン酸ナトリウムを含む。一部の実施形態では、本発明の医薬生成物の溶液は、亜セレン酸を含む。一部の実施形態では、本発明の医薬生成物の溶液は、二酸化セレンを含む。
【0103】
ある好ましい実施形態では、本発明の医薬生成物の溶液は、そのような溶液中で長時間にわたって安定なままであるための選択的気体要件を有する亜セレン酸ナトリウムを含む。驚くべきことに、溶存酸素(DO)を溶液中に約0.5ppmから約8ppmに安定した濃度で維持するために少なくとも1種のセレン化合物をSe(IV)の形態で含む溶液上の酸素のヘッドスペースの存在は、酸素が酸化還元反応に関わり、しばしば溶液中の多量および微量栄養素の安定性に有害であることが一般に予測されるので、通常なら気体とその周囲との交換から保護される溶液中での亜セレン酸ナトリウム、亜セレン酸、および/または二酸化セレンの安定化をもたらすことを見出した。特に、ある特定の微量元素およびビタミンは、密閉されたフレキシブルバッグなどの密閉容器に保存したとき、酸素の存在または不在に感受性があることが報告されている。
【0104】
その結果、本発明は、例えば亜セレン酸ナトリウム、亜セレン酸、および/または二酸化セレンを単独でまたは他の感受性ある微量元素、例えばヨウ素および/または銅と組み合わせて含む溶液上の酸素のヘッドスペースにより維持された、溶液中に溶存酸素の制御された濃度の存在は、溶液中、特に上述の酸化還元反応を回避するため一般に酸素不透過性容器で提供される密閉した医薬栄養生成物中に存在するときに不安定であることが公知の、これらのセレン含有化合物の安定化をもたらすという知見に基づく。
【0105】
上述のように、酸素透過性容器は、例えばPeditrace(商標)などで公知であり、例えば使用され、容器の内部と周囲空気との間での気体交換が可能になるが、ほとんどの非経口生成物は、含有される栄養成分の酸化還元感受性に起因して酸素不透過性容器で提供される。一方、酸素透過性容器は、特に様々な微量元素の高感度組成物の長期安定性を提供する前提条件であることが見出された、定められた安定した酸素濃度を提供しなくなる。対照的に酸素レベルは、例えば温度または高さ(圧力)に基づいて変化に供され、例えば滅菌、輸送、または保存中の好ましくない条件は、その後で容器が再び、酸素透過性フィルムを通して容器内で酸素などの失われた溶存気体の補充をもたらすさらに良い適切な条件で保存される場合であっても、例えばそのSe(IV)形態をとるセレンなどの感受性ある化合物の分解および損失をもたらし得る。
【0106】
一実施形態では、本発明におけるヘッドスペースは、フレキシブルな容器/マルチチャンバー容器の任意の液体溶液で、または窒素などの不活性ガスで満たされない空間を指し、そのような空間内の気体の体積を指す。
【0107】
一実施形態では、出願人は驚くべきことに、容器用の酸素障壁フィルムと組み合わせたときに、少なくとも1種のセレン化合物をSe(IV)の形態で含む溶液上の酸素のヘッドスペースが、溶液中に溶存酸素(DO)を約0.5ppmから約8ppmの安定な濃度で維持することができ、通常なら気体とその周囲との交換から保護される溶液中での亜セレン酸ナトリウム、亜セレン酸、および/または二酸化セレンの安定化をもたらすことを見出した。
【0108】
疑いを避けるため、少なくとも1種のセレン化合物をSe(IV)の形態で含む本発明のフレキシブルな容器/マルチチャンバー容器の溶液は、亜セレン酸ナトリウム、亜セレン酸、および二酸化セレンからなる群から好ましくは選択されるものであり、「セレン溶液」、「セレンを含む/含有する溶液」、または「Se(IV)を含む/含有する溶液」と呼ばれてもよい。
【0109】
本発明の文脈において、溶存気体の「安定な」または「制御された」濃度という言い回しは、溶存気体の濃度が、選択的気体要件を有する成分を含む医薬溶液を含有する生成物の完全保存寿命にわたり、所与の閾値よりも下に降下しないことを意味する。選択的溶存気体の濃度は、生成から保存寿命の終わりまで、いつでも同じであることを意味せず、その損失または消費は、ある特定の最小濃度を保存寿命全体を通して維持する手法で制御することができる。
【0110】
例えば、「0.5ppmから8ppmの、溶液中の溶存酸素の制御された濃度」は、本発明の医薬生成物の保存寿命の全体を通して0.5ppmから8ppmの範囲内にあるままの溶存酸素(DO)濃度に関し、8ppmは、本発明の溶液の酸素飽和度にほぼ該当する。言い換えれば、医薬生成物中の溶液の厳密な酸素濃度が安定であり続けることは必ずしも必要ではなく、保存寿命の全体を通して、濃度はこの範囲よりも下に、即ち0.5ppmよりも下に降下しないことが必要とされる。したがって本発明の好ましい実施形態では、溶液中のDO濃度が少なくとも0.5ppm DOである。
【0111】
本発明の一実施形態では、0.5ppmから8ppmの、溶液中の溶存酸素の制御された濃度は、フレキシブルな容器/マルチチャンバー容器の1つのチャンバー内の溶液上の酸素のヘッドスペースによって維持される。一実施形態では、チャンバーは、0.5ppmから8ppmの、溶液中の溶存酸素の安定な(さらに制御された)濃度を含み、溶液上の酸素のヘッドスペースは密閉される。
【0112】
ある特定の実施形態では、Se(IV)含有溶液中の溶存酸素(DO)は、保存寿命中に少なくとも0.5ppmである。ある特定の実施形態では、Se(IV)含有溶液中の溶存酸素(DO)は、医薬生成物の保存寿命全体を通して0.5ppmよりも下に降下しない。
【0113】
一実施形態では、溶液は、1ppmに等しいかまたはそれより多い溶存酸素(DO)または溶存二酸化炭素を含む。
【0114】
一実施形態では、溶液は、例えば最終加熱滅菌溶液などの滅菌溶液である。
【0115】
別の実施形態では、溶液は、長時間にわたり、特に滅菌および保存中に安定であり続けるためにある特定のレベルの酸素を必要とする、少なくとも1種の化合物を含む。
【0116】
好ましい実施形態では、Se(IV)含有溶液などの医薬溶液中の溶存酸素(DO)は、フレキシブルな容器/マルチチャンバー容器内の溶液の充填(および必要に応じて密閉)時および滅菌前に、少なくとも6ppmである。一部の実施形態では、充填時および滅菌前の溶液中の溶存酸素(DO)濃度が6ppmから8ppmである(8ppmは、溶液の酸素飽和レベルにほぼ該当する)。
【0117】
好ましい実施形態では、医薬溶液を含むフレキシブルな容器/マルチチャンバー容器の酸素密封チャンバーは、酸素を含む気体組成物のヘッドスペースを含む。言い換えれば、そのような実施形態では、ある特定の酸素レベルに関する要件を有する医薬溶液を含むフレキシブルな容器/マルチチャンバー容器のチャンバーの少なくとも1つは、酸素を含むある体積の気体組成物をさらに含む。そのような追加の気体体積または「ヘッドスペース」は、溶液で満たされていない密閉チャンバー内の空間または体積、即ち密閉前の満たされた容器の最上部に残された空気/気体で満たされた体積であると理解される。
【0118】
既に述べたように、ヘッドスペースは、内部に含まれる気体(周囲空気)と容器内の液体(または固体)含量との間の望ましくない相互作用であるとおそらくは見なされる範囲まで、一般に回避されまたは最小限に抑えられる可能性がある(例えばUS20030110736A1参照)。
【0119】
対照的に、本発明の文脈において、そのようなヘッドスペースは、例えば周囲空気を介して酸素などの気体を蓄えるのに十分になるように、したがって例えば容器フィルム材料を通して、即ち一次容器を通して失われた酸素を交換することができるように、意図的に使用し設計することができる。したがって例えば溶液中の溶存酸素(DO)は、約15℃から約25℃、好ましくは約15℃から約30℃の典型的な周囲温度に応じて、少なくとも12カ月、18カ月、または24カ月であることが一般に目標とされる、意図される保存寿命全体を通して、0.5ppmよりも上で維持できる。本発明によるヘッドスペースを使用して、即ち例えば失われる可能性のあるまたはそうでない場合には気体不透過性バッグまたはチャンバーの溶液中に消費される可能性のある、しかしそのような溶液に含有される化合物の安定性に必要とされる、周囲空気または任意のその他の気体または気体混合物を含む十分な気体リザーバーを提供することは、気体がマルチチャンバーバッグ(MCB)のチャンバーから、例えば一次容器を通して失われる状況での長期安定性のために、ある特定のレベルの気体、例えば酸素または二酸化炭素などを必要とする様々な化合物に関連して使用することもできる一般的な原理である。
【0120】
一部の実施形態では、選択的気体は酸素である。そのような場合、酸素を含むヘッドスペース内の気体組成物は、約78%の窒素、21%の酸素、約1%のその他の気体を含む周囲空気であってもよい。しかしながら、ある特定の実施形態では、酸素を含むヘッドスペース内の気体組成物は、特にヘッドスペース体積が低減されるべきである場合はほぼ酸素のみから構成されてもよい、酸素に富む気体組成物であってもよい。ある特定の実施形態では、ヘッドスペースの気体組成物は、約10~約100%の酸素、例えば約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30、約31、約32、約33、約34、約35、約36、約37、約38、約39、約40、約42、約44、約46、約48、約50、約54、約58、約62、約66、約70、約75、約80、約85、約90、約95、約96、約97、約98、または約99%の酸素を含んでいてもよい。当業者に公知のように、より高い酸素レベルは、特に生成中の火災または爆発の危険性に起因して推奨できない。
【0121】
周囲空気の場合、ヘッドスペースの体積は、医薬溶液を提供する容器または区画内に残る通常のヘッドスペースと同じであってもそれより高くてもよい。本発明によれば、ヘッドスペースは、選択的気体要件を有する化合物を含有する溶液の体積の約5%から約100%の範囲にあってもよく、本発明のフレキシブルな容器/マルチチャンバー容器の少なくとも1つのチャンバーに含まれる。
【0122】
例えば約70μgのセレン(IV)を含む25mlのセレン(IV)溶液の場合、例えば周囲空気のヘッドスペースは10mlであってもよい。しかしながら、ある特定の実施形態では、周囲空気または酸素のヘッドスペースの体積は、セレン溶液の体積の約10%よりも多い範囲、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%よりも大きく、または約100%であってもよい。
【0123】
一般に、本発明による選択的気体のヘッドスペースの体積は、選択的気体要件を有する化合物を含有する医薬溶液の体積の約5%から100%の範囲にあってもよく、例えば10%から60%の範囲内、例えば医薬溶液の体積の約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30、約31、約32、約33、約34、約35、約36、約37、約38、約39、約40、約41、約42、約43、約44、約45、約46、約47、約48、約49、約50、約51、約52、約53、約55、約56、約57、約58、約59、または約60%であってもよい。
【0124】
例えば、フレキシブルな容器/マルチチャンバー容器のチャンバー内に密閉されたセレン溶液25mlの場合、周囲空気または酸素のヘッドスペースは、約2.5mlから約22.5mlの範囲内、約2.5mlから約20ml、約2.5mlから約17.5ml、約2.5mlから約15ml、または約2.5mlから約12.5ml、好ましくは約3~約12ml、例えば約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11ml、または約12mlであってもよい。当業者は、セレン溶液のその他の体積の場合、本開示に基づいてヘッドスペースの該当する体積を計算することができる。
【0125】
本明細書に開示されるように、気体のヘッドスペースの体積は、異なる気体組成物が使用される場合には相応に調節され得る。例えば、豊富な酸素含量を有する気体の場合、より小さいヘッドスペースは、当業者に明らかなように使用されてもよく、周囲空気に関して示される上記比に基づいて計算することができ、および/または医薬溶液中で安定になる化合物に応じた通常の実験によって、計算することができる。
【0126】
本発明のフレキシブルな容器/マルチチャンバー容器のある特定の実施形態では、周囲空気または酸素のヘッドスペースおよび溶液中溶存酸素(DO)が、約1℃から約50℃の間の範囲の広範な温度で保存されたとき、溶液中で少なくとも3カ月間、単独でまたはその他の微量元素と組み合わせた亜セレン酸ナトリウム、亜セレン酸、および/または二酸化セレンなどのSe(IV)の形態の少なくとも1種のセレン化合物を安定化させる。亜セレン酸ナトリウムの代わりに、亜セレン酸カリウム、亜セレン酸リチウム、亜セレン酸カルシウム、または亜セレン酸マグネシウムなどのその他の塩形態も同様に使用してもよい。したがって亜セレン酸ナトリウムに言及する場合、単にそのような代替例の好ましい例であると理解すべきである。比較実験が、少なくとも3カ月など、酸素不透過性のフレキシブルな容器内で長時間にわたり、約1℃から約50℃の範囲で試験された様々な温度中に、列挙されたセレン含有組成物が溶液中で安定化されたことを実証できたことは驚くべきことであり予期しなかった。
【0127】
ある特定の実施形態では、本発明による周囲空気または酸素のヘッドスペースおよび溶液中の溶存酸素(DO)は、最高約40℃で保存されたとき、亜セレン酸ナトリウム、亜セレン酸、および/または二酸化セレンを、単独でまたはその他の微量元素の存在下、溶液中で、少なくとも3カ月間安定化させる。さらに、ある特定の実施形態では、周囲空気または酸素のヘッドスペースおよび溶液中の溶存酸素(DO)は、最高約40℃で保存されたとき、亜セレン酸ナトリウム、亜セレン酸、および/または二酸化セレンを単独でまたはその他の微量元素の存在下、溶液中で少なくとも6カ月間安定化させる。
【0128】
本発明のさらなる実施形態では、本発明の周囲空気または酸素のヘッドスペースおよび溶液中の溶存酸素(DO)は、亜セレン酸ナトリウム、亜セレン酸、および/または二酸化セレンを単独でまたはその他の微量元素の存在下、溶液中で、少なくとも6カ月間、好ましくは少なくとも12カ月間、より好ましくは少なくとも18カ月間、最も好ましくは少なくとも24カ月間安定化させる。
【0129】
本発明のさらなる実施形態では、本発明の周囲空気または酸素のヘッドスペースおよび溶液中の溶存酸素(DO)は、亜セレン酸ナトリウム、亜セレン酸、および/または二酸化セレンを単独でまたはその他の微量元素の存在下、溶液中で、少なくとも6カ月間、好ましくは12カ月間、より好ましくは18カ月間、最も好ましくは24カ月間、最高約30℃の温度で安定化させる。
【0130】
本発明のさらなるその他の実施形態では、本発明の周囲空気または酸素のヘッドスペースおよび溶液中の溶存酸素(DO)は、亜セレン酸ナトリウム、亜セレン酸、および/または二酸化セレンを単独でまたはその他の微量元素の存在下、溶液中で、少なくとも6カ月間、好ましくは少なくとも12カ月間、より好ましくは少なくとも18カ月間、最も好ましくは少なくとも24カ月間、約18℃から約25℃の温度で安定化させる。
【0131】
本発明のさらにその他の実施形態では、本発明の周囲空気または酸素のヘッドスペースおよび溶液中の溶存酸素(DO)は、亜セレン酸ナトリウム、亜セレン酸、および/または二酸化セレンを単独でまたはその他の微量元素の存在下、溶液中で、少なくとも6カ月間、好ましくは少なくとも12カ月間、より好ましくは少なくとも18カ月間、最も好ましくは少なくとも24カ月間、通常の保存温度、例えばそれに限定するものではないが室温、約15℃~約30℃まで様々な、より好ましくは約18℃~約25℃、または冷蔵条件での保存で、例えば約1℃から約10℃、好ましくは約2℃から約8℃、または約3℃から約7℃を含む温度で、安定化される。
【0132】
本発明の別の実施形態によれば、選択的気体は、様々な区画が二酸化炭素に関して種々の要件を有するMCB内に配置させることができる、医薬溶液中の化合物の安定性に必要とされる選択的気体の別の例である、二酸化炭素であってもよい。したがって本明細書でなされるおよび酸素に関する本開示は、二酸化炭素に等しく適用でき、二酸化炭素にも有効である。
【0133】
本発明の一実施形態によれば、選択的気体は二酸化炭素(CO)である。さらに別の実施形態によれば、選択的気体要件を有する化合物が炭酸水素塩、例えば炭酸水素ナトリウムである。水性溶液中の炭酸水素塩および二酸化炭素は、下記の式を介して接続される:
【化1】
【0134】
例えば炭酸水素ナトリウム溶液からの二酸化炭素の損失または透過は、炭酸ナトリウム含量の増加をもたらし、したがって増大したpHレベルをもたらす。さらに、二酸化炭素の損失は、炭酸水素ナトリウム成分溶液の最終混合組成物中の炭酸水素イオンの所望の含量および/または利用可能性の低下をもたらす。しかしながら炭酸水素塩は、そのような医薬溶液で必要とされる。次に炭酸塩は、炭酸カルシウムまたはその他の沈殿物(例えば、マグネシウムと)を時間と共に形成する傾向にあり、例えば患者への投与が意図される医薬溶液に有害である。一方、多量の溶存二酸化炭素は、内部に位置される化合物に有益ではない値までpHを低下させる可能性があるので、MCBの別の区画では望ましくないと考えられる。したがって二酸化炭素の損失は、可能な限り最良に回避されまたは制御されることになる。炭酸水素塩と特にMCB内のその他の溶液から、およびそれらの間での、CO移行の範囲の、適正な制御を得ることも重要である。炭酸水素塩含有溶液および区画から逃げることができるまたは逃げるCOガスの量の、改善された制御および制限は、上包装の必要性をなくす機会も与え得る。
【0135】
いくらかの制御を得る公知の方法は、気体不透過性一次フィルムおよび/または上包装を使用することを含む。上包装材料により占有される体積は、必ず、炭酸水素塩およびその他の溶液を含有するフレキシブルバッグの容器の体積よりも大きいので、上包装材料内には、炭酸水素塩溶液そのものから逃げるCOガスを受容することができる体積が常にある。酸素の場合のように、二酸化炭素障壁材料は、一次バッグ材料での二酸化炭素の損失ならびにオーバーパウチを通した任意の損失を制限するのに使用することができる。したがって一次バッグは、ナイロン層を含有するように設計することができる。また、オーバーパウチはナイロンから作製することができまたはナイロンを含むことができる。例えばオーバーパウチは、種々の層:間の接着剤層と共におよびポリプロピレンコポリマーによって支持される、Al、PVDC、およびナイロンから構成される積層フィルムとすることができる。
【0136】
例えば米国特許第7,491,411(B2)号では、多数の区画の少なくとも1つに含有された第1の所定の体積の水性炭酸水素ナトリウム溶液と、多数の区画の少なくとも別のものに含有される第2の所定の体積の水性酸成分溶液とを含む、多数の区画のフレキシブルバッグアセンブリについて記述される。この場合、水性酸成分溶液は、ある量の溶存二酸化炭素を含み、炭酸水素塩成分溶液と酸成分溶液との混合によって、炭酸水素塩溶液がCOを含まない溶液ではなくCO含有溶液の環境に曝露され、次に二酸化炭素が包装材料を横断して酸成分溶液から気体不透過性上包装フレキシブルバッグ内へと移行できるようになり、それによって、炭酸水素ナトリウム成分溶液から前記上包装フレキシブルバッグ内に移行できる二酸化炭素の量が制限される。しかしながら、この場合、両方の区画が容認され、それによって二酸化炭素の存在が利用される。
【0137】
本発明によれば、1つの区画がより高い溶存酸素レベルを必要とする化合物(例えば、亜セレン酸ナトリウムまたは二酸化セレン)を含むMCBに関して記述されたものに類似して、ヘッドスペースは、特に第2の区画がより高い溶存二酸化炭素レベルに耐えることができず、従来技術で記述された手法を使用することができない場合、二酸化炭素のリザーバーを提供するのに使用することができる。
【0138】
特に、通常なら種々の要件を有する製剤を含有するMCBの1つの区画に含有されるとき、選択的気体要件を有する化合物を含む医薬溶液を、調製し、内部に提供された特に亜セレン酸ナトリウム、亜セレン酸、および/または二酸化セレンなどの化合物単独でまたは例えばさらなる微量元素、ビタミン、もしくはグルコースなどの多量栄養素などのその他の成分の存在下で著しい損失なしに気密におよび液密に密閉され得る酸素不透過性材料から調製されたフレキシブルバッグ内に包装した後に滅菌できることは、重要な利点である。例えば本発明は、亜セレン酸ナトリウム、亜セレン酸、および/または二酸化セレンを、MCBの個別の専用チャンバー内で、しかし例えば非経口栄養のためのマルチチャンバーバッグのグルコースチャンバー、非経口栄養のための自立型グルコース溶液または例えばある特定のビタミンおよび/または微量元素を含む自立型医薬溶液でも安定化させる。
【0139】
ある特定の実施形態では、本発明の溶液は、溶液の調製およびフレキシブルな容器内への充填後に最終加熱滅菌を受ける。滅菌は、本発明の医薬生成物のフレキシブルバッグ内への溶液の充填前または後に生じてもよく、充填され密閉されたフレキシブルな容器の最終滅菌、特に加熱滅菌が好ましい。
【0140】
気体を必要とする化合物を含有する、フレキシブルな容器/マルチチャンバー容器またはフレキシブルな容器/マルチチャンバー容器のチャンバーは、前記気体に対して不透過性であることが非常に好ましい。例えば気体が酸素または二酸化炭素である場合、酸素または二酸化炭素不透過性材料が使用されるべきである。例えば、セレンを含む溶液を含有するフレキシブルな容器/マルチチャンバー容器、またはフレキシブルな容器/マルチチャンバー容器のチャンバーは、5cc/m/日未満、4cc/m/日未満、3cc/m/日未満、2cc/m/日未満、1cc/m/日未満、好ましくは0.5cc/m/日未満の酸素障壁を有する材料で作製されてもよい。
【0141】
以前、述べたように、より低い気体障壁は、より多い大きいヘッドスペースおよび/またはより高い濃度の選択的気体を伴うべきである。フィルム材料のより高い気体障壁は、ヘッドスペースの体積および/または選択的気体の濃度を低減させ得る。
【0142】
任意のポートが、気密的手法で、本発明によるヘッドスペースを含有する区画に好ましくは取着されまたは封止されるべきであり、および/またはそのようなポート上の選択的気体の損失を回避する気体不透過性ポートであるべきである。例えば、ポートシールを通した酸素のある特定の損失は、意図される保存寿命にわたって関連ある化合物の安定性を確実にする、例えば酸素のリザーバーとして使用される適切なヘッドスペースで本発明により対処することができる。ある特定の実施形態では、セレンを含有する溶液を含むチャンバーは、酸素不透過性であるポートを含む。ある特定の実施形態では、少なくとも2つの区画を有する本発明によるフレキシブルな容器は、選択的気体要件を有する化合物を含む医薬溶液を含有する区画に取着されたいかなるポートも持たない。
【0143】
本発明の滅菌は、最終加熱滅菌プロセスによって、しかし最終濾過、ガンマ照射、または任意のその他の滅菌技法を使用することによって行われてもよい。また、本発明のフレキシブルな容器/マルチチャンバー容器の溶液は、本質的に滅菌された溶液の汚染がフレキシブルバッグの充填中および密閉前に生じないことを確実にする無菌充填プロセスによって、フレキシブルな容器/マルチチャンバー容器内に満たされてもよい。一部の実施形態では、溶液は滅菌されていてもよいが、必ずしも滅菌されない。例えば滅菌処理は実行されてもよいが、絶対的な滅菌性は実現されなくてもよくおよび/または必要とされなくてもよい。
【0144】
さらなる実施形態では、溶液中の溶存酸素(DO)の濃度は0.5ppmに等しいかまたはそれより大きく、より好ましくは1.0ppmに等しいかまたはそれより多い。ある特定の実施形態では、溶液中の溶存酸素(DO)の濃度は4ppm以下である。ある特定の実施形態では、溶液中の溶存酸素(DO)は、0.8ppmよりも高く、2ppm以下である。
【0145】
本発明のある特定の実施形態では、溶液中の溶存酸素(DO)の濃度は、約0.5、約0.75、もしくは約1から約2ppmの範囲の任意の値、または約0.5、約0.75、約1、もしくは約2から約8ppm、例えば約0.5、約0.75、約1、約1.5、約2、約2.5、約3、約3.5、約4、約4.5、約5、約5.5、約6、約6.5、約7、約7.5、または約8ppmであってもよい。示される範囲は、記述される末端の値を含む。開示される値の任意の組合せを含む範囲は、本発明の実施形態と見なされる。
【0146】
一部の実施形態では、周囲空気または酸素のヘッドスペースにより維持される溶液中の溶存酸素(DO)の濃度は、医薬生成物の保存寿命全体を通して0.5ppmに等しいかまたはそれより大きく、より好ましくは1.0ppmに等しいかまたはそれより多い。
【0147】
本発明の一部の実施形態では、周囲空気または酸素のヘッドスペースにより維持されるSe(IV)含有溶液中の溶存酸素(DO)は、本発明の医薬生成物の保存寿命全体を通して少なくとも0.5ppmである。一部の実施形態では、周囲空気または酸素のヘッドスペースにより維持される溶液中の溶存酸素(DO)濃度は、保存寿命中に減少する可能性があるが0.5ppmより上に維持される。例えば、溶液の溶存酸素(DO)濃度は、フレキシブルな容器内への溶液の充填時および滅菌前に、6ppmよりも上であることが好ましい。滅菌および保存中、溶存酸素(DO)濃度は時間と共に減少し得るが、保存寿命の全体を通して0.5ppmよりも上のままである。
【0148】
本発明のフレキシブルな容器/マルチチャンバー容器のある特定の実施形態では、溶液を含むフレキシブルな容器/マルチチャンバー容器のチャンバーの充填時、好ましくは密閉時の、溶液中の溶存酸素(DO)の濃度が、少なくとも6ppmである。
【0149】
ある特定の実施形態では、溶液中の溶存酸素(DO)濃度は、溶液を含むチャンバーが完全に酸素不透過性であっても、充填、密閉、および滅菌後、ならびに生成物の保存寿命中に、医薬生成物中で減少することが可能と考えられる。一部の実施形態では、溶液の酸素は、おそらくは経時的なチャンバー内での酸化または分解などの低速の化学反応によって、保存寿命中に消費されてもよく、したがって酸素濃度は低下し得る。したがって、フレキシブルな容器/マルチチャンバー容器のチャンバー内での本発明による医薬溶液の充填および密閉時、溶存酸素(DO)濃度が少なくとも6ppm、例えば6ppmから8ppmの範囲にあることが好ましい。充填および密閉時のそのような高い溶存酸素(DO)濃度は、生成物の保存寿命中、溶存酸素(DO)濃度が安定に0.5ppmよりも上のままであることを確実にし、チャンバー内のフィルム材料を通した酸素消費および/または損失が生じた場合であってもDO濃度が0.5ppmよりも下に下がらないことを意味する。
【0150】
ある特定の実施形態の、医薬生成物の少なくとも1種の微量栄養素を安定化させるための選択的溶存気体含量を有するフレキシブルな容器/マルチチャンバー容器では、フレキシブルな容器が:本明細書に開示されるSe(IV)の形態の少なくとも1種のセレン化合物などの少なくとも1種の微量栄養素を含む溶液(即ち、フレキシブルな容器/マルチチャンバー容器のチャンバーに密閉される);および本明細書に開示される酸素などの気体のヘッドスペース(即ち、フレキシブルな容器/マルチチャンバー容器のチャンバーに密閉される)を含む。
【0151】
一部の実施形態では、Se(IV)の形態の少なくとも1種のセレン化合物を含む溶液を含むフレキシブルな容器/マルチチャンバー容器の密閉チャンバーはさらに、酸素を含む気体組成物のヘッドスペースを含む。
【0152】
好ましい実施形態では、Se(IV)の形態の少なくとも1種のセレン化合物を含有する溶液を含むフレキシブルな容器/マルチチャンバー容器またはそのチャンバーは、さらに、酸素を含む気体組成物のヘッドスペースを含み、密閉チャンバーは酸素不透過性であり、チャンバーの充填時、好ましくは密閉時の溶液中の溶存酸素(DO)は、少なくとも6ppmである。そのような実施形態では、溶液中の溶存酸素(DO)は、医薬生成物の保存寿命全体を通して0.5ppmに等しいかもしくはそれより大きく、またはそれに等しいままもしくは上のままであることが示された。
【0153】
本発明による周囲空気または酸素のヘッドスペースにより維持される溶存酸素(DO)の含量が、セレン含有化合物を単独で、特にその他の感受性ある微量元素とも組み合わせて安定化させるのに適切であることは、溶液の複雑な技術計測または操作なしに溶存酸素(DO)濃度を容易に確立できるので、本発明の医薬生成物の文脈において大きな利点である。
【0154】
その他のパラメーターは、長時間にわたり医薬溶液中で安定なままにするために、例えばSe(IV)の形態のセレンなどの選択的気体要件を有する化合物の安定性をさらに改善するために調節しなければならない可能性があることも、当業者に容易に理解されよう。例えばpHは、調節しなければならない可能性があり、および/または製剤中のその他の可能性ある化合物との不適合性に配慮しなければならなくなる。
【0155】
例えば、Se(IV)の形態のセレン、例えば亜セレン酸ナトリウムまたは二酸化セレンなどを含む溶液はさらに、酸性pHを有していてもよく、好ましくは約1から約4、より好ましくは約2から約3.5、より好ましくは約2.5から約3.2の範囲にあってもよい。しかしながら、長期安定性に関し、溶存酸素含量は極めて重要なものになる。さらに、亜セレン酸ナトリウム、亜セレン酸、および/または二酸化セレンが約0.5から約8ppmの溶存酸素(DO)の存在下で、特に約0.8ppmから約4ppmの溶存酸素(DO)の存在下でも、または約1ppmから約2ppmの存在下、約7から約7.5の範囲のほぼ中性pHでだけでなく酸性pHでも安定である本発明の溶液は、特に有利である。本発明によるフレキシブルな容器/マルチチャンバー容器の溶液中のセレンは、特に酸性pHでも、例えば約1~約4、約1.5~約3.5、約1.8~約3.2、約2~約3、約2.1~約2.9、約2.2~約2.8、約2.3~約2.7、約2.4~約2.6の範囲、および約2.5のpH値でも、安定である。指示される範囲は、記述される末端の値を含む。開示される末端値の任意の組合せを含む範囲は、本発明の実施形態と見なされる。
【0156】
そのような酸性pH条件での安定性は、特に溶液が中性pHで安定になることができずに酸性条件下でのみ安定なその他の微量元素も含む場合、重要である。これは特に、酸性pHの溶液中でより安定であることが報告されたヨウ化物(I)の場合に言えることである。しかしながら、これは微量元素の銅(Cu)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、フッ化物(F)、およびモリブデン(Mo)の1種または複数を含む栄養溶液の場合にも言えると考えられる。
【0157】
別の実施例では、例えば亜セレン酸ナトリウムまたは二酸化セレンなどのSe(IV)の形態のセレンを含む溶液の安定性は、ある特定の酸、例えばリンゴ酸、酒石酸、クエン酸、マレイン酸、およびフマル酸の形態の有機酸、より好ましくはリンゴ酸などの存在によってさらに強化されてもよく、有機酸の濃度は、好ましくは約100mMから約400mM、好ましくは約190mMから約220mMの範囲にあり、より好ましくは約200mMである。
【0158】
別の態様では、本発明は、医薬生成物の少なくとも1種の微量栄養素を安定化させるため、マルチチャンバー容器の1つのチャンバーに選択的溶存気体含量を有するマルチチャンバー容器に関し、このマルチチャンバー容器は:炭水化物製剤を含む第1のチャンバー;アミノ酸製剤を含む第2のチャンバー;脂質製剤を含む第3のチャンバー;および少なくとも1種の微量栄養素を含む溶液を含む第4のチャンバー;および気体のヘッドスペースを含むものである。
【0159】
本発明は、亜セレン酸ナトリウム、亜セレン酸、および二酸化セレンを含むまたはこれらからなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む、酸素不透過性のフレキシブルな容器に提供された溶液を含む、医薬生成物の少なくとも1種の微量栄養素を安定化させるために選択的溶存気体含量を有するマルチチャンバー容器内の滅菌溶液であって、溶液が、約0.5ppmから約8ppmの溶存酸素(DO)を約20℃から約25℃で含むことを特徴とするものを対象とする。
【0160】
本発明の文脈において、酸素不透過性材料(例えば、2cc/m/日未満、1cc/m/日未満、好ましくは0.5cc/m/日未満の酸素障壁を有する任意の材料)から好ましくは作製されたマルチチャンバー容器内の溶液は、亜セレン酸塩、例えば亜セレン酸ナトリウム、亜セレン酸、および二酸化セレンからなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含み、溶液が約1ppmから約8ppmの溶存酸素(DO)を含むことを特徴とする。
【0161】
亜セレン酸ナトリウムは、式NaSeOを有する無機化合物である。この塩は無色の固体である。五水和NaSeO(HO)は、最も一般的な水溶性セレン化合物である。亜セレン酸(Selenous acid)(または亜セレン酸(selenious acid))は、式HSeOを有する化合物である。構造的に、より正確にはHSeOと記述される。これはセレンの主要なオキソ酸であり;その他はセレン酸である。二酸化セレンは、式SeOを有する化合物であり、無色の固体である。これはセレンの最も頻繁に遭遇する化合物の1種である。
【0162】
一部の実施形態では、少なくとも1種の微量栄養素は、Se(IV)の形態の少なくとも1種のセレン化合物であり、溶存気体が溶存酸素(DO)である。
【0163】
一部の実施形態では、少なくとも1種のセレン化合物は、亜セレン酸ナトリウム、亜セレン酸、および二酸化セレンからなる群から選択される。
【0164】
一部の実施形態では、少なくとも1種のセレン化合物が、亜セレン酸ナトリウムまたは二酸化セレンである。
【0165】
一部の実施形態では、本発明のマルチチャンバー容器は、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、または少なくとも6個のチャンバーを有する。一部の実施形態では、マルチチャンバー容器のヘッドスペース設定は、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、または少なくとも6個のチャンバーを有するある特定の既存のマルチチャンバー容器に適用可能であってもよい。
【0166】
例えば、米国特許出願公開第2009/0166363(A1)号(Baxter)は、少なくとも第4のチャンバーを有するマルチチャンバーバッグ(MCB)を開示する(請求項20を参照)。EP790051A1(B.Braun)は、より小さいチャンバーも含む4チャンバーバッグを示す。EP2568947A1(B.Braun)は、片側から充填するためのポートチューブを有する3チャンバーバッグを示す。米国特許第8,343,128(B2)号(Otsuka)は、小さいチャンバーを有する構成を示す。米国特許第5,267,646A号(Otsuka)は、気体レベル/存在に関してある特定の要件を有する特別な化合物(即ち、薬物、TE)を含有し得る小さいチャンバーを含むための別の例を含む。
【0167】
一部の実施形態では、本発明のマルチチャンバー容器は、少なくとも5個のチャンバーを含む。
【0168】
ある特定の実施形態では、本発明のマルチチャンバー容器は、5個のチャンバーまたは6個のチャンバーのいずれかを含む。
【0169】
ある特定の実施形態では、マルチチャンバー容器の1つのチャンバー(例えば、第4のチャンバー)の溶液が、医薬生成物の保存寿命全体にわたり周囲空気または酸素のヘッドスペースにより維持された0.5ppmに等しいかまたはそれより多い溶存酸素(DO)を含む。
【0170】
ある特定の実施形態では、マルチチャンバー容器の第4のチャンバーの溶液は、周囲空気または酸素のヘッドスペースにより維持された約0.5ppmから約8ppmの溶存酸素(DO)を含む。
【0171】
ある特定の実施形態では、マルチチャンバー容器の第4のチャンバーの溶液は、周囲空気または酸素のヘッドスペースにより維持される1ppmに等しいかまたはそれより多い溶存酸素(DO)を含む。
【0172】
本発明の実施形態では、マルチチャンバー容器の第4のチャンバーの溶液は、滅菌溶液である。本発明の文脈において、「滅菌された」という用語は、滅菌のプロセスを受けた溶液に関する。滅菌は、全ての形態の生命(特に、真菌、細菌、ウイルス、胞子、単細胞真核生物、例えばPlasmodiumなどの微生物を指す)および特定の表面、物体、または流体、例えば食品または生物培地に存在するプリオンのようなその他の生物剤を、なくす、除去する、死滅させる、または不活性化する任意のプロセスを指す。滅菌は、熱、化学物質、照射、高圧、および濾過を含む様々な手段を通して実現することができる。滅菌は、それらの方法が、存在する全ての形態の生命および生物剤をなくすのではなく低減させる点が、消毒、衛生化、および殺菌と区別される。滅菌後、物体は滅菌されまたは無菌であると言われる。
【0173】
本発明のある特定の実施形態によれば、滅菌は熱によって行われてもよい。本発明の別の実施形態によれば、滅菌では、水蒸気を発生させるため、水の存在下、加圧下で加熱し;この方法は、様々な薬局方により推奨される。一般に、水蒸気滅菌は、オートクレーブで行われてもよく、薬物製品、医療デバイス、プラスチックバッグ、およびその他の単回使用装置、ガラス容器、外科用包帯などで使用することができる。
【0174】
その他の方法は、湿式加熱による滅菌を包含する。滅菌は、乾式加熱を介して実現することもできる。非常に高い温度(180~200℃)が、この方法には必要とされる。乾式加熱は、ガラス製品、金属、およびその他の表面を滅菌するのに一般に使用される。
【0175】
放射線への曝露は、産業全体にわたり使用される別の滅菌方法である。ガンマ放射線は最も一般的であるが、その他の選択肢は、赤外および紫外放射線ならびに高速電子を含む。放射線は、典型的には単回使用構成要素/システムの滅菌に使用されるが、包装された薬物製品に使用することができる。
【0176】
気体による処理が、滅菌の代替例であってもよい。そのような気体は、エチレンオキシド、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、プロピレンオキシド、過酸化水素、および二酸化塩素を含む。この方法は、クリーンルームスーツを滅菌するのに、より一般に使用され得る。濾過を介した滅菌は、その他のプロセスが特定の生成物または成分に適切ではない場合、唯一の選択肢である。濾過では、最終薬物生成物溶液が、無菌製造条件下で生成され、サイズ排除、捕捉、静電引力、およびその他の様式を介して細菌を除去するのに適切な孔径/表面化学で設計されたフィルターを通過する。
【0177】
ある特定の実施形態では、滅菌時のマルチチャンバー容器の第4のチャンバーの溶液中の溶存酸素(DO)の濃度(例えば、周囲空気または酸素のヘッドスペースにより維持される)は、少なくとも6ppmである。
【0178】
ある特定の実施形態では、周囲空気または酸素のヘッドスペースの体積は、マルチチャンバー容器の第4のチャンバー内の溶液の体積の約5%から約100%である。
【0179】
ある特定の実施形態では、マルチチャンバー容器の体積は、マルチチャンバー容器の第4のチャンバー内の溶液の体積の約35%から45%である。
【0180】
ある特定の実施形態では、マルチチャンバー容器の第4のチャンバーの周囲空気または酸素のヘッドスペースは、少なくとも1種のセレン化合物を、約1℃から約30℃の間の温度で保存したときに、少なくとも3カ月、少なくとも6カ月、少なくとも12カ月、少なくとも18カ月、および少なくとも24カ月からなる群から選択される時間にわたり安定化させる。
【0181】
ある特定の実施形態では、マルチチャンバー容器は、約18℃から約25℃の間の温度で保存される。
【0182】
本発明の文脈において、医薬溶液は、周囲空気または酸素などの選択的気体のヘッドスペースと共に、マルチチャンバー容器の1つの密閉チャンバーに提供される。本発明のある特定の実施形態では、溶液は、周囲空気または酸素のヘッドスペースと共に、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、または少なくとも6個のチャンバーを有するマルチチャンバー容器の1つのチャンバーに含有され密閉される。
【0183】
好ましくは、本発明による医薬溶液およびヘッドスペースを含む区画の周りの封止材は、気密であるべきである。充填ポートは、そこを通して本発明による必要な気体が医薬溶液から失われ得る、潜在的な気体漏洩を形成し得る。したがって、気密ポートの使用、または例えば本発明の一実施形態による医薬または注入ポートとしての、後で必要とされない場合の充填後のその除去には、注意を払うべきである。
【0184】
本明細書で使用される「フレキシブルな容器」または「マルチチャンバー容器」という用語は、プラスチックフィルムから作製されたバッグなど、フレキシブルな材料で作製された容器またはバッグを指す。この用語は、ポリマー硬質または半硬質容器を包含しない。
【0185】
本発明のフレキシブルな容器またはバッグは、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、エチレン-酢酸ビニル(EVA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、および全ての可能性ある熱可塑性エラストマーコポリマー、本質的に任意の合成材料であって、積層材料を含む、投与されることになる成分を含有するのに適したものを含むがこれらに限定されない材料で作製することができる。
【0186】
酸素不透過性のフレキシブルな容器は、当技術分野で公知であり、容器の外側への酸素の移行を遮断する気体障壁フィルムで作製される。酸素障壁を透明フィルムに、例えばポリオレフィンフィルムまたはポリエチレンテレフタレートフィルムに提供するために、種々の技術が開発されてきた。主な技術は下記の通りである:(1)高障壁材料、一般に無機酸化物層(例えば、SiOxまたはAl)でのコーティング;(2)多層フィルムであって、内層が、障壁材料、例えばEVOH、ポリアミド、アルミニウム、ハロゲン化ポリビニリデン、例えばPVDC、非晶質ナイロンもしくは結晶質ナイロンまたは両方の組合せ、エチレンビニルアルコールコポリマー層(EVOH)のコポリマー、ポリオレフィンであって、上記層の2つまたはそれよりも多くの組合せを含むもの、ならびに外層が、構造ポリマー(例えば、PE、PP、またはPET)からなるものである。例えば、EVOHは、包装に一般に使用されるポリマーの中で報告される最も低い酸素透過率の1つを有する。化学構造により、EVOHは、エチレンおよびビニルアルコールモノマー単位の半結晶質コポリマーである。
【0187】
一実施形態では、フレキシブルな容器またはマルチチャンバー容器は、5cc/m/日未満、2cc/m/日未満、好ましくは1cc/m/日未満、特に好ましくは0.5cc/m/日未満(30℃/70%RH)の高い酸素障壁を有する材料で作製されてもよい。
【0188】
「OTR」とも呼ばれる「酸素透過率」は、酸素ガスがフィルムを通して透過できる定常状態での率である。OTRは、1日の期間で所与の面積を透過する酸素の体積;cc/m/日(または24時間)と表され、標準温度23℃、および0%の相対湿度(RH)で測定されたものである。
【0189】
したがって本開示は、フレキシブルな容器、好ましくは、前述のフレキシブルなフィルムのいずれかから調製され得る非経口または栄養製剤用のマルチチャンバー容器も提供する。一般に当業者は、低い酸素または二酸化炭素障壁など、本発明による十分低い気体障壁を有する適切なフィルムを選択することができる。例えば容器は、1つまたは多数の区画またはチャンバーを有するバッグの形態であってもよい。バッグなどの容器は、少なくとも2個のチャンバーを含んでいてもよいが、3、4、5、または6個またはそれよりも多くのチャンバーを含有していてもよく、1つの好ましい実施形態では2もしくは3個のチャンバー、または別の好ましい実施形態では4、5、もしくは6個のチャンバーを含有していてもよい。
【0190】
ソフトバッグを含む適切な容器は、典型的には滅菌され、非発熱性で、単回使用の、および/またはすぐに使える状態にある。マルチチャンバー容器は、成人、子供、新生児用の非経口栄養生成物を保持するのに特に有用であり、第1のチャンバー内に本明細書に開示される炭水化物製剤を、第2のチャンバー内に本明細書に開示されるアミノ酸製剤を、および容器の第3のチャンバー内に本明細書に開示される脂質製剤を提供することができる。
【0191】
マルチチャンバー容器は、米国特許出願公開第2007/0092579号に開示される垂直チャンバーを含んでいてもよい。例えばマルチチャンバー容器は、2、3、4、5、または6個の隣接するチャンバーまたは区画を含むバッグとして構成されてもよい。望む場合には、マルチチャンバー容器のチャンバーを分離するのに、脆性障壁または開放可能な封止材(例えば、剥離シールまたは脆性シール)が使用される。マルチチャンバー容器は、脂質エマルジョン、炭水化物製剤、およびアミノ酸製剤を収容する3個のチャンバーを含んでいてもよく、少なくとも1個の、ある特定の実施形態では例えばビタミン製剤および/または微量元素製剤を含有する2または3個のより小さいチャンバーをさらに含んでいてもよい。ある特定の実施形態では、本発明のマルチチャンバー容器は、本発明による脂質エマルジョンを含有する第1のチャンバー、アミノ酸製剤を含有する第2のチャンバー、炭水化物製剤を含有する第3のチャンバー、ビタミン製剤を含有する第4のチャンバー、および微量元素製剤を含有する第5のチャンバーを有する。
【0192】
本発明の文脈で使用されるマルチチャンバー容器またはマルチチャンバーバッグ(MCB)は、それぞれのチャンバー内に含有される製剤の混合後、その再構成された含量を非経口投与するために設計されてもよい。そのようなMCBは、2、3、4、5、6個、またはそれよりも多くのチャンバーを有していてもよい。前記MCBのチャンバーは、同じサイズを有していてもよく、または様々な組成物および体積を収容するように種々のサイズを有していてもよい。チャンバーは、例えば約1から約5ml、約5から約10ml、約10から約50ml、約50から約100ml、約100から約250ml、約250mlから約500ml、約500から約1000ml、約1000から約1500mlの体積を含有するように設計されてもよい。MCBは、互いに隣接して配置されたチャンバーを有するように設計することができる。チャンバーは、様々な形状を有していてもよい。チャンバーは、互いに水平におよび/または垂直に向けることができる。ある特定の小さいチャンバーは、別のより大きいチャンバー内に位置されるように設計することができ、例えば別のより大きいチャンバー内に配置された小さいチャンバーは、前記小さいチャンバーの少なくとも1つの縁部を、周囲のより大きいチャンバーの溶接継ぎ目の間で溶接することによって、前記より大きいチャンバー内に収容し固定することができる。
【0193】
マルチチャンバー容器の開放可能な封止材は、製剤を別々に保存させ、投与直前に混合/再構成させ、それによって、長時間にわたり混合物として保存されるべきではない製剤の、単一容器での保存を可能にする。封止材の開放は、チャンバー間の連通を可能にし、それぞれのチャンバーの内容物の混合を可能にする。マルチチャンバー容器の外側封止材は、チャンバー間のより弱い剥離シールまたは脆性シールを開放するように供給される流体の圧力下で開放しない、強力な封止材である。一部の実施形態では、マルチチャンバー容器の開放可能な封止材は、マルチチャンバー容器の選択されたチャンバーのみを混合または再構成させるように、例えばそれが望まれる場合には脂質エマルジョンとビタミンチャンバーおよびアミノ酸チャンバーとを混合させるように設計されてもよい。
【0194】
マルチチャンバー容器は、構成成分の流体が所望の順序で混合されるように、どの剥離シールから開くかという所望の順序を説明する取扱説明書を備えていてもよい。2つまたはそれよりも多くの剥離シールの開封強度は、所望の順序での封止材の開放を促進させるように様々であってもよい。例えば最初に開放されることになる剥離シールの開封強度は、2番目に開放されることになる剥離シールを開くのに必要とされる開封強度の1/3から1/2であってもよい。
【0195】
一部の実施形態では、マルチチャンバー容器は、少なくとも、炭水化物製剤を含有する第1のチャンバー、アミノ酸製剤を含有する第2のチャンバー、および必要に応じて脂質製剤を含有する第3のチャンバーを含み、必要に応じて、電解質および/またはビタミンを少なくとも第1、第2、および/または第3のチャンバーに含む。特定の実施形態によれば、亜セレン酸ナトリウム、亜セレン酸、および/または二酸化セレンを含む少なくとも1つのチャンバーは、周囲空気または酸素のヘッドスペースをさらに含む。
【0196】
炭水化物製剤は、カロリーの供給を、典型的にはグルコースの形態でもたらす。特に炭水化物製剤は、非経口栄養を受ける患者で観察された高血糖などの悪影響を回避するのに十分な量の炭水化物を提供する。
【実施例
【0197】
本発明は、以下の実施例によってさらに記述される。これらは本発明の範囲を限定するものではなく、本明細書に記述される本発明をさらに例示するために提供される、本発明の態様の好ましい実施形態を表す。
(実施例1)
酸素半透過性および酸素不透過性障壁フィルムにより行われる試験
【0198】
試験は、2種の異なるフィルム、酸素半透過性フィルムおよび酸素不透過性フィルムで行った。
【0199】
半透過性フィルムは、下記の構造:PP|Tie|PA|Tie|PP/SEBS/LLDPEを有する共押出しフィルムである。その中で、PPはポリプロピレンを指し、PAはポリアミドを指し、SEBSはスチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマーを指し、およびLLDPEは線状低密度ポリエチレンを指す。「Tie」は、特別な接着剤ポリマーまたは「タイ樹脂」であって、典型的には極性および無極性反復単位と官能性反応基とのまたは官能性反応基のないポリエチレンコポリマーであり、これは多層フィルムの主層の間の接着を改善するのに使用されるものである。フィルムの酸素障壁は、ポリアミド層(約50cc/m/日)によって提供される。該当するフィルムは、例えば米国特許出願公開第2010/0247935(A1)号に記載されている。半透過性フィルムは、いくらか酸素を通過させる。
【0200】
酸素不透過性フィルムは、酸素障壁を提供するように障壁層でコーティングされた酸化ケイ素の蒸着によりポリエステルに積層された共押出しポリオレフィン材料から作製され、即ちこの特定のPET-SiOxにより提供された酸素障壁は、<0.5cc/m/日である。図1および2(図2Aおよび2B)に示される試験では、1dd/25mlの亜セレン酸ナトリウムがpH3.0±0.2で存在した。100mMのリンゴ酸も同様に、1ポートチューブを有する50mlのモノバッグ内に存在し、このバッグは上述の半透過性または酸素不透過性材料のいずれかで作製されたものであった。
【0201】
混合後、それぞれの溶液を窒素でフラッシングして、0.5ppmよりも低い溶存酸素(DO)に到達させた。10mlの周囲空気のヘッドスペースを50mlバッグに残した。充填後、酸素を飽和させた(約8ppm、図1参照)。それぞれの容器を密閉し、酸素不透過性アルミニウムオーバーパウチで包んで、そこに酸素吸収剤を添加した。次いでそれぞれの容器を湿式加熱滅菌に供した。
【0202】
下記の結果を得た:セレナイトは、EU-2Sバッチ(半透過性)内で、約5カ月後に80%よりも低い回収率まで降下したことが見出された(図2A)。外側パウチに存在する酸素吸収剤と酸素を通過させる半透過性一次フィルムの存在により、酸素は溶液から引き出されると結論付けることができる。EU2-Fバッグ(酸素不透過性)では、これは酸素障壁フィルムにより生じなかった(図2B)。セレナイトは、80%の回収率の閾値よりも上で保持され留まった。したがって酸素障壁フィルムは、セレナイト含有溶液の安定性を確実にするのに有利である。
【0203】
図1に示されるように、溶存酸素(DO)は、両方の場合に約3カ月以内で飽和から本質的に0ppmの溶存酸素(DO)まで素早く降下したが、EU2S半透過性の状況では、酸素吸収剤の影響に起因してさらに早かった。その後、溶存酸素(DO)は、両方の試料で本質的に0ppmであった。
【0204】
したがって溶存酸素(DO)は、酸素障壁フィルムが使用される場合であっても低下した。その他の成分(微量元素、リンゴ酸)を含む溶液中の成分は、フィルムを透過することによってもはや失われないとしても、溶存酸素(DO)を消費することが見出された。リンゴ酸の存在下、これはより顕著であった。理論に拘泥するものではないが、溶液中の酸化還元電位は酸素の消費(酸素との反応)を好むことが想定される。しかしながら溶存酸素(DO)が0.5ppmよりも上で維持される限り、セレナイトは5カ月間にわたり80%よりも上の率で回収することができる。これは充填時に6ppmよりも上の、好ましくは6~8ppm(本質的に飽和まで)の溶存酸素(DO)を有することによって、実現された。
【0205】
(実施例2)
ヘッドスペースの関連性
【0206】
この実施例では、水を酸素で飽和した。使用した溶液の体積は15mlであった。図3に示されるように、ヘッドスペースなしで、酸素不透過性フィルムが使用されたときであっても、溶存酸素(DO)は急速に閾値の0.5ppmよりも下に降下することが見出された(ヘッドスペースが含まれる上記設定とは対照的)。
【0207】
したがって周囲空気で満たされたヘッドスペースは、容器から失われた酸素に代わるある特定の「酸素ストック」を提供することを示すことができた。ヘッドスペースからの酸素は、平衡に達するまで溶液中にゆっくり溶解するようになる。したがって溶存酸素(DO)は、ヘッドスペースが存在する場合に経時的に0.5ppmよりも上で保持することができる。ヘッドスペースがないと(グレーで塗られた円)、セレナイトは経時的な溶存酸素(DO)の損失に起因して安定化することができない。
【0208】
ポートチューブは、フィルム層の間で密閉されなければならず、この密閉部分を完全に酸素耐密にすることが難しいので、ポートチューブは溶存酸素(DO)損失に関与し得る別の態様である。したがって、本明細書に記述される設定で使用されるポートチューブの酸素耐密性を改善すること、または可能な場合にはポートチューブを完全に除去することが、有利である。図3では、ヘッドスペースなしでおよびポートチューブなしで(白抜きの黒い円)、溶存酸素(DO)は、存在するポートチューブ(グレーで塗られた円)と比較して時間と共により高くなり、例えば5mlのヘッドスペースはポートチューブの損失(白抜きの黒い三角形)を完全に補うことができないことが明らかになる。好ましくは、可能な場合には、セレナイトを含む溶液を酸素障壁バッグ内で安定化させるため、ヘッドスペースがありポートチューブがない。そのような設定では、溶存酸素(DO)は、基本的に維持することができる(グレーで塗られた三角形)。
【0209】
図4は、ヘッドスペースの体積に焦点を当てる。わかるように、さらに上記にて論じたように、ヘッドスペースは、組成物中で必要とされるDOレベルを維持するのに必要とされ、充填時に溶液中に存在する酸素は、溶液中に存在する成分によって消費され(DOは、溶液中の酸化還元反応によって消費され、白抜きの黒い円、破線を参照)、そうでない場合には容器から失われる。25ml容器/チャンバー体積または15ml溶液当たり2mlのヘッドスペースは、いずれも完全には十分ではない(黒い三角形)。6mlのヘッドスペースにより、ポートチューブが存在する場合であっても(グレーの四角形、連続線)閾値0.5ppmはほぼ満たすことができ、ポートチューブが存在しない場合は完全に十分である(グレーの四角形、破線)。最良の結果は、ポートチューブが存在する場合であっても(グレーで塗られた円、破線)チャンバー/容器の15ml溶液当たりヘッドスペース10mlで得られる(グレーで塗られた円、連続線)。
【0210】
これらの結果は、ヘッドスペースを、気体を必要とする組成物のリザーバーとして、特にマルチチャンバーバッグ(MCB)での種々の気体レベルに関わる設定で、即ち低酸素を必要とするチャンバーおよび製剤と組み合わせて、使用できることを示す。
(実施例3)
内容物の液体(単数または複数)の最適な安定性を保証するのに選択的溶存気体含量を有するべき液体媒体で満たされたフレキシブルなマルチチャンバー容器。
【0211】
別々の溶液を保存し保持するための、ポリマーフィルムから作製されたフレキシブルなマルチチャンバー容器は、特に医療分野で、より特別には非経口栄養で広く普及している。
【0212】
ほとんどの場合、これらの容器は、低または中程度の気体障壁特性を有するポリマーフィルムから作製される。多くのその他の栄養に関する非経口栄養(PN)生成物または薬物生成物の場合、問題の気体は主に酸素である。安定性の理由で、溶液の1種が酸素から保護されるべき場合、全ての溶液は通常、酸素含量が低くなるように調製されることになる。感受性ある溶液のみが、酸素が低くなるように調製される場合であっても、その系は、チャンバー内に選択的気体含量を有する可能性なしに、種々のチャンバー間で急速に平衡に移動する。
【0213】
さらに、非経口栄養系は通常、不活性ガスでフラッシングされたまたは酸素吸収剤サシェを含有する二次上包装にパックされ、これらは共に、チャンバーと上包装環状空間との間の平衡に向かう急速移動に有意な役割を演じる。
【0214】
本発明は、特に高い障壁ポリマーフィルム材料の使用、低障壁特性を有する任意の潜在的な成分の除去、およびシステムへの気体ヘッドスペースの付加が、選択的溶存気体含量を長期保存にわたってチャンバー内でどのように維持可能になるのか記述する。
【0215】
本発明の記録は、酸素から保護されるべき栄養素(例えば、アミノ酸、脂質、ビタミン)を含有するチャンバー、および微量元素を単独でまたはその他の非酸素感受性成分と混合して含有するチャンバーを有し、亜セレン酸塩の形態のセレンの安定性のために最小量の酸素を含有すべきである、PNマルチ区画容器について記述する。
【0216】
本発明の目的で、容器を作製するのに使用されるプラスチックフィルム材料は、突出した気体障壁特性を有するものである。非経口栄養の場合、問題の気体は酸素である。この特定の目的で、酸素の透過性は、好ましくは0.5cc/m/日(30℃/70%RH)よりも低くあるべきである。これはエチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)の層を含有する共押出しフィルムで実現可能である。しかしながらPN生成物は、通常は湿式加熱滅菌され、EVOH材料は、湿式加熱滅菌によりその障壁を部分的に失う。したがってこの材料は、適切ではない。
【0217】
好ましい選択肢は、酸化ケイ素または酸化アルミニウムの蒸着で基材ポリマー層を組み込んでいる積層構造を使用することである。追加の障壁含有層が、より良い性能のため付加されることがある。
【0218】
図5~9に示される実験では、TOPPAN製のGL-RD材料で積層された構造を使用した。3チャンバー容器が、この特定のフィルムで製造された。チャンバーのサイズは、約25mLに適合するように密閉することによって低減させた。
【0219】
第1の実験では、図5のチャンバーAおよびBに、それぞれ、1ppmよりも低い溶存酸素濃度を有する200mLおよび300mLの水を満たした。図5のチャンバーCには、周囲空気で25mLの水を満たした(溶存酸素約8ppm)。
【0220】
充填後、チューブに栓をし、バッグを水蒸気滅菌し、酸素吸収剤サシェで包み込み、次いで40℃で保存した。
【0221】
図6に示されるように、40℃で17日後、小さいチャンバー内の溶存酸素濃度は依然として非常に高く(約8ppm)、しかし48日後には1ppmよりも下に降下した。
【0222】
第2の実験では、5mLの空気ヘッドスペースを図5のチャンバーCに付加した。図7に示されるように、間の溶存酸素の降下はさらに遅いが、40℃で3カ月保存した後に2ppmから3ppmの間の値の非常に有意なままである。
【0223】
図5に示される容器を、区画当たり少なくとも1つの充填ポートチューブで密閉する。これらの充填ポートチューブは、共押出しによって製造される。高い酸素障壁が提示できるようにそのようなチューブを設計することは、容易ではない。上記にて論じたように、EVOHポリマーの層の使用は、このポリマーが湿式加熱滅菌中にその障壁特性を失うので、良い選択肢ではない。PVDC層の付加は、持続可能性の理由で望ましくない。ナイロンの使用は、障壁を適度にしか改善しなくなる。
【0224】
このチューブ製剤は、いかなる特定の障壁特性も提示せず、したがって、小さい区画での溶存酸素の降下は、充填チューブ壁に向かう酸素の透過から得られることが想定される。
【0225】
図8は、図5の場合に類似するがチャンバーCからいかなる充填チューブも単離するように封止材が付加された、別の例示的なマルチチャンバー容器を示す図である。
【0226】
第3の実験は、25mLの水で満たされ、5mLの追加の空気ヘッドスペースがあり、チャンバーCからチューブを単離するよう付加された封止材を有する、図8のマルチチャンバー容器のチャンバーCで実行した。
【0227】
図9は、溶存酸素のレベルが40℃で3カ月保存後に依然として約8ppmであり、40℃で6カ月間保存後に約6ppmである、この第3の実験の結果を示す。
【0228】
上記結果は、その他のチャンバーおよび上包装環状空間での低い溶存酸素にも関わらず、特に高い障壁ポリマーフィルム材料の使用、低障壁特性を有する成分の除去(充填チューブ)、およびシステムへの気体ヘッドスペースの付加が、長期保存にわたって1つのチャンバー内で選択的に、高い溶存酸素含量の維持を可能にすることを示している。
【0229】
3チャンバーバッグは上記説明されたように使用されるが、本発明は、任意のマルチチャンバー容器またはバッグ、例えば5チャンバーバッグ、6チャンバーバッグ、4チャンバーバッグ、または2チャンバーバッグの「アミノ酸/デキストロース」であって、微量元素またはセレナイトの形態の少なくともセレンをデキストロースチャンバー内で、酸素環境で含まれるものでも使用することができ、それに対してアミノ酸は、酸素を含まない環境でそれらのチャンバー内にあるままと考えられる。
【0230】
あるいは、特定の障壁特性がない一次フィルムを使用できるが、異なる溶存酸素含量を有するとされるチャンバーは、その後保護されるべきである。進行させる周知の方法は、この特定のチャンバーを気体移動から保護する剥離可能な箔片で、そのチャンバーを覆うことである。
【0231】
この技術は、固体薬物を含有する区画を水分から保護するため、2チャンバーバッグ「固体/希釈剤」で使用される(例えば、BBraun製の二重容器)。しかしながらこのプロセスは、技術的にさらに複雑であり、特に湿式加熱滅菌に耐えるべき生成物に関して複雑である。
(実施例5)
6カ月の加速研究
【0232】
図10は、非常に高い障壁一次フィルム、空気の小さいヘッドスペース(5ml)、およびポートチューブの除去(密閉&カットプロセス)を有する、有意な酸素レベルのままであるべき微量元素チャンバー内の、溶存酸素レベルを示す。図10の操作5に示されるように、溶存酸素レベルは、40℃で6カ月間保存後に5ppmよりも上のままである。
【0233】
比較として、図11は、低溶存酸素媒体で満たされたチャンバー内の低レベルの溶存酸素の安定性を示す。図11の操作5に示されるように、滅菌前の場合に類似した溶存酸素レベルが、40℃で6カ月間保存後に保たれたままである。
【0234】
表IIはTEチャンバー内の溶存O(ppm)を示し、表IIIはAAチャンバー内の溶存O(ppm)を示す。特に表IIは、微量元素チャンバー内でのDOの発生を示し、表IIIは、アミノ酸チャンバーでのDOの発生を示して、種々の酸素要件を有するMCBおよびチャンバー内でこの手法を使用できることを示す。AAチャンバーでは、チャンバーおよび溶液が一般に窒素でフラッシングされて酸素含量を低下させるので、DO含量が、充填時には低い。高度酸素不透過性フィルムが使用される場合、少ない酸素を例えばAAチャンバーからフィルムを通過させることによって、オーバーパウチ内に配置された酸素吸収剤/スカベンジャーにより捕捉することによって除去できるので、これは行われなければならない。TEチャンバーでは、酸素含量が約8ppmに押し上げられ、酸素(例えば、周囲空気)を含むヘッドスペースリザーバーが利用可能になるや否や比較的高く保たれる。
【表2】

【表3】

(実施例6)
セレナイトの安定性に関する様々な要因の評価
【0235】
実験の完全実施要因計画(DoE)を開発して、セレナイトの安定性に対する5つの要因の影響を評価した。
【0236】
容器材料:セレナイトとプラスチックバッグ材料との相互作用は、既に強調された。この要因を評価するため、中性(気体不透過性)材料、即ちガラス瓶を、プラスチックバッグとの比較として使用した。
【0237】
溶液のpH:全ての以前の研究を、pH<3.5で実行して、Feの安定性を確実にした。セレナイトのMilliQ水への単純希釈により得られた天然pH>7との比較は、このパラメーターの影響の評価を可能にした。
【0238】
滅菌:試料に対して実行された最終加熱滅菌は、熱曝露による分解性化学反応を開始し得る。滅菌されていない試料対滅菌された試料を、セレナイトの安定性に関して比較して、このプロセスステップの影響を評価した。
【0239】
保存温度:加速安定性研究を、40℃で慣行に基づいて実行する。しかしながらセレナイトは、それに感受性がある可能性があり、5℃で保存した試料との比較を実行した。
【0240】
溶存酸素含量:酸素は多くの酸化還元反応に含まれ、ほとんどの場合に多量および微量栄養素(特にビタミン)に有害なものである。セレナイトの安定性に対するこのパラメーターの影響を評価するため、セレナイトの溶液を酸素(約8ppmの飽和度まで)または窒素(DO<0.5ppm)のいずれかでフラッシングした。
【0241】
要因の全ての組合せを生成し、適切な条件下で6カ月間保存した。次いでそれらをいくつかの試験に供して、いくつかの応答に対する各要因の影響を評価した。
【0242】
以下の読取りを、上記列挙された要因の影響を評価するために行った:
【0243】
セレンの分解を評価するSeアッセイ。
【0244】
任意の沈殿物、粒子、または変色を検出する、試料の目視検査。
【0245】
6カ月間の保存後の試料pHの進化を評価するためのpH測定。
【0246】
6カ月間保存後の溶存酸素の進化を評価する、溶存酸素測定。
【0247】
セレナイトが異なるSe酸化還元対に関わったときの、酸化還元電位測定であり、溶液の酸化還元電位に関する情報は、この元素の安定性を理解するのを助けることができる。
【0248】
研究されたほとんど全ての応答に関し、同じ試料群は、その残りとは異なる挙動を提示した。観察結果を、以下の表IVに詳述する。
【表4】
【0249】
これらの観察は、窒素でフラッシングされ、酸素透過性プラスチックバッグで保存された試料では、観察されたセレンの分解がおそらくは、HSe/HSe-中のセレナイトSeOの還元に起因し、即ち硫黄性ガスに類似した悪臭を放つことが公知のSeの揮発性形態に起因するという結論を可能にした。図12に提示されるpH/酸化還元図は、酸素を完全に含まない媒体中のこれら揮発性種におけるSeOの変換を示す。
(実施例7)
セレンの安定性に対するDOの影響
【0250】
酸素の影響は、セレナイトの安定性において、主に重要に見える。事実、窒素で最初にフラッシングされたがガラス瓶に保存された溶液中に浸透するいくらかの量の酸素は、確かに還元反応を遮断し、SeOの安定性を維持させた。この仮定を確認するため、回帰試験をSeアッセイ結果とlog(溶存酸素結果)との間で行った。40℃で保存された滅菌試料のみが考慮されるが、それは高温での滅菌および保存が共にSe分解を増大させるようであるからである。事実、ほとんどの反応動態は熱によって加速し、滅菌されずに5℃で6カ月間保たれた試料は、40℃で滅菌され保存された試料で重要であるほど、分解を示さないことが説明される。
【0251】
図13に提示される当て嵌め線プロットは、Se投与量とlog酸素含量との間の80%の適合を示す。±5%の分析変動性およびこの回帰試験で使用される数個の試料を考慮すると、有意な代表例と見なすことができる。溶存酸素含量は、したがって最も影響の大きいパラメーターであり、セレンの安定性におけるCQA(重要品質特性)である。図に示されるように、約0.5ppmの低酸素量は、溶液中のセレナイトの安定性を確実にするのに十分であるとすることができ、飽和は必要としなくてよい。
【0252】
酸素の存在は、セレナイトの安定性を促進させる。比較のため、その他の微量元素(即ち、Zn、Cu、Cr、Mo、Mn、Fe、I、F & Se)の混合物の安定性を、200mMのリンゴ酸により、pH2.2で評価し(ヨウ化物の安定性を確実にするため)、ガラス瓶に保存した(したがって、約3ppmの溶存酸素を含有する)。溶液を加熱滅菌し、6カ月間、40℃でまたは5℃で保存した(それぞれ、T6M 40℃およびT6M 5℃)。2つの温度で6カ月間後、それぞれの微量元素の回復濃度を、表Vにまとめる。
【表5】
【0253】
全てのTEに関し、回復は両方の温度で約80~90%である。過剰希釈は、これが予測された回復率よりも低いことを説明し得るが、5℃で試料は安定になるべきであり、したがって参照と見なすことができることが公知である。2つの試料の比較は、40℃で6カ月間保存後にTEが著しく分解しなかったことを示す。セレナイトが数ppmの溶存酸素の存在下で安定であるという仮設を確認する。この酸素の存在は、その他のTEの安定性に有害ではない。
【0254】
酸素導入は、製造において問題ではなくなることを裏付けることができる。例えば、これまでなされたように溶液を窒素でフラッシングする代わりに、周囲空気下で保持することができ、それによって十分な量の酸素を溶液中に溶解させる。しかしながら、溶存酸素含量を再現可能に調節するため、溶液を窒素でフラッシングすることもでき、その後、定められた時間および量の酸素含有気体でフラッシングすることもできる。酸素含量は、当技術分野で公知の方法により、プロセス内制御としていつでもモニターすることができる。充填、滅菌、および保存ステップ中、溶存酸素は、酸素に不透過性のバッグ材料を使用することにより、溶液中で維持することができる。そのような材料は、いかなる酸素もバッグに進入させずまたはバッグの外に除去させない(酸素吸収剤と接触しても)。このように、酸素はTE溶液中に捕捉されたままになり、生成物の保存寿命の終わりまでSe分解を回避できる。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2023-11-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬生成物の少なくとも1種の化合物を安定化させるための選択的溶存気体含量を有するフレキシブルな容器であって、
(a)酸素または二酸化炭素のいずれかの選択的溶存気体を必要とする少なくとも1種の化合物を含む溶液と、
(b)前記選択的溶存気体のヘッドスペースであって、前記ヘッドスペースが、前記フレキシブルな容器内の溶液の体積の少なくとも約5%の体積を有する、ヘッドスペース
を含む、フレキシブルな容器。
【請求項2】
前記フレキシブルな容器が、少なくとも1つのチャンバーを含むマルチチャンバーバッグであり、前記少なくとも1種の化合物が位置される、請求項1に記載のフレキシブルな容器。
【請求項3】
前記ヘッドスペースの体積が、前記フレキシブルな容器内の前記溶液の体積の約35%から約45%である、請求項1に記載のフレキシブルな容器。
【請求項4】
前記フレキシブルな容器が、最終的に加熱滅菌される、請求項1に記載のフレキシブルな容器。
【請求項5】
前記少なくとも1種の化合物が、Se(IV)の形態のセレン化合物である、請求項1に記載のフレキシブルな容器。
【請求項6】
記セレン化合物が、亜セレン酸ナトリウム、亜セレン酸カリウム、亜セレン酸リチウム、亜セレン酸カルシウム、亜セレン酸マグネシウム、亜セレン酸、および二酸化セレンからなる群から選択される、請求項に記載のフレキシブルな容器。
【請求項7】
前記溶液が、前記医薬生成物の保存寿命全体にわたり0.5ppmに等しいかまたはそれより多い溶存酸素(DO)を含む、請求項に記載のフレキシブルな容器。
【請求項8】
前記溶液が、約0.5ppmから約8ppmの溶存酸素(DO)を含む、請求項に記載のフレキシブルな容器。
【請求項9】
前記溶液が、1ppmに等しいかまたはそれより多い溶存酸素(DO)を含む、請求項に記載のフレキシブルな容器。
【請求項10】
滅菌時の前記溶液中の溶存酸素(DO)の濃度が、少なくとも6ppmである、請求項に記載のフレキシブルな容器。
【請求項11】
前記選択的溶存気体のヘッドスペースが、少なくとも1種の化合物を、約1℃から約30℃の間の温度で保存したときに、少なくとも3カ月、少なくとも6カ月、少なくとも12カ月、少なくとも18カ月、および少なくとも24カ月からなる群から選択される時間にわたり安定化させる、請求項1に記載のフレキシブルな容器。
【請求項12】
約18℃から約25℃の間の温度で保存される、請求項11に記載のフレキシブルな容器。
【請求項13】
前記溶液が、約1から約4、好ましくは約2.5から約3.2の範囲の酸性pH値を有する、請求項に記載のフレキシブルな容器。
【請求項14】
前記マルチチャンバー容器が、少なくとも2個のチャンバーを含む、請求項に記載のフレキシブルな容器。
【請求項15】
前記マルチチャンバー容器が、2チャンバー容器、3チャンバー容器、4チャンバー容器、5チャンバー容器、6チャンバー容器、7チャンバー容器、および8チャンバー容器からなる群から選択される、請求項に記載のフレキシブルな容器。
【請求項16】
前記マルチチャンバー容器が、
(a)炭水化物製剤を含有する第1のチャンバー、
(b)アミノ酸製剤を含有する第2のチャンバー、
(c)脂質製剤を含有する第3のチャンバー、および
(d)前記少なくとも1種の化合物を含む溶液を含有する第4のチャンバー
を含む、請求項に記載のフレキシブルな容器。
【請求項17】
前記第4のチャンバーに含有される溶液が、少なくとも1種のセレン化合物を含み、前記ヘッドスペースが、周囲空気、酸素に富む周囲空気、または酸素で満たされる、請求項16に記載のフレキシブルな容器。
【請求項18】
5cc/m/日未満の酸素障壁を有する材料で作製される、請求項1に記載のフレキシブルな容器。
【請求項19】
選択的溶存気体要件を有する化合物が位置される前記チャンバーが、ポートチューブを含まない、請求項に記載のフレキシブルな容器。
【請求項20】
前記フレキシブルな容器が、医薬生成物の少なくとも1種の微量栄養素を安定化させるための前記選択的溶存気体含量を有するマルチチャンバー容器であり、前記マルチチャンバー容器が、
(a)炭水化物製剤、アミノ酸製剤、または脂質製剤を含む第1のチャンバー、ならびに
(b)酸素または二酸化炭素のいずれかの前記選択的溶存気体を必要とする前記少なくとも1種の微量栄養素を含む溶液を含む第2のチャンバー;および前記選択的溶存気体のヘッドスペースであって、前記ヘッドスペースが、前記第2のチャンバー内の溶液の体積の少なくとも約5%の体積を有する、ヘッドスペース
を含む、請求項1に記載のフレキシブルな容器
【請求項21】
前記少なくとも1種の微量栄養素が、Se(IV)の形態の少なくとも1種のセレン化合物であり、前記選択的溶存気体が溶存酸素(DO)である、請求項20に記載のマルチチャンバー容器。
【請求項22】
少なくとも5個のチャンバーを含む、請求項20に記載のマルチチャンバー容器。
【請求項23】
前記少なくとも1種のセレン化合物が、亜セレン酸ナトリウム、亜セレン酸、および二酸化セレンからなる群から選択される、請求項21に記載のマルチチャンバー容器。
【請求項24】
前記少なくとも1種のセレン化合物が、亜セレン酸ナトリウムまたは二酸化セレンである、請求項21に記載のマルチチャンバー容器。
【請求項25】
前記第2のチャンバーの溶液が、前記医薬生成物の保存寿命全体にわたり0.5ppmに等しいかまたはそれより多い溶存酸素(DO)を含む、請求項20に記載のマルチチャンバー容器。
【請求項26】
前記第2のチャンバーの溶液が、約0.5ppmから約8ppmの溶存酸素(DO)を含む、請求項20に記載のマルチチャンバー容器。
【請求項27】
前記第2のチャンバーの溶液が、1ppmに等しいかまたはそれより多い溶存酸素(DO)を含む、請求項20に記載のマルチチャンバー容器。
【請求項28】
前記マルチチャンバー容器が、最終的に加熱滅菌される、請求項20に記載のマルチチャンバー容器。
【請求項29】
滅菌時の前記溶液中の溶存酸素(DO)の濃度が、少なくとも6ppmである、請求項27に記載のマルチチャンバー容器。
【請求項30】
前記選択的溶存気体のヘッドスペースの体積が、前記フレキシブルな容器内の溶液の体積の約35%から45%である、請求項20に記載のマルチチャンバー容器。
【請求項31】
前記選択的溶存気体のヘッドスペースが、前記少なくとも1種の微量栄養素を、約1℃から約30℃の間の温度で保存したときに、少なくとも3カ月、少なくとも6カ月、少なくとも12カ月、少なくとも18カ月、および少なくとも24カ月からなる群から選択される時間にわたり安定化させる、請求項20に記載のマルチチャンバー容器。
【請求項32】
約18℃から約25℃の間の温度で保存される、請求項31に記載のマルチチャンバー容器。
【請求項33】
前記マルチチャンバー容器が、0.5cc/m2/日未満の酸素障壁を有する材料で作製される、請求項20に記載のマルチチャンバー容器。
【請求項34】
前記マルチチャンバー容器が、2cc/m2/日未満の酸素障壁を有する材料で作製される、請求項20に記載のマルチチャンバー容器。
【請求項35】
前記マルチチャンバー容器が、1cc/m2/日未満の酸素障壁を有する材料で作製される、請求項20に記載のマルチチャンバー容器。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0254
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0254】
酸素導入は、製造において問題ではなくなることを裏付けることができる。例えば、これまでなされたように溶液を窒素でフラッシングする代わりに、周囲空気下で保持することができ、それによって十分な量の酸素を溶液中に溶解させる。しかしながら、溶存酸素含量を再現可能に調節するため、溶液を窒素でフラッシングすることもでき、その後、定められた時間および量の酸素含有気体でフラッシングすることもできる。酸素含量は、当技術分野で公知の方法により、プロセス内制御としていつでもモニターすることができる。充填、滅菌、および保存ステップ中、溶存酸素は、酸素に不透過性のバッグ材料を使用することにより、溶液中で維持することができる。そのような材料は、いかなる酸素もバッグに進入させずまたはバッグの外に除去させない(酸素吸収剤と接触しても)。このように、酸素はTE溶液中に捕捉されたままになり、生成物の保存寿命の終わりまでSe分解を回避できる。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
医薬生成物の少なくとも1種の化合物を安定化させるための選択的溶存気体含量を有するフレキシブルな容器であって、
(a)選択的溶存気体要件を有する少なくとも1種の化合物を含む溶液と、
(b)前記気体のヘッドスペースと
を含む、フレキシブルな容器。
(項目2)
前記少なくとも1種の化合物が、高レベルの酸素を必要とする化合物であり、前記選択的溶存気体が酸素である、項目1に記載のフレキシブルな容器。
(項目3)
前記少なくとも1種の化合物が、高レベルの二酸化炭素を必要とする化合物であり、前記選択的溶存気体が二酸化炭素である、項目1に記載のフレキシブルな容器。
(項目4)
前記容器が、少なくとも1つのチャンバーを含むマルチチャンバーバッグであり、前記選択的溶存気体要件を有する化合物が位置される、項目1に記載のフレキシブルな容器。
(項目5)
前記ヘッドスペースの体積が、前記フレキシブルな容器内の前記溶液の体積の約5%から約100%である、項目1に記載のフレキシブルな容器。
(項目6)
前記ヘッドスペースの体積が、前記フレキシブルな容器内の前記溶液の体積の約35%から約45%である、項目1に記載のフレキシブルな容器。
(項目7)
最終的に加熱滅菌される、項目1に記載のフレキシブルな容器。
(項目8)
前記少なくとも1種の化合物が、Se(IV)の形態のセレン化合物である、項目1に記載のフレキシブルな容器。
(項目9)
前記少なくとも1種のセレン化合物が、亜セレン酸ナトリウム、亜セレン酸カリウム、亜セレン酸リチウム、亜セレン酸カルシウム、亜セレン酸マグネシウム、亜セレン酸、および二酸化セレンからなる群から選択される、項目8に記載のフレキシブルな容器。
(項目10)
前記溶液が、前記医薬生成物の保存寿命全体にわたり0.5ppmに等しいかまたはそれより多い溶存酸素(DO)を含む、項目2に記載のフレキシブルな容器。
(項目11)
前記溶液が、約0.5ppmから約8ppmの溶存酸素(DO)を含む、項目2に記載のフレキシブルな容器。
(項目12)
前記溶液が、1ppmに等しいかまたはそれより多い溶存酸素(DO)を含む、項目2に記載のフレキシブルな容器。
(項目13)
滅菌時の前記溶液中の溶存酸素(DO)の濃度が、少なくとも6ppmである、項目9に記載のフレキシブルな容器。
(項目14)
前記気体のヘッドスペースが、少なくとも1種の化合物を、約1℃から約30℃の間の温度で保存したときに、少なくとも3カ月、少なくとも6カ月、少なくとも12カ月、少なくとも18カ月、および少なくとも24カ月からなる群から選択される時間にわたり安定化させる、項目1に記載のフレキシブルな容器。
(項目15)
約18℃から約25℃の間の温度で保存される、項目14に記載のフレキシブルな容器。
(項目16)
前記溶液が、約1から約4、好ましくは約2.5から約3.2の範囲の酸性pH値を有する、項目8に記載のフレキシブルな容器。
(項目17)
前記マルチチャンバー容器が、少なくとも2個のチャンバーを含む、項目4に記載のフレキシブルな容器。
(項目18)
前記マルチチャンバー容器が、2チャンバー容器、3チャンバー容器、4チャンバー容器、5チャンバー容器、6チャンバー容器、7チャンバー容器、および8チャンバー容器からなる群から選択される、項目4に記載のフレキシブルな容器。
(項目19)
前記マルチチャンバー容器が、
(a)炭水化物製剤を含有する第1のチャンバー、
(b)アミノ酸製剤を含有する第2のチャンバー、
(c)脂質製剤を含有する第3のチャンバー、および
(d)選択的溶存気体要件を有する化合物を含む溶液を含有する第4のチャンバー
を含む、項目4に記載のフレキシブルな容器。
(項目20)
前記第4のチャンバーに含有される溶液が、少なくとも1種のセレン化合物を含み、前記ヘッドスペースが、周囲空気、酸素に富む周囲空気、または酸素で満たされる、項目19に記載のフレキシブルな容器。
(項目21)
5cc/m /日未満の酸素障壁を有する材料で作製される、項目1に記載のフレキシブルな容器。
(項目22)
選択的溶存気体要件を有する化合物が位置される前記チャンバーが、ポートチューブを含まない、項目4に記載のフレキシブルな容器。
(項目23)
医薬生成物の少なくとも1種の微量栄養素を安定化させるための選択的溶存気体含量を有するマルチチャンバー容器であって、
(a)炭水化物製剤、アミノ酸製剤、または脂質製剤を含む第1のチャンバー、
(b)選択的溶存気体要件を有する前記少なくとも1種の微量栄養素を含む溶液を含む第2のチャンバー;および前記気体のヘッドスペース
を含む、マルチチャンバー容器。
(項目24)
前記少なくとも1種の微量栄養素が、Se(IV)の形態のセレンである少なくとも1種の微量栄養素の化合物であり、前記溶存気体が溶存酸素(DO)である、項目23に記載のマルチチャンバー容器。
(項目25)
少なくとも5個のチャンバーを含む、項目23に記載のマルチチャンバー容器。
(項目26)
前記少なくとも1種のセレン化合物が、亜セレン酸ナトリウム、亜セレン酸、および二酸化セレンからなる群から選択される、項目23に記載のマルチチャンバー容器。
(項目27)
前記少なくとも1種のセレン化合物が、亜セレン酸ナトリウムまたは二酸化セレンである、項目23に記載のマルチチャンバー容器。
(項目28)
前記第2のチャンバーの溶液が、前記医薬生成物の保存寿命全体にわたり0.5ppmに等しいかまたはそれより多い溶存酸素(DO)を含む、項目23に記載のマルチチャンバー容器。
(項目29)
前記第2のチャンバーの溶液が、約0.5ppmから約8ppmの溶存酸素(DO)を含む、項目23に記載のマルチチャンバー容器。
(項目30)
前記第2のチャンバーの溶液が、1ppmに等しいかまたはそれより多い溶存酸素(DO)を含む、項目23に記載のマルチチャンバー容器。
(項目31)
最終的に加熱滅菌される、項目23に記載のマルチチャンバー容器。
(項目32)
滅菌時の前記溶液中の溶存酸素(DO)の濃度が、少なくとも6ppmである、項目32に記載のマルチチャンバー容器。
(項目33)
前記ヘッドスペースの体積が、前記マルチチャンバー容器内の溶液の体積の約5%から約100%である、項目23に記載のマルチチャンバー容器。
(項目34)
前記酸素のヘッドスペースの体積が、前記フレキシブルな容器内の溶液の体積の約35%から45%である、項目23に記載のマルチチャンバー容器。
(項目35)
前記気体のヘッドスペースが、前記少なくとも1種の微量栄養素を、約1℃から約30℃の間の温度で保存したときに、少なくとも3カ月、少なくとも6カ月、少なくとも12カ月、少なくとも18カ月、および少なくとも24カ月からなる群から選択される時間にわたり安定化させる、項目23に記載のマルチチャンバー容器。
(項目36)
約18℃から約25℃の間の温度で保存される、項目36に記載のマルチチャンバー容器。
(項目37)
0.5cc/m2/日未満の酸素障壁を有する材料で作製される、項目23に記載のマルチチャンバー容器。
(項目38)
2cc/m2/日未満の酸素障壁を有する材料で作製される、項目21に記載のフレキシブルな容器。
(項目39)
1cc/m2/日未満の酸素障壁を有する材料で作製される、項目21に記載のフレキシブルな容器。
【国際調査報告】