(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】車両用ブレーキ装置および車両用ブレーキ装置の作動方法
(51)【国際特許分類】
B60T 8/92 20060101AFI20240517BHJP
【FI】
B60T8/92
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572692
(86)(22)【出願日】2022-05-10
(85)【翻訳文提出日】2024-01-16
(86)【国際出願番号】 EP2022062565
(87)【国際公開番号】W WO2022253527
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】102021205578.8
(32)【優先日】2021-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】レーフェルマン,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ハーグ,フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】マルカルト,マルティン
【テーマコード(参考)】
3D246
【Fターム(参考)】
3D246DA01
3D246GA01
3D246GC14
3D246HA02A
3D246HA38A
3D246HA39A
3D246HC12
3D246JA12
3D246JB11
3D246JB28
3D246JB33
3D246LA06Z
3D246MA16
(57)【要約】
本発明は、車両(F)用ブレーキ装置(10)を提供し、ブレーキアクチュエータ装置(BA)と結合されている制御装置(SE)を含んでいる。前記制御装置(SE)は、発電機作動での電気機械(EM)の作動状態と、前記電気機械(EM)によって発生可能な第2のブレーキトルクとを検出して、前記発電機作動での前記電気機械(EM)の作動状態に依存して前記ブレーキアクチュエータ装置(BA)を作動させるために設置されている。この場合、前記電気機械の前記第2のブレーキトルクと前記ブレーキアクチュエータ装置(BA)の第1のブレーキトルクとの和として、前記車両(F)に少なくとも所定の全ブレーキトルクを発生可能であり、そして前記制御装置(SE)は、さらに、発生させた前記ブレーキアクチュエータ装置(BA)の前記第1のブレーキトルクを減少または増大させることで、その際に前記ブレーキアクチュエータ装置(BA)の作動パラメータの所定の値範囲を維持するために、および/または、その際に前記第2のブレーキトルクとともに少なくとも前記所定の全ブレーキトルクを前記車両(F)に提供するために設置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(F)の制動作用を制御可能な車両用ブレーキ装置(10)において、
-ブレーキアクチュエータ装置(BA)と、
-前記ブレーキアクチュエータ装置(BA)と結合されている、および/または、その中に含まれている制御装置(SE)であって、前記制御装置(SE)が、さらに、前記車両(F)の電気機械(EM)と結合可能であり、且つ発電機作動での前記電気機械(EM)の作動状態と、前記電気機械(EM)によって発生可能な第2のブレーキトルクとを検出して、前記発電機作動での前記電気機械(EM)の作動状態に依存して前記ブレーキアクチュエータ装置(BA)を作動させるために設置されており、前記電気機械の前記第2のブレーキトルクと前記ブレーキアクチュエータ装置(BA)の第1のブレーキトルクとの和として、前記車両(F)に少なくとも所定の全ブレーキトルクを発生可能であり、そして前記制御装置(SE)が、さらに、前記ブレーキアクチュエータ装置(BA)の作動のための少なくとも1つの作動パラメータを検出して変化させることによって、発生させた前記ブレーキアクチュエータ装置(BA)の前記第1のブレーキトルクを減少または増大させることで、その際に前記作動パラメータの所定の値範囲を維持するために、および/または、その際に前記第2のブレーキトルクとともに少なくとも前記所定の全ブレーキトルクを前記車両(F)に提供するために設置されている前記制御装置(SE)と、
を含んでいるブレーキ装置(10)。
【請求項2】
前記ブレーキアクチュエータ装置(BA)が、ブレーキ倍力装置(BV)および/またはブレーキシステムを含んでいる、請求項1に記載のブレーキ装置(10)。
【請求項3】
前記制御装置(SE)が、車両の車載電源網と結合可能であり、且つ車載電源網電圧を検出し、デフォルト値と比較して、前記第1のブレーキトルクを減少させるために設置され、前記車載電源網電圧が第1の閾値以下に低下したときに前記車両内の前記ブレーキアクチュエータ装置(BA)の駆動電圧および/または駆動電流を減少させることで、前記第1のブレーキトルクを減少させる、請求項1または2に記載のブレーキ装置(10)。
【請求項4】
前記ブレーキアクチュエータ装置(BA)が温度センサを含み、前記温度センサによって前記ブレーキアクチュエータ装置(BA)の作動温度を検出可能であり、前記制御装置(SE)は前記温度センサと結合されていて、前記作動温度を温度に対するデフォルト値と比較し、前記ブレーキアクチュエータ装置を前記作動温度に依存して作動させるために設置されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のブレーキ装置(10)。
【請求項5】
車両(F)の制動作用を制御するための、車両用ブレーキ装置(10)の作動方法において、
-請求項1~4のいずれか一項に記載のブレーキ装置(10)を用いて制動作用を実施する必要性を認識するステップ(S1)と、
-前記発電機作動における前記電気機械(EM)での作動状態と、これから前記電気機械(EM)において発生可能な第2のブレーキトルクとを検出して、この発生可能な第2のブレーキトルクを車両(F)における所定の全ブレーキトルクと比較するステップ(S2)と、
-前記ブレーキアクチュエータ装置(BA)による第1のブレーキトルクと、前記電気機械(EM)による前記第2のブレーキトルクとを合わせて、前記車両(F)における全ブレーキトルクとして発生させるステップ(S3)であって、前記ブレーキアクチュエータ装置(BA)の作動のための作動パラメータを調整し、これによって前記ブレーキアクチュエータ装置(BA)の前記第1のブレーキトルクを減少または増大させることで、その際に前記第2のブレーキトルクとともに少なくとも前記所定の全ブレーキトルクを前記車両(F)に提供する前記ステップ(S3)と、
を含む作動方法。
【請求項6】
前記ブレーキアクチュエータ装置(BA)の作動のための少なくとも1つの作動パラメータを検出して変化させ、これによって、前記ブレーキアクチュエータ装置(BA)の前記第1のブレーキトルクを減少させることで、その際に前記作動パラメータの所定の値範囲を維持する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
現時点で発生可能な最大の第2のブレーキトルクを検出し、前記車両(F)における前記所定の全ブレーキトルクがまだ得られる限りは、前記第1のブレーキトルクを減少させる、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記車両(F)の車載電源網における電圧および/または電流を検出して、前記第1のブレーキトルクを減少させ、この場合、前記第1のブレーキトルクを減少させるために、前記車両内の前記ブレーキアクチュエータ装置(BA)の駆動電圧および/または駆動電流を減少させる、請求項5~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記車載電源網における電圧を検出し、前記車載電源網における前記電圧が第1の閾値以下に低下すれば、前記ブレーキアクチュエータ装置(BA)の前記駆動電圧および/または駆動電流を制限し、そして前記車載電源網における前記電圧が第2の閾値以下に低下すれば、前記第2のブレーキトルクが前記車両(F)における前記所定の全ブレーキトルク自体に達したときに、前記ブレーキアクチュエータ装置(BA)をシャットダウンする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ブレーキアクチュエータ装置(BA)の作動温度を温度センサによって検出し、前記作動温度が予め決定されている値を越えれば、前記第1のブレーキトルクを減少させる、請求項5~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記電気機械(EM)における作動状態と、これから発生可能な、前記電気機械(EM)における前記第2のブレーキトルクとを、常時または所定のタイムインターバルで検出する、請求項5~10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ブレーキ装置および車両用ブレーキ装置の作動方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気で作動する車両における通常の駆動コンセプトは、電気機械の制動作用に依拠することができる。このため、制動作動が要求されれば電子的に起動させることができるブレーキ力発生器またはブレーキ倍力装置が知られている。その際、たとえば温度が上昇したときとか、電圧が増減したときのような特殊な状況において、これらの機器をダウングレードさせることができる。その際、ダウングレードとは有用性の制限であり得る。
【0003】
ダウングレードにもかかわらず、制動作動に対するデフォルトが少なくとも部分的に達成できれば、利用が可能である。
【0004】
ブレーキアクチュエータは、その作動状態において、完全に機能しているか、ある程度の所定の最低運転によりダウングレードしているか、或いは、完全にシャットダウンされているかのいずれかであり得る。
【0005】
特許文献1では、自動車におけるクリープモードの作動方法が説明される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第102016201348A1号明細書
【発明の概要】
【0007】
本発明は、請求項1に記載の車両用ブレーキ装置および請求項5に記載の車両用ブレーキ装置の作動方法を提供する。
【0008】
有利な更なる構成は、従属請求項の対象である。
【0009】
本発明の基本的な思想は、車両用ブレーキ装置および車両用ブレーキ装置の作動方法を提示し、この場合ブレーキアクチュエータ装置の可用性を向上させることができる点にある。その際、ブレーキアクチュエータ装置の作動状態を好適に考慮でき、発電機によるブレーキトルクを利用でき、ブレーキアクチュエータ装置の寿命を延長できるようにブレーキ装置の作動を調整することができる。
【0010】
この場合、発電機としての電気機械の現在の可能出力を、その有用性の下で考慮することが可能であるので有利である。これは、ブレーキアクチュエータ装置の作動のダウングレードの選定の際に考慮することができる。なお、「ダウングレード」という表現は、ブレーキアクチュエータ装置および/または車両内の他の構成要素の作動または機能に起こり得る認知可能なあらゆる種類の抑制または減少に関わるものであってよい。その際、発電機が寄与する減速成分(ブレーキトルクの成分)を考慮してよく、追加的にブレーキアクチュエータのダウングレードを行ってよい。
【0011】
本発明によれば、車両の制動作用を制御可能な車両用ブレーキ装置は、ブレーキアクチュエータ装置と、前記ブレーキアクチュエータ装置と結合されている、および/または、その中に含まれている制御装置であって、前記制御装置が、さらに、前記車両の電気機械と結合可能であり、且つ発電機作動での前記電気機械の作動状態と、前記電気機械によって発生可能な第2のブレーキトルクとを検出して、前記発電機作動での前記電気機械の作動状態に依存して前記ブレーキアクチュエータ装置を作動させるために設置されており、前記電気機械の前記第2のブレーキトルクと前記ブレーキアクチュエータ装置の第1のブレーキトルクとの和として、前記車両に少なくとも所定の全ブレーキトルクを発生可能であり、そして前記制御装置が、さらに、前記ブレーキアクチュエータ装置の作動のための少なくとも1つの作動パラメータを検出して変化させることによって、発生させた前記ブレーキアクチュエータ装置の前記第1のブレーキトルクを減少または増大させることで、その際に前記作動パラメータの所定の値範囲を維持するために、および/または、その際に前記第2のブレーキトルクとともに少なくとも前記所定の全ブレーキトルクを前記車両に提供するために設置されている前記制御装置とを含んでいる。
【0012】
制動作用とは、たとえば摩擦ブレーキトルクおよび/または発電機によるブレーキトルクおよび/または任意の他の種類の車両に対するブレーキ力で車輪の回転を緩速にさせるための車両における制動過程であってよい。
【0013】
その際、減速度は車両におけるデフォルトに従って獲得することができ、または、達成することができ、この場合デフォルトは利用者によって任意に低くまたは高く(強く)選定可能であってよい。ブレーキアクチュエータ装置とは、あらゆる種類の摩擦ブレーキ、或いは、任意の他の種類の通常のブレーキまたは発電機によらない他のブレーキであってよい。
【0014】
その際、発電機としての電気機械の作動状態は、電気機械が現時点でまたは全般的に発電機によるブレーキトルクをどれくらい供給できるかに対するその程度に何が対応できるかを検出することができ、たとえば特定の走行性能における、特定の温度における、査定可能な使用できるバッテリー充電量/電力における、および、電気車両に対する更なる作動特有のパラメータにおける所定の速度範囲に対して検出することができる。このとき、発電機としての、したがって発電機によるブレーキトルクを発生させる装置としての電気機械の可能出力に関する知識によっては、たとえば経時的にアダプティブアジャスタブルに且つダイナミックに第1のブレーキトルクを増大および/または減少させることで、たとえば車両に対し常に呼び出し可能で且つ第1のブレーキトルクと第2のブレーキトルクとの和であり得るような最小ブレーキトルクのデフォルト、または、これらブレーキトルクの個々のブレーキトルクの最小ブレーキトルクのデフォルトに部分的に到達することができる。
【0015】
このために検出して変化させるべき、ブレーキアクチュエータ装置の作動のための作動パラメータとは、これらそれぞれのブレーキアクチュエータ装置に対しその作用のために重要である各種のパラメータであってよい。制動作用のデフォルトを少なくとも部分的に獲得するため、この作動パラメータに、または、その複数の作動パラメータに、ほぼ一定の公差を持つデフォルトに到達するために必要であり得るようなそれぞれの対応する値範囲または値を関係づけてよい。
【0016】
その際、有利には、1つのブレーキアクチュエータをダウングレードするための発電機可能出力の考慮を利用することができる。換言すれば、車両における全ブレーキトルクに対するデフォルトを発電機によってどの程度提供できるか、しかも常に提供できるか、または、現時点の(査定すべき)状況で提供できるか、且つこのときに第1のブレーキトルクをどの程度減少させることができるかを査定することができる。このように第1のブレーキトルクを減少させると、ブレーキアクチュエータ装置の1つの特定の作動パラメータまたは複数の作動パラメータを変化させることができて、たとえば第1のブレーキトルクを減少させてブレーキアクチュエータ装置の作動負荷を低減させることができる。これは、少なくとも部分的にさらに全ブレーキトルクに対するデフォルトを満たすことができるように起こり得るので有利である。このデフォルトは、車両の製造者および/または現在の利用者によって標準値として設定することができる。アクティブなダウングレードを行うことができるすべてのブレーキアクチュエータにおいて使用可能である。
【0017】
利用できる発電機可能出力は、種々のパラメータによって制限されていてよい。これは、たとえばバッテリーの充電状態または車両の速度であってもよい。この理由から、発電機可能出力を考慮してダウングレードを連続的に調整せねばならず、その結果ダウングレードはその都度発電機の現在の可能出力に適合する。
【0018】
たとえば、いわゆる「サービスブレーキパフォーマンス」が設定されていてよく、すなわち500Nのペダル力による6.43m/s2の減速度が設定されていてよい。ダウングレードを強くできればできるほど、それだけ可用性が向上する。
【0019】
このように発電機割合を考慮することによって、ブレーキアクチュエータの最小動作態様に対する要求を減らすことができる。その際、ブレーキアクチュエータが発電機の現在の可能出力を認知することが必要な場合があり得る。発電機の制御に対しブレーキアクチュエータが責任を負っておらず、しかも発電機にダイレクトに制御装置が付設されていないか、発電機内に設けられていない場合には、たとえば既存の通信網(CAN,FlexRay...)を介してブレーキアクチュエータに対し発電機可能出力の通信を行うことができる。「サービスブレーキパフォーマンス」というデフォルトを最小動作として利用する場合には、ブレーキアクチュエータをたとえば3m/s2の減速度の発電機可能出力において6.43m/s2ではなくて3.43m/s2まで(ペダル力500Nで)ダウングレードすることができる。
【0020】
車両とは、電気機械を含むことができる駆動装置を備えた乗用車であってよい。
【0021】
ブレーキ装置の有利な実施形態によれば、ブレーキアクチュエータ装置は、ブレーキ倍力装置および/またはブレーキシステムを含んでいる。
【0022】
ブレーキ装置は摩擦ブレーキを含んでいてよく、または、他の各種の発電機によらないブレーキを含んでいてよい。
【0023】
ブレーキ装置の有利な実施形態によれば、制御装置は、車両の車載電源網と結合可能であり、且つ車載電源網電圧を検出し、デフォルト値と比較して、第1のブレーキトルクを減少させるために設置され、この場合車載電源網電圧が第1の閾値以下に低下したときに車両内のブレーキアクチュエータ装置の駆動電圧および/または駆動電流を減少させることで、第1のブレーキトルクを減少させる。
【0024】
電圧が第1の閾値以下に低下すれば、ブレーキアクチュエータの消費電流を制限することができる。これによって、電流の流れによる更なる電圧ダウングレードが防止される。それでもなお電圧が第2の閾値以下にさらに低下すれば、ブレーキアクチュエータを完全にシャットダウンすることができる。このため、デフォルト値は車載電源網の作動態様のための全電圧または最小値に対応していてよく、たとえば12Vまたは6V、或いは、第1の閾値または第2の閾値に対応していてよい。
【0025】
その際、第1および/または第2の閾値をデフォルト値として用いることができる。
【0026】
第1の閾値はたとえば6Vであってよく、この場合それでもなお全ブレーキトルクに対するデフォルトを達成可能であれば、第1のブレーキトルクを所定の大きさへ減少可能であってよい。その際、ブレーキアクチュエータ装置の駆動電圧および/または駆動電流は、第1のブレーキトルクを発生させるような大きさであってよい。このような電圧または電流の利用が少なければ、車載電源網に対して電流または電圧のより少ない負荷を行ってよい。これにより、ブレーキアクチュエータの作動に必要な(提供すべき)作動電流が少なくなる。これにより、ダウングレードさせたブレーキアクチュエータに対し、発生させた車載電源網負荷は小さくなる。加えて、ダウングレードさせた状態で必要な電力消費量はより小さくてよいので、第2の閾値もさらにより小さく選定してよい。この場合、動作範囲はより低い電圧に至るまで拡大する。
【0027】
ブレーキ装置の有利な実施形態によれば、ブレーキアクチュエータ装置は温度センサを含み、温度センサによってブレーキアクチュエータ装置の作動温度を検出可能であり、この場合制御装置は温度センサと結合されていて、作動温度を温度に対するデフォルト値と比較し、ブレーキアクチュエータ装置を作動温度に依存して作動させるために設置されている。
【0028】
温度センサによって確認可能な過大温度の場合、ダウングレードによってブレーキアクチュエータの更なる加熱(+場合によっては、シャットダウン温度を越えたときにブレーキアクチュエータをシャットダウンする)を防止することができる。このとき、温度のデフォルト値はさらに許容すべき所定の温度であってよく、または、すでにシャットダウン温度に対応していてよい。その後、このデフォルト値に依存してブレーキアクチュエータ装置の制御を行うことができ、この場合温度に対するデフォルト値および/または許容範囲を越えれば、たとえば第1のブレーキトルクを減少させることができる。
【0029】
最小出力の減少により、ダウングレードの時点で温度負荷が減少することがある。結果として、ダウングレードせずに、利用可能な温度範囲を拡大させることができる。択一的にまたは追加的に、ダウングレード領域内で継続作動能力まで有用性が向上することがある。
【0030】
最小出力は、機器の電流消費量をどの程度制限できるかを決定する。電流消費量も、温度上昇に対し責任を負うことがある。比較的少ない電流消費量へダウングレードすると、ダウングレード状態での温度上昇も少ない。もし、たとえば特定の(最終的な)シャットダウン閾値があり、ある程度時間が経過した後に初めてこの閾値に到達するように設計することが目的であるならば、より早期の閾値で機器をダウングレード状態へ移すことができる。本発明によるより低い電流により、ダウングレード状態での温度上昇も緩速であり得るので、ダウングレード閾値をより高く選定できる。
【0031】
継続作動能力に関しても同様である。継続作動能力は、シャットダウン閾値に決して到達できない場合に存在する。これは、規定最大周囲温度とダウングレード状態での作動による温度上昇との和がシャットダウン閾値以下であるようなケースである。ダウングレード状態での温度上昇が比較的小さければ、最大周囲温度よりも高い温度が可能であり、或いは、規格が一定であれば、継続作動能力がないようなシステムが突然継続作動可能になるように状態が改善していることが起こり得る。
【0032】
本発明によれば、車両の制動作用を制御するための、車両用ブレーキ装置の作動方法において、本発明によるブレーキ装置を用いて制動作用を実施する必要性を認識することと、発電機作動における前記電気機械での作動状態と、これから前記電気機械において発生可能な第2のブレーキトルクとを検出して、この発生可能な第2のブレーキトルクを車両における所定の全ブレーキトルクと比較することと、前記ブレーキアクチュエータ装置による第1のブレーキトルクと、前記電気機械による前記第2のブレーキトルクとを合わせて、前記車両における全ブレーキトルクとして発生させ、この場合前記ブレーキアクチュエータ装置の作動のための作動パラメータを調整し、これによって前記ブレーキアクチュエータ装置の前記第1のブレーキトルクを減少または増大させることで、その際に前記第2のブレーキトルクとともに少なくとも前記所定の全ブレーキトルクを前記車両に提供することとを行う。
【0033】
前記必要性は、ドライバーのペダル操作から、または、車両に設けたセンサ装置によって認識でき、この場合センサ装置はドライバーの指令および/または交通条件を含んでいてよい。
【0034】
前記所定の全ブレーキトルクとは、少なくとも得るべきブレーキトルク、または、現在の状況にとって必要であるようなブレーキトルクであってよい。
【0035】
本方法の有利な実施形態によれば、ブレーキアクチュエータ装置の作動のための少なくとも1つの作動パラメータを検出して変化させ、これによって、ブレーキアクチュエータ装置の第1のブレーキトルクを減少させることで、その際に作動パラメータの所定の値範囲を維持する。
【0036】
本方法の有利な実施形態によれば、現時点で発生可能な最大の第2のブレーキトルクを検出し、車両における所定の全ブレーキトルクがまだ得られる限りは、第1のブレーキトルクを減少させる。
【0037】
現時点で使用可能な第2のブレーキトルクの検出を行ってよく、および/または、近い将来に使用可能な第2のブレーキトルクを査定してよい。
【0038】
本方法の有利な実施形態によれば、車両の車載電源網における電圧および/または電流を検出して、第1のブレーキトルクを減少させ、この場合、第1のブレーキトルクを減少させるために、車両内のブレーキアクチュエータ装置の駆動電圧および/または駆動電流を減少させる。
【0039】
駆動電圧および/または駆動電流に対する全般的な適合を行ってよい。
【0040】
本方法の有利な実施形態によれば、車載電源網における電圧を検出し、車載電源網における電圧が第1の閾値以下に低下すれば、ブレーキアクチュエータ装置の駆動電圧および/または駆動電流を制限し、そして車載電源網における電圧が第2の閾値以下に低下すれば、第2のブレーキトルクが車両における所定の全ブレーキトルク自体に達したときに、ブレーキアクチュエータ装置をシャットダウンする。
【0041】
電圧が第1の閾値以下に低下すれば、ブレーキアクチュエータの電流消費量を制限する。これによって、電流の流れによる更なる電圧ダウングレードが防止される。それにもかかわらず、電圧が第2の閾値以下に低下すれば、ブレーキアクチュエータを完全にシャットダウンしてよい。これにより、ブレーキアクチュエータの作動のために必要な作動電流が少なくなり得る。これによって、ダウングレードさせたブレーキアクチュエータに対し、発生する車載電源網負荷が減少する。加えて、ダウングレード状態で必要な電力消費量はより小さいので、第2の閾値もより小さく選定することができる。ここでは、動作範囲はより低い電圧に至るまで拡大する。
【0042】
本方法の有利な実施形態によれば、ブレーキアクチュエータ装置の作動温度を温度センサによって検出し、作動温度が予め決定されている値を越えれば、第1のブレーキトルクを減少させる。
【0043】
本方法の有利な実施形態によれば、電気機械における作動状態と、これから発生可能な、電気機械における第2のブレーキトルクとを、常時または所定のタイムインターバルで検出する。
【0044】
ブレーキ装置は、本方法との関連で取り上げた構成要件および本方法の利点をも特徴とすることができ、またその逆でもあり得る。
【0045】
本発明の実施形態の更なる構成要件および利点は、添付の図面を参照する以下の説明から明らかである。
【0046】
次に、図面の概略図に記載した実施形態に基づいて本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】本発明の1実施形態による車両用ブレーキ装置の概略図である。
【
図2】車両における本発明の1実施形態によるブレーキ装置の概略図である。
【
図3】本発明の1実施形態による車両用ブレーキ装置の作動方法の方法ステップのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図では、同じ参照符号は同じ構成要素または機能が同じ構成要素を表している。
【0049】
図1は、本発明の1実施形態による車両用ブレーキ装置の概略図である。
【0050】
車両Fの制動作用を制御可能な車両用ブレーキ装置10は、ブレーキアクチュエータ装置BAと、ブレーキアクチュエータ装置BAと結合されている、および/または、その中に含まれている制御装置SEとを含み、この場合制御装置SEは、さらに、車両Fの電気機械EMと結合可能であり、且つ発電機作動での電気機械EMの作動状態と、電気機械EMによって発生可能な第2のブレーキトルクとを検出して、発電機作動での電気機械EMの作動状態に依存してブレーキアクチュエータ装置BAを作動させるために設置されており、この場合電気機械の第2のブレーキトルクとブレーキアクチュエータ装置BAの第1のブレーキトルクとの和として、車両Fに少なくとも所定の全ブレーキトルクを発生可能であり、そして制御装置SEは、さらに、ブレーキアクチュエータ装置BAの作動のための少なくとも1つの作動パラメータを検出して変化させることによって、発生させたブレーキアクチュエータ装置BAの第1のブレーキトルクを減少または増大させることで、その際に作動パラメータの所定の値範囲を維持するために、および/または、その際に第2のブレーキトルクとともに少なくとも所定の全ブレーキトルクを車両Fに提供するために設置されている。
【0051】
図2は、本発明の1実施形態による車両内のブレーキ装置の概略図である。
【0052】
図2は、
図1の実施形態において追加的にまたは択一的に設けられていてよいような更なる構成要素とこれら構成要素間の相互結合態様とを示している。
【0053】
このため、ブレーキ装置10は次のように実施されていてよく、すなわち制御装置SEが、車両の車載電源網BNと結合可能であり、且つ車載電源網電圧を検出し、デフォルト値と比較して、第1のブレーキトルクを減少させるために設置されているように実施されていてよく、この場合車載電源網電圧が第1の閾値以下に低下したときに車両内のブレーキアクチュエータ装置BAの駆動電圧および/または駆動電流を減少させることで、第1のブレーキトルクを減少させる。ブレーキアクチュエータ装置BAは温度センサTSを含んでいてよく、および/または、制御装置SEは温度センサTSと結合されていてよく、この温度センサによってブレーキアクチュエータ装置BAの作動温度を検出可能であり、この場合制御装置SEは、作動温度を温度に対するデフォルト値と比較し、ブレーキアクチュエータ装置を作動温度に依存して作動させるために設置されている。
【0054】
ブレーキアクチュエータ装置BAはペダルセンサPSを含んでいてよく、および/または、制御装置SEはペダルセンサPSと結合されていてよく、このペダルセンサによってブレーキ要求を認識可能であってよい。
【0055】
図3は、本発明の1実施形態による車両用ブレーキ装置の作動方法の方法ステップのブロック図である。
【0056】
車両用ブレーキ装置の作動方法では、本発明によるブレーキ装置を用いて制動作用を実施する必要性を認識することS1と、発電機作動における電気機械での作動状態と、これから電気機械において発生可能な第2のブレーキトルクとを検出して、この発生可能な第2のブレーキトルクを車両における所定の全ブレーキトルクと比較することS2と、ブレーキアクチュエータ装置による第1のブレーキトルクと、電気機械による第2のブレーキトルクとを合わせて、車両における全ブレーキトルクとして発生させることS3とを行い、この場合ブレーキアクチュエータ装置の作動のための作動パラメータを調整し、これによってブレーキアクチュエータ装置の第1のブレーキトルクを減少または増大させることで、その際に第2のブレーキトルクとともに少なくとも所定の全ブレーキトルクを車両に提供する。
【0057】
以上、有利な実施形態に基づいて本発明を十全に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、様々な方法および態様で修正可能である。
【符号の説明】
【0058】
10 ブレーキ装置
BA ブレーキアクチュエータ装置
EM 電気機械
F 車両
SE 制御装置
S1 制動作用を実施する必要性を認識するステップ
S2 第2のブレーキトルクを全ブレーキトルクと比較するステップ
S3 全ブレーキトルクを発生させるステップ
【手続補正書】
【提出日】2024-01-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(F)の制動作用を制御可能な車両用ブレーキ装置(10)において、
-ブレーキアクチュエータ装置(BA)と、
-前記ブレーキアクチュエータ装置(BA)と結合されている、および/または、その中に含まれている制御装置(SE)であって、前記制御装置(SE)が、さらに、前記車両(F)の電気機械(EM)と結合可能であり、且つ発電機作動での前記電気機械(EM)の作動状態と、前記電気機械(EM)によって発生可能な第2のブレーキトルクとを検出して、前記発電機作動での前記電気機械(EM)の作動状態に依存して前記ブレーキアクチュエータ装置(BA)を作動させるために設置されており、前記電気機械の前記第2のブレーキトルクと前記ブレーキアクチュエータ装置(BA)の第1のブレーキトルクとの和として、前記車両(F)に少なくとも所定の全ブレーキトルクを発生可能であり、そして前記制御装置(SE)が、さらに、前記ブレーキアクチュエータ装置(BA)の作動のための少なくとも1つの作動パラメータを検出して変化させることによって、発生させた前記ブレーキアクチュエータ装置(BA)の前記第1のブレーキトルクを減少または増大させることで、その際に前記作動パラメータの所定の値範囲を維持するために、および/または、その際に前記第2のブレーキトルクとともに少なくとも前記所定の全ブレーキトルクを前記車両(F)に提供するために設置されている前記制御装置(SE)と、
を含んでいるブレーキ装置(10)。
【請求項2】
前記ブレーキアクチュエータ装置(BA)が、ブレーキ倍力装置(BV)および/またはブレーキシステムを含んでいる、請求項1に記載のブレーキ装置(10)。
【請求項3】
前記制御装置(SE)が、車両の車載電源網と結合可能であり、且つ車載電源網電圧を検出し、デフォルト値と比較して、前記第1のブレーキトルクを減少させるために設置され、前記車載電源網電圧が第1の閾値以下に低下したときに前記車両内の前記ブレーキアクチュエータ装置(BA)の駆動電圧および/または駆動電流を減少させることで、前記第1のブレーキトルクを減少させる、請求項1または2に記載のブレーキ装置(10)。
【請求項4】
前記ブレーキアクチュエータ装置(BA)が温度センサを含み、前記温度センサによって前記ブレーキアクチュエータ装置(BA)の作動温度を検出可能であり、前記制御装置(SE)は前記温度センサと結合されていて、前記作動温度を温度に対するデフォルト値と比較し、前記ブレーキアクチュエータ装置を前記作動温度に依存して作動させるために設置されていることを特徴とする、請求項1
または2に記載のブレーキ装置(10)。
【請求項5】
車両(F)の制動作用を制御するための、車両用ブレーキ装置(10)の作動方法において、
-請求項
1に記載のブレーキ装置(10)を用いて制動作用を実施する必要性を認識するステップ(S1)と、
-前記発電機作動における前記電気機械(EM)での作動状態と、これから前記電気機械(EM)において発生可能な第2のブレーキトルクとを検出して、この発生可能な第2のブレーキトルクを車両(F)における所定の全ブレーキトルクと比較するステップ(S2)と、
-前記ブレーキアクチュエータ装置(BA)による第1のブレーキトルクと、前記電気機械(EM)による前記第2のブレーキトルクとを合わせて、前記車両(F)における全ブレーキトルクとして発生させるステップ(S3)であって、前記ブレーキアクチュエータ装置(BA)の作動のための作動パラメータを調整し、これによって前記ブレーキアクチュエータ装置(BA)の前記第1のブレーキトルクを減少または増大させることで、その際に前記第2のブレーキトルクとともに少なくとも前記所定の全ブレーキトルクを前記車両(F)に提供する前記ステップ(S3)と、
を含む作動方法。
【請求項6】
前記ブレーキアクチュエータ装置(BA)の作動のための少なくとも1つの作動パラメータを検出して変化させ、これによって、前記ブレーキアクチュエータ装置(BA)の前記第1のブレーキトルクを減少させることで、その際に前記作動パラメータの所定の値範囲を維持する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
現時点で発生可能な最大の第2のブレーキトルクを検出し、前記車両(F)における前記所定の全ブレーキトルクがまだ得られる限りは、前記第1のブレーキトルクを減少させる、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記車両(F)の車載電源網における電圧および/または電流を検出して、前記第1のブレーキトルクを減少させ、この場合、前記第1のブレーキトルクを減少させるために、前記車両内の前記ブレーキアクチュエータ装置(BA)の駆動電圧および/または駆動電流を減少させる、請求項5
または6に記載の方法。
【請求項9】
前記車載電源網における電圧を検出し、前記車載電源網における前記電圧が第1の閾値以下に低下すれば、前記ブレーキアクチュエータ装置(BA)の前記駆動電圧および/または駆動電流を制限し、そして前記車載電源網における前記電圧が第2の閾値以下に低下すれば、前記第2のブレーキトルクが前記車両(F)における前記所定の全ブレーキトルク自体に達したときに、前記ブレーキアクチュエータ装置(BA)をシャットダウンする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ブレーキアクチュエータ装置(BA)の作動温度を温度センサによって検出し、前記作動温度が予め決定されている値を越えれば、前記第1のブレーキトルクを減少させる、請求項5
または6に記載の方法。
【請求項11】
前記電気機械(EM)における作動状態と、これから発生可能な、前記電気機械(EM)における前記第2のブレーキトルクとを、常時または所定のタイムインターバルで検出する、請求項5
または6に記載の方法。
【国際調査報告】