(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】ニコチン酸モノヌクレオチド及びそのエステルの結晶性固体並びに作製及び使用方法
(51)【国際特許分類】
C07H 19/048 20060101AFI20240517BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240517BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240517BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240517BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240517BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20240517BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240517BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20240517BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20240517BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240517BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240517BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240517BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240517BHJP
A61P 19/10 20060101ALI20240517BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240517BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20240517BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240517BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240517BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20240517BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20240517BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240517BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240517BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20240517BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240517BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240517BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240517BHJP
A61K 31/706 20060101ALI20240517BHJP
C07H 1/06 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
C07H19/048 CSP
A61P25/00
A61P25/28
A61P25/16
A61P21/00
A61P25/02
A61P27/02
A61P21/04
A61P25/14
A61P13/12
A61P29/00
A61P19/02
A61P37/02
A61P19/10
A61P3/10
A61P15/00
A61P43/00 105
A61P1/04
A61P1/18
A61P19/08
A61P9/10
A61P9/10 101
A61P9/00
A61P17/02
A61P35/00
A61P35/02
A61P1/16
A61K31/706
C07H1/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572713
(86)(22)【出願日】2022-05-26
(85)【翻訳文提出日】2024-01-15
(86)【国際出願番号】 US2022031124
(87)【国際公開番号】W WO2022251491
(87)【国際公開日】2022-12-01
(32)【優先日】2021-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518033082
【氏名又は名称】メトロ インターナショナル バイオテック,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クレムスキー,ジョナサン,エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】シュチェパンキーヴィッツ,ブルース
(72)【発明者】
【氏名】コッペシュ,カーステン
(72)【発明者】
【氏名】ハリス,ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ピタク,マテウス
(72)【発明者】
【氏名】ベイツ,マーティン
【テーマコード(参考)】
4C057
4C086
【Fターム(参考)】
4C057AA14
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4C057DD03
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4C086AA01
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4C086ZA66
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4C086ZA75
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZA94
4C086ZA96
4C086ZA97
4C086ZB05
4C086ZB11
4C086ZB21
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC35
(57)【要約】
本開示は、Rがn-プロピルである式(I)の化合物を含む結晶性固体、及びRがC1-C4アルキル又はC2-C4アルケニルである式(I)の化合物の作製方法に関する。本開示はまた、式(II)の化合物を含む結晶性固体に関する。本開示は更に、結晶性固体の調製方法、及び結晶性固体の医薬調製物、並びに疾患及び状態の治療におけるそのような医薬調製物の使用に関する。
【化1】
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物1を含む、結晶性固体。
【化1】
【請求項2】
2θ値16.1、20.1、及び24.5を有する、請求項1に記載の結晶性固体。
【請求項3】
前記固体が、無水である、請求項1又は2に記載の結晶性固体。
【請求項4】
前記固体が、メタノール溶媒和物、エタノール溶媒和物、1-プロパノール溶媒和物、2-プロパノール溶媒和物、C-4アルコール溶媒和物、C-5アルコール溶媒和物、及びC-6アルコール溶媒和物、好ましくは前記メタノール溶媒和物から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の結晶性固体。
【請求項5】
前記結晶性固体が、残留非溶媒和溶媒又は残留非水和水を含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の結晶性固体。
【請求項6】
約5重量%未満のニコチン酸プロピル、好ましくは約1重量%未満のニコチン酸プロピルを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の結晶性固体。
【請求項7】
約5重量%未満の化合物2を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の結晶性固体。
【化2】
【請求項8】
約1重量%未満の化合物2を含む、請求項7に記載の結晶性固体。
【請求項9】
少なくとも約90重量%の化合物1を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の結晶性固体。
【請求項10】
少なくとも約95重量%の化合物1を含む、請求項9に記載の結晶性固体。
【請求項11】
少なくとも約99重量%の化合物1を含む、請求項10に記載の結晶性固体。
【請求項12】
前記結晶性固体が、非吸湿性である、請求項1~11のいずれか一項に記載の結晶性固体。
【請求項13】
前記結晶性固体が、約70%未満の相対湿度で安定したままである、請求項1~12のいずれか一項に記載の結晶性固体。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の結晶性固体と、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤と、を含む、薬学的組成物。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載の結晶性固体を調製するための方法であって、
a)化合物1を溶媒中に溶解して、溶液を形成することと、
b)前記溶液から化合物1を結晶化して、前記結晶性固体を形成することと、を含む、方法。
【請求項16】
前記溶媒が、メタノールである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記溶液が、無水である、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記溶解工程中の前記溶媒の温度が、約30~約40℃である、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
化合物1が、前記結晶化工程の前に、前記溶媒中に完全に溶解される、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
結晶化が、前記溶液から過飽和溶液を形成することを含み、前記過飽和溶液が、化合物1に対して過飽和である、請求項15~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記過飽和溶液を形成することが、前記溶液に貪溶媒を添加すること、前記溶液の温度を低下させること、前記溶液の体積を減少させること、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記過飽和溶液を形成することが、前記溶液の前記温度を低下させることを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記過飽和溶液を形成することが、前記溶液の前記温度を約0~約25℃に低下させることを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記過飽和溶液を形成することが、前記溶液に貪溶媒を添加することを含む、請求項20~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記貪溶媒が、EtOAc、iPrOAc、TBME、MIBK、THF、1-プロパノール、2-プロパノール、及びEtOH、好ましくは変性EtOHから選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記貪溶媒が、TBMEである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記溶媒の、前記貪溶媒に対する比が、体積で約1:1~約8:1である、請求項24~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記溶媒の、前記貪溶媒に対する比が、体積で約5:1である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記過飽和溶液が、約1~4の過飽和比を有する、請求項20~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記過飽和溶液が、約2の過飽和比を有する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
結晶化が、シード結晶を前記溶液に添加することを含み、前記シード結晶が、化合物1を含む、請求項15~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記結晶性固体を単離することを更に含む、請求項15~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記結晶性固体を減圧下で乾燥させることを更に含む、請求項15~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記方法が、化合物1を精製するためのクロマトグラフィーを含まない、請求項15~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記方法が、化合物1の精製中の凍結乾燥を含まない、請求項15~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記結晶性固体の重量が、少なくとも約100mgである、請求項15~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記結晶性固体の量が、少なくとも約1gである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記結晶性固体が、約1%未満のニコチン酸プロピルを含む、請求項15~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記結晶性固体が、少なくとも約90%の化合物1を含む、請求項15~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記結晶性固体が、少なくとも約95%の化合物1を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記結晶性固体が、少なくとも約99%の化合物1を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記結晶性固体が、請求項15~41のいずれか一項に記載の方法に従って形成される、請求項1~13のいずれか一項に記載の結晶性固体。
【請求項43】
式(II)の化合物を含む、結晶性固体。
【化3】
【請求項44】
2θ値21.5、24.2、26.7、及び19.6を有する、請求項43に記載の結晶性固体。
【請求項45】
前記式(II)の化合物が、水和物である、請求項43又は44に記載の結晶性固体。
【請求項46】
前記結晶性固体が、254nmでの曲線下面積のパーセントによって測定される場合、高温で14日間保管した後、90%を超える安定性を有する、請求項43~45のいずれか一項に記載の結晶性固体。
【請求項47】
前記固体が、メタノール溶媒和物、エタノール溶媒和物、1-プロパノール溶媒和物、2-プロパノール溶媒和物、C-4アルコール溶媒和物、C-5アルコール溶媒和物、及びC-6アルコール溶媒和物から選択される、請求項43~46のいずれか一項に記載の結晶性固体。
【請求項48】
前記結晶性固体が、残留非溶媒和溶媒又は残留非水和水を含有する、請求項43~47のいずれか一項に記載の結晶性固体。
【請求項49】
約5重量%未満のニコチン酸を含み、好ましくは約1重量%未満のニコチン酸を含む、請求項43~48のいずれか一項に記載の結晶性固体。
【請求項50】
約1%未満のニコチン酸リボシドを含む、請求項43~49のいずれか一項に記載の結晶性固体。
【請求項51】
少なくとも約90%の前記式(II)の化合物を含み、好ましくは少なくとも約95%の前記式(II)の化合物を含む、請求項43~50のいずれか一項に記載の結晶性固体。
【請求項52】
少なくとも約99%の前記式(II)の化合物を含む、請求項51に記載の結晶性固体。
【請求項53】
前記結晶性固体の単結晶の平均サイズが、20~500マイクロメートルである、請求項43~52のいずれか一項に記載の結晶性固体。
【請求項54】
請求項43~53のいずれか一項に記載の結晶性固体と、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤と、を含む、薬学的組成物。
【請求項55】
請求項43~53のいずれか一項に記載の結晶性固体を調製するための方法であって、
a)前記式(II)の化合物を溶媒中に溶解して、溶液を形成することと、
b)前記溶液から前記式(II)の化合物を結晶化して、前記結晶性固体を形成することと、を含む、方法。
【請求項56】
前記溶媒が、水を含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記溶媒が、アルコールを含む、請求項55又は56に記載の方法。
【請求項58】
前記アルコールが、1-プロパノールである、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記溶解工程中の前記溶媒の温度が、周囲温度である、請求項55~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記式(II)の化合物が、前記結晶化工程の前に、前記溶媒中に完全に溶解される、請求項55~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
結晶化が、前記溶液から過飽和溶液を形成することを含み、前記過飽和溶液が、前記式(II)の化合物に対して過飽和である、請求項55~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記過飽和溶液を形成することが、前記溶液に貪溶媒を添加すること、前記溶液の温度を低下させること、前記溶液の体積を減少させること、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記過飽和溶液を形成することが、前記溶液の前記温度を低下させることを含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記過飽和溶液を形成することが、前記溶液に貪溶媒を添加することを含む、請求項61~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記貪溶媒が、アルコールである、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記貪溶媒が、1-プロパノールである、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記溶媒の、前記貪溶媒に対する比が、体積で約1:0~約1:2である、請求項64~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記溶媒の、前記貪溶媒に対する比が、体積で約6:7である、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記過飽和溶液が、約1~4の過飽和比を有する、請求項61~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記過飽和溶液が、約2の過飽和比を有する、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記過飽和溶液を形成することが、前記溶液に貪溶媒を添加することを含まない、請求項61~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記式(II)の化合物の、前記溶媒に対する比が、重量で約1:3である、請求項55~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
結晶化が、シード結晶を前記溶液に添加することを含み、前記シード結晶が、前記式(II)の化合物を含む、請求項55~72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記結晶性固体を単離することを更に含む、請求項55~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記結晶性固体を減圧下で乾燥させることを更に含む、請求項55~74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記方法が、前記式(II)の化合物を精製するためのクロマトグラフィーを含まない、請求項55~75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
前記方法が、前記式(II)の化合物を精製するための凍結乾燥を含まない、請求項55~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
前記結晶性固体の重量が、少なくとも約100mgである、請求項55~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記結晶性固体の量が、少なくとも約1gである、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記結晶性固体が、約1%未満のニコチン酸リボシドを含む、請求項55~79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記結晶性固体が、少なくとも約90%の前記式(II)の化合物を含む、請求項55~80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記結晶性固体が、少なくとも約95%の前記式(II)の化合物を含む、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記結晶性固体が、少なくとも約99%の前記式(II)の化合物を含む、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記結晶性固体が、請求項55~83のいずれか一項に記載の方法に従って形成される、請求項43~53のいずれか一項に記載の結晶性固体。
【請求項85】
式(I)の化合物を調製する方法であって、
【化4】
式中、Rが、C1-C6アルキル又はC2-C6アルケニルであり、前記方法が、式(II)の化合物を、
【化5】
酸の存在下でアルコールR-OHと接触させることを含む、方法。
【請求項86】
Rが、C1-C6アルキルである、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
Rが、C3アルキルである、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
Rが、n-プロピルである、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記酸が、HClである、請求項85~88のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
前記式(II)の化合物が、請求項43~53のいずれか一項に記載の結晶性固体として提供される、請求項85~89のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
方法55~83のいずれか一項に記載の式(II)の化合物を含む前記結晶性固体を調製することを更に含む、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記式(I)の化合物が、請求項1~13のいずれか一項に記載の結晶性固体として提供される、請求項85~91のいずれか一項に記載の方法。
【請求項93】
方法15~41のいずれか一項に記載の式(I)の化合物を含む前記結晶性固体を調製することを更に含む、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
対象におけるNADレベルを増加させる方法であって、前記方法が、請求項1~13及び43~53のいずれか一項に記載の結晶性固体を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項95】
対象における疾患又は障害を治療又は予防する方法であって、請求項1~13及び43~53のいずれか一項に記載の結晶性固体を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項96】
前記疾患又は障害が、NAD生合成に関連する、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
前記疾患又は障害が、神経障害又は神経変性障害である、請求項95に記載の方法。
【請求項98】
前記神経障害又は神経変性障害が、アルツハイマー病(AD)、アルツハイマー病以外の認知症、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS、ルーゲーリッグ病)、びまん性ルビー体疾患、有棘赤血球舞踏病、原発性側索硬化症、多発性硬化症(MS)、眼疾患、脊髄筋萎縮症、化学療法誘発性ニューロパシー、糖尿病誘発性ニューロパシー、及びフリードライヒ運動失調症から選択される、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記疾患又は障害が、COVID-19の感染によって引き起こされる症状である、請求項95に記載の方法。
【請求項100】
前記疾患又は障害が、急性腎損傷(AKI)又は腎症などの慢性腎疾患である、請求項95又は99に記載の方法。
【請求項101】
前記疾患又は障害が、サイトカインストームによって引き起こされるか又はそれに関連する、請求項95又は99に記載の方法。
【請求項102】
前記疾患又は障害が、炎症である、請求項95に記載の方法。
【請求項103】
前記炎症が、多発性硬化症、リウマチ性関節炎、乾癬性関節炎、変性関節疾患、脊椎関節症、痛風性関節炎、全身性エリテマトーデス、若年性関節炎、リウマチ性関節炎、変形性関節症、骨粗しょう症、糖尿病、月経痛、嚢胞性線維症、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、クローン病、粘液性大腸炎、潰瘍性大腸炎、胃炎、食道炎、膵炎、腹膜炎、アルツハイマー病、ショック、強直性脊椎炎、胃炎、結膜炎、膵炎、多臓器損傷症候群、心筋梗塞、動脈硬化症、脳卒中、再灌流損傷、急性糸球体炎、血管炎、熱損傷、壊死性腸炎、顆粒球輸血関連症候群、及びシェーグレン症候群から選択される、請求項102に記載の方法。
【請求項104】
前記疾患又は障害が、がんである、請求項95に記載の方法。
【請求項105】
前記がんが、脳、腎臓、乳房、前立腺、精巣、卵巣、肺、結腸直腸、子宮頸部、皮膚、胃、リンパ腫、及び白血病から選択される、請求項104に記載の方法。
【請求項106】
前記疾患又は障害が、サルコペニアなどの筋肉状態又は障害である、請求項95に記載の方法。
【請求項107】
前記疾患又は障害が、固形臓器疾患又は障害、好ましくはアルコール誘発性肝硬変から選択される肝臓の障害又は疾患である、請求項95に記載の方法。
【請求項108】
前記疾患又は障害が、固形臓器の移植によって治療され、前記固形臓器が、前記結晶性固体で移植される前に治療される、請求項95に記載の方法。
【請求項109】
前記結晶性固体が、約1~3000mgの単位用量で投与される、請求項94~108のいずれか一項に記載の方法。
【請求項110】
前記結晶性固体が、約100~1000mgの単位用量で投与される、請求項109に記載の方法。
【請求項111】
前記結晶性固体が、約250~750mgの量で投与される、請求項110に記載の方法。
【請求項112】
前記結晶性固体が、1日2回投与される、請求項94~111のいずれか一項に記載の方法。
【請求項113】
前記対象が、ヒトである、請求項94~112のいずれか一項に記載の方法。
【請求項114】
化合物を精製する方法であって、前記方法が、
a)化合物1又は化合物2から選択した化合物を溶媒中に溶解して、溶液を形成することと、
b)前記溶液から前記化合物を結晶化して、工程(a)で溶解した前記化合物よりも高い純度の固体を形成することと、を含む、方法。
【請求項115】
前記化合物が、化合物1である、請求項114に記載の方法。
【請求項116】
前記化合物が、化合物2である、請求項114に記載の方法。
【請求項117】
工程(a)が、非晶質化合物を用いて実施される、請求項114に記載の方法。
【請求項118】
工程(b)におけるより高い純度の前記固体が、約95%超の純度である、請求項114に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年5月27日に出願された米国仮出願第63/193,905号の優先権を主張し、全ての目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)及び関連化合物は、全ての生体における細胞酸化還元反応における必須補酵素として知られている。いくつかの証拠はまた、NADが、DNA修復におけるポリ(ADP-リボシル)アチオン、免疫応答におけるモノ-ADP-リボシル化及びGタンパク質結合シグナル伝達、並びに細胞内カルシウムシグナル伝達における環状ADP-リボース及びニコチン酸アデニンジヌクレオチドリン酸(NAADP)の合成を含む、哺乳動物細胞におけるいくつかの重要なシグナル伝達経路に関与することを示している。また、NAD及びその代謝産物が、転写制御において重要な役割を果たすことも示されている。特に、Sir2 NAD依存性デアセチラーゼ活性の発見は、NADのこの役割に注目を集めた。NADの生物学的理解の進歩にもかかわらず、生細胞及び組織におけるNAD経路の薬理学的介入及び/又は操作のためにそのような組成物を使用する改善された組成物及び方法の必要性が依然として存在する。
【0003】
ニコチン酸モノヌクレオチド(ニコチン酸リボヌクレオチドとしても知られる)及び特定のニコチン酸モノヌクレオチド誘導体は、細胞のNAD産生を増加させると考えられる(Sauve、米国特許第10,961,268(B2)号)。しかしながら、これらの化合物は、十分な純度で薬学的に適切なスケールで合成することが困難である。ニコチン酸モノヌクレオチド及びその誘導体に関連する治療上の利点を考えると、そのような組成物を調製するための改善された組成物及び方法の必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第10,961,268(B2)号
【発明の概要】
【0005】
本開示は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD、その酸化形態ではNAD+、及びその還元形態ではNADHとも称される)を調節するための化合物、結晶性固体、並びに化合物及び/又は結晶性固体の組成物に関する。
【0006】
本開示の一態様は、式(I)の化合物を含む結晶性固体に関し、
【化1】
式中、Rが、n-プロピル(化合物1)である。
【0007】
本開示の更なる態様は、式(II)の化合物を含む結晶性固体に関する。
【化2】
【0008】
いくつかの実施形態において、本開示は、そのような化合物、結晶性固体、及び組成物、並びにRがC1-C4アルキル又はC2-C4アルケニルである式(I)の化合物及び組成物の作製方法に関する。いくつかの実施形態において、本開示は、1つ以上のNAD調節化合物及び/又は結晶性固体を1つ以上の活性医薬成分と組み合わせた第1の成分として含有する薬学的組成物に関する。更なる実施形態において、本開示は、疾患を治療し、かつ/又は細胞及び組織生存率を改善するための細胞及び組織中のニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)の細胞内レベルの増加を促進するために、そのような化合物、結晶性固体、及び/又は組成物を使用する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】結晶性固体としての化合物1の実験的に得られたXRDパターンを示す。
【
図1B】上部パターンが、室温での化合物1の実験的回折図であり、下部パターンが、100K度でシミュレートされた化合物1の計算された回折図であるオーバーレイを示す。シミュレートされた回折図及び実験的回折図のわずかな差異は、温度及び選択配向による格子変化に起因する。
【
図2A】結晶性固体としての化合物2の実験的に得られたXRDパターンを示す。
【
図2B】結晶性固体としての化合物2のシミュレートされたXRDパターンを示す。
【
図2C】上部パターンが化合物2の実験的回折図であり、下部パターンが単結晶X線構造からの計算された回折図であるオーバーレイを示す。シミュレートされた回折図及び実験的回折図のわずかな差異は、温度及び選択配向による格子変化に起因する。
【
図3】DMSO-d6中の化合物1の実験的に得られたプロトンNMRスペクトルを示す。X軸は、化学シフト(ppm)を示す。
【
図4】D
2O中の化合物2の実験的に得られたプロトンNMRスペクトルを示す。X軸は、化学シフト(ppm)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
定義
他の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示の当業者によって一般的に理解される意味を有する。本明細書で使用される場合、以下の用語は、特に明記しない限り、以下にそれらに帰属する意味を有する。
【0011】
本開示において、「含む(comprises)」、「含むこと(comprising)」、「含有すること(containing)」、及び「有すること(having)」などは、米国特許法で帰される意味を有することができ、「含む(includes)」、「含むこと(including)」を意味することができ、「から本質的になる(consisting essentially of)」又は「本質的になる(consists essentially)」なども同様に、米国特許法で帰される意味を有し、この用語は、オープンエンドであり、列挙されるものの基本的な又は新規な特徴が、列挙されているもの以上の存在によって変化しない限り、列挙されるもの以上の存在を許すが、先行技術の実施形態は除外される。
【0012】
本明細書で示される範囲は、その範囲内の全ての値の略記であると理解される。例えば、1~50の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50からの任意の数、数値の組み合わせ、又は部分範囲を含むと理解される。
【0013】
本明細書で使用される「a」又は「an」エンティティという語句は、そのエンティティのうちの1つ以上を指し、例えば、化合物は、1つ以上の化合物又は少なくとも1つの化合物を指す。したがって、「1つ(a)」(又は「1つ(an)」)、「1つ以上」、及び「少なくとも1つ」という用語は、本明細書では互換的に使用され得る。
【0014】
本明細書で使用される場合、文脈から明確に記載又は明らかでない限り、「約」という用語は、当該技術分野における正常な許容範囲内、例えば、平均の2標準偏差以内であると理解される。約は、記載された値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、又は0.01%以内として理解され得る。文脈から別途明確でない限り、本明細書に提供される全ての数値は、約という用語によって修正される。
【0015】
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、1~約20個の炭素原子、好ましくは1~約10個の炭素原子の分枝又は非分枝飽和炭化水素基である。直鎖及び分枝アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ペンチル、オクチルが挙げられる。アルキル基は、環状又は非環状であり得る。アルキル基は、分枝又は非分枝(すなわち、直鎖)であり得る。「低級アルキル」基は、1~6個(例えば、1~4個)の炭素原子を含有するアルキル基である。
【0016】
「アルケニル」という用語は、本明細書で使用される場合、少なくとも1つの二重結合を含有する脂肪族基を指す。
【0017】
本明細書で使用される場合、「任意選択的な」又は「任意選択的に」という用語は、その後に説明される事象又は状況が発生し得るが、発生する必要はなく、説明は、事象又は状況が発生する事例及び発生しない事例を含むことを意味する。例えば、「任意選択的な結合」は、結合が存在しても存在しなくてもよく、説明が単結合、二重結合、又は三重結合を含むことを意味する。
【0018】
「精製」という用語は、本明細書に記載されるように、所与の化合物の純度を指す。例えば、所与の化合物が組成物の主要成分であるとき、すなわち、少なくとも約50%w/w純粋であるとき、化合物は「精製される」。したがって、「精製」とは、少なくとも約50%w/w純度、少なくとも約60%w/w純度、少なくとも約70%純度、少なくとも約80%純度、少なくとも約85%純度、少なくとも約90%純度、少なくとも約92%純度、少なくとも約94%純度、少なくとも約96%純度、少なくとも約97%純度、少なくとも約98%純度、少なくとも約99%純度、少なくとも約99.5%純度、及び少なくとも約99.9%純度を包含し、「実質的に純度」とは、少なくとも約97%純度、少なくとも約98%純度、少なくとも約99%純度、少なくとも約99.5%純度、及び少なくとも約99.9%純度を包含する。
【0019】
「代謝物」という用語は、本明細書に記載されるように、対象に投与した後にインビボで生成される化合物を指す。
【0020】
「塩」という用語は、本明細書に記載されるように、カチオン及びアニオンを含む化合物を指し、これは、プロトン受容部分のプロトン化及び/又はプロトン供給部分の脱プロトン化によって生成することができる。プロトン受容部分のプロトン化は、生理学的アニオンの存在によって電荷がバランスされるカチオン性種の形成をもたらし、プロトン供給部分の脱プロトン化は、生理学的カチオンの存在によって電荷がバランスされるアニオン性種の形成をもたらすことに留意されたい。
【0021】
「薬学的に許容される塩」という語句は、薬学的に許容される塩を意味する。薬学的に許容される塩の例としては、(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸で形成されるか、若しくは酢酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタン-ジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、サリチル酸、ムコン酸などの有機酸で形成された酸付加塩、又は(2)上記無機酸のいずれかのコンジュゲート塩基で形成された塩基性添加塩であって、コンジュゲート塩基が、Na+、K+、Mg2+、Ca2+、NHgR4-g
+の中から選択されるカチオン性成分を含み、Rが、C1-3アルキルであり、gが、0、1、2、3、若しくは4から選択される数である、塩基性添加塩が挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に許容される塩への全ての言及は、同じ酸付加塩の溶媒付加形態(溶媒和物)又は本明細書に定義される結晶性固体を含むことが理解されるべきである。
【0022】
本開示はまた、本開示の化合物、例えば、代謝産物、溶媒和物、プロドラッグ、塩、特に薬学的に許容される塩、及び/又は共沈殿物の有用な形態を含む。
【0023】
本開示の化合物は、溶媒和物として存在することができ、本開示の化合物は、例えば、化合物の結晶格子の構造要素として、水、メタノール又はエタノールなどの極性溶媒の分子を含有する結晶を形成する。極性溶媒の分子は、化合物の分子と化学量論的又は非化学量論的な比率で存在してもよい。化学量論的溶媒和物の場合、例えば、半溶媒和物、(半)溶媒和物、モノ溶媒和物、セスキ溶媒和物、ジ溶媒和物、トリ溶媒和物、テトラ溶媒和物、ペンタ溶媒和物などがそれぞれ可能である。本開示は、そのような溶媒和物全てを含む。
【0024】
更に、本開示の化合物は、遊離形態で存在すること、例えば、遊離塩基として、又は遊離酸として、又は双性イオンとして存在すること、又は塩の形態で存在することが可能である。当該塩は、任意の塩、有機又は無機付加塩のいずれか、特に、薬学で慣習的に使用される、又は例えば、本開示の化合物を単離又は精製するために使用される任意の薬学的に許容される有機又は無機付加塩であり得る。
【0025】
投与が企図される「対象」という用語としては、ヒト(すなわち、任意の年齢群の男性若しくは女性、例えば、小児対象(例えば、乳児、小児、青年)若しくは成人対象(例えば、若年成人、中年成人又は高齢成人))並びに/又は他の霊長類(例えば、カニクイザル、アカゲザル)、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、及び/若しくはイヌなどの商業的に関連する哺乳動物を含む哺乳動物、並びに/又はニワトリ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、及び/若しくはターキーなどの商業的に関連する鳥を含む鳥が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
「治療」、「治療すること」、「緩和すること」、及び「改善すること」という用語は、本明細書において互換的に使用される。これらの用語は、治療的利益及び/又は予防的利益を含むがこれらに限定されない、有益又は所望の結果を得るためのアプローチを指す。治療上の利益とは、治療されている基礎障害の根絶又は改善を意味する。また、治療上の利益は、患者が依然として基礎障害に罹患し得るにもかかわらず、患者において改善が観察されるように、基礎障害に関連する生理学的症状のうちの1つ以上の根絶又は改善によって達成される。予防的利益のために、薬学的化合物及び/又は組成物は、特定の疾患を発症する危険性がある患者、又は疾患の診断がなされていない場合でも、疾患の生理学的症状のうちの1つ以上を報告する患者に投与され得る。
【0027】
本明細書で使用される場合、障害又は病態を「予防する」治療剤は、統計的試料において、未処置の対照試料と比較して処置された試料中の障害若しくは状態の発症を減少させるか、又は未処置の対照試料と比較して障害若しくは状態の1つ以上の症状の発症を遅らせるか、若しくは重症度を減少させる化合物及び/又はその結晶性固体を指す。
【0028】
「治療すること」という用語は、予防的及び/又は治療的治療を含む。「予防的又は治療的」治療という用語は、当該技術分野において認識されており、開示される組成物のうちの1つ以上の対象への投与を含む。望ましくない状態(例えば、対象の疾患又は他の望ましくない状態)の臨床症状の前に投与される場合、治療は予防的である(すなわち、それは、望ましくない状態の発症から対象を保護する)が、望ましくない状態の症状の後に投与される場合、治療は治療的である(すなわち、それは、既存の望ましくない状態又はその副作用を軽減、改善、又は安定化することを意図する)。
【0029】
「調製物」又は「剤形」という用語は、活性化合物及び/又はその結晶性固体の固体製剤及び液体製剤の両方を含むことが意図されており、当業者であれば、所望の用量及び薬物動態パラメータに応じて、活性成分が異なる調製物に存在し得ることを理解するであろう。
【0030】
本明細書で使用される「賦形剤」は、薬学的組成物を調製するために使用され、一般に、安全、非毒性の生物学的にも別様にも望ましくない化合物を指し獣医学的使用及びヒト医薬的使用が許容される賦形剤を含む。
【0031】
「薬学的に許容される」という語句は、本明細書では、適切な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、又はその他の問題若しくは合併症を引き起こすことなく、対象の組織と接触して使用するのに好適であり、かつ合理的なベネフィット/リスク比に見合った化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を指すために使用される。
【0032】
本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」という語句は、液体又は固体充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、又はカプセル化材料などの薬学的に許容される材料、組成物、又はビヒクルを意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合性があり、対象に有害ではないという意味で「許容される」ものでなければならない。
【0033】
本明細書で使用される場合、「併用投与」という語句は、以前に投与された治療剤が依然として身体内で有効である間に第2の薬剤が投与されるように、2つ以上の異なる治療剤の任意の形態の投与を指す(例えば、2つの薬剤が患者において同時に有効であり、2つの薬剤の相乗効果を含み得る)。例えば、異なる治療用化合物は、同時又は連続のいずれかで、同じ製剤又は別個の製剤のいずれかで、投与され得る。したがって、そのような治療を受ける個人は、異なる治療剤の組み合わされた効果から利益を得ることができる。
【0034】
本明細書における変数の任意の定義における要素のリストの列挙は、リストされた要素の任意の単一の要素又は組み合わせ(又はサブコンビネーション)としてのその変数の定義を含む。本明細書における実施形態の列挙は、任意の単一の実施形態として、又は任意の他の実施形態若しくはその一部と組み合わせて、その実施形態を含む。
【0035】
値及び範囲が本明細書に提供される場合はいつでも、これらの値及び範囲によって包含される全ての値及び範囲は、本開示の範囲内に包含されることを意味することが理解されるべきである。更に、これらの範囲内に入る全ての値、並びに値の範囲の上限又は下限もまた、本出願によって企図される。
【0036】
化合物及び結晶性固体
一態様において、本開示は、式(I)の化合物を含む結晶性固体を提供し、
【化3】
式中、Rが、n-プロピルである。Rが、n-プロピルである式(I)の化合物は、本明細書において代替的に「化合物1」と称される。
【0037】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される結晶性固体は、X線回折(XRD)によって特徴付けられる。ある特定の実施形態において、XRDは、X線粉末回折(XRPD)である。θは、回折角を表し、度で測定される。いくつかの実施形態において、XRDで使用される回折計は、回折角θの2倍として回折角を測定する。したがって、ある特定の実施形態において、本明細書に記載される回折パターンは、角度2θに対して測定されるX線強度を指す。
【0038】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物を含む結晶性固体は、16.1、20.1、及び24.5の2θ値を有する。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物を含む結晶性固体は、16.1、20.1、24.5、23.7、18.8、21.5、17.7、8.1、9.9、13.0、26.3、及び30.4の2θ値を有する。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物を含む結晶性固体は、16.1、20.1、24.5、23.7、18.8、21.5、17.7、8.1、9.9、13.0、26.3、30.4、23.0、26.6、25.3、25.5、及び19.7の2θ値を有する。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物を含む結晶性固体は、実質的に、
図1(A又はB)に示されるXRDパターンを有する。いくつかの実施形態において、XRDパターンは、式(I)の化合物のメタノール溶媒和物のものである。いくつかの実施形態において、XRDパターンは、式(I)の化合物の非溶媒和物である。いくつかの実施形態において、XRDパターンは、
図1Cに対応する3次元形状に対応する。
【0039】
ある特定の実施形態において、式(I)の化合物は、結晶性固体中で溶媒和又は水和されていない(例えば、結晶格子は、溶媒又は水の分子を含まない)。ある特定の実施形態において、式(I)の化合物を含む結晶性固体は、非水和水及び/又は非溶媒和溶媒を含む。ある特定の実施形態において、そのような非水和水及び/又は非溶媒和溶媒は、残留量、例えば、10重量%未満、又は5重量%未満、又は0重量%超だが1重量%未満の量で存在する。
【0040】
ある特定の実施形態において、式(I)の化合物は、1つ以上の溶媒によって溶媒和される。ある特定の実施形態において、式(I)の化合物は、アルコールによって溶媒和されて、アルコール溶媒和物、好ましくはメタノールを形成して、メタノール溶媒和物を形成する。ある特定の実施形態において、式(I)の化合物の結晶メタノール溶媒和物は、式(I)の化合物の1分子に対して約1.0、約1.1、又は約1.2分子のメタノールを含有する。ある特定の実施形態において、式(I)の化合物は、エタノールによって溶媒和される。ある特定の実施形態において、式(I)の化合物は、水によって水和される。ある特定の実施形態において、式(I)の化合物は、エタノール及び水によって溶媒和/水和される。様々な実施形態において、結晶性固体は、メタノール溶媒和物、エタノール溶媒和物、1-プロパノール溶媒和物、2-プロパノール溶媒和物、C-4アルコール溶媒和物、C-5アルコール溶媒和物、及びC-6アルコール溶媒和物、好ましくはメタノール溶媒和物から選択される溶媒和物である。
【0041】
様々な実施形態において、本明細書に開示されるXRDパターンを有する式(I)の化合物は、90%を超える純度の非晶質材料から調製され、非晶質材料をアルコールに溶解し、生成物を経時的に、好ましくは周囲温度で沈殿させる工程を含む。様々な実施形態において、式(I)の化合物は、非晶質材料を水又は水溶液に溶解し、次いで得られた溶液を貪溶媒で希釈し、式(I)の化合物を経時的に沈殿させる工程を含む方法によって非晶質材料から調製される。様々な実施形態において、貪溶媒は、エタノール、メタノール、プロパノール、又は8個以下の炭素の別のアルコールなどのアルコールである。様々な実施形態において、貪溶媒は、エタノールである。様々な実施形態において、貪溶媒は、変性エタノールである。
【0042】
一態様において、本開示は、式(II)の化合物を含む結晶性固体を提供する。
【化4】
【0043】
式(II)の化合物は、本明細書において代替的に「化合物2」と称される。
【0044】
いくつかの実施形態において、式(II)の化合物を含む結晶性固体は、21.5、24.2、26.7、及び19.6の2θ値を有する。いくつかの実施形態において、式(II)の化合物を含む結晶性固体は、21.5、24.2、26.7、19.6、15.6、及び29.3の2θ値を有する。いくつかの実施形態において、式(II)の化合物を含む結晶性固体は、約21.5、24.2、26.7、19.6、15.6、29.3、22.9、23.1、22.5、13.3、22.2、30.0、30.6、13.1、27.2、又は17.5の2θ値を有する。いくつかの実施形態において、式(II)の化合物を含む結晶性固体は、実質的に、
図2に示されるXRDパターンを有する。いくつかの実施形態において、XRDパターンは、式(II)の化合物の水和物のものである。
【0045】
ある特定の実施形態において、式(II)の化合物は、結晶性固体中で溶媒和又は水和されていない(例えば、結晶格子は、溶媒又は水の分子を含まない)。ある特定の実施形態において、式(II)の化合物は、1つ以上の溶媒によって溶媒和される。ある特定の実施形態において、式(II)の化合物を含む結晶性固体は、非水和水及び/又は非溶媒和溶媒を含む。ある特定の実施形態において、そのような非水和水及び/又は非溶媒和溶媒は、残留量、例えば、10重量%未満、又は5重量%未満、又は0重量%超だが1重量%未満の量で存在する。
【0046】
いくつかの実施形態において、式(II)の化合物は、水によって溶媒和されて水和物を形成する。他の実施形態において、式(II)の化合物をアルコールによって溶媒和されてアルコール溶媒和物を形成する。ある特定の実施形態において、式(II)の化合物の結晶水和物は、式(II)の化合物の1分子に対して約1.0、約1.1、又は約1.2分子の水を含有する。ある特定の実施形態において、式(II)の化合物は、エタノールによって溶媒和される。ある特定の実施形態において、式(II)の化合物は、水によって水和される。ある特定の実施形態において、式(II)の化合物は、エタノール及び水によって溶媒和/水和される。様々な実施形態において、式(II)の化合物を含む結晶性固体は、メタノール溶媒和物、エタノール溶媒和物、1-プロパノール溶媒和物、2-プロパノール溶媒和物、C-4アルコール溶媒和物、C-5アルコール溶媒和物、及びC-6アルコール溶媒和物、好ましくはメタノール溶媒和物から選択される溶媒和物である。
【0047】
様々な実施形態において、本明細書に開示されるXRDパターンを有する式(II)の化合物は、90%を超える純度の非晶質材料から、非晶質材料をアルコールに溶解し、式(II)の化合物を経時的に、好ましくは周囲温度で沈殿させる工程を含む方法によって調製される。様々な実施形態において、式(II)の化合物は、非晶質材料を水又は水溶液に溶解し、次いで得られた溶液を貪溶媒で希釈し、式(II)の化合物を経時的に沈殿させる工程を含む方法によって非晶質材料から調製される。様々な実施形態において、貪溶媒は、エタノール、メタノール、プロパノール、又は8個以下の炭素の別のアルコールなどのアルコールである。様々な実施形態において、貪溶媒は、エタノールである。様々な実施形態において、貪溶媒は、変性エタノールである。
【0048】
式(I)及び式(II)の化合物は、とりわけ、それらの環境のpHに応じて、様々なプロトン化状態で存在し得ることが明らかであろう。様々なpH環境では、式(I)及び式(II)の化合物は、本明細書に示されるように、両性イオン、又は内部塩として存在する。
【0049】
様々な実施形態において、式(I)及び(II)の化合物は1つ以上の塩であり、当該塩は、H+、Li+、Na+、K+、Mg2+、及びCa2+から選択されるカチオンとともに形成され、かつ/又は当該塩は、酢酸塩、トリフルオロメタンスルホネート(トリフレート)、ハロゲン化物、トリフルオロ酢酸塩、ギ酸塩、H2PO4
-、HPO4
2-、OH-、HSO4
-、SO4
2-、NO3
-、HCO3
-、及びCO3
2-、並びにそれらの混合物から選択されるアニオンとともに形成される。様々な実施形態において、本化合物は、双性イオンである。
【0050】
本開示は、本開示の化合物の薬学的に許容される塩及び/又はその結晶性固体の使用を含む。ある特定の実施形態において、本開示の企図される塩としては、アルキル、ジアルキル、トリアルキル又はテトラアルキルアンモニウム塩が挙げられるが、限定されない。ある特定の実施形態において、本開示の企図される塩としては、L-アルギニン、ベネンタミン、ベンザチン、ベタイン、水酸化カルシウム、コリン、デアノール、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、2-(ジエチルアミノ)エタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-メチルグルカミン、ヒドラバミン、1H-イミダゾール、リチウム、L-リジン、マグネシウム、4-(2-ヒドロキシエチル)モルホリン、ピペラジン、カリウム、1-(2-ヒドロキシエチル)ピロリジン、ナトリウム、トリエタノールアミン、トロメタミン、及び亜鉛塩が挙げられるが、限定されない。
【0051】
ある特定の実施形態において、本化合物は、酢酸塩、トリフレート、ハロゲン化物、トリフルオロ酢酸塩、又はギ酸塩から選択されるアニオンを有する塩である。他の実施形態において、開示される化合物が媒体、例えば、水性媒体と接触している場合、アニオンは、例えば、OH-、H2PO4
-、HPO4
2-、HSO4
-、SO4
2-、NO3
-、HCO3
-、及びCO3
2-から選択することができる。
【0052】
いくつかの実施形態において、開示される化合物は、負に荷電したリン酸塩の形態であり、これは、任意の好適なカチオンと塩を形成し得る。カチオンは、本化合物が単離されるか、又は異なるアニオン種を有する培地に移されるにつれて変化し得る。例えば、開示される化合物は、本明細書に記載される薬学的に許容される塩であるリン酸塩の形態であってもよい。ある特定の実施形態において、カチオンは、Li+、Na+、K+、Mg2+、及びCa2+から選択することができる。
【0053】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される結晶性固体は、溶液、懸濁液、混合物、スラリー、反応混合物などの一部ではない。
【0054】
いくつかの実施形態において、式(I)又は式(II)の化合物を含む結晶性固体の単結晶の平均サイズは、約1マイクロメートル超、約5マイクロメートル超、約10マイクロメートル超、又は約20マイクロメートル超である。更なる実施形態において、式(I)又は式(II)の化合物を含む結晶性固体の単結晶の平均サイズは、約1~約100マイクロメートル、約20~約100マイクロメートル、約1~約500マイクロメートル、約1~約250マイクロメートル、約20~約250マイクロメートル、又は約20~約500マイクロメートルである。
【0055】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される結晶性固体は、式(I)及び式(II)の化合物の非晶質固体と比較して、水における溶解度が低い。好ましい実施形態において、結晶性固体の水に対する溶解度比は、重量で約1:5~約1:75ある。より好ましい実施形態において、結晶性固体の水に対する溶解度比は、重量で約1:10~約1:60である。水へのこの低い溶解度は、望ましい治療特性を付与し得る。
【0056】
様々な実施形態において、結晶性固体は、無水である。様々な実施形態において、結晶性固体は、約5%未満の水、約2%未満の水、約1%未満の水、約0.5%未満の水、又は約0.1%未満の水を含む。いくつかの実施形態において、百分率は、重量基準によるものである。
【0057】
好ましい実施形態において、式(I)の化合物又はその結晶性固体は、約5%未満の不純物、約2%未満の不純物、約1%未満の不純物、又は約0.5%未満の不純物を含む。例えば、好ましい実施形態において、式(I)の化合物又はその結晶性固体は、約5%未満のニコチン酸プロピル、約2%未満のニコチン酸プロピル、約1%未満のニコチン酸プロピル、約0.5%未満のニコチン酸プロピル、又は約0.1%未満のニコチン酸プロピルを含む。いくつかの実施形態において、百分率は、重量基準によるものである。
【0058】
好ましい実施形態において、式(II)の化合物又はその結晶性固体は、約5%未満の不純物、約2%未満の不純物、約1%未満の不純物、又は約0.5%未満の不純物を含む。例えば、好ましい実施形態において、式(II)の化合物又はその結晶性固体は、約5%未満のニコチン酸リボシド、約2%未満のニコチン酸リボシド、約1%未満のニコチン酸リボシド、約0.5%未満のニコチン酸リボシド、約0.1%未満のニコチン酸リボシド、又は約0.01%未満のニコチン酸リボシドを含む。いくつかの実施形態において、百分率は、重量基準によるものである。
【0059】
ある特定の好ましい実施形態において、式(I)又は式(II)の化合物を含む結晶性固体は、純粋又は実質的に純粋である。ある特定の好ましい実施形態において、結晶性固体は、約90%超の純度である。より好ましくは、結晶性固体は、約95%超の純度、又は更により好ましくは約98%超の純度、例えば、約99%超の純度である。いくつかの実施形態において、百分率は、重量基準によるものである。好ましい実施形態において、結晶性固体は、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約99.5%、又は少なくとも約99.9%の式(I)又は式(II)の化合物を含む。いくつかの実施形態において、百分率は、重量基準によるものである。
【0060】
本明細書に記載される結晶性固体は、式(I)及び式(II)の化合物の非晶質形態と比較して有利な特性を有し得る。いくつかの実施形態において、結晶性固体は、例えば高温で改善された化学的及び/又は物理的安定性を示す。ある特定の実施形態において、結晶性固体を含む組成物は、改善された化学的及び/又は物理的安定性を示す。いくつかの実施形態において、結晶性固体は、改善された保存安定性を有する。ある特定の実施形態において、結晶性固体は、非晶質形態よりも製造プロセスにおいて優れたハンドリング特性を示し、これにより、化合物、結晶性固体、及び組成物は、より高い純度、安定性及び/又は一貫性を有し得る。いくつかの実施形態において、結晶性固体は、典型的な薬学的処理条件下で処理しやすい場合がある。ある特定の実施形態において、改善された取り扱い特性は、改善された付着及び流動特性を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される結晶性固体は、非晶質形態と比較して吸湿性が低い。例えば、湿潤環境(例えば、少なくとも50%の湿度)に曝露した場合、結晶性固体は、同一の条件下で対応する非晶質形態よりも少ない水を占有し得る。ある特定の実施形態において、結晶性固体は、湿度に曝露した場合構造的完全性を維持し、例えば、腫脹又は不安定な形態への変換に対する感受性が低い場合がある。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される結晶性固体は、非晶質形態と比較して低い溶解性及び/又は溶解速度を有する。ある特定の実施形態において、薬物としての結晶性固体の効果を延長するために、結晶性固体の吸収を遅くすることが望ましい。例えば、いくつかの実施形態において、本明細書に記載される結晶性固体は、腸に効果的に送達され、胃内では有意に溶解しない。いくつかの実施形態において、持続放出効果は、例えば、結晶性固体の水性懸濁液の使用によって達成される。他の実施形態において、遅延放出は、固体材料を油性ビヒクルに溶解又は懸濁させることによって達成される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される結晶性固体は、非晶質形態よりも高い純度を有し、かつ/又は例えば低コストで、若しくはより少ない材料若しくは空間集約的な精製方法で、純粋な材料の大規模な調製を容易にする。いくつかのそのような実施形態において、本明細書に記載される結晶性固体及び方法は、大規模な精製、例えば、約1グラムを超える、約10グラムを超える、又は約100グラムを超える精製を促進する。
【0061】
結晶性固体を調製する方法
式(I)の化合物の結晶性固体を調製する方法も本明細書に提供される。ある特定の実施形態において、本開示は、a)式(I)の化合物を溶媒に溶解して、混合物を形成することと、b)混合物から式(I)の化合物を結晶化して、結晶性固体を形成することとを含む、式(I)の化合物の結晶性固体を調製する方法に関する。
【0062】
好ましい実施形態において、式(I)の化合物を含む混合物は、溶液である。他の実施形態において、混合物は、スラリー又は懸濁液である。いくつかの実施形態において、溶媒は、アルコール、ケトン、カルボン酸、エステル、エーテル、アルカン、水、アミン、及び類似の極性及び特性を有する他の液体、並びにそれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態において、溶媒は、アセトニトリル、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール、エタノール、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、メタノール、メチルエチルケトン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン、プロパノール、ブタノール、水、又はそれらの任意の組み合わせを含む。ある特定の実施形態において、溶媒は、その分枝及び非分枝異性体を含む、メタノール、エタノール、プロパノール、又はブタノールなどの直鎖又は分枝アルコールである。好ましい実施形態において、溶媒は、メタノールである。いくつかの実施形態において、溶媒は、本明細書に記載される溶媒のうちの2つ以上を含む。いくつかの実施形態において、溶媒は、無水である。
【0063】
ある特定の実施形態において、溶媒の温度は、溶解工程中に周囲温度を上回る。そのような実施形態において、方法は、溶媒を加熱することを含む。例えば、溶媒の温度は、約30~約50℃又は約30~約40℃、例えば約35℃であり得る。他の実施形態において、溶媒の温度は、溶解工程中の約周囲温度である。更に他の実施形態において、溶媒の温度は、溶解工程中に周囲温度を下回る。そのような実施形態において、方法は、溶媒を冷却することを含む。いくつかの実施形態において、溶媒の温度は、約20~約30℃、例えば、約25℃である。好ましい実施形態において、式(I)の化合物は、結晶化工程の前に溶媒中に完全に溶解される。完全に溶解することは、化合物がスラリー又は懸濁液ではなく均一な溶液中で生じることを意味する。他の実施形態において、式(I)の化合物は、結晶化工程の前に溶媒中に部分的に溶解される。
【0064】
ある特定の実施形態において、方法は、式(I)の化合物の混合物(例えば、溶液)から過飽和溶液を形成することを含み、過飽和溶液は、式(I)の化合物に対して過飽和である。いくつかの実施形態において、過飽和溶液は、約1~約4、例えば、約2の過飽和比を有する。いくつかのそのような実施形態において、式(I)の化合物を過飽和溶液から沈殿させる(例えば、結晶化させる)。いくつかの実施形態において、得られた沈殿物(例えば、結晶)は、本明細書に記載される結晶性固体である。
【0065】
過飽和溶液は、様々な方法に従って形成され得る。いくつかの実施形態において、過飽和溶液を形成することは、混合物(例えば、溶液)に貪溶媒を添加すること、混合物(例えば、溶液)の温度を低下させること、混合物(例えば、溶液)の体積を減少させること、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。例えば、方法は、貪溶媒を添加し、続いて得られた混合物を冷却し、続いて追加の貪溶媒を添加することを含み得る。
【0066】
ある特定の実施形態において、過飽和溶液を形成することは、式(I)の化合物を含む混合物の温度を低下させることを含む。いくつかのそのような実施形態において、溶液の温度は、約0~約25℃、約0~約10℃、又は約-5~約5℃、例えば約0℃に低下される。ある特定の実施形態において、溶液を冷却させることは、受動的(例えば、溶液を周囲温度に静置させること)又は能動的(例えば、氷浴又は冷凍庫中で溶液を冷却すること)であってもよい。
【0067】
いくつかの実施形態において、過飽和溶液を形成することは、式(I)の化合物を含む混合物に貪溶媒を添加することを含む。本明細書で使用される場合、「貪溶媒」は、式(I)及び(II)の化合物が不溶性、最小限に可溶性、又は部分的に可溶性である液体を意味する。実際には、式(I)及び(II)の化合物が溶解される溶液に貪溶媒を添加することは、溶媒中の式(I)及び(II)の化合物の溶解度を低下させ、それによって沈殿を刺激する。
【0068】
ある特定の実施形態において、貪溶媒は、制御されない結晶化を防止するためにゆっくりと添加されてもよい。いくつかの実施形態において、貪溶媒は、アルコール、ケトン、カルボン酸、エステル、エーテル、アルカン、水、アミン、及び溶媒と混和性である類似の極性及び特性を有する他の液体、並びにそれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態において、貪溶媒は、ヘキサン又はペンタン溶媒などのアルカン溶媒、又はベンゼン、トルエン、若しくはキシレンなどの芳香族炭化水素溶媒である。ある特定の実施形態において、貪溶媒は、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、メチルtert-ブチルエーテル、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、1-プロパノール、2-プロパノール、エタノール、変性エタノール、及びこれらの組み合わせから選択される。好ましい実施形態において、貪溶媒は、TBMEである。いくつかの実施形態において、貪溶媒は、本明細書に記載される溶媒のうちの2つ以上を含む。いくつかの実施形態において、溶媒の貪溶媒に対する比は、体積で約1:1~約8:1、又は体積で約4:1~約6:1、例えば体積で約5:1である。
【0069】
ある特定の実施形態において、方法は、溶媒を混合物から蒸発させることを更に含む。いくつかの実施形態において、溶媒は、減圧下で及び/又は溶媒が蒸発するように溶媒を加熱することによって除去され得る。
【0070】
ある特定の実施形態において、結晶化は、二次核形成を生じることを含む。いくつかの実施形態において、結晶化は、シード結晶を溶液に添加することを含み、シード結晶は式(I)の化合物を含む。ある特定の実施形態において、シード結晶は、事前の結晶化の間に形成される。ある特定のそのような実施形態において、事前の結晶化は、シード結晶が添加される結晶化よりも小さいスケールで行われる。
【0071】
他の実施形態において、二次核形成は、混合物の環境に対する他の変化によって引き起こされ得る。例えば、結晶化は、結晶化壁、撹拌インペラ、及び超音波処理を含むがこれらに限定されない環境変化によって促進され得る。
【0072】
好ましい実施形態において、方法は、例えば、結晶を濾過することによって、結晶から流体をデカントすることによって、又は任意の他の好適な分離技術によって、結晶性固体を単離することを含む。
【0073】
ある特定の実施形態において、方法は、式(II)の化合物を含む結晶性固体を洗浄すること、例えば、結晶性固体を溶媒又は本明細書に記載される溶媒及び/又は貪溶媒のうちの1つ以上の混合物で洗浄することを含む。ある特定の実施形態において、結晶性固体を洗浄することは、貪溶媒、溶媒、アルコール、ケトン、カルボン酸、エステル、エーテル、アルカン、水、アミン、類似の極性及び特性を有する他の液体、並びにそれらの組み合わせから選択される液体で洗浄することを含む。いくつかの実施形態において、液体は、アセトニトリル、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、プロパノール、又はブタノールなどのアルコール、水、ペンタン、ヘキサン、又はヘプタンなどのアルカン溶媒、ベンゼン、トルエン、又はキシレンなどの芳香族炭化水素溶媒、メチルtert-ブチルエーテル、及びそれらの組み合わせから選択される。ある特定の実施形態において、溶媒及び/又は貪溶媒は、洗浄する前に冷却される。いくつかの実施形態において、方法は、例えば、減圧下及び/又は結晶性固体を加熱することによって、並びに/又は窒素、アルゴン、若しくは空気などの乾燥ガスの流れの下で結晶性固体を乾燥させることを含む。
【0074】
ある特定の実施形態において、結晶性固体を作製する方法は、式(I)の化合物から1つ以上の不純物を除去する。いくつかの実施形態において、本方法は、式(I)の化合物を精製するためのクロマトグラフィー又は凍結乾燥を含まない。ある特定のそのような実施形態において、本明細書に記載される方法は、例えば、式(I)の化合物の製造における最終精製工程として、式(I)の化合物を精製するために使用される。
【0075】
本明細書に記載される方法は、とりわけ、式(I)の化合物から不純物を除去することの利点を提供し得る。好ましい実施形態において、結晶性固体は、約5%未満の不純物、約2%未満の不純物、約1%未満の不純物、又は約0.5%未満の不純物を含む。いくつかの好ましい実施形態において、結晶性固体は、約5%未満のニコチン酸プロピル、約2%未満のニコチン酸プロピル、約1%未満のニコチン酸プロピル、約0.5%未満のニコチン酸プロピル、又は約0.1%未満のニコチン酸プロピルを含む。いくつかの実施形態において、百分率は、重量基準によるものである。
【0076】
ある特定の好ましい実施形態において、式(II)の化合物を含む結晶性固体は、純粋又は実質的に純粋である。ある特定の好ましい実施形態において、結晶性固体は、約90%超の純度である。より好ましくは、結晶性固体は、約95%超の純度、又は更により好ましくは約98%超の純度である。いくつかの実施形態において、百分率は、重量基準によるものである。
【0077】
好ましい実施形態において、結晶性固体は、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約99.5%、又は少なくとも約99.9%の式(I)の化合物を含む。いくつかの実施形態において、百分率は、重量基準によるものである。
【0078】
本開示の別の態様は、式(II)の化合物の結晶性固体を調製する方法を提供する。ある特定の実施形態において、本開示は、a)式(II)の化合物を溶媒に溶解して、混合物を形成することと、b)混合物から式(II)の化合物を結晶化して、結晶性固体を形成することとを含む、式(II)の化合物の結晶性固体を調製する方法に関する。ある特定の実施形態において、方法は、ニコチン酸リボシドをリン含有基(例えば、オキシ塩化リン)と反応させて、溶解及び結晶化工程の前に式(II)の化合物を提供することを含む。
【0079】
好ましい実施形態において、式(II)の化合物を含む混合物は、溶液である。他の実施形態において、混合物は、スラリー又は懸濁液である。いくつかの実施形態において、溶媒は、アルコール、ケトン、カルボン酸、エステル、エーテル、アルカン、水、アミン、及び類似の極性及び特性を有する他の液体、並びにそれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態において、溶媒は、アセトニトリル、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール、エタノール、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、メタノール、メチルエチルケトン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン、プロパノール、ブタノール、水、又はそれらの任意の組み合わせを含む。ある特定の実施形態において、溶媒は、その分枝及び非分枝異性体を含む、メタノール、エタノール、プロパノール、又はブタノールなどの直鎖又は分枝アルコールである。好ましい実施形態において、溶媒は、水である。ある特定の実施形態において、溶媒は、1-プロパノールなどのアルコールを含む。いくつかの実施形態において、溶媒は、本明細書に記載される溶媒のうちの2つ以上を含む。いくつかの実施形態において、式(II)の化合物の、溶媒に対する比は、重量で約1:2~約1:4、例えば重量で約1:3である。
【0080】
ある特定の実施形態において、溶媒の温度は、溶解工程中に周囲温度を上回る。そのような実施形態において、方法は、溶媒を加熱することを含む。例えば、溶媒の温度は、約30~約50℃又は約30~約40℃、例えば約35℃であり得る。他の実施形態において、溶媒の温度は、溶解工程中の約周囲温度である。更に他の実施形態において、溶媒の温度は、溶解工程中に周囲温度を下回る。そのような実施形態において、方法は、溶媒を冷却することを含む。いくつかの実施形態において、溶媒の温度は、約20~約30℃、例えば、約25℃である。好ましい実施形態において、式(II)の化合物は、結晶化工程の前に溶媒中に完全に溶解される。完全に溶解することは、化合物がスラリー又は懸濁液ではなく均一な溶液中で生じることを意味する。他の実施形態において、式(II)の化合物は、結晶化工程の前に溶媒中に部分的に溶解される。
【0081】
ある特定の実施形態において、方法は、式(II)の化合物の混合物(例えば、溶液)から過飽和溶液を形成することを含み、過飽和溶液は、式(II)の化合物に対して過飽和である。いくつかの実施形態において、過飽和溶液は、1~約4、例えば、約2の過飽和比を有する。いくつかのそのような実施形態において、式(I)の化合物を過飽和溶液から沈殿させる(例えば、結晶化させる)。いくつかの実施形態において、得られた沈殿物(例えば、結晶)は、本明細書に記載される結晶性固体である。
【0082】
過飽和溶液は、様々な方法に従って形成され得る。いくつかの実施形態において、過飽和溶液を形成することは、混合物(例えば、溶液)に貪溶媒を添加すること、混合物(例えば、溶液)の温度を低下させること、混合物(例えば、溶液)の体積を減少させること、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。例えば、方法は、貪溶媒を添加し、続いて得られた混合物を冷却し、続いて追加の貪溶媒を添加することを含み得る。
【0083】
ある特定の実施形態において、過飽和溶液を形成することは、式(II)の化合物を含む混合物の温度を低下させることを含む。いくつかのそのような実施形態において、溶液の温度は、約0~約25℃、約0~約10℃、又は約-5~約5℃、例えば約0℃に低下される。ある特定の実施形態において、溶液を冷却させることは、受動的(例えば、溶液を周囲温度に静置させること)又は能動的(例えば、氷浴又は冷凍庫中で溶液を冷却すること)であってもよい。
【0084】
いくつかの実施形態において、過飽和溶液を形成することは、式(II)の化合物を含む混合物に貪溶媒を添加することを含む。ある特定の実施形態において、貪溶媒は、制御されない結晶化を防止するためにゆっくりと添加されてもよい。いくつかの実施形態において、貪溶媒は、アルコール、ケトン、カルボン酸、エステル、エーテル、アルカン、水、アミン、及び溶媒と混和性である類似の極性及び特性を有する他の液体、並びにそれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態において、貪溶媒は、ヘキサン又はペンタン溶媒などのアルカン溶媒、又はベンゼン、トルエン、若しくはキシレンなどの芳香族炭化水素溶媒である。ある特定の実施形態において、貪溶媒は、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、メチルtert-ブチルエーテル、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン及びそれらの組み合わせから選択される。他の実施形態において、溶媒は、その分枝及び非分枝異性体を含む、メタノール、エタノール、プロパノール、又はブタノールなどの直鎖又は分枝アルコールである。好ましい実施形態において、貪溶媒は、1-プロパノールである。いくつかの実施形態において、貪溶媒は、本明細書に記載される溶媒のうちの2つ以上を含む。いくつかの実施形態において、溶媒の貪溶媒に対する比は、体積で約1:0~約1:2、又は体積で約1:0~約6:7、例えば体積で約6:7である。ある特定の実施形態において、過飽和溶液は、貪溶媒を添加することなく形成される。
【0085】
ある特定の実施形態において、方法は、溶媒を混合物から蒸発させることを更に含む。いくつかの実施形態において、溶媒は、減圧下で及び/又は溶媒が蒸発するように溶媒を加熱することによって除去され得る。
【0086】
いくつかの実施形態において、方法は、酸又は塩基を添加して混合物(例えば、溶液)のpHを調整し、式(II)の化合物のプロトン化状態を変化させることを更に含む。ある特定の実施形態において、塩基は、トリエチルアミンなどのアミンである。いくつかの実施形態において、方法は、塩基を溶液に添加することを更に含む。ある特定の実施形態において、溶液のpHは、約2~約4、例えば、約3に調節される。
【0087】
ある特定の実施形態において、結晶化は、二次核形成を生じることを含む。いくつかの実施形態において、結晶化は、シード結晶を溶液に添加することを含み、シード結晶は式(II)の化合物を含む。ある特定の実施形態において、シード結晶は、事前の結晶化の間に形成される。ある特定のそのような実施形態において、事前の結晶化は、シード結晶が添加される結晶化よりも小さいスケールで行われる。
【0088】
他の実施形態において、二次核形成は、混合物の環境に対する他の変化によって引き起こされ得る。例えば、結晶化は、結晶化壁、撹拌インペラ、及び超音波処理を含むがこれらに限定されない環境変化によって促進され得る。
【0089】
好ましい実施形態において、方法は、例えば、結晶を濾過することによって、結晶から流体をデカントすることによって、又は任意の他の好適な分離技術によって、結晶性固体を単離することを含む。
【0090】
ある特定の実施形態において、方法は、式(II)の化合物を含む結晶性固体を洗浄すること、例えば、結晶性固体を溶媒又は本明細書に記載される溶媒及び/又は貪溶媒のうちの1つ以上の混合物で洗浄することを含む。ある特定の実施形態において、結晶性固体を洗浄することは、貪溶媒、溶媒、アルコール、ケトン、カルボン酸、エステル、エーテル、アルカン、水、アミン、類似の極性及び特性を有する他の液体、並びにそれらの組み合わせから選択される液体で洗浄することを含む。いくつかの実施形態において、液体は、アセトニトリル、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、プロパノール、又はブタノールなどのアルコール、水、ペンタン、ヘキサン、又はヘプタンなどのアルカン溶媒、ベンゼン、トルエン、又はキシレンなどの芳香族炭化水素溶媒、メチルtert-ブチルエーテル、及びそれらの組み合わせから選択される。好ましい実施形態において、方法は、1-プロパノールの体積で2:1の混合物で水に結晶性固体を洗浄し、任意選択的に続いてMTBEで結晶性固体を洗浄することを含む。ある特定の実施形態において、溶媒及び/又は貪溶媒は、洗浄する前に冷却される。いくつかの実施形態において、方法は、例えば減圧下及び/又は結晶性固体を加熱することによって、結晶性固体を乾燥させることを含む。
【0091】
ある特定の実施形態において、結晶性固体を作製する方法は、式(II)の化合物から1つ以上の不純物を除去する。いくつかの実施形態において、本方法は、式(II)の化合物を精製するためのクロマトグラフィー又は凍結乾燥を含まない。ある特定のそのような実施形態において、本明細書に記載される方法は、例えば、式(II)の化合物の製造における最終精製工程として、式(II)の化合物を精製するために使用される。
【0092】
本明細書に記載される方法は、とりわけ、式(II)の化合物から不純物を除去することの利点を提供し得る。好ましい実施形態において、結晶性固体は、約5%未満の不純物、約2%未満の不純物、約1%未満の不純物、又は約0.5%未満の不純物を含む。いくつかの好ましい実施形態において、結晶性固体は、約5%未満のニコチン酸リボシド、約2%未満のニコチン酸リボシド、約1%未満のニコチン酸リボシド、約0.5%未満のニコチン酸リボシド、又は約0.1%未満のニコチン酸リボシドを含む。いくつかの実施形態において、百分率は、重量基準によるものである。
【0093】
ある特定の好ましい実施形態において、式(II)の化合物を含む結晶性固体は、純粋又は実質的に純粋である。ある特定の好ましい実施形態において、結晶性固体は、約90%超の純度である。より好ましくは、結晶性固体は、約95%超の純度、又は更により好ましくは約98%超の純度である。いくつかの実施形態において、百分率は、重量基準によるものである。
【0094】
好ましい実施形態において、結晶性固体は、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約99.5%、又は少なくとも約99.9%の式(II)の化合物を含む。いくつかの実施形態において、百分率は、重量基準によるものである。
【0095】
合成
様々な実施形態において、本開示は、式Iの化合物を形成する方法を提供し、
【化5】
式中、Rが、C1-C6アルキル又はC2-C6アルケニルであり、方法が、式(II)の化合物を、
【化6】
酸の存在下でアルコールR-OHと接触させることを含む。例えば、スキーム1を参照されたい。
【化7】
【0096】
ある特定の実施形態において、Rは、C1-C6アルキルである。いくつかの実施形態において、Rは、C1-C4アルキル又はC2-C4アルケニルである。ある特定の実施形態において、Rは、C3アルキルである。ある特定の実施形態において、Rは、n-プロピルである。
【0097】
いくつかの実施形態において、酸は、強酸である。いくつかの実施形態において、酸は、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などである。他の実施形態において、酸は、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタン-ジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、サリチル酸、ムコン酸などの有機酸である。好ましい実施形態において、酸は、HClである。
【0098】
いくつかの実施形態において、方法は、式(II)の化合物を精製することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、式(II)の化合物からトリエチルアンモニウム塩などのアンモニウム塩を除去することを含む。ある特定の実施形態において、式(II)の化合物は、結晶性固体として提供される。いくつかの実施形態において、方法は、本明細書に記載される方法に従って式(II)の化合物を結晶化することを含む。
【0099】
いくつかの実施形態において、方法は、溶液などの混合物を形成するために、式(II)の化合物に溶媒を添加することを含む。いくつかの実施形態において、溶媒は、極性溶媒である。極性溶媒としては、例えば、ヒドロキシル、カルボニル、エーテル、エステル、アミン、アミド、及びカルボキシル基から選択され得る極性基が挙げられる。いくつかの実施形態において、溶媒は、水を含む。好ましい実施形態において、アルコールR-OHは、反応溶媒である。好ましい実施形態において、溶媒は、その分枝及び非分枝異性体を含む、メタノール、エタノール、プロパノール、又はブタノールなどの直鎖又は分枝アルコールである。より好ましい実施形態において、溶媒は、1-プロパノール又は2-プロパノールなどのプロパノールである。いくつかの実施形態において、式(II)の化合物を含む混合物の温度は、約-5~約10℃、約-5~約5℃、又は約0℃である。
【0100】
いくつかの実施形態において、方法は、式(II)の化合物とアルコールとを混合することを含む。ある特定の実施形態において、混合工程は、約12~約72時間、約12~約48時間、又は約12~約24時間行われる。いくつかの実施形態において、式(II)の化合物を含む混合物は、混合工程を通して約-5~約10℃、約-5~約5℃、又は約0℃である。
【0101】
いくつかの実施形態において、方法は、塩基を添加することを含む。様々な実施形態において、塩基は、約12~約72時間後、約12~約48時間後、又は約12~約24時間後に添加される。いくつかの実施形態において、塩基は、反応混合物のpHが約4~約5になるまで添加される。ある特定の実施形態において、薬剤は、アミン塩基である。ある特定のそのような実施形態において、塩基は、トリアルキルアミン塩基である。好ましい実施形態において、塩基は、トリエチルアミンである。更なる実施形態において、方法は、反応混合物に式(I)の化合物のシード結晶を添加することを含む。
【0102】
様々な実施形態において、方法は、得られた生成物(すなわち、式(I)の化合物)を精製することを含む。いくつかの実施形態において、生成物を精製することは、クロマトグラフィーを含む。他の実施形態において、生成物を精製することは、クロマトグラフィーを含まない。好ましい実施形態において、生成物を精製することは、本明細書に記載される方法に従って式(I)の化合物を結晶化することを含む。好ましい実施形態において、式(I)の化合物は、本明細書に記載される結晶性固体として提供される。
【0103】
治療方法、疾患、障害、及び状態
本明細書に記載される化合物、結晶性固体、及び/又は組成物を投与することを含む、それを必要とする対象におけるNADレベルを調節する方法が本明細書に提供される。本明細書に記載される任意の化合物、結晶性固体、又は組成物は、本明細書に開示される任意の疾患又は状態の治療のための医薬品の製造に使用することができる。
【0104】
本明細書に記載される化合物、結晶性固体、及び/又は組成物を投与することを含む、NAD生合成に関連する疾患又は障害を治療する方法が本明細書に提供される。
【0105】
開示される化合物、結晶性固体、及びそれらの薬学的組成物を使用するための方法が本明細書に提供される。開示される化合物、結晶性固体、及びそれらの薬学的組成物は、例えば、老化又はストレス、糖尿病、肥満、神経変性疾患、運動失調及び関連する筋肉障害、急性臓器不全、サイトカインストームなどのウイルス症状、心血管疾患、血液凝固障害、炎症、がん、及び/又はフラッシングなどに関連する疾患又は障害を含む、多種多様な疾患及び障害を治療及び/又は軽減することを含む、様々な治療用途に有用であり得る。方法は、開示される化合物、結晶性固体、及び/又はそれらの薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。開示される化合物、結晶性固体、及びそれらの薬学的組成物は、特定の組織又は細胞におけるNADレベルを増加又は維持しながら、他の組織又は細胞におけるNADレベルを減少させるのに有用であり得る。様々な実施形態において、開示される化合物、結晶性固体、及びそれらの薬学的組成物を使用して、一部の組織又は細胞におけるNADレベルを選択的に低下させるが、他の組織又は細胞におけるNADレベルをより低い程度まで低下させることができる。
【0106】
開示される化合物、結晶性固体、及びそれらの薬学的組成物はまた、炎症に関連する疾患又は障害を治療するために使用することもできる。例示的な炎症状態としては、例えば、多発性硬化症、リウマチ性関節炎、乾癬性関節炎、変性関節疾患、脊椎関節症、痛風性関節炎、全身性エリテマトーデス、若年性関節炎、リウマチ性関節炎、変形性関節症、骨粗しょう症、糖尿病(例えば、インスリン依存性糖尿病又は若年性糖尿病)、月経痛、嚢胞性線維症、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、クローン病、粘液性大腸炎、潰瘍性大腸炎、胃炎、食道炎、膵炎、腹膜炎、アルツハイマー病、ショック、強直性脊椎炎、胃炎、結膜炎、膵炎(急性又は慢性)、多臓器損傷症候群(例えば、敗血症又は外傷に続発する)、心筋梗塞、動脈硬化症、脳卒中、再灌流損傷(例えば、心肺バイパス又は腎臓透析による)、急性糸球体腎炎、血管炎、熱損傷(すなわち、日焼け)、壊死性腸炎、顆粒球輸血関連症候群、及びシェーグレン症候群が挙げられる。皮膚の例示的な炎症状態として、例えば、湿疹、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、蕁麻疹、強皮症、乾癬、及び急性炎症性成分を有する皮膚疾患が挙げられる。
【0107】
他の実施形態において、開示される化合物、結晶性固体、及び/又はそれらの薬学的組成物を使用して、皮膚状態を治療することができる。本明細書に記載される方法に従って治療され得る例示的な皮膚状態としては、炎症、日光損傷、又は自然老化に関連する又はそれによって引き起こされる障害又は疾患が挙げられる。例えば、この組成物は、接触性皮膚炎(刺激性接触性皮膚炎及びアレルギー性接触性皮膚炎を含む)、アトピー性皮膚炎(アレルギー性湿疹としても知られる)、光線性角化症、角化障害(湿疹を含む)、水疱性表皮溶解症、剥離性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、紅斑(多形性紅斑及び結節性紅斑を含む)、太陽又は他の光源によって引き起こされる損傷、円板状エリテマトーデス、皮膚筋炎、乾癬、皮膚がん及び自然老化の影響の治療に有用性を見出す。他の実施形態において、開示される化合物、結晶性固体、及びそれらの薬学的組成物は、例えば、第1、第2又は第3の度合いの火傷及び/又は熱的、化学的若しくは電気的火傷を含む、治癒を促進するための創傷及び/又は火傷の治療に使用され得る。
【0108】
開示される化合物、結晶性固体、及びそれらの薬学的組成物はまた、急性疾患、例えば、臓器若しくは組織への損傷に罹患している対象、例えば、脳卒中若しくは心筋梗塞に罹患している対象、脊髄損傷に罹患している対象、又は肝臓若しくは腎臓などの固形臓器の移植を受けている対象にも投与することができる。いくつかの実施形態において、化合物、結晶性固体及びそれらの薬学的組成物は、急性腎不全(ARF)としても知られる急性腎損傷(AKI)に罹患している対象に投与されてもよい。AKIに罹患している対象又はAKIに罹患するリスクのある対象は、例えば、血清クレアチニンの異常レベルを試験することによって、腎機能についてスクリーニングされ得る。対象は、予防的に又はステージ1 AKIなどの急性腎損傷に応答して治療されてもよい。固形臓器移植を受けている対象は、臓器保存の一形態として、予防的に、若しくは移植後に治療されてもよく、又は個々の臓器は、移植前に体外で治療されてもよい。生検、切除、又は外傷性損傷の修復などの臓器移植以外の手術を受けている対象は、予防的に、又は手術後に治療され得る。
【0109】
開示される化合物、結晶性固体、及びそれらの薬学的組成物はまた、腎臓又は肝臓などの固形臓器の慢性損傷又は慢性疾患に罹患しているか、又は罹患する可能性が高い対象にも使用され得る。いくつかの実施形態において、結晶性固体及びその薬学的組成物は、末期腎不全、又は腎症、又は糖尿病性腎症などの慢性腎疾患に罹患している対象に投与されてもよい。いくつかの実施形態において、結晶性固体及びその薬学的組成物は、肝臓への更なる損傷を修復又は制限するために、慢性感染症、肝硬変、又は肝がんなどの慢性肝疾患に罹患している対象に投与されてもよい。いくつかの実施形態において、結晶性固体及びその薬学的組成物は、アルコール性肝臓を修復するために、又は非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)若しくは非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)からの損傷を安定化若しくは修復するために投与してもよい。
【0110】
ある特定の実施形態において、本明細書に開示される化合物、結晶性固体、又は薬学的組成物は、対象において細胞老化によって誘発又は悪化する疾患又は状態を治療又は予防するために、例えば、老化の開始後に、対象の老化速度を低下させるための方法、対象の寿命を延ばすための方法、寿命に関連する疾患又は状態を治療又は予防するための方法、細胞の増殖能力に関連する疾患又は状態を治療又は予防するための方法、並びに細胞損傷又は死に起因する疾患又は状態を治療又は予防するための方法を使用してもよい。ある特定の実施形態において、方法は、対象の寿命を短縮する疾患の発症率を減少させることによって作用しない。ある特定の実施形態において、方法は、がんなどの疾患によって引き起こされる致死性を低下させることによって作用しない。
【0111】
ある特定の実施形態において、本明細書に開示される化合物、結晶性固体、又は薬学的組成物は、その細胞の寿命を一般に延ばし、ストレス及び/又はアポトーシスからその細胞を保護するために、対象に投与されてもよい。本明細書に記載される化合物又は結晶性固体で対象を治療することは、対象をホルメシス、すなわち、生物に有益であり、その寿命を延ばし得る軽度のストレスにさらすことと同様であり得る。
【0112】
他の実施形態において、開示される化合物、結晶性固体、及び/又はそれらの薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与することによって心血管疾患を治療するための方法が本明細書に提供される。開示される化合物、結晶性固体、及びそれらの薬学的組成物を使用して治療することができる心血管疾患としては、特発性心筋症、代謝性心筋症、アルコール性心筋症、薬物誘発性心筋症、虚血性心筋症、及び高血圧性心筋症などの心筋症又は心筋炎が挙げられる。また、本明細書に記載される組成物及び方法を使用して治療可能なのは、大動脈、冠動脈、頸動脈、脳血管動脈、腎動脈、腸骨動脈、大腿動脈、及び膝窩動脈などの大血管のアテローム性障害(大血管疾患)である。治療することができる他の血管疾患としては、血小板凝集、網膜動脈、糸球体動脈、神経血管、心臓動脈、及び眼、腎臓、心臓、並びに中枢及び末梢神経系の関連する毛細血管床に関連するものが挙げられる。開示される化合物、結晶性固体、及びそれらの薬学的組成物は、個体の血漿中のHDLレベルを増加させるためにも使用し得る。
【0113】
開示される化合物、結晶性固体、及びそれらの薬学的組成物は、最近放射線又は毒素の用量を受けた、又は受けそうな対象に投与してもよい。一実施形態において、放射線又は毒素の用量は、作業関連又は医療処置、例えば、原子力発電所での作業、飛行機の飛行、X線、CATスキャン、又は医療撮像のための放射性染料の投与の一部として受け取られる。そのような実施形態において、化合物又は結晶性固体は、予防措置として投与される。他の実施形態において、放射線又は毒素曝露は、例えば、産業事故、自然放射線の場所での居住、テロ行為、又は放射性又は毒性物質を含む戦争行為の結果として、意図せずに受信される。そのような場合、開示される化合物、結晶性固体、及びそれらの薬学的組成物は、アポトーシスを阻害するための曝露及びその後の急性放射線症候群の発症後、できるだけ早く投与されることが好ましい。
【0114】
他の実施形態において、開示される化合物、結晶性固体、及びそれらの薬学的組成物は、例えば、がんなどの加齢性障害を治療するために有用であり得る。開示される化合物、結晶性固体、及びそれらの薬学的組成物を使用して治療され得る例示的ながんとしては、脳及び腎臓のがん、乳がん、前立腺がん、精巣がん、及び卵巣がんを含むホルモン依存性がん、リンパ腫、及び白血病が挙げられる。治療することができる他の疾患としては、自己免疫細胞を除去すべき自己免疫疾患、例えば、全身性エリテマトーデス、強皮症、及び関節炎が挙げられる。
【0115】
ヘルペス、HIV、アデノウイルス、及びHTLV-1関連の悪性及び良性疾患などのウイルス感染症も、開示される化合物、結晶性固体、及びそれらの薬学的組成物の投与によって治療することができる。
【0116】
いくつかの実施形態において、開示される化合物、結晶性固体、及びそれらの薬学的組成物は、サイトカイン放出症候群(サイトカインストーム)などの症状を経験するものを含む、COVID-19及び他のウイルス感染症などの感染症に罹患している患者を治療するために使用することができる。いくつかの実施形態において、化合物、結晶性固体、及びそれらの薬学的組成物は、必ずしも基礎となるウイルス感染(例えば、COVID-19)を治療することなく、サイトカインストームを緩和又は予防する。サイトカイン放出症候群は、様々な原因から生じ得る急性全身性炎症症候群である。特に、サイトカインストームは、COVID-19及び他の重篤なウイルス症候群(SARS、MERS)で説明されている。患者のサブセットは、顕著に上昇したサイトカインを示し、重症患者はまた、はるかに高いレベルのIL6、CRP、フェリチン、D-二量体、及び他のマーカー、並びにリンパ球減少症(CD4+及びCD8+T細胞の数の減少)を示すことができる。例えば、ある報告では、入院時のD-ダイマーレベルが2.0ug/mlを超えると、死亡する可能性が高い患者のサブセットが特定された(12/67>=2.0対1/267<2.0、感度92.3%、特異度83.3%)(“D-dimer levels on admission to predict in-hospital mortality in patients with Covid-19.”Zhang L,Yan X,Fan Q,et al.J Thromb Haemost.2020 Apr 19)。NADは、サイトカインストームを調節し得る、IL-1βのNLRP3インフラマソーム放出を調節する。NADレベルは年齢とともに低下することが知られており、高齢のCOVID-19患者の転帰の悪化にも寄与する可能性がある。本開示の一態様は、硫酸亜鉛、ベタイン、又はそれらの混合物の投与の不在下で、本開示の化合物、結晶性固体、及びそれらの薬学的組成物を当該患者に投与することを含む、ヒト患者におけるCOVID-19を治療する方法を提供する。
【0117】
いくつかの実施形態において、開示される化合物、結晶性固体、及びそれらの薬学的組成物を使用して、神経変性疾患、及び中枢神経系(CNS)又は末梢神経系(PNS)への外傷性又は機械的損傷に罹患している患者を治療することができる。神経変性疾患の例としては、運動失調症、アルツハイマー病(AD)、アルツハイマー病以外の認知症、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS、ルーゲーリッグ病)、びまん性ルビー体病、有棘赤血球舞踏病、原発性側索硬化症、多発性硬化症(MS)、眼疾患(眼神経炎)、脊髄筋萎縮、化学療法誘発性ニューロパシー(例えば、ビンクリスチン、パクリタキセル、ボルテゾミブ由来)、糖尿病誘発性ニューロパシー、及びフリードライヒ運動失調症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0118】
いくつかの実施形態において、開示される化合物、結晶性固体、及びそれらの薬学的組成物は、骨格筋障害、筋肉障害、及び筋肉喪失、萎縮、及びサルコペニアを含む状態の治療に使用されてもよい。
【0119】
他の実施形態において、開示される化合物、結晶性固体、及びそれらの薬学的組成物は、食欲を減少させる及び/又は満腹感を増加させるために使用され得、それによって体重減少又は体重増加の回避を引き起こす。そのような治療を必要とする対象は、太りすぎ、肥満、又は太りすぎ若しくは肥満になる可能性が高い対象であり得る。
【0120】
他の実施形態において、開示される化合物、結晶性固体、及びそれらの薬学的組成物を使用して、悪液質を有するか、又は悪液質を発症する可能性がある対象を治療してもよい。方法は、対象の疾患の状態を監視することを更に含み得る。食欲及び/又は体重増加を促進するための方法としては、例えば、対象の体重を測定し、対象のBMIを決定することによって、例えば、減少した脂肪又は脂質代謝を必要とする対象を事前に特定することが挙げられ得る。方法はまた、例えば、開示される化合物、結晶性固体、又はそれらの薬学的組成物の投与中及び/又は投与後に、対象を監視することを含み得る。投与は、例えば、ボーラス又は連続的に送達される1つ以上の用量を含むことができる。モニタリングは、ホルモン又は代謝物を評価することを含むことができる。例示的なホルモンとしては、レプチン、アジポネクチン、レジスチン、及びインスリンが挙げられる。例示的な代謝産物としては、トリグリセリド、コレステロール、及び脂肪酸が挙げられる。
【0121】
いくつかの実施形態において、開示される化合物、結晶性固体、及びそれらの薬学的組成物は、インスリン抵抗性、糖尿病前状態、II型糖尿病、及び/又はその合併症などの代謝障害を治療するために使用され得る。開示される化合物、結晶性固体、及びそれらの薬学的組成物の投与は、対象においてインスリン感受性を増加させ、及び/又はインスリンレベルを減少させ得る。そのような治療を必要とする対象は、インスリン抵抗性又はII型糖尿病の他の前駆症状を有する対象、II型糖尿病を有する対象、又はこれらの状態のいずれかを発症する可能性が高い対象であり得る。例えば、対象は、インスリン抵抗性を有する対象、例えば、インスリンの高循環レベルを有する対象、及び/又は関連する状態、例えば、高脂血症、脂質異常、高コレステロール血症、耐糖能障害、高血糖レベル、症候群Xの他の症状、高血圧、アテローム性動脈硬化症、及びリポジストロフィーを有する対象であり得る。
【0122】
哺乳動物における血糖濃度を調節するためのプロセスが本明細書に提供される。本明細書で使用される場合、血糖の濃度を調節することは、以前に決定されたレベルと比較して、血糖の濃度における、又はその濃度の任意の増加、減少、及び/又は維持を指す。
【0123】
本明細書に開示される治療方法はまた、概日時計を調節する方法を対象とし、それによって、概日時計の活性によって調節される(時には影響を受ける、関連する、又は媒介されるとも言われる)生物学的機能を調節又は影響する。典型的には、これらの生物学的機能は、一般に約24時間ごとに繰り返され、24時間の間に「活性」状態と「非活性」状態との間で振動する活性及び非活性のパターンを示す。
【0124】
したがって、本開示は、本明細書に開示される化合物、結晶性固体、又は薬学的組成物を必要とする哺乳動物に投与することによって概日時計の活性を調節する方法を提供する。一般に、概日時計の活性の調節は、SIRT1の活性を調節することによって本方法に従って達成される、CLOCK:BMAL1の調節の結果である。SIRT1の活性は、一般に、本明細書に開示される化合物、結晶性固体、又は薬学的組成物の投与によって、及びある特定の実施形態において、NAD経路に影響を与える化合物又は結晶性固体の投与によって、本方法に従って調節される。それによって、概日時計の調節は、概日時計によって媒介される活動の調節を可能にする。
【0125】
本開示によれば、概日時計の活性は、本明細書に開示される化合物、結晶性固体、又は薬学的組成物の投与によって増加、減少、又は維持され得る。したがって、概日時計の活性によって調節される生物学的機能(生物学的活性と称されることもある)もまた、増加、減少、又は維持され得る。加えて、これらの生物学的機能はまた、時間シフトされてもよく、すなわち、例えば、昼間又は昼間の時間(光サイクルと称されることもある)、又は夜間又は夜間の時間(暗いサイクルと称されることもある)などの特定の期間中に典型的に生じる活動は、代わりに、活動が暗いサイクル又は明るいサイクル中にそれぞれ生じるようにシフトされてもよい。
【0126】
様々な実施形態において、本明細書に開示されるのは、2つ以上の組織又は細胞型におけるニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)レベルを差次的に調節する方法である。そのような方法は、本明細書に開示される化合物、結晶性固体、又は組成物を投与することを含み得、当該投与は、第2の組織又は細胞型と比較して、第1の組織又は細胞型においてNADレベルにおいて差異応答を誘導する。様々な実施形態において、NADレベルにおける差異応答は、NADレベルにおける少なくとも10%の差異、NADレベルにおける少なくとも20%の差異、NADレベルにおける少なくとも30%の差異、NADレベルにおける少なくとも40%の差異、NADレベルにおける少なくとも50%の差異、NADレベルにおける少なくとも60%の差異、NADレベルにおける少なくとも70%の差異、NADレベルにおける少なくとも80%の差異、NADレベルにおける少なくとも90%の差異、NADレベルにおける少なくとも100%の差異、NADレベルにおける少なくとも200%の差異、NADレベルにおける少なくとも300%の差異、NADレベルにおける少なくとも400%の差異、NADレベルにおける少なくとも500%の差異、NADレベルにおける少なくとも600%の差異、NADレベルにおける少なくとも700%の差異、NADレベルにおける少なくとも800%の差異、NADレベルにおける少なくとも900%の差異、及びNADレベルにおける少なくとも1000%の差異から選択される。様々な実施形態において、NADレベルの差異応答は、治療前の未治療のNADレベル又はNADレベルと比較した、第1の組織又は細胞型における少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、又は1000%のNADレベルの増加と、治療前の未治療のNADレベル又はNADレベルと比較した、第2の組織又は細胞型における少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、又は1000%のNADレベルの同時減少とである。様々な実施形態において、NADレベルの差異応答は、未処理のNADレベルと比較した、当該第1の組織又は細胞型における10%以内のNADレベルの維持、及び未処理のNADレベルと比較した、第2の組織又は細胞型における少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、又は1000%のNADレベルの同時減少である。様々な実施形態において、NADレベルの差異応答は、未処理のNADレベルと比較した第1の組織又は細胞型における少なくとも10%のNADレベルの減少、及び未処理のNADレベルと比較した第2の組織又は細胞型におけるNADレベルの同時減少であり、第2の組織又は細胞型における減少は、第1の組織又は細胞型における減少よりも少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、又は1000%より減少する。様々な実施形態において、第1の組織又は細胞型は、正常組織又は細胞であり、第2の組織又は細胞型は、腫瘍性又はがん性である。
【0127】
本明細書に開示されるがんの治療方法は、それを必要とする個体の治療を含む。開示される化合物、結晶性固体、及びそれらの薬学的組成物を使用して治療され得る例示的ながんとしては、脳及び腎臓のがん、乳がん、前立腺がん、精巣がん、及び卵巣がんを含むホルモン依存性がん、リンパ腫、及び白血病が挙げられる。様々な実施形態において、がんは、肺がん、前立腺がん、結腸直腸がん、及び胃がんなどの男性におけるがんの一般的なタイプであり得る。様々な実施形態において、がんは、乳がん、結腸直腸がん、肺がん、及び子宮頸部がんなどの女性におけるがんの一般的なタイプであり得る。様々な実施形態において、がんは、黒色腫、扁平上皮がん、又は基底細胞がんなどの皮膚がんであり得る。様々な実施形態において、がんは、急性リンパ芽球性白血病、脳腫瘍、又は非ホジキンリンパ腫などの小児におけるがんの一般的なタイプであり得る。様々な実施形態において、方法は、選択的な細胞抑制又は細胞傷害効果を示し、その効果は、未治療の腫瘍性又はがん性組織又は細胞と比較して、腫瘍性又はがん性組織又は細胞の生存率の低下によって実証される。
【0128】
方法は、第1の組織又は細胞型が正常な組織又は細胞である状況を含み、方法は、それを必要とする個体における第1の組織又は細胞型の健康の促進又は生物活性の増加のための治療である。様々な実施形態において、治療は、治療された個体におけるがん診断のリスクの増加を誘発しない。好ましくは、治療は、治療を受けている個体におけるがん診断のリスクを低減する。
【0129】
様々な方法は、それを必要とする個体においてがんを治療又は抑制することを含み、方法は、本明細書に記載される化合物、結晶性固体、又は組成物を投与することを含む。様々な実施形態において、本明細書に開示されるのは、腫瘍性又はがん性の組織又は細胞の成長のリスクを増加させることなく、それを必要とする個体の健康な組織又は細胞を増加又は維持する方法であり、そのような方法は、本明細書に記載される化合物、結晶性固体、又は組成物を投与することを含む。
【0130】
様々な実施形態において、本明細書に記載されるのは、腫瘍性又はがん性の組織又は細胞の成長を抑制しながら、それを必要とする個体の健康な組織又は細胞を増加又は維持する方法であり、そのような方法は、本明細書に記載される化合物、結晶性固体、又は組成物を投与することを含む。様々な実施形態において、開示される方法は、少なくとも1つの健康な組織又は細胞型におけるニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)レベルを増加又は維持する方法を含み、そのような方法は、本明細書に記載される化合物、結晶性固体、又は組成物を健康な組織又は細胞型に投与することを含む。様々な実施形態において、本明細書に記載されるのは、少なくとも1つのがん組織又は細胞型の生存率を低下させる方法であり、そのような方法は、本明細書に記載される化合物、結晶性固体、又は組成物をがん組織又は細胞型に投与することを含む。
【0131】
加えて、本明細書に記載される方法は、組織又は細胞型の混合物中の少なくとも1つの組織又は細胞型におけるNADのレベルを調節する方法を含み、そのような方法は、所望の組織又は細胞型への本明細書に記載される化合物、結晶性固体、又は組成物の標的送達を含む。様々な実施形態において、標的送達は、非全身性である。
【0132】
組成物及び薬学的組成物
開示される化合物及び結晶性固体の組成物も本明細書に提供される。ある特定の実施形態において、組成物は、1)式(I)又は式(II)の化合物又はその塩を含む結晶性固体、及び2)1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む。他の実施形態において、組成物は、1)式(I)又は式(II)の化合物又はその塩、及び2)1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0133】
いくつかの実施形態において、組成物は、溶液である。例えば、いくつかの実施形態において、式(I)又は式(II)の化合物を含む結晶性固体を溶媒又は担体に溶解して、式(I)又は式(II)の化合物の溶液を形成する。好ましい実施形態において、結晶性固体は、得られた溶液が純粋又は実質的に純粋であり、かつ/又は1つ以上の不純物を含まないか、又は実質的に含まないような純度である。
【0134】
ある特定の好ましい実施形態において、本開示は、式(I)若しくは式(II)の化合物を含む組成物、又は式(I)若しくは式(II)の化合物を含む結晶性固体を提供し、組成物は、純粋又は実質的に純粋である。ある特定の好ましい実施形態において、組成物は、約90%超の純度である。より好ましくは、組成物は、約95%超の純度であるか、更により好ましくは約98%超の純度であり、例えば、約98%超の純度である。いくつかの実施形態において、百分率は、重量基準によるものである。
【0135】
好ましい実施形態において、組成物は、約5%未満の不純物、約2%未満の不純物、約1%未満の不純物、又は約0.5%未満の不純物を含む。例えば、組成物が式(I)の化合物を含む好ましい実施形態において、組成物は、約5%未満のニコチン酸プロピル、約2%未満のニコチン酸プロピル、約1%未満のニコチン酸プロピル、約0.5%未満のニコチン酸プロピル、約0.1%未満のニコチン酸プロピル、又は約0.01%未満のニコチン酸プロピルを含む。組成物が式(II)の化合物を含む好ましい実施形態において、組成物は、約5%未満のニコチン酸リボシド、約2%未満のニコチン酸リボシド、約1%未満のニコチン酸リボシド、約0.5%未満のニコチン酸リボシド、約0.1%未満のニコチン酸リボシド、又は約0.01%未満のニコチン酸リボシドを含む。いくつかの実施形態において、百分率は、重量基準によるものである。
【0136】
いくつかの実施形態において、薬学的に許容される賦形剤は、抗接着剤、結合剤、コーティング、染料、崩壊剤、香味剤、流動促進剤、潤滑剤、防腐剤、吸着剤、甘味料、シロップ、エリキシル剤、分散剤、希釈剤、充填剤、造粒剤、コーティング剤、ワックス、懸濁剤、湿潤剤、増粘剤、及びビヒクル、並びにそれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態において、賦形剤は、固体賦形剤である。
【0137】
いくつかの実施形態において、薬学的に許容される賦形剤は、組成物の少なくとも約5重量%、少なくとも約10重量%、少なくとも約15重量%、少なくとも約20重量%、少なくとも約25重量%、少なくとも約30重量%、少なくとも約35重量%、少なくとも約40重量%、少なくとも約45重量%、少なくとも約50重量%、少なくとも約55重量%、又は少なくとも約60重量%の量で存在する。いくつかの実施形態において、薬学的に許容される賦形剤は、組成物の少なくとも約20重量%、少なくとも約25重量%、少なくとも約30重量%、少なくとも約35重量%、又は少なくとも約40重量%、好ましくは少なくとも約30重量%の量で存在する。他の実施形態において、薬学的に許容される賦形剤は、組成物の少なくとも約50重量%の量で存在する。製剤のpHは、約3~約11の範囲であり得るが、通常は約7~約10である。
【0138】
いくつかの実施形態において、組成物は、錠剤、丸薬、カプセル、トローチ、顆粒、粉末、小袋、乾燥粉末吸入形態、チュアブル、香錠、及びロゼンジから選択される固体形態である。ある特定の実施形態において、組成物は、錠剤の形態である。他の実施形態において、組成物は、硬質又は軟質ゼラチンカプセルの形態である。
【0139】
本開示の化合物及び結晶性固体は、通常の実践に従って選択され得る従来の担体及び賦形剤とともに製剤化される。錠剤は、賦形剤、流動促進剤、充填剤、結合剤などを含有することができる。全ての製剤は、任意選択的に、Handbook of Pharmaceutical Excipients(1986)に記載されているものなどの賦形剤を含有するであろう。好適な賦形剤は、米国食品医薬品局の不活性成分データベースにも記載されている。賦形剤としては、アスコルビン酸及び他の酸化防止剤、EDTAなどのキレート剤、デキストランなどの炭水化物、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、ステアリン酸などが挙げられる。
【0140】
活性医薬成分を単独で投与することは可能であるが、それらを医薬製剤として提示することが好ましい場合がある。本開示の獣医用及びヒト用の両方の製剤は、上記で定義した少なくとも1つの活性成分を、そのための1つ以上の許容可能な担体、及び任意選択的に他の治療成分とともに含む。薬学的に許容される担体として機能できる材料のいくつかの例としては、以下が挙げられる:(1)糖、例えば、ラクトース、グルコース及びスクロース、(2)デンプン、例えば、トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプン、(3)セルロース、及びその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロース、(4)粉末トラガカント、(5)麦芽、(6)ゼラチン、(7)タルク、(8)賦形剤、例えば、ココアバター及び坐剤ワックス、(9)油、例えば、ピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及び大豆油、(10)グリコール、例えば、プロピレングリコール、(11)ポリオール、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコール、(12)エステル、例えば、オレイン酸エチル及びラウリン酸エチル、(13)アガー、(14)緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム、(15)アルギン酸、(16)ピロゲンフリー水、(17)イソトン酸サリン、(18)リンガー溶液、(19)エチルアルコール、(20)リン酸緩衝液、並びに(21)医薬品製剤に使用される他の非毒性適合物質。
【0141】
薬学的組成物(調製物)は、例えば、経口(例えば、水性又は非水性溶液又は懸濁液、錠剤、カプセル(スプリンクルカプセル及びゼラチンカプセルを含む)、ボーラス、粉末、顆粒、舌に適用するためのペースト)、経口粘膜(例えば、舌下)による吸収、肛門、直腸又は膣(例えば、ペッサリー、クリーム又は泡)、非経口(例えば、無菌溶液又は懸濁液としての筋肉内、静脈内、皮下、又は髄腔内を含む)、鼻腔内、腹腔内、皮下、経皮下、経皮(例えば、皮膚に適用されるパッチ)、及び局所(例えば、皮膚に適用されるクリーム、軟膏又はスプレー、又は眼点滴として)を含むいくつかの投与経路のいずれかによって、対象に投与することができる。化合物又は結晶性固体はまた、吸入のために製剤化してもよい。ある特定の実施形態において、化合物結晶性固体は、滅菌水中に単純に溶解又は懸濁されてもよい。適切な投与経路及びそれに好適な組成物の詳細は、例えば、米国特許第6,110,973号、同第5,763,493号、同第5,731,000号、同第5,541,231号、同第5,427,798号、同第5,358,970号及び同第4,172,896号、並びにそれらに引用される特許に見出すことができる。
【0142】
経口投与に好適な本開示の製剤は、各々が所定量の活性成分を粉末又は顆粒として含有する、カプセル、カシェ又は錠剤などの別個の単位として提示することができる。有効成分はまた、ボーラス、舐剤、又はペーストとして投与され得る。
【0143】
錠剤は、任意選択的に1つ以上の副成分とともに、圧縮又は成形することによって作製される。圧縮錠剤は、任意選択的に結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、防腐剤、表面活性剤又は分散剤と混合された粉末又は顆粒などの自由流動形態の活性成分を好適な機械で圧縮することによって調製することができる。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末活性成分の混合物を好適な機械で成形することによって作製することができる。錠剤は、任意選択的にコーティング又はスコアリングすることができ、任意選択的に、それからの活性成分の徐放又は制御放出を提供するように製剤化される。
【0144】
本開示による薬学的製剤は、1つ以上の薬学的に許容される担体又は賦形剤、及び任意選択的に他の治療薬とともに、本開示による化合物又は結晶性固体を含む。活性成分を含有する薬学的製剤は、意図される投与方法に好適な任意の形態であってもよい。経口使用を意図する場合、例えば、錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性又は油性懸濁液、分散性粉末又は顆粒、エマルジョン、硬質又は軟質カプセル、シロップ又はエリキシルを調製してもよい。経口使用を意図した組成物は、薬学的組成物の製造のための当該技術分野において既知の任意の方法に従って調製され得、そのような組成物は、好ましい調製物を提供するために、甘味剤、香味剤、着色剤、及び保存剤を含む1種以上の薬剤を含有することができる。錠剤の製造に好適な非毒性の薬学的に許容される賦形剤との混合物中に活性成分を含有する錠剤が、許容される。これらの賦形剤は、例えば、不活性希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム又はリン酸ナトリウム、造粒剤及び崩壊剤、例えば、トウモロコシデンプン又はアルギン酸、結合剤、例えば、デンプン、ゼラチン又はアカシア、並びに平滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルクであり得る。錠剤は、コーティングされていないものであってもよく、マイクロカプセル化などの公知の技術によってコーティングされ、消化管内の崩壊及び吸収を遅延させ、それによってより長い期間にわたって持続的活性をもたらすものであってもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリルなどの時間遅延材料を単独で、又はワックスとともに使用することができる。
【0145】
経口使用のための製剤はまた、硬質ゼラチンカプセルとして提示することもでき、活性成分は、不活性固体希釈剤、例えば、リン酸カルシウム、若しくはカオリンと混合されるか、又は軟質ゼラチンカプセルとして提示され、活性成分は、水若しくは油媒体、例えば、ピーナッツ油、流動パラフィン、若しくはオリーブ油と混合される。
【0146】
本開示の水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に好適な賦形剤との混合物中に活性物質を含有する。そのような賦形剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガム及びアカシアガムなどの懸濁剤、並びに天然に存在するホスファチド(例えば、レシチン)などの分散剤又は湿潤剤、アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンステアレート)、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドと脂肪酸に由来する部分エステル及びヘキシトール無水物との縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)が挙げられる。水性懸濁液はまた、エチル又はn-プロピルp-ヒドロキシ安息香酸などの1つ以上の防腐剤、1つ以上の着色剤、1つ以上の香味剤、及びスクロース又はサッカリンなどの1つ以上の甘味剤を含有してもよい。液体製剤はまた、点眼剤又は眼表面又は涙管などの隣接位置への他の形態の送達を含み得る。液体製剤は、静脈内製剤、賦形剤、及び生理食塩水、又は緩衝溶液などの担体、並びにそのような製剤、注射又は注入などのためのパッケージング又は容器を含み得る。
【0147】
水を加えることによる水性懸濁液の調製に好適な本開示の分散性粉末及び顆粒は、分散剤又は湿潤剤、懸濁剤、及び1つ以上の防腐剤との混合物中の活性成分を提供する。好適な分散剤又は湿潤剤、及び懸濁剤は、上記に開示されたものによって例示される。追加の賦形剤、例えば、甘味剤、香味剤、及び着色剤もまた、存在することができる。
【0148】
単回投与形態を生成するために担体材料と組み合わせることができる有効成分の量は、治療される対象、及び特定の投与方法に応じて変化するであろう。例えば、ヒトへの経口投与を意図した時間放出製剤は、全組成物の約5%~約95%(重量:重量)で変動し得る、適切かつ便利な量の担体材料と配合された約1~約1000mgの活性物質を含有し得る。薬学的組成物は、投与のために容易に測定可能な量を提供するように調製することができる。
【0149】
投与量は、症状、患者の年齢及び体重、治療又は予防する障害の性質及び重症度、投与経路、並びに薬物の形態に応じて変化するであろうが、一般に、成人のヒト患者には、0.01~3000mgの化合物又は結晶性固体の1日投与量が推奨され、これは、単回投与又は分割投与で投与してもよい。一般に、本開示の組成物は、非経口投与のために、他の物質の中でも本明細書に開示される化合物又は結晶性固体の約0.1~30%w/vを含有する水溶液中で提供されてもよい。典型的な用量範囲は、1回又は2~4回の分割用量で与えられる、1日当たり体重1kg当たり約0.01~約50mg/kgである。ある特定の実施形態において、本明細書に記載される化合物及び/又は結晶性固体は、1日当たり約1~約3000mg、1日当たり約100~約1000mg、又は1日当たり約250~約750mgの量で投与される。所望であれば、活性化合物又は結晶性固体の有効な1日用量は、1日を通して適切な間隔で別々に投与される1、2、3、4、5、6回以上の分割用量として、任意選択的に単位剤形で、投与され得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される化合物及び/又は結晶性固体は、1日に1、2、3、4、5、6回又はそれ以上投与される。単回投与形態を生成するために担体材料と組み合わせることができる有効成分の量は、一般に、治療効果をもたらす化合物及び/又は結晶性固体の量であろう。
【0150】
肺内又は鼻腔内投与に好適な製剤は、例えば、約0.1~約500ミクロン、例えば、約0.5、約1、約30、又は約35ミクロンなどの範囲の粒径を有し、これは、肺胞嚢に到達するように、鼻腔を通って急速に吸入することによって、又は口を通って吸入することによって投与される。好適な製剤としては、活性成分の水性又は油性溶液が挙げられる。エアロゾル又は乾燥粉末投与に好適な製剤は、従来の方法に従って調製してもよく、他の治療剤とともに送達してもよい。
【0151】
製剤は、例えば密封されたアンプル及びバイアルなどの単位用量又は複数用量容器で提供され、使用直前に滅菌液体担体、例えば注射用水、の添加を要するだけで凍結乾燥(凍結乾燥)状態で保存することができる。即時注射溶液及び懸濁液は、前述の種類の滅菌粉末、顆粒及び錠剤から調製される。好ましい単位投与量製剤は、本明細書において上記に列挙されるような、1日用量若しくは1日単位の部分用量、又はその適切な画分の、活性成分を含有するものである。
【0152】
特に上記で言及した成分に加えて、本開示の製剤は、問題の製剤の種類を考慮して当該技術分野の従来の他の薬剤を含み得ること、例えば、経口投与に好適なものが香味剤を含み得ることを理解されたい。
【0153】
いくつかの実施形態において、組成物中の化合物及び/又は結晶性固体の量は、約0.001重量%~100重量%である。
【0154】
いくつかの実施形態において、化合物及び/又は結晶性固体は、組成物中の唯一の活性医薬成分である。代替的に、化合物及び/又は結晶性固体は、1つ以上の追加の活性医薬成分を有する組成物中に製剤化される。唯一の活性医薬成分として製剤化されるとき、化合物及び/又は結晶性固体は、個別に、又は1つ以上の別個に製剤化された活性医薬成分とともにレジメンの一部として投与され得る。
【0155】
同じ製剤で、又は1つ以上の別個に製剤化された活性医薬成分とのレジメンの一部として併用投与される場合、追加の活性医薬成分は、ニコチン酸(NA)、ニコチンアミド(Nam)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)、ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチン酸リボシド(NAR)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD/NADH)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)、及びニコチン酸アデニンジヌクレオチド(NaAD)などのNAD経路の化合物から選択され得る。いくつかの実施形態において、式I及びIIの化合物は、併せて投与される。いくつかの実施形態において、追加の活性医薬成分は、非晶質固体である。いくつかの実施形態において、追加の活性医薬成分は、結晶性固体である。いくつかの実施形態において、追加の活性医薬成分は、非晶質NMNである。いくつかの実施形態において、追加の活性医薬成分は、結晶性NMNである。
【0156】
全般的に今まで説明されている本発明は、以下の実施例を参照することによってより容易に理解されるであろうが、本発明の特定の態様及び実施形態の説明の目的でのみ含まれ、本発明を限定することは意図されない。
【実施例】
【0157】
実施例1.1:化合物2の調製
【化8】
50mLの回収フラスコに1.00g(3.92mmoL)のニコチン酸リボシドを充填し、アルゴンでパージした。これに6mLのトリメチルリン酸塩を添加し、撹拌を開始し、反応物を氷浴で冷却した。次に、0.73mL(7.84mmol)のオキシ塩化リンを添加した。30分後、LC/MSによって決定されるように、反応を完了させた。反応物を10mLの氷冷水に滴下した。添加が完了した後、混合物を真空中で濃縮して、約9gの溶媒を除去した。次いで、濃縮混合物を、50mLの1-プロパノール中の3.2mL(23.0mmol)のトリエチルアミンの撹拌氷冷溶液に滴下し、pH=3の混合物をpH紙によって決定した。懸濁液を1時間撹拌した後、固体沈殿物を濾過し、1-プロパノールですすぎ、粗化合物2の第1の作物を得た。濾過が完了した後、上清中に固体が形成された。濾液を72時間撹拌し、次いで懸濁液を濾過し、沈殿物を1-プロパノールですすぎ、粗化合物2の第2の作物を得た。第2の作物を真空乾燥させ、重量はまだ湿っている間1.00gであった。
1H及び
31P NMR解析は、第2の作物が第1の作物よりも純度が高いことを示した。第2の作物を、その後の実験のためのシード材料として使用した。
図4を参照されたい。
1H-NMR(500MHz;D
2O):δ 9.42(s,1H),9.25(d,J=6.3Hz,1H),9.00(d,J=8.0Hz,1H),8.22(dd,J=7.8,6.5Hz,1H),6.16(d,J=5.3Hz,1H),4.58-4.56(m,1H),4.49(t,J=5.1Hz,1H),4.37(dd,J=5.0,2.8Hz,1H),4.26-4.22(m,1H),4.12-4.08(d,d,d1H,J=12.0,5.1,2.2Hz)
【0158】
実施例1.2A:化合物2の結晶化
100mgの非晶質化合物2(別個に調製)に、300マイクロリットルの水を添加した。これに350マイクロリットルの1-プロパノールを添加し、濁った溶液を得た。上記の実験からの化合物2の第2の作物を使用して、混合物を播種した。数時間後、バイアル内に結晶が形成された。混合物を濾過せず、スラリーとして残した。
【0159】
実施例1.2B:化合物2の結晶化
2.00g量の非晶質化合物2(別個に調製した)を6mLの水に溶解し、次いで7mLの1-プロパノールを添加して濁った溶液を得た。更に2mLの水を添加して、透明な溶液を得た。混合物を播種するために使用される上記の実験からの化合物2の第2の作物であるが、結晶は形成されなかった。追加の0.2mLのn-プロパノールを添加して、濁った混合物を得た。これを1日撹拌させ、結晶は得られなかった。次いで、混合物に、第2の実験からのスラリーの滴を播種して、化合物2の結晶を調製し、迅速な結晶化をもたらした。これを周囲温度で2日間撹拌した。固体を濾過し、15mLの(2:1v:v)1-プロパノール:水、15mLの1-プロパノール、次いで2×15mLのメチルtert-ブチルエーテルで洗浄した。試料を高真空下、周囲温度で1時間乾燥させて、1.92g(96%質量回収)の白色固体を得た。単離生成物の水溶性は、約20mg/mL(50:1w:w 水:化合物2)であり、水に自由に溶ける出発化合物2(3:1 水:化合物2)とは対照的であった。
【0160】
実施例1.2C:化合物2の結晶化
500mg量の非晶質化合物2を1.5mLの水に溶解した。試料は完全に溶解し、結晶が形成され始めた。結晶は、撹拌することなく増殖させた。水をデカントし、次いで固体を高真空下で乾燥させた。化合物2の単結晶X線回折品質結晶を調製した。これらの結晶を使用して、化合物2結晶のXRPDシグネチャを生成し(
図2)、また、化合物2の単結晶X線構造を得た(
図2C)。
【0161】
実施例2.1:化合物1の調製
【化9】
化合物2を使用前に1-プロパノールから濾過し、500mLの回収フラスコに充填し、アルゴンでパージした。固体を1-プロパノール中に懸濁し、氷浴中で冷却した。HClガスを反応混合物中にバブリングした。固体は、ガスが懸濁液にバブリングされると溶解した。反応物を氷浴から除去し、3日間にわたって室温で撹拌した。出発物質がLC/MSによって残っていないとき、反応混合物を油が得られるまで回転式蒸発器上で濃縮した。アリコートを高真空下に30分間置いた。アリコートは泡立たなかった。これの試料をLC/MS用に採取した。油を10mLの1-プロパノールで希釈し、氷浴で冷却した。合計1.5mLのトリエチルアミンを添加して、pHを4~5にした。トリエチルアミンの添加により、かなりの量の沈殿物が形成された。40mLの1-プロパノールを添加して、沈殿物の全てを溶解した。化合物1のシード結晶を溶液に添加した。時間が経つにつれて、溶液は濁り、沈殿物が形成されることが観察された。混合物を、一晩室温で撹拌した。高VACで4時間後、アリコートの試料をLC/MS用に採取した。フラスコの内容物は、「乳白色の」懸濁液と比較して、より結晶的で濾過可能に見える。固体を濾過した。濾過ケーキを各々10mLの1-プロパノールで2回洗浄し、続いて2回の10mLのMTBE洗浄を行った。1-プロパノール濾液の試料をLC/MS用に採取した。固体をバイアルに移した。湿潤重量は約1.2gであった。高真空下に1時間置いた。1.23g(55%収率)の白色固体を得た。試料をLC/MS、
1H及び
31P NMR用に採取した。
図3を参照されたい。
【0162】
実施例2.2A:多形スクリーニング
非晶質化合物1を、表1に提供される条件に従って多形についてスクリーニングし、0℃(1時間)と-20℃(7時間)との間の4日間の成熟サイクルを含む、観察1と観察2との間の処理を行い、結果を示す。
【0163】
【0164】
【0165】
実施例2.2B:塩スクリーニング
非晶質化合物1を、表2に従って多形についてスクリーニングした。化合物1(15mg)をHPLCバイアルに秤量し、磁気撹拌棒を添加した。500rpmで撹拌しながら、化合物を約15体積(200μl)EtOH中に5℃で溶解した。溶解したら、モル当量の対イオンを添加し、5℃で撹拌した(45μlの1Mストック又は90μlの0.5Mストック)。試料を1℃/分で-20℃に冷却したが、溶液を残した。溶液を5℃でバイアルキャップ内の針を通してゆっくりと蒸発させた。
【0166】
【0167】
実施例2.2C:共結晶スクリーニング
非晶質化合物1を、表3に従って多形についてスクリーニングした。化合物1(25mg)をHPLCバイアルに秤量し、2つの粉砕ボールを添加した。これに(固体として)1モル当量の配座異性体を添加した。混合物を最初に500rpmで粉砕し、Fritschプラネタリミルで2時間、次いで回収した固形物をXRPDによって分析した。結晶化された材料は得られず、得られた固体をTHF(7.5μl)の滴で湿らせ、Fritschプラネタリミル上で500rpmで2時間粉砕した。粉砕後に観察を行い、回収された固体に対してXRPDを行った。
【0168】
【0169】
実施例2.2D:化合物1の塩形態
化合物1(150mg)を10体積(1.5mL)の絶対EtOH中に撹拌しながら室温で溶解した。3分後、沈殿物が形成され始めた。試料を更に15分間撹拌した後、濾過し、正圧で乾燥させた。次いで、試料を真空下で室温で30分間真空オーブンに入れた。次いで、試料を、特徴付けられる前に、穿孔アルミホイルでキャップされたバイアル中で一晩ヒュームフード中に放置した。XPDパターンを
図1Aに従って得た。
図1Bも参照されたい。HPLCによるパーセンテージ収率=約63%及び純度98.7%。40℃/75%RHで7日間保管すると、材料は粘着性固体であり、HPLCによる純度は96.4%であった。試料は、室温で安定した細かい白色粉末であり、少量の溶媒が捕捉されるが、解析は、試料が無水の非溶媒和固体であることを示す。試料は、最大70%RHの湿度条件下で安定している。
【0170】
図1Cは、以下の属性を有する化合物1の結晶格子単位胞の図である。
【0171】
【0172】
化合物1のデータは、単結晶X線回折によって得られ、構造は直接的な方法によって解決され、最小二乗微細化を使用して精製された。結晶構造における原子の割り当てと位置は、フーリエ差分マップで観察された電子密度に基づいて割り当てられ、実験データに適合したモデルに収束した。非水素原子を異方性的に精製し、ORTEP画像で見ることができる異方性変位パラメータ(熱楕円体)を与えた(
図1C)。
【0173】
実施例2.2E:化合物1の結晶形態のスケールアップ
非晶質化合物1(1.23g)を20mLのバイアルに秤量し、7体積(8.60mL)のメタノールで処理して、透明な溶液を得た。この溶液を「polar bear」装置上で35℃で400rpmで撹拌した。溶液を、0.5体積(615μl)のTBMEを添加することによって過飽和させ、次いで、溶液中に持続させた事前に結晶化された材料(約60mg)を使用して播種した。次いで、試料を0.1℃/分で25℃に冷却してから、貪溶媒添加した。2.6体積(3.2mL)のTBMEの添加を、シリンジポンプを使用して50分間(1μl/秒)にわたって行った。次いで、懸濁液を0.1℃/分で5℃に冷却した。試料を5℃で1時間保持した後、真空下でBuchner漏斗を使用して単離した。試料を真空下で20分間乾燥させた後、更に真空オーブン内で一晩乾燥させた。XPDパターンを
図1Aに従って得た。
図1Bも参照されたい。HPLCによるパーセンテージ収率=約45%及び純度97.9%。
【0174】
実施例3:化合物2の安定性試験
表4に示されるように、それぞれの形態の安定性を比較するために、化合物2の非晶質形態及び結晶形態を調製し、ストレス条件下で保存した。T=0で、非晶質化合物2を97.3%AUCでアッセイし、結晶性化合物2を99%でアッセイした。試料を、飽和塩溶液を含有する瓶に密封して、必要な相対湿度、すなわち、RH=60%の硝酸アンモニウム、RH=75%の塩化ナトリウム、及びRH=97%の飽和硝酸カリウムを生成した。RH=0%に対して、固体五酸化リンを使用した。HPLCデータは、インラインガードカラムを備えたWaters Atlantis T3 C18カラム(3um、100×4.6mm)を備えたAgilent1290システムを使用して収集した。移動相A:200mMの炭酸アンモニウム(pH3.8)、移動相B:95:5 MeOH:移動相A。ポンピングは、1mL/分である。グラデーションは0%Bで5分間、続いて20分間のグラデーションを100%Bにし、最後に3分間保持する。関連データを254nmにてDADを介して収集する。
【0175】
【0176】
表4の結果は、化合物2の結晶形態が、化合物2の非晶質形態と比較して改善された安定性を有することを示す。
【0177】
参照及び同等物による組み込み
本明細書で言及される全ての刊行物及び特許は、各個々の刊行物又は特許が、参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されたかのように、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。矛盾する場合、本明細書におけるあらゆる定義を含む本出願が優先する。
【0178】
本発明の特定の実施形態が考察されているが、上記明細書は、例示的であり、制限的ではない。本発明の多くの変形は、本明細書及び以下の特許請求の範囲を見直すと、当業者に明らかになるであろう。本発明の全範囲は、特許請求の範囲、それらの均等物の全範囲、及び本明細書を、かかる変形とともに、参照することによって決定されるべきである。
【国際調査報告】