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特表2024-520415線維芽細胞及び線維芽細胞由来産物を用いる脱毛症治療のための方法及び組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】線維芽細胞及び線維芽細胞由来産物を用いる脱毛症治療のための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/33 20150101AFI20240517BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20240517BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20240517BHJP
   A61K 31/122 20060101ALI20240517BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20240517BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240517BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20240517BHJP
   A61K 8/98 20060101ALI20240517BHJP
   A61Q 7/00 20060101ALI20240517BHJP
   C12N 5/077 20100101ALN20240517BHJP
   C12N 5/0775 20100101ALN20240517BHJP
   C07K 16/24 20060101ALN20240517BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20240517BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20240517BHJP
   C12N 15/115 20100101ALN20240517BHJP
   C12N 9/22 20060101ALN20240517BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20240517BHJP
   C12N 9/99 20060101ALN20240517BHJP
   C07K 14/54 20060101ALN20240517BHJP
   C07K 14/475 20060101ALN20240517BHJP
   C07K 14/47 20060101ALN20240517BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20240517BHJP
【FI】
A61K35/33
A61K38/16
A61K38/17
A61K31/122
A61P17/14
A61P43/00 121
A61K8/64
A61K8/98
A61Q7/00
C12N5/077
C12N5/0775
C07K16/24
C12N15/113 Z
C12N15/09 100
C12N15/115 Z
C12N9/22
C07K16/28
C12N9/99
C07K14/54
C07K14/475
C07K14/47
C12N15/11 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572746
(86)(22)【出願日】2022-05-25
(85)【翻訳文提出日】2024-01-18
(86)【国際出願番号】 US2022030805
(87)【国際公開番号】W WO2022251277
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】63/193,403
(32)【優先日】2021-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516071686
【氏名又は名称】フィジーン、エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】FIGENE, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イチム、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】オヒーロン、ピート
【テーマコード(参考)】
4B065
4C083
4C084
4C087
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AC20
4B065CA44
4C083AA071
4C083AC211
4C083BB53
4C083CC37
4C083EE22
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA03
4C084CA17
4C084CA25
4C084CA56
4C084MA02
4C084MA63
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA92
4C084ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB34
4C087BB44
4C087BB46
4C087BB48
4C087BB57
4C087BB64
4C087CA04
4C087MA02
4C087MA63
4C087MA66
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA92
4C087ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206CB21
4C206KA01
4C206MA04
4C206MA83
4C206MA86
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA92
4C206ZC75
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045EA28
(57)【要約】
本明細書に開示されるのは、円形脱毛症を含む脱毛症の治療及び予防のための方法及び組成物である。態様は、毛包再生を刺激又は促進するための方法に向けられている。ある態様は、円形脱毛症に罹患している対象に線維芽細胞及び/又は線維芽細胞由来産物を投与することを含む、円形脱毛症の治療方法に向けられている。いくつかの態様において、線維芽細胞由来製品は、円形脱毛症の治療又は予防のための局所使用のために処方された、線維芽細胞由来の条件培地、エクソソーム、又はアポトーシス小体である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象に有効量の線維芽細胞又は線維芽細胞由来産物を提供することを含む、対象の脱毛症を治療又は予防する方法。
【請求項2】
前記脱毛症が真皮の炎症に関連している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脱毛症が円形脱毛症である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記脱毛症がアンドロゲン性脱毛症である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記アンドロゲン性脱毛症が男性パターン脱毛症である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記アンドロゲン性脱毛症が女性パターン脱毛症である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記線維芽細胞又は線維芽細胞由来産物が局所投与される、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記線維芽細胞又は線維芽細胞由来産物が、皮内及び/又は経皮投与される、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記線維芽細胞又は線維芽細胞由来産物が、前記対象の頭皮の領域に投与される、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記対象の頭皮の領域に再生光源を投与することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
有効量の線維芽細胞を前記対象に提供することを含む、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記線維芽細胞が、前記対象に対して同種異系、異種、又は自己由来である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記線維芽細胞が、皮膚、脂肪、骨髄、大網組織、血液、乳歯、卵管、精巣組織、卵巣組織、毛包、子宮内膜組織、又はそれらの組み合わせに由来する、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記線維芽細胞が真皮線維芽細胞である、請求項11~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記線維芽細胞が、再生活性を増強するのに十分な条件に予め供されている、請求項11~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記条件が、前記線維芽細胞においてHIF1α発現を上方制御するのに十分な条件である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記条件が、HIF1αを未処理の対照に対して少なくとも25%上方制御するのに十分な条件である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記条件が、線維芽細胞におけるHIF1αの核移行を増強するのに十分な条件である、請求項11~14のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記条件が、低酸素を模倣できる薬剤を含む、請求項11~18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記条件が、線維芽細胞を一酸化炭素と共に培養することを含む、請求項11~19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記条件が、約0重量%~約79重量%の窒素、約21重量%~約99.999999重量%の酸素、及び約0.0000001重量%~約0.3重量%の一酸化炭素を含むガス組成物に線維芽細胞を曝露することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ガス組成物が、0%の窒素及び約99.999999%の酸素を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ガス組成物が、約0.005%~約0.05%を含む、請求項20~22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記線維芽細胞が、該線維芽細胞の生存及び/又は活性を増強するのに十分な条件に予め供されている、請求項11~23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記条件が、エピジェネティック調節因子による治療を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記エピジェネティック調節因子が、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤が、バルプロ酸、ボリノスタット、エンチノスタット、パノビノスタット、トリコスタチンA、モセチノスタット、ベリノスタット、FK228、MC1568、ツバスタチン、酪酸ナトリウム、又はスルフォラファンである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記エピジェネティック調節因子が、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤である、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤が、5-アザシチジンである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記条件が、前記線維芽細胞をGSK-3阻害剤とともに培養することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
前記GSK-3阻害剤が、リチウム又はリチウム塩である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
有効量の線維芽細胞由来産物を前記対象に提供することを含む、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記線維芽細胞由来産物が、皮膚、脂肪、骨髄、大網組織、血液、乳歯、卵管、精巣組織、卵巣組織、毛包、子宮内膜組織、又はそれらの組み合わせに由来する線維芽細胞から得られたものである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記線維芽細胞由来産物が真皮線維芽細胞から得られたものである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記線維芽細胞由来産物が、前記対象に対して同種異系、異種又は自己の線維芽細胞から得られたものである、請求項32~34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
前記線維芽細胞由来産物が、線維芽細胞の培養物由来の条件培地を含む、請求項32~35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
前記条件培地が、EMEM、α-MEM、IMDM、DMEM、又はRPMI中での線維芽細胞の培養物から得られたものである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記条件培地が、線維芽細胞用の栄養を含む懸濁液中での接着線維芽細胞の培養によって生成された、請求項36又は37に記載の方法。
【請求項39】
前記懸濁液が、成長因子を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記懸濁液が、幹細胞エクソソームを含む、請求項38又は39に記載の方法。
【請求項41】
前記幹細胞エクソソームが間葉系幹細胞由来エクソソームである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記間葉系幹細胞が、臍帯、骨髄、皮膚、卵管、脂肪組織、子宮内膜組織、末梢血、月経血、毛包、又はそれらの組み合わせに由来する、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記懸濁液が、1つ以上の炎症性メディエーターの活性を阻害することができる中和因子を含む、請求項38~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記中和因子が、モノクローナル抗体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、又は遺伝子編集系である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記中和因子が、インターロイキン-1、インターロイキン-6、インターロイキン-8、インターロイキン-9、インターロイキン-11、インターロイキン-12、インターロイキン-15、インターロイキン-17、インターロイキン-18、インターロイキン-21、インターロイキン-23、インターロイキン-27、インターロイキン-33、TNFα、インターフェロンγ、TNFβ、又はリンホトキシンに結合可能な抗体である、請求項43又は44に記載の方法。
【請求項46】
前記懸濁液が、VEGF、EGF、PGDF-BB、IGF-1、HGF-1、NGF、BDNF、IL-3、IL-4、IL-10、IL-13、IL-20、IL-35を含む、請求項38~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記線維芽細胞由来産物が、線維芽細胞由来のマイクロベシクルである、請求項32~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記線維芽細胞由来産物が、線維芽細胞由来のエクソソームである、請求項32~35のいずれかに記載の方法。
【請求項49】
前記エクソソームが、線維芽細胞由来の条件培地から濃縮されたものである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記エクソソームが、
a)一本鎖オリゴヌクレオチドで支持体を官能化し、官能化支持体を生成する工程;
b)前記一本鎖オリゴヌクレオチドに相補的なタグを有するリガンドと前記官能化支持体をインキュベートし、固定化リガンドを得る工程;
c)前記固定化リガンドを前記条件培地とインキュベートして、前記固定化リガンドとエクソソームとの結合によるエクソソームの結合を通じてエクソソームを捕捉させ、捕捉されたエクソソームの基質を得る工程;及び
d)前記捕捉されたエクソソームを制限酵素とインキュベートする工程
によって濃縮される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記リガンドが、抗体、ペプチド、又はアプタマーである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記支持体が、磁気ビーズ、膜、細胞培養プレート、試験管、スライド、マイクロプレート、マイクロチャネル、ピラー、又はディスク状片である、請求項50又は51に記載の方法。
【請求項53】
前記支持体が、共有結合又はビオチン化を介して前記リガンドで官能化される、請求項50~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記制限酵素がDNAseである、請求項50~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記リガンドが、エクソソーム特異的テトラスパニンに結合可能な抗体である、請求項50~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記リガンドが、MHCクラスI及びII、HSP70、アネキシンV、フロチリン、又はEpCAMに結合可能な抗体である、請求項50~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記条件培地が、EMEM、α-MEM、IMDM、DMEM、又はRPMI中での線維芽細胞の培養物に由来する、請求項49~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記線維芽細胞由来産物が、線維芽細胞由来のアポトーシス小胞である、請求項32~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記線維芽細胞由来産物が、線維芽細胞由来の核酸である、請求項32~35のいずれかに記載の方法。
【請求項60】
前記線維芽細胞由来産物が、再生活性を増強するのに十分な条件に供された線維芽細胞から得られたものである、請求項32~59のいずれかに記載の方法。
【請求項61】
前記条件が、前記線維芽細胞においてHIF1α発現を上方制御するのに十分な条件である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記条件が、HIF1αを未処理の対照に対して少なくとも25%上方制御するのに十分な条件である、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記条件が、線維芽細胞におけるHIF1αの核移行を増強するのに十分な条件である、請求項60に記載の方法。
【請求項64】
前記条件が、低酸素を模倣できる薬剤を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項65】
前記条件が、前記線維芽細胞を一酸化炭素とともに培養することを含む、請求項60に記載の方法。
【請求項66】
前記条件が、約0重量%~約79重量%の窒素、約21重量%~約99.999999重量%の酸素、及び約0.0000001重量%~約0.3重量%の一酸化炭素を含むガス組成物に線維芽細胞を曝露することを含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記ガス組成物が、0%の窒素及び約99.999999%の酸素を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記ガス組成物が、約0.005%~約0.05%を含む、請求項66又は67に記載の方法。
【請求項69】
前記線維芽細胞由来産物が、線維芽細胞の生存及び/又は活性を増強するのに十分な条件に供された線維芽細胞から得られたものである、請求項32~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記条件が、エピジェネティック調節因子による処理を含む、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記エピジェネティック調節因子が、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤である、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤が、バルプロ酸、ボリノスタット、エンチノスタット、パノビノスタット、トリコスタチンA、モセチノスタット、ベリノスタット、FK228、MC1568、ツバスタチン、酪酸ナトリウム、又はスルフォラファンである、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記エピジェネティック調節因子が、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤である、請求項70に記載の方法。
【請求項74】
前記DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤が、5-アザシチジンである、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記条件が、前記線維芽細胞をGSK-3阻害剤とともに培養することを含む、請求項69記載の方法。
【請求項76】
前記GSK-3阻害剤が、リチウム又はリチウム塩である、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記線維芽細胞又は線維芽細胞由来産物を提供する前に、前記対象が、年齢が一致した対照対象と比較して、FoxP3を発現する細胞の数が減少している、請求項1~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
前記線維芽細胞又は線維芽細胞由来産物を提供する前に、前記対象が、年齢が一致した対照対象と比較して、インターロイキン-10を発現する細胞の数が減少している、請求項1~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記線維芽細胞又は線維芽細胞由来産物を提供する前に、前記対象が、年齢が一致した対照対象と比較して、インターロイキン-4を発現する細胞の数が減少している、請求項1~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
前記線維芽細胞又は線維芽細胞由来産物を提供する前に、前記対象が、年齢が一致した対照対象と比較して、インターロイキン-13を発現する細胞の数が減少している、請求項1~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記線維芽細胞又は線維芽細胞由来産物を提供する前に、前記対象が、年齢が一致した対照対象と比較して、インターロイキン-35を発現する細胞の数が減少している、請求項1~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記線維芽細胞又は線維芽細胞由来産物を提供する前に、前記対象が、年齢が一致した対照対象と比較して、制御性T細胞の数が減少している、請求項1~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
前記線維芽細胞又は線維芽細胞由来産物を提供する前に、前記対象が、年齢が一致した対照対象と比較して、骨髄抑制細胞の数が減少している、請求項1~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
前記線維芽細胞又は線維芽細胞由来産物を提供する前に、前記対象が、年齢が一致した対照対象と比較して、TIM-1を発現するB細胞の数が減少している、請求項1~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
前記線維芽細胞又は線維芽細胞由来産物を提供する前に、前記対象が、年齢が一致した対照対象と比較して、IL-10を発現するB細胞の数が減少している、請求項1~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
前記線維芽細胞又は線維芽細胞由来産物を提供する前に、前記対象が、年齢が一致した対照対象と比較して制御性B細胞の数が減少している、請求項1~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
前記線維芽細胞又は線維芽細胞由来産物を提供する前に、前記対象が、年齢が一致した対照対象と比較して、インターフェロンガンマを発現する細胞の数が増加している、請求項1~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
前記線維芽細胞又は線維芽細胞由来産物を提供する前に、前記対象が、年齢が一致した対照対象と比較して、TNF-αを発現する細胞数が増加している、請求項1~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
前記線維芽細胞又は線維芽細胞由来産物を提供する前に、前記対象が、年齢が一致した対照対象と比較して、インターロイキン-1を発現する細胞の数が増加している、請求項1~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
前記線維芽細胞又は線維芽細胞由来産物を提供する前に、前記対象が、年齢が一致した対照対象と比較して、インターロイキン-2を発現する細胞の数が増加している、請求項1~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
前記線維芽細胞又は線維芽細胞由来産物を提供する前に、前記対象が、年齢が一致した対照対象と比較して、インターロイキン-6を発現する細胞の数が増加している、請求項1~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項92】
前記線維芽細胞又は線維芽細胞由来産物を提供する前に、前記対象が、年齢が一致した対照対象と比較して、インターロイキン-8を発現する細胞の数が増加している、請求項1~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項93】
前記線維芽細胞又は線維芽細胞由来産物を提供する前に、前記対象が、年齢が一致した対照対象と比較して、インターロイキン-11を発現する細胞の数が増加している、請求項1~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項94】
前記線維芽細胞又は線維芽細胞由来産物を提供する前に、前記対象が、年齢が一致した対照対象と比較して、インターロイキン-12を発現する細胞の数が増加している、請求項1~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項95】
前記線維芽細胞又は線維芽細胞由来産物を提供する前に、前記対象が、年齢が一致した対照対象と比較して、インターロイキン-15を発現する細胞の数が増加している、請求項1~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項96】
前記線維芽細胞又は線維芽細胞由来産物を提供する前に、前記対象が、年齢が一致した対照対象と比較して、インターロイキン-17を発現する細胞の数が増加している、請求項1~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項97】
前記線維芽細胞又は線維芽細胞由来産物を提供する前に、前記対象が、年齢が一致した対照対象と比較して、インターロイキン-18を発現する細胞の数が増加している、請求項1~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項98】
前記線維芽細胞又は線維芽細胞由来産物を提供する前に、前記対象が、年齢が一致した対照対象と比較して、インターロイキン-21を発現する細胞の数が増加している、請求項1~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項99】
前記線維芽細胞又は線維芽細胞由来産物を提供する前に、前記対象が、年齢が一致した対照対象と比較して、インターロイキン-23を発現する細胞の数が増加している、請求項1~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項100】
前記線維芽細胞又は線維芽細胞由来産物を提供する前に、前記対象が、年齢が一致した対照対象と比較して、インターロイキン-27を発現する細胞の数が増加している、請求項1~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項101】
前記線維芽細胞又は線維芽細胞由来産物を提供する前に、前記対象が、年齢が一致した対照対象と比較して、インターロイキン-33を発現する細胞の数が増加している、請求項1~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項102】
前記線維芽細胞又は線維芽細胞由来産物を提供する前に、前記対象が、年齢が一致した対照対象と比較してナチュラルキラー細胞の数が増加している、請求項1~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項103】
前記線維芽細胞又は線維芽細胞由来産物を提供する前に、前記対象が、年齢が一致した対照対象と比較して、ナチュラルキラーT細胞の数が増加している、請求項1~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項104】
前記線維芽細胞又は線維芽細胞由来産物を提供する前に、前記対象が、年齢が一致した対照対象と比較して、Th1細胞の数が増加している、請求項1~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項105】
前記線維芽細胞又は線維芽細胞由来産物を提供する前に、前記対象が、年齢が一致した対照対象と比較して、Th17細胞の数が増加している、請求項1~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項106】
有効量のジフェニルシクロプロペノンを前記対象に提供することをさらに含む、請求項1~105のいずれか一項に記載の方法。
【請求項107】
有効量の線維芽細胞由来エクソソームを対象に提供することを含む、対象のアンドロゲン性脱毛症を治療又は予防する方法。
【請求項108】
有効量の線維芽細胞由来条件培地を対象に提供することを含む、対象のアンドロゲン性脱毛症を治療又は予防する方法。
【請求項109】
有効量のジフェニルシクロプロペノンを前記対象に提供することをさらに含む、請求項107又は108に記載の方法。
【請求項110】
有効量の線維芽細胞由来エクソソームを対象に提供することを含む、対象のアンドロゲン性脱毛症を治療又は予防する方法。
【請求項111】
有効量の線維芽細胞由来条件培地を対象に提供することを含む、対象のアンドロゲン性脱毛症を治療又は予防する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年5月26日に出願された米国仮特許出願シリアル番号63/193,403の優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[技術分野]
本開示の実施形態は、少なくとも細胞生物学及び再生医学の分野を包含する。
【背景技術】
【0003】
脱毛症や禿頭症とも呼ばれる脱毛は、頭や体の一部から毛髪の喪失を指す。脱毛の程度は、狭い範囲から全身まで様々である。脱毛症は、精神的苦痛[1,2]によって引き起こされたり、又は薬物誘発性の場合[3-7]、あるいはその他の原因によって引き起こされ得る。一般的な脱毛症の種類には、アンドロゲン性脱毛症(androgenetic alopecia;男性パターン脱毛及び女性パターン脱毛を含む)、円形脱毛症、及び休止期脱毛症として知られる薄毛が含まれる[8-17]。男性パターン脱毛の原因には、遺伝と男性ホルモンの組み合わせが含まれ、女性パターン脱毛の原因は不明であり、円形脱毛症の原因は自己免疫であり、休止期脱毛症の原因は、一般的に身体的又は心理的にストレスとなる出来事である[18,19]。
【0004】
毛包は、幹細胞が大規模な再生を可能にする再生器官である。毛包は、外毛根鞘、内毛根鞘、毛幹からなる。増殖中の毛母細胞が内毛根鞘と毛幹を生み出し、その周囲を特殊な間葉系細胞からなる毛乳頭が取り囲んでいる。毛乳頭は毛包の形成を指示するが、毛包の特性は上皮の情報によって獲得される。毛包の下部は、成長期(活発な成長)、退行期(破壊)、休止期(休止)を含む成長サイクルを経る。これらの様々な段階は、毛包の場所や機能によって、様々な期間続く。成長期には、毛母細胞が急速に増殖し、上方に移動した後、内毛根鞘と毛幹の細胞型に分化する。退行期には、下部の毛包はアポトーシス死滅し、毛乳頭はバルジの下の領域に達するまで上方に移動する。毛乳頭は休止期の間そこに留まる。毛乳頭がバルジから幹細胞をリクルートすると、成長期が新たに始まり、毛包は増殖と分化を通じて再生する。
【0005】
脱毛症の管理には、一般的に薬物療法や手術が用いられる[20]。脱毛症の治療に現在使用されている薬剤は、ミノキシジル、フィナステリド、デュタステリドである[21-23]。手術による脱毛症の管理には、植毛が含まれる。植毛は通常、局所麻酔下で行われる。外科医は、後頭部や側頭部の健康な毛髪を薄毛の部分に移植する。手術には4~8時間かかり、さらに髪を太くするために追加セッションを行うこともできる。従来の植毛では、非脱毛領域に十分な毛髪がない場合、施術に支障をきたしていた。幹細胞治療は、脱毛症の治療と管理のための新たな戦略を提示する[24]。しかし、従来の植毛の文脈では、脱毛頭皮部分に毛包幹細胞を投与しても、そのような部分の皮膚には新しい毛包の成長に必要な成長因子がないため、効率が非常に低い。
【0006】
アンドロゲン性脱毛症及び円形脱毛症を含む脱毛症の治療のための、さらなる改良された方法及び組成物に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0007】
本開示の態様は、線維芽細胞及び線維芽細胞由来産物、並びに脱毛症の治療及び予防におけるそれらの使用方法に関する。特定の実施形態は、脱毛症を有する対象に線維芽細胞又は線維芽細胞由来産物を提供することを含む、アンドロゲン性脱毛症及び円形脱毛症を含む脱毛症の治療方法に関する。また、脱毛症を発症するリスクのある対象に線維芽細胞又は線維芽細胞由来産物を提供することを含む、アンドロゲン性脱毛症及び円形脱毛症を含む脱毛症の予防方法も開示する。本開示の線維芽細胞は、再生活性及び/又は血管新生活性を増強するのに十分な条件に供され得る。石鹸、シャンプー、軟膏などの局所投与用に処方された組成物を含む、脱毛症の治療又は予防に使用するための線維芽細胞又は線維芽細胞由来産物を含む医薬組成物もまた、本明細書において企図される。したがって、本開示の実施形態は、アンドロゲン性脱毛症及び円形脱毛症を含む脱毛症を治療及び予防するための新たな戦略を提供する。
【0008】
本開示の実施形態には、脱毛症の治療方法、脱毛症の予防方法、脱毛を遅らせる方法、毛髪の成長を刺激する方法、及び炎症を軽減する方法が含まれる。本開示の方法は、対象を脱毛症について診断すること、対象をアンドロゲン性脱毛症について診断すること、対象を円形脱毛症について診断すること、対象を皮膚炎症について診断すること、対象に線維芽細胞を提供すること、対象に線維芽細胞由来産物を提供すること、及び対象に線維芽細胞由来エクソソームを提供することのうちの1つ以上を含み得る。また、線維芽細胞、真皮線維芽細胞、線維芽細胞由来産物、線維芽細胞由来条件培地、及び線維芽細胞由来エクソソームのうちの1つ以上を含む組成物も開示される。前述の工程又は成分のいずれか1つ以上は、本開示の特定の実施形態から除外され得る。
【0009】
本明細書では、いくつかの実施形態において、有効量の線維芽細胞又は線維芽細胞由来産物を対象に提供することを含む、対象における脱毛症を治療又は予防する方法が開示される。いくつかの実施形態において、脱毛症は、真皮の炎症と関連している。いくつかの実施形態において、脱毛症は、アンドロゲン性脱毛症、男性パターン脱毛症、女性パターン脱毛症、円形脱毛症、又は休止期脱毛症である。いくつかの実施形態において、脱毛症は、アンドロゲン性脱毛症である。いくつかの実施形態において、脱毛症は円形脱毛症である。いくつかの実施形態において、線維芽細胞又は線維芽細胞由来産物は局所的に投与される。いくつかの実施形態において、線維芽細胞又は線維芽細胞由来産物は、皮内及び/又は経皮的に投与される。いくつかの実施形態において、線維芽細胞又は線維芽細胞由来産物は、対象の頭皮の領域に投与される。いくつかの実施形態において、本方法は、対象の頭皮の領域に再生光源を与えることをさらに含む。いくつかの実施形態において、再生光源はレーザー光である。
【0010】
いくつかの実施形態において、本方法は、対象に有効量の線維芽細胞を提供することを含む。いくつかの実施形態において、線維芽細胞は、対象に対して同種異系、異種異系、又は自己由来である。いくつかの実施形態において、線維芽細胞は、皮膚、脂肪、骨髄、大網組織(omental tissue)、血液、乳歯、卵管、精巣組織、卵巣組織、毛包、子宮内膜組織、又はそれらの組み合わせに由来する。いくつかの実施形態において、線維芽細胞は真皮線維芽細胞である。いくつかの実施形態において、線維芽細胞は、再生活性を増強するのに十分な条件に事前に供されている。いくつかの実施形態において、前記条件は、線維芽細胞におけるHIF1α発現を上方制御するのに十分である。いくつかの実施形態において、前記条件は、未処理の対照に対してHIF1αを少なくとも25%上方制御するのに十分である。いくつかの実施形態において、前記条件は、線維芽細胞におけるHIF1αの核移行を増強するのに十分である。いくつかの実施形態において、前記条件は、低酸素を模倣することができる薬剤を含む。いくつかの実施形態において、条件は、線維芽細胞を一酸化炭素で培養することを含む。いくつかの実施形態において、前記条件は、約0重量%~約79重量%の窒素、約21重量%~約99.999999重量%の酸素、及び約0.0000001重量%~約0.3重量%の一酸化炭素を含むガス組成物に線維芽細胞を曝露することを含む。いくつかの実施形態において、前記ガス組成物は、0%の窒素及び約99.999999%の酸素を含む。いくつかの実施形態において、前記ガス組成物は、約0.005%と約0.05%の間を含む。いくつかの実施形態において、線維芽細胞は、線維芽細胞の生存及び/又は活性を増強するのに十分な条件に事前に供されている。いくつかの実施形態において、前記条件は、エピジェネティック調節因子による処理を含む。いくつかの実施形態において、エピジェネティック調節因子は、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤である。いくつかの実施形態において、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤は、バルプロ酸、ボリノスタット、エンチノスタット、パノビノスタット、トリコスタチンA、モセチノスタット、ベリノスタット、FK228、MC1568、ツバスタチン、酪酸ナトリウム、又はスルフォラファンである。いくつかの実施形態において、エピジェネティック調節因子は、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤である。いくつかの実施形態において、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤は、5-アザシチジンである。いくつかの実施形態において、前記条件は、線維芽細胞をGSK-3阻害剤と共に培養することを含む。いくつかの実施形態において、GSK-3阻害剤は、リチウム又はリチウム塩である。
【0011】
いくつかの実施形態において、本方法は、対象に有効量の線維芽細胞由来産物を提供することを含む。いくつかの実施形態において、線維芽細胞由来産物は、皮膚、脂肪、骨髄、大網組織、血液、乳歯、卵管、精巣組織、卵巣組織、毛包、子宮内膜組織、又はそれらの組み合わせに由来する線維芽細胞から得られた。いくつかの実施形態において、線維芽細胞由来産物は、真皮線維芽細胞から得られた。いくつかの実施形態において、線維芽細胞由来産物は、対象に対して同種異系、異種異系、又は自己由来の線維芽細胞から得られた。いくつかの実施形態において、線維芽細胞由来産物は、線維芽細胞の培養からの条件培地を含む。いくつかの実施形態において、条件培地は、EMEM、α-MEM、IMDM、DMEM、又はRPMI中での線維芽細胞の培養から得られた。いくつかの実施形態において、調整培地は、線維芽細胞用の栄養を含む懸濁液中での接着線維芽細胞の培養によって生成された。いくつかの実施形態において、液体懸濁液は成長因子を含む。いくつかの実施形態では、液体懸濁液は幹細胞エクソソームを含む。いくつかの実施形態において、幹細胞エクソソームは、間葉系幹細胞由来エクソソームである。いくつかの実施形態において、間葉系幹細胞は、臍帯、骨髄、皮膚、卵管、脂肪組織、子宮内膜組織、末梢血、月経血、毛包、又はそれらの組み合わせに由来する。いくつかの実施形態において、液体懸濁液は、1つ以上の炎症性メディエーターの活性を阻害することができる中和因子を含む。いくつかの実施形態において、中和因子は、モノクローナル抗体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、又は遺伝子編集系である。いくつかの実施形態において、中和因子は、インターロイキン-1、インターロイキン-6、インターロイキン-8、インターロイキン-9、インターロイキン-11、インターロイキン-12、インターロイキン-15、インターロイキン-17、インターロイキン-18、インターロイキン-21、インターロイキン-23、インターロイキン-27、インターロイキン-33、TNFα、インターフェロンガンマ、TNFβ、又はリンホトキシンに結合可能な抗体である。いくつかの実施形態において、液体懸濁液は、VEGF、EGF、PGDF-BB、IGF-1、HGF-1、NGF、BDNF、IL-3、IL-4、IL-10、IL-13、IL-20、IL-35を含む。いくつかの実施形態において、線維芽細胞由来産物は、線維芽細胞由来のマイクロベシクルである。いくつかの実施形態において、線維芽細胞由来産物は、線維芽細胞由来のエクソソームである。いくつかの実施形態において、エクソソームは、線維芽細胞からの条件培地から濃縮された。いくつかの実施形態において、エクソソームは、a)支持体を一本鎖オリゴヌクレオチドで官能化し、官能化支持体を生成すること;b)前記官能化支持体を、一本鎖オリゴヌクレオチドに相補的なタグを有するリガンドとインキュベートし、固定化リガンドを得ること;c)前記固定化リガンドを条件培地とインキュベートして、前記固定化リガンドとエクソソームとの結合によりエクソソームの捕捉を可能にし、捕捉されたエクソソームの基質を得ること;及びd)前記捕捉されたエクソソームを制限酵素とインキュベートすること、によって濃縮される。いくつかの実施形態において、リガンドは抗体、ペプチド、又はアプタマーである。いくつかの実施形態において、支持体は、磁気ビーズ、膜、細胞培養プレート、試験管、スライド、マイクロプレート、マイクロチャネル、ピラー、又はディスク状片である。いくつかの実施形態において、支持体は、共有結合又はビオチン化を介してリガンドで官能化される。いくつかの実施形態において、制限酵素はDNAseである。いくつかの実施形態において、リガンドは、エクソソーム特異的テトラスパニンに結合可能な抗体である。いくつかの実施形態において、リガンドは、MHCクラスI及びII、HSP70、アネキシンV、フロチリン、又はEpCAMに結合可能な抗体である。いくつかの実施形態において、条件培地は、EMEM、α-MEM、IMDM、DMEM、又はRPMI中での線維芽細胞の培養に由来する。いくつかの実施形態において、線維芽細胞由来産物は、線維芽細胞由来のアポトーシス小胞である。いくつかの実施形態において、線維芽細胞由来産物は、線維芽細胞由来の核酸である。いくつかの実施形態において、線維芽細胞由来産物は、再生活性を増強するのに十分な条件に供された線維芽細胞から得られた。いくつかの実施形態において、条件は、線維芽細胞におけるHIF1α発現を上方制御するのに十分である。いくつかの実施形態において、条件は、未処理の対照に対してHIF1αを少なくとも25%上方制御するのに十分である。いくつかの実施形態において、条件は、線維芽細胞におけるHIF1αの核移行を増強するのに十分である。いくつかの実施形態において、条件は、低酸素を模倣することができる薬剤を含む。いくつかの実施形態において、条件は、線維芽細胞を一酸化炭素で培養することを含む。いくつかの実施形態において、条件は、約0重量%~約79重量%の窒素、約21重量%~約99.999999重量%の酸素、及び約0.0000001重量%~約0.3重量%の一酸化炭素を含むガス組成物に線維芽細胞を曝露することを含む。いくつかの実施形態において、ガス組成物は、0%の窒素及び約99.999999%の酸素を含む。いくつかの実施形態において、ガス組成物は、約0.005%と約0.05%との間を含む。いくつかの実施形態において、線維芽細胞由来産物は、線維芽細胞の生存及び/又は活性を増強するのに十分な条件に供された線維芽細胞から得られた。いくつかの実施形態において、前記条件は、エピジェネティック調節因子による処理を含む。いくつかの実施形態において、エピジェネティック調節因子は、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤である。いくつかの実施形態において、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤は、バルプロ酸、ボリノスタット、エンチノスタット、パノビノスタット、トリコスタチンA、モセチノスタット、ベリノスタット、FK228、MC1568、ツバスタチン、酪酸ナトリウム、又はスルフォラファンである。いくつかの実施形態において、エピジェネティック調節因子は、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤である。いくつかの実施形態において、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤は、5-アザシチジンである。いくつかの実施形態において、条件は、線維芽細胞をGSK-3阻害剤と共に培養することを含む。いくつかの実施形態において、GSK-3阻害剤は、リチウム又はリチウム塩である。
【0012】
いくつかの実施形態において、本方法は、対象に有効量のジフェニルシクロプロペノンを提供することをさらに含む。いくつかの実施形態において、本方法は、有効量のc-Met活性化剤(例えば、HGF)を対象に提供することをさらに含む。いくつかの実施形態において、本方法は、HGF産生を刺激することができる1つ以上の薬剤を対象に提供することをさらに含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、対象は、年齢が一致した対照対象と比較して、FoxP3を発現する細胞数が減少している。いくつかの実施形態において、対象は、年齢が一致した対照対象と比較して、インターロイキン-10を発現する細胞数が減少している。いくつかの実施形態において、対象は、年齢が一致した対照対象と比較して、インターロイキン-4を発現する細胞数が減少している。いくつかの実施形態において、対象は、年齢が一致した対照対象と比較して、インターロイキン-13を発現する細胞数が減少している。いくつかの実施形態において、対象は、年齢が一致した対照対象と比較して、インターロイキン-35を発現する細胞数が減少している。いくつかの実施形態において、対象は、年齢が一致した対照対象と比較して、制御性T細胞の数が減少している。いくつかの実施形態において、対象は、年齢が一致した対照対象と比較して、骨髄抑制細胞の数が減少している。いくつかの実施形態において、対象は、年齢が一致した対照対象と比較して、TIM-1を発現するB細胞の数が減少している。いくつかの実施形態において、対象は、年齢が一致した対照対象と比較して、IL-10を発現するB細胞の数が減少している。いくつかの実施形態において、対象は、年齢が一致した対照対象と比較して、制御性B細胞の数が減少している。いくつかの実施形態において、対象は、年齢が一致した対照対象と比較して、インターフェロンガンマを発現する細胞数が増加している。いくつかの実施形態において、対象は、年齢が一致した対照対象と比較して、TNFαを発現する細胞数が増加している。いくつかの実施形態において、対象は、年齢が一致した対照対象と比較して、インターロイキン-1を発現する細胞数が増加している。いくつかの実施形態において、対象は、年齢が一致した対照対象と比較して、インターロイキン-2を発現する細胞数が増加している。いくつかの実施形態において、対象は、年齢が一致した対照対象と比較して、インターロイキン-6を発現する細胞数が増加している。いくつかの実施形態において、対象は、年齢が一致した対照対象と比較して、インターロイキン-8を発現する細胞数が増加している。いくつかの実施形態において、対象は、年齢が一致した対照対象と比較して、インターロイキン-11を発現する細胞数が増加している。いくつかの実施形態において、対象は、年齢が一致した対照対象と比較して、インターロイキン-12を発現する細胞数が増加している。いくつかの実施形態において、対象は、年齢が一致した対照対象と比較して、インターロイキン-15を発現する細胞数が増加している。いくつかの実施形態において、対象は、年齢が一致した対照対象と比較して、インターロイキン-17を発現する細胞数が増加している。いくつかの実施形態において、対象は、年齢が一致した対照対象と比較して、インターロイキン-18を発現する細胞数が増加している。いくつかの実施形態において、対象は、年齢が一致した対照対象と比較して、インターロイキン-21を発現する細胞数が増加している。いくつかの実施形態において、対象は、年齢が一致した対照対象と比較して、インターロイキン-23を発現する細胞数が増加している。いくつかの実施形態において、対象は、年齢が一致した対照対象と比較して、インターロイキン-27を発現する細胞数が増加している。いくつかの実施形態において、対象は、年齢が一致した対照対象と比較して、インターロイキン-33を発現する細胞数が増加している。いくつかの実施形態において、対象は、年齢が一致した対照対象と比較して、ナチュラルキラー細胞数が増加している。いくつかの実施形態において、対象は、年齢が一致した対照対象と比較して、チュラルキラーT細胞数が増加している。いくつかの実施形態において、対象は、年齢が一致した対照対象と比較して、Th1細胞数が増加している。いくつかの実施形態において、対象は、年齢が一致した対照対象と比較して、Th17細胞数が増加している。
【0014】
また、本明細書では、いくつかの実施形態において、有効量の線維芽細胞由来エクソソームを対象に提供することを含む、対象におけるアンドロゲン性脱毛症を治療又は予防する方法が開示される。いくつかの実施形態において、有効量の線維芽細胞由来の条件培地を対象に提供することを含む、対象におけるアンドロゲン性脱毛症を治療又は予防する方法が開示される。
【0015】
また、本明細書では、いくつかの実施形態において、有効量の線維芽細胞由来エクソソームを対象に提供することを含む、対象における円形脱毛症を治療又は予防する方法が開示される。いくつかの実施形態において、有効量の線維芽細胞由来の条件培地を対象に提供することを含む、対象における円形脱毛症を治療又は予防する方法が開示される。
【0016】
治療的、診断的、又は生理学的な目的又は効果に関連するいずれかの方法はまた、記載された治療的、診断的、又は生理学的な目的又は効果を達成又は実施するための、本明細書で議論されるいずれかの化合物、組成物、又は薬剤の「使用」のような「使用」クレーム文言で記載され得る。
【0017】
本発明の1つの実施形態に関して議論された制限は、本発明の他の任意の実施形態に適用され得ることが特に企図される。さらに、本発明の任意の組成物は、本発明の任意の方法において使用され得、本発明の任意の方法は、本発明の任意の組成物を製造又は利用するために使用され得る。本開示の1つの態様に関して議論される任意の実施形態は、本開示の他の態様にも適用され、逆もまた同様である。例えば、本明細書に記載される方法の任意のステップは、任意の他の方法に適用され得る。さらに、本明細書に記載される任意の方法は、任意のステップ又はステップの組み合わせの除外を有することができる。実施例に記載された実施形態の態様は、異なる実施例又は本願の他の箇所、例えば、要約、詳細な説明、及び特許請求の範囲において議論された実施形態の文脈で実施され得る実施形態でもある。
【0018】
以上、以下の詳細な説明をよりよく理解できるようにするために本開示の特徴及び技術的利点をやや大まかに概説した。本明細書の特許請求の範囲の主題を形成する追加の特徴及び利点は、以下に説明する。開示された着想及び具体的な実施形態は、本設計と同じ目的を遂行するための他の構造を修正又は設計するための基礎として容易に利用され得ることが、当業者には理解されるべきである。また、そのような等価な構造は、添付の特許請求の範囲に規定された精神及び範囲から逸脱しないことも、当業者には理解されるはずである。本明細書に開示された設計の特徴と考えられる新規な特徴は、組織及び操作方法の両方に関して、さらなる目的及び利点とともに、以下の説明からよりよく理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[I.定義の例]
長年の特許法の慣例に従い、本明細書において、特許請求の範囲を含め、comprisingという単語と組み合わせて使用される場合、「a」及び「an」という単語は、「1つ以上」を表す。本開示のいくつかの実施形態は、本開示の1つ又は複数の要素、方法ステップ、及び/又は方法から構成されるか、又はこれらから本質的に構成され得る。本明細書に記載される任意の方法又は組成物が、本明細書に記載される任意の他の方法又は組成物に関して実施され得、異なる実施形態が組み合わされ得ることが企図される。
【0020】
本明細書で使用される場合、「又は」及び「及び/又は」という用語は、複数の成分を組み合わせて、又は互いに排他的に記述するために使用される。例えば、「x、y、及び/又はz」は、「x」単独、「y」単独、「z」単独、「x、y、及びz」、「(x及びy)又はz」、「x又は(y及びz)」、又は「x又はy又はz」を指すことができる。x、y、又はzは、実施形態から特に除外されてもよいことが特に企図されている。
【0021】
本出願を通じて、「約」という用語は、細胞生物学及び分子生物学の分野におけるその平明かつ通常の意味に従って使用され、値が、その値を決定するために採用される装置又は方法についての誤差の標準偏差を含むことを示す。
【0022】
本明細書で使用する「同種異系」とは、同じ種の1つ以上の個体由来ではあるが、自然環境では免疫学的に不適合であるか、又は免疫学的に不適合になりうる、他の身体からの組織又は細胞又は他の材料を指す。
【0023】
本明細書で使用する「細胞株」とは、初代細胞培養の1回以上の継代培養によって形成された細胞集団を指す。再培養の各ラウンドは継代と呼ばれる。細胞が継代培養された場合、継代培養された細胞という。ある特定の細胞集団、あるいは細胞株は、継代された回数によって言及又は特徴づけられることがある。例えば、10回継代された培養細胞集団はP10培養と呼ばれる場合がある。初代培養、すなわち組織から細胞を分離した後の最初の培養はP0と呼ばれる。最初の継代培養の後、細胞は二次培養(P1又は継代1)と表現される。二次培養の後、細胞は三次培養(P2又は継代2)となる。継代培養の期間中に多くの集団倍加があり得ることは当業者には理解されよう。継代間の期間中の細胞の増殖(例えば、集団倍加の数)は、播種密度、基質、培地、増殖条件、継代間の時間を含むがこれらに限定されない多くの因子に依存する。
【0024】
本明細書で使用される「条件培地」とは、特定の細胞又は細胞集団を一定期間培養した後、培地を除去し、細胞から培地を分離した培地を指す。細胞が培地中で培養されると、他の細胞に栄養因子を供給する細胞因子を分泌することがある。このような栄養因子には、ホルモン、サイトカイン、細胞外マトリックス(ECM)、タンパク質、小胞、抗体、顆粒などが含まれるが、これらに限定されるものではない。この例では、細胞因子を含む培地は条件培地である。細胞又は細胞集団「由来」の条件培地は、上述のように細胞又は細胞集団から得られた条件培地を表す。したがって、一例では、線維芽細胞からの条件培地は、線維芽細胞が一定期間培養され、その後取り出されて、培地が線維芽細胞から分離された培地を表す。
【0025】
本明細書において「栄養因子」とは、細胞の生存、成長、増殖、及び/又は成熟を促進及び/又は支援する物質を指す。あるいは、それに加えて、栄養因子は細胞の活性の増加を刺激する。
【0026】
「~を含む(comprising)」という用語は、「~を含む(including)」、「~を含む(containing)」、又は「~を特徴とする(characterized by)」と同義であり、包括的又はオープンエンドであり、追加の未記載要素又は方法ステップを除外しない。「~からなる」という表現は、特定されていない要素、工程、又は成分を除外する。「~から本質的になる」という表現は、記載される主題の範囲を、指定された材料又は工程と、その基本的かつ新規な特性に重大な影響を与えないものとに限定する。「~からなる」という用語の文脈で説明される実施形態は、「~からなる」又は「~から本質的になる」という用語の文脈でも実装され得ることが企図される。
【0027】
治療された対象に対して治療されていない対象の任意の症状の表現に関連する、用語「低減する」、「阻害する」、「減少させる」、「抑制する」、「減少させる」、「予防する」、及び文法上の等価物(「より低く」、「より小さく」などを含む)は、治療対象における症状の量及び/又は大きさが、医学的に訓練された人員によって臨床的に適切であると認識される任意の量だけ、処置された対象における症状の量及び/又は強度が、治療されていない対象における症状の量及び/又は強度よりも低いことを意味する。一実施形態では、治療された対象における症状の量及び/又は大きさは、治療されていない対象における症状の量及び/又は大きさより少なくとも10%低い、少なくとも25%低い、少なくとも50%低い、少なくとも75%低い、及び/又は少なくとも90%低い。
【0028】
本明細書で使用される場合、「治療上有効な量」という用語は、「有効量」、「治療上有効な用量」、及び/又は「有効量」と同義であり、それを必要とする個体において当業者が求める生物学的、美容的又は臨床的応答を引き出す化合物の量を指す。一例として、有効量は、細胞群の免疫原性を低下させるのに十分な量である。開示された方法の特定の適用に投与されるべき適切な有効量は、本明細書に提供される指針を用いて、当業者によって決定され得る。例えば、有効量は、本明細書に記載のin vitro及びin vivoアッセイから外挿することができる。当業者であれば、個体の状態を治療の経過を通じてモニターすることができ、投与される本明細書に開示される化合物又は組成物の有効量をそれに応じて調節することができることを認識するであろう。
【0029】
本明細書において、「治療」、「処置」、又は「処置する」という用語は、治療される個体又は細胞の自然経過を変化させようとする介入を意味し、予防のため、又は疾患又は病態の病理学的経過の間に実施されうる。治療は、例えば、疾患の発生又は再発の予防、症状の緩和、疾患の直接的又は間接的な病理学的結果の軽減、転移の予防、疾患の進行速度の低下、疾患状態の改善又は緩和、寛解又は予後の改善など、様々な所望の結果の1つ以上を達成するために行われる。
【0030】
本明細書全体を通して、「一実施形態」、「実施形態」、「特定の実施形態」、「関連する実施形態」、「ある実施形態」、「追加の実施形態」、又は「さらなる実施形態」、又はそれらの組み合わせへの言及は、実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通じて様々な場所に前述の語句が現れるが、必ずしもすべてが同じ実施形態を指すわけではない。さらに、特定の特徴、構造、又は特性は、1つ又は複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。
【0031】
本開示の様々な態様を範囲形式で示すことができる。範囲形式での説明は、単に便宜上、簡潔にするためのものであり、本開示の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の記述は、その範囲内の個々の数値と同様に、可能なすべての部分範囲が明示的に記載されているかのように具体的に開示しているとみなされるべきである。例えば、1から6までのような範囲の記述は、1から3まで、1から4まで、1から5まで、2から4まで、2から6まで、3から6までのような部分範囲、及びその範囲内の個々の数値、例えば、1、2、3、4、5、及び6を具体的に開示したとみなされるべきである。これは範囲の広さに関係なく適用される。範囲が存在する場合、範囲は範囲の端点を含むことができる。
【0032】
本明細書で使用される「対象」という用語は、「個体」又は「患者」という用語と互換的に使用されることがあり、一般に、治療を必要とする個体を指す。対象は、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ブタ又はげっ歯類などの哺乳動物であり得る。対象は、例えば、骨に関連する疾患又は病状を有するか、又は有する疑いのある患者であることができる。骨に直接的又は間接的に関連する病状を有するか又は有する疑いのある対象については、病状は1つ又は複数の種類であり得る。対象は、疾患を有するか、又は疾患が疑われる。対象は無症状であってもよい。対象の性別は問わない。対象は、特定の年齢、例えば、少なくとも30歳、35歳、40歳、45歳、50歳、55歳、60歳、65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、又は100歳以上である。
【0033】
本明細書で使用する「線維芽細胞由来産物」(「線維芽細胞関連産物」又は「線維芽細胞誘導体」でもある)という用語は、1つ以上の線維芽細胞から誘導された、又は得られた分子剤又は細胞剤を指す。場合によっては、線維芽細胞由来産物は分子薬剤である。線維芽細胞由来分子産物の例には、線維芽細胞培養からの条件培地、線維芽細胞から得られるマイクロベシクル、線維芽細胞から得られるエクソソーム、線維芽細胞から得られるアポトーシス小胞、線維芽細胞から得られる核酸(例えば、DNA、RNA、mRNA、miRNAなど)、線維芽細胞から得られるタンパク質(例えば、成長因子、サイトカインなど)、及び線維芽細胞から得られる脂質が含まれる。場合によっては、線維芽細胞由来の産物は細胞剤である。細胞性の線維芽細胞由来産物の例としては、線維芽細胞の分化及び/又は脱分化によって産生される細胞(例えば、幹細胞、造血細胞、神経細胞など)が挙げられる。
【0034】
「担体」とは、本明細書で使用する場合、治療薬が投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、又はビヒクルを指す。このような医薬担体は、水中の生理食塩水のような滅菌液体、及びピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などのような石油由来、動物由来、植物由来又は合成由来のものを含む油であり得る。生理食塩水は、医薬組成物を静脈内投与する場合に好ましい担体である。生理食塩水、ブドウ糖及びグリセロールの水溶液も、特に注射液用の液体担体として採用することができる。適切な医薬賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセリン、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどが挙げられる。組成物は、所望により、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、又はpH緩衝剤を含有することもできる。これらの組成物は、溶液、懸濁液、乳剤、錠剤、丸薬、カプセル剤、粉末剤、徐放性製剤などの形態をとることができる。組成物は、トリグリセリドなどの従来の結合剤及び担体を用いて、坐剤として製剤化することができる。本発明の化合物は、中性又は塩の形態として製剤化することができる。薬学的に許容される塩としては、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来する遊離アミノ基で形成されたもの、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来する遊離カルボキシル基で形成されたものなどが挙げられる。適切な医薬担体の例は、E. W. Martin著「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。このような組成物は、治療上有効な量の化合物、好ましくは精製された形態の化合物を、適切な量の担体とともに含有し、患者への適切な投与のための形態を提供する。製剤は投与様式に適したものであるべきである。
【0035】
[II.脱毛症の治療又は予防のための方法及び組成物]
本開示の態様は、脱毛症の治療又は予防のための方法及び組成物に関する。脱毛症(「脱毛」でもある)は、対象の頭部の任意の部分からの毛髪の任意の喪失を記載する。様々なタイプの脱毛症が当該技術分野において認識されており、アンドロゲン性脱毛症(例えば、男性パターン脱毛症、女性パターン脱毛症)、円形脱毛症、及び休止期脱毛症が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、円形脱毛症(AA)の治療方法が開示される。
【0036】
本明細書に開示されるように、線維芽細胞及び/又は線維芽細胞由来産物(例えば、エクソソーム、条件培地など)は、脱毛症の治療及び予防に有用である。したがって、本開示の実施形態は、有効量の線維芽細胞又は線維芽細胞由来産物を対象に提供することを含む、脱毛症の治療又は予防のための方法に向けられている。いくつかの実施形態において、本開示の方法は、対象への線維芽細胞の投与を含む。いくつかの実施形態において、本開示の方法は、対象への線維芽細胞由来産物の投与を含む。特定の実施形態では、脱毛症の治療又は予防のために、線維芽細胞由来エクソソーム、又は線維芽細胞由来エクソソームを含む組成物を対象に投与することを含む方法が開示される。このような組成物の投与には、例えば、局所投与、経皮投与、及び皮内投与が含まれる。線維芽細胞又は線維芽細胞由来産物を含む医薬組成物としては、例えば、石鹸、シャンプー、軟膏、及び他のこのような製剤が挙げられる。
【0037】
線維芽細胞又は線維芽細胞由来産物は、1つ又は複数の治療薬又は療法と組み合わせて対象に提供され得る。一例では、本開示の線維芽細胞又は線維芽細胞由来産物は、ジフェニルシクロプロペノンと組み合わせて(例えば、ジフェニルシクロプロペノンと同時に、ジフェニルシクロプロペノンの前に、又はジフェニルシクロプロペノンの後に)対象に投与される。別の例において、本開示の線維芽細胞又は線維芽細胞由来産物は、HGF産生刺激剤と組み合わせて(例えば、HGF産生刺激剤と同時に、HGF産生刺激剤の前に、又はHGF産生刺激剤の後に)対象に投与される。
【0038】
対象に投与される線維芽細胞及び線維芽細胞由来産物を得るために培養される線維芽細胞を含む本開示の線維芽細胞は、線維芽細胞の再生活性を増強するのに十分な条件に供され得る。一例では、線維芽細胞は対象に投与する前にそのような条件に供される。別の例では、線維芽細胞は、線維芽細胞から線維芽細胞由来産物を得る前にそのような条件に供される。このような条件には、例えば、対照の未処理の線維芽細胞と比較して、線維芽細胞におけるHIF1α発現を上方制御するのに十分な条件が含まれる。いくつかの実施形態では、線維芽細胞は、HIF1α発現を少なくとも、多くとも、又は約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、もしくは100%、又はそれ以上、又はそこから導出可能な任意の範囲もしくは値だけ上方制御するのに十分な条件に供される。このような条件は、対照の未処理の線維芽細胞と比較して、細胞内のHIF1αの核移行を増強する(すなわち、細胞の核内のHIF1αの量を増加させる)のに十分であり得る。このような条件は、低酸素条件及び/又は低酸素をシミュレートするための1つ以上の薬剤による処理からなり得る。いくつかの実施形態において、本開示の線維芽細胞は一酸化炭素を用いて培養される。いくつかの実施形態において、一酸化炭素を用いて線維芽細胞を培養することは、約0重量%~約79重量%の窒素(又はその中の任意の範囲もしくは値)、約21重量%~約99.999999重量%の酸素(又はその中の任意の範囲もしくは値)、及び0.0000001重量%~約0.3重量%の一酸化炭素(又はその中の任意の範囲もしくは値)を含むガス組成物に線維芽細胞を曝露することを含む。
【0039】
対象に投与される線維芽細胞及び線維芽細胞由来産物を得るために培養される線維芽細胞を含む本開示の線維芽細胞は、線維芽細胞の生存及び/又は活性を増強する条件に供され得る。一例では、線維芽細胞は対象に投与する前にそのような条件に供される。別の例では、線維芽細胞は、線維芽細胞から線維芽細胞由来産物を得る前にそのような条件に供される。いくつかの実施形態において、このような条件は、エピジェネティック修飾剤による処理を含む。いくつかの実施形態において、エピジェネティック修飾剤は、例えば、バルプロ酸、ボリノスタット、エンチノスタット、パノビノスタット、トリコスタチンA、モセチノスタット、ベリノスタット、FK228、MC1568、ツバスタチン、酪酸ナトリウム、又はスルフォラファンなどのヒストン脱アセチル化酵素阻害剤である。いくつかの実施形態において、エピジェネティック修飾因子は、例えば、5-アザシチジンなどのDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤である。いくつかの実施形態において、このような条件は、GSK-3β阻害剤などのグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3(GSK-3)阻害剤による治療を含む。いくつかの実施形態において、GSK-3阻害剤は、リチウム又はリチウム塩である。
【0040】
本開示の実施形態は、AA患者の毛球近傍へのT細胞浸潤を減少させるための線維芽細胞及び/又は線維芽細胞由来産物(例えば、エクソソーム)の利用を含む。AA患者においては、ジフェニルシクロプロペノン(DCP)による局所免疫療法が治療効果を有することが知られている[25-41]。DCPによる治療が成功した前後のAA患者及び健常対照者の頭皮生検から抽出したRNAを用いて半定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応を行ったところ、研究者は、全てのタイプの未治療AAにおいて、インターフェロン(IFN)-γ、インターロイキン(IL)-1β、IL-2の定常状態mRNAレベルの増加を伴うT細胞反応が検出された。DCP投与後、IFN-γの発現は減少したが、対照群でみられる構成的なレベルよりはまだ高かった。一方、IL-2、IL-8、IL-10、腫瘍壊死因子αのmRNA発現は増加した。これらの結果は、AAにおける病因に関与するサイトカインの存在を示唆している。未治療のAAではTH1タイプのサイトカインパターンが存在し、これはDCP治療中に分泌されるサイトカインによって変化する。IL-10は最近、TH1反応の免疫調節因子として報告されており、したがって、DCP適用後に基底ケラチノサイト又は病変T細胞が生理活性IL-10を分泌し、病変Tリンパ球に対する抑制効果をもたらすという仮説が立てられている[42]。
【0041】
本開示の一実施形態では、線維芽細胞は、インターフェロンガンマの発現を低下させるのに十分な頻度及び濃度で対象に投与される。別の実施形態では、毛髪再生の増加/脱毛の減少におけるDCP処置の有効性を高めるために、線維芽細胞及び/又は線維芽細胞由来産物(例えば、エクソソーム)がDCPと共に投与される。本発明の別の実施形態では、エクソソームなどの線維芽細胞由来産物は、インターフェロンガンマの発現を低下させるのに十分な頻度及び濃度で投与される。免疫調節療法のためのエクソソーム生成のための特定の例示的方法は、当技術分野で認識されており、本明細書で企図されている[43]。
【0042】
本開示の一実施形態において、酸化的/炎症性ストレスは、線維芽細胞及び/又は線維芽細胞由来産物の投与量及び/又は投与頻度を導くために、脱毛傾向のマーカーとして利用される。酸化的/炎症性ストレスを評価する手段は、当該技術分野で記載されており、本明細書で企図されている[44~66]。いくつかの状況において、本開示は、抗酸化剤とともに線維芽細胞及び/又は線維芽細胞由来産物の投与を提供する。
【0043】
いくつかの実施形態では、毛包細胞の増殖を促進するために、HGFの刺激剤(すなわち、HGF産生を刺激できる薬剤)が添加される[67-70]。
【0044】
[III。線維芽細胞と培養細胞]
本開示の態様は、治療方法及び組成物に有用な細胞を含む。本明細書に開示される細胞には、例えば、線維芽細胞、幹細胞(例えば、造血幹細胞又は間葉系幹細胞)、及び内皮前駆細胞が含まれる。ある種類の細胞(例えば、線維芽細胞)は、単独で用いてもよいし、他の種類の細胞と組み合わせて用いてもよい。例えば、線維芽細胞を単離し、単独で又は1つ以上の幹細胞と組み合わせて対象に提供することができる。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるのは、アンドロゲン性脱毛症及び円形脱毛症を含む脱毛症が可能な線維芽細胞である。いくつかの実施形態において、本開示の線維芽細胞はプラスチックに接着する。いくつかの実施形態において、線維芽細胞は、CD73、CD90、及び/又はCD105を発現する。いくつかの実施形態において、線維芽細胞は、CD14、CD34、CD45、及び/又はHLA-DR陰性である。いくつかの実施形態において、線維芽細胞は、骨形成系細胞、軟骨形成系細胞、及び脂肪形成系細胞に分化する能力を有する。
【0045】
本開示の組成物は、増殖し、外胚葉、中胚葉、又は内胚葉に分化することができる単離された線維芽細胞又はその集団から得ることができる。いくつかの実施形態において、単離された線維芽細胞は、Oct-4、Nanog、Sox-2、KLF4、c-Myc、Rex-1、GDF-3、LIF受容体、CD105、CD117、CD344、又はStellaマーカーのうちの少なくとも1つを発現する。いくつかの実施形態において、単離された線維芽細胞は、MHCクラスI、MHCクラスII、CD45、CD13、CD49c、CD66b、CD73、CD105、又はCD90細胞表面タンパク質の少なくとも1つを発現しない。このような単離された線維芽細胞は、条件培地の供給源として使用することができる。この細胞は単独で培養してもよいし、条件培地中の増殖因子の産生をさらに上方制御するために他の細胞の存在下で培養してもよい。
【0046】
いくつかの実施形態において、本開示の線維芽細胞は、テロメラーゼ、Nanog、Sox2、β-III-チューブリン、NF-M、MAP2、APP、GLUT、NCAM、NeuroD、Nurr1、GFAP、NG2、Olig1、アルカリホスファターゼ、ビメンチン、オステオネクチン、オステオプロテグリン、アディプシン、エリスロポエチン、SM22-α、HGF、c-MET、α-1-Antriptrypsin、セルロプラスミン、AFP、PEPCK1、BDNF、NT-4/5、TrkA、BMP2、BMP4、FGF2、FGF4、PDGF、PGF、TGFα、TGFβ、及び/又はVEGFを発現する。
【0047】
線維芽細胞は、それ自体の投与によって増殖させ利用することもできるし、条件培地を得るために増殖培地中で培養することもできる。増殖培地という用語は、一般に、線維芽細胞の培養に十分な培地を指す。特に、本明細書の開示の細胞を培養するための1つの培地は、ダルベッコ変法必須培地(DMEM)を含む。一例としては、DMEM-low glucose(本明細書ではDMEM-LGともいう)(Invitrogen(登録商標)、カリフォルニア州カールズバッド)が挙げられる。DMEM-low glucoseは、好ましくは、15%(v/v)のウシ胎児血清(例えば、規定のウシ胎児血清、HycloneTM、ユタ州ローガン)、抗生物質/抗マイコプラズマ剤(好ましくは、ペニシリン(100単位/ミリリットル)、ストレプトマイシン(100ミリグラム/ミリリットル)、及びアムホテリシンB(0.25マイクログラム/ミリリットル)、(Invitrogen、(登録商標)、カリフォルニア州カールズバッド)、及び0.001%(v/v)2-メルカプトエタノール(Sigma(登録商標)、ミズーリ州セントルイス)が補充される。
【0048】
培地は、血清含有培地、無血清培地、あるいはゼノフリー(xeno-free)培地とすることができる。異種動物由来成分の混入を防ぐという観点から、血清は幹細胞と同じ動物由来のものを用いることができる。無血清培地とは、未処理又は未精製の血清を含まない培地のことであり、精製された血液由来成分や動物組織由来成分(成長因子など)を含む培地も含まれる。培地は、血清の代替物を含んでも含まなくてもよい。血清の代替物としては、アルブミン(脂質リッチアルブミン、ウシアルブミン、組換えアルブミン又はヒト化アルブミンなどのアルブミン代替物、植物デンプン、デキストラン及びタンパク質加水分解物など)、トランスフェリン(又は他の鉄トランスポーター)、脂肪酸、インスリン、コラーゲン前駆体、微量元素、2-メルカプトエタノール、3’-チオールギセロール(giserol)、又はこれらの等価物を適切に含む材料を挙げることができる。血清の代替物は、例えば、国際公開第98/30679号(その全体が本明細書に組み込まれる)に開示された方法によって調製することができる。あるいは、より便宜的に、任意の市販の材料を使用することができる。市販の材料としては、ノックアウト血清代替物(KSR)、Chemically-defined Lipid concentrated(Gibco)、Glutamax(Gibco)などが挙げられる。培地成分の1つ以上は、少なくとも、多くとも、約0.1、0.5、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、180、200、250ng/L、ng/ml、μg/ml、mg/ml、又はそこから導出可能な任意の範囲の濃度で添加することができる。
【0049】
場合によっては、異なる増殖培地が使用されるか、異なる補充物が提供され、これらは通常、増殖培地への補充物として示される。また本発明に関連して、本明細書で使用される標準増殖条件という用語は、37℃で、相対湿度が約100%に維持され、5%COを含む標準的な雰囲気中での細胞の培養を指す。前述の条件は培養に有用であるが、このような条件は、例えば温度、CO、相対湿度、酸素、増殖培地などを変化させるなど、細胞を培養するために当該技術分野で利用可能な選択肢を理解する当業者によって変化させることが可能であることを理解されたい。
【0050】
また、本明細書で開示するのは培養細胞である。培養細胞については、様々な用語が用いられている。細胞培養とは、一般に、生体から採取され、制御された条件下(「培養中」又は「培養」)で増殖した細胞を指す。一次細胞培養とは、最初の部分培養の前に、生物から直接採取した細胞、組織、臓器の培養のことである。細胞は、細胞の増殖及び/又は分裂を促進する条件下で増殖培地中に置かれると、培養物中で拡大し、その結果細胞の集団が大きくなる。細胞が培養で拡大されるとき、細胞増殖の速度は、細胞数が2倍になるのに必要な時間、すなわち「倍加時間」で測定されることがある。
【0051】
開示された方法で使用される線維芽細胞は、老化状態に達する前に、少なくとも25、30、35、又は40回の倍加を受けることができる。1014細胞以上に達するまで倍加できる細胞を誘導する方法が提供される。例えば、培養中に約10から約10細胞/cmで播種したときに、少なくとも約1014、1015、1016、又は1017以上の細胞を産生するのに十分な倍加が可能な細胞を誘導する方法である。好ましくは、これらの細胞数は80日、70日、又は60日以内に産生される。ある実施形態において、使用される線維芽細胞は単離され、拡大され、CD10、CD13、CD44、CD73、CD90、CD141、PDGFr-α、HLA-A、HLA-B、及びHLA-Cからなる群から選択される1つ以上のマーカーを有する。いくつかの実施形態において、線維芽細胞は、CD31、CD34、CD45、CD117、CD141、HLA-DR、HLA-DP、又はHLA-DQのうちの1つ以上を産生しない。
【0052】
線維芽細胞や椎体細胞を含む培養細胞について言及する場合、老化(「複製的老化」又は「細胞老化」とも)という用語は、有限の細胞培養に起因する性質、すなわち、有限回数の集団倍加(ヘイフリック限界と呼ばれることもある)を超えて増殖できないことを指す。細胞老化は線維芽細胞様細胞を用いて最初に報告されたが、培養でうまく増殖できるヒトの正常な細胞型のほとんどが細胞老化を起こす。様々な細胞型のin vitro寿命は様々であるが、最大寿命は通常100個体倍加未満である(これは培養物中の全ての細胞が老化し、その結果培養物が分裂できなくなるまでの倍加数である)。老化は暦上の時間に依存するのではなく、むしろ培養物が受けた細胞分裂の回数、すなわち集団倍加数によって測定される。したがって、必須成長因子を除去して静止状態にした細胞は、成長因子を再導入すると成長と分裂を再開することができ、その後、連続的に増殖させた同等の細胞と同じ数の倍加を行う。同様に、細胞を液体窒素中で凍結し、様々な数の細胞倍加を行った後、解凍して培養すると、凍結せずに培養した細胞と実質的に同じ数の細胞倍加を行う。老化細胞は死んだ細胞や死にかけた細胞ではなく、プログラムされた細胞死(アポトーシス)に対して抵抗性があり、3年間も非分裂状態を維持することができる。これらの細胞は生きており、代謝も活発であるが、分裂はしない。
【0053】
場合によっては、線維芽細胞は生検から得られ、生検を提供するドナーは治療される個体(自家)であってもよいし、治療される個体とは異なるドナー(同種異系)であってもよい。個体に対して同種異系線維芽細胞が利用される場合、線維芽細胞は一人又は複数のドナーのものであってもよい。ある実施形態では、線維芽細胞は若いドナーから使用される。別の実施形態では、線維芽細胞に遺伝子を導入し、増殖の増強とヘイフリック限界の克服を可能にする。細胞を誘導した後、標準的な細胞培養技術を用いて細胞を培養増殖させることができる。
【0054】
生検から線維芽細胞を採取する手順の一例を示す。皮膚組織(真皮及び表皮層)は、対象の耳介後部から生検することができる。一実施形態では、出発材料は、標準的な無菌的方法を用いて採取された3mmのパンチ皮膚生検3個から構成される。生検材料は、治療医によって採取され、滅菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含むバイアルに入れられる。生検材料は冷蔵シッパーで製造施設に返送される。一実施形態では、製造施設に到着後、生検材料は検査され、受け入れられ次第、直接製造エリアに移送される。工程開始後、生検組織は酵素消化の前に洗浄される。洗浄後、リベラーゼ消化酵素液をミンチせずに加え、生検組織を37.0±2℃で1時間インキュベートする。生検組織の消化時間は、培養細胞の生存率や増殖率に影響する重要なプロセスパラメーターである。リベラ―ゼ(Liberase)はコラゲナーゼ/中性プロテアーゼ酵素カクテルで、Lonza Walkersville, Inc.から製剤化され、Roche Diagnostics Corp.からは非製剤形態で得られる。あるいは、Serva Collagenase NB6 (Helidelburg, Germany)のような他の市販のコラゲナーゼを用いてもよい。消化後、開始増殖培地(IMDM、GA、10%ウシ胎児血清(FBS))を加えて酵素を中和し、遠心分離で細胞をペレット化し、5.0mLの開始増殖培地に再懸濁する。あるいは、遠心分離は行わず、開始培地の添加のみで酵素を完全に不活化する。初期化培地は、細胞懸濁液をT-175細胞培養フラスコに播種する前に添加し、細胞の増殖と拡大を開始させる。T-75フラスコの代わりにT-75、T-150、T-185又はT-225フラスコを使用することもできる。細胞は37.0±2℃、5.0±1.0% COで培養し、3~5日ごとに新鮮な完全増殖培地を与える。プロセス内の全てのフィードは、完全増殖培地の半分を除去し、同量を新しい培地と交換することにより行う。あるいは、全量をフィードすることもできる。継代前の細胞は、T-175フラスコに30日以上留置すべきではない。培養分割の際、適切な播種密度を確保するため、コンフルエンスをプロセス全体を通してモニターする。T-175フラスコで細胞のコンフルエンスが40%以上になったら、使用済み培地を除去して細胞を洗浄し、トリプシン-EDTAで処理してフラスコ内の接着細胞を溶液中に放出することにより継代する。その後、細胞はトリプシン処理し、T-500フラスコに播種して、細胞増殖が続けられる。T-500フラスコの代わりに、1本又は2本のT-300フラスコ、1層セルスタック(1CS)、1層セルファクトリー(1CF)、2層セルスタック(2CS)を使用することもできる。形態学的評価は各継代時及びハーベスト前に行い、プロセス全体を通して培養の純度をモニターする。形態は、観察されたサンプルを細胞培養の形態検査用の目視標準と比較することにより評価される。培養単層で増殖する場合、細胞は典型的な線維芽細胞の形態を示す。細胞は、細長い紡錘形か紡錘形の外観を示し、細長い伸長部を持つこともあれば、より大きく平坦化した星状細胞として現れ、細胞質前縁を持つこともある。これらの形態の混合も観察される。コンフルエントでない部分の線維芽細胞は、同様の形をしているが、ランダムに配向していることがある。細胞培養物におけるケラチノサイトの存在も評価される。ケラチノサイトは丸く不規則な形をしており、コンフルエンスが高いと石畳状に組織化されているように見える。低いコンフルエンスでは、ケラチノサイトは小さなコロニーとして観察される。細胞は37.0±2℃、5.0±1.0%COで培養し、T-500フラスコでは3~5日ごと、10層セルスタック(10CS)では5~7日ごとに継代する。継代前の細胞は、T-500フラスコに10日以上滞留させるべきではない。原薬の安全性に関する品質管理(QC)リリース試験には、無菌試験とエンドトキシン試験が含まれる。T-500フラスコ内の細胞コンフルエンスが95%以上になると、細胞は10CS培養容器に継代される。あるいは、10CSの代わりに5層セルスタック(5CS)を2個、又は10層セルファクトリー(10CF)を使用することもできる。10CSへの継代は、使用済み培地を除去し、細胞を洗浄し、トリプシン-EDTAで処理し、フラスコ内の接着細胞を溶液中に放出することにより行う。その後、細胞を10CSに移す。完全増殖培地を加えてトリプシンを中和し、T-500フラスコから細胞を新しい完全増殖培地の入った2Lボトルにピペットで移す。2Lボトルの内容物を10CSに移し、全層に播種する。細胞はその後、5.0±1.0%CO、37.0±2℃で培養し、5~7日ごとに新鮮な完全増殖培地を与える。継代前の細胞は、10CSに20日以上とどまるべきでない。一実施形態では、継代された真皮線維芽細胞は、増殖した線維芽細胞をタンパク質フリーの培地であるPrimary Harvest中で一定期間インキュベートすることにより、培地中に存在する免疫原性タンパク質を実質的に除去される。10CSの細胞コンフルエンスが95%以上になると、細胞を採取する。収穫は、使用済み培地を除去し、細胞を洗浄し、Trypsin-EDTAで処理して付着細胞を溶液中に放出し、さらに完全増殖培地を加えてトリプシンを中和することにより行う。細胞は遠心分離により回収され、再懸濁された後、全生細胞数と細胞生存率を測定するためのインプロセスQC検査が実施される。
【0055】
線維芽細胞は、例えば、真皮線維芽細胞;胎盤線維芽細胞;脂肪線維芽細胞;骨髄線維芽細胞;包皮線維芽細胞;臍帯線維芽細胞;毛包由来線維芽細胞;爪由来線維芽細胞;子宮内膜由来線維芽細胞;ケロイド由来線維芽細胞;及び形成外科関連の副産物から得られる線維芽細胞を含む、種々の供給源から得られる線維芽細胞であり得る。いくつかの実施形態において、線維芽細胞は真皮線維芽細胞である。
【0056】
いくつかの実施形態において、線維芽細胞は、1つ以上の因子を産生するように操作又は刺激される。いくつかの実施形態において、線維芽細胞は、白血病抑制因子(LIF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、上皮成長因子受容体(EGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、FGF-6.グリア由来神経栄養因子(GDNF)、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、肝細胞成長因子(HGF)、IFN-γ、インスリン様成長因子結合タンパク質(IGFBP-2)、IGFBP-6、IL-1ra、IL-6、IL-8、単球走化性タンパク質(MCP-1)、単核食細胞コロニー刺激因子(M-CSF)、神経栄養因子(NT3)、組織メタロプロテイナーゼ阻害因子(TIMP-1)、TIMP-2、腫瘍壊死因子(TNF-β)、血管内皮増殖因子(VEGF)、VEGF-D、ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子受容体(uPAR)、骨形成タンパク質4(BMP4)、IL1-a、IL-3、レプチン、幹細胞因子(SCF)、間質細胞由来因子-1(SDF-1)、血小板由来成長因子-BB(PDGFBB)、トランスフォーミング成長因子β(TGFβ-1)及び/又はTGFβ-3。操作又は刺激された線維芽細胞からの因子は、条件培地中に存在し、治療的使用のために採取され得る。
【0057】
いくつかの実施形態において、線維芽細胞は、血管新生を促進する能力を増強するために、1つ以上の血管新生遺伝子でトランスフェクトされる。「血管新生遺伝子」は、培養系、組織、又は生物において血管新生を刺激又は増強することができるタンパク質又はポリペプチドをコードする遺伝子を指す。線維芽細胞のトランスフェクションに有用な血管新生遺伝子の例としては、アクチビンA、アドレノメデュリン、aFGF、ALK1、ALK5、ANF、アンジオゲニン、アンジオポエチン-1、アンジオポエチン-2、アンジオポエチン-3、アンジオポエチン-4、bFGF、B61、bFGF誘導活性、カドヘリン、CAM-RF、cGMPアナログ、ChDI、CLAF、クローディン、コラーゲン、コネキシン、Cox-2、ECDGF(内皮細胞由来成長因子)、ECG、ECI、EDM、EGF、EMAP、エンドグリン、エンドセリン、エンドスタチン、内皮細胞増殖阻害因子、内皮細胞生存能維持因子、内皮分化スフィンゴ糖脂質G蛋白質共役型受容体-1(EDG1)、エフリン、Epo、HGF、TGF-β、PD-ECGF、PDGF、IGF、IL8、成長ホルモン、フィブリンフラグメントE、FGF-5、フィブロネクチン、フィブロネクチン受容体、第X因子、HB-EGF、HBNF、HGF、HUAF、心臓由来血管細胞増殖抑制因子、IL1、IGF-2 IFN-γ、α1β1インテグリン、α2β1インテグリン、K-FGF、LIF、平滑筋腫由来成長因子、MCP-1、マクロファージ由来成長因子、単球由来成長因子、MD-ECI、MECIF、MMP2、MMP3、MMP9、ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子、ニューロピリン、ニューロセリン、一酸化窒素供与体、一酸化窒素合成酵素(NOSs)、notch、オクルディン、ゾナオクルディン、オンコスタチンM、PDGF、PDGF-B、PDGF受容体、PDGFR-β、PD-ECGF、PAI-2、PD-ECGF、PF4、P1GF、PKR1、PKR2、PPARγ、PPARγリガンド、ホスホジエステラーゼ、プロラクチン、プロスタサイクリン、プロテインS、平滑筋細胞由来成長因子、平滑筋細胞由来遊走因子、スフィンゴシン-1-リン酸-1(SIP1)、Syk、SLP76、タキキニン、TGF-β、Tie1、Tie2、TGF-β、TGF-β受容体、TIMPs、TNF-α、トランスフェリン、トロンボスポンジン、ウロキナーゼ、VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、VEGF-E、VEGF、VEGF(164)、VEGI、EG-VEGFが挙げられる。1つ以上の血管新生因子をトランスフェクトした線維芽細胞は、開示された疾患の治療又は予防方法に使用することができる。
【0058】
適切な条件下で、線維芽細胞は、インターロイキン-1(IL-1)及び/又は他の炎症性サイトカインを産生し得る。いくつかの実施形態において、本開示の線維芽細胞は、IL-1又は他の炎症性サイトカインの発現を防止又は低減するように(例えば、遺伝子編集によって)改変される。例えば、いくつかの実施形態において、線維芽細胞は、線維芽細胞がIL-1を発現できないように、欠失した又は非機能性のIL-1遺伝子を有する線維芽細胞である。このような改変された線維芽細胞は、対象に提供された場合に限定された炎症促進能を有することにより、本開示の治療方法において有用であり得る。いくつかの実施形態において、線維芽細胞は、TNF-αで処理され(例えば、TNF-αで培養され)、それによって増殖因子の発現及び/又は線維芽細胞の増殖を誘導する。
【0059】
いくつかの実施形態において、本開示の線維芽細胞は、個体への導入後に分化する前駆細胞として使用される。いくつかの実施形態において、線維芽細胞は、個体への導入前に、異なる細胞型(例えば、造血細胞)への分化に供される。
【0060】
本明細書に開示されているように、線維芽細胞は個体への導入前又は導入後に1つ以上の因子を分泌する可能性がある。このような因子には、成長因子、栄養因子及びサイトカインが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施態様において、分泌された因子は、個体において治療効果を有し得る。いくつかの実施態様において、分泌された因子は同じ細胞を活性化する。いくつかの実施形態では、分泌因子は、隣接及び/又は遠位の内因性細胞を活性化する。いくつかの実施形態において、分泌因子は細胞増殖及び/又は細胞分化を刺激する。いくつかの実施形態において、線維芽細胞は、ヒト成長因子、線維芽細胞成長因子、神経成長因子、インスリン様成長因子、造血幹細胞成長因子、線維芽細胞成長因子ファミリーのメンバー、血小板由来成長因子ファミリーのメンバー、血管又は内皮細胞成長因子、及びTGFβファミリーのメンバーから選択されるサイトカイン又は成長因子を分泌する。
【0061】
いくつかの実施形態において、本開示の線維芽細胞は、mRNA分解阻害剤とともに培養される。いくつかの実施形態において、線維芽細胞は、線維芽細胞のリプログラミングを支持するのに適した条件下で培養される。いくつかの実施形態において、このような条件は、30℃と38℃の間、31℃と37℃の間、又は32℃と36℃の間の温度条件を含む。いくつかの実施形態において、このような条件は、4.6g/l、4.5g/l、4g/l、3g/l、2g/l又は1g/l以下のグルコースを含む。いくつかの実施形態において、そのような条件は、約1g/lのグルコースを含む。
【0062】
本開示の態様は、線維芽細胞から条件培地を生成することを含む。条件培地は、線維芽細胞を用いた培養から得ることができる。細胞は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10日間又はそれ以上培養されてよい。いくつかの実施形態では、線維芽細胞は条件培地を採取する前に約3日間培養される。条件培地は、培地から細胞を分離することによって得ることができる。条件培地を遠心分離してもよい(例えば、500×gで)。条件培地は膜でろ過してもよい。膜は1000kDaを超える膜であってもよい。条件培地は、HPLCなどの液体クロマトグラフィーに供することができる。条件培地は、サイズ排除によって分離されてもよい。
【0063】
いくつかの実施形態において、本開示は、線維芽細胞由来のエクソソームを治療手段として利用する。線維芽細胞由来のエクソソームは、本明細書に開示される様々な方法及び組成物において、線維芽細胞に加えて、又は線維芽細胞の代わりに使用され得る。エクソソームは、「微粒子」又は「粒子」とも呼ばれ、脂質二重層によって限定された小胞又は扁平な球体を含み得る。微粒子は40~100nmの直径を含み得る。微粒子はエンドソーム膜の内方への出芽によって形成され得る。微粒子は約1.13~1.19g/mlの密度を有し、スクロース勾配上で浮遊し得る。微粒子はコレステロール及びスフィンゴミエリン、並びに、GM1、GM3、フロチリン、srcプロテインキナーゼLynなどの脂質ラフトマーカーに富んでいてもよい。微粒子は、線維芽細胞又は線維芽細胞条件培地に特徴的又は特異的なタンパク質など、線維芽細胞に存在する1つ以上のタンパク質を含んでいてもよい。RNA、例えばmiRNAを含んでいてもよい。微粒子は、線維芽細胞又は線維芽細胞を培養によって調整された培地に見出される1つ以上の遺伝子又は遺伝子産物を有していてもよい。微粒子は線維芽細胞によって分泌される分子を含んでいてもよい。このような微粒子、及びその中に含まれる分子(特にタンパク質又はポリペプチドを含む)の組み合わせは、例えば、アンドロゲン性脱毛症及び円形脱毛症を含む脱毛症の治療又は予防を目的として、線維芽細胞の活性を補うため、又は線維芽細胞の代わりに使用することができる。微粒子は、細胞骨格に見られる細胞質タンパク質(例えばチューブリン、アクチン及びアクチン結合タンパク質)、細胞内膜融合及び輸送(例えばアネキシン及びrabタンパク質)、シグナル伝達タンパク質(例えば、プロテインキナーゼ、14-3-3及びヘテロ三量体Gタンパク質)、代謝酵素(例えばペルオキシダーゼ、ピルビン酸及び脂質キナーゼ、及びエノラーゼ-1)、及びテトラスパニンファミリー(例えばCD9、CD63、CD81及びCD82)を含み得る。特に、微粒子は1つ以上のテトラスパニンを含んでいてもよい。
【0064】
[IV.膜小胞の単離と精製]
本開示のエクソソームは、線維芽細胞から(例えば、線維芽細胞培養物由来の条件培地から)得られ、開示された方法及び組成物において使用するために精製され得る。いくつかの実施形態において、エクソソームは、陰イオン交換によって、場合によっては加圧下で精製され得る。いくつかの実施形態において、開示のエクソソームは、高速液体クロマトグラフ(HPLC)によって精製される。陰イオン交換クロマトグラフィーを実施するために、異なる種類の支持体が使用され得る。より好ましくは、これらは、セルロース、ポリ(スチレン-ジビニルベンゼン)、アガロース、デキストラン、アクリルアミド、シリカ、エチレングリコール-メタクリレート共重合体、又はそれらの混合物、例えば、アガロース-デキストラン混合物を含み得る。したがって、具体的な実施形態において、本開示は、線維芽細胞を含む組織培養物などの生物学的試料から膜小胞、特にエクソソームを調製する方法であって、生物学的試料を、セルロース、ポリ(スチレン-ジビニルベンゼン)、シリカ、アクリルアミド、アガロース、デキストラン、エチレングリコール-メタクリレート共重合体から選択される支持体の単独又は混合物、任意選択で官能化された陰イオン交換クロマトグラフィーによって処理する少なくとも1つの工程を含む方法に関する。
【0065】
さらに、クロマトグラフィー分離能を向上させるために、本開示の範囲内では、ビーズ形態の支持体を使用することが好ましい。いくつかの実施形態において、これらのビーズは、クロマトグラフィー下の対象物(例えば、エクソソーム)の浸透を可能にするために十分に高い多孔性を有する、均質で較正された直径を有する。このように、エクソソームの直径(一般に50~100nmの間)を考慮すると、本開示の特定の態様では、特に10nm~5μmの間、例えば約20nm~約2μmの間、例えば約100nm~約1μmの間など、高い空隙率のゲルを使用することが好ましい。陰イオン交換クロマトグラフィーでは、陰イオン分子と相互作用できる基を用いて、使用する支持体を官能化する必要がある。一般に、この基は、それぞれ弱又は強アニオン交換体を規定する3級又は4級のアミンで構成され得る。いくつかの実施形態において、強アニオン交換体を使用することが特に有利である。このようにして、本開示によれば、第4級アミンで官能化された上記のようなクロマトグラフィー支持体が使用される。したがって、より具体的な実施形態によれば、陰イオン交換クロマトグラフィーは、第4級アミンを用いて官能化された支持体上で行われる。いくつかの実施形態において、支持体は、ポリ(スチレン-ジビニルベンゼン)、アクリルアミド、アガロース、デキストラン及びシリカかの単独又は混合物、及び第4級アミンで官能化されたものから選択される。第4級アミンで官能化された支持体の例としては、ゲルSOURCE Q、MONO Q、Q SEPHAROSE(登録商標)、POROSTM HQ及びPOROSTM.QE、FRACTOGELTM TMAEタイプのゲル、TOYOPEARL SUPERTM Qゲルなどがある。
【0066】
陰イオン交換クロマトグラフィーに使用できる支持体としては、ポリ(スチレン-ジビニルベンゼン)がある。本発明の範囲内で使用できるこのタイプのゲルの例は、SOURCE Qゲル、例えばSOURCE 15 Q(Pharmacia)である。この支持体は、内部細孔が非常に大きいという利点を有し、ゲルを通る液体の循環に対する抵抗が小さい一方で、エクソソームの大きさを考慮すると特に重要なパラメーターである官能基へのエクソソームの迅速な拡散を可能にする。カラムに保持された生物学的化合物は、さまざまな方法で溶出することができる。例えば、0から2Mまで濃度を変化させた生理食塩水の勾配を利用して溶出することができる。このようにして精製された様々なフラクションは、連続分光光度計を使用してカラム出口で光学密度(OD)を測定することにより検出される。一例として、実施例で用いた条件では、膜小胞を構成する画分は、小胞の種類にもよるが、約350~700mMのイオン強度で溶出した。
【0067】
このクロマトグラフィーのステップでは、要件や処理量に応じて、様々なタイプのカラムを使用することができる。例えば、調製物によっては、約100μlから10ml以上のカラムを使用することが可能である。このように、使用可能な担体は、例えば25mg/mlのタンパク質に達する容量を有する。このため、100μlのカラムは、約2.5mgのタンパク質の容量を有し、問題の試料を考慮すると、約2lの培養上清(例えば、10~20倍濃縮後、1調製あたり100~200mlの容量を示す)の処理が可能である。カラムの容積を増やすなどして、より大量の処理も可能であることが理解される。さらに、本発明を実施するために、陰イオン交換クロマトグラフィー工程をゲル浸透クロマトグラフィー工程と組み合わせることも可能である。このように、本開示の特定の実施形態によれば、ゲル浸透クロマトグラフィー工程は、陰イオン交換クロマトグラフィー工程の前又は後のいずれかで、陰イオン交換工程に追加される。この実施形態では、浸透クロマトグラフィー工程は、陰イオン交換工程の後に行われてもよい。具体的な実施形態では、陰イオン交換クロマトグラフィー工程は、ゲル浸透クロマトグラフィー工程に置き換えられる。本出願は、特に、この工程を陰イオン交換クロマトグラフィー又は以下に詳述するような生物学的試料の他の処理ステップと組み合わせた場合に、ゲル透過液体クロマトグラフィーを用いて膜小胞を精製できることを実証する。
【0068】
ゲル浸透クロマトグラフィー工程を実施するために、シリカ、アクリルアミド、アガロース、デキストラン、エチレングリコール-メタクリレート共重合体又はそれらの混合物、例えばアガロース-デキストラン混合物から選択される支持体を使用することができる。例示として、ゲル浸透クロマトグラフィーには、SUPERDEXTM 200HR(Pharmacia)、TSK G6000(TosoHaas)又はSEPHACRYLTM S(Pharmacia)のような支持体を使用することができる。本発明によるプロセスは、異なる生物学的試料に適用することができる。特に、これらは、対象からの生物学的液体(骨髄、末梢血など)、培養上清、細胞溶解液、精製前溶液、又は膜小胞を含む他の組成物からなり得る。この点に関して、本開示の具体的な実施形態では、生体試料は膜小胞を産生する線維芽細胞の培養上清である。
【0069】
さらに、本開示の特定の実施形態によれば、生物学的試料は、クロマトグラフィー工程の前に、膜小胞で濃縮されるように処理される(濃縮段階)。このように、特定の実施形態において、本開示は、生物学的試料から膜小胞を調製する方法であって、少なくとも:1)膜小胞で濃縮された試料を調製する濃縮段階、及び2)試料を陰イオン交換クロマトグラフィー及び/又はゲル浸透クロマトグラフィーで処理する段階、を含むことを特徴とする、方法を提供する。
【0070】
一実施形態では、生物学的試料は、膜小胞が濃縮されるように処理された培養上清である。特に、生物学的試料は、遠心分離、清澄化、限外濾過、ナノ濾過及び/又はアフィニティークロマトグラフィー、特に清澄化及び/又は限外濾過及び/又はアフィニティークロマトグラフィーのような処理によって、膜小胞を産生する細胞(例えば、線維芽細胞)の集団の培養上清から、又は生物学的液体から得られる予め精製された溶液で構成され得る。したがって、本発明による膜小胞を調製する好ましい方法は、より詳細には以下の工程を含む:a)小胞の放出を可能にする条件下で膜小胞(例えばエクソソーム)産生細胞の集団を培養する工程、b)膜小胞で試料を濃縮する工程、及びc)試料の陰イオン交換クロマトグラフィー及び/又はゲル浸透クロマトグラフィー処理。
【0071】
上記で示したように、サンプル(例えば上清)濃縮ステップは、上清に対する1つ以上の遠心分離、清澄化、限外ろ過、ナノろ過、及び/又はアフィニティークロマトグラフィーステップを含んでもよい。第一の具体的な実施形態において、濃縮ステップは、(i)細胞及び/又は細胞残屑の除去(清澄化)、場合によってはそれに続く(ii)濃縮及び/又はアフィニティークロマトグラフィーステップを含む。別の具体的な実施形態では、濃縮ステップは、アフィニティークロマトグラフィーステップを含み、場合によっては、細胞及び/又は細胞残屑の除去(清澄化)ステップが先行する。本開示による特定の濃縮ステップは、(i)細胞及び/又は細胞残屑の除去(清澄化)、(ii)濃縮、及び(iii)アフィニティークロマトグラフィーを含む。細胞及び/又は細胞残屑は、例えば、低速、好ましくは1000g以下、例えば100~700gで、サンプルを遠心分離することによって除去することができる。このステップにおける好ましい遠心条件は、例えば1~15分間、約300g又は600gである。
【0072】
細胞及び/又は細胞残屑は、場合によっては上述の遠心分離と組み合わせた試料の濾過によって除去することもできる。濾過は、特に、空隙率(porosity)が減少するフィルターを用いた連続的な濾過によって実施することができる。この目的のために、0.2μm以上、例えば0.2~10μmの空隙率を有するフィルターを使用することができる。特に、空隙率が10μm、次いで1μm、0.5μm、そして0.22μmのフィルターを連続して使用することが可能である。
【0073】
クロマトグラフィーの段階で処理するサンプル量を減らすために、濃縮ステップを実施することもできる。この方法では、膜小胞を沈降させるために、高速、例えば10,000~100,000gでサンプルを遠心分離することによって濃縮することができる。これは一連の分画遠心分離で構成されて最後の遠心分離を70,000gで実行されてもよい。得られたペレット中の膜小胞は、より少量で、適切なバッファー中に取り込まれ、その後の工程に供される。濃縮工程は、限外濾過によって行うこともできる。実際、この限外濾過により、上清を濃縮し、小胞の初期精製を行うことができる。一実施形態によれば、生物学的サンプル(例えば、上清)は、タンジェンシャル限外濾過などの限外濾過に供される。タンジェンシャル限外濾過は、決定されたカットオフ閾値の膜によって分離された2つの区画(濾液及び逆流液)の間で溶液を濃縮及び分画することからなる。分離は、濾液コンパートメントに流れを与え、このコンパートメントと濾液コンパートメントの間に膜貫通圧をかけることによって行われる。限外ろ過の実施には、スパイラル膜(Millipore、Amicon)、平膜、中空糸(Amicon、Millipore、Sartorius、Pall、GF、Sepracor)など、さまざまなシステムを使用することができる。本開示の範囲内では、1000kDa未満、例えば300kDaと1000kDaの間、例えば300kDaと500kDaの間のカットオフ閾値を有する膜の使用が有利である。
【0074】
アフィニティークロマトグラフィーの工程は、異なるクロマトグラフィー支持体や材料を用いて、様々な方法で実施することができる。有利には、これは非特異的アフィニティークロマトグラフィーであり、目的物(すなわちエクソソーム)を保持することなく、溶液中に存在する特定の汚染物質を保持(すなわち結合)することを目的とする。したがって、これはネガティブ選択である。いくつかの実施形態では、色素上でのアフィニティークロマトグラフィーが使用され、タンパク質及び酵素、例えばアルブミン、キナーゼ、デヒドロゲナーゼ、凝固因子、インターフェロン、リポタンパク質、あるいはまた補因子などの夾雑物の除去(すなわち保持)を可能にする。いくつかの実施形態では、このクロマトグラフィー工程に使用される担体は、色素で官能化されたイオン交換クロマトグラフィーに使用される担体である。具体例として、色素は、Blue SEPHAROSETM(Pharmacia)、YELLOW 86、GREEN 5、及びBROWN 10(Sigma)から選択され得る。支持体はアガロースであってもよい。処理された生物学的試料からの汚染物質の保持(結合)を可能にする任意の他の支持体及び/又は色素又は反応性基が、本開示において使用され得ることが理解されるべきである。
【0075】
[V.治療用組成物の投与]
本明細書で提供される療法は、治療剤(例えば、線維芽細胞、線維芽細胞由来のエクソソーム、線維芽細胞由来産物など)を単独又は組み合わせて投与することを含み得る。治療薬は、当技術分野で知られている任意の適切な方法で投与することができる。例えば、第1及び第2の治療(例えば、線維芽細胞由来産物及びジフェニルシクロプロペノン)は、順次(異なる時間に)又は同時(同じ時間に)に投与され得る。いくつかの実施形態において、第1及び第2の処置は、別個の組成物で投与される。いくつかの実施形態において、第1の治療及び第2の治療は、同じ組成物でされる。
【0076】
本開示の実施形態は、治療用組成物を含む組成物及び方法に関する。異なる治療薬は、1つの組成物で投与してもよいし、2つの組成物、3つの組成物、又は4つの組成物のような2つ以上の組成物で投与してもよい。薬剤の様々な組み合わせが採用され得る。
【0077】
本開示の治療剤(例えば、線維芽細胞、線維芽細胞由来産物、ジフェニルシクロプロペノン)は、同じ投与経路によって投与されてもよいし、異なる投与経路によって投与されてもよい。いくつかの実施形態において、治療剤は、静脈内、筋肉内、皮下、局所、経口、経皮、腹腔内、眼窩内、移植、吸入、髄腔内、脳室内、又は経鼻により投与される。適切な投与量は、治療される疾患の種類、疾患の重症度及び経過、個体の臨床的状態、個体の臨床歴及び治療に対する反応、並びに主治医の裁量に基づいて決定され得る。
【0078】
治療薬には様々な「単位用量」が含まれる。単位用量は、治療用組成物を所定量含むものとして定義される。投与される量、並びに特定の経路及び製剤は、臨床技術に携わる者の判断能力の範囲内である。単位用量は、1回の注射として投与される必要はなく、ある設定された期間にわたる連続注入を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、単位用量は、単回投与可能な用量を含む。
【0079】
投与量は、治療回数と単位投与量の両方において、望まれる治療効果に依存する。有効量は、特定の効果を達成するのに必要な量を指すと理解される。特定の実施形態における実施において、10mg/kg~200mg/kgの範囲の用量が、これらの薬剤の保護能力に影響を及ぼすことができることが企図される。したがって、用量としては、約0.1、0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、及び200、300、400、500、1000μg/kg、mg/kg、μg/日、又はmg/日、又はそこから導出可能な任意の範囲が挙げられる。さらに、このような用量は、1日の間に複数回、及び/又は複数日、週、又は月において投与することができる。
【0080】
特定の実施形態において、医薬組成物の有効量は、約1μM~150μMの血中レベルを提供し得るものである。別の実施形態において、有効量は、約4μM~100μMの血中レベルを提供する。又は約1μM~100μM;又は約1μM~50μM;又は約1μM~40μM;又は約1μM~30μM;又は約1μM~20μM;又は約1μM~10μM;又は約10μM~150μM;又は約10μM~100μM;又は約10μM~約50μM;又は約25μM~約150μM;又は約25μM~約100μM;又は約25μM~約50μM;又は約50μM~約150μM;又は約50μM~約100μM(又はそこから導出可能な任意の範囲)。他の実施形態において、用量は、対象に投与される治療薬から生じる薬剤の以下の血中レベルを提供し得る:約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、もしくは100μM、又はそこから導出可能な任意の範囲。特定の実施形態において、対象に投与される治療薬は、体内で代謝されて代謝治療薬となり、この場合、血中濃度はその治療薬の量を指すことがある。あるいは、治療剤が対象によって代謝されない範囲において、本明細書で議論される血中濃度は、代謝されない治療剤を指す場合がある。
【0081】
治療用組成物の正確な量もまた、医師の判断に依存し、各個人に特有である。投与量に影響する因子には、患者の身体的及び臨床的状態、投与経路、意図する治療目標(症状の緩和あるいは治癒)、特定の治療物質又は対象が受けている可能性のある他の療法の効力、安定性及び毒性が含まれる。
【0082】
体重のμg/kg又はmg/kgの投与量単位は、4μM~100μMのように、μg/ml又はmM(血中濃度)の同等の濃度単位に換算して表すことができることは、当業者には理解され、認識されるであろう。また、取り込みは生物種や臓器・組織に依存することが理解される。取り込み及び濃度測定に関して適用可能な換算係数及び生理学的仮定は周知であり、当業者であれば、ある濃度測定値を別の濃度測定値に換算し、本明細書に記載の用量、効能及び結果に関して合理的な比較及び結論を行うことができるであろう。
【0083】
いくつかの実施形態では、100kgあたり約10から約1013の細胞が、1回の点滴につきヒトに投与される。いくつかの実施形態では、100kgあたり約1.5×10~約1.5×1012の細胞が注入される。一部の実施形態では、100kgあたり約1×10~約5×1011のの細胞が注入される。いくつかの実施形態では、100kgあたり約4×10~約2×1011のの細胞が注入される。一部の実施形態では、100kgあたり約5×10細胞~約1×10細胞の間が注入される。いくつかの実施形態では、細胞の単回投与が提供される。いくつかの実施形態では、複数回の投与が提供される。いくつかの実施形態では、複数回の投与が3~7日間連続して行われる。いくつかの実施形態では、3~7回の投与が、3~7日間連続して提供される。いくつかの実施形態では、5回の投与が、5日間連続して提供される。いくつかの実施形態では、100kgあたり約10から約1013細胞の間の単回投与が提供される。いくつかの実施形態では、100kgあたり約1.5×10~約1.5×1012の細胞の単回投与が提供される。いくつかの実施形態では、100kgあたり約1×10~約5×1011細胞の単回投与が提供される。いくつかの実施形態では、100kgあたり約5×1010細胞の単回投与が提供される。いくつかの実施形態では、100kgあたり1×1010細胞の単回投与が提供される。いくつかの実施形態では、100kgあたり約10細胞~約1013細胞の複数回の投与が提供される。いくつかの実施形態では、100kgあたり約1.5×10~約1.5×1012細胞の複数回の投与が提供される。いくつかの実施形態では、100kgあたり約1×10~約5×1011細胞の複数回の投与が、3~7日間連続して提供される。いくつかの実施形態では、100kgあたり約4×10個の細胞を3~7日間連続して複数回投与する。いくつかの実施形態では、100kgあたり約2×1011細胞の複数回の投与が、3~7日間連続して提供される。いくつかの実施形態では、約3.5×10細胞の5回の投与が、連続する5日間にわたって提供される。いくつかの実施形態では、約4×10細胞の5回の投与が、連続する5日間にわたって提供される。いくつかの実施形態では、約1.3×1011細胞の5回の投与が、連続する5日間にわたって提供される。いくつかの実施形態では、約2×1011細胞の5回の投与が、連続する5日間にわたって提供される。
【0084】
[VI.開示のキット]
本明細書に記載される細胞組成物及び/又は非細胞組成物のいずれか、又はこれらに類似する組成物は、キットに含まれ得る。非限定的な例では、線維芽細胞又はその誘導体(例えば、線維芽細胞由来のエクソソーム)を調製するための方法において使用するための1つ又は複数の試薬が、キットに含まれ得る。このような試薬としては、細胞、ベクター、1つ又は複数の成長因子、ベクター(複数可)1つ又は複数の共刺激因子、培地、酵素、緩衝液、ヌクレオチド、塩、プライマー、化合物などを挙げることができる。キットの構成成分は適切な容器で提供される。
【0085】
キットの一部の成分は、水性媒体中又は凍結乾燥形態で包装され得る。キットの容器手段には、一般に、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジ又は他の容器手段が含まれ、その中に成分を入れることができ、好ましくは、好適に分注することができる。キット中に複数の成分が含まれる場合、キットは一般的に、追加成分を別々に入れることができる第2、第3又は他の追加容器も含む。しかしながら、成分の様々な組み合わせがバイアルに含まれ得る。本開示のキットはまた、一般に、商業的販売のために成分を密閉して収容するための手段を含む。このような容器には、所望のバイアルが保持される射出成形又はブロー成形プラスチック容器が含まれ得る。
【0086】
キットの成分が1つ及び/又は複数の液体溶液で提供される場合、溶液は水溶液であり、滅菌水溶液が特に有用である。場合によっては、容器手段はそれ自体がシリンジ、ピペット、及び/又は他のそのような器具であってもよく、あるいは所望の反応のための複数の区画を有する基板であってもよい。
【0087】
キットの一部の成分は乾燥粉末として提供される場合がある。試薬及び/又は成分が乾燥粉末として提供される場合、粉末は適切な溶媒の添加により再構成することができる。溶媒は、別の容器手段で提供されることも想定される。キットはまた、滅菌された許容可能な緩衝液及び/又は他の希釈剤を含むための第2の容器手段を含んでいてもよい。
【0088】
具体的な実施形態では、試薬及び材料には、所望の配列を増幅するためのプライマー、ヌクレオチド、適切な緩衝液又は緩衝試薬、塩などが含まれ、場合によっては、試薬には、特定の所望の細胞を単離するための装置又は試薬が含まれる。
【0089】
特定の実施形態では、キットには、個人から1つ以上のサンプルを抽出するのに適した1つ以上の器具が含まれる。器具は、シリンジ、細い針、メスなどであってもよい。
【実施例
【0090】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を示すために含まれる。以下に続く実施例において開示される技術は、本開示の方法の実施において良好に機能するように本発明者らによって発見された技術を表すものであり、したがって、その実施のための特定の態様を構成すると考えることができることを、当業者は理解すべきである。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、開示される特定の実施形態において多くの変更を加えることができ、それでもなお、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、同様又は類似の結果を得ることができることを理解すべきである。
【0091】
[実施例1:アンドロゲン性脱毛症の治療における線維芽細胞の条件培地の使用]
エクソソームの調製:線維芽細胞は、エクソソームの培地中への放出を促進するのに十分な条件下で培養する。具体的には、包皮線維芽細胞をT175フラスコ中で、10%ウシ胎児血清を含む15mlのαMEM培地で培養する。24時間培養後、培地をリン酸緩衝生理食塩水に交換し、細胞をさらに12時間培養する。300gで10分、2000gで10分、10000gで30分という勾配遠心によってエクソソームを抽出し、続いて100000gで70分間遠心してエクソソームをペレット化する。任意で、再懸濁したペレットの100000g遠心分離を繰り返すことにより、エクソソーム調製物を低移動度画分から、主に遊離タンパク質から精製する。
【0092】
アンドロゲン性脱毛症(AGA)治療のための臨床試験:適格基準を満たし、書面によるインフォームド・コンセントを提供した30名の男性患者が登録される。皮膚科医が参加者全員のAGAの臨床診断を行う。選択基準は、年齢18~60歳、脱毛期間6ヵ月以上、ハミルトン・ノーウッドグレード3~6である。頭皮の感染症、悪性疾患、自己免疫疾患(橋本病、関節リウマチ、ループスなど)、過去3ヵ月以内の血管手術歴、毛髪成長に影響を与える全身疾患、毛細血管拡張症、血液疾患の既往歴、経口又は静脈内麻薬の常用者は研究対象から除外される。
【0093】
その他の除外基準は、過去6ヵ月以内の脱毛に対する外用薬又は全身治療薬の使用、化学療法又は免疫抑制剤の投与、成長因子を含む薬剤の使用、ヘモグロビン値10未満、血小板減少症(又は血小板数10万未満)、血清アルブミン2.5g/dl未満、他の臨床試験への参加(過去3ヵ月以内)である。
【0094】
15人の患者に、1mlあたり1マイクログラムのエクソソームタンパク質を2週間ごとに5回投与する。この溶液は側頭部と前頭部に、1部位あたり0.05mlを1~2cm間隔で皮内注射する。さらに15人の患者に、同じ頻度で頭皮あたり500万個の線維芽細胞の濃度で投与する。
【0095】
介入前の研究開始時と最終治療セッションの3ヵ月後に、デジタルカメラ(Nikon D300s(登録商標、東京、日本)で標準写真を撮影し、トリコグラムを実施し、デジタル写真毛髪分析装置(KC Triple Scope(登録商標)、KC Technology Co、韓国)を用いて、タトゥーで印をつけた部位の毛髪密度と直径を150倍のレンズで測定する。さらに、患者は来院ごとに患者満足度アンケートに-2~+2点(-2:かなり悪化、-1:やや悪化、0:変化なし、+1:やや改善、+2:かなり改善)で回答する。
【0096】
質的データの記述には百分率と度数を用い、量的データの記述には平均と標準偏差を用いる。検定前後の量的データの比較は、対応のあるt検定(又は、データの分布や分類された情報によっては、ノンパラメトリックの同等の検定)によって行われる。すべての検定の推定は、有意水準5%で行われる。
【0097】
5週間の治療後、すべてのパラメータが有意に改善した。
【0098】
本開示及びその利点について詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲によって定義される設計の精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書において様々な変更、置換及び改変を行うことができることを理解されたい。さらに、本出願の範囲は、本明細書に記載されたプロセス、機械、製造、物質組成、手段、方法及びステップの特定の実施形態に限定されることを意図するものではない。当業者であれば、本開示から容易に理解されるように、本明細書に記載される対応する実施形態と実質的に同じ機能を果たすか、又は実質的に同じ結果を達成する、現在存在するか、又は後に開発されるプロセス、機械、製造、物質組成物、手段、方法、又はステップが、本開示に従って利用され得る。したがって、添付の特許請求の範囲は、そのようなプロセス、機械、製造、物質組成物、手段、方法、又はステップをその範囲内に含むことを意図している。
【0099】
[参考文献]
本明細書で言及されるすべての特許及び刊行物は、本発明が属する技術分野の当業者のレベルを示すものである。以下に列挙するものを含むすべての特許及び刊行物は、個々の刊行物が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されている場合と同じ程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。
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【国際調査報告】