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特表2024-520422循環分子をアッセイするための組成物および方法
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  • 特表-循環分子をアッセイするための組成物および方法 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】循環分子をアッセイするための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/02 20060101AFI20240517BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20240517BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240517BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20240517BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
C12Q1/02
G01N33/48 M
G01N33/53 D
G01N33/543 501A
G01N33/543 541A
G01N33/543 575
G01N33/50 P
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572790
(86)(22)【出願日】2022-05-27
(85)【翻訳文提出日】2024-01-19
(86)【国際出願番号】 US2022031372
(87)【国際公開番号】W WO2022251655
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】63/194,789
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515059083
【氏名又は名称】ガーダント ヘルス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】タラサズ, アミルアリ
(72)【発明者】
【氏名】ケネディ, アンドリュー
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
【Fターム(参考)】
2G045AA13
2G045BB10
2G045CA11
2G045CA25
2G045CA26
2G045DA13
2G045DA36
2G045FA37
2G045FB01
2G045FB02
2G045FB03
2G045FB05
2G045FB13
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ03
4B063QQ08
4B063QQ42
4B063QQ79
4B063QR48
4B063QS24
4B063QS33
4B063QS34
4B063QX02
(57)【要約】
本明細書では、細胞デブリに会合している標的分子を検出および定量化するための方法が提供される。本明細書では、対象ががんなどの疾患または状態を有する可能性を決定するための方法も提供される。細胞デブリに埋め込まれている細胞表面タンパク質などの腫瘍細胞由来タンパク質は、生体分子複合体が目的の細胞表面タンパク質、および死細胞または瀕死細胞またはそれらの断片、例えば細胞膜デブリに特異的なマーカーを両方とも含む場合、そうした生体分子複合体を腫瘍由来であると識別することにより、血液中にて検出される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の細胞デブリ会合標的分子を検出するための方法であって、
a)前記試料またはその部分試料を少なくとも1つの結合分子と接触させることであって、それにより前記少なくとも1つの結合分子および細胞デブリを含む複合体を生成し、前記少なくとも1つの結合分子は細胞デブリマーカーに結合し、前記細胞デブリは膜断片を含むこと、ならびに
b)前記複合体に会合している少なくとも1つの標的分子の存在またはレベルを検出すること
を含む方法。
【請求項2】
前記試料は対象から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記試料は血液試料である、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記血液試料は全血試料である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記血液試料は血漿試料である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記血液試料は血漿ペレット試料またはバフィーコート試料である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの結合分子はタンパク質であり、前記タンパク質は必要に応じて抗体である、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの結合分子は、細胞デブリマーカーに結合する、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記細胞デブリマーカーは内膜マーカーである、直前の請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞デブリマーカーは、ホスファチジルセリンまたはホスファチジルエタノールアミンである、請求項8~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記細胞デブリマーカーは、ホスファチジルセリンである、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つの結合分子は、アネキシンVまたはホスファチジルセリンに特異的な抗体である、直前の請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記細胞デブリマーカーは、ホスファチジルエタノールアミンである、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つの結合分子は、ホスファチジルエタノールアミンに特異的な抗体である、直前の請求項に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの結合分子は、標識を含むかまたは固体支持体にコンジュゲートされている、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの結合分子は標識を含み、前記方法は、前記標識を固体支持体に結合させることにより前記少なくとも1つの結合分子を捕捉することをさらに含む、直前の請求項に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つの結合分子は標識にコンジュゲートされており、前記標識は、フルオロフォア、ビオチン、ペプチド、またはオリゴヌクレオチドを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記固体支持体はビーズを含む、請求項15~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つの結合分子は、磁気ビーズにコンジュゲートされている、直前の請求項に記載の方法。
【請求項20】
前記検出することの前に、前記試料またはその部分試料から前記複合体を捕捉することを含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記捕捉することは、前記少なくとも1つの結合分子に結合していない、前記試料またはその部分試料の成分を、前記少なくとも1つの結合分子が結合している前記複合体から分離することを含む、直前の請求項に記載の方法。
【請求項22】
前記検出することは、前記複合体に会合している標的分子の質量分析を含む、請求項20~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記検出することは、前記複合体を、前記複合体と会合する可能性のある標的分子に結合する少なくとも1つの結合分子と接触させることを含む、請求項20~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記複合体に会合している標的分子に結合する少なくとも1つの結合分子は、標的分子に特異的な抗体である、直前の請求項に記載の方法。
【請求項25】
標的分子に結合する少なくとも1つの結合分子は標識を含む、請求項23~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記標識は、フルオロフォアまたはオリゴヌクレオチドである、直前の請求項に記載の方法。
【請求項27】
前記標識は、オリゴヌクレオチドである、直前の請求項に記載の方法。
【請求項28】
前記標識はオリゴヌクレオチドであり、細胞デブリマーカーに結合する前記結合分子はオリゴヌクレオチドを含む、直前の請求項に記載の方法。
【請求項29】
前記検出することは、近接ライゲーションアッセイまたは近接伸長アッセイを含む、直前の請求項に記載の方法。
【請求項30】
前記検出することはイムノアッセイを含む、請求項20~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記イムノアッセイは、酵素結合免疫吸着検定法、サンドイッチアッセイ、電気化学発光アッセイ、またはマルチプレックスイムノアッセイである、直前の請求項に記載の方法。
【請求項32】
前記検出することは、前記複合体のフローサイトメトリー分析を含む、請求項20~31に記載の方法。
【請求項33】
前記複合体に会合している複数の標的分子が検出される、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記複数の標的分子は、2~10,000、2~5,000、2~1,000、または2~100個の標的分子である、直前の請求項に記載の方法。
【請求項35】
前記複合体を、前記複合体と会合する可能性のある標的分子に結合する少なくとも1つの結合分子と接触させた後、前記複合体を捕捉することを含む、請求項1~19または33~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
少なくとも1つの標的分子、前記複数の標的分子の2つもしくはそれよりも多く、または前記複数の標的分子の各々は、タンパク質である、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
少なくとも1つの標的分子、前記複数の標的分子の2つもしくはそれよりも多く、または前記複数の標的分子の各々は、炭水化物、必要に応じて糖タンパク質炭水化物である、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
少なくとも1つの標的分子は、疾患に関連付けられる分子であるか、前記複数の標的分子の2つもしくはそれよりも多くは、疾患に関連付けられる分子であるか、または前記複数の標的分子の各々は、疾患に関連付けられる分子である、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記疾患はがんである、直前の請求項に記載の方法。
【請求項40】
前記少なくとも1つの標的分子は、同じ組織タイプの健常細胞と比べて腫瘍細胞において上方制御される、直前の実施形態に記載の方法。
【請求項41】
前記標的分子の少なくとも1つ、2つもしくはそれよりも多く、または各々は、PD-L1、CTLA4、NYESO1、メソテリン、CA15-3、CA19-9、CA-125、およびCA-172-4から選択される、請求項38~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
少なくとも1つの標的分子、2つもしくはそれよりも多くの標的分子、または前記複数の標的分子の各々は、細胞タイプマーカーである、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記細胞タイプマーカーは、免疫細胞および固形組織細胞のマーカーから選択される、直前の請求項に記載の方法。
【請求項44】
前記細胞タイプマーカーは、結腸、肺、乳房、皮膚、前立腺、胃、膵臓、および肝細胞タイプマーカーのマーカーから選択される、直前の請求項に記載の方法。
【請求項45】
前記試料は、疾患を有する対象から得られ、前記検出することは、複数の標的分子を識別することを含み、前記識別することは、標的タンパク質の質量分析を含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記試料またはその部分試料中の総細胞デブリレベルを測定することを含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記試料は、疾患を有する対象から得られ、前記総細胞デブリレベルは、健常個体から得られた試料またはその部分試料中の総細胞デブリレベルと比べて測定される、直前の請求項に記載の方法。
【請求項48】
前記試料の部分試料中の、または第1の試料が得られた同じ対象から得られた第2の試料中のDNAを分析することを含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記部分試料または前記第2の試料は、血漿試料または血清試料である、直前の請求項に記載の方法。
【請求項50】
前記DNAはcfDNAである、直前の請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2021年5月28日に出願された米国仮特許出願第63/194,789号に基づく優先権の利益を主張するものであり、この仮特許出願は、その全体があらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本開示は、循環細胞デブリに由来するタンパク質などの循環分子のアッセイに関する組成物および方法を提供する。一部の実施形態では、細胞デブリに由来する循環タンパク質は腫瘍細胞に由来する。一部の実施形態では、アッセイされるタンパク質は、がんなどの疾患または障害を有するかまたは有すると疑われる対象に由来する。
【背景技術】
【0003】
緒言および要旨
生検を含む侵襲的診断手順は、がん、潰瘍、肝疾患、感染症、移植拒絶反応、ならびに他の疾患および障害を検出または診断するために一般的に使用されており、疾病の可能性のある部位に由来する細胞または組織の関連特徴が分析される。血液などの体液の分析(「液体生検」)に基づく疾患および障害の検出は、魅力的な代替手段である。液体生検は非侵襲的であり、場合によっては採血のみを必要とする。しかしながら、液体生検物質中のタンパク質を分析するための正確で高感度な方法を開発することは困難であった。これは、部分的には、疾患のため体液中に放出される同じタンパク質の一部は、体液に通常存在する同じタンパク質であるからである。
【0004】
細胞デブリは、アポトーシス、オートファジー性細胞死、壊死、または他のタイプの細胞死に続いて、血液または他の体液中に放出される可能性のある死細胞の成分である。例えば、細胞死は、細胞膜を断片化に結び付き、細胞表面タンパク質を含む生体分子複合体をもたらす可能性がある。がん、自己免疫疾患、感染症および敗血症、心筋梗塞、虚血傷害、脳傷害、肝疾患、および神経変性疾患を含む、多くのタイプの疾患には、異常な細胞死または細胞死の変化が関与する。腫瘍細胞などの細胞により分泌されるエクソソームおよび他のナノスケール小胞は、それらの起源である細胞の状態に関する重要な情報も提供することができるタンパク質および核酸を含む。細胞デブリおよびエクソソームに由来する、タンパク質などの循環分子を識別および定量化し、そうした分子を可溶性循環タンパク質と区別することにより、対象の疾患を検出するための重要な情報を提供することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書の方法は、細胞デブリに由来するタンパク質などの循環分子のレベルを定量化および識別するための手法を提供する。一部の実施形態では、細胞デブリに埋め込まれている細胞表面タンパク質などの腫瘍細胞由来タンパク質は、生体分子複合体が目的の細胞表面タンパク質、および死細胞または瀕死細胞またはそれらの断片、例えば細胞膜デブリに特異的なマーカーを両方とも含む場合、そうした生体分子複合体を腫瘍由来であると識別することにより、血液中にて検出される。一部の実施形態では、本明細書の方法は、例えば、細胞表面タンパク質および細胞デブリの成分の両方の存在により発生するシグナルを検出することにより、単一ステップで実施してもよく、または例えば、細胞デブリのマーカーに関して試料を富化し、次いで富化試料中の二次マーカー、例えば目的のタンパク質をアッセイすることにより逐次的に実施してもよい。ある特定の実施形態では、本明細書の方法は、例えば、細胞デブリに会合しているマーカーに焦点を当てることにより、向上した特異度および/または感度で、血液中の腫瘍組織診断マーカーを測定することを容易にし、一部の実施形態では、生検組織の免疫組織化学アッセイに対する代替手段を提供する。本明細書の方法の応用としては、血液中の死細胞または瀕死細胞の細胞タイプ分布のプロファイリング、およびある特定の疾患状態を反映することができる循環タンパク質シグネチャの識別も挙げられる。
【0006】
本明細書の方法は、エクソソームから単離されたcfDNAまたは核酸におけるエピジェネティック変異および配列変異を含むがそれらに限定されない、DNA変異および修飾に関する情報を提供することができる追加のステップを含んでいてもよい。タンパク質分析およびDNA分析を含むそのような方法は、対象の特定の疾患状態の可能性に関するさらにより向上した情報を提供することができる。
【0007】
本開示は、腫瘍細胞などの死細胞または瀕死細胞を起源とする分子の分析を向上させるという必要性を満たすことを目的とする。血液中のがんマーカーの検出の向上は、障害のより正確な検出(診断)を可能にし、したがって処置の向上を可能にする。したがって、以下の例示的な実施形態が提供される。
【0008】
実施形態1は、試料中の細胞デブリ会合標的分子を検出するための方法であって、
a)試料またはその部分試料を少なくとも1つの結合分子と接触させることであって、それにより少なくとも1つの結合分子および細胞デブリを含む複合体を生成し、少なくとも1つの結合分子は細胞デブリマーカーに結合し、細胞デブリは膜断片を含むこと、ならびに
b)複合体に会合している少なくとも1つの標的分子の存在またはレベルを検出すること
を含む方法である。
【0009】
実施形態1.1は、試料またはその部分試料を複数の異なる結合分子と接触させることであって、結合分子は、複数の細胞デブリマーカーまたは少なくとも1つの細胞デブリマーカーおよび少なくとも1つの標的分子に結合する、実施形態1に記載の方法である。
【0010】
実施形態1.2は、細胞デブリが原形質膜断片を含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法である。
【0011】
実施形態1.3は、細胞デブリが内膜断片を含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法である。
【0012】
実施形態1.4は、細胞デブリが内側原形質膜断片を含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法である。
【0013】
実施形態2は、試料が対象から得られる、先行する実施形態のいずれか1つの方法である。
【0014】
実施形態3は、試料が血液試料である、先行する実施形態のいずれか1つの方法である。
【0015】
実施形態4は、血液試料が全血試料である、実施形態3に記載の方法である。
【0016】
実施形態5は、血液試料が血漿試料である、実施形態3に記載の方法である。
【0017】
実施形態6は、血液試料が、血漿ペレット試料またはバフィーコート試料である、実施形態3に記載の方法である。
【0018】
実施形態7は、少なくとも1つの結合分子がタンパク質であり、タンパク質は必要に応じて抗体である、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法である。
【0019】
実施形態8は、少なくとも1つの結合分子が細胞デブリマーカーに結合する、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法である。
【0020】
実施形態9は、細胞デブリマーカーが内膜マーカーである、直前の実施形態に記載の方法である。
【0021】
実施形態10は、細胞デブリマーカーがホスファチジルセリンまたはホスファチジルエタノールアミンである、実施形態8~9のいずれか1つに記載の方法である。
【0022】
実施形態11は、細胞デブリマーカーがホスファチジルセリンである、実施形態8~10のいずれか1つの方法である。
【0023】
実施形態12は、少なくとも1つの結合分子が、アネキシンVまたはホスファチジルセリンに特異的な抗体である、直前の実施形態に記載の方法である。
【0024】
実施形態13は、細胞デブリマーカーがホスファチジルエタノールアミンである、実施形態10に記載の方法である。
【0025】
実施形態14は、少なくとも1つの結合分子が、ホスファチジルエタノールアミンに特異的な抗体である、直前の実施形態に記載の方法である。
【0026】
実施形態15は、少なくとも1つの結合分子が、標識を含むかまたは固体支持体にコンジュゲートされている、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法である。
【0027】
実施形態16は、少なくとも1つの結合分子が標識を含み、この方法は、標識を固体支持体に結合させることにより少なくとも1つの結合分子を捕捉することをさらに含む、直前の実施形態に記載の方法である。
【0028】
実施形態17は、少なくとも1つの結合分子が標識にコンジュゲートされており、標識は、フルオロフォア、ビオチン、ペプチド、またはオリゴヌクレオチドを含む、実施形態15に記載の方法である。
【0029】
実施形態17.1は、少なくとも1つの結合分子がオリゴヌクレオチドにコンジュゲートされている、実施形態15に記載の方法である。
【0030】
実施形態18は、固体支持体がビーズを含む、実施形態15~16のいずれか1つに記載の方法である。
【0031】
実施形態19は、少なくとも1つの結合分子が磁気ビーズにコンジュゲートされている、直前の実施形態に記載の方法である。
【0032】
実施形態20は、検出することの前に、試料またはその部分試料から複合体を捕捉することを含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法である。
【0033】
実施形態21は、捕捉が、少なくとも1つの結合分子に結合していない、試料またはその部分試料の成分を、少なくとも1つの結合分子が結合している複合体から分離することを含む、直前の実施形態に記載の方法である。
【0034】
実施形態22は、検出することが、複合体に関連付けられる標的分子の質量分析を含む、実施形態20~21のいずれか1つに記載の方法である。
【0035】
実施形態23は、検出することが、複合体を、複合体と会合する可能のある標的分子に結合する少なくとも1つの結合分子と接触させることを含む、実施形態20~21のいずれか1つに記載の方法である。
【0036】
実施形態24は、複合体に会合する標的分子に結合する少なくとも1つの結合分子が、標的分子に特異的な抗体である、直前の実施形態に記載の方法である。
【0037】
実施形態25は、標的分子に結合する少なくとも1つの結合分子が標識を含む、実施形態23~24のいずれか1つに記載の方法である。
【0038】
実施形態26は、標識がフルオロフォアまたはオリゴヌクレオチドである、直前の実施形態に記載の方法である。
【0039】
実施形態27は、標識がオリゴヌクレオチドである、直前の実施形態に記載の方法である。
【0040】
実施形態28は、標識がオリゴヌクレオチドであり、細胞デブリマーカーに結合する結合分子はオリゴヌクレオチドを含む、直前の実施形態に記載の方法である。
【0041】
実施形態28.1は、1つまたは複数のオリゴヌクレオチドがDNAを含む、実施形態17、17.1、27、または28のいずれか1つに記載の方法である。
【0042】
実施形態28.2は、1つまたは複数のオリゴヌクレオチドがRNAを含む、実施形態17、17.1、27、または28のいずれか1つに記載の方法である。
【0043】
実施形態28.3は、1つまたは複数のオリゴヌクレオチドが少なくとも部分的に一本鎖である、実施形態17、17.1、27、28、28.1、または28.2のいずれか1つに記載の方法である。
【0044】
実施形態28.4は、1つまたは複数のオリゴヌクレオチドが、少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、または18ヌクレオチドの長さを有する、実施形態17、17.1、27、28、28.1、28.2、または28.3のいずれか1つに記載の方法である。
【0045】
実施形態28.5は、1つまたは複数のオリゴヌクレオチドが、独立して、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21~25、26~30、31~40、または41~50ヌクレオチドの長さを有する、実施形態17、17.1、27、28、28.1、28.2、28.3、または28.4のいずれか1つに記載の方法である。
【0046】
実施形態29は、検出することが、近接ライゲーションアッセイまたは近接伸長アッセイを含む、実施形態28~28.5のいずれか1つに記載の方法である。
【0047】
実施形態29.1は、オリゴヌクレオチドが、タグ(例えば、標識が会合した結合分子を識別し、必要に応じて、例えば分析されている試料および/または事前富化画分を識別するための追加情報を提供する分子バーコードなど)の3’にある相補的ハイブリダイゼーション配列を含む、実施形態28~29のいずれか1つに記載の方法である。
【0048】
実施形態29.2は、相補的ハイブリダイゼーション配列を含むオリゴヌクレオチドが近接している場合(例えば、オリゴヌクレオチドが付着している結合分子が、同じ細胞デブリ片に結合している場合)、ハイブリダイゼーション配列は互いにハイブリダイズし、DNAポリメラーゼによる伸長のための基質を形成する、実施形態28~29.1のいずれか1つに記載の方法である。
【0049】
実施形態29.3は、DNAポリメラーゼによる伸長のための基質を伸長させて伸長産物を産生させ、伸長産物を検出し(例えば、配列決定またはqPCRにより、これらはいずれも増幅および/またはライブラリー調製ステップの後に続いてもよい)、したがって細胞デブリに会合している標的分子が存在することが示される、実施形態29.2に記載の方法である。
【0050】
実施形態29.4は、オリゴヌクレオチドが、タグ(例えば、標識が会合した結合分子を識別し、必要に応じて、例えば分析されている試料および/または事前富化画分を識別するための追加情報を提供する分子バーコードなど)を含む、実施形態28~29のいずれか1つに記載の方法である。
【0051】
実施形態29.5は、オリゴヌクレオチドが近接している場合(例えば、結合分子が同じ細胞デブリ片に結合している場合)にオリゴヌクレオチドの相互ライゲーションをもたらしライゲーション産物を形成するライゲーション鋳型およびリガーゼが提供される、実施形態28~29または29.4のいずれか1つに記載の方法である。
【0052】
実施形態29.6は、ライゲーション産物を増幅することをさらに含む、実施形態29.5に記載の方法である。
【0053】
実施形態29.7は、ライゲーション産物またはその増幅産物を検出することをさらに含み(例えば、配列決定またはqPCRにより、これらは増幅および/またはライブラリー調製ステップの後に続いてもよい)、したがって細胞デブリに会合している標的分子が存在することが示される、実施形態29.5または29.6に記載の方法である。
【0054】
実施形態30は、検出することがイムノアッセイを含む、実施形態20~29.7のいずれか1つに記載の方法である。
【0055】
実施形態31は、イムノアッセイが、酵素結合免疫吸着検定法、サンドイッチアッセイ、電気化学発光アッセイ、またはマルチプレックスイムノアッセイである、直前の実施形態に記載の方法である。
【0056】
実施形態32は、検出することが、複合体のフローサイトメトリー分析を含む、実施形態20~31に記載の方法である。
【0057】
実施形態33は、複合体に会合している複数の標的分子が検出される、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法である。
【0058】
実施形態34は、複数の標的分子が、2~10,000、2~5,000、2~1,000、または2~100個の標的分子である、直前の実施形態に記載の方法である。
【0059】
実施形態35は、複合体を、複合体と会合する可能性のある標的分子に結合する少なくとも1つの結合分子と接触させた後、複合体を捕捉することを含む、実施形態1~19または33~34のいずれか1つに記載の方法である。
【0060】
実施形態35.1は、試料を細胞デブリマーカー結合分子と接触させることの前に、試料を、標的分子に結合する少なくとも1つの結合分子と接触させる、実施形態1~19または33~34のいずれか1つに記載の方法である。
【0061】
実施形態35.2は、試料を細胞デブリマーカー結合分子と接触させることの後、試料を、標的分子に結合する少なくとも1つの結合分子と接触させる、実施形態1~19または33~34のいずれか1つに記載の方法である。
【0062】
実施形態35.3は、試料を細胞デブリマーカー結合分子と接触させることと同時に、試料を、標的分子に結合する少なくとも1つの結合分子と接触させる、実施形態1~19または33~34のいずれか1つに記載の方法である。
【0063】
実施形態36は、少なくとも1つの標的分子、複数の標的分子の2つもしくはそれよりも多く、または複数の標的分子の各々がタンパク質である、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法である。
【0064】
実施形態37は、少なくとも1つの標的分子、複数の標的分子の2つもしくはそれよりも多く、または複数の標的分子の各々が、炭水化物、必要に応じて糖タンパク質炭水化物である、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法である。
【0065】
実施形態38は、少なくとも1つの標的分子が、疾患に関連付けられる分子であるか、複数の標的分子の2つまたはそれよりも多くが疾患に関連付けられる分子であるか、または複数の標的分子の各々が疾患に関連付けられる分子である、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0066】
実施形態39は、疾患ががんである、直前の実施形態に記載の方法である。
【0067】
実施形態40は、少なくとも1つの標的分子が、同じ組織タイプの健常細胞と比べて腫瘍細胞において上方制御される、直前の実施形態に記載の方法である。
【0068】
実施形態41は、標的分子の少なくとも1つ、2つもしくはそれよりも多く、または各々が、PD-L1、CTLA4、NYESO1、メソテリン、CA15-3、CA19-9、CA-125、およびCA-172-4から選択される、実施形態38~40のいずれか1つに記載の方法である。
【0069】
実施形態42は、少なくとも1つの標的分子、2つもしくはそれよりも多くの標的分子、または複数の標的分子の各々が細胞タイプマーカーである、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法である。
【0070】
実施形態43は、細胞タイプマーカーが、免疫細胞および固形組織細胞のマーカーから選択される、直前の実施形態に記載の方法である。
【0071】
実施形態44は、細胞タイプマーカーが、結腸、肺、乳房、皮膚、前立腺、胃、膵臓、および肝細胞タイプマーカーのマーカーから選択される、直前の実施形態に記載の方法である。
【0072】
実施形態45は、試料が、疾患を有する対象から得られ、検出は、複数の標的分子を識別することを含み、識別は、標的タンパク質の質量分析を含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法である。
【0073】
実施形態46は、試料またはその部分試料中の総細胞デブリレベルを測定することを含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法である。
【0074】
実施形態46.1は、総細胞デブリレベルが、試料またはその部分試料中の少なくとも1つの細胞デブリマーカーを定量化することにより測定される、直前の実施形態に記載の方法である。
【0075】
実施形態47は、試料が疾患を有する対象から得られ、総細胞デブリレベルは、健常個体から得られた試料またはその部分試料中の総細胞デブリレベルと比べて測定される、実施形態46または46.1に記載の方法である。
【0076】
実施形態48は、試料の部分試料中の、または第1の試料が得られたものと同じ対象から得られた第2の試料中のDNAを分析することを含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法である。
【0077】
実施形態49は、部分試料または第2の試料が、血漿試料または血清試料である、直前の実施形態に記載の方法である。
【0078】
実施形態50は、DNAがcfDNAである、直前の実施形態に記載の方法である。
【0079】
実施形態50.1は、DNAの分析が、DNAの標的領域の少なくとも1つのエピジェネティック特徴を定量化することを含み、必要に応じて、エピジェネティック特徴はメチル化を含む、実施形態48~50のいずれか1つに記載の方法である。
【0080】
実施形態50.2は、DNAの分析が、DNAの1つまたは複数の標的領域における1つまたは複数の遺伝子変異体を検出または定量化することを含む、実施形態48~50のいずれか1つに記載の方法である。
【0081】
実施形態51は、がんの存在または非存在を検出するための方法であって、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法を実施することを含み、複合体に会合している少なくとも1つの標的分子の存在またはレベルは、がんの存在または非存在を示す、方法である。
【0082】
実施形態52は、がんをスクリーニングするための方法であって、複数の対象に由来する試料に対して、実施形態1~50.2のいずれか1つに記載の方法を実施することを含み、複合体に会合している少なくとも1つの標的分子の存在またはレベルは、対応する対象ががんを有する可能性があることを示す、方法である。
【0083】
実施形態53は、残留がんをモニターするための、または再発がんの存在もしくは非存在を検出するための方法であって、実施形態1~50.2のいずれか1つに記載の方法を実施することを含み、複合体に会合している少なくとも1つの標的分子の存在またはレベルは、がんのステータスまたは再発がんの存在もしくは非存在を示す、方法である。
【0084】
実施形態54は、疾患を処置するための療法を識別するための方法であって、必要に応じて、疾患はがんであり、この方法は、実施形態1~50.2のいずれか1つに記載の方法を実施することを含み、複合体に会合している少なくとも1つの標的分子の存在またはレベルは、疾患を処置するための好適な療法を示す、方法である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
図1A図1A~1Bは、本明細書で開示される方法の例示的なワークフローを示す。全血試料の少なくとも部分を、血漿、バフィーコート、および赤血球に分画する。血漿を、血漿ペレットおよび血漿上清に分画する。図1Aでは、細胞デブリを、バフィーコート画分および血漿ペレットから、および/または全血試料の部分から単離する。また、エクソソームを、血漿上清から、および/または全血試料の部分から単離することができる。細胞デブリおよび/またはエクソソームに会合している標的タンパク質を検出する。図1Bに示されている別の例示的な方法では、バフィーコート画分、血漿ペレット、血漿上清、および/または全血試料の部分を、マーカーおよび標的タンパク質が近接している場合にハイブリダイゼーションおよび伸長を容易、ならびにこれに続く鎖伸長、増幅、および標的タンパク質を検出するための配列決定を容易にするオリゴヌクレオチドに連結されているマーカーまたは標的タンパク質に特異的な抗体と接触させる。別の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、マーカーおよび標的タンパク質が近接している場合にライゲーション、およびこれに続く鎖伸長、増幅、および標的タンパク質を検出するための配列決定を容易にするように構成することができる。
図1B図1A~1Bは、本明細書で開示される方法の例示的なワークフローを示す。全血試料の少なくとも部分を、血漿、バフィーコート、および赤血球に分画する。血漿を、血漿ペレットおよび血漿上清に分画する。図1Aでは、細胞デブリを、バフィーコート画分および血漿ペレットから、および/または全血試料の部分から単離する。また、エクソソームを、血漿上清から、および/または全血試料の部分から単離することができる。細胞デブリおよび/またはエクソソームに会合している標的タンパク質を検出する。図1Bに示されている別の例示的な方法では、バフィーコート画分、血漿ペレット、血漿上清、および/または全血試料の部分を、マーカーおよび標的タンパク質が近接している場合にハイブリダイゼーションおよび伸長を容易、ならびにこれに続く鎖伸長、増幅、および標的タンパク質を検出するための配列決定を容易にするオリゴヌクレオチドに連結されているマーカーまたは標的タンパク質に特異的な抗体と接触させる。別の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、マーカーおよび標的タンパク質が近接している場合にライゲーション、およびこれに続く鎖伸長、増幅、および標的タンパク質を検出するための配列決定を容易にするように構成することができる。
【0086】
図2図2は、本開示の一部の実施形態での使用に好適なシステムの一例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0087】
ある特定の実施形態の詳細な説明
これから、本発明のある特定の実施形態を詳細に参照するものとする。本発明はそのような実施形態との関連で説明されることになるが、それらは、本発明をそうした実施形態に限定することを意図するものではないことが理解されるだろう。逆に、本発明は、添付の特許請求の範囲により規定される本発明内に含まれ得るすべての代替、改変、および均等物を網羅することが意図されている。
【0088】
本教示を詳細に説明する前に、本開示は、特定の組成物またはプロセスステップに限定されず、それ自体が変化し得ることが理解されるべきである。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、文脈が明らかに別様に指示しない限り、単数形「a」、「an」、および「the」は複数の参照を含むことが留意されるべきである。したがって、例えば、「核酸」への参照は複数の核酸を含み、「細胞」への参照は複数の細胞を含むなどである。
【0089】
数値範囲は、範囲を規定する数値を含む。測定値および測定可能な値は、有効数字および測定に伴う誤差を考慮した近似値であると理解される。また、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含むこと(comprising)」、「含む(contain)」、「含む(contains)」、「含むこと(containing)」、「含む(include)」、「含む(includes)」、および「含むこと(including)」の使用は、限定を意図したものではない。上述の一般的な説明および詳細な説明は両方とも例示的および説明的なものに過ぎず、教示を限定するものではないことが理解されるべきである。
【0090】
上記の明細書で特に注記されていない限り、種々の成分を「含む」と記載されている本明細書の実施形態は、記載の成分「からなる」かまたは「から本質的になる」ことも企図され、種々の成分「からなる」と記載されている本明細書の実施形態は、その記載の成分を「含む」かまたは「から本質的になる」ことも企図され、種々の成分「から本質的になる」と記載されている本明細書の実施形態は、その記載の成分「からなる」かまたは「含む」ことも企図される(この同義性は、特許請求の範囲におけるこうした用語の使用には適用されない)。
【0091】
本明細書で使用されるセクション見出しは、構造化を目的としたものであり、本開示の主題をいかなる点でも限定するものとして解釈されるべきではない。参照により組み込まれているあらゆる文書または他の資料が、定義を含む本明細書の任意の明示的な内容と矛盾する場合は、本明細書が優先する。
I.定義
【0092】
「細胞デブリマーカー」は、本明細書で使用される場合、死細胞または瀕死細胞の成分に物理的に会合しているかまたは埋め込まれており、インタクトな生細胞の外膜上、インタクトな小胞、または試料の可溶性画分中よりも、破壊されたかまたはインタクトな死細胞または瀕死細胞のそのような成分中により多くの割合で存在する、タンパク質、脂質、または炭水化物などの分子を意味する。細胞デブリマーカーに会合している、死細胞または瀕死細胞の成分は、それが起源であった細胞の他の成分から解離していてもよく、またはインタクトな死細胞もしくは瀕死細胞に含まれていてもよい。細胞デブリマーカーの例としては、内側原形質膜に会合しているかまたは局在化している分子、例えばホスファチジルセリンおよびホスファチジルエタノールアミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
「瀕死細胞」は、本明細書で使用される場合、細胞死に関連付けられる物理的変化により、例えば、原形質膜の外側への内部リン脂質の移動が生じ始めている、インタクトなプレアポトーシス細胞、プレ壊死細胞、またはオートファジー性細胞である。
【0094】
「細胞デブリ」は、本明細書で使用される場合、アポトーシス、オートファジー性細胞死、壊死、または他のタイプの細胞死に続いて、血液または他の体液中に放出される可能性のある、死細胞の成分を意味する。例えば、細胞死は、細胞膜の断片化に結び付き、細胞表面タンパク質を含む生体分子複合体をもたらす可能性がある。一部の実施形態では、細胞デブリは、死細胞または瀕死細胞から放出される膜断片、ならびにタンパク質および/または炭水化物などの会合分子を含む。
【0095】
「細胞デブリマーカー結合分子」および「細胞デブリマーカーに結合する」「結合分子」は、本明細書で使用される場合、細胞デブリマーカーに特異的に結合する分子を意味する。例えば、細胞デブリマーカーに特異的に結合する抗体は、細胞デブリマーカー結合分子である。細胞デブリマーカー結合分子の例としては、アネキシンV、ホスファチジルセリンに対する抗体、およびホスファチジルエタノールアミンに対する抗体が挙げられるが、これらに限定されない。結合分子としては、ナノボディ、アプタマー、アフィマー、およびDARPinsなども挙げられる。
【0096】
第1の分子は、第1の分子が複合体または他の分子と直接的または間接的に(例えば、1つまたは複数の追加分子の鎖を介して)結合している場合、複合体または他の分子「に会合」している。
【0097】
「エクソソームマーカー」は、本明細書で使用される場合、エクソソームの外膜に物理的に会合しているかまたは埋め込まれており、インタクトな生細胞の外膜上、細胞デブリ、または試料の可溶性画分中よりもエクソソームにより高い割合で存在する、タンパク質、脂質、または炭水化物などの分子を意味する。エクソソームマーカーの例としては、テトラスパニン、CD9、CD63、およびCD81が挙げられるが、これらに限定されない。
【0098】
「エクソソームマーカー結合分子」は、本明細書で使用される場合、エクソソームマーカーに特異的に結合する分子を意味する。例えば、エクソソームマーカーに特異的に結合する抗体は、エクソソームマーカー結合分子である。結合分子としては、ナノボディ、アプタマー、アフィマー、およびDARPinsなども挙げられる。
【0099】
「細胞タイプマーカー」は、本明細書で使用される場合、同じ試料中に存在する他の細胞タイプよりも、または任意の他の細胞タイプよりも、1つまたは複数の細胞タイプに高い割合で存在する分子を意味する。
【0100】
「固形組織細胞」は、本明細書で使用される場合、固形組織中のまたはそれに由来する細胞を意味する。固形組織細胞は、血液またはリンパ中に通常存在する細胞などの循環細胞タイプを除外する。固形組織細胞タイプの例としては、結腸、肺、乳房、皮膚、前立腺、胃、膵臓、および肝細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0101】
「無細胞DNA」、「cfDNA分子」、または単に「cfDNA」としては、細胞外形態で対象に(例えば、血液、血清、血漿、またはリンパ液、脳脊髄液、尿、または痰などの他の体液中に)天然で存在するDNA分子が挙げられる。cfDNAは、大型で複雑な生物学的有機体、例えば哺乳動物の1つまたは複数の細胞に以前は存在していたが、細胞(複数可)から有機体内に見出される流体へと放出されており、流体の試料から得ることができ、in vitro細胞溶解ステップを実施する必要がない。cfDNA分子は、DNA断片として生じてもよい。
【0102】
本明細書で使用される場合、「血液試料」は、全血またはその成分(例えば、血漿、血清、バフィーコート、血漿ペレット)を含む試料を指す。
【0103】
本明細書で使用される場合、DNA分子などの核酸の「分配」は、複数の部分試料または部分集団の各々において異なる割合で存在する1つまたは複数の修飾または特徴に基づき、核酸の試料または集団を核酸の複数の部分試料または部分集団へと分離、分画、選別、または富化することを意味する。分配は、1つまたは複数のメチル化核酸塩基の存在または非存在に基づき、核酸分子を物理的に分配することを含んでいてもよい。試料または集団は、遺伝子変化もしくはエピジェネティック変化または疾患状態を示す特質に基づき、1つまたは複数の分配された部分試料または部分集団に分配することができる。
【0104】
本明細書で使用される場合、「単離された元の」試料の形態は、試料が単離された時点で、および単離された試料の化学構造を変化させる何らかの手順を受ける前の、試料の組成または化学構造を指す。同様に、分子に「元々存在する」特徴は、分子が分子の化学構造を変化させる何らかの手順を受ける前に「元の分子」に存在する特徴、または特徴を「元々含む」分子に存在する特徴を指す。
【0105】
本明細書で使用される場合、「塩基対合特異性」は、所与の塩基が最も優先的に対合する標準DNA塩基(A、C、G、またはT)を指す。例えば、未修飾シトシンおよび5-メチルシトシンは同じ塩基対合特異性(つまり、Gに対する特異性)を有するが、ウラシルおよびシトシンは、ウラシルがAに対して塩基対合特異性を有し、シトシンがGに対して塩基対合特異性を有するため、異なる塩基対合特異性を有する。それにも関わらず、ウラシルは4つの標準DNA塩基の中で最も優先的にAと対合するため、Gとゆらぎ対を形成するウラシルの能力は無関係である。
【0106】
本明細書で使用される場合、複数のメンバーを含む「組合せ」は、メンバーを含む単一の組成物、またはマルチウェルプレート、チューブラック、冷蔵庫、冷凍庫、インキュベーター、ウォーターバス、アイスバケット、機械、もしくは他の形態の保管場所などの、例えば、別々の容器内またはより大きな容器の区画内において近接している組成物のセットのいずれかを指す。
【0107】
少なくとも1つの標的領域を含む1つもしくは複数のタンパク質もしくは核酸または1つもしくは複数の分子などの1つまたは複数の標的分子の「捕捉」は、1つまたは複数の標的分子を非標的分子から優先的に単離または分離することを指す。
【0108】
本明細書で使用される場合、「標識」は、捕捉部分、フルオロフォア、オリゴヌクレオチド、またはそれが付着しているものの検出、分離、もしくは単離を容易にする他の部分である。
【0109】
本明細書で使用される場合、「捕捉部分」は、捕捉部分に連結した分子を、捕捉部分を欠如する分子から親和性分離することを可能にする分子である。例示的な捕捉部分としては、固相に連結されているかもしくは連結可能なストレプトアビジンに結合することにより親和性分離を可能にするビオチン、または固相に連結されているかまたは連結可能な相補的オリゴヌクレオチドに結合することにより親和性分離を可能にするオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0110】
本明細書で使用される場合、「タグ」は、タグが会合している分子の特徴を示す情報を含む、核酸、標識、フルオロフォア、またはペプチドなどの分子である。例えば、分子は、試料タグ(1つの試料中の分子を別の試料中の分子と区別する)、分子タグ/分子バーコード/バーコード(異なる分子を互いに区別する(一意的タグ付けシナリオおよび非一意的タグ付けシナリオの両方において)、分配タグ(分配画分中の分子を別の分配画分中の分子と区別する)、精製タグ、および/または検出可能なタグもしくは標識を有していてもよい。
【0111】
本明細書で使用される場合、「標的分子」は、その存在または非存在が検出されるタンパク質、炭水化物、または脂質などの分子である。標的分子の同一性は、検出前に既知である必要はない。標的分子の同一性は、本明細書に記載の方法の一部として、例えば質量分析法を使用して標的タンパク質を分析することにより決定してもよい。
【0112】
「特異的に結合する」は、プライマー、プローブ、もしくは他のオリゴヌクレオチド、タンパク質、または他の結合分子および標的配列の文脈では、適切なハイブリダイゼーション条件下で、プライマー、オリゴヌクレオチド、またはプローブが、その標的配列もしくはその複製物にハイブリダイズして安定ハイブリッドを形成し、同時に安定非標的ハイブリッドの形成が最小限に抑えられることを意味する。したがって、プライマーまたはプローブは、非標的配列よりも十分により大きな程度に標的配列またはその複製物にハイブリダイズして、最終的に標的配列の捕捉または検出を可能にする。適切なハイブリダイゼーション条件は、当技術分野で周知であり、配列組成に基づいて予測することができるか、または日常的な試験方法を使用することにより決定することができる(例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2nd ed. (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989)の1.90~1.91節、7.37~7.57節、9.47~9.51節、および11.47~11.57節、特に9.50~9.51節、11.12~11.13節、11.45~11.47節、および11.55~11.57節を参照。こうした文献は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0113】
「血漿ペレット」は、本明細書で使用される場合、以前に全血から分離されていた血漿の遠心分離後の沈殿物質を意味する。血漿は、第1の遠心分離により全血から分離することができ、血漿ペレットは、第1の遠心分離の血漿部分(上清)のみの第2の遠心分離により生成することができる。第2の遠心分離の上清は、単離血漿と呼ばれる場合があり、沈殿物は血漿ペレットである。一部の実施形態では、血漿ペレットは、細胞デブリ(例えば、バフィーコートに見出される細胞デブリよりも一般的に質量が低いかまたはサイズが小さい)を含む。一部の実施形態では、血漿ペレットは、cfDNA、cfRNA、可溶性タンパク質、エクソソーム、および代謝産物を実質的に含まない。「実質的に含まない」は、十分な程度に不在であり、関連特性が少量の不純物の存在により意味のある影響を受けないことを意味する。
【0114】
「イムノアッセイ」は、本明細書で使用される場合、機能を試験するため、または試料の1つもしくは複数の成分の存在を検出、識別、および/もしくは定量化するために、分子または試料を抗体と接触させることを含むアッセイまたは方法を意味する。イムノアッセイの例としては、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、サンドイッチアッセイ、電気化学発光(ECL)アッセイ、およびマルチプレックスアッセイを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0115】
「抗体」は、本明細書で使用される場合、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および所望の抗原結合活性を呈する限り抗体断片を含むがこれらに限定されない種々の抗体構造を包含するように幅広く使用される。
【0116】
「抗体断片」は、インタクト抗体の部分を含み、インタクト抗体が結合する抗原に結合する、インタクト抗体以外の分子を指す。抗体断片の例としては、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’);ダイアボディ;直鎖状抗体;単鎖抗体分子(例えば、scFv);および抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
タンパク質または核酸は、腫瘍細胞を起源とする場合、「腫瘍により産生される」という。腫瘍細胞を起源とするDNAは「循環腫瘍DNA」(「ctDNA」)である。腫瘍細胞は、腫瘍に留まるかまたは腫瘍から分離されるか(例えば、転移性がん細胞および循環腫瘍細胞の場合のように)に関わりなく、腫瘍を起源とする新生物細胞である。
【0118】
核酸の文脈での「標的領域」は、例えば、プローブを使用することにより(例えば、配列相補性により)識別および/または捕捉の標的とされるゲノム遺伝子座を指す。「標的領域セット」または「標的領域のセット」は、例えばプローブのセットを使用することにより(例えば、配列相補性により)識別および/または捕捉の標的とされる複数のゲノム遺伝子座を指す。
【0119】
「配列可変標的領域」は、正常細胞と比べて、新生物細胞(例えば、腫瘍細胞およびがん細胞)において、ヌクレオチド置換(つまり、一塩基変異)、挿入、欠失、または遺伝子融合もしくは転座など、配列に変化を呈し得る標的領域を指す。配列可変標的領域セットは、配列可変標的領域のセットである。一部の実施形態では、配列可変標的領域は、50個未満もしくはそれと等しい、例えば、40、30、20、10、5、4、3、もしくは2個のヌクレオチド未満もしくはそれと等しい連続ヌクレオチドに影響を及ぼすか、または1個のヌクレオチドに影響を及ぼす変化を呈し得る標的領域である。
【0120】
「エピジェネティック標的領域」は、正常細胞と比べて、異なる細胞もしくは組織タイプ(例えば、異なるタイプの免疫細胞)または新生物細胞(例えば、腫瘍細胞およびがん細胞)において配列非依存性差異を示し得るか、あるいは健常対象に由来するcfDNAなどのDNAと比べて、異なる細胞タイプもしくはがんを有する対象に由来するcfDNAなどのDNAにおいて、またはバックグラウンドcfDNA(例えば、造血細胞を起源とするcfDNA)と比べてcfDNAに対して通常は実質的に寄与しない異なる細胞もしくは組織タイプ(例えば、免疫、肺、結腸など)を起源とするcfDNAにおいて配列非依存性差異を示し得る標的領域を指す。配列非依存性変化の例としては、メチル化(増加または減少)、ヌクレオソーム分布、cfDNA断片化パターン、CCCTC結合因子(「CTCF」)結合、転写開始部位、および調節タンパク質結合領域の変化が挙げられるが、これらに限定されない。したがって、エピジェネティック標的領域セットとしては、高メチル化可変標的領域セット、低メチル化可変標的領域セット、ならびにCTCF結合部位および転写開始部位などの断片化可変標的領域セットが挙げられるが、これらに限定されない。本目的では、新生物、腫瘍、またはがんに関連する局所増幅および/または遺伝子融合の影響を受け易い遺伝子座も、エピジェネティック標的領域セットに含めることができる。なぜならば、配列決定によるコピー数の変化の検出、または参照ゲノム中の1つよりも多くの遺伝子座にマッピングされる融合配列の検出は、例えば、局所増幅および/または遺伝子融合は、それらの検出が1つまたは少数の個々の位置における塩基コールの正確性に依存しないため、比較的浅い深度の配列決定で検出することができるという点で、ヌクレオチド置換、挿入、または欠失の検出よりも、上記で考察されている例示的なエピジェネティック変化の検出により類似する傾向があるからである。エピジェネティック標的領域セットは、エピジェネティック標的領域のセットである。
【0121】
所与の標的セットに対するプローブのコレクションの「捕捉収量」は、プローブのコレクションが典型的な条件下で捕捉する標的セットに対応する核酸の量(例えば、別の標的セットと比べた量または絶対量)を指す。例示的で典型的な捕捉条件は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション緩衝液を含む少量の反応体積(約20μL)中で、試料核酸およびプローブを65℃で10~18時間インキュベートすることである。捕捉収量は絶対値で表してもよく、複数のプローブのコレクションの場合は相対値で表してもよい。複数のセットの標的領域の捕捉収量を比較する場合は、捕捉収量を、標的領域セットのフットプリントサイズに対して正規化する(例えば、1キロベース当たりの基準で)。したがって、例えば、第1および第2の標的領域のフットプリントサイズがそれぞれ50kbおよび500kbである場合(正規化係数は0.1となる)、第1の標的領域セットに対応するDNAは、第1の標的領域セットに対応する捕捉されたDNAの体積当たりの質量濃度が、第2の標的領域セットに対応する捕捉されたDNAの体積当たりの質量濃度の0.1倍よりも大きい場合、第2の標的領域セットに対応するDNAよりも高い収量で捕捉される。さらなる例として、同じフットプリントサイズを使用して、第1の標的領域セットに対応する捕捉されたDNAが、第2の標的領域セットに対応する捕捉されたDNAの体積当たりの質量濃度の0.2倍の体積当たりの質量濃度を有する場合、第1の標的領域セットに対応するDNAは、第2の標的領域セットに対応するDNAよりも2倍大きい捕捉収量で捕捉されていた。
【0122】
「メチル化」または「DNAメチル化」という用語は、核酸分子の核酸塩基へのメチル基の付加を指す。一部の実施形態では、メチル化は、CpG部位(シトシン-リン酸-グアニン部位(つまり、核酸配列の5’->3’方向でシトシンの後にグアニンが続く)におけるシトシンへのメチル基の付加を指す。一部の実施形態では、DNAメチル化は、N-メチルアデニンなど、アデニンへのメチル基の付加を指す。一部の実施形態では、DNAメチル化は、5メチル化(シトシンの6員炭素環の5位の炭素の修飾)である。一部の実施形態では、5-メチル化は、シトシンの5C位にメチル基を付加して5-メチルシトシン(5mC)を作出することを指す。一部の実施形態では、メチル化は5mCの誘導体を含む。5mCの誘導体としては、5-ヒドロキシメチルシトシン(5-hmC)、5-ホルミルシトシン(5-fC)、および5-カルボキシルシトシン(5-caryboxylcytosine)(5-caC)が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、DNAメチル化は、3Cメチル化(シトシンの6員炭素環の3位の炭素の修飾)である。一部の実施形態では、3Cメチル化は、シトシンの3C位にメチル基を付加して3-メチルシトシン(3mC)を作出することを含む。メチル化は、非CpG部位でも生じる可能性があり、例えば、メチル化は、CpA、CpT、またはCpC部位で生じる可能性がある。DNAメチル化は、メチル化DNA領域の活性を変化させる可能性がある。例えば、プロモーター領域のDNAがメチル化されると、遺伝子の転写が抑制される可能性がある。DNAメチル化は正常な発生にとって重要であり、メチル化の異常はエピジェネティック調節を混乱させる可能性がある。エピジェネティック調節の混乱、例えば抑制は、がんなどの疾患を引き起こす可能性がある。DNAのプロモーターメチル化はがんを示す可能性がある。
【0123】
「高メチル化」という用語は、核酸分子の集団(例えば、試料)内の他の核酸分子と比べて、核酸分子(複数可)のメチル化のレベルまたは程度が増加することを指す。一部の実施形態では、高メチル化DNAは、少なくとも1つのメチル化残基、少なくとも2つのメチル化残基、少なくとも3つのメチル化残基、少なくとも5つのメチル化残基、または少なくとも10個のメチル化残基を含むDNA分子を含んでいてもよい。
【0124】
「低メチル化」という用語は、核酸分子の集団(例えば、試料)内の他の核酸分子と比べて、核酸分子(複数可)のメチル化のレベルまたは程度が減少することを指す。一部の実施形態では、低メチル化DNAは、非メチル化DNA分子を含む。一部の実施形態では、低メチル化DNAは、0個のメチル化残基、最大で1個のメチル化残基、最大で2個のメチル化残基、最大で3個のメチル化残基、最大で4個のメチル化残基、または最大で5個のメチル化残基を含むDNA分子を含んでいてもよい。
【0125】
「DNAの修飾核酸塩基を認識する作用剤」、例えば「DNAの修飾シトシンを認識する作用剤」という用語は、DNAの1つまたは複数の修飾核酸塩基、例えばメチルシトシンに結合または検出する分子または試薬を指す。「修飾核酸塩基」は、未修飾核酸塩基との化学構造の違いを含む核酸塩基である。DNAの場合、未修飾核酸塩基は、アデニン、シトシン、グアニン、またはチミンである。一部の実施形態では、修飾核酸塩基は修飾シトシンである。一部の実施形態では、修飾核酸塩基はメチル化核酸塩基である。一部の実施形態では、修飾シトシンはメチルシトシン、例えば5-メチルシトシンである。そのような実施形態では、シトシン修飾はメチルである。DNAのメチルシトシンを認識する作用剤としては、本明細書ではメチルシトシンに結合する試薬であることを指す「メチル結合試薬」が挙げられるが、これらに限定されない。メチル結合試薬としては、メチル結合ドメイン(MBD)、メチル結合タンパク質(MBP)、およびメチルシトシンに特異的な抗体が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、そのような抗体は、DNAの5-メチルシトシンに結合する。一部のそのような実施形態では、DNAは一本鎖であってもよくまたは二本鎖であってもよい。
【0126】
「またはそれらの組合せ(単数)」および「またはそれらの組合せ(複数)」という用語は、本明細書で使用される場合、この用語の前に列挙されている用語のありとあらゆる順列および組合せを指す。例えば、「A、B、C、またはそれらの組合せ」は、A、B、C、AB、AC、BC、またはABC、特定の文脈において順序が重要である場合は、さらにBA、CA、CB、ACB、CBA、BCA、BAC、またはCABの少なくとも1つを含むことが意図されている。この例で説明を続けると、BB、AAA、AAB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、およびCABABBなど、1つまたは複数の項目または用語の繰り返しを含む組合せが明示的に含まれる。当業者であれば、文脈からそうでないことが明らかでない限り、典型的には、任意の組合せの項目または用語の数に制限がないことを理解するであろう。
【0127】
「または」は、文脈が別様に要求しない限り、包括的な意味で、つまり「および/または」と等価的に使用される。
II.例示的な方法
A.細胞デブリ会合標的分子の識別および定量化
【0128】
本明細書で開示される方法は、試料または部分試料を、少なくとも1つの細胞デブリマーカー結合分子と接触させるステップ、および細胞デブリに会合している、標的タンパク質などの少なくとも1つの標的分子の存在またはレベルを検出するステップを含む。細胞デブリは膜断片を含む。標的分子は、細胞デブリマーカーとは異なる。細胞デブリに会合している標的分子の検出は、例えば全血または血漿の試料中の標的分子を検出するよりも有益であり得る。なぜならば、後者は標的タンパク質のより高いバックグラウンドまたはベースラインレベルを示す可能性があるが、細胞デブリに会合している標的分子のレベルは対象が健康であれば低いからである。一部の実施形態では、細胞デブリに会合している、標的タンパク質などの少なくとも1つの標的分子が定量化される。一部の実施形態では、細胞デブリに会合している標的タンパク質の翻訳後修飾が検出または定量化される。
【0129】
図1Aに示されているように、細胞デブリは、全血試料、または例えば遠心分離により調製されるその種々の部分試料から富化または単離することができる。一部の実施形態では、全血試料、バフィーコート画分、および血漿ペレットの1つもしくは複数または各々を、少なくとも1つの細胞デブリマーカー結合分子と接触させる。例示的な細胞デブリマーカー結合分子は、アネキシンVまたはそれと例えばビオチンとのコンジュゲートである。他の例示的な細胞デブリマーカー結合分子は、本明細書の他所に記載されている。タンパク質などの1つまたは複数の標的分子は、アポトーシス小体を含んでいてもよい富化細胞デブリ中で検出または定量化することができる。一部の実施形態では、エクソソームは、試料またはその部分試料、例えば、血漿の第2の遠心分離後の上清からも富化される。1つまたは複数の標的分子は、該当する場合、富化細胞デブリ中で検出または定量化される1つまたは複数の標的分子と同じであってもよくまたは異なっていてもよく、富化エクソソーム中で検出または定量することができる。一部の実施形態では、無細胞DNAは、試料またはその部分試料から、例えば、血漿の第2の遠心分離後の上清から単離される。無細胞DNAを、例えば本明細書の他所に記載のように分析して、配列変異またはエピジェネティック特徴を検出または定量化することができる。
【0130】
接触および検出は、逐次的にまたは同時に実施することができる。一部の実施形態では、逐次的方法は、少なくとも1つの細胞デブリマーカー結合分子、少なくとも1つの細胞デブリマーカー、および1つまたは複数の標的分子を含む複合体を富化、捕捉、または単離すること、ならびに続いて1つまたは複数の標的分子を検出することを含む。一部の実施形態では、方法は、試料または部分試料を、少なくとも1つの細胞デブリマーカー結合分子および標的分子に特異的な少なくとも1つの結合分子と同時に接触させることを含み、結合分子は、近接ライゲーションアッセイまたは近接伸長アッセイなど、細胞デブリに会合している標的分子の直接検出を容易にするように構成されている。例えば、図1Bに示されている近接ライゲーションアッセイを参照されたい。例えば、図1Bには、オリゴ連結抗体またはコンジュゲート(例えば、PDL1およびCTLA4の一方または両方に特異的な抗体、ならびにアネキシンV、またはホスファチジルセリンに特異的な抗体)を使用して、細胞デブリ中のPDL1および/またはCTLA4を検出または定量化することが示されている。必要に応じて、血漿上清を用いた同様の近接ライゲーションまたは近接伸長手法を使用してエクソソームを分析してもよく、および/または図1Aに関して上記で考察されているように無細胞DNAを分析してもよい。
【0131】
近接伸長アッセイでは、第1および第2の結合分子(例えば、細胞デブリマーカー結合分子および標的結合分子)は、タグ(例えば、標識が会合した結合分子を識別する分子バーコード;タグは、例えば試料タグなどの試料に関連する、および/または分配タグなどの分析されている事前富化画分に関連する追加情報を提供する1つまたは複数の追加エレメントをさらに含み;これは、その後のプール化を容易にすることができる)の3’にある相補的ハイブリダイゼーション配列を含むオリゴヌクレオチドで標識されている。タグは、タグに関して本明細書の他所に記載の特徴のいずれかを有してもよい。オリゴヌクレオチドが近接している場合(例えば、結合分子が同じ細胞デブリ片に結合している場合に生じる)、ハイブリダイゼーション配列は互いにハイブリダイズし、バックグラウンドを上回る速度で、DNAポリメラーゼによる伸長のための基質を形成することができる。次いで、伸長産物を検出することができ(例えば、配列決定またはqPCRにより、これらは増幅および/またはライブラリー調製ステップの後に続いてもよい)、したがって、細胞デブリに会合している標的分子の存在が示される。近接伸長アッセイの一般的な例については、AndersonらのWO2007/005649A2を参照されたい。この文献はあらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。加えて、抗体に付着した核酸標識の増幅については、SanoらのUS5,665,539でも考察されている。この文献はあらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0132】
近接ライゲーションアッセイでは、第1および第2の結合分子(例えば、細胞デブリマーカー結合分子および標的結合分子)は、オリゴヌクレオチドで標識されている。ライゲーション鋳型およびリガーゼは、それらが近接している場合(例えば、結合分子が同じ細胞デブリ片に結合している場合に生じる)、バックグラウンドを上回る速度で互いに対するオリゴヌクレオチドのライゲーションをもたらすように提供される。ライゲーション産物は、ライゲーション鋳型の少なくとも部分を含んでいてもよく、および/または例えばライゲーション鋳型の部分のハイブリダイゼーションおよび/または適切なプライマーを使用した相補鎖合成ステップにより少なくとも部分的に二本鎖であってもよい。オリゴヌクレオチドは、上記に記載のおよび本明細書の他所に記載のタグおよび/またはバーコードを含んでもよい。タグは、タグに関して本明細書の他所に記載の特徴のいずれかを有してもよい。ライゲーション産物は、増幅の基質であってもよい。ライゲーション産物を検出することができ(例えば、配列決定またはqPCRにより、これらは増幅および/またはライブラリー調製ステップの後に続いてもよい)、したがって、細胞デブリに会合している標的分子の存在が示される。近接ライゲーションアッセイの一般的な例は、RuffらのUS9,518,296B2、およびHennessyらのUS2007/0281367A1に見出すことができる。こうした文献は両方ともあらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0133】
また、エクソソームマーカー結合分子が細胞デブリマーカー結合分子の代わりにまたはそれと組み合わせて使用される方法であって、少なくとも1つのエクソソームマーカー結合分子、少なくとも1つのエクソソームマーカー、および1つまたは複数の標的分子を含む複合体を富化、捕捉、または単離すること、ならびに続いて例えば、細胞デブリマーカーを含む複合体中の1つまたは複数の標的分子に加えて、エクソソームに由来する1つまたは複数の標的分子を検出することを含んでいてもよい方法が開示される。エクソソームは細胞デブリとはみなされない。
【0134】
一部の実施形態では、こうした方法は、試料または部分試料を細胞デブリマーカー結合分子と接触させること、および細胞デブリに会合している、標的タンパク質などの1つまたは複数の標的分子を検出することを含む。一部の実施形態では、細胞デブリマーカーは内膜マーカーである。理論に束縛されることは望まないが、内側原形質膜リーフレット(inner plasma membrane leaflet)にほぼ排他的に局在化している脂質は、プレアポトーシス細胞、アポトーシス細胞、ならびに他の瀕死細胞および死細胞では、外膜リーフレット(outer membrane)へと反転する。加えて、破壊された細胞成分は、試料溶媒に曝されている内膜リーフレット(inner membrane leaflet)を含む。したがって、選択的結合内膜マーカーは、細胞デブリに対する選択的結合を促進し、したがって可溶性タンパク質よりも、細胞デブリに会合している標的分子を選択的に検出することを促進することができる。例示的な内膜マーカーとしては、ホスファチジルセリンおよびホスファチジルエタノールアミンが挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、細胞デブリマーカー結合分子は、細胞デブリマーカーに特異的に結合する抗体、ナノボディ、アフィマー、またはDARpinなどのタンパク質である。一部の実施形態では、タンパク質は、アネキシンV、またはホスファチジルセリンに特異的な抗体である。一部の実施形態では、細胞デブリマーカー結合分子は、アプタマーなどの核酸である。一部の実施形態では、細胞デブリマーカー結合分子は、捕捉部分(例えば、ビオチン)またはオリゴヌクレオチドなどの標識を含む。
【0135】
一部の実施形態では、こうした方法は、試料またはその部分試料中の総細胞デブリレベルを測定することを含む。総細胞デブリレベルは、例えば、本明細書に記載のもののいずれかであってもよい細胞デブリマーカーの総量を定量化することにより測定することができる。総細胞デブリレベルを測定するために使用される細胞デブリマーカーは、結合分子が結合する細胞デブリマーカーと同じであってもよくまたは異なっていてもよい。1つよりも多くの細胞デブリマーカー結合分子が使用される場合、総細胞デブリレベルの測定に使用される細胞デブリマーカーは、結合分子が結合する細胞デブリマーカーの1つと同じであってもよく、または結合分子が結合する細胞デブリマーカーのすべてと異なっていてもよい。そのような測定には、任意の好適な測定技法を使用することができる(例えば、イムノアッセイ、質量分析など)。
【0136】
本明細書の方法は、エクソソームをアッセイするために使用することもできる。そのような実施形態では、こうした方法は、試料または部分試料を、少なくとも1つのエクソソームマーカー結合分子と接触させること、およびエクソソームに会合している、標的タンパク質などの少なくとも1つの標的分子の存在またはレベルを検出することを含む。一部の実施形態では、エクソソームマーカーは、試料中の他の膜よりもエクソソーム膜により高い割合で存在する膜貫通タンパク質である。一部の実施形態では、エクソソームマーカーはテトラスパニンである。一部の実施形態では、エクソソームマーカーは、CD9、CD63、またはCD81である。一部の実施形態では、エクソソームマーカー結合分子は、エクソソームマーカーに特異的に結合する抗体、ナノボディ、アフィマー、またはDARpinなどのタンパク質である。一部の実施形態では、タンパク質は、CD9、CD63、またはCD81に特異的な抗体である。一部の実施形態では、エクソソームマーカー結合分子は、アプタマーなどの核酸である。一部の実施形態では、エクソソームマーカー結合分子は、ビオチンなどの標識または捕捉部分を含む。
【0137】
本明細書の方法は、標的タンパク質などの少なくとも1つの標的分子を検出することを含む。一部の実施形態では、1つまたは複数の標的分子の同一性は、本方法の開始前には不明である。一部のそのような実施形態では、こうした方法は、質量分析および標的タンパク質の識別を使用して標的タンパク質を検出することを含む。一部の実施形態では、検出は、試料を、試料中に存在することが疑われる標的分子に特異的な結合分子と接触させることを含む。一部の実施形態では、1つまたは複数の標的分子の同一性は、本方法の開始前に既知であり、それに応じて標的分子検出方法が選択される。一部の実施形態では、検出は、ELISA、サンドイッチアッセイ、電気化学発光(ECL)アッセイ、またはマルチプレックスイムノアッセイなどのイムノアッセイを実施することを含む。一部の実施形態では、検出は、試料のフローサイトメトリー分析を含む。
【0138】
一部の実施形態では、1つまたは複数の標的分子は、腫瘍細胞、別の疾患状態の細胞、または細胞が得られる対象における疾患の存在により変化した細胞に由来する分子である。一部の実施形態では、1つまたは複数の標的分子は、対象から得られる身体試料のタイプには通常存在しない細胞タイプに由来する。一部の実施形態では、少なくとも1つの標的分子は、標的タンパク質である。一部の実施形態では、少なくとも1つの標的分子は、糖タンパク質炭水化物などの標的炭水化物である。一部の実施形態では、1つまたは複数の標的分子は、PD-L1、CTLA4、NYESO1、メソテリン、CA15-3、CA19-9、CA-125、およびCA-172-4から選択される。一部の実施形態では、1つまたは複数の標的分子は、免疫細胞タイプマーカーまたは固形組織細胞タイプマーカーなどの細胞タイプマーカーである。一部の実施形態では、固形組織細胞タイプマーカーは、結腸、肺、乳房、皮膚、前立腺、胃、膵臓、または肝細胞に存在するマーカーである。
【0139】
一部の実施形態では、標的分子のレベルの決定は、疾患診断または適切な処置の識別を容易にする。一部の実施形態では、1つまたは複数の標的分子の存在またはレベルの変化は、対象における疾患または障害、例えば、がん、前がん、感染症、移植拒絶反応、または細胞死に変化を引き起こす他の障害の存在を示す。一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、例えば配列可変標的領域セットにおける遺伝子変異体を検出することをさらに含む。一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、エピジェネティック特徴、例えば、DNAメチル化および/または断片化を検出することをさらに含む。一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、例えば配列可変標的領域セットにおける遺伝子変異体を検出すること、ならびにエピジェネティック特徴、例えばゲノムメチル化および/または断片化を検出することをさらに含む。エピジェネティック特徴の検出は、エピジェネティック標的領域セットにて実施することができる。例示的な配列可変標的領域セットおよびエピジェネティック標的領域セットは、例えば、2020年8月6日に公開されたWO2020/160414に記載されている。この文献は、参照により本明細書に組み込まれる。遺伝子変異体および/またはエピジェネティック特徴の検出は、標的分子のレベルを決定するために使用されるものと同じ試料に由来する核酸(例えば、cfDNA)を使用して実施してもよい。遺伝子変異体および/またはエピジェネティック特徴を検出するための例示的な手法は、下記のセクションII.Dを含む、本明細書の他所に記載されている。一部の実施形態では、エピジェネティック標的領域における配列非依存性変化のcfDNA分析、例えば本明細書に記載のcfDNA分析と組み合わせた標的分子の検出は、対象における疾患または障害、例えば、がん、前がん、感染症、移植拒絶反応、または健常対象と比べて、細胞デブリおよび/もしくはエクソソームに会合している標的分子の相対量の変化ならびにDNA変化を引き起こす他の障害が存在することを示す。
B.対象
【0140】
一部の実施形態では、試料は、がんもしくは前がん、感染症、移植拒絶反応、または免疫系に直接的もしくは間接的に影響を及ぼす他の疾患を有する対象から得られる。一部の実施形態では、試料は、がんもしくは前がん、感染症、移植拒絶反応、または免疫系に直接的もしくは間接的に影響を及ぼす他の疾患を有することが疑われる対象から得られる。一部の実施形態では、試料は、腫瘍を有する対象から得られる。一部の実施形態では、試料は、腫瘍を有することが疑われる対象から得られる。一部の実施形態では、試料は、新生物を有する対象から得られる。一部の実施形態では、試料は、新生物を有することが疑われる対象から得られる。一部の実施形態では、試料は、腫瘍、がん、または新生物が寛解している(例えば、化学療法、外科的切除、放射線療法、またはそれらの組合せ後の)対象から得られる。上述の実施形態のいずれかでは、がん、腫瘍、もしくは新生物、またはがん、腫瘍、もしくは新生物の疑いは、肺、結腸、直腸、腎臓、乳房、前立腺、または肝臓のものであってもよい。一部の実施形態では、がん、腫瘍、もしくは新生物、またはがん、腫瘍、もしくは新生物の疑いは、肺のものである。一部の実施形態では、がん、腫瘍、もしくは新生物、またはがん、腫瘍、もしくは新生物の疑いは、結腸または直腸のものである。一部の実施形態では、がん、腫瘍、もしくは新生物、またはがん、腫瘍、もしくは新生物の疑いは、乳房のものである。一部の実施形態では、がん、腫瘍、もしくは新生物、またはがん、腫瘍、もしくは新生物の疑いは、前立腺のものである。上述の実施形態のいずれかでは、対象はヒト対象であってもよい。
C.分析
【0141】
本方法は、対象における状態、特にがんまたは前がんの存在を診断し、状態を特徴付け(例えば、がんを病期分類することまたはがんの不均質性を決定すること)、状態の処置に対する応答をモニターし、状態の発症または状態のその後の経過の予後リスクをもたらすために使用することができる。本開示は、特定の処置選択肢の有効性を決定するためにも有用であり得る。処置が成功すると、より多くのがんが死滅し、DNAおよび細胞デブリを排出し得るため、処置選択肢の成功は、対象の血液中に検出されるコピー数変異、希少突然変異、または標的分子の量を増加させる可能性がある。他の例では、これは生じない可能性がある。別の例では、おそらくは、ある特定の処置選択肢は、時間の経過と共にがんの遺伝子プロファイルと相関する可能性がある。この相関性は、療法を選択する際に有用であり得る。
【0142】
加えて、がんが処置後に寛解していることが観察された場合、本方法を使用して、残留疾患または疾患の再発をモニターすることができる。
【0143】
検出することができるがんのタイプおよび数としては、血液がん、脳がん、肺がん、皮膚がん、鼻がん、喉がん、肝臓がん、骨がん、リンパ腫、膵臓がん、皮膚がん、腸がん、直腸がん、甲状腺がん、膀胱がん、腎臓がん、口腔がん、胃がん、固形腫瘍、不均質腫瘍、および均質腫瘍等などを挙げることができる。がんのタイプおよび/または病期は、突然変異、希少突然変異、インデル、コピー数変異、トランスバージョン、転座、組換え、逆位、欠失、異数性、部分異数性、倍数性、染色体不安定性、染色体構造変化、遺伝子融合、染色体融合、遺伝子切断、遺伝子増幅、遺伝子重複、染色体損傷、DNA損傷、核酸化学修飾の異常変化、エピジェネティックパターンの異常変化、および核酸5-メチルシトシンの異常変化を含む遺伝子変異から検出することができる。
【0144】
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、腫瘍(または新生物細胞、またはがん細胞)によりまたは前がん細胞により産生される標的分子および/またはDNAの存在を識別することを含む。一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、腫瘍(または新生物細胞、またはがん細胞)によりまたは前がん細胞により産生される標的分子のレベルを決定することおよび/またはDNAの存在を識別することを含む。一部の実施形態では、標的分子のレベルの決定は、標的分子のレベルの増加またはレベルの減少のいずれかを決定することを含み、標的分子のレベルの増加または減少は、標的分子のレベルを閾値レベル/値と比較することにより決定される。
【0145】
また、遺伝子データは、特定の形態のがんを特徴付けるために使用することができる。がんは、組成および病期が両方とも不均質であることが多い。遺伝子プロファイルデータは、がんの特定のサブタイプの特徴付けを可能にすることができ、それは、その特定のサブタイプの診断または処置に重要であり得る。また、この情報は、特定のタイプのがんの予後に関する手がかりを対象または担当医に提供し、対象または担当医が疾患の進行に応じて処置選択肢を適応させることを可能にすることができる。一部のがんは進行してより侵襲性になり、遺伝的に不安定になる可能性がある。他のがんは、良性、不活性、または休止状態のままである可能性がある。本開示の系および方法は、疾患進行の決定に有用であり得る。
【0146】
さらに、本開示の方法は、対象における異常状態の不均質性を特徴付けるために使用することができる。そのような方法は、例えば、対象に由来する細胞外分子のプロファイルを生成することを含んでいてもよく、プロファイルは、標的分子検出、およびコピー数変異、および希少突然変異分析からもたらされる複数のデータを含む。一部の実施形態では、異常状態は、がんまたは前がんである。一部の実施形態では、異常状態は、不均質なゲノム集団をもたらすものであってもよい。がんの例では、一部の腫瘍は、異なる病期のがんの腫瘍細胞を含むことが公知である。他の例では、不均質性は、複数の疾患病巣を含んでいてもよい。この場合も、がんの例では、複数の腫瘍病巣が存在する可能性があり、おそらくは1つまたは複数の病巣は、原発部位から広がった転移の結果である。
【0147】
本方法は、不均質疾患の異なる細胞に由来する情報の総和であるプロファイル、フィンガープリント、またはデータセットを生成するために使用することができる。このデータセットは、標的分子の同一性およびレベル、コピー数変異、エピジェネティック変異、または他の突然変異分析を、単独でまたは組合せで含んでいてもよい。
【0148】
本方法は、がんまたは他の疾患を、診断、予後判定、モニター、または観察するために使用することができる。一部の実施形態では、本明細書の方法は、胎児を診断、予後判定、またはモニターすることを含まず、したがって非侵襲的出生前検査に関するものではない。他の実施形態では、こうした方法論は、DNAおよび他のポリヌクレオチドが母体分子と共循環する可能性のある胎児対象におけるがんまたは他の疾患を診断、予後判定、モニター、または観察するために、妊娠対象において使用することができる。
D.DNAの分析;試料を複数の部分試料に分配する
【0149】
本明細書に記載の一部の実施形態では、本開示の方法は、試料(同じ対象に由来する別々の試料であってもよくまたは同じ試料であってもよい)中のDNAを分析することをさらに含む。例えば、細胞デブリに会合している標的分子の分析と組み合わせて無細胞DNAなどのDNAを分析することにより、疾患の存在などの異常状態を検出する方法の特異度および/または感度を向上させることができる。図1A~1Bに示されているように、無細胞DNAなどのDNAを、血液試料、または血漿の遠心分離後に得られる血漿上清などのその部分試料から単離することができる。DNAの分析は、目的のDNAの検出または定量化を含んでいてもよい。DNAの分析は、遺伝子変異体および/またはエピジェネティック特徴(例えば、DNAメチル化および/またはDNA断片化)を検出することを含んでいてもよい。
【0150】
こうした実施形態のいずれかでは、メチル化レベルは、分配、亜硫酸水素塩変換などのメチル化感受性変換、配列決定中の直接検出、メチル化感受性制限酵素消化、または任意の他の好適な手法を使用して決定することができる。例えば、異なる形態のDNA(例えば、高メチル化DNAおよび低メチル化DNA)を、DNAの1つまたは複数の特質に基づいて物理的に分配することができる。例えば、メチル化DNA結合タンパク質(例えば、MBD2、MBD4、またはMeCP2などのMBD)または5-メチルシトシンに特異的な抗体(MeDIPなど)を使用して、DNAを分配することができる。この手法は、例えば、ある特定の配列が高メチル化されているかまたは低メチル化されているかを決定するために使用することができる。
【0151】
DNAの異常特徴(配列ベースの、エピジェネティックな、またはその両方の)を検出すると共に、細胞デブリおよび/またはエクソソーム中の1つまたは複数の標的分子の異常レベルも検出することにより、DNA特徴単独、または細胞デブリおよび/もしくはエクソソーム中の1つもしくは複数の標的分子のレベル単独を検出するよりも、異常状態を識別するためのより高い特異度および/または感度を提供することができる。
【0152】
メチル化プロファイリングは、ゲノムの異なる領域にわたってメチル化パターンを決定することを含んでいてもよい。例えば、メチル化の程度(例えば、1分子当たりのメチル化核酸塩基の相対数)および配列決定に基づき分子を分配した後、異なる分配画分中の分子の配列を参照ゲノムに対してマッピングすることができる。これにより、他の領域と比較して、より高度にメチル化されているか、またはそれほど高度にメチル化されていないゲノムの領域を示すことができる。このように、ゲノム領域は、個々の分子とは対照的に、メチル化の程度が異なる可能性がある。
【0153】
試料中の核酸分子を分配することにより、例えば、試料の1つの分配画分においてより多く存在する希少核酸分子を富化することにより、希少シグナルを増加させることができる。例えば、高メチル化DNAには存在するが、低メチル化DNAにはより少量で存在する(または存在しない)遺伝子変異は、試料を高メチル化核酸分子と低メチル化核酸分子とに分配することにより、より容易に検出することができる。試料の複数の分配画分を分析することにより、単一分子の多次元分析を実施することができ、したがってより高い感度を達成することができる。分配は、1つまたは複数のメチル化核酸塩基の存在または非存在に基づき、核酸分子を分配画分または部分試料へと物理的に分配することを含んでいてもよい。試料は、差次的遺伝子発現または疾患状態を示す特質に基づき、分配画分または部分試料へと分配することができる。試料は、核酸、例えば無細胞DNA(cfDNA)、非cfDNA、腫瘍DNA、循環腫瘍DNA(ctDNA)、および無細胞核酸(cfNA)の分析中に、正常状態と疾患状態との間でシグナルの差異をもたらす特質またはその組合せに基づいて分配することができる。
【0154】
一部の実施形態では、高メチル化および/または低メチル化可変エピジェネティック標的領域を分析して、それらが、腫瘍細胞、または分析されているDNA試料(cfDNAなど)に通常は寄与しないタイプの細胞、および/または特定の免疫細胞タイプの異なるメチル化特質を示すか否かを決定する。
【0155】
一部の場合では、試料中の不均質DNAは、2つまたはそれよりも多くの分配画分(例えば、少なくとも3、4、5、6、または7つの分配画分)に分配される。一部の実施形態では、各分配画分は差次的にタグ付けされる。次いで、タグ付き分配画分は、集合的な試料調製および/または配列決定のために一緒にプールすることができる。分配-タグ付け-プール化ステップは1回よりも多く行ってもよい、各ラウンドの分配は、異なる特質(例は本明細書に提供されている)に基づいて行われ、他の分配画分および分配手段と区別される差次的タグを使用してタグ付けされる。他の例では、差次的タグ付き分配画分は別々に配列決定される。
【0156】
一部の実施形態では、差次的タグ付きプールDNAに由来する配列リードが得られ、in silicoで分析される。タグは、異なる分配画分に由来するリードを選別するために使用される。遺伝子変異を検出するための分析は、分配画分ごとのレベル、ならびに全核酸集団レベルで実施することができる。例えば、分析は、各分配画分の核酸におけるCNV、SNV、インデル、融合などの遺伝子変異体を決定するためのin silico分析を含んでいてもよい。一部の場合では、in silico分析は、クロマチン構造の決定を含んでいてもよい。例えば、配列リードの網羅範囲を使用して、クロマチンにおけるヌクレオソーム位置を決定することができる。より高い網羅範囲は、ゲノム領域におけるヌクレオソーム占有率がより高いことと相関する可能性があり、より低い網羅範囲は、ヌクレオソーム占有率がより低いことまたはヌクレオソーム枯渇領域(NDR)と相関する可能性がある。
【0157】
分配に使用することができる特質の例としては、配列長、メチル化レベル、ヌクレオソーム結合、配列ミスマッチ、免疫沈降、および/またはDNAに結合するタンパク質が挙げられる。得られる分配画分としては、以下の核酸形態:一本鎖DNA(ssDNA)、二本鎖DNA(dsDNA)、短鎖DNA断片、および長鎖DNA断片の1つまたは複数が挙げられる。一部の実施形態では、一般に、シトシン修飾(例えば、シトシンメチル化)またはメチル化に基づく分配を実施し、必要に応じて、DNAの上述の特質または形態のいずれかに基づいていてもよい少なくとも1つの追加の分配ステップを組み合わせる。一部の実施形態では、核酸の不均質集団は、1つまたは複数のエピジェネティック修飾を有する核酸と、1つまたは複数のエピジェネティック修飾を有さない核酸とに分配される。エピジェネティック修飾の例としては、メチル化の存在または非存在、メチル化のレベル、メチル化のタイプ(例えば、5-メチルシトシン対アデニンメチル化および/またはシトシンヒドロキシメチル化などの他のタイプのメチル化)、ならびにヒストンなどの1つまたは複数のタンパク質との会合および会合のレベルが挙げられる。代替的にまたは加えて、核酸の不均質集団を、ヌクレオソームと会合している核酸分子とヌクレオソームを欠く核酸分子とに分配してもよい。代替的にまたは加えて、核酸の不均質集団を、一本鎖DNA(ssDNA)と二本鎖DNA(dsDNA)とに分配してもよい。代替的にまたは加えて、核酸の不均質集団を、核酸長(例えば、最大160bpの分子および160bpよりも大きな長さを有する分子)に基づいて分配してもよい。
【0158】
試料内の核酸の集団を分配するために使用される作用剤は、所望の特異性を有する抗体、天然結合パートナー、もしくはそれらの変異体(Bock et al., Nat Biotech 28: 1106-1114 (2010);Song et al., Nat Biotech 29: 68-72 (2011))、または所与の標的に対する特異性を有するように例えばファージディスプレイにより選択された人工ペプチドなどの親和性作用剤であってもよい。一部の実施形態では、分配に使用される作用剤は、修飾核酸塩基を認識する作用剤である。一部の実施形態では、作用剤により認識される修飾核酸塩基は、メチルシトシン(例えば、5-メチルシトシン)などの修飾シトシンである。一部の実施形態では、作用剤により認識される修飾核酸塩基は、DNA中の第1の核酸塩基に対して、試料のDNA中の第2の核酸塩基とは異なるように影響を及ぼす手順の産物である。一部の実施形態では、修飾核酸塩基は、その塩基対合特異性が手順により変更されたことを意味する「変換された核酸塩基」であってもよい。例えば、ある特定の手順では、非メチル化もしくは未修飾のシトシンがジヒドロウラシルへと変換されるか、またはより一般には、少なくとも1つの修飾形態もしくは未修飾形態のシトシンが脱アミノ化を受け、ウラシル(DNAの文脈では修飾核酸塩基とみなされる)もしくはさらなる修飾形態のウラシルがもたらされる。分配作用剤の例としては、メチルシトシン(例えば、5-メチルシトシン)などの修飾シトシンであってもよい修飾核酸塩基を認識する抗体などの抗体が挙げられる。一部の実施形態では、分配作用剤は、5-カルボキシルシトシン(5caC)などの5-メチルシトシン以外の修飾シトシンを認識する抗体である。代替的な分配作用剤としては、MeCP2などのタンパク質を含む、本明細書に記載のメチル結合ドメイン(MBD)およびメチル結合タンパク質(MBP)が挙げられる。
【0159】
分配作用剤の追加の非限定的な例は、ヒストンに結合した核酸を、遊離または未結合核酸から分離することができるヒストン結合タンパク質である。本明細書で開示される方法で使用することができるヒストン結合タンパク質の例としては、RBBP4、RbAp48、およびSANTドメインペプチドが挙げられる。
【0160】
一部の実施形態では、分配は、バイナリ分配および修飾の度合い/レベルに基づく分配の両方を含んでいてもよい。例えば、メチル化断片を、メチル化DNA免疫沈降(MeDIP)により分配してもよく、またはすべてのメチル化断片を、メチル結合ドメインタンパク質(例えば、MethylMinderメチル化DNA富化キット(ThermoFisher Scientific)を使用して非メチル化断片から分配してもよい。その後、追加の分配は、メチル結合ドメインおよび結合断片を有する溶液中の塩濃度を調整することにより、異なるレベルのメチル化を有する断片を溶出することを含んでいてもよい。塩濃度が増加すると共に、より高いメチル化レベルを有する断片が溶出される。
【0161】
一部の場合では、最終分配画分には、異なる程度の修飾(修飾の過剰存在または過少存在)を有する核酸が富化される。過剰存在および過少存在は、核酸に生じた修飾の数を、集団中の1鎖当たりの修飾数の中央値と比べることにより規定することができる。例えば、試料中の核酸の5-メチルシトシン残基数の中央値が2である場合、2つよりも多くの5-メチルシトシン残基を含む核酸では、この修飾が過剰存在し、5-メチルシトシン残基が1つまたはゼロである核酸では、過少存在する。親和性分離の効果は、結合相には修飾が過剰存在する核酸が富化され、非結合相(つまり、溶液中)には修飾が過少存在する核酸が富化されることである。結合相中の核酸は、その後の処理前に溶出することができる。
【0162】
MeDIPまたはMethylMiner(登録商標)メチル化DNA富化キット(ThermoFisher Scientific)を使用すると、連続溶出を使用して種々のレベルのメチル化を分配することができる。例えば、低メチル化分配画分(メチル化無し)は、核酸集団を、磁気ビーズに付着させたキットのMBDと接触させることにより、メチル化分配画分から分離することができる。ビーズは、メチル化核酸を非メチル化核酸から分離するために使用される。続いて、1つまたは複数の溶出ステップを連続して実施して、異なるレベルのメチル化を有する核酸を溶出させる。例えば、メチル化核酸の第1のセットを、160mMまたはそれよりも高い、例えば少なくとも150mM、少なくとも200mM、300mM、400mM、500mM、600mM、700mM、800mM、900mM、1000mM、または2000mMの塩濃度で溶出させてもよい。そのようなメチル化核酸を溶出させた後、磁気分離をもう一度使用して、より高レベルのメチル化核酸をメチル化のレベルがより低いメチル化核酸から分離する。溶出および磁気分離ステップを繰り返して、低メチル化分配画分(メチル化を含まない核酸が富化されている)、メチル化分配画分(低レベルのメチル化を含む核酸が富化されている)、および高メチル化分配画分(高レベルのメチル化を含む核酸が富化されている)など、種々の分配画分を作出することができる。
【0163】
一部の方法では、親和性分離に基づく分配に使用される作用剤に結合した核酸を洗浄ステップに供する。洗浄ステップでは、親和性作用剤に弱く結合した核酸を洗い流す。そのような核酸は、平均値または中央値に近い程度に修飾を有する核酸(つまり、試料と作用剤との初期接触時に固相に結合したままの核酸と固相に結合しない核酸との間の中間)に富化することができる。
【0164】
親和性分離は、修飾の程度が異なる少なくとも2つ、場合によっては3つまたはそれよりも多くの核酸の分配画分をもたらす。分配画分は依然として別々であるが、少なくとも1つの分配画分、通常は2つまたは3つ(またはそれよりも多く)の分配画分の核酸は、通常はアダプターの成分として提供される核酸タグに連結されており、異なる分配画分の核酸は、1つの分配画分のメンバーを別の分配画分のメンバーから区別する異なるタグを受け取る。同じ分配画分の核酸分子に連結されたタグは、互いに同じであってもよくまたは異なっていてもよい。しかしながら、互いに異なる場合、タグは、それらが付着している分子が特定の分配画分のものであることを識別するために、それらのコードの一部が共通していてもよい。
【0165】
メチル化などの特質に基づく核酸試料の分配に関するさらなる詳細は、WO2018/119452を参照されたい。この文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0166】
一部の実施形態では、分配は、核酸を、メチル結合タンパク質(「MBP」)のメチル結合ドメイン(「MBD」)と接触させることにより実施される。一部のそのような実施形態では、核酸をMBP全体と接触させる。一部の実施形態では、MBDは、5-メチルシトシン(5mC)に結合し、MBPは、MBDを含み、本明細書では、メチル結合タンパク質またはメチル結合ドメインタンパク質と同義的に参照される。一部の実施形態では、MBDは、ビオチンリンカーを介して、Dynabeads(登録商標)M-280ストレプトアビジンなどの常磁性ビーズにカップリングされている。メチル化の程度が異なる画分への分配は、NaCl濃度を増加させて画分を溶出させることにより実施することができる。
【0167】
一部の実施形態では、結合したDNAは、抗体またはMBDを、プロテイナーゼKなどのプロテアーゼと接触させることにより溶出させる。これは、上記で考察されているようにNaClを使用した溶出ステップの代わりにまたはそれらに加えて実施してもよい。
【0168】
本明細書で企図される修飾核酸塩基を認識する作用剤の例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。
(a)MeCP2は、未修飾シトシンよりも5-メチル-シトシンに優先的に結合するタンパク質である。
(b)RPL26、PRP8、およびDNAミスマッチ修復タンパク質MHS6は、未修飾シトシンよりも5-ヒドロキシメチル-シトシンに優先的に結合する。
(c)FOXK1、FOXK2、FOXP1、FOXP4、およびFOXI3は、未修飾シトシンよりも、好ましくは5-ホルミル-シトシンに結合する(Iurlaro et al., Genome Biol. 14: R119 (2013))。
(d)1つもしくは複数のメチル化もしくは修飾核酸塩基またはそれらの変換産物、例えば5mC、5caC、またはDHUに特異的な抗体。
【0169】
一般に、溶出は、1分子当たりのメチル化部位の数など、修飾の数の関数であり、塩濃度が増加すると、より多くのメチル化を有する分子が溶出する。メチル化の程度に基づいてDNAを異なる集団へと溶出するには、NaCl濃度を漸増させた一連の溶出緩衝液を使用することができる。塩濃度は、約100nm~約2500mM NaClの範囲であってもよい。一実施形態では、このプロセスは、3(三)つの分配画分をもたらす。分子を、修飾核酸塩基を認識する作用剤を含む分子を含む第1の塩濃度の溶液と接触させ、分子はストレプトアビジンなどの捕捉部分に付着していてもよい。第1の塩濃度では、作用剤に結合することになる分子の集団もあり、未結合のままであることになる集団もある。未結合集団は、「低メチル化」集団として分離することができる。例えば、低メチル化形態のDNAが富化された第1の分配画分は、低塩濃度、例えば100mMまたは160mMでは未結合のままである分配画分である。中間メチル化DNAが富化された第2の分配画分は、中間塩濃度、例えば100mM~2000mMの濃度を使用して溶出される。これも試料から分離される。高メチル化形態のDNAが富化された第3の分配画分は、高塩濃度、例えば少なくとも約2000mMを使用して溶出される。
【0170】
一部の実施形態では、5-メチルシチジン(5mC)に対して生じたモノクローナル抗体を使用して、メチル化DNAを精製する。一本鎖DNA断片を得るために、DNAを、例えば95℃で変性させる。標準ビーズまたは磁気ビーズにカップリングさせたプロテインG、ならびに抗5mC抗体とのインキュベーションに続く洗浄を使用して、抗体に結合したDNAを免疫沈降する。次いで、そのようなDNAを溶出させることができる。分配画分は、非沈殿DNAおよびビーズから溶出した1つまたは複数の分配画分を含んでいてもよい。
【0171】
一部の実施形態では、DNAの分配画分は、ライブラリー調製の酵素ステップの調製に備えて脱塩および濃縮される。
【0172】
一部の実施形態では、メチル化は、メチル化感受性変換を使用して検出される。そのような変換技法の例としては、未修飾シトシンおよびある特定の修飾シトシン(例えば、5-ホルミルシトシン(fC)または5-カルボキシルシトシン(caC))をウラシルに変換するが、他の修飾シトシン(例えば、5-メチルシトシン、5-ヒドロキシルメチルシトシン)は変換されない亜硫酸水素塩変換を含む。亜硫酸水素塩変換の実施は、配列リードを使用してmCまたはhmCを含む位置を識別することを容易にすることができる。亜硫酸水素塩変換の例示的な説明は、例えば、Moss et al., Nat Commun. 2018; 9: 5068を参照されたい。
【0173】
そのような変換技法の例としては、酸化的亜硫酸水素塩(Ox-BS)変換も挙げられる。Ox-BS変換の実施は、配列リードを使用してmCを含む位置を識別することを容易にすることができる。酸化的亜硫酸水素塩変換の例示的な説明は、例えば、Booth et al., Science 2012; 336: 934-937を参照されたい。
【0174】
そのような変換技法の例としては、Tet支援亜硫酸水素塩(TAB)変換も挙げられる。例えば、Yu et al., Cell 2012; 149: 1368-80に記載のように、β-グルコシルトランスフェラーゼを使用してhmCを保護し(5-グルコシルヒドロキシメチルシトシン(ghmC)を形成する)、次いでmTet1などのTETタンパク質を使用してmCをcaCへと変換し、次いで亜硫酸水素塩処理を使用してCおよびcaCをUへと変換することができるが、ghmCは影響を受けないままである。したがって、TAB変換を使用する場合、第1の核酸塩基は、未修飾のシトシン、fC、caC、mC、または亜硫酸水素塩により影響を受ける他のシトシン形態の1つまたは複数を含み、第2の核酸塩基はhmCを含む。TAB変換の実施は、配列リードを使用してhmCを含む位置を識別することを容易にすることができる。
【0175】
そのような変換技法の例としては、置換ボラン還元剤を用いたTet支援変換も挙げられ、必要に応じて、置換ボラン還元剤は、2-ピコリンボラン、ボランピリジン、tert-ブチルアミンボラン、またはアンモニアボランである。例えば、Liu et al., Nature Biotechnology 2019; 37:424-429(例えば、添付の図1および添付の備考7)を参照されたい。TAP変換の実施は、配列リードを使用して未修飾Cを含む位置を識別することを容易にすることができる。この手順は、上記のLiu et al. 2019にさらに詳細に記載されているTet支援ピリジンボラン配列決定(TAPS)を包含する。
【0176】
代替的に、hmCの保護(例えば、βGTを使用した)を、置換ボラン還元剤によるTet支援変換と組み合わせてもよい。そのようなTAPSβ変換の実施は、配列リードを使用して、未修飾CまたはhmCを含む位置と、一方ではmCを含む位置とを区別することを容易にすることができる。このタイプの変換の例示的な説明は、例えば、Liu et al., Nature Biotechnology 2019; 37:424-429を参照されたい。
【0177】
そのような変換技法の例としては、APOBECカップリングエピジェネティック(ACE)変換も挙げられる。ACE変換の実施は、配列リードを使用して、hmCを含む位置と、mCまたは未修飾Cを含む位置とを区別することを容易にすることができる。ACE変換の例示的な説明は、例えば、Schutsky et al., Nature Biotechnology 2018; 36: 1083-1090を参照されたい。
【0178】
そのような変換技法の例としては、例えばEM-Seqの場合と同様に、核酸塩基の酵素的変換も挙げられる。例えば、www.biorxiv.org/content/10.1101/2019.12.20.884692v1にて入手可能な、Vaisvila R, et al. (2019) EM-seq: Detection of DNA methylation at single base resolution from picograms of DNA. bioRxiv; DOI: 10.1101/2019.12.20.884692を参照されたい。
【0179】
一部の実施形態では、メチル化は、メチル化感受性制限酵素(MSRE)を使用して検出される。例えば、試料の部分を、1またはそれよりも多くのMSREでの消化に供して、非メチル化配列を切断することができる。例示的なMSREとしては、AatII、AccII、AciI、Aor13HI、Aor15HI、BspT104I、BssHII、BstUI、Cfr10I、ClaI、CpoI、Eco52I、HaeII、HapII、HhaI、Hin6I、HpaII、HpyCH4IV、MluI、MspI、NaeI、NotI、NruI、NsbI、PmaCI、Psp1406I、PvuI、SacII、SalI、SmaI、およびSnaBIが挙げられる。一部の実施形態では、少なくとも2つのメチル化感受性ヌクレアーゼが使用される。一部の実施形態では、少なくとも3つのメチル化感受性ヌクレアーゼが使用される。一部の実施形態では、メチル化感受性ヌクレアーゼは、BstUIおよびHpaIIを含む。一部の実施形態では、2つのメチル化感受性ヌクレアーゼは、HhaIおよびAccIIを含む。一部の実施形態では、メチル化感受性ヌクレアーゼは、BstUI、HpaII、およびHin6Iを含む。一部の実施形態では、1つまたは複数のMSREと接触させる試料の部分は、高メチル化DNAを含むか、または本明細書の他所に記載のように得ることができる高メチル化DNA分配画分であるかもしくはそれを含む。
【0180】
一部の実施形態では、DNA断片化は、配列決定されたDNAの断片(例えば、cfDNA)の終点および/または中間点を決定することにより検出される。例えば、断片が腫瘍を起源とするかまたは健常細胞を起源とするかに応じて、断片化パターンに差異が生じる可能性がある。
E.アダプターライゲーションまたは付加;タグ付け
【0181】
一部の実施形態では、本開示の方法は、試料(同じ対象に由来する別々の試料であってもよくまたは同じ試料であってもよい)中のDNAを分析することをさらに含む。そのような方法では、アダプターをDNAに付加してもよい。これは、例えば、プライマーの5’部分にアダプターを提供することにより、増幅手順と同時に行うことができる(PCRを使用する場合、これは、ライブラリー調製PCRまたはLP-PCRと呼ばれる場合がある)。一部の実施形態では、アダプターは、ライゲーションなどの他の手法により付加される。一部のそのような方法では、分配前または捕捉前に、一本鎖DNAへのライゲーションを含んでいてもよいその3’末端へのライゲーションにより、第1のアダプターを核酸に付加する。アダプターは、例えばユニバーサルプライマーおよびDNAポリメラーゼを使用した第二鎖合成のプライミング部位として使用することができる。次いで、第2のアダプターを、今や二本鎖である分子の第二鎖の少なくとも3’末端にライゲートさせることができる。一部の実施形態では、第1のアダプターは、ビオチンなどの親和性タグを含み、第1のアダプターにライゲートした核酸は、ストレプトアビジンなどの親和性タグの結合パートナーを含んでいてもよい固体支持体(例えば、ビーズ)に結合する。関連手順のさらなる考察は、Gansauge et al., Nature Protocols 8:737-748 (2013)を参照されたい。一本鎖核酸と適合性である配列決定ライブラリー調製用の市販キット、例えば、Swift BiosciencesのAccel-NGS(登録商標)Methyl-Seq DNAライブラリーキットが入手可能である。一部の実施形態では、アダプターライゲーション後、核酸が増幅される。
【0182】
好ましくは、アダプターは、タグの組合せの数が、同じ開始地点および終止地点を有する2つの核酸が同じタグの組合せを受け取る低い確率、例えば95、99または99.9%の確率をもたらすような十分な数の異なるタグを含む。アダプターは、同じタグを有するかまたは異なるタグを有するかに関わらず、同じまたは異なるプライマー結合部位を含んでいてもよいが、好ましくは、アダプターは同じプライマー結合部位を含む。
【0183】
一部の実施形態では、アダプターの付着後、核酸は増幅に供される。増幅には、例えば、アダプターのプライマー結合部位を認識するユニバーサルプライマーを使用することができる。
【0184】
一部の実施形態では、アダプターの付着後、DNAを分配し、DNAを、エピジェネティック修飾を有する核酸に優先的に結合する作用剤と接触させることを含む。核酸は、作用剤との結合により、核酸が修飾を有する程度の異なる少なくとも2つの部分試料に分配される。例えば、作用剤が修飾を有する核酸に対して親和性を有する場合、修飾が過剰存在する核酸(集団内の存在中央値と比較して)は作用剤と優先的に結合するが、修飾が過少存在する核酸は結合しないか、または作用剤からより容易に溶出される。次いで、アダプター内のプライマー結合部位に結合するプライマーから核酸を増幅することができる。代わりに、アダプター付着前に分配を実施してもよく、その場合、アダプターは、分子がどの分配画分に存在していたかを識別する成分を含む差次的タグを含んでいてもよい。
【0185】
一部の実施形態では、核酸は、プライマー結合部位およびタグを含むY字形アダプターに両端が連結される。分子が増幅される。
【0186】
DNA分子のタグ付けは、タグをDNA分子に付着または会合させる手順である。そのようなタグは、タグが会合している分子の特徴を示す情報を含む、核酸などの分子であってもよい。例えば、分子は、試料タグ(1つの試料中の分子を別の試料中の分子と区別する)、または分子タグ/分子バーコード/バーコード(異なる分子を互いに区別する(一意的タグ付けシナリオおよび非一意的タグ付けシナリオの両方において)を有してもよい。分配ステップを含む方法の場合、分配タグ(1つの分配画分中の分子を別の分配画分中の分子と区別する)を含んでいてもよい。一部の実施形態では、DNA分子に付加されるアダプターはタグを含む。ある特定の実施形態では、タグは、1つのバーコードまたはバーコードの組合せを含んでいてもよい。本明細書で使用される場合、「バーコード」という用語は、文脈に応じて、特定のヌクレオチド配列を有する核酸分子、またはヌクレオチド配列自体を指す。バーコードは、例えば、10~100個のヌクレオチドを有してもよい。バーコードのコレクションは、特定の目的に応じて、縮重配列を有してもよく、またはある特定のハミング距離を有する配列を有してもよい。そのため、例えば、分子バーコードは、1つのバーコードまたは各々が分子の異なる末端に付着している2つのバーコードの組合せで構成されていてもよい。加えてまたは代替的に、異なる分配画分および/または試料の場合、分子バーコードまたは分子タグの異なるセットを、バーコードが個々の配列により分子タグとしての役目を果たし、バーコードがメンバーであるセットに基づき、バーコードが対応する分配画分および/または試料を識別する役目も果たすように、使用することができる。
【0187】
一部の実施形態では、2つまたはそれよりも多くの分配画分、例えば各分配画分は、差次的にタグ付けされる。タグを使用して、タグ(またはタグ(複数))が特定の分配画分と相関するように、個々のポリヌクレオチド集団分配画分を標識することができる。代替的に、タグは、分配ステップを使用しない実施形態で使用してもよい。一部の実施形態では、単一のタグを使用して、特定の分配画分を標識することができる。一部の実施形態では、複数の異なるタグを使用して、特定の分配画分を標識することができる。特定の分配画分を標識するために複数の異なるタグが使用される実施形態では、1つの分配画分を標識するために使用されるタグのセットは、他の分配画分を標識するために使用されるタグのセットと容易に区別することができる。一部の実施形態では、タグは追加の機能を有してもよく、例えば、タグは、試料供給源をインデックス化するために使用することができるか、または一意的分子識別子として使用することができるか(これは、例えば、Kinde et al., Proc Nat'l Acad Sci USA 108: 9530-9535 (2011)、Kou et al., PLoS ONE,11: e0146638 (2016)にあるように、配列決定エラーを突然変異と区別することにより配列決定データの品質を向上させるために使用することができる)、または例えば米国特許第9,598,731号に記載のような非一意的分子識別子として使用することができる。同様に、一部の実施形態では、タグは追加の機能を有してもよく、例えば、タグは、試料供給源をインデックス化するために使用することができるか、または非一意的分子識別子として使用することができる(これは、配列決定エラーを突然変異と区別することにより配列決定データの品質を向上させるために使用することができる)。
【0188】
一部の実施形態では、分配画分タグ付けは、各分配画分中の分子を分配タグでタグ付けすることを含む。分配画分を再混合し(例えば、必要な配列決定実行数を低減し、不必要なコストを回避するため)、分子を配列決定した後、供給源分配画分を分配タグにより識別する。別の実施形態では、異なる分配画分は、例えば、一対のバーコードで構成される分子タグの異なるセットでタグ付けされる。このように、各分子バーコードは、供給源分配画分を示し、ならびに分配画分内の分子の区別にも有用である。例えば、35個のバーコードの第1セットを使用して第1の分配画分中の分子をタグ付けすることができ、35個のバーコードの第2セットを使用して第2の分配画分中の分子をタグ付けすることができる。
【0189】
一部の実施形態では、分配および分配タグによるタグ付けの後、分子を、単一実行で配列決定するためにプールしてもよい。一部の実施形態では、試料タグを、例えば分配タグの付加およびプール化に続くステップにおいて分子に付加する。試料タグにより、単回の配列決定実行で配列決定を行うために複数の試料から生成された物質をプールすることが容易になり得る。
【0190】
代替的に、一部の実施形態では、分配タグを、試料ならびに分配画分と相関させることができる。簡単な例として、第1のタグは、第1の試料の第1の分配画分を示すことができ、第2のタグは、第1の試料の第2の分配画分を示すことができ、第3のタグは、第2の試料の第1の分配画分を示すことができ、第4のタグは、第2の試料の第2の分配画分を示すことができる。
【0191】
タグは、1つまたは複数の特質に基づいて既に分配された分子に付着させてもよいが、ライブラリー中の最終タグ付き分子は、もはやその特質を有していない可能性がある。例えば、一本鎖DNA分子を分配およびタグ付けすることができるが、ライブラリー中の最終タグ付き分子は二本鎖である可能性が高い。同様に、DNAを、異なるレベルのメチル化に基づく分配に供することできるが、最終ライブラリーでは、そうした分子に由来するタグ付き分子はメチル化されていない可能性がある。したがって、ライブラリー中の分子に付着したタグは、典型的には、最終タグ付き分子が由来する「親分子」の特質を示し、必ずしもタグ付き分子自体の特質を示すわけではない。
【0192】
一例として、バーコード1、2、3、4などを使用して、第1の分配画分中の分子をタグ付けおよび標識する。バーコードA、B、C、Dなどを使用して、第2の分配画分中の分子をタグ付けおよび標識する。バーコードa、b、c、dなどを使用して、第3の分配画分中の分子をタグ付けおよび標識する。差次的にタグ付けされた分配画分を、配列決定前にプールしてもよい。差次的にタグ付けされた分配画分は、別々に配列決定してもよく、または例えばIlluminaシーケンサーの同じフローセル内で同時に一緒に配列決定してもよい。
【0193】
配列決定後、リードの分析は、分配画分ごとのレベルでならびに全DNA集団レベルで実施することができる。タグを使用して、異なる分配画分のリードを選別する。分析は、配列情報、ゲノム座標長、網羅範囲、および/またはコピー数を使用して、遺伝子変異およびエピジェネティック変異(メチル化、クロマチン構造などの1つまたは複数)を決定するためのin silico分析を含んでいてもよい。一部の実施形態では、より高い網羅範囲は、ゲノム領域におけるヌクレオソーム占有率がより高いことと相関する可能性があり、より低い網羅範囲は、ヌクレオソーム占有率がより低いことまたはヌクレオソーム枯渇領域(NDR)と相関する可能性がある。
【0194】
分子タグ付けは、配列リードの起源であるDNA分子を区別することを可能にするタグ付け操作を指す。タグ付け戦略は、一意的タグ付け戦略と非一意的タグ付け戦略とに分けることができる。一意的タグ付けでは、試料中のすべてまたは実質的にすべての分子が異なるタグを有するため、リードを、タグ情報のみに基づいて元の分子に割り当てることができる。そのような方法で使用されるタグは、「一意的タグ」と呼ばれることがある。非一意的タグ付けでは、同じ試料中の異なる分子が同じタグを有し得るため、タグ情報に加えて他の情報を使用して、配列リードを元の分子に割り当てる。そのような情報には、開始座標および終止座標、分子がマッピングされる座標、開始座標単独または終止座標単独などを挙げることができる。そのような方法で使用されるタグは、「非一意的タグ」と呼ばれることがある。したがって、試料中のあらゆる分子を一意的にタグ付けする必要はない。試料内の識別可能なクラス内に分類される分子を一意的にタグ付けするだけで十分である。したがって、異なる識別可能なファミリーの分子は、タグ付き分子の同一性に関する情報を失うことなく、同じタグを有することができる。
【0195】
非一意的タグ付けのある特定の実施形態では、使用される異なるタグの数は、特定の群のすべてのDNA分子が異なるタグを有する可能性が非常に高くなる(例えば、少なくとも99%、少なくとも99.9%、少なくとも99.99%、または少なくとも99.999%)のに十分な数であり得る。バーコードをタグとして使用する場合、およびバーコードを例えばランダムに分子の両末端に付着させる場合、バーコードの組合せが一緒になってタグを構成することができることに留意されたい。そしてこの数は、該当コールに分類される分子の数の関数である。例えば、クラスは、参照ゲノムの同じ開始-終止位置にマッピングされるすべての分子であってもよい。クラスは、特定の遺伝子座、例えば、特定の塩基または特定の領域(例えば、最大で100個の塩基または遺伝子もしくは遺伝子のエクソン)にわたってマッピングされるすべての分子であってもよい。ある特定の実施形態では、クラス内の分子の数zを一意的に識別するために使用される異なるタグの数は、2*z、3*z、4*z、5*z、6*z、7*z、8*z、9*z、10*z、11*z、12*z、13*z、14*z、15*z、16*z、17*z、18*z、19*z、20*z、または100*z(例えば、下限)のいずれか~100,000*z、10,000*z、1000*z、または100*z(例えば、上限)のいずれかであり得る。
【0196】
例えば、約5ng~30ngの無細胞DNAの試料では、およそ3000個の分子が特定のヌクレオチド座標にマッピングされ、任意の開始座標を有する約3~10個の分子が同じ終止座標を共有すると予想される。したがって、約50~約50,000個の異なるタグ(例えば、約6~220個のバーコードの組合せ)は、すべてのそのような分子を一意的にタグ付けするのに十分であり得る。ヌクレオチド座標にわたってマッピングされる3,000個の分子すべてを一意的にタグ付けするには、約100万~約2,000万個の異なるタグが必要になるだろう。
【0197】
一般に、反応における一意的または非一意的タグバーコードの割り当ては、米国特許出願公開第20010053519号、第20030152490号、第20110160078号、および米国特許第6,582,908号、米国特許第7,537,898号、および米国特許第9,598,731号に記載されている方法および系に従う。タグは、試料核酸にランダムに連結されていてもよくまたは非ランダムに連結されていてもよい。
【0198】
一部の実施形態では、タグ付き核酸は、マイクロウェルプレートに負荷した後に配列決定される。マイクロウェルプレートは、96,384個または1536個のマイクロウェルを有してもよい。一部の場合では、それらを、予想される比の一意的タグで、マイクロウェルに導入する。例えば、一意的タグは、1ゲノム試料当たり約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50、100、500、1000、5000、10000、50,000、100,000、500,000、1,000,000、10,000,000、50,000,000、または1,000,000,000個よりも多くの一意的タグが負荷されるように負荷することができる。一部の場合では、一意的タグは、1ゲノム試料当たり約2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50、100、500、1000、5000、10000、50,000、100,000、500,000、1,000,000、10,000,000、50,000,000、または1,000,000,000個未満の一意的タグが負荷されるように負荷することができる。一部の場合では、1試料ゲノム当たりの負荷される一意的タグの平均数は、1ゲノム試料当たり約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50、100、500、1000、5000、10000、50,000、100,000、500,000、1,000,000、10,000,000、50,000,000、または1,000,000,000個未満のまたはそれよりも多くの一意的タグである。
【0199】
好ましい形式では、標的核酸の両末端にライゲートされた20~50個の異なるタグ(例えば、バーコード)が使用される。例えば、35個の異なるタグ(例えば、バーコード)を標的分子の両末端にライゲートして35×35の順列を作出し、これは35個のタグでは1225個に相当する。そのようなタグの数は、同じ開始地点および終止地点を有する異なる分子が、異なる組合せのタグを受け取る確率を高くする(例えば、少なくとも94%、99.5%、99.99%、99.999%)のに十分である。他のバーコード組合せとしては、10~500の任意の数、例えば、約15×15、約35×35、約75×75、約100×100、約250×250、約500×500が挙げられる。
【0200】
一部の場合では、一意的タグは、所定のまたはランダムもしくは半ランダム配列のオリゴヌクレオチドであってもよい。他の場合では、複数のバーコードを使用してもよく、複数のバーコードは必ずしも互いに一意ではない。この例では、バーコードおよびそれがライゲートされ得る配列の組合せが、個々に追跡することができる一意的な配列を作出するように、バーコードを個々の分子にライゲートさせることができる。本明細書に記載のように、配列リードの、始まりの部分(開始部分)および停止(終止)部分との組合せでの配列データ非一意的バーコードの検出は、特定の分子への一意的同一性の割り当てを可能にすることができる。個々の配列リードの長さまたは塩基対数も、そのような分子に一意的同一性を割り当てるために使用することができる。本明細書に記載のように、一意的同一性が割り当てられた一本鎖の核酸に由来する断片は、それにより、親鎖に由来する断片のその後の識別を可能にすることができる。
F.富化/捕捉ステップ;増幅
【0201】
本明細書で開示される方法は、細胞デブリおよび標的分子を含む複合体などの複合体を富化、捕捉、もしくは単離すること、ならびに/またはcfDNA標的領域などのDNAを富化、捕捉、もしくは単離することを含んでいてもよい。一部の実施形態では、捕捉は、複合体または標的分子を、細胞デブリマーカーおよび/もしくはエクソソームマーカーまたは標的分子に特異的な結合分子と接触させること、ならびに/あるいはDNAを標的領域に特異的なプローブと接触させることを含む。富化または捕捉は、当技術分野で公知の任意の好適な手法を使用して、本明細書に記載の任意の試料または部分試料に対して実施することができる。
【0202】
一部の実施形態では、マーカーもしくは標的分子に特異的な結合分子、またはDNA標的領域に特異的なプローブは、それぞれ、標的分子、またはプローブにハイブリダイズしたDNAの富化または捕捉を容易にする捕捉部分を含む。一部の実施形態では、捕捉部分はビオチンである。一部のそのような実施形態では、磁気ビーズなどの固体支持体に付着したストレプトアビジンが、ビオチンとの結合に使用される。一部の実施形態では、標的領域を含まない非特異的に結合したDNAを、捕捉されたDNAから洗い流す。一部の実施形態では、次いでDNAをプローブから解離させ、塩洗浄または別のDNA変性剤を含む緩衝液を使用して固体支持体から溶出させる。一部の実施形態では、プローブは、例えばビオチン-ストレプトアビジン相互作用を破壊することによっても固体支持体から溶出される。一部の実施形態では、捕捉されたDNAは、固体支持体からの溶出後に増幅される。一部のそのような実施形態では、アダプターを含むDNAは、アダプターにアニーリングするPCRプライマーを使用して増幅される。一部の実施形態では、捕捉されたDNAは、固体支持体に付着したままで増幅される。一部のそのような実施形態では、増幅は、アダプター内の配列にアニーリングするPCRプライマー、およびDNAの標的領域にアニーリングするプローブ内の配列にアニーリングするPCRプライマーの使用を含む。
【0203】
一部の実施形態では、本明細書の方法は、エピジェネティックおよび/または配列可変標的領域を含むDNAを富化または捕捉することを含む。そのような領域を、試料のアリコート(例えば、アダプターの付着および増幅を受けた試料)から捕捉してもよいが、メチルシトシンを認識する作用剤を用いてDNAを分配するステップが、試料の別のアリコートに対して実施される。エピジェネティックおよび/または配列可変標的領域を含むDNAの富化または捕捉は、DNAを、標的特異的プローブの第1または第2のセットと接触させることを含んでいてもよい。そのような標的特異的プローブは、上記に示されている実施形態および下記のプローブに関するセクションにあるもの含むがそれらに限定されない、標的特異的プローブのセットについて本明細書に記載されている特徴のいずれかを有してもよい。捕捉は、本明細書で開示される方法で調製される1つまたは複数の部分試料に対して実施してもよい。一部の実施形態では、DNAは、第1の部分試料または第2の部分試料、例えば、第1の部分試料および第2の部分試料から捕捉される。一部の実施形態では、部分試料は、差次的にタグ付けされ(例えば、本明細書に記載のように)、次いで捕捉を受ける前にプールされる。エピジェネティックおよび/または配列可変標的領域を含むDNAを捕捉するための例示的な方法は、例えば、WO2020/160414に見出すことができる。この文献は、これにより参照により本明細書に組み込まれる。
【0204】
捕捉ステップは、一般に、長さ、塩基組成など、プローブの特徴にある程度依存する、特異的な核酸ハイブリダイゼーションに好適な条件を使用して実施することができる。当業者であれば、核酸ハイブリダイゼーションに関する技術分野における一般知識を考慮し、適切な条件に精通しているだろう。一部の実施形態では、標的特異的プローブおよびDNAの複合体が形成される。
【0205】
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、対象から得られるcfDNAの標的領域の複数のセットを捕捉することを含む。標的領域は、それらが腫瘍を起源とするかまたは健常細胞を起源とするかまたはある特定の細胞タイプを起源とするかに応じて差異を含む可能性がある。捕捉ステップでは、cfDNA分子の捕捉セットが生成される。一部の実施形態では、配列可変標的領域セットに対応するcfDNA分子は、エピジェネティック標的領域セットに対応するcfDNA分子よりも、cfDNA分子の捕捉セットにおいてより高い捕捉収量で捕捉される。一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、対象から得られるcfDNAを、標的特異的プローブのセットと接触させることを含み、標的特異的プローブのセットは、エピジェネティック標的領域セットに対応するcfDNAよりも高い捕捉収量で、配列可変標的領域セットに対応するcfDNAを捕捉するように構成されている。捕捉ステップ、捕捉収量、および関連態様の追加の考察は、WO2020/160414を参照されたい。この文献は、あらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれる。
【0206】
配列可変標的領域の分析には、エピジェネティック標的領域の分析に必要であり得るよりも十分な信頼性または正確性で、より深度の深い配列決定が必要となる可能性があるため、エピジェネティック標的領域セットに対応するcfDNAよりも高い捕捉収量で配列可変標的領域セットに対応するcfDNAを捕捉することが有益であり得る。断片化パターン(例えば、転写開始部位またはCTCF結合部位の破損を調査するため)または断片存在量(例えば、高メチル化分配画分および低メチル化分配画分における)を決定するのに必要なデータ量は、一般に、がん関連配列突然変異の存在または非存在を決定するのに必要なデータ量よりも少ない。異なる収量で標的領域セットを捕捉することにより、同じ配列決定実行で(例えば、プールした混合物を使用して、および/または同じ配列決定セル内で)異なる配列決定深度まで標的領域を配列決定することが容易になり得る。
【0207】
一部の実施形態では、DNAが増幅される。一部の実施形態では、増幅は、捕捉ステップの前に実施される。一部の実施形態では、増幅は、捕捉ステップの後で実施される。一部の実施形態では、増幅は、捕捉ステップの前および後で実施される。種々の実施形態では、本方法は、本明細書の考察と一致するように、例えば、エピジェネティック標的領域セットおよび配列可変標的領域セットについて異なる度合いの配列決定深度まで、捕捉されたDNAを配列決定することをさらに含む。
【0208】
一部の実施形態では、捕捉ステップは、配列可変標的領域セットに対するプローブおよびエピジェネティック標的領域セットに対するプローブを用いて同じ容器にて同時に実施され、例えば、配列可変標的領域セットおよびエピジェネティック標的領域セットに対するプローブは同じ組成である。この手法は、比較的簡素なワークフローを提供する。
【0209】
一部の実施形態では、アダプターは、本明細書に記載のように、DNAに含まれている。一部の実施形態では、タグは、バーコードであってもよくまたはバーコードを含んでいてもよく、DNAに含まれている。一部の実施形態では、そのようなタグは、アダプターに含まれている。タグは、核酸の起源の識別を容易にすることができる。例えば、バーコードを使用すると、並列配列決定のために複数の試料をプールした後で、DNAの由来元となった起源(例えば、対象)の特定が可能になり得る。これは、例えば本明細書に記載のように、例えばプライマーの5’部分にバーコードを提供することにより、増幅手順と同時に行うことができる。一部の実施形態では、アダプターおよびタグ/バーコードは、同じプライマーまたはプライマーセットにより提供される。例えば、バーコードは、アダプターの3’およびプライマーの標的ハイブリダイゼーション部分の5’に位置してもよい。代替的に、バーコードは、必要に応じて、同じライゲーション基質のアダプターと共に、ライゲーションなどの他の手法により付加することができる。
【0210】
増幅、タグ、およびバーコードに関する追加の詳細は、本明細書で考察されており、それらは、そうした実施形態のいずれかと共に実行可能な程度に組み合わせることができる。
G.捕捉セット;標的領域
【0211】
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法を使用して捕捉または富化された核酸は、DNAの1つまたは複数の捕捉セットなどの捕捉DNAを含む。一部の実施形態では、捕捉DNAは、異なる免疫細胞タイプにおいて差次的にメチル化されている標的領域を含む。一部の実施形態では、免疫細胞タイプは、分化の異なる段階にある活性化リンパ球およびナイーブリンパ球または骨髄細胞などの、希少なまたは密接に関連した免疫細胞タイプを含む。
【0212】
一部の実施形態では、試料または第1の部分試料から捕捉された捕捉エピジェネティック標的領域セットは、高メチル化可変標的領域を含む。一部の実施形態では、高メチル化可変標的領域は、1つの細胞タイプにおいて、または1つの免疫細胞タイプにおいて、またはクラスター内の1つの免疫細胞タイプにおいて、差次的または排他的に高メチル化されている。一部の実施形態では、高メチル化可変標的領域は、1つの細胞タイプにおいて、または1つの免疫細胞タイプにおいて、またはクラスター内の1つの免疫細胞タイプにおいて顕著により多いかまたは排他的に存在する程度に高メチル化されている。そのような高メチル化可変標的領域は、他の細胞タイプにおいて高メチル化されていてもよいが、上記の1つの細胞タイプで観察される程ではない。一部の実施形態では、高メチル化可変標的領域は、少なくとも1つの他の組織タイプよりも健常cfDNAにおいてより低いメチル化を示す。
【0213】
一部の実施形態では、試料または第2の部分試料から捕捉された捕捉エピジェネティック標的領域セットは、低メチル化可変標的領域を含む。一部の実施形態では、低メチル化可変標的領域は、1つの細胞タイプにおいて、または1つの免疫細胞タイプにおいて、またはクラスター内の1つの免疫細胞タイプにおいて、排他的に低メチル化されている。一部の実施形態では、低メチル化可変標的領域は、1つの細胞タイプにおいて、または1つの免疫細胞タイプにおいて、またはクラスター内の1つの免疫細胞タイプにおいて排他的に存在する程度に低メチル化されている。そのような低メチル化可変標的領域は、他の細胞タイプにおいて低メチル化されていてもよいが、上記の1つの細胞タイプで観察される程ではない。一部の実施形態では、低メチル化可変標的領域は、少なくとも1つの他の組織タイプよりも健常cfDNAにおいてより高いメチル化を示す。
【0214】
いかなる特定の理論にも束縛されることは望まないが、がんを有する個体では、増殖中のまたは活性化された免疫細胞および/またはがん細胞は、それぞれ、健常個体の免疫細胞および/または同じ組織タイプの健常細胞よりも多くのDNAを血流へと排出する可能性がある。そのため、cfDNAの起源である細胞タイプおよび/または組織の分布は、発がんに際して変化する可能性がある。したがって、高メチル化および/または低メチル化の変動は、疾患の指標となり得る。例えば、分配ステップ後の部分試料中の高メチル化可変標的領域および/または低メチル化可変標的領域のレベルの増加は、がんの存在(または対象の病歴に応じて再発)の指標であり得る。
【0215】
免疫細胞タイプを含むがそれらに限定されない種々の細胞タイプを区別するために有用な例示的な高メチル化可変標的領域および低メチル化可変標的領域は、例えば、Scott, C.A., Duryea, J.D., MacKay, H. et al., "Identification of cell type-specific methylation signals in bulk whole genome bisulfite sequencing data," Genome Biol 21, 156 (2020) (doi.org/10.1186/s13059-020-02065-5)に記載のように、全ゲノム亜硫酸水素塩配列決定により、種々の細胞タイプから得られるDNAを分析することにより識別されている。全ゲノム亜硫酸水素塩配列データは、Blueprintコンソーシアムから入手可能であり、インターネットのdcc.blueprint-epigenome.euにて入手可能である。
【0216】
一部の実施形態では、第1および第2の捕捉標的領域セットは、例えば、WO2020/160414に記載のように、それぞれ、配列可変標的領域セットに対応するDNAおよびエピジェネティック標的領域セットに対応するDNAを含む。第1および第2の捕捉セットを混合して、混合捕捉セットを提供してもよい。配列可変標的領域セットおよびエピジェネティック標的領域セットは、その全体が参照により本明細書に組み込まれるWO2020/160414においてそのようなセットに関して記載されている特徴のいずれかを有してもよい。一部の実施形態では、エピジェネティック標的領域セットは、高メチル化可変標的領域セットを含む。一部の実施形態では、エピジェネティック標的領域セットは、低メチル化可変標的領域セットを含む。一部の実施形態では、エピジェネティック標的領域セットは、CTCF結合領域を含む。一部の実施形態では、エピジェネティック標的領域セットは、断片化可変標的領域を含む。一部の実施形態では、エピジェネティック標的領域セットは、転写開始部位を含む。一部の実施形態では、エピジェネティック標的領域セットは、がんにおいて局所増幅を示す可能性のある領域、例えば、AR、BRAF、CCND1、CCND2、CCNE1、CDK4、CDK6、EGFR、ERBB2、FGFR1、FGFR2、KIT、KRAS、MET、MYC、PDGFRA、PIK3CA、およびRAF1の1つまたは複数を含む。例えば、一部の実施形態では、エピジェネティック標的領域セットは、上述の標的の少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、または18個を含む。
【0217】
一部の実施形態では、配列可変標的領域セットは、がんにおいて体細胞突然変異を起こすことが公知である複数の領域を含む。一部の態様では、配列可変標的領域セットは、がんを有する対象の決定された割合が、パネル中の1つまたは複数の異なる遺伝子またはゲノム領域において遺伝子変異体または腫瘍マーカーを呈するように選択された複数の異なる遺伝子またはゲノム領域(「パネル」)を標的とする。パネルは、配列決定のための領域を一定数の塩基対に制限するように選択することができる。パネルは、例えば、本明細書の他所に記載のようにプローブの親和性および/または量を調整することにより、所望量のDNAを配列決定するように選択してもよい。パネルは、所望の配列リード深度を達成するようにさらに選択してもよい。パネルは、配列決定された塩基対の量に対して、所望の配列リード深度または配列リード網羅範囲を達成するように選択してもよい。パネルは、試料中の1つまたは複数の遺伝子変異体を検出するための理論的感度、理論的特異度、および/または理論的正確性を達成するように選択してもよい。
【0218】
領域のパネルを検出するためのプローブとしては、目的のゲノム領域(ホットスポット領域)を検出するためのプローブを挙げることができる。プローブの設計にはクロマチン構造に関する情報を考慮してもよく、および/またはプローブは、特定の部位(例えば、KRASコドン12および13)が捕捉され得る可能性を最大化するように設計してもよく、ヌクレオソーム結合パターンおよびGC配列組成により影響を受けるcfDNA網羅範囲および断片サイズ変異の分析に基づき捕捉を最適化するように設計してもよい。また、本明細書で使用される領域は、ヌクレオソーム位置およびGCモデルに基づき最適化された非ホットスポット領域を含んでいてもよい。
【0219】
目的のゲノム位置のリストの例は、WO2020/160414の表3および表4に見出すことができる。一部の実施形態では、本開示の方法で使用される配列可変標的領域セットは、WO2020/160414の表3の少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも55、少なくとも60、少なくとも65、または70個の遺伝子の少なくとも部分を含む。一部の実施形態では、本開示の方法で使用される配列可変標的領域セットは、WO2020/160414の表4の少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも55、少なくとも60、少なくとも65、少なくとも70、または73個の遺伝子の少なくとも部分を含む。加えてまたは代替的に、好適な標的領域セットは文献から入手可能である。例えば、Gale et al., PLoS One 13: e0194630 (2018)は参照により本明細書に組み込まれており、この文献には、配列変異標的領域セットの一部またはすべてとして使用することができる35個のがん関連遺伝子標的のパネルが記載されている。こうした35個の標的は、AKT1、ALK、BRAF、CCND1、CDK2A、CTNNB1、EGFR、ERBB2、ESR1、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FOXL2、GATA3、GNA11、GNAQ、GNAS、HRAS、IDH1、IDH2、KIT、KRAS、MED12、MET、MYC、NFE2L2、NRAS、PDGFRA、PIK3CA、PPP2R1A、PTEN、RET、STK11、TP53、およびU2AF1である。
【0220】
一部の実施形態では、配列可変標的領域セットは、上記およびWO2020/160414の表3および表4に列挙されているがん関連遺伝子など、少なくとも10、20、30、または35個のがん関連遺伝子の標的領域を含む。
H.配列決定
【0221】
一般に、アダプターによりフランキングされている核酸を含む、試料タンパク質および/または核酸は、事前の増幅の有無に関わらず、配列決定に供することができる。配列決定法としては、例えば、エドマン分解に基づくタンパク質配列決定法、質量分析に基づくタンパク質配列決定法、サンガー配列決定法、ハイスループット配列決定法、ピロシーケンス法、合成による配列決定法、単一分子配列決定法、ナノポア配列決定法、半導体配列決定法、ライゲーションによる配列決定法、ハイブリダイゼーションによる配列決定法、デジタル遺伝子発現法(Helicos)、次世代配列決定法(NGS)、合成による単一分子配列決定法(SMSS)(Helicos)、超並列配列決定法、クローン単一分子アレイ法(Solexa)、ショットガン配列決定法、Ion Torrent、Oxford Nanopore、Roche Genia、Maxim-Gilbert配列決定法、プライマーウォーキング法、およびPacBio、SOLiD、Ion Torrent、またはNanoporeプラットフォームを使用した配列決定法が挙げられる。
【0222】
一部の実施形態では、配列決定法は、未修飾および修飾核酸塩基を検出および/または区別することを含む。例えば、単一分子リアルタイム(SMRT)配列決定法は、例えば、5-メチルシトシンおよび5-ヒドロキシメチルシトシンならびに未修飾シトシンの直接検出を容易にする。例えば、Schatz., Nature Methods. 14(4): 347-348 (2017)およびUS9,150,918を参照されたい。配列決定反応は、複数のレーン、複数のチャネル、複数のウェル、または複数の試料セットを実質的に同時に処理する他の手段であってもよい、様々な試料処理ユニットで実施することができる。また、試料処理ユニットは、複数の実行を同時に処理することができるように複数の試料チャンバーを含んでいてもよい。
【0223】
配列決定反応は、がんまたは他の疾患のマーカーを含むことが既知である核酸など、1つまたは複数の形態の核酸に対して実施することができる。配列決定反応は、試料中に存在する任意の核酸断片に対して実施することもできる。一部の実施形態では、ゲノムの配列網羅範囲は、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、99.9%、または100%未満であってもよい。一部の実施形態では、配列決定反応は、ゲノムの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、または80%の配列網羅範囲を提供することができる。配列網羅範囲は、少なくとも5、10、20、70、100、200、または500個の異なる遺伝子、または最大で5000、2500、1000、500、または100個の異なる遺伝子に対して実施することができる。
【0224】
同時配列決定反応は、マルチプレックス配列決定法を使用して実施することができる。一部の場合では、無細胞核酸は、少なくとも1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、50000、100,000回の配列決定反応を用いて配列決定してもよい。他の場合では、無細胞核酸は、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、50000、100,000回未満の配列決定反応を用いて配列決定してもよい。配列決定反応は、逐次的に実施してもよくまたは同時に実施してもよい。その後のデータ分析は、配列決定反応のすべてまたは一部に対して実施してもよい。一部の場合では、データ分析は、少なくとも1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、50000、100,000回の配列決定反応に対して実施してもよい。他の場合では、データ分析は、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、50000、100,000回未満の配列決定反応に対して実施してもよい。例示的なリード深度は、1遺伝子座(塩基)当たり1000~50000個のリードである。
III.ある特定の本開示の方法の追加特徴
A.試料
【0225】
試料は、対象から単離された任意の生物学的試料であってもよい。試料は、身体試料であってもよい。試料としては、既知または疑わしい固形腫瘍、全血、血小板、血清、血漿、便、赤血球、白血球細胞または白血球、内皮細胞、組織生検、脳脊髄液 滑液、リンパ液、腹水、間質液または細胞外液、細胞間の空間にある流体、歯肉溝滲出液、骨髄、胸水、胸膜液、脳脊髄液、唾液、粘液、痰、精液、汗、および尿などの身体組織または流体を挙げることができる。試料は、好ましくは、体液、特に血液およびその画分、脳脊髄液、胸膜液、唾液、痰、または尿である。試料は、対象から単離された元の形態であってもよく、あるいは細胞などの成分を除去もしくは追加するための、または1つの成分を別の成分と比べて富化するためのさらなる処理に供されていてもよい。したがって、分析のための好ましい体液は、無細胞核酸を含む血漿または血清である。
【0226】
一部の実施形態では、核酸の集団は、新生物、腫瘍、前がん、もしくはがんを有することが疑われる対象、または新生物、腫瘍、前がん、もしくはがんと以前に診断された対象に由来する血清、血漿、または血液試料から得られる。集団は、様々なレベルの配列変異、エピジェネティック変異、および/または複製後修飾もしくは転写後修飾を有する核酸を含む。複製後修飾としては、特に核酸塩基の5位におけるシトシンの修飾、例えば、5-メチルシトシン、5-ヒドロキシメチルシトシン、5-ホルミルシトシン、および5-カルボキシルシトシンが挙げられる。
【0227】
試料は、対象から単離または得られ、試料分析の現場へと輸送することができる。試料は、望ましい温度、例えば、室温、4℃、-20℃、および/または-80℃で保存および発送することができる。試料は、試料分析の現場で対象から単離または得ることができる。対象は、ヒト、哺乳動物、動物、伴侶動物、介助動物、またはペットであってもよい。対象は、がん、前がん、感染症、移植拒絶反応、または免疫系の変化に関する他の疾患もしくは障害を有する可能性がある。対象は、がんも検出可能ながんの症状も有していない可能性がある。対象は、1つまたは複数のがん療法、例えば、化学療法、抗体、ワクチン、または生物製剤のいずれか1つまたは複数で処置されていてもよい。対象は、寛解状態にあってもよい。対象は、がんまたは任意のがん関連遺伝子突然変異/障害に罹り易いと診断されていてもよくまたはされていなくてもよい。
【0228】
一部の実施形態では、試料は血漿を含む。得られる血漿の体積は、配列決定された領域の所望のリード深度に依存する可能性がある。例示的な体積は、0.4~40ml、5~20ml、10~20mlである。例えば、体積は、0.5mL、1mL、5mL 10mL、20mL、30mL、または40mLであってもよい。採取される血漿の体積は、5~20mLであってもよい。
B.捕捉部分
【0229】
上記で考察されているように、試料中のタンパク質および/または核酸などの分子は、標的分子または標的領域を有する分子が捕捉および分析される捕捉ステップに供してもよい。標的捕捉は、ビオチンなどの捕捉部分、およびストレプトアビジンなどの、捕捉部分に結合する第2の部分または結合パートナーで標識されたオリゴヌクレオチドの使用を含んでいてもよい。一部の実施形態では、捕捉部分および結合パートナーは、本明細書の他所で考察されているように、それぞれ配列可変標的領域セットおよびエピジェネティック標的領域セットの捕捉収量など、標的領域の異なるセットに関してより高い捕捉収量およびより低い捕捉収量を有してもよい。捕捉部分を含む方法は、例えば、2017年12月26日に発行された米国特許第9,850,523号にさらに記載されている。この文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0230】
捕捉部分としては、限定ではないが、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、特定のヌクレオチド配列を含む核酸、抗体により認識されるハプテン、および磁気誘引性粒子が挙げられる。抽出部分は、ビオチン/ストレプトアビジンまたはハプテン/抗体などの結合対のメンバーであってもよい。一部の実施形態では、分析物に付着する捕捉部分は、磁気誘引性粒子または遠心分離により沈降させることができる大型粒子などの分離可能部分に付着するその結合対により捕捉される。捕捉部分は、捕捉部分を有する核酸と捕捉部分を欠如する核酸との親和性分離を可能にする任意のタイプの分子であってもよい。例示的な捕捉部分は、固相に連結されているかもしくは連結可能なストレプトアビジンに結合することにより親和性分離を可能にするビオチン、または固相に連結されているかもしくは連結可能な相補的オリゴヌクレオチドに結合することにより親和性分離を可能にするオリゴヌクレオチドである。
C.コンピュータシステム
【0231】
本開示の方法は、コンピュータシステムを使用してまたはその支援を受けて実施することができる。図2は、本開示の方法を実施するようにプログラムまたは別様に構成されたコンピュータシステム201を示す。コンピュータシステム201は、試料調製、配列決定、および/または分析の種々の局面を制御することができる。一部の例では、コンピュータシステム201は、例えば本明細書で開示される方法のいずれかに従って、試料調製、および(該当する場合は)核酸配列決定することを含む試料分析を実施するように構成されている。
【0232】
コンピュータシステム201は、中央処理装置(CPU、本明細書では「プロセッサ」および「コンピュータプロセッサ」ともいう)205を含み、これは、シングルコアもしくはマルチコアプロセッサであってもよく、または並列処理用の複数のプロセッサであってもよい。また、コンピュータシステム201は、メモリまたはメモリ位置210(例えば、ランダムアクセスメモリ、読み取り専用メモリ、フラッシュメモリ)、電子記憶装置215(例えば、ハードディスク)、1つまたは複数の他のシステムとの通信のための通信インターフェース220(例えば、ネットワークアダプタ)、およびキャッシュ、他のメモリ、データ記憶装置、および/または電子ディスプレイアダプタなどの周辺デバイス225を含む。メモリ210、記憶装置215、インターフェース220、および周辺デバイス225は、マザーボードなどの通信ネットワークまたはバス(実線)を介してCPU205と通信する。記憶装置215は、データを記憶するためのデータ記憶装置(またはデータリポジトリ)であってもよい。コンピュータシステム201は、通信インターフェース220の支援を受けてコンピュータネットワーク230に動作可能に接続することができる。コンピュータネットワーク230は、インターネット、インターネットおよび/もしくはエクストラネット、またはインターネットと通信するイントラネットおよび/もしくはエクストラネットであってもよい。コンピュータネットワーク230は、一部の場合では、電気通信ネットワークおよび/またはデータネットワークである。コンピュータネットワーク230は、クラウドコンピューティングなどの分散コンピューティングを可能にすることができる1つまたは複数のコンピュータサーバを含んでいてもよい。コンピュータネットワーク230は、一部の場合では、コンピュータシステム201の支援を受けて、コンピュータシステム201に接続されたデバイスがクライアントまたはサーバとして動作することを可能にすることができるピアツーピアネットワークを実装してもよい。
【0233】
CPU205は、プログラムまたはソフトウェアで具現化することができる機械可読命令のシーケンスを実行することができる。命令は、メモリ210などのメモリ位置に記憶されていてもよい。CPU205により実施される動作の例としては、フェッチ、デコード、実行、およびライトバックを挙げることができる。
【0234】
記憶装置215は、ドライバ、ライブラリー、および保存されたプログラムなどのファイルを記憶することができる。記憶装置215は、ユーザにより生成されたプログラムおよび記録されたセッション、ならびにプログラムに関連付けられる出力(複数可)を記憶することができる。記憶装置215は、ユーザデータ、例えば、ユーザ選択およびユーザプログラムを記憶することができる。コンピュータシステム201は、一部の場合では、イントラネットまたはインターネットを介してコンピュータシステム201と通信するリモートサーバに位置するなど、コンピュータシステム201の外部にある1つまたは複数の追加のデータ記憶装置を含んでいてもよい。データは、例えば、通信ネットワークまたは物理的データ転送を使用して(例えば、ハードドライブ、サムドライブ、または他のデータ記憶機構を使用して)、1つの場所から別の場所に転送することができる。
【0235】
コンピュータシステム201は、ネットワーク230を介して1つまたは複数のリモートコンピュータシステムと通信することができる。実施形態では、コンピュータシステム201は、ユーザ(例えば、オペレータ)のリモートコンピュータシステムと通信することができる。リモートコンピュータシステムの例としては、パーソナルコンピュータ(例えば、ポータブルPC)、スレートまたはタブレットPC(例えば、Apple(登録商標)iPad(登録商標)、Samsung(登録商標)Galaxy Tab)、電話、スマートフォン(例えば、Apple(登録商標)iPhone(登録商標)、Android(登録商標)対応デバイス、Blackberry(登録商標))、または携帯情報端末が挙げられる。ユーザは、ネットワーク230を介してコンピュータシステム201にアクセスすることができる。
【0236】
本明細書に記載の方法は、例えば、メモリ210または電子記憶装置215など、コンピュータシステム201の電子記憶場所に記憶されている機械(例えばコンピュータプロセッサ)実行可能コードにより実施することができる。機械実行可能コードまたは機械可読コードは、ソフトウェアの形態で提供することができる。使用中、プロセッサ205はコードを実行することができる。一部の場合では、コードは、記憶装置215から取り出され、プロセッサ205が直ちにアクセスすることができるようにメモリ210に記憶されてもよい。一部の場合では、電子記憶装置215は除外することができ、機械実行可能命令は、メモリ210に記憶される。
【0237】
一態様では、本開示は、少なくとも1つの電子プロセッサにより実行されると、本明細書に記載される方法の少なくとも部分を実施するコンピュータ実行可能命令を含む非一過性コンピュータ可読媒体を提供する。例えば、この方法は、対象から試料を収集し、必要に応じて試料を分画すること;試料またはその部分試料を、少なくとも1つの細胞デブリマーカー結合分子と接触させること;細胞デブリマーカー結合分子を含む複合体を捕捉するか、または複合体に会合している標的分子を直接検出すること;標的分子のレベル、対象ががんまたは他の疾患を有する可能性、および/またはがんもしくは他の疾患の適切な処置を検出および識別することを含んでいてもよい。
【0238】
コードは、コードを実行するように適合したプロセッサを有する機械で使用するために事前コンパイルおよび構成されていてもよく、または実行時にコンパイルされてもよい。コードは、事前コンパイル様式または同時コンパイル様式でコードを実行することができるように選択することができるプログラミング言語で提供することできる。
【0239】
コンピュータシステム201など、本明細書で提供されるシステムおよび方法の態様は、プログラミングで具現化することができる。この技術の種々の態様は、典型的には、あるタイプの機械可読媒体で搬送または具現化されている機械(またはプロセッサ)実行可能コードおよび/または関連データの形態の「製品」または「物品」であると考えることができる。機械実行可能コードは、メモリ(例えば、読み取り専用メモリ、ランダムアクセスメモリ、フラッシュメモリ)またはハードディスクなどの電子記憶装置に記憶させることができる。「記憶」型媒体としては、コンピュータもしくはプロセッサなどの有形メモリ、またはソフトウェアプログラミングのために任意の時点で非一過性記憶を提供することができる種々の半導体メモリ、テープドライブ、およびディスクドライブなどの、それらの関連モジュールのいずれかまたはすべてを挙げることができる。
【0240】
ソフトウェアのすべてまたは部分は、インターネットまたは種々の他の電気通信ネットワークを介して随時通信することができる。そのような通信は、例えば、1つのコンピュータまたはプロセッサから別のコンピュータまたはプロセッサへと、例えば、管理サーバまたはホストコンピュータからアプリケーションサーバのコンピュータプラットフォームへとソフトウェアをロードすることを可能にすることができる。したがって、ソフトウェアエレメントを保持することができる別のタイプの媒体としては、有線および光地上回線ネットワークを介して、ならびに種々の無線リンクを通じてローカルデバイス間の物理的インターフェイス間で使用されるものなど、光、電気、および電磁波が挙げられる。有線もしくは無線リンクまたは光リンクなどの、そのような波動を伝送する物理的エレメントも、ソフトウェアを保持する媒体であるとみなすことができる。本明細書で使用される場合、非一過性有形「記憶」媒体に限定されない限り、コンピュータまたは機械「可読媒体」などの用語は、プロセッサに実行のための命令を提供することに関与するあらゆる媒体を指す。
【0241】
したがって、コンピュータ実行可能コードなどの機械可読媒体は、有形記憶媒体、搬送波媒体、または物理的伝送媒体を含むがこれらに限定されない多くの形態をとることができる。不揮発性記憶媒体としては、例えば、図面に示されている、データベースなどを実装するために使用することができるものなど、任意のコンピュータ(複数可)などの記憶デバイスのいずれかなどの、光ディスクまたは磁気ディスクが挙げられる。揮発性記憶媒体としては、そのようなコンピュータプラットフォームのメインメモリなどのダイナミックメモリが挙げられる。有形伝送媒体としては、同軸ケーブル;コンピュータシステム内のバスを構成する有線を含む、銅線および光ファイバーが挙げられる。搬送波伝送媒体は、無線周波数(RF)および赤外線(IR)データ通信中に発生するものなど、電気信号もしくは電磁信号、または音響波または光波の形態をとってもよい。したがって、コンピュータ可読媒体の一般的な形態としては、例えば、フロッピーディスク(登録商標)、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、任意の他の磁気媒体、CD-ROM、DVDもしくはDVD-ROM、任意の他の光学媒体、パンチカード、紙テープ、穴のパターンを有する任意の他の物理記憶媒体、RAM、ROM、PROMおよびEPROM、フラッシュ-EPROM、任意の他のメモリチップもしくはカートリッジ、データもしくは命令を運ぶ搬送波、そのような搬送波を運ぶケーブルもしくはリンク、またはコンピュータがプログラミングコードおよび/もしくはデータを読み取ることができる任意の他の媒体が挙げられる。こうした形態のコンピュータ可読媒体の多くは、1つまたは複数の命令の1つまたは複数のシーケンスを、実行のためにプロセッサに搬送することに関与することができる。
【0242】
コンピュータシステム201は、例えば、試料分析の1つまたは複数の結果を提供するためのユーザインターフェース(UI)を備える電子ディスプレイを含むかまたはそれと通信することができる。UIの例としては、限定ではないが、グラフィカルユーザインターフェイス(GUI)およびウェブベースユーザインターフェイスが挙げられる。
【0243】
コンピュータシステムおよびネットワーク、データベース、ならびにコンピュータプログラム製品に関する追加の詳細は、例えば、Peterson, Computer Networks: A Systems Approach, Morgan Kaufmann, 5th Ed. (2011)、Kurose, Computer Networking: A Top-Down Approach, Pearson, 7th Ed. (2016)、Elmasri, Fundamentals of Database Systems, Addison Wesley, 6th Ed. (2010)、Coronel, Database Systems: Design, Implementation, & Management, Cengage Learning, 11th Ed. (2014)、Tucker, Programming Languages, McGraw-Hill Science/Engineering/Math, 2nd Ed. (2006)、およびRhoton, Cloud Computing Architected: Solution Design Handbook, Recursive Press (2011)にも提供されている。こうした文献の各々は、その全体が参照によりここに組み込まれる。
D.応用
1.がんおよび他の疾患
【0244】
本方法は、対象における状態、特にがんまたは前がんの存在を診断し、状態を特徴付け(例えば、がんを病期分類するかまたはがんの不均質性を決定し)、状態の処置に対する応答をモニターし、状態の発症または状態のその後の経過の予後リスクを達成するために使用することができる。本開示は、特定の処置選択肢の有効性を決定する際にも有用であり得る。処置が成功すると、より多くのがんが死滅し、細胞デブリを排出し得るため、処置選択肢の成功は、対象の血液中で検出される標的分子の量、コピー数変異、または希少突然変異が増加する可能性がある。他の例では、これは生じない可能性がある。別の例では、ある特定の処置選択肢は、時間の経過と共にがんのプロファイル(例えば、細胞デブリ会合タンパク質の、および/または遺伝子プロファイル)と相関する可能性がある。この相関性は、療法を選択する際に有用であり得る。
【0245】
一部の実施形態では、本方法は、がんのスクリーニングに、またはがんをスクリーニングするための方法に使用される。例えば、試料は、以前にがんと診断されていない対象に由来してもよい。一部の実施形態では、対象は、がんを有していてもよくまたは有していなくてもよい。一部の実施形態では、対象は、早期がんを有していてもよくまたは有していなくてもよい。一部の実施形態では、対象は、タバコ使用(例えば、喫煙)、体重過剰もしくは肥満、高い体格指数(BMI)を有すること、高齢であること、栄養不良、高アルコール消費、またはがんの家族歴など、がんの1つまたは複数のリスク因子を有する。
【0246】
一部の実施形態では、対象は、例えば、少なくとも1、5、10、または15年間、タバコを使用している。一部の実施形態では、対象は、高いBMI、例えば、25もしくはそれよりも高い、26もしくはそれよりも高い、27もしくはそれよりも高い、28もしくはそれよりも高い、29もしくはそれよりも高い、または30もしくはそれよりも高いBMIを有する。一部の実施形態では、対象は、少なくとも40、45、50、55、60、65、70、75、または80歳である。一部の実施形態では、対象は、栄養不良であり、例えば、赤身肉および/または加工肉、トランス脂肪、飽和脂肪、および精製糖の1つまたは複数の消費量が多く、ならびに/または果物および野菜、複合炭水化物、および/もしくは不飽和脂肪の消費量が少ない。高消費量および低消費量は、例えば、それぞれ、www.dietaryguidelines.gov/sites/default/files/2021-03/Dietary_Guidelines_for_Americans-2020-2025.pdfにて入手可能なDietary Guidelines for Americans 2020-2025の推奨値を超えるかまたは下回るかで規定することができる。一部の実施形態では、対象は、アルコール消費量が多く、例えば、1日当たり平均で少なくとも3、4、または5杯のドリンクを飲む(ドリンクは、約1オンスまたは30mLの80プルーフの蒸留酒または同等物である)。一部の実施形態では、対象は、がんの家族歴を有し、例えば、少なくとも1人、2人、または3人の血縁親族が以前にがんと診断されていた。一部の実施形態では、親族は、少なくとも三親等親族(例えば、曽祖父母、大叔母または叔父、いとこ)、少なくとも二親等親族(例えば、祖父母、叔母もしくは叔父、または異母兄弟)、または一親等親族(例えば、親または実兄弟)である。
【0247】
加えて、がんが処置後に寛解していることが観察された場合、本発明の方法を使用して、残留疾患または疾患の再発をモニターすることができる。
【0248】
一部の実施形態では、本明細書で開示される方法および系は、1つまたは複数の目的のタンパク質が存在することおよび/または核酸変異体を体細胞起源であるかもしくは生殖系列起源であるかに分類することに基づき、患者の所与の疾患または状態を処置するための個別化または標的化療法を識別するために使用することができる。典型的には、検討されている疾患は、がんの一タイプである。そのようながんの非限定的な例としては、以下のものが挙げられる:胆道がん、膀胱がん、移行細胞癌、尿路上皮癌、脳がん、神経膠腫、星状細胞腫、乳癌、化生癌、子宮頸がん、子宮頸部扁平上皮癌、直腸がん、結腸直腸癌、結腸がん、遺伝性非ポリポーシス結腸直腸がん、結腸直腸腺癌、消化管間質腫瘍(GIST)、子宮内膜癌、子宮内膜間質肉腫、食道がん、食道扁平上皮癌、食道腺癌、眼黒色腫、ブドウ膜黒色腫、胆嚢癌、胆嚢腺癌、腎細胞癌、明細胞腎細胞癌、移行細胞癌、尿路上皮癌、ウィルムス腫瘍、白血病、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、肝がん、肝癌、肝細胞腫、肝細胞癌、胆管癌、肝芽腫、肺がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、中皮腫、B細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、前駆体Tリンパ芽球性リンパ腫/白血病、末梢性T細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、上咽頭癌(NPC)、神経芽腫、中咽頭がん、口腔扁平上皮癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓がん、膵管腺癌、偽乳頭状新生物、腺房細胞癌、前立腺がん、前立腺腺癌、皮膚がん、黒色腫、悪性黒色腫、皮膚黒色腫、小腸癌、胃がん、胃癌、消化管間質腫瘍(GIST)、子宮がん、または子宮肉腫。がんのタイプおよび/または病期は、突然変異、希少突然変異、インデル、再編成、コピー数変異、トランスバージョン、転座、組換え、逆位、欠失、異数性、部分異数性、倍数性、染色体不安定性、染色体構造変化、遺伝子融合、染色体融合、遺伝子切断、遺伝子増幅、遺伝子重複、染色体損傷、DNA損傷、核酸化学修飾の異常変化、エピジェネティックパターンの異常変化、および核酸5-メチルシトシンの異常変化を含む遺伝子変異から検出することができる。
【0249】
また、標的分子および遺伝子データは、特定の形態のがんを特徴付けるために使用することができる。がんは、組成および病期が両方とも不均質であることが多い。遺伝子プロファイルデータは、特定のサブタイプのがんの特徴付けを可能にすることができ、それは、その特定のサブタイプの診断または処置において重要であり得る。また、この情報は、特定のタイプのがんの予後に関する手がかりを、対象または担当医に提供し、対象または担当医のいずれかが、疾患の進行に応じて処置選択肢を適応させることを可能にすることができる。一部のがんは、進行して、より侵襲性になり、遺伝的に不安定になる可能性がある。他のがんは、良性、不活性、または休止状態のままである可能性がある。本開示のシステムおよび方法は、疾患進行の決定に有用であり得る。
【0250】
さらに、本開示の方法は、対象における異常状態の不均質性を特徴付けるために使用することができる。このような方法は、例えば、対象に由来する細胞外分子およびポリヌクレオチドの遺伝子プロファイルを生成することを含んでいてもよく、遺伝子プロファイルは、コピー数変異および希少突然変異分析から得られる複数のデータを含む。一部の実施形態では、異常状態はがんである。一部の実施形態では、異常状態は、不均質なゲノム集団をもたらすものであってもよい。がんの例では、一部の腫瘍は、異なる病期のがんの腫瘍細胞を含むことが公知である。他の例では、不均質性は、複数の疾患病巣を含んでいてもよい。この場合も、がんの例では、複数の腫瘍病巣が存在する可能性があり、おそらくは1つまたは複数の病巣は、原発部位から広がった転移の結果である。
【0251】
本方法は、不均質な疾患の異なる細胞に由来する標的細胞および遺伝子情報の総和であるプロファイル、フィンガープリント、またはデータセットを生成するために使用することができる。このデータセットは、コピー数変異、エピジェネティック変異、および突然変異分析を、単独でまたは組合せで含んでいてもよい。
【0252】
本方法は、がん、前がん、または他の疾患を、診断、予後判定、モニター、または観察するために使用することができる。一部の実施形態では、本明細書の方法は、胎児を診断、予後判定、またはモニターすることを含まず、したがって非侵襲的出生前検査に関するものではない。他の実施形態では、こうした方法論は、DNAおよび他のポリヌクレオチドが母体分子と共循環する可能性のある胎児対象におけるがんまたは他の疾患を診断、予後判定、モニター、または観察するために、妊娠対象において使用することができる。
【0253】
本明細書で開示される方法および系を使用して必要に応じて評価される他の遺伝子に基づく疾患、障害、または状態の非限定的な例としては、以下のものが挙げられる:軟骨無形成症、アルファ-1抗トリプシン欠損症、抗リン脂質症候群、自閉症、常染色体優性多発性嚢胞腎疾患、シャルコー・マリー・トゥース(CMT)病、ネコ鳴き症、クローン病、嚢胞性線維症、ダーカム病、ダウン症候群、デュアン症候群、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、第V因子ライデン血小板増加症、家族性高コレステロール血症、家族性地中海熱、脆弱X症候群、ゴーシェ病、ヘモクロマトーシス、血友病、全前脳症、ハンチントン病、クラインフェルター症候群、マルファン症候群、筋強直性ジストロフィー、神経線維腫症、ヌーナン症候群、骨形成不全症、パーキンソン病、フェニルケトン尿症、ポーランド異常(Poland anomaly)、ポルフィリン症、早老症、網膜色素変性症、重症複合免疫不全症(SCID)、鎌状赤血球症、脊髄性筋萎縮症、テイ-サックス病、サラセミア、トリメチルアミン尿症、ターナー症候群、口蓋心臓顔面症候群、WAGR症候群、またはウィルソン病など。
【0254】
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、以前にがんと診断された対象の以前のがん処置後の予め選択された時点で、腫瘍細胞を起源とするかまたは由来する細胞デブリに会合している標的分子の存在または非存在を検出することを含む。また、腫瘍細胞を起源とするかまたは由来するDNAを検出してもよい。この方法は、対象の腫瘍細胞を起源とするかまたは由来する標的分子および該当する場合にはDNAの存在または非存在を示すがん再発スコアを決定することをさらに含んでいてもよい。
【0255】
がん再発スコアが決定される場合、それを、がん再発ステータスを決定するためにさらに使用することができる。がん再発ステータスは、例えば、がん再発スコアが所定の閾値を上回る場合、がん再発のリスクがある可能性がある。がん再発ステータスは、例えば、がん再発スコアが所定の閾値を上回る場合、がん再発のリスクが低いかまたはより低い可能性がある。特定の実施形態では、所定の閾値と等しいがん再発スコアは、がん再発のリスクがあるか、またはがん再発のリスクが低いかもしくはより低いかのいずれのがん再発ステータスももたらし得る。
【0256】
一部の実施形態では、がん再発スコアを所定のがん再発閾値と比較し、がん再発スコアががん再発閾値を上回る場合、対象は、その後のがん処置の候補であると分類されるか、がん再発スコアががん再発閾値を下まわる場合、療法の候補ではないと分類される。特定の実施形態では、がん再発閾値と等しいがん再発スコアは、その後のがん処置の候補であるかまたは療法の候補ではないかのいずれにも分類されるという結果をもたらし得る。
【0257】
上記で考察されている方法は、対象のがん再発のリスクを決定するためのおよび/または対象をその後のがん処置の候補であると分類するための方法に関するセクションを含む、本明細書の他所に示されている1つまたは複数の任意の適合性のある特徴をさらに含んでもよい。
2.対象におけるがん再発のリスクを決定するための、および/または対象をその後のがん処置の候補であると分類するための方法
【0258】
一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、対象のがん再発のリスクを決定するための方法である。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、対象をその後のがん処置の候補であると分類するための方法である。
【0259】
そのような方法はいずれも、対象に対する1つまたは複数の以前のがん処置後の1つまたは複数の予め選択された時点で、がんと診断された対象から試料を収集することを含んでいてもよい。対象は、本明細書に記載の対象のいずれであってもよい。試料は、細胞デブリを含んでいてもよい。試料は、DNA、例えばcfDNAを含んでいてもよい。DNAは、組織試料から得ることができる。
【0260】
そのような方法はいずれも、本明細書に記載の実施形態のいずれかに従って、試料またはその部分試料を少なくとも1つの結合分子と接触させること、および少なくとも1つの標的分子の存在またはレベルを検出することを含んでいてもよい。こうした方法は、対象に由来するDNAから標的領域の複数のセットを捕捉することをさらに含んでいてもよく、複数の標的領域セットは、配列可変標的領域セットおよび/またはエピジェネティック標的領域セットを含み、それによりDNA分子の捕捉セットが生成される。捕捉ステップは、本明細書の他所に記載の実施形態のいずれかに従って実施することができる。そのような方法はいずれも、捕捉DNA分子を配列決定することを含んでいてもよく、それにより配列情報のセットが生成される。配列可変標的領域セットの捕捉DNA分子は、エピジェネティック標的領域セットの捕捉DNA分子よりも深い配列決定深度まで配列決定してもよい。そのような方法はいずれも、配列情報のセットを使用して、予め選択された時点で、腫瘍細胞を起源とするかまたは由来するDNAの存在または非存在を検出することを含んでいてもよい。腫瘍細胞を起源とするかまたは由来するDNAの存在または非存在の検出は、本明細書の他所に記載のそれらの実施形態のいずれかに従って実施することができる。
【0261】
そのような方法ではいずれも、以前のがん処置は、手術、治療組成物の投与、および/または化学療法を含んでいてもよい。
【0262】
対象のがん再発のリスクを決定するための方法は、対象の腫瘍細胞を起源とするかまたは由来する少なくとも1つの標的分子および/またはDNAの存在もしくは非存在または量を示すがん再発スコアを決定することを含んでいてもよい。がん再発スコアは、がん再発ステータスを決定するためにさらに使用することができる。がん再発ステータスは、例えば、がん再発スコアが所定の閾値を上回る場合、がん再発のリスクがある可能性がある。がん再発ステータスは、例えば、がん再発スコアが所定の閾値を上回る場合、がん再発のリスクが低いかまたはより低い可能性がある。特定の実施形態では、所定の閾値と等しいがん再発スコアは、がん再発のリスクがあるか、またはがん再発のリスクが低いかもしくはより低いかのいずれのがん再発ステータスももたらす可能性がある。
【0263】
対象をその後のがん処置の候補であると分類するための方法は、対象のがん再発スコアを所定のがん再発閾値と比較し、それにより、がん再発スコアががん再発閾値を上回る場合、対象をその後のがん処置の候補であると分類するか、またはがん再発スコアががん再発閾値を下回る場合、療法の候補ではないと分類することを含んでいてもよい。特定の実施形態では、がん再発閾値と等しいがん再発スコアは、その後のがん処置の候補であるかまたは療法の候補ではないかのいずれにも分類されるという結果をもたらし得る。一部の実施形態では、その後のがん処置は、化学療法または治療組成物の投与を含む。
【0264】
そのような方法はいずれも、がん再発スコアに基づき対象の無病生存(DFS)期間を決定することを含んでいてもよく、例えば、DFS期間は、1年、2年、3年、4年、5年、または10年などであってもよい。
【0265】
一部の実施形態では、配列情報のセットは、配列可変標的領域配列を含み、がん再発スコアの決定は、特定の免疫細胞タイプ、配列可変標的領域配列に存在するSNV、挿入/欠失、CNV、および/または融合のレベルを示す少なくとも第1のサブスコアを決定することを含んでいてもよい。
【0266】
一部の実施形態では、1、2、3、4、または5から選択される、配列可変標的領域における突然変異の数は、第1のサブスコアが、がん再発に陽性であると分類されるがん再発スコアをもたらすのに十分である。一部の実施形態では、突然変異の数は、1、2、または3から選択される。
【0267】
がん再発スコアががん再発に陽性であると分類される任意の実施形態では、対象のがん再発ステータスは、がん再発のリスクがある可能性があり、および/または対象は、その後のがん処置の候補であると分類することができる。
【0268】
一部の実施形態では、がんは、本明細書の他所に記載のタイプのがんのいずれか1つ、例えば、結腸直腸がんである。
3.療法および関連投与
【0269】
ある特定の実施形態では、本明細書で開示される方法は、個別化療法を識別し、患者に施すことに関する。一部の実施形態では、特定の標的分子または細胞デブリのレベルの決定は、適切な処置の選択を容易にする。一部の実施形態では、患者または対象は、所与の疾患、障害、または状態を有する。本質的にあらゆるがん療法(例えば、外科療法、放射線療法、および/または化学療法など)が、こうした方法の一部として含まれ得る。ある特定の実施形態では、対象に施される療法は、少なくとも1つの化学療法薬を含む。一部の実施形態では、化学療法薬は、アルキル化剤(例えば、これらに限定されないが、クロランブシル、シクロホスファミド、シスプラチン、およびカルボプラチン)、ニトロソウレア(例えば、これらに限定されないが、カルムスチンおよびロムスチン)、代謝拮抗剤(例えば、これらに限定されないが、フルオロウラシル(Fluorauracil)、メトトレキサート、およびフルダラビン)、植物アルカロイドおよび天然産物(例えば、これらに限定されないが、ビンクリスチン、パクリタキセル、およびトポテカン)、抗腫瘍抗生物質(例えば、これらに限定されないが、ブレオマイシン、ドキソルビシン、およびミトキサントロン)、ホルモン剤(例えば、これらに限定されないが、プレドニゾン、デキサメタゾン、タモキシフェン、およびロイプロリド)、および生物学的応答調節剤(例えば、これらに限定されないが、ハーセプチンおよびアバスチン、アービタックスおよびリツキサン)を含んでいてもよい。一部の実施形態では、対象に施される化学療法は、FOLFOXまたはFOLFIRIを含んでいてもよい。ある特定の実施形態では、少なくとも1つのPARP阻害剤を含む療法を対象に施すことができる。ある特定の実施形態では、PARP阻害剤としては、なかでも、オラパリブ、タラゾパリブ、ルカパリブ、ニラパリブ(商品名ZEJULA)を挙げることができる。典型的には、療法としては、少なくとも1つの免疫療法(または免疫療法剤)が挙げられる。免疫療法は、一般に、所与のがんタイプに対する免疫応答を増強するための方法を指す。ある特定の実施形態では、免疫療法は、腫瘍またはがんに対するT細胞応答を増強するための方法を指す。
【0270】
一部の実施形態では、療法は、体細胞起源であるかまたは生殖系列起源であるかの核酸変異体のステータスに基づいて個別化される。一部の実施形態では、本質的にあらゆるがん療法(例えば、外科療法、放射線療法、および/または化学療法など)が、こうした方法の一部として含まれ得る。典型的には、個別化療法としては、少なくとも1つの免疫療法(または免疫療法剤)が挙げられる。免疫療法は、一般に、所与のがんタイプに対する免疫応答を増強するための方法を指す。ある特定の実施形態では、免疫療法は、腫瘍またはがんに対するT細胞応答を増強するための方法を指す。
【0271】
一部の実施形態では、免疫療法または免疫療法剤は、免疫チェックポイント分子を標的とする。ある特定の腫瘍は、免疫チェックポイント経路を乗っ取ることにより免疫系を回避することができる。したがって、免疫チェックポイントを標的にすることは、免疫系を回避する腫瘍の能力に対抗し、ある特定のがんに対する抗腫瘍免疫を活性化するための効果的な手法として浮上している。Pardoll, Nature Reviews Cancer, 2012, 12:252-264。
【0272】
ある特定の実施形態では、免疫チェックポイント分子は、抗原に対するT細胞応答に関与するシグナルを低減させる阻害性分子である。例えば、CTLA4は、T細胞上に発現され、抗原提示細胞上のCD80(別名B7.1)またはCD86(別名B7.2)に結合することによりT細胞活性化を下方制御する役割を果たす。PD-1は、T細胞上に発現される別の阻害性チェックポイント分子である。PD-1は、炎症応答中の末梢組織でのT細胞の活性を制限する。加えて、PD-1のリガンド(PD-L1またはPD-L2)は、多くの異なる腫瘍の表面では一般的に上方制御され、腫瘍微小環境における抗腫瘍免疫応答の下方制御がもたらされる。ある特定の実施形態では、阻害性免疫チェックポイント分子はCTLA4またはPD-1である。他の実施形態では、阻害性免疫チェックポイント分子は、PD-L1またはPD-L2など、PD-1のリガンドである。他の実施形態では、阻害性免疫チェックポイント分子は、CD80またはCD86など、CTLA4のリガンドである。他の実施形態では、阻害性免疫チェックポイント分子は、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)、T細胞膜タンパク質3(TIM3)、ガレクチン9(GAL9)、またはアデノシンA2a受容体(A2aR)である。
【0273】
こうした免疫チェックポイント分子を標的とするアンタゴニストを使用すると、ある特定のがんに対する抗原特異的T細胞応答を増強することができる。したがって、ある特定の実施形態では、免疫療法または免疫療法剤は、阻害性免疫チェックポイント分子のアンタゴニストである。ある特定の実施形態では、阻害性免疫チェックポイント分子はPD-1である。ある特定の実施形態では、阻害性免疫チェックポイント分子はPD-L1である。ある特定の実施形態では、阻害性免疫チェックポイント分子のアンタゴニストは抗体(例えば、モノクローナル抗体)である。ある特定の実施形態では、抗体またはモノクローナル抗体は、抗CTLA4、抗PD-1、抗PD-L1、または抗PD-L2抗体である。ある特定の実施形態では、抗体はモノクローナル抗PD-1抗体である。一部の実施形態では、抗体はモノクローナル抗PD-L1抗体である。ある特定の実施形態では、モノクローナル抗体は、抗CTLA4抗体および抗PD-1抗体、抗CTLA4抗体および抗PD-L1抗体、または抗PD-L1抗体および抗PD-1抗体の組合せである。ある特定の実施形態では、抗PD-1抗体は、ペムブロリズマブ(Keytruda(登録商標))またはニボルマブ(Opdivo(登録商標))の1つまたは複数である。ある特定の実施形態では、抗CTLA4抗体はイピリムマブ(Yervoy(登録商標))である。ある特定の実施形態では、抗PD-L1抗体は、アテゾリズマブ(Tecentriq(登録商標))、アベルマブ(Bavencio(登録商標))、またはデュルバルマブ(Imfinzi(登録商標))の1つまたは複数である。
【0274】
ある特定の実施形態では、免疫療法または免疫療法剤は、CD80、CD86、LAG3、KIR、TIM3、GAL9、またはA2aRに対するアンタゴニスト(例えば、抗体)である。他の実施形態では、アンタゴニストは、阻害性免疫チェックポイント分子の細胞外ドメインおよび抗体のFcドメインを含む可溶性融合タンパク質など、阻害性免疫チェックポイント分子の可溶型である。ある特定の実施形態では、可溶性融合タンパク質は、CTLA4、PD-1、PD-L1、またはPD-L2の細胞外ドメインを含む。一部の実施形態では、可溶性融合タンパク質は、CD80、CD86、LAG3、KIR、TIM3、GAL9、またはA2aRの細胞外ドメインを含む。一実施形態では、可溶性融合タンパク質は、PD-L2またはLAG3の細胞外ドメインを含む。
【0275】
ある特定の実施形態では、免疫チェックポイント分子は、抗原に対するT細胞応答に関与するシグナルを増幅する共刺激分子である。例えば、CD28は、T細胞上に発現される共刺激受容体である。T細胞がT細胞受容体を介して抗原に結合すると、CD28は、抗原提示細胞上のCD80(別名B7.1)またはCD86(別名B7.2)に結合して、T細胞受容体シグナル伝達を増幅し、T細胞活性化を促進する。CD28は、CTLA4と同じリガンド(CD80およびCD86)に結合するため、CTLA4は、CD28により媒介される共刺激シグナル伝達に対抗するかまたはそれを調節することができる。ある特定の実施形態では、免疫チェックポイント分子は、CD28、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)、CD137、OX40、またはCD27から選択される共刺激分子である。他の実施形態では、免疫チェックポイント分子は、例えば、CD80、CD86、B7RP1、B7-H3、B7-H4、CD137L、OX40L、またはCD70を含む、共刺激分子のリガンドである。
【0276】
こうした共刺激チェックポイント分子を標的とするアゴニストを使用すると、ある特定のがんに対する抗原特異的T細胞応答を増強することができる。したがって、ある特定の実施形態では、免疫療法または免疫療法剤は、共刺激チェックポイント分子のアゴニストである。ある特定の実施形態では、共刺激チェックポイント分子のアゴニストは、アゴニスト抗体であり、好ましくはモノクローナル抗体である。ある特定の実施形態では、アゴニスト抗体またはモノクローナル抗体は、抗CD28抗体である。他の実施形態では、アゴニスト抗体またはモノクローナル抗体は、抗ICOS、抗CD137、抗OX40、または抗CD27抗体である。他の実施形態では、アゴニスト抗体またはモノクローナル抗体は、抗CD80、抗CD86、抗B7RP1、抗B7-H3、抗B7-H4、抗CD137L、抗OX40L、または抗CD70抗体である。
【0277】
ある特定の実施形態では、体細胞起源であるかまたは生殖系列起源であるかとしての、対象に由来する試料の核酸変異体のステータスを、参照集団の比較器結果のデータベースと比較して、その対象のために個別化または標的化された療法を識別することができる。典型的には、参照集団は、対象と同じがんもしくは疾患タイプを有する患者、および/または対象と同じ療法を受けているかもしくは受けたことがある患者を含む。個別化または標的化療法(複数可)は、核酸変異体および比較器結果がある特定の分類基準を満たす(例えば、実質的またはほぼ一致する)場合に、識別することができる。
【0278】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の個別化療法は、典型的には非経口的に(例えば、静脈内または皮下)投与される。免疫療法剤を含む医薬組成物は、典型的には静脈内投与される。ある特定の療法剤は経口投与される。しかしながら、個別化療法(例えば、免疫療法剤など)は、当技術分野で公知の任意の方法により、例えば、頬側、舌下、直腸、膣、尿道内、局所、眼内、鼻腔内、および/または耳内にも投与することができ、投与としては、錠剤、カプセル、顆粒、水性懸濁物、ゲル、スプレー、座薬、膏薬、または軟膏などを挙げることができる。
【0279】
がん以外の、特定の遺伝子に基づく疾患、障害、または状態を処置するための治療選択肢は、一般に、当業者であれば周知であり、検討されている特定の疾患、障害、または状態を考慮すれば明らかであろう。
【0280】
一部の実施形態では、例えば、遺伝子変異体が検出される場合、療法は、体細胞起源であるかまたは生殖系列起源であるかとしての核酸変異体のステータスに基づき個別化される。一部の実施形態では、本質的にあらゆるがん療法(例えば、外科療法、放射線療法、および/または化学療法など)が、こうした方法の一部として含まれ得る。典型的には、個別化療法としては、少なくとも1つの免疫療法(または免疫療法剤)が挙げられる。免疫療法は、一般に、所与のがんタイプに対する免疫応答を増強するための方法を指す。ある特定の実施形態では、免疫療法は、腫瘍またはがんに対するT細胞応答を増強するための方法を指す。
【0281】
ある特定の実施形態では、体細胞起源であるかまたは生殖系列起源であるとしての、対象に由来する試料の核酸変異体のステータスを、参照集団の比較器結果のデータベースと比較して、その対象のための個別化または標的化療法を識別することができる。典型的には、参照集団は、対象と同じがんもしくは疾患タイプを有する患者、および/または対象と同じ療法を受けているかもしくは受けたことがある患者を含む。個別化または標的化療法(複数可)は、核酸変異体および比較器結果がある特定の分類基準を満たす(例えば、実質的またはほぼ一致する)場合に、識別することができる。
【0282】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の個別化療法は、典型的には非経口的に(例えば、静脈内または皮下に)投与される。免疫療法剤を含む医薬組成物は、典型的には静脈内投与される。ある特定の療法剤は経口投与される。しかしながら、個別化療法(例えば、免疫療法剤など)は、例えば、頬側、舌下、直腸、膣、尿道内、局所、眼内、鼻腔内、および/または耳内などの方法によっても投与することもでき、投与としては、錠剤、カプセル、顆粒、水性懸濁物、ゲル、スプレー、座薬、膏薬、または軟膏などを挙げることができる。
IV.キット
【0283】
本明細書に記載の組成物を含むキットも提供される。キットは、本明細書に記載の方法を実施する際に使用することができる。一部の実施形態では、キットは、1つまたは複数の細胞デブリマーカー結合分子を含む。一部の実施形態では、キットは、例えば、1つまたは複数の細胞デブリマーカー結合分子に加えて、エクソソームマーカー結合分子を含む。一部の実施形態では、マーカー結合分子は、標識または捕捉部分を含む。一部の実施形態では、キットは、捕捉部分の結合パートナーに連結された固体支持体を含む。一部の実施形態では、キットは、1つまたは複数の標的分子結合分子を含む。一部の実施形態では、キットは、標的分子の存在またはレベルを検出するための試薬を含む。
【0284】
一部の実施形態では、キットは、DNAのメチルシトシンを認識する作用剤をさらに含む。一部のそのような実施形態では、作用剤は、抗体またはメチル結合タンパク質もしくはメチル結合ドメインである。一部の実施形態では、キットは、エピジェネティック標的領域セットおよび/または配列可変標的領域セットに特異的に結合する標的特異的プローブを含む。一部のそのような実施形態では、標的特異的プローブは捕捉部分を含む。一部の実施形態では、キットは、捕捉部分の結合パートナーに連結された固体支持体を含む。一部の実施形態では、キットはアダプターを含む。一部の実施形態では、キットはPCRプライマーを含み、PCRプライマーは、標的領域またはアダプターにアニーリングする。一部の実施形態では、キットは、本明細書の他所の追加要素を含む。一部の実施形態では、キットは、本明細書に記載の方法を実施するための使用説明書を含む。
【0285】
キットは、ALK、APC、BRAF、CDKN2A、EGFR、ERBB2、FBXW7、KRAS、MYC、NOTCH1、NRAS、PIK3CA、PTEN、RBI、TP53、MET、AR、ABLl、AKTl、ATM、CDHl、CSFIR、CTNNBl、ERBB4、EZH2、FGFRl、FGFR2、FGFR3、FLT3、GNA11、GNAQ、GNAS、HNF1A、HRAS、IDH1、IDH2、JAK2、JAK3、KDR、KIT、MLH1、MPL、NPM1、PDGFRA、PROC、PTPN11、RET、SMAD4、SMARCB1、SMO、SRC、STK11、VHL、TERT、CCND1、CDK4、CDKN2B、RAF1、BRCA1、CCND2、CDK6、NF1、TP53、ARID1A、BRCA2、CCNE1、ESR1、RIT1、GATA3、MAP2K1、RHEB、ROS1、ARAF、MAP2K2、NFE2L2、RHOA、およびNTRKlからなる群から選択される少なくとも5、6、7、8、9、10、20、30、40個の、またはすべての遺伝子に選択的にハイブリダイズする複数のオリゴヌクレオチドプローブをさらに含んでもよい。オリゴヌクレオチドプローブが選択的にハイブリダイズすることができる遺伝子の数はさまざまであり得る。例えば、遺伝子の数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、または54を含んでいてもよい。キットは、本明細書に記載の方法のいずれかを実施するための複数のオリゴヌクレオチドプローブおよび使用説明書を含む容器を含んでいてもよい。
【0286】
キットは、異なる分子バーコードおよび同一の試料バーコードを有する少なくとも4、5、6、7、または8つの異なるライブラリーアダプターを含んでいてもよい。ライブラリーアダプタは、配列決定アダプターでなくてもよい。例えば、ライブラリーアダプターは、フローセル配列も、配列決定用のヘアピンループの形成を可能にする配列も含まない。分子バーコードおよび試料バーコードの様々な変化型および組合せが全文にわたって説明されており、キットに応用可能である。さらに、一部の場合では、アダプターは配列アダプターではない。加えて、キットに付属のアダプターは、配列決定アダプターをさらに含んでいてもよい。配列決定アダプターは、1つまたは複数の配列決定プライマーにハイブリダイズする配列を含んでいてもよい。配列決定アダプターは、固体支持体にハイブリダイズする配列、例えばフローセル配列をさらに含んでいてもよい。例えば、配列決定アダプターは、フローセルアダプターであってもよい。配列決定アダプターは、ポリヌクレオチド断片の一方または両方の末端に付着させることができる。一部の場合では、キットは、異なる分子バーコードおよび同一の試料バーコードを有する少なくとも8つの異なるライブラリーアダプターを含んでいてもよい。ライブラリーアダプターは、配列決定アダプターでなくてもよい。キットは、ライブラリーアダプターに選択的にハイブリダイズする第1の配列、およびフローセル配列に選択的にハイブリダイズする第2の配列を有する配列決定アダプターをさらに含んでいてもよい。別の例では、配列決定アダプターはヘアピン形状であってもよい。例えば、ヘアピン形状のアダプターは、相補的二本鎖部分およびループ部分を含んでいてもよく、二本鎖部分は、二本鎖ポリヌクレオチドに付着(例えば、ライゲーション)することができる。ヘアピン形状の配列決定アダプターをポリヌクレオチド断片の両末端に付着させて環状分子を生成し、それを複数回配列決定してもよい。配列決定アダプターは、1つまたは複数のバーコードを含んでいてもよい。例えば、配列決定アダプターは、試料バーコードを含んでいてもよい。試料バーコードは、所定の配列を含んでいてもよい。試料バーコードは、ポリヌクレオチドの供給源を識別するために使用することができる。試料バーコードは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25個、またはそれよりも多く(または全文に記載の任意の長さ)の核酸塩基、例えば少なくとも8塩基であってもよい。上記に記載のように、バーコードは、連続配列であってもよくまたは不連続配列であってもよい。
【0287】
ライブラリーアダプターは平滑末端およびY字形であってもよく、40核酸塩基長未満であってもよく、またはそれと等しくてもよい。ライブラリーアダプターの他の変化型は、全文に見出すことができ、キットに応用可能である。
【0288】
本発明の好ましい実施形態を本明細書において示し説明してきたが、当業者であれば、そのような実施形態は単なる例として提供されていることが明らかであろう。本発明は、本明細書内で提供される特定の例により限定されることが意図されていない。本発明は上述の明細書を参照して説明されているが、本明細書における実施形態の説明および例示は、限定的な意味で解釈されることを意図したものではない。当業者であれば、今や、本発明から逸脱することなく、数多くの変化型、変更、および置換を思いつくだろう。さらに、本発明のすべての態様は、様々な条件および変数に依存する、本明細書に示されている特定の図示、構成、または相対的割合に限定されないことが理解されるべきである。本明細書に記載の開示の実施形態に対する種々の代替を本発明の実施に使用することができることが理解されるべきである。したがって、本開示は、あらゆるそのような代替、改変、変形型、または均等物も網羅することが企図される。本発明の範囲は以下の特許請求の範囲により規定され、そうした特許請求の範囲内の方法および構造ならびにそれらの均等物がそれにより網羅されることが意図されている。
【0289】
上述の開示は、明瞭性および理解を目的として、例示および例によりある程度詳細に説明されているが、当業者であれば、本開示を読むと、本開示の真の範囲から逸脱することなく、形態および詳細に種々の変更をなすことができ、添付の特許請求の範囲内で実施することができることは明らかであろう。例えば、方法、システム、コンピュータ可読媒体、および/または成分特徴、ステップ、要素、またはそれらの他の態様はすべて、種々の組合せで使用することができる。
【0290】
本明細書で引用される特許、特許出願、ウェブサイト、他の刊行物または文書、および受託番号などはすべて、個々の項目があたかも具体的におよび個々に参照により組み込まれていることを示すかのごとく、あらゆる目的のためにそれらの全体が参照により組み込まれる。異なるバージョンの配列が異なる時点で受託番号に関連付けられている場合、本出願の有効出願日における受託番号に関連付けられているバージョンが意図されている。有効出願日とは、実際の出願日または該当する場合は受託番号を参照する優先権出願の出願日のいずれか早い方を意味する。同様に、刊行物またはウェブサイトなどの異なる版が異なる時期に刊行されている場合、別様の指示がない限り、本出願の有効出願日において最新の刊行された版が意図されている。
【実施例
【0291】
(実施例1)
標的タンパク質およびエクソソームマーカーの同時検出を使用した循環タンパク質の分析
患者試料のセットを血液ベースアッセイにより分析して、がんの存在/非存在を検出する。こうした患者の全血試料の第1の部分を、1,600gで10分間10℃にて遠心分離することにより、血漿、バフィーコート、および赤血球画分に分画する。血漿画分を、3,220gで10分間10℃にて遠心分離することによりさらに分画して、血漿ペレットおよび血漿上清を生成する。バフィーコート画分、血漿ペレット、および全血試料の第2の部分を、第1のオリゴヌクレオチドにコンジュゲートされた、ホスファチジルセリンに特異的に結合する第1の抗体、および第2のオリゴヌクレオチドにコンジュゲートされた、CTLA4またはPDL1などの標的分子に特異的に結合する第2の抗体と接触させる。必要に応じて、血漿上清を、第1のオリゴヌクレオチドにコンジュゲートされた、エクソソームマーカーに特異的に結合する第1の抗体、および第2のオリゴヌクレオチドにコンジュゲートされた、CTLA4またはPDL1などの標的分子に特異的に結合する第2の抗体と接触させる。第1および第2のオリゴヌクレオチドの各々は、2つの部分:1)コンジュゲートされている抗体に固有である配列(分子バーコード)を有する第1の部分、および2)ハイブリダイゼーション配列を有する、第1の部分に対して3’にある第2の部分を含む。第1のオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション配列は互いに同じであり、各第2のオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション配列と相補的である。第1および第2のオリゴヌクレオチドは、互いに十分に接近した近傍内に存在する場合にハイブリダイズし、ハイブリダイズした(二本鎖)オリゴヌクレオチド配列を、DNAポリメラーゼを使用してハイブリダイゼーション配列の3’末端から伸長させる。伸長させたオリゴヌクレオチドをプールし、増幅し、Illuminaシーケンサーを使用して配列決定するかまたはqPCRなどの好適な手順により定量化する。例示的なハイブリダイゼーション、伸長、および配列決定に基づく検出手順については、例えば、Gong et al., Bioconjugate Chem. 2016, 27, 1, 217-225を参照されたい。
【0292】
次いで、シーケンサーにより生成された配列リードを、バイオインフォマティクスツール/アルゴリズムを使用して分析する。配列決定された分子に存在する分子バーコードを使用して、抗体およびそれらの抗原分子を識別すると共に、また、細胞デブリまたは該当する場合はそれらが近接していたエクソソームマーカーをデコンボリューションする。健常対象に由来する試料と比べた、患者に由来する試料中の、腫瘍細胞で上方制御されるタンパク質などのタンパク質に対応する配列リードの定量化は、患者ががんを有する可能性の決定を容易にする。
(実施例2)
標的タンパク質およびエクソソームマーカーの逐次的検出を使用した循環タンパク質の分析
【0293】
患者全血試料のセットを実施例1に記載のように分画する。バフィーコート画分、血漿ペレット、および全血試料の第2の部分を、ビオチンにコンジュゲートされたアネキシンVと接触させ、次いでストレプトアビジンにコンジュゲートされた磁気ビーズと接触させて、細胞デブリを単離する。必要に応じて、血漿上清を、ビオチンにコンジュゲートされたエクソソームマーカー結合分子と接触させ、次いでストレプトアビジンにコンジュゲートされた磁気ビーズと接触させてエクソソームを単離する。ビーズおよびそれらに結合した分子を沈殿させ、漸増濃度の塩を含む緩衝液を用いてあらゆる未結合試料成分をビーズから洗い流す。高塩緩衝液を使用して細胞デブリをアネキシンVから洗い流し、該当する場合は、エクソソームをエクソソームマーカー結合分子から洗い流す。沈殿し富化された分子を浄化して塩を除去し、標的分子検出ステップに備えて濃縮する。
【0294】
標的分子の同一性が既知である場合、単離された細胞デブリおよびエクソソームを、該当する場合は標的分子に対する抗体と接触させ、イムノアッセイまたはフローサイトメトリーを使用して検出する。標的分子の同一性が既知または未知の場合、該当する場合は、細胞デブリおよびエクソソームの膜および他の物質からタンパク質を精製し、タンパク質を質量分析法により分析して、それらを識別および/または定量化する。
(実施例3)
標的タンパク質およびエクソソームマーカーの逐次的検出を使用した循環タンパク質およびcfDNAの組合せ分析
【0295】
患者全血試料のセットを、実施例1に記載のように分画する。バフィーコート画分、血漿ペレット、および全血試料の第2の部分を、実施例2に記載のように処理および分析する。血漿上清を複数のアリコートに分割する。第1のアリコートを、実施例2に記載のように処理および分析する。第2のアリコートからcfDNAを抽出する。
【0296】
次いで、対象試料のcfDNAを、シトシンメチル化レベルに基づいて分配する。cfDNAを、メチルシトシンを認識する抗体と接触させ、次いでプロテインGにコンジュゲートされた磁気ビーズを使用して免疫沈降させ、したがって高メチル化DNAと低メチル化DNAとに分配する。メチル化されていないかまたはメチル化の程度が低いあらゆるDNAを、漸増濃度の塩を含む緩衝液を用いてビーズから洗い流す。最後に、高塩緩衝液を使用して、高度にメチル化されたDNAを抗体から洗い流し、高メチル化分配画分、中間分配画分、および低メチル化分配画分を提供する。
【0297】
分配画分のcfDNAを濃縮した後、第1のアダプターを、その3’末端へのライゲーションによりcfDNAに付加する。アダプターを、ユニバーサルプライマーおよびDNAポリメラーゼを使用した第二鎖合成のプライミング部位として使用する。第1のアダプターはビオチンを含み、第1のアダプターにライゲートした核酸は、ストレプトアビジンを含むビーズに結合する。次いで、第2のアダプターを、今や二本鎖である分子の第二鎖の3’末端にライゲートさせる。こうしたアダプターは非一意的分子バーコードを含み、各分配画分を、他の分配画分に使用されているアダプターのバーコードと区別可能な非一意的分子バーコードを有するアダプターとライゲートさせる。ライゲーション後、分配画分を一緒にプールし、PCRにより増幅する。
【0298】
PCR後、増幅されたDNAを洗浄し、富化する前に濃縮する。濃縮したら、増幅されたDNAを、塩緩衝液、ならびに配列可変標的領域セットに対するプローブおよびエピジェネティック標的領域セットに対するプローブを含むビオチン化RNAプローブと組み合わせ、この混合物を一晩インキュベートする。配列可変領域セットに対するプローブは約50kbのフットプリントを有し、エピジェネティック標的領域セットに対するプローブは約500kbのフットプリントを有する。配列可変標的領域セットに対するプローブは、本明細書に記載の遺伝子の少なくともサブセットを標的とするオリゴヌクレオチドを含み、エピジェネティック標的領域セットに対するプローブは、高メチル化可変標的領域、低メチル化可変標的領域、ならびに必要に応じて、CTCF結合標的領域、転写開始部位標的領域、局所増幅標的領域、およびメチル化対照領域の1つまたは複数のセレクションを標的とするオリゴヌクレオチドを含む。
【0299】
ビオチン化RNAプローブ(DNAにハイブリダイズする)を、ストレプトアビジン磁気ビーズで捕捉し、一連の塩に基づく洗浄により、捕捉されていない増幅されたDNAから分離し、それにより試料を富化する。富化後、Illumina NovaSeqシーケンサーを使用して、富化試料のアリコートを配列決定する。次いで、シーケンサーにより生成された配列リードを、バイオインフォマティクスツール/アルゴリズムを使用して分析する。分子バーコードを使用して一意的な分子を識別し、ならびに差次的に分配した分子へと試料をデコンボリューションする。この例に記載の方法は、その分配に基づき分子の全体的なメチル化レベル(つまり、メチル化シトシン残基)に関する情報を提供することとは別に、メチル化シトシンのタイプの同一性および/または位置に関するより高解像度の情報も提供することができる。実際の腫瘍変異体を技術的エラー(例えば、PCRエラー、配列決定エラー)と区別するのに十分な確度をもってコールすることができる、SNV、挿入、欠失、および融合などのゲノム変更を検出することにより、配列可変標的領域配列を分析する。エピジェネティック標的領域配列を独立して分析して、正常細胞と比較してがんにおいてメチル化が異なることが示されている領域のメチル化cfDNA分子を検出する。最後に、分析の結果を組み合わせて、最終的な腫瘍の存在/非存在コールを生成する。
図1A
図1B
図2
【国際調査報告】