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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】バッテリ用冷却組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/10 20060101AFI20240517BHJP
【FI】
C09K5/10 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572795
(86)(22)【出願日】2022-06-02
(85)【翻訳文提出日】2024-01-11
(86)【国際出願番号】 EP2022065141
(87)【国際公開番号】W WO2022253992
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】2105920
(32)【優先日】2021-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】322010291
【氏名又は名称】トータルエナジーズ ワンテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シャンパーニュ,ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】レザン,ジョナサン
(57)【要約】
本発明は、バッテリを冷却し、熱暴走に対してそれを保護するための冷却組成物に関するものであり、当該冷却組成物は、120mW.m-1.K-1以下の熱伝導率を有してなる。本発明はまた、バッテリを冷却するための、および/または、熱暴走に対してバッテリを保護するための、冷却装置および冷却組成物の使用に関するものである。そのバッテリは、例えば、電気またはハイブリッド車両の推進システムにおいて実現されるものである。
【選択図】(なし)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱暴走からバッテリを保護するための冷却組成物の使用であって、
当該冷却組成物が、少なくとも1種の基油を含み、且つ125mW.m-1.K-1以下の熱伝導率を有する、ことを特徴とする冷却組成物の使用。
【請求項2】
前記冷却組成物が、120mW.m-1.K-1以下、好ましくは、115mW.m-1.K-1以下の熱伝導率を有する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記冷却組成物が、前記冷却組成物の総重量に対して、少なくとも70重量%の基油、好ましくは70~99.9重量%の基油、
更に好ましくは80~99重量%の基油、
もっと好ましくは85~98重量%の基油を含む、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記冷却組成物が、前記冷却組成物の総重量に対して100重量%の基油を含む、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項5】
前記冷却組成物が循環するところの、少なくとも1つの循環ループを備えたバッテリの冷却システムで、前記冷却組成物が使用される、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記冷却組成物が、油ポンプ、流体交換器および空気交換器から選択される少なくとも1つの要素を循環する、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記冷却システムが、前記冷却組成物用の少なくとも1つの貯蔵タンクを更に備える、請求項5又は6に記載の使用。
【請求項8】
前記バッテリがリチウム・イオン・バッテリである、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記バッテリを冷却するための、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記バッテリが、電気またはハイブリッド車両、好ましくは電気車両の推進システムで使用される、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱暴走の伝播に対してバッテリ、特にリチウム・イオン・バッテリを冷却および保護するための組成物の分野に関する。バッテリは、モバイルまたは固定用途で使用することができる。より具体的には、本発明は、電気またはハイブリッド車両の推進システムを冷却すること、より具体的には、電気またはハイブリッド車両のバッテリおよび任意的にパワー・エレクトロニクス・システムを冷却することを目的とする。より具体的には、本発明は、冷却組成物であって、バッテリおよび任意的にパワー・エレクトロニクス・システムにおけるその使用に適合する、冷却組成物を提案することを目的とする。
【背景技術】
【0002】
バッテリは、化学エネルギーが電気エネルギーに変換される、電気を生み出すためのシステムである。化学エネルギーは、電気化学的な発電機内に配置された電極の少なくとも1つの面に堆積した電気化学的に活性な化合物からなる。電気エネルギーは、電気化学セルの放電中の電気化学反応によって生み出される。
バッテリは、複数の電気化学セルを備える。リチウムイオン電気化学セルは、電気化学的に活性なやり方での、ホスト構造へのリチウムの可逆的挿入の原理に基づく。
リチウム・イオン・セルなどの電気化学セルの分野では、セルの温度は、セルの適切な範囲内で温度を維持するために、管理されなければならない。
リチウム・イオン・バッテリは、一般に、-40℃~+70℃の範囲の温度で使用される。暴走の場合、いくつかのセルは、400~800℃のオーダーの温度に達する場合がある。
【0003】
バッテリは、モバイルまたは固定用途で通例使用される。
固定用途には、蓄電池、例えば、ソーラ蓄電池が含まれる。
モバイル用途には、自動車用途が含まれる。CO放出の削減のため、しかしまたエネルギー消費の削減のための国際規格の進展は、内燃機関に対する代替解決策を提案するように自動車製造業者に迫る。
【0004】
自動車製造業者によって特定された解決策の1つは、内燃機関を電動機に置き換えることである。したがって、CO放出を削減するための研究は、電気車両を開発するように多数の自動車会社を仕向けてきた。
【0005】
本発明によって定義される「電気車両」は、推進の唯一の手段として電動機を備える車両を指し、一方、ハイブリッド車両は、推進の組み合わせられた手段として内燃機関および電動機を備える。
【0006】
本発明によって定義される「推進システム」は、電気車両の推進のために要求される機械部品を含むシステムを指す。推進システムは、それにより、より具体的には、パワー・エレクトロニクス・システム(速度調節専用)のロータ・ステータ・アセンブリを備える電動機と、トランスミッションと、バッテリとを包含する。バッテリは、そのようなものとして普通、セルと呼ばれる組の電気アキュムレータからなる。
【0007】
一般に、電気またはハイブリッド車両においては、上述の推進システムの異なる部分の潤滑および/または冷却要件を満たすように、組成物を使用する必要がある。
より具体的には、電気推進システムは、電動機、パワー・エレクトロニクス・システム、およびバッテリを介して、その動作中に熱を発生させる。発生する熱の量は、環境に通常放散される熱の量よりも大きいため、エンジン、パワー・エレクトロニクス・システム、およびバッテリの冷却を提供することが要求される。一般に、冷却は、危険な温度に達するのを防止するように、推進システムの複数の熱を発生させる部分および/または当該システムの熱に敏感な部分、特にパワー・エレクトロニクス・システムおよびバッテリに対して実施される。
【0008】
従来、任意的にグリコールと組み合わされた、空気または水によって電動機をどのようにして冷却するかが知られている。しかしながら、ますますより高い出力を有するますますより小さいエンジンの出現で、そのような冷却方法はもはや十分ではない。さらに、特に急速充電中にバッテリが発生させ得る熱を、バッテリを損傷しそれによりバッテリの耐用期間を制限する温度(すなわち、>45℃)に達することなく、従来使用されている方法によって抜き取ることはできない。
【0009】
それにより、推進システム、より具体的にはバッテリを冷却する代替方法が最近提案されている。
そのようなものとして、特許文献1は、電気および/またはハイブリッド車両用のバッテリの構成セルにおける高い熱伝導率の材料、ならびに外部ケーシング用の低い熱伝導率の材料の使用を記載している。
【0010】
また、特許文献2は、バッテリパックを形成しそれを外側から絶縁するために、低い熱伝導率の材料を使用することに言及している。当該文献は、非常に高い熱伝導率を有する水/グリコール混合物に基づく流体を開示している。
【0011】
代替的に、企業は流体の開発に取り組んできた。ここで当該流体は、推進システムで使用することができ、高い熱伝導率を有し、セルの、およびそれゆえにシステム全体の冷却を改善するのに特に有用である。
それにより、特許文献3は、152から180mW.m-1.K-1の間に含まれる熱伝導率を有する自己推進用途のための潤滑組成物を記載している。
【0012】
本発明者らは、改善された冷却特性と、熱暴走に対する保護の特性との両方を有する組成物を改善および提案しようと努めてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014/0318746号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2012/0161472号明細書
【特許文献3】国際公開第2015/034340号パンフレット
【発明の概要】
【0014】
より詳細には、本発明は、熱暴走に対してバッテリを保護するための冷却組成物の使用に関するものであり、当該冷却組成物は、少なくとも1つの基油(ベースオイル)を含み、125mW.m-1.K-1以下の熱伝導率を有する。
優先的には、バッテリはリチウム・イオン・バッテリである。
一実施形態によれば、本発明に従って使用される冷却組成物は、120mW.m-1.K-1以下、優先的には115mW.m-1.K-1以下の熱伝導率を有する。
一実施形態によれば、本発明に従って使用される冷却組成物は、冷却組成物の総重量に対して、少なくとも70重量%の基油、優先的には70~99.9重量%の基油、優先的にはさらに80~99重量%の基油、より優先的には85~98重量%の基油を含む。
【0015】
優先的には、冷却組成物は、冷却組成物が循環する、少なくとも1つの循環ループを含むバッテリを冷却するためのシステムで使用される。
優先的には、冷却組成物は、油ポンプ、流体交換器および空気交換器から選ばれる少なくとも1つの要素を循環する。
優先的には、冷却システムは、冷却組成物用の少なくとも1つの貯蔵タンクをさらに含む。
【0016】
本発明はさらに、本発明による冷却組成物が循環する、少なくとも1つの循環ループを含む、バッテリを冷却するためのシステムに関する。
本発明による冷却システムの一実施形態によれば、冷却組成物は、油ポンプ、流体交換器および空気交換器から選択される少なくとも1つの要素を循環する。
一実施形態によれば、冷却システムは、冷却組成物用の少なくとも1つの貯蔵タンクをさらに含む。
本発明による冷却システムの一実施形態によれば、バッテリはリチウム・イオン・バッテリである。
【0017】
本発明はさらに、バッテリ、優先的にはリチウム・イオン・バッテリを熱暴走に対して冷却および保護するための、本発明による冷却組成物の使用に関する。
好ましい実施形態によれば、バッテリは、電気またはハイブリッド車両、優先的には電気車両の推進システムに使用される。
本発明による使用の好ましい実施形態によれば、冷却組成物は、本発明で定義される冷却システムで使用される。
【0018】
別段指示しない限り、製品中の分量は、製品の総重量に対して、重量によって表現される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実験部のシミュレーションの枠組み内のバッテリセルの概略斜視図を表す。
図2】実験部のシミュレーションの枠組み内のバッテリセルおよび支持体(S)の斜視図を表す。
図3】実験部のシミュレーションの枠組み内のセルおよび支持体(S)を含む箱(B)の斜視図を表す。
図4】実験部のシミュレーションの枠組み内の箱Bの上面図を表す。
図5】実験部のシミュレーションの枠組み内の計算のための箱および寸法(D)の斜視図を表す。
図6】2つの流体および熱源の適用の2つの持続時間についての、経時的な不良セルの平均温度の進展を表す。
図7】2つの流体および熱源の適用の2つの持続時間についての、経時的な流体の平均温度の進展を表す。
図8】2つの流体および熱源の適用の2つの持続時間についての、経時的な隣接セルの平均温度の進展を表す。
図9】2つのセル間の4mmの空間についての2つの流体についての、経時的な不良セルの平均温度の進展を表す。
図10】2つのセル間の4mmの空間についての2つの流体についての、経時的な流体の平均温度の進展を表す。
図11】2つのセル間の4mmの空間についての2つの流体についての、経時的な隣接セルの平均温度の進展を表す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、電気またはハイブリッド車両の推進システムを熱暴走に対して冷却および保護するための組成物に関し、当該組成物は、少なくとも1つの基油を含み、125mW.m-1.K-1以下の30℃における熱伝導率を有する。
優先的には、冷却組成物は、120mW.m-1.K-1以下、優先的には115mW.m-1.K-1以下、より優先的には110mW.m-1.K-1以下の30℃における熱伝導率を有する。
熱伝導率は、例えばASTM D7896規格に従って測定される。
【0021】
[基油(ベースオイル)]
本発明に従って使用される冷却組成物は、冷却組成物の総重量に対して、優先的には、少なくとも70重量%、優先的には70~99重量%、より優先的には80~98重量%、優先的には85~95重量%の範囲の総含有量で、一種または複数種の基油を含む。
一実施形態によれば、冷却組成物は、冷却組成物の総重量に対して、100重量%の基油を含む。
そのような基油は、潤滑油の分野で従来使用されている基油、例えば合成もしくは天然の鉱物油、動物もしくは植物油またはそれらの混合物から選択することができる。
複数の基油の混合物、例えば2、3、または4つの基油の混合物が存在し得る。
本発明による冷却組成物に使用される基油は、特に、API分類(またはATIEL分類によるその等価物)によって定義され、以下の表1に示されるクラスによる、グループI~Vに属する鉱物油もしくは合成油、またはそれらの混合物であり得る。
【0022】
【表1】
【0023】
鉱物性の基油には、原油の常圧蒸留および真空蒸留、その後の溶媒抽出、脱れき、溶媒脱ろう、水素化処理、水素化分解、水素化異性化および水素化仕上げなどの精製操作によって得られる任意の種類の基油が含まれる。
生物供給されることができる合成油および鉱物油の混合物を、さらに使用することができる。
電気またはハイブリッド車両の推進システムでの使用に適した、特に粘度、粘度指数または耐酸化性に関する特性を組成物が有しなければならないことを除いて、本発明に従って使用される組成物を製造するための異なる基油の使用に関して一般に制限はない。
【0024】
本発明による組成物の基油は、合成油、例えば、2~8個の炭素原子、特に2~4個の炭素原子を含むアルキレンオキシドの重合または共重合によって得られる、カルボン酸およびアルコールのある特定のエステル、ポリアルファオレフィン(PAO)、およびポリアルキレングリコール(PAG:polyalkylene glycol)からさらに選択することができる。
【0025】
基油として使用されるPAOは、例えば、4~32個の炭素原子を含むモノマー、例えばオクテンまたはデセンから得られる。PAOの重量平均分子量は、かなり著しく変動し得る。優先的には、PAOの重量平均分子量は、600Da未満である。PAOの重量平均分子量はさらに、100~600Da、150~600Da、またはさらに200~600Daの範囲であり得る。
【0026】
好ましい実施形態によれば、本発明による組成物の基油は、ポリアルファオレフィン(PAO)、ポリアルキレングリコール(PAG)ならびにカルボン酸およびアルコールのエステル、シリコーン、エーテルから選択される。
【0027】
[追加の添加剤]
追加の添加剤を本発明の冷却組成物に使用することができる。添加剤としては、酸化防止剤、防食添加剤、消泡添加剤および流動点降下剤が挙げられる。
【0028】
特に好ましい実施形態によれば、本発明に従って使用される冷却組成物は、少なくとも1つの酸化防止添加剤を含む。
酸化防止添加剤は一般に、使用中の組成物の分解を遅延することを可能にする。そのような分解は、堆積物の形成、スラッジの存在、または組成物の粘度の増加で示されることが最も多い。
【0029】
酸化防止添加剤は、特に、ヒドロペルオキシドのラジカル阻害剤または破壊剤として作用する。通例使用される酸化防止添加剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止添加剤、リン硫黄系酸化防止添加剤が挙げられる。そのような酸化防止添加剤のいくつか、例えばリン硫黄系酸化防止添加剤は、灰(分)を生成する場合がある。フェノール系酸化防止添加剤は、灰(分)がない場合があり、または中性もしくは塩基性金属塩の形態である場合がある。酸化防止添加剤は、特に、立体障害性フェノール、立体障害性フェノールエステル、およびチオエーテル架橋を含む立体障害性フェノール、ジフェニルアミン、少なくとも1つのC1~C12アルキル基で置換されたジフェニルアミン、N,N´-ジアルキル-アリール-ジアミン、ならびにそれらの混合物から選択することができる。
【0030】
優先的には、本発明によれば、立体障害性フェノールは、フェノール基を含む化合物から選択され、それのアルコール機能(アルコール官能基)を有する炭素原子に隣接する炭素の少なくとも1つは、少なくとも1つのC~C10アルキル基、優先的にはC~Cアルキル基、優先的にはCアルキル基、優先的にはtert-ブチル基で置換される。
【0031】
アミン化合物は、任意的にフェノール系酸化防止添加剤と組み合わせて使用することができる、別のクラスの酸化防止添加剤である。アミン化合物の例は、芳香族アミン、例えば式NRを有する芳香族アミンあり、式中、Rは脂肪族基または任意的に置換された芳香族基を表し、Rは任意的に置換された芳香族基を表し、Rは水素原子、アルキル基、アリール基、または式RS(O)を有する基を表し、式中、Rはアルキレンまたはアルケニレン基を表し、Rはアルキル基、アルケニル基またはアリール基を表し、zは0、1または2である。
【0032】
硫黄アルキルフェノールまたはそのアルカリもしくはアルカリ土類金属塩は、酸化防止添加剤としてさらに使用することができる。
【0033】
別のクラスの酸化防止添加剤は、銅化合物のクラス、例えば、銅チオ-またはジチオ-ホスファート、銅塩およびカルボン酸塩、銅ジチオカルバマート、銅スルホナート、銅フェナート、銅アセチルアセトナートである。銅塩IおよびII、コハク酸塩または無水コハク酸塩も使用することができる。
【0034】
本発明に従って使用される冷却組成物は、当業者に知られている任意の種類の酸化防止剤をさらに含有することができる。
本発明に従って使用される冷却組成物は、組成物の総重量に対して、0.1~2重量%の少なくとも1つの酸化防止添加剤を含むことができる。
特定の実施形態によれば、本発明に従って使用される冷却組成物は、芳香族アミン型または立体障害性フェノール型の酸化防止添加剤がない。
【0035】
本発明に従って使用される冷却組成物は、少なくとも1つの防食添加剤(腐食防止添加剤)を含むことができる。
防食添加剤は、有利には、バッテリの金属部品の腐食を遅延または防止する。
本発明に従って使用される冷却組成物は、組成物の総重量に対して、0.01~2重量%または0.01~5重量%、優先的には0.1~1.5重量%または0.1~2重量%の防食剤を含むことができる。
【0036】
本発明に従って使用される冷却組成物は、少なくとも1つの消泡剤をさらに含むことができる。
消泡剤は、ポリアクリレート(ポリアクリル酸塩)から、又は更にはワックスから選択することができる。
本発明に従って使用される冷却組成物は、組成物の総重量に対して、0.01~2重量%または0.01~5重量%、優先的には0.1~1.5重量%または0.1~2重量%の消泡剤を含むことができる。
【0037】
本発明に従って使用される冷却組成物は、少なくとも1つの流動点降下(PPD:pour point depressant)添加剤をさらに含むことができる。
パラフィン結晶の形成を遅くすることにより、流動点降下添加剤は、一般に、低温条件下での組成物の挙動を改善する。流動点降下添加剤の例としては、アルキルポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアリールアミド、ポリアルキルフェノール、ポリアルキルナフタレン、アルキルポリスチレンが挙げられる。
【0038】
冷却組成物が潤滑システムで使用されるとき、本発明に従って使用される冷却組成物は、電気またはハイブリッド車両の推進システム用の潤滑剤において使用するのに適した任意の種類の添加剤をさらに含むこともでき、潤滑組成物と呼ぶことができる。
電気またはハイブリッド車両用の推進システムの潤滑の分野の当業者に知られているそのような添加剤は、摩擦調整剤、洗剤、耐摩耗添加剤、極圧添加剤、分散剤、およびそれらの混合物から選択することができる。
【0039】
本発明に従って使用される潤滑組成物は、少なくとも1つの摩擦調整添加剤を含むことができる。摩擦調整添加剤は、金属元素を提供する化合物および無灰化合物から選択することができる。金属元素を提供する化合物は、Mo、Sb、Sn、Fe、Cu、Znなどの遷移金属の錯体を含み、その配位子は、酸素、窒素、硫黄またはリン原子を含む炭化水素化合物であり得る。無灰摩擦調整添加剤は、一般に有機起源のものであり、脂肪酸およびポリオールモノエステル、アルコキシル化アミン、アルコキシル化脂肪アミン、脂肪エポキシド、脂肪エポキシドボラート(fatty epoxide borate)、脂肪アミン酸または脂肪酸グリセロールエステルから選択することができる。本発明によれば、脂肪族化合物は、10~24個の炭素原子を含む少なくとも1つの炭化水素部分を含む。
本発明に従って使用される潤滑組成物は、組成物の総重量に対して、0.01~2重量%または0.01~5重量%、優先的には0.1~1.5重量%または0.1~2重量%の摩擦調整添加剤を含むことができる。
【0040】
本発明に従って使用される潤滑組成物は、少なくとも1つの洗剤添加剤をさらに含むことができる。
洗剤添加剤は、一般に、酸化および燃焼副生成物を溶解することによって、金属部品の表面上の堆積物の形成を減少させる。
本発明に従って使用される潤滑組成物に使用することができる洗剤添加剤は、一般に当業者に知られている。洗剤添加剤は、長い親油性炭化水素鎖および親水性頭部を含む、アニオン性化合物であり得る。関連するカチオンは、アルカリまたはアルカリ土類金属の金属カチオンであり得る。
【0041】
洗剤添加剤は、優先的には、カルボン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、スルフオナート、サリチラート、ナフテナート、ならびにフェナート塩から選択される。アルカリ金属およびアルカリ土類金属は、優先的には、カルシウム、マグネシウム、ナトリウムまたはバリウムである。
そのような金属塩は、一般に、化学量論量または過剰量、すなわち化学量論量よりも高い濃度の金属を含む。そうすると、同じものが過塩基化洗剤である。過塩基化特性を洗剤添加剤に与える過剰の金属は、一般に、油不溶性金属塩、例えば、炭酸塩、水酸化物、シュウ酸塩、酢酸塩、グルタミン酸塩、優先的には炭酸塩の形態である。
【0042】
本発明に従って使用される潤滑組成物は、組成物の総重量に対して、2~4重量%の洗剤添加剤を含むことができる。
【0043】
また、本発明に従って使用される潤滑組成物は、少なくとも1つの分散剤を含むことができる。
分散剤は、マンニッヒ塩基、スクシンイミド、例えばポリイソブチレンスクシンイミドから選択することができる。
本発明に従って使用される潤滑組成物は、組成物の総重量に対して、0.2~10重量%の分散剤を含むことができる。
【0044】
本発明に従って使用される潤滑組成物は、少なくとも1つの耐摩耗剤および/または極圧剤をさらに含むことができる。
多種多様な耐摩耗添加剤がある。優先的には、本発明による潤滑組成物については、耐摩耗添加剤は、金属アルキルチオホスファート、特に亜鉛アルキルチオホスファート、より特定的には亜鉛ジアルキルジチオホスファートまたはZnDTPなどの、リン-硫黄添加剤から選択される。好ましい化合物は、式Zn((SP(S)(OR)(OR))を有し、式中、R et Rは、同一であるかまたは異なり、独立して、アルキル基、優先的には1~18個の炭素原子を含むアルキル基を表す。
【0045】
リン酸アミンも同様に、本発明による潤滑組成物に使用することができる耐摩耗添加剤である。しかしながら、このような添加剤によって提供されるリンは、それらが灰を生成し得るため、自動車の触媒系において毒として作用し得る。そのような効果は、リン酸アミンを、リンを運ばない添加剤、例えばポリスルフィド、特に硫黄含有オレフィンで部分的に置換することによって最小化することができる。
【0046】
本発明に従って使用される潤滑組成物は、組成物の総重量に対して、0.01~15%、優先的には0.1~10重量%、優先的には1~5重量%の耐摩耗剤を含むことができる。
【0047】
本発明に従って使用される潤滑組成物は、酸化防止剤の粘度指数(viscosity index)を改善する少なくとも1つの添加剤(VI改善剤)を含むことができる。VI改善剤の例としては、ポリメタクリレート、ポリイソブテンまたは脂肪酸エステルが挙げられる。存在するとき、そのような添加剤は、潤滑組成物の総重量の1~25重量%を占めることができる。
【0048】
有利には、本発明に適した組成物は、摩擦調整剤、粘度指数調整剤、洗剤、極圧添加剤、分散剤、酸化防止剤、防食添加剤、流動点降下剤、消泡剤およびそれらの混合物から選択される、少なくとも1つの追加の添加剤を含む。
【0049】
優先的には、本発明で使用される冷却組成物は、0.01重量%未満のハロカーボン化合物を含み、優先的には、本発明で使用される冷却組成物は、ハロカーボン化合物を含まない。
そのような添加剤は、別個に、ならびに/または、当業者に周知の欧州自動車工業会(ACEA:European Automobile Manufacturers Association)および/もしくは米国石油協会(API:American Petroleum Institute)によって定義される通りの性能レベルを有する車両エンジン用の商用の潤滑剤配合物のために既に販売中の添加剤と類似の混合物として導入することができる。
そのような組成物の配合に関して、当該追加の添加剤は、油にまたは基油の混合物に添加することができる。
【0050】
有利には、本発明による冷却組成物は、1.5~35mm/s、より具体的には2~25mm/s、さらには2.5~10mm/sの範囲の、規格ASTM D445による40℃で測定した動粘度を有する。
有利には、本発明に従って使用される冷却組成物は、0.5~7mm/s、より具体的には1~4mm/s、さらには1.5~2.5mm/sの範囲の、規格ASTM D445による100℃で測定した動粘度を有する。
【0051】
本発明による冷却組成物は、バッテリ、より具体的にはリチウム・イオン・バッテリのセルを冷却するために使用することができる。バッテリ、より具体的にはリチウム・イオン・バッテリは、電気またはハイブリッド車両、より具体的には電気車両の推進システムに使用することができる。
本発明に従って使用される冷却組成物は、組成物がバッテリ、より具体的にはリチウム・イオン・バッテリに使用されるときに、熱暴走の伝播を制限するか、またはさらには排除することを可能にする。より具体的には、バッテリは、電気またはハイブリッド車両、より具体的には電気車両の推進システムに使用することができる。
それにより、本発明による組成物は、熱暴走の伝播に対してバッテリ、より具体的にはリチウム・イオン・バッテリを冷却および/または保護するために使用することができる。より具体的には、バッテリは、電気またはハイブリッド車両、より具体的には電気車両の推進システムに使用することができる。
【0052】
典型的には、冷却組成物は、-40℃~+70℃の範囲の温度、優先的には0~30℃の範囲の温度で使用される。
【0053】
本発明によれば、特定の、有利なまたは好ましい、本発明による組成物の特徴は、同様に特定の、有利なまたは好ましい、本発明による使用を定義することを可能にする。
本発明による冷却組成物は、典型的には、電気またはハイブリッド車両、より具体的には電気車両の推進システムの冷却システムの循環ループを循環することができる。
好ましい実施形態によれば、本発明による冷却組成物は、電気またはハイブリッド車両、より具体的には電気車両の推進システムのバッテリを、熱暴走の伝播に対して冷却および/または保護するために使用される。
【0054】
一般に、複数のセルを含むバッテリの場合、熱暴走は、セルの損傷によって特性付けることができ(セルはその後「不良」と呼ばれる)、それは、その内部温度の増加をもたらし、それは、電解質内での発熱反応を生じさせ、それは、ガスの噴出、およびその化学反応からの、熱の形態のエネルギーの放出につながる可能性がある。
【0055】
分離されたセルの熱暴走は、しばしば隣接セルへの暴走の伝播をもたらす。実際、少なくとも90℃、またはさらには少なくとも100℃、またはさらには少なくとも120℃の温度に達するセルの温度の増加も、熱暴走を開始させる。
典型的には、セルは、その温度が100℃を越えて、またはさらには120℃を越えて上昇するとき、不良と呼ばれる。熱の増加は、時としてガスの噴出を伴う場合がある。
【0056】
したがって、本発明による冷却組成物は、バッテリの冷却システムの循環ループに使用することができる。
【0057】
本発明のバッテリ、優先的にはリチウム・イオン・バッテリは、-40℃~+70℃、優先的には0~30℃の範囲の温度で使用することができる。
暴走の場合、不良バッテリセルは、400~800℃のオーダーの温度に達する場合がある。
【0058】
本発明はさらに、バッテリ、より具体的にはリチウム・イオン・バッテリを冷却するためのシステムに関する。好ましい実施形態によれば、バッテリは、電気またはハイブリッド車両の推進システムに使用される。
【0059】
本発明による冷却システムは、本発明による冷却組成物が循環する、少なくとも1つの循環ループを含む。
典型的には、冷却システムは、油ポンプ、流体交換器(「チラー」とも呼ばれる、2つの流体間の熱交換器)、およびヒートポンプから選択される、少なくとも1つの要素を備える。それにより、一実施形態によれば、本発明による冷却組成物は、油ポンプ、チラーおよび空気交換器から選択される少なくとも1つの要素、優先的には油ポンプ、チラーおよび空気交換器から選択されるすべての要素を循環する。
本発明によって定義されるように、ヒートポンプは、加熱システムまたは冷凍システムと考えることができる。
【0060】
一般に、冷却システムは、冷却組成物用の貯蔵タンクをさらに含む。
冷却システムは、優先的には、通常の条件下で-40℃~+70℃、またはさらには0~+30℃の範囲の温度で使用される。
本発明による冷却システムは、電気またはハイブリッド車両、優先的には電気車両の推進システムに使用することができる、リチウム・イオン・バッテリなどのバッテリにおける熱暴走を制限、またはさらには防止することを可能にする。
【0061】
本発明はさらに、本発明による冷却システムにおける、例えば電気またはハイブリッド車両、優先的には電気車両の推進システムに使用される、リチウム・イオン・バッテリなどのバッテリを、熱暴走に対して冷却するためおよび/または保護するための本発明による冷却組成物の使用に関する。
【0062】
本発明はさらに、その別の態様によれば、本発明による冷却組成物と、当該バッテリの、少なくとも1つの部分との間での少なくとも1つの熱交換ステップを含む、バッテリ、優先的にはリチウム・イオン・バッテリを冷却するための方法に関する。典型的には、冷却プロセスは少なくとも1つのステップを含み、それにおいて、当該バッテリの、1つの部分は熱交換ステップによって冷却される。優先的には、方法は、少なくとも電気またはハイブリッド車両、優先的には電気車両の推進システムのバッテリにおいて、使用される。
【0063】
さらにその上、好ましい実施形態によれば、バッテリ、優先的にはリチウム・イオン・バッテリを冷却するための方法は、ハロカーボン化合物を使用しない。
【0064】
より特定的には、本発明によるバッテリを冷却するための方法は、冷却組成物の総重量に対して、優先的には、少なくとも70重量%の基油、優先的には70~100重量%の基油を含む、単一の冷却組成物を使用する。
【0065】
本発明はさらに、本発明による冷却組成物と、当該バッテリの、少なくとも1つの部分との間での熱交換の少なくとも1つのステップを含む、熱暴走に対してリチウム・イオン・バッテリなどのバッテリを保護するための方法に関する。優先的には、熱暴走に対する保護の方法は、電気またはハイブリッド車両、優先的には電気車両の推進システムのバッテリに使用される。典型的には、本発明による保護方法は、複数のセルを含む、バッテリに使用され、方法は、セルの暴走の少なくとも1つのステップと、隣接セルの温度が120℃を超えず、優先的には100℃を超えず、またはさらには90℃を超えない、1つのステップとを含む。
優先的には、方法は、本発明による冷却システムに使用される。
【0066】
さらにその上、好ましい実施形態によれば、バッテリを熱暴走に対して、優先的にはリチウム・イオン・バッテリを、保護するための方法は、ハロカーボン流体を使用しない。
【0067】
より特定的には、本発明による熱暴走に対してバッテリを保護する方法は、冷却組成物の総重量に対して、優先的には、少なくとも70重量%の基油、優先的には70~100重量%の基油を含む、単一の冷却組成物を使用する。
【0068】
本発明による冷却組成物およびその使用について記載されるすべての特徴および選好は、当該方法にも適用される。
【0069】
ここで、本発明は、言うまでもなく本発明の例示として与えられる、以下の事例(実施例)によって説明されるが、これに限定されない。
【実施例
【0070】
有限要素法に基づいて、電気車両バッテリにおける熱暴走を、シミュレーションソフトウェアであるCOMSOL MULTIPHYSICS(登録商標)5.4を使用してシミュレートした。
【0071】
モデル化されるバッテリは5つのセルを含み、各々が同一でかつ直方体形状を有し、変形可能でなく、以下の寸法のものである。
- 長さL(寸法x)=250mm、
- 幅l(寸法z)=198mm、および
- 厚さe(寸法y)=5mm。
図1は、セルの図を表す。
セルの特性は以下の通りである。
- 密度(密度):rho=2700kg/m
- 比熱容量:CP=900J/(kg.K)、
- 異方性熱伝導率:kxx=kzz=35W/(m.K)、kyy=0.8W/(m.K)。
【0072】
体積熱源が、第1のセル(熱暴走を経るセル)に適用される。そのような源は、不良セルの温度を10秒以内に約800℃(30℃の温度から始まる)まで高めるべく計算されている。使用される計算は以下の通りである。Q=rho×CP×温度差/暴走の持続時間。そこから、1.8711e8W/mの熱源値の一定値がもたらされる。
暴走が15秒続く場合において当該値は保たれ、したがって、不良セルは、そのような場合において、暴走が10秒続く場合よりも多くのエネルギーを受け取った(係数1.5)。
【0073】
このような試験において、熱伝導率の効果を評価した。それにより、当該パラメータのみが、以下の挙動規則を使用して、一方の流体(冷却組成物)から他方へ変更された。
- 熱伝導率110W/(m.K)を有する流体について、以下が使用される。
k=-0.21×T+116.35
- 熱伝導率140W/(m.K)を有する流体について、以下が使用される。
k=-0.21×T+146.35
【0074】
セル支持体の特性が、コポリエステルを表すように選択された。
- 密度:Rho=1130kg/m
- 比熱容量:CP=1600J/(kg.K)
- 等方性熱伝導率:k=0.19W/(m.K)
【0075】
図2は、支持体(S)の図を示す。
箱は、以下の外形寸法を有する。
- L=274mm、
- l=231mm
- e=64mm。
【0076】
図3は、セルおよび支持体を囲む、箱(B)の図を示す。
箱の壁は2mmの厚さを有する。
その特性は鋼に対応し、以下の通りである。
- 密度:Rho=7850kg/m
- 比熱容量:CP=475J/(kg.K)、
- 等方性熱伝導率:k=44.5W/(m.K)。
【0077】
図4は、以下を含む箱の上面図である。
- 5つのセル:C1、C2、C3、C4およびC5
- 各セル間の、流体で充填された4つの空間:F1、F2、F3、F4。
シミュレーション試験のために、セルC1は(熱源の適用によって)不良にされている。
【0078】
解決される問題のサイズを制限するために、シミュレーションモデルの幾何学的形状は、完全な幾何学的形状の左側部分に縮小されている。対称条件が断面に適用されている。結果として、実際にシミュレートされる幾何学的形状は、完全な幾何学的形状とは異なる。それにもかかわらず、熱源は体積によるやり方で適用され、箱は閉じられており(流体入口も出口もない)、そのような単純化は、シミュレートされる現象、および調査から導き出される結論に、質的な影響を及ぼさない。断面は、箱の左側の端から111.375mmの距離に位置付けられ、それを支持体の第2の部分のちょうど中央に位置付ける。
【0079】
図5は、計算のためのサイジング(D)を示す。領域(D)内で使用される流体の体積は、0.936リットルである。
【0080】
物理モデル化は、以下の要素によって特性付けられる。
- 流れを記述するナビエ・ストークス方程式と、流体中の熱伝達を表す熱方程式との間の、強い結合(すなわち、流れは移流項を介して熱伝達に影響し、熱的条件は温度への流体特性の依存を通じて流れに影響する)。
- 固体内の熱伝達を表すための、すべての固体内の熱方程式。
- 流体は非圧縮性と考えられる(密度への熱的条件の影響のみが考慮され、これはブシネスク近似である)。
- 第1のセルの熱暴走は、上述の熱源によってモデル化される。
- システムは閉じられた回路で動作し、流体は温度による密度の変化の効果によってのみ循環する。
- モデルの離散化に使用されるメッシュの数は、流体について1,377,265メッシュ、セルについて2,392,214メッシュ、箱について71,127メッシュ、支持体について1,324,894メッシュである。
【0081】
そのような試験では、流体が固体(セルまたは箱)と接触する各表面上の流体に、滑りなし条件が適用される。他方では、流体領域の上側表面は、接線速度が許容される、自由表面である。熱的観点からは、流体の自由表面および箱のすべての外部表面(下側表面を除く)は、交換係数h=10W/(m.K)で外気(それは30℃である)と熱交換する。箱は支持体上に置かれるのであり、流体と箱の底部との間に熱交換はないと考えられる。
【0082】
図6図7、および図8は、それぞれ、熱伝導率によってのみ区別される2つの流体についての、ならびに熱源の適用の2つの異なる持続時間10秒および15秒についての、不良セル(C1)の平均温度、流体の平均温度、隣接セル(C2)の平均温度を表す。3つの図に示す結果については、セルは5mmの空間によって分離されている。
【0083】
図6は、15秒の持続時間が、不良セルの温度のより大きな増加を引き起こし、熱暴走のより深刻な場合をシミュレートすることを可能にすることを示す。
【0084】
図7の結果によって示されるように、流体の平均温度は、本発明による冷却組成物が使用される場合、より低い。
【0085】
図8の結果によって示されるように、隣接セルの平均温度は、本発明による冷却組成物が使用されるとき、より低い。それにより、本発明による冷却組成物は、熱暴走の伝播を、最低でも制限するが、とりわけ防止することを可能にする。
【0086】
他の試験を行ったが、このとき、2つのセル間の空間は4mm、持続時間は15秒であった。2つのセル間のより小さい間隔は、熱暴走の伝播に対して、より助けになる。結果を図9(不良セルの平均温度)、図10(流体の平均温度)および図11(隣接セルの平均温度)に示す。
図10および図11の結果は、より厳しい条件、つまり4mmの間隔および不良セルのより高い加熱の下でさえ、熱暴走の伝播を冷却ならびに制限および防止することにおける、本発明による冷却組成物の効果を示す。
【符号の説明】
【0087】
(なし)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】