(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】ブレンステッド酸触媒ポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 23/26 20060101AFI20240517BHJP
C08K 3/24 20060101ALI20240517BHJP
C08K 3/016 20180101ALI20240517BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
C08L23/26
C08K3/24
C08K3/016
C08K3/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572820
(86)(22)【出願日】2022-06-06
(85)【翻訳文提出日】2023-11-24
(86)【国際出願番号】 US2022032374
(87)【国際公開番号】W WO2022261015
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】バーラト アイ.チャウダリー
(72)【発明者】
【氏名】カート エー.ボルツ ザ サード
(72)【発明者】
【氏名】ピーター シー.ドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ベンカータ クリシュナ サイ パップ
(72)【発明者】
【氏名】アルカディ エル.クラソフスキー
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB201
4J002DA026
4J002DA037
4J002DA056
4J002DE076
4J002DE146
4J002DE216
4J002DE266
4J002DJ016
4J002DJ046
4J002DJ056
4J002EJ056
4J002EV238
4J002EW046
4J002EW056
4J002FD020
4J002FD030
4J002FD050
4J002FD070
4J002FD090
4J002FD097
4J002FD136
4J002FD148
4J002GQ01
(57)【要約】
ポリマー組成物は、エチレンモノマー及びシランモノマーから誘導される単位を含む、エチレン-シランコポリマーであって、エチレン-シランコポリマーが、0.48mol%~1.00mol%の共重合シラン含有量を有する、エチレン-シランコポリマーと、ブレンステッド酸触媒と、難燃剤及びカーボンブラックのうちの1つ以上を含む、充填剤と、を含む。充填剤対触媒重量比は、75~1000である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物であって、
エチレンモノマー及びシランモノマーから誘導される単位を含む、エチレン-シランコポリマーであって、前記エチレン-シランコポリマーが、0.48mol%~1.00mol%の共重合シラン含有量を有する、エチレン-シランコポリマーと、
ブレンステッド酸触媒と、
難燃剤及びカーボンブラックのうちの1つ以上を含む、充填剤と、を含み、
充填剤対触媒重量比が、75~1000である、ポリマー組成物。
【請求項2】
前記充填剤が、難燃剤及びカーボンブラックの両方を含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記ブレンステッド酸触媒が、スルホン酸である、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記ブレンステッド酸触媒が、アリールスルホン酸である、請求項3に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記ポリマー組成物が、前記ポリマー組成物の総重量に基づいて、0.01重量%~0.50重量%のブレンステッド酸触媒を含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記シランが、ビニルトリメチルシロキサンである、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
前記エチレン-シランコポリマーの前記共重合シラン含有量が、0.55mol%~0.80mol%である、請求項6に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
前記充填剤対触媒重量比が、100~700である、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
前記充填剤対触媒重量比が、100~500である、請求項9に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
ケーブルであって、
導体と、
前記導体の周囲に配設された請求項1~9のいずれか一項に記載のポリマー組成物と、を含む、ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリマー組成物に関し、より具体的には、ブレンステッド酸触媒を含むポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
序論
エチレン-シランコポリマーは、水分架橋性ポリマー組成物の形成において使用される。そのようなポリマー組成物は、低電圧ケーブル構造を含むワイヤ及びケーブルを製作するために使用され、ケーブル用ジャケット又は電気絶縁体のいずれかとして利用され得る。エチレン-シランコポリマーを作製するためにエチレンと共重合されるシランコモノマーは、ポリマー組成物の架橋を容易にする。ポリマー組成物の架橋は、多くの場合、「硬化」と称される。コポリマーの共重合シラン含有量は、ポリマー組成物の所望の硬化レベルに応じて調整することができる。例えば、米国特許第8,460,770号(「’770特許」)は、エチレン-シランコポリマーが、0.5重量パーセント~5重量パーセントのシランコモノマーを含み得ることを開示している。
【0003】
エチレン-シランコポリマーを含むポリマー組成物は、典型的には、触媒を用いてポリマー組成物の硬化(架橋)を速める。利用され得る触媒の種類の1つの選択肢は、縮合硬化触媒である。ポリマー組成物に用いられる従来の縮合硬化触媒としては、ルイス酸又はブレンステッド酸が挙げられる。エチレン-シランコポリマーで作製されたポリマー組成物は、周囲条件(すなわち、23℃及び相対湿度50%)下で可能な限り速く硬化することが望ましい。このために、ブレンステッド酸は、周囲環境において硬化(架橋)を促進する際にルイス酸よりもはるかに有効であるため好ましい。硬化がどの程度迅速に起こるかについて一般的に使用される尺度は、ポリマー組成物が、周囲条件で硬化するときに、60%のホットクリープなどの固定のホットクリープレベルに達するまでの日数を測定することである。ホットクリープは、電力ケーブル絶縁材料に関する絶縁ケーブル技術者協会(Insulated Cable Engineers Association、ICEA)規格、ICEA-T-28-562-2003に基づいて、前述の試験方法によって、固定応力(例えば、0.2MPa)下で特定の温度(200℃又は150℃のいずれか)で測定される。共重合シラン含有量及び/又は触媒の量を増加させることによって、60%のホットクリープに達するのにかかる時間を減少させることができるが、経済的ではない場合があり、又は押出加工性の問題につながる場合がある。
【0004】
ポリマー組成物は、ポリマー組成物の特性を変更するために1つ以上の充填材料を含み得る。例えば、充填材料は、ポリマー組成物を難燃性にするための難燃剤、及びポリマー組成物に紫外線(「ultraviolet、UV」)耐性特性を提供するためのカーボンブラックを含み得る。難燃剤及びカーボンブラックなどの充填剤を含まないポリマー組成物において、ブレンステッド酸触媒は、ルイス酸よりも周囲条件下ではるかに速い架橋を生成することが知られている。しかしながら、充填剤を含むポリマー組成物は、反対の効果を呈する。ルイス酸触媒は、難燃剤及びカーボンブラック充填剤と相溶性であるが、ブレンステッド酸触媒は、充填剤の組み込みにより架橋性能の急激な低下を呈し、周囲条件で許容できないほど長い硬化時間をもたらす。例えば、‘770特許では、「充填剤が存在する場合、充填剤は、充填剤がさもないとシラン硬化反応を妨げかねない可能性があるいかなる傾向も防止又は遅延させる材料で被覆される」と説明している。しかしながら、充填剤が被覆されたとしても、その被覆が問題を必然的に軽減することになることは保証されない。
【0005】
ブレンステッド酸触媒及び充填剤(特に、被覆されていないもの)の明らかな不相溶性を考慮すると、充填剤及びブレンステッド酸触媒の両方を含む、向上した硬化速度を呈するポリマー組成物を発見することは驚くべきことであろう。
【発明の概要】
【0006】
本出願の発明者らは、驚くべきことに、充填剤及びブレンステッド酸触媒の両方を含む、周囲条件で向上した硬化速度を呈するポリマー組成物を発見した。
【0007】
本発明は、0.48mol%~1.00mol%の共重合シラン含有量を有するエチレン-シランコポリマーを利用することにより、硬化速度をほとんど又は全く低下させることなく、ブレンステッド酸触媒及び充填剤を使用することが可能になることを発見した結果である。驚くべきことに、0.48mol%~1.00mol%の共重合シラン含有量を有するエチレン-シランコポリマーと組み合わせて75~1000の充填剤対触媒重量比を用いることによって、充填剤の組み込みにもかかわらず、硬化の加速がもたらされる。そのような結果は、より短い周囲条件硬化時間を可能にして硬化プロセスに関連するコストを低減すると同時に、様々な追加の特性をポリマー組成物に付与することも可能にするという点で有利である。
【0008】
本発明は、ワイヤ及びケーブルの製造において特に有用である。
【0009】
本開示の第1の特徴によれば、ポリマー組成物は、エチレンモノマー及びシランモノマーから誘導される単位を含む、エチレン-シランコポリマーであって、エチレン-シランコポリマーが、0.48mol%~1.00mol%の共重合シラン含有量を含む、エチレン-シランコポリマーと、ブレンステッド酸触媒と、難燃剤及びカーボンブラックのうちの1つ以上を含む、充填剤と、を含む。充填剤対触媒重量比は、75~1000である。
【0010】
本開示の第2の特徴によれば、充填剤は、難燃剤及びカーボンブラックの両方を含む。
【0011】
本開示の第3の特徴によれば、ブレンステッド酸触媒は、スルホン酸である。
【0012】
本開示の第4の特徴によれば、ブレンステッド酸触媒は、アリールスルホン酸である。
【0013】
本開示の第5の特徴によれば、ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、0.01重量%~0.50重量%のブレンステッド酸触媒を含む。
【0014】
本開示の第6の特徴によれば、シランは、ビニルトリメチルシロキサンである。
【0015】
本開示の第7の特徴によれば、エチレン-シランコポリマーの共重合シラン含有量は、0.55mol%~0.80mol%である。
【0016】
本開示の第8の特徴によれば、充填剤対触媒重量比は、100~700である。
【0017】
本開示の第9の特徴によれば、充填剤対触媒重量比は、100~500である。
【0018】
本開示の第10の特徴によれば、ケーブルは、導体と、導体の周囲に配設された本開示のポリマー組成物と、を含む。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語は、2つ以上の項目の列挙で使用される場合、列挙された項目のうちのいずれか1つをそれ自体で用いることができるか、又は列挙された項目のうちの2つ以上の任意の組み合わせを用いることができることを意味する。例えば、組成物が成分A、B、及び/又はCを含有するものとして説明されている場合、組成物は、Aを単独で、Bを単独で、Cを単独で、A及びBを組み合わせて、A及びCを組み合わせて、B及びCを組み合わせて、又はA、B、及びCを組み合わせて、含有することができる。
【0020】
別途記載のない限り、全ての範囲は、終点を含む。
【0021】
試験方法は、試験方法番号でハイフン付きの2桁の数字で日付が示されていない限り、この文書の優先日における最新の試験方法を指す。試験方法への言及は、試験の協会及び試験方法番号への参照の両方を含む。試験方法組織は、以下の略語のうちの1つによって参照され、ASTMは、ASTMインターナショナル(ASTM International)(旧称、米国材料試験協会(American Society for Testing and Materials))を指し、ENは、欧州規格(European Norm)を指し、DINは、ドイツ規格協会(Deutsches Institut fur Normung)を指し、ISOは、国際標準化機構(International Organization for Standards)を指す。
【0022】
本明細書で使用される場合、重量パーセント(「重量%」)という用語は、別途明記しない限り、成分が、ポリマー組成物の総重量に占める重量パーセンテージを示す。
【0023】
本明細書で使用される場合、「CAS番号」は、ケミカル・アブストラクツ・サービス(Chemical Abstracts Service)によって割り当てられたケミカルサービス登録番号である。
【0024】
本明細書で使用される場合、「周囲条件」という用語は、5℃~50℃の温度及び5%~100%の相対湿度を有する空気雰囲気である。
【0025】
ポリマー組成物
ポリマー組成物は、エチレン-シランコポリマー、ブレンステッド酸触媒、及び充填剤を含む。ポリマー組成物は、75~1000の充填剤対触媒重量比を有する。
【0026】
エチレン-シランコポリマー
エチレン-シランコポリマーは、エチレンモノマー及びシランモノマーから誘導される単位を含む。「コポリマー」とは、異なる種類のモノマーを反応(すなわち、重合)させることによって調製される高分子化合物を意味する。エチレン-シランコポリマーは、エチレンとシランモノマーとの共重合によって調製される。
【0027】
ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、10重量%以上、又は15重量%以上、又は20重量%以上、又は25重量%以上、又は30重量%以上、又は35重量%以上、又は40重量%以上、又は45重量%以上、又は50重量%以上、又は55重量%以上、又は60重量%以上、又は65重量%以上、又は70重量%以上、又は75重量%以上、又は80重量%以上、又は85重量%以上、一方で同時に、又は98重量%以下、又は95重量%以下、又は90重量%以下、又は85重量%以下、又は80重量%以下、又は75重量%以下、又は70重量%以下、又は65重量%以下、又は60重量%以下、又は55重量%以下、又は50重量%以下、又は45重量%以下のエチレン-シランコポリマーを含み得る。
【0028】
エチレン-シランコポリマーは、ASTM D792により測定される場合に、1立方センチメートル当たり0.910グラム(「g/cc」)以上、又は0.915g/cc以上、又は0.920g/cc以上、又は0.921g/cc以上、又は0.922g/cc以上、又は0.925g/ccから0.930g/cc以上、又は0.935g/cc以上、一方で同時に、0.940g/cc以下、又は0.935g/cc以下、又は0.930g/cc以下、又は0.925g/cc以下、又は0.920g/cc以下、又は0.915g/cc以下の密度を有する。
【0029】
エチレン-シランコポリマーは、フーリエ変換赤外(Fourier-Transform Infrared、FTIR)分光を使用して測定される場合に、90重量%以上、又は91重量%以上、又は92重量%以上、又は93重量%以上、又は94重量%以上、又は95重量%以上、又は96重量%以上、又は96.5重量%以上、又は97重量%以上、又は97.5重量%以上、又は98重量%以上、又は99重量%以上、一方で同時に、99.5重量%以下、又は99重量%以下、又は98重量%以下、又は97重量%以下、又は96重量%以下、又は95重量%以下、又は94重量%以下、又は93重量%以下、又は92重量%以下、又は91重量%以下のα-オレフィンを含む。α-オレフィンは、C2、又はC3~C4、又はC6、又はC8、又はC10、又はC12、又はC16、又はC18、又はC20α-オレフィン、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、及び1-オクテンを含み得る。シラン官能化ポリオレフィンの他の単位は、不飽和エステルを含むがこれらに限定されない、1つ以上の重合性モノマーから誘導され得る。不飽和エステルは、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、又はカルボン酸ビニルであり得る。アルキル基は、1~8個の炭素原子又は1~4個の炭素原子を有することができる。カルボキシレート基は、2~8個の炭素原子又は2~5個の炭素原子を有することができる。アクリレート及びメタクリレートの例としては、エチルアクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、t-ブチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、及び2エチルヘキシルアクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。ビニルカルボキシレートの例としては、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、及びビニルブタノアートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
エチレン-シランコポリマーは、0.48mol%~1.00mol%の共重合シランを含み得る。例えば、エチレン-シランコポリマーは、エチレン-シランコポリマーの総モルに基づいて、0.48mol%以上、又は0.50mol%以上、又は0.55mol%以上、又は0.60mol%以上、又は0.65mol%以上、又は0.70mol%以上、又は0.75mol%以上、又は0.80mol%以上、又は0.85mol%以上、又は0.90mol%以上、又は0.95mol%以上、一方で同時に、1.00mol%以下、又は0.95mol%以下、又は0.90mol%以下、又は0.85mol%以下、又は0.80mol%以下、又は0.75mol%以下、又は0.70mol%以下、又は065mol%以下、又は0.60mol%以下、又は0.55mol%以下、又は0.50mol%以下の共重合シランを含み得る。エチレン-シランコポリマー中に存在する共重合シランの含有量は、以下でより詳細に説明されるシラン試験によって決定される。
【0031】
エチレン-シランコポリマーを作製するために使用されるシランコモノマーは、加水分解性シランモノマーであり得る。「加水分解性シランモノマー」は、α-オレフィン(例えば、エチレン)と有効に共重合してα-オレフィン/シランコポリマー(エチレン/シラン反応器コポリマーなど)を形成する、シラン含有モノマーである。加水分解性シランモノマーは、以下の構造(I)を有し、
【0032】
【化1】
式中、R
1は、水素原子又はメチル基であり、xは、0又は1であり、nは、1~4、又は6、又は8、又は10、又は12の整数であり、各R
2は、独立して、加水分解性有機基、例えば、1~12個の炭素原子を有するアルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、ブトキシ)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ)、アラルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ)、1~12個の炭素原子を有する脂肪族アシルオキシ基(例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、プロパノイルオキシ)、アミノ基若しくは置換アミノ基(例えば、アルキルアミノ、アリールアミノ)、又は1~6個の炭素原子を有する低級アルキル基であるが、但し、3つのR
2基のうちの1つ以下がアルキルであることを条件とする。加水分解性シランモノマーは、高圧プロセスなどの反応器内でα-オレフィン(エチレンなど)と共重合して、α-オレフィン-シラン反応器コポリマーを形成し得る。α-オレフィンがエチレンである例では、そのようなコポリマーは、本明細書ではエチレン-シランコポリマーと称される。
【0033】
加水分解性シランモノマーは、ビニル、アリル、イソプロペニル、ブテニル、シクロヘキセニル、又はガンマ(メタ)アクリロキシアリル基などのエチレン性不飽和ヒドロカルビル基、及び例えば、ヒドロカルビルオキシ、ヒドロカルボニルオキシ、又はヒドロカルビルアミノ基などの加水分解性基を含む、シランモノマーを含み得る。加水分解性基は、メトキシ、エトキシ、ホルミルオキシ、アセトキシ、プロプリオニルオキシ、及びアルキル又はアリールアミノ基を含み得る。特定の例では、加水分解性シランモノマーは、不飽和アルコキシシランであり、これは、ポリオレフィン上にグラフト化することができるか、又は反応器内でα-オレフィン(エチレンなど)と共重合することができる。加水分解性シランモノマーの例としては、ビニルトリメトキシシラン(vinyltrimethoxysilane、「VTMS」)、ビニルトリエトキシシラン(vinyltriethoxysilane、「VTES」)、ビニルトリアセトキシシラン、及びガンマ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。構造(I)に関連して、VTMSについては、x=0、R1=水素、及びR2=メトキシ、VTESについては、x=0、R1=水素、及びR2=エトキシ、並びにビニルトリアセトキシシランについては、x=0、R1=H、及びR2=アセトキシである。
【0034】
エチレン系ポリマー
ポリマー組成物は、1つ以上のエチレン系ポリマーを含み得る。本明細書で使用される場合、「エチレン系」ポリマーは、どの単位もシランモノマーから誘導されず、かつモノマーの50重量%超がエチレンであるが他のコモノマーも用いられ得る、ポリマーである。エチレン系ポリマーは、エチレンと、プロピレン、1-ブテン、1ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、及び1-オクテンなどの1つ以上のC3~C20α-オレフィンコモノマーと、を含むことができる。エチレン系ポリマーは、単峰性又は多峰性の分子量分布を有することができ、単独で、又は1つ以上の他の種類のエチレン系ポリマーと組み合わせて(例えば、モノマーの組成及び含有量、触媒の調製法、分子量、分子量分布、密度などが互いに異なる2つ以上のエチレン系ポリマーのブレンド)使用することができる。エチレン系ポリマーのブレンドが用いられる場合、ポリマーは、任意の反応器内プロセス又は反応器後プロセスによってブレンドされ得る。
【0035】
エチレン系ポリマーは、核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance、NMR)又はフーリエ変換赤外(FTIR)分光法を使用して測定される場合に、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、85重量%以上、90重量%以上、又は91重量%以上、又は92重量%以上、又は93重量%以上、又は94重量%以上、又は95重量%以上、又は96重量%以上、又は97重量%以上、又は97.5重量%以上、又は98重量%以上、又は99重量%以上、一方で同時に、100重量%以下、99.5重量%以下、又は99重量%以下、又は98重量%以下、又は97重量%以下、又は96重量%以下、又は95重量%以下、又は94重量%以下、又は93重量%以下、又は92重量%以下、又は91重量%以下、又は90重量%以下、又は85重量%以下、又は80重量%以下、又は70重量%以下、又は60重量%以下のエチレンを含み得る。エチレン系ポリマーの他の単位としては、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、及び1-オクテンなどの、C3、又はC4、又はC6、又はC8、又はC10、又はC12、又はC16、又はC18、又はC20α-オレフィンが挙げられ得る。
【0036】
ポリマー組成物は、0重量%~60重量%のエチレン系ポリマーを含み得る。例えば、ポリマー組成物は、0重量%以上、又は5重量%以上、又は10重量%以上、又は15重量%以上、又は20重量%以上、又は25重量%以上、又は30重量%以上、又は35重量%以上、又は40重量%以上、又は45重量%以上、又は50重量%以上、又は55重量%以上、一方で同時に、60重量%以下、又は55重量%以下、又は50重量%以下、又は45重量%以下、又は40重量%以下、又は35重量%以下、又は30重量%以下、又は25重量%以下、又は20重量%以下、又は15重量%以下、又は10重量%以下、又は5重量%以下のエチレン系ポリマーを含む。
【0037】
充填剤
ポリマー組成物は、充填剤を含む。充填剤は、150℃までの温度で溶融又は分解し得ない固体である。充填剤は、難燃剤(例えば、ハロゲン化又はハロゲンフリー)、三酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛、炭酸亜鉛、炭酸水酸化亜鉛、水和ホウ酸亜鉛、リン酸亜鉛、スズ酸亜鉛、ヒドロスズ酸亜鉛、硫化亜鉛、酸化亜鉛、カーボンブラック、有機粘土、三水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、ハイドロマグネサイト、ハンタイト、ハイドロタルサイト、ベーマイト、炭酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、水酸化カルシウム、硫酸カルシウム、シリカ、タルク、及びそれらの組み合わせのうちの1つ以上を含む(が、これらに限定されない)。ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、1重量%以上、又は3重量%以上、又は5重量%以上、又は10重量%以上、又は15重量%以上、又は20重量%以上、又は25重量%以上、又は30重量%以上、又は35重量%以上、又は40重量%以上、又は45重量%以上、又は50重量%以上、又は55重量%以上、又は60重量%以上、又は65重量%以上、又は70重量%以上、又は75重量%以上、一方で同時に、80重量%以下、又は75重量%以下、又は70重量%以下、又は65重量%以下、又は60重量%以下、又は55重量%以下、又は50重量%以下、又は45重量%以下、又は40重量%以下、又は35重量%以下、又は30重量%以下、又は25重量%以下、又は20重量%以下、又は15重量%以下、又は10重量%以下、又は5重量%以下、又は3重量%以下の充填剤含有量(すなわち、上述の全ての充填剤の総重量%)を含み得る。
【0038】
ハロゲン化難燃剤の例としては、ヘキサハロジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)オクタハロジフェニルエーテル、デカハロジフェニルエーテル、デカハロビフェニルエタン、1,2-ビス(トリハロフェノキシ)エタン、1,2-ビス(ペンタハロフェノキシ)エタン、ヘキサハロシクロドデカン、テトラハロビスフェノール-A、エチレン(N,N′)-ビス-テトラハロフタルイミド、テトラハロ無水フタル酸、ヘキサハロベンゼン、ハロゲン化インダン、ハロゲン化リン酸エステル、ハロゲン化パラフィン、ハロゲン化ポリマー、ハロゲン化ポリスチレン、並びにハロゲン化ビスフェノール-A及びエピクロルヒドリンのポリマー、又はそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。特に望ましいハロゲン化難燃剤は、50重量パーセント超、又は60重量パーセント超、又は70重量パーセント超の臭素含有量を有する臭素化芳香族化合物である。非常に有用な実施形態では、ハロゲン化難燃剤は、デカブロモジフェニルエーテル又はデカブロモジフェニルエタン又はエチレンビス-テトラブロモフタルイミドである。ハロゲンフリー難燃剤の例としては、金属水和物、金属炭酸塩、赤リン、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン、カーボンナノチューブ、タルク、粘土、有機改質粘土、炭酸カルシウム、珪灰石、マイカ、オクタモリブデン酸アンモニウム、フリット、中空ガラス微小球、膨張性化合物、膨張グラファイト、及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0039】
ブレンステッド酸触媒
ポリマー組成物は、ブレンステッド酸触媒を含む。ブレンステッド酸触媒は、水素カチオン(プロトン、H+)を失うか、又は「供与する」ことができる分子又はイオンである任意の酸を含む。ブレンステッド酸触媒は、6以下のpKaを有し得る。例示的なブレンステッド酸触媒としては、スルホン酸、カルボン酸、及びリン酸が挙げられる。スルホン酸は、アルキルスルホン酸、アリールスルホン酸、アルキルアリールスルホン酸、又はアリールアルキルスルホン酸であり得る。スルホン酸は、式RSO3Hのものであり得、式中、Rは、(C1~C10)アルキル、(C6~C10)アリール、(C1~C10)アルキル置換(C6~C10)アリール、又は(C6~C10)アリール置換(C1~C10)アルキルである。スルホン酸は、疎水性スルホン酸であり得、24時間後、23℃で0から0.1g/mL未満のpH7.0蒸留水での溶解度を有するスルホン酸であり得る。例示的なスルホン酸としては、アルキルベンゼンスルホン酸(例えば、4-メチルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、又はジアルキルベンゼンスルホン酸)、ナフタレンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、メタンスルホン酸、及びベンゼンスルホン酸が挙げられる。スルホン酸は、炭素原子、水素原子、1つの硫黄原子、及び3つの酸素原子からなり得る。一実施形態では、スルホン酸は、米国特許出願公開第2016/0251535(A1)号に定義されているとおり、ブロックされたスルホン酸であり得、これは、式RSO3Hのスルホン酸を原位置生成する化合物であり、式中、Rは、任意選択的に水分又はアルコールの存在下で、それを加熱したときに、上記に定義されたとおりである。ブロックされたスルホン酸の例としては、アミン-スルホン酸塩及びスルホン酸アルキルエステルが挙げられる。ブロックされたスルホン酸は、炭素原子、水素原子、1つの硫黄原子、及び3つの酸素原子、並びに任意選択的に窒素原子からなり得る。例示的なカルボン酸としては、安息香酸及びギ酸が挙げられる。例示的な酸触媒は、King Industries Specialty Chemicalsから商品名NACURE(商標)酸触媒で入手可能である。そのような酸触媒の市販の例としては、NACURE(商標)155スルホン酸触媒、NACURE(商標)1051スルホン酸触媒、NACURE(商標)CD-2120疎水性スルホン酸触媒、及びNACURE(商標)CD-2180疎水性スルホン酸触媒が挙げられる。更に、米国特許出願公開第2011/0171570号に開示されているNACURE(商標)材料(全てKing Industriesの製品)は、様々な解離温度を有するブロックされたスルホン酸の例である。市販のブロックされたスルホン酸の例としては、キシレン/4-メチル-2-ペンタノン中の共有結合的にブロックされたジノニルナフタレンスルホン酸の30%溶液である、NACURE(商標)1419(King Industriesの製品)、及びキシレン中の共有結合的にブロックされたドデシルベンゼンスルホン酸の25%溶液である、NACURE(商標)5414(King Industriesの製品)が挙げられる。
【0040】
ブレンステッド酸触媒は、典型的には、ブレンステッド酸触媒が最終溶融押出プロセス中に存在するように、押出機においてポリマー組成物に(ケーブル製造中などに)添加される。このように、ポリマー組成物は、ポリマー組成物が押出機を出る前にいくらかの架橋を経験し得、ポリマー組成物が押出機を出た後、典型的には水分(例えば、サウナ、湯浴、若しくは冷却浴)及び/又はポリマー組成物が保管、輸送、若しくは使用される環境に存在する湿気に曝されるときに、架橋が完了する。
【0041】
ブレンステッド酸触媒は、触媒マスターバッチが組成物に含まれた状態で、触媒マスターバッチブレンドに含まれ得る。好適な触媒マスターバッチの非限定的な例としては、SI-LINK(商標)AC DFDA-5488 NT及びSI-LINK(商標)AC DFDB-5418 BKを含む、The Dow Chemical CompanyからSI-LINK(商標)の商品名で販売されるものが挙げられる。
【0042】
ポリマー組成物は、ポリマー組成物の重量に基づいて、0.01重量%以上、又は0.02重量%以上、又は0.04重量%以上、又は0.06重量%以上、又は0.08重量%以上、又は0.10重量%以上、又は0.12重量%以上、又は0.14重量%以上、又は0.16重量%以上、又は0.18重量%以上、又は0.20重量%以上、又は0.22重量%以上、又は0.24重量%以上、又は0.26重量%以上、又は0.28重量%以上、一方で同時に、1.0重量%以下、又は0.80重量%以下、又は0.60重量%以下、又は0.50重量%以下、又は0.40重量%以下、又は0.30重量%以下、又は0.28重量%以下、又は0.26重量%以下、又は0.24重量%以下、又は0.22重量%以下、又は0.20重量%以下、又は0.18重量%以下、又は0.16重量%以下、又は0.14重量%以下、又は0.12重量%以下、又は0.10重量%以下、又は0.08重量%以下、又は0.06重量%以下、又は0.04重量%以下、又は0.02重量%以下の量で、ブレンステッド酸触媒を含む。
【0043】
充填剤対触媒重量比
ポリマー組成物は、75~1000の充填剤対触媒重量比を有する。充填剤対触媒重量比は、ポリマー組成物中に存在する全ての組み合わされた充填剤の総重量%を、ポリマー組成物中のブレンステッド酸触媒の総重量%で除算することによって計算される。充填剤対触媒重量比は、75以上、又は100以上、又は150以上、又は200以上、又は250以上、又は300以上、又は350以上、又は400以上、又は450以上、又は500以上、又は550以上、又は600以上、又は650以上、又は700以上、又は750以上、又は800以上、又は850以上、又は900以上、又は950以上、一方で同時に、1000以下、又は950以下、又は900以下、又は850以下、又は800以下、又は750以下、又は700以下、又は650以下、又は600以下、又は550以下、又は500以下、又は450以下、又は400以下、又は350以下、又は300以下、又は250以下、又は200以下、又は150以下、又は100以下である。
【0044】
添加剤
ポリマー組成物は、1つ以上の添加剤を含み得る。好適な添加剤の非限定的な例としては、酸化防止剤、水分捕捉剤(加水分解性シランモノマーを含む)、着色剤(充填剤として既に含まれているカーボンブラック以外)、腐食防止剤、潤滑剤、紫外線(ultraviolet、UV)吸収剤又は安定剤、ブロッキング防止剤、相溶化剤、可塑剤、加工助剤、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0045】
ポリマー組成物は、酸化防止剤を含み得る。好適な酸化防止剤の非限定的な例としては、フェノール系酸化防止剤、チオ系酸化防止剤、リン酸系酸化防止剤、及びヒドラジン系金属不活性化剤が挙げられる。好適なフェノール系酸化防止剤としては、高分子量ヒンダードフェノール、メチル置換フェノール、一級又は二級カルボニルを有する置換基を有するフェノール、並びに硫黄及びリン含有フェノールなどの多官能フェノールが挙げられる。代表的なヒンダードフェノールとしては、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ペンタエリスリチルテトラキス-3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、n-オクタデシル-3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’-メチレンビス(2,6-tert-ブチル-フェノール)、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-o-クレゾール)、2,6-ジ-tertブチルフェノール、6-(4-ヒドロキシフェノキシ)-2,4-ビス(n-オクチル-チオ)-1,3,5トリアジン、ジ-n-オクチルチオ)エチル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンゾエート、及びソルビトールヘキサ[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-フェニル)-プロピオネート]が挙げられる。一実施形態では、組成物は、BASFからIrganox(商標)1010として市販されているペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)を含む。好適なメチル置換フェノールの非限定的な例は、イソブチリデンビス(4,6-ジメチルフェノール)である。好適なヒドラジン系金属不活性化剤の非限定的な例は、オキサリルビス(ベンジリデンヒドラジド)である。一実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、0重量%、又は0.001重量%、又は0.01重量%、又は0.02重量%、又は0.05重量%、又は0.1重量%、又は0.2重量%、又は0.3重量%、又は0.4重量%から0.5重量%、又は0.6重量%、又は0.7重量%、又は0.8重量%、又は1.0重量%、又は2.0重量%、又は2.5重量%、又は3.0重量%の酸化防止剤を含有する。
【0046】
ポリマー組成物は、紫外線(UV)吸収剤又は安定剤を含み得る。好適なUV安定剤の非限定的な例は、ヒンダードアミン光安定剤(hindered amine light stabilizer、HALS)である。好適なHALSの非限定的な例は、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン、N、N-1,2-エタンジイルビス-N-3-4,6-ビスブチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノプロピル-N,N-ジブチル-N,N-ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)-1,5,8,12-テトラキス[4,6-ビス(n-ブチル-n-1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルアミノ)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-1,5,8,12-テトラアザドデカンである(これは、SABO S.p.A(Levate,Italy)からSABO(商標)STAB UV-119として市販されている)。一実施形態では、組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、0重量%、又は0.001重量%、又は0.002重量%、又は0.005重量%、又は0.006重量%から0.007重量%、又は0.008重量%、又は0.009重量%、又は0.01重量%、又は0.2重量%、又は0.3重量%、又は0.4重量%、又は0.5重量%、1.0重量%、又は2.0重量%、又は2.5重量%、又は3.0重量%までのUV吸収剤又は安定剤を含有する。
【0047】
ポリマー組成物は、加工助剤を含み得る。好適な加工助剤の非限定的な例としては、油、ポリジメチルシロキサン、有機酸(ステアリン酸など)、及び有機酸の金属塩(ステアリン酸亜鉛など)が挙げられる。一実施形態では、ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、0重量%、又は0.01重量%、又は0.02重量%、又は0.05重量%、又は0.07重量%、又は0.1重量%、又は0.2重量%、又は0.3重量%、0.4重量%から0.5重量%、又は0.6重量%、又は0.7重量%、又は0.8重量%、又は1.0重量%、又は2.0重量%、又は2.5重量%、又は3.0重量%、又は5.0重量%、又は10.0重量%までの加工助剤を含有する。
【0048】
一実施形態では、ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、0重量%、又は0重量%超、又は0.001重量%、又は0.002重量%、又は0.005重量%、又は0.006重量%から0.007重量%、又は0.008重量%、又は0.009重量%、又は0.01重量%、又は0.2重量%、又は0.3重量%、又は0.4重量%、又は0.5重量%、1.0重量%、又は2.0重量%、又は2.5重量%、又は3.0重量%、又は4.0重量%、又は5.0重量%~6.0重量%、又は7.0重量%、又は8.0重量%、又は9.0重量%、又は10.0重量%、又は15.0重量%、又は20.0重量%、又は30重量%、又は40重量%、又は50重量%の添加剤を含有する。
【0049】
充填剤を例とする成分中に存在する又は成分に付随する水分によって引き起こされ得るスコーチの可能性を低減又は排除するために、成分若しくはマスターバッチのうちの1つ以上が調合若しくは押出前に乾燥され得るか、又は成分若しくはマスターバッチの混合物が調合若しくは押出後に乾燥される。組成物は、長い貯蔵寿命のために、触媒の非存在下で調製され得、触媒は、押出プロセスによるケーブル構造の調製における最終工程として添加され得る。代替的に、触媒は、マスターバッチの形態で1つ以上の他の成分と組み合わされ得る。
【0050】
被覆導体
本開示はまた、被覆導体を提供する。被覆導体は、導体と、導体上の被覆とを含み、被覆は、ポリマー組成物を含む。ポリマー組成物は、導体の周囲に少なくとも部分的に配設されて、被覆導体を生産する。
【0051】
被覆導体を生産するためのプロセスは、押出機においてポリマー組成物を混合し、エチレン-シランコポリマーの少なくとも溶融温度まで加熱することと、次いでポリマー溶融ブレンドを導体上に被覆することと、を含む。「上に」という用語は、ポリマー溶融ブレンドと導体との間の直接接触又は間接接触を含む。ポリマー溶融ブレンドは、押出可能な状態にある。
【0052】
ポリマー組成物は、導体の上及び/又は周囲に配設されて、被覆を形成する。被覆は、絶縁層などの1つ以上の内層であり得る。被覆は、導体を全体的に若しくは部分的に覆うか、又はそうでなければ取り囲むか、若しくは包み得る。被覆は、導体を取り囲む唯一の構成要素であり得る。代替的に、被覆は、金属導体を包む多層ジャケット又はシースのうちの1層であり得る。被覆は、導体と直接接触し得る。被覆は、導体を取り囲む絶縁層に直接接触し得る。
【0053】
得られた被覆導体(ケーブル)は、被覆が所望の程度の架橋に達するように、十分な長さの時間、湿潤条件で硬化される。硬化中の温度は、一般に0℃超である。一実施形態では、ケーブルは、90℃の水浴中で少なくとも4時間硬化(エージング)される。一実施形態では、ケーブルは、空気雰囲気を含む周囲条件で最大30日間硬化(エージング)され、周囲条件は、上で定義されたとおりである。
【0054】
一実施形態では、ポリマー組成物は、14 AWG導体(直径:1.63mm)上に0.762mmの厚さで被覆され、被覆導体が23℃及び相対湿度50%の周囲条件で硬化されるとき、14日以内(又は12日以内、又は10日以内、又は8日以内、又は7日以内、又は6日以内、又は5日以内、又は4日以内、又は3日以内、又は2日以内、又は1日以内)に60%のホットクリープを達成する。
【実施例】
【0055】
試験方法
密度:密度は、ASTM D792、方法Bに従って測定される。結果は、g/ccで記録される。
【0056】
メルトインデックス:メルトインデックス(Melt index、MI)は、ASTM D1238、条件190℃/2.16キログラム(kg)重量に従って測定され、10分当たりに溶出されるグラム(g/10分)で報告される。
【0057】
シラン試験:X線蛍光分光法(x-ray fluorescence spectroscopy、「XRF」)を使用して、エチレン-シランコポリマーの試験試料のケイ素原子(Si)含有量の重量パーセント(重量%)を決定し、次いでエチレン-シランコポリマーの試験試料におけるシランコモノマー単位重量%を計算する。115.6℃(華氏240度(°F))で3分間予熱しているBuehler SimpliMet 300自動マウンティングプレスを使用して、粉末形態の試験試料を8.3メガパスカル(megapascal、MPa;1,200ポンド/平方インチ(per square inch、psi))で1分間プレスして、約6mmの厚さを有するプラークを形成し、プラークを25℃に冷却する。PANalytical Axiosからの波長分散X線蛍光分光計を使用して、波長分散XRFによってプラークのSi原子含有量を分析する。XRFスペクトルの線強度を、放射化分析(Neutron Activation Analysis、NAA)又は誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma、ICP)方法を使用して個別に測定された既知のSi原子濃度のポリマー標準を使用して確立されたSi原子含有量の検量線と比較することによって、Si原子含有量を決定する。XRFで測定されたSi原子重量%値、及び加水分解性シリル基が誘導された少なくとも1つのシランコモノマーの分子量を使用して、エチレン-シランコポリマーにおける加水分解性シリル基コモノマー単位重量%(すなわち、加水分解性シリル基の重量%)を計算する。ビニルトリメトキシシラン(VTMS)から誘導される加水分解性シリル基の場合、VTMS分子量148.23g/molを使用する。エチレン-シランコポリマーにおける加水分解性シリル基含有量(加水分解性シリル基コモノマー単位の重量%)を計算するには、XRFで得られたSi原子重量%(「C」)及びp=C*(m/28.086)(1/10000ppmw)の式を使用し、式中、*は、乗算を意味し、/は、除算を意味し、pは、エチレン-シランコポリマーにおける加水分解性シリル基の重量%であり、Cは、重量百万分率(weight parts per million、ppmw)でのSi原子量(XFR)であり、mは、加水分解性シリル基が誘導されるシランコモノマーのg/molでの分子量であり、28.086は、ケイ素原子の原子量であり、10000ppmwは、1.00重量%中100万分の1の重量部数である。例えば、XRFがエチレン-シランコポリマーにおいて379ppmwのSi原子を示し、エチレン-シランコポリマーの作製に使用されるコモノマーが分子量148.23g/molを有するVTMSである場合、コモノマー含有量は、0.20重量%である。使用されるシランコモノマーのエチレン-シランコポリマーにおける加水分解性シリル基コモノマー単位を計算するには、エチレン-シランコポリマーにおける加水分解性シリル基コモノマー単位の計算された重量%及びG=100*(p/m)/[(p/m)+(100.00重量%-p)/28.05g/mol]の式を使用し、式中、*は、乗算を意味し、Gは、エチレン-シランコポリマーにおける加水分解性シリル基のモルパーセント(mol%)を意味し、pは、エチレン-シランコポリマーにおける加水分解性シリル基の重量%であり、mは、加水分解性シリル基が誘導されるシランコモノマーのg/molでの分子量であり、28.05g/molは、モノマーエチレン(H2C=CH2)の分子量である。例えば、コモノマー含有量が2.0重量%であり、コモノマーがVTMSである場合、p=2.0重量%及びm=148.23g/molであり、G=0.38mol%である。コモノマー含有量が5.0重量%であり、コモノマーがVTMSである場合、p=5.0重量%及びm=148.23g/molであり、G=0.99mol%である。分子量の異なる2つ以上のシランコモノマーを使用してエチレン-シランコポリマーを作製する場合、エチレン-シランコポリマーにおける全ての加水分解性シリル基の総mol%の計算に使用される分子量は、コモノマーの加重平均分子量である。重み付けは、反応器に供給されるコモノマーの量の割合によって決定され得、代替的に、エチレン-シランコポリマーに対するNMR分光法によって、それぞれの加水分解性シリル基が異なる種類の炭素原子(例えば、三級炭素原子対二級炭素原子)に結合している場合、エチレン-シランコポリマーにおける異なるコモノマー単位の相対量を決定し、代替的に、較正されたフーリエ変換赤外(Fourier Transform Infrared、FT-IR)分光法によって、異なる種類のコモノマーの定量化を提供する。
【0058】
ホットクリープ試験方法:以下に概説される水分硬化方法によって調製されたポリマー組成物の試験試料において、架橋の程度、ひいては硬化の程度を測定する。試験は、電力ケーブル絶縁材料に関する絶縁ケーブル技術者協会(ICEA)規格、ICEA-T-28-562-2003に基づいている。試験片を、0.736~3.048mm(29~120ミル)の範囲の厚さ値の絶縁層を有する被覆導体から押出方向に沿って取り出す。UL 2556,Wire and Cable Test Methods,Section 7.9に従って、負荷Wt下及び200℃でのホットクリープ試験方法に試験試料を供する。負荷重量=CA*200キロパスカル(kilopascal、kPa;1平方インチ当たり29.0ポンド/フィート)であり、CAは、被覆導体調製方法に従って調製された被覆導体試料から切り取られた絶縁層試験片の断面積である。試験材料毎に3つの試験片を調製する。H=25+/-2mmである、互いに離れている元の距離Hで試験片に2つのマークを付ける。ホットクリープ試験アセンブリの上部グリップに配置する。把持した試験片から0.2メガパスカル(MPa)の吊り下げ負荷をかける。試験片を含む試験アセンブリを、予熱した循環空気オーブンにおいて200℃+/-2℃又は150℃+/-2℃で15分間加熱し、次いで、依然として負荷が取り付けられた状態で、試験片のマーク間の最終的な長さDeを測定する。式1:HCE=[100*(De-H)]/H(1)に従って、ホットクリープ伸び(hot creep elongation、HCE)パーセントを計算する。伸びの量を初期長さで除算すると、ホットクリープの測定値がパーセンテージとして提供される。HCE(ホットクリープとも称される)が低いほど、試験片の負荷下での伸びの程度が小さくなり、ひいては架橋の程度が大きくなり、ひいては硬化の程度が大きくなる。ホットクリープ値が低いほど、架橋度が高いことを示す。
【0059】
材料
実施例で使用された材料が、以下に記載される。
【0060】
ESC1は、水分捕捉剤を含有し、かつ1.5g/10分のメルトインデックス(I2)、0.921g/ccの密度、0.31mol%の共重合VTMS含有量、及び23℃で46.8重量%の結晶化度を特徴とする、エチレン-シランコポリマー(ethylene-silane copolymer)である。ESC1は、The Dow Chemical Company、Midland,Michiganから入手可能である。
【0061】
ESC2は、2.0g/10分のメルトインデックス(I2)、0.922g/ccの密度、0.65mol%の共重合VTMS含有量、及び23℃で44.6重量%の結晶化度を特徴とする、エチレン-シランコポリマーである。ESC2は、The Dow Chemical Company、Midland,Michiganから入手可能である。
【0062】
FRMBは、熱可塑性エチレンポリマー、酸化防止剤、ヒンダードアミン安定剤、及び約60重量%の充填剤(臭素化難燃剤及び三酸化アンチモン)のブレンドである、難燃剤マスターバッチ(flame retardant masterbatch)である。FRMBは、The Dow Chemical Company、Midland,Michiganから入手可能である。
【0063】
CBMBは、熱可塑性エチレンポリマー、酸化防止剤、及び約40重量%のカーボンブラック(充填剤)のブレンドを含む、カーボンブラックマスターバッチ(carbon black masterbatch)である。CBMBは、The Dow Chemical Company、Midland,Michiganから入手可能である。
【0064】
CAMBは、熱可塑性エチレンポリマー、酸化防止剤、及び約3重量%のアリールスルホン酸のブレンドを含む、触媒マスターバッチ(catalyst masterbatch)である。CAMBは、The Dow Chemical Company、Midland,Michiganから入手可能である。
【0065】
CCMBは、熱可塑性エチレンポリマー、水分捕捉剤、酸化防止剤、安定剤、約31重量%のカーボンブラック(充填剤)、及び約1.5重量%のアリールスルホン酸のブレンドを含む、触媒とカーボンブラックとを組み合わせたマスターバッチ(combined catalyst and carbon black masterbatch)である。CCMBは、The Dow Chemical Company、Midland,Michiganから入手可能である。
【0066】
被覆導体調製方法
本発明の実施例(inventive example、「IE」)1及び2並びに比較例(comparative example、「CE」)1~4の試料を、表1の成分のペレットをファイバードラムにおいて混合することによって調製した。次に、試料を押出中に溶融混合して、米国ワイヤゲージ規格14番線の固体銅導体(「ワイヤ」)上にポリマー組成物の厚さ0.762mmの被覆を有する被覆導体を作製した。被覆導体を、二条ねじMaddockスクリュー及び20/40/60/20メッシュスクリーンを有する63.5mmのDavis Standard押出機を使用して、ゾーン1/ゾーン2/ゾーン3/ゾーン4/ゾーン5/ヘッド/ダイにわたって、129.4/135.0/143.3/148.9/151.7/165.6/165.6の設定温度(℃)で製作した。スクリューの長さ対直径(length-to-diameter、L/D)比は、26(スクリューのねじ山の開始からスクリューの先端まで測定)、又は24(供給ケーシングの端部に対応するスクリュー位置からスクリューの先端まで測定)であった。被覆導体は、IE1及びCE1について毎分38回転(「revolutions per minute、rpm」)、IE2及びCE2について37rpm、並びにCE3及びCE4について39rpmのスクリュー速度を使用して、毎分91.44メートルのライン速度で製作した。
【0067】
水分硬化方法
被覆導体を23℃及び相対湿度(relative humidity、RH)50%でエージングし、様々な時間間隔の後にホットクリープ試験方法によるホットクリープ測定を行って、周囲条件で60%のホットクリープを達成するのに必要な日数を計算した。
【0068】
結果
表1は、IE1、IE2、及びCE1~CE4の組成物及び硬化性能の両方を提供する。
【0069】
【表1】
*周囲条件で140日後、CE2は、69%のホットクリープを達成しただけであった。
【0070】
表1から明らかなように、0.48mol%~1.00mol%の共重合シラン含有量及び75~1000の充填剤対触媒重量比を有するエチレン-シランコポリマーを含むIE1及びIE2は、この特徴の組み合わせを含まない比較例よりも、周囲条件でより速い硬化を実証する。例えば、IE1は、CE1よりも約7倍速く硬化した。そのような結果は驚くべきことであり、なぜなら、IE1がCE1より少ないブレンステッド酸触媒を含有するにもかかわらず、IE1はCE1より速く60%のホットクリープに達するからである。同様に、IE2は、同等の装填量のブレンステッド酸触媒にもかかわらず、CE2よりも35倍以上速く硬化した。CE3とCE4との比較は、より高い共重合シラン含有量が硬化速度に影響を及ぼすが、それが硬化性能に影響を及ぼす唯一の要因ではないことを実証する。例えば、ESC2(CE3)のより高いシラン含有量は、ESC1(CE4)よりも4倍速い硬化をもたらしたが、この性能向上は、それぞれCE1及びCE2に対してIE1及びIE2によって得られた7倍及び35倍超速い硬化速度にはるかに及ばない。したがって、共重合シラン含有量及び充填剤対触媒重量比の両方の組み合わせもまた、硬化速度に影響を及ぼす可能な特徴である。CE1をCE4と比較すると、充填剤の包含がESC1を含む周囲硬化特性に悪影響を及ぼしたことがわかる。同じ有害な影響がCE2で明らかであり、より大きな程度である。対照的に、ポリマー組成物が、0.48mol%~1.00mol%の共重合シラン含有量及び75~1000の充填剤対触媒重量比を有するエチレン-シランコポリマーで作製される場合(すなわち、IE1及びIE2)、同じ充填剤は、架橋特性に対してほとんど又は全く悪影響を及ぼさなかったように思われる。
【国際調査報告】