(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】細胞内に長期間存在しうる外部導入mRNAを選別する方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/10 20060101AFI20240517BHJP
C40B 40/08 20060101ALI20240517BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20240517BHJP
C12Q 1/68 20180101ALI20240517BHJP
C12Q 1/6811 20180101ALI20240517BHJP
【FI】
C12N15/10 200Z
C40B40/08 ZNA
C12Q1/6869 Z
C12Q1/68 100Z
C12Q1/6811 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572841
(86)(22)【出願日】2022-05-27
(85)【翻訳文提出日】2023-11-24
(86)【国際出願番号】 KR2022007577
(87)【国際公開番号】W WO2022250498
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】10-2021-0069538
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521143642
【氏名又は名称】アールエヌエージーン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】イ, ウギル
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA17
4B063QQ79
4B063QR32
4B063QR62
4B063QX01
(57)【要約】
本発明は、細胞内に長期間存在しうる細胞内安定性が向上されたmRNA配列を選別して作製する方法に係わるものである。
一態様による方法によれば、目的タンパク質のアミノ酸配列には、変化を与えない範囲において、それを暗号化する塩基配列に変異を導入し、細胞内安定性が向上されたmRNA配列を選別して作製することができるものであり、該方法を利用すれば、生体内目的タンパク質の発現レベルを向上させることができるという長所がある。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)目的タンパク質のアミノ酸配列には、変化を与えない範囲において、目的タンパク質を暗号化する塩基配列に、変異が導入された配列を含むテンプレート配列を設計する段階と、
(B)前述の段階で設計されたテンプレート配列を基に、プライマーを作製する段階と、
(C)前述の作製されたプライマー配列を利用し、変異が導入された多様な配列を含むライブラリーを作製する段階と、
(D)前述の作製されたライブラリーから、細胞内安定性が向上された配列を選別する段階と、を含む、細胞内安定性が向上されたmRNA配列を選別する方法。
【請求項2】
前記(A)段階において、変異を導入することは、目的タンパク質を暗号化する塩基配列の全部領域または一部領域に、同一アミノ酸を暗号化する重複コドン(redundancy codon)を導入する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記(A)段階において、変異を導入することは、目的タンパク質を暗号化する塩基配列の全部領域または一部領域に、コドンの3番目塩基に、N(A、G、CまたはT)、R(AまたはG)、Y(CまたはT)、あるいはH(A、CまたはT)を導入する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記(A)段階において設計されたテンプレート配列は、プローモーター、非翻訳部位(UTR)、5’キャップ(cap)及び3’ポリアデニル酸配列(poly-A)によって構成された群のうちから選択された1以上をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記(A)段階は、前記設計されたテンプレート配列を分割し、2以上の区域に設定することを追加して含み、
前述のそれぞれの分割された区域の末端は、互いに重畳される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前述のそれぞれの分割された区域の重畳された部分は、変異が導入されていない、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記設計されたテンプレート配列を分割し、2以上の区域に設定することは、前記テンプレート配列を、10ないし1,000bpサイズの区域に分割することを含み、
前述のそれぞれの分割された区域は、末端の1ないし100bp領域が互いに重畳される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記(B)段階は、
前記設計されたテンプレート配列の分割された区域の配列、またはその相補的な配列をプライマーとして合成する段階を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記プライマー合成段階は、5’末端からの最初区域を除いた残り区域は、相補的な配列をプライマーとして合成することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記(C)段階は、前記(B)段階において作製されたプライマー配列及びPCR産物を利用し、PCR反応を連続して遂行する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記(D)段階は、
D-1)前記ライブラリーに含まれた目的タンパク質を暗号化するDNA配列、またはそこから作製されたRNA配列を細胞に形質感染させる段階と、
D-2)前述の形質感染された細胞から目的タンパク質を暗号化するRNA配列を得る段階と、
D-3)前記得られたRNA配列から、目的タンパク質を暗号化するDNAを合成し、ライブラリーを作製する段階と、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記(D)段階は、前記D-1)段階ないしD-3)段階を1回以上繰り返して遂行する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記(D)段階は、
D-4)前記ライブラリーに含まれた目的タンパク質を暗号化するDNA配列をベクター内にクローニングする段階と、
D-5)前記ベクター、またはそこから作製されたRNAを細胞に形質感染させる段階と、
D-6)前述の形質感染された細胞から目的タンパク質を暗号化するRNAを得る段階と、をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記(D)段階は、
D-7)前記得られたRNA、及びそこから合成されたDNAの配列を決定する段階をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記目的タンパク質、またはそれを暗号化するmRNAは、抗癌免疫治療剤、癌治療ワクチン、感染疾患ワクチン、タンパク質代替治療剤、アレルギー治療剤または免疫疾患治療剤として使用される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞内に長期間存在しうる細胞内安定性が向上されたmRNA配列を選別して作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、mRNAは、単に遺伝情報を伝達する物質から外れ、新たな有望薬物として大なる大きい期待を集めている。天然RNAと構造的に類似した合成mRNAを利用し、一時的に所望するタンパク質を生成させ、目的とする活性を示させるのである。現在、mRNA基盤癌免疫療法治療剤と感染疾病ワクチンとが臨床試験に入っている。
【0003】
核酸暗号化された薬剤の概念は、ウォルフ(Wolff)らが、試験管内転写(IVT:in vitro transcription)mRNAや、プラスミドDNA(pDNA)をネズミの骨格筋に注射したとき、筋肉に、暗号化されたタンパク質が発現されるということを示すことによって始まった。概念的には、IVTmRNA基盤治療方法と、他の核酸基盤治療とには、さまざまな重要な違いがある。該IVT mRNAは、機能を示すために、核に入る必要がなく、さまざまな方法により、いったん細胞質に導入されれば、mRNAは、即座に翻訳される。一方、DNA治療剤は、RNAに転写されるためには、核に接近しなければならず、それらの機能は、細胞分裂中、核膜崩壊が必要である。それにより、該IVTmRNA基盤治療剤は、DNA及びウイルスベクターと異なり、遺伝体に統合されないために、挿入突然変異誘発の可能性がないという長所がある。
【0004】
なお、mRNAを薬剤として利用するために、まず細胞内遺伝子発現として重要な段階であるmRNAの相対的安定性調節を理解することが必要である。該mRNAの安定は、発現レベルだけではなく、遺伝子生成物の生成速度を決定するのに重要な役割を行う。一般的に、寿命が短い多くのタンパク質は、短命mRNAによって暗号化される。血球細胞のα-グロビンのような安定したタンパク質を暗号化するmRNAは、半減期がかなり長いことと知られている。また、細胞は、ナンセンス(nonsense)コドン(codon)突然変異を含むmRNAの半減期を決定して短縮させるための監督メカニズム(surveillance mechanism)を使用する。従って、そのようなmRNA安定性の変化は、細胞の反応と機能とに、それ以上にない大きい結果をもたらしうるというのである。
【0005】
従って、mRNA治療剤の機能を向上させるためには、生体内安定性を向上させる必要性があるが、本発明においては、細胞内安定性が向上されたmRNAを選別して作製するための方法が開発された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一態様は(A)目的タンパク質のアミノ酸配列には、変化を与えない範囲において、目的タンパク質を暗号化する塩基配列に、変異が導入された配列を含むテンプレート配列を設計する段階と、(B)前述の段階で設計されたテンプレート配列を基に、プライマーを作製する段階と、(C)前述の作製されたプライマー配列を利用し、変異が導入された多様な配列を含むライブラリーを作製する段階と、(D)前述の作製されたライブラリーから、細胞内安定性が向上されたmRNA配列を選別する段階と、を含む、細胞内安定性が向上されたmRNA配列を選別する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様は(A)目的タンパク質のアミノ酸配列には、変化を与えない範囲において、目的タンパク質を暗号化する塩基配列に、変異が導入された配列を含むテンプレート配列を設計する段階と、(B)前述の段階で設計されたテンプレート配列を基に、プライマーを作製する段階と、(C)前述の作製されたプライマー配列を利用し、変異が導入された多様な配列を含むライブラリーを作製する段階と、(D)前述の作製されたライブラリーから、細胞内安定性が向上された配列を選別する段階と、を含む、細胞内安定性が向上されたmRNA配列を選別する方法を提供するものである。
【0008】
前記方法は、目的タンパク質を暗号化する多様な塩基配列において、細胞内安定性が向上された配列を作製することに係わるものであり、具体的には、前記方法は、目的タンパク質のアミノ酸配列には、変化を与えない範囲において、目的タンパク質を暗号化する野生型塩基配列に変異が導入された多様な配列のうちから、細胞内安定性にすぐれる配列を選別することを含むものでもある。
【0009】
前記細胞内安定性が向上された配列は、生体内/細胞内におけるリボヌクレアーゼ(RNase:ribonuclease)などによる分解程度が低減され、かつ/あるいは目的タンパク質の発現レベルにすぐれる配列を意味するものでもある。前記配列は、核酸配列として、DNA配列またはRNA配列でもあり、具体的には、目的タンパク質を暗号化するcDNA配列またはmRNA配列でもある。
【0010】
本明細書における用語「目的タンパク質」は、当業者が生産しようとするタンパク質であり、本発明の方法を利用して選別されたcDNAまたはmRNA、前記cDNAまたはmRNAが宿主細胞に導入されて発現が可能な全てのタンパク質を意味する。
【0011】
前記目的タンパク質、またはそれを暗号化するmRNAは、抗癌免疫治療剤、癌治療ワクチン、感染疾患ワクチン、タンパク質代替治療剤、アレルギー治療剤または免疫疾患治療剤として使用されうるものでもある。
【0012】
本明細書における用語「暗号配列」とは、適切な調節配列の制御下に配された場合、試験管内または生体内の細胞において、ポリペプチドで転写及び解読される二本鎖DNA配列または二本鎖mRNA配列を意味するものであり、「暗号化する塩基配列」、または「暗号化配列」などとも混用される。該暗号配列の境界は、5’(アミノ)末端にある開始コドン及び3’(カルボキシル)末端にある終結コドンによって決定される。該暗号配列は、原核配列、真核mRNA由来のcDNA配列、真核(例:哺乳動物)DNA由来のゲノムDNA配列、及び合成DNA配列も含むものでありえる。
【0013】
前記目的タンパク質を暗号化する塩基配列は、mRNAの翻訳に必要なエキソンだけによってなるcDNA配列でありえる。
【0014】
前記(A)段階において、変異を導入することは、目的タンパク質を暗号化する塩基配列の全部領域または一部領域に、同一アミノ酸を暗号化する重複コドン(redundancy codon)を導入することでもあり、具体的には、コドンの3番目塩基に、N(A、G、CまたはT)、R(AまたはG)、Y(CまたはT)、あるいはH(A、CまたはT)を導入するものでありえる。従って、各コドンの3番目塩基に、具体的に特定されていない任意の塩基が導入され、導入される塩基の組み合わせにより、多くの塩基配列が作られることになるが、それを介し、同一アミノ酸配列を暗号化する塩基配列のライブラリーを作製することができる。
【0015】
本明細書における用語「コドン(codon)」とは、mRNAのトリプレットコードであり、mRNAの3個塩基配列がまとめられて1つのアミノ酸を構成することになるが、その過程において、3個塩基の組み合わせは、統合された暗号情報によって解釈されるために、それをトリプレットコードと呼び、それをコドンという単位で示す。
【0016】
本明細書における用語「重複コドン(redundancy codon)」とは、同一アミノ酸を暗号化するコドンの集合を意味するものであり、同意コドン(synonymous codon)とも混用される。該コドンの種類は、全体64種であり、3種の終結コドンを除く61種が、20種アミノ酸を暗号化する。1つのアミノ酸を暗号化するコドンは、少なくは1種から、多くは6種が存在し、具体的には、前者には、メチオニンとトリプトファンとがあり、後者には、ロイシン、アルギニン、セリンがある。残り15種のアミノ酸を暗号化するコドンの個数は、2種、3種、4種ずつ存在する。そのような事実は、1つのタンパク質を暗号化することができるmRNAの種類が、無数に多いということを意味する。
【0017】
前記(A)段階において、目的タンパク質のアミノ酸配列には、変化を与えない範囲において、目的タンパク質を暗号化する塩基配列に多様性を付与するために、それぞれのアミノ酸を暗号化するコドンが、以下のようにも変形される:フェニルアラニンの場合、uuY、ロイシンの場合、uuRまたはcuN、イソロイシンの場合、auH、バリンの場合、guN、セリンの場合、ucN及びagY、プロリンの場合、ccN、スレオニンの場合、acN、アラニンの場合、gcN、チロシンの場合、uaY、ヒスチジンの場合、caY、グルタミンの場合、caR、アスパラギンの場合、aaY、リシンの場合、aaR、アスパラギン酸の場合、gaY、グルタミン酸の場合、gaR、システインの場合、ugY、アルギニンの場合、cgNまたはagR、グリシンの場合、ggN。また、トリプトファン、開始コドンであるメチオニン、及び終結コドンは、変異が導入されていなくてもよい。
【0018】
前記(A)段階において設計されたテンプレート配列は、プローモーター、非翻訳部位(UTR)、5’キャップ(cap)及び3’ポリアデニル酸配列(poly-A)によって構成された群のうちから選択された1以上をさらに含むものでもあり、それら以外に、目的タンパク質の発現を調節する構成要素をさらに含むものでありえる。
【0019】
本明細書における用語「プローモーター(promoter)」とは、DNAの一部分として、転写を開始するように、RNA重合酵素の結合に関与する。一般的には、標的遺伝子に隣接し、その上流に位置し、RNA重合酵素またはRNA重合酵素を誘導するタンパク質である転写因子(transcription factor)が結合するサイトであり、前記酵素または前記タンパク質が正しい転写開始部位に位置するように誘導することができる。すなわち、センスストランド(sense strand)で転写しようとする遺伝子の5’部位に位置し、RNA重合酵素が、直接または転写因子を介し、当該位置に結合し、標的遺伝子に対するmRNA合成を開始するように誘導することに特定された遺伝子配列を有する。
【0020】
前記プローモーターは、一般プローモーターのうちでは、構成的または誘導性でもあり、原核細胞の場合には、lac,tac,T3及びT7プローモーター、真核細胞の場合には、猿ウイルス40(SV40),マウス乳房腫瘍ウイルス(MMTV)プローモーター、ヒト免疫欠乏ウイルス(HIV)、例えば、HIVの長い末端繰り返し部(LTR)プローモーター、モロニーウイルス,サイトメガロウイルス(CMV),エプスタイン・バールウイルス(EBV),ラウス肉腫ウイルス(RSV)プローモーターだけではなく、β-アクチンプローモーター、ヒトヘログロビン,ヒト筋肉クレアチン,ヒトメタロチオネイン由来のプローモーターなどでもあるが、それらに制限されるものではない。
【0021】
本明細書における用語「非翻訳部位(UTR:untranslated region)」は、非解釈部位とも言い、mRNA鎖において、タンパク質遺伝子のテンプレートにならない部分、すなわち、翻訳されていない部分を意味する。一般的には、前記UTRは、5’-UTR、3’-UTRが存在する。
【0022】
本明細書における用語「5’キャップ(5’ cap)」または「末端キャップ」は、RNA分子の末端5’ヌクレオチドに化学的に結合された7-メチルグアノシン(7mG)キャップとARCA(anti-reverse cap analog)とを意味する。
【0023】
本明細書における用語「ポリアデニル酸配列(poly-A)」または「ポリアデニル酸テール」は、mRNAのようなRNA分子の3’末端に転写された後に付加される一連の隣接アデニル酸(ポリアデニレート)を意味する。
【0024】
前記テンプレートに含まれるプローモーター、非翻訳部位(UTR)、5’キャップ(cap)及び/または3’ポリアデニル酸配列(poly-A)は、目的タンパク質を暗号化する配列に作動自在に連結されたものでありえる。
【0025】
本明細書における用語「作動自在に連結された(operably linked)」とは、一般的機能を遂行するように、核酸発現調節配列と、目的とするタンパク質またはペプチドを暗号化する核酸配列とが、機能的に連結(functional linkage)されている状態を意味する。例として、プローモーターと、タンパク質またはペプチドを暗号化する核酸配列とが、作動自在に連結され、暗号化配列の発現に影響を及ぼしうる。発現ベクターとの作動的連結は、当該技術分野で周知されている遺伝子組み換え技術を利用しても製造され、部位特異的DNAの切断及び連結は、当該技術分野で一般的に知られた酵素などを使用することができる。
【0026】
前述の5’非翻訳部位、プローモーター、目的タンパク質暗号化配列、3’非翻訳部位及びポリアデニル酸配列は、前述の順序で連結され、テンプレートを構成するものでもあり、それぞれ直接連結され、あるいはリンカーを介し、間接的に連結されもするのである。
【0027】
前記リンカーは、目的タンパク質の発現に影響を及ぼさない限り、特別に今になって制限されるものではなく、例えば、3個ないし21個の核酸によって構成されたものでありえる。
【0028】
前記(A)段階は、前述の設計されたテンプレート配列を1以上の区域に設定することをさらに含むものでもあり、具体的には、2以上の区域に設定して分割することをさらに含むものでありえる。前記(A)段階において設計されたテンプレート配列は、2個以上の区域に分割して設定され、具体的には、前記テンプレート配列をそれぞれ10ないし1,000bpサイズに分割することにより、2個以上の区域が設定され、前述の分割された区域を、5’末端から、第1区域から第n区域(nは、2以上の整数である)までと命名することができる。また、前述の分割された区域の大きさは、それぞれ同じでもいいし、異なってもよい。
【0029】
前述の分割される区域の大きさは、10ないし1,000bpでもあり、例えば、10ないし1,000bp、10ないし900bp、10ないし800bp、10ないし700bp、10ないし600bp、10ないし500bp、10ないし400bp、10ないし300bp、10ないし200bp、10ないし180bp、10ないし150bp、10ないし140bp、10ないし130bp、10ないし120bp、10ないし110bp、10ないし100bp、30ないし1,000bp、30ないし900bp、30ないし800bp、30ないし700bp、30ないし600bp、30ないし500bp、30ないし400bp、30ないし300bp、30ないし200bp、30ないし180bp、30ないし150bp、30ないし140bp、30ないし130bp、30ないし120bp、30ないし110bp、30ないし100bp、50ないし1,000bp、50ないし900bp、50ないし800bp、50ないし700bp、50ないし600bp、50ないし500bp、50ないし400bp、50ないし300bp、50ないし200bp、50ないし180bp、50ないし150bp、50ないし140bp、50ないし130bp、50ないし120bp、50ないし110bp、50ないし100bp、60ないし1,000bp、60ないし900bp、60ないし800bp、60ないし700bp、60ないし600bp、60ないし500bp、60ないし400bp、60ないし300bp、60ないし200bp、60ないし180bp、60ないし150bp、60ないし140bp、60ないし130bp、60ないし120bp、60ないし110bp、60ないし100bp、70ないし1,000bp、70ないし900bp、70ないし800bp、70ないし700bp、70ないし600bp、70ないし500bp、70ないし400bp、70ないし300bp、70ないし200bp、70ないし180bp、70ないし150bp、70ないし140bp、70ないし130bp、70ないし120bp、70ないし110bp、70ないし100bp、80ないし1,000bp、80ないし900bp、80ないし800bp、80ないし700bp、80ないし600bp、80ないし500bp、80ないし400bp、80ないし300bp、80ないし200bp、80ないし180bp、80ないし150bp、80ないし140bp、80ないし130bp、80ないし120bp、80ないし110bp、80ないし100bp、90ないし1,000bp、90ないし900bp、90ないし800bp、90ないし700bp、90ないし600bp、90ないし500bp、90ないし400bp、90ないし300bp、90ないし200bp、90ないし180bp、90ないし150bp、90ないし140bp、90ないし130bp、90ないし120bp、90ないし110bp、または90ないし100bpでありえる。
【0030】
また、前述のそれぞれの分割された区域の末端は、互いに重畳されるものでもあり、それにより、前述のそれぞれ分割された区域の末端は、両側区域の末端と互いに重畳される部分が存在しうる。前述のそれぞれの分割された区域の末端は、1ないし100bpサイズの領域が互いに重畳されるものでもあり、例えば、第2区域の5’末端は、第1区域の3’末端と重畳され、3’末端は、第3区域の5’末端と重畳されうる。
【0031】
前述の重畳される領域の大きさは、1ないし100bpでもあり、例えば、1ないし100bp、1ないし99bp、1ないし90bp、1ないし81bp、1ないし72bp、1ないし63bp、1ないし54bp、1ないし45bp、1ないし36bp、1ないし30bp、1ないし27bp、1ないし24bp、1ないし21bp、1ないし18bp、1ないし15bp、1ないし12bp、1ないし9bp、3ないし100bp、3ないし99bp、3ないし90bp、3ないし81bp、3ないし72bp、3ないし63bp、3ないし54bp、3ないし45bp、3ないし36bp、3ないし30bp、3ないし27bp、3ないし24bp、3ないし21bp、3ないし18bp、3ないし15bp、3ないし12bp、3ないし9bp、6ないし100bp、6ないし99bp、6ないし90bp、6ないし81bp、6ないし72bp、6ないし63bp、6ないし54bp、6ないし45bp、6ないし36bp、6ないし30bp、6ないし27bp、6ないし24bp、6ないし21bp、6ないし18bp、6ないし15bp、6ないし12bp、6ないし9bp、9ないし100bp、9ないし99bp、9ないし90bp、9ないし81bp、9ないし72bp、9ないし63bp、9ないし54bp、9ないし45bp、9ないし36bp、9ないし30bp、9ないし27bp、9ないし24bp、9ないし21bp、9ないし18bp、9ないし15bp、9ないし12bp、12ないし100bp、12ないし99bp、12ないし90bp、12ないし81bp、12ないし72bp、12ないし63bp、12ないし54bp、12ないし45bp、12ないし36bp、12ないし30bp、12ないし27bp、12ないし24bp、12ないし21bp、12ないし18bp、12ないし15bp、15ないし100bp、15ないし99bp、15ないし90bp、15ないし81bp、15ないし72bp、15ないし63bp、15ないし54bp、15ないし45bp、15ないし36bp、15ないし30bp、15ないし27bp、15ないし24bp、15ないし21bp、または15ないし18bpでありえる。
【0032】
また、前述のそれぞれの分割された区域の重畳された部分は、変異が導入されていないものでありえる。それは、追って、前述の分割された区域に合成されたプライマーを利用してPCR反応を遂行する場合、プライマー・プライマーまたはプライマー・PCR生産物の相補的な結合を誘導するためである。
【0033】
前記(B)段階は、変異が導入されたテンプレート配列を基に、目的タンパク質を暗号化する多様な配列を含むライブラリー作製のためのプライマー配列を設計して作製する段階として、前記テンプレートの分割された区域の配列を基に、プライマーを合成する段階を含むことができる。
【0034】
具体的には、前記(B)段階は、前記テンプレートの分割された区域の配列、またはその相補的な配列を基に、プライマーを合成するものであり、前記プライマーは、前述の分割された区域の配列、またはその相補的な配列が含まれるように合成するものでもあり、具体的には、前述の分割された区域の配列、またはその相補的な配列が、プライマー配列を構成するものでありえる。前述の合成されたプライマーは、第1プライマーから第nプライマー(nは、2以上の整数である)と命名することができる。
【0035】
また、前記プライマー合成段階は、5’末端から、最初区域(第1区域)を除いた残り区域(第2区域ないし第n区域)は、相補的な配列をプライマーとして合成することを含むものであり、具体的には、前述の合成されたプライマーのうち第1プライマーを除いた残りプライマーは、前述の分割された区域の相補的な配列を基に合成されるものでありえる。
【0036】
前記(C)段階は、前記(B)段階において作製されたプライマー配列を利用し、多様な変異を含む、目的タンパク質を暗号化する多様な配列を含むライブラリーを作製する段階として、具体的には、前記段階は、前述の合成されたプライマー及び/またはPCR産物を利用し、PCR反応を連続して遂行する段階を含むものでありえる。前記連続PCR反応は、n個の区域に分割されたテンプレートの場合、(n-1)回のPCR反応が連続して遂行されうる。前記連続的PCR反応は、一次PCR反応から、(n-1)次PCR反応までと命名することができる。
【0037】
例えば、前記連続的PCR反応の一次PCR反応は、第1プライマー及び第2プライマーを利用し、テンプレートなしにPCR反応を遂行するものであり、該第1プライマー及び該第2プライマーの3’末端(テンプレートの重畳された部分)が相補的に結合し、互いにそれぞれのテンプレートの役割を行うことにより、PCR反応が進められうる。次に、二次PCR反応は、第1プライマー及び第3プライマーを利用し、一次PCR反応の生産物をテンプレートとして利用してPCR反応を遂行するものであり、該一次PCR反応の生産物、及び第3プライマーの3’末端(テンプレートの重畳された部分)が相補的に結合されてPCR反応が進められうる。
【0038】
前述のような方式でもって、連続してPCR反応を遂行し、最終的に、一次PCR反応は、第1プライマー及び第2プライマーを利用して遂行し(第1プライマーの3’末端、及び第2プライマーの3’末端は、テンプレートの重畳された部分に該当し、相補的に結合する)、順次に、(n-1)次PCR反応は、第1プライマー及び第nプライマーを利用し、(n-2)次PCR反応の生産物をテンプレートとして利用し、((n-2)次PCR反応の生産物の3’末端、及び第nプライマーの3’末端は、テンプレートの重畳された部分に該当し、相補的に結合する)PCR反応を遂行するものであり(nは、3以上の整数である)、前記PCR反応の最終産物は、(A)段階において設計されたテンプレートを基とする多様な配列を含むライブラリーが作製されうる(
図4)。なお、前述の段階で設計されたテンプレートが、2個の区域に分割された場合には、第1プライマー及び第2プライマーを利用して遂行された一次PCR反応だけでも、ライブラリーを作製することができる。
【0039】
前記ライブラリーは、目的タンパク質を暗号化するDNA配列またはRNA配列を含むものでもあり、前記目的タンパク質を暗号化する配列は、プローモーター、非翻訳部位(UTR)、5’キャップ(cap)及び3’ポリアデニル酸配列(poly-A)によって構成された群のうちから選択された1以上をさらに含むものでありえる。
【0040】
前記(D)段階は、前述の作製されたライブラリーから、細胞内安定性が向上された目的タンパク質を暗号化するmRNA配列を選別する過程であり、D-1)前記ライブラリーに含まれた目的タンパク質を暗号化するDNA配列、またはそこから作製されたRNA配列を細胞に形質感染させる段階と、D-2)前述の形質感染された細胞から細胞内安定性にすぐれる目的タンパク質を暗号化するRNA配列を得る段階と、D-3)前記得られたRNA配列から、目的タンパク質を暗号化するDNAを合成し、ライブラリーを作製する段階と、を含むものでありえる。
【0041】
前記ライブラリーに含まれたDNA配列は、目的タンパク質のアミノ酸配列には、変化を与えない範囲において、目的タンパク質を暗号化する多様なcDNA配列を含む多くのテンプレート配列の集合である。
【0042】
前述の形質感染に利用される配列は、前記ライブラリーに含まれたDNA配列、またはそこから作製されたRNA配列でありえる。前記RNA配列は、ライブラリーに含まれた配列から転写されたものであり、具体的には、試験管内転写(IVT:in vitro transcription)反応を介して得られたものでありえる。
【0043】
本明細書において用語「形質感染(transfection)」とは、本発明の目的上、前記ライブラリー配列、前記配列を含む発現ベクター、または前記配列から転写されたRNA配列を宿主細胞内に導入し、宿主細胞内において、前記ライブラリー配列の核酸分子を発現させることを意味するものであり、「形質導入(transduction)」または「形質転換(transformation)」と混用されて使用されうる。また、前記核酸分子は、目的タンパク質を暗号化する配列を含むテンプレート配列の形態でもって、DNA及びRNAを含むものでありえる。前記ライブラリー配列は、宿主細胞内に導入されて発現されうるものであるならば、いかなる形態で導入されるものであってもよい。
【0044】
前記ライブラリー配列導入に適する宿主細胞は、大腸菌、枯草菌(Bacillussubtilis)、ストレプトマイセス属(Streptomyces sp.)、シュードモナス属(Pseudomonas sp.)、プロテウス・ミラビリス(Proteusmirabilis)またはブドウ球菌属(Staphylococcus sp.)のような原核細胞でありえる。また、アスペルギルス属(Aspergillus sp.)のような真菌、ピキア酵母(Pichia pastoris)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミケス属(Schizosaccharomycessp.)またはアカパンカビ(Neurosporacrassa)のような酵母、それ以外の下等真核細胞、植物または昆虫の細胞のような高等真核生物の細胞でありえる。また、哺乳動物の細胞でもあり、具体的には、猿腎臓細胞7(COS7:monkey kidney cells)細胞、NSO細胞、SP2/0、チャイニーズハムスター卵巣(CHO:Chinese hamster ovary)細胞、W138、幼いハムスター腎臓(BHK:babyhamster kidney)細胞、MDCK、骨髄腫細胞株、HeLa細胞、HuT78細胞またはHEK293細胞などを利用することができるが、それらに制限されるものではない。
【0045】
前述の形質感染方法は、核酸を、有機体、細胞、組織または器官に導入するいかなる方法も含み、当分野で公知された宿主細胞により、適する標準技術を選択して遂行することができ、例えば、電気穿孔法(electroporation)、原形質融合、リン酸カルシウム(CaPO4)沈澱、塩化カルシウム(CaCl2)沈澱、微細注入法(microinjection)、シリコンカーバイド繊維を利用した撹拌、アグロバクテリア媒介された形質転換、ポリエチレングリコール(PEG)法、DEAE-デキストラン法、陽イオンリポソーム法、酢酸リチウム-DMSO法、リポフェクタミン及び乾燥/抑制媒介された形質転換法などが含まれるものでありえる。
【0046】
本明細書における用語「発現ベクター」とは、適切な宿主細胞に導入され、目的タンパク質を発現することができる組み換えベクターであり、遺伝子挿入物が発現されるように、作動自在に連結された必須な調節要素を含む遺伝子作製物を言う。前記用語「作動自在に連結された(operably linked)」とは、一般的機能を遂行するように、核酸発現調節配列と、目的とするタンパク質をコーディングする核酸配列とが機能的に連結されているものを意味する。組み換えベクターとの作動的連結は、当該技術分野で周知されている遺伝子組み換え技術を利用して製造され、部位特異的DNAの切断及び連結は、当該技術分野で一般的に知られた酵素などを使用して容易に行うことができる。
【0047】
本発明の適する発現ベクターは、プローモーター、開始コドン、終結コドン、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサーのような発現調節エレメント以外にも、膜標的化または分泌のためのシグナル配列を含むものでありえる。該開始コドン及び該終結コドンは、一般的に、目的タンパク質をコーディングするヌクレオチド配列の一部と見なされ、遺伝子作製物が投与されたとき、個体において必ず作用を示さなければならないしコーディング配列とインフレーム(in frame)されなければならない。
【0048】
また、前記発現ベクターは、ベクターを含む宿主細胞を選択するための選択性マーカーを含むものでありえる。該選択性マーカーは、ベクターで形質転換された細胞を選別するためのものであり、薬物耐性、栄養要求性、細胞毒性剤に対する耐性、または表面タンパク質発現のような選択可能表現型を付与するマーカーが使用されうる。選択剤(selective agent)が処理された環境においては、該選別マーカーを発現する細胞だけ生存するので、形質転換された細胞が選別可能である。また、ベクターが複製可能な発現ベクターである場合、複製が開始される特定核酸配列である複製原点(replication origin)を含むものでありえる。
【0049】
外来遺伝子を挿入するための組み換え発現ベクターにおいては、プラスミド、ウイルス、コスミドのような多様な形態のベクターを使用することができる。組み換えベクターの種類は、原核細胞及び真核細胞の各種宿主細胞において、所望する遺伝子を発現し、所望するタンパク質を生産する機能を遂行する限り、特別に制限されるものではないが、具体的には、強力な活性を示すプローモーターと、強い発現力を保有しながら、自然状態と類似した形態の外来タンパク質を量産することができるベクターとが利用されうる。
【0050】
本発明において、目的タンパク質を発現させるために、多様な宿主と、ベクターとの組み合わせが利用されうる。真核宿主に適する発現ベクターにおいては、以下のところに制限されるものではないが、SV40、ウシ乳頭腫ウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(adeno associated virus)、サイトメガロウイルス及びレトロウイルスに由来する発現調節配列などが含まれるものでありえる。細菌宿主に使用することができる発現ベクターにおいては、以下のところに制限されるものではないが、pET、pRSET、pBluescript、pGEX2T、pUCベクター、Tベクターシステム、colE1、pCR1、pBR322、pMB9、またはそれらの誘導体などを含む大腸菌(Escherichia coli)から得られる細菌性プラスミド;RP4のように、さらに広い宿主範囲を有するプラスミド;λgt10、λgt11またはNM989のようなファージラムダ(phage lambda)誘導体に例示されうるファージDNA;及びM13や、フィラメント性一本鎖DNAファージのようなその他DNAファージなどが含まれるものでありえる。酵母細胞には、2℃プラスミド、またはその誘導体などが使用され、昆虫細胞には、pVL941などが使用されうる。
【0051】
前記D-1)段階は、前述の形質感染された細胞において、目的タンパク質の発現レベルを確認する段階をさらに含むものでもあり、それは、目的タンパク質、または前記目的タンパク質を暗号化する配列の発現いかん、または発現程度を測定するものでありえる。また、それは、細胞に形質感染が正しくなされているかということを確認するものでありえる。
【0052】
前記タンパク質の発現レベルを測定する方法は、ウェスタンブロッティング(westernblotting)、ELISA(enzyme linked immunosorbent assay)、放射線免疫分析(RIA:radioimmuneassay)、放射免疫拡散法(radicalimmunodiffusion)、オクタロニー免疫拡散法(ouchterlonyimmunodiffusion)、ロケット免疫電気泳動(rocket immunoeletrophoresis)、免疫組織化学染色法(immunohistochemical staining)、免疫沈澱分析法(immunoprecipitationassay)、補体固定分析法(complement fixation assay)、免疫蛍光法(immunofluorescence)、免疫クロマトグラフィー法(immunochromatography)、FACS分析法(fluorescence activated cell sorter analysis)またはタンパク質チップ方法(protein chip technology)でありえる。
【0053】
前記目的タンパク質を暗号化する配列、具体的には、mRNAまたは遺伝子の発現レベルを測定する方法は、逆転写酵素重合反応(RT-PCR)、競争的逆転写酵素重合酵素反応(competitive RT-PCR)、リアルタイム逆転写酵素重合酵素反応(realtime quantitative RT-PCR)、定量的重合酵素反応(quantitative RT-PCR)、RNase保護分析法(RNase protection method)、ノーザンブロッティング(nothernblotting)またはDNAチップ方法(DNA chip technology)でありえる。
【0054】
前記目的タンパク質の発現レベルを評価する段階は、発現レベルを測定することができる製剤を利用するものでありえる。前述の「発現レベルを測定することができる製剤」は、特定タンパク質、またはそれを暗号化する遺伝子の発現レベルを確認するために使用されうる分子を意味し、具体的には、前記目的タンパク質、またはそれを暗号化する遺伝子を検出及び/または増幅することができる製剤を含むものでもあるが、それに制限されるものではない。
【0055】
本明細書における用語「特定タンパク質、またはそれを暗号化する遺伝子を検出することができる製剤」とは、前述の特定遺伝子またはタンパク質に特異的に結合して認識させるか、あるいは検出して増幅させることができる製剤を意味し、「特定遺伝子またはタンパク質を増幅することができる製剤」は、前述の特定遺伝子またはタンパク質の複製を繰り返し、その数を増加させることができる製剤を意味し、例えば、前記遺伝子を含むポリヌクレオチドを特異的に増幅することができるプライマー、または特異的に結合することができるプローブを意味するものでもあるが、それらに制限されるものではない。
【0056】
前記段階において、目的タンパク質の発現レベルを効果的に評価するために、目的タンパク質、それを暗号化する遺伝子、またはmRNAに特異的に結合するプライマー・プローブ・ヌクレオチド・抗体またはその抗原結合断片・リガンド・受容体・タンパク質、またはそれらの組み合わせを含む組成物を利用することができる。
【0057】
本明細書における用語「プライマー(primer)」とは、自由3’末端水酸化基(free 3’ hydroxyl group)を有する核酸配列であり、特定塩基配列に対し、相補的なテンプレート(template)と塩基対を形成することができるしテンプレートストランド複写のための開始地点として作用する核酸配列を言う。該プライマーは、適切な緩衝溶液及び温度において、重合反応のための試薬(すなわち、DNAポリメラーゼまたは逆転写酵素)、及び異なる4種のヌクレオシドポリホスフェートの存在下において、DNA合成を開始することができる。PCR条件、センスプライマー及びアンチセンスプライマーの長さは、当業界に公知された技術によって適切に選択されうる。
【0058】
本明細書における用語「プローブ(probe)」とは、標的核酸、例えば、mRNAと特異的に結合をなすことができるRNAまたはDNAのような核酸断片を意味し、特定mRNAの存在有無、含量及び発現量を確認するように、ラベリング(labeling)されてもいる。該プローブは、オリゴヌクレオチド(oligonucleotide)プローブ、一本鎖DNA(single strand DNA)プローブ、二本鎖DNA(double strand DNA)プローブ、RNAプローブのような形態に作製されうる。適切なプローブの選択及び混成化の条件は、当該技術分野に公知された技術によって適切に選択されうる。前記プローブは、10ないし100nt、15ないし100nt、10ないし80nt、10ないし50nt、10ないし30nt、10ないし20nt、15ないし80nt、15ないし50nt、15ないし30nt、15ないし20nt、20ないし100nt、20ないし80nt、20ないし50nt、または20ないし30ntを有するものでありえる。
【0059】
前記プライマーまたは前記プローブは、ホスホロアミダイト(phosphoramidite)固体支持体合成法や、その他広く公知された方法を利用し、化学的に合成されうる。また、そのような核酸配列は、当該技術分野に公知された多様な方法を介して変形させることができる。そのような変形の例は、メチル化、キャップ化、天然ヌクレオチド1以上の同族体への置換、またはヌクレオチド間の変形、例えば、荷電されていない連結体(例:メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホロアミダイト、カルバメート)、あるいは荷電された連結体(例:ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)への変形を含むものでありえる。また、該プライマーまたは該プローブは、検出可能な信号を、直接または間接的に提供することができる標識を利用しても変形される。前記標識の例は、放射性アイソトープ、蛍光性分子またはビオチンを含むものでありえる。
【0060】
本明細書における用語「抗体」とは、当該技術分野に公知された用語であり、抗原性部位に対して指示される特異的な免疫グロブリンを意味する。前記抗体は、目的タンパク質またはその断片に対して特異的に結合することができ、前記断片は、免疫原性断片であり、タンパク質に対する抗体によって認識されうる1以上のエピトープ(epitope)を有しているタンパク質断片を意味する。
【0061】
前記D-1)段階は、形質感染後、前述の形質感染された細胞を培養する段階をさらに含むものでもあり、具体的には、細胞内または生体内の安定性が向上された配列を選別するために、目的タンパク質を暗号化する配列が導入された細胞を培養する段階を含むものでありえる。
【0062】
前述の培養する段階は、例えば、12ないし96時間、12ないし84時間、12ないし72時間、12ないし60時間、12ないし48時間、12ないし36時間、12ないし24時間、24ないし96時間、24ないし84時間、24ないし72時間、24ないし60時間、24ないし48時間、24ないし36時間、36ないし96時間、36ないし84時間、36ないし72時間、36ないし60時間、36ないし48時間、48ないし96時間、48ないし84時間、48ないし72時間、48ないし60時間、60ないし96時間、60ないし84時間、60ないし72時間、72ないし96時間、または72ないし84時間培養するものでありえる。
【0063】
前述の形質感染後細胞を培養する間、細胞に導入された多様なRNA配列または前記DNA配列から翻訳されたRNA配列のうち、生体内安定性が低い配列は、細胞内で分解されて存在することができないか、発現レベルが低下され、細胞内安定性が高い配列だけ存在するか、あるいは発現レベルが向上されるのである。従って、次の段階であるD-2)段階において、前述の形質感染された細胞からRNAを得ることになれば、細胞内または生体内の安定性が向上され、細胞内において分解されていないか、あるいは変異が導入されていない野生型配列より発現レベルが向上されたRNA配列が得られる。また、前述の得られたRNA配列からDNA配列を合成することにより、細胞内安定性にすぐれる配列に選別されて構成されたライブラリー(二次ライブラリー)を構築することができる。
【0064】
前記(D)段階は、前記D-1)段階ないしD-3)段階を1回以上繰り返して遂行するものでもあり、具体的には、前述の段階で作製された二次ライブラリーに含まれたDNA配列、またはそこから作製されたRNA配列をさらに細胞に形質感染させ、形質感染された細胞からよりもさらに精製されたライブラリー(三次ライブラリー)を作製することができる。前述のD-1)段階ないしD-3)段階を1回以上何回繰り返すことにより、さにすぐれた細胞内安定性を有する配列のライブラリーを獲得することができるが、細胞内安定性が向上されたmRNA配列を選別して作製するのに有利な効果を提供することができる。
【0065】
前記(D)段階は、D-4)前記ライブラリーに含まれた目的タンパク質を暗号化するDNA配列をベクター内にクローニングする段階と、D-5)前記ベクター、またはそこから作製されたRNAを細胞に形質感染させる段階と、D-6)前述の形質感染された細胞から目的タンパク質を暗号化するRNAを得て選別する段階と、をさらに含むものでありえる。
【0066】
具体的には、前記D-3)段階を介して得られたライブラリーは、同一アミノ酸配列を暗号化する多様な種類の塩基配列を含んでいるが、それぞれの塩基配列を分離させ、それぞれ細胞に形質感染させるために、前記ライブラリーに含まれたDNA配列をベクター内にクローニングする段階を含むものでありえる。クローニングされた組み換えベクターは、ベクター当たり1種類の配列のみを含んでいるが、前述のベクター、またはそこから作製されたRNAに形質感染された細胞は、1種類の配列のみを発現することができる。
【0067】
従って、前記D-6)段階の形質感染された細胞(クローン)は、細胞当たり1種類の暗号化配列(DNAまたはRNA)を含んでいるが、前記細胞(クローン)から得られたRNAは、細胞(クローン)当たり1種類の配列を得るものでありえる。
【0068】
前記D-6)段階の形質感染された細胞は、選別された細胞でもあり、具体的には、目的タンパク質、またはそれを暗号化する配列の発現レベルにすぐれる細胞が選別されたものでありえる。前述の選別する過程は、対照群を形質感染させた細胞の目的タンパク質発現レベルと比較して選別するものを含むものでもあり、前記対照群は、変異が導入されていない野生型遺伝子配列でありえる。
【0069】
前記(D)段階は、D-7)前述の得られたRNA、及びそこから合成されたDNAの配列を決定する段階をさらに含むものでありえる。
【0070】
前述の配列を決定することは、対象配列の塩基配列を分析して配列情報を確認することであり、当業界の公知された方法を利用することができ、例えば、サンガー塩基配列分析(Sanger sequencing)、マクサム・ギルバート塩基配列分析(Maxam-Gilbertsequencing)または次世代塩基配列分析(next generation sequencing)の方法を利用することができる。
【発明の効果】
【0071】
一態様による方法によれば、目的タンパク質のアミノ酸配列には、変化を与えない範囲において、それを暗号化する塩基配列に変異を導入し、細胞内安定性が向上されたmRNA配列を選別して作製することができるものであり、前記方法を利用すれば、生体内目的タンパク質の発現レベルを向上させることができるという長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【
図1】細胞内安定性が向上されたmRNA配列を選別または作製する方法の過程を示した模式図である。
【
図2】細胞内安定性が向上されたmRNA配列を選別または作製する方法の過程を示した模式図である。
【
図3】目的タンパク質(例:ガウシアルシフェラーゼ)の変異導入過程及びプライマー設計過程を示した模式図である。
【
図4】連続PCR反応を介して変異導入テンプレートを合成する過程を大体のところ示した図である。
【
図5】設計/作製されたプライマーを利用し、連続PCR反応を遂行する過程を示した図である。
【
図6】本発明の方法を介して選別された候補mRNA配列の目的タンパク質発現レベルを比較した図である。
【
図7】本発明の方法を介して選別された細胞内安定性にすぐれるmRNA配列の二次構造を対照群と比較した図である。
【
図8】本発明の方法を介し、HeLa細胞を利用して選別された細胞内安定性にすぐれるCOVID19抗原タンパク質を暗号化する配列の発現レベルを比較した図である。
【
図9】本発明の方法を介し、HEK293T細胞を利用して選別された細胞内安定性にすぐれるCOVID19抗原タンパク質を暗号化する配列の発現レベルを比較した図である。
【
図10】本発明の方法を介し、HeLa細胞を利用して選別された細胞内安定性にすぐれるCOVID19抗原タンパク質を含む組み換えタンパク質を暗号化する配列の発現レベルを比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
以下、実施例を介し、さらに詳細に説明する。しかし、それら実施例は、例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲は、それら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0074】
実施例1:mRNAコドン変異を極大化させるためのテンプレート設計及びライブラリー作製
本発明の、安定性が向上されたmRNA選別して作製方法について説明するために、周知されている分泌性ルシフェラーゼ酵素であるガウシアルシフェラーゼ(GL:Gaussia luciferase)遺伝子の暗号配列を代表例として利用した。前記暗号配列は、米国・New England Biolabs社のクローニングベクターであるpCMV-GLuc_2内のGaussia princeps luciferase遺伝子暗号配列を参照した。前記遺伝子配列の5’末端部位には、T7プローモーターが位置し、試験管内転写(IVT:in vitro transcription)を可能にさせ、mRNAの安定性を増大させると知られたUTR暗号配列を、前記遺伝子配列の5’末端と3’末端部位とにそれぞれ挿入した。また、3‘末端部位には、ポリアデニル化配列を位置させ、試験管内転写反応(IVT)後、即座にmRNAとして使用することができるように考案されている。前記変異が導入されていない野生型ガウシアルシフェラーゼ遺伝子配列が含まれたテンプレート(野生型ガウシアルシフェラーゼ(GL)遺伝子テンプレート)配列は、配列番号1の配列でもって表現した。
【0075】
次に、前記配列番号1の配列のガウシアルシフェラーゼ遺伝子を暗号化する開放型解読フレーム(ORF)配列から翻訳されるタンパク質の各アミノ酸配列は、維持しながら、mRNAコドンに変異を導入するために、コドンの3番目塩基を多様化させた。ガウシアルシフェラーゼ遺伝子暗号化配列に導入される変異配列を設計して詳細に敍述するために、当業者が一般的に使用する国際純粋・応用化学連合(IUPAC:International Union of Pure and Applied Chemistry)の重義性コード(ambiguity codes)命名法を利用し、以下のように表現した。Nは、アデニン(A)、グアニン(G)、C(シトシン)またはT(チミン);Rは、アデニン(A)またはグアニン(G);Yは、C(シトシン)またはT(チミン);Hは、アデニン(A)、C(シトシン)またはT(チミン);Dは、アデニン(A)、グアニン(G)またはT(チミン)を意味する。前述の重義性コードを利用し、コドンの3番目塩基に変異が導入されたガウシアルシフェラーゼのmRNA配列において、フェニルアラニンは、uuY、ロイシンは、uuRまたはcuN、イソロイシンは、auH、バリンは、guN、セリンは、ucNまたはagY、プロリンは、ccN、スレオニンは、acN、アラニンは、gcN、チロシンは、uaY、ヒスチジンは、caY、グルタミンは、caR、アスパラギンは、aaY、リシンは、aaR、アスパラギン酸は、gaY、グルタミン酸は、gaR、システインは、ugY、アルギニンはcgN及びagR、グリシンは、ggNと表記した。また、メチオニンは、atg、トリプトファンは、tggと表記し、1つのコドンだけ有する。配列番号1において、前記コドンの変異を含むように設計された暗号配列を含むテンプレート(変異導入ガウシアルシフェラーゼ(GL)遺伝子テンプレート)は、配列番号2で表示し、前述の配列番号1及び2の配列は、下記の表1に記載された(開放型解読フレームの配列は、アルファベット小文字で表記され、開放型解読フレーム内に変異が導入されていない部分は、下線で表示されている)。
【0076】
【0077】
次に、配列番号1の配列を基に、前記配列番号2のテンプレートDNA配列を作製するために、まず、前述の約760個の塩基対を含む配列番号2の全体配列暗号配列及びその相補配列を、約75~135塩基の大きさに分割し、それぞれの分割された領域を合成した(
図3)。合成されたオルリゴヌクレオチド配列の情報は、下記表2に記載されている。
【0078】
【0079】
次に、前述の合成されたオルリゴヌクレオチド配列をプライマーとして使用し、連続的なPCR反応を遂行した(
図4)。まず、PM_Rpic_GL_F1(配列番号3)及びPM_Rpic_GL_R1(配列番号4)をプライマーとして使用し、PCR反応を遂行した。その場合、PM_Rpic_GL_F1の3’末端部分と、PM_Rpic_GL_R1の3’末端部分とが互いに相補的な結合がなされ、PCR反応がなされることになり、反応結果、配列番号2の一部領域に該当する配列が産物として生成される(配列番号12)。
【0080】
続けて、配列番号12の配列をテンプレートにし、PM_Rpic_GL_F1(配列番号3)及びPM_Rpic_GL_R2(配列番号5)をプライマーとして使用し、二次PCR反応を遂行し、配列番号12の3’末端部分と、PM_Rpic_GL_R2の3’末端部分とが互いに相補的な結合がなされて反応が遂行され、配列番号13の産物が生成される。そのように、以前PCR反応の産物をテンプレートにし、連続的なPCR反応を遂行することにより、最終的に配列番号2の配列を作製することができる(
図5)。前述の連続PCR反応のテンプレート、プライマー、生産物の配列情報は、下記表3に記載されている。
【0081】
【0082】
前述の連続PCR反応の最終産物は、変異コドンの多様な組み合わせを含んでいるライブラリーであり、具体的には、最終産物である配列番号18に導入された変異コドンは、総160個に該当し、4種変異が誘導されるNが83個、3種変異が誘導されるHが10個、2種変異が誘導されるYとRとがそれぞれ31個と36個とであるので、(4^83)x(3^10)x(2^31)x(2^36)のおよそ8.14x10^74個の変異コドンを含む配列を含むライブラリーが作製されうる。従って、前記ライブラリー配列において、安定化された構造または安定因子と相互作用することができる配列を同定することにより、安定性が向上されたmRNA配列を選別することができる。
【0083】
実施例2:変異されたmRNA生産のための試験管内転写(IVT)及び精製段階
前記実施例1で作製されたライブラリーに含まれた多様な変異配列から、試験管内転写(IVT)を介するmRNAを作製するために、下記のような実験を行った。
【0084】
具体的には、試験管内転写(IVT)反応を行うために、mRNA生産用キットである米国・New England Biolabs社のHiScribe T7 ARCA mRNAkit with tailingを使用した。まず、前記実施例1を介して作製された変異DNAを含むライブラリー混合体1μg、10μl 2x ARCA/NTP Mix、2μl T7 RNA Polymerase Mixを混合し、残りは、蒸溜水を添加し、最終的に20μlの反応物を組成し、37℃で30分間反応させ、試験管内転写(IVT)反応を遂行した。反応が完了すれば、2μlDNase酵素を添加した後、37℃で15分間処理し、残留DNAをいずれも除去した。DNA除去が完了した後、ポリアデニル酸テールを添加する反応を実施するために、前述のIVT反応物20μlに、5μl Poly(A) polymerase Reaction Buffer、5μlPoly(A) polymeraseを混合し、残りは、蒸溜水を添加し、最終的に50μlの反応物を組成し、37℃で30分間反応させた。最終的に得られたIVTmRNAは、RNA精製キットを利用して精製した。
【0085】
実施例3:IVT mRNAの宿主細胞への形質感染
前記実施例2で作製されたIVTmRNAを、ヒト細胞株であるHEK293T(ATCC、CRL-3216)に形質感染させて発現させるために、下記のような実験を行った。
【0086】
具体的には、まず、HEK293細胞を培養するために、T75フラスコにおいて、10%FBS(fetus bovine serum)(#16000-028(Gibco))、1%ABAM(#15240-O13(Gibco BRL))を添加したMEM培地(#11095-080(Gibco))で3日間培養した後、1x PBS緩衝溶液で洗浄した後、トリプシンで処理し、培養容器底に分離させた。分離された細胞を遠心分離し、上澄み液を捨て、さらに1xPBS緩衝溶液で再分散させた後、電気穿孔用溶液に、約5X105細胞/mlの濃度に再分散させ、細胞が分散された溶液1mlに、約20μgのIVTmRNAを添加した後で混合し、米国・Thermo Fisher Scientific社のネオン形質感染システム(Neon Transfection System)を利用して形質感染させた。電気穿孔遂行条件は、製作社のプロトコルによるものとした。形質感染された細胞は、さらに6ウェルマイクロプレート容器に分散させ、5%CO2細胞培養器で培養した。
【0087】
実施例4:形質感染された細胞における、生体内安定性にすぐれるmRNAの分離/精製
前記実施例3で作製された形質感染細胞において、細胞内安定性にすぐれるmRNA配列を得て精製するために、下記のような実験を行った。
【0088】
具体的には、前記実施例3における電気穿孔方法を利用して形質感染させた後、細胞内安定性が向上されたRNA配列を選別するために、72時間培養し、その後、前記培養された細胞と、前記細胞培養液とを収穫した。次に、前記ガウシアルシフェラーゼを暗号化する配列が、形質感染が良好になされ、目的タンパク質を発現するか否かということを確認するために、収穫された細胞培養液に分泌されたガウシアルシフェラーゼの発現レベルを測定し、100サンプル当たり、5ml BioLux GLuc Assay Bufferに、50μl BioLux GLucSubstrateと、800μl BioLux GLuc Stabilizerとを添加し、GLuc assay溶液を製造し、各時間帯別に回収された培養液10μlを、96ウェルマイクロプレートに入れ、ウェル当たり50μlのGLuc assay溶液を添加した後、35~40秒間培養した後、ルミノメーターで発光度を測定した。
【0089】
次に、前述の形質感染後、72時間培養された細胞において、当業者に周知されている方法でもって、細胞内RNAを分離させて精製した。
【0090】
実施例5:RT-PCR方法を利用して精製されたmRNAからのcDNA増幅
前記実施例4の形質感染された細胞において得られたmRNAから、cDNAを合成/増幅するために、下記のような実験を行った。
【0091】
具体的には、RNAをテンプレートとして、一次的に、逆転写酵素(reverse transcriptase)を利用したRT-PCR反応でcDNAを合成し、前記cDNAを一般的な重合酵素連鎖反応(PCR)で増幅した。まず、RT-PCRを遂行するために、前記実施例4で精製された2μgRNAに、100ng Random Hexamer、2μl 10xReverse Transcriptase Buffer、10m MDTT、10m MdNTP、250unitsreverse transcriptaseを添加した後、蒸溜水で最終体積20μlに合わせた。その反応物を、70℃で10分間培養し、RNAを変形させ、42℃で1時間、逆転写反応を実施し、さらに80℃で15分間逆転写酵素を不活性化させた。前述のcDNA産物に対し、配列番号10及び11のプライマーを利用し、さらに重合酵素連鎖反応を実施し、IVTmRNA作製用DNA切片を増幅し、分離させて精製した。なお、前記DNA切片は、多様な変異配列を含んでいるので、第二次ライブラリーと見ることができる。前述の実施例3ないし5の段階は、数回繰り返し、三次ライブラリー、四次ライブラリーなどを作製することができ、繰り返し回数が増加されるほど、さらに細胞内安定性が向上されたRNA配列によって構成されたライブラリーを得ることができる。
【0092】
実施例6:増幅されたcDNAにおけるIVT mRNA作製、及び細胞形質の感染
前記実施例5で分離/精製されたDNA切片を利用し、前記実施例2の方法でもってIVTmRNAを作製し、それを再びHEK293T細胞に形質感染させた。そのとき、対照群として、変異が導入されていない配列番号1のテンプレート配列を利用して作製されたIVTmRNAを同一様相に形質感染させた。24,48,72時間後、形質感染された細胞における、分泌性ルシフェラーゼ発現レベルを時間帯別に比較測定し、前記実施例を介して得られた変異されたガウシアルシフェラーゼmRNA暗号配列が、対照群である変異が導入されていない野生型ルシフェラーゼmRNAより安定性が上昇されることを確認した。また、結果として、ガウシアルシフェラーゼタンパク質翻訳効率上昇と共に、タンパク質の発現レベルが有意に上昇したことを確認した。安定性及び発現のレベルが有意に上昇した細胞において、RNAを分離させて精製して得た。
【0093】
実施例7:IVT mRNAから合成されたcDNAクローニング、及びそれを利用したIVT mRNA再生産及び安定性の評価
前記実施例6で確認された、安定性及び発現のレベルが有意に上昇した細胞において得られた全てのRNAまたはmRNAに対し、配列番号10及び11のプライマーを利用し、前述のRT-PCR方法でもってcDNAを増幅した。本段階で増幅されたcDNAには、さまざまな種類の安定化されたmRNAから逆転写されたcDNAが混合されているので、さらに精製されたライブラリーであると見ることができる。従って、前述の多様な配列のうちから、安定化されたmRNAの特定配列を選別し、暗号配列を分析し、安定化程度を試験するために、それに該当するそれぞれのcDNA配列を、大腸菌用Tベクターシステムにクローニングする必要がある。そのために、当業者にすでに周知されている台湾・Yeastern Biotech社のT&Aクローニングベクターを使用し、それぞれのcDNAが挿入されたクローンから、プラスミドベクターDNAを分離させて精製し、さらに前述の方法でもって、クローン別に、試験管内転写(IVT)反応を遂行し、IVTmRNAを作製した。前述の選別されて作製されたIVT mRNAと、対照群IVT mRNA途に対し、それぞれクローン別にHEK293T細胞に、前述の電気穿孔方法で形質感染させ、時間別に培養液を回収し、ルシフェラーゼ発現レベル分析を実施し、相対的に対照群に比べ、すぐれたルシフェラーゼ発現レベルを示すクローンを選別した。
【0094】
実施例8:安定性が確認された変異暗号コドンの評価及び決定
前述のところにおいて、卓越した発現レベルを示すとして選別されたクローンの暗号配列を、当業者に周知されているシークエンシング方法でもって確認した。前記シークエンシング結果を利用し、さまざまなクローンの暗号配列を比較し、共通する暗号配列を導き出すか、あるいはRNA三次構造予測プログラム(http://rna.tbi.univie.ac.at/cgi-bin/RNAWebSuite/RNAfold.cgi)を介し、新規の有意な構造を分析することができる。また、RNA三次構造に結合し、mRNAの安定性を調節することができるタンパク質の予測または発掘も可能である。
【0095】
具体的には、前記実施例7において、一連のガウシアルシフェラーゼのIVTmRNAの再生産及び安定性の評価過程を介して獲得された数十種のmRNA暗号配列を選別し、そのうちの8種クローンの暗号配列を、配列番号19ないし26に整理した。最初の野生型暗号配列(配列番号1)と、各クローンの配列とを比較し、類似性を比較した結果、アミノ酸配列の変化がない状態において、暗号配列の類似性は、79.0%~82.6%の範囲に分析された(表4)。
【0096】
【0097】
また、選別されたクローンにおいて、RPIC_GL_15は、形質感染後、24時間だけではなく、48時間、72時間においても、対照群に比べ、非常に高い発現レベル及び安定性を示すということが確認されるが(
図6)、多様な変異配列において、RPIC_GL_15が細胞内安定性にすぐれているということを知ることができる。次に、前述の段階で言及されたRNA構造を決定するアルゴリズムプログラムでもって、RPIC_GL_15のRNA暗号配列を分析した結果、最初の暗号配列の二次構造と非常に異なる構造を示した(
図7)。前記結果を基に、本発明の一連の過程が、細胞内において、構造的に異なる状態でありながら、安定性が顕著に向上されたcDNAまたはmRNAを選別することができ、前述の選別された配列を利用し、タンパク質の生成を向上させることができるということを知ることができる。
【0098】
実施例9:細胞内安定性が向上されたmRNA選別して作製する方法の利用
前記実施例において、すぐれた効果が確認された本発明のmRNA選別方法が、ガウシアルシフェラーゼ以外の他の目的タンパク質にも適用されうるか否かということを確認するために、下記のような実験を行った。
【0099】
まず、Covid19抗原タンパク質を目的タンパク質にし、Covid19抗原タンパク質を暗号化する細胞内安定性が向上されたmRNA選別することにした。具体的には、変異が導入されていないCovid19抗原タンパク質の暗号化配列含まれたテンプレート(配列番号27)を利用し、前記実施例に記載されたmRNA選別方法を介し、細胞内安定性が向上されたmRNAを効果的に選別した。その結果、目的タンパク質のアミノ酸配列には、変化を与えない範囲において、目的タンパク質を暗号化する塩基配列に変異が導入された配列において、#57(配列番号30)及び#114(配列番号34)の場合、野生型配列(WT)よりも、細胞内安定性にすぐれるということを確認し、前記選別された配列は、Hela細胞及びHEK293T細胞において、いずれも同一結果を示した(
図8及び
図9)。
【0100】
また、Covid19抗原タンパク質及び追加ペプチドを含む組み換えタンパク質を目的タンパク質にし、前述の方法を介し、細胞内安定性が向上されたmRNA選別した結果、前記結果と同一に、目的タンパク質のアミノ酸配列には、変化を与えない範囲において、目的タンパク質を暗号化する塩基配列に変異が導入された配列において、#8(配列番号36)及び#29(配列番号39)の場合、野生型配列(WT)よりも、細胞内安定性にすぐれるということを確認した(
図10)。
【0101】
前記結果を基に、本発明のmRNA選別方法は、目的タンパク質の種類及び配列に影響を受けず、細胞内安定性が向上された配列を効果的に選別することができるというこを知ることができる。
【0102】
前述の本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者であるならば、本発明の技術的思想や、必須な特徴を変更せずとも、他の具体的な形態に容易に変形が可能であるということを理解することができるであろう。従って、以上で記述された実施例は、全ての面において、例示的なものであり、限定的ではないと理解されなければならない。
【配列表】
【国際調査報告】