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特表2024-520441一体型かつ連続したウイルスろ過、濃縮、及び緩衝剤交換のための方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】一体型かつ連続したウイルスろ過、濃縮、及び緩衝剤交換のための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/06 20060101AFI20240517BHJP
   C12Q 1/24 20060101ALI20240517BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
C12M3/06
C12Q1/24
C12P21/02 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572852
(86)(22)【出願日】2022-05-24
(85)【翻訳文提出日】2023-11-24
(86)【国際出願番号】 US2022030783
(87)【国際公開番号】W WO2022251261
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】63/192,662
(32)【優先日】2021-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503385923
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100179925
【弁理士】
【氏名又は名称】上出 真紀
(72)【発明者】
【氏名】キャプロン チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】ゴドフリー スコット
(72)【発明者】
【氏名】イコン ニキタ
(72)【発明者】
【氏名】コーリ ジョエル
(72)【発明者】
【氏名】オロスコ ラケル
(72)【発明者】
【氏名】ズー ミン
【テーマコード(参考)】
4B063
4B064
【Fターム(参考)】
4B063QA20
4B063QQ79
4B063QS12
4B064AG01
4B064AG27
4B064CA05
4B064CA06
4B064CA10
4B064CA19
4B064CE06
4B064CE20
(57)【要約】
一体型かつ連続したウイルスろ過及び生物学的生成物の濃縮のための方法及びシステムは、最終精製システムに連結された初期生成システムを含む。初期生成システムは、ウイルス低減ろ過(VRF)スキッドを含み、最終精製システムはシングルパス・タンジェンシャルろ過-透析ろ過(SPTFF-DF)スキッドを含む。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
初期の生物学的生成物の一体型連続処理のための単回使用システムであって、シングルパス・タンジェンシャルフローろ過(SPTFF)及び透析ろ過(DF)ユニット操作に連結されたウイルスろ過ユニット操作を含む前記単回使用システム。
【請求項2】
処理が、ろ過、濃縮、及び緩衝剤交換を含む、請求項1に記載の単回使用システム。
【請求項3】
前記生物学的生成物がタンパク質である、請求項1に記載の単回使用システム。
【請求項4】
前記生物学的生成物がモノクローナル抗体である、請求項1に記載の単回使用システム。
【請求項5】
前記ウイルスろ過ユニット操作が、ポンプ、少なくとも1つのプレフィルタ、及び1以上のウイルス低減ろ過膜を含む、請求項1に記載の単回使用システム。
【請求項6】
前記SPTFF-DFユニット操作が、1以上のSPTFF膜、DF混合タンク、DF膜、センサ、ポンプ、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の単回使用システム。
【請求項7】
さらに前記ウイルスろ過ユニット操作に連結された供給物貯蔵槽を含む、請求項1に記載の単回使用システム。
【請求項8】
前記供給物貯蔵槽が精製及びポリッシュされたモノクローナル抗体を約5~約20g/Lの濃度で保持する、請求項7に記載の単回使用システム。
【請求項9】
前記供給物貯蔵槽が精製及びポリッシュされたモノクローナル抗体を約8~約12g/Lの濃度で保持する、請求項7に記載の単回使用システム。
【請求項10】
前記システムが、一体型の連続したウイルスろ過、濃縮、及び緩衝剤交換を、約8時間の時間枠内に行う、請求項1に記載の単回使用システム。
【請求項11】
前記システムが、一体型の連続したウイルスろ過、濃縮、及び緩衝剤交換を、約24時間以下の時間内に行う、請求項1に記載の単回使用システム。
【請求項12】
前記システムが、一体型の連続したウイルスろ過、濃縮、及び緩衝剤交換を、約12時間以下の時間内に行う、請求項1に記載の単回使用システム。
【請求項13】
前記システムが、前記生物学的生成物の濃度を10倍に増加させる処理が可能である、請求項1に記載の単回使用システム。
【請求項14】
処理された生物学的生成物を提供するための一体型の連続的方法であって、
a)初期の生物学的生成物を含む供給流を提供すること;
b)前記供給流をろ過してウイルス性汚染物質を除去すること;
c)前記初期の生物学的生成物を濃縮すること;及び
d)緩衝剤交換を行って、処理された生物学的生成物を生成すること、を含み、
前記工程b)~d)は、シングルパス・タンジェンシャルフローろ過(SPTFF)及び透析ろ過(DF)ユニット操作に連結されたウイルスろ過ユニット操作により行われる前記方法。
【請求項15】
前記ウイルスろ過ユニット操作が、ポンプ、少なくとも1つのプレフィルタ、及び1以上のウイルス低減ろ過膜を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記SPTFF-DFユニット操作が、1以上のSPTFF膜、DF混合タンク、DF膜、センサ、ポンプ、又はそれらの組み合わせを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記初期の生物学的生成物がタンパク質である、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記初期の生物学的生成物がモノクローナル抗体である、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記方法が、一体型の連続したウイルスろ過、濃縮、及び緩衝剤交換を、従来の方法と比較して約50%短縮された時間枠内に行う、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記システムが、一体型の連続したウイルスろ過、濃縮、及び緩衝剤交換を、約24時間以下の時間内に行う、請求項14に記載のシステム。
【請求項21】
前記システムが、一体型の連続したウイルスろ過、濃縮、及び緩衝剤交換を、約12時間以下の時間内に行う、請求項14に記載のシステム。
【請求項22】
前記システムが、前記初期の生物学的生成物の濃度を10倍に増加させる処理を行う、請求項15に記載のシステム。
【請求項23】
目的の生物学的生成物の製造方法であって、
(I)細胞培養において前記目的の生物学的生成物を発現する真核細胞を培養すること;
(II)前記目的の生物学的生成物を、前記細胞培養から、目的の生物学的生成物及び1以上の不純物若しくは緩衝剤成分を含む流体供給物の形態で採取すること;
(III)目的の生物学的生成物及び1以上の不純物若しくは緩衝剤成分を含む前記流体供給物を精製して、前記流体供給物から、前記目的の生物学的生成物を分離すること;及び
(IV)任意で、前記目的の生物学的生成物を、投与に適した薬学的に許容可能な製剤に処方すること;の工程を含み、
前記方法の工程IVは、さらに、前記流体供給物を、初期の生物学的生成物の一体型連続処理のための単回使用システムに通過させる工程を含み、
初期の生物学的生成物の一体型連続処理のための前記単回使用システムは、シングルパス・タンジェンシャルフローろ過(SPTFF)及び透析ろ過(DF)ユニット操作に連結されたウイルスろ過ユニット操作を含む、前記製造方法。
【請求項24】
前記目的の生物学的生成物が組換えタンパク質である、請求項24に記載の方法。
【請求項25】
細胞培養において前記目的の生物学的生成物を発現する真核細胞を培養する前記工程が流加細胞培養で行われる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
細胞培養において前記目的の生物学的生成物を発現する真核細胞を培養する前記工程が連続細胞培養で行われる、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
目的の生物学的生成物の製造方法であって、
(I)細胞培養において前記目的の生物学的生成物を発現する真核細胞を培養すること;
(II)前記目的の生物学的生成物を、前記細胞培養から、目的の生物学的生成物及び1以上の不純物若しくは緩衝剤成分を含む流体供給物の形態で採取すること;
(III)目的の生物学的生成物及び1以上の不純物若しくは緩衝剤成分を含む前記流体供給物を精製して、前記流体供給物から、前記目的の生物学的生成物を分離すること;及び
(IV)任意で、前記目的の生物学的生成物を、投与に適した薬学的に許容可能な製剤に処方すること;の工程を含み、
前記方法の工程IVは、さらに、
a)初期の生物学的生成物を含む供給流を提供すること;
b)前記供給流をろ過してウイルス性汚染物質を除去すること;
c)前記初期の生物学的生成物を濃縮すること;及び
d)緩衝剤交換を行って、処理された生物学的生成物を生成すること、を含む前記製造方法。
【請求項28】
前記目的の生物学的生成物が組換えタンパク質である、請求項28に記載の方法。
【請求項29】
細胞培養において前記目的の生物学的生成物を発現する真核細胞を培養する前記工程が流加細胞培養で行われる、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
細胞培養において前記目的の生物学的生成物を発現する真核細胞を培養する前記工程が連続細胞培養で行われる、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記システムが、一体型の連続したウイルスろ過、濃縮、及び緩衝剤交換を、約8時間以下の時間枠内に行う、請求項1に記載の単回使用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において、生物学的生成物(例えば、タンパク質)の製造において使用するためのシステム及び方法が開示され、より具体的には、一体型かつ連続したウイルスろ過、濃縮、及び緩衝剤交換のための単回使用のシステム及び方法が開示される。特定の実施形態において、システムは、生物学的生成物又は目的の材料を含む供給流の処理において使用するための、シングルパス・タンジェンシャルフローろ過(SPTFF)及び透析ろ過(DF)ユニット操作(operation)に連結されたウイルスろ過ユニット操作を含む一体型の単回使用システムである。
【背景技術】
【0002】
治療薬の製造における重要な課題は、環境汚染やプロセス関連の汚染がない、要求される純度の効能を有する製品を一貫して提供する能力である。生物製剤の製造は、生きた細胞の関与を考慮すると、特に困難である。
【0003】
従来の生物製剤の製造は、類似の一連の単位操作を含み、上流及び下流の2つの主要部分に分けられる。上流の単位操作は、通常、細胞培養及び採取工程を含み、下流は複数の精製工程で構成される。具体的には、下流プロセスの最後は、通常、ウイルス低減ろ過(VRF又はVF)工程を含み、その後、生成物の濃縮及び緩衝剤の交換のための限外ろ過/透析ろ過(UF/DF)が行われる。
【0004】
従来、VRFシステム及びUF/DFシステムは切り離されて、多くの場合は別々の日に連続して実行され、かなりの空間を占める大型の装置を利用する。新しい技術は、定期的/継続的なろ過を用いたVRFシステムのプロセス時間を生産工程にわたって短縮しようとしているが、ウイルスのブレイクスルーに関する懸念は依然として残っている。
【0005】
当該技術分野において、ウイルスのブレイクスルーのリスクを最小限に抑えながら、単回使用の装置を使用して、迅速な時間枠で、小さい設置面積における大規模生産を可能とする、改善されたプロセス、特にVRFプロセス及びUF/DFプロセスが必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本明細書において、モノクローナル抗体等の生物学的生成物の製造、特に、目的の生物学的生成物のバッチ又は連続製造によって生成される供給流の処理において使用するための、一体型の連続したウイルスろ過、限外ろ過、及び透析ろ過のためのシステム及び方法が開示される。
【0007】
一態様において、初期の生物学的生成物(initial biologic product)の一体型の連続した処理のための単回使用システムが提供され、前記システムは、シングルパス・タンジェンシャルフローろ過(SPTFF)及び透析ろ過(DF)ユニット操作に連結されたウイルスろ過ユニット操作を含む。
【0008】
別の態様において、処理された生物学的生成物を提供するための一体型の連続した方法が提供され、前記方法は、a)初期の生物学的生成物を含む供給流(例えば、流体供給物)を提供すること;b)前記供給流をろ過してウイルス性汚染物質を除去すること;c)前記初期の生物学的生成物を濃縮すること;及びd)緩衝液交換を行って、処理された生物学的生成物を生成することを含む。
【0009】
第3の態様において、目的の生物学的生成物の製造方法が提供され、前記方法は、
(I)細胞培養において前記目的の生物学的生成物を発現する真核細胞を培養すること;
(II)前記目的の生物学的生成物を、前記細胞培養から、目的の生物学的生成物及び1以上の不純物若しくは緩衝剤成分を含む流体供給物の形態で採取すること;
(III)目的の生物学的生成物及び1以上の不純物若しくは緩衝剤成分を含む前記流体供給物を精製して、前記流体供給物から、前記目的の生物学的生成物を分離すること;及び
(IV)任意で、前記目的の生物学的生成物を、投与に適した薬学的に許容可能な製剤に処方すること;の工程を含み、
前記方法は、さらに、前記流体供給物を、初期の生物学的生成物の一体型連続処理のための単回使用システムに通過させる工程を含み、
初期の生物学的生成物の一体型連続処理のための前記単回使用システムは、シングルパス・タンジェンシャルフローろ過(SPTFF)及び透析ろ過(DF)ユニット操作に連結されたウイルスろ過ユニット操作を含む。
【0010】
第4の態様において、目的の生物学的生成物の製造方法が提供され、前記方法は、
(I)細胞培養において前記目的の生物学的生成物を発現する真核細胞を培養すること;
(II)前記目的の生物学的生成物を、前記細胞培養から、目的の生物学的生成物及び1以上の不純物若しくは緩衝剤成分を含む流体供給物の形態で採取すること;
(III)目的の生物学的生成物及び1以上の不純物若しくは緩衝剤成分を含む前記流体供給物を精製して、前記流体供給物から、前記目的の生物学的生成物を分離すること;及び
(IV)任意で、前記目的の生物学的生成物を、投与に適した薬学的に許容可能な製剤に処方すること;の工程を含み、
前記方法は、さらに、
a)初期の生物学的生成物を含む供給流(例えば、流体供給物)を提供すること;
b)前記供給流をろ過してウイルス性汚染物質を除去すること;
c)前記初期の生物学的生成物を濃縮すること;及び
d)緩衝剤交換を行って、処理された生物学的生成物を生成すること、を含む。
【0011】
第5の態様において、ウイルスろ過-限外ろ過及び透析ろ過(VF-UFDF)システムが開示され、前記システムは、初期精製ユニット操作及び最終精製ユニット操作を含み、前記のユニット操作は連結されている。
【0012】
一実施形態において、前記初期精製ユニット操作は、ウイルス粒子を除去するための少なくとも1つのウイルスろ過膜を含み、前記最終精製ユニット操作は、濃縮及び緩衝剤交換のためのシングルパス・タンジェンシャルフローろ過(SPTFF)及び透析ろ過(DF)システムを含む。
【0013】
一実施形態において、前記初期精製ユニット操作は、ポンプ、少なくとも1つのプレフィルタ、及び1以上のウイルス低減ろ過膜を含む。
【0014】
一実施形態において、前記最終精製ユニット操作は、1以上のSPTFF膜、DF混合タンク、DF膜、センサ、ポンプ、又はそれらの組み合わせを含む。
【0015】
一実施形態において、前記材料はタンパク質である。
【0016】
具体的な実施形態において、前記材料はモノクローナル抗体である。
【0017】
一実施形態において、前記処理は、従来の処理システムと比較して約50%短縮された時間枠内で行われる。
【0018】
一実施形態において、前記処理は約24時間以下の時間内に行われる。
【0019】
一実施形態において、前記処理は約12時間以下の時間内に行われる。
【0020】
一実施形態において、前記処理は結果として材料の濃度を10倍に増加させる。
【0021】
一実施形態において、前記システムはさらに前記初期精製アセンブリに連結された供給物貯蔵槽を含む。
【0022】
具体的な実施形態において、前記供給物貯蔵槽は精製及びポリッシュされた(polished)モノクローナル抗体を約5~約20g/L、より具体的には約8~約12g/Lの濃度で保持する。
【0023】
本発明の前記及び他の特徴及び態様は、本発明の特定の例示的な実施形態についての以下の説明を参照し、添付の図面と併せて読むことによって最もよく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、例示的な実施形態に基づいた、最終の精製スイート(suite)における濃縮及び緩衝剤交換のためのシングルパス・タンジェンシャルフローろ過(SPTFF)及び透析ろ過(DF)システムに連結された、初期の精製スイートにおける最後の工程としてのウイルスろ過(VF)を含む、最終精製処理を行うための一体型単回使用システムの概略図を示す。
図2図2は、例示的な実施形態に基づいた、図1の一体型単回使用システム内で使用されるウイルスろ過システムの概略図を示す。
図3図3は、例示的な実施形態に基づいた、図1の一体型単回使用システム内で使用される最終精製システムの概略図を示す。
図4図4は、例示的な実施形態に基づいた、モード1又はモード2で操作するときの一体型単回使用システムの操作時間を比較するモード1及び2の図形的な時間表現を示す。
図5A図5Aは、例示的な実施形態に基づいた、ポール4インシリーズの体積変換係数流束変動プロファイル(分子1)のグラフを示し、SPTFF膜用のポール社製4連膜を用いた、様々な開始濃度における分子1の体積変換係数(VCF)対供給流束を示す。
図5B図5Bは、例示的な実施形態に基づいた、ポール9インシリーズの体積変換係数流束変動プロファイル(分子2)のグラフを示し、SPTFF膜用のポール社製9連膜を用いた、様々な開始濃度における分子2の体積変換係数(VCF)対供給流束を示す。
図5C図5Cは、例示的な実施形態に基づいた、ポール9インシリーズの体積変換係数流束変動プロファイル(分子3)のグラフを示し、SPTFF膜用のポール社製9連膜を用いた、様々な開始濃度における分子3の体積変換係数(VCF)対供給流束を示す。
【0025】
図面は本発明の例示的な実施形態を示すにすぎず、したがってその範囲を限定するものとみなされるべきではなく、本発明は他の同様に効果的な実施形態も許容し得る。
【発明を実施するための形態】
【0026】
流体(例えば、細胞培養培地又は清澄化細胞培養培地)から生物学的生成物を生成するためには、精製及び/又は粒子分離が必要な場合がある。従来のアプローチにおいて、流体を精製するプロセス及び/又は流体から粒子(すなわち固体)を分離するプロセスは多くの工程を含み、それぞれの工程は別々の装置システムで行われる。プロセスのコストには、通常、各処理工程に関連する制御及び処理ハードウェアのための個別の装置及びスペースのコストが含まれる。
【0027】
本明細書において、例えばタンパク質等の分子のろ過処理に使用される方法、システム、及び装置が開示され、より具体的には、分子の、一体型かつ連続したウイルスろ過、限外ろ過、及び透析ろ過の処理のための方法及びシステムが開示される。有利には、本明細書に開示されるシステム及び方法は、コンパクトな形式で、すなわち従来のアプローチよりも小さい設置面積で、ウイルスろ過、限外ろ過、及び透析ろ過を可能とする。
【0028】
本発明の例示的な実施形態の説明は、ある特定の装置の利用とともに以下に示されるが、本発明の別の実施形態は、同一又は類似の機能を実行し、従来のシステムと比較して全体的に省スペースである、プロセス内で用いられる他の種類の装置に適用可能である。
【0029】
I.定義
「生物学的生成物(biologic product)」又は「生物学的材料(biologic material)」という用語は、一般に、生物学的プロセスを介して、又は既存の生物学的生成物の化学修飾又は触媒修飾を介して生成される目的の生成物を示す。生物学的プロセスとしては、細胞培養、発酵、代謝、呼吸等が挙げられる。目的の生物学的生成物としては、例えば、抗体、抗体フラグメント、タンパク質、ホルモン、ワクチン、天然タンパク質のフラグメント(ワクチンとして使用されるバクテリア毒素のフラグメント、例えば、破傷風トキソイド等)、融合タンパク質又はペプチド複合体(例えば、サブユニットワクチン等)、ウイルス様粒子(VLPs)等が挙げられる。
【0030】
本明細書で使用される「連続」という用語は、間に最小の保持量を有する2以上の一体型の(物理的に接続された)連続したユニット操作を指す。このようなプロセスは、完全連続又はエンドツーエンド連続とも称される。プロセスがバッチ及び連続ユニット操作の両方で構成される場合、例えば、連続上流プロセス(細胞培養及び標的タンパク質の合成)及びバッチ下流プロセス(タンパク質の原薬又は医薬品への精製及び処方化)で構成される場合、プロセスはハイブリッドである。本明細書に記載される、関連付けられたユニット操作の特定の文脈において、「連続」という用語は、一定又は非周期的な液体輸送を指す。一実施形態において、本明細書に記載される方法及びシステムは、タンパク質のバッチについて連続したウイルスろ過、濃縮、及び緩衝剤交換を可能にする。
【0031】
「透析ろ過」又は「DF」という用語は、緩衝剤交換、すなわち、あるセットの緩衝塩を別のセットに交換することを意味するために用いられる。
【0032】
「ダイアボリューム(diavolume)」又は「DV」という用語は、透析ろ過工程中に行われた洗浄の程度の尺度である。それは、保持物の体積に対する、ユニット操作に導入される透析ろ過の緩衝剤の量に基づく。
【0033】
「下流」又は「下流処理」という用語は、一般に、生物学的生成物が生成された元の溶液からの生物学的生成物の捕捉、望ましくない成分及び不純物を除いた生物学的生成物の精製、病原体(例えば、ウイルス、エンドトキシン)のろ過又は不活性化、並びに処方化及び包装のために必要な工程の一部又は全てを指す。
【0034】
「高濃縮」という用語は、開始濃度よりも高い、好ましくは以前よりも著しく高い濃度を示す。濃度の増加量は、例えば、選択された生体分子及び媒体、並びに使用された限外ろ過及び透析ろ過の装置の条件及びパラメータに依存する。本明細書に記載される特定の実施形態において、タンパク質の最終濃度は、約1~約80g/L、約10~約80g/L、約20~約80g/L、約20~約70g/L、約30~約70g/Lであり、又はより具体的には、約1~約10g/L、約10~約20g/L、約20~約30g/L、約30~約40g/L、約40g/L~約50g/L、約50~約60g/L、約60~約70g/L、約70~約80g/Lである。特定の実施形態において、タンパク質の最終濃度は約80g/Lよりも高い。特定の実施形態において、タンパク質の最終濃度は、供給物中のタンパク質の濃度よりも2倍、3倍、4倍、5倍、又は10倍以上増加する。具体的な実施形態において、100L中10g/Lの材料が10L中100g/Lに、すなわち、濃度が10倍に増加する。
【0035】
「供給物」、「供給試料」、及び「供給流」という用語は、ろ過されるユニット操作(例えば、ウイルスろ過、SPTFF)に送達される(例えば、連続的に、バッチとして)溶液を指す。
【0036】
本明細書で使用される「ろ過」という用語は、膜を用いて溶液又は懸濁液中の成分を、成分間のサイズの違いに従って分離する圧力駆動の分離プロセスを指す。ろ過の結果、少なくとも一部(例えば、少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%)の望ましくない生物学的汚染物質(例えば、哺乳類の細胞、バクテリア、酵母細胞、ウイルス、又はマイコバクテリア)及び/又は粒子状物質(例えば、沈殿タンパク質)が、液体(例えば、本明細書に記載されるいずれかのシステム又はプロセスに存在する液体培養培地又は流体)から除去される。
【0037】
本明細書で使用される「ろ液」という用語は、フィルタ(例えば、プレフィルタ又はウイルスフィルタ)から放出される、検出可能な量の組換え抗体を含む流体を意味する。
【0038】
本明細書で使用される「流路」という用語は、システム又はサブシステムの全て又は一部を通る液体(例えば、供給物、保持物、透過物)の流れを支持するチャネルを指す。
【0039】
本明細書におけるシステム又はプロセスに関する「一体型(integrated)」という用語は、特定の結果(例えば、液体培養培地からのモノクローナル抗体の生成)を達成するために構造要素が協働して機能するシステム又はプロセスを意味する。
【0040】
「精密ろ過」という用語は、直径約0.05μm~約1μmの範囲の孔径を用いて、混合物から、インタクト(intact)な細胞及び比較的大きなデブリ(debris)若しくはタンパク質の凝集体を分離するために使用されるろ過を指す。
【0041】
本明細書で使用される「灌流細胞培養」という用語は、バイオリアクタに新鮮な培地を連続的に供給し、反応器内に細胞を保持しながら細胞を含まない使用済み培地を絶えず除去することによって行われる灌流培養を指し、したがって、細胞が、細胞保持デバイスを介して反応器内に保持されるため、灌流培養においては、連続培養と比較してより高い細胞密度を得ることができる。灌流速度は、細胞株の要求、供給物中の栄養素の濃度、及び毒素化のレベルに依存する。
【0042】
「ポリペプチド」、「ポリペプチド生成物」、「タンパク質」、及び「タンパク質生成物」という用語は、本明細書において互換的に使用され、当該技術分野で知られるように、2以上のアミノ酸からなる分子、例えば、連続的なペプチド結合を介して結合された少なくとも1つのアミノ酸鎖を示す。一実施形態において、「目的のタンパク質」又は「目的のポリペプチド」は、宿主細胞に形質転換された外因性の核酸分子によってコードされたタンパク質であり、外因性のDNAがアミノ酸配列を決定する。別の実施形態において、「目的のタンパク質」は、宿主細胞にとって内因性である核酸分子によってコードされるタンパク質である。
【0043】
本明細書で使用される「プレフィルタ」という用語は、ウイルスろ過膜の上流のフィルタを指す。プレフィルタの目的は、目的の生物学的生成物の通過を許容しながら、ウイルスを低減するろ過工程の前に目詰まり成分を選択的に保持することである。
【0044】
本明細書で使用される「保持物」という用語は、膜によって保持される特定の生物学的生成物(例えば、タンパク質)の画分を指す。また、見かけの保持又は固有の保持のいずれとしても計算することもできる。
【0045】
本明細書で使用される「単回使用」という用語は、一回使用してその後廃棄するのに適した物品、及び本発明によるプロセスで一回のみ使用され、その後そのプロセスでは使用されない再利用可能な物品を指す。そのような物品は「使い捨て」とも称される。
【0046】
「スキッド」という用語は、システムが容易に輸送されるようにする枠組の内に含まれる構成のシステムを指す。個々のスキッドは、完全なプロセスのシステム、又はプロセスの特定の態様を実行するシステムを含むことができる。複数のスキッドが組み合わされて、より大きなシステム又は運搬可能な設備全体を作ることもできる。
【0047】
「シングルパス・タンジェンシャルフローろ過」又は「SPTFF」という用語は、供給流が、再循環しない単一通過でフィルタ装置を通るように方向づけられるタンジェンシャルフローろ過の一種である。
【0048】
「タンジェンシャルフローろ過」又は「TFF」は、クロスフローろ過としても知られ、供給流が膜面と平行に流れるプロセスを指す。圧力を加えると、流量の一部は膜を通過し(ろ液/透過物)、流量の残部は保持される(保持物)。従来のTFFにおいて、保持物は供給物貯蔵槽に再循環される。
【0049】
「膜間圧」又は「TMP」という用語は、供給物から膜のろ液側に加えられる平均圧力を指す。
【0050】
本明細書で使用される「限外ろ過」又は「UF」という用語は、溶液又は懸濁液を、溶媒及び小さな溶質分子を通過させる一方、高分子を保持する半透膜に供する任意の技術を指す。限外ろ過は、溶液又は懸濁液中の高分子の濃度を高めるために使用され得る。一実施形態において、限外ろ過は、水中のタンパク質の濃度を高めるために使用される。膜の評価は、例えば、公称分子量(NMW)で、かつ約1kDから約1,000kDの範囲で表現し得る。
【0051】
「ユニット操作(unit operation)」という用語は、液体培養培地から生物学的物質を製造するプロセスにおいて実施され得る機能的な工程を指す。
【0052】
「ウイルス低減ろ過」又は「VRF」又は「VF」という用語は、ウイルス汚染を低減することを目的としたバイオ製造における一般的なユニット操作を指す。このプロセスはウイルス粒子をフィルタの表面及び孔内に保持し、ウイルスのサイズに基づいて行われる。ウイルスフィルタは、典型的なタンパク質精製プロセスにおけるさまざまな位置に配置することができる。一実施形態において、ウイルスフィルタは、UF/DFのすぐ上流に配置される。ウイルス低減レベルは、前処理された負荷(load)物質中のウイルス量と、後処理された試料中のウイルス量とを比較することにより計算される。レベルは、典型的には、低減の対数(log10)に換算して表現される。ウイルス除去フィルタは、大きく2つのカテゴリ:大きなウイルス、典型的には80~100nmの内因性レトロウイルスを、>4又は>6log10で除去するフィルタ;並びに小型及び大型ウイルス(18~24nmのパルボウイルスより大きい)を、>4log10で除去するフィルタに分類される。ウイルス粒子の数の減少は、約1%~約99%、好ましくは約20%~約99%、より好ましくは約30%~約99%、より好ましくは約40%~約99%、さらに好ましくは約50%~約99%、さらに好ましくは約60%~約99%、さらにより好ましくは約70%~約99%、さらにより好ましくは約80%~99%、及びさらにより好ましくは約90%~約99%程度とすることができる。特定の非限定的な実施形態において、精製された抗体生成物中のウイルス量は、存在する場合、そのウイルスのID50(標的とする集団の50パーセントを感染させるウイルスの量)未満、好ましくはそのウイルスのID50の少なくとも10分の1未満、より好ましくはそのウイルスのID50の少なくとも100分の1未満、及びさらにより好ましくはそのウイルスのID50の少なくとも1,000分の1未満である。
【0053】
開示されるシステム及び方法は、各図の同等の部分が同じ参照符号によって識別され、以下に簡単に説明される添付の図面を参照して、非限定的な例示の実施形態の以下の説明を読むことによって、よりよく理解され得る。
II.システム
【0054】
本明細書に開示されるシステムは、連続又はバッチ製造を含む任意の適切な生物学的製造プロセスによって生成される材料(モノクローナル抗体等の生物学的生成物)の量を処理するのに適している。
【0055】
一実施形態において、システムは、例えば、連続(灌流)細胞培養、捕捉、ウイルス不活化、ポリッシング、又はそれらの組み合わせを含む1以上の一体型の連続した上流操作を含むシステムによって生成されたある量の材料(生物学的生成物)の処理を可能にする。
【0056】
特定の実施形態において、本明細書に開示されるシステム及び方法は、単回使用の流路を用いた小さいスイートにおいて、iSKID(例えば、国際公開第2020/205559号を参照)とともに用いるのに適している。本明細書において言及される場合、「iSKID」は、初期精製、ウイルス不活化、及びポリッシング工程を、連続的に、灌流操作(例えば、2週間の高強度灌流操作)の間にわたって実施するタンパク質生成プラットフォームである。本明細書に開示されるシステム及び方法は、iSKIDを用いた用途に限定されず、モノクローナル抗体等の生物学的生成物を生成するために使用される任意のシステムである。
【0057】
一実施形態において、初期精製アセンブリ及び最終精製アセンブリの両方を含むVF-UFDFシステム(VF-TFFシステムとも呼ばれる)が提供され、これらのアセンブリは接続、連結、又はその他の方法で一体化される。特定の実施形態において、システムは単回使用である。
【0058】
VF-UFDFシステムはさらに、供給物貯蔵槽、例えば、精製及びポリッシュされたタンパク質を保持し、特定の実施形態において、初期の精製ユニット操作に接続された、タンパク質プールタンクを含み得る。供給物貯蔵槽は十分に混合される。タンパク質プールタンクの容量は異なっていてもよい。一実施形態において、タンパク質プールタンクは、約200リットル~約5,000リットルの間の容量を有する。特定の実施形態において、タンパク質プールタンクは、最大40kgの精製及びポリッシュされたモノクローナル抗体、又は精製及びポリッシュされたモノクローナル抗体を約5~約20g/L、又は約5~約15g/Lの間、又は約8~約12g/L、又は約9~約11g/L若しくは約10g/Lの間の濃度で貯蔵する。
【0059】
任意で、システムは、タンパク質凝集体等のより大きな不純物又は汚染物質を除去するための前ろ過工程(例えば、精密ろ過)を包含してもよい。
【0060】
一実施形態において、初期の精製スイートにおける第1のウイルス低減ろ過(VRF)スキッドと、最終精製スイートにおける第2のシングルパス・タンジェンシャルフローろ過-透析ろ過(SPTFF-DF)スキッドとを含む、2つのスキッド体を含むシステムが提供される。
【0061】
特定の実施形態において、VRFスキッドは、VRFポンプ、少なくとも1つのVRFプレフィルタ、及び1以上のVRFフィルタを含む。特定の実施形態において、1以上のVRFフィルタがVRFマニホールド内に配置される。圧力を加えることにより、流体の一部がフィルタ膜を通ってろ液の流れに送り込まれる。特定の実施形態において、ポンプは圧力供給容器に置き換えられる。
【0062】
VRFポンプは異なっていてもよい。一実施形態において、VRFポンプの流量は40キログラムの生成物用に設計され、より具体的には、流量は、約80リットル/時間~680リットル/時間、約400リットル/時間~560リットル/時間、又は約440リットル/時間~520リットル/時間である。一般に、このようなポンプの流量の動作範囲は、約5リットル/時間~1,200リットル/時間の範囲である。
【0063】
1以上のVRF膜は異なっていてもよい。操作において、生成物は、VRF膜の孔を自由に通って透過物に入る一方、ウイルス粒子は、存在する場合、膜に保持される。
【0064】
ウイルスフィルタは、流体がフィルタを通って流れるときに、組換え抗体を含む流体(例えば、液体培養培地、又は本明細書に記載される任意のプロセスに存在する流体)から少なくとも一部(例えば、少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、又は99%、又は100%)のウイルスを除去することができる。
【0065】
VRFにおいては、ろ過のモード、膜面積、膜の孔側、膜材料、モジュール構成、及び試験方法によって異なる様々なフィルタを利用することができる。
【0066】
代表的、非限定的な膜材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、酢酸セルロース、再生セルロース、セルロース複合材料、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリールスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、不織布及び織布の繊維材料等の高分子材料、又は無機材料が挙げられる。
【0067】
一般に、必要とされる膜面積は、どのくらい(すなわち、体積又は質量)のろ過を意図しているかに依存する。具体的な実施形態において、フィルタは、約1~約10m2、又は約1~約8m2、若しくは約8m2、約6m2、約4m2、又は約2m2以下である。一実施形態において、フィルタは、15kgに対して約4m2以下であり、又は40kgに対して約8m2以下である。
【0068】
膜の孔径は異なっていてもよく、一実施形態において、約10~約100nm、より具体的には約15~約50nm、さらにより具体的には約20~約30nm、さらにより具体的には約20nmである。
【0069】
特定の実施形態において、VRF膜は予め滅菌される。他の実施形態において、VRF膜は、滅菌に適した材料から形成される。市販のVRF膜の例としては、Viresolve(登録商標) Pro(ミリポア)、Planova 20N(旭化成)、及びVirosart(ザルトリウス)が挙げられる。
【0070】
一実施形態において、1以上のVRF膜は終端のフィルタである。終端のフィルタにおいて、分離される(又は供給される)溶液又は懸濁液の流れは、膜に対して垂直である。
【0071】
VRFシステムの能力は異なっていてもよい。一般に、ウイルスの低減は、供給原料中のウイルス力価と、関連する生成物の画分との比によって測定され、log10減少係数(LRF)と呼ばれる。一実施形態において、VRFは、約6LRF超、約5LRF超、約4LRF超、約3LRF超、又は約2LRF超を可能とする。単一の製造プロセスの全体的なLRFは、各プロセスの工程の個別のLRFに基づく。特定の実施形態において、ウイルスのブレイクスルーは観察されない。
【0072】
特定の実施形態において、VRFアセンブリは、VRFフィルタのマニホールドに取り付けられたプレフィルタにより構成され、単回使用の無菌接続部を介して最終処方のブレイクタンクに連結される。
【0073】
一般に、VRF操作は、体積処理量を最大化し、処理時間を最小化し、及び確実なウイルス除去を保証する条件を特定するよう最適化される。
【0074】
一実施形態において、体積処理量は、約200~約1,000L/m2であり、より具体的には約400~約600L/m2である。特定の実施形態において、体積処理量は、約400~約450、約450~約500、約500~約550、又は約550~約600L/m2である。
【0075】
一実施形態において、質量処理量は、約1~約10kg/m2、より具体的には約3~約5kgである。
【0076】
特定の実施形態において、処理時間は、最大40kgに対して約8時間以下である。例えば、約8時間、約7時間、約6時間、約5時間、約4時間、約3時間、約2時間、又は約1時間以下である。
【0077】
特定の実施形態において、処理時間は、約15kgに対して約8時間以下である。例えば、約8時間、約7時間、約6時間、約5時間、約4時間、約3時間、約2時間、又は約1時間以下である。
【0078】
SPTFF-DFアセンブリは、システムの最終精製の構成要素として機能し、1以上のSPTFF膜、DF混合タンク、DF膜、センサ、及びポンプで構成される。この第2のスキッドには、空間を節約するために、水を用いてインラインで希釈される濃縮された緩衝剤が供給されている。
【0079】
一実施形態において、アセンブリは、ブレイクタンク、透析ろ過(DF)の緩衝剤濃縮物、注射用水(WFI)、SPTFF-DFスキッド、UF/DFプール供給チューブ、及びUFDFプールタンクを含む。
【0080】
この実施形態によれば、ブレイクタンクは、流量がウイルスろ過スキッドとSPTFF-DFスキッドとの間で完全に一致しない場合に、圧力ブレイク及び安全性を提供するように設計される。一実施形態において、ブレイクタンクは、約20リットル~約100リットルの容量を有する。ブレイクタンクはVRFスキッド及びSPTFF-DFスキッドの両方に接続される。
【0081】
透析ろ過(DF)の緩衝剤濃縮物及びWFIは、DF緩衝剤濃縮物が緩衝剤交換に適切な濃度に希釈されるよう、一緒に混合されるように設計される。
【0082】
WFIは、下流の装置をフラッシングし、DF緩衝剤濃縮物の濃度をプロセスで使用される適切な濃度/強度に調整するための水を提供するように設計される。
【0083】
SPTFF-DFスキッドは、スキッド上に予め取り付けられ、かつ容易に輸送できる状態であるスキッドユニットであり、SPTFF-DFスキッドを他の装置及びウイルスろ過スキッドの下流に流動的に連結するためのいくつかの無菌接続を有するスキッドユニットである。一実施形態において、SPTFF-DFスキッドは、SPTFFポンプ、SPTFF1膜、DFプール1タンク、DFプール2タンク、DF緩衝剤ポンプ、WFIポンプ、インラインミキサ、DFプール1ポンプ、DFプール2ポンプ、DF膜、及び任意のSPTFF2膜を含む。例示的な実施形態の範囲及び精神から逸脱することなく、追加の装置を使用してもよい。さらに、特定の装置を組み合わせてもよいが、組み合わされた装置は、例示的な実施形態の範囲及び精神から逸脱することなく、同じ又は類似の機能を保持し得る。
【0084】
一実施形態において、第1のタンクが濃縮生成物で満たされた後、SPTFFプロセスが第2のタンクを充填し続ける間に、材料は従来のTFF膜を通して透析ろ過(diafiltering)を開始する。一実施形態において、第1のプールを空にすること及び/又は最終のUFDFプールへの濃縮は、第2のプールが透析ろ過を開始する前に完了する必要はない(すなわち、モード1)。別の実施形態において、第1のタンクが終了し(材料が透析ろ過され、最終のUFDFプールにむけて空になる/濃縮される)、第2のタンクが満たされると、第2のタンクは透析ろ過を開始する(すなわち、モード2)。有利なことに、これにより、必要とされる時間をほぼ半分に短縮し、12時間の枠内で操作を完了する。特定の実施形態において、UF/DFの時間は従来の操作と比較して約50%短縮され、同じ時間枠内でより多くの材料を処理する操作が可能になる。また、有利なことに、ポンプに対する要求がいつでも低減され、同じ総量の材料に対してより小さいポンプシステムを用いることが可能になる。さらに、単回使用の流路を使用することにより、操作が完了した後にシステムの洗浄に必要な時間と資源が低減される。
【0085】
このシステムは、(i)手動/部分自動モード、又は(ii)完全自動モードの2つのモードのうちの1つで操作することができる。両方の操作モードにおいて、VRFは同じ自動化で動作し、唯一異なるのは流量及び膜面積である。
【0086】
負荷量及び膜性能に応じて、フィルタのマニホールド内での操作のために複数のVRF膜が設定され、必要に応じて切り替えられてもよい。
【0087】
ここで図1~3を参照すると、一体型のウイルスろ過、濃縮、及び透析ろ過プロセス105を実施するための、一体型単回使用システム100は、初期精製システム200及び最終精製システム300を含む。
【0088】
初期精製システム200は、タンパク質プールタンク210、ウイルス低減フィルタ(VRF)洗浄(wash)220、注射用水(WFI)タンク230、ウイルスろ過スキッド240、及びブレイクタンク供給管290を含む。本明細書においては、初期精製システム200の一部として特定の装置が含まれるが、例示的な実施形態の範囲及び精神から逸脱することなく、追加の装置を使用するか、又は装置を組み合わせてもよい。
【0089】
タンパク質プールタンク210は、精製及びポリッシュされたタンパク質を保持するように設計されたタンクであり、いくつかの例示的な実施形態によれば、500リットル~約5,000リットルの容量を有する。しかしながら、タンパク質プールタンク210の容量は、他の実施形態において異なっていてもよい。タンパク質プールタンク210は、約5キログラム~約40キログラムの精製及びポリッシュされたmABを貯蔵し、単回使用のミキサである。タンパク質プールタンク210内のタンパク質は、5グラム/リットル~約15グラム/リットルの範囲であり、好ましくは約10グラム/リットルである。タンパク質プールタンク210は、タンパク質プールタンク無菌接続部241においてウイルスろ過スキッド240に接続するタンパク質プールタンク排出ライン212を介して、ウイルスろ過スキッド240に流動的に連結される。
【0090】
VRF洗浄220は、一体型単回使用システム100、特に、ウイルスフィルタ270及びウイルスろ過スキッド240をフラッシュするように設計される。VRF洗浄220は、VRF洗浄無菌接続部244においてウイルスろ過スキッド240に接続するVRF洗浄排出ライン222を介して、ウイルスろ過スキッド240に流動的に連結される。
【0091】
WFI230は、フィルタをフラッシュするための、必要に応じてウイルスフィルタ又はプレフィルタをフラッシュするための水を供給するように設計される。WFI230は、WFI無菌接続部247においてウイルスろ過スキッド240に接続するWFI排出ライン232を介して、ウイルスろ過スキッド240に流動的に連結される。
【0092】
ウイルスろ過スキッド240は、スキッド上に予め設置されたスキッドユニットであり、容易に輸送できる状態になっており、ウイルスろ過スキッド240を他の装置に流動的に連結するためのいくつかの無菌接続部を有する。ウイルスろ過スキッド240は、VRFポンプ250、VRFプレフィルタ260、及びVRFマニホールド271内に任意に配置される1以上のVRF膜270を含む。本明細書においては、特定の装置がウイルスろ過スキッド240の一部として含まれるが、例示的な実施形態の範囲及び精神から逸脱することなく、追加の装置を使用するか、又は装置を組み合わせてもよい。
【0093】
VRFポンプ250は、VRFポンプ250及びタンパク質プールタンク無菌接続部241の間に位置するVRFポンプ吸引ライン制御弁243を含むVRFポンプ吸引ライン242を介して、タンパク質プールタンク無菌接続部241に流動的に連結される。VRFポンプ250は、また、VRF洗浄供給ライン245を介してVRF洗浄無菌接続部244に流動的に連結され、VRF洗浄供給ライン245は、VRF洗浄無菌接続部244から、VRFポンプ吸引ライン制御弁243及びVRFポンプ250の間に位置するVRFポンプ吸引管接合部251まで延び、VRFポンプ吸引管接合部251及びVRF洗浄無菌接続部244の間に配置されたVRF洗浄供給ライン制御弁246を含む。さらに、VRFポンプ250は、WFI供給ライン248を介してWFI無菌接続部247に流動的に連結され、WFI供給ライン248は、WFI無菌接続部247からVRFポンプ吸引管接合部251まで延び、VRFポンプ吸引管接合部251及びWFI無菌接続部247の間に配置されたWFI供給ライン制御弁249を含む。VRFポンプは、流路に組み込まれた単回使用のポンプヘッドである。いくつかの例示的な実施形態によれば、VRFポンプ250は、80リットル/時間~680リットル/時間の供給流量(10リットル/時間~1,200リットル/時間の動作範囲)を有するQF1200SU Quattroflow低せん断ポンプであるか、又は約480リットル/時間の供給流量(5リットル/時間~950リットル/時間の動作範囲)を有するWatson Marlow 600ポンプであるが、他の実施形態においては、他の種類のポンプも使用し得る。
【0094】
VRFプレフィルタ260は、VRFポンプ排出ライン254を介してVRFポンプ250に流動的に連結される。
【0095】
VRF膜270は、VRFプレフィルタ排出ライン262を介してVRFプレフィルタ260に流動的に連結される。いくつかの例示的な実施形態によれば、複数のVRF膜270A、270B、270C(又はそれ以上)が、互いに並列に、及び任意でVRFマニホールド271に配置されて、VRFプレフィルタ260に流動的に連結される。VRF膜270のサイズは、1平方メートルから4×4平方メートル(16平方メートル)の範囲である。特定の実施形態において、VRF膜270は、Planova 20N、Planova BioEX、又はViresolve Proであり、それぞれ20LMH~70LMH、35LMH~170LMH、又は100~350LMHの流束範囲を有する。VRF膜270は、VRF膜排出ライン276を介してブレイクタンク無菌接続部278に流動的に連結されており、VRF膜排出ライン276は、VRF膜270及びブレイクタンク無菌接続部278の間に位置するVRF膜排出ライン制御弁277を含む。VRF廃棄物排出ライン273は、VRF膜排出ライン制御弁277及びVRF膜270の間に位置するVRF膜排出管接合部272においてVRF膜排出ライン276に連結され、VRF膜排出管接合部272及び廃棄物280の間に配置されたVRF廃棄物排出ライン制御弁274を有する。
【0096】
ウイルスろ過スキッド240は、初期精製システム200を完成させる。ブレイクタンク無菌接続部278は、ブレイクタンク供給管290を介して最終精製システム300に流動的に連結される。いくつかの例示的な実施形態によれば、このブレイクタンク供給管290は、初期精製スイート200を最終精製スイート300から分離する壁(図示せず)のマウスホールを通る。
【0097】
最終精製システム300は、ブレイクタンク310、透析ろ過(DF)緩衝剤濃縮物320、注射用水(WFI)330、シングルパス・タンジェンシャルフローろ過及び透析ろ過(SPTFF-DF)スキッド340、UFDFプール供給管390、及びUFDFプールタンク395を含む。本明細書においては、特定の装置が最終精製システム300の一部として含まれるが、例示的な実施形態の範囲及び精神から逸脱することなく、追加の装置を使用するか、又は装置を組み合わせてもよい。
【0098】
ブレイクタンク310は、流量がウイルスろ過スキッド240(図2)とSPTFF-DFスキッド340との間で完全に一致しない場合に圧力ブレイク及び安全性を提供するように設計されたタンクである。いくつかの例示的な実施形態によれば、ブレイクタンクは、20リットル~約100リットルの容量を有するが、ブレイクタンク310の容量は、他の実施形態においては異なっていてもよい。ブレイクタンク310は、ブレイクタンク供給管290を介してウイルスろ過スキッド240(図2)に流動的に連結される。ブレイクタンク310は、また、ブレイクタンク無菌接続部341においてSPTFF-DFスキッド340に接続するブレイクタンク排出ライン312を介して、SPTFF-DFスキッド340に流動的に連結される。
【0099】
透析ろ過(DF)緩衝剤濃縮物320及びWFI330は、DF緩衝剤濃縮物320が適切な濃度に希釈されるよう、一緒に混合されるように設計される。DF緩衝剤濃縮物320は、DF緩衝剤濃縮物無菌接続部344においてSPTFF-DFスキッド340に接続するDF緩衝剤濃縮物排出ライン322を介して、SPTFF-DFスキッド340に流動的に連結される。
【0100】
WFI330は、下流の装置をフラッシングし、DF緩衝剤濃縮物320の濃度を適切な濃度に調整するための水を提供するように設計される。WFI330は、WFI無菌接続部347においてSPTFF-DFスキッド340に接続するWFI排出ライン332を介して、SPTFF-DFスキッド340に流動的に連結される。
【0101】
SPTFF-DFスキッド340は、スキッド上に予め取り付けられ、かつ容易に輸送できる状態であるスキッドユニットであり、SPTFF-DFスキッド340をウイルスろ過スキッド240の下流の他の装置に流動的に連結するためのいくつかの無菌接続部を有する。SPTFF-DFスキッド340は、SPTFFポンプ3000、SPTFF1膜3010、DFプール1タンク3020、DFプール2タンク3030、DF緩衝剤ポンプ3040、WFIポンプ3050、インラインミキサ3060、DFプール1ポンプ3070、DFプール2ポンプ3080、DF膜3090、及び任意のSPTFF2膜3100を含む。本明細書においては、特定の装置がSPTFF-DFスキッド340の一部として含まれるが、例示的な実施形態の範囲及び精神から逸脱することなく追加の装置を使用するか、又は装置を組み合わせてもよい。
【0102】
SPTFFポンプ3000は、SPTFFポンプ吸引ライン342を介してブレイクタンク無菌接続部341に流動的に連結されており、SPTFFポンプ吸引ライン342は、SPTFFポンプ3000及びブレイクタンク無菌接続部341の間に位置するSPTFFポンプ吸引ライン制御弁343を含む。SPTFFポンプ3000は、流路に組み込まれた単回使用のポンプヘッドである。いくつかの例示的な実施形態によれば、SPTFFポンプ3000は、20リットル/時間~1,200リットル/時間の供給流量の範囲を有するQF1200SUクアトロフロー低せん断ポンプである。
【0103】
DF緩衝剤ポンプ3040は、DF緩衝剤ポンプ吸引ライン345を介してDF緩衝剤濃縮物無菌接続部344に流動的に連結され、DF緩衝剤ポンプ吸引ライン345は、DF緩衝剤ポンプ3040及びDF緩衝剤濃縮物無菌接続部344の間に位置するDF緩衝剤ポンプ吸引ライン制御弁346を含む。DF緩衝剤ポンプ3040は、流路に組み込まれた単回使用のポンプヘッドである。いくつかの例示的な実施形態によれば、DF緩衝剤ポンプ3040は、20リットル/時間~1,200リットル/時間の動作範囲を有するQF1200SU Quattroflow低せん断ポンプである。
【0104】
WFIポンプ3050は、WFIポンプ吸引ライン348を介してWFI無菌接続部347に流動的に連結されており、WFIポンプ吸引ライン348は、WFIポンプ3050及びWFI無菌接続部347の間に位置するWFIポンプ吸引ライン制御弁349を含む。WFIポンプ3050は流路に組み込まれた単回使用のポンプヘッドである。いくつかの例示的な実施形態によれば、WFIポンプ3050は、20リットル/時間~1,200リットル/時間の動作範囲を有するQF1200SU Quattroflow低せん断ポンプである。
【0105】
インラインミキサ3060は、DF緩衝剤ポンプ排出ライン3042を介してDF緩衝剤ポンプ3040に流動的に連結される。インラインミキサ3060は、また、WFIポンプ3050からWFIポンプ排出管接合部3041まで延びるWFIポンプ排出ライン3052を介して、WFIポンプ3050に流動的に連結され、WFIポンプ排出管接合部3041は、インラインミキサ3060及びDF緩衝剤ポンプ3040の間のDF緩衝剤ポンプ排出ライン3042に沿って位置する。インラインミキサ3060は、DF緩衝剤濃縮物320のための、WFI330を用いたインライン希釈システムであり、らせん状のインラインミキサを含む。
【0106】
SPTFF1膜3010は、SPTFFポンプ排出ライン3002を介してSPTFFポンプ3000に流動的に連結される。SPTFF1膜3010は、また、SPTFF1膜フラッシュライン3062を介して、インラインミキサ3060に流動的に連結され、SPTFF1膜フラッシュライン3062は、インラインミキサ3060からSPTFFポンプ排出管接合部3001まで延び、SPTFF1膜フラッシュ制御弁3063を含み、SPTFFポンプ排出管接合部3001は、SPTFFポンプ3000及びSPTFF1膜3010の間のSPTFFポンプ排出ライン3002に沿って位置する。いくつかの例示的な実施形態によれば、SPTFF1ユニット3010は、約0.9平方メートルから約20平方メートルまでのサイズ容量を有する一連の膜(例えば、Centrastak100に積み重ねられたCentrasetteカセット)で構成される。いくつかの例示的な実施形態によれば、SPTFF1ユニット3010は、9連構成で設置される。SPTFF1膜3010のサイズは、一体型単回使用システム100を介した40キログラムの生成物用に設計された場合、最大20平方メートルである。SPTFF1膜3010は、SPTFF透過物廃棄ライン3011を介して廃棄物396に流動的に連結され、SPTFF透過物廃棄ライン3011は、SPTFF1膜3010から廃棄物396までの透過物の流れを制御するためのSPTFF透過物廃棄制御弁3012を含む。
【0107】
DFプール1タンク3020は、保持物プール1ライン3014を介してSPTFF1膜3010に流動的に連結され、保持物プール1ライン3014は、SPTFF1膜3010及びDFプール1タンク3020の間に位置する保持物プール1ライン制御弁3015を含む。DFプール1タンク3020は、第1モード及び第2モードで操作することができ、これらは一体型単回使用システム100の操作と関連してさらに詳細に説明される。いくつかの例示的な実施形態によれば、DFプール1タンク3020は、20~100リットルのタンク容量を有する。特定の実施形態において、スキッドの接続は無菌的である。DFプール1タンク3020は、また、DF緩衝剤プール1ライン3064を介してインラインミキサ3060に流動的に連結され、DF緩衝剤プール1ライン3064は、DFプール1タンク3020から、インラインミキサ3060及びSPTFF1膜フラッシュ制御弁3063の間に位置するインラインミキサ排出管接合部3061まで延び、インラインミキサ排出管接合部3061に隣接するDFプールタンク制御弁3065及びDFプール1タンク3020に隣接するDFプール1タンク制御弁3066を含む。
【0108】
DFプール2タンク3030は、また、保持物プール2ライン3016を介してSPTFF1膜3010に流動的に連結され、保持物プール2ライン3016は、DFプール2タンク3030から、保持物プール1ライン3014に沿ってSPTFF1膜3010及び保持物プール1ライン制御弁3015の間に位置する保持物プール1配管接合部3013まで延び、保持物プール1配管接合部3013及びDFプール2タンク3030の間に位置する保持物プール2ライン制御弁3017を含む。DFプール2タンク3030は、第1モード及び第2モードで操作することができ、これらは一体型単回使用システム100の操作と関連してさらに詳細に説明される。例示的な実施形態によれば、DFプール2タンク3030は、DFプール1タンク3020と同様である。さらに、SPTFF1膜保持物廃棄ライン3018は、保持物プール1配管接合部3013から廃棄物396まで延び、廃棄物396に行く保持物の流れを制御するためのSPTFF1膜保持物廃棄ライン制御弁3019を含む。DFプール2タンク3030は、また、DF緩衝剤プール2ライン3067を介してインラインミキサ3060に流動的に連結され、DF緩衝剤プール2ライン3067は、DFプールタンク制御弁3065及びDFプール1タンク制御弁3066の間に位置するDF緩衝剤プール1配管接合部3068から、DFプール2タンク3030及び残留物プール2ライン制御弁3017の間に位置するDF緩衝剤プール2配管接合部3069まで延び、DFプール2タンク制御弁3160を含む。
【0109】
DFプール1ポンプ3070は、DFプール1ポンプ吸引ライン3022を介してDFプール1タンク3020に流動的に連結される。DFプール1ポンプ3070は、流路に組み込まれた単回使用のポンプヘッドである。いくつかの例示的な実施形態によれば、DFプール1ポンプ3070は、150リットル/時間~5,000リットル/時間の動作範囲を有するQF4400SU Quattroflow低せん断ポンプ、50リットル/時間~5,000リットル/時間の動作範囲を有するQF5050SU、又は実施形態に応じて適切な容量を有する他のポンプである。DFプール2ポンプ3080は、DFプール2ポンプ吸引ライン3032を介してDFプール2タンク3030に流動的に連結される。DFプール2ポンプ3080は、流路に組み込まれた単回使用のポンプヘッドである。いくつかの例示的な実施形態によれば、DFプール2ポンプ3080は、DFプール1ポンプ3070と同一又は類似である。
【0110】
DF膜3090は、DFプール1ポンプ排出ライン3072を介してDFプール1ポンプ3070に流動的に連結され、DFプール1ポンプ制御弁3073を含む。DF膜3090は、また、DFプール2ポンプ排出ライン3082を介して、DFプール2ポンプ3080に流動的に連結され、DFプール2ポンプ排出ライン3082は、DFプール2ポンプ3080から、DF膜3090及びDFプール1ポンプ制御弁3073の間に位置するDF膜プールポンプ配管接合部3074まで延び、DFプール2ポンプ制御弁3083を含む。DF膜3090は、また、DF膜フラッシュライン3161を介してインラインミキサ3060に流動的に連結され、DF膜フラッシュライン3161は、インラインミキサ排出管接合部3061から、DFプール1ポンプ排出ライン3072に沿ってDF膜ポンププールポンプ配管接合部3074及びDF膜3090の間に位置するDF膜フラッシュ配管接合部3162まで延び、DF膜フラッシュ制御弁3163を含む。DF膜3090は、第1のモード及び第2のモードで操作することができ、これらは一体型単回使用システム100の操作と関連してさらに詳細に説明される。いくつかの例示的な実施形態によれば、DF膜3090は、0.9平方メートルから20平方メートルまでのサイズ容量を有するCentrastak100膜である。DF膜3090は、DF透過物廃棄ライン3091を介して廃棄物397に流動的に連結され、DF透過物廃棄ライン3091は、DF膜3090から廃棄物397への透過物の流れを制御するためのDF透過物廃棄制御弁3092を含む。
【0111】
DF膜3090は、DF膜3090からDFプール1タンク3020まで延びるDFプール1保持物リサイクルライン3093を介してDFプール1タンク3020に流動的に連結され、DFプール1保持物リサイクル制御弁3094を含む。DF膜3090は、また、DFプール2保持物リサイクルライン3095を介してDFプール2タンク3030に流動的に連結され、DFプール2保持物リサイクルライン3095は、DFプール1保持物リサイクルライン3093に沿ってDF膜3090及びDFプール1保持物リサイクル制御弁3094の間に位置するDFプールタンク保持物配管接合部3096から、DFプール2タンク3030まで延び、DFプール2保持物リサイクル制御弁3097を含む。DF膜3090の保持物部分は、DF膜保持物廃棄ライン3098を介して廃棄物397に流動的に連結され、DF膜保持物廃棄ライン3098は、DFプールタンク保持物配管接合部3096から廃棄物397まで延び、DF膜3090から廃棄物397への保持物の流れを制御するためのDF膜保持物廃棄制御弁3099を含む。いくつかの実施形態によれば、DF膜保持物廃棄ライン3098は、廃棄物397に直接導かれ、或いは、DF透過物廃棄ライン3091等の別の廃棄ラインと組み合わされてもよい。
【0112】
SPTFF2膜3100は、SPTFF2膜プール1供給ライン3076を介してDFプール1ポンプ3070に流動的に連結され、SPTFF2膜プール1供給ライン3076は、SPTFF2膜3100から、DFプール1ポンプ排出ライン3072に沿ってDFプール1ポンプ3070及びDFプール1ポンプ制御弁3073の間に位置するSPTFF2膜プール1供給管接合部3075まで延び、SPTFF2膜プール1供給ライン制御弁3077を含む。SPTFF2膜3100は、また、SPTFF2膜プール2供給ライン3086を介してDFプール2ポンプ3080に流動的に連結され、SPTFF2膜プール2供給ライン3086は、DFプール2ポンプ排出ライン3082に沿ってDFプール2ポンプ3080及びDFプール2ポンプ制御弁3083の間に位置するSPTFF2膜プール2供給管接合部3085から、SPTFF2膜プール1供給ライン3076に沿ってSPTFF2膜3100及びSPTFF2膜プール1供給ライン制御弁3077の間に位置する第2のSPTFF2膜プール2供給管接合部3087まで延び、SPTFF2膜プール2供給ライン制御弁3088を含む。SPTFF2膜3100は、また、SPTFF2膜フラッシュライン3164を介してインラインミキサ3060に流動的に連結され、SPTFF2膜フラッシュライン3164は、インラインミキサ排出管接合部3061からSPTFF2膜フラッシュ配管接合部3087まで延び、SPTFF2膜フラッシュ制御弁3165を含む。SPTFF2膜3100は任意である。いくつかの実施形態によれば、SPTFF2膜3100は、SPTFF1膜3010と同様である。SPTFF2膜3100は、SPTFF2透過物廃棄ライン3101を介して廃棄物397に流動的に連結され、SPTFF2透過物廃棄ライン3101は、SPTFF2膜3100から廃棄物397への透過物の流れを制御するためのSPTFF2透過廃棄物制御弁3102を含む。
【0113】
SPTFF2膜3100は、SPTFF2保持物ライン3105を介してUFDFプールタンク無菌接続部380に流動的に連結され、SPTFF2保持物ライン3105は、SPTFF2膜3100からUFDFプールタンク無菌接続部380まで延び、SPTFF2保持物制御弁3106を含む。SPTFF2膜3100の保持物部分は、SPTFF2保持物廃棄ライン3107を介して廃棄物397に流動的に連結され、SPTFF2保持物廃棄ライン3107は、SPTFF2保持物ライン3105に沿ってSPTFF2膜3100及びSPTFF2保持物制御弁3106の間に位置するSPTFF2膜保持物配管接合部3108から、廃棄物397まで延び、SPTFF2膜保持物廃棄制御弁3109を含む。いくつかの実施形態によれば、SPTFF2保持物廃棄ライン3107は、廃棄物397に直接導かれ、或いは、DF透過物廃棄ライン3091又はSPTFF2透過物廃棄ライン3101等の別の廃棄ラインと組み合わされてもよい。
【0114】
UFDFプールタンク395は、UFDFプール供給管390を介してUFDFプールタンク無菌接続部380に流動的に連結される。UFDFプールタンク395は、100リットル~500リットルの容量を有するように設計される。UFDFプールタンク395は濃縮された材料を、含まれる場合、SPTFF2膜3100から受け取るか、又は、DF膜3090が保持物をDFプール1タンク3020及びDFプール2タンク3030に再循環して戻した後にDFプール1タンク3020及びDFプール2タンク3030からそれぞれ受け取る。UFDFプールタンク395が濃縮された材料を受け取った後、濃縮された材料は、本明細書に記載されない、既知のプロセス及び手順に従って最終ろ過及び最終処方を経る。
【0115】
図1から図3の概略図を説明したので、ここで一体型単回使用システム100の操作について説明する。一体型単回使用システム100の簡単な概要によれば、一体型単回使用システム100は、(i)ウイルスろ過スキッド200によって実行されるウイルス低減ろ過(VRF)によって、及びその後の(ii)シングルパス・タンジェンシャルフローろ過(SPTFF)、透析ろ過(DF)による緩衝剤交換、SPTFFによる任意の第2の濃縮による濃縮によって、単回ポリッシュされたモノクローナル抗体(mAb)のプール5~40kgを、プレ最終ろ過(UFDF)プールに12時間未満(非稼働時の設定及び分解時間を含む)の単回バッチで採取するように設計され、これらは全てSPTFF-DFスキッド300により実行される。この一体型単回使用システム100は、2つのモード、モード1若しくは第1モードと呼ばれる単回12時間のバッチで最大15キログラムを処理できる手動/部分自動モード、又はモード2若しくは第2モードと呼ばれる単回12時間のバッチで最大40キログラムを処理できる完全自動モード、のうちの1つにより操作することができる。全ての流路、膜、ポンプヘッド、及び連結部は、滅菌された単回使用の材料により作られる。
【0116】
以下に説明する操作は、12時間で5キログラムから40キログラムの抗体を処理するための推定操作範囲を有するが、当業者はこれらの操作範囲を変更して、12時間で5キログラムから40キログラムより多い又は少ない抗体を処理するか、又は時間を調整することができる。操作を開始する前に、VRF膜270、SPTFF1膜3010、使用する場合SPTFF2膜3100、及びDF膜3090は、関連するライン及びタンクとともに、VRF洗浄220及び/又はWFI230及び/又はDF緩衝剤及び/又はWFI330を用いてフラッシュされ及び準備される。
【0117】
モード1又はモード2の両方の操作モードにおいて、ウイルスろ過スキッド240は、流れパラメータ及び膜面積のみが異なる、同じ自動化によって運転される。負荷量及び膜性能に応じて、複数のVRF膜270をVRFマニホールド271内で操作するように互いに並列に設定し、必要に応じて切り替えてもよい。
【0118】
例示的な実施形態によれば、初期精製200において、5キログラムから40キログラムの精製及びポリッシュされたmAbが、200~5,000Lの単回使用ミキサ(SUM)又は貯蔵タンクであるタンパク質プールタンク210に約10g/リットル(7~13g/L)で貯蔵される。VRFポンプ250は、材料を、80~680リットル/時間の供給流量で、タンパク質プールタンクからVRFプレフィルタ260にポンプで送り、次にVRF膜270に送る。VRFポンプ250は、流路に組み込まれた単回使用のポンプヘッドを備え、20リットル/時間~1,200リットル/時間の動作範囲を有するQF1200SU Quattroflow低せん断ポンプである。0.9平方メートルから8平方メートルのVRF膜270が使用され、最大300LMHとなり得る目標流束64LMHで、最大600リットル/平方メートルとなり得る385リットル/平方メートルの容量まで負荷される。流れは、VRF膜270から、最終精製300の一部である20リットル~100リットルのタンクであるブレイクタンク310まで続く。初期精製200は、6時間、又はタンパク質プールタンク210内に貯蔵される全ての出発材料が処理され、ブレイクタンク310への充填が開始されるまで連続して運転される。初期精製200の運転中、VRFポンプ吸引ライン制御弁243及びVRF膜排出ライン制御弁277は、それらを通って流れることを可能にするため開位置にあり、VRF洗浄供給ライン制御弁246、WFI供給ライン制御弁249、及びVRF廃棄物排出ライン制御弁274は、それらを通る流れを防止するため閉位置にある。
【0119】
特定の実施形態において、全ての供給材料が負荷された後、VRF膜270は10リットル/平方メートルのVRF洗浄220によりフラッシュされる。初期精製200の洗浄が実施される場合、初期精製200の運転前後において、VRFポンプ吸引ライン制御弁243及びWFI供給ライン制御弁249は、それらを通る流れを防止するため閉位置に配置され、VRF洗浄供給ライン制御弁246及びVRF膜排出ライン制御弁277は、それらを通って流れることを可能にするため開位置に配置される。洗浄流体は初期精製200を出てブレイクタンク310まで行く。
【0120】
ブレイクタンク310が充填を開始すると、SPTFF-DFスキッド340上のSPTFFポンプ3000は、80リットル/時間~680リットル/時間であるVRFポンプ250と同等の供給流量で、ブレイクタンク310からSPTFF1膜3010を通って材料を送り出し始める。
【0121】
SPTFF-DFスキッド340の動作は、動作が大きく異なるモード1又はモード2のどちらに基づいて操作されるかによって、この工程以降変化する。SPTFF-DFスキッド340が、より自動化されないモード1において操作される場合、SPTFF-DFスキッド340は、最大15キログラムのタンパク質を処理することができ、タンパク質プールタンク210内にあった材料を、DFプール1タンク3020及びDFプール2タンク3030である、2つの連続するDFプールタンク3020、3030に分割する。15キログラムを超えるタンパク質を処理する場合、SPTFF-DFスキッド340はモード2で動作し、SPTFF-DFスキッド340は、DFプール1タンク3020及びDFプール2タンク3030内の処理材料の間で交互に切り替えることによって、多くのより短い透析ろ過(DF)工程を実行する。
【0122】
ここで、モード1におけるSPTFF-DFスキッド340の動作について説明する。SPTFF1膜3010は、9連構成で設定される。他の実施形態において、連続は、4連、5連、6連、7連、8連、又は9連とすることができる。SPTFF-DFスキッド340の操作には、流路に組み込まれた単回使用のポンプヘッドを備えたQF1200SU Quattroflow低せん断ポンプが使用され、20リットル/時間~1,200リットル/時間の動作範囲を有する。15キログラムのタンパク質を処理する場合、SPTFF1膜3010は、操作上3平方メートル~20平方メートルの間で変動する約9平方メートルの膜面積を有する。一貫した体積濃縮係数(変数)を達成するために、10LMH~50LMHとすることができる一定流束が目標とされ、動作の過程で透過流束が減少した場合、供給流束を変更して一定のVCFを維持することができる。例えば、開始濃度10g/Lで4連膜構成を用いた分子1では、8倍のVCF及び目標濃度80グラム/リットルを達成するために供給流束25.5LMHが目標とされた。目標濃度、流束、及び膜面積の要件は、図5A、5B、及び5Cの分子1、2、及び3にそれぞれ示されるように、流束変動実験によって、開発における運転前に決定する必要がある。SPTFF1膜3010の膜面積は、VRF流量と一致する比較的一定の流束を維持するために、分子特有の性質に応じて増加又は減少させ得る。膜ホルダは、Centrastak100であり、0.9平方メートルから20平方メートルの膜面積を収容できる。濃縮材料、又はSPTFF1膜3010の保持物は、SPTFF1膜3010から、透析ろ過に使用される最大100リットルの単回使用の混合タンクであるDFプール1タンク3020に流出する。この間、保持物プール1ライン制御弁3015は開位置にあり、保持物プール2ライン制御弁3017及びSPTFF1膜保持物廃棄ライン制御弁3019は閉位置にある。初期精製200からの材料をSPTFF1膜3010内で処理する途中、保持物プール1ライン制御弁3015が閉位置に切り替わり、保持物プール2ライン制御弁3017が開位置に切り替わって、DFプール1タンク3020の負荷を停止し、DFプール2タンク3030の負荷を開始する。いくつかの例示的な実施形態によれば、DFプール2タンク3030は、DFプール1タンク3020とサイズが類似又は同じである単回使用の混合タンクである。ブレイクタンク310が空になると、SPTFF1膜3010は、DF緩衝剤濃縮物320及びWFI洗浄330の混合物である洗浄緩衝剤の膜保持容量の2倍でフラッシュされる。
【0123】
SPTFF1膜3010の運転の途中、保持物プール1ライン制御弁3015が閉位置に切り替わり、保持物プール2ライン制御弁3017が開位置に切り替わると、DFプール1タンク3020は透析ろ過を開始する。DFプール1ポンプ3070は、DFプール1タンク3020から材料の汲み出しを開始し、いくつかの例示的な実施形態によれば2平方メートルから20平方メートルの面積を有するDF膜3090に、800リットル/時間~7,000リットル/時間又は360LMHの目標供給流量で材料を通過させる。DF膜3090の操作には、DFプール1ポンプ3070がSPTFF供給ポンプよりも大きいサイズのポンプであることが必要とされる。いくつかの例示的な実施形態によれば、DFプール1ポンプは、流路に組み込まれた単回使用のポンプヘッドであり、150リットル/時間~5,000リットル/時間の動作範囲を有するQF4400SUクアトロフロー低せん断ポンプである。SPTFF1膜3010の面積と同様に、DF膜3090の面積は、分子ごとに調整することができる。膜ホルダはCentrastak100であり、0.90平方メートルから20平方メートルを収容できる。80グラム/リットルの流れにおいて、透析ろ過は平均10%の変換率又は36LMHの流束を有することが期待される。透析ろ過緩衝剤濃縮物320は、インラインでWFI330と混合され、得られた混合物は、DF膜3090を出る透過物の流量に自動的に一致する量で、DF透過物廃棄ライン3091を通ってDFプール1タンク3020に加えられる。7~10ダイアボリューム(DV)の混合物がDFプール1タンク3020に加えられた後、材料は適切に緩衝剤交換されるべきであり、これは1以上のタンク内/インラインセンサ(図示せず)を介して検出され得る。8DVの混合物を加えるためには、DFプール1タンク3020及びDF膜3090を用いたこのプロセスは約3時間かかると予想される。DF膜3090の保持物は、DFプール1保持物リサイクルライン3093を通ってDFプール1タンク3020にリサイクルして戻される。DF緩衝剤濃縮物320及びWFI330の混合物のDFプール1タンク3020への添加が完了し、かつ緩衝剤交換が適切に完了すると、同様のプロセスが、SPTFF1膜3010が後半の動作を終了した後にDFプール2タンク3030で繰り返される。
【0124】
任意のSPTFF2膜3100は最終目標濃度(最終的な所望の濃度は、この濃縮工程に必要な経路長/膜面積を決定する)を達成するために使用することができる。緩衝後にDFプール1タンク3020に存在する材料は、DFプール1ポンプ3070を通って、SPTFF2膜プール1供給ライン3076を介してSPTFF2膜3100にポンプで送られる。材料がSPTFF2膜3100を通って流れると、保持物の濃縮された材料は、最終ろ過及び最終処方の前に、100リットル~500リットルのタンクであるUFDFプールタンク395に流れる。DFプール1タンク3020からの材料がSPTFF2膜3090を通って処理されると、SPTFF2膜3100を通る同様のプロセスが、DFプール2タンク3030内に存在する材料を用いて繰り返される。SPTFF2膜3100が存在しない別の実施形態においては、DFプール1タンク3020及びDFプール2タンク3030内の緩衝材料は、それぞれのタンク3020、3030からUFDFプールタンク395に順次移送される。
【0125】
或いは、SPTFF-DFスキッド340は、以下に説明するモード2で動作することができる。モード2で動作するSPTFF-DFスキッド340の一般的な動作原理は、SPTFF-DFスキッド340がモード1で動作するときと同じであるが、DFプール1タンク3020を完全に充填し、かつタンパク質プールタンク210から送られる材料を途中で切り替えてDFプール2タンク3030を充填する代わりに、DFプール1タンク3020及びDFプール2タンク3030の充填が、モード2でのSPTFF-DFスキッド340の動作中に何度も切り替えられ、多くのより少なく充填されたDFプールタンク3020、3030が前後に繰り返し処理される。DFプール1タンク3020及びDFプール2タンク3030の一方のタンクがDF膜3090DFによる透析ろ過を行い、次いで材料をSPTFF2膜3100に(又は直接UFDFプールタンク395に)送る間、他方のタンクが満たされる。高い頻度で切り替えられるほど、同じ時間内に処理できる材料が多くなる。このモード2では、総体積、pH、導電率、濃度、及び流量の監視及び反応を行いながら、DFプール1タンク3020及びDFプール2タンク3030の間で流体の流れを切り替える弁(弁切り替え)の追加の自動化が必要となり得る。
【0126】
SPTFF-DFスキッド340を操作するために選択されたモードに応じてモード1又はモード2の動作が完了すると、一体型単回使用システム100はその後フラッシュされ、単回使用の流路は廃棄される。
【0127】
図4は、例示的な実施形態によるモード1 410又はモード2 450で動作するときの一体型単回使用システムの動作時間を比較するモード1及び2の図形的な時間表現400を示す。図4を参照すると、モード1 410は最小の自動化で動作して最大15キログラムの材料を処理し、モード2は追加の自動化で動作して最大40キログラムの材料を処理する。モード1 410は、ウイルスろ過スキッド240におけるウイルス低減ろ過(VRF)415、SPTFF-DFスキッド340の一部におけるシングルパス・タンジェンシャルフローろ過(SPTFF)425、及びSPTFF-DFスキッド340の一部における透析ろ過(DF)435の動作を含む。VRF415、SPTFF425、及びDF435は、一体型単回使用システム100(図1)のプロセス全体を集合的に形成する。したがって、VRF415はプロセスを開始してモード1 410で完了するまでに、最大15キログラムの材料に対して5.8時間を要する。モード1 410のSPTFF425は、VRF415の開始直後に開始して、完了までに6時間を要する。DF435はSPTFF415の中間点から開始して完了までに6時間を要し、DFプール1タンク3020(図3)では3時間及びDFプール2タンク3030(図3)では3時間を要する。したがって、モード1 410で動作する一体型単回使用システム100(図1)のプロセス全体は、最大15キログラムの材料の処理を完了するために10時間未満を要し、これは臨床上の要求に対処するのに十分な量である。
【0128】
モード2 450は、ウイルスろ過スキッド240におけるウイルス低減ろ過(VRF)455、SPTFF-DFスキッド340の一部におけるシングルパス・タンジェンシャルフローろ過(SPTFF)465、及びSPTFF-DFスキッド340の一部における透析ろ過(DF)475の動作を含む。VRF455、SPTFF465、及びDF475は、一体型単回使用システム100(図1)のプロセス全体を集合的に形成する。したがって、VRF455はプロセスを開始してモード2 450で完了するまでに、最大40キログラムの材料に対して8.5時間を要する。モード2 450のVRF455は、同様に処理される材料の量が増加するため、モード1 410のVRF415よりも多くの時間を要する。モード2 450のSPTFF465は、VRF455の開始直後に開始して、完了までに9時間を要する。DF475は、SPTFF465の開始直後に開始して、DFプール1タンク3020(図3)及びDFプール2タンク3030(図3)それぞれ10サイクル(各サイクルは55分よりやや短い)を完了するまでに約9時間を要する。したがって、モード2 450で動作する一体型単回使用システム100(図1)のプロセス全体は、最大40キログラムの材料の処理を完了するために10時間未満を要し、これは臨床上の要求に対処し、かつ商業的な要求に対処するのに十分な量である。DF475がSPTFF465の開始直後に開始でき、DFプール1タンク3020(図3)及びDFプール2タンク3030(図3)の間で短い反復サイクルで動作することから、モード2 450はモード1 410よりもさらに多くの材料を処理できる。
【0129】
図5Aは、ポール4インシリーズの流束変動の体積変換係数(VCF、分子1)のグラフ500を示し、例示的な実施形態に基づいて、様々な開始濃度においてシングルパス・タンジェンシャルフローろ過(SPTFF)1膜3010(図3)用のポール社製4連膜を用いた、分子1の体積変換係数(VCF)510対供給流束520を示す。本質的に、このグラフ500から分かることは、高い開始濃度では最大潜在変換係数は減少するが、より低い流束もより大きい影響を有するということである。高濃度の材料で始める場合、流束が低いほど、より高い濃度を得ることができる。低濃度の材料で開始する場合、流束が低いほど、変換係数に対する影響が少ない。これらの実験は、所望の変換係数及び最終濃度について、与えられた分子の最適な流束を決定するために、生成物の大規模な濃縮を行う前に実施することができる。したがって、タンパク質プールタンク210の開始濃度(~10グラム/リットル)において、所望の80グラム/リットルまで濃縮するためには流束はかなり低くなければならない(~10LMH)。一体型単回使用システム100(図1)又はVFTFFシステムを所望の流束で動作させるために、9連(又は特定の実施形態においては9連未満、例えば4連以上9未満)又は9連超のSPTFF1膜3010(図3)の構成が必要となる。
【0130】
図5Bは、ポール9インシリーズの流束変動の体積変換係数(VCF、分子2)のグラフ540を示し、例示的な実施形態に基づいて、様々な開始濃度においてSPTFF1膜(図3)用のポール社製9連膜を用いた分子2の体積変換係数(VCF)550対供給流束560を示す。図5Bを参照すると、高い開始濃度では最大潜在変換係数は減少するが、より低い流束もより大きい影響を有することが分かる。9連のSPTFFは、4連と同様の流束でより高い濃度を達成でき、より低速なVFシステムとより簡単に組み合わせることができ、VF-TFFシステムにおけるSPTFF配置の理想的な候補となる。1つの制限は、より高い供給濃度においては、圧力閾値によってシステムの最大供給流束がより低くなることである。追加の膜面積を用いてこれに対応できない場合、特にDF工程で必要な濃度が低い場合は、代わりにより小さい(例えば、7連又は4連)システムを使用することができる。この一組の流束変動は、一体型単回使用システム100(図1)又はVFTFFシステムの動作範囲における供給流束が、妥当な供給流束で所望の濃縮係数を達成できることを示している。
【0131】
図5Cは、ポール9インシリーズの流束変動の体積変換係数(VCF、分子3)のグラフ570を示し、例示的な実施形態に基づいて、様々な開始濃度においてSPTFF1膜(図3)用のポール社製9連膜を用いた分子3の体積変換係数(VCF)580対供給流束590を示す。図5Cを参照すると、高い開始濃度では最大潜在変換係数は減少するが、より低い流束もより大きい影響を有することがわかる。9連のSPTFFは、4連と同様の流束でより高い濃度を達成でき、より低速なVFシステムとより簡単に組み合わせることができ、VF-TFFシステムにおけるSPTFF配置の理想的な候補となる。より高いVF流量が用いられるか又はより高い供給濃度である場合、特にDF工程で必要とされる濃度が低い場合は、代わりにより小さい(例えば、7連又は4連)システムを使用することができる。この一組の流束変動は、一体型単回使用システム100(図1)又はVFTFFシステムの動作範囲における供給流束が、妥当な供給流束で所望の濃縮係数を達成できることを示している。以上を考慮すると、一体型単回使用システム100は、生物学的生成物(例えば、タンパク質)をろ過プロセスを通じて処理するときの、リスク回避、省スペース、及び時間の節約のうちの少なくとも1つを提供する。
【0132】
リスク回避に関して、このシステムの原理の1つは、全ての材料を単一のバッチで処理できることである。ウイルスろ過を一度に行うことにより、継続的又は定期的に行う場合とは対照的に、流量や圧力の変化による操作上の問題と同様に、ウイルスのブイレイクスルーのリスクを最小限に抑えられる。また、「サブバッチ」がないため、バッチ定義に関する規制上の懸念も回避される。
【0133】
省スペースに関して、SPTFF及びVRFを、流量を一致させることと並行して実施することにより、ウイルスろ過材料を保持するために必要なスペースが減少し、それにより、20リットルから100リットルの容量を有する小さなブレイクタンクのみが必要となる。透析ろ過(DF)に必要なタンクのサイズは、また、高い初期の濃縮係数、すなわちいくつかの例示的な実施形態においては8倍を目標とすることによって最小化され、VRFプールを10グラム/リットルから80グラム/リットルにする。具体的な実施形態において、タンクは約350Lである。スペースの節約は、いくつかの例示的な実施形態によるらせん状インラインミキサを介して、DF緩衝剤のインライン希釈システムを用いることによっても達成される。
【0134】
具体的な実施形態において、システムはモード1で行われ、DFタンクのサイズは開始タンクの少なくとも約6分の1の大きさしかない。例えば、2,000Lの開始タンクに対して約350L×2タンクである。
【0135】
具体的な実施形態において、システムはモード2で行われ、DFに必要なタンクのサイズは開始タンクの少なくとも約8、少なくとも約10、少なくとも約12、少なくとも約14、少なくとも約16、又は少なくとも約20分の1の大きさしかない。
【0136】
時間の節約に関して、VRFをSPTFFと並行して実行することにより、これらのプロセスは従来別々の日(VRFの実施が最初の日及びUFDFの実施が次の日)に行われることから、少なくとも1日の自動的な時間の節約となる。また、時間の節約は、2タンクDFシステムを用いることによっても達成される。第1のDFタンクが濃縮生成物で満たされた後、材料は従来のTFF膜を通して透析ろ過を開始し、一方、SPTFFプロセスは第2のDFタンクの充填を継続する。第1のDFタンクが終了し(材料が透析ろ過されて空になる)、第2のタンクが充填されると、第2のDFタンクは透析ろ過を開始する。このプロセスにより、モード2で運転している場合、12時間以内に運転を完了するためにUF/DF時間をほぼ半分に短縮できる(図4)。
【0137】
別の利点は、このシステムは、任意の時点におけるポンプに対する要求を低減し、より小さいポンプシステムとすることができ、それによってコストを削減できることである。さらに、単回使用の流路を使用することにより、運転完了後のシステムの洗浄に必要な時間及び資源が低減される。
III.方法
【0138】
本明細書において、また、一体型の連続したやり方で生物学的生成物(例えば、タンパク質)をろ過及び濃縮/緩衝剤交換することによってウイルスを除去する方法が開示される。
【0139】
一実施形態において、この方法は、(i)溶液中の生物学的生成物を提供すること;及び(ii)溶液を、(a)ウイルス低減ろ過(VRF)、(b)シングルパス・タンジェンシャルフローろ過(SPTFF)による濃縮、(c)透析ろ過(DF)による緩衝剤交換、及び(d)任意で、SPTFFによる第2の濃縮に供すること、を含む。
【0140】
上述のように、バイオ医薬品での使用を意図した生物学的生成物を含む組成物中に存在し得るウイルスのろ過は、品質管理の重要な側面である。生物学的生成物は、数ある物質の中でも、例えば、タンパク質、核酸、炭水化物、脂質、又は生体材料であり得る。タンパク質は、例えば、とりわけ、抗体、抗体フラグメント、抗体誘導体、サイトカイン、成長因子、ホルモン、酵素、若しくは血液凝固因子等の治療用タンパク質、又は、とりわけ、抗原タンパク質等のワクチンタンパク質であり得る。生物学的生成物は、細胞、組織、又は生物体等の生物系によって、とりわけ、哺乳類細胞、植物細胞、又は細菌細胞等によって生成され得る。生物学的生成物は、撹拌タンクバイオリアクタ、エアリフトバイオリアクタ、若しくはウェーブバイオリアクタの使用に基づく懸濁培養等の均一プロセス、又はマイクロキャリアベースのシステム、充填床バイオリアクタ、若しくは中空糸バイオリアクタに基づく付着培養等の不均一プロセスによって、バッチ培養若しくは流加培養等の不連続モード、又は灌流を伴う連続培養等の連続モードで実行され、かつ、実験室、パイロット、若しくは生産規模等の任意の適切な規模で実行されることにより生成することができる。ウイルスは、細菌(すなわち、「ファージ」とも呼ばれる「バクテリオファージ」)、又は、とりわけ、生物学的生成物の投与が意図される、個々のヒト又は動物等のヒト及び/又は動物に感染し得るウイルスであってもよい。ウイルスは、無菌状態の維持に不注意に失敗したこと等による外因性供給源から、又は生物学的生成物を作るために使用された生物系等の内因性供給源から、生物学的生成物を含む組成物に導入された可能性がある。
【0141】
本発明の方法は、生物学的生成物の製造中に、例えばウイルス汚染に基づいて存在した可能性があるウイルスを、確実に除去又は排除するために使用することができる。複数の異なる種類のウイルス及び/又は既定の種類のウイルスの複数の活性粒子が存在する可能性がある限り、本発明の方法を用いて、複数の異なる種類及び/又は既定の種類の複数の活性粒子を除去することができる。したがって、例えば、本発明の方法は、最終的に生物学的生成物を含むバイオ医薬品が、任意の種類のウイルスの活性粒子を、許容限界を超えるいかなる量も含まないこと、例えばバイオ医薬品がウイルスの活性粒子を含まないこと、を保証するために使用することができる。
【0142】
特定の実施形態において、本発明の方法は、12時間未満(非稼働時の設定及び分解時間を含む)の単回バッチにおけるウイルスろ過、濃縮、及び透析ろ過を含む。一実施形態において、本発明の方法は、12時間未満、11時間未満、10時間未満、9時間未満、8時間未満、7時間未満、6時間未満、又は5時間以下を要する。
【0143】
一実施形態において、(i)溶液中の生物学的生成物の提供は、500~2,000Lの単回使用ミキサ(SUM)又は貯蔵タンクに約10g/L(5~15g/L)で保管された約5~約40kgの精製及びポリッシュされたモノクローナル抗体(mAb)を提供することを含む。
【0144】
一実施形態において、(ii)溶液を、(a)ウイルス低減ろ過(VRF)に供することは、材料がプレフィルタを通ってVRF膜(Planova BioEX)まで、流路に組み込まれた単回使用のポンプヘッドを備えたQF1200SU Quattroflow低せん断ポンプ(動作範囲20~1,200L/hr)を用いて、約80~約680L/hrの供給流量で至ることを含む。0.9~8m2のVRF膜を使用し、64LMH(最大150LMH)の目標流束で385L/m2(最大600L/m2)の容量まで負荷する。このプロセスは6時間、又は全ての開始材料が処理されるまで連続して行われる。全ての供給材料が負荷された後、膜は10L/m2の洗浄緩衝剤でフラッシュされる。
【0145】
流れは、最終精製において20~100Lのブレイクタンクまで続く。ブレイクタンクが充填を開始すると、第2のスキッド上のSPTFFポンプがVRF供給ポンプと同等の供給流量(80~680L/hr)でSPTFF膜を通して材料を送り出し始める。
【0146】
(b)シングルパス・タンジェンシャルフローろ過(SPTFF)による濃縮の方法は異なっていてもよい。すなわち、SPTFF-DFは操作モードに応じて動作が異なる。あまり自動化されていないモード1において操作する場合、最大15kgを処理でき、VRFプールを2つの連続したDFプールに分割する。15kgを超える量をモード2で処理する場合、DFプール1及びDFプール2の間で交互に切り替えながら、多くのより短いDF工程を実行する。
【0147】
モード1:SPTFF膜は、4~9連構成で設定される。SPTFFの操作には、流路に組み込まれた単回使用のポンプヘッドを備えたQF1200SUクアトロフロー低せん断ポンプ(動作範囲20~1,200L/hr)が使用される。目標濃度及び流束は、図1と同様の流束変動実験によって、開発運転前に決定する必要がある。膜面積は、比較的一定の流束を維持するために、分子特有の性質に応じて増加又は減少させ得る。膜ホルダはCentrastak 100であり、0.9~20m2を収容できる。濃縮された材料はSPTFFから流出し、透析ろ過のために2つの100Lの単回使用の混合タンクのうちの第1のタンクに流れる。VRFからの材料を処理する途中、SPTFFの出口にある弁が切り替わり、第2の100Lの単回使用の混合タンクへの負荷が開始される。ブレイクタンクが空になった後、膜は膜保持容量の2倍の洗浄緩衝剤によりフラッシュされる。
【0148】
SPTFF操作の途中、SPTFFの出口弁が第2の100Lのタンクに切り替わると、第1のタンクは透析ろ過を開始する。ポンプは、材料を0.9~20m2のTFF膜上に目標供給流量800~7,000L/hr又は360LMHで通過させ始める。DF操作には、流路に組み込まれた単回使用のポンプヘッドを備えたより大きいQF4400SUクアトロフロー低せん断ポンプ(動作範囲150~5,000L/hr)が必要とされる。SPTFFの操作と同様に、DF操作の膜面積は分子ごとに調整することができる。膜ホルダはCentrastak100であり、0.9~20m2を収容できる。80g/Lの透析ろ過では、平均10%の変換率(36LMHの流束)を有することが予想される。透析ろ過の緩衝剤濃縮物は、インラインで水と混合され、透過物の流量に自動的に一致する量で混合タンクに加えられる。5~10ダイアボリューム(DV)の後、材料は適切に緩衝剤交換される必要がある(タンク内/インラインセンサにより検出)。8DVについては、このプロセスは約3時間かかると予想される。SPTFFプロセスが終了した後、このプロセスは第2の透析ろ過タンクで繰り返される。
【0149】
任意の第2のSPTFF膜をUF2に使用して、最終目標濃度(最終的な所望の濃度は、この濃縮工程に必要な経路長を決定する)を達成することができる。この濃縮された材料は、最終ろ過及び最終処方の前に、最終の200~500Lのプールに送られる。
【0150】
モード2:一般的な動作原理は同一であるが、DFプールを完全に充填してVRFプールの途中で切り替える代わりに、DFプールは、多くのより小さなDFプールの動作中に何度も切り替えられる。一方のタンクがDFを行い、次いで材料を第2のSPTFFに(又は直接最終プールに)送る間、他方のタンクが充填される。切り替え頻度が高くなるほど、同じ時間内に処理できる材料が多くなる。
【0151】
システムはその後フラッシュされ、単回使用の流路は廃棄される。本明細書に開示されるシステム及び方法は、目的のあらゆる生物学的生成物(例えば、タンパク質)を含む水性製剤を提供するために使用され得る。
【0152】
本発明の方法は、システムに関して上述した利点、すなわち、ろ過プロセスを通じて生物学的生成物(例えば、タンパク質)を処理するときの、リスク回避、省スペース、及び時間の節約を提供する。
【0153】
当該技術分野において既知の、目的の生物学的生成物を製造又は生成する方法は、本明細書に記載される流体供給物をろ過するシステム及び方法と組み合わせて用いることができる。例えば、当業者は、組換えタンパク質等の生物学的生成物を発酵を用いて製造又は生成する方法を知っている。特定の実施形態において、目的の生物学的生成物の生成は、細胞培養において目的の生物学的生成物を発現する真核細胞を培養することを含む。細胞培養において目的の生物学的生成物を発現する真核細胞を培養することは、増殖及び/又はタンパク質の生成/発現を可能にする適切な培地及び条件下で真核細胞を維持することを含み得る。目的の生物学的生成物は、流加又は連続細胞培養によって生成され得る。したがって、真核細胞は流加又は連続細胞培養で、好ましくは連続細胞培養で培養され得る。
【0154】
特定の実施形態において、真核宿主細胞は酵母細胞である。一実施形態において、真核宿主細胞は哺乳類細胞である。本明細書で使用される哺乳類細胞は、分泌された組換え治療用タンパク質の生成に適した哺乳類細胞株であり、したがって「宿主細胞」とも呼ばれる。特定の実施形態において、哺乳類細胞は、ハムスター細胞等のげっ歯類細胞である。哺乳類細胞は、分離された細胞又は細胞株である。特定の実施形態において、哺乳類細胞は、形質転換及び/又は不死化細胞株である。特定の実施形態において、哺乳類細胞は、細胞培養における連続継代に適応しており、初代非形質転換細胞又は器官構造の一部である細胞を含まない。特定の実施形態において、哺乳類細胞は、BHK21、BHK TK-、ジャーカット細胞、293細胞、HeLa細胞、CV-1細胞、3T3細胞、CHO、CHO-K1、CHO-DXB11(CHO-DUKX又はDuxB11とも呼ばれる)、CHO-S細胞及びCHO-DG44細胞、又はそのような細胞株のいずれかの誘導体/子孫である。特定の実施形態において、哺乳類細胞は、CHO細胞、例えば、CHO-DG44、CHO-K1、及びBHK21であり、さらにより好ましくは、CHO-DG44細胞及びCHO-K1細胞である。特定の実施形態において、哺乳類細胞はCHO-DG44細胞である。哺乳類細胞、特にCHO-DG44細胞及びCHO-K1細胞のグルタミンシンセターゼ(GS)欠損誘導体も包含される。一実施形態において、哺乳類細胞はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、例えばCHO-DG44細胞、CHO-K1細胞、CHO DXB11細胞、CHO-S細胞、CHO GS欠損細胞又はそれらの誘導体である。
【0155】
特定の実施形態において、宿主細胞は、治療用タンパク質、例えば組換え分泌治療用タンパク質等の異種タンパク質をコードする1以上の発現カセットをさらに含み得る。特定の実施形態において、宿主細胞は、また、NS0及びSp2/0細胞といったマウス骨髄腫細胞等のマウス細胞、又はそのような細胞株のいずれかの誘導体/子孫であってもよい。
【0156】
目的の生物学的生成物又は組換えタンパク質の発現は、目的の生物学的生成物又は組換えタンパク質をコードするDNA配列を含む細胞内で起こり、これが転写され、翻訳後修飾を含むタンパク質配列に翻訳されて、細胞培養中の目的の生物学的生成物又は組換えタンパク質を生成する。
【0157】
本明細書において、目的の生物学的生成物の製造方法が開示され、前記方法は、
(I)細胞培養において前記目的の生物学的生成物を発現する真核細胞を培養すること;
(II)前記目的の生物学的生成物を、前記細胞培養から、目的の生物学的生成物及び1以上の不純物若しくは緩衝剤成分を含む流体供給物の形態で採取すること;
(III)目的の生物学的生成物及び1以上の不純物若しくは緩衝剤成分を含む前記流体供給物を精製して、前記流体供給物から、前記目的の生物学的生成物を分離すること;及び
(IV)任意で、前記目的の生物学的生成物を、投与に適した薬学的に許容可能な製剤に処方すること;の工程を含み、
前記方法は、さらに、前記流体供給物を、初期の生物学的生成物の一体型連続処理のための単回使用システムに通過させる工程を含み、
初期の生物学的生成物の一体型連続処理のための前記単回使用システムは、シングルパス・タンジェンシャルフローろ過(SPTFF)及び透析ろ過(DF)ユニット操作に連結されたウイルスろ過ユニット操作を含む。
【0158】
本明細書において、目的の生物学的生成物の製造方法が開示され、前記方法は、
(I)細胞培養において前記目的の生物学的生成物を発現する真核細胞を培養すること;
(II)前記目的の生物学的生成物を、前記細胞培養から、目的の生物学的生成物及び1以上の不純物若しくは緩衝剤成分を含む流体供給物の形態で採取すること;
(III)目的の生物学的生成物及び1以上の不純物若しくは緩衝剤成分を含む前記流体供給物を精製して、前記流体供給物から、前記目的の生物学的生成物を分離すること;及び
(IV)任意で、前記目的の生物学的生成物を、投与に適した薬学的に許容可能な製剤に処方すること;の工程を含み、
前記方法は、さらに、
a)初期の生物学的生成物を含む供給流(又は流体供給物)を提供すること;
b)前記供給流をろ過してウイルス性汚染物質を除去すること;
c)前記初期の生物学的生成物を濃縮すること;及び
d)緩衝剤交換を行って、処理された生物学的生成物を生成すること、を含む。
【0159】
特定の実施形態において、目的の生物学的生成物は組換えタンパク質である。特定の実施形態において、細胞培養において目的の生物学的生成物を発現する真核細胞を培養する工程は流加細胞培養で行われる。特定の実施形態において、細胞培養において目的の生物学的生成物を発現する真核細胞を培養する工程は連続細胞培養で行われる。
【0160】
本発明を特定の実施形態を参照して説明してきたが、これらの説明は限定的な意味で解釈されることを意図したものではない。開示された実施形態の様々な修正、及び本発明の代替の実施形態は、本発明の説明を参照して当業者に明らかになるであろう。開示された概念及び特定の実施形態は、本発明と同じ目的を実行するための他の構造又は方法を修正又は設計するための基礎として容易に利用できることが当業者に理解されるはずである。また、そのような同等な構造が、付属の特許請求の範囲に記載される本発明の精神及び範囲から逸脱しないことも、当業者に理解されるべきである。したがって、特許請求の範囲は、本発明の範囲に含まれるそのようなあらゆる修正又は実施形態を網羅するものと考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
【手続補正書】
【提出日】2023-11-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
初期の生物学的生成物の一体型連続処理のための単回使用システムであって、シングルパス・タンジェンシャルフローろ過(SPTFF)及び透析ろ過(DF)ユニット操作に連結されたウイルスろ過ユニット操作を含む前記単回使用システム。
【請求項2】
処理が、ろ過、濃縮、及び緩衝剤交換を含む、請求項1に記載の単回使用システム。
【請求項3】
前記生物学的生成物がタンパク質である、請求項1又は2に記載の単回使用システム。
【請求項4】
前記生物学的生成物がモノクローナル抗体である、請求項1又は2に記載の単回使用システム。
【請求項5】
前記ウイルスろ過ユニット操作が、ポンプ、少なくとも1つのプレフィルタ、及び1以上のウイルス低減ろ過膜を含む、請求項1又は2に記載の単回使用システム。
【請求項6】
前記SPTFF-DFユニット操作が、1以上のSPTFF膜、DF混合タンク、DF膜、センサ、ポンプ、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1又は2に記載の単回使用システム。
【請求項7】
さらに前記ウイルスろ過ユニット操作に連結された供給物貯蔵槽を含む、請求項1又は2に記載の単回使用システム。
【請求項8】
前記供給物貯蔵槽が精製及びポリッシュされたモノクローナル抗体を5~20g/Lの濃度で保持する、請求項7に記載の単回使用システム。
【請求項9】
前記供給物貯蔵槽が精製及びポリッシュされたモノクローナル抗体を8~12g/Lの濃度で保持する、請求項7に記載の単回使用システム。
【請求項10】
前記システムが、一体型の連続したウイルスろ過、濃縮、及び緩衝剤交換を、8時間の時間枠内に行う、請求項1又は2に記載の単回使用システム。
【請求項11】
前記システムが、一体型の連続したウイルスろ過、濃縮、及び緩衝剤交換を、24時間以下の時間内に行う、請求項1又は2に記載の単回使用システム。
【請求項12】
前記システムが、一体型の連続したウイルスろ過、濃縮、及び緩衝剤交換を、12時間以下の時間内に行う、請求項1又は2に記載の単回使用システム。
【請求項13】
前記システムが、一体型の連続したウイルスろ過、濃縮、及び緩衝剤交換を、8時間以下の時間内に行う、請求項1又は2に記載の単回使用システム。
【請求項14】
前記システムが、前記生物学的生成物の濃度を10倍に増加させる処理が可能である、請求項1又は2に記載の単回使用システム。
【請求項15】
処理された生物学的生成物を提供するための一体型の連続的方法であって、
a)初期の生物学的生成物を含む供給流を提供すること;
b)前記供給流をろ過してウイルス性汚染物質を除去すること;
c)前記初期の生物学的生成物を濃縮すること;及び
d)緩衝剤交換を行って、処理された生物学的生成物を生成すること、を含み、
前記工程b)~d)は、シングルパス・タンジェンシャルフローろ過(SPTFF)及び透析ろ過(DF)ユニット操作に連結されたウイルスろ過ユニット操作により行われる前記方法。
【請求項16】
前記ウイルスろ過ユニット操作が、ポンプ、少なくとも1つのプレフィルタ、及び1以上のウイルス低減ろ過膜を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記SPTFF-DFユニット操作が、1以上のSPTFF膜、DF混合タンク、DF膜、センサ、ポンプ、又はそれらの組み合わせを含む、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記初期の生物学的生成物がタンパク質である、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項19】
前記初期の生物学的生成物がモノクローナル抗体である、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項20】
前記方法が、一体型の連続したウイルスろ過、濃縮、及び緩衝剤交換を、従来の方法と比較して50%短縮された時間枠内に行う、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項21】
前記方法が、一体型の連続したウイルスろ過、濃縮、及び緩衝剤交換を、24時間以下の時間内に行う、請求項15又は16に記載の方法
【請求項22】
前記方法が、一体型の連続したウイルスろ過、濃縮、及び緩衝剤交換を、12時間以下の時間内に行う、請求項15又は16に記載の方法
【請求項23】
前記方法が、前記初期の生物学的生成物の濃度を10倍に増加させる処理を行う、請求項15又は16に記載の方法
【請求項24】
目的の生物学的生成物の製造方法であって、
(I)細胞培養において前記目的の生物学的生成物を発現する真核細胞を培養すること;
(II)前記目的の生物学的生成物を、前記細胞培養から、目的の生物学的生成物及び1以上の不純物若しくは緩衝剤成分を含む流体供給物の形態で採取すること;
(III)目的の生物学的生成物及び1以上の不純物若しくは緩衝剤成分を含む前記流体供給物を精製して、前記流体供給物から、前記目的の生物学的生成物を分離すること;及び
(IV)任意で、前記目的の生物学的生成物を、投与に適した薬学的に許容可能な製剤に処方すること;の工程を含み、
前記方法の工程IVは、さらに、前記流体供給物を、初期の生物学的生成物の一体型連続処理のための単回使用システムに通過させる工程を含み、
初期の生物学的生成物の一体型連続処理のための前記単回使用システムは、シングルパス・タンジェンシャルフローろ過(SPTFF)及び透析ろ過(DF)ユニット操作に連結されたウイルスろ過ユニット操作を含む、前記製造方法。
【請求項25】
前記目的の生物学的生成物が組換えタンパク質である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
細胞培養において前記目的の生物学的生成物を発現する真核細胞を培養する前記工程が流加細胞培養で行われる、請求項24又は25に記載の方法。
【請求項27】
細胞培養において前記目的の生物学的生成物を発現する真核細胞を培養する前記工程が連続細胞培養で行われる、請求項24又は25に記載の方法。
【請求項28】
目的の生物学的生成物の製造方法であって、
(I)細胞培養において前記目的の生物学的生成物を発現する真核細胞を培養すること;
(II)前記目的の生物学的生成物を、前記細胞培養から、目的の生物学的生成物及び1以上の不純物若しくは緩衝剤成分を含む流体供給物の形態で採取すること;
(III)目的の生物学的生成物及び1以上の不純物若しくは緩衝剤成分を含む前記流体供給物を精製して、前記流体供給物から、前記目的の生物学的生成物を分離すること;及び
(IV)任意で、前記目的の生物学的生成物を、投与に適した薬学的に許容可能な製剤に処方すること;の工程を含み、
前記方法の工程IVは、さらに、
a)初期の生物学的生成物を含む供給流を提供すること;
b)前記供給流をろ過してウイルス性汚染物質を除去すること;
c)前記初期の生物学的生成物を濃縮すること;及び
d)緩衝剤交換を行って、処理された生物学的生成物を生成すること、を含む前記製造方法。
【請求項29】
前記目的の生物学的生成物が組換えタンパク質である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
細胞培養において前記目的の生物学的生成物を発現する真核細胞を培養する前記工程が流加細胞培養で行われる、請求項28又は29に記載の方法。
【請求項31】
細胞培養において前記目的の生物学的生成物を発現する真核細胞を培養する前記工程が連続細胞培養で行われる、請求項28又は29に記載の方法。
【国際調査報告】