(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】微細構造化熱硬化性物品を製造するための複合型、製造方法及び型を得るための方法
(51)【国際特許分類】
B29C 39/26 20060101AFI20240517BHJP
A61L 27/18 20060101ALI20240517BHJP
B29C 33/40 20060101ALI20240517BHJP
B29C 39/02 20060101ALI20240517BHJP
G02C 7/00 20060101ALI20240517BHJP
G02C 7/06 20060101ALN20240517BHJP
【FI】
B29C39/26
A61L27/18
B29C33/40
B29C39/02
G02C7/00
G02C7/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572985
(86)(22)【出願日】2022-05-25
(85)【翻訳文提出日】2023-11-24
(86)【国際出願番号】 EP2022064212
(87)【国際公開番号】W WO2022248557
(87)【国際公開日】2022-12-01
(32)【優先日】2021-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598142955
【氏名又は名称】エシロール アンテルナショナル
【氏名又は名称原語表記】ESSILOR INTERNATIONAL
【住所又は居所原語表記】147,rue de Paris,F-94277 Charenton-le-Pont,France
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【氏名又は名称】赤木 啓二
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】ピエール フロマンタン
(72)【発明者】
【氏名】シャン ハイフォン
【テーマコード(参考)】
2H006
4C081
4F202
4F204
【Fターム(参考)】
2H006BA01
2H006BD00
4C081AB22
4C081CB021
4C081DA01
4C081EA03
4F202AA36
4F202AC05
4F202AF01
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4F202AH74
4F202AJ03
4F202AJ06
4F202AJ09
4F202AJ11
4F202AR12
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4F202CB01
4F202CD23
4F202CK12
4F202CK43
4F204AA36
4F204AC05
4F204AG05
4F204AH74
4F204AJ03
4F204AJ06
4F204AJ09
4F204AJ11
4F204AR12
4F204EA03
4F204EB01
4F204EK24
4F204EK25
(57)【要約】
本発明は、眼科用レンズ基材として使用可能であり且つ微細構造化主表面を含む熱硬化性光学物品を製造するための複合型、このような熱硬化性光学物品を製造するための方法、及び複合型を得るための方法に関する。複合型(1)は、- 第1の内表面(2a)を有する鉱物性第1の外側型部分(2)と、- 第1の内表面(2a)に取外し可能に接合された有機成形フィルム(4)であって、有機成形フィルム(4)と接触して熱硬化性材料(6)を流延した後に前記微細構造化主表面を直接に形成するように構成された微細構造化パターンを有する有機成形フィルム(4)とを含む。本発明によると、有機成形フィルム(4)は、少なくとも前記微細構造化パターン上で疎水性であり、10nm~500μmの間の厚さを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性材料(6)を成形キャビティ(5)内に流延することによって、眼科用レンズ基材として使用可能であり且つ微細構造化主表面を含む熱硬化性光学物品を製造するための複合型(1)であって、
- 第1の内表面(2a)を有する鉱物性第1の外側型部分(2)と、
- 前記第1の内表面(2a)に取外し可能に接合された有機成形フィルム(4)であって、前記有機成形フィルム(4)と接触して前記熱硬化性材料(6)が流延された後に前記微細構造化主表面を直接に成形するように構成された微細構造化パターンを有する、有機成形フィルム(4)と、
を含み、
前記有機成形フィルム(4)が、少なくとも前記微細構造化パターン上で疎水性であり、かつ10nm~500μmの厚さを有する、複合型(1)。
【請求項2】
前記有機成形フィルム(4)が、
- 少なくとも前記微細構造化パターン上で100°超、好ましくは110°超、好ましくは120°超の水接触角を示し、及び/又は
- 1μm~100μmの厚さを有する、
請求項1に記載の複合型(1)。
【請求項3】
前記有機成形フィルム(4)が、エラストマー、熱可塑性ポリマー及び熱硬化性ポリマーから選択される少なくとも1つのポリマーをベースとしており、好ましくは、100MPa~4000MPaの、ASTMD882-12に従って測定されるヤング率を有し、
前記有機成形フィルム(4)が、単一層又は複数層タイプであり、前記微細構造化パターン上で疎水性であり、かつ任意選択により前記有機成形フィルム(4)の厚さにわたっても疎水性である、
請求項1又は2に記載の複合型(1)。
【請求項4】
前記有機成形フィルム(4)が、二成分型ポリジメチルシロキサン(PDMS)などのシリコーンゴム、及び二成分型液体ウレタンゴムなどのポリウレタンゴムから好ましくは選択される少なくとも1つの架橋エラストマーをベースとしている、請求項3に記載の複合型(1)。
【請求項5】
前記有機成形フィルム(4)が、一成分型液体感光性ポリマー接着剤などのチオール-エン熱硬化性樹脂、及び熱硬化性ポリウレタンから好ましくは選択される少なくとも1つの熱硬化性ポリマーをベースとしている、請求項3に記載の複合型(1)。
【請求項6】
前記有機成形フィルム(4)が、テトラフルオロエチレン、ヘキサフロオロプロピレン及びフッ化ビニリデンのターポリマーなどのフッ素化ポリマー、及び熱可塑性ポリウレタン(TPU)から好ましくは選択される少なくとも1つの熱可塑性ポリマーをベースとしている、請求項3に記載の複合型(1)。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の複合型(1)であって、
例えば鉱物ガラスから製造される、前記鉱物性第1の外側型部分(2)が、微細構造体を含む前記第1の内表面(2a)を有し、その上に、前記有機成形フィルム(4)の第1の面が、それらの間で接着剤なしに取外し可能に接合されており、前記有機成形フィルム(4)が、前記第1の面で前記微細構造体に適合しており、且つ前記微細構造化パターンを形成する反対側の第2の面を有し、
複合型(1)が、前記第1の内表面(2a)の反対側の第2の内表面(3a)を有する鉱物性第2の外側型部分(3)を更に含み、前記成形キャビティ(5)が、前記有機成形フィルム(4)と前記第2の内表面(3a)との間に画定される、
複合型(1)。
【請求項8】
前記鉱物性第1の外側型部分(2)の前記第1の内表面(2a)が、凹形である前記第1の内表面(2a)を有し、前記有機成形フィルム(4)の厚さが、前記鉱物性第1の外側型部分(2)の前記微細構造体の平均振幅の1/10~1/100の範囲である、請求項7に記載の複合型(1)。
【請求項9】
眼科用レンズ基材として使用可能であり且つ例えば近視を制御するように構成される微細構造化主表面を含む熱硬化性光学物品を製造するための方法であって、
a)熱硬化性材料(6)を請求項1~8のいずれか一項に記載の複合型(1)の成形キャビティ(5)内に流延し、それにより、前記熱硬化性材料(6)が、前記第1の内表面(2a)とは接触せずに、前記有機成形フィルム(4)と、前記第1の内表面(2a)の反対側である鉱物性第2の外側型部分(3)の第2の内表面(3a)と接触するようにする工程と、
b)前記成形キャビティ(5)内に流延された前記熱硬化性材料(6)を硬化させる工程と、
c)工程b)において得られた成形された熱硬化性材料を脱型する工程であって、成形された熱硬化性材料を前記有機成形フィルム(4)から剥離し、前記有機成形フィルム(4)の前記微細構造化パターンが、得られた熱硬化性光学物品の前記微細構造化主表面を直接に成形するようにすることを含む工程と
を含む、方法。
【請求項10】
前記有機成形フィルム(4)が、前記熱硬化性材料(6)からの流延工程a)の間の攻撃に対する耐性を有し、
- エチレン/ノルボルネン又はエチレン/シクロペンタジエンコポリマーなどのシクロオレフィンコポリマー;
- ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)のホモポリマーなどの直鎖状又は分岐状の脂肪族又は芳香族ポリオールのアリルカーボネートのホモポリマー及びコポリマー;
- 任意選択的にビスフェノールAから誘導される、(メタ)アクリル酸及びそのエステルのホモポリマー及びコポリマー;
- チオ(メタ)アクリル酸及びそのエステルのホモポリマー及びコポリマー;
- 任意選択的にビスフェノールA又はフタル酸から誘導されるアリルエステル、及びスチレンなどのアリル芳香族のホモポリマー及びコポリマー;
- ウレタン及びチオウレタンのコポリマー;
- エポキシのポリマー及びコポリマー;並びに
- スルフィド、ジスルフィド及びエピスルフィドのポリマー及びコポリマー
から選択される、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか一項に記載の複合型(1)を得るための方法であって、
A)疎水性であるか又は疎水性表面層でコートされるかのどちらかであり、且つ前記鉱物性第1の外側型部分(2)に取外し可能に接合される前記有機成形フィルム(4)を形成することができるポリマー組成物であって、流延される前記熱硬化性材料(6)からの攻撃に耐えることができるポリマー組成物を提供する工程と、
B)前記ポリマー組成物を前記鉱物性第1の外側型部分(2)の前記内表面(2a)上に適用して、前記有機成形フィルム(4)のための前駆体層(4a)を形成する工程と、
C)適用された前駆体層(4a)を処理して、10nm~500μmの厚さ及び流延されて硬化された熱硬化性光学物品をそこから剥離することができる表面張力を有する前記有機成形フィルム(4)を形成する工程と
を含む、方法。
【請求項12】
前記鉱物性第1の外側型部分(2)の前記内面(2a)が、鉱物ガラスから形成されており、且つ、工程B)及びC)において前記有機成形フィルム(4)が適合するように接合されて前記微細構造化パターンを形成する微細構造体を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリマー組成物が、溶媒と、エラストマー、熱可塑性ポリマー及び熱硬化性ポリマーから選択される少なくとも1つのポリマーとを含む溶液からなり、工程B)が、好ましくはスピンコーティング、噴霧コーティング又は浸漬コーティングによって前記溶液を前記鉱物性第1の外側型部分(2)の前記内表面(2a)上にコートすることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
工程C)が、
- 好ましくは前記少なくとも1つのポリマーがエラストマー及び熱硬化性ポリマーから選択される場合、前記前駆体層(4a)を、例えば熱及び/又は紫外線下で、架橋すること、又は
- 好ましくは前記少なくとも1つのポリマーが熱可塑性ポリマーから選択されかつ工程B)においてスピンコートされる場合、溶媒を、蒸発させること
を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリマー組成物が溶媒を有さない場合、かつ好ましくは前記少なくとも1つのポリマーが熱可塑性ポリマーから選択される場合、工程B)及びC)が、前記鉱物性第1の外側型部分(2)の前記内面(2a)の前記微細構造体に対して加圧することによって圧力及び/又は真空を用いて前記ポリマー組成物をマイクロ熱加工することを含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科用レンズ基材として使用可能であり且つ微細構造化主表面を含む熱硬化性光学物品を製造するための複合型、このような熱硬化性光学物品を製造するための方法、及び複合型を得るための方法に関する。本発明は特に、近視を制御するように構成された微細構造体を含む眼科用レンズに適用される。
【背景技術】
【0002】
公知の方法において、微細構造化主表面を導入する熱硬化性眼科用レンズ基材を鉱物ガラス型(ミネラルガラス型)のキャビティ内に流延(キャスティング)することができ、その内表面は、その硬化後に流延熱硬化性材料の主表面に所望の微細構造体を与えるように構成された微細構造パターンを提供される。
【0003】
このような流延方法の主な欠点は、微細構造化鉱物型は、熱硬化性材料の連続脱型から生じる汚れを抑える反復清浄化及び/又は再研磨処理のために使用中に破損するため、しばしば最後に廃棄され、これらの型は操作者がそれらを適切に操作しない場合、破断することがあることである。廃棄率/破断率は、使用された微細構造化型の0.3%もの高い値に達し得る。それらの非常に高いコストを考慮に入れて、本出願人はこの欠点を克服することを以前は目指した。
【0004】
国際公開第99/29494A1号パンフレットは、型からレンズ表面内に微細構造体を移すための工程に存する、表面実用微細構造体を含む眼科用レンズを得るための方法に関し、その内表面は微細構造体を担持し、視力矯正幾何学的形状の設計を有する。型は、実用微細構造体がその中に形成される表面を有する金属又はプラスチックインサートを含む複合型であり得、前記インサートは、鉱物ガラスから製造され得る、視力矯正幾何学的形状を有する型表面に好ましくは接着剤によって適合させる。インサートは、必要とされる視力矯正幾何学的形状を有すると共に相当する型表面に固定されるように最初に造形されるか、又は最初に平面形状を有し、次いで型の視力矯正幾何学的形状表面に適合するように変形され得る。
【0005】
型の内表面を金属又はプラスチックインサートでコートするこのような方法の欠点は、この接着されたインサートがいくつかの場合:
- 特に、接着される比較的厚いインサートのために鉱物ガラス型の微細構造体に十分に合致することができないこと、
- 眼科用レンズの熱硬化性材料の流延に十分に(すなわち化学的に及び熱的に)耐えることができないこと、及び
- インサートと型表面及びこの流延材料のいずれかとの間の非常に良い接着性のために、同材料を型内に流延して硬化した後に型表面及び/又は熱硬化性材料から容易に剥離可能でないこと
に存在し得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、熱硬化性材料を成形キャビティ内に流延することによって眼科用レンズ基材として使用可能であり且つ微細構造化主表面を含む熱硬化性光学物品を製造するための複合型を提供することによって少なくとも上述の欠点を克服することであり、複合型は、
- 第1の内表面を有する鉱物性第1の外側型部分と、
- 第1の内表面に取外し可能に接合された有機成形フィルムであって、有機成形フィルムと接触して熱硬化性材料を流延した後に前記微細構造化主表面を直接に形成するように構成された微細構造化パターンを有する、有機成形フィルムとを含む。
【0007】
特定の有機成形フィルムが決められた方法でこの鉱物性第1の外側型部分に結合される場合、この鉱物性第1の外側型部分を反復的に流延、硬化及び脱型される熱硬化性材料からより良く保護して、前記鉱物型部分の耐久性を増加させる複合型を得ることができ、複合型内に設計された微細構造体の最初に設計されたパターンを維持しながら、流延されて硬化された熱硬化性物品の、複合型からの剥離性(すなわち最終脱型工程の間に複合型から容易に取り外され得ること)を特に改良することを本発明者は発見した、という点で、この目標は達せられている。
【0008】
本発明によると、有機成形フィルムは、少なくとも前記微細構造化パターン上で疎水性であり、10nm~500μmの間の厚さを有する。
【0009】
有機成形フィルムと、鉱物性第1の外側型部分とのこの配置は、流延されて硬化された熱硬化性材料と鉱物性第1の外側型部分との任意の接触を防ぐことによって、このフィルムが取外し可能に接合される(すなわち除去可能に付着される)前記鉱物性第1の外側型部分を遮蔽膜のように保護することを可能にすることに留意すべきである。
【0010】
結果として、反復される流延-硬化-脱型工程(この脱型工程は鉱物性第1の外側型部分の第1の内表面のために確かに非常に要求がきびしい)から生じる汚れを抑える反復される過酷な清浄化及び再研磨処理に起因する使用中の破損が防がれ、結果として、特に最初の微細構造体が導入されている場合に非常にコストが大きいこのような鉱物性第1の外側型部分の廃棄は、最小にされるか又は少なくとも著しく遅らせられる。
【0011】
特にその適用技術及び疎水性に起因して鉱物性第1の外側型部分と流延熱硬化性材料の両方から容易に剥離可能であり、したがって微細構造化パターンに良いコンフォメーショナルモールディング/脱型能力を与えながら、特にはその小さな厚みに起因して鉱物性第1の外側型部分内に設計され得る微細構造体に十分に合致するように構成される有機成形フィルムのおかげで、本発明の複合型は、熱硬化性微細構造化レンズ材料に更なる改良形態を与えることを可能にすることにも留意すべきである。
【0012】
本発明の有機成形フィルムは、単一層又は複数層タイプのどちらかであり得、
- 完全に疎水性(すなわちその全厚さにわたって)であるか、又は
- 流延される熱硬化性材料と接触しているように設計された前記微細構造化パターンを画定する有機成形フィルムの内表面層上で疎水性であり得るにすぎず、この疎水性内表面層は、以下に説明されるように、場合により親水性であるか又はそれほど疎水性ではない下位の有機層上に噴霧コーティングすることによって場合により得られることを更に指摘しておいてもよいだろう。
【0013】
好ましくは、この複合型の有機成形フィルムは、少なくとも前記微細構造化パターン上で100°超、好ましくは110°超、より好ましくは120°超の水接触角を示し(これはかなり高い疎水性を示す)、及び/又は1μm~100μmの間、より好ましくは10μm~90μmの間の厚さを有する。
【0014】
上記のとおり、少なくともその微細構造化内表面層上の有機成形フィルムのこの高い疎水性は、この微細構造化内表面層と接触して流延された熱硬化性材料の脱型工程を更に容易にするように具体的に設計され、したがって熱硬化性物品を複合型から十分に離型することを可能にする。
【0015】
本発明の他の有利な特徴によると、有機成形フィルムは、エラストマー、熱可塑性ポリマー及び熱硬化性ポリマーから選択される少なくとも1つのポリマーをベースとし得、好ましくは、100MPa~4000MPaの間の、及び好ましくは200MPa~2000MPaの間の、ASTMD882-12に従って測定されるヤング率を有する。
【0016】
本発明の第1の実施形態によると、有機成形フィルムは、完全に疎水性の有機成形フィルムの上記の場合、二成分型ポリジメチルシロキサン(PDMS)などのシリコーンゴム、及び二成分型液体ウレタンゴムなどのポリウレタンゴムから好ましくは選択される少なくとも1つの架橋エラストマーをベースとしている。
【0017】
本発明の第2の実施形態によると、有機成形フィルムは、完全に疎水性の有機成形フィルムの上記の場合、一成分型液体感光性ポリマー接着剤などのチオール-エン熱硬化性樹脂、及び熱硬化性ポリウレタンから好ましくは選択される少なくとも1つの熱硬化性ポリマーをベースとしている。
【0018】
本発明の第3の実施形態によると、有機成形フィルムは、完全に疎水性の有機成形フィルムの上記の場合、テトラフルオロエチレン、ヘキサフロオロプロピレン及びフッ化ビニリデンのターポリマーなどのフッ素化ポリマー、及び熱可塑性ポリウレタン(TPU)から好ましくは選択される少なくとも1つの熱可塑性ポリマーをベースとしている。
【0019】
本発明のこれらの3つの実施形態によると、有機成形フィルムは代わりに、上で定義した少なくとも1つの架橋エラストマー、熱硬化性ポリマー又は熱可塑性ポリマーをベースとし得、それは、フィルムのポリマー下位層上に噴霧コートされ得るフィルムの疎水性内表面層を考慮して疎水性でなくてもよい。
【0020】
本発明の別の態様によると、例えば鉱物ガラスから製造される、鉱物性第1の外側型部分は、微細構造体を含む前記第1の内表面を有することができ、その上に、有機成形フィルムの第1の面が、それらの間で接着剤なしに取外し可能に上に接合され、有機成形フィルムが、第1の面上で微細構造体に適合し、且つ前記微細構造化パターンを形成する反対側の第2の面を有し、
複合型は、第1の内表面の反対側の第2の内表面を有する鉱物性第2の外側型部分を更に含み、成形キャビティは、有機成形フィルムと第2の内表面との間に画定される。
【0021】
鉱物性第1の外側型部分は、金属材料又はプラスチックタイプではない(例えば有機ポリマータイプではない)非金属材料など、鉱物ガラス以外の鉱物材料を含むか又はそれらから製造され得ることを指摘しておいてもよいだろう。
【0022】
有機成形フィルムが取外し可能に上に接合される(接着によって接合されない)前記微細構造体を鉱物性第1の外側型部分が含む上述の態様によると、鉱物性第1の外側型部分とフィルムとの間の接合界面(化学結合を含むことも含まないこともあり得る)は、成形キャビティ内に熱硬化性材料を流延して硬化した後に次にフィルムを鉱物性第1の外側型部分から容易に取り外すために、十分に弱いか又はせいぜい中程度の接着性を示すように選択されることもまた、指摘しておいてもよいだろう。
【0023】
その全ての前述の特徴に共通し得る本発明の好ましい実施形態によると、有機成形フィルムが取外し可能に上に接合される(接着によって接合されない)前記微細構造体を含む鉱物性第1の外側型部分の第1の内表面は、(別の幾何学的形状が使用可能であるが)凹形である前記第1の内表面を有することができ、有機成形フィルムの厚さは、鉱物性第1の外側型部分の前記微細構造体の平均振幅の1/10~1/100(更により好ましくは前記微細構造体の平均振幅の1/20~1/50)の範囲であり得る。
【0024】
前記微細構造体の平均振幅に対する有機成形フィルムのこの厚さ比は、設計される元の微細構造体の光学素子に影響を与えないことを可能にすることを指摘しておいてもよいだろう。
【0025】
本発明の別の目的は、眼科用レンズ基材として使用可能であり且つ例えば近視を制御するように構成される微細構造化主表面を含む熱硬化性光学物品を製造するための方法を提供することであり、この方法は、流延、硬化及び脱型工程を考慮して、実施するのが容易であり、すぐれた化学的及び機械的特性を複合型に与えることができる。
【0026】
本発明によれば、この製造方法は、
a)熱硬化性材料を上で定義した複合型の成形キャビティ内に流延し、熱硬化性材料が、前記第1の内表面と接触せずに、有機成形フィルムと、第1の内表面の反対側である鉱物性第2の外側型部分の第2の内表面と接触するようにする工程と、
b)成形キャビティ内に流延された熱硬化性材料を硬化させる工程と、
c)工程b)において得られた成形された熱硬化性材料を脱型する工程であって、成形された熱硬化性材料を有機成形フィルムから剥離し、有機成形フィルムの微細構造化パターンが、得られた熱硬化性光学物品の微細構造化主表面を直接に成形するようにすることを含む工程と
を含む。
【0027】
流延された熱硬化性材料と接触している複合型の前記第2の内表面は、鉱物性第1の外側型部分と一緒に作用して閉じるように複合型の一部である、相補的な鉱物性第2の外側型部分に属することに留意すべきである。上述の凹形の第1の内表面に対して凸形であり得る、この第2の鉱物内表面は、(他の鉱物材料を使用することができるが)例えば鉱物ガラスから製造される。
【0028】
製造された熱硬化性光学物品は有利には、近視だけでなく、遠視、乱視及び老視もまた処理又は制御するために使用可能な例えば矯正眼鏡レンズであり得る眼科用レンズの基材を形成するように設計されることも指摘しておいてよいだろう。
【0029】
好ましくは、有機成形フィルムは、
- エチレン/ノルボルネン又はエチレン/シクロペンタジエンコポリマーなどのシクロオレフィンコポリマー;
- ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)のホモポリマーなどの直鎖状又は分岐状の脂肪族又は芳香族ポリオールのアリルカーボネートのホモポリマー及びコポリマー;
- ビスフェノールAから任意選択的に誘導される、(メタ)アクリル酸及びそのエステルのホモポリマー及びコポリマー;
- チオ(メタ)アクリル酸及びそのエステルのホモポリマー及びコポリマー;
- ビスフェノールA又はフタル酸と、スチレンなどのアリル芳香族とから任意選択的に誘導されるアリルエステルのホモポリマー及びコポリマー;
- ウレタン及びチオウレタンのコポリマー;
- エポキシのホモポリマー及びコポリマー;並びに
- スルフィド、ジスルフィド及びエピスルフィドのホモポリマー及びコポリマー
から選択される、熱硬化性材料からの流延工程a)の間の攻撃に耐えるように選択される。
【0030】
より好ましくは、有機成形フィルムは、
- 直鎖状又は分岐状の脂肪族又は芳香族ポリオールのアリルカーボネートのホモポリマー又はコポリマー、更により好ましくは名称Orma(登録商標)などのジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)のホモポリマー、又は
- いわゆる「MR8」、「MR」7及び「1.74」レンズなど、ポリチオウレタンコポリマーである、熱硬化性材料からの流延工程a)の間の攻撃を防ぐように選択される。
【0031】
本発明の別の態様によると、上で定義した複合型を得るための方法は、
A)疎水性であるか又は疎水性表面層でコートされるかのどちらかであり且つ鉱物性第1の外側型部分に取外し可能に接合される有機成形フィルムを形成することができるポリマー組成物であって、流延される熱硬化性材料からの攻撃に耐えることができるポリマー組成物を提供する工程と、
B)ポリマー組成物を鉱物性第1の外側型部分の内表面上に適用して、有機成形フィルムのための前駆体層を形成する工程と、
C)適用された前駆体層を処理して、10nm~500μmの間、好ましくは1μm~100μmの間の前記厚さ及び流延されて硬化された熱硬化性光学物品をそこから剥離することができる表面張力を有する有機成形フィルムを形成する工程と
を含む。
【0032】
例えば鉱物ガラスから形成される、鉱物性第1の外側型部分の前記内面は、微細構造体を含んでおり、その上に工程B)及びC)において有機成形フィルムが適合するように接合されて上記微細構造化パターンが形成されるようになっている。
【0033】
本発明の第1の典型的な実施形態によると、ポリマー組成物は溶媒と、エラストマー、熱可塑性ポリマー及び熱硬化性ポリマーから選択される少なくとも1つのポリマーとを含む溶液からなり、工程B)は、好ましくはスピンコーティング、噴霧コーティング又は浸漬コーティングによって溶液を鉱物性第1の外側型部分の内表面上にコートすることを含む。
【0034】
本発明のこの第1の典型的な実施形態によると、工程C)は、
- 好ましくは、少なくとも1つのポリマーがエラストマー及び熱硬化性ポリマーから選択される場合、前駆体層を例えば熱及び/又は紫外線下で(例えば硬化によって)架橋すること、又は
- 好ましくは、少なくとも1つのポリマーが熱可塑性ポリマーから選択されて工程B)においてスピンコートされる場合、溶媒を蒸発させることを含むことができる。
【0035】
本発明の第2の典型的な実施形態によると、疎水性ポリマー組成物が溶媒を有さない場合、及び好ましくは、少なくとも1つのポリマーが熱可塑性ポリマーから選択される場合、工程B)及びC)は、鉱物性第1の外側型部分の前記内面の微細構造体に対して加圧することによって圧力及び/又は真空を用いて疎水性ポリマー組成物をマイクロ熱加工することを含む。
【0036】
複合型を得るための本発明のこれらの方法は有利には、剥離性のためにそれによって中程度の接着性を提供しながら、鉱物性第1の外側型部分の元の微細構造体の形状を高忠実度で複製することを可能にすることを指摘しておいてもよいだろう。
【0037】
本説明において、眼科用レンズ基材の微細構造化主表面を形成する微細構造体は、レンズレットを含むことができる。レンズレットは、それらが上に配置される主表面に隆起部及び/又は窪みを形成することができる。レンズレットの輪郭は、丸いか又は多角形、例えば六角形であり得る。
【0038】
より詳しくは、レンズレットは、マイクロレンズであり得る。マイクロレンズは球面、トーリックであってよく、又は非球面形を有してよく、軸対称であってもなくてもよい。マイクロレンズは、単焦点、円柱度数、又は非焦点を有し得る。
【0039】
好ましい実施形態において、レンズレット又はマイクロレンズは、近視又は遠視の進行を阻止するために使用することができる。その場合、ベースレンズ基材は、近視又は遠視を矯正する光出力を提供するベースレンズを含み、マイクロレンズ又はレンズレットはそれぞれ、装着者が近視を有する場合、ベースレンズの光出力よりも大きな光出力を提供し得、又は装着者が遠視を有する場合、ベースレンズの光出力よりも低い光出力を有し得る。
【0040】
レンズレット又はマイクロレンズはまた、フレネル構造体、フレネル構造体をそれぞれ画定する回折構造体、永久技術的隆起部又は移相要素であり得る。マイクロプリズム等の屈折光学素子及び小さな突起若しくはキャビティ等の光分散光学素子又は基材上に凹凸を生み出す任意のタイプの素子であることもできる。それはまた、米国特許第2021109379A1号明細書に説明されているπ-フレネルレンズレット、すなわち、その位相跳躍が2πの複数値である単焦点フレネルレンズとは対照的に、その位相関数が公称波長でπ位相跳躍を有するフレネルレンズレットであり得る。このようなレンズレットは、不連続な形状を有する構造体を含む。言い換えれば、このような構造体の形状は、不連続性を示すか、又はその導関数が不連続性を示す、レンズレットが属する眼科用レンズの主表面の基準面からの距離を用いて、高度関数によって記述することができる。
【0041】
レンズレットは、0.5マイクロメートル(μm)以上且つ1.5ミリメートル(mm)以下の直径を有する円に内接できる輪郭形状を有することができる。
【0042】
レンズレットは、0.1μm以上且つ50μm以下の、それらが上に配置される主表面に垂直な方向に測定される高さを有することができる。
【0043】
主表面は、全ての微細構造体の中心点を含む、平面、球面、球面円柱又は更に複雑な表面であり得る、表面として画定され得る。
【0044】
この主表面は、微細構造体がレンズ内に埋め込まれる場合、仮想表面であり得るか、又は微細構造体が埋め込まれない場合、眼科用レンズ物理的外面に近いか又は等しい。次に、この主表面に対する部分垂直軸を用いて、軸に沿って主表面に対する最大の正の偏差から最小の負の偏差を引いた差を微細構造体の各点について計算して微細構造体の高さを決定することができる。
【0045】
レンズレットは周期的又は準周期的レイアウトを有することができるが、ランダム化された位置を有することもできる。レンズレットの典型的なレイアウトは、一定のグリッドステップを有する、ハニカムレイアウトの、複数の同心円状のリングの、連続した、例えば微細構造体間にスペースがないグリッドであり得る。
【0046】
これらの構造体は、強度、曲率、又は光偏差において光波前部の修正を提供することができ、ここで、波前部の強度は、構造体が吸収性を有し、且つ0%~100%の範囲で波前部の強度を局所的に吸収することができるように構成され、曲率は、構造体が±20ジオプタの範囲で波前部の曲率を局所的に修正することができるように構成され、光偏差は、構造が±1°~±30°の範囲の角度で光を局所的に散乱することができるように構成されている。
【0047】
構造体間の距離は、(別個の微細構造体)の0(連続)~3倍の範囲であり得る。
【0048】
本説明において、用語「含む(comprise)」(並びに「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」などのそのいずれかの文法的変形態)、「有する(have)」(並びに「有する(has)」及び「有する(having)」などのそのいずれかの文法的変形態)、「含有する(contain)」(並びに「含有する(contains)」及び「含有する(containing)」などのそのいずれかの文法的変形態)、並びに「含む(include)」(並びに「含む(includes)」及び「含む(including)」などのそのいずれかの文法的変形態)は、オープンエンドの連結動詞である。これらは、述べられる特徴、整数、ステップ若しくは構成要素、又はこれらのグループの存在を規定するために用いられるが、1つ又は複数の他の特徴、整数、ステップ若しくは構成要素、又はこれらのグループの存在又は追加を排除するものではない。結果として、1つ以上の工程又は要素を「含む(comprises)」、「有する」、「含む(contains)」、又は「含む(includes)」方法又は方法内の工程は、それらの1つ以上の工程又は要素を有するが、それらの1つ以上の工程又は要素のみを有することに限定されない。
【0049】
別段の指示がない限り、本明細書で使用される成分の量、範囲、反応条件などを指す全ての数字又は表現は、全ての場合において用語「約」によって修飾されているものとして理解される。また、別段の指示がない限り、本発明による「X~Y」又は「X~Yの間」の値の間隔の表示は、X及びYの値を含むことを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】熱硬化性材料が型キャビティを充填する、本発明の好ましい実施形態による複合型の略部分断面図である。
【
図2a-2e】ポリマー溶液をスピンコートすることによって有機成形フィルムを得るための本発明の第1の実施形態による方法の略ブロック図の工程を示す。
【
図3a-3c】ポリマー溶液を噴霧コートすることによって有機成形フィルムを得るための本発明の別の実施形態による方法の略ブロック図の工程を示す。
【
図4a-4c】ポリマー溶液を浸漬コートすることによって有機成形フィルムを得るための本発明の別の実施形態による方法の略ブロック図の工程を示す。
【
図5a-5c】加圧下でマイクロ熱加工することによって有機成形フィルムを得るための本発明の別の実施形態による方法の略ブロック図の工程を示す。
【
図6a-6c】真空下でマイクロ熱加工することによって有機成形フィルムを得るための本発明の別の実施形態による方法の略ブロック図の工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1は、本発明の典型的な実施形態による複合型1を図面で示し、それは特に、
- その第1の微細構造化内表面2a上の微細構造化鉱物性第1の外側型部分2(例えば凹形であり鉱物ガラス製)、
- 相補的且つ平滑な第2の内表面3aを有する鉱物性第2の外側型部分3(例えば凸形であり同様に鉱物ガラス製)、
- 微細構造化鉱物性第1の外側型部分2を保護するように構成されると共に、第1の微細構造化内表面2aを(高い複製忠実度で)適合するようにコートする有機成形フィルム4、及び
- 有機成形フィルム4と第2の内表面3との間で画定されると共に、流延される流延熱硬化性材料6(キャスト熱硬化性材料6)によって充填され、次いで決定温度で、特定の時間の間、このキャビティ5内で硬化されるように構成される成形キャビティ5、を含む。
【0052】
上に説明されたように、フィルム4のために選択されるすぐれた耐化学薬品性及び耐熱性のために、フィルム4と、下方に位置する鉱物性第1の外側型部分2の第1の微細構造化内表面2aとの両方とも破損しないことを本出願人は確かめた。
【0053】
流延熱硬化性材料6の硬化を終えた後、近視を制御するように構成されるレンズ基材などの得られた熱硬化性物品は、それ自体この鉱物内表面2aから容易に取り外されるフィルム4から、容易に剥離される。
【0054】
同様に上に説明されたように、有機成形フィルム4の厚さは好ましくは、鉱物性第1の外側型部分2の微細構造化内表面2aの平均振幅の1/10~1/100の範囲であり、それは微細構造体の光学素子に影響を与えないことができる。
【0055】
有機成形フィルム4は、疎水性であるように選択され、好ましくは流延される熱硬化性材料6と接触しているように設計された少なくともその微細構造化内表面上で120°超の水接触角を示し、フィルム4の低い表面張力は、流延されて硬化された物品を容易に脱型することを可能にする。
【0056】
フィルム4は、10nm~500μmの間の厚さを有し、鉱物内表面2a上に元の微細構造体を高忠実度で複製することができるように更に選択される。
【0057】
フィルム4は、長時間の製造時間を維持するため、(例えば鉱物ガラスの)鉱物性第1の外側型部分2との中程度の接着性を示し、鉱物性第1の外側型部分2を修復又は清浄化するために同部分から容易に取外し可能であるように更に選択される。
【0058】
上に説明されたように、フィルム4は好ましくは、(100MPa~4000MPaの間の)中程度のヤング率を示し、鉱物性第1の外側型部分2を衝撃から保護する。
【0059】
スピンコーティングによってポリマー溶液として適用され得る有機成形フィルム4に関する
図2a-2eの略ブロック図において:
-
図2aは、ポリマー溶液4aを鉱物微細構造化内表面2a上に堆積させる初期工程を示し(ここで溶液は、少なくとも1つのエラストマー、熱可塑性ポリマー又は熱硬化性ポリマーをベースとしている)、
-
図2bは、堆積された溶液4aからの回転散布を示し、
-
図2cは、鉱物微細構造化内表面2a上のフィルム4の薄い液体前駆体4aの形成を示し、及び
-
図2d又は代わりに2eは、UV若しくは加熱下で硬化によって(
図2dを参照)、又は溶媒蒸発によって(
図2eを参照)いずれかでの、フィルム4の最終形成を示す。
【0060】
噴霧コーティングによってポリマー溶液として適用され得る有機成形フィルム4に関する
図3a-3cの略ブロック図において:
-
図3aは、鉱物微細構造化内表面2a上へのポリマー溶液4aの初期噴霧工程を示し(ここで溶液は、少なくとも1つのエラストマー、熱可塑性ポリマー及び熱硬化性ポリマーをベースとしている)、
-
図3bは、鉱物微細構造化内表面2a上の前駆体液体フィルム4aの後続の形成を示し、及び
-
図3cは、熱又はUV下で硬化させることによるフィルム4の最終形成を示す。
【0061】
浸漬コーティングによってポリマー溶液として適用され得る有機成形フィルム4に関する
図4a-4cの略ブロック図において:
-
図4aは、ポリマー溶液4a中への鉱物性第1の外側型部分2の初期浸漬工程を示し、
-
図4bは、鉱物微細構造化内表面2a上の前駆体液体フィルム4aの形成を示し、及び
-
図4cは、熱又はUV下で硬化させることによるフィルム4の最終形成を示す。
【0062】
圧力によるマイクロ熱加工技術によって薄膜として適用され得る有機成形フィルム4に関する
図5a-5cの略ブロック図において:
-
図5aは、フィルム4の前駆体4aを集成する初期工程を示し、
-
図5bは、空気圧Pを適用してフィルム4の前駆体4aを鉱物性第1の外側型部分2aの鉱物内表面2a上に合致させる後続の工程を示し、及び
-
図5cは、内表面2aに取外し可能に接合されるフィルム4を形成する最終工程を示す。
【0063】
真空によるマイクロ熱加工技術によって:薄膜として適用され得る有機成形フィルム4に関する
図6a-6cの略ブロック図において:
-
図6aは、フィルム4の前駆体4aを集成する初期工程を示し、
-
図6bは、真空Vを適用してフィルム4の前駆体4aを鉱物性第1の外側型部分2aの鉱物内表面2a上に合致させる後続の工程を示し、及び
-
図6cは、内表面2aに取外し可能に接合されるフィルム4を形成する最終工程を示す。
【0064】
本発明の複合型及び方法の実施例:
以下の実施例は、より詳細であるが非限定的な様式で本発明を説明するものである。
【0065】
実施例1:スピンコーティングによって適用されるPDMS系成形フィルム:
以下の特徴に従って、以下の表1による二成分型PDMSをフィルム4のために使用した:
- PDMS:Dow Chemical製のSylgard(登録商標)184;
- ポリマー溶液の調製:PDMSのパートA及びBを10:1(wt:wt)比で混合し、2分間撹拌し、次に、混合物を使用前に脱気のために真空デシケーター内に置いた(10~13分)。
【0066】
【0067】
図2a~2dを参照して上に説明されたように、PDMSフィルム4をスピンコーティングによって調製し、次に硬化させた。具体的には、PDMS混合物4aを、プラズマで予め処理された鉱物ガラスの第1の外側型部分2の微細構造化内表面2aの上に流し込み、次に、その上にスピンコートした。
【0068】
1μm~100μmの間の所望のフィルムの厚さを達成するために、最終硬化フィルム4の目標の厚さに達するようにスピンコーティング(すなわちスピニング)速度及び時間を両方とも調節した。スピニング速度を増加させることによって、それぞれ10~100μmの厚さを有する複数のフィルムが得られ、それらは、鉱物ガラス内表面の微細構造体断面形を高忠実度で非常によく複製することがわかった。
【0069】
微細構造体断面形の高い反復忠実度はまた、PDMS粘度を制御することによって、収縮及び微細構造体の形状設計を小改良すること、並びに/又はPDMSを選択的に硬化して後で未硬化部分を洗い流すためのマスクを使用することによって達成できることを指摘しておいてもよいだろう。
【0070】
PDMS前駆体フィルムは、硬化剤と混合した後に更に架橋され、したがって疎水性エラストマーフィルムになり、その弾性率/硬度は、PDMS架橋度を変化させることによって調節された。PDMSフィルムのヤング率は硬化剤の重量比、したがって硬化フィルム中のPDMSの架橋度を変化させることによって制御された。
【0071】
PDMSポリマー鎖の大きさに応じて、架橋していないPDMSは、少ない数の繰り返し単位又は多い数の繰り返し単位の場合それぞれ、ほとんど液体又は半固体であり得ることを指摘しておいてもよいだろう。
【0072】
次に、眼科用レンズ基材は、名称Orma(登録商標)(ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)のホモポリマー、及び「MR7」、「MR8」、「1.74」(ポリチオウレタン)の熱硬化性レンズ基材6を流延することによって、
図1の原理に従って型キャビティ内に流延して硬化させることによって製造された。
【0073】
得られたレンズ基材は、流延及び硬化工程の間フィルム4によって保護されていたので(したがってこれは保護遮蔽として作用した)、容易に脱型され、鉱物ガラスの第1の外側型部分2の内表面2aが維持される間に高忠実度の複製された微細構造体を導入した。
【0074】
PDMSは有利には、架橋剤と混合される時でも、長時間の間室温で液体のままであり、しかも、PDMSは高い分解能で微細構造体内に流入することができ、更にフィルムの厚さの正確な制御をもたらすことに留意すべきである。したがって、特定の最適化によって、それは数ナノメートルの微細構造体内に流入することができるのがよい。したがって元の微細構造体の容易な且つ良好な成形適性。
【0075】
PDMSフィルムは、この鉱物ガラスがプラズマで処理された後に第1の型部分2の鉱物ガラスに接合するのが容易であると共に、その低い表面張力のためにそこからのすぐれた剥離性を提供することにも留意すべきである。
【0076】
PDMSは、限定されないが、メタノール、グリセロール、プロパノール、アセトン及びピリジンなどの多くの溶媒に対してすぐれた耐薬品性を示すので、特に有利であることに更に留意すべきである。
【0077】
実施例2:スピンコーティングによって適用されるポリウレタンゴム系成形フィルム:
- 原材料:Smooth-On,Inc.製のポリウレタン液体ゴムClear Flex(登録商標)30、
- ポリマー溶液の調製:Clear Flex(登録商標)30のパートA及びBを最初に1:1の比(体積/体積)で混合し、次に3分間撹拌し、後で脱気した。
【0078】
このように調製されたポリマー溶液を鉱物ガラス第1の外側型部分(molt part)2上に滴下し、
図2a-2cを参照して上に開示されたようにスピンコートして、スピンコーターのスピニング速度に応じて10μm~100μmの間の薄い層を形成することによってポリウレタンゴムフィルム4を調製した。このように調製されたガラスインサートを炉内に置き、
図2dに従って、ポリウレタンの薄い前駆体層4aを硬化させ、フィルム4を得た。
【0079】
実施例3:スピンコーティングによって適用されるチオール-エン熱硬化性樹脂系成形フィルム:
- 原材料:Norland products製の「NOA61」、これは、紫外線への露光によって硬化された透明な、無色の、一成分型液体感光性ポリマー接着剤である(以下の表3のその詳細な特性を参照のこと)。
【0080】
完全に硬化されたとき、「NOA61」は、非常に良い接着性と耐溶媒性の両方を有した。12時間の間50℃で老化させ、次いでUV硬化させた後、「NOA61」は、-150℃~125℃の温度に耐えることができた。
【0081】
【0082】
- ポリマー溶液の適用及び硬化:
図2a-2dの工程は以下のように実施された。
【0083】
「NOA61」を30秒間の間4000rpmでスピンコートし、60μmの最終厚さにした。
【0084】
次に、スピンコートされた溶液を高ワット数のUVランプ(400WのDymax(登録商標)5000EC)下で、48mW/cm2の平均強度で、10分間UV硬化させた。
【0085】
硬化されたフィルム4を15時間の間60℃で安定化のために放置しておいた。
【0086】
実施例4:スピンコーティングによって適用されるフルオロポリマー系成形フィルム:
- 原材料:3M製のTHV 220G。
- ポリマー溶液の調製:THV220Gをアセトン中に溶解した。
【0087】
このように調製されたポリマー溶液を鉱物ガラスの第1の外側型部分2上に滴下し、
図2a-2cを参照して上に開示されたようにスピンコートして、フィルム4の薄い前駆体層を形成することによってフルオロポリマーフィルム4を調製した。
【0088】
図2eの溶媒蒸発工程に従ってスピンコーティングの間にアセトンを蒸発させ、THV 220Gの薄い層を鉱物ガラスの第1の外側型部分2上に形成するようにし、10μm~100μmの間のフィルム4の最終厚さにした。
【0089】
実施例5:マイクロ熱加工によって適用されたTPU系成形フィルム:
- 原材料:
Covestro製のDureflex(登録商標)A4000、脂肪族熱可塑性ポリウレタン(TPU)、
- TPU系前駆体層の適用:
【0090】
薄いA4000系前駆体層を110℃のそれらの軟化点まで加熱し、次にそれぞれ、
図5a-5cに従って加圧窒素によって鉱物ガラスの第1の外側型部分2に当てて圧縮し、及び/又は
図6a-6cに従って真空によってこの鉱物型部分2に当てて引っ張り、鉱物型部分2上の微細構造体断面形2aに当てて変形させた。
【0091】
それぞれのTPU系フィルム4は、1μm~100μmの間の最終厚さに達した。
【0092】
実施例6:噴霧コーティングによって適用されたPDMS系成形フィルム:
- 原材料:Dow Corning製のSylgard(登録商標)184
- ポリマー溶液の調製:Sylgard(登録商標)184は非常に粘性でそのまま使用できなかった。ヘキサン、シリコーン油、又は Dow Corning「200fluid」などのいくつかの溶媒を別々に使用してSylgard(登録商標)184を希釈した。
【0093】
図3a-3cに従って、中程度のノズルによるエアブラシを鉱物ガラスの第1の外側型部分2の上に保持し、PDMS溶液の液滴を圧縮窒素下で噴霧した。
【0094】
代わりに、鉱物ガラスの第1の外側型部分2を噴霧コーティングの間回転させ、より均一な厚さを達成した。PDMS液体フィルム4aをこのように形成し、その厚さを特に噴霧時間、圧力、型部分2の回転速度によって制御した。
【0095】
次に、PDMS液体フィルム4aを熱、及び/又はUV下で硬化させ、1μm~100μmの間の最終厚さを有するフィルム4を得た。
【0096】
実施例7:浸漬コーティングによって適用されたPDMS系成形フィルム:
- 原材料:Sigma Aldrich製のヒドロキシ末端PDMS(Mw=18000gモル-1)。
- ポリマー溶液の調製:このPDMS-OHをn-へプタン中に溶解し、次いで架橋剤(TEOS)及び0.2wt%触媒ジブチル錫ジラウレートをポリマー溶液に添加した。ポリマー混合物を30分間の間室温で撹拌し、真空下で脱気した。
【0097】
図4a-4cに従って、液体前駆体フィルム4aが必要とされる厚さに形成されるまで、鉱物ガラスの第1の外側型部分2を数サイクルの間このPDMS-OH溶液中に浸し、取り出した。
【0098】
熱及び/又はUV下でこの液体フィルム4aを硬化させた後に、1μm~100μmの間の最終厚さを有する固体疎水性フィルム4が得られた。
【0099】
実施例8:ポリマー成形フィルムの疎水性表面処理:
- 原材料:Smooth-On,Inc.製のEase Release(登録商標)200、
- 上記の実施例1~7による鉱物ガラスの第1の外側型部分2の上に適用される上記のフィルム4のそれぞれをEase Release(登録商標)200で更に噴霧コートして、(より高い接触角によって示される)より良い疎水性機能を達成し、流延及び硬化後の熱硬化性光学物品の脱型を改良した。
【0100】
したがってこの離型剤は、フルオロポリマー上に噴霧コートするために特に使用可能であるが、また、非限定的な方法で、反応性ポリシロキサン、PVA(ポリビニルアルコール)、ワックス及びシリコーン油上でも使用可能である。
【0101】
また、この疎水性表面処理プロセスは、スピンコーティング又は浸漬コーティングなどの別のコーティング技術によって親水性フィルム又はそれほど疎水性でないフィルムに適用されて、所望の疎水性成形フィルムを得ることができることに留意すべきである。
【国際調査報告】