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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】磁気ギヤ式装置及び回転子
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/10 20060101AFI20240517BHJP
   F16H 49/00 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
H02K7/10 A
F16H49/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572991
(86)(22)【出願日】2022-05-26
(85)【翻訳文提出日】2023-12-01
(86)【国際出願番号】 GB2022051344
(87)【国際公開番号】W WO2022258948
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】2108117.9
(32)【優先日】2021-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508317402
【氏名又は名称】マグノマティックス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MAGNOMATICS LIMITED
【住所又は居所原語表記】Park House, Bernard Road, Sheffield, South Yorkshire S2 5BQ Great Britain
(74)【代理人】
【識別番号】110003926
【氏名又は名称】弁理士法人イノベンティア
(72)【発明者】
【氏名】コーク、 グリン
(72)【発明者】
【氏名】ドラガン、 ラドゥ-ステファン
(72)【発明者】
【氏名】パウエル、 デイヴィット
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン、 グレッグ
(72)【発明者】
【氏名】カルヴェリー、 スチュアート
【テーマコード(参考)】
5H607
【Fターム(参考)】
5H607AA12
5H607BB01
5H607BB07
5H607BB14
5H607DD02
5H607EE31
(57)【要約】
本開示は、磁気ギヤ式装置に関する。一例では、磁気ギヤ式装置は、複数の第1の永久磁石を備える第1の移動子と、固定子と、第2の移動子と、磁束を減衰させるために、前記複数の第1の永久磁石と整列している磁束シールドと、備える。固定子及び第2の移動子のうちの一方は、複数の磁極片を備え、第1の移動子と固定子及び第2の移動子のうちのもう一方との間に配置される。第1の移動子、固定子及び第2の移動子は、第1の方向に整列しており、磁束シールドは、非磁性領域によって、複数の第1の永久磁石から、第1の方向に垂直な第2の方向に離間しており、それにより、第2の方向の磁束を減衰させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ギヤ式装置であって、
複数の第1の永久磁石を備える第1の移動子と、
固定子と、
第2の移動子と、
磁束を減衰させるために、前記複数の第1の永久磁石と整列している磁束シールドと、備え、
前記固定子及び前記第2の移動子のうちの一方が、複数の磁極片を備え、前記第1の移動子と前記固定子及び前記第2の移動子のうちのもう一方との間に配置され、
前記第1の移動子、前記固定子及び前記第2の移動子が、第1の方向に整列しており、前記磁束シールドは、非磁性領域によって、前記複数の第1の永久磁石から、前記第1の方向に垂直な第2の方向に離間しており、それにより、前記第2の方向の磁束を減衰させる、
磁気ギヤ式装置。
【請求項2】
前記第1の移動子、前記固定子及び前記第2の移動子は、シャフトの周りに配列され、かつ、互いに軸方向に整列しており、前記第1の移動子及び前記第2の移動子のうちの一方が、シャフトに機械的に結合されている、請求項1に記載の磁気ギヤ式装置。
【請求項3】
前記第1の移動子、前記固定子及び前記第2の移動子は、金属ケーシング内に収容され、前記磁束シールドが、前記複数の第1の永久磁石と前記金属ケーシングとの間に位置している、請求項2に記載の磁気ギヤ式装置。
【請求項4】
前記第1の移動子、前記固定子及び前記第2の移動子は、シャフトの周りに同心円状に配列されている、請求項1に記載の磁気ギヤ式装置。
【請求項5】
前記第2の移動子は、前記回転可能なシャフトに機械的に結合された導電性の磁極片支持構造を備え、前記磁束シールドは、前記複数の第1の永久磁石と前記磁極片支持構造との間に位置している、請求項4に記載の磁気ギヤ式装置。
【請求項6】
前記複数の磁極片は、前記複数の磁極片が、磁極片スペーサによって、前記磁極片支持構造から軸方向に離間するように、電気絶縁性磁極片スペーサを介して、前記磁極片支持構造に結合されている、請求項5に記載の磁気ギヤ式装置。
【請求項7】
前記第1の移動子、前記固定子及び前記第2の移動子は、金属ケーシング内に収容され、前記磁束シールドが、前記複数の第1の永久磁石と前記ケーシングとの間に位置している、請求項1、2又は4のいずれかに記載の磁気ギヤ式装置。
【請求項8】
前記第1の移動子は、永久磁石支持構造を備え、前記磁束シールドは、前記永久磁石支持構造と機械的に結合されている、請求項1~7のいずれかに記載の磁気ギヤ式装置。
【請求項9】
前記磁束シールドが、前記磁極片支持構造に機械的に結合されている、請求項5又は請求項6に記載の磁気ギヤ式装置。
【請求項10】
前記非磁性領域が、非磁性の電気絶縁性スペーサである、請求項1~9のいずれかに記載の磁気ギヤ式装置。
【請求項11】
前記非磁性領域がエアギャップを備える、請求項1~9のいずれかに記載の磁気ギヤ式装置。
【請求項12】
前記磁束シールドが導体を備える、請求項1~11のいずれかに記載の磁気ギヤ式装置。
【請求項13】
前記磁束シールドが、未磁化の磁化可能材料を含む、請求項1~12のいずれかに記載の磁気ギヤ式装置。
【請求項14】
前記磁束シールドが、ラミネート及び軟磁性複合材料「SMC」のうちの1つを含む、請求項11に記載の磁気ギヤ式装置。
【請求項15】
前記磁束シールドが環状リングを備える、請求項1~14のいずれかに記載の磁気ギヤ式装置。
【請求項16】
前記磁束シールドが、前記環状リングを形成するように配列された複数の円周セグメントを備え、前記円周セグメントは、円周方向に互いに離間している、請求項14に記載の磁気ギヤ式装置。
【請求項17】
前記固定子及び前記第2の移動子のうちの前記もう一方が、複数の第2の永久磁石を備える、請求項1~16のいずれかに記載の磁気ギヤ式装置。
【請求項18】
前記固定子が複数の巻線を備え、前記第2の移動子は、前記固定子と前記第1の移動子との間に位置しており、前記複数の磁極片を備える、請求項1~16のいずれかに記載の磁気ギヤ式装置。
【請求項19】
前記固定子は、複数の第2の永久磁石を更に備える、請求項18に記載の磁気ギヤ式装置。
【請求項20】
前記複数の第2の永久磁石は、前記複数の巻線と前記第2の移動子との間に配列されている、請求項19に記載の磁気ギヤ式装置。
【請求項21】
前記磁束シールドは、前記複数の第1の永久磁石の第1の軸方向端部から軸方向に離間している第1の磁性シールドと、前記複数の第2の永久磁石の第2の軸方向端部から軸方向に離間している第2の磁束シールドと、を備える、請求項1~20のいずれかに記載の磁気ギヤ式装置。
【請求項22】
前記複数の第1の永久磁石は、前記第1の永久磁石の各々が事前定義された弧長さを占めるように円周方向に配列されており、前記磁束シールドは、前記第1の永久磁石から、前記弧長さの10分の1から2分の1の距離だけ軸方向に離間している、請求項1~21のいずれかに記載の磁気ギヤ式装置。
【請求項23】
磁気ギヤ式装置であって、
複数の第1の永久磁石を備える第1の回転子と、
固定子と、
前記第1の回転子と前記固定子との間に配置された第2の回転子であって、前記第2の回転子が磁極片支持構造を備え、前記磁極片支持構造は、壁領域及び磁極片領域を備え、前記磁極片領域に複数の磁極片が結合されている、第2の回転子と、を備え、
前記第1の回転子、前記固定子及び前記第2の回転子は、シャフトの周りに同心円状に配列されており、前記磁極片支持構造の少なくとも1つの壁領域は、前記複数の第1の永久磁石から前記少なくとも1つの壁領域への軸方向の磁束漏れを最小限に抑えるように、前記複数の第1の永久磁石から軸方向に離間している、
磁気ギヤ式装置。
【請求項24】
同心円状に配列された磁気的に相互作用する構成要素を備える磁気ギヤ式装置用の回転子であって、前記回転子が、
支持構造と、
前記支持構造に結合された複数の永久磁石と、
前記支持構造に結合された磁束シールドであって、前記磁束シールドは、前記複数の永久磁石と軸方向に整列しており、更に、非磁性領域によって、前記複数の永久磁石から軸方向に離間している、磁束シールドと、
を備える、回転子。
【請求項25】
軸方向に整列している磁気的に相互作用する構成要素を備える磁気ギヤ式装置用の回転子であって、前記回転子が、
支持構造と、
前記支持構造に結合された複数の永久磁石と、
前記支持構造に結合された磁束シールドであって、前記磁束シールドは、前記複数の永久磁石と半径方向に整列しており、更に、非磁性領域によって、前記複数の永久磁石から半径方向に離間している、磁束シールドと、
を備える、回転子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、磁気ギヤ式装置(magnetically geared apparatus)及び磁気ギヤ式装置のための回転子に関する。
【背景技術】
【0002】
機械的接触なしに2つ以上の可動構成要素の間でトルクを伝達するための磁気ギヤ式装置が知られている。磁気ギヤ式装置は、機械ギヤ式装置(mechanically geared apparatus)に勝る多くの利点がある。例えば、磁気ギヤ式装置では、摩擦損失が最小限に抑えられる。したがって、磁気ギヤ式装置は、機械ギヤ式装置よりもエネルギー効率が高い。このような磁気ギヤ式装置の2つの例を図1aから図2bに示す。
【0003】
図1a及び図1bは、外側固定子102と、第1の(内側)回転子104と、固定子102と第1の回転子104との間に半径方向に配置された第2の(中間)回転子106と、を含む磁気ギヤ式装置100を示している。固定子102は、円周方向に配列された複数の導電性の巻線108を備え、第1の回転子104は、円周方向に配列された複数の永久磁石110を備え、第2の回転子106は、円周方向に配列された複数の未磁化の強磁性(典型的にはスチール)磁極片112を備えている。第1の回転子104は、入力シャフト118aを介して内燃エンジン114に接続され、第2の回転子106は、出力シャフト118が第2の回転子106によって駆動されるように、出力シャフト118bに接続されている。第1の回転子104、第2の回転子106及び固定子102は、ケーシング(図1には示されていない)内に収容され得る。永久磁石110は第1の磁場を発生させ、巻線108は、電流が供給されると、同様に第2の磁場を発生させる。巻線108に供給される電流を調整することによって、第2の磁場の特性を制御することができる。結果として生じる磁場は、第1の磁場と磁極片112との間の相互作用によって生成される。この結果として生じる磁場は、巻線108によって生成される第2の磁場と結合して、トルク及び第1の回転子104と第2の回転子106との間のギヤ式相互作用(geared interaction)を生成する。図1の装置は、内燃エンジン114、巻線108に電気入力を供給するバッテリ、又はこれら2つの組み合わせを使用して出力シャフト118bを駆動する能力のための、動力分割デバイスとして有用である。更に、図1a及び図1bの装置は、ギヤ式ハイブリッド変速機として使用でき、したがって、従来の機械式ギヤボックスが省略される。
【0004】
図2a及び図2bは、磁気ギヤ式装置200を示している。装置100と共通する構成要素には、同様の参照番号が使用される。図を見ると分かるように、図2の磁気ギヤ式装置200は、図1a及び図1bの装置と類似している。しかしながら、固定子102は、円周方向に配列された複数の第2の永久磁石120(複数の第1の永久磁石110とは異なる)を更に含む。更に、入力シャフトは、第1の回転子104に接続されていない。固定子102、第1の回転子104、第2の回転子106を封入するケーシング122が図示されている。図1a~図1bの装置100と同様に、第2の回転子106は、出力シャフト118に機械的に結合されており、出力シャフト118を駆動する。ケーシング122、固定子102、及び第1の回転子104は、ベアリング124によって出力シャフト118に接続されており、それによって、出力シャフト118はこれらの構成要素に対して回転可能である。この配列は、運転モード又は発電モードのいずれかと組み合わせてギヤ式トルク伝達を可能にすることによって、磁気ギヤ及び一般的な電気機械の機能を組み合わせる。第1の回転子104上の第1の永久磁石110によって第1の磁場が発生し、固定子102上の第2の永久磁石120によって第2の磁場が発生する。磁極片112は、第1の磁場と第2の磁場との間の相互作用を調整する。固定子の巻線に3相の120度変位電流が供給されると、装置200内に回転磁場が生じる。この回転磁場は、第1の永久磁石110により発生した第1の磁場と同じ数の極対を有し得る。回転磁場と第1の磁場とは磁極片を介して互いに直接結合し、それにより、第1の回転子104の回転と第2の回転子106の回転とは、巻線108に供給される電流と電気機械的に結合される。第2の回転子106は第1の回転子104よりも低速で回転する。したがって、図示のように出力シャフトを第2の回転子106に接続することによって、非常に高いトルク能力を持つ高効率のモータ発電機が実現される。更に、図2a及び図2bの装置は、ギヤードモータ/発電機として使用でき、したがって、従来の機械式ギヤボックスが省略される。
【0005】
図1b及び図2bに示すように、磁気ギヤ式装置が高トルクモータ/発電機200として構成される場合、含まれる第1の磁石110の数は、磁気ギヤ式装置を動力分割デバイス100として構成されるときよりも少なくなり得る。当業者には理解されるように、第1の永久磁石の具体的な数は、アプリケーションによって異なる。
【0006】
磁気ギヤ式装置の別の例は、磁気ギヤである。典型的な磁気ギヤは、複数の第1の永久磁石を備える内側回転子と、複数の第2の永久磁石を備える外側回転子と、第1の回転子と第2の回転子との間に径方向に配置され、複数の磁極片を備える磁極片回転子戸を含む。複数の第1の永久磁石は第1の磁場を生成し、複数の第2の永久磁石は第2の磁場を生成する。磁極片は、第1の磁場と第2の磁場との間の相互作用を変調し、それによって、内側回転子と外側回転子との間のギヤによる相互作用を生成する。したがって、図2A及び図2Bの配列との主な違いは、巻線が存在せず、複数の第2の永久磁石が固定子ではなく回転子に装着されていることである。内側回転子を第1の(例えば、入力)シャフトに取り付け、外側回転子を第2の(例えば、出力)シャフトに取り付けることによって、磁気ギヤが生成される。
【0007】
しかしながら、上記段落の例のうちのいずれかに記載されているような磁気ギヤ式装置の問題は、浮遊磁束が、装置の様々な導電性構成要素内の望まれない渦電流の形成を引き起こし得ることである。このような渦電流は、オーム加熱に起因するエネルギー損失を引き起こし、次いで、効率を低下させる。この問題は、関与する磁場が実質的であり、したがって、装置の望まれない構成要素へとより浮遊しやすい、大きなトルクの適用例では悪化する。更に、重量及びサイズの低減が望まれるので、よりコンパクトな磁気ギヤ式装置の設計が追求されている。また、小型化が進むことによって、有益なことに、構造の剛性が高くなる。しかしながら、小型化を進めると、装置の構成要素間の間隔が小さくなるので、同時に浮遊磁束の問題が悪化する。したがって、このような磁気ギヤ式装置における浮遊磁束を効果的に制御する必要がある。
【発明の概要】
【0008】
第1の態様では、磁気ギヤ式装置であって、
複数の第1の永久磁石を備える第1の移動子と、
固定子と、
第2の移動子と、
磁束を減衰させるために、複数の第1の永久磁石と整列している磁束シールドと、備え、
固定子及び第2の移動子のうちの一方が、複数の磁極片を備え、第1の移動子と固定子及び第2の移動子のうちのもう一方との間に配置され、
第1の移動子、固定子及び第2の移動子が、第1の方向に整列しており、磁束シールドは、非磁性領域によって、複数の第1の永久磁石から、第1の方向に垂直な第2の方向に離間しており、それにより、第2の方向の磁束を減衰させる、磁気ギヤ式装置が提供される。
【0009】
固定子及び第2の移動子のうちのもう一方は、複数の第2の永久磁石を備える。この場合、本装置は、磁気ギヤを構成し得る。
【0010】
固定子は、複数の巻線を備えてもよく、任意選択で、複数の第2の永久磁石も備え得る。このような例では、第2の移動子は、磁極片を備えてもよく、固定子と第1の移動子との間に配置され得る。固定子が、複数の巻線と複数の第2の永久磁石の両方を備える場合、装置はモータ/発電機を構成し得る。固定子が複数の巻線のみを備える場合、装置は動力分割デバイスを構成し得る。固定子が複数の永久磁石と複数の巻線とを備える場合、複数の第2の永久磁石は、巻線と第2の移動子との間に配列され得る。
【0011】
読者には理解されるように、移動子は、回転子又は並進子のいずれかとすることができる。すなわち、移動子は、固定子に対して回転すること、固定子に対して実質的に軸方向に平行移動することのいずれかが可能である。以下の説明の各項及び添付図面を読むと読者には理解されるように、本発明は、半径方向に配列され、かつ軸方向に配列された磁気ギヤ式装置(移動子が回転子を構成する)、並びに線形に配列された磁気ギヤ式装置(移動子が並進子を構成する)に適用可能である。以下の説明では、簡潔性及び一貫性のために「回転子」という単語を全般的に使用する。しかしながら、読者には理解されるように、並進子は回転子に代えて等価に使用することができ(その逆も同様)、したがって、本明細書に開示する概念は、いずれのタイプの移動子にも等価に当てはまる。
【0012】
第2の態様では、同心円状に配列された磁気的に相互作用する構成要素を備える磁気ギヤ式装置用の回転子であって、回転子が、
支持構造(例えば、永久磁石支持構造)と、
支持構造に結合された複数の永久磁石(例えば、第1の永久磁石)と、
支持構造に結合された磁束シールドであって、磁束シールドは、複数の永久磁石と軸方向に整列しており、更に、非磁性領域によって、複数の永久磁石から軸方向に離間している、磁束シールドと、を備える、回転子が提供される。
【0013】
第3の態様では、軸方向に離間している磁気的に相互作用する構成要素を備える磁気ギヤ式装置用の回転子であって、回転子が、
支持構造と、
支持構造に結合された複数の永久磁石と、
支持構造に結合された磁束シールドであって、磁束シールドは、複数の永久磁石と半径方向に整列しており、更に、非磁性領域によって、複数の永久磁石から半径方向に離間している、磁束シールドと、を備える、回転子が提供される。
【0014】
上述のような磁束シールドを含むことによって、第1の永久磁石からの望まれない磁束漏れは、同様に第1の永久磁石と整列されている磁気ギヤ式装置の構成要素内の望まれない渦電流を回避するように減衰又は方向転換される。これによって、オーム損失が低減される。更に、磁束シールドは、第1の永久磁石から離間しているので、第1の永久磁石と磁束シールドとの間の磁気短絡が防止又は低減される。このような短絡は、磁束シールドが磁束漏れを効果的に低減するのを妨げ、漏れ方向に磁束をアクティブに引き込み、したがって、性能を低下させることさえあり得る。
【0015】
更に、固定子、第1の回転子及び第2の回転子が同心円状に配列されている(すなわち、互いに半径方向に整列している)場合、磁束シールドは、軸方向の磁束を減衰し、半径方向の磁束強化するように、第1の永久磁石から軸方向に離間している。それによって、浮遊軸方向磁束による問題となる渦電流を低減しながら、半径方向に整列している固定子と第1の回転子と第2の回転子と間の磁気結合が強化される。同様に、固定子、第1の回転子及び第2の回転子が軸方向に整列している場合、磁束シールドは、半径方向の磁束を減衰し、軸方向の磁束を強化するように、第1の永久磁石から半径方向に離間している。それによって、浮遊半径方向磁束による問題となる渦電流を低減しながら、軸方向に整列している固定子と第1の回転子と第2の回転子と間の磁気結合が強化される。
【0016】
例えば、第1の方向は半径方向であってもよく(固定子、第1の回転子及び第2の回転子が、同心円状に配列され得る)、第2の方向は軸方向であってもよい。代替的には、第1の方向が軸方向であってもよく、第2の方向が半径方向であってもよい。
【0017】
本開示において、材料又は領域が非磁性であると言われる場合、その材料又は領域は強磁性ではないと理解すべきである。非磁性領域は、空気と同様の透磁率を有し得る。例えば、非磁性領域の相対透磁率は、実質的に1であり得る。したがって、非磁性領域は、実質的に磁化不可能である。これは、(例えば、複数の第1の永久磁石からの)大きな外部磁場を受けた場合であっても、その領域が磁束経路として機能しないことを保証するのに役立つ。
【0018】
非磁性領域は、電気絶縁性であり得る(例えば、電気絶縁体を備え得る)。これは更に、非磁性領域における損失の多い渦電流の形成を防止することによって、エネルギー効率の向上に役立ち得る。
【0019】
磁束シールドは、磁束(例えば、浮遊磁束)を減衰及び/又は方向転換するように配列された構造を備え得る。
【0020】
磁束シールドは、導体を備え得る。例えば、磁束シールドは銅を含んでもよい。銅は非磁性材料であるが、時間変動する磁場(第1の回転子と第2の回転子とが互いに異なる速度で回転することによって引き起こされる、時間変動する磁場など)を受ける場合、渦電流をサポートする。誘導された渦電流は、(レンツの法則にしたがって)渦電流を引き起こした磁場とは反対の、渦電流自体の磁場を生成する。つまり、銅製の磁束シールドを使用すると、永久磁石からのいかなる浮遊磁束も減衰される。更に、銅の電気抵抗は比較的低いので、内部のオーム損失は高くはならない。
【0021】
磁束シールドは、未磁化の磁化可能な材料(例えば、未磁化の強磁性材料)を備え得る。例えば、磁束シールドはスチールを含んでもよい。磁束シールドは、未磁化の磁化可能材料を含んでいる場合、円周方向、半径方向、及び軸方向のうちの1つにラミネートすることができる。加えて、又は代替的に、軟磁性複合材料「SMC(soft magnetic composite)」を含んでもよい。SMCは、電気絶縁フィルム中に埋め込まれた強磁性粉末を含む。ラミネート又はSMCを使用すると、使用しない場合に問題のあるオーム損失につながる磁束シールドにおける渦電流を低減するのに役立ち得る。
【0022】
磁束シールドは、未磁化の磁化可能料を含む場合、渦電流を低減するように成形され得る。例えば、磁束シールドは内部に円周方向又は径方向のスリットを備えてもよい。磁束シールドは、半径方向に、面取りされた又は丸みを帯びたプロファイルを有し得る。磁束シールドは、内部に形成された貫通孔を有してもよい。
【0023】
磁束シールドは、第1の回転子及び第2の回転子の各々から電気的に絶縁され得る。すなわち、磁束シールドは、第1の回転子及び第2の回転子のうちの一方に、それらの間に絶縁材料がある状態で取り付けられ得る。絶縁材料は、いくつかの例では、非導電性接着剤を含み得る。
【0024】
非磁性領域は、エアギャップを備え得る。代替的には、非磁性領域は、ガラス繊維、炭素繊維、エンジニアリングプラスチック、又は木材などのスペーサを備えてもよい。これらの全ての材料の相対透磁率は、実質的に1である。いくつかの例では、第1の永久磁石の各々は、それぞれ対応するスペーサセグメントによって磁束シールドから離間され得る。空気と同様の透磁率を有する非磁性スペーサを提供することにより、望まれない浮遊方向に移動するいかなる磁束も磁束シールドが方向転換又は減衰することを可能にすると同時に、望まれない浮遊方向に磁束が引かれることを防止する。エアギャップではなくスペーサを使用することによって、スペーサに磁束シールドを装着することができるので構造が単純化され得る。
【0025】
第1の回転子、固定子及び第2の回転子の各々は、シャフト(例えば、回転可能なシャフト、あるいは、回転子の代わりに並進子が使用される場合には、並進可能なシャフト)の周りに配列され得る。第1の回転子及び第2の回転子のうちの一方は、シャフトに機械的に結合され得る。例えば、第1の回転子及び第2の回転子のうちの一方は、シャフトを駆動するように構成され得る。シャフトは、固定子並びに第1の回転子及び第2の回転子のうちのもう一方に対して移動するように構成され得る。例えば、固定子並びに第1の回転子及び第2の回転子のうちのもう一方は、ベアリングを介してシャフトに結合され得る。
【0026】
第1の回転子、固定子及び第2の回転子は、回転可能なシャフトの周りに実質的に同心円状に配列され得る。第2の回転子は、回転可能なシャフトに回転的に結合され得る。例えば、第2の回転子は、回転可能なシャフトを駆動するように構成され得る。回転可能なシャフトは、固定子及び第1の回転子に対して回転するように構成され得る。例えば、回転可能なシャフトは、固定子及び第1の回転子の回転を引き起こすことなくシャフトが回転できるように、ベアリングを介して、固定子及び第1の回転子に結合され得る。
【0027】
代替的には、第1の回転子、固定子及び第2の回転子は、シャフトの周りに配列され、互いに軸方向に整列して(すなわち、回転可能なシャフトに平行な方向に整列して)いてもよい。例えば、固定子は、第1の回転子から軸方向に離間していてもよく、第2の回転子は、固定子と第1の回転子との間に軸方向に配置され得る。第2の回転子は、回転可能なシャフトに回転的に結合され得る。例えば、第2の回転子は、回転可能なシャフトを駆動するように構成され得る。回転可能なシャフトは、固定子及び第1の回転子の回転を引き起こすことなく回転可能なシャフトが回転できるように、ベアリングを介して、固定子及び第1の回転子に結合され得る。
【0028】
代替的には、第1の態様の移動子が並進子を備える場合、第1の並進子、固定子及び第2の並進子は、並進可能なシャフトの周りに配列され得る。例えば、第1の並進子、固定子及び第2の回転子は、並進可能なシャフトの周りに実質的に同心円状に配列され得る。第1の並進子及び第2の並進子の各々が、固定子に対して並進可能であり得る。第1の並進子は、並進可能なシャフトの並進を駆動するように、並進可能なシャフトに結合され得る。
【0029】
また、上記の例の各々は、更なるシャフトを備えてもよく、第1の回転子/並進子は、更なるシャフトの移動を駆動するように、更なるシャフトに固定される。更なるシャフトは、第2の回転子/並進子及び固定子に対して移動するように構成され得る。
【0030】
複数の第1の永久磁石は、円周方向に配列され得る。同様に、複数の磁極片は、円周方向に配列され得る。同様に、複数の巻線は、円周方向に配列され得る。第1の永久磁石の各々は、第1の回転子の外周の周りに事前定義された弧長さを占めてもよく、磁束シールドは、第1の永久磁石から、事前定義された弧長さの10分の1から2分の1の距離だけ離間し得る。発明者らは、この離間距離が性能及び効率を最適化し得ることを発見した。任意のより小さい離間距離である場合は、磁束は、第1の永久磁石から磁束シールドへと励起され、機械の性能が低下し得る。任意のより大きい離間距離である場合、磁束シールドと第2の回転子との間には小さい空間しかなく、磁束シールドから第2の回転子への磁束の漏れを引き起こし得る。
【0031】
第2の回転子は、回転可能なシャフトに機械的に結合された磁極片支持構造を備え得る。磁極片は、磁極片支持構造に結合され得る。磁極片支持構造は、導体であってもよい。例えば、磁極片支持構造は、金属を含んでもよい。例えば、磁極片支持構造は、金属で形成されていてもよい。磁束シールドは、複数の第1の永久磁石と磁極片支持構造との間に軸方向に位置し、それによって、軸方向の磁束が磁極片支持構造へと漏れることを防止し得る。それによって、磁極片構造における渦電流及びオーム損失が低減又は防止され得る。
【0032】
磁極片支持構造は、第2の回転子の第1の軸方向端部にある第1の支持部材と、任意選択で、第2の回転子の第2の軸方向端部にある第2の支持部材と、任意選択で、第1の支持部材と第2の支持部材との間に軸方向にある第3の支持部材と、を備え得る。支持部材の各々は、中心で回転可能なシャフトに接続されたディスク、又は回転可能なシャフトから半径方向に延びる複数のスポークを備え得る。装置は、複数の磁束シールドを備えてもよく、各磁束シールドは、第1の磁極片と支持部材のうちのそれぞれ対応する支持部材との間に軸方向に位置している。
【0033】
装置又は回転子は、第1の永久磁石の第1の軸方向端部から軸方向に離間している第1の磁性シールドを備えてもよく、かつ/又は、第1の永久磁石の第2の軸方向端部から軸方向に離間している第2の磁束シールドを備えてもよい。磁極片支持構造が第3の支持部材も備える場合、装置は、第3の支持部材の第1の側部から軸方向に離間している第3の磁束シールドと、第3の支持部材の第2の側部から軸方向に離間している第4の磁束シールドと、を更に備える。
【0034】
いくつかの例では、各磁束シールドは、第1の永久磁石と軸方向に整列し、第1の永久磁石から軸方向に離間するように、支持部材のうちのそれぞれ対応する支持部材に取り付けられ得る。各磁束シールドとそれぞれ対応する支持部材との間には、非磁性の電気絶縁性スペーサが提供され得る。
【0035】
複数の磁極片は、複数の磁極片が支持部材(単数又は複数)から軸方向に離間するように、非磁性の(かつ任意選択で、電気絶縁性の)磁極片スペーサを介して、支持部材(単数又は複数)に結合され得る。磁極片の各々は、それぞれ対応する磁極片スペーサによって支持部材(単数又は複数)から軸方向に離間していてもよい。これは、磁極片と磁束シールドとの間の間隙を大きくし、磁束のための経路のリラクタンスを増加させる働きをし、したがって、シールドの磁束密度が低減することによって、磁束シールドが向上する。非磁性の磁極片スペーサは、第1の態様のスペーサと同じ材料を含み得る。例えば、非磁性の磁極片スペーサは、ガラス繊維、炭素繊維、エンジニアリングプラスチック、又は木材を含み得る。
【0036】
第1の回転子、固定子及び第2の回転子は、ケーシング内に収容され得る。ケーシングは、金属、例えば、スチール又はアルミニウムであり得る。磁束シールドは、複数の第1の永久磁石とケーシングとの間に軸方向に位置し得る。したがって、ケーシングにおける渦電流、したがってオーム損失は、それにより低減され得る、又は防止され得る。
【0037】
第1の回転子は永久磁石支持構造を備え得る。第1の永久磁石は、永久磁石支持構造に結合され得る。磁束シールドは、永久磁石支持構造に結合され得る。例えば、磁束シールドは、永久磁石支持構造と、それらの間に非磁性領域がある状態で結合され得る。
【0038】
磁束シールドは、第1の永久磁石からの軸方向の磁束漏れ経路と一致するように配列され得る。例えば、スペーサの半径方向外縁を少なくとも部分的に取り囲むように配置され得る。
【0039】
磁束シールドは、複数の第1の永久磁石と軸方向に整列するように配列された環状リングを備え得る。磁束シールドは、環状リングを形成するように配列された複数の円周セグメントを備え得る。円周セグメントは、例えば、小さなエアギャップによって、互いに円周方向に離間していてもよい。したがって、渦電流は更に低減され得る。
【0040】
固定子は、巻線と第2の回転子との間に配列された複数の第2の永久磁石を更に備え得る。複数の第2の永久磁石は、固定子に、例えば固定子の内面に装着され得る。
【0041】
磁束シールドは、面取りされた半径方向内面及び面取りされた半径方向外面を備え得る。代替的には、磁束シールドは、丸みを帯びた断面プロファイルを有してもよい。いくつかの例では、磁束シールドは、スペーサの半径方向外縁に少なくとも部分的に沿って延びていてもよい。これらの配列は更に、軸方向浮遊磁束を方向転換して第1の永久磁石及び磁極片に戻すのに役立つことができ、それによって、オーム損失が低減される。
【0042】
第1の永久磁石は、第1の永久磁石の各々が半径方向内縁よりも半径方向外縁において軸方向に短くなるように面取りされていてもよい。磁極片は、第1の永久磁石の各々が、半径方向外縁よりも、半径方向内縁において軸方向に短くなるように面取りされていてもよい。これは、第1の永久磁石の半径方向外縁と磁極片の半径方向外縁との間の磁束経路のリラクタンスを増加させるのに役立つことができ、これは、軸方向浮遊磁束を時間的に低減するのに役立ち得る。
【0043】
また、本明細書では、磁気ギヤ式装置であって、
複数の第1の永久磁石を備える第1の回転子と、
固定子と、
第1の回転子と固定子との間に配置された第2の回転子であって、第2の回転子が磁極片支持構造を備え、磁極片支持構造は、壁領域及び磁極片領域を備え、磁極片領域に複数の磁極片が結合されている、第2の回転子と、を備え、
第1の回転子、固定子及び第2の回転子は、シャフトの周りに同心円状に配列されており、磁極片支持構造の少なくとも1つの壁領域は、複数の第1の永久磁石から少なくとも1つの壁領域への軸方向の磁束漏れを最小限に抑えるように、複数の第1の永久磁石から軸方向に離間している、磁気ギヤ式装置も開示する。
【0044】
磁極片支持構造は、エアギャップによって、複数の第1の永久磁石から軸方向に離間していてもよい。
【0045】
第1の永久磁石の各々が、第1の回転子の外周の周りに事前定義された弧長さを占める場合、磁束シールドは、第1の永久磁石から、事前定義された弧長さの10分の1から2分の1の距離だけ離間し得る。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1a】先行技術による第1の磁気ギヤ式装置を概略的に示す。
図1b】軸方向A-Aに沿って見た、図1aによる磁気ギヤ式装置を示す。
図2a】先行技術による第2の磁気ギヤ式装置を概略的に示す。
図2b】軸方向A-Aに沿って見た、図2aによる磁気ギヤ式装置を示す。
図3a】本開示による第2の磁気ギヤ式装置を示す。
図3b図3aによる第2の磁気ギヤ式装置の変形形態を示す。
図4】本開示による第3の磁気ギヤ式装置を示す。
図5】本開示による第4の磁気ギヤ式装置を示す。
図6】本開示による第5の磁気ギヤ式装置を示す。
図7】本開示による第6の磁気ギヤ式装置を示す。
図8a】本開示による第7の磁気ギヤ式装置を示す。
図8b図8aの磁気ギヤ式装置の変形形態を示す。
図9】本開示による第8の磁気ギヤ式装置を示す。
図10】本開示による第9の磁気ギヤ式装置を示す。
図11】本開示による第10の磁気ギヤ式装置を示す。
図12】本開示による第11の磁気ギヤ式装置を示す。
図13】本開示による回転子を示す。
図14】本開示による磁気ギヤ式装置内における軸方向の磁束漏れの例示図を示す。
図15】(a)は、先行技術による磁気ギヤ式装置内の支持部材における磁束密度を示し、(b)は、本開示による磁気ギヤ式装置内の支持部材における磁束密度を示す。
図16a】本開示の例のうちのいずれかにおいて使用するため磁束シールド構造を示す。
図16b】本開示の例のうちのいずれかにおいて使用するため磁束シールド構造を示す。
図16c】本開示の例のうちのいずれかにおいて使用するため磁束シールド構造を示す。
図16d】本開示の例のうちのいずれかにおいて使用するため磁束シールド構造を示す。
図17】本開示による、軸方向に配列された第1の磁気ギヤ式装置を示す。
図18】本開示による、軸方向に配列された第2の磁気ギヤ式装置を示す。
図19】本開示による、軸方向に配列された第3の磁気ギヤ式装置を示す。
図20】本開示による、線形の磁気ギヤ式装置を示す。
図21】本開示による第1の磁気ギヤを示す。
図22】本開示による第2の磁気ギヤを示す。
図23】本開示による第3の磁気ギヤを示す。
図24】本開示による第4の磁気ギヤを示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図面において、同様の構成要素には、同様の参照番号が使用される。
【0048】
本明細書で、「軸方向(axial direction)」とは、図1a及び図2aに示される方向A-Aを指す。2つの構成要素は、「軸方向に整列している(axially aligned)」と言われる場合、互いに軸A-Aに平行な方向に整列している。同様に、2つの構成要素が「互いに軸方向に離間している(axially spaced from one another)」と言われる場合、それらの間には、軸A-Aに平行な方向に間隙がある。「半径方向(radial direction)」は、軸A-Aに垂直であることを定義する。「円周方向(circumferential direction)」は、軸A-Aと同心円状であることを定義する。
【0049】
図1aを参照すると、第1の磁気ギヤ式装置100の第2の回転子106は、磁極片112が、磁極片112の第1の軸方向端部にある単一のスチール支持部材126を含む磁極片支持構造によって支持される「オープンカップ(open cup)」構成を有する。磁極片112の第2の軸方向端部は支持部材がない。スチールは剛性が高いので支持部材として使用され、それによって、第2の回転子106の変形が防止される。
【0050】
対照的に、図2aを参照すると、第2の磁気ギヤ式装置200の第2の回転子106は、磁極片112が、磁極片112の第1の軸方向端部にある第1のスチール支持部材126a(本明細書では、壁領域と呼ばれることもある)と、磁極片112の第2の軸方向端部にある第2のスチール支持部材126b(本明細書では、壁領域と呼ばれることもある)と、を含む磁極片支持構造によって支持される「クローズドカップ(closed cup)」構成を有することが分かる。壁領域の間に、磁極片112を備える磁極片領域が画定される。また、図2aには、アルミニウムケーシング122も示されている。ケーシング122の内面に固定子102が装着されている。ケーシング122は、装置200の可動構成要素を隠す。アルミニウムは軽量で耐久性があり、したがって、好適なケーシング材料である。
【0051】
読者には理解されるように、第1の磁気ギヤ式装置100が、図2aに示すようなクローズドカップ構成を有してもよく、第2の磁気ギヤ式装置200が、図1aに示すようなオープンカップ構成を有してもよい。更に、図1aには示されていないが、装置100もまた、アルミニウムケーシング122を含み得る。
【0052】
読者には理解されるように、複数の第2の永久磁石120を備える更なる回転子と固定子を置き換え、巻線を省略することによって、巻線を含まない、固定ギヤ比の磁気ギヤが形成される。これは、例えば、図4図7にも当てはまる。
【0053】
発明者らは、磁束が第1の永久磁石110の軸方向端部から軸方向に、かt、スチール支持部材(単数又は複数)126及びケーシング122へと浮遊し得ることを発見した。浮遊が起こると、これらの構成要素において渦電流が誘導され、これは、第1の磁気ギヤ式装置100及び第2の磁気ギヤ式装置200におけるオーム損失につながる。スチール支持部材(単数又は複数)は、渦電流を低減するように、フライス加工、ドリル加工、又は成形され得る。しかしながら、このようにすると、支持部材(単数又は複数)の構造的な剛性又は堅牢性に悪影響を及ぼす。スチールは、全体を通じて選択される金属として言及されているが、他の金属を使用してもよく、本明細書で開示する特徴は、浮遊軸方向磁束に起因して意図せずに渦電流が誘導され得る任意の磁気ギヤ式装置において使用するのに適している。
【0054】
本開示は、浮遊軸方向磁束の関するこの問題に対処する。図3図12の各々には、浮遊軸方向磁束が、スチール支持部材126(単数又は複数)又はアルミニウムケーシング122において渦電流を生じさせることを防止または低減するように、磁束シールドが配列されている、本開示による磁気ギヤ式装置が示されている。図13には、第1の磁気ギヤ式装置における第1の回転子104として使用するための、又は第2の磁気ギヤ式装置における第1の回転子104として使用するための、本開示よる回転子が開示されている。読者には理解されるように、本明細書に開示されている原理は、磁気ギヤ(例えば、以下で図21図24を参照)、磁気モータ/発電機(例えば、以下で図4図7及び図17図20を参照)、及び磁気動力分割デバイス(例えば、以下で図3a、図3b、図3cを参照)適用することができる。
【0055】
以下の例の各々において、磁束シールドは、接着剤、ボルト、リベット又はクリップによって、あるいは実際には任意の他の固定手段を使用して装置に取り付けることができる。読者には理解されるように、以下の例の各々における磁束シールドは、性能と効率を向上させるために、図1a~図1bによる第1の磁気ギヤ式装置100と組み合わせて使用しても、あるいは、図2a~図2bによる第2の磁気ギヤ式装置と組み合わせ使用してもよい。以下により詳細に記載するように、磁束シールド(又は各磁束シールド)は、非磁性の電気絶縁性領域によって第1の永久磁石から離間している。非磁性の電気絶縁性領域は、スペーサ構成要素であり得る(例えば、図3aのスペーサ304a、304bを参照)。代替的には、エアギャップであってもよい(例えば、図6を参照)。
【0056】
以下の例では、未磁化の軟磁性複合材料で磁束シールドが形成されている。ただし、いくつかの例では、ラミネートされたスチールシートで形成されていてもよい。他の例では、銅で形成されていてもよい。
【0057】
図3aは、本開示による第3の磁気ギヤ式装置300を示している。磁気ギヤ式装置300は、複数の第1の永久磁石110のみを含む。つまり、固定子に結合された複数の第2の永久磁石は含まない。したがって、図1a~図1bと同様に、動力分割デバイスとしての使用に特に適している。第3の磁気ギヤ式装置300は、第1の回転子104の第1の軸方向端部にある第1の環状磁束シールド302aと、第1の回転子104の第2の軸方向端部にある第2の環状磁束シールド302b、とを含む。磁束シールド302a、302bの各々は、第1の永久磁石110と軸方向に整列しており、それぞれ対応する環状スペーサ304a、304bによって、第1の永久磁石110から離間している。つまり、各スペーサ304a/304bは、第1の永久磁石110の軸方向端部と、それぞれ対応する磁束シールド302a/302bとの間に挟まれている。代替的な例では、各磁束シールド302a/302bは、スペーサの代わりに又はスペーサに加えて、それぞれ対応するエアギャップによって、第1の永久磁石110のそれぞれ対応する軸方向端部から離間していてもよい。
【0058】
磁束シールド302a、302bの位置及び材料に起因して、磁束シールド302a、302bは、第1の永久磁石110からの浮遊軸方向磁束線が、スチール支持部材126に到達することを低減又は実質的に防止し、更に、浮遊軸方向磁束線が金属ケーシング122に到達することを低減又は実質的に防止する。
【0059】
図3aでは、半径方向R及び軸方向Aとラベル付けされている。半径方向Rは、軸方向Aに垂直である。図を見ると分かるように、固定子102、第1の回転子104及び第2の回転子106は、同心円状に配列されている。つまり、それらは半径方向に整列している。一方、磁束シールド302aは、第1の永久磁石110と軸方向に整列しており、第1の永久磁石110から軸方向に離間している。したがって、磁束シールド302aは、軸方向に浮遊している磁束を減衰させ、半径方向に、すなわち、磁極片112及び固定子102に向かって半径方向に伝播するように磁束を励起する。
【0060】
図3aには、入力シャフト118a及び出力シャフト118bも示されている。入力シャフト118aは、入力シャフト118aが第1の回転子104を駆動するように、第1の回転子104に機械的に結合されている。出力シャフト118bは、第2の回転子が出力シャフト118bを駆動するように、第2の回転子106に機械的に結合されている。入力シャフト118aは、磁気ギヤ式装置300の第1の軸方向端部から延びており、出力シャフト118bは、磁気ギヤ式装置300の第2の軸方向端部から延びている。第2の回転子106はオープンカップ構造を有し、入力シャフト118aを収容するために第1の軸方向端部で開口している。第1の回転子104もまたオープンカップ構造を有し、出力シャフト118bを収容するために第2の軸方向端部で開口している。入力シャフト118aは、ベアリング124を介してケーシング122に結合されている。出力シャフト118bは、ベアリング124を介してケーシング122及び第1の回転子104に結合されている。第1の回転子104は、半径方向に最も内側の回転子である。第2の回転子106は、第1の回転子104と固定子102との間に半径方向に配列されている。
【0061】
第2の回転子106はオープン構造を有し、第1の軸方向端部で開口しており、単一の(第2の)スチール支持部材126bのみを含む。この配列がオープンカップ構造を画定する。このオープンカップ構造を理由に、第1の永久磁石110の第1の軸方向端部にある第1の磁束シールド302aは、浮遊軸方向磁束がケーシング122に到達することを防止するように作用する。第2の磁束シールド302bは、浮遊軸方向磁束がスチール支持部材126bに到達することを防止するように作用する。いくつかの例では、第1の永久磁石110と装置の第1の軸方向端部(すなわち、スチール支持部材126bから遠位にある端部)にあるケーシング122との間に十分に大きな間隙がある場合、第1の磁束シールド302aを省略してもよい。
【0062】
図3bは、図3aに示される磁気ギヤ式装置300の変形形態300’を示している。図3aと同様に、図3bの磁気ギヤ式装置300’は、入力シャフト118a及び出力シャフト118bを備える。入力シャフト118aは、入力シャフト118aが第1の回転子104’を駆動するように、第1の回転子104’に機械的に結合されている。出力シャフト118bは、第2の回転子106’が出力シャフト118bを駆動するように、第2の回転子106’に機械的に結合されている。実際には、出力シャフト118bは、第1のスチール支持部材126aに直接結合された中空シャフト118bを備える。入力シャフト118aと出力シャフト118bの両方が、磁気ギヤ式装置300’の同じ(第1の)軸方向端部から延びており、互いに同心円状である。入力シャフト118aは、中空の出力シャフト118b内に同心円状に配列されている。入力シャフト118aは、ベアリングを介してケーシング122及び第2の回転子106’に結合されている。出力シャフト118bは、ベアリングを介してケーシング122及び第1の回転子104’に結合されている。
【0063】
図4は、本開示による第4の磁気ギヤ式装置400を示している。磁気ギヤ式装置400は、複数の第1の永久磁石110と複数の第2の永久磁石120の両方を含む。したがって、図2a~図2bと同様に、高トルクモータ/発電機としての使用に特に適している。第4の磁気ギヤ式装置400は、第3の磁気ギヤ式装置300に含まれているものと同じ磁束シールド302a、302b及びスペーサ304a、304bを含む。図4の磁束シールド302a、302bは、図3a~図3cの磁束シールドと同じ利点を提供する。
【0064】
図5は、本開示による第5の磁気ギヤ式装置500を示している。第5の磁気ギヤ式装置500は、図4の第4の磁気ギヤ式装置400と同様であるが、複数の第1の永久磁石110は、サブ複数の永久磁石へと2つに分割される。したがって、第2の回転子106は、2つの半体へと分割され、第1の半体にある複数の第1の磁極片112aと、第2の反対にある複数の第2の磁極片112bとを備える。更に、第2の回転子106は、第1の半体の第1の軸方向端部に第1のスチール支持部材126aと、第2の半体の第2の軸方向端部にある第2のスチール支持部材126bと、第1の支持部材126aと第2の支持部材126bとの間に軸方向にある第3のスチール支持部材126cと、を備える。第3のスチール支持部材126cは、複数の第1の磁極片112aと複数の第2の磁極片112bの間に挟まれている。更に、複数の第1の永久磁石110は、第1の回転子104の第1の半体にある第1のサブ複数の第1の永久磁石110aと、第1の回転子104の第2の半体にある第2のサブ複数の第1の永久磁石110bとを備える。第2の回転子106の複数の第1の磁極片112aは、第1の回転子104の第1のサブ複数の永久磁石110aに対応しており(それらと半径方向に整列しており)、同様に、第2の回転子106の複数の第2の磁極片112bは、第1の回転子104の第2のサブ複数の永久磁石110bに対応している(それらと半径方向に整列している)。
【0065】
第1の回転子104は、第1のスペーサ304aによって、第1のサブ複数の永久磁石110aの第1の軸方向端部から軸方向に離間している第1の環状磁束シールド302aと、第2のスペーサ304bによって、第2のサブ複数の永久磁石110bの第2の軸方向端部から軸方向に離間している第2の環状磁束シールド302bと、第3のスペーサ304cによって、第1のサブ複数の第1の永久磁石110aの第2の軸方向端部から軸方向に離間している第3の環状磁束シールド302cと、第4のスペーサ304dによって、第2のサブ複数の第1の永久磁石110bの第1の軸方向端部から軸方向に離間している第4の環状磁束シールド302dと、を備える。したがって、第3の磁束シールド302c及び第4の磁束シールド302dは、軸方向磁束が、第3のスチール支持部材126cへの漏れることを低減又は実質的に防止し、第1の軸方向磁束シールド302aは、第1のスチール支持部材126aへの漏れを低減又は実質的に防止し、第2の軸方向磁束シールド302bは、第2のスチール支持部材126bへの漏れを低減又は実質的に防止する。
【0066】
図6は、本開示による第6の磁気ギヤ式装置600を示している。第6の磁気ギヤ式装置600は、第4の磁気ギヤ式装置400と同様であるが、スペーサ304a、304bは存在しない。したがって、第6の磁気ギヤ式装置600は、複数の第1の永久磁石110の第1の軸方向端部と整列し、そこから軸方向に離間している第1の環状磁束シールド302aと、複数の第1の永久磁石110の第2の軸方向端部と整列し、そこから軸方向に離間している第2の環状磁束シールド302bと、を含む。しかしながら、前述の例とは対照的に、複数の第1の永久磁石110と磁束シールド302a、302bの各々とのスペースには、代わりにエアギャップが含まれる。特に、第1の回転子104に取り付けられる代わりに、磁束シールド302a、302bは、第1の支持部材126a及び第2の支持部材126bのうちの対応する支持部材の内面に取り付けられ、エアギャップによって、複数の第1の永久磁石110から軸方向に離間している。したがって、複数の永久磁石の軸方向端部とそれぞれ対応する磁束シールドとの間に非磁性の電気絶縁性領域が提供される限り、スペーサは必ずしも必要ではないことが分かる。この領域は、前述のように、スペーサによって、エアギャップによって、又はこれら2つの組み合わせによって提供され得る。
【0067】
図7は、本開示による第7の磁気ギヤ式装置を示している。第7の磁気ギヤ式装置700は、図6の磁気ギヤ式装置600の軽微な変形形態を表している。特に、第7の磁気ギヤ式装置700内の第1の磁束シールド302aは、第1の支持部材126aに、それらの間に第1のスペーサ304aがある状態で取り付けられ、第7の磁気ギヤ式装置700内の第2の磁束スペーサ302bは、第2の支持部材126bに、それらの間に第2のスペーサ304bがある状態で取り付けられている。したがって、第1の磁束シールド302aは、エアギャップを備える電気絶縁領域によって複数の第1の永久磁石110から、かつ、第1のスペーサ304aによって第1の支持部材126aから軸方向に離間している。同様に、第2の磁束シールド302bは、エアギャップを備える電気絶縁領域によって複数の第1の永久磁石110から、かつ、第2のスペーサ304bによって第2の支持部材126bから軸方向に離間している。
【0068】
図3図7に示すように、磁束シールド302は、長方形の断面プロファイルを有し得る。しかしながら、図8a、図8b及び図9に示すように、磁束シールド302は長方形の断面プロファイルを有しなくてもよい。図8a、図8b、及び図9には、このような2つの長方形でない断面プロファイルが示されている。
【0069】
図8aの磁気ギヤ式装置800内の第1の磁束シールド302aは、第1の磁束シールド302aがその断面の半径方向中心において最も厚くなるように、実質的に三角形の断面を有する、具体的には、面取りされた半径方向内縁及び面取りされた半径方向外縁を有する。他の例では、第1の磁束シールド302aは、丸みを帯びた断面プロファイルを有し得る。例えば、図8bの磁気ギヤ式装置801では、第1の磁束シールド302aは、磁束シールド302aがその断面の半径方向中心において最も厚くなるように、湾曲したセグメントとして成形され得る。磁気ギヤ式装置の磁束漏れの経路に応じて、該当の断面プロファイルが選択され得る。図8aに示すような面取りされた断面プロファイル、又は図8bに示すような丸みを帯びた断面プロファイルは、軸方向浮遊磁束の大部分が第1の永久磁石110の各々の半径方向中点から延びる磁気ギヤ式装置において特に有用であり得る。このような例では、面取りされたプロファイル又は丸みを帯びたプロファイルは、渦電流を防止する、すなわち、磁極片支持部材におけるオーム損失を低減又は実質的に防止するのに更に役立ち得る。
【0070】
更に他の例では、磁束シールドは、内部に形成された、スリット、孔、ポケット、及び/又は溝を含み得る。スリットは、半径方向又は円周方向に形成され得る。このような特徴は、磁束シールド自体における、渦電流を防止する、すなわちオーム損失を低減するのに役立ち得る。これに関する詳細は、以下の図16A図16Dに示す。
【0071】
図9は、本開示による第9の磁気ギヤ式装置900を示している。図9の磁気ギヤ式装置900では、第1の磁束シールド302aは、第1のスペーサ304aの半径方向外縁に部分的に沿って延びている。したがって、複数の第1の永久磁石110の半径方向外縁から延びる少なくともいくつかの浮遊磁束線は、磁束シールドによって捕捉される。
【0072】
図8a、図8b及び図9には磁気ギヤ式装置800、900の第2の軸方向が示されていないが、これらの例の各々における磁気ギヤ式装置は、前述の例のように、第2の磁束シールド302b及び第2のスペーサ304bが含まれ得ることが読者には理解されよう。各例における第2の磁束シールド302b及び第2のスペーサ304bは、第1の磁束シールド302a及び第1のスペーサ304aと同じ断面プロファイルを有してもよく、あるいは、異なる断面プロファイルを有してもよい。
【0073】
図10の第10の磁気ギヤ式装置1000に示されるように、第1の非磁性の電気絶縁性磁極片スペーサ1002a(第1のスペーサ304aとは区別される)が、第1の支持部材126aと磁極片112との間に提供され得る。図10には示されていないが、第2の支持部材126bと磁極片112との間に、第2の非磁性の電気絶縁性磁極片スペーサ1002bを提供してもよい。これは、磁極片から第1の支持部材への磁束経路を破壊するのに役立ち、それによって、磁束シールドの効果が強化される。
【0074】
図11の第11の磁気ギヤ式装置1100に示されるように、複数の第1の永久磁石110は、第1の永久磁石の各々の半径方向外縁が、第1の永久磁石の各々の半径方向内縁よりも短くなるように、それらの第1の軸方向端部で面取りされ得る。有利なことに、これにより、磁極片112に最も近い経路のリラクタンスが増加する。スペーサ304aはくさび形であり、同様に、第1の永久磁石110の面取り部を占めて対応するように面取りされている。特に、スペーサ304aの半径方向内縁は、スペーサ304aの半径方向外縁よりも短い。図11には示されていないが、第2のスペーサ304bもくさび形であってもよく、第2のスペーサ304bの半径方向外縁は、半径方向内縁よりも長い軸方向長さを有する。
【0075】
図12は、本開示による第12の磁気ギヤ式装置1200を示している。第12の例の磁極片112は、複数の磁極片112の半径方向内縁が、その半径方向外縁よりも長い軸長さを有するように、面取りされている1202。加えて、半径方向外縁の長さは、複数の永久磁石110の半径方向外縁の長さと同様又は同じである。有利なことに、これにより、第1の永久磁石110に最も近い経路のリラクタンスが増加する。第1の支持部材126aは、磁極片112のテーパに適合するように、同様にテーパが付けられていてもよい。図12には示されていないが、磁極片112のうちの他方の軸方向端部も同様に面取りされ得る。
【0076】
図13は、第1の磁気ギヤ式装置100における第1の回転子104として使用するための、又は第2の磁気ギヤ式装置200における第1の回転子104として使用するための、本開示よる回転子104を示している。回転子104は、第1の永久磁石支持構造1300に装着されている、円周方向に配列された複数の第1の永久磁石110を含む。第1の永久磁石110の各々は、軸方向にラミネートされ、円周方向にセグメント化されている。図示の例では、第1の永久磁石110の各々は、6個の軸方向にラミネートされた円周セグメント110a~110fを含み、各セグメントは、軸方向にラミネートされた永久磁石110の軸方向列である。このようにして永久磁石を構成することによって、渦電流に起因する損失が最小限に抑えられる。第1の永久磁石110は、円周方向に互いに離間している。
【0077】
図13の回転子104は、前述の磁束シールド及び電気絶縁領域の概念を利用する。第1の環状磁束シールド302aは、第1の回転子104の第1の軸方向端部にボルト留め又は他の方法で取り付けられ、第2の環状磁束シールド302bは、第1の回転子104の第2の軸方向端部にボルト留め又は他の方法で取り付けられる。ボルトがスチールである場合、ボルトは、絶縁材料によって、例えば絶縁コーティング又はスペーサによって、磁束シールド302a、302bから電気的に絶縁され得る。スチールボルトは非磁性である。磁束シールド302a、302bの各々は、例えば、第1の回転子104と同じ直径を有し、円周方向に配列された第1の永久磁石110と軸方向に整列している環状リングを備える。磁束シールド302a、302bの各々は、複数の第1の永久磁石110の外径とほぼ一致する又はそれよりも大きい外径を有し、複数の第1の永久磁石110の内径とほぼ一致する内径を有する。いくつかの例では、磁束シールドは、複数の第1の永久磁石の外径から半径方向外向きに延び、かつ/又は、複数の第1の永久磁石の内径から半径方向内向きに突出し得る。
【0078】
磁束シールド302a、302bの各々は、円周方向にセグメント化されている。図示の例では、第1の永久磁石110の数は、磁束シールドセグメント1302の数と等しく、各磁束シールドセグメント1302は、第1の永久磁石110のうちの1つのそれぞれ対応する軸方向端部と軸方向に整列している。磁束シールドセグメント1302は、ボルト1304によって第1の回転子104に固定されている。磁束シールドセグメントは、構造を単純にするために、(小さな)エアギャップによって互いから離れている。加えて、磁束シールドが電気導体を備える場合、エアギャップは、磁束シールドにおける渦電流を低減するのに役立ち得る。
【0079】
第1の永久磁石110と第1の磁束シールド302aとの間に、電気絶縁性領域が、この場合は第1のスペーサ304aが配置される。第1の永久磁石110と第2の磁束シールド302bとの間に、別の電気絶縁性領域が、この場合は第2のスペーサ304bが配置される。磁束シールド302a、302bと同様に、第1のスペーサ304a及び第2のスペーサ304bは、円周方向にセグメント化されている。つまり、各磁束シールドセグメント1302とその対応する第1の永久磁石110との間に、それぞれ対応するスペーサセグメント1306がある。言い換えれば、各円周スペーサセグメント1306は、それぞれ対応する第1の永久磁石110と磁束シールドセグメント1302との対に挟まれている。スペーサセグメント1306もまた、ボルト1304によって第1の回転子に固定されている。
【0080】
図14は、磁束シールド302がどのように、複数の第1の永久磁石110の軸方向端部から延びる軸方向磁束線を妨害して、これらの磁束線を第1の永久磁石110及び磁極片112に向かって方向転換し、それによって、支持部材126に到達する軸方向磁束の量を実質的に低減するか、を示している。実際には、磁束シールド302は、永久磁石回転子に戻るように軸方向漏れ磁場のための磁気経路を提供し、周囲の構造に伝播する磁場の大きさを低減させる。これは、次に、周囲の構造における渦電流を低減する。
【0081】
図15の(a)は、図1又は図2による磁気ギヤ式装置内の支持部材126における磁束密度を示す。図15の(b)は、本開示による磁気ギヤ式装置内の支持部材126における磁束密度を示し、磁束シールド302を存在する。図を見ると分かるように、磁束シールド302が使用される場合、支持部材126における磁束密度が実質的に低減される。それによって、渦電流もまた低減される。
【0082】
上述したように、磁束シールドは、磁気ギヤ式装置内の損失を更に防止するために、スリット、孔及び/又はポケットを含み得る。これは、磁束シールドが銅などの導体を備える場合に特に重要であり得る。このような例では、磁束シールドにおける、オーム損失につながり得る渦電流がサポートされ得る。スリット、孔及び/又はポケットを含むことによって、任意のそのような電流は、磁束シールドを通る蛇行経路に従わなければならない。渦電流が移動しなければならない経路の長さが増大するので、オーム損失が低減される。
【0083】
図16aは、スリット、孔、又はポケットがない磁極片セグメント1600を示している。軸方向磁束Fに応答して、楕円形の渦電流経路1602を形成される。
【0084】
図16bは、ポケット1606が内部に形成されている磁極片セグメント1604を示している。ポケットは、磁束シールドセグメント1604全体に延びているわけでない。図示のように、ポケット1606の周りに渦電流経路1608が形成されている。
【0085】
図16cは、スリット1612a、1612bが内部に形成されている磁極片セグメント1610を示している。スリット1612aは、磁極片セグメント1610へと半径方向に延びている。スリット1612bは、磁極片セグメント1610へと円周方向に延びている。スリット1612a、1612bの周りに、渦電流経路1614が形成されている。
【0086】
図16dは、孔1622が貫通して形成されている磁極片セグメント1620を示している。孔1622は、セグメント1620を貫通して軸方向に延びている。スリット孔1622の周りに、渦電流経路1624、1626が形成されている。
【0087】
上記の例では、磁気装置の半径方向配列に注目してきた。しかし、読者には理解されるように、軸方向配列を代替的に使用してもよい。図17は、第1の軸方向配列を示し、図18は、第2の軸方向配列を示し、図19は、第3の軸方向配列を示している。図20は、半径方向配列を示しているが、装置は回転移動ではなく、線形軸方向移動するように構成されている。
【0088】
図17では、固定子102、第1の回転子104、及び第2の回転子106は各々、回転可能な出力シャフト118の周りに配列されている。しかしながら、前述の例のように互いに対して同心円状に配列されるのではなく、固定子102は、装置の第1の軸方向端部に向かって位置しており、第1の回転子104は、装置の第2の軸方向端部に向かって位置しており、第2の回転子106は、固定子102と第1の回転子104との間に軸方向に位置している。したがって、第1の回転子104、第2の回転子106、及び固定子102は軸方向に離れている。この配列では、軸方向磁束が望ましいが、半径方向磁束は望まれない。したがって、磁束シールド302は、複数の第1の永久磁石110とケーシング122との間に位置するように、複数の第1の永久磁石110と半径方向に整列している。磁束シールド302は、スペーサ304によって、複数の第1の永久磁石110から半径方向に離間している。しかしながら、読者には理解されるように、磁束シールド302は代替的には、エアギャップによって、複数の第1の永久磁石110から離間していてもよい。
【0089】
また、図17では、半径方向R及び軸方向Aとラベル付けされている。半径方向Rは、軸方向Aに垂直である。図を見ると分かるように、固定子102、第1の回転子104、及び第2の回転子106は、軸方向Aに互いに離間している。言い換えると、固定子102、第1の回転子104、及び第2の回転子106は、互いに軸方向Aに整列している。一方、磁束シールド302は、第1の永久磁石110と半径方向に整列しており、第1の永久磁石110から半径方向に離間している。したがって、磁束シールド302は、半径方向に浮遊している磁束を減衰させ、軸方向に、すなわち、磁極片112及び固定子102に向かって軸方向に伝播するように磁束を励起する。
【0090】
図18の第2の軸方向配列は、図17における軸方向配列の修正形態ある。この装置は、第1の軸方向端部にある第1の固定子部分102aと、第2の軸方向端部にある第2の固定子部分102bと、を含む固定子102を含む。第1の回転子104は、装置の軸方向中心に位置する。第2の回転子106は、複数の第1の磁極片112aが、第1の固定子部分102aと第1の回転子104との間に軸方向に配列されるように、かつ、複数の第2の磁極片112bが、第2の固定子部分102bと第1の回転子104との間に軸方向に配列されるように、配列される。磁極片支持部材126は、複数の第1の磁極片112aを複数の第2の磁極片112bと機械的に結合する。やはり、軸方向磁束が望ましいが、半径方向磁束は望まれない。したがって、磁束シールド302は、複数の第1の永久磁石110と磁極片支持部材126との間に位置するように、複数の第1の永久磁石110と半径方向に整列している。磁束シールド302は、スペーサ304によって、複数の第1の永久磁石110から半径方向に離間している。しかしながら、読者には理解されるように、磁束シールド302は代替的には、エアギャップによって、複数の第1の永久磁石110から離間していてもよい。
【0091】
読者には理解されるように、第2の固定子部分102b及び複数の第2の磁極片112bは、省略されてもよく、それ自体は必須ではない。
【0092】
図19の第3の軸方向配列は、図17における軸方向配列の代替修正形態ある。この装置は、第1の軸方向端部にある第1の永久磁石回転子104aと、第2の軸方向端部にある第2の永久磁石回転子104bと、を含む。固定子102は、装置の軸方向中心に位置する。第1の磁極片回転子106aは、複数の第1の磁極片112aが、第1の永久磁石回転子104aと固定子102との間に軸方向に配列されるように配列され、かつ、第2の磁極片回転子106bは、複数の第2の磁極片112bが、第2の永久磁石回転子104bと固定子102との間に軸方向に配列されるように、配列される。やはり、軸方向磁束が望ましいが、半径方向磁束は望まれない。したがって、第1の磁束シールド302aは、第1の回転子104aの永久磁石110と半径方向に整列しており、第2の磁束シールド302bは、第2の回転子104bの永久磁石110と半径方向に整列している。磁束シールド302a、302bは各々、それぞれ対応するスペーサ304a、304bによって、複数の第1の永久磁石110から半径方向に離間している。しかしながら、読者には理解されるように、各磁束シールド302a、302bは代替的には、それぞれ対応するエアギャップによって、複数の第1の永久磁石110から離間していてもよい。
【0093】
図20は、線形配列を示す。図20では、固定子102、第1の並進子104及び第2の並進子106は、固定子102が第1の並進子104から半径方向外側に位置するように、かつ、第2の並進子106が固定子102と第1の並進子104との間に半径方向に配列されるように、並進可能な出力シャフト118の周りに同心円状に配列される。図示のように、第2の並進子106は、出力シャフト118に結合されている。出力シャフト118、第1の並進子104及び第2の並進子106の各々は、固定子102に対して軸方向に並進するように構成される。巻線108は固定子102の周りにトロイダルに巻かれている。前述の例のように、第1の並進子104は、複数の第1の永久磁石110を備え、固定子102は、複数の第2の永久磁石120及び複数の巻線108を備え、第2の並進子106は、複数の磁極片112及び支持部材126a、126bを備える。この配列では、半径方向磁束が望ましく、軸方向磁束は望まれない。したがって、第1の磁束シールド302aは、複数の第1の永久磁石110と第1の支持部材126aとの間に位置するように、複数の第1の永久磁石110と軸方向に整列しており、第2の磁束シールド302bは、複数の第1の永久磁石110と第2の支持部材126bとの間に位置するように、複数の第1の永久磁石110と軸方向に整列している。磁束シールド302a、302bは各々、それぞれ対応するスペーサ304a、304bによって、複数の第1の永久磁石110から軸方向に離間している。しかしながら、読者には理解されるように、各磁束シールド302a、302bは代替的には、それぞれ対応するエアギャップによって、複数の第1の永久磁石110から離間していてもよい。
【0094】
図21は、本開示による第6の磁気ギヤ2100を示している。磁気ギヤ2100は、重要な1つの違いを除いて、図3aの磁気ギヤ300とほとんど点において同じである。特に、磁気ギヤ式装置300は、固定子102上に巻線108のみを備えるが、磁気ギヤ2100は、固定子102の第2の永久磁石120のみを備えている。図21の固定子102上に(巻線ではなく)第2の永久磁石120が存在することにより、装置2100は、動力分割装置としてではなく、磁気ギヤとしての使用に好適になり得る。
【0095】
同様に、図22は、磁気ギヤ2200を示しており、これは、重要な1つの違いを除いて、図3bの磁気ギヤ300’とほとんど点において同じである。特に、磁気ギヤ式装置300’は、固定子102上に巻線108のみを備えるが、磁気ギヤ2200は、固定子102の第2の永久磁石120のみを備えている。装置2200を動力分割装置としてではなく、磁気ギヤとしての使用に好適にするのは、図22の固定子102上に(巻線ではなく)第2の永久磁石120が存在することである。
【0096】
図23は、本開示による更なる磁気ギヤ2300を示している。磁気ギヤ2300では、磁極片112は、(次にケーシング122に結合される)固定子2302に装着され、複数の第2の永久磁石120は、第2の回転子2304に装着される。磁極片106を担持する固定子2302は、第1の回転子104と第2の回転子2304との間に位置する。第2の回転子2304は、第1の軸方向端部で開口しており、第2の軸方向端部にスチール支持部材2306を備える(つまり、オープンカップ構造を有する)。第1の回転子104は同様にオープンカップ構造を有し、第2の軸方向端部で開口している。第1の回転子104は、入力シャフト118aによって駆動されるように、入力シャフト118aに結合されている。第2の回転子2304は、出力シャフト118bを駆動するように、出力シャフト118bに結合されている。入力シャフト118aは、磁気ギヤ2300の第1の軸方向端部から延びている。第1の永久磁石110の第1の軸方向端部にある第1の磁束シールド302aは、浮遊軸方向磁束がケーシング122に到達することを防止するように作用する。第2の磁束シールド302bは、浮遊軸方向磁束がスチール支持部材2306に到達することを防止するように作用する。
【0097】
最後に、図24は、図23に示される磁気ギヤ2300の変形形態2400を示している。図23のように、第1の軸方向端部から延びる入力シャフト118a及び第2の軸方向から延びる出力シャフト118bを有するのでなく、図24の磁気ギヤ2400は、磁気ギヤ2400の第1の軸方向端部から両方とも延びる入力シャフト118a及び出力シャフト118bを有する。更に、第1の回転子104に機械的に結合されている入力シャフト118aは、中空の出力シャフト118bと同心円状に配列されている。中空の出力シャフト118bは、スチール支持部材2306に機械的に結合されている。
【0098】
「を備える(comprising)」という用語は、「を含むが、これに限定されない(including but not limited to)」という意味と解釈すべきであり、したがって、列挙されていない特徴の存在を除外するものではない。説明され、添付の図面に示される例は、本発明が実施され得る方法の例として提供され、本発明の範囲を限定することを意図するものでない。本開示から逸脱することなく、修正を行うことができ、機能的かつ構造的に同等の部品で要素を置換することができ、異なる実施形態の特徴を組み合わせることができる。特に、上述の例で説明した特徴は、組み合わせが技術的に可能である限り、互いに組み合わせることができる。例えば、上述の例のいずれか1つは、図8a、図8b又は図9に示したような形状の磁束シールドを使用してもよく、あるいは、図9に示したようなスペーサの外縁取り囲んでもよい。上述の例のうちのいずれにおいても、図10に示したようなスペーサ1002aが含まれ得る。上述の例のうちのいずれにおいても、複数の第1の永久磁石110の軸方向端部を図11に示すように面取りしてもよく、かつ/あるいは、磁極片112の軸方向端部を図12に示すように面取りしてもよい。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3a
図3b
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16a
図16b
図16c
図16d
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
【国際調査報告】