(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】ペプチドに基づくネオ抗原ワクチンの多成分化学組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 39/00 20060101AFI20240517BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20240517BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240517BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240517BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240517BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240517BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20240517BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240517BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240517BHJP
C07K 7/04 20060101ALI20240517BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20240517BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240517BHJP
【FI】
A61K39/00 H
A61K39/39
A61P35/00
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K39/395 T
A61P15/00
A61P17/00
A61P35/02
C07K7/04 ZNA
C07K14/47
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573030
(86)(22)【出願日】2022-05-19
(85)【翻訳文提出日】2023-11-24
(86)【国際出願番号】 US2022030037
(87)【国際公開番号】W WO2022251034
(87)【国際公開日】2022-12-01
(32)【優先日】2021-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506329306
【氏名又は名称】アマゾン テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フランク ウィルヘルム シュミッツ
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド ヘッカーマン
(72)【発明者】
【氏名】レイン クリストファー プライス
(72)【発明者】
【氏名】アンティエ ハイト
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA63
4C084MA66
4C084MA70
4C084NA14
4C084ZA81
4C084ZA89
4C084ZB26
4C084ZB27
4C084ZC75
4C085AA03
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C085GG10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA16
4H045BA17
4H045CA40
4H045DA86
4H045EA28
4H045EA31
(57)【要約】
本明細書に提供されるのは、腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド、腫瘍特異ネオ抗原短鎖ペプチド、及びアジュバント、任意選択的にヘルパーペプチド、ならびに任意選択的に腫瘍特異ペプチドを含む、免疫原性組成物である。本開示はまた、がんを治療するためにこれらの免疫原性組成物を使用する方法も提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫原性組成物であって、
(a)複数種の腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド;
(b)複数種の腫瘍特異ネオ抗原短鎖ペプチド;
(c)アジュバント;
(d)任意選択的にヘルパーペプチド;及び
(e)任意選択的に1種以上の腫瘍特異フレームシフトペプチド
を含む、前記免疫原性組成物。
【請求項2】
前記免疫原性組成物が、最大約50種の前記腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド及び/または短鎖ペプチドを含む、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項3】
前記免疫原性組成物が約10~約20種の前記腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド及び/または短鎖ペプチドを含む、請求項1または2に記載の免疫原性組成物。
【請求項4】
前記免疫原性組成物が約19種の前記腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド及び/または短鎖ペプチドを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項5】
前記免疫原性組成物が、少なくとも約2種以上の前記腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチドを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項6】
前記免疫原性組成物が約2~約18種の前記腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチドを含む、請求項5に記載の免疫原性組成物。
【請求項7】
前記免疫原性組成物が、少なくとも約10~約15種の前記腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチドを含む、請求項6に記載の免疫原性組成物。
【請求項8】
前記免疫原性組成物が、少なくとも約2種以上の前記腫瘍特異ネオ抗原短鎖ペプチドを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項9】
前記免疫原性組成物が、少なくとも約2~約10種の前記腫瘍特異ネオ抗原短鎖ペプチドを含む、請求項8に記載の免疫原性組成物。
【請求項10】
前記免疫原性組成物中の前記腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチドの各々が異なっている、先行請求項のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項11】
前記免疫原性組成物中の前記腫瘍特異短鎖ペプチドの各々が異なっている、先行請求項のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項12】
前記免疫原性組成物が2種以上の前記腫瘍特異フレームシフトペプチドを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項13】
前記腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド及び/または短鎖ペプチドが2つ以上のペプチドプールに分割される、先行請求項のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項14】
前記腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド及び/または短鎖ペプチドが約4つの前記ペプチドプールに分割される、請求項13に記載の免疫原性組成物。
【請求項15】
各ペプチドプールが約5種以下の前記腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド及び/または短鎖ペプチドを含む、請求項13または14に記載の免疫原性組成物。
【請求項16】
1つ以上の前記ペプチドプールが任意選択的に前記ヘルパーペプチドを含む、請求項13~15のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項17】
3つの前記ペプチドプールが約5種の前記腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド及び/または短鎖ペプチドを含み、1つの前記ペプチドプールが、4種の前記腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド及び/または短鎖ペプチド、及び前記ヘルパーペプチドを含む、請求項13~16のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項19】
1つ以上の前記ペプチドプールが1種以上の前記腫瘍特異フレームシフトペプチドを含む、請求項13~17のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項20】
各ペプチドプールが、異なった前記腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド及び/または短鎖ペプチドを含む、請求項13~19のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項21】
前記腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチドは約15~約30アミノ酸の長さである、先行請求項のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項22】
前記腫瘍特異ネオ抗原短鎖ペプチドは約5~約15アミノ酸の長さである、先行請求項のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項23】
前記アジュバントが、Toll様受容体アゴニスト、NOD様受容体アゴニスト、Mda5アゴニスト、RIG-I、PKRアゴニスト、STINGアゴニストまたは他の自然免疫感知経路アゴニストである、先行請求項のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項24】
前記ヘルパーペプチドが、汎DRヘルパーエピトープ(PADRE)、破傷風ヘルパーペプチド、B型肝炎表面抗原ヘルパーT細胞エピトープ、百日咳毒素ヘルパーT細胞エピトープ、麻疹ウイルスFタンパク質ヘルパーT細胞エピトープ、Chlamydia trachomitis主要外膜タンパク質ヘルパーT細胞エピトープ、ジフテリア毒素ヘルパーT細胞エピトープ、Plasmodium falciparumスポロゾイト周囲タンパク質ヘルパーT細胞エピトープ、Schistosoma mansoniトリオースリン酸イソメラーゼヘルパーT細胞エピトープ、キーホールリンペットヘモシアニン、Plasmodium vivax B細胞エピトープ(PVB)、Escherichia coli TraTヘルパーT細胞エピトープ、合成Tヘルパーエピトープ、上記ヘルパーペプチドのいずれかの免疫増強性類縁体及びセグメントである、先行請求項のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項25】
前記ヘルパーペプチドが汎DRヘルパーエピトープ(PADRE)である、請求項24に記載の免疫原性組成物。
【請求項26】
前記ペプチドプールの各々が前記アジュバントをさらに含む、請求項13~19のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項27】
前記免疫原性組成物が多機能的CD4
+及びCD8
+応答を誘導する、先行請求項のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項28】
先行請求項のいずれか1項に記載の免疫原性組成物、及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項29】
がんを治療する方法であって、それを必要とする対象に、治療的有効量の請求項1~27のいずれか1項に記載の免疫原性組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項30】
前記対象が前記免疫原性組成物の少なくとも1回以上の用量を投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記対象が前記免疫原性組成物の少なくとも6回の用量を異なる時間に投与される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記免疫原性組成物が、用量ごとに1つ以上の前記ペプチドプールとして投与される、請求項29~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記対象が、2つ以上の前記ペプチドプールの用量を6回、異なる時間に投与される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記対象が各ペプチドプールを前記対象の1~4本の肢に投与される、請求項32または33に記載の方法。
【請求項35】
各ペプチドプールが、異なる位置に投与される、請求項32~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記対象が各ペプチドプールを前記対象の異なる肢に投与される.請求項32~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記対象が各ペプチドプールを、投与の度に前記対象の同じ肢に投与される、請求項32~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記免疫原性組成物の各用量が、前記免疫原性組成物の先行用量の投与の少なくとも約1週間後~約4週間後に投与される、請求項32~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記免疫原性組成物の各用量の間に前記アジュバントを投与することをさらに含む、請求項29~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記アジュバントが、前記免疫原性組成物の各用量の間に週1回投与される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記アジュバントが、前記アジュバントが、Toll様受容体アゴニスト、NOD様受容体アゴニスト、Mda5アゴニスト、RIG-I、PKRアゴニスト、STINGアゴニスト、または他の自然免疫感知経路アゴニストである、請求項39または40に記載の方法。
【請求項42】
少なくとも1つのチェックポイント阻害剤を投与することをさらに含む、請求項29~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記チェックポイント阻害剤が、プログラム死-1(PD-1)経路、Lag3経路、Tim3経路、ICOS経路、OX-40、GITR経路または4-1BB経路の阻害剤である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記PD-1経路の前記阻害剤が、抗PD-1抗体である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記チェックポイント阻害剤が、抗細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA4)抗体である、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記がんが、メラノーマ、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、腎臓癌、胃癌、結腸癌、精巣癌、頭頸部癌、膵臓癌、脳のがん、B細胞リンパ腫、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、T細胞リンパ球性白血病、結腸癌、尿路上皮癌、または肺癌である、請求項29~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記がんがメラノーマである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記がんが乳癌である、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記がんが肺癌である、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
前記対象が、がんと診断されている、既にがんを患っている、再発がんを有する、またはがんを発症するリスクを有する、請求項29~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記免疫原性組成物が、皮下、筋肉内、経皮(transcutaneous)、皮内、経皮(transdermal)、腫瘍内、リンパ節内、静脈内または腹腔内投与によって投与される、請求項29~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記免疫原性組成物が筋肉内投与によって投与される、請求項51に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年5月27日に出願された米国仮特許出願第63/194,041号の利益を主張するものであり、参照によりその全体を本明細書に援用する。
【0002】
配列表の参照
本出願はコンピュータ可読形態の配列表を含有する。コンピュータ可読形態を参照により本明細書に援用する。上記ASCIIコピーは、2022年5月3日に作成されたものであり、名前が146401_091808_SL.txtであり、サイズが1,108バイトである。
【背景技術】
【0003】
がんは、死亡全体の4分の1を占める世界中で一番多い死因である。Siegel et al.,CA:A Cancer Journal for Clinicians,68:7-30(2018)。2018年には1810万件の新たながん症例及び960万件のがん関連死があった。Bray et al.,CA:A Cancer Journal for Clinicians,68(6):394-424。複数の既存の標準治療がん療法が存在し、これには、切除技術(例えば、外科手技及び放射線)、及び化学的技術(例えば、化学療法剤)が含まれる。残念なことに、そのような療法は、重大なリスク、有害な副作用、及び極めて高額な費用、ならびに不確実な有効性と関連していることがよくある。
【0004】
がん免疫療法(例えば、がんワクチン)は、有望ながん治療様式として登場した。がん免疫療法の目的は、正常組織を傷付けずに残しながらがんの選択的破壊のために免疫系を統御することである。従来のがんワクチンは、典型的には腫瘍関連抗原を標的としている。腫瘍関連抗原は典型的に、正常組織に存在しているが、がんに過剰発現している。しかしながら、これらの抗原が正常組織に存在していることが多いため、免疫寛容が免疫活性化を妨げることがある。腫瘍関連抗原を標的とするいくつかの臨床試験は、標準治療と比較して、長持ちする有益な効果を実証することができなかった。Li et al.,Ann Oncol.,28(Suppl 12):xii11-xii17(2017)。
【0005】
ネオ抗原は、がん免疫療法にとっての魅力的な標的に相当する。ネオ抗原は、個別な特異性を有する非自家タンパク質である。ネオ抗原は、腫瘍細胞ゲノムにおけるランダム体細胞変異に由来し、正常細胞の表面には発現しない。Id.ネオ抗原は専ら腫瘍細胞上に発現するため、そしてそれゆえに中枢性免疫寛容を誘導しないため、がんネオ抗原を標的とするがんワクチンは、減弱した中枢性免疫寛容及び改善された安全性プロファイルを含めた潜在的利点を有する。Id.
【0006】
がんの変異の全貌は複雑であり、腫瘍変異は、通常、各個の対象に特有である。配列決定によって検出されたマウス体細胞変異は、有効なネオ抗原をもたらさない。腫瘍DNAまたは腫瘍細胞における変異の小さな百分率しか、有効でありそうなワクチンを設計するのに十分な精度で腫瘍特異ネオ抗原に転写、翻訳及びプロセシングされない。その上、すべてのネオ抗原が免疫原性であるというわけではない。実際に、内因性ネオ抗原を自然に認識するT細胞の割合は約1%~2%である。Karpanen et al.,Front Immunol.,8:1718(2017)を参照されたい。しかも、ネオ抗原ワクチンの製造に関連する費用及び時間はかなり大きい。
【0007】
このように、ネオ抗原を含む個別化がんワクチンを開発するためには大きな課題が残っている。
【0008】
発明の概要
本発明は、成分の独特な組合せを含む個別化(つまり、対象に特異的な)免疫原性組成物(例えば、がんワクチン)に関する。本明細書に記載の免疫原性組成物は、複数種の腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド、複数種の腫瘍特異ネオ抗原短鎖ペプチド、及びアジュバントを含む。免疫原性組成物は、任意選択的に、ヘルパーペプチドを含み得る。免疫原性組成物は、任意選択的に、腫瘍特異フレームシフトペプチドを含み得る。
【0009】
免疫原性組成物は、最大約50種の腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド及び/または短鎖ペプチドを含み得る。免疫原性組成物は、約10~約20種の腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド及び/または短鎖ペプチドを含み得る。免疫原性組成物は、約19種の腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド及び/または短鎖ペプチドを含むことが好ましい。
【0010】
免疫原性組成物は、少なくとも約2種以上の腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチドを含み得る。免疫原性組成物は、約2~約18種の腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチドを含み得る。免疫原性組成物は、典型的には、少なくとも約10~約15種の腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチドを含み得る。免疫原性組成物は、少なくとも約2種以上の腫瘍特異ネオ抗原短鎖ペプチドを含み得る。免疫原性組成物は、少なくとも約2~約10種の腫瘍特異ネオ抗原短鎖ペプチドを含み得る。
【0011】
典型的には、免疫原性組成物中の腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチドの各々が異なっている。典型的には、免疫原性組成物中の腫瘍特異短鎖ペプチドの各々が異なっている。
【0012】
免疫原性組成物は、2種以上の腫瘍特異フレームシフトペプチドを含み得る。腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド及び/または短鎖ペプチドは、2つ以上のペプチドプールに分割され得る。好ましくは、腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド及び/または短鎖ペプチドは、約4つのペプチドプールに分割される。通常、各ペプチドプールは、約5種以下の腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド及び/または短鎖ペプチドを含み得る。1つ以上のペプチドプールは、任意選択的にヘルパーペプチドを含み得る。1つ以上のペプチドプールは、1種以上の腫瘍特異フレームシフトペプチドを含み得る。
【0013】
一例を挙げると、3つのペプチドプールが約5種の腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド及び/または短鎖ペプチドを含み得、1つのペプチドプールが、4種の腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド及び/または短鎖ペプチド、及びヘルパーペプチドを含み得る。各ペプチドプールが、異なった腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド及び/または短鎖ペプチドを含んでいてもよい。腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチドは約15~約30アミノ酸の長さであり得る。腫瘍特異ネオ抗原短鎖ペプチドは約5~約15アミノ酸の長さであり得る。
【0014】
免疫原性組成物に使用されるアジュバントは、Toll様受容体アゴニスト、NOD様受容体アゴニスト、Mda5アゴニスト、RIG-I、PKRアゴニスト、STINGアゴニストまたは他の自然免疫感知経路アゴニストであり得る。ペプチドプールの各々は、アジュバントを含み得る。
【0015】
ヘルパーペプチドは、汎DRヘルパーエピトープ(PADRE)、破傷風ヘルパーペプチド、B型肝炎表面抗原ヘルパーT細胞エピトープ、百日咳毒素ヘルパーT細胞エピトープ、麻疹ウイルスFタンパク質ヘルパーT細胞エピトープ、Chlamydia trachomitis主要外膜タンパク質ヘルパーT細胞エピトープ、ジフテリア毒素ヘルパーT細胞エピトープ、Plasmodium falciparumスポロゾイト周囲タンパク質ヘルパーT細胞エピトープ、Schistosoma mansoniトリオースリン酸イソメラーゼヘルパーT細胞エピトープ、キーホールリンペットヘモシアニン、Plasmodium vivax B細胞エピトープ(PVB)、Escherichia coli TraTヘルパーT細胞エピトープ、合成ヘルパーTエピトープ、上記ヘルパーペプチドのいずれかの免疫増強性類縁体及びセグメントであり得る。好ましくは、ヘルパーペプチドは汎DRヘルパーエピトープ(PADRE)である。
【0016】
本明細書に開示される免疫原性組成物は、多機能的CD4+及びCD8+応答を誘導することができる。
【0017】
本開示はまた、本明細書に開示される免疫原性組成物を含む医薬組成物にも関する。
【0018】
本開示はまた、がんの治療を、それを必要とする対象において行う方法であって、本明細書に記載の個別化免疫原性組成物を投与することを含む、当該方法にも関する。本明細書に開示される方法は、任意の数のがんに適し得る。主要は、メラノーマ、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、腎臓癌、胃癌、結腸癌、精巣癌、頭頸部癌、膵臓癌、脳のがん、B細胞リンパ腫、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、T細胞リンパ球性白血病、膀胱癌、または肺癌からのものであり得る。好ましくは、がんは、メラノーマ、乳癌、肺癌、結腸癌、及び尿路上皮癌である。本明細書に開示される方法に適する対象は、がんと診断されている場合がある、既にがんを患っている、再発がんを有する、またはがんを発症するリスクを有する。
【0019】
対象は、本明細書に開示される免疫原性組成物の少なくとも1回以上の用量を投与され得る。典型的には、対象は、免疫原性組成物の少なくとも6回の用量を異なる時間に投与される。
【0020】
免疫原性組成物は、用量ごとに1つ以上のペプチドプールとして投与され得る。対象は、2つ以上のペプチドプールの用量を6回、異なる時間に投与され得る。対象は、各ペプチドプールを対象の1~4本の肢に投与され得る。ペプチドプールは、異なる位置に投与され得る。対象は、各ペプチドプールを対象の異なる肢に投与され得る。対象は各ペプチドプールを、投与の度に対象の同じ肢に投与され得る。免疫原性組成物の各用量は、免疫原性組成物の先行用量の投与の少なくとも約1週間後~約4週間後に投与され得る。
【0021】
アジュバントは、免疫原性組成物の各用量の間に投与され得る。アジュバントは、免疫原性組成物の各用量の間に週1回投与され得る。アジュバントは、Toll様受容体アゴニスト、NOD様受容体アゴニスト、Mda5アゴニスト、RIG-I、PKRアゴニスト、STINGアゴニスト、または他の自然免疫感知経路アゴニストであり得る。
【0022】
本明細書に開示される方法は、少なくとも1つの、または1つのチェックポイント阻害剤を投与することをさらに含み得る。チェックポイント阻害剤は、プログラム死-1(PD-1)経路、Lag3経路、Tim3経路、ICOS経路、OX-40、GITR経路または4-1BB経路の阻害剤であり得る。特に、PD-1経路の阻害剤は、抗PD-1抗体、小分子、ペプチドであり得る、または当該経路を遺伝学的手段(例えば、短鎖干渉RNAまたはCRISPR媒介遺伝子編集)によって阻害し得る。関心対象のチェックポイント阻害剤は、抗細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA4)抗体、小分子、ペプチドであり得る、または当該経路を遺伝学的手段(例えば、短鎖干渉RNAまたはCRISPR媒介遺伝子編集)によって阻害し得る。
【0023】
免疫原性組成物は、皮下、筋肉内、経皮(transcutaneous)、皮内、経皮(transdermal)、静脈内、腫瘍内、リンパ節内または腹腔内投与によって投与され得る。本明細書に開示される免疫原性組成物は、筋肉内投与によって投与されることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】ワクチンペプチドプールの組成を示す模式図である。
【
図2】免疫原性組成物の治療計画を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本開示は、成分の独特な組合せを含む、強力な個別化がん免疫原性組成物(例えば、対象に特異的な免疫原性組成物)に関する。本明細書に記載の免疫原性組成物は、複数種の腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド、複数種の腫瘍特異ネオ抗原短鎖ペプチド、及びアジュバントを含む。免疫原性組成物は、任意選択的に、ヘルパーペプチドを含み得る。免疫原性組成物は、任意選択的に、腫瘍特異フレームシフトペプチドを含み得る。免疫原性組成物は、最大約50種の腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド及び/または短鎖ペプチドを含み得る。典型的には、免疫原性組成物は、約10~約20種の腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド及び/または短鎖ペプチドを含む。好ましくは、免疫原性組成物は、約19種の腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド及び/または短鎖ペプチドを含む。免疫原性組成物は、腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド及び/または短鎖ペプチド、ならびにアジュバントを含む、2つ以上のペプチドプールに、分割され得る。1つ以上のペプチドプールは、ヘルパーペプチドをさらに含み得る。1つ以上のペプチドプールは、腫瘍特異フレームシフトペプチドをさらに含み得る。免疫原性組成物は、各々が約5種以下のペプチド(すなわち、腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチドもしくは短鎖ペプチド、ヘルパーペプチド、または腫瘍特異フレームシフトペプチド)を含んでいる、約4つのペプチドプールに分割されることが好ましい。各ペプチドプールはアジュバントも含み得る。
【0026】
本開示はまた、腫瘍特異ネオ抗原ペプチドを含む免疫原性組成物を投与することによって、がんの治療を、それを必要とする対象において行う方法にも関する。対象は、免疫原性組成物の少なくとも1回以上の用量を投与され得る。典型的には、対象は、免疫原性組成物の約6回の用量を異なる時間に投与され得る。免疫原性組成物は、用量ごとに1つ以上のペプチドとして投与され得る。ペプチドプールは、異なる肢(例えば、約1~約4本)に投与され得る。ペプチドプールは、投与の度に対象の同じ肢に投与され得る。
【0027】
本開示の中で引用されるすべての刊行物及び特許は、参照によりそれらの全体が援用される。参照によって援用される資料が本明細書と矛盾するかまたは整合していない限りにおいて、本明細書は、いかなるそのような資料よりも優先されることになる。本明細書においていかなる参考文献の引用も、そのような参考文献が本開示に対する先行技術であるという容認ではない。値の範囲が示されている場合、それは、範囲内の任意の特定の値を用いる実施形態を含む。さらに、範囲で示された値に対する言及は、その範囲に入っているありとあらゆる値を含む。すべての範囲はそれらの端点を包含し、かつ、組み合わされることができる。値が先行詞「約」の使用によって近似として表されている場合、特定の値が別の実施形態を形成することは、理解されよう。特定の数値に対する言及は、文脈から特に明らでない限り、少なくともその特定の値を含む。「または」の使用は、その使用の具体的文脈から特に定まるのでない限り、「及び/または」を意味することになる。
【0028】
記載の態様に関係する様々な用語が、本明細書及び特許請求の範囲の全体を通して使用されている。そのような用語は、特に示されていない限り当技術分野におけるそれらの通常の意味を与えられるべきである。他の具体的に定義される用語は、本明細書に提供されている定義と整合するように解釈されるべきである。本明細書で記載または言及されている技術及び手順は、総じて十分に理解され、通例、当業者によって従来の方法論、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual 4th ed.(2012)Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NYに記載されている広く利用されている分子クローニング方法論などを用いて採用される。適切とされる場合には、市販のキット及び試薬の使用を伴う手順を、通常、特に記されていない限り製造業者によって規定されたプロトコール及び条件に従って行う。
【0029】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈から特に明らかでない限り、複数形を含む。「含む」、「など」という用語、及び類似する用語は、特に具体的な指示がない限り、限定のない包含を伝えることを意図している。
【0030】
特に指示がない限り、一まとまりの要素または範囲に先行する用語「少なくとも」、「未満」及び「約」、または類似する用語は、まとまりまたは範囲の中のあらゆる要素を指すと理解されるべきである。当業者であれば、本明細書に記載される本発明の具体的な実施形態に対する多くの均等物を認識するであろう、または慣例的な実験しか用いずにそれらを確認することができるであろう。そのような均等物を以下の特許請求の範囲に包含することが意図されている。
【0031】
「がん」という用語は、制御されない増殖、不死性、転移可能性、速い成長及び増殖速度、及び/またはある特定の形態学的特徴によって細胞の集団が特徴付けられている、対象における生理学的状態を指す。がんは、多くの場合、腫瘍または腫瘤の形態をとり得るが、そうはいっても、対象の中に単独で存在することまたは血流中を独立した細胞、例えば白血病細胞もしくはリンパ腫細胞として循環することがある。がんという用語は、血液悪性腫瘍、固形腫瘍、肉腫、癌腫、ならびに他の固形及び非固形腫瘍を含めた、あらゆるタイプのがん及び転移がんを含む。がんの例としては、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫及び白血病が挙げられるが、これらに限定されない。そのようながんのより詳しい例としては、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、肺の扁平上皮癌、腹膜癌、肝細胞癌、消化器癌、膵臓癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝細胞腫、乳癌(例えば、三重陰性乳癌、ホルモン受容体陽性乳癌)、骨肉腫、メラノーマ、結腸癌、大腸癌、子宮内膜(例えば、漿液性)または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝細胞癌腫、ならびに様々なタイプの頭部、頸部及び脳のがんが挙げられる。三重陰性乳癌は、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)及びHer2/neuの遺伝子の発現が陰性である乳癌を指す。ホルモン受容体陽性乳癌は、以下:ERまたはPRのうちの少なくとも1つが陽性であり、かつHer2/neu(HER2)が陰性である、乳癌を指す。
【0032】
本明細書で使用される「ヘルパーペプチド」という用語は、非特異的なワクチンヘルパーエピトープとして機能し、活性化CD4 T細胞による免疫応答の増大を誘導する、外来ペプチドを指す。
【0033】
本明細書で使用される「フレームシフト変異」という用語は、タンパク質をコードするオープンリーディングフレーム内での核酸配列の変化を指すが、この変化は、当該変異の下流側のリーディングフレームに変化をもたらしてそれによって、野生型タンパク質に比べて配列が変化したタンパク質を産生させるものである。典型的には、フレームシフト変異は、3の倍数でないインデル(すなわち、1つ以上のヌクレオチドの挿入または欠失)によって生じる。
【0034】
本明細書で使用される「腫瘍特異フレームシフトペプチド」という用語は、フレームシフト変異を含有する腫瘍特異ネオ抗原ペプチドを指す。
【0035】
本明細書で使用される「ネオ抗原」という用語は、それを対応する親抗原と異ならせている少なくとも1つの改変、例えば、腫瘍細胞における変異による改変、または腫瘍細胞に特異な翻訳後修飾による改変を有する、抗原を指す。変異は、フレームシフト、インデル、ミスセンスまたはナンセンス置換、スプライス部位変化、ゲノム再構成または遺伝子融合、またはネオ抗原を生む任意のゲノム発現変化を含むことがある。変異は、スプライス変異を含むことがある。腫瘍細胞に特異な翻訳後修飾は、異常リン酸化を含むことがある。腫瘍細胞に特異な翻訳後修飾は、プロテオソームによって生成されたスプライス抗原を含むこともある。Lipe et al.,Science,354(6310):354:358(2016)を参照されたい。通常は、点変異が腫瘍における変異の約95%を占め、インデル及びフレームシフト変異が残りを占める。Snyder et al.,N Engl J Med.,371:2189-2199(2014)を参照されたい。
【0036】
本明細書で使用される場合、用語「腫瘍特異ネオ抗原」は、対象の腫瘍細胞または組織の中に存在するが対象の正常細胞または組織の中には存在しないネオ抗原である。
【0037】
本明細書で使用される「対象」という用語は、任意の動物、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、齧歯動物などを含むがこれらに限定されない任意の哺乳動物を指す。いくつかの実施形態では、哺乳動物はマウスである。いくつかの実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【0038】
方法についてのさらなる説明、及び方法の実施のための手引きを本明細書に提供する。
【0039】
A.免疫原性組成物
a.ネオ抗原ペプチド
免疫原性組成物は、対象の特定のがんに応じて腫瘍特異根の抗原の選択及び数が調整されるように製剤化され得る。例えば、腫瘍特異ネオ抗原の選択は、がんの具体的なタイプ、がんの状態、対象の免疫状態、及び対象のMHCタイプによって決まり得る。
【0040】
免疫原性組成物は、少なくとも約1種、約2種、約3種、約4種、約5種、約6種、約7種、約8種、約9種、約10種、約11種、約12種、約13種、約14種、約15種、約16種、約17種、約18種、約19種、約20種、約21種、約22種、約23種、約24種、約25種、約26種、約27種、約28種、約29種、約30種、約31種、約32種、約33種、約34種、約35種、約36種、約37種、約38種、約39種、約40種、約41種、約42種、約43種、約44種、約45種、約46種、約47種、約48種、約49種、約50種の、またはそれよりも多い腫瘍特異ネオ抗原ペプチド(例えば、腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド及び/または短鎖ペプチド)を含み得る。免疫原性組成物は、最大約100種の腫瘍特異を含み得る。免疫原性組成物は、約10~20種の腫瘍特異ネオ抗原、約10~30種の腫瘍特異ネオ抗原、約10~40種の腫瘍特異ネオ抗原、約10~50種の腫瘍特異ネオ抗原、約10~60種の腫瘍特異ネオ抗原、約10~70種の腫瘍特異ネオ抗原、約10~80種の腫瘍特異ネオ抗原、約10~90種の腫瘍特異ネオ抗原、または約10~100種の腫瘍特異ネオ抗原を含有し得る。典型的には、免疫原性組成物は、少なくとも約10種の腫瘍特異ネオ抗原を含む。本明細書に開示される免疫原性組成物は、好ましくは、10~約20種の腫瘍特異ネオ抗原を含む。例えば、免疫原性組成物は、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19または約20種の腫瘍特異ネオ抗原を含み得る。好ましくは、免疫原性組成物は、約19種の腫瘍特異ネオ抗原を含み得る。好ましくは、免疫原性組成物は、約20種の腫瘍特異ネオ抗原を含み得る。免疫原性組成物中の腫瘍特異ネオ抗原の各々は異なっていることが好ましい。
【0041】
本明細書に開示される免疫原性組成物は、複数種の腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド、及び複数種の腫瘍特異ネオ抗原短鎖ペプチドを含む。腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチドは、抗原提示細胞によって内在化され、MCH提示のためにプロセシングされる。MHCクラスII分子は、典型的には、長さがより長いペプチドに結合する。MHCクラスIIは、概して、約13アミノ酸の長さから約25アミノ酸の長さまでのペプチドを許容できる。実施形態において、1種以上の腫瘍特異ネオ抗原は、長さ約13~25アミノ酸の長いペプチドである。MHCクラスI分子は、典型的には、短いペプチドに結合する。腫瘍特異ネオ抗原短鎖ペプチドはMHC分子に直接結合する。MHCクラスI分子は、短いペプチドに結合できる。MHCクラスI分子は、概して約8アミノ酸~約10アミノ酸の長さのペプチドを許容できる。
【0042】
免疫原性組成物は、少なくとも約2種以上の腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチドを含み得る。免疫原性組成物は、少なくとも約2種、約3種、約4種、約5種、約6種、約7種、約8種、約9種、約10種、約11種、約12種、約13種、約14種、約15種、約16種、約17種、約18種、約19種、約20種、約21種、約22種、約23種、約24種、約25種、約26種、約27種、約28種、約29種、約30種、約31種、約32種、約33種、約34種、約35種、約36種、約37種、約38種、約39種、約40種、約41種、約42種、約43種、約44種、約45種、約46種、約47種、約48種、約49種、約50種の、またはそれよりも多い腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチドを含み得る。免疫原性組成物は、約2~20種の腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド、約10~20種の腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド、約10~30種の腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド、約10~40種の腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド、または約10~50種の腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチドを含有し得る。典型的には、免疫原性組成物は、少なくとも約10種の腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチドを含む。
【0043】
本明細書に開示される免疫原性組成物は、好ましくは、10~約15種の腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチドを含む。例えば、免疫原性組成物は、約10種、約11種、約12種、約13種、約14種、約15種、約16種、約17種または約18種の腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチドを含み得る。通常、本明細書に開示される免疫原性組成物は、腫瘍特異ネオ抗原短鎖ペプチドに比べて多い腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチドを含む。免疫原性組成物中の腫瘍特異長鎖ペプチドの各々は異なっていることが好ましい。
【0044】
免疫原性組成物は、少なくとも約2種以上の腫瘍特異ネオ抗原短鎖ペプチドを含み得る。免疫原性組成物は、少なくとも約2種、約3種、約4種、約5種、約6種、約7種、約8種、約9種、約10種、約11種、約12種、約13種、約14種、約15種、約16種、約17種、約18種、約19種、約20種、約21種、約22種、約23種、約24種、約25種、約26種、約27種、約28種、約29種、約30種、約31種、約32種、約33種、約34種、約35種、約36種、約37種、約38種、約39種、約40種、約41種、約42種、約43種、約44種、約45種、約46種、約47種、約48種、約49種、約50種の、またはそれよりも多い腫瘍特異ネオ抗原短鎖ペプチドを含み得る。免疫原性組成物は、約2~約10種の腫瘍特異ネオ抗原短鎖ペプチドを含有し得る。例えば、免疫原性組成物は、少なくとも約2種、約3種、約4種、約5種、約6種、約7種、約8種、約9種または約10種の腫瘍特異ネオ抗原短鎖ペプチドを含み得る。
【0045】
免疫原性組成物は、約2~15種の腫瘍特異ネオ抗原短鎖ペプチド、約2~10種の腫瘍特異ネオ抗原短鎖ペプチド、約4~10種の腫瘍特異ネオ抗原短鎖ペプチド、約5~10種の腫瘍特異ネオ抗原短鎖ペプチド、約6~10種の腫瘍特異ネオ抗原短鎖ペプチド、約7~10種の腫瘍特異ネオ抗原短鎖ペプチド、または約8~10種の腫瘍特異ネオ抗原短鎖ペプチドを含有し得る。本明細書に開示される免疫原性組成物は、好ましくは、2~約10種の腫瘍特異ネオ抗原短鎖ペプチドを含む。例えば、免疫原性組成物は、約2種、約3種、約4種、約5種、約6種、約7種、約8種、約9種または約10種の腫瘍特異ネオ抗原短鎖ペプチドを含み得る。通常、本明細書に開示される免疫原性組成物は、腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチドに比べて少ない腫瘍特異ネオ抗原短鎖ペプチドを含む。免疫原性組成物中の腫瘍特異短鎖ペプチドの各々は異なっていることが好ましい。
【0046】
腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチドは、約15~約30アミノ酸の長さであり得る。腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチドは、約15アミノ酸の長さ、約16アミノ酸の長さ、約17アミノ酸の長さ、約18アミノ酸の長さ、約19アミノ酸の長さ、約20アミノ酸の長さ、約21アミノ酸の長さ、約22アミノ酸の長さ、約23アミノ酸の長さ、約24アミノ酸の長さ、約25アミノ酸の長さ、約26アミノ酸の長さ、約27アミノ酸の長さ、約28アミノ酸の長さ、約29アミノ酸の長さ、または約30アミノ酸の長さであり得る。
【0047】
腫瘍特異ネオ抗原短鎖ペプチドは、約5アミノ酸の長さから約15アミノ酸の長さまでであり得る。腫瘍特異ネオ抗原短鎖ペプチドは、約5アミノ酸の長さ、約6アミノ酸の長さ、約7アミノ酸の長さ、約8アミノ酸の長さ、約9アミノ酸の長さ、約10アミノ酸の長さ、約11アミノ酸の長さ、約12アミノ酸の長さ、約13アミノ酸の長さ、約14アミノ酸の長さ、または約15アミノ酸の長さであり得る。
【0048】
腫瘍特異ネオ抗原ペプチドは、長鎖であろうと短鎖であろうと、腫瘍に固有な転写産物または翻訳されたペプチドをもたらす任意の機序から発生し得る。そのような機序の例としては、腫瘍DNAの挿入、欠失及び/または転位;転写のエラー;一次転写産物の改変された及び/または不完全なイントロンスプライシング;あるいは翻訳のエラーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
b.ペプチドプール
免疫原性組成物の腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド及び/または短鎖ペプチドは、2つ以上のペプチドプールに分割され得る。例えば、免疫原性組成物の腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド及び/または短鎖ペプチドは、約2個、約3個、約4個、約5個、約6個、約7個、約8個、約9個、約10個、約11個、約12個、約13個、約14個、約15個、約16個、約17個、約18個、約19個、約20個の、またはそれよりも多いペプチドプールに分割され得る。ペプチドプールの所望の数は、免疫原性組成物中の腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド及び/または短鎖ペプチドの数によって決まり得る。例えば、約40種の腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド及び/または短鎖ペプチドを含む免疫原性組成物は、約5~約10個のペプチドプールに分割されることがある。例えば、約30種の腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド及び/または短鎖ペプチドを含む免疫原性組成物は、約5~約8個のペプチドプールに分割されることがある。例えば、約20種の腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド及び/または短鎖ペプチドを含む免疫原性組成物は、約2~約5個のペプチドプールに分割されることがある。
【0050】
本明細書に記載される好ましい免疫原性組成物では、腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド及び/または短鎖ペプチドは約2~約5個のペプチドプールに分割され得る。理論に拘泥することは望まないが、腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド及び/または短鎖ペプチドを分割することで免疫原性組成物の共溶解性を促進できると考えられる。好ましくは、腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド及び/または短鎖ペプチドは、約4個のペプチドプール、または約5個のペプチドプールに分割され得る。
【0051】
本明細書に開示される各ペプチドプールは、最大約20種の腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド及び/または短鎖ペプチドを含み得る。例えば、本明細書に開示される各ペプチドプールは、約1種、約2種、約3種、約4種、約5種、約6種、約7種、約8種、約9種、約10種、約11種、約12種、約13種、約14種、約15種、約16種、約17種、約18種、約19種または約20種の腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド及び/または短鎖ペプチドを含み得る。各ペプチドプールは約5個以下のペプチドプールを含むことが好ましい。例えば、各ペプチドプールは、約1種、約2種、約3種、約4種または約5種の腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド及び/または短鎖ペプチドを含み得る。
【0052】
各ペプチドプールは、同じ数の腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド及び/または短鎖ペプチドを含んでいてもよい。例えば、各ペプチドプールが、約1種、約2種、約3種、約4種または約5種の腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド及び/または短鎖ペプチドを含んでいてもよい。
【0053】
各ペプチドプールは、異なる数の腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド及び/または短鎖ペプチドを含んでいてもよい。例えば、4つのペプチドプールが5種の腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド及び/または短鎖ペプチドを含み得、1つのペプチドプールが4種の腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド及び/または短鎖ペプチドを含み得る。例えば、3つのペプチドプールが5種の腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド及び/または短鎖ペプチドを含み得、1つのペプチドプールが4種の腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド及び/または短鎖ペプチドを含み得、1つのペプチドプールが3種の腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド及び/または短鎖ペプチドを含み得る。例えば、2つのペプチドプールが5種の腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド及び/または短鎖ペプチドを含み得、1つのペプチドプールが4種の腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド及び/または短鎖ペプチドを含み得、1つのペプチドプールが3種の腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド及び/または短鎖ペプチドを含み得、ペプチドプールは腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチド及び/または短鎖ペプチドを含み得る。
【0054】
本明細書に開示される免疫原性組成物は、少なくとも1種のヘルパーペプチドも含み得る。いくつかの例では、免疫原性組成物の1つのペプチドプールがヘルパーペプチドを含み得る。いくつかの例では、本明細書に開示される1つ以上のペプチドプールがヘルパーペプチドを含み得る。ペプチドプールは、約1種、約2種、約3種、約4種、約5種の、またはそれよりも多いヘルパーペプチドを含み得る。但し、通常はペプチドプールが単一のヘルパーペプチドを含むことが好ましい。一例を挙げると、免疫原性組成物が5つのペプチドプールに分割される場合、単一のペプチドプールがヘルパーペプチドを含み得る。
【0055】
免疫原性組成物は、アジュバントをさらに含む。1つ以上のペプチドプールはアジュバントを含み得る。いくつかの例では、各ペプチドプールがアジュバントを含み得る。他の例では、アジュバントはペプチドプールの一部に存在し得る。例えば、免疫原性組成物が5つのペプチドプールに分割される場合、約1個、約2個、約3個、約4個または約5個のペプチドプールはアジュバントを含み得る。好ましくは、各ペプチドプールがアジュバントを含む。
【0056】
本明細書に開示される免疫原性組成物は、少なくとも1種以上の腫瘍特異フレームシフトペプチドも含み得る。免疫原性組成物は、約1種、約2種、約3種、約4種、約5種、約6種、約、約7種、約8種、約9種、約10種、約11種、約12種、約13種、約14種、約15種の、またはそれよりも多い腫瘍特異フレームシフトペプチドを含み得る。いくつかの例では、1つ以上のペプチドプールは腫瘍特異フレームシフトペプチドを含み得る。ペプチドプールは、約1種、約2種、約3種、約4種、約5種の、またはそれよりも多い腫瘍特異フレームシフトペプチドを含み得る。
【0057】
対象における免疫応答は、1種以上の腫瘍特異ネオ抗原を腫瘍細胞表面に提示すること、1種以上の腫瘍特異ネオ抗原が腫瘍細胞上の1種以上のMHC分子によって提示されること、または1種以上の腫瘍特異ネオ抗原が抗原提示細胞によるT細胞への提示の能力を有することを含み得る。
【0058】
対象における免疫応答は、CD4+媒介応答、CD8+媒介応答、または多機能的CD4+及び媒介応答であり得る。
【0059】
免疫原性組成物は、特定の対象の個人的必要性に応じて個別化された成分を含有し得る。
【0060】
c.ヘルパーペプチド
本明細書に開示される免疫原性組成物は、少なくとも1種のヘルパーペプチドも含み得る。ヘルパーペプチドは、がん抗原に対して特異的ではないCD4+T細胞応答を刺激するが、リコール応答または他の非特異的な補助を刺激し得る、任意の好適なペプチドであり得る。CD4 T細胞の活性化は、CD8+T細胞を支援することができる。
【0061】
ヘルパーペプチドは、T細胞ヘルパー活性を有するアミノ酸(天然または非天然アミノ酸)の配列である。ヘルパーペプチドは、免疫系の能力を確立及び最大化する上で重要な役割を果たすものであるヘルパーTリンパ球によって認識され、他の免疫細胞、例えば細胞傷害性Tリンパ球などの活性化及び誘導に関与する。
【0062】
ヘルパーペプチドは、連続的または不連続なエピトープを含み得る。ヘルパーペプチドは、ヘルパーペプチドの類縁体及びセグメントを含めて、免疫応答を増強または刺激する能力を有する。ヘルパーペプチドは、約10~約150アミノ酸の長さであり得、特に、約10~約50アミノ酸の長さであり得る。複数のヘルパーペプチドが存在している場合、各ヘルパーペプチドは、典型的には、独立して作用する。
【0063】
ヘルパーペプチドは、通常、腫瘍特異ネオ抗原ではない。
【0064】
本明細書に開示される免疫原性組成物に使用され得るヘルパーペプチドとしては、例えば、B型肝炎表面抗原ヘルパーT細胞エピトープ、百日咳毒素ヘルパーT細胞エピトープ、麻疹ウイルスFタンパク質ヘルパーT細胞エピトープ、Chlamydia trachomitis主要外膜タンパク質ヘルパーT細胞エピトープ、ジフテリア毒素ヘルパーT細胞エピトープ、Plasmodium falciparumスポロゾイト周囲タンパク質ヘルパーT細胞エピトープ、Schistosoma mansoniトリオースリン酸イソメラーゼヘルパーT細胞エピトープ、キーホールリンペットヘモシアニン、Plasmodium vivax B細胞エピトープ(PVB)、Escherichia coli TraTヘルパーT細胞エピトープ、ならびにこれらのヘルパーペプチドのいずれかの免疫増強性類縁体及びセグメントが挙げられる。
【0065】
ヘルパーペプチドは、汎ヘルパーTエピトープであり得る。本明細書で使用される汎ヘルパーTエピトープは、T細胞機能をクラスII(CD4+T細胞)拘束的に活性化させるように多数のクラスII分子に結合する、ペプチドもしくは他の免疫原性分子、またはその断片を指す。汎ヘルパーTエピトープの一例は、ペプチド配列AKXVAAWTLKAAA(配列番号1)を含むPADRE(汎DRエピトープ)である。Xはシクロヘキシルアラニルであり得る。PADREは、詳しくは、CD4+ヘルパーTエピトープを有する、つまり、それはPADRE特異的CD4+ヘルパーT応答の誘導を刺激する。汎ヘルパーTエピトープの別の例は、非天然の汎DRヘルパーT細胞エピトープ(PADRE)である。PADREは、本明細書に開示される免疫原性組成物に特に適している好ましいヘルパーペプチドである。
【0066】
破傷風類毒素は、PADREと同様の働きをする他のヘルパーTエピトープを有する。破傷風及びジフテリア毒素は、ヒトCD4+細胞のための汎エピトープを有する(Diethelm-Okita 2000)。本明細書に開示される免疫原性組成物に使用されるヘルパーペプチドは、破傷風類毒素ペプチド、例えば、ペプチド配列FNNFTVSFWLRVPKVSASHLE(アミノ酸947~967;配列番号2)を含むF21Eであり得る。
【0067】
本明細書に開示される免疫原性組成物は、約1種以上のヘルパーペプチドを含み得る。例えば、免疫原性組成物は、約1種、約2種、約3種、約4種、約5種、約6種、約7種、約8種、約、約10種、約11種、約12種、約13種、約14種、約15種、約16種、約17種、約18種、約19種または約20種のヘルパーペプチドを含み得る。典型的には、約19種の腫瘍特異ネオ抗原長鎖及び/または短鎖ペプチドを含む免疫原性組成物は、少なくとも約1種のヘルパーペプチドを含むことが好ましい。
【0068】
d.腫瘍特異フレームシフトペプチド
本明細書に記載の免疫原性組成物は、腫瘍特異フレームシフトペプチドをさらに含み得る。理論に拘泥することは望まないが、腫瘍特異フレームシフトペプチドは免疫原性が高いと考えられ、免疫原性組成物(すなわち、ワクチン)に対する増強された応答をもたらし得る。
【0069】
腫瘍特異フレームシフトペプチドは、任意の長さを有し得る。例えば、腫瘍特異フレームシフトペプチドは、腫瘍特異ネオ抗原長鎖ペプチドまたは腫瘍特異ネオ抗原短鎖ペプチドに対応したものであり得る。腫瘍特異フレームシフトペプチドは、約2アミノ酸の長さから約100アミノ酸の長さまでであり得る。典型的には、腫瘍特異フレームシフトペプチドは、約2アミノ酸の長さ~約30アミノ酸の長さであり得る。腫瘍特異フレームシフトペプチドは、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30アミノ酸の、またはそれを上回る長さであり得る。
【0070】
腫瘍特異フレームシフトペプチドは、特定のペプチドが免疫原性組成物中への組入れのためにより適したものとなるように、腫瘍特異フレームシフトペプチドと比較してアミノ酸の付加または欠失によって改変され得る。
【0071】
本明細書に開示される免疫原性組成物は、約1種以上の腫瘍特異フレームシフトペプチドを含み得る。例えば、免疫原性組成物は、約1種、約2種、約3種、約4種、約5種、約6種、約7種、約8種、約、約10種、約11種、約12種、約13種、約14種、約15種、約16種、約17種、約18種、約19種または約20種の腫瘍特異ペプチドを含み得る。典型的には、約19種の腫瘍特異ネオ抗原長鎖及び/または短鎖ペプチドを含む免疫原性組成物は、少なくとも約2種の腫瘍特異フレームシフトペプチドを含むことが好ましい。
【0072】
腫瘍特異フレームシフトペプチドは、ペプチドプールの1つ以上の中に含まれ得る。
【0073】
e.アジュバント
本明細書に記載の免疫原性組成物は、アジュバントをさらに含む。アジュバントは、免疫原性組成物と混和されることで腫瘍特異ネオ抗原に対する免疫応答を増大させるかあるいは増強及び/または強化するが、単独で投与された場合には腫瘍特異ネオ抗原に対する免疫応答を生じさせない、任意の物質である。アジュバントは、ネオ抗原に対する免疫応答を生じさせるがアレルギーまたは他の有害反応を生まないことが好ましい。本明細書では、免疫原性組成物が免疫原性組成物の投与の前に、それと一緒に、それと同時に、それと付随的に、またはその後に投与され得ることを企図している。
【0074】
アジュバントは、例えば、抗原提示細胞(APC)様樹状細胞の活性化、リンパ球動員、B及び/またはT細胞の刺激、ならびにマクロファージの刺激を含めたいくつかの機序によって、免疫応答を増強し得る。本発明の免疫原性組成物が、アジュバントを含むかまたは1種以上のアジュバントと一緒に投与される場合、使用され得るアジュバントとしては、無機塩アジュバントまたは無機塩ゲルアジュバント、微粒子アジュバント、マイクロ粒子アジュバント、粘膜アジュバント及び免疫刺激アジュバントが挙げられるが、これらに限定されない。アジュバントの例としては、アルミニウム塩(ミョウバン)(例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム及び硫酸アルミニウム)、3De-O-脱アシル化モノホスホリルリピドA(MPL)(GB2220211参照)、MF59(Novartis)、AS03(Glaxo SmithKline)、AS04(Glaxo SmithKline)、ポリソルベート80(Tween80;ICL Americas,Inc.)、イミダゾピリジン化合物(国際公開第WO2007/109812として公開された国際出願第PCT/US2007/064857号参照)、イミダゾキノキサリン化合物(国際公開第WO2007/109813として公開された国際出願第PCT/US2007/064858号参照)、及びサポニン、例えばQS21(Kensil et al,in Vaccine Design:The Subunit and Adjuvant Approach(eds.Powell & Newman,Plenum Press,NY,1995)、米国特許第5,057,540号参照)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、アジュバントは、(完全または不完全)フロイントアジュバントである。他のアジュバントは、任意選択的にモノホスホリルリピドAなどの免疫刺激剤と組み合わせた、水中油(例えば、スクアレンまたはピーナッツ油)エマルジョンである(Stoute et al,N.Engl.J.Med.336,86-91(1997)参照)。
【0075】
CpG免疫刺激オリゴヌクレオチドも、ワクチン環境でのアジュバントの効果を増強することが報告されている。他のTLR結合性分子、例えば、RNA結合性TLR3、TLR7、TLR8、TLR13、及びDNA結合性TLR9も、使用され得る。
【0076】
有用なアジュバントの他の例としては、ポリICLC(ポリl-リジン及びカルボキシメチルセルロースで安定化されたポリイノシン酸及びポリシチジル酸)、1018ISS、アルミニウム塩、Amplivax、AS15、BCG、CP-870,893、CpG7909、CyaA、dSLIM、GM-CSF、IC30、IC31、Imiquimod、ImuFact IMP321、IS Patch、ISS、ISCOMATRIX、Juvlmmune、LipoVac、MF59、モノホスホリルリピドA、Montanide IMS 1312、Montanide ISA 206、Montanide ISA 50V、Montanide ISA-51、OK-432、OM-174、OM-197-MP-EC、ONTAK、PepTel.RTM、ベクターシステム、PLGAマイクロ粒子、レシキモド、SRL172、Virosomes及び他のウイルス様粒子、VEGF trap、R848、ベータグルカン、Pam3Cys、Aquila’s QS21 stimulon、バディメザン、ならびにAsA404(DMXAA)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
f.免疫原性組成物の他の成分
本明細書に記載の免疫原性組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含み得る。
【0078】
1種以上の腫瘍特異ネオ抗原の懸濁液または分散体、特に、水性等張懸濁液、分散体または両親媒性溶媒が使用され得る。免疫原性組成物は、無菌化されることがあり、及び/または賦形剤、例えば、保存剤、安定化剤、湿潤剤及び/または乳化剤、可溶化剤、浸透圧を調整するための塩、及び/または緩衝剤を含むことがあり、それ自体既知である方法で、例えば、従来の分散及び懸濁化プロセスの手段によって調製される。ある特定の実施形態では、そのような分散体剤または懸濁剤は、粘度調整剤を含み得る。懸濁液または分散体は、2℃~8℃の辺りの温度に保たれる、または選好的には、より長い間にわたる貯蔵のために、冷凍され得、その後、使用の少し前に解凍され得る。注射のためには、ワクチンまたは免疫原性調製物は、水性溶液、好ましくは生理学的に適合する緩衝液、例えば、ハンクス液、リンガー液、注射用グルコース溶液、または緩衝生理食塩水の中に含まれた状態に製剤化され得る。溶液は、製剤化剤、例えば、懸濁化剤、安定化剤及び/または分散剤を含有し得る。
【0079】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、保存剤、例えば、水銀誘導体であるチメロサールを付加的に含む。具体的な実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、0.001%~0.01%のチメロサールを含む。他の実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、保存剤を含んでいない。
【0080】
賦形剤は、アジュバントから独立して存在し得る。賦形剤の機能は、例えば、ワクチンペプチドの溶解性を増大させること、免疫原性組成物の分子量を増加させること、活性もしくは免疫原性を増大させること、安定性を付与すること、生物学的活性を増大させること、または血清中半減期を延ばすことであり得る。賦形剤は、T細胞(例えば、CD4+またはCD8+T細胞)に対する1種以上の腫瘍特異ネオ抗原の提示を助けるためにも使用され得る。賦形剤は、担体タンパク質、例えば、限定されるものではないが、キーホールリンペットヘモシアニン、血清タンパク質、例えば、トランスフェリン、ウシ血清アルブミン、ヒト血清アルブミン、サイログロブリンもしくはオボアルブミン、免疫グロブリン、またはホルモン、例えばインスリンもしくはパルミチン酸であり得る。ヒトの免疫化のためには、担体は、通常、ヒトに許容され、かつ安全な、生理学的に許容される担体である。あるいは、担体は、デキストラン、例えばセファロースであり得る。
【0081】
細胞傷害性T細胞は、そのままの外来抗原自体ではなく、MHC分子に結合したペプチドの形態にある抗原を認識する。MHC分子自体は、抗原提示細胞の細胞表面に位置している。それゆえ、細胞傷害性T細胞の活性化は、ペプチド抗原とMHC分子と抗原提示細胞(APC)との三量体型複合体が存在する場合に可能となる。それは、1種以上の腫瘍特異抗原が細胞傷害性T細胞の活性化のために使用されているだけではなくそれぞれのMHC分子を有する付加的なAPCが加わっている場合に、免疫応答を増強し得る。したがって、いくつかの実施形態では、免疫原性組成物は、少なくとも1種のAPCをさらに含有する。
【0082】
免疫原性組成物は、許容できる担体(例えば、水性担体)を含み得る。様々な水性担体、例えば、水、緩衝水、0.9%生理食塩水、0.3%グリシン、ヒアルロン酸などが使用され得る。これらの組成物は、従来のよく知られた無菌化技術によって無菌化され得る、または無菌濾過され得る。結果として得られた水性溶液は、そのままの状態での使用のために包装されることがあり、または凍結乾燥されることがあり、凍結乾燥された調製物は無菌溶液と混合された後に投与され得る。組成物は、生理学的条件に近づけるために必要とされる薬学的に許容される補助物質、例えば、pH調整及び緩衝剤、張度調整剤、湿潤剤など、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンオレエートなどを含有し得る。
【0083】
本明細書に開示される免疫原性組成物は、1種以上の乳化剤をさらに含み得る。乳化剤は、純粋な乳化剤、または乳化剤の混合物であり得る。乳化剤(複数可)は、薬学的及び/または免疫学的に許容されるものでなければならない。乳化剤は、両親媒性物質または混合物を疎水性担体中に再懸濁させる場合に、両親媒性物質、両親媒性物質と抗原との混合物、または両親媒性と抗原と他のワクチン成分(例えば、アジュバント、ヘルパーペプチド、または腫瘍特異フレームシフトペプチド)との混合物を安定化させるのを助けるために使用され得る。乳化剤の使用は、例えば、疎水性担体中での両親媒性物質または混合物のより均一な分布を促進し得る。
【0084】
乳化剤は両親媒性であり得、それゆえ、乳化剤は広範な化合物を含み得る。乳化剤は、界面活性剤、例えば、非イオン性界面活性剤などであり得る。使用され得る乳化剤の例としては、ポリエチレングリコール化ソルビトールに由来する唯一の液体であるポリソルベート、及びソルビタンエステルが挙げられる。ポリソルベートには、例えば、ソルビタンモノオレエートが含まれ得る。典型的な乳化剤は当技術分野でよく知られており、限定されるものではないが、オレイン酸マンニド(Arlacel(商標)A)、レシチン、Tween(商標)80、Spans(商標)20、80、83及び85を含む。
【0085】
ネオ抗原は、それらを特定の細胞組織、例えばリンパ系組織に指向するものであるリポソームによって投与されることができる。リポソームは、半減期を延ばす上でも有用である。リポソームは、エマルジョン、泡状物質、ミセル、不溶性単層、液晶、リン脂質分散体、ラメラ層などを含む。これらの調製物において、送達されることになるネオ抗原は、リポソームの一部として、単独で、または例えばリンパ系細胞の間で広く認められる受容体に結合する分子、例えばCD45抗原に結合するモノクローナル抗体と一緒に、または他の治療用もしくは免疫原性組成物と一緒に、組み込まれている。かくして、所望のネオ抗原で満たされたリポソームはリンパ系細胞の部位に指向され得、次いでリポソームはそこで、選択された免疫原性組成物を送達する。リポソームは、中性の、及び負に帯電したリン脂質及びステロール、例えばコレステロールを含むのが一般的である標準的な小胞形成脂質から形成され得る。脂質の選択は、通常、例えばリポソームの大きさ、血流中でのリポソームの酸不安定性及び安定性の考慮に従って行われる。リポソームを調製するために様々な方法を利用することができ、それは例えば、Szoka et al.,An.Rev.Biophys.Bioeng.9;467(1980)、米国特許第4,235,871号、同第4,501,728号、同第4,501,728号、同第4,837,028号及び同第5,019,369号に記載されている。
【0086】
免疫細胞に指向する場合、リポソームに組み込むべきリガンドは、例えば、所望の免疫系細胞の細胞表面決定基に特異的な抗体またはその断片を含み得る。リポソーム懸濁液は、数ある中でも投与様式、送達されるペプチド、及び治療する疾患のステージに応じて様々である用量で、静脈内、局部、局所などに投与され得る。
【0087】
免疫細胞を標的とするための代替方法、免疫原性組成物の成分、例えば、抗原(すなわち、腫瘍特異ネオ抗原)、リガンドまたはアジュバント(例えば、TLR)は、ポリ(乳酸-コ-グリコール)マイクロスフェアに組み込まれ得る。ポリ(乳酸-コ-グリコール)マイクロスフェアは、ファゴエンドソーム送達装置として免疫原性組成物の成分を捕捉することができる。
【0088】
治療目的または免疫化目的のためには、本明細書に記載の腫瘍特異ネオ抗原をコードする核酸を患者に投与することもできる。患者に核酸を送達するために複数の方法が好都合に用いられる。例えば、核酸を「裸のDNA」として直接送達することができる。この手法は、例えば、Wolff et al.,Science 247:1465-1468(1990)、ならびに米国特許第5,580,859号及び同第5,589,466号に記載されている。また、例えば米国特許第5,204,253号に記載されているように、核酸を弾道的送達を用いて投与することもできる。DNAのみで構成される粒子を投与することができる。あるいは、DNAを粒子、例えば金粒子に付着させることができる。核酸配列を送達するための手法には、電気穿孔を伴うかまたは伴わない、ウイルスベクター、mRNAベクター及びDNAベクター、線状化または環状のDNAまたはRNAが含まれ得る。また、核酸をカチオン性化合物、例えばカチオン性脂質と複合体化させて送達することもできる。
【0089】
本明細書に開示される方法のステップを実施することによって選択された1種以上の腫瘍特異ネオ抗原を含む免疫原性組成物を製造する方法も、本明細書に開示される。本明細書に記載の免疫原性組成物は、当技術分野で知られている方法を用いて製造され得る。例えば、本明細書に開示される腫瘍特異ネオ抗原またはベクター(例えば、1種以上の腫瘍特異ネオ抗原をコードする少なくとも1つの配列を含むベクター)を生産する方法は、ネオ抗原またはベクターを発現させるのに適した条件の下で宿主細胞を培養することと、ここで、宿主細胞が、ネオ抗原またはベクターをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを含み、ネオ抗原またはベクターを精製することと、を含み得る。標準的な精製方法としては、クロマトグラフィー技術、電気泳動技術、免疫学的技術、沈降技術、透析技術、濾過技術、濃縮技術及びクロマトフォーカシング技術が挙げられる。
【0090】
宿主細胞には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NS0細胞、酵母またはHEK293細胞が含まれ得る。宿主細胞は、本明細書に開示される1つ以上の腫瘍特異ネオ抗原またはベクターをコードする少なくとも1つの核酸配列を含む1種以上のポリヌクレオチドで形質転換され得る。ある特定の実施形態では、単離されるポリヌクレオチドはcDNAであり得る。
【0091】
B.治療方法
本開示はまた、がんの治療をそれを必要とする対象において行う方法であって、本明細書に記載の個別化免疫原性組成物を投与することを含む、当該方法にも関する。
【0092】
がんは、任意の固形腫瘍または任意の血液学的腫瘍であり得る。本明細書に開示される方法は、好ましくは、固形腫瘍に適している。腫瘍は、原発腫瘍(例えば、最初に腫瘍が発生した原部位にある、腫瘍)であり得る。固形腫瘍には、乳癌腫瘍、卵巣癌腫瘍、前立腺癌腫瘍、肺癌腫瘍、腎臓癌腫瘍、胃癌腫瘍、精巣癌腫瘍、頭頸部癌腫瘍、膵臓癌腫瘍、脳の癌腫瘍、及びメラノーマ腫瘍が含まれ得るが、これらに限定されない。血液学的腫瘍には、リンパ腫(例えば、B細胞リンパ腫)及び白血病(例えば、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、及びT細胞リンパ球性白血病)による腫瘍が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0093】
本明細書に開示される方法は、血液悪性腫瘍、固形腫瘍、肉腫、癌腫、ならびに他の固形及び非固形腫瘍を含めた、任意の好適ながん性腫瘍のために用いられ得る。例示となる好適ながんとしては、例えば、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、副腎皮質癌、肛門癌、虫垂癌、星細胞腫、基底細胞癌、脳腫瘍、胆管癌、膀胱癌、骨癌、乳癌、気管支腫瘍、原発不明の癌腫、心臓腫瘍、子宮頸癌、脊索腫、結腸癌、大腸癌、頭蓋咽頭腫、乳管癌、胎児性腫瘍、子宮内膜癌、上衣腫、食道癌、嗅神経芽細胞腫、線維性組織球腫、ユーイング肉腫、眼部癌、胚細胞腫瘍、胆嚢癌、胃癌(gastric cancer)、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍、妊娠性絨毛性疾患、神経膠腫、頭頸部癌、肝細胞癌、組織球症、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、眼内メラノーマ、膵島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎臓癌、ランゲルハンス細胞組織球症、喉頭癌、口唇口腔癌、肝臓癌、非浸潤性小葉癌、肺癌、マクログロブリン血症、悪性線維性組織球腫、メラノーマ、メルケル細胞癌、中皮腫、原発不明の転移性扁平上皮性頸部癌、NUT遺伝子が関与する正中線癌、口腔癌、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫、菌状息肉症、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍、鼻腔及び副鼻腔(par nasal sinus)癌、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、非小細胞肺癌、中咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、乳頭腫症、傍神経節腫、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、クロム親和性細胞腫、下垂体腫瘍、胸膜肺芽腫、原発性中枢神経系リンパ腫、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌、腎盂及び尿管癌、網膜芽細胞腫、ラブドイド腫瘍、唾液腺癌、セザリー症候群、皮膚癌、小細胞肺癌、小腸癌、軟部組織肉腫、脊髄腫瘍、胃癌(stomach cancer)、T細胞リンパ腫、奇形腫様腫瘍、精巣癌、咽喉癌、胸腺腫及び胸腺癌、甲状腺癌、尿道癌、子宮癌、膣癌、外陰癌、ならびにウィルムス腫瘍が挙げられる。好ましくは、がんは、メラノーマ、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、腎臓癌、胃癌(gastric cancer)、結腸癌、精巣癌、頭頸部癌、膵臓癌、脳のがん、B細胞リンパ腫、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、T細胞リンパ球性白血病、膀胱癌、または肺癌である。メラノーマは特に関心対象である。また、乳癌、肺癌及び膀胱癌も特に関心対象である。
【0094】
本明細書に開示される方法は、血液悪性腫瘍、固形腫瘍、肉腫、癌腫、ならびに他の固形及び非固形腫瘍を含めた、任意の好適ながん性腫瘍のために用いられ得る。例示となる好適ながんとしては、例えば、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、副腎皮質癌、肛門癌、虫垂癌、星細胞腫、基底細胞癌、脳腫瘍、胆管癌、膀胱癌、骨癌、乳癌、気管支腫瘍、原発不明の癌腫、心臓腫瘍、子宮頸癌、脊索腫、結腸癌、大腸癌、頭蓋咽頭腫、乳管癌、胎児性腫瘍、子宮内膜癌、上衣腫、食道癌、嗅神経芽細胞腫、線維性組織球腫、ユーイング肉腫、眼部癌、胚細胞腫瘍、胆嚢癌、胃癌(gastric cancer)、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍、妊娠性絨毛性疾患、神経膠腫、頭頸部癌、肝細胞癌、組織球症、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、眼内メラノーマ、膵島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎臓癌、ランゲルハンス細胞組織球症、喉頭癌、口唇口腔癌、肝臓癌、非浸潤性小葉癌、肺癌、マクログロブリン血症、悪性線維性組織球腫、メラノーマ、メルケル細胞癌、中皮腫、原発不明の転移性扁平上皮性頸部癌、NUT遺伝子が関与する正中線癌、口腔癌、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫、菌状息肉症、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍、鼻腔及び副鼻腔(par nasal sinus)癌、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、非小細胞肺癌、中咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、乳頭腫症、傍神経節腫、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、クロム親和性細胞腫、下垂体腫瘍、胸膜肺芽腫、原発性中枢神経系リンパ腫、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌、腎盂及び尿管癌、網膜芽細胞腫、ラブドイド腫瘍、唾液腺癌、セザリー症候群、皮膚癌、小細胞肺癌、小腸癌、軟部組織肉腫、脊髄腫瘍、胃癌(stomach cancer)、T細胞リンパ腫、奇形腫様腫瘍、精巣癌、咽喉癌、胸腺腫及び胸腺癌、甲状腺癌、尿道癌、子宮癌、膣癌、外陰癌、ならびにウィルムス腫瘍が挙げられる。好ましくは、がんは、メラノーマ、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、腎臓癌、胃癌(gastric cancer)、結腸癌、精巣癌、頭頸部癌、膵臓癌、脳のがん、B細胞リンパ腫、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、T細胞リンパ球性白血病、膀胱癌、または肺癌である。メラノーマは特に関心対象である。また、乳癌、肺癌及び膀胱癌も特に関心対象である。
【0095】
免疫原性組成物は、対象の免疫系、特に、特定のCD8+T細胞またはCD4+T細胞の応答を刺激する。CD8+及びヘルパーCD4+T細胞によって産生されるインターフェロンガンマは、PD-L1の発現を調節する。腫瘍細胞におけるPD-L1発現は、T細胞によって攻撃されると上方制御される。それゆえ、腫瘍ワクチンは、特定のT細胞の産生を誘導し得ると同時にPD-L1の発現を上方制御し得、このことが免疫原性組成物の有効性を制限し得る。しかも、免疫系が活性化されるとはいえ、抗原提示細胞上のリガンドB7-1/B7-2と結合して免疫抑制剤の作用をするものであるT細胞表面受容体CTLA-4の発現はそれに対応して増加する。このため、いくつかの例では、対象は、抗免疫抑制薬または免疫刺激薬、例えばチェックポイント阻害剤をさらに投与され得る。チェックポイント阻害剤には、抗CTL4-A抗体、抗PD-1抗体及び抗PD-L1抗体、Lag3経路、Tim3経路、ICOS経路、OX-40経路、GITR経路または4-1BB経路の阻害剤が含まれ得るが、これらに限定されない。これらのチェックポイント阻害剤は、T細胞の免疫チェックポイントタンパク質に結合して腫瘍細胞によるT細胞機能の抑制を除去する。抗体によるCTLA-4またはPD-L1の遮断は、患者の中のがん性細胞に対する免疫応答を増強し得る。CTLA-4は、ワクチン接種プロトコールに従う場合、有効であることが示されている。
【0096】
本明細書に記載の免疫原性組成物は、がんと診断されている、既にがんを患っている、再発がん(すなわち、再燃)を有する、またはがんを発症するリスクを有する対象に、投与され得る。本明細書に記載の免疫原性組成物は、他の形態のがん治療(例えば、化学療法、免疫療法または放射線)に対して抵抗性を有する対象に投与され得る。本明細書に記載の免疫原性組成物は、他の標準治療がん療法(例えば、手術、化学療法、免疫療法または放射線)の前に、それと一緒に、またはその後に、対象に投与され得る。本明細書に記載の免疫原性組成物は、他の標準治療がん療法(例えば、手術、化学療法、免疫療法または放射線)と同時に、その後に、またはそれと組み合わせて、投与され得る。
【0097】
対象は、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、または腫瘍特異的な応答を所望される任意の動物であり得る。
【0098】
本明細書に記載の免疫原性組成物は、腫瘍特異ネオ抗原に対する免疫応答を誘発するのに十分であってなおかつ症候及び/または合併症を終わらせるかまたは少なくとも部分的に止めるのに十分な量で、対象に投与され得る。実施形態において、免疫原性組成物は、長続きする免疫応答をもたらし得る。長続きする免疫応答は、免疫増強用量の免疫原性組成物を対象に投与することによって確立され得る。免疫原性組成物に対する免疫応答は、免疫増強用量を対象に投与することによって延長され得る。実施形態では、少なくとも1回、少なくとも2回、少なくとも3回の、またはそれを上回る用量を投与してがんを減弱させることができる。1回目の免疫増強用量は、免疫応答を少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、または少なくとも1000%増大させ得る。2回目の免疫増強用量は、免疫応答を少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、または少なくとも1000%増大させ得る。3回目の免疫増強用量は、免疫応答を少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、または少なくとも1000%増大させ得る。
【0099】
免疫応答を誘発するのに十分な量は、「治療的有効量」と定義される。この用途のために有効な量は、例えば、組成、投与様式、治療する疾患のステージ及び重症度、患者の体重及び全身の健康状態、ならびに処方医の判断によって決まるであろう。免疫原性組成物が、通常、重篤な疾患状態、すなわち、生死に関わるまたは生死に関わる可能性がある状況、特に、がんが転移した場合において採用され得ることは、念頭に置いておかなければならない。そのような場合には、外来物質を最小限に抑えること及びネオ抗原の比較的無毒な性質を考慮して、これらの免疫原性組成物をかなり余分に投与することが可能であり、また、それが望ましいという所感を処置医が持ち得る。
【0100】
本明細書に提供される免疫原性組成物は、例えば、限定はされないが、経口、皮内、クモ膜下腔内、腫瘍内、筋肉内、腹腔内、静脈内、局所、皮下、経皮、鼻腔内及び吸入経路によって、ならびにスカリフィケーション(例えば二股の針を使用して、皮膚の上層を引っ掻くこと)によって、対象に投与され得る。腫瘍部位で免疫原性組成物を投与して腫瘍に対する局所免疫応答を誘導することができる。好ましい投与経路は、クモ膜下腔内または筋肉内注射による経路である。
【0101】
免疫原性組成物の投薬量は、組成物のタイプ、及び対象の年齢、体重、体表面積、個別の条件、個別の薬物動態データ、及び投与の様式によって決まり得る。
【0102】
対象は、免疫原性組成物の1回以上の用量を投与され得る。いくつかの例では、免疫原性組成物は、1回用量、2回用量、3回用量、4回用量、5回用量、6回用量、7回用量、8回用量、9回用量、10回用量またはそれを上回る用量として投与される。対象に免疫原性組成物の6回用量を投与することが好ましい。各用量を同じ時間に投与してもよいが、各用量を異なる時間に投与することが好ましい。各用量は任意の好適な間隔で投与され得る。各用量は、先行用量の投与の約2日後、約5日後、約1週間後、約2週間後、約3週間後、約4週間後、約5週間後、約6週間後、約7週間後、約8週間後、約9週間後、約10週間後、約11週間後、約12週間後、またはずっと後に投与され得る。免疫原性組成物の各用量の間の間隔は、同じ時間間隔または異なる時間間隔であり得る。各用量は、好ましくは、免疫原性組成物の先行用量の投与の少なくとも約1週間~約4週間後に投与される。典型的には、各用量は、免疫原性組成物の先行用量の約4週間後に投与される。
【0103】
通常は、免疫原性組成物を、各用量ごとに2つ以上のペプチドプールとして投与することが好ましい。免疫原性組成物は、各用量ごとに約2個、約3個、約4個または約5個のペプチドプールとして投与され得る。好ましくは、各用量ごとに4つのペプチドプールを投与する。いくつかの例では、免疫原性組成物を4つのペプチドプールとして6回用量で投与する。
【0104】
対象は各ペプチドプールを対象の1本以上の肢に投与され得る。対象は各ペプチドプールを約1~約4本の肢に投与され得る。各ペプチドプールは対象の同じ肢に投与され得る。各ペプチドプールは対象の異なる肢に投与され得る。各ペプチドプールを対象の異なる肢に投与することが好ましい。
【0105】
各ペプチドプールは、対象の同じ肢に1回以上の用量で投与され得る。例えば、ペプチドプールを用量ごとに左腕に投与する。あるいは、各ペプチドプールは、対象の異なる肢に1回以上の用量で投与され得る。例えば、ペプチドプールは、1回用量で左腕に、2回目の用量で右腕に、及び3回目の用量で左右に投与され得る。各ペプチドプールを、用量ごとに対象の同じ肢に投与することが好ましい。
【0106】
方法は、免疫原性組成物の各用量の間にアジュバントを投与することをさらに含み得る。アジュバントの目的は、ワクチンによって誘導される腫瘍内へのT細胞浸潤を可能にすること、及びワクチンによって誘導される免疫応答を支援することである。アジュバントは、免疫原性組成物の各用量の間に1回以上投与され得る。いくつかの例では、アジュバントは、免疫原性組成物の各用量の間に約1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、またはそれよりも多く投与され得る。典型的には、アジュバントを免疫原性組成物の各用量の間に週1回投与することが好ましい。
【0107】
対象は、免疫原性組成物による治療の開始前にアジュバントを投与され得る。アジュバントは、免疫原性組成物の開始の約1週間前、約2週間前、約3週間前、約4週間前、またはそれよりももっと前に投与され得る。
【0108】
免疫原性組成物は、免疫原性組成物1つあたり約10~約500μgの各腫瘍特異ネオ抗原長鎖及び/または短鎖ペプチドを含み得る。免疫原性組成物は、免疫原性組成物1つあたり約10μg、約20μg、約30μg、約40μg、約50μg、約60μg、約70μg、約80μg、約90μg、約100μg、約110μg、約120μg、130μg、140μg、約150μg、約160μg、約170μg、約180μg、約190μg、約200μg、約210μg、約220μg、約230μg、約240μg、約250μg、約260μg、約270μg、約280μg、約290μg、約300μg、約310μg、約320μg、約330μg、約340μg、約350μg、約360μg、約370μg、約380μg、約390μg、約400μg、約410μg、約420μg、約430μg、約440μg、約450μg、約460μg、約470μg、約480μg、約490μg、約500μgの各腫瘍特異ネオ抗原長鎖及び/または短鎖ペプチドを含み得る。典型的には、免疫原性組成物は、免疫原性組成物1つあたり約300μgの腫瘍特異ネオ抗原長鎖及び/または短鎖ペプチドを含む。
【0109】
各ペプチドプールは、最大約900μgのアジュバントと混和され得る。例えば、各ペプチドプールは、約10μg、約20μg、約30μg、約40μg、約50μg、約60μg、約70μg、約80μg、約90μg、約100μg、約110μg、約120μg、130μg、140μg、約150μg、約160μg、約170μg、約180μg、約190μg、約200μg、約210μg、約220μg、約230μg、約240μg、約250μg、約260μg、約270μg、約280μg、約290μg、約300μg、約310μg、約320μg、約330μg、約340μg、約350μg、約360μg、約370μg、約380μg、約390μg、約400μg、約410μg、約420μg、約430μg、約440μg、約450μg、約460μg、約470μg、約480μg、約490μg、約500μg、約550μg、約600μg、約650μg、約700μg、約750μg、約800μg、約850μgまたは約900μgのアジュバントと混和され得る。
【0110】
本明細書に記載の免疫原性組成物は、単独で、または他の治療剤と組み合わせて、対象に投与され得る。治療剤は、例えば、化学療法剤、ホルモン調節剤、シグナル伝達カスケード阻害剤、放射線、または免疫療法であり得る。特定のがんに適する任意の治療的処置が施与され得る。例示的な化学療法剤としては、アルデスロイキン、アルトレタミン、アミフォスチン、アスパラギナーゼ、ブレオマイシン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クラドリビン、シサプリド、シスプラチン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ドロナビノール、エポエチンアルファ、エトポシド、フィルグラスチム、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、グラニセトロン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、インターフェロンアルファ、イリノテカン、ランソプラゾール、レバミゾール、ロイコボリン、メゲストロール、メスナ、メトトレキサート、メトクロプラミド、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、オメプラゾール、オンダンセトロン、パクリタキセル(Taxol(登録商標))、ピロカルピン、プロクロルペラジン、リツキシマブ、タモキシフェン、タキソール、トポテカン塩酸塩、トラスツズマブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン及びビノレルビン酒石酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。対象は、小分子、または標的療法(例えば、キナーゼ阻害剤)を投与され得る。対象は、抗CTLA抗体、または抗PD-1抗体、または抗PD-L1抗体をさらに投与され得る。抗体によるCTLA-4またはPD-L1の遮断は、患者におけるがん性細胞に対する免疫応答を増強し得る。
【実施例】
【0111】
以下の実施例は、本開示を例示する役割を果たすものであり、決して本開示を限定するものではない。
【0112】
実施例1
1.個別化ワクチン
各個別化ワクチン製品は、投与時に既製アジュバントであるポリICLC(Hiltonol(登録商標)(Oncovir,Inc.,Washington,DC))と混合される、各々最大5種のペプチドを有する4つの患者固有の非複合体化ペプチドプールから成り立つことになる。個別化ペプチドプールの成分、及びプールの数を決定するためには、患者試料をHLA型判定に供することに加えて、各患者からの組織試料をDNA及びRNA配列決定に供することになる。類似するデータを、複数の生物工学アルゴリズムを用いて解析して、患者の疾患への指向活性の見込みを有するネオ抗原性ペプチドの患者固有の特有な組を同定することになる。各々が1種の汎DR CD4-ヘルパーエピトープ(PADRE)と共に5種以下のペプチドを含んだ、最大4つの患者固有ペプチドプールを製造することになる(
図1)。
【0113】
各ワクチンプールの組成(どのペプチドをどのプールの中に組み込むことになるか)は、ペプチドの溶解性、及び予測される免疫原性/レシピエント免疫学的応答性についての情報に従う。具体的には、疎水性アミノ酸の割合のようなペプチドの物理化学特性によって、どのペプチドが最も共溶解性であるかが判定される。製造業者は、コンピュータ伝達経路及び機械学習モデルから予測免疫原性を提供されることになる。製造業者は、平均免疫原性が類似するすべてのペプチドを含んだペプチドプールを作ろうとすることになる。
【0114】
本質的に、各患者固有ワクチンは、天然に提示されるMHCクラスIエピトープまたはその伸長形態、例えば少なくとも1種のネオ抗原性腫瘍特異変異体を代表する、19種未満のペプチドからなることになる。これらのペプチドは抗原提示細胞上での提示を可能にするが、この提示は、T細胞媒介抗腫瘍免疫反応を誘導すると予期されるものである。ワクチンペプチドの共溶解性を確保するためには、それらを個別投与のための最大4つのペプチドプールに分割することになる。製剤化中に、所望のT細胞応答の発生を支援すべく各ペプチドプールにワクチンアジュバント(ここでは、ポリICLC、Hiltonol(登録商標))を添加することになる。さらには、CD4 T細胞媒介「ヘルパー」応答を誘導してそれによってCD8 T細胞の初回刺激及び増殖を支援することを目的として、汎DRヘルパーエピトープであるPADREをこれらのペプチドプールワクチンのうちの1つの中に含ませることになる。
【0115】
ペプチドは各々、どれも修飾のない天然に存在するL-アミノ酸から成り立つ30アミノ酸(AA)以下の長さを有することになる。ペプチド配列は、どれも患者の腫瘍に見られる少なくとも1つの(非同義の、またはインデルによる)変異を組み込んでいるため、患者の正常なタンパク質配列とは異なることになる。PADREペプチドは以前に記載がなされており(AKFVAAWTLKAAA(配列番号3))、天然に存在するL-アミノ酸からなる。PADREペプチド以外は、製品中に含有されるペプチド配列は患者によって異なっている。
【0116】
ポリICLC(別名Hiltonol(登録商標))は、個別化ワクチンのアジュバント成分として使用されることになる。さらには、ポリICLCは、計画された6回のワクチン接種訪問の合間に注射されて、ワクチンによって誘導されるネオ抗原特異的なT細胞の腫瘍ホーミングを支援する及び免疫抑制的腫瘍微小環境を軽減することが計画されている。
【0117】
ポリリジン及びカルボキシメチルセルロースで安定化されたポリイノシン酸-ポリシチジル酸は、数年前に短期間がん治験において高用量(最大300mcg/kg IV)でインターフェロン(IFN)誘導剤として使用された安定化二本鎖RNA(dsRNA)である。他方、より低い用量(10~50mcg/kg)のポリICLCは、より広範な宿主防御、強力なアジュバント作用、ならびに特異的な抗腫瘍及び抗ウイルス作用を誘導することが示されている。ポリICLCはまた、in vivoで腫瘍タンパク質合成及び細胞増殖を優先的に減少させることも見出されている。
【0118】
2.剤形及び投与
提案される第I相臨床試験では、腫瘍特異ネオ抗原をポリICLCと一緒に試験参加者に投与することになる。両方の適応症群に共通して、ワクチンの、及びポリICLCの単回用量を、以下の表1に示されるとおりに与えることになる。
【表1】
【0119】
4つのワクチンプール(ポリICLCアジュバントと混和したペプチドプール)の6回用量を4週に1回投与することになる。これらのワクチン接種は、ワクチンを与える週を除いて週に1回のポリICLCのIM注射と隣り合わせにされる。IMポリICLC注射の目的は、ワクチンによって誘導される腫瘍内へのT細胞浸潤を可能にすること、及びワクチンによって誘導されるTh1免疫応答を支援することである。治療計画を
図2に示す。
【0120】
3.ワクチン製剤
ワクチンは、各患者の腫瘍抗原プロファイル及び予測免疫応答性に応じて独特に作られるように臨床現場で「ベッド脇での」最終製剤化を経ることになる。ペプチドプールは、プール1つあたり1mLの総注射液となるようにアジュバント溶液(500μgのポリICLC)で所望の300μg/ペプチドの濃度に希釈されることになる。手順は、アジュバントと混合する前に無菌粒子フィルターでワクチンペプチドプール製品を濾過する付加的ステップを必要としつつ、ワクチン調製及び投与のための標準的な手順に倣うことになる。
【0121】
ワクチンプールに製剤化すべきワクチンペプチドの選択は、それらの予測免疫原性、ならびに溶解性及び製造性を支配している物理化学特性によって決まることになる。製剤化すべき個々のペプチドは、最も多い数の免疫原性ペプチド(20種以下、任意選択的にPADREを含む)を組み込むことを目的として試験群とペプチド製造業者とによって共同で同定されることになる。
【0122】
本発明者らのワクチンペプチド予測アルゴリズムによって免疫原性が上位に順位付けられた可能な限り多くのペプチドを溶解させるためには、DMSOを使用することになる。様々な承認薬において低濃度(およそ4%v/v)のDMSOが賦形剤として使用され、幹細胞輸注液において凍結保護剤として使用された場合に安全であることが示されている。
【0123】
実施例2:ステージIIIC~IVのメラノーマまたはホルモン受容体陽性Her2陰性乳癌を有する対象を治療するための第I相臨床試験
第I相臨床試験を用いて、転移性または難治性のステージIIIC~IVのメラノーマまたはホルモン受容体陽性Her2陰性乳癌を有する約20名の対象の治療における個別化ネオ抗原ペプチドワクチンの安全性を調べる。個別化ネオ抗原ペプチドワクチンをTh1極性化アジュバントであるポリICLCと一緒に投与することで、患者の腫瘍に対する多クローン性で多エピトープの細胞傷害性T細胞免疫性が誘導され得る。
【0124】
試験される具体的な疾患は、解剖学的ステージIVの乳癌AJCC v8、臨床的ステージIIIの皮膚メラノーマAJCC v8、臨床的ステージIVの皮膚メラノーマAJCC v8、ホルモン受容体陽性乳癌、局所進行性皮膚メラノーマ、転移性末端黒子型メラノーマ、転移性結膜メラノーマ、転移性皮膚メラノーマ、転移性Her2陰性乳癌、転移性粘膜メラノーマ、病理学的ステージIIIC皮膚メラノーマAJCC v8、病理学的ステージIIID皮膚メラノーマAJCC v8、病理学的ステージIV皮膚メラノーマAJCC v8、予後的ステージIV乳癌AJCC v8、再発性末端黒子型メラノーマ、再発性皮膚メラノーマ、再発性粘膜メラノーマ、難治性Her2陰性乳癌、切除不可の末端黒子型メラノーマ、切除不可の皮膚メラノーマ、及び切除不可の粘膜メラノーマである。
【0125】
1.概要
対象に個別化ネオ抗原ペプチドワクチンを筋肉内注射によって4週に1回与える。ワクチンを与えない週に、対象にポリICLC(Hiltonol(登録商標)、ポリL-リジン安定化剤を含むポリI:ポリC、ポリリジン及びカルボキシメチルセルロースで安定化されたポリイノシン酸-ポリシチジル酸、ポリリボイノシン酸-ポリリボシチジル酸-ポリリジンカルボキシメチルセルロース、安定化ポリリボイノシン酸/ポリリボシチジル酸)を筋肉内に週に1回与える。ワクチンは、ポリICLCを開始してから2週間後に初めて投与され、その後、4週に1回投与される。また、ポリICLCを開始してから2週間後にニボルマブ(BMS-936558、CMAB819、MDX-1106、NIVO、ニボルマブバイオ後続品CMAB819、ONO-4538、Opdivo(登録商標)(Bristol Myers Squibb,New York,NY))を2週間または4週間ごとに静脈内に投与する。ワクチン処置の継続期間は25週間であり、但し、対象の疾患が進行するかまたは治療が許容できない毒性を引き起こす場合はこの限りでない。
【0126】
ワクチン処置の完了後、疾患進行または許容される毒性の非存在下で最長12ヶ月間にわたって対象にニボルマブを2週間または4週間ごとに投与する。
【0127】
試験治療の完了後、対象の経過観察を最長24、36及び48週間にわたって行う。
【0128】
2.アウトカム評価基準
主要アウトカム評価基準は、個別化ネオ抗原ワクチンの1回目の用量の後の1年間における有害事象の発生率である。有害事象は、有害事象共通用語規準のバージョン5.0によって評価される。
【0129】
副次アウトカム評価基準は、48週間後の、製剤化され投与された個別化ネオ抗原ワクチンの数;同じく48週間後の、少なくとも5種のワクチンペプチドを使用して製剤化された個別化ネオ抗原ワクチンの数;スクリーニング訪問生検から16週間後までに製剤化された個別化ネオ抗原ワクチンの数;個別化ネオ抗原ワクチンの1回目の用量の後の1年間で免疫関連の固形腫瘍における応答評価基準の基準によって評価された最も良好な全奏効;及び個別化ネオ抗原ワクチンの1回目の用量の後の1年間の無増悪生存率である。
【0130】
3.適格性判断基準
試験は、任意の性別の18歳以上の成人が利用できるものである。健常ボランティアは受け入れていない。
【0131】
均等物
当業者であれば、本明細書に記載される本発明の方法の他の好適な改変形態及び適合形態が、自明であり、本開示の範囲または実施形態から逸脱することなく好適な均等物を用いてもたらされ得ることは、容易に分かるであろう。今や、ある特定の組成物及び方法が詳しく記載されたので、それらは、単に例示のために紹介されているにすぎず限定が意図されていない以下の実施例を参照することによって、より明確に理解されるであろう。
【配列表】
【国際調査報告】