(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】変異型ヒトNAxタンパク質およびスクリーニング方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/02 20060101AFI20240517BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240517BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20240517BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240517BHJP
【FI】
C12Q1/02
C07K19/00
C12N15/62 Z
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573036
(86)(22)【出願日】2022-05-27
(85)【翻訳文提出日】2024-01-15
(86)【国際出願番号】 US2022031302
(87)【国際公開番号】W WO2022256251
(87)【国際公開日】2022-12-08
(32)【優先日】2021-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】513004906
【氏名又は名称】ユニバーシティ・オブ・コペンハーゲン
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF COPENHAGEN
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ノーランド, キャメロン エル.
(72)【発明者】
【氏名】パヤンデ, ジャン メヘル-ディーン
(72)【発明者】
【氏名】プレス, ステファン アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】チュア, ハン チョウ
(72)【発明者】
【氏名】クションサク, マルク
【テーマコード(参考)】
4B063
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ13
4B063QR59
4B063QR80
4B063QS38
4B063QX04
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、ヒトNa
Xの活性を調節する分子を同定するために使用され得る変異型ヒトNa
Xを使用する変異型ヒトNa
Xイオンチャネル(「Na
X」)タンパク質およびスクリーニング方法に関する。例えば、いくつかの実施形態では、スクリーニング方法は、潜在的Na
Xモジュレーターの存在下で変異型ヒトNa
Xに対してイオンチャネルアッセイを実施することを含む。本開示はまた、ヒトNa
Xのモジュレーターとして作用する分子およびそのような分子を検出するための関連キットに関する。
【選択図】
図19A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトNa
Xイオンチャネルタンパク質(Na
X)モジュレーターを同定する方法であって、
a)ヒトNa
XのDIIIドメインの少なくとも一部がヒトまたは哺乳動物Na
Vタンパク質(Na
V)のDIIIドメインの対応する部分で置換されている変異型ヒトNa
Xを提供する工程、
b)潜在的Na
Xモジュレーターの存在下で前記変異型ヒトNa
Xに対してイオンチャネルアッセイを実施する工程、および
c)前記潜在的モジュレーターの存在下での前記アッセイにおける前記変異型ヒトNa
Xの活性が前記潜在的モジュレーターの非存在下での活性よりも高いかまたは低い場合に、前記潜在的モジュレーターをヒトNa
Xモジュレーターとして同定する工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記変異型ヒトNa
Xが、ヒトまたは哺乳動物Na
V由来のDIII S1~S6領域の全部または一部を含み、場合により、置換された前記ヒトNa
Xの前記DIIIドメインの少なくとも一部が、(a)DIII(残基920~1200)、(b)DIII電圧センサドメインIII(VSD3)およびS4-S5リンカー(残基920~1058)、(c)DIII VSD3、S4-S5リンカーおよびS5(残基920~1078)、(d)DIIIおよびDII-DIIIリンカー(残基733~1200)、(e)DIIIおよびDIII-DIVリンカー(920~1237)、(f)DIIIおよびDII-DIIIリンカーおよびDIII-DIVリンカー(733~1237)を含むか、またはこれらからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ヒトまたは哺乳動物Na
VのDIIIドメインの対応する部分で置換された前記ヒトNa
XのDIIIドメインの少なくとも一部が、S5を含まず、かつ/またはS6を含まない、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ヒトまたは哺乳動物Na
VのDIIIドメインの対応する部分で置換された前記ヒトNa
XのDIIIドメインの少なくとも一部が、S1、S2、S3、S4および/またはS4-S5リンカーのいずれをも含まない、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ヒトNa
Xの前記DIIIドメインの少なくとも一部が、哺乳動物Nav1.1、哺乳動物Nav1.2、哺乳動物Nav1.3、哺乳動物Nav1.4、哺乳動物Nav1.5、哺乳動物Nav1.6、哺乳動物Nav1.7、哺乳動物Nav1.8、哺乳動物Nav1.9、ヒトNav1.1、ヒトNav1.2、ヒトNav1.3、ヒトNav1.4、ヒトNav1.5、ヒトNav1.6、ヒトNav1.7、ヒトNav1.8またはヒトNav1.9の対応する部分で置換されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ヒトNa
Xの前記DIIIドメインの少なくとも一部が、ヒトNav1.7の対応する部分で置換されている、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記変異型ヒトNa
Xが、キメラ構築物2、キメラ構築物3、キメラ構築物7、キメラ構築物9、キメラ構築物11、キメラ構築物15もしくはキメラ構築物19であるか、または前記変異型ヒトNa
Xが、配列番号3、4、8、10、12、16もしくは20のうちの1つのアミノ酸配列を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ヒトNa
Xイオンチャネルタンパク質(Na
X)モジュレーターを同定する方法であって、
a)ヒトNa
Xの2つ、3つまたは4つのS6アルファヘリックスのそれぞれの上の少なくとも1つの残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む変異型ヒトNa
Xを提供する工程、
b)潜在的モジュレーターの存在下で、前記変異型ヒトNa
Xに対してイオンチャネルアッセイを実施する工程、および
c)前記潜在的モジュレーターの存在下での前記アッセイにおける前記変異型ヒトNa
Xの活性が前記潜在的モジュレーターの非存在下での活性よりも高いかまたは低い場合に、前記潜在的モジュレーターをヒトNa
Xモジュレーターとして同定する工程
を含む、方法。
【請求項9】
前記変異型ヒトNa
Xが、前記4つのS6アルファヘリックスのうちの2つの上にある少なくとも1つの残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記変異型ヒトNa
Xが、前記4つのS6アルファヘリックスの3つの上の少なくとも1つの残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記変異型ヒトNa
Xが、4つ全てのS6アルファヘリックスの上の少なくとも1つの残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記変異型ヒトNa
Xが、前記4つのS6アルファヘリックスの少なくとも3つの上のアミノ酸残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による1つの置換を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記変異型ヒトNa
Xが、配列番号1の以下のセグメント:残基383~397(ドメインI(D1)のS6中)、残基717~731(DIIのS6中)、残基1182~1196(DIIIのS6中)および/または残基1485~1499(DIVのS6中)のうちの少なくとも2つの中に、グリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基によるアミノ酸残基の1つまたは2つの置換を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記変異型ヒトNa
Xが、配列番号1の以下のセグメント:残基383~397(ドメインI(D1)のS6中)、残基717~731(DIIのS6中)、残基1182~1196(DIIIのS6中)および/または残基1485~1499(DIVのS6中)のうちの少なくとも3つの中に、グリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基によるアミノ酸残基の1つまたは2つの置換を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記変異型ヒトNa
Xが、配列番号1の以下のセグメント:残基383~397(ドメインI(D1)のS6中)、残基717~731(DIIのS6中)、残基1182~1196(DIIIのS6中)および/または残基1485~1499(DIVのS6中)のそれぞれの中に、グリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基によるアミノ酸残基の1つまたは2つの置換を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
前記変異型ヒトNa
Xが、残基L390、F724、I1189およびI1492のうちの2つ以上におけるアミノ酸残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
前記変異型ヒトNa
Xが、残基L390、F724、I1189およびI1492のうちの3つ以上におけるアミノ酸残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項18】
前記変異型ヒトNa
Xが、アミノ酸残基L390、F724およびI1189の、またはアミノ酸残基F724、I1189およびI1492の、グリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記変異型ヒトNa
Xが、野生型ヒトNa
Xと比較した置換F724Q、I1189TおよびI1492Tを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ヒトNa
Xが、野生型ヒトNa
Xと比較した置換L390E、I1189EおよびI1492Eを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記イオンチャネルアッセイが、前記変異型ヒトNa
Xの同定されたモジュレーターの存在下で実施される、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記変異型ヒトNa
Xの同定されたモジュレーターが、テトロドトキシン(TTX)、キニジン、フレカイニド、テトラカインまたはリドカインの1つ以上である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記潜在的モジュレーターが、ペプチドまたは大環状分子または抗体である、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記潜在的モジュレーターが小分子である、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記変異型ヒトNa
Xおよび野生型ヒトNa
Xのいずれかまたは両方に対する、パート(c)で同定された潜在的モジュレーターの結合親和性を決定することをさらに含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記潜在的モジュレーターが、前記変異型ヒトNa
Xおよび野生型ヒトNa
Xのいずれかまたは両方に、10μM以下、10μM~50nM、10μM~500nM、1μM以下、1μM~50nM、または100nM以下のEC50またはIC50で結合する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記イオンチャネルアッセイが、パッチクランプもしくは自動パッチクランプアッセイ、イオンフラックスアッセイ、またはイオンもしくは電圧感受性色素アッセイである、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
パート(c)で同定された前記潜在的モジュレーターが、前記アッセイにおける前記変異型ヒトNa
Xの活性を、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%低下させる、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
パート(c)で同定された前記潜在的モジュレーターが、前記アッセイにおいて、10nM~500μM、50nM~500μM、10nM~50μM、100nM~500μM、100nM~50μM、1~500μM、1~50μM、10~500μMまたは50~250μMの最大半値濃度で前記変異型ヒトNa
Xの活性を低下させる、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
パート(c)で同定された前記潜在的モジュレーターが、前記アッセイにおいて前記変異型ヒトNa
Xの活性を増加させる、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
ペプチド、大環状分子、小分子または抗体であってもよい、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法によって同定されるヒトNa
Xのモジュレーター。
【請求項32】
変異型ヒトNa
Xイオンチャネル(Na
X)タンパク質であって、ヒトNa
XのDIIIドメインの少なくとも一部が、ヒトまたは哺乳動物Na
Vタンパク質(Na
V)のDIIIドメインの対応する部分で置換されている、変異型ヒトNaXイオンチャネル(NaX)タンパク質。
【請求項33】
請求項32に記載の変異型ヒトNa
Xであって、前記変異型ヒトNa
Xが、ヒトまたは哺乳動物Na
V由来のDIII S1~S6領域の全部または一部を含み、場合により、置換された前記ヒトNa
Xの前記DIIIドメインの前記少なくとも一部が、(a)DIII(残基920~1200)、(b)DIII電圧センサドメインIII(VSD3)およびS4-S5リンカー(残基920~1058)、(c)DIII VSD3、S4-S5リンカーおよびS5(残基920~1078)、(d)DIIIおよびDII-DIIIリンカー(残基733~1200)、(e)DIIIおよびDIII-DIVリンカー(920~1137)、(f)DIIIおよびDII-DIIIリンカーおよびDIII-DIVリンカー(733~1237)を含むか、またはこれらからなる、変異型ヒトNaX。
【請求項34】
前記ヒトまたは哺乳動物Na
VのDIIIドメインの対応する部分によって置換された前記ヒトNa
Xの前記DIIIドメインの少なくとも一部が、S5を含まず、かつ/またはS6を含まない、請求項32または33に記載の変異型ヒトNa
X。
【請求項35】
前記ヒトまたは哺乳動物Na
VのDIIIドメインの対応する部分によって置換された前記ヒトNa
Xの前記DIIIドメインの少なくとも一部が、S1、S2、S3、S4および/またはS4-S5リンカーのいずれをも含まない、請求項32~34のいずれか一項に記載の変異型ヒトNa
X。
【請求項36】
前記ヒトNa
XのDIIIドメインの少なくとも一部が、哺乳動物Nav1.1、哺乳動物Nav1.2、哺乳動物Nav1.3、哺乳動物Nav1.4、哺乳動物Nav1.5、哺乳動物Nav1.6、哺乳動物Nav1.7、哺乳動物Nav1.8、哺乳動物Nav1.9、ヒトNav1.1、ヒトNav1.2、ヒトNav1.3、ヒトNav1.4、ヒトNav1.5、ヒトNav1.6、ヒトNav1.7、ヒトNav1.8またはヒトNav1.9の対応する部分によって置換されている、請求項32~35のいずれか一項に記載の変異型ヒトNa
X。
【請求項37】
前記ヒトNa
Xの前記DIIIドメインの少なくとも一部が、ヒトNav1.7の対応する部分によって置換されている、請求項36に記載の変異型ヒトNa
X。
【請求項38】
前記変異型ヒトNa
Xが、キメラ構築物2、キメラ構築物3、キメラ構築物7、キメラ構築物9、キメラ構築物11、キメラ構築物15もしくはキメラ構築物19であるか、または前記変異型ヒトNa
Xが、配列番号3、4、8、10、12、16もしくは20の1つのアミノ酸配列を含む、請求項37に記載の変異型ヒトNa
X。
【請求項39】
2つ、3つ、または4つのS6アルファヘリックスのそれぞれの上の少なくとも1つの残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む、変異型ヒトNa
Xイオンチャネル(Na
X)タンパク質。
【請求項40】
前記変異型ヒトNa
Xが、前記4つのS6アルファヘリックスのうちの2つの上にある少なくとも1つの残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む、請求項39に記載の変異型ヒトNa
X。
【請求項41】
前記変異型ヒトNa
Xが、前記4つのS6アルファヘリックスの3つの上の少なくとも1つの残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む、請求項39に記載の変異型ヒトNa
X。
【請求項42】
前記変異型ヒトNa
Xが、4つ全てのS6アルファヘリックスの上の少なくとも1つの残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む、請求項39に記載の変異型ヒトNa
X。
【請求項43】
前記変異型ヒトNa
Xが、前記4つのS6アルファヘリックスの少なくとも3つの上のアミノ酸残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による1つの置換を含む、請求項39に記載の変異型ヒトNa
X。
【請求項44】
請求項39に記載の変異型ヒトNa
Xであって、前記変異型ヒトNa
Xが、配列番号1の以下のセグメント:残基383~397(ドメインI(D1)のS6中)、残基717~731(DIIのS6中)、残基1182~1196(DIIIのS6中)および/または残基1485~1499(DIVのS6中)のうちの少なくとも2つの中に、グリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基によるアミノ酸残基の1つまたは2つの置換を含む、変異型ヒトNaX。
【請求項45】
請求項39に記載の変異型ヒトNa
Xであって、前記変異型ヒトNa
Xが、配列番号1の以下のセグメント:残基383~397(ドメインI(D1)のS6中)、残基717~731(DIIのS6中)、残基1182~1196(DIIIのS6中)および/または残基1485~1499(DIVのS6中)のうちの少なくとも3つの中に、グリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基によるアミノ酸残基の1つまたは2つの置換を含む、変異型ヒトNaX。
【請求項46】
請求項39に記載の変異型ヒトNa
Xであって、前記変異型ヒトNa
Xが、配列番号1の以下のセグメント:残基383~397(ドメインI(D1)のS6中)、残基717~731(DIIのS6中)、残基1182~1196(DIIIのS6中)および/または残基1485~1499(DIVのS6中)のそれぞれの中に、グリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基によるアミノ酸残基の1つまたは2つの置換を含む、変異型ヒトNaX。
【請求項47】
前記変異型ヒトNa
Xが、残基L390、F724、I1189およびI1492のうちの2つ以上におけるアミノ酸残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む、請求項39に記載の変異型ヒトNa
X。
【請求項48】
前記変異型ヒトNa
Xが、残基L390、F724、I1189およびI1492のうちの3つ以上におけるアミノ酸残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む、請求項39に記載の変異型ヒトNa
X。
【請求項49】
前記変異型ヒトNa
Xが、アミノ酸残基L390、F724およびI1189の、またはアミノ酸残基F724、I1189およびI1492のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む、請求項48に記載の変異型ヒトNa
X。
【請求項50】
前記変異型ヒトNa
Xが、野生型ヒトNa
Xと比較した置換F724Q、I1189TおよびI1492Tを含む、請求項49に記載の変異型ヒトNa
X。
【請求項51】
前記ヒトNa
Xが、野生型ヒトNa
Xと比較した置換L390E、I1189EおよびI1492Eを含む、請求項49に記載の変異型ヒトNa
X。
【請求項52】
ヒトイオンチャネルタンパク質の活性を調節する試験分子がヒトNa
Xイオンチャネル(Na
X)タンパク質の活性を調節するかどうかを決定する方法であって、
a)ヒトNa
XのDIIIドメインの少なくとも一部がヒトまたは哺乳動物Na
Vタンパク質(Na
V)のDIIIドメインの対応する部分で置換されている変異型ヒトNa
Xを提供する工程、
b)前記試験分子の存在下で前記変異型ヒトNa
Xに対してイオンチャネルアッセイを実施する工程;および
c)前記試験分子の存在下での前記アッセイにおける前記変異型ヒトNa
Xの活性が、前記試験分子の非存在下での活性よりも高いかまたは低い場合、前記試験分子がヒトNa
Xモジュレーターであると決定する工程を含み、場合により、
d)パート(c)により、前記試験分子がヒトNa
Xモジュレーターでない場合、追加のスクリーニングのために前記試験分子を選択する工程を含む、方法。
【請求項53】
ヒトイオンチャネルタンパク質の活性を調節する試験分子がヒトNa
Xイオンチャネル(Na
X)タンパク質の活性を調節するかどうかを決定する方法であって、
a)前記試験分子が前記ヒトイオンチャネルタンパク質の活性を調節することを決定する工程、
b)ヒトNa
XのDIIIドメインの少なくとも一部がヒトまたは哺乳動物Na
Vタンパク質(Na
V)のDIIIドメインの対応する部分で置換されている変異型ヒトNa
Xを提供する工程、
c)前記試験分子の存在下で前記変異型ヒトNa
Xに対してイオンチャネルアッセイを実施する工程;および
d)前記試験分子の存在下での前記アッセイにおける前記変異型ヒトNa
Xの活性が、前記試験分子の非存在下での活性よりも高いかまたは低い場合、前記試験分子がヒトNa
Xモジュレーターであると決定する工程を含み、場合により、
e)パート(d)により、前記試験分子がヒトNa
Xモジュレーターでない場合、追加のスクリーニングのために前記試験分子を選択する工程
を含む、方法。
【請求項54】
前記変異型ヒトNa
Xが、ヒトまたは哺乳動物Na
V由来のDIII S1~S6領域の全部または一部を含み、場合により、置換された前記ヒトNa
XのDIIIドメインの少なくとも一部が、(a)DIII(残基920~1200)、(b)DIII電圧センサドメインIII(VSD3)およびS4-S5リンカー(残基920~1058)、(c)DIII VSD3、S4-S5リンカーおよびS5(残基920~1078)、(d)DIIIおよびDII-DIIIリンカー(残基733~1200)、(e)DIIIおよびDIII-DIVリンカー(920~1237)、(f)DIIIおよびDII-DIIIリンカーおよびDIII-DIVリンカー(733~1237)を含むか、またはこれらからなる、請求項52または53に記載の方法。
【請求項55】
前記ヒトまたは哺乳動物Na
VのDIIIドメインの対応する部分で置換された前記ヒトNa
XのDIIIドメインの少なくとも一部が、S5を含まず、かつ/またはS6を含まない、請求項52、53または54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記ヒトまたは哺乳動物Na
VのDIIIドメインの対応する部分で置換された前記ヒトNa
XのDIIIドメインの少なくとも一部が、S1、S2、S3、S4および/またはS4-S5リンカーのいずれをも含まない、請求項52~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記ヒトNa
XのDIIIドメインの少なくとも一部が、哺乳動物Nav1.1、哺乳動物Nav1.2、哺乳動物Nav1.3、哺乳動物Nav1.4、哺乳動物Nav1.5、哺乳動物Nav1.6、哺乳動物Nav1.7、哺乳動物Nav1.8、哺乳動物Nav1.9、ヒトNav1.1、ヒトNav1.2、ヒトNav1.3、ヒトNav1.4、ヒトNav1.5、ヒトNav1.6、ヒトNav1.7、ヒトNav1.8またはヒトNav1.9の対応する部分で置換されている、請求項52~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記ヒトNa
XのDIIIドメインの少なくとも一部が、ヒトNav1.7の対応する部分で置換されている、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記変異型ヒトNa
Xが、キメラ構築物2、キメラ構築物3、キメラ構築物7、キメラ構築物9、キメラ構築物11、キメラ構築物15もしくはキメラ構築物19であるか、または前記変異型ヒトNa
Xが、配列番号3、4、8、10、12、16もしくは20のうちの1つのアミノ酸配列を含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
ヒトイオンチャネルタンパク質の活性を調節する試験分子がヒトNa
Xイオンチャネル(Na
X)タンパク質の活性を調節するかどうかを決定する方法であって、
a)ヒトNa
Xの2つ、3つまたは4つのS6アルファヘリックスのそれぞれの上の少なくとも1つの残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む変異型ヒトNa
Xを提供する工程、
b)前記試験分子の存在下で前記変異型ヒトNa
Xに対してイオンチャネルアッセイを実施する工程;および
c)前記試験分子の存在下での前記アッセイにおける前記変異型ヒトNa
Xの活性が、前記試験分子の非存在下での活性よりも高いかまたは低い場合、前記試験分子がヒトNa
Xモジュレーターであると決定する工程を含み、場合により、
d)パート(c)により、前記試験分子がヒトNa
Xモジュレーターでない場合、追加のスクリーニングのために前記試験分子を選択する工程
を含む、方法。
【請求項61】
ヒトイオンチャネルタンパク質の活性を調節する試験分子がヒトNa
Xイオンチャネル(Na
X)タンパク質の活性も調節するかどうかを決定する方法であって、
a)前記試験分子が前記ヒトイオンチャネルタンパク質の活性を調節することを決定する工程、
b)ヒトNa
Xの2つ、3つまたは4つのS6アルファヘリックスのそれぞれの上の少なくとも1つの残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む変異型ヒトNa
Xを提供する工程、
c)前記試験分子の存在下で前記変異型ヒトNa
Xに対してイオンチャネルアッセイを実施する工程、および
d)前記試験分子の存在下での前記アッセイにおける前記変異型ヒトNa
Xの活性が、前記試験分子の非存在下での活性よりも高いかまたは低い場合、前記試験分子がヒトNa
Xモジュレーターであると決定する工程を含み、場合により、
e)パート(d)により、前記試験分子がヒトNa
Xモジュレーターでない場合、追加のスクリーニングのために前記試験分子を選択する工程
を含む、方法。
【請求項62】
前記変異型ヒトNa
Xが、前記4つのS6アルファヘリックスのうちの2つの上にある少なくとも1つの残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む、請求項60または61に記載の方法。
【請求項63】
前記変異型ヒトNa
Xが、前記4つのS6アルファヘリックスの3つの上の少なくとも1つの残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む、請求項60または61に記載の方法。
【請求項64】
前記変異型ヒトNa
Xが、4つ全てのS6アルファヘリックスの全ての上の少なくとも1つの残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む、請求項60または61に記載の方法。
【請求項65】
前記変異型ヒトNa
Xが、前記4つのS6アルファヘリックスの少なくとも3つの上のアミノ酸残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による1つの置換を含む、請求項60または61に記載の方法。
【請求項66】
請求項60または61に記載の方法であって、前記変異型ヒトNa
Xが、配列番号1の以下のセグメント:残基383~397(ドメインI(D1)のS6中)、残基717~731(DIIのS6中)、残基1182~1196(DIIIのS6中)および/または残基1485~1499(DIVのS6中)のうちの少なくとも2つの中に、グリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基によるアミノ酸残基の1つまたは2つの置換を含む、方法。
【請求項67】
請求項60または61に記載の方法であって、前記変異型ヒトNa
Xが、配列番号1の以下のセグメント:残基383~397(ドメインI(D1)のS6中)、残基717~731(DIIのS6中)、残基1182~1196(DIIIのS6中)および/または残基1485~1499(DIVのS6中)のうちの少なくとも3つの中に、グリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基によるアミノ酸残基の1つまたは2つの置換を含む、方法。
【請求項68】
請求項60または61に記載の方法であって、前記変異型ヒトNa
Xが、配列番号1の以下のセグメント:残基383~397(ドメインI(D1)のS6中)、残基717~731(DIIのS6中)、残基1182~1196(DIIIのS6中)および/または残基1485~1499(DIVのS6中)のそれぞれの中に、グリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基によるアミノ酸残基の1つまたは2つの置換を含む、方法。
【請求項69】
前記変異型ヒトNa
Xが、残基L390、F724、I1189およびI1492のうちの2つ以上におけるアミノ酸残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む、請求項60または61に記載の方法。
【請求項70】
前記変異型ヒトNa
Xが、残基L390、F724、I1189およびI1492のうちの3つ以上におけるアミノ酸残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む、請求項60または61に記載の方法。
【請求項71】
前記変異型ヒトNa
Xが、アミノ酸残基L390、F724およびI1189の、またはアミノ酸残基F724、I1189およびI1492の、グリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記変異型ヒトNa
Xが、野生型ヒトNa
Xと比較した置換F724Q、I1189TおよびI1492Tを含む、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記ヒトNa
Xが、野生型ヒトNa
Xと比較した置換L390E、I1189EおよびI1492Eを含む、請求項71に記載の方法。
【請求項74】
ペプチド、大環状分子、小分子または抗体であってもよい、請求項52~73のいずれか一項に記載の方法によって同定される分子。
【請求項75】
請求項32~51のいずれか一項に記載のキメラまたは変異型ヒトNa
Xと、請求項31に記載のモジュレーターまたは請求項52、53、60もしくは61に記載の試験分子と、を含む、分子複合体。
【請求項76】
ヒトNa
Xの活性をアッセイするための、またはヒトNa
Xモジュレーターおよび/もしくはヒトNa
Xに結合する分子を同定するためのキットであって、請求項32~51のいずれか一項に記載の変異型ヒトNa
Xを含み、さらに、イオンチャネルアッセイを実施するための1つ以上の試薬、変異型ヒトNa
Xのモジュレーターおよび使用説明書のうちの少なくとも1つを含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる2021年5月30日に出願された米国仮特許出願第63/195,039号に対する優先権を主張する。
【0002】
本開示は、ヒトNaXの活性を調節する分子を同定するために使用され得る変異型ヒトNaXを使用する変異型ヒトNaXイオンチャネル(「NaX」)タンパク質およびスクリーニング方法に関する。例えば、いくつかの実施形態では、スクリーニング方法は、潜在的なNaXモジュレーターの存在下で変異型ヒトNaXに対してイオンチャネルアッセイを実施することを含む。本開示はまた、ヒトNaXのモジュレーターとして作用する分子およびそのような分子を検出するための関連キットに関する。
【背景技術】
【0003】
プロトタイプの電位依存性ナトリウム(NaV)チャネルは、活動電位を開始および伝播することによって電気シグナル伝達において重要な役割を果たす。密接に関連する9つの哺乳動物チャネルサブタイプ、NaV1.1-NaV1.9は、神経系機能、筋収縮およびホルモン分泌を含む重要な生理学的過程に寄与する様々な組織で発現している。10番目のNaVチャネル様遺伝子であるSCN7AAは、ほぼ30年前にクローニングされたが、非定型の配列特徴およびこのNaV2.1タンパク質から電位活性化ナトリウム(Na+)電流を記録し得ないことから、これは異なる生理学的役割を有する可能性がないという推測が高まり、NaXと命名された。
【0004】
標準的なNaVチャネルとは対照的に、NaXは、細胞外のNa+濃度によって活性化されるNa+チャネルとして機能することが提案されている。複数の証拠により、NaXがNa+恒常性に寄与し得ることが示唆されている1、2。NaXは、血液組成のモニタリングを専門とする脳領域での発現に限定されていることを示す5。NaXノックアウトマウスは、脱水にもかかわらず塩分を摂取し、血中Na+レベルの上昇によって引き起こされる高血圧に抵抗性である5、6。ヒトでは、NaXに対する自己免疫は、口渇知覚および食欲の障害を伴う慢性高ナトリウム血症を引き起こす7。末梢では、NaXは、上皮Na+チャネル(ENaC)の上流のNa+恒常性を調節し、アトピー性皮膚炎および肥厚性瘢痕を処置するための標的として示唆されている8。
【0005】
NaXは、NaV1.7チャネル16と最も高い配列同一性(約55%)を共有するが、NaVチャネルファミリーの最も分岐するメンバーである。従来のNaVチャネルでは、電圧センサドメイン(VSD)は、S4セグメントに沿って保存された4~8個のゲート電荷残基を含み、膜脱分極時に外向きに移動し、チャネルゲート(VSD1~VSD3)を開くかまたは急速不活性化(VSD4)を開始する。このパラダイムとは対照的に、NaXは電圧非感受性であり、S4ゲート電荷残基の数が少ないことが報告されている。したがって、NaX中の電圧センサ様ドメイン(VSLD)の機能および配座状態は不明であり、VSLDがどのようにチャネルゲート制御に寄与するかも不明である。さらに、NaVと比較してNaXにおいて分岐しているDIII-DIVリンカーセグメントは、NaVチャネルにおける迅速な不活性化に必要であることが知られている。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、ヒトNaXの活性を調節する分子を同定するために使用され得る変異型ヒトNaXを使用する変異型ヒトNaXイオンチャネル(「NaX」)タンパク質およびスクリーニング方法、およびこのような方法により同定される分子、およびこの方法を実施するためのキットに関する。変異型ヒトNaXタンパク質および関連する方法は、例えば、NaX活性を調節するだけでなく、NaVタンパク質に結合し、または調節することが知られている試験分子を試験して、標的タンパク質に対する選択性を試験するためにも使用され得る。変異型Naxを使用する本明細書に記載のアッセイにおいて同定されたモジュレーターは、ヒトNaxのモジュレーター/候補モジュレーターとして有用であり得る。本発明者らは、驚くべきことに、イオンチャネルの開口した伝導状態を模倣することによってヒトNaxに関連するイオンチャネル測定を可能にする変異型Naxタンパク質を見出した。理論に束縛されるものではないが、変異型Naxは、例えば、イオンチャネルタンパク質のリン酸化および/または通常はNaxイオンチャネルを開口することを可能にする他の関連する生理学的または構造的変化を模倣することによって、Naxイオンチャネルの開口した導電状態を模倣し得る。本開示は、例えば、以下の実施形態のいずれか1つまたは組み合わせを含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、本明細書の開示は、ヒトNaXイオンチャネルタンパク質(NaX)モジュレーターを同定する方法であって、a)ヒトNaXのDIIIドメインの少なくとも一部がヒトまたは哺乳動物NaVタンパク質(NaV)のDIIIドメインの対応する部分と置換されている変異型ヒトNaXを提供する工程、b)潜在的NaXモジュレーターの存在下で変異型ヒトNaXに対してイオンチャネルアッセイを実施する工程、およびc)潜在的モジュレーターの存在下でのアッセイにおける変異型ヒトNaXの活性が潜在的モジュレーターの非存在下での活性よりも高いかまたは低い場合に、潜在的モジュレーターをヒトNaXモジュレーターとして同定する工程を含む、方法に関する。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、ヒトまたは哺乳動物NaV由来のDIII S1-S6領域の全部または一部を含み、場合により、置換されたヒトNaXのDIIIドメインの少なくとも一部は、(a)DIII(残基920~1200)、(b)DIII電圧センサドメインIII(VSD3)およびS4-S5リンカー(残基920~1058)、(c)DIII VSD3、S4-S5リンカーおよびS5(残基920~1078)、(d)DIIIおよびDII-DIIIリンカー(残基733~1200)、(e)DIIIおよびDIII-DIVリンカー(920~1237)、(f)DIIIおよびDII-DIIIリンカーおよびDIII-DIVリンカー(733~1237)を含むか、これらからなる。いくつかの例では、ヒトまたは哺乳動物NaVのDIIIドメインの対応する部分で置換されたヒトNaXのDIIIドメインの少なくとも一部は、S5を含まず、かつ/またはS6を含まない。いくつかの例では、ヒトまたは哺乳動物NaVのDIIIドメインの対応する部分で置換されたヒトNaXのDIIIドメインの少なくとも一部は、S1、S2、S3、S4および/またはS4-S5リンカーのいずれをも含まない。いくつかの例では、ヒトNaXのDIIIドメインの少なくとも一部は、哺乳動物Nav1.1、哺乳動物Nav1.2、哺乳動物Nav1.3、哺乳動物Nav1.4、哺乳動物Nav1.5、哺乳動物Nav1.6、哺乳動物Nav1.7、哺乳動物Nav1.8、哺乳動物Nav1.9、ヒトNav1.1、ヒトNav1.2、ヒトNav1.3、ヒトNav1.4、ヒトNav1.5、ヒトNav1.6、ヒトNav1.7、ヒトNav1.8またはヒトNav1.9の対応する部分で置換されている。例えば、いくつかの例では、ヒトNaXのDIIIドメインの少なくとも一部は、ヒトNav1.7の対応する部分で置換されているいくつかの例では、変異型ヒトNaXは、キメラ構築物2、キメラ構築物3、キメラ構築物7、キメラ構築物9、キメラ構築物11、キメラ構築物15もしくはキメラ構築物19であるか、または配列番号3、4、8、10、12、16もしくは20のいずれか1つのアミノ酸配列である。
【0008】
本発明は、ヒトNaXイオンチャネルタンパク質(NaX)モジュレーターを同定する方法であって、(a)ヒトNaXの2つ、3つまたは4つのS6アルファヘリックスのそれぞれの上の少なくとも1つの残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む変異型ヒトNaXを提供する工程、(b)潜在的モジュレーターの存在下で、変異型ヒトNaXに対してイオンチャネルアッセイを実施する工程、および(c)潜在的モジュレーターの存在下でのアッセイにおける変異型ヒトNaXの活性が潜在的モジュレーターの非存在下での活性よりも高いかまたは低い場合に、潜在的モジュレーターをヒトNaXモジュレーターとして同定する工程を含む、方法をも包含する。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、4つのS6アルファヘリックスのうちの2つの上にある少なくとも1つの残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、4つのS6アルファヘリックスの3つの上の少なくとも1つの残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含むいくつかの例では、変異型ヒトNaXは、4つ全てのS6アルファヘリックスの上の少なくとも1つの残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、4つのS6アルファヘリックスの少なくとも3つの上のアミノ酸残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による1つの置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、配列番号1の以下のセグメント:残基383~397(ドメインI(D1)のS6中)、残基717~731(DIIのS6中)、残基1182~1196(DIIIのS6中)および/または残基1485~1499(DIVのS6中)のうちの少なくとも2つの中に、グリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基によるアミノ酸残基の1つまたは2つの置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、配列番号1の以下のセグメント:残基383~397(ドメインI(D1)のS6中)、残基717~731(DIIのS6中)、残基1182~1196(DIIIのS6中)および/または残基1485~1499(DIVのS6中)のうちの少なくとも3つの中に、グリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基によるアミノ酸残基の1つまたは2つの置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、配列番号1の以下のセグメント:残基383~397(ドメインI(D1)のS6中)、残基717~731(DIIのS6中)、残基1182~1196(DIIIのS6中)および/または残基1485~1499(DIVのS6中)のそれぞれの中に、グリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基によるアミノ酸残基の1つまたは2つの置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、残基L390、F724、I1189およびI1492のうちの2つ以上におけるアミノ酸残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、残基L390、F724、I1189およびI1492のうちの3つ以上におけるアミノ酸残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、アミノ酸残基L390、F724およびI1189の、またはアミノ酸残基F724、I1189およびI1492の、グリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、野生型ヒトNaXと比較した置換F724Q、I1189TおよびI1492Tを含む。いくつかの例では、ヒトNaXは、野生型ヒトNaXと比較した置換L390E、I1189EおよびI1492Eを含む。
【0009】
上記の方法のいずれにおいても、イオンチャネルアッセイはまた、変異型ヒトNaXの同定されたモジュレーター、例えば、本明細書において同定されたモジュレーターまたは本明細書における方法の実施において別途同定されたモジュレーターの存在下でも実施され得る。いくつかのそのような場合では、変異型ヒトNaXの同定されたモジュレーターは、テトロドトキシン(TTX)、キニジン、フレカイニド、テトラカインまたはリドカインの1以上である。
【0010】
上記の方法のいずれにおいても、潜在的モジュレーターは、ペプチドまたは大環状分子または抗体であり得る。例えば、いくつかの例では、潜在的モジュレーターは小分子である。いくつかの例では、小分子は、例えば、テトロドトキシン(TTX)、キニジン、フレカイニド、テトラカイン、またはリドカインの誘導体であり得る。
【0011】
上記の方法のいずれもまた、パート(c)で同定された潜在的モジュレーターの、変異型ヒトNaXおよび野生型ヒトNaXのいずれかまたは両方に対する結合親和性を決定することをさらに含み得る。いくつかの例では、潜在的モジュレーターは、変異型ヒトNaXおよび野生型ヒトNaXのいずれかまたは両方に、10μM以下、10μM~50nM、10μM~500nM、1μM以下、1μM~50nM、または100nM以下のEC50またはIC50で結合する。いくつかの例では、EC50またはIC50をELISAアッセイで決定し得る。
【0012】
上記の方法のいずれにおいても、イオンチャネルアッセイは、パッチクランプもしくは自動パッチクランプアッセイ、イオンフラックスアッセイ、またはイオンもしくは電圧感受性色素アッセイであり得る。上記の方法のいずれにおいても、パート(c)で同定された潜在的モジュレーターは、アッセイにおける変異型ヒトNaXの活性を、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%低下させ得る。いくつかの例では、パート(c)で同定された潜在的モジュレーターは、アッセイにおいて、10nM~500μM、50nM~500μM、10nM~50μM、100nM~500μM、100nM~50μM、1~500μM、1~50μM、10~500μMまたは50~250μMの最大半値濃度で変異型ヒトNaXの活性を低下させる。他の例では、パート(c)で同定された潜在的モジュレーターは、アッセイにおいて変異型ヒトNaXの活性を増加させる。
【0013】
本開示はまた、本明細書に記載の方法によって同定されるヒトNaXのモジュレーターに関し、このモジュレーターは、場合によりペプチド、大環状分子、小分子または抗体であり得る。
【0014】
本開示はまた、変異型ヒトNaXイオンチャネル(NaX)タンパク質を包含し、ヒトNaXのDIIIドメインの少なくとも一部が、ヒトまたは哺乳動物NaVタンパク質(NaV)のDIIIドメインの対応する部分によって置換されている。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、ヒトまたは哺乳動物NaV由来のDIII S1-S6領域の全部または一部を含み、場合により、置換されたヒトNaXのDIIIドメインの少なくとも一部は、(a)DIII(残基920~1200)、(b)DIII電圧センサドメインIII(VSD3)およびS4-S5リンカー(残基920~1058)、(c)DIII VSD3、S4-S5リンカーおよびS5(残基920~1078)、(d)DIIIおよびDII-DIIIリンカー(残基733~1200)、(e)DIIIおよびDIII-DIVリンカー(920~1237)、(f)DIIIおよびDII-DIIIリンカーおよびDIII-DIVリンカー(733~1237)を含むか、これらからなる。いくつかの例では、ヒトまたは哺乳動物NaVのDIIIドメインの対応する部分で置換されたヒトNaXのDIIIドメインの少なくとも一部は、S5を含まず、かつ/またはS6を含まない。いくつかの例では、ヒトまたは哺乳動物NaVのDIIIドメインの対応する部分で置換されたヒトNaXのDIIIドメインの少なくとも一部は、S1、S2、S3、S4および/またはS4-S5リンカーのいずれをも含まない。いくつかの例では、ヒトNaXのDIIIドメインの少なくとも一部は、哺乳動物Nav1.1、哺乳動物Nav1.2、哺乳動物Nav1.3、哺乳動物Nav1.4、哺乳動物Nav1.5、哺乳動物Nav1.6、哺乳動物Nav1.7、哺乳動物Nav1.8、哺乳動物Nav1.9、ヒトNav1.1、ヒトNav1.2、ヒトNav1.3、ヒトNav1.4、ヒトNav1.5、ヒトNav1.6、ヒトNav1.7、ヒトNav1.8またはヒトNav1.9の対応する部分で置換されている。例えば、いくつかの例では、ヒトNaXのDIIIドメインの少なくとも一部は、ヒトNav1.7の対応する部分で置換されている。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、キメラ構築物2、キメラ構築物3、キメラ構築物7、キメラ構築物9、キメラ構築物11、キメラ構築物15もしくはキメラ構築物19であるか、または配列番号3、4、8、10、12、16もしくは20のいずれか1つのアミノ酸配列である。
【0015】
本開示は、2つ、3つ、または4つのS6アルファヘリックスのそれぞれの上の少なくとも1つの残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む、変異型ヒトNaXイオンチャネル(NaX)タンパク質をさらに含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、4つのS6アルファヘリックスのうちの2つの上にある少なくとも1つの残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、4つのS6アルファヘリックスの3つの上の少なくとも1つの残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含むいくつかの例では、変異型ヒトNaXは、4つ全てのS6アルファヘリックスの上の少なくとも1つの残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、4つのS6アルファヘリックスの少なくとも3つの上のアミノ酸残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による1つの置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、配列番号1の以下のセグメント:残基383~397(ドメインI(D1)のS6中)、残基717~731(DIIのS6中)、残基1182~1196(DIIIのS6中)および/または残基1485~1499(DIVのS6中)のそれぞれの中に、グリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基によるアミノ酸残基の1つまたは2つの置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、配列番号1の以下のセグメント:残基383~397(ドメインI(D1)のS6中)、残基717~731(DIIのS6中)、残基1182~1196(DIIIのS6中)および/または残基1485~1499(DIVのS6中)のそれぞれの中に、グリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基によるアミノ酸残基の1つまたは2つの置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、配列番号1の以下のセグメント:残基383~397(ドメインI(D1)のS6中)、残基717~731(DIIのS6中)、残基1182~1196(DIIIのS6中)および/または残基1485~1499(DIVのS6中)のそれぞれの中に、グリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基によるアミノ酸残基の1つまたは2つの置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、残基L390、F724、I1189およびI1492のうちの2つ以上におけるアミノ酸残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、残基L390、F724、I1189およびI1492のうちの3つ以上におけるアミノ酸残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、アミノ酸残基L390、F724およびI1189の、またはアミノ酸残基F724、I1189およびI1492の、グリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、野生型ヒトNaXと比較した置換F724Q、I1189TおよびI1492Tを含む。いくつかの例では、ヒトNaXは、野生型ヒトNaXと比較した置換L390E、I1189EおよびI1492Eを含む。
【0016】
本開示は、ヒトイオンチャネルタンパク質の活性を調節する試験分子がヒトNaXイオンチャネル(NaX)タンパク質の活性を調節するかどうかを決定する方法であって、(a)ヒトNaXのDIIIドメインの少なくとも一部がヒトまたは哺乳動物NaVタンパク質(NaV)のDIIIドメインの対応する部分と置換されている変異型ヒトNaXを提供する工程、(b)試験分子の存在下で変異型ヒトNaXに対してイオンチャネルアッセイを実施する工程、(c)試験分子の存在下でのアッセイにおける変異型ヒトNaXの活性が、試験分子の非存在下での活性よりも高いかまたは低い場合、試験分子がヒトNaXモジュレーターであると決定する工程を含み、場合により、(d)パート(c)により、試験分子がヒトNaXモジュレーターでない場合、追加のスクリーニングのために試験分子を選択する工程を含む方法をさらに含む。
【0017】
本開示は、ヒトイオンチャネルタンパク質の活性を調節する試験分子がヒトNaXイオンチャネル(NaX)タンパク質の活性を調節するかどうかを決定する方法であって、(a)試験分子がヒトイオンチャネルタンパク質の活性を調節することを決定する工程、(b)ヒトNaXのDIIIドメインの少なくとも一部がヒトまたは哺乳動物NaVタンパク質(NaV)のDIIIドメインの対応する部分と置換されている変異型ヒトNaXを提供する工程、(c)試験分子の存在下で変異型ヒトNaXに対してイオンチャネルアッセイを実施する工程、および(d)試験分子の存在下でのアッセイにおける変異型ヒトNaXの活性が、試験分子の非存在下での活性よりも高いかまたは低い場合、試験分子がヒトNaXモジュレーターであると決定する工程を含み、場合により、(e)パート(d)により、試験分子がヒトNaXモジュレーターでない場合、追加のスクリーニングのために試験分子を選択する工程を含む方法をさらに含む。
【0018】
上記の2つのさらなる方法において、いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、ヒトまたは哺乳動物NaV由来のDIII S1-S6領域の全部または一部を含み、場合により、置換されたヒトNaXのDIIIドメインの少なくとも一部は、(a)DIII(残基920~1200)、(b)DIII電圧センサドメインIII(VSD3)およびS4-S5リンカー(残基920~1058)、(c)DIII VSD3、S4-S5リンカーおよびS5(残基920~1078)、(d)DIIIおよびDII-DIIIリンカー(残基733~1200)、(e)DIIIおよびDIII-DIVリンカー(920~1237)、(f)DIIIおよびDII-DIIIリンカーおよびDIII-DIVリンカー(733~1237)を含むか、これらからなる。いくつかの例では、ヒトまたは哺乳動物NaVのDIIIドメインの対応する部分で置換されたヒトNaXのDIIIドメインの少なくとも一部は、S5を含まず、かつ/またはS6を含まない。いくつかの例では、ヒトまたは哺乳動物NaVのDIIIドメインの対応する部分で置換されたヒトNaXのDIIIドメインの少なくとも一部は、S1、S2、S3、S4および/またはS4-S5リンカーのいずれをも含まない。いくつかの例では、ヒトNaXのDIIIドメインの少なくとも一部は、哺乳動物Nav1.1、哺乳動物Nav1.2、哺乳動物Nav1.3、哺乳動物Nav1.4、哺乳動物Nav1.5、哺乳動物Nav1.6、哺乳動物Nav1.7、哺乳動物Nav1.8、哺乳動物Nav1.9、ヒトNav1.1、ヒトNav1.2、ヒトNav1.3、ヒトNav1.4、ヒトNav1.5、ヒトNav1.6、ヒトNav1.7、ヒトNav1.8またはヒトNav1.9の対応する部分で置換されている。いくつかの例では、ヒトNaXのDIIIドメインの少なくとも一部が、ヒトNav1.7の対応する部分で置換されている。いくつかのこのような例では、変異型ヒトNaXは、キメラ構築物2、キメラ構築物3、キメラ構築物7、キメラ構築物9、キメラ構築物11、キメラ構築物15もしくはキメラ構築物19であるか、または配列番号3、4、8、10、12、16もしくは20のいずれか1つのアミノ酸配列である。
【0019】
本開示は、また、ヒトイオンチャネルタンパク質の活性を調節する試験分子がヒトNaXイオンチャネル(NaX)タンパク質の活性を調節するかどうかを決定する方法であって、(a)ヒトNaXの2つ、3つまたは4つのS6アルファヘリックスのそれぞれの上の少なくとも1つの残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む変異型ヒトNaXを提供する工程、(b)試験分子の存在下で変異型ヒトNaXに対してイオンチャネルアッセイを実施する工程、(c)試験分子の存在下でのアッセイにおける変異型ヒトNaXの活性が、試験分子の非存在下での活性よりも高いかまたは低い場合、試験分子がヒトNaXモジュレーターであると決定する工程を含み、場合により、(d)パート(c)により、試験分子がヒトNaXモジュレーターでない場合、追加のスクリーニングのために試験分子を選択する工程を含む方法を含む。
【0020】
本開示は、ヒトイオンチャネルタンパク質の活性を調節する試験分子がヒトNaXイオンチャネル(NaX)タンパク質の活性も調節するかどうかを決定する方法であって、(a)試験分子がヒトイオンチャネルタンパク質の活性を調節することを決定する工程、(b)ヒトNaXの2つ、3つまたは4つのS6アルファヘリックスのそれぞれの上の少なくとも1つの残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む変異型ヒトNaXを提供する工程、(c)試験分子の存在下で変異型ヒトNaXに対してイオンチャネルアッセイを実施する工程、(d)試験分子の存在下でのアッセイにおける変異型ヒトNaXの活性が、試験分子の非存在下での活性よりも高いかまたは低い場合、試験分子がヒトNaXモジュレーターであると決定する工程を含み、(e)パート(d)により、試験分子がヒトNaXモジュレーターでない場合、追加のスクリーニングのために試験分子を選択する工程を含む方法をさらに含む。
【0021】
上記の2つの方法のいずれにおいても、いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、4つのS6アルファヘリックスのうちの2つの上にある少なくとも1つの残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、4つのS6アルファヘリックスの3つの上の少なくとも1つの残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、4つ全てのS6アルファヘリックスの上の少なくとも1つの残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、4つのS6アルファヘリックスの少なくとも3つの上のアミノ酸残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による1つの置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、配列番号1の以下のセグメント:残基383~397(ドメインI(D1)のS6中)、残基717~731(DIIのS6中)、残基1182~1196(DIIIのS6中)および/または残基1485~1499(DIVのS6中)のそれぞれの中に、グリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基によるアミノ酸残基の1つまたは2つの置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、配列番号1の以下のセグメント:残基383~397(ドメインI(D1)のS6中)、残基717~731(DIIのS6中)、残基1182~1196(DIIIのS6中)および/または残基1485~1499(DIVのS6中)のそれぞれの中に、グリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基によるアミノ酸残基の1つまたは2つの置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、配列番号1の以下のセグメント:残基383~397(ドメインI(D1)のS6中)、残基717~731(DIIのS6中)、残基1182~1196(DIIIのS6中)および/または残基1485~1499(DIVのS6中)のそれぞれの中に、グリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基によるアミノ酸残基の1つまたは2つの置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、残基L390、F724、I1189およびI1492のうちの2つ以上におけるアミノ酸残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、残基L390、F724、I1189およびI1492のうちの3つ以上におけるアミノ酸残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、アミノ酸残基L390、F724およびI1189の、またはアミノ酸残基F724、I1189およびI1492の、グリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、野生型ヒトNaXと比較した置換F724Q、I1189TおよびI1492Tを含む。いくつかの例では、ヒトNaXは、野生型ヒトNaXと比較した置換L390E、I1189EおよびI1492Eを含む。
【0022】
本開示はまた、上記の方法によって同定される分子を含み、これは場合により、ペプチド、大環状分子、小分子または抗体であり得る。
【0023】
本開示はまた、本明細書に記載のキメラまたは変異型ヒトNaXタンパク質と、該タンパク質のモジュレーターまたは該タンパク質の潜在的モジュレーターとを含む分子複合体を含む。
【0024】
本開示はまた、ヒトNaXの活性をアッセイするため、またはヒトNaXモジュレーターおよび/もしくはヒトNaXに結合する分子を同定するためのキットであって、本明細書に記載の変異型ヒトNaXを含み、さらに、イオンチャネルアッセイを実施するための1つ以上の試薬、変異型ヒトXのモジュレーターおよび使用説明書を含む、キットを含む。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1A】
図1A~
図1Hは、ヒトNa
Xおよびβ3-Na
Xチャネル複合体の全体構造の特徴付けを示す。
図1Aは、ヒトNa
XまたはNa
V1.7を発現するアフリカツメガエル(Xenopus laevis)卵母細胞からの代表的な電流を示す。
【
図1B】
図1Bは、示される化合物の細胞外適用に応答した、Na
Xを発現する卵母細胞からの代表的な電流を示す。
【
図1C】
図1Cは、Na
Xを発現し、Na
VまたはCa
Vチャネル補助サブユニット、Na
+/K
+-ATPアーゼサブユニットおよびシナプス関連タンパク質97(SAP97)を共発現し、示された細胞外Na
+濃度の存在下での卵母細胞からの代表的な電流を示す。
図1A~
図1Cの電圧プロトコルは以下の通りである。Na
X:0mVのHPから20mV刻みで、+80~-100mVの間の工程;Na
V1.7:-100mVのHPから5mV刻みで-80mV~+65mVの間の脱分極工程。
【
図1E】
図1Eは、ヒトNa
XまたはNa
V1.7を発現するマウスNeuro-2細胞からの、細胞外Na
+濃度(HP=-60mV)の変化、または電圧:-100mVのHPから10mV刻みで、-60から+60mVの間の脱分極工程に応答した、代表的な電流を示す。
【
図1G】
図1Gは、示されたタンパク質について、Neuro-2細胞から抽出されたタンパク質の全溶解物および表面画分を、プローブ探査したウエスタンブロットを示す。
【
図1H】
図1Hは、β3-Na
Xチャネル複合体の側面図および細胞外図を示す。おおよその膜境界を示す。DI、DII、DIIIおよびDIVは、それぞれ緑色、青色、橙色および桃色に着色され、β3サブユニットは灰色の表面表示である。
【
図2A】
図2A~Eは、Na
X細孔モジュールの構造が非導電状態を明らかにすることを示す。
図2Aは、Na
X細孔容積が灰色表面として示されており、DIIおよびDIVがカートゥーン描写で示されていることを示す(明らかにするためにDIおよびDIIIは省略されている)。
【
図2B】
図2Bは、活性化ゲートに並ぶ側鎖を有するS6-ヘリックスを棒状と半透明の表面で表した図である。四面図は、DIIIおよびDIVがオレンジ色および桃色に着色され、DIII-DIVリンカー由来のIFIモチーフ(緑色、破線の枠内)がスティックおよび半透明表面表示で示されている、より広い視点を提供する。
【
図2C】
図2Cは、側方開窓および結合脂質を強調する細孔モジュールをスライスした直交図を示す。S6ゲートを横切るホスファチジルエタノールアミンは紫色の棒で示されている。側面図では、明確にするために前景の脂質を除去している。
【
図2D】
図2Dの図は、中央のパネルCと同様であるが、モデル化された脂質の周りに青色メッシュ表示で示される低温EMマップを有する。
【
図2E】
図2Eは、本明細書の表4に示すキメラ構築物1~7を含む、ヒトNa
X、ヒトNa
V1.7、または二重および単一ドメインが交換されたNa
V1.7-Na
Xキメラを発現するアフリカツメガエル由来の代表的な電流を示す。0mVのHPから20mV刻みで+80~-100mVの間の工程。
【
図3A】
図3A~
図3Fは、標的化された細孔湿潤S6変異を有するヒトNa
Xの特徴付けを示す。
図3Aは、S6ゲートに並ぶ標的疎水性側鎖の位置および拡大図を示す。
【
図3B】
図3Bは、表示電圧プロトコル下で
X-QTT構築物を発現するアフリカツメガエル卵母細胞からの代表的な電流を示す。
【
図3C】
図3Cは、示されるNa
X構築物を発現する卵母細胞からの代表的な電流を示す。
【
図3E】
図3Eは、Na
X-QTT構築物を発現し、示されたNa
V補助サブユニットを共発現する卵母細胞からの代表的な電流を示す。上記の電圧プロトコル。
【
図4A】
図4A~
図4Cは、Na
X選択性フィルタの構造および特徴付けを示す。
図4Aは、Na
XDENAモチーフ残基側鎖を棒で示す。
【
図4B】
図4Bの上段のパネルは、Na
X側鎖を示し、Na
Vチャネルの選択性フィルタの周りに相互作用ネットワークを形成する類似の残基を棒で示す(Na
V1.7,PDB6J8J)。
図4Bの下段のパネルは、Na
X選択性フィルタおよびNa
V1.7選択性フィルタ(
図4Bの上段のパネルと同様)の同じ図を示すが、静電的表面平滑化として示す。中央キャビティおよび活性化ゲートは、明確にするために除外されている。
【
図4C】
図4Cは、Na
XおよびNa
V1.7(灰色、PDB6J8J)構造と棒として示されている選択側鎖とを比較したDI-DIV界面の重ね合わせ拡大図を示す。
【
図4D】
図4Dは、C末端にGFP-Flagタグを有するヒトNa
X--QTTを発現するHEK293細胞からの、生理的(
図4D左側のパネル)またはNMDG
+のみの細胞外溶液(
図4Dの中央パネル)中の代表的な電流を示す。0mVのHPから20mVの増分で+80から-100mVの間の工程。
図4Dの右側のパネルは、独立した実験からのI-V曲線データの要約を示す。
図4Eの左側のパネルは、細胞外溶液中に示された一価陽イオンを有するヒトNa
X-QTTを発現するHEK293細胞からの代表的な電流を示す。-80mVから+80mVまでの電圧ランプを印加した。
【
図4E】
図4Eの右側パネルは、独立した実験から測定された逆転電位および透過率比の要約を示す。
【
図5A】
図5A~Cは、ヒトNa
X-QTTチャネルの薬理作用を示す。
図5Aの左側のパネルおよび中央パネルは、細胞外溶液中に示された量のCaCl
2を含むか、または含まない、示された細胞外一価陽イオンを有するヒトNa
X-QTTを発現するHEK293細胞からの代表的なI-V電流を示す。-80mVから+80mVまでの電圧ランプを印加した。
図5Aの右側のパネルは、80mVにおける示された濃度のCa
2+による外向きNa
+のブロックの割合を示す。
【
図5B】
図5Bは、0~+80mVまで段階的に進めたときの、示された2価および3価の陽イオン(単位はmM)を含むか、または含まない標準細胞外溶液中におけるヒトNa
X-QTTを発現するアフリカツメガエルの卵母細胞からの代表的な電流を示す。
【
図5C】
図5Cは、0~+80mV(左側のパネル)または0~-100mV(右側のパネル)に段階的に進めた場合の、示された遮断薬を含むか、または含まない標準細胞外溶液中における、ヒトNa
X-QTTを発現する卵母細胞からの代表的な電流を示す。
図5Cの中央パネルは、独立した実験から測定された電流の要約を示す。
【
図6A】
図6A~
図6Eは、非定型Na
X電圧センサ様ドメインの構造を示す。
図6Aは、VSLD1のゲート電荷(青)、HCS(緑)、およびENC/INC(赤)の側鎖を棒で示す。挿入図は、Na
X中のユニークなプロリンを強調しており、比較のためにNa
V1.7VSD1(PDB6J8J)を重ね合わせている。
【
図6B】
図6Bは、
図6Aと同様にレンダリングされたVSLD2を示す。挿入図は、His579-S4相互作用(
図6Bの上部パネル)およびS4-S5リンカーの置換(
図6Bの底部パネル)を強調しており、比較のためにNa
V1.7DII(PDB6J8J)を重ね合わせている。
【
図6C】
図6Cは、
図6Aと同様にレンダリングされたVSLD3を示す。挿入図は、S3ヘリックスのPhe1011を強調している。
【
図6D】
図6Dは、
図6Aと同様にレンダリングされたVSLD4を示す。挿入図は、Na
XおよびNa
V1.7VSD4(PDB6J8J)の間のS4/S4-S5リンカー領域の比較を示し、ゲート電荷残基のCαは青色の球として示されている。
【
図6E】
図6Eは、-100mVのHPから5mV刻みで-80~+65mVの間の脱分極工程に応答した、Na
V1.7および様々なNa
V1.7-Na
X-VSLDを発現するアフリカツメガエルの卵母細胞からの代表的な電流を示す。
【
図7A】
図7A~
図7Fは、種々の発現系におけるヒトNa
Xの機能的評価を示す。
図7Aは、示された構築物を発現するHEK293T細胞から抽出したタンパク質の全溶解物および表面画分のウエスタンブロットを示す。
【
図7B】
図7Bは、示された電圧プロトコルで、ヒトNa
XまたはNa
V1.7(C末端GFPおよびFlagタグを有する)を発現するHEK293T細胞からの代表的な電流を示す。
【
図7C】
図7Cは、示された構築物を発現するアフリカツメガエル卵母細胞から抽出されたタンパク質の全溶解物および表面画分のウエスタンブロットを示す。
【
図7D】
図7Dは、示された電圧プロトコルで、ヒトNa
XまたはNa
V1.7を発現する卵母細胞からの代表的な電流を示す。
【
図7E】
図7Eは、示された構築物を発現するマウスNeuro-2A細胞から抽出されたタンパク質の全溶解物および表面画分のウエスタンブロットを示す。
【
図7F】
図7Fは、示された細胞外Na+濃度(HP=-60mV)下で、ヒトNa
X(*、C末端GFPおよびFlagタグを有する)を発現するNeuro-2A細胞からの代表的な電流を示す。個々の細胞のシール抵抗(Rm)が提供される。
【
図8A】
図8A~
図8Dは、アフリカツメガエルの卵母細胞におけるヒトNa
Xの機能的評価を示す。
図8A(左側のパネル)および
図8B(左側のパネル)は、細胞外溶液中に存在する示された薬理学的モジュレーターを有するヒトNa
Xを発現するアフリカツメガエルの卵母細胞からの代表的な電流を示す。
図8Aの右側のパネルは、0mVのHPから20mV刻みで、+80mV~-100mVの間の脱分極工程によるI-Vプロットを示す。
【
図8B】
図8Bの左側のパネルは、-100mVのHPから20mV刻みで、-100~+100mVの間の脱分極工程によるI-Vプロットを示す。
【
図8C】
図8C(左側のパネル)および
図8D(左側のパネル)は、示されたタンパク質が共発現されたヒトNa
Xを発現する卵母細胞からの代表的な電流を示す。
図8Cの右側のパネルは、0mVのHPから20mV刻みで+80mV~-100mVの間の工程を有するI-Vプロットを示す。
【
図8D】
図8Dは、-100mVのHPから20mV刻みで、-100~+100mVの間の脱分極工程を有するI-Vプロットを示す。
【
図9】
図9は、Na
XチャネルおよびNa
Vチャネルの多重配列アラインメントを示す。Na
Xドメイン境界を参照のために示す。Na
Xゲーティング電荷をアスタリスクで示し、選択性フィルタ残基を四角で囲む。Na
XDIII-DIVリンカーIFIモチーフを3つの連続したアスタリスクで示す。
【
図10B】
図10Bは、脂質ナノディスク(MSP1E3D1)中のβ3-Na
Xサンプルのサイズ排除クロマトグラフィー溶出プロファイルを示す。
図10Cは、サイズ排除クロマトグラフィー溶出画分のSDS-PAGE分析を示す。
【
図11C】
図11Cは、最終的な再構成における割り当てられた粒子配向の全体的な分布を示すヒートマップを示す。
【
図11D】
図11Dは、2つのハーフデータセット間のフーリエシェル相関(FSC)に基づくグローバル分解能推定値を示す。
【
図11E】
図11Eは、ウィンドウ化されたFSCによって推定された、局所分解能によって色付けされた最終的な3D再構成の等表面レンダリングを示す。
【
図11G】
図11Gは、β3-Na
X界面活性剤(GDN)サンプルの代表的な低温EM顕微鏡写真を示す。
【
図11I】
図11Iは、最終的な再構成における割り当てられた粒子配向の全体的な分布を示すヒートマップを示す。
【
図11J】
図11Jは、2つのハーフデータセット間のフーリエシェル相関(FSC)に基づくグローバル分解能推定値を示す。
【
図11K】
図11Kは、ウィンドウ化されたFSCによって推定された、局所解像度によって色付けされた最終的な3D再構成の等表面レンダリングを示す。
【
図12A】
図12A~
図12Bは、低温EMデータ処理ワークフローを示す。
図12Aは、β3-NaX-ナノディスクサンプルの低温EMデータ処理ワークフローの概略図を示す。
【
図12B】
図12Bは、β3-Na
X界面活性剤サンプルの低温EMデータ処理ワークフローの概略図を示す。
【
図13A】
図13A~
図13Fは、全体的なNa
X構造、β3相互作用、およびNa
Vチャネルとの比較を示す。
図13Aは、β3-Na
X-ナノディスク複合体の低温EMの再構築を示す。Na
XのNTD(N末端ドメイン)は細胞の内側にあり、β3サブユニットECD(細胞外ドメイン)は細胞の外側にある。おおよその膜境界を示す。
【
図13B】
図13Bは、β3-Na
X複合体の側面図を示す。挿入図は、Na
Xとのβ3相互作用を強調している。
【
図13C-13E】
図13C~
図13Eは、様々な観点から、ヒトNa
V1.2(PDB6J8E)、Na
V1.4(PDB6AGF)、Na
V1.5(PDB6UZ0)およびNa
V1.7(PDB6J8J)構造を、アライメントしたβ3-Na
Xの拡大図を示す。
【
図13F】
図13Fは、Na
XのDIVW1484側鎖およびNa
V1.7が重ね合わせられた中央キャビティの拡大図を示す(PDB6J8J)。Na
V1.7のDIV Pheを棒表示で示す。
【
図14A】
図14A~
図14Fは、Na
XのDIII-DIリンカー、DIIIキメラチャネルおよび脂質結合細孔構造を示す。
図14Aは、β3-Na
X-ナノディスク構造からのDIIIおよびDIVの側面図および細胞内図を示し、DIII-DIVリンカーのIFIモチーフを球で示し、Na
V1.7の等価領域(PDB6J8J)を比較のために示す。
【
図14B】
図14Bは、DIII-DIVリンカー領域とIFI/IFMモチーフとの多重配列アラインメントを示す。
【
図14C】
図14Cは、0mVのHPからの20mV刻みでの+80mV~-100mVの間の電圧段階、または-100mVのHPからの20mVの刻みでの-100mV~+120mVの間の脱分極工程を有する、野生型またはIFI>QQQ変異型ヒトNa
Xを発現する卵母細胞からの代表的な電流を示す。I-Vプロットを
図14Cの右側のパネルに示す。
【
図14D】
図14Dは、0mVのHPから20mV刻みで、+80mV~-100mVの間の電圧工程に応答した、様々なDIIIIヒトNa
V1.7-Na
Xチャネルキメラを発現する卵母細胞からの概略電流および代表電流を示す。
図14D、右側のパネル、様々なDIIINa
V1.7-Na
Xキメラの+80mV(上段のパネル)および-100mV(下段のパネル)での最大電流振幅。
【
図14E】
図14Eは、ゲートライニング側鎖を有するβ3-Na
X-ナノディスクS6-ゲート構造の側面図を棒で示し、半透明表面表示および割り当てられたホスファチジルエタノールアミンを棒で示す。
【
図14F】
図14Fは、β3-Na
Xナノディスクおよびβ3-Na
X界面活性剤ベースの構造を細孔内に割り当てられた脂質と比較した細孔の上面図を棒表示で示す。低温-EMマップを、β3-NaX-GDN構造のメッシュ表現でモデル化脂質の周りに示す。
【
図15A】
図15A~
図15Cは、Na
X選択性フィルタおよびNa
V1.7選択性フィルタの構造および比較を示す。
図15Aは、Na
X選択性フィルタおよびNa
V1.7(PDB6J8J)選択性フィルタの等価図を示す。Na
V1.7中で結合したテトロドトキシンを選択された相互作用と共に示す。
【
図15B】
図15Bは、115mMの細胞外Na+、K+、Li+またはCs+の存在下で野生型または変異型ヒトNa
V1.7およびNa
Xチャネル構築物を発現するアフリカツメガエルの卵母細胞からの代表的な電流を示す。-100mVのHPからの-50mV~+50mVの間の工程(10mV工程)を示す。
【
図15C】
図15Cは、塩化物(Cl-)イオン(メタンスルホネートで置換、MS-)の存在下(左)または非存在下(右)における-80mVから+80mVへの電圧勾配に応答した、ヒトNa
X-QTTを発現する(C末端GFP-Flagタグを含有する)HEK293細胞からの代表的な電流を示す。
【
図16A】
図16A~
図16Eは、Na
X電圧センサ様ドメインの構造および比較を示す。
図16Aは、Na
V1.7VSD4(PDB6J8J)およびNa
XVSLD4の等価図を示し、ゲーティング電荷側鎖を棒で示し、R3~R5を参照用のために標識している。
【
図16B】
図16Bは、野生型Na
V1.7および様々な変異体チャネルの活性化および定常状態不活性化の電圧依存性を示す。活性化、電流は、-100mVのHPから5mVの刻みで、-80から+65mVの間の脱分極工程後に得られた。不活性化では、-100mVのHPからの一連の調整パルス(-120から-10mVの間、5mV刻み、500ms)の後、0または-20mV(25ms)での試験パルス中に電流が得られた。正規化された活性化曲線および不活性化曲線を電流トレースの右側に示す。
【
図16C】
図16Cは、Na
XVSDL3およびKCNQ1VSD(PDB6UZZ)を重ね合わせ、Na
XゲーティングチャージおよびHCSを棒で示す。Na
XS3F1101およびKCNQ1由来の対応するS3セリンを表面表示で示す。この位置は、全てのヒトNa
Vチャネルにおいてセリンとしても保存されていることに留意されたい。
【
図16D】
図16Dは、Na
XVSDL4の図を示し、ヒトNa
VチャネルVSD4配列と比較した場合に独特であるプロリン側鎖を強調している。
【
図16E】
図16Eは、野生型Na
V1.5およびトリプルプロリンVSD4変異体チャネルの活性化および定常状態不活性化の電圧依存性を示す。活性化、電流は、-100mVのHPから5mVの刻みで、-80から+40mVの間の脱分極工程後に得られた。不活性化では、-100mVのHPからの一連の調整パルス(-120から-10mVの間、5mV刻み、500ms)の後、0または-20mV(25ms)での試験パルス中に電流が得られた。正規化された活性化曲線および不活性化曲線を電流トレースの右側に示す。
【
図17A】
図17A~
図17Bは、Na
X選択性フィルタおよびS6ゲート領域の構造および比較を示す。
図17Aは、低温EMマップ(メッシュ)の一部および球としてモデル化されたNa+イオンと共に示されるNa
X中の推定イオン結合部位(DEEモチーフ)を有する選択性フィルタの拡大図を示す。比較のために、Na
V1.2(PDB6J8E)およびNa
VPaS(PDB6NT4)のDEEモチーフ結合部位に割り当てられたNa+イオンを示す。
【
図17B】
図17Bは、Tyr1491(S6)および結合したホスファチジルエタノールアミンを示し、Na
V1.4(非導電性の不活性化状態にあると仮定される;PDB6AGF)および薬物結合Na
V1.5(非導電性の薬物遮断状態にあると仮定される;PDB6UZ0)と比較したNa
XS6ゲートの細胞内図を示す。割り当てられた脂質、界面活性剤および薬物分子(PE、GDNまたはフレカイニド)は、それぞれ棒表示として示されている。
【
図18】
図18は、構築物1~25を発現するアフリカツメガエルの卵母細胞の電流振幅を示す。(*p<0.05;**p<0.01;****p<0.0001;1元配置ANOVA、Na
Xに対するDunnett検定。)
【
図20】
図20は、Na
XチャネルS6セグメント(部分)およびNa
Vチャネルの多重配列アラインメントを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
I.定義
別段定義されない限り、本発明に関連して使用される科学用語および専門用語は、当業者が通常理解する意味を有するものとする。本開示に従って利用される場合、以下の用語は、別途指示がない限り、以下の意味を有すると理解されるべきである:
【0027】
本願において、「または」の使用は、別段述べられない限り、「および/または」を意味する。多数項従属請求項の文脈では、「または」の使用は、1つよりも多くの先行する独立請求項または従属請求項のいずれかのみを指す。また、「要素」または「構成成分」などの用語は、特に明記しない限り、1つの単位を含む要素および構成成分と、1つよりも多くのサブユニットを含む要素および構成成分の両方を包含する。
【0028】
本明細書で用いられる場合の「~から本質的になる」という移行用語は、特許請求されたプロセスの工程に言及する場合、そのプロセスが、プロセスの基本的かつ新規な特性に実質的に影響を与えるであろう特定の工程を超える追加の工程を含まないことを意味する。本明細書で用いられる場合の「~から本質的になる」という移行用語は、組成物または製品、例えばキットに言及する場合、その基本的かつ新規な特性に実質的に影響を与えるであろう指定された成分を超えて追加の成分を含まないことを意味する。
【0029】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が別途明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0030】
本明細書に記載される場合、任意の濃度範囲、パーセンテージ範囲、比率の範囲、または整数範囲は、別途指示がない限り、列挙された範囲内のあらゆる整数、および適切な場合には、それらの分数(整数の10分の1および100分の1など)の値を含むと理解されるべきである。
【0031】
単位、接頭辞、および記号は、国際単位系(SI)で受け入れられている形式で示されている。数値範囲は、範囲を定義する数を含む。本明細書で提供される見出しは、本明細書全体を参照することによって有し得る本開示の種々の態様の限定ではない。したがって、以下に定義される用語は、明細書全体を参照することによってさらに詳細に定義される。
【0032】
本明細書に記載される全てのタンパク質は、「哺乳動物NaV」などの語句のように、特に明記されない限り、ヒトタンパク質である。「哺乳動物」タンパク質としては、ヒトタンパク質ならびに他の哺乳動物種由来の同等のタンパク質が挙げられる。
【0033】
本明細書に記載される「NaV」タンパク質または「Nav」もしくは「NaV」タンパク質は、電位依存性ナトリウムチャネルタンパク質ファミリーのメンバーである。ヒトおよび他の哺乳動物におけるNaVファミリーメンバーの例としては、Nav1.1、Nav1.2、Nav1.3、Nav1.4、Nav1.5、Nav1.6、Nav1.7、Nav1.8およびNav1.9が挙げられる。ヒトNaVファミリーメンバータンパク質は、4つのドメイン(DI、DII、DIII、DIV)を含み、それぞれが6つの膜貫通アルファヘリックス(S1,S2,S3,S4,S5,S6)を含み、いくつかの例では、ドメイン内の特定のアルファヘリックスの間および4つのドメインの間にループまたはリンカーを有し、合計24個の膜貫通アルファヘリックスを含む。
【0034】
本明細書に記載される「NaX」イオンチャネルタンパク質または「NaX」もしくは「NaX」タンパク質は、電位依存性ナトリウムチャネルタンパク質ファミリーのメンバーであり、Nav2.1またはscn7aとしても知られている。特に明記しない限り、「NaX」タンパク質は「ヒトNaX」タンパク質を意味する。ヒトNaXタンパク質は、中枢神経系ならびに皮膚および他の上皮においてもナトリウムセンサとして作用することが報告されている。野生型ヒトNaXのアミノ酸配列はUniProtデータベース(受け入れ番号Q01118)に提供されており、本明細書では配列番号1として提供される。ヒトXタンパク質はまた、タンパク質の天然に存在するバリアントを含み、その例は、例えば、UniProtデータベースの番号Q01118にも見出され得る。ヒトNaVタンパク質と同様に、ヒトNaXは、各々が6つの膜貫通アルファヘリックス(S1,S2,S3,S4,S5,S6)を含む4つのドメイン(DI、DII、DIII、DIV)を含む。
【0035】
本明細書で使用される場合、「変異型ヒトNaX」は、配列番号1の野生型NaXタンパク質と比較して、少なくとも1つの操作されたアミノ酸の置換、挿入または欠失を含むヒトNaXタンパク質を指す。いくつかの例では、「変異型ヒトNaX」は、野生型ヒトNaXの少なくとも1つの残基が哺乳動物またはヒトNaVの同等/対応する残基で置換されている少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。いくつかの例では、野生型ヒトNaXの領域または完全ドメインは、哺乳動物またはヒトNaVの同等の領域またはドメイン、例えばDIIIおよび/またはDIII-DIVリンカーの一部または全部で置換されている。そのような例では、変異型ヒトNaXは、種々のタンパク質、ヒトまたは哺乳動物NaV由来のアミノ酸配列セグメントを含むので、本明細書では代替的に「キメラヒトNaX」または「キメラNaX」または「キメラ」と呼ぶことがある。
【0036】
本明細書における「キメラ」という用語は、タンパク質に言及する場合、タンパク質が2つ以上の天然タンパク質由来のアミノ酸配列で構成されていることを意味する。例えば、上記のように、本明細書で使用される場合、「キメラヒトNaX」は、NaXタンパク質の少なくとも1つの領域がヒトNaVファミリーメンバータンパク質由来の対応する領域と交換されている変異型ヒトXの一種を指す。
【0037】
本明細書における「キメラ」という用語は、タンパク質に言及する場合、タンパク質が2つ以上の天然タンパク質由来のアミノ酸配列で構成されていることを意味する。例えば、本明細書で使用される場合、「キメラヒトNaX」は、NaXタンパク質の少なくとも1つの領域が、ヒトまたは哺乳動物NaV1.1、Nav1.2、Nav1.3、Nav1.4、Nav1.5、Nav1.6、Nav1.7、Nav1.8、またはNav1.9などの哺乳動物またはヒトNaVファミリーメンバータンパク質などのNaVファミリーメンバータンパク質由来の対応する領域と交換されている変異型ヒトNaXを指す。いくつかの例では、交換領域は、完全なドメイン、または1つ以上の個々の膜貫通アルファヘリックスもしくはドメイン内のリンカー領域もしくはループの1つ、またはドメイン内のαヘリックスおよび/もしくはループの一部であり得る。
【0038】
本明細書で使用される場合、「対応する」または「等価な」という用語は、変異体またはキメラヒトNaXの作製においてヒトNaXから欠失した残基または領域を置換するヒトまたは哺乳動物NaVタンパク質由来の残基または領域を指す場合に互換的に使用される。本明細書で使用される場合、「対応する」または「等価な」残基または領域が、適切に折り畳まれたときに2つのタンパク質内の同じ位置にある残基または領域である。いくつかの例では、そのような対応するまたは等価な領域またはアミノ酸残基は、2つのタンパク質の配列アラインメントおよび構造情報を使用して同定され得る。
【0039】
本明細書で使用される場合、「モジュレーター」は、ヒトNaXのようなイオンチャネルタンパク質などのタンパク質の挙動を変化させ得る分子を指す。例えば、いくつかの例では、モジュレーターは、タンパク質に結合することによって標的タンパク質の挙動を変化させ得る。本明細書のモジュレーターは、例えば、タンパク質が細胞膜を横切るイオンの流れを調節する程度など、タンパク質の活性を増加または減少させるように作用し得る。ヒトNaXの活性を低下させるモジュレーターは、例えば、ヒトNaX活性の「阻害剤」である。ヒトNaXの活性を増加させるモジュレーターは、例えば、ヒトNaX活性の「活性化因子」である。いくつかの実施形態では、モジュレーターは、特定のイオンの存在下または特定の二次分子の存在下などの特定の条件下でのみ、ヒトNaXの活性を調節し得る。
【0040】
本明細書で使用される場合、ヒトNaXの「潜在的モジュレーター」は、ヒトNaXのモジュレーターとして作用するかどうかを決定するために試験される分子である。
【0041】
本明細書における「イオンチャネルアッセイ」は、電位依存性ナトリウムチャネルなどのイオンチャネルタンパク質の活性を測定するために使用されるアッセイを指す。様々なアッセイおよびアッセイ形式が当技術分野で通常使用されており、その多くはハイスループットスクリーニング(HTS)分析のための自動化された形式で提供されている。例としては、例えば放射性Na+イオンなどの放射性イオンを使用するイオンフラックスアッセイ、例えば蛍光シグナルがイオン濃度の変化と共に増加または減少する蛍光指示薬分子を使用する蛍光アッセイなどのイオン感受性または電圧感受性色素アッセイ、および様々な種類のパッチクランプアッセイが挙げられる。そのようなアッセイは、様々な条件でイオンチャネルタンパク質を含む膜を横切るイオン電流の変化を直接的または間接的に測定し得る。いくつかの例では、そのようなアッセイを使用して、潜在的なまたは同定されたモジュレーターの存在下または非存在下でイオンチャネルタンパク質の「活性」を評価する。この意味における「活性」という用語は、これらの種々のアッセイが直接的または間接的に、蛍光、放射能、またはイオン電流の変化などの種々のパラメータの測定を通じてタンパク質の活性を測定することを考えると、最も広い意味での活性を意味する。
【0042】
「パッチクランプアッセイ」は、本明細書では最も広い意味で使用され、例えば、種々の溶液条件下でNaXまたはNaVなどのイオンチャネルタンパク質を含有する細胞膜の小さなパッチを横切るイオンの動きの変化を評価するために使用されるアッセイを指す。
【0043】
本明細書で使用される場合、「ペプチド」という用語は、2~50個、2~15個、2~10個、2~8個、または6~14個のアミノ酸のアミノ酸鎖を含む、ペプチド結合によって連結された50アミノ酸以下の鎖を指す。
【0044】
本明細書で使用される「小分子」という用語は、50ダルトン~2500ダルトンの分子量を有する有機分子を指す。
【0045】
本明細書で使用される場合、「大環状化合物」または「大環状分子」という用語は、環状化合物または高分子の高分子環状部分を指す。大環状化合物のサイズは500ダルトン~7500ダルトンの範囲である。本明細書のいくつかの例では、大環状化合物は環状ペプチドまたはペプチド誘導体である。
【0046】
本明細書で使用される場合、「結合断片」という用語は、標的タンパク質と直接接触すると予想される、小分子、ペプチド、または抗体などのより大きな分子の一部を指す。結合断片は、高スループットスクリーニングに使用され得る。
【0047】
本開示において、「結合する」または「結合」または「特異的結合」および同様の用語は、例えばNaXまたはNaVタンパク質などのタンパク質に「結合する」分子に言及する場合、結合親和性が十分に強く、結合対のメンバー間の相互作用がランダムな分子会合(すなわち、「非特異的結合」)によるものであり得ないことを意味する。したがって、結合は選択的または特異的である。
【0048】
本明細書で使用される場合、「競合アッセイ」という用語は、試験されている分子が共通の標的への参照分子の特異的結合を防止または阻害するアッセイを指す。
【0049】
他の定義は、以下のセクションに適宜含まれる。
【0050】
II.変異型NAXタンパク質
いくつかの実施形態では、本発明は、変異型ヒトNaXイオンチャネルタンパク質を含む。
【0051】
ヒトNa
Xは、電位依存性ナトリウムチャネルタンパク質ファミリーのメンバーであり、Nav2.1またはscn7aとしても知られている。タンパク質のゲノムおよびアミノ酸配列に関する情報は、例えば、受け入れ番号Q01118のUniProtデータベースに見出し得る。いくつかの実施形態では、シグナル配列を含むヒトNa
Xのアミノ酸配列は、配列番号1のものである。ヒトNa
Xタンパク質は、中枢神経系ならびに皮膚および他の上皮においてもナトリウムセンサとして作用することが報告されている。ヒトNa
XおよびNa
Vタンパク質は、各々が6つの膜貫通アルファヘリックス(S1,S2,S3,S4,S5,S6)を含む4つのドメイン(DI、DII、DIII、DIV)を含む。これらのドメイン内には、以下の表1に記載されるように、それぞれ対応するアミノ酸残基位置を有するさらなる領域がある。例えば、各ドメインはまた、「電位センサドメイン」または「VSD」(例えば、VSD1、VSD2、VSD3、VSD4)または「電位センサ様ドメイン」または「VSLD」(例えば、VSLD1、VSLD2、VLSD3、VSLD4)は、S1-S4ヘリックスおよびそれらの介在リンカーまたはループを含み、これらは、タンパク質の細胞外面または細胞内面に存在し、例えば、S4-S5リンカーおよびS5とS6との間の細孔形成選択性フィルタループを含む、アルファヘリックス間の特異的リンカーまたはループ;および4つのドメイン間のリンカーを含む。配列番号1のヒトNa
Xの特定のヘリックス、リンカー、ループおよび他の領域は以下に示す通りである。
【表1】
【0052】
本開示は、例えば、少なくとも1つのアミノ酸残基が野生型哺乳動物またはヒトNaVの少なくとも1つの対応する残基で置換された変異型ヒトNaXを含む。いくつかの例では、野生型ヒトNaXの領域または完全ドメインは、哺乳動物またはヒトNaVの同等の領域またはドメイン、例えばDIIIまたはDIII/DIVリンカーの一部または全部で置換される。そのような例では、変異型ヒトNaXは、種々のタンパク質、哺乳動物またはヒトNaV由来のアミノ酸配列セグメントを含むので、本明細書では代替的に「キメラヒトNaX」または「キメラNaX」または「キメラ」と呼ばれることがある。いくつかの例では、置換された残基または領域は、哺乳動物またはヒトNav1.1、Nav1.2、Nav1.3、Nav1.4、Nav1.5、Nav1.6、Nav1.7、Nav1.8またはNav1.9に由来する。いくつかの例では、置換された残基または領域は、ヒトNaVに由来し、例えば、ヒトNav1.1、Nav1.2、Nav1.3、Nav1.4、Nav1.5、Nav1.6、Nav1.7、Nav1.8またはNav1.9に由来し、例えば、ヒトNav1.7に由来する。
【0053】
いくつかの実施形態では、ヒトNa
XのDIIIドメインの少なくとも一部が、ヒトまたは哺乳動物Na
Vタンパク質(Na
V)のDIIIドメインの対応する部分によって置換されている。いくつかの例では、変異型ヒトNa
Xは、ヒトまたは哺乳動物Na
V由来のDIIIS1-S6領域の全部または一部を含み、場合により、置換されたヒトNa
XのDIIIドメインの少なくとも一部は、(a)DIII(残基920~1200)、(b)DIII電圧センサドメインIII(VSD3)およびS4-S5リンカー(残基920~1058)、(c)DIII VSD3、S4-S5リンカーおよびS5(残基920~1078)、(d)DIIIおよびDII-DIIIリンカー(残基733~1200)、(e)DIIIおよびDIII-DIVリンカー(920~1237)、(f)DIIIおよびDII-DIIIリンカーおよびDIII-DIVリンカー(733~1237)を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNa
Xは、ヒトまたは哺乳動物Na
V由来のDIIIS1-S6領域の全部または一部を含み、場合により、置換されたヒトNa
XのDIIIドメインの少なくとも一部は、(a)DIII(残基920~1200)、(b)DIII電圧センサドメインIII(VSD3)およびS4-S5リンカー(残基920~1058)、(c)DIII VSD3、S4-S5リンカーおよびS5(残基920~1078)、(d)DIIIおよびDII-DIIIリンカー(残基733~1200)、(e)DIIIおよびDIII-DIVリンカー(920~1237)、(f)DIIIおよびDII-DIIIリンカーおよびDIII-DIVリンカー(733~1237)を含む。いくつかの例では、ヒトまたは哺乳動物Na
VのDIIIドメインの対応する部分によって置換されているヒトNa
XのDIIIドメインの少なくとも一部は、S5を含まない。いくつかの例では、ヒトまたは哺乳動物Na
VのDIIIドメインの対応する部分によって置換されているヒトNa
XのDIIIドメインの少なくとも一部は、S6を含まない。いくつかの例では、ヒトまたは哺乳動物Na
VのDIIIドメインの対応する部分で置換されたヒトNa
XのDIIIドメインの少なくとも一部は、S1、S2、S3、S4および/またはS4-S5リンカーのいずれをも含まない。いくつかの例では、ヒトNa
XのDIIIドメインの少なくとも一部は、哺乳動物Nav1.1、哺乳動物Nav1.2、哺乳動物Nav1.3、哺乳動物Nav1.4、哺乳動物Nav1.5、哺乳動物Nav1.6、哺乳動物Nav1.7、哺乳動物Nav1.8、哺乳動物Nav1.9、ヒトNav1.1、ヒトNav1.2、ヒトNav1.3、ヒトNav1.4、ヒトNav1.5、ヒトNav1.6、ヒトNav1.7、ヒトNav1.8またはヒトNav1.9の対応する部分で置換されている。例えば、いくつかの例では、ヒトNa
XのDIIIドメインの少なくとも一部は、ヒトNav1.7の対応する部分で置換されている。いくつかのこのような例では、変異型ヒトNa
Xは、キメラ構築物2、キメラ構築物3、キメラ構築物7、キメラ構築物9、キメラ構築物11、キメラ構築物15もしくはキメラ構築物19であるか、または配列番号3、4、8、10、12、16もしくは20のいずれか1つのアミノ酸配列である。(以下の表4および
図18を参照されたい。)
【0054】
他の例では、変異型ヒトNa
Xは、そのS6セグメントの1つ、2つ、3つ、または4つ全てのアミノ酸残基の、極性残基もしくは荷電残基またはグリシン残基もしくはプロリン残基による少なくとも1つの置換を有する。いくつかの場合、置換残基は極性または荷電している。例示的な極性アミノ酸残基としては、セリン、トレオニン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、ヒスチジンが挙げられる。例示的な荷電アミノ酸残基としては、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジンおよびアルギニンが挙げられる。これらのアミノ酸置換は、S6セグメントの1つ、2つ、3つ、または4つ全て(すなわち、膜二重層の半分まで)の細胞内から中膜貫通領域におよび得る。変異を設計するためのNa
X膜貫通セグメントの予測は、タンパク質データバンク(PDB)から入手可能な実験構造およびNa
Vチャネルを用いた標準的な構造ベースのマルチシーケンスアラインメント(例えば、ClustalW)に基づいて行い得る。
図20は、DI、DII、DIIIおよびDIVのそれぞれのS6におけるヒトNa
Xにおけるアミノ酸置換の潜在的な位置、ならびに他のヒトNa
Vタンパク質における対応する残基とのそれらのアラインメントを示す。各配列の右側の破線のボックスによって示されるように、アミノ酸置換は、残基L390、F724、I1189もしくはI1492のいずれか1つで、またはいずれかの方向に7残基までの任意の残基で、例えば残基383~397(ドメインI(D1)のS6中)、残基717~731(DIIのS6中)、残基1182~1196(DIIIのS6中)および/または残基1485~1499(DIVのS6中)で行われ得る。したがって、いくつかの実施形態では、D1のS6、DIIのS6、DIIIのS6、およびDIVのS6の少なくとも1つは、グリシン、プロリン、極性または荷電残基による上記範囲内のアミノ酸残基の少なくとも1つの置換を含む。
【0055】
いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、4つのS6アルファヘリックスの1つの少なくとも1つの残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、4つのS6アルファヘリックスのうちの2つの上にある少なくとも1つの残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、4つのS6アルファヘリックスの3つの上の少なくとも1つの残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、4つ全てのS6アルファヘリックスの上の少なくとも1つの残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、4つのS6アルファヘリックスの少なくとも3つの上のアミノ酸残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による1つの置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、配列番号1の以下のセグメント:残基383~397(ドメインI(D1)のS6中)、残基717~731(DIIのS6中)、残基1182~1196(DIIIのS6中)および/または残基1485~1499(DIVのS6中)のそれぞれの中に、グリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基によるアミノ酸残基の1つまたは2つの置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、配列番号1の以下のセグメント:残基383~397(ドメインI(D1)のS6中)、残基717~731(DIIのS6中)、残基1182~1196(DIIIのS6中)および/または残基1485~1499(DIVのS6中)のそれぞれの中に、グリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基によるアミノ酸残基の1つまたは2つの置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、配列番号1の以下のセグメント:残基383~397(ドメインI(D1)のS6中)、残基717~731(DIIのS6中)、残基1182~1196(DIIIのS6中)および/または残基1485~1499(DIVのS6中)のそれぞれの中に、グリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基によるアミノ酸残基の1つまたは2つの置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、配列番号1の以下のセグメント:残基383~397(ドメインI(D1)のS6中)、残基717~731(DIIのS6中)、残基1182~1196(DIIIのS6中)および/または残基1485~1499(DIVのS6中)のそれぞれの中に、グリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基によるアミノ酸残基の1つまたは2つの置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、残基L390、F724、I1189およびI1492のうちの2つ以上におけるアミノ酸残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、残基L390、F724、I1189およびI1492のうちの3つのアミノ酸残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、アミノ酸残基L390、F724およびI1189の、またはアミノ酸残基F724、I1189およびI1492の、グリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、野生型ヒトNaXと比較した置換F724Q、I1189TおよびI1492Tを含む。いくつかの例では、ヒトNaXは、野生型ヒトNaXと比較した置換L390E、I1189EおよびI1492Eを含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、残基L390、F724、I1189およびI1492の4つ全てのアミノ酸残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、変異型ヒトNa
Xタンパク質は、イオンチャネルアッセイで活性である。例えば、いくつかの例では、イオンチャネルアッセイは、アフリカツメガエル卵母細胞において変異タンパク質を発現させることを含む。いくつかのそのような場合、0mVの保持電位から+80mVまたは-100mVで誘発された構築物を発現するアフリカツメガエルの卵母細胞の電流の振幅は、ヒトNa
X野生型を発現する卵母細胞からの振幅よりも有意に高い。(いくつかの活性型および不活性型の変異型ヒトNa
Xタンパク質構築物の例示については
図18を参照されたい(アスタリスクは統計学的有意性を示す。)。
【0057】
III.変異型ヒトNAXタンパク質を使用するスクリーニング方法
本開示はまた、特に、例えばイオンチャネルアッセイおよび/または結合アッセイにおいて、変異型ヒトNaXに対する潜在的なモジュレーターをスクリーニングすることを含む、ヒトNaXのモジュレーターとして作用する分子を同定する方法を包含する。
【0058】
いくつかの実施形態では、ヒトNa
XのDIIIドメインの少なくとも一部が、ヒトまたは哺乳動物Na
Vタンパク質(Na
V)のDIIIドメインの対応する部分によって置換されている。いくつかの例では、変異型ヒトNa
Xは、ヒトまたは哺乳動物Na
V由来のDIIIS1-S6領域の全部または一部を含み、場合により、置換されたヒトNa
XのDIIIドメインの少なくとも一部は、(a)DIII(残基920~1200)、(b)DIII電圧センサドメインIII(VSD3)およびS4-S5リンカー(残基920~1058)、(c)DIII VSD3、S4-S5リンカーおよびS5(残基920~1078)、(d)DIIIおよびDII-DIIIリンカー(残基733~1200)、(e)DIIIおよびDIII-DIVリンカー(920~1237)、(f)DIIIおよびDII-DIIIリンカーおよびDIII-DIVリンカー(733~1237)を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNa
Xは、ヒトまたは哺乳動物Na
V由来のDIIIS1~S6領域の全部または一部を含み、場合により、置換されたヒトNa
XのDIIIドメインの少なくとも一部は、(a)DIII(残基920~1200)、(b)DIII電圧センサドメインIII(VSD3)およびS4-S5リンカー(残基920~1058)、(c)DIII VSD3、S4-S5リンカーおよびS5(残基920~1078)、(d)DIIIおよびDII-DIIIリンカー(残基733~1200)、(e)DIIIおよびDIII-DIVリンカー(920~1237)、(f)DIIIおよびDII-DIIIリンカーおよびDIII-DIVリンカー(733~1237)を含む。いくつかの例では、ヒトまたは哺乳動物Na
VのDIIIドメインの対応する部分によって置換されているヒトNa
XのDIIIドメインの少なくとも一部は、S5を含まない。いくつかの例では、ヒトまたは哺乳動物Na
VのDIIIドメインの対応する部分によって置換されているヒトNa
XのDIIIドメインの少なくとも一部は、S6を含まない。いくつかの例では、ヒトまたは哺乳動物Na
VのDIIIドメインの対応する部分で置換されたヒトNa
XのDIIIドメインの少なくとも一部は、S1、S2、S3、S4および/またはS4-S5リンカーのいずれをも含まない。いくつかの例では、ヒトNa
XのDIIIドメインの少なくとも一部は、哺乳動物Nav1.1、哺乳動物Nav1.2、哺乳動物Nav1.3、哺乳動物Nav1.4、哺乳動物Nav1.5、哺乳動物Nav1.6、哺乳動物Nav1.7、哺乳動物Nav1.8、哺乳動物Nav1.9、ヒトNav1.1、ヒトNav1.2、ヒトNav1.3、ヒトNav1.4、ヒトNav1.5、ヒトNav1.6、ヒトNav1.7、ヒトNav1.8またはヒトNav1.9の対応する部分で置換されている。例えば、いくつかの例では、ヒトNa
XのDIIIドメインの少なくとも一部は、ヒトNav1.7の対応する部分で置換されている。いくつかのこのような例では、変異型ヒトNa
Xは、キメラ構築物2、キメラ構築物3、キメラ構築物7、キメラ構築物9、キメラ構築物11、キメラ構築物15もしくはキメラ構築物19であるか、または配列番号3、4、8、10、12、16もしくは20のいずれか1つのアミノ酸配列である。(以下の表4および
図18を参照されたい。)
【0059】
本発明は、ヒトNaXイオンチャネルタンパク質(NaX)モジュレーターを同定する方法であって、(a)ヒトNaXの2つ、3つまたは4つのS6アルファヘリックスのそれぞれの上の少なくとも1つの残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む変異型ヒトNaXを提供する工程、(b)潜在的モジュレーターの存在下で、変異型ヒトNaXに対してイオンチャネルアッセイを実施する工程、および(c)潜在的モジュレーターの存在下でのアッセイにおける変異型ヒトNaXの活性が潜在的モジュレーターの非存在下での活性よりも高いかまたは低い場合に、潜在的モジュレーターをヒトNaXモジュレーターとして同定する工程を含む、方法をも包含する。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、4つのS6アルファヘリックスのうちの2つの上にある少なくとも1つの残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、4つのS6アルファヘリックスの1つの少なくとも1つの残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、4つのS6アルファヘリックスのうちの2つの上にある少なくとも1つの残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、4つのS6アルファヘリックスの3つの上の少なくとも1つの残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含むいくつかの例では、変異型ヒトNaXは、4つ全てのS6アルファヘリックスの上の少なくとも1つの残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、4つのS6アルファヘリックスの少なくとも3つの上のアミノ酸残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による1つの置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、配列番号1の以下のセグメント:残基383~397(ドメインI(D1)のS6中)、残基717~731(DIIのS6中)、残基1182~1196(DIIIのS6中)および/または残基1485~1499(DIVのS6中)のそれぞれの中に、グリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基によるアミノ酸残基の1つまたは2つの置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、配列番号1の以下のセグメント:残基383~397(ドメインI(D1)のS6中)、残基717~731(DIIのS6中)、残基1182~1196(DIIIのS6中)および/または残基1485~1499(DIVのS6中)のそれぞれの中に、グリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基によるアミノ酸残基の1つまたは2つの置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、配列番号1の以下のセグメント:残基383~397(ドメインI(D1)のS6中)、残基717~731(DIIのS6中)、残基1182~1196(DIIIのS6中)および/または残基1485~1499(DIVのS6中)のそれぞれの中に、グリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基によるアミノ酸残基の1つまたは2つの置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、配列番号1の以下のセグメント:残基383~397(ドメインI(D1)のS6中)、残基717~731(DIIのS6中)、残基1182~1196(DIIIのS6中)および/または残基1485~1499(DIVのS6中)のそれぞれの中に、グリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基によるアミノ酸残基の1つまたは2つの置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、残基L390、F724、I1189およびI1492のうちの2つ以上におけるアミノ酸残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、残基L390、F724、I1189およびI1492のうちの3つのアミノ酸残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、アミノ酸残基L390、F724およびI1189の、またはアミノ酸残基F724、I1189およびI1492の、グリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、野生型ヒトNaXと比較した置換F724Q、I1189TおよびI1492Tを含む。いくつかの例では、ヒトNaXは、野生型ヒトNaXと比較した置換L390E、I1189EおよびI1492Eを含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、残基L390、F724、I1189およびI1492の4つ全てのアミノ酸残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む。
【0060】
本開示は、ヒトイオンチャネルタンパク質、例えばヒトNaVタンパク質の活性を調節する試験分子がヒトNaXイオンチャネル(NaX)タンパク質の活性も調節するかどうかを決定する方法であって、(a)ヒトNaXのDIIIドメインの少なくとも一部がヒトまたは哺乳動物NaVタンパク質(NaV)のDIIIドメインの対応する部分と置換されている変異型ヒトNaXを提供する工程、(b)試験分子の存在下で変異型ヒトNaXに対してイオンチャネルアッセイを実施する工程、(c)試験分子の存在下でのアッセイにおける変異型ヒトNaXの活性が、試験分子の非存在下での活性よりも高いかまたは低い場合、試験分子がヒトNaXモジュレーターであると決定する工程を含み、場合により、(d)パート(c)により、試験分子がヒトNaXモジュレーターでない場合、追加のスクリーニングのために試験分子を選択する工程を含む方法をさらに含む。
【0061】
本開示は、ヒトイオンチャネルタンパク質、例えばヒトNaVタンパク質の活性を調節する試験分子がヒトNaXイオンチャネル(NaX)タンパク質の活性も調節するかどうかを決定する方法であって、(a)試験分子がヒトイオンチャネルタンパク質の活性を調節することを決定する工程、(b)ヒトNaXのDIIIドメインの少なくとも一部がヒトまたは哺乳動物NaVタンパク質(NaV)のDIIIドメインの対応する部分と置換されている変異型ヒトNaXを提供する工程、(c)試験分子の存在下で変異型ヒトNaXに対してイオンチャネルアッセイを実施する工程、および(d)試験分子の存在下でのアッセイにおける変異型ヒトNaXの活性が、試験分子の非存在下での活性よりも高いかまたは低い場合、試験分子がヒトNaXモジュレーターであると決定する工程を含み、場合により、(e)パート(d)により、試験分子がヒトNaXモジュレーターでない場合、追加のスクリーニングのために試験分子を選択する工程を含む方法をさらに含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、ヒトNa
XのDIIIドメインの少なくとも一部が、ヒトまたは哺乳動物Na
Vタンパク質(Na
V)のDIIIドメインの対応する部分によって置換されている。いくつかの例では、変異型ヒトNa
Xは、ヒトまたは哺乳動物Na
V由来のDIIIS1~S6領域の全部または一部を含み、場合により、置換されたヒトNa
XのDIIIドメインの少なくとも一部は、(a)DIII(残基920~1200)、(b)DIII電圧センサドメインIII(VSD3)およびS4-S5リンカー(残基920~1058)、(c)DIII VSD3、S4-S5リンカーおよびS5(残基920~1078)、(d)DIIIおよびDII-DIIIリンカー(残基733~1200)、(e)DIIIおよびDIII-DIVリンカー(920~1237)、(f)DIIIおよびDII-DIIIリンカーおよびDIII-DIVリンカー(733~1237)を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNa
Xは、ヒトまたは哺乳動物Na
V由来のDIIIS1~S6領域の全部または一部を含み、場合により、置換されたヒトNa
XのDIIIドメインの少なくとも一部は、(a)DIII(残基920~1200)、(b)DIII電圧センサドメインIII(VSD3)およびS4-S5リンカー(残基920~1058)、(c)DIII VSD3、S4-S5リンカーおよびS5(残基920~1078)、(d)DIIIおよびDII-DIIIリンカー(残基733~1200)、(e)DIIIおよびDIII-DIVリンカー(920~1237)、(f)DIIIおよびDII-DIIIリンカーおよびDIII-DIVリンカー(733~1237)を含む。いくつかの例では、ヒトまたは哺乳動物Na
VのDIIIドメインの対応する部分によって置換されているヒトNa
XのDIIIドメインの少なくとも一部は、S5を含まない。いくつかの例では、ヒトまたは哺乳動物Na
VのDIIIドメインの対応する部分によって置換されているヒトNa
XのDIIIドメインの少なくとも一部は、S6を含まない。いくつかの例では、ヒトまたは哺乳動物Na
VのDIIIドメインの対応する部分で置換されたヒトNa
XのDIIIドメインの少なくとも一部は、S1、S2、S3、S4および/またはS4-S5リンカーのいずれをも含まない。いくつかの例では、ヒトNa
XのDIIIドメインの少なくとも一部は、哺乳動物Nav1.1、哺乳動物Nav1.2、哺乳動物Nav1.3、哺乳動物Nav1.4、哺乳動物Nav1.5、哺乳動物Nav1.6、哺乳動物Nav1.7、哺乳動物Nav1.8、哺乳動物Nav1.9、ヒトNav1.1、ヒトNav1.2、ヒトNav1.3、ヒトNav1.4、ヒトNav1.5、ヒトNav1.6、ヒトNav1.7、ヒトNav1.8またはヒトNav1.9の対応する部分で置換されている。例えば、いくつかの例では、ヒトNa
XのDIIIドメインの少なくとも一部は、ヒトNav1.7の対応する部分で置換されている。いくつかのこのような例では、変異型ヒトNa
Xは、キメラ構築物2、キメラ構築物3、キメラ構築物7、キメラ構築物9、キメラ構築物11、キメラ構築物15もしくはキメラ構築物19であるか、または配列番号3、4、8、10、12、16もしくは20のいずれか1つのアミノ酸配列である。(以下の表4および
図18を参照されたい。)
【0063】
本開示は、また、ヒトイオンチャネルタンパク質の活性を調節する試験分子がヒトNaXイオンチャネル(NaX)タンパク質の活性を調節するかどうかを決定する方法であって、(a)ヒトNaXの2つ、3つまたは4つのS6アルファヘリックスのそれぞれの上の少なくとも1つの残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む変異型ヒトNaXを提供する工程、(b)試験分子の存在下で変異型ヒトNaXに対してイオンチャネルアッセイを実施する工程、(c)試験分子の存在下でのアッセイにおける変異型ヒトNaXの活性が、試験分子の非存在下での活性よりも高いかまたは低い場合、試験分子がヒトNaXモジュレーターであると決定する工程を含み、場合により、(d)パート(c)により、試験分子がヒトNaXモジュレーターでない場合、追加のスクリーニングのために試験分子を選択する工程を含む方法を含む。
【0064】
本開示は、ヒトイオンチャネルタンパク質の活性を調節する試験分子がヒトNaXイオンチャネル(NaX)タンパク質の活性も調節するかどうかを決定する方法であって、(a)試験分子がヒトイオンチャネルタンパク質の活性を調節することを決定する工程、(b)ヒトNaXの2つ、3つまたは4つのS6アルファヘリックスのそれぞれの上の少なくとも1つの残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む変異型ヒトNaXを提供する工程、(c)試験分子の存在下で変異型ヒトNaXに対してイオンチャネルアッセイを実施する工程、(d)試験分子の存在下でのアッセイにおける変異型ヒトNaXの活性が、試験分子の非存在下での活性よりも高いかまたは低い場合、試験分子がヒトNaXモジュレーターであると決定する工程を含み、(e)パート(d)により、試験分子がヒトNaXモジュレーターでない場合、追加のスクリーニングのために試験分子を選択する工程を含む方法をさらに含む。
【0065】
いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、4つのS6アルファヘリックスの1つの少なくとも1つの残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、4つのS6アルファヘリックスのうちの2つの上にある少なくとも1つの残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、4つのS6アルファヘリックスの3つの上の少なくとも1つの残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、4つ全てのS6アルファヘリックスの上の少なくとも1つの残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、4つのS6アルファヘリックスの少なくとも3つの上のアミノ酸残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による1つの置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、配列番号1の以下のセグメント:残基383~397(ドメインI(D1)のS6中)、残基717~731(DIIのS6中)、残基1182~1196(DIIIのS6中)および/または残基1485~1499(DIVのS6中)のそれぞれの中に、グリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基によるアミノ酸残基の1つまたは2つの置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、配列番号1の以下のセグメント:残基383~397(ドメインI(D1)のS6中)、残基717~731(DIIのS6中)、残基1182~1196(DIIIのS6中)および/または残基1485~1499(DIVのS6中)のそれぞれの中に、グリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基によるアミノ酸残基の1つまたは2つの置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、配列番号1の以下のセグメント:残基383~397(ドメインI(D1)のS6中)、残基717~731(DIIのS6中)、残基1182~1196(DIIIのS6中)および/または残基1485~1499(DIVのS6中)のそれぞれの中に、グリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基によるアミノ酸残基の1つまたは2つの置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、配列番号1の以下のセグメント:残基383~397(ドメインI(D1)のS6中)、残基717~731(DIIのS6中)、残基1182~1196(DIIIのS6中)および/または残基1485~1499(DIVのS6中)のそれぞれの中に、グリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基によるアミノ酸残基の1つまたは2つの置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、残基L390、F724、I1189およびI1492のうちの2つ以上におけるアミノ酸残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、残基L390、F724、I1189およびI1492のうちの3つのアミノ酸残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、アミノ酸残基L390、F724およびI1189の、またはアミノ酸残基F724、I1189およびI1492の、グリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、野生型ヒトNaXと比較した置換F724Q、I1189TおよびI1492Tを含む。いくつかの例では、ヒトNaXは、野生型ヒトNaXと比較した置換L390E、I1189EおよびI1492Eを含む。いくつかの例では、変異型ヒトNaXは、残基L390、F724、I1189およびI1492の4つ全てのアミノ酸残基のグリシン、プロリンまたは極性もしくは荷電残基による置換を含む。
【0066】
ヒトイオンチャネルタンパク質の活性を調節することが知られているか、または発見された試験分子がヒトNaXイオンチャネル(NaX)タンパク質の活性も調節するかどうかを決定する特定の方法では、方法を対抗選択として使用し得る。例えば、実験者が、特定のNaVタンパク質のモジュレーターがそのNaVタンパク質および/または関連するNaVタンパク質に特異的であることを確実にしたい場合、実験者は、本明細書の方法を実施して試験分子が変異型ヒトNaXのモジュレーターではないことを確認し得る。
【0067】
上記の方法のいずれにおいても、イオンチャネルアッセイは、例えば、イオンチャネルとしての変異型NaXタンパク質の活性を検出するために使用される任意の適切なアッセイであり得る。例としては、自動パッチクランプアッセイ、イオンフラックスアッセイ、およびイオンまたは電圧感受性色素アッセイを含むパッチクランプアッセイが挙げられるが、これらに限定されない。例示的なアッセイは、例えば、H.Yuら,“high throughput screening technologies for ion channels,”Acta Pharm.Sinica37:34-43(2016)に記載されており、材料は、商業的製造業者から入手可能である。イオンフラックスアッセイでは、例えば、ナトリウム22(22Na+)などの放射性同位体を使用して、ナトリウムイオンまたは他のイオンの細胞流入および流出を追跡し得る。別のタイプのアッセイは、電圧感受性またはイオン感受性色素アッセイである。電圧感受性色素アッセイでは、イオンチャネルタンパク質を含む膜を横切る電圧変化は、例えばビス-(1,3-ジブチルバルビツール酸)トリメチンオキソノール(DiBAC4)またはFMPなどのオキソノール誘導体などの色素を使用し、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を使用して測定される。いくつかの例では、FRET色素は、膜に局在化または結合され得る。イオン感受性色素アッセイは、イオン濃度に応じてシグナルの差を示す色素を使用し得る。一例は、ナトリウム指示薬色素SBFIである。他の実施形態では、パッチクランプアッセイをスクリーニング方法に使用し得る。いくつかの実施形態では、自動パッチクランプアッセイを使用し得る。パッチクランプアッセイを実施するための例示的なプラットフォームおよび機器は、いくつかの製造業者によって販売されている。プラットフォームアッセイの例としては、IonWorks(商標)platform assays、PatchXpress(商標)およびIonFlux(商標)(Molecular Devices社)、Qpatch(商標)HT/HTX(Sophion)、ならびにPatchliner(商標)およびSynchroPatch(商標)(Nanion Technologies社)が挙げられる。
【0068】
上記の方法のいずれにおいても、当該方法において同定された潜在的モジュレーターは、変異型ヒトNaxの活性を調節し、例えば、野生型ヒトNaxの活性よりも低いか、または高い活性を有する。いくつかの例では、潜在的モジュレーターは、野生型ヒトNaXの活性よりも低い活性を有するなど、変異型ヒトNaXの活性を低下させる。いくつかの例では、活性は、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、または少なくとも90%低下し得る。いくつかの例では、モジュレーターの存在下での変異型ヒトNaXの活性は、例えば、モジュレーターの非存在下での変異型ヒトNaxの活性の1~90%、10~90%、1~10%、1~20%、25~90%、50~90%、25~75%、40~80%、または50~75%であり得る。いくつかの例では、アッセイで同定された潜在的モジュレーターは、10nM~500μM、50nM~500μM、10nM~50μM、100nM~500μM、100nM~50μM、1~500μM、1~50μM、10~500μMまたは50~250μMの最大半値濃度でアッセイにおいて変異型ヒトNaXの活性を低下させる。
【0069】
他の例では、アッセイで同定された潜在的モジュレーターは、例えば野生型ヒトNaXの活性よりも高い活性を有するなど、アッセイにおける変異型ヒトNaXの活性を増加させる。いくつかの例では、活性は、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、または少なくとも100%(すなわち、2倍)、最大100%、または最大3倍増加し得る。いくつかの例では、モジュレーターの存在下での変異型ヒトNaXの活性は、例えば、モジュレーターの非存在下での変異型ヒトNaxの活性よりも10~100%、10~80%、20~80%、25~100%、25~75%、50~100%、2~3倍または100~200%高い場合がある。
【0070】
上記の方法のいずれにおいても、イオンチャネルアッセイはまた、変異型ヒトNaXの潜在的モジュレーターおよび同定されたモジュレーターの両方の存在下で行われ得る。例えば、そのような場合、同定されたモジュレーターがタンパク質の活性を変化させるために潜在的モジュレーターと競合するかどうかを決定し得る。いくつかのそのような場合では、変異型ヒトNaXの同定されたモジュレーターは、テトロドトキシン(TTX)、キニジン、フレカイニド、テトラカインまたはリドカインの1以上である。
【0071】
上記の方法のいずれもまた、変異型ヒトNaXおよび野生型ヒトNaXのいずれかまたは両方に対するアッセイにおいて、ならびにキメラヒトNaXの場合、置換アミノ酸が由来する哺乳動物またはヒトNaVタンパク質に対する、アッセイにおいて同定された潜在的モジュレーターの結合親和性を決定することをさらに含み得る。例えば、ELISAアッセイを使用して、例えば、ビーズ、プレートなどの固体表面などのマトリックス上の脂質で安定化した形態の変異型ヒトNaXタンパク質を使用して、結合親和性を決定し得る。ビーズは、薄片またはチップ、球、ペレットなどの任意の形状を有し得る。いくつかの実施形態では、そのようなビーズは、ストレプトアビジン被覆ビーズ、アビジン被覆ビーズ、または脱グリコシル化アビジン被覆ビーズである。いくつかの実施形態では、そのようなビーズは磁性ビーズである。いくつかの例では、潜在的モジュレーターは、変異型ヒトNaXおよび野生型ヒトNaXのいずれかまたは両方に、10μM以下、10μM~50nM、10μM~500nM、1μM以下、1μM~50nM、または100nM以下のEC50またはIC50で結合する。
【0072】
いくつかの実施形態では、例えば、分子の他の生物学的活性を決定するために、上記のスクリーニングで選択された分子に対してさらなる実験を実施し得る。例えば、さらなるアッセイを使用して、分子がヒトまたは哺乳動物のNaVタンパク質などの他のイオンチャネルタンパク質にも結合するかどうかを決定し、結果としてイオンチャネルモジュレーターまたは結合剤としての分子の特異性を決定し得る。例えば、キメラヒトNaXを使用する方法では、さらなるアッセイを実施して、分子が、変異型NaXのキメラ部分が由来するNaVタンパク質の活性をも調節するかどうか、または分子がそのNaVタンパク質に結合するかどうかを決定し得る。
【0073】
IV.スクリーニング方法のための試験分子
上記の方法のいずれにおいても、潜在的モジュレーター(すなわち、試験分子)は、ペプチドまたは大環状分子または抗体であり得る。例えば、いくつかの例では、潜在的モジュレーターは小分子である。
【0074】
本開示はまた、本明細書に記載の方法によって同定されるヒトNaXのモジュレーターに関し、このモジュレーターは、場合によりペプチド、大環状分子、小分子または抗体であり得る。
【0075】
いくつかの実施形態では、試験される潜在的モジュレーター分子はペプチドである。いくつかの実施形態では、ペプチドは、6~14量体ペプチド、例えば6~12量体、6~10量体、6~8量体、8~12量体、8~10量体などである。スライド10を参照されたい。いくつかの実施形態では、ペプチドは、14量体である。スライド15~16を参照されたい。いくつかの実施形態では、ペプチドは6~10量体である。いくつかの実施形態では、ペプチドは8~10量体である。いくつかの実施形態では、ペプチドは6~8量体である。いくつかの実施形態では、ペプチドは8量体である。スライド21~22を参照されたい。いくつかの実施形態では、ペプチドは、3~40量体、3~20量体、4~16量体、4~14量体、または6~14量体、例えば3量体、4量体、5量体、6量体、7量体、8量体、9量体、10量体、11量体、12量体、13量体、14量体、15量体、16量体、17量体、18量体、19量体、20量体、21量体、22量体、23量体、24量体、25量体、26量体、27量体、28量体、29量体、30量体、31量体、32量体、33量体、34量体、35量体、36量体、37量体、38量体、39量体、または40量体である。
【0076】
いくつかの実施形態では、ペプチドは大環状化合物である。いくつかの実施形態では、大環状化合物は、6~14量体、例えば6~12量体、6~10量体、6~8量体、8~12量体、8~10量体などの大環状化合物である。スライド10を参照されたい。いくつかの実施形態では、大環状化合物は、6~14量体の大環状化合物である。スライド15~16を参照されたい。いくつかの実施形態では、大環状化合物は、6~10量体の大環状化合物である。いくつかの実施形態では、大環状化合物は、8~10量体の大環状化合物である。いくつかの実施形態では、大環状化合物は、6~8量体の大環状化合物である。いくつかの実施形態では、大環状化合物は、8量体の大環状化合物である。スライド21~22を参照されたい。いくつかの実施形態では、大環状化合物は、3~40量体、3~20量体、4~16量体、4~14量体、または6~14量体、例えば、3量体、4量体、5量体、6量体、7量体、8量体、9量体、10量体、11量体、12量体、13量体、14量体、15量体、16量体、17量体、18量体、19量体、20量体、21量体、22量体、23量体、24量体、25量体、26量体、27量体、28量体、29量体、30量体、31量体、32量体、33量体、34量体、35量体、36量体、37量体、38量体、39量体、または40量体の大環状化合物である。いくつかの実施形態では、大環状化合物は、少なくとも1つの親油性側鎖および少なくとも1つの正に帯電した側鎖を有する。
【0077】
いくつかの実施形態では、本明細書のスクリーニングで試験される分子は小分子である。いくつかの実施形態では、試験される分子は抗体であり、抗体は、IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEのいずれかの完全長抗体だけでなく、Fv、Fab’、(Fab’)2、scFvなどの抗体の抗原結合断片、ナノボディ、一本鎖抗体、二重特異性または多重特異性抗体も含み得る。
【0078】
いくつかの実施形態では、試験される分子は、ペプチドの結合断片、小分子の結合断片、または抗体の結合断片(例えば、抗原結合断片)である。
【0079】
V.分子複合体
いくつかの実施形態では、本開示は、ペプチド、小分子、抗体、またはペプチド、小分子もしくは抗体の結合断片などの潜在的モジュレーター分子などの分子に結合した本明細書に記載の変異型ヒトNaXを含む分子複合体を含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、分子はペプチドである。いくつかの実施形態では、ペプチドは、6~12量体、6~10量体、6~8量体、8~12量体、8~10量体などの6~14量体のペプチドである。スライド10を参照されたい。いくつかの実施形態では、ペプチドは、14量体である。スライド15~16を参照されたい。いくつかの実施形態では、ペプチドは、6~10量体である。いくつかの実施形態では、ペプチドは、8~10量体である。いくつかの実施形態では、ペプチドは、6~8量体である。いくつかの実施形態では、ペプチドは、8量体である。スライド21~22を参照されたい。いくつかの実施形態では、ペプチドは、3~40量体、3~20量体、4~16量体、4~14量体、または6~14量体、例えば3量体、4量体、5量体、6量体、7量体、8量体、9量体、10量体、11量体、12量体、13量体、14量体、15量体、16量体、17量体、18量体、19量体、20量体、21量体、22量体、23量体、24量体、25量体、26量体、27量体、28量体、29量体、30量体、31量体、32量体、33量体、34量体、35量体、36量体、37量体、38量体、39量体、または40量体である。
【0081】
いくつかの実施形態では、ペプチドは大環状化合物である。いくつかの実施形態では、大環状化合物は、6~14量体、例えば6~12量体、6~10量体、6~8量体、8~12量体、8~10量体などの大環状化合物である。スライド10を参照されたい。いくつかの実施形態では、大環状化合物は、6~14量体の大環状化合物である。スライド15~16を参照されたい。いくつかの実施形態では、大環状化合物は、6~10量体の大環状化合物である。いくつかの実施形態では、大環状化合物は、8~10量体の大環状化合物である。いくつかの実施形態では、大環状化合物は、6~8量体の大環状化合物である。いくつかの実施形態では、大環状化合物は、8量体の大環状化合物である。スライド21~22を参照されたい。いくつかの実施形態では、大環状化合物は、3~40量体、3~20量体、4~16量体、4~14量体、または6~14量体、例えば、3量体、4量体、5量体、6量体、7量体、8量体、9量体、10量体、11量体、12量体、13量体、14量体、15量体、16量体、17量体、18量体、19量体、20量体、21量体、22量体、23量体、24量体、25量体、26量体、27量体、28量体、29量体、30量体、31量体、32量体、33量体、34量体、35量体、36量体、37量体、38量体、39量体、または40量体の大環状化合物である。
【0082】
いくつかの実施形態では、大環状化合物は、少なくとも1つの親油性側鎖および少なくとも1つの正に帯電した側鎖を有する。
【0083】
いくつかの実施形態では、大環状化合物は、少なくとも1つの親油性側鎖および少なくとも1つの正に帯電した側鎖を有する。いくつかの実施形態では、分子は抗体であり、抗体は、IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEのいずれかの完全長抗体だけでなく、Fv、Fab’、(Fab’)2、scFvなどの抗体の抗原結合断片、ナノボディ、一本鎖抗体、二重特異性または多重特異性抗体も含み得る。
【0084】
いくつかの実施形態では、分子は、ペプチドの結合断片、小分子の結合断片、または抗体の結合断片(例えば、抗原結合断片)である。
【0085】
VII.キット
本開示はまた、本明細書のスクリーニング方法に関連する試薬を含むキットを含む。いくつかの例では、キットは、本明細書中に記載の1つ以上の種の変異型ヒトNaXを含む。いくつかの例では、キットは、特定の変異型ヒトNaXの有無にかかわらず、本明細書のスクリーニング方法で使用される試薬を含む。いくつかの例では、キットは2種類以上の変異型ヒトNaXを含む。いくつかの例では、キットはまた、例えば対照として、少なくとも1つの哺乳動物もしくはヒトのNaVおよび/または野生型のヒトNaXを含む。
【0086】
いくつかの実施形態では、本明細書のキットは、イオンチャネルアッセイを実施するための1つ以上の試薬を含み得る。いくつかの例では、キットは、例えば陽性対照として、変異型ヒトNaXの特定のモジュレーターを含み得る。本明細書のキットはまた、変異型ヒトNaXを調節しないと同定された陰性対照を含み得る。分子が変異型タンパク質に結合するかどうかを決定するためにキットが使用される場合、キットは、ビーズなどのマトリックス粒子またはプレートなどの別の種類のマトリックスに結合した変異型ヒトNaXを含み得る。ビーズは、薄片またはチップ、球、ペレットなどの任意の形状を有し得る。いくつかの実施形態では、そのようなビーズは、ストレプトアビジン被覆ビーズ、アビジン被覆ビーズ、または脱グリコシル化アビジン被覆ビーズである。いくつかの実施形態では、そのようなビーズは磁性ビーズである。変異型ヒトNaXは、マトリックスに予め結合していてもいなくてもよい。いくつかの実施形態では、ビオチン-ストレプトアビジンまたは同様の系など、タンパク質のマトリックスへのタンパク質の結合を促進するための試薬が含まれる。
【0087】
いくつかの実施形態では、キットは、本明細書のスクリーニング方法に関連する試薬、例えば本明細書の方法に記載のイオンチャネルアッセイを実施するのに必要な試薬の一部または全部を含み得る。いくつかの例では、タンパク質のモジュレーターなどの1つ以上の対照試薬も含まれ得る。
【0088】
いくつかの実施形態では、キットは、ペプチド、小分子、および/または抗体などの試験分子または試験分子のライブラリーを含み得る。いくつかの実施形態では、キット中のペプチドは大環状化合物であり得る。いくつかの実施形態では、キットは、ペプチド、小分子、または抗体の結合断片である試験分子を含み得る。
【0089】
いくつかの実施形態では、キットは、使用のための指示書をも含み得る。
【0090】
実施例
以下は、本開示の方法および組成物の実施例である。これらの実施例は、本開示を限定することを意図するものではなく、例示することのみを意図しており、上記の一般的な説明を考慮すると、様々な他の実施形態が実施され得ることが理解される。
【0091】
実施例1-材料および方法
実施例1.1-実験モデルおよび対象の詳細
細胞株Expi293Fは、懸濁液(Thermo Fisher Scientific)中で増殖するように形質転換および採用されたヒト胎児腎臓細胞株(雌)であり、タンパク質発現に使用された。Expi293F細胞を、SMM 293T-I培地中、37℃および5%CO2で培養した。Expi293F細胞を認証し、マイコプラズマ汚染について試験した。
【0092】
実施例1.2-タンパク質の発現および精製
2xStrepIIおよび2xFLAGタグをそのN末端にタンデムに含む全長ヒトXおよびタグなし全長ヒトβ3を、CMVプロモーターの制御下でpRKベクターにそれぞれクローニングした。両構築物をExpi293細胞にPEIでトランスフェクトし、SMM 293T-I培地中、5% CO2下、37℃で48時間培養した。細胞を800gで10分間の遠心分離によって回収し、再懸濁し、dounce均質化によって緩衝液A(25mM ADA pH6.0、200mM NaCl、1mM PMSF、1μg/mLのベンゾナーゼおよび1xRocheプロテアーゼ阻害剤カクテル)に溶解した。細胞膜を可溶化するために、グリコジオスゲニン(GDN)およびコレステロールヘミスクシネート(CHS)をそれぞれ最終濃度2%および0.3%になるようにサンプルに添加し、このサンプルを4℃で2時間穏やかに撹拌した。次いで、不溶性物質を4℃で1時間、125,000gでの超遠心分離によって回収した。上清を、緩衝液B(25mM ADA pH6.0、200mM NaCl、0.01% GDN)中で予備平衡化し、4℃で1時間バッチで結合させた抗FLAG M 2アガロース樹脂にアプライした。次いで、サンプルをグラビティカラムにアプライし、収集した樹脂を10 CV緩衝液Bで洗浄した後、5mM ATPおよび10mM MgCl2を補充した10 CVで洗浄した。300μg/mL FLAGペプチドを補充した5 CV緩衝液Bでタンパク質を溶出した。溶出液を、緩衝液B中で予備平衡化し、バッチ中で3時間結合させたStrep-Tactin XT Superflow高容量樹脂に直接アプライし、次いで10 CV緩衝液Bで洗浄した後、50mMビオチンを補充した5 CVでサンプルを溶出した。ナノディスクの組み込みのために、Amicon Ultra遠心分離濾過装置(100kDa MWCO)を使用してサンプルを15μMに濃縮した。界面活性剤(GDN)中の構造分析のために、溶出液を代わりに100μLに濃縮し、緩衝液B中で予備平衡化したSuperose 6 3.2/300カラムにアプライした。
【0093】
実施例1.3-質量分析
サイズ排除クロマトグラフィー後、10μgのNaX含有ピーク画分(それぞれβ1サブユニットまたはβ3サブユニットとの共発現後)を8Mグアニジン(1:1 v/v)で変性させ、1Mジチオスレイトール(DTT、Sigma-Aldrich、ミズーリ州セントルイス)で100mM DTTの最終濃度まで還元し、95℃で10分間インキュベートし、次いで遠心分離した。10μLの1M Tris(pH8)を溶液に添加し、水を使用してグアニジンを最終濃度2Mに希釈した。2μLのPNGaseF(15000U,New England Biolabs社)で脱グリコシル化を行った後、37℃で一晩インキュベートした。サンプルを60℃で10mM DTTを用いてさらに還元し(15分)、続いて室温で20mMヨードアセトアミドでアルキル化した。タンパク質を、37℃で一晩、50mM重炭酸アンモニウム、pH8中の0.2μgトリプシン(Promega社)またはキモトリプシンで消化した。消化物をギ酸でクエンチし、上清をC18 PhyTips(PhyNexus社)で脱塩し、凍結乾燥し、2%アセトニトリルを含む0.1%ギ酸で再構成し、Elite Orbitrap質量分析計(ThermoFisher Scientific社)にインターフェースされたWaters NanoAcquity HPLCシステム(Waters社)で逆相ナノLC/MS/MSによってさらに処理することなく分析した。ペプチドをSymmetry C18カラム(1.7mm BEH-130、0.1×100mm、Waters社)にロードし、1μL/分の流速で2%~25%の溶媒B(0.1%ギ酸、98%アセトニトリル)の60分間の勾配で分離した。1.2kVのスプレー電圧で、ペプチドを質量分析計に直接溶出した。完全MSデータを、60,000の分解能で350~1250m/zのFTで取得した。完全なMSスキャンからの最も豊富なイオンを、2-Daの単離ウィンドウを通してMS/MSのために選択した。
【0094】
取得したタンデムMSスペクトルを、トリプシンまたはキモトリプシン酵素特異性を用いてMascotアルゴリズム(Matrix Sciences社)を用いて検索した。検索基準としては、50ppmの完全なMS耐性、可変修飾としてメチオニンの酸化(+15.9949Da)および静的修飾としてシステインのカルバミドメチル化(+57.0215Da)による0.5DaのMS/MS耐性が挙げられた。データは、Uniprot哺乳動物データベースに重ね合わせた逆タンパク質配列を含む社内構築物の特異的配列に対して検索した。ペプチドの帰属を、最初にペプチドレベルで2%の偽陽性率(FDR)までフィルタにかけ、続いてタンパク質レベルで2%のFDRまでフィルタにかけた。
【0095】
実施例1.4-脂質ナノディスクへのβ3-NaXの再構成
ナノディスクへの再構成のために、複数の50μLサンプルアリコートをそれぞれ、200倍モル過剰のPOPC:POPE:POPG脂質混合物(3:1:1 50mM HEPES pH7.5、100mM NaCl、5mM MgCl2および1% CHAPSを含有する緩衝液中、10mg/mLの超音波処理浴で可溶化した比)を含む2mLチューブにアプライし、4℃で30分間インキュベートした。次いで、膜足場タンパク質MSP1E3D1(Sigma社)を4倍モル過剰でサンプルにアプライし、4℃でさらに30分間インキュベートした。次いで、サンプルを1.5mLに希釈し、Bio-Beadsを0.25mg/mLの最終濃度にアプライした。次いで、サンプルを4℃で一晩転転倒動させた後、Bio-Beadを除去した。次いで、サンプルをプールし、緩衝液C(25mM HEPES pH7.0、200mM NaCl)であらかじめ平衡化したカラム中の1mLのStrep-Tactin XT樹脂上を通過させ、空のナノディスクを除去した。カラムを5CV緩衝液Cで洗浄した後、50mMビオチンを含有する5CVでサンプルを溶出した。次いで、サンプルを100μLに濃縮し、緩衝液C中で予備平衡化したSuperose 6 3.2/300カラムにアプライした。ピーク画分をプールし、3mg/mLに濃縮した。
【0096】
実施例1.5-低温EMサンプルの調製およびデータ取得
サンプルを室温で10分間、最終濃度0.05%のEMグレードのグルタルアルデヒドで架橋した。1M Tris pH7.0を添加することによって架橋反応をクエンチした。Ultrafoil R2/2(200メッシュ)低温EMグリッド(Quantifoil社GMBH)を、Solarusプラズマ洗浄機(Gatan社、カリフォルニア州プレザントン)を用いて5秒間プラズマ洗浄した。2.25mg/mL(ナノディスク)または1.5mg/mL(GDN)の3マイクロリットルの最終サンプルを低温EMグリッドに適用し、Vitribot Mark IV(ThermoFisher Scientific社、マサチューセッツ州ウォルサム)を使用して、湿度100%で8のブロット力設定を使用して2.5秒間ブロットし、液体エタンに浸漬した。次いで、K2(ナノディスク)またはK3(GDN)Summit直接電子検出器(Gatan社、カリフォルニア州プレザントン)を使用して、生物量子エネルギーフィルタを用いて300keVで操作されるTitan Krios電子顕微鏡(ThermoFisher Scientific社、マサチューセッツ州ウォルサム)でグリッドを画像化した。ナノディスクの画像を、20eVのエネルギースリットを使用して0.824Å/ピクセルに相当する165,000×の倍率で記録した。画像スタックは、10秒間にわたって0.2秒間隔で記録された50枚の画像を含み、総露光量は約50e-/Å2であった。GDNサンプルの画像を、20eVのエネルギースリットを使用して、0.419Å/ピクセルに相当する105,000倍の倍率で超解像モードで記録した。画像スタックは、3秒にわたって0.05秒間隔で記録された60枚の画像を含み、総露光量は約64e-/Å2であった。全てのデータ収集はserialEM67を用いて行った。
【0097】
実施例1.6-低温EMデータ処理
ナノディスクサンプル
低温-EMデータは、WARP、RELION、およびcisTEMソフトウェアパッケージ68-71の組み合わせを使用して処理した。最初のデータセットについては、RELIONのMotionCor272を使用して、フレームの動きに対して11,658個の動画を補正した。得られた画像を、合計累積運動量が250未満のもののみを保持するようフィルタリングして、コントラスト伝達関数(CTF)パラメータを、CTFFIND4.173を使用してスペクトルの30~4.5Åの帯域を使用して適合させた。画像をフィルタリングして、検出された適合分解能が5Åより良好なもののみを含め、さらなる処理のために合計9,988枚の良好な画像を得た。WARP68の深層学習ベースのアルゴリズムを使用して、1,669,107個の粒子を選別した。粒子をcisTEMで2回の2次元分類に供し、最良の30クラスを選択し(76,392粒子)、3次元分類のためにRELIONにエクスポートした。ナノディスクの外側の全ての密度が消去された、ナノディスク(EMD-9024)74で解決された20Åのローパスフィルタリング(LPF)KV1.2再構成を最初の3次元基準として使用した。次いで、得られた最良の3次元体積を、cisTEM(350,901粒子)における2次元分類からの粒子のより広範な選択を使用して、2回目の3次元分類の基準として使用した。次いで、最良の3次元体積およびその対応する91,435個の粒子を、マスクなしでの反復的な自動精製および反復的に調整されたマスクおよび20Åのマスクの外側のLPFによる手動精製のために、cisTEMにインポートして戻した(外側重量0.8)。次いで、得られた4.5Åマップを、cisTEMの単一ラウンドのみの2次元分類からの粒子スタックを使用して、cisTEMのマスクされていない自動精製およびマスクされた手動精製の最終ラウンドにおける参照として使用し、最終3.2Åマップを得た。
【0098】
界面活性剤(GDN)サンプル
RELION、Gaautomatch[K.Zhang、MRC LMB(mrc-lmb.cam.ac.uk/kzhang/)]、およびcisTEMソフトウェアパッケージの組み合わせを使用して、低温-EMデータを処理した。10,850個の動画を、RELIONのMotion Cor272を使用してフレーム移動について補正し、1Å/ピクセルにビニングした。得られた画像を、合計累積運動量が250未満のもののみを保持するようフィルタリングして、コントラスト伝達関数(CTF)パラメータを、CTFFIND4.173を使用してスペクトルの30~4.5Åの帯域を使用して適合させた。画像をフィルタリングして、検出された適合分解能が5Åより良好なもののみを含め、さらなる処理のために合計10,569枚の良好な画像を得た。鋳型としてβ1補助サブユニット(EMD-9617)と複合体化したNaV1.4の再構成の16個の均一な投影を使用して、Gautomatchを使用して合計2,780,663個の粒子を自動的に選別した。粒子をRELIONで250クラスへの二次元分類の一巡に供し、最良の55クラスからの1,420,422個の粒子を含む粒子スタックを抽出し、cisTEMにエクスポートした。ナノディスクに溶解したβ3-NaXの構造を、マスクなしの自動精製の初期ラウンドにおける初期基準として使用し、続いて反復マスク精製およびマスク外の20ÅLPFによる数ラウンドの手動精製を行った(外側重量0.8)。手動による精密化の実行は、デフォーカス精密化を含み、0.2のスコア閾値を使用した。マスクされていない自動精密化およびマスクされた手動精密化の反復ラウンドにより、最終的に2.85Åの分解能で再構成した。
【0099】
実施例1.7-モデル構築および構造解析
β1補助サブユニットと複合体を形成したNaV1.4の構造(PDB 6AGF)28を鋳型として、Phyre2サーバー58を用いてNaX相同性モデルを作成した。このモデルをβ1と共に、Coot59での手動再構築のために低温EMマップにドッキングして、β3-NaX複合体の初期モデルを得た。Phenix60における複数回の実空間精密化およびCootにおける手動再構築に続いて、ISOLDE62を用いたUCSF ChimeraX61における分子動力学支援手動精密化を行った。Phenixで最終的に改良した後、Phenix検証パッケージを使用してモデルを検証した。PyMol63、UCSF Chimera64、およびUCSF ChimeraXを使用して構造図を作成した。チャネル孔65を分析するために、Caver3.0を使用した。Clustal Omega66を使用して配列アラインメントを行い、ESPrimpt 3.067でレンダリングした。
【0100】
実施例1.8-生化学的および電気生理学的試験のための分子生物学
ヒトNaX、NaX-eGFP-2×FLAG、NaV1.7、NaX-NaV1.7ドメイン交換キメラ、ATP1A1、ATP1B1およびSAP97(ホモサピエンスに最適化されたコドン)の相補的DNA(cDNA)をpcDNA3.1/Hygro(+)ベクターにクローニングし、この試験に使用した。ヒトNaVβ1、NaVβ3、CaVβ1、CaVγ2、CaVα2δ1、ATP1A1、ATP1B1、ATP1G1およびSAP97構築物をpcDNA3.1(+)ベクターにクローニングした。NaX、NaV1.55およびNaV1.7変異体(NaXN1142K、QTT(F724Q/I1189T/I1492T);NaV1.5 S1610P/S1618P/A1640P;NaV1.7S211P、ΔL966、S1269F、K1406NおよびA1596P/S1605P/A1627P)を、特注設計したプライマー(EurofinsGenomics社)、PfuUltraIIFusionHSDNAPolymerase(AgilentTechnologies社)を用いた部位特異的変異誘発法を用いて作製し、DNA配列はサンガーDNA配列決定(EurofinsGenomics社)で確認した。アフリカツメガエル卵母細胞における発現のために、NotI、BamHIまたはXbaI制限酵素のいずれかを使用してcDNAを線状化し、次いでT7 mMessage mMachine Kit(Ambion社)を用いてキャップされたRNAに転写した。HEK293T細胞およびNeuro-2a細胞における発現のために、NucleoBond Xtra Midi Plusキット(Macherey-Nagel社)で精製したプラスミドDNAを使用した。
【0101】
実施例1.9-二電極電位固定電気生理学的試験
卵母細胞を以前に記載したように調製した
68。健康そうなステージV~VIの卵母細胞に、Nanoliter 2010注入器(World Precision Instruments社)を用いて2.5~40ngのRNA(5~41 nL)を注入した。1つ以上の構築物を除外する場合、等量のヌクレアーゼフリー水を添加して、種々の構築物の組み合わせにわたって一定のRNA濃度を維持した。注入された卵母細胞を、50μg/mLゲンタマイシンおよび50μg/mLテトラサイクリン(96mM NaCl、2mM KCl、1mM MgCl
2、1.8mM CaCl
2、2.5mMピルビン酸ナトリウム、0.5mMテオフィリン、5mM HEPES;NaOH;pH7.4)を補充したND96中、18℃、140rpmで2~5日間維持した。Warner OC-725C Oocyte Clamp増幅器(Warner Instrument Corp.、米国)を使用し、ND 96溶液(96mM NaCl、2mM KCl、1mM MgCl
2、1.8mM CaCl
2、5mM HEPES;NaOHでpH7.4)を用いて一定の灌流下、室温で2電極電位固定測定を行った。イオン選択性実験のために、外部溶液は、塩化物塩として115mMの試験陽イオン、1.2mM CaCl
2、2mM MgCl
2、5mM HEPES(対応する水酸化物を含むpH7.4)を含んでいた。データ取得は、Digidata 1550デジタイザー(Molecular devices社;10kHzでサンプリング)およびpCLAMP10ソフトウェア(Molecular Devices社)を使用して行った。ホウケイ酸ガラスキャピラリー(Harvard Apparatus社)からのマイクロ電極を、P-1000 Flaming/Brown Micropipette Puller System(Sutter Instrument社)を使用して約0.2~1.0MΩの抵抗を有するように調製し、3M KClを充填した。アコニチンおよびベラトリジン(Alomone Labs社)をDMSOに溶解して50mMストックを作製し、電気生理学的実験のためにND96で300および100μMにさらに希釈した。他のNa
V活性化剤(Alomone Labs社;
図8A~
図8D)を水に溶解してストック溶液を作製した。イオン電流の電圧依存性は、0mVの保持電位から+80~-100mVの範囲の電圧まで、20mV刻みで1秒間のステップからなるプロトコルを使用して決定した。
【0102】
実施例1.10-細胞培養、細胞表面ビオチン化およびウエスタンブロット
HEK293T細胞およびNeuro-2a細胞(ATCC)を、前述のように増殖させ、維持した68。およそ800,000個のHEK293T細胞および250,000個のNeuro-2a細胞を35mm細胞培養皿に播種し、約20時間後にLipoD293 ver.II(tebu-bio)を使用して1μgのcDNAによる一過性トランスフェクションを行った。生化学実験のために、NaX-eGFP-2×FLAGおよびβ3のcDNAを1:1の質量比で混合した。等量の空ベクターDNAを添加して、β3をトランスフェクションから除外した場合に総cDNA量を一定に維持した。トランスフェクトしたHEK293T細胞をトランスフェクションの24時間後に生化学実験に使用した。分化を誘導するために、Neuro-2a細胞を、生化学的実験および電気生理学的実験のために使用する前に、トランスフェクションの24時間後に血清飢餓状態にした(DMEM中でさらに24~30時間培養した)。細胞表面ビオチン化およびウエスタンブロットを、以下のような、わずかな改変のみを伴って、以前に記載されたように行った68;1)クエンチ工程は、氷上で穏やかに撹拌しながら30分間行った。2)アフリカツメガエル卵母細胞を溶解前にトリス緩衝生理食塩水で2回洗浄した。3)卵母細胞の総溶解物画分をSDSサンプル緩衝液で1:5に希釈した後、過剰なタンパク質のためにゲルにロードした。マウス抗Na+/K+-ATPアーゼ抗体がSanta Cruz Biotechnology社からのもの(sc-21712)であったことを除いて、抗体は68に記載されているものを使用した。ブロットは、最小3回の個々の実験の代表である。
【0103】
実施例1.11-パッチクランプ電気生理学的試験
パッチクランプ実験の1時間前に、Na
X-eGFP-2×FLAGを発現する分化したNeuro-2a細胞をガラスカバースリップ上に播種した。細胞を、Axopatch200B増幅器(Molecular Devices社)、Digidata 1550Aデジタイザー(Molecular Devices社;10kHzでサンプリング)およびpCLAMP10ソフトウェア(Molecular Devices社)を使用して、全細胞構成(
図1E~Fおよび
図7F)で-60mVで電圧クランプした。パッチクランプ実験のためのガラスピペットをホウケイ酸ガラス毛細管(World Precision Instruments社;Kwik-Fil 1.5/1.12;OD/ID)から引っ張り、2.0~5.5MΩの間の最終抵抗値までファイヤーポリッシングした。細胞外溶液は、140または190mM NaCl、5mM KCl、2.5mM CaCl
2、1mM MgCl
2.5mM HEPES、20mMグルコース NaOHでpH7.4)を含有していた。これらの溶液の浸透圧値は、約302mOsm/L(140NaClの場合)および約395mOsm/L(190NaClの場合)であった。細胞内溶液は、KOHを含む120mM K-グルコネート、20mM TEA-Cl、2mM MgCl
2、2mM Na
2ATP、1mM EGTAおよび10mM HEPES、pH7.3を含んでいた(約281mOsm/L)。
【0104】
Na
XまたはNa
X-QTT-eGFP-2×FLAGを発現するHEK293T細胞を、ホールセルパッチクランプ実験の1時間前にガラスカバースリップ上に播種した。より生理学的な条件(
図4Dおよび
図7B)では、細胞外溶液は、150mM NaCl、5mM KCl、0.5mM CaCl
2、1.2mM MgCl
2、10mM HEPES、およびNaOHおよび13mM D-(+)-グルコース(pH7.4)、約320mOsm/Lを含み、細胞内溶液は、CsOHを含み、140mM CsCl、10mM CsF、5mM EGTA、10mM HEPES、および2mM Na
2ATP(pH7.2)、約304mOsm/Lを含んでいた。Na
X-QTTが陽イオン透過性であるかどうかを決定するために、本発明者らは最初に全ての細胞外陽イオンをNMDG
+で置換した(
図4E)。細胞外溶液は、150mM NMDGおよび10mM HEPESを含有していた(D-(+)-グルコースを適宜添加して約325mOsm/Lのオスモル濃度を達成し、塩酸でpHを7.4に調整した)。Na
X-QTTが陰イオン透過性であるかどうかを決定するために、本発明者らは、細胞内溶液および細胞外溶液の両方の全てのCl
-イオンを大きな陰イオンメタンスルホネート(MS
-)で置換した(
図15C)。細胞外溶液は、150mM NaMおよび10mM HEPESを含有していた(D-(+)-グルコースを適宜添加して約325mOsm/Lのオスモル濃度を達成し、塩酸でpHを7.4に調整した)。細胞内溶液は、136mM NaMS、10mM NaF、5mM EGTA、10mM HEPESおよび2mM Na
2ATP(NaOHでpH7.2、約309mOsm/L)を含有していた。細胞外NMDG溶液は、150mM NMDGおよび10mM HEPESを含有していた(D-(+)-グルコースを適宜添加して、約325mOsm/Lのオスモル濃度を達成し、メタンスルホン酸でpHを7.4に調整した)。
【0105】
イオン選択性実験(
図4Eおよび
図5A)(i)一価陽イオンを含む場合、細胞外溶液は150mM XCl、10mM HEPESを含み、D-(+)-グルコースを適宜添加して約325mOsm/Lの浸透圧を達成し、XOHでpHを7.4に調整した(XはNa
+、K
+、Li
+またはCs
+を示す)。(ii)Ca
2+を含む場合、細胞外溶液は110mM CaCl
2、10mM HEPESを含み、D-(+)-グルコースを適宜添加して、約325mOsm/Lの浸透圧を達成し、Ca(OH)
2でpHを7.4に調整した。(iii)細胞内溶液は、136mM NaClを含み、NaOH、136mM NaCl、10mM NaF、5mM EGTA、10mM HEPESおよび2mM Na
2ATP(pH7.2)を含み、約309mOsm/Lであった。
【0106】
実施例1.12-データ分析
データ分析のために、生の電流トレースは、典型的には、500~800Hzで8極ベッセルローパスフィルタを使用してフィルタリングされた。電流トレースは、図に表示するために係数5のデータ削減を受けた。データは、細胞の少なくとも2つのバッチからの少なくとも3つの細胞からの平均±標準偏差(SD)として示される。Na
+細胞内溶液を用いて行ったイオン選択性実験(
図4Eおよび
図5A)では、Na
+細胞内溶液を基準として液接合電位(LJP)を測定し、記録後に補正した。相対イオン透過率(PNa/PX)は、式P
X/P
Na=[Na
+]
ICexp(E
revF/RT)/[X
+]
EC(X=Na,K,LiまたはCs)を用いて計算した(式中、Fはファラデー定数であり、Rはガス定数であり、T=274Kであり、E
revは-80~+80mVランプ(LJPに対して補正)から測定した。)。
【0107】
実施例2-ヒトNa
X機能の評価
信頼できるイオン電流は、HEK293T細胞またはアフリカツメガエル卵母細胞におけるヒトNa
Xを発現させた後、膜電圧の変化に応答して検出されなかった(
図1A~
図1D、
図7A~
図7D、および
図8A~
図8D)。卵母細胞における異なる電位段階プロトコル中のアコニチン、ベラトリジン、ポンピリドトキシン、血液抑制物質-Iおよび神経毒-IIなどの古典的なNa
Vチャネル活性化剤の適用は、いかなる明確なヒトNa
X媒介電流も引き起こさなかった(
図1B、
図1D、
図8A~
図8B)。ヒトNa
Xの表面発現は強固であるにもかかわらず、Na
Vまたは電位依存性カルシウム(Ca
V)チャネル補助サブユニット(すなわち、β1、β3、α2δ1、γ2)との同時発現も、信頼できる電流を生成し得なかった(
図1C、
図1D、
図7A、
図7Cおよび
図8C~
図8D)。これらの結果は、Na
Xが従来の電圧ゲート付きチャネルとして動作しないという以前の知見を大幅に拡張する
14、15。
【0108】
細胞外ナトリウム濃度の増加[Na
+]
eは、マウスNa
Xを発現するグリアおよび神経芽細胞腫(Neuro-2a)細胞株において非不活性化Na
+電流を活性化することが報告されている。マウスNa
Xはまた、原形質膜でNa
+/K
+-ATPアーゼおよびシナプス結合タンパク質97(SAP97)と相互作用することが示唆されている。表面発現およびATP1A1αサブユニットをいくつかの条件下で共免疫沈降させる本発明者らの能力がある(表2)にもかかわらず、200mM[Na
+]
eへの曝露時にNa
+/K
+-ATPアーゼサブユニットおよびSAP97と共にヒトNa
Xを共発現する卵母細胞において信頼できる内向きNa
+電流は検出されなかった(
図1Cおよび
図1D)。
【表2】
【0109】
ヒトNa
XをNeuro-2a細胞で発現させた場合、本発明者らは、ホールセルパッチクランプ配置で[Na
+]
eを140から190mMに変化させると、小さく点滅する内向き電流を観察した(
図1E~Gおよび7E~F)。Na
V1.7チャネルを発現するNeuro-2a細胞は、浸透圧の変化後に同様のフリッカー挙動を示し、この現象がヒトNa
Xを発現する細胞に特異的ではないことが示された(
図1E~G)。非不活性化内向き電流は、シール抵抗が低い場合(<1GΩ)にのみ観察され、この表現型は、模擬およびヒトNa
XトランスフェクトNeuro-2a細胞の両方で見られた(
図7F)。全体として、本発明者らの知見がヒトおよびマウスNa
Xチャネルの間の機能的分岐(
図9)、または実験プロトコルのわずかな違いを反映するかどうかは不明であるが、本発明者らはヒトNa
Xを通る信頼できる電流を測定し得なかった。次に、本発明名者らは、ヒトNa
Xの構造決定がその機能または調節への洞察を提供し得るかどうかを検討した。
【0110】
実施例3-脂質ナノディスク中のβ3-Na
X複合体の構造決定
ヒトNa
XをHEK293細胞中で組換え発現させ、穏やかな界面活性剤であるグリコジオスゲニン中で精製した(
図10A~C)。Na
V1.7チャネルが補助的なβサブユニット
23-25、β1またはβ3サブユニットと安定な複合体を形成するという報告によって着想を得て、β1またはβ3サブユニットを共発現させ、Na
Xと共精製することを見出した(表2)。より自然な環境を提供するために、β3-Na
X複合体を、一般的なリン脂質混合物を使用してナノディスクに再構成した(
図10A~
図10C)。サンプルのガラス化の前に、Na
+濃度を、Na
Xを活性化すると報告されている閾値を超えて200mMまで上昇させた。得られたヒトβ3-Na
X複合体の低温EM再構築は、3.2Å分解能まで拡張され(
図11A~
図11F、
図12A、および表3)、再構成された脂質膜環境で決定された真核生物Na
Vチャネルファミリーメンバーの最初の構造を表す。以下の表3の最初の表題行では、β3-
X-ナノディスクのEMDB参照番号はEMDB-25919であり、PDB参照番号はPDB7TJ8である。β3-Na
X-GDNのEMDB基準はEDMB-25920であり、PDB基準はPDB7TJ9である。
【表3】
【0111】
実施例4-β3-Na
Xチャネル複合体の全体構造
β3-Na
Xチャネル複合体は、中心細孔モジュールの周りのドメイン交換組織に配置されたVSLDを有する四葉クローバに似ており(
図1H)、これはNa
V、Ca
VおよびNALCNチャネル間で共有されるアーキテクチャに適合する。Na
Xでは、可溶性細胞内アミノ末端ドメインがVSLD1の下にドッキングされ、細胞内DIII-DIVリンカーが細孔に沿って結合しており、細胞内カルボキシル末端ドメイン(CTD)は十分に分解されておらず(
図13A)、利用可能なヒトNa
Vチャネル構造を連想させる特徴を有する。細胞外側では、Na
Xサブユニットおよびβ3サブユニットから、2つおよび4つのN結合型グリカンがそれぞれ、伸長することが見出されている。
【0112】
β3-サブユニットは、その免疫グロブリン-ドメインをNa
X細孔モジュールの精密化された細胞外ループの間にくさび留めし、その単一膜貫通ヘリックスをVSLD3に対して配置することによって、広範な相互作用を形成する(
図1Hおよび13B)。現代のβ1またはβ3補助サブユニットはNa
Xと安定な複合体を形成するようであるが(表2)、その細孔モジュールは、β2またはβ4-サブユニットと共有結合複合体を形成するのに必要なシステイン残基を持たない
23,27。
【0113】
脂質ナノディスク中で再構成されたヒトNa
Xの全体構造は、界面活性剤中で決定されたNa
V1.1、Na
V1.2、Na
V1.4、Na
V1.5およびNa
V1.7チャネル構造と非常に類似している
23、28-31(
図13C)。逆に、Na
Xは、Na
Vチャネルゲーティングに頻繁に関与する領域において、VSLD4の約5Åの位置シフト、およびDIIS4-S5リンカーに沿った6Åを超える変位を含む、実質的な逸脱を示す(
図13Dおよび13E)。
Xにおいて観察された構造変化は、その高い配列多様性の結果であり、その明確な機能に寄与すると考えられる(
図9)。
【0114】
実施例5-Na
X細孔モジュールは非導電状態にある
Na
X細孔モジュールは、外側前庭、イオン選択性フィルタ、中央キャビティ、およびS6活性化ゲートを含む(
図2A)。S6ゲートは狭く、水和イオンの通過に対する障壁を形成する疎水性側鎖の二重環によって裏打ちされており、非導電状態を明確に定義する(
図2A、
図2Bおよび
図13C)
23,28-31。しかし、本発明者らのNa
X構造は高Na
+濃度下で決定されたので、これらの所見は、マウスNa
XがNa+活性化非不活性化チャネルを形成するという報告と矛盾するように思われる。代わりに、細孔モジュールについて観察された非導電状態は、ヒトNa
Xに関する本発明者らの生理学的研究からの予測と完全に一致している(
図1A~F、7A~Fおよび8A~D)
【0115】
Na
X中央キャビティの体積はNa
Vチャネルの体積と同様であるが、一般的に細孔遮断薬
32,33によって標的とされるDIV-S6フェニルアラニンはDIV-Trp1484に置き換えられる(
図13F)。Na
Xにより、細孔モジュールを貫通する4つの側方開窓を明らかにされ、Na
Vチャネルで最初に示唆されるように、疎水性薬物または脂質が中央キャビティに直接入るための膜アクセス経路が同定された(
図2Cおよび
図2D)
28-30,34。したがって、古典的なNa
VまたはCa
Vチャネルアンタゴニストが中央キャビティ内のNa
Xを標的とし得ることが考えられる。
【0116】
実施例6-Na
X DIII-DIVリンカーはS6ゲート拡張を制限する
Na
Xの細胞内DIII-DIVリンカーは、ヒトNa
Vチャネルの急速不活性化状態構造によく似た様式で細孔モジュール受容体部位と相互作用する(
図2Bおよび14A)。Na
XIFIモチーフは、Na
VチャネルのS6ゲート拡張を制限する複合体と類似しており、DIII-S4-S5リンカーとDIV-S5およびS6との間に結合している(
図2Bおよび
図14A)。Na
XのDIII-DIVリンカーは、かなりの配列分岐の部位として長い間認識されてきたが(
図14B)、Na
Vチャネルにおけるこの重要な機能領域と高い構造相同性を明らかに共有している(
図14A)。それにもかかわらず、Na
XのIFIモチーフを古典的な非活性化Na
VチャネルQQQモチーフに変異させることは、注入された卵母細胞において機能的チャネルを生成するのに不十分であり(
図14C)、これは、Na
Xチャネルをゲーティングするための明確な要件の存在をさらに強調している。
【0117】
本発明者らは、Na
XおよびNa
V1.7構造モデルを利用して、ヒトNa
Xの非伝導性状態を担う決定因子を評価するための正確に標的化されたキメラチャネルのパネルを構築した。二重ドメインのDII-DIIIおよび DIII-DIV Na
V1.7-Na
Xキメラならびに単一ドメインDIII Na
V1.7-Na
Xキメラは、アフリカツメガエル卵母細胞において単独で発現された場合、大きな内向き電流および外向き電流を生じた(
図2E)。最終的に、Na
V1.7-VSD3および関連するDIII-S4-S5リンカーの両方を交換することは、リークチャネル表現型を移入するのに十分な最小領域であった(
図14D)。これらの領域は、Na
VチャネルのS6拡張を制限するIFMモチーフの受容体部位を形成するのに必要であり(
図14A)、Na
Xへのそれらの置換は堅牢なリーク電流を生成するので(
図2Eおよび
図14D)、本発明者らは、Na
XのDIII-DIVリンカーがS6透析を制限し、細孔モジュールの非伝導状態を安定化する役割を果たしていることを提案する。
【0118】
実施例7-Na
X細孔は膜脂質によって浸潤される
定義により、イオンチャネルの閉鎖状態または不活性化状態は非導電性である。β3-Na
X構造では、4つの脂質が側方細孔開窓を貫通して、狭い疎水性S6ゲートの上方の中央キャビティに入る。これらの著しい密度は、3つのリン脂質および1つのコレステロールとして明確に割り当て得る(
図2Cおよび2D)。1つのリン脂質は、細胞内S6活性化ゲートをまたぎ、シールしている(
図2Cおよび
図14E)。
【0119】
脂質ナノディスク環境がβ3-Na
X中の膜脂質の堅固な可視化に関与しているかどうかを評価するために、本発明者らは、外因性リン脂質を補充せずに界面活性剤グリコジオスゲニン中に新しいサンプルを調製し、その構造を2.85Å分解能で決定した(
図11G~
図11L、
図12Bおよび表3)。本発明者らは、4つの明確に定義された共精製脂質が貫通した同一のNa
X細孔構造を観察した(
図14F)。したがって、β3-Na
X中のイオン伝導経路は、脂質によって浸透および閉塞されているので、この細孔モジュール構造では明らかに非伝導性である(
図2A~Dおよび14E~F)。Na
X内に結合したよく分解された共精製脂質の存在は、その非導電状態の固有の安定性およびS6ゲートおよび中央キャビティの疎水性を反映している可能性がある。
【0120】
実施例8-標的化細孔湿潤変異はヒトNa
Xを活性化し得る
S6ゲートは狭く、疎水性であり、脂質に結合しており、IFIモチーフ受容体部位を破壊すると、S6拡張を促進し得るという本発明者らの集合的な観察に基づいて、本発明者らは、S6ゲート周囲への極性残基の標的化された導入が、細孔水和、結合した脂質の不安定化、およびNa
Xの開導電状態への移行を促進し得ると推論した(
図3A~F)。したがって、3つのS6ゲートライニング位置に極性置換を含む三重変異体Na
Xチャネル構築物(F724Q-I1189T-I1492T)、Na
X-QTTは、電位段階プロトコルに応答してアフリカツメガエル卵母細胞において単独で発現させた場合、堅牢なイオン電流を生成した(
図3Aおよび3B)。対応する単一点変異Na
Xチャネル構築物は堅牢な電流を生成し得ず、非導電性細孔モジュール状態の不安定化を通じてS6ゲート拡張を達成するための細孔湿潤閾値が存在することが示された(
図3C)。L390E-I189E-I1492E三重変異型Na
Xチャネル構築物(Na
X-EEE)も機能を示したが、Na
X--QTTと比較して電流振幅が非常に低く、電流変動がより大きかった(
図3Dおよび3F)。
【0121】
注入された卵母細胞では、Na
X-QTT電流は、長時間(5秒間)の脱分極試験パルスの間でさえ不活化の徴候なく外向きに整流する(
図3B)。Na
Xはβ1またはβ3サブユニットと安定に相互作用し得るので(
図1Hおよび表2)、これらの補助サブユニットの機能的効果を評価した。Na
X-QTTをそれぞれβ1サブユニットまたはβ3サブユニットの存在下で発現させた場合、電流振幅または動態に違いは観察されなかった(
図3Eおよび3F)。HEK293T細胞では、Na
X-QTTはまた、C末端GFP-2xFLAGタグを用いて発現させた場合、ホールセルパッチクランプ実験において非不活性化チャネルとして挙動する(下記参照)。重要なことに、Na
X-QTTチャネル構築物は、選択性フィルタおよび他の重要なチャネル領域から著しく除去された、細胞内S6ゲート(
図3A)の周りを標的とする3つの変異のみを含むので、以下、本発明者らは、ヒトNa
Xチャネルのイオン選択性および薬理学を評価するためのプロキシとしてNa
X-QTTを特徴付ける。
【0122】
実施例9-Na
X選択性フィルタ
Na
X(DENAモチーフ)の独特のイオン選択性フィルタは、Na
Vチャネルにおいて古典的なDEKAモチーフを支持する足場とは根本的に異なる局所構造によって支持されている(
図4A~C)。Na
Vチャネル内の4つの目印となるトリプトファン残基は、3つの保存されたトレオニン側鎖を含むドメイン間相互作用を形成している(
図4B)
23,28-30,35,36。Na
Xでは、Pro355がDIトリプトファンを置換し、Ala351およびIle1432がそれぞれDIおよびDIVトレオニンの対照物を置換する(
図4B)。Na
XPro355およびIle1432と同等の位置のNa
V1.5における置換は病原性であり、これらの変化が機能的に関連性のある可能性を強調している。その結果、Na
X選択性フィルタは、Na
Vチャネルの選択性フィルタよりも広く、電気陰性度が高い(
図4B)。
【0123】
Na
XのDENAモチーフでは、Asp353(DI)がDII-Trp689の骨格に水素結合し、Glu688(DII)がイオン透過経路を指し、Asn1142(DIII)がDIV-Phe1433カルボニルに結合して、Na
VチャネルのDIVアラニンと比較してAla1434(DIV)に約1.5Åの半径方向シフトを課す(
図4Aおよび
図4C)。Ala1434の相対的な変位はNa
X中のDI-Pro355によって適応され、これはまた、DI-Tyr359が約90°再配向して、存在しない従来のDIトリプトファンによって空いた体積を満たすことを可能にする(
図4C)。この構造的再構築は、外側前庭部のDI-Glu356およびDII-Glu691を2.5~3.5Å置換し、これはカノニカルテトロドトキシン(TTX)結合部位を修飾し、Na
X選択的阻害剤を発見する可能性を強調し得る(
図15A)。
【0124】
実施例10-Na
Xは一価陽イオンを区別しない
特徴的なDIII-Asn1142側鎖は、Na
VチャネルにおけるNa
+-選択性の確立において重要な役割を果たす従来のDIII-リジンと比較して、Na
X選択性フィルタの構造および化学的プロファイルを劇的に変化させる(
図4A~C)。したがって、本発明者らは、単一の突然変異を介してDENAモチーフをヒトNa
V1.7チャネルに導入し、注入されたアフリカツメガエル卵母細胞でNa
+およびLi
+選択性の顕著な喪失を観察したが、異常な動態を有する測定可能なK
+電流が記録された(
図15B)。相互実験では、標準的なDEKAモチーフのNa
Xへの変異導入は測定可能な電流を生じず(
図15B)、Na
XDENモチーフを超える分子的特徴がその活性化に寄与することが確認された。
【0125】
本発明者らは、HEK293T細胞において発現されるNa
X-QTT構築物からの電流を調べ、細胞外溶液中の全ての陽イオンを大きな陽イオンN-メチル-D-グルカミン(NMDG)で置き換えた場合、反転電位が+5mVから-100mV未満にシフトすることを見出し(
図4D)、この構築物が陽イオンチャネルとして挙動し、大きな陽イオンが透過しないことが確認された。全ての細胞外Cl
-イオンを大きな陰イオンであるメタンスルホン酸で置換しても電流プロファイルは変化せず(
図15C)、Na
Xが陽イオン選択性チャネルとして挙動することを示し、これは選択性フィルタのサイズおよび電気陰性プロファイルと一致する(
図4B)。予想通り、単純なNa
+細胞内溶液(150mM)を用いたランププロトコル(-80~+80mV)を使用すると、対称的なNaCl/NaCl条件下で反転電位は0mVに近かった(
図4E)。特に、細胞を異なる細胞外一価陽イオン(150mM)に曝露した場合、反転電位のわずかな変化のみが測定され、Na
X-QTTがNa
+、K
+、Cs
+またはLi
+イオンを効果的に区別しないことが立証された(
図4E)。
【0126】
実施例11-Na
Xは細胞外Ca
2+によって阻害される
本発明者らは、Na
X-QTTから電流を測定し、Ca
2+が透過しないことを観察した(
図5A)。しかし、細胞外Ca
2+は阻害効果を示し、生理学的に適切な濃度のCa
2+(1mM)は外向きのNa
+電流の約70%を阻害した(
図5A)。特に、細胞外Ca
2+の遮断は、従来のNa
Vチャネルと比較してNa
Xに対して約10倍強力であり、選択性フィルタ内の物理化学的区別が確認された(
図4Aおよび
図4B)。二価陽イオンであるZn
2+およびCo
2+は1mMでNa
X-QTT電流を阻害したが、三価陽イオンGd
3+による阻害はより強力であり(
図5B)、多価陽イオンによる細孔ブロックがNa
Xのより広くより電気陰性の選択性フィルタ構造によって実質的に影響されないことを実証している(
図4B)。
【0127】
実施例12-Na
Xは従来のNa
Vチャネル遮断薬に対して感受性である
本発明者らは、Na
X-QTTの薬理特性を確立するために一連の古典的Na
Vチャネル遮断薬を試験した。注目すべきことに、Na
XがTTX抵抗性チャネルであるという以前の報告とは強く対照的に、テトロドトキシンは、10nMという低い濃度でNa
X-QTTに対して阻害効果を示した(
図5C)。TTXブロックの効力は、感受性Na
VチャネルサブタイプのTTXブロックに関与する側鎖の実質的な保存と一致して、TTXブロックが選択性フィルタで起こることを示唆している(
図9および
図15A)。
【0128】
全身麻酔薬リドカインは、おそらくチャネルの中央キャビティ内で結合することによって、低いmM濃度でNa
X-QTT電流を遮断するのに有効であった(
図5C)。キニジンおよびロペラミドなどの他の古典的な細孔遮断薬は、高いμM濃度でNa
X-QTT電流の同等に強力な阻害剤であった(
図5C)。対照的に、フレカイニド、ラノラジンまたはフェニトインについては、300μMまでの濃度のNa
X-QTT電流に対して強い阻害効果は観察されなかった(
図5C)。
【0129】
実施例13-Na
Xは非典型的な電圧センサ様ドメインを明らかにする
マウスまたはヒトNa
Xチャネルが電圧活性化電流を生成する条件はまだ同定されておらず、この明らかな電圧感受性の欠如は謎のままである。逆説的に、S4ゲーティング電荷の数はヒトNa
Xではわずかに減少し(
図9)
14,15,22、そのVSLDはNa
VおよびCa
VチャネルのVSDと全体的に高い構造類似性を共有する(
図13Dおよび13E)。興味深いことに、Na
X中のVSLD1、VSLD2およびVSLD3は全て活性化立体配座で見出されるが、VSLD4は不活性化されている(
図6A~
図6D)。Na
XVSLDをより詳細に評価することにより、その明らかな欠陥電圧感受性の洞察を提供するはずである。
【0130】
ヒトNa
Vチャネルと比較して、Na
X中のVSLD1は、4つの予想されるS4ゲート電荷のうちの3つしか含まない(
203PTL
QTA
RTL
RIL
KIIP
218;配列番号87;
図6Aおよび
図9)。K4は、活性化された立体配座(
図6A)と同様に、疎水性構築部位(HCS)の下の細胞内負電荷クラスタ(INC)によって配位されている
37,38。注目すべきことに、R1でのグルタミン中和は、他のチャネルにおいて電圧感受性を低下させることが知られており
40、Pro203は、Na
Vチャネルにおいてセリンとして保存された位置において、Na
XにおけるS4運動に影響を及ぼし得る細胞外S3-S4ループ内の放射状屈曲を付与する(
図6Aおよび9)。
【0131】
Na
XVSLD2は、5つの予想されるS4ゲート電荷(
593ALL
RLF
RML
RIF
KLG
K
608;配列番号88)を全て含み、その活性化状態は、S4カルボニル骨格に結合する固有のS3His579側鎖によって安定化されているようである(
図6Bおよび
図9)。さらに、ヒトNa
Vチャネル構造に対するDIIS4-S5リンカーのサイトゾル(3-7Å)へのラジカルシフトは、VSLD2カップリングを変化させている可能性がある(
図6Bおよび13D)。これは、Na
XDII-S6ヘリックス内の単一残基欠失によって伝播され、これはPhe731を再配置して約180°の再配向を受けてS4-S5リンカーを強制的に置換している(
図6Bおよび
図9)。
【0132】
Na
XVSLD3は、6つの標準的なS4ゲート電荷(
1024
KPL
ISM
KFL
RPL
RVLS
Q
1040;配列番号89)のうちの4つのみを示し、その変化は、その活性化された立体配座を安定化させ、固有の電圧感受性を低下させると予測された(
図6Cおよび
図9)。さらに、Phe1011(S3)は、VSLD3におけるHCSを実質的かつ一義的に拡張し(
図6Cおよび
図9)、これは、S4ゲーティング電荷移動にさらに影響を与えると予想される。
【0133】
Na
XVSLD4は、H4およびH8が生理学的pHで帯電する可能性が低いため
37,39,44,45、4つのS4ゲート電荷(
1346
QLI
LLS
RII
HML
RLG
KGP
KVF
H
1367;配列番号90)のみを含む(
図6Dおよび
図9)。比較すると、標準的なNa
VチャネルにおけるVSD4および関連するDIVS4-S5リンカーは、高速不活性化機構に密接に連結された8つのS4ゲート電荷を保存する。ヒトNa
Vチャネル構造
23,28,29,31,37および0mVでの予想とは全く対照的に、Na
XのVSLD4は、不活性化されたような状態で存在し、S4が細胞質側に相対的に約7Å変位していることが示されている(
図6Dと16A)。この観察は驚くべきことであるが、Na
Xについてこれまでに記載された不十分な電圧感受性と一致する。
【0134】
実施例14-発散Na
X VSLDのプローブ機能
Na
XのVSLDにおいて同定された構造的特徴は、チャネル機能への非標準的な寄与を示唆する。さらに、関連するヒトチャネルにおける疾患の原因となる変化として報告されているNaX中の位置に、いくつかの顕著な配列特異性が生じる。Na
XVSLD1中のPro203は、チャネル活性化を-12mV過分極にすると報告されているNa
V1.7中の病原性Ser211Pro突然変異と同等である(
図6Aおよび
図16B)。構造に基づく配列アラインメントにより、類似のインフレームDII-S6欠失がNa
V1.7(ΔLeu966)において病原性であり、活性化の-16mVの過分極を生じることが明らかになった(
図6Bおよび
図16B)。Na
XVSLD3中のPhe1011は、チャネル活性化に強い過分極(-45mV)を与えると報告されたKCNQ1中の病原性Ser209Phe変異に対応し(
図16C)
43、一方、Na
V1.7中の同等のSer1269Phe置換は約8mVの脱分極シフトをもたらした(
図6Cおよび
図16B)。さらに、Na
XのVSLD4には3つのプロリンが独特に存在し(
図9および
図16D)、Na
V1.5中の対応するVSD4残基のプロリンに変異させると、VSLD4で観察された不活性化配座と一致して、定常状態不活性化に対する強い脱分極シフト(15mV)を付与した(
図6D、
図16Aおよび
図16E)。
【0135】
Na
XVSLD機能をさらに調査するために、本発明者らは、個々のVSLDのNa
V1.7への標的化された移入によってキメラ構築物を操作した。注目すべきことに、Na
V1.7-Na
X-VSLD2チャネルキメラを発現するアフリカツメガエル卵母細胞を注入すると、強い電流が記録され(
図6E)、VSLD2が構成的に活性化されるか、または本質的に電気機械的カップリングが可能であることを示している。対照的に、Na
X-VSLD1、VSLD3またはVSLD4のホールセールトランスファーにより、Na
V1.7キメラチャネルが機能しなくなった(
図6E))。したがって、Na
XがNaV、Ca
vおよびK
Vチャネルと全体的な構造類似性を共有しているにもかかわらず、本発明者らの知見は、累積的な配列適応がチャネルスーパーファミリーにわたって非常に多様な機能的結果をもたらし得ることを示唆している。
【0136】
実施例15-例示的なNa
X/Na
V1.7キメラ構築物
以下の表4に示すように、対応するNa
X配列の代わりにヒトNa
V1.7由来の1つ以上の領域が挿入された一連のキメラヒトNa
Xタンパク質を構築した。0mVの保持電位から+80mVまたは-100mVで誘発された構築物を発現するアフリカツメガエル卵母細胞の現在の振幅が、ヒトNa
X野生型を発現する卵母細胞からの振幅よりも有意に高い場合(
図18参照)、構築物は機能的であるとみなされる(表4参照)。表4の最初の7つのキメラおよびhNa
X-hNa
V1.7DIVキメラのデータも実施例6に記載されており、
図2Eに示す。
【表4】
【0137】
考察
上記の実施例は、Na
Xチャネルに関する洞察を提供するために、構造、機能および薬理学の統合分析を追求している。種々の発現系、補因子および薬理学的活性化因子を包括的に評価を通して、本発明者らは、ヒトNa
Xが電圧活性化チャネルとして機能しないことを実証した。同様の変化がNa
V1.5およびNa
V1.7チャネルのゲート特性に劇的な影響を及ぼし得るので、Na
Xの電圧感受性の変化の原因となる分子的特徴は、選択性フィルタ、電圧センサ、および細孔モジュール内の単一残基の変化が含まれ得る(
図6A~
図6E、
図9、
図16Bおよび
図16E)。実際、Na
Xに構造変化を与える多くの位置変化が、Na
Vチャネルにおける疾患ホットスポット位置の根底にあるように思われるが、これらの観察の重要性は不明のままである。
【0138】
構造誘導型タンパク質工学を使用して、本発明者らは、Na
XとNa
V1.7との間の全相同ドメインまたはサブドメイン(例えば、VSLD)を移動することで、非常に珍しいゲーティング特性を有する非機能性構築物またはチャネルのいずれかが生成されることが見出された(
図2Eおよび6E)。これらの結果は、Na
Xゲーティングのカップリングまたはエネルギー論がNa
Vチャネルから実質的に異なることを示唆しており、これは、これらの密接に関連するチャネル足場間のカップリング界面に負担をかける構造的差異を指し示している可能性が高い。特に、本発明者らの研究は、Na
Xが特定の細胞状況において電圧変調チャネルとして機能し得る可能性を排除しない。NALCNチャネルまたはTMEM16Aチャネルについて最近記載されたように、推定上の補助サブユニットまたは補因子の結合がNa
Xにある程度の電圧感受性を付与し得ることが考えられる。
【0139】
Na
+感知に対する差異の再調製
マウスNa
Xは、細胞外Na
+濃度を150mMを超えるように増加させると、非不活性化内向き電流を生じることが報告されている。本発明者らは、形質膜上でそれを安定化すると予想される因子(すなわち、SAP97)と同時発現させた場合でさえ、低いシール抵抗を有する定性的に同様の記録しか観察せず、ヒトNa
Xの異種発現時にNa
+活性化電流を再構成し得なかった(
図1Dおよび7F)。マウスおよびヒトのNa
Xタンパク質との間の配列の相違または細胞状況の相違が、これらの一見矛盾する機能的結果を説明すると考えられる(
図9)。
【0140】
β3-Na
Xの本発明者らの低温EMサンプルは、200mM NaCl中で、Na
+依存性ゲーティングに必要な報告された閾値より高く調製された
9-11。構造分析では明確なNa
+感知遺伝子座または活性化に基づく機構は観察されず、細胞外Na
+イオンとして割り当て得る唯一のマップ上の特徴は、Na
X選択性フィルタの近くで、Na
Vチャネルにも見られる部位に結合している(
図17A)
29,49。本発明者らは、Na
Xについて記載されているNa
+感知機構が、Na
+/K
+ATPアーゼ、エンドセリン受容体、またはまだ同定されていない系などの外因性タンパク質因子または経路によって寄与されている可能性が最も高いと推測している。Na
XDIII-DIVリンカーに沿った予測されるリン酸化部位の翻訳後修飾(
図14B)が、そのポアモジュール受容体部位からIFIモチーフを除去してS6拡張およびチャネルゲート制御を促進するのに役立ち得ると考えられる。あるいは、Na
XのDIVおよびVSLD4内に見られる通常とは異なるが高度に保存されたヒスチジン残基の存在はまた、潜在的な細胞内二価陽イオンまたはpH感受性活性化または調節機構の推測を高め得る(
図6Dおよび
図9)。
【0141】
Na
X仮説:非選択的Na
+リークチャネル
構造分析および反復タンパク質工学実験によって導かれて、本発明者らは、疎水性S6ゲート領域の周りの3つの残基の標的変異させることが、アフリカツメガエル卵母細胞およびHEK293T細胞で発現されるヒトNa
Xを介して堅牢なイオン電流を生成するのに十分であることを見出した(
図3、
図4D、
図4Eおよび
図5)。おそらく、Na
X-QTTチャネル構築物に3つの極性側鎖を導入することにより、S6ゲートを水和させ、結合した膜脂質を除去し、細孔拡張およびイオン伝導が可能になる(
図2B~
図2D)。この概念的および技術的ブレークスルーにより、ヒトNa
Xの基本特性を特徴付けることが初めて可能となった。
【0142】
Na
Vチャネルとは異なり、Na
X-QTTは、細胞外Ca
2+イオンの非存在下でオーミックリークチャネルとして一価陽イオンを効果的に伝導する(
図3、
図4D、
図4E)。Ca
2+は透過せず、Na
X-QTTを遮断するので、生理学的レベルの細胞外Ca
2+の存在下では、負の膜電位ではNa
X-QTT電流は外向きに整流し、小さな内向きリーク成分のみを有する(
図5A)。この独特の電流の表現型は、TTX、Zn
2+、Co
2+およびGd
3+による見かけの選択性フィルタブロック、ならびにリドカイン、キニジンおよびロペラミドによる推定細孔ブロックを含む、Na
V様チャネルに期待される薬理学的感受性を有する(
図5Bおよび5C)。フレカイニド、ラノラジンまたはフェニトインは、Na
X-QTT電流の強力な阻害をもたらさず(
図5C)、これは、標準的なNa
Vチャネルに対するヒトNa
Xの特徴的な薬理学的プロファイルを示し、おそらく、DIV-Trp1484(
図13F)のような特有の中央キャビティライニング残基、またはNa
Xにおける不活性化状態の潜在的欠如を反映している(
図3Bおよび
図4D)。Na
X-QTT電流は非不活性性であり、電圧によって変調されなかったが、細孔を湿潤するQTT変異はS6ゲート領域を標的とするので、野生型ヒトNa
Xチャネルにおけるこれらの重要な特性を定義するために今後の研究が必要とされる。それにもかかわらず、Na
Xがインビボでリークチャネルとして機能することを先の研究が示唆したことは注目に値する。
【0143】
Na
X選択性フィルタ構造の物理的、化学的および静電的プロファイルは、陽イオン選択性チャネルの予想を満たすが(
図4Aおよび
図4B)、Na
VチャネルにおいてNa
+選択性を付与するDIII-リジン側鎖を欠いている(
図9)。実際、本発明者らのNa
X-QTTの電気生理学的特性評価により、試験した一価陽イオン(Na
+、K
+、Cs
+およびLi
+)間で選択性がないことが明らかになった(
図4E)。したがって、本発明者らは、ヒトNa
Xが生理学的条件下で細胞外Ca
2+による調節に感受性のNa
+リークチャネルとして機能すると仮定する(
図5A)。特に、Na
X-QTTのCa
2+遮断は、Na
Vチャネル上のCa
2+遮断よりも約10倍強力であるが(
図5A)、遠縁の関連する非選択的NALCNNa
+リークチャネルのCa
2+遮断感受性と類似しており、おそらく細胞への過剰な脱分極Na
+流入を回避するための共通の制御機構を反映している。
【0144】
細孔結合膜脂質の可視化
界面活性剤または脂質ナノディスク中で決定された本発明者らのNa
Xチャネル構造の顕著な特徴は、脂質がイオン伝導経路を完全に閉塞し、S6ゲートを封止する非伝導状態が可視化されたことであった(
図2C、2Dおよび14F)。S6ゲートを封鎖するリン脂質は、Na
Vチャネル構造
28,29,31のS6ゲートに結合したコレステロール様分子を連想させる(
図17B)。S6ゲートにおけるこれらの疎水性リガンドの占有は、Na
Vチャネルにおける薬物ブロックに古典的に関与してきた保存されたDIV-S6チロシン側鎖の「上」配座と相関しているようである(
図9および
図17B)
23,31-33。特に、中央キャビティ内の薬物結合は、S6ゲート(
図17B)での脂質様密度の置換と同時に、この保存されたS6チロシン
30,31の「ダウンコンフォメーション」を強制し得る
31。したがって、本発明者らのNa
X構造は、膜脂質がS6ゲートを封止し得、その脂質占有がイオン伝導性、薬物結合および細孔構造を調節し得る新たなパラダイムを支持する。この開発中のモデルは、S6ゲートがNa
Vチャネルをしっかりと閉じて完全に閉じなければならないという長年の見解とは強く対照的である
30。
【0145】
概要および見解
NaXチャネルの基本的な生理学的および薬理学的特性は、ほぼ30年前のそのクローニング以来、不可解なままである。本発明者らは、ヒトNaXが、本発明者らが調べた条件下で、Na+活性化チャネルとしても電圧活性化チャネルとしても独立して機能しないことを見出した。構造誘導型タンパク質工学的取り組みを通して、本発明者らは、従来の異種発現系を使用してヒトNaXチャネル変異体を特徴付けるためのアプローチを発見した。NaX-QTTチャネル構築物は、Ca2+およびTTXによる強力な阻害を含む、特徴的であるがNaVチャネル様の薬理学的プロファイルを示し、NaXチャネルがインビボでCa2+調節Na+リークチャネルとして作用し得ることを示唆する非選択的陽イオン伝導性を明らかにした。全体として、この研究は、NaXの生理学および薬理学をさらに調べるための不可欠なツールを提供し、この非定型イオンチャネルの理解を大きく前進させる。
【0146】
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68 Chua,C.H.,Wulf,M.,Weidling,C.,Rasmussen,L.P.およびPless,S.A.The NALCN channel complex is voltage sensitive and directly modulated by extracellular calcium.Sci Adv6,eaaz3154(2020).
【0147】
シーケンス表
以下の表は、本明細書で参照される特定の配列をさらに記載する。
【表5】
【0148】
前述の発明は明確な理解のために例示および実例によって幾分詳細に説明されているが、これらの説明および実例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本明細書に引用される全ての特許および科学文献の開示は、参照によりその全体が明示的に組み込まれる。
【配列表】
【国際調査報告】