IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エムシージーアールエックス コーポレーションの特許一覧

特表2024-520484大うつ病性障害に対する経頭蓋磁気刺激(TMS)療法の補助的D-シクロセリン増強
<>
  • 特表-大うつ病性障害に対する経頭蓋磁気刺激(TMS)療法の補助的D-シクロセリン増強 図1
  • 特表-大うつ病性障害に対する経頭蓋磁気刺激(TMS)療法の補助的D-シクロセリン増強 図2
  • 特表-大うつ病性障害に対する経頭蓋磁気刺激(TMS)療法の補助的D-シクロセリン増強 図3
  • 特表-大うつ病性障害に対する経頭蓋磁気刺激(TMS)療法の補助的D-シクロセリン増強 図4
  • 特表-大うつ病性障害に対する経頭蓋磁気刺激(TMS)療法の補助的D-シクロセリン増強 図5
  • 特表-大うつ病性障害に対する経頭蓋磁気刺激(TMS)療法の補助的D-シクロセリン増強 図6
  • 特表-大うつ病性障害に対する経頭蓋磁気刺激(TMS)療法の補助的D-シクロセリン増強 図7
  • 特表-大うつ病性障害に対する経頭蓋磁気刺激(TMS)療法の補助的D-シクロセリン増強 図8
  • 特表-大うつ病性障害に対する経頭蓋磁気刺激(TMS)療法の補助的D-シクロセリン増強 図9
  • 特表-大うつ病性障害に対する経頭蓋磁気刺激(TMS)療法の補助的D-シクロセリン増強 図10
  • 特表-大うつ病性障害に対する経頭蓋磁気刺激(TMS)療法の補助的D-シクロセリン増強 図11
  • 特表-大うつ病性障害に対する経頭蓋磁気刺激(TMS)療法の補助的D-シクロセリン増強 図12
  • 特表-大うつ病性障害に対する経頭蓋磁気刺激(TMS)療法の補助的D-シクロセリン増強 図13
  • 特表-大うつ病性障害に対する経頭蓋磁気刺激(TMS)療法の補助的D-シクロセリン増強 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】大うつ病性障害に対する経頭蓋磁気刺激(TMS)療法の補助的D-シクロセリン増強
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/42 20060101AFI20240517BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20240517BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240517BHJP
   A61K 41/00 20200101ALI20240517BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
A61K31/42
A61P25/24
A61P43/00 121
A61K41/00
A61K45/00
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573056
(86)(22)【出願日】2022-05-26
(85)【翻訳文提出日】2024-01-12
(86)【国際出願番号】 CA2022050839
(87)【国際公開番号】W WO2022246557
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】63/193,643
(32)【優先日】2021-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523444073
【氏名又は名称】エムシージーアールエックス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】マクギアー、アレキサンダー ロバート アンガス
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA11
4C084AA17
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZA121
4C084ZA122
4C084ZC412
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC67
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZA12
4C086ZC75
(57)【要約】
大うつ病性障害(MDD)に対する経頭蓋磁気刺激(TMS)療法の補助的D-シクロセリン(DCS)増強が提供される。また、間欠若しくは連続θバースト刺激(iTBS若しくはcTBS)、高頻度若しくは低頻度刺激又はこれらのD-シクロセリン(DCS)との組み合わせにより患者のMDDを治療する及び/又はMDDの1つ以上の症状並びに不安、認知機能、及び自殺を含めたMDDの合併症を改善し及び/又は緩和する及び/又はその頻度を低下させる組み合わせ療法及び治療方法も提供される。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大うつ病性障害(MDD)を治療する方法であって、大うつ病性障害(MDD)に対する経頭蓋磁気刺激(TMS)療法、任意選択で間欠又は連続θバースト刺激(iTBS又はcTBS)、高頻度又は低頻度刺激及びこれらの組み合わせを増強し、抑うつ症状を改善しより高い臨床反応率及び寛解率を提供するために、補助的D-シクロセリン(DCS)又はD-シクロセリンの薬剤的に許可可能なエステル、又はアルキル化D-シクロセリン、又はD-シクロセリンの薬剤的に許可可能な前駆物質を投与するステップを含む方法。
【請求項2】
患者の大うつ病性障害(MDD)を治療する方法及び/又はMDDの1つ以上の症状を改善し及び/又は緩和し及び/又はその頻度を低下させる方法であって、前記患者に低服用量のD-シクロセリン、任意選択で患者当たり1~250mgを投与するステップ、及び前記患者を経頭蓋磁気刺激、任意選択で間欠若しくは連続θバースト刺激(iTBS若しくはcTBS)、高頻度若しくは低頻度刺激又はこれらの組み合わせに供するステップを含む方法。
【請求項3】
悲しみの感情、涙ぐむ、絶望、短気、被刺激性、興味喪失/喜びの欠如、集中力障害、決断力のなさ、記憶喪失、平坦な情動、睡眠障害、疲労、食欲減退又は亢進、体重減少又は体重増加、無価値感又は罪悪感、死及び/又は自殺の考えを含むMDDの1つ以上の症状を改善を補助する、経頭蓋磁気刺激、任意選択で間欠θバースト刺激(iTBS)としての使用のためのD-シクロセリン又はN-メチル-D-アスパラギン酸受容体作用薬又は部分的N-メチル-D-アスパラギン酸受容体作用薬。
【請求項4】
大うつ病性障害(MDD)の管理のための経頭蓋磁気刺激を伴う又は伴わない低服用量D-シクロセリンの使用。
【請求項5】
前記低服用量は、1~30μg/mLのD-シクロセリン血漿濃度を達成するのに十分なD-シクロセリンの服用量である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
経頭蓋磁気刺激、任意選択で間欠又は連続θバースト刺激(iTBS又はcTBS)、高頻度若しくは低頻度刺激又はこれらの組み合わせを使用したMDDの治療における補助的な使用を支援するため、3時間以内に1~30μg/mLの最大血漿レベルを達成するように配合されたD-シクロセリン。
【請求項7】
作業記憶及び主観的認知機能全般を含めた、MDDの認知機能障害を改善し及び/又は好転させ及び/又は部分的に好転させる方法であって、患者に低服用量のD-シクロセリンを投与するステップ、及び前記患者を経頭蓋磁気刺激、任意選択で間欠若しくは連続θバースト刺激(iTBS若しくはcTBS)、高頻度若しくは低頻度刺激又はこれらの組み合わせに供するステップを含む方法。
【請求項8】
前記低服用量は、1~30μg/mLのD-シクロセリンの血漿濃度を達成するのに十分なD-シクロセリンの服用量である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
MDDにおける自殺リスク及び自殺念慮を低下させる方法であって、患者に低服用量のD-シクロセリンを投与するステップ、及び前記患者を経頭蓋磁気刺激、任意選択で間欠又は連続θバースト刺激(iTBS又はcTBS)、高頻度若しくは低頻度刺激又はこれらの組み合わせに供するステップを含む方法。
【請求項10】
前記低服用量は、1~30μg/mLのD-シクロセリンの血漿濃度を達成するのに十分なD-シクロセリンの服用量である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
MDDに関連する不安症状を改善する方法であって、患者に低服用量のD-シクロセリンを投与するステップ、及び前記患者を経頭蓋磁気刺激、任意選択で間欠又は連続θバースト刺激(iTBS又はcTBS)、高頻度若しくは低頻度刺激又はこれらの組み合わせに供するステップを含む方法。
【請求項12】
前記低服用量は、1~30μg/mLのD-シクロセリンの血漿濃度を達成するのに十分なD-シクロセリンの服用量である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
筋電図検査法又は脳造影法を含めた神経生理学により測定された、間欠θバースト刺激を含めた経頭蓋磁気刺激の効果を延長させる方法であって、患者に低服用量のD-シクロセリン又はN-メチル-D-アスパラギン酸受容体作用薬若しくは部分的N-メチル-D-アスパラギン酸受容体作用薬を投与するステップ、及び前記患者を経頭蓋磁気刺激、任意選択で間欠又は連続θバースト刺激(iTBS又はcTBS)、高頻度若しくは低頻度刺激又はこれらの組み合わせに供するステップを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、うつ病の治療方法に関し、より詳細には、間欠θバースト刺激(iTBS)、連続θバースト刺激(cTBS)又は高頻度若しくは低頻度刺激、又はこれらの組み合わせを含めた、大うつ病性障害に対する経頭蓋磁気刺激(TMS)療法の補助的D-シクロセリン(DCS)増強に関する。
【背景技術】
【0002】
大うつ病性障害(MDD)は、情動的、身体的及び認知的変化を特徴とする全般的障害の重大な原因であり、また自殺念慮及び自殺リスクの増加にも関連している。カナダでは、現在のMDDエピソードの年間有病率は3.9%であり、生涯有病率は9.9%である1。これは、毎年約150万人のカナダ人、及びその一生涯で見れば350万人を超えるカナダ人に相当する。カナダにおけるMDDの真のコストは分からないが、直接医療費は年間120億ドルを超える2。オンタリオ州における健康調整生存年で見たMDDの負荷は、乳癌、結腸直腸癌、肺癌及び前立腺癌を合わせた負荷を超え3、全般的に見て、この慢性・再発性の病態は、いずれの癌又は感染症よりも高い障害調整生存年を占めている4。MDDは、役割機能不全5及び生産性の損失6に関連する。
【0003】
有効な抗うつ薬薬物療法及び心理学的治療はあるが7、しかしながら患者の30%超は、数回の介入及びそれらの組み合わせを経た後にもなお、大きな利益を得ることができない8。最大で70%の患者は寛解を得ない、典型的には数ヵ月以内に再発が起こる8。うつ病に対する薬物療法及び心理学的治療の消費量はこの10年間に増加しているにもかかわらず、MDDの人口有病率に関連した変化はなく9、治療抵抗性うつ病の人口有病率は2~3%である10。アルバータ州ヘルスサービス(Alberta Health Services)のデータによれば、治療抵抗性うつ病の1症例毎に直接医療費の9倍の増加に関連することが指摘される11。従って、MDD治療及び管理のアウトカムの向上を達成することが決定的に重要である。
【0004】
MDDに関係があるとされている脳領域の非侵襲的反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)は、薬物療法からの利益が得られていない、又はそれを忍容できない個体に対する治療選択肢として登場した。高頻度及び低頻度rTMSによる臨床反応率は約50%であり、間欠的(iTBS)又は連続的(cTBS)に送達されるθバースト刺激(TBS)など、プロトコルが新しくなっても改善されていない。
【0005】
シナプス可塑性は、rTMS又はTBSの正の効果を受け入れ可能な患者においてrTMS及びTBSが抑うつ症状の改善を生じさせる機構と考えられているが、しかしながらこれについて、可塑性機構を遮断すること又は亢進させることのいずれによるにしろ、治療プロトコルと併せて明示的に試験されたことは一度もない。TMS及びシナプス可塑性を研究する先行技術12では、単回の介入及び短いタイムスケール、典型的には1時間未満が用いられ、且つ治療プロトコルの一部として利用される脳領域ではない運動皮質を標的とするため、これは重大な欠落である。更に治療プロトコルには、背外側前頭前皮質などの領域を標的とする数週間にわたる毎日の、又は毎日数回の刺激が関わる。そのため、MDDの治療としてのrTMS又はTBSにシナプス可塑性が必要かどうか、又はシナプス可塑性を利用してアウトカムを改善させることができるかどうかは不明である。先行技術は、健常ボランティアに頼り過ぎることが更なる制約となり13~15、一方で、MDDを有する個体がTMS可塑性プロトコルに異なる反応を示すことを指摘する文献も増えつつある17~19、122
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
過去の治療方法が失敗に終わった患者又は良好な忍容性を示さなかった患者のMDDを治療する方法が必要とされている。
【0007】
この背景情報は、本出願人によって本発明に関連する可能性があると考えられる情報を公知のものとする目的で提供される。前出の情報のいずれかが本発明に対する先行技術を構成するということを認める意図は必ずしもなく、またそのように解釈されてはならない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、大うつ病性障害に対する経頭蓋磁気刺激(TMS)療法の補助的D-シクロセリン(DCS)増強を提供することである。本発明のある態様では、患者の大うつ病性障害(MDD)を治療する方法及び/又はMDDの1つ以上の症状を改善し及び/又は緩和し及び/又はその頻度を低下させる方法であって、患者に低服用量のD-シクロセリンを投与するステップ、及び患者を経頭蓋磁気刺激、任意選択で間欠θバースト刺激(iTBS)、連続θバースト刺激(cTBS)又は高頻度若しくは低頻度刺激、又はこれらの組み合わせに供するステップを含む方法が提供される。
【0009】
本発明の別の態様では、大うつ病性障害(MDD)に関連する自殺念慮及び自殺リスクを低下させる方法であって、患者に低服用量のD-シクロセリンを投与するステップ、及び患者を経頭蓋磁気刺激、任意選択で間欠θバースト刺激(iTBS)、連続θバースト刺激(cTBS)又は高頻度若しくは低頻度刺激、又はこれらの組み合わせに供するステップを含む方法が提供される。
【0010】
本発明の別の態様では、作業記憶及び主観的認知機能全般を含めた、MDDの認知機能障害を改善し及び/又は好転させ及び/又は部分的に好転させる方法であって、患者に低服用量のD-シクロセリンを投与するステップ、及び患者を経頭蓋磁気刺激、任意選択で間欠θバースト刺激(iTBS)、連続θバースト刺激(cTBS)又は高頻度若しくは低頻度刺激、又はこれらの組み合わせに供するステップを含む方法が提供される。
【0011】
本発明の別の態様では、大うつ病性障害(MDD)に関連する不安及び不安による苦痛を低下させる方法であって、患者に低服用量のD-シクロセリンを投与するステップ、及び患者を経頭蓋磁気刺激、任意選択で間欠θバースト刺激(iTBS)、連続θバースト刺激(cTBS)又は高頻度若しくは低頻度刺激、又はこれらの組み合わせに供するステップを含む方法が提供される。
【0012】
本発明の別の態様では、経頭蓋磁気刺激補助剤、任意選択で間欠θバースト刺激(iTBS)、連続θバースト刺激(cTBS)又は高頻度若しくは低頻度刺激、又はこれらの組み合わせとしての使用のためのD-シクロセリンが提供される。
【0013】
本発明のこれら及び他の特徴は、添付の図面が参照される以下の詳細な説明において更に明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】n=20例の健常参加者を組み入れたプラセボ対照無作為化対照研究からの経時的な運動誘発電位(MEP)頂点間振幅を示す。参加者は、1時間の間を開けた2回のiTBS治療を受け、D-シクロセリンが複数の治療に及ぼす効果を調べた。iTBSを間隔を置いて反復すると、シナプス可塑性と一致するMEP反応の促通が生じるが、これはD-シクロセリンの影響を受けなかった。
図2】n=20例の健常参加者を組み入れたプラセボ対照無作為化対照研究におけるiTBS後の変化を調べるため刺激反応曲線を使用したシナプス可塑性の異なるメトリクスを示す。補助的D-シクロセリン(100mg)により、シナプス可塑性の亢進を示唆する有意且つ持続的な促通が生じた。a)に正規化したデータを提示し、b)に生データを提示する。
図3】経時的な運動誘発電位(MEP)頂点間振幅を示す。a)プラセボ条件の健常参加者(n=12)及び大うつ病性障害(MDD)参加者(n=12)並びにb)プラセボ及びD-シクロセリンアームのMDD参加者の時間の経過に伴う運動誘発電位(MEP)振幅平均値。エラーバーは平均値の標準誤差を表す。
図4】実験的パラダイムの異なる時点における刺激反応曲線を示す。a)ベースライン時の大うつ病性障害(MDD)プラセボ及びD-シクロセリンアームにおける刺激反応曲線(SRC)平均値、b)間欠θバースト刺激(iTBS)後90分におけるSRC平均値、及びc)iTBS翌日のSRC平均値。d)健常、MDD-プラセボ、及びMDD-D-シクロセリン群におけるiTBS後16時間までのベースラインからのSRC変化平均値。ボンフェローニ事後 健常-プラセボ対MDD-プラセボ *p<0.05、**p<0.01。ボンフェローニ事後 MDD-プラセボ対MDD-D-シクロセリン #p<0.05。エラーバーは平均値の標準誤差を表す。
図5】間欠θバースト刺激(iTBS)後90分と翌日との間の刺激反応曲線曲線下面積の関係を示す。a)プラセボ条件では、間欠θバースト刺激(iTBS)後90分における刺激反応曲線(SRC)曲線下面積(AUC)の変化は、翌日のSRC AUCの変化と負の相関がある。b)D-シクロセリン条件では、iTBS後90分におけるSRC AUCの変化は翌日のSRC AUCの変化と正の相関がある。帯状部分は95%信頼区間を指し示している。
図6】補助的100mg DCS(n=25)又はプラセボ(n=25)をiTBSと併せて使用した中等度から重度のMDD患者における二重盲検プラセボ対照無作為化対照試験(RCT)データを示す。a)iTBS+DCSは、iTBS+プラセボと比較した抑うつ症状の有意な改善及び臨床反応率の高さに関連した。b)iTBS+DCSに無作為化された参加者は、iTBS+プラセボに無作為化されたn=25例の参加者よりも臨床反応率が高い。c)iTBS+DCSに無作為化された参加者は、iTBS+プラセボに無作為化されたn=25例の参加者よりも臨床寛解率が高い。
図7】補助的100mg DCS(n=25)又はプラセボ(n=25)をiTBSと併せて使用した中等度から重度のMDD患者における二重盲検プラセボ対照無作為化対照試験(RCT)データを示す。iTBS+DCSに無作為化された参加者は、a)臨床全般印象重症度スコアの改善が大きくなり、及びb)臨床全般印象尺度の改善が大きくなった。
図8】iTBS+DCSに無作為化されたn=25例において不安の改善がiTBS+プラセボに無作為化されたn=25例の参加者よりも大きかったという中等度から重度のMDD患者における二重盲検プラセボ対照無作為化対照試験(RCT)データを示す。
図9】iTBS+DCSに無作為化されたn=25例において視覚的アナログ尺度により測定したときの全般的幸福の改善がiTBS+プラセボに無作為化されたn=25例の参加者よりも大きかったという中等度から重度のMDD患者における二重盲検プラセボ対照無作為化対照試験(RCT)データを示す。
図10】iTBS+DCSに無作為化された参加者について主観的認知機能(PDQ)並びにNバック課題の作業記憶成績が有意に改善したという本発明者らのRCTからのTHINC-it(登録商標)データを示す。
図11】iTBS標的部位における灰白質リモデリングのエビデンスを示す。iTBS+DCSに無作為化された参加者には神経突起密度の増加があるが、iTBS+プラセボにはない。COVID-19に関連してMR施設が閉鎖されたため、臨床データ及びMRデータの参加者数は等しくない。
図12】iTBS+DCSに無作為化されたn=25例において自殺念慮の低下がiTBS+プラセボに無作為化されたn=25例の参加者よりも大きかったという中等度から重度のMDD患者における二重盲検プラセボ対照無作為化対照試験(RCT)データを示す。
図13】死の暗黙連想テストと呼ばれる自殺リスクに関連するコンピュータ化した神経心理学的検査ではiTBS+DCSに無作為化されたn=25例においてiTBS+プラセボ参加者よりもスコアの低下が大きかったという中等度から重度のMDD患者における二重盲検プラセボ対照無作為化対照試験(RCT)データを示す。
図14】補助剤を吸収及び分布に十分な時間をもって摂取することがiTBS+DCS参加者に限り治療反応に関係することを実証している中等度から重度のMDD患者における二重盲検プラセボ対照無作為化対照試験(RCT)データを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
rTMS及びTBSのような標的化した神経刺激治療には、シナプス可塑性と称される、脳内での活動依存的変化を促す刺激トレインを送達することが関わる。rTMS及びTBSの有効性が可塑性機構に依存するかどうかは不明であるが、iTBSプロトコルによるものを含め、MDDにおいてTMS関連の可塑性が損なわれていることを指示するエビデンスが幾通りかある16~18。MDD患者のrTMS又はTBSに対する反応性は、そうした患者のTMS関連の可塑性を改善することにより改善し得る。
【0016】
従って、本発明の一実施形態は、TMS関連の可塑性を増加させるためのrTMS又はTBSに対する補助剤療法を提供する。任意選択で、TMS関連の可塑性の増加には、神経突起密度及び分岐を含めた微細構造変化の増加が含まれる。
【0017】
これに応じて、一実施形態において、TMS関連の可塑性を改善するためのrTMS又はTBSと補助剤療法の組み合わせは、患者のMDDを治療する方法及び/又はMDDの1つ以上の症状を改善し及び/又は緩和する及び/又はその頻度を低下させる方法において用いられる。MDDの1つ以上の症状には、悲しみの感情、涙ぐむこと、絶望、短気、苛立ち、興味喪失/喜びの欠如、記憶喪失、平坦な情動、睡眠障害、疲労、食欲減退及び体重減少及び/又は無価値感が含まれる。
【0018】
一実施形態において、TMS関連の可塑性を改善するためのrTMS又はTBSと補助剤療法の組み合わせは、MDD患者の作業記憶を改善する又は回復させる方法及び/又はMDD患者の認知機能障害を改善する又は好転させる若しくは部分的に好転させる方法において用いられる。
【0019】
一実施形態において、TMS関連の可塑性を改善するためのrTMS又はTBSと補助剤療法の組み合わせは、MDD患者の自殺のリスク又は自殺念慮を低下させる方法において用いられる。一部の実施形態において、患者は自殺企図歴を有する。
【0020】
適切な高頻度刺激プロトコルは当該技術分野において公知であり、抗うつ薬有効性についてシャム対照のエビデンスがあるプロトコルが挙げられる19。高頻度刺激プロトコルには、トレイン間間隔を約10~30秒とした、5Hz以上での約40パルスのトレインが関わる。強度は、運動閾値の約80%~約120%の間まで様々であり得る。好ましい実施形態において、強度は、安静時運動閾値(rMT)の約100%~120%の間である。
【0021】
適切な低頻度刺激プロトコルは当該技術分野において公知であり、抗うつ薬有効性についてシャム対照のエビデンスがあるプロトコルが挙げられる19。低頻度刺激プロトコルには、300~2400パルスの範囲の、パルス約1Hzのトレインが関わる。強度は、運動閾値の約80%~約120%の間まで様々であり得る。好ましい実施形態において、強度は、安静時運動閾値(rMT)の約100%~110%の間である。
【0022】
適切な連続及び間欠TBSプロトコルは当該技術分野において公知であり、抗うつ薬有効性についてシャム対照のエビデンスがあるプロトコルが挙げられる20。iTBS刺激頻度は、現在利用可能な技術では一定である(2秒間トレインについて5Hzで3パルス50Hzバースト、トレインは10秒毎)。cTBS刺激頻度は、現在利用可能な技術では一定である(トレインの継続期間にわたって5Hzで3パルス50Hzバースト)。治療1回の総パルス数及び治療強度は様々であってもよい。治療1回のパルス数は、約600~約3600の間である。一部の実施形態において、各治療に600パルスが含まれる。他の実施形態において、各治療に1200パルスが含まれる。なおも他の実施形態において、各治療に1800パルスが含まれる。なおも他の実施形態において、各治療に3600パルスが含まれる。強度は、運動閾値の約80%~約120%の間まで様々であり得る。好ましい実施形態において、強度は、安静時運動閾値(rMT)の約80%~90%の間である。
【0023】
一部の実施形態において、iTBSプロトコルには、5Hzで繰り返される50Hzバースト、2秒オン及び8秒オフ、80%rMTで送達されるセッション1回に600パルスが含まれる。
【0024】
一部の実施形態において、1日1回のrTMS又はTBS治療が行われる。他の実施形態において、毎日複数回のrTMS又はTBS治療、任意選択で毎日2~10回の治療が行われる。
一部の実施形態において、急性rTMS又はTBS治療コースは6週間にわたって送達される。
【0025】
一部の実施形態において、rTMS又はTBS治療コースは1~8週間の治療である。一部の実施形態において、rTMS又はTBSは、急性治療コース後も再発予防のため提供が継続される。
【0026】
rTMS又はTBSプロトコルに関連するシナプス可塑性には、可塑性において主要な役割を果たすイオンチャネル型グルタミン酸受容体である22NMDARシグナル伝達が必要である21。グルタミン酸に結合すると、こうした四量体受容体は膜脱分極を惹起し、さらに、カルシウムシグナル伝達を通じて細胞内メッセンジャーカスケード、遺伝子発現及びタンパク質合成を惹起してシナプス結合強度を改変し得る23。NMDARの細胞表面発現は、それ自体が動的に制御され、急性及び慢性ストレスに特異的な様式でシナプス強度を長期調節する二次機構を提供する24、25。従って、本発明の一実施形態において、TMS関連の可塑性を増加させるようなrTMS又はTBSの補助剤療法は、NMDARシグナル伝達を通じて働く補助剤療法である。
【0027】
一実施形態において、rTMS又はTBSとNMDAR作用薬又は部分的作用薬の組み合わせは、患者のMDDを治療する方法及び/又はMDDの1つ以上の症状を改善し及び/又は緩和する及び/又はその頻度を低下させる方法において用いられる。
【0028】
一実施形態において、rTMS又はTBSとNMDAR作用薬又は部分的作用薬の組み合わせは、MDD患者の作業記憶を改善する又は回復させる方法及び/又はMDD患者の認知機能障害を改善する又は好転させる若しくは部分的に好転させる方法において用いられる。
【0029】
一実施形態において、rTMS又はTBSとNMDAR作用薬又は部分的作用薬の組み合わせは、MDD患者の自殺のリスク又は自殺念慮を低下させる方法において用いられる。一部の実施形態において、患者は自殺企図歴を有する。
【0030】
本発明の一実施形態は、TMS関連の可塑性を増加させるためのrTMS又はTBSの補助剤療法としてのNMDAR作用薬又は部分的作用薬を提供する。
【0031】
NMDAR作用薬又は部分的作用薬をrTMS又はTBSの補助剤療法として使用する、本発明の実施形態では、NMDAR作用薬又は部分的作用薬は、各rTMS又はTBS治療の直前に又はそれと同時に提供される。
【0032】
DCSは、シナプス可塑性の分子機序を生かすことによりMDDをrTMS又はTBSでより良好に治療することを可能にし得る部分的NMDAR作用薬である。低服用量のDCSが高頻度rTMSによる短期促通を増加させることを指示するデータがあり13、さらに、経頭蓋直流電気刺激を使用して、tDCS単独と比べて12時間超にわたって持続する可塑性を示唆するデータがある26。DCSは、NR2C NMDARサブユニットのグリシン部位に優先的に結合し27、28、NR2CサブユニットはMDD個体の前頭前野に正常なレベルで発現するため、これは重要である29
【0033】
一実施形態において、rTMS又はTBSとD-シクロセリン(DCS)の組み合わせは、患者のMDDを治療する方法及び/又はMDDの1つ以上の症状を改善し及び/又は緩和する及び/又はその頻度を低下させる方法において用いられる。
【0034】
一実施形態において、rTMS又はTBSとD-シクロセリン(DCS)の組み合わせは、MDD患者の作業記憶を改善する又は回復させる方法及び/又はMDD患者の認知機能障害を改善する又は好転させる若しくは部分的に好転させる方法において用いられる。
【0035】
一実施形態において、rTMS又はTBSとD-シクロセリン(DCS)の組み合わせは、MDD患者の自殺のリスク又は自殺念慮を低下させる方法において用いられる。一部の実施形態において、患者は自殺企図歴を有する。
【0036】
従って、本発明の一実施形態は、TMS関連の可塑性を増加させるためのrTMS又はTBSの補助剤療法としてのD-シクロセリン(DCS)を提供する。
【0037】
本発明の実施形態において、DCSは、毎日の服用量として毎日のrTMS又はTBSの直前又はそれと同時に提供される(2~6週間)。一部の実施形態において、DCSは、rTMS又はTBS治療の約30分前、約45分前、約60分前、約90分前、約120分前又は約180分前に提供される。任意選択で、rTMS又はTBS治療のタイミングは、DCS血漿レベルに依存する。従って、一部の実施形態において、rTMS又はTBS治療の開始前にDCS血漿レベルが最小閾値を上回らなければならない。任意選択で、最小閾値は約10μg/mLである。
【0038】
一部の実施形態において、本発明の方法は、低服用量のD-シクロセリン(DCS)を含む。低服用量のD-シクロセリン(DCS)には、約1~250mgのDCSの範囲の服用量が含まれる。好ましい実施形態において、服用量は、約50mg~約150mgのDCSの範囲である。D-シクロセリンの適切な服用量は、患者の体重に基づき得るか、又は1~30μg/mLの血漿濃度を生じさせるものであり得る。任意選択で、D-シクロセリンの血漿濃度は、rTMS又はTBS治療前に評価される。
【0039】
一部の実施形態において、D-シクロセリンは、D-シクロセリンの薬剤的に許可可能な塩、D-シクロセリンの薬剤的に許可可能なエステル、アルキル化D-シクロセリン、又はD-シクロセリンの薬剤的に許可可能な前駆物質として提供される。
【0040】
一部の実施形態において、D-シクロセリンは医薬組成物として提供され、薬剤的に許可可能な担体又は希釈剤を含み得る。
【0041】
D-シクロセリンを含む医薬組成物は、経口、静脈内、経粘膜(例えば、鼻腔、膣等)、肺、経皮、眼内、頬側、舌下、腹腔内、髄腔内又は筋肉内など、幾つかの経路のいずれか、又は組み合わせにより患者に投与することができる。一部の実施形態において、医薬組成物は、迅速吸収及び分布となるように配合される。
【0042】
錠剤、カプセル、スプリンクル製剤、及び経口懸濁液など、経口医薬製剤が好ましい。経口投与用の固形組成物は、コーンスターチ、ゼラチン、ラクトース、アカシア、スクロース、微結晶性セルロース、カオリン、マンニトール、リン酸二カルシウム、炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、脂質、アルギン酸、又は制御された徐放用の成分など、好適な担体又は賦形剤を含有し得る。使用することのできる崩壊剤としては、限定なしに、微結晶性セルロース、コーンスターチ、デンプングリコール酸ナトリウム及びアルギン酸が挙げられる。使用し得る錠剤結合剤としては、限定なしに、アカシア、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、スクロース、デンプン、及びエチルセルロースが挙げられる。
【0043】
一部の実施形態において、D-シクロセリン(DCS)は、舌下製剤として提供される。
【実施例
【0044】
実施例1:D-シクロセリンは、経頭蓋磁気刺激間欠θバースト刺激によって誘導されるシナプス可塑性の尺度である皮質脊髄興奮性を増加させる。このような増加は、間欠θバースト刺激が1回送達されるか、又は加速デザインで繰り返し送達されるかにかかわらない。
【0045】
経頭蓋磁気刺激は、シナプス可塑性と呼ばれる過程を通じて脳の機能を変化させることによって抑うつ症状を改善すると考えられている。間欠θバースト刺激プロトコルは、N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDA-R)に依存することが公知である。従って本発明者らは、運動皮質をモデル回路として使用して、NMDA-R部分的作用薬である低服用量のD-シクロセリンがiTBSシナプス可塑性を増強し得るかどうかを試験した。
【0046】
方法:この実験は、予め登録済みの無作為化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験(NCT05081986)であった。20例の健常個体を、本クロスオーバー研究の2つの実験アーム:a)プラセボ-D-シクロセリン及びb)D-シクロセリン-プラセボのうちの一方に無作為に割り付けた。プラセボアームでは、参加者にiTBSの1時間前に1個の100mg経口服用量の微結晶性セルロースが与えられた。D-シクロセリン100mgアームでは、参加者にiTBSの1時間前に100mg経口服用量のD-シクロセリンが与えられた。参加者は研究所に二度通院して、クロスオーバーデザインの両方のアームを完了した。来院間で到着時間を標準化し、来院は少なくとも7日隔てた。
【0047】
TMSパルスは全て、二相性Cool-B70 8の字コイルを備えたニューロナビゲーションMagPro刺激装置(X100システム、MagVenture、デンマーク)を使用して送達した。ANT Neuroニューロナビゲーションソフトウェア(ANT Neuro、ドイツ)のモデルMNI脳を使用して、参加者の頭部及びTMSコイルを三次元空間にレジストレーションした。TMSコイルの配置は、ANT neuroニューロナビゲーションソフトウェアを使用して制御した;二相性パルスの初期相が脳において中心溝に対して後方から前方への向きの電界を送るような位置にコイルを配置した。接地電極を右茎状突起に置きつつ、右第一背側骨間筋(FDI)に置いた2つの体表面筋電計(EMG)電極からMEPの頂点間振幅を記録した。EMG信号は増幅し(1000倍)、CED 1401信号アナログ/デジタル変換器(Cambridge Electronic Design、英国)を使用してフィルタリングし(20~2000Hz)、及びSignal 6.0ソフトウェア(Cambridge Electronic Design)を使用して5000Hzでデジタル化した。
【0048】
TMSを左一次運動野に送達して、刺激時に最も大きい頂点間FDI MEP振幅を誘発する領域(ホットスポット)を同定した。ニューロナビゲーションソフトウェア上でホットスポット領域をマークし、それ以降の刺激は全て、この部位に実施した。安静時運動閾値(RMT)を、10例中5例の試行で0.05mV以上の頂点間MEP振幅を誘発した刺激装置出力の最も低い値として決定した。
【0049】
クロスオーバーデザインの各アームにおいて、iTBSは60分隔てて2回送達した。iTBSは、ホットスポットに80%RMTで送達した。刺激では600パルスを送達し、これは、各々が50Hzの3パルスで構成される20トレインのバーストからなり、8秒のトレイン間間隔を置いて5Hzで繰り返された。
結果:ベースライン時のMEP振幅については、クロスオーバーデザインのアーム間で差はなかった(t=1.4、pholm=0.571)。初回iTBS前のMEP振幅(ベースライン)は、2回目のiTBS直前(60分)のMEP振幅と差がなかった(両方ともpholm=1.000、平均差は0.05mV未満、図1)。
【0050】
140/120%のMEP振幅比をTMS刺激反応曲線の尺度として使用した。薬物が140%/120%比に及ぼす主効果があり、この比はプラセボ試験と比較してD-シクロセリン試験で高かった(D-シクロセリン=2.4[1.7,3.20]、プラセボ=1.6[0.9,2.3]、t(128)=2.6、p=0.010、図2)。
【0051】
結論:低服用量のD-シクロセリンは、間欠θバースト刺激後に、ある種の形態のシナプス可塑性を選択的に亢進させる。
【0052】
実施例2:無作為化二重盲検プラセボ対照クロスオーバーデザインにおいて、運動皮質における間欠θバーストトレインのTMS刺激を部分的NMDA-R作用薬のD-シクロセリンと併せて使用すると、MDDのシナプス可塑性機能障害がレスキューされる。
【0053】
方法:大うつ病性障害者(NCT03937596)及び健常者(NCT03432689)の間での運動皮質経頭蓋磁気間欠θバースト刺激を使用した並行群間二重盲検無作為化クロスオーバー研究。適格な参加者を無作為化し、ここで割り付けは隠匿し、及び参加者がプラセボ及び100mg D-シクロセリンを与えられる順番に関して盲検化したままとした。
【0054】
大うつ病性障害を有するハミルトンうつ病評価尺度17項目(HDRS-17)スコアが15以上(Hamilton,1960)の12例の参加者を募集した。組入れ基準は、過去4週間にその薬物療法に変更がない年齢18~60歳の男女であった。除外基準は、妊娠、授乳、てんかん、脳卒中歴、腎疾患、肝疾患、現在のアルコール使用障害(過去3ヵ月)、各セッション前24時間にアルコール使用を控えることができない、抗生物質に対するアレルギー、イソニアジド、エチオナミド、若しくはブプロピオンの使用、精神病の既往歴、又は頭蓋内インプラントであった。
【0055】
以前に別個の研究(NCT03432689)の一環としてオンライン広告及び本発明者らの施設にあるチラシで募集した12例の健常参加者からのデータを使用した。これらの健常参加者は、精神医学的診断のない年齢18~60歳の男女であり、除外基準はMDD参加者と同じであった。健常参加者については、必要に応じて催眠剤などの薬物療法を受けていることは除外基準としなかった。この研究からのデータによれば、D-シクロセリンによってiTBS後のMEPの促通が鈍化したことが示唆され、これについては他にも記載されている123
【0056】
ベースライン来院時に社会人口統計学的情報及び現在の薬物療法を収集した。参加者は、抑うつ症状の重症度の評価のために、自己報告式簡易抑うつ症状尺度(Quick Inventory of Depressive Symptoms-Self Report:QIDS-SR)8に記入するとともに、ベック不安尺度(Beck Anxiety Inventory:BAI)124及び状態-特性不安尺度(State-Trait Anxiety Inventory:STAI)125にも記入した。参加者はまた、両方の研究アームとも、ベースライン時及びiTBSの翌日にトロント副作用スケール(Toronto Side Effects Scale:TSES)126も記入した。
【0057】
MDD標本に対して臨床医が施行する測定法は、HDRS-17であった。臨床医が施行するインスツルメントは、健常対照標本では実施しなかった。
【0058】
臨床医の評定によるインスツルメントが施行され、適格性の確認後、参加者はその無作為化された最初のカプセル(100mgのD-シクロセリン又はプラセボ)を経口摂取し、その後、その自己報告式質問紙に記入した。次に参加者は実験部屋に連れて行かれ、そこでその場での実験について説明を受けた。参加者は、上肢の筋緊張が最小限となるのを確実にするため、手及び肘を枕の上に載せて座った。参加者の体表解剖学的マーカーをニューロナビゲーションソフトウェア(ANT Neuro、ドイツ)を使用してテンプレート磁気共鳴脳画像にレジストレーションした。次に、参照電極を半径方向の茎状突起の上に置きつつ、筋電計電極(Covidien、アイルランド)を右第一背側骨間(FDI)筋上に置いた。Visorシステム(ANT Neuro、ドイツ)を1kHzで使用してEMGを取得した。その盲検化されたカプセルを摂取してから1~2時間後の間に、Cool-B70 8の字コイルを備えたMagPro X100システム(MagVenture、デンマーク)を利用してFDIホットスポットの位置を特定した。次に、10例中5例以上のMEP(50マイクロボルト以上)を発生させるのに必要な最小限の刺激強度として定義される安静時運動閾値(RMT)を決定した。
【0059】
-15、-10、-5、iTBS直後、次に、iTBS後+5、+10、+15、+20、+25、+30、+60、及び+90分に、0.25Hz及び120%RMTで20個のMEPのビンを取得した。ベースライン時、iTBS後90分、及び翌日(RMTの再決定後)に、0.25HzのTMSパルスを送達し、100~150%RMTの間で刺激強度をランダムに変化させることにより、取得された刺激反応曲線(SRC)もまた取得した。各刺激強度につき、合計4パルスを送達した。
【0060】
iTBSプロトコルは、80%RMTで8秒トレイン間間隔として5Hzで繰り返される、50Hzで3パルスのバースト20トレインからなった。2.4データ処理EMGデータをMATLAB(登録商標)を使用して、先述のとおりカスタムで書かれたスクリプトによってオフラインで分析した123。TMSパルスに先行する100msウィンドウの平均値で補正した頂点間振幅を分離した。EMGトレースを個々に調べた後、分析に含めた。分析及びグラフ表現のため、頂点間値のビン(iTBS時点について20個、各SRC強度について4個)の平均を求めた。経時的MEPをベースライン平均値で正規化した。
【0061】
統計的分析:臨床データ及び自己報告データについては、SPSS v26(IBM、イリノイ州シカゴ市)を使用して、連続データは対応のある標本又は独立標本のスチューデントt検定で、及び二値データはカイ二乗検定で分析した。EMGデータについては、反復測定二元配置ANOVA及びボンフェローニ事後検定で分析した。外れ値はチューキーのフェンス(Tukey’s Fences)を用いて特定した。アルファは0.05以下と定義した。
【0062】
結果:うつ病の参加者は、健常参加者と比較してiTBS後にMEP促通が低下していたが(図3a;時点F(11,220)=2.15、p=0.018;群F(1,220)=1.38、p=0.254;時点×群F(11,220)=2.10、p=0.021)、しかしながら、ボンフェローニ事後検定に耐える時点の差はなかった。
【0063】
実施例1の健常者と同様に、D-シクロセリンはiTBS後の経時的MEPに影響を与えず、プラセボアームとD-シクロセリン治療アームとの間に差はなかった(図3b;時点F(11,198)=1.40、p=0.175;治療F(1,198)=0.982、p=0.335;時点×治療F(11,198)=1.51、p=0.130)。
【0064】
個々のSRC内でのシフトが、活動依存的変化の尺度を提供し、従ってベースライン時、iTBS後90分及びiTBS翌日のプラセボ及びD-シクロセリンアームのSRCを調べた(図4a~図4c)。標準比較法のため、この同じデザインより前にプラセボカプセルを摂取していた健常参加者からのデータを含めた(図4d)。翌日のSRCの変化から、健常者及びうつ病の参加者では長期適応パターンが逆であること、及びD-シクロセリン治療によってMDDのこの過程が正常になったことが明らかになった(図4d;強度F(5,145)=1.388、p=0.232;群F(2,145)=3.364、p=0.049;強度×群F(10,145)=1.898、p=0.0499)。刺激から90分後のSRCの曲線下面積(AUC)の変化(ΔAUC 90min)と翌日の変化(ΔAUC NextDay)との間の関連性を調べた。有意な薬物×ΔAUC 90min効果(治療F(2,43)=0.58、p=0.56;ΔAUC_90min F(1,43)=0.00、p=0.95;治療×ΔAUC 90min F(1,43)=8.16、p=0.007)が認められた。プラセボ健常群及びMDD群では、ΔAUC 90minとΔAUC NextDayとの間に弱い負の関係が同定され(図5a;F(1,19)=4.45、r2=0.19、p=0.048)、一方でD-シクロセリン群では正の関係が見られた(図5b;F(1,19)=14.92、r2=0.44、p=0.001)。
【0065】
結論:NMDA-R部分的作用薬D-シクロセリンによってiTBS後のMDDにおけるシナプス可塑性は正常化及び安定化し、iTBS後の持続的な変化につながる。
【0066】
実施例3:iTBSの補助剤としてのDCSは治療効果を亢進させて、MDDにおけるうつ病のアウトカムを改善する。
【0067】
背景:治療抵抗性大うつ病性障害(MDD)に対する経頭蓋磁気刺激プロトコルは、シナプス可塑性に依存すると考えられている。θバースト刺激(TBS)プロトコルは、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体依存性であることが公知であるが、NMDA受容体シグナル伝達が亢進することによって治療アウトカムに影響が及ぶかどうかは不明である。ここで、本発明者らは、低服用量のNMDA受容体部分的作用薬であるD-シクロセリンによってMDDにおける間欠TBS(iTBS)治療アウトカムが亢進し得るかどうかについて試験する。
【0068】
方法:この事前登録済みの(NCT03937596)単一施設4週間無作為化二重盲検プラセボ対照試験では、治療抵抗性MDDを有する50例の参加者を1:1でiTBS+プラセボ又はiTBS+D-シクロセリン(100mg)に無作為化した。参加者は、最初の2週間は毎日のiTBS治療の少なくとも60分前に補助剤又はプラセボを服用することが求められ、第3週及び第4週の間はiTBSが補助剤なしに継続された。本発明者らは、MagPro X100刺激装置(MagVenture、デンマーク)及びCOOL-B70コイルを利用した。左DLPFCの標的化には、体表解剖学及びBeam F3法が含まれた30。研究プロトコルの一環として解剖学的及び機能的ニューロイメージングを収集したが、ニューロイメージングに由来する標的が実現可能でない臨床セッティングへの一般化可能性を増加させるため、体表解剖学を利用した標的化を選択した。この標的は、参加者の解剖学的MRI又はニューロイメージング(Visor2、ANT Neuro、オランダ)を完了できなかった参加者についてはテンプレート脳のいずれかにレジストレーションした。第一背側骨間筋に置いた筋電計(EMG)電極を使用して安静時運動閾値(rMT)を決定し、ここで閾値は、10例中最低5例の50μVを超えるEMG反応を誘発するのに必要な刺激強度として決定された。
【0069】
全ての患者が、80%rMTで5Hz(2秒間オン8秒間オフ)で繰り返される50Hzの3連の20トレインで送達されるセッション1回につき合計600パルスからなる能動的iTBSを受けた。参加者は合計20治療について月曜日から金曜日まで毎日治療を受けた。
【0070】
主要アウトカムは、治療の終わりにモンゴメリー・アスベルグうつ病評価尺度(Montgomery Asberg Depression Rating Scale:MADRS)により測定したときの抑うつ症状の変化であった。副次的アウトカムには、臨床反応(MADRSの50%以上の改善)、臨床寛解(MADRSが10点以下)、及び臨床全般印象(CGI)が含まれた。
【0071】
結果:一次分析では、これらの2群におけるベースラインと4週間との間の変化が等しいという帰無仮説が棄却された(t(39)=-2.47、p=0.0178)。MADRSスコアの変化を調べるmITT分析では、抑うつ症状の低下がiTBS+DCS群においてiTBS+プラセボ群と比較してより大きいことが実証された(図6a;混合モデル尤度比(MMLR)カイ二乗=9.97、p=0.0068)。これは、MADRSに関して6.15の平均差(95%CI:2.43~9.88、p=0.001)及び0.99のヘッジのg(95%CI:0.34~1.62)に対応する。
【0072】
治療毎の分析により、2週間(平均差3.97、95%CI:0.43~7.51、p=0.014)及び4週間(平均差7.09、95%CI:2.66~11.52、p=0.0012)の両方で、iTBS+プラセボ群及びiTBS+DCS群にMADRSスコアの有意な差があったことが明らかになった。
【0073】
iTBS+DCSは、2週間(iTBS+プラセボ16.7%対iTBS+DCS 52.2%;又は5.45、95%CI:1.41~21.03、p=0.014)及び4週間(iTBS+プラセボ29.2%対iTBS+DCS 73.9%;又は6.88、95%CI:1.91~24.77、p=0.003;図6b)の両方で、iTBS+プラセボよりも高い臨床反応率に関連した。臨床寛解率は2週間では分かれなかったが(iTBS+プラセボ4.2%対iTBS+DCS 17.4%)、4週間までに統計的に有意な差を示した(iTBS+プラセボ4.2%対iTBS+DCS 39.1%;又は14.78、95%CI:1.68~129.52、p=0.014;図6c)。
【0074】
CGI-重症度尺度については、iTBS+DCSにおいてiTBS+プラセボ群と比較してより大きい改善が実証された(MMLRカイ二乗=13.13、p=0.0014、図7a)。CGI-改善スコアを分析したとき、それらは正規分布しなかったため、本発明者らはマン・ホイットニー検定を利用した。これにより、2週間(z=2.38、p=0.017)及び4週間(z=3.24、p=0.0012;図7b)でiTBS+DCS群において、iTBS+プラセボ群と比べると改善がより大きいことが明らかになった。
【0075】
GAD-7を用いた自己報告の不安症状によれば、iTBS+DCS群においてiTBS+プラセボ群と比較して改善がより大きいことが明らかになった(MMLRカイ二乗=6.67、p=0.035;図8)。
【0076】
全般的幸福についての視覚的アナログ尺度では、iTBS+DCS群においてiTBD+プラセボ群と比較して改善がより大きいことが示された(MMLRカイ二乗=7.94、p=0.018、図9)。
【0077】
結論:補助剤D-シクロセリンは、iTBSを使用したMDDにおける経頭蓋磁気刺激治療アウトカムを改善する。
【0078】
実施例4:DCSをiTBSと組み合わせると、客観的及び主観的認知機能不全が減少する。
【0079】
100mg DCSがiTBSの補助的戦略としてMDD関連の認知機能障害を減少させ、及び/又はMDDにおける認知を改善する有効性について、上記の実施例に記載される無作為化比較試験で試験した。
【0080】
参加者は、ベースライン時及び治療後に認知的失敗質問紙(Cognitive Failures Questionnaire:CFQ31)及び自覚的欠陥質問紙(Perceived Deficits Questionnaire:PDQ)並びにTHINC-itコンピュータ化神経認知バッテリーを記入した。
【0081】
iTBS+DCS参加者は、自覚的欠陥質問紙により測定したときのその主観的認知機能及び作業記憶のNバック課題に関する客観的認知機能の有意に大きい改善を示した(図10)。
【0082】
実施例5:DCSをiTBSと組み合わせると、TMS標的部位の微細構造リモデリングが誘導され、それにつながる。
【0083】
神経突起密度及び配向分散指数(NODDI)32は、神経突起形態及び分枝の代理尺度を提供するMRIツールであり、モデル種で組織学に対抗するものとしてバリデートされている33、34。白質への適用がより多く見られるが、NODDIは健常及び疾患の両方の皮質灰白質において見分ける力を有する35~37。神経突起密度メトリクスは、神経突起内の体積を反映する一方、配向分散メトリクスは、神経突起のねじれ又は複雑さを捉える(MDDではこれらの両方が影響を受ける)。
【0084】
上記の実施例で考察した無作為化プラセボ対照試験では、神経突起密度及び配向分散指数(NODDI)32を定量化する拡散磁気共鳴データは、Seaman Family MR Research Centerの3T General Electric Discovery MR750スキャナを使用して取得した。この方法は、脳白質及び灰白質における神経突起形態及び分枝を記述する病理組織学的特徴の代理尺度を提供する。標本数が少ないにもかかわらず、iTBS+DCS治療を受けた参加者の標的部位における神経突起密度の増加に関して、大きい効果が観察された(図11)。
【0085】
実施例6:DCSをiTBSと組み合わせると、死の暗黙連想テストにより測定したときの自殺念慮及び自殺リスクが低下する。
【0086】
上記の実施例で考察した無作為化プラセボ対照試験では、iTBS+DCSを受けた参加者は自殺念慮が急速に消失し、これはiTBS+プラセボを受けた参加者よりも統計的に大幅な消失であった(図12)。
【0087】
参加者はまた、自殺企図に関連する死の暗黙連想テストと呼ばれるコンピュータ化した神経心理学的検査も、後ろ向き及び前向きの両方で完了した。このテストの成績によれば、iTBS+DCS群では改善が見られたが、iTBS+プラセボ群では見られず、抑うつ症状改善の差に関して統計的に制御したときこの効果は持続した(図13)。
【0088】
実施例7:TMSの増強は、DCSが刺激時に脳に存在するのに十分な吸収及び分布時間があるかに依存する。
【0089】
上記の実施例で考察した無作為化プラセボ対照試験では、参加者は、TMS治療の少なくとも60分前にそのカプセルを経口摂取するように指示された。これは、経口DCSの十分な吸収及び分布を可能にするためであった38
【0090】
本発明者らは、プロトコルの遵守、従って治療時の脳内におけるDCSの存在と治療アウトカムとの間に関係があるかどうかについて、2つの介入群で臨床レスポンダー及びノンレスポンダーを比較することにより調べた。この結果、4群比較となった。クラスカル・ワリス検定によって摂取と治療との間の時間を調べ、群の有意な効果を認めた(H(3)=25.15、p<0.001、図14)。ボンフェローニ事後比較により、iTBS+DCSレスポンダーは摂取と治療との間の間隔がiTBS+DCSノンレスポンダー(p<0.001)、iTBS+プラセボレスポンダー(p=0.044)及びiTBS+プラセボノンレスポンダー(p<0.001)よりも長いことが明らかになった。
【0091】
これは、治療アウトカムが、TMSが送達されたときに脳内でD-シクロセリンの吸収及び分布に十分な時間があったかに関係したこと、及びプラセボ治療を受けた参加者ではプロトコルの遵守はアウトカムと関係がなかったことを実証している。
【0092】
参考文献
1.Patten SB,Williams JV,Lavorato DH,Wang JL,McDonald K,Bulloch AG.Descriptive epidemiology of major depressive disorder in Canada in 2012.Can J Psychiatry.Jan 2015;60(1):23-30.doi:cjp-2015-vol60-january-23-30[pii]
10.1177/070674371506000106[doi]
2.Tanner JA,Hensel J,Davies PE,Brown LC,Dechairo BM,Mulsant BH.Economic Burden of Depression and Associated Resource Use in Manitoba,Canada.Can J Psychiatry.May 2020;65(5):338-346.doi:10.1177_0706743719895342[pii]
10.1177/0706743719895342[doi]
3.Ratnasingham S,Cairney J,Manson H,Rehm J,Lin E,Kurdyak P.The burden of mental illness and addiction in ontario.Can J Psychiatry.Sep 2013;58(9):529-37.doi:10.1177/070674371305800908[doi]
4.Global,regional,and national disability-adjusted life-years(DALYs)for 359 diseases and injuries and healthy life expectancy(HALE)for 195 countries and territories,1990-2017:a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2017.Lancet.Nov 10 2018;392(10159):1859-1922.doi:S0140-6736(18)32335-3[pii]
10.1016/S0140-6736(18)32335-3[doi]
5.Druss BG,Hwang I,Petukhova M,Sampson NA,Wang PS,Kessler RC.Impairment in role functioning in mental and chronic medical disorders in the United States:results from the National Comorbidity Survey Replication.Mol Psychiatry.Jul 2009;14(7):728-37.doi:mp200813[pii]
10.1038/mp.2008.13[doi]
6.Alonso J,Petukhova M,Vilagut G,et al.Days out of role due to common physical and mental conditions:results from the WHO World Mental Health surveys.Mol Psychiatry.Dec 2011;16(12):1234-46.doi:mp2010101[pii]
10.1038/mp.2010.101[doi]
7.Lam RW,Kennedy SH,Parikh SV,et al.Canadian Network for Mood and Anxiety Treatments(CANMAT)2016 Clinical Guidelines for the Management of Adults with Major Depressive Disorder:Introduction and Methods.Can J Psychiatry.Sep 2016;61(9):506-9.doi:10.1177/0706743716659061
8.Rush AJ,Trivedi MH,Wisniewski SR,et al.Acute and longer-term outcomes in depressed outpatients requiring one or several treatment steps:a STAR*D report.Am J Psychiatry.Nov 2006;163(11):1905-17.doi:163/11/1905[pii]
10.1176/ajp.2006.163.11.1905[doi]
9.Patten SB,Williams JV,Lavorato DH,Wang JL,McDonald K,Bulloch AG.Major Depression in Canada:What Has Changed over the Past 10 Years?Can J Psychiatry.Feb 2016;61(2):80-5.doi:61/2/80[pii]
10.1177_0706743715625940[pii]
10.1177/0706743715625940[doi]
10.Nemeroff CB.Prevalence and management of treatment-resistant depression.J Clin Psychiatry.2007;68 Suppl 8:17-25.
11.Treatment Resistant Depression:The Alberta Perspective(Alberta Health Services)(2019).
12.Ziemann U,Reis J,Schwenkreis P,et al.TMS and drugs revisited 2014.Journal Article
Review.Clin Neurophysiol.Oct 2015;126(10):1847-68.
13.Brown JC,DeVries WH,Korte JE,et al.NMDA receptor partial agonist,d-cycloserine,enhances 10 Hz rTMS-induced motor plasticity,suggesting long-term potentiation(LTP)as underlying mechanism.Brain Stimul.May-Jun 2020;13(3):530-532.doi:S1935-861X(20)30005-X[pii]
10.1016/j.brs.2020.01.005[doi]
14.Selby B,MacMaster FP,Kirton A,McGirr A.d-cycloserine blunts motor cortex facilitation after intermittent theta burst transcranial magnetic stimulation:A double-blind randomized placebo-controlled crossover study.Brain Stimul.Jul-Aug 2019;12(4):1063-1065.doi:S1935-861X(19)30105-6[pii]
10.1016/j.brs.2019.03.026[doi]
15.Teo JT,Swayne OB,Rothwell JC.Further evidence for NMDA-dependence of the after-effects of human theta burst stimulation.Letter
Randomized Controlled Trial.Clin Neurophysiol.Jul 2007;118(7):1649-51.
16.Kuhn M,Mainberger F,Feige B,et al.State-Dependent Partial Occlusion of Cortical LTP-Like Plasticity in Major Depression.Neuropsychopharmacology.May 2016;41(6):1521-9.doi:npp2015310[pii]
10.1038/npp.2015.310[doi]
17.Player MJ,Taylor JL,Weickert CS,et al.Neuroplasticity in depressed individuals compared with healthy controls.Neuropsychopharmacology.Oct 2013;38(11):2101-8.doi:npp2013126[pii]
10.1038/npp.2013.126[doi]
18.Vignaud P,Damasceno C,Poulet E,Brunelin J.Impaired Modulation of Corticospinal Excitability in Drug-Free Patients With Major Depressive Disorder:A Theta-Burst Stimulation Study.Front Hum Neurosci.2019;13:72.doi:10.3389/fnhum.2019.00072[doi]
19.Brunoni AR,Chaimani A,Moffa AH,et al.Repetitive Transcranial Magnetic Stimulation for the Acute Treatment of Major Depressive Episodes:A Systematic Review With Network Meta-analysis.JAMA Psychiatry.Feb 1 2017;74(2):143-152.doi:2594387[pii]
10.1001/jamapsychiatry.2016.3644[doi]
20.Li CT,Chen MH,Juan CH,et al.Efficacy of prefrontal theta-burst stimulation in refractory depression:a randomized sham-controlled study.Journal Article
Randomized Controlled Trial
Research Support,Non-U.S.Gov’t.Brain.Jul 2014;137(Pt 7):2088-98.
21.Huang YZ,Chen RS,Rothwell JC,Wen HY.The after-effect of human theta burst stimulation is NMDA receptor dependent.Journal Article
Randomized Controlled Trial
Research Support,Non-U.S.Gov’t.Clin Neurophysiol.May 2007;118(5):1028-32.
22.Traynelis SF,Wollmuth LP,McBain CJ,et al.Glutamate receptor ion channels:structure,regulation,and function.Pharmacol Rev.Sep 2010;62(3):405-96.doi:10.1124/pr.109.002451
23.Popoli M,Yan Z,McEwen BS,Sanacora G.The stressed synapse:the impact of stress and glucocorticoids on glutamate transmission.Nat Rev Neurosci.Nov 30 2011;13(1):22-37.doi:nrn3138[pii]
10.1038/nrn3138[doi]
24.Yuen EY,Liu W,Karatsoreos IN,Feng J,McEwen BS,Yan Z.Acute stress enhances glutamatergic transmission in prefrontal cortex and facilitates working memory.Proc Natl Acad Sci U S A.Aug 18 2009;106(33):14075-9.doi:0906791106[pii]
8967[pii]
10.1073/pnas.0906791106[doi]
25.Yuen EY,Wei J,Liu W,Zhong P,Li X,Yan Z.Repeated stress causes cognitive impairment by suppressing glutamate receptor expression and function in prefrontal cortex.Neuron.Mar 8 2012;73(5):962-77.doi:S0896-6273(12)00083-9[pii]
10.1016/j.neuron.2011.12.033[doi]
26.Nitsche MA,Jaussi W,Liebetanz D,Lang N,Tergau F,Paulus W.Consolidation of human motor cortical neuroplasticity by D-cycloserine.Neuropsychopharmacology.Aug 2004;29(8):1573-8.doi:1300517[pii]
10.1038/sj.npp.1300517[doi]
27.Dravid SM,Burger PB,Prakash A,et al.Structural determinants of D-cycloserine efficacy at the NR1/NR2C NMDA receptors.J Neurosci.Feb 17 2010;30(7):2741-54.doi:30/7/2741[pii]
3573526[pii]
10.1523/JNEUROSCI.5390-09.2010[doi]
28.Sheinin A,Shavit S,Benveniste M.Subunit specificity and mechanism of action of NMDA partial agonist D-cycloserine.Neuropharmacology.Aug 2001;41(2):151-8.doi:S0028390801000739[pii]
10.1016/s0028-3908(01)00073-9[doi]
29.Beneyto M,Meador-Woodruff JH.Lamina-specific abnormalities of NMDA receptor-associated postsynaptic protein transcripts in the prefrontal cortex in schizophrenia and bipolar disorder.Neuropsychopharmacology.Aug 2008;33(9):2175-86.doi:1301604[pii]
10.1038/sj.npp.1301604[doi]
30.Beam W,Borckardt JJ,Reeves ST,George MS.An efficient and accurate new method for locating the F3 position for prefrontal TMS applications.Brain Stimul.Jan 2009;2(1):50-4.doi:S1935-861X(08)00337-9[pii]
10.1016/j.brs.2008.09.006[doi]
31.Broadbent DE,Cooper PF,FitzGerald P,Parkes KR.The Cognitive Failures Questionnaire(CFQ)and its correlates.Br J Clin Psychol.Feb 1982;21(1):1-16.doi:10.1111/j.2044-8260.1982.tb01421.x[doi]
32.Zhang H,Schneider T,Wheeler-Kingshott CA,Alexander DC.NODDI:practical in vivo neurite orientation dispersion and density imaging of the human brain.Neuroimage.Jul 16 2012;61(4):1000-16.doi:S1053-8119(12)00353-9[pii]
10.1016/j.neuroimage.2012.03.072[doi]
33.Jespersen SN,Bjarkam CR,Nyengaard JR,et al.Neurite density from magnetic resonance diffusion measurements at ultrahigh field:comparison with light microscopy and electron microscopy.Neuroimage.Jan 1 2010;49(1):205-16.doi:S1053-8119(09)00966-5[pii]
10.1016/j.neuroimage.2009.08.053[doi]
34.Jespersen SN,Leigland LA,Cornea A,Kroenke CD.Determination of axonal and dendritic orientation distributions within the developing cerebral cortex by diffusion tensor imaging.IEEE Trans Med Imaging.Jan 2012;31(1):16-32.doi:10.1109/TMI.2011.2162099[doi]
35.Genc E,Fraenz C,Schlueter C,et al.Diffusion markers of dendritic density and arborization in gray matter predict differences in intelligence.Nat Commun.May 15 2018;9(1):1905.doi:10.1038/s41467-018-04268-8[pii]
4268[pii]
10.1038/s41467-018-04268-8[doi]
36.Nazeri A,Schifani C,Anderson JAE,Ameis SH,Voineskos AN.In Vivo Imaging of Gray Matter Microstructure in Major Psychiatric Disorders:Opportunities for Clinical Translation.Biol Psychiatry Cogn Neurosci Neuroimaging.Sep 2020;5(9):855-864.doi:S2451-9022(20)30072-0[pii]
10.1016/j.bpsc.2020.03.003[doi]
37.Venkatesh A,Stark SM,Stark CEL,Bennett IJ.Age- and memory-related differences in hippocampal gray matter integrity are better captured by NODDI compared to single-tensor diffusion imaging.Neurobiol Aging.Aug 12 2020;96:12-21.doi:S0197-4580(20)30260-8[pii]
10.1016/j.neurobiolaging.2020.08.004[doi]
38.van Berckel BN,Lipsch C,Timp S,et al.Behavioral and neuroendocrine effects of the partial NMDA agonist D-cycloserine in healthy subjects.Neuropsychopharmacology.May 1997;16(5):317-24.doi:S0893133X96001960[pii]
10.1016/S0893-133X(96)00196-0[doi]
【0093】
特定の具体的な実施形態を参照して本発明を説明したが、当業者には、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなくその様々な変形例が明らかであろう。当業者には明らかであろうかかる変形例は全て、以下の特許請求の範囲内に包含されることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】