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特表2024-520486単核細胞-血小板リッチのフィブリンマトリックス及びその化合物を調製するための方法及びシステム
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  • 特表-単核細胞-血小板リッチのフィブリンマトリックス及びその化合物を調製するための方法及びシステム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】単核細胞-血小板リッチのフィブリンマトリックス及びその化合物を調製するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/14 20150101AFI20240517BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240517BHJP
   A61K 35/19 20150101ALI20240517BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20240517BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
A61K35/14
A61K35/17
A61K35/19
A61K35/15
A61P17/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573067
(86)(22)【出願日】2022-05-12
(85)【翻訳文提出日】2024-01-23
(86)【国際出願番号】 US2022028941
(87)【国際公開番号】W WO2022250969
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】63/193,889
(32)【優先日】2021-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523444154
【氏名又は名称】ピーアールピー コンセプツ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】キャロル,リチャード,ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4C087
【Fターム(参考)】
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA05
4C087BB34
4C087BB37
4C087BB38
4C087DA03
4C087DA04
4C087DA16
4C087DA19
4C087DA20
4C087DA21
4C087MA02
4C087NA05
4C087NA06
4C087NA20
4C087ZA89
(57)【要約】
血小板、単球、及びリンパ球を含む精製された非自然発生の創傷治癒組成物が提供されており、当該組成物は、実質的に好中球を含んでいない。当該精製された非自然発生の創傷治癒組成物を調製するシステム;当該組成物を生成する方法;及び、創傷を治療するために当該組成物を使用する方法;も提供されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血小板、単球、及びリンパ球を含み且つ実質的に好中球を含まない精製された非自然発生の創傷治癒組成物を調製するためのシステムであって、
血液サンプルを受けるための密封可能な開放端、及び該開放端の反対側にある閉鎖端を有する第1の容器であり、
前記第1の容器は、前記閉鎖端に近接する第1の位置に配置された密度分離媒体、及び前記開放端と前記第1の位置との間の第2の位置に配置された約1.055から1.080g/cmの密度を有するチキソトロピックゲル、並びに、前記開放端と前記第2の位置との間の第3の位置に6.0から8.5の範囲のpHを有する抗凝固剤溶液を有し、
前記第1の容器は、遠心分離されたときに、血液サンプルから、分離された血小板、単球、リンパ球、及び血漿の抽出可能な懸濁液を生成するために使用可能である、第1の容器と、
前記第1の容器において生成された、分離された血小板、単球、リンパ球、及び血漿の抽出された懸濁液を受けるための密封可能な開放端を有する第2の容器であり、前記第2の容器は凝固活性剤を有し、
前記第2の容器は、遠心分離されたときに、分離された血小板、単球、及びリンパ球の前記懸濁液から創傷治癒組成物を生成するために使用可能である、第2の容器と、
を含むシステム。
【請求項2】
前記第1の容器の開放端及び前記第2の容器の開放端と結合するように適応した移送装置をさらに含み、前記移送装置は、前記第1の容器の開放端と結合したときに、前記第1の容器から分離された血小板、単球、リンパ球、及び血漿の前記懸濁液を受けるための滅菌シールを生成し、前記第2の容器の開放端と結合したときに、分離された血小板、単球、リンパ球、及び血漿の前記懸濁液を前記第2の容器に移送するための滅菌環境を生成する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記密度分離媒体は、非ニュートンゲル及びニュートン液体のうち少なくとも1つを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記密度分離媒体は、約1500未満の分子量を有するイオン性物質を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記密度分離媒体は、ジアトリゾ酸ナトリウム、その誘導体、及びそれらの組み合わせを含む群から選択される、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記密度分離媒体は、少なくとも400,000の分子量を有するスクロース又はエピクロロヒドリンのポリマー、その誘導体、及びそれらの組み合わせを含む群から選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1の容器の開放端を封止するための第1の閉鎖装置をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記第1の閉鎖装置は、前記第1の容器の開放端を真空封止するように適応している、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記第1の閉鎖装置は、圧力差により前記血液サンプルを前記第1の容器に供給するためのカニューレによって突き刺し可能である、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記第2の容器の開放端を封止するための第2の閉鎖装置をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記第2の閉鎖装置は、前記第2の容器の開放端を真空封止するように適応している、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記第2の閉鎖装置は、圧力差により、分離された血小板、単球、リンパ球、及び血漿の前記懸濁液を前記第2の容器に供給するためのカニューレによって突き刺し可能である、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
血小板、単球、及びリンパ球を含む精製された創傷治癒組成物は、単核細胞-血小板リッチのフィブリンマトリックスである、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記第1の容器及び前記第2の容器のうち少なくとも1つを受けるように適応した遠心分離機をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記チキソトロピックゲルは、1.060から約1.065g/cmの比重を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記分離媒体は、1.065から約1.085g/cmの比重を有し、好ましくは約1.070から約1.080g/cmの比重を有し、1.077g/cmの最適な比重を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記pHは、約6.5から約7.5であり、好ましくは6.85から約7.15であり、7.0の最適なpHである、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
クエン酸ナトリウム抗凝固剤の濃度が約0.05Mから約0.20Mであり、好ましいクエン酸ナトリウムの濃度は約0.08Mから約0.13Mであり、最適なクエン酸ナトリウムの濃度は、約0.09Mから約0.11Mに及ぶ、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
pHは7.0であり、クエン酸ナトリウムの濃度は0.1Mである、請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
前記抗凝固剤は、1リットルあたり0.10モルで294gmのクエン酸ナトリウム・2HO、0.27gmのクエン酸・HO、及びpH7.0を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項21】
前記抗凝固剤は、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩、エチレンジアミン四酢酸二カリウム塩又は三カリウム塩のうち少なくとも1つを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項22】
前記凝固活性剤は、0.05Mから0.3M、好ましくは0.1Mから約0.25Mの濃度の塩化カルシウム(CaCl・2H0)凝血活性溶液であり、最適な濃度は0.2Mである、請求項1に記載のシステム。
【請求項23】
血小板、単球、及びリンパ球を含み且つ実質的に好中球を含まない精製された非自然発生の創傷治癒組成物を調製するためのシステムであって、
血液サンプルを受けるための密封可能な開放端、及び該開放端の反対側にある閉鎖端を有する第1の容器であり、
前記第1の容器は、前記閉鎖端に近接する第1の位置に配置された第1の密度分離媒体、及び前記開放端と前記第1の位置との間の第2の位置に配置された第2の密度分離媒体、並びに、前記開放端と前記第2の位置との間の第3の位置に6.0から8.5の範囲のpHを有する抗凝固剤溶液を有し、
前記第1の容器は、遠心分離されたときに、血液サンプルから、分離された血小板、単球、リンパ球、及び血漿の抽出可能な懸濁液を生成するために使用可能である、第1の容器と、
前記第1の容器において生成された、分離された血小板、単球、リンパ球、及び血漿の抽出された懸濁液を受けるための密封可能な開放端を有する第2の容器であり、前記第2の容器は凝固活性剤を有し、
前記第2の容器は、遠心分離されたときに、分離された血小板、単球、リンパ球、及び血漿の前記懸濁液から創傷治癒組成物を生成するために使用可能である、第2の容器と、
を含むシステム。
【請求項24】
前記第2の密度分離媒体は、約1.055から1.080g/cmの密度を有するチキソトロピックゲルである、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記第1の密度分離媒体は、ニュートン液体のうち少なくとも1つを含む、請求項23に記載のシステム。
【請求項26】
前記第1の密度分離媒体は、約1500未満の分子量を有するイオン性物質を含む、請求項23に記載のシステム。
【請求項27】
前記第1の密度分離媒体は、ジアトリゾ酸ナトリウム、その誘導体、及びそれらの組み合わせを含む群から選択される、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記第1の密度分離媒体は、少なくとも400,000の分子量を有するスクロース又はエピクロロヒドリンのポリマー、その誘導体、及びそれらの組み合わせを含む群から選択される、請求項23に記載のシステム。
【請求項29】
血小板、単球、及びリンパ球を含む精製された創傷治癒組成物は、単核細胞-血小板リッチのフィブリンマトリックスである、請求項23に記載のシステム。
【請求項30】
血小板、単球、及びリンパ球を含む精製された非自然発生の創傷治癒組成物であって、実質的に好中球を含まない、精製された非自然発生の創傷治癒組成物。
【請求項31】
好中球の濃度は、分離された白血球の5%未満である、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
単核細胞-血小板リッチのフィブリンマトリックスである、請求項30に記載の精製された非自然発生の創傷治癒組成物。
【請求項33】
創傷を治療する方法であって、請求項30に記載の精製された非自然発生の創傷治癒組成物を、創傷の治療を必要とする対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項34】
血液サンプルから、血小板、単球、リンパ球、及び血漿を含む精製された非自然発生の創傷治癒組成物を生成する方法であって、
前記血液サンプルを受けるための密封可能な開放端、及び該開放端の反対側にある閉鎖端を有する第1の容器に前記血液サンプルを導入するステップであり、前記第1の容器は、前記閉鎖端に近接する第1の位置に配置された密度分離媒体、及び前記開放端と前記第1の位置との間の第2の位置に配置された約1.055から1.080g/cmの密度を有するチキソトロピックゲル、並びに、前記開放端と前記第2の位置との間の第3の位置に6.0から8.5の範囲のpHを有する抗凝固剤溶液を有する、ステップと、
前記第1の容器を遠心分離して、前記血液サンプルから、分離された血小板、単球、リンパ球、及び血漿の抽出可能な懸濁液を生成するステップと、
分離された血小板、単球、リンパ球、及び血漿の前記抽出可能な懸濁液を、凝固活性剤を有する第2の容器において抽出するステップであり、前記第2の容器は、前記第1の容器において生成された、分離された血小板、単球、リンパ球、及び血漿の抽出された前記懸濁液を受けるための密封可能な開放端を有する、ステップと、
前記第2の容器を遠心分離して、血小板、単球、及びリンパ球を含む精製された非自然発生の創傷治癒組成物を生成するステップと、
を含む方法。
【請求項35】
前記創傷治癒組成物は実質的に好中球を含まない、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
好中球の濃度は、分離された白血球の5%未満である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記密度分離媒体は、非ニュートンゲル及びニュートン液体のうち少なくとも1つを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記密度分離媒体は、約1500未満の分子量を有するイオン性物質を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記密度分離媒体は、ジアトリゾ酸ナトリウム、その誘導体、及びそれらの組み合わせを含む群から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記密度分離媒体は、少なくとも400,000の分子量を有するスクロース又はエピクロロヒドリンのポリマー、その誘導体、及びそれらの組み合わせを含む群から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項41】
血小板、単球、及びリンパ球を含む精製された創傷治癒組成物は、単核細胞-血小板リッチのフィブリンマトリックスである、請求項34に記載の方法。
【請求項42】
前記チキソトロピックゲルは、1.060から約1.065g/cmの比重を有する、請求項34に記載の方法。
【請求項43】
前記分離媒体は、1.065から約1.085g/cmの比重を有し、好ましくは約1.070から約1.080g/cmの比重を有し、1.077g/cmの最適な比重を有する、請求項34に記載の方法。
【請求項44】
前記pHは、約6.5から約7.5であり、好ましくは6.85から約7.15であり、7.0の最適なpHである、請求項34に記載の方法。
【請求項45】
クエン酸ナトリウム抗凝固剤の濃度が約0.05Mから約0.20Mであり、好ましいクエン酸ナトリウムの濃度は約0.08Mから約0.13Mであり、最適なクエン酸ナトリウムの濃度は、約0.09Mから約0.11Mに及ぶ、請求項34に記載の方法。
【請求項46】
pHは7.0であり、クエン酸ナトリウムの濃度は0.1Mである、請求項41に記載の方法。
【請求項47】
前記抗凝固剤は、1リットルあたり0.10モルで294gmのクエン酸ナトリウム・2HO、0.27gmのクエン酸・HO、及びpH7.0を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項48】
前記凝固活性剤は、0.05Mから0.3M、好ましくは0.1Mから約0.25Mの濃度の塩化カルシウム(CaCl・2H0)凝血活性溶液であり、最適な濃度は0.2Mである、請求項34に記載の方法。
【請求項49】
請求項34に記載の方法によって生成された、血小板、単球、及びリンパ球を含み、実質的に好中球を含まない、精製された非自然発生の創傷治癒組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、血球細胞処理の技術及び装置に関する。一実施形態において、本発明は、リンパ球及び単球等の単核細胞並びに血小板を共に全血試料から分離するための方法及びシステムに関し、特に、赤血球による又は多形核顆粒球による著しい汚染なしに血小板及び単核細胞の高い回収率を提供する血液分離の方法及びシステムに関する。
【0002】
本願において引用される全ての出版物、特許、特許出願、及び他の参考文献は、全ての目的のためにその全体を参照により本明細書に援用するものであり、個々の出版物、特許、特許出願、又は他の参考文献が全ての目的のためにその全体を参照により援用されるように具体的且つ個別に示されているのと同じ程度である。本明細書における参考文献の引用は、それが本発明に対する先行技術であることを認めるものとして解釈してはならない。
【背景技術】
【0003】
急性創傷は組織化された創傷治癒順序に従い、3から4週間で治癒することが多い。創傷後4週間経ってもなお創傷が存在する場合、それは慢性創傷として定められる。[Demidova-Rice, TN, et al. (2012) Adv Skin Wound Care. 25(7): 304-14]。多くの調査研究が慢性創傷管理に対して実施されて、効果的で手頃な治療に対する需要の高まりに対処している。慢性創傷の治癒軌跡は、12週間かかると予想されている[Sibbald, RG, et al. (2011) Adv Skin Wound Care. 24: 415-37]。この期間は、創傷が分子環境の変化、慢性炎症、若しくは線維症[Canedo-Dorantes, L, et. al. (2019) Int J Inflam. 2019: 3706315]、又は未修正の既存の全身性因子を呈する場合に延長することがある。
【0004】
最も一般的な慢性創傷は、糖尿病性足部潰瘍(DFU)、褥瘡(PU)、静脈性下肢潰瘍(VLU)、及び非治癒性手術創であり、主要な医療問題である。慢性創傷は、通常、糖尿病、血管疾患、及び肥満症等の基礎疾患を有する高齢者において発生する[Gould, L, et al. (2015) Wound Repair Regen. 23(1): 1-13]。免疫及び栄養状態の低下、並びに慢性のメカニカルストレスも、創傷治癒の転帰不良に寄与することが示されている[Eming, SA, et al. (2014) Sci Transl Med. 6(265): 265sr6]。慢性創傷は、驚くほど高い死亡率と関連している:虚血性(死亡率55%)、神経障害性(45%)、及び神経虚血性(18%)の糖尿病性足部潰瘍の5年死亡率[Moulik, PK, et al. (2003) Diabetes Care. 26(2): 491-4]は、乳癌及び前立腺癌と関連するもの(それぞれ18%及び8%)[Armstrong, DG, et al. (2007) Int. Wound J. 4(4): 286-287]よりも高いか又は同程度である。慢性創傷は、高い医療費とも関連している:米国では、Medicare 5%Limited Data Setのレトロスペクティブ分析によると、慢性非治癒創傷の総支出推定額は、2014年に281億米ドルから968億米ドルに及んだ[Nussbaum, SR, et al. (2018) Value Health. 21(1): 27-32]。驚くべき有病率及び高い医療費にもかかわらず、効率的な治療は依然として欠如している。
【0005】
例えば、糖尿病性足部創傷の複雑さ及び多重度は、それを非常に困難な治療標的にしており、マウスモデルで見られる偏った進展は、ベンチからベッドサイドへの障害を克服するための新しい方法の必要性を強調している。臨床的進展には、既存の知識及び分野を超えた新しい進歩の可能性の両方を活用するより革新的な研究戦略が必要である[Barakat, M, et al. (2020) Adv Wound Care. https://doi.org/10.1089/wound2020.1254]。
【0006】
血小板は、直径が2から4μmまでばらつきのある小さな生理活性無核細胞であり、骨髄及び肺における成熟巨核球に由来する[Lefrancais, E, et al. (2017) Nature. 544(7648): 105-109]。血小板は、一次止血に不可欠であるが、組織再生及び炎症においても重要な役割を果たす[Etulain J. (2018) Platelets. 29(6): 556-568]。
【0007】
血小板α顆粒は、血小板内のサイズ及び数の点で主要な顆粒集団を構成する。これらには、トランスフォーミング増殖因子‐β(TGF‐β)、血小板由来増殖因子(PDGF)、血小板由来内皮細胞増殖因子(ECGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、上皮増殖因子(EGF)、及びインスリン様増殖因子(IGF)、並びにP-セレクチン、血小板第4因子、フィブロネクチン、ベータ-トロンボグロブリン、von Willebrand因子(vWF)、フィブリノーゲン、並びに、凝固因子V及びXIII等の増殖因子及び接着因子が含まれる[Eisinger, F, et al. (2018) Front Med. 5: 317]。
【0008】
血小板は、数十年もの間、創傷治療において使用されている。多血小板血漿(PRP)投与の利益は、PRP投与がその実行のために複雑な機器又は訓練を必要としないことを考慮すると、経済的利点と関連している。さらに、それらの一次自家由来(primary autologous origin)により、疾患流行又は免疫原性反応の懸念は無視することができる[Etulain, J. (2018) Platelets. 29(6): 556-568]。血小板は、血液から大量に容易に入手可能である。正常な血小板数は、1マイクロリットルの血液あたり150,000から450,000に及ぶ。血小板は、何百もの生理活性タンパク質を放出する50~80のアルファ顆粒を有し[Blair, P, et al. Blood Rev. (2009) 23(4): 177-189]、これらの生理活性タンパク質には、増殖因子、接着分子、並びに細胞の生存、増殖、及び移動を促進するセロトニンが含まれる[Cloutier, N, et al. (2018) PNAS 115(7): E1550-E1559]。血小板由来微粒子(PDMs)はサイトカインの放出を刺激し、細胞内シグナル伝達経路を活性化し、血管形成を促進し、さらに、組織再生に関与している[Neumuller, J, et al. In: Khan M, ed. Intechopen. London: Intechopen; (2015). pp. 255-284]。血小板は、免疫細胞と相互作用し[Hu H, et al. Thromb Haemost (2010) 104: 1184-1192]、鎮痛効果を有する[Miyamoto, H, et al. J Oral Max Surgery, Med, and Path. (2020) 32(4): 237-240]。血小板は、組織リモデリングに関与し[Langer HF, et al. Arterioscler Thromb Vasc Biol. (2007) 27: 1463-1470]、骨髄由来前駆細胞[Massberg S, et al. J Exp Med. (2006) 203: 1221-1233]及び間葉系幹細胞[Langer HF, et al. J Mol Cell Cardiol. (2009) 47: 315-325]をリクルートする。血小板は、血管完全性の維持にも重要である[Boulaftali Y, et al. J Clin Invest. (2013) 123: 908-916]。血小板メディエーターは、細胞外マトリックス形成及び結合組織再構築を刺激する[Xu X, et al. Cells Tissues Organs. (2013) 197: 103-113]。
【0009】
慢性非治癒皮膚創傷の治療のために、創傷に濃縮血小板を挿入して創傷治癒プロセスを加速させる技術が開発された。末梢血から単離された血小板は、自家増殖因子源である。多血小板血漿(PRP)という用語は、血漿濃縮物における血小板の自家調製及び濃縮を記述するために1970年代に導入された[Pietrzak, WS, et al. (2005) J Craniofac Surg. 16: 1043-1054]。PRPは、自家調整血漿としても知られ、全血由来の多血小板血漿の濃縮物であり、遠心分離して赤血球及び白血球を除去する。自家PRPゲルは、患者の血液由来のフィブリン足場、サイトカイン、増殖因子、及びケモカインから成る[Frykberg, RG, et al. (2010) Ostomy Wound Manage. 56(6): 36-44]。PRPゲルの作用機序は、血小板活性化で見られるのと同様の正常な創傷治癒反応の分子及び細胞誘導であると考えられている。
【0010】
単球は、典型的には、1から3日間血液中を循環した後で組織内に移動し、そこでマクロファージ又は樹状細胞になる。マクロファージは可塑性を示し、炎症促進性、創傷治癒促進性、線維化促進性、抗炎症性、抗線維化性、又は組織再生性の表現型をとる。マクロファージの活性化状態及び機能に従って、それらはM1型(古典的活性化マクロファージ)及びM2型(選択的活性化マクロファージ)に分けることができる。M1マクロファージとM2マクロファージとの間のバランスは、創傷治癒において重要な役割を果たす[Mosser DM, et al. (2008) Nature Rev Immunol. 8(12): 958-969]。最もよく特徴づけられているのは、M1が、病原体コロニー形成に対する炎症促進性の免疫応答を開始することである[Porta, C, et al. (2015) Semin Immunol. 27(4): 237-248]。炎症が軽減されるに従い、これらのアラーミンは、選択的活性化マクロファージ又はM2表現型の存在によって特徴づけられる抗炎症反応又は創傷治癒反応の開始を促進すると考えられている。
【0011】
Tヘルパー2型リンパ球(Th2)細胞によって産生されるインターロイキン4(IL‐4)は、炎症を抑制するM2型マクロファージにマクロファージを変換することができる[Abramson, SL, et al. (1990) J Immunol. 144(2): 625-630]。M2マクロファージは、主に、抗炎症性サイトカインを分泌し、抗炎症性サイトカインは、炎症を減らす機能を有し、創傷治癒及び組織修復において重要な役割を果たす。
【0012】
代謝経路利用のシフトは、創傷治癒の間の宿主-病原体相互作用に影響を及ぼす代謝及び免疫結果を生じるマクロファージ分極化を特徴づける[Anders, CB, et al. (2019). Curr Opinion Infect Dis. 32(3): 204-209]。マクロファージの可塑性は、治癒の炎症期から増殖期への移行を確実にするために正常組織修復に重要である。
【0013】
マウスにおける研究は、増殖因子(GFs)の特定の組み合わせが単核細胞の生存、接着、及び血管形成の可能性を増強するということを示している[Jin, E, et al. (2013) J Cell. Mol. Med. 17(12): 1644-1651]。in vivoでの創傷治癒結果は、GFにより治療された創傷が未治療の創傷と比較して7日目及び14日目に創傷治癒の加速を実証したことを明らかにした。組織学的分析は、創傷における移植細胞及び分化転換ケラチノサイトの数が、GFにより治療された対象において有意に多いことを実証した。これは、血小板により放出された増殖因子を用いた単核細胞のプライミングが細胞ベースの治療を強化することができるということを示唆している。
【0014】
マクロファージは、創傷に入り、IL‐10を産生し、これは、次に、創傷周囲の細胞に創傷閉鎖を開始させる[Quiros, M, et al. (2017) J Clin Invest. 127(9): 3510-3520]。粘膜創傷の研究は、創傷修復を組織化するためにIL‐10が使用するシグナル伝達経路の一部を明らかにした。
【0015】
リンパ球は、瘢痕の有無にかかわらず、創傷修復の方向を調節する役割を有する。Tリンパ球のサブセットは、炎症の程度を弱め、関連する血管新生を促進し、それによって皮膚瘢痕のリスクを下げることがマウスにおいて示されている[Wang, X, et al. (2019) Adv in Wound Care 8(11): 527-537]。創傷へのTリンパ球浸潤の時間経過は、CD3+Tリンパ球が3日目に創傷に存在し、14日目にピークに達し、30日目まで持続することを示し、皮膚創傷治癒及び瘢痕反応における重要なTリンパ球の役割を示唆している。CD4+Tリンパ球は、創傷損傷及び修復に対する反応を調節する鍵となるリンパ球集団となる可能性がある。Tリンパ球によって誘導される炎症と血管形成との間にはバランスがあり、これは、組織修復及び瘢痕形成を説明するメカニズムの一部であり得る。
【0016】
血小板への単核細胞(リンパ球及び単球)の添加は創傷治癒を増強することができる。免疫系は、創傷治癒の成功に不可欠な役割を果たす。宿主防御に寄与することに加えて、免疫細胞は、サイトカイン、リンホカイン、及び増殖因子の分泌を介した創傷治癒の重要な調節因子である[Park, JE, et al. Am J Surg. (2004) 187(5): S11-S16]。PRP技術の様々な研究は、PRP抽出における血小板、赤血球、白血球、pH、及びグルコースを含む血液成分の広範な変化が、創傷治癒の成功に重要な役割を果たすことを明らかにしている。高濃度の細胞が、PRPサンプル中の白血球数と同様に重要である。PRP分画を回収するための標準化されていない方法は、重要ではないと考えられ、研究者によってしばしば無視されてきた。しかし、臨床使用のためのPRP調製の標準化の欠如は、PRP使用における様々な臨床的有効性に少なくとも部分的に寄与している[Fitzpatrick, J, et al. (2017) Orthop J Sports Med. 5(1):2325967116675272]。
【0017】
様々な抗凝固剤が、遠心分離及び分析の前の期間、血液サンプルを非凝固状態で保存するために、単独で又は細胞支持溶液と併せて、採血/分離装置において使用されてきた。例えば、一部の一般的な抗凝固剤は、ヘパリンナトリウム、KEDTA、KEDTA、及び様々な濃度のクエン酸ナトリウムを含む。特に、クエン酸ナトリウム溶液は、抗凝固剤として長年使用されている。参照により援用する特許文献1は、pH6.0を超えて約pH8.5までに及ぶpH、及び好ましくは約0.05Mから約0.2Mに及ぶクエン酸ナトリウム濃度を有するクエン酸ナトリウムベースの抗凝固剤溶液を開示している。
【0018】
カルシウムは、血液凝固カスケードにおいて鍵となる役割を果たすことが知られている。クエン酸ナトリウム溶液は、血液凝固におけるカルシウムの関与を防ぐ。典型的には、これらのクエン酸ナトリウム溶液は、新たに採取された全血に添加されて凝固を防ぐ。その後、必要に応じてカルシウムを全血懸濁液に添加して戻して、その後の凝固を誘導することができる。クエン酸ナトリウムは、広範なpHにわたって良好な緩衝能力を提供するため、特に有利な抗凝固剤である。特に、クエン酸ナトリウムの緩衝能力は、化合物の対応する酸上に存在する3つのカルボキシル基に起因し得る。クエン酸ナトリウムはクエン酸の対応するナトリウムベースの塩であるため、緩衝化学を行うために機能するのはクエン酸/クエン酸ナトリウムの組み合わせである。
【0019】
上述のように、クエン酸(ヒドロキシトリカルボン酸)は3つのカルボキシル基を有し、その結果3つのpKaを有している。第1のpKaは約3.06のpHで現れる。第2のpKaは約4.76のpHで現れる。第3のpKaは約5.4のpHで現れる。従って、クエン酸ナトリウムは、これらのpH値でその最も効果的な緩衝機能を行い、in vitroで細胞懸濁液に添加されたときに緩衝機能を行うのに特に有用である。その結果、クエン酸ナトリウムは、pHの範囲にわたるその緩衝能力のために、様々な血液分離装置において抗凝固剤として使用されている。クエン酸は、3つのタイプの溶液で抗凝固剤として一般的に使用されている。第1のタイプの溶液は、緩衝クエン酸ナトリウムと呼ばれている。第2のタイプの溶液は、典型的には、CPD溶液又はクエン酸-リン酸-デキストロースと呼ばれている。第3のタイプは、ACD又は酸-クエン酸-デキストロースとして示されている。これらの溶液中のクエン酸イオン濃度は、典型的には、抗凝固機能を行うのに必要な濃度よりも高い。
【0020】
参照により援用する特許文献2は、血液サンプルからリンパ球及び単球を分離する方法を開示している。この発明の不可欠な部分は、改善された血液分離チューブであり、これは、1.060~1.065g/cmの比重を有するゲル状物質を利用して、細胞分離の純度を著しく増強する一方で、許容できる細胞収率を提供している。
【0021】
参照により援用する特許文献3は、血液サンプル中の顆粒球性白血球の浮遊密度における見かけ上のシフトを抑制する及び/又は浮遊密度におけるいかなる損失も回復し、それによって、血液サンプル中の顆粒球からのリンパ球及び単球の分離の質を確実にする方法を開示している。
【0022】
参照により援用する特許文献4は、固体フィブリンウェブを調製する方法を開示している。この方法は、患者から血液を採取し、血液から血漿を分離し、血漿をカルシウム凝固活性化剤と接触させ、同時に血漿を凝固及び遠心分離して固体フィブリンウェブを形成することを含む。固体フィブリンウェブは、生体における体組織の再生に適している。
【0023】
参照により援用する特許文献5は、生体における組織の再生に適した自家固体フィブリンウェブを調製するためのシステムを開示している。このシステムは、分離媒体及び低密度高粘度液体を有する密封された一次容器を含む。
【0024】
参照により援用する特許文献6は、固体フィブリンウェブを調製するための方法及び装置を開示している。1つの方法は、患者から血液を採取し、血液から血漿を分離し、血漿をカルシウム凝固活性化剤と接触させ、同時に血漿を凝固及び軸方向に遠心分離して固体フィブリンウェブを形成することを含み得る。固体フィブリンウェブは、生体における体組織の再生に適している可能性がある。
【0025】
参照により援用する特許文献7は、固体フィブリンウェブを調製するための方法及び装置を開示している。1つの方法は、患者から血液を採取し、血液から血漿を分離し、血漿をカルシウム凝固活性化剤と接触させ、同時に血漿を凝固及び軸方向に遠心分離して固体フィブリンウェブを形成することを含み得る。固体フィブリンウェブは、生体における体組織の再生に適している可能性がある。
【0026】
参照により援用する特許文献8は、生体における組織の再生に適した自家固体フィブリンウェブを調製するためのシステムを開示している。このシステムは、分離媒体及び低密度高粘度液体を有する密封された一次容器を含む。
【0027】
参照により援用する特許文献9は、大気に対して閉鎖された、血小板において濃縮された血漿を得るためのシステムを開示している。このシステムは、抗凝固部分及び分離ゲルを有する収集チューブを含む。
【0028】
どのシステムも、トロンビン又はバトロキソビンを使用することなく、チキソトロピックゲル分離装置及び密度勾配媒体を使用して、血漿中の血小板を有する濃縮単核(単球及びリンパ球)細胞調製物を調製していない。創傷治癒のために単核細胞と血小板とを組み合わせる利点は、単核細胞の免疫機能と血小板の細胞シグナル伝達とを組み合わせることである。顆粒球は、炎症に寄与するため除外される。好中球において豊富なPRPの使用は、コラーゲンI型に対するコラーゲンIII型の比率が高くなり、線維症の増加及び腱強度の低下をもたらす可能性がある[Zhou, Y, et al. (2016) BioMed Res. Int. 2016: 1-8]。他の好中球媒介の有害性には、組織に適用した場合の炎症性サイトカイン並びに炎症促進性及び異化作用を促進するマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)の放出が含まれる[Fedorova, NV, et al. (2018) Mediat Inflamm. 2018: ID 1574928]。好中球は細胞外トラップ(NETs)を産生することができ、これらは、様々な細胞質タンパク質及び顆粒タンパク質に結合した脱凝縮クロマチンから構成される大きな細胞外ウェブ様構造である。本来は病原体に対する防御機構として認識されているけれども、それらは再生を邪魔することがある[Wong, SL, et al. (2015) Nat Med. 21(7):815-819]。創傷直後の好中球の存在に加えて、NETバリアが再確立された後も好中球は創傷内にとどまる。まとめると、研究結果は、好中球が一般的な再生促進性のキューによって刺激されるけれども、それらの存在及びNETが再生を邪魔する可能性があることを実証している[Wier, E, et al. bioRxiv (2020.07.06).189910]。
【0029】
従って、血小板、単球、及びリンパ球を含む精製された非自然発生の創傷治癒組成物の必要性が当技術分野において存在し、当該組成物は、実質的に好中球を含まない。そのような組成物は、例えば、創傷治癒を必要とする対象における創傷治癒のために有用であろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【特許文献1】米国特許第5,494,590号
【特許文献2】米国特許第4,640,785号
【特許文献3】米国特許第4,816,168号
【特許文献4】米国特許第6,368,298号
【特許文献5】米国特許第6,979,307号
【特許文献6】米国特許第7,745,106号
【特許文献7】米国特許第8,802,362号
【特許文献8】米国特許第8,491,564号
【特許文献9】米国特許第10,617,812号
【発明の概要】
【0031】
本発明の一実施形態において、血小板、単球、及びリンパ球を含む精製された非自然発生の創傷治癒組成物が提供され、当該組成物は、実質的に好中球を含まない。さらなる実施形態において、精製された非自然発生の創傷治癒組成物は、単核細胞-血小板リッチのフィブリンマトリックス(a mononuclear-platelet rich fibrin matrix)である。
【0032】
血小板、単球、及びリンパ球を含む精製された非自然発生の創傷治癒組成物を調製するためのシステムも提供され、上記の組成物は実質的に好中球を含まず、並びに、本発明のシステムを使用して上記の組成物を調製する方法も提供される。
【0033】
さらに、創傷を治療する方法が提供され、当該方法は、血小板、単球、及びリンパ球を含み且つ実質的に好中球を含まない本発明の精製された非自然発生の創傷治癒組成物を、創傷の治療を必要とする対象に投与するステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】採血管及び分離アセンブリ内に配置された例証的なクエン酸ナトリウムベースの抗凝固剤溶液を例示した図である。
図2】凝血形成のための加工された採血管及び遠心分離アセンブリとの間の例証的な移送装置を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の図及び説明は、本発明を明確に理解するために関連する要素を例示するために簡略化されているが、明確にするために、典型的な医薬組成物及び安定化の方法に見られる多くの他の要素は排除されていることを理解されたい。当業者は、他の要素及び/又はステップが本発明の実施において望ましい及び/又は要求されることを認識することになる。しかし、そのような要素及びステップは当技術分野においてよく知られているため、またそれらは本発明のより良い理解を容易にするものではないため、そのような要素及びステップの議論は本明細書には提供されていない。本明細書における開示は、当業者に知られているそのような要素及び方法に対する全てのそのような変形及び修正を対象としている。さらに、本明細書において特定及び例示されている実施形態は、例証的な目的のためだけであり、本発明の説明において排他的又は限定的であることを意図していない。
【0036】
本発明は、一般的に、遠心分離による全血からの単核細胞(単球及びリンパ球)及び血小板の分離を提供する。一実施形態において、本発明は、特定の密度の非ニュートンのチキソトロピックゲルを利用する採血管である。このゲルは、ゲルバリアの下に配置されたFicoll(登録商標)Paque[Sigma Aldrich]等の液体密度媒体と、ゲルバリアの上に配置された液体抗凝固剤、好ましくはクエン酸ナトリウムとの間に安定したバリアを形成するために、採血管内に置かれる。真空採血管は、遠心分離に先立ち標準的な静脈穿刺を使用して血液サンプルを採取するのを可能にする。採血時に血液は抗凝固剤と混合されて、血液の凝固を防ぐ。遠心分離すると、血液成分はその細胞密度によって分離され、より密度の高い赤血球及び顆粒球の集団がゲルバリアの下に移動するのを可能にし、より密度の低い単核細胞及び血小板はゲルバリアの上にとどまる。これらの細胞の効果的な分離及び単離は、研究室のプロトコルだけでなく、様々な臨床的アッセイに対しても重要であることが多い。単離された細胞分画の治療的応用も、創傷ケアにおける多血小板血漿の使用等、重要である。
【0037】
分離が発生すると、1つの応用は、損傷部位への単核細胞-血小板血漿懸濁液の直接注入を含む。単核細胞、血小板、及び血漿の上部分画、すなわち、単核細胞-血小板リッチの血漿(「M-PRP」)は、針及び注射器等の注入装置まで無菌的に移送される。PRPにおいて収集された血小板は、一例として、グルコン酸カルシウム又は塩化カルシウムの添加によって活性化され、これによって、アルファ顆粒からの因子の放出が誘導される。このプロセスによって、単核細胞及び血小板の濃度が上昇し、次に、濃縮されたM-PRPが患部及びその周辺に注入され、身体の自然治癒シグナルがジャンプスタートされ、大幅に強化される。
【0038】
同様の応用として、分層植皮術(split thickness skin grafts)に対する接着剤としてM-PRP懸濁液を使用することがある。これは、移植片を基質に固定するのに寄与し、M-PRP内に含まれる細胞が移植片の「受け取り」を加速させるのに寄与する。この使用によって、移植片を基質に固定するためのステッチ又はステープルも不要になる。
【0039】
別の応用では、分離が発生すると、単核細胞、血小板、及び血漿の上部分画は、塩化カルシウムを有する第2の真空管又はバイアルまで無菌的に移送される。接触すると、カルシウムイオンはクエン酸塩の抗凝固作用を克服し、血漿フィブリノーゲンにフィブリンまで活性化させ、細胞懸濁液をフィブリン塊に捕捉する。この凝血形成の背後には、内因性凝固経路があり、これは、チューブガラス表面によって第XII因子レベルで活性化され、カルシウムの存在下で進行してプロトロンビンをトロンビンに、続いてフィブリノーゲンをフィブリンに変換し、その結果、フィブリンの重合及び架橋を促進する[Margolis, J. (1956) Nature。178:805-806]。
【0040】
Ca2+-誘導性の凝血形成のメカニズムには、白色血栓における血小板凝集体上に蓄積したフィブリンメッシュが含まれる。血小板凝集体は、凝血形成の核のように機能し、主に凝血の中心近く又は深部領域に位置し、この凝血は本質的に白色血栓として分類され得る。この場合、血小板α顆粒において貯えられた増殖因子は、比較的長期間保持されると仮定することができる。このタイプの凝血は、より優れた再生能力を有する増殖因子の長期キャリアとして機能する。
【0041】
凝血形成が進行するに従い、第2の真空管又はバイアルは遠心分離されて単核細胞-血小板リッチのフィブリンマトリックス(「M-PRFM」)が有利に生成され、これは、遠心分離後に創傷上に直接置くことができる。このフィブリンマトリックスは、M-PRFMにおける容易な取り扱いを可能にし、特定の整形外科的応用のように、必要に応じて所定の位置に縫合することができる。
【0042】
別の応用では、分離が発生すると、単核細胞、血小板、及び血漿の上部分画は、塩化カルシウムを有する第2の真空バイアルまで無菌的に移送される。このバイアルは、平らな底を有してもよく、これは、遠心分離後に、M-PRFMを平らな膜にする。このM-PRFM膜は、大きい表面積を有し、従って、M-PRFMへの創傷面の曝露が大きい。
【0043】
特定の実施形態の説明
「患者」とは、哺乳類、例えば、ヒト、マウス、ラット、モルモット、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、又は、サル、チンパンジー、ヒヒ、若しくはアカゲザル等の非ヒト霊長類であり、「患者」及び「対象」という用語は、本明細書では同じ意味で使用される。
【0044】
対象に関して「治療する」という用語は、対象の障害の少なくとも1つの症状を改善することを指す。治療は、障害の治癒、改善、又は少なくとも部分的な寛解であり得る。本開示において使用される場合「投与する」、「投与している」、又は「投与」という用語は、本発明の組成物を対象に投与することを指す。
【0045】
一実施形態において、自家フィブリン分子構造を有するフィブリンマトリックスが提供され、これは、単核細胞(単球及びリンパ球)及び血小板を包埋し、細胞移動及び微小血管新生(microvascularization)の達成を支持するための生分解性の足場として作用する。この有利な単核細胞-血小板リッチのフィブリンマトリックス(M-PRFM)は、創傷治癒の増強につながる細胞及び増殖因子の送達システムとして作用する。M-PRFMは、最初の血液試料に存在する血小板及び単核細胞の大部分を有する。血小板は大部分が活性化され、強く重合したフィブリンマトリックスを強化するように作用する。単核細胞(単球及びリンパ球)もフィブリンネットワーク内に捕捉され、組織治癒プロセスに寄与する。大量のメディエーター、特に血小板増殖因子が創傷内に放出されて、組織再生プロセスが活性化される。
【0046】
M-PRFMは、最初の2週間の創傷治癒の増強につながる細胞及び増殖因子の送達システムとして機能し得る。血小板は大部分が活性化され、強く重合したフィブリンマトリックスを強化するセメントとして作用する。単核細胞も強い天然フィブリンマトリックスに捕捉される。M‐PRFMの細胞組成は、この生物学的材料が血液由来の生体組織であり、その細胞内容を生きている且つ安定した状態で保つために慎重に扱わなければならないことを意味する。M‐PRFMの形成中に、原線維は横方向の連合を経て、複雑な線維ネットワークをもたらす枝を形成する。高度の等辺の原線維の分枝は膜の弾性をもたらす。ゲル化点後のフィブリンの微細なナノ構造は物理化学的に特徴付けられて、異なるスケールでの動的な挙動及び複雑な階層が示される。
【0047】
M‐PRFMの複雑な構造は、架橋モノマー単位によって提供される設計及び弾性による有利な機械的挙動を提供し得る。M-PRFMの形態及び機械的挙動は、フィブリノーゲン及びトロンビンの割合に依存する。例えば、トロンビン濃度が低いと、線維が厚く、分枝構造が少なく、空洞が大きい、従って安定性が低下した凝血が生じる。フィブリン線維の直径は、血小板活性化中の細胞接着及び相互作用に利用可能な表面積に影響を与える。標準的なプロトコルを使用した場合に本発明の一実施形態に従って形成された例証的なフィブリンネットワークの分析は、約90nmの厚さの線維の高密度なネットワークを有するM‐PRFMを生成した。フィブリンネットワークにおいて見られる微小空間は、細胞及び増殖因子によって満たされる。
【0048】
さらに、検出されたフィブリン線維間の架橋は、フィブリンネットワークの構造を機械的に安定化し、プラスミンの繊維素溶解活性を制御する。フィブリンは、インテグリン、増殖因子、及びフィブロネクチンを含む他の細胞外マトリックス成分に対する結合部位を有するため、細胞が浸潤する足場として作用するだけでなく、細胞機能を指示する分子シグナルも提供する。M‐PRFMは、血漿において利用可能なフィブリノーゲン全てを使用してフィブリンに変換し、従って、最大のフィブリン密度を確実としている。全体として、増殖因子に加えて、フィブリン線維の質及び量は、組織治癒におけるM‐PRFMの効力及び有効性に影響を与える。
【0049】
別の実施形態において、血小板、単球、及びリンパ球を含む精製された創傷治癒組成物を調製するためのシステムが提供され、当該システムは:
血液サンプルを受けるための密封可能な開放端、及び該開放端の反対側にある閉鎖端を有する第1の容器であり、
第1の容器は、閉鎖端に近接する第1の位置に配置された密度分離媒体、及び開放端と第1の位置との間の第2の位置に配置された約1.055から1.080g/cmの密度を有するチキソトロピックゲル、並びに、開放端と第2の位置との間の第3の位置に6.0から8.5の範囲のpHを有する抗凝固剤溶液を有し、
第1の容器は、遠心分離されたときに、血液サンプルから、分離された血小板、単球、リンパ球、及び血漿の抽出可能な懸濁液を生成するために使用可能である、第1の容器;並びに、
第1の容器において生成された、分離された血小板、単球、リンパ球、及び血漿の抽出された懸濁液を受けるための密封可能な開放端を有する第2の容器であり、第2の容器は凝固活性剤を有し、
第2の容器は、遠心分離されたときに、分離された血小板、単球、及びリンパ球の懸濁液から精製された創傷治癒組成物を生成するために使用可能である、第2の容器;
を含む。
【0050】
一実施形態において、当該システムは、第1の容器の開放端と結合する及び第2の容器の開放端と結合するように適応した移送装置をさらに含み、移送装置は、第1の容器の開放端と結合したときに、第1の容器から分離された血小板、単球、リンパ球、及び血漿の懸濁液を受けるための滅菌シールを生成し、第2の容器の開放端と結合したときに、分離された血小板、単球、リンパ球、及び血漿の懸濁液を上記の第2の容器に移送するための滅菌環境を生成する。
【0051】
当該システムの密度分離媒体は、非ニュートンゲル及びニュートン液体のうち少なくとも1つを含む。一実施形態において、密度分離媒体は、約1500未満の分子量を有するイオン性物質を含む。別の実施形態において、密度分離媒体は、ジアトリゾ酸ナトリウム、その誘導体、及びそれらの組み合わせを含む群から選択される。さらなる実施形態において、密度分離媒体は、少なくとも400,000の分子量を有するスクロース又はエピクロロヒドリンのポリマー、その誘導体、及びそれらの組み合わせを含む群から選択される。
【0052】
一実施形態において、当該システムは、第1の容器の開放端を封止するための第1の閉鎖装置をさらに含む。第1の閉鎖装置は、第1の容器の開放端を真空封止するように適応している。一実施形態において、第1の閉鎖装置は、圧力差により血液サンプルを第1の容器に供給するためのカニューレによって突き刺し可能である。
【0053】
一実施形態において、当該システムは、第2の容器の開放端を封止するための第2の閉鎖装置をさらに含む。別の実施形態において、第2の閉鎖装置は、上記の第2の容器の開放端を真空封止するように適応している。一実施形態において、第2の閉鎖装置は、圧力差により、分離された血小板、単球、リンパ球、及び血漿の懸濁液を第2の容器に供給するためのカニューレによって突き刺し可能である。
【0054】
当該システムの別の実施形態では、血小板、単球、及びリンパ球を含む精製された創傷治癒組成物は、単核細胞-血小板リッチのフィブリンマトリックスである。
【0055】
一実施形態において、当該システムは、第1の容器及び第2の容器のうち少なくとも1つを受けるように適応した遠心分離機をさらに含む。
【0056】
さらなる実施形態では、当該システムのチキソトロピックゲルは、1.060から約1.065g/cmの比重を有する。別の実施形態において、分離媒体は、1.065から約1.085g/cmの比重を有し、好ましくは約1.070から約1.080g/cmの比重を有し、1.077g/cmの最適な比重を有する。
【0057】
当該システムの別の実施形態において、pHは、約6.5から約7.5であり、好ましくは6.85から約7.15であり、7.0の最適なpHである。
【0058】
一実施形態では、クエン酸ナトリウム抗凝固剤の濃度は約0.05Mから約0.20Mであり、好ましいクエン酸ナトリウムの濃度は約0.08Mから約0.13Mであり、最適なクエン酸ナトリウムの濃度は、約0.09Mから約0.11Mに及ぶ。一実施形態において、pHは7.0であり、クエン酸ナトリウムの濃度は0.1Mである。
【0059】
さらなる実施形態において、抗凝固剤は、1リットルあたり0.10モルで294gmのクエン酸ナトリウム・2HO、0.27gmのクエン酸・HO、及びpH7.0を含む。一実施形態において、凝固活性剤は、0.05Mから0.3M、好ましくは0.1Mから約0.25Mの濃度の塩化カルシウム(CaCl・2H0)凝血活性溶液であり、最適な濃度は0.2Mである。
【0060】
一実施形態では、血小板、単球、及びリンパ球を含む精製された創傷治癒組成物を調製するためのシステムも提供され、当該システムは:
血液サンプルを受けるための密封可能な開放端、及び開放端の反対側にある閉鎖端を有する第1の容器であり、
第1の容器は、閉鎖端に近接する第1の位置に配置された第1の密度分離媒体、及び開放端と第1の位置との間の第2の位置に配置された第2の密度分離媒体、並びに、開放端と第2の位置との間の第3の位置に6.0から8.5の範囲のpHを有する抗凝固剤溶液を有し、
第1の容器は、遠心分離されたときに、血液サンプルから、分離された血小板、単球、リンパ球、及び血漿の抽出可能な懸濁液を生成するために使用可能である、第1の容器;並びに、
第1の容器において生成された、分離された血小板、単球、リンパ球、及び血漿の抽出された懸濁液を受けるための密封可能な開放端を有する第2の容器であり、第2の容器は凝固活性剤を有し、
第2の容器は、遠心分離されたときに、分離された血小板、単球、リンパ球、及び血漿の懸濁液から精製された創傷治癒組成物を生成するために使用可能である、第2の容器;
を含む。
【0061】
当該システムの一実施形態において、第2の密度分離媒体は、約1.055から1.080g/cmの密度を有するチキソトロピックゲルである。別の実施形態において、第1の密度分離媒体は、ニュートン液体のうち少なくとも1つを含む。さらなる実施形態において、第1の密度分離媒体は、約1500未満の分子量を有するイオン性物質を含む。第1の密度分離媒体は、ジアトリゾ酸ナトリウム、その誘導体、及びそれらの組み合わせを含む群から選択することができる。
【0062】
当該システムの別の実施形態において、第1の密度分離媒体は、少なくとも400,000の分子量を有するスクロース又はエピクロロヒドリンのポリマー、その誘導体、及びそれらの組み合わせを含む群から選択される。
【0063】
本発明の一実施形態では、血小板、単球、及びリンパ球を含む精製された創傷治癒組成物が、単核細胞-血小板リッチのフィブリンマトリックスであるシステムが提供される。
【0064】
本発明の別の実施形態では、血小板、単球、及びリンパ球を含む精製された非自然発生の創傷治癒組成物が提供され、当該組成物は、実質的に好中球を含まない。一実施形態では、好中球の濃度は、分離された白血球の5%未満である。
【0065】
本発明の一実施形態として、血液サンプルから、血小板、単球、リンパ球、及び血漿を含む精製された非自然発生の創傷治癒組成物を生成する方法も提供され、当該方法は:
上記の血液サンプルを受けるための密封可能な開放端、及び開放端の反対側にある閉鎖端を有する第1の容器に上記の血液サンプルを導入するステップであり、上記の第1の容器は、閉鎖端に近接する第1の位置に配置された密度分離媒体、及び開放端と第1の位置との間の第2の位置に配置された約1.055から1.080g/cmの密度を有するチキソトロピックゲル、並びに、開放端と第2の位置との間の第3の位置に6.0から8.5の範囲のpHを有する抗凝固剤溶液を有する、ステップ;
上記の第1の容器を遠心分離して、血液サンプルから、分離された血小板、単球、リンパ球、及び血漿の抽出可能な懸濁液を生成するステップ;
分離された血小板、単球、リンパ球、及び血漿の抽出可能な懸濁液を、凝固活性剤を有する第2の容器において抽出するステップであり、第2の容器は、第1の容器において生成された、分離された血小板、単球、リンパ球、及び血漿の上記の抽出された懸濁液を受けるための密封可能な開放端を有する、ステップ;並びに、
上記の第2の容器を遠心分離して、血小板、単球、及びリンパ球を含む精製された非自然発生の創傷治癒組成物を生成するステップ;
を含む。
【0066】
この方法の一実施形態において、創傷治癒組成物は実質的に好中球を含まない。別の実施形態では、好中球の濃度は、分離された白血球の5%未満である。
【0067】
この方法のさらなる実施形態において、分離媒体は、非ニュートンゲル及びニュートン液体のうち少なくとも1つを含む。一実施形態において、密度分離媒体は、約1500未満の分子量を有するイオン性物質を含む。一実施形態において、密度分離媒体は、ジアトリゾ酸ナトリウム、その誘導体、及びそれらの組み合わせを含む群から選択される。例えば、密度分離媒体は、少なくとも400,000の分子量を有するスクロース又はエピクロロヒドリンのポリマー、その誘導体、及びそれらの組み合わせを含む群から選択される。
【0068】
一実施形態において、当該方法は、単核細胞-血小板リッチのフィブリンマトリックスである、血小板、単球、及びリンパ球を含む精製された創傷治癒組成物を提供する。一実施形態では、当該方法のチキソトロピックゲルは、1.060から約1.065g/cmの比重を有する。別の実施形態では、本発明の方法の分離媒体は、1.065から約1.085g/cmの比重を有し、好ましくは約1.070から約1.080g/cmの比重を有し、1.077g/cmの最適な比重を有する。さらに別の実施形態では、クエン酸ナトリウム抗凝固剤のpHは、約6.5から約7.5であり、好ましくは6.85から約7.15であり、7.0の最適なpHである。
【0069】
一実施形態では、クエン酸ナトリウム抗凝固剤の濃度は約0.05Mから約0.20Mであり、好ましいクエン酸ナトリウムの濃度は約0.08Mから約0.13Mであり、最適なクエン酸ナトリウムの濃度は、約0.09Mから約0.11Mに及ぶ。さらなる実施形態において、pHは7.0であり、クエン酸ナトリウムの濃度は0.1Mである。
【0070】
さらなる実施形態において、抗凝固剤は、1リットルあたり0.10モルで294gmのクエン酸ナトリウム・2HO、0.27gmのクエン酸・HO、及びpH7.0を含む。特定の実施形態において、凝固活性剤は、0.05Mから0.3M、好ましくは0.1Mから約0.25Mの濃度の塩化カルシウム(CaCl・2H0)凝血活性溶液であり、最適な濃度は0.2Mである。
【0071】
本発明の別の実施形態では、上記の方法に従って、上記の方法によって生成される、血小板、単球、及びリンパ球を含む精製された非自然発生の創傷治癒組成物が提供され、当該組成物は実質的に好中球を含まない。さらなる実施形態では、精製された非自然発生の創傷治癒組成物は、単核細胞-血小板リッチのフィブリンマトリックスである。
【0072】
本発明によるさらに別の方法では、本発明の、血小板、単球、及びリンパ球を含み、実質的に好中球を含まない、精製された非自然発生の創傷治癒組成物を、創傷の治療を必要とする対象に投与するステップを含む、創傷を治療する方法が提供される。M-PRFMは第2バイアルから取り出され、創傷面に直接塗布される。次に、創傷は適切な包帯材及び絆創膏で包まれて、数日間、創傷面においてM-PRFMを支持する。
【0073】
本発明の別の実施形態によると、クエン酸ナトリウムベースの抗凝固剤溶液が以下の様式で調製される。クエン酸三ナトリウム・2HO及びクエン酸・HOが、以下に記載される範囲内の所望の濃度及びpHを有するクエン酸ナトリウム溶液を得るのに十分な量の水において溶解される。例えば、7.0(+0.15)のpHを有する0.1Mのクエン酸ナトリウム溶液を、29.4gのクエン酸Na・2HO及び0.27gのクエン酸・HOを1リットルのHOに溶解することによって調製することができる。クエン酸ナトリウムベースの溶液の濃度は、血液分離/採取装置に添加されるか又は一部の他の実験/臨床技術に関与する血液サンプルの凝固を防ぐのに十分であるべきである。特に、クエン酸ナトリウムの濃度は、約0.05Mから約0.2M、好ましくは約0.08Mから約0.13Mに及ぶべきである。最も好ましい範囲は、約0.09Mから約0.11Mである。加えて、最終的なクエン酸ナトリウムベースの溶液のpHは、pH6.0を超えて約pH8.5まで、好ましくは約pH6.5から約pH7.5に及ぶ。最も好ましい実施形態において、pHは、約pH6.85から約pH7.15に及び、理想的にはpH7.0である。
【0074】
抗凝固剤溶液は、代替的に、例えば、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩、エチレンジアミン四酢酸二カリウム塩及び三カリウム塩、並びにそれらの組み合わせ等を含んでもよい。他の適したクエン酸塩ベースの抗凝固剤製剤には、例えば、1リットルあたり:0.109モル0.129モルで、24.7gm32.0gmのクエン酸ナトリウム・2HO、及び4.42gm4.2gmのクエン酸HOを含む緩衝クエン酸ナトリウム、pH6.1;例えば、1リットルあたり:0.2gm0.2gmのソルビン酸カリウム(抗真菌剤)、220gm13.2gmのクエン酸ナトリウム・2HO、24.5gm14.7gmのデキストロース・HO、及び8.0gm4.8gmのクエン酸・HOを含むクエン酸デキストロース(ACD-A及びACD-B)、pH5.05(ACD-A);pH5.1(ACD-B);例えば、1リットルあたり:0.2のソルビン酸カリウム、26.3gmのクエン酸ナトリウム・2HO、3.27gmのクエン酸HO、2.22gmの一塩基性リン酸ナトリウム・HO、25.5gmのデキストロース・HOを含むクエン酸リン酸デキストロース(CPDA-1は0.275gmのアデニンを含有)、pH5.8;例えば、1リットルあたり:8.0gmのクエン酸ナトリウム・2HO、22.6gmのデキストロース・HO、4.2gmの塩化ナトリウム、及びpHを6.1に調整するためのクエン酸を含むアルセバー溶液;並びに、例えば、1リットルあたり:0.10モルで、294gmのクエン酸ナトリウム・2HO及び0.27gmのクエン酸・HOを含むM-PRFMクエン酸塩、pH7.0;が含まれる。
【0075】
本発明の溶液が上述のステップに従って調製されると、この溶液は、一部の実験技術において利用され得るか、又は、全血若しくはその前処理された細胞画分のより重い相からリンパ球、単球、及び血小板を分離するために当技術分野で利用可能ないくつかの血液分離及び/又は収集管のいずれかに添加され得る。本発明のクエン酸ナトリウムベースの抗凝固剤溶液は、いかなる血液分離装置にも使用することができるけれども、細胞密度分離媒体として、又は遠心分離に先立ち装置の様々な成分を単離するためのバリア手段として利用されるチキソトロピックゲル層を利用するそれらの装置と共に使用される場合に、最大の利点を提供する。特に、本発明の溶液は、改善された血液分離アセンブリの構築に利用することができる。アセンブリの好ましい実施形態は、閉鎖端及び開放端を有する容器を含む。容器は、好ましくは、血液サンプルを収集し、サンプルを分離するためのその後の遠心分離を受けることができる当技術分野において知られているタイプのものである。
【0076】
図1を参照すると、本発明の例証的な実施形態による血液収集及び分離システム10が示されている。システム10は、容器又はチューブ12と、第1の位置においてチューブ内に置かれた例えばチキソトロピックゲル等の高粘度で低密度の非混合性ゲル14の層と、チキソトロピックゲル14のすぐ下に置かれた液体密度分離媒体16の層とを含み、ゲル14の上に置かれた抗凝固剤溶液18の層を有する。参照番号26は、抗凝固剤溶液18、チキソトロピックゲル14、及び液体密度分離媒体層16を含む層状部分を総称して示している。典型的には、液体密度分離媒体16は、例えば、市販の液体密度勾配分離媒体Ficoll(登録商標)Paque等、全血から単核細胞及び血小板を分離するための当技術分野において知られている適したタイプのものである。
【0077】
行われることになる所望の作動に応じて、当技術分野において知られている種々のチキソトロピックゲルをチキソトロピックゲル14に使用することができる。例えば、チキソトロピックゲルが分離媒体並びにバリア手段として利用される場合、ゲルは1.055g/cmから約1.080g/cmの比重、好ましくは約1.060g/cmから約1.065g/cmの比重を有するべきである。チキソトロピックゲルが液体密度勾配材料と共に利用される場合、ゲルは主に遠心分離に先立つ一時的なバリア手段として機能する。そのようなアセンブリでは、ゲルは、後に分析を行うことができるまで、チューブ内に存在する液体密度勾配材料から、チューブに送達される血液サンプルの単離を維持する。そのような状況では、チキソトロピックゲルの比重は、血液サンプルの他の成分から単核細胞及び血小板細胞の層を適切に分離するのを可能にするのに十分な範囲内にあるべきである。好ましくは、そのようなアセンブリにおいて利用されるチキソトロピックゲルは、約1.055g/cmから約1.075g/cmに及ぶ比重を有する。チキソトロピックゲルは当技術分野においてよく知られており、典型的には非水溶性であり、血液に対して化学的に不活性である。それらは、一般的に、ジメチルポリシロキサン又はポリエステル及び沈殿メチル化シリカから調製され、メチル化は材料を疎水性にする。本発明の改善された血液分離アセンブリの好ましい実施形態は、チキソトロピックゲル層よりも容器の開放端から離れた第2の位置において容器内で利用される適した液体密度分離媒体も含む。
【0078】
本発明の一実施形態による例証的な方法は、全血又は前処理された血液の細胞分画のサンプルを、層状部分26を有する容器12に導入することを含む。次に、アセンブリ10のその後の遠心分離によって、チキソトロピックゲル層14は、容器12の上端15に向かって第1の位置から移動する。遠心分離が進むに従い、赤血球及び顆粒球が単核細胞及び血小板の画分から分離し、チキソトロピックゲルのすぐ上の層において濃縮されることになる。チキソトロピックゲルがチューブ内の新しい位置に向かって動くに従い、赤血球及び顆粒球はゲルを通って移動して、下の液体密度分離媒体を動かす。液体密度分離媒体が動かされるに従い、チキソトロピックゲルを介して上方に動き、単核細胞及び血小板の画分/抗凝固剤溶液と混ぜ合わされる。赤血球及び顆粒球はチューブの底に向かってペレット化され、リンパ球、単球、及び血小板はチキソトロピックゲル層のすぐ上で高度に精製された単核細胞-血小板細胞の層を形成し、それによって、単核細胞及び血小板細胞の単離及びその後の除去を容易にする。
【0079】
最後に、抗凝固剤溶液18はチキソトロピックゲル層14の上に置かれているため、単核細胞及び血小板細胞の層の遠心分離及びその後の単離のためにチューブに導入された全血サンプルに適切に接触することができる。図1において、抗凝固剤溶液18は、チキソトロピックゲル層14の上に、ゲルよりも分離チューブ10の開放端により近い位置において置かれているのが示されている。この抗凝固剤溶液18は、例えば、血液サンプルが後に遠心分離及びその後の分析のためにチューブに添加されるときに、血液サンプルの凝固を防ぐのに十分な有効濃度のクエン酸ナトリウムを有してもよい。抗凝固剤溶液は、pH6.0を超えて約pH8.5まで、好ましくは約pH6.5から約pH7.5に及ぶpHを有してもよい。最も好ましくは、溶液のpHは、約pH6.85から約pH7.15に及ぶべきである。最適には、pHは7.0であるべきである。改善された血液分離10の一実施形態では、クエン酸ナトリウムの濃度は、約0.05Mから約0.2M、好ましくは約0.08Mから約0.13Mに及ぶべきである。最も好ましくは、クエン酸ナトリウムの濃度は約0.09Mから約0.11Mであるべきである。最適には、濃度は0.1Mであるべきである。
【0080】
溶液18として使用するのに適した抗凝固剤溶液は主にクエン酸ナトリウムで構成されるけれども、細胞維持溶液又は他の試薬等のさらなる試薬を添加して、溶液にさらなる特性を与えることができる。本発明の改善された血液分離アセンブリの好ましい実施形態は、単独で又は添加された試薬と共に、全血又はその一部のサンプルを受けるのに十分な体積のものである、容器又はチューブの開放端に隣接する自由空間も含む。図1は、分離されることになる血液サンプルを収容するのに適した空間を提供するために抗凝固剤溶液16の上に置かれた自由空間20を示している。
【0081】
加えて、本発明のアセンブリは、任意的に、容器又はチューブの開放端を封止するための閉鎖要素を含んでもよい。典型的には、閉鎖要素は、容器の開放端の真空封止を提供するだけでなく、試験対象から血液サンプルを採取するために容器を適合させるために針によって貫通可能であることに適している。図1において、例えばシール等の閉鎖要素22が、上述のように容器の真空封止をもたらすために容器又はチューブの開放端に提供されている。血液サンプルをアセンブリ10に添加すると、サンプルと抗凝固剤溶液18との混合が、典型的には容器12の手動反転によって発生する。チキソトロピックゲル層14は、液体密度分離媒体16等のアセンブリの他の構成要素とのいかなる接触からも血液サンプル/抗凝固剤溶液懸濁液を単離するためのバリアとして機能するために、チューブ内の一時的に固定された第1の位置に残る。
【0082】
本発明は、全血又はその前処理された細胞画分のサンプルのより重い相からリンパ球、単球、及び血小板を分離する方法をさらに含む。この方法は、開放端及び閉鎖端を有する容器を提供するステップを含む。好ましくは、容器は、上述のタイプの採血/分離管である。当該方法は、チキソトロピックゲル状物質の第1の層を第1の位置において容器又はチューブに導入することを含む。当該方法は、第1のチキソトロピックゲル層よりも容器の開放端に近い第2の位置において抗凝固剤溶液を容器に導入することをさらに含む。この方法はまた、溶液のpHを上述の好ましい範囲のいずれかに制限するステップと、血液サンプルの凝固を防ぐのに十分なクエン酸ナトリウムの有効濃度で、本発明の抗凝固剤溶液を容器に導入するステップとを含む。加えて、当該方法は、溶液中のクエン酸ナトリウム濃度を、抗凝固剤溶液の説明において上述した範囲のいずれかに制限するステップを含む。
【0083】
本発明の方法は、全血又は前処理された血液の細胞分画のサンプルを容器に導入するステップ、及びサンプルのより重い相からリンパ球、単球、及び血小板の分離を誘導するために容器を遠心分離する後続のステップも含む。
【0084】
多くの方法及びシステムが、1つの容器から別の容器への流体の移送を必要とする。一般的な実行は、2つの容器のクロージャを取り外し、1つの容器内の液体をもう1つの容器にピペットで移動させることである。しかし、この実行はサンプルを環境汚染物質に曝露する。例えば、この技術は、血液サンプル中の赤血球から分離された血漿を移送させるために使用される。しかし、多くの場合、界面メニスカスにおける血漿を取り除くには異なる技術が必要である。しばしば、高密度で望ましくない低画分の赤血球が、吸引したサンプルを汚染する。この問題を回避するために、ピペットを、メニスカス(すなわち、血漿と赤血球の間の界面)から安全な距離で維持することができ、これは、サンプルの不完全な移送をもたらす可能性がある。望ましい分画の不完全な移送は、サンプル試薬及び第2の容器内のそれらの最適な体積収率及び非化学量論比よりも低い結果をもたらす。この第2の条件は、製品の性能変動の深刻な原因となり得る。これは、反応速度が特定の化学量論比で最大となり且つより高いか又は低い比で急速に減少する多くの酵素反応において生じるケースである。この技術は依然として、様々な層を正確に見るオペレーターの能力及びその経験に非常に敏感であるため、滅菌された針及び注射器を使用しても、血漿又は細胞の様々な層を回収する能力は改善されない。
【0085】
創傷ケアは、特に慢性潰瘍に関して、医学における最も重要な問題の1つである。この問題は、管理コストが高いというためだけでなく、成功率が変動するためにも重要である。創傷ケアに関連する他の問題には、液体の損失及び感染症が発生する可能性が含まれる。合成又は動物由来の膜は、包帯材として、又は再骨化のプロセスにおいて軟組織から骨空洞を分離するために、創傷ケアにおいて使用されてきた。
【0086】
創傷ケアのための1つの治療法には、生物学的組織又は動物由来のスポンジ(一般にタンパク質ベース)、例えばコラーゲン、フィブリン、アルブミン等を創傷部位に塗布することが含まれ得る。しかし、アレルギー反応及び免疫学的反応が、これらの塗布でよくみられる。これらの症例のほとんどは、1回の塗布では解決せず、複数回の塗布が必要になることがある。
【0087】
別の治療法には、最も困難な症例に対して行われる皮膚移植が含まれる。しかし、皮膚移植は費用が高く、全体的な治療費が大幅に増加する。改変された動物コラーゲンのメッシュが、新しい自家組織を支持するために使用されている。その適用は、皮膚組織の培養に最大20日かかる可能性のある困難なプロセスであり、装置が汚染される可能性がある。
【0088】
全体として、自家PRP若しくはM-PRP、又は生体内で組織を再生することができる固形フィブリンマトリックスを調製するための方法及びシステムが望まれている。
【0089】
本発明は、生体内で組織を再生することができる固形フィブリンマトリックス又は自家フィブリン膜を形成するためのシステム及び方法も提供する。これらの方法及びシステムでは、単核細胞及び血小板を有する抗凝固血漿が、血液サンプルの遠心分離によって得られる。本明細書において記載される移送装置によって、カルシウム凝血剤を有する第2の容器に細胞-血漿懸濁液が移送され、その後直ちに遠心分離されて、安定で高密度の自家フィブリン単核細胞-血小板ネットワークが得られるのを可能にする。本明細書において記載される移送装置は、他の用途において他の液体を移送するために使用することもできる。言い換えれば、本明細書において記載される方法、移送装置、及びシステムは、同時の遠心分離及び凝固を可能にする。
【0090】
これらのシステム及び方法を使用することによって、以下の少なくとも1つを達成することができる:(1)試料は、無菌性が維持される様式で操作される;(2)血漿の総量が、凝血の完全な収率を最大にするために移送される;(3)凝血時間を最小にするために、抗凝固剤とカルシウム凝血剤の化学量論比は狭い範囲に維持される;(4)適用されるマトリックスのpHはヒト組織の正常なpHに近く、従って、刺すような感覚が回避される;(5)移送は迅速に完了し、血小板由来の増殖因子の半減期内に手術の間に行うことができる;(6)通常これらの操作を行わない医療提供者(例えば、ナース・プラクティショナー等)は、これらの方法を容易に行い、システムを操作することができる;(7)装置は、再使用及び血液媒介病原体による汚染の可能性を防ぐために単回使用である。
【0091】
一般的に言えば、本発明は、生体内の組織を再生するために使用することができる固体フィブリンマトリックス又は自家フィブリン膜を調製するための統合されたシステム及び方法を提供する。図2において描かれている一実施形態では、システムは、図1の容器10等の一次容器10、二次容器48(又は代替容器38)、及び移送装置18を含む。好ましくは、一次及び二次容器10、48は、チューブ又は平底バイアル38であり、より詳細には、試験管又はバイアルであるが、流体又は液体を保持することができ且つ遠心分離することができるいかなる容器も、本発明で使用するのに適している。好ましくは、容器10、48、及び38はガラス又はプラスチックから作られている。
【0092】
一次容器10は、標準的な静脈穿刺技術を使用してその中に血液を吸引する能力を有するべきである。好ましくは、一次容器10は、血液が吸引されている間、汚染を防ぐためにシール22で密封されるが、容器10はその後すぐに密封されてもよい。例えば、ゴム栓、キャップ、フォーム、エラストマー、又は他の複合材料等、様々なシール22を使用して、一次容器10を密封することができる。シール22は、貫通又は穿孔可能であるべきであり、従って、ゴム及びシリコーンが好ましい材料であり、それからシールが作製されるが、シールを提供し且つ貫通可能ないかなる材料も使用することができる。一次容器10は、図1の層状部分26を有してもよい。
【0093】
作動中、抗凝固剤18は、一次容器10に集められた血液をわずかに希釈して遠心分離のための状態にする傾向がある。加えて、一次容器は、密度勾配分離媒体26、空気27、並びに高粘度で低密度のゲル28を含む。
【0094】
移送装置18は、図2において描かれているように、2つの部分を含んでもよい。移送装置18は、第1の開口部を有する第1の端部42と、第2の開口部を有する第2の端部50とを有するカニューレを含む。カニューレの端部42、50は、一次及び二次容器10、48、又は38のシール22、24を貫通又は穿通することができるように、鋭利であるか又は尖っている(又は、それらの上にベベルグラウンドを有してさえいる)。カニューレは、容器の操作中に誤って指が刺さるのを防ぐために、ハウジング内に凹んで同軸に取り付けられる。ハウジング58は、カニューレと共に中心を有して且つ軸方向に向けられた2つの円筒形の対向ガイド62、64を有する。ガイド62、64は、一次容器10及び二次容器48又は38を移送装置18の第1及び第2の端部42、50上にガイドするのに役立つ。
【0095】
カニューレの端部42、50は、密閉シールを形成する安全弁、シース、又はエラストマースリーブ68、72によって包含されるか又は覆われてもよい。安全シース68、72は、第1及び第2の開口部46、54も覆う。第1及び第2の端部42、50がエラストマースリーブ68、72に穴を開けると、スリーブ68、72はそれに応じて退縮する。端部42、50は、シール22、24に完全に穴を開けるのに十分に長く延びているが、容器10、48、又は38内にさらに延びていない。これによって、反転された一次容器10の液体体積の二次容器48又は38への最大体積の移動が可能となる。エラストマースリーブ68、72は、穴が開いていない場合のガス又は液体の流れを防ぐ。スリーブ68、72に適した材料には、ゴムの種類及び熱可塑性エラストマーが含まれるが、これらに限定されない。
【0096】
採血管10の遠心分離に続いて、密封された一次ホルダ10は、移送装置18を使用してシール22に穴を開ける前に反転される。言い換えると、一次容器10は、密封された開口部が最も低い垂直位置になるように反転される。一次容器を反転させると、層が配置される順序が変化する。シール22の上には、下から上へ順に以下の層:単核細胞-血小板リッチの血漿、(図1において示されている)ゲル14、残留ガス、分離媒体16、及び赤血球がある。
【0097】
次に、二次容器48又は38が、図2において示されているように、その密封された開口部24を最上位置にして垂直位置に配置される。これによって、二次容器48又は38は、一次ホルダの内容物をその中に移送するように位置する。次に、移送装置のガイド64が、二次容器48又は38の上に配置され、二次容器48又は38をその中にガイドし、次に、反転された一次容器10が、他のガイド62の中に配置される(又はその逆も同様である)。言い換えると、カニューレのいずれかの端部42、50を使用して、いずれかのシール22、24に穴を開けることができる。移送装置18は、いずれかの端部においても対称であるため、ユーザには、ある程度のフールプルーフな操作が提供される。次に、ユーザは、容器を強制的に一緒にして、それぞれのカニューレ端部42、50で両方のシール22、24に穴を開ける。端部42、50を覆う2つのバルブスリーブ68、72は、フールプルーフな操作をさらに強化する。第一に、第1の端部42が一次シール22に穴を開けた場合(ここでも、いずれかの端部を使用して、いずれかのシールに穴を開けることができる)、もう1つの端部50を覆う穴の開いていないスリーブ72は流体を含み、それによって流体がこぼれるのを防いでいる。一方、最初にもう1つの端部50がもう1つのシール24(及びそれに応じてスリーブ72)に穴を開けた場合、真空が第1の端部42を覆うスリーブ68によって維持される。
【0098】
端部42、50が、示されているように両方のスリーブ68、72及びシール22、24に穴を開けると、所望の流体が圧力差によって一次容器10から二次容器48、又は使用される場合は38まで移送される。言い換えると、二次容器48又は38内の圧力は排出されているため、一次容器10の内容物(より具体的には、単核細胞-血小板リッチの血漿)は二次容器48又は使用される場合は38内に流れる。元々は大気圧である一次容器10内の圧力は、液面が減少し且つガス体積が膨張するに従い減少する。しかし、どの時点においても圧力はゼロではない。二次容器48又は38は、ゼロに等しいか又はゼロよりもわずかに大きい圧力まで完全に排気されているため、圧縮するガスがほとんど又は全くないので、チューブが充填されるに従いその中の圧力は増加しない。
【0099】
一次容器10において層が連続的に配置されているため、単核細胞-血小板リッチの血漿は、移送装置18を介して二次容器48又は38まで容易に移送される。加えて、一次容器10も排気レベルに予め設定されているため、容器は、採血後に部分的に充填されるだけである。これによって、「ヘッドスペース」内のガスは、その体積が拡大されたときに、移送中にゼロよりもかなり高い状態を維持することが可能になり、それによって、二次容器48又は使用される場合には38まで、迅速且つ完全に移送することが可能になる。これは、理想的なガス法則及びPoiseuille-Hagen方程式によって決定される。
【0100】
単核細胞-血小板-血漿の分画の二次容器48又は38への移送が完了し、それによって最大収率及び試薬の適切な化学量論比の維持が可能となる。次に、単核細胞-血小板-血漿は、二次容器48又は38内の凝固活性化剤36と接触し、それによって、固体フィブリンウェブを形成するために直ちに遠心分離できる混合物が生成される。一次容器10と二次容器48又は38との圧力差は、移送中実質的に維持され、迅速な移送を可能にしている。移送装置18は、チューブ係合の順序に影響されず、システムを事実上フールプルーフにしている。最後に、移送は、通気なしで発生させてもよく、サンプルの無菌性及び非汚染性を維持している。
【0101】
二次容器48又は38において、単核細胞-血小板-血漿の懸濁液は、カルシウム凝固活性化剤36と接触し、その直後に、同時の血漿の凝固及び遠心分離が起こって、固体フィブリンウェブを形成することができる。固体フィブリンウェブは、生体における体組織の再生に適している。そのような方法は、血漿がカルシウム凝固活性化剤36と接触する前に、そこから水を除去することによって血漿を最初に予備濃縮する必要性を軽減する。加えて、移送装置18は、広範な用途において血液又は他の流体を移送するために使用することができる。
【0102】
二次容器48の使用によって、遠心分離後に形成される結果として生じる単核細胞-血小板フィブリンマトリックスが二次チューブ14の底部の形状で形成され、従って、単核細胞-血小板リッチのフィブリンマトリックス(M-PRFM)を形成することが可能となる。或いは、二次バイアル38を使用して、遠心分離後に、結果として生じる単核細胞-血小板リッチのフィブリンマトリックスが二次バイアル38と同じ直径のM-PRFM膜を形成する。
【0103】
さらなる実施形態において、本発明は、すぐに使用できるキットも提供し、当該キットは、1つ又は複数の一次容器10、二次容器48又は38、移送装置18、静脈穿刺部位を洗浄するためのアルコールスワブ、マルチサンプル採血針(21ゲージ×1´´)、安全ホルダ、弾性包帯材、及びM-PRFMマトリックス又は膜を受けるための無菌培養皿を含む。これらの構成要素は、キット内で多種多様に配置することができる。
【0104】
次に、本発明は以下の実施例においてさらに説明されるが、これらの実施例は、例示のみを意図したものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0105】
全血から単核細胞及び血小板を分離することによって、比較的濃縮された細胞-血漿懸濁液が得られる。回収率、純度、生存率、赤血球汚染、及び顆粒球汚染の再現性試験を、密度勾配流体、チキソトロピックゲル、及びクエン酸抗凝固剤を有する真空採血管を使用して実施した。pH7.0の1.0mLのクエン酸抗凝固剤を含むチューブあたり約8.0mLの10の血液サンプルを1ドナーから採取した。チューブを1500xgで20分間遠心分離した。結果として生じる単核細胞-血小板の分画を7回反転させて、細胞を血漿中に再懸濁させ、単核細胞-血小板リッチの血漿(M‐PRP)を作成した。M‐PRPは自動血液分析器を使用して重複して分析した。最終洗浄ステップは行わなかった。サンプルを、ほぼ等しい最終体積まで再懸濁した。チューブ間変動を、各チューブに対する重複した読み取りの平均の差分を得ることによって計算した。
【0106】
【表1】
表1. 密度勾配液体、チキソトロピックゲル、及びクエン酸抗凝固剤(pH7.0)を有する真空細胞分離装置を使用した全血からの回収率、生存率、RBC汚染率、及びPMN(多形核細胞又は顆粒球)汚染率の再現性試験
【実施例2】
【0107】
クエン酸ナトリウム抗凝固剤、チキソトロピックゲル、及び密度勾配液体を有する採血管を使用して全血試料が採取される。抗凝固剤と全血とを混合するために、チューブは緩やかに7回反転させる。チューブは、スイングアウトバケットローターに配置され、1500xgで20分間遠心分離される。M‐PRPがゲル分離チューブ内の全血試料から分離されると、M‐PRPは、クエン酸ナトリウムを有する第2のバイアルまで無菌的に移される。溶液は穏やかに混合され、第2のバイアルは、3500xgで25分間遠心分離される。第2の遠心分離ステップが完了すると、バイアルのキャップが外され、バイアルを反転させて内容物を組織培養皿等の無菌の受容装置上に空にすることによってM-PRFMが回収される。M-PRFMは、例えば無菌鉗子によって回収され、創傷面上に直接配置される。その後、数日間、創傷内のM-PRFMを支持するために、創傷は適切な被覆材及び包帯材で覆われる。この処置は、必要に応じて毎週繰り返すことができる。
【0108】
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特定の実施形態の変更を行うことができるように、本発明は、上述した本発明の特定の実施形態に限定されるものではなく、さらに、依然として添付の特許請求の範囲に含まれることを理解されたい。
図1
図2
【国際調査報告】