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特表2024-520490ハイブリッド電気自動車内の多燃焼モード内燃エンジンの遷移を制御する装置および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】ハイブリッド電気自動車内の多燃焼モード内燃エンジンの遷移を制御する装置および方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/00 20160101AFI20240517BHJP
   B60K 6/442 20071001ALI20240517BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20240517BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20240517BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20240517BHJP
   B60L 50/61 20190101ALI20240517BHJP
【FI】
B60W20/00 900
B60K6/442 ZHV
B60W10/06 900
B60W10/08 900
B60L50/16
B60L50/61
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573100
(86)(22)【出願日】2022-05-14
(85)【翻訳文提出日】2024-01-22
(86)【国際出願番号】 IB2022054506
(87)【国際公開番号】W WO2022248966
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】17/329,330
(32)【優先日】2021-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/661,851
(32)【優先日】2022-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523444992
【氏名又は名称】シュイ,ファン
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュイ,ファン
【テーマコード(参考)】
3D202
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA02
3D202BB03
3D202BB11
3D202CC41
3D202DD18
3D202DD20
3D202FF13
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BA00
5H125BD17
5H125CA01
5H125EE27
5H125EE31
5H125EE42
(57)【要約】
自動車の設計者は、内燃機関からバッテリーや電気モータへと大きく舵を切っている。完全な電動化をサポートするインフラが整備されるまで、内燃機関と電気機械の両方を含むハイブリッド電気自動車(HEV)は、期待される航続距離を維持しながら、電動化とより高いシステム燃料効率に向けた一歩となる。さらに高いシステム燃料効率を得るために、HEVでは火花点火(SI)運転よりも高い効率を提供する燃焼モードを使用することができる。このような燃焼モードの問題点は、SI運転ほど広い運転範囲で使用できないことと、モード間の移行に時間がかかり面倒なことである。HEVに搭載されるICEをマルチ燃焼モードエンジンとし、モード切り替えがスムーズになるようにEMで調整することで、代替燃焼モードの高い燃費効率を活かしつつ、車両ユーザーが期待するスムーズな運転を実現することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(ICE)に機械的に連結された電気機械(EM)と、EMに電気的に連結されたバッテリーとを有するハイブリッド電気自動車(HEV)を制御する方法であって、
現在の燃焼モードから新たな燃焼モードへの移行を、現在の燃焼モードと新たな燃焼モードとの間に生じる移行区間を用いて指令すべきであると決定するステップと、
移行区間中にICEを動作させるための複数の所定の燃焼モード切替動作点のうちの1つを選択するステップと、
移行区間中に選択された所定の燃焼モード切替動作点を達成するようにICEに指令するステップと、を含み、
ICEの選択された所定の燃焼モード切替動作点が、ICEの速度の低下を防止するのに不十分なトルクを生成するとき、EMは、モータとして作用し、ICEを駆動し、それによってICEの選択された所定の燃焼モード切換動作点を維持し、
ICEの選択された所定の燃焼モード切替動作点が、ICEの回転数を上昇させるトルクを発生させる場合、EMは発電機として働き、ICEに負荷をかけてICEの選択された所定の燃焼モード切替動作点を維持する、方法。
【請求項2】
移行区間中にICEが新しい燃焼モードで動作するための準備を行い、
該準備が、ICEの吸気温度、ICEの吸気システム内の圧力、ICEに導入される吸気中の排気ガス割合、ICEの圧縮比、ICEへの空燃比、ICEへの燃料噴射タイミングおよび量を含む燃料供給戦略、ICEの点火タイミング、およびICEのバルブタイミングおよびバルブのリフトを変更すること、のうちの少なくとも1つの調整を含み、
準備が完了したときに、ICEに新しい燃焼モードで動作するように命令すること、をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
現在の燃焼モードから新しい燃焼モードへの移行が、
バッテリーの充電状態、
新しい燃焼における安定した燃焼をサポートするためのICEの動作ポイント、
車両の運転者によるHEVからのトルクの要求および移行間隔の予想持続時間、および、
新しい燃焼モードで動作するHEVの効率は、現在の燃焼モードで動作するHEVの効率よりも高い、
のうちの少なくとも1つに基づいて決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
HEVは直列構成であり、
EMはICEに機械的に連結され、バッテリーに電気的に連結された第1のEMであり、
HEVは、さらに、
バッテリーに電気的に連結された第2のEMと、
第2のEMに機械的に連結されたHEVである駆動輪と、を含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
HEVは並列構成であり、
EMはバッテリーに電気的に連結された第1のEMであり、
EMはICEに機械的に連結され、移行中は両者ともHEVの駆動輪に機械的に連結される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ハイブリッド電気自動車(HEV)であって、
電気機械(EM)と、
EMに機械的に連結された内燃機関(ICE)と、
EMに電気的に連結されたバッテリーと、
互いに通信可能な複数のコントローラから構成される車両システムコントローラ(VSC)と、
を備え、複数のコントローラのうちの1つは、複数のコントローラ内の他のコントローラを調整する調整コントローラ(CC)である、ハイブリッド電気自動車(HEV)。
【請求項7】
調整コントローラ(CC)は、EMコントローラ、ICEコントローラ、およびバッテリーコントローラに電子的に結合され、
CCは、現在の燃焼モードから新しい燃焼モードへの遷移が、現在の燃焼モードと新しい燃焼モードとの間に生じる遷移インターバルを伴って指令されるべきであると決定し、
CCは、遷移インターバル中にICEを動作させるための複数の所定の燃焼モード切替動作点のうちの1つを選択し、
CCは、遷移インターバル中に選択された所定の燃焼モード切替動作点を達成するようにICEに指令し、
ICEの選択された所定の燃焼モード切替動作点が、移行区間中にICEの速度が低下するのを防ぐのに不十分なトルクを生成する場合、EMは、モータとして機能し、ICEを駆動し、
ICEの選択された所定の燃焼モード切替動作点を維持し、ICEの選択された所定の燃焼モード切替動作点が、移行区間中にICEの速度が上昇するようなトルクを生成する場合、EMは、発電機として機能し、ICEに負荷をかけて、ICEの選択された所定の燃焼モード切替動作点を維持する、請求項6に記載のHEV。
【請求項8】
選択された所定の燃焼モード切替動作点は、バッテリーの充電状態、運転者が要求する駆動輪のトルク、新しい燃焼モードでのICEの動作点が安定した燃焼をサポートできること、新しい燃焼モードで動作するHEVの効率が現在の燃焼モードで動作するHEVの効率よりも高いこと、のうちの少なくとも1つに基づく、請求求項6に記載のHEV。
【請求項9】
移行インターバル中にICEが新しい燃焼モードで動作するための準備を行い、
該準備は、CEの吸気温度、ICEの吸気システム内の圧力、ICEに導入される吸気中の排気ガス割合、ICEの圧縮比、ICEへの空燃比、ICEへの燃料噴射タイミングと量を含む燃料供給戦略、ICEの点火タイミング、ICEのバルブタイミングとバルブのリフト量の変更、の少なくとも1つの調整が含み、および、
CCは、準備が完了したときにICEに新しい燃焼モードで動作するように命令する、請求項6に記載のHEV。
【請求項10】
現在の燃焼モードから新しい燃焼モードへの移行を指令するか否かの判断は、新しい燃焼モードで動作するHEVの効率が現在の燃焼モードで動作するHEVの効率よりも大きいこと、運転者の要求トルク、新しい燃焼モードが安定した燃焼をサポートできること、およびバッテリーの充電状態の少なくとも1つに基づいて行われる、請求項6に記載のHEV。
【請求項11】
HEVは直列構成であり、
EMはICEに機械的に連結され、バッテリーに電気的に連結された第1のEMであり、HEVはさらに、バッテリーに電気的に連結された第2のEMを含み、HEVの駆動輪は第2のEMに機械的に連結されている、請求項6に記載のHEV。
【請求項12】
HEVは並列構成であり、
EMはバッテリーに電気的に結合された第1のEMであり、
EMはICEに機械的に結合されており、EMとICEの両方が移行中にHEVの駆動輪に機械的に結合されている、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
内燃機関(ICE)に機械的に連結された第1の電気機械(EM1)と、HEVの駆動輪に機械的に連結された第2の電気機械(EM2)と、EM1およびEM2に電気的に連結されたバッテリーと、EM2に電子的に連結されたEM2コントローラと、EM2コントローラに電子的に連結された協調コントローラ(CC)とを有する直列ハイブリッド電気自動車(HEV)を制御する方法であって、
現在の燃焼モードから新たな燃焼モードへの移行が、現在の燃焼モードと新たな燃焼モードとの間に生じる移行インターバルとともに指令されるべきであると決定するステップと、
移行インターバル中にICEを動作させるための複数の所定の燃焼モード切替動作点のうちの1つを選択するステップと、
移行インターバル中に、選択された所定の燃焼モード切替動作点を達成するようにICEに指令するステップと、
移行インターバル後に準備が完了したときに、新たな燃焼モードを動作させるようにICEに指令するステップと、を含む方法。
【請求項14】
移行区間中、ICEは、新しい燃焼モードで動作するように準備され、このような準備は、ICEの吸気温度、ICEの吸気システム内の圧力、ICEに導入される吸気中の排気ガス割合、ICEの圧縮比、ICEへの空燃比、ICEへの燃料噴射タイミングおよび量を含む燃料供給戦略、ICEの点火タイミング、およびICEのバルブタイミングおよびバルブのリフトを変更することのうちの少なくとも1つの調整を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ICEの選択された所定の燃焼モード切替動作点が、ICEの速度が低下するのを防ぐのに不十分なトルクを発生する場合、EM1がモータとして機能し、ICEを駆動して、ICEの選択された所定の燃焼モード切替動作点を維持し、
バッテリーが、燃焼モード移行中に、ICEを駆動するための電力をEM1に供給し、HEVの車輪を駆動するための電力をEM2に供給し、
ICEの選択された所定の燃焼モード切替動作点が、ICEの速度を上昇させるトルクを発生させる場合、EM1は発電機として機能し、
ICEに負荷をかけてICEの選択された所定の燃焼モード切替動作点を維持し、ICEに負荷をかけるためのEM1の出力電力はバッテリーに吸収され、燃焼モード移行時にHEVの車輪を駆動するためにEM2に供給される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
現在の燃焼モードから新しい燃焼モードへの移行を指令するか否かの決定は、新しい燃焼モードで動作するHEVの効率が現在の燃焼モードで動作するHEVの効率よりも大きいこと、運転者の要求トルク、新しい燃焼における安定した燃焼をサポートするためのICEの動作点、およびバッテリーの充電状態のうちの少なくとも1つに基づいて行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
内燃機関(ICE)に機械的に連結された電気機械(EM)と、EMとICEの両方がHEVの駆動輪に機械的に連結され、EMに電気的に連結されたバッテリーとを有する並列ハイブリッド電気自動車(HEV)を制御する方法であって、
現在の燃焼モードから新たな燃焼モードへの移行が、現在の燃焼モードと新たな燃焼モードとの間に生じる移行インターバルとともに指令されるべきであることを決定するステップと、
移行インターバル中にICEを動作させるための複数の所定の燃焼モード切替動作点のうちの1つを選択するステップと、
移行インターバル中に選択された所定の燃焼モード切替動作点を達成するようにICEに指令するステップと、
移行インターバル後に新たな燃焼モードで動作するようにICEに指令するステップと、を含む方法。
【請求項18】
前記移行区間中に、前記ICEは、新しい燃焼モードで動作するように準備され、このような準備は、ICEの吸気温度、ICEの吸気システム内の圧力、ICEに導入される吸気中の排気ガス割合、ICEの圧縮比、ICEへの空燃比、ICEの燃料噴射タイミングおよび量を含む燃料供給戦略、ICEの点火タイミング、ICEのバルブタイミング、およびICEのバルブのリフトプロファイルの少なくとも1つの調整を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ICEの選択された所定の燃焼モード切替動作点が、ICEの速度が低下するのを防止するのに不十分なトルクを発生するとき、EMは、それによってICEを駆動してICEの選択された所定の燃焼モード切替動作点を維持するモータとして機能し、バッテリーは、燃焼モード移行中にICEとHEVの駆動輪の両方を駆動するための電力をEMに供給し、
ICEの選択された所定の燃焼モード切替動作点が、ICEの速度を上昇させるトルクを生成する場合、EMは発電機として動作し、それによってICEに負荷を与えてICEの選択された所定の燃焼モード切替動作点を維持し、ICEに負荷を与えるためのEMの出力電力はバッテリーに吸収され、ICEは選択された所定の燃焼モード切替遷移中にHEVの駆動輪にトルクを提供する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
現在の燃焼モードから新しい燃焼モードへの移行を指令するか否かの決定は、新しい燃焼モードで動作するHEVの効率が現在の燃焼モードで動作するHEVの効率よりも大きいこと、運転者が要求するトルク、新しい燃焼モードにおけるICEの動作点が安定した燃焼をサポートすること、および、バッテリーの充電状態、のうちの少なくとも1つに基づいて行われる、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ハイブリッド電気自動車における燃焼モード切り替えに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関は、自動車輸送において依然として重要な動力源である。残念なことに、化石燃料の燃焼は、気候変動の主な原因である温室効果ガスの大きな原因となっている。自動車の電動化は急速に進んでいる。電気自動車が普及するまでのギャップを埋めるために、高効率の自動車が望まれている。あるいは、メタノールや、太陽光や風力を動力源とする電気分解によるグリーン水素のような合成燃料の開発が進み、持続可能で経済的に競争力のあるものになれば、内燃機関は電気自動車と並んで将来も長く続くかもしれない。
【0003】
現代の内燃機関のほとんどは、ガソリンで作動する火花点火(SI)またはディーゼル燃料で作動する圧縮点火(Cl)である。ClエンジンはSIエンジンよりも高い効率を提供するが、容易に解決できない排出ガス問題がある。特に、スモッグにつながる窒素酸化物が発生し、尿素とトラップを使った後処理は面倒である。また、Clエンジンは粒子状物質を発生させ、これを粒子状物質フィルターに集めて再生しなければならないが、これも面倒な解決策である。
【0004】
均質荷電圧縮着火(HCCI)エンジン、制御自動着火(CAI)エンジン、最適化運動過程(OKP)エンジン、火花補助圧縮着火(SACI)エンジンである。これらは、CO2削減(燃費向上)に大きな期待を示しているものの、最先端の自動車に匹敵するドライバビリティを備えた完全な機能を持つ自動車を提供するために、全運転範囲にわたって適しているものはない。つまり、これらの代替燃焼モードで運転する内燃エンジンは、従来の燃焼モード(ClまたはSI)で運転する場合のおよそ半分の出力しか出せない。そのため、自動車は可能な限りこれらの代替燃焼モードで運転し、代替燃焼モードが達成できない運転領域でのみSIまたはCl運転に切り替えて高出力を得ることが長い間提案されてきた。このようにして、自動車全体の効率が改善される。
【0005】
また、従来の車両において、完全な燃焼の欠如さえも含むトルク変動や、人間であるか自律的であるかにかかわらず、車両の運転者によって動作点の変更が要求されたときに許容できないほど遅い遷移などの動作上の困難なしに燃焼モード切換を行うことが困難であることは、当該技術分野において周知である。移行が遅いだけでなく、移行中に燃焼が不安定になる可能性が高い。これは最新の車両の運転手にとって受け入れがたいことだ。さらに、不安定な燃焼は、許容できないほど高い排出ガスにつながる可能性がある。このような燃焼モード間の切り替えに伴う運転上の欠点を伴うことなく、高効率燃焼モードの利点を実現するシステムおよび方法が望まれている。
いる。
【発明の概要】
【0006】
先行技術における欠点を克服するために、ハイブリッド電気自動車(HEV)の内燃機関(ICE)は、現在の燃焼モードと、2つの燃焼モード間の遷移を伴う新たな燃焼モードとの間の遷移動作点に指令される。移行動作点は、安定した点であることが知られており、また、ICEが新しい燃焼モードに入るために必要な調整を行うことができる点である。必要な調整には、吸気圧、吸気温度、圧縮比、バルブタイミング、排気ガス再循環量などの1つ以上が含まれる。従来のエンジン、すなわち電気機械のないエンジンでは、移行動作点におけるトルクの量は、車両の運転者が要求するものと一致しなければならないため、移行動作点にアクセスすることは不可能である。このような移行時にトルクが低下したり急上昇したりすることは、まったく容認できない。しかし、HEVでは、電気機械および電気機械が結合されたバッテリーを使用して、余分なトルクを吸収したり、トルクを供給したりして、運転者の要求を満たすことができる。
【0007】
HEVの利点を利用して燃焼モード間を移行する方法が開示されている。HEVは、内燃機関(ICE)に機械的に連結された電気機械(EM)と、EMに電気的に連結されたバッテリーを有する。本方法は、現在の燃焼モードから新しい燃焼モードへの移行を、現在の燃焼モードと新しい燃焼モードとの間に生じる移行インターバルで指令すべきであると決定することと、移行インターバル中にICEを動作させるための複数の所定の燃焼モード切替動作点のうちの1つを選択することと、移行インターバル中に選択された所定の燃焼モード切替動作点を達成するようにICEに指令することとを含む。ICEの選択された所定の燃焼モード切替動作点が、ICEの速度低下を防ぐのに不十分なトルクを発生する場合、EMはモータとして作用し、ICEを駆動してICEの選択された所定の燃焼モード切替動作点を維持する。ICEの選択された所定の燃焼モード切換動作点が、ICEの速度を増加させるようなトルクを生成する場合、EMは発電機として機能し、ICEに負荷をかけて、ICEの選択された所定の燃焼モード切換動作点を維持する。
【0008】
ICEは、移行区間中に新しい燃焼モードで動作するための準備を受ける。この準備は、(移行する燃焼モードの性質に応じて)ICEの吸気システムを加熱または冷却すること、ICEの吸気システム内の圧力を上昇または下降させること、ICEに導入される吸気中の排気ガス割合を増加または減少させること、ICEの圧縮比を変更すること、ICEへの空燃比を変更すること、ICEの燃料噴射タイミングおよび量を変更すること、ICEの点火タイミングを変更すること、およびICEのバルブのバルブタイミングを変更することのうちの少なくとも1つを含む。さらに、燃焼モードに応じて、燃料供給を停止または再開することもできる。この方法は、準備が完了したときに、新しい燃焼モードで動作するようにICEに命令することも含む。
【0009】
選択された所定の燃焼モード切替動作点は、バッテリーの充電状態に基づく。いくつかの実施形態では、選択された所定の燃焼モード切替動作点は、さらに、車両の運転者によるHEVからのトルクの要求と、遷移間隔の予想持続時間とに基づいている。車両の運転者は、通常アクセルペダルを介して通信するHEVを運転する人である。あるいは、操作者は、自動運転コントローラの自律コントローラであってもよい。
【0010】
現在の燃焼モードから新しい燃焼モードへの移行を指令すべきとの判断は、新しい燃焼モードで動作するHEVの効率が、現在の燃焼モードで動作するHEVの効率よりも大きいことに基づいて行われる。
【0011】
現在の燃焼モードから新しい燃焼モードへの移行は、バッテリの充電状態およびICEが新しい燃焼モードでの安定した燃焼をサポートするのに適した温度であることに基づいて決定される。いくつかの実施形態では、これは、ICEが新しい燃焼モードに移行するために十分にウォームアップされるべきコールドスタートの状況である可能性がある。他のタイプの遷移では、新しい燃焼モードで安定した燃焼が行われるように、ICE内、特に吸気口の温度は所定のレベルよりも低くなければならない。
【0012】
一部のHEVは、EMがバッテリーに電気的に結合し、EMとICEの両方が機械的に連結された直列構成である。HEVはまた、バッテリーに電気的に結合された第2のEMを有する。駆動輪は、第2のEMに機械的に連結されたHEVである。
【0013】
他の実施形態では、HEVは、バッテリーに電気的に結合されたEMと、EMとICEの両方が機械的に連結された並列構成である。EMとICEは、移行中にHEVの駆動輪に機械的に連結される。
【0014】
また、電気機械(EM)と、EMに機械的に連結された内燃機関(ICE)と、EMに電気的に連結されたバッテリーと、EM、ICE、およびバッテリーに電子的に連結された協調コントローラ(CC)とを含むハイブリッド電気自動車(HEV)も開示される。CCは、現在の燃焼モードから新しい燃焼モードへの移行を、現在の燃焼モードと新しい燃焼モードとの間に生じる移行インターバルで指令すべきであると決定し、移行インターバル中にICEを動作させるための複数の所定の燃焼モード切替動作点のうちの1つを選択し、移行インターバル中に選択された所定の燃焼モード切替動作点に到達するようにICEに指令する。ICEの選択された所定の燃焼モード切替動作点が、移行区間中にICEの速度が低下するのを防ぐのに不十分なトルクを発生する場合、EMはモータとして機能し、ICEを駆動してICEの選択された所定の燃焼モード切替動作点を維持する。ICEの選択された所定の燃焼モード切換動作点が、移行中にICEの速度を増加させるようなトルクを発生する場合、EMは発電機として作用し、ICEに負荷をかけて、ICEの選択された所定の燃焼モード切換動作点を維持する。
【0015】
選択された所定の燃焼モード切換動作点は、バッテリーの充電状態および駆動輪における運転者の要求トルクのうちの少なくとも1つに基づいている。
【0016】
ICEは、移行インターバル中に新しい燃焼モードで動作するための準備を受ける。この準備には、ICEの吸気系統の温度調整、ICEの吸気系統の圧力調整、ICEに導入される吸気中の排気ガス割合の変更、ICEの圧縮比の変更、ICEへの空燃比の変更、ICEの燃料噴射タイミングおよび量の変更、ICEの点火タイミングの変更、ICEのバルブのバルブタイミングの変更のうち少なくとも1つが含まれる。CCは、準備が完了すると、新しい燃焼モードで動作するようにICEに命令する。
【0017】
現在の燃焼モードから新しい燃焼モードへの移行を指令するかどうかの決定は、新しい燃焼モードで動作するHEVの効率が、現在の燃焼モードで動作するHEVの効率よりも大きいことに基づいて行われる。
【0018】
現在の燃焼モードから新しい燃焼モードへの移行を指令するかどうかの決定は、さらに、運転者が要求するトルク、新しい燃焼モードでの安定した燃焼をサポートするためにICEが、ある実施形態では十分に温かいこと、または他の実施形態では十分に冷たいこと、およびバッテリーの充電状態のうちの少なくとも1つに基づいて行われる。
【0019】
いくつかの実施形態では、HEVは、EMが第1のEMであり、バッテリーに電気的に結合された第2のEMを含む直列構成である。HEVの駆動輪は、第2のEMに機械的に連結されている。
【0020】
他の実施形態では、HEVは、EMとICEとが機械的に連結された並列構成である。EMとICEの両方がHEVの駆動輪に機械的に連結されている。
【0021】
また、内燃機関(ICE)に機械的に連結された第1の電気機械(EM1)と、HEVの駆動輪に機械的に連結された第2の電気機械(EM2)と、EM1およびEM2に電気的に連結されたバッテリとを有する直列ハイブリッド電気自動車(HEV)を制御する方法が開示される。本方法は、現在の燃焼モードから新しい燃焼モードへの移行が、現在の燃焼モードと新しい燃焼モードとの間に生じる移行区間を伴って指令されるべきであると決定するステップと、移行区間中にICEを動作させるための複数の所定の燃焼モード切替動作点のうちの1つを選択するステップと、移行区間中に選択された所定の燃焼モード切替動作点を達成するようにICEに指令するステップと、移行区間後にICEを新しい燃焼モードに指令するステップとを含む。
【0022】
移行区間中、ICEは新しい燃焼モードで動作するように準備され、このような準備は、ICEの吸気内の温度を調整すること、ICEの吸気圧を調整すること、ICEの吸気内にリサイクルされる排気ガスの割合を調整すること、ICEの圧縮比を変更すること、ICEへの空燃比を変更すること、ICEの燃料噴射タイミングおよび量を含む燃料供給戦略を変更すること、およびICEのバルブタイミングおよびバルブのリフト量を変更することのうちの少なくとも1つを含む。
【0023】
ICEの選択された所定の燃焼モード切替動作点が、ICEの速度低下を防ぐのに不十分なトルクを生成する場合、EM1はモータとして機能し、それによってICEの選択された所定の燃焼モード切替動作点を維持するようにICEを駆動する。バッテリーはEM1に電力を供給してICEを駆動し、バッテリーはEM2に電力を供給して燃焼モード移行時にHEVの車輪を駆動する。
【0024】
ICEの選択された所定の燃焼モード切替動作点が、ICEの速度を上昇させるトルクを発生させる場合、EM1は発電機として機能し、ICEに負荷をかけてICEの選択された所定の燃焼モード切替動作点を維持する。バッテリーは、ICEに負荷をかけるためのEM1からの電力を吸収する。バッテリーとEM1は、燃焼モード移行時にHEVの車輪を駆動するために、適宜EM2に電力を供給する。
【0025】
また、内燃機関(ICE)に機械的に連結され、EM1とICEの両方がHEVの駆動輪に機械的に連結された第1の電気機械(EM1)と、EM1に電気的に連結されたバッテリーとを有する並列ハイブリッド電気自動車(HEV)を制御する方法が開示される。本方法は、現在の燃焼モードから新しい燃焼モードへの移行が、現在の燃焼モードと新しい燃焼モードとの間に生じる移行区間を伴って指令されるべきであると決定するステップと、移行区間中にICEを動作させるための複数の所定の燃焼モード切替動作点のうちの1つを選択するステップと、移行区間中に選択された所定の燃焼モード切替動作点を達成するようにICEに指令するステップと、移行区間後にICEを新しい燃焼モードに指令するステップとを含む。
【0026】
移行区間中、ICEは新しい燃焼モードで動作するように準備され、このような準備は、ICEの吸気内の温度を調整すること、ICEの吸気圧を調整すること、ICEの吸気内にリサイクルされる排気ガスの割合を調整すること、ICEの圧縮比を変更すること、ICEへの空燃比を変更すること、ICEの燃料噴射タイミングおよび量を含む燃料供給戦略を変更すること、およびICEのバルブタイミングおよびバルブのリフト量を変更することのうちの少なくとも1つを含む。
【0027】
ICEの選択された所定の燃焼モード切換動作点が、ICEの速度の低下を防止するのに不十分なトルクを生成する場合、EM1は、モータとして作用し、ICEを駆動し、それによってICEの選択された所定の燃焼モード切換動作点を維持する。EM1がモータとして機能する場合、バッテリーは、燃焼モード移行時にHEVのICEと駆動輪の両方を駆動するための電力をEM1に供給する。
【0028】
ICEの選択された所定の燃焼モード切換動作点が、ICEの速度を上昇させるトルクを発生させる場合、EM1は発電機として動作し、ICEに負荷を与えて、ICEの選択された所定の燃焼モード切換動作点を維持する。EM1が発電機として機能する場合、バッテリーはEM1の電力を吸収してICEに負荷をかける。ICEは、燃焼モード移行時にHEVの駆動EM1および駆動輪にトルクを供給する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1a図1a~dは、直列-並列ハイブリッド電気自動車の実施形態を概略的に示す図である。
図1b図1a~dは、直列-並列ハイブリッド電気自動車の実施形態を概略的に示す図である。
図1c図1a~dは、直列-並列ハイブリッド電気自動車の実施形態を概略的に示す図である。
図1d図1a~dは、直列-並列ハイブリッド電気自動車の実施形態を概略的に示す図である。
図2図2は、直列ハイブリッド電気自動車の概略図である。
図3図3は、内燃機関の単一シリンダの概略図である。
図4a図4a~cは、それぞれ、火花点火燃焼モード、火花アシスト圧縮点火燃焼モード、および均質充電圧縮点火燃焼モードを表す図である。
図4b図4a~cは、それぞれ、火花点火燃焼モード、火花アシスト圧縮点火燃焼モード、および均質充電圧縮点火燃焼モードを表す図である。
図4c図4a~cは、それぞれ、火花点火燃焼モード、火花アシスト圧縮点火燃焼モード、および均質充電圧縮点火燃焼モードを表す図である。
図5図5は、1つの燃焼モードから別の燃焼モードへの移行を示すフローチャートである。
図6a図6a~d、図7a、図7b、図8a、および図8bは、本開示の実施形態による、現在の燃焼モードから新しい燃焼モードへの例示的な遷移のグラフである。
図6b図6a~d、図7a、図7b、図8a、および図8bは、本開示の実施形態による、現在の燃焼モードから新しい燃焼モードへの例示的な遷移のグラフである。
図6c図6a~d、図7a、図7b、図8a、および図8bは、本開示の実施形態による、現在の燃焼モードから新しい燃焼モードへの例示的な遷移のグラフである。
図6d図6a~d、図7a、図7b、図8a、および図8bは、本開示の実施形態による、現在の燃焼モードから新しい燃焼モードへの例示的な遷移のグラフである。
図7a図6a~d、図7a、図7b、図8a、および図8bは、本開示の実施形態による、現在の燃焼モードから新しい燃焼モードへの例示的な遷移のグラフである。
図7b図6a~d、図7a、図7b、図8a、および図8bは、本開示の実施形態による、現在の燃焼モードから新しい燃焼モードへの例示的な遷移のグラフである。
図8a図6a~d、図7a、図7b、図8a、および図8bは、本開示の実施形態による、現在の燃焼モードから新しい燃焼モードへの例示的な遷移のグラフである。
図8b図6a~d、図7a、図7b、図8a、および図8bは、本開示の実施形態による、現在の燃焼モードから新しい燃焼モードへの例示的な遷移のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
当業者であれば理解できるように、図のいずれか1つを参照して図示および説明した実施形態の様々な特徴を、1つまたは複数の他の図に図示した特徴と組み合わせて、明示的に図示または説明されていない代替の実施形態を生成することができる。図示された特徴の組み合わせは、典型的な用途のための代表的な実施形態を提供する。しかしながら、本開示の教示と一致する特徴の様々な組み合わせおよび改変が、特定の用途または実施に対して所望され得る。当業者であれば、明示的に記載または図示されているか否かにかかわらず、同様の用途または実施態様を認識することができる。
【0031】
20年以上前に、ハイブリッド電気自動車(HEV)が市場に出始めた。この種の車両は、動力源として従来の内燃エンジン(ICE)を使用する。しかし、そのパワートレインには、トランスミッションやギアトレイン以外に、バッテリーと電気機械が組み込まれている。電気機械は、発電モード、すなわち、回生ブレーキの場合にエンジンまたは車両からの回転力を取り出してバッテリーに蓄えられる電力を生成する発電機として作動させることができる。その他の場合、電気機械は車両を駆動するモータとして作動し、車両を推進する動力源としてICEの一部または全部を代替する。バッテリーは、動作モードに応じて、電気機械からの電気エネルギーを蓄積したり、電気機械に電力を供給したりする装置である。
【0032】
図laは、ICE12と2つの電気機械22および24を含む直並列HEVの概略図である。駆動輪50に供給される推進力は、ICE12のみによって、またはクラッチ34が係合されているときにICE12と電気機械22とによって共に供給され得る。すなわち、ICE12またはICE12と電気機械22の両方が、シャフト31を介してクラッチ34の片側にトルクを供給する。係合されると、トルクは変速機40に接続されたシャフト36に伝達され、変速機40の出力シャフト42に伝達される。シャフト42はディファレンシャル44に接続し、ディファレンシャル44はハーフシャフト46に接続し、ハーフシャフト46は車輪50を駆動する(並列ハイブリッド構成)。このような運転モードでは、並列ハイブリッドは電気機械24なしで構成することができる。電気機械24がシャフト62を介してトランスミッション50に接続する場合。電気機械24は、クラッチ34が係合されているときにも、駆動輪50にトルクを供給することができる。あるいは、別の動作モードでは、クラッチ34が切り離され、駆動輪50への推進トルクが電気機械24によってのみ供給され、電気機械22がICE12に負荷をかけて電気機械24に供給する電力を生成し、バッテリー20を充電する(直列ハイブリッド構成において)。
【0033】
電気機械22と24の両方は、ケーブル26を介してバッテリー20に電気的に結合されている。電気機械22は、ギアセット30を有するシャフト60およびシャフト31を介してICE12に連結されている。電気機械22は、無負荷の場合、単にICE12と関連して回転しているだけである。負荷がかかっている場合、すなわち電気機械22が発電機モードである場合、電気機械22はICE12からトルクを引き出し、それによってバッテリー20に貯蔵される電気を生成する。電気機械22は、代わりに、クラッチ34が切り離されたときにICE12を始動させるためのモータとして機能するか、またはICE12が燃焼モードの移行を経ているときなどにICE12を駆動するためのモータとして機能することができる。これは、両方一緒に、または電気機械によって、またはICEのみによって駆動することができるため、並列HEVと呼ばれる。
【0034】
機械的ハードウェアに加えて、図laのHEVは様々な電子的ハードウェアも含む。エンジン電子制御ユニット(EECU)74がICE12に結合されている。ICE12の制御については、以下で詳しく説明する。バッテリーコントローラ76がバッテリー20に結合されている。バッテリーコントローラ76は、バッテリー20から、バッテリー20の個々のセルの温度および充電状態、ならびに充電中および放電中の電流および電圧レートに関する信号を受信する。これらのデータから、バッテリーコントローラは、バッテリーを保護するための動作パラメータを決定する。このような情報は、場合によっては、バッテリー20の放電または充電の速度を制限するため、またはバッテリー20の充電状態を示すために使用され、HEVの動作モードに影響を与える。第1の電気機械コントローラ78が電気機械22に結合され、第2の電気機械コントローラ80が電気機械24に結合されている。コントローラ78および80は、それぞれの電気機械が発電機として動作しているかモータとして動作しているかを制御し、巻線に供給される電流量を制御して、電気機械によって提供されるトルクのレベルまたは電気機械によって吸収されるトルクのレベルを制御する。変速機制御82は、変速機40に電子的に結合されている。多くの制御の場合、コントローラが通信する信号は、実際にはデバイスドライバと通信し、所望の制御に影響を与える。このようなデバイスドライバは当業者にはよく知られており、ここでは分かりやすくするために別途図示しない。もちろん、コントローラ72、74、76、78、80、82は、別個のユニットとすることも、単一のコントローラまたは重複する機能を有する複数のコントローラに組み合わせることもできる。コントローラは、車両システムコントローラ(VSC)90にグループ化されて示されている。また、入力70が調整コントローラ72に供給される様子が示されているが、このような図示は限定を意図するものではない。入力70は、コントローラのいずれかに直接供給されてもよく、VSC90のすべてのコントローラは、データの共有を可能にするように相互接続されている。決定すべき事項の多く、例えば、トランスミッション40の適切なギヤは、エンジン回転数、電気機械22が発電機/モータモードであるかどうかなどの他の要因に依存し、他の要因も相互に関連するため、調整コントローラ72も設けられる。調整コントローラ72は、他のすべてのコントローラと通信する。さらに、調整コントローラには、ほんの一例として、温度、圧力、アクセルペダル位置、湿度、ナビゲーション情報などの他の入力70が提供される。あるいは、入力70は、関連するコントローラに直接提供されてもよい。例えば、湿度は、EECU74のみに関連し、そのようなコントローラに直接提供されるかもしれない。入力70は、代替的にセンサーと呼ばれる。
【0035】
図lbにおいて、代替HEVは、2組の駆動輪150および152を有する。車輪152は、モータモードで電気機械124によってのみ駆動され、または電気機械124が発電機モードで動作する場合、電気機械124は車輪152を制動することができる。電気機械124は、シャフト162、ディファレンシャル164、ハーフシャフト166を介して車輪152に接続する。車輪150は、ICE112と電気機械122の一方または両方によって駆動される。ICE112は、クラッチ133とクラッチ164とが係合し、それによってシャフト131と132とが連結されると、車輪150を駆動する。シャフト132はギアセット130とシャフト160を介して変速機140に接続され、変速機140はシャフト142を介して差動装置144に接続される。ディファレンシャル144は、ハーフシャフト146を介して駆動輪150に接続される。電気機械122は、クラッチ133が係合されるとICE112に連結される。電気機械122とICE112との間には、シャフト160、131、132を介してギアセット130が設けられている。電気機械122および124は、ケーブル126を介してバッテリー120に電気的に結合されている。図laと同様に、図lbのHEVは、ICEコントローラ174、バッテリーコントローラ176、電動機コントローラ178および180、トランスミッションコントローラ182、および協調コントローラ172を備える。このようなコントローラは、それぞれの要素、例えばバッテリーコントローラ176とバッテリー120とに、直接またはデバイスドライバを介して間接的に電子的に結合されている。図lbに示されるようなこのような配置は、クラッチ133が切られているときにはもっぱら電気機械122および124によって車輪150および152を駆動し、クラッチ133が係合されているときにはもっぱらICE112によって車輪150を駆動し、電気機械122が受動的である、すなわち、電気機械122のコイルに電流が供給されないので、電気機械122が回転する間は、システム内の摩擦を除いて、ICE112を駆動することも負荷をかけることもない。そして、電気機械122、124とICE112の両方を同時に用いて車両を駆動することができる。電気機械124が排除された実施形態では、並列HEVが形成される。クラッチ164が切り離され、クラッチ133が係合され、HEVが電気機械124のみによって推進される実施形態では、直列HEVを形成する。
【0036】
図lcでは、車輪250と252の両方のセットが駆動可能な代替HEVが示されている。車輪252は、モータモードで電気機械224によってのみ駆動されるか、電気機械224がジェネレータモードで作動するとき、電気機械224は車輪252を制動することができる。車輪250は、シャフト232とシャフト236を結合するクラッチ233が係合したときに、ICE212によって駆動される。シャフト236は、車輪250に連結されたハーフシャフト246に連結されたディファレンシャル244にシャフト242を介して連結されたトランスミッション240に連結されている。電気機械222は、ベルト駆動システム260を介してICE212に結合されている。ベルト駆動システム260が歯付きベルトであれば、ICE212が電気機械222を駆動することも、電気機械がICE212を駆動することも可能である。図laと同様に、代替実施形態において、電気機械224が排除される場合、結果として生じる構成は、純粋な並列HEVである。クラッチ233が切り離され、HEVが電気機械224によって推進される実施形態では、もっぱら直列HEVを形成する。
【0037】
図lcのHEVは、EECU274、バッテリーコントローラ276、電気機械コントローラ278および280、トランスミッションコントローラ282、およびセンサからの入力270を有する協調コントローラ272を備えている。
【0038】
図Idにおいて、代替HEVは、ICE312、電気機械322、電気機械324および車輪350が機械的に接続された遊星ギアセットギアトレインを有する。車輪350は、ICE312と電気機械324の両方によって同時にまたは個別に駆動することができる。直列ハイブリッドモードでは、発電機モードの電気機械322をICE312によって駆動して、電気機械324に電力を供給したり、バッテリー320を充電したりすることができる。並列ハイブリッドモードでは、電気機械324とICE312の両方が遊星歯車列を介して車輪350を推進することができる。遊星ギアトレインは、シャフト342、ディファレンシャル344、およびハーフシャフト346を介して車輪350に接続される。
【0039】
図Idのコントローラの状況は、図la~cのコントローラの状況と類似している。図IdのHEVは、EECU374、バッテリーコントローラ376、電気機械コントローラ378および380、ならびにセンサからの入力370を有する協調コントローラ372を有する。
【0040】
図la~dのHEVは、並列モードで運転することができ、これは、ICEと電気機械がともに車両を推進できることを意味する。HEVは、図la~lcのようにクラッチを介してエンジンと駆動輪との機械的な接続が切断される直列モードで運転することも、図Idのように動力分割機構と制御によって車輪がエンジンによって駆動されないようにすることもできる。
【0041】
直列構成では、エンジンと車両駆動系が直接機械的に接続されることはなく、レンジ・エクステンダーと呼ばれることもあり、車両は電気機械だけで駆動される。このようなシステムは図2に示されており、車輪450はモーター走行モードで電気機械424によってのみ駆動される。回生ブレーキなどの特定の動作モードでは、電気機械424は発電機モードで動作する。電気機械は、シャフト442、ディファレンシャル444、およびハーフシャフト446を介して車輪450に接続される。ICE412と電気機械422は、シャフト431および460ならびにギアセット430を介して連結されており、ICE412が電気機械422を駆動して電力を生成し、電気機械422に供給するとともにバッテリー420を充電する。車輪450は、モータモードの電気機械424によってのみ駆動される。あるいは、電気機械424がシャフト436を介して発電機モードで作動するとき、電気機械424は車輪450を制動することができる。シャフト436は電気機械424をギアトレイン440に接続し、ギアトレイン440はシャフト442を介してディファレンシャル444に接続する。ディファレンシャル444は、ハーフシャフト446を介して駆動輪450に接続される。電気機械422および424は、ケーブル426を介してバッテリー420に電気的に結合されている。図laと同様に、図2のHEVは、エンジンコントローラ474、バッテリーコントローラ476、電気モータコントローラ478および480、ならびに協調コントローラ472を備えている。このようなコントローラは、それぞれの要素、例えばバッテリーコントローラ476とバッテリ420とに、直接またはデバイスドライバを介して間接的に電子的に結合されている。図2の配置は、電気機械424のみによって駆動輪450に推進力を提供することを可能にする。
【0042】
図la~dおよび図2のすべての電子制御装置は、個別のユニットとして示されている。これらは一緒に収容することができる。あるいは、単一のコントローラを使用して、離散的に示された2つ以上のコントローラの機能を管理することもできる。あるいは、離散的なコントローラの1つの機能を、2つのコントローラで共有することもできる。本出願の目的上、図la~dおよび図2に示す処理能力は、車両システムコントローラ(VSC)(図laの90、図lbの190、図lcの290、図Idの390、および図2の490)とみなすことができる。
【0043】
VSCは、互いに通信可能な複数のコントローラから構成される。複数のコントローラのうちの1つは、他のコントローラを調整する調整コントローラ(CC)である。
【0044】
図la~dまたは図2のいずれにもそのように図示されていないが。他の実施形態では、図la~d及び図2の複数の電子コントローラの機能は、処理ユニットの任意の適切な組み合わせによって提供される。
【0045】
当業者には、電子コントローラが、HEVの様々な要素を管理するデバイスコントローラに信号を提供することが知られている。例えば、ICEに供給される燃料量を制御するEECUからの信号は、信号電圧レベルであり、燃料噴射装置にパルス幅を指令する電気的能力を有するデバイスドライバに供給される。当業者であれば、制御を調整する多数のコントローラを意味するVSCは、バッテリーやICEなどのHEVの要素を制御するための中間デバイスに信号を供給しているに過ぎないと考える。
【0046】
上述したハイブリッドシステムのバッテリーが外部から充電できない場合、それらはハイブリッド電気自動車(HEV)と呼ばれる。上述したハイブリッドシステムのバッテリーが外部電源によって充電可能であり、上述したハイブリッドシステムの電気機械が車両を駆動するのに十分なパワーを有する場合、それらはプラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)と呼ばれる。ここで、HEVという用語は、従来のHEVとPHEVの両方を指し、両者ともICEとEMに依存しており、唯一の違いは、電気プラグを介してバッテリーを上乗せできることと、場合によってはバッテリー容量である。
【0047】
低速での高トルク出力、スムーズな速度制御、高速応答時間、高効率など、車両の駆動力需要に対応する上で、電気機械を使用する車両には明らかな利点がある。また、電気機械は、道路や交通状況に基づいて出力パワーを大きくかつ迅速に変化させるという運転者のランダムな要求に、よりよく応えることができる。
【0048】
現在の(プラグイン)ハイブリッド電気自動車は、主にSIガソリンエンジンまたはClディーゼルエンジンを使用している。電気機械はモータ/発電機として、バッテリーは電気エネルギーの貯蔵と放電のために使用される。ICEは、低燃費運転ポイントで作動するように調整されている。電気機械は、駆動輪で推進力を得るためにICEを補うか、または他の運転ポイントでは、車両の減速や制動など、車両からエネルギーを回収するために発電機として作動する。都市部では、ハイブリッド電気自動車の燃料消費量は、従来のエンジン車よりも大幅に低くなる可能性がある。プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)の中には、完全電気航続距離(AER)を持つものがあり、炭化水素燃料の代わりに電力網からの電気エネルギーが自動車の駆動に使用されるため、燃料消費がさらに削減される。
【0049】
図3は、内燃エンジン(ICE)500の単一シリンダを概略図で示している。500を概略図で示している。このようなICEは、前述の図のICE12、112、212、312、および412の代替の1つである。図la-dおよび図2のHEVのエンジンは、多気筒エンジンである可能性が高い。図3の概略図では、分かりやすくするために、そのようなエンジンのシリンダを1つだけ示している。ICE 500は、吸気通路530、排気通路540、およびターボチャージャ550を備えている。ICE500は、シリンダブロック510とシリンダヘッド520を有する。シリンダブロック510内には、ピストン502が往復運動するシリンダ511がある。燃焼室509は、シリンダヘッド520、ピストン502の頂部、およびシリンダ511の表面によって画定される。
【0050】
シリンダヘッド520には、吸気ポート503と排気ポート504がある。吸気ポート503は燃焼室509に吸気を供給する。排気ガスは、排気ポート504を通じて燃焼室509から排出される。燃焼室509への出入りは、吸気ポート503の吸気ポペット弁505と排気ポート504の排気ポペット弁506を介して制御される。
【0051】
カム575が吸気弁505を開閉する。同様に、カム576が排気弁506を開閉する。カム575および576は、それぞれカムシャフト577および578に結合されている。いくつかの実施形態では、カムシャフト577および578は、クランクシャフト(図3には示されていない)と固定された関係で回転する。可変バルブタイミング実施形態では、カムシャフト577および578は、そのクランクシャフト上のカムの開閉時間が調整可能であるように、クランクシャフトから独立して移動するある限定された権限の範囲を有する。
【0052】
シリンダヘッド520は、中央に配置された点火プラグ507を有する。点火プラグ507は、燃焼室509内の他の位置に配置することができる。
【0053】
図3の実施形態では、吸気を加圧するためにターボチャージャ550が設けられている。本開示の発明者によって企図される他の実施形態では、内燃機関は加圧されず、ターボチャージャ500および関連ハードウェアが省略される。ターボチャージャ550は、コンプレッサ551、タービン552、およびコンプレッサ551とタービン552とを結合するシャフト553を含む。排気ガス中のエネルギーは、排気通路540に配置されたタービン552によって取り出される。シャフト553を介して、コンプレッサ551は回転させられ、それによって吸気通路530内の吸気を加圧する。吸気通路530はまた、吸気フィルター531(吸気からエンジン500に害を及ぼす可能性のある不要な粒子または液滴を除去するためのもの)、エアフローメータ532(空気通路530を通過する空気の量を測定するためのもの)、圧力センサ536、スロットル533(ICE500に流入する空気の量を制御するためのもの)、およびインタークーラ534(コンプレッサ551を介して加熱された吸気を冷却するためのもの)を備える。
【0054】
いくつかの用途では、エンジン500は、吸気加熱が望ましい燃焼モードで動作する。吸気通路530には吸気ヒータ539が配置されている。
【0055】
図3において吸気ポート503のすぐ上流に示されている吸気通路530には、燃料インジェクタ508が配置されている。他の実施形態では、燃料インジェクタ508は吸気ポート503に配置される。これらの位置のいずれにおいても、燃料インジェクタ508は比較的低圧のインジェクタである。さらに他の実施形態では、燃料噴射装置508の先端が燃焼室509内に位置する高圧噴射装置である。このような構成は直接噴射と呼ばれる。いくつかの実施形態では、吸気通路530内に位置する燃料噴射装置と燃焼室509内に位置する燃料噴射装置の両方が設けられている。このような構成は、使用される特性の異なる燃料の使用に対応するだけでなく、いくつかの燃焼モード制御アプリケーション(SACIなど)のための異なる燃料噴射戦略の使用にも対応する。
【0056】
スロットル533とコンプレッサ551との間の吸気通路530には、吸気通路530内の過給圧を測定するための圧力センサ536が設けられている。いくつかの実施形態では、圧力センサは、スロットル533の下流の吸気通路にも設けられる。
【0057】
触媒コンバータ541が、タービン552の下流の排気通路540に設けられる。他の実施形態では、リーンNOxトラップまたは粒子フィルターなどの他の排気後処理装置が、触媒コンバータ541の代わりに、または触媒コンバータ541に加えて排気通路540に設けられる。
【0058】
いくつかの実施形態では、ICE500は、吸気再循環バルブ561を備えた吸気循環通路560を有する。バルブ561は、コンプレッサ551から受け取った空気の圧力が望ましい圧力よりも高い場合に開かれる。
【0059】
ICE500は、バイパス通路570に配置されたウェイストゲートバルブ弁571を有する。バイパスは、タービン552の上流側で排気通路540に接続し、タービン552の下流側で排気通路540に接続する。ウェイストゲートバルブ571は、タービン552に供給される圧力を制御し、それによってターボチャージャ550のタービン552の回転数を適切なレベルに制御する。
【0060】
ICE500は、排気通路540(タービン552の下流)を吸気通路530(コンプレッサ551の上流)に結合するEGR通路580、排気から吸気に流れるEGRの量を制御するEGRバルブ582、およびEGRクーラー581を含む排気ガス再循環(EGR)システムも備える。EGRは、シリンダ509内の燃焼温度を低下させ、窒素酸化物(NOx)の生成を抑制するための措置として、吸気を排気ガスで希釈するために使用される。EGRはまた、スロットル損失のレベルを下げることによってエンジン効率を向上させる。また、燃焼モードによっては、燃焼速度を制御するために吸気混合気の排気ガス希釈が必要となる。急速すぎる燃焼(自動着火)は、サイクルの不適切な時期に発生するため、騒音が大きく、逆効果になることがある。さらに、自動着火は燃焼室表面の過熱につながり、これを放置すると表面が溶けてエンジン500が破壊される可能性がある。
【0061】
EGRクーラー581は、吸気中の再循環排気流の温度を低下させるので、燃焼イベントによるNOxの発生が少なくなり、NOxは温度に敏感であることが知られている。
【0062】
ICE500は、エンジン電子制御ユニット(EECU)574を含む。エンジン電子制御ユニット(EECU)574は、センサからの信号を受け、センサデータに基づいて所望の動作点を計算し、エンジンに関連するアクチュエータに動作を指令する。信号は、エアフローセンサ532、吸気圧センサ536、およびその他のセンサ592から供給される。その他のセンサには、エンジン回転数およびエンジン位置が決定されるエンジンクランクアングルセンサ、車両を推進するための運転者の希望を決定するアクセルペダルポジションセンサ、ブレーキペダルセンサ、湿度センサ、温度センサ(エンジンクーラント、空気温度、EGR温度など)、圧力降下センサ(エアフィルタ531の向こう側など)、圧力センサ、バルブポジションセンサなどのいずれかが含まれる。自律走行モードでは、エンジンの所望の動作点は、別のコントローラを介して、またはEECU574内で決定されてもよい。EECU574は、トランスミッションコントローラ、電気機械コントローラ、バッテリーコントローラなどの他のコントローラと通信してもよい。いくつかの実施形態では、協調コントローラさえも含まれる。
【0063】
EECU574に提供されるセンサデータおよび他の情報に基づいて、エンジン500の適切な動作点、例えば、燃料噴射タイミングおよび量、点火プラグ507のタイミング、スロットルバルブ553の位置、EGRバルブ582の位置、ウェイストゲートバルブ571の位置、吸気再循環バルブ561の位置、ヒータ539を介した吸気加熱、ポペットバルブ505および506の開閉時間などを決定する。
【0064】
アクセルペダル594は、コントローラ574に信号を供給する。このようなコントローラ574は、EECU(図laの74、図lbの174、図lcの274、図Idの374)である。アクセルペダル594は、車両の運転者が車両を推進させる意思を示す方法である。あるいは、自律走行車では、車両は、所望のルートと、交通量や障害物などの他の入力に基づいて制御される。従来のHEVでは、車両運転者はアクセルペダル594を介して所望の速度を伝達する。アクセルペダル信号が結合されたコントローラは、その要求を所望のトルクに変換し、このトルクは、ある動作モードにおいて、コントローラ574のトルク要求信号にさらに変換することができる。オペレータがアクセルペダルを戻して減速すると、所望のトルクが減少し、車両が減速する。オペレータがアクセルペダルを踏み込むと、所望のトルクが増加し、車両はスピードアップする。
【0065】
上記で簡単に述べたように、ICE500は複数の燃焼モードで運転することができ、そのうちのいくつかは、従来の火花点火(SI)運転よりも燃料消費を大幅に減少させる。SIと他の燃焼モード間の移行を支援するためにHEVがどのように使用されるかを説明する前に、代替燃焼モードについて以下に説明する。
【0066】
圧縮着火(Cl)エンジンと同様に、燃焼は圧縮ストローク中にガスを圧縮することで発生する高温から自然発生する。また、圧縮着火エンジンのようにスロットルはなく、シリンダーに空気がフルチャージされる。SIエンジンでは、燃焼室内に燃料と空気の正確な比率が存在するように、エンジンに導入される空気の量がスロットルバルブによって制御される。HCCIエンジンはスロットル制御を避けることで、Clエンジンに近い燃費を実現している。燃焼を開始する時間は、混合気の温度が自動着火温度まで上昇する時間によって制御されるが、この制御は比較的難しい。混合気 は予混合されリーンであるため,HCCI による燃焼では煤や NOx はほとんど発生しない。
【0067】
HCCI 燃焼は、一般に中負荷および低負荷条件でのみ使用できる。これは、エンジン負荷と混合気の燃料濃度があるレベルまで上昇すると、燃焼が荒くなり、騒音が発生するからである。ICEからのトルク要求がHCCIに適した運転範囲を超えると、SIまたは他の燃焼モードに移行する。また、HCCIはエンジン本体温度が低く、冷たい壁への熱伝達損失が大きいため、ICEの冷間始動時には適さない。SI燃焼は、ICEが十分に暖機され、要求される動作点がHCCIに適している場合にHCCIに移行する冷間始動時に適切である。
【0068】
HCCIの燃焼制御を実現するために、さまざまな技術的アプローチがある。自動着火制御(CAI)と呼ばれる1つの解決策は、低負荷条件下で吸気バルブと排気バルブの開閉時間を変更し、追加の排気ガスがシリンダ内に閉じ込められるようにすることである。高温の残留排気ガスが大量に存在することで、シリンダ内の混合ガスの温度が上昇し、ICEの圧縮行程の適切な時期に自動着火温度に達することができ、自然燃焼が発生する。
【0069】
最適化キネティックプロセス(Optimized Kinetic Process: OKP)と呼ばれる別の解決策は、エンジンの圧縮比を約15:1に高め、排気ガスと冷却水の熱を利用して吸入空気を加熱し、加熱されていない吸入空気とともにシリンダに入ることである。2つの空気流の比率を制御することで、吸気温度を素早く調整し、HCCIの燃焼時間を制御することができる。ベンチテストにより、この方式は燃料消費を大幅に削減できることが証明されており、HCCIの作動範囲も比較的広く、自動車エンジンで一般的に使用される中・低負荷条件をカバーすることができる。
【0070】
HCCIに関連する別の燃焼モードである火花アシスト圧縮着火(SACI)は、HCCIよりも高トルクで使用でき、火花アシストを使用する。 空気と燃料の混合気の温度を、着火して火炎伝播を達成できる臨界温度以上(まだ自己着火温度未満)にし、スパークプラグで着火する。点火された混合気は火炎を伝搬してより多くの混合気を燃焼に参加させて熱を放出し、シリンダ内の圧力と温度をさらに上昇させ、残った未燃混合気は自動着火温度に達して自然燃焼する。この「点火誘起均質チャージ圧縮点火」燃焼モードは、HCCIとSIの2つの燃焼モード間の移行モードとして使用することができる。
【0071】
「着火誘導均質チャージ圧縮着火」に必要な最低混合気温度を低減し、燃焼制御に必要な混合気の温度範囲を拡大するために、点火プラグ近傍の混合気を局所的に濃縮することができる。このため、シリンダ内の圧縮サイクル中に少量の燃料噴射を実現することができる。
【0072】
さらに,可変圧縮比の使用,デュアル燃料の使用など,他のHCCI方式もある。シリンダ内の温度、ひいてはHCCIエンジンにおける点火のタイミングは、吸気温度を加熱することによっても補助することができる。
【0073】
HCCI および SACI 燃焼モードは、燃料消費量の大幅な削減が期待でき、フリート車両に搭載されてテストされているが、燃焼制御の技術的な難しさのため、市販には至っていない。
【0074】
HCCIの制御はより複雑で困難であるため、従来の燃焼モードからHCCIモードへの切り替えには、燃焼モード切り替え戦略と制御アルゴリズムを事前に慎重に研究し、制御装置が適切な命令を発行できるように明確に理解し、エンジン制御作動装置を段階的に調整させる必要がある。しかし、モード切替前のエンジン作動点とエンジン熱状態は無制限である。そのため、可能性のある全ての切替点を事前に入念に調査することは手間がかかりすぎ、自動車製品に多燃焼モードエンジンを適用する際の大きな困難となっている。
【0075】
上記の理由に基づき、自動車製品への多燃焼モードエンジンの応用を実現するために、効果的で、信頼性が高く、安定した、実用的なエンジン燃焼モード切替戦略と制御アルゴリズムを見つける必要がある。
【0076】
図4a~cを参照すると、いくつかの燃焼モードが比較されている。図 4a では、SI 燃焼が示されている。燃焼室600にはスパークプラグ602があり、スパークカーネル604を生成する。燃焼室600内の混合気は、かなり高濃度の燃料606を有するものとして図示されている。燃焼室600の下には、上死点(TDC)およびその少し先で終了する圧縮ストロークを通じた下死点(BDC)前から始まる事象の時系列が示されている。燃料はBDCの前に噴射され、燃料と空気のほぼ均一な混合気を確保するための予混合時間を提供する。燃料噴射時間はブロック620として図示されている。火花点火624はTDCの直前に行われる。SACI燃焼は図4bに示されており、火花カーネル604と2つの燃料混合領域(燃料リッチ領域610と燃料リーン領域608)が示されている。イベントのタイミングを示す図の下部では、燃料の一部がBDCの前である630で噴射される。別の少量の燃料が632でTDC近くに噴射される。630で噴射された燃料は予混合気608を生成し、632で噴射された燃料はスパーク604付近のリッチ領域610を生成する。図4cでは、HCCIが示されている。シリンダ600内は非常にリーンな混合気612である。HCCIではスパークはない。イベントのタイミングでは、BDCの前にシリンダ600に燃料が供給されることを示している。いくつかのHCCI動作点では、混合気の圧縮後に混合気が自動着火するのに十分な暖かさになるように、吸気が加熱される。HCCIに適した範囲を持つ他の動作点では,適切な燃焼のために混合気の吸気加熱はより少ないか全く必要ない。図示されていませんが、燃焼モード移行時に吸気温度や圧縮比などのエンジン制御パラメータを調整するために、燃料噴射や火花点火を行わずに電気機械でエンジンシャフトを回転させるという方法もある。この場合、車両は電気機械のみによって推進される。
【0077】
本明細書ではHCCI燃焼とSACI燃焼について説明するが、多くの車両メーカーが、若干の相違はあるものの、これらの燃焼モードに関連する効率的な燃焼モードを研究している。本開示の発明者は、任意の燃焼モード切り替えを企図している。
【0078】
本開示によれば、少なくとも1つの電気機械、少なくとも1つのバッテリー、およびマルチ燃焼モードエンジンを含むHEVは、EMおよびICE、ならびにバッテリーを統合することによって相乗効果を達成するために固有の特性を利用し、EMおよびICEの協調制御によって安定した動作点であることが知られている移行中のエンジン動作点にアクセスする。移行中、ICEからの出力トルクは、車両のオペレータ(オペレータは、車両を運転する人または自律コントローラであってもよい)からのトルク要求に従う必要がない。
【0079】
現在の燃焼モードから新しい燃焼モードへの移行を指令するかどうかの決定は、新しい燃焼モードで動作するHEVの効率が、現在の燃焼モードで動作するHEVの効率よりも大きいこと、運転者の要求トルク、新しい燃焼モードでの安定した燃焼をサポートするためにICEが、ある実施形態では十分に暖かいこと、または他の実施形態では十分に冷たいこと、およびバッテリーの充電状態のうちの少なくとも1つに基づいて行われる。例えば、コールドスタート後にICEを作動させる場合、燃焼が不安定になるため、ICEが十分に暖まるまでHCCI燃焼にアクセスできない可能性がある。別の例では、湿度は、火花によって開始されない燃焼モード、すなわち自動着火に大きな影響を与える。高湿度環境では、燃焼が不安定になるため、HCCI燃焼やSACI燃焼をまったく行えない場合もある。
【0080】
両者が機械的に連動している場合、EMとICEの協調制御により、ICEの出力トルクまたは出力は、燃焼モード切替操作、すなわち遷移の間、駆動輪のトルクとはほとんど無関係である。移行中、EMの作用下にあるICEは、現在のICEの動作点から同じ燃焼モードの燃焼モード切替動作点まで動作するように指令される。
【0081】
ICEの燃焼モード切替動作点は、システム開発中に事前に決定されたICEの回転速度とトルクからなる単一または限られた数のICE動作点とすることができる。異なるICEの動作状態に基づいて、1つの所定の燃焼モード切替動作点を選択することができる。現在のICEの動作点から、選択された所定の燃焼モード切換動作点を達成することによって、ICEは、システム開発中に予め決定されたICE燃焼モード切換移行制御戦略に従って、移行区間中に新しい燃焼モードで動作するための準備を受ける
【0082】
現在の燃焼モードから新しい燃焼モードへICEを動作させるための準備は、ICEの少なくとも1つの調整または制御を含む:ICEの吸気温度、ICEの吸気システム内の圧力、ICEに導入される吸気中の排気ガス割合、ICEの圧縮比、ICEへの空燃比、ICEの燃料噴射タイミングと量を含む燃料供給戦略、ICEの点火タイミング、およびICEのバルブタイミングとバルブのリフティングの変更。
【0083】
ICEの選択された所定の燃焼モード切換動作点が、ICEの速度が低下するのを防止するのに不十分なトルクを生成する場合、EMは、モータとして作用し、ICEを駆動し、それによってICEの選択された所定の燃焼モード切換動作点を維持する。
【0084】
選択された所定の燃焼モード切換動作によってICEの速度が上昇するようなトルクが発生すると、EMは発電機として機能し、ICEに負荷をかけてICEの選択された所定の燃焼モード切換動作点を維持する。
【0085】
燃焼モード切換の準備を完了し、ICEの燃焼モード切換移行制御戦略に従うことによって、ICEの動作が新しい燃焼モード切換条件を満たした後、ICEは新しい燃焼モードで動作するように命令される。
【0086】
ICE は、新しい燃焼モード範囲で運転される。ICEの動作点は、新しい燃焼モードの下で、必要に応じて任意の目標動作点に制御することができる。
【0087】
燃焼モード切換移行時には、シリンダ内のガス仕事量が変動するなど、ICEの動作に異常が生じる可能性があり、ICEの回転速度やトルクを含むICE出力が不安定になったり、変動したり、あるいは中断したりする可能性がある。しかし、EMとICEが機械的に連結されている場合、EMとバッテリーの協調制御により、EMとバッテリーがそれらの変動や中断を吸収、補償、抑制し、必要な燃焼モード切替操作点、すなわちICEの回転速度とトルクを維持することができる。従って、本発明は、スムーズな燃焼モード切り替えを保証するだけでなく、ICEとEM、および車両の駆動輪に接続された追加のEM(複数可)の合計出力パワーまたは結果としてのトルクを保証して、車両の駆動パワーまたはトルクの要求を満たす。
【0088】
さらに、ICEは、燃焼およびエミッション制御が困難な動作領域または閾値を回避するために、効率的で安定した動作範囲または限定された動作点で制御することができる。例えば、HCCI燃焼モードにおけるICEの動作点が、図6bに示されるSACIとHCCIの重複領域664のように、その動作範囲の上限または下限閾値に近い場合、燃焼の制御および排出ガスの後処理が困難になる。
【0089】
所定の燃焼モード切換動作点の数が限られているため、システム開発中に予め必要とされる1つのICE動作点、または限定された少なくとも1つの動作点を選択し、燃焼モード切換戦略および制御アルゴリズムを慎重に最適化することが可能である。例えば、燃焼モード切替時のICE燃焼モード切替点またはICE熱条件のわずかな偏差に対処する方法として、ICE制御装置またはアクチュエータのシーケンス調整を選択的に実行するための複数の制御命令セットを開発することが含まれるが、これに限定されない。燃焼モード切り替え操作の完了後、ICEは新しい燃焼モードで運転される。
【0090】
次に図5を参照すると、ある燃焼モードから別の燃焼モードへの移行に関与するプロセスがフローチャートで示されている。このプロセスは、750で開始され、ガソリンエンジンでは図4aに示されているような通常の火花点火モードである可能性が高い第1の燃焼モードでウォームアップされる。ICEがウォームアップされると、制御はブロック754に進み、新しい燃焼モードでの要求トルクが所望されるかどうかが判断される。否の場合、制御はブロック754に戻り、燃焼モード移行が所望されるかまたは推奨されるまで待機し続ける。イエスの場合、制御はブロック756に進み、選択された所定の燃焼モード切換移行動作が指令される:ICEと第1のEMとを機械的に連結し、第1のEMの作用下でICEを選択された所定の燃焼モード切換動作点に協調制御する。選択された所定の燃焼モード切替動作点は、ICEが、移行区間中のICE制御装置および動作パラメータ調整を含め、所望の新しい燃焼モードで動作する準備をすることができるものである。選択された所定の燃焼モード切替動作点を達成するために、ICEは要求されたトルクを提供しなくてもよい。
【0091】
ICEによって提供されるトルクが要求よりも大きい場合、第1のEMは、ICEに負荷をかけるために発電機として機能する。ICE によって提供されるトルクが要求より小さい場合、第1の EM は ICE を駆動するモータとして動作する。ICEがトルクを提供しない(燃料供給をカットする)場合、第1のEMは、所定の回転数およびゼロトルクで、ICEの選択された所定の燃焼モード切替点までICEを駆動する。並列ハイブリッドでは、ICEと第1のEMが共同で車両を推進し、第1のEMがICEのトルク出力と車両要求トルクのトルク差を補償または吸収する。直列ハイブリッドの場合、バッテリーと第1のEMは共同で車両を推進する第2のEMに電力を供給し、バッテリーは第1のEM出力と第2のEM要求(車両要求)の間の電力差を供給または吸収する。
【0092】
ICEが選択された所定の燃焼モード切替動作点で安定に動作している場合、制御はブロック760に進み、ICEは、所望の新しい燃焼モードを動作させるための条件を満たすようにICE制御デバイスおよび動作パラメータを調整することによって、所望の新しい燃焼モードで動作するための準備を受ける。準備には、ICEの吸気温度、ICEの吸気システム内の圧力、ICEに導入される吸気中の排気ガス割合、ICEの圧縮比、ICEへの空燃比、ICEへの燃料噴射タイミングおよび量を含む燃料供給戦略、ICEの点火タイミング、およびICEのバルブタイミングおよびバルブのリフト量の変更の少なくとも1つの調整が含まれる。
【0093】
準備が完了すると、制御はブロック762に渡され、このブロック762では、ICEが新しい燃焼モードに切り替える準備ができているかどうかが判定される。いいえ」の場合、制御はブロック760に戻り、燃焼モードの切り替え条件が整うまで準備を続ける。はいの場合、制御はブロック764に進み、ICEに新しい燃焼モードで動作するよう命令する。
【0094】
ブロック764でのICEの動作の間、制御はブロック754に進み、要求されたICEのトルクが新しい燃焼モードが望まれることを示しているかどうかを判断し続ける。ノーであれば、ICEはブロック764で現在の燃焼モードで動作し続ける。イエスの場合、制御はブロック756に進む。
【0095】
移行間隔は、数サイクルの非常に短い期間とすることができる。例えば、いくつかの燃焼モード切り替えでは、吸気マニホールド内の圧力を上昇させる必要があり、これには数ICE回転が必要である。別の例では、HCCI燃焼への移行において、吸気マニホールドは電気抵抗加熱または他の加熱手段によって加熱され、これには数秒を要することがある。制御はブロック760から762に進み、新しい燃焼モードでの燃焼をサポートするために変更されるべきICEのパラメータが、必要な変更を達成したかどうかが判断される。すなわち、ICEは、新しい燃焼モードに安定的に切り替える準備ができているか。もしそうでなければ、制御は移行モードを継続するためにブロック760に渡される。このループは、新しい燃焼モードでの安定した燃焼をもたらす吸気温度、有効圧縮比、吸気圧力、排気ガス再循環などのパラメータが達成されるまで続けられるので、制御は、ICEに新しい燃焼モードへの変更を指令するためのブロック764にパスする。制御はブロック754に戻り、別の移行が望まれることを示すトルクの変化を待つ。この場合も、移行を行うべきであるという指示がない場合、制御は、ブロック754で肯定的な結果が得られるまで、動作中の燃焼モードに留まる。
【0096】
図6aでは、典型的なSIエンジンの動作範囲が、エンジントルク646対エンジン回転数648のグラフで示されている。ICEが回転数の関数として発現できる最大トルクは、曲線650として示されている。最低エンジン回転数652と最高エンジン回転数654の間の曲線650の動作範囲は、SI燃焼でアクセスすることができる。しかし、前述したように、可能であれば、より高い燃料効率の燃焼モードで運転することが望ましい。図6bでは、SI範囲(囲み傍線648、650、652、654)の上に重畳して、低トルクレベルでのHCCIが破線660内に示され、中トルクでのSACIが破線662内に示されている。領域660内では、HCCIまたはSI運転のいずれかを使用することができる。領域662内では、SACI運転またはSI運転のいずれかを使用することができる。また、領域664内では、HCCI動作とSACI動作の重なり、SI、HCCI、SACI動作のいずれかを選択することができる。
【0097】
図6cでは、動作点PIが示されている。これは、SI運転が唯一の選択肢であるマップの領域におけるピークトルク曲線の下の領域にある。より少ないトルクの要求が所望される場合、例えば点P2において、SI燃焼モードが使用され得るが、HCCI動作の高効率もまた許容可能な動作点である。HCCIの高効率を利用するために、HCCIへの移行が実行される。HCCIで運転するにはスロットルを全開にするが、SIでの運転ポイントPIではスロットルを部分的に閉じる。より確実な点火を得るために、HCCIでは吸気口を加熱することが有効です。インテークを加熱するのは、数秒かかるゆっくりとしたプロセスであり、インテーク内の圧力を変えるような場合は、エンジンの回転数を数回で変えることができる。PI点からP2点へ直接移行する代わりに、中間動作点T1がPIとP2の間にアクセスされる。したがって、PIからT1、P2へと移行することになる。図6cにバーR1を示す。上述したように、PIとP2で動作する間の移行区間中、ICEは所定の動作点を採用する。PIからP2に移行する際、エンジン回転数は上昇し、トルクは低下することに注意されたい。このような状況の例として、車両が信号待ちから発進する場合、車両を加速させるために高いトルクが必要となる。車両がほぼ要求される速度に達した後、車両オペレータはアクセルペダルを戻して加速を減速し、わずかに増加した速度で継続するが、車両がほぼ速度に達したため、より少ないトルクが必要である。R1は、所定の動作点を選択できる速度の範囲である。もちろん、T1は、運転者の要求が満たされるように、R1の範囲に沿ってP2と同じエンジン速度を有するように選択される。
【0098】
推移は、図6dにトルク対時間のグラフで示されている。3つの区間がある:ICEが第1の燃焼モードで、すなわちPIで動作している時間であり、これは図6dの区間674として示されている。トルクの変化に対する要望が入ると、ICEは移行区間676に入る。ICEのパラメータが移行を完了するのに適しているとき、ICEは、区間678において新しい燃焼モード(P2)で動作するように指令される。ダッシュドットの曲線672は、時間の関数としてのICEのトルク出力を示す。トルクは区間674から676まで減少し、678で再び減少する。所望のエンジントルクが破線670で示されている。区間676の間、ICEのトルクは所望のトルクを上回る。これは、EMがICEに負荷を与える発電機として作動し、その結果、駆動輪に供給されるトルクが並列HEVの所望のトルクになる状況である。図1に示すようないくつかの並列HEV構成では、第2のEMが車両の駆動輪に接続され(図laの24、図lbの124、図lcの224、図Idの324)、第2のEMトルクが車両を推進するためにICEトルクを補足する。過剰トルクは680、すなわち区間676の間の曲線670と672の差として図示され、バッテリーはEMから過剰電力を吸収し、その動作モードに応じて第2のEMから、または第2のEMに電力を吸収または供給する。図2に示すような直列ハイブリッドHEVの場合、EM422はICEの過剰トルクにより過剰電力を供給するため、バッテリーはEM422から過剰電力を吸収し、燃焼モード切換移行時のみ車両を推進するEM424に電力を供給する。
【0099】
図7aのエンジンマップは、図6aおよび図6bに示されたものと同一である。しかし、図7aの遷移は、図6cに示された遷移とは異なる。すなわち、ICEはポイントP3からスタートしており、HCCI燃焼モードで動作している。車両オペレータは、例えば、追い越し操作や坂を登る必要性など、突然のトルクのバーストを要求する。新しい動作ポイントは、SI燃焼モードゾーンにある動作ポイントP4として表示される。HCCIで作動している場合、インテークマニホールドが加熱されている可能性が高く、エンジンノックや吸気ガスの加熱による体積効率の低下により、ICEはすぐにポイントP4に移行することができません。ICEのパラメータがポイントP4にアクセスするのに適した状態になるまでの時間を確保するため,ICEはSACI燃焼モードのポイントを取るように指令される(図7aのラベルはT3).ここでもまた、これは、エンジン速度の範囲に沿って生じる、Rlによって示される所定のトルク動作点の1つに沿って起こる。
【0100】
時間の関数としてのエンジントルクのプロットが図7bに示されている。所望のトルクは破線の曲線681であり、ICE提供トルクはダッシュドットの曲線682として示されている。ICEトルク682は、ICEが現在の燃焼モード(本実施例ではHCCI)で動作している第1の区間684のP3の間、所望のトルク681に一致する。ICEが新しい燃焼モードで動作している第3の区間688では、ICEトルク682と所望トルク681は再びほぼ等しくなる。ICEが移行点であるT3で動作している第2の区間686の間、ICEトルク682は所望のトルク681よりも低い。区間686の間、EMはICEを駆動するモータとして機能し、不足分のトルクを供給する。このトルクは690として示され、その結果、車両の駆動輪に供給されるトルクは並列HEVの所望のトルクとなる。図1に示すようないくつかの並列HEV構成では、第2のEMが車両の駆動輪に接続し(図laの24、図lbの124、図lcの224、図Idの324)、第2のEMトルクがICEのトルクを補足して車両を推進する。不足分のトルクは690、すなわち区間686の間の曲線681と622の差として図示され、バッテリーはEMに電力を供給する。バッテリーは、その動作モードに応じて、第2のEMに電力を供給したり、第2のEMから電力を吸収したりする。図2に示すような直列ハイブリッドHEVの場合、ICEのトルク不足によりEM422がモータとして機能するため、バッテリーはICEを駆動するEM422に電力を供給し、燃焼モード切換移行時のみ車両を推進するEM424に電力を供給する。
【0101】
ここで図8aを参照すると、ICEのエンジンマップが示されている。ここでもマップの説明は図6aおよび図6bと同じであるが、ICEの動作マップには異なる遷移が示されている。開始点は現在の燃焼モードのP5であり、目標は別の燃焼モードの点P6に移動することである。この例では、遷移中のT5でICEがオフになる。図 8b では、この移行のタイムラインは、最初のインターバルである 694 の間、ICE がポイント P5 で動作していることを示している。エンジンによって生成されたトルクがダッシュドットの曲線692として示され、所望のトルクが破線の曲線691として示されている。移行区間696の間、ICEはトルクを発生しない。所望のトルクを提供するために、EMはモータとして機能し、ICEを所定の燃焼モード切替回転数まで駆動し、同時にトルク699を提供して、燃焼モード切替移行中の並列ハイブリッドHEVの車両を推進する。図1に示すようないくつかの並列HEVの構成では、車両の駆動輪に接続する第2のEMが設けられる(図laの24、図laの24、図lbの124、図lcの224、図Idの324]、第2のEMトルクは車両を推進するICEトルクを補足する。量のトルクは699、すなわち区間696の間の曲線691と692の差として図示され、バッテリーはEMに電力を供給する。バッテリーは、その動作モードに応じて、第2のEMに電力を供給したり、第2のEMから電力を吸収したりする。図2に示すような直列ハイブリッドHEVの場合、燃焼モード切換移行中はEM422がEM424に電力を供給しないので、バッテリー420は、選択された所定の燃焼モード切換回転数までICEを駆動するEM422に電力を供給し、車両を単独で推進するEM424に電力を供給する。P6として示されるように、ICEが新しい燃焼モードに入る準備が整うと、移行が完了し、ICEトルク692は所望のトルク691に等しくなる。
【0102】
図6d図7b、および図8bでは、遷移の持続時間は時間的に同一であるように見える。しかし、これは説明の便宜のためだけである。いくつかの遷移は非常に短く、数回転である。他の遷移はもっと長い。
【0103】
最良の構成を実施形態に関して詳細に説明してきたが、当技術分野に精通した者であれば、以下の特許請求の範囲の範囲内で様々な代替設計および実施形態を認識するであろう。様々な実施形態が、1つまたは複数の所望の特性に関して他の実施形態よりも利点を提供するか、または好ましいものとして説明されてきたかもしれないが、当業者であれば認識するように、1つまたは複数の特性は、特定の用途および実装に依存する所望のシステム属性を達成するために妥協され得る。これらの属性には、コスト、効率、強度、耐久性、ライフサイクルコスト、市場性、速度、耐久性、範囲、外観、パッケージング、サイズ、サービス性、重量、製造可能性、組立容易性などが含まれるが、これらに限定されない。つまたは複数の特性に関して他の実施形態または先行技術の実施形態よりも望ましくないと特徴付けられる本明細書に記載の実施形態は、本開示の範囲外ではなく、特定の用途にとって望ましい場合がある。
図1a
図1b
図1c
図1d
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図5
図6a
図6b
図6c
図6d
図7a
図7b
図8a
図8b
【手続補正書】
【提出日】2024-01-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(ICE)に機械的に連結された電気機械(EM)と、EMに電気的に連結されたバッテリーとを有するハイブリッド電気自動車(HEV)を制御する方法であって、
現在の燃焼モードから新たな燃焼モードへの移行を、現在の燃焼モードと新たな燃焼モードとの間に生じる移行区間を用いて指令すべきであると決定するステップと、
移行区間中にICEを動作させるための複数の所定の燃焼モード切替動作点のうちの1つを選択するステップと、
移行区間中に選択された所定の燃焼モード切替動作点を達成するようにICEに指令するステップと、を含み、
ICEの選択された所定の燃焼モード切替動作点が、ICEの速度の低下を防止するのに不十分なトルクを生成するとき、EMは、モータとして作用し、ICEを駆動し、それによってICEの選択された所定の燃焼モード切換動作点を維持し、
ICEの選択された所定の燃焼モード切替動作点が、ICEの回転数を上昇させるトルクを発生させる場合、EMは発電機として働き、ICEに負荷をかけてICEの選択された所定の燃焼モード切替動作点を維持する、方法。
【請求項2】
移行区間中にICEが新しい燃焼モードで動作するための準備を行い、
該準備が、ICEの吸気温度、ICEの吸気システム内の圧力、ICEに導入される吸気中の排気ガス割合、ICEの圧縮比、ICEへの空燃比、ICEへの燃料噴射タイミングおよび量を含む燃料供給戦略、ICEの点火タイミング、およびICEのバルブタイミングおよびバルブのリフトを変更すること、のうちの少なくとも1つの調整を含み、
準備が完了したときに、ICEに新しい燃焼モードで動作するように命令すること、をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
現在の燃焼モードから新しい燃焼モードへの移行が、
バッテリーの充電状態、
新しい燃焼における安定した燃焼をサポートするためのICEの動作ポイント、
車両の運転者によるHEVからのトルクの要求および移行間隔の予想持続時間、および、
新しい燃焼モードで動作するHEVの効率は、現在の燃焼モードで動作するHEVの効率よりも高い、
のうちの少なくとも1つに基づいて決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
HEVは直列構成であり、
EMはICEに機械的に連結され、バッテリーに電気的に連結された第1のEMであり、
HEVは、さらに、
バッテリーに電気的に連結された第2のEMと、
第2のEMに機械的に連結された駆動輪と、を含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
HEVは並列構成であり、
EMはバッテリーに電気的に連結された第1のEMであり、
EMはICEに機械的に連結され、移行中は両者ともHEVの駆動輪に機械的に連結される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ハイブリッド電気自動車(HEV)であって、
電気機械(EM)と、
EMに機械的に連結された内燃機関(ICE)と、
EMに電気的に連結されたバッテリーと、
互いに通信可能な複数のコントローラから構成される車両システムコントローラ(VSC)と、
を備え、複数のコントローラのうちの1つは、複数のコントローラ内の他のコントローラを調整する調整コントローラ(CC)である、ハイブリッド電気自動車(HEV)。
【請求項7】
調整コントローラ(CC)は、EMコントローラ、ICEコントローラ、およびバッテリーコントローラに電子的に結合され、
CCは、現在の燃焼モードから新しい燃焼モードへの遷移が、現在の燃焼モードと新しい燃焼モードとの間に生じる遷移インターバルを伴って指令されるべきであると決定し、
CCは、遷移インターバル中にICEを動作させるための複数の所定の燃焼モード切替動作点のうちの1つを選択し、
CCは、遷移インターバル中に選択された所定の燃焼モード切替動作点を達成するようにICEに指令し、
ICEの選択された所定の燃焼モード切替動作点が、移行区間中にICEの速度が低下するのを防ぐのに不十分なトルクを生成する場合、EMは、モータとして機能し、ICEを駆動し、
ICEの選択された所定の燃焼モード切替動作点を維持し、ICEの選択された所定の燃焼モード切替動作点が、移行区間中にICEの速度が上昇するようなトルクを生成する場合、EMは、発電機として機能し、ICEに負荷をかけて、ICEの選択された所定の燃焼モード切替動作点を維持する、請求項6に記載のHEV。
【請求項8】
選択された所定の燃焼モード切替動作点は、バッテリーの充電状態、運転者が要求する駆動輪のトルク、新しい燃焼モードでのICEの動作点が安定した燃焼をサポートできること、新しい燃焼モードで動作するHEVの効率が現在の燃焼モードで動作するHEVの効率よりも高いこと、のうちの少なくとも1つに基づく、請求求項6に記載のHEV。
【請求項9】
移行インターバル中にICEが新しい燃焼モードで動作するための準備を行い、
該準備は、CEの吸気温度、ICEの吸気システム内の圧力、ICEに導入される吸気中の排気ガス割合、ICEの圧縮比、ICEへの空燃比、ICEへの燃料噴射タイミングと量を含む燃料供給戦略、ICEの点火タイミング、ICEのバルブタイミングとバルブのリフト量の変更、の少なくとも1つの調整が含み、および、
CCは、準備が完了したときにICEに新しい燃焼モードで動作するように命令する、請求項6に記載のHEV。
【請求項10】
現在の燃焼モードから新しい燃焼モードへの移行を指令するか否かの判断は、新しい燃焼モードで動作するHEVの効率が現在の燃焼モードで動作するHEVの効率よりも大きいこと、運転者の要求トルク、新しい燃焼モードが安定した燃焼をサポートできること、およびバッテリーの充電状態の少なくとも1つに基づいて行われる、請求項6に記載のHEV。
【請求項11】
HEVは直列構成であり、
EMはICEに機械的に連結され、バッテリーに電気的に連結された第1のEMであり、HEVはさらに、バッテリーに電気的に連結された第2のEMを含み、HEVの駆動輪は第2のEMに機械的に連結されている、請求項6に記載のHEV。
【請求項12】
HEVは並列構成であり、
EMはバッテリーに電気的に結合された第1のEMであり、
EMはICEに機械的に結合されており、EMとICEの両方が移行中にHEVの駆動輪に機械的に結合されている、請求項6に記載のHEV
【請求項13】
内燃機関(ICE)に機械的に連結された第1の電気機械(EM1)と、HEVの駆動輪に機械的に連結された第2の電気機械(EM2)と、EM1およびEM2に電気的に連結されたバッテリーと、EM2に電子的に連結されたEM2コントローラと、EM2コントローラに電子的に連結された協調コントローラ(CC)とを有する直列ハイブリッド電気自動車(HEV)を制御する方法であって、
現在の燃焼モードから新たな燃焼モードへの移行が、現在の燃焼モードと新たな燃焼モードとの間に生じる移行インターバルとともに指令されるべきであると決定するステップと、
移行インターバル中にICEを動作させるための複数の所定の燃焼モード切替動作点のうちの1つを選択するステップと、
移行インターバル中に、選択された所定の燃焼モード切替動作点を達成するようにICEに指令するステップと、
移行インターバル後に準備が完了したときに、新たな燃焼モードを動作させるようにICEに指令するステップと、を含む方法。
【請求項14】
移行区間中、ICEは、新しい燃焼モードで動作するように準備され、このような準備は、ICEの吸気温度、ICEの吸気システム内の圧力、ICEに導入される吸気中の排気ガス割合、ICEの圧縮比、ICEへの空燃比、ICEへの燃料噴射タイミングおよび量を含む燃料供給戦略、ICEの点火タイミング、およびICEのバルブタイミングおよびバルブのリフトを変更することのうちの少なくとも1つの調整を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ICEの選択された所定の燃焼モード切替動作点が、ICEの速度が低下するのを防ぐのに不十分なトルクを発生する場合、EM1がモータとして機能し、ICEを駆動して、ICEの選択された所定の燃焼モード切替動作点を維持し、
バッテリーが、燃焼モード移行中に、ICEを駆動するための電力をEM1に供給し、HEVの車輪を駆動するための電力をEM2に供給し、
ICEの選択された所定の燃焼モード切替動作点が、ICEの速度を上昇させるトルクを発生させる場合、EM1は発電機として機能し、
ICEに負荷をかけてICEの選択された所定の燃焼モード切替動作点を維持し、ICEに負荷をかけるためのEM1の出力電力はバッテリーに吸収され、燃焼モード移行時にHEVの車輪を駆動するためにEM2に供給される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
現在の燃焼モードから新しい燃焼モードへの移行を指令するか否かの決定は、新しい燃焼モードで動作するHEVの効率が現在の燃焼モードで動作するHEVの効率よりも大きいこと、運転者の要求トルク、新しい燃焼における安定した燃焼をサポートするためのICEの動作点、およびバッテリーの充電状態のうちの少なくとも1つに基づいて行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
内燃機関(ICE)に機械的に連結された電気機械(EM)と、EMとICEの両方がHEVの駆動輪に機械的に連結され、EMに電気的に連結されたバッテリーとを有する並列ハイブリッド電気自動車(HEV)を制御する方法であって、
現在の燃焼モードから新たな燃焼モードへの移行が、現在の燃焼モードと新たな燃焼モードとの間に生じる移行インターバルとともに指令されるべきであることを決定するステップと、
移行インターバル中にICEを動作させるための複数の所定の燃焼モード切替動作点のうちの1つを選択するステップと、
移行インターバル中に選択された所定の燃焼モード切替動作点を達成するようにICEに指令するステップと、
移行インターバル後に新たな燃焼モードで動作するようにICEに指令するステップと、を含む方法。
【請求項18】
前記移行区間中に、前記ICEは、新しい燃焼モードで動作するように準備され、このような準備は、ICEの吸気温度、ICEの吸気システム内の圧力、ICEに導入される吸気中の排気ガス割合、ICEの圧縮比、ICEへの空燃比、ICEの燃料噴射タイミングおよび量を含む燃料供給戦略、ICEの点火タイミング、ICEのバルブタイミング、およびICEのバルブのリフトプロファイルの少なくとも1つの調整を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ICEの選択された所定の燃焼モード切替動作点が、ICEの速度が低下するのを防止するのに不十分なトルクを発生するとき、EMは、それによってICEを駆動してICEの選択された所定の燃焼モード切替動作点を維持するモータとして機能し、バッテリーは、燃焼モード移行中にICEとHEVの駆動輪の両方を駆動するための電力をEMに供給し、
ICEの選択された所定の燃焼モード切替動作点が、ICEの速度を上昇させるトルクを生成する場合、EMは発電機として動作し、それによってICEに負荷を与えてICEの選択された所定の燃焼モード切替動作点を維持し、ICEに負荷を与えるためのEMの出力電力はバッテリーに吸収され、ICEは選択された所定の燃焼モード切替遷移中にHEVの駆動輪にトルクを提供する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
現在の燃焼モードから新しい燃焼モードへの移行を指令するか否かの決定は、新しい燃焼モードで動作するHEVの効率が現在の燃焼モードで動作するHEVの効率よりも大きいこと、運転者が要求するトルク、新しい燃焼モードにおけるICEの動作点が安定した燃焼をサポートすること、および、バッテリーの充電状態、のうちの少なくとも1つに基づいて行われる、請求項17に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0032】
図laは、ICE12と2つの電気機械22および24を含む直並列HEVの概略図である。駆動輪50に供給される推進力は、ICE12のみによって、またはクラッチ34が係合されているときにICE12と電気機械22とによって共に供給され得る。すなわち、ICE12またはICE12と電気機械22の両方が、シャフト31を介してクラッチ34の片側にトルクを供給する。係合されると、トルクは変速機40に接続されたシャフト36に伝達され、変速機40の出力シャフト42に伝達される。シャフト42はディファレンシャル44に接続し、ディファレンシャル44はハーフシャフト46に接続し、ハーフシャフト46は車輪50を駆動する(並列ハイブリッド構成)。このような運転モードでは、並列ハイブリッドは電気機械24なしで構成することができる。電気機械24がシャフト62を介してトランスミッション40に接続する場合。電気機械24は、クラッチ34が係合されているときにも、駆動輪50にトルクを供給することができる。あるいは、別の動作モードでは、クラッチ34が切り離され、駆動輪50への推進トルクが電気機械24によってのみ供給され、電気機械22がICE12に負荷をかけて電気機械24に供給する電力を生成し、バッテリー20を充電する(直列ハイブリッド構成において)。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0035
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0035】
図lbにおいて、代替HEVは、2組の駆動輪150および152を有する。車輪152は、モータモードで電気機械124によってのみ駆動され、または電気機械124が発電機モードで動作する場合、電気機械124は車輪152を制動することができる。電気機械124は、シャフト162、ディファレンシャル164、ハーフシャフト166を介して車輪152に接続する。車輪150は、ICE112と電気機械122の一方または両方によって駆動される。ICE112は、クラッチ133とクラッチ164とが係合し、それによってシャフト131と132とが連結されると、車輪150を駆動する。シャフト132はギアセット130とシャフト160を介して変速機140に接続され、変速機140はシャフト142を介して差動装置144に接続される。ディファレンシャル144は、ハーフシャフト146を介して駆動輪150に接続される。電気機械122は、クラッチ133が係合されるとICE112に連結される。電気機械122とICE112との間には、シャフト160、131、132を介してギアセット130が設けられている。電気機械122および124は、ケーブル126を介してバッテリー120に電気的に結合されている。図laと同様に、図lbのHEVは、ICEコントローラ174、バッテリーコントローラ176、電動機コントローラ178および180、トランスミッションコントローラ182、およびセンサーからの入力170を備える協調コントローラ172を備える。このようなコントローラは、それぞれの要素、例えばバッテリーコントローラ176とバッテリー120とに、直接またはデバイスドライバを介して間接的に電子的に結合されている。図lbに示されるようなこのような配置は、クラッチ133が切られているときにはもっぱら電気機械122および124によって車輪150および152を駆動し、クラッチ133が係合されているときにはもっぱらICE112によって車輪150を駆動し、電気機械122が受動的である、すなわち、電気機械122のコイルに電流が供給されないので、電気機械122が回転する間は、システム内の摩擦を除いて、ICE112を駆動することも負荷をかけることもない。そして、電気機械122、124とICE112の両方を同時に用いて車両を駆動することができる。電気機械124が排除された実施形態では、並列HEVが形成される。クラッチ164が切り離され、クラッチ133が係合され、HEVが電気機械124のみによって推進される実施形態では、直列HEVを形成する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0038
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0038】
図Idにおいて、代替HEVは、ICE312、電気機械322、電気機械324および車輪350が機械的に接続された遊星ギアセットギアトレインを有する。車輪350は、シャフト331を介したICE312とシャフト362を介した電気機械324の両方によって同時にまたは個別に駆動することができる。直列ハイブリッドモードでは、発電機モードのシャフト361を介して電気機械322シャフト331を介してICE312によって駆動され、電気機械324に電力を供給したり、バッテリー320を充電したりすることができる。並列ハイブリッドモードでは、シャフト361を介した電気機械322の速度調整により、シャフト362を介した電気機械324とシャフト331を介したICE312の両方が遊星歯車列を介して車輪350を推進することができる。遊星ギアトレインは、シャフト342、ディファレンシャル344、およびハーフシャフト346を介して車輪350に接続される。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0100
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0100】
時間の関数としてのエンジントルクのプロットが図7bに示されている。所望のトルクは破線の曲線681であり、ICE提供トルクはダッシュドットの曲線682として示されている。ICEトルク682は、ICEが現在の燃焼モード(本実施例ではHCCI)で動作している第1の区間684のP3の間、所望のトルク681に一致する。ICEが新しい燃焼モードで動作している第3の区間688では、ICEトルク682と所望トルク681は再びほぼ等しくなる。ICEが移行点であるT3で動作している第2の区間686の間、ICEトルク682は所望のトルク681よりも低い。区間686の間、EMはICEを駆動するモータとして機能し、不足分のトルクを供給する。このトルクは690として示され、その結果、車両の駆動輪に供給されるトルクは並列HEVの所望のトルクとなる。図1に示すようないくつかの並列HEV構成では、第2のEMが車両の駆動輪に接続し(図laの24、図lbの124、図lcの224、図Idの324)、第2のEMトルクがICEのトルクを補足して車両を推進する。不足分のトルクは690、すなわち区間686の間の曲線681と682の差として図示され、バッテリーはEMに電力を供給する。バッテリーは、その動作モードに応じて、第2のEMに電力を供給したり、第2のEMから電力を吸収したりする。図2に示すような直列ハイブリッドHEVの場合、ICEのトルク不足によりEM422がモータとして機能するため、バッテリーはICEを駆動するEM422に電力を供給し、燃焼モード切換移行時のみ車両を推進するEM424に電力を供給する。
【手続補正6】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1c
【手続補正7】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1d
【国際調査報告】