(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】1つ以上の水晶振動子マイクロバランスセンサを用いた、キャリアストリーム中のプロセスガスの質量流量の測定及び制御のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 5/02 20060101AFI20240517BHJP
【FI】
G01N5/02 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023573128
(86)(22)【出願日】2022-06-02
(85)【翻訳文提出日】2024-01-16
(86)【国際出願番号】 US2022031884
(87)【国際公開番号】W WO2022256478
(87)【国際公開日】2022-12-08
(32)【優先日】2021-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520435429
【氏名又は名称】インフィコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】レイクマン スティーヴ
(72)【発明者】
【氏名】リンザン モハメド
(72)【発明者】
【氏名】ソン チュンファ
(72)【発明者】
【氏名】バウムガーテル ルーカス
(57)【要約】
製造システムのキャリアストリーム中の前駆体物質を監視する方法は、QCMセンサの表面に前駆体物質の膜を堆積するステップと、堆積された前駆体物質の膜を用いてQCMセンサの開始共振周波数を決定するステップと、製造システムの動作中にQCMセンサの共振周波数を測定して、開始共振周波数と比較するステップと、測定された共振周波数と対応する開始共振周波数との差が閾値以上である場合にシステムエラーを出すステップと、QCMセンサを開始共振周波数に回復するように構成されたシステム修正を自動的に実施するステップと、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造システムのキャリアストリーム中の前駆体物質を監視する方法であって、
センサ結晶の表面に前駆体物質の膜を堆積するステップと、
堆積された前記前駆体物質の膜を用いて前記センサ結晶の開始共振周波数を決定するステップと、
前記製造システムの動作中に前記センサ結晶の共振周波数を測定するステップと、
前記センサ結晶の測定された前記共振周波数と前記開始共振周波数とを比較するステップと、
測定された前記共振周波数と前記開始共振周波数との差が閾値以上である場合にシステムエラーを出すステップと、
測定された前記共振周波数が前記開始共振より低い場合、前駆体膜の堆積を低減するように構成されたシステム修正を自動的に実施するステップと、
測定された前記共振周波数が前記開始共振周波数より高い場合、前駆体膜の堆積を増加させるように構成されたシステム修正を自動的に実施するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記システム修正は、前記センサ結晶の温度を上昇させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記システム修正は、前記センサ結晶の温度を低下させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記システム修正は、前駆体送達システムを制御するように構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
製造システムのキャリアストリーム中の前駆体物質を監視する方法であって、
QCMセンサの表面に前駆体物質の膜を堆積するステップと、
堆積された前記前駆体物質の膜を用いて前記QCMセンサの開始共振周波数を決定するステップと、
前記製造システムの動作中に前記QCMセンサの共振周波数を測定するステップと、
前記QCMセンサの測定された前記共振周波数と前記開始共振周波数とを比較するステップと、
測定された前記共振周波数と対応する前記開始共振周波数との差が閾値以上である場合にシステムエラーを出すステップと、
前記QCMセンサを前記開始共振周波数に回復するように構成されたシステム修正を自動的に実施するステップと、
を含む、方法。
【請求項6】
前記システム修正は、前記QCMセンサの温度を上昇させるステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記システム修正は、前記QCMセンサの温度を低下させるステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記システム修正は、前駆体送達システムを制御するように構成される、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記システム修正は、測定された前記共振周波数が前記開始共振より低い場合、前駆体膜の堆積を低減するように構成され、測定された前記共振周波数が前記開始共振周波数より高い場合、前駆体膜の堆積を増加させるように構成される、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
製造システムのキャリアストリーム中の前駆体物質を監視するシステムであって、
1つ以上のワークピースを受け入れるように構成された真空プロセスチャンバと、
前記真空プロセスチャンバに流体的に結合された前駆体源と、
前記真空プロセスチャンバに流体的に結合されたキャリアガス源と、
前記前駆体源及び前記キャリアガス源と前記真空プロセスチャンバとの間の前記前駆体及び前記キャリアガスの流路に沿って配置された複数のQCMセンサと、
前記複数のQCMセンサに電気的に通信する制御ユニットと、
前記流路に沿って配置され、前記制御ユニットに連通する1つ以上のバルブと、
を含み、
前記制御ユニットは、
前記前駆体の蒸発と前記キャリアガスの放出を制御するステップと、
堆積された前駆体の膜を用いて前記複数のQCMセンサのそれぞれの開始共振周波数を決定するステップと、
前記製造システムの動作中に前記QCMセンサの共振周波数の測定値を受信するステップと、
測定された前記共振周波数と対応する開始共振周波数とを比較するステップと、
測定された前記共振周波数と対応する前記開始共振周波数との差が閾値以上である場合にシステムエラーを出すステップと、
前記QCMセンサを前記開始共振周波数に回復するように構成された修正を自動的に実施するステップと、
を実行するように構成される、システム。
【請求項11】
前記制御ユニットは、GUIに電気的に結合される、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記前駆体を加熱して前駆体ガスを前記流路内に放出するように構成されたヒータを更に含み、前記ヒータは、前記制御ユニットに電気的に通信する、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記修正は、前記QCMセンサの温度を上昇させるステップを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
前記修正は、前記QCMセンサの温度を低下させるステップを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項15】
前記修正は、前駆体送達システムを制御するように構成される、請求項10に記載のシステム。
【請求項16】
前記修正は、測定された前記共振周波数が前記開始共振より低い場合、前駆体膜の堆積を低減するように構成され、測定された前記共振周波数が前記開始共振周波数より高い場合、前駆体膜の堆積を増加させるように構成される、請求項15に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国仮特許出願第63/196929号の出願日の利益及び優先権を主張する。本出願の明細書全体は、参照により組み込まれるものとする。
【0002】
本発明は、一般に、マイクロエレクトロニクス製造の分野に関し、より具体的には、1つ以上の水晶振動子マイクロバランス(QCM)センサを用いた、キャリアストリーム中のプロセスガスの質量流量の測定及び制御のための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
マイクロエレクトロニクス製造(半導体、LCD、OLEDなど)は、マイクロプロセッサ、DRAM、3DNAND、LEDセルなどの装置の製造のための様々な真空関連プロセスに依存している。半導体装置技術の進歩(ムーアの法則)は、製造プロセス技術の進化及び革新を推進し続けている。例えば、トランジスタゲート及び装置の相互接続用の金属薄膜の堆積は、長い間、物理気相堆積(PVD)の方法に依存している。PVDは、依然として金属膜を堆積する主要な手段であり、集積回路(IC)製造プロセス全体を通して使用されている。装置の製造がますます複雑になるにつれて、化学気相堆積(CVD)などの他の堆積方法が該分野で普及してきている。一般に、CVDプロセスにより、粒度、共形性、厚さなどの堆積膜の特性をよりよく制御することができる。近年、原子層堆積(ALD)は、高度な半導体装置の製造を可能にするプロセス技術となっている。ALDは、単分子層の物質をウェーハ表面に堆積できる方法である。基板の表面に単分子層の物質を堆積できるため、目標の厚さを達成するために、必要に応じてALDサイクルの数を増減することで、膜の最終的な厚さを正確に制御できる。
【0004】
要約すると、マイクロエレクトロニクス製造で使用される堆積技術の進化は、製造がますます困難になっている装置への需要によって主に推進されている。半導体装置技術の進歩により、プロセスタイプは、ますます多様化し、各プロセスステップを実行するのに必要な精度も向上している。ALDとCVDは、半導体製造で使用される2種類のプロセスタイプに過ぎない。マイクロエレクトロニクス装置の製造には、他にも多くの種類のプロセスが必要である。
【0005】
一般的なIC製造工場(fab)では、多数の真空ベースのシステム(プロセスツール)が使用され、多くの異なる種類の反応性化学物質を使用して、シリコンウェーハ又はその他の基板の表面に装置及び回路をパターニングする。プロセスツールは、多数の基板が一度に処理されるバッチ式の反応装置で構成されてもよく、それぞれが一度に一枚のウェーハを処理する複数の真空チャンバのクラスターで構成されてもよい。全ての反応性プロセスタイプでは、基板の表面にいくつかの所望の変化が必要となる真空チャンバにプロセスガスを流れる必要がある。半導体及びディスプレイの製造方法は、プロセスチャンバに確実かつ一貫して送達することが困難な前駆体物質(プロセスガス)への依存度を高めている。特殊なガス送達サブシステムは、ウェーハプロセスを一貫して実行するために、正確に適切な量と正確なタイミングでプロセスガスを供給するように設計されている。プロセスチャンバへのプロセスガス(ガス、揮発性物質、蒸気など)の流れを制御することは、キャリアガスの流れ内の対象種の濃度を正確に測定する手段がないため、更に困難になっている。前駆体の濃度監視の重要な用途は、プロセス制御及び信頼性である。装置のアスペクト比が増加するにつれて、堆積された前駆体の厚さを正確に制御することは、より重要になる。場合によっては、堆積速度が前駆体の濃度に依存するため、前駆体の濃度を1%以下の精度で監視し制御する必要がある。濃度モニターを駆動する他の要因としては、正確な化学含有量(電界効果トランジスタ装置のゲートスタック物質など)に依存する膜特性が挙げられる。
【0006】
この問題は、固体又は液体として存在する有機及びハロゲン化物ベースの前駆体によって例示される。これらの前駆体は、定期的な交換が必要である金属容器(アンプル)に保管される。前駆体の流れを可能にするために、熱を加えてアンプルのヘッドスペース内の前駆体物質を揮発させる。次に、熱によって放出された前駆体蒸気は、アンプルを通る制御されたキャリアガスの流れによってプロセスチャンバに輸送される。次に、前駆体とキャリアガスの混合物は、ガスライン、バルブ、及び流量制御器のシステムを通ってプロセスチャンバに送られる。前駆体ストリームは、プロセスチャンバへの流路に入ると、他のガスと更に混合されるか又は希釈されてもよい。ガス送達システム全体を通して、前駆体ガスがガス送達システム内のいずれの点でも凝縮するのを防止するために、状態条件(温度、圧力など)を維持する必要がある。しかしながら、送達システム全体の温度は、前駆体ガスの熱分解が発生する場合の閾値を超えてはならない。
【0007】
多くの従来のタイプのセンサ(発光、質量分析装置、熱伝導率のセンサなど)を使用して、前駆体の濃度を監視することができる。しかしながら、大部分のプロセスガスは、センサの使用に対して腐食又は汚染の潜在的な原因となり、センサの耐用年数に影響を与える。したがって、センサの設計及び使用は、高度な感度及び精度を提供するとともに、センサが使用される過酷な環境を考慮する必要がある。過酷な環境にもかかわらず、前駆体の濃度は、混合物に導入される可能性のあるキャリアガス及び他の希釈ガスに比べて非常に低い場合が多い。センサは、高い選択性、感度及び精度を有しなければならない。したがって、そのようなセンサを配備するコストは、非現実的になる可能性がある。
【0008】
前駆体流れ濃度を確実かつ目立たずに測定する機能がなければ、半導体製造工場では、ウェーハスクラップイベント(wafer scrap events)に起因する不要なコストが発生する。半導体プロセスツールは、複雑で高度に自動化されたシステムであり、ウェーハスクラップイベント(逸脱)は、多くの場合、かなりの時間にわたって検出されず、その間に処理ミスによりウェーハが1枚ずつ失われる。ガス送達システムは、耐久性と一貫したパフォーマンスを実現するように設計されているが、不適切な前駆体流れを引き起こすドリフト、部品の故障、及びその他の誤った動作モードの影響を受けやすい。場合によっては、前駆体アンプルの消耗が長期間にわたって完全に検出されず、その間にプロセスチャンバが数百枚のスクラップウェーハを生成する可能性がある。スクラップにされたウェーハのコストは、直接コストと収益の損失という点でかなり多い。更に、ウェーハスクラップにより、人件費の振り分け、生産性の損失、将来のスクラップイベントを防止する先制手順に関連するその他のコストなどの追加コストが発生する。例えば、再発するウェーハスクラップイベントのリスクを最小限に抑えるために、半導体製造工場は、多くの場合、製品ウェーハのサンプリングメトロロジー周波数を増やすなどの、インライン品質保証の追加方法を使用する。
【0009】
QCMセンサは、現在、プロセスの膜厚変化速度を監視するために使用されている。一般に、新しい監視用水晶振動子の共振の基本モードは、6MHzに近い。前駆体などの質量が結晶表面に蓄積すると、監視に使用される剪断モードを含む大部分の共振モードの共振周波数は、低下する。QCM-MFC方法及びシステムの新規性は、これを利用している。所定の圧力及び温度での二元混合物において、結晶表面上の前駆体の凝縮速度は、キャリアガスに対する前駆体の濃度に正比例する。これは、半導体で使用されるキャリアガスの極低温が非常に低いため、前駆体の気液平衡にあるキャリアガス成分がQCMに凝縮しないという事実によって促進される。本発明は、小さな前駆体質量の凝縮による温度変化がQCMの局所温度を変化させないという事実によっても促進され、これは、周波数シフト(又は位相エラー)が、位相変化によりQCMに移送された前駆体質量を示すことを意味する。水晶振動子が前駆体の凝縮点より低い温度に保持されると、水晶振動子に前駆体の質量が継続的に蓄積される。質量蓄積の速度は、前駆体の濃度の違いによって変化し、対応する結晶周波数変化の速度は、前駆体送達システムのためのフィードバック信号として使用できる。
【0010】
通常、QCMセンサは、特定の物質蓄積モードにあり、該モードでは、結晶上の質量変化の速度は、熱蒸発器などのいくつかの物質源に対する蒸発速度を制御するために使用される。しかしながら、QCMセンサは、特定レベルの蓄積より高い質量変化を検出する能力には限界がある。質量の蓄積が増加すると、音波の散乱と吸収による減衰が増加し、その結果、共振品質が低下する。QCM共振モニターは、特定の品質係数閾値より低い共振を検出できないため、QCMを質量モニターとして使用できなくなる。したがって、いくつかのシステムでは複数のQCMセンサを使用し、第一のQCMが飽和すると、予備に保持されている第二のQCMが飽和した結晶と置き換わる。これは、予備QCMを前駆体の凝縮温度より高い温度で保持することによって行うことができる。
【0011】
この方法で複数のQCMを使用する場合の1つの欠点は、前駆体の質量流量が、第一に、第一のセンサの蓄積モード中に前駆体の質量流量の送達を奪うこと、第二に、飽和した結晶が熱によってリフレッシュされる場合に質量流量を追加することという2つの方法により変化する可能性があることである。様々な要因に応じて、これらの効果により、チャンバの上流の前駆体分圧が変動して、プロセスチャンバへの正味の流れ(又は投与量)に影響を与える可能性がある。一般に、送達ライン内で物質が蓄積して蒸発すると、前駆体送達の安定性に潜在的なリスクが生じる可能性がある。
【0012】
他のシステムは、前駆体化合物の熱分解を誘導するのに十分な高温でQCMセンサを動作させる。実際には、大部分の前駆体ガスは、加熱された基板の表面での化学気相堆積(CVD)を目的とする。QCMセンサを加熱して、結晶の表面でのCVDを誘導することができる。厳密に制御された温度で、結晶上の質量変化(堆積)速度は、結晶に到達する前駆体物質のフラックスに正比例する。結晶に生じる膜は、凝縮した物質のように単純に蒸発することができない。特定の累積膜厚では、粒子が脱落する潜在的なリスクが存在する。いずれのメカニズムによっても、結晶の飽和を管理しなければならないため、QCMセンサを特定の質量蓄積モードで動作させると、コストと複雑さが生じる。測定されたストリーム内の前駆体の濃度が変化するリスクも存在し、最後に、質量負荷の方法が結晶上の前駆体の熱分解を使用する場合、又は膜の破壊及び粒子の脱落につながる厚さによる応力の蓄積により、粒子が発生するリスクが増加する。
【0013】
これらは、現在使用されている、マイクロエレクトロニクス製造を監視するシステム及び方法に関連するいくつかの問題に過ぎない。
【発明の概要】
【0014】
製造システムのキャリアストリーム中の前駆体物質を監視する方法の一実施形態は、提供され、
センサ結晶の表面に前駆体物質の膜を堆積するステップ(i)と、
堆積された前記前駆体物質の膜を用いて前記センサ結晶の開始共振周波数を決定するステップ(ii)と、
前記製造システムの動作中に前記センサ結晶の共振周波数を測定するステップ(iii)と、
前記センサ結晶の測定された前記共振周波数と前記開始共振周波数とを比較するステップ(iv)と、
測定された前記共振周波数と前記開始共振周波数との差が閾値以上である場合にシステムエラーを出すステップ(v)と、
測定された前記共振周波数が前記開始共振より低い場合、前駆体膜の堆積を低減するように構成されたシステム修正を自動的に実施するステップ(vi)と、
測定された前記共振周波数が前記開始共振周波数より高い場合、前駆体膜の堆積を増加させるように構成されたシステム修正を自動的に実施するステップ(vii)と、を含む。
【0015】
製造システムのキャリアストリーム中の前駆体物質を監視する方法の別の実施形態は、提供され、
QCMセンサの表面に前駆体物質の膜を堆積するステップ(i)と、
堆積された前記前駆体物質の膜を用いて前記QCMセンサの開始共振周波数を決定するステップ(ii)と、
前記製造システムの動作中に前記QCMセンサの共振周波数を測定するステップ(iii)と、
前記QCMセンサの測定された前記共振周波数と前記開始共振周波数とを比較するステップ(iv)と、
測定された前記共振周波数と対応する前記開始共振周波数との差が閾値以上である場合にシステムエラーを出すステップ(v)と、
前記QCMセンサを前記開始共振周波数に回復するように構成されたシステム修正を自動的に実施するステップ(vi)と、を含む。
【0016】
製造システムのキャリアストリーム中の前駆体物質を監視するシステムの一実施形態は、1つ以上のワークピースを受け入れるように構成された真空プロセスチャンバと、前記真空プロセスチャンバに流体的に結合された前駆体源と、前記真空プロセスチャンバに流体的に結合されたキャリアガス源と、前記前駆体源及び前記キャリアガス源と前記真空プロセスチャンバとの間の前記前駆体及び前記キャリアガスの流路に沿って配置された複数のQCMセンサと、前記複数のQCMセンサに電気的に通信する制御ユニットと、前記流路に沿って配置され、前記制御ユニットに連通する1つ以上のバルブと、を含む。前記制御ユニットは、前記前駆体の蒸発と前記キャリアガスの放出を制御するステップ(i)と、堆積された前駆体の膜を用いて前記複数のQCMセンサのそれぞれの開始共振周波数を決定するステップ(ii)と、前記製造システムの動作中に前記QCMセンサの共振周波数の測定値を受信するステップ(iii)と、測定された前記共振周波数と対応する前記開始共振周波数とを比較するステップ(iv)と、測定された前記共振周波数と対応する前記開始共振周波数との差が閾値以上である場合にシステムエラーを出すステップ(v)と、前記QCMセンサを前記開始共振周波数に回復するように構成された修正を自動的に実施するステップ(vi)と、を実行するように構成される。
【0017】
一実施形態では、前記システムの制御ユニットは、GUIに電気的に結合される。別の実施形態では、前記システムは、前記前駆体を加熱して前駆体ガスを前記流路内に放出するヒータを更に含み、前記ヒータは、前記制御ユニットに電気的に通信する。一実施形態では、前記QCMセンサを前記開始共振周波数に回復する修正は、QCMセンサの温度を上昇させるか又は低下させるステップを含む。一実施形態では、前記QCMセンサを前記開始共振周波数に回復する修正は、前駆体送達システムを制御するステップを含む。一実施形態では、前記QCMセンサを前記開始共振周波数に回復する修正は、測定された前記共振周波数が前記開始共振より低い場合、前駆体膜の堆積を低減するステップと、測定された前記共振周波数が前記開始共振周波数より高い場合、前駆体膜の堆積を増加させるステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
一部が添付図面に示される実施形態を参照することによって、上で簡単に要約した本発明のより具体的な説明を行うことができる。しかしながら、添付図面は、本発明の典型的な実施形態のみを示すため、本発明の範囲を限定すると見なされるべきではなく、これは、本発明が他の同等に有効な実施形態を認めることができるためである。したがって、本発明の本質及び目的を更に理解するために、以下の詳細な説明を図面と併せて参照することができる。
【0019】
【
図1】1つ以上の水晶振動子マイクロバランスセンサを用いた、キャリアストリーム中の凝縮性プロセスガスの質量流量の測定及び制御のための方法の一実施形態を実施する場合に使用され得るステップの一例を示す。
【
図2】1つ以上の水晶振動子マイクロバランスセンサを用いた、キャリアストリーム中の凝縮性プロセスガスの質量流量の測定及び制御のためのシステムの一実施形態を概略的に示す。
【
図3】1つ以上の水晶振動子マイクロバランスセンサを用いた、キャリアストリーム中の凝縮性プロセスガスの質量流量の測定及び制御のためのシステムのQCMセンサの一実施形態を概略的に示す。
【
図4】1つ以上の水晶振動子マイクロバランスセンサを用いた、キャリアストリーム中の凝縮性プロセスガスの質量流量の測定及び制御のためのシステムの別の実施形態を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の説明は、キャリアストリーム中の凝縮性プロセスガスの質量流量の測定及び制御のための水晶振動子マイクロバランスセンサの様々な実施形態に関する。本明細書に記載されるバージョンは、本明細書に詳述される特定の発明概念を具体化する例であることが理解されるであろう。そのため、その他の変形及び修正は、当業者には容易に明らかになるであろう。また、添付図面に関して適切な参照枠を提供するために、この議論全体を通して特定の用語が使用されてもよい。「上流」、「下流」、「上部」、「下部」、「前方」、「後方」、「内部」、「外部」、「前」、「後」、「上」、「下」、「内」、「外」、「第一の」、「第二の」などの用語は、特に示されている場合を除き、これらの概念を限定することを意図したものではない。本明細書で使用される「約」又は「およそ」という用語は、請求又は開示された値の80%~125%の範囲を指し得る。図面に関して、それらの目的は、キャリアストリーム中の凝縮性プロセスガスの質量流量の測定及び制御のための水晶振動子マイクロバランスセンサの顕著な特徴を説明することであり、特に縮尺どおりに提供されていない。
【0021】
1つ以上の水晶振動子マイクロバランス(QCM)センサを用いた、キャリアストリーム中の凝縮性プロセスガスの質量流量の測定及び制御のための方法100の一実施形態を、
図1を参照して説明する。第一のステップ102では、凝縮性前駆体の膜(前駆体膜)をQCMセンサに形成する。「膜(film)」という用語は、厚さがナノメートルの数分の1から数マイクロメートルまでの範囲の、(指定されない限り)任意の状態での物質の層を指すために使用される。一例では、初期膜の厚さは、数ナノメートル程度であり、監視される前駆体の特性を含むいくつかの要因に依存する。初期膜の必要な厚さは、送達システムのガスラインの圧力に応じて変化する前駆体物質の特性(凝縮温度、蒸発温度)から由来する。システム動作中の任意の時点でのQCMセンサ上の前駆体膜の厚さは、測定システムの時間応答と温度制御回路の潜在的なエラーに影響を与える。前駆体膜の初期堆積は、後述する準備ステップの一部であってもよい。本明細書で使用される「堆積する(deposit)」、「堆積し(depositing)」及び「堆積(deposition)」という用語は、限定されないが、凝縮などの他の膜形成方法を排除することを意味するものではない。ステップ104では、QCMセンサの開始共振周波数を決定し、QCMセンサに堆積された前駆体の薄膜があり、QCMセンサ280は、正味ゼロ凝縮状態(前駆体の蒸発=前駆体の凝縮)にある。ステップ106では、システム動作中にQCMセンサの共振周波数の連続測定値を取得する。共振周波数と開始共振周波数との偏差は、システムが平衡状態から外れているか、又はQCMセンサが正味ゼロ凝縮の状態ではなくなっていることを示す。
【0022】
例えば、ステップ108では、QCMセンサで凝縮する前駆体の量がQCMセンサから蒸発する前駆体の量より大きい場合(Δ質量>0、Δ周波数QCM<0)、正味の正の凝縮状態が発生する。正味の正の前駆体凝縮が発生する場合、監視に使用される全ての共振モード(剪断モードを含む)の共振周波数が低下する。この状態は、QCMセンサを通って移動する前駆体の濃度の意図的な増加、又は温度の意図的な低下の結果である可能性がある。しかしながら、正味の正の前駆体凝縮は、システムの故障、又は適切な量のキャリアガス又はその他の成分の供給の失敗の結果である可能性もある。この共振周波数の変化は、システムエラー又は位相エラーを引き起こす可能性があり、修正を決定するために使用される。この例の修正は、QCMセンサの温度の上昇である。修正が実施されると、システムエラーは、解消される。同様に、ステップ110では、正味の負の凝縮状態が発生する場合、QCMセンサで凝縮する前駆体の量は、QCMセンサから蒸発する前駆体の量より少ない。正味の負の前駆体凝縮が発生する場合、共振周波数は、増加する。この状態は、QCMセンサ上又はQCMセンサを通過する前駆体の濃度の意図的な減少、又は温度の意図的な上昇の結果である可能性がある。しかしながら、正味の負の前駆体凝縮は、システムの故障、又はキャリアストリーム内の適切な量の前駆体の供給の失敗の結果である可能性もある。この共振周波数の低下は、システムエラーを引き起こす可能性があり、修正を決定するために使用される。この例での修正は、QCMの温度の低下である。システム修正が実施されると、システムエラーは、解消される。
【0023】
QCMセンサを特定の振動周波数(Δ周波数QCM=0)に保持することにより、QCMセンサの温度は、前駆体の正確な凝縮温度のために常に感知され、該凝縮温度は、状態変数(圧力、温度など)とキャリアガスに対する前駆体の濃度によって異なる。次に、QCMの温度の修正は、フィードバックとして使用されて前駆体送達システムを制御することができる。このような修正は、キャリアガス流量及び前駆体アンプル温度などの要因に基づいて実行されてもよい。
【0024】
一実施形態では、QCMセンサでの前駆体の凝縮速度がQCMセンサからの凝縮前駆体の蒸発速度と等しくなるように、QCMセンサの温度を制御する方法が開示される。この方法により、結晶の飽和が防止され、測定プロセスが真空プロセスチャンバへの流量濃度に影響を与えるリスクが最小限に抑えられるか又は解消される。QCMセンサが平衡に達すると、QCMセンサの結晶における正味の質量流量は、ゼロになる。
【0025】
この方法の別の実施形態では、QCMセンサは、前駆体/キャリアガス混合物中の前駆体の分圧制御器として使用される。この方法の実施形態は、液体及び固体の前駆体を用いて使用されてもよい。この方法では、QCMセンサは、所定の圧力で過飽和に近い状態で動作する。位相エラーは、QCMセンサからの前駆体が過剰に蒸発する場合に誘導され、前駆体の蒸発を制御することによりQCMセンサからの上流のキャリアストリーム中の前駆体の濃度を制御するために使用できる。
【0026】
キャリアストリーム中の前駆体を監視する方法の一実施形態は、センサ結晶を含むQCMセンサを提供するステップと、QCMセンサ結晶の表面に前駆体の膜を堆積するステップと、堆積された膜を用いてQCMセンサ結晶の開始共振周波数を決定するステップと、製造システムの動作中にQCMセンサ結晶の共振周波数を測定して、開始共振周波数と比較するステップと、測定された共振周波数が開始共振周波数より低い場合、測定された共振周波数が開始共振周波数と等しくなるまで、センサ結晶の温度を上昇させるステップと測定された共振周波数が開始共振周波数より高い場合、測定された共振周波数が開始共振周波数と等しくなるまで、センサ結晶の温度を低下させるステップと、を含む。
【0027】
キャリアストリーム中の前駆体を監視する方法の別の実施形態は、センサ結晶を含むQCMセンサを提供するステップと、QCMセンサ結晶に前駆体の膜を堆積するステップと、堆積された膜を用いてセンサ結晶の開始共振周波数を決定するステップと、製造システムの動作中にQCMセンサ結晶の共振周波数を継続的に測定して、開始共振周波数と比較するステップと、測定された共振周波数と開始共振周波数との差が閾値以上である場合、そのような差に応じて、QCMセンサ結晶を開始共振周波数に回復するシステム修正を自動的に実施するステップと、を含む。
【0028】
測定及び制御方法100は、電気機械設備、エネルギー源、コンピュータハードウェア(データプロセッサ、サーバ、制御器、表示装置、入力装置、出力装置など)、コンピュータプログラム(組み込みソフトウェア、アプリケーションソフトウェアなど)、及び特定用途向け集積回路を含む様々なタイプのアセンブリ及びシステムを通じて実施されてもよい。
【0029】
図2及び
図3は、上述した方法のうちの1つ以上を実施する半導体などのマイクロエレクトロニクス装置の製造を監視するシステム200、300の実施形態を概略的に示す。まず、
図2を参照すると、システム200は、一般に、所望のマイクロエレクトロニクス装置を製造するために使用される1つ以上のワークピース又は基板50を受け入れるように構成された真空プロセスチャンバ210を含む。一実施形態では、基板は、シリコンからなるウェーハである。真空プロセスチャンバ210は、1つ以上の供給ライン又は導管220を介して1つ以上の物質源に接続される。
図2は、2つの物質源を示しており、一方の物質源は、キャリアガス源230であり、他方の物質源は、前駆体源240である。前駆体源240は、マイクロエレクトロニクス装置の製造中に一般的に使用される液体又は固体状態の前駆体物質242を保持するように構成されたアンプルであってもよい。前駆体物質242は、蒸発して、キャリアガスによって供給導管220を通って真空プロセスチャンバ210に輸送されるように、加熱されてもよく、真空プロセスチャンバ210では、前駆体が分解して、真空プロセスチャンバ210内に位置する基板50の表面に薄い固体膜を形成する。
【0030】
質量流量制御器(MFC)260は、供給導管220を流れるキャリアガス及び/又は前駆体242に曝されるように、供給導管220内に配置されてもよく、供給導管220に結合されてもよい。MFCは、供給導管220に沿ったキャリアガス及び/又は前駆体242の流量を測定し制御するために使用される。供給導管220内の圧力を制御するために、1つ以上の圧力制御バルブ270を配置してもよい。一実施形態では、1つ以上の圧力制御バルブ270は、原子層堆積(ALD)バルブを含んでもよい。一実施形態では、ALDバルブは、3つのポートを含んでもよく、第一のポートは、キャリアガス源230につながる導管に接続され、第二のポートは、前駆体源240につながる導管に接続される。第三のポートは、供給ライン220に接続される。この実施形態では、ALDバルブは、キャリアガスと前駆体蒸気の混合物又は比率を制御するように構成されてもよい。
【0031】
更に
図2を参照すると、QCMセンサ280は、供給導管220を通る前駆体ガスの流路に沿った1つ以上の点に配置される。
図2に示す例に示すように、2つのQCMセンサ280は、システム200の一部であり、第一のQCMセンサ280は、圧力制御バルブ270の前又は上流に配置される。図示されるように、第二のQCMセンサ280は、圧力制御バルブ270の下流に配置されるが、真空プロセスチャンバ210と供給導管220との結合位置の前に配置される。システム200に示される2つのQCMセンサ280は、互いに同じであってもよい。システムの他の実施形態(
図4のシステム300など)は、必要に応じて配置されたより少ない又はより多くのQCMセンサ280を含んでもよい。各QCMセンサ280は、センサ制御ユニットなどの制御ユニット290に電気的に通信し、制御ユニット290は、グラフィックユーザインタフェース(GUI)/プロセッサ292に電気的に通信する。制御ユニット290及び/又はプロセッサ292は、前駆体及びキャリアガスの放出を制御するバルブを含むバルブ270、MFC260、及び前駆体源240のヒータのうちの1つ以上に通信してもよい。
【0032】
図3は、半導体などのマイクロエレクトロニクス装置の製造を監視するシステム300の別の実施形態の概略図を示す。システム300は、一般に、所望のマイクロエレクトロニクス装置を製造するために使用される1つ以上のワークピース又は基板を受け入れるように構成された真空プロセスチャンバ310を含む。一実施形態では、基板は、シリコンからなるウェーハである。真空プロセスチャンバ310は、1つの供給ライン又は導管325及び1つの希釈ライン又は導管320を介して1つ以上の物質源に接続される。図示されるように、システム300は、希釈ライン320及び前駆体ライン325を含む。
図3は、2つの物質源を示しており、一方の物質源は、キャリアガス源330であり、他方の物質源は、前駆体源340である。前駆体源340は、マイクロエレクトロニクス装置の製造中に一般的に使用される液体又は固体状態の前駆体物質342を保持するように構成されたアンプルであってもよい。前駆体物質342は、蒸発して、キャリアガスによって供給導管325を通って輸送され、更に希釈導管320によって希釈されて、前駆体/キャリア混合物が真空プロセスチャンバ310に輸送されるように加熱されてもよく、真空プロセスチャンバ310では、前駆体が分解して、真空プロセスチャンバ310内に配置された基板の表面に膜を堆積する。
【0033】
質量流量制御器(MFC)360は、供給導管325を流れるキャリアガス及び/又は前駆体342に曝されるように、供給導管325内に配置されてもよく、供給導管325に結合されてもよい。MFCは、供給導管325に沿ったキャリアガス及び/又は前駆体342の流量を測定し制御するために使用される。システム300内の圧力を制御するために、1つ以上の圧力制御バルブ370及び真空375を配置してもよい。
【0034】
更に
図3を参照すると、QCMセンサ280は、システム300を通る前駆体及びキャリアガスの流路に沿った3つ以上の点に配置される。
図3に示すように、1つのQCMセンサ280がシステム300の希釈ライン320に沿って配置され、2つのQCMセンサ280がシステム300の前駆体ライン325に沿って配置されることにより、全てのQCMセンサ280は、真空プロセスチャンバ310の前又は上流に配置される。システム300の一部として示されるQCMセンサ280は、互いに同じであってもよい。システムの他の実施形態は、必要に応じて配置されたより少ない又はより多くのQCMセンサ280を含んでもよい。各QCMセンサ280は、センサ制御ユニットなどの制御ユニット390に電気的に通信し、制御ユニット390は、グラフィックユーザインタフェース(GUI)/プロセッサ392を含んでもよく、グラフィックユーザインタフェース(GUI)/プロセッサ392に電気的に通信してもよい。制御ユニット390及び/又はプロセッサ392は、前駆体及びキャリアガスの放出を制御するバルブを含むバルブ370、MFC360、及び前駆体源340のヒータのうちの1つ以上に通信してもよい。
【0035】
図4は、システム200、300で使用され得るQCMセンサ280の一実施形態の概略図を示す。QCMセンサ280は、水晶振動子などの圧電(振動)結晶286を少なくとも部分的に取り囲む空間284を画定するハウジング282を含んでもよい。図示されるように、ハウジング282は、結晶286が供給導管220/320/325を通って移動するキャリアガス及び前駆体に曝されるように、供給導管220/320/325の内部空間222/322/327に開口する。QCMセンサ280は、電気接続などの1つ以上の接続方式を更に含む。図示されるように、QCMセンサ280をセンサ制御ユニットなどの制御ユニット290/390に電気的に結合する制御器接続281がある。温度制御接続283は、QCMセンサ280を1つ以上の温度制御ユニット294/394に結合してもよい。一実施形態では、温度制御ユニットは、結晶286に接触する1つ以上のペルチェ素子を含み、QCMセンサ280及び結晶286の温度の調整を支援する。1つ以上の温度制御ユニット294/394は、GUI/プロセッサ292/392に電気的に通信するように構成されてもよい。1つ以上の温度制御ユニット294/394は、供給導管220/320などのシステム200、300内の他の部品の温度を制御するために使用される同じユニットであってもよく、別個のユニットであってもよい。別の実施形態では、1つ以上の温度制御ユニット294は、制御ユニット290/390に通信する。1つ以上の温度制御ユニット294、394は、少なくとも1つの冷却装置及び少なくとも1つの加熱装置を含んでもよい。少なくとも1つの加熱装置は、閉ループ循環システムを介してガス又は液体を加熱する抵抗ヒータ、又は熱電(TE)ヒータを含んでもよい。少なくとも1つの冷却装置は、QCMセンサ280に組み込まれた熱電(TE)冷却器、液体冷却剤、又は冷却ガスを含んでもよい。少なくとも1つの加熱/冷却装置は、QCMセンサが受け取る電流量に応じてQCMセンサを加熱するか又は冷却するように構成されたペルチェ素子を含んでもよい。
【0036】
システム200、300は、質量流量の測定及び制御のための、キャリアガスストリーム中の前駆体濃度のリアルタイム測定のためにQCMセンサ280を使用する。システム200、300の動作中、QCMセンサ280は、QCMセンサ280の結晶286で発生する質量変化に応答する。例えば、QCMセンサ280の水晶振動子286は、特定の基本周波数、例えば、6MHzで、振動する。質量が結晶286に蓄積すると、全ての共振モード(監視に使用される剪断モードを含む)での共振周波数が低下し、その結果、基本周波数の下方シフトが生じる(Δ質量>0、Δ周波数QCM<0)。
【0037】
システム200、300内で動作する前に、QCMセンサ280(及びMPC260/360)は、測定及び制御のために準備される。準備シーケンス又は準備ステップでは、QCMセンサ280の温度は、前駆体の凝縮温度より高い温度まで徐々に上昇する。次に、前駆体/キャリアガス混合物は、供給導管220/320/325を通って、QCMセンサ280上又はQCMセンサ280を通って流れることが可能になる。次に、QCMセンサ280の温度は、前駆体の凝縮膜がQCMセンサ280(センサ結晶286)に形成されるまで、温度設定値まで徐々に低下する。この温度設定値は、必要な過飽和の程度、安全上の懸念及び感度によって異なる。設定値温度でのQCM280の共振周波数は、開始共振周波数である。準備シーケンスが完了し、QCMセンサ280の温度が定常状態に設定され、動作の準備が整うと、システム200、300は、監視モード又は制御モードで動作してもよい。次に、システムの動作について、
図3のシステム300を参照して説明するが、
図2のシステムは、同様の方法で動作することもできる。
【0038】
図3を参照すると、システム300が監視モードで動作する場合、平衡状態又は定常状態での変化は、変化した共振周波数と一致するようにQCMセンサ280への駆動源の周波数を変化させるためにエラー信号を使用しない。前駆体の分圧の変化が発生する場合、平衡状態又は定常状態での変化(開始共振周波数に対する周波数の変化)が発生し、これにより、QCMセンサ280に対する蒸発/凝縮速度の変化が発生する。例えば、システム300が監視モードで動作し、定常状態での変化が制御ユニット390によって検出され、プロセッサ392に送信される場合、温度制御ユニット394は、QCMセンサ280の温度(又はペルチェ素子への電流)を調整する。QCMセンサ280の温度は、QCMからのエラー信号がゼロ280に減少するまで調整され、これは、QCMの開始共振周波数が回復することを意味する。この温度修正(又はペルチェ素子への電流の変化)は、キャリアストリーム中の前駆体の分圧の変化を示す。システム300は、開ループ又は閉ループで動作してもよい。
【0039】
開ループでは、システムは、監視モードで動作する。例えば、平衡状態又は定常状態での変化(開始共振周波数に対する周波数の変化)が発生する場合、それは、前駆体の分圧の変化を示す。この変化は、QCMセンサ280が開始共振周波数に回復するまで、プロセスエンジニアがQCMセンサ280の温度を調整することによって手動で相殺される。温度調整は、プロセスエンジニアがプロセッサ/ディスプレイ392と対話することによって達成されてもよい。一実施形態では、プロセスエンジニアは、ペルチェ素子に送達される電流の変化を実施する。あるいは、閉ループ構成では、プロセッサ392によって自動修正を決定し、制御ユニット390及び/又は温度制御ユニット394に応用することができる。平衡状態又は定常状態での変化(開始共振周波数からの周波数の変化)が発生することにより、前駆体の分圧の変化が発生したことを示す場合、その変化は、制御ユニット390によって検出され、プロセッサ/ディスプレイ392に送信される。プロセッサ392は、前駆体の蒸発及びキャリアガスの放出を制御するように構成される。プロセッサ392は、QCMセンサ280からのエラー信号に基づいて、前駆体の分圧の修正を決定する。例えば、平衡がQCMセンサ280からの前駆体の正味蒸発にシフトする場合、プロセッサ392は、QCMセンサ280が開始共振周波数に回復するまで、前駆体源340からの前駆体342の蒸発速度を増加させてもよい。
【0040】
無論、ガス送達に使用されるシステム200、300の部品、例えば、供給導管220、320、325は、蒸発した前駆体種の凝縮を防止するために加熱されなければならない。しかしながら、システム200、300の温度は、ガス送達部品内で前駆体分子の熱分解を誘導しないように十分に低くなければならない。このような影響は、回避すべき障害状態と考えられる。
【0041】
本発明は、特定の例示的な実施形態を参照して特に示され説明されてきたが、当業者であれば、本明細書及び図面によってサポートされる本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、細部の様々な変更が可能であることを理解することができる。更に、例示的な実施形態が特定の数の要素を参照して説明される場合、例示的な実施形態が、特定の数より少ない又は多い要素を利用して実施できることを理解することができる。
【国際調査報告】