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特表2024-520498家畜におけるインビトロ育種システム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】家畜におけるインビトロ育種システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 67/02 20060101AFI20240517BHJP
   C12N 5/07 20100101ALI20240517BHJP
   C12N 5/0735 20100101ALN20240517BHJP
【FI】
A01K67/02 ZNA
C12N5/07
C12N5/0735
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573142
(86)(22)【出願日】2022-05-26
(85)【翻訳文提出日】2024-01-16
(86)【国際出願番号】 US2022031210
(87)【国際公開番号】W WO2022251549
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】63/194,667
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500368329
【氏名又は名称】エービーエス グローバル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ビートン, ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】クリッシャー, レベッカ リン
(72)【発明者】
【氏名】リー, チャン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】ラージプート, サンディープ
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AC14
4B065BA21
4B065BC01
4B065CA41
(57)【要約】
本教示は、インビトロで家畜を育種する方法を提供する。複数の胚盤胞から胚性幹細胞を作製し、胚性幹細胞を遺伝子型決定して、交配に最適な胚を選択して子孫を作製し、胚性幹細胞を始原生殖細胞様細胞(PGCLC)に誘導するための工程が提供される。雄PGCLCは、更に精原幹細胞様細胞に、次いで、精子細胞様細胞に誘導される。雌PGCLCは、卵母細胞に誘導され、次いで成熟される。次いで、得られた配偶子を、互いに、又は望ましい遺伝子を有する動物由来の異性配偶子と混合して、次世代の胚を作製することができ、次いでこのプロセスによって再び実行することができる。このインビトロ育種方法を使用して、家畜における遺伝的進歩の速度を増加させることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
家畜を育種する方法であって、
A)複数の成体動物から少なくとも1頭の家畜親を選択することと、
B)前記少なくとも1頭の家畜親から複数の配偶子を得ることと、
C)前記複数の配偶子を使用して少なくとも1つの胚を作製することと、
D)前記少なくとも1つの胚から胚性幹細胞の株を作製することと、
E)前記少なくとも1つの胚を遺伝子型決定することと、
F)育種のための少なくとも1つの胚性幹細胞株を選択することと、
G)少なくとも1つの選択された株から幹細胞を誘導して、配偶子又は配偶子様細胞に分化させることと、
H)前記配偶子又は配偶子様細胞を異性配偶子又は配偶子様細胞と組み合わせて、少なくとも1つの次世代胚を産生することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの胚を遺伝子型決定することが、前記少なくとも1つの胚から作製された前記胚性幹細胞を遺伝子型決定すること、又は前記少なくとも1つの胚の生検を遺伝子型決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
配偶子又は配偶子様細胞を前記組み合わせることが、インビトロ受精によるもの、又は細胞質内精子注射によるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
異性親の前記配偶子が、高い遺伝的メリットを有する成体動物由来であるか、又は前記配偶子様細胞が、工程D若しくはGで産生された異性遺伝子型胚性幹細胞株由来である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
I)前記少なくとも1つの次世代胚から胚性幹細胞株を作製して、次世代胚性幹細胞株を作製することと、
J)次世代胚性細胞株に対して工程E~Hを繰り返すことと、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
工程C又は工程Iからの前記胚性幹細胞株のうちの少なくとも1つから動物を産生することを更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記親が、ウシ親又はブタ親である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
胚性幹細胞の株を前記作製することが、胚、それに由来する胚盤胞、又はそれらの一部に、WNTシグナル伝達阻害剤、GSK3シグナル伝達阻害剤、タンキラーゼ阻害剤、Rhoキナーゼ(ROCK)阻害剤、アクチビンAシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせを投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記WNTシグナル伝達阻害剤が、存在する場合、iwr-1、iwr-1-endo、iwp-2、Box5、iCRT3、スクレロスチン、dkk2、dkk1、LF3、CCT036477、FH535、カルダモニン、IWP-L6、Wnt-C59、ニクロサミド、XAV-939、ICG-001、LGK-974、CP21R7、NCB-0846、PNU-74654、サリノマイシン、KY021 11、WIKI4、PRI-724、KYA1797K、2,4-ジアミノ-キナゾリン、Ant 1.4Br、Ant 1.40、アピキュラレン、バフィロマイシン、ETC-159、G007-LK、G244-LM、IWR、NSC668036、PKF1 15-584、ピルビニウム、ケルセチン、シゾカオールD、BC2059、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、
前記GSK3阻害剤が、存在する場合、CHIR99021、AR-A 014418、A 1070722、SB 415286、TCS 2002、3F8、TDZD 8、TC-G 24、BIO-アセトキシム、インジルビン-3’-オキシム、TWS 119、TCS 21311、SB 216763、BIO、炭酸リチウム、ケンパウロン、アルスターパウロン、及びCHIR 98014からなる群から選択され、
前記タンキラーゼ阻害剤が、存在する場合、XAV939、AZ 6102、JW 55、TC-E 5001、及びWIKI4からなる群から選択され、
前記ROCK阻害剤が、存在する場合、Y-27632又はPD0325901であり、
前記アクチビンAシグナル伝達の誘導剤が、存在する場合、アクチビンA、アラントラクトン、BMP4、ノーダル、スタウプリミド、SB-431542、A01、アラントラクトン、GDF8、又はコノフィリンである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞が、bFGF、FGF2、FGF4、又はSUN 11602で更に処理される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記細胞に、ビタミンC、LIFシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせを投与することを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
細胞を配偶子又は配偶子様細胞に前記誘導することが、前記選択された幹細胞株の各々からの細胞を前駆細胞に誘導することであって、前記細胞に、アクチビンAシグナル伝達の誘導剤、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)シグナル伝達の誘導剤、インスリンシグナル伝達の誘導剤、WNTシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせを投与することによる、誘導することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記前駆細胞が、中胚葉様細胞であり、前記誘導することが、前記細胞に、アクチビンA、CHIR99021、及び血清代替品を投与することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記前駆細胞が、形成細胞様細胞であり、前記誘導することが、前記細胞に、bFGF、アクチビンA、及びCHIR99021を投与することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
細胞を配偶子又は配偶子様細胞に前記誘導することが、前記前駆細胞を始原生殖細胞様細胞(PGCLC)に誘導することであって、前記細胞に、BMPシグナル伝達の誘導剤、LIFシグナル伝達の誘導剤、SCFシグナル伝達の誘導剤、EGFシグナル伝達の誘導剤、WNTシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせを投与することによる、誘導することを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記前駆細胞をPGCLCに前記誘導することが、LIF、SCF、EGF、及びBMP4を投与することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記細胞に、血清代替品を投与することを更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
細胞を配偶子又は配偶子様細胞に前記誘導することが、前記胚性幹細胞を精原幹細胞様細胞(SSCLC)に誘導することであって、前記細胞に、レチノイン酸(RA)シグナル伝達の誘導剤、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)シグナル伝達の誘導剤、テストステロンシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせを投与することによる、誘導することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
胚性幹細胞を配偶子又は配偶子様細胞に前記誘導することが、前記胚性幹細胞を精子細胞に誘導することであって、前記細胞に、インスリンシグナル伝達の誘導剤、テストステロンシグナル伝達の誘導剤、FSHの誘導剤、ウシ脳下垂体抽出物(BPE)、又はそれらの組み合わせを投与することによる、誘導することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
細胞を配偶子又は配偶子様細胞に前記誘導することが、前記胚性幹細胞を卵母細胞に誘導することであって、
前記胚性幹細胞を再構成された卵巣内に配置することと、
前記再構成された卵巣内の前記細胞に、エストロゲン受容体アゴニストを投与することと、
前記再構成された卵巣内の前記細胞に、少なくとも1つのTGFβシグナル伝達の誘導剤を投与することと、
前記再構成された卵巣内の前記細胞に、FSHシグナル伝達の誘導剤、EGFシグナル伝達の誘導剤、ゴナドトロピンシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせを投与することと、による、誘導することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記幹細胞を配偶子又は配偶子様細胞に前記誘導することが、前記幹細胞を卵母細胞に誘導することであって、前記細胞に、FIGLA、SOHLH1、LHX8、NOBOX、STAT3、TBPL2、DYNLL1、SUB1、又はそれらの組み合わせを発現させることによる、誘導することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
ウシを育種する方法であって、
A)複数の成体動物から少なくとも1頭のウシ親を選択することと、
B)前記少なくとも1頭のウシ親から複数の配偶子を得ることと、
C)前記複数の配偶子から少なくとも1つの胚を作製することと、
D)前記少なくとも1つの胚から胚性幹細胞の1つ以上の株を作製することであって、前記作製することが、
i)胚、それから成熟した胚盤胞、又はそれらの一部に、WNTシグナル伝達阻害剤及びFGFシグナル伝達の誘導剤を投与することを含む、作製することと、
E)前記胚性幹細胞の1つ以上の株を遺伝子型決定することと、
F)育種のための幹細胞株の組み合わせを選択することと、
G)各選択された株から幹細胞を誘導して、配偶子又は配偶子様細胞に分化させることであって、前記誘導することが、
i)アクチビンAシグナル伝達の誘導剤、bFGFシグナル伝達の誘導剤、インスリンシグナル伝達の誘導剤、WNTシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせを投与することによる、前記幹細胞を前駆細胞に誘導することと、
ii)BMPシグナル伝達の誘導剤、LIFシグナル伝達の誘導剤、SCFシグナル伝達の誘導剤、EGFシグナル伝達の誘導剤、WNTシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせを投与することによる、前記前駆細胞をPGCLCに誘導することと、
iii)XY遺伝子型を有する前記PGCLCを精子細胞様細胞に誘導することであって、
a)RAシグナル伝達の誘導剤、GDNFシグナル伝達の誘導剤、テストステロンシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせを投与することによる、前記PGCLCをSSCLCに誘導することと、
b)インスリンシグナル伝達の誘導剤、テストステロンシグナル伝達の誘導剤、FSHシグナル伝達の誘導剤、又はBPEを投与することによる、前記SSCLCを精子細胞様細胞に誘導することと、を含む、誘導することと、
iv)XX遺伝子型を有する前記PGCLCを卵母細胞に誘導することであって、
a)前記細胞を再構成された卵巣内に配置することと、
b)前記再構成された卵巣に、エストロゲン受容体アゴニストを投与することと、
c)前記再構成された卵巣に、少なくとも1つのTGFβシグナル伝達の誘導剤を投与することと、
d)前記再構成された卵巣に、FSHシグナル伝達の誘導剤、EGFシグナル伝達の誘導剤、ゴナドトロピンシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせを投与することと、を含む、誘導することと、を含む、分化させることと、
H)前記配偶子又は配偶子様細胞を用いてインビトロ受精を行って、複数の次世代胚を形成することと、
I)前記複数の次世代胚の各々から胚性幹細胞株を作製して、次世代胚性幹細胞株を作製することと、
J)前記次世代胚性幹細胞株に対して工程E~Hを繰り返すことと、を含む、方法。
【請求項25】
工程D)が、FGF2及びIWR1を含む培地中で、前記胚、それから成熟した胚盤胞、又はそれらの一部をインキュベートすることを含み、
工程G)が、
i)アクチビンA、bFGF、及びCHIR99021を投与することによる、前記幹細胞を形成細胞に誘導すること、又は血清代替品、アクチビンA、及びCHIR99021を投与することによる、前記幹細胞を中胚葉様細胞に誘導することと、
ii)BMP4、LIF、SCF、EGF、及び血清代替品を投与することによる、前記形成細胞又は中胚葉様細胞をPGCLCに誘導することと、
iii)XY PGCLCを精子細胞様細胞に誘導することであって、
a)RA、GDNF、及びテストステロンを投与することによる、前記PGCLCをSSCLに誘導することと、
b)血清代替品、テストステロン、及びBPEを投与することによる、前記SSCLを精子細胞様細胞に誘導することと、を含む、誘導することと、
iv)XX PGCLCを卵母細胞に誘導することであって、
a)前記XX PGCLSと雌ウシ性腺体細胞及びRAとを混合して、再構成された卵巣を形成することと、
b)前記再構成された卵巣にICI182780を投与して、二次卵胞様構造(2FL)を誘導することと、
c)前記2FLに、FSH、BMP15、及びGDF9を投与して、卵丘-卵母細胞複合体(COC)を誘導することと、
d)前記COCに、FSH、EGF、及びhCGを投与して、卵母細胞を形成することと、を含む、誘導することと、を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
工程D又は工程Iで作製された前記胚性幹細胞株のうちの少なくとも1つから動物を産生することを更に含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
ブタを育種する方法であって、
A)複数の成体動物から少なくとも1頭のブタ親を選択することと、
B)前記少なくとも1頭のブタ親から複数の配偶子を得ることと、
C)前記複数の配偶子から少なくとも1つの胚を作製することと、
D)前記少なくとも1つの胚から胚性幹細胞の1つ以上の株を作製することであって、前記作製することが、
i)胚、それから成熟した胚盤胞、又はそれらの一部を複数の胚から単離することと、
ii)前記胚、それから成熟した胚盤胞、又はそれらの一部に、GSK3阻害剤、タンキラーゼ阻害剤、ビタミンC、アクチビンAシグナル伝達誘導剤、LIFシグナル伝達誘導剤、FGFシグナル伝達誘導剤、又はそれらの組み合わせを投与することと、を含む、作製することと、
E)前記胚性幹細胞の1つ以上の株の各々を遺伝子型決定することと、
F)育種のための幹細胞株の組み合わせを選択することと、
G)各選択された株から幹細胞を誘導して、配偶子様細胞に分化させることであって、前記誘導することが、
i)前記細胞に、アクチビンaシグナル伝達の誘導剤、bFGFシグナル伝達の誘導剤、インスリンシグナル伝達の誘導剤、WNTシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせを投与することによる、前記幹細胞を前駆細胞に誘導することと、
ii)前記細胞に、BMPシグナル伝達の誘導剤、LIFシグナル伝達の誘導剤、SCFシグナル伝達の誘導剤、EGFシグナル伝達の誘導剤、WNTシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせを投与することによる、前記前駆細胞をPGCLCに誘導することと、
iii)XY遺伝子型を有する前記PGCLCを精子細胞様細胞に誘導することであって、
a)前記細胞に、RAシグナル伝達の誘導剤、GDNFシグナル伝達の誘導剤、テストステロンシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせを投与することによる、前記PGCLCをSSCLCに誘導することと、
b)前記細胞に、インスリンシグナル伝達の誘導剤、テストステロンシグナル伝達の誘導剤、FSHシグナル伝達の誘導剤、及びBPEを投与することによる、前記SSCLCを精子細胞様細胞に誘導することと、を含む、誘導することと、
iv)XX遺伝子型を有する前記PGCLCを卵母細胞に誘導することであって、
a)前記細胞を再構成された卵巣内に配置することと、
b)前記再構成された卵巣に、エストロゲン受容体アゴニストを投与することと、
c)前記再構成された卵巣に、少なくとも1つのTGFβシグナル伝達の誘導剤を投与することと、
d)前記細胞に、FSHシグナル伝達の誘導剤、EGFシグナル伝達の誘導剤、ゴナドトロピンシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせを投与することと、を含む、誘導することと、を含む、分化させることと、
H)前記配偶子又は配偶子様細胞を用いてインビトロ受精を行って、複数の次世代胚を形成することと、
I)前記複数の次世代胚の各々から胚性幹細胞株を作製して、次世代胚性幹細胞株を作製することと、
J)次世代胚性細胞株に対して工程E~Hを繰り返すことと、を含む、方法。
【請求項28】
工程D)が、前記胚、それから成熟した胚盤胞、又はそれらの一部に、bFGF、CHIR99021、及びPD0325901を投与することを含み、
工程G)が、
i)アクチビンA、bFGF、及びCHIR99021を投与することによる、前記幹細胞を形成細胞に誘導すること、又は血清代替品、アクチビンA、及びCHIR99021を含む培地中でインキュベートすることによる、前記幹細胞を中胚葉様細胞に誘導することと、
ii)前記細胞に、BMP4、LIF、SCF、EGF、及び血清代替品を投与することによる、前記形成細胞又は中胚葉様細胞をPGCLCに誘導することと、
iii)XY PGCLCを精子細胞に誘導することであって、
a)前記細胞に、RA、GDNF、及びテストステロンを投与することによる、前記PGCLCをSSCLに誘導することと、
b)前記細胞に、血清代替品、テストステロン、及びBPEを投与することによる、前記SSCLを精子細胞に誘導することと、を含む、誘導することと、
iv)XX PGCLCを卵母細胞に誘導することであって、
a)前記XX PGCLCと雌ウシ性腺体細胞及びRAとを混合して、再構成された卵巣を形成することと、
b)前記再構成された卵巣にICI182780を投与して、二次卵胞様構造(2FL)を誘導することと、
c)前記2FLに、FSH、BMP15、及びGDF9を投与して、卵丘-卵母細胞複合体(COC)を誘導することと、
d)前記COCに、FSH、EGF、及びhCGを投与して、卵母細胞を形成することと、
e)前記卵母細胞をMII卵母細胞に成熟させることと、を含む、誘導することと、を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
工程D又は工程Iで作製された前記胚性幹細胞株のうちの少なくとも1つから動物を産生することを更に含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
インビトロでのウシ始原生殖細胞様細胞を生成する方法であって、
ウシ胚性幹細胞に、FGFシグナル伝達の誘導剤、アクチビンaシグナル伝達の誘導剤、及びWNTシグナル伝達の誘導剤を投与して、ウシ形成細胞を誘導すること、又はウシ胚性幹細胞に、アクチビンAシグナル伝達の誘導剤、WNTシグナル伝達の誘導剤、及び血清代替品を投与して、ウシ中胚葉様細胞を誘導することと、
前記ウシ形成細胞又は前記ウシ中胚葉様細胞に、LIFシグナル伝達の誘導剤、SCFシグナル伝達の誘導剤、EGFシグナル伝達の誘導剤、及びBMPシグナル伝達の誘導剤を投与して、始原生殖細胞様細胞を誘導することと、を含む、方法。
【請求項31】
ウシ形成細胞を誘導することを含み、前記WNTシグナル伝達の誘導剤が、GSK3を阻害することによってWNTを誘導する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
ウシ形成細胞を誘導することを含み、前記アクチビンAシグナル伝達の誘導剤が、アクチビンA、アラントラクトン、BMP4、ノーダル、スタウプリミド、SB-431542、A01、アラントラクトン、GDF8、又はコノフィリンであり、前記FGFシグナル伝達の誘導剤が、bFGF、SUN 11602、スクラルファート、又はFGF-Pであり、前記WNTシグナル伝達の誘導剤が、WNT2b、WNT3A、WNT-4、Wnt5A、Wnt5b、Wnt7a、Wnt8a、Wnt9a、Wnt-9b、Wnt10b、Wnt11、Wnt16b、ノリン、WntアゴニストI、WntアゴニストII、CHIR99021、LP 922056、BML 284、WAY 316606塩酸塩、SGC AAK1 1、CHIR 98014、又はFoxy 5である、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
ウシ中胚葉様細胞を誘導することを含み、前記アクチビンAシグナル伝達の誘導剤が、アクチビンA、アラントラクトン、BMP4、ノーダル、スタウプリミド、SB-431542、A01、アラントラクトン、GDF8、又はコノフィリンであり、前記WNTシグナル伝達の誘導剤が、WNT2b、WNT3A、WNT-4、Wnt5A、Wnt5b、Wnt7a、Wnt8a、Wnt9a、Wnt-9b、Wnt10b、Wnt11、Wnt16b、ノリン、WntアゴニストI、WntアゴニストII、CHIR99021、LP 922056、BML 284、WAY 316606塩酸塩、SGC AAK1 1、CHIR 98014、又はFoxy 5である、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記LIFシグナル伝達の誘導剤が、LIFであり、前記SCFシグナル伝達の誘導剤が、SCFであり、前記BMPシグナル伝達の誘導剤が、BMP4、BMP8b、BMP7、TGFβ、sb4(2-[[(4-ブロモフェニル)メチル]チオ]ベンゾオキサゾール)、トリアムシノロン、イソリキリチゲニン及びkm11073、4’-ヒドロキシカルコン、又はSVAK-12である、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
ウシ胚性幹細胞からウシ始原生殖細胞様細胞(bPGCLC)を誘導する方法であって、
A)前記細胞に、
i)bFGF、アクチビンA、及びCHIR99021を投与して、ウシ形成細胞を形成するか、又は
ii)アクチビンA、CHIR99021、及び血清代替品を投与して、ウシ中胚葉様細胞を形成することと、
B)前記細胞に、rLIF、SCF、EGF、BMP4、及び血清代替品を投与して、bPGCLCを産生することと、を含む、方法。
【請求項36】
ブタ胚性幹細胞を誘導する方法であって、
胚、胚盤胞、又はそれらの一部を提供することと、
前記胚、胚盤胞、又はそれらの一部に、FGFシグナル伝達誘導剤、WNTシグナル伝達誘導剤、Rhoキナーゼ(ROCK)阻害剤、及びアクチビンAシグナル伝達誘導剤を投与することと、を含む、方法。
【請求項37】
前記FGFシグナル伝達の誘導剤が、bFGF、SUN 11602、スクラルファート、又はFGF-Pであり、前記WNTシグナル伝達の誘導剤が、WNT2b、WNT3A、WNT-4、Wnt5A、Wnt5b、Wnt7a、Wnt8a、Wnt9a、Wnt-9b、Wnt10b、Wnt11、Wnt16b、ノリン、WntアゴニストI、WntアゴニストII、CHIR99021、LP 922056、BML 284、WAY 316606塩酸塩、SGC AAK1 1、CHIR 98014、又はFoxy 5であり、前記ROCK阻害剤が、Y-27632又はPD0325901であり、前記アクチビンAシグナル伝達の誘導剤が、アクチビンA、アラントラクトン、BMP4、ノーダル、スタウプリミド、SB-431542、A01、アラントラクトン、GDF8、又はコノフィリンである、請求項36に記載の方法。
【請求項37】
前記WNTシグナル伝達の誘導剤が、GSK3を阻害することによってWNTを誘導する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記FGFシグナル伝達の誘導剤が、bFGFであり、前記WNTシグナル伝達の誘導剤が、CHIR99021であり、前記ROCK阻害剤が、PD0325901であり、前記アクチビンAシグナル伝達の誘導剤が、アクチビンAである、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
実験室で成長した肉を培養する方法であって、
請求項1の工程Dからの胚性幹細胞を、筋肉細胞、脂肪細胞、臓器細胞、又はそれらの組み合わせに誘導することと、
前記筋肉細胞、脂肪細胞、臓器細胞、又はそれらの組み合わせを三次元構造上で培養することと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年5月28日に出願された米国仮出願第63/194,667号の利益及びそれに対する優先権を主張する。63/194,667は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表の組み込み
配列表は、33,957バイトのサイズであるRB-29-2021-WO1-SEQLST.xmlという名称のファイルを含め、2022年5月23日に作成され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
分野
本発明の分野は、家畜の胚性幹細胞の誘導及び分化である。
【背景技術】
【0004】
背景
世界人口が増加するにつれて、食料生産量も増加させる必要がある。しかしながら、最近の推定では、世界の温室効果ガス排出量の約15%を世界の家畜生産が占めている(Capper,J.L.and Cady,R.A.,J.Anim.Sci.,2020,98,skz291)。環境への影響を最小限に抑えながら食料生産量を増やす方法の1つは、遺伝的進歩、すなわち動物の性能の遺伝的予測に基づいて動物生殖質の効率を高めることによるものである。例えば、乳製品生産量は、2007年~2017年で、ウシの数がほぼ25%と減少しているのにもかかわらず、ほぼ25%と同じ量増加した。すなわち、2007年に存在していた乳牛の75%が、2017年に2007年よりも25%多い牛乳を生産した(Capper,J.L.and Cady,R.A.,J.Anim.Sci.,2020,98,skz291)。この効率の向上は、牛乳生産のはるかに大きな増加にもかかわらず、温室効果ガスの増加はわずか1%であった。(酪農乳業が全体として2050年までに二酸化炭素排出量ネットゼロを約束しているため、温室効果ガス排出量は、まもなく減少し始めるだろう。)遺伝子改善は、豚肉生産量の増加も促進しており、豚肉生産量は、1959年の121億ポンドの豚肉から2009年には228億ポンドの豚肉へと増加した。同じ期間に、豚肉生産のための土地利用は78%減少し、水使用量は41%減少し、豚肉生産のカーボンフットプリントは35%減少した。
いくつかの概要は、乳製品生殖質における遺伝的進歩の増加は、インビトロ育種によって促進され得ると仮定している。最も顕著には、Goszczynski,D.E.,et al.,Biology of Reproduction,2019,100,885-895を参照されたい。従来の育種では、胚がインビトロで作製されてから6ヶ月間(ブタ)又は9ヶ月間(ウシ)にわたって胚を妊娠させ、その後、動物が性的成熟に達するまで更に7ヶ月間(ブタ)又は1年間(ウシ)待つ必要がある。本発明の方法は、より短い期間で増加した遺伝的進歩を可能にする生殖生物学的技術を使用して、生成時間を短縮することを探究する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Capper,J.L.and Cady,R.A.,J.Anim.Sci.,2020,98,skz291
【非特許文献2】Goszczynski,D.E.,et al.,Biology of Reproduction,2019,100,885-895
【発明の概要】
【0006】
概要
本願発明者らは、ウシ及びブタなどの家畜をインビトロで育種する方法を開発した。いくつかの実施形態では、本教示は、A)複数の成体動物から少なくとも1頭の家畜親を選択することと、B)少なくとも1頭の家畜親から複数の配偶子を得ることと、C)複数の配偶子を使用して少なくとも1つの胚を作製することと、D)少なくとも1つの胚から胚性幹細胞の株を作製することと、E)少なくとも1つの胚を遺伝子型決定することと、F)育種のための少なくとも1つの胚性幹細胞株を選択することと、G)少なくとも1つの選択された株から幹細胞を誘導して、配偶子又は配偶子様細胞に分化させることと、H)配偶子又は配偶子様細胞を異性配偶子又は配偶子様細胞と組み合わせて、少なくとも1つの次世代胚を産生することと、を含むか、それらからなるか、又は本質的にそれらからなっていてもよい、家畜を育種する方法を提供する。いくつかの構成では、少なくとも胚を遺伝子型決定することが、少なくとも1つの胚から作製された胚性幹細胞を遺伝子型決定すること、又は少なくとも1つの胚の生検を遺伝子型決定することを含むか、それらからなるか、又は本質的にそれらからなっていてもよい。様々な構成では、配偶子又は配偶子様細胞を組み合わせることは、インビトロ受精によるもの、又は細胞質内精子注射によるものであり得る。様々な構成では、異性親の配偶子は、高い遺伝的メリットを有する成体動物由来であってもよく、又は配偶子様細胞は、本教示の方法で産生された異性遺伝子型胚性幹細胞株由来である。
【0007】
様々な構成では、本教示の方法は、I)少なくとも1つの次世代胚から胚性幹細胞株を作製して、次世代胚性幹細胞株を作製することと、J)次世代胚性細胞株に対して工程E~Hを繰り返すことと、を更に含むか、それらからなるか、又は本質的にそれらからなっていてもよい。様々な構成では、本方法は、本教示の方法に従って家畜を育種する間に産生される胚性幹細胞株のうちの少なくとも1つから動物を産生することを更に含むか、それらからなるか、又は本質的にそれらからなっていてもよい。様々な構成では、親は、ウシ親又はブタ親であり得る。
【0008】
様々な構成では、胚性幹細胞の株を作製することは、胚、それに由来する胚盤胞、又はそれらの一部に、WNTシグナル伝達阻害剤、GSK3シグナル伝達阻害剤、タンキラーゼ阻害剤、Rhoキナーゼ(ROCK)阻害剤、アクチビンAシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせを投与することを含むか、それらからなるか、又は本質的にそれらからなっていてもよい。いくつかの構成では、WNTシグナル伝達阻害剤は、存在する場合、iwr-1、iwr-1-endo、iwp-2、Box5、iCRT3、スクレロスチン、dkk2、dkk1、LF3、CCT036477、FH535、カルダモニン、IWP-L6、Wnt-C59、ニクロサミド、XAV-939、ICG-001、LGK-974、CP21R7、NCB-0846、PNU-74654、サリノマイシン、KY021 11、WIKI4、PRI-724、KYA1797K、2,4-ジアミノ-キナゾリン、Ant 1.4Br、Ant 1.40、アピキュラレン、バフィロマイシン、ETC-159、G007-LK、G244-LM、IWR、NSC668036、PKF1 15-584、ピルビニウム、ケルセチン、シゾカオールD、BC2059、又はそれらの組み合わせであってもよく、GSK3阻害剤は、存在する場合、CHIR99021、AR-A 014418、A 1070722、SB 415286、TCS 2002、3F8、TDZD 8、TC-G 24、BIO-アセトキシム、インジルビン-3’-オキシム、TWS 119、TCS 21311、SB 216763、BIO、炭酸リチウム、ケンパウロン、アルスターパウロン、又はCHIR 98014であってもよく、タンキラーゼ阻害剤は、存在する場合、XAV939、AZ 6102、JW 55、TC-E 5001、又はWIKI4であってもよく、ROCK阻害剤は、存在する場合、Y-27632又はPD0325901であってもよく、アクチビンAシグナル伝達の誘導剤は、存在する場合、アクチビンA、アラントラクトン、BMP4、ノーダル、スタウプリミド、SB-431542、A01、アラントラクトン、GDF8、又はコノフィリンであってもよい。様々な構成では、WNTシグナル伝達阻害剤は、存在する場合、iwr-1、iwr-1-endo、iwp-2、Box5、iCRT3、スクレロスチン、dkk2、dkk1、LF3、CCT036477、FH535、カルダモニン、IWP-L6、Wnt-C59、ニクロサミド、XAV-939、ICG-001、LGK-974、CP21R7、NCB-0846、PNU-74654、サリノマイシン、KY021 11、WIKI4、PRI-724、KYA1797K、2,4-ジアミノ-キナゾリン、Ant 1.4Br、Ant 1.40、アピキュラレン、バフィロマイシン、ETC-159、G007-LK、G244-LM、IWR、NSC668036、PKF1 15-584、ピルビニウム、ケルセチン、シゾカオールD、BC2059、又はそれらの組み合わせであってもよい。様々な構成では、GSK3阻害剤は、存在する場合、CHIR99021、AR-A 014418、A 1070722、SB 415286、TCS 2002、3F8、TDZD 8、TC-G 24、BIO-アセトキシム、インジルビン-3’-オキシム、TWS 119、TCS 21311、SB 216763、BIO、炭酸リチウム、ケンパウロン、アルスターパウロン、又はCHIR 98014であってもよい。様々な構成では、タンキラーゼ阻害剤は、存在する場合、XAV939、AZ 6102、JW 55、TC-E 5001、又はWIKI4であってもよく、ROCK阻害剤は、存在する場合、Y-27632又はPD0325901であってもよく、アクチビンAシグナル伝達の誘導剤は、存在する場合、アクチビンA、アラントラクトン、BMP4、ノーダル、スタウプリミド、SB-431542、A01、アラントラクトン、GDF8、又はコノフィリンである。様々な構成では、細胞は、bFGF、FGF2、FGF4、又はSUN 11602で更に処理され得る。様々な構成では、本方法は、ビタミンC、LIFシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせを細胞に投与することを更に含み得る。
【0009】
様々な構成では、細胞を配偶子又は配偶子様細胞に誘導することは、選択された幹細胞株の各々からの細胞に、アクチビンAシグナル伝達の誘導剤、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)シグナル伝達の誘導剤、インスリンシグナル伝達の誘導剤、WNTシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせを投与することによる、細胞を前駆細胞に誘導することを含むか、それらからなるか、又は本質的にそれらからなっていてもよい。いくつかの構成では、前駆細胞は、中胚葉様細胞であってもよく、誘導することは、アクチビンA、CHIR99021、及び血清代替品を含む培地中で細胞を培養することを含むか、それらからなるか、又は本質的にそれらからなっていてもよい。様々な構成では、前駆細胞は、形成細胞様細胞であってもよく、培養することは、bFGF、アクチビンA、及びCHIR99021を含む培地中で細胞を培養することを含み得る。様々な構成では、細胞を配偶子又は配偶子様細胞に誘導することは、前駆細胞に、BMPシグナル伝達の誘導剤、LIFシグナル伝達の誘導剤、SCFシグナル伝達の誘導剤、EGFシグナル伝達の誘導剤、WNTシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせを投与することによる、細胞を始原生殖細胞様細胞(PGCLC)に誘導することを更に含むか、それらからなるか、又は本質的にそれらからなっていてもよい。いくつかの構成では、前駆細胞をPGCLCに誘導することは、細胞に、LIF、SCF、EGF、及びBMP4を投与することを含むか、それらからなるか、又は本質的にそれらからなっていてもよい。いくつかの構成では、誘導することは、血清代替品を投与することを更に含むか、それらからなるか、又は本質的にそれらからなっていてもよい。
【0010】
様々な構成では、細胞を配偶子又は配偶子様細胞に誘導することは、胚性幹細胞に、レチノイン酸(RA)シグナル伝達の誘導剤、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)シグナル伝達の誘導剤、テストステロンシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせを投与することによる、細胞を精原幹細胞様細胞(SSCLC)に誘導することを含むか、それらからなるか、又は本質的にそれらからなっていてもよい。様々な構成では、胚性幹細胞を配偶子又は配偶子様細胞に誘導することは、インスリンシグナル伝達の誘導剤、テストステロンシグナル伝達の誘導剤、FSHの誘導剤、ウシ脳下垂体抽出物(BPE)、又はそれらの組み合わせを投与することによる、胚性幹細胞を精子細胞に誘導することを含み得る。様々な構成では、細胞を配偶子又は配偶子様細胞に誘導することは、胚性幹細胞を再構成された卵巣内に配置することと、再構成された卵巣内の細胞に、エストロゲン受容体アゴニストを投与することと、再構成された卵巣内の細胞に、少なくとも1つのTGFβシグナル伝達の誘導剤を投与することと、再構成された卵巣内の細胞に、FSHシグナル伝達の誘導剤、EGFシグナル伝達の誘導剤、ゴナドトロピンシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせを投与することと、による、胚性幹細胞を卵母細胞に誘導することを含むか、それらからなるか、又は本質的にそれらからなっていてもよい。様々な構成では、幹細胞を配偶子又は配偶子様細胞に誘導することは、幹細胞に、FIGLA、SOHLH1、LHX8、NOBOX、STAT3、TBPL2、DYNLL1、SUB1、又はそれらの組み合わせを発現させることによる、細胞を卵母細胞に誘導することを含むか、それらからなるか、又は本質的にそれらからなっていてもよい。
【0011】
様々な実施形態では、本教示のウシを育種する方法は、A)複数の成体動物から少なくとも1頭のウシ親を選択することと、B)少なくとも1頭のウシ親から複数の配偶子を得ることと、C)複数の配偶子から少なくとも1つの胚を作製することと、D)少なくとも1つの胚から胚性幹細胞の1つ以上の株を作製することであって、作製することが、i)胚、それから成熟した胚盤胞、又はそれらの一部に、WNTシグナル伝達阻害剤及びFGFシグナル伝達の誘導剤を投与することを含むか、それらからなるか、又は本質的にそれらからなっていてもよい、作製することと、E)胚性幹細胞の1つ以上の株を遺伝子型決定することと、F)育種のための幹細胞株の組み合わせを選択することと、G)配偶子又は配偶子様細胞に分化させるために、各選択された株から幹細胞を誘導することであって、誘導することが、i)アクチビンAシグナル伝達の誘導剤、bFGFシグナル伝達の誘導剤、インスリンシグナル伝達の誘導剤、WNTシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせを投与することによる、幹細胞を前駆細胞に誘導することと、ii)BMPシグナル伝達の誘導剤、LIFシグナル伝達の誘導剤、SCFシグナル伝達の誘導剤、EGFシグナル伝達の誘導剤、WNTシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせを投与することによる、前駆細胞をPGCLCに誘導することと、iii)XY遺伝子型を有するPGCLCを精子細胞様細胞に誘導することであって、a)RAシグナル伝達の誘導剤、GDNFシグナル伝達の誘導剤、テストステロンシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせを投与することによる、PGCLCをSSCLCに誘導することと、b)インスリンシグナル伝達の誘導剤、テストステロンシグナル伝達の誘導剤、FSHシグナル伝達の誘導剤、又はBPEを投与することによる、SSCLCを精子細胞様細胞に誘導することと、を含むか、それらからなるか、又は本質的にそれらからなっていてもよい、誘導することと、iv)XX遺伝子型を有するPGCLCを卵母細胞に誘導することであって、a)細胞を再構成された卵巣内に配置することと、b)再構成された卵巣に、エストロゲン受容体アゴニストを投与することと、c)再構成された卵巣に、少なくとも1つのTGFβシグナル伝達の誘導剤を投与することと、d)再構成された卵巣に、FSHシグナル伝達の誘導剤、EGFシグナル伝達の誘導剤、ゴナドトロピンシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせを投与することと、を含むか、それらからなるか、又は本質的にそれらからなっていてもよい、誘導することと、を含むか、それらからなるか、又は本質的にそれらからなっていてもよい、誘導することと、H)配偶子又は配偶子様細胞を用いてインビトロ受精を行って、複数の次世代胚を形成することと、I)複数の次世代胚の各々から胚性幹細胞株を作製して、次世代胚性幹細胞株を作製することと、J)次世代胚性幹細胞株に対して工程E~Hを繰り返すことと、を含むか、それらからなるか、又は本質的にそれらからなっていてもよい。いくつかの構成では、工程D)は、FGF2及びIWR1を含む培地中で、胚、それから成熟した胚盤胞、又はそれらの一部をインキュベートすることを含むか、それらからなるか、又は本質的にそれらからなっていてもよく、工程G)は、i)アクチビンA、bFGF、及びCHIR99021を投与することによる、幹細胞を形成細胞に誘導すること、又は血清代替品、アクチビンA、及びCHIR99021を投与することによる、幹細胞を中胚葉様細胞に誘導することと、ii)細胞をBMP4、LIF、SCF、EGF、及び血清代替品を投与することによる、形成細胞又は中胚葉様細胞をPGCLCに誘導することと、iii)XY PGCLCを精子細胞様細胞に誘導することであって、a)RA、GDNF、及びテストステロンを投与することによる、PGCLCをSSCLに誘導することと、b)血清代替品、テストステロン、及びBPEを投与することによる、SSCLを精子細胞様細胞に誘導することと、を含むか、それらからなるか、又は本質的にそれらからなっていてもよい、誘導することと、iv)XX PGCLCを卵母細胞に誘導することであって、a)XX PGCLSと雌ウシ性腺体細胞及びRAとを混合して、再構成された卵巣を形成することと、b)再構成された卵巣にICI182780を投与して、二次卵胞様構造(2FL)を誘導することと、c)2FLに、FSH、BMP15、及びGDF9を投与して、卵丘-卵母細胞複合体(COC)を誘導することと、d)COCに、FSH、EGF、及びhCGを投与して、卵母細胞を形成することと、を含むか、それらからなるか、又は本質的にそれらからなっていてもよい、誘導することと、を含むか、それらからなるか、又は本質的にそれらからなっていてもよい。様々な構成では、本方法は、工程D又は工程Iで作製された胚性幹細胞株のうちの少なくとも1つから動物を産生することを更に含むか、それらからなるか、又は本質的にそれらからなっていてもよい。
【0012】
様々な実施形態では、本教示によるブタを育種する方法は、A)複数の成体動物から少なくとも1頭のブタ親を選択することと、B)少なくとも1頭のブタ親から複数の配偶子を得ることと、C)複数の配偶子から少なくとも1つの胚を作製することと、D)少なくとも1つの胚のから胚性幹細胞の1つ以上の株を作製することであって、作製することが、i)胚、それから成熟した胚盤胞、又はそれらの一部を複数の胚から単離することと、ii)胚、それから成熟した胚盤胞、又はそれらの一部を、GSK3阻害剤、タンキラーゼ阻害剤、ビタミンC、アクチビンAシグナル伝達誘導剤、LIFシグナル伝達誘導剤、FGFシグナル伝達誘導剤、又はそれらの組み合わせを補充した培地中でインキュベートすることと、を含むか、それらからなるか、又は本質的にそれらからなっていてもよい、作製することと、E)胚性幹細胞の1つ以上の株の各々を遺伝子型決定することと、F)育種のための幹細胞株の組み合わせを選択することと、G)各選択された株から幹細胞を誘導して、配偶子又は配偶子様細胞に分化させることであって、誘導することが、i)細胞に、アクチビンaシグナル伝達の誘導剤、bFGFシグナル伝達の誘導剤、インスリンシグナル伝達の誘導剤、WNTシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせを投与することによる、幹細胞を前駆細胞に誘導することと、ii)細胞に、BMPシグナル伝達の誘導剤、LIFシグナル伝達の誘導剤、SCFシグナル伝達の誘導剤、EGFシグナル伝達の誘導剤、WNTシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせを投与することによる、前駆細胞をPGCLCに誘導することと、iii)XY遺伝子型を有するPGCLCを精子細胞様細胞に誘導することであって、a)細胞に、RAシグナル伝達の誘導剤、GDNFシグナル伝達の誘導剤、テストステロンシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせを投与することによる、PGCLCをSSCLCに誘導することと、b)細胞に、インスリンシグナル伝達の誘導剤、テストステロンシグナル伝達の誘導剤、FSHシグナル伝達の誘導剤、及びBPEを投与することによる、SSCLCを精子細胞様細胞に誘導することと、を含む、誘導することと、iv)XX遺伝子型を有するPGCLCを卵母細胞に誘導することであって、a)細胞を再構成された卵巣内に配置することと、b)再構成された卵巣に、エストロゲン受容体アゴニストを投与することと、c)再構成された卵巣に、少なくとも1つのTGFβシグナル伝達の誘導剤を投与することと、d)細胞に、FSHシグナル伝達の誘導剤、EGFシグナル伝達の誘導剤、ゴナドトロピンシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせを投与することと、を含む、誘導することと、を含むか、それらからなるか、又は本質的にそれらからなっていてもよい、分化させることと、H)配偶子又は配偶子様細胞を用いてインビトロ受精を行って、複数の次世代胚を形成することと、I)複数の次世代胚の各々から胚性幹細胞株を作製して、次世代胚性幹細胞株を作製することと、J)次世代胚性細胞株に対して工程E~Hを繰り返すことと、を含むか、それらからなるか、又は本質的にそれらからなっていてもよい。いくつかの構成では、工程D)は、胚、それから成熟した胚盤胞、又はそれらの一部に、bFGF、CHIR99021、及びPD0325901を投与することを含むか、それらからなるか、又は本質的にそれらからなっていてもよく、工程G)は、i)細胞にアクチビンA、bFGF、及びCHIR99021を投与することによる、幹細胞を形成細胞に誘導すること、又は細胞に、血清代替品、アクチビンA、及びCHIR99021を投与することによる、幹細胞を中胚葉様細胞に誘導することと、ii)BMP4、LIF、SCF、EGF、及び血清代替品を投与することによる、形成細胞又は中胚葉様細胞をPGCLCに誘導することと、iii)XY PGCLCを精子細胞に誘導することであって、a)RA、GDNF、及びテストステロンを投与することによる、PGCLCをSSCLに誘導することと、b)血清代替品、テストステロン、及びBPEを投与することによる、SSCLを精子細胞に誘導することと、を含むか、それらからなるか、又は本質的にそれらからなっていてもよい、誘導することと、iv)XX PGCLCを卵母細胞に誘導することであって、a)XX PGCLCと雌ウシ性腺体細胞及びRAとを混合して、再構成された卵巣を形成することと、b)再構成された卵巣にICI182780を投与して、二次卵胞様構造(2FL)を誘導することと、c)2FLに、FSH、BMP15、及びGDF9を投与して、卵丘-卵母細胞複合体(COC)を誘導することと、d)COCに、FSH、EGF、及びhCGを投与して、卵母細胞を形成することと、e)卵母細胞をMII卵母細胞に成熟させることと、を含む、誘導することと、を含むか、それらからなるか、又は本質的にそれらからなっていてもよい。様々な構成では、本方法は、工程D又は工程Iで作製された胚性幹細胞株のうちの少なくとも1つから動物を産生することを更に含むか、それらからなるか、又は本質的にそれらからなっていてもよい。
【0013】
様々な実施形態では、本教示は、ウシ胚性幹細胞に、FGFシグナル伝達の誘導剤、アクチビンaシグナル伝達の誘導剤、及びWNTシグナル伝達の誘導剤を投与して、ウシ形成細胞を誘導すること、又はウシ胚性幹細胞に、アクチビンAシグナル伝達の誘導剤、WNTシグナル伝達の誘導剤、及び血清代替品を投与して、ウシ中胚葉様細胞を誘導することと、ウシ形成細胞又はウシ中胚葉様細胞に、LIFシグナル伝達の誘導剤、SCFシグナル伝達の誘導剤、EGFシグナル伝達の誘導剤、及びBMPシグナル伝達の誘導剤を投与して、始原生殖細胞様細胞を誘導することと、を含むか、それらからなるか、又は本質的にそれらからなっていてもよい、インビトロでのウシ始原生殖細胞様細胞を生成する方法を提供する。いくつかの構成では、ウシ形成細胞が作製され、WNTシグナル伝達の誘導剤は、GSK3を阻害することによってWNTを誘導し得る。様々な構成では、ウシ形成細胞が作製され、アクチビンAシグナル伝達の誘導剤は、アクチビンA、アラントラクトン、BMP4、ノーダル、スタウプリミド、SB-431542、A01、アラントラクトン、GDF8、又はコノフィリンであってもよく、FGFシグナル伝達の誘導剤は、bFGF、SUN 11602、スクラルファート、又はFGF-Pであってもよく、WNTシグナル伝達の誘導剤は、WNT2b、WNT3A、WNT-4、Wnt5A、Wnt5b、Wnt7a、Wnt8a、Wnt9a、Wnt-9b、Wnt10b、Wnt11、Wnt16b、ノリン、WntアゴニストI、WntアゴニストII、CHIR99021、LP 922056、BML 284、WAY 316606塩酸塩、SGC AAK1 1、CHIR 98014、又はFoxy 5であってもよい。様々な構成では、ウシ中胚葉様細胞が作製され、アクチビンAシグナル伝達の誘導剤は、アクチビンA、アラントラクトン、BMP4、ノーダル、スタウプリミド、SB-431542、A01、アラントラクトン、GDF8、又はコノフィリンであってもよく、WNTシグナル伝達の誘導剤は、WNT2b、WNT3A、WNT-4、Wnt5A、Wnt5b、Wnt7a、Wnt8a、Wnt9a、Wnt-9b、Wnt10b、Wnt11、Wnt16b、ノリン、WntアゴニストI、WntアゴニストII、CHIR99021、LP 922056、BML 284、WAY 316606塩酸塩、SGC AAK1 1、CHIR 98014、又はFoxy 5であってもよい。いくつかの構成では、LIFシグナル伝達の誘導剤は、LIFであってもよく、SCFシグナル伝達の誘導剤は、SCFであってもよく、BMPシグナル伝達の誘導剤は、BMP4、BMP8b、BMP7、TGFβ、sb4(2-[[(4-ブロモフェニル)メチル]チオ]ベンゾオキサゾール)、トリアムシノロン、イソリキリチゲニン及びkm11073、4’-ヒドロキシカルコン、又はSVAK-12であってもよい。
【0014】
様々な実施形態では、本教示は、細胞に、i)bFGF、アクチビンA、及びCHIR99021を投与して、ウシ形成細胞を形成するか、又はii)アクチビンA、CHIR99021、及び血清代替品を投与して、ウシ中胚葉様細胞を形成することと、B)細胞に、rLIF、SCF、EGF、BMP4、及び血清代替品を投与して、bPGCLCを産生することと、を含むか、それらからなるか、又は本質的にそれらからなっていてもよい、ウシ胚性幹細胞からウシ始原生殖細胞様細胞(bPGCLC)を誘導する方法を提供する。
【0015】
いくつかの実施形態では、本教示は、胚、胚盤胞、又はそれらの一部を提供することと、胚、胚盤胞、又はそれらの一部に、FGFシグナル伝達誘導剤、WNTシグナル伝達誘導剤、Rhoキナーゼ(ROCK)阻害剤、及びアクチビンAシグナル伝達誘導剤を投与することと、を含むか、それらからなるか、又は本質的にそれらからなっていてもよい、ブタ胚性幹細胞を誘導する方法を提供する。いくつかの構成では、FGFシグナル伝達の誘導剤は、bFGF、SUN 11602、スクラルファート、又はFGF-Pであってもよく、WNTシグナル伝達の誘導剤は、WNT2b、WNT3A、WNT-4、Wnt5A、Wnt5b、Wnt7a、Wnt8a、Wnt9a、Wnt-9b、Wnt10b、Wnt11、Wnt16b、ノリン、WntアゴニストI、WntアゴニストII、CHIR99021、LP 922056、BML 284、WAY 316606塩酸塩、SGC AAK1 1、CHIR 98014、又はFoxy 5であってもよく、ROCK阻害剤は、Y-27632又はPD0325901であってもよく、アクチビンAシグナル伝達の誘導剤は、アクチビンA、アラントラクトン、BMP4、ノーダル、スタウプリミド、SB-431542、A01、アラントラクトン、GDF8、又はコノフィリンであってもよい。様々な構成では、FGFシグナル伝達の誘導剤は、bFGF、SUN 11602、スクラルファート、又はFGF-Pであってもよい。様々な構成では、WNTシグナル伝達の誘導剤は、WNT2b、WNT3A、WNT-4、Wnt5A、Wnt5b、Wnt7a、Wnt8a、Wnt9a、Wnt-9b、Wnt10b、Wnt11、Wnt16b、ノリン、WntアゴニストI、WntアゴニストII、CHIR99021、LP 922056、BML 284、WAY 316606塩酸塩、SGC AAK1 1、CHIR 98014、又はFoxy 5であってもよい。様々な構成では、ROCK阻害剤は、Y-27632又はPD0325901であってもよい。様々な構成では、アクチビンAシグナル伝達の誘導剤は、アクチビンA、アラントラクトン、BMP4、ノーダル、スタウプリミド、SB-431542、A01、アラントラクトン、GDF8、又はコノフィリンであってもよい。様々な構成では、WNTシグナル伝達の誘導剤は、GSK3を阻害することによってWNTを誘導し得る。様々な構成では、FGFシグナル伝達の誘導剤は、bFGFであってもよく、WNTシグナル伝達の誘導剤は、CHIR99021であってもよく、ROCK阻害剤は、PD0325901であってもよく、アクチビンAシグナル伝達の誘導剤が、アクチビンAであってもよい。
【0016】
様々な実施形態では、本教示は、本教示の胚性幹細胞を、筋肉細胞、脂肪細胞、臓器細胞、又はそれらの組み合わせに誘導することと、筋肉細胞、脂肪細胞、臓器細胞、又はそれらの組み合わせを三次元構造上で培養することと、を含み得る、実験室で成長した肉を培養する方法を提供する。
【0017】
本教示は、家畜を育種する方法であって、A)複数の成体動物から少なくとも1頭の家畜親を選択することと、B)少なくとも1頭の家畜親から複数の配偶子を得ることと、C)複数の配偶子を使用して複数の胚を作製することと、D)複数の胚のうちの2つ以上から胚性幹細胞の株を作製することと、E)複数の胚のうちの2つ以上を遺伝子型決定することと、F)育種のための少なくとも1つの胚性幹細胞株を選択することと、G)少なくとも1つの選択された株から幹細胞を誘導して、配偶子又は配偶子様細胞に分化させることと、H)配偶子又は配偶子様細胞を異性配偶子又は配偶子様細胞と組み合わせて、複数の次世代胚を産生することと、を含み得る、家畜を育種する方法を提供する。
【0018】
いくつかの構成では、複数の胚のうちの2つ以上を遺伝子型決定することは、複数の胚のうちの2つ以上から作製された胚性幹細胞を遺伝子型決定することを含み得る。様々な構成では、複数の胚のうちの2つ以上を遺伝子型決定することは、複数の胚のうちの2つ以上の生検を遺伝子型決定することを含み得る。様々な構成では、配偶子又は配偶子様細胞を組み合わせることは、インビトロ受精によるものであり得る。様々な構成では、配偶子又は配偶子様細胞を組み合わせることは、細胞質内精子注射によるものであり得る。様々な構成では、異性親の配偶子は、高い遺伝的メリットを有する成体動物由来であってもよい。いくつかの構成では、異性親の配偶子は、高い遺伝的メリットを有する性的成熟動物由来であってもよい。様々な構成では、異性親の配偶子様細胞は、異性幹細胞株から産生された配偶子様細胞であってもよい。様々な構成では、異性親の配偶子様細胞は、工程Dで産生された異性遺伝子型胚性幹細胞株由来であってもよい。様々な構成では、異性親の配偶子様細胞は、工程Gで産生された異性遺伝子型胚性幹細胞株由来であってもよい。
【0019】
様々な構成では、本教示の方法は、I)複数の次世代胚の各々から胚性幹細胞株を作製して、次世代胚性幹細胞株を作製することと、J)次世代胚性幹細胞株に対して工程E~Hを繰り返すことと、を更に含み得る。様々な構成では、本教示の方法は、工程(C)からの胚性幹細胞株のうちの1つからの胚性幹細胞を使用して核移植を行うことを更に含み得る。様々な構成では、本教示の方法は、工程(I)からの胚性幹細胞株のうちの1つからの胚性幹細胞を使用して核移植を行うことを更に含み得る。様々な構成では、親は、ウシ親である。様々な構成では、親は、ブタ親である。
【0020】
様々な構成では、胚性幹細胞の株を作製することは、i)複数の胚からの胚から内部細胞塊(ICM)を単離することと、ii)wntシグナル伝達阻害剤を補充した培地中でICMをインキュベートすることと、を含み得る。いくつかの構成では、wntシグナル伝達阻害剤は、iwr-1、iwr-1-endo、iwp-2、Box5、iCRT3、スクレロスチン、dkk2、dkk1、LF3、CCT036477、FH535、カルダモニン、IWP-L6、Wnt-C59、ニクロサミド、XAV-939、ICG-001、LGK-974、CP21R7、NCB-0846、PNU-74654、サリノマイシン、KY021 11、WIKI4、PRI-724、KYA1797K、2,4-ジアミノ-キナゾリン、Ant 1.4Br、Ant 1.40、アピキュラレン、バフィロマイシン、ETC-159、G007-LK、G244-LM、IWR、NSC668036、PKF1 15-584、ピルビニウム、ケルセチン、シゾカオールD、BC2059、又はそれらの組み合わせであってもよい。いくつかの構成では、wntシグナル伝達阻害剤は、iwr-1又はiwr-1-endoであってもよい。様々な構成では、wntシグナル伝達阻害剤は、iwr-1であってもよく、細胞は、FGF2、FGF4、又はSUN 11602で更に処理され得る。
【0021】
様々な構成では、胚性幹細胞の株を作製することは、i)複数の胚からの胚から内部細胞塊(ICM)を単離することと、ii)GSK3阻害剤、タンキラーゼ阻害剤、又はそれらの組み合わせを補充した培地中でICMをインキュベートすることと、を含み得る。いくつかの構成では、GSK3阻害剤は、CHIR99021、AR-A 014418、A 1070722、SB 415286、TCS 2002、3F8、TDZD 8、TC-G 24、BIO-アセトキシム、インジルビン-3’-オキシム、TWS 119、TCS 21311、SB 216763、BIO、炭酸リチウム、ケンパウロン、アルスターパウロン、又はCHIR 98014であってもよい。様々な構成では、GSK3阻害剤は、CHIR99021であってもよい。様々な構成では、タンキラーゼ阻害剤は、XAV939、AZ 6102、JW 55、TC-E 5001、又はWIKI4であってもよい。様々な構成では、タンキラーゼ阻害剤は、XAV939であってもよい。様々な構成では、本方法は、ビタミンC、アクチビンAシグナル伝達の誘導剤、LIFシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせを細胞に投与することを更に含み得る。
【0022】
様々な構成では、細胞を配偶子又は配偶子様細胞に誘導することは、選択された幹細胞株の各々からの細胞を胚盤葉上層様細胞(EpiLC)に誘導することを含み得る。様々な構成では、細胞をEpiLCに誘導することは、細胞に、アクチビンAシグナル伝達の誘導剤、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)シグナル伝達の誘導剤、インスリンシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせを細胞に投与することを含み得る。いくつかの構成では、アクチビンAシグナル伝達の誘導剤は、アクチビンA、アラントラクトン、BMP4、ノーダル、スタウプリミド、SB-431542、A01、アラントラクトン、GDF8、又はコノフィリンであってもよい。いくつかの構成では、アクチビンAシグナル伝達の誘導剤は、アクチビンAであってもよい。様々な構成では、bFGFシグナル伝達の誘導剤は、bFGF、SUN 11602、スクラルファート、及びFGF-Pであってもよい。いくつかの構成では、bFGFシグナル伝達の誘導剤は、bFGFであってもよい。様々な構成では、インスリンシグナル伝達の誘導剤は、インスリン、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、臭化亜鉛、硫酸亜鉛硫酸亜鉛-7水、bpV、BMOV、バナジルロシグリタゾン、バナジルトレハロース、バナジルメトホルミン、バナジルケルセチン、デメチルアステリキノンB1、及びBRD 7552であってもよい。様々な構成では、インスリンシグナル伝達の誘導剤は、インスリンを含有する媒体添加剤であってもよい。いくつかの構成では、媒体添加剤は、血清代替品であってもよい。
【0023】
様々な構成では、細胞を配偶子又は配偶子様細胞に誘導することは、胚性幹細胞を始原生殖細胞様細胞(PGCLC)に誘導することを含み得る。いくつかの構成では、誘導することは、細胞に、BMPシグナル伝達の誘導剤、LIFシグナル伝達の誘導剤、SCFシグナル伝達の誘導剤、EGFシグナル伝達の誘導剤、WNTシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせを投与することを含む。いくつかの構成では、BMPシグナル伝達の誘導剤は、BMP4、BMP8b、BMP7、TGFβ、sb4(2-[[(4-ブロモフェニル)メチル]チオ]ベンゾオキサゾール)、トリアムシノロン、イソリキリチゲニン及びkm11073、4’-ヒドロキシカルコン、又はSVAK-12であってもよい。いくつかの構成では、BMPシグナル伝達の誘導剤は、BMP4、BMP8b、又はそれらの組み合わせであってもよい。様々な構成では、LIFシグナル伝達の誘導剤は、LIFであってもよい。様々な構成では、SCFシグナル伝達の誘導剤は、SCFであってもよい。様々な構成では、EGFシグナル伝達の誘導剤は、EGF、アンフィレグリン、EPR、又はHB-EGFであってもよい。いくつかの構成では、EGFシグナル伝達の誘導剤は、EGFであってもよい。様々な構成では、WNTシグナル伝達の誘導剤は、WNT2b、WNT3A、WNT-4、Wnt5A、Wnt5b、Wnt7a、Wnt8a、Wnt9a、Wnt-9b、Wnt10b、Wnt11、Wnt16b、ノリン、WntアゴニストI、WntアゴニストII、CHIR99021、LP 922056、BML 284、WAY 316606塩酸塩、SGC AAK1 1、CHIR 98014、又はFoxy 5であってもよい。
【0024】
いくつかの構成では、誘導することは、細胞に、BMPシグナル伝達の誘導剤、LIFシグナル伝達の誘導剤、SCFシグナル伝達の誘導剤、EGFシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせを投与することを含む。いくつかの構成では、BMPシグナル伝達の誘導剤は、BMP4、BMP8b、BMP7、TGFβ、sb4(2-[[(4-ブロモフェニル)メチル]チオ]ベンゾオキサゾール)、トリアムシノロン、イソリキリチゲニン及びkm11073、4’-ヒドロキシカルコン、又はSVAK-12であってもよい。いくつかの構成では、BMPシグナル伝達の誘導剤は、BMP4、BMP8b、又はそれらの組み合わせであってもよい。様々な構成では、LIFシグナル伝達の誘導剤は、LIFであってもよい。様々な構成では、SCFシグナル伝達の誘導剤は、SCFであってもよい。様々な構成では、EGFシグナル伝達の誘導剤は、EGF、アンフィレグリン、EPR、又はHB-EGFであってもよい。いくつかの構成では、EGFシグナル伝達の誘導剤は、EGFであってもよい。
【0025】
いくつかの構成では、細胞を配偶子又は配偶子様細胞に誘導することは、胚性幹細胞を精原幹細胞様細胞(SSCLC)に誘導することを含み得る。いくつかの構成では、誘導することは、レチノイン酸(RA)シグナル伝達の誘導剤、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)シグナル伝達の誘導剤、テストステロンシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせを細胞に投与することを含み得る。いくつかの構成では、レチノイン酸シグナル伝達の誘導剤は、レチノイン酸、レチノイン酸p-ヒドロキシアニリド、9-cisレチノイン酸、BMP4、TTNPB、メトプレン酸、EC23、1-メチル-2-オキシインドール、アダパレン、CD437、AC261066、CD1530、Ch 55、AM 580、AM 80、AC 55649、BMS 961、BMS 753、CD 2314、フェンレチニド、アダパレン、EC 19、又はSR 1078であってもよい。いくつかの構成では、レチノイン酸シグナル伝達の誘導剤は、レチノイン酸であってもよい。様々な構成では、GDNFシグナル伝達の誘導剤は、GDNF、ニュールツリン(NRTN)、アルテミン(ARTN)、パーセフィン(PSPN)、XIB4035、BT13、BT18、又はBT44であってもよい。いくつかの構成では、GDNFシグナル伝達の誘導剤は、GDNFであってもよい。様々な構成では、テストステロンシグナル伝達の誘導剤は、テストステロン、メチルテストステロン、フルオキシメステロン、オキシメトロン、オキサンドロロン、エチルエストレノール、スタノゾロール、ダナゾール、メタンドロステノロン、ノルエタンドロロン、GDNF、ジヒドロテストステロン、又はイカリインであってもよい。
【0026】
様々な構成では、胚性幹細胞を配偶子又は配偶子様細胞に誘導することは、胚性幹細胞を精子細胞に誘導することを含み得る。様々な構成では、細胞を誘導することは、インスリンシグナル伝達の誘導剤、テストステロンシグナル伝達の誘導剤、FSHシグナル伝達の誘導剤、ウシ脳下垂体抽出物(BPE)、又はそれらの組み合わせを投与することを含み得る。様々な構成では、インスリンシグナル伝達の誘導剤は、インスリン、bpV、BMOV、バナジルロシグリタゾン、バナジルトレハロース、バナジルメトホルミン、バナジルケルセチン、デメチルアステリキノンB1、及びBRD 7552であってもよい。様々な構成では、インスリンシグナル伝達の誘導剤は、インスリンであってもよい。様々な構成では、テストステロンシグナル伝達の誘導剤は、テストステロン、GDNF、ジヒドロテストステロン、及びイカリインであってもよい。様々な構成では、テストステロンシグナル伝達の誘導剤は、テストステロンであってもよい。様々な構成では、FSHシグナル伝達の誘導剤は、FSH、コリフォリトロピンアルファ、FSHβ-CTP-α、N2-α FSH、妊馬の血清ゴナドトロピン、チアゾリジノン、及びヘキサヒドロキノリンからなる群から選択される。
【0027】
様々な構成では、細胞を配偶子又は配偶子様細胞に誘導することは、胚性幹細胞を卵母細胞に誘導することを含み得る。いくつかの構成では、胚性幹細胞を卵母細胞に誘導することは、胚性幹細胞を再構成された卵巣内に配置することを含み得る。様々な構成では、胚性幹細胞を卵母細胞に誘導することは、細胞にエストロゲン受容体アゴニストを投与することを含み得る。いくつかの構成では、エストロゲン受容体は、ICI182780、フェルチニン、エストロピペート、エストロン-3-サルフェート、S-エクオール、WAY-200070、DY 131、GSK 4716、AB-1、ERB-041、ビオカニンA、β-エストラジオール、α-エストラジオール、PPT、DPN、FERb 033、又はAC 186であってもよい。様々な構成では、エストロゲン受容体アゴニストは、ICI182780であってもよい。様々な構成では、誘導することは、少なくとも1つのTGFβシグナル伝達の誘導剤を細胞に投与することを含み得る。いくつかの構成では、少なくとも1つのTGFβシグナル伝達の誘導剤は、BMP15、BMP4、BMP8b、BMP7、GDF9、TGFβ、sb4(2-[[(4-ブロモフェニル)メチル]チオ]ベンゾオキサゾール)、トリアムシノロン、イソリキリチゲニン、km11073、PD07824、4’-ヒドロキシカルコン、又はSVAK-12からなる群から選択されてもよい。いくつかの構成では、少なくとも1つのTGFβシグナル伝達の誘導剤は、BMP15、GDF9、又はそれらの組み合わせであってもよい。様々な構成では、細胞を卵母細胞に誘導することは、細胞に、FSHシグナル伝達の誘導剤、EGFシグナル伝達の誘導剤、ゴナドトロピンシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせを投与することを含み得る。いくつかの構成では、FSHシグナル伝達の誘導剤は、FSH、コリフォリトロピンアルファ、FSHβ-CTP-α、N2-α FSH、妊馬の血清ゴナドトロピン、チアゾリジノン、又はヘキサヒドロキノリンであってもよい。いくつかの構成では、FSHシグナル伝達の誘導剤は、FSHであってもよい。様々な構成では、EGFシグナル伝達の誘導剤は、EGF、アンフィレグリン、EPR、及びHB-EGFであってもよい。いくつかの構成では、EGFシグナル伝達の誘導剤は、EGFであってもよい。様々な構成では、ゴナドトロピンシグナル伝達の誘導剤は、hCG、絨毛性ゴナドトロピン、コリオゴナドトロピンアルファ、又はコリフォリトロピンアルファであってもよい。いくつかの構成では、EGFシグナル伝達の誘導剤は、EGFであってもよい。
【0028】
様々な構成では、誘導することは、細胞に、FIGLA、SOHLH1、LHX8、NOBOX、STAT3、TBPL2、DYNLL1、若しくはSUB1遺伝子、又はそれらの組み合わせを発現させることを含み得る。いくつかの構成では、細胞に遺伝子を発現させることは、遺伝子を含むベクターを細胞内に一過性にトランスフェクトすることを含み得る。
【0029】
様々な構成では、ESCを、直接的に誘導された卵母細胞様細胞に誘導する方法は、細胞に、FIGLA、SOHLH1、LHX8、NOBOX、STAT3、TBPL2、DYNLL1、若しくはSUB1遺伝子、又はそれらの組み合わせを発現させることを含み得る。様々な構成では、細胞に遺伝子を発現させることは、遺伝子を含むベクターを細胞内に一過性にトランスフェクトすることを含み得る。
【0030】
様々な実施形態では、本教示によるウシを育種する方法は、A)複数の成体動物から少なくとも1頭のウシ親を選択することと、B)少なくとも1頭のウシ親から複数の配偶子を得ることと、C)複数の配偶子から複数の胚を作製することと、D)複数の胚の各々から胚性幹細胞の株を作製することであって、作製することが、i)任意選択的に複数の胚からの胚からICMを単離することと、ii)wntシグナル伝達阻害剤を補充した培地中でICMをインキュベートすることと、を含み得る、作製することと、E)胚性幹細胞の各々の株を遺伝子型決定することと、F)育種のための幹細胞株の組み合わせを選択することと、G)配偶子様細胞に分化させるために、各選択された株から幹細胞を誘導することであって、誘導することが、i)アクチビンAシグナル伝達の誘導剤、bFGFシグナル伝達の誘導剤、インスリンシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせを投与することによる、幹細胞をEpiLCに誘導することと、ii)BMPシグナル伝達の誘導剤、LIFシグナル伝達の誘導剤、SCFシグナル伝達の誘導剤、EGFシグナル伝達の誘導剤、WNTシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせを投与することによる、EpiLCをPGCLCに誘導することと、iii)XY遺伝子型を有するPGCLCを精子細胞様細胞に誘導することであって、a)RAシグナル伝達の誘導剤、GDNFシグナル伝達の誘導剤、テストステロンシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせを投与することによる、PGCLCをSSCLCに誘導することと、b)インスリンシグナル伝達の誘導剤、テストステロンシグナル伝達の誘導剤、FSHシグナル伝達の誘導剤、又はBPEを投与することによる、SSCLCを精子細胞様細胞に誘導することと、を含む、誘導することと、iv)XX遺伝子型を有するPGCLCを卵母細胞に誘導することであって、a)細胞を再構成された卵巣内に配置することと、b)再構成された卵巣に、エストロゲン受容体アゴニストを投与することと、c)再構成された卵巣に、少なくとも1つのTGFβシグナル伝達の誘導剤を投与することと、d)再構成された卵巣に、FSHシグナル伝達の誘導剤、EGFシグナル伝達の誘導剤、ゴナドトロピンシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせを投与することと、を含む、誘導することと、を含み得る、誘導することと、H)配偶子又は配偶子様細胞を用いてインビトロ受精を行って、複数の次世代胚を形成することと、I)複数の次世代胚の各々から胚性幹細胞株を作製して、次世代胚性幹細胞株を作製することと、J)次世代胚性幹細胞株に対して工程E~Hを繰り返すことと、を含み得る。いくつかの構成では、工程D)は、FGF2及びIWR1を含む培地中で、ICM、胚、胚盤胞、又はそれらの一部をインキュベートすることを含んでもよく、工程G)は、i)アクチビンA、bFGF、及び血清代替品を投与することによる、幹細胞をEpiLCに誘導することと、ii)BMP4、LIF、SCF、BMP8b、及びEGFを投与することによる、EpiLCをPGCLCに誘導することと、iii)XY PGCLCを精子細胞様細胞に誘導することであって、a)RA、GDNF、及びテストステロンを投与することによる、PGCLCをSSCLに誘導することと、b)血清代替品、テストステロン、及びBPEを投与することによる、SSCLを精子細胞様細胞に誘導することと、を含む、誘導することと、iv)XX PGCLCを卵母細胞に誘導することであって、a)XX PGCLSと雌ウシ性腺体細胞及びRAとを混合して、再構成された卵巣を形成することと、b)再構成された卵巣にICI182780を投与して、二次卵胞様構造(2FL)を誘導することと、c)2FLに、FSH、BMP15、及びGDF9を投与して、卵丘-卵母細胞複合体(COC)を誘導することと、d)COCに、FSH、EGF、及びhCGを投与して、卵母細胞を形成することと、を含む、誘導することと、を含んでもよい。様々な実施形態では、本方法は、工程D又は工程Iで作製された胚性幹細胞株のうちの少なくとも1つからの細胞を使用して核移植を行うことを更に含み得る。
【0031】
様々な実施形態では、本教示によるブタを育種する方法は、A)複数の成体動物から少なくとも1頭のブタ親を選択することと、B)少なくとも1頭のブタ親から複数の配偶子を得ることと、C)複数の配偶子から複数の胚を作製することと、D)複数の胚の各々から胚性幹細胞の株を作製することであって、作製することが、i)任意選択的に複数の胚からの胚からICMを単離することと、ii)ICM、胚、それから成熟した胚盤胞、又はそれらの一部を、GSK3阻害剤、タンキラーゼ阻害剤、ビタミンC、アクチビンAシグナル伝達誘導剤、LIFシグナル伝達誘導剤、又はそれらの組み合わせを補充した培地中でインキュベートすることと、を含む、作製することと、E)胚性幹細胞の各々の株を遺伝子型決定することと、F)育種のための幹細胞株の組み合わせを選択することと、G)各選択された株から幹細胞を誘導して、配偶子様細胞に分化させることであって、誘導することが、i)細胞に、アクチビンaシグナル伝達の誘導剤、bFGFシグナル伝達の誘導剤、インスリンシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせを投与することによる、幹細胞をEpiLCに誘導することと、ii)細胞に、BMPシグナル伝達の誘導剤、LIFシグナル伝達の誘導剤、SCFシグナル伝達の誘導剤、EGFシグナル伝達の誘導剤、WNTシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせを投与することによる、EpiLCをPGCLCに誘導することと、iii)XY遺伝子型を有するPGCLCを精子細胞様細胞に誘導することであって、a)細胞に、RAシグナル伝達の誘導剤、GDNFシグナル伝達の誘導剤、テストステロンシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせを投与することによる、PGCLCをSSCLCに誘導することと、b)細胞に、インスリンシグナル伝達の誘導剤、テストステロンシグナル伝達の誘導剤、FSHシグナル伝達の誘導剤、及びBPEを投与することによる、SSCLCを精子細胞様細胞に誘導することと、を含む、誘導することと、iv)XX遺伝子型を有するPGCLCを卵母細胞に誘導することであって、a)細胞を再構成された卵巣内に配置することと、b)再構成された卵巣に、エストロゲン受容体アゴニストを投与することと、c)再構成された卵巣に、少なくとも1つのTGFβシグナル伝達の誘導剤を投与することと、d)細胞に、FSHシグナル伝達の誘導剤、EGFシグナル伝達の誘導剤、及びゴナドトロピンシグナル伝達の誘導剤を投与することと、を含む、誘導することと、を含む、分化させることと、H)配偶子又は配偶子様細胞を用いてインビトロ受精を行って、複数の次世代胚を形成することと、I)複数の次世代胚の各々から胚性幹細胞株を作製して、次世代胚性幹細胞株を作製することと、J)次世代胚性幹細胞株に対して工程E~Hを繰り返すことと、を含み得る。いくつかの構成では、工程D)は、CHIR99021、WH-4-023、XAV939、ビタミンC、アクチビンA、及びLIFを含む培地中でICMをインキュベートすることを含んでもよく、工程G)は、i)アクチビンA、bFGF、及び血清代替品を投与することによる、幹細胞をEpiLCに誘導することと、ii)BMP4、LIF、SCF、BMP8b、及びEGFを投与することによる、EpiLCをPGCLCに誘導することと、iii)XY PGCLCを精子細胞に誘導することであって、a)RA、GDNF、及びテストステロンを投与することによる、PGCLCをSSCLに誘導することと、b)血清代替品、テストステロン、及びBPEを投与することによる、SSCLを精子細胞に誘導することと、を含む、誘導することと、iv)XX PGCLCを卵母細胞に誘導することであって、a)XX PGCLCと雌ウシ性腺体細胞及びRAとを混合して、再構成された卵巣を形成することと、b)再構成された卵巣にICI182780を投与して、二次卵胞様構造(2FL)を誘導することと、c)2FLに、FSH、BMP15、及びGDF9を投与して、COCを誘導することと、d)COCに、FSH、EGF、及びhCGを投与して、卵母細胞を形成することと、e)卵母細胞をMII卵母細胞に成熟させることと、を含む、誘導することと、を含んでもよい。様々な構成では、本方法は、工程D又は工程Iで作製された胚性幹細胞株のうちの少なくとも1つからの細胞を使用して核移植を行うことを更に含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】MEF1フィーダー細胞上で成長するウシ胚性幹細胞を示す。
図2】フィーダーを含まない、ビトロネクチンコーティングされたプレート上で成長するウシ胚性幹細胞を示す。
図3】本教示のウシ胚性幹細胞が胚様体を形成することを示す。
図4】本教示のウシ胚性幹細胞が、ニューロン細胞(外胚葉細胞)、中胚葉細胞、及び内胚葉細胞の3つ全ての主要な細胞型に分化することを示す。
図5】中間細胞型を介した、フィーダーを含まないウシ胚性幹細胞から始原生殖細胞様細胞への誘導を示す。
図6】誘導されたウシ始原生殖細胞様細胞の形態を示す。
図7】CF1マウスフィーダー細胞上で成長するブタ胚性幹細胞を示す。
図8】フィーダーを含まない、ビトロネクチン又はフィブロネクチンコーティングされたプレート上で成長するブタ胚性幹細胞を示す。
図9】本教示のブタ胚性幹細胞が胚葉体を形成することを示す。
図10】本教示のブタ胚性幹細胞が自発的に中胚葉細胞に分化することを示す。
図11】本教示のブタ胚性幹細胞が自発的に内胚葉細胞に分化することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
詳細な説明
本明細書に記載の方法は、親を選択する工程と、IVFを介して交配を行って、複数の胚を形成する工程と、これらの胚から胚性幹細胞(ESC)株を作製する工程と、細胞株を遺伝子型決定する工程と、次世代のために親を選択する工程と、選択された胚性幹細胞株から配偶子を導出する工程と、これらの配偶子を用いてIVF又は細胞質内精子注射(ICSI)を行って、複数の胚を形成する工程と、次いで、これらの胚からESCを産生して、プロセスを再び開始する工程と、を含む、育種する方法を含む。本明細書に開示する方法は、ウシ、ブタ、ヒツジ、及びヤギなどの様々な哺乳動物家畜種に対する育種する方法の適用を含む。特に、ウシ及びブタが望ましい。これらの方法は、自然に子孫を妊娠させ、それらを遺伝子型決定し、その後、交配する前に動物が性的に成熟するのを待つよりも時間はかからない。胚性幹細胞株を作製してから遺伝子型を取得する方がリスクは低いが、胚を生検して遺伝子型を決定し、選択した胚のみから胚性幹細胞株を作製することが可能である。このプロセス中に作製された高い遺伝的メリットを有する胚性幹細胞株を使用して、標準的な核移植プロトコルを使用して(乳、肉、又は配偶子の)産生のための動物を作製することができる。
【0034】
また、ウシ胚性幹細胞に由来する第1の始原生殖細胞様細胞を本明細書に開示する。
【0035】
動物の選択
ウシ
ウシ産業は、様々な小ヌクレオチド多型(SNP)の遺伝子型を含むゲノム情報(しばしば業界では遺伝学と称される)を使用して、特定の遺伝子座で同様の遺伝学を有する動物を用いた過去の結果に基づいて、特定の動物の値を予測する。
【0036】
本明細書で使用される場合、「遺伝子座」又は複数の「遺伝子座」は、染色体上の特定の遺伝子又はマーカーの物理的な部位又は位置を指す。遺伝子座はまた、「A」遺伝子座、「B」遺伝子座、又はヘテロ接合性「A/B」遺伝子座のいずれかとして特徴付けられ得る。「A」又は「B」のいずれかの遺伝子座としての遺伝子座の識別は、多型自体、又はILLUMINA(登録商標),Inc.(San Diego,CA)によって開発されたコンテキスト的に周囲の配列に基づいて、上(TOP)及び下(BOT)の指定に従って決定される。「A」又は「B」としての多形性部位の指定を決定するための方法は、例えば、www(dot)illumina(dot)com/documents/products/technotes/technote_topbot.pdf.でインターネット上で入手可能な「TOP/BOT」Strand and 「A/B」Allele」と題されたILLUMINA(登録商標)のTechnical Noteによって提供されるように、当該技術分野で既知である。NCBIのdbSNPデータベースは、2005年にTOP/BOT命名法を採用し、その指定は、当業者によく知られている。配列比較によって、dbSNP識別子、ソース、染色体位置、遺伝子、転写産物、遺伝子への系統又は定量的形質遺伝子座(QTL)、及び相互作用を含むがこれらに限定されない、各遺伝子座に関する広範な情報は、当業者に利用可能である。予測伝達能力(PTA)は、例えば、生産(乳及び乳成分)、健康/適合性、並びに種類の広範なカテゴリにおいて、様々な形質について計算することができる。乳牛は、乳、脂肪、及びタンパク質収率、生産的寿命の長さ、並びに体細胞スコア(乳房炎の指標)の形質について評価される。評価手順は、評価された動物の親戚からの情報と、ウシの場合には動物自体からの情報を組み合わせる。加えて、多数の種類又はコンフォメーション形質が定期的に評価される。形質は、典型的には、それらの相対的な経済的重みに基づいて指標に組み合わされる。例えば、CDCBと併せてUSDA AIPLによって計算されたネットメリットインデックス(NM$)は、今日の乳業生産者に関連する収入及び費用に基づいて生涯利益を概算し、ドルでの価値で表される。NM$に含まれる形質としては、タンパク質(ポンド)、脂肪(ポンド)、生産寿命、体細胞スコア、乳器混合、足/脚混合、身体サイズ混合、及び娘の妊娠率が含まれる。Holstein Association USA(HAU)は、Total Performance Index(TPI(登録商標)、HAU、Brattleboro,Vermont)を計算する。これには、タンパク質、脂肪、種類、乳器混合、足及び脚の混合、娘の妊娠率、生産寿命、体細胞スコア、娘の分娩の容易さ、娘の死産、並びに乳製品の形態の形質が含まれる。American Jersey Cattle Associationによって使用されるJERSEY PERFORMANCE INDEX(商標)(JPI(商標),American Jersey Cattle Association、Reynoldsburg,Ohio)は、タンパク質、脂肪、機能的形質指数、生産寿命、体細胞スコア、及び娘の妊娠率といった形質で構成される。この機能的形質指数は、全ての種類の形質についての雄ウシ/雌ウシのPTAに基づく。JPI(商標)は、品種を改善するという利益のために定期的に更新される。Council of Dairy Cattle Breedingは、概算育種値(例えば、NM$、CM$)を年に3回発行している。これらの刊行物は、「Sire Summaries」と称される。その中に開示された予測値は、2021年12月のSire Summary時点のものである。ウシの育種家の中には、カスタム指数を使用するものもいる。形質パラメータは、基礎となる遺伝学及び決定された各形質の遺伝性と相関している。12のPTA形質間の遺伝学及び表現型の相関関係は、VanRaden et al.,2018でも提供されている。遺伝子型と表現型との間のこれらの相関関係は、経時的に追跡されており、パーセントとして表されるネットメリット信頼性(NM_Rel)及び乳信頼性(Milk_Rel)などの信頼性スコアの計算を可能にする。
【0037】
Holstein Association USA(HAU)は、Total Performance Index(TPI(登録商標)、HAU、Brattleboro,Vermont)を計算する。これには、タンパク質、脂肪、種類、乳器混合、足及び脚の混合、娘の妊娠率、生産寿命、体細胞スコア、娘の分娩の容易さ、娘の死産、並びに乳製品の形態の形質が含まれる。ネットメリットスコアと同様に、TPI(登録商標)は、2010年のベースライン平均動物との比較に基づいて計算されるが、Holstein Association USAは、ベースライン動物を更新する計画を発表していない。したがって、本明細書で使用される場合、TPI(登録商標)スコアは、2010年のベースライン動物を使用して計算される。しかしながら、新しいベースライン年が採用される場合、当業者は、当該技術分野で既知の方法を使用して、2010年のベースライン集団(www.holsteinusa.comでインターネットで入手可能)に基づいて、任意の将来のベースライン動物についてのTPI(登録商標)値を計算又は変換することができるであろう。TPI(登録商標)(HAU、Brattleboro,Vermont)には、生産量、種類、並びに重要な線形及び混合の形質が組み込まれている。TPI(登録商標)は、タンパク質及び脂肪に対して報酬を受け取る乳製品に焦点を当てており、種類により重点を置く必要がある。
【0038】
個々の育種家及び遺伝学の企業も、育種の決定を補助するために使用可能な独自の指数及び他のカスタム計算を作成する。
【0039】
American Angus Associationなどの肉牛協会は、動物の死体の予測値を表す牛肉値($B)などの値指数を含む同様のレポートを公開している。
【0040】
形質指数を使用して、次世代の親を選択することができる。当業者は、選択及び形質指数を使用して、次世代への親となる動物を選択することができる。親が選択されると、雄配偶子が収集される(射精又は上皮精液を収集する方法)は、当該技術分野で既知である。雌配偶子もまた、当該技術分野で認識された方法、最も頻繁には、経膣採卵によって収集される。
【0041】
SNP遺伝子型に基づくいくつかの他の予測形質は、本明細書に開示される胚性幹細胞株について記載されている。本明細書で使用される場合、娘の妊娠率(DPR)は、各21日間(発情周期)の間に実際に妊娠する、非妊娠牛、又は妊娠可能な雌牛の割合の遺伝子的尺度である。DPRは、群管理目的で計算された妊娠率と似ているが、必ずしも同じではない。より大きなPTA DPRを有する種雄ウシの娘は、所与の発情周期の間に受胎する可能性が高く、PTA DPRの各l%の増加は、開放された4日間の遺伝的減少に関連する。
【0042】
本明細書で使用される場合、ウシ生存率(LIV)は、品種の平均に対する死亡又は安楽死で終わらない授乳の確率値を表す。授乳中に死ぬウシは価値がなく、農家は、死体を処分するために費用を支払わなければならないため、この形質は重要である。その形質は、何らかの理由で群から淘汰されたウシを含むPLに似ている。LIV値は、約-5~+5の範囲であり、品種平均と比較して、雄ウシの娘の5%以上が生き残る。同様に、雌ウシ生存性(HLIV)は、平均的な管理状件下で出生から2日後から18ヶ月齢までの動物の雌の子孫の予測生存性の割合を表す。数値が高いほど好ましく、その形質は、品種平均と比較して表される。例えば、HLIV値が1のホルスタイン雄ウシは、品種平均と比較して、その娘の1%以上が18ヶ月齢まで生存すると予想される。
【0043】
本明細書で使用される場合、雌ウシ受胎率(HCR)は、各サービスで妊娠した受精雌ウシの割合であり、割合の偏差として示される。
【0044】
本明細書で使用される場合、ウシ受胎率(CCR)は、各サービスで妊娠した受精ウシの割合であり、割合の偏差として示される。
【0045】
本明細書で使用される場合、予測伝達能力乳(MILK又はPTA MILK)は、平均からの子孫の乳収量の予測差である、ポンドで測定される乳収量の形質である。MILKは、個々の種雄ウシの平均的な娘について、授乳毎に予想される乳の追加のポンド数として示される。より高い数値が好ましい。
【0046】
残留飼料摂取量(RFI)は、サイズ、生産量、及び体重の変化を考慮した後の、動物の実際の飼料摂取量と予測飼料摂取量の間の差として定義される。この形質は、授乳当たりのポンド数で表され、より少ない数が、より良いと考えられる。飼料節約量(FSAV)は、体重及び残留飼料摂取量に基づいて、授乳中に節約された食物のポンド数で表される。
【0047】
本明細書で使用される場合、予測伝達能力の種類(PTAT又はTYPE)は、基礎集団の物理的コンフォメーションからの点数の差として表される。娘の最終スコアは、品種分類器によって収集される。次いで、生スコアをウシの年齢に合わせて調整し、これを使用して、PTAの種類(PTAT)を導出する。これらのPTATは、基礎集団からの点数の差として表される。TYPE値は、時間経過に伴う異なる基礎集団にわたる比較を可能にするために正規化される。より高い数値は、より望ましい物理的コンフォメーションと相関する。
【0048】
本明細書で使用される場合、以前は「乳製品の特徴」として知られていたSTA乳製品形態(DF又はDFM)は、「乳汁分泌」の指標を提供し、乳牛が肉及び脂肪を介して飼料から乳を生産する能力を反映する、骨の鋭さ、角度、平坦度、肋骨の開口度、及び首の長さを指す。
【0049】
乳牛は、当該技術分野で周知である線形記述形質として一般に知られる基準を使用して評価され、記載される。これらの線形記述形質としては、身長(STA)、強度(STR)、体の深さ(BDE)、尻の角度(RPA)、股関節の位置、坐骨幅、前乳房の高さ(FTA)、前乳房の付着(FUA)、後乳房の高さ(RUH)、後乳房の幅(RUW)、懸垂靭帯(UCL)、乳房の深さ(UDP)、前乳頭の配置(FTP)、後乳頭の配置(RTP)、乳頭の長さ(TLG)、乳房の傾斜(UT)、後肢(側望)(RLS)、後肢(後望)(RLR)、肢蹄スコア(FLS)、蹄の角度、寛幅(TRW)、及びボディコンディションが挙げられる。これらの線形形質基準は、当業者に周知である。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるThe Dairy Cow Today:U.S.Trends,Breeding,and Progress Since 1980,S.L.Spahr and G.W.Opperman,Chapter 9,Type and classification and trait appraisalを参照されたい。
【0050】
線形記述形質は、形質の種類の伝達パターンを記述するプロセスを簡素化するために、しばしば複合指数に組み合わされる。複合指数としては、肢蹄複合(FLC)、乳房複合指数(UDC)、身体(BF)複合指数、身体サイズ複合(BSC)指数、乳生産能(DC)複合指数、及び体重複合(BWC)が挙げられる。FLC複合は、後肢、側望、蹄の角度といった線形形質の組み合わせである。UDCには、前乳房の付着、後乳房の高さ、後乳房の幅、乳房の深さ、懸垂靭帯、前乳頭の配置、及び後乳頭の配置といった線形形質が組み込まれている。UDCは、UDCと群生活との間の関連が最大化されるように設計される。より大きな値は、より長い群寿命と関連付けられる。乳房複合指数は、強い付着を有する十分に形成された大容量の乳房を記述する。高いUDCを有する育種動物を使用すると、体細胞スコアが低下し、乳汁が問題なく、より多くの乳を保持することができる娘が生じる。BF指数は、身長、体の深さ、尻の角度、及び坐骨幅の線形形質を組み合わせたものである。DC複合は、乳製品形態及び強度の線形形質を組み合わせたものである。BSCは、身長、強度、体の深さ、及び坐骨幅の4つの線形形質から計算される別の複合指数である。BSCが1.0STA増加する毎に、成熟体重の24ポンドの予測される増加と相関する。BWCは、体重を予測するために様々な線形形質から計算される。これらの形質としては、身長、強度、乳製品形態、及び坐骨幅が挙げられる(August 2021 Sire Summaryのように)。
【0051】
本明細書で使用される場合、「生産寿命」(PL)は、乳牛が初めて出産した後に群においてどれくらい生存するかの尺度である。これは、分娩日、屠殺又は死亡日、及びDHI検査のウシの各授乳期における乳の日(乾乳日に基づく)に基づいている。生産寿命(PL)のPTAは、搾乳ストリングでの寿命の追加月数として表される。PLが大きい雄ウシは、生産寿命が長い娘の種雄ウシになると予想される。PLを計算するために使用されるデータには、実際の寿命、授乳期、及びPLと相関する形質からのデータを補完した屠殺データが含まれる。ピーク生産の数ヶ月間最大のPLクレジットを割り当て、最初の授乳よりも後の授乳にわずかにより多くの信用を与えることによって、PLはウシの長寿の経済的影響を反映している。PLの遺伝性は0.085と低く、その形質は、乳牛の生涯の後半に発現する。したがって、PLは、低い遺伝性と晩年の形質の発現のため、選択によって改善することが困難な形質である。PLを計算するための方法は、当該技術分野において既知である。VanRaden et al.,Journal of Dairy Science 76:2758-2764(1993)、VanRaden et al.,Journal of Dairy Science 78:631-638(1995)、Weigel et al.,Journal of Dairy Science 81:2040-2044(1998)を参照されたい。
【0052】
本明細書で使用される場合、「体細胞スコア」(SCS)は、体細胞数(SCC)から計算される。乳が生産されると、少数の細胞も乳に移される(乳を構成するタンパク質、脂肪、水、ミネラルとともに)。全ての乳には、これらの細胞の一部が含まれているが、非常に多く存在する場合には、乳の品質が影響を受ける。乳加工業者は、農家から購入する牛乳において許容され得る細胞の濃度を制限する。また、乳房への刺激が高いSCSを引き起こす可能性があるため、個々のウシのSCSを知ることは、農家がウシが健康であるかどうかを判断するのに役立ち得る。健康管理はSCSに最も大きな影響を与えるが、一部の人々が耳感染症を引き起こす可能性が高いことを受け継ぐのと同様に、ウシは、より高いSCSを引き起こす形質を受け継ぐ可能性がある。乳又はタンパク質産生のような形質に次いで、SCSは、低い遺伝性を有する。体細胞スコアPTAは、乳房炎抵抗性の指標として、最初の5回の授乳からの体細胞スコアデータを使用して計算される。最も低いPTA SCSを有する雄ウシは、SCSが最も低く、体細胞数(SCC)が最も低く、乳房炎の症例が最も少ない娘の種ウシとなると予想される。本開示は、dam親と比較して子孫における低減されたSCSを提供し、これを含む。
【0053】
本明細書で使用される場合、「受胎能力指標」(FI)は、雌ウシとして妊娠する能力、授乳中のウシとして妊娠する能力、並びに再び周期を開始し、熱を示し、妊娠し、及び妊娠を維持するウシの全体的な能力といったいくつかの生殖要素を1つの全体的な指数に組み合わせる。受胎能力指数は、次の式から導出される。受胎能力指数=18%の雌ウシ受胎率(HCR)+18%のウシ受胎率(CCR)+64%の娘の妊娠率(DPR)。
【0054】
本明細書で使用される場合、「種雄ウシの分娩の容易さ」(SCE)は、特定の種雄ウシからの子ウシが多かれ少なかれ容易に生まれる傾向を測定し、雌ウシの最初の子ウシの困難な出産の割合として1~5のスケールで表される(1が「問題なし」として分類される)。ホルスタインの難産率は、約8%である。一般に、8%以下のSCEを有する雄ウシは、「分娩の容易な」雄ウシとみなされる。数が小さい方が好ましい。
【0055】
本明細書で使用される場合、「娘の分娩の容易さ」(DCE)は、SCEと同様に、特定の動物からの子ウシの分娩が多かれ少なかれ容易に生じる傾向の測定値である。数が小さい方が好ましい。
【0056】
本明細書で使用される場合、「サービス種雄ウシの死産」(SSB)は、種雄ウシから予想される死産した子ウシの割合を表す。死産の遺伝的基礎は、8%である。
【0057】
本明細書で使用される場合、「早期の最初の分娩」(EFC)は、平均とは異なる、雄ウシの子孫が出産すると予想される日数の逆数である。例えば、雄ウシの娘が、平均より2日早く(平均から-2日目に)出産した場合、雄ウシのEFCは、+2.0であろう。
【0058】
本明細書で使用される場合、「娘の死産」(DSB)は、種雄ウシからの子ウシが死産する傾向であり、ホルスタイン品種のみに適用される。以下で考察されるように、DSBは、特定のハプロタイプに関連し得る。
【0059】
育種家は、子孫の生涯にわたるBos taurus動物の価値の評価のためのメリットの尺度を開発した。様々なメリットの尺度は、動物の子孫がその生涯にわたって提供する追加の純利益を説明するものである。典型的な乳業事業の収入及び費用が推定され、その結果、全体的な純利益の尺度を計算することができる。生涯収益性の3つの異なる値(ネット、フルード、及びチーズ)が利用可能である。数式間の主な違いは、構成要素に重点が置かれていることである。育種時には、生産者は、その地域での乳の支払いに最も近い指数を選択する。ネットメリットは、米国全土の将来の予想平均乳価格に基づく。フルードメリットは、タンパク質の支払いを受けていない生産者のためのものである。フルードメリットの式では、追加のタンパク質を産生するために追加の飼料が必要であるため、タンパク質に負の値が置かれる。追加のタンパク質に対する直接の支払いがなければ、これは負の値になる。チーズメリットは、チーズ工場に直接的に乳を販売する農家に適している場合がある。
【0060】
本明細書で使用される場合、チーズメリット(CM$)は、チーズ又は他の乳製品に製造されるように販売される乳に適切な経済的価値を組み込んだ指数である。この式には、MILK、PTAF、PTAP、及び様々な健康及び種類の形質が組み込まれている。CM$の考察は、us.altagenetics.com.で入手可能である。
【0061】
本明細書で使用される場合、ハプロタイプは、(連結された)基として一緒に伝達される染色体上の異なる位置における対立遺伝子(DNA配列)の組み合わせである。ハプロタイプテストは、受胎能力及び他の形質に影響を与える劣性遺伝子障害の識別を提供するために利用可能である。Cole et al.,“Haplotype tests for recessive disorders that affect fertility and other traits,”USDA AIP Research Report Genomic3(09-13)(2018年12月1日に更新された)を参照されたい。特定のハプロタイプは、本明細書に提供されるBos taurus生殖質において望ましくない。劣性遺伝子ハプロタイプがホモ接合型である場合、受胎能力及び他の重要な形質が有意に影響を受ける。本開示の生殖質は、群を改善し、これらの望ましくないハプロタイプの存在を低減するために使用することができる。
【0062】
劣性遺伝子ハプロタイプ変異には、無角(角の欠如である)、すなわちハプロタイプHHPが含まれる。かつて、これは、望ましくない遺伝学と密接に関連していたため、望ましくない表現型とみなされた。しかしながら、動物福祉は、損傷を防ぐために動物の角を取り除く必要があり、最近の育種の進歩は、形質を、関連する貧弱な生産表現型から分離し、それをより望ましい形質にしている。別の劣性遺伝子ハプロタイプは、赤色コートカラーであり、ホルスタインが白黒であると想定されるために、望ましくないだけであり、赤色コートカラーは、ハプロタイプHBR、HDR、及びHHRによって引き起こされ得る。対照的に、いくつかのハプロタイプは、生存可能なホモ接合性の子孫を産生しないため、望ましくない。ホルスタインウシの場合、HH0、HH1、HH2、HH3、HH4、HH5、及びHH6。HH0は、胚の死、死産及び他の変形を引き起こすホルスタインウシにおける先天性遺伝性致死性欠損症であるBrachyspina症候群(HH0)を引き起こす。(例えば、TY)。HH1は、APAF1遺伝子におけるナンセンス変異である。HH3は、単一アミノ酸置換を引き起こすSMC2遺伝子中のSNPによって引き起こされる。HH4は、GART遺伝子の遺伝的病変によって引き起こされる。HH5は、TFB1M遺伝子の遺伝的病変によって引き起こされる。HH6は、SDE2テロメア維持ホモログ遺伝子内のATG開始コドンの破壊によって引き起こされる。HH2に関連する遺伝子欠損は、まだ不明である。
【0063】
ウシは、メンデル様式で遺伝する単遺伝性疾患であるいくつかの遺伝性疾患に苦しんでいる。様々な遺伝子疾患は、当該技術分野において既知である。例えば、各々参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Garrick and Ruvinsky,“The Genetics of Cattle,”2nd Edition,CAB International,Oxfordshire UK 2015を参照されたく、また、Parkinson et al.,“Diseases of Cattle in Australasia,”ISBN 9780958363447 Jolly et al.,“Genetic Diseases of Cattle,”Chapter 21も参照されたい。
【0064】
低カルシウム血症(乳熱)、第四胃変位(DA)、ケトーシス(KETO)、乳腺炎(MAST)、子宮筋層炎(METR)、及び胎盤停滞(RETP)を含む、ホルスタインウシにおいていくつかの他の健康形質が追跡される。MFEVは、授乳中のウシが授乳の早い段階で過剰なカルシウムを分泌する障害である。DAは、ウシの第四胃(「真の胃」)に気体を充満させ、ウシの腹部の床部分から内腔の片側に移動させる障害であり、獣医の介入を必要とする状態である。KETOは、一般に、又は特に牛乳を作るために、エネルギー摂取量よりも多くのエネルギーを使用するウシによって引き起こされる疾患である。MASTは、ウシの乳房の炎症であり、細菌によって引き起こされることが多い。METRは、ウシの子宮の子宮内膜及び筋肉層の両方の炎症である。RETPは、胎児の胎盤のウシ側が、子ウシ側から分離できず、胎児の膜及び他の組織が出生後24時間排出されない場合である。これらの形質の各々は、品種平均耐性に対する割合の増加で表される。(平均耐性は、発生率を100%から差し引くことによって計算される。)例えば、雄ウシのMFEVが+0.5の場合、雄ウシの娘は、品種平均よりも0.5%高い乳熱に対する抵抗力を持つと予想される。ホルスタイン動物についてゲノム及び遺伝子評価が提供され、各形質の評価は、品種平均を上回る又は下回る耐性点の割合で表される。
【0065】
ブタ
ウシの育種とは対照的に、ブタの選択は、あまり集中的ではない。各育種家は、その育種目標に応じて、独自のカスタム指数を使用する。多くは、「最良線形不偏予測」又はBLUP統計モデルに依存している。形質指数を計算するためのほとんどのソフトウェアは、特定の育種家のためにカスタマイズされるが、公的に利用可能なプログラムは、当該技術分野で知られている。ゲノムマーカーをモデルにもたらすGBLUPも含む、いくつかの当技術分野で認識されている統計モデルが存在する(Stock,J.,Front.Genet.2020、11:568)。これらのモデルを使用して、概算育種値(EBV、Fox et al.による米国出願第2005/0221322号で公開される)を予測する。どの動物が、育種プログラムの目標を達成する子孫につながるかを予測するのは、当業者の知識の範囲内である。ウシと同様に、配偶子を収集する方法は、当該技術分野で既知である。
【0066】
胚の作製
多数の胚は、インビトロ受精(IVF)又は人工授精(AI)などの当該技術分野で既知の方法を介して作製される。AI胚は、当該技術分野で知られている方法(例えば、フラッシング)を使用して収集され、次に胚盤胞段階の胚が収集され、次の工程に進む。IVF胚を観察し、適切なときにプロセスの次の工程に送ることができる。
【0067】
胚性幹細胞の生成
胚性幹細胞(ESC)は、例えば、内部細胞塊(ICM)を切除し、細胞を解離させ、次いで、それらを基質上に再播種することによって生成することができる。代替的に、又は加えて、全胚、又はそれらから成熟した胚盤胞を基質上に播種して、胚性幹細胞になるようにプレートを置くことができる。透明帯は、酵素消化又はレーザ補助孵化を含む、当該技術分野で既知の任意の方法によって除去することができる。
【0068】
内部細胞塊の切除
種間で類似している様々な技術を使用して、胚盤胞から内部細胞塊を単離することができる。ICM細胞は、顕微鏡手術、酵素消化、免疫手術、又は機械的分離を使用して単離することができる。
【0069】
胚盤胞は、HEPES-TL培地などの好適な細胞成長培地中に配置することができ、次いで、顕微鏡手術は、例えば、限定されないが眼科用ハサミを使用して、当該技術分野で知られている任意の技術を介して(例えば、Gao,X.et al.,Nature Cell Biology,2019,21,687-699)、又は倒立顕微鏡(例えば、Nikon製のTE2000-U、例えば、Bogliotti,Y.S.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2018,115,2090-2095を参照されたい)に取り付けたマイクロマニピュレーション機器(例えば、Nikon/Narishige製のNT88-V3高精度マイクロマニピュレータ)に接続したマイクロブレードを使用して、実行することができる。
【0070】
胚盤胞の透明帯は、トロホブラストがマイクロドロップに分散し始めるまで、プロナーゼ、トリプシン、又はそれらの組み合わせなどを介した酵素消化によって除去することができる。次いで、ICM細胞を幹細胞培養培地中で洗浄し、2本の細かい針及び引っ張られたマウスマイクロピペットを用いて単離することができる(例えば、Li M,et al.,Mol.Reprod.Dev.,2003,65,429-434を参照されたい)。
【0071】
あるいは、ICMは、Tyrodeの溶液(Sigma-Aldrichなどの商業的供給源から入手可能)、又はプロナーゼ溶液中で胚盤胞をインキュベートして、透明帯を除去し、その後、栄養外胚葉(TE)の抗体及び補体系が媒介する溶解によって、免疫手術技術を使用して単離することができる。胚盤胞を、10~20%の抗ブタ血清(ブタ用)又は抗ウシ血清(ウシ用)を補充した幹細胞培養培地中で30分間~1時間インキュベートすることができる。血清は、ウサギ、ヤギ、又はラットなどの任意の好適な宿主から必要な種に対して上昇させる抗体であり得る。血清を洗い流すことができ、次いで、細胞を、10~20%の補体血清を補充した幹細胞培養培地中で30分間~1時間インキュベートすることができる。様々な供給源からの補体血清は市販されており、供給源としては、モルモット補体が挙げられる。処理した後、ICMは、次いで、ピペッティングによって溶解トロホブラスト細胞から単離され、幹細胞培養培地中で複数回洗浄することができる(例えば、Hou,D.R.,Sci Rep.2016,6,25838を参照されたい)。機械的分離のために、透明帯を含まない胚盤胞は、自発的孵化プロセス及び人工孵化プロセスの両方によって得られ、次いで3回洗浄することができる。次いで、ICMは、幹細胞培養培地中で細かく引っ張られたガラス毛細管ピペットを用いて穏やかにピペッティングすることによって、栄養外胚葉から分離することができる(例えば、Jung,S.K.,et al.,J Vet Sci.,2014,15,519-528を参照されたい)。
【0072】
代替的に、胚性幹細胞培養物は、最初に全胚盤胞を配置することによって確立することができる。透明帯は、プロナーゼ又はTyrodeの溶液(上記)を介して除去することができ、その後、全胚盤胞を、以下に記載されるように培地中のフィーダー細胞上に配置することができる。培地は、TE成長ではなくESC成長を促進するように配合することができる。したがって、ESCは成長し、TEの成長は制限される。したがって、時間が経つにつれて、TE細胞は競合しなくなり、培養物中に存在しなくなる。
【0073】
代替的に、ICMは、TEのレーザ支援による除去によって単離されてもよく、これは次のように実行され得る。胚盤胞は、ICMが9時の位置(視野に対して)に配置されている2つの保持ピペットによって固定され得る。適切な張力が確立されると、およそ10個の赤外線レーザパルス(300mW×1ms、ZILOS-TK(商標)、Hamilton Thorne Research、Beverly,MA)を発射して、胚盤胞を、2つの不均等な部分に分割することができ、より小さい方は、ICMからなり、より大きい方は、トロホブラスト細胞のみで構成される。切除されたICM細胞は、フィーダー細胞上に、又はタンパク質コーティングされた培養容器内に直接配置することができる。
【0074】
ウシ胚性幹細胞
単離されたら、単離されたICM細胞を、i)フィブロネクチン、マトリゲル、若しくはビトロネクチンなどの有機マトリックスでコーティングされたか、ii)脱細胞化細胞外マトリックス(ECM、ブタゼラチン、コラーゲンIV、フィブロネクチン、ラミニン、及びビトロネクチンの混合物)でコーティングされたか、又はiii)不活性化フィーダー細胞とともに播種された培養皿に配置する。好適な不活性化フィーダー細胞としては、ガンマ線照射マウス胚性線維芽細胞(MEF)又はマイトマイシン処理されたMEFなどの有糸分裂不活性化フィーダー細胞、ヒト胎児筋細胞、ヒト胎児線維芽細胞、ヒト成人卵管上皮細胞、ヒト真皮線維芽細胞、ヒト羊膜間葉系細胞、ヒト羊膜上皮細胞、マウス骨髄間質細胞、マウス羊水球、MEF SNL株、ヒト羊水球、ヒト包皮線維芽細胞、ヒト羊水間葉系細胞、脱落膜由来間葉系細胞の細胞周囲基質、又は別の種類の不活性化フィーダー細胞などが挙げられる。不活性化MEF細胞は、6ウェルプレートのウェル当たり570,000~650,000個の細胞、12ウェルプレートのウェル当たり228,000~350,000個の細胞、又は4ウェルプレートのウェル当たり100,000~118,000個の細胞でプレーティングすることができる。プレーティングされたMEFは、7日間にわたって良好である。細胞を、成長因子FGF2及びTGFβを完全に欠く基礎培地中で培養する。
【0075】
好適な培地としては、CTFR培養培地(Ludwig,T.E.,et al.,Nature Methods,2006,637-646)、ES培養培地(Wu X,et al.,Sci Rep.2016 6,28343)、改変TeSRl(例えば、TGFPを欠く)、TeSRl、N2B27、又はE6(Thermo-Fisher、カタログ番号A15164091から入手可能)が挙げられる。実施例22には、改変N2B27培地が記載される。簡潔に述べると、この培地は、DMEM/F12培地、神経基礎培地、0.5倍のB-27 Supplement、1倍のN2 supplement、1倍のMEM非必須アミノ酸溶液、1倍のGLUTAMAX(商標)(Life Technologies Corporation、Carlsbad,CA)、ペニシリン-ストレプトマイシン、及び0.1mMの2-メルカプトエタノールを含有する。培地に、ウィングレス統合シグナル伝達(「WNTシグナル伝達」)の阻害剤、及びbFGF、FGF2、FGF4、又はSUN 11602が補充され得る。様々なシグナル伝達分子及び小分子が、WNTシグナル伝達を阻害することが当該技術分野で既知であり、Sigma-Aldrich(St.Louis,MO)及びR&D systems(Minneapolis,MN)などの供給業者から市販されている。そのような分子としては、iwr-1、iwr-1-endo、iwp-2、Box5、iCRT3、スクレロスチン、dkk2、dkk1、LF3、CCT036477、FH535、カルダモニン、IWP-L6、Wnt-C59、ニクロサミド、XAV-939、ICG-001、LGK-974、CP21R7、NCB-0846、PNU-74654、サリノマイシン、KY021 11、WIKI4、PRI-724、KYA1797K、2,4-ジアミノ-キナゾリン、Ant 1.4Br、Ant 1.40、アピキュラレン、バフィロマイシン、ETC-159、G007-LK、G244-LM、IWR、NSC668036、PKF1 15-584、ピルビニウム、ケルセチン、シゾカオールD、BC2059、及びそれらの組み合わせが挙げられる。好ましい実施形態は、20ng/mLのFGF及び2.5μMのIWRを補充したN2B27培地である。
【0076】
6~7日培養した後、ICMの発芽後成長物を継代することができる。これは通常、細胞を酵素的に(例えば、プロナーゼ、トリプシン、又は組換えトリプシンで)又は機械的に(上記で考察されているように)解離し、i)培養培地及びRhoキナーゼ(ROCK)阻害剤、又はii)培養培地、FBS、及び血清代替品のいずれかを用いて、新しく調製されたフィーダー細胞上に再播種することを含む。血清代替品は、当該技術分野で周知であり、一般に、補助アミノ酸、抗酸化剤、並びにインスリン、トランスフェリン、及び脂質豊富なアルブミンなどのタンパク質を含有する。血清代替品は、微量元素も含有してもよい。市販の血清代替品としては、N2、B27、及びKNOCKOUT(登録商標)Serum Replacment(KSR、Gibco、商標はThermo Fisher Scientific、Waltham,MA似対するものである)が挙げられる。血清代替品の完全な考察は、例えば、公開された出願US2002/0076747に見出すことができる。好適なROCK阻害剤としては、Y-27632、AS1892802、ファスジル塩酸塩、GSK 269962、GSK 429286、H 1152、Glyclyl-H 1152、HA 1100、OXA 06、RKI 1447、SB 772077B、SR 3677、PD-325901、及びTC-S 7001が挙げられる。継代された細胞を、同じ培地及びフィーダー細胞を含有する新しいウェルに播種することができる。確立されたら、培地は、毎日交換することができる。細胞を、4~5日毎に1:10~1:20に分割することができる。細胞を、加湿COインキュベータ内で37℃~38.5℃で維持することができる。
【0077】
ブタ胚性幹細胞
単離されたICM細胞を、STO又はMEF細胞などの有糸分裂不活性化し、かつ代謝活性のフィーダー細胞上で培養することができる。これらのフィーダー細胞は、ガンマ線照射又はマイトマイシンC処理を使用して有糸分裂不活性化することができる。他の例示的なフィーダー細胞は、上記に記載されている。ICM細胞を、発芽後成長物が現れるまで、加湿雰囲気中、5%O、5%CO及び90%N中、37.0℃~38.5℃で培養することができる。(Hou,D.R.,Sci Rep.2016,6,25838、Gao,X.et al.,Nature Cell Biology,2019,21,687-699、Li,M.,et al.,Mol.Reprod.Dev.,2003,65,429-434、Michalska,A.Curr.Protoc.Stem Cell Biol.,2007,Chapter 1:Unit1C.3における例示的な手順を参照されたい)。pESC、pESLC、又はpEPSCMなどのいくつかの培地をこれらの培養に使用することができるが、これらに限定されない。
【0078】
pESCは、低グルコースのダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Invitrogen)及びHamのF-10培地(Invitrogen)の1:1混合物である。この混合物は、2mMのl-グルタミン、1%(v/v)の非必須アミノ酸(Invitrogen)、0.1mMのβ-メルカプトエタノール(Invitrogen)、及び1%(v/v)のペニシリン-ストレプトマイシン(Invitrogen)、並びに20ng/mLの組換えヒト塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF、Invitrogen)、20ng/mLの組換えヒト幹細胞因子(SCF、R&D Systems、USA)、及び20ng/mLの組換えヒト白血病阻止因子(LIF)を補充した15%(v/v)のFBS(HyClone)を更に含む(Park,J.K.,et al.,PLoS One.2013,8,e52481、Jung,S.K.,et al.,J Vet Sci.,2014,15,519-528、Yuan,Y.,et al.Cell Death Discov.,2019,5,104)。
【0079】
別の公開されたブタ培地は、0.1mMのb-メルカプトエタノール(Amresco、3151B55)、100IU/mlのペニシリン、0.05mg/mlのストレプトマイシン、0.1mMのMEM非必須アミノ酸(Gibco、08540)、20ng/mlの組換えヒト線維芽細胞成長因子-塩基性(rh-bFGF、Sigma、F0291)、40ng/mlの組換えヒト白血病阻止因子(rh-LIF、Sigma、L-5283)、ヌクレオシド(0.03mMのアデノシン、0.03mMのグアノシン、0.03mMのシチジン、0.03mMのウリジン、及び0.01mMのチミジン、Sigma)、並びに16%のFBSを補充したDMEMを含む。(Li,M.,et al.,Mol.Reprod.Dev.,2003,65,429-434)。
【0080】
ブタ拡大潜在幹細胞培地(pEPSCM)は、500mlのN2B27基礎培地:0.2μMのCHIR99021(GSK3阻害剤及びWNTアゴニスト、Tocris、カタログ番号4423)、0.3μMのWH-4-023(SRC阻害剤、Tocris、カタログ番号5413)、2.5μMのXAV939(タンキラーゼ阻害剤、Sigma、カタログ番号X3004)又は2.0μMのIWR-1(wnt阻害剤、Tocris、カタログ番号3532)、65.0μg/mlのビタミンC(Sigma、カタログ番号49752-100G)、10.0ng/mlのLIF(Stem Cell Institute(SCI)、University of Cambridge)、20.0ng/mlのアクチビン(SCI)及び0.3%のFBS(Gibco、カタログ番号10270)+10μMのY27632(ROCK阻害剤)を含む(Gao,X.et al.,Nature Cell Biology,2019,21,687-699)。
【0081】
改変N2B27培地は、実施例22に記載されており、ブタ胚性幹細胞の調製にも好適である。
【0082】
ブタ胚性幹細胞の調製及び維持に好適な培地は、GSK3阻害剤、タンキラーゼ阻害剤、又はそれらの組み合わせを含み得る。当業者は、有効量の異なるGSK3阻害剤、例えば、限定されないが、市販の阻害剤AR-A 014418、A 1070722、SB 415286、TCS 2002、3F8、TDZD 8、TC-G 24、BIO-アセトキシム、インジルビン-3’-オキシム、TWS 119、TCS 21311、SB 216763、BIO、炭酸リチウム、ケンパウロン、アルスターパウロン、及びCHIR 98014を認識するだろう。(これらの小分子は全て、R&D systemsから購入して入手することができる)。更に、代替のタンキラーゼ阻害剤としては、AZ 6102、JW 55、TC-E 5001、及びWIKI4が挙げられ得る。好適な培地はまた、ROCK阻害剤及び/又はbFGFシグナル伝達の誘導剤を含んでもよい。好ましい実施形態は、実施例22に記載されるN2B27培地であり、10ng/mlのbFGF、3μMのCHIR99021、及び1μMのPD0325901が補充されている。PD0325901は、6日後に抜き取ることができる。
【0083】
培養培地は、1~2日毎に交換することができる。一般に、細胞は、培養の5~8日後にコロニーを形成する。次に、胚由来コロニー形成細胞を、引っ張られたガラスピペットを使用して機械的に単離し、幹細胞培養培地中の新鮮なフィーダー細胞上に再播種することができる。代替的に、細胞を、トリプシン化プロセスを使用して除去することができる。細胞は、一般に、3~4日後に十分に画定されたコロニーを形成し、引っ張られたガラスピペット法又は5~7日毎のトリプシン化を介して定期的に継代され得る。細胞を、毎日培地を交換しつつ、加湿雰囲気中、5%O、5%CO及び90%N中、37~38.5℃で培養することができる。
【0084】
幹細胞を、アルカリホスファターゼアッセイ、ESC特異的mRNA及びタンパク質ベースのマーカー分析、並びに/又は胚様体形成、自発的分化、及び奇形腫形成アッセイを使用して検証することができる(例示的な方法については、Park,J.K.,et al.,PLoS One.2013,8,e52481、Jung,S.K.,et al.,J Vet Sci.,2014,15,519-528、Yuan,Y.,et al.Cell Death Discov.,2019,5,104を参照されたい)。
【0085】
確立されたESCはまた、プライミングされたESCと比較して、ナイーブ(真のESC)としてその状況を決定するために評価されてもよく、又はナイーブESCにおけるmRNA(MHC I抗原、XIST)及びタンパク質(H3K27me3)ベースのマーカーの低い発現、若しくは発現しないことに基づいてプライミングされてもよい(Zhang,M.,et al.,FASEB J.,2019,33,9350-9361を参照されたい)。
【0086】
ESCの遺伝子型決定
各幹細胞株のアリコートを、遺伝子型決定に使用するために採取することができる。いくつかの実施形態では、遺伝子検査が同じ胚由来の細胞の一部に対して行われている間に、胚を培養してもよい。検査結果が陽性である場合、培養された胚は、子孫の産生のためにレシピエントに移すことができる。代替的に、これらの陽性胚からの細胞を、核移植プロセス、又は当該技術分野で既知の任意の他のプロセスで使用して、遺伝的に優れた動物を産生し得る。様々な実施形態では、胚性細胞又は胚性幹細胞の拡張し、凍結させるための方法が開示される。拡張した細胞の一部分に対して、遺伝子検査を行ってもよい。検査結果が好ましい場合、同じ胚からの残りの細胞を解凍し、これを使用して子孫を産生してもよい。別の実施形態では、生検試料は、受精後約3~7日間培養された胚から得られてもよい。胚生検の一般的な方法は、当該技術分野で既知であり、例えば、Polisseni et al.,Fertility and Sterility,2010,93,783-788及びLopes et al.Theriogenology,2001,56,1383-1392に開示されている。生検された細胞を個別に培養して、細胞を約2~10日間、又は更に長く拡張させてもよい。生検試料からの拡張した細胞は、残りの胚が培養される間、全ゲノム解析(WGA)又は遺伝子型決定などの遺伝子検査を受けてもよい。多重置換増幅(MDA)は、WGA技術の一種であり、これを使用して、分析のために生検からのDNAの量を増加させ得る(例えば、Lauri et al.Genomics,2013,101,24-29を参照されたい)。
【0087】
ウシ遺伝子型決定
当該技術分野で既知のウシ動物又はウシ細胞を遺伝子型決定するいくつかの方法がある。最も一般的なのは、50kのウシSNPチップである。ESCの遺伝子型は、BovineSNP50 v3 BeadChipマイクロアレイキット(BeadChip)を使用して、製造業者の指示に従って、ILLUMINA(登録商標)Infinium HTS BeadChip(ILLUMINA(登録商標)Inc.、San Diego,CA)マイクロアレイシステムを使用して決定することができる。BeadChipは、中央値37.4kbの間隔で、主要なウシ品種の種類のゲノム全体に均一に分布する53,714の非常に有益なSNPプローブを含んでいる。SNPプローブは、18の一般的な牛肉及び乳製品品種で検証されている。BeadChipは、ILLUMINA(登録商標),Inc.、USDA-ARS,the University of Missouri、及びUniversity of Albertaの共同成果物である。22,000を超えるSNPプローブは、経済的に重要な肉牛及び乳牛のプールされた集団に見出される新規のSNP遺伝子座を標的とする。BeadChipは周知であり、当業者によって広く使用されている。GENESEEK(登録商標)GENOMIC PROFILER(商標)High-Densityアレイ(GGP HD150K;139376 SNP;Neogen Genomics、Lincoln NE)、NEOGEN(登録商標)GGP Bovine 50kチップ(47843 SNP;Neogen Genomics、Lincoln NE)、及びNEOGEN(登録商標)GGP Bovine 100kチップ(100,000 SNP)を含むが、これらに限定されない、他の好適な遺伝子型決定チップ及び技術を使用することができる。
【0088】
ウシ参照ゲノム(Bovine Genome Sequencing and Analysis Consortium,Science 324(5926):522-528)、Btau(ftp.hgsc.bcm.tmc.edu/で入手可能)、及びBovine HapMap Consortiumデータセット(Bovine HapMap Consortium,Science 324(5926):528-32 (2009)bovinehapmap.orgでインターネットで入手可能)を含む、多種多様な公的に利用可能なリソースが当該技術分野で既知である。分析ツール及び配列データは、European Union’s Seventh Framework Programme for research,technological development,and demonstration(Grant Agreement No.613689)及びUSDA National Institute of Food and Agricultureによって支援されているBovine Genome Database(BGD)によって維持される。BGDは、University of Missouriにホストされている。
【0089】
ブタ遺伝子型決定
ウシ遺伝子型決定と同様に、当該技術分野で既知のブタ遺伝子型決定のいくつかの方法が存在する。ILLUMINA(登録商標)は、およそ64,000のSNPを含有するPorcineSNP60v2 BeadChipを販売している。異なる育種家の目標及び指数を提供するために、このチップは、追加の25,000のユーザが供給するSNPプローブのためのスペースも提供する。このチップは、様々な政府機関及び学術機関の研究者で構成されるInternational Porcine SNP Chip Consortiumと共同で設計された。このチップは、上記で考察したように、マーカー支援ブタ選択を可能にするように設計される。それぞれ約80,000及び51,000のSNPを含有する、GENESEEK(登録商標)GENOMIC PROFILER(商標)(GGP Porcine 80K;Neogen Genomics、Lincoln NE)及びNEOGEN(登録商標)GGP Porcine 50kチップ(Neogen Genomics、Lincoln NE)を含むが、これらに限定されない、他の好適な遺伝子型決定チップ及び技術を使用することができる。他の遺伝子型決定チップ及び技術は、市販されており、当該技術分野で既知である。
【0090】
遺伝子型決定されたら、最も望ましい形質を有するESC株は、ブタ及びウシの両方の育種のための選択工程と同様に選択される。特に望ましいESC株を使用して、例えば、Ross and Cibelli,Methods Mol.Biol.,2010,636,155-177に記載されているような核移植方法を使用して動物を生成することができる。Strelchenko et al.に対して2000年1月4日に登録された米国特許第6,011,197号も参照されたい。
【0091】
代替的に、又は加えて、ESC株は、以下で考察されるインビトロ配偶子生成のために選択され得る。
【0092】
配偶子生成
胚性幹細胞株は、多能性であり、配偶子を含む多くの異なる細胞型を形成するように誘導することができる。配偶子生成中に産生される配偶子の種類は、細胞の遺伝子型に依存する。XYを保有するESC株を誘導して精子又は精子細胞様細胞を作製することができ、XXを保有するESC株を誘導して卵母細胞又は卵母細胞様細胞を作製することができる。
【0093】
始原生殖細胞様細胞(PGCLC)へのESC分化
これまで、始原生殖細胞様細胞は、中間細胞型を介して胚性幹細胞から誘導されてきた。これらの前駆細胞は、胚盤葉上層様細胞、形成細胞様細胞、中胚葉様細胞、又は胚外内胚葉(Xen)細胞などの様々な種類の多能性細胞である。始原生殖細胞様細胞に分化することができる任意の多能性細胞型を、前駆細胞として使用することができる。
【0094】
また、胚性幹細胞から直接PGCLCを作製することも企図されている。
【0095】
ウシ
胚性幹細胞は、(トリプシン中などで)酵素的に解離され、細胞外マトリックス又は基底ラミナ分子でプレコーティングされた皿上でフィーダーを含まないように培養することができる。好適な分子としては、コラーゲンIV、ポリ-L-オルニチン、及びラミニン、ゼラチン、ビトロネクチン、又はフィブロネクチンが挙げられる。例えば、PBS中の16.7μg/mlのヒト血漿フィブロネクチン(Millipore)を、12ウェルプレート内に配置し、37℃~38.5℃でインキュベートすることができる(Wang H,et al.,Sci Rep.,2016,6,27256、Hayashi,K.,et al.,2011,Cell,146,519-532、Ciccarelli M,et al.,Proc Natl Acad Sci USA,2020,117,24195-24204中の他の例示的な手順を参照されたい)。
【0096】
次いで、これらの培養ESCを、胚盤葉上層様細胞(EpiLC)、形成様細胞、又は中胚葉様細胞などの前駆細胞に誘導することができる。EpiLCを作製するための例示的な方法は、アクチビンシグナル伝達誘導剤、bFGFシグナル伝達誘導剤、インスリンシグナル伝達誘導剤、又はそれらの組み合わせを含む無血清培地中でESCを培養することである。各々の種類のシグナル伝達の誘導剤は、当該技術分野で既知であり、以下で考察する。代替的に、又は加えて、培養bESCを、bFGFシグナル伝達誘導剤、アクチビンAシグナル伝達誘導剤、WNTシグナル伝達誘導剤/GSK3阻害剤、又はそれらの組み合わせを含む無血清培地中でウシ形成様細胞に誘導することができる。代替的に、又は加えて、bESCを、アクチビンAシグナル伝達誘導剤及びwntシグナル伝達誘導剤/GSK3阻害剤を含む無血清培地中で中胚葉様細胞に誘導することができる。更に、無血清培地は、血清代替品を含み得る。例示的な無血清培地としては、実施例22及び実施例33にそれぞれ詳細に記載されているN2B27培地及びGK15培地が挙げられる。ウシ形成細胞及びウシ中胚葉様細胞の両方を、フィブロネクチンコーティングされたプレート上で、フィーダーを含まない状態で誘導することができる。例示的なアクチビンシグナル伝達誘導剤としては、アクチビンA、BMP4、ノーダル、アラントラクトン、スタウプリミド([9S-(9α,10β,11β,13α)]-N-(2,3,10,11,12,13-ヘキサヒドロ-10-メトキシ-9-メチル-1,3-ジオキソ-9,13-エポキシ-1H,9H-ジイインドロ[1,2,3-gh:3’,2’,1’-lm]ピロロ[3,4-j][1,7]ベンゾジアゾニン-11-イル)-N-メチルベンザミド)、SB-431542(4-[4-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-5-(2-ピリジニル)-1H-イミダゾール-2-イル]ベンザミド)、A01([4-[[4-クロロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]スルホニル]-1-ピペラジニル][4-(5-メチル-1H-ピラゾール-1-イル)フェニル]メタノン)、アラントラクトン、GDF8、及びコノフィリン(ジメチル(2R,6R,11R,13S,14S,23S,24S,25S,36R,39R,40R)-14,25-ジエチル-24,33-ジヒドロキシ-31,32-ジメトキシ-12,22-ジオキサ-1,9,18,29-テトラザドデカシクロ[23.13.1.16,9.02,23.03,21.05,19.06,17.011,13.028,36.030,35.036,39.014,40]テトラコンタ-3,5(19),16,20,27,30,32,34-オクタエン-16,27-ジカルボキシレート)が挙げられる。bFGFシグナル伝達の例示的な誘導因子としては、bFGF、SUN 11602(4-[[4-[[2-[(4-アミノ-2,3,5,6-テトラメチルフェニル)アミノ]アセチル]メチルアミノ]-1-ピペリジニル]メチル]ベンズアミド)、スクラルファート(CAS54182-58-0)、及びFGF-P(Casey-Sawicki,K.,et al.,Health Phys 2014,106,704-12に公開されるペプチド模倣物)が挙げられる。例示的なインスリンシグナル伝達の誘導剤としては、インスリン、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、臭化亜鉛、硫酸亜鉛硫酸亜鉛-7水、bpV(CAS42494-73-5)、BMOV(CAS38213-69-3)、バナジルロシグリタゾン、バナジルトレハロース、バナジルメトホルミン、バナジルケルセチン(バナジル分子は全て、Jiang,P,Applied Biochemistry and Biotechnology,2016,180,841-851に公開されている)、デメチルアステリキノンB1(2-[2-(1,1-ジメチル-2-プロペニル)-1H-インドール-3-イル]-3,6-ジヒドロキシ-5-[7-(3-メチル-2-ブテニル)-1H-インドール-3-イル]-2,5-シクロヘキサジエン-1,4-ジオン)、及びBRD7552(メチル[2,3-O-ビス(ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル-カルバモイル)]-4-O-(4-エトキシカルボニル-フェニルカルバモイル)-α-D-グルコピラノシド)が挙げられる。他のインスリンシグナル伝達の誘導剤は、血清代替品などのインスリンを含有する培地添加剤を含むことができる。
【0097】
前駆細胞からPGCLCを誘導するいくつかの方法が存在する。EpiLCの浮遊培養物は、低細胞結合性底U字96ウェルプレートのウェル中、インスリンシグナル伝達の活性化因子、少なくとも1つのBMPシグナル伝達の誘導剤、LIFシグナル伝達の誘導剤、SCFシグナル伝達の誘導剤、EGFシグナル伝達の誘導剤、WNTシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせを含む無血清培地中で、プレーティングすることができる。例示的な無血清培地としては、市販のDMEM、MEMalpha、DMEM/F12、HamのF-10、HamのF-12、RPMI 1640、Opti-MEM、RPMI 1640、Opti-MEM、及びGMEMが挙げられる。無血清培地N2B27及びGK15培地は、それぞれ実施例22及び実施例33に記載されている。インスリンシグナル伝達の例示的な誘導剤を上記に列挙する。例示的なBMPシグナル伝達の誘導剤としては、BMP4、BMP8b、BMP7、TGFβ、sb4(2-[[(4-ブロモフェニル)メチル]チオ]ベンゾオキサゾール)、トリアムシノロン、イソリキリチゲニン、及び4’-ヒドロキシカルコン(Vrijens,K,et al.,PLOS One,2013,8,e59045)、C1=C(CC(C)C)O=NC1C(=O)Nc1:c:c(Cl):c(F):c:c:1、C(OC1=CC(CC)=CC=C1)(=O)Nc1:c:c(N(O)=O):c(F):c:c:1、C1C=SC(C(OCC(=O)Nc2:c:c:c(OC(F)F):c:c:2)=O)C=1C(これらのフッ素化化合物は、Genthe,J.R.,ACS Chem Biol.2017 Sep 15;12(9):2436-2447に記載される)、km11073(WO2019042889)、PD07824、SVAK-12(Kato,S.,et al.,Mol Cell Biochem.,2011,349,97-106)、C1=C(C(F)(F)F)C(Cl)=CC=C1S(O)(O)N1CCN(C(=O)C2=CC=C(N3C(C)=CC=N3)C=C2)CC1、又は1-エチル-6-フルオロ-4-オキソ-7-[4-(3-フェニルプロパノイル)-1-ピペラジニル]-1,4-ジヒドロ-3-キノリンカルボン酸が挙げられ得る。LIFシグナル伝達の誘導剤は、LIFであってもよい。SCFシグナル伝達の誘導剤は、SCFであってもよい。EGFシグナル伝達の例示的な誘導剤としては、EGF、アンフィレグリン、EPR、及びHB-EGFが挙げられる。例示的なWNTシグナル伝達の誘導剤としては、WNT2b、WNT3A、WNT-4、Wnt5A、Wnt5b、Wnt7a、Wnt8a、Wnt9a、Wnt-9b、Wnt10b、Wnt11、Wnt16b、ノリン、WntアゴニストI(2-アミノ-4-(3,4-(メチレンジオキシ)ベンジルアミノ)-6-(3-メトキシフェニル)ピリミジン、CAS 853220-52-7)、WntアゴニストII(5-(フラン-2-イル)-N-(3-(1H-イミダゾール-1-イル)プロピル)-1,2-オキサゾール-3-カルボキサミド)、CHIR99021、LP 922056、BML 284、WAY 316606塩酸塩、SGC AAK1 1、CHIR 98014、及びFoxy 5が挙げられる。
【0098】
代替的に、前駆細胞の浮遊培養は、インスリンシグナル伝達の活性化因子、少なくとも1つのBMPシグナル伝達の誘導剤、LIFシグナル伝達の誘導剤、SCFシグナル伝達の誘導剤、EGFシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせを含む無血清培地中で誘導することができる。(例示的な誘導剤及び培地は、上記で考察される。)
【0099】
細胞を、37℃~38.5℃、5%COで維持することができる(Wang H,et al.,Sci Rep.,2016,6,27256、Hayashi,K.,et al.,2011,Cell,146,519-532)。
【0100】
代替的に、前駆細胞を、基礎培養培地中のマウス胚線維芽細胞(MEF)フィーダー層上に播種することができる。基礎培地は、少なくとも1つのBMPシグナル伝達の誘導剤、SCFシグナル伝達の誘導剤、少なくとも1つのインスリンシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせを更に含み得る。例示的な基礎培地としては、100倍のN-2 Supplement(Gibco)及び50倍のB-27(商標)Supplement(Gibco)が補充されたNEUROBASAL(商標)(Gibco、Waltham,Massachusetts,USA)及びDMF/12培地(Hyclone、Logan,Utah,USA)(1:1)が挙げられ、N2B27培地と呼ばれる。例示的なシグナル誘導剤については、上記に記載されている。
【0101】
代替的に、ウシ形成細胞及び/又はウシ中胚葉様細胞は、LIFシグナル伝達の誘導剤、SCFシグナル伝達の誘導剤、EGFシグナル伝達の誘導剤、及びBMPシグナル伝達の誘導剤が補充されたGK15基礎培地を使用して、フィーダーを含まない培養物中で誘導することができる。(例示的なシグナル伝達誘導剤は、上記で考察される。)更に、GK15培地は、インスリンシグナル伝達の誘導剤を含む血清代替品を含有し得る。(実施例33には、GK15培地が記載される。)
【0102】
最後の代替物では、ESCは、PRDM1、PRDM14、STELLA、SOX17、及び/又はSOX2などの内因性転写因子のCRISPR媒介性多重活性化を使用して、GDF9、VASA、DAZL、NANOS2、及びNANOS3の発現を誘導することによって、PGCLCに分化され得る。これらのマーカーは、PGC分化において役割を果たすことが知られている(Wang H,et al.,Sci Rep.,2016,6,27256、Wang G,et al.,Nat Immunol.,2019,20,1494-1505、Ideta,A.,Sci Rep.,2016,6,24983、Ciccarelli,M.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2020,117,24195-24204)。いくつかの実施形態では、内因性転写因子のCRISPR媒介性活性化因子は、標準的な方法に従って動物から育種させることができる。代替的な実施形態では、CRISPR媒介性活性化因子は、それらが得られた動物中に存在しないように、培養細胞中で一過性にトランスフェクトされ得る。
【0103】
未分化ESCを除去するために、得られるPGCLC培養物を、Sda/GM2-グリカン(Klisch,K.,Reproduction,2011,142,667-674)、α-SSEA-1(Fox N,Dev.Biol.,1981,83,391-398)、αSSEA-3、SSEA-4(Shevinsky,L.H.,et al.,Cell,1982,30,697-705)、EMA-1(Hahnel,A.C.and Eddy,E.M.,Gamete Res.,1986,15,1235-1244)、TG-1(Donovan PJ,et al.,J.Cell Sci.,1987,8,359-367)、c-kit(De Miguel,M.P.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2002,99,10458-10463)、又はTNAP(MacGregor,G.R.,et al.,Development,1995,121,1487-1489)を含むPGC特異的細胞表面マーカーを使用して、蛍光活性化細胞選別(FACS)によって選別することができる。
【0104】
機能的及び遺伝的同一性は、インビボでウシPGCと比較してトランスクリプトームシグネチャーを分析することによって検証することができ、PGCの純度は、アルカリホスファターゼ(APase)染色によって決定することができる。
【0105】
PGCLCは、Farini et al.,Dev.Biol.,2005,285,49-56によって記載される方法を使用して体細胞の非存在下で、又は雄若しくは雌の胎児性腺の体細胞の存在下で(Hayashi,K.and Saitou,M.,Nature Protocols,2013,1513-1524)、培養物中で維持され得る。
【0106】
ブタ
ブタESC(pESC)は、フィーダー細胞上に維持することができる。分化のために細胞を調製するために、それらを適合させ、基礎ラミニン分子でコーティングされた皿上で、フィーダーを含まない状態で維持することができる。好適な分子としては、ビトロネクチン、フィブロネクチン、ポリ-L-オルニチン(0.01%、Sigma)+ラミニン(10ng/ml、BD Biosciences)又はゼラチンが挙げられる。細胞を、N2B27などの基礎培地上で維持することができる。N2B27は、N2(Gibco、17502-048)が補充されたDMEM/F12(Gibco、11320-033)と、B27(Gibco、17504-044)、25μg/mlのインスリン及び50μg/mlのBSAが補充されたNeurobasal培地(Gibco、21103-049)との1:1混合物である。基礎培地は、細胞の多能性状態を維持するために、アクチビンA(20ng/ml、PeproTech)、bFGF(12ng/ml、Invitrogen)、及び1%KSR(Gibco)を更に補充することができる。代替的に、それらは、10ng/mlのFGF及び3μMのCHIR99021が補充された実施例22で調製したようなN2B27培地上で維持することができる。培地は、毎日交換することができる。
【0107】
PGCLC分化のために、ESCを前駆細胞に誘導することができる。胚細胞を単一細胞に消化し、次いで、無血清培地中で、少なくとも1つのBMPシグナル伝達の誘導剤、SCFシグナル伝達の誘導剤、EGFシグナル伝達の誘導剤、LIFシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせで処理することができる。代替的に、細胞を、アクチビンシグナル伝達の誘導剤、WNTシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせで処理することができる。代替的に、細胞を、bFGFシグナル伝達の誘導剤、アクチビンシグナル伝達の誘導剤、WNTシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせで処理することができる。例示的なシグナル伝達分子を上記に列挙する。例示的な培地は、Wang,H,et al.,Sci Rep.,2016,6,27256に記載されるように、15%のKSR、NEAA、L-グルタミン、ペニシリン/ストレプトマイシン、及びβ-メルカプトエタノールが補充されたGMEMであり得る。他の例示的な培地としては、上記に記載されるN2B27及びGK15培地が挙げられる。
【0108】
代替的に、内因性転写因子、具体的には、PRDM1、PRDM14、STELLA、SOX17、OCT4、及びSOX2の組み合わせのCRISPR媒介性多重活性化を使用することによって、ESCをPGCに分化させることができる。これらの因子は、PGC分化に役割を果たすことが知られている(例えば、Wang,H,et al.,Sci Rep.,2016,6,27256、Wang G,et al.,Nat Immunol.,2019,20,1494-1505を参照されたい)。いくつかの実施形態では、CRISPR媒介性多重因子は、標準的な方法を使用して動物から育種させることができる。代替的に、CRISPR媒介性多重因子を、誘導培養細胞内で一過性にトランスフェクトすることができる。
【0109】
未分化ESCを除去するために、得られたPGCLCを、Sda/GM2-グリカン(Klisch,K.,et al.,Reproduction,2011,142,667-674)、α-SSEA-1(Fox,N.,et al.,Dev Biol,1981,83,391-398)、αSSEA-3、SSEA-4(Shevinsky,L.H.,et al.,Cell,1982,30,697-705)、EMA-1(Hahnel,A.C.and Eddy,E.M.,Gamete Res.,1986,15,1235-1244)、TG-1(Donovan P.J.,et al.,J.Cell Sci.,1987,8,359-367)、c-kit(De Miguel,M.P.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2002,99,10458-10463)、又はTNAP(MacGregor,G.R.,et al.,Development,1995,121,1487-1489)を含むPGC特異的細胞表面マーカーを使用して、FACSによって選別することができる。
【0110】
代替的に、前駆細胞は、少なくとも1つのBMPシグナル伝達の誘導剤、LIFシグナル伝達の誘導剤、SCFシグナル伝達の誘導剤、上皮成長因子(EGF)シグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせを含む培養培地中で誘導することができる。例示的な誘導剤は、上記で考察される。6日目に、これらの細胞は、PGCLCになり得る。
【0111】
加えて、ESCに、NANOG、BLIMP1、TFAP2C、及びSOX17などの転写因子を発現させることによって、ESCを刺激してPGCLCになることができる。これらの転写因子は、発現カセットを含むベクターをトランスフェクトして一過性に転写因子を発現させることによって、又は誘導性プロモーター上の転写因子を含むPIGGYBACトランスポゾンを含むベクターをトランスフェクトすることによって、発現することができる。培養培地は、BMPシグナル伝達の誘導剤、LIFシグナル伝達の誘導剤、SCFシグナル伝達の誘導剤、EGFの誘導剤、及びROCK阻害剤を含み得る。好適な誘導剤及びROCK阻害剤は、上記で考察される。核への転写因子の取り込みは、デキサメタゾンの添加によって増強され得る。
【0112】
精子生成
精原幹細胞様細胞(SSCLC)の分化を誘導するために、雄遺伝子型のウシ又はブタのPGCLCを、レチノイン酸シグナル伝達の誘導剤、GDNFシグナル伝達の誘導剤、テストステロンシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせを含む培地中で解離させ、配置することができる。例示的なレチノイン酸シグナル伝達の誘導剤としては、レチノイン酸、レチノイン酸p-ヒドロキシアニリド、9-cisレチノイン酸、BMP4、TTNPB、メトプレン酸、EC23、1-メチル-2-オキシインドール、アダパレン、CD437、AC261066、CD1530、Ch 55、AM 580、AM 80、AC 55649、BMS 961、BMS 753、CD 2314、フェンレチニド、アダパレン、EC 19、及びSR 1078が挙げられる。例示的なGDNFシグナル伝達の誘導剤としては、GDNF、ニュールツリン(NRTN)、アルテミン(ARTN)、パーセフィン(PSPN)、XIB4035、BT13(N,N-ジエチル-3-[4-[4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)ベンゾイル]ピペラジン-1-イル]-4-メトキシベンゼンスルホンアミド)、BT18([4-[5-[(6,7-ジメトキシ-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル)スルホニル]-2-メトキシフェニル]ピペラジン-1-イル]-[4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェニル]メタノン)、BT44、及び
C12NC(C3=CC=C(C4=NC5C=C(C(O)=O)C=CC=5N4)C=C3)=NC1=CC=C(C(=O)O)C=2(Ivanova,L.,et al.,ACS Omega 2018,3,1,1022-1030)が挙げられる。例示的なテストステロンシグナル伝達の誘導剤としては、テストステロン、メチルテストステロン、フルオキシメステロン、オキシメトロン、オキサンドロロン、エチルエストレノール、スタノゾロール、ダナゾール、メタンドロステノロン、ノルエタンドロロン、GDNF、ジヒドロテストステロン、及びイカリインが挙げられる。培地は、毎日交換することができる(Wang,H,et al.,Sci Rep.,2016,6,27256)。
【0113】
代替的に、ウシ又はブタのPGCLCは、再構成された精巣において分化され得る。ブタ又はウシの胚性精巣体細胞は、例えば、コラゲナーゼを用いて、胚性精巣を単離し、細胞を分散させることによって調製することができる。次いで、細胞をトリプシンで処理することによって解離させることができる。単一細胞懸濁液は、細胞ストレーナーを介して濾過することによって得ることができ、細胞は、遠心分離によって収集することができる。野生型胚から得られた細胞は、磁性ビーズとコンジュゲートされたPGC特異的マーカー抗体を使用した磁気細胞選別(MACS)によってPGCを枯渇させることができる。代替的に、体細胞は、生殖細胞特異的遺伝子ノックアウト動物(例えば、NANOS2ノックアウト)を含む胚から単離されてもよく、その場合、MACS選別は省略されてもよい。
【0114】
次いで、これらの細胞を、1:1の比率で同種異系PGCLCと混合し、インスリンシグナル伝達の誘導剤、BMPシグナル伝達の誘導剤、レチノイン酸シグナル伝達の誘導剤、アクチビンAシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせが補充されたα-MEM中で培養することができる。シグナル誘導剤の例は、上記に記載されている。RecA及びStra8などの減数分裂特異的マーカー、並びに精原幹細胞(SSC)特異的マーカーの発現を監視することができる。細胞は、これらのマーカーが、培養物中の0日目のPGCLCと比較して上方制御され、PGCLCからSSCLCへの分化を確認するとき、精原幹細胞様細胞(SSCLC)として確認することができる。(Zhou,Q.,et al.,Cell Stem Cell,2016,18,330-340を参照されたい)。
【0115】
代替的に、PGCLCを基礎培養培地中のフィーダー層上に再播種することができる。例えば、基礎培地は、N2B27であってもよい。基礎培地は、BMPシグナル伝達の誘導剤、FGFシグナル伝達の誘導剤、GDNFシグナル伝達の誘導剤、LIFシグナル伝達の誘導剤、インスリンシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせを更に含み得る。次いで、細胞は、精原幹細胞様細胞(SSCLC)状態を確認するために当該技術分野で既知の方法によってアッセイされるように、精原幹細胞特異的マーカーが0日目と比較して上方制御されるまで培養され得る。この誘導の効率は、CRISPR関連遺伝子としてEif2s3yを使用して増強することができる。いくつかの実施形態では、Eif2s3y発現カセットは、得られる任意の産生動物から育種させることができる。
【0116】
安定なSSCLCの維持及び増殖のために、SSCLCを、StemPro supplement(Invitrogen)、25mg/mlのインスリン、100mg/mlのトランスフェリン、60mMのプトレシン、30nMの亜セレン酸ナトリウム、6mg/mlのD-(1)-グルコース、30mg/mlのピルビン酸、1ml/mlのDL-乳酸(Sigma)、5mg/mlのウシアルブミンImmunO(MP Biochemicals LLC、Solon,OH,USA)、2mMのL-グルタミン、50μMの2-メルカプトエタノール、最少必須培地(MEM)、ビタミン溶液(Invitrogen)、MEM非必須アミノ酸溶液(Invitrogen)、100μMのアスコルビン酸、10mg/mlのD-ビオチン、30ng/mlのb-エストラジオール、60ng/mlのプロゲステロン(Sigma)、及び0.1%のFCSが補充されたStemPro-34無血清培地(SFM)(Invitrogen)などの幹細胞培養培地中で培養することができる。培地は、20ng/mlのEGF、10ng/mlのFGF2、100ng/mlのLIF、及び40ng/mlのGDNFを更に含み得る(Aponte et al.,Reproduction,2008,136,543-5572を参照されたい)。
【0117】
次に、SSCLCを、単倍体精子細胞様細胞(SLC)に分化させることができる。SSCLCは、インスリンシグナル伝達の誘導剤、テストステロンシグナル伝達の誘導剤、FSHシグナル伝達の誘導剤、ウシ下垂体抽出物、又はそれらの組み合わせを含有する最小培地中で培養することができる。インスリンシグナル伝達の誘導剤及びテストステロンシグナル伝達の誘導剤の例は、上記で考察される。例示的なFSHシグナル伝達の誘導剤としては、FSH、コリフォリトロピンアルファ、FSHβ-CTP-α、N2-α FSH、妊馬の血清ゴナドトロピン、チアゾリジノン、及びヘキサヒドロキノリンが挙げられる。ウシ脳下垂体抽出物は、例えば、Thermofisher、Sigma-Aldrich (Millipore Sigma)、Lonza、及び他の生化学製造業者から市販されている。培地は、2日毎に交換することができる。細胞を、TP1、PRM1、アクロシン、及びハプリンなどの単倍体精子マーカーが上方制御されるまで、37℃~38.5℃で、5%CO中で培養することができる。上方制御は、培養物全体から採取した試料のウェスタンブロットを介して測定することができる。
【0118】
代替的に、SSCLCは、6ウェルプレート中、TP1、PRM1、アクロシン、及びハプリンなどの単倍体精子マーカーが上方制御されるまで、レチノイン酸シグナル伝達の誘導剤、インスリンシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせを含む、基礎培養培地、例えばN2B27中で、フィーダー層上に再播種することができる。
【0119】
この誘導の効率は、CRISPR関連遺伝子としてEif2s3yを使用して増強することができる。いくつかの実施形態では、Eif3s3y遺伝子は、産生動物のために株から外へ育種させることができる。
【0120】
この誘導は、精子細胞マーカーを有する丸い単倍体細胞を産生する。精子細胞を使用して、当該技術分野で既知の方法を介して、細胞質内精子注射(ICSI)によって卵母細胞を受精させることができる。精子は、必要に応じて、性腺細胞又は性腺細胞から馴化した培地とともに懸濁液中でSSLCをインキュベートすることによって産生することができる。
【0121】
卵生成
再構成された卵巣
FACS選別されたブタ又はウシの雌PGCLCは、インスリンシグナル伝達の誘導剤及びレチノイン酸シグナル伝達の誘導剤が補充された最小培地中で、1:1の比率で同種異系性腺体細胞と混合して、再構成された卵巣を形成することができる。性腺体細胞は、胚性卵巣を単離し、それらをコラゲナーゼで分散させ、続いて細胞をトリプシンで消化することによって調製することができる。単一細胞懸濁液は、細胞ストレーナーを介して濾過することによって得ることができ、細胞は、遠心分離によって収集される。次いで、細胞を、磁性ビーズとコンジュゲートされたPGC特異的タンパク質マーカー抗体を使用した磁気細胞選別(MACS)によって、始原生殖細胞(PGC)を枯渇させる。代替的に、このPGC枯渇工程は、雌生殖細胞特異的ノックアウト(例えば、NANOS3ノックアウト動物)を有する胚から単離された卵巣を使用することによって回避することができる。
【0122】
再構成された卵巣を、インビトロ分化(IVDi)培地に浸漬されたコラーゲンコーティングされた膜上に配置することができる。IVDi培地は、FCS、アスコルビン酸、グルタミンサプリメント、ペニシリン/ストレプトマイシン、及び2-メルカプトエタノールが補充された最小培地を含み得る。培養の2~7日目に、培養培地を、FCS、アスコルビン酸、グルタミンサプリメント、ペニシリン/ストレプトマイシン、及び2-メルカプトエタノールが補充された無血清培地を含むIVDi培地に変更することができる。培養の5日目から10日目まで、エストロゲン受容体アゴニストをIVDi培地に添加することができる。例示的なエストロゲン受容体アゴニストとしては、ICI182780、フェルチニン、エストロピペート、エストロン-3-サルフェート、S-エクオール、WAY-200070、DY 131、GSK 4716、AB-1、ERB-041、ビオカニンA、β-エストラジオール、α-エストラジオール、PPT、DPN、FERb 033、又はAC 186が挙げられる。培養の15~25日目に、個々の二次卵胞様構造(2FL)を再構成された卵巣から手動で解離させることができる(以下を参照されたい)。
【0123】
電気的に研がれたタングステン針を、個々の二次卵胞様構造(2FL)の単離に使用することができる。2FL間の間質細胞を除去することができる。2FLを、再構築された卵巣(rOvaries)から分離し、コラーゲンコーティングされた膜上に大部分が規則的な間隔で配置することができる。
【0124】
コラーゲン膜上の単一の2FLを、IVG培地に浸漬することができる。IVG培地は、FCS、ポリビニルピロリドンなどの安定化ポリマー、アスコルビン酸、グルタミンサプリメント、ペニシリン/ストレプトマイシン、M2-メルカプトエタノール、ピルビン酸ナトリウム(Nacalai Tesque)、卵胞刺激ホルモン(FSH)シグナル誘導剤、TGFβシグナル誘導剤、又はそれらの組み合わせなどが補充された最小培地を含み得る。例示的なFSH及びBMPシグナル誘導剤は、上記で考察される。例示的なTGFβシグナル誘導剤としては、GDF9、BMP15(GDF9bとも呼ばれる)、及び上記で考察した例示的なBMPシグナル誘導剤が挙げられる。培養の1~5日目に、TGFβシグナル誘導剤を培地から抜き取ることができ、その後、濾胞をコラゲナーゼ中でインキュベートすることができる。血清が補充された最小培地で洗浄した後、卵胞は、TGFβシグナル誘導剤を含まないIVG中で培養することができる。培養の7~14日目に、膜上で成長した卵丘-卵母細胞複合体(COC)を採取し、IVM培地に移すことができる。FCS、ピルビン酸ナトリウム、ペニシリン/ストレプトマイシンが補充された最小培地に、シグナル伝達分子を補充することができる。シグナル伝達分子は、FSHシグナル伝達誘導剤、EGFシグナル伝達誘導剤、ゴナドトロピンシグナル伝達誘導剤、又はそれらの組み合わせであり得る。例示的なFSH及びEGFシグナル伝達誘導剤は、上記で考察される。例示的なゴナドトロピンシグナル伝達誘導剤としては、hCG、絨毛性ゴナドトロピン、コリオゴナドトロピンアルファ、及びコリフォリトロピンアルファが挙げられる。培養16時間目に、ヒアルロニダーゼ(Sigma)で処理することによって卵母細胞から腫れた卵巣細胞を取り除き、第1の極体放出によってMII卵母細胞を決定することができる。
【0125】
直接誘導された卵母細胞様細胞
FIGLA、SOHLH1、LHX8、NOBOX、STAT3、TBPL2、DYNLL1、若しくはSUB1遺伝子、又はそれらの組み合わせの発現を可能にするベクターは、リポフェクタミン2000(Thermo)、ヌクレオフェクション(Lonza Nucleofector Kit、VPH-1001、VPH-5012、若しくはその他)、又は電気泳動(BTX)を使用することによって、ESCに共トランスフェクションすることができる。好適なベクターとしては、シールド1(shield1)誘導性プロモーターを有するPiggyBACベースのベクター及び一過性トランスフェクションに好適なベクターが挙げられる。様々な一過性トランスフェクションシステムは、当該技術分野で既知であり、市販されている。24時間後、ES細胞を抗生物質とともに培養することができる。2~5日後、ES細胞をフィーダー細胞上に再拡散させることができる。(例示的なフィーダー細胞は、上記で考察される。)培養の3~7日目に、単一のコロニーを拾い上げ、フィーダー細胞上に播種する。フィーダー細胞を除去するために、ES細胞を、フィーダーを含まない条件下で少なくとも3回継代させることができる。
【0126】
体細胞を含まない直接誘導卵母細胞様細胞(DIOL)の長期誘導のために、FCS、アスコルビン酸、グルタミンサプリメント、抗生物質、及び2-メルカプトエタノールを補充し得る基礎培地中、50,000個のES細胞を、低細胞結合性底U字96ウェルプレートに移すことができる。培地は、SCFシグナル伝達誘導剤、ROCK阻害剤、又はそれらの組み合わせを更に含むことができる。(例示的なSCFシグナル伝達誘導剤及びROCK阻害剤は、上記で考察される。)培養2日目に、凝集体を、該当する場合、Shield1を有する補充された基礎培地中、TRANSWELL(登録商標)-COL(登録商標)膜(CORNING(登録商標)、CORNING(登録商標),Inc.、Corning,NY)上に配置することができる。細胞を2~4週間培養することができる。体細胞によるDIOLの誘導のために、50,000個のES細胞及び30,000~75,000個のE12.5雌性腺体細胞を、S10培地中、低細胞結合性底U字96ウェルプレート(誘導が必要な場合は0.5μMのShield1を有する)に移すことができる。培養2日目に、凝集体をTRANSWELL(登録商標)-COL(登録商標)膜上に配置し、28日間培養する(必要に応じてShield1を含む)。
【0127】
DIOLのインビトロ成長(IVG)培養のために、個々の卵胞は、電気的に研がれたタングステン針を使用して手動で単離することができる。単離されたDIOLを、IVG培地中、TRANSWELL(登録商標)-COL(登録商標)膜上で培養することができる。IVG培地は、FCS、ポリビニルピロリドン、アスコルビン酸、グルタミンサプリメント、抗生物質、2-メルカプトエタノール、及びピルビン酸ナトリウムが補充された基礎培地を含むことができる。IVG培地は、FSHシグナル伝達の誘導剤と、少なくとも1つのTGFβシグナル伝達の誘導剤と、を更に含むことができる。培養2日目に、少なくとも1つのTGFβシグナル伝達の誘導剤を培地から抜き取ることができる。卵胞を、コラゲナーゼ中でインキュベートすることができる。卵胞は、FCSが補充された基礎培地で洗浄することができ、卵胞は、TGFβシグナル伝達の誘導剤を含まないIVG中で7~11日間培養することができる。
【0128】
インビトロ胚産生
配偶子様細胞から胚を生成するための当該技術分野で既知のいくつかの方法が存在する。ICSIの標準的な方法を使用して、本教示に従って作製された所望の遺伝子又は卵母細胞様細胞又はDIOLを有する動物由来の卵母細胞に本教示の精子細胞を注射することができる。代替的に、又は加えて、本教示の卵母細胞様細胞又はDIOLを、望ましい遺伝子を有する動物から得られた精子を用いたインビトロ受精に使用することができる。
【0129】
家畜胚性幹細胞のその他の使用
培養肉(又は実験室で成長した肉)は、幹細胞に由来する食用タンパク質であり、一部の菜食主義者及びビーガンに許容される自然に成長した肉の「残酷さのない」代替品であり得る。一般に、実験室で成長した肉は、幹細胞が、筋細胞、脂肪細胞、骨細胞、及び/又は軟骨細胞などのヒトによって食用にされる細胞に分化するように、幹細胞を培養することによって生産される。いくつかの実施形態では、分化細胞は、例えば、横紋筋細胞若しくは骨格筋細胞、平滑筋細胞、心筋細胞、脾臓細胞、胸腺細胞、内皮細胞、血液細胞、膀胱細胞、肝細胞、腎細胞、膵細胞、肺細胞、又はそれらの任意の組み合わせなどの臓器細胞である。代替的に、所望の細胞型は、時には、完全に分化した細胞型を生成するのに有用な成体幹細胞又は前駆細胞などの中間細胞型である。いくつかの実施形態では、インビトロでの幹細胞の成長に好適な成長培地を使用して、単離された幹細胞を培養し得る。好適な培養培地は、Challakereによる公開出願第US2011/0301249A1号で考察される。
【0130】
分化すると、培養物は、三次元培養物に移行する。細胞を三次元培養物に移行させる方法は、Wild Type,Inc.によってWO/2018/227016で考察されている。培養のための三次元構造は、当該技術分野において公知であり、限定されないが、食用マイクロキャリア、ヒドロゲルチューブ及びヒドロゲルマトリックス、脱細胞化植物材料、植物系中空繊維、セルロース膜、コラーゲンブレンド中空繊維、並びにヒドロコロイド及びタンパク質を含む食用中空繊維が含まれる。いくつかの実施形態では、細胞を、質感改変特性を有する少なくとも1つの天然タンパク質を含む微細骨格上の浮遊培養において成長させる。種々の組成物の微細骨格を使用して、最終的な食品において所望の質感及び/又は一貫性を生み出すことができる。様々な実施形態では、大豆タンパク質などの質感を変えた植物タンパク質が使用される。微細骨格は、任意選択的に、食品に質感を提供するための少なくとも1つの充填剤又は結合剤材料を含む。いくつかの構成では、微細骨格は、完成食品がもはや微細骨格構造が残っていないように生分解する材料から作られる。例えば、細胞の集合体は、バイオリアクター内の微細骨格に播種される。細胞が微細骨格に付着し、増殖するにつれて、残存する全てが、互いに付着している細胞の塊と、それらが分泌した細胞外マトリックス材料になるまで、微細骨格は徐々に生分解する。したがって、微細骨格(及び更に大きな3D骨格)を使用して、得られた培養食品の構造を導くことができるが、ヒトによる消費のための食品中に残ることはない。代替的に、微細骨格及び3D骨格は、消費のために培養食品中に生分解及び/又は残存しない材料を含み得る。例えば、本明細書に記載の特定の材料を使用して、特定の構造、質感、味、又は他の所望の特性を付与するために、骨格を生成することができる。いくつかの実施形態では、細胞を、細胞組織から作製された三次元骨格上で成長させることができる。いくつかの実施形態では、三次元細胞組織は、骨格筋細胞、平滑筋細胞及び衛星細胞を含む筋細胞を含み得る。いくつかの実施形態では、三次元多型細胞組織は、脂肪細胞(例えば、含脂肪細胞)を含み得る。いくつかの実施形態では、三次元多型細胞組織は、特殊化された細胞(例えば、線維芽細胞)によって分泌される細胞外マトリックスを含み得る。いくつかの実施形態では、三次元多型細胞組織は、大動脈内皮細胞及び骨格微血管内皮細胞を含むがこれらに限定されない、内皮細胞によって形成される内皮細胞又は毛細血管内皮を含み得る。いくつかの実施形態では、三次元多型細胞組織は、細胞外マトリックスを更に含み得る。いくつかの実施形態では、三次元多型細胞組織は、脂肪細胞を更に含み得る。いくつかの実施形態では、三次元多型細胞組織は、毛細血管を更に含み得る。いくつかの実施形態では、前駆細胞は、本明細書に記載されるように産生され得る。いくつかの構成では、前駆細胞を単一培養で分化させることができ、次いで、複数の細胞を有する三次元多孔質骨格上でインキュベートすることができる。非限定的な例としては、本教示の胚性幹細胞を培養して間葉系幹細胞に分化させ、次いで間葉系幹細胞を筋芽細胞に分化させ、次いで分化した筋芽細胞を三次元多孔質骨格上で培養することが挙げられるが、これらに限定されない。詳細な培養方法及び潜在的な多孔質骨格は、TECHNION RESEARCH & DEVELOPMENT FOUNDATION LIMITED.に対するWO/2019/016795に記載される。
【0131】
細胞を実験室で成長した肉に分化させるために使用することができる成長因子には、限定されないが、血小板由来成長因子(PDGF)、インスリン様成長因子(IGF-1)などが含まれ得る。PDGF及びIGF1は、有糸分裂促進性、走化性、及び細胞応答の増殖(分化)を刺激することが知られている。成長因子は、以下のうちの1つ以上であり得る。PDGF、例えば、PDGF AA、PDGF BB;IGF、例えば、IGF1、IGF2;線維芽細胞成長因子(FGF)、例えば、酸性FGF、塩基性FGF、b-内皮細胞成長因子、FGF4、FGF5、FGF6、FGF7、FGF8、及びFGF9;トランスフォーミング成長因子(TGF)、例えば、TGF-P1、TGF bi.2、TGF-p2、TGF-p3、TGF-p5;骨形成タンパク質(BMP)、例えば、BMP 1、BMP 2、BMP 3、BMP 4;血管内皮成長因子(VEGF)、例えば、VEGF、胎盤成長因子;上皮成長因子(EGF)、例えば、EGF、アンフィレグリン、ベータセルリン、ヘパリン結合EGF;インターロイキン、例えば、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14;コロニー刺激因子(CSF)、例えば、CSF-G、CSF-GM、CSF-M;神経成長因子(NGF);幹細胞因子;肝細胞成長因子、及び毛様体神経栄養因子。いくつかの実施形態では、成長因子は、EGFシグナル伝達の誘導剤、インスリンシグナル伝達の誘導剤、又はそれらの組み合わせであり得る。例示的な成長因子としては、EGF、IGF1、又はそれらの組み合わせが挙げられる。多孔性骨格上でウシ細胞を分化させるための手順は、TECHNION RESEARCH & DEVELOPMENT FOUNDATION LIMITED.に対するWO/2019/016795に記載される。
【0132】
いくつかの実施形態では、実験室肉は、臓器肉であり得る。例えば、実験室で成長した肝臓を作製するために、胚性幹細胞は、最初に本明細書に記載の内胚葉前駆細胞に分化させることによって、肝細胞に分化させることができる。次いで、前駆内胚葉細胞を、bFGFシグナル伝達の誘導剤及びTGFβシグナル伝達の誘導剤で処理することによって肝内胚葉に分化させることができる。次に、肝細胞成長因子(HGF)で処理することによって、肝内胚葉細胞を未成熟の肝細胞様細胞に分化させることができる。次いで、これらの細胞を、肝細胞成長因子、オンコスタチンM、及びデキサメタゾンなどのコルチコステロイドで処理することができる。次いで、得られた成熟肝細胞様細胞を、食用骨格を含む懸濁培養物中で成長させることができる。次いで、細胞は、骨格をコロニー化して、実験室で成長した肝臓を作製することができる。(abcam.com.のプロトコルから適合させた。)代替的に、肝細胞は、前駆細胞にHNF1A、FOXA1、及びHNF4Aを発現させることによって前駆細胞から誘導され得る(そのような方法は、Wild Type,Inc.によるWO/2018/227016に記載されている。他の好適な培地誘導剤は、Wild Type,Inc.によるWO/2018/227016で考察されている。
【0133】
様々な実施形態では、実験室で成長した肉は、骨格筋肉であり得る。いくつかの実施形態では、骨格筋細胞は、FGFシグナル伝達の誘導剤及びEGFシグナル伝達の誘導剤で細胞を処理することによって、胚性幹細胞に由来し得る。いくつかの構成では、FGFシグナル伝達の誘導剤は、FGFであってもよく、EGFシグナル伝達の誘導剤は、EGFであってもよい。導入の詳細な方法は、Association Francaise Contre les Myopathiesに対するUS11001803B2に記載される。いくつかの実施形態では、家畜胚性幹細胞(ウシ又はブタ胚性幹細胞など)は、本教示に従って中胚葉様幹細胞になるように誘導され得る。代替的に、TGF-βシグナル伝達誘導剤を投与することによって、胚性幹細胞を誘導して、間葉系幹細胞様細胞などの中胚葉様細胞を形成することができる。いくつかの実施形態では、TGF-ベータシグナル伝達誘導剤は、BMP4であり得る。次いで、細胞は、フィブロネクチン又はビトロネクチンでコーティングされたプレート上でフィーダーを用いずに成長させることができる。トロホブラストを形成した後、細胞は、成長培地を含有する血清又は血清代替品中で成長させ、間葉系幹細胞様細胞に分化させることができる。胚性幹細胞を間葉系幹細胞様細胞に誘導する更なる方法は、University of Connecticutに対するUS10226488B2で考察されている。次いで、間葉系幹細胞を骨格筋細胞に誘導することができる。次いで、骨格筋細胞を、上記で考察したように三次元培養物に変換することができる。
【実施例
【0134】
本教示は、任意の特許請求の範囲又は実施形態の範囲を限定することを意図するものではない、実施例に提供される説明を含む。本発明を更に例示するために、以下の非限定的な実施例を提供する。当業者は、本開示に照らして、開示される特定の実施形態では、多くの変更を行うことができ、それでも本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、類似又は同様の結果を得ることができることを理解するだろう。
【0135】
実施例1
この実施例は、ウシ群においてNM$を増加させるための複数の胚の作製を示す。
【0136】
乳牛生産群は、NM$の中央値が700であり、上位10%の動物は、850を超えるNM$を有する。850を超えるNM$を有する雌ウシは、同期され、成熟卵母細胞が、標準的な経膣採卵によって収集される。精液は、標準的な方法を使用して、850を超えるNM$を有する群れの雄ウシから収集される。雌ウシと雄ウシとの間の様々な異なる交配からの胚は、インビトロ受精によって作製される。
【0137】
実施例2
この実施例は、ブタの群れにおいてブタ生産量を増加させるための複数の胚の作製を例示する。
【0138】
背部脂肪、ロース深さ、及び不妊特性を優先するカスタム指数を使用して、ブタ生産群から上位10%の動物を選択する。卵母細胞は、標準的な経膣採卵によって雌から収集される。精液は、標準的な方法で雄から収集される。雌と雄との間の様々な異なる交配からの胚は、インビトロ受精によって作製される。
【0139】
実施例3
この実施例は、ウシ胚からの胚性幹細胞株の作製を示す。
【0140】
内部細胞塊を、実施例1で産生された各胚から切除する。透明帯を通過した胚盤胞段階の胚をPBS中に配置し、TE2000-U倒立顕微鏡(Nikon)に取り付けたNT88-V3高精度マイクロマニピュレータ(Nikon)に接続したマイクロブレードを使用して切除した。次いで、細胞を、MEFフィーダー細胞の単層上の培養プレートからウェルに播種し、20ng/mLのヒトFGF2及び2.5μMのIWR1を補充したCTFR基本培地中で培養する。細胞を37℃~38.5℃、5%COで48時間インキュベートする。フィーダー層に付着しない細胞は、顕微鏡下で22ゲージの針を使用してフィーダー層に押し付けられる。培地は、発芽後成長物が現れるまで、毎日交換する。5日後、発芽後成長物を10μMのY-27632で処理し、トリプシン解離させ、新鮮なフィーダー細胞上で継代させる。
【0141】
実施例4
この実施例は、ブタ胚性幹細胞株の確立を示す。
【0142】
実施例2で作製した胚からの胚盤胞を使用して、ICMをCa2+-TL-HEPES培地中に配置し、次いで眼科用ハサミを使用して顕微鏡手術を介してICMを切除することによってICMを得る。単離されたICMを、500mlのN2B27基礎培地当たり、0.2μMのCHIR99021(GSK3阻害剤、Tocris、カタログ番号4423)、0.3μMのWH-4-023(SRC阻害剤、Tocris、カタログ番号5413)、2.5μMのXAV939(タンキラーゼ阻害剤、Sigma、カタログ番号X3004)、又は2.0μMのIWR-1(WNT阻害剤、Tocris、カタログ番号3532)、65.0μg/mlのビタミンC(Sigma、カタログ番号49752-100G)、10.0ng/mlのLIF(Stem Cell Institute(SCI),University of Cambridge)、20.0ng/mlのアクチビン(SCI)及び0.3%のFBS(Gibco、カタログ番号10270)+10μMのY27632(ROCK阻害剤)を含むpEPSCM中、STO細胞上で7日間培養した(Gao,X.et al.,Nature Cell Biology,2019,21,687-699)。発芽後成長物は、2日後に現れる。発芽後成長物を機械的に単離し、pEPSCM中の新鮮なSTO細胞上に再播種する。細胞は、3日後に十分に画定されたコロニーを形成する。
【0143】
実施例5
この実施例は、次世代のインビトロ育種のためのウシ胚性幹細胞の選択を示す。
【0144】
各幹細胞株のアリコートを採取し、標準的な方法を使用してDNAを抽出する。次いで、DNAを、製造業者の指示に従ってBovineSNP50 v3 BeadChipマイクロアレイキットを使用して遺伝子型決定する。次いで、これらのSNP遺伝子型を分析して、各細胞株の予測NM$を計算する。上位10%のNM$細胞株は、次世代の作製のための配偶子生成のために選択される。次に、生成された配偶子間、又は配偶子と他の動物との間の交配を計画する。
【0145】
実施例6
この実施例は、次世代のインビトロ育種のためのブタ胚性幹細胞の選択を示す。
【0146】
各幹細胞株のアリコートを採取し、標準的な方法を使用してDNAを抽出する。次いで、DNAを、製造業者の指示に従ってPorcineSNP60v2 BeadChipを使用して遺伝子型決定する。次いで、得られたSNPを、背部脂肪、ロース深さ、及び不妊形質を優先するカスタム指標を使用して分析する。次いで、この指標に従って上位10%の細胞株を、次世代の細胞株を作製するための配偶子生成のために選択する。
【0147】
実施例7
この実施例は、ウシ胚性幹細胞からPGCLCへの分化を誘導する方法を示す。
【0148】
実施例3で生成した細胞株からの胚性幹細胞を、TrypLE(商標)(Thermo Fisher Scientific、Waltham,MA;Invitrogen 12604-021)で解離させ、コラーゲンIVでプレコーティングした皿に播種して、フィーダーを含まない培養物を作製する。次いで、これらの培養ESCを、20ng/mlのアクチビンA、12ng/mlのbFGF、及び1%のKNOCKOUT(登録商標)血清代替品(KSR)を含むN2B27培地中、胚盤葉上層様細胞(EpiLC)に誘導する。これらの細胞を3日間インキュベートする。この培地を毎日交換する。
【0149】
次いで、EpiLCのこの浮遊培養物を、GK15培地(GMEM[Invitrogen]15%のKSR、0.1mMのNEAA、1mMのピルビン酸ナトリウム、0.1mMの2-メルカプトエタノール、100U/mlのペニシリン、0.1mg/mlのストレプトマイシン、及び2mMのL-グルタミンを含む)中、低細胞結合性底U字96ウェルプレート(NUNC)のウェルに配置する。GK15培地には、500ng/mlのBMP4(R&D Systems)、1000U/mlのLIF(Invitrogen)、100ng/mlのSCF(R&D Systems)、500ng/mlのBMP8b(R&D Systems)、及び50ng/mlのEGF(R&D Systems)が更に補充される。細胞を、37℃~38.5℃、5%COで維持する。分化したPGCLCを、α-SSEA-1を用いたFAC選択を介して、未分化EpiLCから分離する。
【0150】
実施例8
この実施例は、ウシ胚性幹細胞からPGCLCへの分化を誘導する代替方法を示す。
【0151】
実施例3で生成された系統からの胚性幹細胞のEpiLCへの分化は、実施例7に記載されるように行われる。
【0152】
次いで、これらの誘導EpiLCを、PRDM1、PRDM14、及びTFAP2Cの発現を引き起こすベクターで一過性にトランスフェクトする。これらの細胞を2日間インキュベートする。分化したPGCLCを、c-kit表面マーカーを用いたFAC選択を介して、未分化EpiLCから分離する。
【0153】
実施例9
この実施例は、ブタ胚性幹細胞からPGCLCへの分化を示す。
【0154】
実施例4で生成された細胞株からの胚性幹細胞を、ゼラチンでコーティングされた皿上でのフィーダーを含まない培養に適合させる。次いで、細胞をトリプシンで解離させ、50ng/mlのBMP4(PeproTech)、50ng/mlのBMP8b(R&D)、50ng/mlのSCF(PeproTech)、50ng/mlのEGF(PeproTech)、及び1000U/mlのLIF(Gibco)を含むN2B27培地で処理する。これらの細胞を2日間インキュベートする。分化したPGCLCを、TNAP表面マーカーを用いたFAC選択を介して、未分化EpiLCから分離する。
【0155】
実施例10
この実施例は、ESCからPGCLCへと分化させる代替方法を示す。
【0156】
実施例4からのブタESCを、NANOG、BLIMP1、TFAP2C、及びSOX17の転写を誘導するベクターで一過性にトランスフェクトする。細胞を、Advanced RPMI 1640、1%のB27 supplement、1.0倍のグルタミンペニシリン-ストレプトマイシン、1.0倍のNEAA、0.1mMの2-メルカプトエタノール及び以下のサイトカイン(500.0ng/mlのBMP2、10.0ng/mlのLIF、100.0ng/mlのSCF、50.0ng/mlのEGF及び10.0μMのY27632)を含む培地中で培養する。未分化細胞を、EMA-1細胞表面マーカーを用いたFAC選択を介して、PGCLCから分離する。
【0157】
実施例11
この実施例は、ウシ雄PGCLCをSSCLCに分化させる方法を示す。
【0158】
実施例7からの雄PGCLCを解離させ、15%のFBS、NEAA、L-グルタミン、ペニシリン/ストレプトマイシン、β-メルカプトエタノール、2μMのRA、4ng/mlのGDNF、及び1μMのテストステロンを含むDMEM培地(RGT培地と呼ばれる)とともに、12ウェルプレートのゼラチンコーティングされたウェルにプレーティングする(2×10個の細胞/ウェル)。
【0159】
減数分裂特異的マーカーRecA及びStra8、並びに精原幹細胞(SSC)特異的マーカーを監視し、培養物中の0日目のPGCLCと比較して、PGCLCの精原幹細胞様細胞(SSCLC)への分化を確認する。(Zhou,Q.,et al.,Cell Stem Cell,2016,18,330-340を参照されたい)。
【0160】
実施例12
この実施例は、ブタ雄PGCLCをSSCLCに分化させる方法を示す。
【0161】
ブタ胚性精巣体細胞は、NANOS2ノックアウト胚からブタ胚性精巣を単離することによって調製される。次いで、細胞を、1mg/mlのコラゲナーゼIV型で、37℃~38.5℃で10分間分散させ、その後、0.25%のトリプシン/1mMのEDTAを用い、37℃~38.5℃で10分間解離させる。単一細胞懸濁液は、細胞ストレーナーを介して濾過することによって得られ、細胞を遠心分離によって収集する。
【0162】
次いで、これらの細胞を、実施例9からの雄PGCLCと1:1の比で混合する。次に、この混合物を、10%のKSR、各々20ng/mlのBMP-2、BMP-4、及びBMP-7(R&D Systems)、10μMのレチノイン酸(Sigma)、並びに100ng/mlのアクチビンA(R&D Systems)が補充されたα-MEM中で培養する。
【0163】
減数分裂特異的マーカーRecA及びStra8、並びに精原幹細胞(SSC)特異的マーカーを監視し、培養物中の0日目のPGCLCと比較して、PGCLCの精原幹細胞様細胞(SSCLC)への分化を確認する。(Zhou,Q.,et al.,Cell Stem Cell,2016,18,330-340を参照されたい)。
【0164】
実施例13
この実施例は、PGCLCからSSCLCへと分化させる代替方法を示す。
【0165】
ブタPGCLCを、100倍のN-2 Supplement(Gibco)及び50倍のB-27(商標)Supplement(Gibco)が補充されたNEUROBASAL(商標)(Gibco、Waltham,Massachusetts,USA)及びDMF/12培地(Hyclone、Logan,Utah,USA)(1:1)中、フィーダー層上に再播種する(6ウェルプレートのウェル当たり3×10個の細胞)。このNB27培地には、25ng/mlのBMP4(PeproTech)、20ng/mlのbFGF(PeproTech)、40ng/mlのGDNF(PeproTech)、10ng/mlのLIF(Miltenyi Biotec,Bergisch Gladbach,Germany)、12μg/mlのインスリン(Sigma-Aldrich)、及び15%のKSRが更に補充されている。
【0166】
減数分裂特異的マーカーRecA及びStra8、並びに精原幹細胞(SSC)特異的マーカーを監視し、培養物中の0日目のPGCLCと比較して、PGCLCの精原幹細胞様細胞(SSCLC)への分化を確認する。(Zhou,Q.,et al.,Cell Stem Cell,2016,18,330-340を参照されたい)。
【0167】
実施例14
この実施例は、ウシSSCLCを精子細胞様細胞に分化させる方法を示す。
【0168】
実施例10からのSSCLCを、10%のKSR、10mMのテストステロン(Acros Organics)、200ng/mlのFSH(Sigma)、及び50mg/mlのBPE(CORNING(登録商標)Life Sciences)を含むαMEM中で培養する。培地を2日毎に交換する。細胞を、37℃~38.5℃で、5%CO中で培養する。
【0169】
実施例15
この実施例は、ブタSSCLCを精子細胞様細胞に分化させる方法を示す。
【0170】
実施例11からのSSCLCを、6ウェルプレート中、2nMのRA(Sigma-Aldrich)及び15%のKSRが補充されたN2B27基礎培地中で、フィーダー層上に再播種する。細胞を、37℃~38.5℃で、5%CO中で培養する。
【0171】
実施例16
この実施例は、再構成された卵巣におけるPGCLCからの卵母細胞の形成を示す。
【0172】
実施例8からの雌PGCLC(ウシ)を、低細胞結合性底U字96ウェルプレート(NUNC)中、1μMのレチノイン酸が補充されたGK15培養培地中で、ウシ雌性腺体細胞と1:1の比率で再構成する。ウシ雌性腺体細胞は、胚性卵巣を単離し、それらを1mg/mlのコラゲナーゼIV型で、37℃~38.5℃で10分間分散させ、その後、0.25%のトリプシン/1mMのEDTAで、37℃~38.5℃で10分間消化することによって調製される。単一細胞懸濁液は、細胞ストレーナーを介して濾過することによって得られ、細胞を遠心分離によって収集する。次いで、これらの細胞を、磁性ビーズとコンジュゲートされたPGC特異的タンパク質マーカー抗体を使用した磁気細胞選別(MACS)によって、内因性始原生殖細胞(PGC)を枯渇させる。このPGC枯渇工程は、雌生殖細胞特異的ノックアウト(例えば、NANOS3ノックアウト動物)を有する胚から単離された卵巣を使用することによって回避することができる。次いで、これらの枯渇させたウシ体細胞を、実施例8からの雌PGCLCと混合して、再構成された卵巣を形成する。
【0173】
再構成された卵巣を、αMEMベースのインビトロ分化(IVDi)培地に浸漬されたTRANSWELL(登録商標)-COL膜(CORNING(登録商標)Incorporated、Corning,NY)上に配置する。IVDi培地は、2%のFCS、150μMのアスコルビン酸(Sigma)、1倍のGLUTAMAX(商標)、1倍のペニシリン/ストレプトマイシン、及び55μMの2-メルカプトエタノール(Life Technologies)が補充されたαMEMを含む。培養4日目に、培養培地を、10%のFCS、150μMのアスコルビン酸、1倍のGlutamax、1倍のペニシリン/ストレプトマイシン、及び55μMの2-メルカプトエタノールが補充されたStemPro-34 SFM(Life Technologies)を含むStemPro-34ベースのIVDi培地に交換する。培養物の7日目から10日目まで、500nMのICI182780を、各培地交換とともにStemPro-34ベースのIVDi培地に添加する。培養の約21日目に、個々の二次卵胞様構造(2FL)が形成される。
【0174】
電気的に研がれたタングステン針を、個々の二次卵胞様構造(2FL)の単離に使用することができる。2FL間の間質細胞を除去することができる。2FLを、再構築された卵巣(rOvaries)から分離し、解離させ、TRANSWELL(登録商標)-COL(登録商標)膜上に大部分が規則的な間隔で配置することができる。
【0175】
TRANSWELL(登録商標)-COL(登録商標)膜上の単一2FLを、5%のFCS、2%のポリビニルピロリドン(Sigma)、150μMのアスコルビン酸、1倍のGLUTAMAX(商標)、1倍のペニシリン/ストレプトマイシン、100μMの2-メルカプトエタノール、55μg/mlのピルビン酸ナトリウム(Nacalai Tesque)、0.1IU/mlの卵胞刺激ホルモン(Follistim、MSD)、15ng/mlのBMP15及び15ng/mlのGDF9(R&D Systems)が補充されたαMEMを含むIVG-α MEM培地に浸漬する。培養の2日目に、BMP15及びGDF9を培地から抜き取り、次に、卵胞を0.1%のIV型コラゲナーゼ(MP Biomedicals)中でインキュベートする。5%のFCSが数回補充されたαMEMで洗浄した後、BMP15及びGDF9を含まないIVG-αMEM中で卵胞を培養する。培養11日目に、膜上で成長した卵丘-卵母細胞複合体(COC)を、微細なガラスキャピラリーによって拾い上げる。卵丘-卵母細胞複合体を、IVM培地(5%のFCS、25μg/mlのピルビン酸ナトリウム、1倍のペニシリン/ストレプトマイシン、0.1IU/mlのFSH、4ng/mlのEGF、及び1.2IU/mlの1hCG(ゴナドトロピン、ASKA)が補充されたαMEM)に移した。培養16時間目に、ヒアルロニダーゼ(Sigma)で処理することによって卵母細胞から腫れた卵巣細胞を取り除き、次に顕微鏡下で第1の極体放出によってMII卵母細胞を決定する。
【0176】
実施例17
この実施例は、胚性幹細胞から直接卵母細胞を誘導する方法を示す。
【0177】
実施例4からのESCを、フィーダーを含まない条件下で少なくとも3回継代する。
【0178】
体細胞を含まない直接誘導卵母細胞様細胞(DIOL)の長期誘導のために、50,000個のES細胞を、S10培地(StemPro-34 SFM(Life Technologies)中、低細胞結合性底U字96ウェルプレートに移す。S10培地には、10%のFCS、150μMのアスコルビン酸、1倍のGLUTAMAX(商標)、1倍のペニシリン/ストレプトマイシン、及び55μMの2-メルカプトエタノール、150ng/mlのSCF、並びに10nMのY-27632(Wako)が補充されている。培養2日目に、凝集体を、S10培地中、TRANSWELL(登録商標)-COL(登録商標)膜(CORNING(登録商標))上に配置する。CMVプロモーター上にFIGLA、SOHLH1、LHX8、NOBOX、STAT3、TBPL2、DYNLL1、及びSUB1コードカセットを含む非組み込みプラスミドを、細胞がそれらを3週間発現することを可能にする間隔で培養細胞内に一過性にトランスフェクトする。
【0179】
DIOLのインビトロ成長(IVG)培養のために、個々の卵胞は、研がれたタングステン針を使用して手動で単離される。単離されたDIOLを、IVG培地中、TRANSWELL(登録商標)-COL(登録商標)膜上で培養する。IVG培地は、5%のFCS、2%のポリビニルピロリドン(Sigma)、150μMのアスコルビン酸、1倍のGLUTAMAX(商標)、1倍のペニシリン/ストレプトマイシン、100μMの2-メルカプトエタノール、55μg/mlのピルビン酸ナトリウム(Nacalai Tesque)、0.1IU/mlの卵胞刺激ホルモン(Follistim、MSD)、15ng/mlのBMP15及び15ng ml/のGDF9(R&D Systems)が補充されたαMEMを含む。培養の2日目に、BMP15及びGDF9を培地から抜き取り、次に、卵胞を0.1%のIV型コラゲナーゼ中でインキュベートする。5%のFCSが数回補充されたαMEMで洗浄した後、DIOLが形成されるまで7~11日間、BMP15及びGDF9を含まないIVG-αMEM中で卵胞を培養する。
【0180】
実施例18
この実施例は、インビトロで生成されたウシ配偶子を使用したインビトロ受精を示す。
【0181】
次のラウンドのインビトロ育種のための複数の胚を作製するために、実施例12からの複数の精子細胞様細胞を、ICSIの標準的な手順(卵母細胞当たり1つの精子細胞様細胞)を使用して、実施例14からの複数の卵母細胞に注入する。次に、得られた胚のうち、胚盤胞段階に達する各々を使用して、実施例3に記載されるような細胞株を作製し、インビトロ育種の別のサイクルを開始する。
【0182】
実施例19
この実施例は、インビトロで作製されたブタ配偶子を使用したインビトロ受精を示す。
【0183】
次のラウンドのインビトロ育種のための複数の胚を作製するために、実施例11からの複数の精子細胞様細胞を、ICSIの標準的な手順(卵母細胞当たり1つの精子細胞様細胞)を使用して、実施例15からの複数の卵母細胞に注入する。次に、得られた胚のうち、胚盤胞段階に達する各々を使用して、実施例4に記載されるような細胞株を作製し、インビトロ育種の別のサイクルを開始する。
【0184】
実施例20
この実施例は、同じ遺伝子型の動物を作製するための、選択されたウシ胚性幹細胞株の核移植を示す。
【0185】
実施例5又は実施例16で作製したNM$ウシ胚性幹細胞株の上位1%について、核移植を、Ross and Cibelli,Methods Mol Biol.636.155-77(2010)及びRoss et al.,BioTechniques 41:741-750(2006)に公開されるのと同様の方法で行う。Strelchenko et al.に対して2000年1月4日に登録された米国特許第6,011,197号も参照されたい。
【0186】
簡潔に述べると、ドナー細胞は、HH培地中、10IU/mLのプロナーゼで5分間処理することによって解離される。卵母細胞は、屠畜場由来の卵巣から、又は超音波誘導卵母細胞吸引によって生きた動物からのいずれかから採取される。卵母細胞をインビトロで成熟させ、脱核する。選択された胚性幹細胞培養物からの単一細胞を、20μm(内径)のガラスピペットを使用して、脱核された卵母細胞の囲卵腔に挿入する。卵母細胞融合物は、方形DCパルス発生器を使用して誘導される。融合した卵母細胞をイオノマイシンを使用して活性化し、標準条件下で培養する。活性化後48時間で、切断されていない胚を培養物から除去し、活性化後72時間で、培地に任意選択的に血清を補充し、7日間培養してから回収し、同期したレシピエントに移植する。子ウシは、通常、代理母から生まれ、胚性幹細胞と遺伝的に同一である。ウシ卵母細胞の高い利用可能性及び通常ウシにおいて得られる比較的高い効率レベルは、商業目的及び研究目的の両方でSCNTを使用することを提供する。
【0187】
実施例21
この実施例は、ブタ胚性幹細胞の核移植を示す。
【0188】
ブタ胚性幹細胞をコンフルエンスになるまで成長させ、細胞周期のG1又はG2で強制的に停止させる。卵母細胞を得て、調製し、実施例20に記載されるように核を移植する。
【0189】
実施例22
この実施例は、家畜胚性幹細胞を誘導するための例示的な培地を示す。
【0190】
N2B27基礎培地(NBM)は、40mLのDMEM/F12培地(Gibco 11320-033)、DMEM/F12培地に再懸濁された10mLの100mg/mlのBSAストック、500μLのN-2 Supplement(100倍、Gibco 17502-048)、50mLのNeurobasal Medium(Gibco 21103-049)、1mLのB-27 Supplement(50倍、Gibco 17504-044)、1mLのMEM Non-essential Amino Acid Solution、1 mLのGLUTAMAX(商標)Supplement(100倍カタログ:Gibco 35050-061)、100U/ml mLのペニシリン-ストレプトマイシン(10,000U/mL、Gibco 15140-122)、10μLの2-メルカプトエタノール1Mストック(最終濃度0.1mM、Sigma M6250)を混合することによって作製した。混合後、培地を濾過滅菌した。
【0191】
NBFR培地について、この基礎培地には、20ng/mLの組換えヒト線維芽細胞成長因子(FGF、Peprotech 100-18B)及び2.5μMのIWR1(SIGMA I0161)が補充された。
【0192】
実施例23
この実施例は、ウシ胚性幹細胞を誘導する方法を示す。
【0193】
MEFフィーダー細胞の層を、4ウェルプレート中、ウェル当たり118,000個の細胞でプレーティングし、10%の胎児ウシ血清(FBS)、1%のPen/Strep(Gibco 15140-122)、及び1%のGLUTAMAX(商標)が補充されたDMEM培地上で培養した。播種の準備ができたら、フィーダー細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、次いで半分の体積の培地で覆った。培地を除去した後、胚盤胞を添加した。
【0194】
胚盤胞全体(透明質帯を除去したもの)を、10μMのY-27632 ROCK阻害剤(ENZO、ALx-270-333-M005、ROCKi)が補充された培地とともに、フィーダープレートに添加した。プレーティングから24時間後に、MEFに付着していない胚を、プレートに付着するまで32gの針を用いて押し下げた。
【0195】
培地をプレーティングから48時間後に交換し、その後は毎日交換した。プレーティングから6日後に、細胞を、分割することなく(同じサイズウェルで1:1の比率で)、(明らかな細胞の成長がみられない場合であっても)新しいウェルに継代させた(実施例24を参照されたい)。6日後、細胞を4ウェルプレートから12ウェルプレートに再度継代させた(明らかな細胞の成長がみられない場合であっても)。次いで、細胞を、成長に応じて、第2の継代の3~5日後に、12ウェルプレートから6ウェルプレートに継代させた。この継代後、細胞を典型的には3~4日おきに、成長に応じて1:5~1:10の比率で継代した。4~5継代後にコロニーを形成しなかった細胞株を廃棄した。本願発明者らは、表1に示すように、様々な供給源からの76のウシ胚性幹細胞株を確立した。
【表1】
【0196】
出発材料は、屠畜場卵巣(インビトロ)から、経膣採卵技術(インビトロ)によって、又はフラッシングされた胚(インビボ)によって得られた卵母細胞又は胚のいずれかであった。
【0197】
実施例24
この実施例は、実施例23に確立された細胞株の維持を示す。
【0198】
細胞を、成長に応じて3~5日毎に継代によって維持した。成長培地を除去した。次に、プレートのウェルをPBSで洗浄し、TrypLEの6ウェルプレートのウェル当たり500uLを使用してプレートから分離させ、37℃インキュベータで2~3分間インキュベートした。5mlのNBFR培地(実施例22を参照)を加え、混合物を15mlのファルコンチューブに移した。チューブを、室温で400×gで4分間遠心分離した。このスピン中に上記のようにPBSで洗浄することによって新しいフィーダー細胞ウェルを調製した。スピン後、バルク上清をペレットを乱すことなくファルコンから廃棄した。次いで、ペレットを、事前に温めたNBFR培地中に再懸濁させ、適切な数の細胞を(必要な分割に応じて)事前に洗浄したウェルに加えた。必要に応じて、最終濃度10μMのROCKiを任意選択的に添加して、細胞生存率を増加させた。新鮮な培地(ROCKiを含まない)を24時間後に添加した。次いで、培地を細胞上で毎日交換した。
【0199】
胚性幹細胞の凍結保存のために、細胞を、上清のスピン及び除去の後、細胞を次いで1μlのROCKi及び100μlのDMSOを含有する900μlの培地に再懸濁させたことを除き、継代について上に記載したように洗浄した。次に、細胞をゆっくりと凍結し、次に、-80℃におよそ24時間移した後、液体窒素中で保存した。
【0200】
凍結保存された細胞を解凍するために、凍結された細胞を37℃の水浴中で、小さな氷結晶のみが残るまで加熱した。解凍された細胞及び凍結溶液を円錐形のチューブに移し、次に5mLの予熱したNBFR培地を滴下した。次いで、細胞を、室温で400×gで4分間遠心分離した。スピンさせながら、新鮮なフィーダー細胞ウェルを洗浄した。スピン後、上清を廃棄した。ペレットを、2ulのROCK阻害剤を含有する2mLの培地中に再懸濁させ、次いで、予め洗浄したウェルに移した。24時間後、ROCKiを含む培地を除去し、ROCKiを含まない新鮮な培地と交換した。次いで、培地の交換及び継代を上記のように行った。
【0201】
実施例25
この実施例は、フィーダーを含まない胚性幹細胞培養で使用される培地及び手順を示す。
【0202】
ES培地について、N2B27基礎培地には、20ng/mlのbFGF(Peprotech、100-18B)、2.5μMのIWR1(Selleck Chemicals、1127442-82-3)、20ng/mlのアクチビンA(R&D、カタログ番号338-AC-010)が補充された。
【0203】
ES継代培地について、ES培地には、10μMのY-27632 ROCK阻害剤(ENZO、ALx-270-333-M005、ROCKi)が更に補充された。
【0204】
フィーダーを含まない培養物の場合、コーティングされていない培養皿を細胞外マトリックスタンパク質でコーティングした。VITRONECTIN XF(商標)(Nucleus Biotech,Inc、San Diego,CAによって所有される商標、Stemcell Technologyから購入、カタログ番号07180)を使用して、製造業者の指示に従って6ウェルプレートをコーティングし、次いで、室温で1時間インキュベートした。次いで、プレートをDPBS(Gibco)中で洗浄し、次いで2mlのES培地を各ウェルに添加した。
【0205】
実施例26
この実施例は、胚性幹細胞培養物をフィーダー細胞培養物からフィーダーを含まない培養物に変換することを示す。
【0206】
実施例23で確立されたフィーダー細胞培養上のESCを、1mL/ウェルのD-PBS(Ca++及びMg++を含まない)で洗浄した。次いで、1mL/ウェルのReLeSR(商標)(STEMCELL Technologies Canada Inc、Vancouver,Canada)を各ウェルに添加し、放出された胚性幹細胞を1分以内に培地とともに除去し、新鮮な容器に移した。次いで、細胞を室温又は37℃で5~7分間インキュベートした。次いで、1mL/ウェルのES培養培地を各ウェルに添加した。次いで、プレートの側面を製造業者の指示に従っておよそ30~60秒間タップすることによってコロニーを分離させた。細胞凝集体のサイズをチェックして、プレーティング前にReLeSR(商標)製造業者が推奨するサイズ(およそ50~200μm)であることを確認した。次いで、分離した細胞凝集体を15mLのチューブに移した。細胞混合物を上下に2~5回ピペッティングして、任意の大きな凝集体を確実に破壊した。次に、細胞凝集体混合物を、ES継代培地を含有する予めコーティングされたウェル上に、所望の密度(用途に応じて、1:2~1:4の比率/ウェル)でプレーティングした。必要に応じて、継代培地を用いて、体積を適切な体積まで上げた。次いで、プレートを37℃のインキュベータに入れ、細胞凝集体を均等に分布させるために、何回かの迅速な、短い、前後の、及び左右の動きで移動させ、次いで24時間所定の位置に放置した。24時間後、培地をES培養培地で毎日交換し、培養物を視覚的に評価して成長を監視した。
【0207】
実施例27
この実施例は、フィーダーを含まないウシ胚性幹細胞培養物の維持を示す。
【0208】
全ての培養細胞と同様に、胚性幹細胞は、細胞がコンフルエンスに近づくと、継代を必要とする。継代するために、細胞培養培地を除去し、細胞を1mL/ウェルのDPBSで洗浄した。洗浄後、細胞を1mL/ウェルのReLeSR(商標)で最長1分間処理し、少量を除いてReLeSR(商標)の大部分を除去した。次いで、細胞を室温で5~7分間インキュベートした。次に、1ml/ウェルのES継代培地(実施例25を参照)を各ウェルに添加した。次いで、プレートの側面を製造業者の指示に従っておよそ30~60秒間タップすることによってコロニーを分離させた。細胞凝集体のサイズをチェックして、プレーティング前にReLeSR(商標)製造業者が推奨するサイズであることを確認した。次いで、分離した細胞凝集体を15mLのチューブに移した。
【0209】
細胞混合物を上下に2~5回ピペッティングして、任意の大きな凝集体を確実に破壊した。次に、細胞凝集体混合物を、ES継代培地を含有する予めコーティングされたウェル上に、所望の密度(用途に応じて、1:2~1:4の比率/ウェル)でプレーティングした(実施例25を参照されたい)。必要に応じて、継代培地を用いて、体積を適切な体積まで上げた。次いで、プレートを加湿したインキュベータ(38.5℃、5%CO、5%O2)に移し、細胞凝集体を均等に分布させるために、何回かの迅速な、短い、前後の、及び左右の動きで移動させ、次いで細胞を24時間かけて安定させた。次いで、細胞を、無細胞培養培地を毎日交換しつつ維持し、視覚的に評価して成長を監視した。
【0210】
フィーダーを含まない維持されたウシ胚性幹細胞の凍結保存のために、細胞培養培地を除去し、細胞を1mL/ウェルのDPBSで洗浄した。次いでDPBSを除去し、1分以内に吸引された各ウェルに1mLのReLeSR(商標)を添加して、少量を除いてReLeSR(商標)の大部分を除去した。次いで、細胞を室温で5~7分間インキュベートした。次いで、製造業者の指示に従って、プレートを室温で5~7分間インキュベートした。各ウェルに1mlの継代培地を添加した(実施例25を参照されたい)。次いで、プレートの側面を製造業者の指示に従っておよそ30~60秒間タップすることによってコロニーを分離させた。細胞凝集体のサイズをチェックして、プレーティング前にReLeSR(商標)製造業者が推奨するサイズであることを確認した。次いで、分離した細胞凝集体を15mLのチューブに移した。
【0211】
細胞を、1mlの凍結バイアル中、300μLの細胞懸濁液、600μLのES継代培地、及び100μLのDMSOを含む凍結保存混合物中で凍結させた。混合物を2~5回ピペッティングして混合し、小さな凝集体へと破壊した。次いで、バイアルをクライオボックスに入れ、-80℃で一晩インキュベートした。次いで、バイアルを、長期間保存のために液体窒素に移した。
【0212】
実施例28
この実施例は、ウシ胚性幹細胞の形態を示す。
【0213】
実施例24(図1)のように、及び実施例27(図2)のようなフィーダーを含まない条件下で、フィーダー細胞上で成長した細胞を、40倍のNikon ECLIPSE Ti2倒立顕微鏡で観察した。(写真は、NIS elements Brソフトウェアを使用して撮影した。)胚性幹細胞は、フィーダー細胞とともに成長したときに、凝集体のスポット内に集まった(図1)。フィーダーを含まない条件下で成長させると、細胞は、コンフルエント構造を形成する(図2)。(スケールバーは100μmである。)この形態は、胚性幹細胞について予想される。
【0214】
実施例29
この実施例は、ウシ胚性幹細胞が、多能性細胞と一致する遺伝子発現プロファイルを有することを示す。
【0215】
タンパク質発現を分析するために、実施例23及び実施例26に記載されるような胚性幹細胞の細胞ペレットを、1倍のプロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche Applied Science)を含有するRIPA緩衝液(Sigma)中、氷上で、4℃で30分間解凍した。溶解物を高強度超音波処理(3セットの30秒パルス)に供し、不溶性材料を4℃、15,000rpmで15分間遠心分離することによって除去した。上清の総タンパク質濃度は、DCタンパク質アッセイキット(Bio-Rad)を使用して決定された。試料当たり合計300ngのタンパク質抽出物を、CDX2(Abcam ab76541)、GATA6(Cell Signaling 5851T)、OCT_4(Abcam ab181557)、NANOG(PeproTech 500-P236)、及びSOX2(Cell Signaling 3579T)マーカーについてのキャピラリーウェスタンブロット(Rajput,S.,et al.,F S Sci.,2021,2,33-42)を使用して分析した。Oct4、Sox2、及びNANOGの発現の増加が観察された。CDX2(栄養外胚葉を指定する)は、最小限の発現を示し、GATA6(原始内胚葉を指定する)の発現は、ウェスタンブロットで検出することができなかった。この発現プロファイルは、多能性胚性幹細胞について予想される。
【0216】
この発現を、リアルタイムPCR(RT-PCR)によって更に検証した。プライマー対を表2に示す。
【表2】
【0217】
RT-qPCRを行って、全てのマーカーのmRNA発現を分析した。RNAを、ウシ線維芽細胞及びウシ胚性幹細胞から、PureLink(商標)RNAミニキット(Thermo Fisher Scientific、Waltham,MA)を使用して単離した。iScript(商標)cDNA合成キット(Bio-Rad Laboratories,Inc.、Hercules,CA、1708891)を使用してRNAをcDNAに変換し、これをPOWERTRACK(商標)SYBR Green Master Mix(Thermo Fisher Scientific、Waltham,MA A46012)を使用するqPCRに使用した。全てのキットは、製造業者の指示に従って使用した。
【0218】
抽出物内で、各マーカーについてのmRNA発現をGADPHに対して正規化した。次いで、ウシ胚性幹細胞における発現を線維芽細胞における発現と比較し、倍率変化として提示した。5つのESCラインの平均からの結果を表3に列挙する。
【表3】
【0219】
多能性マーカーOCT4、SOX2、及びNANOGの転写は、ウシESCにおいて顕著に増加する。対照的に、指定マーカーCDX2及びGATA6は、線維芽細胞と比べて、転写産物存在量が近い。本明細書に記載されるように作製されたウシ胚性幹細胞は、多能性細胞と一致する方法で多能性マーカーを発現する。
【0220】
実施例30
この実施例は、ウシ胚性幹細胞の自発的分化を示す。
【0221】
ウシ胚性幹細胞を、TrypLE(商標)Select(Thermo Fisher Scientific、Waldham,MA、12563011)を使用して培養皿から分離させ、CF-1フィーダー細胞培養培地(10%FBSが補充されたDMEM)中に再懸濁させ、次いで、AggreWell(商標)400μウェル培養皿(STEMCELL Technologies Canada Inc.、Vancouver Canada)に播種した。浮遊培養物中で4日後、胚様体が形成された。図3は、40倍における胚様体の代表的な写真を示す。胚様体をゼラチンコーティングされた皿に移し、観察及びRT-qPCRの前に更に2週間培養した。胚性幹細胞は、ニューロン細胞(外胚葉)、中胚葉細胞、及び内胚葉細胞に分化した。代表的な自発的分化細胞を図4に示す。RT-qPCRに使用したプライマー対を表4に列挙する。
【表4】
【0222】
RNA抽出及びRT-qPCRは、実施例29に記載されるように行った。抽出物内で、各マーカーについてのmRNA発現をGADPHに対して正規化した。次いで、分化細胞における発現を、未分化ウシ胚性幹細胞における発現と比較し、倍率変化として報告した。AFPを使用して内胚葉分化を調べ、ACTA2を使用して中胚葉分化を調べ、TUBB3を使用して外胚葉分化を調べた。表5に示すように、これらのマーカーの各々の転写産物存在量は、bESCにおけるそれらの存在量と比べて増加した。
【表5】
【0223】
実施例31
この実施例は、ウシ胚性幹細胞の核型正常性を例示する。
【0224】
2つの細胞株(1つは雄遺伝子型を有し、1つは雌遺伝子型を有する)が、核型決定のために選択された。簡潔に述べると、10継代を受けた株からの細胞を調製し、コルセミドで処理し、洗浄し、採取した。採取した細胞を低張性溶液で処理し、固定し、染色し、分析した。染色体を取り付け、次いでGバンドを分析した。染色体の数、形態、及びGバンドは全て正常であった。この実施例は、本教示に従って調製されたウシ胚性幹細胞が、家畜胚性幹細胞における以前の試みよりも動物に表現型が近いことを示す。
【0225】
実施例32
この実施例は、エリート遺伝子を用いた胚性幹細胞の遺伝子型決定を示す。
【0226】
本教示の胚性幹細胞からDNAを抽出した。次に、DNAを、NEOGEN(登録商標)GGP Bovine 100kチップを使用した品種登録及び遺伝子型決定のための胚DNAとしてCouncil on Dairy Cattle Breeding(CDCB)に提出した。CDCBは、SNPの結果から算出された予測伝達能力(PTA)を提供した。これらの結果を表6及び表7に報告する。
【表6-1】
【表6-2】
【表7-1】
【表7-2】
【0227】
これらのデータは、本教示の胚性幹細胞が当該技術分野で一般的な方法で遺伝子型決定され得ることを示す。
【0228】
実施例33
この実施例は、本教示のウシ胚性幹細胞からの始原生殖細胞様細胞(PGCLC)の誘導を示す。
【0229】
この実施例におけるいくつかの培養方法は、GK15培地を使用する。GK15培地(GBM)は、404mLのGlasgowの最小必須培地(GMEM、Gibco、11710035)、75mLのKNOCKOUT(商標)Serum Replacement(KSR、Gibco、10828-010、商標Thermofisher Scientific、Waltham,MA)、5mlの2mM L-グルタミン、1mLの2-メルカプトエタノール、5mLの非必須アミノ酸(NEAA、100倍)、5mLのピルビン酸ナトリウム、及び5mLのペニシリン-ストレプトマイシン溶液(P/S、100倍)を添加することによって作製した。
【0230】
本願発明者らは、最初に、ウシ胚性幹細胞を前駆細胞、具体的にはウシ形成様細胞又はウシ中胚葉様細胞に誘導した。前駆細胞を調製するために、PBS中の16.7ug/mlのヒト血漿フィブロネクチン(Millipore、FC010)を使用して細胞培養プレートをコーティングし、次いで37℃で1時間インキュベートした。フィブロネクチン溶液を除去した。1ml/ウェルのbFCM又はbMLC培地(以下を参照)をコーティングされたプレートに添加し、次いで5%O、5%COインキュベータ内で37℃で1時間インキュベートした。
【0231】
誘導培地は、前駆細胞の各々について異なるものであった。ウシ形成細胞については、10mlのNBM(実施例22を参照)に10ng/mlのbFGF、10ng/mlのアクチビンA、及び3μMのCHIR99021を補充することによってbFCMを作製した。ウシ中胚葉様細胞誘導については、10mlのGK15培地に、最終濃度70ng/mlのアクチビンA及び3μMのCHIR99021になるまで補充した。
【0232】
次いで、フィーダーを含まないウシ胚性幹細胞をPBSで洗浄した。500μlの0.25%トリプシン/EDTAを各ウェルに添加し、細胞を37℃で3分間インキュベートした。500μlのNBMを添加し、上下にピペッティングした。次いで、細胞懸濁液を15mlのチューブに移し、300×g、20℃で5分間遠心分離した。培地を除去し、細胞ペレットを1mlのNBM中に再懸濁させた。上の調製したbFCM又はbMLC培地を含有するプレートに、ウェル当たり1.0~2.0×10個の細胞を添加した。細胞を、5%O、5%COインキュベータ内で、37℃で24~48時間培養した。
【0233】
ウシPGCLCのための培地は、1000U/mLのrLIF、100ng/mLのSCF、50ng/mLのEGF、及び500ng/mlのBMP4が補充されたGBMであった。200μlのこの培地を、上記のようにフィブロネクチンでコーティングした96ウェル底U字プレートに添加した。
【0234】
次いで、前駆細胞をPBSで洗浄した。500μlの0.25%トリプシン/EDTAを各ウェルに添加し、細胞を37℃で3分間インキュベートした。500μlのNBMを添加し、上下にピペッティングした。次いで、細胞懸濁液を15mlのチューブに移し、300×g、20℃で5分間遠心分離した。次いで、培地を除去した。細胞ペレットを1mlのGBMに再懸濁させた。次いで、ウェル当たり4×10個の細胞を、PGCLC培地を含有する96ウェル底U字プレートの各ウェルに添加した。次いで、細胞を、5%O、5%COインキュベータ内で、37℃で96時間維持した。新鮮なウシPGCLC培地を一日おきに添加した。
【0235】
実施例34
この実施例は、実施例33で誘導されたようなPGCLCの特徴付けを示す。
【0236】
フィーダーを含まない胚性幹細胞、中間細胞、及び誘導PGCLCを全て、40倍のNikon ECLIPSE Ti2倒立顕微鏡で観察した。(図5)。全ての細胞は、予想される形態を有していた。
【0237】
RT-PCRプライマーを、多能性遺伝子(OCT4、表2を参照)及びPGC指定遺伝子(NANOS3、SOX17、TBXT、及びTFAP2C)のために設計した。本明細書の遺伝子のプライマーを表8に列挙する。
【表8】
【0238】
RT-qPCRを実施例29と同様に行って、ウシ胚性幹細胞(bESC)、ウシ形成細胞から誘導されたウシPGCLC、及びウシ中胚葉様細胞から誘導されたウシPGCLCにおける遺伝子発現を調べた。抽出物内で、各マーカーについてのmRNA発現をGADPHに対して正規化し、次いで、bESCにおける発現と比較した。bESCにおける発現に対する発現を表9に示す。
【表9】
【0239】
多能性マーカーOCT4の転写産物存在量は変化しないが、PGC指定マーカーNANOS3、SOX17、TBXT、及びTFAP2Cにおける転写産物存在量は、全て顕著に増加している。
【0240】
更に、誘導PGCL細胞の凝集体は、予想される細胞形態を有していた(図6を参照されたい)。
【0241】
これらのデータは、ウシ胚性幹細胞からのウシ始原生殖細胞様細胞の誘導を示す。
【0242】
実施例35
この実施例は、ブタ胚性幹細胞の産生を示す。
【0243】
ブタ胚性幹細胞は、以下の変更を伴いつつ、実施例23に記載されるようにインビトロ受精したブタ卵母細胞から調製された。細胞を、10ng/mlのbFGF、3μMのCHIR99021、1μMのPD0325901(ROCK阻害剤)、及び10ng/mlのアクチビンAが補充されたN2B27培地(実施例22を参照)中、CF1フィーダー細胞上で成長させた。PD0325901を6日後に抜き取った。細胞を、40倍のNikon ECLIPSE Ti2倒立顕微鏡で観察した。(写真は、NIS elements Brソフトウェアを使用して撮影した。)図7は、これらの細胞を40倍の倍率で示す。次いで、細胞を、ES培地が、10ng/mlのbFGF、3μMのCHIR99021、1μMのPD0325901(ROCK阻害剤)、及び10ng/mlのアクチビンAが補充されたN2B27培地を含むことを除き、実施例25に記載されるように無細胞培養するために移した。PD0325901を6日後に抜き取った。フィーダーを含まない細胞を図8に40倍で示す。スケールバーは100μmである。胚性幹細胞は、フィーダー細胞とともに成長したときに、凝集体のスポット内に集まる(図7)。フィーダーを含まない条件下で成長させると、細胞は、コンフルエント構造を形成する(図8)。この形態は、胚性幹細胞について予想される。
【0244】
実施例36
この実施例は、多能性細胞に典型的なブタ胚性幹細胞の挙動を示す。
【0245】
胚様体の形成及びブタ胚性幹細胞の自発的分化を、実施例30のウシ胚性幹細胞について記載されるように実施した。ブタ胚性幹細胞は、胚様体(図9)、中胚葉細胞(図10)、及び内胚葉細胞(図11)を形成した。これらのデータは、ブタ胚性幹細胞が多能性であることを示す。
【0246】
実施例37
この実施例は、ブタ胚性幹細胞の多能性を示す。
【0247】
RNA prep及びRT-qPCRをブタ胚性幹細胞について行い、実施例29のようにデータを分析する。多能性マーカーのためのプライマーを表10に列挙する。
【表10】
【0248】
多能性マーカーOCT4、SOX2、及びNANOGは、線維芽細胞と比較して上方制御されるが、分化マーカーCDX2及びGATA4は上方制御されないことが予想される。
【0249】
実施例38
この実施例は、培養牛肉の生産のためのウシESCの使用を示す。
【0250】
実施例26で成長したウシ胚性幹細胞を、20ng/mlのbFGF及び20ng/mlのEGFでおよそ16時間処理し、続いて培地交換を行ってもよい。その後、細胞を同じ培地上で成長させ、10~15日間毎日交換して、筋細胞の分化を誘導する。次いで、細胞を、多孔質の食用骨格上で三次元培養に移行させる。その後、骨格筋、したがって牛肉に近似した方法で、細胞が骨格上で成長することが予想される。
【0251】
実施例39
この実施例は、培養豚肉の生産のためのブタESCの使用を示す。
【0252】
実施例35で成長したブタ胚性幹細胞を、20ng/mlのbFGF及び20ng/mlのEGFでおよそ16時間処理し、続いて培地交換を行ってもよい。その後、細胞を同じ培地上で成長させ、10~15日間毎日交換して、筋細胞の分化を誘導する。次いで、細胞を、多孔質の食用骨格上で三次元培養に移行させる。その後、骨格筋、したがって豚肉に近似した方法で、細胞が骨格上で成長することが予想される。
【0253】
実施例40
この実施例は、臓器肉の生産のためのウシESCの使用を示す。
【0254】
実施例26で成長したウシ胚性幹細胞は、フィーダーを含まないプレート上で、2日間にわたって毎日培地を交換しつつ、100ng/mlのアクチビンA及び3μMのCHIR99021を用いて処理して、内胚葉様細胞を作製してもよい。次いで、細胞を5ng/mlのbFGF及び20ng/mlのBMP4を用いて5日間、毎日培地を交換しつつ処理して、肝内胚葉細胞を誘導する。次いで、これらの細胞を、20ng/mlの肝細胞成長因子(HGF)を用いて5日間、毎日培地交換しつつ処理して、未成熟の肝細胞様細胞を誘導する。次いで、細胞を20ng/mlのHGF、20ng/mlのオンコスタチンM、及び100nMのデキサメタゾンを用いて10~12日間処理する。次いで、細胞を多孔質の食用骨格上での三次元培養に適合させ、コンフルエンスになるまで成長させる。細胞は、この段階で、牛肉肝臓に類似した組織を形成すると予想される。
【0255】
本明細書で引用される任意の参照文献は、各々が参照によってその全体が組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
2024520498000001.app
【国際調査報告】