(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】呼気標本計測値の改ざんを防ぐための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/11 20060101AFI20240517BHJP
A61B 5/113 20060101ALI20240517BHJP
G01N 33/497 20060101ALI20240517BHJP
G01N 33/98 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
A61B5/11
A61B5/113
G01N33/497 A
G01N33/98
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573144
(86)(22)【出願日】2022-05-18
(85)【翻訳文提出日】2024-01-17
(86)【国際出願番号】 SE2022050488
(87)【国際公開番号】W WO2022250595
(87)【国際公開日】2022-12-01
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520347605
【氏名又は名称】センスエア アクチボラグ
【氏名又は名称原語表記】Senseair AB
【住所又は居所原語表記】Box 96, 824 08 Delsbo SWEDEN
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100202854
【氏名又は名称】森本 卓行
(72)【発明者】
【氏名】ヘーク,ベルティル
(72)【発明者】
【氏名】ユングブラッド,ヨナス
【テーマコード(参考)】
2G045
4C038
【Fターム(参考)】
2G045AA40
2G045CB22
2G045DA74
2G045JA01
2G045JA07
4C038VA04
4C038VB04
4C038VB33
4C038VC05
(57)【要約】
本発明は、呼気分析システムおよび方法に関する。特に、本発明は、使用者の呼気中の酩酊物質の濃度の計測の有効性を判定し、それにより分析時間の増加または使用者にとっての不便なく、結果の改ざんのリスクを低減するための呼気分析システムおよび方法に関する。視線検出器が提供され、その出力信号は、信号がそれぞれの予想挙動および関係を有するかどうかを判定するためにトレーサ物質信号と比較される。
【選択図】
図2a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼気分析デバイス(100)を使用して使用者の呼気における酩酊物質の濃度の計測の有効性を判定するための方法であって、
前記呼気分析デバイス(100は、
- 前記酩酊物質の濃度を表すセンサ信号およびトレーサ物質の濃度を表すセンサ信号を標本抽出するように構成された計測セルと、
- 所定の視野を有し、前記視野の物体によるカバー範囲を計測し、カバー度合を表す信号を出力するように構成された視線検出器とを備え、
前記方法は、
- (305)前記視線検出器(108)の前記出力信号を監視し、(310)前記出力信号が設定されている背景値から逸脱している場合、(315)時間の関数として前記視線検出器出力信号を記録し、前記出力信号変化は記録された視線信号シグネチャであるステップと、
- (320)前記トレーサ物質センサ信号を監視し、(325)前記トレーサ物質におけるピークが検出された場合、前記ピークは、前記使用者の呼吸サイクルの可能な呼気段階を示し、(330)前記酩酊物質センサ信号および前記トレーサ物質センサ信号に基づいて前記酩酊物質の呼気濃度値を導出するステップと、
- (335)前記視線検出器(108)に由来する記録された前記視線信号シグネチャを、少なくとも1つの記憶されている基準信号シグネチャと比較するステップと、
- (345)前記視線検出器出力信号と前記トレーサ物質信号との間の関係を、記憶されている信号関係判断基準と比較するステップとを含み、
- (340、350、355)記録された前記視線信号シグネチャが前記記憶されている基準信号シグネチャと一致した場合、かつ記録された前記視線出力信号および前記トレーサ物質信号が前記記憶されている信号関係判断基準を満たす場合、前記呼気濃度値の前記計測の前記有効性が確認される、方法。
【請求項2】
前記監視するステップ(305)において、前記視線検出器出力信号の背景値が導出され、記録された前記視線信号シグネチャを前記記憶されている基準信号シグネチャと比較するステップ(335)は、初期上昇後の信号スロープ、信号が上昇する時間区分の持続時間、上限値(21)に関連付けられた信号値、前記上限レベル(21)に関連した事前に定義されたレベル以上の信号の持続時間、ピークもしくは横這い後の信号スロープというパラメータのうちの1つまたは前記パラメータからの選択を少なくとも比較することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記記憶されている信号関係判断基準は、前記視線検出器出力信号と前記トレーサ物質信号との間の時間関係を含む、請求項1および2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記時間関係判断基準は、物体が前記呼気分析デバイス(100)に接近していることを示す記録されている前記視線検出器出力信号の上昇が前記トレーサ物質信号における前記ピークの開始前に発生することを条件とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記時間関係判断基準は、記録されている前記視線検出器出力信号におけるピークが所定の時間区分内の前記トレーサ物質信号における前記ピークと一致することを条件とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記視線検出器出力信号と前記トレーサ物質信号との間の関係を、記憶されている信号関係判断基準と比較する前記ステップ(345)は、前記視線検出器出力信号における前記ピークと前記トレーサ物質における前記ピークとの時間差を、呼気標本が前記呼気分析デバイス(100)に到達するのに必要な時間に関係した予想時間遅延に関係する所定の係数で修正することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記視線検出器出力信号と前記トレーサ物質信号との間の前記時間関係は、呼気標本が前記呼気分析デバイス(100)に到達するのに必要な時間に関係した予想時間遅延に関係した所定の係数による、前記視線検出器出力信号における前記ピークと前記トレーサ物質における前記ピークとの予想時間差を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記視線検出器(108)は、熱放射を計測するように構成されている、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記呼気分析デバイス(100)は、周囲温度を計測するための手段をさらに備え、前記視線検出器(108)からの前記出力信号は、前記周囲温度で補償される、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
使用者の呼気における酩酊物質の濃度の計測を実行し前記計測を検証するように構成された呼気分析デバイス(100)であって、
前記呼気分析デバイス(100は、
- 前記酩酊物質の濃度を表すセンサ信号およびトレーサ物質の濃度を表すセンサ信号を標本抽出するように構成された計測セル(102)と、
- 所定の視野を有し、前記視野の物体によるカバー範囲を計測し、カバー度合を表す信号を出力するように構成された視線検出器(108)と、
- 前記計測セル(102)および前記視線検出器(108)と接続された制御および信号処理ユニット(114)とを備え、前記呼気分析デバイス(100)は、
- (305)前記視線検出器(108)の前記出力信号を監視し、(310)前記出力信号が設定されている背景値から逸脱している場合、(315)時間の関数として前記視線検出器出力信号を記録し、前記出力信号変化は記録された視線信号シグネチャであるステップと、
- (320)前記トレーサ物質センサ信号を監視し、(325)前記トレーサ物質におけるピークが検出された場合、前記ピークは、前記使用者の前記呼吸サイクルの可能な呼気段階を示し、(330)前記酩酊物質センサ信号および前記トレーサ物質センサ信号に基づいて前記酩酊物質の呼気濃度値を導出するステップと、
- (335)前記視線検出器(108)に由来する記録された前記視線信号シグネチャを、少なくとも1つの記憶されている基準信号シグネチャと比較するステップと、
- (345)前記視線検出器出力信号と前記トレーサ物質信号との間の関係を、記憶されている信号関係判断基準と比較するステップとを実行するように構成され、
- (340、350、355)記録された前記視線信号シグネチャが前記記憶されている基準信号シグネチャと一致した場合、かつ記録された前記視線出力信号および前記トレーサ物質信号が前記記憶されている信号関係判断基準を満たす場合、前記呼気濃度値の前記計測の前記有効性が確認される、呼気分析デバイス(100)。
【請求項11】
前記視線検出器(108)は、電磁放射を検出するように構成され、前記視線検出器(108)の実効視野を判定するアパーチャを含む、請求項10に記載の呼気分析デバイス(100)。
【請求項12】
前記視線検出器(108)は、赤外線検出を利用するセンサ(111)を備え、熱放射を計測するように構成されている、請求項10または11に記載の呼気分析デバイス(100)。
【請求項13】
前記視線検出器(108)の前記センサ(111)は、近赤外反射率計測を利用するように構成された能動的センサである、請求項12に記載の呼気分析デバイス(100)。
【請求項14】
前記視線検出器(108)は、前記呼気分析装置からの事前に定義された距離にある事前に定義された領域に対応する視野を有するように構成され、前記事前に定義された領域は、前記事前に定義された距離において前記呼気分析デバイス(100)を使用する人の典型的な人間の顔の領域であり、前記事前に定義された距離は呼気分析デバイス(100)の適切な使用に関連付けられ、100~300mmの間である、請求項10~13のいずれかに記載の呼気分析デバイス(100)。
【請求項15】
前記呼気分析デバイス(100)は、周囲温度を計測するための手段をさらに備え、前記視線検出器(108)からの信号は、前記周囲温度で補償される、請求項10~14のいずれかに記載の呼気分析デバイス(100)。
【請求項16】
前記視線検出器(108)は、前記視野の空間解像度を提供する対応する複数の出力信号を提供するように構成された複数のセンサ(411c、411d、411e)を備える、請求項10~15のいずれかに記載の呼気分析デバイス(100)。
【請求項17】
前記視線検出器(108)は、8×8マトリクスのIR光検出器を備える、請求項10~15のいずれかに記載の呼気分析デバイス(100)。
【請求項18】
前記監視するステップ(305)において、前記視線検出器出力信号の背景値が導出され、記録された前記視線信号シグネチャを前記記憶されている基準信号シグネチャと比較する前記ステップ(335)は、初期上昇後の信号スロープ、信号が上昇する時間区分の持続時間、上限値(21)に関連付けられた信号値、前記上限レベル(21)に関連した事前に定義されたレベル以上の信号の持続時間、ピークもしくは横這い後の信号スロープというパラメータのうちの1つまたは前記パラメータからの選択を少なくとも比較することを含む、請求項10~15のいずれかに記載の呼気分析デバイス(100)。
【請求項19】
前記記憶されている信号関係判断基準は、前記視線検出器出力信号と前記トレーサ物質信号との間の時間関係を含む、請求項10~18のいずれかに記載の呼気分析デバイス(100)。
【請求項20】
前記時間関係判断基準は、物体が前記呼気分析デバイス(100)に接近していることを示す記録されている前記視線検出器出力信号の上昇が前記トレーサ物質信号における前記ピークの開始前に発生することを条件とする、請求項19に記載の呼気分析デバイス(100)。
【請求項21】
前記時間関係判断基準は、記録されている前記視線検出器出力信号におけるピークが所定の時間区分内の前記トレーサ物質信号における前記ピークと一致することを条件とする、請求項20に記載の呼気分析デバイス(100)。
【請求項22】
前記視線検出器出力信号と前記トレーサ物質信号との間の関係を、記憶されている信号関係判断基準と比較する前記ステップ(345)は、前記視線検出器出力信号における前記ピークと前記トレーサ物質における前記ピークとの時間差を、呼気標本が前記呼気分析デバイス(100)に到達するのに必要な時間に関係した予想時間遅延に関係する所定の係数で修正することを含む、請求項21に記載の呼気分析デバイス(100)。
【請求項23】
前記視線検出器出力信号と前記トレーサ物質信号との間の前記時間関係は、呼気標本が前記呼気分析デバイス(100)に到達するのに必要な時間に関係した予想時間遅延に関係した所定の係数による、前記視線検出器出力信号における前記ピークと前記トレーサ物質における前記ピークとの予想時間差を含む、請求項19に記載の呼気分析デバイス(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼気分析デバイスおよび方法に関する。詳しくは、本発明は、分析時間の増加もしくは使用者にとっての不便なく、結果を改ざんする可能性を低減する呼気分析デバイスおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
呼気分析機器は、酩酊物質、特にエチルアルコール(エタノール)の影響下での運転を検出および防止するための手段として、特に車両ではますます一般的になってきている。呼気分析機器は、運転者の呼気中の物質の含有量の計測値を与えるスタンドアロンのユニットであり、さらに手持ち式のユニットでもあり得る。代替的に、呼気分析機器は、運転者の識別および/または車両をロックするための機器も含むシステムの一部でもよい。そのような呼気分析機器は、典型的に車両に恒久的に搭載されており、例えばダッシュボードの一体化部分であり得る。呼気分析機器はまた、作業領域、車両フリートのデポなどへのアクセスを制限するために使用される定置システムでもよい。
【0003】
適切な感度を有し、信頼性が高く、かつ十分に高速な分析を提供する呼気分析器を提供することは、容易なことではない。これは、呼気分析機器が複数の物質を検出可能であるべきであり、水分、CO2含有量などのばらつきによって妨げられるべきでない場合に特に難しい。これらの要件を満たす呼気分析機器は、本明細書に参照によって組み込まれている例えばUS7919754およびUS9746454に記載されている。
【0004】
呼気分析機器は、運転者の識別および/または車両をロックするための機器、いわゆる「アルコールインターロック装置」も含むシステムの一部でもよい。そのような呼気分析機器は、典型的に車両に恒久的に搭載されており、例えばダッシュボードの一体化部分であり得、さらに車両の制御システムに接続され得る。アルコールインターロック装置は、飲酒運転による有罪判決を受けたことがある自動車所有者のリハビリのための必須付属装置として犯罪者プログラムにおいて広く使用されている。加えて、類似システムおよびデバイスが、バス、タクシー、電車などの商業的車両において使用されている。しかしながら、これらのシステムは近い将来に個人の車両においても一般的になり、場合によっては少なくともいくつかの国および区域において必須となると考えられる。
【0005】
従来の車載呼気検査機器と固定の試験所の両方に最も一般的な手法は、深呼吸の後、使用者が自分の気道を空にするためのマウスピースを使用することである。この手法は、能動的検出と呼ばれる。正確な判定を確実にするために、使用者は、ほぼ全肺活量で強制呼気を提供しなければならない。これは、特に限られた肺活量を有する人にとっては、大幅な時間と労力を必要とする。加えて、マウスピース、もしくはマウスピースの一部は、衛生的な理由で使い捨て可能なプラスチック品の場合が多い。結果として扱いが煩雑となり、膨大な量の使い捨て可能プラスチック品が使用され、環境的な観点から疑問視されている。
【0006】
非接触検出は、マウスピースが利用されず、呼気検査装置が典型的に呼気と周囲空気との混合を受容し、酩酊物質の検出が、正常な呼吸において息を吐いている間に取得された呼気標本から判定される代替的な手法である。この検出は完全に受動的であり得、例えば、使用者が車両のルーチンの平常の起動を実行している間に行われる使用者のアクションは必要ない。代替的に、使用者は、検出プロセスを容易にするように意図された特定のアクションを行うように指示され得、例えば使用者は、空気吸入口などに向かって呼吸することを指示され得る。非接触検出の場合の1つの問題は、使用者が特定の方向に呼吸することを指示された場合などでも、検出および分析対象の物質の低濃度である。確立されている方法は、トレーサガス、典型的には非常に予測可能な量の呼気に常に存在する二酸化炭素または水蒸気を利用して、両方が標的物質の分析をトリガし、標的物質の濃度値の判定を容易にすることである。しかしながら、非接触検出を現実のシナリオにおいて満足のいくやり方で機能させるのは困難であることがわかっている。酩酊物質の濃度を正確に分析することは、非常に長い時間を要する場合がある。この必要とされる時間は、例えば、車両の運転開始時またはゲート付きの作業場に雇用主が入ろうとしたときに許容できないほどの長さとして知覚される場合がある。
【0007】
非接触呼気分析器システムを使用する場合のさらなる1つの課題は、そのようなシステムが改ざんの影響を特に受けやすい場合があることである。改ざんは、例えば、冷却された管によって呼気標本を冷却すること、または呼気標本を炭で濾過することを含み得る。改ざんは、認識されている問題であり、様々なやり方で対処されている。しかしながら、知られている手法は、典型的に、呼気分析器システムに対して大幅な複雑性を付加し、その使用をより煩雑にし、または結果を使用者に提供するために必要な時間を増加させる。
【0008】
EP3106872は、呼気分析器システムがカメラを伴って提供され、生成された画像が高度な画像分析方法で分析されて、改ざんの試行を検出および警告するシステムおよび方法を開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、先行技術の非接触検出システムの欠点を克服する呼気分析システムおよび動作方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これは、請求項1に定義されるような方法、および請求項10に定義されるような呼気分析デバイスによって実現される。
【0011】
本発明の一態様によれば、方法が提供される。使用者の呼気における酩酊物質の濃度の計測の有効性を判定するための方法は、呼気分析デバイスを使用し、呼気分析デバイスは、
酩酊物質の濃度を表すセンサ信号およびトレーサ物質の濃度を表すセンサ信号を標本抽出するように構成された計測セルと、
所定の視野を有し、視野の物体によるカバー範囲を計測し、カバー度を表す信号を出力するように構成された視線検出器とを備える。
上記方法は、
- 視線検出器の出力信号を監視し、出力信号が設定されている背景値から逸脱している場合、時間の関数として視線検出器出力信号を記録し、出力信号変化は記録された視線信号シグネチャであるステップと、
- トレーサ物質センサ信号を監視し、トレーサ物質におけるピークが検出された場合、ピークは、使用者の呼吸サイクルの可能な呼気段階を示し酩酊物質センサ信号およびトレーサ物質センサ信号に基づいて酩酊物質の呼気濃度値を導出するステップと、
- 視線検出器に由来する記録された視線信号シグネチャを、少なくとも1つの記憶されている基準信号シグネチャと比較するステップと、
- 視線検出器出力信号とトレーサ物質信号との間の関係を、記憶されている信号関係判断基準と比較するステップとを含み、
- 記録された視線信号シグネチャが記憶されている基準信号シグネチャと一致した場合、かつ記録された視線出力信号およびトレーサ物質信号が記憶されている信号関係判断基準を満たす場合、呼気濃度値の計測の有効性が確認される。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、監視するステップにおいて、視線検出器出力信号の背景値が導出され、記録された視線信号シグネチャを記憶されている基準信号シグネチャと比較するステップは、初期上昇後の信号スロープ、信号を上昇させる時間区分の持続時間、上限値に関連付けられた信号値、上限レベルに関連した事前に定義されたレベル以上の信号の持続時間、ピークもしくは横這い後の信号スロープというパラメータのうちの1つもしくは前記パラメータからの選択を少なくとも比較することを含む。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、記憶されている信号関係判断基準は、視線検出器出力信号とトレーサ物質信号との間の時間関係を含む。この時間関係判断基準は、物体が呼気分析デバイスに接近していることを示す記録されている視線検出器出力信号の増加がトレーサ物質信号におけるピークの開始前に発生することを条件とする場合がある。時間関係判断基準は、記録されている視線検出器出力信号におけるピークが所定の時間区分内のトレーサ物質信号におけるピークと一致することをさらに条件とし得る。さらに、視線検出器出力信号とトレーサ物質信号との間の関係を、記憶されている信号関係判断基準と比較するステップは、視線検出器出力信号におけるピークとトレーサ物質におけるピークとの時間差を、呼気標本が呼気分析デバイスに到達するのに必要な時間に関係した予想時間遅延に関係する所定の係数で修正することを含み得る。代替的に、視線検出器出力信号とトレーサ物質信号との間の時間関係は、呼気標本が呼気分析デバイスに到達するのに必要な時間に関係した予想時間遅延に関係した所定の係数による、視線検出器出力信号におけるピークとトレーサ物質におけるピークとの予想時間差を含み得る。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、視線検出器は熱放射を計測するように構成されている。呼気分析デバイスは、周囲温度を計測するための手段をさらに備えてもよく、視線検出器からの出力信号は、周囲温度で補償される。
【0015】
本発明の一態様によれば、呼気分析デバイスが提供される。呼気分析デバイスは、
- 酩酊物質の濃度を表すセンサ信号およびトレーサ物質の濃度を表すセンサ信号を標本抽出するように構成された計測セルと、
- 所定の視野を有し、視野の物体によるカバー範囲を計測し、カバー度合を表す信号を出力するように構成された視線検出器とを備え、
- 計測セルおよび視線検出器と接続された制御および信号処理ユニットとを備え、呼気分析デバイスは、
- 視線検出器の出力信号を監視し、出力信号が設定されている背景値から逸脱している場合、時間の関数として視線検出器出力信号を記録し、出力信号変化は記録された視線信号シグネチャであるステップと、
- トレーサ物質センサ信号を監視し、トレーサ物質におけるピークが検出された場合、ピークは、使用者の呼吸サイクルの可能な呼気段階を示し、酩酊物質センサ信号およびトレーサ物質センサ信号に基づいて酩酊物質の呼気濃度値を導出するステップと、
- 前記視線検出器に由来する記録された視線信号シグネチャを、少なくとも1つの記憶されている基準信号シグネチャと比較するステップと、
- 視線検出器出力信号とトレーサ物質信号との間の関係を、記憶されている信号関係判断基準と比較するステップとを行うように構成されており、
- 記録された視線信号シグネチャが記憶されている基準信号シグネチャと一致した場合、かつ記録された視線出力信号およびトレーサ物質信号が記憶されている信号関係判断基準を満たす場合、呼気濃度値の計測の有効性が確認される。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、視線検出器は、電磁放射を検出するように構成され、視線検出器の実効視野を判定するアパーチャを含む。視線検出器は、赤外線検出を利用するセンサを備えてもよく、熱放射を計測するように構成されている。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、視線検出器(108)のセンサは、近赤外反射率計測を利用するように構成された能動的センサである。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、視線検出器は、呼気分析装置からの事前に定義された距離にある事前に定義された領域に対応する視野を有するように構成され、事前に定義された領域は、事前に定義された距離において呼気分析デバイスを使用する人の典型的な人間の顔の領域であり、事前に定義された距離は呼気分析デバイスの適切な使用に関連付けられ、100~300mmの間である。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、呼気分析デバイスは、周囲温度を計測するための手段をさらに備え、視線検出器からの信号は、周囲温度で補償される。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、視線検出器は、視野内の物体の低解像度画像を形成し得る視野の空間解像度を提供する対応する複数の出力信号を提供するように構成された複数のセンサを備える。視線検出器は、8×8マトリクスのIR光検出器を備えてもよい。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、呼気分析デバイスは、監視するステップにおいて、視線検出器出力信号の背景値を導出し、記録された視線信号シグネチャを記憶されている基準信号シグネチャと比較するステップにおいて、初期上昇後の信号スロープ、信号を上昇させる時間区分の持続時間、上限値に関連付けられた信号値、上限レベルに関連した事前に定義されたレベル以上の信号の持続時間、ピークもしくは横這い後の信号スロープというパラメータのうちの1つまたは前記パラメータからの選択を比較するようにさらに構成されている。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、呼気分析デバイスは、視線検出器出力信号とトレーサ物質信号との間の時間関係を含む信号関係判断基準を記憶するようにさらに構成されている。この時間関係判断基準は、物体が呼気分析デバイスに接近していることを示す記録されている視線検出器出力信号の増加がトレーサ物質信号におけるピークの開始前に発生することを条件とする場合がある。時間関係判断基準は、記録されている視線検出器出力信号におけるピークが所定の時間区分内のトレーサ物質信号におけるピークと一致することをさらに条件とし得る。さらに、視線検出器出力信号とトレーサ物質信号との間の関係を、記憶されている信号関係判断基準と比較するステップは、視線検出器出力信号におけるピークとトレーサ物質におけるピークとの時間差を、呼気標本が呼気分析デバイスに到達するのに必要な時間に関係した予想時間遅延に関係する所定の係数で修正することを含み得る。代替的に、視線検出器出力信号とトレーサ物質信号との間の時間関係は、呼気標本が呼気分析デバイスに到達するのに必要な時間に関係した予想時間遅延に関係した所定の係数による、視線検出器出力信号におけるピークとトレーサ物質におけるピークとの予想時間差を含み得る。
【0023】
本発明によって、使用者の呼気中の酩酊物質の濃度の計測を検証できる呼気分析方法および呼気分析デバイスを提供可能である。
【0024】
本発明によってもたらされる1つの利点は、検証が外部データベースまたは複雑な画像分析システムに依存せずにスタンドアロンのユニットで実行可能であることである。
【0025】
さらなる利点は、検証が高速かつ信頼性が高いことであり、これは、例えば作業場における呼気分析システムおよびルーチンを実施することを受け入れられるために非常に重要である。
【0026】
さらに、本発明による呼気分析方法および呼気分析デバイスのさらなる利点は、本方法およびデバイスが手持ち式デバイス、例えば作業領域への進入口に設けられる固定デバイス、および車載デバイスを含むがそれらに限定されない様々なやり方で実施され得ることである。本呼気分析デバイスは、車両のダッシュボードに容易に組み込まれる、例えば自動車インフォテインメントシステムに提供された既存の機能および設備を利用することができる。本呼気分析デバイスはまた、車両ロックシステム、いわゆるアルコールインターロック装置と通信接続され得る。
【0027】
以下において、本発明がその非限定的な実施形態に関して、添付図面を参照して、一例に過ぎないがより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1aおよび
図1bは、本発明による呼気分析デバイスの概略図であり、
図1aは呼気分析デバイスを、
図1bは視線および視野の基本概念を示す。
【
図2a】本発明による呼気分析デバイスのセンサ信号を示す概略グラフであり、視線検出器(上方グラフ)およびトレーサを含む呼気分析デバイスの典型的なセンサ信号と、物質信号(下方グラフ)のグラフを示す。
【
図2b】本発明による呼気分析デバイスのセンサ信号を示す概略グラフであり、信号のばらつきと視線検出器の視野との間の関係を示すグラフおよび概略図である。
【
図2c】本発明による呼気分析デバイスのセンサ信号を示す概略グラフであり、視線検出器の典型的な信号シグネチャおよび定量化を示す。
【
図4】
図4a、
図4bおよび
図4cは、本発明による視線検出器配置の異なる実施形態の概略図である。
【
図5】赤外温度計測に基づく視線検出器の一実施形態のスペクトル特性のグラフである。
【
図6】その視野のグラフを含む反射近赤外放射(NIR)に基づく視線検出器の一実施形態を示す図である。
【
図7】事前に定義された視野内の光反射率を監視する発光ダイオードおよびフォトダイオードを用いる視線検出器の一実施形態によって提供された視野を示す図である。
【
図8】
図8a、
図8bおよび
図8cは、本発明による呼気分析デバイスの概略的に異なる用途例を示す図であり、
図8aは手持ち式デバイスを、
図8bは壁取り付けデバイスを、
図8cは自動車一体型ユニットを含む。
【発明を実施するための形態】
【0029】
「最上部」、「最下部」、「上方」、「下方」、「下」、「上」などの語は、図面に示される、および/またはデバイスの正常な動作中の、本発明の実施形態の形状に言及して使用されているのに過ぎず、決して本発明を限定することは意図されない。
【0030】
定義:
トレーサは、例えば、二酸化炭素もしくは水蒸気など、吐き出された呼気と本質的に関連した生理学的物質である。
【0031】
ベースラインとは、他の瞬時信号値の基準となる酩酊物質もしくはトレーサの濃度に対応する信号レベルを意味する。オフセット誤差は、ベースラインからの偏差である。
【0032】
濃度ピークは、ピーク最大値前の濃度増加およびその後の減少を伴う、時間に対する計測濃度の最大値によって定義される。
【0033】
本発明による呼気分析デバイスおよび方法は、本発明の重要な実施態様を表す、車両に搭載された非接触検出システムとして主に説明される。呼気分析デバイスは、車両において完全に一体化され得、例えば、使用者との通信のために既存の車両インフォテインメントシステムおよび/または例えば呼気分析デバイスへの空気流を検出するためにHVACシステムを利用する。統合システム呼気分析デバイスは、本明細書によって参照として組み込まれているSE1950840-7に記載されている。本発明による車両呼気分析デバイスはまた、車両内に後付けされ得、この場合、呼気分析デバイスは、通常、車両計器装備の他の部品からより独立し得る。当業者によって認識されるように、本教示は、例えば作業領域、フリートデポなどへの進入口におけるシステムなど、スタンドアロンのシステムに等しく適切である。本発明による呼気分析デバイスおよび方法はまた、車両または他の場所において使用される手持ち式システムでもよい。
【0034】
本発明による呼気分析デバイスおよび方法は、例えば、本明細書によって参照により組み込まれているSE1950840-7およびSE2050105-2に記載されるような呼気分析デバイスの速度および性能を改善するための最近開発されたシステムおよび方法と容易に組み合わされ得る。
【0035】
図1aは、本発明による呼気分析デバイス100の概略図である。呼気分析デバイス100は、ハウジング101と、計測セル102と、視線検出器108と、1つまたは複数の視聴覚通信ユニット113と、制御および信号処理ユニット114とを備える。呼気分析デバイス100は、事前に定義された最大距離内の使用者からの呼気を分析するように適合されている。この距離における酩酊物質およびトレーサガスの両方の濃度を導出することによって、酩酊物質の呼気濃度が導出可能である。トレーサガスは、既知の呼気濃度を有し、その濃度を計測セル102の位置で計測することによって、呼気の希釈量が導出可能である。典型的に、二酸化炭素(CO
2)もしくは水蒸気(H
2O)は、トレーサガスとして使用されており、人間の呼気における容量で、それぞれ、公称濃度4.2および5.6パーセントを示す。
【0036】
計測セル102は、ハウジング101における入口103および出口104と、例えばファン105など、入口103から出口104へ空気を強制的に流す手段とが設けられる。計測セル102は、動作中、呼気標本抽出入口103の位置から引き出された空気に継続的に曝される。入口103は、呼気分析デバイス100の動作中に使用者に対向するハウジング101の表面上に配置されている。
【0037】
呼気分析デバイス100が車両内に設けられる実施態様では、呼気分析デバイス100は、例えばダッシュボードに完全に一体化されてもよく、その場合、ハウジング101は分離した部品ではない。また、完全に一体化されたデバイスの場合、呼気分析デバイス100は、専用視聴覚通信ユニット113および専用制御および信号処理ユニット114を有することができず、むしろ車両内に提供されたそのような機能を利用する。したがって、これらのユニットは、一体化実施態様において機能ユニットとして見なされるべきである。
【0038】
計測セル102は、赤外線(IR)分光の原理によって動作していることが好ましい。IRエミッタ106は、計測セル102の内壁からの反射後にIR検出器107によって吸収されているIR放射線のビームを送出する。内壁の表面は、例えばアルミニウムなどの高反射性材料で被覆されていることが好ましい。IRビームの反射回数およびコリメーションは、トレーサおよび酩酊物質のIR吸収係数および濃度の期待される範囲に適合され得る。エミッタ106は、典型的に、小質量を有する黒体膜であり、したがって5Hz以上の繰り返し周波数を有する3~10μmの広波長範囲における脈動放射線を出射するように適合されている。IR検出器107は、9.5μmの波長において吸収ピークを有する、例えばエチルアルコールなどの1つまたはいくつかの酩酊物質の吸収ピーク、およびそれぞれ、4.3および6.0μmにおいて吸収ピークを呈する、二酸化炭素および水蒸気などの1つまたはいくつかのトレーサガスになるように調整された狭帯域フィルタを含む。酩酊物質もしくはトレーサガスの存在は、結果としてIR強度の低減をもたらし、このIR強度は、特定の吸収ピークになるように適合された光学フィルタを有し、かつIRエミッタ106の繰り返し周波数と同期して動作するマルチチャネルIR検出器107によって電気信号に変換される。当業者によっても理解されるように、異なる原理にしたがって動作する他のタイプの計測セルも利用され得る。計測セルまたは計測原理の選択は、例えば、分析対象の特定の酩酊物質、または消費電力もしくは費用などの構造制約に依存し得る。本発明は、酩酊物質の特定の呼気濃度の呼気濃度計測に関して、特定の計測セルもしくは計測原理に限定されない。
【0039】
視線検出器108は、呼気標本が正確に分析されるように、物体が提示され、入口103を基準とし正確に位置決めされた場合、情報を提供するように配置される。これは、視線検出器108が物体存在信号を提供するように配置されていると言及される。視線検出器108はさらに、物体の性質、すなわち、物体が生きている人間か否かに関する信号シグネチャと呼ばれる情報を提供するように配置される。様々な視線検出器によって実施される複数の異なる計測技術は、さらに以下で説明される。
【0040】
図1bに概略的に示されるように、視線検出器108は、Ωで示される、定義された実効視野を有する。この視野は、典型的に、ステラジアンで定量化される立体角として設けられる。代替的に、この視野は、水平もしくは垂直方向における角度αとして、またはそれぞれ、水平方向および垂直方向における角度αおよび角度βの組み合わせとして与えられ得る。視線検出器は、典型的に、基本設計からの固有の視野を有する。この固有の視野は、視線検出器108がハウジング101内にどのように搭載されるかによって、さらに1つまたは複数レンズなどの手段と、および/または実効視野Ωを与える視線検出器108の前方にあるアパーチャとを提供することによって変更され得る。固有の視野を伴う視線検出器を有する当業者は、所望の実効視野のために画角を変更する手段をどのように提供するかを知っている。視野は、典型的に固定されているが、視野を調節するための手段が想定され得る。ハウジング101内に搭載された場合の視線検出器108は、矢印Aによって示される、
図1bにおける視野の考えられる中心線を定義する視野方向をさらに有する。視野方向は、典型的に、どのように視線検出器108がハウジング101内に搭載されているか、および/またはどのように呼気分析デバイス100全体が例えばダッシュボード上に搭載されているかに主に依存する。視線検出器108および視野を制御するための手段は、それらが必要な場合、典型的に、実効視野および視野方向が呼気分析デバイス100の正常動作中の使用者の顔の位置およびカバー範囲と一致するようにハウジング内に配置される。典型的に、使用者は、その被験者の顔と入口103との間の事前に定義された最大距離、通常100~300mm内で入口103に向かって息を吐くように指示される。200mm、それぞれ150mmの高さ/幅を有する典型的な顔は、20~100°の範囲において角度αおよびβを与え得る。上述したように、視野、さらに視野方向は、例えば、検出器または光学構成の形状を調節することによって調節可能であり得る。一実施形態では、視野および/または視野方向は、制御および信号処理ユニット114によって調節可能であるパラメータである。
【0041】
視線検出器108は、典型的に、呼気分析デバイス101の外面101a上の計測セル102の呼気標本抽出入口3に横に位置決めされている。視線検出器108の視野αは、事前に定義された最大距離の位置における被験者の顔によって取り囲まれるように適合されている。視線検出器108は、センサ111、例えば典型的に多層微細構造111を備えており、その視野内の物体の平均温度、反射率、もしくは他の特定の特性に対応する電気信号を提供する。微細構造111の作用面積は、典型的に、0.3×0.3mmである。
【0042】
その視野は、光学装置110、典型的に屈折レンズによって事前に定義された距離に適合されている。
【0043】
一実施形態によれば、呼気分析デバイス100は、隣接した環境、例えば周囲温度を監視するように適合された補助センサ112が設けられている。これは、例えば視線検出器108がIRセンサであり、かつpが周囲温度に対して何らかの交差感度を有し得る場合に有益になり得る。放射熱および伝導熱の両方の効果を計測し、信号を合成することによって、周囲温度からの影響を最小限にし得る。補助センサ112は、湿度、気圧、および照度を含む他の周囲の変量も同様に計測するように配置され得る。
【0044】
呼気分析デバイス100は、電源(不図示)および呼気分析デバイス101と、他の電子機器、例えば車両の操縦性を制御するための手段との間での情報の双方向転送のためのデータ通信手段(不図示)をさらに含み得る、またはそれらに接続され得る。
【0045】
使用者の呼気中の酩酊物質の濃度の計測を有効化する本発明による呼気分析デバイス100の機能性および方法が、
図2a~
図2cの概略的グラフおよび
図3のフローチャートを参照して、まず一般的な場合において説明され、その後、視線検出器108に関係する異なる検出器技術を利用する異なる実施形態が説明される。
図2aは、視線検出器108からの出力信号および計測セル102からの出力を示し、Tで示される上方の曲線はトレーサ信号に関し、下方の曲線Sは物質信号に関する。
【0046】
図1a~
図1bを参照して説明される呼気分析デバイス100は、方法のステップを実行するように構成されている。特に、呼気分析デバイス100の計測セル102は、酩酊物質の濃度を表すセンサ信号およびトレーサ物質の濃度を表すセンサ信号の標本抽出するように構成されており、上述したIRベースの技術によるものであることが好ましいが、それに限らない。機能性は、制御および信号処理ユニット114によって制御され、センサ/検出器信号は、制御および信号処理ユニット114によって処理される。視線検出器108は、所定の視野Ωを有して構成され、視野の物体によるカバー範囲を計測し、カバー度合を表す信号を出力するように構成されている。
【0047】
呼気分析デバイス100を用いて実行され、制御および信号処理ユニット114によって制御される本発明による方法は、
305: - 視線検出器108の出力信号を監視し、
310: - 出力信号が設定されている背景値から逸脱している場合、
315: - 時間の関数として視線検出器出力信号を記録し、出力信号変化は記録された視線信号シグネチャであるステップと、
320: - トレーサ物質センサ信号を監視し、
325: - トレーサ物質におけるピークが検出された場合、ピークは、使用者の呼吸サイクルの可能な呼気段階を示し、
330: - 酩酊物質センサ信号およびトレーサ物質センサ信号に基づいて酩酊物質の呼気濃度値を導出するステップとを含む。
呼気濃度値の計測の有効性は、
335~340: - 記録された視線信号シグネチャが記憶されている基準信号シグネチャと一致するかどうかを判定し、それにより人間が呼気分析デバイス100に接近していることを示すために、視線検出器108に由来する記録された視線信号シグネチャを、少なくとも1つの記憶されている基準信号シグネチャと比較するステップと、
345~350: - 記録された視線出力信号がトレーサ物質信号と予想された関係を有するかどうかを判定するために、視線検出器出力信号およびトレーサ物質信号との間の関係を、記憶されている信号関係判断基準と比較するステップとによって判定される。
355: - 酩酊物質の導出された呼気濃度値は、記録された視線信号シグネチャが記憶されている基準信号シグネチャと一致することと、視線検出器出力信号およびトレーサ物質信号が記憶されている信号関係判断基準を満たすこととの両方の場合、改ざんされていないという意味で有効な計測と判定される。
【0048】
視線検出器108の出力信号を監視するステップ305および視線信号シグネチャを記録するステップ310~315は、典型的に、背景値もしくはベースライン値を設定することを含み得る。これは、1秒または数秒で標本抽出され平均化された出力信号値であり得る。視線検出器108の視野内にある物体を示す背景レベルからの偏差が検出され、視線信号シグネチャの記録を開始する。この検出を行うやり方を、以下でさらに説明する。
図2aに示されたレベル20は、典型的な背景信号の表現であり、上限レベル21は、視野内にある物体によってもたらされる信号の表現である。その物体もしくは人が視線検出器108の視野内に留まる時間に応じて、上限レベル21は、横這い、広いピーク、もしくは狭いピークの形態を有し得る。狭いピークは、人が呼気分析デバイス100に向かって傾いて、多少または連続的に動いて後退していることに対応する。
【0049】
一実施形態によれば、視線信号シグネチャは、例えば、物体が動いている、または物体のアクション、例えば息の吐き出しを検出していると見なされ得る、
図2bに示される上限レベル21上の信号の時間変化を含む。例えば、息吐き出しによって引き起こされた熱変化は、IRセンサの形態の視線検出器108によって検出され得る。
【0050】
視線検出器108の出力信号とトレーサ物質信号との間の関係を比較するステップ345~350における本発明の実施形態によれば、記憶されている信号関係判断基準は、視線検出器出力信号とトレーサ物質信号との間の期待される時間関係を含む。この時間関係判断基準は、物体が呼気分析デバイス100に接近していることを示す記録されている視線検出器出力信号の上昇がトレーサ物質信号におけるピーク44の開始前に発生することを条件とする場合がある。時間関係判断基準はまた、記録されている視線検出器出力信号におけるピークが所定の時間区分内のトレーサ物質信号におけるピークと一致することであり得る。この比較は、呼気標本が呼気分析デバイスに到達するのに必要な時間に関係する予想時間遅延に関係する所定の係数によって、視線検出器出力信号におけるピークとトレーサ物質におけるピークとの時間差を修正することを含み得る。代替的に、この視線検出器出力信号におけるピークとトレーサ物質におけるピークとの間の時間遅延は、予測可能な時間遅延が呼気分析デバイス100を使用している使用者の正確かつ正常な挙動と関連付けられ得る点において、本質的に関係判断基準であり得る。一方、使用者が入口103に近い管から供給された例えばCO2を使用して計測値を改ざんしようとすると、結果として、予想とは異なる時間遅延がもたらされる。
【0051】
本発明の実施形態によれば、記録されているシグネチャ信号を記憶されている基準信号シグネチャと比較するステップ335~340は、初期上昇後の信号スロープ、信号を上昇させる時間区分の持続時間、上限値21(横這い値)に関連付けられた信号値、上限レベル21に関連した事前に定義されたレベル以上の信号の持続時間、ピークもしくは横這い後の信号スロープというパラメータのうちの1つまたはパラメータからの選択を少なくとも比較することを含む。適したパラメータと、それらがどのように利用され得るかが
図2b~
図2cに概略的に図示されている。
図2b)は、視線LoS信号、同期したトレーサT信号、視線検出器の視野内に出現した人間の顔の存在の図を提供する。最初に、視野は、示されたように非構造化され得る、または構造化されているが固定の表面であり得る背景を表す。人間の顔が視野内に出現すると、視線信号が定常状態背景レベルから変化し、視野の大部分が被覆されたときに典型的に横這いまたは広いピークの形態で上限レベルに到達する。いくつかの信号変化が、人間の顔の小さな動きに、さらに例えば口が開いた状態、および息を吐く形状における変化に対応するこの上限レベルで観察され得る。トレーサ信号Tは、典型的に、人間が息を吐くのと一致した明確なピークを呈する。人間の顔が視野から退出することによって、視線信号は、横這いレベルから背景レベルに戻る。
【0052】
図2c)は、時間の関数として視線検出器からの視線信号を幾分より詳細に図示している。この信号は、時間セグメントに分割可能であり、その時間セグメントは各々が、そのセグメントの信号スロープ特性によって特徴付けられる。セグメント間の遷移は、セグメントと、この例では座標L
i;t
i、i=1,2,・・・8との間の線形延長の交差として定義される。この例の座標L
i;t
iは、信号シグネチャを定義する。特に、ほぼ平坦な時間セグメント0~t
1は背景信号を表し、t
1~t
2は物体、通常は検査対象の人間の顔が視野に入ることと一致する鮮明な上昇を表し、t
5~t
6は物体が視野を満たす横這いを表し、t
6~t
7は、物体が視野から移動するときの下降の開始を表す。追加の時間セグメントt
2~t
3、t
3~t
4、t
4~t
5、t
7~t
8は、信号シグネチャの解釈のために有意な場合とそうでない場合がある中間状態である。
【0053】
Li;tiの座標の識別は、現在のスロープの値を提供し、それを前の時間標本と比較する連続した時間標本の微分学を使用する単純なアルゴリズムによって実行される。
【0054】
上記で説明され
図2c)で示された例では、記憶されている基準信号シグネチャは、L
i;t
i座標のパラメータセットであり、i=l,2,・・・Nであり、(i)背景静止段階、(ii)上昇段階、(iii)横這い、(iv)下降段階の開始の特性を有する。基準L
i;t
i座標のセットは、典型的に、視線検出器の実際の実施から得られた実験的データに基づいて正常な変動性のための許容範囲を含む。
【0055】
ある視線信号を僅かに異なる視野を有する別の視線信号と比較すると、2つの信号は、物体が視野に進入または退出する並進運動に起因する僅かな時間遅延を除いて、ほぼ等しい見た目を明らかに有する。したがって、座標Li;tiは、そのような場合におけるそれらの2つの信号間で時間において僅かに異なる。対照的に、例えば口を開けるなど、物体の形状の時間変化は、Li;ti座標の類似した時間差を提供しない。いくつかの物体が互いに独立して移動する場合、Li;ti間の時間差はあまり順序立った時間変化を呈しておらず、操作試行の場合を示す。
【0056】
一実施形態によれば、視線信号シグネチャは、空間解像度をさらに有する視線検出器108に関し、それによって時間の経過に伴う信号の変化もまた特定の領域に帰する場合がある。例えば、IRセンサの単純なアレイは、物体の一部に局所化された時間に依存した熱変化を、物体が温かい息を吐き出す人間の顔である場合に発生し得る「画像」に分解する。2つまたはいくつかの領域からの合成信号を使用することによって、物体の並進運動と物体の形状の変化とを区別可能である。並進運動は、近接しているが異なる視野を表す信号シグネチャ間の時間差においてそれ自体が顕在化する。一方、形状の変化から生じる信号シグネチャは、2つの近接した視野において同時に発生する。
【0057】
視線検出器108が波長範囲5~8μmで動作している受動的IRセンサであり、その出力信号がその視野内の物体の平均温度に対応する一実施形態によれば、以下の信号特性は有効である。横這いレベル21と背景レベル20との間の差は、人の顔の皮膚温度と、人の顔が視線検出器108の視野内にないときの背景の平均温度との間の差に対応する。
【0058】
視線検出器108が事前に定義された視野を照射する発光ダイオードと、基本的に同じ視野からの反射光を検出するように構成されたフォトダイオードとを備える一実施形態によれば、背景レベル20および上限レベル21はそれぞれ、その視野内の物体の平均反射率に対応する。外部光源からの外乱は、発光ダイオードとフォトダイオードとの間の同期動作によって、さらに可視範囲を僅かに上回る0.8~1.0μmまでの動作波長範囲を選択することによって最小限に抑えることができる。
【0059】
視線検出器108の各実施形態における共通特性は、電磁放射が受動的または能動的モードの動作のいずれかにおいて用いられることである。実施形態の視線検出器108は、実際の視野を直接的または間接的に決定するアパーチャを含む。波動回折の望ましくない影響を避けるために、このアパーチャは、動作波長範囲よりも非常に大きいことが好ましい。
図4a~
図4cは、視野109を画定する光学装置110およびセンサ111を多層微細構造111の形態で含む3つの代替実施形態における視線検出器108を示す。
【0060】
いくつかの受動的および能動的センサ原理は、センサ111のために用いられ得ることを理解されたい。赤外温度計測は受動的センサの一例であり、人間の顔の狭い皮膚温度範囲は、背景に対する有用なコントラストを提供する。近赤外(NIR)反射率計測の使用は、能動的センサの例である。この場合の視野は、NIR放射線の明確な発散ビームによって画定される。視野内の拡散反射物体の存在は、NIR放射器のすぐ近くのフォトダイオードによって検出され得る反射率信号を提供する。
【0061】
図4a)の視線検出器装置408aは、視野405aを画定する幅wを有する開口410aを含む視線原理に基づく。
【0062】
幅Faを有する検査対象の人の顔と開口410aとの間の事前に定義された距離Daは、角度qaによって視野405aを画定し、ここでtan qa/2=Fa/2Daである。さらに、開口410aの幅w、微細構造411aのサイズs、および呼気分析デバイス100の外面と微細構造411aの表面との間の距離daは、式(1)によって与えられる。
【0063】
【0064】
式(1)を使用することによって、F
a、D
a、d
a、およびsが既知のとき、wが決定され得る。数値F
a=150mm、D
a=100mm、s=0.3mm、およびd
a=0.5mmを使用すると、開口幅w=0.45mmが適正である。したがって、
図3a)に示す構成は、比較的短距離D
aに対して適正である。人間の大人の顔は、典型的に、水平方向および垂直方向それぞれにおいて150mmおよび200mmの近似幅を有する楕円形を有する。開口410aの形状は、選択的に、対応して楕円形もしくは長円形であり得る。
【0065】
視線検出器装置408bの一実施形態は、
図3b)に概略的に示され、人の顔と、呼気分析デバイス100のハウジング101の外面との間のより長い距離において適切な光学装置410bを備える。光学装置410bは、熱放射を人の顔F
bからセンサ411bへ集束するために設けられ、好ましくは微細構造である屈折レンズ410bを備える。距離D
bおよびd
bは、
図3b)に示すように定義される。レンズの焦点距離fは、式(2)から計算可能である。
【0066】
【0067】
微細構造11bのサイズs間の関係は、式(3)によって与えられる。
【0068】
【0069】
以下の数値Db=300mm、db=0.6mm、およびs=0.3mmを代入すると、結果としてf=0.6mmおよびFb=150mmとなる。したがって、光学装置110bは、幅Fb=150mmを有する人の顔と呼気分析デバイス101の外面との間の距離Db=300mmに対して十分な視野を提供する。
【0070】
レンズ410bの材料は、受動的IR温度計測センサの場合に5~8μmの波長範囲、NIR反射率センサの場合に0.8~1.0μmの波長範囲において、好ましくは1.5~1.7の屈折率および低吸収率を有するべきである。ポリエチレンおよびポリエステル(Mylar(商標))は、十分な赤外線伝送特性を有するポリマーの例である。適切な球面レンズ形状もしくは放物線レンズ形状は、ポリマー材料の射出成形もしくはダイカストによって得られ得る。
【0071】
視線検出器装置408cの一実施形態は、
図4cに概略的に示されており、各々を放射熱検出が分離した領域に分割可能にする異なる視野および焦点距離を呈する複数のレンズ410d、410e、410fを伴う光学装置410cを備えており、好ましくは微細構造の複数のセンサ411c、411d、411eは、異なるアパーチャおよび角度的視野を可能にするように1つまたはいくつかの像平面内に位置する。当業者には理解されるように、図示された3つのレンズおよび3つのセンサを伴う装置は、非限定的な例である。より多くのレンズ/センサが設けられてもよく、例えば、2D-アレイで設けられてもよい。角度的な熱分布に関する情報を追加することによって、センサ411c、411d、411eからの合成信号のより高精度の分析が実現可能である。
【0072】
図5は、黒体放射のプランク方程式によるl=2~10μmの波長範囲内で温度35°Cにおける黒体BBからの熱放射の赤外スペクトル分布のグラフを示す。人間の皮膚は、皮膚の色にかかわらず約0.95の放射係数を呈しており、したがって黒体からの計算された熱放射は、人間の皮膚からの熱放射の正確な近似である。温度が35°Cから増加すると、BBで示されたグラフは、より短い波長に向かってシフトし、プランクの方程式からも明らかなように、大きさにおいても増加する。したがって、1つまたはいくつかの波長間隔における放射電力の計測は、表面温度の間接的な計測である。
【0073】
また、
図5のグラフには、有益なことにセンサ111として使用され得るIII-V半導体インジウムヒ素アンチモン化合物InAsSbに基づく光起電多層微細構造のスペクトル反応が示されている。この多層微細構造は、電荷担体、電子、もしくは正孔の減少を呈する少なくとも1つの層を含む。空乏層は、pドーパント材料もしくはnドーパント材料間のpn接合によって、またはショットキー障壁によって生成可能である。この層内に適切なエネルギーを伴う光子が吸収されると、電荷および電圧が生成される。
図5で「InAsSb」と表記されている曲線の詳細な反応特性は、ヒ素AsおよびアンチモンSbという元素間の置換によって修正され得る半導体材料のエネルギーバンドギャップによって判定される。そのような組成のばらつきによって、長い波長で発生する下降は、1.5μm程度だけより短い波長にシフトされ得る。
【0074】
曲線InAsSbと比較される異なるスペクトル分布を有するいくつかの微細構造を組み合わせることによって、皮膚温度計測の精度が大幅に改善され得る。十分な特性を伴う光起電微細構造は、日本、東京の旭化成エレクトロニクスの製品ラインAK9752、AK9754、AK9756から市販されている。
【0075】
光起電微細構造は、熱放射に反応する光起電力素子に加えて熱伝導に反応するセンサ素子を含み得る。有益なことに、微細構造が事前に設定され、制御された温度まで加熱または冷却されることを可能にするペルチェ素子も含み得る。
【0076】
また、ロングパスフィルタLPの分光透過曲線も、
図5のグラフに含まれている。ロングパスフィルタLPは、より短い波長において射出する光源からの干渉に対する交差感度を最小限に抑えるために、センサ111の光路に挿入され得る。ロングパスもしくはバンドパス透過特性は、様々な無機質かつ高分子の材料(S.Musikant Optical Materials,1985年,176~199頁)を使用して実現され得る。
図5のスペクトル分布は、黒体放射体、光起電微細構造、およびロングパスフィルタそれぞれの放射(E)、反応(R)、および透過(T)の最大値に正規化されている。
【0077】
光起電微細構造の形態におけるセンサ111は、例えば、真のDC応答を提供する際に、熱電原理によって動作しているサーモパイルと比較して、顕著な利点を有する。熱電デバイスは、2つ以上の位置間の温度差を必要とし、操作性に関して低い周波数限界を設定する。したがって、熱伝導および小型の設計に起因する制限は、光起電構造と比較して熱電デバイスの魅力を低減する。光起電微細構造のさらなる利点は、より高い信号対雑音比をもたらす優れた解像度である。
【0078】
図6および
図7は、本発明の物理的な実施態様の例として2つのタイプのデバイスで得られた視野の表現を示す。
【0079】
図6のグラフは、市販の8×8マトリクスのIR光検出器(Panasonic AMG88)で得られた視野の水平および垂直角度分布を示す。本実施態様による視線検出器によって、視野が低解像度画像に分割され得る。水平および垂直方向の各々における±30度の全視野は、8×8=64個の別個の素子に分割されることができ、視線信号が64個の素子の各々からの信号のいくつかの合成から構成され得る。
【0080】
図7のグラフは、近傍における物体の反射率を監視する市販の発光ダイオードおよびフォトダイオード(VCNL3040、Vishay Semiconductors,Inc.)を含む視線検出器によって提供される視野の一例を表す。グラフに示すように、視野は、±15度で50%の減少を有する環状の反射率分布によって表される。
【0081】
図8は、本発明によるによる呼気分析デバイスの典型的な動作を示し、このデバイスは、
図8aに示すように手持ち式デバイス81a、
図8bに示すように壁に取り付けられた自立型器具51b、または
図8cに示すように、例えば車両のハンドル(図示)もしくはダッシュボードと一体化されたユニット51cに組み込まれてもよい。
【0082】
図8aに示すように、手持ち式デバイス51aの場合、使用者は、通信ユニット113を介して、手でデバイス51aを把持し、事前に定義された距離内に持ってきた後にそれに向かって息を吐くように指示される。
【0083】
図8bに示すように、壁に取り付けられた自立型器具51bの場合、使用者は、通信ユニット113を介して、事前に定義された距離に到達するまで器具51bに接近した後に、それに向かって息を吐くように指示される。
【0084】
図8cに示すように、車両のハンドル内などに一体化されたユニット51cの場合、検査対象の人は、通信ユニット113を介して、ユニット51cに向かって屈みこみ、それによりそれを事前に定義された距離内に持っていった後に、それに向かって息を吐くように指示される。
【0085】
使用者がデバイスに近づくこと、またはデバイスに向かって傾くことのいずれかの結果である使用者と呼気分析デバイス100との間の相対距離の変化は、
図2a~
図2cのグラフによる視線検出器信号をもたらす。視線検出器信号シグネチャにおける詳細は、
図3を参照して説明した方法で利用された基準信号を記憶した基準信号シグネチャの設定時に考慮されることが意図される実施態様に応じて異なる。当業者は、典型的および好ましくは使用者が機器を試験する限定セットの実験に基づいて、特定の実施態様に関連する適した基準信号シグネチャを容易に想到するであろう。
【0086】
上述した実施形態は、本発明のシステムおよび方法の説明上の例として理解されたい。様々な修正、組み合わせおよび変更が上記実施形態になされ得ることは当業者であれば理解されるであろう。特に、異なる実施形態における異なる部分解決策は、技術的に可能であれば他の構成において組み合わされ得る。
【国際調査報告】