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特表2024-520502アルキル(メタ)アクリレートを製造するための反応器および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】アルキル(メタ)アクリレートを製造するための反応器および方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/08 20060101AFI20240517BHJP
   C07C 69/54 20060101ALI20240517BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240517BHJP
【FI】
C07C67/08
C07C69/54 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573175
(86)(22)【出願日】2022-05-19
(85)【翻訳文提出日】2023-11-27
(86)【国際出願番号】 EP2022063559
(87)【国際公開番号】W WO2022248328
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】21176498.0
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319013746
【氏名又は名称】レーム・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Roehm GmbH
【住所又は居所原語表記】Deutsche-Telekom-Allee 9, 64295 Darmstadt, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シュテフェン クリル
(72)【発明者】
【氏名】ベライド アイト アイサ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス リューリング
(72)【発明者】
【氏名】ムニール スティトゥ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス グレフ
(72)【発明者】
【氏名】オラフ メアカー
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB46
4H006AB84
4H006AC48
4H006BA05
4H006BA25
4H006BA81
4H006BA83
4H006BA85
4H006BC14
4H006BC32
4H006BD36
4H006BD52
4H006BD53
4H006BD81
4H006BE30
4H006KA06
4H039CA66
4H039CC60
4H039CG10
4H039CL25
(57)【要約】
本発明は、粉末貴金属含有触媒の存在下で、(メタ)アクロレイン、アルキルアルコール、特にメタノール、および酸素含有ガスの、アルキル(メタ)アクリレートへの、特にメチル(メタ)アクリレートへの不均一触媒酸化反応を実施するために適した新規の方法および反応器に関する。ここで特定の態様は、粒子状触媒の効果的な保持および特に新たな触媒バッチ中にその調製の結果として存在する触媒粉末の微細画分の連続的な搬出である。そのような微細画分は、反応の間の摩耗によって生成されることもある。さらなる特徴は、それらの搬出された触媒画分の効果的な再循環、回収および利用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクロレインから出発し、それとアルキルアルコールとを、酸素含有ガスおよび粒子状の粉末触媒の存在下で、液相中で反応させることによる、アルキル(メタ)アクリレートの製造方法であって、
a. 用いられる触媒粉末の一部が、反応の間に生成物溶液と一緒に分級方式で反応器から搬出され、
b. 反応器内に残留する触媒画分は、触媒搬出物に比して、より大きな粒子サイズへとシフトしたより狭い平均粒子サイズ分布を有し、
c. aによる触媒搬出物が少なくとも1つのさらなるフィルタで捕集され、
d. 前記触媒搬出物が任意に少なくとも部分的に前記反応器に再循環され、且つ
e. 前記触媒搬出物が任意に少なくとも部分的に取り出され、後処理に送られて、用いられた触媒金属の少なくとも1つが回収されること
を特徴とする、前記方法。
【請求項2】
メタクロレインの酸化的変換が、中心の活性酸化金属として金またはパラジウムを、さらなる担体材料を含めた総質量に対して0.1質量%~10質量%の濃度で含む粉末の新たな触媒を用いること、
触媒粒子が0.1~300μmのサイズを有し、存在する触媒粒子の95体積%より多くが200μm未満のサイズを有すること、および
触媒粒子の50体積%より多くが10~90μmのサイズを有すること、および
0.1μm~10μmのサイズを有する反応器内の触媒粒子の微細画分が10体積%未満であること
を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1時間あたり0.5質量%未満の反応器内に存在する触媒粉末が、反応の間に生成物溶液と一緒に分級方式で反応器から搬出されること、
1000時間の稼働時間後の反応器内に残留する触媒画分において、全ての触媒粒子の98体積%より多くが10μmを上回る粒子サイズを有すること、
触媒搬出物が、1~30μmのサイズの粒子の保持を可能にする少なくとも1つのさらなるフィルタ内で捕集されること、および
傾斜沈降器の下流のフィルタ内で保持される粒子は、50体積%より多くの程度まで30μm未満の粒子であること
を特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
用いられる粉末触媒が、平均粒子サイズ分布30~100μmを有すること、および
反応器媒体と共に搬出される微細画分が平均粒子サイズ分布1~15μmを有すること
を特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記アルキルアルコールがメタノールであり、前記アルキルメタクリレートがMMAであることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも50体積%の程度まで30μm未満の粒子からなる粒子集合体が反応器から連続的に搬出されて、MMA、メタクリル酸、水、およびメタノールを含有する反応媒体中に懸濁された形態でフィルタに供給されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
反応器を出る反応媒体が、20質量%を上回り且つ50質量%未満のMMA含有率を有し、1%~15質量%の水含有率を有し、且つ20質量%未満の未変換のメタクロレインを含有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの分級沈降装置と、触媒粒子の微細画分を含有する反応媒体によって連続的に横切られる少なくとも2つのフィルタとの組み合わせが使用され、且つ少なくとも1つの分級沈降装置の後の第1のフィルタが、引き続く第2のフィルタよりも低い保持能力を有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
分級沈降装置が反応器シェル内に取り付けられること、および少なくとも1つの下流のフィルタが反応器シェルの外側に配置されことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
次の工程作業の上流、好ましくは蒸留、脱気、相分離または抽出の上流の最終フィルタが、10μm未満の粒子についての保持能力を有し、その結果、10μmを上回る直径を有する1ppm未満の触媒粒子が次の工程作業へと通過することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
直径の、気化された液体レベルの高さに対する比が1:1~1:50である反応器内で反応が実施されること、前記反応器が少なくとも2つの領域AおよびBを含有すること、および領域Aから各々の領域Bへの移行部で、反応混合物が領域Bに入る際の反応混合物の流れを均一化する内部構造物が存在し、ここで領域Aの体積の、全ての領域Bの総体積に対する比が1を上回り且つ500未満であることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記反応器が1つ以上の供給導管を含み、それを通じてアルキルアルコールと(メタ)アクロレインとの混合物が供給され得ることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記分級沈降装置、領域Cが、水平に対して傾斜角を有する複数のチャネル状のプロファイル、管またはラメラからなり、各々、入口で同じ圧力を有することを特徴とする、請求項8または9に記載の方法。
【請求項14】
前記沈降装置が傾斜沈降器であることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記沈降装置がハイドロサイクロンであることを特徴とする、請求項8または9に記載の方法。
【請求項16】
相対的に大きな触媒粒子が分離装置内で保持されて、領域Bへと再循環されること、相対的に小さな触媒粒子が少なくとも1つのフィルタ装置を使用して捕集されること、および反応器下部の領域Aに、ノズルまたは気化装置を介して酸素含有ガスが積極的に供給されると共に、少なくとも1つの領域Bは反応混合物のための積極的な気化のための装置を含まないことを特徴とする、請求項11から15までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
攪拌手段または垂直搬送ポンプが領域Aに配置されること、および領域Aおよび少なくとも1つの領域Bが内部構造物によって、好ましくは隔壁によって互いに分離され、領域Aから各々の領域Bへの移行部での内部構造物は領域Bに気泡が入ることを大幅に防止することを特徴とする、請求項11から16までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
体積分布に基づく平均触媒粒子サイズが50~120μmであることを特徴とする、請求項1から17までのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末貴金属触媒の存在下で、(メタ)アクロレイン、アルキルアルコールおよび酸素含有ガスの不均一触媒酸化反応を実施してアルキル(メタ)アクリレートをもたらすために適した新規の方法および反応器に関する。ここで特定の態様は、粒子状触媒の効果的な保持および新たな触媒中にその調製の結果として存在するかまたは反応の間に摩耗によって生成される触媒粉末の微細画分の連続的な搬出である。さらなる特徴は、それらの搬出された量の触媒の効果的な再循環、回収および利用である。
【0002】
(メタ)アクリレートとの用語は下記でアクリル酸およびメタクリル酸の誘導体を意味するとして理解されるべきである。
【0003】
液相中での不均一触媒反応は技術文献内に多く記載されている。それらは例えばコバルト触媒されたフィッシャー・トロプシュ合成、水素を用いたパラジウムおよびニッケル触媒された水素化、および多数の酸化反応を含む。
【0004】
この背景に対して、本発明による反応器システムは、そのような方法の長期的に問題のない連続稼働を、変わらない活性および選択率で達成することを可能にし、使用される触媒はより長く用いられることができ、反応器からの貴金属含有搬出物を回収し且つ再循環することができる。
【0005】
これは、そのような方法を可能な限り単純で、経済的に実現可能且つ環境に優しい方式で実施する可能性をもたらす。
【背景技術】
【0006】
固相に加えて少なくとも1つの液相が存在する不均一触媒プロセスは、いわゆるスラリー反応器内で実施されることが多い。
【0007】
それらのプロセスは、触媒が反応器内でペレットまたは成形体として固定されている、広く使用されている流動床気相プロセス(例えばプロペン/アンモニア/空気からのアクリロニトリルの生成、または相応の前駆体からの(メタ)アクロレインおよびメタ(アクリル酸)の気相生成)に比して本質的な違いおよび基本的な利点を有する。懸濁された触媒粒子/粉末を使用するスラリー反応器は、特に必要とされる高い反応温度の結果として、気相の固定床触媒が適切な選択率および収率を示さないところで特に使用される。
【0008】
これは一般に、とりわけ有機基質の部分酸化の群からのいくつかの強い発熱反応に該当する。これは特に、(メタ)アクロレインから(メタ)アクリル酸への酸化に該当し、それは第2の段階においてメタノールを用いてMMAへとエステル化され得る。
【0009】
メチルメタクリレート(MMA)はモノマーであり、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、コーティング、樹脂を製造するための出発材料であり、多数の他の化学製品および用途のための基礎である。化学産業における基本モノマーとしての(メタ)アクリレートおよびメタクリル酸を製造するための様々な競合する方法がある。それらは様々な原料および中間生成物、例えばアセトンシアノヒドリン(ACH)(アセトンとシアン化水素酸との反応によって形成)、エチレン、プロピレンまたはイソブテンに由来する。世界の生産状況は、原料としてのアセトンから出発するC3に基づくMMA法が優勢であり続けている。C4に基づく方法は特にアジアにおいて確立されてきている。MMA製造方法の新たな重要な開発は、出発材料としてエチレンを用いたC2に基づく方法の分野、主として三菱ケミカル株式会社(MCC)のALPHA法およびEvonikの新規のLIMA法において見出される。
【0010】
一般的な先行技術は実質的に現在の概要および総括文献に記載されている。
【0011】
a.) Nexant, CHEMSYSTEMS PERP PROGRAM, Methyl Methacrylate PERP 08/09-7 2010年3月、
b.) R.J.Chang, S.Naqvi, IHS Chemical PEP Report Methyl Methacrylate (MMA) Process Summary 2014-05、
c.) “Trends and Future of Monomer-MMA Technologies”, K.Nagai&T.Ui, Sumitomo Chemical Co.,Ltd.; Basic Chemicals Research Laboratory, http://www.sumitomochem.co.jp/english/rd/report/theses/docs/20040200_30a.pdf,2005、
d.) “Viele Wege fuehren zum Methacrylsaeuremethylester”[メチルメタクリレートへの多くのルート], S.Krill, A.Ruehling, H.Offermans, Chem. Unserer Zeit, 2019, 53; 著作権 2019 Wiley-VCH Verlag GmbH&Co. KGaA, ヴァインハイム。
【0012】
イソブテンまたはMTBEまたはtert-ブタノールに基づく方法は、ここでも詳細に記載される。この全体で2段階の方法においては、固定床触媒上での気相酸化によって得られる(メタ)アクロレインが凝縮され、精製されて、第2の段階において液相中で直接酸化的エステル化(DOE)によってメタノールと反応してMMAがもたらされる。
【0013】
この方法の特徴は、Pd-Pbに基づく不均一担持触媒を使用することであり、それは特に優れた使用寿命および93%までの非常に高いMMA選択率を特徴とする。粉末触媒はスラリー反応器内で、つまり、液体の反応マトリックスと、懸濁された触媒と、酸素含有ガス、最も単純な場合は空気とからなる三相反応システムにおいて用いられる。DOEプロセスの高い選択率は該プロセスを有利であるように見せるにもかかわらず、開発について著しい必要性があり、なぜなら、触媒が鉛の損失、いわゆる浸出の傾向を有し、それが後処理の間の著しいコストおよび不便性を引き起こすからである。可溶性鉛化合物は触媒活性を維持するために反応器内に計量供給されなければならない。
【0014】
その間に、NiOxおよび金からなるコアシェル触媒に基づく第2世代の触媒が開発され、元の方法の主たる欠点および問題を解決している。第1世代の触媒とは対照的に、長期安定性は数年に充分に増加された。それらの新規の開発はS.StahlおよびP.Alsters, “Liquid Phase Aerobic Oxidation Catalysis”,2016年8月17日出版, Print ISBN 9783527337811, Wiley-VCH Verlag GmbH,Ken Suzuki, 209~2018ページ、および米国特許第8450235号明細書(US8,450,235)内に記載されている。
【0015】
そのような反応器の公知の変形態様は、「ドラフト管」として知られる内管を有する反応器のものであり、それは内部循環を可能にする。例えば、米国特許第5288673号明細書(US5,288,673)は、合成ガスから炭化水素を製造するためのフィッシャー・トロプシュ合成のためのドラフト管を備えたスラリー反応器の使用を記載している。
【0016】
中国特許第104418309号明細書(CN104418309)は、アントラキノンの不均一触媒水素化反応において過酸化水素製造用のドラフト管を備えたスラリー反応器を記載している。使用された触媒濃度は約10g/l(<0.01kg/混合物のkg)であり、従って相対的に低い。ドラフト管内の下から上への流れの方向は、高い割合の触媒を定常的に搬送して管内に戻す。
【0017】
国際公開第2012/152600号(WO2012/152600)はシクロヘキサノンのアンモ酸化を記載しており、それは不均一TS-1触媒を用いて三相(気体・液体・固体)反応として実施される。円筒形のドラフト管が使用される場合、この方法における熱移動と物質移動との両方が明らかに改善され得る。ここで、反応物は様々な点で計量供給される。1つの計量添加はドラフト管の下で行われ(この場合はNH3)、1つはその上で行われ(この場合はH2O)、且つ任意に1つは側方から行われる(この場合は例えばシクロヘキサノン)。ろ過は、大きな総面積を有する多くのキャンドルフィルタを用いて行われる。それらは、反応器の高さの中心点およびドラフト管の外端部に配置されている。説明によれば、前記方法は中断およびフィルタの逆洗なく1年間実施され得る。1年後、フィルタを洗浄しなければならない。
【0018】
内部循環を有するスラリー反応器を、堆積物が形成し得る反応のために、特に、例えば重合性物質が生成される反応のために使用することは記載されていない。米国特許第5417930号明細書(US5,417,930)は、1つ以上のドラフト管を介した内部循環を有するスラリー型反応器が重合性物質の重合のために特に有益であることすら示唆する。そのような物質を含む反応のために、先行技術は、スラリー混合物の外部循環を用いて不均一触媒反応を実施するためのいくつかの反応器を開示している。従って、例えば米国特許第US5969178号明細書は、イソブテンまたはtert-ブタノールからメタクロレインを介したMMAの連続製造方法を記載している。重合し易いメタクロレインの酸化的エステル化は、前記方法の最後の段階として気泡塔内で外部循環を用いて行われる。これに関し、前記反応器は「外部循環型気泡塔反応器」として記載されている。
【0019】
中国特許第101314120号明細書(CN101314120)は、例えばフィッシャー・トロプシュ法を実施するためのスラリー混合物の外部循環を用いたループスラリー反応器を記載する。スラリー混合物の外部循環を有する全ての反応器は非常に複雑な反応器の設計、および例えばさらなるポンプによる、保護されなければならないスラリー搬送装置を必要とする。従ってこのために、および他の理由のために、それらのシステムは内部循環を有するシステムに比して欠点を有する。要約すると、先行技術による方法の以下の側面が改善される必要があり且つ望ましい:
・ 可能な限り単純な反応器の構成、ひいては規模拡大についての適性に限定がないこと、
・ 沈降するかまたは重合し易い物質の使用が可能であること、
・ 高い触媒濃度の使用、それ故により高いスループット、
・ 使用される不均一触媒の摩耗の低減、
・ 反応器の相の良好な混合
・ 触媒の長い操業時間、中断のない堅固な稼働、存在する場合は非常に短いメンテナンス期間、
・ 運転停止時間なく、不均一触媒をスラリー混合物から連続的に分離するための単純化されたろ過システムを取り付け可能であること。
【0020】
MMAを製造するための新規のLiMA法は、エチレンおよび合成ガスから出発してメタクロレインをもたらすためのC2に基づくメタクロレイン合成の高効率な工程段階と、メタクロレインのMMAへの高効率な直接酸化的エステル化とを組み合わせている。確立された段階と新規の開発とのこの組み合わせは、MMA製造のための新規の高効率な方法を提供することをまさに可能にする。第1の段階において、この方法は、エチレンと合成ガスとを反応させてプロピオンアルデヒドをもたらし、公知のロジウムに基づくホスフィンまたはホスフィット配位子が触媒として有利に使用される。修正された方法においては、ホルマリンとの反応がほぼ定性的な収率のメタクロレインを中間生成物としてもたらす。次いで、最後の段階において、メタクロレインをメタノールの存在下で貴金属に基づく不均一触媒上でMMAへと直接的に変換して、高い変換率および実質的に定性的な選択率が達成される。
【0021】
Angew. Chem. 2016, 128, 14420~14428, T2016 Wiley-VCH Verlag GmbH&Co.KGaA, ヴァインハイムにおいて、R.CirminnaおよびM.Pagliaroは日本のMMA製造業者である旭化成ケミカルズのナノ粒子の金・NiOxに基づく触媒の本質的な態様および特徴を記載している。
【0022】
活性な金触媒の性能のために本質的であると見られることは、とりわけ、アルミナ、シリカおよび酸化マグネシウムからなり且つ金・NiOxの複合系の調製を可能にする混合金属酸化物担体材料の使用である。K.Suzuki, H.Ishidaらは、触媒AuNiOx/SiO2-Al23-MgOの製造および反応システムを、ACS Catal. 2013, 3, 1845~1849に記載しており、ここで酸化的エステル化におけるメタクロレインのメタノールおよび酸素含有ガス、例えば最も単純な場合では空気との反応が実験室の装置において連続的に実施されている。それらの研究は反応についての触媒の選択率についての中枢であるが、どのように工業規模の反応器を構成して効率的に触媒を保持でき、ひいては長期稼働において性能を維持できるかについては示されていない。
【0023】
メタクロレインのMMAへの酸化的エステル化を実施するための反応器は例えば欧州特許3235560号明細書(EP3235560)内に記載されている。この文献は例えば、ドラフト管、つまり媒体が攪拌機によって下向きに搬送される領域を通じた三相媒体の循環を記載している一方で、気化された反応空間は逆の流れを有する。これは、触媒濃度の勾配を生成するために行われる。反応器の下部では触媒濃度が高く、上部では触媒濃度がより低い。反応器から生成物媒体を多かれ少なかれ無触媒で連続的に除去することを達成するための分離システムも提案されている。これは特に好ましくは10~50μmの保持を有するフィルタを用いて遂行される。傾斜要素のアセンブリ、いわゆる傾斜沈降器による触媒のさらなる予備分離も記載されている。
【0024】
触媒中の微細画分および反応の間に摩耗によって形成され得る微細画分は、この方法によって効率的に保持/回収できない。このシステムに伴う他の問題は、ろ過システムの前のガス分離が記載されていないことである。しかしながら、フィルタの稼働と傾斜沈降との両方において、ガス画分は分離作用の部分的または完全な損失をもたらし、且つ反応マトリックス内のモノマーの重合堆積物もみちびく。
【0025】
反応器は好ましくは連続法のために使用されるべきなので、不均一触媒は反応混合物から連続的にろ過除去され得なければならない。このために、反応器内、特に好ましくは反応器の上部における領域2の周囲に存在するフィルタを使用することが好ましい。特に、該発明の他の選択された実施態様に関わらず、少なくとも1つの連続稼働可能且つ逆洗可能なフィルタを前記領域2の上部に取り付けることが好ましい。
【0026】
代替的または追加的に、反応混合物は反応器から連続的に搬出され、少なくとも1つの外部のフィルタを介してろ過される。その後、触媒は、ろ過後に任意にさらなる処理に供され、部分的または完全に反応器内へと戻される。このさらなる処理は例えば洗浄、再活性化または粒子サイズによる分離であることができる。
【0027】
さらに、欧州特許3235560号明細書によれば、追加的な沈降システムをそのようなフィルタの上流または反応器の周囲で取り付けてもよい。これは層流を有する特定の領域であってよく、そこで、使用される触媒の大部分が沈降される。従ってそのような沈降は実際のろ過前に行われる。そのような沈降システムの1つの可能な変形態様は、例えば、傾斜要素、例えば管または傾斜金属シートで構成されるアセンブリである。そのようなシステムの稼働原理は、Journal of Fluid Mechanics/Volume 92/Issue 03/1979年6月, 435~457ページにおいて、および“Enhanced sedimentation in vessels having inclined walls” in Theory of Dispersed Multiphase Flow: ウィスコンシン大学マディソン校数学研究セミナーによって開催されたアドバンストセミナーのプロシーディングス, 1982年5月26~28日においてさらに記載されている。酸化反応のための使用の詳細は例えば特開平10-94705号公報(JP10-094705 A)および特開平9-248403号公報(JP09-248403 A)内に示される。
【0028】
特開平9-248403号公報はさらに、メタクロレインからMMAへの酸化的直接エステル化のために用いられ得る、三相(液体・固体・気体)反応混合物の後処理装置を記載している。脱気領域および下降管と組み合わせた傾斜沈降器の選択された設計は、垂直に配置された傾斜管要素にわたる圧力差をもたらし、下降管/傾斜沈降器の領域が脱気されることにより酸素が大幅に枯渇するので、ここではより還元性の条件が支配的になる。観察される1つの問題は、傾斜沈降器要素内部での流れの短絡である。これは、副生成物のイソブチルアルデヒドおよびイソ酪酸メチルの形成の増加、つまりメタクロレインおよびMMA自体の望ましくない水素化生成物をもたらす。この刊行物において、それらの問題は絞り要素を傾斜沈降器に組み込むこと、つまり傾斜沈降器要素内の流れを遅らせ、停滞させ、ひいては均一にする内部構造物によって解決されている。触媒成分の微細物の搬出および反応が長期間実施される間の摩耗の結果として生じる微細画分の問題はここでは記載されておらず、取り組まれていない。
【0029】
特開平10-94705号公報はさらにメタクロレインをMMAへと変換する例に基づき、固体・液体・気体の反応マトリックスのための同様の分離システムを記載しており、ここでは分離装置を反応器タンクに組み込む追加的な特徴を有する(CSTRシステム)。主たる特徴は、反応器における側壁であり、それが下降管の機能を果たす。傾斜沈降器要素は反応器シェルの内側および外側に配置されることができ、この文献も傾斜沈降器要素内側の絞り、隔壁を記載しており、それらが流れを均一にして、副生成物形成の問題を低減する。
【0030】
両方の日本の特許出願の特徴は、下降管および傾斜沈降器についての稼働パラメータである。下降管部分においては脱気されたスラリーの非常に速い速度(0.5~1.5m/秒)が確立される一方で、傾斜要素の出口での搬出速度は0.004m/秒(0.4cm/秒または14.4m/時間)である。搬出速度に対する下降管の速度のこの大きな速度差(0.5/0.004=125倍)は、選択された設計の結果である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0031】
【特許文献1】米国特許第8450235号明細書
【特許文献2】米国特許第5288673号明細書
【特許文献3】中国特許第104418309号明細書
【特許文献4】国際公開第2012/152600号
【特許文献5】米国特許第5417930号明細書
【特許文献6】中国特許第101314120号明細書
【特許文献7】欧州特許3235560号明細書
【特許文献8】特開平10-94705号公報
【特許文献9】特開平9-248403号公報
【非特許文献】
【0032】
【非特許文献1】Nexant, CHEMSYSTEMS PERP PROGRAM, Methyl Methacrylate PERP 08/09-7 2010年3月
【非特許文献2】R.J.Chang, S.Naqvi, IHS Chemical PEP Report Methyl Methacrylate (MMA) Process Summary 2014-05
【非特許文献3】Trends and Future of Monomer-MMA Technologies, K.Nagai&T.Ui, Sumitomo Chemical Co.,Ltd.; Basic Chemicals Research Laboratory, http://www.sumitomochem.co.jp/english/rd/report/theses/docs/20040200_30a.pdf,2005
【非特許文献4】Viele Wege fuehren zum Methacrylsaeuremethylester[メチルメタクリレートへの多くのルート], S.Krill, A.Ruehling, H.Offermans, Chem. Unserer Zeit, 2019, 53; 著作権 2019 Wiley-VCH Verlag GmbH&Co. KGaA, ヴァインハイム
【非特許文献5】S.StahlおよびP.Alsters, “Liquid Phase Aerobic Oxidation Catalysis”,2016年8月17日出版, Print ISBN 9783527337811, Wiley-VCH Verlag GmbH,Ken Suzuki, 209~2018ページ
【非特許文献6】R.Cirminna, M.Pagliaro, Angew. Chem. 2016, 128, 14420~14428, T2016 Wiley-VCH Verlag GmbH&Co.KGaA, ヴァインハイム
【非特許文献7】K.Suzuki, H.Ishida, ACS Catal. 2013, 3, 1845~1849
【非特許文献8】Journal of Fluid Mechanics/Volume 92/Issue 03/1979年6月, 435~457ページ
【非特許文献9】“Enhanced sedimentation in vessels having inclined walls” in Theory of Dispersed Multiphase Flow: ウィスコンシン大学マディソン校数学研究セミナーによって開催されたアドバンストセミナーのプロシーディングス, 1982年5月26~28日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
本発明によって取り組まれる課題は、(メタ)アクロレインからアルキル(メタ)アクリレートへの酸化的エステル化のための方法を、触媒を交換せずに可能な限り長期の操業時間の間、稼働できるように改善することであった。これは、進行中の稼働の間の、触媒の長い操業時間、中断のない堅固な稼働、存在する場合は非常に短いメンテナンス期間を意味する。
【0034】
取り組まれるさらなる課題は特に、最初の装入の際に既に存在するか、または稼働の間に摩耗された材料として形成される触媒の微細画分が、進行中の稼働の間に効率的に分離され且つ搬出されることを確実にすることであった。
【0035】
取り組まれるさらなる課題は、それにもかかわらず、前記方法を高い触媒濃度で、ひいてはより高いスループットで実施できることであった。
【課題を解決するための手段】
【0036】
前記の課題は、アルキル(メタ)アクリレート、好ましくはMMAの新規の製造方法であって、(メタ)アクロレインから出発し、それとアルキルアルコール、好ましくはメタノールとを、酸素含有ガスおよび粒子状の粉末触媒の存在下で、液相中で反応させることによる前記方法によって解決される。この新規の方法は、
a. 用いられる触媒粉末の一部が、反応の間に生成物溶液と一緒に分級方式で反応器から搬出され、
b. 反応器内に残留する触媒画分は、触媒搬出物に比して、より大きな粒子サイズへとシフトしたより狭い平均粒子サイズ分布を有し、
c. aによる触媒搬出物が少なくとも1つのさらなるフィルタで捕集され、
d. 前記触媒搬出物が任意に少なくとも部分的に前記反応器に再循環され、且つ
e. 前記触媒搬出物が任意に少なくとも部分的に取り出され、後処理に送られて、用いられた触媒金属の少なくとも1つが回収されること
を特徴とする。
【0037】
ここで記載される発明に関して、平均粒子サイズ分布は、体積平均の粒子サイズ分布を意味するとして理解されるべきである。これは例えば様々な篩別段階を介して特定できる。しかしながら、本発明によれば、ベックマン・コールターLS粒子サイズ測定が実施された。前記測定の基礎および測定原理は「DIN ISO 22412:2019-09 Particle size analysis-Dynamic light scattering (DLS)」の規格に説明されている。原則的に、測定されるべき成分に加えて0.1質量%未満のみのピロリン酸ナトリウムを安定剤として含有する希釈懸濁液が用いられる。測定されるべき成分は、光源の10~20%の吸収度/散乱が達成される必要がある。評価は、全ての測定された物体が球に近似であるという原則に基づく。その際、それぞれの球の体積は球の直径の関数としてプロットされて粒子分布関数が得られる。従ってこれは体積分布をもたらし、それをとりわけ、材料の密度を使用して質量分布へと変換できる。特段記載されない限り、常に体積分布が想定されるべきである。
【0038】
(メタ)アクロレインの酸化的変換は好ましくは、金またはパラジウムを中心の活性酸化金属として、さらなる担体材料を含む総質量に対して0.1質量%~10質量%の濃度で含む粉末の新たな触媒を用いる。それらの好ましく用いられる触媒の粒子は、0.1~300μmのサイズを有し、ここで存在する触媒粒子の95体積%より多くが200μm未満のサイズを有する。触媒粒子の50体積%より多くが10~90μmのサイズを有し、反応器内の0.1μm~10μmのサイズを有する触媒粒子の微細画分は10体積%未満であることも好ましい。
【0039】
1時間あたり0.5質量%未満の反応器内に存在する触媒粉末が、反応の間に生成物溶液と一緒に分級方式で反応器から搬出される場合が特に好ましい。1000時間の稼働後、反応器内に残留する触媒画分は、少なくとも98質量%の程度まで10μmを上回る粒子サイズを有する触媒粒子を含む。
【0040】
触媒搬出物は1~30μmの粒子の保持を可能にする少なくとも1つのさらなるフィルタで捕集され、且つ傾斜沈降器の下流のフィルタ内で保持される粒子は50体積%より多くの程度まで30μm未満の粒子である。
【0041】
用いられる粉末触媒は好ましくはその体積画分に基づく30~100μmの平均粒子サイズ分布を有し、それらのサイズは長期の連続稼働の場合、機械的応力によって減少されることがある。反応器媒体と共に搬出される微細画分は、同様に体積画分に基づき好ましくは平均粒子サイズ分布1~15μmを有する。
【0042】
少なくとも50体積%の程度まで30μm未満の粒子で構成される粒子の集合体が反応器から連続的に搬出される場合に特に有利であることが証明されている。それらの粒子を、MMA、メタクリル酸、水およびメタノールを含有する反応媒体中に懸濁された形態でフィルタに供給することがさらに有利である。
【0043】
本発明の好ましい実施態様において、反応器を出る反応媒体は20質量%を上回り且つ50質量%未満のMMA含有率を有する。その際、それらの実施態様において、水の含有率は1質量%~15質量%である。その際、20質量%未満の未変換メタクロレインも存在する。
【0044】
本発明による方法において、少なくとも1つの分級沈降装置と少なくとも2つのフィルタとの組み合わせを使用することが特に有利であることが証明されている。触媒粒子の微細画分を含有する反応媒体はそれらを連続的に横切る。さらに、少なくとも1つの分級沈降装置の後の第1のフィルタが、引き続く第2のフィルタよりも低い保持能力を有する場合が好ましい。
【0045】
分級沈降装置が、少なくとも1つの下流のフィルタが反応器シェルの外側に配置されるように、反応器シェルに取り付けられることが特に好ましい。
【0046】
本発明の他の実施態様に追加的に、または独立して、次のプロセス工学的作業の上流、好ましくは蒸留、脱気、相分離または抽出の上流の最終フィルタは、10μm未満の粒子についての保持能力を有する場合が有利である。これにより、10μmを上回る直径を有する1ppm未満の触媒粒子が次のプロセス工学的作業へと通過する。このフィルタが少なくとも1μmのサイズを有する粒子を分離するために適している場合が有利である。
【0047】
反応は、例えば且つ好ましくは、直径の、気化された液体のレベルの高さに対する比が1:1~1:50である反応器内で実施され得る。ここで、反応器は少なくとも3つの領域A、BおよびCを含み、領域Aから各々の領域Bへの移行部で、反応混合物が領域Bに入る際の反応混合物の流れを均一化する内部構造物が存在する。各々の領域Bは、沈降装置を含む少なくとも1つの領域Cに接続されている。そのような反応器において、領域Aの体積の、全ての領域Bの総体積に対する比が1を上回り且つ500未満である場合が特に好ましい。領域Aは反応器を含む。
【0048】
反応器は好ましくは1つ以上の供給導管を含み、それを通じてアルキルアルコールと(メタ)アクロレインとの混合物が供給され得る。反応器はさらに、少なくとも1つの分級沈降装置を含む。
【0049】
分級沈降装置が、水平に対する傾斜角を有する複数のチャネル状のプロファイル、管またはラメラからなり、各々、入口で同じ圧力を有し、それらを通じて流れる液体が各々の入口で同じ流速を有する場合がさらに好ましい。
【0050】
領域Cにおける沈降装置は特に好ましくは傾斜沈降器またはハイドロサイクロンである。
【0051】
相対的に大きな触媒粒子が沈降装置内で保持され、領域Bへと再循環される本発明の実施態様も特に好ましい。比較的大きな触媒粒子が領域Bを介して領域Aに戻る場合が好ましい。そのような実施態様において、領域Cを通過する比較的小さな触媒粒子は少なくとも1つのフィルタ装置を使用して捕集されると共に、反応器下部における領域Aに、ノズルまたは気化装置を介して酸素含有ガスが積極的に供給される。同時に、1つ以上の領域B、特に好ましくは全ての領域Bは、反応混合物を積極的に気化するための装置を含まず、従って領域Cに入るガスが最小化される。
【0052】
領域Aにおける反応混合物は任意に、攪拌手段またはポンプを用いて、気泡が可能な限り小さく且つ領域Aにおけるガスの滞留時間が高くなるように、垂直に搬送されることができる。
【0053】
任意に、領域Aにおいて、攪拌手段は、領域Aおよび少なくとも1つの領域Bが内部構造物によって、好ましくは隔壁によって互いに分離されるように配置され、領域Aから各々の領域Bへの移行部での内部構造物は領域Bに気泡が入ることを大幅に防止する。
【0054】
本発明による方法は、触媒粒子の平均サイズが50~120μmである場合に特に効率的に実施され得る。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】変換率および選択率を示す図である。
図2】選択率を示す図である。
図3】ギ酸メチルについての選択率を示す図である。
図4】本発明の触媒搬出物および触媒保持を示す図である。
図5】粒子サイズ分布を示す図である。
図5a図5の拡大図である。
図6】反応器搬出物中の触媒濃度の時間経過を、搬出体積の関数として示す図である。
【実施例
【0056】
実験の部
メタクロレインを米国特許第4496770号明細書(US4,496,770)に従って製造した。しかしながら、例えば米国特許第9580374号明細書(US9,580,374)における代替的な手順も使用できる。
【0057】
例1 粉末状の摩耗耐性SiO2-Al23-MgO担体材料の製造
エナメルで裏張りされた受器にまず21.36kgのMg(NO32・6H2Oおよび31.21kgのAl(NO33・9H2Oを装入し、その混合物を、インペラ式攪拌機を用いて攪拌しながら41.85kgの脱塩水中に溶解した。次いで、1.57kgの60%のHNO3を攪拌しながら添加した。
【0058】
166.67kgのシリカゾル(Koestrosol 1530AS(Bad Koestritz)、30質量%のSiO2、平均粒子サイズ: 15nm)をまず、エナメルで裏張りされた500Lの反応器に装入し、インペラ式攪拌機を用いて攪拌しながら15℃に冷却した。2.57kgの60%のHNO3を前記ゾルに攪拌しながらゆっくりと添加した。15℃で、受器からの硝酸塩溶液を前記ゾルに攪拌しながら45分間にわたって添加した。添加後、その混合物を30分間にわたって50℃に加熱し、この温度でさらに4時間保持し、混合物をゲル化した。
【0059】
この時間の最後に、ゲル化された混合物を、懸濁液として噴霧乾燥機内に連続的にポンプ輸送し、出口温度130℃で噴霧乾燥した。乾燥されたグリーン生成物(噴霧乾燥後に初めに得られる混合物)をロータリーキルン内でか焼し、加熱領域(600℃)における滞留時間は約45分であった。ロータリーキルン内でのか焼についての滞留時間およびスループット時間はロータリーキルンの傾き(約1°~2°の傾き)を介して制御された。か焼作業の間に発生する窒素を含むガスは気体の形態で除去され、吸収および化学吸着によって適切に処理された。
【0060】
ロータリーキルンの通過を、加熱領域における同じ滞留時間および同じ温度設定で繰り返した。仕上げられた担体粒子中の硝酸塩含有率は1000ppm未満であった。
【0061】
か焼後、55kgの白色の流動可能な粉末状の担体材料が得られた。質量収率は約95%であった。
【0062】
担体をSEMおよびレーザー回折によって分析し、球状の担体が平均粒子サイズ分布約60μmを有することが明らかになった。
【0063】
引き続き、担体を数回のパスおよび様々なふるいのサイズを用いた篩別による分級に供し、120μmを上回る画分と15μm未満の画分とが非常に大幅に除去された。技術的な限界ゆえに、約3.6体積%の微細画分は残留し、つまり篩別にもかかわらず1~15ミクロンの粒子サイズを有する粒子は残留した。分級段階(ふるい分け/篩別)の収率は約70%であり、仕上げられた担体材料の得られた平均粒子サイズ分布は約68μmであった。
【0064】
例2: メタクロレインからMMAへの直接酸化的エステル化の連続実施のためのナノ粒子状の金含有触媒の製造
エナメルで裏張りされた反応器内で、15kgの前記担体を、インペラ式攪拌機で攪拌しながら50kgの脱塩水中に懸濁した。生じる混合物を90℃に加熱し、90℃に達した後、15分間エージングした。852.9gのCo(NO32・6H2Oの7.5kgの脱塩水中の溶液を10分間にわたって計量供給し、その混合物を30分間エージングした。次いで、3.7Lの1モルのNaOH溶液を10分間にわたって添加した。その直後に、376.8gの金酸(41%の金)の7.5kgの脱塩水中の溶液を添加し、その混合物を30分間エージングした。生じる懸濁液を40℃に冷却し、遠心機を使用してろ過した。ろ過ケークを遠心機内で脱塩水を用いて、ろ液が透明になり且つ100μS/cm未満の導電率を有するまで洗浄した。
【0065】
湿った触媒を真空乾燥オーブン内、105℃で、残留湿分が5%未満になるまで乾燥させた。乾燥した触媒をロータリーキルン内でか焼し、加熱領域(450℃)内での滞留時間は約45分であった。収率は約99%であった。
【0066】
か焼された触媒をSEM-(EDX)およびレーザー回折によって分析し、球状のエッグシェル触媒が平均粒子サイズ分布約68μmを有することが明らかになった。微細画分は約5.2体積%であった。ICPにより金含有率0.85質量%が明らかになった。
【0067】
前記触媒をこの形態で、例3におけるメタクロレインからMMAへの連続酸化的エステル化において用いた。
【0068】
例3: メタクロレインからMMAへの直接酸化的エステル化の連続実施
I. 反応器、反応システム、触媒保持システムの構成
攪拌機を備えた攪拌槽反応器を反応のために使用した。用いられた材料は、わずかに腐食性の媒体に耐えられる従来のステンレス鋼製である。反応器は、サーモスタットに接続される二重のジャケットを有し、媒体を介して冷却および加熱を行うことができる。反応器の蓋は蒸気管(公称幅100mm)を介して凝縮器に接続されている。
【0069】
攪拌槽は内径400mmを有し、反応器の蓋までの高さは1500mmであった。攪拌機は底を介して下から反応器に接続されており、酸素含有ガス(この場合は圧縮空気)のための最適なガス分散と媒体中での粒子状触媒の最適な懸濁との両方を可能にする特別な攪拌手段が備えられている。半径方向の搬送方向を有する気体と液体との混合物のための大量のガス用の一次分散機(Ekato Phasejet)、およびKombijet攪拌手段、つまり、攪拌機シャフトに固定された2つの攪拌手段からなる市販の攪拌機システムが用いられる。反応器の底からの攪拌手段の距離は100mmであり、第2の攪拌手段については400mmであった。酸素含有ガスを供給するためのガス導管は、分散手段の直下で終端しており、反応器断面にわたるガスの均一な分布および酸化ガスの微細な分散を確実にする。
【0070】
反応器の蓋の上では、反応物、再循環流および助剤のための供給導管が、その供給導管が媒体の充填レベルより充分下で終端するように反応器内で取り付けられている。反応器の上部は導管を介して、メタノール性の安定剤溶液(1000ppmのテンポール)を含有する受け容器と接続されている。
【0071】
II. 触媒保持システム
反応器の上部に、反応懸濁液を外部に取り付けられた傾斜沈降器へと通過させる取り出し管がある。スラリーは脱気容器内(内径200mm、円錐形の下方の流出部)でまず脱気されて、溶解されたガス成分のみがスラリー懸濁液中に残留する。脱気容器の下部は内径30mmを有するパイプラインに接続されており、下降管の上部を構成する。従って、ここでは脱気された、二相のみの懸濁液が垂直に下向きにY字状の分岐部へと流れる。分岐部の右側のアームは懸濁液を傾斜沈降器要素へと通過させ、そこで二相系が効率的に沈降される。従って、触媒は反応器へと戻る。傾斜沈降器の出口に、分離の品質の視覚検査を可能にするための耐圧ののぞき窓、並びに圧力保持手段および取り出し量の制御バルブがある。圧力バルブの下流に、ポリプロピレン製の2つの並列のフィルタが取り付けられており、それが1ミクロンの最大の分離性能を可能にする(製造元の仕様による)。前記フィルタは連続的に横切られ、且つ三方バルブを介して、1つだけのフィルタが横切られる一方で他のものは進行中の稼働の間に交換され得ることが可能であるように組み込まれている。
【0072】
傾斜沈降器のラメラ要素は、内部寸法L=700mm、H=20mm、W=50mmを有するステンレス鋼製の直方体状の4つの端部のプロファイルである。従って有用な内部体積は700mLである。合計8つのラメラ要素が取り付けられている。
【0073】
III. 反応の開始および連続的な反応:
反応器にメタノール、水およびMMA、並びに溶解されたメタクリル酸Naの混合物を装入した。この反応混合物の最初の装入は、定常状態の濃度へのより速やかな到達をもたらす。3質量%のメタクリル酸(その50%がナトリウム塩の形態であった)、33質量%のMMA、5質量%の水および59質量%のメタノールである組成を有するこの出発媒体130kgを反応器に装入した。充填レベルは反応器の充填高さの約80%であった。例2による触媒13kgを反応器にさらに装入する。従って、スラリー密度は、用いられた触媒量および反応溶液の稼働体積に対して10質量%である。反応混合物を80℃に加熱し、攪拌機を260rpmに設定する。反応器を動作圧力5bar絶対にもたらす(出発媒体として窒素を使用)。反応温度に到達した後、空気を1kg/時間ずつ導入することにより反応が直ちに開始し、それは反応器内でのメタクロレインレベルの低下および反応混合物内でのMMA濃度の増加から明らかである。空気の量を、上述の段階において、オフガスが酸素濃度5体積%を有するまで増加する。これが推奨され、なぜなら反応からのオフガスの爆発限界は、わずか8体積%の酸素含有率であるからである。凝縮性の有機成分、特にメタノール、メタクロレイン、MMA、水、低沸点物の凝縮後のオフガスの温度は-20℃である。NIRを使用して様々なオフガス成分、特にCO2、CO、酸素、水、プロペン、窒素、メタノール、アセトン、ギ酸メチル、および任意に、オフガスと共に搬出される他の低沸点物の濃度を測定および定量化する。総含有率1.5体積%未満の揮発性有機成分を有するオフガスを熱処理に供して灰化する。
【0074】
メタクロレインは計量ポンプを介して反応器に連続的に供給される。1時間あたり、140モルのメタクロレインを反応器に計量供給して定常状態の変換率70%~72%を確立する。連続稼働の総運転時間にわたって、98~102モルのメタクロレインの変換が測定される。この稼働方式によれば、反応器は本質的に2つのメタクロレイン供給流、つまり新たなメタクロレイン供給(約100mol/時間の計量添加速度)とメタクロレインの再循環供給(これはMAL-MeOH再循環塔からの上部画分である)とを用いて稼働される。この流れはさらなる約40モル/時間のメタクロレインを含有する。
【0075】
触媒保持システム(傾斜沈降器およびろ過ユニット)を介した定常状態の反応混合物の搬出は圧力バルブを介して制御され、且つ平均32.5kg/時間であった。これは約4時間の平均反応時間に相応する。搬出される体積の、傾斜沈降器要素の体積に対する比は、特に固体分離の品質についての定義されたパラメータとして計算できる。本例においては、この比はラメラ要素(700mL)あたり1時間あたり約4.06kgの液体である。傾斜沈降器の分離効率を記述する1つのパラメータは、傾斜沈降器の断面積に基づく媒体の体積流であり、生じる形式的な速度が粒子/粒子集合体の落下速度未満であれば、粒子の分離が生じる。本例において、このパラメータは約0.17m/時間または0.17m3/m2×時間である(密度800kg/m3、ラメラの面積700mm×50mm、傾斜角60°のサイン関数での投影面積)。
【0076】
反応混合物を減圧し、体積10Lを有する中間容器を介して塔へと通過させる。このいわゆるメタクロレイン-メタノール回収塔(動作圧力1bar絶対)において、反応中に変換されなかったメタクロレインおよび過剰なメタノールが塔頂部で凝縮して、反応器に再循環される。さらに、特定の濃度の他の低沸点物は塔の頭部生成物中で凝縮される。それらはとりわけMMA、水、アセトン、プロピオン酸メチル、ギ酸メチルおよびメチルアクリレート、およびさらなる微量の他の低沸点成分を含み、そのいくつかが互いにおよび主成分と共沸混合物を形成する。
【0077】
塔は環流比1:1で稼働される。塔底部温度は72℃~73℃である。塔の制御パラメータはとりわけ、底部生成物(底部搬出物)の残留メタクロレイン含有率であり、それは典型的には1質量%を充分下回る。ユニットの連続稼働において、底部におけるメタクロレイン含有率0.05質量%~0.2質量%が達成される。
【0078】
底部生成物は粗製MMA並びに反応の高沸点の副生成物、特にメトキシイソ酪酸メチル(「MMIB」)およびメタクリル酸(「MAA」)(部分的にナトリウム塩の形態である)を含有する。一連の抽出および多段階蒸溜により、市販の品質および純度のMMAがもたらされる。
【0079】
反応の選択率はガスクロマトグラフィー(GC)によって測定され、平均でMMAについては94.4%、メタクリル酸については3.0%、およびMMIBについては1.2%であり、それぞれの基準値は使用されたメタクロレインの量である。反応物(メタクロレイン)およびMMAの損失を含めると、オフガス中でのC4の照合は実質的に100%になる。
【0080】
ユニットのほぼ1000時間の稼働の運転時間にわたる変換率および選択率の経過を図1に示す。
【0081】
本発明によれば、傾斜沈降器内での分級は最初のほぼ100時間の稼働時間にわたって反応器内に存在する触媒の減少をみちびき、その結果、メタクロレインの変換率が低下する。MAAおよびイソ酪酸メチルについての選択率とは異なり、MMAおよびMMIBについての選択率はこれによって影響されない。この理由は第1に、より多くのイソ酪酸メチルを生成する(より活性な)微細画分の搬出であり、第2に、MAAについて反応マトリックス内の水含有率が遅れて変化し、それが図2に示されるようにMAAの選択率における変化をもたらすことである。意外なことに、図3に示されるとおり、ギ酸メチルについての選択率の低下も生じる。これは、ギ酸への加水分解が減少するので反応のNaOH需要が低下し、オフガス流中のギ酸メチルの量がより少なくなるなど、いくつかの利点を有する。ギ酸メチルは凝縮サイトでオフガスからの水と反応してギ酸およびメタノールを形成することによりオフガス凝縮物の腐食性を高めることがある。
【0082】
図4は本発明の触媒搬出物および触媒保持の、運転時間の関数としての測定を示す。時間0は新たな触媒を示す。
【0083】
上述の連続反応からの反応器搬出物を定期的な間隔で採取し、傾斜沈降器を出てそこに存在する触媒の量を測定した。このために、反応媒体の試料を深さ1μmのフィルタを通じてろ過し、乾燥後に残留物を重量測定によって測定した。
【0084】
開始直後に、懸濁液は依然として約1200ppmの触媒濃度を有する。これはとりわけ、懸濁液のわずかな紫色の着色から明らかである。次いで、触媒濃度は急速に減少し、わずか20の反応器体積の搬出後(反応時間80~100時間に相応)、約1ppmの漸近最小値に達する。次いで、採取を停止した。
【0085】
最終試料の触媒を均質化し、その粒子サイズ分布をコールター法によって分析した。結果を図5に示す。図5aは拡大した部分を示す。
【0086】
本発明によれば、非常に小さな残留粒子のみが傾斜沈降器を介して搬出されることを確実にする分級の作用が観察される。これは、ほぼ100時間後の安定な変換機能と一致する。従って、以下が実証された:
a) わずか数日の短い稼働時間にわたって、新たな触媒の破壊的な微細画分が反応器から効率的に搬出され、本発明の触媒保持システムによる分級方式において、
b) この搬出物は非常に大幅に回収されて引き続き微細フィルタに再循環されることができ、且つ
c) この始動および調整段階の後、変換率および定常状態の反応濃度は安定なままであるので、稼働パラメータを実質的に適合させることなく、後処理部分の問題のない稼働を可能にする。
【0087】
図6は、反応器搬出物中の触媒濃度の時間経過を、搬出体積の関数として示す。
【0088】
例4: メタクロレインからMMAへの直接酸化的エステル化の連続実施
反応を例3に記載されたものと同じ反応器のセットアップを用いて実施する。例2からの触媒を用いる。スラリー密度は、定常状態の反応媒体に対して10質量%である。しかしながら、触媒の一次保持のための手段はここでは反応器内部に取り付けられている。
【0089】
反応器の上部には、定常状態の稼働の充填レベルより約150mm下にオーバーフローが配置されている。従って、スラリーは上部で自由にあふれ出る。スラリーは脱気容器内(内径200mm、円錐形の下方の流出部)でまず脱気されて、溶解されたガス成分のみがスラリー懸濁液中に残留する。脱気容器の下部は内径30mmを有するパイプラインに接続されており、下降管の上部を構成する。従って、ここでは脱気された、二相のみの懸濁液が垂直に下向きにY字状の分岐部へと流れる。分岐部の右側のアームは懸濁液を傾斜沈降器要素へと通過させ、そこで二相懸濁液が効率的に沈降される。傾斜沈降器の出口に、分離の品質の視覚検査を可能にするための耐圧ののぞき窓、並びに圧力保持手段および取り出し量の制御バルブがある。圧力バルブの下流に、ポリプロピレン製の2つの並列のフィルタが取り付けられており、それが1ミクロンの最大の分離性能を可能にする(製造元の仕様による)。前記フィルタは連続的に横切られ、且つ三方バルブを介して、1つだけのフィルタが横切られる一方で他のものは進行中の稼働の間に交換され得ることが可能であるように組み込まれている。
【0090】
傾斜沈降器のラメラ要素は、内部寸法L=700mm、H=20mm、W=50mmを有するステンレス鋼製の直方体状の4つの端部のプロファイルである。従って有用な内部体積は700mLである。合計8つのラメラ要素が取り付けられている。
【0091】
反応器を例3に記載するようにオンラインにし、まず供給流を用いずに1時間稼働し、反応器内および下降管内での定常状態の循環を確実にする。次いで、65kg/時間の取り出しを確立し、供給流を供給する。搬出物の半分を、40℃への冷却後に反応器に再循環し、従って流れの供給は反応器の下方の三分の一で行われる。例3と同様に、以下のパラメータを確立する: 1時間あたり、ラメラ要素あたり8.1kgの液体、従って沈降器の負荷は0.34m/時間または0.34m3/時間m2である。この相対的に高い速度は、触媒の相対的に高い搬出が予測されることを意味する。
【0092】
1時間あたり100モルの新たなメタクロレイン、並びに塔からの再循環流からのさらなる40モルのメタクロレインを計量供給する。稼働時間全体にわたる空気消費は約8500Lである。4体積%~4.5体積%の残留酸素濃度がオフガス内で確立される。それらの条件下で、触媒の空時収率は約7.5~8molのMMA/時間/触媒のkgである。
【0093】
ユニットを7日間連続稼働する。この時間の間、1つのフィルタが連続的に横切られ、1ミクロンのPPフィルタの開始背圧は約100mbarである。この第1の稼働時間の間、フィルタの負荷を通じて圧力が連続的に増大し、7日間の稼働時間後、この圧力は約900mbarである。
【0094】
168時間のこの第1の稼働時間の後、第1のフィルタから第2のフィルタへの切り替えを行う。
【0095】
ユニットをさらに10日間連続稼働し、粗製生成物を第2のフィルタを介して連続的に搬出する。この第2の稼働段階においては、新たなフィルタによる圧力上昇は著しく低い。
【0096】
照合のために、2つのフィルタを水で、まず入念に、オーブン内、70℃で再循環空気流中で、次いでさらに12時間120℃で洗浄する。次いで、ろ過された触媒微細画分の重量および粒子サイズを測定する。それらの結果を以下の表1に報告する。
【0097】
308時間の総稼働時間後、メタクロレインの計量添加を終了することによって反応を停止する。反応器を稼働温度でさらに16時間気化し、0.2質量%未満の残留メタクロレイン含有率をもたらす。次いで、反応器の内容物をフィルタを通じて搬出し、触媒を洗浄して乾燥させ、その乾燥した粉末をマッフル炉内、空気中、400℃での処理に供する。最後に、残留質量を測定する。12.75kgの触媒が判明する。これは、最初に用いられた触媒量の約98%に相応する。
【0098】
【表1】
【0099】
結論: 特定の比搬出速度から換算して、MMA1トンあたり19gの触媒が反応器から搬出される。触媒が貴金属含有率1質量%を有すると仮定して、これは190mgの金に相応し、それは、微細フィルタにおける金の、約8米国ドル/MMAのトンの値に相応するであろう(1オンスの金の仮想的な価格を1400米国ドル/オンスと仮定して)。損失は比較的少ない一方で、前記反応は選択率における著しい増加をもたらし、生成物の後処理の間、触媒の微細画分は問題を起こさない。さらに、搬出される微細画分の大部分を引き続き再循環することもできる。
【0100】
例4b) メタクロレインからMMAへの直接酸化的エステル化の連続実施
例4と同じセットアップにおいて、それぞれのラメラの末端に狭窄部を溶接した。狭窄部は例4に比して1.6%のみの開口部を有する。
【0101】
ラメラの狭窄は、両方の段階における搬出物が、段階1または2のいずれが考慮されるかに依存して約2~4分の1に減少したという結果を有した。
【0102】
【表2】
図1
図2
図3
図4
図5
図5a
図6
【国際調査報告】