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  • 特表-薬物抵抗性てんかんを処置する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】薬物抵抗性てんかんを処置する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/137 20060101AFI20240517BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20240517BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
A61K31/137
A61P25/08
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573252
(86)(22)【出願日】2022-05-27
(85)【翻訳文提出日】2024-01-26
(86)【国際出願番号】 US2022031245
(87)【国際公開番号】W WO2022251569
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】63/194,586
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516291619
【氏名又は名称】アイカーン スクール オブ メディスン アット マウント サイナイ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マデリン・シー・フィールズ
(72)【発明者】
【氏名】ララ・マルクーゼ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA13
4C084MA17
4C084NA05
4C084ZA062
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA08
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA79
4C206NA14
4C206ZA06
(57)【要約】
本明細書で開示されるのは、薬物抵抗性てんかんをケタミンで処置する方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その処置を必要とする対象において薬物抵抗性てんかんを処置する方法であって、治療有効量のケタミン又は薬学的に許容されるその塩を、前記対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項2】
その処置を必要とする対象においててんかんを処置する方法であって、治療有効量のケタミン又は薬学的に許容されるその塩を前記対象に投与する工程を含み、ここで、前記対象が、前記ケタミン又は薬学的に許容されるその塩の投与後に、麻酔を実質的に経験しない、方法。
【請求項3】
対象に抗発作薬が事前に投与された、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
その処置を必要とする対象においててんかんを処置する方法であって、治療有効量のケタミン又は薬学的に許容されるその塩を前記対象に投与する工程を含み、ここで、前記対象に抗発作薬が事前に投与された、方法。
【請求項5】
発作の持続期間、重症度及び/又は頻度の改善が、抗発作薬の投与後の対象において実質的に観察されなかった、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
その処置を必要とする対象においててんかんを処置する方法であって、治療有効量のケタミン又は薬学的に許容されるその塩を前記対象に投与する工程を含み、ここで、前記対象がてんかんを有し抗発作薬が投与されたことを指し示す臨床記録を前記対象が有する、方法。
【請求項7】
臨床記録が、発作の持続期間、重症度及び/又は頻度の改善が抗発作薬の投与後の対象において実質的に観察されなかったことを指し示す、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
その処置を必要とする対象においててんかんを処置する方法であって、
前記対象に抗発作薬が事前に投与されたことを決定する工程と、
発作の持続期間、重症度及び/又は頻度の改善が、前記抗発作薬の投与後の前記対象において実質的になかったことを決定する工程と、
治療有効量のケタミン又は薬学的に許容されるその塩を前記対象に投与する工程と
を含む、方法。
【請求項9】
治療有効量のケタミン又は薬学的に許容されるその塩の投与を含む処置のために対象を選択する方法であって、
てんかんを有し抗発作薬が投与された対象を同定する工程と、
発作の持続期間、重症度及び/又は頻度の改善が、前記抗発作薬の投与後の前記対象において実質的になかったことを決定する工程と、
治療有効量のケタミン又は薬学的に許容されるその塩の投与を含む処置のために前記対象を選択する工程と
を含む、方法。
【請求項10】
抗発作薬が、トピラメート、バルプロ酸、フェルバメート、ルフィナミド、スチリペントール、フェンフルラミン、クロバザム、クロナゼパム、ロラゼパム、ガバペンチン、プレガバリン、レチガビン、フェニトイン、カルバマゼピン、オクスカルバゼピン、酢酸エスリカルバゼピン、ラモトリギン、ラコサミド、ゾニサミド、レベチラセタム、ブリバラセタム、エトスクシミド、ペランパネル、フェノバルビタール、プリミドン、エピディオレックス、セノバメート及びチアガビンからなる群から選択される、請求項3から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ケタミンを投与した後に、てんかんの1つ又は複数の症状の頻度、重症度及び/又は持続期間が低減する、請求項1から8及び10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
てんかんの1つ又は複数の症状が、焦点発作、全般性発作、非けいれん性発作、不随意筋収縮、前兆、ジャクソンマーチ、感覚外乱、唇鳴らし、物体持ち上げ、不随意発声、不規則な呼吸、青色の皮膚、膀胱若しくは腸の制御の喪失、咬舌、又はそれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
焦点発作が、脳の左半球の発作である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
焦点発作が、脳の右半球の発作である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
全般性発作が、強直間代、強直、間代、ミオクローヌス、欠神及び脱力発作からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
対象が、ケタミンの投与後に、麻酔を実質的に経験しない、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
治療有効量が、ケタミンの麻酔域下用量である、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
治療有効量が、対象において麻酔を生成するために必要とされる用量の約10%から約30%までである、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
対象が、複数回用量のケタミンを一定の間隔で受ける、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
ケタミンが、静脈内に投与される、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
ケタミンが、薬学的に許容される担体又は希釈剤と共に製剤化される、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
担体又は希釈剤が水性である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
担体又は希釈剤が、滅菌リン酸緩衝生理食塩水、静菌水、グリシン水溶液、又はそれらの任意の組合せを含む、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
治療有効量が、約0.1から約2.0mg/kgの間である、請求項20から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
治療有効量が約0.5ml/kgである、請求項20から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
ケタミンを週に1回投与する工程を含む、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
ケタミンを週に3回投与する工程を含む、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
ケタミンを週に1回6週間にわたって投与する工程を含む、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
ケタミンを週に3回2週間にわたって投与する工程を含む、請求項1から25及び27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
ケタミンが鼻腔内に投与される、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
ケタミンが、液剤又は懸濁剤として製剤化される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
ケタミンが、エアロゾルスプレーとして投与される、請求項30又は31に記載の方法。
【請求項33】
ケタミンが、乾燥粉末として製剤化される、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
ケタミンが鼻粘膜と接触させられる、請求項30から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
ケタミンが、定量吸入器を備えるデバイスによって投与される、請求項30から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
ケタミン又は薬学的に許容されるその塩が、ケタミン及び薬学的に許容される分散剤のエアロゾルスプレー製剤を含有する鼻孔スプレー吸入器を備えるデバイスによって投与され、ここで、前記デバイスが、てんかんを処置するために有効な用量のケタミンを含有するが、ケタミンの用量が麻酔を引き起こす用量未満となるように医師又は医療提供者によって決定されるスプレーを形成することによって、ある量のエアロゾル製剤を分散させるために計量される、請求項30から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
ケタミンが、薬学的に許容される担体又は希釈剤と共に製剤化される、請求項30から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
ケタミンが、分散剤と共に製剤化される、請求項30から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
ケタミンが、粘膜浸透増強剤と共に製剤化される、請求項30から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
ケタミンが、噴射剤と共に製剤化される、請求項30から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
治療有効量が、約0.05から約0.7mg/kgの間である、請求項30から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
治療有効量が約0.5ml/kgである、請求項30から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
ケタミンが、週に3回投与される、請求項1から42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
ケタミンが、週に3回約1か月間にわたって、次いで、週に2回約1か月間にわたって投与される、請求項1から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
ケタミンが発作の最中に投与され、対象が、ケタミンの投与後約10分以内に発作後状態又は通常状態に移行する、請求項1から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
ケタミンが発作の最中に投与され、対象が、ケタミンの投与後5分以内に発作後状態又は通常状態に移行する、請求項1から45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
ケタミンがエスケタミンである、請求項1から46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
ケタミンを投与した後に、発作の頻度が低減する、請求項1から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
発作の頻度が発作日記によって評価される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
発作頻度の低減が少なくとも約10%である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
発作頻度の低減が少なくとも約25%である、請求項48から50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
発作頻度の低減が少なくとも約50%である、請求項48から51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
対象が、ケタミンを投与する前に、うつ病及び/又は不安を有すると同定又は診断された、請求項1から52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
対象のてんかん患者用の神経学的障害うつ病評価尺度(NDDI-E)スコアが、ケタミンを投与した後に低くなっている、請求項1から53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
NDDI-Eスコアが、ケタミンを投与した後に、少なくとも1ポイント低くなっている、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
NDDI-Eスコアが、ケタミンを投与した後に、少なくとも3ポイント低くなっている、請求項54又は55に記載の方法。
【請求項57】
対象の全般性不安障害7(GAD-7)スコアが、ケタミンを投与した後に低くなっている、請求項1から56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
GAD-7スコアが、ケタミンを投与した後に、少なくとも10%低くなっている、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
GAD-7スコアが、ケタミンを投与した後に、少なくとも30%低くなっている、請求項57又は58に記載の方法。
【請求項60】
対象の不安、うつ病及び気分指標(ADAMS)スコアが、ケタミンを投与した後に低くなっている、請求項1から59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
ADAMSスコアが、ケタミンを投与した後に、少なくとも10%低くなっている、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
ADAMSスコアが、ケタミンを投与した後に、少なくとも30%低くなっている、請求項60又は61に記載の方法。
【請求項63】
対象のてんかん患者の生活の質評価尺度-10(QOLIE-10)スコアが、ケタミンを投与した後に低くなっている、請求項1から62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
QOLIE-10スコアが、ケタミンを投与した後に、少なくとも10%低くなっている、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
QOLIE-10スコアが、ケタミンを投与した後に、少なくとも30%低くなっている、請求項63又は64に記載の方法。
【請求項66】
第2の治療剤を投与する工程を含む、請求項1から65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
第2の治療剤が抗発作薬である、請求項66に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年5月28日に出願された米国仮出願第63/194,586号の優先権を主張するものであり、その開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】国際特許公開第WO2013138322号
【特許文献2】米国特許第4,925,673号
【特許文献3】米国特許第5,013,556号
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Gill Sら、Epilepsia 2017、58(5)、695~705
【非特許文献2】Spitzerら、Arch Intern Med. 2006、166(10)、1092~1097
【非特許文献3】Esbensen Aら、J. Autism Dev. Disord. 2003、33(6)、617~629
【非特許文献4】Kalilani Lら、Epilepsia. 2018、59(12)、2179~2193
【非特許文献5】Holmes, M.ら、Epilepsia、2020、61(12)、2619~2628
【非特許文献6】Paulら、「Comparison of racemic ketamine and S-ketamine in treatment-resistant major depression: report of two cases」、World J. of Bio. Psych.、2009、241~244頁、第10巻(3)
【非特許文献7】Paskalisら、「Oral Administration of the NMDA Receptor Antagonist S-Ketamine as Add-on Therapy of Depression: A Case Series」、Pharmacopsychiatry、2010、33~35頁、第40号
【非特許文献8】Noppersら、「Absence of long-term analgesic effect from a short-term S-ketamine infusion on fibromyalgia pain: A randomized, prospective, double blind, active placebo-controlled trial」、Eur. J. of Pain.、2011
【非特許文献9】Matthewsら、「Ketamine for Treatment-Resistant Unipolar Depression」、CNS Drugs、2012、1~16頁
【非特許文献10】Zarateら、Am J Psychiatry、2006、163:153~5
【非特許文献11】Remington: The Science and Practice of Pharmacy、第21版、2005、Lippincott, Williams & Wilkins、Phila.、PA
【非特許文献12】Ming Ming Wen, Discov Med、「Olfactory Targeting Through Intranasal Delivery of Biopharmaceutical Drugs to the Brain - Current Development」、2011、11:497~503
【非特許文献13】Illum, L.、J Pharm Pharmacol、56:3~17、2004
【非特許文献14】Illum, L.、Eur J Pharm Sci 11:1~18、2000
【非特許文献15】Wearley, L. L.、1991、1991、Crit. Rev. in Ther. Drug Carrier Systems 8:333
【非特許文献16】Remington's Pharmaceutical Sciences、第18版、1990(Mack Publishing Co. Easton PA 18042)第89章
【非特許文献17】Chongら、Clin Drug Investig. 2009;29(5):317~24
【非特許文献18】Marshall, K. In: Modern Pharmaceutics、G.S. Banker及びC.T. Rhodes編、第10章、1979
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書で開示されるのは、その処置を必要とする対象において薬物抵抗性てんかんを処置する方法であって、治療有効量のケタミン又は薬学的に許容されるその塩を、対象に投与する工程を含む方法である。
【0005】
本明細書で開示されるのは、その処置を必要とする対象においててんかんを処置する方法であって、治療有効量のケタミン又は薬学的に許容されるその塩を対象に投与する工程を含み、ここで、対象が、ケタミン又は薬学的に許容されるその塩の投与後に、麻酔を実質的に経験しない方法である。
【0006】
一部の実施形態では、対象に抗発作薬が事前に投与された。
【0007】
本明細書で開示されるのは、その処置を必要とする対象においててんかんを処置する方法であって、治療有効量のケタミン又は薬学的に許容されるその塩を対象に投与する工程を含み、ここで、対象に抗発作薬が事前に投与された方法である。
【0008】
一部の実施形態では、発作の持続期間、重症度及び/又は頻度の改善は、抗発作薬の投与後の対象において実質的に観察されなかった。
【0009】
本明細書で開示されるのは、その処置を必要とする対象においててんかんを処置する方法であって、治療有効量のケタミン又は薬学的に許容されるその塩を対象に投与する工程を含み、ここで、対象がてんかんを有し抗発作薬が投与されたことを指し示す臨床記録を対象が有する方法である。一部の実施形態では、臨床記録は、発作の持続期間、重症度及び/又は頻度の改善が抗発作薬の投与後の対象において実質的に観察されなかったことを指し示す。
【0010】
本明細書で開示されるのは、その処置を必要とする対象においててんかんを処置する方法であって、
対象に抗発作薬が事前に投与されたことを決定する工程と、
発作の持続期間、重症度及び/又は頻度の改善が、抗発作薬の投与後の対象において実質的になかったことを決定する工程と、
治療有効量のケタミン又は薬学的に許容されるその塩を対象に投与する工程と
を含む方法である。
【0011】
本明細書で開示されるのは、治療有効量のケタミン又は薬学的に許容されるその塩の投与を含む処置のために対象を選択する方法であって、
てんかんを有し抗発作薬が投与された対象を同定する工程と、
発作の持続期間、重症度及び/又は頻度の改善が、抗発作薬の投与後の対象において実質的になかったことを決定する工程と、
治療有効量のケタミン又は薬学的に許容されるその塩の投与を含む処置のために対象を選択する工程と
を含む方法である。
【0012】
一部の実施形態では、抗発作薬は、トピラメート、バルプロ酸、フェルバメート、ルフィナミド、スチリペントール、フェンフルラミン、クロバザム、クロナゼパム、ロラゼパム、ガバペンチン、プレガバリン、レチガビン、フェニトイン、カルバマゼピン、オクスカルバゼピン、酢酸エスリカルバゼピン、ラモトリギン、ラコサミド、ゾニサミド、レベチラセタム、ブリバラセタム、エトスクシミド、ペランパネル、フェノバルビタール、プリミドン、エピディオレックス、セノバメート及びチアガビンからなる群から選択される。
【0013】
一部の実施形態では、ケタミンを投与した後に、てんかんの1つ又は複数の症状の頻度、重症度及び/又は持続期間が低減する。一部の実施形態では、てんかんの1つ又は複数の症状は、焦点発作、全般性発作、非けいれん性発作、不随意筋収縮、前兆、ジャクソンマーチ、感覚外乱、唇鳴らし、物体持ち上げ(object lifting)、不随意発声、不規則な呼吸、青色の皮膚(blue skin)、膀胱若しくは腸の制御の喪失、咬舌、又はそれらの任意の組合せからなる群から選択される。一部の実施形態では、焦点発作は、脳の左半球の発作である。一部の実施形態では、焦点発作は、脳の右半球の発作である。
【0014】
一部の実施形態では、全般性発作は、強直間代、強直、間代、ミオクローヌス、欠神及び脱力発作からなる群から選択される。
【0015】
一部の実施形態では、対象は、ケタミンの投与後に、麻酔を実質的に経験しない。
【0016】
一部の実施形態では、治療有効量は、ケタミンの麻酔域下用量である。一部の実施形態では、治療有効量は、対象において麻酔を生成するために必要とされる用量の約10%から約30%までである。
【0017】
一部の実施形態では、対象は、複数回用量のケタミンを一定の間隔で受ける。
【0018】
一部の実施形態では、ケタミンは、静脈内に投与される。一部の実施形態では、ケタミンは、薬学的に許容される担体又は希釈剤と共に製剤化される。一部の実施形態では、担体又は希釈剤は水性である。一部の実施形態では、担体又は希釈剤は、滅菌リン酸緩衝生理食塩水、静菌水、グリシン水溶液、又はそれらの任意の組合せを含む。一部の実施形態では、治療有効量は、約0.1から約2.0mg/kgの間である。一部の実施形態では、治療有効量は約0.5ml/kgである。
【0019】
一部の実施形態では、ケタミンは鼻腔内に投与される。一部の実施形態では、ケタミンは、液剤又は懸濁剤として製剤化される。一部の実施形態では、ケタミンは、エアロゾルスプレーとして投与される。一部の実施形態では、ケタミンは、乾燥粉末として製剤化される。一部の実施形態では、ケタミンは、鼻粘膜と接触させられる。
【0020】
一部の実施形態では、ケタミンは、定量吸入器を備えるデバイスを利用して投与される。一部の実施形態では、ケタミン又は薬学的に許容されるその塩は、ケタミン及び薬学的に許容される分散剤のエアロゾルスプレー製剤を含有する鼻孔スプレー吸入器を備えるデバイスを利用して投与され、ここで、デバイスは、てんかんを処置するために有効な用量のケタミンを含有するが、ケタミンの用量が麻酔を引き起こす用量未満となるように医師又は医療提供者によって決定されるスプレーを形成することによって、ある量のエアロゾル製剤を分散させるために計量される。
【0021】
一部の実施形態では、ケタミンは、薬学的に許容される担体又は希釈剤と共に製剤化される。一部の実施形態では、ケタミンは、分散剤と共に製剤化される。一部の実施形態では、ケタミンは、粘膜浸透増強剤と共に製剤化される。一部の実施形態では、ケタミンは、噴射剤と共に製剤化される。
【0022】
一部の実施形態では、治療有効量は、約0.05から約0.7mg/kgの間である。一部の実施形態では、治療有効量は、約0.5ml/kgである。
【0023】
一部の実施形態では、ケタミンは、週に3回投与される。一部の実施形態では、ケタミンは、週に3回約1か月間にわたって、次いで、週に2回約1か月間にわたって投与される。
【0024】
一部の実施形態では、ケタミンは発作の最中に投与され、対象は、ケタミンの投与後約10分以内に発作後状態又は通常状態に移行する。一部の実施形態では、ケタミンは発作の最中に投与され、対象は、ケタミンの投与後5分以内に発作後状態又は通常状態に移行する。
【0025】
一部の実施形態では、ケタミンはエスケタミンである。
【0026】
一部の実施形態では、ケタミンを投与した後に、発作の頻度は低減する。一部の実施形態では、発作の頻度は発作日記によって評価される。一部の実施形態では、発作頻度の低減は少なくとも約10%である。一部の実施形態では、発作頻度の低減は少なくとも約25%である。一部の実施形態では、発作頻度の低減は少なくとも約50%である。
【0027】
一部の実施形態では、対象は、ケタミンを投与する前に、うつ病及び/又は不安を有すると同定又は診断された。
【0028】
一部の実施形態では、対象のてんかん患者用の神経学的障害うつ病評価尺度(NDDI-E)スコアは、ケタミンを投与した後に低くなっている。一部の実施形態では、NDDI-Eスコアは、ケタミンを投与した後に、少なくとも1ポイント低くなっている。一部の実施形態では、NDDI-Eスコアは、ケタミンを投与した後に、少なくとも3ポイント低くなっている。
【0029】
一部の実施形態では、対象の全般性不安障害7(GAD-7)スコアは、ケタミンを投与した後に低くなっている。一部の実施形態では、GAD-7スコアは、ケタミンを投与した後に、少なくとも10%低くなっている。一部の実施形態では、GAD-7スコアは、ケタミンを投与した後に、少なくとも30%低くなっている。
【0030】
一部の実施形態では、対象の不安、うつ病及び気分指標(ADAMS)スコアは、ケタミンを投与した後に低くなっている。一部の実施形態では、ADAMSスコアは、ケタミンを投与した後に、少なくとも10%低くなっている。一部の実施形態では、ADAMSスコアは、ケタミンを投与した後に、少なくとも30%低くなっている。
【0031】
一部の実施形態では、対象のてんかん患者の生活の質評価尺度-10(QOLIE-10)スコアは、ケタミンを投与した後に低くなっている。一部の実施形態では、QOLIE-10スコアは、ケタミンを投与した後に、少なくとも10%低くなっている。一部の実施形態では、QOLIE-10スコアは、ケタミンを投与した後に、少なくとも30%低くなっている。
【0032】
一部の実施形態では、第2の治療剤は抗発作薬である。
【0033】
定義
本明細書において使用される場合、用語「約」及び「およそ」は交換可能に使用され、数値を修飾することを指すために使用される場合、数値の0%から10%までの数値のある範囲の不確実性を包括する。
【0034】
明確化を目的として、「対象は麻酔を実質的に経験しない」は、対象が、麻酔が最小限からまったくないことを指し示す行動を呈することを意味すると理解される。例えば、対象は、口頭での質問若しくは要求及び/又は疼痛性刺激に応答し、医師又は医療提供者の判断で、麻酔が最小限からまったくないことを指し示す。一部の実施形態では、対象の精神状態の神経学的検査は、「清明」又は「嗜眠」の特徴付けを提供する。一部の実施形態では、対象の精神状態の神経学的検査は、「鈍感」、「昏迷」又は「昏睡」以外の特徴付けを提供する。
【0035】
本明細書において使用される場合、「発作の持続期間、重症度及び/又は頻度の改善が実質的にない」は、発作の持続期間、重症度及び頻度の1つ又は複数の、ベースライン(すなわち、抗発作薬の投与前に評価された発作の持続期間、重症度及び頻度)と比べた、まったくない改善、最小限の改善(例えば、約10%未満の改善、約8%未満の改善、約5%未満の改善、約2%未満の改善又は約0%の改善)又は悪化を指す。発作の持続期間、重症度及び/又は頻度の改善は、発作日記を利用して評価される。発作日記は、例えば、対象、医師及び/又は医療提供者が、発作の頻度及び重症度を書き留めるための、文書(例えば、ノート及び/又はカレンダー)又はアプリケーションである。発作の頻度及び重症度は、例えば、それらの発生直後に又は定期的に、報告されうる。例示的な発作日記は、例えば、Epsy (https://www.epsyhealth.com/)又はSeizure Tracker (https://seizuretracker.com/)を含む。
【0036】
本明細書において使用される場合、「発作後状態」は、てんかん発作後、対象が発作から回復している最中に発生する、意識の状態を指す。発作後状態の最中に、対象は、例えば、眠気、精神錯乱、悪心、高血圧症、頭痛又は片頭痛、及び失見当識を経験する。一部の実施形態では、発作後状態の持続期間は、約3分から約3時間まで(例えば、約3分から約10分まで、約10分から約20分まで、約20分から約40分まで、約40分から約1時間まで、約1時間から約2時間まで、又は約2時間から約3時間まで)である。一部の実施形態では、対象の脳活動及び/又は行動は、発作後状態後に、通常(例えば、対象が目覚めており、発作、発作後状態又は発作前状態のいずれも経験していない場合に対象において日常的に観察されるもの)に戻る。
【0037】
本明細書において使用される場合、薬物の「治療有効量」は、薬物の所望の活性を実証するために有効な量である。一部の実施形態では、ケタミンの治療有効量は、薬物抵抗性てんかんの症状を緩和する、すなわち目立って低減させるために有効な量である。
【0038】
本明細書において使用される場合、用語「エアロゾル」は、空中懸濁物を指す。特に、エアロゾルは、本発明の製剤の粒子化又は微粒化及びその空中懸濁物を指す。本発明によれば、エアロゾル製剤は、鼻孔吸入又は肺内投与用のケタミンを含む製剤である。
【0039】
本明細書において使用される場合、用語「吸入器」は、例えば溶液、粉末等での薬物の鼻孔投与及び肺内投与のためのデバイスの両方を指す。例えば、用語「吸入器」は、急性喘息発作用の抗ヒスタミン剤を投与するために使用される等の噴射剤駆動吸入器、及び充血除去剤を投与するために使用される等のプラスチックスプレーボトルを包括することが意図されている。
【0040】
本明細書において使用される場合、用語「分散剤」は、粘膜組織におけるケタミンのエアロゾル化若しくはケタミンの吸収又は両方を援助する作用物質を指す。具体的な態様では、分散剤は、粘膜浸透増強剤であることができる。好ましくは、分散剤は、薬学的に許容される。
【0041】
本明細書において使用される場合、用語「薬学的に許容される」は、連邦又は州政府の規制機関によって承認されているか、又は米国薬局方若しくは動物(例えば、ヒト)において使用するための他の一般的に認められている薬局方に収載されていることを意味する。
【0042】
本明細書において使用される場合、「ケタミン」は、ケタミンのS(+)及びR(-)立体異性体のラセミ混合物を含有するケタミンの調製物、鏡像異性体比が異なるS(+)及びR(-)立体異性体を含有する調製物、並びに鏡像異性体の一方のみ(例えば、S(+)ケタミンのみ又はR(-)ケタミンのみ)を含有する調製物を含む。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】薬物抵抗性てんかんを処置する際の、麻酔域下用量のケタミンの効能を評価する研究における、患者の訪問ごとの活動を描写するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
てんかんは、異常な脳活動が発作につながる神経学的障害である。てんかん発作の処置に成功することができる患者もいるが、処置に応答しない、すなわち、抗発作薬による処置に対して抵抗性のてんかん発作である発作を有する患者もいる。
【0045】
グルタメートは、成熟脳における主な興奮性神経伝達物質である。動物及びヒトモデルの両方において、グルタメートは発作に関与し、反復発作を引き起こすプロセス(てんかん原生)に関与する。グルタメートは、うつ病を含むてんかん集団に影響するいくつかの併発状態にも関与する可能性が高い(Niciu MJら、2015; Zarate CAら、2006)。
【0046】
ケタミンは、NMDA受容体媒介性グルタミン酸神経伝達を遮断する非競合性NMDA受容体アンタゴニストである(Dingledineら、1999;Freeman FGら、1982、Aram JAら、1989)。ケタミンは、グルタメート媒介性NMDA受容体誘導性神経毒性を遮断することによって神経保護になりうる(Mazarati AMら、1999;Kapur Jら、1990、Fujikawa DG、1995)。不応性及び超不応性てんかん重積状態におけるケタミンの麻酔用量を検査しているいくつかの症例報告、3つの後ろ向き研究及び2つの前向き研究がある(Gaspard Nら、2013;Rosati Aら、2018;Mewasingh LDら、2003;Tarocco Aら、2014;Synowiec ASら、2013、Zieler FAら、2013、Esaian Dら、2013;Kramer AH、2012;Yeh PSら、2011;Hsieh CYら、2010;Pruss Hら、2008;Kramer Uら、2005;Ubogu EEら、2003;Sheht RDら、1998;Walker MCら、1996、Zieler FAら、2014)。しかしながら、ケタミンは、薬物抵抗性てんかん(DRE)がある患者において従来の抗発作薬剤(ASM)として麻酔域下用量で使用されたことがない。DREは、てんかん集団の30%超を構成する。多くが新規作用機序を持つ複数の新たなASMの導入にもかかわらず、DREがある人々の百分率は縮減していない(Brodie MJ、2013)。DREがある患者は、早すぎる死(てんかん患者における予期せぬ又は原因不明の突然死SUDEP)(Mohanraj Rら、2006)、傷害、心理社会的機能不全及び生活の質の低下(Lawn NDら、2004、McCagh Jら、2009)のリスクが増大する。
【0047】
処置抵抗性うつ病及びDREは、考えられる作用機序-グルタメートを含む若干数の共通点を有する。多数のリサーチが、麻酔域下用量のケタミンで薬物抵抗性うつ病を成功裏に処置できることを示している(Niciuら、2013;Lent JKら、2019;Lapidus KAら、2014;Murrough JWら、2012)。
【0048】
てんかんがある人々は、一般集団よりもはるかに高い率の不安及びうつ病を有し、最近のメタ分析では、てんかんがある人々の20.2%が不安を患っており、22.9%がうつ病を患っていることが分かっている(Scott AJら、2017)。この10年以前は、てんかんの負担が情動障害の増加の原因であると考えられていた。しかしながら、最近の調査は、より複雑且つ双方向性の関係を明らかにした。具体的には、てんかんがある人々は、てんかんの診断の前及び後の両方で、精神病、うつ病、不安及び自殺念慮の発生率が高い(Hesdorffer DCら、2012)。これは、精神医学的疾病及びてんかんが、共通の基礎となる神経生物学を共有しうることを示唆している。更に、精神医学的疾病は、未だ理解されていない手法で発作閾値を下げることができる。気分の安定化に使用される多くの薬剤もASMである。てんかんのある人々は高い率の不安及びうつ病を患っていることから、副次的狙いは、ケタミンによる処置がこれらの患者の気分及び生活の質に対して何らかの利益を有するか否かを調査することである。
【0049】
ケタミンは、軽度から中等度の有害副作用を持つ、安全で安価で容易に入手可能な薬物である。本発明は、ケタミンの投与が、他の抗発作薬に対して不応性である対象において、てんかんの症状(例えば、発作)を緩和することができるという驚くべき且つ予期せぬ発見に基づく。
【0050】
本明細書では、その処置を必要とする対象において薬物抵抗性てんかんを処置する方法であって、治療有効量のケタミン又は薬学的に許容されるその塩を、対象に投与する工程を含む方法が開示される。
【0051】
本明細書では、その処置を必要とする対象においててんかんを処置する方法であって、治療有効量のケタミン又は薬学的に許容されるその塩を対象に投与する工程を含み、ここで、対象が、ケタミン又は薬学的に許容されるその塩の投与後に、麻酔を実質的に経験しない方法が開示される。
【0052】
本明細書では、その処置を必要とする対象においててんかんの1つ又は複数の症状を処置する方法であって、治療有効量のケタミン又は薬学的に許容されるその塩を、対象に投与する工程を含む方法が開示される。
【0053】
一部の実施形態では、対象に抗発作薬が事前に投与された。
【0054】
本明細書では、その処置を必要とする対象においててんかんを処置する方法であって、治療有効量のケタミン又は薬学的に許容されるその塩を対象に投与する工程を含み、ここで、対象に抗発作薬が事前に投与された方法が開示される。
【0055】
一部の実施形態では、発作の持続期間、重症度及び/又は頻度の改善は、抗発作薬の投与後の対象において実質的に観察されなかった。
【0056】
本明細書では、その処置を必要とする対象においててんかんを処置する方法であって、治療有効量のケタミン又は薬学的に許容されるその塩を対象に投与する工程を含み、ここで、対象がてんかんを有し抗発作薬が投与されたことを指し示す臨床記録を対象が有する方法が開示される。
【0057】
一部の実施形態では、臨床記録は、発作の持続期間、重症度及び/又は頻度の改善が抗発作薬の投与後の対象において実質的に観察されなかったことを指し示す。
【0058】
本明細書では、その処置を必要とする対象においててんかんを処置する方法であって、
対象に抗発作薬が事前に投与されたことを決定する工程と、
発作の持続期間、重症度及び/又は頻度の改善が、抗発作薬の投与後の対象において実質的になかったことを決定する工程と、
治療有効量のケタミン又は薬学的に許容されるその塩を対象に投与する工程と
を含む方法が開示される。
【0059】
本明細書では、治療有効量のケタミン又は薬学的に許容されるその塩の投与を含む処置のために対象を選択する方法であって、
てんかんを有し抗発作薬が投与された対象を同定する工程と、
発作の持続期間、重症度及び/又は頻度の改善が、抗発作薬の投与後の対象において実質的になかったことを決定する工程と、
治療有効量のケタミン又は薬学的に許容されるその塩の投与を含む処置のために対象を選択する工程と
を含む方法が開示される。
【0060】
一部の実施形態では、抗発作薬は、トピラメート、バルプロ酸、フェルバメート、ルフィナミド、スチリペントール、フェンフルラミン、クロバザム、クロナゼパム、ロラゼパム、ガバペンチン、プレガバリン、レチガビン、フェニトイン、カルバマゼピン、オクスカルバゼピン、酢酸エスリカルバゼピン、ラモトリギン、ラコサミド、ゾニサミド、レベチラセタム、ブリバラセタム、エトスクシミド、ペランパネル、フェノバルビタール、プリミドン、エピディオレックス、セノバメート及びチアガビンからなる群から選択される。
【0061】
一部の実施形態では、ケタミンを投与した後に、てんかんの1つ又は複数(例えば、2つ以上、3つ以上、4つ以上、2つ、3つ、又は4つ)の症状の頻度、重症度及び/又は持続期間が低減する。この文脈において、1つ又は複数の症状の頻度、重症度及び/又は持続期間の低減は、例えば、(1)ベースライン、すなわち、処置の開始前の(例えば、ケタミンの投与前、ここで、1種又は複数の治療剤の投与前の1つ又は複数の症状の頻度、重症度及び/又は持続期間は、例えば、単一の測定若しくは評価、又は行った複数の測定若しくは評価の平均によって、例えば、1か月の期間、3週の期間、2週の期間、7日の期間、6日の期間、5日の期間、4日の期間、3日の期間、2日の期間、又は1日の期間(例えば、7日の期間)の過程にわたって評定されうる)対象における1つ又は複数の症状の頻度、重症度及び/又は持続期間、ここで、例えば、症状の頻度、重症度及び/又は持続期間の低減は、処置の約1時間後(例えば、処置の約2時間、4時間、6時間、8時間、16時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、1.5週間、2週間、3週間、4週間、1か月、6週間、2か月、3か月、又は1年後)に測定される;並びに/或いは(2)対象にプラセボ(例えば、ケタミンを含有しない材料、物質又は物品)が投与された後に、対象が経験した1つ又は複数の症状の頻度、重症度及び/又は持続期間と比較した場合、症状の頻度、重症度及び/又は持続期間を低減させることを含みうる。
【0062】
例えば、てんかんの1つ又は複数の症状の頻度が低減する。例えば、てんかんの1つ又は複数の症状の重症度が低減する。例えば、てんかんの1つ又は複数の症状の持続期間が低減する。
【0063】
一部の実施形態では、てんかんの1つ又は複数の症状は、焦点発作、全般性発作、非けいれん性発作、不随意筋収縮、前兆、ジャクソンマーチ、感覚外乱、唇鳴らし、物体持ち上げ、不随意発声、不規則な呼吸、青色の皮膚、膀胱若しくは腸の制御の喪失、咬舌、号泣、意識消失、つまずき、転倒、平衡の喪失、急速な瞬目、緊張病、単収縮、感覚の変化(例えば、味覚又は嗅覚の変化)、精神錯乱、記憶喪失、又はそれらの任意の組合せからなる群から選択される。一部の実施形態では、てんかんの1つ又は複数の症状は、焦点発作、全般性発作、非けいれん性発作、不随意筋収縮、前兆、ジャクソンマーチ、感覚外乱、唇鳴らし、物体持ち上げ、不随意発声、不規則な呼吸、青色の皮膚、膀胱若しくは腸の制御の喪失、咬舌、又はそれらの任意の組合せからなる群から選択される。
【0064】
一部の実施形態では、焦点発作は、脳の左半球の発作である。一部の実施形態では、焦点発作は、脳の右半球の発作である。
【0065】
一部の実施形態では、全般性発作は、強直間代、強直、間代、ミオクローヌス、欠神及び脱力発作からなる群から選択される。
【0066】
一部の実施形態では、対象は、ケタミンの投与後に、麻酔を実質的に経験しない。一部の実施形態では、ケタミンの投与後に、対象は、話し(例えば、質問に正確に答え)、刺激(例えば、感触、疼痛、特定の音、匂い及び視覚刺激)に応答し、並びに/又は覚醒及び清明性と一致する行動を呈する。
【0067】
一部の実施形態では、治療有効量は、ケタミンの麻酔域下用量である。一部の実施形態では、治療有効量は、対象において麻酔を生成するために必要とされる用量の、約2%から約80%まで(例えば、約2%から約70%、約2%から約60%、約2%から約50%、約2%から約40%、約2%から約30%、約2%から約20%、約2%から約10%、約10%から約80%、約20%から約80%、約30%から約80%、約40%から約80%、約50%から約80%、約60%から約80%、約10%から約30%、約10%から約40%、約10%から約50%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、又は約40%)である。
【0068】
一部の実施形態では、対象は、単回用量のケタミンを受ける。一部の実施形態では、対象は、複数回用量のケタミンを一定の間隔で受ける。一部の実施形態では、ケタミンは、月に少なくとも1回(例えば、月に少なくとも2回、月に少なくとも3回、月に少なくとも4回、週に少なくとも1回、週に少なくとも2回、週に少なくとも3回、週に少なくとも4回、週に少なくとも5回、週に少なくとも6回、1日に少なくとも1回、1日に少なくとも2回、1日に少なくとも3回、月に2回、月に3回、月に4回、週に1回、週に2回、週に3回、週に4回、週に5回、週に6回、1日に1回、1日に2回、又は1日に3回)投与される。一部の実施形態では、ケタミンは、週に3回投与される。
【0069】
一部の実施形態では、複数回用量のケタミンは、少なくとも1日、例えば、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも1か月、少なくとも2か月、少なくとも3か月、少なくとも6か月、少なくとも1年、少なくとも2年、少なくとも3年、少なくとも5年、少なくとも7年、少なくとも10年、少なくとも15年、少なくとも20年かけて、又は対象の生涯を通して投与される。一部の実施形態では、発作の頻度、重症度及び/又は持続期間は、複数回用量のケタミンを、最大1日、最大2日、最大3日、最大4日、最大5日、最大6日、最大1週間、最大2週間、最大3週間、最大4週間、最大1か月、最大2か月、最大3か月、最大6か月、又は最大1年かけて投与した後に、低減する。
【0070】
一部の実施形態では、ケタミンは、週に3回1週間にわたって投与される。一部の実施形態では、ケタミンは、週に2回1週間にわたって投与される。一部の実施形態では、ケタミンは、週に1回1週間にわたって投与される。一部の実施形態では、ケタミンは、週に3回2週間にわたって投与される。一部の実施形態では、ケタミンは、週に2回2週間にわたって投与される。一部の実施形態では、ケタミンは、週に1回2週間にわたって投与される。一部の実施形態では、ケタミンは、週に3回3週間にわたって投与される。一部の実施形態では、ケタミンは、週に2回3週間にわたって投与される。一部の実施形態では、ケタミンは、週に1回3週間にわたって投与される。一部の実施形態では、ケタミンは、週に3回1か月間にわたって投与される。一部の実施形態では、ケタミンは、週に2回1か月間にわたって投与される。一部の実施形態では、ケタミンは、週に1回1か月間にわたって投与される。一部の実施形態では、ケタミンは、週に3回2か月間にわたって投与される。一部の実施形態では、ケタミンは、週に2回2か月間にわたって投与される。一部の実施形態では、ケタミンは、週に1回2か月間にわたって投与される。一部の実施形態では、ケタミンは、週に3回3か月間にわたって投与される。一部の実施形態では、ケタミンは、週に2回3か月間にわたって投与される。一部の実施形態では、ケタミンは、週に1回3か月間にわたって投与される。
【0071】
一部の実施形態では、ケタミンを投与する頻度は、初回投薬期間後に減少する。一部の実施形態では、ケタミンは、週に2~3回約1か月間にわたって、次いで、週に1~2回約1か月間にわたって投与される。一部の実施形態では、ケタミンは、週に3回約1か月間にわたって、次いで、週に2回約1か月間にわたって投与される。一部の実施形態では、ケタミンは、週に2回約1か月間にわたって、次いで、週に1回約1か月間にわたって投与される。一部の実施形態では、ケタミンは、週に2~3回約1か月間にわたって、次いで、週に1~2回約1か月間にわたって、次いで、その後は週に1回投与される。一部の実施形態では、ケタミンは、週に3回約1か月間にわたって、次いで、週に2回約1か月間にわたって、次いで、その後は週に1回投与される。
【0072】
一部の実施形態では、ケタミンは、発作の最中に投与される。一部の実施形態では、ケタミンは発作の最中に投与され、対象は、対象にケタミンが投与されなかった場合よりも早く、発作後状態又は通常状態に移行する。一部の実施形態では、ケタミンは発作の最中に投与され、対象は、ケタミンの投与後、約2時間(例えば、約1時間45分、約1時間30分、約1時間15分、約1時間、約45分、約30分、約25分、約20分、約15分、約10分、約5分、約3分、約2分、約1分、又は約30秒)以内に発作後状態又は通常状態(例えば、通常状態)に移行する。一部の実施形態では、ケタミンは発作の最中に投与され、対象は、ケタミンの投与後10分以内に発作後状態又は通常状態に移行する。一部の実施形態では、ケタミンは発作の最中に投与され、対象は、ケタミンの投与後5分以内に発作後状態又は通常状態に移行する。
【0073】
一部の実施形態では、ケタミンは発作の最中に投与され、対象は、ケタミンの投与後、約2時間(例えば、約1時間45分、約1時間30分、約1時間15分、約1時間、約45分、約30分、約25分、約20分、約15分、約10分、約5分、約3分、約2分、約1分、又は約30秒)以内に発作後状態に移行する。一部の実施形態では、ケタミンは発作の最中に投与され、対象は、ケタミンの投与後10分以内に発作後状態に移行する。一部の実施形態では、ケタミンは発作の最中に投与され、対象は、ケタミンの投与後5分以内に発作後状態に移行する。
【0074】
一部の実施形態では、ケタミンは発作の最中に投与され、対象は、ケタミンの投与後、約2時間(例えば、約1時間45分、約1時間30分、約1時間15分、約1時間、約45分、約30分、約25分、約20分、約15分、約10分、約5分、約3分、約2分、約1分、又は約30秒)以内に通常状態に移行する。一部の実施形態では、ケタミンは発作の最中に投与され、対象は、ケタミンの投与後10分以内に通常状態に移行する。一部の実施形態では、ケタミンは発作の最中に投与され、対象は、ケタミンの投与後5分以内に通常状態に移行する。
【0075】
一部の実施形態では、ケタミンはエスケタミン(すなわち、(S)-ケタミン)である。一部の実施形態では、ケタミンはアールケタミン(すなわち、(R)-ケタミン)である。一部の実施形態では、ケタミンは、エスケタミン、又はケタミンのR鏡像異性体である。一部の実施形態では、ケタミンは、エスケタミン及びアールケタミンの混合物である。一部の実施形態では、混合物は、エスケタミンが豊富である。一部の実施形態では、混合物は、約60%エスケタミン及び約40%アールケタミンである。一部の実施形態では、混合物は、約70%エスケタミン及び約30%アールケタミンである。一部の実施形態では、混合物は、約80%エスケタミン及び約20%アールケタミンである。一部の実施形態では、混合物は、約90%エスケタミン及び約10%アールケタミンである。一部の実施形態では、混合物は、約95%エスケタミン及び約5%アールケタミンである。一部の実施形態では、混合物は、約98%エスケタミン及び約2%アールケタミンである。
【0076】
一部の実施形態では、ケタミンを投与した後に、発作の頻度が低減する。この文脈において、発作の頻度の低減は、例えば、(1)ベースライン、すなわち、処置の開始前の(例えば、ケタミンの投与前、ここで、ケタミンの投与前の発作の頻度は、例えば、単一の測定若しくは評価、又は行った複数の測定若しくは評価の平均によって、例えば、1か月の期間、3週の期間、2週の期間、7日の期間、6日の期間、5日の期間、4日の期間、3日の期間、2日の期間、又は1日の期間(例えば、7日の期間)の過程にわたって評定されうる)対象における発作の頻度、ここで、例えば、発作の頻度の低減は、処置の約1時間後(例えば、処置の約2時間、4時間、6時間、8時間、16時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、1.5週間、2週間、3週間、4週間、1か月、6週間、2か月、3か月、又は1年後)に測定される;並びに/或いは(2)対象にプラセボ(例えば、ケタミンを含有しない材料、物質又は物品)が投与された後に、対象が経験した発作の頻度と比較した場合、発作の頻度を低減させることを含みうる。
【0077】
一部の実施形態では、発作の頻度は発作日記によって評価される。一部の実施形態では、ケタミンを投与した後に、発作日記によれば発作の頻度は低減する。
【0078】
一部の実施形態では、発作頻度の低減は、少なくとも約2%、例えば、少なくとも約4%、少なくとも約6%、少なくとも約8%、少なくとも約10%、少なくとも約12%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%であるか、又は発作が対象において発生しなくなる。一部の実施形態では、発作頻度の低減は、少なくとも約10%である。一部の実施形態では、発作頻度の低減は、少なくとも約25%である。一部の実施形態では、発作頻度の低減は、少なくとも約50%である。
【0079】
一部の実施形態では、対象は、不眠症を有すると同定又は診断される。一部の実施形態では、ケタミンを投与した後に、平均1日睡眠持続時間は対象において増大する。睡眠持続時間は、例えば、アプリケーション、活動量計又はスマートウォッチによる、ケタミンの投与前の1日当たりの平均睡眠と比べた1日当たりの平均睡眠持続時間の増大によって例えば測定されうる。平均は、少なくとも2日、例えば、少なくとも3日、4日、5日、1週間、9日、10日、2週間、3週間、4週間、1か月、2か月、又は3か月を超える睡眠の平均であることができる。平均を算出するために使用される日数は、ケタミンの初回投与の1週間、2週間、1か月、2か月、又は3か月以内に収まる。
【0080】
一部の実施形態では、対象は、認知機能障害を有すると同定又は診断される。一部の実施形態では、ケタミンを投与した後に、対象の認知機能障害の1つ又は複数の症状が、ケタミンの投与前に比べて改善される。この改善は、例えば、ミニメンタルステート検査(MMSE)、モントリオール認知評価、3語遅延再生試験、時計描画試験、血清電解質濃度、又は血清カルシウム濃度によって測定されうる。一部の実施形態では、認知機能障害の症状は、乏しい記憶力、新たな情報を学習する困難、集中困難、又は乏しい意思決定能力を含むがこれらに限定されない。
【0081】
一部の実施形態では、対象は、片頭痛を有すると同定又は診断される。一部の実施形態では、ケタミンを投与した後に、対象は、ケタミンの投与前と比べて低頻度の、低重症度の及び/又は短い片頭痛発作の持続時間及び/又は片頭痛の症状を経験する。一部の実施形態では、片頭痛の症状は、顔面痛、首痛、拍動痛、光に対する過敏症、乱視、閃光を見ること、目まい、立ちくらみ、倦怠感、音に対する過敏症、悪心、嘔吐、易刺激性、鼻詰まり、又は頭皮圧痛を含むがこれらに限定されない。
【0082】
一部の実施形態では、対象は、ケタミンを投与する前に、うつ病及び/又は不安を有すると同定又は診断された。一部の実施形態では、ケタミンの投与後に、うつ病及び/又は不安が低減する。この文脈において、対象におけるうつ病及び/又は不安を低減させることは、例えば、(1)ベースライン、すなわち、処置の開始前の(例えば、ケタミンの投与前、ここで、ケタミンの投与前のうつ病及び/又は不安は、例えば、単一の測定若しくは評価、又は行った複数の測定若しくは評価の平均によって、例えば、1か月の期間、3週の期間、2週の期間、7日の期間、6日の期間、5日の期間、4日の期間、3日の期間、2日の期間、又は1日の期間(例えば、7日の期間)の過程にわたって評定されうる)対象におけるうつ病及び/又は不安、ここで、例えば、うつ病及び/又は不安の低減は、処置の約1時間後(例えば、処置の約2時間、4時間、6時間、8時間、16時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、1.5週間、2週間、3週間、4週間、1か月、6週間、2か月、3か月、又は1年後)に測定される;並びに/或いは(2)対象にプラセボ(例えば、ケタミンを含有しない材料、物質又は物品)が投与された後に、対象が経験したうつ病及び/又は不安と比較した場合、うつ病及び/又は不安を低減させることを含みうる。一部の実施形態では、うつ病は、大うつ病性障害、処置抵抗性うつ病、単一エピソード、再発性大うつ病性障害-単極性うつ病、季節性情動障害-冬季うつ病、双極性気分障害-双極性うつ病、大うつ病様エピソードを伴う全身病状による気分障害、又は抑うつ病像を伴う全身病状による気分障害のうちのいずれかを含むがこれらに限定されない。
【0083】
てんかんを患っている対象においてうつ病を評定する手段は、てんかん患者用の神経学的障害うつ病評価尺度(NDDI-E)である。NDDI-Eについての更なる情報は、Gill Sら、Epilepsia 2017、58(5)、695~705において見ることができ、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。一部の実施形態では、対象のてんかん患者用の神経学的障害うつ病評価尺度(NDDI-E)スコアは、ケタミンを投与した後に低くなっている。この文脈において、対象のNDDI-Eスコアは、ケタミンを投与した後に、ケタミンを投与する前よりも低くなっている。一部の実施形態では、NDDI-Eスコアは、ケタミンを投与した後に、少なくとも0.5ポイント低くなっている(例えば、少なくとも1ポイント低くなっている、少なくとも2ポイント低くなっている、少なくとも3ポイント低くなっている、少なくとも4ポイント低くなっている、少なくとも5ポイント低くなっている、少なくとも6ポイント低くなっている、少なくとも7ポイント低くなっている、少なくとも8ポイント低くなっている、1ポイント低くなっている、2ポイント低くなっている、3ポイント低くなっている、4ポイント低くなっている、5ポイント低くなっている、6ポイント低くなっている、7ポイント低くなっている、又は8ポイント低くなっている)。一部の実施形態では、NDDI-Eスコアは、ケタミンを投与した後に、少なくとも1ポイント低くなっている。一部の実施形態では、NDDI-Eスコアは、ケタミンを投与した後に、少なくとも3ポイント低くなっている。一部の実施形態では、ケタミンを投与する前のNDDI-Eスコアは16よりも大きく、NDDI-Eスコアは、ケタミンを投与した後に、16未満又はそれに等しい(例えば、未満)。一部の実施形態では、ケタミンを投与する前のNDDI-Eスコアは16よりも大きく、NDDI-Eスコアは、ケタミンを投与した後に、11未満又はそれに等しい(例えば、未満)。一部の実施形態では、ケタミンを投与する前のNDDI-Eスコアは11よりも大きく、NDDI-Eスコアは、ケタミンを投与した後に、11未満又はそれに等しい(例えば、未満)。
【0084】
全般性不安障害を評定する手段は、全般性不安障害-7(GAD-7)である。GAD-7についての更なる情報は、Spitzerら、Arch Intern Med. 2006、166(10)、1092~1097において見ることができ、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。一部の実施形態では、対象の全般性不安障害7(GAD-7)スコアは、ケタミンを投与した後に低くなっている。この文脈において、対象のGAD-7スコアは、ケタミンを投与した後に、ケタミンを投与する前よりも低くなっている。一部の実施形態では、GAD-7スコアは、ケタミンを投与した後に、少なくとも5%低くなっている(例えば、少なくとも8%低くなっている、少なくとも10%低くなっている、少なくとも15%低くなっている、少なくとも20%低くなっている、少なくとも25%低くなっている、少なくとも30%低くなっている、少なくとも40%低くなっている、少なくとも50%低くなっている、少なくとも70%低くなっている又は少なくとも90%低くなっている)。一部の実施形態では、GAD-7スコアは、ケタミンを投与した後に、少なくとも10%低くなっている。一部の実施形態では、GAD-7スコアは、ケタミンを投与した後に、少なくとも30%低くなっている。一部の実施形態では、ケタミンを投与する前の対象のGAD-7スコアは15以上であり、対象のGAD-7スコアは、ケタミンを投与した後に、10又は10未満である。一部の実施形態では、ケタミンを投与する前の対象のGAD-7スコアは15以上であり、対象のGAD-7スコアは、ケタミンを投与した後に、5又は5未満である。一部の実施形態では、ケタミンを投与する前の対象のGAD-7スコアは15以上であり、対象のGAD-7スコアは、ケタミンを投与した後に、10又は10未満である。一部の実施形態では、ケタミンを投与する前の対象のGAD-7スコアは10以上であり、対象のGAD-7スコアは、ケタミンを投与した後に、5又は5未満である。一部の実施形態では、ケタミンを投与する前の対象のGAD-7スコアは15であり、対象のGAD-7スコアは、ケタミンを投与した後に、5未満である。
【0085】
精神遅滞を伴う対象の間で不安、うつ病及び気分を評定する手段は、不安、うつ病及び気分指標(ADAMS)である。ADAMSについての更なる情報は、Esbensen Aら、J. Autism Dev. Disord. 2003、33(6)、617~629において見ることができ、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。一部の実施形態では、対象の不安、うつ病及び気分指標(ADAMS)スコアは、ケタミンを投与した後に低くなっている。この文脈において、対象のADAMSスコアは、ケタミンを投与した後に、ケタミンを投与する前よりも低くなっている。一部の実施形態では、ADAMSスコアは、ケタミンを投与した後に、少なくとも5%低くなっている(例えば、少なくとも8%低くなっている、少なくとも10%低くなっている、少なくとも15%低くなっている、少なくとも20%低くなっている、少なくとも25%低くなっている、少なくとも30%低くなっている、少なくとも40%低くなっている、少なくとも50%低くなっている、少なくとも70%低くなっている又は少なくとも90%低くなっている)。一部の実施形態では、ADAMSスコアは、ケタミンを投与した後に、少なくとも10%低くなっている。一部の実施形態では、ADAMSスコアは、ケタミンを投与した後に、少なくとも30%低くなっている。
【0086】
てんかんを有する対象の生活の質を評定する手段は、てんかん患者の生活の質評価尺度-10(QOLIE-10)である。QOLIE-10についての更なる情報は、Gill S.ら、Epilepsia 2017、58(5)、695~705において見ることができ、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。一部の実施形態では、対象のてんかん患者の生活の質評価尺度-10(QOLIE-10)スコアは、ケタミンを投与した後に低くなっている。この文脈において、対象のQOLIE-10スコアは、ケタミンを投与した後に、ケタミンを投与する前よりも低くなっている。一部の実施形態では、QOLIE-10スコアは、ケタミンを投与した後に、少なくとも5%低くなっている(例えば、少なくとも8%低くなっている、少なくとも10%低くなっている、少なくとも15%低くなっている、少なくとも20%低くなっている、少なくとも25%低くなっている、少なくとも30%低くなっている、少なくとも40%低くなっている、少なくとも50%低くなっている、少なくとも70%低くなっている又は少なくとも90%低くなっている)。一部の実施形態では、QOLIE-10スコアは、ケタミンを投与した後に、少なくとも10%低くなっている。一部の実施形態では、QOLIE-10スコアは、ケタミンを投与した後に、少なくとも30%低くなっている。
【0087】
一部の実施形態では、対象は、2歳以上(例えば、4、6、8、10、12、14、16、18、21、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、又は80歳以上)である。一部の実施形態では、対象は、80歳以下(例えば、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、21、18、16、14、12、10、8、5、4、又は2歳以下)である。
【0088】
一部の実施形態では、対象は、症候性てんかんを有すると同定又は診断される。
【0089】
一部の実施形態では、対象の臨床記録は、異常な神経画像の所見を示す。
【0090】
一部の実施形態では、対象の臨床記録は、異常な脳波図(EEG)を示す。
【0091】
一部の実施形態では、対象は、精神遅滞を有すると同定又は診断される又はされた。
【0092】
一部の実施形態では、対象は、神経精神(neuropsyhiatric)障害を有すると同定又は診断される。
【0093】
一部の実施形態では、対象の臨床記録は、対象が熱性発作を有していたことを示す。
【0094】
一部の実施形態では、対象は、てんかん重積状態を有すると同定又は診断される。
【0095】
一部の実施形態では、対象は、Kalilani Lら、Epilepsia. 2018、59(12)、2179~2193において開示されている薬物抵抗性てんかんと相関している疾患、障害又は病歴のうちのいずれかを有し、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0096】
一部の実施形態では、対象の臨床記録は、微生物の不均衡という腸内微生物叢の特徴を指し示す。例えば、対象の消化管は、ブドウ球菌(Staphylococcus)種若しくはクロストリジウム(Clostridium)種等の高個体群密度の有害な細菌、又はラクトバチルス(Lactobacillus)種及び/若しくはビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)種等の異常に低い個体群密度の有益な細菌を含有する。腸内微生物叢と薬物抵抗性てんかんとの間の関係についての更なる情報は、Holmes, M.ら、Epilepsia、2020、61(12)、2619~2628において見ることができ、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0097】
一部の実施形態では、対象は、心血管障害を有すると同定又は診断される。一部の実施形態では、心血管障害は虚血性心疾患である。
【0098】
一部の実施形態では、対象は、消化性潰瘍を有すると同定又は診断される。
【0099】
一部の実施形態では、対象は、関節炎(例えば、変形性関節症又は関節リウマチ)を有すると同定又は診断される。
【0100】
一部の実施形態では、方法は、第2の治療剤を投与する工程を含む。一部の実施形態では、第2の治療剤は、抗発作薬、抗うつ薬、抗精神病薬、NMDAアンタゴニスト、又は酸化ストレス障害を寛解させる若しくは増悪させる薬物である。
【0101】
一部の実施形態では、第2の治療剤は抗発作薬である。一部の実施形態では、抗発作薬は、トピラメート、バルプロ酸、フェルバメート、ルフィナミド、スチリペントール、フェンフルラミン、クロバザム、クロナゼパム、ロラゼパム、ガバペンチン、プレガバリン、レチガビン、フェニトイン、カルバマゼピン、オクスカルバゼピン、酢酸エスリカルバゼピン、ラモトリギン、ラコサミド、ゾニサミド、レベチラセタム、ブリバラセタム、エトスクシミド、ペランパネル、フェノバルビタール、プリミドン、エピディオレックス、セノバメート及びチアガビンからなる群から選択される。
【0102】
一部の実施形態では、第2の治療剤は抗うつ薬である。一部の実施形態では、抗うつ薬は、リチウム塩、カルバマゼピン、バルプロ酸、リゼルグ酸ジエチルアミド(LSD)、p-クロロフェニルアラニン、p-プロピドパセトアミド(propyidopacetamide)ジチオカルバメート誘導体(例えば、FLA63);抗不安薬、例えば、ジアゼパム;モノアミンオキシダーゼ(MAO)阻害剤、例えば、イプロニアジド、クロルジリン、フェネルジン、トラニルシプロミン及びイソカルボキサジド;生体アミン取り込み遮断薬、例えば、三環系抗うつ薬、例を挙げると、デシプラミン、イミプラミン及びアミトリプチリン;非定型抗うつ薬、例を挙げると、ミルタザピン、ネファゾドン、ブプロピオン;セロトニン再取り込み阻害剤、例えば、フルオキセチン、ベンラファキシン及びデュロキセチンからなる群から選択される。
【0103】
一部の実施形態では、第2の治療剤は抗精神病薬である。一部の実施形態では、抗精神病薬は、フェノチアジン誘導体(例えば、クロルプロマジン(ソラジン)及びトリフルオプロマジン)、ブチロフェノン(例えば、ハロペリドール(ハルドール))、チオキサンテン誘導体(例えば、クロルプロチキセン)、サンド薬品株式会社のジベンゾジアゼピン(例えば、クロザピン);ベンゾジアゼピン系薬;ドーパミンアゴニスト及びアンタゴニスト、例えば、L-DOPA、コカイン、アンフェタミン、α-メチル-チロシン、レセルピン、テトラベナジン、ベンズトロピン、パーギリン;ノルアドレナリンアゴニスト及びアンタゴニスト、例えば、クロニジン、フェノキシベンザミン、フェントラミン、トロポロンである。
【0104】
一部の実施形態では、第2の治療剤はNMDAアンタゴニストである。一部の実施形態では、NMDAアンタゴニストは、ペチジン、レボルファノール、メタドン、デキストロプロポキシフェン、トラマドール、ケトベミドン、デキストロメトルファン(DXM)、フェンシクリジン(PCP)、メトキセタミン(MXE)及び亜酸化窒素からなる群から選択される。
【0105】
一部の実施形態では、第2の治療剤は、酸化ストレス障害を寛解させる又は増悪させる薬物である。一部の実施形態では、酸化ストレス障害を寛解させる又は増悪させる薬物は、還元型ISグルタチオン(GSH)、グルタチオン前駆体、例えば、N-アセチルシステイン;酸化防止剤、例えば、ビタミンE及びC、ベータカロテン並びにキノン;脂質膜過酸化の阻害剤、例えば、21-アミノステロイドU74006F(メシル酸チリラザド)及びラザロイド;酸化防止剤、例を挙げると、マジンドール;2cマレイン酸ジゾシルピン;セレギリン;スルフヒドリルN-アセチルシステイン及びシステアミン;ジメチルチオ尿素;EUK-8(これは、合成低分子サレン-マンガン錯体である);合成マンガンベースの金属タンパク質スーパーオキシドジスムターゼ模倣体、SC52608;フリーラジカルスカベンジャー若しくは抑制剤、例えば、ペゴルゴテイン、トコトリエノール、トコフェロール(tocopheral)、MDL7418、LY231617、MCI-186、AVS(ニカラベン)、アロプリノール、リファンピシン、オキシプリノール、次亜塩素酸、又は組換えヒトCu、Zn-SODである。
【0106】
ピークケタミン血漿レベル(すなわち、ケタミンのCmax)は、ケタミンの投与後の対象において観察されるケタミンの最高血漿濃度であることが理解される。一部の実施形態では、ピークケタミン血漿レベル(すなわち、ケタミンのCmax)は、約0.1ng/mLから約2000ng/mLまでである。例えば、約0.1ng/mLから約2000ng/mLまで、約0.1ng/mLから約1500ng/mLまで、約0.1ng/mLから約1200ng/mLまで、約0.1ng/mLから約1000ng/mLまで、約0.1ng/mLから約800ng/mLまで、約0.1ng/mLから約600ng/mLまで、約0.1ng/mLから約500ng/mLまで、約0.1ng/mLから約400ng/mLまで、約0.1ng/mLから約300ng/mLまで、約0.1ng/mLから約200ng/mLまで、約0.1ng/mLから約100ng/mLまで、約0.1ng/mLから約70ng/mLまで、約0.1ng/mLから約50ng/mLまで、約0.1ng/mLから約40ng/mLまで、約0.1ng/mLから約30ng/mLまで、約0.1ng/mLから約20ng/mLまで、約0.1ng/mLから約10ng/mLまで、約0.1ng/mLから約5ng/mLまで、約20ng/mLから約50ng/mLまで、約25ng/mLから約35ng/mLまで、約28ng/mLから約32ng/mLまで、約200ng/mLから約800ng/mLまで、約300ng/mLから約700ng/mLまで、約400ng/mLから約600ng/mLまで、約450ng/mLから約550ng/mLまで、約480ng/mLから約520ng/mLまで、約10ng/mL、約20ng/mL、約30ng/mL、約40ng/mL、約50ng/mL、約100ng/mL、約200ng/mL、約300ng/mL、約400ng/mL、約500ng/mL、約600ng/mL、又は約700ng/mL。
【0107】
一部の実施形態では、対象はヒトである。
【0108】
一部の実施形態では、対象は妊娠していない。
【0109】
一部の実施形態では、対象は高血圧ではない。
【0110】
一部の実施形態では、対象は心不全に罹患していない。
【0111】
一部の実施形態では、対象は心血管疾患に罹患していない。
【0112】
一部の実施形態では、対象は以前に脳卒中を有したことがない。
【0113】
一部の実施形態では、対象は脳外傷に罹患していない。
【0114】
一部の実施形態では、対象は脳浮腫に罹患していない。
【0115】
一部の実施形態では、対象は脳内出血に罹患していない。
【0116】
一部の実施形態では、対象は甲状腺機能亢進症(例えば、制御不能な甲状腺機能亢進症)に罹患していない。
【0117】
一部の実施形態では、対象は甲状腺クリーゼに罹患していない。
【0118】
投薬量、投与ルート、及び医薬組成物
一部の実施形態では、本明細書で提供される通りのDREを処置する方法は、DREを患っている対象(例えば、ヒト)を、治療有効量のケタミン(例えば、エスケタミン)で処置する工程を含む。実際の用量は、患者の体重、処置に対する患者の応答、てんかんの重症度、投与ルート、同時発生的に投与される薬剤の性質、1日当たり投与される投薬回数、及び薬物の投与において通常の技量の医師によって一般的に考えられる他の要因に応じて変動することになる。一部の実施形態では、ケタミンの治療有効量は、DREを処置するための、患者の体重1kg当たり約0.01から約2.0mg(mg/kg)のケタミンの用量である。一部の実施形態では、用量は、約0.1から約2.0mg/kgのケタミンである。一部の実施形態では、用量は、約0.05から約0.5mg/kgのケタミンである。一部の実施形態では、用量は、約0.5から約1.5mg/kgのケタミンである。一部の実施形態では、用量は、約0.7から約1.7mg/kgのケタミンである。一部の実施形態では、用量は、約0.5mg/kg未満、約0.4mg/kg未満又は約0.3mg/kg未満のケタミンである。一部の実施形態では、ケタミンの治療有効量は、約0.01mg/kgから約2.0mg/kgまでの範囲内の用量である。一部の実施形態では、ケタミンの治療有効量は、約0.01mg/kgから約1.5mg/kgまでの範囲内の用量である。一部の実施形態では、ケタミンの治療有効量は、約0.01mg/kgから約1mg/kgまでの範囲内の用量である。一部の実施形態では、ケタミンの治療有効量は、約0.01mg/kgから約0.75mg/kgまでの範囲内の用量である。一部の実施形態では、ケタミンの治療有効量は、約0.75mg/kgから約1.5mg/kgまでの範囲内の用量である。一部の実施形態では、ケタミンの治療有効量は、約0.5mg/kgから約1.2mg/kgまでの範囲内の用量である。一部の実施形態では、ケタミンの治療有効量は、約0.05mg/kgから約0.5mg/kgまでの範囲内の用量である。一部の実施形態では、ケタミンの治療有効量は、約0.1mg/kgから約0.9mg/kgまでの範囲内の用量である。一部の実施形態では、ケタミンの治療有効量は、約0.2mg/kgから約0.9mg/kgまでの範囲内の用量である。一部の実施形態では、ケタミンの治療有効量は、約0.3mg/kgから約0.8mg/kgまでの範囲内の用量である。一部の実施形態では、ケタミンの治療有効量は、約0.2mg/kgの用量又は約0.4mg/kgの量である。一部の実施形態では、ケタミンの治療有効量は、約0.5ml/kgである。
【0119】
一部の実施形態では、ケタミンの治療有効量は、個体のためのケタミンの麻酔域下量である。一部の実施形態では、個体は、静脈内又は鼻腔内投与を介してケタミンで処置される。一部の実施形態では、ケタミンは、静脈内に投与される。一部の実施形態では、ケタミンは、鼻腔内に投与される。一部の実施形態では、ケタミンは鼻粘膜と接触させられる。一部の実施形態では、個体は、鼻の嗅上皮を介する処置と比較して実質的に鼻の呼吸上皮のみを介して、ケタミンで鼻腔内に処置される(例えば、鼻の嗅上皮を介する処置と比較して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%のケタミンが、鼻の呼吸上皮を介して送達される)。一部の実施形態では、個体は、鼻の呼吸上皮を介する処置と比較して実質的に鼻の嗅上皮のみを介して、ケタミンで鼻腔内に処置される(例えば、鼻の呼吸上皮を介する処置と比較して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%のケタミンが、鼻の嗅上皮を介して送達される)。一部の実施形態では、個体は、単回用量の治療有効量のケタミンで処置される。一部の実施形態では、個体は、複数回用量の治療有効量のケタミンで処置される。一部の実施形態では、1回又は複数回用量のケタミンの初期処置後、対象は、その後、1回又は複数回のより高用量のケタミンで処置される。一部の実施形態では、1回又は複数回のより高用量は、初期処置用量に対する対象の応答に基づいて決定される。一部の実施形態では、ケタミン用量の更なる調整は、ケタミン症状を処置することとケタミンのあらゆる有害又は望ましくない効果の最小化との間の平衡を達成するという目的を持って為されうる。
【0120】
一部の実施形態では、ケタミン(例えば、エスケタミン)の総用量は、約25mgである。一部の実施形態では、エスケタミンの総用量は、約50mgである。一部の実施形態では、エスケタミンの総用量は、約75mgである。一部の実施形態では、エスケタミンの総用量は、約100mgである。一部の実施形態では、エスケタミンの総用量は、約1.1mg/kgである。一部の実施形態では、エスケタミンの総用量は、約1.2mg/kg、1.3mg/kg、1.4mg/kg、1.5mg/kg、1.6mg/kg、1.7mg/kg、1.8mg/kg、1.9mg/kg、又は2.0mg/kgである。
【0121】
上記の態様のいずれかでは、ケタミンは、エスケタミン又はR-ケタミンであることができる。故に、DREを処置する方法であって、そのような処置を必要とする患者に、DREを処置するために有効な量のケタミン、Rケタミン又はエスケタミンを投与する工程を含む方法も提供される。一部の実施形態では、エスケタミン又はRケタミンは、静脈内に投与される。一部の実施形態では、エスケタミン又はRケタミンは、鼻腔内に投与される。
【0122】
DREを処置する方法であって、DREを患っている対象(例えば、ヒト)を、治療有効量のエスケタミンで処置する工程を含む方法も、本明細書において提供される。一部の実施形態では、エスケタミンは、約0.01mg/kgから約2.0mg/kgまでの範囲内の量で投与される。一部の実施形態では、エスケタミンは、約0.01mg/kgから約1.5mg/kgまでの範囲内の量で投与される。一部の実施形態では、エスケタミンは、約0.01mg/kgから約1mg/kgまでの範囲内の量で投与される。一部の実施形態では、エスケタミンは、約0.01mg/kgから約0.75mg/kgまでの範囲内の量で投与される。一部の実施形態では、エスケタミンは、約0.75mg/kgから約1.5mg/kgまでの範囲内の量で投与される。一部の実施形態では、エスケタミンは、約0.5mg/kgから約1.2mg/kgまでの範囲内の量で投与される。一部の実施形態では、エスケタミンは、約0.05mg/kgから約0.5mg/kgまでの範囲内の量で投与される。一部の実施形態では、エスケタミンは、約0.2mg/kgの量で又は約0.4mg/kgの量で投与される。
【0123】
一部の実施形態では、エスケタミンの総用量は、約25mgである。一部の実施形態では、エスケタミンの総用量は、約50mgである。一部の実施形態では、エスケタミンの総用量は、約75mgである。一部の実施形態では、エスケタミンの総用量は、約100mgである。一部の実施形態では、エスケタミンの総用量は、約1.1mg/kgである。一部の実施形態では、エスケタミンの総用量は、約1.2mg/kg、1.3mg/kg、1.4mg/kg、1.5mg/kg、1.6mg/kg、1.7mg/kg、1.8mg/kg、1.9mg/kg、又は2.0mg/kgである。
【0124】
一部の実施形態では、エスケタミンは、静脈内に投与される。一部の実施形態では、エスケタミンは、鼻腔内に投与される。
【0125】
DREの処置において使用するための、ケタミン(例えば、エスケタミン)と、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤とを含む医薬組成物も、本明細書において提供される。担体は、循環系に可溶性であり且つ生理学的に許容される高分子であり、ここで、生理学的許容は、当業者が患者への前記担体の注射を治療レジームの一部として許容するであろうことを意味する。担体は、好ましくは、循環系において、クリアランスのための許容される血漿半減期で比較的安定である。そのような高分子は、大豆レシチン、オレイン酸及びトリオレイン酸ソルビタンを含むがこれらに限定されず、トリオレイン酸ソルビタンが好ましい。一部の実施形態では、医薬組成物は、鼻腔内又は静脈内投与のためのものである。一部の実施形態では、医薬組成物は、対象においてDREを処置する方法において使用するためのものである。一部の実施形態では、ケタミンは、薬学的に許容される担体又は希釈剤と共に製剤化される。一部の実施形態では、ケタミンは、液剤又は懸濁剤として製剤化される。一部の実施形態では、担体又は希釈剤は水性である。一部の実施形態では、担体又は希釈剤は、滅菌リン酸緩衝生理食塩水、静菌水、グリシン水溶液、又はそれらの任意の組合せを含む。
【0126】
ケタミン(2-(2-クロロフェニル)-2-(メチルアミノ)-シクロヘキサノン)は、麻酔科医、獣医師及びリサーチャーによって使用される全身麻酔薬である。薬理学的には、ケタミンは、非競合性NMDA受容体(NMDAR)アンタゴニストである。より具体的には、ケタミンは、NMDA受容体のアロステリック部位と結合して、そのチャネルを有効に阻害する。完全に麻酔レベルの高用量で、ケタミンは、培養ヒト神経芽腫細胞においてμ-オピオイド受容体2型と-しかしながら、アゴニスト活性なしで-及びラットにおいてシグマ受容体と結合することも分かった。また、ケタミンは、ムスカリン受容体と相互作用して、モノアミン作動性疼痛経路及び電圧開口型カルシウムチャネルを降下する。
【0127】
ケタミンは、キラル化合物である。S(+)及びR(-)立体異性体は、異なる親和性:それぞれKi=3200及び1100nMでNMDA受容体と結合する。Vrankenらは、33人の男性及び女性におけるイオン導入パッチ(帯電した薬物がガルバニック電流のパルスによって伝送される送達機構)の使用を、難治性中枢神経障害性疼痛の処置のためにケタミンを送達するイオン導入パッチの使用を研究する調査において研究した。S(+)-ケタミン(「(S)-ケタミン」又は「エスケタミン」とも称される)は、ケタミンのラセミ混合物よりも2倍強力であることが分かった。ケタミンのほとんどの医薬調製物はラセミであるが、一部の商標は、報告されているところでは、鏡像異性体比において差異を有する(ほとんど文書化されていない)。より活性な(S)-ケタミン鏡像異性体は、商標名Ketanest Sで医学的使用に利用可能である。その塩酸塩は、Ketanest、Ketaset及びKetalarとして販売されている。再発性大うつ病歴を持つ患者がケタミン及びS-ケタミンの静脈内注入で処置された2つの症例研究について記述しているPaulら、「Comparison of racemic ketamine and S-ketamine in treatment-resistant major depression: report of two cases」、World J. of Bio. Psych.、2009、241~244頁、第10巻(3);うつ病患者が標準的な抗うつ薬療法への追加として1.25mg/kgの経口S-ケタミンを受けた4つの症例研究を提示しているPaskalisら、「Oral Administration of the NMDA Receptor Antagonist S-Ketamine as Add-on Therapy of Depression: A Case Series」、Pharmacopsychiatry、2010、33~35頁、第40号;線維筋痛に対するS-(+)-ケタミンの鎮痛効能を評価する臨床試験について記述している冊子体発行前論文のNoppersら、「Absence of long-term analgesic effect from a short-term S-ketamine infusion on fibromyalgia pain: A randomized, prospective, double blind, active placebo-controlled trial」、Eur. J. of Pain.、2011;ケタミンについての新興の文献の総括並びにケタミン及びS-ケタミンの両方の薬理学の総括を提供しているMatthewsら、「Ketamine for Treatment-Resistant Unipolar Depression」、CNS Drugs、2012、1~16頁;及び国際特許公開第WO2013138322号を参照されたい。本明細書において使用される場合、「ケタミン」は、ケタミンのS(+)及びR(-)立体異性体のラセミ混合物を含有するケタミンの調製物、鏡像異性体比が異なるS(+)及びR(-)立体異性体を含有する調製物、並びに鏡像異性体の一方のみ(例えば、S(+)ケタミンのみ又はR(-)ケタミンのみ)を含有する調製物を含む。鼻腔内ケタミンは、商標名Spravatoで利用可能である。
【0128】
ケタミンの静脈内投与は、処置抵抗性大うつ病の迅速な処置のために使用されてきた。40分間かけて与えられる0.5mg/kgの静脈内注入は、注射後2時間以内にうつ病の改善をもたらし、最大1週間にわたって継続された。重篤な有害事象はなかった。Zarateら、Am J Psychiatry、2006、163:153~5。疼痛の処置に使用される鼻腔内(IN)ケタミン血漿レベルは、うつ病における静脈内(IV)ケタミン研究の3~4分の1である。ケタミンの緩徐注入は、注入期間中に漸増する血漿レベルを生成する。一部の実施形態では、これらの研究は、薬物抵抗性てんかんの処置において使用されうる投薬量を告げるものである。
【0129】
外科的手技用の麻酔の誘導のための典型的なケタミン用量は、1.0~2.0mg/kgの間であり、麻酔を持続させるために追加のケタミンが使用される。麻酔において、標的ケタミン血中レベルには、0.2~0.26mg/kgの間のケタミンボーラス用量で1分間かけて到達する。ケタミン血漿レベルがDRE応答を生成するための用量は、麻酔を生成するために必要とされるレベルとは対照的に、40分間かけて0.5mg/kgの範囲内である。疼痛研究における解離の報告は、これらの研究において鼻腔内で達成されたケタミンレベルがはるかに低かったことから、大うつ病性障害におけるIV研究よりも有意に低かった。疼痛に使用される鼻腔内用量(50mg)は、ケタミンの0.1mg/kg i.v.とほぼ同等である。そのような投与は、1時間以上又はそれ以下の期間をかけて投与されうる。鼻腔内製剤の慢性投与は、応答に応じて、毎日から毎週までの範囲で必要に応じて用いられうることが予測される。一部の実施形態では、50mgの鼻腔内投薬量がてんかんを処置するために不十分であることを証明するならば、IV研究において約0.5mg/kgの投薬量使用法の相対当量を確立するためには、有効に増大する用量、例えば、合計およそ100mg、およそ150mg、およそ200mg、およそ250mgのケタミンが鼻腔内に投与されることになる。鼻腔内製剤は、静脈内投与のための病院又は診療所への患者提示の必要性を排除しうる。対象は、鼻腔内ケタミンを自宅で摂取することができ、針刺しを必要としない。故に、患者にとっての処置の受容性は、IVケタミンよりも良好となるであろう。患者は、少なくとも中等度に処置抵抗性の患者であり、てんかん症状の迅速且つ安全な低減のための新たな選択肢を求めている人物でありうる。医師は、対象を外来患者としてモニターすることができ、経口的に投与される薬剤に合うように投薬量を調整してよい。
【0130】
一部の実施形態では、ケタミンのDRE緩和用量は、体重1kg当たりおよそ0.01からおよそ3mg、体重1kg当たりおよそ0.01からおよそ2mg、体重1kg当たりおよそ0.01からおよそ1.5mg、体重1kg当たりおよそ0.05からおよそ1.4mg、体重1kg当たりおよそ0.05からおよそ1.3mg、体重1kg当たりおよそ0.05からおよそ1.2mg、体重1kg当たりおよそ0.05からおよそ1.1mg、体重1kg当たりおよそ0.01からおよそ1mg、又は体重1kg当たりおよそ0.05からおよそ0.7mgである。
【0131】
一部の実施形態では、エスケタミンのDRE緩和用量は、体重1kg当たりおよそ0.01からおよそ3mg、体重1kg当たりおよそ0.01からおよそ2mg、体重1kg当たりおよそ0.01からおよそ1.5mg、体重1kg当たりおよそ0.05からおよそ1.4mg、体重1kg当たりおよそ0.05からおよそ1.3mg、体重1kg当たりおよそ0.05からおよそ1.2mg、体重1kg当たりおよそ0.05からおよそ1.1mg、体重1kg当たりおよそ0.01からおよそ1mg、又は体重1kg当たりおよそ0.05からおよそ0.7mgである。
【0132】
一部の実施形態では、ケタミンのDRE緩和用量は、およそ0.01mgから約1000mg、又はその中の任意の量若しくは範囲、好ましくは約0.01mgから約500mgまで、又はその中の任意の量若しくは範囲、好ましくは約0.1mgから約250mgまで、又はその中の任意の量若しくは範囲である。別の態様では、ケタミンのDRE緩和用量は、例えば、0.01mg、0.025mg、0.05mg、0.1mg、0.5mg、1mg、5mg、10mg、25mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、90mg、95mg、100mg、150mg、200mg、250mg、又は500mgである。
【0133】
一部の実施形態では、ケタミンのDRE緩和用量は、およそ0.01mgから約1000mg、又はその中の任意の量若しくは範囲、好ましくは約0.01mgから約500mgまで、又はその中の任意の量若しくは範囲、好ましくは約0.1mgから約250mgまで、又はその中の任意の量若しくは範囲である。別の態様では、ケタミンのDRE緩和用量は、例えば、0.01mg、0.025mg、0.05mg、0.1mg、0.5mg、1mg、5mg、10mg、25mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、90mg、95mg、100mg、150mg、200mg、250mg、又は500mgである。
【0134】
一態様では、エスケタミンのDRE緩和用量は、およそ0.01mgから約1000mg、又はその中の任意の量若しくは範囲、好ましくは約0.01mgから約500mgまで、又はその中の任意の量若しくは範囲、好ましくは約0.1mgから約250mgまで、又はその中の任意の量若しくは範囲である。別の態様では、エスケタミンのDRE緩和用量は、例えば、0.01mg、0.025mg、0.05mg、0.1mg、0.5mg、1mg、5mg、10mg、25mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、90mg、95mg、100mg、150mg、200mg、250mg、又は500mgである。
【0135】
本明細書で開示される組成物(例えば、ケタミンを含む組成物)を療法のためにそのままで使用することが可能な場合、組成物を医薬製剤で、例えば、意図されている投与ルート及び標準的な医薬実務に関して選択された好適な医薬賦形剤、希釈剤又は担体と混和して製剤化することが好ましい場合がある。好適な担体及びそれらの製剤は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy、第21版、2005、Lippincott, Williams & Wilkins、Phila.、PAにおいて記述されている。したがって、一態様では、医薬組成物又は製剤は、ケタミンの少なくとも1つの活性組成物を、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤及び/又は担体と一緒に含む。賦形剤、希釈剤及び/又は担体は、製剤の他の原料に適合し、且つそのレシピエントに悪影響がないという意味で、「許容される」ものでなくてはならない。
【0136】
ヒトへのインビボ投与のために、組成物は、薬学的に有用な組成物を調製するために使用される公知の方法に従って製剤化されうる。組成物は、短時間作用型、高速放出型、長時間作用型又は持続放出型となるように設計されてよい。故に、医薬製剤は、制御放出用に又は緩徐放出用に製剤化されてもよい。
【0137】
医薬組成物又は製剤に製剤化される場合、ケタミンは、薬学的に許容される担体又は賦形剤と混和されうる。用語「担体」は、化合物が共に投与される、希釈剤、アジュバント、賦形剤又はビヒクルを指す。そのような医薬担体は、滅菌液、例を挙げると、水、及びピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油等の石油、動物、植物又は合成起源のものを含む油であることができる。水又は水溶液生理食塩水並びにデキストロース及びグリセロール水溶液が、特に注射用溶液のための担体として好ましくは用いられる。他の例示的な担体は、滅菌リン酸緩衝生理食塩水、静菌水等の若干数の標準的な医薬担体のうちのいずれかを含むがこれらに限定されない。様々な水性担体、例えば、水、緩衝用水、0.4%生理食塩水、0.3%グリシン等が使用されうる。
【0138】
本明細書において記述されている組成物及び製剤は、経口(固体又は液体)、非経口(筋肉内、腹腔内、静脈内(IV)又は皮下注射)、経皮(受動的に又はイオントフォレーシス(ionophoresis)若しくはエレクトロポレーションを使用してのいずれか)、経粘膜(鼻孔、鼻腔内、経膣、経直腸又は舌下)、若しくは吸入投与ルートによる、又は生体内分解性インサートを使用する投与のためのものであってよく、各投与ルートに適切な剤形で製剤化されうる。あらゆる所与の事例における最も好適なルートは、特定の宿主、並びに活性原料が投与されている状態の性質及び重症度によって決まることになる。組成物は、単位剤形で好都合に提示されてよく、調剤分野において周知の方法のいずれかによって、並びに周知の担体及び賦形剤を使用して調製されてよい。
【0139】
概して、本開示に従う調製物は、滅菌水性又は非水性溶液、懸濁液又はエマルションを含む。非水性溶媒又はビヒクルの例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油及びコーン油等の植物油、ゼラチン、並びにオレイン酸エチル等の注射用有機エステルである。そのような剤形は、アジュバント、保存、湿潤、乳化及び分散化剤を場合により含有してもよい。医薬組成物は、例えば、細菌保持フィルターに通す濾過によって、滅菌剤を組成物に組み込むことによって、組成物を照射することによって、又は組成物を加熱することによって、滅菌されうる。それらは、使用直前に、滅菌水、又は何らかの他の滅菌注射用媒質を使用して製造することもできる。
【0140】
ケタミンの好ましい投与ルートは、静脈内(IV)である。故に、ケタミンは、IV投与に適切な製剤又は医薬組成物で調製されてもよい。ケタミンは、上述した通りの薬学的に許容される担体又は賦形剤と混和されうる。例として、ケタミンは、静脈内投与のために生理食塩水中で製剤化されうる。
【0141】
別の好ましい投与モードは、鼻腔内投与、すなわち、鼻粘膜を経由する及び鼻脳経路を経由する脳脊髄液へ直接の投与である。Ming Ming Wen, Discov Med、「Olfactory Targeting Through Intranasal Delivery of Biopharmaceutical Drugs to the Brain - Current Development」」、2011、11:497~503は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。Wenにおいて論じられる通り、鼻腔内に投与された薬物は、代替経路を介して脳に到達しうる。1つの経路では、薬物、例えばケタミンは、鼻の呼吸上皮の血管を経由する吸収後、全身に吸収される。この全身経路を介して送達された薬物は、脳に到達する前に、最初に血液脳関門を横断しなくてはならない。代替送達経路では、鼻腔内に投与された薬物は、鼻腔蓋にある嗅上皮と脳の三叉神経系との間の接続を介してCNS中に迅速に輸送されうる。これは、嗅覚ニューロンと脳との間にシナプスがない、直接接続を生じさせる。経路は、このように、血液脳関門を通過せずに、脳への活性剤の輸送を可能にする。
【0142】
ケタミンの鼻腔内投与を改善しうる賦形剤は、粘膜付着剤(例えば、カーボポール、カルボキシメチルセルロース及びヒアルロナン)、鼻粘膜の接触時にケタミンの透過性及びバイオアベイラビリティを改善する浸透増強剤(例えば、ペパーミント油、N-トリデシル-ベータ-D-マルトシド及びヘキサレリン)を含む。例えばキトサンは、粘膜付着性及び浸透増強特性の両方を有する。鼻腔内送達用の製剤に使用されうる他の作用物質は、全身経路を経由する吸収を限定し、嗅上皮を経由する吸収を増大させるために、リポソーム(例えば、カチオン性リポソーム及びポリエチレングリコール(PEG)でコーティングしたリポソーム)、血管収縮薬(例えば、フェニレフリン)を含む。鼻腔内投与のための追加の製剤及び方法は、Illum, L.、J Pharm Pharmacol、56:3~17、2004及びIllum, L.、Eur J Pharm Sci 11:1~18、2000において見られ、そのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0143】
液体及び粉末鼻腔内製剤のいずれを使用してもよい。例えばケタミンは、分散化剤又は分散剤と組み合わされてよく、鼻腔内投与のために最適化されたエアロゾル製剤で鼻腔内に投与されてよい。
【0144】
鼻腔内液体エアロゾル製剤は、生理学的に許容される希釈剤中にケタミン及び分散化剤を含有する。エアロゾル化製剤は、エアロゾル化用量が鼻道の粘膜に実際に到達することを確実にするために、液体又は固体粒子に分解される。用語「エアロゾル粒子」は、鼻腔内投与に好適な、すなわち、粘膜に到達するであろう液体又は固体粒子を記述するために使用される。送達デバイスの構築、製剤への追加の成分、及び粒子特徴等の他の考慮事項が重要である。薬物の鼻腔内投与のこれらの態様は当技術分野において周知であり、製剤の操作、エアロゾル化手段及び送達デバイスの構築は、最大でも当業者による日常実験を必要とする。一部の実施形態では、薬物粒子が肺胞に到達することを確実にするために、質量中位力学径は5マイクロメートル又はそれ以下となる(Wearley, L. L.、1991、1991、Crit. Rev. in Ther. Drug Carrier Systems 8:333)。
【0145】
送達デバイスの構築に関して、スプレーボトル、液体製剤の噴霧化、微粒化又はポンプエアロゾル化、及び乾燥粉末製剤のエアロゾル化を含むがこれらに限定されない、当技術分野において公知であるエアロゾル化の任意の形態が、本発明の実践において使用されうる。
【0146】
鼻腔内エアロゾル製剤は、ケタミンの微粉化した粉末形態と、分散剤とを含む乾燥粉末製剤として調製されてもよい。例えば、乾燥粉末製剤は、ケタミン、分散化剤及び増量剤も含有する、微粉化した乾燥粉末を含むことができる。本発明の製剤と併せて有用な増量剤は、ラクトース、ソルビトール、スクロース又はマンニトール等の作用物質を、デバイスからの粉末の散布を容易にする量で含む。
【0147】
鼻孔製剤は、送達デバイス、例えば、エアロゾル送達を活用して投与されうる。スプレーボトル、液体製剤の噴霧化、微粒化又はポンプエアロゾル化、及び乾燥粉末製剤のエアロゾル化を含むがこれらに限定されない、当技術分野において公知であるエアロゾル化の任意の形態が使用されうる。
【0148】
鼻孔製剤は、例えば、圧搾された際にスプレーを形成することによってエアロゾル製剤をエアロゾル化するように寸法指定されたアパーチャ又は開口部を持つプラスチック圧搾ボトルを使用して、投与されうる。開口部は通常、ボトルの頂部に見られ、頂部は、一般的に、エアロゾル製剤の効率的な投与のために鼻道に部分的にフィットするように先細である。
【0149】
鼻腔内投与のための有用なデバイスは、定量スプレー器が取り付けられた小さくて硬いボトルである。一実施形態では、定量は、ケタミン溶液を規定の容積のチャンバーに引き込むことによって送達され、このチャンバーは、チャンバー中の液体が圧縮された際にスプレーを形成することによってエアロゾル製剤をエアロゾル化するように寸法指定されたアパーチャを有する。チャンバーが圧縮されて、ケタミンを投与する。具体的な実施形態では、チャンバーはピストン配列である。そのようなデバイスは、市販されている。一部の実施形態では、定量は、不快又は幻覚に関連するレベル未満である。一部の実施形態では、定量は、てんかんを処置するために有効なケタミンの用量であるが、このケタミンの用量は、麻酔を引き起こす用量未満であることが医師又は医療提供者によって決定される。
【0150】
組成物及び製剤の鼻腔内送達のための好ましいデバイスは、オプティノーズ装置であり、これは、OptiNose US Inc.社(Yardley、PA)から市販されている。一部の実施形態では、オプティノーズデバイスは、ケタミンを鼻の嗅上皮に送達するように構成される。鼻の嗅上皮へのケタミンの送達は、鼻脳経路を経由して脳脊髄液へ直接のケタミンの送達を可能にする。
【0151】
用量を鼻腔内に投与するために有用な他のデバイスは、30ミクロンの典型的な粒径を生成する鼻及び口腔咽頭粘膜を越える局所溶液の微粒化を提供する、粘膜自動化デバイスである。そのようなデバイスの例は、LMA MAD Nasal(商標)デバイス(LMA Company社、San Diego、CA)であり、これは、30ミクロンの典型的な粒径を生成し、0.09mLのシステムのデッドスペースを有し、約3/16インチ(4mm)の先端径及び約1-3/4インチ(44mm)のアプリケーター長さが使用されうる。
【0152】
別の実施形態では、鼻腔内薬物送達は、可溶化した薬剤(液体形態)を摂取し、それを鼻の中へ一度に数滴滴下させて、それが鼻粘膜へ流れ落ちるようにすることによって、達成される。これは、例えばシリンジを使用して為されうる。
【0153】
ある特定の実施形態では、本開示は、鼻腔内投与のための(例えば、DREを患っている対象を処置する際に使用するための)液体又は粉末エアロゾル製剤及び剤形を提供する。概して、そのような剤形は、薬学的に許容される希釈剤中のケタミンを含有する。そのような液体エアロゾル製剤における薬学的に許容される希釈剤は、滅菌水、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース溶液等を含むがこれらに限定されない。具体的な実施形態では、本開示において及び/又は本開示の医薬製剤において使用されうる希釈剤は、一般的にpH7.0~8.0の間の範囲のリン酸緩衝生理食塩水若しくは緩衝生理食塩水、又は水である。本開示は、鼻腔内投与のための、当技術分野において公知である任意の好適な希釈剤の使用を企図している。
【0154】
製剤は、例えば、pH維持、溶液安定化、浸透圧溶解度の調節、薬物安定性、又は鼻粘膜を経由する吸収の増強に有用な、塩化ナトリウム又は塩化カリウム等の塩、及びグルコース、ガラクトース又はマンノース等の炭水化物を含むがこれらに限定されない、他の作用物質、原料及び/又は成分も含んでよい。
【0155】
鼻腔内投与のための製剤は、「粘膜浸透増強剤」、すなわち、胆汁酸塩、脂肪酸、界面活性剤又はアルコール等であるがこれらに限定されない、ケタミンの経粘膜浸透の速度又は容易さを増大させる試薬を含んでよい。浸透増強剤の例は、コール酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸塩、グリココール酸ナトリウム、ジメチルスルホキシド又はエタノールを含む。
【0156】
本明細書で開示される製剤、例えば、鼻腔内製剤は、分散剤を含んでよい。好ましくは、分散剤は、薬学的に許容される。好適な分散化剤は、当技術分野において周知であり、界面活性剤等を含むがこれらに限定されない。そのような界面活性剤は、一般的に、液体エアロゾルを形成する溶液の微粒化によって引き起こされる、表面誘導凝集を低減させるために使用されて、液体エアロゾルを形成する。そのような界面活性剤の例は、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル及びアルコール、並びにポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含むがこれらに限定されない。使用される界面活性剤の量は、一般的に、製剤の0.001から4質量%の範囲内で変動することになる。好適な界面活性剤は、当技術分野において周知であり、具体的な製剤に応じて、所望の特性に基づき選択されうる。
【0157】
一部の実施形態では、ケタミンは、エアロゾルスプレーとして投与される。一部の実施形態では、ケタミンは、乾燥粉末として製剤化される。一部の実施形態では、ケタミンは、定量吸入器を備えるデバイスを利用して投与される。一部の実施形態では、ケタミン又は薬学的に許容されるその塩は、ケタミン及び薬学的に許容される分散剤のエアロゾルスプレー製剤を含有する鼻孔スプレー吸入器を備えるデバイスを利用して投与され、ここで、デバイスは、てんかんを処置するために有効な用量のケタミンを含有するが、ケタミンの用量が麻酔を引き起こす用量未満となるように医師又は医療提供者によって決定されるスプレーを形成することによって、ある量のエアロゾル製剤を分散させるために計量される。一部の実施形態では、ケタミンは、分散剤と共に製剤化される。一部の実施形態では、ケタミンは、粘膜浸透増強剤と共に製剤化される。多くの場合、肺への吸入のための液体又は乾燥粉末製剤のエアロゾル化は、噴射剤を必要とすることになる。噴射剤は、当技術分野において一般的に使用される任意の噴射剤であってよい。そのような有用な噴射剤の非限定的な具体例は、トリフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン(dichlorodiflouromethane)、ジクロロテトラフルオロエタノール及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン(tetraflouroethane)、又はそれらの組合せを含む、クロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン(hydochlorofluorocarbon)若しくは炭化水素である。一部の実施形態では、ケタミンは、噴射剤と共に製剤化される。
【0158】
本明細書における使用のために企図されているのは、経口固形剤形であり、これは、Remington's Pharmaceutical Sciences、第18版、1990(Mack Publishing Co. Easton PA 18042)第89章において一般的に記述されている。固形剤形は、錠剤、カプセル剤、丸剤、トローチ剤若しくはキャンディー剤、カシェ剤、ペレット剤、散剤、又は顆粒剤を含む。例示的なキャンディー製剤は、Chongら、Clin Drug Investig. 2009;29(5):317~24において記述されている。また、本発明の組成物を製剤化するために、リポソーム又はプロテノイドのカプセル化を使用してよい(例えば、米国特許第4,925,673号において報告されているプロテノイドミクロスフェアとして)。リポソームのカプセル化を使用してよく、リポソームは種々のポリマーで誘導体化されてよい(例えば、米国特許第5,013,556号)。治療薬のための考えられる固形剤形の記述は、Marshall, K. In: Modern Pharmaceutics、G.S. Banker及びC.T. Rhodes編、第10章、1979によって与えられる。概して、製剤は、治療剤と、胃の環境に対する保護及び腸における生物学的活性材料の放出を可能にする不活性原料とを含む。
【0159】
本明細書における使用のために、不活性希釈剤;アジュバント、湿潤剤、乳化及び懸濁化剤;並びに甘味、香味、着色及び着香剤を含む他の成分を含有しうる、薬学的に許容される乳剤、液剤、懸濁剤及びシロップ剤を含む経口投与のための液体剤形も企図されている。
【0160】
経口製剤では、放出の場所は、胃、小腸(十二指腸、空腸(jejunem)又は回腸)、又は大腸であってよい。当業者ならば、例えば腸溶コーティングの使用によって、胃では溶解せず、十二指腸内で又は腸のいずれか他の場所で材料を更に放出するであろう、利用可能な製剤を有する。腸溶コーティングとして使用される、より一般的な不活性原料の例は、酢酸トリメリト酸セルロース(CAT)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、HPMCP 50、HPMCP 55、ポリ酢酸ビニルフタレート(PVAP)、オイドラギットL30D、アクアテリック、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、オイドラギットL、オイドラギットS及びシェラックである。これらのコーティングを混合フィルムとして使用してよい。
【0161】
コーティング又はコーティングの混合物を錠剤に使用することもでき、これは、胃に対する保護を意図していない。これは、糖衣、又は錠剤をより嚥下しやすくするコーティングを含むことができる。カプセル剤は、乾燥治療薬(すなわち、散剤)の送達用の硬質シェル(ゼラチン等)からなっていてよく、液体形態には、軟質ゼラチンシェルが使用されうる。カシェ剤のシェル材料は、濃いデンプン又は他の食用紙であってよい。丸剤、キャンディー剤、成型錠剤又は粉薬錠剤には、モイストマッシング技法(moist massing technique)が使用されうる。カプセル投与用の材料の製剤は、散剤、軽く圧縮されたプラグ、又は更には錠剤としてのものであってもよい。これらの治療薬は、圧縮によって調製されうる。
【0162】
治療剤の体積を、不活性材料で希釈するか又は増加させてよい。これらの希釈剤は、炭水化物、とりわけマンニトール、ラクトース、無水ラクトース、セルロース、スクロース、修飾デキストラン及びデンプンを含みうる。三リン酸カルシウム、炭酸マグネシウム及び塩化ナトリウムを含むある特定の無機塩を、充填剤として使用してもよい。一部の市販の希釈剤は、ファストフロー、エムデックス、STA-Rx 1500、エムコンプレス及びアビセルである。
【0163】
治療剤の固形剤形への製剤化において、崩壊剤が含まれうる。崩壊剤として使用される材料は、デンプンをベースとする市販の崩壊剤を含むデンプン、エクスプロタブ、デンプングリコール酸ナトリウム、アンバーライト、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ウルトラアミロペクチン(ultramylopectin)、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、オレンジの皮、酸カルボキシメチルセルロース、天然スポンジ及びベントナイトを含むがこれらに限定されず、いずれも使用されうる。崩壊剤は、不溶性カチオン性交換樹脂であってもよい。粉末状ガムが崩壊剤として及び結合剤として使用されてよく、寒天、カラヤ又はトラガカント等の粉末状ガムを含みうる。アルギン酸及びそのナトリウム塩も崩壊剤として有用である。結合剤を使用して、治療剤を一緒に保持して硬質錠剤を形成してよく、アカシア、トラガカント、デンプン及びゼラチン等の天然産物由来の材料を含みうる。その他は、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)及びカルボキシメチルセルロース(CMC)を含む。ポリビニルピロリドン(PVP)及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)はいずれも、ペプチド(又は誘導体)を顆粒化するためにアルコール溶液中で使用されうる。
【0164】
製剤化プロセス中の粘着を防止するために、摩擦防止剤を製剤に含んでよい。滑沢剤は、ペプチド(又は誘導体)と鋳型壁との間の層として使用されてよく、これらは、そのマグネシウム及びカルシウム塩を含むステアリン酸、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、流動パラフィン、植物油並びにワックスを含みうるがこれらに限定されない。ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、種々の分子量のポリエチレングリコール、カーボワックス4000及び6000等の可溶性滑沢剤を使用してもよい。
【0165】
製剤化中の薬物の流動特性を改善しうる及び圧縮中の再配列を補助するための流動促進剤が添加されてよい。流動促進剤は、デンプン、タルク、焼成シリカ及び水和シリコアルミネートを含んでよい。
【0166】
水性環境への治療剤の溶解を補助するために、界面活性剤が湿潤剤として添加されてもよい。界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム及びジオクチルスルホン酸ナトリウム等のアニオン性洗剤を含んでよい。カチオン性洗剤が使用されるかもしれず、塩化ベンザルコニウム又は塩化ベンゼトニウム(benzethomium chloride)を含んでよい。界面活性剤として製剤に含まれうる潜在的な非イオン性洗剤のリストは、ラウロマクロゴール400、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン水添ヒマシ油10、50及び60、モノステアリン酸グリセロール、ポリソルベート40、60、65及び80、ショ糖脂肪酸エステル、メチルセルロース並びにカルボキシメチルセルロースである。これらの界面活性剤は、タンパク質又は誘導体の製剤中に、単独で又は比の異なる混合物としてのいずれかで存在しうる。
【0167】
制御放出経口製剤が本発明を実践する際に使用されてよい。治療剤は、拡散又は浸出機構のいずれかによる放出を許す不活性マトリックス、例えばガムに組み込まれてよい。ゆっくりと縮退するマトリックスが製剤に組み込まれてもよい。一部の腸溶コーティングは、遅延放出効果も有する。制御放出の別の形態は、オロス治療システム(Alza Corp.社)に基づく方法によるものであってよく、すなわち、治療剤は、水が入り、浸透圧効果により単一の小さい開口部を経由して作用物質を押し出すことを可能にする半透膜に封入される。一部の実施形態では、ケタミンは、対象におけるケタミンの血漿レベルを、ピークケタミン血漿レベル(すなわち、ケタミンのCmax)の10%以上(例えば、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、又は95%以上)に、ケタミンの投与後、少なくとも6時間(例えば、少なくとも8時間、少なくとも12時間、少なくとも16時間、少なくとも20時間、少なくとも24時間、少なくとも36時間、又は少なくとも48時間)にわたって維持するように製剤化される。ピークケタミン血漿レベル(すなわち、ケタミンのCmax)は、ケタミンの投与後の対象において観察されるケタミンの最高血漿濃度であることが理解される。一部の実施形態では、ピークケタミン血漿レベル(すなわち、ケタミンのCmax)は、約0.1ng/mLから約2000ng/mLまでである。例えば、約0.1ng/mLから約2000ng/mLまで、約0.1ng/mLから約1500ng/mLまで、約0.1ng/mLから約1200ng/mLまで、約0.1ng/mLから約1000ng/mLまで、約0.1ng/mLから約800ng/mLまで、約0.1ng/mLから約600ng/mLまで、約0.1ng/mLから約500ng/mLまで、約0.1ng/mLから約400ng/mLまで、約0.1ng/mLから約300ng/mLまで、約0.1ng/mLから約200ng/mLまで、約0.1ng/mLから約100ng/mLまで、約0.1ng/mLから約70ng/mLまで、約0.1ng/mLから約50ng/mLまで、約0.1ng/mLから約40ng/mLまで、約0.1ng/mLから約30ng/mLまで、約0.1ng/mLから約20ng/mLまで、約0.1ng/mLから約10ng/mLまで、約0.1ng/mLから約5ng/mLまで、約20ng/mLから約50ng/mLまで、約25ng/mLから約35ng/mLまで、約28ng/mLから約32ng/mLまで、約200ng/mLから約800ng/mLまで、約300ng/mLから約700ng/mLまで、約400ng/mLから約600ng/mLまで、約450ng/mLから約550ng/mLまで、約480ng/mLから約520ng/mLまで、約10ng/mL、約20ng/mL、約30ng/mL、約40ng/mL、約50ng/mL、約100ng/mL、約150ng/mL、約200ng/mL、約300ng/mL、約400ng/mL、約500ng/mL、約600ng/mL、又は約700ng/mL。
【0168】
一部の実施形態では、tmaxは、約1分から約10時間までである。例えば、約1分から約5分まで、約1分から約10分まで、約1分から約15分まで、約1分から約30分まで、約1分から約1時間まで、約1分から約1.5時間まで、約1分から約2時間まで、約1分から約3時間まで、約1分から約5時間まで、約1分から約7時間まで、約30分から約1.5時間まで、約45分から約1.25時間まで、約50分から約70分まで、約1時間から約2時間まで、約1時間から約3時間まで、約1時間から約4時間まで、約1時間から約5時間まで、約15分、約45分、約50分、約55分、約1時間、約1.1時間、約1.5時間、約2時間、又は約3時間。
【0169】
他のコーティングを製剤に使用してよい。これらは、コーティングパンに適用されうる様々な糖を含む。治療剤は、フィルムコート錠で与えられてもよく、この場合において使用される材料は、2つの群に分割される。第1は非腸溶性材料であり、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシ-エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピル-メチルセルロース、カルボキシナトリウム-メチルセルロース、プロビドン(providone)及びポリエチレングリコールを含む。第2の群は、一般にフタル酸のエステルである腸溶性材料からなる。最適なフィルムコーティングを提供するために材料のミックスが使用されてもよい。フィルムコーティングは、パンコーター内若しくは流動床内で、又は圧縮コーティングによって行われうる。
【0170】
別の代替的な実施形態では、投与は、経皮投与を含む。経皮投与は、例えば、パッチ剤及びイオントフォレーシスデバイスを含む受動的又は能動的経皮又は経皮膚的モダリティ、並びにペースト剤、軟膏又は軟膏剤の局所適用を含む。
【0171】
当業者ならば、経皮薬物送達又は皮膚への治療剤の投与のための一般的な技術をよく承知している。経皮薬物送達は、薬物の制御放出を患者に供与し、経皮パッチ剤は、使い勝手がよく、便利で、無痛であり、患者のコンプライアンスの改善を通常もたらす複数日間の投薬を供与する。DRE患者をケタミンの経皮投与で処置するための本発明の方法は、顔、頭又は体の皮膚にケタミンを投与する工程を含みうる。そのようなケタミン組成物は、顔、頭皮、側頭領域、腕、胃、大腿部、背部、頸部等の皮膚に投与されうる。顔の好適な皮膚は、顎、上唇、下唇、前額部、鼻、頬、目の周りの皮膚、上眼瞼、下眼瞼又はそれらの組合せの皮膚を含む。頭皮の好適な皮膚は、頭皮の前部、側頭領域を覆う頭皮、頭皮の外側部又はそれらの組合せを含む。側頭領域の好適な皮膚は、こめかみ、及び側頭領域を覆う頭皮並びにそれらの組合せを含む。ケタミンは、生体接着パッチ剤、又は密封被覆材を伴う生体接着ストリップに製剤化されうる。代替として、皮膚への投与用の経皮ケタミン組成物は、密封包帯を伴う又は伴わない層で皮膚に塗布される、局所軟膏剤、局所ゲル剤、ローション剤、クリーム剤、液剤、スプレー剤、塗料、フィルム、箔、化粧品として塗布されうる。
【0172】
ケタミン含有組成物の皮内投与も企図されている。治療剤の皮内投与は、皮膚の層の内部又は間として定義される。対照的に、皮下投与は皮膚の最初の層の下として定義され、静脈内は血流中への全身投与である。皮内、静脈内又は皮下注射による治療剤の投与は、薬物送達の一般的な手段であり、当業者によって容易に実施される。
【0173】
本明細書において記述されている組成物及び製剤は、医療従事者によって又は患者によって投与されうる。DREを処置するためのケタミンの患者自己投与は、明示的に企図されている。鼻腔内投与及び経皮パッチ剤を介する投与は、患者自己投与に特に適している。
【0174】
本明細書において記述されている方法において使用するための製剤は、ケタミンに加えて、他の治療又は薬理活性原料を含むことができる。
【0175】
医薬製剤を含む組成物中におけるケタミンの有効量は、所望の治療的、予防的及び/又は生物学的効果を部分的に又は完全に達成する用量を含む。具体的な実施形態では、DREがある対象に投与される有効量のケタミンは、DREの1つ又は複数の兆候又は症状を処置するために有効である。特定の用途のために有効な実際の量は、処置されている状態及び投与ルートによって決まる。
【0176】
ある特定の態様では、本開示は、治療有効用量、すなわち、DREを処置するために有効な用量のケタミンの投与を提供する。具体的な投薬量は、疾患の状態、すなわち、DREの重症度、対象の年齢、体重、一般的健康状態、性別及び食習慣、投薬間隔、投与ルート、排泄率、並びに薬物の組合せに応じて調整されうる。有効量のケタミンを単独で又は1種若しくは複数の活性剤と組み合わせてのいずれかで含有する本明細書において記述されている剤形のいずれも、十分に日常実験の境界内であり、したがって、十分に本発明の範囲内である。
【0177】
初回用量がより大きく、続いて、より小さい維持用量であってよい。用量は、有効投薬量レベルを維持するために、毎週若しくは隔週のような低頻度で投与されるか、又はより小さい用量に分画されて、毎日、毎日数回、毎週2回、隔週、四半期ごと等、投与されてよい。予備用量は動物試験に従って決定することができ、ヒト投与のための投薬量のスケーリングは、技術分野で許容された慣例に従って実施されうる。ある特定の実施形態では、対象に、1回用量、2回用量、3回用量、4回用量、5回用量、6回用量又はそれ以上の本明細書において記述されているケタミン含有組成物が投与されうる。しかしながら、処置に対する対象の応答に応じて、他の範囲が可能である。その上、初回用量は、その後に投与されるケタミンの用量と同じであってもよく、又はそれより低くても高くてもよい。
【0178】
投薬の回数及び頻度は、組成物の投与に対する対象の応答に基づいて決定されてよく、例えば、患者の症状の1つ若しくは複数が改善する場合及び/又は対象が有害反応なしに組成物の投与を忍容する場合、一部の対象では単回用量で十分であり、他の対象は、本明細書において記述される通りのケタミンを含有する組成物の、毎日、1日に数回、1日おき、週に数回、毎週、隔週、毎週2回、又は毎月の投与を受ける場合がある。処置の持続期間及び頻度は、処置に対する対象の応答によって、すなわち、対象の状態及び/又はDREの1つ若しくは複数の症状が改善するか否かによって、決まることになる。
【0179】
投薬レジメンの一例において、ケタミンの初回用量はDREを処置するために使用され、続いて、DREの処置を維持するためにより低用量のケタミンへの滴定が行われる。そのようなレジメンは、例えば、DREの急性症状を処置するために高用量のケタミンを使用し、続いて、DREの慢性症状を処置するためにより低用量のケタミンへの滴定を行うために特に有用となりうる。
【0180】
一部の実施形態では、DREを処置するためのケタミンの用量は、体重1kg当たりおよそ0.001からおよそ2mg、体重1kg当たり0.01からおよそ1mg、又は体重1kg当たりおよそ0.05からおよそ0.7mgである。DREを患っている対象(例えば、患者)には、例えば、体重1kg当たり約0.01mg(mg/kg)、約0.05mg/kg、0.1mg/kg、約0.2mg/kg、約0.3mg/kg、約0.4mg/kg、約0.5mg/kg、約0.6mg/kg、約0.7mg/kg、約0.8mg/kg、約0.9mg/kg、約1.0mg/kg、約1.1mg/kg、約1.2mg/kg、約1.3mg/kg、約1.4mg/kg、約1.5mg/kg、約1.6mg/kg、約1.7mg/kg、約1.8mg/kg、約1.9mg/kg、約2mg/kg、又は約3mg/kgの用量のケタミンが投与(自己投与を含む)されうる。
【0181】
一部の実施形態では、例えば、鼻腔内、経皮、静脈内、皮内又は皮下投与(例えば、静脈内又は鼻腔内投与)のためのケタミンの総用量は、約1mgから約250mgまでの範囲(例えば、約1mgから約10mg、約1mgから約40mg、約1mgから約100mg、約1mgから約175mg、約20mgから約40mg、約20mgから約100mg、約20mgから約175mg、約50mgから約100mg、約100mgから約150mg、約150mgから約200mg、又は約200mgから約250mg、約1mg、約2mg、約4mg、約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130mg、約140mg、約150mg、約160mg、約170mg、約180mg、約190mg、約200mg、約210mg、約220mg、約230mg、約240mg、及び約250mg)である。
【0182】
一部の実施形態では、体重80kgの対象のためのケタミンの鼻腔内、経皮、静脈内、皮内又は皮下(例えば、静脈内又は鼻腔内)用量は、約40mgに等しい又はそれよりも大きく、例えば、約45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、100mg、110mg、120mg、130mg、140mg、150mg、160mg、170mg、180mg、190mg、200mg、210mg、220mg、230mg、240mg、又は250mgである。ある特定の実施形態では、体重1kg当たり0.13から0.53mgに対応する、8~32mgのケタミンの鼻腔内投与が企図されている。一部の実施形態では、有効用量は、医師又は医療提供者の監督下で滴定され、そのため、特定の用途のための最適用量が正確に決定される。故に、各個々の患者に適している用量が提供される。投薬量範囲が確立されると、更なる利点は、患者がケタミンを、必要に応じて用量対効果ベースで投与できることである。故に、投与の頻度は患者の管理下にある。しかしながら、各投与での比較的低い用量は、乱用の可能性を低減させることになる。
【0183】
一部の実施形態では、DREを処置するためのエスケタミンの用量は、体重1kg当たりおよそ0.001からおよそ2mg、体重1kg当たり0.01からおよそ1mg、又は体重1kg当たりおよそ0.05からおよそ0.7mgである。DREを患っている対象(例えば、患者)には、例えば、体重1kg当たり約0.01mg(mg/kg)、約0.05mg/kg、0.1mg/kg、約0.2mg/kg、約0.3mg/kg、約0.4mg/kg、約0.5mg/kg、約0.6mg/kg、約0.7mg/kg、約0.8mg/kg、約0.9mg/kg、約1.0mg/kg、約1.1mg/kg、約1.2mg/kg、約1.3mg/kg、約1.4mg/kg、約1.5mg/kg、約1.6mg/kg、約1.7mg/kg、約1.8mg/kg、約1.9mg/kg、約2mg/kg、又は約3mg/kgの用量のエスケタミンが投与(自己投与を含む)されうる。
【0184】
別の実施形態では、鼻腔内投与1回当たりのエスケタミンの総用量は、約1から約250mgまでの範囲である。非限定的な例として、1mg、2mg、4mg、5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、100mg、110mg、120mg、130mg、140mg、150mg、160mg、170mg、180mg、190mg、200mg、210mg、220mg、230mg、240mg、及び250mgのエスケタミン用量が具体的に企図されている。
【0185】
別の実施形態では、鼻腔内投与1回当たりのケタミンの総用量は、約10mgから約300mg、約10mgから約250mg、約10から約200mg、約15から約175mg、約20から約175mg、約25から約150mg、約25から約125mg、約25から約100mg、約50から約100mg、約50mgから約75mg、約75mgから約100mg、又は約75mgから約200mgまでの範囲である。
【0186】
別の実施形態では、鼻腔内投与1回当たりのエスケタミンの総用量は、約10mgから約300mg、約10mgから約250mg、約10から約200mg、約15から約175mg、約20から約175mg、約25から約150mg、約25から約125mg、約25から約100mg、約50から約100mg、約50mgから約75mg、約75mgから約100mg、又は約75mgから約200mgまでの範囲である。
【0187】
ある特定の実施形態では、体重約70~80kgの対象のためのエスケタミンの鼻腔内又は静脈内用量は、約40mgに等しい又はそれよりも大きく、例えば、約45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、100mg、110mg、120mg、130mg、140mg、150mg、160mg、170mg、180mg、190mg、200mg、210mg、220mg、230mg、240mg、又は250mgである。
【0188】
ある特定の実施形態では、体重1kg当たり0.13から0.53mg/kgに対応する、8~32mgのエスケタミンの鼻腔内投与が企図されている。別の実施形態では、体重1kg当たり約0.83から1.25mgの間に対応する、約50~75mgの間の総用量のエスケタミンの鼻腔内投与が企図されている。別の実施形態では、体重1kg当たり約0.74から1.1mg/kgの間に対応する、約50~75mgの間の総用量のエスケタミンの鼻腔内投与が企図されている。
【0189】
ある特定の実施形態では、体重1kg当たり0.13から0.53mgに対応する、8~32mgのケタミンの鼻腔内投与が企図されている。別の実施形態では、体重1kg当たり約0.83から1.25mgの間に対応する、約50~75mgの間の総用量のケタミンの鼻腔内投与が企図されている。別の実施形態では、体重1kg当たり約0.74から1.1mgの間に対応する、約50~75mgの間の総用量のケタミンの鼻腔内投与が企図されている。
【0190】
好ましくは、ケタミンの有効用量は、医師又は医療提供者の監督下で滴定され、そのため、特定の用途のための最適用量が正確に決定される。故に、本開示は、各個々の対象(例えば、患者)に適している用量を提供する。
【0191】
投薬量範囲が確立されると、ケタミンの鼻腔内投与のための組成物及び鼻腔内投与を介する処置方法の利点は、患者がケタミンを、必要に応じて用量対効果ベースで投与(例えば、自己投与)できることである。故に、投与の頻度は対象の管理下にある。更に別の特定の利点は、ケタミンの鼻腔内投与が非侵襲的であり、ケタミンによる血液脳関門の横断を容易にすることである。
【0192】
ケタミンの軽度の有害作用、例えば、不快及び/又は幻覚は、時に「ケタミンドリーム」と呼ばれ、50mgよりも大きい用量のケタミンの投与時に発生することがあり、通常、鼻腔内に総用量100mgよりも大きい用量のケタミンを必要とする。DREを処置するためにケタミンを投与する場合、DREを処置する際に有効であるが、そのような副作用をもたらすレベル未満である用量を投与することが好ましい。しかしながら、特にDREの急性エピソードに応答して、より高用量のケタミンが投与されうることが考えられる。
【0193】
DREのあるヒト患者を処置するための方法は、ケタミンを使用して、患者におけるDREの少なくとも1つの症状を低減させる又は排除することに向けられる。ケタミンは、(S)-ケタミン及び(R)-ケタミンのラセミ混合物として又は鏡像異性的に富化されたケタミン鏡像異性体として投与されうる。組成物は、例えば、(S)-ケタミン及び(R)-ケタミン鏡像異性体のいずれかの90%、95%、99%、99.9又は99.99%となる程度まで、富化されてよい。
【0194】
具体的な実施形態では、DREのあるヒト患者を処置するための方法は、エスケタミンを使用して、患者におけるDREの少なくとも1つの症状を低減させる又は排除することに向けられる。
【0195】
ある特定の実施形態では、ケタミンを含む組成物は、DREを患っている患者の鼻腔内に又は静脈内に投与される。
【0196】
他の実施形態では、本開示は、本明細書で開示されるケタミン含有組成物及び製剤の予防的使用も企図している。例えば、ある特定の実施形態では、現在提供されているのは、ヒト患者においてDREの発病を阻害するための方法であって、そのような阻害を必要とする対象に、DREの発病及び/又は1つ若しくは複数のDRE様症状の発病を阻害するための治療有効量のケタミンを含む組成物を投与する工程を含み、治療有効量が、1日当たり約0.1mg/kgから約3.0mg/kg/日の間の用量付近の投薬量範囲である方法である。具体的な実施形態では、DREの症状は、ケタミンの投与後2時間以内に緩和される。本明細書で開示される通り、DREの症状は、ケタミンの投与と同時に緩和されうる。
【0197】
ケタミンのIV投与は、必要に応じて、例えば、DREの症状が出現した場合であってよい。IV投与では、ケタミン(例えば、少なくとも0.5mg/kgの用量)は40分の期間をかけて投与されうる。IV投与は、最大1週間にわたって又はそれよりも長く継続されうる。ケタミンのIV投与は、週に少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回実現されてもよく、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10週又はそれ以上の期間にわたって継続されうる。ケタミンのIV投与によって引き起こされた重篤な有害事象は観察されていない。観察されるあらゆる副作用は、典型的には軽度、例えば、多幸感、BP上昇、性欲亢進、認知外乱であり、更に、これらの作用は、典型的には、注入後80分以内に軽快する。
【0198】
鼻腔内ケタミンの投与は、必要に応じて、例えば、DREの症状が出現した場合であってよい。具体的な実施形態では、ケタミンは、14日以内に、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9回投与される。他の実施形態では、ケタミンは、21日以内に、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9回投与される。他の実施形態では、鼻腔内ケタミンは、1日に少なくとも1回、1日に少なくとも2回、1日当たり少なくとも3回、又はそれ以上投与される。他の実施形態では、鼻腔内ケタミンは、週に少なくとも1回、週に少なくとも2回、週に少なくとも3回、又はより頻繁に投与される。別の実施形態では、鼻腔内ケタミンは、月に少なくとも2回又は月に少なくとも1回投与される。処置は、必要な限り長く継続することができる。
【0199】
一部の実施形態では、第2の作用物質が、DREを処置するためにケタミンと組み合わせて、又はケタミンによるDREの初期処置フェーズ後に使用され、ここで、第2の作用物質は、DREの処置におけるケタミンの正の効果を引き上げるか、又はDREの処置におけるケタミンの正の効果を持続させる。
【0200】
一部の実施形態では、ケタミンの静脈内、経口、口腔内、舌下、肺内及び経皮投与が企図されている。1つの代替的な実施形態では、故に、本発明は、ヒト患者のDREを処置する方法であって、ケタミンを含む組成物を患者に、DREの症状を低減させる又は排除するために十分な投薬量で静脈内に投与する工程を含む方法を提供する。別の代替的な実施形態では、故に、本発明は、ヒト患者のDREを処置する方法であって、ケタミンを含む組成物を患者に、DREの症状を低減させる又は排除するために十分な投薬量で経皮的に投与する工程を含む方法を提供する。別の代替的な実施形態では、故に、本発明は、ヒト患者のDREを処置する方法であって、ケタミンを含む組成物を患者に、DREの症状を低減させる又は排除するために十分な投薬量で経口的に(例えば、液体又は固体(例えば、キャンディー剤)剤形)投与する工程を含む方法を提供する。より具体的な実施形態では、ケタミンは、薬学的に許容される担体中であり、1日当たり約0.1mg/kgから約3.0mg/kg/日の間の用量で投与される。
【0201】
本発明の方法は、複数回用量のケタミンの静脈内、経口又は経皮投与を含む方法を経由して達成されうる。投与静脈内、経口又は経皮投与ケタミンは、必要に応じて、例えば、DREの症状が出現した場合であってよい。具体的な実施形態では、ケタミンは、14日以内に、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9回投与される。他の実施形態では、ケタミンは、6週間以内に、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9回投与される。他の実施形態では、ケタミンは、1日に少なくとも1回、1日に少なくとも2回、1日当たり少なくとも3回、又はそれ以上投与される。他の実施形態では、ケタミンは、週に少なくとも1回、週に少なくとも2回、週に少なくとも3回、又はより頻繁に投与される。別の実施形態では、ケタミンは、月に少なくとも2回又は月に少なくとも1回投与される。処置は、必要な限り長く継続することができる。
【実施例
【0202】
これは、外来診療の場での薬物抵抗性てんかんの処置における麻酔域下用量のIVケタミンの効能を評価するためのパイロットスタディである。
研究の説明:
ケタミンは、1960年代に臨床診療に登場した薬剤である。
ケタミンは、麻酔薬として及び疼痛軽減を提供するために使用される。最近、ケタミンは、麻酔域下用量を使用して薬物抵抗性うつ病を処置するために承認された。病院において、静脈内麻酔薬投薬量は、昏睡状態の患者におけるてんかん重積状態として公知である絶え間ない発作を処置するために使用される。麻酔域下用量のケタミンは、外来診療の場において薬剤抵抗性発作のための処置として試行されてこなかった。この研究は、薬物抵抗性てんかんを患っている外来患者において麻酔域下ケタミンの有効性を検査することを望むものである。
目的:
主要目的:ケタミンで処置した薬剤抵抗性患者における発作頻度を定量化すること。本発明者らの仮説は、この集団においてケタミンが発作頻度を低減させるであろうというものである。
副次的目的:この患者集団におけるうつ病/不安の存在又は非存在に留意し、ケタミンが抗うつ/抗不安作用を有するならば定量化する。
エンドポイント:
主要エンドポイント:補助的なケタミンは、28日当たりの発作頻度を有意に低減させるであろう。2週間の積極的な処置期間中に、50%の発作低減が期待される。注入後28日間で、継続して50%の発作低減が期待される。3か月で、ケタミン注入前の発作頻度に戻ることが期待される。
副次的エンドポイント:気分評価。うつ病及び/又は不安は包含基準ではないが、NDDI-E、QOLIE-10、GAD 7、ADAMSを処置の前及び後に実施することとする。気分評価の改善が期待される。
研究集団:薬物抵抗性てんかん患者
フェーズ又はステージ:フェーズIIa
サイトの説明/てんかん外来患者診療所
参加者募集施設:
研究の持続期間:2年
参加者の持続期間:18週間
【0203】
図1は、研究における患者について評価及び処置を描写するフローチャートを描写している。Table 1(表1)は、研究のための活動のスケジュールを描写している。
【0204】
【表1】
【0205】
注入中の血行動態の不安定性は、患者に潜在的なリスクを課すが非常に低い。心血管疾患歴のある患者は、研究から除外されることになる。
【0206】
注入中に精神医学的有害作用が発生しうる。これらの作用は可逆的であり、患者に対して恒久的で不可逆的な傷害を引き起こすことはないであろう。
【0207】
医師及びCRUスタッフが注入中に存在し、注入後2時間にわたって患者をモニターし続ける。注入後のバイタルの評価後に安定していると判断された場合、患者は立ち去るのを許可される。
【0208】
研究の終了は、上記の活動スケジュール(SoA)に示される3か月間のフォローアップ評価の完了として定義される。
【0209】
これは、薬物抵抗性てんかん(DRE)がある成人患者における麻酔域下用量(0.5mg/kg)のIVラセミケタミンの効能及び臨床ユーザビリティを調査するための、単一サイト非盲検パイロットスタディである。15人の対象が研究に登録することになる(スクリーニング脱落を考慮しており、10人の対象のみが処置フェーズの資格を得る、すなわち、10人の対象が処置フェーズに入るのに資格を得ると登録は終了することになる)。
【0210】
研究は、3つのフェーズからなる:スクリーニング-CRUに入る前;IVケタミンが投与されることになる臨床リサーチユニット(CRU)中での処置;処置後の安全性のフォローアップ。対象又は対象の法的に権限を与えられた代理人(LAR)は、あらゆる研究関連手順を完了する前に、適切に取得したインフォームドコンセントを提供する。
【0211】
包含基準
この研究に参加するのに適格であるために、個人は以下の基準のすべてを満たさなくてはならない:
1. 署名及び日付が記入されたインフォームドコンセント用紙の提供
2. 成人(18歳以上)
3. 認知障害のある成人は除外されない(すなわち、研究に含まれることになる)
4. 薬物抵抗性てんかん(DRE)の確定診断、すなわち、2つ以上の適切に選択された抗発作薬剤(ASMs)で失敗した
5. 焦点又は全般性てんかんと一致するEEG
6. 患者は、1か月当たり4回を超える焦点意識、焦点意識減損、焦点起始両側強直間代又は全般性強直間代発作を有さなくてはならない。
7. 患者は、開始の12週間前の登録時に1つ以上の抗発作薬剤(ASM)を安定用量で服用中であってよい。
8. てんかんデバイス:迷走神経刺激装置(VNS)、脳深部刺激装置(DBS)又は応答神経刺激装置(RNS)を利用している患者は、スクリーニング訪問前に少なくとも4週間にわたって安定した状態を保っていなければならない。研究中、デバイスの調整は許可されない。
【0212】
除外基準
以下の基準のいずれかを満たす個人は、この研究への参加から除外されることになる:
1. 18歳未満の患者
2. 妊娠中の女性
3. 授乳している女性
4. 昨年中に21日を超える発作自由を有した患者
5. スクリーニングの3か月以内にてんかん重積状態歴のある患者
6. 過去2年以内にアルコール依存症又は薬物誤用歴がある患者
7. 不安定な内科的疾病
8. 重篤な又は切迫した自殺又は殺人のリスク
9. 心血管疾患がある患者
10. 統合失調症がある患者
11. 動脈瘤又は大動脈解離、脳動静脈奇形及び脳内出血歴がある患者
12. 不動である、すなわち、車椅子に束縛された、寝たきりの個人である患者
13. 精神刺激薬(アンフェタミン、メチルフェニデート等)及びモノアミンオキシダーゼ阻害剤(セレギリン、イソカルボキサジド、フェネルジン等)を服用中の患者
【0213】
動員及び保持のための戦略
マウントサイナイにあるてんかんプロバイダでは、年間3000人をはるかに上回るてんかんの人々が見られる。およそ50%が薬物抵抗性である。それらの人々のうちより少ない百分率が、研究に含まれる必要がある発作頻度を有するであろう。15人の患者がてんかん外来診療所から直接動員される。潜在的な対象は、リサーチを手短に紹介し関心を測る、処置てんかんプロバイダによって打診される。次いで、潜在的な対象は、リサーチチームのメンバーによって接触されることの許諾を要求される。
【0214】
参加者は、研究参加に対するいかなる報酬(例えば、割引券、ギフトカード)も、補償又は提供されることはない。
【0215】
認知障害のある成人はこの研究に登録される。対象の能力が限定されていて合理的に意見を聞くことができないのでない限り、いかなる対象からも同意が取得される。研究は素人用語で説明され、口頭による同意が取得される。個人が同意しない場合、当該人物は研究に含まれない。コンセント用紙の同意チェックボックスを使用して、同意を文書化する。
【0216】
スクリーニング訪問:
インフォームドコンセントは、リサーチスタッフによって対象又は対象のLARのいずれかから取得され、その後、包含及び除外基準を患者が検討する。発作日記が対象及び/又はLARに配布される。患者が研究を承諾した場合、病歴及び身体検査、定期的な血液検査(少なくとも過去3か月以内のCBC、CMP)並びにEKGが実施される。これは、内科的疾病を確立するためのものである。発作日記は、1回目の注入前4週間以内に先を見越して記入される。ベースライン気分評価がこのスクリーニング訪問で実施される。
【0217】
処置フェーズ:
適格と判断された患者は、処置フェーズに進む。このフェーズは、6回の研究訪問(3回の訪問/週を2週間にわたって)からなる。
処置訪問1: 5週目月曜日(ベースライン発作日記が回収される)
処置訪問2: 5週目水曜日
処置訪問3: 5週目金曜日
処置訪問4: 6週目月曜日
処置訪問5: 6週目水曜日
処置訪問6: 6週目金曜日(注入前に気分評価が実施される)
【0218】
各訪問は、3時間の期間続くことが期待される。処置は、マウントサイナイ病院(MSH)の臨床リサーチユニット(CRU)で行われる。
【0219】
注入前にバイタル(血圧、脈拍、呼吸数、SP02)を取り、CRUへの滞在中を通してモニターする。体重を測定し、投与される研究薬剤の用量を算出する。処置前気分評価を患者に施す(NDDI-E、QOLIE-10、GAD 7、ADAMS)。気分評価は、注入前の処置訪問6において、並びにまた注入後1か月及び3か月の訪問において、再度施する。妊娠可能な女性たちに対しては、処置訪問1においてCRUへの入室時に、ポイントオブケア尿妊娠検査を行い、陽性ならば、対象を研究から離脱させる。
【0220】
患者に、40分間かけて0.5mg/kgのラセミケタミンIVを週に3回(M、W、F)、連続2週間にわたって受けさせる。患者に、処置訪問の前に一晩絶食するように要求する(真夜中を過ぎてケタミン注入の終了1時間後までNPO)。患者は、朝の薬を一口の水で服用することを許可されている。
【0221】
注入は、MSHのCRUで行う。
【0222】
医師及びCRUスタッフが注入中に存在し、注入後2時間にわたって患者をモニターし続ける。注入後のバイタルの評価後に安定していると判断された場合、患者は立ち去るのを許可される。
【0223】
緊急挿管の可能性は低いが、呼吸抑制又はあらゆる緊急事態のためのプロトコールは、迅速な応答を求めて電話すること(又は911に電話すること)となる。医師は、安全性をモニターするために、CRU内で常に患者と共にいる。
【0224】
処置後フェーズ
このフェーズは、5つの注入後の安全性評価及び3つの処置後の評価からなる。
【0225】
フォローアップ安全性評価を行って、有害事象を事実上モニターする。これらを、ケタミンの最終用量後の最初の3日間は毎日、次いで、合計2週間にわたって毎週行う。
【0226】
注入後1、2及び3か月で、患者にフォローアップ電話をかける。注入後1及び3か月で、対象に処置後の気分評価(NDDIE-E、QOLIE-10、GAD 7、ADAMS)を施す。発作日記をレビューし、有害事象を各訪問ごとに評価する。
注入後の安全性評価1: 6週目土曜日(有害事象の評価)
注入後の安全性評価2: 7週目日曜日(有害事象の評価)
注入後の安全性評価3: 7週目月曜日(有害事象の評価)
注入後の安全性評価4: 8週目月曜日(有害事象の評価)
注入後の安全性評価5: 9週目月曜日(有害事象の評価)
処置後の評価1: 電話10週目(発作日記回収、気分評価が実施される)
処置後の評価2: 電話14週目(発作日記)
処置後の評価3: 電話18週目(発作日記回収、気分評価が実施される)
【0227】
参加者は、ベースライン評価、6つの介入セッション、並びに1、2及び3か月のフォローアップ評価を完了したら、研究を完了したとみなされる。
【0228】
注入前にバイタル(血圧、脈拍、呼吸数、SP02)を取り、CRUへの滞在中を通してモニターする。体重を測定し、投与される研究薬剤の用量を算出する。患者に、40分間かけて0.5mg/kgのラセミケタミンIVを週に3回(M、W、F)、連続2週間にわたって受けさせる。
【0229】
医師及びCRUスタッフが注入中に存在し、注入後2時間にわたって患者をモニターし続ける。注入後のバイタルの評価後に安定していると判断された場合、患者は立ち去るのを許可される。
【0230】
ASM/AEDを服用中の患者は、スクリーニング訪問の12週間前に安定用量でなくてはならない。てんかんデバイス:迷走神経刺激装置(VNS)、脳深部刺激装置(DBS)又は応答神経刺激装置(RNS)を利用している患者は、スクリーニング訪問前に少なくとも4週間にわたって安定した状態を保っていなければならない。研究中、デバイスの調整は許可されない。
【0231】
調査員は、安全又は管理上の理由から、対象をいつでも研究から離脱させてよい。
離脱のための理由は以下の通りである:
- 注入中のアレルギー又は有害反応(重篤な有害事象)。
- 注入中の血行動態の不安定性。
【0232】
秩序ある中止(orderly termination)のための手順
対象は、何らかの理由でいつでもリサーチから離脱してよい。対象は、希望があれば、口頭で又は書面でそうするように要求される。調査員が離脱させた対象を、CRU内でモニターし、安定させる。対象の早期中止をもたらす有害事象の後には、調査員によって解明される通り、満足のいく解決及び転帰の決定が続くことになる。離脱の理由並びにあらゆる有害事象及び評価を文書化する。
【0233】
患者が部分的な注入プロトコールに耐えることはできるがそのすべてには耐えられない場合、そのデータは研究チームによって保持され、分析において使用されうる。
参加者は、要請に応じていつでも、研究への参加から自由に離脱できる。
【0234】
参加者が予定された処置訪問に戻れず、且つ研究スタッフが少なくとも3回試みた後に参加者と連絡が取れない場合、参加者はフォローアップ不能になったとみなされる。
【0235】
参加者が必要とされる研究訪問のために診療所に戻れない場合、以下の行動をとらなくてはならない:
・ サイトは、参加者に連絡するように試み、逃した訪問の予定を2日以内に組み直し、割り当てられた訪問スケジュールを維持することの重要性について参加者に助言し、参加者が研究を継続することを望む及び/又は継続するべきか否かを解明する。
・ 参加者がフォローアップ不能になったと判断される前に、調査員又は被指名人は参加者との連絡を再開するためにあらゆる努力を払う(可能な場合、3回の電話)。
・ 参加者に連絡が取れない状態が続くならば、フォローアップ不能になったことを主な理由として参加者は研究から離脱したとみなされる。
・ 身体検査ベースの評価:体重、血圧、心拍数、SP02。
・ 発作日記ログ(第1回処置訪問の前28日間~第6回処置訪問後3か月間)
・ 気分評価(NDDI-E、QOLIE-10、GAD-7、ADAMS)ベースライン、注入前及び後
【0236】
注入前にバイタル(血圧、脈拍、呼吸数、SP02)を取り、IVラセミケタミンの注入を通して及び注入後2時間モニターする。
【0237】
フォローアップ安全性評価を行って、有害事象を事実上モニターする。これらを、ケタミンの最終用量後の最初の3日間は毎日、次いで、合計2週間にわたって毎週行う。評価される症状は、渇望、不快、震え、発汗、動悸、疲労、食欲不振、気分の落ち込み、悪寒、自律神経覚醒、流涙、不穏状態、不安、悪夢、パラノイア、妄想及び幻覚、激越、精神錯乱、運動能力の喪失、憤怒、悪心、呼吸及び心臓機能の低下、不眠症、認知機能障害、並びに振戦を含むことになるがこれらに限定されない。
【0238】
緊急挿管の可能性は低いが、呼吸抑制又はあらゆる緊急事態のためのプロトコールは、迅速な応答を求めて電話すること(又は911に電話すること)となる。医師は、安全性をモニターするために、CRU内で常に患者と共にいる。
【0239】
対象の早期中止をもたらす有害事象の後には、調査員によって解明される通り、満足のいく解決及び転帰の決定が続くことになる。離脱の理由並びにあらゆる有害事象及び評価を文書化する。
【0240】
乱用に関連する有害事象
乱用:有害な身体的又は心理的影響が付随する研究薬の散発的又は持続的な意図的な過剰使用。
【0241】
モニターされる乱用に関連するAEは、以下を含む:
・ 多幸気分;高揚した気分;異常感;酩酊感;弛緩感;目まい;異常な思考;幻覚;不相応な情動
・ 注意、認知及び気分の異常;傾眠、気分障害及び外乱;精神病;攻撃性;精神錯乱及び失見当識
治験薬管理記録の不一致(Drug accountability discrepancies):研究薬剤の流用
【0242】
乱用に関連するすべてのAEをAEとして捉え、早急に報告しなくてはならない。
【0243】
すべての統計分析は、研究が完了した後に、調査員又は被指名人によって実施される。統計分析は、必要とされる際には、SASソフトウェア又は他の検証済みの統計ソフトウェアを使用して実施される。
【0244】
インフォームドコンセント文書を管理することの一部として、調査員/リサーチスタッフは、各対象及び/又は保護者/法的に権限を与えられた代理人に、研究の性質、その目的、関与する手順、予測される持続期間、関与する潜在的なリスク及び利益、あらゆる潜在的な不快感、対象に利用可能な処置の潜在的な代替手順又は過程、並びに対象の記録の機密保持の程度を説明する。各対象に、研究への参加は自由意思によるものであること、いつでも研究から離脱してよいこと、並びに承諾に基づく離脱はその後の医学的処置にも処置医師との関係にも影響しないことを伝える。
【0245】
このインフォームドコンセントは、非専門用語で書かれた標準的な書面による声明を利用して与えられるべきである。対象及び/又は対象の法的に許容される代理人は、それに署名及び日付を記入する前に声明を理解すべきであり、署名された文書のコピーが与えられる。対象が読めない又は法的に許容される代理人が読めない場合、インフォームドコンセントの議論の全期間中にわたって公正な立会人が存在すべきである。ICF及び対象に提供されるあらゆる他の書面情報が読まれ、対象又は対象の法的に許容される代理人に説明された後、並びに対象又は対象の法的に許容される代理人が対象の研究への参加に口述で承諾し、そうすることができるならばICFに署名し、個人的に日付を記入した後、立会人はコンセント用紙に署名し、個人的に日付を記入すべきである。
【0246】
対象は、いかなる研究固有の手順も実施される前のスクリーニング訪問時に、ICFに署名するように要求される。対象は、インフォームドコンセントが取得される前に研究に入ることはできない。IRB/IEC承認済みICFの署名のないコピーは、マウントサイナイのPPHS標準承諾テンプレートに従って準備される。各対象は、研究参加の前に承認済みICFに署名しなくてはならない。用紙は、適切な当事者によって署名及び日付が記入されなくてはならない。
【0247】
各対象についての原本の署名されたICFは調査員によって検証され、ファイルに保管され、安全なキャビネット内に保存される。
【0248】
プライバシー
対象候補者は最初に担当てんかん専門医によって打診される。リサーチチームは、候補者の処置てんかん専門医によって研究が紹介され、候補者が関心を示した後に、参加者候補者に打診するだけとなる。対象は、個人事務所/診察室での臨床訪問中にのみ打診される。いかなるやりとりも、個室内で、対象及び/若しくは許諾が提供された介護者と行われるか、又は彼らが合意した人物が対象の意思決定に参加できる。研究チームは、優先電話番号を使用して対象に連絡するだけである。対象は、第三者によって会話が立ち聞きされることを回避するために、静かな部屋で承諾する。
(参考文献)
図1
【手続補正書】
【提出日】2024-01-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その処置を必要とする対象において薬物抵抗性てんかんを処置する方法であって、治療有効量のケタミン又は薬学的に許容されるその塩を、前記対象に鼻腔内に投与する工程を含む、方法。
【請求項2】
その処置を必要とする対象においててんかんを処置する方法であって、治療有効量のケタミン又は薬学的に許容されるその塩を前記対象に鼻腔内に投与する工程を含み、ここで、前記対象が、前記ケタミン又は薬学的に許容されるその塩の投与後に、麻酔を実質的に経験しない、方法。
【請求項3】
対象に抗発作薬が事前に投与された、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
その処置を必要とする対象においててんかんを処置する方法であって、治療有効量のケタミン又は薬学的に許容されるその塩を前記対象に鼻腔内に投与する工程を含み、ここで、前記対象に抗発作薬が事前に投与された、方法。
【請求項5】
発作の持続期間、重症度及び/又は頻度の改善が、抗発作薬の投与後の対象において実質的に観察されなかった、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
その処置を必要とする対象においててんかんを処置する方法であって、治療有効量のケタミン又は薬学的に許容されるその塩を前記対象に鼻腔内に投与する工程を含み、ここで、前記対象がてんかんを有し抗発作薬が投与されたことを指し示す臨床記録を前記対象が有する、方法。
【請求項7】
臨床記録が、発作の持続期間、重症度及び/又は頻度の改善が抗発作薬の鼻腔内投与後の対象において実質的に観察されなかったことを指し示す、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
その処置を必要とする対象においててんかんを処置する方法であって、
前記対象に抗発作薬が事前に投与されたことを決定する工程と、
発作の持続期間、重症度及び/又は頻度の改善が、前記抗発作薬の投与後の前記対象において実質的になかったことを決定する工程と、
治療有効量のケタミン又は薬学的に許容されるその塩を前記対象に鼻腔内に投与する工程と
を含む、方法。
【請求項9】
治療有効量のケタミン又は薬学的に許容されるその塩の投与を含む処置のために対象を選択する方法であって、
てんかんを有し抗発作薬が投与された対象を同定する工程と、
発作の持続期間、重症度及び/又は頻度の改善が、前記抗発作薬の投与後の前記対象において実質的になかったことを決定する工程と、
治療有効量のケタミン又は薬学的に許容されるその塩の鼻腔内投与を含む処置のために前記対象を選択する工程と
を含む、方法。
【請求項10】
抗発作薬が、トピラメート、バルプロ酸、フェルバメート、ルフィナミド、スチリペントール、フェンフルラミン、クロバザム、クロナゼパム、ロラゼパム、ガバペンチン、プレガバリン、レチガビン、フェニトイン、カルバマゼピン、オクスカルバゼピン、酢酸エスリカルバゼピン、ラモトリギン、ラコサミド、ゾニサミド、レベチラセタム、ブリバラセタム、エトスクシミド、ペランパネル、フェノバルビタール、プリミドン、エピディオレックス、セノバメート及びチアガビンからなる群から選択される、請求項3から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ケタミンを鼻腔内に投与した後に、てんかんの1つ又は複数の症状の頻度、重症度及び/又は持続期間が低減する、請求項1から8及び10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
てんかんの1つ又は複数の症状が、焦点発作、全般性発作、非けいれん性発作、不随意筋収縮、前兆、ジャクソンマーチ、感覚外乱、唇鳴らし、物体持ち上げ、不随意発声、不規則な呼吸、青色の皮膚、膀胱若しくは腸の制御の喪失、咬舌、又はそれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
焦点発作が、脳の左半球の発作である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
焦点発作が、脳の右半球の発作である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
全般性発作が、強直間代、強直、間代、ミオクローヌス、欠神及び脱力発作からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
対象が、ケタミンの鼻腔内投与後に、麻酔を実質的に経験しない、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
治療有効量が、ケタミンの麻酔域下用量である、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
治療有効量が、対象において麻酔を生成するために必要とされる用量の約10%から約30%までである、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
対象が、複数回鼻腔内用量のケタミンを一定の間隔で受ける、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
ケタミンが、薬学的に許容される担体又は希釈剤と共に製剤化される、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
担体又は希釈剤が水性である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
担体又は希釈剤が、滅菌リン酸緩衝生理食塩水、静菌水、グリシン水溶液、又はそれらの任意の組合せを含む、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
治療有効量が、約0.1から約2.0mg/kgの間である、請求項20から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
治療有効量が約0.5ml/kgである、請求項20から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
ケタミンを週に1回鼻腔内に投与する工程を含む、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
ケタミンを週に3回鼻腔内に投与する工程を含む、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
ケタミンを週に1回6週間にわたって鼻腔内に投与する工程を含む、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
ケタミンを週に3回2週間にわたって鼻腔内に投与する工程を含む、請求項1から24及び26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
ケタミンが、スプレーとして投与される、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
ケタミンが、液剤又は懸濁剤として製剤化される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
ケタミンが、エアロゾルスプレーとして投与される、請求項29又は30に記載の方法。
【請求項32】
ケタミンが、乾燥粉末として製剤化される、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
ケタミンが鼻粘膜と接触させられる、請求項29から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
ケタミンが、定量吸入器を備えるデバイスによって鼻腔内に投与される、請求項29から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
ケタミン又は薬学的に許容されるその塩が、ケタミン及び薬学的に許容される分散剤のエアロゾルスプレー製剤を含有する鼻孔スプレー吸入器を備えるデバイスによって投与され、ここで、前記デバイスが、てんかんを処置するために有効な用量のケタミンを含有するが、ケタミンの用量が麻酔を引き起こす用量未満となるように医師又は医療提供者によって決定されるスプレーを形成することによって、ある量のエアロゾル製剤を分散させるために計量される、請求項29から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
ケタミンが、薬学的に許容される担体又は希釈剤と共に製剤化される、請求項29から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
ケタミンが、分散剤と共に製剤化される、請求項29から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
ケタミンが、粘膜浸透増強剤と共に製剤化される、請求項29から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
ケタミンが、噴射剤と共に製剤化される、請求項29から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
治療有効量が、約0.05から約0.7mg/kgの間である、請求項29から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
治療有効量が約0.5ml/kgである、請求項29から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
ケタミンが、週に3回投与される、請求項1から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
ケタミンが、週に3回約1か月間にわたって、次いで、週に2回約1か月間にわたって投与される、請求項1から42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
ケタミンが発作の最中に投与され、対象が、ケタミンの投与後約10分以内に発作後状態又は通常状態に移行する、請求項1から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
ケタミンが発作の最中に投与され、対象が、ケタミンの投与後5分以内に発作後状態又は通常状態に移行する、請求項1から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
ケタミンがエスケタミンである、請求項1から45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
ケタミンを鼻腔内に投与した後に、発作の頻度が低減する、請求項1から46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
発作の頻度が発作日記によって評価される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
発作頻度の低減が少なくとも約10%である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
発作頻度の低減が少なくとも約25%である、請求項47から49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
発作頻度の低減が少なくとも約50%である、請求項47から50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
対象が、ケタミンを投与する前に、うつ病及び/又は不安を有すると同定又は診断された、請求項1から51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
対象のてんかん患者用の神経学的障害うつ病評価尺度(NDDI-E)スコアが、ケタミンを鼻腔内に投与した後に低くなっている、請求項1から52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
NDDI-Eスコアが、ケタミンを投与した後に、少なくとも1ポイント低くなっている、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
NDDI-Eスコアが、ケタミンを投与した後に、少なくとも3ポイント低くなっている、請求項53又は54に記載の方法。
【請求項56】
対象の全般性不安障害7(GAD-7)スコアが、ケタミンを鼻腔内に投与した後に低くなっている、請求項1から55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
GAD-7スコアが、ケタミンを投与した後に、少なくとも10%低くなっている、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
GAD-7スコアが、ケタミンを投与した後に、少なくとも30%低くなっている、請求項56又は57に記載の方法。
【請求項59】
対象の不安、うつ病及び気分指標(ADAMS)スコアが、ケタミンを投与した後に低くなっている、請求項1から58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
ADAMSスコアが、ケタミンを投与した後に、少なくとも10%低くなっている、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
ADAMSスコアが、ケタミンを投与した後に、少なくとも30%低くなっている、請求項59又は60に記載の方法。
【請求項62】
対象のてんかん患者の生活の質評価尺度-10(QOLIE-10)スコアが、ケタミンを投与した後に低くなっている、請求項1から61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
QOLIE-10スコアが、ケタミンを投与した後に、少なくとも10%低くなっている、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
QOLIE-10スコアが、ケタミンを投与した後に、少なくとも30%低くなっている、請求項62又は63に記載の方法。
【請求項65】
第2の治療剤を投与する工程を含む、請求項1から64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
第2の治療剤が抗発作薬である、請求項65に記載の方法。
【国際調査報告】