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▶ サプリーム テクノロジーズ,ベー.フェー.の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】ゲノム編集ツールの細胞質送達
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20240517BHJP
【FI】
C12N15/09 110
C12N15/09 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573291
(86)(22)【出願日】2022-05-19
(85)【翻訳文提出日】2024-01-29
(86)【国際出願番号】 NL2022050271
(87)【国際公開番号】W WO2022250531
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】2028321
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521271727
【氏名又は名称】サプリーム テクノロジーズ,ベー.フェー.
【氏名又は名称原語表記】SAPREME TECHNOLOGIES B.V.
【住所又は居所原語表記】Antonie van Leeuwenhoeklaan 9, Building A12-1, 3721 MA Bilthoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】ポステル,ルーベン
(72)【発明者】
【氏名】ウェン,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】メルツェヒ,マティアス フリードリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ザマ ジムコ
(57)【要約】
本発明の第1の態様は、細胞内への核酸のインビトロ送達におけるサポニンの使用に関する。典型的には、核酸は例えば少なくとも5.5kbpという比較的大きいサイズを有するプラスミドDNAである。本発明の第2の態様は、CRISPR/Casコンストラクトをコードする核酸をインビトロの細胞内に送達するための方法に関する。典型的には、核酸は例えば少なくとも5.5kbpという比較的大きいサイズを有するプラスミドDNAである。本発明の第3の態様は、CRISPR/Casコンストラクトをコードする核酸をインビトロの細胞内に送達するためのパーツキットに関する。加えて、本発明は細胞内への核酸のインビトロ送達にとって好適なナノ粒子にも関し、ナノ粒子はCRISPR/Casコンストラクトをコードする核酸、ポリリジンペプチド、および任意にサポニンを含むかまたはそれらからなる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞内への核酸のインビトロ送達におけるサポニンの使用であって、ここで、前記サポニンはビスデスモシド型のトリテルペノイド12,13-デヒドロオレアナン型サポニンであり、前記核酸は5.5キロ塩基対(kbp)よりも多くを含む、細胞内への核酸のインビトロ送達におけるサポニンの使用。
【請求項2】
前記サポニンは、式(I)に従い、
【化1】
式中、
はキシロース残基、アラビノース残基、またはグルコース残基であり、そのC1原子によって式(I)の対応するキシロース残基に結合され、
は、同じ分子上の他のR残基から独立して、H、アセチル残基、またはそのC1原子によって式(I)の対応するキノボース残基に結合されたキシロース残基であり、ただし、前記キノボース残基に結合された少なくとも2つのアセチル残基または少なくとも1つのアセチル残基およびキシロース残基が、前記サポニンに存在し、
好ましくは、式(I)に従う前記サポニンのRはキシロース残基であり、および/または、前記サポニンは厳密に2つのアセチル基を持ち、
より好ましくは、式(I)に従う前記サポニンの前記アセチル基は、前記サポニンの対応するキノボース残基のC3位置およびC4位置における酸素原子に結合され、
あるいは、式(I)に従う前記サポニンの前記R残基の1つはキシロース残基であり、前記R残基の1つはアセチル基であり、前記R残基の1つはHであり、好ましくは、式(I)に従う前記サポニンの前記キシロース残基は、対応するキノボース残基のC3位置における酸素原子に結合され、前記アセチル基は前記サポニンの対応するキノボース残基のC4位置における酸素原子に結合され、
あるいは、より好ましくは、式(I)に従う前記サポニンのRはキシロース残基であり、式(I)に従う前記サポニンの2つのR基はアセチル基であり、これらは対応するキノボース残基のC3位置およびC4位置における酸素原子に結合され、前記第3のR基はHである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記サポニンは、式(II)に従うGE1741であり、
【化2】
式中、Rはキシロースである、
あるいは、前記サポニンは式(III)に従うSO1861である、
【化3】
請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記核酸はプラスミドDNAである、請求項1~3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
前記核酸はナノ粒子の一部を形成し、このナノ粒子はさらにナノ粒子形成化合物を含み、好ましくは、前記ナノ粒子形成化合物はポリリジンペプチドを含むかまたはそれからなり、好ましくは、前記ポリリジンペプチドは5~25個のリジン残基からなり、より好ましくは前記ポリリジンペプチドは16個のリジン残基からなる、請求項1~4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記ナノ粒子は、前記ナノ粒子形成化合物および前記核酸を3:1から15:1の範囲の、好ましくは3:1から9:1の範囲の質量比で含む、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記核酸が、少なくとも、CRISPR関連エンドヌクレアーゼ(Cas)をコードする前記核酸の第1の部分を含み、ここで、前記核酸は、任意に、ガイドRNA(gRNA)をコードするかまたはgRNAであるかまたはgRNAを含む前記核酸の第2の部分を含み、好ましくは、前記核酸はCasをコードするプラスミドDNAであり、より好ましくは、前記核酸は少なくとも前記Casを発現するためのプラスミドDNAであり、さらにはより好ましくは、前記核酸は、前記Casを発現するため、かつ前記gRNAを発現するためのプラスミドDNAである、請求項1~6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
前記核酸、好ましくは前記プラスミドDNA、より好ましくは前記CasをコードするプラスミドDNAは、少なくとも6kbp、好ましくは少なくとも7kbp、より好ましくは少なくとも7.5kbp、最も好ましくは少なくとも8kbpよりも多くを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
前記Casをコードする核酸は、Cas9(配列番号1)、Cas12a(配列番号2)、Cas13a(配列番号3)、または少なくとも90%のアミノ酸残基同一性をストレプトコッカス・ピオゲネス血清型M1のCas9、フランシセラ・ツラレンシスsubsp.ノビシダ(株U112)のCas12a、およびレプトトリキア・ブッカリス(株ATCC14201/DSM1135/JCM12969/NCTC10249/C-1013-b)のCas13aのいずれか1つに対して有するCasをコードする、請求項7~8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
前記細胞は、真核細胞である、請求項1~9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
インビトロの細胞内に5.5キロ塩基対(kbp)よりも多くを含む核酸を送達するための方法であって、
(i)前記核酸を提供するステップと、
(ii)ビスデスモシド型のトリテルペノイド12,13-デヒドロオレアナン型サポニンであるサポニンを提供するステップと、
(iii)前記サポニンの存在下において前記核酸と前記細胞をインキュベーションするステップと、を含む方法。
【請求項12】
前記サポニンは、式(I)に従い、
【化4】
式中、
はキシロース残基、アラビノース残基、またはグルコース残基であり、そのC1原子によって式(I)の対応するキシロース残基に結合され、
は、同じ分子の他のR残基から独立して、H、アセチル残基、またはそのC1原子によって式(I)の対応するキノボース残基に結合されたキシロース残基であり、ただし、前記キノボース残基に結合された少なくとも2つのアセチル残基または少なくとも1つのアセチル残基およびキシロース残基が、前記サポニンに存在する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記核酸は、プラスミドDNAである、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記核酸は、ナノ粒子の一部を形成し、このナノ粒子はさらにナノ粒子形成化合物を含み、好ましくは、前記ナノ粒子は前記ナノ粒子形成化合物のポリリジンペプチドを含み、好ましくは前記ポリリジンペプチドは5~25個のリジン残基からなり、より好ましくは前記ポリリジンペプチドは16個のリジン残基からなる、請求項11~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記ナノ粒子は、前記ナノ粒子形成化合物および前記核酸を3:1から15:1の範囲の、好ましくは3:1から9:1の範囲の質量比で含む、請求項13または請求項14に記載の方法。
【請求項16】
サポニン濃度は、前記方法のステップ(ii)において1μg/mL~5μg/mLである、請求項11~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記サポニンは、式(II)に従うGE1741であり、
【化5】
式中、Rはキシロースである、
あるいは、前記サポニンが式(III)に従うSO1861である、
【化6】
請求項11~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記核酸は、少なくともCasをコードする第1の部分を含む前記CRISPR/Casコンストラクトをコードする核酸であり、前記核酸は、任意に、gRNAをコードするか、あるいはgRNAを含むかまたはgRNAである第2の部分を含み、好ましくは、前記CRISPR/Casコンストラクトをコードする前記核酸はプラスミドDNAの一部として提供され、好ましくは、ここで、少なくとも、前記CRISPR/Casコンストラクトの前記Cas部分をコードする前記核酸の前記部分はプラスミドDNAの一部として提供され、より好ましくは、前記プラスミドDNAは、前記CRISPR/Casコンストラクトの前記Casおよび前記gRNAを発現するためである、請求項12~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記核酸、好ましくは前記プラスミドDNAは、少なくとも6kbp、好ましくは少なくとも7kbp、より好ましくは少なくとも7.5kbp、最も好ましくは少なくとも8kbpよりも多くを含む、請求項12~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記Casをコードする核酸は、Cas9(配列番号1)、Cas12a(配列番号2)、Cas13a(配列番号3)、または少なくとも90%のアミノ酸残基同一性をストレプトコッカス・ピオゲネス血清型M1のCas9、フランシセラ・ツラレンシスsubsp.ノビシダ(株U112)のCas12a、およびレプトトリキア・ブッカリス(株ATCC14201/DSM1135/JCM12969/NCTC10249/C-1013-b)のCas13aのいずれか1つに対して有するCasをコードする、請求項11~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
インビトロの細胞内に5.5キロ塩基対(kbp)よりも多くを含む核酸を送達するためのパーツキットであって、
(a)第1のプラスミドDNAを含む第1の容器、
(b)任意に、第2のプラスミドDNAを含む第2の容器、
(c)ポリリジンK16ペプチドを含む第3の容器、
(d)ビスデスモシド型のトリテルペノイド12,13-デヒドロオレアナン型サポニンであり、好ましくは1つのサポニンであり、最も好ましくはGE1741およびSO1861から選択される少なくとも1つのサポニンを含む第4の容器、
(e)使用説明書、を含むか、またはそれらからなる第1の組み合わせ、
ここで、前記使用は、少なくとも、前記ポリリジンK16ペプチドおよび前記第1のプラスミドDNAのナノプレックス、ならびに任意に前記サポニンの調製を含み、
前記第1のプラスミドは少なくとも5.5kbpのサイズを有する、
あるいは
(a)第3のプラスミドDNAを含む第1の容器、
(b)ポリリジンK16ペプチドを含む第2の容器、
(c)ビスデスモシド型のトリテルペノイド12,13-デヒドロオレアナン型サポニンであり、好ましくは1つのサポニンであり、最も好ましくはGE1741およびSO1861から選択される少なくとも1つのサポニンを含む第3の容器、
(d)使用説明書、を含むかまたはそれらからなる第2の組み合わせ、
ここで、前記使用は、少なくとも、前記ポリリジンK16ペプチドおよび前記第3のプラスミドDNAのナノプレックス、ならびに任意に前記サポニンの調製を含み、
前記第3のプラスミドは少なくとも5.5kbpのサイズを有する、
あるいは
(a)前記第1のプラスミドDNAを含む第1の容器、
(b)任意に、RNAオリゴヌクレオチドを含む第2の容器、
(c)ポリリジンK16ペプチドを含む第3の容器、
(d)ビスデスモシド型のトリテルペノイド12,13-デヒドロオレアナン型サポニンであり、好ましくは1つのサポニンであり、最も好ましくはGE1741およびSO1861から選択される少なくとも1つのサポニンのサポニンを含む第4の容器、
(e)使用説明書、を含むかまたはそれらからなる第3の組み合わせ、
ここで、前記使用は、少なくとも、前記ポリリジンK16ペプチドおよび前記第1のプラスミドDNAのナノプレックス、ならびに任意に前記サポニンの調製を含み、
前記第1のプラスミドは少なくとも5.5kbpのサイズを有する、
好ましくは、前記第1のプラスミドDNAはCas9をコードし、前記第2のプラスミドDNAはgRNAをコードし、および/または前記RNAオリゴヌクレオチドはgRNAのRNAオリゴヌクレオチドであり、または、前記第3のプラスミドDNAはCas9をコードしかつgRNAをコードする、を含むパーツキット。
【請求項22】
細胞内への核酸のインビトロ送達にとって好適なナノ粒子を含む組成物であって、前記ナノ粒子は、
(i)5.5キロ塩基対(kbp)よりも多くを含む前記核酸、
(ii)ポリリジンペプチド、および
(iii)ビスデスモシド型のトリテルペノイド12,13-デヒドロオレアナン型サポニンであるサポニン、を含むかまたはそれらからなる、組成物。
【請求項23】
前記サポニンは、式(I)に従い、
【化7】
式中、
はキシロース残基、アラビノース残基、またはグルコース残基であり、そのC1原子によって式(I)の対応するキシロース残基に結合され、
は、同じ分子上の他のR残基から独立して、H、アセチル残基、またはそのC1原子によって式(I)の対応するキノボース残基に結合されたキシロース残基であり、ただし、前記キノボース残基に結合された少なくとも2つのアセチル残基または少なくとも1つのアセチル残基およびキシロース残基が、前記サポニンに存在し、
好ましくは、式(I)に従う前記サポニンのRはキシロース残基であり、および/または、前記サポニンは厳密に2つのアセチル基を持ち、
あるいは、式(I)に従う前記サポニンの前記アセチル基は、前記サポニンの対応するキノボース残基のC3位置およびC4位置における酸素原子に結合され、
より好ましくは、式(I)に従う前記サポニンの前記R残基の1つはキシロース残基であり、前記R残基の1つはアセチル基であり、前記R残基の1つはHであり、
さらにはより好ましくは、式(I)に従う前記サポニンの前記キシロース残基は対応するキノボース残基のC3位置における酸素原子に結合され、前記アセチル基は前記サポニンの対応するキノボース残基のC4位置における酸素原子に結合され、
最も好ましくは、式(I)に従う前記サポニンのRはキシロース残基であり、式(I)に従う前記サポニンの2つのR基はアセチル基であり、これらは対応するキノボース残基のC3位置およびC4位置における酸素原子に結合され、第3のR基はHである、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記サポニンは、式(II)に従うGE1741であり、
【化8】
式中、Rはキシロースである、
または、前記サポニンは式(III)に従うSO1861である、
【化9】
請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記ポリリジンペプチドは5~25個のリジン残基からなり、より好ましくは前記ポリリジンペプチドは16個のリジン残基からなる、請求項22~24のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
前記ナノ粒子は、前記ポリリジンペプチドおよび前記核酸を3:1から15:1の範囲の、好ましくは3:1から9:1の範囲の質量比で含む、請求項22~25のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項27】
前記核酸は、プラスミドDNAの一部である、請求項22~26のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
前記核酸は、少なくとも、Casをコードする前記核酸の第1の部分を含み、前記核酸は、任意に、gRNAをコードするか、あるいはgRNAを含むかまたはgRNAである前記核酸の第2の部分を含む、請求項22~27のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項29】
前記核酸、好ましくは前記プラスミドDNAは、少なくとも6kbp、好ましくは少なくとも7kbp、より好ましくは少なくとも7.5kbp、最も好ましくは少なくとも8kbpよりも多くを含む、請求項22~28のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項30】
前記核酸の前記Casをコードする第1の部分は、Cas9(配列番号1)、Cas12a(配列番号2)、Cas13a(配列番号3)、または少なくとも90%のアミノ酸残基同一性をストレプトコッカス・ピオゲネス血清型M1のCas9、フランシセラ・ツラレンシスsubsp.ノビシダ(株U112)のCas12a、およびレプトトリキア・ブッカリス(株ATCC14201/DSM1135/JCM12969/NCTC10249/C-1013-b)のCas13aのいずれか1つに対して有するCasをコードする、請求項22~29のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の第1の態様は、細胞内への比較的大きい核酸のインビトロ送達におけるサポニンの使用に関し、核酸は5.5キロ塩基対(kbp)よりも多くを含む。本発明の第2の態様は、サポニンの存在下においてインビトロの細胞内にCRISPR/Casコンストラクトをコードするかかる核酸を送達するための方法に関する。本発明の第3の態様は、サポニンの存在下において、インビトロの細胞内にCRISPR/Casコンストラクトをコードする核酸を送達するためのパーツキットに関する。加えて、本発明は、細胞内への核酸のインビトロ送達にとって好適なナノ粒子にも関し、ナノ粒子は、CRISPR/Casコンストラクトをコードする核酸、ポリリジンペプチド、および任意にサポニンを含むかまたはそれらからなる。
【背景技術】
【0002】
CRISPR(クラスター化した規則的な間隔の短いパリンドロームリピート)-Cas9技術-多くの場合に「遺伝子のはさみ」と呼ばれる-は、ここ数年に遺伝子技術の分野に革命を起こしたツールである。その単純な、安価な、かつ迅速な操作によって、ゲノムからDNA配列またはさらには遺伝子を精確に切り出すかまたは挿入することが可能である(ゲノム編集)。これらの特性は、CRISPR-Cas9を、他の既に存在する遺伝子編集ツールに優る遺伝子治療のための有益なかつ有望な技術にする。CRISPR-Cas9の真正の目的は、バクテリオファージに対する細菌ストレプトコッカス・ピオゲネスの抗ウイルス防御メカニズムである。
【0003】
CRISPR-Cas9は3つの構成要素からなる。Cas9は鎖切断を誘導する細菌の酵素である(二本鎖切断の場合にはヌクレアーゼ、一本鎖切断の場合にはニッカーゼ)。ヌクレアーゼがその酵素活性の場所を認識するために、トランス活性化CRISPR-RNA(tracrRNA)およびCRISPR-RNA(crRNA)がガイドRNA(gRNA)を形成し、これは精確な切断のために必要な情報をCas9酵素に与える。
【0004】
バクテリオファージ感染の間に、crRNAは、ファージ配列の配列と、それによって、二本鎖切断を誘導および感染を防止するための情報とを所有するかまたは得る。tracrRNAの目的は、crRNAを安定化し、一緒になってCRISPR-Cas9複合体を形成することであり、その標的に対するcrRNA配列のアニーリング後に、Cas9ヌクレアーゼはファージ配列を切り得る。細胞の修復メカニズムがその後に変異に至り、遺伝子不活性化(ノックアウト)をもたらす。
【0005】
この発見された防御メカニズムは、人工crRNAを設計することによって選択された遺伝子を標的化するというアイディアが生じたときに、ゲノム編集の革命を動き出させた。遺伝子のCRISPR-Cas9に基づくノックアウトまたは挿入(「ノックイン」)が可能であり、その単純な、迅速な、かつ費用対効果の良い応用可能性によって他のゲノム編集技術からそれ自体を区別した。
【0006】
サイトゾル内へのgRNAと一緒のCas9ヌクレアーゼの導入は、酵素をコードするDNAまたはRNAの形態で可能である。しかしながら、トランスフェクション効率は不良であり、Cas9をコードする(プラスミド)DNAを導入することによるインビトロのCas9ヌクレアーゼの使用は、大きいプラスミドDNAなどの比較的大きいDNAコンストラクトの低いトランスフェクション効率を原因として阻止される。よって、通常は、Cas9ヌクレアーゼ/蛋白質それ自体が市販の試薬(例えば、Lipofectamine(商標)CRISPRMAX(商標)Cas9トランスフェクション試薬)の助けによって送達されている。なぜなら、このやり方では、より効率的な移入およびより少ないオフターゲット効果が示され、細胞内に蛋白質をインビトロ送達することによって、不良なDNAトランスフェクション効率が防止されるからである。
【0007】
本発明者らの知る限り、これまで、比較的大きい、すなわちCas9DNAプラスミド、すなわちCas9をコードし、かつ少なくとも5.5キロ塩基対(kbp)のサイズを有するプラスミドDNAのようなDNAコンストラクトを、単純なかつ効率的なやり方で送達することができるインビトロの非ウイルス系のトランスフェクションエンハンサーは存在しない。さらに、プラスミドDNAなどのDNAを送達し得る普遍的なトランスフェクションエンハンサーは、細胞内へのインビトロCas9DNA送達の分野の業者にとって利用可能ではない。
【発明の概要】
【0008】
本発明者らは、驚くべきことに、例えばCRISPR/Cas9核酸コンストラクトのような比較的大きいプラスミドの効率的なインビトロ送達が、植物の防御分子、すなわちサポニンを細胞のトランスフェクションの間に適用することによって確立され得ることを明らかにしている。特定の群のトリテルペノイドサポニン(ビスデスモシド型のトリテルペノイド12,13-デヒドロオレアナン型サポニン)、例えばSO1861およびGE1741は、オリゴリジンに基づくナノプレックスのトランスフェクション効率をかなりの度合いで増大させることができる(サーマ(Sama)ら,2017年、サーマ(Sama)ら,2018年)。今や、本発明によって、本発明者らは、(i)核酸およびポリリジンを含むペプチドに基づくナノ粒子のサポニンに基づくトランスフェクション(本発明者らによってサポフェクションという造語で呼ばれる)の実現可能性、(ii)DNA、mRNA、およびミニサークルDNAなどの核酸の普遍的な複合体化、ならびに(iii)サポニンの非毒性の濃度、すなわち1μg/mL~5μg/mLの使用は、サポニンを、大きいプラスミドDNAのトランスフェクションの分野において適用されるDNAを含む組成物の好適な構成成分にするということを確立した。
【0009】
本発明の第1の態様は、ビスデスモシド型のトリテルペノイド12,13-デヒドロオレアナン型サポニンである、特に式(I)に従うサポニンの、細胞内への核酸のインビトロ送達における使用に関する:
【0010】
【化1】
【0011】
式中、
はキシロース残基、アラビノース残基、またはグルコース残基であり、そのC1原子によって式(I)の対応するキシロース残基に結合され、
は、同じ分子上の他のR残基から独立して、H、アセチル残基、またはそのC1原子によって式(I)の対応するキノボース残基に結合されたキシロース残基であり、ただし、キノボース残基に結合された少なくとも2つのアセチル残基または少なくとも1つのアセチル残基およびキシロース残基が、サポニンに存在し、
核酸は、少なくとも5.5キロ塩基対(kbp)よりも多くを含み、例えば、CRISPR関連エンドヌクレアーゼ(Cas)をコードする核酸の第1の部分を含み、さらに任意に、ガイドRNA(gRNA)をコードするかまたはgRNAであるかまたはgRNAを含む核酸の第2の部分を含む。
【0012】
本発明者らは、先に、カーネーションファミリーからの植物二次代謝物が、比較的小さいサイズのプラスミドDNA(<5kbp)、ミニサークルDNA(~3kbp)、およびmRNA(<1kbp)の細胞内送達を増大させるということを先に明らかにした。トリテルペンサポニンを用いるDNAトランスフェクション技術は、サポニンがトランスフェクションプロセスを改善するためのツールとして用いられているということを示唆するサポフェクションという造語で呼ばれた。サポニン以外の普通に使用されるトランスフェクション試薬の短所は、CRISPR/Cas9コンストラクトなどの比較的大きいプラスミドが標的細胞内にトランスフェクションされなければならないときの、それらの低い効率である。本発明者らは、今や、ジプソフィラ・エレガンスM.ビーブおよびサポナリア・オフィシナリスL.からの植物二次代謝物が、CRISPR/Cas9コンストラクトなどの大きい核酸コンストラクト(例えば、サイズ>8,000bpを有するプラスミドDNA)の細胞内送達を改善するということを示す。本発明者らは、驚くべきことに、ビスデスモシド型のトリテルペノイド12,13-デヒドロオレアナン型サポニンであるこれらのサポニン化合物、例えばGE1741およびSO1861が、真核細胞内への複合体化したCRISPR/Cas9コンストラクトの有効な送達に寄与するということを確立した。
【0013】
トリテルペンサポニンは、かなりの数の植物によって合成される植物由来二次代謝物である。本発明者らは、先に、キャラクタリゼーションされたトリテルペンサポニン、例えばサポナリア・オフィシナリスL.からのSO1861、ジプソフィラ・エレガンスM.ビーブからのGE1741、およびアグロステンマ・ギタゴL.からのAG1856が、(小さいサイズの)プラスミドDNA、ミニサークルDNA、およびmRNAを含有するオリゴリジンに基づくナノプレックスのトランスフェクション効率を、かなりの度合いで増大させるということを明らかにした(クロシャール(Clochard)ら,2020年、サーマ(Sama)ら,2018年a、サーマ(Sama)ら,2017年)。これらのトランスフェクションの単純な実現可能性は、トリテルペンサポニンをトランスフェクションの分野における新規のかつ有望なプレーヤーにする。
【0014】
CRISPR(クラスター化した規則的な間隔の短いパリンドロームリピート)-Cas9技術は、染色体DNA上の遺伝子の精確な欠失およびゲノム上へのDNA配列の挿入を許す。CRISPR/Cas9は3つの構成要素からなる。Cas9は鎖切断を誘導するエンドヌクレアーゼである。tracerRNA(trRNA)およびCRISPR-RNA(crRNA)は、Cas9-ヌクレアーゼを所望の切断部位に導く。比較的大きいCas9DNAプラスミドコンストラクト(プラスミドDNAサイズは7,000bpまたはより大きい)の送達にとって好適である非ウイルス系のトランスフェクション試薬の数は、限定されているかまたは実在さえもしない。
【0015】
本発明者らは、今や、GE1741およびSO1861が、真核細胞内へのCRISPR/Cas9DNAプラスミドコンストラクトを包含する大きい核酸の送達のための強力な促進因子かつツールであるということを示した。加えて、本発明者らは、トランスフェクションがGE1741などのサポニンの存在下であったときには、大きいプラスミドDNA(7,000bpよりも大きいサイズ)の一部としてトランスフェクションされたGFPドナー配列によって、効率的なノックアウト実験が首尾良く確立されたということをも明らかにした。
【0016】
本発明の第2の態様は、インビトロの細胞内に、例えばCRISPR/Casコンストラクトをコードする5.5キロ塩基対(kbp)よりも多くを含む核酸を送達する方法に関し、以下のステップを含む:
(i)核酸を提供することおよび式(I)に従うサポニンを提供すること、
【0017】
【化2】
【0018】
式中、
はキシロース残基、アラビノース残基、またはグルコース残基であり、そのC1原子によって式(I)の対応するキシロース残基に結合され、
は、同じ分子上の他のR残基から独立して、H、アセチル残基、またはそのC1原子によって式(I)の対応するキノボース残基に結合されたキシロース残基であり、ただし、キノボース残基に結合された少なくとも2つのアセチル残基または少なくとも1つのアセチル残基およびキシロース残基が、サポニンに存在する;ならびに
(ii)サポニンの存在下において核酸と細胞をインキュベーションすること、
ここで、例えば、CRISPR/Casコンストラクトをコードする核酸は、少なくとも、Casをコードする核酸の第1の部分を含み、核酸は、任意に、gRNAをコードするかまたはgRNAを含むかまたはgRNAである核酸の第2の部分を含む。
【0019】
大きいプラスミドDNAのCMV-CAS9-2A-GFP(8.2kbp)(シグマアルドリッチ、タウフキルヘン、独国)の複合体化のために、ポリリジン(K16)に基づくナノプレックスが製剤された(図1)。異なる質量比で製剤されたP(ペプチド)D(Cas9-GFPプラスミド)ナノプレックスの平均サイズおよびPDI(多分散指数)が、マルバーンナノゼータサイザー(マルバーン・インストゥルメンツLtd.、英国)を用いて測定された。より高い質量比では、より低いサイズの傾向が観察され得た。PDIは一定の単分散分布を示した、n≧3。本発明者らは、当分野において公知のアガロースに基づくゲル電気泳動およびQuant-IT-PicoGreenアッセイを適用することによって、ナノプレックスの複合体化効率をもまた決定した(サーマ(Sama)ら,2017年、図3)。ゲル保持アッセイおよび定量的な複合体化効率を適用することによって、PDナノプレックス製剤のDNA保持ポテンシャルは、DNA複合体化効率の定性的な尺度としての用をなした。ナノプレックス製剤はDNAを保持してゲル上の移動をさせない。定量的な複合体化アッセイは、プラスミドDNAおよびポリリジンペプチドを含む全ての製剤について効率的な複合体化を示した。
【0020】
生物物理学的キャラクタリゼーションが、大きいプラスミドDNAおよびポリリジンペプチドのナノプレックスが形成されたということを確立した後に、細胞実験、トランスフェクションが行なわれた。ペプチド/DNA(N/P)比を原因として、本発明者らによって実施された試験は、16:1またはより高い質量比のペプチド対プラスミドDNA質量比では細胞に対するナノプレックスの毒性の効果を明らかにし、加えて、本発明者らによって実施されたさらなる試験は、2:1またはより低いペプチド対プラスミドDNA質量比では非効率的な核酸送達を明らかにした。いかなる理論による拘束も望まなければ、後者の効果は最も蓋然的にはDNAの不十分な複合体化を原因とする。よって、本発明者らは、4:1比および8:1比で製剤されたPDナノプレックスによって実施された例によって、本発明の利益を実証する。JIMT-1細胞(DSMZ、no.ACC589)およびNeuro-2A細胞(DSMZ、no.ACC148)が、トランスフェクションされるべきである細胞が考えられるときに非毒性の濃度で、GE1741同時適用またはSO1861同時適用あり、およびなしで、比較的大きいCas9-GFPプラスミドを含有するナノプレックスによってトランスフェクションされた。全てのトランスフェクション条件のトランスフェクション効率が、蛍光強度の観点から負の対照(例えば、サポニンの不在下においてナノ粒子と接触させられた細胞)と比較して、フローサイトメトリーを用いて48時間のインキュベーション時間後に測定された。GE1741に基づくトランスフェクションおよびSO1861に基づくトランスフェクションの効率は、ナノ粒子のLipofectamine3000(商標)に基づくトランスフェクションの効率ともまた比較された。トランスフェクションは普通に公知のかつ当分野において適用されるプロトコールに従って行なわれた(クロシャール(Clochard)ら,2020年、サーマ(Sama)ら,2018年a、サーマ(Sama)ら,2017年、サーマ(Sama)ら,2018年b)。トランスフェクション効率はNeuro-2A細胞において4.1のペプチド/DNA比から8:1比までは増大しなかったので、4:1の比がJIMT-1細胞によるさらなる試験および例に用いられた。Neuro-2A細胞およびJIMT-1細胞におけるGE1741によって媒介されるPDトランスフェクションおよびSO1861によって媒介されるPDトランスフェクションのトランスフェクション効率が評価された。細胞が、Cas9-GFPDNAを含有するPDナノプレックスによって、GE1741またはSO1861あり、およびなしでトランスフェクションされた(サポニンの最終濃度は2μg/mlであった)。Neuro-2A細胞およびJIMT-1細胞において、トランスフェクション(transection)効率は30%および40%の間で変動した。Lipofectamin3000は参照としての用をなした、n≧3。GE1741不使用のトランスフェクションまたはSO1861不使用のトランスフェクションと比較して有意な違いが明らかであった。U検定、p≦0.05。
【0021】
SO1861と比較して、GE1741はわずかにより良好なトランスフェクション調節特性を見せた。さらなるノックアウト実験では、GE1741およびNeuro-2A細胞が試験された。ゲノムDNA上へのGFPの遺伝子を含有する直鎖ドナー配列(LDS)の組み込みが、Origene(ヘルフォルト、独国)からの以下の3つのキットを用いて評価された:Slc19a3-KN2.0(CAT#KN515911)、Slc25a24-KN2.0(CAT#KN515970)、およびSlc26a4-KN2.0(CAT#KN516006)。これらのキットは、全ての3つが、相同性によって媒介されないCRISPRによるマウス遺伝子ノックアウトキットであった。キットは、Cas9および標的特異的なsgRNAをコードするオールインワンプラスミドを含有した。Slc26a4キットは12番染色体の溶質輸送体ファミリー26メンバー4を標的化した。Slc26a4座位を標的化することによるindel効率は、既にNeuro-2A細胞において示され得た(リュ(Ryu)ら,2018年)。そして、直鎖ドナーキット(Slc19a3、Slc25a24)については、2つの異なるsgRNA配列が試験された。実施例の項において、図9はGE1741の存在下におけるトランスフェクション効率を実証している。GFPによって媒介される蛍光は、サポニンの存在の影響下における染色体DNA上への直鎖ドナー配列の効率的な送達および組み込みを示す。それゆえに、CRISPR/Cas9によるNeuro-2A細胞における異なる溶質輸送体遺伝子(Slc)のノックアウトについて、異なる標的(ノックアウトされる遺伝子)および異なる組み込み技術の効率を比較するために、Neuro-2A細胞が異なるキットによってトランスフェクションされた(図8および図10参照)。トランスフェクション効率の有意な増大が、GE1741不使用のトランスフェクションと比較してGE1741によって処置された細胞について観察された。U検定、p≦0.05(n≧3)。
【0022】
それゆえに、これらの例は、驚くべきことに、ビスデスモシド型のトリテルペノイド12,13-デヒドロオレアナン型サポニン、特に、ジプソフィラ・エレガンスM.ビーブからのサポニンGE1741およびサポナリア・オフィシナリスL.からのSO1861が、単純なかつ効率的なやり方で、真核細胞内への、6.5kbpまたはより大きい、最高で8.2kbp以上のサイズを有する比較的大きいDNA、例えばCRISPR/Cas9コンストラクト(例えばプラスミドDNA)の効率的な送達にとって好適であるということを確立した。
【0023】
本発明の第3の態様は、インビトロの細胞内に、例えばCRISPR/Casコンストラクトなどをコードする5.5kbpよりも多く、好ましくは8kbpよりも多くを含む核酸を送達するためのパーツキットに関し、以下を含む:
以下を含むかまたはそれらからなる第1の組み合わせ:
(a)例えばCas9をコードする第1のプラスミドDNAを含む第1の容器、
(b)任意に、例えばgRNAをコードする第2のプラスミドDNAを含む第2の容器、
(c)ポリリジンK16ペプチドを含む第3の容器、
(d)少なくとも1つのビスデスモシド型のトリテルペノイド12,13-デヒドロオレアナン型サポニン、好ましくはGE1741およびSO1861の1つを含む第4の容器、
(e)使用説明書、
ここで、使用は、少なくとも、ポリリジンK16ペプチドおよび第1のプラスミドDNAのナノプレックス、ならびに任意にサポニンの調製を含み、
第1のプラスミドは少なくとも5.5kbpのサイズを有する、
あるいは
以下を含むかまたはそれらからなる第2の組み合わせ:
(a)例えばCas9をコードし、かつgRNAをコードする第3のプラスミドDNAを含む第1の容器、
(b)ポリリジンK16ペプチドを含む第2の容器、
(c)少なくとも1つのビスデスモシド型のトリテルペノイド12,13-デヒドロオレアナン型サポニン、好ましくはGE1741およびSO1861の1つを含む第3の容器、
(d)使用説明書、
ここで、使用は、少なくとも、ポリリジンK16ペプチドおよび第3のプラスミドDNAのナノプレックス、ならびに任意にサポニンの調製を含み、
第3のプラスミドは少なくとも5.5kbpのサイズを有する、
あるいは
以下を含むかまたはそれらからなる第3の組み合わせ:
(a)例えばCas9をコードする第1のプラスミドDNAを含む第1の容器、
(b)任意に、RNAオリゴヌクレオチドのようなオリゴヌクレオチド、例えばgRNAのRNAオリゴヌクレオチドを含む第2の容器、
(c)ポリリジンK16ペプチドを含む第3の容器、
(d)少なくとも1つのビスデスモシド型のトリテルペノイド12,13-デヒドロオレアナン型サポニン、好ましくはGE1741およびSO1861の1つを含む第4の容器、
(e)使用説明書、
ここで、使用は、少なくとも、ポリリジンK16ペプチドおよび第1のプラスミドDNAのナノプレックス、ならびに任意にサポニンの調製を含み、
第1のプラスミドは少なくとも5.5kbpのサイズを有する。
【0024】
本発明は、細胞内への例えばCRISPR/Casコンストラクトをコードする核酸のインビトロ送達にとって好適なナノ粒子を含む組成物にもまた関し、ここで、ナノ粒子は以下を含むかまたはそれらからなる:
(i)例えばCRISPR/Casコンストラクトをコードする5.5キロ塩基対(kbp)よりも多くを含む核酸、
(ii)ポリリジンペプチド、および
(iii)ビスデスモシド型のトリテルペノイド12,13-デヒドロオレアナン型サポニンであるサポニン、
場合によっては、ここで、CRISPR/Casコンストラクトをコードする核酸は、少なくとも、CRISPR関連エンドヌクレアーゼ(Cas)をコードする核酸の第1の部分を含み、核酸は、任意に、ガイドRNA(gRNA)をコードするかまたはgRNAであるかまたはgRNAを含む核酸の第2の部分を含む。
【0025】
好ましい組成物は、本発明の細胞内へのCRISPR/Casコンストラクトをコードする核酸のインビトロ送達にとって好適なナノ粒子を含む組成物であり、さらに式(I)に従うサポニンを含む:
【0026】
【化3】
【0027】
式中、
はキシロース残基、アラビノース残基、またはグルコース残基であり、そのC1原子によって式(I)の対応するキシロース残基に結合され、
は、同じ分子上の他のR残基から独立して、H、アセチル残基、またはそのC1原子によって式(I)の対応するキノボース残基に結合されたキシロース残基であり、ただし、キノボース残基に結合された少なくとも2つのアセチル残基または少なくとも1つのアセチル残基およびキシロース残基が、サポニンに存在する。
【0028】
CRISPR/Casコンストラクトをコードする核酸は、少なくとも、CRISPR関連エンドヌクレアーゼ(Cas)をコードする核酸の第1の部分を含み、核酸は、任意に、ガイドRNA(gRNA)をコードするかまたはgRNAであるかまたはgRNAを含む核酸の第2の部分を含む。好ましくは、サポニンはGE1741またはSO1861、より好ましくはGE1741である。好ましくは、ポリリジンペプチドは16個のリジン残基からなる。好ましくは、核酸はプラスミドDNAの一部として提供される。好ましくは、コードされるCasは、Cas9(配列番号1)、または少なくとも90%の配列同一性をCas9に対して有するCasである。
【0029】
本発明が具体的な実施形態について記載されるが、本発明はそれにではなく請求項によってのみ限定される。本明細書に記載される本発明の実施形態は、別様に指定されない限り、組み合わせおよび共同で機能し得る。
【0030】
定義
用語の第1、第2、第3、および同類は、本明細書および請求項において、必ずしも配列的または時間的順序を記載するためではなく、例えば類似の要素、組成物、組成物の構成成分、または別個の方法ステップを区別するために用いられる。用語は適当な状況下では交換可能であり、本発明の実施形態は、別様に指定されない限り、本明細書に記載または例示される以外の配列で機能し得る。
【0031】
本明細書に記載される本発明の実施形態は、別様に指定されない限り、組み合わせおよび共同で機能し得る。
【0032】
さらにその上、種々の実施形態は、「好ましい」または「例えば(e.g.)」もしくは「例えば(for example)」または「特に」および同類として言及されるが、本発明の範囲を限定するとしてではなく、むしろ、本発明が実装され得る例示的な様式で解釈されるべきである。
【0033】
請求項において用いられる用語「含む」は、その後に挙げられている例えば要素あるいは組成物、方法、使用、パーツキットの方法ステップまたは構成成分に制限されると解釈されるべきではない。それは他の要素あるいは方法ステップまたはある種の組成物中の構成成分を排除しない。それは、言及される申し立てられた特徴、物、(方法)ステップ、または構成要素の存在を指定すると解釈されることを必要とするが、1つ以上の他の特徴、物、ステップ、もしくは構成要素、またはそれらの群の存在または追加を妨げない。それゆえに、表現「ステップAおよびBを含む方法」の範囲はステップAおよびBのみからなる方法に限定されるべきではなく、むしろ、本発明については、方法の列挙されているのみのステップがAおよびBであり、さらに、請求項はそれらの方法ステップの均等物を包含すると解釈されるべきである。それゆえに、表現「構成要素AおよびBを含む組成物」の範囲は構成要素AおよびBのみからなる組成物に限定されるべきではなく、むしろ、本発明については、組成物の列挙されているのみの構成要素がAおよびBであり、さらに、請求項はそれらの構成要素の均等物を包含すると解釈されるべきである。
【0034】
加えて、不定冠詞「a」または「an」による要素または構成要素の言及は、文脈が要素または構成要素のただ1つのみがあるということを明瞭に要求しない限り、要素または構成要素の1つよりも多くが存在するという可能性を排除しない。不定冠詞「a」または「an」は、それゆえに、通常は「少なくとも1つ」を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】異なる質量比で製剤されたPDナノプレックスの平均サイズおよびPDIを提示する表。ペプチド/DNA(PD)ナノプレックスが、低い粒子サイズおよび好ましくは単分散サイズ分布を有する最適な製剤を評価するために異なる質量比で製剤された。より高い質量比では、より低いサイズの傾向が観察された。PDIは一定の単分散分布を示した。n≧3。
図2A】DNAを装填した(D)オリゴリジンに基づく(P)ナノプレックスのサイズ分布。Cas9DNA(A)、GFPDNA(B)、またはGFP-Cas9DNA(C)を装填したPDナノプレックス(ペプチド質量:DNA質量について4:1質量比)は、120nm前後に主要なサイズ分布を示した。凝集した粒子の割合は低かった(1,000~10,000nmのサイズ範囲に小さいピーク)。
図2B】DNAを装填した(D)オリゴリジンに基づく(P)ナノプレックスのサイズ分布。Cas9DNA(A)、GFPDNA(B)、またはGFP-Cas9DNA(C)を装填したPDナノプレックス(ペプチド質量:DNA質量について4:1質量比)は、120nm前後に主要なサイズ分布を示した。凝集した粒子の割合は低かった(1,000~10,000nmのサイズ範囲に小さいピーク)。
図2C】DNAを装填した(D)オリゴリジンに基づく(P)ナノプレックスのサイズ分布。Cas9DNA(A)、GFPDNA(B)、またはGFP-Cas9DNA(C)を装填したPDナノプレックス(ペプチド質量:DNA質量について4:1質量比)は、120nm前後に主要なサイズ分布を示した。凝集した粒子の割合は低かった(1,000~10,000nmのサイズ範囲に小さいピーク)。
図3A】定量的な複合体化効率を包含する一連のナノプレックス製剤についてのゲル保持アッセイ。PDナノプレックス製剤のDNA保持ポテンシャルは、DNA複合体化効率の定性的な尺度としての用をなした。製剤されたナノプレックスはアガロースゲルポケットにアプライされ、その後に電圧が印加された。良く複合体化したナノプレックスは低い臭化エチジウム染色を示し、ゲル上の移動を示さない。遊離の移動するDNAと比較して(図3Aおよび図3Bの左レーン、0:1)、ナノプレックス製剤のいずれも、左から右に第2~第8レーンのいずれかにおいてそれらのポケットから出なかった。PDのシグナル(GFP-DNA;図3Aおよび図3Bの最後の3つのレーン、左からレーン6~8)はより弱く見え、より小さいDNAのより良好な複合体化を指示した。定量的な複合体化アッセイは全ての製剤について効率的な複合体化を示した。GFPを装填したナノプレックスは最も良く複合体化され、より大きいサイズのプラスミド(Cas9-GFP-DNA。図3B、左からレーン2~5)はわずかにより少なく複合体化され、PD(Cas9DNA)プラスミド(図3A、左からレーン2~5)についての複合体化効率は、約それらの他の2つの複合体化効率の間であった。
図3B】定量的な複合体化効率を包含する一連のナノプレックス製剤についてのゲル保持アッセイ。PDナノプレックス製剤のDNA保持ポテンシャルは、DNA複合体化効率の定性的な尺度としての用をなした。製剤されたナノプレックスはアガロースゲルポケットにアプライされ、その後に電圧が印加された。良く複合体化したナノプレックスは低い臭化エチジウム染色を示し、ゲル上の移動を示さない。遊離の移動するDNAと比較して(図3Aおよび図3Bの左レーン、0:1)、ナノプレックス製剤のいずれも、左から右に第2~第8レーンのいずれかにおいてそれらのポケットから出なかった。PDのシグナル(GFP-DNA;図3Aおよび図3Bの最後の3つのレーン、左からレーン6~8)はより弱く見え、より小さいDNAのより良好な複合体化を指示した。定量的な複合体化アッセイは全ての製剤について効率的な複合体化を示した。GFPを装填したナノプレックスは最も良く複合体化され、より大きいサイズのプラスミド(Cas9-GFP-DNA。図3B、左からレーン2~5)はわずかにより少なく複合体化され、PD(Cas9DNA)プラスミド(図3A、左からレーン2~5)についての複合体化効率は、約それらの他の2つの複合体化効率の間であった。
図4A】Neuro-2A細胞(図4A)およびJIMT-1細胞(図4B)におけるサポニンによって媒介されるPD(Cas9-GFP)トランスフェクションのトランスフェクション効率。Neuro-2A細胞(A)およびJIMT-1細胞(B)が、GFP-DNA(すなわち、GFP DNAを含むプラスミド)を担持するPDナノプレックスによってまたはCas9-GFP-DNAを担持するPDナノプレックスによって、最も高い非毒性のサポニン同時投与(2μg/mlでのGE1741同時投与、または2μg/mlでのSO1861同時投与)あり、およびなしでトランスフェクションされた。GFP-DNAトランスフェクションは70%前後の高い効率に到達し、全ての細胞のおよそ40%がCas9-GFPトランスフェクション後にGFPを発現した。Lipofectamin3000は正の対照としての用をなし、有効なGFP-DNA送達のみを示した。GFP-Cas9-DNAは低い量でのみ送達された、N≧3。*:サポニン不使用のトランスフェクション(ヌクレアーゼのみ)と比較して有意な違い、U検定。
図4B】Neuro-2A細胞(図4A)およびJIMT-1細胞(図4B)におけるサポニンによって媒介されるPD(Cas9-GFP)トランスフェクションのトランスフェクション効率。Neuro-2A細胞(A)およびJIMT-1細胞(B)が、GFP-DNA(すなわち、GFP DNAを含むプラスミド)を担持するPDナノプレックスによってまたはCas9-GFP-DNAを担持するPDナノプレックスによって、最も高い非毒性のサポニン同時投与(2μg/mlでのGE1741同時投与、または2μg/mlでのSO1861同時投与)あり、およびなしでトランスフェクションされた。GFP-DNAトランスフェクションは70%前後の高い効率に到達し、全ての細胞のおよそ40%がCas9-GFPトランスフェクション後にGFPを発現した。Lipofectamin3000は正の対照としての用をなし、有効なGFP-DNA送達のみを示した。GFP-Cas9-DNAは低い量でのみ送達された、N≧3。*:サポニン不使用のトランスフェクション(ヌクレアーゼのみ)と比較して有意な違い、U検定。
図5A】PD(Cas9-GFP)トランスフェクション±サポニン投与の間のNeuro-2A細胞のコンフルエンス測定。コンフルエンスの視覚的なモニタリングが、Neuro-2A細胞のCas9-GFPトランスフェクション(図5A、E、F)およびGFP-DNAトランスフェクション(図5A、C、D)の間に実施された。インキュベーション時間の間のコンフルエンスの提示はCytosmartのアルゴリズムによって提供された。無処置の負の対照と比較して、明確な毒性の効果は観察され得なかった(図5A、B)。サポニンGE1741は、経時的なコンフルエンシー評価の間に不在であったか(図5A、C、E)または存在した(図5A、D、F)。図5B~Fは、95時間のインキュベーション時間後のNeuro-2A細胞コンフルエンシーを示す。
図5B】PD(Cas9-GFP)トランスフェクション±サポニン投与の間のNeuro-2A細胞のコンフルエンス測定。コンフルエンスの視覚的なモニタリングが、Neuro-2A細胞のCas9-GFPトランスフェクション(図5A、E、F)およびGFP-DNAトランスフェクション(図5A、C、D)の間に実施された。インキュベーション時間の間のコンフルエンスの提示はCytosmartのアルゴリズムによって提供された。無処置の負の対照と比較して、明確な毒性の効果は観察され得なかった(図5A、B)。サポニンGE1741は、経時的なコンフルエンシー評価の間に不在であったか(図5A、C、E)または存在した(図5A、D、F)。図5B~Fは、95時間のインキュベーション時間後のNeuro-2A細胞コンフルエンシーを示す。
図5C】PD(Cas9-GFP)トランスフェクション±サポニン投与の間のNeuro-2A細胞のコンフルエンス測定。コンフルエンスの視覚的なモニタリングが、Neuro-2A細胞のCas9-GFPトランスフェクション(図5A、E、F)およびGFP-DNAトランスフェクション(図5A、C、D)の間に実施された。インキュベーション時間の間のコンフルエンスの提示はCytosmartのアルゴリズムによって提供された。無処置の負の対照と比較して、明確な毒性の効果は観察され得なかった(図5A、B)。サポニンGE1741は、経時的なコンフルエンシー評価の間に不在であったか(図5A、C、E)または存在した(図5A、D、F)。図5B~Fは、95時間のインキュベーション時間後のNeuro-2A細胞コンフルエンシーを示す。
図5D】PD(Cas9-GFP)トランスフェクション±サポニン投与の間のNeuro-2A細胞のコンフルエンス測定。コンフルエンスの視覚的なモニタリングが、Neuro-2A細胞のCas9-GFPトランスフェクション(図5A、E、F)およびGFP-DNAトランスフェクション(図5A、C、D)の間に実施された。インキュベーション時間の間のコンフルエンスの提示はCytosmartのアルゴリズムによって提供された。無処置の負の対照と比較して、明確な毒性の効果は観察され得なかった(図5A、B)。サポニンGE1741は、経時的なコンフルエンシー評価の間に不在であったか(図5A、C、E)または存在した(図5A、D、F)。図5B~Fは、95時間のインキュベーション時間後のNeuro-2A細胞コンフルエンシーを示す。
図5E】PD(Cas9-GFP)トランスフェクション±サポニン投与の間のNeuro-2A細胞のコンフルエンス測定。コンフルエンスの視覚的なモニタリングが、Neuro-2A細胞のCas9-GFPトランスフェクション(図5A、E、F)およびGFP-DNAトランスフェクション(図5A、C、D)の間に実施された。インキュベーション時間の間のコンフルエンスの提示はCytosmartのアルゴリズムによって提供された。無処置の負の対照と比較して、明確な毒性の効果は観察され得なかった(図5A、B)。サポニンGE1741は、経時的なコンフルエンシー評価の間に不在であったか(図5A、C、E)または存在した(図5A、D、F)。図5B~Fは、95時間のインキュベーション時間後のNeuro-2A細胞コンフルエンシーを示す。
図5F】PD(Cas9-GFP)トランスフェクション±サポニン投与の間のNeuro-2A細胞のコンフルエンス測定。コンフルエンスの視覚的なモニタリングが、Neuro-2A細胞のCas9-GFPトランスフェクション(図5A、E、F)およびGFP-DNAトランスフェクション(図5A、C、D)の間に実施された。インキュベーション時間の間のコンフルエンスの提示はCytosmartのアルゴリズムによって提供された。無処置の負の対照と比較して、明確な毒性の効果は観察され得なかった(図5A、B)。サポニンGE1741は、経時的なコンフルエンシー評価の間に不在であったか(図5A、C、E)または存在した(図5A、D、F)。図5B~Fは、95時間のインキュベーション時間後のNeuro-2A細胞コンフルエンシーを示す。
図6A】PDD(Cas9-DNA、gRNA(GFP)-DNA)ナノプレックス±サポニン投与(共トランスフェクション)による、GFPを発現するNeuro-2A-GFP細胞のGFPノックアウト。GFPを発現するNeuro-2A細胞が、Cas9-DNAプラスミドおよびgRNA(GFP)-DNAプラスミドの共トランスフェクションによって、4:0.5:0:5の比で、500ngの各DNA/ウェルおよびウェルあたり4,000ngのポリリジンK16ペプチドによってトランスフェクションされた。FITC-Hメジアンの減少が、サポニンGE1741ありのおよびなしのトランスフェクションで観察された。サポニン同時投与では、FITC-Hは10%減少し(図6D)、負の対照と比較して「蛍光性」と考えられない細胞の量は7.5%増大した(図6E)、n≧3。図6A:負の対照によるFACS結果。図6B:PDD(Cas9-DNA、gRNA(GFP)-DNA)、4:1によるFACS結果。図6C:PDD(Cas9-DNA、gRNA(GFP)-DNA)、4:1+GE1741によるFACS結果。図6D図6A~Cの試験サンプルおよび対照のLipofectamine3000DD(Cas9-DNA)についてのメジアンのFITC-Hの値。図6E図6A~Cの試験サンプルおよび対照のLipofectamine3000DD(Cas9-DNA)における非蛍光性の細胞の量。
図6B】PDD(Cas9-DNA、gRNA(GFP)-DNA)ナノプレックス±サポニン投与(共トランスフェクション)による、GFPを発現するNeuro-2A-GFP細胞のGFPノックアウト。GFPを発現するNeuro-2A細胞が、Cas9-DNAプラスミドおよびgRNA(GFP)-DNAプラスミドの共トランスフェクションによって、4:0.5:0:5の比で、500ngの各DNA/ウェルおよびウェルあたり4,000ngのポリリジンK16ペプチドによってトランスフェクションされた。FITC-Hメジアンの減少が、サポニンGE1741ありのおよびなしのトランスフェクションで観察された。サポニン同時投与では、FITC-Hは10%減少し(図6D)、負の対照と比較して「蛍光性」と考えられない細胞の量は7.5%増大した(図6E)、n≧3。図6A:負の対照によるFACS結果。図6B:PDD(Cas9-DNA、gRNA(GFP)-DNA)、4:1によるFACS結果。図6C:PDD(Cas9-DNA、gRNA(GFP)-DNA)、4:1+GE1741によるFACS結果。図6D図6A~Cの試験サンプルおよび対照のLipofectamine3000DD(Cas9-DNA)についてのメジアンのFITC-Hの値。図6E図6A~Cの試験サンプルおよび対照のLipofectamine3000DD(Cas9-DNA)における非蛍光性の細胞の量。
図6C】PDD(Cas9-DNA、gRNA(GFP)-DNA)ナノプレックス±サポニン投与(共トランスフェクション)による、GFPを発現するNeuro-2A-GFP細胞のGFPノックアウト。GFPを発現するNeuro-2A細胞が、Cas9-DNAプラスミドおよびgRNA(GFP)-DNAプラスミドの共トランスフェクションによって、4:0.5:0:5の比で、500ngの各DNA/ウェルおよびウェルあたり4,000ngのポリリジンK16ペプチドによってトランスフェクションされた。FITC-Hメジアンの減少が、サポニンGE1741ありのおよびなしのトランスフェクションで観察された。サポニン同時投与では、FITC-Hは10%減少し(図6D)、負の対照と比較して「蛍光性」と考えられない細胞の量は7.5%増大した(図6E)、n≧3。図6A:負の対照によるFACS結果。図6B:PDD(Cas9-DNA、gRNA(GFP)-DNA)、4:1によるFACS結果。図6C:PDD(Cas9-DNA、gRNA(GFP)-DNA)、4:1+GE1741によるFACS結果。図6D図6A~Cの試験サンプルおよび対照のLipofectamine3000DD(Cas9-DNA)についてのメジアンのFITC-Hの値。図6E図6A~Cの試験サンプルおよび対照のLipofectamine3000DD(Cas9-DNA)における非蛍光性の細胞の量。
図6D】PDD(Cas9-DNA、gRNA(GFP)-DNA)ナノプレックス±サポニン投与(共トランスフェクション)による、GFPを発現するNeuro-2A-GFP細胞のGFPノックアウト。GFPを発現するNeuro-2A細胞が、Cas9-DNAプラスミドおよびgRNA(GFP)-DNAプラスミドの共トランスフェクションによって、4:0.5:0:5の比で、500ngの各DNA/ウェルおよびウェルあたり4,000ngのポリリジンK16ペプチドによってトランスフェクションされた。FITC-Hメジアンの減少が、サポニンGE1741ありのおよびなしのトランスフェクションで観察された。サポニン同時投与では、FITC-Hは10%減少し(図6D)、負の対照と比較して「蛍光性」と考えられない細胞の量は7.5%増大した(図6E)、n≧3。図6A:負の対照によるFACS結果。図6B:PDD(Cas9-DNA、gRNA(GFP)-DNA)、4:1によるFACS結果。図6C:PDD(Cas9-DNA、gRNA(GFP)-DNA)、4:1+GE1741によるFACS結果。図6D図6A~Cの試験サンプルおよび対照のLipofectamine3000DD(Cas9-DNA)についてのメジアンのFITC-Hの値。図6E図6A~Cの試験サンプルおよび対照のLipofectamine3000DD(Cas9-DNA)における非蛍光性の細胞の量。
図6E】PDD(Cas9-DNA、gRNA(GFP)-DNA)ナノプレックス±サポニン投与(共トランスフェクション)による、GFPを発現するNeuro-2A-GFP細胞のGFPノックアウト。GFPを発現するNeuro-2A細胞が、Cas9-DNAプラスミドおよびgRNA(GFP)-DNAプラスミドの共トランスフェクションによって、4:0.5:0:5の比で、500ngの各DNA/ウェルおよびウェルあたり4,000ngのポリリジンK16ペプチドによってトランスフェクションされた。FITC-Hメジアンの減少が、サポニンGE1741ありのおよびなしのトランスフェクションで観察された。サポニン同時投与では、FITC-Hは10%減少し(図6D)、負の対照と比較して「蛍光性」と考えられない細胞の量は7.5%増大した(図6E)、n≧3。図6A:負の対照によるFACS結果。図6B:PDD(Cas9-DNA、gRNA(GFP)-DNA)、4:1によるFACS結果。図6C:PDD(Cas9-DNA、gRNA(GFP)-DNA)、4:1+GE1741によるFACS結果。図6D図6A~Cの試験サンプルおよび対照のLipofectamine3000DD(Cas9-DNA)についてのメジアンのFITC-Hの値。図6E図6A~Cの試験サンプルおよび対照のLipofectamine3000DD(Cas9-DNA)における非蛍光性の細胞の量。
図7A】PD(Cas9-gRNA(GFP)-DNA)ナノプレックス±サポニン投与(オールインワントランスフェクション)による、GFPを発現するNeuro-2A細胞のGFPノックアウト。GFPを発現するNeuro-2A細胞が、Cas9-gRNA(GFP)-DNAプラスミドによる「オールインワン」トランスフェクションによって、4:1の比でトランスフェクションされた。500ngの各DNA/ウェル。FITC-Hは観察され得なかった(図7D)。しかしながら、蛍光性と考えられる細胞の量は8:1のPD質量比で11%上昇した(図7E)。n≧3。図7A:負の対照によるFACS結果。図7B:PD(Cas9-gRNA(GFP)-DNA、4:1によるFACS結果。図7C:PD(Cas9-gRNA(GFP)-DNA、4:1+GE1741によるFACS結果。図7D図7A~Cの試験サンプルならびにPD(Cas9-gRNA(GFP)-DNA、8:1およびPD(Cas9-gRNA(GFP)-DNA、8:1+GE1741のメジアンFITC-Hの値。図7E図7A~Cの試験サンプルならびにPD(Cas9-gRNA(GFP)-DNA、8:1およびPD(Cas9-gRNA(GFP)-DNA、8:1+GE1741の非蛍光性の細胞の量。
図7B】PD(Cas9-gRNA(GFP)-DNA)ナノプレックス±サポニン投与(オールインワントランスフェクション)による、GFPを発現するNeuro-2A細胞のGFPノックアウト。GFPを発現するNeuro-2A細胞が、Cas9-gRNA(GFP)-DNAプラスミドによる「オールインワン」トランスフェクションによって、4:1の比でトランスフェクションされた。500ngの各DNA/ウェル。FITC-Hは観察され得なかった(図7D)。しかしながら、蛍光性と考えられる細胞の量は8:1のPD質量比で11%上昇した(図7E)。n≧3。図7A:負の対照によるFACS結果。図7B:PD(Cas9-gRNA(GFP)-DNA、4:1によるFACS結果。図7C:PD(Cas9-gRNA(GFP)-DNA、4:1+GE1741によるFACS結果。図7D図7A~Cの試験サンプルならびにPD(Cas9-gRNA(GFP)-DNA、8:1およびPD(Cas9-gRNA(GFP)-DNA、8:1+GE1741のメジアンFITC-Hの値。図7E図7A~Cの試験サンプルならびにPD(Cas9-gRNA(GFP)-DNA、8:1およびPD(Cas9-gRNA(GFP)-DNA、8:1+GE1741の非蛍光性の細胞の量。
図7C】PD(Cas9-gRNA(GFP)-DNA)ナノプレックス±サポニン投与(オールインワントランスフェクション)による、GFPを発現するNeuro-2A細胞のGFPノックアウト。GFPを発現するNeuro-2A細胞が、Cas9-gRNA(GFP)-DNAプラスミドによる「オールインワン」トランスフェクションによって、4:1の比でトランスフェクションされた。500ngの各DNA/ウェル。FITC-Hは観察され得なかった(図7D)。しかしながら、蛍光性と考えられる細胞の量は8:1のPD質量比で11%上昇した(図7E)。n≧3。図7A:負の対照によるFACS結果。図7B:PD(Cas9-gRNA(GFP)-DNA、4:1によるFACS結果。図7C:PD(Cas9-gRNA(GFP)-DNA、4:1+GE1741によるFACS結果。図7D図7A~Cの試験サンプルならびにPD(Cas9-gRNA(GFP)-DNA、8:1およびPD(Cas9-gRNA(GFP)-DNA、8:1+GE1741のメジアンFITC-Hの値。図7E図7A~Cの試験サンプルならびにPD(Cas9-gRNA(GFP)-DNA、8:1およびPD(Cas9-gRNA(GFP)-DNA、8:1+GE1741の非蛍光性の細胞の量。
図7D】PD(Cas9-gRNA(GFP)-DNA)ナノプレックス±サポニン投与(オールインワントランスフェクション)による、GFPを発現するNeuro-2A細胞のGFPノックアウト。GFPを発現するNeuro-2A細胞が、Cas9-gRNA(GFP)-DNAプラスミドによる「オールインワン」トランスフェクションによって、4:1の比でトランスフェクションされた。500ngの各DNA/ウェル。FITC-Hは観察され得なかった(図7D)。しかしながら、蛍光性と考えられる細胞の量は8:1のPD質量比で11%上昇した(図7E)。n≧3。図7A:負の対照によるFACS結果。図7B:PD(Cas9-gRNA(GFP)-DNA、4:1によるFACS結果。図7C:PD(Cas9-gRNA(GFP)-DNA、4:1+GE1741によるFACS結果。図7D図7A~Cの試験サンプルならびにPD(Cas9-gRNA(GFP)-DNA、8:1およびPD(Cas9-gRNA(GFP)-DNA、8:1+GE1741のメジアンFITC-Hの値。図7E図7A~Cの試験サンプルならびにPD(Cas9-gRNA(GFP)-DNA、8:1およびPD(Cas9-gRNA(GFP)-DNA、8:1+GE1741の非蛍光性の細胞の量。
図7E】PD(Cas9-gRNA(GFP)-DNA)ナノプレックス±サポニン投与(オールインワントランスフェクション)による、GFPを発現するNeuro-2A細胞のGFPノックアウト。GFPを発現するNeuro-2A細胞が、Cas9-gRNA(GFP)-DNAプラスミドによる「オールインワン」トランスフェクションによって、4:1の比でトランスフェクションされた。500ngの各DNA/ウェル。FITC-Hは観察され得なかった(図7D)。しかしながら、蛍光性と考えられる細胞の量は8:1のPD質量比で11%上昇した(図7E)。n≧3。図7A:負の対照によるFACS結果。図7B:PD(Cas9-gRNA(GFP)-DNA、4:1によるFACS結果。図7C:PD(Cas9-gRNA(GFP)-DNA、4:1+GE1741によるFACS結果。図7D図7A~Cの試験サンプルならびにPD(Cas9-gRNA(GFP)-DNA、8:1およびPD(Cas9-gRNA(GFP)-DNA、8:1+GE1741のメジアンFITC-Hの値。図7E図7A~Cの試験サンプルならびにPD(Cas9-gRNA(GFP)-DNA、8:1およびPD(Cas9-gRNA(GFP)-DNA、8:1+GE1741の非蛍光性の細胞の量。
図8】CRISPR-Cas9に基づく遺伝子ノックアウトおよびレポーター遺伝子ノックイン(OriGene)。GFPをコードしかつピューロマイシンをコードする直鎖ドナー配列(LDS)と一緒に(EF1a(すなわちEF1アルファプロモーター)、GFP配列、P2A配列(すなわち2A自己切断ペプチド)、およびピューロマイシン(「Puro」)配列を含む「直鎖ドナー」)、Cas9配列およびgRNA配列を有するオールインワンDNAプラスミドのプラスミドDNA(上側左)の共トランスフェクションを実施することによって、遺伝子ノックアウトおよびノックイン実験が行なわれる。溶質輸送体(Slc)の遺伝子がgRNA標的として選択された(「標的配列」)。Cas9によって誘導される鎖切断(Slcノックアウト)の後に、LDSは非相同組み換えによって順向きでまたは逆向きで組み込まれる(GFP-ピューロマイシンノックイン)。改変された細胞クローンの選択は、挿入されたピューロマイシン耐性遺伝子によって達成される。
図9A】サポニンによって媒介されるPDD(Cas9-gRNA(Slc26a4)-DNA、LDSDNA)トランスフェクションのトランスフェクション効率。A:Neuro-2A細胞が、PDDナノプレックス(Cas9-gRNA(Slc26a4)-DNA、GFP-ピューロマイシンLDS。ペプチドおよびDNAの質量が考えられるときに4:1および8:1質量比)によって、GE1741同時投与あり、およびなしでトランスフェクションされた。GE1741の適用は、4:1および8:1質量比についてそれぞれ20%および30%のトランスフェクション効率に至った。Lipofectamin3000は正の対照としての用をなした。B~D:サポニンによって媒介されるGFP遺伝子ノックイン後のNeuro-2A細胞の明確な蛍光強度増大。n≧3。*サポニン不使用のトランスフェクション(ヌクレアーゼのみ)と比較して有意な違い。U検定が行なわれた。図9B:負の対照。図9C:PDD(Cas9-gRNA(Slc26a4)-DNA、Puro-GFP-LDS)、4:1)。図9D:PDD(Cas9-gRNA(Slc26a4)-DNA、Puro-GFP-LDS)、4:1)+GE1741。
図9B】サポニンによって媒介されるPDD(Cas9-gRNA(Slc26a4)-DNA、LDSDNA)トランスフェクションのトランスフェクション効率。A:Neuro-2A細胞が、PDDナノプレックス(Cas9-gRNA(Slc26a4)-DNA、GFP-ピューロマイシンLDS。ペプチドおよびDNAの質量が考えられるときに4:1および8:1質量比)によって、GE1741同時投与あり、およびなしでトランスフェクションされた。GE1741の適用は、4:1および8:1質量比についてそれぞれ20%および30%のトランスフェクション効率に至った。Lipofectamin3000は正の対照としての用をなした。B~D:サポニンによって媒介されるGFP遺伝子ノックイン後のNeuro-2A細胞の明確な蛍光強度増大。n≧3。*サポニン不使用のトランスフェクション(ヌクレアーゼのみ)と比較して有意な違い。U検定が行なわれた。図9B:負の対照。図9C:PDD(Cas9-gRNA(Slc26a4)-DNA、Puro-GFP-LDS)、4:1)。図9D:PDD(Cas9-gRNA(Slc26a4)-DNA、Puro-GFP-LDS)、4:1)+GE1741。
図9C】サポニンによって媒介されるPDD(Cas9-gRNA(Slc26a4)-DNA、LDSDNA)トランスフェクションのトランスフェクション効率。A:Neuro-2A細胞が、PDDナノプレックス(Cas9-gRNA(Slc26a4)-DNA、GFP-ピューロマイシンLDS。ペプチドおよびDNAの質量が考えられるときに4:1および8:1質量比)によって、GE1741同時投与あり、およびなしでトランスフェクションされた。GE1741の適用は、4:1および8:1質量比についてそれぞれ20%および30%のトランスフェクション効率に至った。Lipofectamin3000は正の対照としての用をなした。B~D:サポニンによって媒介されるGFP遺伝子ノックイン後のNeuro-2A細胞の明確な蛍光強度増大。n≧3。*サポニン不使用のトランスフェクション(ヌクレアーゼのみ)と比較して有意な違い。U検定が行なわれた。図9B:負の対照。図9C:PDD(Cas9-gRNA(Slc26a4)-DNA、Puro-GFP-LDS)、4:1)。図9D:PDD(Cas9-gRNA(Slc26a4)-DNA、Puro-GFP-LDS)、4:1)+GE1741。
図9D】サポニンによって媒介されるPDD(Cas9-gRNA(Slc26a4)-DNA、LDSDNA)トランスフェクションのトランスフェクション効率。A:Neuro-2A細胞が、PDDナノプレックス(Cas9-gRNA(Slc26a4)-DNA、GFP-ピューロマイシンLDS。ペプチドおよびDNAの質量が考えられるときに4:1および8:1質量比)によって、GE1741同時投与あり、およびなしでトランスフェクションされた。GE1741の適用は、4:1および8:1質量比についてそれぞれ20%および30%のトランスフェクション効率に至った。Lipofectamin3000は正の対照としての用をなした。B~D:サポニンによって媒介されるGFP遺伝子ノックイン後のNeuro-2A細胞の明確な蛍光強度増大。n≧3。*サポニン不使用のトランスフェクション(ヌクレアーゼのみ)と比較して有意な違い。U検定が行なわれた。図9B:負の対照。図9C:PDD(Cas9-gRNA(Slc26a4)-DNA、Puro-GFP-LDS)、4:1)。図9D:PDD(Cas9-gRNA(Slc26a4)-DNA、Puro-GFP-LDS)、4:1)+GE1741。
図10図10(1~3).レポーター遺伝子ノックイン技術-相同組み換え対非相同組み換え。図10は相同組み換えを適用するノックイン技術を提示し、環状ドナー鋳型DNAをDNAベクター、ここではpUCの一部として用いる。比較のために、図8は非相同組み換えを適用するノックイン技術を提示し、対象の核酸をノックインするために直鎖ドナー鋳型DNAのLDSを用いる。相同組み換えキット(1+2)は、図8に提示される通り、環状DNAドナー配列(2:相同な腕部および機能カセットを含有する環状ドナー鋳型DNA)とCas9およびgRNAをコードするプラスミドDNA(1:pCas-Guideベクターにクローニングされた標的配列)とからなる。ここでは、ドナー配列は相同修復によって組み込まれる(3:1のpCas-GuideプラスミドDNA+2の環状ドナー鋳型DNAを担持するプラスミドDNAとしての用をなすpUCベクターの共トランスフェクションは、ドナー配列(GFP-Puro(ピューロマイシン))のゲノム組み込みをもたらし、ノックインされた遺伝子を有する編集された染色体を提供する。標的遺伝子はノックアウトされ、GFPはネイティブな遺伝子プロモーター下にあり、ピューロマイシン遺伝子(Puro)はこの例ではPGKプロモーター下にある。環状ドナー鋳型DNA(2)は直鎖ドナー配列(例えば、図8上側右参照)よりも分解性でないが、遺伝子組み込み効率がGFP蛍光の程度を測定することによって評価されるときに明らかな通り、組み込みプロセスはより複雑なプロセスであるように見える。
図11A】Neuro-2A細胞における異なる溶質輸送体(Slc)のノックアウト-相同組み換え対非相同組み換え。異なる標的および異なる組み込み技術についての効率を、サポニンGE1741の不在または存在の影響下において、K16ペプチドを含むナノプレックスにおいて比較するために、Neuro-2A細胞がNHRキットを用いておよびHRキットを用いてトランスフェクションされた。全てのNHRノックインキット(Slc26a4、Slc19a3、およびSlc25a24)はトランスフェクション効率の有意な増大を示したが、GFP発現はHRノックインキットでは観察され得なかった。n≧3。*サポニン不使用のトランスフェクション(ヌクレアーゼのみ)と比較して有意な違い。U検定。(A)Cas9およびgRNA(Slc26a4)をコードする核酸を含むプラスミドDNAならびにピューロマイシンおよび緑色蛍光蛋白質をコードするLDSDNA(Puro-GFP-LDS)の共トランスフェクション。(B)Cas9およびgRNA(Slc)をコードする核酸を含むプラスミドDNAならびにDNAベクターとして提供されたピューロマイシンおよび緑色蛍光蛋白質をコードするドナー鋳型DNA(Puro-GFP-DS)の共トランスフェクション。
図11B】Neuro-2A細胞における異なる溶質輸送体(Slc)のノックアウト-相同組み換え対非相同組み換え。異なる標的および異なる組み込み技術についての効率を、サポニンGE1741の不在または存在の影響下において、K16ペプチドを含むナノプレックスにおいて比較するために、Neuro-2A細胞がNHRキットを用いておよびHRキットを用いてトランスフェクションされた。全てのNHRノックインキット(Slc26a4、Slc19a3、およびSlc25a24)はトランスフェクション効率の有意な増大を示したが、GFP発現はHRノックインキットでは観察され得なかった。n≧3。*サポニン不使用のトランスフェクション(ヌクレアーゼのみ)と比較して有意な違い。U検定。(A)Cas9およびgRNA(Slc26a4)をコードする核酸を含むプラスミドDNAならびにピューロマイシンおよび緑色蛍光蛋白質をコードするLDSDNA(Puro-GFP-LDS)の共トランスフェクション。(B)Cas9およびgRNA(Slc)をコードする核酸を含むプラスミドDNAならびにDNAベクターとして提供されたピューロマイシンおよび緑色蛍光蛋白質をコードするドナー鋳型DNA(Puro-GFP-DS)の共トランスフェクション。
図12A】GFP-ピューロマイシンLDSのノックイン後のピューロマイシン選択。溶質輸送体Slc26a4のノックアウトおよびGFP-ピューロマイシンドナー配列の組み込みの後に、細胞は、ピューロマイシン選択が始められるまで7継代に渡って培養された。異なる濃度のピューロマイシンが適用され、細胞生存率が観察された(A、B)。1μg/mLおよび2μg/mLは、ピューロマイシン耐性を原因とするいくつもの生残細胞集団を有するコンフルエンスの減少を示した。(B)緑色蛍光は、提示された細胞培養プレートのウェルにおける白色化によって明らかである。横列A~Cのプレートウェルは左から右に1~4と付番されている。ウェルC3~4は空であった。
図12B】GFP-ピューロマイシンLDSのノックイン後のピューロマイシン選択。溶質輸送体Slc26a4のノックアウトおよびGFP-ピューロマイシンドナー配列の組み込みの後に、細胞は、ピューロマイシン選択が始められるまで7継代に渡って培養された。異なる濃度のピューロマイシンが適用され、細胞生存率が観察された(A、B)。1μg/mLおよび2μg/mLは、ピューロマイシン耐性を原因とするいくつもの生残細胞集団を有するコンフルエンスの減少を示した。(B)緑色蛍光は、提示された細胞培養プレートのウェルにおける白色化によって明らかである。横列A~Cのプレートウェルは左から右に1~4と付番されている。ウェルC3~4は空であった。
図13】Cas9によって媒介されるSlc26a4ノックアウト-GFPノックイン細胞の単離後のFITC-H分析。成長したNeuro-2A細胞クローンはトリプシン処理され、フローサイトメトリーにアプライされた。細胞は蛍光(FITC-H)の観点から分析された。無処置のNeuro-2A細胞およびNeuro-2A-GFP細胞がそれぞれ負のおよび正の対照として用いられた。2つの型の細胞クローンが観察された。いくつかのクローンは蛍光を示さず、安定なGFP発現を指示しなかったが、他のクローンは2つの細胞集団を示した。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明が具体的な実施形態について記載されるが、本発明はそれにではなく請求項によってのみ限定される。本明細書に記載される本発明の実施形態は、別様に指定されない限り、組み合わせおよび共同で機能し得る。
【0037】
細胞内への例えば5.5kbpまたはより大きいサイズを有するプラスミドDNAなどの比較的大きい核酸のインビトロ送達のための改善された方法を提供することが、本発明の第1のゴールである。
【0038】
好ましくは少なくともCasをコードする比較的大きい核酸(すなわち、少なくとも5.5kbpのサイズを有する核酸)を有する標的細胞をインビトロで提供するための方法を提供することが、本発明の目的であり、この方法は、例えば核酸を含む組成物を調製するための方法ステップが関係するときにおよび/または相対的なトランスフェクション効率が関係するときに、本発明に従うトランスフェクションが当分野において普通に適用されるトランスフェクション方法と比較されるときに、より面倒でない製造要件および改善された核酸トランスフェクション効力を伴う。標的細胞内への核酸のインビトロ送達(トランスフェクション)の目的のために選択された核酸とキットの構成要素を組み合わせることに応用可能な、キットなどのツールを提供することもまた本発明の目的である。かかる核酸は、典型的には5,000bpよりも大きく、さらには8,000~9,000bpほども大きく、またはより大きい。
【0039】
上の目的の少なくとも1つは、好ましくは少なくとも本発明のCasをコードする比較的大きい核酸(すなわち、少なくとも5.5kbpのサイズを有する核酸)を有する標的細胞を提供するためのインビトロ方法を提供することによって達成される。少なくとも、さらなる目的は、サポニンGE1741および/またはサポニンSO1861などのトランスフェクション効力増強試薬を含む本発明のキットを提供することによって達成される。
【0040】
本発明は具体的な実施形態について記載されるが、本発明はそれにではなく請求項のみによって限定される。本発明は複数の実施形態の観点から記載されているが、それらの代替、改変、順列、および均等物は本明細書を読むことによって当業者には明らかになるであろうということが企図される。本発明は例示されている実施形態に決して限定されない。添付の請求項によって定められる範囲から逸脱することなしに、変更がなされ得る。
【0041】
本発明の第1の態様は、細胞内への、比較的大きい、すなわち少なくとも5.5kbpまたは少なくとも8kbpのようなより大きいサイズを有する核酸のインビトロ送達における、ビスデスモシド型のトリテルペノイド12,13-デヒドロオレアナン型サポニンの使用に関する。
【0042】
本明細書において用いられる用語「サポニン」は、その当分野において確立された正式の意味を有し、本明細書においては、アグリコンコアまたはサポゲニンと呼称される新油性骨格構造に共有結合的に取り付けられた1つ以上の親水性糖鎖を含む両親媒性グリコシドの群を言う。サポニンは天然に存在し得るかまたは合成(すなわち天然に存在しない)であり得る。本明細書において用いられる用語「サポニン」は、天然に存在するサポニン、ならびに化学的および/またはバイオテクノロジー的合成経路によってデノボ合成されたサポニンを包含すると解釈されるべきである。ビスデスモシド型のトリテルペノイド12,13-デヒドロオレアナン型サポニンは、トリテルペン、すなわち五環式C30テルペンアグリコンコアを有し、これは12,13-デヒドロオレアナン型であり、それに取り付けられた2つの糖鎖を有する(すなわちビスデスモシド型である)。
【0043】
本発明の特に有利な態様は、細胞内への、比較的大きい、すなわち少なくとも5.5kbpまたは少なくとも8kbpのようなより大きいサイズを有する核酸のインビトロ送達におけるサポニンの使用に関し、ここで、サポニンは式(I)に従う:
【0044】
【化4】
【0045】
式中、
はキシロース残基、アラビノース残基、またはグルコース残基であり、そのC1原子によって式(I)の対応するキシロース残基に結合され、
は、同じ分子上の他のR残基から独立して、H、アセチル残基、またはそのC1原子によって式(I)の対応するキノボース残基に結合されたキシロース残基であり、ただし、キノボース残基に結合された少なくとも2つのアセチル残基または少なくとも1つのアセチル残基およびキシロース残基が、サポニンに存在する。
【0046】
典型的には、本発明の使用は、核酸が、少なくとも6kbp、好ましくは少なくとも7kbp、より好ましくは少なくとも7.5kbp、最も好ましくは少なくとも8kbp、もしくはさらには少なくとも9kbpよりも多く、または10kbp以上を含み、好ましくは、プラスミドDNA、例えばCRISPR関連エンドヌクレアーゼ(Cas)をコードするプラスミドDNAであるということを特徴とする。
【0047】
有利には、本発明の使用は以下を特徴とする:核酸は、CRISPR関連エンドヌクレアーゼ(Cas)をコードする核酸の第1の部分を含み、核酸は、任意に、ガイドRNA(gRNA)をコードするかまたはgRNAであるかまたはgRNAを含む核酸の第2の部分を含み、好ましくは、核酸はCasをコードするプラスミドDNAであり、より好ましくは、核酸は少なくともCasを発現するためのプラスミドDNAであり、さらにはより好ましくは、核酸はCasを発現するためのかつgRNAを発現するためのプラスミドDNAである。
【0048】
ゆえに、本発明の特定の態様は、細胞内への核酸のインビトロ送達における式(I)に従うサポニンの使用に関する:
【0049】
【化5】
【0050】
式中、
はキシロース残基、アラビノース残基、またはグルコース残基であり、そのC1原子によって式(I)の対応するキシロース残基に結合され、
は、同じ分子上の他のR残基から独立して、H、アセチル残基、またはそのC1原子によって式(I)の対応するキノボース残基に結合されたキシロース残基であり、ただし、キノボース残基に結合された少なくとも2つのアセチル残基または少なくとも1つのアセチル残基およびキシロース残基が、サポニンに存在し、
ここで、核酸は、少なくとも、CRISPR関連エンドヌクレアーゼ(Cas)をコードする核酸の第1の部分を含み、核酸は、任意に、ガイドRNA(gRNA)をコードするかまたはgRNAであるかまたはgRNAを含む核酸の第2の部分を含む。
【0051】
典型的には、本発明の使用は、細胞が真核細胞であるということを特徴とする。
【0052】
本発明に従う使用は、好ましくは、式(I)に従うサポニンのRがキシロース残基であり、および/またはサポニンが厳密に2つのアセチル基を持つということを特徴とする。
【0053】
以下を特徴とする本発明に従う使用が好ましい:式(I)に従うサポニンのアセチル基は、サポニンの対応するキノボース残基のC3位置およびC4位置における酸素原子に結合される。
【0054】
以下を特徴とする本発明に従う使用もまた好ましい:式(I)に従うサポニンのR残基の1つはキシロース残基であり、R残基の1つはアセチル基であり、R残基の1つはHである。
【0055】
いくつかの実施形態に従うと、本発明に従う使用は以下を特徴とする:式(I)に従うサポニンのキシロース残基は対応するキノボース残基のC3位置における酸素原子に結合され、ここで、アセチル基はサポニンの対応するキノボース残基のC4位置における酸素原子に結合される。
【0056】
以下を特徴とする本発明に従う使用が好ましい:式(I)に従うサポニンのRはキシロース残基であり、ここで、式(I)に従うサポニンの2つのR基はアセチル基であり、これらは対応するキノボース残基のC3位置およびC4位置における酸素原子に結合され、ここで、第3のR基はHである。
【0057】
以下を特徴とする本発明に従う使用が特に好ましい:
サポニンが式(II)に従うGE1741であるということ:
【0058】
【化6】
【0059】
式中、Rはキシロースである、
または、サポニンが式(III)に従うSO1861であるということ:
【0060】
【化7】
【0061】
本発明の使用は有利には以下を特徴とし得る:核酸はナノ粒子の一部を形成し、このナノ粒子はさらにナノ粒子形成化合物を含み、好ましくは、ナノ粒子形成化合物はポリリジンペプチドを含むかまたはそれらからなり、好ましくは、ポリリジンペプチドは5~25個のリジン残基からなり、より好ましくは、ポリリジンペプチドは16個のリジン残基からなる。具体的な実施形態において、使用は以下を特徴とし得る:ナノ粒子はナノ粒子形成化合物および核酸を3:1から15:1の範囲の、好ましくは3:1から9:1の範囲の質量比で含む。
【0062】
サポニンSO1861またはGE1741、好ましくはGE1741を、ポリリジンペプチドとナノプレックス化されているプラスミドDNAと組み合わせることによって(サポニンに基づく「サポフェクション」技術。ナノプレックス化した構造、すなわちナノプレックスに関する。ポリリジンペプチド、好ましくはK16ペプチド、好ましくはプラスミドDNAの形態の核酸、およびサポニン、好ましくはSO1861またはGE1741、より好ましくはGE1741からなる)、本発明者らは、驚くべきことに、例えば哺乳類細胞(例えばJIMT-1癌細胞)およびネズミ癌細胞(Neuro-2A)において、ここでは例えばCas9蛋白質をコードしかつペプチドに基づく(ポリリジンK16ペプチド)ナノプレックスに組み込まれた、DNAプラスミドの形態の比較的大きい核酸(>6,500bp、例えば7.0kbp~8.3kbpのサイズを有するプラスミドDNA)をインビトロの細胞内に有効に送達することができた。SO1861またはGE1741などのサポニンは、プラスミドDNAおよびポリリジンペプチドからなる予め形成されたナノプレックスと混合され、それによって、プラスミドDNAおよびポリリジンペプチド、例えばK16ペプチドからなるナノプレックスを含みかつGE1741などのサポニンを含む組成物を提供する。かかる混合物は、核酸によってトランスフェクションされられるべきである標的細胞と接触させられる。代替的には、サポニンを含有する第1の組成物およびナノプレックスを含有する第2の組成物が両方とも、第1の組成物および第2の組成物の先行する混合なしに、細胞と接触させられる。ここでは、例えば、第1の組成物および第2の組成物は細胞培養培地に追加され、これにおいて、核酸によるトランスフェクションのために選択された細胞が培養される。例えば、Cas9切断部位に挿入されるピューロマイシンのドナーDNA配列と組み合わせられるかまたは組み合わせられないかどちらかの例えば緑色蛍光蛋白質(GFP)のドナー配列などの二本鎖DNAドナー配列の共トランスフェクションは、効率的なドナー配列由来遺伝子発現を示した。本発明のトランスフェクション方法によって達成され、ナノプレックス構造を含む組成物の一部として、または本発明に従うDNAプラスミドによるトランスフェクションのために選択された細胞に別個に追加されたGE1741およびSO1861などのサポニンの存在下における比較的大きいDNAプラスミドおよびポリリジンのナノプレックスの使用によって達成されたトランスフェクション効率は、現行のゴールドスタンダードのLipofectamine3000(商標)によって得られ得るよりも高かった。例えば、実施例の項、図4~7、9、11、および12の参照がなされる。前述の通り、本発明に従うと、サポニンが、混合物が細胞と接触をさせられる前のポリリジンおよび核酸から組成されるナノ粒子と予め混合されるか、または細胞が、例えばナノ粒子およびサポニンを細胞培養培地に追加することによってナノ粒子およびサポニンを別個に細胞に同時追加することによってトランスフェクションされるかどちらかである。
【0063】
本発明の方法を適用することによって、および本発明に従う使用によって、本発明者らは、約7kbpまたはさらには8.2kbpのサイズを有するプラスミドDNAのトランスフェクションが考えられるときに、少なくとも15%のインビトロのトランスフェクション効力を達成した。好ましくは、トランスフェクション効率は少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、最も好ましくは少なくとも30%である。実際に、本発明の方法を適用することによって、および本発明に従う使用によって、少なくとも30%のトランスフェクション効率が得られた(図11をもまた参照)。典型的には、例えばLipofectamin3000の助けによってプラスミドDNAをトランスフェクションすることによって得られ得るトランスフェクション効率よりも例えば少なくとも3倍高いかかる高い効率は、トランスフェクションの間のサポニンの存在の影響下において、少なくとも配列番号1に従うアミノ酸配列を有するCas9、配列番号2に従うアミノ酸配列を有するCas12a、または配列番号3に従うアミノ酸配列を有するCas13a、好ましくはCas9などのCas酵素をコードするプラスミドDNAなどの少なくとも7kbpのサイズを有するプラスミドDNAをトランスフェクションすることによって達成可能である。典型的には、プラスミドDNAはgRNAをもまたコードする。典型的には、かかるプラスミドDNAは少なくとも8kbpのサイズを有し、トランスフェクションの間のサポニンの存在を原因として、本発明の方法を適用することによっておよび本発明に従う使用によって、依然としてインビボで効率的にトランスフェクションされる。代替的にかつ対等に、以下の本発明に従う使用が好ましい:核酸はCas9などのCasをコードし、ここで、gRNAは、gRNAをコードする第2の核酸(gRNAをコードする第2のプラスミドDNA)としてまたはgRNAのRNA配列として提供される。
【0064】
典型的には、本発明の使用は、配列番号1に従うアミノ酸配列を有するCas9、配列番号2に従うアミノ酸配列を有するCas12a、または配列番号3に従うアミノ酸配列を有するCas13aをコードする、好ましくは前記Cas9をコードする核酸を包含する。加えて、Casをコードする核酸が以下をコードするということを特徴とする本発明に従う使用もまた好ましい:Cas9(配列番号1)、Cas12a(配列番号2)、Cas13a(配列番号3)、または少なくとも90%のアミノ酸残基同一性をストレプトコッカス・ピオゲネス血清型M1のCas9、フランシセラ・ツラレンシスsubsp.ノビシダ(株U112)のCas12a、およびレプトトリキア・ブッカリス(株ATCC14201/DSM1135/JCM12969/NCTC10249/C-1013-b)のCas13aのいずれか1つに対して有するCas。
【0065】
ある実施形態は本発明の使用であり、ここで、核酸、好ましくはプラスミドDNAは、少なくとも、CRISPR関連エンドヌクレアーゼ(Cas)、好ましくはCas9(配列番号1)、または少なくとも90%の配列同一性をこのCas9に対して有するCasをコードする核酸の第1の部分を含み、核酸は、任意に以下のいずれか1つ以上を含む:CRISPR-RNA(crRNA)を含みかつトランス活性化CRISPR-RNA(tracrRNA)を含む非コードガイドRNAである核酸の第2の部分、コードされるガイドRNAはシングルガイドRNAまたはツーピースRNAであり、tracrRNAは核酸の第1の部分によってコードされるCasの結合部位を含む。代替的には、ある実施形態は、以下の本発明の使用である:Cas9などのCasは第1のプラスミドDNAなどの第1の核酸によってコードされ、gRNAは第2のプラスミドDNAなどの第2の核酸によってコードされる。Casをコードする核酸およびgRNAをコードする核酸が両方とも単一のプラスミドDNAなどの単一の核酸によって包含される本発明に従う使用が好ましい。
【0066】
対象の蛋白質をコードする(安定にトランスフェクションされた)ノックインされた遺伝子を有する細胞を提供する目的のためには、以下の本発明の使用が好ましい:核酸のインビトロ送達に、細胞のゲノムにノックインするために選択された遺伝子をコードするDNAドナー鋳型であるさらなる核酸と一緒に、Cas9などのCasをコードしかつgRNAをコードする核酸を含む単一のプラスミドDNAの送達、または2つの別個のプラスミドDNAの送達が関わり、第1のものはCasをコードし、第2のものはgRNAをコードする。ドナー鋳型DNAは、直鎖ドナー配列または環状ドナー鋳型DNAどちらか、例えばDNAベクターである。本発明者らは、安定なトランスフェクションおよびノックインされた細胞の形成は、環状ドナー鋳型DNAの適用と比較して、直鎖DNAドナー配列が方法の使用のために適用されるときにより効率的であるということを確立した。よって、以下の使用が好ましい:細胞内への核酸のインビトロ送達が、直鎖ドナー配列の送達を含む細胞内へのCRISPR/Casコンストラクトのインビトロ送達に関する。
【0067】
以下を特徴とする本発明に従う使用が好ましい:インビトロ送達される核酸によってコードされるCasは、Cas9(配列番号1)、Cas12a(配列番号2)、Cas13a(配列番号3)であるか、あるいは、前記核酸は、少なくとも90%のアミノ酸残基同一性をこれらのCas9、Cas12a、およびCas13aのいずれか1つに対して有するCasを、またはこれらのCas9、Cas12a、およびCas13aのいずれか1つのエンドヌクレアーゼ活性に類似のCas様のエンドヌクレアーゼ活性を有し、かつCas9が考えられるときにはtracrRNAに結合する能力があり、かつ少なくとも90%のアミノ酸残基同一性をこれらのCas9、Cas12a、およびCas13aのいずれか1つに対して有するエンドヌクレアーゼをコードする。
【0068】
本発明者らは、ポリリジン(10~20個のリジン残基、典型的には16個のリジン残基)が、少なくとも5.5kbp、例えば少なくとも7kbp、またはさらには少なくとも8kbpのサイズを有するプラスミドDNAなどの核酸とのナノ粒子(ナノプレックス)を効率的に形成するということを確立した。本発明者らは、かかるナノ粒子が、ポリリジンペプチドおよび核酸の間の質量比が16:1未満、例えば3:1から15:1であるときに、細胞のトランスフェクションの間の1~5マイクログラム/mLのSO1861またはGE1741などのサポニンの存在下において、細胞内に特に効率的にトランスフェクションされるということを確立した。本発明者らは、効率的な核酸トランスフェクションのためには、ナノ粒子におけるポリリジンペプチドおよび核酸の間の質量比は2:1よりも高く、例えば3:1~15:1であるべきであるということをもまた確立した。本発明の使用では、細胞内へのインビトロ送達のために選択された核酸はナノプレックス(ナノ粒子)の一部として提供されるということが好ましく、ここで、ナノプレックスは、典型的には少なくとも5.5kbp、例えば少なくとも6.0kbp、例えば6~9kbpのサイズを有する好ましくはプラスミドDNAの形態の核酸と、ポリリジンペプチド、例えばK12ペプチド~K20ペプチド(12から20個のリジン残基のいずれか1つからなるポリリジンペプチド)、好ましくはK16ペプチドとからなる。かかる核酸による細胞のトランスフェクションの間に、サポニンもまた細胞に追加されるか、またはサポニンは最初にナノ粒子と予め混合され、それから細胞に追加される。以下の本発明の使用は任意である:細胞内へのインビトロ送達のために選択された核酸がナノプレックス(ナノ粒子)の一部として提供され、ここで、ナノプレックスは、典型的には少なくとも5.5kbp、例えば少なくとも6.0kbp、例えば6~9kbpのサイズを有する好ましくはプラスミドDNAの形態の核酸、サポニン、例えばSO1861またはGE1741、好ましくはGE1741、およびポリリジンペプチド、例えばK12ペプチド~K20ペプチド(12から20個のリジン残基のいずれか1つからなるポリリジンペプチド)、好ましくはK16ペプチドからなる。典型的には、本発明の使用において、ナノ粒子は、ポリリジンペプチドなどのナノ粒子形成化合物および核酸を、3:1から15:1の範囲の、好ましくは3:1から9:1の範囲の質量比で含む。なぜなら、2:1の質量比ではトランスフェクションは非効率的であるからであり、なぜなら、16:1の質量比ではナノ粒子(ナノプレックス)は細胞にとって毒性があるからである。
【0069】
本発明の第2の態様は、以下のステップを含む、インビトロの細胞内に5.5キロ塩基対(kbp)よりも多くを含む核酸を送達するための方法に関する:
(i)核酸を提供すること、および
(ii)ビスデスモシド型のトリテルペノイド12,13-デヒドロオレアナン型サポニンであるサポニンを提供すること、および
(iii)サポニンの存在下において核酸と細胞をインキュベーションすること。
【0070】
本発明の第2の態様の好ましい実施形態においては、サポニンが式(I)に従う方法が提供される:
【0071】
【化8】
【0072】
式中、
はキシロース残基、アラビノース残基、またはグルコース残基であり、そのC1原子によって式(I)の対応するキシロース残基に結合され、
は、同じ分子上の他のR残基から独立して、H、アセチル残基、またはそのC1原子によって式(I)の対応するキノボース残基に結合されたキシロース残基であり、ただし、キノボース残基に結合された少なくとも2つのアセチル残基または少なくとも1つのアセチル残基およびキシロース残基が、サポニンに存在する。
【0073】
特定の実施形態において、本発明の第2の態様は、以下のステップを含む、インビトロの細胞内にCRISPR/Casコンストラクトをコードする核酸を送達するための方法に関し得る:
(i)核酸を提供することおよび式(I)に従うサポニンを提供すること、
【0074】
【化9】
【0075】
式中、
はキシロース残基、アラビノース残基、またはグルコース残基であり、そのC1原子によって式(I)の対応するキシロース残基に結合され、
は、同じ分子上の他のR残基から独立して、H、アセチル残基、またはそのC1原子によって式(I)の対応するキノボース残基に結合されたキシロース残基であり、ただし、キノボース残基に結合された少なくとも2つのアセチル残基または少なくとも1つのアセチル残基およびキシロース残基が、サポニンに存在する、ならびに
(ii)サポニンの存在下において核酸と細胞をインキュベーションすること、
ここで、CRISPR/Casコンストラクトをコードする核酸は、少なくとも、Casをコードする核酸の第1の部分を含み、ここで、核酸は、任意に、gRNAをコードするかまたはgRNAを含むかまたはgRNAである核酸の第2の部分を含む。
【0076】
有利には、核酸がプラスミドDNAであるということを特徴とする方法が提供される。
【0077】
以下を特徴とする本発明に従う方法が好ましい:核酸はナノ粒子の一部を形成し、このナノ粒子はさらにナノ粒子形成化合物を含む。
【0078】
以下を特徴とする本発明に従う方法が特に好ましい:ナノ粒子はナノ粒子形成化合物のポリリジンペプチドを含み、ここで、好ましくはポリリジンペプチドは5~25個のリジン残基からなり、より好ましくはポリリジンペプチドは16個のリジン残基からなる。例えば、好ましいポリリジンペプチドはK16ペプチドともまた言われる。
【0079】
本発明の方法または使用が以下を特徴とするということは本発明の一部である:ナノ粒子は、ナノ粒子形成化合物、例えばペプチド、例えばポリリジンおよび核酸を3:1から15:1の範囲の、好ましくは3:1から9:1の範囲の質量比で含む。典型的には、ナノ粒子形成化合物はポリリジンペプチド、例えばK16ペプチドである。以下の方法が好ましい:核酸がプラスミドDNAであり、少なくともCas、好ましくはCas9(配列番号1)をコードしかつ任意にgRNAをもまたコードし、ここで、ナノ粒子は、プラスミドDNAに加えて少なくとも1つのポリリジンペプチド、好ましくはポリリジンK16ペプチド(16個のリジン残基からなるポリリジンペプチド)を含む。代替的には、ポリリジンペプチドは、8~25個のリジン残基、好ましくは10~20、より好ましくは12~18個からなるペプチドである。プラスミドDNA、K16ペプチドを包含するナノ粒子が調製および適用され、GE1741およびSO1861から選択されるサポニンの存在下において細胞と接触させられ、好ましくはサポニンがGE1741であるときには、高いインビトロトランスフェクション効率が本発明の方法によって得られる。典型的には、インビトロの選択された標的細胞内へのプラスミドDNAのトランスフェクションの間のサポニン濃度は、1μg/mL~5μg/mL、好ましくは2~4μg/mLである。本発明者らは、サポニンが1μg/mL~5μg/mLのサポニン濃度でナノプレックスと一緒に細胞に適用されるときに、サポニンが、ナノプレックスがGE1741またはSO1861などのサポニンの存在下において接触させられる細胞に対する毒性の活性を見せないということを確立した。細胞は、典型的には、ナノプレックスを含む組成物およびサポニン、好ましくはGE1741を含む別個の組成物と接触させられる。それゆえに、典型的には、ナノ粒子は、ポリリジンペプチドおよび核酸、例えば、少なくとも以下をコードするプラスミドDNAを含む:Cas、好ましくはCas9(配列番号1)、または少なくとも90%の配列同一性、好ましくは90~99.5%の配列同一性、例えば92%、93%、94%、95%、または95~99%をこのCas9に対して有するCas。
【0080】
サポニン濃度が方法のステップ(ii)において1μg/mL~5μg/mLであるということを特徴とする本発明に従う方法が好ましい。典型的には、細胞のトランスフェクションの間のサポニンの濃度は、1.5~4.5μg/mL、例えば2、2.5、3、3.5、もしくは4μg/mL、またはそれらの間のいずれかの濃度である。かかるサポニン濃度は、本発明の使用および方法に従うと、核酸のトランスフェクションのために選択される細胞に対して毒性を課さない。サポニンが好ましくはGE1741またはSO1841であり、より好ましくはサポニンがGE1741であるかかるサポニン濃度は、核酸、好ましくは少なくともCas、好ましくはCas9(配列番号1)をコードするプラスミドDNAの効率的なトランスフェクションにとって好適である。代替的には、コードされるCasはCas12a(配列番号2)またはCas13a(配列番号3)である。
【0081】
本発明者らは、細胞が、少なくとも5.5kbpのサイズ、例えば6.5kbp~8.5kbp、例えば7kbp~8.3kbpのサイズを有するプラスミドDNAを含み、かつK16ペプチドなどのポリリジンペプチドを含むナノプレックスと、サポニンSO1861またはGE1741の存在下においてインビトロで接触させられたときに、比較的高いトランスフェクション効力が得られたということを確立した。GE1741が好ましい。なぜなら、GE1741の適用によって、SO1861と比較して、ずっと改善されたトランスフェクション効率が達成可能であったからである。このときには、効率は、製造者の推奨に従って「ゴールドスタンダード」Lipofectamin3000を適用するトランスフェクションによって得られる結果と比較された。よって、本発明の方法におけるおよび本発明に従う使用のためのGE1741の適用は特に好ましい。ナノプレックスは、5.5kbpまたはより大きい、例えば5.5~9.5kbpのサイズを有するプラスミドDNAなどの核酸とK16ペプチドなどのポリリジンペプチドとを混合することによって、最初に調製され、核酸およびポリリジンのかかるナノプレックスが得られた後に、これらのナノプレックスは、核酸およびポリリジンペプチドからなるナノプレックスがサポニンの存在下において細胞に適用される前に、任意に、最初に、SO1861またはGE1741などのサポニンとさらに混合される。代替的には、ナノ粒子およびサポニンは細胞培養物に別個に追加され、その結果、細胞は例えば細胞培養培地中のサポニンの存在下においてトランスフェクションされる。
【0082】
ある実施形態は、以下を特徴とする本発明に従う方法である:
サポニンが式(II)に従うGE1741であるということ:
【0083】
【化10】
【0084】
式中、Rはキシロースである、
または、サポニンが式(III)に従うSO1861であるということ:
【0085】
【化11】
【0086】
サポニンがGE1741である本発明の方法または本発明に従う使用が好ましい。効率的なトランスフェクションが、標的細胞のトランスフェクションの間にGE1741またはSO1861と組み合わせるナノプレックスによって達成されるので、本明細書に記載される実施形態に従う類似の分子構造を有するサポニンもまた、本発明の使用に従ってまたは本発明の方法に従って核酸トランスフェクション効率を改善することにとって好適である。
【0087】
典型的には、本発明の方法においてまたは本発明の使用に従って、サポニンは、1~5μg/mlの標的細胞のトランスフェクションの間の濃度で適用される。なぜなら、本発明のナノプレックス(ナノ粒子)に含まれる核酸のトランスフェクション効率に対するサポニンの存在の正の影響が考えられるときに、かかる濃度では、サポニンは細胞に対して非毒性でありながら、トランスフェクション効力は依然として最適であるからである。好ましくは、ナノプレックスはポリリジンペプチドK16を含む。当然のことながら、細胞毒性がポリリジンペプチドの代替的な長さの影響下において誘導されない限り、かつトランスフェクション効率が、トランスフェクション効率が少なくとも15%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、最も好ましくは少なくとも30%であるK16とは異なる長さを有するポリリジンペプチドを適用することによって阻止されない限り、より短いおよびより長いポリリジンペプチドは等しく好適である。典型的には、少なくとも5.5kbp、例えば5.5~10kbpまたは6.5~9.0kbpのサイズのプラスミドDNAをトランスフェクションすることにとって、トランスフェクション効率が考えられるときに、K16ペプチドの適用は高度に有益である。本発明の方法において適用されるかまたは本発明に従う使用のために適用されるナノプレックスでは、よって、K16ペプチドの存在が好ましいが、より短いまたはより長い長さを有するポリリジンペプチド、例えばK10~K20もまた好適である。
【0088】
有利には、本発明の方法において、核酸は、少なくともCasをコードする第1の部分を含むCRISPR/Casコンストラクトをコードする核酸であり、ここで、核酸は、任意に、gRNAをコードするかまたはgRNAを含むかまたはgRNAである第2の部分を含むであろう。以下を特徴とする本発明の使用または本発明に従う方法が特に好ましい:CRISPR/Casコンストラクトをコードする核酸はプラスミドDNAの一部として提供され、好ましくは、ここで、少なくとも、CRISPR/CasコンストラクトのCas部分をコードする核酸の部分はプラスミドDNAの一部として提供され、より好ましくは、ここで、プラスミドDNAは、CRISPR/CasコンストラクトのCasおよびgRNAを発現するためである。好ましくは、プラスミドDNAは、Cas9(配列番号9)を、または少なくとも90%の配列同一性をこのCas9蛋白質に対して有するCasをコードする。典型的には、プラスミドDNAは少なくとも6.0kbp、例えば6.5~8.8kbpのサイズを有する。典型的には、プラスミドDNAがCas、好ましくはCas9をコードする核酸を包含し、かつgRNAをコードする核酸をもまた包含するときに、プラスミドDNAのサイズは7.0kbpよりも大きく、例えば7.5~9.5kbp、または8~8.5kbpである。Cas、例えばCas9(配列番号1)をコードする核酸およびgRNAをコードする核酸を含むプラスミドDNAを適用することが有益である。なぜなら、単一のプラスミドDNAが、ポリリジンペプチド、好ましくはK16ペプチドとのナノプレックス形成に、およびその後にサポニン(細胞にナノ粒子を追加する前に、または細胞にナノ粒子を含む別個の組成物およびサポニンを含む別個の組成物を同時追加することによってどちらかで)、例えばSO1861またはGE1741、好ましくはGE1741との混合物の形成に関わらなくてはならないのみであるからである。単一のプラスミドDNAのみがペプチドとナノプレックス化(かつ任意に、ナノプレックス化した核酸によるトランスフェクションのために選択された細胞に追加される前にサポニンと予め混合)されなければならないときには、一貫したバッチ間の生産がより便利かつ容易にされる。しかしながら、本発明の方法および使用は、Casをコードする第1のプラスミドDNAおよびgRNAをコードする第2のプラスミドDNAの適用にとってもまた好適かつ応用可能である。実施形態において、本発明の方法および使用は、Cas9および緑色蛍光蛋白質(GFP)をコードするプラスミドDNAで適用される。
【0089】
プラスミドDNAが6kbpよりも多く、好ましくは少なくとも7kbp、より好ましくは少なくとも7.5kbp、最も好ましくは少なくとも8kbpを含むということを特徴とする本発明の使用または方法が好ましい。例えば、Cas9をコードする核酸を含むプラスミドDNAは典型的には6.5~7.5kbpであり、Cas9-GFPコンストラクトをコードする核酸を含むプラスミドDNAは典型的には7.5~8.5kbpである。ナノプレックスがK16ペプチドなどのポリリジンペプチドによって調製され、任意にその後にGE1741などのサポニンと混合され、これらのナノプレックスが(予め混合された)サポニンの存在下においてトランスフェクションのために選択された細胞と接触させられるときに、かかるプラスミドDNAサイズは効率的にトランスフェクションされ得る。本発明者らは、先に、一般的な意味で、細胞が16:1の質量比のナノプレックス(ナノプレックス(ナノ粒子)の総重量に基づいて16部のペプチド、1部の核酸)と接触させられたときに、毒性の効果が明らかになったということを明らかにした。加えて、本発明者らは、先に、一般的な意味で、細胞が2:1の質量比(ペプチド:核酸)のナノプレックスと接触させられたときに、非効率的な核酸送達が明らかになったということを明らかにした。よって、毒性の不在に鑑みてかつ見かけ上の核酸送達効率に鑑みて、ナノプレックスは、ナノプレックス(ナノ粒子)の総重量に基づいてペプチド質量対核酸質量の3:1から12:1の質量比で製剤される。好ましくは、核酸、例えばトータルのペプチド対トータルのプラスミドDNAの質量比は、ナノプレックスの総重量に基づいて4:1から8:1、例えば4:1、5:1、6:1、7:1、または8:1である。サポニン、例えばSO1861またはGE1741、好ましくはGE1741の影響下において、ポリリジンペプチド、例えばK14~K18ペプチド、好ましくはK16ペプチドを含み、かつCas9(配列番号1)などのCasをコードする核酸を含みかつgRNAをコードする核酸を含む単一の第1のプラスミドDNAを含むかまたは前記Casをコードする第1のプラスミドDNAおよび前記gRNAをコードする第2のプラスミドDNAを含むナノプレックス(ナノ粒子)では、トランスフェクション効率は典型的には少なくとも20%である。
【0090】
Casをコードする核酸が以下をコードするということを特徴とする本発明の使用または本発明に従う方法が好ましい:Cas9(配列番号1)、Cas12a(配列番号2)、Cas13a(配列番号3)、または少なくとも90%のアミノ酸残基同一性をストレプトコッカス・ピオゲネス血清型M1のCas9、フランシセラ・ツラレンシスsubsp.ノビシダ(株U112)のCas12a、およびレプトトリキア・ブッカリス(株ATCC14201/DSM1135/JCM12969/NCTC10249/C-1013-b)のCas13aのいずれか1つに対して有するCas。好ましくは、Casをコードする核酸は、プラスミドDNA、例えば、6~9kbp、典型的には6.5~8.5kbpのサイズを有するプラスミドDNAの一部である。Cas9では、gRNAはtracrRNAおよびCRISPR-RNA(crRNA)をコードするが、核酸がCas12a(配列番号2)またはCas13a(配列番号3)をコードするときには、gRNAをコードする核酸はcrRNAのみをコードする。本発明の方法において適用されるかまたは本発明の使用に関わる核酸が、Cas9、または少なくとも90%の配列同一性を配列番号1に従うCas9に対して有するCasをコードするときには、コードされるgRNAはCRISPR-RNA(crRNA)を含みかつトランス活性化CRISPR-RNA(tracrRNA)を含み、ここで、gRNAはシングルガイドRNA(sgRNA)またはツーピースRNAであり、ここで、tracrRNAはCas9の結合部位を含む。
【0091】
本発明の第3の態様は、以下を含む、インビトロの細胞内に5.5キロ塩基対(kbp)よりも多くを含む核酸を送達するためのパーツキットに関する:
以下を含むかまたはそれらからなる第1の組み合わせ:
(a)第1のプラスミドDNAを含む第1の容器、
(b)任意に、第2のプラスミドDNAを含む第2の容器、
(c)ポリリジンK16ペプチドを含む第3の容器、
(d)ビスデスモシド型のトリテルペノイド12,13-デヒドロオレアナン型サポニンであり、好ましくは1つのサポニンであり、最も好ましくはGE1741およびSO1861から選択される少なくとも1つのサポニンを含む第4の容器、
(e)使用説明書,
ここで、使用は、少なくとも、ポリリジンK16ペプチドおよび第1のプラスミドDNAのナノプレックス、ならびに任意にサポニンの調製を含み、
ここで、第1のプラスミドは少なくとも5.5kbpのサイズを有する、
あるいは
以下を含むかまたはそれらからなる第2の組み合わせ:
(a)第3のプラスミドDNAを含む第1の容器、
(b)ポリリジンK16ペプチドを含む第2の容器、
(c)ビスデスモシド型のトリテルペノイド12,13-デヒドロオレアナン型サポニンであり、好ましくは1つのサポニンであり、最も好ましくはGE1741およびSO1861から選択される少なくとも1つのサポニンを含む第3の容器、
(d)使用説明書、
ここで、使用は、少なくとも、ポリリジンK16ペプチドおよび第3のプラスミドDNAのナノプレックス、ならびに任意にサポニンの調製を含み、
ここで、第3のプラスミドは少なくとも5.5kbpのサイズを有する、
あるいは
以下を含むかまたはそれらからなる第3の組み合わせ:
(a)第1のプラスミドDNAを含む第1の容器、
(b)任意に、RNAオリゴヌクレオチドを含む第2の容器、
(c)ポリリジンK16ペプチドを含む第3の容器、
(d)少なくとも1つのサポニン、ビスデスモシド型のトリテルペノイド12,13-デヒドロオレアナン型サポニンであり、好ましくは1つのサポニンであり、最も好ましくはGE1741およびSO1861から選択されるサポニンを含む第4の容器、
(e)使用説明書、
ここで、使用は、少なくとも、ポリリジンK16ペプチドおよび第1のプラスミドDNAのナノプレックス、ならびに任意にサポニンの調製を含み、
ここで、第1のプラスミドは少なくとも5.5kbpのサイズを有する、
好ましくは、ここで、第1のプラスミドDNAはCas9をコードし、第2のプラスミドDNAはgRNAをコードし、および/またはRNAオリゴヌクレオチドはgRNAのRNAオリゴヌクレオチドであり、あるいは、ここで、第3のプラスミドDNAはCas9をコードしかつgRNAをコードする。
【0092】
代替的には、本発明の第3の態様は、以下を含むインビトロの細胞内にCRISPR/Casコンストラクトをコードする核酸を送達するためのパーツキットに関し得る:
以下を含むかまたはそれらからなる第1の組み合わせ:
(a)Cas9をコードする第1のプラスミドDNAを含む第1の容器、
(b)任意に、gRNAをコードする第2のプラスミドDNAを含む第2の容器、
(c)ポリリジンK16ペプチドを含む第3の容器、
(d)少なくとも1つのサポニン、好ましくはGE1741およびSO1861の1つのサポニンを含む第4の容器、
(e)使用説明書、
ここで、使用は、少なくとも、ポリリジンK16ペプチドおよび第1のプラスミドDNAのナノプレックス、ならびに任意にサポニンの調製を含み、
ここで、第1のプラスミドは少なくとも5.5kbpのサイズを有する、
あるいは
以下を含むかまたはそれらからなる第2の組み合わせ:
(a)Cas9をコードしかつgRNAをコードする第3のプラスミドDNAを含む第1の容器、
(b)ポリリジンK16ペプチドを含む第2の容器、
(c)少なくとも1つのサポニン、好ましくはGE1741およびSO1861の1つのサポニンを含む第3の容器、
(d)使用説明書、
ここで、使用は、少なくとも、ポリリジンK16ペプチドおよび第3のプラスミドDNAのナノプレックス、ならびに任意にサポニンの調製を含み、
ここで、第3のプラスミドは少なくとも5.5kbpのサイズを有する、
あるいは
以下を含むかまたはそれらからなる第3の組み合わせ:
(a)Cas9をコードする第1のプラスミドDNAを含む第1の容器、
(b)任意に、gRNAのRNAオリゴヌクレオチドを含む第2の容器、
(c)ポリリジンK16ペプチドを含む第3の容器、
(d)少なくとも1つのサポニン、好ましくはGE1741およびSO1861の1つのサポニンを含む第4の容器、
(e)使用説明書、
ここで、使用は、少なくとも、ポリリジンK16ペプチドおよび第1のプラスミドDNAのナノプレックス、ならびに任意にサポニンの調製を含み、
ここで、第1のプラスミドは少なくとも5.5kbpのサイズを有する。
【0093】
キットは、任意に、以下を含有する少なくとも1つのさらなる容器を含む:第1、第2、または第3の組み合わせの第1、第2、第3、および存在する場合には第4の容器のいずれか1つ以上に含有される構成要素を希釈または溶解するための、ならびに/あるいは少なくともプラスミドDNAおよび16個のリジン残基からなるポリリジンペプチドを含むナノプレックスの構成要素と、任意に少なくとも1つのサポニン、好ましくはGE1741またはSO1861どちらか、より好ましくはGE1741とを希釈または溶解するための、希釈剤あるいは溶媒。好ましくは、キットは、唯一のサポニンとしてのGE1741を含む容器またはバイアルを含有する。典型的には、プラスミドDNAは、第1または第3の組み合わせで典型的な5.5kbp~10kbp、例えば6.5kbp~7.5kbp、または第2の組み合わせで典型的な7.5kbp~8.5kbpのサイズを有する。プラスミドDNAは、好ましくは、配列番号1のアミノ酸配列に従うCas9をコードするDNAの部分を含む。代替的には、キットは、少なくとも90%の同一性をCas9のアミノ酸配列(配列番号1、例えばwww.uniprot.org/uniprot/Q99ZW2参照)に対して有するCasをコードするプラスミドDNAを含む。
【0094】
キットの第1のもしくは第2の組み合わせのコードされる非コードガイドRNAまたはキットの第3の組み合わせに含まれるgRNAは、CRISPR-RNA(crRNA)を含み、かつトランス活性化CRISPR-RNA(tracrRNA)を含み、ここで、ガイドRNAはシングルガイドRNAまたはツーピースRNAであり、ここで、tracrRNAは、第1または第3のプラスミドDNAによってコードされるCas9の結合部位を含む。
【0095】
本発明の使用および/または方法および/またはキットは、インビトロのノックインされた遺伝子を有する細胞、好ましくはインビトロの安定にトランスフェクションされたノックイン細胞を得ることにとって特に好適である。好ましくは、標的細胞ゲノムにノックインされるべき蛋白質をコードする核酸は直鎖ドナー配列(LDS)の型のDNAであるが、環状DNAドナー鋳型もまた、本発明の方法を適用することによってまたは本発明の使用に従って、本発明のキットの使用によって標的細胞のゲノムにコードする核酸をノックインするために応用可能である。例えばベクターまたはプラスミドDNAの形態のLDSまたは環状DNAドナー鋳型は、好ましくはプラスミドDNAの一部としてのCas、好ましくはCas9(配列番号1)をコードする核酸と共トランスフェクションされ、このプラスミドDNAは、好ましくはgRNAをコードする核酸をもまた含むが、共トランスフェクションでは、gRNAは、RNAとしてまたはgRNAをコードするさらなるプラスミドDNAとしてもまた提供され得る。本発明に従うと、CasおよびgRNAをコードする核酸、好ましくは1つまたは2つのプラスミドDNA、より好ましくは単一のプラスミドDNAは、プラスミドDNA、ポリリジンペプチド、好ましくはK16ペプチド、および任意にSO1861およびGE1741から選択されるサポニンを含むかまたはそれらからなる、好ましくは含むナノ粒子(ナノ粒子を形成するナノプレックス化した構成要素)として提供され、好ましくは、サポニンはGE1741である。核酸およびポリリジンペプチドを含むナノ粒子が好ましく、これらのナノ粒子は、核酸による標的細胞のトランスフェクションの間にサポニンと混合される。直鎖または環状DNAドナー鋳型、好ましくはLDSの(安定な)トランスフェクションによるノックインのために選択された細胞は、サポニンおよびナノ粒子およびDNAドナー鋳型と接触させられ、その結果、Cas、好ましくはCas9(配列番号1)をコードする核酸、gRNAをコードする核酸、およびDNAドナー鋳型、好ましくはLDSがインビトロの細胞内にトランスフェクションされ、その結果、その後に、ドナーDNAは細胞のゲノムの標的位置にノックインされる。好ましくは、本発明の使用、本発明の方法、本発明のキットの適用、および/またはサポニンとの組み合わせでの本発明のナノ粒子の適用は、標的細胞の効率的なトランスフェクションをもたらし、ここで、「効率的」は少なくとも20%、例えば少なくとも25%または少なくとも30%または少なくとも35%のトランスフェクション率を言い、好ましくは、細胞のゲノム上への選択された核酸のノックインは安定なトランスフェクションである。つまり、ノックインされた核酸は細胞の一またはより多くの継代後に細胞のゲノムに留まる。
【0096】
本発明の第4の態様は、細胞内への核酸のインビトロ送達にとって好適なナノ粒子を含む組成物に関し、ここで、ナノ粒子は以下を含むかまたはそれらからなる:
(i)5.5キロ塩基対(kbp)よりも多くを含む核酸、
(ii)ポリリジンペプチド、および
(iii)ビスデスモシド型のトリテルペノイド12,13-デヒドロオレアナン型サポニンであるサポニン。
【0097】
本発明の第4の態様のある具体的な実施形態は、有利には、細胞内へのCRISPR/Casコンストラクトをコードする核酸のインビトロ送達にとって好適なナノ粒子を含む組成物に関し得る。ここで、ナノ粒子は以下を含むかまたはそれらからなる:
(i)CRISPR/Casコンストラクトをコードする核酸、
(ii)ポリリジンペプチド、
ここで、CRISPR/Casコンストラクトをコードする核酸は、少なくとも、CRISPR関連エンドヌクレアーゼ(Cas)をコードする核酸の第1の部分を含み、ここで、核酸は、任意に、ガイドRNA(gRNA)をコードするかまたはgRNAであるかまたはgRNAを含む核酸の第2の部分を含む。
【0098】
式(I)に従うサポニンを含む本発明の組成物が好ましい:
【0099】
【化12】
【0100】
式中、
はキシロース残基、アラビノース残基、またはグルコース残基であり、そのC1原子によって式(I)の対応するキシロース残基に結合され、
は、同じ分子上の他のR残基から独立して、H、アセチル残基、またはそのC1原子によって式(I)の対応するキノボース残基に結合されたキシロース残基であり、ただし、キノボース残基に結合された少なくとも2つのアセチル残基または少なくとも1つのアセチル残基およびキシロース残基が、サポニンに存在する。
【0101】
本発明に従うと、組成物が、5.5kbpよりも多くを含む選ばれた核酸、例えばCRISPR/Casコンストラクトによるトランスフェクションのために選択される細胞に適用される前に、組成物は最初にサポニンと混合され得る。または、細胞にサポニンを含む第1の組成物を適用することによって、かつ細胞に本発明の組成物を適用することによって、組成物は細胞と接触し、サポニンもまた細胞に追加される。
【0102】
ある実施形態は、サポニンを含む本発明に従う組成物であり、ここで、式(I)に従うサポニンのRはキシロース残基であり、および/またはサポニンは厳密に2つのアセチル基を持つ。
【0103】
ある実施形態は、サポニンを含む本発明に従う組成物であり、ここで、式(I)に従うサポニンのアセチル基はサポニンの対応するキノボース残基のC3位置およびC4位置における酸素原子に結合される。
【0104】
ある実施形態は、サポニンを含む本発明に従う組成物であり、ここで、式(I)に従うサポニンのR残基の1つはキシロース残基であり、R残基の1つはアセチル基であり、R残基の1つはHである。
【0105】
ある実施形態は、サポニンを含む本発明に従う組成物であり、ここで、式(I)に従うサポニンのキシロース残基は対応するキノボース残基のC3位置における酸素原子に結合され、アセチル基はサポニンの対応するキノボース残基のC4位置における酸素原子に結合する。
【0106】
ある実施形態は、サポニンを含む本発明に従う組成物であり、ここで、式(I)に従うサポニンのRはキシロース残基であり、式(I)に従うサポニンの2つのR基はアセチル基であり、これらは対応するキノボース残基のC3位置およびC4位置における酸素原子に結合され、第3のR基はHである。
【0107】
ある実施形態はサポニンを含む本発明に従う組成物であり、ここで、サポニンは式(II)に従うGE1741である:
【0108】
【化13】
【0109】
式中、Rはキシロースである、
または、ここで、サポニンは式(III)に従うSO1861である、
【0110】
【化14】
【0111】
ポリリジンペプチドが5~25個のリジン残基からなり、より好ましくはポリリジンペプチドが16個のリジン残基からなる本発明に従う組成物が好ましい。
【0112】
典型的には、本発明に従う組成物において、ナノ粒子は、ポリリジンペプチドおよび核酸を3:1から15:1の範囲の、好ましくは3:1から9:1の範囲の質量比で含む。組成物はサポニンを含むか、含まないかのどちらかである。典型的には、本発明の組成物はサポニンを含まず、組成物がコンストラクトによって細胞をトランスフェクションするために適用されるときに、細胞は、ここでは上で概説された実施形態の本発明の組成物およびサポニンと同時インキュベーションされる。
【0113】
核酸がプラスミドDNAの一部である本発明に従う組成物が好ましい。上で説明された通り、ある種の実施形態においては、以下の組成物が好ましい:核酸は少なくともCasをコードする核酸の第1の部分を含み、ここで、核酸は、任意に、gRNAをコードするかまたはgRNAを含むかまたはgRNAである核酸の第2の部分を含む。
【0114】
プラスミドDNAが6kbpよりも多く、好ましくは少なくとも7kbp、より好ましくは少なくとも7.5kbp、最も好ましくは少なくとも8kbpを含む本発明の組成物が特に好ましい。
【0115】
核酸のCasをコードする第1の部分が以下をコードする本発明に従う組成物が好ましい:Cas9(配列番号1)、Cas12a(配列番号2)、Cas13a(配列番号3)、または少なくとも90%のアミノ酸残基同一性をストレプトコッカス・ピオゲネス血清型M1のCas9、フランシセラ・ツラレンシスsubsp.ノビシダ(株U112)のCas12a、およびレプトトリキア・ブッカリス(株ATCC14201/DSM1135/JCM12969/NCTC10249/C-1013-b)のCas13aのいずれか1つに対して有するCas。
【0116】
本発明の第5の態様は、細胞内への核酸のインビトロ送達にとって好適なナノ粒子に関し、ナノ粒子は以下を含むかまたはそれらからなる:
(i)CRISPR/Casコンストラクトをコードする核酸、
(ii)ポリリジンペプチド、および
(iii)式(I)に従うサポニン、
【0117】
【化15】
【0118】
式中、
はキシロース残基、アラビノース残基、またはグルコース残基であり、そのC1原子によって式(I)の対応するキシロース残基に結合され、
は、同じ分子上の他のR残基から独立して、H、アセチル残基、またはそのC1原子によって式(I)の対応するキノボース残基に結合されたキシロース残基であり、ただし、キノボース残基に結合された少なくとも2つのアセチル残基または少なくとも1つのアセチル残基およびキシロース残基がサポニンに存在し、
ここで、CRISPR/Casコンストラクトをコードする核酸は、少なくとも、CRISPR関連エンドヌクレアーゼ(Cas)をコードする核酸の第1の部分を含み、ここで、核酸は、任意に、ガイドRNA(gRNA)をコードするかまたはgRNAであるかまたはgRNAを含む核酸の第2の部分を含む。
【0119】
本発明の実施形態は本発明に従うナノ粒子であり、式(I)に従うサポニンのRはキシロース残基であり、および/またはサポニンは厳密に2つのアセチル基を持つ。
【0120】
以下の本発明に従うナノ粒子が好適である:式(I)に従うサポニンのアセチル基が、サポニンの対応するキノボース残基のC3位置およびC4位置における酸素原子に結合される。
【0121】
以下の本発明に従うナノ粒子もまた好適である:式(I)に従うサポニンのR残基の1つはキシロース残基であり、R残基の1つはアセチル基であり、R残基の1つはHである。
【0122】
ある種の実施形態において、本発明に従うナノ粒子は式(I)のサポニンを含み、ここで、式(I)に従うサポニンのキシロース残基は対応するキノボース残基のC3位置における酸素原子に結合され、アセチル基はサポニンの対応するキノボース残基のC4位置における酸素原子に結合される。
【0123】
ある種の実施形態において、本発明に従うナノ粒子は式(I)のサポニンを含み、ここで、式(I)に従うサポニンのRはキシロース残基であり、ここで、式(I)に従うサポニンの2つのR基はアセチル基であり、これらは対応するキノボース残基のC3位置およびC4位置における酸素原子に結合され、第3のR基はHである。
【0124】
以下の本発明に従うナノ粒子が好ましい:
サポニンが式(II)に従うGE1741である:
【0125】
【化16】
【0126】
式中、Rはキシロースである、
または、サポニンが式(III)に従うSO1861である:
【0127】
【化17】
【0128】
好ましくは、ナノ粒子はSO1861またはGE1741、より好ましくはGE1741を含む。
【0129】
好ましくは、本発明に従うナノ粒子では、ポリリジンペプチドは5~25個のリジン残基からなり、より好ましくはポリリジンペプチドは16個のリジン残基からなる。
【0130】
典型的には、本発明に従うナノ粒子では、ナノ粒子は、核酸およびポリリジンペプチドを3:1から15:1の範囲の、好ましくは3:1から9:1の範囲の質量比で含む。好ましくは、範囲は4:1~8:1から選択される。
【0131】
核酸がプラスミドDNAの一部である本発明に従うナノ粒子が好ましい。プラスミドDNAは、好ましくは、Cas、好ましくはCas9(配列番号1)をコードする核酸の第1の部分と、gRNAをコードする核酸の第2の部分とを含む。
【0132】
典型的には、本発明に従うナノ粒子では、プラスミドDNAは、5.5kbpよりも多く、好ましくは少なくとも6kbp、より好ましくは少なくとも7kbp、最も好ましくは少なくとも7.5kbpを含む。プラスミドDNAはCRISPR/Casコンストラクトをコードする核酸を含む。CRISPR/Casコンストラクトをコードする核酸は、少なくとも、CRISPR関連エンドヌクレアーゼ(Cas)をコードする核酸の第1の部分を含み、ここで、核酸は、任意に、ガイドRNA(gRNA)をコードするかまたはgRNAであるかまたはgRNAを含む核酸の第2の部分を含む。
【0133】
本発明に従うナノ粒子では、核酸のCasをコードする第1の部分は以下をコードするということが好ましい:Cas9(配列番号1)、Cas12a(配列番号2)、Cas13a(配列番号3)、または少なくとも90%のアミノ酸残基同一性をストレプトコッカス・ピオゲネス血清型M1のCas9、フランシセラ・ツラレンシスsubsp.ノビシダ(株U112)のCas12a、およびレプトトリキア・ブッカリス(株ATCC14201/DSM1135/JCM12969/NCTC10249/C-1013-b)のCas13aのいずれか1つに対して有するCas。より好ましいのは、CasはCas9である。
【0134】
細胞内内へのCRISPR/Casコンストラクトをコードする核酸のインビトロ送達にとって好適なナノ粒子を含む本発明の組成物、または本発明のナノ粒子は、サポニンの存在下において核酸によって細胞をトランスフェクションするための本発明に従う方法における適用にとって特に好適である。本発明の使用には、典型的には本発明のかかる組成物または本発明のかかるナノ粒子が関わり、ここでサポニンはトランスフェクションされるべきである細胞に同時投与されるか、またはサポニンは組成物の一部またはナノ粒子の一部である。
【0135】
本発明はさらに次の例によって例示される。これらは決して本発明を限定すると解釈されるべきではない。いくつかのパーツまたは化合物の改変および代替的な実装が可能であり、添付の請求項に定められる保護の範囲に包含される。
【実施例
【0136】
ナノプレックスキャラクタリゼーション
本発明者らは、比較的大きいプラスミドDNA(8,216bp)からオリゴリジンに基づくナノプレックス(ナノ粒子)への非自明な複合体化を行なうことを成し遂げた。かかる複合体化は、先には、4~5kbpの範囲のプラスミドでのみ達成されていた(サーマ(Sama)ら,2017年)。K16ペプチドおよびDNAプラスミドからなるナノプレックス、いわゆる「PDナノプレックス」を異なる質量比で製剤し(図1図2)、DNA複合体化を定性的に(ゲル保持アッセイ)および定量的に(蛍光強度測定)決定した(図3)。プラスミドDNAはCas9をコードした。Cas9アミノ酸配列はここでは下の配列のリストにおいて配列番号1として提供される。Cas9配列はストレプトコッカス・ピオゲネス血清型M1からのCas9であり、配列はwww.uniprot.org/uniprot/Q99ZW2から検索され、ここでは、それは>sp|Q99ZW2|CAS9_STRP1 CRISPR関連エンドヌクレアーゼCas9/Csn1として挙げられた。
【0137】
サイズおよびサイズ分布
Cas9およびCas9-GFPDNAを装填したPDナノプレックスを、異なる質量比で複合体化した。サイズおよびPDI(多分散指数)は、安定性およびトランスフェクション効率の観点から最適な製剤のための質量比の初期評価を提供する(図1)。適用されるペプチドの質量および適用される核酸の質量の間の質量比が考えられるときに、サイズ値は、より高い質量比ではより小さい粒子への傾向を示した。PDIは全ての製剤について単分散粒子の懸濁を指示した。これは、4:1質量比(ペプチド:核酸)製剤について示される例示的なサイズ分布評価によって確認された(図2)。
【0138】
ゲル保持
いかなる理論による拘束も望まなければ、ゲル電気泳動において、臭化エチジウムまたはSYBRセーフDNAゲル染色剤のような色素は、インターカレーション後の蛍光によって二本鎖核酸を可視にするという目的を有する。DNAがナノプレックス内にコンパクトに組み込まれる場合には、核酸は電圧を印加した後にアノードに向かって流れない。正荷電のオリゴペプチドの負電荷の相殺が達成されるので、ナノプレックス内のDNAはゲルポケットに留まる。
【0139】
よって、Cas9、Cas9-GFP、および比較のGFPをコードするDNAプラスミドを異なる質量比で複合体化し、ゲルポケットに移入した。電気泳動を完了した後には、大きいプラスミド(Cas9約7kbp、Cas9-GFP約8kbp)でさえも、DNA複合体化が可能であり、達成されるということが観察された(図3)。
【0140】
複合体化を定量または複合体化効率を決定するために、蛍光に基づく定量アッセイをナノプレックス製剤後に実施した。DNAに対する結合後に蛍光性の色素(Quant-IT(商標)PicoGreen(商標)、サーモフィッシャー)を用いて、遊離のDNAの量を計算し-複合体化したDNAは色素によってアクセスし得ない-それによって、複合体化効率を計算した。
【0141】
実験は、ペプチド(ポリリジンK16ペプチド)の量を増大させると、わずかに増大した効率が観察され、これは全ての質量比について一般的に効率的であった(84~98%)ということを明らかにした。加えて、より大きいプラスミドサイズでは、より効率的でない複合体化が観察された(図3)。
【0142】
本発明者らは、先に、一般的な意味で、細胞が16:1質量比のナノプレックスと接触させられたときには、毒性の効果が明らかになったということを明らかにした。加えて、本発明者らは、先に、一般的な意味で、N/P比を原因として、細胞が2:1質量比のナノプレックスと接触させられたときには、非効率的な核酸送達が明らかになったということを明らかにした。よって、毒性および核酸送達効率を、4:1および8:1比で製剤されたPDナノプレックスで評価した。
【0143】
細胞トランスフェクション
Cas9-GFP-DNA移入
JIMT-1細胞(ヒト乳癌)およびNeuro-2A細胞(ネズミ神経芽腫)を、Cas9-GFPプラスミドを含有するナノプレックスによって、サポニンGE1741同時適用またはサポニンSO1861同時適用あり、およびなしで(つまり、サポニンは、サポニンの存在下においてトランスフェクションされるべきである核酸を含むナノ粒子の追加と一緒に、細胞培養物に追加される)、サポニンが考えられるときに非毒性の濃度でトランスフェクションした。ナノ粒子中のペプチドおよび核酸(プラスミドDNA)についての質量比は、動的光散乱(DLS)測定を考えて、かつ先述の以前に評価された毒性および以前に行なわれた効率研究を考えて選択した。全てのトランスフェクション条件のトランスフェクション効率を、48時間のインキュベーション時間後に、フローサイトメトリーによって、負の対照との比較によって、蛍光強度の観点から測定した(図4)。比較として、サポニンに基づくトランスフェクションの効率を、市販のトランスフェクションエンハンサーLipofectamine3000(商標)と比較した。商標Lipofectamin(商標)は非ウイルス系のトランスフェクションの分野におけるゴールドスタンダードとして見られている。トランスフェクション効率の決定はGFP(緑色蛍光蛋白質)遺伝子によって可能であった。これは、核酸と細胞を接触させる間のサポニンの存在または不在下において、Cas9-GFP融合蛋白質遺伝子として共トランスフェクションされた。Cas9-GFPを含むDNAプラスミドの首尾良いトランスフェクション、よって、首尾良くトランスフェクションされた細胞内におけるCas9-DNAの細胞内転写によるCas9蛋白質の間接的送達は、共トランスフェクションされたGFP DNAによって引き起こされる緑色蛍光として示されるであろう。
【0144】
Neuro-2A細胞のトランスフェクションプロセス(播種、トランスフェクション、インキュベーション)の過程において、細胞は生細胞撮像装置(Cytosmart-Omni)によって詳しく撮像し、コンフルエンスについて分析した。視覚的画像を処理したクラウドに基づくアルゴリズムによって、Cytosmartはコンフルエンスの観点から生存率の有益な尺度を提供した。この同時の実験では、サポニン同時適用ありのおよびなしのトランスフェクションについて有意な毒性効果は観察されなかった(図5)。
【0145】
実施された試験は、サポニンが細胞トランスフェクションの間に存在したときには、大きいDNAプラスミド(少なくとも7kbpのサイズを有する)が細胞株内に効率的にトランスフェクションされ得たという驚くべき知見を提供した。そして、5kbpよりも小さいサイズを有する比較的小さいGFPプラスミドと比較して、トランスフェクションされるより少数の量の核酸分子を考慮するときには、実施された試験の結果はより多くのインパクトを獲得する。核酸の適用される量は500ng/ウェルに留まるが、トランスフェクションされたDNAプラスミドのサイズ、よってプラスミドの分子質量は有意に変化するので、効率は呈示されるものよりもいっそう高い。
【0146】
Cas9-DNA移入
GFPによって駆動される蛍光によってCas9-DNAの首尾良い送達を確立した後に、本発明者らは次にCas9-トランスフェクションの機能性を試験した。よって、GFPを発現するNeuro-2A-GFP細胞が取得された。試験の狙いは、CRISPR-Cas9遺伝子ノックアウトによるGFP遺伝子のノックアウトを示し、視覚化することであった。よって、Cas9-DNA(すなわちプラスミドDNA)を、gRNADNAプラスミド(PDD)と共トランスフェクションするか、またはCas9およびgRNA(PD)をコードしかつCas9およびガイドRNA両方を発現する1つのプラスミドDNA(「オールインワンプラスミド」)によって送達するかどちらかをした(図8図9)。細胞のトランスフェクションの間のGE1741同時適用の効果を、蛍光強度の減少によって検討した(FITC-HおよびFSCに関する4分割上のドットプロットのFITC-Hメジアンおよび分離)。両方の実験は蛍光の縮減を明らかにした(それぞれ全ての細胞の10%および11%は蛍光性と考えられなかった)(図6図7)。全ての細胞の30%がCas9-DNAによって首尾良くトランスフェクションされたということを考慮すると、結果はいくらかの程度まで効率的なかつ有意な遺伝子ノックアウトを示した。遺伝子ノックアウト効率を改善するために、gRNAにとって最も効率的な標的配列を選択するために、いくつもの異なるgRNA配列を試験した。初期におよびさらに適用されたgRNA配列は、効率情報を有するデータベースから得られた。多くのGFP配列が利用可能であるので、最適なgRNA配列の選択のためには、トランスフェクションされた細胞株のGFP遺伝子配列は公知でなければならない。さらに、遺伝子ノックアウトは、最小限の変化が検出され得る高感度のアッセイを要求する。プロモーターによって駆動される高度に蛍光性の細胞内では、単一の遺伝子ノックアウトは場合によっては同定され得なかった。
【0147】
Cas9-gRNA-DNAおよびLDS移入
鎖切断の直後のゲノムDNA上への直鎖ドナー配列(LDS。直鎖DNAドナー鋳型ともまた言われる)の組み込みは、対象の遺伝子によってノックインし、それによって細胞を安定にトランスフェクションするための方法である。このやり方で、CRISPR-Cas9技術によって、ノックアウトおよびノックインが確立され得る。GFPのようなレポーター遺伝子およびピューロマイシンのような耐性遺伝子をコードするLDSは、首尾良いCas9改変の検出、およびそれぞれの首尾良くトランスフェクションされた細胞の単離を促進する。以下を含む第1のキットが本発明者らによって提供される:Cas9およびgRNAをコードするオールインワンプラスミド(第1のプラスミドDNA)を含有する第1の容器、ならびにGFPおよびピューロマイシンをコードするLDS(DNAドナー鋳型としての用をなす直鎖ドナー配列DNA)を含有する第2の容器。オールインワンプラスミドおよびLDSは細胞内への共トランスフェクションのために選択され(図8)、キットは、さらに、第1のプラスミドおよびLDSを標的細胞内にトランスフェクションするための説明書を含む。類似に、以下を含む第2のキットが本発明者らによって提供される:Cas9およびgRNAをコードするオールインワンプラスミド(第1のプラスミド)を含有し、かつGFPおよびピューロマイシンをコードするLDSを含有する容器。オールインワンプラスミドおよびLDSは細胞内への共トランスフェクションのために選択され(図8)、キットは、さらに、第1のプラスミドおよびLDSを標的細胞内にトランスフェクションするための説明書を含む。第1のキットおよび第2のキットは、さらに、ペプチドおよび第1のプラスミドおよび(任意に)LDSのナノプレックスを提供するために、第1のプラスミドとの混合のためのおよび任意にLDSとの混合のため、または第1のプラスミドおよびLDSの組み合わせとの混合のための、ポリリジンK16ペプチドを含有するバイアルを含み得る。代替的には、第1のキットまたは第2のキットは、ペプチドおよび第1のプラスミドおよび(任意に)LDSのナノプレックスを提供するために、さらにポリリジンK16ペプチドを含有する第1の容器を含むか、またはさらにポリリジンK16ペプチドを含有する容器を含む。GFPによって媒介される蛍光は、核内へのGFPをコードするLDSの送達を証明する。ピューロマイシン選択圧によって選択されたトランスフェクションされた細胞は、Cas9によって誘導される鎖切断後のゲノム上への安定なLDS組み込みの証拠として、複数継代に渡ってGFP蛍光を発現するであろう。
【0148】
Cas9およびgRNAをコードするプラスミドDNAならびにGFPおよびピューロマイシンをコードするLDSによるNeuro-2A細胞の共トランスフェクションが、4:1および8:1のポリリジンK16ペプチド-核酸比でされ、プラスミドDNAおよびLDSが等しく複合体化された(500ng/ウェル)。細胞のトランスフェクションを、細胞が培養された細胞培養培地中のGE1741あり、およびなしで行なった。サポニンの不在または存在の影響下におけるトランスフェクション効率を、細胞のトランスフェクションの間のLipofectamin3000の存在の影響下におけるトランスフェクションと比較した。全てのトランスフェクションされた細胞の30%超についての蛍光の発現は、サポニンがトランスフェクションの間に存在したときのLDSの首尾良い送達および帰結としてのGFPの発現を示している。Lipofectamin3000は匹敵する結果に到達しなかった(<10%)(図9)。
【0149】
ゲノム上へのドナー配列の組み込みは非相同組み換え(「NHR」)および相同組み換え(「HR」)によって行なわれ得る。直鎖ドナー配列は順向きおよび逆向きで組み込まれるが(図8)、相同な組み込み(相同組み換え「HR」)は相同な腕部によってのみ可能であり、専ら順向きの組み込みをもたらす(図10)。両方の技術は利点および欠点を呈示し得る。直鎖ドナー配列(LDS)DNAは、HRを適用する組み込みと比較して、NHRによってより容易に鎖切断部に組み込まれ得る。しかしながら、直鎖化された核酸はDNAseによって比較的素早く分解される。ドナー配列のより複雑な相同な組み込みは、そのベクターの安定性に直面する。溶質輸送体26a4に対する試験されたノックアウトキットの他にも(図9)、2つの他のLDSドナーキット(Slc19a3、Slc25a24)および2つのHRに基づくキットを試験した(Slc4a4、Slc11a2)。各キットについて、2つの異なるgRNA配列を調べた。結果は、蛍光発現が相同組み換えを用いるトランスフェクションでは検出され得なかったということを示している(図11)。しかしながら、LDSによるトランスフェクションは、サポニンがトランスフェクションの間に存在したときに有意な効率増大を示した。Slc26a4標的によるトランスフェクション後に到達された効率レベルが最も高かった。
【0150】
GE1741の存在下におけるCas9-gRNAプラスミドおよびLDSの共トランスフェクションのその後に、ピューロマイシンによって媒介される選択は、トランスフェクションされた細胞の単離を可能にし、ゲノム上へのドナー配列組み込みの同定を促進する。この目的のために、異なるピューロマイシン濃度をGE1741の存在下のトランスフェクションされた細胞に適用した。最適なピューロマイシン濃度は、ドナー配列から耐性を受け取った細胞は助命しながら、トランスフェクションされていない/非耐性細胞を最適に殺すはずである。0.5μg/mLのピューロマイシンはNeuro-2A細胞に対する有意な効果を達成せず、1μg/mLは単に不完全な選択を達成したが、2~3μg/mLは全てに近い細胞を逓減させ、よってさらなるステップに採用された(図12)。
【0151】
ピューロマイシン濃度を維持することによって、細胞を成長させた。コンフルエンスに到達したときに、ゲノムDNAを抽出した。設計されたプライマー(Slc26a4の始めのフォワードプライマー、Slc26a4の終わりのリバースプライマー)によって、組み込まれたドナーカセットの存在は、CRISPR-Cas9による標的化された組み込みを示すであろう。蛍光はトランスフェクションの5日後に依然として見られ得た。
【0152】
GE1741の存在の影響下における別のノックイントランスフェクションを行ない、陽性の集団を蛍光活性化セルソーティング(FACS)によってソーティングおよび培養した。陽性の集団および新たなNeuro-2Aクローンを、コンフルエンスおよび蛍光についてさらにモニタリングした。改変された細胞の単離のための蛍光活性化セルソーティング(FACS)を、遺伝子改変された細胞の代替的な単離方法として行なった。高度に蛍光性のNeuro-2A細胞をFACSによって選択し、96ウェルプレート上に単離し、コンフルエンスまで成長させた。コンフルエントなウェルをトリプシン処理し、フローサイトメトリーにアプライした。無処置のNeuro-2A細胞および無処置のNeuro-2A-GFP細胞は負のおよび正の対照としての用をなした。いくつかの細胞クローン集団は蛍光を示さなかったが、他は2つの異なる集団を明らかにした(図13)。
【0153】
例および試験の詳細な判定後に、本発明の方法を適用することによってかつ本発明の方法および使用に従ってサポニンとの組み合わせでナノプレックスを用いることによって、またはサポニンありの共トランスフェクションを包含する本発明のナノ粒子もしくは本発明のナノプレックスを含む組成物を適用することによって達成される次の利益が明らかになった。トリテルペノイドサポニン、例えばGE1741またはSO1861、好ましくはGE1741の同時適用によるCas9DNAの増大した送達が明らかである。ポリリジン対核酸の質量比が考えられるときに、まさに十分に低い細胞毒性を示しかつ改善されたかつ効率的な細胞侵入を見せる製剤比および濃度が、本発明者らによって確立される。2:1~15:1から選択される比が好ましく、4:1~8:1から選択される比が好ましい。細胞に対するプラスミドDNA(およびサポニン)の適用のタイミングは、遺伝子ノックアウトおよび遺伝子ノックインを確立することにとって十分に正確であった。例においては、効率的な遺伝子ノックアウトを提供するgRNA配列を用いた。高感度のアッセイによって、細胞集団内の単一のノックアウトである細胞が同定され得る。
【0154】
それゆえに、インビトロの細胞内への核酸のトランスフェクションの間のサポニンの存在の影響下におけるCas9DNA(>8kbp)のような大きいコンストラクトの驚くべきことに増大した送達は、本発明者らの知る限りこれまで存在することおよび明らかであることはなかったサポニンの新規の特性を表している。サポニンに基づくインビトロトランスフェクションができる細胞(例えばNeuro-2A、JIMT-1)は、今や、本発明者らによる本貢献を原因として、それらのサイズにかかわらず、いずれかの核酸によってトランスフェクションされ得る。重要なことに、5kbpよりも大きい、例えばさらには7~8kbpよりも大きいプラスミドサイズを有するプラスミドDNAのサポニンに基づくトランスフェクションは、トランスフェクション剤Lipofectamin3000を用いる当分野において現行で用いられる方法の1つと比較されるときに、より高い効率に到達する。例えば5.5kbp、またはより高い比較的大きいプラスミドDNAの所望のトランスフェクションが考えられるときに当分野が悩む問題は、例えば、2020年12月にサーモフィッシャーウェブサイトから取られた次の引用文によって例示される:「カチオン性脂質によって媒介されるトランスフェクションにおける類似の取り込み効率にもかかわらず、大きいプラスミドの核送達は小さいプラスミド分子と比較して難しい。この効果は、同等の質量またはモル濃度の異なるサイズのコンストラクトを用いて観察され、プラスミドの核送達が細胞内の通過の速度によって限定され得るということと、小さいプラスミドが細胞の防御の飽和によってではなくむしろ細胞質の素早い通過によって分解を免れるということとを示唆する(ルカクス(Lukacs)ら,2000年、マクレナキャン(McLenachan)ら,2007年)」。www.thermofisher.com/de/de/home/references/gibco-cell-culture-basics/transfection-basics/guidelines-for-plasmid-dna-transfection.htmlから取った。
【0155】
サポニンがプラスミドDNAなどの大きいコンストラクトのためのトランスフェクションブースターとして適用される本発明の技術は、現行で当分野において見られる見かけ上の阻止されたトランスフェクション効率の解決を提供する。
【0156】
サポニンはトランスフェクションの分野において種々の適用を提供する。実施された試験および提示された例および先に実行された試験は、これがインビトロの環境および実験において適用されるということを証明した。大きいDNAプラスミド(プラスミドDNA)からポリリジンに基づくナノプレックスへの首尾良い複合体化と、より小さいサイズのプラスミドDNA(最高で4~5kbpのプラスミドDNAサイズを有する)、mRNA、およびミニサークルDNAによる先に実施されたナノプレックス製剤とによって、ナノ粒子が核酸によってトランスフェクションされるべきである細胞と接触させられるときにサポニンの存在と組み合わせられたポリリジンK16ペプチドおよび核酸から組成されるナノ粒子からなるトランスフェクショントライアドは、今や、本発明に従う効率的なかつ非毒性のインビトロ遺伝子送達のための普遍的なツールであることが分かった。
【0157】
ポリリジンK16ペプチドに基づくナノプレックスによって、驚くべきことに、8.2kbpほども大きいDNAプラスミドが複合体化され、(1~5マイクログラム/mL)GE1741またはSO1861の存在下においてインビトロの細胞内にトランスフェクションされ得た。行なわれた分析に基づくと、より大きいサイズのポリリジンペプチドもまた安定なナノプレックスを形成し得るということが明らかであった(ゲル保持アッセイ)。これは正荷電のペプチドの量についてフレキシビリティを提供し、これは調整され得る。
【0158】
参照
クロシャール(Clochard),J.、イェルツ(Jerz),G.、シュミーダー(Schmieder),P.、ミトダンク(Mitdank),H.、トローガー(Troger),M.、サーマ(Sama),S.、ウェン(Weng),A.(2020年)アグロステンマ・ギタゴL.からの新たなアセチル化トリテルペンサポニンは遺伝子送達を効率的に調節し、高い細胞の忍容性を示す(A new acetylated triterpene saponin from Agrostemma githago L. modulates gene delivery efficiently and shows a high cellular tolerance).インターナショナル・ジャーナル・オブ・ファーマシューティクス(International Journal of Pharmaceutics),第589巻,p.119822.
リュ(Ryu),N.、キム(Kim),M.A.、パク(Park),D.、リ(Lee),B.、キム(Kim)、Y.R.、キム(Kim),K.H.、ベック(Baek),J.I.、キム(Kim),W.J.、リ(Lee),K.Y.、キム(Kim),U.K.,(2018年)標的化された遺伝子治療のためのCRISPR-Cas9複合体の有効なPEIによって媒介される送達(Effective PEI-mediated delivery of CRISPR-Cas9 complex for targeted gene therapy).ナノメディシン(Nanomedicine),第14巻,p.2095-2102.
サーマ(Sama),S.、イェルツ(Jerz),G.、シュミーダー(Schmieder),P.、ジョセフ(Joseph),J.F.、メルジグ(Melzig),M.F.、ウェン(Weng),A.(2018年a)ジプソフィラ・エレガンスM.ビーブからの植物由来トリテルペンは、遺伝子を装填したナノプレックスの非毒性の送達を可能にする(Plant derived triterpenes from Gypsophila elegans M.Bieb. enable non-toxic delivery of gene loaded nanoplexes).ジャーナル・オブ・バイオテクノロジー(Journal of Biotechnology),第284,p.131-139.
サーマ(Sama),S.、G.イェルツ(Jerz)、P.シュミーダー(Schmieder)、E.ヴォイト(Woith)、M.F.メルジグ(Melzig)、およびA.ウェン(Weng).2017年.「サポフェクトシド-非毒性のかつ有効なDNAおよびRNA送達を保証する(Sapofectosid -Ensuring non-toxic and effective DNA and RNA delivery)」,インターナショナル・ジャーナル・オブ・ファーマシューティクス(International Journal of Pharmaceutics),第534巻:p.195-205.
サーマ(Sama),S.、E.ヴォイト(Woith)、W.ヴァルター(Walther)、G.イェルツ(Jerz)、W.チェン(Chen)、S.ハルト(Hart)、M.F.メルジグ(Melzig)、およびA.ウェン(Weng).2018年b.「標的化された自殺遺伝子トランスフェクションは、悪性の神経芽腫を有するnu/nuマウスにおける有望な結果を明らかにする(Targeted suicide gene transfections reveal promising results in nu/nu mice with aggressive neuroblastoma)」,ジャーナル・オブ・コントロールド・リリース(Journal of Controlled Release),第275巻:p.208-16.
【0159】
配列-配列番号

配列番号1
ストレプトコッカス・ピオゲネス血清型M1からのCas9;配列はwww.uniprot.org/uniprot/Q99ZW2から検索
>sp|Q99ZW2|CAS9_STRP1 CRISPR関連エンドヌクレアーゼCas9/Csn1
MDKKYSIGLDIGTNSVGWAVITDEYKVPSKKFKVLGNTDRHSIKKNLIGALLFDSGETAE
ATRLKRTARRRYTRRKNRICYLQEIFSNEMAKVDDSFFHRLEESFLVEEDKKHERHPIFG
NIVDEVAYHEKYPTIYHLRKKLVDSTDKADLRLIYLALAHMIKFRGHFLIEGDLNPDNSD
VDKLFIQLVQTYNQLFEENPINASGVDAKAILSARLSKSRRLENLIAQLPGEKKNGLFGN
LIALSLGLTPNFKSNFDLAEDAKLQLSKDTYDDDLDNLLAQIGDQYADLFLAAKNLSDAI
LLSDILRVNTEITKAPLSASMIKRYDEHHQDLTLLKALVRQQLPEKYKEIFFDQSKNGYA
GYIDGGASQEEFYKFIKPILEKMDGTEELLVKLNREDLLRKQRTFDNGSIPHQIHLGELH
AILRRQEDFYPFLKDNREKIEKILTFRIPYYVGPLARGNSRFAWMTRKSEETITPWNFEE
VVDKGASAQSFIERMTNFDKNLPNEKVLPKHSLLYEYFTVYNELTKVKYVTEGMRKPAFL
SGEQKKAIVDLLFKTNRKVTVKQLKEDYFKKIECFDSVEISGVEDRFNASLGTYHDLLKI
IKDKDFLDNEENEDILEDIVLTLTLFEDREMIEERLKTYAHLFDDKVMKQLKRRRYTGWG
RLSRKLINGIRDKQSGKTILDFLKSDGFANRNFMQLIHDDSLTFKEDIQKAQVSGQGDSL
HEHIANLAGSPAIKKGILQTVKVVDELVKVMGRHKPENIVIEMARENQTTQKGQKNSRER
MKRIEEGIKELGSQILKEHPVENTQLQNEKLYLYYLQNGRDMYVDQELDINRLSDYDVDH
IVPQSFLKDDSIDNKVLTRSDKNRGKSDNVPSEEVVKKMKNYWRQLLNAKLITQRKFDNL
TKAERGGLSELDKAGFIKRQLVETRQITKHVAQILDSRMNTKYDENDKLIREVKVITLKS
KLVSDFRKDFQFYKVREINNYHHAHDAYLNAVVGTALIKKYPKLESEFVYGDYKVYDVRK
MIAKSEQEIGKATAKYFFYSNIMNFFKTEITLANGEIRKRPLIETNGETGEIVWDKGRDF
ATVRKVLSMPQVNIVKKTEVQTGGFSKESILPKRNSDKLIARKKDWDPKKYGGFDSPTVA
YSVLVVAKVEKGKSKKLKSVKELLGITIMERSSFEKNPIDFLEAKGYKEVKKDLIIKLPK
YSLFELENGRKRMLASAGELQKGNELALPSKYVNFLYLASHYEKLKGSPEDNEQKQLFVE
QHKHYLDEIIEQISEFSKRVILADANLDKVLSAYNKHRDKPIREQAENIIHLFTLTNLGA
PAAFKYFDTTIDRKRYTSTKEVLDATLIHQSITGLYETRIDLSQLGGD
【0160】
配列番号2
フランシセラ・ツラレンシスsubsp.ノビシダ(株U112)からのCas12a;配列はwww.uniprot.org/uniprot/A0Q7Q2から検索
>sp|A0Q7Q2|CS12A_FRATN CRISPR関連エンドヌクレアーゼCas12a
MSIYQEFVNKYSLSKTLRFELIPQGKTLENIKARGLILDDEKRAKDYKKAKQIIDKYHQF
FIEEILSSVCISEDLLQNYSDVYFKLKKSDDDNLQKDFKSAKDTIKKQISEYIKDSEKFK
NLFNQNLIDAKKGQESDLILWLKQSKDNGIELFKANSDITDIDEALEIIKSFKGWTTYFK
GFHENRKNVYSSNDIPTSIIYRIVDDNLPKFLENKAKYESLKDKAPEAINYEQIKKDLAE
ELTFDIDYKTSEVNQRVFSLDEVFEIANFNNYLNQSGITKFNTIIGGKFVNGENTKRKGI
NEYINLYSQQINDKTLKKYKMSVLFKQILSDTESKSFVIDKLEDDSDVVTTMQSFYEQIA
AFKTVEEKSIKETLSLLFDDLKAQKLDLSKIYFKNDKSLTDLSQQVFDDYSVIGTAVLEY
ITQQIAPKNLDNPSKKEQELIAKKTEKAKYLSLETIKLALEEFNKHRDIDKQCRFEEILA
NFAAIPMIFDEIAQNKDNLAQISIKYQNQGKKDLLQASAEDDVKAIKDLLDQTNNLLHKL
KIFHISQSEDKANILDKDEHFYLVFEECYFELANIVPLYNKIRNYITQKPYSDEKFKLNF
ENSTLANGWDKNKEPDNTAILFIKDDKYYLGVMNKKNNKIFDDKAIKENKGEGYKKIVYK
LLPGANKMLPKVFFSAKSIKFYNPSEDILRIRNHSTHTKNGSPQKGYEKFEFNIEDCRKF
IDFYKQSISKHPEWKDFGFRFSDTQRYNSIDEFYREVENQGYKLTFENISESYIDSVVNQ
GKLYLFQIYNKDFSAYSKGRPNLHTLYWKALFDERNLQDVVYKLNGEAELFYRKQSIPKK
ITHPAKEAIANKNKDNPKKESVFEYDLIKDKRFTEDKFFFHCPITINFKSSGANKFNDEI
NLLLKEKANDVHILSIDRGERHLAYYTLVDGKGNIIKQDTFNIIGNDRMKTNYHDKLAAI
EKDRDSARKDWKKINNIKEMKEGYLSQVVHEIAKLVIEYNAIVVFEDLNFGFKRGRFKVE
KQVYQKLEKMLIEKLNYLVFKDNEFDKTGGVLRAYQLTAPFETFKKMGKQTGIIYYVPAG
FTSKICPVTGFVNQLYPKYESVSKSQEFFSKFDKICYNLDKGYFEFSFDYKNFGDKAAKG
KWTIASFGSRLINFRNSDKNHNWDTREVYPTKELEKLLKDYSIEYGHGECIKAAICGESD
KKFFAKLTSVLNTILQMRNSKTGTELDYLISPVADVNGNFFDSRQAPKNMPQDADANGAY
HIGLKGLMLLGRIKNNQEGKKLNLVIKNEEYFEFVQNRNN
【0161】
配列番号3
レプトトリキア・ブッカリス(株ATCC14201/DSM1135/JCM12969/NCTC10249/C-1013-b)からのCas13a;配列はwww.uniprot.org/uniprot/C7NBY4から検索
>sp|C7NBY4|CS13A_LEPBD CRISPR関連エンドリボヌクレアーゼCas13a
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図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
【配列表】
2024520521000001.app
【国際調査報告】