(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】新規ブラゼイン産生系及び方法
(51)【国際特許分類】
A01H 5/00 20180101AFI20240517BHJP
A01H 5/02 20180101ALI20240517BHJP
A01H 5/04 20180101ALI20240517BHJP
A01H 5/12 20180101ALI20240517BHJP
A01H 5/06 20180101ALI20240517BHJP
A01H 5/08 20180101ALI20240517BHJP
A01H 6/34 20180101ALI20240517BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20240517BHJP
A23L 27/00 20160101ALI20240517BHJP
A23L 27/10 20160101ALI20240517BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20240517BHJP
C12N 15/29 20060101ALN20240517BHJP
C07K 14/415 20060101ALN20240517BHJP
【FI】
A01H5/00 A ZNA
A01H5/02
A01H5/04
A01H5/12
A01H5/06
A01H5/08
A01H6/34
C12P21/02 C
A23L27/00 E
A23L27/10 C
C12N15/11 Z
C12N15/29
C07K14/415
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573330
(86)(22)【出願日】2022-05-27
(85)【翻訳文提出日】2024-01-16
(86)【国際出願番号】 US2022031322
(87)【国際公開番号】W WO2022251617
(87)【国際公開日】2022-12-01
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391026058
【氏名又は名称】ザ コカ・コーラ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Coca‐Cola Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メルコリアーノ,クリストファ ピー.
(72)【発明者】
【氏名】プラカシュ,インドラ
(72)【発明者】
【氏名】ヘイズ,アレク
(72)【発明者】
【氏名】カーズィ,ファヤズ
(72)【発明者】
【氏名】ファン,タンファン
【テーマコード(参考)】
4B047
4B064
4H045
【Fターム(参考)】
4B047LB03
4B047LB09
4B047LF01
4B047LF02
4B047LF05
4B047LF07
4B047LF09
4B047LG18
4B047LP01
4B064AG01
4B064CA11
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA10
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA20
4H045CA30
4H045EA02
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、低いカロリーを有するか又はカロリーを有さない甘味タンパク質又はそのバリアントを産生する解決手段を提示する。組換え遺伝子及び植物形質転換技術を使用することにより、甘味タンパク質をコードする非天然遺伝子が植物の増殖可能なゲノム中に含まれ、それにより遺伝子改変植物を形成し、改変前のその天然ゲノムによる植物は、その甘味タンパク質を天然に産生し得ない。このような遺伝子改変植物及びその子孫は、非天然甘味タンパク質及び/又はそのバリアントを産生することを可能にされる。遺伝子改変植物に由来する甘味料、組成物及び消耗品も提供される。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲノム形質転換イベントを含む植物であって、前記ゲノム形質転換イベントは、前記植物が甘味タンパク質の非天然発現又は濃縮を生じさせることを可能にする、植物。
【請求項2】
トランスジェニック植物であり、前記ゲノム形質転換イベントは、発現カセットを含み、前記発現カセットは、前記甘味タンパク質をコードするヌクレオチド配列の1つ以上を含む、請求項1に記載の植物。
【請求項3】
前記発現カセットは、配列番号1~24に記載されるヌクレオチド配列の1つ以上を含む、請求項2に記載の植物。
【請求項4】
前記甘味タンパク質をコードする前記ヌクレオチド配列は、配列番号1~24に記載されるヌクレオチド配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有する、請求項2又は3に記載の植物。
【請求項5】
前記発現カセットは、プロモーター、スペーサー、エピトープタグ、ターミネーター、シグナルペプチド又はそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の調節配列を含む、請求項2~4のいずれか一項に記載の植物。
【請求項6】
前記調節配列は、配列番号1~6及び8~13に記載されるヌクレオチド配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有する、請求項5に記載の植物。
【請求項7】
前記発現カセットは、前記甘味タンパク質をコードする前記ヌクレオチド配列と作動可能に結合されているプロモーターを含む、請求項2~6のいずれか一項に記載の植物。
【請求項8】
前記甘味タンパク質は、ソーマチン、モネリン、マビンリン、ブラゼイン、卵白リゾチーム、ネオクリン、ペンタジン若しくはそれらのバリアント又はそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の植物。
【請求項9】
前記甘味タンパク質は、ブラゼイン又はそのバリアントである、請求項1~8のいずれか一項に記載の植物。
【請求項10】
前記甘味タンパク質は、配列番号25に記載されるアミノ酸配列と少なくとも少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の植物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の植物から得られる植物部位であって、前記植物の器官、組織、葉、茎、根、花若しくは花部、果実、シュート、配偶体、胞子体、花粉、葯、小胞子、卵細胞、接合体、胚、分裂組織領域、カルス組織、種子、挿し木、細胞若しくは組織培養物又は任意の他の部位若しくは産物に由来し、前記甘味タンパク質を含む植物部位。
【請求項12】
その子孫又は祖先は、前記子孫及び前記祖先が前記甘味タンパク質を産生することを可能にする前記ゲノム形質転換イベントの起源である、請求項1~11のいずれか一項に記載の植物。
【請求項13】
ウリ科(Cucurbitaceae)/ウリ類である、請求項1~12のいずれか一項に記載の植物。
【請求項14】
スイカである、請求項13に記載の植物。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の植物によって産生される前記甘味タンパク質を含む甘味料。
【請求項16】
非天然甘味タンパク質を産生する生合成方法であって、
(a)植物を、遺伝子改変植物を形成するゲノム形質転換イベントと組み合わせることであって、前記ゲノム形質転換イベントは、前記遺伝子改変植物が前記甘味タンパク質の非天然発現又は濃縮を生じさせることを可能にする、組み合わせること;
(b)前記遺伝子改変植物の集団を生育及び再生させること;
(c)前記甘味タンパク質を産生する前記遺伝子改変植物を選択すること;及び
(d)前記甘味タンパク質を収集すること
を含む生合成方法。
【請求項17】
発現カセットを含むプラスミドを調製/提供することであって、前記発現カセットは、前記非天然甘味タンパク質を発現する、調製/提供すること;
宿主細胞を前記プラスミドで形質転換すること;及び
前記植物を複数の前記形質転換宿主細胞で形質移入すること
をさらに含み、前記遺伝子改変植物は、トランスジェニック植物である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記発現カセットは、前記甘味タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記発現カセットは、配列番号1~24に記載されるヌクレオチド配列の1つ以上を含む、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記ヌクレオチド配列は、配列番号1~24に記載されるヌクレオチド配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有する、請求項18又は19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、PCT国際特許出願として2022年5月27日に出願されており、2021年5月28日に出願された米国仮特許出願第63/194,552号明細書の利益及びそれに対する優先権を主張し、その開示全体が参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0002】
米国特許法施行規則第1.821条(c)又は(e)に従い、配列表のASCIIテキストバージョンを含むファイルが本出願とともに提出されており、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
世界中の国々における健康食並びに肥満及び糖尿病の潜在的なリスクの認知の増加に伴い、従来の高カロリー甘味料の代替品である低カロリー又はノンカロリー甘味料が食料及び飲料事業並びに他の産業にとって一層重要になっている。一部の消費者も、スクロース、フルクトース及びグルコースを含む人工甘味料又は高カロリー甘味料の代用品としての、天然に見出され得る甘味料の使用に関心を寄せている。一部の人工甘味料と同様に、天然甘味料は、同等量のカロリー甘味料よりも大きい甘味効果を提供し得;したがって糖の甘味と同等の甘味を達成するためにより少量のその代替品が要求される。しかしながら、天然に見出されるこれらの甘味料の一部は、産生が高価であり得、且つ/又は限定されるものではないが、甘味残存、甘味発生の遅延、否定的な食感、苦味、金属味、清涼味、渋味及びカンゾウ様呈味を含む、好まれない呈味特徴及び/若しくは異味を有し得る。
【0004】
代替甘味料としての甘味タンパク質は、大いに注目を集めている。これまで、いくつかの甘味タンパク質:ソーマチン、モネリン、マビンリン、ブラゼイン、卵白リゾチーム及びネオクリン(Masuda,2005(非特許文献1))並びにペンタジン(van der Wei,1989(非特許文献2))が単離されている。これらのタンパク質は、スクロースよりも重量基準で数千又は数百倍甘い(Kant,2005(非特許文献3))。
【0005】
ブラゼインは、西アフリカの蔓性植物ペンタディプランドラ・ブラゼアナ・バイロン(Pentadiplandra brazzeana Baillon)の果実から抽出され得る甘味タンパク質である(国際公開第95/31547号)。これは、等間隔の4つのジスルフィド結合を有する3次元構造を有する単量体タンパク質として特徴付けられている。このタンパク質の3つの形態が天然に存在することが公知であり、N末端アミノ酸残基のみ異なる。1つは、N末端にグルタミンを含有する54アミノ酸翻訳産物に対応する。この形態は、N末端グルタミンがピログルタミン酸への天然変換を受け、第2の形態をもたらすため、短寿命であることが示されている(Ming et al.,1994(非特許文献4))。N末端グルタミン又はピログルタミン酸の損失は、N末端ピログルタミン酸を有する形態よりも2倍甘いことが報告されている53アミノ酸形態を生じさせる(Izawa et al.,1996(非特許文献5))。
【0006】
単離された甘味タンパク質のうち、ブラゼインは、最も有望なものと考えられる(Faus,2000(非特許文献6))。実際、この甘味知覚は、他の甘味タンパク質よりもスクロースにより類似する(Pfeiffer et al.,2000(非特許文献7))。さらに、これは、他の甘味タンパク質と比較してより良好なpH及び熱安定性を有する。この甘味力は、98℃での4時間のインキュベーション後に減少せず;さらに広いpH範囲(2.5~8)にわたって安定であることが実証された。ブラゼインは、水中で極めて可溶性(>50mg/ml)であることも実証された(Ming et al.,1994)。これらの特性により、このタンパク質は、低カロリー甘味料として多くの産業食料製造プロセスに好適になる。
【0007】
ブラゼインは、化学合成され得(Izawa et al.,1996(非特許文献5))、それは、構造・機能研究のための小規模のその産生に有用であるが、大規模商業産生に好適でない。さらに、化学合成は、高価である。
【0008】
大腸菌(Escherichia coli)中のブラゼインの組換え発現の方法が報告されている(Assadi-Porter et al.,2000(非特許文献8))。しかしながら、迅速な遺伝子操作及び構造研究のための同位体標識の容易性に理想的な細菌系でも、それは、ヒト消費のためのタンパク質の産生に不適である。ブラゼインの生合成産生は、P・パストリス(P.pastoris)酵母(Carlson、米国特許出願公開第2010/0112639号明細書(特許文献2))、糸状菌(Vind、米国特許第9273320号明細書(特許文献3))、トウモロコシ種子(Lamphear et al.,2005(非特許文献9))、トマト(Drake、国際公開第99/25835号(特許文献4))、コーン(Nikolov、国際公開第01/21270号(特許文献5))、果実及び野菜(国際公開第97/42333号(特許文献6))、マウス(Yan et al.,2013(非特許文献10))でも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第95/31547号
【特許文献2】米国特許出願公開第2010/0112639号明細書
【特許文献3】米国特許第9273320号明細書
【特許文献4】国際公開第99/25835号
【特許文献5】国際公開第01/21270号
【特許文献6】国際公開第97/42333号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Masuda,T.,Ueno,Y.,and Kitabatake,N.(2005).High yield secretion of the sweet-tasting protein lysozyme from the yeast Pichia pastoris.Protein Expr.Purif.39,35-42.
【非特許文献2】van der Wei,H.,Larson,G.,Hladik,A.,Hladik,C.M.,Hellekant,G.Glaser,D.(1989).Isolation and characterization of pentadin,the sweet principle of Pentadiplandra brazzeana Baillon.Chemical Senses,14(1),75-79.
【非特許文献3】Kant,R.(2005).Sweet proteins-potential replacement for artificial low calorie sweeteners.Nutrition Journal 4,5.
【非特許文献4】Ming,D.,and Hellekant,G.(1994).Brazzein,a new high-potency thermostable sweet protein from Pentadiplandra brazzeana B.FEBS Lett 355,106-108.
【非特許文献5】Izawa,H.,Ota,M.,Kohmura,M.,and Ariyoshi,Y.(1996).Synthesis and characterization of the sweet protein brazzein.Biopolymers 39,95-101.
【非特許文献6】Faus,I.(2000).Recent developments in the characterization and biotechnological production of sweet-tasting proteins.Appl Microbiol Biotechnol 53,145-151.
【非特許文献7】Pfeiffer,J.F.,Boulton,R.B.,and Noble,A.C.(2000).Modeling the sweetness response using time-intensity data.Food Quality and Preference 11,129-138.
【非特許文献8】Assadi-Porter,F.M.,Maillet,E.L.,Radek,J.T.,Quijada,J.,Markley,J.L.,and Max,M.(2010).Key amino acid residues involved in multi-point binding interactions between brazzein,a sweet protein,and the T1R2-T1R3 human sweet receptor.JMol Biol 398,584-599.
【非特許文献9】Lamphear,B.J.,Barker,D.K.,Brooks,C.A.,Delaney,D.E.,Lane,J.R.,Beifuss,K.,Love,R.,Thompson,K.,Mayor,J.,Clough,R.,et al.(2005).Expression of the sweet protein brazzein in maize for production of a new commercial sweetener.Plant Biotechnol J3,103-114.
【非特許文献10】Yan S,Song H,Pang D,Zou Q,Li L,et al.(2013)Expression of Plant Sweet Protein Brazzein in the Milk of Transgenic Mice.PLoS ONE 8(10):e76769.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記の開示にもかかわらず、低いカロリーを有するか又はカロリーを有さない代替甘味料の供給源としての甘味タンパク質の効率的且つ低コストの産生のための新たな方法及び生物系が依然として必要とされている。健康的な風味料、甘味料、消耗品、食料又は飲料製品のための供給源としての低カロリー又はノンカロリー甘味タンパク質を産生する低コスト及び人気植物も望まれている。上記の背景において、本開示は、この必要性に対処するための利点及び進展を提示する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示は、低いカロリーを有するか又はカロリーを有さない甘味タンパク質又はそのバリアントを産生する解決手段を含む。ゲノム編集、及び/又は組換えDNA、及び/又は植物形質転換技術を使用することにより、甘味タンパク質をコードする非天然遺伝子が植物中で生成されるか又はそのゲノム中に導入若しくは実装され、それにより遺伝子改変植物を形成し、改変前のその天然ゲノムによる植物は、甘味タンパク質を天然に産生し得ない。このような遺伝子改変植物及びその子孫は、非天然甘味タンパク質及び/又はそのバリアントを産生することを可能にされる。
【0013】
提供される解決手段は、顕著に有利である。第1に、植物中の甘味タンパク質の産生は、成熟した農業技術のため、より良好な技術経済性を有し得る。さらに、この解決手段は、果実内だけでなく、植物のより多くの部位全体にわたる甘味タンパク質産生を可能にし、それにより植物の栄養価及び経済価値全体を増強し得る。さらに、甘味タンパク質の産生を担う遺伝子の、生育が速いか又は成熟が速い植物/作物中への生成又は実装は、甘味タンパク質の産生及び加工の効率を改善し、コスト効率的な利益を提供し得る。提供される解決手段は、本明細書に記載される植物に由来する様々な食材の産生を可能にし得る。このような食材としては、限定されるものではないが、甘味料、完全純度甘味料、甘味付与組成物、ジュース、低純度ジュース、高純度エキス、固体若しくは半固体食料、飲料又は消耗品が挙げられる。本開示による食材は、有利には、それらの甘味タンパク質産生植物及び材料又はその一部を使用することにより、新規な風味、呈味改善、ユニークな食味プロファイル及び/又は低カロリー若しくはノンカロリーを提供し得る。
【0014】
従来の開示は、主に遺伝子操作微生物(大部分は細菌又は酵母)ベースの甘味タンパク質作製方法に着目したことに留意されたい。本開示は、非天然甘味タンパク質を産生することが可能になる遺伝子改変、又はトランスジェニック、又は遺伝子編集植物を明確に記載する。より重要なことに、植物に由来する甘味料及び食料製品はまた、合成又は微生物生成甘味料よりも消費者に受け入れられ得る。本明細書に提供される植物は、より少ない加工で又は好ましい追加の風味特徴で使用され得る、カロリーと甘味とのより低い比を有する風味料、又は甘味料、又は食料、又はジュース、又は植物エキス、又は植物材料、又は他の由来消耗品の産生を可能にし得る。
【0015】
果実及び/又は種子を産生するためのゲノム形質転換イベントを含むトランスジェニック又は遺伝子編集植物の能力は、希少であることに留意することが重要である。驚くべきことに、本開示による植物は、果実及び種子を含む様々な組織を産生し、果実及び種子を含む様々な組織は、全て非天然甘味タンパク質を含み、産生する。甘味タンパク質を含有する本植物の果実は、様々な食料及び飲料製品のための供給源として使用され得、したがって食料及び消耗品産業における技術経済的利点を提供する。さらに、本開示の種子産生植物は、様々な植物育種技術を使用する種子の繁殖及び植物の農業再生産により、甘味タンパク質の大量産生及びコスト効率的産生に利益を与え得る。
【0016】
スイカ果実は、その大きいサイズ及び人気の風味に起因して、低カロリー及び/又はノンカロリー甘味料の産生についての大きい潜在性を有する。天然ゲノムによるスイカは、公知の天然甘味タンパク質を産生しない。本開示は、有利には、ゲノム改変方針を用いることにより、スイカの様々な部位における非天然甘味タンパク質の組織特異的発現のための有効なアプローチを提供する。スイカ果実の食用部分中で特異的に発現される甘味タンパク質が生成され得る。
【0017】
本開示は、一般に、ゲノム形質転換イベントを含む植物であって、ゲノム形質転換イベントは、植物が甘味タンパク質の非天然発現又は濃縮を生じさせることを可能にする、植物に関する。一部の実施形態では、植物は、トランスジェニック植物であり、ゲノム形質転換イベントは、植物形質転換技術によって得られる。他の実施形態では、植物は、遺伝子編集植物であり、ゲノム形質転換イベントは、遺伝子又はゲノム編集技術によって得られる。
【0018】
一部の実施形態では、ゲノム形質転換イベントは、甘味タンパク質をコードするヌクレオチド配列の1つ以上を含む。ヌクレオチド配列の1つ以上は、発現カセットによって植物のゲノム内で実装され得、発現カセットは、甘味タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。ある実施形態では、ゲノム形質転換イベントは、植物を甘味タンパク質産生ヌクレオチド配列で形質転換することによって植物に付加される。
【0019】
一部の実施形態では、ゲノム形質転換イベント又は発現カセットは、配列番号1~24に記載されるヌクレオチド配列の1つ以上を含む。ある実施形態では、甘味タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、配列番号1~24に記載されるヌクレオチド配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有する。
【0020】
一部の実施形態では、ゲノム形質転換イベント又は発現カセットは、プロモーター、スペーサー、エピトープタグ、ターミネーター、コード配列、シグナルペプチド又はそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の調節配列を含む。ある実施形態では、調節配列は、配列番号1~6及び8~13に記載されるヌクレオチド配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有する。
【0021】
一部の実施形態では、ゲノム形質転換イベント又は発現カセットは、甘味タンパク質をコードするヌクレオチド配列と作動可能に結合されているプロモーターを含む。
【0022】
一部の実施形態では、ゲノム形質転換イベント又は発現カセットは、甘味タンパク質をコードするヌクレオチド配列と作動可能に結合されている開始コドンを含む。
【0023】
一部の実施形態では、ゲノム形質転換イベント又は発現カセットは、シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列は、甘味タンパク質をコードするヌクレオチド配列と作動可能に結合されている。
【0024】
一部の実施形態では、ゲノム形質転換イベント又は発現カセットは、レポーター遺伝子をさらに含む。
【0025】
本開示による甘味タンパク質としては、限定されるものではないが、ソーマチン、モネリン、マビンリン、ブラゼイン、卵白リゾチーム、ネオクリン若しくはそれらのバリアント又はそれらの組み合わせが挙げられる。一部の実施形態では、甘味タンパク質は、ブラゼイン又はそのバリアントである。例示的な例として、本開示によるブラゼインは、des-pyrE-braである。des-pyrE-braのアミノ酸配列は、配列番号25に記載される。
【0026】
一部の実施形態では、本開示による甘味タンパク質は、配列番号25に記載されるアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%を有するアミノ酸配列を含む。
【0027】
一部の実施形態では、本開示は、ゲノム形質転換イベントを含む、記載される植物から得られる植物部位であって、ゲノム形質転換イベントは、植物が甘味タンパク質の非天然発現又は濃縮を生じさせることを可能にする、植物部位に関する。
【0028】
一部の実施形態では、記載される植物の子孫又は祖先は、子孫及び祖先が甘味タンパク質を産生することを可能にするゲノム形質転換イベントの起源である。
【0029】
一部の実施形態では、植物は、ウリ科(Cucurbitaceae)又はウリ類の植物科のメンバーである。特定の実施形態では、植物は、スイカである。
【0030】
一部の実施形態では、本開示は、本明細書に記載される植物によって産生される甘味タンパク質を含む食材に関する。食材は、甘味料、風味料、食料、飲料又は食料成分であり得る。
【0031】
一部の態様では、本開示は、本明細書に記載される遺伝子改変植物を作製する方法に関する。方法は、植物をゲノム形質転換イベントと組み合わせることであって、ゲノム形質転換イベントは、遺伝子改変植物が甘味タンパク質の非天然発現又は濃縮を生じさせることを可能にする、組み合わせることを含む。一部の実施形態では、方法は、発現カセットを含むプラスミドを調製/提供することであって、発現カセットは、非天然甘味タンパク質を発現する、調製/提供すること;宿主細胞をプラスミドで形質転換すること;及び植物を複数の形質転換宿主細胞で形質移入することをさらに含み、遺伝子改変植物は、トランスジェニック植物である。他の実施形態では、ゲノム形質転換イベントは、ゲノム編集の方法によって得られ、遺伝子改変植物は、遺伝子編集植物である。
【0032】
一部の態様では、本開示は、本明細書に記載される非天然甘味タンパク質を産生する生合成方法に関する。生合成方法は、(a)植物を、遺伝子改変植物を形成するゲノム形質イベントと組み合わせることであって、ゲノム形質転換イベントは、遺伝子改変植物が甘味タンパク質の非天然発現又は濃縮を生じさせることを可能にする、組み合わせること;(b)遺伝子改変植物の集団を生育及び再生させること;(c)甘味タンパク質を産生する遺伝子改変植物を選択すること;及び(d)甘味タンパク質を収集することを含む。一部の実施形態では、方法は、発現カセットを含むプラスミドを調製/提供することであって、発現カセットは、非天然甘味タンパク質を発現する、調製/提供すること;宿主細胞をプラスミドで形質転換すること;及び植物を複数の形質転換宿主細胞で形質移入することをさらに含み、遺伝子改変植物は、トランスジェニック植物である。
【0033】
選択用語の定義及び解釈
以下の技術用語の定義又は解釈が本開示全体にわたって使用される。本明細書で使用される技術用語は、一般に、植物生物学、分子生物学、バイオインフォマティクス及び植物育種の関連分野でそれらに一般に適用される意味を与えられるものとする。以下の用語定義の全ては、本出願の全内容に適用される。本明細書及び特許請求の範囲で使用される通り、「1つの(a)」又は「1つの(an)」は、それが使用される文脈に応じて1つ以上を意味し得ることが理解されるべきである。したがって、例えば、「細胞」への言及は、少なくとも1つの細胞が利用され得ることを意味し得る。
【0034】
属性又は値と関連する用語「本質的に」、「約」、「およそ」などは、特に、それぞれ厳密にその属性又は厳密にその値も定義する。所与の数値又は範囲に関連する用語「約」は、特に、与えられる値又は範囲の20%以内、10%以内又は5%以内である値又は範囲に関する。本明細書で使用される通り、用語「含む」は、用語「からなる」も包含する。
【0035】
用語「ペプチド」、「オリゴペプチド」、「ポリペプチド」、「タンパク質」又は「酵素」は、本明細書で互換的に使用され、本明細書で特に言及されない限り、ペプチド結合によって一緒に結合されている任意の長さの多量体形態のアミノ酸を指す。
【0036】
用語「遺伝子配列」、「ポリヌクレオチド」、「核酸配列」、「ヌクレオチド配列」、「核酸」、「核酸分子」は、本明細書で互換的に使用され、リボヌクレオチド若しくはデオキシリボヌクレオチドのいずれか又はその両方の組み合わせである、任意の長さの多量体非分枝形態のヌクレオチドを指す。
【0037】
トランスジェニック/トランス遺伝子/組換え遺伝子
本開示の目的では、「トランスジェニック」、「トランス遺伝子」又は「組換え」は、例えば、核酸配列、発現カセット、遺伝子構築物若しくは核酸配列を含むベクター又は本開示による核酸配列、発現カセット若しくはベクターで形質転換された生物に関して、(a)核酸の配列若しくはその一部、又は(b)本開示による核酸配列と作動可能に結合されている遺伝子制御配列、例えばプロモーター、又は(c)(a)及び(b)の組み合わせがそれらの天然遺伝子環境に位置していないか若しくは組換え法によって改変、例えば遺伝子操作法によって人工的に改変及び/又は挿入された、組換え法によってもたらされた全ての構築物を意味する。
【0038】
本明細書で使用される通り、用語「トランスジェニック」は、生物に関し、例えば、トランスジェニック植物は、組換えプロセス、例えばアグロバクテリウム媒介形質転換又はパーティクルボンバードメントによって植物の増殖可能なゲノム中に部分的又は完全に組み込まれた、本明細書に記載される核酸、構築物、ベクター若しくは発現カセット又はその一部を外因的に含有する生物、例えば植物、植物細胞、カルス、植物組織又は植物部位を指す。
【0039】
植物/遺伝子改変植物/トランスジェニック植物/遺伝子編集植物/ゲノム編集植物/天然植物
本明細書で使用される用語「植物」は、植物全体、植物の祖先及び子孫並びに種子、シュート、茎、葉、根(塊茎を含む)、花及び組織及び器官を含む植物部位を包含し、上記の各々は、目的遺伝子/核酸を含む。用語「植物」は、植物細胞、浮遊培養物、カルス組織、胚、分裂組織領域、配偶体、胞子体、花粉及び小胞子も包含し、同様に、上記の各々は、目的遺伝子/核酸を含む。
【0040】
用語「遺伝子改変植物」は、少なくとも1つの人工的に遺伝子改変された細胞を含む植物を指す。本明細書で使用される遺伝子改変植物及び対応する非改変植物は、それぞれ少なくとも1つの遺伝子改変細胞を含む植物及び前記改変を欠く同じタイプの植物を指す。
【0041】
当業者は、遺伝子改変植物が、少なくとも1つの人工的に遺伝子改変された細胞を含む植物を包含し得ることを認識する。一部の実施形態では、遺伝子改変としては、例えば、内因性目的ポリヌクレオチド又は遺伝子中への突然変異欠失、挿入、転置因子などの導入による内因性遺伝子の改変が挙げられる。さらに又は代わりに、一部の実施形態において、遺伝子改変としては、異種ポリヌクレオチド又は複数の異種ポリヌクレオチドでの少なくとも1つの植物細胞の形質転換が挙げられる。当業者は、異種ポリヌクレオチド又は複数の異種ポリヌクレオチドでの少なくとも1つの植物細胞の形質転換を含む遺伝子改変植物がある実施形態においてトランスジェニック植物と称され得ることを認識する。
【0042】
本明細書で使用される遺伝子改変植物と、対応する非改変植物との比較は、少なくとも1つの遺伝子改変細胞を含む植物と、改変を欠く同じタイプの植物とを比較することを包含する。当業者は、トランスジェニックという用語が、本明細書に開示される植物に関して使用される場合、細胞の1つ以上で転写される少なくとも1つの異種ポリヌクレオチドを含有する植物を包含することを認識する。トランスジェニック材料という用語は、細胞の少なくとも1つに少なくとも1つの異種ポリヌクレオチドを含有する少なくとも1つの細胞、複数の細胞又は組織を含む植物又はその部位を広く包含する。したがって、「トランスジェニック植物」及び「対応する非トランスジェニック植物」又は「変更された発現を有する少なくとも1つの細胞を含む遺伝子改変植物であって、異種転写可能ポリヌクレオチドを含む少なくとも1つの細胞を含む植物」及び「対応する非改変植物」の比較は、「トランスジェニック植物」又は「遺伝子改変植物」と、前記異種転写可能ポリヌクレオチドを欠く同じタイプの植物との比較を包含する。当業者は、一部の実施形態では、「転写可能ポリヌクレオチド」が、RNAポリメラーゼによってRNA分子に転写され得るポリヌクレオチドを含むことを認識する。
【0043】
内因性/天然
「内因性」又は「天然」核酸及び/又はタンパク質は、植物中にその天然形態で見出される(すなわち組換えDNA操作技術のようないかなるヒトの介入も存在しない)対象の核酸及び/又はタンパク質を指すが、続いて植物中に(再)導入される単離形態のその同じ遺伝子(又は実質的に相同な核酸/遺伝子)(トランス遺伝子)も指す。このようなトランス遺伝子を含有するトランスジェニック植物は、トランス遺伝子発現の顕著な低減及び/又は内因性遺伝子の発現の顕著な低減を受けることも又は受けないこともある。
【0044】
外因性
用語「外因性」(「内因性」と対照的)核酸又は遺伝子は、組替えDNA技術によって植物中に導入された核酸を指す。「外因性」核酸は、植物中にその天然形態で生じ得ないか、植物中にその天然形態で見出される対象の核酸と異なり得るか、又は植物中にその天然形態で見出される核酸と同一であるが、その天然遺伝子環境内で組み込まれ得ない。「外因性」の対応する意味は、タンパク質発現に関連して適用される。例えば、トランス遺伝子、すなわち外因性核酸を含有するトランスジェニック植物は、内因性遺伝子の発現と比較して全体としてそれぞれの遺伝子又はタンパク質の発現の顕著な増加を受け得る。本開示によるトランスジェニック植物は、任意の遺伝子座で組み込まれた1つ以上の外因性核酸を含み、任意選択で、植物は、天然遺伝的背景内の内因性遺伝子も含み得る。
【0045】
発現カセット
本明細書で使用される「発現カセット」は、宿主細胞中で発現され得るベクターDNAである。発現カセットを形成するDNA、DNAの一部又は遺伝因子の配置は、人工的であり得る。当業者は、発現を生じさせ得るために発現カセット中に存在しなければならない遺伝因子を理解している。発現カセットは、本明細書に記載される通り、1つ以上の制御配列(少なくともプロモーター)に作動可能に結合されている、発現される目的配列を含む。追加の調節因子としては、転写及び翻訳エンハンサーが挙げられ得る。当業者は、本開示の実施における使用に好適であり得るターミネーター及びエンハンサー配列を理解している。発現増加/過剰発現についての定義セクションに記載される通り、イントロン配列も5’非翻訳領域(UTR)又はコード配列中に付加されて、サイトゾル中に蓄積する成熟メッセージの量を増加させ得る。他の制御配列(プロモーター、エンハンサー、サイレンサー、イントロン配列、3’UTR及び/又は5’UTR領域の他)は、タンパク質及び/又はRNA安定化因子であり得る。このような配列は、当業者に知られているか又は当業者によって容易に得られ得る。
【0046】
発現カセットは、宿主細胞のゲノム中に組み込まれ、前記宿主細胞のゲノムと一緒に複製され得る。
【0047】
ベクター
ベクター又はベクター構築物は、部分的に若しくは全体的に人工的であるか又は含有される遺伝因子の配置が人工的であり、宿主細胞中で複製され得、宿主細胞又は宿主生物への目的DNA配列の導入に使用されるDNA(例えば、限定されるものではないが、プラスミド、ウイルスDNA及び染色体ベクター)である。ベクターは、構築物であり得るか、又は少なくとも1つの構築物を含み得る。ベクター、例えば細菌宿主細胞中のプラスミドベクターは、宿主細胞のゲノム中への組み込みなしで複製し得るか、又はそれは、そのDNAの一部若しくは全てを宿主細胞のゲノム中に組み込み、したがってそのDNAの複製及び発現をもたらし得る。本開示の宿主細胞は、細菌細胞、例えば大腸菌(Escherichia coli)又はアグロバクテリウム属(Agrobacterium)種細胞、酵母細胞、真菌、藻類若しくはシアノ細菌細胞又は植物細胞から選択される任意の細胞であり得る。当業者は、目的配列を含有する宿主細胞を良好に形質転換し、選択し、増殖させるために遺伝子構築物上に存在しなくてはならない遺伝因子を理解している。典型的には、ベクターは、少なくとも1つの発現カセットを含む。1つ以上の目的配列は、本明細書に記載される通り、1つ以上の制御配列(少なくともプロモーター)に作動可能に結合されている。追加の調節因子としては、転写及び翻訳エンハンサーが挙げられ得る。当業者は、本明細書に開示される技術の実施における使用に好適であり得るターミネーター及びエンハンサー配列を理解している。
【0048】
作動可能に結合されている
用語「作動可能に結合されている」又は「機能的に結合されている」は、互換的に使用され、本明細書で使用される通り、プロモーター配列が目的遺伝子の転写を指向し得るような、プロモーター配列と目的遺伝子との間の機能的結合を指す。
【0049】
調節/制御配列
用語「調節又は制御配列」は、本開示の甘味タンパク質をコードするポリヌクレオチドからの発現に必要な全ての構成要素を含めるために本明細書に定義される。各制御配列は、天然に甘味タンパク質をコードするヌクレオチド配列に対して天然若しくは外来であり得るか、又は互いに天然若しくは外来であり得る。このような制御配列としては、限定されるものではないが、リーダー、ポリアデニル化配列、プロペプチド配列、プロモーター、シグナルペプチド配列及び転写ターミネーターが挙げられる。少なくとも、制御配列は、プロモーター並びに転写及び翻訳終止シグナルを含む。制御配列は、制御配列と、甘味タンパク質をコードするヌクレオチド配列のコード領域とのライゲーションを容易にする特異的制限部位を導入する目的でリンカーに提供され得る。
【0050】
コード配列
本明細書で使用される場合、用語「コード配列」は、タンパク質産物のアミノ酸配列を直接規定するポリヌクレオチド配列を意味する。コード配列の境界は、一般に、オープンリーディングフレームによって決定され、それは、通常、ATG開始コドン又は代替開始コドン、例えばGTG及びTTGで始まり、終止コドン、例えばTAA、TAG及びTGAで終わる。コード配列は、DNA、cDNA、RNA、合成又は組換えヌクレオチド配列であり得る。
【0051】
プロモーター/植物プロモーター/強プロモーター/弱プロモーター
「プロモーター」又は「植物プロモーター」は、植物細胞中でコード配列セグメントの発現を媒介する調節因子を含む。「植物プロモーター」は、植物細胞、例えば本系中において及び本明細書に記載される、発現される核酸配列で形質転換される植物に由来し得る。これは、他の「植物」調節シグナル、例えば植物ターミネーターにも適用される。本開示の方法において有用なヌクレオチド配列の上流のプロモーターは、プロモーター、オープンリーディングフレーム(ORF)又は3’-調節領域、例えばターミネーター若しくはORFから離れて位置する他の3’調節領域のいずれの機能にも活性にも干渉しない1つ以上のヌクレオチド置換、挿入及び/又は欠失によって改変され得る。プロモーターの活性がそれらの配列の改変によって増加すること、又はそれらが、より活性のプロモーター、さらには異種生物からのプロモーターによって完全に置き換えられることがさらに可能である。植物中の発現について、核酸分子は、本明細書に記載される通り、正しい時点で且つ要求される空間的発現パターンで遺伝子を発現させる好適なプロモーターに作動可能に結合されているか又はそれを含まなければならない。
【0052】
本明細書で使用されるプロモーターは、構成的プロモーター、ユビキタスプロモーター、発生的に調節されるプロモーター、誘導性プロモーター、器官特異的プロモーター、組織特異的プロモーター、種子特異的プロモーター、緑色組織特異的プロモーター、分裂組織特異的プロモーターなどを広く包含する。「ユビキタスプロモーター」は、生物の実質的に全ての組織又は細胞中で活性である。
【0053】
機能的に均等なプロモーターの同定のため、候補プロモーターのプロモーター強度及び/又は発現パターンは、例えば、プロモーターをレポーター遺伝子に作動可能に結合させ、植物の様々な組織中のレポーター遺伝子の発現レベル及びパターンをアッセイすることによって分析され得る。一般に、「弱プロモーター」は、コード配列の発現を低いレベルで推進するプロモーターであると意図される。「低いレベル」は、1細胞当たり約1/10,000転写産物~約1/100,000転写産物~約1/500,0000転写産物のレベルと意図される。反対に、「強プロモーター」は、コード配列の発現を、高いレベルで又は1細胞当たり約1/10転写産物~約1/100転写産物~約1/1000転写産物で推進する。一般に、「中強度プロモーター」は、コード配列の発現を強プロモーターよりも低いレベルで推進するプロモーターであると意図される。
【0054】
ターミネーター
用語「ターミネーター」は、一次転写産物の3’プロセシング及びポリアデニル化並びに転写の終結をシグナリングする転写単位の末端のDNA配列である制御配列を包含する。ターミネーターは、天然遺伝子、様々な他の植物遺伝子又はT-DNAから誘導され得る。付加されるターミネーターは、例えば、ノパリンシンターゼ若しくはオクトピンシンターゼ遺伝子又は代替的に別の植物遺伝子或いはあまり好ましくないが、任意の他の真核生物遺伝子から誘導され得る。
【0055】
レポーター遺伝子
「選択マーカー」、「選択マーカー遺伝子」又は「レポーター遺伝子」は、それが発現される細胞に表現型を付与して本開示の核酸構築物で形質移入又は形質転換される細胞の同定及び/又は選択を容易にする任意の遺伝子を含む。これらのマーカー遺伝子は、一連の異なる原理を介する核酸分子の良好な移動の同定を可能にする。好適なマーカーは、抗生物質若しくは除草剤耐性を付与するマーカー、新たな代謝的特性を導入するマーカー又は視覚選択を可能にするマーカーから選択され得る。選択マーカー遺伝子の例としては、抗生物質、例えばカナマイシン(KAN)又はハイグロマイシン(Hyg)に対する耐性を付与する遺伝子が挙げられる。視覚マーカー遺伝子の発現は、蛍光の形成をもたらす(緑色蛍光タンパク質、GFP;赤色蛍光タンパク質、RFP;及びそれらの誘導体)。このリストは、少数の考えられるマーカーを表すにすぎない。当業者は、そのようなマーカーを熟知している。生物及び選択方法に応じて、異なるマーカーが好ましい。
【0056】
発現/遺伝子発現
用語「発現」又は「遺伝子発現」は、1つ若しくは複数の規定の遺伝子又は規定の遺伝子構築物の転写を意味する。用語「発現」又は「遺伝子発現」は、特に、RNAの翻訳及びそれによりコードされるタンパク質/酵素の合成、すなわちタンパク質/酵素発現を意味する。
【0057】
同一性パーセント/相同性
本明細書で使用される通り、配列同一性、相同性又は「同一性パーセント」は、2つの最適にアラインメントされたDNA又はタンパク質セグメントが構成要素、例えばヌクレオチド配列又はアミノ酸配列のアラインメントのウィンドウ全体にわたり不変である程度を意味する。試験配列及び参照配列のアラインメントされたセグメントの「同一性割合」は、2つのアラインメントされたセグメントの配列によって共有される同一の構成要素の数を、全長試験配列又は全長参照配列の小さい方であるアラインメントのウィンドウにわたる参照セグメント中の配列構成要素の総数で割ったものである。「同一性パーセント」(「同一性%」)は、同一性割合を100倍したものである。
【0058】
導入/実装/形質転換
本明細書で言及される用語「導入」、「実装」又は「形質転換」は、宿主細胞中への外因性ポリヌクレオチドの移動を包含し、移動に使用される方法を問わない。
【0059】
後続のクローン増殖が可能な植物組織は、器官形成によるか又は胚発生によるかにかかわらず、本開示の遺伝子構築物及びそれから再生された植物全体で形質転換され得る。選択される特定の組織は、形質転換されている特定の種に利用可能であり、且つ最も好適なクローン増殖系に応じて変動する。例示的な組織標的としては、葉切片、花粉、胚、子葉、胚軸、大配偶体、カルス組織、既存の分裂組織(例えば、頂端分裂組織、腋芽及び根分裂組織)及び誘導分裂組織(例えば、子葉分裂組織及び胚軸分裂組織)が挙げられる。ポリヌクレオチドは、宿主細胞中に一過的又は安定的に導入され得、例えばプラスミドとして組み込まれずに維持され得る。代わりに、これは、宿主ゲノム中に組み込まれ得る。次いで、得られた形質転換植物細胞は、当業者に公知な方式で形質転換植物を再生するために使用され得る。代わりに、植物に再生され得ない植物細胞は、宿主細胞として選択され得、すなわち、得られた形質転換植物細胞は、植物(全体)に再生する能力を有さない。
【0060】
植物のゲノム中への外来遺伝子の移動は、形質転換と呼ばれる。植物種の形質転換は、現在、かなり定型的な技術である。有利には、いくつかの形質転換方法のいずれかが目的遺伝子を好適な祖先細胞中に導入するために使用され得る。形質転換及び植物組織又は植物細胞からの植物の再生について記載される方法は、一過的又は安定的な形質転換に利用され得る。形質転換方法としては、リポソーム、エレクトロポレーション、遊離DNA取り込みを増加させる化学物質、植物中へのDNAの直接注入、パーティクルガンボンバードメント、ウイルス又は花粉を使用する形質転換及びマイクロプロジェクションの使用が挙げられる。トランスジェニック作物を含むトランスジェニック植物は、好ましくは、アグロバクテリウム属(Agromacterium)媒介形質転換を介して産生される。有利な形質転換方法は、植物体中の形質転換である。この目的のため、例えば、アグロバクテリウムを植物種子に作用させるか又は植物分裂組織にアグロバクテリウムを植菌することが可能である。形質転換アグロバクテリウムの懸濁液をインタクト植物又は少なくとも花原基に作用させることは、本開示によれば特に有利であることが判明した。続いて、植物は、処理植物の種子が得られるまで生育される(Clough and Bent,Plant J.(1998)16,735-743)。発現される核酸又は構築物は、好ましくは、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)の形質転換に好適なベクター、例えばpBinl9中にクローニングされる(Bevan et al.,Nucl.Acids Res.12(1984)8711)。次いで、そのようなベクターによって形質転換されたアグロバクテリウムは、例えば、傷つけた葉又はみじん切りにした葉をアグロバクテリウム溶液中で浸漬し、次いでそれらを好適な培地中で培養することにより、植物、例えばシロイヌナズナ属(Arabidopsis)のようなモデルとして使用される植物(アラビドプシス・タリアナ(Arabidopsis thaliana)は、作物とみなされず、本開示の範囲内にある)又は作物、例えば例としてタバコ植物の形質転換についての公知の方式で使用され得る。アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)による植物の形質転換は、例えば、Hofgen and WillmitzerによるNucl.Acid Res.(1988)16,9877に記載されるか、又はとりわけTransgenic Plants,Vol.1,Engineering and Utilization,eds.S.D.Kung and R.Wu,Academic Press,1993,pp.15-38中のF.F.White,Vectors for Gene Transfer in Higher Plantsから公知である。
【0061】
倍数性/倍数性レベル/染色体倍数性/多倍数性
倍数性又は染色体倍数性は、細胞の核中で生じる完全な染色体セットの数を指す。体細胞、組織及び個々の生物は、存在する染色体セットの数(「倍数性レベル」):1倍体(1セット)、2倍体(2セット)、3倍体(3セット)、4倍体(4セット)、5倍体(5セット)、6倍体(6セット)、7倍体(heptaploid)又は7倍体(septaploid)(7セット)などに従って説明され得る。遺伝子用語の多倍数性は、3つ以上の染色体セットを有する細胞を説明するために本明細書で使用される。
【0062】
モジュレーション
用語「モジュレーション」は、発現又は遺伝子発現に関して、発現レベルを前記遺伝子発現によって対照植物と比べて変化させるプロセスを意味し、発現レベルは、増加又は減少し得る。モジュレートされていない元の発現は、構造RNA(rRNA、tRNA)又は後続の翻訳を伴うmRNAの任意の種類の発現であり得る。本出願の目的では、モジュレートされていない元の発現は、いかなる発現の不存在でもあり得る。用語「活性をモジュレートすること」又は用語「発現をモジュレートすること」は、収量関連特性の増加若しくは減少、例えば、限定されるものではないが、種子収量の増加若しくは減少及び/又は植物の生育の増加若しくは減少をもたらす、標的核酸配列及び/又はコードされるタンパク質の発現の任意の変化を意味するものとする。発現は、ゼロ(発現の不存在又は計測不能な発現)からある量に増加し得るか、又はある量から計測不能な少量若しくはゼロに減少し得る。
【0063】
一般に、形質転換後、植物細胞又は細胞集団は、目的遺伝子とともに同時移動された、植物発現可能遺伝子によってコードされる1つ以上のマーカーの存在について選択され、その後、形質転換材料は、植物全体に再生される。形質転換植物を選択するため、形質転換において得られた植物材料は、通常、形質転換植物が未形質転換植物から区別され得るような選択的条件に供される。例えば、上記の方式で得られた種子は、播種され、最初の生育期後、噴霧によって好適な選択に供され得る。形質転換種子のみが植物に生育し得るように、適宜滅菌後、好適な選択剤を使用して種子を寒天プレート上で生育させることがさらに可能である。代わりに、形質転換植物は、選択マーカー、例えば本明細書に記載されるものの存在についてスクリーニングされる。
【0064】
DNA移動及び再生後、推定形質転換植物は、目的遺伝子の存在、コピー数及び/又はゲノム機構についても評価され得る。
【0065】
生成された形質転換植物は、様々な手段、例えばクローン増殖又は古典的育種技術によって繁殖され得る。例えば、第1世代(又はT1)形質転換植物が自家受粉され得、ホモ接合型第2世代(又はT2)形質転換体が選択され、次いでT2植物が古典的育種技術を介してさらに繁殖され得る。生成された形質転換生物は、様々な形態をとり得る。例えば、それらは、形質転換細胞及び未形質転換細胞のキメラ;クローン性形質転換体(例えば、発現カセットを含有するように形質転換された全ての細胞);形質転換組織及び未形質転換組織のグラフト(例えば、植物中で未形質転換接ぎ穂にグラフトされた形質転換台木)であり得る。
【0066】
本明細書に記載される通り、構築物で形質転換されたか若しくは構築物によって交換可能に形質転換されたか、又は核酸で若しくは核酸によって形質転換された植物、植物部位、種子又は植物細胞は、バイオテクノロジー手段による前記構築物又は前記核酸の導入の結果に起因して、前記構築物又は前記核酸をトランス遺伝子として担持する植物、植物部位、種子又は植物細胞を意味すると理解されるべきである。したがって、植物、植物部位、種子又は植物細胞は、前記発現カセット、前記組換え構築物又は前記組換え核酸を含む。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【
図1】ブラゼイン突然変異のいくつかの例及び甘味に対するそれらの報告された効果を示す。NS=全く甘味でない;RS=甘味の低減;NC=変化なし;IS=甘味の増加;Max=最大の甘味の増加。色凡例:桃色=N又はC末端の欠失;橙色=アラニンへのより大きい残基の変化;淡青色=側鎖サイズの変化;黄色=電荷の変化;緑色=ジスルフィド結合の除去又はシフト。赤色は、甘味誘発に最も重要であると同定されたアミノ酸残基である。
【
図2】実施例1によるプロトプラスト培養培地中のブラゼイン-FLAGタンパク質の検出を示す。抗FLAG抗体は、表1の発現カセット設計#4(BAAS Des-pyrE-bra FLAG)で形質移入されたプロトプラストの培養培地から約6~7kDaでピークを検出したが、モック(空)からもGFP対照からもピークを検出しなかった。タンパク質は、同じ発現カセットで形質移入されたプロトプラストからもかなり少量(約15%)で検出され得た。これは、3回の独立反復からの代表的なグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0068】
ゲノム形質転換イベントの構築
本開示は、一般に、ゲノム形質転換イベントを含む植物であって、ゲノム形質転換イベントは、植物が甘味タンパク質の非天然発現又は濃縮を生じさせることを可能にする、植物に関する。一部の実施形態では、植物は、トランスジェニック植物又は遺伝子改変植物であり、ゲノム形質転換イベントは、発現カセットを含み、発現カセットは、甘味タンパク質をコードするヌクレオチド配列の1つ以上を含む。他の実施形態では、植物は、遺伝子編集植物であり、ゲノム形質転換イベントは、遺伝子又はゲノム編集技術によって得られる。
【0069】
一部の実施形態では、ゲノム形質転換イベントは、甘味タンパク質をコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含む。ヌクレオチド配列の1つ以上は、発現カセットによって植物のゲノム中に実装され得、発現カセットは、甘味タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。ある実施形態では、ゲノム形質転換イベントは、植物を甘味タンパク質産生ヌクレオチド配列で形質転換することによって植物に付加される。
【0070】
一部の実施形態では、甘味タンパク質は、ソーマチン若しくはそのバリアント、モネリン若しくはそのバリアント、マビンリン若しくはそのバリアント、ブラゼイン若しくはそのバリアント、卵白リゾチーム若しくはそのバリアント、ペンタジン若しくはそのバリアント、ネオクリン若しくはそのバリアント又はそれらの任意の組み合わせである。
【0071】
一部の実施形態では、甘味タンパク質は、ブラゼイン又はそのバリアントからなる。本開示によるブラゼインは、野生型及び全ての形態並びにそれらのフォールディング構成を包含する。ブラゼインは、天然に異なる形態で見出され得る。des-pyrE-braと呼ばれる副形態は、N末端ピログルタミン酸(pyrE)残基を欠き、主形態(pyrEを有する)よりも甘い。例示的な例として、本開示によるブラゼインは、des-pyrE-braである。des-pyrE-braのアミノ酸配列は、配列番号25に記載される。
【0072】
本開示によるブラゼインは、その全ての突然変異体を包含する。突然変異体は、野生型ブラゼインのアミノ酸配列の1つ以上の位置の原子又は官能基又は残基又は電荷又はラジカルの突然変異、欠失、変更又は付加を含み得る。ブラゼイン突然変異体の例としては、限定されるものではないが、D29A、D29K、D29N、E41K、A2ins、D2N、Q17A、K6、K30、R33、E36、R43の突然変異、C末端Y54アミノ酸の欠失、K5、Y8、K15、H31及びD50残基の突然変異体、負荷電D29の中性又は陽荷電残基への突然変異、残基29~33、39~43及び36の突然変異、29~33領域中の陽電荷が挙げられる。ブラゼイン突然変異体の他の例示的な例は、
図1に示される。したがって、一部の実施形態では、本開示による甘味タンパク質は、配列番号25に記載されるアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも30%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%を有するアミノ酸配列を含む。
【0073】
一部の実施形態では、ゲノム形質転換イベントは、発現カセットを含み、発現カセットは、配列番号1~24に記載されるヌクレオチド配列の1つ以上を含む。ある実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号1~24に記載されるヌクレオチド配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有する。
【0074】
一部の実施形態では、ゲノム形質転換イベントは、甘味タンパク質をコードするヌクレオチド配列の1つ以上を含む。本明細書に記載される甘味タンパク質としては、ソーマチン、モネリン、マビンリン、ブラゼイン、卵白リゾチーム、ネオクリン又はそれらの組み合わせが挙げられる。本明細書で使用される「甘味タンパク質をコードするヌクレオチド配列」は、甘味タンパク質の1つ以上のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を包含する。例示的な例として、配列番号7に記載されるヌクレオチド配列は、ブラゼインをコードし得る。配列番号14~24に記載されるヌクレオチド配列は、ブラゼインの1つ以上のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードし得る。一部の実施形態では、配列番号7及び配列番号14~24に記載されるヌクレオチド配列は、配列番号25に記載されるアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも30%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%を有するポリペプチドをコードし得る。
【0075】
一部の実施形態では、ゲノム形質転換イベント又は発現カセットは、プロモーター、スペーサー、エピトープタグ、ターミネーター、コード配列、シグナルペプチド又はそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の調節配列を含む。ある実施形態では、調節配列は、配列番号1~6及び8~13に記載されるヌクレオチド配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有する。調節配列は、甘味タンパク質をコードするヌクレオチド配列と作動可能に結合され得る。
【0076】
ある実施形態では、ゲノム形質転換イベント又は発現カセットは、エピトープタグをコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含み、1つ以上のヌクレオチド配列は、配列番号8に記載される1つ以上のヌクレオチド配列を有する。他の実施形態では、1つ以上のエピトープタグは、配列番号8に記載されるヌクレオチド配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有する1つ以上のヌクレオチド配列を有する。エピトープタグの例示的な例は、配列番号31に記載されるアミノ酸配列を有するFLAGである。したがって、一部の実施形態では、本植物は、配列番号31に記載されるエピトープタグのアミノ酸配列に作動可能に結合されている甘味タンパク質のアミノ酸配列を含む非天然ポリペプチドを産生することが可能とされる。
【0077】
一部の実施形態では、甘味タンパク質は、N末端においてプロペプチドとコードされる。プロペプチドを含むタンパク質は、一般に未成熟であり、おそらく非機能的であり、プロペプチドの触媒又は自己触媒的開裂によって成熟機能タンパク質に変換され得る。ある実施形態では、ゲノム形質転換イベント又は発現カセットは、プロペプチドをコードするヌクレオチド配列に作動可能に結合されている甘味タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0078】
一部の実施形態では、甘味タンパク質は、N末端においてシグナルペプチドとコードされる。シグナルペプチド及びプロペプチド配列の両方がタンパク質のN末端に存在する場合、プロペプチド配列は、成熟タンパク質のN末端に隣接して位置し、シグナルペプチド配列は、プロペプチド配列のN末端に隣接して位置する。シグナルペプチドは、植物の宿主細胞によって開裂される。好ましくは、これは、宿主細胞によって分泌前、分泌中又は分泌直後に開裂される。ある実施形態では、ゲノム形質転換イベント又は発現カセットは、甘味タンパク質をコードするヌクレオチド配列に作動可能に結合されているシグナルペプチドをコードする1つ以上のヌクレオチド配列をさらに含み、ヌクレオチド配列は、配列番号9~13に記載される1つ以上の配列を有する。他の実施形態では、シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号9~13に記載されるヌクレオチド配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有する1つ以上のヌクレオチド配列を有する。ある実施形態では、シグナルペプチド若しくはプロペプチド又はその両方をコードするヌクレオチド配列は、甘味タンパク質をコードするヌクレオチド配列と作動可能に結合されている。
【0079】
例示的な例として、ブラゼインのアミノ酸配列へのN末端分泌シグナルペプチドの付加は、細胞膜を通過するブラゼインのトランスロケーションを媒介し得、それは分泌シグナルの開裂をもたらし、ブラゼインのアポプラスト蓄積をもたらす。本明細書に記載されるシグナルペプチドの例としては、BAAS、PRla、CHIA、BP80及びS2Sが挙げられる。BAAS、PRla、CHIA、BP80及びS2Sの各々のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号26~30に記載される。したがって、一部の実施形態では、本植物は、配列番号26~30に記載されるシグナルペプチドのアミノ酸配列に作動可能に結合されている甘味タンパク質のアミノ酸配列を含む非天然ポリペプチドを産生する。
【0080】
一部の実施形態では、ゲノム形質転換イベント又は発現カセットは、1つ以上のコード配列を含む。例示的な例として、甘味タンパク質、例えばdes-pyrE-braのアミノ酸配列は、メチオニン残基で開始しない。新規開始コドンATGは、単一アミノ酸だけ元のものから変動するタンパク質を産生するために配列に付加される。開始コドンを含む配列は、発現系の迅速な試験及び最適化のための有益な科学試薬として機能することが予測される。甘味タンパク質をコードするコドン最適化ヌクレオチド配列の例示的な例は、配列番号14~24に記載される。一部の実施形態では、ゲノム形質転換イベント又は発現カセットは、配列番号14~24に記載されるヌクレオチド配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有する1つ以上のヌクレオチド配列を含む。
【0081】
表1は、本開示による発現カセットの設計のいくつかの非限定的な例を示す。目的遺伝子の各々、例えばブラゼインをコードするヌクレオチド配列は、プロモーター配列、及び/又はエピトープタグをコードするヌクレオチド配列、及び/又はシグナルペプチドをコードする遺伝子配列、及び/又はコドンに作動可能に結合されており、それにより発現可能遺伝子を形成する。このような「発現可能遺伝子」は、スペース配列(スペーサー)を介して作動可能に結合されることによってさらに改変されて発現又は「発現カセット」によって産生される酵素産物を変更し得る。一部の実施形態では、本植物の発現カセットは、1つ以上の発現可能遺伝子及び1つ以上のスペーサーを含み、各発現可能遺伝子は、甘味タンパク質をコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含む。
【0082】
【0083】
【0084】
一部の実施形態では、本開示の発現カセットは、1つ以上のレポータータンパク質をコード及び発現する1つ以上のレポーター遺伝子配列をさらに含む。レポータータンパク質としては、限定されるものではないが、カナマイシン耐性タンパク質(KAN)、ハイグロマイシン耐性タンパク質(Hyg)、緑色蛍光タンパク質(GFP)及び緑色蛍光タンパク質(RFP)が挙げられる。
【0085】
一部の実施形態では、発現カセットは、プラスミド上で担持されて宿主細胞による酵素産生を可能にする。他の実施形態では、染色体組込みを可能にするベクター上で担持される発現カセットは、染色体からの酵素の発現を可能にする。
【0086】
植物系統の構築及び形質転換
一部の実施形態では、本開示の植物を作製する方法は、植物系統を構築し、本明細書に記載されるゲノム形質転換イベントを選択天然植物と組み合わせること及び/又は選択天然植物を、本開示によって作製される発現カセットで形質転換することに関する。
【0087】
ブラゼインの天然発現は、ペンタディプランドラ・ブラゼアナ(Pentadiplandra brazzeana)中でのみ利用可能であることが一般に公知である。本出願の一部の実施形態では、ブラゼインをコードするヌクレオチド配列を含むゲノム形質転換イベントと組み合わせられるか又はそれで形質転換されるために選択される天然植物は、ペンタディプランドラ・ブラゼアナ(Pentadiplandra brazzeana)でない。特に、組み合わせ又は形質転換前の天然ゲノムによる天然植物は、ブラゼインを天然に産生しない。ある実施形態では、形質転換のための選択天然植物としては、野生型、又は未形質転換、又は非形質転換ウリ科(Cucurbitaceae)又はウリ類が挙げられ、それらはその天然ゲノムによって検出可能なブラゼインを天然に産生しない。ある実施形態では、植物は、スイカである。
【0088】
一部の実施形態では、植物は、生育が速い果実又は野菜である。甘味タンパク質の急速な産生を可能にする生育が速い経済果実、野菜又は植物の遺伝子編集又は形質転換は、効率及びコストに関してより興味深い。生育が速い植物の非限定的な例は、ニワウメ、モモ及びネクタリン、アンズ、ダイコン、セイヨウスモモ及びそれらの類縁種、スミノミザクラ、リンゴ、ナシ、セイヨウミザクラ、柑橘類、キュウリ、ズッキーニ、エンドウ、カブなどである。
【0089】
本開示による遺伝子改変植物は、植物をゲノム形質転換イベントと組み合わせ、それにより遺伝子改変植物を形成することによって産生され、ゲノム形質転換イベントは、遺伝子改変植物が本明細書に記載される甘味タンパク質の非天然発現又は濃縮を生じさせることを可能にする。
【0090】
代わりに、ゲノム形質転換イベントは、植物を甘味タンパク質産生ヌクレオチド配列で形質転換することによって植物に付加され得る。一部の実施形態では、植物をゲノム形質転換イベントと組み合わせることは、以下の方法の1つ以上を使用して実施される:リポソームの使用、エレクトロポレーションの使用、遊離DNA取り込みを増加させる化学物質の使用、植物中へのDNAの直接注入の使用、パーティクルガンボンバードメントの使用、ウイルス若しくは花粉を使用する形質転換の使用、マイクロプロジェクションの使用又はアグロバクテリウム属(Agrobacterium)媒介形質転換の使用。好ましくは、トランスジェニック植物は、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)媒介形質転換方法を介して作製される。一部の実施形態では、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium Tumefaciens)を発現カセットで形質転換してトランスジェニックアグロバクテリウムを作出し、次いでそれを使用して目的植物を形質移入し、発現カセット中のレポーター遺伝子の発現に基づき良好に形質転換された植物を選択した。
【0091】
一部の実施形態では、トランスジェニック植物は、以下の方法によって生産されたトランスジェニックスイカ(Citrullus lanatus)である。簡潔に述べると、第1に、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium Tumefaciens)株EHA105を本出願の発現カセットで、Weigel et.al.によって報告された凍結融解法(Transformation of agrobacterium using the freeze-thaw method,CSH Protoc.2006 Dec 1;2006(7))を使用して形質転換した。簡潔に述べると、化学的にコンピテントなアグロバクテリウムを調製した。発現カセットの添加後、混合物を交互に液体窒素中で冷凍し、液体に解凍した。次いで、細胞を溶原性ブロス(LB)培地中で回収しておき、選択抗生物質を有するLB培地上でプレートアウトした。第2に、適切な成熟度を有するスイカ苗を、形質転換のための外植体の調製に使用した。子葉を胚軸から切断し、回収し、形質転換のために適切に処理した。次いで、形質転換アグロバクテリウム培養物をそれらの外植体に添加した。感染後、外植体を無菌ペーパータオル上でブロットし、ムラシゲスクーグ(MS)培地を有するプレートに移した。プレートを密封し、適切な時間、同時栽培した。同時栽培後、外植体を生育チャンバに移動させて閾値含有量の選択抗生物質の選択下で生育した。
【0092】
他の実施形態では、植物を、2つ以上の発現カセットの感染によって同時形質転換し、使用された発現カセットは表1に示されるものから選択した。
【0093】
植物及びその組織中のタンパク質発現
一部の実施形態では、本開示の植物を作製する方法は、植物中で導入されたゲノム形質転換イベントによる甘味タンパク質の発現をモニタリング及び分析することに関する。
【0094】
一部の実施形態では、本出願によって作製された非天然甘味タンパク質を産生する植物の組織又は部位をサンプリングし、分析準備済サンプルを得るように処理した。サンプルをさらに分析に供してゲノム形質転換イベント又は発現カセット中の目的遺伝子によって発現された甘味タンパク質の存在及び/又は含有量を検出した。
【0095】
一部の実施形態では、本開示によって作製された非天然甘味タンパク質を産生する植物の組織をタンパク質抽出緩衝液中で粉砕し、次いで遠心分離に供した。得られた上清をさらに希釈し、次いで抗体検出に使用した。標的タンパク質の各々の存在を、対応する抗体の結合によって産生された化学発光シグナルの検出及び各測定における対照として使用されたタンパク質サイズラダーによって示されるタンパク質のサイズによって確認した。一部の実施形態では、タンパク質検出は、タンパク質検出のための従来のウェスタンブロッティング法のタンパク質分離及び免疫検出を自動化するJess装置(Bio-Techne)を使用することによって実施した。ある実施形態では、シグナル/ノイズ比(S/N比)>3を分析及び選択目的で陽性シグナルについてのカットオフとして使用した。
【0096】
一部の実施形態では、甘味タンパク質は、限定されるものではないが、トランスジェニック植物の器官、組織、葉、茎、根、花又は花部、果実、シュート、配偶体、胞子体、花粉、葯、小胞子、卵細胞、接合体、胚、分裂組織領域、カルス組織、種子、挿し木、細胞若しくは組織培養物、胎座、室、中果皮、外皮、表皮又は任意の他の部位若しくは産物を含む本出願の植物の様々な組織中で検出される。一部の実施形態では、植物は、スイカであり、甘味タンパク質は、胎座、室、中果皮、外皮及びその表皮中で検出される。一部の実施形態では、甘味タンパク質の発現は、組織特異的であり、例えば、甘味タンパク質の発現レベルは、植物の一部の部位又は組織中で組織の他の部位と比較して顕著に高い。
【0097】
一部の実施形態では、本開示の非天然甘味タンパク質を産生する植物は、栽培可能及び再生産可能である。トランスジェニック植物の子孫又は祖先は、子孫及び祖先が甘味タンパク質を産生することを可能にする非天然酵素の供給源である。トランスジェニック植物の種子の繋殖はその生存可能な子孫をもたらし、子孫は非天然甘味タンパク質又はそのバリアントを産生する。
【0098】
一部の実施形態では、非天然甘味タンパク質を産生する植物は、2倍体の染色体セットを有する2倍体植物である。ある実施形態では、2倍体トランスジェニック植物は、種子を産生し、種子は、非天然甘味タンパク質を含み、2倍体トランスジェニック植物の種子の繁殖は、その生存子孫をもたらし、子孫は甘味タンパク質を産生する。
【0099】
非天然甘味タンパク質を産生する植物に由来する甘味料、組成物及び消耗品
一部の実施形態では、本開示は、一般に、甘味タンパク質を含む甘味料又は甘味付与組成物であって、非天然甘味タンパク質を産生し、それを含む植物又はその部位に由来する甘味料又は甘味付与組成物に関する。ある実施形態では、甘味料又は甘味付与組成物は、本開示によって作製される植物に由来する。一部の実施形態では、本開示は、少なくとも1つの本明細書に記載される甘味料及び少なくとも1つの本明細書に記載される甘味タンパク質を含む組成物を提供する。一部の実施形態では、組成物は、少なくとも1つの本明細書に記載される甘味料及び少なくとも1つの本明細書に記載される甘味タンパク質を含む甘味料構成要素を含む。1つの特定の実施形態では、組成物は、本明細書に記載される甘味付与組成物を含み、甘味付与組成物は、ブラゼインを含む。
【0100】
本開示の植物は、適切な加工時に甘味タンパク質ベース甘味料を誘導し得る。得られる甘味料は、多くの目的で低カロリー又はノンカロリー甘味を提供するために使用され得る。甘味を提供するためのこのような使用の例は、飲料、例えば茶、コーヒー、果実ジュース及び果実飲料;食料、例えばジャム及びゼリー、ピーナツバター、パイ、プリン、シリアル、飴、アイスクリーム、ヨーグルト、ベーカリー製品;ヘルスケア製品、例えば歯磨き粉、洗口液、咳止めドロップ、咳止めシロップ;チューインガム;並びに砂糖代用品である。ある実施形態では、甘味料は、本出願による植物のジュース中に存在する。
【0101】
一部の実施形態では、本開示は、非天然甘味タンパク質を産生する植物に由来する甘味料を作製する方法にも関する。方法は、一般に、限定されるものではないが、植物又はその部位の前処理の清浄化及び破砕、植物又はその部位の抽出、粗甘味料を産生するための沈降及び/又は遠心分離、吸着及び/又は分離、濃縮及び回収、さらなる精製、任意選択の濃縮/乾燥並びに配合を含むステップを包含する。抽出の手段は、室温又は加熱温度若しくは冷蔵温度での水抽出;有機溶媒、例えばアルコールなどを介する抽出を包含する。分離及び精製の手段は、遠心分離、浸漬、重力沈降、濾過、精密濾過、ナノ濾過、限外濾過、逆浸透、クロマトグラフィー、吸収クロマトグラム、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、交換樹脂精製などを包含する。このような技術は、一般に、当業者に公知である。植物エキスの調製のための慣用の抽出技術の記載は、米国特許出願第2005/0123662号明細書に見出され得る。ある実施形態では、甘味料は、本開示によって作製される植物の葉若しくは果実又はその両方から得られる。
【0102】
一部の実施形態では、甘味料は、本開示による非天然甘味タンパク質を産生するスイカから得られ、甘味料は、スイカによって産生される非天然甘味タンパク質を含む。一部の実施形態では、甘味タンパク質は、ブラゼインである。
【0103】
一部の実施形態では、上記甘味タンパク質は、組成物又は消耗品、例えば飲料中の唯一の甘味料である。他の実施形態では、組成物又は消耗品は、上記甘味タンパク質及び1つ以上の追加の甘味料を含む。甘味料構成要素中で使用される追加の甘味料は、任意の公知の甘味料、例えば天然甘味料、天然強力甘味料、合成甘味料であり得る。
【0104】
典型的には、少なくとも1つの本開示の甘味タンパク質は、少なくとも約50重量%、例えば少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%及び少なくとも約95%などの甘味付与組成物を含む。より特定される実施形態では、少なくとも1つの本開示の甘味タンパク質は、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%又は少なくとも約99%の甘味付与組成物を含む。
【0105】
一部の実施形態では、少なくとも1つの本明細書に記載される甘味タンパク質は、組成物が消耗品に添加される場合、消耗品のBrix値によって測定される甘味が少なくとも1度、例えば少なくともBrix2度、少なくともBrix3度、少なくともBrix4度又は少なくともBrix5度などだけ増加するような量で組成物中に存在する。
【0106】
一部の実施形態では、本開示は、少なくとも1つの上記で本明細書に記載される甘味料及び少なくとも1つの本明細書に記載される甘味タンパク質を含む消耗品を提供する。一部の実施形態では、本開示は、少なくとも1つの本明細書に記載される甘味料及び少なくとも1つの本明細書に記載される甘味タンパク質を含む甘味付与組成物を含む消耗品を提供する。
【0107】
少なくとも1つの本明細書に記載される甘味タンパク質は、典型的には、消耗品中に、その甘味を増強するため、且つ/又は消耗品の呈味がスクロースで甘味付与された消耗品により近くなるように甘味料の1つ以上の呈味属性をモジュレートするために有効な量で存在する。
【0108】
一部の実施形態では、少なくとも1つの本明細書に記載される甘味タンパク質は、消耗品中に、約Brix4度、約Brix5度、約Brix6度、約Brix7度、約Brix8度、例えば約Brix8度、約Brix9度、約Brix10度、約Brix11度又は約Brix12度などと同等の甘味を提供するために有効な量で存在する。他の実施形態では、少なくとも1つの本明細書に記載される甘味タンパク質は、消耗品中に、消耗品のBrix値によって測定される甘味を少なくとも1つの甘味タンパク質の不存在下の消耗品のBrix度と比較して、例えば少なくとも1度、例えば少なくともBrix2度、少なくともBrix3度、少なくともBrix4度又は少なくともBrix5度などだけ増加させるために有効な量で存在する。
【0109】
他の実施形態では、少なくとも1つの本明細書に記載される甘味タンパク質は、組成物又は消耗品中に、組成物又は消耗品が消耗品に添加される場合、甘味料の1つ以上の呈味属性がモジュレートされ、少なくとも1つの甘味タンパク質の不存在下の消耗品の同じ1つ以上の呈味属性と比較して消耗品の呈味がスクロースで甘味付与された消耗品により近くなるように有効な量で存在する。例示的な呈味属性モジュレーションとしては、苦味の減少又は排除、苦味残存の減少又は排除、酸味の減少又は排除、渋味の減少又は排除、塩味の減少又は排除、金属味の減少又は排除、食感の改善、甘味残存の減少又は排除及び甘味発生の増加が挙げられる。甘味料の複数の呈味属性は、消耗品が全体的に、より多くのスクロースで甘味付与された特徴を有するように同時にモジュレートされ得る。スクロースで甘味付与された特徴の改善を定量する方法は、当技術分野において公知であり、それとしては、例えば、呈味試験及びヒストグラムマッピングが挙げられる。
【0110】
例示的な消耗品としては、限定されるものではないが、食用ゲル混合物及び組成物、歯科組成物、食材(菓子、調味料、チューインガム、シリアル組成物、焼成商品、乳製品及び卓上甘味付与組成物)、ジュース(低純度ジュース)、高純度エキス、完全純度甘味料、飲料並びに飲料製品が挙げられる。
【0111】
一部の実施形態では、本開示は、本明細書に記載される植物に由来する飲料又は飲料製品を提供する。一部の実施形態では、飲料又は飲料製品は、本明細書に記載される植物中に含有されるか又はそれにより産生される少なくとも1つの甘味タンパク質を含む。
【0112】
本明細書で使用される「飲料」又は「飲料製品」は、レディトゥドリンク飲料、飲料濃縮物、飲料シロップ又は粉末飲料である。好適な飲用飲料としては、炭酸及び非炭酸飲料が挙げられる。炭酸飲料としては、限定されるものではないが、冷凍炭酸飲料、強化発泡性飲料、コーラ、果実風味の発泡性飲料(例えば、レモン-ライム、オレンジ、ブドウ、イチゴ及びパイナップル)、ジンジャーエール、ソフトドリンク及びルートビアが挙げられる。非炭酸飲料としては、限定されるものではないが、果実ジュース、果実風味のジュース、ジュースドリンク、ネクター、野菜ジュース、野菜風味のジュース、スポーツドリンク、栄養ドリンク、強化水ドリンク、ビタミン強化水、ニアウォータードリンク(例えば、天然又は合成風味料を有する水)、ココナッツ水、茶タイプのドリンク(例えば、紅茶、緑茶、ルイボス茶、ウーロン茶)、コーヒー、ココアドリンク、乳成分を含有する飲料(例えば、乳飲料、乳成分を含有するコーヒー、カフェオレ、ミルクティー、フルーツミルク飲料)、穀物エキスを含有する飲料及びスムージーが挙げられる。1つの特定の実施形態では、飲料又は飲料製品は、本開示による非天然甘味タンパク質を産生するスイカに由来するスイカジュースである。
【0113】
飲料濃縮物及び飲料シロップは、初期容量の液体マトリックス(例えば、水)及び所望の飲料成分を用いて調製される。次いで、原液飲料は、さらなる容量の水を添加することによって調製される。粉末飲料は、液体マトリックスの不存在下で飲料成分の全てを乾燥混合することによって調製される。次いで、原液飲料は、全容量の水を添加することによって調製される。
【0114】
飲料は、液体マトリックス、すなわち成分(本発明の組成物を含む)が溶解される基礎成分を含む。一実施形態では、飲料は液体マトリックスとして飲料品質の水を含み、例えば脱イオン水、蒸留水、逆浸透水、炭処理水、精製水、脱塩水及びそれらの組合せなどが使用され得る。追加の好適な液体マトリックスとしては、限定されるものではないが、リン酸、リン酸緩衝液、クエン酸、クエン酸緩衝液及び炭処理水が挙げられる。
【0115】
一部の実施形態では、飲料は、追加の甘味料を含有する。追加の甘味料は、本明細書に記載される植物に由来しても又はしなくてもよい。一部の実施形態では、飲料は、約0~約140,000ppmの濃度の炭水化物甘味料を含有する。一部の実施形態では、飲料は、本明細書に記載される植物に由来しない炭水化物甘味料を有さないか又は実質的に有さない。
【0116】
飲料は、限定されるものではないが、炭水化物、ポリオール、アミノ酸及びその対応する塩、ポリアミノ酸及びその対応する塩、糖酸及びその対応する塩、ヌクレオチド、有機酸、無機酸、有機酸塩及び有機塩基塩を含む有機塩、無機塩、苦味化合物、カフェイン、風味料及び風味付与成分、渋味化合物、タンパク質又はタンパク質加水分解物、界面活性剤、乳化剤、増量剤、ジュース、乳製品、穀物及び他の植物エキス、フラボノイド、アルコール、ポリマー並びにそれらの組み合わせを含む添加剤を任意選択でさらに含み得る。任意の好適な本明細書に記載される添加剤が使用され得る。
【0117】
飲料は、上記で詳述される1つ以上の機能性成分をさらに含有し得る。機能性成分としては、限定されるものではないが、ビタミン、ミネラル、酸化防止剤、保存料、グルコサミン、ポリフェノール及びそれらの組み合わせが挙げられる。任意の好適な本明細書に記載される機能性成分が使用され得る。
【0118】
一部の実施形態では、本飲料は、1人分8オンス当たり最大約120カロリーを有するフルカロリー飲料である。一部の実施形態では、本飲料は、1人分8オンス当たり最大約60カロリーを有する中カロリー飲料である。一部の実施形態では、本飲料は、1人分8オンス当たり最大約40カロリーを有する低カロリー飲料である。一部の実施形態では、本飲料は、1人分8オンス当たり約5カロリー未満を有するゼロカロリーである。一部の実施形態では、本飲料は、1人分8オンス当たり約1カロリー未満を有するゼロカロリーである。
【0119】
一部の実施形態では、本開示による消耗品は、歯科組成物である。歯科組成物は、一般に、活性歯科物質及び基材を含む。歯科組成物は、口腔中で使用される任意の経口組成物、例えば口内清涼剤、うがい剤、口内洗浄剤、歯磨き粉、歯磨き用剤、歯磨剤、口内スプレー、ティースホワイトニング剤、デンタルフロスなどの形態であり得る。
【0120】
一部の実施形態では、本開示による消耗品は、菓子である。菓子は、甘味物、キャンディー、菓子類又は類似の用語であり得る。菓子は、典型的には糖分が高いと知覚されるか又は典型的には甘い任意の食料の形態であり得る。本開示の特定の実施形態によれば、菓子は、ベーカリー製品、例えばペストリー;デザート、例えばヨーグルト、ゼリー、飲用ゼリー、プリン、ババロア、ブラマンジェ、ケーキ、ブラウニー、ムースなど、ティータイム又は食後に食される甘味付与された食料品;冷凍食品;冷菓、例えばアイスクリームのタイプ、例えばアイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイスなど(甘味料及び様々な他のタイプの原料が乳製品に添加され、得られた混合物が撹拌及び冷凍された食料品)及びアイス菓子、例えばシャーベット、デザートアイスなど(様々な他のタイプの原料が液糖に添加され、得られた混合物が撹拌及び冷凍された食料品);一般菓子、例えば焼き菓子又は蒸し菓子、例えばクラッカー、ビスケット、餡パン、ハルバ、アルファホールなど;餅及びスナック;卓上製品;一般砂糖菓子、例えばチューインガム(例えば、実質的に水不溶性の咀嚼可能ガムベース、例えばチクル又はジェツロン、グッタケイゴムを含むその代用品又はある可食天然合成樹脂又はワックスを含む組成物を含む)、ハードキャンディー、ソフトキャンディー、ミント、ヌガーキャンディー、ゼリービーンズ、ファッジ、トフィー、タフィー、スイスミルクタブレット、リコリスキャンディー、チョコレート、ゼラチンキャンディー、マシュマロ、マジパン、ディビニティー、綿菓子など;果実風味のソース、チョコレートソースなどを含むソース;食用ゲル;バタークリーム、小麦粉ペースト、ホイップクリームなどを含むクリーム;イチゴジャム、マーマレードなどを含むジャム;並びに甘味パンなどを含むパン又は他のデンプン製品並びにそれらの組合せであり得る。本明細書で言及される通り、「基礎組成物」は食品であり得、甘味料構成要素を担持するためのマトリックスを提供する任意の組成物を意味する。
【0121】
一部の実施形態では、本消耗品は、本明細書に記載される植物に由来する甘味タンパク質を含む調味料である。調味料は、本明細書で使用される場合、食料又は飲料の風味を増強又は改善するために使用される組成物である。調味料の非限定的な例としては、ケチャップ;カラシ;バーベキューソース;バター;チリソース;チャツネ;カクテルソース;カレー;ディップ;フィッシュソース;セイヨウワサビ;ホットソース;ゼリー、ジャム、マーマレード又は保存料;マヨネーズ;ピーナツバター;薬味;レムラード;サラダドレッシング(例えば、オイル及びビネガー、シーザー、フレンチ、ランチ、ブルーチーズ、ロシアン、サウザンドアイランド、イタリアン並びにバルサミコ酢のビネグレット)、サルサ;ザワークラウト;醤油;ステーキソース;シロップ;タルタルソース;及びウスターソースが挙げられる。
【0122】
一部の実施形態では、本消耗品は、本明細書に記載される植物に由来する甘味タンパク質を含むチューインガムである。チューインガム組成物は、一般に、水溶性部分及び水不溶性の咀嚼可能ガムベース部分を含む。水溶性部分は、典型的には本開示の甘味料又は甘味付与組成物を含み、咀嚼中の一定期間にわたり風味付与剤の一部と消散する一方、不溶性ガムベース部分は口内に保持される。不溶性ガムベースは、一般に、ガムがチューインガム、風船ガム又は機能性ガムとみなされるかどうかを決定する。
【0123】
一部の実施形態では、本消耗品は、本明細書に記載される植物に由来する甘味タンパク質を含むシリアル組成物である。シリアル組成物は、典型的には、主食又は軽食のいずれかとして食される。特定の実施形態における使用のためのシリアル組成物の非限定的な例としては、即席シリアル及びホットシリアルが挙げられる。即席シリアルは、消費者によるさらなる加工(すなわち調理)なしで食され得るシリアルである。即席シリアルの例としては、朝食シリアル及びスナックバーが挙げられる。朝食シリアルは、典型的には、細切状、フレーク状、パフ状又は押出形態を生じさせるように加工される。朝食シリアルは、一般に冷めたままで食され、乳及び/又は果実と混合されることが多い。スナックバーとしては、例えば、エネルギーバー、餅、グラノーラバー及び栄養バーが挙げられる。ホットシリアルは、一般に、食される前に通常、乳又は水のいずれかで調理される。ホットシリアルの非限定的な例としては、グリッツ、粥、ポレンタ、米及びロールドオートが挙げられる。シリアル組成物は、一般に、少なくとも1つのシリアル成分を含む。本明細書で使用される場合、用語「シリアル成分」は、穀類全粒又はその一部、種子全体又はその一部及びイネ科植物全体又はその一部などの材料を示す。特定の実施形態における使用のためのシリアル成分の非限定的な例としては、トウモロコシ、コムギ、コメ、オオムギ、フスマ、フスマ胚乳、ブルグア、ソルガム、キビ、オートムギ、ライムギ、ライコムギ、ソバ、フォニオ、キヌア、マメ、ダイズ、アマランス、テフ、スペルトコムギ及びカニワが挙げられる。
【0124】
一部の実施形態では、本消耗品は、本明細書に記載される植物に由来する甘味タンパク質を含む焼成商品である。焼成商品としては、本明細書で使用される場合、食される状態の製品並びに食前に準備を必要とする焼くのみの製品、小麦粉及びミックスが挙げられる。焼成商品の非限定的な例としては、ケーキ、クラッカー、クッキー、ブラウニー、マフィン、ロールケーキ、ベーグル、ドーナツ、シュトルーデル、ペストリー、クロワッサン、ビスケット、パン、パン製品及び丸パンが挙げられる。本開示の実施形態による好ましい焼成商品は、3つのグループ:パンタイプ生地(例えば、精白パン、バラエティブレッド、ソフトバンズ、ハードロール、ベーグル、ピザ生地及びフラワートルティーヤ)、甘味生地(例えば、デニッシュ、クロワッサン、クラッカー、パフペストリー、パイクラスト、ビスケット及びクッキー)及びバッター(例えば、ケーキ、例えばスポンジ、パウンド、デビルズフード、チーズケーキ及びレイヤーケーキ、ドーナツ又は酵母で膨らませた他のケーキ、ブラウニー並びにマフィン)に分類され得る。生地は一般に小麦粉ベースであると特徴付けられる一方、バッターは、より水ベースである。
【0125】
一部の実施形態では、本消耗品は、本明細書に記載される植物に由来する甘味タンパク質を含む乳製品である。本開示における使用に好適な乳製品及び乳製品の作製方法は、当業者に周知である。乳製品は、本明細書で使用される場合、乳又は乳から製造される食材を含む。本開示の実施形態における使用に好適な乳製品の非限定的な例としては、乳、ミルククリーム、サワークリーム、クレームフレーシュ、バターミルク、培養バターミルク、粉乳、加糖練乳、無糖練乳、バター、チーズ、カテージチーズ、クリームチーズ、ヨーグルト、アイスクリーム、フローズンカスタード、フローズンヨーグルト、ジェラート、ビア、ピーマ、フィールミョルク、カイマック、ケフィア、ヴィーリ、クミス、アイラグ、アイスミルク、カゼイン、アイラン、ラッシー、コア又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0126】
一部の実施形態では、本消耗品は、本明細書に記載される植物に由来する甘味タンパク質を含む卓上風味付与組成物である。卓上風味付与組成物は、少なくとも1つの増量剤、添加剤、固結防止剤、機能性成分又はそれらの組み合わせをさらに含み得る。卓上風味付与組成物は、当技術分野において公知の任意の形態で包装され得る。非限定的な形態としては、限定されるものではないが、粉末形態、顆粒形態、パケット、錠剤、小袋、ペレット、キューブ、固体及び液体が挙げられる。
【0127】
本明細書に記載される非天然甘味タンパク質を産生する植物の形態及びそれを作製する方法は、本開示の好ましい実施形態を構成する一方、本開示は、それらの正確な形態に限定されないことが理解されるべきである。当業者に明らかな通り、上記の様々な実施形態は、さらなる実施形態を提供するために組み合わされ得る。本トランスジェニック植物、方法及びプロセス(その規定の構成要素を含む)の態様は、必要に応じて、本開示の系、方法、ノード及びコンポーネント並びに概念を最良に用いるために改変され得る。これらの態様は、特許請求される本開示の範囲内と十分にみなされる。例えば、上記の様々な方法は、一部の行為を除外し、他の行為を含み、且つ/又は説明される実施形態に記載されるものと異なる順序で行為を実行し得る。
【0128】
さらに、本明細書に教示されるトランスジェニック植物及び作製方法において、様々な行為は、説明及び記載されるものと異なる順序で実施され得る。上記に照らして、本系、方法及び物品に対するこれらの及び他の変更形態がなされ得る。一般に、以下の特許請求の範囲において、使用される用語は、本明細書及び特許請求の範囲に開示される具体的な実施形態に本開示を限定すると解釈されるべきではないが、そのような特許請求の範囲が与えられる均等物の全範囲とともに全ての考えられる実施形態を含むと解釈されるべきである。したがって、本開示は、本開示によって限定されるものではなく、その範囲は、添付の特許請求の範囲によって完全に決定されるべきである。
【0129】
非特許文献
Masuda,T.,Ueno,Y.,and Kitabatake,N.(2005).High yield secretion of the sweet-tasting protein lysozyme from the yeast Pichia pastoris.Protein Expr.Purif.39,35-42.Kant,R.(2005).Sweet proteins-potential replacement for artificial low calorie sweeteners.Nutrition Journal 4,5.
Faus,I.(2000).Recent developments in the characterization and biotechnological production of sweet-tasting proteins.Appl Microbiol Biotechnol 53,145-151.
Ming,D.,and Hellekant,G.(1994).Brazzein,a new high-potency thermostable sweet protein from Pentadiplandra brazzeana B.FEBS Lett 355,106-108.
Pfeiffer,J.F.,Boulton,R.B.,and Noble,A.C.(2000).Modeling the sweetness response using time-intensity data.Food Quality and Preference 11,129-138.
Izawa,H.,Ota,M.,Kohmura,M.,and Ariyoshi,Y.(1996).Synthesis and characterization of the sweet protein brazzein.Biopolymers 39,95-101.
Assadi-Porter,F.M.,Maillet,E.L.,Radek,J.T.,Quijada,J.,Markley,J.L.,and Max,M.(2010).Key amino acid residues involved in multi-point binding interactions between brazzein,a sweet protein,and the T1R2-T1R3 human sweet receptor.JMol Biol 398,584-599.
Lamphear,B.J.,Barker,D.K.,Brooks,C.A.,Delaney,D.E.,Lane,J.R.,Beifuss,K.,Love,R.,Thompson,K.,Mayor,J.,Clough,R.,et al.(2005).Expression of the sweet protein brazzein in maize for production of a new commercial sweetener.Plant Biotechnol J3,103-114.
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【0130】
本明細書に挙げられる全ての刊行物、特許及び特許出願は、本開示が属する技術分野における当業者の水準を示す。
【0131】
以下の実施例は、本開示の好ましいが非限定的な実施形態を説明する。
【実施例】
【0132】
実施例1 - 非天然ブラゼインを産生するスイカの生産。
ブラゼインは、西アフリカで見出されるウブリ(Oubli)樹木ペンタディプランドラ・ブラゼアナ{Pentadiplandra brazzeana)から最初に同定された甘味タンパク質である。ブラゼインは、スクロースよりも500~2000倍甘く、飲料産業において低カロリー甘味料として使用される潜在性を有する。スイカは、重量基準で世界最大の果実生産系の1つをなし、広範な地理において生育され得る。スイカ生産のこのような好ましい経済性は、ブラゼインを発現するトランスジェニックスイカの着想に極めて説得力を持たせる。本試験は、迅速な概念実証データセットを生成し、市販の様々なスイカにおけるブラゼインの産生の技術的な実行可能性を裏付けた。
【0133】
スイカにおけるプロモーター、シグナルペプチド及びコドン使用頻度パターンの最適化のための発現カセット配列を設計すること。機能性発現ベクターへのDNA部分のデノボ合成及びアセンブリ。サンガーシーケンシングによって全ての発現カセットの配列組込み及び設計原理を評価すること。
【0134】
ブラゼインタンパク質は、天然に異なる形態で見出され得る。des-pyrE-braと呼ばれる副形態は、N末端ピログルタミン酸(pyrE)残基を欠き、主形態(pyrEを有する)よりも甘く、したがって、本試験に望ましい産物として選択される。des-pyrE-braのペプチド配列は、配列番号25に記載される(Ming et al,1994)。
【0135】
des-pyrE-braタンパク質のペプチド配列はメチオニン残基で開始しないため、以下のアプローチを開発した:(1)新規開始コドン(ATG)の付加:本発明者らは、新規ATGが元のタンパク質から単一アミノ酸だけ変動するタンパク質を産生することを予測する。このバージョンは、発現系(設計、プロモーター及びコドン使用頻度)の迅速な試験及び最適化のための有益な科学試薬として機能することが予測される:(2)N末端分泌シグナルの付加:細胞膜を通過するタンパク質の分泌シグナル媒介トランスロケーションは、分泌シグナルの開裂をもたらし、des-pyrE-braタンパク質のアポプラスト蓄積をもたらす。
【0136】
これらの標的遺伝子の発現及び検出を容易にするため、プロモーター配列、エピトープタグ及びターミネーター配列を含む遺伝因子を各個々の標的遺伝子について設計した。4つの主な可変要素:抗ブラゼイン抗体が利用可能になるまでのブラゼインの検出のためのFLAGタグの包含;des-pyrE-braタンパク質の発現、開裂及び分泌を容易にするための5つの異なるシグナルペプチド;複数の植物種におけるコドン使用頻度選好性に基づく6つのコドン使用頻度表;スイカにおいて事前に評価された3つの構成的プロモーター及び文献報告から同定された1つの果実特異的プロモーターを含む4つのプロモーターが、最適発現を容易にすることがみなされた。
【0137】
表1に示される通り、ブラゼインをコードするヌクレオチド配列の異なる組み合わせを有する合計18種の発現カセットを構築した。これらの発現カセットの構築は、標準的な遺伝子操作法に従って実施した。この設計から必要とされる全ての個々の部分を合成し、プラスミドのサンガーシーケンシングを介して評価してインシリコ設計に対する100%一致を確保した。
【0138】
これらの発現カセットを収容するプラスミドを調製し、チャールストングレー苗から単離されたスイカプロトプラストに送達した。24時間後、プロトプラスト及び培養培地をサンプリングし、抗FLAG抗体を使用して分析した。
図2に示される通り、ブラゼインタンパク質の予測サイズに一致するサイズを有するFLAGタグ含有タンパク質が表1の発現カセット設計#4から検出された。結果は、カセット設計の組込みを実証し、ブラゼインをスイカ細胞中で発現させ、次いでその細胞から分泌させることができる最初の証拠を提供する。
【0139】
以下の番号付与された項は、本開示のさらなる例示的態様及び特徴を定義する:
1.ゲノム形質転換イベントを含む植物であって、ゲノム形質転換イベントは、植物が甘味タンパク質の非天然発現又は濃縮を生じさせることを可能にする、植物。
2.トランスジェニック植物であり、ゲノム形質転換イベントは、発現カセットを含み、発現カセットは、甘味タンパク質をコードするヌクレオチド配列の1つ以上を含む、項1の植物。
3.発現カセットは、配列番号1~24に記載されるヌクレオチド配列の1つ以上を含む、項2の植物。
4.甘味タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、配列番号1~24に記載されるヌクレオチド配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有する、項2~3のいずれかの植物。
5.発現カセットは、プロモーター、スペーサー、エピトープタグ、ターミネーター、シグナルペプチド又はそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の調節配列を含む、項2~4のいずれかの植物。
6.調節配列は、配列番号1~6及び8~13に記載されるヌクレオチド配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有する、項5の植物。
7.発現カセットは、甘味タンパク質をコードするヌクレオチド配列と作動可能に結合されているプロモーターを含む、項2~6のいずれかの植物。
8.甘味タンパク質は、ソーマチン、モネリン、マビンリン、ブラゼイン、卵白リゾチーム、ネオクリン、ペンタジン若しくはそれらのバリアント又はそれらの組み合わせからなる群から選択される、項1~7のいずれかの植物。
9.甘味タンパク質は、ブラゼイン又はそのバリアントである、項1~8のいずれかの植物。
10.甘味タンパク質は、配列番号25に記載されるアミノ酸配列と少なくとも少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%を有するアミノ酸配列を含む、項1~9のいずれかの植物。
11.項1~10のいずれかの植物から得られる植物部位であって、前記植物の器官、組織、葉、茎、根、花若しくは花部、果実、シュート、配偶体、胞子体、花粉、葯、小胞子、卵細胞、接合体、胚、分裂組織領域、カルス組織、種子、挿し木、細胞若しくは組織培養物又は任意の他の部位若しくは産物に由来し、甘味タンパク質を含む植物部位。
12.その子孫又は祖先は、子孫及び祖先が甘味タンパク質を産生することを可能にするゲノム形質転換イベントの起源である、項1~11のいずれかによる植物。
13.ウリ科(Cucurbitaceae)/ウリ類である、項1~12のいずれかの植物。
14.スイカである、項13の植物。
15.項1~14のいずれかによる植物によって産生される甘味タンパク質を含む甘味料。
16.項1~14のいずれかによる植物又はその部位に由来する消耗品。
17.項15の甘味料を含む食料、飲料、風味料又は成分。
18.非天然甘味タンパク質を産生する生合成方法であって、
(a)植物を、遺伝子改変植物を形成するゲノム形質転換イベントと組み合わせることであって、ゲノム形質転換イベントは、遺伝子改変植物が甘味タンパク質の非天然発現又は濃縮を生じさせることを可能にする、組み合わせること;
(b)遺伝子改変植物の集団を生育及び再生させること;
(c)甘味タンパク質を産生する遺伝子改変植物を選択すること;及び
(d)甘味タンパク質を収集すること
を含む方法。
19.発現カセットを含むプラスミドを調製/提供することであって、発現カセットは、非天然甘味タンパク質を発現する、調製/提供すること;
宿主細胞をプラスミドで形質転換すること;及び
植物を複数の形質転換宿主細胞で形質移入すること
をさらに含み、遺伝子改変植物は、トランスジェニック植物である、項18の方法。
20.発現カセットは、甘味タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む、項19の方法。
21.発現カセットは、配列番号1~24に記載されるヌクレオチド配列の1つ以上を含む、項19~20のいずれかの方法。
22.ヌクレオチド配列は、配列番号1~24に記載されるヌクレオチド配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有する、項20~21のいずれかの方法。
23.発現カセットは、プロモーター、スペーサー、エピトープタグ、ターミネーター、シグナルペプチド又はそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の調節配列を含む、項19~22のいずれかの方法。
24.調節配列は、配列番号1~6及び8~13に記載されるヌクレオチド配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有する、項23の方法。
25.発現カセットは、甘味タンパク質をコードするヌクレオチド配列と作動可能に結合されているプロモーターを含む、項23~24のいずれかの方法。
26.甘味タンパク質は、ソーマチン、モネリン、マビンリン、ブラゼイン、卵白リゾチーム、ネオクリン、ペンタジン若しくはそれらのバリアント又はそれらの組み合わせからなる群から選択される、項18~25のいずれかの方法。
27.甘味タンパク質は、ブラゼイン又はそのバリアントである、項18~26のいずれかの方法。
28.甘味タンパク質は、配列番号25に記載されるアミノ酸配列と少なくとも少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%を有するアミノ酸配列を含む、項18~27のいずれかの方法。
29.植物は、ウリ科(Cucurbitaceae)/ウリ類である、項18~28のいずれかの方法。
30.植物は、スイカである、項29の方法。
31.非天然甘味タンパク質を産生する遺伝子改変植物を作製する方法であって、植物をゲノム形質転換イベントと組み合わせることであって、ゲノム形質転換イベントは、遺伝子改変植物が甘味タンパク質の非天然発現又は濃縮を生じさせることを可能にする、組み合わせることを含む方法。
32.発現カセットを含むプラスミドを調製/提供することであって、発現カセットは、非天然甘味タンパク質を発現する、調製/提供すること;
宿主細胞をプラスミドで形質転換すること;及び
植物を複数の形質転換宿主細胞で形質移入すること
をさらに含み、遺伝子改変植物は、トランスジェニック植物である、項31の方法。
33.発現カセットは、甘味タンパク質をコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含む、項32の方法。
34.発現カセットは、配列番号1~24に記載されるヌクレオチド配列の1つ以上を含む、項33の方法。
35.ヌクレオチド配列は、配列番号1~24に記載されるヌクレオチド配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有する、項33~34のいずれかの方法。
36.発現カセットは、プロモーター、スペーサー、エピトープタグ、ターミネーター、シグナルペプチド又はそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の調節配列を含む、項32~35のいずれかの方法。
37.調節配列は、配列番号1~6及び8~13に記載されるヌクレオチド配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有する、項36の方法。
38.発現カセットは、甘味タンパク質をコードするヌクレオチド配列と作動可能に結合されているプロモーターを含む、項36~37のいずれかの方法。
39.甘味タンパク質は、ソーマチン、モネリン、マビンリン、ブラゼイン、卵白リゾチーム、ネオクリン、ペンタジン若しくはそれらのバリアント又はそれらの組み合わせからなる群から選択される、項32~38のいずれかの方法。
40.甘味タンパク質は、ブラゼイン又はそのバリアントである、項32~39のいずれかの方法。
41.甘味タンパク質は、配列番号25に記載されるアミノ酸配列と少なくとも少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%を有するアミノ酸配列を含む、項32~40のいずれかの方法。
42.植物は、ウリ科(Cucurbitaceae)/ウリ類である、項32~41のいずれかの方法。
43.植物は、スイカである、項42の方法。
【0140】
上記の本明細書、実施例及びデータは、本開示の組成物の製造及び使用の完全な記載を提供する。本開示の多くの実施形態は、本開示の趣旨及び範囲から逸脱せずに作製され得るため、本開示は、以下に添付される特許請求の範囲にある。
【配列表】
【国際調査報告】