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特表2024-520541ソレノイドの正常性ステータスを監視する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】ソレノイドの正常性ステータスを監視する方法
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20240517BHJP
   F16K 51/00 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
F16K31/06 320A
F16K51/00 F
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023573416
(86)(22)【出願日】2022-06-03
(85)【翻訳文提出日】2023-11-28
(86)【国際出願番号】 EP2022065243
(87)【国際公開番号】W WO2022263211
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】BE2021/5464
(32)【優先日】2021-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】593074329
【氏名又は名称】アトラス コプコ エアーパワー,ナームローゼ フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】ATLAS COPCO AIRPOWER,naamloze vennootschap
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100196221
【弁理士】
【氏名又は名称】上潟口 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】ファンデ サンデ ハンス
【テーマコード(参考)】
3H066
3H106
【Fターム(参考)】
3H066BA38
3H106DA07
3H106DA22
3H106EE27
3H106EE28
3H106FB08
3H106GC29
(57)【要約】
一実施形態によれば、プロセス制御システムをサポートするためのソレノイドを含むソレノイドバルブの正常性状態を推定するためのコンピュータ実装方法が開示され、本方法は、ソレノイドを通過する電流(100、101)を監視するステップと、ソレノイドバルブの状態変化を開始する瞬間と電流の時間微分が中断される瞬間(102、103)との間の時間期間を決定するステップと、この時間期間をソレノイドバルブの正常性状態を示す基準時間期間と比較し、これにより正常性状態を決定するステップとを含む。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセス制御システムをサポートするためのソレノイドを含むソレノイドバルブの正常性状態を推定するためのコンピュータ実装方法であって、
前記ソレノイドを通過する電流(100、101)を監視するステップと、
前記ソレノイドバルブの状態変化を開始する瞬間と、前記電流の時間微分が中断する瞬間との間の時間期間を決定するステップ(102、103)と、
この時間期間をソレノイドバルブの正常性状態を示す基準時間期間と比較し、前記正常性状態を決定するステップと、
を含む、コンピュータ実装方法。
【請求項2】
前記状態変化は、前記電流の大きさが予め定義された閾値を上回る瞬間として決定される、請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項3】
前記状態変化は、その命令が与えられたときに決定される、請求項1に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項4】
前記監視するステップは、前記命令によって開始される、請求項3に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項5】
前記方法は更に、前記監視された電流をサンプリングすることにより、前記サンプリングされた電流のアレイを得るステップを含み、前記決定すること及び前記比較することは、前記サンプリングされた電流のアレイにより実行される、請求項1~4のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項6】
前記決定することが、前記サンプリングされた電流のアレイを前記ソレノイドバルブの基準アレイと相関させることによって実行される、請求項5に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項7】
前記決定することが、前記サンプリングされた電流のアレイのサブアレイを、V字形又はL字形の関数を表す基準サブアレイと順次的に相関させることによって実行される、請求項5に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項8】
前記瞬間及び/又は前記正常性状態を表すデータを報告するステップを更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項9】
前記瞬間及び/又は正常性状態を表すデータを送信するステップを更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法のステップを実行するように適合されたプロセッサを備えるデータ処理装置。
【請求項11】
前記プロセッサが、マイクロプロセッサ又はマイクロコントローラである、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
コンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムがコンピュータによって実行されるときに、前記コンピュータに請求項1~9のいずれか一項に記載の方法を実行させる命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項13】
請求項12に記載のコンピュータプログラムを伝送するデータキャリア信号。
【請求項14】
請求項10又は11に記載のデータ処理ユニット装置と、正常性状態を表すように構成されたインタフェースとを備えるノード。
【請求項15】
請求項10又は11に記載の装置、及び/又は請求項14に記載のノードを備えるソレノイドバルブ。
【請求項16】
請求項10又は11に記載のデータ処理装置を備える圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソレノイドバルブの分野に関し、詳細には、ソレノイドバルブの正常性ステータスを監視する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ソレノイドバルブは、電気機械的に作動するバルブであり、流体の流れを制御するために産業用途において最も一般的に使用される構成要素の1つである。ソレノイドバルブの特性は、使用する電流の特性、発生する磁界の強さ、流体を調整するために使用する機構、及び制御する流体の種類及び特性の点で異なる。換言すると、多くのバルブ設計があるが、共通する構成要素、すなわちソレノイドを全てが有する。
【0003】
基本的に、ソレノイドは電気機械アクチュエータである。ソレノイドは、静止部分であるコイルと、可動部分であるプランジャとを備える。両方の部分の間のインタフェースは、主として機械的ばねによって達成される。
【0004】
コイルは、電圧源によって給電されることで、プランジャの直線運動を実現する。ストローク長、すなわち、プランジャの開始位置と終了位置との間の距離は、一般的に1mm程度の小さなものである。
【0005】
産業用途における流体の流れを制御することは、ソレノイドバルブのタスクが流体を遮断、放出、投与、分配、又は混合することであることを意味する。しかしながら、これらの作業を安全及び信頼性の高い方法で行うことが重要である。
【0006】
技術的機能の理由から、ソレノイドバルブが時間の経過とともに劣化することは避けられないであろう。ソレノイドバルブ自体の品質だけでなく、様々な他の変数が、使用の強度及び/又は動作する大気条件のように、その寿命に影響を与えることになる。他の影響としては、制御されたプロセスの流体粒子に起因する目詰まり、及び印加された圧力などの作業条件がある。
【0007】
あらゆる危機的状況を回避し、ソレノイドバルブが作動している工業設備の適切な作動を保証するためには、故障したソレノイドバルブをできるだけ迅速に交換することが重要である。更に、ソレノイドバルブが故障することを避けるべきであり、言い換えれば、故障が起こる前にソレノイドバルブは交換すべきである。
【0008】
危機的な状況を回避する方法は、工業設備の全てのソレノイドバルブが交換されるメンテナンス間隔を定めることである。この間隔は、例えば、許容されるスイッチング動作の総数に基づいて決定されるか、又は単に工業設備自体の作業時間で表される期間となる。
【0009】
許容スイッチ数に基づいてメンテナンス間隔を定義することの欠点は、特に安全で信頼できる運転を保証する必要がある場合に、メンテナンス間隔を極めて慎重な方法で選択しなければならないことである。言い換えれば、1つのソレノイドバルブだけが機能しなくなるという事態は避ける必要がある。これは、まだ十分に機能しており、潜在的に極めて長い時間及び/又はより多くのスイッチング動作で正しく機能したままである可能性がある、ソレノイドバルブのセット全体を交換することになる可能性がある。
【0010】
従って、ソレノイドバルブの状態又は正常性ステータスを監視するための改善された方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、上記及びその他の欠点を改善することを目的とする。この目的のために、第1の態様による本発明は、ソレノイドを含むソレノイドバルブの正常性状態を決定するためのコンピュータ実装方法に関し、ソレノイドバルブは、プロセス制御システムをサポートするのに適しており、
本方法は、
ソレノイドを通過する電流を監視するステップと、
ソレノイドバルブの状態変化を開始する瞬間と、及び電流の時間微分が中断する瞬間との間の時間期間を決定するステップと、
時間期間とソレノイドバルブの正常性状態を示す基準期間と比較することで、正常性状態を決定するステップと、
を含む。
【0012】
ソレノイドは、コイル、プランジャ及び機械ばねを備える。既に述べたように、コイルは、電圧源によって給電され、これによりプランジャの直線運動を実現することができる。コイルに給電されると、そこに電流が流れて、プランジャの動きを引き起こす。この動きにより、ソレノイドバルブは開放状態又は閉鎖状態に状態変化を生じる。後者は、ソレノイドバルブのタイプ、すなわちノーマルオープソレノイドバルブ又はノーマルクローズソレノイドバルブに依存する。従って、監視されるのは、状態変化を引き起こす又は開始する電流である。
【0013】
次に、電流を監視しながら、ソレノイドバルブの正常性状態を示す時間期間が決定される。この時間期間は、状態変化が開始された瞬間から、監視電流の時間微分が中断する瞬間までの時間である。
【0014】
電流が不連続になる瞬間は、電流が連続時間信号として監視されるときに正確に決定できることを更に理解すべきである。これは、無限のサンプリング周波数又は無限小のサンプリング周期でサンプリングすることに相当する。実際には、使用される実際のサンプリング周波数及び対応するサンプリング期間に起因して、上記瞬間は、このように間接的に決定される。間接的な決定については、本発明の本開示において更に説明する。
【0015】
状態変化が開始されると、コイルの接続点にわたって電圧が印加され、そこに電流が流れ始める。コイルは、誘導構成要素であるので、電流値は、瞬時に特定のレベルになるわけではなく、ゼロから増大することになる。増大中、電流は監視され、直接又は間接的に時間微分が計算される。電流は時間と共に増大すなわち、変化するので、時間微分も時間と共に変化する。更に、電流によって引き起こされる磁場は、ソレノイドバルブが開放又は閉鎖の何れかになるまでプランジャを動かす力を生み出す。更に、機械ばねもまた、プランジャの動きに影響を与える。従って、プランジャの電流は、最初は印加された電圧源によって影響を受けるが、更にプランジャの動きのような他の変数のセットによっても影響される。
【0016】
言い換えれば、最初にプランジャを動かすコイルによって発生される磁場は、それ自体もまた、マクスウェルの方程式の結果としてプランジャの位置及び動きに影響される。つまり、プランジャの動きは、コイルを流れる電流に影響を与え、その逆もまた同様である。従って、電流の経時的な値は、その時間微分も同様に変化することは明らかであろう。
【0017】
従って、監視中、ソレノイドバルブの状態変化が開始される瞬間と、電流の時間微分が中断する瞬間との間の時間期間が決定される。
【0018】
状態変化が開始される瞬間とは、例えば、状態を変化させる命令がなされた瞬間、又はコイルに流れる電流がゼロとは異なる瞬間である。従って、この瞬間は、電流の大きさが予め定義された閾値を超えた瞬間として決定することができる。或いは、状態変化は、その命令が与えられたときに決定することができる。更に、監視は、上記命令によって開始することができる。更に、交流バルブを扱う場合、電流が負の半周期で開始する場合の発生に対処するため、大きさはその絶対値とみなすことができることに留意されたい。
【0019】
しかしながら、この瞬間は、決定された時間期間のセットを互いに比較することができるように、コヒーレントで一貫した方法で選択されるべきであることを理解すべきである。
【0020】
決定された時間期間の終わりを定義する別の瞬間は、時間微分が中断される時である。これは電流の曲線がキンク又はディップを有する瞬間である。
【0021】
高いサンプリング周波数で電流を監視する場合、上記キンクは、正確に、すなわちおおよそ直接的方法で決定することができる。より実際には、このキンクは、電流を表すサンプルを処理することによって、間接的に決定することができる。値が下降しているサンプルの範囲の後に、値が上昇しているサンプルの範囲がある場合、上記範囲の間にキンクが存在する可能性があることを示している。
【0022】
従って、コンピュータ実装方法は、電流をサンプリングすることで、サンプリングされた電流のアレイを得るステップを含むことができる。瞬間の決定及び基準時間期間との比較は、サンプリングされた電流のアレイによって実行することができる。
【0023】
次に、決定された時間期間が基準時間期間と比較される。或いは、サンプリングされた電流のアレイは、上記時間期間を決定するためにソレノイドバルブの基準アレイと相関される。
【0024】
時間期間を決定する別のアプローチは、サンプリングされた電流のアレイのサブアレイを、V字型又はL字型関数を表す基準サブアレイと順次相関させることである。
【0025】
基準時間期間は、ソレノイドバルブの正常性状態を示す。従って、ソレノイドバルブの特定のタイプ及びモデルに対して、ある時間期間を基準期間として定義することができる。基準時間期間は、例えば、ソレノイドバルブが初めて使用されるときに決定される。ソレノイドバルブの動作中、時間期間は、定期的に又は連続的に基準時間期間と比較される。決定された時間期間が、時間と共にドリフト又は増加し始めた場合、これはソレノイドバルブの機能が低下していることを示すものである。言い換えれば、ソレノイドバルブの正常性ステータスが悪化する。
【0026】
基準時間期間及び決定された時間期間は更に、動作圧力等のパラメータに依存することができる。バルブのタイプによっては、動作圧力が上昇すると、基準時間期間は増加、減少又は一定になることができる。その結果、決定された時間期間のドリフト又は増加は、動作圧力のようなパラメータにも依存する可能性がある。
【0027】
決定された時間期間又は正常性ステータスが動作圧力に依存することに対処するために、動作圧力範囲を限られた数のクラスで分割し、同じクラスの測定値内でのみ決定された時間期間又は正常性ステータスを比較することができる。
【0028】
或いは、多項式又は他の適切なタイプの近似曲線によって基準時間期間と動作圧力の間の関係をモデル化することで、グランドトゥルースを生成することができる。ソレノイドの動作寿命の間、この多項式モデル又は他の近似曲線モデルは、新しい決定された時間帯が利用可能になる全てのスイッチングの瞬間に更新することができる。更新された多項式モデル又は近似曲線モデルとグランドトゥルースとの間の差は、時間の経過とともに大きくなり、ソレノイドバルブの劣化の尺度も確立される。
【0029】
最後に、決定された時間期間を報告することができる。或いは、好ましくは、時間期間を報告する代わりに、ソレノイドバルブの正常性状態を報告することができる。更に、瞬間及び/又は正常性状態を表すデータは、更なる処理のために別のデバイスに送信することができる。
【0030】
正常性状態は、例えば、0と1との間の値とすることができ、これにより、0は故障したソレノイドバルブに対応し、1は新しい正常性なソレノイドバルブに対応する。或いは、正常性状態は、「正常性」、「劣化」又は「故障」として報告される。
【0031】
様々な利点を識別することができる。最初に、各ソレノイドバルブを個別に監視することができる。更に、これは、構造化された及び自動化された方法で行うことができる。第2に、正常性状態の決定は、ソレノイドバルブが動作する環境とは無関係に実行することができる。言い換えれば、有害な環境に起因するより早い劣化は、上述したように単に時間期間を決定することによって認識されるので、この環境は間接的に考慮される。
【0032】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様による方法のステップを実行するように適合されたプロセッサを含むデータ処理装置が開示される。プロセッサは、マイクロプロセッサ又はマイクロコントローラとすることができる。
【0033】
本発明の第3の態様によれば、プログラムがコンピュータによって実行されたときに、コンピュータに第1の態様の方法を実行させる命令を含むコンピュータプログラムが開示される。
【0034】
第4の態様によれば、第3の態様のコンピュータプログラムを伝送するデータキャリア信号が開示される。
【0035】
第5の態様によれば、第2の態様によるデータ処理ユニット装置を備えたノードが、正常性状態を表すように構成されたインタフェースと共に開示される。
【0036】
第6の態様によれば、第2の態様による装置、及び/又は第5の態様によるノードを備えたソレノイドバルブが開示される。
【0037】
本発明は、図面を参照して更に例示される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】交流ソレノイドの時間の関数としての電流を示す図である。
図2】交流ソレノイドの時間の関数としての電流の変化を示す図である。
図3】本発明の実施形態に従って実行されるステップを示す図である。
図4】本発明の様々な実施形態によるステップを実行するための好適なコンピューティングシステムを示す図である。
図5】直流ソレノイドの典型的なスイッチオン電流を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は、交流ソレノイドの時間の関数としての電流を示す。グラフ110では、横軸104に時間、及び縦軸105に電流値が表されている。実線100は、良好に機能しているソレノイドを表し、これは正常性な状態にあることを意味する一方、破線101は、スイッチング動作の回数を重ねた後に故障し、交換が必要となった同じソレノイドの電流を表す。
【0040】
発明の概要で既に述べたように、プランジャは、グラフ110で表されるように、コイルを流れる電流に影響を与える。100及び101で表される両電流は、交番電圧源にスイッチオンされたときの横軸104上の時間の関数として、縦軸105上の典型的なコイル電流を示している。電流100のパターンにおけるディップ102は、この例では9.5ms付近、又は4.3msに発生したスイッチング動作の5.2ms後に発生し、電流の時間微分の急激な変化によって特徴付けられる。このディップ102は、プランジャが機械的な終端位置に達した瞬間に発生する。その後起こるもので、ソレノイドは、電流100が周期的なパターンに収束する、可動部のない構成要素と考えることができる。定電圧源によって供給されるソレノイドバルブもまた、同様の電流ディップ102を示すが、この電流は最終的には一定値に収束する。これは、直流ソレノイドの標準スイッチオン電流を示す図5に更に示されている。ここでは、ディップは約32msで発生し、電流は約500mAの一定値に収束する。
【0041】
請求項に記載される発明は、ソレノイドの種類、すなわち交流ソレノイドであるか又は直流ソレノイドであるかには無関係であることを更に理解すべきである。両方のタイプについて、同じ方法が、変更すべきところは変更して、その正常性ステータスを決定するために適用される。
【0042】
ホールセンサ及び/又はシャントを用いて電流を測定することができる。次に、電流に比例する測定電圧をアナログ・デジタル変換器で変換し、更に処理する。
【0043】
開示された方法は、このディップ102を監視し、つまり、4.3msの状態変化の開始の瞬間に関して、このディップ102が発生する瞬間が決定される。この例では、ソレノイドバルブの状態変化を開始する瞬間と、電流の時間微分が中断する瞬間、従ってディップ102が発生する瞬間との間の時間期間は、5.2msである。
【0044】
電流のディップは、図1の破線101で示されるように、バルブが切り替えられるほどグラフ110上で右にシフトすることになる。図2には、これらのディップのシフトの推移がより詳細に示されている。これらのグラフ200では、横軸211に時間、及び縦軸210に電流値が表され、更にスイッチの数212を表すZ軸によって拡張されている。
【0045】
図2の図では、破線203で示されるように、ディップ102から103の場所がシフトしていることが観察される。このシフトは、ソレノイドバルブの状態変化を開始する瞬間と、電流の時間微分が中断する瞬間との間の時間の増加に対応している。最後のグラフ201及び202では、ディップが消失しているが、これは前記時間が無限又は特定できないことを意味する。これはソレノイドの故障に相当する。
【0046】
このシフト203の原因には幾つかの現象がある。エンドポジションに何度も当たる間に、摩耗によってプランジャの表面から破片粒子が摩滅し、一方では機械的摩擦が増加し、他方ではプランジャの長さが減少することがある。更に、ソレノイドバルブが制御する流体中に存在する粒子は、ソレノイドバルブの機能を妨げ、最終的にはソレノイドバルブを閉塞する可能性がある。
【0047】
特に交流バルブの場合、コイル電流がゼロを横切る間プランジャをその端位置に保つ役割を果たすシャドーイングコイルが劣化及び/又は破損すると、グリッド周波数の2倍で大量の繰り返しヒットが発生するため、シフト203は増幅される。
【0048】
スイッチオンの瞬間から電流がディップするまでの時間間隔(time-to-hitとして更に定義される)だけを考慮すると、図3に示されるように、この進化の更に詳細な図をプロットすることができる。横軸301にスイッチの数、縦軸302にtime-to-hitを示す。
【0049】
図3では、3つのフェーズを区別することができる。
【0050】
初期段階では、ディップはほぼ同じ位置に留まり、及びソレノイドはサプライヤによって指定された通りに動作する。time-to-hitは、典型的な平均値と極めて小さな偏差を有する統計的分布を示す。
【0051】
劣化段階では、オン・オフが繰り返されるほど、ディップは右にシフトし始める。プランジャは最終的にエンドポジションに到達するため、プランジャがブロックされたわけではなく、及びバルブは、意図された用途に対しては、まだ適切に機能するかもしれない。しかしながら、他の潜在的に有害な2次効果に注意する必要がある。例えば、交流のシャドーイングコイルが破断した場合(多くの場合、劣化フェーズの開始と一致する)、プランジャは間もなく離脱し、及びグリッド電圧の1サイクルにつき2回エンドポジションに戻り、繰り返しヒット、摩耗の加速、微小な漏れ及び/又は刺激的なノイズを引き起こす可能性がある。
【0052】
寿命末期になると、ディップが区別できなくなり、プランジャの詰まりを示す。詰まりは、開始位置、終了位置、又はその中間位置で起こる可能性があるため、故障が意図された用途に及ぼす影響については全く保証されない。
【0053】
従って、本発明の開示された方法によれば、time-to-hitがソレノイドの正常性指標として使用される。
【0054】
time-to-hitの分布が統計的に元の分布からあるレベルの確率で逸脱していない限り、ソレノイドは健全であると考えられる。この条件が満たされなくなった瞬間、劣化フェーズが開始される。用途によっては、これがソレノイドを交換する適切なタイミングとなることもある。
【0055】
アプリケーションでソレノイドが劣化フェーズで動作することが許されている場合、ある統計的なレベルの確率まで残りの耐用年数を推定するために、time-to-hit値を利用することができる。そのためには、できれば異なる用途の多数の同一バルブについて、time-to-hitの変化曲線が必要であり、その変化の統計的モデルを作成する。統計的にアプローチするには様々な方法がある。
【0056】
time-to-hitの可用性により、予防保全、すなわち、ソレノイドを一定間隔又は一定回数のオン・オフスイッチの後にやみくもに交換することから、状態ベースの保全、すなわち、劣化段階の開始瞬間を推測することを経て、予知保全、すなわち、残りの耐用年数を推測することへと発展させることができる。これには幾つかの利点があり、ソレノイドは効果的に必要な時だけ交換すればよい。時間の経過及び平均ベースでは、ソレノイドのコスト、ソレノイドが交換される機械のサービスコスト、及びソレノイドが交換されるシステムの非生産性に関連するコストが削減される。更に、予知保全の場合、ソレノイドの交換は、生産性への影響を最小限にするようにスケジュールすることもできる。
【0057】
ソレノイドのプランジャの動きは、交流バルブを扱う場合、通常10msの時間間隔内で終了する。直流バルブの場合は、時間間隔は、健全な状態で30ms程度、劣化した状態では50msにまで上昇する可能性がある。time-to-hit計算の十分な精度、例えば0.1msを得るためには、最小サンプリング周波数10kHzが推奨される。0.25msの時間分解能が許容できる場合は、4kHzでのサンプリングも同様に可能である。これは、精度とサンプリングコストのトレードオフであることに注意すべきである。
【0058】
電流は連続的にサンプリングされる。無電源時、電流は理論的にはゼロであるが、そのデジタル表現は通常、最下位ビット近くで変化する。従って、ソレノイドが無電源であるときに決して超えず、可能な限り小さい(例えば、5mA)閾値を定義する必要がある。従って、選択された電流閾値を超えると、ソレノイドは、初期の過渡段階で確実にプランジャが動いている状態で動作する。これは、少なくとも10ms、例えば10kHzのサンプリング周波数で100サンプルであるが、直流バルブも監視できるように100msが好ましい、タイムスパンをカバーするバッファにおいて、後続の全ての電流サンプルを保存するトリガーとなる。バッファが満たされると、数値アルゴリズムが、V字型プロファイル又はL字型プロファイルが通常は格納されている、遙かに短い基準ベクトルとの一連の相関係数の計算を開始する。目標は、この相関係数が最大となるバッファ内の位置を定義することであり、これはtime-to-hitの尺度である。バイアスは、スイッチオンから閾値を超えるまでの時間に等しく、time-to-hitの正確な値を取得するために加算することができる。
【0059】
図4は、上記の実施形態によるステップを実行するための好適なコンピューティングシステム400を示す。コンピューティングシステム400は、ソレノイドバルブの正常性状態を推定するための方法のステップを実行するように適合されたプロセッサを含むデータ処理装置を含むアプリケーションとして使用することができる。コンピューティングシステム400は、一般に、適切な汎用コンピュータとして形成され、バス410、プロセッサ402、ローカルメモリ404、1又は2以上の任意の入力インタフェース414、1又は2以上の任意の出力インタフェース416、通信インタフェース412、記憶素子インタフェース406及び1又は2以上の記憶素子408を備えることができる。バス410は、コンピューティングシステム400の構成要素間の通信を可能にする1又は2以上の導体を備えることができる。プロセッサ402は、プログラミング命令を解釈及び実行する任意のタイプの従来のプロセッサ又はマイクロプロセッサを含むことができる。ローカルメモリ404は、プロセッサ402による実行のための情報及び命令を記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)又は他のタイプの動的記憶デバイス、及び/又はプロセッサ402による使用のための静的情報及び命令を記憶する読み出し専用メモリ(ROM)又は他のタイプの静的記憶デバイスを含むことができる。入力インタフェース414は、キーボード420、マウス430、ペン、音声認識及び/又はバイオメトリック機構等、オペレータがコンピューティングデバイス400に情報を入力することを可能にする1又は2以上の従来の機構を備えることができる。出力インタフェース416は、ディスプレイ440等、オペレータに情報を出力する1又は2以上の従来の機構を備えることができる。通信インタフェース412は、コンピューティングシステム400が他のデバイス及び/又はシステムと通信して一定間隔でパラメータを取得することを可能にする、例えば1又は2以上のイーサネットインタフェース等の任意のトランシーバ様機構を備えることができる。コンピューティングシステム400の通信インタフェース412は、ローカルエリアネットワーク(LAN)又は例えばインターネットのようなワイドエリアネットワーク(WAN)によって、そのような別のコンピューティングシステムに接続することができる。ストレージ要素インタフェース406は、バス410を、例えばSATAディスクドライブ等の1又は2以上のローカルディスク等の1又は2以上のストレージ要素408に接続し、これらのストレージ要素408への及び/又はこれらのストレージ要素408からのデータの読み書きを制御するための、例えばSATA(Serial Advanced Technology Attachment)インタフェース又はSCSI(Small Computer System Interface)等のストレージインタフェースを備えることができる。上記の記憶要素408はローカルディスクとして説明されているが、一般に、リムーバブル磁気ディスク、CD又はDVDのような光記憶媒体、-ROMディスク、ソリッドステートドライブ、フラッシュメモリカードのような任意の他の適切なコンピュータ読み取り可能媒体を使用することができる。また、上述したシステム400は、物理的ハードウェアの上の仮想マシンとして実行することもできる。
【0060】
本発明を特定の実施形態を参照して例証してきたが、本発明が前述の例示的な実施形態の詳細に限定されるものではなく、本発明がその範囲から逸脱することなく様々な変更及び修正で具現化することができることは当業者には明らかであろう。従って、本発明の実施形態は、全ての点で例示的なものであって制限的なものではないと考えられ、本発明の範囲は、前述の説明によってではなく、添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲に含まれる全ての変更は、従って、そこに包含されることが意図される。
【0061】
本発明の特許出願の読み手には更に、「comprising」又は「comprises」という用語は、他の要素又はステップを排除するものではなく、「a」又は「an」という用語は、複数を排除するものではなく、コンピュータシステム、プロセッサ、又は他の統合ユニットのような単一の要素が、特許請求の範囲に記載された複数の手段の機能を果たし得ることが理解されよう。特許請求の範囲におけるいかなる参照符号も、当該各請求項を限定するものと解釈してはならない。「第1」、「第2」、「第3」、「a」、「b」、「c」等の用語は、本明細書又は特許請求の範囲において使用される場合、類似の要素又はステップを区別するために導入されたものであり、必ずしも連続的又は時系列的な順序を説明するものではない。同様に、「上」、「下」、「上」、「下」等の用語は、説明目的で導入されたものであり、必ずしも相対的な位置を示すものではない。このように使用される用語は、適切な状況下では交換可能であり、本発明の実施形態は、上記で説明又は図示されたものとは異なる他の順序、又は方向で本発明に従って動作可能であることを理解されたい。
【符号の説明】
【0062】
100、101 電流
102 ディップ
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-11-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセス制御システムをサポートするためのソレノイドを含むソレノイドバルブの正常性状態を推定するためのコンピュータ実装方法であって、
前記ソレノイドを通過する電流(100、101)を監視するステップと、
前記ソレノイドバルブの状態変化を開始する瞬間と、前記電流の時間微分が中断する瞬間との間の時間期間を決定するステップ(102、103)と、
この時間期間をソレノイドバルブの正常性状態を示す基準時間期間と比較し、前記正常性状態を決定するステップと、
を含み、
前記方法は更に、前記監視された電流をサンプリングすることにより、前記サンプリングされた電流のアレイを得るステップを含み、前記決定すること及び前記比較することは、前記サンプリングされた電流のアレイにより実行され、前記決定することが、前記サンプリングされた電流のアレイのサブアレイを、V字形又はL字形の関数を表す基準サブアレイと順次的に相関させることによって実行される、コンピュータ実装方法。
【請求項2】
前記状態変化は、前記電流の大きさが予め定義された閾値を上回る瞬間として決定される、請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項3】
前記状態変化は、その命令が与えられたときに決定される、請求項1に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項4】
前記監視するステップは、前記命令によって開始される、請求項3に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項5】
前記決定することが、前記サンプリングされた電流のアレイを前記ソレノイドバルブの基準アレイと相関させることによって実行される、請求項1に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項6】
前記瞬間及び/又は前記正常性状態を表すデータを報告するステップを更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項7】
前記瞬間及び/又は正常性状態を表すデータを送信するステップを更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の方法のステップを実行するように適合されたプロセッサを備えるデータ処理装置。
【請求項9】
前記プロセッサが、マイクロプロセッサ又はマイクロコントローラである、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
コンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムがコンピュータによって実行されるときに、前記コンピュータに請求項1~7のいずれか一項に記載の方法を実行させる命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項11】
請求項10に記載のコンピュータプログラムを伝送するデータキャリア信号。
【請求項12】
請求項8又は9に記載のデータ処理ユニット装置と、正常性状態を表すように構成されたインタフェースとを備えるノード。
【請求項13】
請求項8又は9に記載の装置、及び/又は請求項12に記載のノードを備えるソレノイドバルブ。
【請求項14】
請求項8又は9に記載のデータ処理装置を備える圧縮機。
【国際調査報告】