(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】分析器システム
(51)【国際特許分類】
G01N 27/62 20210101AFI20240517BHJP
H01J 49/16 20060101ALI20240517BHJP
H01J 49/04 20060101ALN20240517BHJP
【FI】
G01N27/62 F
H01J49/16 700
H01J49/16 500
H01J49/04 500
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573433
(86)(22)【出願日】2022-05-31
(85)【翻訳文提出日】2023-11-28
(86)【国際出願番号】 EP2022064773
(87)【国際公開番号】W WO2022253838
(87)【国際公開日】2022-12-08
(32)【優先日】2021-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100202854
【氏名又は名称】森本 卓行
(72)【発明者】
【氏名】ジーバース-エングラー,アドリアン
(72)【発明者】
【氏名】トート,ティボル
【テーマコード(参考)】
2G041
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041DA05
2G041EA04
2G041GA09
2G041HA01
(57)【要約】
分析器システム(110)が開示される。分析器システム(110)は、少なくとも1つのエレクトロスプレーイオン源ノズル(114)を有する少なくとも1つの質量分析装置(112)と、少なくとも1つの被検物質を有する少なくとも1つの液体を提供するように構成された少なくとも1つの液体供給部(116)と、少なくとも1つのガスを提供するように構成された少なくとも1つのガス供給部(118)と、少なくとも1つの化学ドーパント(122)を有する少なくとも1つの化学ドーパントガスを液体供給部(116)によって提供される被検物質へと提供するように構成された少なくとも1つのドーパントガス供給部(120)とを備え、液体供給部(116)およびガス供給部(118)は、エレクトロスプレーイオン源ノズル(114)を介して質量分析装置(112)に結合し、ドーパントガス供給部(120)は、ガス供給部(118)に接続されている。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのエレクトロスプレーイオン源ノズル(114)を有する少なくとも1つの質量分析装置(112)と、
少なくとも1つの被検物質を有する少なくとも1つの液体を提供するように構成された少なくとも1つの液体供給部(116)と、
少なくとも1つのガスを提供するように構成された少なくとも1つのガス供給部(118)と、
少なくとも1つの化学ドーパント(122)を有する少なくとも1つの化学ドーパントガスを前記液体供給部(116)によって提供される前記被検物質へと提供するように構成された少なくとも1つのドーパントガス供給部(120)と
を備え、
前記液体供給部(116)および前記ガス供給部(118)は、前記エレクトロスプレーイオン源ノズル(114)を介して前記質量分析装置(112)に結合し、前記ドーパントガス供給部(120)は、前記ガス供給部(118)に接続されている、分析器システム(110)。
【請求項2】
前記ガス供給部(118)は、ネブライザガス供給部(142)であり、前記ネブライザガス供給部(142)は、少なくとも1つのネブライザガスを提供するように構成され、前記ネブライザガスは、前記液体供給部(116)によって提供される前記液体を霧化させるように構成されている、請求項1に記載の分析器システム(110)。
【請求項3】
前記エレクトロスプレーイオン源ノズル(114)に少なくとも1つの加熱されたガスを提供するように構成された少なくとも1つの加熱ガス供給部(146)をさらに備える、請求項1または2に記載の分析器システム(110)。
【請求項4】
前記被検物質は、ステロイドまたはその代謝産物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の分析器システム(110)。
【請求項5】
前記ドーパントガス供給部(120)は、前記化学ドーパント(122)を含む少なくとも1つのドーパントガスフラスコ(174)を備え、前記ドーパントガスフラスコ(174)は、前記ガス供給部(118)に接続されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の分析器システム(110)。
【請求項6】
前記ドーパントガス供給部(120)は、少なくとも1つの上部空間ガス抽出装置(156)を備え、前記上部空間ガス抽出装置(156)は、気体の形態の前記化学ドーパント(122)を含むガスを提供するように構成され、前記上部空間ガス抽出装置(156)は、前記ガス供給部(118)に接続されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の分析器システム(110)。
【請求項7】
前記上部空間ガス抽出装置(156)は、前記化学ドーパント(122)の溶液を含み、前記上部空間ガス抽出装置(156)は、ガス上部空間(164)から気体の形態の前記化学ドーパント(122)を抽出するように構成され、前記上部空間ガス抽出装置(156)は、前記ガス供給部(118)の前記ガスを前記化学ドーパント(122)に衝突させるように構成されている、請求項6に記載の分析器システム(110)。
【請求項8】
前記上部空間ガス抽出装置(156)は、少なくとも1つの反応容器を備え、前記反応容器は、少なくとも1つのアンモニウム塩を受け入れるように構成され、前記上部空間ガス抽出装置(156)は、前記反応容器への少なくとも1つの反応容器供給部をさらに備え、前記反応容器供給部は、前記反応容器に少なくとも1つの反応液を提供するように構成されている、請求項6または7に記載の分析器システム(110)。
【請求項9】
前記化学ドーパント(122)は、固体物質として提供され、前記上部空間ガス抽出装置(156)は、前記固体物質を前記ガス供給部(118)の前記ガスと衝突させるように構成されている、請求項6~8のいずれか一項に記載の分析器システム(110)。
【請求項10】
前記上部空間ガス抽出装置(156)は、少なくとも1つのガス加熱ユニットを備え、前記ガス加熱ユニットは、前記ガス供給部(118)によって提供された前記ガスを、前記ガスが前記固体物質へ衝突する前に加熱するように構成されている、請求項9に記載の分析器システム(110)。
【請求項11】
前記上部空間ガス抽出装置(156)は、少なくとも1つのレーザアブレーション装置を備え、前記レーザアブレーション装置は、前記固体物質をアブレートするように構成されている、請求項9または10に記載の分析器システム(110)。
【請求項12】
少なくとも1つのエレクトロスプレーイオン源ノズル(114)を有する少なくとも1つの質量分析装置(112)と、
少なくとも1つの被検物質を有する少なくとも1つの液体を提供するように構成された少なくとも2つの液体供給部(166)と、
少なくとも1つのガスを提供するように構成され、前記エレクトロスプレーイオン源ノズル(114)を介して前記質量分析装置(112)に結合した少なくとも1つのガス供給部(118)と、
少なくとも1つの化学ドーパント(122)を有する少なくとも1つの化学ドーパントガスを前記2つの液体供給部(166)の一方によって提供される前記被検物質へと提供するように構成され、前記ガス供給部(118)に接続された少なくとも1つのドーパントガス供給部(120)と
を備え、
前記液体供給部は、前記エレクトロスプレーイオン源ノズル(114)を介して前記質量分析装置(112)に交互に結合可能である、多重化分析器システム(196)。
【請求項13】
前記エレクトロスプレーイオン源ノズル(114)を介して前記質量分析装置(112)に交互に結合可能である、少なくとも2つのドーパントガス供給部(120)を備える、請求項12に記載の多重化分析器システム(196)。
【請求項14】
少なくとも1つのステロイドまたはその代謝産物、特にはエストラジオールを検出するための、請求項1~11のいずれか一項に記載の分析器システム(110)の使用。
【請求項15】
少なくとも1つの被検物質を分析するための方法であって、
a)請求項1~11のいずれか一項に記載の分析器システム(110)を少なくとも1つ提供することと、
b)前記エレクトロスプレーイオン源ノズル(114)へと、前記被検物質を有する前記液体を提供し、前記ガスを提供することと、
c)前記ガス供給部(118)を介して前記化学ドーパント(122)を有する前記化学ドーパントガスを提供することによって、前記被検物質のプロトン化または脱プロトン化を支援することと、
d)前記質量分析装置(112)で少なくとも1つの測定を行うことと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、分析器システム、多重化分析器システム、分析器システムの使用、および少なくとも1つの被検物質を分析するための方法に関する。これらの装置および方法を、被検物質の分析、すなわち同定および定量化を目的として、被検物質または前述の被検物質の断片の分子量または分子量対電荷比を測定するために適用し得る。具体的には、これらの装置および方法を、小さな生体分子などの生体分子の分析に適用し得る。しかしながら、他の用途も実現可能である。
【背景技術】
【0002】
背景技術
ESI(エレクトロスプレーイオン化)は、質量分析において用いられ、液体に高電圧を印加してエアロゾルを発生させるエレクトロスプレーを用いてイオンを生じさせる技術である。1つ以上の目的の被検物質を含む液体を、エレクトロスプレーによって微細なエアロゾルに分散させ得る。
【0003】
イオン化の前または最中のエレクトロスプレーイオン源による質量分析システムにおける信号対雑音比の改善を、エレクトロスプレープロセスを強化することができる化学的ドーパントの添加によって実施または促進することができる。添加は、通常は、溶媒またはクロマトグラフィ溶離液のそれぞれへの添加剤として行われ(プレカラム)、あるいはT字ピース型ミキサの使用によって行われる(ポストカラム)。
【0004】
Li et al.,Anal.Chem.2014,86,331-335が、エレクトロスプレーイオン化質量分析において被検物質の信号を強めるための化学蒸気支援エレクトロスプレーイオン化を記載している。具体的には、ESI質量分析(MS)の検出感度を向上させるための化学蒸気支援エレクトロスプレーイオン化(ESI)技術が報告されている。この技術は、化学蒸気をナノESIスプレーチップの周りのシースガスへと導入し、あるいはスプレーチップの付近に出口を位置させたチューブを通って導入することを含む。さまざまな化学蒸気が試験され、被検物質の信号強度に対する影響度がさまざまであることが明らかにされている。ESIにおけるベンジルアルコール蒸気の使用が、標準ペプチドの信号強度を最大4倍も増加させることが明らかになっている。この技術をキャピラリ液体クロマトグラフィタンデムMS(LC-MS/MS)と組み合わせたとき、アルファカゼインの酸加水分解物において同定された固有ペプチドの数が、45%増加し、大腸菌細胞溶解物のトリプシン消化物において同定されたペプチドおよびタンパク質の数が、それぞれ13%および14%増加し、平均マッチスコアも向上した。この技術はまた、フェニレフリンなどのいくつかの小分子に関する被検物質の信号も、3倍まで増加させることが可能であった。化学蒸気支援ESIプロセスにおいて観察された被検物質の信号の増大は、ESIにおけるイオン化効率の向上に関連する。この方法は、既存のESI質量分析計に、検出感度を向上させるために、最小限のコストで容易に実装可能である。
【0005】
Badu-Tawiah et al.,Analyst,2017,142,2152-2160に、ミリ秒の時間スケールでのタンパク質の折り畳みおよび展開のための設定変更可能なマルチモード収容型エレクトロスプレーイオン化が記載されている。具体的には、3つの固有のモード(タイプI、II、およびIII)で動作することができ、後続の質量分析によるオンラインでの特性評価のためにタンパク質の荷電状態を制御するために適用された設定変更可能な収容型エレクトロスプレー(ES)イオン源が記載されている。この装置を使用して、100%の水中に準備したタンパク質を、塩酸蒸気への曝露後に高度に帯電させた。ミオグロビンについて、より高い電荷状態へのシフトが、展開するタンパク質からヘム補因子が逃れることができるよりも速く生じた。この効果は、高度に帯電したホロ-ミオグロビン中間体(+26)の検出に反映され、修飾プロセスがミリ秒の時間スケールで生じたことを示唆している(タイプIモード)。収容型ESエミッタにキャビティを導入することにより(タイプIIモード)、タンパク質の変性の増加が観察され、アポ-ミオグロビンイオンのみが検出された。
【0006】
同様に、米国特許出願公開第2016/0329198号明細書が、試料入口から試料出口まで延びる試料キャピラリを備えるエレクトロスプレーエミッタと、エレクトロスプレーエミッタの周りに同軸に配置された導管を備える要素とを備えることにより、導管と試料キャピラリとの間に延在し、ガス出口において終わるチャンバを形成している装置を記載している。要素は、いくつかの例において、チャンバに連通したキャリアガス入口と、チャンバに連通した作動ガス入口とをさらに備えることができ、チャンバは、キャリアガス入口および作動ガス入口からガス出口への流体の流れのための経路を提供するように構成される。装置の使用の方法も、そこに開示されている。いくつかの例において、例えば質量分析および/または液滴反応に使用するための収容型エレクトロスプレーのための方法および装置が、そこで論じられている。
【0007】
上述の装置によって達成される利点にもかかわらず、いくつかの技術的課題が依然として存在する。プレカラムの実施態様は、一般に、カラムの寿命に影響を及ぼし、メタノール、アセトニトリル、および/または水などの使用される溶媒の溶出特性を変化させることによって、クロマトグラフィ方法および/またはクロマトグラフィアッセイの展開を制約する。したがって、カラムの性能および寿命に深刻な影響が存在し得る。エレクトロスプレーイオン化技術が高速液体クロマトグラフィ(HPLC)または超高速液体クロマトグラフィ(UHPLC)などの液体クロマトグラフィ(LC)と組み合わせられる場合、ポストカラムの実施態様は、特には分離および分析ピーク形状信号重複への悪影響ゆえに、典型的には実現不可能である。この影響は、特には、マイクロリットル/分の範囲またはナノリットル/分の範囲などの低流量を一般的に使用する液体クロマトグラフィ技術において、さらにもっと悪化する可能性がある。そのような液体クロマトグラフィ技術は、具体的には、キャピラリ液体クロマトグラフィ技術(cLC、キャピラリLC、CapLC)および/またはナノスケール液体クロマトグラフィ技術(NanoLC)を含み得る。過度のピークの広がりゆえに、ポストカラムの実施態様は、一般に、そのような低流量での使用に関して通常は実行不可能な望ましくない滞留体積を導入する。さらに、T字ピースのキャピラリコネクタなどによる液体クロマトグラフィ流路へのポストカラムのドーパント添加により、上述のドーパントの負の影響を受けやすいアッセイのための下流の液体クロマトグラフィ流路のドーパントクリアランスおよび一般的なキャリーオーバの懸念が生じる。これは、特には、クロマトグラフィ条件および目的の被検物質が頻繁に変わる完全に統合されたランダムアクセス自動クロマトグラフィおよび/または質量分析臨床分析器の場合であり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする課題
したがって、上述の技術的課題に少なくとも部分的に対処する分析器システム、多重化分析器システム、分析器システムの使用、および少なくとも1つの被検物質を分析するための方法を提供することが望ましい。具体的には、分析器システムによって取得される被検物質の信号の信号対雑音比を高めることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
概要
この課題は、独立請求項の特徴を有する分析器システム、多重化分析器システム、分析器システムの使用、および少なくとも1つの被検物質を分析するための方法によって対処される。単独で実現されても、任意の組み合わせで実現されてもよい好都合な実施形態が、従属請求項ならびに明細書全体に挙げられる。
【0010】
以下で使用されるとき、「・・・を有する(have)」、「・・・を備える(comprise)」、または「・・・を含む(include)」という用語、あるいはこれらの任意の文法的変形物は、非排他的なやり方で使用される。したがって、これらの用語は、これらの用語によって紹介される特徴の他に、この文脈において説明されるエンティティにさらなる特徴が存在しない状況、および1つ以上のさらなる特徴が存在する状況の両方を指し得る。一例として、「AはBを有する」、「AはBを備える」、および「AはBを含む」という表現は、B以外に、他の要素がAに存在しない状況(すなわち、Aが単独かつ排他的にBからなる状況)、および、B以外に、要素C、要素CおよびD、またはさらなる要素などの1つ以上のさらなる要素がエンティティAに存在する状況の両方を指し得る。
【0011】
さらに、特徴または要素が1回だけ存在しても、2回以上存在してもよいことを示す「少なくとも1つ」または「1つ以上」という用語、あるいは同様の表現は、典型的には、それぞれの特徴または要素を紹介するときに1回だけ使用されることに留意されたい。以下では、ほとんどの場合、それぞれの特徴または要素に言及するとき、「少なくとも1つ」または「1つ以上」という表現は、それぞれの特徴または要素が1回だけ存在しても、2回以上存在してもよいという事実にもかかわらず、繰り返されない。
【0012】
さらに、以下で使用されるとき、「好ましくは」、「より好ましくは」、「詳細には」、「より詳細には」、「具体的には」、「より具体的には」という用語、または同様の用語は、代替の可能性を制限することなく、随意による特徴に関して使用される。したがって、これらの用語によって紹介される特徴は、随意による特徴であり、決して特許請求の範囲の技術的範囲を制限するものではない。本発明は、当業者であれば理解できるとおり、代替の特徴を使用して実行されてもよい。同様に、「本発明の実施形態において」または同様の表現によって紹介される特徴は、随意による特徴であることが意図され、本発明の代替の実施形態に関するいかなる制限も伴わず、本発明の範囲に関するいかなる限定も伴わず、そのようなやり方で紹介される特徴を本発明の他の随意による特徴または随意ではない特徴と組み合わせる可能性に関するいかなる制限も伴わない。
【0013】
本発明の第1の態様において、分析器システムが開示される。分析器システムは、少なくとも1つのエレクトロスプレーイオン源ノズルを有する少なくとも1つの質量分析装置を備える。さらに、分析器システムは、少なくとも1つの液体供給部を備える。液体供給部は、少なくとも1つの被検物質を有する少なくとも1つの液体を提供するように構成される。さらに、分析器システムは、少なくとも1つのガス供給部を備える。ガス供給部は、少なくとも1つのガスを提供するように構成される。さらに、分析器システムは、少なくとも1つのドーパントガス供給部を備える。ドーパントガス供給部は、少なくとも1つの化学ドーパントを有する少なくとも1つの化学ドーパントガスを液体供給部によって提供される被検物質に提供するように構成される。液体供給部およびガス供給部は、エレクトロスプレーイオン源ノズルを介して質量分析装置に結合し、ドーパントガス供給部は、ガス供給部に接続される。
【0014】
本明細書において使用されるとき、「分析器システム」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってのその一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味または特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定はされないが、少なくとも1つのサンプルまたはサンプルの少なくとも1つの成分を用いて少なくとも1つの分析測定を実施するように構成された任意のシステムを指し得る。測定の結果として、あるいは測定の一部として、分析器システムは、サンプルおよび/または少なくとも1つの成分に特徴的な少なくとも1つの測定結果、具体的には被検物質に関する少なくとも1つの測定結果を生成し得る。特には、分析されたサンプルに関する被検物質関連の情報が、分析測定から導出されてよく、あるいは導出可能であってよい。情報は、例えば、サンプル中に存在する被検物質の有無、濃度、または量に関する情報であってよい。特には、分析器システムは、サンプル中の被検物質を検出するように構成されてよい。具体的には、分析器システムは、体外診断分析器であってよい。本明細書において使用されるとき、「体外診断分析器」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってのその一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味または特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定はされないが、人間または動物の身体から得られた少なくとも1つのサンプルまたはサンプルの少なくとも1つの成分を用いて少なくとも1つの分析測定を実施するように構成された任意の分析器システムを指し得る。具体的には、サンプルは、血液、組織、またはそれらの成分であってよく、それらを含んでもよい。さらに、サンプルは、他の体液または排泄物あるいはそれらの成分であってよく、それらを含んでもよい。具体的には、サンプルは、毛髪、尿、または糞便を含んでよい。体外診断分析器は、疾患または他の状態を検出するように構成されてよく、疾患の治癒、治療、または予防を助けるために全体的な健康状態を監視するように構成されてもよい。
【0015】
上述したように、分析器システムは、少なくとも1つの質量分析装置を備える。本明細書において使用されるとき、「質量分析装置」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってのその一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味または特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定はされないが、イオンの質量対電荷比を測定するように構成された任意の分析技術を指し得る。測定結果を、具体的には、質量スペクトル、例えば質量対電荷比の関数としての強度のプロットとして提示し得る。上述のように、質量分析装置は、より詳細に以下でさらに説明され得る少なくとも1つのエレクトロスプレーイオン源ノズルを備える。さらに、質量分析装置は、少なくとも1つの質量分析器および少なくとも1つの検出器を備えてよい。エレクトロスプレーイオン源ノズル、質量分析器、および検出器は、イオン化チャンバ内に配置されてよい。質量分析器は、イオンをそれらの質量対電荷比に従って選別および分離するように構成されてよい。質量分析装置は、スキマー、集束レンズ、または多極子などの電磁素子などの1つ以上のイオン光学部品を備え得る。イオン光学部品は、質量分析器が配置されたイオン化チャンバ内の領域にイオンを移動させるように構成されてよい。
【0016】
本明細書において使用されるとき、「エレクトロスプレーイオン源ノズル」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってのその一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味または特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定はされないが、電気を使用することによって液体を微細なエアロゾルに分散させるように構成された任意の装置を指し得る。エレクトロスプレーイオン源ノズルは、少なくとも1つのキャピラリを備え得る。キャピラリは、例示的には、ガラスおよび/またはステンレス鋼などの少なくとも1つの金属で作られてよい。キャピラリは、0.05mm~0.5mm、好ましくは0.1mm~0.3mmの内径を有し得る。他の寸法も実現可能であり得る。エレクトロスプレーイオン源ノズルは、キャピラリの外面に高電圧を印加するように構成されてよい。外面は、高電圧を印加するための電気接点を有してよい。例示的には、電気接点は、キャピラリの外面上の導電性コーティングであってよい。導電性コーティングは、例示的には、金の膜、具体的にはスパッタリングによる金の膜であってよい。高電圧は、具体的には、0.1kV~10kV、特には0.5kV~7kVの範囲にあってよい。エレクトロスプレーイオン源ノズルは、液体をエアロゾルに分散させる電場を生成するように構成されてよい。エアロゾルは、帯電した液滴を含んでよい。
【0017】
本明細書において使用されるとき、「液体供給部」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってのその一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味または特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定はされないが、少なくとも1つの液体を提供するように構成された任意の装置を指し得る。具体的には、液体供給部は、液体を提供し、具体的には液体を貯蔵するように構成されたフラスコまたは容器などの少なくとも1つの貯蔵要素を備え得る。さらに、これに加え、あるいは代えて、液体供給部は、少なくとも1つのホースなどの少なくとも1つのチューブを備え得る。チューブは、液体を所望の場所へと移送し、あるいは液体を別の要素へと移送するように構成されてよい。具体的には、エレクトロスプレーイオン源ノズルは、少なくとも1つのキャピラリを備え得る。さらなる詳細については、上記の説明を参照されたい。上述のように、液体供給部およびガス供給部は、エレクトロスプレーイオン源ノズルを介して質量分析装置に結合する。具体的には、液体供給部は、少なくとも1つのチューブを備えてよく、チューブは、エレクトロスプレーイオン源ノズルのキャピラリに接続されてよく、あるいは接続可能であってよい。液体供給部は、具体的にはチューブを介して、エレクトロスプレーイオン源ノズルのキャピラリに液体を提供するように構成されてよい。具体的には、液体供給部は、少なくとも1つの被検物質を有する液体の流れをエレクトロスプレーイオン源ノズルのキャピラリに投与するように構成されてよい液体供給シリンジポンプなどの少なくとも1つの液体供給投与装置を備え得る。液体供給投与装置、特には液体供給シリンジポンプは、少なくとも1つの被検物質を有する液体の流れを1nl/分~50μL/分の範囲内の流量でエレクトロスプレーイオン源ノズルのキャピラリへと投与するように構成されてよい。
【0018】
具体的には、分析器システムは、少なくとも1つの液体クロマトグラフィ装置を備え得る。本明細書において使用されるとき、「液体クロマトグラフィ装置」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってのその一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味または特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定はされないが、混合物の成分を互いに分離するように構成された任意の装置を指し得る。混合物は、移動相とも呼ばれ得る流体に溶解させられてよい。移動相は、固定相とも呼ばれ得る材料を有するカラム、毛細管、プレート、またはシートなどの系を通って混合物を運ぶように構成されてよい。混合物の異なる成分は、固定相に関して異なる親和性を有する。固定相との相互作用に応じて、混合物の異なる成分は、移動相中で異なる速度で移動し得、これが、異なる成分の互いの分離をもたらし得る。液体クロマトグラフィ装置は、ナノ液体クロマトグラフィ装置、マイクロ液体クロマトグラフィ装置、高速液体クロマトグラフィ装置、高性能液体クロマトグラフィ装置、からなる群から選択されてよい。しかしながら、他の種類の液体クロマトグラフィ装置も実現可能であり得る。具体的には、液体供給部が、液体クロマトグラフィ装置に相当できる。さらには、代案として、液体供給部は、少なくとも1つのチューブなどを介して液体クロマトグラフィ装置に結合でき、あるいは結合可能であってよい。したがって、液体クロマトグラフィ装置は、液体を液体供給部に提供するように構成されてよい。
【0019】
本明細書において使用されるとき、「液体」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってのその一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味または特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定はされないが、液体の凝集状態を有する任意の物質を指し得る。具体的には、液体は、その容器の形状に従うが、圧力とは無関係に少なくともほぼ一定の体積を保つほぼ非圧縮性の流体であってよい。液体は、具体的には、水、特には脱イオン水、有機溶媒、緩衝液、からなる群から選択されてよい。さらに、液体は、上述のように少なくとも1つの被検物質を含んでよい。本明細書において使用されるとき、「被検物質」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってのその一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味または特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定はされないが、検出および/または測定対象の分子または化学化合物などの任意の化学的または生物学的物質または種を指し得る。具体的には、サンプル中の被検物質の有無、濃度、および/または量を、検出または測定し得る。具体的には、被検物質は、生物学的分子または高分子であってよい。被検物質は、具体的には、ステロイドまたはその代謝産物、特にはエストラジオールであってよい。さらに、被検物質は、治療効果のある物質、具体的には抗生物質、特には麻酔剤、ペプチド、タンパク質、内因性代謝産物、具体的にはヌクレオチド、脂質、具体的にはリン脂質、特にはセラミド、具体的にはジアシルグリセリド、特にはトリアシルグリセリド、具体的には脂肪酸を含む関連の化合物、毒素、毒性化合物、外因性化合物、糖類、具体的には単糖、特には二糖、具体的にはオリゴ糖、具体的には多糖、特にはそれらの関連の化合物、からなる群から選択されてよい。また、被検物質は、前述の化合物の代謝産物であってもよい。しかしながら、他の被検物質も実現可能であり得る。
【0020】
本明細書において使用されるとき、「ガス供給部」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってのその一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味または特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定はされないが、少なくとも1つのガスを提供するように構成された任意の装置を指し得る。具体的には、ガス供給部は、ガスを提供し、具体的にはガスを貯蔵するように構成されたフラスコまたは容器などの少なくとも1つの貯蔵要素を備え得る。さらに、具体的には、ガス供給部は、少なくとも1つのガス発生器を備え得る。さらに、これに加え、あるいは代えて、ガス供給部は、少なくとも1つのホースなどの少なくとも1つのチューブを備え得る。チューブは、ガスを所望の場所へと移送し、あるいはガスを別の要素へと移送するように構成されてよい。具体的には、上述のように、エレクトロスプレーイオン源ノズルが、少なくとも1つのキャピラリを備え得る。さらなる詳細については、上記の説明を参照されたい。上述のように、液体供給部およびガス供給部は、エレクトロスプレーイオン源ノズルを介して質量分析装置に結合する。ガス供給部は、少なくとも1つのチューブを備えてよく、チューブは、キャピラリの端部または先端部、あるいはキャピラリの端部または先端部の付近の領域に通じてよい。具体的には、ガス供給部は、チューブを通るガスの流れを投与するように構成されたガス供給シリンジポンプなどの少なくとも1つのガス供給投与装置を備え得る。本明細書において使用されるとき、「ガス」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってのその一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味または特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定はされないが、気体の凝集状態を有する任意の物質を指し得る。ガスの粒子は、互いに大きな距離で自由に移動し得、利用可能な空間を均一に満たし得る。
【0021】
具体的には、ガス供給部は、ネブライザガス供給部であってよい。ネブライザガス供給部は、少なくとも1つのネブライザガスを提供するように構成されてよい。ネブライザガスは、液体供給部によって提供される液体を霧化させるように構成されてよい。具体的には、ネブライザガスは、液体の微細なエアロゾルへの分散を支援するように構成されてよい。さらに、ネブライザガスは、キャピラリから質量分析器へと向かう微細なエアロゾルの移動を支援するように構成されてよい。具体的には、ネブライザガスは、少なくとも1つの不活性ガス、具体的にはチッ素、アルゴン、ヘリウムのうちの少なくとも1つを含んでよい。さらに、ネブライザガスは、チッ素、アルゴン、ヘリウムのうちの少なくとも1つと酸素との混合物を含んでよい。さらに、具体的には、ネブライザガスは、油を含まない圧縮されたゼログレードの空気を含んでよい。ネブライザガス供給部を、シースガス供給部と呼ぶこともできる。
【0022】
さらに、随意により、分析器システムは、少なくとも1つの加熱ガス供給部を備え得る。加熱ガス供給部は、少なくとも1つの加熱ガスをエレクトロスプレーイオン源ノズルに提供するように構成されてよい。加熱ガスは、加熱ガス供給部の環境の温度よりも高い温度を有し得る。具体的には、加熱ガスは、20°C~800°C、特には25°C~700°Cの範囲内の温度を有し得る。具体的には、加熱ガスは、少なくとも1つの不活性ガス、具体的にはチッ素、アルゴン、ヘリウムのうちの少なくとも1つを含んでよい。さらに、加熱ガスは、チッ素、アルゴン、ヘリウムのうちの少なくとも1つと酸素との混合物を含んでよい。さらに、具体的には、加熱ガスは、油を含まない圧縮されたゼログレードの空気を含んでよい。さらに、加熱ガスは、油を含まない圧縮された空気であってよい。さらに、他の種類のガスも実現可能であり得る。加熱ガス供給部は、加熱ガスを提供し、具体的にはガスを貯蔵するように構成されたフラスコまたは容器などの少なくとも1つの貯蔵要素を備え得る。さらに、これに加え、あるいは代えて、加熱ガス供給部は、少なくとも1つのホースなどの少なくとも1つのチューブを備え得る。さらに、加熱ガス供給部は、少なくとも1つの加熱要素を備え得る。具体的には、加熱要素は、自然対流または強制対流、渦、ならびに/あるいはガスの循環によってガスを加熱するように構成されてよい。加熱要素は、ガスを所望の温度まで加熱するように構成されてよい。具体的には、加熱ガス供給部は、少なくとも1つのパイプラインを備えてよく、加熱要素は、パイプライン内のガスを直接的または間接的に加熱するように構成されてよく、ガスは静止していても、循環していてもよい。加熱要素は、ガスと直接接触しても、あるいは保護チューブを通してガスを加熱するように構成されてもよい。加熱要素を、具体的には、リングラジエータ、フランジラジエータ、からなる群から選択し得る。また、他の実施形態が実現可能であり得る。
【0023】
例示的には、分析器システムは、ネブライザガス供給部および加熱ガス供給部を備えてよく、ネブライザガス供給部が、上述のガス供給部に相当する。したがって、ドーパントガス供給部を、ネブライザガス供給部に接続し得る。さらに、例示的には、分析器システムは、ネブライザガス供給部および加熱ガス供給部を備えてよく、加熱ガス供給部が、上述のガス供給部に相当する。したがって、ドーパントガス供給部を、加熱ガス供給部に接続し得る。さらに、例示的には、分析器システムは、ネブライザガス供給部のみを備え、加熱ガス供給部を備えなくてよく、ネブライザガス供給部が、上述のガス供給部に相当する。
【0024】
本明細書において使用されるとき、「ドーパントガス供給部」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってのその一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味または特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、少なくとも1つの化学ドーパントガスを提供するように構成された任意の装置を指し得る。具体的には、ドーパントガス供給部は、化学ドーパントガスを提供するように構成され、具体的には、化学ドーパントを貯蔵し、あるいは化学ドーパントの少なくとも1つの原料を貯蔵するように構成されたフラスコまたは容器などの少なくとも1つの貯蔵要素を備え得る。化学ドーパントまたは化学ドーパントの原料は、気体の状態でドーパントガス供給部に貯蔵されてよい。さらに、化学ドーパントまたは化学ドーパントの原料は、固体の状態または液体の状態でドーパントガス供給部に貯蔵されてもよい。ドーパントガス供給部の実施形態に関するさらなる詳細は、以下でさらに詳細に説明される。
【0025】
本明細書において使用されるとき、「化学ドーパントガス」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってのその一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味または特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定はされないが、少なくとも1つの化学ドーパントを含む任意のガスを指し得る。化学ドーパントは、被検物質の信号を増強する、背景信号を抑制する、などによって分析器システムで行われる測定の信号体雑音比を高めるように構成されてよい。具体的には、化学ドーパントガスは、被検物質のプロトン化または脱プロトン化を支援するように構成されてよい。したがって、化学ドーパントガスは、後に脱プロトン化またはプロトン化し得る成分を少なくとも含み得る。具体的には、化学的ドーパントガスは、アンモニアであってよい。アンモニアは、被検物質をプロトン化するように構成されてよい。化学ドーパントガスの形成のための少なくとも1つの原料は、炭酸アンモニウム、フッ化アンモニウム、酢酸アンモニウム、メタン酸アンモニウム、からなる群から選択されてよい。さらに、化学ドーパントガスの形成のための少なくとも1つの原料は、アンモニアガスへと解離でき、あるいはアンモニアガスを放出することができる他の化合物を含んでもよい。
【0026】
上述したように、ドーパントガス供給部は、ガス供給部に接続される。具体的には、ドーパントガス供給部は、ネブライザガス供給部または加熱ガス供給部に接続されてよい。具体的には、分析器システムは、少なくとも1つのチューブなどの少なくとも1つの供給ラインを備えてよい。供給ラインは、ガス供給部の少なくとも1つの容器をエレクトロスプレーイオン源ノズル、具体的にはキャピラリに接続するように構成されてよい。ドーパントガス供給部は、具体的には、ガス供給部の供給ラインに接続されてよい。より具体的には、ドーパントガス供給部は、少なくとも1つのドーパントガス供給チューブなどの少なくとも1つのドーパントガス供給ラインを備えてよい。ドーパントガス供給部ラインは、ガス供給部の供給ラインに接続されてよい。例示的には、ドーパントガス供給ラインは、少なくとも1つの弁を介し、あるいは少なくとも1つのT字ピースを介するなど、少なくとも1つの接続要素を介してガス供給部の供給ラインに接続されてよい。さらに、ガス供給部の供給ラインは、ガス供給部の供給ラインからドーパントガス供給部へとガスを移送するように構成されてよい少なくとも1つの入口を備えてよい。さらに、ガス供給部の供給ラインは、ドーパントガス供給部からガス供給部の供給ラインへとガスを移送するように構成されてよい少なくとも1つの出口を備えてよい。複数の他の選択肢が存在し得る。さらに、ドーパントガス供給ラインは、ドーパントガス供給部からガス供給部へと化学ドーパントガスの流れを投与するように構成されたシリンジポンプなどの少なくとも1つのドーパントガス投与装置を備えてよい。例示的には、ドーパントガス投与装置は、ドーパントガス供給ラインに一体化されてもよい。さらに、例示的には、ドーパントガス投与装置は、ガス供給ラインの出口に一体化されてもよい。具体的には、ドーパントガス投与装置は、化学ドーパントの濃度を液体クロマトグラフィ装置の勾配に適合させるように構成されてよい。さらに、ドーパントガス投与装置は、化学ドーパントの濃度を変化するイオン化効率に適合させるように構成されてよい。
【0027】
具体的には、ガス供給部とドーパントガス供給部とが、順次的に配置されてよい。さらに、具体的には、ガス供給部、ドーパントガス供給部、および液体供給部が、順次的に配置されてよい。例示的には、ドーパントガス供給部、および随意により液体供給部も、それぞれガス供給部の供給ラインへと接続されてよい。本明細書において使用されるとき、「順次的配置」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってのその一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味または特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定はされないが、いかなる分岐も持たない直列配置を指し得る。したがって、具体的には単一の流路が形成されるようなやり方で、ガス供給部とドーパントガス供給部との直列接続、またはガス供給部とドーパントガス供給部と液体供給部との直列接続が存在し得る。
【0028】
ドーパントガス供給部は、化学ドーパントガスを含む少なくとも1つのドーパントガスフラスコを備えてよい。本明細書において使用されるとき、「ドーパントガスフラスコ」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってのその一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味または特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定はされないが、ガス、特には化学ドーパントガスを貯蔵および提供するように構成されてよい任意のフラスコを指し得る。ドーパントガスフラスコは、ドーパントガスフラスコボトルと呼ばれることもある。フラスコは、具体的には、圧力安定ボトルであってよい。さらに、フラスコは、具体的にはガラス製であってよい。具体的には、ドーパントガスフラスコは、化学ドーパントを加圧ガスとして含み得る。ドーパントガスフラスコは、ガス供給部に接続されてよく、あるいは接続可能であってよい。ガス供給部は、具体的には、ネブライザガス供給部であってよく、あるいは加熱ガス供給部であってよい。具体的には、ドーパントガスフラスコは、少なくとも1つのT字ピースなどの少なくとも1つの接続要素を介してガス供給部に接続されてよく、あるいは接続可能であってよい。具体的には、ガス供給部の少なくとも1つのガス供給チューブと、ドーパントガスフラスコに接続され、あるいは接続可能である少なくとも1つのチューブとが、少なくとも1つのT字ピースを介して互いに接続されてよく、あるいは接続可能であってよい。さらに、ドーパントガス供給部は、少なくとも1つの弁などの少なくとも1つの流量調節要素を備えてよい。流量調節要素、具体的には弁は、ガス供給部への化学ドーパントの流れを調節するように構成されてよい。弁をガス調節弁と呼んでもよい。
【0029】
さらに、ドーパントガス供給部は、少なくとも1つの上部空間ガス抽出装置を備えてよい。本明細書において使用されるとき、「上部空間ガス抽出装置」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってのその一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味または特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定はされないが、ガスを提供するように構成された任意の容器、特には密封容器または密封可能な容器を指し得る。具体的には、容器は、より詳細には以下でさらに説明されるように、気体の状態であってよく、あるいは気体の状態にされてよい少なくとも1つの物質、具体的には少なくとも1つの揮発性物質を受け入れるように構成されてよい。ガスは、容器の上部空間、例えば容器の上部領域において利用可能であってよく、上部空間から取り出されて別の装置に移送されてよい。具体的には、上部空間ガス抽出装置は、化学ドーパントガスを提供するように構成されてよい。
【0030】
上部空間ガス抽出装置は、ガス供給部に接続されてよく、あるいは接続可能であってよい。具体的には、分析器システムは、少なくとも1つの供給ラインを備えてよい。供給ラインは、ガス供給部から上部空間ガス抽出装置にガスを供給するように構成されてよい。さらに、分析器システムは、上部空間ガス抽出装置からガス供給部へとガスを供給するための少なくとも1つのさらなる供給ラインを備えてよい。供給ラインおよびさらなる供給ラインは、具体的には、1つ以上のチューブであってよく、あるいは1つ以上のチューブを含んでもよい。供給ラインを、入口と呼んでもよく、さらなる供給ラインを、出口と呼んでもよい。
【0031】
上部空間ガス抽出装置は、具体的には、化学ドーパントの少なくとも1つの溶液を含んでよく、あるいは化学ドーパントの少なくとも1つの溶液を受け入れるように構成されてよい。化学ドーパントの溶液は、具体的には、揮発性溶液であってよい。上部空間ガス抽出装置は、ガス上部空間から気体の形態の化学ドーパントを抽出するように構成されてよい。上部空間ガス抽出装置は、例えば上述のとおりのさらなる供給ラインを介して、ガス供給部のガスを化学ドーパントと衝突させるように構成されてよい。
【0032】
さらに、上部空間ガス抽出装置は、少なくとも1つの反応容器を備えてもよい。本明細書において使用されるとき、「反応容器」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってのその一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味または特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定はされないが、少なくとも1つの物質、特には少なくとも1つの液体物質を受け入れて保持し、装置の少なくとも1つの内部空間内などの装置内での反応を可能にするように構成された任意の装置を指し得る。少なくとも1つの物質、具体的には少なくとも1つの液体物質は、少なくとも1つのさらなる物質と化学反応を起こすように構成されてよい。したがって、化学ドーパントガスを、反応によって、具体的には少なくとも1つの物質、特には少なくとも1つのアンモニア塩と溶液、具体的には水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムの溶液との反応によって、その場で生じさせ得る。反応容器は、任意の形状を有し得る。具体的には、反応容器は、少なくとも1つのアンモニウム塩を受け入れるように構成されてよい。さらに、上部空間ガス抽出装置は、反応容器への少なくとも1つの反応容器供給部を備えてもよい。反応容器供給部は、具体的には、少なくとも1つの反応容器供給ラインまたは少なくとも1つの反応容器チューブを備え得る。反応容器供給部を、少なくとも1つの反応液を反応容器に提供するように構成し得る。アンモニウム塩は、反応液と化学反応するように構成されてよい。アンモニア塩を、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、メタン酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、からなる群から選択し得る。しかしながら、他の種類のアンモニア塩も実現可能であり得る。さらに、反応液は、水酸化ナトリウムの溶液、水酸化カリウムの溶液、からなる群から選択されてよい。しかしながら、他の反応液も実現可能であり得る。反応液の濃度は、0.1mol/l~20mol/l、具体的には0.5mol/l~15mol/l、より具体的には1mol/l~11mol/lの範囲内であってよい。具体的には、反応液の濃度が低いと、作業者の安全性が向上し得る。さらに、具体的には、高い濃度はガスの出力を増やし得る。
【0033】
さらに、分析器システムは、少なくとも1つのポンプ、具体的には少なくとも1つのシリンジポンプ、より具体的には少なくとも1つの電動シリンジポンプを備え得る。反応容器供給部は、少なくとも1つのポンプ、具体的には少なくとも1つのシリンジポンプを備え得る。ポンプは、反応液を移送し、反応液の流れを反応容器へと投与するように構成されてよい。さらに、分析器システムは、少なくとも1つの三方弁を備え得る。三方弁は、シリンジポンプを反応容器およびガス供給部に選択的に接続するように構成されてよい。反応中、シリンジポンプは、反応容器に接続されてよく、化学ドーパントガスで満たされるように構成されてよい。反応後、シリンジポンプは、ガス供給部に接続されてよく、化学ドーパントガスをガス供給部へと提供するように構成されてよい。さらに、分析器システムは、少なくとも1つの圧力調節弁を備え得る。圧力調節弁は、流体またはガスの圧力を所望の値に制御するように構成された弁を指し得る。圧力調節弁は、具体的には、圧力設定、リストリクタ、および/または圧力センサとの一体装置であってよい。具体的には、圧力調節弁は、減圧レギュレータであってよい。減圧レギュレータは、流体またはガスの入力圧力をその出力において所望の値に下げるように構成された制御弁であってよい。さらに、具体的には、圧力調節弁は、背圧レギュレータであってよい。背圧レギュレータは、その入口側における設定圧力を維持するために、入口圧力が設定値を超えたときに開いて流れを可能にするように構成された制御弁であってよい。圧力調節弁は、シリンジポンプをガス供給部に接続し得る。上部空間ガス抽出装置は、少なくとも1つの三方弁を介してシリンジポンプに接続されてよい。シリンジポンプは、反応中に化学ドーパントガスで満たされるように構成されてよい。
【0034】
さらに、化学ドーパントは、固体または液体の物質として提供されてもよく、上部空間ガス抽出装置は、固体または液体の物質にガス供給部のガスを衝突させるように構成されてよい。具体的には、化学ドーパントガスは、ドーパントガスの溶液から放出されてよく、あるいは従順な固体または液体から、例えば蒸発する物理的に結合または吸着したガスの放出、または前駆体化学物質の化学分解によって、放出されてもよい。固体物質は、具体的には、メタン酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、からなる群から選択されてよい。しかしながら、他の種類の固体物質も実現可能であり得る。上部空間ガス抽出装置は、特には、少なくとも1つのガス加熱ユニットを備え得る。ガス加熱ユニットは、ガス供給部によって提供されたガスを、ガスが固体物質へ衝突する前に加熱するように構成されてよい。ガス加熱ユニットは、具体的には、ガス供給部によって提供されるガスを、50°C~500°Cの範囲、特には100°C~400°Cの範囲の温度に加熱するように構成されてよい。ガス加熱ユニットは、自然対流または強制対流、渦、ならびに/あるいはガスの循環によってガスを加熱するように構成されてよい。ガス加熱ユニットは、ガスを所望の温度まで加熱するように構成されてよい。具体的には、上部空間ガス抽出装置は、少なくとも1つのパイプラインを備えてよく、ガス加熱ユニットは、パイプライン内のガスを直接的または間接的に加熱するように構成されてよく、ガスは静止していても、循環していてもよい。ガス加熱ユニットは、ガスと直接接触しても、あるいは保護チューブを通してガスを加熱するように構成されてもよい。ガス加熱ユニットを、具体的には、リングラジエータ、フランジラジエータ、からなる群から選択し得る。また、他の実施形態が実現可能であり得る。これに加え、あるいは代えて、容器が少なくとも1つの容器加熱要素を備えてもよい。容器加熱要素は、反応容器を加熱するように構成されてよい。
【0035】
さらに、上部空間ガス抽出装置は、少なくとも1つのレーザアブレーション装置を備え得る。レーザアブレーション装置は、固体物質をアブレートするように構成されてよい。本明細書において使用されるとき、「レーザアブレーション装置」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってのその一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味または特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定はされないが、表面をレーザビームで照射することによって表面、特には固体表面から材料を除去するように構成された任意の装置を指し得る。具体的には、材料は、レーザエネルギーの吸収によって加熱されてよく、蒸発または昇華させてよい。しかしながら、さらに、材料はプラズマに変換されてもよい。具体的には、レーザアブレーション装置は、パルスレーザを備え得る。しかしながら、他の実施形態も実現可能であり得る。
【0036】
また、ドーパントガス供給部の他の実施形態も実現可能であり得る。例示的には、ドーパントガス供給部は、少なくとも1つのバブリング抽出装置を備え得る。バブリング抽出装置は、溶液から化学ドーパントガスを抽出するように構成されてよい。本明細書において使用されるとき、「バブリング抽出装置」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってのその一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味または特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定はされないが、液体を提供するように構成された任意の容器、特には密封容器または密封可能な容器を指し得る。液体は、化学ドーパントを含んでよい。バブリング抽出装置は、上述のように、ガス供給部に接続されてよく、あるいは接続可能であってよい。具体的には、上述したように、分析器システムは、少なくとも1つの供給ラインを備え得る。供給ラインは、ガス供給部からのガスをバブリング抽出装置、具体的にはバブリング抽出装置の容器によって提供される液体へと供給するように構成されてよい。このようにして、化学ドーパントを気体の状態にし得る。
【0037】
具体的には、分析器システムは、少なくとも1つの貯蔵タンク、特には少なくとも1つの貯蔵圧力タンクをさらに備え得る。「貯蔵圧力タンク」という用語は、気体または液体を周囲の大気の圧力とは異なる圧力で保持するように構成された任意の容器を指し得る。貯蔵圧力タンクは、気体の形態の化学ドーパントを含むガスを貯蔵するように構成されてよい。貯蔵圧力タンクは、ガス供給部、具体的にはネブライザガス供給部のチューブに接続されてよく、あるいは接続可能であってよい。さらに、分析器システムは、少なくとも1つの投与ガス調節器を備え得る。投与ガス調節器は、ガス供給部を貯蔵圧力タンクに接続するように構成されてよい。さらに、分析器システムは、気体の形態の化学ドーパントを含むガスを圧縮するように構成された少なくとも1つの圧縮機ユニットを備え得る。「圧縮機ユニット」という用語は、ガスの体積を減少させることによってガスの圧力を高めるように構成された任意の機械的装置を指し得る。圧縮機ユニットは、具体的には、体積を減少させる機械的リンク機構の変位によってガスを圧縮するように構成されてよい容積式圧縮機であってよい。さらに、圧縮機ユニットは、動圧縮機であってもよい。
【0038】
さらに、分析器システムは、少なくとも1つの貯蔵圧力タンクシリンジポンプ、具体的には少なくとも1つの電動貯蔵圧力タンクシリンジポンプを備え得る。ドーパントガス供給部、具体的には反応容器、または上部空間ガス抽出装置は、少なくとも1つの弁、具体的には少なくとも1つの三方弁を介して貯蔵圧力タンクシリンジポンプに接続されてよく、あるいは接続可能であってよい。貯蔵圧力タンクシリンジポンプは、化学ドーパントガスの生成中に化学ドーパントガスで充てんされるように構成されてよい。さらに、弁は、貯蔵圧力タンクシリンジポンプを、特には充てん後に、ガス供給部、具体的にはネブライザガス供給部に接続するように構成されてよい。具体的には、弁は、貯蔵圧力タンクシリンジポンプをガス供給部、具体的にはネブライザガス供給部のチューブに接続するように構成されてよい。より具体的には、弁は、貯蔵圧力タンクシリンジポンプをガス供給部のチューブに接続された圧力調節弁に接続するように構成されてよい。貯蔵圧力タンクシリンジポンプは、化学ドーパントガスを作動圧力、具体的には予め設定された作動圧力まで圧縮するように構成されてよい。さらに、貯蔵圧力タンクシリンジポンプは、ガス供給部、具体的にはネブライザガス供給部、より具体的にはガス供給部のチューブに接続された圧力調節弁に、化学ドーパントガスの安定した供給部を供給するように構成されてよい。
【0039】
さらに、分析器システムは、少なくとも1つの補充装置、具体的には少なくとも1つの自動補充装置を備え得る。補充装置は、具体的には連続的に、ガス供給部、具体的には上部空間ガス抽出装置または反応容器に、少なくとも1つの物質を充てんまたは再充てんするように構成されてよい。物質は、例示的には、化学ドーパントガスの前駆体であってよく、あるいは液体または固体の形態の化学的ドーパントであっても、液体または固体の形態の化学的ドーパントを含んでもよい。具体的には、補充装置は、少なくとも1つの補充装置貯蔵タンクを備え得る。補充装置貯蔵タンクは、液体または固体の形態の前駆体または化学ドーパントなどの少なくとも1つの物質を貯蔵するように構成されてよい。さらに、補充装置は、具体的には物質を補充装置貯蔵タンクからガス供給部へと移送するように構成されてよい少なくとも1つの補充装置ポンプを備えてもよい。さらに、補充装置は、ガス供給部への物質の流れを投与または調節するように特に構成されてよい少なくとも1つの弁または少なくとも1つの抑制キャピラリチューブを備えてもよい。したがって、補充装置は、化学ドーパントガスの濃度を一定に保つために、物質をガス供給部に恒久的に移送するように構成されてよい。上部空間ガス抽出装置の上部空間内の化学ドーパントガスの圧力を、補充装置によって、具体的には補充装置ポンプによって補償し得る。したがって、上部空間ガス抽出装置内の液面は一定であり得るが、同時に、化学ドーパントの未使用の溶液が利用可能であり得る。
【0040】
分析器システムは、具体的には、少なくとも2つのドーパントガス供給部を備え得る。少なくとも2つのドーパントガス供給部は、少なくとも2つの化学ドーパントを有する少なくとも2つの化学ドーパントガスを提供するように構成されてよい。分析器システムは、少なくとも1つの混合装置をさらに備えてもよい。混合装置は、少なくとも2つの化学ドーパントガスの混合物を作成するように構成されてよい。さらに、混合装置は、化学ドーパントガスとさらなるガスとの混合物を作成するように構成されてよい。さらに、分析器システムは、少なくとも1つの投与装置を備え得る。投与装置は、ドーパントガスを投与するように構成されてよい。投与装置および混合装置は、別々の構成要素であってよい。しかしながら、代案として、投与装置および混合装置は、一体のユニットとして設計されてもよい。混合装置および/または投与装置は、マイクロソレノイド、具体的には2/2ウェイのマイクロソレノイド、3/2ウェイのマイクロソレノイド、膜ポンプ、マイクロ投与ポンプ、からなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を備え得る。また、他の構成要素も実現可能であり得る。
【0041】
さらに、分析器システムは、少なくとも1つの温度制御装置を備え得る。温度制御装置は、ガス供給部によって提供されるガス、ドーパントガス供給部によって提供される化学ドーパントガス、のうちの1つの温度を制御するように構成されてよい。さらに、これに加え、あるいは代えて、分析器システムは、少なくとも1つのさらなる温度制御装置を備え得る。さらなる温度制御装置は、液体供給部によって提供される液体の温度を制御するように構成されてよい。具体的には、液体供給部によって提供される液体が、液体クロマトグラフィ装置によって提供される溶出液に相当できる。ガス供給部によって提供されるガスの温度、ドーパントガス供給部によって提供される化学ドーパントガスの温度、および/または液体供給部によって供給される液体の温度を高めることによって、信号増強反応またはノイズ抑制反応が増加し得、具体的には、被検物質のプロトン化または脱プロトン化が増加し得る。具体的には、温度制御装置および/またはさらなる温度制御装置は、ガスまたは液体の温度の測定、ガスまたは液体の温度の調整、のうちの1つ以上のために構成されてよい。温度制御装置は、管状ヒータ、フローヒータ、セラミック断面ヒータ、ねじ込みヒータ、加熱フランジ、からなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を備え得る。さらに、温度制御装置は、ガスの温度を割り出すように構成された熱電対または抵抗温度センサなどの少なくとも1つの温度センサを備え得る。
【0042】
本発明のさらなる態様において、多重化分析器システムが開示される。
【0043】
本明細書において使用されるとき、「多重化分析器システム」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってのその一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味または特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定するものではないが、複数のサンプルで複数の分析測定を実行するように構成された任意の分析器システムを指し得、複数の分析測定の実行は、順次的に実行され、かつ/または時間的にインターリーブされる。例示的には、第1のサンプルを分析測定する1つの第1のステップと、第2のサンプルを分析測定する1つの第2のステップとが、並行して行われてもよい。第1のステップおよび第2のステップは、具体的には、分析測定の異なる種類のステップに相当できる。しかしながら、第1のステップおよび第2のステップが、分析測定の同じ種類のステップに相当してもよい。
【0044】
多重化分析器システムは、少なくとも1つのエレクトロスプレーイオン源ノズルを有する少なくとも1つの質量分析装置を備える。さらに、多重化分析器システムは、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つの液体供給部を備える。液体供給部は、少なくとも1つの被検物質を有する少なくとも1つの液体を提供するように構成される。さらに、多重化分析器システムは、少なくとも1つのガス供給部を備える。ガス供給部は、少なくとも1つのガスを提供するように構成される。ガス供給部は、エレクトロスプレーイオン源ノズルを介して質量分析装置に結合する。さらに、多重化分析器システムは、少なくとも1つのドーパントガス供給部を備える。ドーパントガス供給部は、少なくとも1つの化学ドーパントを有する少なくとも1つの化学ドーパントガスを2つの液体供給部のうちの1つによって提供される被検物質に提供するように構成される。ドーパントガス供給部は、ガス供給部に接続される。液体供給部は、エレクトロスプレーイオン源ノズルを介して質量分析装置に交互に結合可能である。具体的には、液体供給部の各々が、エレクトロスプレーイオン源ノズルのキャピラリに接続されてよく、あるいは接続可能であってよい少なくとも1つの液体供給チューブなどの少なくとも1つの液体供給ラインをそれぞれ有してもよい。さらに、液体供給ラインの各々が、少なくとも1つの液体供給弁をそれぞれ有してもよい。液体供給弁は、少なくとも2つの異なる位置へと移動可能であってよい少なくとも1つのロック片を有しても、備えてもよい。第1の位置において、ロック片は、液体供給ラインの或る部分と液体供給ラインのさらなる部分との間の接続が現れるように、液体供給弁内に配置されてよい。したがって、液体供給部とエレクトロスプレーイオン源ノズルのキャピラリとの間の接続が出現し得る。さらに、第2の位置において、ロック片は、液体供給ラインの一部分と液体供給ラインのさらなる部分とが互いに切り離されるように、液体供給弁内に配置されてよい。したがって、液体供給部とエレクトロスプレーイオン源ノズルのキャピラリとを互いに切り離し得る。
【0045】
具体的には、多重化分析器システムは、少なくとも2つのドーパントガス供給部、好ましくは少なくとも3つのドーパントガス供給部を備え得る。少なくとも2つのドーパントガス供給部は、エレクトロスプレーイオン源ノズルを介して質量分析装置に交互に結合可能であってよい。上述したように、ドーパントガス供給部は、ドーパントガス供給ラインを備えてよい。具体的には、ドーパントガス供給部の各々が、ドーパントガス供給ラインをそれぞれ備え得る。具体的には、ドーパントガス供給部の各々が、さらなるドーパントガス供給ラインにそれぞれ接続されてよく、あるいは接続可能であってよい少なくとも1つのドーパントガス供給チューブなどの少なくとも1つのドーパントガス供給ラインをそれぞれ有し得る。さらなるドーパントガス供給ラインは、キャピラリの端部または先端部に通じてよい。さらに、ドーパントガス供給ラインの各々が、少なくとも1つのドーパントガス供給弁をそれぞれ有してもよい。ドーパントガス供給弁は、少なくとも2つの異なる位置へと移動可能であってよい少なくとも1つのロック片を有しても、備えてもよい。第1の位置において、ロック片は、ドーパントガス供給ラインとさらなるドーパントガス供給ラインとの間の接続が現れるように、ドーパントガス供給弁内に配置されてよい。したがって、ドーパントガス供給部とエレクトロスプレーイオン源ノズルとの間の接続が出現できる。さらに、第2の位置において、ロック片は、ドーパントガス供給ラインとさらなるドーパントガス供給ラインとを切り離してもよいように、ドーパントガス供給弁内に配置されてよい。したがって、ドーパントガス供給部とエレクトロスプレーイオン源ノズルとを互いに切り離し得る。
【0046】
質量分析装置、液体供給部、ガス供給部、およびドーパントガス供給部に関しては、上記の説明を参照してもよい。さらに、多重化分析器システムは、混合装置、投与装置、および/または温度制御装置などの分析器システムの構成要素を備えてよい。これらの構成要素に関しては、上記の説明を参照してもよい。
【0047】
本発明のさらなる態様において、少なくとも1つのステロイドまたはその代謝産物、具体的にはエストラジオールを検出するための、上記のような分析器システムまたは以下でより詳細にさらに説明されるような分析器システムの使用が開示される。
【0048】
本発明のさらなる態様において、少なくとも1つの被検物質を分析するための方法が開示される。
【0049】
本方法は、具体的には所与の順序で実行されてよい以下のステップを含む。しかしながら、異なる順序も可能であることに留意されたい。さらに、方法ステップのうちの1つ以上を1回または繰り返し実行することも可能である。さらに、方法ステップのうちの2つ以上を同時に、または時間的に重なり合った様相で実行することが可能である。本方法は、列挙されないさらなる方法ステップを含んでもよい。
【0050】
本方法は、以下のステップ、すなわち、
a)上述され、あるいは以下でより詳細にさらに説明されるような分析器システムを少なくとも1つ提供するステップと、
b)エレクトロスプレーイオン源ノズルへと、被検物質を有する液体を提供し、ガスを提供するステップと、
c)ガス供給部を介して化学ドーパントを有する化学ドーパントガスを提供することによって、被検物質のプロトン化または脱プロトン化を支援するステップと、
d)質量分析装置で少なくとも1つの測定を行うステップと
を含む。
【0051】
方法ステップのさらなる詳細、定義、または選択肢については、上述のとおりの分析器システムまたは以下でさらに詳細に説明される分析器システムを参照してもよい。
【0052】
本発明による方法および装置は、既知の方法および装置を超える多数の利点を提供する。
【0053】
具体的には、エレクトロスプレーイオン化の負モードの感度が高まり得る。さらに、ポストカラムのピーク分散体積の導入を回避し得る。さらに、少なくとも1つの被検物質を分析するための方法ならびに分析器システム自体を、あまり複雑でないものにしてよい。さらに、少なくとも1つの被検物質を分析するための方法ならびに分析器システムが、特には化学ドーパントの塩基性によって、ギ酸などの酸性汚染に対して主に堅牢となり得る。
【0054】
ネブライザガスを、エレクトロスプレーイオン化または他の周囲圧力イオン化技術の最中に同時に目的の被検物質の信号を増加させること、背景信号を抑制すること、または前述の動作態様の両方によって信号対雑音比を高めることができる気体ドーパントで、ドープし得る。ドーパントガスは、加圧ガスボトルから供給されてよく、あるいは上部空間抽出による溶液からの抽出またはドーパントガスの溶液からの直接バブリング抽出、あるいは蒸発する物理的に結合/吸着したガスの放出、または例えば加熱ガス、加熱要素による直接加熱、または表面に結合するレーザエネルギーによって導入される熱による前駆体化学物質の化学分解のいずれかによる従順な固体または液体からのドーパントガスの放出によってその場で生成されてもよい。上述のプロセスのドーパントガスの供給源の例は、例えば加圧ガスまたは溶液としてのアンモニア、あるいはその塩、特には炭酸塩、フッ化物、ギ酸塩、酢酸塩であってよく、これらは上述の加熱または分解方法によって分解される。本発明のいくつかの実施形態は、主に、加圧ガス容器の必要性を、その場での生成ユニットとの交換によって省略し、安全性および規制上の懸念を回避し得る。例えばアンモニアガスを利用することによって気体の形態の化学ドーパントを適用することにより、その揮発性ゆえに、サイクル時間を短くし得る。
【0055】
要約すると、さらなる可能な実施形態を排除することなく、以下の実施形態が想定され得る:
【0056】
実施形態1:少なくとも1つのエレクトロスプレーイオン源ノズルを有する少なくとも1つの質量分析装置と、
少なくとも1つの被検物質を有する少なくとも1つの液体を提供するように構成された少なくとも1つの液体供給部と、
少なくとも1つのガスを提供するように構成された少なくとも1つのガス供給部と、
少なくとも1つの化学ドーパントを有する少なくとも1つの化学ドーパントガスを液体供給部によって提供される被検物質へと提供するように構成された少なくとも1つのドーパントガス供給部と
を備え、
液体供給部およびガス供給部は、エレクトロスプレーイオン源ノズルを介して質量分析装置に結合し、ドーパントガス供給部は、ガス供給部に接続されている、分析器システム。
【0057】
実施形態2:ガス供給部は、ネブライザガス供給部であり、ネブライザガス供給部は、少なくとも1つのネブライザガスを提供するように構成され、ネブライザガスは、液体供給部によって提供される液体を霧化させるように構成されている、実施形態1による分析器システム。
【0058】
実施形態3:ドーパントガス供給部は、ネブライザガス供給部に接続されている、実施形態2による分析器システム。
【0059】
実施形態4:ネブライザガスは、少なくとも1つの不活性ガス、特にはチッ素、アルゴン、ヘリウムのうちの少なくとも1つを含む、実施形態2または3による分析器システム。
【0060】
実施形態5:加熱ガス供給部は、エレクトロスプレーイオン源ノズルに少なくとも1つの加熱されたガスを提供するように構成された少なくとも1つの加熱ガス供給部をさらに備える、実施形態1~4のいずれか1つによる分析器システム。
【0061】
実施形態6:ドーパントガス供給部は、加熱ガス供給部に接続されている、実施形態5による分析器システム。
【0062】
実施形態7:加熱ガスは、少なくとも1つの不活性ガス、特にはチッ素、アルゴン、ヘリウムのうちの少なくとも1つを含む、実施形態5または6による分析器システム。
【0063】
実施形態8:化学ドーパントガスは、アンモニアである、実施形態1~7のいずれか1つによる分析器システム。
【0064】
実施形態9:化学ドーパントガスの形成のための少なくとも1つの原材料が、炭酸アンモニウム、フッ化アンモニウム、酢酸アンモニウム、メタン酸アンモニウム、からなる群から選択される、実施形態1~8による分析器システム。
【0065】
実施形態10:少なくとも1つの液体クロマトグラフィ装置を備え、液体供給部は、液体クロマトグラフィ装置に結合している、実施形態1~9のいずれか1つによる分析器システム。
【0066】
実施形態11:液体クロマトグラフィ装置は、ナノ液体クロマトグラフィ装置、マイクロ液体クロマトグラフィ装置、高速液体クロマトグラフィ装置、高性能液体クロマトグラフィ装置、からなる群から選択される、実施形態10による分析器システム。
【0067】
実施形態12:被検物質は、ステロイドまたはその代謝産物、特にはエストラジオールである、実施形態1~11のいずれか1つによる分析器システム。
【0068】
実施形態13:体外診断分析器である、実施形態1~12のいずれか1つによる分析器システム。
【0069】
実施形態14:ドーパントガス供給部は、化学ドーパントを含む少なくとも1つのドーパントガスフラスコを備え、ドーパントガスフラスコは、ガス供給部に接続されている、実施形態1~13のいずれか1つによる分析器システム。
【0070】
実施形態15:ドーパントガスフラスコは、少なくとも1つのT字形ピースを介してガス供給部に接続され、ドーパントガス供給部は、少なくとも1つの弁をさらに備え、弁は、ガス供給部への化学ドーパントの流量を調節するように構成されている、実施形態15による分析器システム。
【0071】
実施形態16:ドーパントガスフラスコは、化学ドーパントを加圧ガスとして含む、実施形態14または15による分析器システム。
【0072】
実施形態17:ドーパントガス供給部は、少なくとも1つの上部空間ガス抽出装置を備え、上部空間ガス抽出装置は、気体の形態の化学ドーパントを含むガスを提供するように構成され、上部空間ガス抽出装置は、ガス供給部に接続されている、実施形態1~16による分析器システム。
【0073】
実施形態18:ガス供給部から上部空間ガス抽出装置へとガスを供給するための少なくとも1つの供給ラインを備え、上部空間ガス抽出装置からガス供給部へとガスを供給するための少なくとも1つのさらなる供給ラインをさらに備える、実施形態17による分析器システム。
【0074】
実施形態19:上部空間ガス抽出装置は、化学ドーパントの溶液を含み、上部空間ガス抽出装置は、ガス上部空間から気体の形態の化学ドーパントを抽出するように構成されている、実施形態17または18のいずれか1つによる分析器システム。
【0075】
実施形態20:上部空間ガス抽出装置は、ガス供給部のガスを化学ドーパントと衝突させるように構成されている、実施形態19による分析器システム。
【0076】
実施形態21:上部空間ガス抽出装置は、少なくとも1つの反応容器を備え、反応容器は、少なくとも1つのアンモニウム塩を受け入れるように構成され、上部空間ガス抽出装置は、反応容器への少なくとも1つの反応容器供給部をさらに備え、反応容器供給部は、反応容器に少なくとも1つの反応液を提供するように構成されている、実施形態17~20のいずれか1つによる分析器システム。
【0077】
実施形態22:反応容器供給部は、少なくとも1つのポンプを備え、ポンプは、反応容器へと反応液の流れを投与するように構成されている、実施形態21による分析器システム。
【0078】
実施形態23:アンモニア塩は、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、メタン酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、からなる群から選択される、実施形態21または22による分析器システム。
【0079】
実施形態24:反応液は、水酸化ナトリウムの溶液、水酸化カリウム、からなる群から選択される、実施形態21~23のいずれか1つによる分析器システム。
【0080】
実施形態25:少なくとも1つのシリンジポンプ、特には少なくとも1つの電動シリンジポンプをさらに備え、少なくとも1つの三方弁をさらに備え、三方弁は、シリンジポンプを反応容器およびガス供給部に選択的に接続するように構成され、反応時に、シリンジポンプは、反応容器に接続され、化学ドーパントガスで満たされるように構成され、反応後に、シリンジポンプは、ガス供給部に接続され、化学ドーパントガスをガス供給部に提供するように構成されている、実施形態21~24のいずれか1つによる分析器システム。
【0081】
実施形態26:少なくとも1つの圧力調節弁をさらに備え、圧力調節弁は、シリンジポンプをガス供給部に接続する、実施形態25による分析器システム。
【0082】
実施形態27:上部空間ガス抽出装置は、少なくとも1つの三方弁を介してシリンジポンプに接続され、シリンジポンプは、反応時に化学ドーパントガスで満たされるように構成されている、実施形態25または26による分析器システム。
【0083】
実施形態28:化学ドーパントは、固体物質として提供される、実施形態7~27のいずれか1つによる分析器システム。
【0084】
実施形態29:上部空間ガス抽出装置は、固体物質をガス供給部のガスと衝突させるように構成されている、実施形態28による分析器システム。
【0085】
実施形態30:上部空間ガス抽出装置は、少なくとも1つのガス加熱ユニットを備え、ガス加熱ユニットは、ガス供給部によって提供されたガスを、特にはガスが固体物質へ衝突する前に、加熱するように構成されている、実施形態28または29による分析器システム。
【0086】
実施形態31:上部空間ガス抽出装置は、少なくとも1つのレーザアブレーション装置を備え、レーザアブレーション装置は、固体物質をアブレートするように構成されている、実施形態28~30のいずれか1つによる分析器システム。
【0087】
実施形態32:固体物質は、メタン酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、からなる群から選択される、実施形態28~31のいずれか1つによる分析器システム。
【0088】
実施形態33:少なくとも1つの貯蔵タンク、特には少なくとも1つの貯蔵圧力タンクをさらに備え、貯蔵タンクは、気体の形態の化学ドーパントを含むガスを貯蔵するように構成されている、実施形態16~32のいずれか1つによる分析器システム。
【0089】
実施形態34:気体の形態の化学ドーパントを含むガスを圧縮するように構成された少なくとも1つの圧縮機ユニットをさらに備える、実施形態33による分析器システム。
【0090】
実施形態35:少なくとも1つの投与ガス調節器をさらに備え、投与ガス調節器は、ガス供給部を貯蔵タンクに接続するように構成されている、実施形態33または34による分析器システム。
【0091】
実施形態36:液体供給部は、液体供給部へと少なくとも1つの被検物質を有する液体の流れを投与するように構成された少なくとも1つの液体供給シリンジポンプを備える、実施形態1~35のいずれか1つによる分析器システム。
【0092】
実施形態37:少なくとも2つの化学ドーパントを有する少なくとも2つの化学ドーパントガスを提供するように構成された少なくとも2つのドーパントガス供給部を備え、少なくとも2つの化学ドーパントガスの混合物を作成するように構成された少なくとも1つの混合装置をさらに備える、実施形態1~36のいずれか1つによる分析器システム。
【0093】
実施形態38:少なくとも1つの投与装置をさらに備え、投与装置は、ドーパントガスを投与するように構成されている、実施形態1~37のいずれか1つによる分析器システム。
【0094】
実施形態39:少なくとも1つのエレクトロスプレーイオン源ノズルを有する少なくとも1つの質量分析装置と、
少なくとも1つの被検物質を有する少なくとも1つの液体を提供するように構成された少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つの液体供給部と、
少なくとも1つのガスを提供するように構成され、エレクトロスプレーイオン源ノズルを介して質量分析装置に結合した少なくとも1つのガス供給部と、
少なくとも1つの化学ドーパントを有する少なくとも1つの化学ドーパントガスを2つの液体供給部の一方によって提供される被検物質へと提供するように構成され、ガス供給部に接続された少なくとも1つのドーパントガス供給部と
を備え、
液体供給部は、エレクトロスプレーイオン源ノズルを介して質量分析装置に交互に結合可能である、多重化分析器システム。
【0095】
実施形態40:少なくとも2つのドーパントガス供給部、好ましくは少なくとも3つのドーパントガス供給部を備え、2つのドーパントガス供給部は、エレクトロスプレーイオン源ノズルを介して質量分析装置に交互に結合可能である、実施形態39による多重化分析器システム。
【0096】
実施形態41:少なくとも1つのステロイドまたはその代謝産物、特にはエストラジオールを検出するために、分析器システムに関する先行の実施形態のいずれか1つによる分析器システムの使用。
【0097】
実施形態42:少なくとも1つの被検物質を分析するための方法であって、
a)分析器システムに関する先行の実施形態のいずれか1つによる分析器システムを少なくとも1つ提供することと、
b)エレクトロスプレーイオン源ノズルへと、被検物質を有する液体を提供し、ガスを提供することと、
c)ガス供給部を介して化学ドーパントを有する化学ドーパントガスを提供することによって、被検物質のプロトン化または脱プロトン化を支援することと、
d)質量分析装置で少なくとも1つの測定を行うことと
を含む方法。
【0098】
図面の簡単な説明
さらなる随意による特徴および実施形態が、好ましくは従属請求項と併せて、実施形態の後続の説明においてさらに詳細に開示される。ここで、それぞれの随意による特徴は、当業者であれば理解できるとおり、独立した様相で実現されても、任意の実行可能な組み合わせにて実現されてもよい。本発明の範囲は、好ましい実施形態によって限定されるわけではない。実施形態は、図中に概略的に示されている。ここで、これらの図における同一の参照番号は、同一または機能的に同等の要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【
図1A】本発明による分析器システムの例示的な実施形態を示している。
【
図1B】本発明による分析器システムの例示的な実施形態を示している。
【
図1C】本発明による分析器システムの例示的な実施形態を示している。
【
図2】概念実証実験を説明するクロマトグラムを示している。
【
図3】さらなる概念実証実験を説明するクロマトグラムを示している。
【
図4】本発明による多重化分析器システムの例示的な実施形態を示している。
【
図5】本発明による多重化システムで少なくとも1つのサンプルを分析するための方法を概略的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0100】
実施形態の詳細な説明
図1A~
図1Cが、本発明による分析器システム110の例示的な実施形態を示している。分析器システム110は、少なくとも1つのエレクトロスプレーイオン源ノズル114を有する少なくとも1つの質量分析装置112を備える。さらに、分析器システム110は、少なくとも1つの液体供給部116を備える。液体供給部116は、少なくとも1つの被検物質を有する少なくとも1つの液体を提供するように構成される。さらに、分析器システムは、少なくとも1つのガス供給部118を備える。ガス供給部118は、少なくとも1つのガスを提供するように構成される。さらに、分析器システム110は、少なくとも1つのドーパントガス供給部120を備える。ドーパントガス供給部120は、少なくとも1つの化学ドーパント122を有する少なくとも1つの化学ドーパントガスを液体供給部116によって提供される被検物質に提供するように構成される。液体供給部116およびガス供給部118は、エレクトロスプレーイオン源ノズル114を介して質量分析装置112に結合し、ドーパントガス供給部120は、ガス供給部118に接続される。
【0101】
図1Aおよび
図1Bに示されるように、エレクトロスプレーイオン源ノズル114は、少なくとも1つのキャピラリ124を備え得る。キャピラリ124は、例示的には、ガラスおよび/またはステンレス鋼などの少なくとも1つの金属で作られてよい。エレクトロスプレーイオン源ノズル114は、キャピラリ124の外面126に高電圧を印加するように構成されてよい。具体的には、液体供給部116は、液体クロマトグラフィ装置128であってよく、あるいは液体クロマトグラフィ装置に相当してもよい。エレクトロスプレーイオン源ノズル114のキャピラリ124は、矢印130で概略的に示されるように、少なくとも1つのチューブなどを介して液体供給部116、特には液体クロマトグラフィ装置128に結合でき、あるいは結合可能であってよい。
【0102】
さらに、
図1Aおよび
図1Bに示されるように、ガス供給部118は、ガスを提供および貯蔵するように構成された容器134などの少なくとも1つの貯蔵要素132を備えてよい。さらに、ガス供給部118は、少なくとも1つのホース138などの少なくとも1つのチューブ136を備えてよい。具体的には、ガス供給部118は、少なくとも1つのチューブ136を備えてよく、チューブ136は、キャピラリ124の端部140に通じてよい。
【0103】
具体的には、ガス供給部は、ネブライザガス供給部142であってよい。ネブライザガス供給部142は、少なくとも1つのネブライザガスを提供するように構成されてよい。ネブライザガスは、液体供給部116によって提供される液体を霧化させるように構成されてよい。具体的には、ネブライザガス142は、少なくとも1つの不活性ガス、具体的にはチッ素を含んでよい。さらに、分析器システムは、少なくとも1つのさらなるガス供給部144を備えてよい。さらなるガス供給部は、加熱ガス供給部146であってよい。加熱ガス供給部146は、少なくとも1つの加熱ガスをエレクトロスプレーイオン源ノズル114に提供するように構成されてよい。具体的には、加熱ガスは、少なくとも1つの不活性ガス、具体的にはチッ素を含んでよい。加熱ガス供給部146は、ガスを提供および貯蔵するように構成されたさらなる容器150などの少なくとも1つのさらなる貯蔵要素148を備えてよい。さらに、加熱ガス供給部146は、少なくとも1つのさらなるホース154などの少なくとも1つのさらなるチューブ152を備えてよい。具体的には、加熱ガス供給部146は、少なくとも1つのさらなるチューブ152を備えてよく、さらなるチューブ152は、キャピラリ124の端部140に通じてよい。例示的には、
図1Aに示されるように、分析器システム110は、ネブライザガス供給部142および加熱ガス供給部146を備えてよい。さらに、
図1Aに示されるように、ドーパントガス供給部120は、ネブライザガス供給部142に接続されてよい。
【0104】
具体的には、
図1Aに示されるように、ドーパントガス供給部120は、少なくとも1つの上部空間ガス抽出装置156を備えてよい。上部空間ガス抽出装置156は、特には、少なくとも1つの容器158を備えてよい。容器158は、気体の状態であってよく、あるいは気体の状態にされてよい少なくとも1つの物質、具体的には少なくとも1つの揮発性物質を受け入れるように構成されてよい。上部空間ガス抽出装置156は、特には、化学ドーパント122の少なくとも1つの溶液160を含んでよい。化学ドーパント122の溶液160は、具体的には、揮発性溶液162であってよい。上部空間ガス抽出装置156は、ガス上部空間164から気体の形態の化学ドーパント122を抽出するように構成されてよい。
【0105】
上部空間ガス抽出装置156は、ガス供給部118、特にはネブライザガス供給部142に接続されてよく、あるいは接続可能であってよい。具体的には、分析器システム110は、ガス供給部118、具体的にはネブライザガス供給部142から上部空間ガス抽出装置156へとガスを供給するための少なくとも1つの供給ライン166を備えてよい。さらに、分析器システム110は、上部空間ガス抽出装置156からガス供給部118、具体的にはネブライザガス供給部142へとガスを供給するための少なくとも1つのさらなる供給ライン168を備えてよい。供給ライン166を、入口170と呼んでもよく、さらなる供給ライン168を、出口172と呼んでもよい。
【0106】
ネブライザガスを含む化学ドーパントは、キャピラリ124の端部140において液体クロマトグラフィ装置128によって提供される溶出液と合流してよい。溶出液との均一な混合を生じさせ得る。化学ドーパント122は、エレクトロスプレーイオン化の負モードにおける脱プロトン化またはエレクトロスプレーイオン化の正モードでのプロトン化を支援するように構成されてよい。
【0107】
あるいは、
図1Bに示されるように、ドーパントガス供給部120は、化学ドーパントガス122を含む少なくとも1つのドーパントガスフラスコ174を備えてよい。ドーパントガスフラスコ174は、具体的には、圧力安定ボトル176であってよい。具体的には、ドーパントガスフラスコ174は、加圧ガスとして化学ドーパント122を含んでよい。ドーパントガスフラスコ174は、ガス供給部118、特にはネブライザガス供給部142に接続されてよく、あるいは接続可能であってよい。具体的には、ドーパントガスフラスコ174は、少なくとも1つのT字ピース178を介してガス供給部118に接続されてよく、あるいは接続可能であってよい。具体的には、ドーパントガスフラスコ174は、少なくとも1つのチューブ180に接続されてよく、チューブ180は、T字ピース178を介してガス供給部118のチューブ136に接続されてよい。さらに、ドーパントガス供給部120は、少なくとも1つのガス流量調節部182、具体的には少なくとも1つの弁184を備えてよい。ガス流量調節部182は、ガス供給部118、具体的にはガス供給部118のチューブ136への化学ドーパント122の流れを調節するように構成されてよい。T字ピースは、化学ドーパントガスをネブライザガスと混合するように構成されてよい。
【0108】
図1Cが、本発明による分析器システム110の例示的な実施形態の詳細図を示している。少なくとも1つのキャピラリ124を有するエレクトロスプレーイオン源ノズル114が示されている。さらに、加熱ガス供給部146が示されている。ドーパント化学ガスと加熱ガスとの混合物を、地点188においてイオンスプレーと出会うバー186によって図示されるように、外部からエレクトロスプレーイオン源ノズル114に移してよい。加熱ガス供給部146の出口は、キャピラリ124に対して20°~80°、具体的には30°~70°、より具体的には45°の角度αで配置されてよい。化学ドーパントガスと加熱ガスとの混合物は、最適化されたエレクトロスプレーイオン化プロセスをもたらし得る。
【0109】
図2が、概念実証実験を説明するクロマトグラムを示している。被検物質エストラジオールを、シリンジポンプを使用して質量分析装置に直接注入した。クロマトグラムの番号が付けられた部分は、実験の異なる部分を表し、以下で説明される。クロマトグラムにおいて、強度Iが、時間tに応じて示されている。
【0110】
クロマトグラムの部位1において、シリンジポンプを作動させ、被検物質エストラジオールの注入を開始した。信号の増加が観察され、数秒後に安定してプラトーに達した。プラトーの強度レベルは、約1400であった。
【0111】
クロマトグラムの部位2において、シリンジポンプをオフにしたところ、被検物質がもはや注入されないため、信号の即時の減少が観察された。水酸化アンモニウムの溶液を含む圧力安定ボトルを、質量分析装置に接続した。
【0112】
クロマトグラムの部位3において、シリンジポンプを再びオンにしたところ、信号の増加が観察され、数秒後に安定して強度が約13000のプラトーに達した。これは、化学ドーパントを使用することによるおおむね9倍の信号増強に等しい。
【0113】
クロマトグラムの部位4において、シリンジポンプをオフにしたところ、被検物質がもはや注入されないため、信号の即時の減少が観察された。
【0114】
クロマトグラムの部位5において、水酸化アンモニウムの溶液を含む圧力安定ボトルを、質量分析装置から切り離し、シリンジポンプを再びオンにした。信号の増加が観察され、数秒後に安定して強度が約1600のプラトーに達した。実験は、部位1と同等の結果を示した。
【0115】
クロマトグラムの部位6において、シリンジポンプを再びオンにしたところ、信号の増加が観察された。シリンジポンプが空になったため、信号は安定なプラトーに達することができなかった。したがって、シリンジポンプをオフにし、手動で補充した。
【0116】
クロマトグラムの部位7において、シリンジポンプを再びオンにしたところ、信号の増加が観察され、数秒後に安定して強度が約14000のプラトーに達した。実験結果は、部位3と同等であり得る。
【0117】
図3が、さらなる概念実証実験を説明するクロマトグラムを示している。液体クロマトグラフィ質量分析に基づくアッセイについて信号増強を調査するために、Agilent 1290 Infinity HPLCシステムを、Agilent 6495 Triple Quadrupoleに接続した。クロマトグラムに、1秒あたりのカウントcps が、保持時間tに応じて示されている。
【0118】
クロマトグラム190は、ニートな溶媒に溶解させた100pg/mLのエストラジオール較正物質の注入を示し、LC/MSグレードの脱イオン水を含む溶離液Aおよびメタノール中の0.2mmol/Lのフッ化アンモニウムを含む溶離液Bで実行されている。ニートな溶媒は、LC/MSグレードの標準溶媒を指し得、具体的には、信号への影響、特には信号へのマトリックスの影響が回避され、あるいは少なくとも大幅に低減されるようにニートであってよい。この移動相の組成は、技術水準のエストラジオールアッセイを代表する。エストラジオールのピーク192は、28秒の保持時間で溶出し、59という面積値を示した。クロマトグラム194を作成するために、ドーパントとしての気体の水酸化アンモニウムの添加を利用した。移動相は、LC/MSグレードの水を含む溶離液Aおよびメタノールを含む溶離液Bとした。エストラジオールの保持時間は28秒であり、面積値は495であった。これは、技術水準のエストラジオールアッセイと比較しておおむね8倍の信号増強を呈する。
【0119】
図4が、本発明による多重化分析器システム196の例示的な実施形態を示している。
【0120】
多重化分析器システム196は、少なくとも1つのエレクトロスプレーイオン源ノズル114を有する少なくとも1つの質量分析装置112を備える。さらに、多重化分析器システム196は、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つの液体供給部116を備える。
図4による実施形態において、多重化分析器システム196は、少なくとも4つの液体供給部116を備えてよい。具体的には、4つの液体供給部116のうちの3つが、高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)装置198であってよく、4つの液体供給部116のうちの1つが、高速液体クロマトグラフィ装置200であってよい。液体供給部116は、エレクトロスプレーイオン源ノズル114を介して質量分析装置112に交互に結合可能である。具体的には、液体供給部116の各々が、エレクトロスプレーイオン源ノズル114のキャピラリ124に接続されてよく、あるいは接続可能であってよい少なくとも1つの液体供給ライン214をそれぞれ有してよい。さらに、液体供給ライン214の各々が、少なくとも1つの液体供給弁216をそれぞれ有してよい。液体供給弁216は、少なくとも2つの異なる位置へと移動可能であってよい少なくとも1つのロック片を有しても、備えてもよい。第1の位置において、ロック片は、液体供給ライン214の或る部分218と液体供給ライン214のさらなる部分220との間の接続が現れるように、液体供給弁216内に配置されてよい。したがって、液体供給部116とエレクトロスプレーイオン源ノズル114のキャピラリ124との間の接続が出現できる。さらに、第2の位置において、ロック片は、液体供給ライン214の一部分218と液体供給ライン214のさらなる部分220とが互いに切り離されるように、液体供給弁216内に配置されてよい。したがって、液体供給部116とエレクトロスプレーイオン源ノズル114のキャピラリ124とを互いに切り離してよい。液体供給部116は、少なくとも1つのサンプルを提供する容器202に交互に結合可能であってよい。具体的には、液体供給部116はそれぞれ、少なくとも1つの弁222を介して容器202に交互に結合可能であってよい。
【0121】
さらに、多重化分析器システム196は、少なくとも1つのガス供給部118を備える。ガス供給部118は、チッ素などの少なくとも1つのガスを提供するように構成される。ガス供給部118は、エレクトロスプレーイオン源ノズル114を介して質量分析装置112に結合する。さらに、多重化分析器システム196は、少なくとも1つのドーパントガス供給部120を備える。具体的には、多重化分析器システム196は、少なくとも3つのドーパントガス供給部120を備えてよい。少なくとも3つのドーパントガス供給部120は、ガス供給部118に交互に接続可能であってよい。具体的には、ドーパントガス供給部120の各々が、ドーパントガス供給ライン224をそれぞれ備えてよい。具体的には、ドーパントガス供給部120の各々が、さらなるドーパントガス供給ライン226にそれぞれ接続されてよく、あるいは接続可能であってよい少なくとも1つのドーパントガス供給ライン224をそれぞれ有してよい。さらなるドーパントガス供給ライン226は、キャピラリ124の端部140に通じてよい。さらに、ドーパントガス供給ライン224の各々が、少なくとも1つのドーパントガス供給弁228をそれぞれ有してもよい。ドーパントガス供給弁228は、少なくとも2つの異なる位置へと移動可能であってよい少なくとも1つのロック片を有しても、備えてもよい。第1の位置において、ロック片は、ドーパントガス供給ライン224とさらなるドーパントガス供給ライン226との間の接続が現れるように、ドーパントガス供給弁228内に配置されてよい。したがって、ドーパントガス供給部120とエレクトロスプレーイオン源ノズル114との間の接続が出現できる。さらに、第2の位置において、ロック片は、ドーパントガス供給ライン224とさらなるドーパントガス供給ライン226とを切り離してよいように、ドーパントガス供給弁228内に配置されてよい。したがって、ドーパントガス供給部120とエレクトロスプレーイオン源ノズル114とを互いに切り離し得る。さらに、多重化分析器システム196は、少なくとも1つのコントローラ204を備えてよい。コントローラ204は、液体供給弁216、弁222、ドーパントガス供給弁228の少なくとも1つを制御するように構成されてよい。さらに、随意により、多重化分析器システム196は、加熱ガス供給部146を備えてよい。
【0122】
図5に、多重化システム196で少なくとも1つのサンプルを分析するための方法が、概略的に示されている。
【0123】
3つの高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)ストリーム206および1つの高速液体クロマトグラフィストリーム208を多重化してよく、質量分析装置112へと交互に導いてよく、質量分析装置112を、特にはランダムアクセス測定モードに常に保ってよい。質量スペクトル210を、時間期間tにおいて次々に取得し得る。時間期間tは、例示的には、36秒であってよい。このようにして、質量分析データ212を収集し得る。液体クロマトグラフィ質量分析サイクルは、具体的には、右側の囲みに示されるように、3つの相、すなわち平衡相A、検出相B、および洗浄相Cを含み得る。HPLCストリーム206のうちの1つが平衡相にあってよい一方で、残りのHPLCストリーム206のうちの1つが検出相にあってよく、かつ残りのHPLCストリーム206のうちの1つが洗浄相にあってよく、逆もまた同様である。化学ドーパントガスは、検出相Bの最中にのみ特定的かつ選択的に供給されてもよい。
【0124】
質量分析装置の検出器の課題は、pH、緩衝液、および有機含有量の変更による移動相の高速な切り替えであり得る。気体のドーパントの添加は、緩衝液および/またはpHの変更がエレクトロスプレーイオン源ノズル源においてポストカラムのみで生じればよく、HPLCシステムの全流路について緩衝液およびpHを交換する必要はないため、ランダムアクセスを容易にする。したがって、質量分析条件のより迅速な切り替えおよび平衡を可能にでき、ロバストな高スループット分析を可能にできる。
【符号の説明】
【0125】
110 分析器システム
112 質量分析装置
114 エレクトロスプレーイオン源ノズル
116 液体供給部
118 ガス供給部
120 ドーパントガス供給部
122 化学ドーパント
124 キャピラリ
126 外面
128 液体クロマトグラフィ装置
130 矢印
132 貯蔵要素
134 容器
136 チューブ
138 ホース
140 端部
142 ネブライザガス供給部
144 さらなるガス供給部
146 加熱ガス供給部
148 さらなる貯蔵要素
150 さらなる容器
152 さらなるチューブ
154 さらなるホース
156 上部空間ガス抽出装置
158 容器
160 溶液
162 揮発性溶液
164 ガス上部空間
166 供給ライン
168 さらなる供給ライン
170 入口
172 出口
174 ドーパントガスフラスコ
176 圧力安定ボトル
178 T字ピース
180 チューブ
182 流量調節部
184 弁
186 バー
188 地点
190 クロマトグラム
192 ピーク
194 クロマトグラム
196 多重化分析器システム
198 高圧液体クロマトグラフィ装置
200 高速液体クロマトグラフィ装置
202 容器
204 コントローラ
206 高圧液体クロマトグラフィストリーム
208 高速液体クロマトグラフィストリーム
210 質量スペクトル
212 質量分析データ
214 液体供給ライン
216 液体供給弁
218 部分
220 さらなる部分
222 弁
224 ドーパントガス供給ライン
226 さらなるドーパントガス供給ライン
228 ドーパントガス供給弁
【手続補正書】
【提出日】2023-11-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのエレクトロスプレーイオン源ノズル(114)を有する少なくとも1つの質量分析装置(112)と、
少なくとも1つの被検物質を有する少なくとも1つの液体を提供するように構成された少なくとも1つの液体供給部(116)と、
少なくとも1つのガスを提供するように構成された少なくとも1つのガス供給部(118)と、
少なくとも1つの化学ドーパント(122)を有する少なくとも1つの化学ドーパントガスを前記液体供給部(116)によって提供される前記被検物質へと提供するように構成された少なくとも1つのドーパントガス供給部(120)と
を備え、
前記液体供給部(116)および前記ガス供給部(118)は、前記エレクトロスプレーイオン源ノズル(114)を介して前記質量分析装置(112)に結合し、前記ドーパントガス供給部(120)は、前記ガス供給部(118)に接続されている、分析器システム(110)。
【請求項2】
前記ガス供給部(118)は、ネブライザガス供給部(142)であり、前記ネブライザガス供給部(142)は、少なくとも1つのネブライザガスを提供するように構成され、前記ネブライザガスは、前記液体供給部(116)によって提供される前記液体を霧化させるように構成されている、請求項1に記載の分析器システム(110)。
【請求項3】
前記エレクトロスプレーイオン源ノズル(114)に少なくとも1つの加熱されたガスを提供するように構成された少なくとも1つの加熱ガス供給部(146)をさらに備える、請求項
1に記載の分析器システム(110)。
【請求項4】
前記被検物質は、ステロイドまたはその代謝産物である、請求項
1に記載の分析器システム(110)。
【請求項5】
前記ドーパントガス供給部(120)は、前記化学ドーパント(122)を含む少なくとも1つのドーパントガスフラスコ(174)を備え、前記ドーパントガスフラスコ(174)は、前記ガス供給部(118)に接続されている、請求項
1に記載の分析器システム(110)。
【請求項6】
前記ドーパントガス供給部(120)は、少なくとも1つの上部空間ガス抽出装置(156)を備え、前記上部空間ガス抽出装置(156)は、気体の形態の前記化学ドーパント(122)を含むガスを提供するように構成され、前記上部空間ガス抽出装置(156)は、前記ガス供給部(118)に接続されている、請求項
1に記載の分析器システム(110)。
【請求項7】
前記上部空間ガス抽出装置(156)は、前記化学ドーパント(122)の溶液を含み、前記上部空間ガス抽出装置(156)は、ガス上部空間(164)から気体の形態の前記化学ドーパント(122)を抽出するように構成され、前記上部空間ガス抽出装置(156)は、前記ガス供給部(118)の前記ガスを前記化学ドーパント(122)に衝突させるように構成されている、請求項6に記載の分析器システム(110)。
【請求項8】
前記上部空間ガス抽出装置(156)は、少なくとも1つの反応容器を備え、前記反応容器は、少なくとも1つのアンモニウム塩を受け入れるように構成され、前記上部空間ガス抽出装置(156)は、前記反応容器への少なくとも1つの反応容器供給部をさらに備え、前記反応容器供給部は、前記反応容器に少なくとも1つの反応液を提供するように構成されている、請求項
6に記載の分析器システム(110)。
【請求項9】
前記化学ドーパント(122)は、固体物質として提供され、前記上部空間ガス抽出装置(156)は、前記固体物質を前記ガス供給部(118)の前記ガスと衝突させるように構成されている、請求項
6に記載の分析器システム(110)。
【請求項10】
前記上部空間ガス抽出装置(156)は、少なくとも1つのガス加熱ユニットを備え、前記ガス加熱ユニットは、前記ガス供給部(118)によって提供された前記ガスを、前記ガスが前記固体物質へ衝突する前に加熱するように構成されている、請求項9に記載の分析器システム(110)。
【請求項11】
前記上部空間ガス抽出装置(156)は、少なくとも1つのレーザアブレーション装置を備え、前記レーザアブレーション装置は、前記固体物質をアブレートするように構成されている、請求項
9に記載の分析器システム(110)。
【請求項12】
少なくとも1つのエレクトロスプレーイオン源ノズル(114)を有する少なくとも1つの質量分析装置(112)と、
少なくとも1つの被検物質を有する少なくとも1つの液体を提供するように構成された少なくとも2つの液体供給部(166)と、
少なくとも1つのガスを提供するように構成され、前記エレクトロスプレーイオン源ノズル(114)を介して前記質量分析装置(112)に結合した少なくとも1つのガス供給部(118)と、
少なくとも1つの化学ドーパント(122)を有する少なくとも1つの化学ドーパントガスを前記2つの液体供給部(166)の一方によって提供される前記被検物質へと提供するように構成され、前記ガス供給部(118)に接続された少なくとも1つのドーパントガス供給部(120)と
を備え、
前記液体供給部は、前記エレクトロスプレーイオン源ノズル(114)を介して前記質量分析装置(112)に交互に結合可能である、多重化分析器システム(196)。
【請求項13】
前記エレクトロスプレーイオン源ノズル(114)を介して前記質量分析装置(112)に交互に結合可能である、少なくとも2つのドーパントガス供給部(120)を備える、請求項12に記載の多重化分析器システム(196)。
【請求項14】
少なくとも1つのステロイドまたはその代謝産物、特にはエストラジオールを検出するための、請求項1~11のいずれか一項に記載の分析器システム(110)の使用。
【請求項15】
少なくとも1つの被検物質を分析するための方法であって、
a)請求項1~11のいずれか一項に記載の分析器システム(110)を少なくとも1つ提供することと、
b)前記エレクトロスプレーイオン源ノズル(114)へと、前記被検物質を有する前記液体を提供し、前記ガスを提供することと、
c)前記ガス供給部(118)を介して前記化学ドーパント(122)を有する前記化学ドーパントガスを提供することによって、前記被検物質のプロトン化または脱プロトン化を支援することと、
d)前記質量分析装置(112)で少なくとも1つの測定を行うことと
を含む、方法。
【国際調査報告】