(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】音響エコーキャンセラの基準信号を準備するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
H04R 3/02 20060101AFI20240517BHJP
【FI】
H04R3/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573441
(86)(22)【出願日】2022-06-02
(85)【翻訳文提出日】2024-01-26
(86)【国際出願番号】 US2022072726
(87)【国際公開番号】W WO2022256826
(87)【国際公開日】2022-12-08
(32)【優先日】2021-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591009509
【氏名又は名称】ボーズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】BOSE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】エリー・ブー・ダヘル
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・エム・ヘラ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィグネイシュ・カタヴァラヤン
【テーマコード(参考)】
5D220
【Fターム(参考)】
5D220CC06
(57)【要約】
車両に配置されたエコーキャンセレーションシステムのための基準信号を準備するための方法であって、複数の駆動信号を受信するステップであって、各駆動信号は、複数の音響トランスデューサのうちの関連するトランスデューサに供給されて、関連する音響トランスデューサが駆動信号を音響信号に変換する、ステップと、複数のフィルタのうちのそれぞれのフィルタを用いて各駆動信号をフィルタリングして、複数のフィルタリングされた信号を生成するステップであって、複数のフィルタの各々は、関連する音響トランスデューサから車両内に配置されたマイクロフォンへの伝達関数を近似し、それにより、複数のフィルタリングされた信号は各々、マイクロフォンにおいてそれぞれの音響信号を推定する、ステップと、複数のフィルタリングされた信号の少なくともサブセットを合計して、合計基準信号を生成するステップと、合計基準信号をエコーキャンセレーションシステムに出力するステップと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に配置されたエコーキャンセレーションシステムのための基準信号を準備するための方法であって、
複数の駆動信号を受信するステップであって、各駆動信号は、複数の音響トランスデューサのうちの関連するトランスデューサに供給されて、前記関連する音響トランスデューサが前記駆動信号を音響信号に変換し、前記複数の音響トランスデューサは各々、各音響信号が前記車両の車室内で聞こえるように前記車両内に配置される、ステップと、
複数のフィルタのうちのそれぞれのフィルタを用いて各駆動信号をフィルタリングして、複数のフィルタリングされた信号を生成するステップであって、前記複数のフィルタの各々は、関連する音響トランスデューサから前記車両内に配置されたマイクロフォンへの伝達関数を近似し、それにより、前記複数のフィルタリングされた信号は各々、前記マイクロフォンにおいてそれぞれの音響信号を推定する、ステップと、
前記複数のフィルタリングされた信号の少なくともサブセットを合計して、合計基準信号を生成するステップと、
前記合計基準信号をエコーキャンセレーションシステムに出力するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記複数のフィルタリングされた信号の第2のサブセットを合計して、第2の合計基準信号を生成するステップと、
前記第2の合計基準信号を前記エコーキャンセレーションシステムに出力するステップと、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数のフィルタは、車両内の状態に従ってフィルタのセットから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記状態は、座席位置、窓位置、乗員数、乗員の位置、及びドア位置のうちの少なくとも1つに従って決定される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
車両に配置されたエコーキャンセレーションシステムのための基準信号を準備するための方法であって、
複数の駆動信号を受信するステップであって、各駆動信号は、前記車両内に配置された複数の音響トランスデューサのうちの関連するトランスデューサに供給されて、前記関連する音響トランスデューサが前記駆動信号を音響信号に変換する、ステップと、
前記複数の駆動信号の各々を複数の周波数サブバンドに分離するステップと、
前記複数の周波数サブバンドうちの第1の周波数サブバンドについて、前記複数の駆動信号の第1の選択を基準信号として前記エコーキャンセレーションシステムに提供するステップであって、前記第1の選択は、前記複数の駆動信号のうちの少なくともサブセットを含む、ステップと、
前記複数の周波数サブバンドのうちの第2の周波数サブバンドについて、前記複数の駆動信号の第2の選択を基準信号として前記エコーキャンセレーションシステムに提供するステップであって、前記第2の選択は、前記複数の駆動信号のサブセットを含み、前記第2の選択は、前記複数の駆動信号のサブセットを含み、前記第1の選択と前記第2の選択とは、少なくとも1つの駆動信号だけ異なる、ステップと、
を含む、方法。
【請求項6】
前記複数の駆動信号の前記第1の選択のうちの少なくとも1つと、前記複数の駆動信号の前記第2の選択のうちの少なくとも1つとは、基準信号として前記エコーキャンセレーションシステムに提供される前に合計される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記複数の駆動信号の前記第1の選択のサブセットは、前記エコーキャンセレーションシステムに提供される前に合計される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の駆動信号の前記第1の選択は、基準信号として前記エコーキャンセレーションシステムに提供される前に、複数のフィルタのうちのそれぞれのフィルタを用いてフィルタリングされ、前記複数のフィルタの各々は、前記複数の駆動信号の前記第1の選択の各々が、前記車両内に配置されたマイクロフォンにおいて、前記第1の周波数サブバンド内のそれぞれの音響信号を推定するように、関連する音響トランスデューサから、前記マイクロフォンへの伝達関数を近似する、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の駆動信号の前記第1の選択のサブセットは、前記エコーキャンセレーションシステムに提供される前に合計される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記複数のフィルタは、車両内の状態に従ってフィルタのセットから選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
プロセッサによって実行されると、車両に配置されたエコーキャンセレーションシステムのための基準信号を準備するプログラムコードを記憶する非一時的記憶媒体であって、前記プログラムコードは、実行されると、
複数の駆動信号を受信するステップであって、各駆動信号は、複数の音響トランスデューサのうちの関連するトランスデューサに供給されて、前記関連する音響トランスデューサが前記駆動信号を音響信号に変換し、前記複数の音響トランスデューサは各々、各音響信号が前記車両の車室内で聞こえるように前記車両内に配置される、ステップと、
複数のフィルタのうちのそれぞれのフィルタを用いて各駆動信号をフィルタリングして、複数のフィルタリングされた信号を生成するステップであって、前記複数のフィルタの各々は、関連する音響トランスデューサから前記車両内に配置されたマイクロフォンへの伝達関数を近似し、それにより、前記複数のフィルタリングされた信号は各々、前記マイクロフォンにおいてそれぞれの音響信号を推定する、ステップと、
前記複数のフィルタリングされた信号の少なくともサブセットを合計して、合計基準信号を生成するステップと、
前記合計基準信号をエコーキャンセレーションシステムに出力するステップと、
を含む、非一時的記憶媒体。
【請求項12】
前記複数のフィルタリングされた信号の第2のサブセットを合計して、第2の合計基準信号を生成するステップと、
前記第2の合計基準信号を前記エコーキャンセレーションシステムに出力するステップと、
を更に含む、請求項10に記載のプログラムコード。
【請求項13】
前記複数のフィルタは、車両内の状態に従ってフィルタのセットから選択される、請求項10に記載のプログラムコード。
【請求項14】
前記状態は、座席位置、窓位置、乗員数、乗員の位置、及びドア位置のうちの少なくとも1つに従って決定される、請求項13に記載のプログラムコード。
【請求項15】
プロセッサによって実行されると、車両に配置されたエコーキャンセレーションシステムのための基準信号を準備するプログラムコードを記憶する非一時的記憶媒体であって、前記プログラムコードは、実行されると、
複数の駆動信号を受信するステップであって、各駆動信号は、前記車両内に配置された複数の音響トランスデューサのうちの関連するトランスデューサに供給されて、前記関連する音響トランスデューサが前記駆動信号を音響信号に変換する、ステップと、
前記複数の駆動信号の各々を複数の周波数サブバンドに分離するステップと、
前記複数の周波数サブバンドうちの第1の周波数サブバンドについて、前記複数の駆動信号の第1の選択を基準信号として前記エコーキャンセレーションシステムに提供するステップであって、前記第1の選択は、前記複数の駆動信号のうちの少なくともサブセットを含む、ステップと、
前記複数の周波数サブバンドのうちの第2の周波数サブバンドについて、前記複数の駆動信号の第2の選択を基準信号として前記エコーキャンセレーションシステムに提供するステップであって、前記第2の選択は、前記複数の駆動信号のサブセットを含み、前記第2の選択は、前記複数の駆動信号のサブセットを含み、前記第1の選択と前記第2の選択とは、少なくとも1つの駆動信号だけ異なる、ステップと、
を含む、非一時的記憶媒体。
【請求項16】
前記複数の駆動信号の前記第1の選択のうちの少なくとも1つと、前記複数の駆動信号の前記第2の選択のうちの少なくとも1つとは、基準信号として前記エコーキャンセレーションシステムに提供される前に合計される、請求項15に記載のプログラムコード。
【請求項17】
前記複数の駆動信号の前記第1の選択のサブセットは、前記エコーキャンセレーションシステムに提供される前に合計される、請求項15に記載のプログラムコード。
【請求項18】
前記複数の駆動信号の前記第1の選択は、基準信号として前記エコーキャンセレーションシステムに提供される前に、複数のフィルタのうちのそれぞれのフィルタを用いてフィルタリングされ、前記複数のフィルタの各々は、前記複数の駆動信号の前記第1の選択の各々が、前記車両内に配置されたマイクロフォンにおいて、前記第1の周波数サブバンド内のそれぞれの音響信号を推定するように、関連する音響トランスデューサから、前記マイクロフォンへの伝達関数を近似する、請求項15に記載のプログラムコード。
【請求項19】
前記複数の駆動信号の前記第1の選択のサブセットは、前記エコーキャンセレーションシステムに提供される前に合計される、請求項18に記載のプログラムコード。
【請求項20】
前記複数のフィルタは、車両内の状態に従ってフィルタのセットから選択される、請求項18に記載のプログラムコード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年6月4日に出願され、「Systems and Methods for Preparing Reference Signals For an Acoustic Echo Canceler」と題された米国特許出願第17/339,332号の優先権を主張し、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本開示は、概して、音響エコーキャンセラの基準信号を準備するためのシステム及び方法に関する。
【発明の概要】
【0003】
下記で言及される全ての実施例及び特徴は、任意の技術的に可能な方式で組み合わせることができる。
【0004】
一態様によれば、車両内に配置されたエコーキャンセレーションシステムのための基準信号を準備する方法は、複数の駆動信号を受信するステップであって、各駆動信号は、複数の音響トランスデューサのうちの関連するトランスデューサに供給されて、関連する音響トランスデューサが駆動信号を音響信号に変換し、複数の音響トランスデューサは各々、各音響信号が車両の車室内で聞こえるように車両内に配置される、ステップと、複数のフィルタのうちのそれぞれのフィルタを用いて各駆動信号をフィルタリングして、複数のフィルタリングされた信号を生成するステップであって、複数のフィルタの各々は、関連する音響トランスデューサから車両内に配置されたマイクロフォンへの伝達関数を近似し、それにより、複数のフィルタリングされた信号は各々、マイクロフォンにおいてそれぞれの音響信号を推定する、ステップと、複数のフィルタリングされた信号の少なくともサブセットを合計して、合計基準信号を生成するステップと、合計基準信号をエコーキャンセレーションシステムに出力するステップと、を含む。
【0005】
一実施例では、本方法は、複数のフィルタリングされた信号の第2のサブセットを合計して、第2の合計基準信号を生成するステップと、第2の合計基準信号をエコーキャンセレーションシステムに出力するステップと、を更に含む。
【0006】
一実施例では、複数のフィルタは、車両内の状態に従ってフィルタのセットから選択される。
【0007】
一実施例では、状態は、座席位置、窓位置、乗員数、乗員の位置、及びドア位置のうちの少なくとも1つに従って決定される。
【0008】
一態様によれば、車両内に配置されたエコーキャンセレーションシステムのための基準信号を準備する方法は、複数の駆動信号を受信するステップであって、各駆動信号は、車両内に配置された複数の音響トランスデューサのうちの関連するトランスデューサに供給されて、関連する音響トランスデューサが駆動信号を音響信号に変換する、ステップと、複数の駆動信号の各々を複数の周波数サブバンドに分離するステップと、複数の周波数サブバンドうちの第1の周波数サブバンドについて、複数の駆動信号の第1の選択を基準信号としてエコーキャンセレーションシステムに提供するステップであって、第1の選択は、複数の駆動信号のうちの少なくともサブセットを含む、ステップと、複数の周波数サブバンドのうちの第2の周波数サブバンドについて、複数の駆動信号の第2の選択を基準信号としてエコーキャンセレーションシステムに提供するステップであって、第2の選択は、複数の駆動信号のサブセットを含み、第2の選択は、複数の駆動信号のサブセットを含み、第1の選択と第2の選択とは、少なくとも1つの駆動信号だけ異なる、ステップと、を含む。
【0009】
一実施例では、複数の駆動信号の第1の選択のうちの少なくとも1つと、複数の駆動信号の第2の選択のうちの少なくとも1つとは、基準信号としてエコーキャンセレーションシステムに提供される前に合計される。
【0010】
一実施例では、複数の駆動信号の第1の選択のサブセットは、エコーキャンセレーションシステムに提供される前に合計される。
【0011】
一実施例では、複数の駆動信号の第1の選択は、基準信号としてエコーキャンセレーションシステムに提供される前に、複数のフィルタのうちのそれぞれのフィルタを用いてフィルタリングされ、複数のフィルタの各々は、複数の駆動信号の第1の選択の各々が、マイクロフォンにおいて、第1のサブバンド内のそれぞれの音響信号を推定するように、関連する音響トランスデューサから、車両内に配置されたマイクロフォンへの伝達関数を近似する。
【0012】
一実施例では、複数の駆動信号の第1の選択のサブセットは、エコーキャンセレーションシステムに提供される前に合計される。
【0013】
一実施例では、複数のフィルタは、車両内の状態に従ってフィルタのセットから選択される。
【0014】
別の態様によれば、プロセッサによって実行されると、車両に配置されたエコーキャンセレーションシステムのための基準信号を準備するプログラムコードを記憶する非一時的記憶媒体であって、プログラムコードは、実行されると、複数の駆動信号を受信するステップであって、各駆動信号は、複数の音響トランスデューサのうちの関連するトランスデューサに供給されて、関連する音響トランスデューサが駆動信号を音響信号に変換し、複数の音響トランスデューサは各々、各音響信号が車両の車室内で聞こえるように車両内に配置される、ステップと、複数のフィルタのうちのそれぞれのフィルタを用いて各駆動信号をフィルタリングして、複数のフィルタリングされた信号を生成するステップであって、複数のフィルタの各々は、関連する音響トランスデューサから車両内に配置されたマイクロフォンへの伝達関数を近似し、それにより、複数のフィルタリングされた信号は各々、マイクロフォンにおいてそれぞれの音響信号を推定する、ステップと、複数のフィルタリングされた信号の少なくともサブセットを合計して、合計基準信号を生成するステップと、合計基準信号をエコーキャンセレーションシステムに出力するステップと、を含む。
【0015】
一実施例では、本プログラムコードは、複数のフィルタリングされた信号の第2のサブセットを合計して、第2の合計基準信号を生成するステップと、第2の合計基準信号をエコーキャンセレーションシステムに出力するステップと、を更に含む。
【0016】
一実施例では、複数のフィルタは、車両内の状態に従ってフィルタのセットから選択される。
【0017】
一実施例では、状態は、座席位置、窓位置、乗員数、乗員の位置、及びドア位置のうちの少なくとも1つに従って決定される。
【0018】
別の態様によれば、プロセッサによって実行されると、車両に配置されたエコーキャンセレーションシステムのための基準信号を準備するプログラムコードを記憶する非一時的記憶媒体であって、プログラムコードは、実行されると、複数の駆動信号を受信するステップであって、各駆動信号は、車両内に配置された複数の音響トランスデューサのうちの関連するトランスデューサに供給されて、関連する音響トランスデューサが駆動信号を音響信号に変換する、ステップと、複数の駆動信号の各々を複数の周波数サブバンドに分離するステップと、複数の周波数サブバンドのうちの第1の周波数サブバンドについて、複数の駆動信号の第1の選択を基準信号としてエコーキャンセレーションシステムに提供するステップであって、第1の選択は、複数の駆動信号のうちの少なくともサブセットを含む、ステップと、複数の周波数サブバンドのうちの第2の周波数サブバンドについて、複数の駆動信号の第2の選択を基準信号としてエコーキャンセレーションシステムに提供するステップであって、第2の選択は、複数の駆動信号のサブセットを含み、第2の選択は、複数の駆動信号のサブセットを含み、第1の選択と第2の選択とは、少なくとも1つの駆動信号だけ異なる、ステップと、を含む。
【0019】
一実施例では、複数の駆動信号の第1の選択のうちの少なくとも1つと、複数の駆動信号の第2の選択のうちの少なくとも1つとは、基準信号としてエコーキャンセレーションシステムに提供される前に合計される。
【0020】
一実施例では、複数の駆動信号の第1の選択のサブセットは、エコーキャンセレーションシステムに提供される前に合計される。
【0021】
一実施例では、複数の駆動信号の第1の選択は、基準信号としてエコーキャンセレーションシステムに提供される前に、複数のフィルタのうちのそれぞれのフィルタを用いてフィルタリングされ、複数のフィルタの各々は、複数の駆動信号の第1の選択の各々が、マイクロフォンにおいて、第1のサブバンド内のそれぞれの音響信号を推定するように、関連する音響トランスデューサから、車両内に配置されたマイクロフォンへの伝達関数を近似する。
【0022】
一実施例では、複数の駆動信号の第1の選択のサブセットは、エコーキャンセレーションシステムに提供される前に合計される。
【0023】
一実施例では、複数のフィルタは、車両内の状態に従ってフィルタのセットから選択される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図面では、同じ参照符号は、一般に、異なる図を通して同じ部分を指す。また、図面は、必ずしも縮尺通りではなく、むしろ、一般に、様々な態様の原理を例解することに重点が置かれている。
【
図1】一実施例による、エコーキャンセレーションシステムの概略図を描写する。
【
図2】一実施例による、車両内のスピーカシステムの概略図である。
【
図3】一実施例による基準信号発生器の概略図である。
【
図4】実施例による、エコーキャンセラのための基準信号を生成する方法のフローチャートである。
【
図5】一実施例による基準信号発生器の概略図である。
【
図6】実施例による、エコーキャンセラのための基準信号を生成する方法のフローチャートである。
【
図7】一実施例による、複数のサブバンドにわたる選択されたスピーカ信号のプロットを示す。
【
図8A】一実施例による、エコーキャンセラのための基準信号を生成する方法のフローチャートである。
【
図8B】一実施例による、エコーキャンセラのための基準信号を生成する方法のフローチャートである。
【
図8C】一実施例による、エコーキャンセラのための基準信号を生成する方法のフローチャートである。
【
図8D】一実施例による、エコーキャンセラのための基準信号を生成する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
多数のチャネルを実装するエコーキャンセラは、計算コストが高く、収束速度が遅い。更に、サードパーティ製品がエコーキャンセレーションを実行している場合、ソフトウェア及び/又はハードウェアの制限により、基準チャネルの最大数に制限が課される可能性がある。その結果、そのエコーキャンセレーション性能に影響を与えることなくエコーキャンセラ内のチャネル数を低減することが望ましい。
【0026】
本開示で説明される様々な例は、マルチチャネルシステムにおける音響エコーキャンセラへの基準チャネル入力を最適化するためのシステム及び方法に関する。いくつかの例は、性能を改善するため、計算コストを低減するため、又はエコーキャンセラによって必要とされる基準チャネルの数に従うために、スピーカチャネルの数を基準チャネルのより小さいセットにダウンセレクトする。いくつかの例では、スピーカチャネルは、合計される前にマイクロフォンにおいて受信された音響信号を近似するためにプレフィルタリングされる。いくつかの例は、スピーカチャネルをサブバンドのセットに分離し、サブバンド内でダウンセレクトして、エコーキャンセラのための基準信号を生成する。
【0027】
図1は、例示的なマルチチャネル音響エコーキャンセレーションシステム100を示す。スピーカチャネル102a~102Mはそれぞれ、駆動信号u
1(n),...,u
M(n)をスピーカ(104a~104M(代替的に音響トランスデューサと呼ばれる)に提供し、ここで、Mは、スピーカチャネル、駆動信号、及びスピーカの総数である。駆動信号u
1(n)-u
M(n)は、音楽、ナビゲーションコマンド、音声支援等の1つ以上のプログラムコンテンツ信号から構成される。各スピーカ102a~102Mは、受信した駆動信号u
1(n)-u
M(n)を車室106内で聞こえるそれぞれの音響信号に変換する。(本開示で使用されるように、スピーカは、電気信号を受信し、それを車室内で聞こえる音響信号に変換するのに適した任意のトランスデューサであり得る。)
【0028】
エコーキャンセレーションシステム100は、車両内に着座した少なくとも1人のユーザから音声信号を受信するために、車室106内に配置された少なくとも1つのマイクロフォン108を更に含む。しかしながら、マイクロフォン108は、その位置に起因して、スピーカ104a~104Mによって生成された音響信号及び車室内のノイズ(例えば、ロードノイズ)を含む、音声信号以外の信号を受信する。マイクロフォン信号y(n)は、したがって、以下のように表すことができる:
y(n)=s(n)+d(n)+v(n) (1)
ここでs(n)は所望の信号(典型的にはスピーチ信号)であり、v(n)はノイズ信号であり
【0029】
【数1】
は、全てのエコー信号(すなわち、マイクロフォン108において受信されるように、スピーカ104a~104Mによって生成される音響信号)の組み合わせである。
【0030】
動作中、エコーキャンセラ110はNチャネルエコーキャンセラであり、したがって、以下でより詳細に説明するように、基準信号発生器112に従って、駆動信号u
1(n)-u
M(n)から選択されるか、又は他の方法で駆動信号u
1(n)-u
M(n)に基づくN個の基準信号を受信する。上述したように、基準チャネルの数が多いと、計算の複雑性が高くなり、収束が遅くなる。高品質オーディオを有する車両は、通常、多数のスピーカを使用する。
図2は、スピーカチャネルの数が14に等しい(3つのダッシュスピーカ、フロントドアの各々に3つのスピーカ、リアドアの各々に1つのチャネル、2つのバックスピーカ、及びウーファ)、そのような車両の一実施例を示す。
【0031】
したがって、
図1の例では、基準信号発生器112はM個のスピーカ信号から選択し、及び/又はそれらをN個の基準信号x
1(n),...,x
N(n)に結合し、ここでN≦Mであり、Nチャネル音響エコーキャンセラに供給される。N個の信号から、エコーキャンセラ102は、エコー信号
【0032】
【数2】
を推定し、それをマイクロフォン信号から減算することを試みる。典型的には、エコーキャンセラ110は、適応フィルタ114a~114Nの合計出力が組み合わされたエコー信号d(n)の推定値
【0033】
【数3】
を表すように、エコー経路h
1(n),...,h
N(n)を推定するために適応フィルタ114a~114Nのセットを使用する。しかしながら、エコーキャンセラ110が、低減された数の基準信号、すなわち、M個のスピーカ信号の数よりも少ない数の基準信号を受信する場合、適応フィルタ114a~114Nは、元のエコー経路の組み合わせを表す修正されたエコー経路を識別しようと試みる。
【0034】
組み合わされたエコー信号
【0035】
【数4】
は減算器116において、マイクロフォン信号y(n)から減算されて、推定スピーチ信号s(n)を生成する。理想的には、推定エコー信号
【0036】
【0037】
【数6】
に等しくなるように、実際のエコーd(n)と同一である。したがって、基準信号発生器112は、e(n)を最小化するように、M個のスピーカチャネルをN個の基準チャネルにダウンセレクトするように最適化されている。
【0038】
駆動信号u1(n)-uM(n)は、等化、アップミキシング、ルーティング、及び/又はサウンドステージレンダリングを含む、様々な上流側の処理段の結果であり得ることを理解されたい。代替的に、又は加えて、駆動信号u1(n)-uM(n)は、スピーカ104a~104Mによって音響信号に変換される前に追加の処理を受けることができることを理解されたい。駆動信号が、スピーカ104a~104Mに提供される前に等化などの追加の処理を受ける場合、適応フィルタ114a~114Nは、修正されたエコー経路と、スピーカ104a~104Mによって変換される前に基準信号が受ける追加の処理とを識別しようと試みる。更に、推定されたスピーチ信号s(n)は、推定されたスピーチ信号s(n)を改善するために、ポストフィルタなどを用いて更なる処理を受けることができることを理解されたい。
【0039】
生成された基準チャネルの性能を評価するために使用され得る1つのメトリックは、組み合わされた基準x1(n),.,xN(n)とマイクロフォン信号y(n)との間のマルチコヒーレンスC_xyである。マルチコヒーレンスは、入力と出力との間の線形性のレベルを表す0から1までの値をもたらす。ノイズ信号v(n)及び所望の信号s(n)がない場合、1のマルチコヒーレンスは、入力と出力との間の線形関係を見つけることができ、エコー信号d(n)の完全なキャンセレーションを達成することができることを意味する。その結果、マルチコヒーレンスを最大化する解決策が最適であると考えられる。
【0040】
生成された基準の性能を評価するために使用することができる別のメトリックは、生成された信号がマルチチャネル音響エコーキャンセラにおいて基準チャネルとして使用され、マイクロフォン信号が入力信号として使用されるときのエコーリターンロスエンハンスメント(ERLE)である。ERLEは、エコーキャンセレーションの実際のレベルと、エコー経路が変更されたときの適応フィルタの収束速度とを評価するために使用することができる。本開示は、マルチコヒーレンスに関して基準チャネルを最適化することを説明するが、基準チャネル生成(例えば、ERLE)を最適化するために、エコーキャンセラの性能を決定するための任意の適切なメトリックが、その代わりに使用され得ることが理解されよう。
【0041】
駆動信号u1(n)-uM(n)を選択し、結合し、その他の方法で動作させて、基準信号x1(n)-xN(n)をレンダリングするためのいくつかの方法を以下に説明する。これらの方法は、方法の実行のための非一時的記憶プログラムコードと通信する、デジタル信号プロセッサ等の1つ以上のプロセッサによって実行されることができる。いくつかの例では、基準信号発生器は、エコーキャンセラとは別個のプロセッサ内に実装され、音響信号に変換されるべき駆動信号を受信し、これらの駆動信号から、エコーキャンセレーションプロセッサ/デバイスに入力される基準信号を準備することができる。例えば、既存のユニットのための基準信号を生成するために、既存のエコーキャンセレーションユニットを有する車両にプロセッサを追加することができる。代替例では、エコーキャンセラの機能を実装する同じプロセッサを使用して、スピーカ駆動信号から基準信号を生成することができる。
【0042】
第1の方法では、N個の駆動信号からなる駆動信号のサブセットがM個の駆動信号から選択され、基準信号を形成するために使用される。一実施例では、駆動信号のN個の駆動信号の選択は、選択された入力とマイクロフォン信号との間の総マルチコヒーレンスを最大化するように選択される。
【0043】
【数7】
ここで{S_i}はM個の駆動信号のサブセットであり、Uは全ての可能なN個の駆動信号の組み合わせのユニバーサルセットである。これらの組み合わせの総数は、以下に等しい
【0044】
【0045】
別の言い方をすれば、マルチコヒーレンスメトリックを最大化する駆動信号の選択が最適であると見なされ、基準チャネルを生成するために選択される。
【0046】
図2は、これらの組み合わせの一実施例を示しており、ここではM=14及びN=5。したがって、この例では、スピーカ104a~104Mはスピーカ104a~104nとして実装される。N=5であるので、利用可能な14個の駆動信号から5個の駆動信号が選択される。一実施例では、スピーカ104d、104f、104h、104j、及び104lの駆動信号は、選択とマイクロフォン信号との間の最大の総マルチコヒーレンスを提供する駆動信号のセットとして選択され得る。
【0047】
通常、最大のマルチコヒーレンスを提供するスピーカ駆動信号の選択は、システムの設計段階で実行される。すなわち、車両のオーディオシステムが設計されている間に、スピーカ駆動信号のどのセットがマイクロフォン信号との最大のマルチコヒーレンスを提供するかを決定するために様々なテストを実行することができ、選択は車両が販売された後に変更されない。しかしながら、代替的な例では、基準信号発生器112は、駆動信号u1(n)-uM(n)の様々な選択のマルチコヒーレンスを比較して、ランタイム中に、マイクロフォン信号との最良のマルチコヒーレンスを提供する基準信号としてN個の駆動信号のセットを選択することができる。このN個の駆動信号のセットは、車室内の状態が変化するにつれて(例えば、周期的に)更新され得る。加えて、又は代替として、N個の駆動信号のセットは、スピーカ104a-104Nを通して再生される番組コンテンツ(例えば、音楽、アナウンスメント等)の変化を考慮するように更新されることができる。
【0048】
別の例では、スピーカのグループの駆動信号は、同じ基準チャネルに合計され得る。同じグループ内の駆動信号スピーカは、以下のように合計を使用して結合される:
【0049】
【数9】
ここで、x
i(n)は第iのスピーカグループの組み合わされた基準信号であり、{U
i}は第iのグループに属するスピーカのセットであり、u
k(n)は第iのグループの構成駆動信号である。
【0050】
例えば、
図2のスピーカは、4つのグループのスピーカ、すなわち、前方左、前方右、後方左、及び後方右、並びに中央チャネルに分割されることができる。より詳細には、この例では、フォント左グループはスピーカ104k~104nを含み、前方右グループはスピーカ104b、104eを含み、後方左グループはスピーカ104i及び104jを含み、後方右グループはスピーカ104f及び104gを含み、中央チャネル(グループ)はスピーカ104a及び104hを含む。これらのグループの各々の駆動信号は、各グループから単一の基準チャネルを形成するために一緒に合計され得る。
【0051】
この方法の別の例が
図3のブロック図に示されている。
図3は、簡略化した例であり、M=4及びN=2、したがって、スピーカ104a~104Mはスピーカ104a~104dを含む。示されるように、この例では、基準チャネル発生器112は、合計ブロック302a、302bを備え、これらは、スピーカ104a~104bの駆動信号及びスピーカ104c~104dの駆動信号(すなわち、駆動信号u
1(n)-u
4(n))を合計して、基準信号x
1(n)及びx
2(n)をもたらす。
【0052】
一般に、グループ化されたスピーカは、車室内に同じ場所に配置され、すなわち、それらは、車室内の特定の構造又は隣接する構造(すなわち、ドア、ピラーなど)内に配置される隣接するスピーカのセットを形成する。上記で説明したように、グループは、生成された基準信号とマイクロフォン信号との間のマルチコヒーレンスを最大にするように選択され得る。
【0053】
この例は、一般に、高い相互コヒーレンスを有する同じグループ内のスピーカが、重複する周波数範囲を有さないと仮定することに留意されたい。なぜなら、そのような重複する周波数範囲は、駆動信号間の建設的又は非建設的合計をもたらし得るからである。したがって、例えば、ツイータスピーカ104a及びウーファスピーカ104hから構成される中央チャネルグループを、周波数重複なしに追加することができる。しかしながら、ほとんどの場合、この状態はオーディオシステムのチューニングに依存し、常に保証されるとは限らない。
【0054】
したがって、2つのスピーカが類似のコンテンツを共有し、高い相互コヒーレンスを有する場合、スピーカのうちの1つのみが、組み合わされた基準に含まれる必要がある。しかしながら、相互コヒーレンスが低いスピーカは、同じ周波数帯域を共有するスピーカであっても、グループ化することができることに留意されたい。したがって、
図2の例の変形形態では、スピーカ104a~104Mのうちのいくつかのスピーカは、合計されたスピーカのグループから省略され得る。例えば、
図2に戻ると、同様の周波数帯域内で高い相互コヒーレンスを有するスピーカをグループ化することを回避するために、フォント左グループは、スピーカ104k~104mを含み、前方右グループはスピーカ104c~104eを含み、後方左グループはスピーカ104iを含み、後方右グループはスピーカ104gを含み、中央チャネル(グループ)はスピーカ104a及び104hを含む。前述のグループ化と比較して、スピーカ104c、104f、104j、及び105nは、高い相互コヒーレンス及び重複周波数を有するスピーカを合計することを回避するために除外される。
【0055】
グループ内で合計するためにスピーカを選択するとき、マイクロフォン信号に対して最も高い総マルチコヒーレンスを有するスピーカグループ組み合わせが、一般に最適であると見なされる。合計されるスピーカ駆動信号と、選択されたスピーカ駆動信号のグループ化(全てのスピーカ駆動信号のグループ化を含む)とは、一般に、生成された基準信号とマイクロフォン信号との間のマルチコヒーレンスを最大化するように設計段階中に選択されるが、代替例では、選択されるスピーカ駆動信号と、スピーカ信号のグループ化とは、車室内の変化する状態及び/又は変化するプログラムコンテンツ(例えば、音楽、告知など)を考慮してマルチコヒーレンスを最大化するようにランタイム中に調整され得る。したがって、スピーカ駆動信号の選択と、スピーカ駆動信号のグループ化とは、基準信号とマイクロフォン信号との間のマルチコヒーレンスを最大化するために、ランタイム中に(例えば、周期的に)更新され得る。
【0056】
図4は、
図3に関連して説明した駆動信号を合計する例に従って基準信号を生成する方法400のフローチャートを示す。方法400は、エコーキャンセレーションシステム100などの任意の適切なエコーキャンセレーションシステムのための基準信号を提供するように実施され得ることを理解されたい。
【0057】
ステップ402において、複数の駆動信号が受信され、各駆動信号は、複数の音響トランスデューサのうちの関連するトランスデューサに供給されて、関連する音響トランスデューサが駆動信号を音響信号に変換する。複数の駆動信号は、等化、アップミキシング、ルーティング、及び/又はサウンドステージレンダリングなどの上流側の処理の結果であり得、そのようなプロセスは当該技術分野で知られている。更に、駆動信号は、音響トランスデューサによって音響信号に変換される前に、更なる処理を受けることができる。
【0058】
ステップ404において、複数の駆動信号の少なくともサブセットが合計され、合計基準信号を生成する。典型的には、駆動信号の複数のサブセットが合計されて、ステップ406においてエコーキャンセレーションシステムに提供される複数の合計基準信号が生成される。どの駆動信号がどの駆動信号と合計されるか、すなわち、駆動信号の合計サブセットのいずれかを構成する駆動信号は、結果として得られる合計基準信号とマイクロフォンとの間のマルチコヒーレンスなどのメトリックを最大化するように選択され得る。一般的に言えば、上述したように、あるスピーカが別のスピーカと高い相互コヒーレンスを有し、同じ周波数範囲(又は少なくとも重複する周波数範囲)内で動作する場合、これらのスピーカのうちの少なくとも1つは、基準信号を生成するために合計される任意のサブセットから除外され得る。
【0059】
ステップ406において、合計基準信号は、エコーキャンセラ110などのエコーキャンセラに出力されるが、任意の適切なエコーキャンセラを使用することができる。これらの基準信号は、典型的には、エコーキャンセラによってフィルタリングされ、推定されたスピーチ信号をレンダリングするためにマイクロフォン信号から減算される推定されたエコー信号をもたらす。
【0060】
代替例では、選択された駆動信号は、以下の式に示されるように、低減された数の信号に結合される前に、最初にフィルタリングされる。
【0061】
【0062】
この例では、式(4)と式(5)との間の差は、各駆動信号uk(n)を対応するインパルス応答h0,k(n)でフィルタリングすることである。h0,k(n)は、生成された駆動信号とマイクロフォン信号との間のマルチコヒーレンスを最大化するように選択される。所望の信号s(n)及びノイズ信号v(n)がなく、エコー経路に変化がないと仮定すると、k=1,...,Mに対してh0,k(n)=hk(n)を設定すると、h1(n)...hM(n)は、1に等しいマルチコヒーレンスをもたらし、この解決策を最適にする。これは、基準信号を生成するときに全てのスピーカの駆動信号が含まれる限り、任意の数の基準チャネルに当てはまる。しかしながら、適応フィルタのトラッキング能力を改善するために、共同設置されたスピーカを一緒にグループ化することが依然として一般的に望ましい。
【0063】
言い換えれば、この例では、各駆動信号は、それぞれのスピーカ(すなわち、駆動信号が与えられるスピーカ)とマイクロフォンとの間の伝達関数を推定する固定フィルタを用いてフィルタリングされる。
図5は、式5に従ってフィルタリングされた駆動信号の例示的な実施を示す。固定フィルタ602a~602Nのセット、ここでは固定フィルタ602a~602dは、関連するスピーカからマイクロフォン(すなわち、エコー経路)への伝達関数の推定を実施する。したがって、駆動信号u
1(n)を受信する固定フィルタ602aは、例えば、フィルタ602aの出力がマイクロフォン108においてスピーカ104aによって生成された音響信号の推定値を表すように、スピーカ104aからマイクロフォン108への伝達関数の推定値を実施する。同様に、駆動信号u
2(n)を受信する固定フィルタ602bは、例えば、フィルタ602bの出力がマイクロフォン108においてスピーカ104bによって生成された音響信号の推定値を表すように、スピーカ104bからマイクロフォン108への伝達関数の推定値を実施し、以下同様である。
【0064】
この例は、基準信号を生成するために駆動信号を効果的にプレフィルタリングし、したがって、エコーキャンセラ110に入力される前にフィルタ114a~114Nの機能を達成する(ただし、M>Nとして全てのM個の駆動信号について)。(特定の例では、全ての駆動信号がフィルタリングされるわけではないが、全ての駆動信号をフィルタリングすると、一般に最良の結果が得られる)したがって、この例では、フィルタ114a~114Nは、スピーカ104a~104Mからのエコー経路を推定するように適合せず、固定フィルタの事前に決定された伝達関数と、各スピーカ104a~104Nとマイクロフォンとの間の実際のエコー経路と、の間に典型的にはいくらかの差があるので、固定フィルタ602a~602Nの伝達関数の間の差を推定するように適合する。
【0065】
実際には、エコー経路はしばしば変化する。これを説明するために、全てのスピーカからマイクロフォンへの伝達関数は、異なる状態(例えば、座席位置、窓位置、乗員数、乗員の位置、及びドア位置)について事前に測定され得る。次いで、これらの測定された伝達関数を組み合わせて、全ての状態において適用されるフィルタh
0,k(n)の単一のセットを生成することができる。
図5の例では、例えば、推定された伝達関数
【0066】
【数11】
の各々は、車室内の様々な異なる状態に対する複数の伝達関数を組み合わせた結果であり得る。したがって、推定伝達関数
【0067】
【数12】
は、様々な状態におけるスピーカ104aからマイクロフォンへの伝達関数の組み合わせであり得、同様に、推定された伝達関数
【0068】
【数13】
は、様々な状態におけるスピーカ104bからマイクロフォンへの伝達関数の組み合わせであり得、以下同様である。この結果、フィルタ602a~602Nは、ほとんどの状態で良好に動作するが、車室内の変化する状態に対して調整するようには適合しない。
【0069】
代替的に、特定の伝達関数h
0,k(n)を実装するフィルタ602a~602Nのセットは、車室内の各状態について記憶され得る。これらのフィルタは、車室内の変化する状態に応じて記憶され、実装され得る。したがって、
図5の例では、1セットのフィルタ602a~602dが、車室内の1つの状態(例えば、1つの座席位置)に対して記憶され、実施される。一方、予め記憶された固定フィルタ602a~602dの異なるセットは、異なる状態に適した伝達関数の異なるセットを用いて、車室内の異なる状態のためにロードされ、実施され得る。このようにして、固定フィルタ602a~602dは、車室内の特定の状態に対する伝達関数を適切に表す。この方法は、一般に、車室に関する複数の状態を表す組み合わされた伝達関数を見つけるよりも良好な結果を生成するが、車室内の状態を表す入力を受け取り、フィルタのリポジトリからフィルタの正しいセットをロードして実施する必要があるので、実施するために追加の記憶装置及びより大きな処理能力を必要とする。
【0070】
更に、駆動信号が、スピーカ104a~104Mに提供される前に等化などの追加の処理を受ける場合、固定フィルタ602a~602dは、追加の処理を更に考慮することができる。この例では、異なる等化設定を使用する異なるタイプの番組コンテンツに対して、異なる固定フィルタを記憶し、ロードすることができる。
【0071】
図6は、
図5に関連して説明した例に従って基準信号を生成する方法600のフローチャートを示す。方法600は、エコーキャンセレーションシステム100などの任意の適切なエコーキャンセレーションシステムのための基準信号を提供するように実施され得ることを理解されたい。
【0072】
ステップ602において、複数の駆動信号が受信され、各駆動信号は、関連する音響トランスデューサが駆動信号を音響信号に変換するように、複数の音響トランスデューサのうちの関連するトランスデューサに提供される。複数の駆動信号は、等化、アップミキシング、ルーティング、及び/又はサウンドステージレンダリングなどの上流側の処理の結果であり得、そのようなプロセスは当技術分野で知られている。更に、駆動信号は、音響トランスデューサによって音響信号に変換される前に、更なる処理を受けることができる。
【0073】
ステップ604において、複数のフィルタのうちのそれぞれのフィルタを用いて各駆動信号がフィルタリングされ、複数のフィルタリングされた信号を生成し、複数のフィルタの各々は、関連する音響トランスデューサから車両内に配置されたマイクロフォンへの伝達関数を近似し、それにより、複数のフィルタリングされた信号は各々、マイクロフォンにおいてそれぞれの音響信号を推定する。各フィルタによって実施される伝達関数は、車両内の様々な状態において、関連する音響トランスデューサ(すなわち、フィルタリングされている駆動信号を受信する音響トランスデューサ)とマイクロフォンとの間の組み合わされた伝達関数であり得る。あるいは、車両内の様々な状態(例えば、座席位置、窓位置、乗員数、乗員の位置、及びドア位置)に対する伝達関数を実施するフィルタのセットを、車両内の現在の状態に従って記憶及びロードすることができる。
【0074】
ステップ606において、複数のフィルタリングされた信号の少なくともサブセットが合計され、合計基準信号を生成する。このステップは、一般に、処理時間を短縮するために、又はエコーキャンセラによって課される入力制約を守るために、エコーキャンセラに供給される基準信号の数を減らすことである。このステップでは、共同設置されたスピーカに供給される駆動信号のグループを合計することが一般に望ましい。
【0075】
ステップ608において、合計基準信号は、エコーキャンセラ110などのエコーキャンセラに出力されるが、任意の適切なエコーキャンセラを使用することができる。これらの基準信号は、典型的には、エコーキャンセラによってフィルタリングされ、推定されたスピーチ信号をレンダリングするためにマイクロフォン信号から減算される推定されたエコー信号をもたらす。
【0076】
基準信号を生成するための上述のシステム及び方法は、全ての周波数について説明されたが、これらの方法を使用して生成された最適解は、必ずしも各周波数ビンにおいて最適であるとは限らない。例えば、100Hz~600Hzの周波数範囲内で基準信号とマイクロフォンとの間のマルチコヒーレンスを最適化するように選択されたスピーカ駆動信号のサブセットは、その範囲に対しては良好に動作するが、5000Hz~5500Hzなどの別の周波数範囲に対しては不十分である。これを説明するために、周波数スペクトル全体をサブバンドに分割することができ、上述した方法の中で、各サブバンドについて最適解を見つけることができる。目的は、依然として、サブバンドの各々における総コヒーレンスを最大化する解を見つけることである。
【0077】
例えば、第jのサブバンドにおけるスピーカ駆動信号の最適な選択は、次のように得られる。
【0078】
【数14】
ここで、x
(j)(n)は、第jのサブバンドにおいて生成された基準信号ベクトルであり、y
(j)(n)は、第jのサブバンドにおけるマイクロフォン信号である。C
xy({S
i},y
(j)(n))は、第jのサブバンドにおける選択されたスピーカとマイクロフォン信号との間の総マルチコヒーレンスである。
図7は、各サブバンド内のスピーカの選択されたサブセットの一実施例を示しており、5つの基準信号、したがってN=5が見出される。この例では、周波数スペクトルは65個のサブバンドに分割され、5つのスピーカの最適なサブセットが各サブバンドについて見出された。もちろん、5つの基準信号及び65個のサブバンドは、一例として提供されているにすぎない。代替例では、エコーキャンセラ又は基準信号発生器の処理制約及び/又は入力制約に従って、任意の数の基準信号及び任意の数のサブバンドを使用することができる。
【0079】
同様に、
図3及び
図4に関連して説明したように、各サブバンド内の駆動信号のグループを合計することによって、各サブバンドに対して最適解を得ることができる。例えば、駆動信号は、結果として生じる基準信号とマイクロフォン信号との間のマルチコヒーレンスを最適化するために、各サブバンド内のグループにグループ化及び合計されることができる。例えば、
図3の単純な例では、1つのサブバンドにおいて、スピーカ104a及び104bの駆動信号を合計することができ、スピーカ104c及び104dの駆動信号を合計することができる。一方、異なるサブバンドでは、各サブバンドのマルチコヒーレンスを最適化するために、駆動信号104a及び104cを合計することができ、104b及び104dを合計することができる。同様に、上述のように、高い相互コヒーレンスが存在する場合、周波数重複が存在する特定のスピーカ駆動信号を省略することが有益であり得る。したがって、グループ化されたスピーカ駆動信号及びスピーカ駆動信号のグループは、各サブバンドについて選択されて、そのサブバンド内のマルチコヒーレンスを最適化することができる。
【0080】
更に、
図5及び
図6に関連して説明したように、サブバンド内のマルチコヒーレンスを最適化するために、各サブバンド内でフィルタを選択することができる。異なるフィルタを選択して、サブバンドとのマルチコヒーレンスを最大化することができる。したがって、各サブバンドに対して少なくとも1セットのフィルタを実装することができる。上述したように、各サブバンドに対するフィルタは、様々な状態の伝達関数を組み合わせて、ほとんどの状態に対して良好に機能する伝達関数に到達することができる。代替的に、フィルタのセットは、各サブバンドについて、車室内の変化する状態を考慮するために記憶され、ロードされ得る。したがって、1つのサブバンド内の1セットのフィルタを1つの状態に対して実装することができ、別の組のフィルタを記憶装置からロードして、車室内の異なる状態を考慮するように実装することができる。したがって、実装されるフィルタは、基準信号とマイクロフォン信号との間のマルチコヒーレンスを最大化するように、各サブバンド内で最適化され得る。
【0081】
エコーキャンセラがサブバンド化されていない入力基準信号を受信するように設計されている場合、サブバンド化された信号を合成して所望の数の基準信号をレンダリングすることができる。したがって、
図7の例では、サブバンド内の最適化された基準信号を周波数にわたって合計して、5つの基準信号を生成することができる。代替的に、エコーキャンセラがサブバンド化された信号を受信するように構成される場合、最適な選択された信号は、サブバンド化された基準信号として直接提供され得る。
【0082】
更に、基準信号生成のマルチコヒーレンスを最適化するための方法は、サブバンドにわたって変化し得る。例えば、フィルタ及び合計方法(すなわち、
図5及び
図6に関連して説明されるような)は、エコー経路が低周波数においてより小さい変化を受けるので、低周波数において良好に機能することができる。しかしながら、この方法は、より高い周波数におけるエコー経路の大きな変化に起因して、それらの周波数における性能劣化を被る。一方、スピーカ駆動信号ダウンセレクション法は、それらの周波数で再生することができるスピーカの数が限られているために、高周波数で良好に動作することができる。したがって、最適解は、異なるサブバンド帯域における解が異なる方法を使用して生成される、異なる方法間のハイブリッドであり得る。したがって、一実施例では、低周波数サブバンドにおいて最適なフィルタを実装することができるが、高周波数においては、それらのサブバンド内のマルチコヒーレンスを最適化する限られた数のスピーカ駆動信号を選択することができる。実際に、上述した方法は、技術的に可能な任意の方法で、各サブバンド内に基準信号を提供するために各サブバンド内で実施され得ることを理解されたい。
【0083】
更に、複数のマイクロフォンを使用してユーザの音声を捕捉することができることを理解されたい。これらの場合、音響エコーキャンセラを各マイクロフォンに対して実装することができ、エコーキャンセラから出力された結果として得られる推定スピーチ信号を組み合わせて単一の出力推定スピーチ信号にすることができる。例えば、P個のマイクロフォンがユーザの音声を捕捉するために使用される場合、各々がそれぞれのマイクロフォンに関連するP個のエコーキャンセラのセットを使用して、関連するマイクロフォン内のエコーをキャンセルすることができる。エコーキャンセラ110と同様に、P個のエコーキャンセラは、各スピーカから関連するマイクロフォンへのエコー経路を推定することによって動作する。それぞれの基準信号発生器(すなわち、P個の基準信号発生器から)を使用して、スピーカ信号を選択又は組み合わせて、各エコーキャンセラに対する基準信号を得ることができる。各基準信号発生器は、
図1~
図7に関連して上述したように、また
図8A~
図8Dに関連して後述する方法に従って、スピーカ信号を選択又は組み合わせるための方法を用いることができる。
【0084】
代替例では、マイクロフォン信号y(n)は、ビームフォーマを使用して、マイクロフォンのアレイから出力された信号を組み合わせた結果であり得る。結果として得られる組み合わされたマイクロフォン信号は、単一のマイクロフォン信号として扱うことができ、
図1~
図7に関連して上述したようなスピーカ信号を選択又は合成するための方法、及び
図8A~
図8Dに関連して後述する方法を用いて、組み合わされたマイクロフォン信号内のエコー信号をキャンセルすることができる。
【0085】
図8は、
図7に関連して説明した例に従って基準信号を生成するための方法800のフローチャートを示す。方法800は、エコーキャンセレーションシステム100のような適切なエコーキャンセレーションシステムのための基準信号を提供するために実施され得ることが理解されるべきである。
【0086】
ステップ802において、複数の駆動信号が受信され、各駆動信号は、関連する音響トランスデューサが駆動信号を音響信号に変換するように、複数の音響トランスデューサのうちの関連するトランスデューサに提供される。複数の駆動信号は、等化、アップミキシング、ルーティング、及び/又はサウンドステージレンダリングなどの上流側の処理の結果であり得、そのようなプロセスは当該技術分野で知られている。更に、駆動信号は、音響トランスデューサによって音響信号に変換される前に、更なる処理を受けることができる。
【0087】
ステップ804において、複数の駆動信号の各々が複数の周波数サブバンドに分離される。駆動信号をサブバンド化するための任意の適切な方法が使用され得る。例えば、各駆動信号は、帯域フィルタの並列バンクでフィルタリングすることができ、帯域フィルタのバンクの各フィルタは、カットオフ周波数を実装して、駆動信号の異なるサブバンドを生成する。
【0088】
ステップ806において、各サブバンド内で少なくとも1つの基準信号が生成される。このステップにおいて、各サブバンド内で生成される基準信号は、上述した方法の任意の組み合わせを使用して生成することができる。各サブバンド内で基準信号を生成するための様々な方法が、ステップ806b~806dに関連して以下で説明される。いくつかの例では、結果として生じる基準信号を最適化するために、及び/又は計算時間を低減するために、異なるサブバンドに対して異なる方法が使用され得る。
【0089】
図8Bのステップ806bに示す第1の方法では、各サブバンド内で、駆動信号のサブセットが基準信号として選択される。この例では、少なくとも2つの帯域間のサブセットが少なくとも1つの駆動信号だけ異なるように、駆動信号の異なるサブセットが各サブバンドについて選択される。ここで、サブセットは、選択された基準信号と、各サブバンド内のマイクロフォンとの間のマルチコヒーレンスを最大化するように選択され得る。
【0090】
第2の方法では、ステップ806cにおいて、少なくとも1つのサブバンド内で、複数のフィルタリングされた信号の少なくともサブセットが合計されて、少なくとも合計基準信号が生成される。典型的には、サブセット内で、駆動信号の複数のサブセットが合計されて、ステップ808においてエコーキャンセレーションシステムに提供される複数の合計基準信号が生成される。どの駆動信号がどの駆動信号と合計されるか、すなわち、駆動信号の合計されたサブセットのいずれかを構成する駆動信号は、結果として得られる合計基準信号とマイクロフォンとの間のマルチコヒーレンスなどのメトリックを最大化するように選択され得る。一般的に言えば、上述したように、あるスピーカが別のスピーカと高い相互コヒーレンスを有し、同じ周波数範囲(又は少なくとも重複する周波数範囲)内で動作する場合、これらのスピーカのうちの少なくとも1つは、サブバンド内で、基準信号を生成するために合計される任意のサブセットから除外され得る。
【0091】
第3の方法では、ステップ806dにおいて、少なくとも1つのサブバンド内で、複数のフィルタのうちのそれぞれのフィルタを用いて各駆動信号がフィルタリングされ、複数のフィルタリングされた信号を生成し、複数のフィルタの各々は、関連する音響トランスデューサから車両内に配置されたマイクロフォンへの伝達関数を近似し、それにより、複数のフィルタリングされた信号は各々、マイクロフォンにおいて、サブバンド内で、それぞれの音響信号を推定する。各フィルタによって実施される伝達関数は、車両内の様々な状態において、関連する音響トランスデューサ(すなわち、フィルタリングされている駆動信号を受信する音響トランスデューサ)とマイクロフォンとの間の組み合わされた伝達関数であり得る。あるいは、車両内の様々な状態(例えば、座席位置、窓位置、乗員数、乗員の位置、及びドア位置)に対する伝達関数を実施するフィルタのセットを、車両内の現在の状態に従って記憶及びロードすることができる。更に、駆動信号がスピーカに提供される前に等化などの追加の処理を受ける場合、複数のフィルタは、追加の処理を更に考慮することができる。この例では、異なる等化設定を使用する異なるタイプの番組コンテンツに対して、異なるフィルタを記憶し、ロードすることができる。
【0092】
ステップ808において、各サブバンド内の基準信号は、エコーキャンセラ110などのエコーキャンセラに出力されるが、任意の適切なエコーキャンセラを使用することができる。これらの基準信号は、典型的には、エコーキャンセラによってフィルタリングされ、推定されたスピーチ信号をレンダリングするためにマイクロフォン信号から減算される推定されたエコー信号をもたらす。
【0093】
上記の方法は、典型的には、各サブバンドについて基準信号とマイクロフォンとの間のマルチコヒーレンスなどのメトリックを最大化するように設計段階中に選択されるが、代替例では、これらの方法は、車室内の状態/プログラムコンテンツの変化を考慮するために周期的に更新又は変更され得る。
【0094】
更に、方法400を単一のマイクロフォンについて説明してきたが、方法400のステップは、各々がそれ自体のエコーキャンセラを有する複数のマイクロフォンについて繰り返すことができ、すなわち、各別個のマイクロフォンに関連する各エコーキャンセラについて基準信号を生成することができる。代替例では、マイクロフォン信号は、ビームフォーマを使用して、マイクロフォンのアレイから出力された信号を組み合わせた結果であり得る。結果として生じる合成マイクロフォン信号は、単一のマイクロフォン信号として扱われることができ、方法400は、合成マイクロフォン信号内のエコー信号をキャンセルするために採用されることができる。
【0095】
本開示において提供される数式は、本発明の態様の原理を例示する目的のためだけに簡略化されており、決して排他的又は限定的なものと見なされるべきではない。更に、数式の変形が考えられ、本開示の趣旨及び範囲内である。
【0096】
本明細書における記号の使用に関し、大文字、例えばHは、概して、周波数領域又はスペクトル領域における項、信号、又は量を表し、小文字、例えばhは、概して、時間領域における項、信号、又は量を表す。時間領域と周波数領域との間の関係は、一般に周知であり、少なくともフーリエ数学又はフーリエ分析の分野で説明されており、したがって本明細書では提示しない。加えて、本明細書で記号によって表される信号、伝達関数、又は他の項若しくは量は、アナログ形式又は離散形式で演算、考慮、又は分析され得る。時間領域の項又は量の場合、アナログ時間インデックス、例えばt、及び/又は離散サンプルインデックス、例えばnは、様々な場合に交換又は省略可能である。同様に、周波数領域では、アナログ周波数インデックス、例えばf、及び離散周波数インデックス、例えばkは、ほとんどの場合省略される。更に、本明細書で開示される関係及び計算は、一般に、当業者によって理解されるように、時間領域又は周波数領域のいずれか、及びアナログ領域又は離散領域のいずれかにおいて、存在し得るか又は実行され得る。したがって、時間領域又は周波数領域、及びアナログ領域又は離散領域における全ての可能な変動を例解するための様々な例は、本明細書では提示されない。
【0097】
本明細書に説明される機能又はその部分、及びその様々な修正(以下「機能」)は、少なくとも部分的に、コンピュータプログラム製品(例えば、1つ以上のデータ処理装置、例えば、プログラム可能プロセッサ、コンピュータ、複数のコンピュータ、及び/若しくはプログラム可能論理構成要素による実行のための、又はその動作を制御するための、1つ以上の非一時的機械可読媒体又は記憶デバイスなどの情報キャリアにおいて有形に具現化されたコンピュータプログラム)を介して実装され得る。
【0098】
コンピュータプログラムは、コンパイル型言語又はインタプリタ型言語を含む任意の形態のプログラム言語で書き得るが、それは、独立型プログラムとして、又はコンピューティング環境での使用に好適なモジュール、構成要素、サブルーチン若しくは他のユニットとして含む任意の形態で配設され得る。コンピュータプログラムは、1つのコンピュータ上で、若しくは1つの設置先における複数のコンピュータ上で実行されるように配設され得るか、又は複数の設置先にわたって配信されて、ネットワークによって相互接続され得る。
【0099】
機能の全部又は一部を実装することと関連した動作は、基準信号の選択又は組み合わせの機能を実施するために1つ以上のコンピュータプログラムを実行する1つ以上のプログラム可能なプロセッサによって、実施され得る。機能の全部又は一部は、特殊目的論理回路、例えば、FPGA及び/又はASIC(application-specific integrated circuit)(特定用途向け集積回路)として実装され得る。
【0100】
コンピュータプログラムの実行に好適なプロセッサとしては、例として、汎用マイクロプロセッサ及び特殊目的マイクロプロセッサの両方並びに任意の種類のデジタルコンピュータの任意の1つ以上のプロセッサが挙げられる。一般的に、プロセッサは、読取り専用メモリ、ランダムアクセスメモリ、又はその両方から命令及びデータを受信することになる。コンピュータの構成要素は、命令を実行するためのプロセッサ並びに命令及びデータを記憶するための1つ以上のメモリデバイスを含む。
【0101】
本明細書において、いくつかの本発明の実施形態について説明及び例解してきたが、当業者であれば、様々な他の手段及び/若しくは機能の実行及び/若しくは結果を得るための構造、並びに/又は本明細書に説明される1つ以上の利点を容易に想起し、こうした変更形態及び/又は修正の各々は、本明細書に説明される本発明の実施形態の範囲内にあると見なされる。より一般的には、当業者であれば、本明細書に説明されるパラメータ、寸法、材料及び構成の全てが例示的であること、実際のパラメータ、寸法、材料、及び/又は構成が、具体的な用途又は本発明の教示が使用される用途に依存するであろうことを、容易に理解するであろう。当業者であれば、本明細書に説明される具体的な本発明の実施形態に対する多くの同等物を、通常の実験のみを使用して認識するか、又は確認することができるであろう。したがって、前述の実施形態は、単なる例として提示されたものであり、添付の特許請求の範囲及びその等価物の範囲内で、具体的に記載及び特許請求されるものとは別様に本発明の実施形態を実践することができるということを理解されたい。本開示の本発明の実施形態は、本明細書に説明される各個々の特徴、システム、物品、材料、及び/又は方法に関する。更に、2つ以上のこうした特徴、システム、物品、材料及び/又は方法のいかなる組み合わせも、こうした特徴、システム、物品、材料及び/又は方法が相互に矛盾しない場合、本開示の発明の範囲内に含まれる。
【国際調査報告】