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特表2024-520552抗CD79B抗体に対する抗イディオタイプ抗体
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  • 特表-抗CD79B抗体に対する抗イディオタイプ抗体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】抗CD79B抗体に対する抗イディオタイプ抗体
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/42 20060101AFI20240517BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240517BHJP
   C12N 15/64 20060101ALI20240517BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240517BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240517BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240517BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
C07K16/42
C07K16/46 ZNA
C12N15/64 Z
C12N15/62
C12N15/13
C12N5/10
G01N33/53 N
G01N33/53 D
G01N33/53 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573543
(86)(22)【出願日】2022-05-26
(85)【翻訳文提出日】2024-01-19
(86)【国際出願番号】 IB2022054977
(87)【国際公開番号】W WO2022254292
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】63/195,248
(32)【優先日】2021-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509087759
【氏名又は名称】ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100217663
【弁理士】
【氏名又は名称】末広 尚也
(72)【発明者】
【氏名】グルガン,キャサリン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】マルティネツ,クリスティアン アール.
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ,ナン
(72)【発明者】
【氏名】ツォウ,ホン ミミ
【テーマコード(参考)】
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AA92X
4B065AA94X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA46
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA50
4H045DA76
4H045EA50
(57)【要約】
特定の態様では、本開示は、CD9B441含有タンパク質に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体及びその抗原結合部分、例えば、抗体又はその抗原結合部分に関する。いくつかの態様では、本開示の抗イディオタイプ抗体及び抗原結合部分は、CD9B441を含むキメラ抗原受容体を発現する細胞を検出及び定量するための方法において、使用され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD9B441を含む標的抗体に特異的に結合する、抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分。
【請求項2】
前記標的抗体又はその抗原結合部分が、配列番号29のアミノ酸配列を有する軽鎖可変(VL)領域と、配列番号30のアミノ酸配列を有する重鎖可変(VH)領域と、を含む、請求項1に記載の抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分。
【請求項3】
CD9B441に特異的に結合する、抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分であって、前記抗イディオタイプ抗体又は前記抗原結合部分が、
(a)軽鎖可変(VL)領域の相補性決定領域であって、
(i)配列番号5のアミノ酸配列を有する、LCDR1と、
(ii)配列番号6のアミノ酸配列を有する、LCDR2と、
(iii)配列番号7のアミノ酸配列を有する、LCDR3と、を含む、軽鎖可変(VL)領域の相補性決定領域を含み、
(b)重鎖可変(VH)領域の相補性決定領域であって、
(i)配列番号17のアミノ酸配列を有するHCDR1、配列番号19のアミノ酸配列を有するHCDR2、配列番号21のアミノ酸配列を有するHCDR3と、
(ii)配列番号18のアミノ酸配列を有するHCDR1、配列番号20のアミノ酸配列を有するHCDR2、及び配列番号22のアミノ酸配列を有するHCDR3と、
からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCDR1~3を含む、重鎖可変(VH)領域の相補性決定領域を更に含む、抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分。
【請求項4】
前記VL領域が、配列番号8に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項1又は3に記載の抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分。
【請求項5】
前記軽鎖が、配列番号9に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項1又は3に記載の抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分。
【請求項6】
CD9B441を含む標的抗体に特異的に結合する、抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分であって、前記抗イディオタイプ抗体又は前記抗原結合部分が、
(a)配列番号8の軽鎖可変(VL)領域と、
(b)重鎖可変(VH)領域のフレームワーク領域であって、
(i)配列番号11のHFW1と、
(ii)配列番号12~13からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、HFW2と、
(iii)配列番号14~15からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、HFW3と、
(iv)配列番号16のHFW4と、を含む、重鎖可変(VH)領域のフレームワーク領域と、
(c)重鎖可変(VH)領域の相補性決定領域であって、
(i)配列番号17~18からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、HCDR1と、
(ii)配列番号19~20からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、HCDR2と、
(iii)配列番号21~22からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、HCDR3と、を含む、重鎖可変(VH)領域の相補性決定領域と、を含む、抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分。
【請求項7】
前記VH領域が、配列番号23~24からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項1、3及び6のいずれか一項に記載の抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分。
【請求項8】
前記重鎖が、配列番号25~26からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項1、3及び6のいずれか一項に記載の抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分。
【請求項9】
前記抗イディオタイプ抗体又は前記抗原結合部分が、配列番号8の前記VL領域を含み、配列番号23~24からなる群から選択されるVH領域を更に含む、請求項1、3及び6のいずれか一項に記載の抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分。
【請求項10】
前記抗イディオタイプ抗体又は前記抗原結合部分が、配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、配列番号25~26からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖を更に含む、請求項1、3及び6のいずれか一項に記載の抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分。
【請求項11】
前記抗原結合部分が、Fab、F(ab’)2、又はscFvから選択される、請求項1、3及び6のいずれか一項に記載の抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分。
【請求項12】
前記抗体が、モノクローナル抗体である、請求項1、3及び6のいずれか一項に記載の抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分。
【請求項13】
前記抗体が、キメラ抗体である、請求項1、3及び6のいずれか一項に記載の抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分。
【請求項14】
前記抗体が、マウスIgG2aフレームワークを含む、請求項1、3及び6のいずれか一項に記載の抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分。
【請求項15】
前記抗体が、完全ヒト抗体である、請求項1、3及び6のいずれか一項に記載の抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分。
【請求項16】
請求項1、3及び6のいずれか一項に記載の抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分の、前記重鎖、前記軽鎖、又はその両方をコードする核酸。
【請求項17】
CD9B441に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分の、前記重鎖、前記軽鎖、又はその両方をコードする核酸であって、前記核酸が、
a)配列番号10のヌクレオチド配列、
b)配列番号27~28からなる群から選択されるヌクレオチド配列、又は
c)a)及びb)の両方、を含む、核酸。
【請求項18】
請求項17に記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項19】
前記ベクターが、発現ベクターである、請求項18に記載のベクター。
【請求項20】
請求項19に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項21】
前記細胞が、哺乳動物細胞である、請求項20に記載の宿主細胞。
【請求項22】
CD9B441に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分を産生する方法であって、前記方法が、前記抗体又は前記抗原結合部分を発現させる条件下で、前記宿主細胞が前記抗体又は前記抗原結合部分の前記重鎖及び前記軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含む、請求項20に記載の宿主細胞を培養することと、前記培養物から前記抗体又は前記抗原結合部分を単離することと、を含む、方法。
【請求項23】
生体試料中のCD9B441を検出するための方法であって、(a)生体試料を提供することと、(b)前記生体試料を、請求項1、3、及び6のいずれか一項に記載の抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分と接触させることと、(c)前記抗イディオタイプ抗体又は前記抗原結合部分を検出することと、を含む、方法。
【請求項24】
前記抗体が、検出可能な標識を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記抗イディオタイプ抗体又は前記抗原結合部分を検出する前に、前記抗イディオタイプ抗体又は前記抗原結合部分を検出可能な標識と接触させることを更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記生体試料が、血液、血清、又は尿である、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
生体試料中のCD9B441を含むキメラ抗原受容体(CAR)の発現を検出するための方法であって、(a)生体試料を提供することと、(b)前記生体試料を、請求項1、3、及び6のいずれか一項に記載の抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分と接触させることと、(c)前記抗イディオタイプ抗体又は前記抗原結合部分を検出し、それによって、前記CARの前記発現を検出することと、を含む、方法。
【請求項28】
CD9B441が、キメラ抗原受容体(CAR)の細胞外部分の前記抗原結合領域内にある、請求項1、3、及び6のいずれか一項に記載の抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分。
【請求項29】
CD9B441がscFvであり、前記抗イディオタイプ抗体又は前記抗原結合部分が、前記CARの前記scFv中のエピトープに特異的に結合する、請求項28に記載の抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分。
【請求項30】
CD9B441が、CD79bに特異的に結合する、請求項28に記載の抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分。
【請求項31】
前記抗体又は前記抗原結合部分が、その他のCD79b抗体又はその他のCD79b結合CARと交差反応しない、請求項28に記載の抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分。
【請求項32】
前記CARが、配列番号31~32からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項28に記載の抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分。
【請求項33】
生体試料中のCD9B441を検出するためのキットであって、(a)請求項1、3、及び6のいずれか一項に記載の抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分と、(b)前記抗イディオタイプ抗体又は前記抗原結合部分を検出するための説明書と、を含む、キット。
【請求項34】
生体試料中のCD9B441を検出するために使用され、(a)生体試料を提供することと、(b)前記生体試料を前記抗イディオタイプ抗体又は前記抗原結合部分と接触させることと、(c)前記抗イディオタイプ抗体又は前記抗原結合部分を検出することと、を含む、請求項1、3、及び6のいずれか一項に記載の抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分。
【請求項35】
試料からCD9B441を精製する方法であって、(a)CD9B441を含む生体試料を提供することと、(b)前記生体試料を、請求項1、3、及び6のいずれか一項に記載の抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分と接触させることと、(c)前記抗イディオタイプ抗体又は前記抗原結合部分を捕捉し、それによって、CD9B441を精製することと、を含む、方法。
【請求項36】
細胞集団からCAR-T細胞を選択する方法であって、(a)CAR-T細胞を含む生体試料を提供することと、(b)前記生体試料を、請求項1、3、及び6のいずれか一項に記載の抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分と接触させることと、(c)前記抗イディオタイプ抗体又は前記抗原結合部分を捕捉し、それによって、CAR-T細胞を選択することと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は2021年6月1日に出願された米国特許仮出願第63/195,248号の優先権を主張するものである。前述の出願の全内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(配列表)
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出済みである、その全体が参照により本明細書に組み込まれる配列表を含む。当該ASCIIコピーは、2022年5月12日に作成され、名称は、JBI6565WOPCT1_SL.txtであり、サイズは37,580バイトである。
【0003】
(技術分野)
本発明は、CD9B441含有タンパク質に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体及びその抗原結合部分、例えば、抗体又はその抗原結合部分に関する。CD9B441を含むキメラ抗原受容体を発現する細胞を検出及び定量する方法もまた、提供される。
【背景技術】
【0004】
標的ゲノムへのゲノム材料の送達及び統合の理解における最近の進歩は、標準治療を多様な疾患に合わせて変化させる大きな可能性を有している。T細胞療法では、特定の腫瘍関連抗原に対するそれらの特異性を高めるために遺伝子改変され単離された、T細胞を利用する。遺伝子改変は、キメラ抗原受容体(CAR)又は外因性T細胞受容体の発現を伴い、T細胞上に新たな抗原特異性を提供してもよい。キメラ抗原受容体を発現するT細胞(CAR-T細胞)は、腫瘍免疫反応性を誘導し得る。
【0005】
目的の1つの特定のCAR標的は、CD79bである。抗原又は病原体を検出するために、B細胞は、細胞表面にB細胞受容体(BCR)を有するが、これは、膜貫通免疫グロブリン分子(mIg)、並びにCD79a(Igα)及びCD79b(Igβ)のジスルフィド結合ヘテロ二量体からなる多成分受容体である。CD79bは、広範囲のB細胞リンパ腫で高度に発現している。その発現は、ほとんどの広汎性大B細胞型リンパ腫(DLBCL)腫瘍モデルの癌細胞の生存率にとって重要であることが、示されている。したがって、抗原喪失によるCD79b標的化剤に対する耐性の発生は起こりにくく、新規免疫療法アプローチの開発にとって魅力的な標的となり得る。臨床において、CD79bを標的とする抗体薬物複合体(ADC)分子であるポラツズマブ(Polivy)(商標)が、再発性/難治性(r/r)DLBCLの治療に関して最近承認された(例えば、Polsonら、Blood、110:616-623(2007年)を参照のこと)。ポラツズマブ治療により、標準治療法(ベンダムスチン及びリツキシマブ)と組み合わせた場合の完全寛解(CR)率及び寛解期間(DOR)率の増加がもたらされ、CD79bを価値のある臨床標的として検証する(Palanca-Wesselsら、The Lancet Oncology、16(6):704-715(2015年)を参照のこと)。したがって、CD79b標的化CAR-T療法を開発する必要性が、存在している。CARを発現するタンパク質及び細胞を検出、精製、又は選択するために、このようなCARに向けられた抗イディオタイプ抗体もまた、必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、CD9B441含有タンパク質に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体及びその抗原結合部分、例えば、抗体又はその抗原結合部分を提供する。本開示はまた、抗イディオタイプ抗体及びその抗原結合部分をコードする核酸、抗イディオタイプ抗体及びその抗原結合部分を産生する方法、抗イディオタイプ抗体及びその抗原結合部分を使用してCD9B441を検出する方法、並びに抗イディオタイプ抗体及びその抗原結合部分を含むキットを提供する。
【0007】
一態様では、本開示は、CD9B441を含む標的抗体などの抗CD79b抗体に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分を提供する。いくつかの実施形態では、標的抗体又はその抗原結合部分は、配列番号29のアミノ酸配列を含む軽鎖可変(VL)領域と、配列番号30のアミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)領域と、を含む。
【0008】
その他の実施形態では、抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分は、生体試料中のCD9B441の検出において使用するためのものであり、検出は、(a)生体試料を提供することと、(b)生体試料を抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分と接触させることと、(c)抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分を検出することと、を含む。
【0009】
別の態様では、本開示は、CD9B441に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分であって、当該抗イディオタイプ抗体又は当該その抗原結合部分が、配列番号5のアミノ酸配列を有するLCDR1、配列番号6のアミノ酸配列を有するLCDR2、配列番号7のアミノ酸配列を有するLCDR3を含む軽鎖可変(VL)領域の相補性決定領域を含み、配列番号17のアミノ酸配列を有するHCDR1、配列番号19のアミノ酸配列を有するHCDR2、配列番号21のアミノ酸配列を有するHCDR3、並びに配列番号18のアミノ酸配列を有するHCDR1、配列番号20のアミノ酸配列を有するHCDR2、及び配列番号22のアミノ酸配列を有するHCDR3からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCDR1~HCDR3を含む重鎖可変(VH)領域の相補性決定領域を更に含む、抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分を提供する。
【0010】
いくつかの実施形態では、抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分は、配列番号8に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するVL領域と、配列番号23に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するVH領域と、を含む。いくつかの実施形態では、抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分は、配列番号9に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖と、配列番号25に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖と、を含む。いくつかの実施形態では、抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分は、配列番号8に対して少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するVL領域を含む。いくつかの実施形態では、抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分は、配列番号23に対して少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するVH領域を含む。
【0011】
特定の実施形態では、抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分は、配列番号8のVL領域及び配列番号23のVH領域を含む。特定の実施形態では、抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分は、配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、配列番号25のアミノ酸配列を含む重鎖を更に含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分は、配列番号8に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するVL領域と、配列番号24に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するVH領域と、を含む。いくつかの実施形態では、抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分は、配列番号9に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖と、配列番号26に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖と、を含む。いくつかの実施形態では、抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分は、配列番号8に対して少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するVL領域を含む。いくつかの実施形態では、抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分は、配列番号24に対して少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するVH領域を含む。
【0013】
特定の実施形態では、抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分は、配列番号8のVL領域及び配列番号24のVH領域を含む。特定の実施形態では、抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分は、配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、配列番号26のアミノ酸配列を含む重鎖を更に含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、抗原結合部分は、Fab、F(ab’)、又はscFvから選択される。いくつかの実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、キメラ抗体である。いくつかの実施形態では、キメラ抗体は、マウスIgG2aフレームワークを含む。いくつかのその他の実施形態では、抗体は、完全ヒト抗体である。いくつかの実施形態では、抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分は、CD9B441に特異的であり、CD9B441は、キメラ抗原受容体(CAR)の細胞外部分の抗原結合領域内にある。いくつかの実施形態では、CD9B441はscFvであり、抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分は、CARのscFv中のエピトープに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、CD9B441は、CD79bに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合部分は、その他のCD79b抗体又はその他のCD79b結合CARと交差反応しない。いくつかの実施形態では、CARは、配列番号31~32からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0015】
いくつかの実施形態では、本開示は、抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分の重鎖、軽鎖、又はその両方をコードする核酸を提供する。
【0016】
別の態様では、本開示は、CD9B441に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分の重鎖、軽鎖、又はその両方をコードする核酸であって、当該核酸が、配列番号10のヌクレオチド配列、配列番号27のヌクレオチド配列、又はその両方を含む、核酸を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、CD9B441に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分の重鎖、軽鎖、又はその両方をコードする核酸であって、当該核酸が、配列番号10のヌクレオチド配列、配列番号28のヌクレオチド配列、又はその両方を含む、核酸を提供する。別の態様では、本開示は、核酸配列を含むベクターを提供する。例えば、ベクターは、自己複製核酸構造であってもよい、又はそれが導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれてもよい。いくつかの実施形態では、ベクターは、発現ベクターである。別の態様では、本開示は、ベクターを含む宿主細胞を提供する。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、哺乳類細胞である。
【0017】
別の態様では、本開示は、CD9B441に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分を産生する方法であって、当該方法が、当該抗体又は当該抗原結合部分を発現させる条件下で宿主細胞を培養し、宿主細胞が、抗体又は抗原結合部分の重鎖及び軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含む、宿主細胞を培養することと、培養物から当該抗体又は当該抗原結合部分を単離することと、を含む方法を、提供する。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分をコードする核酸を含むベクターをコードする。
【0018】
別の態様では、本開示は、生体試料中のCD9B441を検出するための方法であって、(a)生体試料を提供することと、(b)生体試料を抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分と接触させることと、(c)抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分を検出することと、を含む方法を、提供する。
【0019】
別の態様では、本開示は、生体試料中のCD9B441を含むキメラ抗原受容体(CAR)の発現を検出するための方法であって、(a)生体試料を提供することと、(b)生体試料を抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分と接触させることと、(c)抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分を検出し、それによってCARの発現を検出することと、を含む方法を、提供する。
【0020】
いくつかの実施形態では、抗体は、検出可能な標識を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分を検出する前に、抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分を検出可能な標識と接触させることを更に含む。いくつかの実施形態では、生体試料は、血液、血清又は尿である。
【0021】
いくつかの態様では、本開示は、生体試料中のCD9B441を検出するためのキットであって、(a)抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分と、(b)抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分を検出するための説明書と、を含むキットを、提供する。
【0022】
その他の態様では、本開示は、試料からCD9B441を精製する方法であって、(a)CD9B441を含む生体試料を提供することと、(b)生体試料を抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分と接触させることと、(c)抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分を捕捉し、それによって、CD9B441を精製することと、を含む方法を、提供する。
【0023】
その他の態様では、本開示は、細胞集団からCAR-T細胞を選択する方法であって、(a)CAR-T細胞を含む生体試料を提供することと、(b)生体試料を抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分と接触させることと、(c)抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分を捕捉し、それによって、CAR-T細胞を選択することと、を含む方法を、提供する。いくつかの実施形態では、抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分は、CD9B441に特異的である。
【0024】
本開示は、前述の態様及び実施形態のうちのいずれかの全ての組み合わせ、並びに詳細な説明及び実施例に記載の実施形態のうちのいずれかとの組み合わせを企図する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明を説明する目的で、本開示のある特定の実施形態が図面に示されている。しかしながら、本開示は、図面に示された実施形態の精密な配置及び手段に限定されるものではない。
図1】ポリクローナルELISAで検出された3ラウンドのパニング後のCD9B503特異的結合濃縮の、グラフ表示を示す。
図2】陰性対照scFv融合タンパク質カウンタスクリーニング試薬CD9B504と比較した、CD9B503標的結合アッセイからのモノクローナルFab結合スクリーニングの結果の、グラフ表示を示す。
図3A】CD9B441-HL SupT1細胞への、用量依存的結合を示す。CD9B441-HL SupT1細胞へのA003B192及びA003B274の、用量依存的結合を示す。過剰なFc-CD9B441-HL CAR融合タンパク質の存在下では、結合は検出されなかった。
図3B】CD9B441-HL SupT1細胞への、用量依存的結合を示す。組換えフィコエリトリン複合A003B192のCD9B441-HL-SupT1細胞への、用量依存的結合の、グラフ表示を示す。
【0026】
(発明の詳細な説明)
概要
本開示は、CD9B441含有タンパク質に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体及びその抗原結合部分、例えば、抗体又はその抗原結合部分を提供する。本開示の抗イディオタイプ抗体及び抗原結合部分は、CD9B441を含むCARを発現する細胞を検出及び定量するための方法において使用され得る。このような方法により、研究者は、インビトロで生成されたCAR-T細胞の所与のバッチが所望のCARを発現したかどうか、したがって、細胞が所望のタンパク質を標的とするのに治療上有用であるかどうかを判断できる場合がある。本開示では、抗イディオタイプ抗体及び抗原結合部分は、B細胞リンパ腫を含む癌に関連するタンパク質であるCD79bをそれ自体が標的とするCD9B441を標的とする。
【0027】
定義
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、「a」、「an」、及び「the」という単数形は、その内容に別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を包含する。したがって、例えば、「細胞(a cell)」という言及には、2つ又は3つ以上の細胞の組み合わせ等が含まれる。
【0028】
移行句「備える/含む(comprising)」、「から本質的になる(consisting essentially of)」、及び「からなる(consisting of)」は、特許用語において一般的に受け入れられている意味を含意することを意図している、すなわち、(i)「備える/含む(comprising)」は、「含む」、「含有する」、又は「特徴とする」と同義であり、包括的又は非制限的なものであり、その他の列挙されていない要素又は方法工程を除外するものではなく、(ii)「からなる(consisting of)」は、特許請求の範囲において特定されていない、あらゆる要素、工程、又は成分を除外する、並びに(iii)「から本質的になる」は、特定される材料又は工程、及び、特許請求される発明の「基本的かつ新しい特徴(複数可)に実質的に影響しないもの」に、特許請求の範囲を制限する。「備える/含む」という語句(又はその同義語)を伴って記載される実施形態はまた、「からなる」及び「から本質的になる」を伴って独立して記載される実施形態として提供する。
【0029】
「活性化(activation)」又は「刺激(stimulation)」又は「活性化された(activated)」又は「刺激された(stimulated)」とは、活性化マーカの発現、サイトカイン産生、又は標的細胞の増殖若しくは細胞傷害性の媒介をもたらす、細胞の生物学的状態の変化の誘導を指す。細胞は、一次刺激シグナルによって活性化されてもよい。共刺激シグナルは、一次シグナルの大きさを増幅し、初期刺激後の細胞死を抑制し得、その結果、より耐久性のある活性化状態、ひいてはより高い細胞傷害能をもたらす。「共刺激シグナル」とは、TCR/CD3核酸連結などの一次シグナルと組み合わせて、T細胞及び/若しくはNK細胞の増殖並びに/又は鍵となる分子の上方制御若しくは下方制御を引き起こすシグナルを指す。
【0030】
「抗イディオタイプ抗体」又は「抗イディオタイプの抗体」とは、別の抗体の可変領域に特異的に結合する抗体を指す。A003B192及びA003B274の場合、抗イディオタイプ抗体は、抗CD79b抗体に特異的に結合する。
【0031】
「抗原結合部分」、「抗原結合断片」又は「抗原結合領域」とは、抗原に結合するタンパク質の部分を指す。抗原結合断片は、合成ポリペプチド、酵素的に得ることが可能なポリペプチド、又は遺伝的に操作されたポリペプチドであってもよく、これには、抗原に結合する免疫グロブリンの部分、例えば、VH、VL、VH及びVL、Fab、Fab’、F(ab’)、Fd及びFv断片、1つのVH領域又は1つのVL領域からなる領域抗体(dAb)、サメ可変IgNAR領域、ラクダ化VH領域、VHH領域、FR3-CDR3-FR4部分などの抗体のCDRを模倣するアミノ酸残基からなる最小認識ユニット、HCDR1、HCDR2、及び/又はHCDR3、並びにLCDR1、LCDR2、及び/又はLCDR3、抗原に結合する代替骨格、並びに抗原結合断片を含む多重特異性タンパク質が挙げられる。抗原結合断片(VH及びVLなど)は、合成リンカを介して互いに連結して、VH及びVL領域が別々の一本鎖により発現された場合に、VH/VL領域が分子内又は分子間で対合して一価の抗原結合領域、例えば一本鎖Fv(scFv)又はダイアボディを形成し得る、様々な種類の一本鎖抗体設計を形成してもよい。抗原結合断片はまた、二重特異性タンパク質及び多重特異性タンパク質を遺伝的に操作するために、単一特異性又は多重特異性であり得るその他の抗体、タンパク質、抗原結合断片、又は代替骨格に複合化させてもよい。
【0032】
「癌」とは、身体における異常細胞の制御されていない成長を特徴とする、様々な疾患の広範な群を指す。制御されていない細胞分裂及び成長は、隣接組織を浸潤する悪性腫瘍の形成をもたらし、リンパ系又は血流を介して、身体の遠位部分にも転移する場合がある。「癌」又は「癌組織」は、腫瘍を含み得る。
【0033】
「完全長抗体」は、ジスルフィド結合によって相互に接続された、2本の重鎖(HC)及び2本の軽鎖(LC)、並びにこれらの多量体(例えば、IgM)で構成される。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)及び重鎖定常領域で構成され、重鎖定常領域は、サブ領域CH1、ヒンジ、CH2、及びCH3で構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域(CL)で構成される。VH及びVLは、フレームワーク領域(FW)が散在している、相補性決定領域(CDR)と呼称される超可変性の領域に更に細分化されてもよい。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順序:FW1、CDR1、FW2、CDR2、FW3、CDR3、及びFW4で配置された、3つのCDR及び4つのFWセグメントで構成される。
【0034】
「相補性決定領域(CDR)」は、抗体における抗原結合部位である。CDRは、様々な用語を使用して定義されてもよい:(i)VH内に3つ(HCDR1、HCDR2、HCDR3)及びVL内に3つ(LCDR1、LCDR2、LCDR3)の相補性決定領域(CDR)は、配列多様性に基づいている(Wu and Kabat,J.Exp.Med.132:211-50,1970年,Kabatら,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.,1991年)。(ii)VH内に3つ(H1、H2、H3)及びVL内に3つ(L1、L2、L3)の「超可変性領域」、「HVR」、又は「HV」は、Chothia及びLesk(Chothia and Lesk,Mol.Biol.196:901-17,1987年)によって定義されるとおり、構造において超可変性である、抗体可変領域の領域を指す。International ImMunoGeneTics(IMGT)データベース(http://www_imgt_org)は、抗原結合部位についての標準的番号及び定義を提供する。CDR、HV及びIMGTの記述間の対応については、Lefrancら,Dev.Comparat.Immunol.27:55-77,2003年に記載されている。本明細書で使用される「CDR」、「HCDR1」、「HCDR2」、「HCDR3」、「LCDR1」、「LCDR2」、及び「LCDR3」という用語は、本明細書において別途記載のない限り、上掲のKabat、Chothia、又はIMGTにより記載されている方法のいずれかによって定義されるCDRを含む。フレームワーク領域(FW)は、VL(LFW1、LFW2、LFW3、LFW4)及びVH(HFW1、HFW2、HFW3、HFW4)の両方におけるCDRに隣接し、それらの間にある。
【0035】
「ヒト抗体」とは、ヒト被検体に投与される場合に、最小の免疫応答を有するように最適化された抗体を指す。ヒト抗体の可変領域は、ヒト免疫グロブリン配列に由来する。ヒト抗体が定常領域又は定常領域の一部を含む場合、その定常領域もまたヒト免疫グロブリン配列に由来する。ヒト抗体は、ヒト抗体の可変領域がヒト生殖系列免疫グロブリン又は再編成された免疫グロブリン遺伝子を使用する系から得られた場合、ヒト起源の配列に「由来する」重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む。このような代表的な系は、ファージディスプレイされたヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリ、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座を保有する遺伝形質転換性の非ヒト動物、例えば、マウス又はラットである。「ヒト抗体」は、典型的には、ヒト抗体及びヒト免疫グロブリン遺伝子座を得るために使用した系の違い、フレームワーク若しくはCDRへの体細胞変異の導入若しくは置換の意図的な導入、又はこれらの両方により、ヒトで発現した免疫グロブリンと比較した場合にアミノ酸の違いを含有する。典型的には、「ヒト抗体」は、ヒト生殖系列免疫グロブリン又は再編成された免疫グロブリン遺伝子によってコードされているアミノ酸配列に対して、アミノ酸配列が少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一である。場合によっては、「ヒト抗体」は、例えばKnappikら,(2000年)J.Mol.Biol.296:57-86に記載されるようなヒトフレームワーク配列分析に由来する共通塩基フレームワーク配列、又は例えば、Shiら,(2010年)J.Mol.Biol.397:385-96及びPCT国際公開特許第2009/085462号に記載される、ファージディスプレイされたヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリに組み込まれた合成HCDR3を含有してもよい。少なくとも1つのCDRが非ヒト種に由来する抗体は、「ヒト抗体」の定義には含まれない。
【0036】
「ヒト化抗体」とは、少なくとも1つのCDRが非ヒト種に由来し、少なくとも1つのフレームワークがヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体を指す。ヒト化抗体は、フレームワークに置換を含むことができるため、フレームワークは、発現したヒト免疫グロブリン又はヒト免疫グロブリン生殖細胞系列遺伝子配列の厳密なコピーではない場合がある。
【0037】
「単離された(Isolated)」とは、組換え細胞などにおける分子が産生される系のその他の成分から離して実質的に分離及び/又は精製された分子の均質な集団(例えば、合成ポリヌクレオチド又はポリペプチド)、並びに少なくとも1つの精製工程又は単離工程に供されたタンパク質を指す。「単離された」とは、その他の細胞材料及び/又は化学物質を実質的に含まない分子を指し、より高い純度、例えば80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の純度まで単離された分子を包含する。
【0038】
「変調する(modulate)」とは、対照又は媒体によって媒介される応答と比較した場合に、増強された又は低減された応答を媒介する試験分子の増強された又は減少した能力のいずれか(すなわち、下流効果)を指す。
【0039】
「ナチュラルキラー細胞」及び「NK細胞」は、本明細書では互換的かつ同義的に使用される。NK細胞とは、CD16+CD56+及び/又はCD57+TCR-表現型を有する分化リンパ球を指す。NK細胞は、特定の細胞溶解性酵素の活性化によって「自己」MHC/HLA抗原を発現できない細胞に結合し、死滅させる能力、腫瘍細胞又はNK活性化受容体の配位子を発現するその他の疾患細胞を死滅させる能力、及び免疫応答を刺激又は阻害するサイトカインと呼ばれるタンパク質分子を放出する能力を特徴とする。
【0040】
「特異的に結合する(specifically binds)」、「特異的結合(specific binding)」、「特異的に結合している(specifically binding)」、又は「結合する(binds)」とは、タンパク質性分子が、抗原又は抗原内のエピトープに、その他の抗原に対する親和性よりも高い親和性で結合することを指す。典型的には、タンパク質性分子は、約1×10-7M以下、例えば約5×10-8M以下、約1×10-8M以下、約1×10-9M以下、約1×10-10M以下、約1×10-11M以下、又は約1×10-12M、1×10-13M、1×10-14M、1×10-15M以下の平衡解離定数(KD)で抗原又は抗原内のエピトープに結合し、典型的には、KDは、非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)への結合についてのKDよりも少なくとも100倍小さい。本明細書に記載される前立腺ネオ抗原の文脈において、「特異的結合」とは、タンパク質性分子が、前立腺ネオ抗原がその変異体である野生型タンパク質に検出可能には結合することなく、前立腺ネオ抗原に結合することを指す。
【0041】
「腫瘍細胞」又は「癌細胞」とは、インビボ、エキソビボ、又は組織培養のいずれかにおいて、自然発生的な又は誘発された表現型の変化を有する癌性の、前癌性の、又は形質転換性の細胞を指す。これらの変化は、必ずしも新たな遺伝物質の取り込みを伴うものではない。形質転換は、形質転換ウイルスの感染及び新たなゲノム核酸の組み込み、外因性核酸の取り込みにより発生させることもでき、自然発生的に又は発癌物質に曝露した後に発生し、それによって、内因性の遺伝子が変異する場合もある。形質転換/癌は、インビトロ、インビボ、及びエキソビボにおける、形態学的変化、細胞の不死化、異常な増殖制御、病巣の形成、増殖、悪性病変、腫瘍特異的マーカレベルの変調、浸潤性、ヌードマウスなどの好適な動物宿主における腫瘍の増殖などによって例示される。
【0042】
「キメラ抗原受容体」又は「CAR」という用語は、本明細書で使用される場合、全て、天然では単一のタンパク質において一緒にみられることのない組み合わせで、細胞外標的結合領域、膜貫通領域、及び細胞内シグナル伝達領域を含む細胞表面受容体として定義される。これには、特に、細胞外領域及び細胞内シグナル伝達領域が天然では単一の受容体タンパク質において一緒にみられることのない受容体が含まれる。本発明のキメラ抗原受容体は、主に、T細胞及びナチュラルキラー(NK)細胞などのリンパ球での使用が意図される。
【0043】
「T細胞」及び「Tリンパ球」という用語は、互換的であり、本明細書において同義的に使用される。本明細書で使用される場合、T細胞は、胸腺細胞、ナイーブTリンパ球、未成熟Tリンパ球、成熟Tリンパ球、休止Tリンパ球、又は活性化Tリンパ球を含む。T細胞は、Tヘルパー(Th)細胞、例えば、Tヘルパー1(Th1)又はTヘルパー2(Th2)細胞であり得る。T細胞は、ヘルパーT細胞(HTL、CD4+T細胞)、CD4+T細胞、細胞傷害性T細胞(CTL、CD8+T細胞)、腫瘍浸潤細胞傷害性T細胞(TIL、CD8+T細胞)、CD4+CD8+T細胞、又はT細胞の任意のその他のサブセットであり得る。特定の実施形態で使用するのに好適なT細胞のその他の例示的な集団としては、ナイーブT細胞及びメモリT細胞が挙げられる。また、「NKT細胞」も挙げられるが、これは、半不変異体αβT細胞受容体を発現するだけでなく、NK1.1などの、典型的にはNK細胞と関連する様々な分子マーカもまた発現する、T細胞の特殊な集団を指す。NKT細胞としては、NK1.1+及びNK1.1-、並びにCD4+、CD4-、CD8+、及びCD8-細胞が挙げられる。NKT細胞のTCRは、MHC I様分子CD1dによって提示される糖脂質抗原を認識するという点で、独特である。NKT細胞は、炎症又は免疫寛容のいずれかを促進するサイトカインを産生する能力により、保護効果又は有害効果のいずれかを有し得る。また、「ガンマデルタT細胞(γδT細胞)」も含まれるが、これは、それらの表面に異なるTCRを有するT細胞の小さなサブセットの特殊な集団を指し、TCRがα-TCR鎖及びβ-TCR鎖と表記される2つの糖タンパク質鎖から構成されるT細胞の大部分とは異なり、γδT細胞におけるTCRは、γ鎖及びδ鎖から構成される。γδT細胞は、免疫監視及び免疫調節において役割を果たし得、IL-17の重要な供給源であること、及び活発なCD8+細胞傷害性T細胞応答を誘導することが見出された。また、異常又は過剰な免疫応答を抑制し、免疫寛容において役割を果たすT細胞を指す「制御性T細胞」又は「Treg」も含まれる。Tregは、典型的には、転写因子Foxp3陽性CD4+T細胞であり、また、IL-10産生CD4+T細胞である転写因子Foxp3陰性制御性T細胞も含み得る。
【0044】
本明細書で使用される場合、「抗原」という用語は、T細胞受容体が結合することが可能な任意の剤(例えば、タンパク質、ペプチド、多糖類、糖タンパク質、糖脂質、核酸、これらの一部、又はこれらの組み合わせ)分子を指す。抗原はまた、免疫応答を惹起することも可能である。免疫応答の例は、限定するものではないが、抗体産生、若しくは特定の免疫学的コンピテント細胞の活性化、又はその両方を伴う場合がある。当業者には、抗原が決して「遺伝子」によってコードされている必要がないことを、理解されよう。抗原は、合成で発生され得る、又は生体試料に由来し得る、又はポリペプチド以外の巨大分子であってもよいことが、容易に明らかである。このような生体試料としては、組織試料、腫瘍試料、細胞、又はその他の生物学的成分、生物、タンパク質/抗原のサブユニット、殺傷された全細胞若しくは不活性化された全細胞若しくは溶解物を含む流体が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0045】
「抗体」という用語は、モノクローナル抗体、多重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、一本鎖Fv(scFv)、一本鎖抗体、Fab断片、F(ab’)断片、ジスルフィド連結Fv(sdFv)、イントラボディ、ミニボディ、ダイアボディ、及び抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、抗原特異的TCRに対する抗Id抗体を含む)、及び上記のいずれかのエピトープ結合断片を指す。「抗体」及び「抗体(複数)」という用語はまた、米国特許出願公開第2007/0004909号に記載のものなどの共有結合性ダイアボディ、及び同第2009/0060910号に開示されているものなどのIg-DARTSを指す。TCR結合分子として有用な抗体としては、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な断片、すなわち、抗原結合部位を含有する分子が挙げられる。免疫グロブリン分子は、任意の種類(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM1、IgM2、IgA1、及びIgA2)、又はサブクラスであってもよい。
【0046】
「宿主細胞」という用語は、異種核酸を含有する任意の細胞を意味する。異種核酸は、ベクター(例えば、発現ベクター)であり得る。例えば、宿主細胞は、細胞による物質の産生、例えば、遺伝子、DNA配列若しくはRNA配列、タンパク質、又は酵素の細胞による発現のための、任意の方法で選択、改変、形質転換、成長、使用、又は操作される任意の生物由来の細胞であってもよい。適切な宿主を決定してもよい。例えば、宿主細胞は、ベクター骨格及び所望の結果に基づいて選択されてもよい。例として、プラスミド又はコスミドは、いくつかの種類のベクターを複製するために、原核生物宿主細胞に導入され得る。DH5α、JM109、及びKCBなどであるが、これらに限定されない細菌細胞、SURE(登録商標)コンピテント細胞、並びにSOLOPACK Gold細胞を、ベクター複製及び/又は発現のための宿主細胞として使用し得る。更に、大腸菌LE392などの細菌細胞は、ファージウイルスの宿主細胞として使用され得る。宿主細胞として使用され得る真核細胞としては、酵母(例えば、YPH499、YPH500及びYPH501)、昆虫及び哺乳動物が挙げられるが、これらに限定されない。ベクターの複製及び/又は発現のための哺乳類真核宿主細胞の例としては、HeLa、NIH3T3、Jurkat、293、COS、CHO、Saos、及びPC12が挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
「発現する」及び「発現」という用語は、遺伝子又はDNA配列の情報が生成されることを可能にするか又は生成させること、例えば、対応する遺伝子又はDNA配列の転写及び翻訳に関与する細胞機能を活性化することによってタンパク質を生成することを意味する。DNA配列は、細胞内に又は細胞によって発現して、タンパク質などの「発現産物」を形成する。発現産物自体、例えば、得られたタンパク質は、細胞によって「発現された」と言うこともできる。発現産物は、細胞内、細胞外、又は膜貫通として特徴付けられ得る。
【0048】
「形質移入」という用語は、組換えDNA技術を使用して「外来」(即ち、外因性又は細胞外)核酸を細胞に導入することを意味する。「遺伝子改変」という用語は、「外来」(即ち、外因性又は細胞外)遺伝子、DNA配列又はRNA配列を宿主細胞に導入することを意味し、その結果、宿主細胞は、導入された遺伝子又は配列を発現させて、所望の物質、典型的には、導入された遺伝子又は配列によってコードされるタンパク質又は酵素を産生する。導入された遺伝子又は配列はまた、「クローニングされた」又は「外来」遺伝子又は配列と呼ばれる場合もあり、開始、終止、促進因子、シグナル、分泌、又は細胞の遺伝機序によって使用されるその他の配列などのキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドに操作可能に連結された調節配列又は制御配列を含んでもよい。遺伝子又は配列は、周知の機能を有しない非機能的配列を含んでもよい。導入されたDNA又はRNAを受容して発現する宿主細胞は、「遺伝的に操作されている」。宿主細胞に導入されたDNA又はRNAは、宿主細胞と同じ属若しくは同じ種の細胞を含む任意の起源、又は異なる属若しくは異なる種に由来し得る。
【0049】
「形質導入」という用語は、ウイルスベクターを使用する外来核酸の細胞への導入を意味する。
【0050】
「調節要素」という用語は、核酸配列の発現のいくつかの態様を制御する任意のシス作用性遺伝要素を指す。いくつかの実施形態では、「促進因子」という用語は、本質的に、転写を開始するために必要な最小配列を含む。いくつかの実施形態では、「促進因子」という用語は、転写を開始させるための配列を含み、加えて、それぞれ、一般的に「エンハンサ要素」及び「抑制因子要素」と呼ばれる、転写を上方制御又は下方制御し得る配列もまた含む。
【0051】
本明細書で使用される場合、「操作可能に連結された」及び類似の語句は、核酸又はアミノ酸に関して使用される場合、それぞれ、互いに機能的な関係で配置された核酸配列又はアミノ酸配列の、操作可能であるような連結を指す。例えば、操作可能に連結された促進因子、エンハンサ要素、転写解読枠(オープンリーディングフレーム)、5’及び3’UTR、並びにターミネータ配列は、核酸分子(例えば、RNA)の正確な産生をもたらす。いくつかの実施形態では、操作可能に連結された核酸要素は、転写解読枠の転写及び最終的にはポリペプチドの生成(すなわち、転写解読枠の発現)をもたらす。別の例として、操作可能に連結されたペプチドは、機能領域が互いに適切な距離で配置されて、各領域の意図された機能を付与するものを指す。
【0052】
「増強する」又は「促進する」又は「増加する」又は「拡大する」又は「改善する」は、全般的に、媒体又は対照分子/組成物のいずれかによって引き起こされる応答と比較して、より大きな生理学的応答を生じさせるか、誘発するか、又は引き起こす(すなわち、下流効果)、本明細書で企図される組成物の能力を指す。測定可能な生理学的応答は、特に当該技術分野及び本明細書の記載の理解から明らかなように、T細胞の拡大、活性化、エフェクタ機能、持続性の増加、及び/又は癌細胞死殺傷能力の増加を含んでもよい。特定の実施形態では、「増加した」又は「増強された」量は、「統計的に有意な」量であり得、1.1、1.2、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30倍、又はそれ以上(例えば、500、1000倍)の増加(1の中間及びそれ以上、例えば、1.5、1.6、1.7、1.8等の全ての整数及び小数点を含む)を含んでもよく、応答は、媒体又は対照組成物によって生成される。
【0053】
「減少する」又は「より低い」又は「より少なくする」又は「低下させる」又は「弱める」とは、一般に、媒体又は対照分子/組成物のいずれかによって引き起こされる応答と比較して、より少ない生理学的応答(即ち、下流効果)を生じさせるか、誘発するか、又は引き起こす、本明細書で企図される組成物の能力を指す。特定の実施形態では、「減少した」又は「低減された」量は、「統計的に有意な」量であり得、1.1、1.2、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30倍、又はそれ以上(例えば、500、1000倍)の減少(1の中間及びそれ以上、例えば、1.5、1.6、1.7、1.8等の全ての整数及び小数点を含む)を含んでもよく、応答(基準応答)は、媒体、対照組成物、又は特定の細胞系譜における応答によって生成される。
【0054】
用量又は量に適用される「有効な」という用語は、それを必要とする被検体への投与時に所望の活性をもたらすのに十分な化合物又は医薬組成物の量を指す。活性成分の組み合わせを投与する場合、その組み合わせの有効量は、個々に投与された場合に有効であろう各成分の量を含んでいる場合もあり、含んでいない場合もあることに、留意されたい。正確な必要量は、種、年齢、及び全身状態、治療される病態の重症度、用いられる具体的な薬物、投与の様式などに応じて、被検体によって異なる。
【0055】
「医薬的に許容される」という語句は、本明細書に記載される組成物に関連して使用される場合、生理学的に許容可能であり、哺乳動物(例えば、ヒト)に投与された場合に、通常は有害反応を生じない、分子実体及びこのような組成物のその他の成分を指す。好ましくは、「医薬的に許容される」という用語は、哺乳類、より具体的にはヒトにおける使用について、連邦政府若しくは州政府の規制機関によって認可されているか、又は米国薬局方若しくはその他の全般的に認められている薬局方に記載されていることを意味する。
【0056】
「タンパク質」という用語は、本明細書で使用される場合、全ての長さのタンパク質断片を含む天然のタンパク質及び合成のタンパク質、融合タンパク質、並びに糖タンパク質に加えて、全てのその他の種類の改変タンパク質(例えば、リン酸化、アセチル化、ミリストイル化、パルミトイル化、グリコシル化、酸化、ホルミル化、アミド化、ポリグルタミル化、ADP-リボシル化、ペグ化、ビオチン化などから得られるタンパク質)を含むがこれらに限定されない、改変タンパク質の全ての種類を包含する。
【0057】
「核酸」という用語は、「ヌクレオチド」、及び「ポリヌクレオチド」は、別途明記しない限り、DNA及びRNAの両方を包含する。「核酸配列」又は「ヌクレオチド配列」とは、アミノ酸をコードしている核酸配列を意味し、これらの用語はまた、リンカによってコードされている任意のアミノ酸を含む、クローン化のアーチファクトとして付加される任意のアミノ酸をコードしている部分を含む核酸配列を指す場合もある。
【0058】
「担体」という用語は、化合物が一緒に投与される希釈剤、補助剤、賦形剤、又は媒体を指す。このような医薬担体は、落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油などの、石油、動物、植物、又は合成起源のものを含む、水及び油などの滅菌液体であってもよい。水又は水溶液、生理食塩水、並びにデキストロース及びグリセリン水溶液が、特に注射溶液用の担体として好ましく用いられる。代替的に、担体は、バインダ(圧縮丸剤用)、流動促進剤、封入剤、風味剤、及び着色剤のうちの1種以上を含むがこれらに限定されない固体剤形担体であってもよい。好適な医薬用担体の例は、E.W.Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。
【0059】
「約」又は「およそ」という用語は、値の統計的に意味のある範囲内にあることを含む。このような範囲は、所与の値又は範囲の1桁以内、好ましくは50%以内、より好ましくは20%以内、更により好ましくは10%以内、更により好ましくは5%以内であり得る。「約」又は「およそ」という用語によって包含される許容可能な変動は、研究中の具体的なシステムに依存し、当業者によって容易に理解され得る。
【0060】
「分化抗原群79Bタンパク質」又は「CD79b」とは、B細胞特異的糖タンパク質B29、Ig-β、又はAGM6とも呼ばれる、周知のタンパク質を指す。Bリンパ球抗原受容体は、抗原特異的成分、表面免疫グロブリン(Ig)を含む、多量体複合体であり、Ig-α(Igα)及びIg-β(Igβ)と非共有会合している。CD79bは、B細胞抗原成分のIgβタンパク質である。全てのCD79bアイソフォーム及び変異体が、「CD79b」に包含される。様々なアイソフォームのアミノ酸配列は、GenBank目録番号AAH32651.1、EAW94232.1、AAH02975.2、NP_000617.1、及びNP_001035022.1から取得可能である。完全長CD79b配列のアミノ酸配列を、配列番号33に示す。配列は、細胞外領域(残基29~残基159)及び細胞質領域(残基181~残基229)を含む。
【0061】
「CD9B441」という用語は、CARを含む、CD9B441VL(配列番号29)及びCD9B441VH(配列番号30)に由来する可変領域を含有する、任意の抗体、その抗原結合部分、又は任意のその他のタンパク質を指す。特定の実施形態では、本開示の抗イディオタイプ抗体は、配列番号29に示されるVL領域及び/又は配列番号30に示されるVH領域を含むタンパク質に、特異的に結合する。特定の実施形態では、本開示の抗イディオタイプ抗体は、配列番号29に示されるVL領域の3つのCDR及び配列番号30に示されるVH領域の3つのCDRを含むタンパク質に、特異的に結合する。
【0062】
「CD9B503」という用語は、CD9B441由来scFv融合タンパク質、具体的には、CD9B441-HL(配列番号32)を指す。
【0063】
「A003B192」という用語は、CD9B441由来scFv CD9B503及びマウスIgG2a/kを標的とするヒトVH(配列番号23)/ヒトVL(配列番号8)を有する、キメラモノクローナル抗体(mAb)を指す。
【0064】
「A003B274」という用語は、CD9B441由来scFv CD9B503及びマウスIgG2a/kを標的とするヒトVH(配列番号24)/ヒトVL(配列番号8)を有するキメラモノクローナル抗体(mAb)を指す。
【0065】
本明細書で使用される用語は、あくまで特定の実施形態を説明する目的のものに過ぎず、限定を目的としたものではない。本明細書で使用される場合、文脈により別途明確に示されない限り、冠詞「a」、「an」及び「the」は、複数の指示物を含むものと理解されたい。
【0066】
本開示は、本明細書に記載される抗体、核酸、ポリペプチド、及びタンパク質の変異体、例えば、機能的変異体を更に提供する。「変異体」は、例えば、置換、挿入、又は欠失といった1つ以上の改変によって、基準ポリペプチド又は基準ポリヌクレオチドとは異なる、ポリペプチド又はポリヌクレオチドを指す。本明細書で使用される「機能的変異体」という用語は、親抗体、ポリペプチド、又はタンパク質と実質的又は有意な配列同一性又は類似性を有する抗体、ポリペプチド、又はタンパク質を指すが、この機能的変異体は、変異体である抗体、ポリペプチド、又はタンパク質の生物活性を保持する。機能的変異体は、親抗体、ポリペプチド、又はタンパク質と同様の程度、同程度、又はより高い程度で標的細胞を認識する能力を保持する、例えば、本明細書に記載される抗体、ポリペプチド、又はタンパク質(親抗体、ポリペプチド、又はタンパク質)の変異体を包含する。親抗体、ポリペプチド、又はタンパク質に関して、機能的変異体は、例えば、親抗体、ポリペプチド、又はタンパク質に対して、アミノ酸配列が少なくとも約30%、約40%、約50%、約60%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又はそれ以上同一であり得る。
【0067】
本明細書では、ポリペプチドの構造は、列挙された基準配列(所与の配列番号を有する)との配列同一性%に基づいて定義された場所にある。これに関連して、2つのアミノ酸配列間の配列同一性%は、最適な方法で配列されたこれらの2つの配列を比較することによって判定されてもよく、比較されるアミノ酸配列は、これらの2つの配列間における最適な配列のために、基準配列に対して付加又は欠失を含み得る。同一性の百分率は、2つの配列間のアミノ酸残基が同一である同一位置の数を判定し、この同一位置の数を比較ウィンドウ内の位置の総数で除算し、得られた結果に100を乗算し、これら2つの配列間における同一性の百分率を得るようにすることにより計算される。典型的には、比較ウィンドウは、比較される配列の全長に対応する。例えば、BLASTプログラム、「BLAST 2配列」(Tatusovaら,「Blast 2 sequences-a new tool for comparing protein and nucleotide sequences」,FEMS Microbiol Lett.174:247-250)を使用することが可能であり、サイトhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/gorf/bl2.htmlで入手可能であり、使用されるパラメータは、デフォルト(具体的には、パラメータ「オープンギャップペナルティ」:5、及び「エクステンションギャップペナルティ」:2について;選択されたマトリックスは、例えば、プログラムによって提案されるマトリックス「BLOSUM 62」)によって所与されるようなものであり、比較される2つの配列間における同一性の百分率は、プログラムによって直接計算される。クエリ配列の基準配列に対する配列同一性の判定は、当業者の能力の範囲内であり、BLAST(商標)などの市販の分析ソフトウェアを使用して実行され得る。
【0068】
機能的変異体は、例えば、少なくとも1つの保存的アミノ酸置換を有する親抗体、ポリペプチド、又はタンパク質のアミノ酸配列を含み得る。別の実施形態では、機能的変異体は、少なくとも1つの非保存的アミノ酸置換を有する親抗体、ポリペプチド、又はタンパク質のアミノ酸配列を含み得る。この場合、非保存的アミノ酸置換は、機能的変異体の生物活性を抑制又は阻害することができない。非保存的アミノ酸置換により、機能的変異体の生物活性を向上させることができ、その結果、機能的変異体の生物活性は、親抗体、ポリペプチド、又はタンパク質と比較して増強する。
【0069】
本発明の抗体のアミノ酸置換は、保存的アミノ酸置換であってもよい。保存的アミノ酸置換は、当該技術分野において周知であり、特定の物理的特性及び/又は化学的特性を有する1種のアミノ酸を、同じ又は類似の化学的特性又は物理的特性を有する別のアミノ酸と交換する、アミノ酸置換を含む。例えば、保存的アミノ酸置換は、別の酸性アミノ酸で置換された酸性アミノ酸(例えば、Asp又はGlu)、非極性側鎖を有する別のアミノ酸で置換された非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、Ala、Gly、Val、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Trp、Val等)、別の塩基性アミノ酸で置換された塩基性アミノ酸(Lys、Arg等)、極性側鎖を有する別のアミノ酸で置換された極性側鎖を有するアミノ酸(Asn、Cys、Gln、Ser、Thr、Tyr等)等であり得る。
【0070】
本発明の実施形態の抗体、ポリペプチド、及びタンパク質(本発明の機能的部分及び機能的変異体を含む)は、1種以上の天然に存在するアミノ酸の代わりに、合成アミノ酸を含み得る。このような合成アミノ酸は、当該技術分野において周知であり、例としては、アミノシクロヘキサンカルボン酸、ノルロイシン、α-アミノn-デカン酸、ホモセリン、S-アセチルアミノメチル-システイン、トランス-3-及びトランス-4-ヒドロキシプロリン、4-アミノフェニルアラニン、4-ニトロフェニルアラニン、α-(2-アミノ-2-ノルボルナン)-カルボン酸、α,γ-ジアミノ酪酸、α,β-ジアミノプロピオン酸、ホモフェニルアラニン、4-クロロフェニルアラニン、4-カルボキシフェニルアラニン、β-フェニルセリンβ-ヒドロキシフェニルアラニン、フェニルグリシン、α-ナフチルアラニン、シクロヘキシルアラニン、シクロヘキシルグリシン、N’-ベンジル-N’-メチル-リジン、N’,N’-ジベンジル-リジン、6-ヒドロキシリジン、オルニチン、α-アミノシクロペンタンカルボン酸、α-アミノシクロヘキサンカルボン酸、α-アミノシクロヘプタンカルボン酸、インドリン-2-カルボン酸、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸、アミノマロン酸、アミノマロン酸モノアミド、及びα-tert-ブチルグリシンが挙げられる。
【0071】
本発明の実施形態の抗体、ポリペプチド、及びタンパク質(機能的部分及び機能的変異体を含む)は、翻訳後修飾を受け得る。これらは、グリコシル化、エステル化、N-アシル化、アミド化、カルボキシル化、リン酸化、エステル化、例えば、ジスルフィド架橋を介して環化され得る、又は酸付加塩に変換され得る。いくつかの実施形態では、これらは、二量体化若しくはポリマー化、又は複合化されている。
【0072】
本発明の実施形態の抗体、ポリペプチド、及び/又はタンパク質(機能的部分及びその機能的変異体を含む)は、当該技術分野において周知の方法によって得られ得る。ポリペプチド及びタンパク質をデノボ合成する好適な方法は、Chanら,Fmoc Solid Phase Peptide Synthesis,Oxford University Press,Oxford,United Kingdom,2000年、Peptide and Protein Drug Analysis,ed.Reid,R.,Marcel Dekker,Inc.,2000年、及びEpitope Mapping,ed.Westwoodら,Oxford University Press,Oxford,United Kingdom,2001年などの参考文献に記載されている。また、ポリペプチド及びタンパク質は、標準的な組換え方法を使用して本明細書に記載される核酸を使用して、組換えにより産生され得る。例えば、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd ed.,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.2001年、及びAusubelら,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates and John Wiley & Sons,NY,1994年を参照のこと。更に、本発明の抗体、ポリペプチド、及びタンパク質(機能的部分及びその機能的変異体を含む)の一部は、植物、細菌、昆虫、哺乳動物等の供給源から単離及び/又は精製され得る。単離及び精製の方法は、当該技術分野において周知である。代替的に、本明細書に記載される抗体、ポリペプチド、及び/又はタンパク質(機能的部分及びその機能的変異体を含む)は、商業的に合成され得る。この点において、抗体、ポリペプチド、及びタンパク質は、合成、組換え、単離、及び/又は精製され得る。
【0073】
本開示の方法及び使用
本開示は、CD9B441含有タンパク質に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体及びその抗原結合部分、例えば、抗体又はその抗原結合部分を提供する。例えば、抗イディオタイプ抗体は、特異的結合を促進するために、CD9B441抗体の部分に相補的なアミノ酸配列を含んでもよい。本開示はまた、抗イディオタイプ抗体及びその抗原結合部分をコードする核酸、抗イディオタイプ抗体及びその抗原結合部分を産生する方法、抗イディオタイプ抗体及びその抗原結合部分を使用してCD9B441を検出する方法、並びに抗イディオタイプ抗体及びその抗原結合部分を含むキットを提供する。例えば、抗イディオタイプ抗体は、その他の試薬を含有するキットに含まれてもよく、例えば、CAR中のT細胞の表面上に発現されるCD9B441/CD9B503抗体又はその断片を、所与の生体試料が含むかどうか、を判定するために、使用されてもよい。
【0074】
CD9B441の任意の機能的部分に結合する能力について抗体を試験する方法は、当該技術分野において周知であり、任意の抗体-抗原結合アッセイ、例えば、放射性免疫検定法(RIA)、ウエスタンブロット、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、免疫沈降、及び競合阻害アッセイなどが挙げられる。
【0075】
抗体を作製する好適な方法は、当該技術分野において周知である。例えば、標準的なハイブリドーマ法は、例えば、Kohler and Milstein,Eur.J.Immunol.,5,511-519(1976年),Harlow and Lane(eds.),Antibodies:A Laboratory Manual,CSH Press(1988年)、及びC.A.Janewayら.(eds.),Immunobiology,5th Ed.,Garland Publishing,New York,N.Y.(2001年)に記載されている。代替的に、その他の方法、例えば、EBV-ハイブリドーマ法(Haskard and Archer,J.Immunol.Methods,74(2),361-67(1984年)、及びRoderら.,Methods Enzymol.,121,140-67(1986年))、及びバクテリオファージベクター発現系(例えば、Huseら.,Science,246,1275-81(1989年)を参照のこと)などが、当該技術分野において周知である。更に、非ヒト動物において抗体を産生する方法は、例えば、米国特許第5,545,806号、同第5,569,825号及び同第5,714,352号、並びに米国特許出願公開第2002/0197266(A1)号に記載されている)。
【0076】
また、ファージディスプレイを使用して、抗体を生成し得る。これに関して、抗体の抗原結合可変(V)領域をコードするファージライブラリは、標準的な分子生物学及び組換えDNA技術を使用して生成され得る(例えば、Sambrookら.,(上記)、及びAusubelら.(上記)を参照のこと)。所望の特異性を有する可変領域をコードするファージは、所望の抗原への特異的結合のために選択され、選択された可変領域を含む完全な抗体又は部分的な抗体が、再構成される。再構成された抗体をコードする核酸配列は、ハイブリドーマ産生に使用される骨髄腫細胞などの好適な細胞株に導入され、その結果、モノクローナル抗体の特性を有する抗体が細胞によって分泌される(例えば、Janewayら.,(上記)、Huseら.,(上記)、及び米国特許第6,265,150号を参照のこと)。
【0077】
一態様では、本開示は、CD9B441を含む標的抗体又はCARに特異的に結合する、抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分を提供する。例えば、抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分は、VH及びVLを含む断片抗原結合領域(Fab)の1つ以上の領域に特異的に結合してもよい。いくつかの実施形態では、抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分は、配列番号8のアミノ酸配列を有するVL領域と、配列番号23~24からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するVH領域と、を含む。
【0078】
その他の実施形態では、抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分は、生体試料中のCD9B441の検出において使用するためのものであり、検出は、(a)生体試料を提供することと、(b)生体試料を抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分と接触させることと、(c)抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分を検出することと、を含む。例えば、抗イディオタイプ抗体は、組織試料、腫瘍試料、細胞又はその他の生物学的成分を含む液体、生物、タンパク質/抗原のサブユニット、死滅又は不活性化した全細胞又は溶解物を含む、任意の生体試料に添加されてもよい。抗イディオタイプ抗体は、緩衝剤、安定剤、及び/又はポリマーを含むがこれらに限定されない、医薬的に許容される試薬を含む溶液に含有されてもよい。抗イディオタイプ抗体は、生体試料とのピペッティング及び/又は混合によって接触されてもよい。次に、抗イディオタイプ抗体は、生体試料中のCD9B441含有タンパク質、例えば、抗体又はその抗原結合部分に特異的に結合してもよい。一実施例として、抗イディオタイプ抗体がCD9B441に結合したかどうかは、結合していない抗イディオタイプ抗体を洗浄し、複合体化した抗イディオタイプ抗体のみを残すことによって、判断され得る。この実施例を続けると、抗イディオタイプ抗体は、生体試料中のCD9B441の量に比例するシグナルを所与するように照射され得る、蛍光体を含んでもよい。CD9B441に対する抗イディオタイプ抗体の結合複合体の検出は、以下に更に記載される。
【0079】
別の態様では、本開示は、配列番号5のLCDR1、配列番号6のLCDR2、及び配列番号7のLCDR3を含む、軽鎖可変(VL)領域を含み、配列番号17~配列番号18からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCDR1と、配列番号19~配列番号20からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCDR2と、配列番号21~配列番号22からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCDR3と、を含む、重鎖可変(VH)領域を更に含む、抗CD79b抗体に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分を提供する。
【0080】
いくつかの実施形態では、本開示は、抗CD79b抗体に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分であって、当該抗イディオタイプ抗体又は当該その抗原結合部分が、配列番号5のLCDR1、配列番号6のLCDR2、配列番号7のLCDR3を含む軽鎖可変(VL)領域の相補性決定領域を含み、配列番号17のアミノ酸配列を有するHCDR1、配列番号19のアミノ酸配列を有するHCDR2、配列番号21のアミノ酸配列を有するHCDR3、並びに配列番号18のアミノ酸配列を有するHCDR1、配列番号20のアミノ酸配列を有するHCDR2、及び配列番号22のアミノ酸配列を有するHCDR3からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCDR1~HCDR3を含む重鎖可変(VH)領域の相補性決定領域を更に含む、抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分を提供する。
【0081】
特定の実施形態では、本開示は、配列番号5のLCDR1、配列番号6のLCDR2、配列番号7のLCDR3を含む、軽鎖可変(VL)領域を含み、配列番号17のHCDR1、配列番号19のHCDR2、及び配列番号21のHCDR3を含む重鎖可変(VH)領域を更に含む、抗CD79b抗体に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分を提供する。
【0082】
特定の実施形態では、本開示は、配列番号5のLCDR1、配列番号6のLCDR2、配列番号7のLCDR3を含む軽鎖可変(VL)領域を含み、配列番号18のHCDR1、配列番号20のHCDR2、及び配列番号22のHCDR3を含む重鎖可変(VH)領域を更に含む、抗CD79b抗体に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分を提供する。
【0083】
いくつかの実施形態では、本開示は、配列番号8の軽鎖可変(VL)領域を含み、配列番号11のHFW1、配列番号12~配列番号13からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHFW2、配列番号14~配列番号15からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHFW3、配列番号16のHFW4、配列番号17~配列番号18からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCDR1、配列番号19~配列番号20からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCDR2、配列番号21~配列番号22からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCDR3、を含む、重鎖可変(VH)領域を更に含む、抗CD79b抗体に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分を提供する。
【0084】
いくつかの実施形態では、抗CD79b抗体に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分は、配列番号8に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するVL領域と、配列番号23に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するVH領域と、を含む。いくつかの実施形態では、抗CD79b抗体に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分は、配列番号9に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖と、配列番号25に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖と、を含む。
【0085】
特定の実施形態では、抗CD79b抗体に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分は、配列番号8のVL領域及び配列番号23のVH領域を含む。特定の実施形態では、抗CD79b抗体に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分は、配列番号9の軽鎖及び配列番号25の重鎖を含む。
【0086】
いくつかの実施形態では、抗CD79b抗体に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分は、配列番号8に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するVL領域と、配列番号24に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するVH領域と、を含む。いくつかの実施形態では、抗CD79b抗体に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分は、配列番号9に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖と、配列番号26に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖と、を含む。
【0087】
特定の実施形態では、抗CD79b抗体に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分は、配列番号8のVL領域及び配列番号24のVH領域を含む。特定の実施形態では、抗CD79b抗体に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分は、配列番号9の軽鎖及び配列番号26の重鎖を含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、抗原結合部分は、Fab、F(ab’)、又はscFvから選択される。いくつかの実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、キメラ抗体である。いくつかの実施形態では、キメラ抗体は、マウスIgG2aフレームワークを含む。特定の実施形態では、マウスIgG2aフレームワークは、配列MAWVWTLLFLMAAAQSIQAを含む混合FVB/N、C57BL/6J由来のマウスIg重鎖シグナルペプチドを含んでもよい。
【0089】
いくつかのその他の実施形態では、抗体は、完全ヒト抗体である。例えば、完全ヒト抗体は、IgG、IgM、IgA、IgE、又はIgDであってもよい。いくつかの実施形態では、抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分は、CD9B441に特異的であり、CD9B441は、キメラ抗原受容体(CAR)の細胞外部分の抗原結合領域内にある。例えば、CD9B441をコードする核酸をインビトロでT細胞に導入してもよく、次に、その少なくとも一部が、CARの細胞外部分で発現される。次に、抗イディオタイプ抗体は、CARの細胞外部分に特異的に結合してもよい。いくつかの実施形態では、CD9B441はscFvであり、抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分は、CARのscFv中のエピトープに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、CD9B441は、CD79bに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分は、その他のCD79b抗体又はその他のCD79b結合CARと交差反応しない。例えば、CD9B441がCARの細胞外部分に発現しているかどうかを判定するためのアッセイにおいて偽陽性を防ぐために、抗イディオタイプ抗体は、CD9B441に特異的であり得、その標的CD79b又はCD9B441ではないその他のCD79b標的化配位子への認識可能な結合を有さない場合がある。いくつかの実施形態では、CARは、配列番号31~32からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0090】
いくつかの実施形態では、本開示は、抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分の重鎖、軽鎖、又はその両方をコードする核酸を提供する。例えば、核酸は、DNA、RNA、及びそれらに対する任意の化学修飾(例えば、ヌクレオシド修飾)であり得る。
【0091】
別の態様では、本開示は、CD9B441に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分の重鎖、軽鎖、又はその両方をコードする核酸であって、当該核酸が、配列番号10のヌクレオチド配列、配列番号27のヌクレオチド配列、又はその両方を含む、核酸を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、CD9B441に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分の重鎖、軽鎖、又はその両方をコードする核酸であって、当該核酸が、配列番号10のヌクレオチド配列、配列番号28のヌクレオチド配列、又はその両方を含む、核酸を提供する。別の態様では、本開示は、核酸配列を含むベクターを提供する。例えば、ベクターは、自己複製核酸構造であってもよい、又はそれが導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれてもよい。いくつかの実施形態では、ベクターは、発現ベクターである。別の態様では、本開示は、ベクターを含む宿主細胞を提供する。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、哺乳類細胞である。
【0092】
別の態様では、本開示は、CD9B441に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分を産生する方法であって、当該方法が、当該抗体又は当該抗原結合部分を発現させる条件下で宿主細胞を培養し、宿主細胞が、抗体又は抗原結合部分の重鎖及び軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含む、宿主細胞を培養することと、培養物から当該抗体又は当該抗原結合部分を単離することと、を含む方法を、提供する。例えば、抗イディオタイプ抗体は、深タンク撹拌発酵槽、灌流タンクシステム、エアリフト反応器、及び連続培養システムでの均質な懸濁培養によって、産生されてもよい。抗イディオタイプ抗体は、タンパク質A又はタンパク質Gを使用した親和性分離、サイズ排除クロマトグラフィ、及び電荷分離を含む物理的分離手順又は化学的分離手順によって、反応混合物及び/又は増殖混合物から単離されてもよい。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分をコードする核酸を含むベクターをコードする。
【0093】
別の態様では、本開示は、生体試料中のCD9B441を検出するための方法であって、(a)生体試料を提供することと、(b)生体試料を抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分と接触させることと、(c)抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分を検出することと、を含む方法を、提供する。例えば、抗イディオタイプ抗体は、生体試料において発現されたCD9B441に結合してもよい。結合した複合体は、化学的検出方法及び物理的検出方法の両方を含む任意の検出方法によって、検出されてもよい。例えば、検出方法は、生体試料中の目的の抗体の単なる存在を同定するために使用され得るか、又は試料中の目的の抗体が検出可能なレベルで存在するかどうかを試験するために使用され得るか、又は試料中の目的の抗体の量を定量し、更に異なる試料からの抗体レベルを比較するために使用され得る。例えば、検出方法は、免疫沈降、免疫細胞化学、免疫ブロット法、及び免疫吸着アッセイのうちの1つ以上であってもよい。具体例として、免疫吸着アッセイは、生体試料が洗浄される結合抗イディオタイプ抗体又はその断片を含む、ELISAアッセイ又はELISA型アッセイであってもよい。
【0094】
別の態様では、本開示は、生体試料中のCD9B441を含むキメラ抗原受容体(CAR)の発現を検出するための方法であって、(a)生体試料を提供することと、(b)生体試料を抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分と接触させることと、(c)抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分を検出し、それによってCARの発現を検出することと、を含む方法を、提供する。
【0095】
いくつかの実施形態では、抗体は、検出可能な標識を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分を検出する前に、抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分を検出可能な標識と接触させることを更に含む。例えば、検出可能な標識は、抗イディオタイプ抗体と一体化するか、抗イディオタイプ抗体と結合するか、又はそうでなければ抗イディオタイプ抗体と複合体を形成し、固有の同定可能なシグナルを発するか、若しくはそうでなければシグナルを提供する任意の化学タグ又は成分であってもよい。例えば、検出可能な標識は、同位体マーカ、比色バイオセンサ、フォトクロミック化合物、蛍光標識、蛍光発生標識、又は電気化学センサであってもよい。具体例として、蛍光標識は、緑色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、フルオレセイン、ローダミン、クマリン、シアニン、フィコエリスリン、及びそれらの誘導体であってもよい。
【0096】
いくつかの実施形態では、生体試料は、血液、血清又は尿である。例えば、生体試料は、全血、血清、血漿、尿、糞便、脳脊髄液、腹水等であってもよい。いくつかの実施形態では、生体試料は、本解析のために所与の時間に採取された生体材料などの、新鮮な生体材料である。生体試料はまた、本目的又はその他の目的のために、患者の治療中の別の時点で採取された生体材料、又はアーカイブされた患者材料を使用した生体材料であってもよい。生体試料は、新たに得られたものでも、前もって得られていたものでもよく、前もって得られていたものは、使用前に保存されていてもよい(例えば、室温、冷蔵、又は凍結)。
【0097】
いくつかの態様では、本開示は、生体試料中のCD9B441を検出するためのキットであって、(a)抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分と、(b)抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分を検出するための説明書とを含む、キットを提供する。例えば、キットは、固体粉末、凍結乾燥粉末、液体溶液若しくは混合して溶液を形成する液体成分として、又は固体支持体に結合された抗イディオタイプ抗体若しくはその抗原結合部分を含んでもよい。キットは、生体試料のアッセイにおいてキットの使用を容易にするために必要な、安定剤、緩衝剤、及びその他の医薬的に許容される賦形剤を含む、追加の試薬を含んでもよい。キットはまた、アッセイの実施方法について使用者に指示する説明書を含んでもよい。
【0098】
その他の態様では、本開示は、試料からCD9B441を精製する方法であって、(a)CD9B441を含む生体試料を提供することと、(b)生体試料を本開示の抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分と接触させることと、(c)CD9B441を含有するCAR又はその他のタンパク質を含む抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分を捕捉し、それによってCD9B441を精製することと、を含む方法を、提供する。例えば、物理的方法及び化学的方法を含む任意の分離方法を使用して、抗イディオタイプ抗体を捕捉してもよい。具体的には、イオン交換クロマトグラフィ、ゲル濾過クロマトグラフィ、限外濾過、電気泳動、及び抗イディオタイプ抗体の特定のエピトープに特異的な抗体を用いた免疫親和性精製を含む、タンパク質を精製するための当該技術分野で周知の技術を用いて、細胞培養培地、宿主細胞、又はその両方からCD9B441を捕捉及び単離し得る。いくつかの実施形態では、抗イディオタイプ抗体は、その精製を容易にする領域を含有する融合タンパク質である。特定の実施形態では、精製されたCD9B441組成物は、CD9B441を含有しないタンパク質から実質的に単離される。いくつかの実施形態では、精製されたCD9B441組成物は、100%純粋、99%純粋、98%純粋、97%純粋、96%純粋、95%純粋、又は90%純粋又はそれ以上のものである。
【0099】
その他の態様では、本開示は、細胞集団からCAR-T細胞を選択する方法であって、(a)CAR-T細胞を含む生体試料を提供することと、(b)生体試料を抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分と接触させることと、(c)抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分を捕捉し、それによって、CAR-T細胞を選択することと、を含む方法を、提供する。いくつかの実施形態では、抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分は、CD9B441に特異的である。
【実施例
【0100】
実施例1:CD9B441結合Fabの決定
抗CD9B441由来scFv融合タンパク質結合Fabを、Shiら,J.Mol.Biol.397:385-96,2010年,PCT国際公開特許第2009/085462号、米国特許公開第2010/0021477号に記載のとおり、2セットのデノボFab-pIXファージディスプレイライブラリから選択した。CD9B441-HLは、CD79b CAR-Tプログラムにおけるwave2からのリード分子であり、そのscFv融合タンパク質CD9B503は、デノボFab-pIXファージディスプレイライブラリのパニングにおいて使用される抗原である。
【0101】
精製された組換え抗原を使用するファージ選択では、ビオチン化CD9B503を「ベイト」として使用して、ファージバインダを捕捉及び固定化した。数回の選択ラウンド後、精製された抗原を使用するポリクローナルファージELISAを実施して、個々のパニングライブラリの特異的濃縮を検出した。CD9B503に対するバインダの濃縮を実証したこれらのパニングライブラリから収集したファージを、可溶性Fabとして、一次スクリーニングのために大腸菌で発現させた。濃縮されたFabライブラリから調製されたモノクローナルFab溶解物を、Meso Scale Discovery(MSD)社系の電気化学発光免疫検定法(ECLIA)において、CD9B503(CD9B441-HL-scFv Fc)への結合についてスクリーニングしたが、類似の陰性対照scFv融合タンパク質CD9B504(CD9B449-HL-scFv Fc)への結合については、スクリーニングしなかった。
【0102】
ファージパニング
6つの個々のV3.0及びV5.0デノボFabファージライブラリを使用する、6つの個々のパニング実験を、標準的なプロトコルに従って、ビオチン化CD9B503に対してパニングした(Cheadle,E.J.ら,Antibody Engineering.907,645-666(2012年)。簡単に説明すると、ファージライブラリ及び常磁性ストレプトアビジン(SA)ビーズを、1%のウシ血清アルブミン/50%のChemiblocker(ミリポア社製、カタログ番号2170)/49%の1xTBST(テクノバ社製、カタログ番号T0310)中で、1時間遮断した。ビオチン化標的タンパク質、CD9B503を、100nMの濃度で開始し、その後のパニングラウンドにおいて濃度を減少させて、遮断されたビーズ上に予め捕捉した。同時に、各100nMのビオチン化CD9B492、CD9B500及びCD9B504を混合し、陰性選択として使用するために遮断したビーズ上に予め捕捉した。デノボファージライブラリのそれぞれを、ビオチン化CD9B492、CD9B500及びCD9B504を含有する陰性選択SAビーズに対して、予め吸着させた。陰性選択SAビーズを、ビーズに結合するファージクローンと共に廃棄し、予め吸着させたファージライブラリを、1uMの非ビオチン化CD9B492、CD9B500及びCD9B504の存在下で、標的ビオチン化CD9B503SAビーズに添加した。いくらかの培養の後、SAビーズ/CD9B503/ファージライブラリ複合体を、パニングラウンドに応じて、1xTBST中で数回洗浄した。最後の洗浄後、対数期TG1大腸菌細胞(OD600nm=0.4~0.6)の感染により、ビーズで囲まれたファージクローンを放出した。ファージ感染TG1細胞を、100μg/mlのカルベニシリン及び1%のグルコースを含む10mlの2xYT培養液に接種し、次に、振盪しながら37℃で一晩増殖させた。ファージを生成し、追加のパニングに供した。選択圧を増加させるために、その後の各ラウンド(R#)において、R1 100nM、4℃で一晩、R2 10nM、室温(RT)で1時間、R3 10nM、4℃で一晩、抗原濃度を100nMから10nMに低下させた。
【0103】
ポリクローナルファージELISA
ポリクローナルファージELISAによる各パニング実験から、バインダの濃縮を決定した。簡単に説明すると、100μlの20nMのビオチン化CD9B503及び1xTBS(テクノバ社製、カタログ番号T9530)で希釈したカウンタスクリーニング試薬を、黒色NAコートプレート(サーモ社製、カタログ番号15217)上に捕捉した。37℃で1時間培養した後、300μlの1×TBSTで6回、プレートを洗浄した。300μlの遮断緩衝液(10%のBSA溶液/50%のChemiblocker/50%の1×TBST)をプレートの各ウェルに添加し、室温で1時間、培養した。遮断後、遮断緩衝液で1/100に希釈した各パニングラウンドから産出された100μLのポリクローナルファージを、プレートの各ウェルに添加し、室温で1時間培養して、ファージ粒子上にディスプレイされたFabを結合して、CD9B503を固定化させた。培養後、1×TBSTで10回、プレートを洗浄した。遮断緩衝液で1:2500に希釈した100μlのHRP複合化抗M13(pVIII)抗体(GEヘルスケア社製、カタログ番号27942101)をプレートに添加し、室温で培養した。1時間の培養後、300μlの1×TBSTで10回、プレートを洗浄した。100μlの調製したBM化学発光ELISA基質(ロシュ社製、カタログ番号11582950001)を、プレートの各ウェルに添加した。化学発光又は相対光単位(RLU)を、Envisionプレートリーダによって測定した。図1に示すように、6回のパニング実験は全て、3ラウンドのパニング後に、CD9B503特異的結合濃縮を示した。A003B192及びA003B274の両方は、XP40パニング実験に由来した。
【0104】
Fab産生
プラスミドDNAを、CD9B503へのバインダの濃縮を実証するために同定されたファージパニング実験の特定のラウンドのグリセロール株から単離及び精製し、TG-1大腸菌細胞に形質転換し、次に、100ug/mlのカルベニシリンを含有するLB/寒天プレート上で、37℃で一晩、増殖させた。一晩の培養物を、(i)群体PCR及びV-領域の配列決定に、並びに(ii)Fab産生のための培養の開始に、使用した。Fab産生のために、一晩の培養物を、100ug/mlのカルベニシリンを含有する新鮮な2xYT培養液で10倍希釈し、37℃で5~6時間増殖させた。Fab産生を、2mMのIPTG及び200ug/mlのカルベニシリンを含有する新鮮な培養液を添加することによって誘発し、培養物を、30℃で一晩、増殖させた。培養物を遠心沈殿し、細菌ペレットをBugBuster(商標)(ミリポア社製)を使用して溶解し、可溶性Fabタンパク質を放出させた。細胞溶解物を遠心沈殿し、上清を、Fab ELISAに使用した。
【0105】
一次スクリーニング
濃縮されたFabライブラリから調製されたモノクローナルFab溶解物を、Meso Scale Discovery(MSD)社系の電気化学発光免疫検定法(ECLIA)において、CD9B503への結合についてスクリーニングしたが、類似の陰性対照scFv融合タンパク質CD9B504(CD9B449-HL-scFv Fc)への結合については、スクリーニングしなかった。ビオチン化scFv-Fc融合抗原、標的抗原CD9B503又は陰性対照scFv融合タンパク質カウンタスクリーニング試薬CD9B504を、SuperBlock T20(TBS)遮断緩衝液(サーモ社製、カタログ番号37536)中で2.5nMの濃度に希釈し、50ul/ウェルを、それらのそれぞれのMSD384ウェルストレプトアビジンプレート(Meso Scale Discovery社製、カタログ番号L21SA-5)に追加し、振盪機上で、室温で30分間、培養した。プレートを、1×80ul/ウェルの1×PBSTで洗浄し、96ウェルプレートにおける大腸菌発現からの粗Fab溶解物を、384ウェルアッセイプレートに二重にスタンプし、振盪機上で、室温で1時間、培養した。アッセイプレートを、1×80ul/ウェルの1×PBSTで洗浄し、6nMのSULFO-TAG抗ヒト/NHPカッパ(κ)抗体(Meso Scale社製、カタログ番号D20TF-6)を10ul/ウェルで添加し、プレートを、振盪機上で、室温で1時間、培養した。プレートを、2×80ul/ウェルの1×PBSTで洗浄し、35ul/ウェルの1×MSD Read Buffer T(Meso Scale社製、カタログ番号R92TC-1)を各ウェルに添加し、プレートを、MSD Sector S600プレートリーダで解析した。全ての液体処理を、アジレント社製のBravoシステムで実行し、384ウェルプレートの洗浄を、バイオテック社製の405選択プレート洗浄機で行った。CD9B503結合アッセイで平均バックグラウンドシグナルに標準偏差の3倍を加えたものより大きいシグナルを有し、CD9B504結合アッセイで平均バックグラウンドシグナルに標準偏差の3倍を加えたものより小さいシグナルを有するクローンを、配列決定のために選択した。また、CD9B504に対するCD9B503の10超の結合シグナル比を有するクローンを、配列決定のために選択した。
【0106】
図2は、一次スクリーンの結果を示す。CD9B503又はCD9B504への結合について、MSDプレート上でモノクローナルFabをスクリーニングした(カウンタスクリーニング)。A003B192におけるVH及びVLについてのCL002588468親クローン及びA003B274におけるVH及びVLについてのCL002588437親クローンについての平均生結合シグナルを、埋め込み表に示すが、両方のクローンは、比ヒットリストからのものである(CD9B504に対するCD9B503のシグナル比は10超である)。
【0107】
実施例2:CD9B503(CD9B449-HL-scFv)に対するモノクローナル抗体の生成
Fab選択
CD9B503に対する結合活性を示したが、CD9B504に対しては示さなかったFabクローンを、ヒットとして選択した。選択されたFabを配列決定して、V領域配列を決定し、固有のクローンを同定した。固有のFab V領域を哺乳類発現ベクターにクローニングして、マウスIgG2a/マウスカッパ(κ)定常領域を有するキメラmAbとして発現させた。
【0108】
A003B192及びA003B274の可変領域を、可溶性scFv-Fc融合タンパク質CD9B503に対するヒトFab-pIXデノボライブラリを使用したファージディスプレイによって、同定した。これらのV領域は、いかなる親和性成熟をも受けなかった。DNA配列を、いかなるコドン最適化をも行わずに、デノボFabライブラリから得た。
【0109】
及びVのクローニング
2つのpcDNA3.1由来哺乳類発現ベクター(vDR000368及びvDR000961)を使用して、キメラmAbの重鎖(HC)又は軽鎖(LC)をコードする単一遺伝子構築物を生成した。各ベクターは、HC及びLCの発現を駆動するヒトサイトメガロウイルス(hCMV)促進因子を含有し、両方とも、クローニングを容易にするアンピシリン耐性遺伝子(Amp(R))を含有する。vDR000368は、可変重(VH)鎖をマウスIgG2a定常領域へとクローニングするための、固有のHindIII及びDraIII制限酵素部位を有する。vDR000961は、可変軽(VL)鎖をマウスカッパ(κ)定常領域によってクローニングするための、固有のHindIII及びTth111I制限酵素部位を有する。
【0110】
A003B192及びA003B274のVH又はVLを含むDNA断片を、IDTによって合成し、HCベクターvDR000368及びLCベクターvDR000961に結合させた。HC合成断片は、HindIII制限酵素部位、コザック配列、シグナルペプチドをコードするDNA配列、VH、CH1の一部、並びにDraIIIクローニング部位を含んでいた。LC合成断片は、HindIII制限酵素部位、コザック配列、シグナルペプチドをコードするDNA配列、VL、カッパ(κ)定常領域の一部、並びにTth111I制限クローニング部位を含んでいた。A003B192について、最終的なHC構築物はPBD000109791であり、LC構築物はPBD00098715である。A003B274について、最終的なHC構築物はPBD000109922であり、LC構築物はPBD00098715である。HC構築物及びLC構築物を、哺乳類発現細胞株HEK293Expi又はCHOに同時形質移して、最終的なmAbを作製した。
【0111】
タンパク質発現
形質移入の前に、HC構築物及びLC構築物を配列決定検証した。Expi293(商標)発現培養液(サーモ社製、カタログ番号A1435101)で増殖させた、HEK Expi293(商標)細胞(サーモ社製、カタログ番号A14527)。細胞を、8%のCO下で、125RPMで振盪しながら、37℃で増殖させた。Expi293(商標)発現キット(サーモ社製、カタログ番号A14524)を使用して、細胞を、1ml当たり2.5×10個で形質移入した。形質移入した細胞1リットルにつき、1mgの全DNAを25mlのOpti-MEM培養液(サーモ社製、カタログ番号319850620)に希釈し、2.6mlのExpi293(商標)試薬を25mlのOpti-MEMに希釈し、室温で5分間、培養した。希釈したDNAと希釈したExpi293試薬と、を加え合わせ、室温で20分間、培養した。次に、このDNA複合体を、細胞に加えた。細胞を、振盪培養器に一晩入れた。形質移入の翌日、5mlのエンハンサ1を50mlのエンハンサ2に希釈し、2種のエンハンサの全量を細胞に添加した(発現キットからのエンハンサ、サーモ社製、カタログ番号A14524)。形質移入した細胞を、培養器内に4日間戻してから、収穫した。4,500gで35分間の遠心分離によって細胞を除去し、次に、0.2μmのフィルタで濾過してから、発現レベルを確認した。
【0112】
スクリーニング目的のために、クローンを最初に96ウェルのディープウェルプレートに形質移入した場合もあった。上記と同じ細胞及び試薬を使用した。プレートを、1000RPMで振盪した。プレートを4,000gで30分間の遠心分離によって清澄化し、次に、0.2umのフィルタプレートを通して濾過した。
【0113】
発現を、Octetによって定量した。マウスIgG2(シグマ社製、カタログ番号M9144)を、標準物質として使用した。タンパク質Aバイオセンサを使用した。試料及び標準物質を、使用済みのExpi293培養液で希釈した。標準曲線は、2倍希釈で100μg/mlで開始した。試料を、1:10に希釈した。標準曲線は、直線点曲線であった。計算を、Forte Biosystemsソフトウェアによって実施した。
【0114】
実施例3:抗イディオタイプ抗体A003B192及びA003B274の結合アッセイ
Biacoreによる可溶性タンパク質を使用した結合アッセイ
Biacoreシステム(サイティバ社製)を使用して、表面プラズモン共鳴(SPR)によって、生体分子相互作用を測定した。抗マウスFc抗体を、CM5センサチップに直接固定化した。ライブラリ抗体(マウスIgG2a)を、約20~60RUに達するように、1μg/mlに希釈した。抗原(scFV Fc融合)を、100nM~0.16nM、1:5の希釈で3分間、会合させる。30分間解離させる。アッセイの結果(以下の表1)は、CD9B503(CD9B441-HL-scFv-Fc二価融合タンパク質)及びCD9B574(CD9B441-LH-scFv-Fc一価融合タンパク質)に対する、A003B192及びA003B274のナノモル解離定数を示す。
【0115】
【表1】
【0116】
細胞結合アッセイ
ScFv形質移入SupT1-CD9B441-HL及びSupT1-CD9B337-HL細胞を、RMPI1640(ATCC)、10%のFBS、1%の非必須アミノ酸、1mMのピルビン酸ナトリウム、2mML-グルタミン、10mMのHEPES、0.1%の重炭酸塩中で培養した。細胞培養サプリメントは、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製のGibco製品であった。mAbを、染色緩衝液(BSA)(ベクトン・ディッキンソンPharmingen社製、カタログ番号554657)中で、6マイクログラム/mLに希釈した。scFv発現SupT1細胞を、固定可能な生存/死滅染色剤(Molecular Probes社製、カタログ番号L34974)で標識し、384ウェルのV底マイクロプレート(グライナー・バイオ・ワン社製、カタログ番号781281)に、50,000細胞/ウェルで添加した。
【0117】
標準化mAb試料を、20μl/ウェル体積で細胞懸濁液に穏やかに混合しながら添加し、細胞を、氷上で30分間、最終mAb濃度2.5μg/mlで培養した。細胞懸濁液を、70μl/ウェルの氷冷染色緩衝液(BSA)で希釈し、細胞を、400×gで5分間、4℃でペレット化し、上清を吸引した。細胞ペレットを、70ul/ウェルの氷冷染色緩衝液(BSA)で、もう一度洗浄した。3μg/mlのAF488抗マウスIgG(H+L)特異的ヤギF(ab’)(Jackson Immuno Research社製、カタログ番号115-546-062)を、細胞ペレットに40ul/ウェルで穏やかに混合しながら添加し、細胞を、氷上、暗所で、30分間培養した。細胞を、前述のように洗浄し、40ul/ウェルのBD Cytofix(ベクトン・ディッキンソンPharmingen社製、カタログ番号554655)を用いて、氷上で20分間固定した。固定した細胞を上記のように洗浄し、細胞ペレットを20ulの染色緩衝液に再懸濁し、iQue PLUS VBRフロー細胞数測定器(ザルトリウス社製)で解析した。iQue Forecyte(登録商標)7.1ソフトウェアを使用して、生存集団及び一重項集団にゲートをかけたBL1-H(AF488)チャネルにおける抗体結合の平均蛍光強度(MFI)について、データを分析した。全ての液体処理を、アジレント社製のBravoシステムで実行し、384ウェルプレートの吸引を、バイオテック社製の405選択プレート洗浄機で行った。
【0118】
表2に示すように、A003B192及びA003B274は両方とも、SupT1-CD9B441-HLへの特異的結合を示したが、陰性対照SupT1-CD9B337-HLへは示さなかった。
【0119】
【表2】
【0120】
実施例4:CD79b CAR(CD9B441-HL)抗イディオタイプ抗体A003B192及びA003B274の特性評価
NK細胞及びT細胞上に発現するCD79b CAR(CD9B441-HL)を検出する抗体を、ファージディスプレイスクリーニングに由来するタンパク質のパネルから同定した。最初に組換えCARタンパク質への結合について、タンパク質を試験し、潜在的なバインダをスケールアップした。タンパク質を精製し、CD9B441-HLを発現するSupT1細胞への用量依存的結合を、フローサイトメトリによって試験した。Fc-CD9B441-HL融合タンパク質との競合結合実験及び親SupT1細胞への結合の欠如により、CARに特異的な結合であることが判明した。最適なバインダを選択した後、CAR検出試薬として使用するために、抗体を、rPE(組換えフィコエリトリン)に直接複合化させた。抗体を、1:1のPE:抗体比を含有するように精製し、受容体計数試験(細胞表面上に発現されるCARの数)を可能にした。
【0121】
精製
細胞培養上清をMabSelectカラムに充填し、100mMのpH3.0の酢酸ナトリウムなどの低pH緩衝液で溶出し、続いて、Sephadex G-25カラムを使用して、1×SSC、8.5%のpH7.0のスクロースへと、緩衝液交換した。タンパク質を含有する画分を回収した。精製後、SDS-PAGE(ポリアクリルアミド電気泳動)法、SEC-HPLC(サイズ排除クロマトグラフィ)法、及びLC-MS(液体クロマトグラフィ)法を使用して、タンパク質のQC(品質管理)を行った。
【0122】
フィコエリトリン標識
1μLのLightning-Link(登録商標)R-PE抗体標識キット(エクスペディオン社製、カタログ番号703-0015)からの修飾因子試薬を、各10μLの標識される抗体に添加し、穏やかに混合した。抗体試料(修飾因子試薬を加えたもの)を凍結乾燥したrPE(エクスペディオン社製、カタログ番号703-0015)に直接ピペットで移し、穏やかに再懸濁し、室温(20~25℃)の暗所で、1時間培養した。1μLのQuencher試薬を、使用した抗体10μLごとに添加し、30分間培養した。
【0123】
標識後、サイズ排除クロマトグラムカラム上で、PE抗体複合体を精製した。画分を回収し、SEC-HPLCで解析した。1種のPEを有する1つの抗体のみを含有する画分を一緒にプールし、必要に応じて濃縮した。最終生成物を、SEC-HPLCで解析した。
【0124】
CD79b CAR(CD9B441-HL)抗イディオタイプ抗体A003B192及びA003B274の特性評価
CD9B441-HLを発現するSupT1細胞を、親CAR-SupT1細胞と比較した。細胞(200,000細胞/ウェル)を、生存/死滅Fixable Near-IR生存性色素(ライフ・テクノロジー社製、カタログ番号L10119)で染色し、A003B192及びA003B274の濃度を上げながら、氷上で45分間培養した。更に、両方の抗イディオタイプ抗体を、Fc-CD9B441-HL融合タンパク質の存在下で試験して、CD9B441-HL CARへのA003B192結合及びA003B274結合の特異性を評価した。培養後、試料をBSA染色緩衝液(ベクトン・ディッキンソン・バイオサイエンス社製、カタログ番号554657)で洗浄し、PEヤギ抗マウスIgGポリクローナル抗体(バイオレジェンド社製、カタログ番号405307)で染色して、生存CAR+SupT1細胞上の結合抗体を検出した。培養、洗浄、及び固定(Cytofix、ベクトン・ディッキンソン・バイオサイエンス社製、カタログ番号554655)の後、試料を、10色のFACSCanto II(ベクトン・ディッキンソン・バイオサイエンス社製)フロー細胞数測定器で取得した。FlowJo(TreeStar社製)を使用して分析を実施し、生存CAR+SupT1細胞のPE中央蛍光強度を、図3Aにプロットした。CAR-SupT1親細胞(データは示さず)では、又は過剰なFc-CD9B441-HL CAR融合タンパク質の存在下では、結合は検出されなかった。
【0125】
A003B192をrPEに複合化させ、結合がPE標識によって影響されないことを確実にするために、上記のように、CD9B441-HLSupT1への結合について試験した。FlowJo分析ソフトウェアを使用して分析を実施し、生存CAR+SupT1細胞のPE中央蛍光強度を、図3Bにプロットした。図3Bに示すように、CD9B441-HL-SupT1細胞へのA003B192の用量依存的結合があった。
【0126】
実施形態
発明の有利な実施形態を、以下に付番した項に記載する。
1.CD9B441を含む標的抗体に特異的に結合する、抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分。
2.標的抗体又はその抗原結合部分が、配列番号29のアミノ酸配列を有する軽鎖可変(VL)領域と、配列番号30のアミノ酸配列を有する重鎖可変(VH)領域と、を含む、項1に記載の抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分。
3.CD9B441に特異的に結合する、抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分であって、前記抗イディオタイプ抗体又は前記抗原結合部分が、
(a)軽鎖可変(VL)領域の相補性決定領域であって、
(i)配列番号5のアミノ酸配列を有する、LCDR1と、
(ii)配列番号6のアミノ酸配列を有する、LCDR2と、
(iii)配列番号7のアミノ酸配列を有する、LCDR3と、を含む、軽鎖可変(VL)領域の相補性決定領域を含み、
(b)重鎖可変(VH)領域の相補性決定領域であって、
(i)配列番号17のアミノ酸配列を有するHCDR1、配列番号19のアミノ酸配列を有するHCDR2、配列番号21のアミノ酸配列を有するHCDR3と、
(ii)配列番号18のアミノ酸配列を有するHCDR1、配列番号20のアミノ酸配列を有するHCDR2、及び配列番号22のアミノ酸配列を有するHCDR3と、からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCDR1~3を含む、重鎖可変(VH)領域の相補性決定領域を更に含む、抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分。
4.VL領域が、配列番号8に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、項1又は3に記載の抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分。
5.軽鎖が、配列番号9に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、項1又は3に記載の抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分。
6.CD9B441を含む標的抗体に特異的に結合する、抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分であって、抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分が、
(a)配列番号8の軽鎖可変(VL)領域と、
(b)重鎖可変(VH)領域のフレームワーク領域であって、
(i)配列番号11のHFW1と、
(ii)配列番号12~13からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、HFW2と、
(iii)配列番号14~15からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、HFW3と、
(iv)配列番号16のHFW4と、を含む、重鎖可変(VH)領域のフレームワーク領域と、
(c)重鎖可変(VH)領域の相補性決定領域であって、
(i)配列番号17~18からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、HCDR1と、
(ii)配列番号19~20からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、HCDR2と、
(iii)配列番号21~22からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、HCDR3と、を含む、重鎖可変(VH)領域の相補性決定領域と、を含む、抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分。
7.VH領域が、配列番号23~24からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、項1、3及び6のいずれか一項に記載の抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分。
8.重鎖が、配列番号25~26からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、項1、3及び6のいずれか一項に記載の抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分。
9.抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分が、配列番号8のVL領域を含み、配列番号23~24からなる群から選択されるVH領域を更に含む、項1、3及び6のいずれか一項に記載の抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分。
10.抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分が、配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、配列番号25~26からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖を更に含む、項1、3及び6のいずれか一項に記載の抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分。
11.抗原結合部分が、Fab、F(ab’)2、又はscFvから選択される、項1、3及び6のいずれか一項に記載の抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分。
12.抗体が、モノクローナル抗体である、項1、3及び6のいずれか一項に記載の抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分。
13.抗体が、キメラ抗体である、項1、3及び6のいずれか一項に記載の抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分。
14.抗体が、マウスIgG2aフレームワークを含む、項1、3及び6のいずれか一項に記載の抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分。
15.抗体が、完全ヒト抗体である、項1、3及び6のいずれか一項に記載の抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分。
16.項1、3及び6のいずれか一項に記載の抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分の、重鎖、軽鎖、又はその両方をコードする核酸。
17.CD9B441に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分の、重鎖、軽鎖、又はその両方をコードする核酸であって、当該核酸が、
a)配列番号10のヌクレオチド配列、
b)配列番号27~28からなる群から選択されるヌクレオチド配列、又は
c)a)及びb)の両方、を含む、核酸。
18.項17に記載の核酸を含む、ベクター。
19.ベクターが、発現ベクターである、項18に記載のベクター。
20.項19に記載のベクターを含む、宿主細胞。
21.細胞が、哺乳類細胞である、項20に記載の宿主細胞。
22.CD9B441に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体又はその抗原結合部分を産生する方法であって、当該方法が、当該抗体又は当該抗原結合部分を発現させる条件下で、抗体又は抗原結合部分の重鎖及び軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含む、項20に記載の宿主細胞を培養することと、培養物から当該抗体又は当該抗原結合部分を単離することと、を含む、方法。
23.生体試料中のCD9B441を検出するための方法であって、(a)生体試料を提供することと、(b)生体試料を、項1、3、及び6のいずれか一項に記載の抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分と接触させることと、(c)抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分を検出することと、を含む、方法。
24.抗体が、検出可能な標識を含む、項23に記載の方法。
25.抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分を検出する前に、抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分を検出可能な標識と接触させることを更に含む、項23に記載の方法。
26.生体試料が、血液、血清又は尿である、項23に記載の方法。
27.生体試料中のCD9B441を含むキメラ抗原受容体(CAR)の発現を検出するための方法であって、(a)生体試料を提供することと、(b)生体試料を、項1、3、及び6のいずれか一項に記載の抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分と接触させることと、(c)抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分を検出し、それによって、CARの発現を検出することと、を含む、方法。
28.CD9B441が、キメラ抗原受容体(CAR)の細胞外部分の抗原結合領域内にある、項1、3、及び6のいずれか一項に記載の抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分。
29.CD9B441がscFvであり、抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分が、CARのscFv中のエピトープに特異的に結合する、項28に記載の抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分。
30.CD9B441が、CD79bに特異的に結合する、項28に記載の抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分。
31.抗体又は抗原結合部分が、その他のCD79b抗体又はその他のCD79b結合CARと交差反応しない、項28に記載の抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分。
32.CARが、配列番号31~32からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、項28に記載の抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分。
33.生体試料中のCD9B441を検出するためのキットであって、(a)項1、3、及び6のいずれか一項に記載の抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分と、(b)抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分を検出するための説明書と、を含む、キット。
34.(a)生体試料を提供することと、(b)生体試料を抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分と接触させることと、(c)抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分を検出することと、を含む、生体試料中のCD9B441を検出するために使用される、項1、3、及び6のいずれか一項に記載の抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分。
35.試料からCD9B441を精製する方法であって、(a)CD9B441を含む生体試料を提供することと、(b)生体試料を、項1、3、及び6のいずれか一項に記載の抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分と接触させることと、(c)抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分を捕捉し、それによって、CD9B441を精製することと、を含む、方法。
36.細胞集団からCAR-T細胞を選択する方法であって、(a)CAR-T細胞を含む生体試料を提供することと、(b)生体試料を、項1、3、及び6のいずれか一項に記載の抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分と接触させることと、(c)抗イディオタイプ抗体又は抗原結合部分を捕捉し、それによって、CAR-T細胞を選択することと、を含む、方法。
【0127】
参照による組み込み
本明細書において言及される全ての刊行物及び特許出願は、各個々の刊行物又は特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示された場合と同程度まで、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0128】
主題の開示の特定の実施形態について論じてきたが、上の明細書は例示的であり、限定的ではない。本明細書及び以下の特許請求の範囲を考察すると、本開示の多くの変形形態が、当業者には明らかになるであろう。等価物の全範囲と共に特許請求の範囲を参照することによって、及びこのような変形形態と共に明細書を参照することによって、本開示の全範囲が決定されるべきである。
【0129】
配列
配列番号1:LFW1(アミノ酸)
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRAS
【0130】
配列番号2:LFW2(アミノ酸)
LAWYQQKPGQAPRLLIY
【0131】
配列番号3:LFW3(アミノ酸)
SRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYC
【0132】
配列番号4:LFW4(アミノ酸)
FGQGTKVEIK
【0133】
配列番号5:LCDR1(アミノ酸)
QSVSSSY
【0134】
配列番号6:LCDR2(アミノ酸)
GAS
【0135】
配列番号7:LCDR3(アミノ酸)
QQYGSSPLT
【0136】
配列番号8:軽鎖可変(VL)領域(アミノ酸)
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYGSSPLTFGQGTKVEIK
【0137】
配列番号9:軽鎖(アミノ酸)
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYGSSPLTFGQGTKVEIKRADAAPTVSIFPPSSEQLTSGGASVVCFLNNFYPKDINVKWKIDGSERQNGVLNSWTDQDSKDSTYSMSSTLTLTKDEYERHNSYTCEATHKTSTSPIVKSFNRNEC
【0138】
配列番号10:軽鎖(DNA)
GAAATTGTGCTGACCCAGAGCCCGGGCACCCTGAGCCTGAGCCCGGGCGAACGCGCGACCCTGAGCTGCCGCGCGAGCCAGAGCGTGAGCAGCAGCTATCTGGCGTGGTATCAGCAGAAACCGGGCCAGGCGCCGCGCCTGCTGATTTATGGCGCGAGCAGCCGCGCGACCGGCATTCCGGATCGCTTTAGCGGCAGCGGTTCCGGCACCGATTTTACCCTGACCATTAGCCGCCTGGAACCGGAAGATTTTGCGGTGTATTATTGCCAGCAGTATGGCAGCAGCCCGCTGACCTTTGGCCAGGGCACCAAAGTGGAAATTAAACGGGCTGATGCTGCACCGACTGTGTCCATCTTCCCACCATCCAGTGAGCAGTTAACATCTGGAGGTGCCTCAGTCGTGTGCTTCTTGAACAACTTCTACCCCAAAGACATCAATGTCAAGTGGAAGATTGATGGCAGTGAACGACAAAATGGCGTCCTGAACAGTTGGACTGATCAGGACAGCAAAGACAGCACCTACAGCATGAGCAGCACCCTCACGTTGACCAAGGACGAGTATGAACGACATAACAGCTATACCTGTGAGGCCACTCACAAGACATCAACTTCACCCATTGTCAAGAGCTTCAACAGGAATGAGTGT
【0139】
配列番号11:HFW1(アミノ酸)
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKAS
【0140】
配列番号12:A003B192のHFW2(アミノ酸)
ISWVRQAPGQGLEWMGG
【0141】
配列番号13:A003B274のHFW2(アミノ酸)
ISWVRQAPGQGLEWMGY
【0142】
配列番号14:A003B192のHFW3(アミノ酸)
EYAQKFQGRVTITADESTSTAYMELSSLRSEDTAVYYC
【0143】
配列番号15:A003B274のHFW3(アミノ酸)
NYAQKFQGRVTITADESTSTAYMELSSLRSEDTAVYYC
【0144】
配列番号16:HFW4(アミノ酸)
WGQGTLVTVSS
【0145】
配列番号17:A003B192のHCDR1(アミノ酸)
GGTFKSDA
【0146】
配列番号18:A003B274のHCDR1(アミノ酸)
GGTFKSYA
【0147】
配列番号19:A003B192のHCDR2(アミノ酸)
IRPNEGNA
【0148】
配列番号20:A003B274のHCDR2(アミノ酸)
ISPESGTA
【0149】
配列番号21:A003B192のHCDR3(アミノ酸)
ARGRYGAYRLVYYAFDY
【0150】
配列番号22:A003B274のHCDR3(アミノ酸)
ARERYYYGYRRYRYYGMDV
【0151】
配列番号23:A003B192の重鎖可変(VH)領域(アミノ酸)
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGGTFKSDAISWVRQAPGQGLEWMGGIRPNEGNAEYAQKFQGRVTITADESTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGRYGAYRLVYYAFDYWGQGTLVTVSS
【0152】
配列番号24:A003B274の重鎖可変(VH)領域(アミノ酸)
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGGTFKSYAISWVRQAPGQGLEWMGYISPESGTANYAQKFQGRVTITADESTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARERYYYGYRRYRYYGMDVWGQGTLVTVSS
【0153】
配列番号25:A003B192の重鎖(アミノ酸)
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGGTFKSDAISWVRQAPGQGLEWMGGIRPNEGNAEYAQKFQGRVTITADESTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGRYGAYRLVYYAFDYWGQGTLVTVSSAKTTAPSVYPLAPVCGDTTGSSVTLGCLVKGYFPEPVTLTWNSGSLSSGVHTFPAVLQSDLYTLSSSVTVTSSTWPSQSITCNVAHPASSTKVDKKIEPRGPTIKPCPPCKCPAPNLLGGPSVFIFPPKIKDVLMISLSPIVTCVVVDVSEDDPDVQISWFVNNVEVHTAQTQTHREDYNSTLRVVSALPIQHQDWMSGKEFKCKVNNKDLPAPIERTISKPKGSVRAPQVYVLPPPEEEMTKKQVTLTCMVTDFMPEDIYVEWTNNGKTELNYKNTEPVLDSDGSYFMYSKLRVEKKNWVERNSYSCSVVHEGLHNHHTTKSFSRTPGK
【0154】
配列番号26:A003B274の重鎖(アミノ酸)
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGGTFKSYAISWVRQAPGQGLEWMGYISPESGTANYAQKFQGRVTITADESTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARERYYYGYRRYRYYGMDVWGQGTLVTVSSAKTTAPSVYPLAPVCGDTTGSSVTLGCLVKGYFPEPVTLTWNSGSLSSGVHTFPAVLQSDLYTLSSSVTVTSSTWPSQSITCNVAHPASSTKVDKKIEPRGPTIKPCPPCKCPAPNLLGGPSVFIFPPKIKDVLMISLSPIVTCVVVDVSEDDPDVQISWFVNNVEVHTAQTQTHREDYNSTLRVVSALPIQHQDWMSGKEFKCKVNNKDLPAPIERTISKPKGSVRAPQVYVLPPPEEEMTKKQVTLTCMVTDFMPEDIYVEWTNNGKTELNYKNTEPVLDSDGSYFMYSKLRVEKKNWVERNSYSCSVVHEGLHNHHTTKSFSRTPGK
【0155】
配列番号27:A003B192の重鎖(DNA)
CAGGTGCAGCTGGTGCAGAGCGGCGCGGAAGTGAAAAAACCGGGCAGCAGCGTGAAAGTGAGCTGCAAAGCGAGCGGCGGCACCTTCAAATCCGACGCGATTAGCTGGGTGCGCCAGGCGCCGGGCCAGGGCCTGGAATGGATGGGCGGTATTCGCCCAAACGAGGGGAATGCTGAGTACGCGCAGAAATTTCAGGGCCGCGTGACCATTACCGCTGATGAAAGCACCAGCACCGCGTATATGGAACTGAGCAGCCTGCGCAGCGAAGATACCGCGGTGTATTATTGCGCGCGTGGTCGATATGGTGCATATCGTCTGGTTTACTATGCGTTTGACTACTGGGGCCAGGGCACCCTGGTGACCGTCTCGAGTGCCAAAACAACAGCACCAAGTGTCTATCCACTGGCCCCTGTGTGTGGAGATACAACTGGCTCCTCGGTGACTCTAGGATGCCTGGTCAAGGGTTATTTCCCTGAGCCAGTGACCTTGACCTGGAACTCTGGATCCCTGTCCAGTGGTGTGCACACCTTCCCAGCTGTCCTGCAGTCTGACCTCTACACCCTCAGCAGCTCAGTGACTGTAACCTCGAGCACCTGGCCCAGCCAGTCCATCACCTGCAATGTGGCCCACCCGGCAAGCAGCACCAAGGTGGACAAGAAAATTGAGCCCAGAGGGCCCACAATCAAGCCCTGTCCTCCATGCAAATGCCCAGCACCTAACCTCTTGGGTGGACCATCCGTCTTCATCTTCCCTCCAAAGATCAAGGATGTACTCATGATCTCCCTGAGCCCCATAGTCACATGTGTGGTGGTGGATGTGAGCGAGGATGACCCAGATGTCCAGATCAGCTGGTTTGTGAACAACGTGGAAGTACACACAGCTCAGACACAAACCCATAGAGAGGATTACAACAGTACTCTCCGGGTGGTCAGTGCCCTCCCCATCCAGCACCAGGACTGGATGAGTGGCAAGGAGTTCAAATGCAAGGTCAACAACAAAGACCTCCCAGCGCCCATCGAGAGAACCATCTCAAAACCCAAAGGGTCAGTAAGAGCTCCACAGGTATATGTCTTGCCTCCACCAGAAGAAGAGATGACTAAGAAACAGGTCACTCTGACCTGCATGGTCACAGACTTCATGCCTGAAGACATTTACGTGGAGTGGACCAACAACGGGAAAACAGAGCTAAACTACAAGAACACTGAACCAGTCCTGGACTCTGATGGTTCTTACTTCATGTACAGCAAGCTGAGAGTGGAAAAGAAGAACTGGGTGGAAAGAAATAGCTACTCCTGTTCAGTGGTCCACGAGGGTCTGCACAATCACCACACGACTAAGAGCTTCTCCCGGACTCCGGGTAAA
【0156】
配列番号28:A003B274の重鎖(DNA)
CAGGTGCAGCTGGTGCAGAGCGGCGCGGAAGTGAAAAAACCGGGCAGCAGCGTGAAAGTGAGCTGCAAAGCGAGCGGCGGCACCTTTAAATCCTATGCGATTTCCTGGGTGCGCCAGGCGCCGGGCCAGGGCCTGGAATGGATGGGCTATATTTCCCCAGAGAGTGGCACTGCCAATTATGCGCAGAAATTTCAGGGCCGCGTGACCATTACCGCTGATGAAAGCACCAGCACCGCGTATATGGAACTGAGCAGCCTGCGCAGCGAAGATACCGCGGTGTATTATTGCGCGCGTGAACGTTACTACTATGGCTATCGTCGTTACCGGTATTACGGTATGGATGTTTGGGGCCAGGGCACCCTGGTGACCGTCTCGAGTGCCAAAACAACAGCACCAAGTGTCTATCCACTGGCCCCTGTGTGTGGAGATACAACTGGCTCCTCGGTGACTCTAGGATGCCTGGTCAAGGGTTATTTCCCTGAGCCAGTGACCTTGACCTGGAACTCTGGATCCCTGTCCAGTGGTGTGCACACCTTCCCAGCTGTCCTGCAGTCTGACCTCTACACCCTCAGCAGCTCAGTGACTGTAACCTCGAGCACCTGGCCCAGCCAGTCCATCACCTGCAATGTGGCCCACCCGGCAAGCAGCACCAAGGTGGACAAGAAAATTGAGCCCAGAGGGCCCACAATCAAGCCCTGTCCTCCATGCAAATGCCCAGCACCTAACCTCTTGGGTGGACCATCCGTCTTCATCTTCCCTCCAAAGATCAAGGATGTACTCATGATCTCCCTGAGCCCCATAGTCACATGTGTGGTGGTGGATGTGAGCGAGGATGACCCAGATGTCCAGATCAGCTGGTTTGTGAACAACGTGGAAGTACACACAGCTCAGACACAAACCCATAGAGAGGATTACAACAGTACTCTCCGGGTGGTCAGTGCCCTCCCCATCCAGCACCAGGACTGGATGAGTGGCAAGGAGTTCAAATGCAAGGTCAACAACAAAGACCTCCCAGCGCCCATCGAGAGAACCATCTCAAAACCCAAAGGGTCAGTAAGAGCTCCACAGGTATATGTCTTGCCTCCACCAGAAGAAGAGATGACTAAGAAACAGGTCACTCTGACCTGCATGGTCACAGACTTCATGCCTGAAGACATTTACGTGGAGTGGACCAACAACGGGAAAACAGAGCTAAACTACAAGAACACTGAACCAGTCCTGGACTCTGATGGTTCTTACTTCATGTACAGCAAGCTGAGAGTGGAAAAGAAGAACTGGGTGGAAAGAAATAGCTACTCCTGTTCAGTGGTCCACGAGGGTCTGCACAATCACCACACGACTAAGAGCTTCTCCCGGACTCCGGGTAAA
【0157】
配列番号29:CD9B441の軽鎖可変(VL)(アミノ酸)
QSALTQPPSVSEAPRQRVTISCSGSASNIGNNGVNWYQQLPGKTPKLLIYNDDLLPSGVSDRFSGSKSGTSASLAISGLQSEDEADYFCAAWDDSLNGLVFGGGTKLTVL
【0158】
配列番号30:CD9B441の重鎖可変(VH)(アミノ酸)
QVQLQQSGPGLVKPSQTLSLTCAISGDSVSSKSGAWNWIRQSPSRGLEWLGRTYYRSKWYNEYAVSVKSRITINPDTSKNQFSLQLNSVTPEDTAVYYCTRVDTDFDYWGQGTLVTVSS
【0159】
配列番号31:CAR1(CD9B441-LH)(アミノ酸)
MAWVWTLLFLMAAAQSIQAQSALTQPPSVSEAPRQRVTISCSGSASNIGNNGVNWYQQLPGKTPKLLIYNDDLLPSGVSDRFSGSKSGTSASLAISGLQSEDEADYFCAAWDDSLNGLVFGGGTKLTVLGGSEGKSSGSGSESKSTGGSQVQLQQSGPGLVKPSQTLSLTCAISGDSVSSKSGAWNWIRQSPSRGLEWLGRTYYRSKWYNEYAVSVKSRITINPDTSKNQFSLQLNSVTPEDTAVYYCTRVDTDFDYWGQGTLVTVSSTSTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCKRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCELRVKFSRSADAPAYKQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
【0160】
配列番号32:CAR2(CD9B441-HL)(アミノ酸)
MAWVWTLLFLMAAAQSIQAQVQLQQSGPGLVKPSQTLSLTCAISGDSVSSKSGAWNWIRQSPSRGLEWLGRTYYRSKWYNEYAVSVKSRITINPDTSKNQFSLQLNSVTPEDTAVYYCTRVDTDFDYWGQGTLVTVSSGGSEGKSSGSGSESKSTGGSQSALTQPPSVSEAPRQRVTISCSGSASNIGNNGVNWYQQLPGKTPKLLIYNDDLLPSGVSDRFSGSKSGTSASLAISGLQSEDEADYFCAAWDDSLNGLVFGGGTKLTVLTSTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCKRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCELRVKFSRSADAPAYKQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
【0161】
配列番号33:ヒトCD79b配列(アミノ酸)
MARLALSPVPSHWMVALLLLLSAEPVPAARSEDRYRNPKGSACSRIWQSPRFIARKRGFTVKMHCYMNSASGNVSWLWKQEMDENPQQLKLEKGRMEESQNESLATLTIQGIRFEDNGIYFCQQKCNNTSEVYQGCGTELRVMGFSTLAQLKQRNTLKDGIIMIQTLLIILFIIVPIFLLLDKDDSKAGMEEDHTYEGLDIDQTATYEDIVTLRTGEVKWSVGEHPGQE
図1
図2
図3A
図3B
【配列表】
2024520552000001.app
【国際調査報告】