(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】液体単官能性1,3-ジオキソランコポリマー
(51)【国際特許分類】
C08G 2/10 20060101AFI20240517BHJP
【FI】
C08G2/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573587
(86)(22)【出願日】2021-05-31
(85)【翻訳文提出日】2024-01-16
(86)【国際出願番号】 EP2021064570
(87)【国際公開番号】W WO2022253406
(87)【国際公開日】2022-12-08
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns-Seidel-Platz 4, D-81737 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デラーマン,テレサ
(72)【発明者】
【氏名】アッシャール,ラウラ
(72)【発明者】
【氏名】バウマン,マルティナ
【テーマコード(参考)】
4J032
【Fターム(参考)】
4J032AA34
4J032AB01
4J032AB04
4J032AC02
4J032AC32
4J032AD44
4J032AD46
4J032AD47
4J032AD54
4J032AE14
(57)【要約】
本発明は、一般式Iの1,3-ジオキソランコポリマー及びその製造方法を提供する。
H-[O-CH2-O-CH2-CH2-]x1[O-CH2-CH2O-CH2-]x2[O-CH2-O-CHR1-CHR2-]y1[O-CHR1-CHR2O-CH2-]y2OR3 (I)
[式中、
x1+x2は、10~2000の値を有し、
R1及びR2は、水素基又はC1~C18アルキル基であり、いずれの場合も、単位[O-CH2-O-CHR1-CHR2-]y1及び[O-CHR1-CHR2O-CH2-]y2中の少なくとも1つの基R1又はR2は、C1~C18アルキル基であり、
ただし、y1+y2は、3*(x1+x2+y1+y2)/100~50*(x1+x2+y1+y2)/100の値を有し、
R3は、脂肪族飽和基又は不飽和炭化水素基であって、置換されていないか又はハロゲン原子、アミノ基、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基又はシリル基によって置換されており、1~100個の炭素原子を有し、その中の1つ以上の相互に隣接しない-CH2単位は、-O-基、-S-基、C=O基、-O-C(O)-基又は-NR4-基によって置き換えられてもよく、その中の1つ以上の相互に隣接しない=CH単位は、-N=基によって置き換えられてもよく、
R4は、水素基又はC1~C18アルキル基である。]
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式Iの1,3-ジオキソランコポリマー。
H-[O-CH
2-O-CH
2-CH
2-]
x1[O-CH
2-CH
2O-CH
2-]
x2[O-CH
2-O-CHR
1-CHR
2-]
y1[O-CHR
1-CHR
2O-CH
2-]
y2OR
3 (I)
[式中、
x1+x2は、10~2000の値を有し、
R
1及びR
2は、水素基又はC
1~C
18アルキル基であり、いずれの場合も、単位[O-CH
2-O-CHR
1-CHR
2-]
y1及び[O-CHR
1-CHR
2O-CH
2-]
y2中の少なくとも1つの基R
1又はR
2は、C
1~C
18アルキル基であり、
ただし、y1+y2は、3*(x1+x2+y1+y2)/100~50*(x1+x2+y1+y2)/100の値を有し、
R
3は、脂肪族飽和基又は不飽和炭化水素基であって、置換されていないか又はハロゲン原子、アミノ基、C
1~6アルキル基、C
1~6アルコキシ基又はシリル基によって置換されており、1~100個の炭素原子を有し、その中の1つ以上の相互に隣接しない-CH
2単位は、-O-基、-S-基、C=O基、-O-C(O)-基又は-NR
4-基によって置き換えられてもよく、その中の1つ以上の相互に隣接しない=CH単位は、-N=基によって置き換えられてもよく、
R
4は、水素基又はC
1~C
18アルキル基である。]
【請求項2】
基R
1及びR
2が、水素基又はメチル基、エチル基、n-プロピル基若しくはi-プロピル基から選択される、請求項1に記載の1,3-ジオキソランコポリマー。
【請求項3】
いずれの場合も、単位[O-CH
2-O-CHR
1-CHR
2-]
y1及び[O-CHR
1-CHR
2O-CH
2-]
y2中の1つの基R
1又はR
2のみが、C
1~C
18アルキル基である、請求項1又は2に記載の1,3-ジオキソランコポリマー。
【請求項4】
THF中、35℃、流速0.3ml/分でポリスチレン標準に対して測定し、20μlの注入体積を有するAgilent PLgel MiniMIX-C Guardカラム上においてRID(屈折率検出器)で検出して、750~300000の間の分子量Mwを有する、請求項1~3のいずれかに記載の1,3-ジオキソランコポリマー。
【請求項5】
25℃でAnton Paar MCR 320回転粘度計で測定される、25℃における50mPas~500Pasの動的粘度を有し、グラフによる評価が、剪断応力に対して粘度をプロットすることによって行われる、請求項1~4のいずれかに記載の1,3-ジオキソランコポリマー。
【請求項6】
R
3が1~18個の炭素原子を有するアルキル基である、請求項1~5のいずれかに記載の1,3-ジオキソランコポリマー。
【請求項7】
R
3が2~10個の炭素原子を有するアルケニル基であり、その中の1つ以上の相互に隣接しない-CH
2単位は、-O-基又はO-C(O)-基によって置き換えられ得る、請求項1~6のいずれかに記載の1,3-ジオキソランコポリマー。
【請求項8】
一般式(I)の1,3-ジオキソランコポリマーの製造方法であって、
H-[O-CH
2-O-CH
2-CH
2-]
x1[O-CH
2-CH
2O-CH
2-]
x2[O-CH
2-O-CHR
1-CHR
2-]
y1[O-CHR
1-CHR
2O-CH
2-]
y2OR
3 (I)
[式中、
x1+x2は、10~2000の値を有し、
R
1及びR
2は、水素基又はC
1~C
18アルキル基であり、いずれの場合も、単位[O-CH
2-O-CHR
1-CHR
2-]
y1及び[O-CHR
1-CHR
2O-CH
2-]
y2中の少なくとも1つの基R
1又はR
2は、C
1~C
18アルキル基であり、
ただし、y1+y2は、3*(x1+x2+y1+y2)/100~50*(x1+x2+y1+y2)/100の値を有し、
R
3は、脂肪族飽和基又は不飽和炭化水素基であって、置換されていないか又はハロゲン原子、アミノ基、C
1~6アルキル基、C
1~6アルコキシ基又はシリル基によって置換されており、1~100個の炭素原子を有し、その中の1つ以上の相互に隣接しない-CH
2単位は、-O-基、-S-基、C=O基、-O-C(O)-基又は-NR
4-基によって置き換えられてもよく、その中の1つ以上の相互に隣接しない=CH単位は、-N=基によって置き換えられてもよく、
R
4は、水素基又はC
1~C
18アルキル基である。]
1,3-ジオキソランは、ルイス酸又はブレンステッド酸及び一般式R
3OHのアルコールの存在下で一般式IIのアルキル置換1,3-ジオキソランと共重合され、ルイス酸又はブレンステッド酸と一般式R
3OHのアルコールとのモル比は1未満である方法。
【化1】
【請求項9】
前記酸がトリフルオロメタンスルホン酸である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
1,3-ジオキソラン及び一般式IIのアルキル置換1,3-ジオキソランの合計モル当たり、50~10000モルppmの前記ルイス酸又はブレンステッド酸が使用される、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記温度が10℃~60℃の間である、請求項8~10のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,3-ジオキソラン及びアルキル置換1,3-ジオキソランの単官能性1,3-ジオキソランコポリマー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
気候変動に対するCO2排出量の増加の深刻な影響は議論の余地がなく、CO2排出量の削減が地球の平均気温の上昇を止めるための重要な要因であるというのはパリ協定の調印以降に限ったことではない。
【0003】
プラスチックの製造においても少なからぬ量のCO2が大気中に放出される。EIT Climate-KICによる予測によれば、2050年までに、全世界のCO2排出量の15~20%だけが、プラスチックの製造に起因する。この傾向に対抗する1つの方法は、プラスチック製造においてCO2を利用すること、及びCO2を廃棄物ではなく出発材料としてバリューチェーンに組み込むことである。
【0004】
これに関連して、ポリアセタールは、魅力的なクラスのプラスチックに相当し、とりわけグリーン水素によるCO2の触媒固定によって、環状アセタールの中間体を介してそれらを製造することができる。
【0005】
しかし、ポリオキシメチレン(POM)とも呼ばれる従来のポリアセタール、例えば、ホルムアルデヒド又はトリオキサンの重合(POM-H)又は1,3-ジオキソランの開環重合(POM-C)によって得ることができるものは、このポリマーが結晶性サブセクション及び関連する融点を有するため、室温で固体であり、これは使用によってはさらなる加工を妨げる。この材料クラスの代表的な液体物を調製することができる可能性は、ポリアセタールの適用範囲を大幅に拡大するであろう。
【0006】
従来のポリオキシメチレンは、合成中にアルキル基によって終端化される。これはポリマーの安定化をもたらすが、同時に官能化又はさらなる反応も阻止される。
【0007】
ポリアセタールにおけるポリマー類似反応を可能にするさらなる官能基をポリマーに装備することは、単純な有機反応によってそれらを魅力的なハイブリッド材料に変換することが可能であるため、同様にこの材料の適用範囲を拡大するであろう。特に単官能性ポリマーは、架橋挙動を示さない傾向があるので、これらのハイブリッド材料の調製に有利であることが証明されている。
【0008】
Lutzらは、「One-Step Synthesis of Bis-Macromonomers of Poly(1,3-dioxolane) Catalyzed by Maghnite-H」、J. Appl. Polym. Sci., Vol. 99,3147-3152(2006)において、メタクリル酸無水物の存在下での1,3-ジオキソランの酸触媒開環重合によるα,ω-二官能性ポリジオキソランの調製について記載している。しかし、この方法は、単官能性又は液体生成物のいずれかを得ることを可能にしない。
【0009】
Goethalsら、「Polymer Networks Based on α,ω-Methacrylate-Terminated Poly(1,3-dioxolane)」、Polym. Int., Vol. 38,89-94(1995)も同様の合成を記載している。ここで、メチレン-ビス(オキシエチルメタクリレート)は1,3-ジオキソランの酸触媒開環重合の開始及び連鎖停止に関与し、その結果、二官能性α,ω-メタクリレート末端固体ポリジオキソランとなる。
【0010】
WO14095971 A2は、二官能性ポリオールから出発するトリオキサン及び環状アセタールの重合を記載し、ポリアセタールの末端OH基は、その後、無水グルタル酸を用いて終端化され、カルボン酸末端ポリマーを形成する。固体生成物が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Lutzら、One-Step Synthesis of Bis-Macromonomers of Poly(1,3-dioxolane) Catalyzed by Maghnite-H、 J. Appl. Polym. Sci., Vol. 99,3147-3152(2006)
【非特許文献2】Goethalsら、Polymer Networks Based on α,ω-Methacrylate-Terminated Poly(1,3-dioxolane)、Polym. Int., Vol. 38,89-94(1995)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の目的は、広い温度範囲にわたって液体であり、環状アセタールから製造することができる単官能性ポリアセタールを得ることであった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、一般式Iの1,3-ジオキソランコポリマーを提供する。
H-[O-CH2-O-CH2-CH2-]x1[O-CH2-CH2O-CH2-]x2[O-CH2-O-CHR1-CHR2-]y1[O-CHR1-CHR2O-CH2-]y2OR3 (I)
式中、
x1+x2は、10~2000の値を有し、
R1及びR2は、水素基又はC1~C18アルキル基であり、いずれの場合も、単位[O-CH2-O-CHR1-CHR2-]y1及び[O-CHR1-CHR2O-CH2-]y2中の少なくとも1つの基R1又はR2は、C1~C18アルキル基であり、
ただし、y1+y2は、3*(x1+x2+y1+y2)/100~50*(x1+x2+y1+y2)/100の値を有し、
R3は、脂肪族飽和基又は不飽和炭化水素基であって、置換されていないか又はハロゲン原子、アミノ基、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基又はシリル基によって置換されており、1~100個の炭素原子を有し、その中の1つ以上の相互に隣接しない-CH2単位は、-O-基、-S-基、C=O基、-O-C(O)-基又は-NR4-基によって置き換えられてもよく、その中の1つ以上の相互に隣接しない=CH単位は、-N=基によって置き換えられてもよく、
R4は、水素基又はC1~C18アルキル基である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
一般式Iの1,3-ジオキソランコポリマーはポリアセタールである。
【0016】
一般式Iの1,3-ジオキソランコポリマーのポリマー主鎖から突出するアルキル基の形態の欠陥の制御された組み込みは、ポリアセタールの結晶化度が単に低減されるのではなく排除されることを意味する。そのような非晶質挙動は、ガラス転移点のみが存在するが融点が存在しない場合、示差走査熱量測定によって検出することができる。
【0017】
コポリマーは、1,3-ジオキソラン及び4位及び/又は5位で置換された1,3-ジオキソランから形成される。それらは広い温度範囲にわたって液体であり、したがってさらなる加工に非常に適している。
【0018】
それらは、好ましくは-50℃~-70℃のガラス転移を有し、特に好ましくは融点を有さない。このコポリマーは、100℃超、特に110℃超で分解し始める。
【0019】
1,3-ジオキソランコポリマーは、単位[O-CH2-O-CH2-CH2-]x1、[O-CH2-CH2O-CH2-]x2、[O-CH2-O-CHR1-CHR2-]y1、[O-CHR1-CHR2O-CH2-]y2をランダムに又はブロックで含む。
【0020】
好ましくは、x1+x2は、20~1000、特に好ましくは30~500、特に50~300の値を有する。
【0021】
アルキル基R1、R2及びR4の例は、メチル、エチル、i-オクチル及びn-オクチル基などの直鎖及び分枝鎖アルキル基、並びにシクロヘキシル基などのシクロアルキル基である。好ましくは、R1、R2及びR4は、各出現において独立して、水素基又はC1~C6アルキル基、特に好ましくは水素基又はメチル基、エチル基、n-プロピル基若しくはi-プロピル基である。
【0022】
好ましくは、いずれの場合も、単位[O-CH2-O-CHR1-CHR2-]y1及び[O-CHR1-CHR2O-CH2-]y2中の1つの基R1又はR2のみが、C1~C18アルキル基である。
【0023】
R3は、好ましくは1~30個、特に1~18個の炭素原子を有する。
【0024】
脂肪族飽和炭化水素基であるR3の例は、アルキル基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、sec-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル及びtert-ペンチル基、ヘキシル基、例えば、n-ヘキシル基、ヘプチル基、例えば、n-ヘプチル基、オクチル基、例えば、n-オクチル基及びイソオクチル基、例えば、2,4,4-トリメチルペンチル、ノニル基、例えば、n-ノニル基、デシル基、例えば、n-デシル基、ドデシル基、例えば、n-ドデシル基、ヘキサデシル基、例えば、n-ヘキサデシル基、オクタデシル基、例えば、n-オクタデシル基、シクロアルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル基及びメチルシクロヘキシル基、アリール基、例えば、フェニル、ナフチル、アントリル及びフェナントリル基、アルカリル基、例えば、o-、m-及びp-トリル、キシリル、メシチレニル及びo-、m-及びp-エチルフェニル基、並びにアルカリル基、例えば、ベンジル基、α-及びβ-フェニルエチル基である。1つの好ましい実施形態では、R3は、1~18個の炭素原子を有するアルキル基を含む。
【0025】
脂肪族不飽和炭化水素基であるR3の例は、1つ以上の相互に隣接しない-CH2単位が-O-基又はO-C(O)-基で置き換えられ得るアルケニル基及びアルキニル基である。好ましいアルケニル基R3は、2~10個の炭素原子を有し、例えば、ビニル、アリルオキシエチル、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、メタリル、1-プロペニル、5-ヘキセニル、エチニル、ブタジエニル、ヘキサジエニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、アクリレート及びメタクリレートであり、特に好ましくはビニル、アリル、アクリレート、メタクリレート、アリルオキシエチル、プロピルメタクリレート及びブチルメタクリレートである。
【0026】
好ましいアルケニル基R3はまた、末端アルケニル基を有するポリエチレングリコールである。
【0027】
好ましくは、y1+y2は、5*(x1+x2+y1+y2)/100~40*(x1+x2+y1+y2)/100の値、特に好ましくは、10*(x1+x2+y1+y2)/100~30*(x1+x2+y1+y2)/100の値、特に、14*(x1+x2+y1+y2)/100~25*(x1+x2+y1+y2)/100の値を有する。
【0028】
1,3-ジオキソランコポリマーは、好ましくは750~300000の間、特に好ましくは1500~125000の間、非常に特に好ましくは2200~63000の間、特に4000~25000の間の分子量Mwを有する。
【0029】
1,3-ジオキソランコポリマーは、好ましくは、25℃で50mPas~500Pasの間、特に好ましくは500mPas~200Pasの間、特に700mPas~50Pasの間の動的粘度を有する。
【0030】
上記の一般式Iの1,3-ジオキソランコポリマーは、簡単な方法及び短い反応時間で製造することができる。製造の結果として、上記一般式(I)の1,3-ジオキソランコポリマーはまた、一般式(I)において、基R3が水素原子によって置き換えられているか、又は1,3-ジオキソランコポリマーの他端の水素原子が基R3によって置き換えられているコポリマーの画分と混合され得る。好ましくは、上記一般式(I)のコポリマーは、最大で5モル%、特に好ましくは最大で1モル%、特に最大で0.1モル%の一般式(I)において、基R3が水素原子によって置き換えられているか、又は1,3-ジオキソランコポリマーの他端の水素原子が基R3によって置き換えられているコポリマーと混合される。
【0031】
また、本発明は、一般式(I)の1,3-ジオキソランコポリマーの製造方法であって、
H-[O-CH2-O-CH2-CH2-]x1[O-CH2-CH2O-CH2-]x2[O-CH2-O-CHR1-CHR2-]y1[O-CHR1-CHR2O-CH2-]y2OR3 (I)
[式中、
x1+x2は、10~2000の値を有し、
R1及びR2は、水素基又はC1~C18アルキル基であり、いずれの場合も、単位[O-CH2-O-CHR1-CHR2-]y1及び[O-CHR1-CHR2O-CH2-]y2中の少なくとも1つの基R1又はR2は、C1~C18アルキル基であり、
ただし、y1+y2は、3*(x1+x2+y1+y2)/100~50*(x1+x2+y1+y2)/100の値を有し、
R3は、脂肪族飽和基又は不飽和炭化水素基であって、置換されていないか又はハロゲン原子、アミノ基、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基又はシリル基によって置換されており、1~100個の炭素原子を有し、その中の1つ以上の相互に隣接しない-CH2単位は、-O-基、-S-基、C=O基、-O-C(O)-基又は-NR4-基によって置き換えられてもよく、その中の1つ以上の相互に隣接しない=CH単位は、-N=基によって置き換えられてもよく、
R4は、水素基又はC1~C18アルキル基である。]
1,3-ジオキソランは、ルイス酸又はブレンステッド酸及び一般式R3OHのアルコールの存在下で一般式IIのアルキル置換1,3-ジオキソランと共重合され、ルイス酸又はブレンステッド酸と一般式R3OHのアルコールとのモル比は1未満である方法を提供する。
【0032】
【0033】
一般式IIにおいて、1,3-ジオキソランの4位及び5位にアルキル基R1及びR2が存在する。
【0034】
この方法は、カチオン誘起触媒によるジオキソランモノマーの開環重合である。
【0035】
触媒はルイス酸又はブレンステッド酸である。アルコールR3OHは開始剤としての機能を有する。
【0036】
従来の方法とは対照的に、この方法は、α,ω-ヒドロキシ末端ポリマーのその後の官能化を省くことを可能にする。
【0037】
この方法において、1,3-ジオキソラン及び一般式IIのアルキル置換1,3-ジオキソランの総量に基づいて、好ましくは少なくとも10モル%、特に好ましくは少なくとも20モル%、特に少なくとも30モル%の一般式IIのアルキル置換1,3-ジオキソランが用いられる。
【0038】
一般式IIのアルキル置換1,3-ジオキソランは1,3-ジオキソランよりも低い反応性を有するため、ある割合の値y1+y2を達成するためには、算術的に必要であるよりも多くのアルキル置換1,3-ジオキソランを使用することがこの方法において必要である。
【0039】
酸の例は、ルイス酸、例えば、BF3、AlCl3、TiCl3、SnCl4、SO3、PCl5、POCl3、FeCl3及びその水和物、及びZnCl2、ブレンステッド酸、例えば、ホウ酸、テトラフルオロホウ酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、硫酸、亜硫酸、ペルオキシ硫酸、塩酸、フッ化水素酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、過塩素酸、ヘキサフルオロリン酸、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、並びにカルボン酸、例えば、クロロ酢酸、トリクロロ酢酸、酢酸、アクリル酸、安息香酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、クロトン酸、ギ酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、没食子酸、イタコン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、フタル酸及びコハク酸、酸性イオン交換体、酸性ゼオライト、酸活性化漂白土及び酸活性化カーボンブラックである。
【0040】
特に好ましいのはトリフルオロメタンスルホン酸である。
【0041】
この方法は、好ましくは水の非存在下で行われる。これにより、一般式(I)において、R3基が水素原子に置き換えられたコポリマーの形成が抑制される。
【0042】
この方法は、非プロトン性溶媒の存在下又は非存在下で実施することができる。非プロトン性溶媒が使用される場合、0.1MPaで120℃までの沸点又は沸点範囲を有する溶媒又は溶媒混合物が好ましい。そのような溶媒の例は、エーテル、例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、塩素化炭化水素、例えば、ジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、トリクロロエチレン、炭化水素、例えば、ペンタン、n-ヘキサン、ヘキサン異性体混合物、ヘプタン、オクタン、ベンジン、石油エーテル、ベンゼン、トルエン、キシレン、シロキサン、特に、好ましくは0~6つのジメチルシロキサン単位を有するトリメチルシリル末端基を有する直鎖状ジメチルポリシロキサン、又は好ましくは4~7つのジメチルシロキサン単位を有する環状ジメチルポリシロキサン、例えば、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン及びデカメチルシクロペンタシロキサン、ケトン、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、エステル、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸プロピル、酪酸エチル、イソ酪酸エチル、二硫化炭素及びニトロベンゼン、又はこれらの溶媒の混合物である。
【0043】
用語「溶媒」は、全ての反応成分がその中に溶解しなければならないという意味ではない。反応はまた、1種以上の反応物質の懸濁液又はエマルション中で実施され得る。反応はまた、溶解度ギャップを有する溶媒混合物中で実施されてもよく、少なくとも1種の反応物質は、いずれの場合も混合相の各々に可溶性である。
【0044】
特に好ましくは、トリフルオロメタンスルホン酸及び開始剤の溶液が使用され、塩化メチレンが好ましい溶媒として使用される。
【0045】
使用される触媒及び開始剤の量により、一般式Iの1,3-ジオキソランコポリマーの達成可能な分子量が測定される。
【0046】
開始剤として使用されるアルコールR3OHにより、一般式(I)の1,3-ジオキソランコポリマーの所望の鎖長が制御される。
【0047】
ルイス酸又はブレンステッド酸は、開始剤を活性化するために触媒量で使用される。
【0048】
ルイス酸又はブレンステッド酸と一般式R3OHのアルコールとのモル比は、好ましくは0.5~0.001の間、特に0.1~0.01の間である。
【0049】
好ましくは、1,3-ジオキソラン及び一般式IIのアルキル置換1,3-ジオキソランの合計モル当たり、50~10000モルppm、特に好ましくは100~5000モルppm、特に200~4000モルppmのルイス酸又はブレンステッド酸が使用される。
【0050】
ルイス酸又はブレンステッド酸は、好ましくは、混合物が1,3-ジオキソラン及び一般式IIのアルキル置換1,3-ジオキソランに添加される前に、一般式R3OHのアルコールと混合される。
【0051】
方法は、好ましくは10℃~60℃の間、特に好ましくは15℃~40℃の間、特に21℃~30℃の間の温度で実施される。23℃の反応温度が非常に特に好ましい。
【0052】
反応は、好ましくは、好適な塩基を用いて触媒を不活性化し、ヘプタンなどの炭化水素で洗浄し、減圧下で乾燥させることによって行われる。
【0053】
好適な塩基は、好ましくはピリジン、トリエチルアミン又は水酸化ナトリウム水溶液である。
【0054】
ポリアセタールは、乳化剤として、又は官能性シリコーン油の調製のための反応物として、又は同様の目的で使用され得る。
【0055】
以下の実施例において、いずれの場合も別段の記載がない限り、量及びパーセンテージに関する全ての数値は重量に基づき、全ての圧力は0.10MPa(絶対)であり、全ての温度は20℃である。
【実施例】
【0056】
<本発明全体の分析>
【0057】
アルキルエチレンオキシド架橋の割合を測定するためのNMR分光法。
【0058】
測定は、Bruker Avance 500又はAscend 500(1Hスペクトルについて500MHz)でCDCl3の溶液中で行われる。全ての測定は、外部標準としてのTMSを基準とする。それぞれの組のシグナルを積分することによって、ポリマー中のモノマー単位の相対比を測定する。さらに、ポリマーの鎖長及びモル質量は、末端基シグナルを積分することによって測定することができる。
【0059】
数平均及び質量平均分子量Mn、Mw及び多分散性を測定するためのSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)
【0060】
測定は、THF中、35℃、流速0.3ml/分で測定されるポリスチレン標準に対して行い、20μlの注入体積を有するAgilent PLgel MiniMIX-C Guardカラム上においてRID(屈折率検出器)で検出する。
【0061】
動的粘度を測定するためのレオメータ
【0062】
測定は、Anton Paar MCR 320回転粘度計で25℃で行う。グラフによる評価は、剪断応力に対して粘度をプロットすることによって行う。
【0063】
融点及びガラス転移温度を測定するためのDSC(示差走査熱量測定/示差熱分析)
【0064】
測定は、-150℃~150℃の温度範囲のMETTLER TOLEDO DSC-1装置で、10Kの加熱又は冷却速度で2回行い、融点及びガラス転移温度を測定するために、第2の実施を使用する。
【0065】
分解の開始を測定するためのTGA分析
【0066】
分解の開始(開始)をMETTLER TOLEDO TGA-2装置で測定し、酸素雰囲気中、10K/分の加熱速度で試料を加熱する。
【0067】
[実施例1]
【0068】
触媒溶液の調製:10mlの乾燥ジクロロメタン、1.9mlのアリルオキシエタノール及び76μlのトリフルオロメタンスルホン酸を合わせ、室温で1時間撹拌する。1.35mlの事前に調製した触媒溶液をフラスコに入れ、23℃の温度に調整する。次いで、10.12g(96mmol)の4-エチル-1,3-ジオキソラン(EDX)及び6.75ml(96mmol)の1,3-ジオキソラン(DXL)を添加し、撹拌する。
【0069】
4時間後、混合物がその色を失うまでピリジンを添加する。生成物をヘプタン及び蒸留水で洗浄し、次いで減圧下で乾燥させる。
【0070】
[実施例2]
【0071】
実施例1で調製した触媒溶液2.7mlをフラスコに入れ、23℃の温度に調整する。次いで、10.12g(96mmol)の4-エチル-1,3-ジオキソラン(EDX)及び6.75ml(96mmol)の1,3-ジオキソラン(DXL)を添加し、撹拌する。
【0072】
4時間後、混合物がその色を失うまでピリジンを添加する。生成物をヘプタン及び蒸留水で洗浄し、次いで減圧下で乾燥させる。
【0073】
[実施例3]
【0074】
実施例1で調製した触媒溶液5.4mlをフラスコに入れ、23℃の温度に調整する。次いで、10.12g(96mmol)の4-エチル-1,3-ジオキソラン(EDX)及び6.75ml(96mmol)の1,3-ジオキソラン(DXL)を添加し、撹拌する。
【0075】
4時間後、混合物がその色を失うまでピリジンを添加する。生成物をヘプタン及び蒸留水で洗浄し、次いで減圧下で乾燥させる。
【0076】
[実施例4]
【0077】
触媒溶液の調製:10mlの乾燥ジクロロメタン、5.15gのヒドロキシプロピルメタクリレート及び152μlのトリフルオロメタンスルホン酸を合わせ、室温で1時間撹拌する。4.05mlの事前に調製した触媒溶液をフラスコに入れ、23℃の温度に調整する。次いで、15.18g(144mmol)の4-エチル-1,3-ジオキソラン(EDX)及び10.12ml(144mmol)の1,3-ジオキソラン(DXL)を添加し、撹拌する。
【0078】
4時間後、混合物がその色を失うまでピリジンを添加する。生成物をヘプタン及び蒸留水で洗浄し、次いで減圧下で乾燥させる。
【0079】
[実施例5]
【0080】
触媒溶液の調製:10mlの乾燥ジクロロメタン、3.34gの1-ドデカノール及び76μlのトリフルオロメタンスルホン酸を合わせ、室温で1時間撹拌する。1.35mlの事前に調製した触媒溶液をフラスコに入れ、23℃の温度に調整する。次いで、10.12g(96mmol)の4-エチル-1,3-ジオキソラン(EDX)及び6.75ml(96mmol)の1,3-ジオキソラン(DXL)を添加し、撹拌する。
【0081】
4時間後、混合物がその色を失うまでピリジンを添加する。生成物をヘプタン及び蒸留水で洗浄し、次いで減圧下で乾燥させる。
【0082】
[実施例6]
【0083】
触媒溶液の調製:10mlの乾燥ジクロロメタン、1.05mlのエタノール及び76μlのトリフルオロメタンスルホン酸を合わせ、室温で1時間撹拌する。1.35mlの事前に調製した触媒溶液をフラスコに入れ、23℃の温度に調整する。次いで、10.12g(96mmol)の4-エチル-1,3-ジオキソラン(EDX)及び6.75ml(96mmol)の1,3-ジオキソラン(DXL)を添加し、撹拌する。
【0084】
4時間後、混合物がその色を失うまでピリジンを添加する。生成物をヘプタン及び蒸留水で洗浄し、次いで減圧下で乾燥させる。
【0085】
[例7(非発明)]
【0086】
実施例1で調製した触媒溶液1.35mlをフラスコに入れ、23℃の温度に調整する。次いで、13.5ml(193mmol)の1,3-ジオキソラン(DXL)を添加し、撹拌する。10分後に反応混合物を撹拌することはもはや不可能である。1mlのピリジン及び10mlのジクロロメタンを反応溶液に加える。次いで、固体をヘプタン中で沈殿させ、蒸留水で洗浄し、減圧下で乾燥させる。
【0087】
(実施)例の結果を表1に詳述する。
【0088】
【国際調査報告】