(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】新規遺伝子サイレンシング技術としての短鎖二重鎖DNAおよびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20240517BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240517BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240517BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240517BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240517BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240517BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240517BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240517BHJP
A61P 37/00 20060101ALI20240517BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240517BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240517BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240517BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240517BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240517BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240517BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240517BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240517BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20240517BHJP
A61P 5/00 20060101ALI20240517BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20240517BHJP
A61K 47/62 20170101ALI20240517BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240517BHJP
A61K 47/61 20170101ALI20240517BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20240517BHJP
A61K 47/59 20170101ALI20240517BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20240517BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20240517BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20240517BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240517BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20240517BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240517BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240517BHJP
C07H 21/04 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
A61P35/00
A61P37/06
A61P29/00
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A61P31/00
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A61P37/00
A61P37/08
A61P17/00
A61P1/04
A61P1/16
A61P11/00
A61P9/00
A61P13/12
A61P29/00 101
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A61P25/18
A61P5/00
A61K31/713
A61K47/62
A61K47/68
A61K47/61
A61K47/54
A61K47/59
A61K47/42
A61K47/28
A61K47/44
A61K47/26
A61K9/127
A61K47/34
A61K48/00
C07H21/04 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573589
(86)(22)【出願日】2022-05-31
(85)【翻訳文提出日】2024-01-26
(86)【国際出願番号】 US2022031666
(87)【国際公開番号】W WO2022256354
(87)【国際公開日】2022-12-08
(32)【優先日】2021-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513205961
【氏名又は名称】1グローブ ヘルス インスティテュート エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】リー, チャン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】スン, シャンガオ
(72)【発明者】
【氏名】リー, チャールズ
【テーマコード(参考)】
4C057
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C057BB02
4C057BB05
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4C057MM05
4C076AA17
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4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZB01
4C086ZB08
4C086ZB11
4C086ZB13
4C086ZB15
4C086ZB21
4C086ZB26
4C086ZB31
4C086ZC21
(57)【要約】
本発明は、細胞、組織、生物および動物における標的核酸および/またはタンパク質をモジュレートするための新規タイプの遺伝子サイレンシング技術を開示する。この新しい技術は、ヒトの疾患の予防および処置を含む、遺伝子サイレンシングの適用における使用のための組成物を提供する。組成物は、センス鎖が、アンチセンス鎖と長さが少なくとも等しい、短鎖、二重鎖DNA分子を含む。二重鎖DNA分子は、少なくとも1つの散在リボヌクレオチドモノマーをさらに含む。本発明は、標的遺伝子の発現もしくは機能をモジュレートするために、または疾患の処置もしくは予防のために、ならびに他の医学的または生物学的適用のために、組成物を使用する方法をさらに提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結されたヌクレオチドモノマーを各々が含む第一鎖および第二鎖を含む、短鎖二重鎖DNA(sdDNA)分子であって、
前記第一鎖が、標的となるRNAの標的となるセグメントに実質的に相補的であり、
前記第二鎖が、前記第一鎖に実質的に相補的であり、前記第一鎖と少なくとも1つの二本鎖領域を形成し、
前記第二鎖の長さが、前記第一鎖の長さと等しいかまたはそれより長く、
前記sdDNA分子は、少なくとも1つのリボヌクレオチドモノマーを含む少なくとも1つのリボヌクレオチドモノマー散在セグメント(ISR)を含む、
sdDNA分子。
【請求項2】
前記第一鎖が、少なくとも1つのISRを含む、請求項1に記載のsdDNA分子。
【請求項3】
前記第二鎖が、少なくとも1つのISRを含む、請求項1に記載のsdDNA分子。
【請求項4】
前記第一鎖が少なくとも1つのISRを含み、前記第二鎖も少なくとも1つのISRを含む、請求項1に記載のsdDNA分子。
【請求項5】
前記少なくとも1つのISRが、前記第一鎖の少なくとも1つの標的化領域内に配置されている、請求項2または4に記載のsdDNA分子。
【請求項6】
前記第一鎖内の全てのISRのリボヌクレオチドモノマーの総数が、少なくとも2である、請求項5に記載のsdDNA分子。
【請求項7】
前記少なくとも1つのISRが、前記第二鎖の少なくとも1つの二本鎖領域内に配置されている、請求項3または4に記載のsdDNA分子。
【請求項8】
少なくとも2つまたはそれより多くのISRを含み、各ISRが、互いに独立して、1つのリボヌクレオチドモノマーからなるか、または連続する少なくとも2つ、3つ、4つもしくは5つのリボヌクレオチドモノマーを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のsdDNA分子。
【請求項9】
前記少なくとも1つのISRが、連続する少なくとも2つ、3つ、4つ、5つまたは6つのリボヌクレオチドモノマーを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のsdDNA分子。
【請求項10】
前記第一鎖が、前記標的となるRNAの前記標的となるセグメントに少なくとも70%、80%、85%、90%、95%相補的または完全に相補的である、請求項1に記載のsdDNA分子。
【請求項11】
前記第一鎖が、前記標的となるRNAにハイブリダイズしたときに最大でも1つ、2つまたは3つのミスマッチしか含まない、請求項1から10のいずれか一項に記載のsdDNA分子。
【請求項12】
前記第二鎖が、前記第一鎖に少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%相補的または完全に相補的である、請求項1に記載のsdDNA分子。
【請求項13】
前記第二鎖が、前記第一鎖の前記少なくとも1つの領域に対して相補的な二重鎖の形成時に1つ、2つ、3つまたはそれより多くのミスマッチを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のsdDNA分子。
【請求項14】
前記第一鎖が、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49および50ヌクレオチドモノマーからなる群より選択される長さを有する、請求項1に記載のsdDNA分子。
【請求項15】
前記第一鎖が、
a)6~50ヌクレオチドモノマー、
b)8~36ヌクレオチドモノマー、
c)8~33ヌクレオチドモノマー、
d)8~36ヌクレオチドモノマー、
e)10~30ヌクレオチドモノマー、および
f)8~29ヌクレオチドモノマー
からなる群より選択される長さを有する、
請求項1に記載のsdDNA分子。
【請求項16】
前記第二鎖が、前記第一鎖と長さが等しい、請求項1に記載のsdDNA分子。
【請求項17】
前記第二鎖が、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19および20からなる群より選択されるヌクレオチドモノマー数だけ、前記第一鎖より長い、請求項1に記載のsdDNA分子。
【請求項18】
前記第二鎖が、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49および50ヌクレオチドモノマーからなる群より選択される長さを有する、請求項1に記載のsdDNA分子。
【請求項19】
前記第二鎖が、
a)6~50ヌクレオチドモノマー、
b)8~36ヌクレオチドモノマー、
c)8~33ヌクレオチドモノマー、
d)8~36ヌクレオチドモノマー、
e)8~32ヌクレオチドモノマー、
f)8~30ヌクレオチドモノマー、
g)8~29ヌクレオチドモノマー、および
h)8~25ヌクレオチドモノマー
からなる群より選択される長さを有する、
請求項1に記載のsdDNA分子。
【請求項20】
前記二本鎖領域が、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49および50塩基対からなる群より選択される数の塩基対からなる、請求項1に記載のsdDNA分子。
【請求項21】
前記二重鎖の両方の末端が、平滑末端である、請求項1に記載のsdDNA分子。
【請求項22】
前記第一鎖および前記第二鎖の両方が、3’-オーバーハングを有するか、または前記第一鎖および前記第二鎖の両方が、5’-オーバーハングを有する、請求項1に記載のsdDNA分子。
【請求項23】
前記第二鎖が、次の構成:3’-オーバーハングおよび5’-オーバーハング、3’-オーバーハングおよび5’平滑末端、3’-平滑末端および5’-オーバーハング、3’オーバーハングおよび5’陥凹末端、または5’オーバーハングおよび3’陥凹末端、のうちの1つを有する、請求項17に記載のsdDNA分子。
【請求項24】
前記第一鎖が、次の構成:3’-オーバーハングおよび5’-平滑末端、3’-平滑末端および5’-オーバーハング、3’オーバーハングおよび5’陥凹末端、5’オーバーハングおよび3’陥凹末端、3’平滑末端および5’平滑末端、または3’陥凹末端および5’陥凹末端、のうちの1つを有する、請求項16または17に記載のsdDNA分子。
【請求項25】
前記3’-オーバーハングまたは前記5’-オーバーハングが、最大でも1、2、3、4、5、6、7、8、9または10ヌクレオチドモノマーしか有さない、請求項23または24に記載のsdDNA分子。
【請求項26】
少なくとも1つのヌクレオチドモノマーが、改変ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体である、請求項1から25のいずれか一項に記載のsdDNA分子。
【請求項27】
前記改変ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体が、糖改変ヌクレオチド、骨格改変ヌクレオチド、および/または塩基改変ヌクレオチドである、請求項26に記載のsdDNA分子。
【請求項28】
前記骨格改変ヌクレオチドが、ヌクレオシド間連結の改変を有する、請求項27に記載のsdDNA分子。
【請求項29】
前記ヌクレオシド間連結が、窒素または硫黄ヘテロ原子の少なくとも一方を含むように改変されている、請求項28に記載のsdDNA分子。
【請求項30】
前記改変ヌクレオシド間連結が、ホスホロチオエート(P=S)基、ホスホトリエステル、メチルホスホネート、およびホスホルアミデートからなる群より選択される、請求項29に記載のsdDNA分子。
【請求項31】
前記第一鎖および/または前記第二鎖が、少なくとも1つの改変ヌクレオシド間連結を含み、前記改変ヌクレオシド間連結が、ホスホロチオエートヌクレオシド間連結である、請求項26に記載のsdDNA分子。
【請求項32】
前記第二鎖が、連結されたデオキシリボヌクレオチドモノマー領域に少なくとも1つの改変ヌクレオシド間連結を含み、前記改変ヌクレオシド間連結が、ホスホロチオエートヌクレオシド間連結である、請求項26に記載のsdDNA分子。
【請求項33】
前記第一鎖の各ヌクレオシド間連結が、ホスホロチオエートヌクレオシド間連結である、請求項31に記載のsdDNA分子。
【請求項34】
前記第二鎖の各ヌクレオシド間連結が、ホスホロチオエートヌクレオシド間連結である、請求項31に記載のsdDNA分子。
【請求項35】
前記改変ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体が、改変糖部分を含む、請求項26に記載のsdDNA分子。
【請求項36】
前記改変糖部分の2’位が、OR、R、ハロ、SH、SR、NH
2、NHR、NR
2、およびCNからなる群より選択される基により置き換えられており、ここで、各Rが、独立して、C
1~C
6アルキル、アルケニルまたはアルキニルであり、ハロが、F、Cl、BrまたはIである、請求項35に記載のsdDNA分子。
【請求項37】
前記改変糖部分の2’位が、アリル、アミノ、アジド、チオ、O-アリル、O-C
1~C
10アルキル、OCF
3、OCH
2F、O(CH2)
2SCH
3、O(CH
2)
2-O-N(R
m)(R
n)、O-CH
2-C(=O)-N(R
m)(R
n)、およびO-CH
2-C(=O)-N(R
1)-(CH
2)
2-N(R
m)(R
n)からなる群より選択される基により置き換えられており、ここで、R
l、R
mおよびR
nの各々が、独立して、Hまたは置換もしくは非置換C
1~C
10アルキルである、請求項35に記載のsdDNA分子。
【請求項38】
前記改変糖部分が、5’-ビニル、5’-メチル(RまたはS)、4’-S、2’-F、2’-OCH
3、2’-OCH
2CH
3、2’-OCH
2CH
2Fおよび2’-O(CH2)
2OCH
3置換基からなる群より選択される、請求項35に記載のsdDNA分子。
【請求項39】
前記改変糖部分が、4’-(CH
2)-O-2’(LNA);4’-(CH
2)-S-2;4’-(CH
2)2-O-2’(ENA);4’-CH(CH
3)-O-2’(cEt)および4’-CH(CH
2OCH
3)-O-2’、4’-C(CH
3)(CH
3)-O-2’、4’-CH
2-N(OCH
3)-2’、4’-CH
2-O-N(CH
3)-2’、4’-CH
2-N(R)-O-2’(ここで、Rは、H、C1~C12アルキル、または保護基である)、4’-CH
2-C(H)(CH
3)-2’、ならびに4’-CH
2-C-(=CH
2)-2’からなる群より選択される二環式糖により置換されている、請求項35に記載のsdDNA分子。
【請求項40】
前記改変糖部分が、2’-O-メトキシエチル改変糖(MOE)、4’-(CH
2)-O-2’二環式糖(LNA)、2’-デオキシ-2’-フルオロアラビノース(FANA)、およびメチル(メチレンオキシ)(4’-CH(CH
3)-O-2)二環式糖(cEt)からなる群より選択される、請求項35に記載のsdDNA分子。
【請求項41】
前記改変ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体が、改変核酸塩基を含む、請求項26に記載のsdDNA分子。
【請求項42】
前記改変核酸塩基が、5-メチルシトシン(5-Me-C)、イノシン塩基、トリチル化塩基、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン;アデニンおよびグアニンの6-メチルおよび他のアルキル誘導体;アデニンおよびグアニンの2-プロピルおよび他のアルキル誘導体;2-チオウラシル、2-チオチミンおよび2-チオシトシン、1-メチル-シュード-ウラシル、5-ハロウラシルおよびシトシン;5-プロピニル(-C≡C-CH
3)ウラシルおよびシトシンならびにピリミジン塩基の他のアルキニル誘導体;6-アゾウラシル、シトシンおよびチミン、5-ウラシル(シュードウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシルならびに他の8-置換アデニンおよびグアニン、5-ハロ、特に、5-ブロモ、5-トリフルオロメチルならびに他の5-置換ウラシルおよびシトシン、7-メチルグアニンおよび7-メチルアデニン、2-F-アデニン、2-アミノアデニン、8-アザグアニンおよび8-アザアデニン、ならびに7-デアザグアニンおよび7-デアザアデニン、ならびに3-デアザグアニンおよび3-デアザアデニンからなる群より選択される、請求項41に記載のsdDNA分子。
【請求項43】
前記改変核酸塩基が、5-メチルシトシンである、請求項37に記載のsdDNA分子。
【請求項44】
各シトシン塩基が、5-メチルシトシンである、請求項41に記載のsdDNA分子。
【請求項45】
細胞における遺伝子発現または機能をモジュレートする能力を有する、請求項1から44のいずれか一項に記載のsdDNA分子。
【請求項46】
標的RNAをサイレンシングさせる点で対応する一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチドより強力または効果的である、請求項1から45のいずれか一項に記載のsdDNA分子。
【請求項47】
細胞における遺伝子発現または機能をモジュレートするために使用される、請求項1から46のいずれか一項に記載のsdDNA分子。
【請求項48】
前記細胞が、真核細胞である、請求項47に記載のsdDNA分子。
【請求項49】
前記真核細胞が、哺乳動物細胞である、請求項48に記載のsdDNA分子。
【請求項50】
前記標的となるRNAが、mRNAまたはノンコーディングRNAのどちらかであり、そのようなRNAが、疾患もしくは状態に関与するタンパク質をコードするか、または疾患もしくは状態に関与する生物学的経路の一部を制御する、請求項1に記載のsdDNA分子。
【請求項51】
前記標的となるRNAが、
a)ヒトまたは動物の疾患または障害に関与する遺伝子のmRNA、
b)病原性微生物の遺伝子のmRNA、
c)ウイルスRNA、ならびに
d)自己免疫疾患、炎症性疾患、変性疾患、感染性疾患、増殖性疾患、代謝性疾患、免疫介在性障害、アレルギー性疾患、皮膚科疾患、悪性疾患、胃腸障害、呼吸器障害、心血管障害、腎障害、リウマチ様障害、神経障害、内分泌障害、および老化関連障害からなる群より選択される疾患に関与するRNA
からなる群より選択される、請求項1に記載のsdDNA分子。
【請求項52】
前記第一鎖および/または前記第二鎖が、リガンドまたは部分にコンジュゲートされている、請求項1から51のいずれか一項に記載のsdDNA分子。
【請求項53】
前記リガンドまたは部分が、ペプチド、抗体、ポリマー、多糖、脂質、疎水性部分または分子、カチオン性部分または分子、親油性化合物または部分 オリゴヌクレオチド、コレステロール、GalNAcおよびアプタマーからなる群より選択される、請求項52に記載のsdDNA分子。
【請求項54】
活性薬剤としての請求項1から53のいずれかに記載のsdDNA分子と、薬学的に許容される賦形剤、担体または希釈剤とを含む、医薬組成物。
【請求項55】
前記担体が、医薬担体、正電荷担体、脂質ナノ粒子、リポソーム、タンパク質担体、疎水性部分または分子、カチオン性部分または分子、GalNAc、多糖、ポリマー、ナノ粒子、ナノエマルジョン、コレステロール、脂質、親油性化合物または部分、およびリポイドからなる群より選択される、請求項54に記載の医薬組成物。
【請求項56】
疾患または状態を処置または予防するための方法であって、治療有効量の請求項1から53のいずれか一項に記載のsdDNA分子または請求項54もしくは請求項55のいずれかに記載の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項57】
前記疾患または状態が、がん、自己免疫疾患、炎症性疾患、変性疾患、感染性疾患、増殖性疾患、代謝性疾患、免疫介在性障害、アレルギー性疾患、皮膚科疾患、悪性疾患、胃腸障害、肝障害、呼吸器障害、心血管障害、皮膚科障害、腎障害、リウマチ様障害、神経障害、精神障害、内分泌障害、および老化関連障害または疾患からなる群より選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項58】
前記sdDNA分子または医薬組成物が、静脈内注射(iv)、皮下注射(sc)、経口的に(po)、筋肉内(im)注射、経口投与、吸入、局所的、髄腔内、および他の局部的な投与からなる群より選択される経路によって投与される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
真核細胞における遺伝子発現または遺伝子機能をモジュレートするための方法であって、前記細胞を、有効量の請求項1から53のいずれか一項に記載のsdDNA分子または請求項54もしくは請求項55のいずれかに記載の医薬組成物と接触させるステップを含む、方法。
【請求項60】
ヌクレオチド、そのアナログ、および改変ヌクレオチドからなる群より選択される連結されたヌクレオチドモノマーを各々が含む第一鎖および第二鎖を含む、短鎖二重鎖DNA(sdDNA)分子であって、
前記第一鎖が、前記第二鎖と長さが等しいか、または1、2、3、4、5、6、7および8モノマーからなる群より選択されるモノマー数だけ、前記第二鎖より長さが短く、
前記第一鎖が、少なくとも1つの標的化領域による標的となるRNAの標的となるセグメントに実質的に相補的であり、前記第一鎖が、ホスホロチオエート連結、ホスホジエステル連結、またはホスホロチオエート連結とホスホジエステル連結の混合物からなる群より選択される連結によって隣接モノマー間が連結されている8~36(範囲の終点両方を含む)のヌクレオシドモノマーからなり、
前記第二鎖が、前記第一鎖に実質的に相補的であり、前記第一鎖と少なくとも1つの二本鎖領域を形成し、前記第二鎖が、ホスホロチオエート連結、ホスホジエステル連結、およびホスホロチオエート連結とホスホジエステル連結の混合物からなる群より選択される連結によって隣接モノマー間が連結されている10~36(範囲の終点両方を含む)のヌクレオシドモノマーからなり、
前記sdDNA分子が、デオキシリボヌクレオチド、そのアナログ、および改変デオキシリボヌクレオチドからなる群より選択される少なくとも1つのデオキシリボヌクレオチドモノマーに連結された少なくとも1つのリボヌクレオチドモノマー散在セグメント(ISR)を含み、
前記sdDNA分子における前記ISRが、リボヌクレオチド、そのアナログ、および改変リボヌクレオチドからなる群より選択される少なくとも1つのリボヌクレオチドモノマーを含み、
前記sdDNA分子が、細胞における標的遺伝子発現または機能をモジュレートするために使用され、
前記sdDNA分子が、細胞において対応するASOより前記標的遺伝子の発現をサイレンシングさせる点で強力または効果的である、
sdDNA分子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年5月29日に出願された同時係属米国仮特許出願第63/195,010号の優先権および利益を請求するものであり、この仮出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、遺伝子サイレンシング技術として使用される短鎖二重鎖DNAに関し、生物学的または医学的研究において、疾患の処置および予防において、ならびに他の生物学分野における遺伝子サイレンシングの適用に、使用することができる関連する組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
現代の医学的治療薬は、2つの基本的な技術、すなわち、小分子化学およびタンパク質/抗体技術に依存している。しかし、ゲノムおよび生物医学研究により同定される標的の約10%しか前述の2つの基礎技術によって対処することができない。オリゴヌクレオチドは、小分子化学および抗体/タンパク質技術により創薬可能でないものを含む非常に多くの標的に対処する可能性を秘めている。40年を超える研究によってアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)および低分子干渉RNA(siRNA)技術が生み出された(Cy A. Stein et al., 2017)。しかし、40年を超える研究にもかかわらず、少数の臨床的オーファン適応症以外、有意な創薬可能性の問題が、ASOおよびsiRNA技術の開発が主力治療プラットフォームになることを妨げている。そのような創薬可能性の問題には、数ある中でも特に、低いサイレンシング効率、オフターゲット効果、意図しない免疫応答の刺激、組織透過の課題、およびin vivo送達などが含まれる。したがって、様々な生物学的および医学的適用において目的の遺伝子を標的化する新規技術を生み出すことに対する有意な満たされていない要求がある。
【0004】
ASOは、1978年に最初に提唱された概念(Zamecnik P.C. et al., 1978)に基づく遺伝子サイレンシング技術である。一般に、ASO技術の背後にある原理は、アンチセンスオリゴヌクレオチドが標的核酸にハイブリダイズし、遺伝子発現活性または機能、例えば、転写/転写後もしくは翻訳、をモジュレートすることである。機序は、次のように広くカテゴリー分けされ得る:(1)ASOの結合が、翻訳停止、スプライシングの阻害、もしくは選択的にスプライシングされたバリアントの導入につながる、RNA分解を促進しない単なる占有、または(2)ASOの結合が、リボヌクレアーゼH1(RNase H1)などの内在性酵素によるRNAの分解を促進する、占有誘導不安定化;および(3)翻訳モジュレーション:ASOが、上流オープンリーディングフレーム(uORF)または5’UTRにおける他の阻害もしくは調節エレメントを遮断し得、それによって翻訳効率が上昇またはモジュレートされ得る(Stanley T. Crooke et al., 2008;C. Frank Bennett, 2010;Richard G. Lee, 2013;Stanley T. Crooke, 2017)。ASO構造は、標的RNAに塩基対合によって結合することができる一本鎖デオキシリボヌクレオチド配列である。40年の研究の後、ASO技術は、一本鎖オリゴヌクレオチドの様々な化学的改変、例えば、ホスホロチオエート置換または他の改変ヌクレオチドによって改善されてきた(Iwamoto N et al 2017, Crooke ST, 2017;Crooke ST et al., 2018;米国特許第7919472号および同第9045754号を参照されたい)。
【0005】
RNAiは、短鎖二本鎖RNAが相同配列のRNAの喪失を誘発する機序であり、植物において最初に観察され、線虫(Caenorhabditis elegans)において実証された(A. Fire et al, 1998)。この機序は、長鎖dsRNAの短鎖干渉二重鎖RNA(siRNA)への分解、およびsiRNAと多タンパク質RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)の相互作用を含んだものであり、RISCの中で、siRNAは巻き戻され、センス鎖は廃棄され、アンチセンスまたはガイド鎖は、RISCエンドヌクレアーゼAGO2に結合し、次いで、それが標的RNAを切断する(de Fougerolles et al., 2007;Ryszard Kole, 2016)。哺乳動物細胞では、合成siRNAまたは非対称短鎖干渉RNA(aiRNAもしくは非対称siRNA)を使用して、RISC依存性機序によって遺伝子サイレンシングを誘導することができる(Elbashir SM et al., 2001;Sun X et al., 2008;米国特許第7056704号および同第9328345号を参照されたい)。
【0006】
オリゴヌクレオチドは、何十年にもわたって研究されており、全く新しい種類の治療薬になる大きな可能性を秘めていると考えられる。しかし、オリゴヌクレオチドの、限られたサイレンシング効率、送達の課題、ならびにハイブリダイゼーション依存性毒性およびハイブリダイゼーション非依存性毒性をはじめとする用量依存性有害効果が、これらの新規種類の治療薬を制限し続けている(C. Frank Bennett, 2010;C. Frank Bennett, 2019;Roberts TC et al., 2020;Crooke ST et al., 2018;およびSetten RL et al., 2020)。一般に、ASO化合物は、siRNAに基づく化合物よりも遺伝子サイレンシングを誘導する点で作用が弱いが、ASO化合物にはsiRNA化合物と比べていくつかの薬学的利点がある。目下、ASOおよびsiRNAは、依然として、遺伝子サイレンシング治療薬を設計するための2つの同様に重要なプラットフォーム技術である(Crooke ST et al 2018;Roberts TC et al 2020)。オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション依存性毒性は、主として、非標的遺伝子とのハイブリダイゼーション(「オフターゲット効果」)に起因すると考えられる(Jackson et al., 2003;Lin X et al., 2005)。ハイブリダイゼーション非依存性毒性は、オリゴヌクレオチドとタンパク質の相互作用によって起こり、これらの効果は、凝固時間の増加、炎症誘発効果、および補体経路の活性化を含む。これらの効果は、オリゴヌクレオチドのより高い用量で生じる傾向があり、用量依存性である。例えば、より高い濃度で、ASOは、腎尿細管変化および血小板減少症をもたらす(Geary, RS. et al., 2007;Kwoh J T, 2008)。臨床的には、第一世代PSアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチドおよび第二世代2’-MOE改変アンチセンスオリゴヌクレオチドについての主な忍容性および安全性の問題は、活性化部分トロンボプラスチン時間の延長、注射部位反応、ならびに全身症状、例えば、発熱、悪寒および頭痛などの、ハイブリダイゼーション非依存性効果であることが証明されている(C. Frank Bennett, 2010;Henry S P, 2008;Kwoh J T, 2008)。最も最適化されたASOであっても、一般にsiRNAよりも作用がはるかに弱く、投薬量依存性の画一的な毒性を有することが証明されている(Kendall S. Frazier, 2015)。オリゴヌクレオチドの用量依存性毒性を緩和するために、過去40年間、様々な化学的改変によって、限られた有効性の問題および付随する安全性の問題点を克服するための努力がなされてきた(Iwamoto N et al 2017, Crooke ST et al., 2018;およびRoberts TC et al., 2020)。
【0007】
ASOと比較して、siRNA二重鎖のオフターゲット効果は、センス鎖媒介サイレンシング、内在性miRNA経路との競合、およびTLRまたは他のタンパク質との相互作用により媒介されると考えられている(Setten RL et al 2019)。加えて、21nt/19bpの典型的なsiRNA二重鎖は、細胞および組織透過の点で効率的でなく、安定性および他の薬学的特性を増強するために大掛かりな化学的改変も必要とする。
【0008】
まとめると、ASO技術の40年を超える革新、およびRNAiに基づく技術の20年を超える研究を経て、ヒトの疾患に関与する標的のほぼ90%に対する遺伝子標的化療法の成功裏の開発は、いまだ困難である。さらに、現在承認されているオリゴヌクレオチド薬は、患者1人あたり/1年に50万USDを超える費用がかかり、したがって、一般的な集団が罹患する疾患に対処することは不可能である。それ故、これらの課題を克服するための新規技術が、至急、必要とされている。
本明細書に引用される参考文献は、本請求項に関わる発明に対する先行技術であること認めるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第7919472号明細書
【特許文献2】米国特許第9045754号明細書
【特許文献3】米国特許第7056704号明細書
【特許文献4】米国特許第9328345号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
本発明は、短鎖二重鎖デオキシリボヌクレオチド(sdDNA)により誘発される強力な遺伝子サイレンシングの驚くべき発見に基づく。1つまたは複数のリボヌクレオチドモノマー散在セグメント(「ISR」)を有するsdDNAにより可能になるこの新規タイプの遺伝子サイレンシング技術は、天然に存在するヌクレオチド、そのアナログ、および改変ヌクレオチド(本明細書では以降、まとめて「ヌクレオチドモノマー」と呼ばれる)の群から各々選択される連結されたヌクレオチドモノマーによって構成される、短鎖、二重鎖分子を利用する。言い換えると、本発明の実施形態で使用されるヌクレオチドモノマーは、天然に存在するデオキシリボヌクレオチド、そのアナログ、および改変デオキシリボヌクレオチドの群から選択される、「デオキシリボヌクレオチドモノマー」を含む。さらに、sdDNAの遺伝子サイレンシング機能は、1つまたは少数の散在リボヌクレオチドモノマーを組み込むことにより、劇的に可能にまたは増強され得る。「リボヌクレオチドモノマー」は、天然に存在するリボヌクレオチド、そのアナログ、および改変リボヌクレオチドの群から選択され得る。
【0011】
本発明では、短鎖二重鎖DNA(sdDNA)分子に、さらに1つまたは少数のリボヌクレオチドモノマーが散在しており、これらが少なくとも1つのリボヌクレオチドモノマー散在セグメント(「ISR」)を形成する。
【0012】
本開示に含有されるsdDNAに基づく新規プラットフォーム技術の高い遺伝子サイレンシング効果は、一実施形態では、オリゴヌクレオチドモノマーのセンス鎖と、標的となるリボヌクレオチド配列に実質的に相補的であるオリゴヌクレオチドモノマーのアンチセンス鎖とによって達成される。本発明者らのデータは、本発明のsdDNA分子がそれらの固有かつ新規の組成物によってピコモル濃度で遺伝子サイレンシングを誘発することができることを示しており、これは、ASO、siRNAおよび他の既存の遺伝子サイレンシング技術より強力であり、したがって、用量依存性毒性の低下を可能にする。本発明のsdDNA分子はまた、より良好な組織透過;細胞質内でしか起こらないsiRNAに基づく遺伝子サイレンシングとは対照的に、核内、ミトコンドリア内などにおける遺伝子サイレンシングを可能にすること;オフターゲット効果の低減;より良好な安定性;siRNAに関連する内在性マイクロRNA経路との望ましくない競合の排除または低減;より低い合成費用および他の改善された薬学的特性をはじめとする、既存の遺伝子サイレンシング技術に対する利点のうちの少なくとも1つを有すると予想される。したがって、本発明のsdDNA分子には、既存の技術が直面する様々な課題に対処する大きな可能性がある。本発明のsdDNA分子は、研究、診断、疾患予防および治療、ならびに農業および獣医学を含む生物学分野における他の適用をはじめとする、現行のオリゴヌクレオチドが適用されているまたはその使用が企図されるあらゆる領域において、使用することができる。
【0013】
第1の態様では、本発明は、第一鎖および第二鎖を有する、短鎖二重鎖DNA(sdDNA)分子を含む組成物を提供する。第二鎖の長さは、第一鎖の長さと少なくとも等しく、より具体的には、第二鎖は、第一鎖より長いかまたは第一鎖と長さが等しい。第一鎖は、少なくとも1つの標的化領域による標的となるRNAの標的となるセグメントに実質的に相補的であり、したがって、アンチセンス鎖またはアンチセンスオリゴヌクレオチドであると考えられ得る。さらに、センス鎖またはセンスオリゴヌクレオチドと考えられる得る第二鎖は、第一鎖に実質的に相補的であり、第一鎖と少なくとも1つの二本鎖領域を形成する。sdDNA分子は、少なくとも1つのリボヌクレオチドモノマー散在セグメント(ISR)を含む。ある特徴において、sdDNA分子におけるISRは、どちらかまたは両方の鎖内に存在し得る少なくとも1つのリボヌクレオチドモノマーを含む。
【0014】
本発明により提供される組成物は、真核細胞における遺伝子発現または機能をモジュレートするために使用され、sdDNAは、細胞に接触させられるか、または対象に投与される。
【0015】
一部の実施形態では、sdDNA分子は、少なくとも1つまたは少なくとも2つのリボヌクレオチドモノマー散在セグメント(ISR)を含む。本発明のsdDNA分子の特徴において、分子の第一鎖は、少なくとも1つのISRを含み、または分子の第二鎖は、少なくとも1つのISRを含み得る。ある実施形態では、第一鎖は、少なくとも1つのISRを含み、第二鎖も少なくとも1つのISRを含む。ある特徴において、各ISRは、互いに独立して、1つのリボヌクレオチドモノマーからなるか、または連続する少なくとも2つ、3つ、4つ、5つもしくは6つのリボヌクレオチドモノマーを含む。別の特徴において、ISRは、少なくとも2つのリボヌクレオチドモノマーを、それらが連続しているか、異なる種類の少なくとも1つ(1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10またはそれより多く)の介在モノマーで離間しているかを問わず、含む。さらに別の特徴において、第一鎖内に含まれる全てのISRのリボヌクレオチドモノマーの総数は、少なくとも2である。
【0016】
1つの特徴において、少なくとも1つのISRは、第一(アンチセンス)鎖の少なくとも1つの標的化領域内に配置されている。別の特徴において、少なくとも1つのISRは、第二(センス)鎖の少なくとも1つの二本鎖領域内に配置されている。さらに別の特徴において、少なくとも1つのISRは、第一鎖の少なくとも1つの標的化領域内に配置されており、少なくとも1つのISRは、第二(センス)鎖の少なくとも1つの二本鎖領域内に配置されている。一部の実施形態では、少なくとも1つのISRは、第一鎖のいずれの位置に配置されていてもよい。一部の実施形態では、少なくとも1つのISRは、第一鎖の5’末端もしくはその付近(7核酸塩基以内、もしくは末端から前記末端を数えて前記鎖内の核酸塩基の総数の33%以内、例えば、末端から出発して、約21核酸塩基長である鎖については位置番号1、2、3、4、5、6もしくは7)に;および/または第一鎖の3’末端もしくはその付近(7核酸塩基以内、もしくは末端から前記末端を数えて前記鎖内の核酸塩基の総数の33%以内)に;および/または第一鎖のより中心部に位置する。一部の実施形態では、第一鎖に配置されている少なくとも1つのISRは、第一鎖のオーバーハング領域のみに位置する。一部の実施形態では、第一鎖に配置されている少なくとも1つのISRは、第一鎖のオーバーハング領域と二本鎖領域の両方に位置する。一部の実施形態では、第一鎖内のISRは、第一鎖の5’末端または第一鎖の3’末端に位置する少なくとも1つのリボヌクレオチドモノマーを含む。一部の実施形態では、少なくとも1つのISRは、第二鎖の5’末端もしくはその付近(7核酸塩基以内、もしくは末端から前記末端を数えて前記鎖内の核酸塩基の総数の33%以内)に;および/または第二鎖の3’末端もしくはその付近(7核酸塩基以内、もしくは末端から前記末端を数えて前記鎖内の核酸塩基の総数の33%以内)に;および/または第二鎖のより中心部に位置する。
【0017】
1つの特徴において、第一鎖またはアンチセンス鎖は、核酸塩基配列を形成する複数の連結されたヌクレオチドモノマーを含み、標的となる遺伝子のRNAの標的となるセグメントに少なくとも70%、80%、85%、90%、95%相補的または完全に相補的である。ある特定の実施形態では、標的となるRNAは、mRNAまたはノンコーディングRNAから選択され、このRNAは、疾患、例えば哺乳動物の疾患、に関与するタンパク質をコードするか、または前記疾患に関与する生物学的経路の一部を制御する。用語「標的」および「標的となる」は、本開示では同義で使用され、同じ意味を共有する。
【0018】
様々な実施形態では、第一鎖(アンチセンス鎖)は、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49もしくは50の連結されたヌクレオチドモノマー、またはその等価物の、または前記値のいずれか2つで挟まれている範囲(範囲の終点両方を含む)の、骨格長を有する。例えば、第一鎖の長さの範囲の一部は、(a)8~36ヌクレオチドモノマー;(b)8~33ヌクレオチドモノマー;(c)10~30ヌクレオチドモノマー;(d)10~29ヌクレオチドモノマー;(e)12~29ヌクレオチドモノマー;(f)12~28ヌクレオチドモノマー;(g)12~26ヌクレオチドモノマー;(h)12~25ヌクレオチドモノマー;(i)13~25ヌクレオチドモノマー;(j)13~24ヌクレオチドモノマー;(k)13~23ヌクレオチドモノマー;(l)14~24ヌクレオチドモノマー;(m)15~23ヌクレオチドモノマー;および(n)8~50ヌクレオチドモノマー;(o)16~23ヌクレオチドモノマー;(p)10~36ヌクレオチドモノマー;および(p)少なくとも8ヌクレオチドモノマーを含む。
【0019】
1つの特徴において、第二鎖またはセンス鎖は、核酸塩基配列を形成する複数の連結されたヌクレオチドモノマーを含み、第一鎖またはアンチセンス鎖の連結された領域に少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%相補的または完全に相補的である。結果として、2本の鎖は、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50塩基対を含む二本鎖領域を形成する。一部の実施形態では、センス鎖は、第一/アンチセンス鎖の少なくとも1つの連結された領域に完全に相補的であり、いかなるミスマッチもない少なくとも1つの二本鎖領域を形成する。一部の実施形態では、センス鎖は、第一/アンチセンス鎖の少なくとも1つの連結された領域に相補的であり、1つ、2つ、3つまたはそれより多くのミスマッチを有する少なくとも1つの二本鎖領域を形成する。1つの特徴において、センス鎖内のミスマッチモノマーは、A、G、CおよびTからなる群より選択される核酸塩基、または改変核酸塩基を有する。
【0020】
1つの特徴において、第二鎖またはセンス鎖は、第一鎖またはアンチセンス鎖と等しい骨格長を有する。ある実施形態では、sdDNA分子の2本の鎖は、いかなるオーバーハングも有さない対称二重鎖を形成する。別の実施形態では、第一鎖および第二鎖の両方は、3’-オーバーハングまたは5’-オーバーハングを有する。ある実施形態では、2本の鎖の3’-オーバーハングおよび5’-オーバーハングは、少なくとも1、2、3、4または5ヌクレオチドモノマーの同じ長さを有する。
【0021】
他の特徴において、第二鎖またはセンス鎖は、次のようなヌクレオチドモノマー数だけ、または少なくとも次のようなヌクレオチドモノマー数だけ、第一鎖またはアンチセンス鎖より長い骨格長を有する:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20。ある特定の実施形態では、第二鎖の3’-オーバーハングは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29もしくは30ヌクレオチドモノマーの、または前記値のいずれか2つで挟まれている範囲(範囲の終点両方を含む)の、長さを有する。ある特定の実施形態では、第二鎖の5’-オーバーハングは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29もしくは30ヌクレオチドモノマーの、または前記値のいずれか2つで挟まれている範囲(範囲の終点両方を含む)の、長さを有する。本発明のある実施形態では、第二鎖は、1~5ヌクレオチドモノマーの3’-オーバーハング、および1~5ヌクレオチドモノマーの5’-オーバーハング(範囲の終点両方を含む)を有する。別の実施形態では、第二鎖は、1~8ヌクレオチドモノマー(範囲の終点両方を含む)の3’-オーバーハング、および5’平滑末端を有する。さらに別の実施形態では、第二鎖は、1~8ヌクレオチドモノマー(範囲の終点両方を含む)の5’-オーバーハング、および3’平滑末端を有する。さらに別の実施形態では、第二鎖は、1~10ヌクレオチドモノマー(範囲の終点両方を含む)の3’-オーバーハング、および5’陥凹末端、または1~10ヌクレオチドモノマー((範囲の終点両方を含む)の5’-オーバーハング、および3’陥凹末端を有する。
【0022】
様々な実施形態では、第二またはセンス鎖は、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49もしくは50の連結されたヌクレオチドモノマー、またはその等価物の、または前記値のいずれか2つで挟まれている範囲(範囲の終点両方を含む)の、骨格長を有する。ある特定の実施形態では、例えば、第二センス鎖の長さの範囲の一部は、(a)8~36ヌクレオチドモノマー;(b)8~33ヌクレオチドモノマー;(c)10~30ヌクレオチドモノマー;(d)10~29ヌクレオチドモノマー;(e)12~29ヌクレオチドモノマー;(f)12~28ヌクレオチドモノマー;(g)12~26ヌクレオチドモノマー;(h)12~25ヌクレオチドモノマー;(i)12~24ヌクレオチドモノマー;(j)13~25ヌクレオチドモノマー;(k)13~24ヌクレオチドモノマー;(l)13~23ヌクレオチドモノマー;(m)14~24ヌクレオチドモノマー;(n)15~23ヌクレオチドモノマー;(o)8~50ヌクレオチドモノマー;(p)16~23ヌクレオチドモノマーのタイド(tide);(q)10~36ヌクレオチドモノマー;および(r)少なくとも8ヌクレオチドモノマーを含む。
【0023】
本発明のsdDNA分子のある特徴において、第一鎖および/または第二鎖内の少なくとも1つのヌクレオチドモノマーは、改変ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体、例えば、糖改変ヌクレオチド、骨格改変ヌクレオチド、および/または塩基改変ヌクレオチドである。ある実施形態では、そのような骨格改変ヌクレオチドは、例えば、窒素または硫黄ヘテロ原子の少なくとも一方を含むための、ヌクレオシド間連結の改変を少なくとも有する。一部の実施形態では、改変されたヌクレオシド間連結は、ホスホロチオエート(P=S)基、ホスホトリエステル、メチルホスホネートもしくはホスホルアミデートである、またはそれを含む。
【0024】
ある特定の実施形態では、第一鎖および/または第二鎖は、少なくとも1つの改変ヌクレオシド間連結を含み、改変ヌクレオシド間連結は、ホスホロチオエートヌクレオシド間連結である。一部の実施形態では、第二鎖のデオキシリボヌクレオチドモノマー間の少なくとも1つのヌクレオシド間連結は、ホスホロチオエートヌクレオシド間連結である。一部の実施形態では、第一鎖および/または第二鎖の各ヌクレオシド間連結は、ホスホロチオエートヌクレオシド間連結である。様々な実施形態では、ヌクレオシド間連結は、第一鎖および/または第二鎖のホスホロチオエート連結とホスホジエステル連結の混合物である。
【0025】
ある特徴において、本発明の分子の第一鎖および/または第二鎖は、改変糖部分を含む少なくとも1つの改変ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体を含む。ある特定の実施形態では、改変糖部分の2’位は、OR、R、ハロ、SH、SR、NH2、NHR、NR2、またはCNから選択される基により置き換えられており、ここで、各Rは、独立して、C1~C6アルキル、アルケニルまたはアルキニルであり、ハロは、F、Cl、BrまたはIである。一部の実施形態では、改変糖部分の2’位は、アリル、アミノ、アジド、チオ、O-アリル、O-C1~C10アルキル、OCF3、OCH2F、O(CH2)2SCH3、O(CH2)2-O-N(Rm)(Rn)、O-CH2-C(=O)-N(Rm)(Rn)、またはO-CH2-C(=O)-N(R1)-(CH2)2-N(Rm)(Rn)から選択される基により置き換えられており、ここで、各Rl、RmおよびRnは、独立して、Hまたは置換もしくは非置換C1~C10アルキルである。一部の実施形態では、改変糖部分は、5’-ビニル、5’-メチル(RまたはS)、4’-S、2’-F、2’-OCH3、2’-OCH2CH3、2’-OCH2CH2F、2’-O-アミノプロピル化(2’-AP)および2’-O(CH2)2OCH3の群から選択される置換基を有する。一部の実施形態では、改変糖部分は、4’-(CH2)-O-2’(LNA);4’-(CH2)-S-2;4’-(CH2)2-O-2’(ENA);4’-CH(CH3)-O-2’(cEt)および4’-CH(CH2OCH3)-O-2’、4’-C(CH3)(CH3)-O-2’、4’-CH2-N(OCH3)-2’、4’-CH2-O-N(CH3)-2’、4’-CH2-N(R)-O-2’(ここで、Rは、H、C1~C12アルキル、または保護基である)、4’-CH2-C(H)(CH3)-2’、ならびに4’-CH2-C-(=CH2)-2’の群から選択される二環式糖により置換されている。一部の実施形態では、改変糖部分は、2’-O-メトキシエチル改変糖(MOE)、4’-(CH2)-O-2’二環式糖(LNA)、2’-デオキシ-2’-フルオロアラビノース(2’-F-アラビノ、FANA)、およびメチル(メチレンオキシ)(4’-CH(CH3)-O-2)二環式糖(cEt)の群から選択される。
【0026】
本発明のsdDNA分子のある特徴において、デオキシリボヌクレオチドモノマーの糖部分は、天然に存在するデオキシリボヌクレオチド(2-H)または2’-デオキシ-2’-フルオロアラビノース(FA)のどちらかの糖部分である。
【0027】
本発明のsdDNA分子のある特徴において、リボヌクレオチドモノマーの糖部分は、天然に存在するリボヌクレオチド(2-OH)、2’-F改変糖、2’-OMe改変糖、2’-O-メトキシエチル改変糖(MOE)、4’-(CH2)-O-2’二環式糖(LNA)およびメチル(メチレンオキシ)(4’-CH(CH3)-O-2)二環式糖(cEt)から選択される。
【0028】
別の特徴において、本発明の分子の第一鎖および/または第二鎖は、改変核酸塩基を含む少なくとも1つのヌクレオチドモノマーを含む。一部の実施形態では、改変核酸塩基は、5-メチルシトシン(5-Me-C)、イノシン塩基、トリチル化塩基、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン;アデニンおよびグアニンの6-メチルおよび他のアルキル誘導体;アデニンおよびグアニンの2-プロピルおよび他のアルキル誘導体;2-チオウラシル、2-チオチミンおよび2-チオシトシン、5-ハロウラシルおよびシトシン;5-プロピニル(-C≡C-CH3)ウラシルおよびシトシン、ならびにピリミジン塩基の他のアルキニル誘導体;6-アゾウラシル、シトシンおよびチミン、5-ウラシル(シュードウラシル)、4-チオウラシル、1-メチル-シュード-ウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシルならびに他の8-置換アデニンおよびグアニン、5-ハロ、特に、5-ブロモ、5-トリフルオロメチル、5-メチルウリジンならびに他の5-置換ウラシルおよびシトシン、7-メチルグアニンおよび7-メチルアデニン、2-F-アデニン、2-アミノアデニン、8-アザグアニンおよび8-アザアデニン、ならびに7-デアザグアニンおよび7-デアザアデニン、ならびに3-デアザグアニンおよび3-デアザアデニンの群から選択される。ある特定の実施形態では、改変核酸塩基は、5-メチルシトシンである。ある実施形態では、本発明の分子における各シトシン塩基は、5-メチルシトシンである。ある実施形態では、本発明のsdDNA分子のISRにおける各ウリジン塩基は、5-メチルウリジンである。
【0029】
ある特徴において、本発明のsdDNA分子は、パターン認識受容体(PRR)、例えばToll様受容体、により認識され得る少なくとも1つのCpGモチーフを含み得る。
【0030】
1つの特徴において、本発明の分子の第一鎖および/または第二鎖は、リガンドまたは部分にコンジュゲートされている。ある特定の実施形態では、リガンドまたは部分は、ペプチド/タンパク質、抗体、ポリマー、多糖、脂質、疎水性部分または分子、カチオン性部分または分子、親油性化合物または部分 オリゴヌクレオチド、コレステロール、GalNAcおよびアプタマーの群から選択される。
【0031】
本発明のある特徴において、sdDNA分子は、細胞、例えば、哺乳動物細胞などの真核細胞、における遺伝子発現または機能をモジュレートするために使用される。
【0032】
ある特定の実施形態では、本発明の原理によるsdDNA分子のヌクレオチドモノマー配列の少なくとも一部を指示する、標的となるRNAは、mRNAまたはノンコーディングRNAから選択され、そのようなRNAは、疾患に関与するタンパク質をコードするか、または疾患に関与する生物学的経路の一部を制御する。そのような標的RNAは、様々な実施形態では、ヒトまたは動物の疾患または状態に関与する遺伝子のmRNA;病原性微生物の遺伝子のmRNA;ウイルスRNA、ならびに自己免疫疾患、炎症性疾患、変性疾患、感染性疾患、増殖性疾患、代謝性疾患、免疫介在性障害、アレルギー性疾患、皮膚科疾患、悪性疾患、胃腸障害、呼吸器障害、心血管障害、腎障害、リウマチ様障害、神経障害、内分泌障害、および老化関連障害または疾患からなる群より選択される疾患または障害に関与するRNAから選択され得る。
【0033】
ある実施形態では、本発明は、ヌクレオチド、そのアナログ、および改変ヌクレオチドの群から選択される連結されたヌクレオチドモノマーを各々が含む第一鎖および第二鎖を含む、短鎖二重鎖DNA(sdDNA)分子であって、(a)第一鎖が、第二鎖と長さが等しいか、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14もしくは15モノマーからなる群より選択されるモノマー数だけ、第二鎖より短く;(b)第一鎖が、少なくとも1つの標的化領域による標的となるRNAの標的となるセグメントに実質的に相補的であり、第一鎖が、ホスホロチオエート連結、ホスホジエステル連結、およびホスホロチオエート連結とホスホジエステル連結の混合物からなる群より選択される連結によって隣接モノマー間が連結されている8~36(範囲の終点両方を含む)のヌクレオチドモノマーからなり;(c)第二鎖が、第一鎖に実質的に相補的であり、第一鎖と少なくとも1つの二本鎖領域を形成し、第二鎖が、ホスホロチオエート連結、ホスホジエステル連結、およびホスホロチオエート連結とホスホジエステル連結の混合物からなる群より選択される連結によって隣接モノマー間が連結されている10~36(範囲の終点両方を含む)のヌクレオチドモノマーからなり;(d)sdDNA分子が、デオキシリボヌクレオチド、そのアナログ、および改変デオキシリボヌクレオチドからなる群より選択される少なくとも1つのデオキシリボヌクレオチドモノマーに連結された少なくとも1つのリボヌクレオチドモノマー散在セグメント(ISR)を含み;(e)sdDNA分子におけるISRが、リボヌクレオチド、そのアナログ、および改変リボヌクレオチドからなる群より選択される少なくとも1つのリボヌクレオチドモノマーを含む、sdDNA分子を提供する。ある特徴において、sdDNA分子は、細胞、例えば、哺乳動物細胞などの真核細胞、における標的遺伝子発現または機能をモジュレートするために使用される。さらなる特徴において、sdDNA分子は、細胞において対応するASOより標的遺伝子の発現をサイレンシングさせる点で強力または効果的である。
【0034】
第2の態様では、本発明は、活性薬剤としての第1の態様における組成物と、薬学的に許容される賦形剤、担体または希釈剤とを含む、医薬組成物を提供する。そのような担体の例は、医薬担体、正電荷担体、リポソーム、脂質ナノ粒子、タンパク質担体、疎水性部分または分子、カチオン性部分または分子、GalNAc、多糖、ポリマー、ナノ粒子、ナノエマルジョン、コレステロール、脂質、親油性化合物または部分、およびリポイドを含み、これらに限定されない。
【0035】
第3の態様では、本発明は、本発明のsdDNA分子のまたはそのような分子を含有する医薬組成物の治療有効量を投与することにより疾患または状態を処置または予防するために、第1の態様における組成物または第2の態様における医薬組成物を使用する方法を提供する。投与方法は、静脈内注射(iv)、皮下注射(sc)、経口的に(po)、筋肉内(im)注射、経口投与、吸入、局所的、髄腔内、および他の局部的な投与の群から選択される経路である。
【0036】
ある特徴において、予防的または治療的に処置されることになる疾患または状態は、がん、自己免疫疾患、炎症性疾患、変性疾患、感染性疾患、増殖性疾患、代謝性疾患、免疫介在性障害、アレルギー性疾患、皮膚科疾患、悪性疾患、胃腸障害、肝障害、呼吸器障害、心血管障害、皮膚科障害、腎障害、リウマチ様障害、神経障害、精神障害、内分泌障害、および老化関連障害または疾患の群から選択される。
【0037】
第4の態様では、本発明は、真核細胞における遺伝子発現または遺伝子機能を制御またはモジュレートするために、第1の態様における組成物または第2の態様における医薬組成物を使用する方法を提供する。方法は、細胞を、本発明の任意のsdDNA分子のまたはそのような分子を含有する医薬組成物の有効量と、接触させるステップを含む。
【0038】
一実施形態では、前記接触させるステップは、前記sdDNA分子を含む組成物を、培養下の標的細胞に、または選択的遺伝子サイレンシングを行うことができる生物における標的細胞に、導入するステップを含む。さらなる実施形態では、導入するステップは、単純な混合、トランスフェクション、リポフェクション、電気穿孔、感染、注射、および経口投与、静脈内注射(iv)、皮下注射(sc)、経口的に(po)、筋肉内(im)注射、吸入、局所的、髄腔内、および他の局部的な投与からなる群より選択される。別の実施形態では、導入するステップは、医薬担体、脂質ナノ粒子、正電荷担体、リポソーム、タンパク質担体、疎水性部分または分子、カチオン性部分または分子、GalNAc、多糖、ポリマー、ナノ粒子、ナノエマルジョン、コレステロール、脂質、親油性化合物または部分、およびリポイドを含む群から選択される、薬学的に許容される賦形剤、担体または希釈剤を使用することを含む。
【0039】
ある特定の実施形態では、標的遺伝子は、mRNAである。ある特定の実施形態では、標的遺伝子は、ノンコーディングRNA、例えば、マイクロRNAおよびlncRNAである。
【0040】
ある実施形態では、標的遺伝子は、哺乳動物における疾患、病的状態または望ましくない状態に関連している。さらなる実施形態では、標的遺伝子は、病原性微生物の遺伝子である。さらにさらなる実施形態では、標的遺伝子は、ウイルス遺伝子である。別の実施形態では、標的遺伝子は、腫瘍関連遺伝子である。さらに別の実施形態では、標的遺伝子は、第3の態様に関して列挙された群から選択される疾患に関連する遺伝子である。
【0041】
別の態様では、本発明は、(a)1つまたは複数のデオキシリボヌクレオシド、そのアナログ、または改変デオキシリボヌクレオシドと、(b)長さ少なくとも8核酸塩基のアンチセンス配列内に連結されたリボヌクレオシド、そのアナログ、または改変リボヌクレオシドを含む、1つまたは複数のISRとを含む、オリゴマー二重鎖を提供する。アンチセンス配列は、標的配列に少なくとも70%相補的である。
【0042】
本発明の他の特徴および利点は、異なる例を含む本明細書で提供される追加の説明から明らかである。提供される例によって、本発明を実施する際に有用である異なる構成要素および方法論が例証される。例は、本請求項に関わる発明を限定しない。本開示に基づいて、当業者は、本発明の実施に有用な他の構成要素および方法論を特定することおよび利用することができる。いくつかの実施形態を示し、説明してきたが、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく任意の改変を加えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】
図1Aは、アンチセンス鎖(第一鎖、AS)(およびセンス鎖(第二鎖、SS))に少なくとも1つのリボヌクレオチド散在セグメント(ISR)を有する本発明の原理による短鎖二重鎖DNA(sdDNA)の一部の実施形態の例示的な構造、およびAPOCIII遺伝子を標的化するために設計した構造を有するsdDNAの例示的な配列を示す。ここに描示されている各二重鎖では、センス鎖がアンチセンス鎖の上に列挙されている。
図1Bは、
図1Aに示されているsdDNAの、および比較としてのそれらの対応するASO(
図1AのsdDNAの一本鎖ASと同一の構造および配列を有する)の、遺伝子サイレンシング効力を示す。これらのsdDNAおよび対応するASOを100pMでHepaRG細胞にトランスフェクトした後、APOCIII遺伝子の相対mRNAレベルを分析した。
【0044】
【
図2】
図2Aは、様々な長さの対称sdDNAの一部の実施形態の例示的な構造および配列を示す。
図2Bは、
図2Aに示されているsdDNAによるAPOCIII遺伝子を標的とする遺伝子サイレンシング効力を示す。
図2Cは、
図2Aに示されている各々のsdDNAのアンチセンス鎖と同一の配列を有する対応する一本鎖ASオリゴヌクレオチドによるAPOCIII遺伝子を標的とする遺伝子サイレンシング効力を示す。sdDNAおよび対応する一本鎖ASオリゴヌクレオチドを100pMでHepaRG細胞にトランスフェクトした後、APOCIII遺伝子の相対mRNAレベルを検出した。
【0045】
【
図3】
図3Aは、様々な長さの対称sdDNAの一部の実施形態の例示的な構造および配列を示す。
図3Bは、
図3Aに示されているsdDNAによるAPOCIII遺伝子を標的とする遺伝子サイレンシング効力を示す。sdDNAを100pMでHepaRG細胞にトランスフェクトした後、APOCIII遺伝子の相対mRNAレベルを検出した。
【0046】
【
図4】
図4Aは、SSに異なるPS改変モチーフを有するsdDNAの一部の実施形態の例示的な構造および配列を示す。
図4Bは、
図4Aに示されているsdDNAによる、および比較としてのそれらの対応するASO(
図4AにおけるsdDNAの一本鎖ASと同じ構造および配列を有する)による、APOCIII遺伝子を標的とする遺伝子サイレンシング効力を示す。sdDNAおよび対応するASOを100pMでHepaRG細胞にトランスフェクトした後、APOCIII遺伝子の相対mRNAレベルを検出した。
【0047】
【
図5】
図5Aは、アンチセンス鎖に様々なISRモチーフを有するsdDNAの一部の実施形態の例示的な構造および配列を示す。
図5Bは、
図5Aに示されているsdDNAによるAPOCIII遺伝子を標的とする遺伝子サイレンシング効力を示す。sdDNAを100pMでHepaRG細胞にトランスフェクトした後、APOCIII遺伝子の相対mRNAレベルを検出した。
【0048】
【
図6】
図6Aは、標的RNAへの結合時にアンチセンス鎖に少なくとも1つのミスマッチを有するsdDNAの一部の実施形態の例示的な構造および配列を示す。
図6Bは、
図6Aに示されているsdDNAによるAPOCIII遺伝子を標的とする遺伝子サイレンシング効力を示す。sdDNAを100pMでHepaRG細胞にトランスフェクトした後、APOCIII遺伝子の相対mRNAレベルを検出した。
【0049】
【
図7】
図7Aは、ASより長いSSを有するsdDNAの一部の実施形態の例示的な構造および配列を示す。
図7Bは、
図7Aに示されているsdDNAによる、および比較としてのそれらの対応するASO(
図7AにおけるsdDNAの一本鎖ASと同一の構造および配列を有する)による、APOCIII遺伝子を標的とする遺伝子サイレンシング効力を示す。sdDNAおよび対応するASOを100pMでHepaRG細胞にトランスフェクトした後、APOCIII遺伝子の相対mRNAレベルを検出した。
【発明を実施するための形態】
【0050】
発明の詳細な説明
本発明は、短鎖二重鎖DNAを使用する遺伝子またはRNAモジュレーション/サイレンシング技術に言及する。この新しい技術は、短鎖二重鎖DNA(sdDNA)組成物を使用することによるin vitroおよびin vivoでの遺伝子発現または機能のモジュレーションに使用される。本発明は、標的遺伝子の発現もしくは機能をモジュレートするために、または疾患の処置もしくは予防のために、ならびに他の医学的および生物学的適用のために、組成物を使用する方法も提供する。これらの組成物および方法は、遺伝子発現または遺伝子機能を制御する点で高い効力を提供するが、用量依存性毒性を低下させもする。
【0051】
1.定義
本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈による別段の明確な指示がない限り、複数の言及対象を含む。例えば、用語「細胞(a cell)」は、その混合物をはじめとする複数の細胞を含む。
【0052】
用語「約」が、数値範囲とともに使用される場合、それは、境界をそれらの数値より上および下に拡大することによってその範囲を変更する。一般に、用語「約」は、述べられている値より上および下に20%、10%、5%または1%の分散分、数値を変更するために、本明細書では使用される。一部の実施形態では、用語「約」は、述べられている値より上および下に10%の分散分、数値を変更するために使用される。一部の実施形態では、用語「約」は、述べられている値より上および下に5%の分散分、数値を変更するために使用される。一部の実施形態では、用語「約」は、述べられている値より上および下に1%の分散分、数値を変更するために使用される。
【0053】
本明細書で使用される場合、用語「アナログ」または「類似体」は、同義で、機能的または構造的等価物を意味する。例えば、ヌクレオシドおよびヌクレオチド類似体は、何十年にもわたってがんおよびウイルス感染症の臨床処置に使用されており、新しい化合物は、研究者および製薬業界により継続的に合成され、評価されている。例えば、Jordheim L.P. et al., Nat Rev Drug Discov 12, 447-464 (2013)を参照されたい。
【0054】
本明細書で使用される場合、用語「デオキシリボヌクレオシドモノマー」は、天然に存在するデオキシリボヌクレオシド、そのアナログ、および改変デオキシリボヌクレオシドを含む、ヌクレオシドモノマーを意味する。用語「デオキシリボヌクレオチドモノマー」は、天然に存在するデオキシリボヌクレオチド、そのアナログ、および改変デオキシリボヌクレオチドを含む、ヌクレオチドモノマーを意味する。
【0055】
本明細書で使用される場合、用語「リボヌクレオシドモノマー」は、天然に存在するリボヌクレオシド、そのアナログ、および改変リボヌクレオシドを含む、ヌクレオシドモノマーを意味する。用語「リボヌクレオチドモノマー」は、天然に存在するリボヌクレオチド、そのアナログ、および改変リボヌクレオチドを含む、ヌクレオチドモノマーを意味する。
【0056】
本明細書で使用される場合、用語「ヌクレオシド」は、核酸塩基部分および糖部分を含む化合物を意味する。ヌクレオシドモノマーは、天然に存在するヌクレオシド(例えば、DNAおよびRNAにそれぞれ見られるようなデオキシリボヌクレオシドおよびリボヌクレオシド)、そのアナログ、および改変ヌクレオシドを含むが、これらに限定されない。ヌクレオシドモノマーは、デオキシリボヌクレオシドモノマーであることもあり、またはリボヌクレオシドモノマーであることもある。ヌクレオシドモノマーは、例えばヌクレオチドモノマーになるように、リン酸部分に連結され得る。
【0057】
本明細書で使用される場合、用語「ヌクレオチド」は、リン酸連結基をさらに含むヌクレオシドを意味する。ヌクレオチドモノマーは、天然に存在するヌクレオチド(例えば、DNAおよびRNAにそれぞれ見られるようなデオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチド)、そのアナログ、および改変ヌクレオチドを含むが、これらに限定されない。ヌクレオチドモノマーは、デオキシリボヌクレオチドモノマーであることもあり、またはリボヌクレオチドモノマーであることもある。改変ヌクレオチドは、次のものより多くのもののうちの1つにおいて改変されていることがある:その窒素含有核酸塩基部分、その5炭素糖部分、およびヌクレオシド間連結の変化をもたらすそのリン酸連結基。
【0058】
本明細書で使用される場合、用語「オリゴ」または「オリゴヌクレオチド」は、複数の連結されたヌクレオシドモノマーを含む化合物を指す。ある特定の実施形態では、ヌクレオシドモノマーの1つもしくは複数またはヌクレオシド間連結の1つもしくは複数が改変されている。
【0059】
用語「デオキシヌクレオシド」および「デオキシリボヌクレオシド」は、本明細書では同義で使用される。用語「デオキシヌクレオチド」および「デオキシリボヌクレオチド」も、本明細書では同義で使用される。本明細書で使用される場合、「デオキシヌクレオシド」または「デオキシヌクレオチド」は、デオキシ糖部分を含有する、それぞれ、ヌクレオシドまたはヌクレオチドである。
【0060】
本明細書で使用される場合、「短鎖二重鎖DNA(sdDNA)」におけるような、用語「二重鎖DNA」は、互いにハイブリダイズして二重鎖オリゴヌクレオチドとしての形をなし、細胞と接触させられる、または対象に投与される、2本の鎖またはヌクレオチドモノマーの鎖で構成される分子であって、肝要なRNA標的化モチーフの連結されたヌクレオチドモノマーの大部分、すなわち、50%またはそれより多くが、改変デオキシリボヌクレオチドを含むデオキシリボヌクレオチドモノマーである、分子を意味する。
【0061】
本明細書で使用される場合、用語「モチーフ」は、例えばアンチセンス鎖またはセンス鎖内の、化学的に別個の領域のパターンを意味する。
【0062】
本明細書で使用される場合、用語「直接隣接する」は、2つのエレメントの間、例えば、領域、セグメント、ヌクレオチドおよび/またはヌクレオシドの間に介在エレメントがないことを意味する。
【0063】
本明細書で使用される場合、用語「改変ヌクレオチド」は、少なくとも1つの改変糖部分、改変ヌクレオシド間連結および/または改変核酸塩基を有する、ヌクレオチドを意味する。
【0064】
本明細書で使用される場合、用語「改変ヌクレオシド」は、少なくとも1つの改変糖部分および/または改変核酸塩基を有する、ヌクレオシドを意味する。
【0065】
本明細書で使用される場合、用語「改変オリゴヌクレオチド」は、少なくとも1つの改変ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドを意味する。
【0066】
本明細書で使用される場合、用語「天然に存在するヌクレオシド間連結」は、3’から5’へのホスホジエステル連結を意味する。
【0067】
本明細書で使用される場合、用語「改変ヌクレオシド間連結」は、天然に存在するヌクレオシド間結合からの置換または任意の変化を指す。例えば、ホスホロチオエート連結は、改変ヌクレオシド間連結である。
【0068】
本明細書で使用される場合、用語「天然糖部分」は、DNA(2-H)またはRNA(2-OH)に天然に見られる糖を意味する。
【0069】
本明細書で使用される場合、用語「改変糖」は、天然糖からの置換または変化を指す。例えば、2’-O-メトキシエチル改変糖は、改変糖である。
【0070】
本明細書で使用される場合、用語「二環式糖」は、2つの非ジェミナル環原子の架橋により改変されたフロシル環を意味する。二環式糖は、改変糖である。
【0071】
本明細書で使用される場合、用語「二環式核酸」、「BNA」、「二環式ヌクレオシド」、または「二環式ヌクレオチド」は、ヌクレオシドまたはヌクレオチドのフラノース部分が、フラノース環上の2個の炭素原子を接続する架橋を含むことによって二環式環系を形成している、ヌクレオシドまたはヌクレオチドを指す。
【0072】
本明細書で使用される場合、用語「2’-O-メトキシエチル」(同じく2’-MOE、2’-O(CH2)2-OCH3および2’-O-(2-メトキシエチル))は、フロシル環の2’位のO-メトキシ-エチル改変を指す。2’-O-メトキシエチル改変糖は、改変糖である。本明細書で使用される場合、用語「2’-O-メトキシエチルヌクレオチド」(同じく2’-MOE RNA)は、2’-O-メトキシエチル改変糖部分を含む改変ヌクレオチドを意味する。
【0073】
本明細書で使用される場合、用語「改変核酸塩基」は、アデニン、シトシン、グアニン、チミジンまたはウラシル以外の、任意の核酸塩基を指す。例えば、5-メチルシトシンは、改変核酸塩基である。その一方で、「非改変核酸塩基」は、本明細書で使用される場合、プリン塩基であるアデニン(A)およびグアニン(G)、ならびにピリミジン塩基であるチミン(T)、シトシン(C)およびウラシル(U)を意味する。
【0074】
本明細書で使用される場合、用語「5-メチルシトシン」は、5位に結合されたメチル基によって改変されたシトシンを意味する。例えば、5-メチルシトシンは、改変核酸塩基である。
【0075】
本明細書で使用される場合、「RNA様ヌクレオチド」は、オリゴヌクレオチドに組み込まれたとき、ノーザン構成をとり、RNAのように機能する、改変ヌクレオチドを意味する。RNA様ヌクレオチドは、2’-エンドフラノシルヌクレオチド、架橋核酸(BNA)、LNA、cEt、2’-O-メチル化核酸、2’-O-メトキシエチル化(2’-MOE)核酸、2’-フッ素化核酸、2’-O-アミノプロピル化(2’-AP)核酸、ヘキシトール核酸(HNA)、シクロヘキサン核酸(CeNA)、ペプチド核酸(PNA)、グリコール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、モルホリノ核酸、トリシクロ-DNA(tcDNA)およびRNA代替物を含むが、これらに限定されない。
【0076】
本明細書で使用される場合、「DNA様ヌクレオチド」は、オリゴヌクレオチドに組み込まれたときDNAのように機能する、改変ヌクレオチドを意味する。DNA様ヌクレオチドは、2’-デオキシ-2’-フルオロアラビノース(FANA)ヌクレオチドおよびDNA代替物を含むが、これらに限定されない。
【0077】
本明細書で使用される場合、「ノンコーディングRNA」は、タンパク質に翻訳されないRNA分子を意味する。ノンコーディングRNAの例としては、トランスファーRNA(tRNA)およびリボソームRNA(rRNA)、ならびに低分子ノンコーディングRNAおよび長鎖ncRNA(lncRNA)が挙げられる。本明細書で使用される場合、「低分子ノンコーディングRNA」の例としては、マイクロRNA(miRNA)、asRNA、プレmiRNA、プリmiRNA、piRNA、snoRNA、snRNA、exRNA、scaRNA、および前述のもののいずれかについての模倣物が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、「lncRNA」、「長鎖ノンコーディングRNA」は、タンパク質をコードしない、200より多くのヌクレオチドを含有する転写されたRNA分子である。lncRNAは、5’-キャッピング、3’-ポリアデニル化、およびスプライシングをはじめとする、一般的な転写後改変にも付され得る。一般に、IncRNAは、遺伝子およびゲノム機能の改変において様々な役割を果たす多様なクラスの分子である。例えば、lncRNAが遺伝子転写、翻訳およびエピジェネティック制御を制御することは公知である。IncRNAの例としては、Kcnqlotl、Xlsirt、Xist、ANRIL、NEAT1、NRON、DANCR、OIP5-AS1、TUG1、CasC7、HOTAIRおよびMALAT1が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、「スプライス」または「スプライシング」は、RNAの不必要な領域を除去し、RNAを再形成する、自然過程を指す。その二重鎖を含むオリゴヌクレオチドによるRNA標的機能のモジュレーションの例は、ノンコーディングRNA機能のモジュレーションである。一部の実施形態では、オリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド二重鎖は、上述の低分子ノンコーディングRNAのうちの1つを標的とするように設計される。一部の実施形態では、オリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド二重鎖は、miRNAを標的とするように設計される。一部の実施形態では、オリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド二重鎖は、プレmiRNAを標的とするように設計される。一部の実施形態では、オリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド二重鎖は、プリmiRNAを標的とするように設計される。一部の実施形態では、オリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド二重鎖は、lncRNAを標的とするように設計される。一部の実施形態では、オリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド二重鎖は、スプライスを標的とするように設計される。
【0078】
用語「単離された」または「精製された」は、本明細書で使用される場合、それがそのネイティブ状態で通常は伴う構成要素が実質的にまたは本質的にない、物質を指す。純度および均一性は、代表的には、分析化学技術、例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィーを使用して決定される。
【0079】
用語「散在(している)」は、本明細書で使用される場合、隣接空間に異なる種類の部分を有すること、例えば、異なる種類のヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体のそばに、同じ種類のヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体に対する異なる改変を有することを指す。本発明の様々な実施形態では、「リボヌクレオチドモノマー散在セグメント(ISR:interspersed segment of ribonucleotide monomer)」は、1つまたは複数のリボヌクレオチドが、前記リボヌクレオチドとは異なる種類である少なくとも1つの部分に接続されている、オリゴヌクレオチド鎖のセグメントを指す。例えば、前記リボヌクレオチドが未改変である場合には、異なる種類の部分は、デオキシヌクレオチドもしくはそのアナログ、改変デオキシヌクレオチド、改変リボヌクレオチド、またはリボヌクレオチドアナログであり得る。前記リボヌクレオチドが改変されている場合には、異なる種類の部分は、デオキシヌクレオチドもしくはそのアナログ、改変デオキシヌクレオチド、未改変リボヌクレオチド、異なって改変されたリボヌクレオチド、または異なる種類のリボヌクレオチドアナログである。
【0080】
本明細書で使用される場合、「モジュレートすること」、「制御すること」、およびその文法上の等価物は、増加させることまたは減少させること(例えば、サイレンシングさせること)のどちらか、言い換えると、上方制御することまたは下方制御することのどちらか、を指す。本明細書で使用される場合、「遺伝子サイレンシング」は、遺伝子発現の低減を指し、標的となる遺伝子の約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または95%の遺伝子発現の低減を指し得る。
【0081】
本明細書で使用される場合、用語「阻害すること(inhibiting)」、「阻害すること(to inhibit)」およびそれらの文法上の等価物は、生物活性の文脈で使用されるとき、タンパク質の産生または分子のリン酸化などの、標的となる機能を低下または消失させ得る、生物活性の下方制御を指す。特定の実施形態では、阻害は、標的となる活性の約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または95%の低下を指し得る。障害または疾患の文脈で使用されるとき、これらの用語は、症状の発現を防止することの、症状を緩和することの、または疾患、状態もしくは障害を消失させることの、成功を指す。
【0082】
本明細書で使用される場合、用語「実質的に相補的」または「相補的」は、連結されたヌクレオシドの2本の鎖間の、末端オーバーハングなどのいずれの一本鎖領域も、2つの二本鎖領域間のギャップ領域もない、塩基対合した二本鎖領域における相補性を指す。相補性は、完全である必要はなく、例えば、連結されたヌクレオシドの2本の鎖間に、任意の数の塩基対ミスマッチがあってもよい。しかし、ミスマッチの数が、たとえ最小限にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下であってもハイブリダイゼーションが起こらないくらい多い場合、配列は、実質的に相補的な配列ではない。具体的には、2つの配列が、本明細書において「実質的に相補的」と呼ばれるとき、それは、それらの配列が、選択された反応条件下でハイブリダイズするのに十分、互いに相補的であることを意味する。特異性を達成するのに十分な、核酸相補性とハイブリダイゼーションのストリンジェンシーとの関係は、当技術分野において周知である。2つの実質的に相補的な鎖は、例えば、完全に相補的であることもあり、またはハイブリダイゼーション条件が、例えば、対合する配列と対合しない配列との区別を可能にするのに十分であることを条件に、1つから多数のミスマッチを含有することもある。したがって、実質的に相補的な配列は、二本鎖領域における少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%、または間の任意の数の、塩基対相補性を有する、配列を指し得る。
【0083】
本明細書で使用される場合、「完全に相補的」または「100%相補的」は、連結されたヌクレオシドの第一鎖の核酸塩基配列の各核酸塩基が、連結されたヌクレオシドの第二鎖の第2の核酸塩基配列内に相補核酸塩基を有することを意味する。ある特定の実施形態では、連結されたヌクレオシドの第一鎖は、アンチセンス化合物であり、連結されたヌクレオシドの第二鎖は、標的核酸である。ある特定の実施形態では、連結されたヌクレオシドの第一鎖は、センス化合物であり、連結されたヌクレオシドの第二鎖は、アンチセンス化合物であり、または逆に、連結されたヌクレオシドの第一鎖は、アンチセンス化合物であり、連結されたヌクレオシドの第二鎖は、センス化合物である。
【0084】
本明細書で使用される場合、用語「標的化領域」は、オリゴヌクレオチド鎖内の領域であって、別のオリゴヌクレオチド鎖に実質的にまたは完全に相補的であり、したがって、これら2本の鎖が、適した条件下で、そのような標的化領域において互いにハイブリダイズまたはアニールする、領域を指す。例えば、アンチセンス鎖は、標的化領域を含むことができ、それによって、標的となるmRNAとハイブリダイズすることができる。
【0085】
用語「投与する」、「投与すること」、または「投与」は、本明細書では、それらの最も広い意味で使用される。これらの用語は、本明細書に記載の化合物または医薬組成物を対象に導入する任意の方法を指し、例えば、対象に化合物を全身に、局所に、またはin situで導入することを含み得る。したがって、組成物からの対象において産生される本開示の化合物は(その組成物がその化合物を含むか否かを問わず)、これらの用語に包含される。これらの用語が、用語「全身(性)の」または「全身に」と結びつけて使用されるとき、それらは、血流中の化合物または組成物のin vivoでの全身性の吸収または蓄積、続いての全身への分布を、一般に指す。
【0086】
用語「有効量」または「治療有効量」は、下で説明されるような、疾患処置を含むがこれに限定されない意図された結果に影響を与えるのに十分である、本明細書に記載の化合物または医薬化合物の量を指す。一部の実施形態では、「治療有効量」は、がん細胞の成長もしくは広がり、腫瘍のサイズもしくは数、ならびに/またはがんのレベル、ステージ、進行および/もしくは重症度の他の尺度の、検出可能な死滅もしくは阻害に有効である量である。一部の実施形態では、「治療有効量」は、全身に、局所に、またはin situで投与される量(例えば、対象においてin situで産生される化合物の量)を指す。治療有効量は、意図される適用(in vitroもしくはin vivo)、または処置されることになる対象および病状、例えば、対象の体重および年齢、病状の重症度、または投与様式などによって変わり得るものであり、当業者はそれを容易に決定することができる。この用語は、標的細胞における特定の応答、例えば細胞遊走の低減、を誘導することになる用量にも適用される。具体的な用量は、例えば、特定の医薬組成物、対象ならびに彼らの年齢および既存の健康状態または健康状態のリスク、従うことになる投薬レジメン、疾患の重症度、それが他の薬剤と組み合わせて投与されるのかどうか、投与のタイミング、それが投与される組織、ならびにそれが担持される物理的送達系に依存して変わり得る。
【0087】
対象における「がん」という用語は、がんを引き起こす細胞に典型的な特性、例えば、制御されない増殖、不死性、転移能、速い成長および増殖速度、ならびにある特定の形態学的特徴を有する、細胞の存在を指す。多くの場合、がん細胞は、腫瘍または腫瘤の形態で存在することになるが、そのような細胞は、対象内に単独で存在することもあり、または白血病もしくはリンパ腫細胞などの独立細胞のように血流中を循環することもある。本明細書で使用される場合のがんの例としては、これらに限定されないが、肺がん、膵臓がん、骨がん、皮膚がん、頭部または頸部がん、皮膚または眼内黒色腫、乳がん、子宮がん、卵巣がん、腹膜がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸腺癌、肛門部がん、胃がん(stomach cancer)、胃がん(gastric cancer)、胃腸がん、胃腺癌、アドレノコルチコイド癌(adrenocorticoid carcinoma)、子宮がん、卵管癌、子宮内膜癌、膣癌、外陰部癌、ホジキン病、食道がん、胃食道接合部がん、胃食道腺癌、軟骨肉腫、小腸がん、内分泌系がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟部組織肉腫、ユーイング肉腫、尿道がん、陰茎がん、前立腺がん、膀胱がん、精巣がん、尿管がん、腎盂癌、中皮腫、肝細胞がん、胆道がん、腎臓がん、腎細胞癌、慢性または急性白血病、リンパ球性リンパ腫、中枢神経系(CNS)の新生物、脊髄軸腫瘍(spinal axis tumor)、脳幹神経膠腫、多形性神経膠芽種、星状細胞種、シュワン腫、上衣腫、髄芽腫、髄膜腫、扁平上皮癌、下垂体腺腫、前述のがんのいずれかの、または前述のがんの1つもしくは複数についての組合せの、難治性バージョンを含めて、挙げられる。例示されたがんの一部は、一般用語に含まれ、この用語に含まれる。例えば、一般用語である泌尿器がんは、膀胱がん、前立腺がん、腎臓がん、精巣がんなどを含み、別の一般用語である肝胆道がんは、肝臓がん(それ自体が、肝細胞癌もしくは胆道癌を含む一般用語)、胆嚢がん、胆道がん、または膵臓がんを含む。泌尿器がんと肝胆道がんの両方が、本開示により企図され、用語「がん」に含まれる。
【0088】
用語「医薬組成物」は、対象への投与に好適な形態で、多くの場合、他の物質、例えば、滅菌水溶液などの医薬担体、との混合物で、活性成分、例えば本明細書で開示される分子または組成物、を含有する製剤である。一実施形態では、医薬組成物は、バルクでのまたは単位剤形でのものである。単位剤形は、例えば、カプセル、IVバッグ、錠剤、エアロゾル吸入器上の単一ポンプ、またはバイアルをはじめとする、様々な形態のいずれかである。組成物の単位用量中の活性成分の量は、有効な量であり、関与する特定の処置に従って変化する。患者の年齢および状態に依存して投薬量を常套的に変動させることがときには必要であることは、当業者には理解されるであろう。投薬量は、投与経路にも依存することになる。経口、肺、直腸、非経口、経皮、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、鼻腔内経路などを含む、様々な経路が企図される。本発明のsdDNAの局所的または経皮投与用の剤形は、粉末、スプレー剤、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチおよび吸入剤を含む。
【0089】
用語「医薬品」は、個体に投与されたときに治療利益をもたらす物質を意味する。
【0090】
用語「薬学的に許容される担体」は、化合物の構造に干渉しない媒体または希釈剤を意味する。そのような担体の幾つかは、医薬組成物を、例えば、対象による経口摂取用の錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁物およびトローチ剤として、製剤化することを可能にする。そのような担体の幾つかは、医薬組成物を、注射、注入または局所的投与用に製剤化することを可能にする。例えば、薬学的に許容される担体は、滅菌水溶液である。
【0091】
用語「薬学的に許容される誘導体」は、本明細書に記載の化合物の誘導体、例えば、溶媒和物、水和物、エステル、プロドラッグ、多形体、異性体、同位体標識バリアント、薬学的に許容される塩、および当技術分野において公知の他の誘導体を包含する。
【0092】
用語「薬学的に許容される塩」は、化合物の生理的におよび薬学的に許容される塩、すなわち、親化合物の所望の生物活性を保持し、それに望ましくない毒性効果を付与しない、塩を意味する。用語「薬学的に許容される塩」または「塩」は、親化合物と、無機または有機酸および塩基を含む薬学的に許容される非毒性酸または塩基との反応から調製される、塩を含む。本明細書に記載の化合物の薬学的に許容される塩は、当技術分野において周知の方法により調製することができる。薬学的に許容される塩の総説については、Stahl and Wermuth, Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection and Use (Wiley-VCH, Weinheim, Germany, 2002)を参照されたい。薬学的に許容される塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、アルキルスルホン酸塩、アリールスルホン酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩(maleale)、フマル酸塩、コハク酸塩、乳酸塩および酒石酸塩をはじめとする、酸付加塩;アルカリ金属カチオン、例えば、Na、K、Li、アルカリ土類金属塩、例えば、MgもしくはCa、または有機アミン塩を含み得るが、これらに限定されない。特に、オリゴヌクレオチドのナトリウム塩は、有用であることが証明されており、ヒトへの治療的投与に十分に許容される。したがって、一実施形態では、本明細書に記載の化合物は、ナトリウム塩の形態のものである。
【0093】
本明細書で使用される場合、用語「対象」は、特定の処置のレシピエントになる、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類などを含むがこれらに限定されない、任意の動物(例えば、哺乳動物)を指す。代表的に、用語「対象」および「患者」は、ヒト対象に関して本明細書では同義で使用される。
【0094】
「処置すること(treating)」もしくは「処置」もしくは「処置すること(to treat)」または「緩和すること(alleviating)」もしくは「緩和すること(to alleviate)」などの用語は、本明細書で使用される場合、(1)診断された病的状態もしくは障害を治癒させる、緩徐化する、その症状を減少させる、および/またはその進行を停止させる、治療的手段と、(2)標的となる病的状態または障害の発症を予防または緩徐化する予防的手段または予防手段の、両方を指す。したがって、処置を必要とする者は、障害を既に有している者;障害に罹患しやすい者;および疾患を予防すべき者を含む。患者が次のうちの1つまたは複数を示す場合、対象は、本発明の方法に従ってうまく「処置される」:がん細胞の数の低減またはがん細胞の完全非存在;腫瘍サイズの低減;軟部組織および骨へのがんの広がりを含む、末梢器官へのがん細胞浸潤の阻害または非存在;腫瘍転移の阻害または非存在;腫瘍成長の阻害または非存在;特定のがんに関連する1つまたは複数の症状の軽減;罹病率および死亡率の低下;ならびに生活の質の改善。
【0095】
用語「担体」は、本明細書で使用される場合、例えば、身体の1つの器官または部分から身体の別の器官または部分に対象医薬化合物を運ぶこともしくは輸送することに関与するまたはそれができる、液体もしくは固体充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒またはカプセル化材料などの、薬学的に許容される材料、組成物またはビヒクルを意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合性であり、患者に有害でないという意味で、「許容される」ものでなければならない。薬学的に許容される担体、担体、および/または希釈剤の非限定的な例としては、糖、例えば、ラクトース、グルコースおよびスクロース;デンプン、例えば、トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプン;セルロースおよびその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース;トラガカント粉末;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えば、カカオ脂および坐薬用ワックス;油、例えば、落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油および大豆油;グリコール、例えば、プロピレングリコール;ポリオール、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール;エステル、例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;寒天;緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;アルギン酸;パイロジェンフリー水;等張食塩水;リンゲル液;エチルアルコール;リン酸緩衝溶液;ならびに医薬製剤に利用される他の非毒性適合性物質が挙げられる。湿潤剤、乳化剤、および滑沢剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、およびポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシドコポリマー、ならびに着色剤、放出剤(release agent)、コーティング剤、甘味剤、矯味矯味剤および芳香剤、保存剤ならびに抗酸化物質も、組成物中に存在し得る。
2.ある特定の実施形態-sdDNA構造足場
【0096】
本発明のある特定の実施形態は、アンチセンス鎖およびセンス鎖が両方とも、連結されたヌクレオシドモノマーで構成されている、二重鎖組成物を提供する。肝要なRNA標的化モチーフ内のヌクレオシドモノマーの50パーセントもしくはそれより多くは、デオキシリボヌクレオシドモノマーであり、またはsdDNA分子の二本鎖領域の1本の鎖内の50パーセントまたはそれより多くの核酸塩基は、デオキシリボヌクレオシドモノマーを含み、それに含有されるデオキシリボヌクレオシドモノマーおよび/もしくはヌクレオシド間連結の一部は、天然DNAに見られるものから改変されていることがある。本発明の二重鎖DNA分子は、さらに、1つまたは複数のリボヌクレオチドモノマー散在セグメント(「ISR」)にリボヌクレオシドモノマーを含む。1つまたは複数のISRが、アンチセンス鎖もしくはセンス鎖のどちらかに見られることもあり、または両方に見られることもある。一部の実施形態では、各ISRは、互いに独立して、1つのリボヌクレオチドモノマー、または連続する2つ、3つ、4つ、5つもしくは6つのリボヌクレオチドモノマーからなる。一部の実施形態では、ISRは、連続する少なくとも2つの連結されたリボヌクレオチドモノマーを有する。
【0097】
本発明の短鎖二重鎖DNA(sdDNA)のアンチセンス鎖とセンス鎖の両方は、比較的短く、センス鎖はアンチセンス鎖と長さが少なくとも等しく、それ故、「短鎖二重鎖DNA」(sdDNA)である。さらに、ある特定の実施形態では、長さが2本の鎖間で同じであることから、本発明の二重鎖分子は、より具体的に、「対称短鎖二重鎖DNA」と呼ばれることがある。
【0098】
本発明の二重鎖分子の例示的な構造および配列は、
図1A、2A、4A、5A、6Aおよび7Aで示され、ここで、ISRは、両方の鎖に見られ、またはアンチセンス鎖のみに見られる。
【0099】
一部の実施形態では、同じ長さのアンチセンスおよびセンス鎖が、いかなるオーバーハングも有さない対称構造を形成する。
【0100】
本発明の組成物を、(i)1種類のsdDNA分子を細胞と接触させるまたは対象に投与する;(ii)異なる種類のsdDNA分子を細胞と接触させるまたは対象に異なる時点で別々に投与する;(ii)異なる種類のsdDNA分子を細胞と接触させるまたは対象に同時に投与するという少なくとも3つの方法で、真核細胞における遺伝子発現または機能をモジュレートするために使用する。
【0101】
ある特定の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチド鎖は、mRNAおよびノンコーディングRNAをはじめとするそれが標的化される標的遺伝子の標的セグメントに少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%相補的である「標的化領域」と呼ばれる核酸塩基配列領域を含む。ある特定の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、それが標的化される標的遺伝子の標的セグメントの完全相補配列を含む核酸塩基配列を有する。ある特定の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、それが標的化される標的RNAの標的セグメントにハイブリダイズしたときに最大でも1つ、2つまたは3つのミスマッチしか含まない核酸塩基配列を有する。ある特定の実施形態では、標的遺伝子は、哺乳動物の疾患に関与する、mRNAまたはノンコーディングRNAから選択される。一部の実施形態では、少なくとも1つのISRは、アンチセンス鎖の標的化領域内に配置されている。ある特定の実施形態では、ISRは、アンチセンス鎖の5’末端またはその付近(すなわち、例えば、約21核酸塩基長である鎖についてはその末端を数えて7核酸塩基以内を意味する、鎖の長さの3分の1以内)に位置する。あるいは、ISRは、アンチセンス鎖の3’末端またはその付近(すなわち、例えば、約21核酸塩基長である鎖についてはその末端を数えて7核酸塩基以内を意味する、鎖の長さの3分の1以内)にある。一部の実施形態では、ISR、またはISRの少なくとも一部はまた、アンチセンス鎖のより中央の部分に、すなわち、長さの中間部3分の1に位置し、長さの中間部3分の1にとは、例えば、約21核酸塩基長である鎖についてはアンチセンス鎖の両末端から7核酸塩基を超えて離れて、という意味である。
【0102】
様々な実施形態では、第一またはアンチセンス鎖は、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49もしくは50の連結されたヌクレオチドモノマー、またはその等価物の、または前記値のいずれか2つで挟まれている範囲(範囲の終点両方を含む)の、骨格長を有する。例えば、第一アンチセンス鎖の長さの範囲の一部は、8~50ヌクレオチドモノマー;8~36ヌクレオチドモノマー;8~33ヌクレオチドモノマー;10~36ヌクレオチドモノマー;10~30ヌクレオチドモノマー;10~29ヌクレオチドモノマー;12~36ヌクレオチドモノマー;12~29ヌクレオチドモノマー;12~28ヌクレオチドモノマー;12~26ヌクレオチドモノマー;12~25ヌクレオチドモノマー;13~25ヌクレオチドモノマー;13~24ヌクレオチドモノマー;13~23ヌクレオチドモノマー;14~24ヌクレオチドモノマー;15~23ヌクレオチドモノマー;および16~23ヌクレオチドモノマー;および少なくとも8ヌクレオチドモノマーを含む。
【0103】
ある特定の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチド鎖は、長さ10~36(範囲の終点両方を含む)ヌクレオチドモノマーである。言い換えると、アンチセンス鎖は、10~36(範囲の終点両方を含む)の連結された核酸塩基モノマーである。他の実施形態では、アンチセンス鎖は、8~100、10~80、12~50、14~30、15~23、16~22、16~21、または20(範囲の終点両方を含む)の連結された核酸塩基からなる、改変オリゴヌクレオチドを含む。
【0104】
ある特定の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、14~23(範囲の終点両方を含む)の連結されたヌクレオシドモノマーからなる。ある特定の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、20の連結されたヌクレオシドモノマーからなる。ある特定の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、16の連結されたヌクレオシドモノマーからなる。
【0105】
ある特定の実施形態では、センス鎖は、アンチセンス鎖に実質的に相補的であり、かつ、アンチセンス鎖の全核酸塩基配列にわたって測定して、アンチセンスオリゴヌクレオチドの連結された領域の配列に少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%相補的である、核酸塩基配列を含む。両方の鎖からのこれらの実質的に相補的な配列は、1つまたは複数の二本鎖領域を形成する。
ある特定の実施形態では、センス鎖は、アンチセンス鎖の連結された領域の完全相補配列を含む核酸塩基配列を有する。結果として、2本の鎖は、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50塩基対を含む二本鎖領域を形成する。一部の実施形態では、少なくとも1つのISRは、センス鎖の二本鎖領域内に配置されている。
【0106】
ある特定の実施形態では、ISRは、センス鎖の5’末端もしくはその付近(末端から前記末端を数えて核酸塩基の総数の33%以内)に、またはセンス鎖の3’端もしくはその付近(末端から前記末端を数えて核酸塩基の総数の33%以内)に、位置する。一部の実施形態では、ISR、またはISRの少なくとも一部はまた、センス鎖のより中央の部分に位置し、すなわち、センス鎖の両末端から核酸塩基の総数の33%を超えて離れて位置する。一部の実施形態では、ISRは、センス鎖内に配置されている必要はない。
【0107】
ある特徴において、センスオリゴヌクレオチド鎖は、アンチセンスオリゴヌクレオチド鎖と等しいかまたはそれより長い長さを有する。ある特定の実施形態では、センス鎖は、全長から、16の連結された核酸塩基長、アンチセンス鎖より長い、長さを有する。ある特定の実施形態では、センス鎖は、長さ6~66(範囲の終点両方を含む)ヌクレオチドモノマーである。言い換えると、これらのセンス鎖は、6~66(範囲の終点両方を含む)の連結された核酸塩基である。他の実施形態では、センス鎖は、20~21、8~36、10~30、12~25、14~24、または16~23(範囲の終点両方を含む)の連結された核酸塩基からなる、オリゴヌクレオチドを含む。ある特定のそのような実施形態では、センス鎖は、長さ6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65もしくは66の連結された核酸塩基、または前記値のいずれか2つにより定義される範囲(範囲の終点両方を含む)からなる、オリゴヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、センス鎖は、センスオリゴヌクレオチドである。
【0108】
1つの特徴において、第二センス鎖の長さは、第一アンチセンス鎖のものと等しい。ある特定の実施形態では、二重鎖の両方の末端は、平滑末端である。他の特徴において、第二鎖またはセンス鎖は、少なくとも次のようなヌクレオチドモノマー数だけ、第一鎖またはアンチセンス鎖より長い骨格長を有する:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、17、18、19および20。様々な実施形態では、第二またはセンス鎖は、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65もしくは66の連結されたヌクレオチドモノマー、またはその等価物の、または前記値のいずれか2つで挟まれている範囲(範囲の終点両方を含む)の、骨格長を有する。ある特定の実施形態では、例えば、第二、センス鎖の範囲の一部は、6~66ヌクレオチドモノマー;8~50ヌクレオチドモノマー;8~40ヌクレオチドモノマー;8~36ヌクレオチドモノマー;8~33ヌクレオチドモノマー;10~36ヌクレオチドモノマー;10~30ヌクレオチドモノマー;10~29ヌクレオチドモノマー;12~29ヌクレオチドモノマー;12~28ヌクレオチドモノマー;12~26ヌクレオチドモノマー;12~25ヌクレオチドモノマー;12~24ヌクレオチドモノマー;13~25ヌクレオチドモノマー;13~24ヌクレオチドモノマー;13~23ヌクレオチドモノマー;14~24ヌクレオチドモノマー;15~23ヌクレオチドモノマー;16~23ヌクレオチドモノマーのタイド;および少なくとも8ヌクレオチドモノマーを含む。
【0109】
ある特定の実施形態では、センス鎖は、アンチセンス鎖より1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16ヌクレオチドモノマー長い。ある特定の実施形態では、センス鎖は、8~36(範囲の終点両方を含む)の連結されたヌクレオシドモノマーからなる。ある特定の実施形態では、センス鎖は、13の連結されたヌクレオシドモノマーからなる。ある特定の実施形態では、センス鎖は、14の連結されたヌクレオシドモノマーからなる。
【0110】
本発明のある実施形態では、sdDNA分子の2本の鎖は、いかなるオーバーハングも有さない対称二重鎖を形成する。様々な一部の他の実施形態では、第一鎖(アンチセンス鎖)の2つの末端は、次の構成のうちの1つである:3’-オーバーハングおよび5’平滑末端;5’-オーバーハングおよび3’平滑末端;3’オーバーハングおよび5’陥凹末端;3’陥凹末端および5’オーバーハング;または3’陥凹末端および5’陥凹末端。
【0111】
ある特定の実施形態では、センス鎖の3’-オーバーハングは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30ヌクレオチドモノマーの長さを有する。様々な実施形態では、センス鎖の3’-オーバーハングは、1~8、1~5、1~3、または1~2ヌクレオチドモノマー(範囲の終点両方を含む)の長さを有する。
【0112】
ある特定の実施形態では、センス鎖の5’-オーバーハングは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30ヌクレオチドモノマーの長さを有する。様々な実施形態では、センス鎖の3’-オーバーハングは、1~8、1~5、1~3、または1~2ヌクレオチドモノマー(範囲の終点両方を含む)の長さを有する。
【0113】
本発明のsdDNA分子において、第一鎖および/または第二鎖内の少なくとも1つのヌクレオチドモノマーは、改変ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体、例えば、糖改変ヌクレオチド、骨格改変ヌクレオチド、および/または塩基改変ヌクレオチドであり得る。ある実施形態では、そのような骨格改変ヌクレオチドは、例えば、窒素または硫黄ヘテロ原子の少なくとも一方を含むための、ヌクレオシド間連結の改変を少なくとも有する。一部の実施形態では、改変ヌクレオシド間連結は、ホスホロチオエート(P=S)基、ホスホトリエステル、メチルホスホネートもしくはホスホルアミデートである、またはそれを含む。
【0114】
ある特定の実施形態では、アンチセンス鎖および/またはセンス鎖は、少なくとも1つの改変ヌクレオシド間連結を含む。そのような改変ヌクレオシド間連結は、2つのデオキシリボヌクレオシドモノマー間、2つのリボヌクレオシドモノマー間、または1つのデオキシリボヌクレオシドモノマーと1つのリボヌクレオシドモノマーの間にあり得る。あるいは、末端ヌクレオシドモノマーの少なくとも1つの上のリン酸基は、改変されていることがある。ある特定の実施形態では、ヌクレオシド間連結は、ホスホロチオエートヌクレオシド間連結である。ある特定の実施形態では、ヌクレオシド間連結は、チオホスホルアミデートヌクレオシド間連結である。ある特定の実施形態では、オリゴヌクレオチド鎖の各ヌクレオシド間連結は、ホスホロチオエートヌクレオシド間連結である。ある特定の実施形態では、鎖(アンチセンスまたはセンスまたは両方)内のヌクレオシド間連結の全ては、ホスホロチオエートヌクレオシド間連結であり、またはホスホロチオエート連結とホスホジエステル連結の混合物である。
【0115】
ある特定の実施形態では、アンチセンス鎖および/またはセンス鎖は、改変糖部分を有する少なくとも1つのヌクレオシドモノマーを含む。そのようなヌクレオシドモノマーは、デオキシリボヌクレオシドモノマーであることもあり、またはリボヌクレオシドモノマーであることもある。
【0116】
ある特定の実施形態では、改変糖部分の2’位は、OR、R、ハロ、SH、SR、NH2、NHR、NR2、またはCNから選択される基により置き換えられており、ここで、各Rは、独立して、C1~C6アルキル、アルケニルまたはアルキニルであり、ハロは、F、Cl、BrまたはIである。一部の実施形態では、改変糖部分の2’位は、アリル、アミノ、アジド、チオ、O-アリル、O-C1~C10アルキル、OCF3、OCH2F、O(CH2)2SCH3、O(CH2)2-O-N(Rm)(Rn)、O-CH2-C(=O)-N(Rm)(Rn)、またはO-CH2-C(=O)-N(R1)-(CH2)2-N(Rm)(Rn)から選択される基により置き換えられており、ここで、各Rl、RmおよびRnは、独立して、Hまたは置換もしくは非置換C1~C10アルキルである。一部の実施形態では、改変糖部分は、5’-ビニル、5’-メチル(RまたはS)、4’-S、2’-F、2’-OCH3、2’-OCH2CH3、2’-OCH2CH2Fおよび2’-O(CH2)2OCH3置換基の群から選択される。一部の実施形態では、改変糖部分は、4’-(CH2)-O-2’(LNA);4’-(CH2)-S-2;4’-(CH2)2-O-2’(ENA);4’-CH(CH3)-O-2’(cEt)および4’-CH(CH2OCH3)-O-2’、4’-C(CH3)(CH3)-O-2’、4’-CH2-N(OCH3)-2’、4’-CH2-O-N(CH3)-2’、4’-CH2-N(R)-O-2’(ここで、Rは、H、C1~C12アルキル、または保護基である)、4’-CH2-C(H)(CH3)-2’、ならびに4’-CH2-C-(=CH2)-2’の群から選択される二環式糖により置換されている。
【0117】
一部の実施形態では、改変糖部分は、2’-O-メトキシエチル改変糖(MOE)、4’-(CH2)-O-2’二環式糖(LNA)、2’-デオキシ-2’-フルオロアラビノース(FANA)、およびメチル(メチレンオキシ)(4’-CH(CH3)-O-2)二環式糖(cEt)の群から選択される。
【0118】
一部の実施形態では、本発明の分子のアンチセンス鎖および/またはセンス鎖は、改変核酸塩基を有する少なくとも1つのヌクレオチドモノマーを含む。そのようなヌクレオシドモノマーは、デオキシリボヌクレオシドモノマーであることもあり、またはリボヌクレオシドモノマーであることもある。
【0119】
一部の実施形態では、改変核酸塩基は、5-メチルシトシン(5-Me-C)、イノシン塩基、トリチル化塩基、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン;アデニンおよびグアニンの6-メチルおよび他のアルキル誘導体;アデニンおよびグアニンの2-プロピルおよび他のアルキル誘導体;2-チオウラシル、2-チオチミンおよび2-チオシトシン、5-ハロウラシルおよびシトシン;5-プロピニル(-C≡C-CH3)ウラシルおよびシトシン、ならびにピリミジン塩基の他のアルキニル誘導体;6-アゾウラシル、シトシンおよびチミン、5-ウラシル(シュードウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシルならびに他の8-置換アデニンおよびグアニン、5-ハロ、特に、5-ブロモ、5-トリフルオロメチルならびに他の5-置換ウラシルおよびシトシン、7-メチルグアニンおよび7-メチルアデニン、2-F-アデニン、2-アミノアデニン、8-アザグアニンおよび8-アザアデニン、ならびに7-デアザグアニンおよび7-デアザアデニン、ならびに3-デアザグアニンおよび3-デアザアデニンの群から選択される。
【0120】
特定の実施形態では、本発明の分子における改変核酸塩基は、5-メチルシトシンである。ある実施形態では、本発明の分子における各シトシン塩基は、5-メチルシトシンである。ある特定の実施形態では、改変核酸塩基は、5-メチルウラシルである。ある特定の実施形態では、各ウラシルは、5-メチルウラシルである。
【0121】
ある特定の実施形態では、本発明の分子のアンチセンス鎖もしくはセンス鎖のどちらかまたは両方は、連結されたデオキシヌクレオシドモノマーを含む。ある特定の実施形態では、センス鎖全体が、連結されたデオキシヌクレオシドモノマーから排他的になる。ある特徴において、アンチセンス鎖またはアンチセンス鎖とセンス鎖の両方のどちらかは、連結されたデオキシヌクレオシドモノマーに加えて、さらに、1つまたは複数の連結されたリボヌクレオシドモノマーからなるISRを含む。さらに、よりいっそう多くのISRセグメントがあることもある。ISRは、どちらかの鎖のどこにあってもよい。一部の実施形態では、1つまたは複数のISRは、末端ヌクレオシドモノマー、または末端の最後から2番目のヌクレオシドモノマーを含む。ある特定の実施形態では、ISRの各々は、互いに独立して、1つのリボヌクレオシドモノマー、または2つ、3つ、4つもしくは5つの連結されたリボヌクレオシドモノマーからなる。
【0122】
ある特定の実施形態では、二本鎖領域の少なくとも1本の鎖内の核酸塩基の少なくとも半分は、デオキシリボヌクレオチドモノマーである。
【0123】
ある特定の実施形態では、二本鎖領域のRNA標的化部分における第1の鎖内のヌクレオチドの少なくとも50%は、デオキシリボヌクレオチドモノマーである。
【0124】
ある特定の実施形態では、sdDNA分子内のリボヌクレオチドモノマーの総数は、最大でも、同じsdDNA分子内のデオキシリボヌクレオチドモノマーの総数である。
【0125】
ある特定の実施形態では、ISRの連結されたリボヌクレオシドモノマーの少なくとも1つまたは各々は、改変リボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドアナログである。リボヌクレオチドは、以下と同じまたは同様の方法で改変され得る:改変ヌクレオシド間連結、改変糖部分および/または改変核酸塩基を有する。
【0126】
一部の実施形態では、デオキシリボヌクレオチドモノマーの糖部分は、天然に存在するデオキシリボヌクレオチド(2-H)または2’-デオキシ-2’-フルオロアラビノース(FANA)のどちらかの糖部分である。
【0127】
一部の実施形態では、リボヌクレオチドモノマーの糖部分は、天然に存在するリボヌクレオチド(2-OH)、2’-F改変糖、2’-OMe改変糖、2’-O-メトキシエチル改変糖(MOE)、4’-(CH2)-O-2’二環式糖(LNA)およびメチル(メチレンオキシ)(4’-CH(CH3)-O-2)二環式糖(cEt)からなる群より選択される。
【0128】
ある特定の実施形態では、アンチセンス鎖、センス鎖または両方の鎖において、その中の各ISRの少なくとも1つのまたは各々のリボヌクレオシドモノマーは、2’-O-メトキシエチル改変糖(MOE)、4’-(CH2)-O-2’二環式糖(LNA)、およびメチル(メチレンオキシ)(4’-CH(CH3)-O-2)二環式糖(cEt)の群から選択される改変糖部分を有する。ある特定の実施形態では、アンチセンス鎖、センス鎖または両方の鎖において、少なくとも1つのデオキシリボヌクレオシドモノマーは、2’-デオキシ-2’-フルオロアラビノース(FANA)の改変糖部分を有する。ある特定の実施形態では、各ISRの各リボヌクレオシドモノマーは、2’-O-メトキシエチル改変糖、4’-(CH2)-O-2’二環式糖、またはメチル(メチレンオキシ)(4’-CH(CH3)-O-2)二環式糖(cEt)を有し、各シトシンは、5-メチルシトシンであり、各ウラシルは、5-メチルウラシル、またはメチル-シュードウラシルであり、各ヌクレオシド間連結は、ホスホロチオエート連結である。
【0129】
ある特定の実施形態では、本発明の分子は、各ヌクレオシド間連結がホスホロチオエート連結である、デオキシヌクレオシドモノマーからなるアンチセンス鎖またはセンス鎖のどちらかを有する。ある特定の実施形態では、本発明の分子は、各ヌクレオシド間連結が、ホスホロチオエート改変を有さない天然のリン酸連結である、デオキシヌクレオシドモノマーからなるアンチセンス鎖またはセンス鎖のどちらかを有する。
【0130】
ある特定の実施形態では、本発明の分子は、センス鎖を含み、このセンス鎖の各ヌクレオチドモノマーは、アンチセンス鎖の相補ヌクレオチドモノマーと同じ改変を含む。
【0131】
アンチセンスオリゴヌクレオチド鎖およびセンスオリゴヌクレオチド鎖を有する本発明の例示的な分子の例示的な構造および例示的な配列は、
図1A、2A、4A、5A、6Aおよび7Aで示される。
【0132】
ある特定の実施形態では、短鎖DNA二重鎖、および二重鎖分子のアンチセンス鎖内の少なくとも1つのISRは、強力な遺伝子サイレンシングを可能にする。下の全ての実施例で示されるデータは、アンチセンスオリゴデオキシリボヌクレオチドを有する二重鎖であって、そのアンチセンスオリゴデオキシリボヌクレオチドに少なくとも1つのISRを有する二重鎖に基づく新しいプラットフォーム技術が、極めて強力な遺伝子サイレンシングを可能にしたことを示唆する。様々なISRモチーフ、様々な長さ、相補性およびミスマッチ、様々な改変などを含む、sdDNAのSAR(構造と活性の関係)特徴についてのさらなる研究を行った。この研究は、遺伝子サイレンシング活性に影響し得る様々な構造因子および足場特徴を規定するのに役立つ。そのようなSAR因子および設計特徴は、典型的な哺乳動物細胞における100,000より多くの異なるmRNAの、およびさらにいっそう多くのノンコーディングRNAの、様々な配列および構造を標的とする最適化遺伝子サイレンサーの設計に、重要である。遺伝子サイレンシング活性およびsdDNAのSARに関する本発明者らのデータは、sdDNAの遺伝子サイレンシング特徴がsiRNAおよびASOとは大いに異なることを示唆し、これは、まだ同定されていない遺伝子サイレンシング機序である新規の異なる機序を示す。
【0133】
ある特定の実施形態では、本発明の分子を、少なくとも1つの化学的改変または二次構造のどちらかによって、分解に対して安定化することができる。センスオリゴヌクレオチド鎖およびアンチセンスオリゴヌクレオチド鎖は、アンマッチヌクレオチドモノマーまたは不完全にマッチしたヌクレオチドモノマーを有し得る。センスオリゴヌクレオチド鎖および/またはアンチセンスオリゴヌクレオチド鎖は、1つまたは複数のニック(核酸骨格の切断部)、ギャップ(1つもしくは複数の欠損ヌクレオチドを有する断片化された鎖)、および改変ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体を有し得る。センスおよびアンチセンスオリゴヌクレオチド鎖内のヌクレオチドモノマーのいずれかまたは全てを化学的に改変することができるばかりでなく、各鎖を、その機能性を強化するために、1つまたは複数の部分またはリガンドに、例えば、ペプチド、抗体、抗体断片、ポリマー、多糖、脂質、疎水性部分または分子、カチオン性部分または分子、親油性化合物または部分 オリゴヌクレオチド、コレステロール、GalNAcおよびアプタマーから選択される部分またはリガンドと、コンジュゲートさせることができる。
【0134】
ある特定の実施形態では、本発明の二重鎖分子の二本鎖領域は、いかなるミスマッチもバルジも含有せず、2本の鎖は、二本鎖領域において互いに完全に相補的である。別の実施形態では、二重鎖の二本鎖領域は、ミスマッチおよび/またはバルジを含有する。
【0135】
ある特定の実施形態では、標的は、哺乳動物の疾患に関与する、mRNAまたはノンコーディングRNAである。ある特定の実施形態では、標的は、mRNAである。ある特定の実施形態では、標的は、ノンコーディングRNA、例えば、マイクロRNAおよびlncRNAである。アンチセンス鎖は、標的配列に、それらが互いに実質的に相補的であれば、ハイブリダイズすることによって標的を占有し、標的遺伝子を不活性化することができる。
【0136】
3.アンマッチ領域またはミスマッチ領域
本発明のアンチセンス鎖とセンス鎖の間の相補領域は、例えば1つまたは複数のミスマッチを含有する、少なくとも1つのアンマッチ領域または不完全にマッチした領域を有し得る。一部の実施形態では、本発明で提供されるsdDNAのセンス鎖は、sdDNAの遺伝子サイレンシング活性に対していかなる影響もなく、3つまたはそれより多く(標的化領域の少なくとも15%)のミスマッチを含有することができる。センス鎖内のミスマッチは、オフターゲット効果を低下させるために望ましいこともあり、またはsdDNAに対する他の特徴を可能にすることもある。
【0137】
当業者には周知であるように、活性を消失させることなくミスマッチ塩基を導入することが可能である。同様に、本発明のsdDNAのアンチセンスオリゴヌクレオチドの鎖は、アンマッチ領域またはミスマッチ領域を含み得る。一部の実施形態では、本発明のsdDNAのアンチセンスオリゴヌクレオチドの鎖は、遺伝子サイレンシング活性を維持しながら、少なくとも3つ(標的化領域の少なくとも15%)のミスマッチを許容することができる。アンチセンス鎖内のミスマッチは、オフターゲット効果を低下させるために望ましいこともあり、またはsdDNAに対する他の特徴を可能にすることもある。
4.改変
【0138】
ヌクレオシドモノマーは、塩基-糖組成物である。ヌクレオシドモノマーの核酸塩基(塩基としても公知)部分は、通常は、複素環式塩基部分である。ヌクレオチドモノマーは、ヌクレオシドの糖部分に共有結合で連結されたリン酸基をさらに含むヌクレオシドモノマーである。ペントフラノシル糖を含むヌクレオシドモノマーについては、リン酸基は、糖の2’、3’または5’ヒドロキシル部分に連結されていることがある。オリゴヌクレオチドは、隣接ヌクレオシドモノマーが互いに共有結合して線状ポリマーオリゴヌクレオチドを形成することによって形成される。オリゴヌクレオチド構造内で、リン酸基は、オリゴヌクレオチドのヌクレオシド間連結を形成すると一般にいわれている。
【0139】
本発明のsdDNA分子、アンチセンス鎖および/またはセンス鎖の改変は、ヌクレオシド間連結、糖部分、または核酸塩基に対する置換または変化を包含する。改変されたsdDNA、アンチセンス鎖および/またはセンス鎖は、一部の場合には、例えば、阻害活性の増大、細胞取込みの増強、鎖親和性の増強、溶解度、非特異的相互作用を低減させること、およびRNase分解に対する耐性、またはその他の点での安定性の増強などの、望ましい特性のため、ネイティブ形態より好ましい。それ故、そのような化学的に改変されたヌクレオシドモノマーを有する、より短いアンチセンス鎖と同等の結果を、多くの場合、得ることができる。本発明のアンチセンスおよびセンス鎖内の天然ヌクレオチドの1つまたは複数を、改変ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体で置換することができる。置換は、アンチセンス鎖およびセンス鎖のどこで行われてもよい。
【0140】
オリゴヌクレオチド分子の改変は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、アプタマー、およびRNAiをはじめとする、様々なオリゴヌクレオチド分子の安定性を改善するために研究されている(Chiu and Rana, 2003;Czauderna et al., 2003;de Fougerolles et al., 2007;Kim and Rossi, 2007;Mack, 2007;Zhang et al., 2006;Schrnidt, 2007;Setten RL et al., 2020;Crooke ST et al., 2018;およびRoberts TC et al., 2020)。
【0141】
当業者に公知の任意の安定化改変を使用して、オリゴヌクレオチド分子の安定性を改善することができる。オリゴヌクレオチド分子内で、化学的改変を、リン酸骨格(例えば、ホスホロチオエート連結)、糖(例えば、ロックド核酸、グリセロール核酸、cEt、2’-MOE、2’-フルオロウリジン、2’-O-メチル)、および/または塩基(例えば、2’-フルオロピリミジン)に導入することができる。
【0142】
そのような化学的改変のいくつかの例は、後続のセクションで要約される。
【0143】
様々な実施形態では、改変ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体は、糖改変ヌクレオチド、骨格改変ヌクレオチド、および/または塩基改変ヌクレオチドである。
【0144】
4.1 改変ヌクレオシド間連結または骨格改変ヌクレオチド
RNAおよびDNAの天然に存在するヌクレオシド間連結は、3’から5’へのホスホジエステル連結である。1つまたは複数の改変された、すなわち天然に存在しない、ヌクレオシド間連結をその一方または両方の鎖に有する本発明のsdDNA分子は、例えば、細胞取込みの増強、標的核酸に対する親和性の増強、およびヌクレアーゼの存在下での安定性の増大などの、望ましい特性のため、天然に存在するヌクレオシド間連結のみを有する対応する分子よりも選ばれることもある。
【0145】
改変ヌクレオシド間連結を有するオリゴヌクレオチド鎖は、リン原子を保持するヌクレオシド間連結はもちろん、リン原子を有さないヌクレオシド間連結も含む。ある実施形態では、ホスホジエステルヌクレオシド間連結は、窒素および/または硫黄ヘテロ原子を少なくとも含むように改変されている。代表的なリン含有ヌクレオシド間連結としては、ホスホジエステル、ホスホトリエステル、メチルホスホネート、ホスホルアミデート、チオホスホルアミデートおよびホスホロチオエートが挙げられるが、これらに限定されない。リン含有および非リン含有連結の調製方法は、周知である。
【0146】
一実施形態では、改変ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体は、骨格改変ヌクレオチドである。骨格改変ヌクレオチドは、ホスホジエステルヌクレオシド間連結の改変を有し得る。さらなる実施形態では、骨格改変ヌクレオチドは、ホスホロチオエートヌクレオシド間連結である。ある特定の実施形態では、各ヌクレオシド間連結は、ホスホロチオエートヌクレオシド間連結である。
【0147】
4.2 改変糖部分
本発明のアンチセンスおよび/またはセンス鎖は、糖基が改変されている1つまたは複数のヌクレオシドモノマーを必要に応じて含有し得る。そのような糖改変ヌクレオシドモノマーは、ヌクレアーゼ安定性の増強、結合親和性の増大、または一部の他の有益な生物学的特性を鎖に付与し得る。ある特定の実施形態では、ヌクレオシドモノマーは、化学的に改変されたリボフラノース環部分を含む。化学的に改変されたリボフラノース環の例は、限定ではないが、置換基(5’および2’置換基を含む)の付加、二環式核酸(BNA)を形成するための非ジェミナル環原子の架橋、リボシル環酸素原子のS、N(R)またはC(R1)(R2)(R、R1およびR2は、各々独立して、H、C1~C12アルキルまたは保護基である)での置き換え、およびこれらの組合せを含む。化学的に改変された糖の例としては、2’-F-5’-メチル置換ヌクレオシド(他の開示されている5’,2’-二置換ヌクレオシドについては、2008年8月21日に公開されたPCT国際出願WO2008/101157を参照されたい)、または2’位におけるさらなる置換を伴うリボシル環酸素原子のSでの置き換え(2005年6月16日に公開された米国特許出願公開第2005-0130923を参照されたい)、または代替的に、BNAの5’置換(LNAが、例えば5’-メチルもしくは5’-ビニル基で、置換されている、2007年11月22日に公開されたPCT国際出願WO2007/134181を参照されたい)が挙げられる。
【0148】
改変糖部分を有するヌクレオシドモノマーの例としては、限定ではないが、5’-ビニル、5’-メチル(RまたはS)、4’-S、2’-F、2’-OCH3、2’-OCH2CH3、2’-OCH2CH2Fおよび2’-O(CH2)2OCH3置換基を含むヌクレオシドが挙げられる。2’位における置換基を、アリル、アミノ、アジド、チオ、O-アリル、O-C1~C10アルキル、OCF3、OCH2F、O(CH2)2SCH3、O(CH2)2-O-N(Rm)(Rn)、O-CH2-C(=O)-N(Rm)(Rn)、およびO-CH2-C(=O)-N(R1)-(CH2)2-N(Rm)(Rn)から選択することもでき、ここで、各Rl、RmおよびRnは、独立して、Hまたは置換もしくは非置換C1~C10アルキルである。
【0149】
二環式ヌクレオシドは、二環式糖部分を有する改変ヌクレオシドである。二環式核酸(BNA)の例としては、限定ではないが、4’リボシル環原子と2’リボシル環原子との間に架橋を含むヌクレオシドが挙げられる。ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるsdDNA、アンチセンス鎖および/またはセンス鎖は、架橋が次の式のうちの1つを含む、1つまたは複数のBNAヌクレオシドを含む:4’-(CH2)-O-2’(LNA);4’-(CH2)-S-2;4’-(CH2)2-O-2’(ENA);4’-CH(CH3)-O-2’および4’-CH(CH2OCH3)-O-2’(およびそのアナログ、2008年7月15日に発行された米国特許第7,399,845号を参照されたい);4’-C(CH3)(CH3)-O-2’(およびそのアナログ、2009年1月8日に公開された、WO/2009/006478として公開されたPCT/US2008/068922を参照されたい);4’-CH2-N(OCH3)-2’(およびそのアナログ、2008年12月11日に公開された、WO/2008/150729として公開されたPCT/US2008/064591を参照されたい);4’-CH2-O-N(CH3)-2’(2004年9月2日に公開された米国特許出願公開第2004-0171570号を参照されたい);4’-CH2-N(R)-O-2’(式中、Rは、H、C1~C12アルキル、または保護基である)(2008年9月23日に発行された米国特許第7,427,672号を参照されたい);4’-CH2-C(H)(CH3)-2’(Chattopadhyaya et al., J. Org. Chem., 2009, 74, 118-134を参照されたい);および4’-CH2-C-(=CH2)-2’(およびそのアナログ、2008年12月8日に公開された、WO2008/154401として公開されたPCT/US2008/066154を参照されたい)。
【0150】
ある特定の実施形態では、二環式ヌクレオシドは、(A)α-L-メチレンオキシ(4’-CH2-O-2)BNA (B)β-D-メチレンオキシ(4’-CH2-O-2)BNA (C)エチレンオキシ(4’-(CH2)2-O-2’)BNA、(D)アミノオキシ(4’-CH2-O-N(R)-2’)BNA、(E)オキシアミノ(4’-CH2-N(R)-O-2)BNA、(F)メチル(メチレンオキシ)(4’-CH(CH3)-O-2)BNA(拘束エチルまたはcEtと呼ばれる)、(G)メチレン-チオ(4’-CH2-S-2’)BNA、(H)メチレン-アミノ(4’-CH2-N(R)-2’)BNA、(I)メチル炭素環式(4’-CH2-CH(CH3)-2)BNA、(J)プロピレン炭素環式(4’-(CH2)3-2’)BNA、および(K)ビニルBNAを含むが、これらに限定されない。
【0151】
ある特定の実施形態では、改変ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体は、2’-OH基が、H、OR、R、ハロ、SH、SR、NH2、NHR、NR2、およびCNから選択される基によって置き換えられている、糖改変リボヌクレオチドであり、ここで、各Rは、独立して、C1~C6アルキル、アルケニルおよびアルキニルからなる群より選択され、ハロは、F、Cl、BrおよびIの群から選択される。ある特定の実施形態では、糖改変リボヌクレオチドは、2’-OMe改変ヌクレオチド、2’-F改変ヌクレオチド、2’-O-メトキシエチル(2’MOE)改変ヌクレオチド、LNA(ロックド核酸)改変ヌクレオチド、GNA(グリセロール核酸)改変ヌクレオチド、およびcEt(拘束エチル)改変ヌクレオチドの群から選択される。
【0152】
血清中でのエンドヌクレアーゼ活性に対する耐性を増大させる、2’-O-メチルプリンおよび2’-フルオロピリミジンなどの、リボースの2’位における化学的改変を採用して、本発明の分子を安定化することができる。改変の導入のための位置は、分子のサイレンシング/制御効力の有意な低下を回避するように注意深く選択するべきである。ある特定の実施形態では、アンチセンス鎖の5’末端ヌクレオチドモノマーに隣接する第1のヌクレオチドモノマーは、2’-フルオロ-リボヌクレオチドである。
【0153】
4.3 改変核酸塩基
sdDNA分子内のアンチセンス鎖および/またはセンス鎖は、核酸塩基(または塩基)改変または置換も有し得る。核酸塩基(または塩基)改変または置換は、天然に存在する核酸塩基または合成未改変核酸塩基と構造的に区別可能であるが、機能的に交換可能である。天然核酸塩基と改変核酸塩基の両方が、水素結合に関与することができる。そのような核酸塩基改変は、ヌクレアーゼ安定性、結合親和性、または一部の他の有益な生物学的特性をsdDNA分子に付与し得る。改変核酸塩基は、例えば、5-メチルシトシン(5-Me-C)などの、合成および天然核酸塩基を含む。5-メチルシトシン置換を含む、ある特定の核酸塩基置換は、アンチセンスおよびセンス鎖の結合親和性を増大させるのに特に有用である。例えば、5-メチルシトシン置換は、0.6~1.2℃だけ、核酸二重鎖安定性を増大させることが示されている(Sanghvi, Y.S., Crooke, S.T. and Lebleu, B., eds., Antisense Research and Applications, CRC Press, Boca Raton, 1993, pp. 276-278)。
【0154】
追加の改変核酸塩基は、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン;アデニンおよびグアニンの6-メチルおよび他のアルキル誘導体;アデニンおよびグアニンの2-プロピルおよび他のアルキル誘導体;2-チオウラシル、1-メチルシュードウラシル、2-チオチミンおよび2-チオシトシン、5-ハロウラシルおよびシトシン;5-プロピニル(-C≡C-CH3)ウラシルおよびシトシン、ならびにピリミジン塩基の他のアルキニル誘導体;6-アゾウラシル、シトシンおよびチミン、5-ウラシル(シュードウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシルならびに他の8-置換アデニンおよびグアニン、5-ハロ、特に、5-ブロモ、5-トリフルオロメチルならびに他の5-置換ウラシルおよびシトシン、7-メチルグアニンおよび7-メチルアデニン、2-F-アデニン、2-アミノアデニン、8-アザグアニンおよび8-アザアデニン、7-デアザグアニンおよび7-デアザアデニン、ならびに3-デアザグアニンおよび3-デアザアデニンを含み、これらに限定されない。
【0155】
複素環式塩基部分は、プリンまたはピリミジン塩基が、他の複素環、例えば、7-デアザ-アデニン、7-デアザグアノシン、2-アミノピリジンおよび2-ピリドン、で置き換えられているものを含み得る。アンチセンスおよびセンス鎖の結合親和性を増大させるのに特に有用である核酸塩基としては、5置換ピリミジン、6-アザピリミジンならびにN-2、N-6およびO-6置換プリンが挙げられ、前記置換プリンには、2アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシルおよび5-プロピニルシトシンが含まれる。
【0156】
ある特定の実施形態では、改変ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体は、塩基改変ヌクレオチドである。ある実施形態では、改変ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体は、通常ではない塩基または改変塩基を有する。ある特定の実施形態では、改変塩基は、5-メチルシトシン(5’-Me-C)である。ある特定の実施形態では、各シトシンは、5-メチルシトシンである。ある特定の実施形態では、改変塩基は、5-メチルウラシル(5’-Me-U)である。ある特定の実施形態では、各ウラシルは、5-メチルウラシルである。
【0157】
安定性または親和性に役立ち得る任意の改変ヌクレオチドまたは類似体を、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく作製することができる。そのような化学的改変のいくつかの例は、上に要約されたものと同じである。
【0158】
5.医薬組成物
一部の実施形態では、本発明は、本発明のsdDNAまたはその薬学的に許容される誘導体と少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤または担体とを含む医薬製剤も提供する。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される賦形剤」または「薬学的に許容される担体」は、薬学的投与に適合する、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤などを含むように意図されている。好適な担体は、"Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Twentieth Edition," Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, PA.に記載されており、この参考文献は、参照により本明細書に組み込まれる。そのような担体または希釈剤の例としては、水、食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、および5%ヒト血清アルブミンが挙げられるが、これらに限定されない。リポソームおよび非水性ビヒクル、例えば固定油も、使用され得る。薬学的に活性な物質のためのそのような媒体および薬剤の使用は、当技術分野において周知である。任意の従来の媒体または薬剤がsdDNA分子と非適合性である場合を除いて、組成物におけるその使用が企図される。
【0159】
本発明の分子とともに使用することができる薬学的に許容される担体の例としては、医薬担体、正電荷担体、リポソーム、脂質ナノ粒子、タンパク質担体、疎水性部分または分子、カチオン性部分または分子、GalNAc、多糖、ポリマー、ナノ粒子、ナノエマルジョン、コレステロール、脂質、親油性化合物または部分、およびリポイドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0160】
ある特定の実施形態では、本発明は、医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与するステップを含む、処置の方法を提供する。ある実施形態では、医薬組成物は、静脈内注射(iv)、皮下注射(sc)、経口的に(po)、筋肉内(im)注射、経口投与、吸入、局所的、髄腔内、および他の局部的な投与の群から選択される経路によって投与される。別の実施形態では、治療有効量は、1日に1ng~1g、1日に100ng~1g、または1日に1μg~1000mgである。
【0161】
製剤のための方法は、PCT国際出願PCT/US02/24262(WO03/01 1224)、米国特許出願公開第2003/0091639号および米国特許出願公開第2004/0071775号において開示されており、これらの参考特許文献の各々は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0162】
本発明のsdDNA分子は、本発明のsdDNA分子(活性成分として)の治療有効量(例えば、腫瘍成長の阻害、腫瘍細胞の死滅、細胞増殖性障害の処置または予防などによって所望の治療効果を達成するのに十分な効果的なレベル)と標準的な医薬担体または希釈剤とを従来の手順に従って併せることにより(すなわち、本発明の医薬組成物を生成することにより)調製された好適な剤形で、投与される。
【0163】
これらの手順は、所望の調製物を達成するために、適宜、成分を混合すること、造粒すること、および圧縮することまたは溶解することを含み得る。別の実施形態では、sdDNA分子の治療有効量は、標準的な医薬担体または希釈剤を伴わない好適な剤形で投与される。一部の実施形態では、本発明の二重鎖分子の治療有効量は、好適な剤形で投与される。薬学的に許容される担体は、固体担体、例えば、ラクトース、白土(terra alba)、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸などを含む。例示的な液体担体としては、シロップ、落花生油、オリーブ油、水などが挙げられる。同様に、担体または希釈剤は、当技術分野において公知の時間遅延材料、例えば、単独での、またはワックス、エチルセルロース(eihylcellulose)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルメタクリレートなどを伴う、モノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリンを含む。他の充填剤、賦形剤、矯味矯味剤(flavorant)、および他の添加剤、例えば、当技術分野において公知であるものも、本発明による医薬組成物に含めることができる。
【0164】
本発明の医薬組成物を、一般に知られている様式で、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、水簸、乳化、カプセル化、捕捉または凍結乾燥プロセスによって、製造することができる。医薬組成物を、薬学的に使用することができる調製物へのセンスオリゴヌクレオチドおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドの加工を助長する賦形剤および/または助剤を含む1つまたは複数の生理的に許容される担体を使用して、従来の様式で製剤化することができる。もちろん、適切な製剤は、選択される投与経路に依存する。
【0165】
本発明の組成物、化合物、組合せまたは医薬組成物を、化学療法処置に現在使用されている周知の方法のうちの多くの方法で対象に投与することができる。例えば、がんの処置のために、本発明のsdDNA分子を、腫瘍に直接注射することができ、血流もしくは体腔に注射することができ、または経口摂取することができ、またはパッチを用いて皮膚を通して適用することができる。乾癬状態の処置には、全身投与(例えば、経口投与)、または皮膚の患部への局所的投与が、好ましい投与経路である。選択される用量は、有効な処置を構成するのに十分なものであるべきであるが、許容しがたい副作用を引き起こすほど高用量であってはならない。患者の病状(例えば、がん、乾癬など)および健康の状態を、処置中、および処置後の妥当な期間、入念にモニターするべきである。
【0166】
6.有用性
6.1 使用方法
本発明は、細胞または生物における遺伝子発現または機能をモジュレートする方法を提供する。細胞は、真核細胞、例えば、哺乳動物細胞であり得る。方法は、前記細胞または生物を本明細書で開示されるsdDNA分子と選択的遺伝子サイレンシングが起こり得る条件下で接触させるステップ、およびアンチセンス鎖に実質的に相補的な配列部分を有する標的核酸に対してsdDNA分子によって発揮される選択的遺伝子サイレンシングを媒介するステップを含む。標的核酸は、mRNAまたはノンコーディングRNAなどのRNAであり得、そのようなRNAは、疾患に関与するタンパク質をコードするか、または疾患に関与する生物学的経路の一部を制御する。
【0167】
ある実施形態では、接触させるステップは、sdDNA分子を、培養下の標的細胞に、または選択的遺伝子サイレンシングを行うことができる生物における標的細胞に、導入するステップを含む。さらなる実施形態では、導入するステップは、混合、トランスフェクション、リポフェクション、感染、電気穿孔、または他の送達技術を含む。別の実施形態では、導入するステップは、医薬担体、正電荷担体、リポソーム、脂質ナノ粒子、タンパク質担体、ポリマー、ナノ粒子、ナノエマルジョン、脂質、N-アセチル-ガラクトサミン(GalNAc)、親油性化合物または部分、およびリポイドの群から選択される薬学的に許容される賦形剤、担体または希釈剤を使用して、iv、sc、髄腔内、po、吸入、局所的または他の臨床的に許容される投与方法によって投与することを含む。
【0168】
ある実施形態では、サイレンシング方法は、細胞または生物における遺伝子の機能または有用性を決定するために使用される。
【0169】
ある実施形態では、本発明の組成物による標的となる遺伝子またはRNAは、疾患、例えば、ヒトの疾患もしくは動物の疾患、病的状態、または望ましくない状態に関連または関与する。さらなる実施形態では、標的遺伝子またはRNAは、病原性微生物のものである。さらにさらなる実施形態では、標的遺伝子またはRNAは、ウイルス起源のものである。別の実施形態では、標的遺伝子またはRNAは、腫瘍関連のものである。
【0170】
代替実施形態では、本発明の組成物による標的となる遺伝子またはRNAは、がん、自己免疫疾患、炎症性疾患、変性疾患、感染性疾患、増殖性疾患、代謝性疾患、免疫介在性障害、アレルギー性疾患、皮膚科疾患、悪性疾患、胃腸障害、肝障害、呼吸器障害、心血管障害、皮膚科障害、腎障害、リウマチ様障害、神経障害、精神障害、内分泌障害、または老化関連障害または疾患に関連する、またはより具体的にはそれに関与する、遺伝子またはRNAである。
【0171】
6.2 処置方法
本発明は、ASOおよびsiRNAについて要約されたものを含む、様々な疾患または状態を処置または予防する方法も提供する(Czech, 2006; de Fougerolles et al., 2007; Dykxhoorn et al., 2003; Kim and Rossi, 2007; Mack, 2007; Crooke ST et al., 2018; Setten RL et al., 2019; Roberts TC et al., 2020)。方法は、sdDNA分子の有効量を、それを必要とする対象に、直ぐ上のセクションで説明された所望の遺伝子阻害が起こり得る条件下で、投与するステップを含む。
【0172】
例示的な実施形態では、sdDNA分子と薬学的に許容される賦形剤、担体または希釈剤とを有する医薬組成物が、治療有効量で、疾患または望ましくない状態を処置または予防するために、それを必要とする患者に投与される。
【0173】
一部の実施形態では、本発明を、がん治療として、またはがんを予防するために、使用することができる。sdDNAの組成物は、細胞増殖障害または悪性疾患に関与する遺伝子をサイレンシングまたはノックダウンするために使用することができる。これらの遺伝子の例は、k-Ras、β-カテニン、Stat3である。これらの癌遺伝子は、多数のヒトがんにおいて活性であり、関連がある。
【0174】
本発明の新規組成物を、眼疾患(例えば、加齢黄斑変性(AMD)および糖尿病性網膜症(DR));感染性疾患(例えば、HIV/AIDS、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、RCV、サイトメガロウイルス(CMV)、デング熱、ウエストナイルウイルス);呼吸器疾患(例えば、呼吸器合胞体ウイルス(RSC)、喘息、嚢胞性線維症);神経疾患(例えば、ハンチントン病(HD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄損傷、パーキンソン病、アルツハイマー病、疼痛);心血管疾患;代謝性障害(例えば、高脂血症、高コレステロール血症、および糖尿病);遺伝性障害;および炎症状態(例えば、炎症性腸疾患(IBD)、関節炎、リウマチ様疾患、自己免疫障害)、皮膚科疾患を処置または予防するために、使用することもできる。
【0175】
代替実施形態では、投与方法は、静脈内注射(iv)、皮下注射(sc)、経口的に(po)、髄腔内、吸入、局所的、および他の局部的な投与の群から選択される経路である。
【実施例】
【0176】
本発明の異なる特徴をさらに例証するために、実施例を下に提供する。実施例は、本発明の実施のための有用な方法論も例証する。これらの実施例は、本請求項に関わる発明を限定しない。
【0177】
方法および材料
細胞培養
HepaRG細胞を、10%FBSと、10mg/mlのヒドロコルチゾンと、4mg/mlのヒト組換えインスリンとを補充したウィリアム培地で成長させた。
【0178】
HepaRG細胞へのsdDNAのトランスフェクション
トランスフェクションの24時間前に、HepaRG細胞を6ウェルプレートに播種した(1×105細胞/2mL/ウェル)。sdDNAを、100pMの最終濃度で、Lipofectamine(登録商標)RNAiMAX(Thermo Fisher、USA)により製造方法に記載の通りにトランスフェクトした。手短に述べると、sdDNAおよびRNAiMAXを無血清OPTI-MEM(Thermo Fisher)中で20分間インキュベートし、次いで、培養培地とともに細胞に添加した。
【0179】
定量的PCR
示したsdDNAをトランスフェクトした細胞をトランスフェクションの48時間後に回収した。RNAをTRIZOLで単離し、TaqMan one-step RT-PCR試薬、およびAPOCIII mRNA検出のためのAPOCIIIアッセイを使用してqRT-PCRを行い、遺伝子GAPDH mRNAレベルを内部対照として使用した。
【0180】
標的配列
【0181】
本発明で開示されるsdDNAの遺伝子サイレンシング効果を実証するために、APOCIII遺伝子(APOCIII mRNA)を標的とするように設計し、作製したsdDNAを、下の実施例で使用した。標的配列は、sdDNAのアンチセンス鎖または対応する一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチドに結合することができる、アクセッション#NM_000040からのセグメントである。
【0182】
(実施例1)
様々なISRモチーフを有するsdDNAの遺伝子サイレンシング活性
図1Aは、異なるISRモチーフを有し、ISRが、AS(アンチセンス鎖)とSS(センス鎖)の両方にまたはASのみに位置する、本発明により提供されるsdDNA(sdDNA1~3)の実施形態の構造、およびAPOCIII遺伝子を標的化するために設計したsdDNA(sdDNA1~3)の配列を示す。sdDNA(sdDNA1~3)のアンチセンス鎖と同一の構造および配列を有する一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチドも、比較のために対応する一本鎖ASオリゴヌクレオチド(対応するASO)として使用した。ここで使用する対応するASO(配列番号1)は、最も先進的な最先端のASO技術およびノウハウで最適化された典型的なASO製品である、ISIS304801である。sdDNA1~3および対応するASOによるAPOCIIIを標的とする遺伝子サイレンシング活性を、HepaRG細胞において試験した(結果を
図1Bに示す)。
【0183】
図1Aでは、示されている構造中の全ての文字「D」は、DNA残基またはデオキシリボヌクレオチドモノマーを表し;示されている構造中の全ての文字「R」は、RNA残基またはリボヌクレオチドモノマーを表し;配列中の全ての小文字「a、c、g、t」は、DNA残基を表し;配列中の全ての大文字「A、C、G、U」は、2’-MOE改変RNA残基を表し、この場合、全ての「U」は、5-メチルウリジン2’-MOE RNA残基であり;全ての「C」および「c」は、5-Me-Cであり;示されている構造中の全ての「*」は、PS(ホスホロチオエートヌクレオシド間連結)を表す。
【0184】
結果は、全ての設計したsdDNAが、非常に低い濃度(ピコモル濃度)でAPOCIIIに対する遺伝子サイレンシング活性の高い効力を有し、対応する一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)よりも有意に強力および効果的であることを示唆する。
【0185】
(実施例2)
様々な長さのsdDNA
図2Aは、sdDNAの一部の実施形態を示す。これらのsdDNAでは、ASおよびSSは、長さが対称である。様々なsdDNA二重鎖長(8~36bp)を設計した(
図2Aに示されている、APOCIII遺伝子を標的化するためのsdDNAのsdDNA_1~10構造および配列)。sdDNA_1~10のアンチセンス鎖と同一の構造および配列を有する一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチドも、各々のsdDNAの対応する一本鎖ASとして作製した。APOCIIIを標的とするように設計したsdDNA_1~10および各々の対応する一本鎖ASOの遺伝子サイレンシング活性をHepaRG細胞において試験した(sdDNAの結果を
図2Bに示し、対応する一本鎖ASを
図2Cに示す)。
【0186】
図2Aでは、示されている配列中の全ての小文字「a、c、g、t」、大文字「A、C、G、U」および「*」は、
図1Aにおけるものと同じものを表す。
【0187】
結果は、10bpを有する対称平滑末端型sdDNAが、非常に低い濃度(ピコモル濃度)で非常に強力な遺伝子サイレンシング活性を有し、対応する一本鎖ASOよりも有意に強力および効果的であることを示唆する。対応する一本鎖ASOは、ここではピコモル濃度レベルで概して低い活性を示すが、それらは、周知の現行の最先端ASO技術のもとで開発された公知のオリゴヌクレオチドと一致するナノモル濃度レベル(約10nM~30nM)で遺伝子サイレンシング活性を示すことができる。ここで、典型的なASO(おおよそ16nt~20ntの長さを有する)よりはるかに長い長さを有する一本鎖ASオリゴヌクレオチドが、その典型的なASOより強力な遺伝子サイレンシング活性を示すことも、驚くべき発見である。しかし、本発明のsdDNAは、最先端のASO技術による公知の典型的な十分に最適化されたASO(例えば、配列番号1)をはじめとする対応する一本鎖ASオリゴヌクレオチドよりも比較的に良好な活性を常に示すことができる。
【0188】
(実施例3)
様々な長さの対称sdDNA
図3Aは、sdDNAの実施形態の異なる構造設計を示す。これらのsdDNAでは、ASおよびSSは、長さが対称である。さらに、8~14bpの、ASおよびSS二重鎖の様々な長さを設計し、作製した(
図3Aに示されている、APOC遺伝子を標的化するためのsdDNAのsdDNA_1~3構造および配列)。APOCIIIを標的とするように設計したsdDNA_1~3の遺伝子サイレンシング活性をHepaRG細胞において試験した(sdDNAの結果を
図2Bに示す)。
【0189】
図3Aでは、示されている配列中の全ての小文字「a、c、g、t」および「*」は、
図1Aにおけるものと同じものを表し、示されている配列中の下線付きの全ての大文字「
A、
C、
G、
U」は、LNA改変RNA残基を表し、この場合、全ての「
U」は、5-メチルウリジンLNA RNA残基であり、全ての「
C」は、5-Me-C LNA RNA残基である。
【0190】
結果は、全ての設計したsdDNAが、非常に低い濃度(ピコモル濃度)で極めて強力な遺伝子サイレンシング活性を有することを示唆する。
【0191】
(実施例4)
SSに様々な改変モチーフを有するsdDNA
図4Aは、SSに異なるPS改変モチーフを有するsdDNAの実施形態の異なる構造設計を示す。具体的には、これらのsdDNAでは、ASを一定に保ち、SSを、ヌクレオシド間連結を除いて同じに保った:具体的には、sdDNA_SS:PSは、各ヌクレオシド間連結がPS改変されている、全SSを有し、sdDNA_SS:POは、各ヌクレオシド間連結が天然のPOヌクレオシド間連結である、全SSを有し、sdDNA_SS:PS/POは、連結されたデオキシリボヌクレオシドモノマーのヌクレオシド間連結の全てではなく一部のみがPS改変ヌクレオシド間連結である、混合SSを有する。sdDNA(sdDNA1~3)のアンチセンス鎖と同一の構造および配列を有する一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチドも、比較のために対応する一本鎖ASオリゴヌクレオチド(対応するASO)として使用した。ここで使用する対応するASO(配列番号1)は、最も先進的な最先端のASO技術およびノウハウで最適化された典型的なASO製品である、ISIS304801である。設計したsdDNA(PS、PO、PS/PO)および対応するASOによるAPOCIIIを標的とする遺伝子サイレンシング活性を、HepaRG細胞において試験した(結果を
図4Bに示す)。
【0192】
図4Aでは、示されている配列中の全ての小文字「a、c、g、t」、大文字「A、C、G、U」および「*」は、
図1Aにおけるものと同じものを表す。
【0193】
SS内に異なるPS改変モチーフを有する全ての設計したsdDNAは、非常に低い濃度(ピコモル濃度)でAPOCIIIに対して極めて強力な遺伝子サイレンシング活性を示し、対応するASOよりも有意に強力および効果的である。言い換えると、連結されたデオキシリボヌクレオシドモノマー/DNA残基のヌクレオシド間連結における様々な改変モチーフは、少なくとも従来のASO技術と比較して、本発明で提供されるsdDNAに基づく遺伝子サイレンシング技術による遺伝子サイレンシング活性の有意な改善の利点を維持することができる。PSヌクレオシド間連結で部分的にまたは完全に改変されたSSを有するsdDNAは、完全に天然のPOヌクレオチド間連結を有するsdDNAと少なくとも同様に良好である強力な遺伝子サイレンシング活性を示した。さらに、in vivo適用にはPS改変が必要とされることは、当分野では周知である。
【0194】
これらの結果は、SSが、典型的なDNase以外の未知の機序によってsdDNA二重鎖から除去または分解されることも示唆している。なぜなら、完全PS改変SSを有するsdDNAは、極めて強力である、または非改変SSを有するsdDNAと少なくとも同様に強力であるからである。さらに、また、SS内の連結されたデオキシリボヌクレオシドモノマー/DNA残基の少なくとも1つの改変(例えば、PS改変ヌクレオシド間連結)を使用することは、より良好な安定性および組織分布をはじめとする、in vivo適用のための改善された薬学的特性を有するsdDNAを設計するのに役立ち得ると、予想される。
【0195】
(実施例5)
ASの様々な位置に配置された様々なISRモチーフを有するsdDNA
図5Aは、さらなる一連のsdDNAの異なる構造設計を示す。これらのsdDNAでは、センス鎖を一定に保ったが、AS内のISRのリボヌクレオチドモノマーの位置および総数を変化させた(ISR_0~5、
図5Aに示されている構造および配列)。
図5Aにおけるアンチセンス鎖内の様々なISRモチーフは、各ISRが、1または2程度の少ない数のリボヌクレオチドモノマーを有すること、および各ISRが、少なくとも1つの介在デオキシリボヌクレオチドモノマーで離間していることを示す。
図5Aでは、示されている配列中の全ての小文字「a、c、g、t」、大文字「A、C、G、U」および「*」は、
図1Aにおけるものと同じものを表す。APOCIIIを標的とするように設計したISR_0~5の遺伝子サイレンシング活性をHepaRG細胞において試験した(結果を
図5Bに示す)。
【0196】
全ての設計したsdDNAは、非常に低い濃度(ピコモル濃度レベル)で極めて強力な遺伝子サイレンシング活性を有する。結果は、AS内の少なくとも1つのISRであって、様々な数のリボヌクレオチドモノマーを有し、ASの様々な位置に配置された、ISRが、本発明で提供されるsdDNAの極めて強力な遺伝子サイレンシング活性を増強または可能に得ることを、さらに示唆する。
【0197】
(実施例6)
ASにミスマッチを有するsdDNA
図6Aは、さらなる一連のsdDNAの異なる構造設計を示す。これらのsdDNAでは、アンチセンス鎖を、標的RNAにハイブリダイズしたときに少なくとも1つのミスマッチを含むように設計し(Mis1~2、
図6Aに示されている構造および配列)、ミスマッチを有さないアンチセンス鎖(Mis0)を比較として設計した。
図6Aでは、示されている配列中の全ての小文字「a、c、g、t」、大文字「A、C、G、U」および「*」は、
図1Aにおけるものと同じものを表す。APOCIIIを標的とするように設計したMis_0~3の遺伝子サイレンシング活性をHepaRG細胞において試験した(結果を
図6Bに示す)。
【0198】
全ての設計したsdDNAは、非常に低い濃度(ピコモル濃度レベル)で極めて強力な遺伝子サイレンシング活性を有する。結果は、本発明で提供されるsdDNAのアンチセンス鎖が、本発明で提供されるsdDNAの遺伝子サイレンシング活性を維持しながら少なくとも2つ(標的化領域の少なくとも10%)のミスマッチを有することができることを、さらに示唆する。AS内のある特定の位置における一部のミスマッチまたは複数のミスマッチは、sdDNAの遺伝子サイレンシング活性を低下させる可能性がある。
【0199】
(実施例7)
ASより長いSSを有するsdDNA
図7Aは、ASより長いSSを有する、さらなる一連のsdDNAの異なる構造設計を示す。これらのsdDNAでは、アンチセンス鎖を一定に保ったが、センス鎖の長さを変化させた(sdDNA_1~2、
図7Aに示されている構造および配列)。
図7Aでは、示されている配列中の全ての小文字「a、c、g、t」、大文字「A、C、G、U」および「*」は、
図1Aにおけるものと同じものを表す。sdDNA(sdDNA_1~2)のアンチセンス鎖と同一の構造および配列を有する一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチドも、比較のために対応する一本鎖ASオリゴヌクレオチド(対応するASO)として使用した。設計したsdDNA1~2および対応するASOによるAPOCIIIを標的とする遺伝子サイレンシング活性を、HepaRG細胞において試験した(結果を
図7Bに示す)。
【0200】
全ての設計したsdDNAは、非常に低い濃度(ピコモル濃度レベル)で極めて強力な遺伝子サイレンシング活性を有し、対応するASOよりも有意に強力および効果的である。結果は、sdDNAのセンス鎖が、アンチセンス鎖より長くてもよいことを示唆する。この実施例で示されるように、SSは、少なくとも16モノマーだけASより長くてもよい。
【0201】
均等物
代表例は、本発明の例証に役立つことを目的としたものであり、本発明の範囲を限定することを目的としたものではなく、それらを、本発明の範囲を限定すると解釈するべきでない。実際、本明細書で示したおよび本明細書に記載したものに加えて、本発明の様々な変更形態およびそれらの多くのさらなる実施形態が、本明細書に含まれる例ならびに科学および特許文献への言及を含む本書の完全な内容から、当業者には明らかになる。例は、その様々な実施形態およびそれらの均等物での本発明の実施に適し得る重要な追加情報、例示およびガイダンスを含む。
【0202】
別段の定義がない限り、本明細書で使用する全ての専門および科学用語は、当業者により一般に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様または同等の任意の方法および材料も本開示の実施または試験の際に使用することができるが、好ましい方法および材料を今は記載する。本明細書で述べる方法は、開示する特定の順序に加えて、理論的に可能である任意の順序で行うことができる。
【0203】
参照による組込み
他の文献、例えば、特許、特許出願、特許公報、定期刊行物、本、学術論文、ウェブコンテンツへの言及およびそれらの引用を、本開示で行った。全てのそのような文献は、あらゆる目的でこれによりそれら全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に参照により組み込まれると述べる、しかし本明細書で明確に示す既存の定義、記載または他の開示材料と矛盾する、いずれの材料またはその部分も、組み込まれる材料と本開示材料との間に矛盾が生じない範囲でのみ、組み込まれる。矛盾がある場合は、好ましい開示としての本開示のほうを優先して矛盾を解消されたい。
参考文献
【化1】
【化2】
【化3】
【国際調査報告】