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特表2024-520559TREM2アゴニストバイオマーカー及びその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】TREM2アゴニストバイオマーカー及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20240517BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240517BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240517BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240517BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20240517BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240517BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240517BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20240517BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20240517BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240517BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20240517BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P25/28
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P25/00
A61P25/16
A61P29/00 101
A61P9/10
A61P19/10
A61P19/08
G01N33/53 M
C07K16/28 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573593
(86)(22)【出願日】2022-05-27
(85)【翻訳文提出日】2024-01-16
(86)【国際出願番号】 US2022072605
(87)【国際公開番号】W WO2022251868
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】63/202,150
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/262,942
(32)【優先日】2021-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523449562
【氏名又は名称】ヴィジル ニューロサイエンス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ラーソン, ケリー シー.
(72)【発明者】
【氏名】リンチ, バークレー エー.
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー, リチャード
(72)【発明者】
【氏名】パパペトロプーロス, スピリドン
(72)【発明者】
【氏名】サッカベリー, エヴァン アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】マンデルブラット-サーフ, ヤエル
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZA151
4C084ZA152
4C084ZA161
4C084ZA162
4C084ZA361
4C084ZA362
4C084ZA961
4C084ZA962
4C084ZA971
4C084ZA972
4C084ZB051
4C084ZB052
4C084ZB151
4C084ZB152
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB36
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG04
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA21
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、アルツハイマー病などの、ヒト患者におけるミクログリア機能不全に関連する状態又は障害を治療する方法を提供し、方法は、TREM2アゴニストを患者に投与することを含む。別の態様では、本発明は、そのような状態、例えばアルツハイマー病を有する患者から採取した生物学的試料を、ミクログリア活性に特異的なバイオマーカーについてアッセイして、TREM2アゴニストによる治療利益、又は疾患がTREM2アゴニストを用いた治療に応答する確率が高いかどうかを判定する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
TREM2アゴニストを用いた治療から利益を得るミクログリア機能不全に関連する状態又は障害を有する患者を特定する方法であって、
(a) 前記患者に前記TREM2アゴニストを投与する前に、前記患者から第1の生物学的試料を得ることと、
(b) 表A*中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーの前記第1の生物学的試料中のレベルを測定することと、
(c) 有効量のTREM2アゴニストを前記患者に投与することと、
(d) 前記TREM2アゴニストを前記患者に投与した後に、前記患者から第2の生物学的試料を得ることと、
(e) 表A*中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーの前記第2の生物学的試料中のレベルを測定することと、
(f) 任意選択的に、前記第1の生物学的試料及び前記第2の生物学的試料中の前記1つ以上のバイオマーカーの前記レベルの変化が、前記患者が前記TREM2アゴニストを用いた治療から利益を得るであろうことを示す場合、前記TREM2アゴニストの前記患者への更なる投与を進めることと、を含む方法。
【請求項2】
別の態様では、本発明は、患者におけるミクログリア機能不全に関連する状態又は障害に対するTREM2アゴニストに対する治療応答を予測する方法を提供し、方法は、
(a) 前記患者に前記TREM2アゴニストを投与する前に、前記患者から第1の生物学的試料を得ることと、
(b) 表A*中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーの前記第1の生物学的試料中のレベルを測定することと、
(c) 前記患者からの前記生物学的試料又は参照試料を処置することと、
(d) 表A*中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーの処理された前記生物学的試料中のレベルを測定することと、
(e) 処置前の前記生物学的試料中の1つ以上のバイオマーカーを、処置された前記生物学的試料又は処置された参照試料中の1つ以上のバイオマーカーと比較することと、
(f) 任意選択的に、前記TREM2アゴニストの前記患者への投与が、前記状態又は障害を治療する代替の方法と比較して、成功する可能性が同等である又はより高いと予測される場合、そのような投与を続けることと、を含み、
工程(c)に対する応答のバイオマーカーの変化が、1人以上の類似した患者と比較して、また前記バイオマーカーのうちの1つ以上を使用して評価して、より大きな又はより小さなバイオマーカーの変化に基づいて、前記状態又は障害の治療が成功する可能性を予測する、方法。
【請求項3】
TREM2アゴニストを用いた治療から利益を得るミクログリア機能不全に関連する状態又は障害を有する患者を特定する方法であって、
(a) 前記患者に前記TREM2アゴニストを投与する前に、前記患者から第1の生物学的試料を得ることと、
(b) 表A*中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーの前記第1の生物学的試料中のレベルを測定することと、
(c) 有効量のTREM2アゴニストを前記患者に投与することと、
(d) 前記TREM2アゴニストを前記患者に投与した後に、第2の生物学的試料を得ることと、
(e) 表A*中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーの前記第2の生物学的試料中のレベルを測定することと、を含み、
表A*中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーの前記レベルが、前記患者からの前記第1の生物学的試料中よりも、前記患者からの前記第2の生物学的試料中で高い場合、前記患者が前記TREM2アゴニストの1つ以上の追加の用量を投与される、方法。
【請求項4】
前記1つ以上のバイオマーカーが、表C*中のものから選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
TREM2アゴニストを用いてミクログリア機能不全に関連する状態又は障害を治療する方法であって、
(a) 前記患者に前記TREM2アゴニストを投与する前に、前記患者から第1の生物学的試料を得ることと、
(b) 表A*中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーの前記第1の生物学的試料中のレベルを測定することと、
(c) 有効量のTREM2アゴニストを前記患者に投与することと、
(d) 前記TREM2アゴニストを前記患者に投与した後に、第2の生物学的試料を得ることと、
(e) 表A*中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーの前記第2の生物学的試料中のレベルを測定することと、を含み、
表A*中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーの前記レベルが、前記患者からの前記第1の生物学的試料中よりも、前記患者からの前記第2の生物学的試料中で低い場合、前記患者が前記TREM2アゴニストの1つ以上の追加の用量を投与される、方法。
【請求項6】
前記1つ以上のバイオマーカーが、表D*中のものから選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
TREM2アゴニストに対する患者の応答を監視する方法であって、
(a) 前記患者に前記TREM2アゴニストを投与する前に、前記患者から第1の生物学的試料を得ることと、
(b) 表A*中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーの、前記患者からの前記第1の生物学的試料中のレベルを測定することと、
(c) 有効量のTREM2アゴニストを前記患者に投与することと、
(d) 前記TREM2アゴニストを前記患者に投与した後に、前記患者から1つ以上の後続の生物学的試料を得ることと、
(e) 表A*中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーの前記後続の生物学的試料のレベルを測定することと、を含み、
前記第1の生物学的試料及び後続の生物学的試料中の1つ以上のバイオマーカーの前記レベルを比較することができ、前記バイオマーカーのうちの1つ以上における変化が、患者の応答を示す、方法。
【請求項8】
前記1つ以上のバイオマーカーが、NFLを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記1つ以上のバイオマーカーが、sTREM2を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記1つ以上のバイオマーカーが、sCSF1Rを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記1つ以上のバイオマーカーが、SPP1を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記1つ以上のバイオマーカーが、IL-1RAを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記1つ以上のバイオマーカーが、CSF2を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記1つ以上のバイオマーカーが、キトトリオシダートを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記1つ以上のバイオマーカーが、IP10を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記1つ以上のバイオマーカーが、表B中のものから選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記ミクログリア機能不全に関連する状態又は障害が、TREM2欠損症又はTREM2機能の喪失に関連する状態又は障害である、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
TREM2欠損症又はTREM2機能の喪失に関連する前記状態又は障害が、那須ハコラ病、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、外傷性脳損傷、脊髄損傷、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、プリオン病、脳卒中、骨粗しょう症、大理石骨病、骨硬化症、骨格異形成、骨異形成症(dysosteoplasia)、パイル病、皮質下梗塞及び白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症、皮質下梗塞及び白質脳症を伴う常染色体劣性脳動脈症、脳網膜血管障害、又は異染性白質ジストロフィーである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ミクログリア機能不全に関連する状態又は障害が、コロニー刺激因子1受容体(CSF1R)の機能不全に関連する状態又は障害である、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
CSF1Rの機能不全に関連する前記状態又は障害が、神経軸索スフェロイド及び色素性グリア(ALSP)、神経軸索スフェロイド形成を伴う遺伝性びまん性白質脳症(HDLS)、色素性オルソクロマチック白質ジストロフィー(POLD)、小児発症性白質脳症、ミクログリアの先天性欠損、又は脳異常-神経変性-異骨性骨硬化症(BANDDOS)である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ミクログリア機能不全に関連する状態又は障害が、ATP結合カセットトランスポーター1(ABCD1)の機能不全に関連する状態又は障害である、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
ABCD1の機能不全に関連する前記状態又は障害が、X連鎖性副腎白質ジストロフィー(x-ALD)、小児大脳型副腎白質ジストロフィー(cALD)、グロボイド細胞白質ジストロフィー(クラッベ病としても知られる)、異染性白質ジストロフィー(MLD)、皮質下梗塞及び白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症(CADASIL)、白質消失病(VWM)、アレキサンダー病、脆弱X随伴振戦失調症候群(FXTAS)、成人発症型常染色体優性白質ジストロフィー(ADLD)、及びX連鎖性シャルコー・マリー・トゥース病(CMTX)である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記TREM2アゴニストが、抗hTREM2抗体である、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記抗hTREM2抗体が、配列番号6によるアミノ酸配列を有するCDRL1、配列番号7によるアミノ酸配列を有するCDRL2、及び配列番号8によるアミノ酸配列を有するCDRL3を含む軽鎖可変領域と、配列番号10によるアミノ酸配列を有するCDRH1、配列番号11によるアミノ酸配列を有するCDRH2、及び配列番号12によるアミノ酸配列を有するCDRH3を含む重鎖可変領域と、を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記抗hTREM2抗体が、配列番号5によるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域と、配列番号9によるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記抗hTREM2抗体が、IgG、任意選択的にIgGである、請求項24又は25に記載の方法。
【請求項27】
前記抗hTREM2抗体が、カッパ軽定常領域を含む、請求項24~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記抗hTREM2抗体が、EUナンバリングに従って、R292C、N297G、V302C、D356E、又はL358Mから選択される1つ以上の変異を有するバリアント定常領域を含むIgGである、請求項24~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記抗hTREM2抗体が、配列番号13によるアミノ酸配列を有する軽鎖と、配列番号16によるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、を含む、請求項24~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記TREM2アゴニストが、小分子TREM2アゴニストである、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年5月28日に出願された米国仮特許出願第63/202,150号、及び2021年10月22日に出願された第63/262,942号に対する優先権を主張するものであり、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(配列表)
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含有し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。2022年5月19日に作成された当該ASCIIコピーは、008WO_Sequence_Listing.txtと名付けられ、サイズが34,106バイトである。
【0003】
本発明は、アルツハイマー病などの、ヒト患者におけるミクログリア機能不全に関連する状態又は障害を治療する方法を提供し、方法は、TREM2アゴニストを患者に投与することを含む。別の態様では、本発明は、そのような状態、例えばアルツハイマー病を有する患者から採取した生物学的試料を、ミクログリア活性に特徴的なバイオマーカーについてアッセイして、TREM2アゴニストによる治療利益、又は疾患がTREM2アゴニストを用いた治療に応答する確率が高いかどうかを判定する方法を提供する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
中枢神経系のミクログリアに制限された発現を有する受容体である骨髄細胞上に発現されるトリガー受容体2(TREM2)の変異は、アルツハイマー病及び前頭側頭型認知症などの神経変性疾患のリスクを増加させる(Ulland and Colonna,Nature Reviews,14,2018)。TREM2受容体は、様々なリガンドとの相互作用を通してミクログリアの状態及び機能に影響を与え、そのようなリガンドは、組織損傷を感知し、神経病因を最小限にするために重要である(Deczkowska,Cell,181,2020)。更に、TREM2受容体アゴニズムは、ミクログリアの神経保護的疾患関連(DAM)表現型への進行に必要である(Keren-Shaul Cell,169,2017)。
ミクログリア機能不全に関連する状態及び障害を治療するための方法、並びにそのような治療に対する患者の応答を評価及び予測するための方法に対するニーズが依然として存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Ulland and Colonna,Nature Reviews,14,2018
【非特許文献2】Deczkowska,Cell,181,2020
【非特許文献3】Keren-Shaul Cell,169,2017
【0006】
一態様では、本発明は、ヒト患者におけるミクログリア機能不全に関連付けられる状態又は障害を治療する方法を提供し、方法は、骨髄細胞上に発現されるトリガー受容体2(TREM2)の活性を高めるために有効な量のTREM2アゴニストを患者に投与することを含む。いくつかの実施形態では、アルツハイマー病を治療する方法が提供される。
【0007】
別の態様では、本発明は、ミクログリア機能不全に関連する状態又は障害を有する患者から採取した生物学的試料をアッセイして、TREM2アゴニストによる潜在的利益、又は疾患がTREM2アゴニストを用いた治療に応答する確率が高いかを判定する方法を提供する。他の態様は、TREM2アゴニスト療法に対する患者バイオマーカー応答を評価及び監視する方法を提供する。いくつかの実施形態では、TREM2アゴニストバイオマーカーは、表Aに示されるものから選択される。いくつかの実施形態では、TREM2アゴニストバイオマーカーは、表A*に示されるものから選択される。
【0008】
図面は、本発明を例証する目的で、開示される主題の実施形態を示す。しかしながら、本出願は、図面に示される正確な構成及び実施形態に限定されないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、抗体Ab-1のIV投与後のカニクイザルのCSF中のsCSF1Rの濃度対時間プロファイルを示すグラフのセットである。
図2図2は、抗体Ab-1のIT投与後のカニクイザルのCSF中のsCSF1Rの濃度対時間プロファイルを示すグラフのセットである。
図3図3は、抗体Ab-1の投与後のカニクイザルのCSF中のAb-1の濃度に対してプロットされた、sCSF1Rの濃度のベースラインからの変化(CFB)を示すグラフである。
図4図4は、CSF試料が採取された投与後の時点で分離された、抗体Ab-1の投与後のカニクイザルのCSF中のAb-1の濃度に対してプロットされた、sCSF1Rの濃度のベースラインからの変化(CFB)を示すグラフのセットである。
図5図5は、抗体Ab-1のIV投与後のカニクイザルのCSF中のIP-10の濃度対時間プロファイルを示すグラフのセットである。
図6図6は、抗体Ab-1のIT投与後のカニクイザルのCSF中のIP-10の濃度対時間プロファイルを示すグラフのセットである。
図7図7は、抗体Ab-1のIV投与後のカニクイザルのCSF中のMCP-1の濃度対時間プロファイルを示すグラフのセットである。
図8図8は、抗体Ab-1のIT投与後のカニクイザルのCSF中のMCP-1の濃度対時間プロファイルを示すグラフのセットである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.定義
他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。したがって、以下の用語は、以下の意味を有することが意図されている。
【0011】
「アゴニスト」又は「活性化」剤、例えば化合物又は抗体などは、薬剤が標的に結合した後に、薬剤の標的(例えば、TREM2)の1つ以上の活性又は機能を誘導する(例えば、増加させる)薬剤である。
【0012】
「アンタゴニスト」又は「遮断」剤、例えば化合物又は抗体などは、薬剤が標的に結合した後、1つ以上のリガンドへの標的の結合を低減又は排除する(例えば、減少させる)、並びに/あるいは薬剤が標的に結合した後、標的の1つ以上の活性又は機能を低減又は排除する(例えば、減少させる)薬剤である。いくつかの実施形態では、アンタゴニスト薬剤、又は遮断剤は、そのリガンドの1つ以上への標的結合並びに/あるいは標的の1つ以上の活性又は機能を実質的又は完全に阻害する。
【0013】
「抗体」は、最も広い意味において使用され、免疫グロブリン又はその断片を指し、抗体の抗原結合断片又は領域を含む、任意のそのようなポリペプチドを包含する。認識される免疫グロブリン遺伝子は、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、エプシロン、及びミュー定常領域遺伝子、並びに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。軽鎖は、一般的に、カッパ又はラムダのいずれかとして分類される。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、又はエプシロンとして分類され、それは次に、免疫グロブリンクラス、IgG、IgM、IgA、IgD、及びIgEをそれぞれ定義する。免疫グロブリンのクラスはまた、IgGサブクラスIgG、IgG、IgG、及びIgG、並びにIgAサブクラスIgA及びIgAを含むサブクラスに更に分類することができる。この用語は、限定されないが、ポリクローナル、モノクローナル、単一特異性、多特異性(例えば、二重特異性抗体)、天然、ヒト化、ヒト、キメラ、合成、組換え、ハイブリッド、変異、移植、抗体断片(例えば、全長抗体の一部、一般的には、抗原結合領域又はその可変領域、例、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片)、及びインビトロで生成された抗体を、それらが所望の生物学的活性を示す限り、含む。この用語はまた、単鎖抗体、例えば、単鎖Fv(sFv又はscFv)抗体を含み、それにおいて、可変重鎖及び可変軽鎖は、(直接的に又はペプチドリンカーを通じて)一緒に連結されて連続ポリペプチドを形成する。
【0014】
本明細書に記載される抗体は、多くの実施形態では、一文字アミノ酸表記を使用して、それらのそれぞれのポリペプチド配列によって記載される。別段の指示がない限り、ポリペプチド配列は、N→Cの向きで提供される。
【0015】
「単離」は、天然状態からの変化を指し、すなわち、その本来の環境から変化及び/又は除去される。例えば、ポリヌクレオチド又はポリペプチド(例えば、抗体)は、天然環境において天然に関連付けられる物質から分離される場合に単離される。このように、「単離抗体」は、その天然環境の成分から分離及び/又は回収された抗体である。
【0016】
「精製抗体」は、例えばSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)又はキャピラリー電気泳動-(CE)SDSを還元又は非還元条件下で使用した決定などにより、抗体が、調製物中の他の混入物(例えば、他のタンパク質)と比較して、少なくとも80重量%又はそれ以上、少なくとも85重量%又はそれ以上、少なくとも90重量%又はそれ以上、あるいは少なくとも95重量%又はそれ以上である抗体調製物を指す。
【0017】
「細胞外ドメイン」及び「外部ドメイン」は、膜結合タンパク質への参照において使用される場合には互換的に使用され、細胞の脂質膜の細胞外部側に曝露されるタンパク質の部分を指す。
【0018】
任意の結合薬剤、例えば、抗体などの文脈における「特異的に結合する」は、抗原又はエピトープに特異的に、例えば高い親和性を伴って結合する結合薬剤を指し、他の無関係な抗原又はエピトープに有意に結合しない。
【0019】
「機能的」は、その種類の天然に存在する分子の天然の生物学的活性、又は、例えば、リガンド分子に結合するその能力により判定される任意の特定の所望の活性のいずれかを持つ分子の形態を指す。「機能的」ポリペプチドの例は、その抗原結合領域を通じて抗原に特異的に結合する抗体を含む。
【0020】
「抗原」は、物質、例えば、限定されないが、特定の抗体に結合することができる特定のペプチド、タンパク質、核酸、又は糖などを指す。
【0021】
「エピトープ」又は「抗原決定基」は、特定の抗体により認識され、特異的に結合されることが可能な抗原のその部分を指す。抗原がポリペプチドである場合、エピトープは、タンパク質の三次元の折り畳みにより並置される連続アミノ酸及び/又は非連続アミノ酸から形成され得る。線形エピトープは、アミノ酸の線形配列上の連続アミノ酸から形成されるエピトープである。線形エピトープは、タンパク質変性時に保持され得る。立体構造的又は構造的エピトープは、連続的ではないアミノ酸残基で構成されるエピトープであり、このように、分子の折り畳みにより、例えば二次構造、三次構造、及び/又は四次構造などを通して、互いに近接されるアミノ酸の線形配列の分離部分で構成される。立体構造的又は構造的エピトープは、タンパク質変性時に失われ得る。いくつかの実施形態では、エピトープは、固有の空間立体構造中に少なくとも3、より通常では、少なくとも5又は8~10のアミノ酸を含むことができる。このように、本明細書中で使用されるエピトープは、抗体が、定義されたエピトープの一部だけに結合する、定義されたエピトープを包含する。抗体-抗原複合体の結晶構造の解析、競合アッセイ、遺伝子断片発現アッセイ、変異アッセイ、及び合成ペプチドベースのアッセイを含む、タンパク質上のエピトープの位置をマッピング及び特徴付けするための当技術分野において公知の多くの方法があり、例えば、Using Antibodies: A Laboratory Manual,Chapter 11,Harlow and Lane,eds.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York(1999)において記載されている。
【0022】
「タンパク質」、「ポリペプチド」、又は「ペプチド」は、長さ又は翻訳後修飾(例えば、グリコシル化、リン酸化、脂質化、ミリストイル化、ユビキチン化など)に関係なく、アミド結合により共有結合された少なくとも2つのアミノ酸のポリマーを表示する。この定義内には、D-及びL-アミノ酸、並びにD-及びL-アミノ酸の混合物が含まれる。他に特定されない限り、タンパク質、ポリペプチド、又はペプチドのアミノ酸配列は、本明細書中では、従来のN末端からC末端の配向において呈示されている。
【0023】
「ポリヌクレオチド」及び「核酸」は、本明細書中では互換的に使用され、一緒に共有結合的に連結された2つ又はそれ以上のヌクレオシドを指す。ポリヌクレオチドは、リボヌクレオシド(すなわち、RNA)で全体的に構成されてもよく、2’デオキシリボヌクレオチド(すなわち、DNA)で全体的に構成されてもよく、又はリボ-及び2’デオキシリボヌクレオシドの混合物であってもよい。ヌクレオシドは、典型的には、糖-リン酸連結(糖-リン酸骨格)により一緒に連結されるが、しかし、ポリヌクレオチドは、1つ以上の非標準連結を含み得る。そのような非標準連結の非限定的な例は、ホスホラミデート、ホスホロチオエート、及びアミドを含む(例えば、Eckstein,F.,Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approach,Oxford University Press(1992)を参照のこと)。
【0024】
「操作可能に連結された」又は「操作可能に関連付けられる」は、2つ又はそれ以上のポリヌクレオチド配列が、それらの通常の機能性を許容するように位置付けられる状況を指す。例えば、プロモーターは、それが配列の発現を制御することが可能である場合、コード配列に作動可能に連結される。他の制御配列、例えばエンハンサー、リボソーム結合部位又はエントリー部位、終結シグナル、ポリアデニル化配列、及びシグナル配列などがまた、転写又は翻訳におけるそれらの適切な機能を許容にするように操作可能に連結される。
【0025】
「アミノ酸位置」及び「アミノ酸残基」は、ポリペプチド鎖中のアミノ酸の位置を指すように互換的に使用される。いくつかの実施形態では、アミノ酸残基は、「XN」として表すことができ、ここで、Xはアミノ酸を表し、Nはポリペプチド鎖中でのその位置を表す。2つ又はそれ以上のバリエーション、例えば多型が、同じアミノ酸位置で生じる場合、バリエーションは、バリエーションを分離する「/」で表すことができる。1つのアミノ酸残基の、別のアミノ酸残基との特定の残基位置での置換は、XNYにより表すことができ、ここで、Xは本来のアミノ酸を表し、Nはポリペプチド鎖中の位置を表し、Yは置換又は置換アミノ酸を表す。用語が、より大きなポリペプチド又はタンパク質への参照においてポリペプチド又はペプチド部分を記載するために使用される場合、参照される第1の数は、ポリペプチド又はペプチドが開始する位置(すなわち、アミノ末端)を記載し、第2の参照数は、ポリペプチド又はペプチドが終了する場所(すなわち、カルボキシ末端)を記載する。
【0026】
「ポリクローナル」抗体は、同じ又は異なる抗原上のいくつかの異なる特異的抗原決定基に結合又は反応することが可能である、異なる抗体分子の組成物を指す。ポリクローナル抗体はまた、「モノクローナル抗体のカクテル」と考えることができる。ポリクローナル抗体は、任意の起源、例えば、キメラ、ヒト化、又は完全ヒトであってもよい。
【0027】
「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体の集団から得られた抗体を指し、すなわち、集団を含む個々の抗体は、微量で存在し得る、可能な自然発生的な変異を除いて同一である。各々のモノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して向けられる。いくつかの実施形態では、本開示に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohler et al.,1975,Nature 256:495-7により記載されるハイブリドーマ方法により、又は組換えDNA方法により作製することができる。モノクローナル抗体はまた、例えば、ファージ抗体ライブラリーから単離することができる。
【0028】
「キメラ抗体」は、少なくとも2つの異なる供給源からの成分で作製される抗体を指す。キメラ抗体は、別の分子、例えば、第2の種に由来する抗体の一部に融合された第1の種に由来する抗体の一部を含み得る。いくつかの実施形態では、キメラ抗体は、ヒトに由来する抗体の一部に融合された、非ヒト動物、例えば、マウス又はラットに由来する抗体の一部を含む。いくつかの実施形態では、キメラ抗体は、ヒトから由来する抗体の定常領域に融合された、非ヒト動物から由来する抗体の可変領域の全て又は一部を含む。
【0029】
「ヒト化抗体」は、ドナー抗体結合特異性、例えば、ドナー抗体のCDR領域を含む抗体、例えば、ヒトフレームワーク配列上に移植されたマウスモノクローナル抗体などを指す。「ヒト化抗体」は、典型的には、ドナー抗体と同じエピトープに結合する。
【0030】
「完全ヒト抗体」又は「ヒト抗体」は、ヒト免疫グロブリンタンパク質配列だけを含む抗体を指す。完全ヒト抗体は、非ヒト細胞中、例えば、マウス、マウス細胞中、又はマウス細胞から由来するハイブリドーマ中で産生される場合、マウス糖鎖を含み得る。
【0031】
「完全長抗体」、「インタクトな抗体」、又は「全抗体」が、抗体断片とは対照的に、抗体、例えば本開示の抗TREM2抗体などを、その実質的にインタクトな形態において言及するために互換的に使用される。具体的には、全抗体は、Fc領域を含む重鎖及び軽鎖を伴うものを含む。定常ドメインは、天然配列定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列定常ドメイン)又はそのアミノ酸配列バリアントであり得る。一部の場合では、インタクト抗体は、1つ以上のエフェクター機能を有し得る。
【0032】
「抗体断片」又は「抗原結合部分」は、完全長抗体の一部、一般的には抗原結合又はその可変ドメインを指す。抗体断片の例は、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片;ダイアボディ;直鎖状抗体;単鎖抗体;及び2つ又はそれ以上の異なる抗原に結合する抗体断片から形成される多特異性抗体を含む。増加した結合化学量論又は可変価数(2、3、又は4)を含む抗体断片のいくつかの例は、トリアボディ、三価抗体及びトリマーボディ、テトラボディ、tandAbs(登録商標)、ジダイアボディ、並びに(sc(Fv)2)分子を含み、全てが、高い親和性及び結合性を伴って可溶性抗原に結合する結合薬剤として使用することができる(例えば、Cuesta et al.,2010,Trends Biotech.28:355-62を参照のこと)。
【0033】
「単鎖Fv」又は「sFv」抗体断片は、抗体のVH及びVLドメインを含み、ここで、これらのドメインは単一ポリペプチド鎖中に存在する。一般的に、Fvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインの間にポリペプチドリンカーを更に含み、それによって、sFvが、抗原結合のための所望の構造を形成することが可能になる。sFvのレビューについては、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,Vol.113,pp.269-315,Rosenberg and Moore,eds.,Springer-Verlag,New York(1994)を参照のこと。
【0034】
「ダイアボディ」は、2つの抗原結合部位を伴う小さな抗体断片を指し、それは、同じポリペプチド鎖(VH‐VL)中の軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。同じ鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするために短いリンカーを使用することにより、ドメインは、別の鎖の相補的ドメインと対合し、2つの抗原結合部位を作製することが強制される。
【0035】
「抗原結合ドメイン」又は「抗原結合部分」は、抗原の一部又は全てに特異的に結合し、それに相補的な抗原結合分子の領域又は一部を指す。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、抗原(例えば、エピトープ)の特定の部分にだけ結合し得るが、特に、ここでは抗原は大型である。抗原結合ドメインは、1つ以上の抗体可変領域、特に抗体軽鎖可変領域(VL)及び抗体重鎖可変領域(VH)、特にVH鎖及びVL鎖の各々での相補性決定領域(CDR)を含み得る。
【0036】
「可変領域」及び「可変ドメイン」は、各々の特定の抗体の結合特徴及び特異性特徴を付与するポリペプチド領域を指すように互換的に使用される。抗体の重鎖中の可変領域は、「VH」として言及される一方で、抗体の軽鎖中の可変領域は、「VL」として言及される。配列の主要な変動性は、一般的に、VL領域及びVH領域の各々において「超可変領域」又は「CDR」として表示される可変ドメインの3つの領域中に局在化し、抗原結合部位を形成する。可変ドメインのより保存された部分は、フレームワーク領域FRとして言及される。
【0037】
「相補性決定領域」及び「CDR」は互換的に使用され、抗体分子の重鎖ポリペプチド及び軽鎖ポリペプチドの可変領域内に見出される非連続抗原結合領域を指す。いくつかの実施形態では、CDRはまた、「超可変領域」又は「HVR」として記載される。一般的に、天然抗体は、6つのCDR、VH中に3つ(CDRH1又はH1、CDRH2又はH2、及びCDRH3又はH3として言及される)及びVL中に3つ(CDRL1又はL1、CDRL2又はL2、及びCDRL3又はL3として言及される)を含む。CDRドメインは、様々なアプローチを使用して描写されており、異なるアプローチにより定義されたCDRが本明細書中に包含されることを理解されたい。CDRを定義するための「Kabat」アプローチは、配列変動性を使用し、最も一般に使用される(Kabat et al.,1991,“Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.”NIH 1:688-96)。「Chothia」は、構造ループの位置を使用する(Chothia and Lesk,1987,J Mol Biol.196:901-17)。「AbM」により定義されるCDRは、KabatアプローチとChothiaアプローチとの間の妥協であり、Oxford Molecular AbM抗体モデリングソフトウェア(Martin et al.,1989,Proc.Natl Acad Sci USA.86:9268、また、ワールドワイドウェブwww.bioinf-org.uk/absを参照のこと)を使用して描写され得る。「Contact」CDRの描写は、既知の抗体抗原結晶構造の分析に基づいている(例えば、MacCallum et al.,1996,J.Mol.Biol.262,732-45を参照のこと)。これらの方法により描写されるCDRは、典型的には、互いに比較した場合に、アミノ酸残基の重複又はサブセットを含む。
【0038】
特定のCDRを包含する正確な残基数は、CDRの配列及びサイズに依存して変動し、当業者は、抗体の可変領域のアミノ酸配列が与えられれば、いずれの残基が特定のCDRを含むかをルーチン的に決定することができる。
【0039】
Kabat(上記)はまた、任意の抗体に適用可能である可変ドメイン配列についてのナンバリングシステムを定義した。Kabatナンバリングシステムは、一般的に、可変ドメイン中の残基(軽鎖のおよそ残基1~107及び重鎖の残基1~113)を参照する場合に使用される(例えば、Kabat et al.,Sequences of Immunological Interest.5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))。「EU、若しくはKabatナンバリングシステム」又は「EUインデックス」が、一般的に、免疫グロブリン重鎖定常領域中の残基を指す場合に使用される(例えば、Kabat et al.(上記)において報告されたEUインデックス)。「KabatにおけるEUインデックス」は、ヒトIgG EU抗体の残基ナンバリングを指す。抗体の可変ドメイン中の残基番号への参照は、Kabatナンバリングシステムによる残基ナンバリングを意味する。抗体の定常ドメイン中の残基番号への参照は、EU、若しくはKabatナンバリングシステムによる残基ナンバリングを意味する{例えば、米国特許第2010-280227号を参照のこと)。当業者は、「Kabatナンバリング」のこのシステムを任意の可変ドメイン配列に割り当てることができる。
【0040】
したがって、他に指定されない限り、抗体又は抗原結合断片中の特定のアミノ酸残基の数への参照は、Kabatナンバリングシステムに従う。
【0041】
「フレームワーク領域」又は「FR領域」は、可変領域の一部であるが、しかし、CDRの一部ではないアミノ酸残基を指す(例えば、Kabat、Chothia又はAbMの定義を使用する)。抗体の可変領域は、一般的に、4つのFR領域を含む:FR1、FR2、FR3、及びFR4。したがって、VL領域中のFR領域は、以下の配列:FR1-CDRL1-FR2-CDRL2-FR3-CDRL3-FR4中に現れる一方、VH領域中のFR領域は、以下の配列:FR1-CDRH1-FR2-CDRH2-FR3-CDRH3-FR4中に現れる。
【0042】
「定常領域」又は「定常ドメイン」は、可変領域とは異なる免疫グロブリン軽鎖又は重鎖の領域を指す。重鎖の定常ドメインは、一般的に、CH1ドメイン、ヒンジ(例えば、上部、中央、及び/又は下部ヒンジ領域)、CH2ドメイン、及びCH3ドメインのうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、追加の定常ドメインCH4及び/又はCH5を有することができる。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載される抗体は、CH1ドメインを含むポリペプチド;CH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも一部、及びCH2ドメインを含むポリペプチド;CH1ドメイン及びCH3ドメインを含むポリペプチド;CH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも一部、及びCH3ドメインを含むポリペプチド、又はCH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも一部、CH2ドメイン、及びCH3ドメインを含むポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、CH3ドメインを含むポリペプチドを含む。軽鎖の定常ドメインはCLを指し、いくつかの実施形態では、カッパ又はラムダ定常領域であり得る。しかしながら、これらの定常ドメイン(例えば、重鎖又は軽鎖)が、天然免疫グロブリン分子とはアミノ酸配列が異なるように改変され得ることは当業者により理解されるであろう。
【0043】
「Fc領域」又は「Fc部分」は、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を指す。Fc領域は、天然配列Fc領域又は非天然バリアントFc領域であることができる。一般的に、免疫グロブリンのFc領域は、定常ドメインCH2及びCH3を含む。Fc領域の境界は変動し得るが、いくつかの実施形態では、ヒトIgG重鎖Fc領域は、位置C226のアミノ酸残基から又はP230からそのカルボキシ末端へ伸長するように定義することができる。いくつかの実施形態では、ヒトIgG Fc領域の「CH2ドメイン」はまた、「Cγ2」として表示され、一般的に、アミノ酸残基231前後からアミノ酸残基340前後まで伸長する。いくつかの実施形態では、N連結糖鎖は、インタクトな天然IgG分子の2つのCH2ドメインの間に挿入することができる。いくつかの実施形態では、ヒトIgG Fc領域の「CH3ドメイン」は、C末端からCH2ドメインまでの残基、例えば、Fc領域のアミノ酸残基341前後からアミノ酸残基447前後を含む。「機能的Fc領域」は、天然配列Fc領域の「エフェクター機能」を持つ。例示的なFc「エフェクター機能」は、とりわけ、Clq結合、補体依存性細胞傷害(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、食作用、細胞表面受容体(例えば、LT受容体)の下方調節、などを含む。そのようなエフェクター機能は、一般的に、Fc領域が、結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と組み合わされることを必要とし、当技術分野において公知の様々なアッセイを使用して評価することができる。
【0044】
「天然配列Fc領域」は、自然において見出されるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。天然配列ヒトFc領域は、天然配列ヒトIgG Fc領域(非A及びAアロタイプ)、天然配列ヒトIgG Fc領域、天然配列ヒトIgG Fc領域、及び天然配列ヒトIgG Fc領域並びにそれらの天然バリアントを含む。
【0045】
「バリアントFc領域」は、少なくとも1つのアミノ酸改変、好ましくは1つ以上のアミノ酸置換によって、天然配列Fc領域のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を含む。好ましくは、バリアントFc領域は、天然配列Fc領域と、又は親ポリペプチドのFc領域と比較して少なくとも1つのアミノ酸置換、例えば、約1~約10のアミノ酸置換、好ましくは約1~約5のアミノ酸置換を天然配列Fc領域中に又は親ポリペプチドのFc領域中に有する。本明細書中のバリアントFc領域は、好ましくは、天然配列Fc領域及び/又は親ポリペプチドのFc領域と少なくとも約80%の相同性、最も好ましくはそれと少なくとも約90%の相同性、より好ましくはそれと少なくとも約95%の相同性を持つ。
【0046】
「親和性成熟」抗体、例えば本開示の親和性成熟抗TREM2抗体などは、抗原についての抗体の親和性における改善をもたらす、その1つ以上のHVRにおける1つ以上の変化を、それらの変化を持たない親抗体と比較して、伴う抗体である。一実施形態では、親和性成熟抗体は、標的抗原についてナノモル又は更にピコモルの親和性を有する。親和性成熟抗体は、当技術分野において公知の手順により産生される。例えば、Marks et al.,Bio/Technology,1992,10:779-783は、VH及びVLドメインシャフリングによる親和性成熟を記載する。HVR及び/又はフレームワーク残基のランダム変異誘発は、例えば、Barbas et al.,Proc Nat. Acad. Sci. USA.,1994,91:3809-3813、Schier et al. Gene,1995,169: 147-155、Yelton et al.,Immunol.,1995,155: 1994-2004、Jackson et al.,Immunol.,1995,154(7):3310-9、及びHawkins et al,J.Mol. Biol.,1992,226:889-896により記載されている。
【0047】
「結合親和性」は、リガンドとその結合パートナーの間での非共有結合的な相互作用の合計の強度を指す。いくつかの実施形態では、結合親和性は、リガンドと結合パートナーの間での1対1の相互作用を反映する固有の親和性である。親和性は、一般的に、平衡会合(K)又は解離定数(K)に関して表現され、それらは次に、解離の相互比(koff)及び会合速度定数(kon)である。
【0048】
「パーセント(%)配列同一性」及び「パーセンテージ配列相同性」は、ポリヌクレオチド又はポリペプチド間の比較を指すために本明細書中で互換的に使用され、比較ウィンドウにわたって2つの最適に整列された配列を比較することにより決定され、それにおいて、比較ウィンドウ中のポリヌクレオチド又はポリペプチド配列の一部分は、2つの配列の最適整列のための参照配列と比較してギャップを含んでもよい。パーセンテージは、同一の核酸塩基又はアミノ酸残基が両方の配列において生じる位置の数を決定し、マッチする位置の数をもたらし、マッチする位置の数を比較のウィンドウ中の位置の総数により除して、その結果を100により乗じて、配列同一性のパーセンテージをもたらすことにより算出され得る。あるいは、パーセンテージは、同一の核酸塩基又はアミノ酸残基のいずれかが両方の配列において生じる、あるいは核酸塩基又はアミノ酸残基がギャップと整列される位置の数を決定し、マッチする位置の数をもたらし、このマッチする位置の数を比較のウィンドウ中の位置の総数により除して、その結果を100により乗じて、配列同一性のパーセンテージをもたらすことにより算出され得る。当業者は、2つの配列を整列させるために利用可能な多くの確立されたアルゴリズムがあることを認識する。比較のための配列の最適な整列は、例えば、Smith and Waterman,1981,Adv Appl Math.2:482の局所相同性アルゴリズムにより、Needleman and Wunsch,1970,J Mol Biol.48:443の相同性整列化アルゴリズムにより、Pearson and Lipman,1988,Proc Natl Acad Sci USA.85:2444-8の類似性検索方法により、特に、これらのアルゴリズム(例えば、BLAST、ALIGN、GAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA。例えば、Mount,D.W.,Bioinformatics:Sequence and Genome Analysis,2nd Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York(2013)を参照のこと)のコンピュータ化された実装により行われ得る。
【0049】
パーセント配列同一性及び配列類似性を決定するために適切であるアルゴリズムの例は、BLAST及びBLAST 2.0、FASTDB、又はALIGNアルゴリズムであり、それらは公的に利用可能である(例えば、NCBI:National Center for Biotechnology Information)。当業者は、配列を整列させるための適したパラメータを決定することができる。例えば、BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列について)は、デフォルトとして、ワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=-4、及び両方の鎖の比較を使用することができる。BLASTPを使用したアミノ酸配列の比較は、デフォルトとして、ワード長(W)3、期待値(E)10、及びBLOSUM62スコアリングマトリックスを使用することができる(Henikoff and Henikoff,1989,Proc Natl Acad Sci USA.89:10915-9を参照のこと)。
【0050】
「アミノ酸置換」は、ポリペプチド中の1つのアミノ酸の、別のアミノ酸での置換を指す。「保存的アミノ酸置換」は、類似の側鎖を有する残基の互換性を指し、このように、典型的には、ポリペプチド中のアミノ酸の、同じ又は類似の定義されたアミノ酸のクラス内のアミノ酸での置換を含む。一例として、限定されないが、脂肪族側鎖を伴うアミノ酸は、別の脂肪族アミノ酸、例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、及びメチオニンで置換されてもよく、ヒドロキシル側鎖を伴うアミノ酸は、ヒドロキシル側鎖を伴う別のアミノ酸、例えば、セリン及びトレオニンで置換されてもよく、芳香族側鎖を伴うアミノ酸は、芳香族側鎖を伴う別のアミノ酸、例えば、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、及びヒスチジンで置換されてもよく、塩基性側鎖を伴うアミノ酸は、塩基性側鎖を伴う別のアミノ酸、例えば、リジン、アルギニン、及びヒスチジンで置換されてもよく、酸性側鎖を伴うアミノ酸は、酸性側鎖を伴う別のアミノ酸、例えば、アスパラギン酸又はグルタミン酸で置換されてもよく、及び疎水性又は親水性アミノ酸は、それぞれ、別の疎水性又は親水性アミノ酸で置換されてもよい。
【0051】
「アミノ酸挿入」は、所定のアミノ酸配列中への少なくとも1つのアミノ酸の組み入れを指す。挿入は、1つ又は2つのアミノ酸残基の挿入であることができるが、約3つ~約5つ、あるいは最大約10又はそれ以上のアミノ酸残基のより大きな挿入が本明細書中で企図される。
【0052】
「アミノ酸欠失」は、所定のアミノ酸配列からの1つ以上のアミノ酸残基の除去を指す。欠失は、1つ又は2つのアミノ酸残基の除去であることができるが、しかし、約3つ~約5つ、あるいは最大約10又はそれ以上のアミノ酸残基のより大きな欠失が本明細書で企図される。
【0053】
「対象」は、ヒト、非ヒト霊長類、並びに非霊長類、例えばヤギ、ウマ、及びウシなどを含むが、これらに限定されない、哺乳動物を指す。いくつかの実施形態では、「対象」及び「患者」という用語は、ヒト対象への参照において本明細書中で互換的に使用される。
【0054】
「治療有効用量」、「治療有効量」又は「有効用量」は、それを必要とする哺乳動物への投与時に望ましい活性をもたらすのに十分である、生物学的化合物を含む化合物、又は医薬組成物のその量を指す。本明細書で使用される場合、抗体を含む医薬組成物に関して、「治療有効量/用量」という用語は、哺乳動物への投与時に有効な応答を産生するのに十分である抗体又はその医薬組成物の量/用量を指す。
【0055】
「薬学的に許容される」は、一般的に安全、非毒性であり、生物学的に又は他でも望ましくなくはない化合物又は組成物を指し、ヒトの医薬的及び獣医学的な使用のために許容可能である化合物又は組成物を含む。化合物又は組成物は、規制当局により承認され得る、若しくは承認可能であってもよく、又は米国薬局方若しくはヒトを含む動物における使用のための一般的に認識されている他の薬局方において列挙され得る。
【0056】
「薬学的に許容される賦形剤、担体、又はアジュバント」は、少なくとも1つの治療薬(例えば、本開示の抗体)と一緒に対象に投与することができ、その薬理学的活性を破壊せず、一般的に安全、非毒性であり、薬剤の治療量を送達するのに十分な用量で投与された場合に生物学的に又は他でも望ましくなくはない賦形剤、担体、又はアジュバントを指す。
【0057】
「治療」という用語は、本明細書で、「治療方法」という用語と互換的に使用され、1)診断された病理学的状態、疾患、若しくは障害を治癒する、遅らせる、その症状を和らげる、及び/又はその進行を停止させる治療的な処置若しくは手段、並びに2)予防的/防止的な手段の両方を指す。治療を必要とする者は、特定の医学的疾患又は障害を既に有する個体並びに究極的に障害を獲得し得る個体(すなわち、リスクがある、又は防止的な対策を必要とする個体)を含み得る。
【0058】
本明細書中で使用される「対象」又は「患者」という用語は、対象方法が実施される任意の個体を指す。一般的に、対象はヒトであるが、当業者により理解されるように、対象は任意の動物であってもよい。
【0059】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、血液脳関門(BBB)を通過することができる。「血液脳関門」又は「BBB」という用語は、本明細書中で使用されるように、BBB並びに血液脊髄関門を指す。血液脳関門は、脳血管の内皮、基底膜、及び神経膠細胞からなり、脳中への物質の浸透を限定するよう作用する。いくつかの実施形態では、全薬物の脳/血漿比は、患者への投与(例えば、経口又は静脈内投与)後に少なくともおよそ0.01である。いくつかの実施形態では、全薬物の脳/血漿比は少なくともおよそ0.03である。いくつかの実施形態では、全薬物の脳/血漿比は少なくともおよそ0.06である。いくつかの実施形態では、全薬物の脳/血漿比は少なくともおよそ0.1である。いくつかの実施形態では、全薬物の脳/血漿比は少なくともおよそ0.2である。
【0060】
本明細書で使用される場合、「ホモログ」、特に「TREMホモログ」という用語は、抗原性/免疫原性及び炎症調節活性、並びに/あるいは構造ドメインを含み、本明細書で定義される十分なアミノ酸又はヌクレオチド配列の同一性を有する、共通の生物学的活性を有する一連のペプチド又は核酸分子の任意のメンバーを指す。TREMホモログは、同じ動物種からであってもよく、又は異なる動物種からであってもよい。
【0061】
本明細書中で使用される「バリアント」という用語は、所与のペプチドの天然の対立遺伝子バリエーション、あるいは1つ以上のアミノ酸残基が、アミノ酸置換、付加、又は欠失により改変されている所与のペプチド又はタンパク質の組換え的に調製されたバリエーションのいずれかを指す。
【0062】
本明細書で使用される場合、「誘導体」という用語は、他の方法で改変される、すなわち、非天然アミノ酸を含むペプチド又はタンパク質への、好ましくは生物学的活性を有する任意の種類の分子の共有結合的な付着による、所与のペプチド又はタンパク質のバリエーションを指す。
【0063】
本明細書で使用される「NFL」という略語は、「神経フィラメント軽鎖」を指す。
【0064】
本明細書で使用される「sCSF1R」という略語は、「可溶性コロニー刺激因子1受容体」を指す。
【0065】
本明細書で使用される「sTREM2」という略語は、「骨髄細胞上に発現される可溶性トリガー受容体2」を指す。
【0066】
本明細書で使用される「SPP1」という略語は、「分泌型リンタンパク質1」を指し、これはオステオポンチン(OPN)という用語の同義語であり、かつそれと互換性がある。
【0067】
本明細書で使用される「IL-1RA」という略語は、「インターロイキン-1受容体アンタゴニスト」を指し、本明細書では、タンパク質IL-1RAをコードする遺伝子を指す「IL-1RN」という用語と互換的に使用される。
【0068】
本明細書で使用される「CSF2」という略語は、「コロニー刺激因子2」を指し、これは「顆粒球マクロファージコロニー刺激因子」を指す「GM-CSF」という略語の同義語であり、かつそれと互換性がある。
【0069】
本明細書で使用される「IP10」という略語は、「インターフェロンガンマ誘導タンパク質10」を指し、これは、「C-X-Cモチーフケモカインリガンド10」を指す「CXCL10」という略語の同義語であり、かつそれと互換性がある。
【0070】
その他の小分子の定義
本項では、本明細書に開示される化合物、組成物及び使用の範囲を説明するために使用される追加の用語を定義する。
【0071】
本明細書で使用される「C1~3アルキル」、「C1~5アルキル」、及び「C1~6アルキル」という用語は、それぞれ、1~3個、1~5個、及び1~6個の炭素原子を含む直鎖又は分枝炭化水素を指す。C1~3アルキル、C1~5アルキル、又はC1~6アルキルの代表的な例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、及びヘキシルが含まれるが、これらに限定されない。
【0072】
本明細書で使用される「C2~4アルケニル」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する2~4個の炭素原子を含む飽和炭化水素を指す。アルケニル基は、直鎖及び分枝部分の両方を含む。C2~4アルケニルの代表的な例には、1-プロペニル、2-プロペニル、2-メチル-2-プロペニル、及びブテニルが含まれるが、これらに限定されない。
【0073】
本明細書で使用される「C3~6シクロアルキル」という用語は、環状骨格が3~6個の炭素原子を有する飽和炭素環式分子を指す。C3~5シクロアルキルの代表的な例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、及びシクロヘキシルが含まれるが、これらに限定されない。
【0074】
本明細書で使用される「ジC1~3アルキルアミノ」という用語は、-NR*R**を指し、R*及びR**は、独立して、本明細書で定義されるC1~3アルキルを表す。ジC1~3アルキルアミノの代表的な例には、-N(CH、-N(CHCH、-N(CH)(CHCH)、-N(CHCHCH、及び-N(CH(CHが含まれるが、これらに限定されない。
【0075】
本明細書で使用される「C1~3アルコキシ」及び「C1~6アルコキシ」という用語は、-ORを指し、Rは、それぞれ、本明細書で定義されるC1~3アルキル及びC1~6アルキル基を表す。C1~3アルコキシ又はC1~6アルコキシの代表的な例には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、及びブトキシが含まれるが、これらに限定されない。
【0076】
本明細書で使用される「ハロゲン」という用語は、-F、-CI、-Br、又は-Iを指す。
【0077】
化学基の別の用語の接頭辞として本明細書で使用される「ハロ」という用語は、化学基の修飾を指し、1つ以上の水素原子は、本明細書で定義されるハロゲンで置換される。ハロゲンは、独立して、各出現ごとに選択される。例えば、「C1~6ハロアルキル」という用語は、1つ以上の水素原子がハロゲンで置換される、本明細書で定義されるC1~6アルキルを指す。C1~6ハロアルキルの代表的な例には、-CHF、-CHF、-CF、-CHFCl、-CHCF、-CFHCF、-CFCF、-CH(CF、-CF(CHF、及び-CH(CHF)(CF)が含まれるが、これらに限定されない。更に、「C1~6ハロアルコキシ」という用語は、例えば、1つ以上の水素原子がハロゲンで置換される、本明細書で定義されるC1~6アルコキシを指す。C1~6ハロアルコキシの代表的な例には、-OCHF、-OCHF、-OCF、-OCHFCl、-OCHCF、-OCFHCF、-OCFCF、-OCH(CF、-OCF(CHF、及び-OCH(CHF)(CF)が含まれるが、これらに限定されない。
【0078】
本明細書で使用される「5員ヘテロアリール」又は「6員ヘテロアリール」という用語は、N、S、及びOから選択される1つの環ヘテロ原子と、任意に、1つ以上の環炭素原子の代わりに1つ又は2つ以上の更なる環N原子とを含む、2つ又は3つの二重結合を有する5又は6員炭素環を指す。5員ヘテロアリールの代表的な例には、フリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、及びオキサゾリルが含まれるが、これらに限定されない。6員ヘテロアリールの代表的な例には、ピリジル、ピリミジル、ピラジル、及びピリダジルが含まれるが、これらに限定されない。
【0079】
本明細書で使用される「C3~6ヘテロシクロアルキル」という用語は、飽和炭素環状分子を指し、環状フレームワークが、3~6個の炭素を有し、1つの炭素原子が、N、O、及びSから選択されるヘテロ原子で置換される。C3~6ヘテロシクロアルキル基が、Cヘテロシクロアルキルである場合、1つ又は2つの炭素原子が、独立して、N、O、及びSから選択されるヘテロ原子で置換される。C3~6ヘテロシクロアルキルの代表的な例には、アジリジニル、アゼチジニル、オキセタニル、ピロリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、及びチオモルホリニルが含まれるが、これらに限定されない。
【0080】
本明細書で使用される「C5~8スピロアルキル」という用語は、二環系を指し、2個の環が、単一の共通炭素原子を介して連結する。C5~8スピロアルキルの代表的な例には、スピロ[2.2]ペンタニル、スピロ[3.2]ヘキサニル、スピロ[3.3]ヘプタニル、スピロ[3.4]オクタニル、及びスピロ[2.5]オクタニルが含まれるが、これらに限定されない。
【0081】
本明細書で使用される「C5~8トリシクロアルキル」という用語は、三環系を指し、全ての3個のシクロアルキル環が、同じ2個の環原子を共有する。C5~8トリシクロアルキルの代表的な例には、トリシクロ[1.1.1.01,3]ペンタニル、
、トリシクロ[2.1.1.01,4]ヘキサニル、トリシクロ[3.1.1.01,5]ヘキサニル、及びトリシクロ[3.2.1.01,5]オクタニルが含まれるが、これらに限定されない。
【0082】
単独で、又は「アラルキル」、「アラルコキシ」、若しくは「アリールオキシアルキル」のようなより大きな部分の一部として使用される「アリール」という用語は、合計で4~14個の環員を有する単環状又は二環状の環系を指し、系中の少なくとも1つの環が、芳香族であり、系中の各環が、3~7個の環員を含む。「アリール」という用語は、「アリール環」という用語と互換的に使用され得る。本開示の特定の実施形態では、「アリール」は、1つ以上の置換基を有し得る、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アントラシルなどを含むが、これらに限定されない芳香族環系を指す。本明細書で使用される「アリール」という用語の範囲内には、芳香環が1つ以上の非芳香環に縮合している基、例えば、インダニル、フタルイミジル、ナフチミジル、フェナントリジニル、又はテトラヒドロナフチルなども含まれる。
【0083】
単独で、又はより大きな部分、例えば、「ヘテロアラルキル」若しくは「ヘテロアラルコキシ」の一部として使用される「ヘテロアリール」及び「ヘテロアラ-(heteroar-)」という用語は、5~10個の環原子、好ましくは5、6、又は9個の環原子を有する基、環状アレイで共有された6、10、又は14個のπ電子を有する基、及び炭素原子に加えて1~5個のヘテロ原子を有する基を指す。「ヘテロアリール」の文脈における「ヘテロ原子」という用語は、特に限定されないが、窒素、酸素、又は硫黄を含み、窒素又は硫黄の任意の酸化形態、及び塩基性窒素の任意の四級化形態を含む。ヘテロアリール基には、チエニル、フラニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、インドリジニル、プリニル、ナフチリジニル、及びプテリジニルが含まれるが、これらに限定されない。本明細書で使用される「ヘテロアリール」及び「ヘテロアラ-(heteroar-)」という用語には、ヘテロ芳香族環が、1つ以上のアリール、脂環状、又はヘテロシクリル環に縮合している基も含まれ、ラジカル又は付着点が、ヘテロ芳香族環上にある。非限定的な例には、インドリル、イソインドリル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンズチアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、4H-キノリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、及びピリド[2,3-b]-1,4-オキサジン-3(4H)-オンが含まれる。ヘテロアリール基は、単環式又は二環式であり得る。ヘテロアリール環は、1つ以上のオキソ(=O)又はチオキソ(=S)置換基を含み得る。「ヘテロアリール」という用語は、「ヘテロアリール環」、「ヘテロアリール基」、又は「ヘテロ芳香族」という用語と互換的に使用され得、これらの用語のいずれも、任意に置換される環を含む。「ヘテロアラルキル」という用語は、ヘテロアリールによって置換されるアルキル基を指し、アルキル及びヘテロアリール部分が、独立して、任意に置換され得る。
【0084】
本明細書に記載されるように、本開示の化合物は、「置換」部分を含み得る。概して、「置換」という用語は、指定部分の1つ以上の水素が好適な置換基で置換されることを意味する。別段の指示がない限り、「任意置換」基は、基の1つ以上の置換可能な位置に好適な置換基を有し得、任意の所与の構造中の1つを超える位置が特定の群から選択される1つ以上の置換基で置換される場合、置換基は全ての位置で同じであっても異なっていてもよい。本開示によって想定される置換基の組み合わせは、安定的又は化学的に実行可能な化合物の形成をもたらすものであることが好ましい。本明細書で使用される「安定」という用語は、その生成、検出、及び特定の実施形態では、本明細書で開される目的のうちの1つ以上のためのそれらの回収、精製、及び使用を可能にする条件に供された場合に実質的に変化しない化合物を指す。
【0085】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」という用語は、対象、特にヒトにおける使用について一般的に認識されることを意味する。
【0086】
本明細書で使用される「薬学的に許容される塩」という用語は、薬学的に許容され、親化合物の所望の薬理学的活性を有する化合物の塩を指す。かかる塩には、(1)無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などで形成されるか、又は有機酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸などで形成される、酸付加塩、あるいは(2)いずれかの親化合物中に存在する酸性プロトンが、金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、若しくはアルミニウムイオンにより置換される、又は有機塩基、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルグルカミン、ジシクロヘキシルアミンなどと配位する場合に形成される塩が含まれる。かかる塩の更なる例は、Berge et al., J. Pharm. Sci. 66(1):1-19 (1977)に見出される。また、Stahl et al.,Pharmaceutical Salts: Properties,Selection,and Use,2nd Revised Edition(2011)も参照されたい。
【0087】
2.本発明の特定の実施形態の一般的説明
患者における、アルツハイマー病などのミクログリア機能不全に関連する状態及び障害の診断、予後、及び治療は、プラーク微小環境中の細胞のレベル及び型の変化、プラーク微小環境に関連する細胞の遺伝子セットの発現パターン、サイトカイン発現レベル、免疫応答因子、又はプラーク微小環境中の他の変化の特定により大いに補助され、本明細書では概して「バイオマーカー」、又はより具体的には、遺伝子発現パターンとの関連で「遺伝子シグネチャー」、「遺伝子発現バイオマーカー」、若しくは「分子シグネチャー」、又はタンパク質発現パターンとの関連で「タンパク質シグネチャー」、「タンパク質発現バイオマーカー」、若しくは「プロテオームシグネチャー」、又は細胞型組成パターンとの関連で「細胞シグネチャー(すなわち、ミクログリア細胞シグネチャー)」と称され、これらは、上記状態及び障害に特徴的である。そのようなバイオマーカーは、臨床転帰に関連し得る。そのような関連が臨床応答を予測するものである場合、バイオマーカーは、本明細書に開示されるもののうちの1つなどの治療レジメンから利益を得る可能性がより高い(場合により、より少ない)患者を選択又は層別化する方法で有利に使用される。
【0088】
治療に対する陽性応答を予測するバイオマーカープロファイルを有する患者からの生物学的試料は、本明細書では、「バイオマーカー陽性」又は「バイオマーカー高」と称される。逆に、陽性応答を予測しないバイオマーカープロファイルを有する患者からの生物学的試料は、本明細書では、「バイオマーカー陰性」又は「バイオマーカー低」と称される。代替の用語がバイオマーカーに応じて使用され得るが、より高い量又は「バイオマーカー高」は通常、「バイオマーカー陽性」又は「バイオマーカー+」などの代替の用語を使用して説明され得、一方で、より低い量のバイオマーカー又は「バイオマーカー低」は通常、「バイオマーカー陰性」又は「バイオマーカー-」などの代替の用語を使用して説明され得る。いくつかの実施形態では、バイオマーカーの結果はまた、患者からの生物学的試料中のバイオマーカーのレベルが、対照生物学的試料中のバイオマーカーのレベルとほぼ同じである「正常」、又は患者からの生物学的試料中のバイオマーカーのレベルが、任意の数の適切な因子を考慮した後に、対照生物学的試料中のバイオマーカーのレベルから統計的に有意な程度まで逸脱している「異常」として分類され得る。
【0089】
いくつかの実施形態では、本発明で使用されるバイオマーカーは、遺伝子発現パネルなどのバイオマーカーパネルである。他の実施形態では、バイオマーカーパネルは、サイトカインパネルである。他の実施形態では、バイオマーカーパネルは、プラーク微小環境中に存在する細胞型の特徴である。
【0090】
本明細書で使用される場合、そのような「パネル」は、特定の臨床転帰の可能性を予測する傾向がある方法で、特定の刺激(例えば、TREM2アゴニストを用いた患者の治療)に応答する特定のバイオマーカー、例えば、プラーク微小環境中の特定の遺伝子又は特定の細胞型集団の群を指す。パネル内の個々のバイオマーカー、例えば、遺伝子の発現又は特定の細胞型の保有率は、各々が同じように応答する必要はない。上方調節され得るものもあり、下方調節され得るものもあり、不変であり得るものもあり、したがって、パネルの全体的な応答は、一般的に、臨床応答の可能性の予測において最も有用である。
【0091】
いくつかの実施形態では、本発明で使用されるバイオマーカーは、遺伝子シグネチャーである。他の実施形態では、バイオマーカーは、サイトカインシグネチャーである。他の実施形態では、バイオマーカーパネルは、プラーク微小環境中の細胞型シグネチャーである。パネルと同様に、本明細書で使用される場合、「シグネチャー」は、刺激に応答して治療に対するバイオマーカー応答のフィンガープリント(特有のパターン)を提供する、プラーク微小環境中に存在する特定の遺伝子又は特定の細胞型集団などのバイオマーカーの群を指す。
【0092】
更に、ミクログリア機能不全に関連する状態又は障害に罹患している患者に由来するバイオマーカーは、上記状態又は障害の診断、予後、及び治療の改善において重要なツールであるが、生物学的試料の採取の侵襲性は、麻酔の事故、出血、感染、発作、及び死亡を含む重篤な合併症のリスクを増大させる可能性がある(Warren et al,Brain,2005)。脳組織の外科的除去(生検)及びプラーク部位からの細胞の吸引(細針吸引細胞診)の両方は、異常な細胞を頭蓋腔に曝露する可能性を有する。生検と比較してバイオマーカー分析のための血清試料の採取の侵襲性が低減することは、治療に対する患者の応答のより連続的な監視を可能になる。したがって、「血清バイオマーカー」など、脳の完全性を破壊すること又は炎症を引き起こすことを回避する低侵襲診断ツール及び方法は、現在の治療レジメンに関連するリスクを軽減しながら、患者ケアを改善する機会を提示する。血清バイオマーカーは、プラーク部位(例えば、静脈血及びリンパ液)から離れて得られた体液試料により得られ得るバイオマーカーを含む。血清バイオマーカーの例としては、例えば、循環サイトカイン及び増殖因子、並びに循環免疫細胞中の表現型マーカー及び遺伝子型マーカーが挙げられる。
【0093】
いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、治療の安全性関連パラメータと関連付けられ得る。いくつかの実施形態では、本開示の1つ以上のバイオマーカーは、バイオマーカーが治療の患者安全性関連転帰を予測する場合、治療レジメンの安全性を監視する方法で有利に使用され得る。いくつかの実施形態では、治療レジメンの安全性を予測する1つ以上のバイオマーカーは、臨床応答を予測するバイオマーカーとは独立している。いくつかの実施形態では、治療レジメンの安全性を予測する1つ以上のバイオマーカーは、臨床応答を予測するバイオマーカーとは独立している。
【0094】
本発明は、概して、ミクログリア活性に関連する特定の遺伝子の発現レベルが、TREM2アゴニストを用いた治療後に変化するという驚くべき発見に関する。TREM2アゴニストモノクローナル抗体及び小分子TREM2アゴニストは、マウスモデルにおいて血液脳関門を通過することができ、ニューロン又はアストロサイトに影響を与えない一方で、選択的にミクログリアを活性化することが見出された。
【0095】
3.疾患関連バイオマーカー
驚くべきことに、ヒトTREM2を発現するマウスモデルへのTREM2アゴニストの投与は、ミクログリアの機能、恒常性、及び生存に関連する複数の経路に関与する多数の遺伝子の上方制御をもたらすことが見出された。これらの遺伝子又はタンパク質の上方制御又は下方制御は、ミクログリア機能不全に関連する状態若しくは障害に罹患している患者を治療する方法、かかる状態若しくは障害を診断する方法、又はかかる状態若しくは障害の治療に対する患者の応答を予測する方法などの、本明細書に記載される方法においてバイオマーカーとして使用され得る。
【0096】
以下の各表は、当該表に列挙される任意の単一のバイオマーカー、又は当該表に列挙される2つ以上のバイオマーカーの、全ての可能な並べ替え及び組み合わせにおける任意の組み合わせ、又は当該表に列挙される全てのバイオマーカーを含むと理解されるべきである。以下の表の各々に列挙される2つ以上のバイオマーカーの全ての可能な組み合わせが、本出願の開示の一部として企図される。
【0097】
いくつかの実施形態では、本開示の方法に有用なバイオマーカーは、表Aに列挙されるもののうちの1つ以上である。
【表1】
【0098】
いくつかの実施形態では、本開示の方法に有用なバイオマーカーは、表A*に列挙されるもののうちの1つ以上である。
【表2-1】
【表2-2】
【0099】
いくつかの実施形態では、本開示の方法に有用なバイオマーカーは、表A**に列挙されるもののうちの1つ以上である。
【表3】
【0100】
いくつかの実施形態では、本開示の方法に有用なバイオマーカーは、表Bに列挙されるもののうちの1つ以上である。
【表4】
【0101】
いくつかの実施形態では、本開示の方法に有用なバイオマーカーは、表Cに列挙されるもののうちの1つ以上である。
【表5】
【0102】
いくつかの実施形態では、本開示の方法に有用なバイオマーカーは、表C*に列挙されるもののうちの1つ以上である。
【表6】
【0103】
いくつかの実施形態では、本開示の方法に有用なバイオマーカーは、表Dに列挙されるもののうちの1つ以上である。
【表7】
【0104】
いくつかの実施形態では、本開示の方法に有用なバイオマーカーは、表D*に列挙されるもののうちの1つ以上である。
【表8】
【0105】
いくつかの実施形態では、本開示の方法に有用なバイオマーカーは、表A、表A*、表A**、表B、表C、表C*、表D、又は表D*のうちのいずれか1つにあるものから選択される、遺伝子、又は遺伝子によってコードされるタンパク質若しくはそのバリアントである。
【0106】
いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、表A中のものから選択される遺伝子である。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、表B中のものから選択される遺伝子である。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、表C中のものから選択される遺伝子である。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、表D中のものから選択される遺伝子である。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、表A中のものから選択される遺伝子によってコードされるタンパク質又はそのバリアントである。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、表B中のものから選択される遺伝子によってコードされるタンパク質又はそのバリアントである。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、表C中のものから選択される遺伝子によってコードされるタンパク質又はそのバリアントである。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、表D中のものから選択される遺伝子によってコードされるタンパク質又はそのバリアントである。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、表A*中のものから選択される遺伝子である。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、表C*中のものから選択される遺伝子である。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、表D*中のものから選択される遺伝子である。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、表A*中のものから選択される遺伝子によってコードされるタンパク質又はそのバリアントである。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、表C*中のものから選択される遺伝子によってコードされるタンパク質又はそのバリアントである。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、表D*中のものから選択される遺伝子によってコードされるタンパク質又はそのバリアントである。
【0107】
いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、IL1-RN遺伝子、又はIL1-RN遺伝子によってコードされるタンパク質若しくはそのバリアントであり、IL1-RAであり得る。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、Casp8遺伝子、又はCasp8遺伝子によってコードされるタンパク質若しくはそのバリアントである。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、Ddx58遺伝子、又はDdx58遺伝子によってコードされるタンパク質若しくはそのバリアントである。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、Dock2遺伝子、又はDock2遺伝子によってコードされるタンパク質若しくはそのバリアントである。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、Fcer1g遺伝子、又はFcer1g遺伝子によってコードされるタンパク質若しくはそのバリアントである。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、Fcgr1遺伝子、又はFcgr1遺伝子によってコードされるタンパク質若しくはそのバリアントである。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、Fcrls遺伝子、又はFcrls遺伝子によってコードされるタンパク質若しくはそのバリアントである。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、Ifi30遺伝子、又はIfi30遺伝子によってコードされるタンパク質若しくはそのバリアントである。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、Ifitm3遺伝子、又はIfitm3遺伝子によってコードされるタンパク質若しくはそのバリアントである。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、Itgb5遺伝子、又はItgb5遺伝子によってコードされるタンパク質若しくはそのバリアントである。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、Mcm5遺伝子、又はMcm5遺伝子によってコードされるタンパク質若しくはそのバリアントである。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、Msn遺伝子、又はMsn遺伝子によってコードされるタンパク質若しくはそのバリアントである。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、Pcna遺伝子、又はPcna遺伝子によってコードされるタンパク質若しくはそのバリアントである。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、Pla2g4a遺伝子、又はPla2g4a遺伝子によってコードされるタンパク質若しくはそのバリアントである。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、Pole遺伝子、又はPole遺伝子によってコードされるタンパク質若しくはそのバリアントである。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、Psmb8遺伝子、又はPsmb8遺伝子によってコードされるタンパク質若しくはそのバリアントである。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、Ptpn6遺伝子、又はPtpn6遺伝子によってコードされるタンパク質若しくはそのバリアントである。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、Rad51遺伝子、又はRad51遺伝子によってコードされるタンパク質若しくはそのバリアントである。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、Slamf9遺伝子、又はSlamf9遺伝子によってコードされるタンパク質若しくはそのバリアントである。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、Tgfb1遺伝子、又はTgfb1遺伝子によってコードされるタンパク質若しくはそのバリアントである。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、Tgfbr1遺伝子、又はTgfbr1遺伝子によってコードされるタンパク質若しくはそのバリアントである。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、Top2a遺伝子、又はTop2a遺伝子によってコードされるタンパク質若しくはそのバリアントである。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、Trp73遺伝子、又はTrp73遺伝子によってコードされるタンパク質若しくはそのバリアントである。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、Tyrobp遺伝子、又はTyrobp遺伝子によってコードされるタンパク質若しくはそのバリアントである。
【0108】
本発明のある特定の態様では、同一クラス又は異なるクラスのバイオマーカーからの1つ以上のバイオマーカー(すなわち、遺伝子バイオマーカー及びミクログリア細胞状態バイオマーカー)は、本明細書に記載される方法で使用される場合、単独で、又はバイオマーカーパネルとして互いと任意の組み合わせで使用され得ることが企図される。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、表A中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーを含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、表A*中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーを含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、表A**中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーを含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、表B中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーを含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、表A中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーを含み、表A**中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーを更に含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、表A中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーを含み、更にCXCL10を含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、表B中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーを含み、表A**のものから選択される1つ以上のバイオマーカーを更に含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、表B中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーを含み、更にCXCL10を含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、表A、表A*、表A**、表B、表C、表C*、表D、又は表D*のうちのいずれか1つにあるものから選択される2つ以上のバイオマーカーを含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、表A、表A*、表A**、表B、表C、表C*、表D、又は表D*のうちのいずれか1つにあるものから選択される3つ以上のバイオマーカーを含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、表A、表A*、表A**、表B、表C、表C*、表D、又は表D*のうちのいずれか1つにあるものから選択される4つ以上のバイオマーカーを含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、表A、表A*、表A**、表B、表C、表C*、表D、又は表D*のうちのいずれか1つにあるものから選択される5つ以上のバイオマーカーを含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、表A、表A*、表A**、表B、表C、表C*、表D、又は表D*のうちのいずれか1つにあるものから選択される6つ以上のバイオマーカーを含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、表A、表A*、表A**、表B、表C、表C*、表D、又は表D*のうちのいずれか1つにあるものから選択される7つ以上のバイオマーカーを含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、表A、表A*、表A**、表B、表C、表C*、表D、又は表D*のうちのいずれか1つにあるものから選択される8つ以上のバイオマーカーを含む。
【0109】
いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、NFLを含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、sCSF1Rを含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、sTREM2を含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、SPP1を含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、IL-1RAを含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、CSF2を含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、キトトリオシダートを含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、IP10(CXCL10)を含む。
【0110】
いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、NFL及びsTREM2を含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、NFL及びsCSF1Rを含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、sCSF1R及びsTREM2を含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、NFL、sCSF1R、及びsTREM2を含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、sCSF1Rと、SPP1、IL-1RA、CSF2、キトトリオシダート、及びIP10(CXCL10)のうちの1つ以上とを含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、sTREM2と、SPP1、IL-1RA、CSF2、キトトリオシダート、及びIP10(CXCL10)のうちの1つ以上とを含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、NFLと、SPP1、IL-1RA、CSF2、キトトリオシダート、及びIP10(CXCL10)のうちの1つ以上とを含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、sCSF1R及びsTREM2と、SPP1、IL-1RA、CSF2、キトトリオシダート及びIP10(CXCL10)のうちの1つ以上とを含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、NFL及びsTREM2と、SPP1、IL-1RA、CSF2、キトトリオシダート及びIP10(CXCL10)のうちの1つ以上とを含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、NFL及びsCSF1Rと、SPP1、IL-1RA、CSF2、キトトリオシダート、及びIP10(CXCL10)のうちの1つ以上とを含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、NFL、sCSF1R、SPP1、IL-1RA、CSF2、キトトリオシダート、及びIP10(CXCL10)を含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、NFL、sTREM2、SPP1、IL-1RA、CSF2、キトトリオシダート、及びIP10(CXCL10)を含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、sCSF1R、sTREM2、SPP1、IL-1RA、CSF2、キトトリオシダート及びIP10(CXCL10)を含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、NFL、sCSF1R、sTREM2、SPP1、IL-1RA、CSF2、キトトリオシダート及びIP10(CXCL10)のうちの2つ以上を含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、NFL、sCSF1R、sTREM2、SPP1、IL-1RA、CSF2、キトトリオシダート、及びIP10(CXCL10)のうちの3つ以上を含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、NFL、sCSF1R、sTREM2、SPP1、IL-1RA、CSF2、キトトリオシダート、及びIP10(CXCL10)のうちの4つ以上を含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、NFL、sCSF1R、sTREM2、SPP1、IL-1RA、CSF2、キトトリオシダート、及びIP10(CXCL10)のうちの5つ以上を含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、NFL、sCSF1R、sTREM2、SPP1、IL-1RA、CSF2、キトトリオシダート及びIP10(CXCL10)のうちの6つ以上を含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、NFL、sCSF1R、sTREM2、SPP1、IL-1RA、CSF2、キトトリオシダート及びIP10(CXCL10)のうちの7つ以上を含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、NFL、sCSF1R、sTREM2、SPP1、IL-1RA、CSF2、キトトリオシダート及びIP10(CXCL10)を含む。
【0111】
いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、SPP1、IL-1RA、CSF2、キトトリオシダート及びIP10(CXCL10)を含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、IL-1RA、CSF2、キトトリオシダート、及びIP10(CXCL10)を含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、SPP1、CSF2、キトトリオシダート及びIP10(CXCL10)を含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、SPP1、IL-1RA、キトトリオシダート、及びIP10(CXCL10)を含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、SPP1、IL-1RA、CSF2、及びIP10(CXCL10)を含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、SPP1、IL-1RA、CSF2、及びキトトリオシダートを含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、本段落に開示されるパネルであり、更にNFLを含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、本段落に開示されるパネルであり、更にsCSF1Rを含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、本段落に開示されるパネルであり、更にsTREM2を含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、表Aのバイオマーカーを更に含む、本段落に開示されるパネルである。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、表A*のバイオマーカーを更に含む、本段落に開示されるパネルである。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、表A**のバイオマーカーを更に含む、本段落に開示されるパネルである。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、表Bのバイオマーカーを更に含む、本段落に開示されるパネルである。
【0112】
いくつかの実施形態では、上記のバイオマーカーのうちの1つ以上の発現レベルは、TREM2アゴニストの投与後に高まる。いくつかの実施形態では、上記のバイオマーカーのうちの1つ以上の発現レベルは、TREM2アゴニストの投与後に減少する。
【0113】
いくつかの実施形態では、表A中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーのうちの1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つは、TREM2アゴニストの投与後に増加する。いくつかの実施形態では、表A*中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーのうちの1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つは、TREM2アゴニストの投与後に増加する。いくつかの実施形態では、表B中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーのうちの1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つは、TREM2アゴニストの投与後に増加する。いくつかの実施形態では、表C中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーのうちの1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つは、TREM2アゴニストの投与後に増加する。いくつかの実施形態では、表C*中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーのうちの1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つは、TREM2アゴニストの投与後に増加する。特定の実施形態では、TREM2アゴニストは、抗ヒトTREM2抗体である。特定の実施形態では、TREM2アゴニストは、小分子TREM2アゴニストである。
【0114】
いくつかの実施形態では、表A中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーのうちの1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つは、TREM2アゴニストの投与後に減少する。いくつかの実施形態では、表A*中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーのうちの1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つは、TREM2アゴニストの投与後に減少する。いくつかの実施形態では、表B中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーのうちの1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つは、TREM2アゴニストの投与後に減少する。いくつかの実施形態では、表D中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーのうちの1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つは、TREM2アゴニストの投与後に減少する。いくつかの実施形態では、表D*中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーのうちの1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つは、TREM2アゴニストの投与後に減少する。特定の実施形態では、TREM2アゴニストは、抗ヒトTREM2抗体である。特定の実施形態では、TREM2アゴニストは、小分子TREM2アゴニストである。
【0115】
いくつかの実施形態では、患者におけるバイオマーカーのレベルの上昇又は減少は、患者、又は患者の群、又はまだ選択されていない患者若しくは患者の群の治療的利益の可能性の上昇(又は場合により、減少)と相関する測定可能な上昇又は減少である。いくつかの実施形態では、上昇又は減少は、統計的に有意な上昇又は減少である。「統計的有意性」という用語は、当技術分野で周知であり、本明細書に記載されるものなどの当技術分野で既知の方法を使用して決定され得る。いくつかの実施形態では、統計的有意性は、例えば、ベースラインに対してp<0.1、p<0.05、p<0.04、p<0.03、p<0.02、又はp<0.01を意味する。
【0116】
いくつかの実施形態では、バイオマーカーのレベルの上昇又は減少は、患者が1回の治療サイクルを完了した後に観察される。いくつかの実施形態では、上昇又は減少は、3、4、5、6、7、8、9、又は10回以上のサイクルなど、2回以上の治療サイクル後に観察される。「治療サイクル」という用語は、当技術分野で周知であり、1、2、3、又は4週間などの期間、患者が従う医師により定義された治療レジメンを指し、任意選択的にその後、例えば、1、2、3、又は4週間の期間、患者の回復及び/又は疾患進行の監視を行い、その間に、場合によっては、より低い用量の治療薬が投与される(又は治療薬は全く投与されない)。いくつかの実施形態では、治療サイクルは、単独療法として、又は別の療法との組み合わせのいずれかで、本明細書に記載されるhT2AB又はその薬学的に許容される塩などのTREM2アゴニストを投与することを指す。
【0117】
4.本発明の方法
本発明のある特定の態様は、ミクログリア機能不全に関連する状態の治療、予防、又はその発症リスクの改善を必要とする患者においてそれを行う際に使用するための、TREM2の活性を高める分子(すなわち、TREM2アゴニスト)を提供する。
【0118】
いくつかの実施形態では、ミクログリア機能不全に関連する状態又は障害は、TREM2欠損症又はTREM2機能の喪失に関連するものである。本発明の方法に従って予防、治療、又は改善され得るTREM2欠損症又はTREM2機能の喪失に関連する状態又は障害としては、那須ハコラ病、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、外傷性脳損傷、脊髄損傷、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、プリオン病、脳卒中、骨粗しょう症、大理石骨病、骨硬化症、骨格異形成、骨異形成症(dysosteoplasia)、パイル病、皮質下梗塞及び白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症、皮質下梗塞及び白質脳症を伴う常染色体劣性脳動脈症、脳網膜血管障害、又は異染性白質ジストロフィーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0119】
いくつかの実施形態では、ミクログリア機能不全に関連する状態又は障害は、コロニー刺激因子1受容体(CSF1R、マクロファージコロニー刺激因子受容体/M-CSFR、又は分化クラスター115/CD115としても知られる)の機能不全と関連するものである。本発明の方法に従って予防、治療、又は改善され得るCSF1Rの機能不全に関連する状態又は障害としては、神経軸索スフェロイド及び色素性グリアを伴う成人発症白質脳症(ALSP)、神経軸索スフェロイド形成を伴う遺伝性びまん性白質脳症(HDLS)、色素性オルソクロマチック白質ジストロフィー(POLD)、小児発症性白質脳症、ミクログリアの先天性欠損、又は脳異常-神経変性-異骨性骨硬化症(BANDDOS)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、CSF1Rの機能不全に関連する状態又は障害はまた、那須ハコラ病、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、外傷性脳損傷、脊髄損傷、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、プリオン病、脳卒中、骨粗しょう症、大理石骨病、骨硬化症、骨格異形成、骨異形成症(dysosteoplasia)、パイル病、皮質下梗塞及び白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症、皮質下梗塞及び白質脳症を伴う常染色体劣性脳動脈症、脳網膜血管障害、又は異染性白質ジストロフィーを含み、ここで、上記の疾患又は障害のいずれかが、CSF1R機能不全を示す患者、又はCSF1Rの機能に影響を及ぼす遺伝子中に変異を有する患者において存在する。
【0120】
いくつかの実施形態では、ミクログリア機能不全に関連する状態又は障害は、ATP結合カセットトランスポーター1(ABCD1)の機能不全に関連するものである。本発明の方法に従って予防、治療、又は改善され得るABCD1の機能不全に関連する状態又は障害としては、X連鎖性副腎白質ジストロフィー(x-ALD)、小児大脳型副腎白質ジストロフィー(cALD)、グロボイド細胞白質ジストロフィー(クラッベ病としても知られる)、異染性白質ジストロフィー(MLD)、皮質下梗塞及び白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症(CADASIL)、白質消失病(VWM)、アレキサンダー病、脆弱X随伴振戦失調症候群(FXTAS)、成人発症型常染色体優性白質ジストロフィー(ADLD)、及びX連鎖性シャルコー・マリー・トゥース病(CMTX)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、ABCD1の機能不全に関連する状態又は障害はまた、那須ハコラ病、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、外傷性脳損傷、脊髄損傷、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、プリオン病、脳卒中、骨粗しょう症、大理石骨病、骨硬化症、骨格異形成、骨異形成症(dysosteoplasia)、パイル病、皮質下梗塞及び白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症、皮質下梗塞及び白質脳症を伴う常染色体劣性脳動脈症、脳網膜血管障害、又は異染性白質ジストロフィーを含み、ここで、上記の疾患又は障害のいずれかが、ABCD1機能不全を示す患者、又はABCD1の機能に影響を及ぼす遺伝子中に変異を有する患者において存在する。
【0121】
いくつかの実施形態では、ミクログリア機能不全に関連する状態又は障害は、自閉症又は自閉症スペクトラム障害(ASD)である。いくつかの実施形態では、状態又は障害は自閉症である。いくつかの実施形態では、状態又は障害は、アスペルガー症候群である。
【0122】
一態様では、本発明は、TREM2アゴニストを用いた治療から利益を得るミクログリア機能不全に関連する状態又は障害を有する患者を特定する方法を提供し、方法は、
(a)患者にTREM2アゴニストを投与する前に、患者から第1の生物学的試料を得ることと、
(b)表A中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーの第1の生物学的試料中のレベルを測定することと、
(c)有効量のTREM2アゴニストを患者に投与することと、
(d)TREM2アゴニストを患者に投与した後に、患者から第2の生物学的試料を得ることと、
(e)表A中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーの第2の生物学的試料中のレベルを測定することと、を含む。
【0123】
特定の実施形態では、方法は、患者がTREM2アゴニストを用いた治療から利益を得ると決定された場合、患者へのTREM2アゴニストの追加の投与を更に含む。上記の方法の特定の実施形態では、1つ以上のバイオマーカーは、表Aの代わりに、表A*中のものから選択される。上記の方法の特定の実施形態では、1つ以上のバイオマーカーは、表A中のものから選択される代わりに、本明細書に開示されるバイオマーカーのパネルである。特定の実施形態では、1つ以上のバイオマーカーは、表B中のものから選択される。特定の実施形態では、TREM2アゴニストは、抗hTREM2抗体である。特定の実施形態では、TREM2アゴニストは、小分子TREM2アゴニストである。
【0124】
別の態様では、本発明は、TREM2アゴニストを用いた治療から利益を得る可能性が高い、又はその他の点で類似した患者と比較して利益を得る確率が高い、ミクログリア機能不全に関連する状態又は障害を有する患者を特定する方法を提供し、方法は、
(a)前記患者に前記TREM2アゴニストを投与する前に、前記患者から第1の生物学的試料を得ることと、
(b)表A中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーの第1の生物学的試料中のレベルを測定することと、
(c)有効量のTREM2アゴニストを患者に投与することと、
(d)TREM2アゴニストを患者に投与した後に、患者から第2の生物学的試料を得ることと、
(e)表Aのものから選択される1つ以上のバイオマーカーの第2の生物学的試料中のレベルを測定することと、を含み、
工程(c)に対する状態又は障害の応答は、1人以上の類似した患者と比較して、またバイオマーカーのうちの1つ以上を使用して評価して、ミクログリア機能不全に関連する状態又は障害のより大きな又はより小さな応答に基づいて、ミクログリア機能不全に関連する状態又は障害の治療が成功する可能性を予測する。
【0125】
上記の方法の特定の実施形態では、1つ以上のバイオマーカーは、表Aの代わりに、表A*中のものから選択される。上記の方法の特定の実施形態では、1つ以上のバイオマーカーは、表A中のものから選択される代わりに、本明細書に開示されるバイオマーカーのパネルである。特定の実施形態では、1つ以上のバイオマーカーは、表B中のものから選択される。特定の実施形態では、TREM2アゴニストは、抗hTREM2抗体である。特定の実施形態では、TREM2アゴニストは、小分子TREM2アゴニストである。
【0126】
別の態様では、本発明は、インビトロ又はエクスビボで患者から採取された生物学的試料をアッセイして、患者におけるミクログリア機能不全に関連する状態又は障害がTREM2アゴニストを用いた治療に応答するか、又は応答する確率が高いかを判定する方法を提供し、方法は、
(a)前記患者に前記TREM2アゴニストを投与する前に、前記患者から第1の生物学的試料を得ることと、
(b)表A中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーの第1の生物学的試料中のレベルを測定することと、
(c)状態又は障害がTREM2アゴニストを用いた治療に応答するか、又は応答する確率が高い場合、有効量のTREM2アゴニストを患者に投与することと、を含む。
【0127】
上記の方法の特定の実施形態では、1つ以上のバイオマーカーは、表Aの代わりに、表A*中のものから選択される。上記の方法の特定の実施形態では、1つ以上のバイオマーカーは、表A中のものから選択される代わりに、本明細書に開示されるバイオマーカーのパネルである。特定の実施形態では、1つ以上のバイオマーカーは、表B中のものから選択される。特定の実施形態では、TREM2アゴニストは、抗hTREM2抗体である。特定の実施形態では、TREM2アゴニストは、小分子TREM2アゴニストである。
【0128】
別の態様では、本発明は、以前の治療に応答しないか、又は状態又は障害が、以前の治療に最初に応答した後に難治性になったかのいずれかの患者における、ミクログリア機能不全に関連する状態又は障害を治療する方法を提供し、方法は、
(a)患者にTREM2アゴニストを投与する前に、患者から第1の生物学的試料を得ることと、
(b)表A中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーの第1の生物学的試料中のレベルを測定することと、
(c)ミクログリア機能不全に関連する状態又は障害を有する患者がTREM2アゴニストを用いた治療に応答するか、又は応答する確率が高い場合、有効量のTREM2アゴニストを患者に投与することと、
(d)TREM2アゴニストを患者に投与した後に、第2の生物学的試料を得ることと、
(e)表A中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーの第2の生物学的試料中のレベルを測定することと、を含み、
工程(c)に対する状態又は障害の応答は、1人以上の類似した患者と比較して、またバイオマーカーのうちの1つ以上を使用して評価して、ミクログリア機能不全に関連する状態又は障害のより大きな又はより小さな応答に基づいて、ミクログリア機能不全に関連する状態又は障害の治療が成功する可能性を予測する。
【0129】
上記の方法の特定の実施形態では、1つ以上のバイオマーカーは、表Aの代わりに、表A*中のものから選択される。上記の方法の特定の実施形態では、1つ以上のバイオマーカーは、表A中のものから選択される代わりに、本明細書に開示されるバイオマーカーのパネルである。特定の実施形態では、1つ以上のバイオマーカーは、表B中のものから選択される。特定の実施形態では、TREM2アゴニストは、抗hTREM2抗体である。特定の実施形態では、TREM2アゴニストは、小分子TREM2アゴニストである。
【0130】
別の態様では、本発明は、ミクログリア機能不全に関連する状態又は障害が、TREM2アゴニストを用いた治療後の、状態又は障害に対する第2の治療に応答するかどうかを予測する方法を提供し、方法は、
(a)患者にTREM2アゴニストを投与する前に、患者から第1の生物学的試料を得ることと、
(b)表A中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーの第1の生物学的試料中のレベルを測定することと、
(c)有効量のTREM2アゴニストを患者に投与することと、
(d)TREM2アゴニストを患者に投与した後に、第2の生物学的試料を得ることと、
(e)表A中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーの第2の生物学的試料中のレベルを測定することと、を含み、
工程(c)に対する状態又は障害の応答は、1人以上の類似した患者と比較して、またバイオマーカーのうちの1つ以上を使用して評価して、状態又は障害のより大きな又はより小さな応答に基づいて、状態又は障害の治療が成功する可能性を予測する。
【0131】
上記の方法の特定の実施形態では、1つ以上のバイオマーカーは、表Aの代わりに、表A*中のものから選択される。上記の方法の特定の実施形態では、1つ以上のバイオマーカーは、表A中のものから選択される代わりに、本明細書に開示されるバイオマーカーのパネルである。特定の実施形態では、1つ以上のバイオマーカーは、表B中のものから選択される。特定の実施形態では、TREM2アゴニストは、抗hTREM2抗体である。特定の実施形態では、TREM2アゴニストは、小分子TREM2アゴニストである。
【0132】
いくつかの実施形態では、患者は、アルツハイマー病又は関連する障害に罹患しており、TREM2アゴニストを用いた治療は、プラークがミクログリア機能不全に関連する状態及び障害を治療することができる第2の治療薬に応答する可能性が高くなるように、プラーク微小環境をプライミングする。いくつかの実施形態では、プラークは、単一の治療を用いた単独療法には応答しないが、TREM2アゴニストと組み合わせた場合に、プライミングされ、治療に応答する。いくつかの実施形態では、プラークは、ミクログリア機能不全に関連する状態及び障害を治療することができる治療薬を用いた単独療法に最初は応答するが、難治性となる。いくつかの実施形態では、TREM2アゴニストを用いた治療後、プラークは、ミクログリア機能不全に関連する状態及び障害を治療することができる治療薬で効果的に治療され得る。
【0133】
いくつかの実施形態では、上記の方法は、TREM2アゴニストを用いた治療から利益を得る患者の特定において有用である。そのような患者は、表A中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーのレベルが、患者からの第1の生物学的試料中よりも患者からの第2の生物学的試料中で高い又は低いことを特徴とする。いくつかの実施形態では、表A中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーのレベルが、患者からの第1の生物学的試料中よりも患者からの第2の生物学的試料中で高い場合、1つ以上のバイオマーカーがTREM2アゴニストの投与によって上方制御されるもののうちの1つであるならば、患者はTREM2アゴニストの1つ以上の追加の用量を投与される。いくつかの実施形態では、表A中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーのレベルが、患者からの第1の生物学的試料中よりも患者からの第2の生物学的試料中で低い場合、1つ以上のバイオマーカーがTREM2アゴニストの投与によって下方制御されるもののうちの1つであるならば、患者はTREM2アゴニストの1つ以上の追加の用量を投与される。これは、バイオマーカーレベルのそれぞれの増加又は減少に基づいて、このような患者はTREM2アゴニストを用いた継続治療から利益を得る可能性が高いと考えられるためである。上記の実施形態のいずれかにおいて、バイオマーカーは、表Aの代わりに表A*中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーであってもよい。上記の方法の特定の実施形態では、1つ以上のバイオマーカーは、表A中のものから選択される代わりに、本明細書に開示されるバイオマーカーのパネルである。TREM2アゴニストの投与によって上方制御されることが予想されるバイオマーカーは、表C又は表C*に列挙されるバイオマーカーである。TREM2アゴニストの投与によって下方制御されることが予想されるバイオマーカーは、表D又は表D*に列挙されるものである。特定の実施形態では、1つ以上のバイオマーカーは、表B中のものから選択される。特定の実施形態では、TREM2アゴニストは、抗hTREM2抗体である。特定の実施形態では、TREM2アゴニストは、小分子TREM2アゴニストである。
【0134】
別の態様では、本発明は、TREM2アゴニストを用いてミクログリア機能不全に関連する状態又は障害を治療する方法を提供し、方法は、
(a)患者にTREM2アゴニストを投与する前に、患者から第1の生物学的試料を得ることと、
(b)表A中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーの第1の生物学的試料中のレベルを測定することと、
(c)有効量のTREM2アゴニストを患者に投与することと、
(d)TREM2アゴニストを患者に投与した後に、第2の生物学的試料を得ることと、
(e)表A中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーの第2の生物学的試料中のレベルを測定することと、を含み、
表A中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーのレベルが、患者からの第1の生物学的試料中よりも患者からの第2の生物学的試料中で高い場合、患者はTREM2アゴニストの1つ以上の追加の用量を投与される。上記の方法の特定の実施形態では、1つ以上のバイオマーカーは、表Aの代わりに、表A*中のものから選択される。上記の方法の特定の実施形態では、1つ以上のバイオマーカーは、表Aのものから選択される代わりに、本明細書に開示されるバイオマーカーのパネルである。特定の実施形態では、1つ以上のバイオマーカーは、表C中のものから選択される。特定の実施形態では、1つ以上のバイオマーカーは、表C*中のものから選択される。
【0135】
特定の実施形態では、1つ以上のバイオマーカーは、表B中のものから選択される。特定の実施形態では、TREM2アゴニストは、抗hTREM2抗体である。特定の実施形態では、TREM2アゴニストは、小分子TREM2アゴニストである。
【0136】
別の態様では、本発明は、TREM2アゴニストを用いてミクログリア機能不全に関連する状態又は障害を治療する方法を提供し、方法は、
(a)患者にTREM2アゴニストを投与する前に、患者から第1の生物学的試料を得ることと、
(b)表A中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーの第1の生物学的試料中のレベルを測定することと、
(c)有効量のTREM2アゴニストを患者に投与することと、
(d)TREM2アゴニストを患者に投与した後に、第2の生物学的試料を得ることと、
(e)表A中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーの第2の生物学的試料中のレベルを測定することと、を含み、
表A中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーのレベルが、患者からの第1の生物学的試料中よりも患者からの第2の生物学的試料中で低い場合、患者はTREM2アゴニストの1つ以上の追加の用量を投与される。上記の方法の特定の実施形態では、1つ以上のバイオマーカーは、表Aの代わりに、表A*中のものから選択される。上記の方法の特定の実施形態では、1つ以上のバイオマーカーは、表Aのものから選択される代わりに、本明細書に開示されるバイオマーカーのパネルである。特定の実施形態では、1つ以上のバイオマーカーは、表D中のものから選択される。特定の実施形態では、1つ以上のバイオマーカーは、表D*中のものから選択される。
【0137】
特定の実施形態では、1つ以上のバイオマーカーは、表B中のものから選択される。特定の実施形態では、TREM2アゴニストは、抗hTREM2抗体である。特定の実施形態では、TREM2アゴニストは、小分子TREM2アゴニストである。
【0138】
別の態様では、本発明は、TREM2アゴニストに対する患者の応答を評価する方法を提供し、方法は、
(a)患者にTREM2アゴニストを投与する前に、患者から第1の生物学的試料を得ることと、
(b)表A中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーの第1の生物学的試料中のレベルを測定することと、
(c)有効量のTREM2アゴニストを患者に投与することと、
(d)TREM2アゴニストを患者に投与した後に、第2の生物学的試料を得ることと、
(e)表A中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーの第2の生物学的試料中のレベルを測定することと、を含み、
工程(c)に対する状態又は障害の応答は、1人以上の類似した患者と比較して、プラークのより大きな又はより小さな応答に基づいて、患者を2つ以上の群のうちの1つに分割、分類、又は層別化するように評価される。
【0139】
上記の方法の特定の実施形態では、1つ以上のバイオマーカーは、表Aの代わりに、表A*中のものから選択される。上記の方法の特定の実施形態では、1つ以上のバイオマーカーは、表A中のものから選択される代わりに、本明細書に開示されるバイオマーカーのパネルである。特定の実施形態では、1つ以上のバイオマーカーは、表B中のものから選択される。特定の実施形態では、TREM2アゴニストは、抗hTREM2抗体である。特定の実施形態では、TREM2アゴニストは、小分子TREM2アゴニストである。
【0140】
別の態様では、本発明は、TREM2アゴニストに対する患者の応答を予測する方法を提供し、方法は、
(a)患者にTREM2アゴニストを投与する前に、患者から第1の生物学的試料を得ることと、
(b)表A中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーの、患者からの第1の生物学的試料中のレベルを測定することと、
(c)有効量のTREM2アゴニストを患者に投与することと、
(d)TREM2アゴニストを患者に投与した後に、患者から第2の生物学的試料を得ることと、
(e)表A中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーの、患者からの第2の生物学的試料中のレベルを測定することと、を含み、
工程(c)に対する患者の応答は、1人以上の類似した患者と比較して、またバイオマーカーのうちの1つ以上を使用して評価して、患者のより大きな又はより小さな応答に基づいて、治療が成功する可能性を予測する。
【0141】
上記の方法の特定の実施形態では、1つ以上のバイオマーカーは、表Aの代わりに、表A*中のものから選択される。上記の方法の特定の実施形態では、1つ以上のバイオマーカーは、表A中のものから選択される代わりに、本明細書に開示されるバイオマーカーのパネルである。特定の実施形態では、1つ以上のバイオマーカーは、表B中のものから選択される。特定の実施形態では、TREM2アゴニストは、抗hTREM2抗体である。特定の実施形態では、TREM2アゴニストは、小分子TREM2アゴニストである。
【0142】
別の態様では、本発明は、患者におけるミクログリア機能不全に関連する状態又は障害に対するTREM2アゴニストに対する治療応答を予測する方法を提供し、方法は、
(a)患者にTREM2アゴニストを投与する前に、患者から第1の生物学的試料を得ることと、
(b)表A中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーの第1の生物学的試料中のレベルを測定することと、
(c)患者からの生物学的試料又は参照試料を処置することと、
(d)表A中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーの処理された生物学的試料中のレベルを測定することと、
(e)処置前の生物学的試料中の1つ以上のバイオマーカーを、処置された生物学的試料又は処置された参照試料中の1つ以上のバイオマーカーと比較することと、
(f)任意選択的に、TREM2アゴニストの患者への投与が、ミクログリア機能不全に関連する状態又は障害を治療する代替の方法と比較して、成功する可能性が同等である又はより高いと予測される場合、そのような投与を続けることと、を含み、
工程(c)に対する応答のバイオマーカーの変化は、1人以上の類似した患者と比較して、またバイオマーカーのうちの1つ以上を使用して評価して、より大きな又はより小さなバイオマーカーの変化に基づいて、ミクログリア機能不全に関連する状態又は障害の治療が成功する可能性を予測する。
【0143】
上記の方法の特定の実施形態では、1つ以上のバイオマーカーは、表Aの代わりに、表A*中のものから選択される。上記の方法の特定の実施形態では、1つ以上のバイオマーカーは、表A中のものから選択される代わりに、本明細書に開示されるバイオマーカーのパネルである。特定の実施形態では、1つ以上のバイオマーカーは、表B中のものから選択される。特定の実施形態では、TREM2アゴニストは、抗hTREM2抗体である。特定の実施形態では、TREM2アゴニストは、小分子TREM2アゴニストである。
【0144】
いくつかの実施形態では、参照試料は、状態又は障害の類似した病理を有する患者などの別の患者からであるか、又は参照試料は、状態又は障害の類似した病理の培養物若しくは他のインビトロ試料であってもよい。
【0145】
別の態様では、本発明は、TREM2アゴニストに対する患者の応答を監視する方法を提供し、方法は、
(a)患者にTREM2アゴニストを投与する前に、患者から第1の生物学的試料を得ることと、
(b)表A中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーの、患者からの第1の生物学的試料中のレベルを測定することと、
(c)有効量のTREM2アゴニストを患者に投与することと、
(d)TREM2アゴニストを患者に投与した後に、患者から1つ以上の後続の生物学的試料を得ることと、
(e)表A中のものから選択される1つ以上のバイオマーカーの後続の生物学的試料のレベルを測定することと、を含み
第1の生物学的試料及び後続の生物学的試料中の1つ以上のバイオマーカーのレベルを比較することができ、バイオマーカーのうちの1つ以上における変化は、患者の応答を示す。
【0146】
上記の方法の特定の実施形態では、1つ以上のバイオマーカーは、表Aの代わりに、表A*中のものから選択される。上記の方法の特定の実施形態では、1つ以上のバイオマーカーは、表A中のものから選択される代わりに、本明細書に開示されるバイオマーカーのパネルである。特定の実施形態では、1つ以上のバイオマーカーは、表B中のものから選択される。特定の実施形態では、TREM2アゴニストは、抗hTREM2抗体である。特定の実施形態では、TREM2アゴニストは、小分子TREM2アゴニストである。
【0147】
いくつかの実施形態では、TREM2アゴニストに対する患者の応答は、週当たり1回又は2週間毎に測定される。いくつかの実施形態では、患者の応答は、月に1回測定される。いくつかの実施形態では、患者の応答は、隔月に測定される。いくつかの実施形態では、患者の応答は、四半期毎に(3か月に1回)測定される。いくつかの実施形態では、患者の応答は、毎年測定される。
【0148】
いくつかの実施形態では、TREM2アゴニストに対する患者の応答は、治療を受けている間、監視される。いくつかの実施形態では、患者の応答は、治療が終わった後に監視される。
【0149】
別の態様では、本発明は、TREM2アゴニストを用いた治療に対する応答を予測するバイオマーカーシグネチャーを導出する方法を提供し、方法は、
(a)ミクログリア機能不全に関連する状態又は障害と診断された患者コホートの各患者から治療前生物学的試料を得ることと、
(b)コホート内の各患者について、TREM2アゴニストを用いた治療後の応答値を得ることと、
(c)バイオマーカープラットフォームの各遺伝子について、各生物学的試料中の生のバイオマーカーレベルを測定することであって、バイオマーカープラットフォームが、表A中のものの臨床応答バイオマーカーセットを含む、測定することと、
(d)各生物学的試料について、正規化バイオマーカーのセットの測定されたバイオマーカーレベルを使用して、臨床応答バイオマーカーに対して測定された生のバイオマーカーレベルの各々を正規化することと、
(e)生物学的試料の全てについてのバイオマーカーレベル、及びコホート内の患者の全てについての応答値を比較して、患者コホートを分割して目標のバイオマーカーの臨床的有用性基準を満たす、バイオマーカーシグネチャースコアのカットオフを選択することと、を含む。
【0150】
いくつかの実施形態では、バイオマーカープラットフォームは、臨床応答遺伝子セットを含む遺伝子発現プラットフォームを含む。いくつかの実施形態では、方法は、
(f)各生物学的試料及び各バイオマーカー、例えば、目的の遺伝子シグネチャー中の遺伝子について、その遺伝子について予め定義された増倍係数を使用して、正規化されたバイオマーカー(例えば、RNAバイオマーカー)発現レベルを重み付けすることと、
(g)各患者について、重み付けされたバイオマーカー(例えば、RNAバイオマーカー)発現レベルを加算して、コホート内の各患者について、バイオマーカーシグネチャースコア、例えば、遺伝子シグネチャースコアを生成することと、を更に含む。
【0151】
上記の方法の特定の実施形態では、1つ以上のバイオマーカーは、表Aの代わりに、表A*中のものから選択される。上記の方法の特定の実施形態では、バイオマーカープラットフォームは、表A中のものから選択される代わりに、本明細書に開示されるバイオマーカーのパネルを含む。特定の実施形態では、臨床応答バイオマーカーは、表B中のものから選択される。特定の実施形態では、TREM2アゴニストは、抗hTREM2抗体である。特定の実施形態では、TREM2アゴニストは、小分子TREM2アゴニストである。
【0152】
別の態様では、本発明は、TREM2アゴニストに対するミクログリア機能不全に関連する状態又は障害の応答の遺伝子シグネチャーバイオマーカーの存在又は非存在について、患者からの生物学的試料を試験する方法を提供し、方法は、
(a)遺伝子発現プラットフォームの各遺伝子について、生物学的試料中の生のRNAレベルを測定することであって、遺伝子発現プラットフォームが、表A中のものから選択される臨床応答遺伝子セットと、ハウスキーピング遺伝子の正規化遺伝子セットとを含み、任意選択的に、選択された臨床応答遺伝子の約80%、又は約90%が、状態又は障害に対する応答と正の相関があるRNAレベルを示す、測定することと、
(b)正規化遺伝子の測定されたRNAレベルを使用して、生物学的試料について予め定義された遺伝子シグネチャーにおける各臨床応答遺伝子に対して、測定された生のRNAレベルを正規化することであって、予め定義された遺伝子シグネチャーが、臨床応答遺伝子のうちの少なくとも2つからなり、このようにして遺伝子シグネチャースコアを得る、正規化することと、
(c)遺伝子シグネチャーについて、遺伝子シグネチャースコアを参照スコアと比較することと、
(d)生物学的試料をバイオマーカー高又はバイオマーカー低に分類することと、を含み、
生成されたスコアが、参照スコアに等しいか、又はそれより大きい場合、生物学的試料は、バイオマーカー高に分類され、生成されたスコアが、参照スコアよりも小さい場合、生物学的試料は、バイオマーカー低に分類される。
【0153】
上記の方法の特定の実施形態では、臨床応答バイオマーカーは、表Aの代わりに、表A*中のものから選択される。上記の方法の特定の実施形態では、遺伝子発現プラットフォームは、表A中のものから選択される代わりに、本明細書に開示されるバイオマーカーのパネルを含む。特定の実施形態では、臨床応答バイオマーカーは、表B中のものから選択される。特定の実施形態では、TREM2アゴニストは、抗hTREM2抗体である。特定の実施形態では、TREM2アゴニストは、小分子TREM2アゴニストである。
【0154】
いくつかの実施形態では、工程(b)の後、方法は、
(i)予め定義された増倍係数を使用して、正規化された各RNA値を重み付けることと、
(ii)重み付けされたRNA発現レベルを加算して、重み付けされた遺伝子シグネチャースコアを生成することと、を更に含む。
【0155】
いくつかの実施形態では、正規化遺伝子セットは、約1~5個のハウスキーピング遺伝子、5~10個のハウスキーピング遺伝子、10~約20個のハウスキーピング遺伝子、又は約30~40個のハウスキーピング遺伝子を含む。
【0156】
別の態様では、本発明は、TREM2アゴニストに対する状態又は障害の応答のバイオマーカーシグネチャーの存在又は非存在について、ミクログリア機能不全に関連する状態又は障害と診断された患者からの生物学的試料を試験するための方法を提供し、方法は、
(a)バイオマーカープラットフォームの各バイオマーカーについて、生物学的試料中の生のバイオマーカーレベルを測定することであって、バイオマーカープラットフォームが、表A中のものから選択される臨床応答バイオマーカーセットと、正規化バイオマーカーセットとを含み、任意選択的に、臨床応答バイオマーカーの約80%、又は約90%が、状態又は障害応答と正の相関があるレベルを示す、測定することと、
(b)正規化バイオマーカーの測定されたバイオマーカーレベルを使用して、生物学的試料について予め定義されたバイオマーカーシグネチャーにおける各臨床応答バイオマーカーに対して、測定された生のバイオマーカーレベルを正規化することであって、予め定義されたバイオマーカーシグネチャーが、臨床応答バイオマーカーのうちの少なくとも2つからなる、正規化することと、
(c)生物学的試料について、正規化されたバイオマーカーレベル及び参照バイオマーカーレベルのセットを比較することと、
(d)生物学的試料をバイオマーカー高又はバイオマーカー低に分類することと、を含み、
正規化されたバイオマーカーレベルが、参照バイオマーカーレベルに等しいか、又はそれより大きい場合、生物学的試料は、バイオマーカー高に分類され、正規化されたバイオマーカーレベルが、参照バイオマーカーレベルよりも小さい場合、生物学的試料は、バイオマーカー低に分類される。
【0157】
上記の方法の特定の実施形態では、臨床応答バイオマーカーは、表Aの代わりに、表A*中のものから選択される。上記の方法の特定の実施形態では、バイオマーカープラットフォームは、表A中のものから選択される代わりに、本明細書に開示されるバイオマーカーのパネルを含む。特定の実施形態では、臨床応答バイオマーカーは、表B中のものから選択される。特定の実施形態では、TREM2アゴニストは、抗hTREM2抗体である。特定の実施形態では、TREM2アゴニストは、小分子TREM2アゴニストである。
【0158】
いくつかの実施形態では、正規化バイオマーカーセットは、約10~約12個のハウスキーピング遺伝子、又は約30~40個のハウスキーピング遺伝子を含む。
【0159】
別の態様では、本発明は、TREM2アゴニストに対する応答のバイオマーカーシグネチャーの存在又は非存在について、ミクログリア機能不全に関連する状態又は障害を有する患者から除去された生物学的試料の試料を試験するためのシステムを提供し、システムは、
(i)バイオマーカープラットフォームにおける生のバイオマーカーレベルを測定するための試料分析器であって、バイオマーカープラットフォームが、表Aのものから選択される臨床応答バイオマーカーのセット、及び正規化バイオマーカーのセットからなる、試料分析器と、
(ii)コンピュータープログラムであって、測定されたバイオマーカーレベルを受信及び分析して、
(a)正規化バイオマーカーの測定されたレベルを使用して、生物学的試料について予め定義されたバイオマーカーシグネチャーにおける各臨床応答バイオマーカーに対して、測定された生のバイオマーカーレベルを正規化し、
(b)生成されたバイオマーカーレベルを、バイオマーカーシグネチャーの参照レベルと比較し、かつ
(c)生物学的試料をバイオマーカー高又はバイオマーカー低に分類し、生成されたスコアが、参照スコアに等しいか、又はそれより大きい場合、生物学的試料が、バイオマーカー高に分類され、生成されたスコアが、参照スコアよりも小さい場合、生物学的試料が、バイオマーカー低に分類される、コンピュータープログラムと、を備える。
【0160】
上記の方法の特定の実施形態では、臨床応答バイオマーカーは、表Aの代わりに、表A*中のものから選択される。上記の方法の特定の実施形態では、バイオマーカープラットフォームは、表A中のものから選択される代わりに、本明細書に開示されるバイオマーカーのパネルを含む。特定の実施形態では、臨床応答バイオマーカーは、表B中のものから選択される。特定の実施形態では、TREM2アゴニストは、抗hTREM2抗体である。特定の実施形態では、TREM2アゴニストは、小分子TREM2アゴニストである。
【0161】
別の態様では、本発明は、TREM2アゴニストに対する状態又は障害の応答のバイオマーカーシグネチャーの存在又は非存在について、ミクログリア機能不全に関連する状態又は障害と診断された患者からの生物学的試料を試験するためのシステムを提供し、システムは、
(i)バイオマーカープラットフォームにおける生のバイオマーカーレベルを測定するための試料分析器であって、バイオマーカープラットフォームが、表Aのものから選択される臨床応答バイオマーカーのセット、及び正規化バイオマーカーのセットからなる、試料分析器と、
(ii)コンピュータープログラムであって、測定されたバイオマーカーレベルを受信及び分析して、
(a)正規化バイオマーカーの測定されたレベルを使用して、生物学的試料について予め定義されたバイオマーカーシグネチャーにおける各臨床応答バイオマーカーに対して、測定された生のバイオマーカーレベルを正規化し、
(b)予め定義された増倍係数を使用して、正規化された各バイオマーカーレベルを重み付けし、
(c)重み付けされたバイオマーカーレベルを加算して、バイオマーカーシグネチャースコアを生成し、
(d)バイオマーカーシグネチャーについて、生成されたスコアを参照スコアと比較し、かつ
(e)生物学的試料をバイオマーカー高又はバイオマーカー低に分類し、生成されたスコアが、参照スコアに等しいか、又はそれより大きい場合、生物学的試料が、バイオマーカー高に分類され、生成されたスコアが、参照スコアよりも小さい場合、生物学的試料が、バイオマーカー低に分類される、コンピュータープログラムと、を備える。
【0162】
上記の方法の特定の実施形態では、臨床応答バイオマーカーは、表Aの代わりに、表A*中のものから選択される。上記の方法の特定の実施形態では、バイオマーカープラットフォームは、表A中のものから選択される代わりに、本明細書に開示されるバイオマーカーのパネルを含む。特定の実施形態では、臨床応答バイオマーカーは、表B中のものから選択される。特定の実施形態では、TREM2アゴニストは、抗hTREM2抗体である。特定の実施形態では、TREM2アゴニストは、小分子TREM2アゴニストである。
【0163】
いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、表A中のものなど、本明細書に記載の遺伝子のRNA発現レベルを含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、表A*中のものなど、本明細書に記載の遺伝子のRNA発現レベルを含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、表B中のものなど、本明細書に記載の遺伝子のRNA発現レベルを含む。
【0164】
別の態様では、本発明は、TREM2アゴニストを用いて治療されているミクログリア機能不全に関連する状態又は障害に罹患している患者からの生物学的試料をアッセイして、上記状態又は障害に関連する遺伝子シグネチャーについて正規化されたRNA発現スコアを得るためのキットを提供し、キットは、
(a)遺伝子の各々により発現される転写物に特異的に結合することが可能なハイブリダイゼーションプローブのセットと、
(b)各ハイブリダイゼーションプローブで形成される特定のハイブリダイゼーション複合体の数を定量化するように設計された試薬のセットと、を含む。
【0165】
いくつかの実施形態では、遺伝子シグネチャーは、表A中の2つ以上の遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子シグネチャは、表A*中の2つ以上の遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子シグネチャーは、本明細書に開示されるバイオマーカーパネル中のものから選択される2つ以上の遺伝子を含む。特定の実施形態では、遺伝子シグネチャーは、表B中の2つ以上の遺伝子を含む。特定の実施形態では、TREM2アゴニストは、抗hTREM2抗体である。特定の実施形態では、TREM2アゴニストは、小分子TREM2アゴニストである。
【0166】
別の態様では、本発明は、ミクログリア機能不全に関連する状態又は障害を有する患者を治療するための方法を提供し、患者からの生物学的試料が、遺伝子シグネチャーバイオマーカーなどのバイオマーカーについて陽性であるか、又は陰性であるかを決定することと、生物学的試料がバイオマーカーについて陽性である場合に患者にTREM2アゴニストを投与することと、患者からの生物学的試料がバイオマーカーについて陰性である場合にTREM2アゴニストを含まない状態又は障害の治療を対象に投与することと、を含み、遺伝子シグネチャーバイオマーカーなどのバイオマーカーは、表A中のものから選択される臨床応答バイオマーカーのうちの少なくとも2つを含む。いくつかの実施形態では、表A中のものなどの1つ以上のバイオマーカーから導出された多重遺伝子シグネチャースコアは、より予測可能な遺伝子シグネチャースコアを計算するために、他の個々の遺伝子バイオマーカーと同じグループにおいて1つの「バイオマーカー」として使用され得る。いくつかの実施形態では、表A*中のものなどの1つ以上のバイオマーカーから導出された多重遺伝子シグネチャースコアは、より予測可能な遺伝子シグネチャースコアを計算するために、他の個々の遺伝子バイオマーカーと同じグループ分けにおいて1つの「バイオマーカー」として使用され得る。いくつかの実施形態では、表B中のものなどの1つ以上のバイオマーカーから導出された多重遺伝子シグネチャースコアは、より予測可能な遺伝子シグネチャースコアを計算するために、他の個々の遺伝子バイオマーカーと同じグループ分けにおいて1つの「バイオマーカー」として使用され得る。
【0167】
別の態様では、本発明は、患者からの生物学的試料を試験して、TREM2アゴニストに対するミクログリア機能不全に関連する状態又は障害の応答と相関する遺伝子シグネチャーについてのシグネチャースコアを生成する方法を提供し、方法は、
(a)遺伝子シグネチャーの各遺伝子及び正規化遺伝子セットの各遺伝子について、生物学的試料中の生のRNAレベルを測定することであって、遺伝子シグネチャが、表A中のものから選択される遺伝子を含む、測定することと、
(b)正規化遺伝子の測定されたRNAレベルを使用して、遺伝子シグネチャーにおける各遺伝子に対して測定された生のRNAレベルを正規化することと、
(c)正規化された各RNA値に計算されたスコアリング重みセットを乗算して、重み付けされたRNA発現値を生成することと、
(d)重み付けされたRNA発現値を加算して、遺伝子シグネチャースコアを生成することと、を含む。
【0168】
上記の方法の特定の実施形態では、遺伝子シグネチャーは、表Aの代わりに、表A*中のものから選択される遺伝子を含む。上記の方法の特定の実施形態では、遺伝子シグネチャーは、表A中のものから選択される代わりに、本明細書に開示されるバイオマーカーのパネルを含む。特定の実施形態では、遺伝子シグネチャーは、表B中のものから選択される遺伝子を含む。特定の実施形態では、TREM2アゴニストは、抗hTREM2抗体である。特定の実施形態では、TREM2アゴニストは、小分子TREM2アゴニストである。
【0169】
上記の実施形態のいずれかにおいて、各方法は、方法によって収集された情報に基づいて、患者にTREM2アゴニストを投与する追加の工程を更に含み得る。いくつかの実施形態では、TREM2アゴニストの投与量は、方法によって収集された情報に基づいて変更(増加又は減少)され得る。
【0170】
上記の実施形態のいずれかにおいて、上述の各方法における遺伝子及び/又はバイオマーカーの選択は、CXCL10を更に含み得る。上記の実施形態のいずれかにおいて、上述の各方法における遺伝子及び/又はバイオマーカーの選択は、表A**に列挙されるものを更に含み得る。
【0171】
上記の方法のいずれかの実施形態において、測定されるバイオマーカー及び遺伝子は、バイオマーカーパネルの一部であり得る。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、NFLを含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、sCSF1Rを含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、sTREM2を含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、SPP1を含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、IL-1RAを含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、CSF2を含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、キトトリオシダートを含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、IP10(CXCL10)を含む。
【0172】
いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、NFL及びsTREM2を含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、NFL及びsCSF1Rを含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、sCSF1R及びsTREM2を含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、NFL、sCSF1R、及びsTREM2を含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、sCSF1Rと、SPP1、IL-1RA、CSF2、キトトリオシダート、及びIP10(CXCL10)のうちの1つ以上とを含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、sTREM2と、SPP1、IL-1RA、CSF2、キトトリオシダート、及びIP10(CXCL10)のうちの1つ以上とを含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、NFLと、SPP1、IL-1RA、CSF2、キトトリオシダート、及びIP10(CXCL10)のうちの1つ以上とを含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、sCSF1R及びsTREM2と、SPP1、IL-1RA、CSF2、キトトリオシダート、及びIP10(CXCL10)のうちの1つ以上とを含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、NFL及びsTREM2と、SPP1、IL-1RA、CSF2、キトトリオシダート、及びIP10(CXCL10)のうちの1つ以上とを含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、NFL及びsCSF1Rと、SPP1、IL-1RA、CSF2、キトトリオシダート、及びIP10(CXCL10)のうちの1つ以上とを含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、NFL、sCSF1R、SPP1、IL-1RA、CSF2、キトトリオシダート、及びIP10(CXCL10)を含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、NFL、sTREM2、SPP1、IL-1RA、CSF2、キトトリオシダート、及びIP10(CXCL10)を含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、sCSF1R、sTREM2、SPP1、IL-1RA、CSF2、キトトリオシダート、及びIP10(CXCL10)を含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、NFL、sCSF1R、sTREM2、SPP1、IL-1RA、CSF2、キトトリオシダート、及びIP10(CXCL10)のうちの2つ以上を含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、NFL、sCSF1R、sTREM2、SPP1、IL-1RA、CSF2、キトトリオシダート、及びIP10(CXCL10)のうちの3つ以上を含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、NFL、sCSF1R、sTREM2、SPP1、IL-1RA、CSF2、キトトリオシダート、及びIP10(CXCL10)のうちの4つ以上を含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、NFL、sCSF1R、sTREM2、SPP1、IL-1RA、CSF2、キトトリオシダート、及びIP10(CXCL10)のうちの5つ以上を含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、NFL、sCSF1R、sTREM2、SPP1、IL-1RA、CSF2、キトトリオシダート、及びIP10(CXCL10)のうちの6つ以上を含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、NFL、sCSF1R、sTREM2、SPP1、IL-1RA、CSF2、キトトリオシダート、及びIP10(CXCL10)のうちの7つ以上を含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、NFL、sCSF1R、sTREM2、SPP1、IL-1RA、CSF2、キトトリオシダート、及びIP10(CXCL10)を含む。
【0173】
いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、SPP1、IL-1RA、CSF2、キトトリオシダート、及びIP10(CXCL10)を含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、IL-1RA、CSF2、キトトリオシダート、及びIP10(CXCL10)を含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、SPP1、CSF2、キトトリオシダート、及びIP10(CXCL10)を含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、SPP1、IL-1RA、キトトリオシダート、及びIP10(CXCL10)を含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、SPP1、IL-1RA、CSF2、及びIP10(CXCL10)を含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、SPP1、IL-1RA、CSF2、及びキトトリオシダートを含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、本段落に開示されるパネルであり、更にNFLを含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、本段落に開示されるパネルであり、更にsCSF1Rを含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、本段落に開示されるパネルであり、更にsTREM2を含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、表Aのバイオマーカーを更に含む、本段落に開示されるパネルである。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、表A*のバイオマーカーを更に含む、本段落に開示されるパネルである。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、表A**のバイオマーカーを更に含む、本段落に開示されるパネルである。いくつかの実施形態では、バイオマーカーパネルは、表Bのバイオマーカーを更に含む、本段落に開示されるパネルである。
【0174】
いくつかの実施形態では、インターフェロンシグネチャースコアなどの多重遺伝子シグネチャースコアは、より予測可能な遺伝子シグネチャースコアを計算するために、他の個々の遺伝子バイオマーカーと同じグループ分けにおいて1つの「バイオマーカー」として使用され得る。
【0175】
本発明のいくつかの実施形態では、測定することは、患者からの生物学的試料からRNAを単離することと、RNAの遺伝子標的領域に特異的にハイブリダイズするように設計されたプローブのセットと試料をインキュベートすることと、を含む。いくつかの実施形態では、患者からの第1の生物学的試料及び/又は患者からの第2の生物学的試料は、インビトロ又はエクスビボでアッセイされる。
【0176】
本発明のいくつかの実施形態では、測定することは、本明細書に開示される遺伝子によってコードされる1つ以上のタンパク質又はそのバリアントを、患者からの生物学的試料から単離することと、試料中の当該タンパク質の濃度を測定することと、を含む。いくつかの実施形態では、患者からの第1の生物学的試料及び/又は患者からの第2の生物学的試料は、インビトロ又はエクスビボでアッセイされる。
【0177】
いくつかの実施形態では、生物学的試料は血液試料である。いくつかの実施形態では、生物学的試料は血清試料である。いくつかの実施形態では、生物学的試料は脳脊髄液(CSF)試料である。いくつかの実施形態では、生物学的試料は、生検組織試料である。いくつかの実施形態では、生物学的試料は、白質脳組織試料である。
【0178】
5.結合標的
本発明は、TREM2、特にヒトTREM2に特異的に結合する治療用分子の使用を対象とする。TREM2は、マクロファージ、樹状細胞、及びミクログリアを含む骨髄系の細胞上に発現されるIgスーパーファミリーの受容体のメンバーである(Schmid et al.,Journal of Neurochemistry,Vol.83:1309-1320, 2002、Colonna,Nature Reviews Immunology,Vol.3:445-453,2003、Kiialainen et al.,Neurobiology of Disease,2005,18: 314-322)。TREM2は、ApoE、LPS、曝露されたリン脂質、ホスファチジルセリン、及びアミロイドベータを含む多くの内因性基質に結合する免疫受容体であり、アダプタータンパク質DAP12と複合体化する短い細胞内ドメインを通じてシグナル伝達し、その細胞質ドメインはITAMモチーフを含む(Bouchon et al.,The Journal of Experimental Medicine,2001,194:1111-1122)。TREM2の活性化時に、DAP12中のITAMモチーフ内のチロシン残基は、Srcファミリーのキナーゼによりリン酸化され、それらのSH2ドメインを介したチロシンキナーゼζ鎖関連タンパク質70(ZAP70)及び脾臓チロシンキナーゼ(Syk)のためのドッキング部位を提供する(Colonna,Nature Reviews Immunology,2003,3:445-453、Ulrich and Holtzman,ACS Chem.Neurosci.,2016,7:420-427)。ZAP70及びSykキナーゼは、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)、プロテインキナーゼC(PKC)、細胞外調節キナーゼ(ERK)、及び細胞内カルシウムの上昇を含む、いくつかの下流シグナル伝達カスケードの活性化を誘導する(Colonna,Nature Reviews Immunology,2003,3:445-453,Ulrich and Holtzman,ACS Chem.Neurosci.,2016,7:420-427)。
【0179】
TREM2は、食作用、増殖、生存、及び炎症サイトカイン産生の調節を含む、いくつかの骨髄細胞プロセスにおいて関与している(Ulrich and Holtzman,ACS Chem.Neurosci.,2016,7:420-427)。過去数年間において、TREM2は、いくつかの疾患に関連づけられている。例えば、TREM2及びDAP12の両方における変異は、常染色体劣性障害である那須ハコラ病に関連付けられ、それは、骨嚢胞、筋肉消耗、及び脱髄の表現型により特徴付けられる(Guerreiro et al.,New England Journal of Medicine,2013,368:117-127)。より最近では、TREM2遺伝子におけるバリアントは、アルツハイマー病(AD)並びに前頭側頭型認知症及び筋萎縮性側索硬化症を含む他の形態の認知症についての増加リスクに関連付けられている(Jonsson et al.,New England Journal of Medicine,2013,368:107-116、Guerreiro et al.,JAMA Neurology,2013,70:78-84、Jay et al.,Journal of Experimental Medicine,2015,212:287-295、Cady et al,JAMA Neurol.2014 Apr;71(4):449-53)。特に、R47Hバリアントは、ゲノムワイドな試験において、遅発性ADについての増加リスクに関連付けられるとして特定され、全体的な調整オッズ比(全年齢の集団について)は2.3であり、ApoEとアルツハイマー病との強い遺伝的関連に次ぐ。R47H変異は、TREM2タンパク質の細胞外lg Vセットドメインに存在し、脂質結合並びにアポトーシス細胞及びAbeta(Wang et al., Cell, 2015, 160: 1061-1071; Yeh et al., Neuron, 2016, 91: 328-340)の取り込みに影響を及ぼすことが示されており、疾患に関連づけられる機能喪失を示唆している。更に、R47H変異を伴う、及び伴わないAD患者の脳の死後比較は、変異の保因者についての新規のミクログリアバリア機能の喪失を支持しており、R47H保因者のミクログリアが、プラークを圧縮し、それらの拡散を制限する能力の低減を推定的に実証している(Yuan et al., Neuron, 2016, 90: 724-739)。ミクログリオーシスにおける障害は、プリオン病、多発性硬化症、及び脳卒中の動物モデルにおいて報告されており、TREM2が、中枢神経系における病理又は損傷に応答してミクログリオーシスを支持する際に重要な役割を果たし得ることを示唆している(Ulrich and Holtzman,ACS Chem.Neurosci.,2016,7:420-427)。
【0180】
ヒトでは、TREM2遺伝子は、染色体6p21.1のTREM遺伝子クラスター内に位置する。TREM遺伝子クラスターは、4つのTREMタンパク質(TREMl、TREM2、TREM4、及びTREM5)、並びに2つのTREM様タンパク質(TLT-1及びTLT-2)をコードする。TREM2遺伝子は、細胞外ドメイン、膜貫通領域、及び短い細胞質尾部からなる230アミノ酸タンパク質をコードする(Paradowska-Gorycka et al.,Human Immunology,Vol.74:730-737,2013)。細胞外ドメインは、3つの潜在的なN-グリコシル化部位を有する単一のV型Igスーパーファミリードメインを含有する。230アミノ酸野生型hTREM2アミノ酸配列(NCBI参照配列:NP_061838.1)が、配列番号1として以下に提供される。
【表9】
【0181】
野生型ヒトTREM2タンパク質(配列番号1)のアミノ酸1~18は、シグナルペプチドであり、これは一般的に、成熟タンパク質から除去される。成熟ヒトTREM2タンパク質は、配列番号1のアミノ酸19~174に細胞外ドメイン、配列番号1のアミノ酸175~195に膜貫通ドメイン、及び配列番号1のアミノ酸196~230に細胞質ドメインを含む。ヒトTREM2の細胞外ドメイン(シグナルペプチドを含む)のアミノ酸配列が、配列番号2として以下に提供される。
【表10】
【0182】
「骨髄細胞上に発現されるヒトトリガー受容体2」又は「ヒトTREM2」という用語は、配列番号1のポリペプチド、配列番号2のポリペプチド、配列番号1若しくは配列番号2のポリペプチドからシグナルペプチド(アミノ酸1~18)を引いたもの、ヒトTREM2の対立遺伝子バリアント、又はヒトTREM2のスプライスバリアントを指すことができる。いくつかの実施形態では、「ヒトTREM2」という用語は、変異R47H、Q33X(Xは終止コドンである)、Y38C、T66M、D87N、H157Y、R98W、及びS116Cなど、TREM2の天然バリアントを含む。
【0183】
TREM2の細胞質ドメインは、シグナル伝達能力を欠くため、他のタンパク質と相互作用して、TREM2活性化シグナルを形質導入しなければならない。1つのそのようなタンパク質は、12kDa(DAP12)のDNAX活性化タンパク質である。DAP12はまた、キラー細胞活性化受容体関連タンパク質(KARAP)及びチロシンキナーゼ結合タンパク質(TYROBP)としても知られている。DAP12は、その細胞質ドメイン中にITAMモチーフを含むI型膜貫通アダプタータンパク質である。ITAMモチーフは、ZAP70及びSykチロシンキナーゼの活性化によりシグナル伝達を媒介し、これは、P13K、PKC、ERK、及び細胞内カルシウムの上昇を含むいくつかの下流シグナル伝達カスケードを活性化する(Colonna,Nature Reviews Immunology,Vol.3:445-453,2003、Ulrich and Holtzman,ACS Che Neurosci.,Vol.7:420-427,2016)。DAP12及びTREM2は、それらの膜貫通ドメインを介して会合し、TREM2の膜貫通ドメイン内の荷電リジン残基は、DAP12の膜貫通ドメイン内の荷電アスパラギン酸残基と相互作用する。
【0184】
ヒトDAP12は、染色体19q13.1上に位置するTYROBP遺伝子によりコードされる。ヒトタンパク質は、113アミノ酸長であり、リーダー配列(配列番号3のアミノ酸1~27)、短い細胞外ドメイン(配列番号3のアミノ酸28~41)、膜貫通ドメイン(配列番号3のアミノ酸42~65)、及び細胞質ドメイン(配列番号3のアミノ酸66~113)を含む(Paradowska-Gorycka et al.,Human Immunology,Vol.74:730-737,2013)。DAP12は、短い細胞外ドメイン中の2つのシステイン残基を通じてホモ二量体を形成する。野生型ヒトDAP12アミノ酸配列(NCBI参照配列:NP_003323.1)が、配列番号3として以下に提供される。
【表11】
【0185】
「ヒトDAP12」という用語は、配列番号3のポリペプチド、配列番号3のポリペプチドからリーダーペプチド(アミノ酸1~27)を引いたもの、ヒトDAP12の対立遺伝子バリアント、又はヒトDAP12のスプライスバリアントを指すことができる。
【0186】
6.本発明の治療方法
一態様では、本発明は、ヒト患者におけるTREM2機能不全により起こされる、及び/又はそれに関連する疾患又は障害を治療する方法を提供し、方法は、TREM2の活性を高める分子を患者に投与することを含む。いくつかの実施形態では、TREM2の活性を高める分子は、TREM2のアゴニストである。いくつかの実施形態では、TREM2のアゴニストは、抗hTREM2抗体、又はその抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、TREM2のアゴニストは、小分子である。いくつかの実施形態では、TREM2の活性を高める分子は、TREM2の分解を防止する分子である。いくつかの実施形態では、TREM2の活性を高める分子は、抗hTREM2抗体、又はその抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、TREM2の活性を高める分子は、小分子である。
【0187】
いくつかの実施形態では、TREM2のアゴニストの投与は、患者におけるDAP12シグナル伝達経路を活性化し、ミクログリアの増殖、ミクログリアの生存、及び/又はミクログリアの食作用の増加をもたらす。いくつかの実施形態では、TREM2のアゴニストの投与は、疾患進行の遅延をもたらす。
【0188】
いくつかの実施形態では、TREM2のアゴニストは、単球、樹状細胞、ミクログリア細胞、及び/又はマクロファージを含む骨髄細胞中のTREM2/DAP12シグナル伝達を活性化する。いくつかの実施形態では、TREM2のアゴニストは、1つ以上のTREM2活性を活性化、誘導、促進、刺激、又はその他の方法で増加させる。アゴニストにより活性化又は増加されるTREM2活性は、以下を含むが、これらに限定されない:DAP12に結合するTREM2;TREM2に結合するDAP12;TREM2リン酸化、DAP12リン酸化;PI3K活性化;AKT活性化;可溶性TREM2(sTREM2)のレベルの上昇;可溶性TREM2(sTREM2)のレベルの減少;可溶性CSF1R(sCSF1R)のレベルの上昇;CSF1Rの発現の増加;IL-12p70、IL-6、及びIL-10からなる群から選択される1つ以上の抗炎症性メディエーター(例えば、サイトカイン)の発現の増加;IFN-α4、IFN-b、IL-6、IL-12 p70、IL-1β、TNF、TNF-α、IL-10、IL-8、CRP、ケモカインタンパク質ファミリーのTGF-ベータメンバー、IL-20ファミリーメンバー、IL-33、LIF、IFN-ガンマ、OSM、CNTF、TGF-ベータ、GM-CSF、IL-11、IL-12、IL-17、IL-18、及びCRPからなる群から選択される1つ以上の炎症誘発性メディエーターの発現の低減;CCL2、CCL4、CXCL10、CXCL2、及びCST7からなる群から選択される1つ以上のケモカインの発現の増加;TNF-α、IL-6、若しくはそれらの両方の発現の低減;細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)リン酸化;C-Cケモカイン受容体7(CCR7)の発現の増加;CCL19及びCCL21発現細胞に対するミクログリア細胞走化性の誘導;抗原特異的T細胞増殖を誘導する骨髄由来樹状細胞の能力の向上、正常化、若しくはそれらの両方;破骨細胞産生の誘導、破骨細胞形成率の増加、若しくはそれらの両方;樹状細胞、マクロファージ、ミクログリア細胞、M1マクロファージ及び/若しくはミクログリア細胞、活性化M1マクロファージ及び/若しくはミクログリア細胞、M2マクロファージ及び/若しくはミクログリア細胞、単球、破骨細胞、皮膚のランゲルハンス細胞、及びクッパー細胞の1つ以上の生存及び/又は機能の増加;アポトーシスニューロンのクリアランス、神経組織残骸のクリアランス、非神経組織残骸のクリアランス、細菌若しくは他の異物のクリアランス、疾患の原因となるタンパク質のクリアランス、疾患の原因となるペプチドのクリアランス、及び疾患の原因となる核酸のクリアランスからなる群から選択される1つ以上の種類のクリアランスの誘導;アポトーシスニューロン、神経組織残骸、非神経組織残骸、細菌、他の異物、疾患の原因となるタンパク質、疾患の原因となるペプチド、若しくは疾患の原因となる核酸のうちの1つ以上の食作用の誘導;破壊されたTREM2/DAP12依存性遺伝子発現の正常化;TREM2/DAP12複合体へのSyk、ZAP70、若しくはそれらの両方の動員;Sykリン酸化;樹状細胞、マクロファージ、単球、及び/若しくはミクログリア上でのCD83及び/若しくはCD86の発現の増加;TNF-α、IL-10、IL-6、MCP-1、IFN-α4、IFN-b、IL-1β、IL-8、CRP、ケモカインタンパク質ファミリーのTGF-ベータメンバー、IL-20ファミリーメンバー、IL-33、LIF、IFN-ガンマ、OSM、CNTF、TGF-ベータ、GM-CSF、IL-11、IL-12、IL-17、IL-18、及びCRPからなる群から選択される1つ以上の炎症性サイトカインの分泌の低減;1つ以上の炎症性受容体の発現の低減;低減したレベルのMCSFの条件下でのマクロファージ、樹状細胞、単球、及び/若しくはミクログリアによる食作用の増加;正常レベルのMCSFの存在下でのマクロファージ、樹状細胞、単球、及び/若しくはミクログリアによる食作用の減少;1つ以上のTREM2依存性遺伝子の活性の上昇;又はそれらの任意の組み合わせ。いくつかの実施形態では、TREM2のアゴニストは、ミクログリア機能、自然免疫、成長因子シグナル伝達、及び細胞周期プロセスから選択される1つ以上のTREM2シグナル伝達関連活性を増加させる。
【0189】
別の態様では、本発明は、ミクログリア機能不全に関連する状態又は障害の治療のための医薬品の製造のためのTREM2アゴニストを提供する。別の態様では、本発明は、TREM2機能不全により起こされる、及び/又はそれに関連する疾患又は障害の治療のための医薬品の製造のためのTREM2アゴニストを提供する。更に別の態様では、本発明は、ミクログリア機能不全に関連する状態又は障害の治療のためのTREM2アゴニストを提供する。更に別の態様では、本発明は、TREM2機能不全により起こされる、及び/又はそれに関連する疾患又は障害の治療のためのTREM2アゴニストを提供する。
【0190】
7.疾患及び障害
本発明のある特定の態様は、ミクログリア機能不全に関連する状態の治療、予防、又はその発症リスクの改善を必要とする患者においてそれを行う際に使用するための、TREM2アゴニストを提供する。いくつかの実施形態では、ミクログリア機能不全は、TREM2欠損症によって引き起こされる。いくつかの実施形態では、ミクログリア機能不全は、コロニー刺激因子1受容体(CSF1R)の機能不全によって引き起こされる。いくつかの実施形態では、ミクログリア機能不全は、ATP結合カセットトランスポーター1(ABCD1)の機能不全によって引き起こされる。特定の実施形態では、使用は、有効量のTREM2アゴニストを患者に投与することを含む。
【0191】
本発明の方法に従って予防、治療、又は改善され得るTREM2欠損症又はTREM2機能の喪失に関連する状態又は障害としては、那須ハコラ病、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、外傷性脳損傷、脊髄損傷、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、プリオン病、脳卒中、骨粗しょう症、大理石骨病、及び骨硬化症が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、本発明の方法に従って予防、治療、又は改善される状態又は障害は、アルツハイマー病、那須ハコラ病、前頭側頭型認知症、多発性硬化症、プリオン病、又は脳卒中である。
【0192】
いくつかの実施形態では、本発明の方法に従って予防、治療、又は改善され得る状態又は障害は、CSF1Rの機能不全に関連するものである。本発明の方法に従って予防、治療、又は改善され得るCSF1Rの機能不全に関連する状態又は障害としては、神経軸索スフェロイド及び色素性グリアを伴う成人発症白質脳症(ALSP)、神経軸索スフェロイド形成を伴う遺伝性びまん性白質脳症(HDLS)、色素性オルソクロマチック白質ジストロフィー(POLD)、小児発症性白質脳症、ミクログリアの先天性欠損、又は脳異常-神経変性-異骨性骨硬化症(BANDDOS)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、CSF1Rの機能不全に関連する状態又は障害はまた、那須ハコラ病、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、外傷性脳損傷、脊髄損傷、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、プリオン病、脳卒中、骨粗しょう症、大理石骨病、骨硬化症、骨格異形成、骨異形成症(dysosteoplasia)、パイル病、皮質下梗塞及び白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症、皮質下梗塞及び白質脳症を伴う常染色体劣性脳動脈症、脳網膜血管障害、又は異染性白質ジストロフィーを含み、ここで、上記の疾患又は障害のいずれかが、CSF1R機能不全を示す患者、又はCSF1Rの機能に影響を及ぼす遺伝子中に変異を有する患者において存在する。
【0193】
いくつかの実施形態では、本発明の方法に従って予防、治療、又は改善され得る状態又は障害は、ABCD1の機能不全に関連するものである。本発明の方法に従って予防、治療、又は改善され得るABCD1の機能不全に関連する状態又は障害としては、X連鎖性副腎白質ジストロフィー(x-ALD)、小児大脳型副腎白質ジストロフィー(cALD)、グロボイド細胞白質ジストロフィー(クラッベ病としても知られる)、異染性白質ジストロフィー(MLD)、皮質下梗塞及び白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症(CADASIL)、白質消失病(VWM)、アレキサンダー病、脆弱X随伴振戦失調症候群(FXTAS)、成人発症型常染色体優性白質ジストロフィー(ADLD)、及びX連鎖性シャルコー・マリー・トゥース病(CMTX)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、ABCD1の機能不全に関連する状態又は障害はまた、那須ハコラ病、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、外傷性脳損傷、脊髄損傷、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、プリオン病、脳卒中、骨粗しょう症、大理石骨病、骨硬化症、骨格異形成、骨異形成症(dysosteoplasia)、パイル病、皮質下梗塞及び白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症、皮質下梗塞及び白質脳症を伴う常染色体劣性脳動脈症、脳網膜血管障害、又は異染性白質ジストロフィーを含み、ここで、上記の疾患又は障害のいずれかが、ABCD1機能不全を示す患者、又はABCD1の機能に影響を及ぼす遺伝子中に変異を有する患者において存在する。
【0194】
いくつかの実施形態では、治療、予防、又は改善される状態は、アルツハイマー病である。いくつかの実施形態では、TREM2アゴニスト抗原結合タンパク質を投与される患者は、アルツハイマー病を発症するリスクがある患者である。治療を必要とする患者は、本発明の方法に従って治療され得る疾患又は状態を発症するリスクの増加に関連する1つ以上の遺伝子型を有すると決定され得る。例えば、いくつかの実施形態では、患者は、本明細書に記載される遺伝子型など、アルツハイマー病を発症するリスクの増加に関連する遺伝子型を有する。更なる実施形態では、患者は、アルツハイマー病の発症リスクの増加に関連するTREM2バリアントをコードする対立遺伝子を担持すると決定され得る。例えば、一実施形態では、患者は、TREM2遺伝子中にrs75932628-T変異を含有する少なくとも1つの対立遺伝子を有すると決定されており、例えば、患者は、rs75932628にCTの遺伝子型を有する。関連した実施形態では、アルツハイマー病を有するか、又は発症するリスクがある患者は、配列番号1の47位のアルギニンの代わりにヒスチジンをコードするTREM2バリアント対立遺伝子(R47H TREM2バリアント)を担持すると決定されている患者である。他の実施形態では、患者は、TREM2遺伝子中にrsl43332484-T変異を含有する少なくとも1つの対立遺伝子を有すると決定されており、例えば、患者は、rsl43332484にCTの遺伝子型を有する。関連した実施形態では、アルツハイマー病を有するか、又は発症するリスクがある患者は、配列番号1の62位のアルギニンの代わりにヒスチジンをコードするTREM2バリアント対立遺伝子(R62H TREM2バリアント)を担持すると決定されている患者である。いくつかの実施形態では、アルツハイマー病を発症するリスクがある患者は、TREM1遺伝子中にrs6910730-G変異を含有する少なくとも1つの対立遺伝子、TREM2遺伝子の上流にrs7759295-C変異を含有する少なくとも1つの対立遺伝子、及び/又はAPOE遺伝子の少なくとも1つのε4対立遺伝子を有すると決定されている。
【0195】
別の実施形態では、本発明は、前頭側頭型認知症又は那須ハコラ病の予防、治療、又は改善を必要とする患者においてそれを行うための方法を提供し、方法は、有効量の本明細書に記載されるTREM2アゴニスト抗原結合タンパク質を患者に投与することを含む。いくつかの実施形態では、TREM2アゴニスト抗原結合タンパク質を投与される患者は、前頭側頭型認知症又は那須ハコラ病を発症するリスクがある患者である。例えば、1つのそのような実施形態では、患者は、TREM2遺伝子中にrsl04894002-A変異を含有する少なくとも1つの対立遺伝子を有すると決定されており、例えば、患者は、rs104894002にGA又はAAの遺伝子型を有する。関連した実施形態では、前頭側頭型認知症又は那須ハコラ病を発症するリスクがある患者は、配列番号1の33位のグルタミンの代わりの終止コドンの置換の結果として、短縮されたTREM2タンパク質をコードするTREM2バリアント対立遺伝子を担持することが決定されている患者である。別の実施形態では、患者は、TREM2遺伝子中にrs201258663-A変異を含有する少なくとも1つの対立遺伝子を有すると決定されており、例えば、患者は、rs201258663にGA又はAAの遺伝子型を有する。関連した実施形態では、前頭側頭型認知症又は那須ハコラ病の発症リスクがある患者は、配列番号1の66位のトレオニンの代わりにメチオニンをコードする任意のTREM2バリアント対立遺伝子を有すると決定されている患者である。いくつかの実施形態では、前頭側頭型認知症又は那須ハコラ病の発症リスクがある患者は、配列番号1の38位のチロシンの代わりにシステインをコードするTREM2バリアント対立遺伝子を担持すると決定されている患者である。
【0196】
更に別の実施形態では、本発明は、多発性硬化症の予防、治療、又は改善を必要とする患者においてそれを行うための方法を提供し、方法は、有効量の本明細書に記載されるTREM2アゴニストを患者に投与することを含む。いくつかの実施形態では、TREM2アゴニストを投与される患者は、多発性硬化症を発症するリスクがある患者である。
【0197】
本発明はまた、マクロファージ、ミクログリア、及び樹状細胞などの骨髄細胞の生存又は増殖の増加を必要とする患者においてそれを行う方法を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるTREM2アゴニストを使用して、骨髄細胞中のTREM2/DAP12シグナル伝達を活性化し、それによって、これらの細胞の生物学的活性を調節することができる。そのような生物学的活性としては、サイトカイン放出、食作用、及びミクログリオーシスが挙げられる。
【0198】
本明細書に記載されるTREM2アゴニストは、とりわけ、アルツハイマー病、那須ハコラ病、前頭側頭型認知症、多発性硬化症、プリオン病、又は脳卒中を含む、本明細書に記載されるTREM2欠損症又はTREM2の生物学的活性の喪失に関連する状態の治療又は予防のための医薬組成物又は医薬品の製造で使用され得る。したがって、本発明はまた、本明細書に記載されるTREM2アゴニスト抗原結合タンパク質と、薬学的に許容される賦形剤と、を含む医薬組成物を提供する。
【0199】
一実施形態では、本発明は、アルツハイマー病の予防、治療、又は改善を必要とする患者においてそれを行うための方法を提供し、方法は、有効量の本明細書に記載されるTREM2アゴニスト抗原結合タンパク質を患者に投与することを含む。ある特定の実施形態では、患者に投与されるTREM2アゴニストは、CDR配列、可変領域配列、並びに重鎖配列及び軽鎖配列が表1A~1B及び表2に記載される抗体など、抗hTREM2モノクローナル抗体である。
【0200】
8.標的アゴニスト
本発明は、TREM2欠損症に関連する状態の治療、予防、又はその発症リスクの改善を必要とする患者においてそれを行う方法を提供し、方法は、hTREM2に特異的に結合する有効量の分子を患者に投与することを含み、これは、hTREM2の活性を高める。いくつかの実施形態では、分子は、TREM2のアゴニストである。いくつかの実施形態では、TREM2のアゴニストは、小分子である。いくつかの実施形態では、TREM2のアゴニストは、抗体又はその抗原結合断片である。
【0201】
TREM2アゴニストは、ヒトTREM2(配列番号1)又はヒトTREM2の細胞外ドメイン(ECD)(例えば、配列番号2に記載されるECD)に、例えば、50nM未満、25nM未満、10nM未満、又は5nM未満の平衡解離定数(K)で特異的に結合する。
【0202】
8.1.抗hTREM2抗体
抗体
一態様では、本発明は、抗hTREM2抗体、又はその抗原結合断片の投与に関する。ある特定の実施形態は、インタクトな抗体の文脈で提供されるが、当該抗体の抗原結合断片に由来する分子は、結合特異性を維持し得、また、本発明で使用され得ることが企図される。
【0203】
いくつかの実施形態では、抗hTREM2抗体は、hTREM2のアゴニストである。いくつかの実施形態では、抗hTREM2抗体は、ヒトTREM1(hTREM1)などの他のTREMタンパク質と交差反応しない。いくつかの実施形態では、抗hTREM2抗体は、hTREM1、又はそのアイソフォーム若しくは短縮に結合しない。前駆体hTREM1アイソフォーム1(NCBI参照配列:NP_061113.1)のアミノ酸配列が、配列番号4として以下に提供される。
【表12】
【0204】
いくつかの実施形態では、抗hTREM2抗体は、ヒトTREM2 hTREM2残基19~174に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗hTREM2抗体は、hTREM2のIgV領域、例えば、ヒトTREM2残基19~140に特異的に結合する。
【0205】
ある特定の実施形態では、本開示の抗hTREM2抗体は、hTREM2(配列番号1)のアミノ酸残基29~112内の、又は配列番号1のアミノ酸残基29~112に対応するTREM2タンパク質上のアミノ酸残基内の1つ以上のアミノ酸に結合する。いくつかの実施形態では、本開示の抗hTREM2抗体は、hTREM2(配列番号1)のアミノ酸残基29~41内の、又は配列番号1のアミノ酸残基29~41に対応するTREM2タンパク質上のアミノ酸残基内の1つ以上のアミノ酸に結合する。いくつかの実施形態では、本開示の抗hTREM2抗体は、hTREM2(配列番号1)のアミノ酸残基47~69内の、又は配列番号1のアミノ酸残基47~69に対応するTREM2タンパク質上のアミノ酸残基内の1つ以上のアミノ酸に結合する。いくつかの実施形態では、本開示の抗hTREM2抗体は、hTREM2(配列番号1)のアミノ酸残基76~86内の、又は配列番号1のアミノ酸残基76~86に対応するTREM2タンパク質上のアミノ酸残基内の1つ以上のアミノ酸に結合する。いくつかの実施形態では、本開示の抗hTREM2抗体は、hTREM2(配列番号1)のアミノ酸残基91~100内の、又は配列番号1のアミノ酸残基91~100に対応するTREM2タンパク質上のアミノ酸残基内の1つ以上のアミノ酸に結合する。いくつかの実施形態では、本開示の抗hTREM2抗体は、hTREM2(配列番号1)のアミノ酸残基99~115内の、又は配列番号1のアミノ酸残基99~115に対応するTREM2タンパク質上のアミノ酸残基内の1つ以上のアミノ酸に結合する。いくつかの実施形態では、本開示の抗hTREM2抗体は、hTREM2(配列番号1)のアミノ酸残基104~112内の、又は配列番号1のアミノ酸残基104~112に対応するTREM2タンパク質上のアミノ酸残基内の1つ以上のアミノ酸に結合する。いくつかの実施形態では、本開示の抗hTREM2抗体は、hTREM2(配列番号1)のアミノ酸残基114~118内の、又は配列番号1のアミノ酸残基114~118に対応するTREM2タンパク質上のアミノ酸残基内の1つ以上のアミノ酸に結合する。いくつかの実施形態では、本開示の抗hTREM2抗体は、hTREM2(配列番号1)のアミノ酸残基130~171内の、又は配列番号1のアミノ酸残基130~171に対応するTREM2タンパク質上のアミノ酸残基内の1つ以上のアミノ酸に結合する。いくつかの実施形態では、本開示の抗hTREM2抗体は、hTREM2(配列番号1)のアミノ酸残基139~153内の、又は配列番号1のアミノ酸残基139~153に対応するTREM2タンパク質上のアミノ酸残基内の1つ以上のアミノ酸に結合する。いくつかの実施形態では、本開示の抗hTREM2抗体は、hTREM2(配列番号1)のアミノ酸残基139~146内の、又は配列番号1のアミノ酸残基139~146に対応するTREM2タンパク質上のアミノ酸残基内の1つ以上のアミノ酸に結合する。いくつかの実施形態では、本開示の抗hTREM2抗体は、hTREM2(配列番号1)のアミノ酸残基130~144内の、又は配列番号1のアミノ酸残基130~144に対応するTREM2タンパク質上のアミノ酸残基内の1つ以上のアミノ酸に結合する。いくつかの実施形態では、本開示の抗hTREM2抗体は、hTREM2(配列番号1)のアミノ酸残基158~171内の、又は配列番号1のアミノ酸残基158~171に対応するTREM2タンパク質上のアミノ酸残基内の1つ以上のアミノ酸に結合する。
【0206】
いくつかの実施形態では、本開示の抗hTREM2抗体は、hTREM2(配列番号1)のアミノ酸残基43~50内の、又は配列番号1のアミノ酸残基43~50に対応するTREM2タンパク質上のアミノ酸残基内の1つ以上のアミノ酸に結合する。いくつかの実施形態では、本開示の抗hTREM2抗体は、hTREM2(配列番号1)のアミノ酸残基49~57内の、又は配列番号1のアミノ酸残基49~57に対応するTREM2タンパク質上のアミノ酸残基内の1つ以上のアミノ酸に結合する。いくつかの実施形態では、本開示の抗hTREM2抗体は、hTREM2(配列番号1)のアミノ酸残基139~146内の、又は配列番号1のアミノ酸残基139~146に対応するTREM2タンパク質上のアミノ酸残基内の1つ以上のアミノ酸に結合する。いくつかの実施形態では、本開示の抗hTREM2抗体は、hTREM2(配列番号1)のアミノ酸残基140~153内の、又は配列番号1のアミノ酸残基140~153に対応するTREM2タンパク質上のアミノ酸残基内の1つ以上のアミノ酸に結合する。いくつかの実施形態では、抗hTREM2抗体は、ヒトTREM2のストーク領域、例えば、ヒトTREM2のアミノ酸残基145~174に特異的に結合する。
【0207】
いくつかの実施形態では、抗hTREM2抗体、又はその抗原結合断片は、hTREM2の分解又は切断を特異的に防止する。
【0208】
本明細書で使用される場合、「抗体」(Ab)という用語は、特定の抗原、例えば、hTREM2に特異的に結合する免疫グロブリン分子を指す。いくつかの実施形態では、抗hTREM2抗体は、ヒトへの投与に適している。
【0209】
いくつかの実施形態では、抗hTREM2抗体は、ポリクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、抗hTREM2抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、抗hTREM2抗体は、キメラ抗体である。いくつかの実施形態では、抗hTREM2抗体は、ヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、抗hTREM2抗体は、ヒト抗体、特に完全ヒト抗体である。いくつかの実施形態では、抗hTREM2抗体は、二重特異性抗体又は他の多価抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、単鎖抗体である。
【0210】
いくつかの実施形態では、抗体は、抗体の定常領域の全て又は一部分を含む。いくつかの実施形態では、定常領域は、以下から選択されるアイソタイプから選択される:IgA(例えば、IgA若しくはIgA)、IgD、IgE、IgG(例えば、IgG、IgG、IgG、若しくはIgG)、又はIgM。特定の実施形態では、本明細書に記載される抗hTREM2抗体は、IgGを含む。いくつかの実施形態では、IgGの定常領域は、R292C、N297G、V302C、D356E、又はL358M(EUナンバリングによる)から選択される置換を含む。他の実施形態では、抗hTREM2抗体は、IgGを含む。他の実施形態では、抗hTREM2抗体は、IgGを含む。本明細書で使用される場合、抗体の「定常領域」は、天然定常領域、又はその任意のアロタイプ若しくは天然バリアントを含む。
【0211】
抗hTREM2抗体の軽定常領域は、ラムダ(λ)軽領域又はカッパ(κ)軽領域を含んでもよい。λ軽領域は、既知のサブタイプ、例えば、λ、λ、λ、又はλのいずれか1つであってもよい。
【0212】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」という用語は、ハイブリドーマ技術を介して産生される抗体に限定されない。モノクローナル抗体は、当技術分野で利用可能又は既知の任意の手段による、任意の真核クローン、原核クローン、又はファージクローンを含む単一クローンに由来する。本開示で有用なモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組換え、及びファージディスプレイ技術、又はそれらの組み合わせの使用を含む、当技術分野で既知の幅広い技術を使用して調製され得る。
【0213】
本明細書で使用される場合、「キメラ」抗体という用語は、ラット又はマウス抗体などの一種の免疫グロブリンに由来する可変配列と、ヒト免疫グロブリン鋳型などの別の種の免疫グロブリン定常領域とを有する抗体を指す。キメラ抗体の他の例としては、マウス免疫グロブリン定常領域を有するヒト由来免疫グロブリン可変領域が挙げられる。
【0214】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリンのCDR領域及び可変領域の実質的に全て、並びにヒト免疫グロブリン配列のFR領域の全て又は実質的に全てを含む。ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分を含んでもよい。
【0215】
「ヒト抗体」は、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する抗体を含む。ヒト抗体は、1つ以上のヒト免疫グロブリンに対してトランスジェニックである動物由来であり得る。例えば、トランスジェニック動物は、Xenomouse(登録商標)などの1つ以上の免疫グロブリンの内因性産生を欠いてもよく、免疫化時に完全ヒトタンパク質配列を有する抗体を産生するように操作されてもよい。ヒト抗体はまた、ヒト免疫グロブリンライブラリーからの単離、又はヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体ライブラリーを使用したファージディスプレイ方法を含む、当技術分野で既知の様々な方法により作製され得る。
【0216】
本開示の抗hTREM2抗体は、完全長(インタクト)抗体分子、又はその一部分を含む。抗hTREM2抗体は、その配列が、少なくとも1つの定常領域媒介性生物学的エフェクター機能を変化させるように改変されている抗体であってもよい(例えば、FcγRI、FcγRIIA、FcγRIIB、FcγRIIIA、及び/又はFcγRIIIBなどのFc受容体(FcγR)のうちの1つ以上への結合の改善又は低減)。
【0217】
hTREM2に対して高い親和性を有する抗hTREM2抗体は、治療的及び診断的使用に望ましくあり得る。したがって、本開示は、hTREM2に対して高い結合親和性を有する抗体を企図する。特定の実施形態では、抗hTREM2抗体は、少なくとも約100nMの親和性でhTREM2に結合するが、より高い親和性、例えば、少なくとも約90nM、80nM、70nM、60nM、50nM、40nM、30nM、25nM、20nM、15nM、10nM、7nM、6nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、0.1nM、0.01nM、又は更にそれ以上を示し得る。いくつかの実施形態では、抗体は、約1pM~約10nM、約100pM~約10nM、約100pM~約1nMの範囲の親和性、又は前述の値のいずれかの間の範囲の親和性で、hTREM2に結合する。
【0218】
hTREM2に対する抗hTREM2抗体の親和性は、例えば、限定されるものではないが、ELISA、等温滴定熱量測定、表面プラズモン共鳴、バイオレイヤー干渉、フィルター結合、又は蛍光偏光などの、当技術分野で周知の技術を使用して決定され得る。
【0219】
本開示の抗hTREM2抗体は、軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインの両方における相補性決定領域(CDR)を含む。抗hTREM2抗体は、本明細書に記載される相補性決定領域CDRL1、CDRL2、及びCDRL3を含む軽鎖可変領域、並びに相補性決定領域CDRH1、CDRH2、及びCDRH3を含む重鎖可変領域を含む。
【0220】
いくつかの実施形態では、TREM2アゴニスト抗原結合タンパク質は、CDRL1、又は1つ、2つ、3つ、若しくは4つのアミノ酸置換を有するそのバリアント、CDRL2、又は1つ、2つ、3つ、若しくは4つのアミノ酸置換を有するそのバリアント、CDRL3、又は1つ、2つ、3つ、若しくは4つのアミノ酸置換を有するそのバリアント、CDRH1、又は1つ、2つ、3つ、若しくは4つのアミノ酸置換を有するそのバリアント、CDRH2、又は1つ、2つ、3つ、若しくは4つのアミノ酸置換を有するそのバリアント、及びCDRH3、又は1つ、2つ、3つ、若しくは4つのアミノ酸置換を有するそのバリアントを含み、CDRL1、CDRL2、CDRL3、CDRH2、CDRH2、及びCDRH3のアミノ酸配列は、例示的な軽鎖領域及び可変領域と共に、以下の表1A及び1B中に提供される。
【表13】
【表14】
【0221】
上に述べるように、抗hTREM2抗体は、表1A(軽鎖CDR;すなわち、CDRL)及び表1B(重鎖CDR;すなわち、CDRH)中に提示されるCDRのうちの1つ以上を含み得る。
【0222】
いくつかの実施形態では、抗hTREM2抗体は、配列番号6によるアミノ酸配列を有するCDRL1、配列番号7によるアミノ酸配列を有するCDRL2、配列番号8によるアミノ酸配列を有するCDRL3、又は配列番号6~8のいずれかに対する5つ、4つ、3つ、2つ、若しくは1つ以下のアミノ酸の1つ以上、例えば、1つ、2つ、3つ、4つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換)、欠失、若しくは挿入を含有する任意のCDRL1、CDRL2、若しくはCDRL3アミノ酸配列を含む、軽鎖を含む。そのような置換、欠失、及び挿入は、有意な抗hTREM2結合活性を保持するであろう。これら及び他の実施形態では、抗hTREM2抗体は、配列番号10によるアミノ酸配列を有するCDRH1、配列番号11によるアミノ酸配列を有するCDRH2、配列番号12によるアミノ酸配列を有するCDRH3、又は配列番号10~12のいずれかに対する5つ、4つ、3つ、2つ、若しくは1つ以下のアミノ酸の1つ以上、例えば、1つ、2つ、3つ、4つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換)、欠失、若しくは挿入を含有するアミノ酸配列を有する任意のCDRH1、CDRH2、若しくはCDRH3を含む。そのような置換、欠失、及び挿入は、有意な抗hTREM2結合活性を保持するであろう。
【0223】
いくつかの実施形態では、抗hTREM2抗体は、配列番号6によるアミノ酸配列を有するCDRL1、配列番号7によるアミノ酸配列を有するCDRL2、及び配列番号8によるアミノ酸配列を有するCDRL3を含む軽鎖可変領域と、配列番号10によるアミノ酸配列を有するCDRH1、配列番号11によるアミノ酸配列を有するCDRH2、及び配列番号12によるアミノ酸配列を有するCDRH3を含む重鎖可変領域と、を含む。
【0224】
いくつかの実施形態では、抗hTREM2抗体は、配列番号5によるアミノ酸配列、又は配列番号5に対する5つ、4つ、3つ、2つ、若しくは1つ以下のアミノ酸の1つ以上、例えば、1つ、2つ、3つ、4つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換)、欠失、若しくは挿入を含有する任意のアミノ酸配列を有する、軽鎖可変領域を含む。そのような置換、欠失、及び挿入は、有意な抗hTREM2結合活性を保持するであろう。いくつかの実施形態では、抗hTREM2抗体は、配列番号9によるアミノ酸配列、又は配列番号9に対する5つ、4つ、3つ、2つ、若しくは1つ以下のアミノ酸の1つ以上、例えば、1つ、2つ、3つ、4つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換)、欠失、若しくは挿入を含有する任意のアミノ酸配列を有する、重鎖可変領域を含む。そのような置換、欠失、及び挿入は、有意な抗hTREM2結合活性を保持するであろう。
【0225】
特定の実施形態では、抗hTREM2抗体は、配列番号5によるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域と、配列番号9によるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、を含む。
【0226】
いくつかの実施形態では、抗hTREM2抗体は、表2から選択される重鎖アミノ酸配列及び/又は軽鎖アミノ酸配列を含む。表2は、例示的な抗体「Ab-1」及び「Ab-2」についての例示的な抗hTREM2抗体重鎖及び軽鎖を示す。
【表15-1】
【表15-2】
【0227】
いくつかの実施形態では、抗hTREM2抗体は、配列番号13~15のいずれか1つによるアミノ酸配列、又は配列番号13~15のいずれか1つに対する5つ、4つ、3つ、2つ、若しくは1つ以下のアミノ酸の1つ以上、例えば、1つ、2つ、3つ、4つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換)、欠失、若しくは挿入を含有する任意のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。そのような置換、欠失、及び挿入は、有意な抗hTREM2結合活性を保持するであろう。これら及び他の実施形態では、抗hTREM2抗体は、配列番号16~18のいずれか1つによるアミノ酸配列、又は配列番号16~18のいずれか1つに対する5つ、4つ、3つ、2つ、若しくは1つ以下のアミノ酸の1つ以上、例えば、1つ、2つ、3つ、4つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換)、欠失、若しくは挿入を含有する任意のアミノ酸配列を有する重鎖を含む。そのような置換、欠失、及び挿入は、有意な抗hTREM2結合活性を保持するであろう。
【0228】
いくつかの実施形態では、抗hTREM2抗体は、配列番号13によるアミノ酸配列を有する軽鎖、及び/又は配列番号16によるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む。他の実施形態では、抗hTREM2抗体は、配列番号14によるアミノ酸配列を有する軽鎖、及び/又は配列番号17によるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む。他の実施形態では、抗hTREM2抗体は、配列番号15によるアミノ酸配列を有する軽鎖、及び/又は配列番号18によるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む。
【0229】
ある特定の実施形態では、抗TREM2抗体は、hT2ABであり、これは、配列番号13によるアミノ酸配列を有する軽鎖と、配列番号16によるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、を含むhTREM2アゴニストである。ある特定の実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号14によるアミノ酸配列を有する軽鎖と、配列番号17によるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、を含む、N末端リーダー配列を有するhT2ABである。ある特定の実施形態では、抗TREM2抗体は、mT2ABであり、これは、配列番号14によるアミノ酸配列又はそのエフェクターレスバリアントを有する軽鎖と、配列番号17によるアミノ酸配列又はそのエフェクターレスバリアントを有する重鎖と、を含む、マウスカッパ及びIgG1定常領域を有するhT2AB可変領域のキメラである。
【0230】
ポリヌクレオチド
別の態様では、本開示は、本明細書に記載される抗体又は抗原結合領域をコードするポリヌクレオチドを提供する。特に、ポリヌクレオチドは単離ポリヌクレオチドである。ポリヌクレオチドには、遺伝子発現を制御して、目的のポリペプチドを発現することが可能な組換えポリヌクレオチドを作製する、1つ以上の異種制御配列に作動的に連結させてもよい。関連するポリペプチド又はタンパク質をコードする異種ポリヌクレオチドを含む発現構築物を、適した宿主細胞中に導入して、対応するポリペプチドを発現することができる。
【0231】
当業者により理解されるであろうとおり、遺伝コードの縮重に起因し、ここでは、同じアミノ酸が代替的又は同義コドンによりコードされ、極めて多数の核酸が作製されることができ、それら全てがCDR、可変領域、並びに重鎖及び軽鎖、又は本明細書中に記載される抗原結合タンパク質の他の成分をコードする。このように、特定のアミノ酸配列を同定しており、当業者は、コードされるタンパク質のアミノ酸配列を変化させない方法において、1つ以上のコドンの配列を単に改変することにより、任意の数の異なる核酸を作製することができ得る。これに関して、本開示は、本明細書中に開示されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの各々の及び全ての可能なバリエーションを含む。
【0232】
「単離核酸」は、本明細書において「単離ポリヌクレオチド」と互換的に使用され、天然供給源から単離された核酸の場合において、核酸が単離された生物のゲノム中に存在する隣接する遺伝子配列から分離された核酸である。例えば、鋳型から酵素的に又は化学的に合成された核酸、例えばPCR産物、cDNA分子、又はオリゴヌクレオチドなどの場合では、そのようなプロセスから生じる核酸は、単離核酸であることが理解される。単離核酸分子は、別々の断片の形態における、又はより大きな核酸構築物の成分としての核酸分子を指す。1つの好ましい実施形態では、核酸には、混入する内因性物質が実質的にない。
【0233】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、本明細書中に記載される軽鎖可変領域のCDRL1、CDRL2、及びCDRL3をコードする。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、本明細書中に記載される重鎖可変領域のCDRH1、CDRH2、及びCDRH3をコードする。
【0234】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、本明細書中に記載される軽鎖可変領域のCDRL1、CDRL2、及びCDRL3並びに重鎖可変領域のCDRH1、CDRH2、及びCDRH3をコードする。
【0235】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、本明細書に開示される可変軽鎖のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上の配列同一性を有する軽鎖可変領域VLをコードする。
【0236】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、本明細書に開示される可変重鎖のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上の配列同一性を有する重鎖可変領域VHをコードする。
【0237】
いくつかの実施形態では、本明細書中のポリヌクレオチドは、様々な方法において操作されて、コードされたポリペプチドの発現を提供し得る。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、とりわけ、ポリヌクレオチド及び/又は対応するポリペプチドの発現のための、転写プロモーター、リーダー配列、転写エンハンサー、リボソーム結合部位又はエントリー部位、終結配列、及びポリアデニル化配列を含む、制御配列に作動可能に連結される。ベクター中への挿入前の単離ポリヌクレオチドの操作は、発現ベクターに依存して望ましい、又は必要であり得る。組換えDNA方法を利用したポリヌクレオチド及び核酸配列を改変するための技術は、当技術分野において周知である。ガイダンスは、Sambrook et al.,Molecular Cloning: A Laboratory Manual,3rd Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(2001)、及びCurrent Protocols in Molecular Biology,Ausubel. F.ed.,Greene Pub. Associates(1998)(2013年にアップデート)において提供されている。
【0238】
いくつかの実施形態では、抗原結合タンパク質のバリアントは、本明細書中に記載されるバリアントを含め、ポリペプチドをコードするDNA中のヌクレオチドの部位特異的変異誘発により、カセット若しくはPCR変異誘発、又は当技術分野において周知の他の技術を使用して調製され、バリアントをコードするDNAを産生し、その後、本明細書中に概説されるように細胞培養において組換えDNAを発現することができる。しかし、最大約100~150残基を伴うバリアントCDRを含む抗原結合タンパク質は、確立された技術を使用してインビトロ合成により調製され得る。バリアントは、典型的には、天然に生じる類似体、例えば、抗原への結合と同じ定性的な生物学的活性を示す。そのようなバリアントは、例えば、抗原結合タンパク質のアミノ酸配列内の残基の欠失及び/又は挿入及び/又は置換を含む。欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせは、最終構築物が所望の特性を有することを条件として、最終構築物に達するために作製される。アミノ酸変化はまた、例えば、グリコシル化部位の数又は位置を変化させるなど、抗原結合タンパク質の翻訳後プロセスを改変し得る。いくつかの実施形態では、抗原結合タンパク質バリアントは、エピトープ結合において直接的に含まれるアミノ酸残基を修飾する意図を伴って調製される。他の実施形態では、本明細書中で考察する目的のために、エピトープ結合において直接的に含まれない残基、又は任意の方法でエピトープ結合において含まれない残基の改変が望ましい。CDR領域、フレームワーク領域、及び/又は定常領域のいずれかの内での変異誘発が企図される。共分散分析技術は、抗原結合タンパク質のアミノ酸配列における有用な改変を設計するために、当業者により用いられることができる。例えば、Choulier,et al.,Proteins41:475-484,2000、Demarest et al.,J.Mol. Biol.,2004,335:41-48、Hugo et al.,Protein Engineering,2003,16(5):381-86、Aurora et al.,米国特許公開第2008/0318207 A1号、Glaser et al.,米国特許公開第2009/0048122 A1号、Urech et al.,WO 2008/110348 A1、Borras et al., WO 2009/000099 A2を参照のこと。共分散分析により決定されるそのような改変は、抗原結合タンパク質の効力、薬物動態、薬力学、及び/又は製造可能性の特徴を改善することができる。
【0239】
別の態様では、本発明はまた、本明細書に記載される抗原結合タンパク質の1つ以上の成分(例えば、可変領域、軽鎖、及び重鎖)をコードする1つ以上の核酸又はポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。本明細書で使用される場合、「ベクター」という用語は、タンパク質コード情報を宿主細胞中に移すために使用される任意の分子又は実体(例えば、核酸、プラスミド、バクテリオファージ、又はウイルス)を指す。ベクターの例としては、限定するものではないが、プラスミド、ウイルスベクター、非エピソーム哺乳動物ベクター、及び発現ベクター、例えば、組換え発現ベクターが挙げられる。「発現ベクター」又は「発現構築物」という用語は、本明細書中で使用されるように、特定の宿主細胞における作動可能に連結されたコード配列の発現のために必要な所望のコード配列及び適した核酸制御配列を含む組換えDNA分子を指す。発現ベクターは、限定されないが、転写、翻訳に影響を及ぼす、又はそれを制御する配列、並びに、イントロンが存在する場合、それに作動可能に連結されたコード領域のRNAスプライシングに影響を及ぼす配列を含むことができる。原核生物における発現のために必要な核酸配列は、プロモーター、場合により、オペレーター配列、リボソーム結合部位、及び、恐らくは、他の配列を含む。真核細胞は、プロモーター、エンハンサー、並びに終止シグナル及びポリアデニル化シグナルを利用することが公知である。分泌シグナルペプチド配列はまた、場合により、発現ベクターによりコードされ、対象のコード配列に動作可能に連結されることができ、それにより、発現されたポリペプチドが、所望の場合に、細胞から目的のポリペプチドのより簡便な単離のために、組換え宿主細胞により分泌されることができる。
【0240】
組換え発現ベクターは、任意のベクター(例えば、プラスミド又はウイルス)であってもよく、それは、組換えDNA手順に便利に供することができ、ポリヌクレオチド配列の発現をもたらすことができる。ベクターの選択は、典型的には、ベクターと、ベクターが導入される宿主細胞との適合性に依存する。ベクターは、線形又は閉鎖円形プラスミドであってもよい。例示的な発現ベクターは、とりわけ、T7又はT7lacプロモーターに基づくベクター(pACY:Novagen;pET);バキュロウイルスプロモーターに基づくベクター(例えば、pBAC);EF1-α及びHTLVプロモーターに基づくベクター(例えば、pFUSE2;Invitrogen、米国カリフォルニア州);CMVエンハンサー及びヒトフェリチン軽鎖遺伝子プロモーターに基づくベクター(例えば、pFUSE:Invitrogen、米国カリフォルニア州);CMVプロモーターに基づくベクター(例えば、pFLAG:Sigma、米国);並びにジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーターに基づくベクター(例えば、pEASE:Amgen、米国)を含む。様々なベクターを、対象のポリペプチドの一過性又は安定な発現のために使用することができる。
【0241】
宿主細胞
別の態様では、本明細書に記載される抗原結合タンパク質(例えば、可変領域、軽鎖、及び重鎖)をコードするポリヌクレオチドは、宿主細胞中でのポリペプチドの発現のために、1つ以上の制御配列に作動的に連結される。したがって、更なる態様では、本開示は、本明細書に記載されるTREM2アゴニスト抗原結合タンパク質の成分をコードする1つ以上の発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0242】
例示的な宿主細胞は、原核生物、酵母、又はより高い真核生物細胞を含む。原核宿主細胞は、真正細菌、例えばグラム陰性菌又はグラム陽性菌など、例えば、腸内細菌科、例えば、エシェリキア属(例えば、大腸菌)、エンテロバクター属、エルウィニア属、クレブシエラ属、プロテウス属、サルモネラ属(例えば、サルモネラ・チフィリウム)、セラチア属(例えば、セラチア・マルセスカンス)、及びシゲラ属、並びにバシラス属(例えば、枯草菌、B.リケニフォルミスなど)、シュードモナス属、及びストレプトミセス属などを含む。真核微生物、例えば糸状菌又は酵母などは、組換えポリペプチドのための適切なクローニング又は発現宿主である。サッカロミセス・セレビシエ、又は一般的なパン酵母は、下部真核宿主微生物の間で最も一般的に使用される。しかし、多数の他の属、種、及び系統が、本発明において一般的に利用可能であり、有用であり、例えばピキア属(例えば、P.パストリス)、シゾサッカロミセス・ポンベ;クリベロミセス属、ヤロウイア属;カンジダ属;トリコデルマ・リーシア;ニューロスポラ・クラッサ;シュワンニオミセス属(例えばシュワンニオミセス・オクシデンタリスなど);及び糸状菌、例えば、ニューロスポラ属、ペニシリウム属、トリポクラジウム、及びアスペルギルス属宿主(例えば、A.ニドゥランス、A.ニジェール)などである。
【0243】
グリコシル化抗原結合タンパク質の発現のための宿主細胞は、多細胞生物から由来することができる。無脊椎動物細胞の例は、植物細胞及び昆虫細胞を含む。多数のバキュロウイルス株及びバリアント、並びに宿主からの対応する許容的な昆虫宿主細胞、例えばスポドプテラ・フルギペルダ(毛虫)、ネッタイシマカ(蚊)、ヒトスジシマカ(蚊)、キイロショウジョウバエ(ショウジョウバエ)、及びボンビックス・モリなどが同定されている。そのような細胞のトランスフェクションのための様々なウイルス株が公的に利用可能であり、例えば、オートグラフ・カリフォニカNPVのL-1バリアント及びボンビックス・モリNPVのBm-5株である。
【0244】
脊椎動物宿主細胞も適した宿主であり、そのような細胞からの抗原結合タンパク質の組換え産生は、日常的な手順となっている。発現のための宿主として利用可能な哺乳動物細胞株は、当技術分野において周知であり、限定されないが、American Type Culture Collection(ATCC)から入手可能な不死化細胞株を含み、限定されないが、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、CHOK1細胞(ATCC CCL61)、DXB-11、DG-44、及びチャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO、Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1980,77:4216);SV40により形質転換されたサル腎臓CV1系統(COS-7、ATCC CRL 1651);ヒト胎児腎臓系統(懸濁培養中での増殖のためにサブクローニングされた293又は293細胞(Graham et al.,J.Gen Virol.36:59,1977);ベビーハムスター腎細胞(BHK、ATCC CCL 10);マウスセルトリ細胞(TM4、Mather,Biol.Reprod.,1980,23:243-251);サル腎細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝癌細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳腺腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Mather et al.,Annals N.Y Acad.Sci.,1982,383:44-68);MRC 5細胞又はFS4細胞;哺乳動物骨髄腫細胞、及び他の多くの細胞株を含む。特定の実施形態では、細胞株は、どの細胞株が高い発現レベルを有し、ヒトTREM2結合特性を伴う抗原結合タンパク質を構成的に産生するかを決定することを通じて選択され得る。別の実施形態では、それ自体の抗体を作製しないが、しかし、異種抗体を作製及び分泌する能力を有する、B細胞系統からの細胞株を選択することができる。CHO細胞は、いくつかの実施形態では、本発明のTREM2アゴニスト抗原結合タンパク質を発現するための好ましい宿主細胞である。
【0245】
様々な実施形態では、本開示のポリヌクレオチド、例えば抗原結合タンパク質を発現するための発現ベクターなどを用いた宿主細胞の導入及び形質転換は、トランスフェクション、感染、リン酸カルシウム共沈殿、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、又は他の公知技術を含む方法により達成される。いくつかの実施形態では、選択された方法は、使用される宿主細胞の種類により導くことができる。適切な方法は、例えば、Sambrook et al.,2001において記載されている。
【0246】
発現及び単離
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗原結合タンパク質の1つ以上の成分(例えば、可変領域、軽鎖、及び重鎖)をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞が、目的の抗原結合タンパク質を発現するために使用される。いくつかの実施形態では、抗原結合タンパク質を発現させるための方法は、適切な培地、及び目的のタンパク質の発現のために適した条件において宿主細胞を培養することを含む。
【0247】
選択された培地及び培養条件の種類は、宿主細胞の種類に基づく。いくつかの実施形態では、哺乳動物宿主細胞のための例示的な培地としては、例として、限定されるものではないが、ハムF10(Sigma)、最小必須培地(MEM、Sigma)、RPMI-1640(Sigma)、及びダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Sigma)が挙げられる。いくつかの実施形態では、培地には、必要に応じて、ホルモン及び/又は他の成長因子(インスリン、トランスフェリン、又は上皮成長因子など)、塩(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、及びリン酸など)、緩衝剤(HEPESなど)、ヌクレオチド(アデノシン及びチミジンなど)、抗生物質(GentamycinTM物など)、微量元素(マイクロモル範囲の最終濃度で通常存在する無機化合物として定義される)、並びにグルコース又は等価のエネルギー源が補充され得る。いくつかの実施形態では、培養条件、例えば温度、pH、CO%、及び同様のものなどは、当業者に利用可能で、公知の条件を使用することができる。
【0248】
いくつかの実施形態では、発現された抗原結合タンパク質は、宿主細胞から単離及び/又は精製される。発現されたタンパク質が培地中に存在するいくつかの実施形態では、発現されたタンパク質を含む培地は、単離手順に供される。抗原結合タンパク質が細胞内で産生されるいくつかの実施形態では、細胞は破壊に供され、第1の工程として、粒子破片、宿主細胞又は溶解断片のいずれかが、例えば、遠心分離又は限外濾過により除去される。その後、抗原結合タンパク質は、様々な公知の技術により単離され、更に精製されることができる。そのような単離技術は、プロテインAセファロースを用いた親和性クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、高性能液体クロマトグラフィー、溶解度差、及び同様のものを含む(例えば、Fisher,Laboratory Techniques,In Biochemistry And Molecular Biology,Work and Burdon,eds.,Elsevier(1980)、Antibodies:A Laboratory Manual,Greenfield,E.A.,ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York(2012)、Coligan,et al.(上記)sections 2.7.1-2.7.12 and sections 2.9.1-2.9.3、Barnes,et al.,Purification of Immunoglobulin G(IgG),in Methods Mol.Biol.,Vol.10,pages 79-104,Humana Press(1992)を参照のこと)。
【0249】
いくつかの実施形態では、単離抗体は、更に、以下により測定可能であるように精製することができる:(1)Lowry方法を使用して決定されたタンパク質の重量;(2)スピニングカップシーケンサーの使用によりN末端又は内部アミノ酸配列の少なくとも15の残基を得るために十分な程度まで;あるいは(3)クーマシーブルー又は好ましくは銀染色を使用した還元又は非還元条件下のSDS-PAGEによる均一性まで。精製抗体は、前述の方法により決定されるように、85%又はそれ以上、90%又はそれ以上、95%又はそれ以上、あるいは少なくとも99重量%であることができる。
【0250】
抗体製剤
特定の実施形態では、本発明は、本明細書に開示されるTREM2活性化抗体及びTREM2アゴニスト抗体及び抗原結合タンパク質のうちの1つ又は複数を、薬学的に許容される希釈剤、担体、賦形剤、可溶化剤、乳化剤、防腐剤、及び/又はアジュバントと一緒に含む組成物(例えば、医薬組成物)を提供する。本発明の医薬組成物は、限定されないが、液体組成物、凍結組成物、及び凍結乾燥組成物を含む。「薬学的に許容される」は、ヒトに投与された場合に、用いられる投与量及び濃度でヒトレシピエントに非毒性である、並びに/あるいはアレルギー反応又は有害反応を引き起こさない分子、化合物、及び組成物を指す。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、例えば、組成物のpH、浸透圧、粘度、透明度、色、等張性、臭気、無菌性、安定性、溶解又は放出の速度、吸着又は浸透を改変、維持、又は保存するための製剤材料を含み得る。そのような実施形態では、適切な製剤材料は、限定されないが、アミノ酸(例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、又はリジンなど)、抗微生物剤、抗酸化物質(例えばアスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム、又は水素-亜硫酸ナトリウム)、緩衝剤(例えばホウ酸塩、重炭酸塩、Tris-HCl、クエン酸塩、リン酸塩、又は他の有機酸、増量剤(例えばマンニトール又はグリシンなど)、キレート剤(例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA))、錯化剤(例えばカフェイン、ポリビニルピロリドン、ベータ-シクロデキストリン、又はヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリンなど)、充填剤、単糖類、二糖類、及び他の糖(例えばグルコース、マンノース、又はデキストリンなど)、タンパク質(例えば血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン)、着色、香味剤、及び希釈剤、乳化剤、親水性ポリマー(例えばポリビニルピロリドンなど)、低分子量ポリペプチド、塩形成対イオン(例えばナトリウムなど)、防腐剤(例えば塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸、又は過酸化水素など)、溶媒(例えばグリセリン、プロピレングリコール、又はポリエチレングリコールなど)、糖アルコール(例えばマンニトール又はソルビトールなど)、懸濁剤、界面活性剤又は湿潤剤(例えば、プルロニック(登録商標)、PEG、ソルビタンエステル、ポリソルベート、例えばポリソルベート20、ポリソルベート80など、トリトン、トロメタミン、レシチン、コレステロール、チロキサパル)、安定性増強剤(例えばスクロース又はソルビトールなど)、張性増強剤(例えばアルカリ金属ハロゲン化物、好ましくは、ナトリウム又は塩化カリウム、マンニトールソルビトール)、送達溶媒、希釈剤、賦形剤、及び/又は医薬アジュバントを含む。治療的な使用のための分子を製剤化するための方法及び適切な材料は、医薬技術において公知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.,(A.R.Genrmo,ed.),1990,Mack Publishing Companyにおいて記載されている。
【0251】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、標準的な医薬担体、例えば滅菌リン酸緩衝生理食塩水、静菌水、及び同様のものなどを含む。様々な水性担体、例えば、水、緩衝水、0.4%生理食塩水、0.3%グリシン、及び同様のものなどを使用してもよく、軽度の化学修飾又は同様のものに供された、安定性を高めるための他のタンパク質、例えばアルブミン、リポタンパク質、グロブリンなどを含んでもよい。
【0252】
製剤中の抗原結合タンパク質の例示的な濃度は、約0.1mg/ml~約200mg/ml又は約0.1mg/mL~約50mg/mL、又は約0.5mg/mL~約25mg/mL、あるいは代替的に約2mg/mL~約10mg/mLの範囲であり得る。抗原結合タンパク質の水性製剤は、pH緩衝溶液、例えば、約4.5~約6.5、又は約4.8~約5.5の範囲の、又は代替的に約5.0のpHで調製されてもよい。この範囲内のpHのために適切である緩衝剤の例は、酢酸塩(例えば、酢酸ナトリウム)、コハク酸塩(例えばコハク酸ナトリウムなど)、グルコン酸塩、ヒスチジン、クエン酸塩、及び他の有機酸緩衝剤を含む。緩衝剤の濃度は、例えば、緩衝剤及び製剤の所望の等張性に依存して、約1mM~約200mM、又は約10mM~約60mMであることができる。
【0253】
張性剤は、また、抗原結合タンパク質を安定化し得るが、製剤中に含まれてもよい。例示的な張性剤は、ポリオール、例えばマンニトール、スクロース、又はトレハロースなどを含む。好ましくは、水性製剤は等張であるが、高張又は低張溶液は適切であり得る。製剤中のポリオールの例示的な濃度は、約1%~約15%w/vを範囲となり得る。
【0254】
界面活性剤を、また、抗原結合タンパク質製剤に加えて、製剤化された抗原結合タンパク質の凝集を低下させてもよい及び/又は製剤中の粒子の形成を最小化させてもよい及び/又は吸着を低下させてもよい。例示的な界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート(例えば、ポリソルベート20若しくはポリソルベート80)又はポロキサマー(例えば、ポロキサマー188)が挙げられる。界面活性剤の例示的な濃度は、約0.001%~約0.5%、又は約0.005%~約0.2%、又は代替的に約0.004%~約0.01%w/vの範囲であり得る。
【0255】
一実施形態では、製剤は、上で特定された薬剤(すなわち、抗原結合タンパク質、緩衝剤、ポリオール、及び界面活性剤)を含み、1つ以上の防腐剤、例えばベンジルアルコール、フェノール、m-クレゾール、クロロブタノール、及び塩化ベンゼトニウムなどを本質的に含まない。別の実施形態では、防腐剤は、製剤中に、例えば、約0.1%~約2%の、又は代替的に約0.5%~約1%の範囲の濃度で含まれてもよい。1つ以上の他の薬学的に許容される担体、賦形剤、又は安定剤、例えばREMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES、18th Edition,(A.R.Genrmo,ed.),1990,Mack Publishing Companyにおいて記載されるものなどが、それらが製剤の所望の特徴に悪影響を及ぼさないことを条件として、製剤中に含まれてもよい。
【0256】
抗原結合タンパク質の治療用製剤は、所望される純度を有する抗原結合タンパク質を、任意の生理学的に許容可能な担体、賦形剤、又は安定剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.,(A.R.Genrmo,ed.,1990,Mack Publishing Company)と、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態において混合することにより、保存のために調製される。許容可能な担体、賦形剤、又は安定剤は、用いられる投与量及び濃度でレシピエントに非毒性であり、緩衝液(例えば、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸)、抗酸化物質(例えば、アスコルビン酸及びメチオニン)、防腐剤(オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチル若しくはベンジルアルコール、アルキルパラベン、例えばメチル若しくはプロピルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、及びm-クレゾールなど)、低分子量(例えば、約10残基未満)ポリペプチド、タンパク質(血清アルブミン、ゼラチン、若しくは免疫グロブリン)、親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン)、アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、若しくはリジン)、単糖類、二糖類、及び他の炭水化物(グルコース、マンノース、マルトース、若しくはデキストリンを含む)、キレート剤、例えばEDTA、糖類、例えばスクロース、マンニトール、トレハロース、若しくはソルビトール、塩形成対イオン、例えばナトリウム、金属複合体(例えば、Zn-タンパク質複合体)、並びに/又は非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート(例えば、ポリソルベート20若しくはポリソルベート80)若しくはポロキサマー(例えば、ポロキサマー188)、又はポリエチレングリコール(PEG)を含む。
【0257】
一実施形態では、請求される本発明の適切な製剤は、等張性緩衝剤、例えばリン酸塩、酢酸塩、又はTRIS緩衝剤などを、張性剤、例えばポリオール、ソルビトール、スクロース、又は塩化ナトリウムなどとの組み合わせにおいて含み、それらは等張化及び安定化する。そのような張性剤の一例は、5%ソルビトール又はスクロースである。また、製剤は、場合により、例えば、凝集を防止又は安定性を改善するために、0.01%~0.02% wt/volの界面活性剤を含んでもよい。製剤のpHは、4.5~6.5又は4.5~5.5の範囲であり得る。抗原結合タンパク質のための医薬製剤の他の例示的な記載を、米国特許公開第2003/0113316号及び米国特許第6,171,586号において見出してもよく、それら各々が、その全体において参照により本明細書中に組み入れられる。
【0258】
抗原結合タンパク質の懸濁液及び結晶形態がまた、企図される。懸濁液及び結晶形態を作製する方法は、当業者に公知である。
【0259】
インビボ投与のために使用される製剤は、無菌でなければならない。本発明の組成物は、従来の周知の滅菌技術により滅菌されてもよい。例えば、滅菌は、無菌濾過膜を通した濾過により容易に達成される。結果として得られた溶液は、使用のために包装されてもよく、又は無菌条件下で濾過されてもよく、凍結乾燥調製物は、投与前に滅菌溶液と組み合わされる。
【0260】
凍結乾燥のプロセスは、特にポリペプチドが液体組成物中で比較的不安定である場合に、長期保存のためにポリペプチドを安定化するためにしばしば用いられる。凍結乾燥サイクルは、通常、3つの工程で構成される:凍結、一次乾燥、及び二次乾燥(Williams and Polli, Journal of Parenteral Science and Technology,1984,38(2):48-59を参照のこと)。凍結工程では、溶液を、それが十分に凍結するまで冷却する。溶液中のバルク水は、この段階で氷を形成する。氷は、一次乾燥段階において昇華し、それは、真空を使用して、氷の蒸気圧を下回ってチャンバー圧力を減少させることにより行われる。最後に、吸着又は結合された水は、低下したチャンバー圧力及び上昇した棚温度の下で、二次乾燥段階で除去される。このプロセスによって、凍結乾燥ケーキとして公知の材料が産生される。その後、ケーキを使用前に再構成することができる。
【0261】
凍結乾燥材料についての標準的な再構成の実践は、純粋な水の体積(典型的には凍結乾燥中に除去された体積と等しい)を加えて戻すことであるが、抗菌薬剤の希釈溶液が、非経口投与用の医薬品の製造において時折使用される(Chen,Drug Development and Industrial Pharmacy,Volume 18:1311-1354,1992を参照のこと)。
【0262】
賦形剤が、場合によっては、凍結乾燥産物用の安定剤として作用することが指摘されている(Carpenter et al.,Volume 74:225-239,1991を参照のこと)。例えば、公知の賦形剤は、ポリオール(マンニトール、ソルビトール、及びグリセロールを含む)、糖(グルコース及びスクロースを含む)、並びにアミノ酸(アラニン、グリシン、及びグルタミン酸を含む)を含む。
【0263】
また、ポリオール及び糖はまた、しばしば、ポリペプチドを凍結及び乾燥誘発性損傷から保護し、乾燥状態での保存の間に安定性を増強するために使用される。一般的に、糖、特に二糖類は、凍結乾燥プロセス及び保存の間の両方において有効である。他のクラスの分子、単糖類及び二糖類、並びにポリマー、例えばPVPなどを含め、また、凍結乾燥産物の安定剤として報告されている。
【0264】
注射用には、医薬製剤及び/又は医薬は、上に記載する適した溶液を用いた再構成のための適切な粉末であってもよい。これらの例は、限定されないが、凍結乾燥、回転乾燥又は噴霧乾燥粉末、非晶質粉末、顆粒、沈殿物、又は粒子を含む。注射用には、製剤は、場合により、安定剤、pH調整剤、界面活性剤、生物学的利用能調整剤、及びこれらの組み合わせを含み得る。
【0265】
持続放出調製物を調製してもよい。持続放出調製物の適切な例は、抗原結合タンパク質を含む固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスを含み、そのマトリックスは、成形された物品、例えば、フィルム又はマイクロカプセルの形態である。持続放出マトリックスの例は、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸及びyエチル-L-グルタミン酸のコポリマー、非分解性エチレン-ビニルアセテート、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、例えばLupron Depot(商標)(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドで構成される注射用マイクロスフェア)など、並びにポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸を含む。ポリマー、例えばエチレン-ビニルアセテート及び乳酸-グリコール酸などは、100日間を上回って分子の放出を可能にする一方で、特定のヒドロゲルは、より短い期間にわたりタンパク質を放出する。カプセル化されたポリペプチドが長期間にわたり体内に残る場合、それらは、37℃での水分への曝露の結果として変性又は凝集し、生物学的活性の喪失及び免疫原性における可能な変化をもたらし得る。合理的な戦略を、含まれる機構に依存して、安定化のための考案することができる。例えば、凝集機構が、チオ-ジスルフィド交換を通じた分子間S-S結合形成であることが発見される場合、安定化は、スルフヒドリル残基を修飾し、酸性溶液から凍結乾燥し、水分含量を制御し、適した添加剤を使用し、及び特定のポリマーマトリックス組成物を開発することにより達成され得る。
【0266】
本発明の製剤は、短時間作用、急速放出、長時間作用、又は持続放出であるように設計され得る。このように、医薬製剤はまた、制御放出のために又は遅い放出のために製剤化され得る。
【0267】
特定の投与量は、治療される疾患、障害、又は状態、年齢、体重、全身健康状態、性別、及び対象の食事、投与間隔、投与経路、排泄率、及び薬物の組み合わせに依存して調整され得る。
【0268】
本発明のTREM2アゴニスト抗原結合タンパク質は、非経口、皮下、腹腔内、肺内、くも膜下腔内、脳室内、脳室内、及び鼻腔内、並びに、局所治療のために望ましい場合、病変内投与を含む、任意の適切な手段により投与することができる。非経口投与は、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮内、又は皮下投与を含む。また、抗原結合タンパク質は、特に抗原結合タンパク質の減少する用量を伴う、パルス注入により適切に投与される。好ましくは、投薬は、投与が短いか、又は慢性であるかに部分的に依存して、注射、最も好ましくは静脈内又は皮下注射により与えられる。他の投与方法が企図され、局所的、特に経皮、経粘膜的、直腸、経口、又は局部投与を含み、例えば、所望の部位に近接して配置されたカテーテルを通す。特定の実施形態では、本発明のTREM2アゴニスト抗原結合タンパク質は、生理的溶液中で、0.01mg/kg~100mg/kgの範囲の用量で、毎日から毎週から毎月の範囲の頻度で(例えば、毎日、隔日、3日毎、又は1週間当たり2、3、4、5、若しくは6回)、好ましくは、0.1~45mg/kg、0.1~15mg/kg、又は0.1~10mg/kgの範囲の用量で、1週間当たり1回、2週間毎に1回、又は月に1回の頻度で、静脈内又は皮下に投与される。
【0269】
本明細書に記載されるTREM2アゴニスト抗原結合タンパク質(例えば、抗TREM2アゴニストモノクローナル抗体及びその結合断片)は、TREM2欠損症又はTREM2の生物学的機能の喪失に関連する状態の予防、治療、又は改善を必要とする患者において、それを行うのに有用である。本明細書で使用される場合、「治療する」又は「治療」という用語は、障害の病態の発生を防止する、又はそれを変える意図を伴って実施される介入である。したがって、「治療」は、治療的処置及び予防的又は防止的措置の両方を指す。治療を必要とする患者は、障害若しくは状態が既に診断されている、又はそれを患う患者、並びに障害若しくは状態が予防されるべき患者、例えば、遺伝子マーカーに基づいて障害又は状態を発生するリスクがある患者などを含む。「治療」は、損傷、病理、又は状態の寛解における成功の任意の兆候を含み、任意の客観的又は主観的なパラメータ、例えば症状の低減、緩解、減少など、あるいは損傷、病理、又は状態を患者にとってより許容できるようにすること、変性又は衰退の速度を遅くすること、変性の最終点での衰弱を軽減すること、あるいは患者の身体的又は精神的幸福を改善することなどを含む。症状の治療又は寛解は、客観的又は主観的なパラメータに基づくことができ、身体検査、患者による自己報告、認知検査、運動機能検査、神経精神医学的検査、及び/又は精神医学的評価の結果を含む。
【0270】
8.2.小分子TREM2アゴニスト
小分子アゴニスト
前述の実施形態のいずれかにおいて、本発明の様々な方法及びアッセイで使用されるTREM2アゴニストは、小分子TREM2アゴニスト又はその塩であり得る。
【0271】
いくつかの実施形態では、TREM2のアゴニストは、TREM2の脂質リガンドである。いくつかの実施形態では、TREM2の脂質リガンドは、l-パルミトイル-2-(5’-オキソ-バレロイル)-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POVPC)、2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)、7-ケトコレステロール(7-KC)、24(S)ヒドロキシコレステロール(240HC)、25(S)ヒドロキシコレステロール(250HC)、27-ヒドロキシコレステロール(270HC)、アシルカルニチン(AC)、アルキルアシルグリセロホスホコリン(PAF)、a-ガラクトシルセラミド(KRN7000)、ビス(モノアシルグリセロ)リン酸(BMP)、カルジオリピン(CL)、セラミド、セラミド-1-リン酸(CIP)、コレステリルエステル(CE)、コレステロールリン酸(CP)、ジアシルグリセロール34:1(DG 34:1)、ジアシルグリセロール38:4(DG 38:4)、ジアシルグリセロールピロリン酸(DGPP)、ジヒドロセラミド(DhCer)、ジヒドロスフィンゴミエリン(DhSM)、エーテルホスファチジルコリン(PCe)、遊離コレステロール(FC)、ガラクトシルセラミド(GalCer)、ガラクトシルスフィンゴシン(GalSo)、ガングリオシドGM1、ガングリオシドGM3、グルコシルスフィンゴシン(GlcSo)、ハンクス平衡塩類溶液(HBSS)、Kdo2-脂質A(KLA)、ラクトシルセラミド(LacCer)、リゾアルキルアシルグリセロホスホコリン(LPAF)、リゾホスファチジン酸(LPA)、リゾホスファチジルコリン(LPC)、リゾホスファチジルエタノールアミン(LPE)、リゾホスファチジルグリセロール(LPG)、リゾホスファチジルイノシトール(LPI)、リゾスフィンゴミエリン(LSM)、リゾホスファチジルセリン(LPS)、N-アシル-ホスファチジルエタノールアミン(NAPE)、N-アシル-セリン(NSer)、酸化ホスファチジルコリン(oxPC)、パルミチン酸-9-ヒドロキシ-ステアリン酸(PAHSA)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルエタノール(PEtOH)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルセリン(PS)、スフィンガニン、スフィンガニン-1-リン酸(SalP)、スフィンゴミエリン(SM)、スフィンゴシン、スフィンゴシン-1-リン酸(SolP)、又はスルファチド、あるいはそれらの塩から選択される。
【0272】
いくつかの実施形態では、TREM2のアゴニストはリポ多糖である。
【0273】
いくつかの実施形態では、TREM2のアゴニストは、PCT出願公開WO2019/079529において開示される小分子であり、それは、その全体において参照により本明細書中に組み入れられる。いくつかの実施形態では、TREM2のアゴニストは、チロホスチンAG 538、AC1NS458、IN1040、ブテイン、オカニン、AGL 2263、GB19、GB16、GB20、GB17、GB18、GB21、GB22、GB27、GB44、GB42、GB2、4,4’-ジヒドロキシカルコン、又は3,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、又は上記のいずれかの誘導体若しくは塩である。
【0274】
いくつかの実施形態では、TREM2のアゴニストは、PCT出願公開WO2019/079529において開示されている方法により同定される小分子である。いくつかの実施形態では、TREM2の小分子アゴニストは、TREM2及びチロシンキナーゼ結合タンパク質(TYROBP)を発現する宿主細胞に小分子化合物を適用することにより同定され、ここで、宿主細胞は、NFAT応答エレメント及びレポーターをコードするヌクレオチド配列を含む合成配列を有し、レポーターにより放射されるシグナルを測定する。
【0275】
いくつかの実施形態では、TREM2のアゴニストは、二環式コアを含むTREM2アゴニスト化合物である。いくつかの実施形態では、二環式コアは、10員ヘテロアリールコアである。いくつかの実施形態では、TREM2アゴニスト化合物は、コア環構造の一部として1~4個の窒素原子を含む、10員ヘテロアリールコアを含む。いくつかの実施形態では、TREM2アゴニスト化合物は、3個又は4個の置換基を含む、10員ヘテロアリールコアを含む。
【実施例
【0276】
本明細書に記載される抗体及び結合断片の例示的な実施形態のある特定の特徴及び特性を強調する以下の実施例は、限定ではなく例示目的で提供される。
【0277】
実施例1. マウスモデルにおける遺伝子発現プロファイルのNanostring(登録商標)解析
ヒトTREM2(TREM2の一般的なバリアント、hTREM2-CV)を発現し、ホモ接合マウスTREM2ノックアウトを有する25匹の成体オスマウスを、ヒトTREM2欠損症のモデルとして使用した。hTREM2-CVマウスに、マウス化抗hTREM2抗体(「Ab-3」)を単回投与、又はTREM2の小分子アゴニスト(「化合物X」)を2回投与(BID:0時間及び10時間)した後、24時間後に組織を採取するために安楽死させて、Nanostring(登録商標)解析によって遺伝子発現変化を測定した。
【0278】
抗体Ab-3
抗体Ab-3は、ヒトTREM2アゴニスト抗体のマウス化バージョンであり、PCT出願公開WO2018/195506A1において抗体13E7の操作バリアントとして最初に記載されている。Ab-3は、配列番号19によるHC、配列番号20によるLC(表3中に示す)を有し、配列番号5~8、及び9~10によるCDRを有する抗TREM2抗体を例示する。
【表16】
【0279】
化合物X
化合物Xは、TREM2の小分子アゴニストである。化合物Xは、コア環構造の一部として3個の窒素原子を含有する10員ヘテロアリールコアを有し、中心コア構造から4個の置換基を有する。
【0280】
動物の飼育及び投与手順
動物を集団で収容し、食物及び水を自由に摂取させた。動物を、一定の室温(22±2℃)及び湿度(約50%)で、12:12時間の逆光サイクルで維持した。実験は、Charles River Laboratories、SSFのIACUCによって承認されたプロトコルに従って実施した。6匹の動物には100mpkのAb-3をIP投与し、追加の6匹の動物には、上述のタイミングを使用して、50mpk BIDで経口胃管栄養法により化合物Xを投与した。追加の12匹の動物に対照を投与した。6匹には2%ヒドロキシプロピルメチルセルロース、1%Tween(登録商標)-80のPBS溶液を経口胃管栄養により投与し、6匹には100mpkの非結合一致IgGアイソタイプ対照をIP投与した。動物に、それぞれの試験化合物を、0時間時点及び10時間時点の2回投与した。投与の24時間後、組織採取のためにイソフルラン過剰投与により動物を安楽死させた。最終血液試料を、心臓穿刺によりK3 EDTA抗凝固剤バイアルに採取し、血漿のために処理した。遠心分離(+4℃で10分間2500g)後、血漿を分注し、-80℃で保存した。その後、動物をPBSで灌流し、脳領域を解剖し、急速凍結し、-80℃で保存した。
【0281】
試料の採取及び分析
【0282】
Qiagen試薬を使用して急速凍結した右海馬組織試料からRNAを抽出し、Qubitを使用して濃度を決定した。RNA品質を、Agilent Bioanalyzerを使用して決定し、RINが7を超える試料をNanostring(登録商標)解析に進めた。100ngの各RNA試料を、製造業者のプロトコルに従ってNanostring(登録商標)Mouse Neuroinflammationプローブセットにハイブリダイズした。一晩ハイブリダイゼーションした後、試料をSprintカートリッジに装填し、Nanostring(登録商標)Sprintシステムを使用してスキャンした。主要な遺伝子発現プロファイルを、CNSの炎症に関連する770個の遺伝子からなるnCounter(登録商標)マウス神経炎症パネルを使用して解析した。いくつかのハウスキーピング遺伝子の平均に対する個々の遺伝子発現変化の結果を、目的の経路にグループ化し、nSolver分析ソフトウェアを使用して相対スコアを割り当てた。
【0283】
Nanostring(登録商標)ファイルは、製造業者が推奨する方法に従って分析した。遺伝子を12個のハウスキーピング遺伝子の幾何平均に対して正規化し、ノイズ閾値内であると決定された遺伝子には、陰性対照と等しいカウント値を割り当てた。ノイズカットオフは、各試料の陰性対照の(平均+(2×標準偏差))の最大値を決定することによって計算した。経路解析、細胞型集団解析、及び差次的遺伝子発現は全て、Nanostring(登録商標)Advanced Analysisソフトウェアを使用して、製造業者の推奨プロトコルに従って生成した。
【0284】
Nanostring(登録商標)nSolver(商標)ソフトウェアには、実験で細胞型に関連する遺伝子を識別する細胞型プロファイリングのためのモジュールが含まれる。このモジュールを使用した解析は、化合物X及びAb-3での処理によるミクログリアスコア(ミクログリア関連遺伝子)の増加を明らかにしたが、ニューロンスコア又はアストロサイトスコアに変化は示さず、TREM2活性化で予想されるように、両方の治療によるTREM2アゴニズムのミクログリア特異的効果を示す。表4は、ミクログリア、ニューロン、及びアストロサイト遺伝子の細胞型プロファイリングスコアを報告しており、ミクログリア遺伝子が化合物X及びAb-3での処理によって上方制御されたことを示している。経路解析も実施した。適応免疫応答、自然免疫応答、ミクログリア機能、サイトカインシグナル伝達、及び細胞周期に関連する遺伝子は全て、化合物X及びAb-3で処理した動物の海馬で増加した。表5は、これらの遺伝子に対する化合物X及びAb-3の効果を報告しており、値は遺伝子セットの主成分解析からのPC1スコアを反映している。これらの結果は、化合物X及びAb-3を使用したミクログリアに対するTREM2標的会合の発見を支持している。


【表17】
【表18】
【0285】
表4に示すように、遺伝子発現に対する両処理の効果は、ミクログリアに特異的であった。ミクログリアスコアのみが治療によって増加し、ニューロン又はアストロサイトには影響は観察されなかった。TREM2は骨髄細胞に排他的に発現されるため、これにより、Ab-3及び化合物Xの両方の効果がミクログリアに特異的であり、これらの他のタイプの神経細胞にオフターゲット効果がないことが確認される。
【0286】
表5に示されるように、両処理とも、ミクログリア機能、自然免疫、成長因子シグナル伝達、及び細胞周期を含む、TREM2シグナル伝達の活性化に関連する経路の増加を示した。マウス神経炎症プローブセット上で利用可能な経路の大部分は、両方の処理によって同様に影響を受けた。
【0287】
より大きなプローブセットからの個々の恒常性遺伝子に対する効果も、Nanostring(登録商標)Advanced Analysis Differential Expressionモジュールを使用して、Ab-3を投与されたマウスと化合物Xを投与されたマウスの両方について測定した。Ab-3、化合物X、及びビヒクル対照RNA試料から採取した試料から正規化されたカウントを生成し、カウントを、12個のハウスキーピング遺伝子の幾何平均に対して、並びに各試料の陽性対照に対して正規化した。ノイズ閾値内であると判定された遺伝子には、陰性対照と等しいカウント値を割り当てた。ノイズカットオフは、各試料の陰性対照の(平均+(2×標準偏差))の最大値を決定することによって計算した。LOG2倍率変化は、処理カウントの対照カウントに対する比率をlog2に変換することによって決定した。
【0288】
表6は、恒常性遺伝子のリストと、Ab-3又は化合物Xによる処理後のビヒクル対照に対する遺伝子発現のlog2倍率変化を報告したものである。差次的に発現されなかった遺伝子(ベンジャミニ・ホッホベルグ調整p<0.10)、又は検出されなかった遺伝子は、表6には示していない。空白のセルは、その遺伝子についてその試料セットで有意な差次的発現が観察されなかったことを示す。
【表19-1】
【表19-2】
【表19-3】
【0289】
実施例2. 霊長類モデルにおけるAb-1に対するsCSF1Rの曝露反応
脳内のミクログリアを標的とするTREM2アゴニストであるAb-1を、カニクイザルに単回用量で静脈内(IV)又はくも膜下腔内(IT)のいずれかで投与した。CSF試料中の遊離Ab-1、ケモカイン、及び可溶性コロニー刺激因子1受容体(sCSF1R)の分析を行った。2、20、及び200mg/kgでの単回静脈内投与、並びに0.2又は2mg/動物での単回くも膜下腔内カテーテル投与では、Ab-1は忍容性良好であり、合理的な程度までCSFに浸透することが見出された。
【0290】
Ab-1の調製の詳細
【0291】
投与製剤は、用量レベルの要件を満たすために適切な濃度で調製した。pHを測定し、HClを使用して必要に応じて5.2±0.2に調整した。試験物質の希釈剤、15mM酢酸ナトリウム、9%(w/v)スクロース、0.01%(w/v)ポリソルベート80を、投与前日に無菌的に調製し、0.22μMポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルターを使用して濾過した。Ab-1試験物質を、投与前に冷却条件下で一晩解凍した。用量製剤は、投与日に試験物質を希釈剤と混合することによって調製し、0.22μMのPVDFフィルターで濾過した。製剤完了時から12時間の使用期限を設定し、投与まで冷却(2℃~8℃)保存した。試験材料を、用量投与前に少なくとも30分間、室温まで平衡化させた。
【表20】
【0292】
動物の取り扱い
試験中、カニクイザルは、指定の試験手順/活動の間、個別に収容した。精神/環境エンリッチメントは、標準的な手順に従って提供した。目標温度は64°F~84°F、目標相対湿度は30%~70%に維持した。指定された手順で中断された場合を除いて、12時間の明/12時間の暗サイクルを維持した。Lab Diet(商標)(Certified Primate Diet#5048、PMI Nutrition International,Inc.)を、指定された期間を除き、サルに1日2回利用可能とした。濃縮食品を定期的に提供した。水道水は、自動給水システムを介して各動物に自由に利用可能とした。試験過程を通して獣医によるケアが利用可能であり、臨床徴候又はその他の変化によって正当な理由がある場合には、獣医スタッフが動物を検査した。試験期間中、死亡した動物はいなかった。くも膜下腔内カテーテルは、標準的な椎弓切除手順を使用して外科的に移植した。
【0293】
実験計画
【0294】
試験物質は、IV注射(第1群~第3群)又はIT投与(第4群及び第5群)を介して1日目に1回投与された。用量レベルは、2.0及び2.5mL/kgの用量体積でのIV注射により2、20及び200mg/kg、又は1.5mLの用量体積でのIT投与により0.2及び2mg/動物であった。IV投与では、個々の用量は最新の体重に基づいた。各群は、4匹の対象、2匹のオス及び2匹のメスで構成した。表8に、全体的な実験計画及び投与量レベルの概要を示す。
【表21】
【0295】
CSF試料の採取
ケモカイン及びsCSF1R分析のために、CSF試料(0.25mL)を、ITポートを介して全ての動物から採取した。標的体積のCSF(0.25mL)を、-2日目、4時間、12時間、24時間、32時間、48時間、72時間、96時間、及び168時間の時点で採取した。採取後、ポートをCSF又は滅菌PBSで陽圧ロックした。CSF試料を採取し、湿った氷の上に置いた。全てのアリコートを-60℃~-90℃で凍結保存した。
【0296】
薬理学的結果
CSF試料を、遊離Ab-1、sCSF1R、IP-10、及びMCP-1濃度について時間の関数として測定した。sCSF1R、IP-10、及びMCP-1濃度は、Simoaベースのイムノアッセイプロトコルを使用して決定した。sCSF1R、IP-10、及びMCP-1の濃度を、時間に対してプロットした。sCSF1Rの濃度のベースラインからの変化(CFB)も、遊離Ab-1濃度に対してプロットした。IV投与後及びIT投与後のsCSF1Rの濃度-時間プロファイルをそれぞれ図1及び図2に示す。sCSF1Rの濃度のベースラインからの変化(CFB)をAb-1の濃度に対してプロットしたものを、全てのデータ点の組み合わせとして図3に示し、投与後の時点別にデータを分割したものを図4に示す。図4は、早い時点(<24時間)で曝露反応が最も顕著であり、遅い時点では曝露反応が平坦であることを示しており、sCSF1Rに対するAb-1の間接的応答効果を示唆している。IV投与後及びIT投与後のIP-10の濃度-時間プロファイルをそれぞれ図5及び図6に示す。IV投与後及びIT投与後のMCP-1の濃度-時間プロファイルをそれぞれ図7及び図8に示す。IP-10又はMCP-1と遊離Ab-1との間に有意な曝露反応は観察されなかったため、このデータは含めなかった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
2024520559000001.app
【国際調査報告】