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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】自動車両のタンク用防音バッフル板
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/077 20060101AFI20240517BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
B60K15/077 C
F02M37/00 301J
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573595
(86)(22)【出願日】2022-05-27
(85)【翻訳文提出日】2024-01-26
(86)【国際出願番号】 EP2022064462
(87)【国際公開番号】W WO2022248697
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】LU500212
(32)【優先日】2021-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523449610
【氏名又は名称】プラスチック・オムニウム・アドヴァンスド・イノベーション・アンド・リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-クリストフ・ルメール
(72)【発明者】
【氏名】イン-ム・ユ
【テーマコード(参考)】
3D038
【Fターム(参考)】
3D038CA01
3D038CA04
3D038CC10
(57)【要約】
車両の作動液体を入れるための自動車両のタンク(3)用の防音バッフル板(1)であって、少なくとも2つのパネル(13、15、17)と、バッフル板(1)の他の部分と同一成形の少なくとも1つのヒンジ(19)とを備え、バッフル板(1)少なくとも1つのヒンジ(19)に沿って折り畳まれていない初期構成と、バッフル板(1)が少なくとも1つのヒンジ(19)に沿って折り畳まれた折畳構成と、バッフル板(1)が少なくとも1つのヒンジ(19)に沿って展開された最終構成との間で変形可能であり、折畳構成では、タンクの開口部からタンク内に導入することができる、防音バッフル板(1)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の作動液体を入れるための自動車両のタンク(3)用の防音バッフル板(1、40)であって、
-少なくとも2つのパネル(13、15、17、41、43、45、47)と、
-バッフル板(1、40)の他の部分と同一成形の少なくとも1つのヒンジ(19)と、
を備え、
-バッフル板(1、40)が少なくとも1つの前記ヒンジ(19)に沿って折り畳まれていない初期構成と、
-バッフル板(1、40)が少なくとも1つの前記ヒンジ(19)に沿って折り畳まれた折畳構成と、
-バッフル板(1、40)が少なくとも1つの前記ヒンジ(19)に沿って展開された最終構成と、
の間で変形可能であり、
折畳構成では、前記タンク(3)の開口部(31)から前記タンク(3)内に導入することができる防音バッフル板(1、40)において、
-第1のパネル(15、41、45)の延長上に形成された第1の固定手段(151)と、
-前記第1の固定手段(151)と前記第1のパネル(15、41、45)とを分かつ第2のヒンジ(1511)と、
-前記第1の固定手段(151)を補完する第2の固定手段(131)であって、前記第1のパネル(15、41、45)に隣接する第2のパネル(13、17、43、47)の延長上に形成された第2の固定手段(131)と、
をさらに備え、
前記第1の固定手段(151)と前記第2の固定手段(131)は、前記第1のパネル(15、41、45)との間に180°でない角度が形成されるように前記第1の固定手段(151)が前記第1のパネル(15、41、45)の方に折り畳まれ、前記第1のパネル(15、41、45)と前記第2のパネル(13、17、43、47)が前記最終構成にあるとき、前記第1の固定手段(151)と前記第2の固定手段(131)が自動的に接近して互いに固定し合うように配置されることを特徴とする防音バッフル板(1)。
【請求項2】
少なくとも1つの前記ヒンジ(19)が、隣接する2つのパネル(15、13、17)を分かつ、請求項1に記載の防音バッフル板(1)。
【請求項3】
少なくとも1つの前記ヒンジ(19)が、同一パネル(43、47)の隣接する2つの部分(43A、43B、47A、47B)を分かつ、請求項1または2に記載の防音バッフル板(40)。
【請求項4】
前記バッフル板がその初期構成の形に成形されている、請求項3に記載の防音バッフル板。
【請求項5】
前記バッフル板(40)が平らな形状に成形されている、請求項3に記載の防音バッフル板(40)。
【請求項6】
前記バッフル板(1、40)が、互いに協働して組立ての係合を果たすことができる組立て要素(41A1、41B1)を両端部に備え、好ましくは、前記組立て要素(41A1、41B1)が、互いに協働できる補完的形状を有する、請求項5または請求項2に記載の防音バッフル板(1、40)。
【請求項7】
前記180°でない角度が約90°である、請求項1から6のいずれか一項に記載の防音バッフル板(1、40)。
【請求項8】
少なくとも1つのパネル(13、15、17、41、45)が、前記タンク(3)の壁へのバッフル板(1、40)の固定を果たすための要素(18)を備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の防音バッフル板(1、40)。
【請求項9】
車両の作動液体を入れるための自動車両のタンク(3)であって、請求項1から8のいずれか一項に記載の防音バッフル板(1、40)をその最終構成で備えるタンク。
【請求項10】
前記バッフル板(1、40)が前記タンクの壁に固定され、少なくとも1つの前記ヒンジ(19)が前記壁に対して直角をなす、請求項9に記載のタンク(3)。
【請求項11】
請求項1から4のいずれか一項に記載の防音バッフル板(1、40)の設置方法であって、
-少なくとも1つ前記のヒンジ(19)に沿って前記バッフル板(1、40)を折り畳むステップと、
-折畳構成の前記バッフル板(1、40)を前記タンク(3)の開口部(31)を通して前記タンク(3)内に導入するステップと、
-少なくとも1つの前記ヒンジ(19)に沿って前記バッフル板(1、40)を展開して、前記バッフル板(1、40)が最終構成となるようにするステップと、
を含む方法。
【請求項12】
前記バッフル板(1、40)を前記タンク(3)の少なくとも1つの壁に固定する後続のステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車両のタンク用防音バッフル板、そのバッフル板を備えるタンク及びタンク内へのそのバッフル板の設置方法に関する。タンクは、車両の作動液体、すなわち、燃料、尿素溶液、水、液体水素、ブレーキ液、ウィンドウォッシャー液などのタンクである。より詳細には、本発明は、少なくとも2つのパネルを備える防音バッフル板に関する。
【背景技術】
【0002】
防音バッフル板は、車両の加速時、制動時または方向転換時にタンク内で発生することのある液体の波立ちに伴う騒音(「スロッシュ音(slosh noise)」)を減衰することを目的とする。こうしたバッフル板は、業界用語ではアンチスロッシュバッフル板とも呼ばれる。この種のバッフル板は、揺動防止効果を発揮、つまり、タンク内の液体の動きを制限する働きをする。以下では、防音バッフル板、アンチスロッシュバッフル板及び揺動防止バッフル板のことを単に「バッフル板」と呼ぶ。
【0003】
防音バッフル板は、タンクの上部壁または下部壁でタンク内に固定される。
【0004】
従来、押出ブロー成形によって得られるプラスチック製タンクの場合、防音バッフル板は、タンクの壁に設けられた開口部を通してタンクの製造後にタンク内に導入され、固定されている。利用されるのは、たとえば、ポンプモジュールをタンク内に導入し、固定するための開口部であって、その後は台座によって閉塞される開口部である。しかし、バッフル板の形状が複雑な場合には、タンク内へのバッフル板の導入にこのような方法を利用することは困難である。実際、タンクにあける開口部は、蒸発損失を抑えるためにその大きさも数も極力制限される。そのため、こうしたバッフル板の導入方法は、一般に小型で単純な形状のバッフル板に限られ、必要に応じて、単純な形状の、一般に平坦な、バッフル板が複数個導入される。
【0005】
防音バッフル板を、そのバッフル板の周りを囲む筒状のパリソンの押出ブロー成形による製作と同時にタンク内に導入し、ブロー後またはブロー前にバッフル板を固定する方法も知られている。そうすることにより、少なくとも2つのパネルを有するバッフル板などのように、複雑な形状のバッフル板をタンク内に導入することが可能である。しかし、このようなバッフル板の獲得及び設置のための技法は複雑であり、コストもかかる。この技法で使用されるバッフル板は、複雑な形状をもち、重量的にも重く、車に搭載されるパーツとして不利である。
【0006】
また、特許文献1から、ヒンジで連結された2枚のパネルを有する自動車タンク用の防音バッフルが知られている。この従来技術のバッフルは、ヒンジに沿って折り畳むことによって、タンクの開口部から導入されることができる。その後、展開してタンク内に固定する。バッフルをL字型に保持するために、それ自体がL字状であるバッフル形状制御ピースを使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005-170084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、少なくとも2つのパネルをもつ防音バッフル板であって、タンク内への挿入が簡易かつ安価であるバッフル板を提供することを特に目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明は、車両の作動液体を入れるための自動車両のタンク用の防音バッフル板を対象とする。バッフル板は、
-少なくとも2つのパネルを備え、さらに、
-バッフル板の他の部分と同一成形の少なくとも1つのヒンジを備える。
バッフル板は、
-バッフル板が少なくとも1つのヒンジに沿って折り畳まれていない初期構成と、
-バッフル板が少なくとも1つのヒンジに沿って折り畳まれた折畳構成と、
-バッフル板が少なくとも1つのヒンジに沿って展開された最終構成と、
の間で変形可能であり、
それによって、折畳構成では、バッフル板は、タンクの開口部からタンク内に導入することができる。
本発明は、防音バッフル板が、
-第1のパネルの延長上に形成された第1の固定手段と、
-第1の固定手段と第1のパネルとを分かつ第2のヒンジと、
-第1の固定手段を補完する第2の固定手段であって、第1のパネルに隣接する第2のパネルの延長上に形成された第2の固定手段と、
をさらに備え、第1の固定手段と第2の固定手段は、第1のパネルとの間に180°でない角度が形成されるように第1の固定手段が第1のパネルの方に折り畳まれ、第1のパネルと第2のパネルが最終構成にあるとき、第1の固定手段と第2の固定手段が自動的に接近して互いに固定し合うように配置されることを特徴とする。
【0010】
本発明では、「2つのパネル」という表現は、最終構成でそれぞれ異なる1つの面内に広がる2つのパネルのことをいう。「パネル」という用語は、揺動防止効果を有することができるバッフル板の一部分をいう。
【0011】
ヒンジは、バッフル板の他の部分と同一成形である。ヒンジは、ヒンジによって分けられたバッフル板の2つの部分をヒンジの長手方向軸に沿って正確に相対的に角度移動させて所定の位置関係に導くことを可能にする。バッフル板の各部分は、同じ成形時に共に得られるものである場合には同一成形であると見なされ、各部分は、それらが可逆的に切り離すことのできない単一の部品を共に形成する。
【0012】
「最終構成」とは、バッフル板がタンク内で展開されて設置されたときにバッフル板がとる構成をいう。
【0013】
ヒンジによって分けられたバッフル板の2つの部分の間に形成される角度が最終構成時よりも折畳構成時の方が小さいとき、バッフル板はヒンジに沿って折り畳まれた状態にあると見なされる。好ましくは、折畳構成ではその角度はゼロであり、したがって、折畳構成では、バッフル板の2つの部分は互いが折り返されている。また、初期構成では、その角度は、折畳構成のときよりも大きい。好ましくは、初期構成では、その角度は平角である(ほぼ180°)。
【0014】
したがって、折畳構成では、本発明によるバッフル板の全体寸法の1つは、最終構成のときのその全体寸法よりも小さな寸法となることがわかる。
【0015】
そのため、この解決法は、複雑な形状をもつ防音バッフル板を、製作が容易で、設置も容易なものとして供給することができる。実際、そうしたバッフル板は、平らな板などの単純な形状で製作される。そのため、バッフル板は、プラスチック射出成形によって低いコストで製作することができる。複雑な形状は、プラスチック射出成形後に曲げによって得ることができる。また、ヒンジがあるおかげで、バッフル板は、タンクの開口部から導入することができ、タンク製作時のバッフル板導入よりも簡易かつ安価である。
【0016】
さらに、少なくとも2つのパネルからなるバッフル板の場合、それによってタンク内に導入するバッフル板の数を減らすことができ、場合によっては、タンクに設けられる開口部の数を減らすこともできる。十分な防音効果を得るためには2つの平らなバッフル板が必要になるような場合であっても、1つのバッフル板だけで済ませることができる。2つの平らなバッフル板によるシステムと比べて、2つのパネルが一体であるために固定点の数が減り、場合によっては、タンクに設けられる開口部の数も少なくなる。そのため、タンクの壁へのバッフル板の固定手段の数も、切断・接合作業の数も、タンクの開口部も少なくなって、タンクの組立ても単純化されて、結果として、製造時間の短縮、製造コストの削減、蒸発損失の低減がもたらされる。
【0017】
折畳構成のときに小さくなる寸法とは異なる、バッフル板のその他の全体寸法は、折畳構成と最終構成とで不変であることが好ましい。実際、タンクへの挿入時、バッフル板は、タンクの開口部に対してその寸法をいずれも超えない寸法の断面を有するものでなければならないが、それだけでなく、折畳構成のときにそのそれ以外の寸法が大きくなることもあってはならない。それにより、タンク内への導入及び設置が容易になり、改善される。
【0018】
好ましくは、ヒンジは、バッフル板の高さ方向、つまり、タンクの上下それぞれの壁、すなわち、タンクが車両に装着されたときに地面から遠い方の壁と地面に近い方の壁に対して、ほぼ直角の方向に延びる。
【0019】
有利には、本発明によるバッフル板は、プラスチック射出成形によって成形される。それは単純で迅速、しかも低コストの製作技法である。大型かつ/または複雑な形状のタンクなど、より複雑な形状が要求される場合は、それぞれがさほど複雑でない形状の本発明によるバッフル板複数を設置する方が有利となろう。
【0020】
有利には、ヒンジは、ヒンジが折畳構成に至るために角度を減らす側と反対側のバッフル板の壁の厚みを減らして形成され、それによって、折畳構成でバッフル板の2つの部分の間に形成される角度がゼロとなるときに、バッフル板の2つの部分の間で材料の干渉を起こすことなく折畳構成を得ることができる。あるいは、折畳構成でバッフル板の2つの部分の間に形成される角度がゼロでないとき、ヒンジは、任意選択で、ヒンジの折畳構成を得るために角度が減らされる側、ヒンジの折畳構成を得るために角度が減らされる側と反対側、またはバッフル板の壁の両側のいずれかで、バッフル板の壁の厚さを削ることによって形成される。
【0021】
有利には、バッフル板は、少なくとも1回の折畳と1回の展開にも、タンクに入れる車両の作動液にも耐えることができる材料によって形成される。そのため、PA66やPA6のようなポリアミド、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどを選ぶことができる。
【0022】
防音バッフル板の任意選択によるその他の特徴を、単独または組合せで採り入れたものによれば、
-少なくとも1つのヒンジは、隣接する2つのパネルを分かつ。そのため、たとえば平らな形状など、単純な形状で製作されたバッフル板から、2つのパネル組立体を互いに折り畳むか、または2つのパネル組立体をそれぞれ中央のパネル組立体の上に折り畳むかすることで、タンクの開口部からバッフル板を容易に導入できるようにする。1つのパネル組立体は、少なくとも1つのパネルか、または最低2つの隣接するパネルを備える。この実施形態では、ヒンジによって分けられた2つの部分の間に形成される角度は、最終構成時よりも初期構成時の方が大きい。
-少なくとも1つのヒンジは、同一パネルの隣接する2つの部分を分かつ。これは、たとえば平行六面体などのように閉構造を形成するパネルを有するバッフル板の場合に有利であるが、それは、第3のパネルの折畳みまたは別の2つのパネルの折畳みによってバッフル板の少なくとも2つのパネルを近づけることができるためである。この実施形態では、ヒンジによって分けられた2つの部分の間に形成される角度は、初期構成時も最終構成時も同じである。
【0023】
ある実施形態では、バッフル板はその初期構成の形に成形される。それによって、構造を閉じるステップを省くことができる。
【0024】
別の実施形態では、バッフル板は、平らな形状に成形されるなど、単純な形状で製作される。初期構成のバッフル板を得るには、バッフル板の2つの隣接するパネルの間の分割線に沿って平らな形状を折り畳む。閉構造を得るために必要な場合には、平らな形状の両端部を組立て要素のレベルで組み立てる。そのため、バッフル板は、互いに協働して組立ての係合を果たすことができる組立て要素を両端部に備える。好ましくは、組立て要素は、組立ての係合を果たすために、互いに協働できる補完的形状を有する。それにより、組立ては閉構造が得られるように行われる。「閉構造」とは、本発明でいうところのパネルによってその全体にわたって画定された構造のことをいう。
【0025】
-180°でない角度は約90°である。それにより、バッフル板の最終構成でバッフル板をブロックすることで、バッフル板のパネルの相対的な動きを阻止することができる。それはまた、タンクの壁へのバッフル板の固定点の数を減らすことも可能にする。
【0026】
-少なくとも1つのパネルは、タンクの壁へのバッフル板の固定を果たすための要素を備える。その壁は、タンクの上部壁であることが好ましい。その壁は、タンクの下部壁であることもできる。
【0027】
本発明は、車両の作動液体を入れるための自動車両のタンクであって、上記請求項のいずれか一項に記載の防音バッフル板をその最終構成で備えるタンクも対象とする。タンクは、折畳構成にある防音バッフル板の導入を可能にする開口部を備えるものと理解される。
【0028】
任意選択の1つの特徴によれば、バッフル板はタンクの壁に固定され、有利には、バッフル板のヒンジは前記壁に対して直角をなす。バッフル板が取り付けられたタンクの壁に対して直角をなすヒンジの向きは、パネル間の角度を変えることのできる非常に多様な最終構成のバッフル板を得ることを可能にする。そうして得られるバッフル板は、たとえば、Z、H、Y、TまたはI字形の構造をなすことができる。
【0029】
本発明はさらに、上に説明したような防音バッフル板の設置方法を対象とする。設置方法は、
-少なくとも1つのヒンジに沿ってバッフル板を折り畳むステップと、
-折畳構成のバッフル板をタンクの開口部を通してタンク内に導入するステップと、
-少なくとも1つのヒンジに沿ってバッフル板を展開して、バッフル板が最終構成となるようにするステップと、
を含む。
【0030】
こうした方法は簡易かつ迅速であり、バッフル板をその初期構成からその折畳構成へ、さらに最終構成へともっていくために、複雑な装置も、追加の部品も必要としない。
【0031】
任意選択の1つの特徴によれば、この方法は、バッフル板をタンクの少なくとも1つの壁に固定する後続のステップをさらに含む。固定は、接着、リベット留め、ネジ留め、ヘッディング(bouterollage)または当業者によって通常使用されるその他の固定技法によって行うことができる。
【0032】
本発明については、添付の図面を参照しながら以下に例としてのみ示す説明を読むことによって、よりよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の第1の実施形態による防音バッフルを備える自動車両のタンクの透過斜視図である。
図2図1に示したバッフル板の正面図であって、バッフル板が初期構成にあるときの図である。
図3図1に示したバッフル板の斜視図であって、バッフル板が折畳構成にあるときの図である。
図4図1に示したバッフル板の斜視図であって、バッフル板が折畳構成と最終構成の間の中間構成にあるときの図である。
図5図1に示したバッフル板の斜視図であって、バッフル板が最終構成にあるときの図である。
図6図1のタンクの概略図であって、折畳構成のバッフル板をタンク内に導入しているときの図である。
図7】本発明の第2の実施形態による防音バッフル板の正面図であって、バッフル板が初期構成にあるときの図である。
図8図7に示したバッフル板の斜視図であって、バッフル板が折畳構成にあるときの図である。
図9図7に示したバッフル板の斜視図であって、バッフル板が折畳構成と最終構成の間の中間構成にあるときの図である。
図10図7に示したバッフル板の斜視図であって、バッフル板が折畳構成と最終構成の間の中間構成にあるときの図である。
図11図7に示したバッフル板の斜視図であって、バッフル板が最終構成にあるときの図である。
図12図7に示したバッフル板の上面図であって、バッフル板が折畳構成にあるときの図である。
図13図7に示したバッフル板の上面図であって、バッフル板が折畳構成と最終構成の間の中間構成にあるときの図である。
図14図7に示したバッフル板の上面図であって、バッフル板が最終構成にあるときの図である。
図15】本発明による自動車両のタンク例の透過上面図である。
図16】本発明による自動車両のタンク例の透過上面図である。
図17】本発明による自動車両のタンク例の透過上面図である。
図18】本発明による自動車両のタンク例の透過上面図である。
図19】本発明による自動車両のタンク例の透過上面図である。
図20】本発明による自動車両のタンク例の透過上面図である。
図21】本発明による自動車両のタンク例の透過上面図である。
図22】本発明による自動車両のタンク例の透過上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の第1の実施形態による防音バッフル板(全体を符号1で表す)を図1から図6までに示した。図1では、バッフル板1は、自動車両のタンク3内にあるところが示されている。タンク3は、車両の作動液体を入れるために用意されている。バッフル板1は成形によって製作される。バッフル板1は、少なくとも2つのパネル(ここでは13、15、17の3つのパネル)と少なくとも1つのヒンジ(ここでは2つのヒンジ)19を備える。バッフル板1は、第1のパネル15の延長上に形成された2つの第1の固定手段151と、第1のパネル15と各々の第1の固定手段151とを分かつ第2のヒンジ1511とをさらに備える。第1の固定手段151を補完する2つの第2の固定手段131は、1つは第1のパネル15に隣接する第2のパネル13の延長上に形成され、もう1つは第1のパネル15に隣接する第2のパネル17の延長上に形成される。そして、バッフル板1は、タンク3の上部壁へのバッフル板1の固定を果たすための3つの固定要素18を備える。バッフル板は、
-バッフル板1がヒンジ19に沿って折り畳まれていない初期構成(図2)と、
-バッフル板1がヒンジ19に沿って折り畳まれた折畳構成(図3)と、
-バッフル板1がヒンジ19に沿って展開された最終構成(図5)と、
の間で変形することができる。
【0035】
最終構成では、パネル13、15、17は、それぞれが異なる平面内に広がる。これらのパネルは、各々が揺動防止効果を発揮することができる。ヒンジ19は、それによって分けられたバッフル板の2つの部分、ここではパネル13及びパネル15と、パネル15及びパネル17というそれぞれ2つの部分について、所定の位置までのヒンジの長手方向軸に正確に沿った相対的な角度移動を可能にする。ヒンジ19によって分けられたバッフル板の2つの部分の間に形成される角度α(図5でパネル13と15の間に示されているもの)は、最終構成時よりも折畳構成時の方が小さい。ヒンジ19は、折畳構成に至るために角度αが減らされる側の反対側でバッフル板の壁の厚さを削ることによって形成される。図2を見ると、ヒンジ19を形成するために、バッフル板の壁は、図示されている側と反対の側において厚さを削られていることがわかる。
【0036】
図4は、折畳構成と最終構成との間の中間構成にあるときのバッフル板1を示している。そこでの角度αは最終構成のときよりも小さい。初期構成では、角度αは折畳構成時よりも大きい。
【0037】
ヒンジ19は、タンク3内に設置されると、バッフル板1の高さ方向に延びる。
【0038】
図2から図5までに示したように、折畳構成では、バッフル板1はその全体寸法の1つ(ここではその全幅lt)が最終構成の全幅と比べて小さくなっている。折畳構成では、その全幅が最終構成時の全幅と比べて大きくなることはない。
【0039】
折畳構成では、バッフル板1を、タンク3の開口部31からタンク3内に導入することができる。
【0040】
第1の固定手段151と第2の固定手段131は、第1のパネル15との間に約90°の角度が形成されるように第1の固定手段151が第1のパネル15の方に折り畳まれ、第1のパネル15と第2のパネル13または17が最終構成(図5)にあるとき、第1の固定手段151と第2の固定手段131が自動的に接近して互いに固定し合うように配置される。この実施形態では、手段151は、ツメである手段131が滑動できるようにする切込みを有するブラケットである。
【0041】
バッフル板1は、図2に示すような平らな形状にプラスチック射出成形される。
【0042】
自動車両のタンク3内への設置は以下のようにして行う。少なくとも1つのヒンジ19に沿ってバッフル板1を折り畳み、その折畳構成のバッフル板1を開口部31からタンク3内に導入(図6)した後、バッフル板1を少なくとも1つのヒンジ19に沿って展開して、バッフル板1が最終構成になるようにする。
【0043】
この実施形態では、折畳構成を得るための折り畳むことに先立って、またはその後に、またはそれと同時に、第1の固定手段151を第1のパネル15の方に折り畳んで、図3などに見ることができるように、第1のパネル15との間に約90°の角度を形成する。第1のパネル15と第2のパネル13、17が最終構成にあるとき、第1の固定手段151と第2の固定手段131は、自動的に接近して互いに固定し合う。続いて、バッフル板1をタンク3の少なくとも1つの壁、より詳細にはタンクの上部壁に、固定要素18を介して固定する。
【0044】
図15から図22までは、本発明の第1の実施形態を例証するものとして示した各種タンク例である。これらの例では、同一の構成要素には同じ符号が与えられている。図15から図17までは燃料タンクを表している。図18から図22まではSCRシステムのための尿素溶液のタンクを表している。各図で、矢印は車両の長手方向軸を示している。これらの例では、バッフル板1のパネル13、15、17の数が3つを超える場合、その超える分のパネルには符号14が与えられている。図15から図17において、開口部31は、燃料圧送モジュールがタンク内に導入されて固定される開口部である。図18から図22において、開口部31は、尿素溶液の圧送モジュールがタンク内に導入されて固定される開口部である。これらの例では、少なくとも1つのパネルは、各図に示されたタンクの壁に対するバッフル板1の固定要素18を備える。ヒンジ19は前記壁に対して直角をなす。タンクの壁に対して直角をなすヒンジ19のこの向きは、図示した各種の例に見られるように、様々なパネル間の角度を有する非常に多様な最終構成をもつバッフル板を得ることを可能にする。たとえば、図21にはZ形の構造が見られる。
【0045】
図7から図14までには本発明の第2の実施形態によるバッフル板40を示した。この実施形態は第1の実施形態に多くの点で似通っており、同一の構成要素には同じ符号が与えられている。バッフル板40は、4つのパネル41、43、45及び47を備えている。
【0046】
図7から図14までに示したこの実施形態の変形では、バッフル板40は、図7に示した平らな形状に製作される。パネル41は、平らな形状の両端の一方を各々が構成する部分41A及び41Bであって、組立て要素41A1及び41B1のところで互いに組み立てられる部分41A及び41Bを組み立てることによって得られる。図示されている実施形態では、組立て要素41A1及び41B1は、互いに協働して組立ての係合を果たすことのできるオス型要素とメス型要素の組立体として相補的な形状を備える。好ましくは、オス型要素は弾性小突起であり、メス型要素は溝穴である。初期構成(図11及び図14で見ることのできるもの)のバッフル板を得るには、平らな形状をパネル41、43、45及び47の間の分割線48に沿ってその平らな形状から折り畳む。図11及び図14は最終構成のバッフル板も表している。
【0047】
図示されていない変形では、バッフル板はその初期構成に成形される。
【0048】
第1の固定手段151の数は4つである。その各々は、第1のパネル41または45の延長上に形成される。第2の固定手段131の数は4つである。その各々は、第2のパネル43または47の延長上に形成される。ヒンジ19は、それによって分けられたバッフル板の2つの部分、ここでは同じパネル43または47の隣接する2つの部分43A及び43Bと、47A及び47Bの2つの部分について所定の位置までのヒンジ19の長手方向軸に正確に沿った相対的な角度移動を可能にする。この実施形態では、ヒンジ19によって分けられたバッフル板の2つの部分の間に形成される角度α(図中、部分47Aと47Bの間に示したもの)は、初期構成時も最終構成時も同じである(いずれも図11及び図14のとおり)。
【0049】
最終構成では、パネル41、43、45及び47は、互いに異なる平面内に広がる。これらのパネルは、各々が揺動防止効果を発揮することができる。バッフル板40がタンク3内に設置されると、ヒンジ19はバッフル板40の高さ方向に延びる。
【0050】
図8から図11までに示すように、折畳構成(図8)では、バッフル板40は、その全体寸法の1つ、ここではその全幅ltが最終構成時(図11)の全幅と比べて小さくなっている。折畳構成では、その全長が最終構成時の全長と比べて大きくなることはない。この実施形態では、折畳構成のときに小さくなる寸法でないバッフル板の全体寸法に関しては、折畳構成と最終構成との間で不変である。
【0051】
第1の固定手段151と第2の固定手段131は、第1のパネル41、45との間に約90°の角度が形成されるように第1の固定手段151が第1のパネル41、45の方に折り畳まれ、第1のパネル41、45と第2のパネル43、47が最終構成(図11)にあるとき、第1の固定手段151と第2の固定手段131が自動的に接近して、互いに固定し合うように配置される。
【0052】
この実施形態では、折畳構成を得るための折畳みに先立って、またはその後に、またはそれと同時に、第1の固定手段151を第1のパネル41、45の方へ折り畳んで、図10などに見ることができるように、第1のパネル41、45との間に約90°の角度を形成する。第1のパネル41、45と第2のパネル43、47が最終構成にあるとき、第1の固定手段151と第2の固定手段131は自動的に接近して、互いに固定し合う。
【0053】
図示した実施形態では、角度αは初期構成では平角、折畳構成ではゼロであるが、それ以外の角度を用いることもできる。
【符号の説明】
【0054】
1 防音バッフル板、3 タンク、13 第2のパネル、15 第1のパネル、17 第2のパネル、18 要素、19 ヒンジ、31 開口部、40 防音バッフル板、41 第1のパネル、41A1 組立て要素、41B1 組立て要素、43 第2のパネル、45 第1のパネル、47 第2のパネル、48 分割線、131 第2の固定手段、151 第1の固定手段、1511 第2のヒンジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図15
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図17
図18
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図21
図22
【国際調査報告】