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特表2024-520566ガラス管をガラス物品に変換するための成形ツール
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】ガラス管をガラス物品に変換するための成形ツール
(51)【国際特許分類】
   C03B 23/045 20060101AFI20240517BHJP
   C03B 7/22 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
C03B23/045
C03B7/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573617
(86)(22)【出願日】2022-05-31
(85)【翻訳文提出日】2024-01-23
(86)【国際出願番号】 US2022031516
(87)【国際公開番号】W WO2022256288
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】2021115971
(32)【優先日】2021-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100224775
【弁理士】
【氏名又は名称】南 毅
(72)【発明者】
【氏名】フルネル,オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】フレドホルム,アラン マーク
(72)【発明者】
【氏名】ウエルタ,セサル ブラヴォー
(72)【発明者】
【氏名】パルンボ,アニエッロ マリオ
(72)【発明者】
【氏名】ピエロン,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ツヴェトコフ,ボリス ニコラエヴィッチ
【テーマコード(参考)】
4G015
【Fターム(参考)】
4G015BA00
4G015BB01
4G015BB02
(57)【要約】
ガラス管をガラス容器に変換するプロセスで使用する成形ツールは、流体を収容するための流体キャビティを備える基台部と、基台部から延びる挿入部と、を備える。挿入部は、ガラス管の開口部に嵌合するサイズの外表面を有している。複数の実施形態において、挿入部は、挿入部の内表面から外表面まで延びる流体開口部を備え、流体開口部は、流体キャビティから挿入部とガラス管との間に流体を送達するように構成される。複数の実施形態において、成形ツールは、基台部及び挿入部を通って延びる熱伝導性インサートを備え、熱伝導性インサートは、流体キャビティ内の流体により熱伝導性インサートの温度が調節されるように、流体キャビティを通って延びる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス管をガラス容器に変換するプロセスで使用する成形ツールであって、該成形ツールが、
流体を収容するための流体キャビティを備える基台部と、
前記基台部から延びる挿入部であって、前記ガラス管の開口部に嵌合するサイズの外表面を有する挿入部と、
を備え、
前記挿入部が、該挿入部の内表面から前記外表面まで延びる流体開口部を備え、該流体開口部が、前記流体キャビティから前記挿入部と前記ガラス管との間に前記流体を送達するように構成されること、
前記成形ツールが、前記基台部及び前記挿入部を通って延びる熱伝導性インサートを備え、該熱伝導性インサートが、前記挿入部を形成する材料の熱伝導率よりも大きい熱伝導率を有しており、前記流体キャビティ内の前記流体により前記熱伝導性インサートの温度が調節されるように、前記熱伝導性インサートが前記流体キャビティを通って延びること、
のうちの少なくとも一方を伴う成形ツール。
【請求項2】
前記挿入部が、前記内表面から前記外表面まで延びる前記流体開口部を備え、
前記流体が、前記挿入部と前記ガラス管との間に膜を形成する潤滑剤を含む、請求項1に記載の成形ツール。
【請求項3】
前記流体開口部が、
前記内表面と前記外表面の間を延びる少なくとも1つの離散孔、
前記挿入部を形成する前記材料の多孔性により得られる流路、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項2に記載の成形ツール。
【請求項4】
前記成形ツールが、前記流体キャビティと流体連通する加圧潤滑剤源をさらに備え、
該加圧潤滑剤源が、前記流体キャビティに所定量の前記潤滑剤を、前記ガラス管が前記成形ツールと接触している成形期間にわたって送達するように構成されている、請求項2に記載の成形ツール。
【請求項5】
前記成形ツールが、前記基台部及び前記挿入部を通って延びる熱伝導性インサートを備え、
前記流体が、前記流体キャビティを通って循環する冷却剤を含み、
前記成形ツールが、
冷却剤源と、
前記冷却剤源及び前記流体キャビティと流体連通する冷却剤入口部と、
冷却剤出口部と、
をさらに備え、
前記冷却剤源からの冷却剤が、前記冷却剤入口部から前記流体キャビティに入って前記熱伝導性インサートの周囲を循環し、前記冷却剤出口部から前記成形ツールを出ることにより、前記成形ツールから熱を除去する、請求項1に記載の成形ツール。
【請求項6】
前記熱伝導性インサートが、前記挿入部に配置される近位端と、前記基台部に配置される遠位端とを有しており、
前記冷却剤が、前記遠位端の周囲、及び前記近位端と前記遠位端との間に延在する前記熱伝導性インサートの中央領域の少なくとも一部の周囲を循環するように、前記流体キャビティが前記遠位端の周囲に延在する、請求項5に記載の成形ツール。
【請求項7】
前記成形ツールの中心軸が、前記熱伝導性インサートの少なくとも一部を通って延びる、請求項5に記載の成形ツール。
【請求項8】
前記熱伝導性インサートが、前記挿入部内を延びる直線部と、前記基台部に配置されるコイル状部とを備える、請求項7に記載の成形ツール。
【請求項9】
前記熱伝導性インサートがヒートパイプを備える、請求項5に記載の成形ツール。
【請求項10】
ガラス管をガラス容器に変換する方法であって、
該方法が、
高温になるまで前記ガラス管を加熱するステップと、
前記ガラス容器の部分を形成するように、加熱された前記ガラス管を成形するステップと、
を含み、
前記成形するステップが、
前記ガラス管の外表面の一部を第1の成形ツールに接触させるステップと、
前記ガラス管の肉厚が、前記第1の成形ツールと、流体キャビティを備える第2の成形ツールとの間に配置されるように、前記第2の成形ツールを前記ガラス管の開口部に挿入するステップと、
前記第2の成形ツールを前記開口部に挿入している間、前記流体キャビティ内に流体を循環させるステップと、を含み、
前記循環させるステップにより、
前記第2の成形ツールの流体開口部から、前記第2の成形ツールと前記ガラス管の間の空間に前記流体を送出すること、
前記第2の成形ツールを通って延びる熱伝導性インサートの周囲を、前記流体が循環すること、
のうちの少なくとも一方が得られる、方法。
【請求項11】
前記加熱された前記ガラス管を成形するステップが、前記ガラス管の前記肉厚が前記第1の成形ツールと前記第2の成形ツールの間に配置されている間、軸を中心に前記ガラス管を回転させるステップを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記流体キャビティ内に流体を循環させるステップにおいて、前記流体開口部から前記流体が送出され、
前記流体は潤滑剤であり、
前記流体キャビティ内に流体を循環させるステップが、前記第2の成形ツールと前記ガラス管の間に潤滑剤層を形成するために、前記第2の成形ツールが前記開口部に挿入された状態で回転している間に、一定量の前記潤滑剤を所定の圧力で前記流体キャビティに供給するステップを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記流体が前記熱伝導性インサートの周囲を循環し、
前記流体が冷却剤を含み、
前記流体キャビティ内に流体を循環させるステップが、
前記流体キャビティと流体連通する冷却剤入口部を介して、前記冷却剤を冷却剤源から前記流体キャビティに供給するステップと、
前記冷却剤が前記熱伝導性インサートの周囲を循環した後に、前記流体キャビティと流体連通する冷却剤出口部から前記流体キャビティから前記流体を排出し、前記ガラス管から受け取った熱を前記第2の成形ツールから取り除くステップと、
を含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2021年6月3日を出願日とするロシア特許出願第2021115971号の米国特許法第119条に基づく優先権の利益を主張するものであり、この出願のすべての開示内容は、本明細書の依拠するところとし、参照により本明細書に援用するものとする。
【技術分野】
【0002】
本明細書は、概して、ガラス管をガラス物品に変換する際に使用する成形ツールに関する。
【背景技術】
【0003】
ガラス管は他のガラス物品に変換される場合がある。例えば、ガラス管は、医薬用途で使用する様々なガラス容器に変換することができる。かかるガラス容器としては、限定されるものではないが、バイアル、シリンジ、アンプル、カートリッジなどのガラス物品が挙げられる。ガラス管の変換は、例えば、変換機で行うことができる。かかる変換機は、通常、火炎加工ステップ、回転式及び固定式のツール成形ステップ、熱切り離しステップ、又は割線引き及び衝撃分割ステップなどの複数のステップにより長尺のガラス管を複数のガラス物品に再成形するものである。例えば、ガラス管の形状を再加工する際には、ガラス管を1つ以上の成形ツールに接触させることによりガラス管の一部を容易に再成形できるよう、1つ以上の加熱ステーションでガラス管を高温になるまで予熱しておくことができる。そして、所望の形状に再加工されたガラス管の部分は、ガラス管の残りの部分から切り離して、所望のガラス物品又は容器とするためのさらなる加工を施すことができる。
【0004】
上述のツール成形ステップ時には、得られるガラス物品に欠陥が生じるのを防ぐための対策を講じることができる。例えば、成形ツールとガラスの間の摩擦を低減して、得られるガラス物品に摩擦痕や熱ビリ(thermal check)が生じるのを防ぐため、ガラス管をガラス容器の一部に再加工する前に潤滑剤を成形ツールに噴霧しておくことができる。また、成形ツール表面への潤滑剤の焼き付きを防ぐため、ガラス管加工の合間に成形ツールを冷却できるようにすることもできる。しかし、上記の対策は、潤滑剤の塗布や冷却を行えるように変換プロセスを一時停止するものであるため、非効率である。とはいえ、成形ツールを十分に冷却しなければ、成形ツールに噴霧した潤滑剤が焼き付いて、炭素層が形成され、ひいては成形ツールの形状が凹凸になる恐れもある。また、成形ツールに塗布する潤滑剤の量が不十分な場合には、過度の摩擦によってガラス管に欠陥が生じてしまう可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、ガラス管をガラス物品に変換するプロセスの最中に、成形ツールに潤滑剤を塗布し、成形ツールの温度を調節する、改良された方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、ガラス管をガラス容器に変換するプロセスで使用する成形ツールを含む。成形ツールは、流体を収容するための流体キャビティを備える基台部と、基台部から延びる挿入部であって、ガラス管の開口部に嵌合するサイズの外表面を有する挿入部と、を備える。複数の実施形態において、挿入部は、挿入部の内表面から外表面まで延びる流体開口部を備え、流体開口部は、流体キャビティから挿入部とガラス管との間に流体を送達するように構成される。複数の実施形態において、成形ツールは、基台部及び挿入部を通って延びる熱伝導性インサートを備え、熱伝導性インサートは、挿入部を形成する材料の熱伝導率よりも大きい熱伝導率を有しており、流体キャビティ内の流体により熱伝導性インサートの温度が調節されるように、熱伝導性インサートは流体キャビティを通って延びる。
【0007】
本開示の第2の態様は、挿入部が、内表面から外表面まで延びる流体開口部を備え、流体が、挿入部とガラス管との間に膜を形成する潤滑剤を含む、第1の態様に記載の成形ツールを含む。
【0008】
本開示の第3の態様は、流体開口部が、内表面と外表面の間を延びる少なくとも1つの離散孔を含む、第1又は第2の態様に記載の成形ツールを含む。
【0009】
本開示の第4の態様は、挿入部が、離散孔の配列を備える、第1~第3の態様のいずれかに記載の成形ツールを含む。
【0010】
本開示の第5の態様は、離散孔の配列が、挿入部の外周の少なくとも一部に沿って延びる複数列の離散孔を含む、第1~第4の態様のいずれかに記載の成形ツールを含む。
【0011】
本開示の第6の態様は、流体開口部が、挿入部を形成する材料の多孔性により得られる流路を含む、第1~第5の態様のいずれかに記載の成形ツールを含む。
【0012】
本開示の第7の態様は、挿入部を形成する材料がグラファイトである、第1~第6の態様のいずれかに記載の成形ツールを含む。
【0013】
本開示の第8の態様は、挿入部を形成する材料が、焼結鋼、ステンレス鋼、及び真鍮からなる群から選択される、第1~第7の態様のいずれかに記載の成形ツールを含む。
【0014】
本開示の第9の態様は、成形ツールが、流体キャビティと流体連通する加圧潤滑剤源をさらに備え、加圧潤滑剤源が、流体キャビティに所定量の潤滑剤を、ガラス管が成形ツールと接触している成形期間にわたって送達するように構成されている、第1~第8の態様のいずれかに記載の成形ツールを含む。
【0015】
本開示の第10の態様は、潤滑剤が、油、又は空気と油の混合物を含む、第1~第9の態様のいずれかに記載の成形ツールを含む。
【0016】
本開示の第11の態様は、成形ツールが、基台部及び挿入部を通って延びる熱伝導性インサートを備え、流体が、流体キャビティを通って循環する冷却剤を含み、成形ツールが、冷却剤源と、冷却剤源及び流体キャビティと流体連通する冷却剤入口部と、冷却剤出口部と、をさらに備え、冷却剤源からの冷却剤が、冷却剤入口部から流体キャビティに入って熱伝導性インサートの周囲を循環し、冷却剤出口部から成形ツールを出ることにより、成形ツールから熱を除去する、第1~第10の態様のいずれかに記載の成形ツールを含む。
【0017】
本開示の第12の態様は、熱伝導性インサートが、挿入部に配置される近位端と、基台部に配置される遠位端とを有しており、冷却剤が、遠位端の周囲、及び近位端と遠位端との間に延在する熱伝導性インサートの中央領域の少なくとも一部の周囲を循環するように、流体キャビティが遠位端の周囲に延在する、第1~第11の態様のいずれかに記載の成形ツールを含む。
【0018】
本開示の第13の態様は、成形ツールの中心軸が、熱伝導性インサートの少なくとも一部を通って延びる、第1~第12の態様のいずれかに記載の成形ツールを含む。
【0019】
本開示の第14の態様は、熱伝導性インサートが、挿入部内を延びる直線部と、基台部に配置されるコイル状部とを備える、第1~第13の態様のいずれかに記載の成形ツールを含む。
【0020】
本開示の第15の態様は、熱伝導性インサートの全体が成形ツールの中心軸に沿って延びる、第1~第14の態様のいずれかに記載の成形ツールを含む。
【0021】
本開示の第16の態様は、熱伝導性インサートがヒートパイプを備える、第1~第15の態様のいずれかに記載の成形ツールを含む。
【0022】
本開示の第17の態様は、熱伝導性インサートが、銅、グラファイト、又はそれらの組み合わせで構成される、第1~第16の態様のいずれかに記載の成形ツールを含む。
【0023】
本開示の第18の態様は、冷却剤が水を含む、第1~第17の態様のいずれかに記載の成形ツールを含む。
【0024】
本開示の第19の態様は、ガラス管をガラス容器に変換する装置を含む。本装置は、成形ステーションと、ガラス容器を着脱可能に固定するように構成された保持具と、保持具に動作可能に結合された駆動機構であって、保持具軸を中心にガラス管を回転させるように構成された駆動機構と、成形位置にセットすることにより、ガラス管の外表面に接触するように配置される第1の成形ツールと、ガラス管の開口部に挿入されるように構成された第2の成形ツールと、を備える。第1の成形ツールを成形位置にセットすると、ガラス管が第1の成形ツールと第2の成形ツールとの間で押圧されるとともに、ガラス管が回転しながら第1の成形ツールと第2の成形ツールとの間でガラス管が押圧されるように駆動機構が保持具を回転させて、ガラス管の外周に沿って延在するガラス容器の部分を形成する。第2の成形ツールは、流体キャビティを備える基台部と、基台部から延びる挿入部であって、ガラス管の開口部に嵌合するサイズの外表面を有する挿入部と、を備える。本装置は、挿入部が、挿入部の内表面から外表面まで延びる流体開口部を備え、流体開口部が、ガラス管の回転中に流体キャビティから挿入部とガラス管との間に流体を送達するように構成されること、第2の成形ツールが、熱伝導性インサートを備え、熱伝導性インサートが、挿入部の本体を形成する材料の熱伝導率よりも大きい熱伝導率を有しており、流体キャビティ内の流体により熱伝導性インサートの温度が調節されるように、熱伝導性インサートが流体キャビティを通って延びること、のうちの少なくとも一方を伴う。
【0025】
本開示の第20の態様は、成形ステーションが基台上に配置され、装置が、基台に対して中心軸を中心に回転可能な主ターレットをさらに備え、主ターレットの回転によりガラス管が成形ステーションと位置を合わせて配置されるように、保持具が主ターレットに取り付けられる、第19の態様に記載の装置を含む。
【0026】
本開示の第21の態様は、装置が、基台上に配置された複数の加工ステーションをさらに備え、複数の加工ステーションが、主循環経路に配置され、ガラス管が成形ステーションに入る前にガラス管を加熱する加熱ステーションを含む、第19又は第20の態様に記載の装置を含む。
【0027】
本開示の第22の態様は、複数の加工ステーションは、主循環経路内における成形ステーションの後方に配置される第2の成形ステーションを含み、第2の成形ステーションが、ガラス管の開口部への挿入に適したサイズの第3の成形ツールを備え、第3の成形ツールの外表面とガラス管の開口部との公差が、第2の成形ツールの外表面とガラス管の開口部との公差に比べて小さい、第19~第21の態様のいずれかに記載の装置を含む。
【0028】
本開示の第23の態様は、挿入部が、内表面から外表面まで延びる流体開口部を備え、流体が潤滑剤を含み、ガラス管が挿入部に対して回転すると潤滑剤が挿入部とガラス管との間に膜を形成する、第19~第22の態様のいずれかに記載の装置を含む。
【0029】
本開示の第24の態様は、流体開口部が、内表面と外表面の間を延びる1つ以上の離散孔を含む、第19~第23の態様のいずれかに記載の装置を含む。
【0030】
本開示の第25の態様は、流体開口部が、挿入部を形成する材料の多孔性により得られる流路を含む、第19~第24の態様のいずれかに記載の装置を含む。
【0031】
本開示の第26の態様は、装置が、流体キャビティと流体連通する加圧潤滑剤源をさらに備え、加圧潤滑剤源が、流体キャビティに所定量の潤滑剤を、ガラス管が成形ステーション内にある成形期間にわたって送達するように構成されている、第19~第25の態様のいずれかに記載の装置を含む。
【0032】
本開示の第27の態様は、第2の成形ツールが、基台部及び挿入部を通って延びる熱伝導性インサートを備え、流体が、流体キャビティを通って循環する冷却剤を含み、第2の成形ツールが、冷却剤源と、冷却剤源及び流体キャビティと流体連通する冷却剤入口部と、冷却剤出口部と、をさらに備え、冷却剤源からの冷却剤が、冷却剤入口部から流体キャビティに入って熱伝導性インサートの周囲を循環し、冷却剤出口部から成形ツールを出ることにより、成形ツールから熱を除去する、第19~第26の態様のいずれかに記載の装置を含む。
【0033】
本開示の第28の態様は、熱伝導性インサートが、挿入部に配置される近位端と、基台部に配置される遠位端とを有しており、冷却剤が、遠位端の周囲、及び近位端と遠位端との間に延在する熱伝導性インサートの中央領域の少なくとも一部の周囲を循環するように、流体キャビティが遠位端の周囲に延在する、第19~第27の態様のいずれかに記載の装置を含む。
【0034】
本開示の第29の態様は、第2の成形ツールの中心軸が、熱伝導性インサートの少なくとも一部を通って延びる、第19~第28の態様のいずれかに記載の装置を含む。
【0035】
本開示の第30の態様は、熱伝導性インサートが、挿入部内を延びる直線部と、基台部に配置されるコイル状部とを備える、第19又は第20の態様のいずれかに記載の装置を含む。
【0036】
本開示の第31の態様は、熱伝導性インサートがヒートパイプを備える、第19~第30の態様のいずれかに記載の装置を含む。
【0037】
本開示の第32の態様は、熱伝導性インサートが、銅、グラファイト、又はそれらの組み合わせで構成される、第19~第31の態様のいずれかに記載の装置を含む。
【0038】
本開示の第33の態様は、ガラス管をガラス容器に変換する方法を含む。本方法は、高温になるまでガラス管を加熱するステップと、ガラス容器の部分を形成するように、加熱されたガラス管を成形するステップと、を含む。成形するステップは、ガラス管の外表面の一部を第1の成形ツールに接触させるステップと、ガラス管の肉厚が、第1の成形ツールと、流体キャビティを備える第2の成形ツールとの間に配置されるように、第2の成形ツールをガラス管の開口部に挿入するステップと、第2の成形ツールを開口部に挿入している間、流体キャビティ内に流体を循環させるステップと、を含む。循環させるステップにより、第2の成形ツールの流体開口部から、第2の成形ツールとガラス管の間の空間に流体を送出すること、第2の成形ツールを通って延びる熱伝導性インサートの周囲を、流体が循環すること、のうちの少なくとも一方が得られる。
【0039】
本開示の第34の態様は、加熱されたガラス管を成形するステップが、ガラス管の肉厚が第1の成形ツールと第2の成形ツールの間に配置されている間、軸を中心にガラス管を回転させるステップを含む、第33の態様に記載の方法を含む。
【0040】
本開示の第35の態様は、流体キャビティ内に流体を循環させるステップにおいて、流体開口部から流体が送出され、流体は潤滑剤であり、流体キャビティ内に流体を循環させるステップが、第2の成形ツールとガラス管の間に潤滑剤層を形成するために、第2の成形ツールが開口部に挿入された状態で回転している間に、一定量の潤滑剤を所定の圧力で流体キャビティに供給するステップを含む、第33又は第34の態様に記載の方法を含む。
【0041】
本開示の第36の態様は、潤滑剤が、油、又は空気と油の混合物を含む、第33~第35の態様のいずれかに記載の方法を含む。
【0042】
本開示の第37の態様は、流体開口部が、内表面と外表面の間を延びる1つ以上の離散孔を含む、第33~第36の態様のいずれかに記載の方法を含む。
【0043】
本開示の第38の態様は、流体開口部が、第2の成形ツールを形成する材料の多孔性により得られる流路を含む、第33~第37の態様のいずれかに記載の方法を含む。
【0044】
本開示の第39の態様は、流体が熱伝導性インサートの周囲を循環し、流体が冷却剤を含み、流体キャビティ内に流体を循環させるステップが、流体キャビティと流体連通する冷却剤入口部を介して、冷却剤を冷却剤源から流体キャビティに供給するステップと、冷却剤が熱伝導性インサートの周囲を循環した後に、流体キャビティと流体連通する冷却剤出口部から流体キャビティから流体を排出し、ガラス管から受け取った熱を第2の成形ツールから取り除くステップと、を含む、第33~第38の態様のいずれかに記載の方法を含む。
【0045】
本開示の第40の態様は、冷却剤が水を含む、第33~第39の態様のいずれかに記載の方法を含む。
【0046】
本開示の第41の態様は、熱伝導性インサートが、第2の成形ツールの本体を構成する材料に比べて高い熱伝導率を有する材料から構成される、第33~第40の態様のいずれかに記載の方法を含む。
【0047】
本開示の第42の態様は、熱伝導性インサートがヒートパイプである、第33~第41の態様のいずれかに記載の方法を含む。
【0048】
本開示の第43の態様は、熱伝導性インサートが、銅、グラファイト、又はそれらの組み合わせで構成される、第33~第42の態様のいずれかに記載の方法を含む。
【0049】
本開示の第44の態様は、第1の成形ツール及び第2の成形ツールで形成するガラス容器の部分が、フランジを含む、第33~第42の態様のいずれかに記載の方法を含む。
【0050】
本開示の第45の態様は、方法が、ガラス容器の部分を形成するステップの後に、ガラス容器の開口部に第3の成形ツールを挿入するステップをさらに含み、第3の成形ツールは、第2の成形ツールに比べてガラス管の開口部のサイズにより近似したサイズを有している、第33~第44の態様のいずれかに記載の方法を含む。
【0051】
本開示の第46の態様は、方法が、ガラス容器の部分を形成するステップの後に、ガラス管の領域を切り離しデバイスに接触させることにより、ガラス容器の部分をガラス管の残りの部分から切り離すステップをさらに含む、第33~第45の態様のいずれかに記載の方法を含む。
【0052】
上述の概略的な説明及び以下の詳細な説明はいずれも、種々の実施形態を説明するものであり、特許請求する主題の性質及び特徴を理解するための概観又は枠組みを提供することを意図したものであることを理解されたい。添付の図面は、種々の実施形態の理解をより深めるために添付するものであり、本明細書に組み入れられ、その一部をなすものとする。図面は、本明細書に記載の種々の実施形態を例示的に示すものであり、以下の詳細な説明と合わせて、特許請求する主題の原理及び作用を説明するためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
添付の図面は、理解をより深めるために添付するものであり、本明細書に組み込まれ、その一部をなすものとする。図面は、本開示の選択された態様を例示的に示すものであり、以下の詳細な説明と合わせて、本開示に含まれる方法、製品、及び組成物の原理及び作用を説明するためのものである。
図1】本明細書に記載の1つ以上の実施形態に係る、ガラス物品に変換することが可能なガラス管を示す模式図
図2】本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る、ガラス管からガラス物品を製造するための変換装置の一実施形態を示す模式図
図3】本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る、図2に示すガラス管変換機の主ターレットと、副ターレットと、送給ターレットとを示す模式図
図4A】本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る、図2に示す変換装置の加熱ステーションを示す模式図
図4B】本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る、図2に示す変換装置の切り離しステーションを示す模式図
図4C】本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る、図2に示す変換装置の成形ステーションを示す模式図
図4D】本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る、図2に示す変換装置の成形ステーションの他の実施形態を示す模式図
図4E】本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る、図2に示す変換装置の冷却ステーションを示す模式図
図5A】本明細書に記載の1つ以上の実施形態に係る、ガラス管をガラス物品に変換するプロセスにおける成形ステーションで使用するための成形ツールであって、成形ツールとガラス管の間に潤滑剤を供給するための少なくとも1つの流体開口部を備える成形ツールを示す模式図
図5B】本明細書に記載の1つ以上の実施形態に係る、図5Aに示す成形ツールの、図5Aの5-5線に沿った断面と、流体キャビティが潤滑剤源と流体連通している様子とを示す模式図
図6A】本明細書に記載の1つ以上の実施形態に係る、ガラス管をガラス物品に変換するプロセスにおける成形ステーションで使用するための成形ツールであって、成形ツールとガラス管の間に潤滑剤を供給するための離散配列された孔を備える成形ツールを示す模式図
図6B】本明細書に記載の1つ以上の実施形態に係る、ガラス管をガラス物品に変換するプロセスにおける成形ステーションで使用するための、多孔性材料で構成された成形ツールであって、多孔性材料から成形ツールとガラス管との界面に潤滑剤が染み出すことができるように構成された成形ツールを示す模式図
図7A】本明細書に記載の1つ以上の実施形態に係る、ガラス管をガラス物品に変換するプロセスにおける成形ステーションで使用するための成形ツールであって、ガラス管から受けた熱の放散を促進するために成形ツールの本体内に熱伝導性インサートが延在する成形ツールを示す模式図
図7B】本明細書に記載の1つ以上の実施形態に係る、図7Aに示す成形ツールの内部を示す模式図
図8】本明細書に記載の1つ以上の実施形態に係る、ガラス管をガラス物品に変換するプロセスにおける成形ステーションで使用するための成形ツールであって、成形ツール内を延びる熱伝導性インサートと、冷却剤入口部から流入した冷却剤を成形ツールの流体キャビティに導入して、熱伝導性インサートの端部周囲に循環させる冷却回路とを備える成形ツールを示す断面模式図
図9A】本明細書に記載の1つ以上の実施形態に係る、図7A及び図7Bに示す成形ツールを予熱したガラス管と接触させた場合の成形ツールの軸方向の温度分布をプロットしたシミュレーション結果を示す図
図9B】本明細書に記載の1つ以上の実施形態に係る、図8に示す成形ツールを予熱したガラス管と接触させた場合の成形ツールの軸方向の温度分布をプロットしたシミュレーション結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0054】
これより、ガラス管をガラス物品に変換する際に使用する、温度調節された成形ツールの実施形態について詳細に説明する。なお、図面全体を通して、同一又は類似の箇所は、可能な限り同一の参照番号を用いて示している。本明細書に記載の成形ツールは、ガラス管を成形してガラス物品の各部分とするプロセスにおいてガラス管の開口部に挿入するのに適したサイズとすることができる。複数の実施形態において、例えば、本明細書に記載の成形ツールは、基台部と、基台部から延びる挿入部とを備えている。本成形ツールとガラス管の外部に配置された他の成形ツールとの間でガラス管を押圧することができるように、本成形ツールの挿入部は、ガラス管の開口部に嵌合するサイズの外表面を備えている。本明細書に記載の成形ツールの種々の態様は、ガラス管をガラス物品に成形するプロセス時に適切な潤滑や冷却が得られるように設計されている。例えば、本明細書に記載の成形ツールは、外部の流体源と流体連通する流体キャビティを備えることができる。流体は、基台部内、挿入部内、又はその両方を通って循環することができ、これにより、ガラス管をガラス物品に変換するプロセスにおける、成形ツールがガラス管に接触する前、接触している間、接触した後、又はそれらの組み合わせにおいて、基台部や挿入部の冷却、潤滑、又はその両方を促進することができる。
【0055】
複数の実施形態において、例えば、流体キャビティは、ガラス管の開口部に挿入される挿入部内まで延びる。かかる実施形態では、流体キャビティは、成形ツールを使用してガラス管の再成形を行っている間、成形ツールに潤滑剤を供給するように構成された潤滑剤源と流体連通することができる。成形ツールの挿入部は、その内表面(例えば、流体キャビティを画成する面)から外表面まで延びる1つ以上の流体開口部を備えることができ、ガラス管が成形ツールに対して相対的に動くことにより、潤滑剤層を、成形ツールとガラス管との間に延在するように設けることができる。本明細書に記載の流体キャビティを介して、成形ツールとガラス管の間に局所的に潤滑剤を塗布することができるため、成形ツールに潤滑剤を噴霧する必要がなくなる。本明細書で説明しているように成形ツールにより潤滑剤を塗布することにより、再成形するステップ時に供給する潤滑剤の量を精密に制御することが容易になり、成形ツールとガラス管との間に過度の摩擦が生じるのを防ぐのに十分な潤滑剤の供給を確実に行うことができる。さらに、本明細書に記載の成形ツールにより、従来の潤滑方法で行っていた噴霧を行わなくなるため、潤滑剤が他の構成要素にまで塗布されてしまうのを避けて、変換プロセスの清浄性を向上させることもできる。また、このような局所的潤滑剤塗布手法により、ガラス管の連続搬送の途中に、成形ツールに再注油を行うための不稼働時間を挟む必要がなくなるため、ガラス容器の生産速度を向上させることもできる。
【0056】
複数の実施形態において、本明細書に記載の成形ツールは、挿入部を通って延びる熱伝導性インサートをさらに備えている。熱伝導性インサートは、成形ツールがガラス管から受けた熱を放散するように構成されている。例えば、複数の実施形態において、熱伝導性インサートはヒートパイプを備えており、ガラス管から受けた熱によりヒートパイプ内の作動流体を蒸発させる。蒸発した作動流体はヒートパイプを通って冷却領域まで移動し、続いて凝縮して潜熱を放出することにより熱伝導性インサートの温度を調節する。複数の実施形態において、成形ツールとガラス管との界面での放熱を促進するため、熱伝導性インサートは、挿入部の本体を形成する材料よりも熱伝導率の高い材料で構成される。また、熱伝導性インサートの少なくとも一部は、基台部の流体キャビティを通って延びることができる。熱伝導性インサートを冷却して、ガラス管から受けた熱を放散させるため、流体キャビティ内には冷却剤を循環させることができる。このような、冷却剤と熱伝導性インサートを組み合わせることによって得られる放熱により、ガラス管と接触中の成形ツールの温度を適切な温度範囲内に保つことができ、成形ツール上に付着した潤滑剤の焼き付きや、得られるガラス物品での潜在的欠陥の発生を防ぐことができる。
【0057】
本明細書において、方向性のある用語(例えば、上へ(up)、下へ(down)、右(right)、左(left)、前(front)、後(back)、上(top)、下(bottom)など)は、図面を参照したものに過ぎず、絶対的な向きを意味することを意図するものではない。
【0058】
特に断りのない限り、本明細書に記載のいかなる方法も、各ステップ(工程)を特定の順序で実施することを要請していると解釈されることを意図するものではなく、また、いかなる装置に関しても、特定の向きを要請することを意図するものではない。したがって、方法クレームにおいてそのステップの順序を実際に記載している場合、及び、装置クレームにおいて個々の構成要素の並び順や向きを実際に記載している場合を除き、又は、その他、各ステップが特定の順序に限定される旨の記載が請求の範囲若しくは発明の詳細な説明において明確になされている場合、及び、装置の構成要素の特定の並び順や特定の向きを記載している場合を除き、順序(並び順)や向きが推測されることは、いかなる点においても意図していない。これは、各ステップの順序、操作の流れ、構成要素の並び順、又は構成要素の向きについての論法の問題、文法的な構成又は句読点から導き出される通俗的な意味、本明細書に記載の実施形態の数又は種類など、解釈の根拠となり得るあらゆる非明示的事項に対して該当する。
【0059】
本明細書において、「a」、「an」、及び「the(その/前記)」で示す単数形は、文脈上明らかに複数形を含まないことが明らかである場合を除き、対応する複数形に対する言及も包含するものとする。したがって、例えば、ある構成要素を冠詞「a」で導く表現は、文脈上明らかにそうでない場合を除き、その構成要素を2つ以上有する態様も包含する。
【0060】
ここで、図1を参照すると、ガラス管102の一部が模式的に示されている。ガラス管102は、本明細書に記載の方法に従って(例えば、図2図4Eに関する説明において述べる変換装置100により)、(1つ又は複数の)ガラス物品に変換することができる。図1に示すように、ガラス管102は、外表面140と、内表面146と、内表面146から外表面140まで延びる肉厚Tとを有している。複数の実施形態において、肉厚は6mm以下(例えば、0.1mm以上6mm以下)である。内表面146により、ガラス管102の開口部150が画成される。ガラス管102は、実施態様に応じて様々な異なる組成のガラスで構成することができる。複数の実施形態において、ガラス管102は、複数のガラス層(例えば、コア層及び複数のクラッド層)を含む、合わせガラス管(laminated glass tubing)で構成される。ガラス管102は、様々なプロセス(例えば、Velloプロセス、Dannerプロセスなどの適切なプロセス)を利用して形成することができる。次に、ガラス管102を様々なガラス物品に変換するための変換プロセスについて、より詳細に説明する。
【0061】
図2は、ガラス管102からガラス物品を製造するための例示的な変換装置100を模式的に示している。変換装置100を使用してガラス管102を複数のガラス物品に変換することができる。かかるガラス物品としては、例えば、バイアル、シリンジ、カートリッジ、アンプルなどのガラス物品が挙げられるが、これらに限定されるものではない。変換装置100は、循環経路内に間隔を空けて配置された複数の加工ステーション106を有する基台104と、基台104から間隔を空けて配置され、基台104に対して相対的に移動可能な主ターレット108とを備えている。加工ステーション106のうちの少なくとも1つは、本明細書に記載の温度調節された成形ツールのうちの1つ又は複数を備えている。主ターレット108は、主ターレット108から複数の加工ステーション106に向かって延びる複数の保持具130を備えている。複数の保持具130は互いに間隔を空けて配置され、複数の保持具130のそれぞれが、複数の加工ステーション106と1対1で位置合わせされている。主ターレット108は、複数の加工ステーション106の近傍のそれぞれに、複数の保持具130のそれぞれを次々と割り出すように動作可能に構成されている。
【0062】
複数の実施形態において、主ターレット108は、中心軸Aを中心に基台104に対して回転可能とされる。また、ガラス管102を主ターレット108に送給するためのガラス管装填ターレット110が、主ターレット108の上方に配置されている。またさらに、変換装置100は、基台104上に複数の二次加工ステーション112と、基台104に対して回転可能とされた副ターレット114とを備えることができる。図2に模式的に示しているように、変換装置100の基台104は定置され、加工ステーション106は基台104の上部105に結合されている。複数の加工ステーション106は互いに間隔を空けて、主循環経路116に配置されている。1つ以上の実施形態では、主ターレット108が中心軸Aを中心に回転することにより、主ターレット108が複数の加工ステーション106内にガラス管102を割り出すことができるように、主循環経路116を円環状とすることができる。なお、基台104に結合される加工ステーション106の個数は、ガラス管102から製造する物品の種類や形状の影響を受けると考えられる。主ターレット108の加工ステーション106の個数は、14個~32個とすることができる。本明細書では、変換装置100が主循環経路116に16個の加工ステーション106を有しているものとして、変換装置100及び変換プロセスの説明を行うが、変換装置100は、16個より多い又は少ない個数の加工ステーション106を主循環経路116に有することもできることを理解されたい。限定するものではないが、例えば、加工ステーション106は、加熱ステーション、成形ステーション、研磨ステーション、冷却ステーション、切り離しステーション、穿孔ステーション、計測ステーション、送給ステーション、又は搬出ステーション、などのガラス管102からガラス物品を製造するための加工ステーションを1つ以上含むことができる。また、変換装置100の加工ステーション106の種類や加工ステーション106の順序は、ガラス管102から製造する物品の種類や形状の影響も受けると考えられる。
【0063】
主ターレット108は、基台104の上方に配置することができるとともに、主ターレット108が中心軸Aを中心に基台104に対して回転可能となるように、主ターレット108を基台104に回転可能に結合することができる。駆動モータ(図示せず)を利用して、主ターレット108を基台104に対して回転させることができる。主ターレット108は、複数の保持具130を備えており、複数の保持具130は、主ターレット108に対して各ガラス管102を着脱可能に固定するように構成されている。保持具130は、クランプ、チャックなどの保持デバイス、又は保持デバイスの組み合わせとすることができる。保持具130は、各ガラス管102の向きを、主ターレット108の中心軸Aと概ね平行、かつ基台104の上部105に対して概ね垂直となる向きとすることができる。本明細書では、変換装置100が鉛直方向の向きとされるものとして、変換装置100の説明を行うが、変換装置100は水平方向の向き又は角度をつけた向きとすることもできることを理解されたい。各保持具130は、主ターレット108の底部109から基台104に向かう方向(すなわち、図2に示す座標軸の-Z方向)に延びる。また、各保持具130の向きは、中心軸Aを中心に主ターレット108の割り出しを行うことにより、基台104の主循環経路116の連続する各加工ステーション106内又はその近傍にガラス管102を配置する向きとされる。ガラス管102が鉛直な向きとされているため、各ガラス管102の下方に突出した部分が、主循環経路116の加工ステーション106内を通過しながら漸進的に循環することができる。各保持具130は、主ターレット108の中心軸Aに概ね平行な保持具軸Dを中心に、主ターレット108に対して個別に回転可能とすることができる。各保持具130は、主ターレット108に対して各保持具130を回転させるためのモータ(図示せず)又は連続駆動ベルトなどの駆動機構に、動作可能に結合することができる。保持具130を回転させることにより、定置されたバーナ、成形ツール、冷却ノズルなどの、加工ステーション106の特徴部に対してガラス管102を回転させることが可能となる。
【0064】
図2及び図3を参照すると、変換装置100は、副循環経路118(図3)に、やはり間隔を空けて配置された複数の二次加工ステーション112と、ガラス管102から切り離された物品103(図2)を複数の二次加工ステーション112内に割り出すための副ターレット114(図2)とを有することができる。副ターレット114は、第2の軸Bを中心に基台104に対して回転可能とすることができる。第2の軸Bは、主ターレット108の中心軸Aと概ね平行とすることができる。また、副ターレット114は、ガラス物品103を保持して、ガラス物品103が各二次加工ステーション112に次々と係合するように位置決めするための複数の保持具130をさらに備えている。副ターレット114は、主ターレット108の切り離しステーション206(図3)から物品103を受け取り、副ターレット114の回転により複数の二次加工ステーション112内に物品103を割り出し、完成した物品を変換装置100から搬出することができる。
【0065】
ガラス管装填ターレット110は主ターレット108の上方に配置されている。複数の実施形態において、ガラス管装填ターレット110を、主ターレット108の中心軸Aから偏心させることができる。ガラス管装填ターレット110は、主ターレット108の中心軸Aに概ね平行な軸Cを中心に回転可能とすることができる。ガラス管装填ターレット110は、主ターレット108に対して固定された位置に独立して支持することができるとともに、ガラス管装填ターレット110の回転も、主ターレット108の回転から独立させることができる。図2及び図3を参照すると、いくつかの実施形態では、ガラス管装填ターレット110は、複数の装填路132を備えることができる。装填路132は、円環状の循環経路134に配置され、ガラス管102を保持するように構成されている。ガラス管装填ターレット110の配置は、変換装置100の主循環経路116の1つの加工ステーション106、及び主循環経路116の当該加工ステーション106内に割り出される主ターレット108の保持具130に、装填路132のうちの1つが上下に整列(すなわち、主ターレット108の中心軸Aに平行且つ/又は図2に示すZ軸に平行な方向に整列)するような配置とすることができる。1つ以上の実施形態において、ガラス管装填ターレット110と位置合わせ(整列)される加工ステーション106は、管装填ステーション214(図3)とすることができる。変換装置100が、特定の保持具位置136にあるガラス管102のすべて又は一部を1つ以上の物品に変換し終えると、当該保持具位置136が主循環経路116の管装填ステーション214と整列するように割り出されるタイミングで、ガラス管装填ターレット110は、主ターレット108の頂部から新たに或る長さのガラス管102を当該保持具位置136にある保持具130に送達することができる。代替的な実施形態では、変換装置100は、主ターレット108とガラス管装填ターレット110との間を電気機械的に動かすことが可能なアーム(図示せず)を備えることができる。変換装置100が、特定の保持具位置136にあるガラス管102のすべて又は一部の変換を終えると、アームが、ガラス管装填ターレット110などのガラス管ステージデバイスから新たに或る長さのガラス管102を掴み、この新たな或る長さのガラス管102を主ターレット108の当該特定の保持具位置136に送達することができる。なお、或る長さのガラス管102を新たに主ターレット108に送達する他の方法を企図することもできる。
【0066】
図3を参照すると、上述したように、変換装置100の複数の加工ステーション106は、加熱ステーション202、成形ステーション204、切り離しステーション206、研磨ステーション208、冷却ステーション210、穿孔ステーション212、管装填ステーション214、搬出ステーション216、計測ステーション218、所定管長降下ステーション220などのステーション、及び/又はこれらのステーションの組み合わせを1つ以上含むことができる。図3は、16個の加工ステーション106を持つ主循環経路116と、8個の二次加工ステーション112を持つ副循環経路118とを有する変換装置100の加工ステーション106の配置を模式的に示している。既に述べたように、主循環経路116の加工ステーション106は、円環状の循環経路に均一に分散して等間隔に配置されており、副循環経路118の二次加工ステーション112も、円環状の循環経路に均一に分散して等間隔に配置されている。図3は、複数の装填路132を有するガラス管装填ターレット110も模式的に示している。なお、説明の便宜上、図3では、ガラス管装填ターレット110は、主循環経路116から離間した位置に示されている。なお、図中、ガラス管装填ターレット110は24本の装填路132を有するものとして示されているが、ガラス管装填ターレットは24本より多い又は少ない本数の装填路132を有することもできることを理解されたい。
【0067】
ガラス管102の標的領域を目標温度まで予熱するため、加熱ステーション202は、主ターレット108の割り出し方向222で、切り離しステーション206や各成形ステーション204の手前に配置することができる。かかる目標温度は、ガラス管102の標的領域を塑性変形することができ、ガラスを割ったり砕いたりすることなく効果的にガラス管102の標的領域の成形や切断を行うことのできる温度とされる。切り離しステーション206では、成形されたガラス物品103(図2)を、ガラス管102(図2)から切り離すことができる。また、切り離しステーション206は、途中まで成形したガラス物品103を一旦切り離して、副ターレット114(図2)に移送する加工ステーション106を兼ねることもできる。かかる移送は、当該ガラス物品103を二次加工ステーション112の副循環経路118に通過させながら割り出すために行われる。穿孔ステーション212は、主ターレット108の割り出し方向222で、切り離しステーション206よりも下流側の、主循環経路116上の位置に配置することができる。穿孔ステーション212では、手前の切り離しステーション206で塞いだガラス管102の端部を穿孔することにより、ガラス管102に開口部を形成する。
【0068】
主ターレット108の成形ステーション204は、割り出し方向222で、穿孔ステーション212よりも下流側の位置に配置することができる。複数の成形ステーション204では、ガラス管102に対して繰り返し成形加工を行い、ガラス管102を所望の完成ガラス物品形状とする。上述したように、各成形ステーション204の手前に、1つ以上の加熱ステーション202を配置して、ガラス管102の標的領域を、ガラス管の成形可能温度まで予熱することができる。主ターレット108の成形ステーション204で、ガラス物品103の一端の成形を行い、副ターレット114の成形ステーション204で、ガラス物品103の他端の成形を行う。1つ以上の実施形態において、ガラス管102からバイアルを製造するために変換装置100を使用することができ、変換装置100の成形ステーション204が、1つ以上の肩部成形ステーションと、1つ以上のフランジ成形ステーションと、1つ以上のフランジ仕上げステーションとを備えるとともに、1つ以上の加熱ステーション202を、各成形ステーション204の前や間に配置することができる。また、主循環経路116は、計測ステーション218をさらに備えることができる。計測ステーション218では、寸法計測システムを使用して、ガラス管102の1つ以上の寸法(例えば、直径、厚さなど)や、成形ステーション204で形成した特徴部の1つ以上の寸法を計測することができる。特徴部の寸法としては、フランジの厚さ、フランジの長さ、首部の長さ、首部の厚さ、物品の全長などの特徴部の寸法、又はそれらの組み合わせを挙げることができる。ガラス管102がまだ高温である間に寸法を計測できるように、計測ステーション218は、最後の成形ステーション204の直後に配置することができる。またこれに代えて、温度が下がってからガラス管102やガラス物品の寸法を計測できるように、計測ステーション218を、1つ以上の冷却ステーション210の後方に配置することもできる。
【0069】
引き続き図3を参照すると、1つ以上の冷却ステーション210を、主ターレット108の割り出し方向222で、成形ステーション204の後方に配置することができる。所定管長降下ステーション220は、成形ステーション204の後方、成形ステーション204と切り離しステーション206の間に配置することができ、途中まで成形したガラス管102を降下させ、それによって、切り離しステーション206で目標の長さに切断できるようにガラス管102を位置決めすることができる。また、主循環経路116は、ガラス管装填ターレット110から主ターレット108(図2)に新たに或る長さのガラス管102の原料を装填するための管装填ステーション214を備えることもできる。1つ以上の実施形態において、管装填ステーション214を、冷却ステーション210に組み込むこともできる。管装填ステーション214は、最後の成形ステーション204と切り離しステーション206の間に配置することもできる。
【0070】
主ターレット108の成形ステーション204では、ガラス物品103の第1の端部に特徴部を形成する。例えば、ガラス物品103がバイアル又はカートリッジであり、成形ステーション204で、ガラス物品103の頂部(第1の端部)に肩部とフランジとを形成することができる。切り離しステーション206で、ガラス管102からガラス物品103を切り離すと、ガラス物品103は、副ターレット114の二次加工ステーション112に移送される。二次加工ステーション112は、ガラス物品103の第1の端部の反対側にある、ガラス物品103の第2の端部を形成するための1つ以上の成形ステーション204を備えることができる。例えば、ガラス物品103がバイアルであり、二次加工ステーション112の成形ステーション204で、ガラス物品103の底部(第2の端部)に1つ以上の特徴部を形成することができる。
【0071】
副循環経路の二次加工ステーションは、加熱ステーション202、成形ステーション204、研磨ステーション208、冷却ステーション210、搬出ステーション216などのステーション、又は二次加工ステーション112の組み合わせを1つ以上含むことができる。1つ以上の実施形態において、副循環経路118の二次加工ステーション112を使用して、例えば、バイアル、アンプル、カートリッジ、又はシリンジなどのガラス物品103における、主ターレット108により形成された端部とは反対側の端部に、ガラス物品103の1つ以上の特徴部を形成することができる。例えば、いくつかの実施形態において、ガラス物品103はバイアルであり、副循環経路118の成形ステーション204はバイアルの底部を形成することができる。また、アンプル、カートリッジ、シリンジなどに特有の特徴部などの他の特徴部も企図されている。副循環経路118は、ガラス物品の表面を仕上げるための1つ以上の研磨ステーション208を備えることができる。また、副循環経路118は、複数の冷却ステーション210と、搬出ステーション216とをさらに備えることができる。搬出ステーション216では、完成したガラス物品を変換装置100から搬出することができる。
【0072】
以上、主循環経路116の加工ステーション106及び副循環経路118の二次加工ステーション112について説明したが、これには、ガラス管102からバイアルを製造するための典型的な変換装置100に関する説明も含まれていたかもしれない。しかしながら、使用する加工ステーション106や二次加工ステーション112の数は増減することができ、これらを利用して、異なる形状を有するバイアルや、カートリッジ、シリンジ、アンプルなどの他のガラス物品を製造することもできることを理解されたい。また、これに加えて、加工ステーション106及び二次加工ステーション112の配置としては、多種多様な順序及び/又は構成が考えられ、加工ステーション106及び二次加工ステーション112は、様々に異なる形状のガラス物品を製造するために、そのいずれかの順序及び/又は構成で配置することができる。
【0073】
次に、図4Aを参照すると、変換装置100の加熱ステーション202が模式的に示されている。図4Aでは、バイアルを製造するために再成形された状態のガラス管102が示されており、例えば、肩部142、フランジ144、及び首部145などの複数の特徴部を備えている。複数の実施形態において、肩部142と、フランジ144と、首部145とは、本明細書に記載の成形ステーション204及び204’のうちの1つ以上で形成することができる。例えば、本明細書で説明しているように、複数の実施形態において、肩部142は、図4Cに関する説明で述べる成形ステーション204により最初に形成することができ、一方、首部145及びフランジ144は、図4Dに関する説明で述べる成形ステーション204’により形成することができる。なお、図4Aでは、ガラス物品103をバイアルとして図示しているが、ガラス物品103は、アンプル、シリンジ、カートリッジ、瓶などの物品に特有の特徴部を有することができるものと理解されたい。
【0074】
図4Aに示すように、加熱ステーション202のそれぞれが、1つ以上の加熱要素301を備えることができる。加熱要素301の例としては、燃料バーナ、例えばCOレーザなどのレーザ、誘導加熱器などの加熱デバイス、又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、1つ以上の成形ツール324(図4C)とレーザとを併用して、ガラス管102の加熱、ガラス管102の表面温度の制御、又はその両方を行うことができる。図4Aに示しているように、複数の実施形態において、加熱要素301は、1つ以上のバーナ302を備えることができる。成形ステーション204(図3)で成形工程を実行する前又は切り離しステーション206(図3)で切り離し工程を実行する前に、ガラス管102の標的領域をバーナ302で加熱することができる。なお、図4Aでは、1つのバーナ302を図示しているが、1つの加熱ステーション202において2つ以上のバーナ302を用いることもできることを理解されたい。各バーナ302は、燃料供給部304と、酸素供給部306と、任意選択的に給気部308とに流体連通することができる。バーナ用の燃料の例としては、水素、炭化水素燃料ガス(例えば、メタン、プロパン、ブタンなど)などの燃料、又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。各バーナ302は、バーナ302への燃料ガスの質量流量を制御するための燃料制御弁310を備えることができる。また、各バーナ302は、バーナ302への酸素の質量流量を制御するための酸素制御弁312も備えることができる。また、各バーナ302は、任意選択的にバーナ302への空気の質量流量を制御するための空気制御弁314をさらに備えることができる。バーナ302は、酸素及び/又は空気の存在下で燃料ガスを燃焼させ、ガラス管102の少なくとも標的領域を加熱する火炎を発生させる。
【0075】
バーナ302が発する火炎の熱は、バーナ302に対する燃料ガス、酸素、及び空気の質量流量を変化させることにより、並びにバーナ302に送給する燃料ガスと酸素の比率及び/又は燃料ガスと空気の比率を変化させることにより、増減することができる。燃料制御弁310、酸素制御弁312、空気制御弁314うちの1つ以上を調整して、燃料と酸素の比率及び/又は燃料と空気の比率を調節することができる。バーナ302は連続的に燃焼し、主ターレット108及び/又は副ターレット114の回転によるガラス管102の割り出しによってガラス管102を加熱ステーション202に出し入れすることにより、バーナ302が発する火炎をガラス管102に接炎したり離炎したりする。各ガラス管102が加熱ステーション202にある間は、保持具130によって各ガラス管102を、保持具軸Dを中心にバーナ302に対して回転させることができ、これにより、下流の成形ステーション204(図3)で成形加工を行う特定の領域のガラス管102の外周を均一に加熱する。
【0076】
次に、図4Bを参照すると、変換装置100の切り離しステーション206が模式的に示されている。切り離しステーション206は、主ターレット108の割り出し方向222で、1つ以上の加熱ステーション202の後方に配置される。切り離しステーション206の手前に配置された加熱ステーション202により、ガラス管102は加熱されてガラスは塑性変形可能な状態とされる。切り離しステーション206は、切り離しツール320を備えることができる。手前の加熱ステーション202によって塑性変形可能な状態とされているガラス管102を、保持具130によって保持具軸Dを中心に回転させながら、切り離しツール320をガラス管102の外表面140に係合させて、ガラス管102を目標の長さに切断することができ、これにより、ガラス管102から物品103(図2)を切り離すことができる。またこれに代えて、いくつかの実施形態では、切り離しステーション206は、ガラス管102を目標の長さに切断してガラス管102から物品103を切り離すためのバーナ(例えば水素/酸素バーナなど)、レーザ(例えCOレーザなど)、又はその両方を含むこともできる。他の実施形態では、切り離しステーション206は、切り離しツール320と、水素/酸素バーナ及びレーザのうちの少なくとも一方とを備えることができる。ガラス管102から切り離した物品103は、副ターレット114(図2)に移送するか、又は変換装置100から搬出することができる。
【0077】
次に図4C及び図4Dを参照すると、変換装置100の成形ステーション204の例が模式的に示されている。図4Cは、ガラス管102から形成されたガラスバイアルの肩部142を形成するための成形ステーション204の一実施形態を模式的に示している。図4Dは、ガラス管102から形成されたガラスバイアルの首部145(図4A参照)及びフランジ144を形成するための成形ステーション204’の例示的な実施形態を模式的に示している。なお、本明細書では、肩部142を形成するための成形ステーション204とフランジ144を形成するための成形ステーション204’を、別体の成形ステーションとして説明しているが、本明細書に記載の成形ツールの形状は、かかる構成要素を一緒に形成するように適合することもできることを理解されたい。
【0078】
本明細書では、成形ステーション204及び204’について詳細に説明を行うが、変換装置100は、3つ以上の成形ステーションを備えることもできることを理解されたい。例えば、複数の実施形態では、変換装置100は、主循環経路116の、図4Dに関する説明で述べる成形ステーション204’の後方に、追加の成形ステーション(図示せず)を備えることもできる。この追加の成形ステーションは、本明細書の成形ステーション204’に関する説明で述べる成形ツールと同様の成形ツールセットを備えることができるが、本明細書の図4Dに関する説明で述べる成形ステーション204’の第3の成形ツール324cに比べて開口部150のサイズにより近似した、ガラス管102の開口部150に嵌合するサイズの成形ツールを備えることができる。そして、本明細書に記載の成形ステーション204’によりガラス管102を再加工した後に、追加の成形ステーションの成形ツールを開口部150に挿入することができる。フランジ144及び首部145に所望の形状を有する開口部を成形できるよう、追加の成形ステーションの成形ツールは、第3の成形ツール324cに比べて開口部150との公差を厳しくすることができる。
【0079】
図4Cを参照すると、成形ステーション204は、成形ステーション204に回転可能に結合された1つ以上の成形ツール324を備える。成形ツール324は、主ターレット108(図2)の中心軸A(図2)に概ね平行なツール軸Eを中心に、基台104(図2)に対して回転可能とすることができる。手前の加熱ステーション202で加熱されたガラス管102が成形ステーション204内に割り出されると、保持具130によりガラス管102が回転する。そして、回転可能に構成された成形ツール324が、ガラス管102の外表面140に係合する。成形ツール324は、1つ以上のアクチュエータ326によってガラス管102の外表面140と係合するように作動させることができる。成形ツール324は、アクチュエータ326により維持されるツール圧力で、接触時間にわたり、ガラス管102と接触した状態に維持される。加熱されたガラス管102の外表面140に成形ツール324が接触することにより、ガラス管102が所望の形状に成形される。接触時間が経過すると、アクチュエータ326は成形ツール324を引き戻して、ガラス管102との係合を解く。1つ以上の実施形態において、接触時間は、変換装置100の滞留時間とは異なる時間とすることができる。
【0080】
次に図4Dを参照すると、フランジ144を形成するための成形ステーション204’は、3つの成形ツール324a、324b、324cを備えている。このうちの2つの成形ツール324a、324bがガラス管102の外表面140に接触し、フランジ144の外輪郭を形成する。第3の成形ツール324cは、フランジ144の半径方向内側でガラス管102の内表面146に接触し、ガラス管102のフランジ144の内径を形成する。ガラス管102のフランジ144の内径を形成するため、第3の成形ツール346cの少なくとも一部がガラス管102の開口部150(図1参照)に挿入される。また、第3の成形ツール324cは、ガラス管102の軸方向端部にも接触してフランジ144の軸方向表面を形成する。複数の実施形態において、第3の成形ツール324cを動かさず、保持具130によりガラス管102を第3の成形ツール324cに対して回転することができる。バイアルの構造部の形成に関する説明でも述べたが、成形ステーション204は、例えば、アンプルの肩部、首部、又は先細りの先端部などの他の構造部、又はガラスバイアル以外の物品に付随する他の構造部を形成するように構成することもできる。
【0081】
本明細書では、欠陥を最小限に抑えてフランジ144を形成するようなガラス管102の再加工を支援する第3の成形ツール324cの様々な異なる実施形態(及び、これに応じて変更を加えた成形ステーション204’)を説明している。本明細書で説明しているように、成形ツールによるガラス管102の再成形を支援するため、変換装置100の加熱ステーション202のうちの1つ以上を異なる成形ステーションの間に配置して、ガラス管102の再加熱を行うことができる。そのため、第3の成形ツール324cをガラス管102の開口部150に最初に挿入したときには、第3の成形ツール324cに比べてガラス管102の温度の方が高いと考えられる。複数の実施形態において、ガラス管102と第3の成形ツール324cとの間の摩擦を低減し、互いの相対的な動きを円滑化するために、ガラス管102と第3の成形ツール324cとの間に、油などの潤滑剤の薄い層を設けることができる。このとき、第3の成形ツール324cに塗布する潤滑剤の量が不十分な場合には、過度の摩擦により、ガラス管102の内表面146に欠陥(例えば、摩擦痕など)が生じる恐れがある。さらに、第3の成形ツール324cの温度が、所定の閾値(例えば、200℃)を上回ると、潤滑剤が燃焼して、第3の成形ツール324c上に炭素層が形成される恐れもある。また、かかる炭素層により、第3の成形ツール324cの外形が変化する恐れもあり、そうなると、得られるガラス物品の外観が規格外となってしまう可能性がある。
【0082】
上記に鑑み、第3の成形ツール324cの複数の実施形態は、流体源(図4Dには図示せず)と流体連通する流体キャビティを備えている。流体源からの流体は、実施態様に応じて様々な機能を果たすことができる。例えば、本明細書の図5A図5B図6A図6Bに関する説明で述べるように、第3の成形ツール324cは、第3の成形ツール324cとガラス管102との界面に流体を送達するための1つ以上の開口部を備えることができる。かかる実施形態では、流体は、潤滑剤(例えば、油、空気と油の混合物など)とすることができ、流体源は、第3の成形ツール324cがガラス管102と接触する前又は接触している間に、第3の成形ツール324cに所定量の流体(例えば、潤滑剤)を供給するように構成された潤滑剤源を備えることができる。かかる構成により、潤滑剤の適切な供給を確実に行って、摩擦痕を防ぐことができる。またこれに加えて、本明細書の図7A図7B図8図9A図9Bに関する説明で述べるように、第3の成形ツール324cは、第3の成形ツール324c内を通って延びる熱伝導性インサートを備えることができる。熱伝導性インサートは、熱伝導性材料で構成することができ、これにより、第3の成形ツール324cとガラス管102の界面でガラス管102から受け取った熱を除去することができる。かかる実施形態では、流体は冷却剤として機能することができ、この冷却剤が熱伝導性インサートの少なくとも一部の周囲を循環することにより、ガラス管102から受け取った熱のヒートシンクとして機能することができる。熱伝導性インサートは、ガラス管102に接触する部分における第3の成形ツール324cの温度を調節して、潤滑剤の焼き付きや第3の成形ツール324cの変形を防ぐ役割を果たす。
【0083】
図4Eは、例えば冷却した空気や不活性ガスなどの冷却流体342をガラス管102に向けるように配置された1つ以上の冷却ノズル340を有する冷却ステーション210を模式的に示している。冷却ノズル340のうちの1つ以上は、冷却流体342をガラス管102の特定の領域に向けるように配置することができる。冷却ノズル340への冷却流体342の質量流量を制御するため、冷却ノズル340には、1つ以上の冷却流体制御弁344を流体結合することができ、これにより、ガラス管102の冷却速度の制御、並びにガラス管102の温度及びガラス管102内の温度勾配の制御を可能としている。
【0084】
図4A図4Eは、変換装置100に利用することが可能な加工ステーション106についてのいくつかの異なる例を示す模式図を含んでいる。ただし、異なる構造、構造体の組み合わせ、又は機能を有する他の加工ステーション106を利用して、ガラス管102を1つ以上のガラス物品とする所望の変換を実現することもできることを理解されたい。
【0085】
図3を再び参照すると、動作時には、主ターレット108は、保持具130に固定されたガラス管102を加工ステーション106内に割り出す。各加工ステーション106では、加熱、成形、穿孔、切り離し、冷却、降下、送給などの特定の工程が、ガラス管102に対して行われる。ここで、ガラス管102が、主ターレット108により次の後続の加工ステーション106に割り出されるまでに、特定の加工ステーション106に滞在する時間を、滞留時間(dwell time)とする。すべての加工ステーション106の工程がこの滞留時間内に完了するように、変換装置100の調整が行われる。滞留時間が終了すると、主ターレット108はガラス管102を次の加工ステーション106に割り出す。また、主ターレット108がガラス管102を或る加工ステーション106から次の加工ステーション106に割り出すのに要する時間を、割り出し時間(index time)と呼ぶ。割り出し時間は、時間の単位で計測される。本開示において、1ステーション当たり1部品当たりの合計時間は、滞留時間と割り出し時間の合計となる。
【0086】
次に図5A及び図5Bを参照すると、ガラス管をガラス物品に変換するための成形ステーションで使用する成形ツール500を模式的に示している。図5Aは、成形ツール500の斜視図である。図5Bは、図5Aに示す5-5線に沿った成形ツールの断面を示す模式図である。複数の実施形態において、本明細書の図2図4Eに関する説明で述べた変換装置100の第3の成形ツール324cに代えて、成形ツール500を使用することができる。複数の実施形態において、例えば、バイアルのフランジ144及び/又は肩部142を形成するプロセス時に、ガラス管102の開口部150に成形ツール500を挿入する。複数の実施形態において、成形ツール500をガラス管102の開口部150に挿入することにより、他の形態のガラス容器(例えば、シリンジ、アンプル、カートリッジなどのガラス物品)の一部を成形することができる。
【0087】
図5Aに示すように、成形ツール500は、基台部502と、基台部502の表面506から延びる挿入部504とを備えている。複数の実施形態において、基台部502と挿入部504とでモノリシック体508を形成する。複数の実施形態において、モノリシック体508は、金属の材料又は合金(例えば、鋼、ステンレス鋼、真鍮)から機械加工で製作される。複数の実施形態において、モノリシック体508は、1個の金属材料から機械加工で製作される。複数の実施形態において、成形ツール500の少なくとも一部は、結晶材料(例えば、グラファイト)又は複合材料で構成される。複数の実施形態において、モノリシック体508を形成するのではなく、2つ以上の異なる材料で成形ツール500を構成することもできる。複数の実施形態において、例えば、挿入部504(又はその一部)と基台部502は異なる材料で構成される。
【0088】
複数の実施形態において、基台部502は、支持構造体を介して変換装置100の基台104(図2参照)に取り付け固定される。図示の通り、基台部502の断面のサイズは、挿入部504に比べて大きい。複数の実施形態において、基台部502の表面506は、ガラス管102の端部に接触する(例えば、フランジ144の外表面を形成する)ように構成されている。挿入部504は、ガラス管102の開口部150に挿入される形状とされた外表面510を有している。複数の実施形態において、外表面510は、湾曲接触面512と、1つ以上の平面部514とを有している。複数の実施形態において、湾曲接触面512は、所定の湾曲輪郭(例えば、円形の輪郭)に沿って延びている。かかる湾曲輪郭の形状は、成形するガラス容器に望まれる内部形状に基づいて決まる。複数の実施形態において、1つ以上の平面部514は、湾曲輪郭の切り欠きを含むことができる。これにより、挿入部504を開口部150(図1参照)に挿入したときに、ガラス管の内表面146に接触するのが外表面510の一部のみとなるようにすることができる。1つ以上の平面部514により、挿入部504とガラス管102との接触面積が効果的に減少し、これにより、摩擦と成形ツール500の加熱を低減することができる。なお、挿入部504は、様々な異なる形状を有することができ、1つ以上の平面部514を含まない実施形態も想定できることを理解されたい。
【0089】
挿入部504は、その内表面518(図5B参照)と外表面510との間を延びる1つ以上の流体開口部516を備えている。本明細書で説明しているように、1つ以上の流体開口部516は、成形ツール500とガラス管102との間への潤滑剤の供給を支援するものであり、これにより摩擦を低減することによって、成形ツール500とガラス管102の相対的な動き(例えば、成形ツール500の回転による相対的な動き、ガラス管102の回転による相対的な動き)を円滑化する。複数の実施形態において、1つ以上の流体開口部516は、複数の流体開口部で構成される。例えば、図5Aに示す実施形態では、1つ以上の流体開口部516は、成形ツール500の中心軸505に平行に延びる一列に配置された流体開口部の配列で構成される。挿入部504を開口部150に挿入することにより、挿入部504とガラス管102との軸方向の接触範囲全体に潤滑剤を塗布することができるよう、流体開口部の配列は軸方向に延びる。
【0090】
挿入部504の1つ以上の流体開口部516は、実施態様に応じて様々な形態をとることができる。例えば、複数の実施形態において、1つ以上の流体開口部516は、複数の離散開口部で構成される。複数の実施形態において、このような離散開口部は、モノリシック体508を成形加工することにより(例えば、機械加工によって)形成することができる。複数の実施形態において、成形ツール500の少なくとも一部は、積層造形プロセス(例えば、選択的レーザ溶融法、直接材料堆積法、結合剤噴射法などの適切なプロセス)により形成され、1つ以上の流体開口部516は、モノリシック体508の初期形状の一部として構築される(例えば、1つ以上の流体開口部516は、後処理技術を用いずに形成することができる)。複数の実施形態において、1つ以上の流体開口部516は、離散開口部で構成されるのではなく、挿入部504を形成する材料に固有の多孔性により得られる、挿入部504内の流路で構成される。例えば、複数の実施形態において、モノリシック体508(又は、成形ツール500における挿入部504内の部分)は、炭素系材料(例えば、グラファイト又は複合材料)、ステンレス鋼、真鍮、ニッケル又はコバルト含有合金、又はセラミックなどの多孔性材料から構成される。なお、挿入部504の多孔性により得られるこのような流路は、必ずしも直線状には延びない場合がある。
【0091】
引き続き図5Aを参照すると、1つ以上の流体開口部516が挿入部504の離散開口部で構成される実施形態では、1つ以上の流体開口部516を、実施態様に応じた様々に異なる配置で設けることができる。例えば、複数の実施形態において、変換プロセス時にガラス管102に接触する湾曲接触面512上に、1つ以上の流体開口部516が配置される。このような配置には、(例えば、変換装置100の保持具130(図2参照)が回転することにより、)成形ツール500に対してガラス管102が回転する際に、外表面510とガラス管102の内表面146(図1参照)の間に潤滑剤が広がりやすくなるという利点がある。すなわち、1つ以上の流体開口部516を、ガラス管102に接触する表面に配置することにより、ガラス管102と挿入部504との界面での潤滑剤層の形成が促進される。ガラス管102を再成形するプロセスでは、ガラス管102は、或る特定の成形ステーション内にある間に、成形ツール500に対して、複数回回転する(例えば、2回転以上、2回転、3回転、4回転など)ことができる。1つ以上の流体開口部516によって潤滑剤層を形成することにより、摩擦が低減され、得られるガラス容器に欠陥(例えば、摩擦痕、熱ビリなど)が生じるのを防ぐことができる。
【0092】
図5Bは、図5Aの5-5線に沿った成形ツール500の断面を示す模式図である。成形ツール500は、基台部502を通って延びる流体キャビティ520を備えている。複数の実施形態において、流体キャビティ520は、流体キャビティ520が1つ以上の流体開口部516と流体連通するように、挿入部504を通って延びる。図示の実施形態では、流体キャビティ520は、成形ツール500の中心軸505に沿って、その軸方向範囲全体にわたり延びている。ただし、流体キャビティ520は、実施態様に応じて様々に異なる形態を有することができるものと理解されたい。図示の実施形態では、流体キャビティ520は、成形ツール500の遠位端522まで延びて、流体入口524を形成している。1つ以上の流体開口部516を介してガラス管102との界面に供給される流体は、この流体入口524により外部の供給源から成形ツール内に流入することができる。流体入口524の位置としては、これに代わる様々な位置(例えば、表面506上、基台部502の側面上)も企図されており、これらの位置も本開示の範囲内にある。
【0093】
1つ以上の流体開口部516は、流体キャビティ520を画成する内表面518から挿入部504の外表面510まで延びている。よって、1つ以上の流体開口部516は、流体キャビティ520と流体連通している。図5Bに示すように、流体キャビティ520は、流体導管528を介して潤滑剤源526と流体連通している。複数の実施形態において、潤滑剤源526は、変換装置100の構成要素である(例えば、成形ステーション204’の基台104(図4D参照)上に配置される)。複数の実施形態において、潤滑剤源526は、潤滑剤源(例えば、潤滑剤を充填したリザーバ)に結合された潤滑剤送達機構(例えば、弁)を備えている。潤滑剤源526は、所定量の潤滑剤530を流体キャビティ520に供給するように作動させることができる。流体キャビティ520内と1つ以上の流体開口部516内を流れた潤滑剤530により、挿入部504の外表面510上に1滴以上の液滴532が形成されるように、潤滑剤530に圧力をかけることができる。ガラス管102と挿入部504との相対的な動きにより、液滴532が周方向に広がり、挿入部504とガラス管102の内表面146(図1参照)との界面に、潤滑剤の膜を形成することができる。
【0094】
潤滑剤源526から所定量で送出される潤滑剤530の量は、過度の摩擦を防止するために必要とされる量として予め決定することができ、挿入部504とガラス管102との接触面積の大きさにより変化すると考えられる。例えば、複数の実施形態において、潤滑剤源526は、所定時間だけ開弁状態となり、或る量の潤滑剤530を流体キャビティ520に供給する弁を備えることができる。複数の実施形態において、潤滑剤源526は、開弁時に或る圧力で送出される加圧流体を含んでいる。この圧力は、挿入部504の流体開口部の数に基づいて、いずれの流体開口部にも液滴532が生成されるのに十分な量の潤滑剤530が確実に流体キャビティ520に供給されるように決定することができる。複数の実施形態において、潤滑剤源526を介して流体キャビティ520に供給する潤滑剤530の圧力は、1つ以上の流体開口部516のサイズに少なくとも一部基づいて決定される。1つ以上の流体開口部516のサイズが小さくなるほど、液滴形成を促進するために必要な圧力が大きくなると考えられる。複数の実施形態において、潤滑剤源526は、所定の期間内(例えば、成形ステーション204’のガラス管102が入れ替わるまでの間)に所定量の潤滑剤530を供給するように設計される。
【0095】
複数の実施形態において、流体導管528は、変換装置100の支持構造体(例えば、基台104から延びる成形ツール500の支持アーム)内を延びるパイプを含んでいる。複数の実施形態において、流体導管528は、成形ツール500の外部を延びる可撓管を含んでいる。潤滑剤源526は、使用する潤滑剤の種類によって異なるものと理解されたい。例えば、複数の実施形態において、潤滑剤530は、油などの潤滑液を含んでいる。複数の実施形態において、潤滑剤530は、空気と油の混合物を含んでいる。かかる実施形態では、流体導管528は、少なくとも部分的に成形ツール500内を通って延びることができる。複数の実施形態において、例えば、流体導管528は、成形ツール500内を通って延びるとともに、1つ以上の流体開口部516とそれぞれ位置合わせされた複数の開口部を備えることができ、これにより、潤滑剤の加圧流を1つ以上の流体開口部516から送出して、液滴532を生成することができる。複数の実施形態において、基台部502の表面506は、使い終えた潤滑剤を表面506の外に導くための少なくとも1本の潤滑剤排出路(例えば、溝)を備えている。
【0096】
図6Aは、ガラス管をガラス物品に変換するプロセスの成形ステーションで使用する成形ツール600を模式的に示している。成形ツール600は、基台部602と、基台部602から延びる挿入部604とを備えている。挿入部604とガラス管102の内表面146(図1参照)との界面での潤滑剤の層の形成を促進するため、挿入部604は、挿入部604の湾曲接触面608に沿って配置された複数の離散孔606を備えている。図示のように、複数の離散孔606は、湾曲接触面608を実質的に覆っている。このように多数の流体開口部を設けることにより、本明細書の図5A及び図5Bに関する説明で述べた成形ツール500に比べて、より大量の潤滑剤を短時間に送出することが容易になるため、潤滑剤層の形成に要する時間が短縮される。本明細書で説明しているように、積層造形技術を用いて成形ツールを構築すれば、容易に、このように多数の離散孔606を密な間隔で形成することができる。図6Bは、ガラス管をガラス物品に変換するプロセスの成形ステーションで使用する成形ツール610を模式的に示している。成形ツール610は、基台部612と、基台部612から延びる挿入部614とを備えている。成形ツール610は、潤滑剤が成形ツール610から染み出すような多孔性材料(例えば、グラファイトや複合材料などの炭素系材料、真鍮、ステンレス鋼、ニッケル又はコバルト含有合金、セラミック)で構成される。複数の実施形態において、基台部612は、潤滑剤を保持できるだけの十分な肉厚を有することができるため、潤滑剤が挿入部614からしか染み出ないようにすることができる。成形ツール610を多孔性材料で構成すると、ガラス管102に供給される潤滑剤が空間的に均一に広がりやすくなるという利点がある。
【0097】
図7A及び図7Bは、ガラス管をガラス物品に変換するプロセスで使用する他の成形ツール700を模式的に示している。複数の実施形態において、例えば、本明細書の図4Dに関する説明で述べた成形ツール324cに代えて、成形ツール700を使用することができる。複数の実施形態において、成形ツール700は、本明細書の図3図4Eに関する説明で述べた変換装置100の構成要素である。図7Aは、本体702を備える成形ツール700を示す模式図である。図7Bは、成形ツールの内部を示す模式図(本体702については、その外形を破線で図示するのみ)である。図7Aに示すように、本体702は、基台部704と、基台部704から延びる挿入部706とを備えている。複数の実施形態において、基台部704は、成形ステーション内の支持構造体(図示せず)を介して変換装置100の基台104(図2参照)に取り付けられる。挿入部706は、ガラス管102(図1参照)の開口部150への挿入に適したサイズとされた接触外表面708を有している。挿入部706は、基台部602の表面710から、成形ツール700の中心軸712に沿って延びている。挿入部706の軸方向の長さは、成形ツール700が成形するよう設計されているガラス物品に望まれる形状(例えば、図4A図4Eに示す肩部142及び/又は首部145の軸方向の長さ)に応じて変えることができる。複数の実施形態において、変換プロセスでの使用時には、ガラス管102の端部が表面710に接触し、これにより、成形ツール700で形成するガラス物品の構成要素(例えば、図4A図4Eに示すフランジ144)の成形を促進することができる。
【0098】
複数の実施形態において、本体702は、ステンレス鋼などの適切な金属の材料又は合金で構成される。図示の実施形態では、本体702は、基台部704と挿入部706とが同じ材料で構成されているモノリシック一体成形体である。複数の実施形態において、例えば、基台部704と挿入部706とは、1個の被加工物(例えば、鋼製のブロック)から機械加工で製作される。なお、これに代えて、本体702が、複数の構成要素を備える、複数の材料で構成される、又はその両方である代替的な実施形態も想定されることを理解されたい。例えば、複数の実施形態において、挿入部706が損傷した場合に交換しやすくするよう、挿入部706を基台部704に取り外し可能に取り付けることもできる。複数の実施形態において、基台部704は第1の材料で構成され、挿入部706は第1の材料とは異なる第2の材料で構成される。複数の実施形態において、挿入部706の過熱により挿入部706に塗布された潤滑剤が焼き付くのを防ぐため、第2の材料は、第1の材料に比べて大きな熱容量を有するように選択することができる。
【0099】
図7Bに示すように、本体702は、本体702に形成された1つ以上の開口部714を備えている。図示の実施形態では、1つ以上の開口部714は、冷却剤入口部716が挿入される第1の開口部と、冷却剤出口部718が挿入される第2の開口部とを備えている。複数の実施形態において、冷却剤入口部716と冷却剤出口部718とにより、加圧冷却剤源(図示せず)と流体連通する導管が構成される。複数の実施形態において、冷却剤入口部716と冷却剤出口部718は、本体702の一部である。複数の実施形態において、冷却剤入口部716と冷却剤出口部718は、1つ以上の開口部714に挿入されるように形成された別体の構成要素である。また、冷却剤入口部と冷却剤出口部718を一体化して、1本の冷却剤導管とする実施形態も想定される。
【0100】
複数の実施形態において、冷却剤入口部716及び冷却剤出口部718は、加圧冷却剤源(図示せず)を備える冷却回路の構成要素である。加圧冷却剤源は、冷却剤入口部716及び冷却剤出口部718と流体連通するポンプ及び冷却剤リザーバを備えることができる。冷却剤リザーバは、水や他の適切な冷却流体(例えば、加圧空気、不活性ガス)などの冷却剤を収容することができる。複数の実施形態において、冷却剤はポンプにより加圧されて、冷却剤入口部716から成形ツール700に入り、成形ツール700内を循環して、冷却剤出口部718から成形ツール700を出る。複数の実施形態において、冷却剤入口部716及び冷却剤出口部718は、本体702の同じ開口を通って延びる。すなわち、本体702が、冷却剤入口部716と冷却剤出口部718を挿入する開口部を1つ備える実施形態も想定される。また、1つ以上の開口部714(したがって、冷却剤入口部716及び冷却剤出口部718が本体702に接続される箇所)の位置としては、他の位置も想定される。例えば、複数の実施形態において、1つ以上の開口部714を、本体702の基台719に配置することができる。また、複数の実施形態において、1つ以上の開口部714を、表面710上に配置することができる。他にも、成形ツールが複数の複数の冷却剤入口部、複数の冷却剤出口部、又はその両方を備える実施形態が想定される。
【0101】
複数の実施形態において、本体702は、本体702内に形成された流体キャビティ720を備えている。流体キャビティ720は、冷却剤入口部716及び冷却剤出口部718と流体連通させることができる。例えば、図示の実施形態では、本体702は、1つ以上の開口部714のそれぞれから流体キャビティ720まで延びる送達導管722を備えている。冷却剤入口部716から送達された冷却剤は、送達導管722の1つを通って流体キャビティ720に入り、冷却剤出口部718を通って流体キャビティ720を出る。複数の実施形態において、成形ツール700内において流体が循環するのは、基台部704に限定されている。すなわち、複数の実施形態において、冷却剤入口部716から成形ツール700に入る冷却剤は、挿入部706に入ることも、挿入部706を通って循環することもない。基台部704の体積は、挿入部706に比べて大きいため、冷却剤を循環させるための開口部(例えば、1つ以上の開口部714、送達導管722)のサイズは、冷却剤の送達に高い圧力が必要とならない大きさとすることができる。流体の循環を基台部704内に局在化させることには、冷却剤を成形ツール700内に循環させるために必要な圧力を抑えるという利点がある。圧力要件が抑えられると、プロセスの安全性を高めることができる上、より廉価な冷却剤源(低圧ポンプなど)の使用が可能となる。また、成形ツール700は、流体キャビティ720の境界を画定するキャップ724をさらに備える。キャップ724は、本体702と同じ材料で構成することができる。複数の実施形態において、キャップ724を本体702の内表面に溶接することにより、流体キャビティ720が画成される。
【0102】
引き続き図7Bを参照すると、成形ツール700は、基台部704と挿入部706の両方を通って延びる熱伝導性インサート726をさらに備えている。熱伝導性インサート726は、挿入部706の端部に近接して配置される近位端728と、基台部704に配置される遠位端730とを有している。複数の実施形態において、冷却剤源からの冷却剤が流体キャビティ720内を流れる際に、遠位端730の周囲を循環するように、遠位端730は、流体キャビティ720の内部に配置される。複数の実施形態において、熱伝導性インサート726は、本体702(又は挿入部706)を形成する材料よりも熱伝導率の大きい材料で構成される。複数の実施形態において、熱伝導性インサート726の熱伝導率は、300W/m*K以上である。複数の実施形態において、熱伝導性インサート726は、熱伝導性材料(例えば、銅、グラファイト)で構成された1部品構成の構造を有している。複数の実施形態において、熱伝導性インサート726は、熱伝導性材料で形成されたワイヤを含む。複数の実施形態において、熱伝導性インサート726は、挿入部706と熱伝導性インサート726との間の接触伝導性を高めるため、熱伝導性ペースト(thermal paste)を用いて挿入部706の開口部に圧入される。
【0103】
複数の実施形態において、熱伝導性インサート726は、熱交換媒体を含む熱移動デバイスで構成される。例えば、複数の実施形態において、熱伝導性インサート726はヒートパイプを備えている。ヒートパイプでは、ガラス管102から作動流体が受け取った熱によって、作動流体が加熱され、気化して、遠位端730に向かって進み、冷却領域(例えば、内部で冷却剤が循環する流体キャビティ720内)に移動する。作動流体は冷却領域で凝縮して、挿入部706から外れた位置(例えば、基台部704内)で熱を放出することができる。実施態様にかかわらず、予熱されたガラスの熱は、挿入部706から熱伝導性インサート726内を通り、流体キャビティ720を通って循環する冷却剤に移動する。熱伝導性インサート726と流体キャビティ720とを組み合わせることにより、挿入部706を内に流体を循環させる必要性を回避しながら、成形ツール700からの熱の除去を促進することができる。すなわち、高圧の冷却剤源を利用せずに、挿入部706から熱を除去することができる。
【0104】
図示の実施形態では、熱伝導性インサート726は、挿入部706内を延びる直線部732と、基台部704に配置されるコイル状部734とを備えている。コイル状部734は、熱伝導性インサート726全体を直線状とする場合よりも熱伝導性インサート726の長さを伸ばすことに寄与することができ、熱伝導性インサート726の軸方向範囲を抑えながら、熱伝導性インサート726の有効熱伝導率を潜在的に上昇させることができる。熱伝導性インサート726は、実施態様に応じて様々な形態をとることができる。複数の実施形態において、熱伝導性インサート726の少なくとも一部が、流体キャビティ720を通って循環する冷却剤に接触する。複数の実施形態において、熱伝導性インサート726の少なくとも一部が、流体キャビティ720を通って延びる。他にも、熱伝導性インサート726の一部が本体702の外部に配置される実施形態も想定される。
【0105】
図8は、ガラス管をガラス物品に変換するプロセスで使用することができる成形ツール750の断面模式図である。成形ツール750は、本明細書の図4Dに関する説明で述べた成形ツール324cに代えて使用することができる。成形ツール750は、本明細書の図7A及び図7Bに関する説明で述べた成形ツール700と同様の構成要素を備えることができる。したがって、図8では、同様の参照番号を使用して、同様の構成要素が組み込まれていることを示している。図8に示すように、成形ツール750は、本明細書の図7A及び図7Bに関する説明で述べた本体702を備えるとともに、送達導管722を介して1つ以上の開口部714と流体連通する流体キャビティ720を備えている。成形ツール750は、熱伝導性インサート800を備えているが、この熱伝導性インサート800は、成形ツール750の軸方向の長さが本体702の軸方向の長さより大きい点で、本明細書に記載の熱伝導性インサート726とは構造が異なる。熱伝導性インサート800は、挿入部706に配置される近位端802と、本体702の外に配置される遠位端804とを有している。熱伝導性インサート800は、実質的に直線状であり、コイル状部は備えていない。
【0106】
図8に示すように、本体702は支持構造体806上に配置されている。支持構造体806は、変換装置100の成形ステーションの基台104(図2参照)に取り付けることができる。キャップ808は、一部が基台部704内を(例えば、流体キャビティ720の一部を形成する開口部内を)延びて、流体キャビティ720を密閉する。キャップ808は、軸方向に延びる延長部810を備えている。延長部810は支持構造体806に形成された開口部に挿入される。延長部810は、流体キャビティ720に面するキャビティ812を備えており、これにより、支持構造体806の内部まで流体キャビティ720を延長して、本体702の外まで延びている熱伝導性インサートの遠位端804が流体キャビティ720の内部に配置されるようにしている。
【0107】
引き続き図8を参照すると、成形ツール750は、基台部704を取り囲むように延びる外装814をさらに備えている。外装814は、変換プロセス時に成形ツール750に塗布された潤滑剤を受けるための導管816(例えば、溝、凹部など)を備えている。成形ツール750は、様々な形状を有する熱伝導性インサートを収容するように、本明細書に記載の成形ツールの各種構成要素の構造をどのように変更できるかを実例として示したものである。熱伝導性インサート800が収容できるように本体702の形状を変更した(例えば、基台部704を長くして、キャップ808の延長部810を不要とした)実施形態も想定されるものと理解されたい。
【実施例
【0108】
本明細書の図7A図7B図8に関する説明で述べた成形ツール700、750に対して、Fluent(登録商標)ソフトウェアの熱モデルを用いた試験を実施した。ヒートインサートを用いない場合と、様々に異なる材料を本明細書に記載の熱伝導性インサート726、800として用いた場合とで、シミュレーションを行った。成形ツール700の結果を、以下の表1に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
図示の通り、熱伝導性インサート726があることにより、接触面708の最高温度と平均温度が大きく低下し、熱伝導率の上昇により温度低下幅が大きくなったことがわかる。グラファイトのインサート及びヒートパイプのインサートでは、最高温度が200℃未満まで下がり、潤滑剤の焼き付きを防ぐことができた。図9Aは、熱伝導性インサート726を様々に異なる材料で構成した場合の、挿入部706の軸方向の温度分布をプロットしたグラフ900を示している。図示の通り、熱伝導性インサート726があることにより、軸方向の温度ばらつきが大きく低下し、特に、ヒートパイプを用いた場合に、軸方向の温度ばらつきが最も小さく、50℃未満となった。
【0111】
成形ツール750の熱シミュレーション結果を、以下の表2に示す。
【0112】
【表2】
【0113】
図示の通り、熱伝導性インサート800があることにより、接触面708の最高温度と平均温度が大きく低下し、熱伝導率の上昇により温度低下幅が大きくなったことがわかる。すべてのインサートで、最高温度が200℃未満まで下がり、潤滑剤の焼き付きを防ぐことができた。図9Bは、熱伝導性インサート800を様々に異なる材料で構成した場合の、挿入部706の軸方向の温度分布をプロットしたグラフ902を示している。図示の通り、熱伝導性インサート800があることにより、軸方向の温度ばらつきが大きく低下し、特に、ヒートパイプを用いた場合に、軸方向の温度ばらつきが最も小さく、50℃未満となった。
【0114】
上記の実施例では、熱伝導性インサート726は熱伝導性インサート800と同じ長さを有している。しかし、成形ツール700に比べて成形ツール750の方が、若干性能が良いことが認められる。理論に束縛されることを望むものではないが、キャップ808の延長部810により冷却剤流の体積が大きくなったことにより、熱伝達が促進されたと考えられる。
【0115】
なお、上述の例では、潤滑剤送達導管又は冷却剤循環部のいずれかとして機能する流体キャビティを備えた成形ツールについて説明しているが、流体キャビティがこれらの両機能を同時に果たす実施形態も想定されることを理解されたい。例えば、複数の実施形態において、成形ツールは、本明細書に記載の流体キャビティ520と同様の流体キャビティと、本明細書に記載の1つ以上の流体開口部516と同様の少なくとも1つの流体開口部と、流体キャビティ520内を通って(例えば、潤滑剤に熱伝導性インサートが浸るように)延びる熱伝導性インサートとを備えることができる。また、成形ツールが複数の冷却剤キャビティを含み、各冷却剤キャビティが本明細書に記載の機能のうちの1つを実行する実施形態も想定される。例えば、潤滑剤を送達するための第1の流体キャビティを挿入部内に配置し、熱伝導性インサートの周囲に冷却剤を循環させるための第2の流体キャビティを基台部内に配置する実施形態が想定される。かかる実施形態では、熱伝導性インサートは、このような冷却剤キャビティの両方を通って延びることができるほか、1つの冷却剤キャビティのみを通って延びることもできる。したがって、上述の例では、熱伝導性インサートと潤滑剤送達用の流体開口部とが互いに排他的なものとして説明しているが、かかる本開示の態様を一緒に組み込んだ実施形態も想定される。
【0116】
以上から、ガラス管をガラス物品に変換する際に使用するための改良された成形ツールが、本明細書に記載されていることが理解されよう。本明細書に記載の成形ツールは、流体キャビティから成形ツールとガラス管との界面に潤滑剤を供給するための1つ以上の流体開口部を備えることができ、これにより、成形ツールとガラス管とを互いに相対的に動かす(例えば、回転させる)際に、確実に滑りが得られるようにしている。また、これに代えて又は加えて、本明細書に記載の成形ツールは、成形ツールとガラス管との界面からの熱除去を促進するために、成形ツール内を通って延びる熱伝導性インサートを備えることができる。このような成形ツールからの熱除去は、熱伝導性インサートの周囲に冷却剤を循環させて、成形ツールの接触面を潤滑剤の燃焼温度未満(例えば、200℃以下)に保つことにより行うことができる。本明細書に記載の成形ツール設計には、このように適切な潤滑や冷却を与えることにより、得られるガラス物品に欠陥が形成されるのを防ぎ、これにより、変換プロセスで潤滑や冷却のために休止を挟むことがなくなることから、部品製造時間を短縮し、製造歩留まりを向上することができるという利点がある。
【0117】
当業者であれば、特許請求の範囲に記載の主題の趣旨及び範囲から逸脱しない範囲で、本明細書に記載の実施形態に種々の変形及び変更を加えることができることは明らかであろう。したがって、添付の特許請求の範囲及びその均等物を逸脱しない限り、本明細書に記載の種々の実施形態に対する変形及び変更も本明細書の範囲に含むことが意図されている。
【0118】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0119】
実施形態1
ガラス管をガラス容器に変換するプロセスで使用する成形ツールであって、該成形ツールが、
流体を収容するための流体キャビティを備える基台部と、
前記基台部から延びる挿入部であって、前記ガラス管の開口部に嵌合するサイズの外表面を有する挿入部と、
を備え、
前記挿入部が、該挿入部の内表面から前記外表面まで延びる流体開口部を備え、該流体開口部が、前記流体キャビティから前記挿入部と前記ガラス管との間に前記流体を送達するように構成されること、
前記成形ツールが、前記基台部及び前記挿入部を通って延びる熱伝導性インサートを備え、該熱伝導性インサートが、前記挿入部を形成する材料の熱伝導率よりも大きい熱伝導率を有しており、前記流体キャビティ内の前記流体により前記熱伝導性インサートの温度が調節されるように、前記熱伝導性インサートが前記流体キャビティを通って延びること、
のうちの少なくとも一方を伴う成形ツール。
【0120】
実施形態2
前記挿入部が、前記内表面から前記外表面まで延びる前記流体開口部を備え、
前記流体が、前記挿入部と前記ガラス管との間に膜を形成する潤滑剤を含む、実施形態1に記載の成形ツール。
【0121】
実施形態3
前記流体開口部が、前記内表面と前記外表面の間を延びる少なくとも1つの離散孔を含む、実施形態2に記載の成形ツール。
【0122】
実施形態4
前記挿入部が、離散孔の配列を備える、実施形態3に記載の成形ツール。
【0123】
実施形態5
前記離散孔の配列が、前記挿入部の外周の少なくとも一部に沿って延びる複数列の離散孔を含む、実施形態4に記載の成形ツール。
【0124】
実施形態6
前記流体開口部が、前記挿入部を形成する前記材料の多孔性により得られる流路を含む、実施形態2に記載の成形ツール。
【0125】
実施形態7
前記挿入部を形成する前記材料がグラファイトである、実施形態6に記載の成形ツール。
【0126】
実施形態8
前記挿入部を形成する前記材料が、焼結鋼、ステンレス鋼、及び真鍮からなる群から選択される、実施形態6に記載の成形ツール。
【0127】
実施形態9
前記成形ツールが、前記流体キャビティと流体連通する加圧潤滑剤源をさらに備え、
該加圧潤滑剤源が、前記流体キャビティに所定量の前記潤滑剤を、前記ガラス管が前記成形ツールと接触している成形期間にわたって送達するように構成されている、実施形態2に記載の成形ツール。
【0128】
実施形態10
前記潤滑剤が、油、又は空気と油の混合物を含む、実施形態9に記載の成形ツール。
【0129】
実施形態11
前記成形ツールが、前記基台部及び前記挿入部を通って延びる熱伝導性インサートを備え、
前記流体が、前記流体キャビティを通って循環する冷却剤を含み、
前記成形ツールが、
冷却剤源と、
前記冷却剤源及び前記流体キャビティと流体連通する冷却剤入口部と、
冷却剤出口部と、
をさらに備え、
前記冷却剤源からの冷却剤が、前記冷却剤入口部から前記流体キャビティに入って前記熱伝導性インサートの周囲を循環し、前記冷却剤出口部から前記成形ツールを出ることにより、前記成形ツールから熱を除去する、実施形態1に記載の成形ツール。
【0130】
実施形態12
前記熱伝導性インサートが、前記挿入部に配置される近位端と、前記基台部に配置される遠位端とを有しており、
前記冷却剤が、前記遠位端の周囲、及び前記近位端と前記遠位端との間に延在する前記熱伝導性インサートの中央領域の少なくとも一部の周囲を循環するように、前記流体キャビティが前記遠位端の周囲に延在する、実施形態11に記載の成形ツール。
【0131】
実施形態13
前記成形ツールの中心軸が、前記熱伝導性インサートの少なくとも一部を通って延びる、実施形態11に記載の成形ツール。
【0132】
実施形態14
前記熱伝導性インサートが、前記挿入部内を延びる直線部と、前記基台部に配置されるコイル状部とを備える、実施形態13に記載の成形ツール。
【0133】
実施形態15
前記熱伝導性インサートの全体が前記成形ツールの前記中心軸に沿って延びる、実施形態13に記載の成形ツール。
【0134】
実施形態16
前記熱伝導性インサートがヒートパイプを備える、実施形態11に記載の成形ツール。
【0135】
実施形態17
前記熱伝導性インサートが、銅、グラファイト、又はそれらの組み合わせで構成される、実施形態11に記載の成形ツール。
【0136】
実施形態18
前記冷却剤が水を含む、実施形態11に記載の成形ツール。
【0137】
実施形態19
ガラス管をガラス容器に変換する装置であって、該装置が、
成形ステーションと、
前記ガラス容器を着脱可能に固定するように構成された保持具と、
前記保持具に動作可能に結合された駆動機構であって、保持具軸を中心に前記ガラス管を回転させるように構成された駆動機構と、
成形位置にセットすることにより、前記ガラス管の外表面に接触するように配置される第1の成形ツールと、
前記ガラス管の開口部に挿入されるように構成された第2の成形ツールと、
を備え、
前記第1の成形ツールを前記成形位置にセットすると、前記ガラス管が前記第1の成形ツールと前記第2の成形ツールとの間で押圧されるとともに、前記ガラス管が回転しながら前記第1の成形ツールと前記第2の成形ツールとの間で前記ガラス管が押圧されるように前記駆動機構が前記保持具を回転させて、前記ガラス管の外周に沿って延在する前記ガラス容器の部分を形成し、
前記第2の成形ツールが、
流体キャビティを備える基台部と、
前記基台部から延びる挿入部であって、前記ガラス管の前記開口部に嵌合するサイズの外表面を有する挿入部と、
を備えるとともに、
前記挿入部が、該挿入部の内表面から前記外表面まで延びる流体開口部を備え、該流体開口部が、前記ガラス管の前記回転中に前記流体キャビティから前記挿入部と前記ガラス管との間に流体を送達するように構成されること、
前記第2の成形ツールが、熱伝導性インサートを備え、該熱伝導性インサートが、前記挿入部の本体を形成する材料の熱伝導率よりも大きい熱伝導率を有しており、前記流体キャビティ内の流体により前記熱伝導性インサートの温度が調節されるように、前記熱伝導性インサートが前記流体キャビティを通って延びること、
のうちの少なくとも一方を伴う装置。
【0138】
実施形態20
前記成形ステーションが基台上に配置され、
前記装置が、前記基台に対して中心軸を中心に回転可能な主ターレットをさらに備え、
前記主ターレットの回転により前記ガラス管が前記成形ステーションと位置を合わせて配置されるように、前記保持具が前記主ターレットに取り付けられる、実施形態19に記載の装置。
【0139】
実施形態21
前記装置が、前記基台上に配置された複数の加工ステーションをさらに備え、
該複数の加工ステーションが、主循環経路に配置され、前記ガラス管が前記成形ステーションに入る前に前記ガラス管を加熱する加熱ステーションを含む、実施形態20に記載の装置。
【0140】
実施形態22
前記複数の加工ステーションは、前記主循環経路内における前記成形ステーションの後方に配置される第2の成形ステーションを含み、
該第2の成形ステーションが、前記ガラス管の前記開口部への挿入に適したサイズの第3の成形ツールを備え、
該第3の成形ツールの外表面と前記ガラス管の前記開口部との公差が、前記第2の成形ツールの前記外表面と前記ガラス管の前記開口部との公差に比べて小さい、実施形態21に記載の装置。
【0141】
実施形態23
前記挿入部が、前記内表面から前記外表面まで延びる前記流体開口部を備え、
前記流体が潤滑剤を含み、前記ガラス管が前記挿入部に対して回転すると前記潤滑剤が前記挿入部と前記ガラス管との間に膜を形成する、実施形態19に記載の装置。
【0142】
実施形態24
前記流体開口部が、前記内表面と前記外表面の間を延びる1つ以上の離散孔を含む、実施形態23に記載の装置。
【0143】
実施形態25
前記流体開口部が、前記挿入部を形成する材料の多孔性により得られる流路を含む、実施形態23に記載の装置。
【0144】
実施形態26
前記装置が、前記流体キャビティと流体連通する加圧潤滑剤源をさらに備え、
該加圧潤滑剤源が、前記流体キャビティに所定量の前記潤滑剤を、前記ガラス管が前記成形ステーションに内にある成形期間にわたって送達するように構成されている、実施形態23に記載の装置。
【0145】
実施形態27
前記第2の成形ツールが、前記基台部及び前記挿入部を通って延びる前記熱伝導性インサートを備え、
前記流体が、前記流体キャビティを通って循環する冷却剤を含み、
前記第2の成形ツールが、
冷却剤源と、
前記冷却剤源及び前記流体キャビティと流体連通する冷却剤入口部と、
冷却剤出口部と、
をさらに備え、
前記冷却剤源からの冷却剤が、前記冷却剤入口部から前記流体キャビティに入って前記熱伝導性インサートの周囲を循環し、前記冷却剤出口部から前記成形ツールを出ることにより、前記成形ツールから熱を除去する、実施形態19に記載の装置。
【0146】
実施形態28
前記熱伝導性インサートが、前記挿入部に配置される近位端と、前記基台部に配置される遠位端とを有しており、
前記冷却剤が、前記遠位端の周囲、及び前記近位端と前記遠位端との間に延在する前記熱伝導性インサートの中央領域の少なくとも一部の周囲を循環するように、前記流体キャビティが前記遠位端の周囲に延在する、実施形態27に記載の装置。
【0147】
実施形態29
前記第2の成形ツールの中心軸が、前記熱伝導性インサートの少なくとも一部を通って延びる、実施形態27に記載の装置。
【0148】
実施形態30
前記熱伝導性インサートが、前記挿入部内を延びる直線部と、前記基台部に配置されるコイル状部とを備える、実施形態27に記載の装置。
【0149】
実施形態31
前記熱伝導性インサートがヒートパイプを備える、実施形態27に記載の装置。
【0150】
実施形態32
前記熱伝導性インサートが、銅、グラファイト、又はそれらの組み合わせで構成される、実施形態27に記載の装置。
【0151】
実施形態33
ガラス管をガラス容器に変換する方法であって、
該方法が、
高温になるまで前記ガラス管を加熱するステップと、
前記ガラス容器の部分を形成するように、加熱された前記ガラス管を成形するステップと、
を含み、
前記成形するステップが、
前記ガラス管の外表面の一部を第1の成形ツールに接触させるステップと、
前記ガラス管の肉厚が、前記第1の成形ツールと、流体キャビティを備える第2の成形ツールとの間に配置されるように、前記第2の成形ツールを前記ガラス管の開口部に挿入するステップと、
前記第2の成形ツールを前記開口部に挿入している間、前記流体キャビティ内に流体を循環させるステップと、を含み、
前記循環させるステップにより、
前記第2の成形ツールの流体開口部から、前記第2の成形ツールと前記ガラス管の間の空間に前記流体を送出すること、
前記第2の成形ツールを通って延びる熱伝導性インサートの周囲を、前記流体が循環すること、
のうちの少なくとも一方が得られる、方法。
【0152】
実施形態34
前記加熱された前記ガラス管を成形するステップが、前記ガラス管の前記肉厚が前記第1の成形ツールと前記第2の成形ツールの間に配置されている間、軸を中心に前記ガラス管を回転させるステップを含む、実施形態33に記載の方法。
【0153】
実施形態35
前記流体キャビティ内に流体を循環させるステップにおいて、前記流体開口部から前記流体が送出され、
前記流体は潤滑剤であり、
前記流体キャビティ内に流体を循環させるステップが、前記第2の成形ツールと前記ガラス管の間に潤滑剤層を形成するために、前記第2の成形ツールが前記開口部に挿入された状態で回転している間に、一定量の前記潤滑剤を所定の圧力で前記流体キャビティに供給するステップを含む、実施形態33に記載の方法。
【0154】
実施形態36
前記潤滑剤が、油、又は空気と油の混合物を含む、実施形態35に記載の方法。
【0155】
実施形態37
前記流体開口部が、前記内表面と前記外表面の間を延びる1つ以上の離散孔を含む、実施形態35に記載の方法。
【0156】
実施形態38
前記流体開口部が、前記第2の成形ツールを形成する材料の多孔性により得られる流路を含む、実施形態35に記載の方法。
【0157】
実施形態39
前記流体が前記熱伝導性インサートの周囲を循環し、
前記流体が冷却剤を含み、
前記流体キャビティ内に流体を循環させるステップが、
前記流体キャビティと流体連通する冷却剤入口部を介して、前記冷却剤を冷却剤源から前記流体キャビティに供給するステップと、
前記冷却剤が前記熱伝導性インサートの周囲を循環した後に、前記流体キャビティと流体連通する冷却剤出口部から前記流体キャビティから前記流体を排出し、前記ガラス管から受け取った熱を前記第2の成形ツールから取り除くステップと、
を含む、実施形態33に記載の方法。
【0158】
実施形態40
前記冷却剤が水を含む、実施形態39に記載の方法。
【0159】
実施形態41
前記熱伝導性インサートが、前記第2の成形ツールの本体を構成する材料に比べて高い熱伝導率を有する材料から構成される、実施形態39に記載の方法。
【0160】
実施形態42
前記熱伝導性インサートがヒートパイプである、実施形態39に記載の方法。
【0161】
実施形態43
前記熱伝導性インサートが、銅、グラファイト、又はそれらの組み合わせで構成される、実施形態39に記載の方法。
【0162】
実施形態44
前記第1の成形ツール及び前記第2の成形ツールで形成する前記ガラス容器の前記部分が、フランジを含む、実施形態33に記載の方法。
【0163】
実施形態45
前記方法が、前記ガラス容器の前記部分を形成するステップの後に、前記ガラス容器の前記開口部に第3の成形ツールを挿入するステップをさらに含み、
前記第3の成形ツールは、前記第2の成形ツールに比べて前記ガラス管の前記開口部のサイズにより近似したサイズを有している、実施形態33に記載の方法。
【0164】
実施形態46
前記方法が、前記ガラス容器の前記部分を形成するステップの後に、前記ガラス管の領域を切り離しデバイスに接触させることにより、前記ガラス容器の前記部分を前記ガラス管の残りの部分から切り離すステップをさらに含む、実施形態33に記載の方法。
【符号の説明】
【0165】
100 変換装置
102 ガラス管
103 ガラス物品
104 基台
105 基台の上部
106 加工ステーション
108 主ターレット
109 主ターレットの底部
110 ガラス管装填ターレット
112 二次加工ステーション
114 副ターレット
116 主循環経路
118 副循環経路
130 保持具
132 装填路
134 ガラス管装填ターレットの循環経路
140 ガラス管の外表面
142 ガラス物品の肩部
144 ガラス物品のフランジ
145 ガラス物品の首部
146 ガラス管の内表面
150 ガラス管の開口部
202 加熱ステーション
204 成形ステーション
206 切り離しステーション
208 研磨ステーション
210 冷却ステーション
212 穿孔ステーション
214 管装填ステーション
216 搬出ステーション
218 計測ステーション
220 所定管長降下ステーション
222 主ターレットの割り出し方向
301 加熱要素
302 バーナ
304 燃料供給部
306 酸素供給部
308 給気部
310 燃料制御弁
312 酸素制御弁
314 空気制御弁
320 切り離しツール
324、500、600、610、700、750 成形ツール
326 アクチュエータ
340 冷却ノズル
342 冷却流体
344 冷却流体制御弁
502、602、612、704 成形ツールの基台部
504、604、614、706 成形ツールの挿入部
505、712 成形ツールの中心軸
506、710 基台部の表面
508 モノリシック体
510 挿入部の外表面
512、608 挿入部の湾曲接触面
514 挿入部外表面の平面部
516 挿入部の流体開口部
518 挿入部の内表面
520、720 成形ツールの流体キャビティ
522 流体キャビティの遠位端
524 流体キャビティの流体入口
526 潤滑剤源
528 流体導管
530 潤滑剤
606 挿入部の離散孔
702 成形ツールの本体
708 挿入部の接触外表面
714 成形ツール本体の開口部
716 冷却剤入口部
718 冷却剤出口部
719 成形ツール本体の基台
722 成形ツール本体の送達導管
724、808 流体キャビティのキャップ
726、800 熱伝導性インサート
728、802 熱伝導性インサートの近位端
730、804 熱伝導性インサートの遠位端
732 熱伝導性インサートの直線部
734 熱伝導性インサートのコイル状部
806 成形ツールの支持構造体
810 キャップの延長部
812 延長部のキャビティ
814 成形ツールの外装
816 外装の導管
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
【国際調査報告】