(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】肺線維症の予防または治療用の薬学製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/506 20060101AFI20240517BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240517BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240517BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
A61K31/506
A61P11/00
A61P43/00 105
A61K31/496
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573619
(86)(22)【出願日】2022-05-31
(85)【翻訳文提出日】2023-11-29
(86)【国際出願番号】 KR2022007778
(87)【国際公開番号】W WO2022255790
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】10-2021-0071130
(32)【優先日】2021-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521036827
【氏名又は名称】ジェイツーエイチ バイオテック インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ヒョン-チョル
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジェ-ソン
(72)【発明者】
【氏名】イム,ジ-ウン
(72)【発明者】
【氏名】クォン,スン-ジン
(72)【発明者】
【氏名】イ,スン-ヨン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC42
4C086BC50
4C086GA07
4C086GA12
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZB21
(57)【要約】
本発明は、肺線維症の治療または予防のための化学式1の化合物の医学的用途に関する。また、本発明は、化学式1の化合物とニンテダニブの併用療法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式1の化合物を有効成分として含む肺線維症の予防または治療用の薬学製剤。
【化1】
【請求項2】
前記肺線維症が、薬物療法または放射線被曝によって誘発したことである、請求項1に記載の薬学製剤。
【請求項3】
前記肺線維症が、特発性肺線維症である、請求項1に記載の薬学製剤。
【請求項4】
前記製剤が、有効成分としてニンテダニブまたはその薬学的に許容可能な塩をさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の薬学製剤。
【請求項5】
化学式1の化合物の治療学的または予防学的に有効な量を肺線維症の治療または予防が必要な個体に投与することを特徴とする、肺線維症の治療または予防の方法。
【化2】
【請求項6】
前記肺線維症が、薬物療法または放射線被爆によって誘発されたことである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記肺線維症が、特発性肺線維症である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記方法が、ニンテダニブまたはその薬学的に許容可能な塩の治療学的または予防学的に有効な量を個体に投与することをさらに含む、請求項5から7のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肺線維症を治療または予防するための薬学製剤に関する。即ち、本発明は、肺線維症の治療または予防のための、特定の化合物の医薬用途に関する。また、本発明は、肺線維症の治療または予防のための複合製剤、即ち、併用療法(combination therapy)に関する。
【0002】
本出願は、2021年6月1日出願の韓国特許出願第10-2021-0071130号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
肺線維症(pulmonary fibrosis)とは、肺が次第に固くなって機能が落ち、呼吸困難で死亡に至る疾患である。発生原因は、リウマチ疾患、放射線、かびなどがあり、特別な原因が見つからない特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis)もある。
【0004】
抗癌治療または産業現場で放射線露出による肺組織の損傷及び線維化の事例は非常に頻繁である。例えば、胸部放射線治療を受けた患者の10~15%において2~3ヶ月後に放射線肺炎が発生し、6ヶ月後には晩成副作用である線維化疾患へ進む。このように進んだ肺線維化は、非可逆的であり、回復が不可能である。
【0005】
肺線維症の治療法は、線維化の進行を最大限に遅延させる薬物の服用が基本的であり、ひどい場合、肺移植を考慮しなければならない。現在、臨床的に使用中である肺線維症の処方薬は、ピルフェニドン(pirfenidone)とニンテダニブ(nintedanib)、二種がある。
【0006】
一方、二種の薬物を組み合わせて投与する併用療法(combination therapy)の場合、併用時にその効果を予測することが実質的に不可能である。但し、このような併用投与によって各薬物の投与容量を低めることができるなどの多様な長所から、複合製剤に関わる研究が切実に求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、肺線維症の予防または治療に有用な薬学製剤を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、肺線維症の予防または治療方法を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を達成するために、本発明の一様態は、下記の化学式1のピリミジン-4-カルボキサミド(pyrimidine-4-carboxamide)化合物を有効成分として含む肺線維症(pulmonary fibrosis)の予防または治療用の薬学製剤を提供する。
【0010】
【化1】
本発明者は、肺線維症の予防または治療用医薬品の開発中に、前記化学式1で表される化合物2-((R)-4-(2-フルオロ-4-(メチルスルホニル)フェニル)-2-メチルピペラジン-1-イル)-N-((1R,2s,3S,5S,7S)-5-ヒドロキシアダマンタン-2-イル)ピリミジン-4-カルボキサミド(2-((R)-4-(2-fluoro-4-(methylsulfonyl)phenyl)-2-methylpiperazin-1-yl)-N-((1R,2s,3S,5S,7S)-5-hydroxyadamantan-2-yl)pyrimidine-4-carboxamide)が肺線維症の緩和に非常に効果的であることを見出して本発明を完成した。
【0011】
前記化合物は、国際特許出願公開公報WO2011-139107に開示された化学式に含まれる化合物である。前記化合物は、11β-HSD1(11β-hydroxysteroid dehydrogenase type 1)酵素抑制剤であって、主に糖尿病、非アルコール性脂肪肝炎などような代謝性疾患の治療用途をターゲットとして研究されている(国際特許出願公開公報 WO2020-022708)。
【0012】
前記化学式1の化合物は、国際特許出願公開公報WO2011-139107に開示の方法によって製造され得る。
【0013】
また、本発明は、前記化学式1の化合物の治療学的または予防学的に有効な量を肺線維症の治療または予防が必要な個体に投与することを特徴とする、肺線維症の治療、改善または予防の方法を提供する。即ち、本発明は、前記化学式 1の化合物の肺線維症の治療または予防の医薬用途を提供する。
【0014】
本明細書で使用された「予防(prevention)」とは、患者における肺線維化の再発防止、拡散または発病の予防を含む。
【0015】
本明細書で使用された「治療」とは、肺線維化の根絶、除去または統制を含み、肺線維化の拡張を最小化または遅延することを意味する。
【0016】
本発明の一様態において、肺線維症は、薬物療法(例えば、坑癌治療薬物療法)または放射線被爆によって誘発された肺線維症である。本発明の他の様態において、肺線維症は、特発性肺線維症(Idiopathic pulmonary fibrosis)である。
【0017】
本発明の他の様態は、有効成分として前記化学式1の化合物を含み、第2の有効成分としてニンテダニブ(CAS number:656247-17-5)またはその薬学的に許容可能な塩をさらに含む、肺線維症の予防または治療用の薬学製剤を提供する。即ち、本発明の他の様態は、肺線維症の予防または治療するための前記二種の有効成分の複合製剤、即ち、これらの併用療法を提供する。
【0018】
前記化学式1の化合物とニンテダニブ成分は、肺線維症の治療または予防効果を相乗的に高める。
【0019】
前記ニンテダニブの薬学的に許容可能な塩としては、酸付加塩が使用可能であり、比較的に非毒性の酸から製造された活性化合物の塩を含む。酸付加塩は、十分な量の所望の酸、純粋または適当の非活性(inert)溶媒で、そのような化合物の中性形態を接触することて得られる。薬学的に許容可能な酸付加塩の例には、酢酸、プロピオン酸、イソブチル酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸及びその類似体を含む相対的に非毒性の有機酸に由来した塩のみならず、塩化水素、ブローム化水素、窒酸、炭酸、一水素炭酸、リン酸、一水素リン酸、二水素リン酸、硫酸、一水素硫酸、ヨード化水素または亜リン酸及びその類似体を含む。また、アルジネートとその類似体のようなアミノ酸の塩及びグルクロン酸またはガラクツロン酸とその類似体のような有機酸の類似体を含む。例えば、ニンテダニブのエタンスルホン酸塩が使用され得る。
【0020】
本明細書で使用された用語である「化学式1の化合物」または「ニンテダニブ」とは、化学式1の化合物及びニンテダニブのみならず、これらのクラスレート(clathrates)、水和物、溶媒和物または多形体(結晶多形)を含む意味である。
【0021】
本明細書で使用される場合、用語「結晶多形(polymorph)」は、本発明の化合物の固体結晶形態またはそれの複合体を意味する。同じ化合物の他の結晶多形は、他の物理的、化学的及び/またはスペクトル特性を示す。物理的特性面における相違点としては、安定性(例えば、熱または光安定性)、圧縮性と密度(製剤化及び生産物の製造に重要)及び溶解率(生物学的な利用率に影響を与え得る)を含むが、これらに限定されない。安定性における差異は、化学反応性変化(例えば、さらに他の多形から構成された場合よりも一つの多形から構成された場合にさらに速く変色するような差別的酸化)または機械的な特徴(例えば、動力学的に選好された多形体であって、保存された錠剤の破片が熱力学的にさらに安定した多形へ変換)または両方とも(一つの多形の錠剤は、高い湿度で分解にさらに敏感)を惹起する。結晶多形の他の物理的性質は、それらの加工に影響を与え得る。例えば、一つの結晶多形は、さらに他の結晶多形に比べ、例えば、その形態または粒子の大きさ分布に起因して溶媒化合物を形成する可能性が高いか、ろ過または洗浄がより難しくなり得る。
【0022】
本明細書で使用された用語「溶媒化合物」とは、非共有分子間の力によって結合した化学量論的または非化学量論的な量の溶媒を含む本発明の化合物を意味する。望ましい溶媒は、揮発性であり、無毒性であり、ヒトに極少量投与され得る。
【0023】
本明細書で使用された用語「水和物(hydrate)」とは、非共有分子間の力によって結合した化学量論的または非化学量論的な量の水を含む本発明の化合物を意味する。
【0024】
本明細書で使用された用語「クラスレート(clathrate)」とは、ゲスト分子(例えば、溶媒または水)を閉じ込める空間(例えば、チャンネル(channel))を含む結晶格子形態の本発明の化合物を意味する。
【0025】
もし、ある化合物(プロドラッグ(prodrug))が体内から分離されて本発明の化合物を生成するようになるとしたら、そのような化合物も本発明の範疇に含まれる。本明細書で使用され、相違に指摘されないなら、用語「プロドラッグ」とは、活性化合物、特に、本発明の化合物を供給するために加水分解され、酸化し、生物学的条件(生体外または生体内)下で異なる反応ができる本発明の化合物を意味する。プロドラッグの例には、生加水分解できる(biohydrolyzable)アミド、生加水分解できるエステル、生加水分解できるカルバメート(carbamates)、生加水分解できる炭酸塩、生加水分解できるウレイド(ureides)及び生加水分解できるリン酸塩類似体のような生加水分解できる部分を含み、生加水分解されて本発明の化合物を生成する化合物を含むが、これらの具体的な態様に限定されない。望ましくは、カルボン酸官能基を有している化合物のプロドラッグは、カルボン酸の低級アルキルエステルである。カルボン酸エステルは、分子に存在するカルボン酸の一部をエステル化することで、通常形成される。プロドラッグは、Burger’s Medicinal Chemistry and Drug Discovery 6th ed.(Donald J.Abrahamed., 2001,Wiley)及びDesign and Application of Prodrugs(H.Bundgaard ed.,1985,Harwood Academic Publishers Gmfh)に記載されたようによく知られた方法を用いて容易に製造できる。
【0026】
本発明の化合物は、通常、治療的に有効な量が投与される。
【0027】
本発明の化合物は、任意の望ましい経路によって、このような経路に適切な薬学組成物の形態及び意図する治療のための効果的な投与量で投与され得る。 効果的な投与量は、単回投与または分割投与で、通常約0.01~50mg/体重(kg)/日であり、望ましくは約0.05~20mg/体重(kg)/日である。年齢、種及び治療しようとする疾病または状態(condition)によって、前記範囲の下限未満の投与量水準が望ましい場合がある。その他の場合には、依然としてより多い投与量で有害な副作用なく使用され得る。より多い投与量は、一日の投与のために数回の少ない投与量に分割され得る。適切な投与量を決定するための方法は、本発明が属した分野によく知られている。
【0028】
本発明の併用療法に従って、二種の有効成分が投与される場合、各有効成分の投与量は、単独投与時の投与量と同一であるか、または単独投与に対して10~30重量%減少し得る。本発明の一様態において、併用時の前記化学式1の化合物は、ニンテダニブの投与量に対して0.1~1重量部が投与され得る。ニンテダニブの投与量は、本発明が属する分野において公知である(Ofev(登録商標)投与量参照)。
【0029】
前述したように、二種の有効成分が投与される場合、これらは同時に(同一剤形または分離した剤形で)または連続的に投与され得る。そのため、一様態において、本発明は、前記化学式1の化合物の治療的に有効な量及び第2有効成分であるニンテダニブまたはその薬学的に許容可能な塩の治療的に有効な量を個体に投与して肺線維症を治療または予防するための方法を提供する。
【0030】
一様態において、複数の薬効成分の一つが反復投与(multiple doses)で与えられるか、または全てが反復投与で与えられ得る。もし、同時ではない場合であれば、反復投与の時期は、0週超過から20週未満で任意に変わり得る。
【0031】
また、併用方法、組成物及び剤形は、単に二種の製剤の使用に限定されず、多重治療の組合せも考えられる。病的な状態(condition)を治療、予防または改善するための投与療法(dosage regimen)は、多様な要素によって任意に変更され得る。これらの要素は、個体の年齢、体重、性別、食餌(diet)及び医学的状態(condition)のみならず、個体が患う障害(disorder)を含む。
【0032】
本明細書に開示された併用治療を構成する薬学製剤は、任意に結合した単一剤形または主に同時投与のための分離剤形である。本明細書において、製剤は、二種の有効成分が分離して含まれたキット剤形であり得る。また、併用治療を構成する薬学的製剤は、二つの段階の投与を必要とする療法によって投与される製剤のいずれか一つで順次に投与され得る。二つの段階の投与療法は、活性剤の順次投与または分離された活性剤の離隔投与を必要とし得る。反復投与段階の時間周期は、力価(potency)、溶解度、生物学的利用能(bioavailability)、血漿半減期及び薬学的製剤の動力学的プロファイル(kinetic profile)のような各々の薬学的製剤の特性によって数分から数時間まで至る。標的分子濃度の日内変動(Circadian variation)は、最適の投与間隔を決定するのに使用される。
【0033】
他の様態において、本発明の他の様態によれば、前記化学式1の化合物及び薬学的に許容可能な担体または添加剤を含む薬学製剤、または、前記化学式1の化合物、ニンテダニブまたはその薬学的に許容可能な塩、及び薬学的に許容可能な担体または添加剤を含む薬学製剤(複合製剤)を提供する。
【0034】
用語「薬学的に許容可能な」とは、薬学的製剤としての使用に適合することを意味し、一般的にこのような使用に安全であると認められ、このような使用のために国家の管理機関によって公式的に承認されるか、または韓国薬典または米国薬局方の目録に載っていることを意味する。
【0035】
前述した疾病または状態(conditon)の治療のために、本明細書で説明された前記有効成分または有効成分は次のように投与され得る。本発明による複数の有効成分が下記の一種の製剤に共に含まれるか、または複数の有効成分が各々分離された製剤に含まれて共に服用され得る。
【0036】
鼻腔内投与(Intranasal administration)
本発明による有効成分は鼻腔に投与可能であり、特に、本発明の医薬用途上、鼻腔投与が望ましい。本発明において、このような鼻腔投与は、通常の吸入剤投与を含む概念である。
【0037】
このような「鼻腔内投与(intranasal administration)」とは、鼻及び鼻腔の一つまたは両方ともによる鼻及び鼻腔内への組成物の伝達を意味し、噴霧メカニズムまたは液滴メカニズムによる伝達または有効成分のエアロゾル化による伝達を含む。吸入剤による組成物の投与は、噴霧または液滴メカニズムによる伝達によって鼻または口を通じて行われ得る。
【0038】
鼻腔または吸入伝達のために、本発明の組成物は、通常の技術者によく知られた方法によって剤形化され得る。例えば、代表的な可溶化、希釈、または分散物質、例えば、食塩水、保存剤、例えば、ベンジルアルコール、吸収促進剤などを含み得るが、これらに制限されない。このような液体の製薬組成物は、後述する口腔投与組成物などと同様の方法で製造され得る。
【0039】
このような鼻腔投与は、本発明が属した分野における公知の鼻腔内伝達装置を用いて行われることが可能であり、このような装置においては、フルオロカーボン、ハイドロフルオロアルカンなどの噴射剤が使用され得る。
【0040】
口腔投与(Oral administration)
本発明の化合物は口腔に投与可能であり、口腔は嚥下(swallowing)を含む概念である。口腔投与によって、本発明の化合物が胃腸管(gastrointestinal tract)に入るか、例えば、口腔(buccal)または舌下(sublingual)投与のように、口から血流へ直接的に吸収され得る。
【0041】
口腔投与のための望ましい組成物は、固形、液状、ゲル(gel)またはパウダー状であり得、錠剤(tablet)、トローチ剤(lozenge)、カプセル(capsule)、顆粒剤、散剤などの剤形を有し得る。
【0042】
口腔投与のための組成物は、選択的に腸溶コーティング(enteric coating)され得、腸溶コーティングによって遅延された(delayed)または持続した(sustained)放出を示し得る。即ち、本発明による口腔投与のための組成物は、即時または変形された(modified)放出パターンを有する剤形であり得る。
【0043】
液状剤形は、溶液、シロップ及び懸濁液を含み得、このような液状組成物は、軟質または硬質カプセル内に含有された形態であり得る。このような剤形は、薬学的に許容可能な担体、例えば、水、エタノール、ポリエチレングリコール、セルロースまたはオイルを含み得る。また、前記剤形は、一つ以上の乳化剤及び/または懸濁剤を含み得る。
【0044】
錠剤(tablet)の剤形において、活性成分である薬物の量は、錠剤の総重量に対して約0.05~95重量%、より一般的には剤形の約2~50重量%で存在し得る。また、錠剤は、約0.5~35重量%、より一般的には剤形の約2~25重量%を含む崩壊剤を含み得る。崩壊剤の例としては、乳糖、でん粉、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム(croscarmellose sodium)、マルトデキストリンまたはこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
錠剤を製造するために含まれる滑沢剤としては、望ましく約0.1~5重量%の量で存在し得、タルク(talc)、二酸化ケイ素、ステアリン酸、カルシウム、亜鉛またはマグネシウムステアレート、ステアリルフマル酸ナトリウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
錠剤を製造するための結合剤(binder)としては、ゼラチン、ポリエチレングリコール、糖(sugar)、ガム(gum)、でん粉(starch)、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどが挙げられ、錠剤の製造に望ましい希釈剤としては、マンニトル、キシリトール、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、でん粉、微結晶セルロースなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
錠剤に選択的に含まれ得る可溶化剤は、錠剤の総重量に対して約0.1~3重量%の量が使用され得、例えば、ポリソルベート、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、プロピレンカーボネート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジメチルイソソルビド、ポリオキシエチレングリコール化した天然または水素化ヒマシ油、HCOR(商標)(Nikkol)、オレイルエステル、ゲルシア(Gelucire(商標))、カプリリック/カプリル酸モノ/ジグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルトールHS(商標)などが本発明による薬学組成物に使用され得るが、これらに限定されない。
【0048】
非経口投与(Parenteral Administration)
本発明の化合物は、血流、筋肉または内臓内へ直接投与され得る。非経口投与のための望ましい方法は、静脈内(intravenous)、筋肉内(intra-muscular)、皮下動脈内(subcutaneous intra-arterial)、腹腔内(intraperitoneal)、髄腔内(intrathecal)、頭蓋内(intracranial)注射などを含む。非経口投与のための望ましい装置は、(針及び無針注射器を含む)注射器(injector)及び注入方法(infusion method)を含む。
【0049】
非経口投与のための組成物は、即時または変形された放出パターンを有する剤形であり得、変形された放出パターンは、遅延された(delayed)または持続した(sustained)放出パターンであり得る。
【0050】
多くの非経口剤形は液状組成物であり、このような液状組成物は、本発明による薬効成分、塩、緩衝剤、等張化剤などを含む水溶液である。
【0051】
非経口剤形は、乾燥された形態(例えば、凍結乾燥)または滅菌非水溶液として製造され得る。これらの剤形は、滅菌水(sterile water)のような適したビークル(vehicle)と共に使用され得る。また、溶解度増強剤(solubility-enhancing agents)も、非経口溶液の製造に使用可能である。
【0052】
局所投与(Topical Administration)
本発明の化合物は、皮膚または経皮で局所的に投与され得る。このような局所投与のための剤形は、ローション、溶液、クリーム、ゲル、ハイドロゲル、軟膏、フォーム(foam)、インプラント(implant)、パッチなどを含む。局所投与剤形のための薬学的に許容可能な担体は、水、アルコール、ミネラルオイル、グリセリン、ポリエチレングリコールなどを含み得る。また、局所投与は、電気穿孔法(electroporation)、イオン導入法(iontophoresis)、音波泳動(phonophoresis)などによって行われ得る。
【0053】
局所投与のための組成物は、即時または変形された放出パターンを有する剤形であり得、変形された放出パターンは、遅延された(delayed)または持続した(sustained)放出パターンであり得る。
【発明の効果】
【0054】
本発明は、化学式1の化合物を有効成分として含む、肺線維症の治療または予防に有用な薬学製剤を提供する。即ち、本発明は、肺線維症の治療または予防に有用な、化学式1の化合物の医薬用途を提供する。
【0055】
本発明は、化学式1の化合物及びニンテダニブまたはその薬学的に許容可能な塩の二種の有効成分を含む、肺線維症の治療または予防に有用な薬学製剤を提供する。即ち、本発明は、肺線維症の治療または予防に有用な、相乗効果を示す併用療法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1】放射線の照射による肺線維症誘導のマウスモデルに各試験物質を経口投与したとき、放射線照射部位の肺組織のマッソントリクローム染色(masson’s trichrome)結果である。
【
図2】放射線の照射による肺線維症誘導のマウスモデルに各試験物質を経口投与したとき、放射線照射部位の肺組織を顕微鏡で撮影した後、イメージプログラムを用いてコラーゲンの沈着程度を定量化したグラフである。
【
図3】ブレオマイシン(bleomycin)による肺線維症誘導のマウスモデルに各試験物質を経口投与したとき、肺組織からRNAを抽出してqPCR方法を用いてCOL1A1遺伝子のmRNA発現を定量化したグラフである。
【
図4】ブレオマイシンによる肺線維症誘導のマウスモデルに各試験物質を経口投与したとき、肺組織からRNAを抽出してqPCR方法を用いてTGFb遺伝子のmRNA発現を定量化したグラフである。
【
図5】ブレオマイシンによる肺線維症誘導のマウスモデルに各試験物質を経口投与したとき、肺組織を溶解して溶解物を得た後、ELISA方法を用いてヒドロキシプロリンの量を測定して定量化したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、本発明を具体的な実施例を挙げて説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形されることができ、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0058】
参考例1.肺線維症疾患誘発の動物モデルへの投与(放射線の照射)
C57BL/6、雄、8週齢のマウスに試験物質を経口投与し、1時間後に胸部に3mmの大きさで放射線(90Gy、4mm Collimator)を照射した。その後、14日間、毎日、一日に二回ずつ試験物質を経口投与した後、剖検した。マウスの肺組職を10%ホルマリンで固定した後、パラフィンセクションを作り、トリクローム染色法を用いて組織内のコラーゲン沈着程度を確認した。試験群の構成は、以下の表1のようである。
【0059】
【0060】
参考例2.肺線維症疾患誘発の動物モデルへの投与(ブレオマイシン注入)
C57BL/6Nマウスをイソフルレンを用いて呼吸痲酔した。その後、頸部中央を切開して気道を露出させた。生理食塩注射液に溶かしたブレオマイシンをインシュリン注射器を用いて、露出した上気道に1.25mg/kgを徐々に注入した。その後、インシュリン注射器を除去して切開部分を縫合した。その後、14日間、毎日、一日に二回ずつ試験物質を経口投与した後、剖検した。マウスの左側の肺組織を10%ホルマリンで固定した後、パラフィンセクションを作り、H&E染色法を用いて肺線維化程度を評価した。右側の肺は、qPCR及びヒドロキシプロリン測定のために組織を溶解した。その後、各々の実験に使用して肺線維関連の遺伝子発現及び肺におけるコラーゲンの沈着程度を評価した。試験群の構成は、下記の表2のようである。
【0061】
【0062】
実施例1.肺線維症の動物モデルにおける化学式1の化合物の抗線維化効能
参考例1にしたがって放射線によって誘導された肺線維化マウスモデルに試験物質を投与して剖検した。マウスの肺組織は、10%の中性ホルマリン(neutral formalin)で一日間固定してパラフィンセクションを作った。組職周辺のパラフィンを除去するために、キシレン(xylene)、95%・90%・70%のエタノール溶液に各々5分ずつ順番に反応させた。組織の抗原活性化のために0.1M濃度のクエン酸(pH6.0)溶液に組織を浸漬して20分間沸かした。その次、ブアン液(Bouin’s solution)に1分、ワイゲルトヘマトキシリン(Weigert’s hematoxylin)に10分、 リンタングステン酸 /リンモリブデン酸(Phosphotungstic/phosphomolybdic acid)に10分、 アニリンブルー(aniline blue)に5分、1%アセト酸に1分間順次に反応させた。その後、脱水過程を行った後、カバーグラスで封入して顕微鏡(Carl Zeiss Vision)で観察した。
【0063】
試験結果、
図1及び
図2と同様に、ビークル(G1)に対して全ての試験物質投与群からコラーゲン沈着を抑制する抗線維化効能を確認した。このうち、高い有意性を見せる試験群は、ニンテダニブ単独投与群(G2)、及びニンテダニブと化学式1の化合物との併用投与群(G4)であった。特に、ニンテダニブ投与群(G2)と比較してニンテダニブと化学式1の化合物との併用投与群(G4)は、より優秀な効能を示した。
【0064】
結論的に、化学式1の化合物は、肺線維症の一次評価指標であるコラーゲン沈着現象を有意に抑制し、特に、ニンテダニブと併用投与時、その効果はニンテダニブ単独投与時よりも優秀であることが確認された。
【0065】
実施例2.肺線維症の動物モデルにおける化学式1の化合物の抗線維化効能
参考例1にしたがってブレオマイシンによって誘導された肺線維化マウスモデルに試験物質を投与して剖検した。マウスの肺組織は、10%の中性ホルマリンで一日間固定してパラフィンセクションを作った。組職周辺のパラフィンを除去するために、キシレン、95%・90%・70%のエタノール溶液に各々5分ずつ順番に反応させた。その次、トリクローム染色法のために、ブアン液に1分、ワイゲルトヘマトキシリンに10分、リンタングステン酸/リンモリブデン酸に10分、アニリンブルーに5分、1%アセト酸に1分間順次に反応させた。その後、脱水過程を行った後、カバーグラスで封入して顕微鏡(Carl Zeiss Vision)で観察した。マウスの右側廃朝職の半分は、qPCRのために組織を溶解してRNAを抽出してcDNAを合成した。その後、qPCR装備を用いて線維化を起こす細胞外基質であるCOL1A1及び線維化を起こす重要なサイトカインであるTGFβの遺伝子発現分析を行った。残りの半分は、組織を溶解して得た溶解物をヒドロキシプロリンELISAキット(hydroxyproline ELISA kit)を用いて分析した。
【0066】
試験結果、
図3では、肺組織におけるCOL1A1遺伝子発現を比較したとき、統計学的に有意な差異は観察されなかったが、ビークル(G2)と比較して全ての投与群で減少する傾向を確認することができた。また、
図4においてTGFβの遺伝子発現を比較したとき、ビークル投与群(G2)に対して全ての投与群で有意な差を確認することができた。
図5において、肺組織におけるヒドロキシプロリンの発現を確認した結果、ビークル投与群(G2)に対してニンテダニブ単独投群(G7)を除いた全ての投与群で有意な差を確認することができ、特に、ニンテダニブと化学式1の化合物との併用投与群(G6)からより良好な結果を確認することができた。
【0067】
結論的に、化学式1の化合物は、肺線維症の一次評価指標であるコラーゲン沈着現象を有意に抑制し、特に、ニンテダニブとの併用投与時にその効果はニンテダニブ単独投与時と比較して優秀であることが確認された。
【国際調査報告】