IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コンセホ スペリオール デ インベスティガシオネス シエンティフィカスの特許一覧 ▶ ウニヴェルシタット ポリテクニカ デ ヴァレンシアの特許一覧

<>
  • 特表-長鎖線状アルケンの製造方法 図1
  • 特表-長鎖線状アルケンの製造方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】長鎖線状アルケンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 5/25 20060101AFI20240517BHJP
   C07C 11/02 20060101ALI20240517BHJP
   B01J 23/46 20060101ALI20240517BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240517BHJP
【FI】
C07C5/25
C07C11/02
B01J23/46 301Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573633
(86)(22)【出願日】2022-05-27
(85)【翻訳文提出日】2024-01-29
(86)【国際出願番号】 ES2022070326
(87)【国際公開番号】W WO2022248758
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】P202130482
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】306001703
【氏名又は名称】コンセホ スペリオール デ インベスティガシオネス シエンティフィカス
(71)【出願人】
【識別番号】523449861
【氏名又は名称】ウニヴェルシタット ポリテクニカ デ ヴァレンシア
【住所又は居所原語表記】Servicio de Promocion y Apoyo a Investigacion, Innovacion y Transferencia-,i2T,Cami de Vera,s/n-Edificio 8G-Acceso A-Planta 46022 Valencia Spain
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モン コネジェロ,マルタ
(72)【発明者】
【氏名】レイバ ペレス,アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】オリバ メセグアー,ジュディ
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA03
4G169BA02B
4G169BA27C
4G169BA28C
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BB08C
4G169BC70A
4G169BC70B
4G169BD12C
4G169BE01C
4G169BE03C
4G169BE27C
4G169BE36C
4G169BE42C
4G169CB41
4G169DA05
4H006AA02
4H006AC14
4H006BA23
4H006BA81
4H006BA82
4H006BB61
4H006BC10
4H006BC11
4H006BC19
4H006BC34
4H039CA20
4H039CJ10
(57)【要約】
【課題】本発明は、金属前駆体の存在下で、非置換線状末端C10~C16アルケンから線状内部C10~C16アルケンを得る長鎖線状アルケンの製造方法に関する。
【解決手段】本発明は、線状及び内部C10~C16アルケンを得る方法に関し、以下のステップを含んでいる。
(i)非置換線状末端C10~C16アルケンを、担持された又は非担持の金属前駆体と混合する、
(ii)ステップ(i)で得られた混合物を、150℃と300℃の間の温度で加熱し、金属前駆体からin situで触媒として作用する金属原子を単離させる、
のステップからなり、その特徴とするのは、
金属前駆体が、非置換線状末端C10~C16アルケンに対して100重量ppmより少ない量で用いることである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部及び線状のC10~C16アルケンを得る方法であって、
i)非置換線状末端C10~C16アルケンを、担持又は非担持の金属前駆体と混合し、
ii)ステップ(i)で得られた混合物を、150℃~300℃の温度で加熱し、前記金属前駆体からin situで触媒として作用する金属原子を単離させるステップからなり、
前記金属前駆体が、前記非置換線状末端C10~C16アルケンに対して100重量ppmより少ない量を用い、ステップ(i)とステップ(ii)を溶媒なしで行い、及び前記ステップ(i)の金属前駆体の金属がRuであることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ステップ(i)の非置換線状末端C10~C16アルケンが、非置換線状末端C12~C14アルケンを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップ(i)の非置換線状末端C12~C14アルケンのアルケンが、1-ドデセン及び1-テトラデセンから選ばれることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記金属前駆体が、Ru(CO)12、RuCl、Ru(CCOD、Ru(PPh)l2、コロイド形態のRuナノ粒子、及び純粋な金属としてのRuナノ粒子から選ばれることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記金属前駆体が、無機酸化物に担持されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップ(i)の非置換線状末端C10~C16アルケンが、前記金属前駆体に対して10,000当量と100,000,000当量の間で存在することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記金属前駆体が、前記非置換線状末端C10~C16アルケンに対して重量で1ppmと100ppmの間の量で用いられることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ステップ(ii)が、シンプルな攪拌装置を備えたバッチ式反応器、又は連続流動式又は固定床で撹拌するタンク型連続反応器で行われることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記ステップ(i)の温度が、200℃と250℃の間であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ステップ(ii)が、1barと20barの間の圧力で行われることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記ステップ(ii)が、不活性雰囲気下で行われることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記ステップ(ii)の反応時間が、0.5時間と72時間の間であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油として、また製紙業への応用に有用であることを特徴とする長鎖線状アルケンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非置換長鎖内部アルケンは、工業的に生産される鎖状化合物に不可欠な化合物であるが、その合成はコストがかかり、後に続く変換に制限がある。
これは、内部アルケンを合成する最も直接的で簡単な方法、すなわち、安価で広く入手可能な末端アルケンから所望の内部位置に二重結合を移動させてクリーンな内部アルケンを得る方法は、研究レベルでも又工業レベルでも未だ解決されていないためである。したがって、アルケン中の二重結合を移動させる技術は、シンプルな内部アルケンを製造するニーズを未だ満たしていない。
【0003】
現在、非置換長鎖アルケンの異性化は、工業において塩基固体を用いて、200~450℃の温度で、連続した流れで行われており、一般に、転化率が80~90%でアルケンといくつかの分岐生成物との混合物を生成する(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
この異なる内部成分の混合物では、所望の移動位置(2、3、4など)が得られるが、各アルケンの対応するシス及びトランス立体異性体(以下のコメントを参照)に加え、所定のnアルキル鎖を有するアルケンに対して2(n-1)個の異性体を含み得る最終混合物となる。
前記の特許(例えば、特許文献3を参照)は、最終的な組成を詳細に記述していない。一例として、これまでに記載されたのは1-ブテンなどの短鎖ガス状アルケンの異性化のみであり、転化率80%で2-ブテン中のシス/トランス比が1:2となり、これは純粋なトランス-2-ブテンでは収率が約50%と低いことを意味している。この転化率は、対応する非置換長鎖アルケンの潤滑油や製紙用サイジング剤など多くの用途で許容できるものではない。例えば、長鎖潤滑油は、最終製品で分岐がなく、転化率が少なくとも95%より大きい(スタート時の末端オレフィンは5%より低い)ことを必要とする。そうでないと、潤滑特性が失われ、所望の最終生成物が固化し液状でなくなる。
【0004】
現在の石油由来末端アルケンの二重結合移動プロセスでは、ノルマルアルファーオレフィン(NAO)技術と呼ばれる流動末端アルケンの製造を利用して、両方のプロセスを結合している。非置換長鎖末端アルケン、すなわち線状の長鎖アルケンとみなされる8個以上の炭素を有する末端アルケンの例は、今のところ記載されたものはない(例えば、特許文献4参照)。
【0005】
さらに、現在まで、NAOプロセスからの末端オレフィンは、移動プロセスに入る前に追加の精製(蒸留による)が必要であり、そうしないと触媒が急速に不活性化となる(米国特許US3723564)。
【0006】
さらに、石油化学から得られる非置換長鎖末端アルケンの二重結合の移動は、最適化されたプロセスではなく、高価な触媒、エネルギー集約的プロセスを必要とし、転化率が不充分で、最終混合物に弊害がある分岐及び飽和アルケンを大量に含む生成混合物となる。
【0007】
触媒としてシリカアルミナを用い、75~150℃で転化率が約98%となる流動固体触媒で末端オレフィンから内部オレフィンへの異性化も記載されている(特許文献5)。その結果では、この異性体の分布がかなり広く、このプロセスは、触媒1キログラムで生成物が20キログラムのプロセス収率を達成するために、生成混合物を典型的に4時間循環させる必要があり、これはフレキシブルで効率の良い安価な工業生産には不充分である。
【0008】
また、長鎖の線状末端アルケンを含む二重結合を移動する触媒として、固体に担持された金属を用いる研究もある(特許文献6及び特許文献7参照)。しかしながら、この固体触媒は、添加剤として金属又はアルデヒドの混合物を数千ppmの量で使用して部分的な転化(約68%)であり、工業目的には適していない。
【0009】
末端アルケンにおける二重結合の移動は、溶液中の均一触媒を用いても研究されている。これらの触媒は、塩基性又は酸性である。
【0010】
シンプルなアルケンの異性化に、KOH及びNaOHを鉄(非特許文献1)又はアルミナ(特許文献8、特許文献9)と組合せ、塩基性溶液中の均一系触媒として使用している。
しかしながら、これらの塩基は通常、非常に大量(多くの場合化学量論的)使用する必要があり、反応時間が長く、苛性残を発生させ、多くの場合転化が不充分である。さらに、これらの強塩基は、最終混合物中に塩基が残っていると、アルケンがその後の酸触媒反応、例えばハイドロ付加反応、フリーデル-クラフツ反応、又はエポキシ化反応に好ましくないので、石油由来の長鎖線状内部アルケンの適用には特に適していない。
【0011】
金属錯体をベースにした可溶性酸性触媒は、塩基性触媒よりも研究されており、このシステムは、固体触媒よりも高い転化率と選択性(どちらの場合も最大99%)を示し、実験室での内部アルケンの合成に新たな道を切り開いたが、化学量論的な添加剤、大量の溶媒、許容できない金属触媒量(通常、0.5~10mol%)など工業的に行うに大きな障害があり、商業的な工業プロセスにとって経済的に許容できるものではない(非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6)。
特定の長鎖アルケンに対して非常に少量で可溶なRu触媒の例があるが、これは、場合によっては一酸化炭素雰囲気が必要であるのに加えて、非常に高価で有毒な一酸化炭素錯体を使用する必要があり、これらの触媒系は経済的に魅力がないだけでなく、継続使用の可能性と安全性を考えると危険で望ましくないものである(特許文献10,特許文献11)。
【0012】
したがって、工業規模での生産を達成するためには、末端二重結合から長鎖内部結合への移動の収率と選択性を大幅に向上させる方法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第3723564号明細書
【特許文献2】米国特許第6281404号明細書
【特許文献3】米国特許第5801293号明細書
【特許文献4】米国特許第8324423号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2005/0070747号明細書
【特許文献6】米国特許第3352939号明細書
【特許文献7】米国特許第3409702号明細書
【特許文献8】欧州特許出願公開第0027939号明細書
【特許文献9】西独国特許出願公開第2137024号明細書
【特許文献10】国際公開第2014/1508211号
【特許文献11】米国特許9708236号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】ChemSusChem,2012,Vol.5,p.734-739
【非特許文献2】Science,2019,Vol.363,p.391-396
【非特許文献3】Chem.Cat.Chem.,2017,Vol.9,p.3849-3859
【非特許文献4】Chem.Rev.,2003,Vol.103,p.27-51
【非特許文献5】J.Organomet.Chem.,1975,Vol.86,C17
【非特許文献6】J.Mol.Cat.,1981,Vol.11,p.293-300
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、線状及び内部C10~C16アルケンを得る方法に関し、以下のステップを含んでいる。
(i)非置換線状末端C10~C16アルケンを、担持された又は非担持の金属前駆体と混合し、
(ii)ステップ(i)で得られた混合物を、150℃と300℃の間の温度で加熱し、金属前駆体からin situで触媒として作用する金属原子を単離させる
ステップからなり、その特徴とするのは、
金属前駆体は、非置換線状末端C10~C16アルケンに対して100重量ppmより少ない量で用いることである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の方法は、VIII族及びIX族からの金属のホメオパシー量(100ppmより少ない)を担持され、又は非担持で触媒とし、Hやアルデヒドなどの外部還元剤なしで、及び水素化物や一酸化炭素などの予め還元された可溶性触媒がなしで対応する末端アルケンにある二重結合を移動させることによって、非置換で非分岐の炭素原子が10~16個、好ましくは非置換で非分岐の炭素原子が12~14個の長鎖線状内部アルケンの製造を可能にする。
また、この方法は、溶媒なしで行うのが好ましい。C10~C16アルケンは、その独特の疎水性と密度特性により異性化に適している。さらに、この反応は、炭素数が少ない又は多いアルカンと比較して、どちらの場合も触媒被毒が少なくなるためにより効率的に行われる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】1-ドデセン(A)と、0.0005mol%のRu(C(COD)で4.5時間反応した後の反応生成物(B)の1H-NMRスペクトルである。
図2】1-テトラデセン(A)と、0.0005mol%のRu(C(COD)で4.5時間反応した後の反応生成物(B)の1H-NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
別の実施形態で、本発明は、上述した方法に関し、ステップ(i)及び(ii)を溶媒なしで行われる。
【0019】
別の実施形態で、本発明は、上述した方法に関し、さらにステップ(ii)で得られた生成物を単離するための単離ステップ(iii)を含んでいる。本発明でいう単離ステップ(iii)は、添加剤や副生成物の除去が不要であるので、最終生成物を回収することからなっている。
【0020】
別の実施形態で、本発明は、上述した方法に関し、ステップ(i)の非置換線状末端C10~C16アルケンが、非置換線状末端C12~C14アルケンであり、より好ましくは、ステップ(i)の非置換線状末端C10~C16アルケンが、1-ドデセン及び1-テトラデセンから選ばれる。
【0021】
別の実施形態で、本発明は、上述した方法に関し、ステップ(i)の金属前駆体が、周期表の第VIII族及び第IX族からの金属又はそれらの混合物の塩、錯体、ナノ粒子、及びマクロ形態から選ばれる。
【0022】
別の実施形態で、本発明は、上述した方法に関し、ステップ(i)の金属前駆体の金属が、周期表の第VIII族からであり、好ましくは、ステップ(i)の金属前駆体の金属が、周期表の第VIII族からで、Fe、Ru、Os、及びそれらの混合物から選ばれる。
別の実施形態で、本発明は、上述した方法に関し、ステップ(i)の金属前駆体の金属が、周期表の第IX族からであり、好ましくは、ステップ(i)の金属前駆体の金属が周期表の第IX族からで、Co、Rh、Ir、及びそれらの混合物から選ばれる。
別の実施形態で、本発明は、上述した方法に関し、ステップ(i)の金属前駆体の金属が、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、及びそれらの組合わせから選ばれ、好ましくはFe、Ru、及びこれらの混合物から選ばれ、より好ましくは、ステップ(i)の金属前駆体が、Ruである。
【0023】
別の実施形態で、本発明は、上述した方法に関し、ステップ(i)の金属前駆体の金属が、Ru(III)、Ru(II)、又はRu(0)である。
別の実施形態で、本発明は、上記に定義した方法に関するもので、金属前駆体が、Ru(CO)12、RuCl、Ru(CCOD、Ru(PPh)l2、コロイド形態のRuナノ粒子、及び純粋な金属としてのRuナノ粒子から選ばれる。
本発明全体を通して、コロイド形態のナノ粒子(NP)は、界面活性剤安定化のナノ粒子を指す。例として、とりわけ、カルボン酸類、カルベン類、チオール類、及びアンモニウム塩類がある。純金属としてのナノ粒子(NP)は、担持されていなければならないナノ粒子を指す。
【0024】
別の実施形態で、本発明は、上記で定義される方法に関し、金属前駆体が、無機酸化物に担持され、好ましくは、その無機酸化物が、アルミナ、チタニア、シリカ、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、ナノセリア、活性炭、及び/又はそれらの組み合わせから選ばれる。
【0025】
別の実施形態で、本発明は、上記で定義される方法に関し、金属前駆体が、任意に還元されているRu塩である。
【0026】
別の実施形態で、本発明は、上記で定義される方法に関し、金属前駆体が、活性炭上に担持されている。
【0027】
別の実施形態で、本発明は、上述した方法に関し、ステップ(i)の非置換線状末端C10~C16アルケンが、金属前駆体に対して10,000当量から100,000,000当量の間、好ましくは金属前駆体に対して1,000,000当量から10,000,000当量の間、より好ましくは金属前駆体に対して2,000,000当量から5,000,000当量の間で存在する。
【0028】
別の実施形態で、本発明は、上記に定義される方法に関し、金属前駆体が、非置換線状末端C10~C16アルケンに対して重量で1ppmと100ppmの間、好ましくは非置換線状末端C10~C16アルケンに対して重量で1ppmと50ppmの間、より好ましくは、非置換の線状末端C10~C16アルケンに対して重量で1ppmと10ppmの間の量で使用される。
【0029】
別の実施形態で、本発明は、上記で定義される方法に関し、この方法のステップ(ii)が、シンプルな攪拌装置を備えたバッチ式反応器、又は連続流動又は固定床で撹拌するタンク型連続反応器で行われ、好ましくは、シンプルな攪拌装置を備えたバッチ式反応器で実施される。本発明全体を通して、“バッチ式”という用語は、固定バッチ反応器を指す。
【0030】
別の実施形態で、本発明は、上記で定義される方法に関し、ステップ(ii)の温度が、200℃と250℃の間、より好ましくは、200℃の温度である。
【0031】
別の実施形態で、本発明は、上記で定義される方法に関し、ステップ(ii)が、1barから20barの間、好ましくは1barの圧力で実施される。
【0032】
別の実施形態で、本発明は、上記で定義される方法に関し、ステップ(ii)が、不活性又は周囲雰囲気下、好ましくは不活性な窒素、ヘリウム、又はアルゴン雰囲気下、より好ましくは窒素雰囲気下で行われる。本発明全体を通して、「周囲雰囲気」という用語は、不活性雰囲気下ではなく、屋外環境と同じで行うことを指す。
【0033】
別の実施形態で、本発明は、上記に定義される方法に関し、ステップ(ii)が、有機溶媒の存在下、好ましくは芳香族溶媒の存在下で実施される。
【0034】
別の実施形態で、本発明は、上記で定義される方法に関し、ステップ(ii)の反応時間が、0.5時間と72時間の間、好ましくは1時間と24時間の間である。
【0035】
別の実施形態で、本発明は、上記で定義される方法に関し、ステップ(i)の非置換線状末端C10~C16アルケンが1-ドデセンであり、ステップ(i)の金属前駆体がRuであり、そしてステップ(ii)の温度が200℃である。
【0036】
別の実施形態で、本発明は、上記で定義される方法に関し、ステップ(i)の非置換線状末端C10~C16アルケンが1-ドデセンであり、ステップ(i)の金属前駆体がRuであり、ステップ(ii)の温度が200℃であり、そしてステップ(ii)が不活性窒素雰囲気下で行われる。
【0037】
別の実施形態で、本発明は、上記で定義される方法に関し、ステップ(i)の非置換線状末端C10~C16アルケンが1-ドデセンであり、ステップ(i)の金属前駆体がRuであり、ステップ(ii)の温度が200℃であり、ステップ(ii)が不活性窒素雰囲気下で実施され、反応時間が4.5時間であり、そして反応圧力が1barである。
【0038】
別の実施形態で、本発明は、上記で定義される方法に関し、ステップ(i)の非置換線状末端C10~C16アルケンが1-テトラデセンであり、ステップ(i)の金属前駆体がRuである。
【0039】
別の実施形態で、本発明は、上記で定義される方法に関するもので、ステップ(i)の非置換線状末端C10~C16アルケンが1-テトラデセンであり、ステップ(i)の金属前駆体がRuであり、そしてステップ(ii)の温度が200℃である。
【0040】
別の実施形態で、本発明は、上記で定義される方法に関するもので、ステップ(i)の非置換線状末端C10~C16アルケンが1-テトラデセンであり、ステップ(i)の金属前駆体がRuであり、ステップ(ii)の温度が200℃であり、ステップ(ii)が不活性窒素雰囲気下で実施され、反応時間が5時間、そして反応の圧力が1barである。
【0041】
本発明全体を通して、「非置換線状末端C10~C16アルケン」との用語は、炭素数が10~16で、分岐又は置換を有さず、末端二重結合を有するアルケンをいう。例えば、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセンが挙げられる。
【0042】
「金属前駆体」との用語は、固体に担持されている、又は固体に担持されていない金属の塩、錯体、ナノ粒子、及びマクロ形態を指しており、これは、in situで非常に活性な単離金属原子を形成し、溶媒を使用せずに非置換線状末端C10~C16アルケンの二重結合の移動させる触媒として有用である。固体担体は、アルミナ、ゼオライト、シリカなどの無機酸化物である。例として、特に、Fe、Ru、Os、Co、Rh、及びIrなど周期表の第VIII族及び第IX族からの金属である。
【0043】
本発明の方法で使用されるin situで形成される触媒は、極めて少量、典型的には百万分率(ppm)で使用することをベースにしている。
【0044】
本発明の方法によって得られる非置換線状状内部C10~C16アルケンの構造特性は、潤滑油及び製紙加工の産業において有用である。
【0045】
明細書と特許請求の範囲の全体を通して、「含む」という語及びその変形は、他の技術的特徴、添加剤、成分又はステップを排除することを意図していない。当業者にとって、本発明の他の目的、利点及び特徴は、本発明の記述及び実施形態の両方から部分的に理解できるであろう。以下の実施例及び図面は、例示のために提供されるものであり、本発明を限定することを意図していない。
【0046】
次に、本発明を、発明者らによって行った本発明の生成物の有効性を実証する試験で説明する。
【0047】
表1に、Ruー型触媒について、1-ドデセンを用いた結果を示す。二重結合の移動は、Ru触媒を5重量ppm(投入6)用いるだけで、反応時間が長い(20時間)が、転化率が95%を超えている。アルキル鎖を有するこの線状末端オレフィンは、沸点が200℃以上で熱安定性が良好であるので、150℃以上の温度で内部アルケンへの転化が可能で、より短い時間で転化率が改善される。
表1は、200℃で、4.5時間後に異性化が97%を超える転化率で続いていることを示している。この場合、触媒の量に応じて、内部アルケン混合物が異なることに留意すべきである。例えば、触媒を1重量ppm用いると2-ドデセンが72%、その他の内部アルケンが18%であり、5重量ppm用いると2-ドデセンが26%である。この結果は、いくつかの商業会社で出発物質(1-ドデセン)で一貫している。いずれにせよ、最終的な線状内部アルケン混合物が、所定触媒量で一貫している。
【0048】
【化1】
【0049】
【表1】
【0050】
表2は、1-テトラデセンについて、反応温度150℃と200℃における結果を示している。1-ドデセンについて上記で評価したように、200℃で、5重量ppmのRuで転化率が5時間後に97%を超え、短い時間でより高い転化率が得られた。転化率が95%を超えるのは、どの工業的方法でも達成することは困難であり、生成物の最終用途にとって非常に有益であることを考慮に入れる必要がある。
【0051】
【化2】
【0052】
【表2】
【実施例1】
【0053】
触媒Ru(CCODを5重量ppm用いた1-ドデセンの二重結合移動方法:
1-ドデセン(27g)を、マグネチックスターラーを備えた50mlフラスコに入れ、Ru(メタリル)COD触媒(0.0005mol%)を加えた。フラスコをセプタムで閉じ、窒素雰囲気を作り、フラスコを200℃に予熱したオイルバスに入れ、所定反応時間、マグネチックスターラーで攪拌した。反応混合物から一部を採取し、GC及びNMRを用いて反応を経時的にモニターした。ジクロロメタン(反応中に蒸発する)中のRu触媒のストック溶液は、使用する量が少なく計量できないので、製造されたと考える。これらの溶液を製造するのに、ジクロロメタンを溶媒としてメスフラスコを使用した。GC分析では、反応混合物5.6μLを酢酸エチル1mLで希釈した。NMR分析では、反応混合物20mgを重水素化クロロホルム(CDClシグナル:一重項、7.26ppm)に溶解し、反応転化率を計算するための内部標準として1,2-ジクロロエタン15mg(シグナル:一重項、3.73ppm)を添加した。図1は、スタートの末端アルケンが消え、目的とする生成物が現れる様子を示している。
【実施例2】
【0054】
触媒Ru(CCODを5重量ppm用いた1-テトラデセンの二重結合移動方法:
1-テトラデセン(32g)を、マグネチックスターラーを備えた50mlフラスコに入れ、Ru(メタリル)COD触媒(0.0005mol%)を加えた。フラスコをセプタムで閉じ、窒素雰囲気を作り、フラスコを200℃に予熱したオイルバスに入れ、所定反応時間、マグネチックスターラーで攪拌した。反応混合物から一部を採取し、GC及びNMRを用いて反応を経時的にモニターした。ジクロロメタン(反応中に蒸発する)中のRu触媒のストック溶液は、使用する量が少なく計量できないので、製造されたと考える。これらの溶液を製造するために、ジクロロメタンを溶媒としてメスフラスコを使用した。CG分析では、反応混合物5.6μLを酢酸エチル1mLで希釈した。NMR分析では、反応混合物20mgを重水素化クロロホルム(CDClシグナル:一重項、7.26ppm)に溶解し、反応転化率を計算するための内部標準として1,2-ジクロロエタン15mg(シグナル:一重項、3.73ppm)を添加した。図2は、スタートの末端アルケンが消え、目的とする生成物が現れる様子を示している。
【実施例3】
【0055】
シリカ上の固体Ru触媒を用いた撹拌反応器における1-ドデセンの二重結合の移動方法:
RuClを大表面積シリカに含浸させ最終Ruが1重量%としたシリカ上固体Ru触媒を、1-ドデセン(27g)に対して0.001mol%になるようにしてマグネチックスターラー付き50mlフラスコに入れ、次いで1-ドデセン(27g)を入れた。フラスコをセプタムで閉じ、窒素雰囲気を作り、フラスコを200℃に予熱したオイルバスに入れ、所定反応時間、マグネチックスターラーで攪拌した。上澄みサンプルを採取し、GC及びNMRを用いて反応を経時的にモニターした。NMR分析では、上澄み20 mgを重水素化クロロホルム(CDClシグナル:一重項、7.26ppm)に溶解し、反応転化率を計算するための内部標準として1,2-ジクロロエタン15mg(シグナル:一重項、3.73ppm)を添加した。
図1
図2
【国際調査報告】