IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ボーグワーナー インコーポレーテッドの特許一覧

特表2024-520581摩擦改善のためのラウンドコーナーエッジリンク
<>
  • 特表-摩擦改善のためのラウンドコーナーエッジリンク 図1
  • 特表-摩擦改善のためのラウンドコーナーエッジリンク 図2
  • 特表-摩擦改善のためのラウンドコーナーエッジリンク 図3
  • 特表-摩擦改善のためのラウンドコーナーエッジリンク 図4
  • 特表-摩擦改善のためのラウンドコーナーエッジリンク 図5
  • 特表-摩擦改善のためのラウンドコーナーエッジリンク 図6
  • 特表-摩擦改善のためのラウンドコーナーエッジリンク 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】摩擦改善のためのラウンドコーナーエッジリンク
(51)【国際特許分類】
   F16G 13/06 20060101AFI20240517BHJP
   F16G 13/04 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
F16G13/06 B
F16G13/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573674
(86)(22)【出願日】2021-06-07
(85)【翻訳文提出日】2023-11-29
(86)【国際出願番号】 US2021036176
(87)【国際公開番号】W WO2022260647
(87)【国際公開日】2022-12-15
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500124378
【氏名又は名称】ボーグワーナー インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100093861
【弁理士】
【氏名又は名称】大賀 眞司
(74)【代理人】
【識別番号】100129218
【弁理士】
【氏名又は名称】百本 宏之
(72)【発明者】
【氏名】冨永 祥太
(72)【発明者】
【氏名】谷本 翔
(57)【要約】
【解決手段】チェーンは、リンクとタイミング駆動プラスチック面との間の摩擦損失を低減するために、円形の面取りされたエッジを有するリンクを含む。円形面取りエッジの半径が0.14~0.33mmの範囲であることが好ましい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンク本体を有するチェーンリンクであって、前記リンク本体は、次のものを含む:
0.14 ~ 0.33mmの半径の前面面取りされたエッジを有する前面と、
0.14 ~ 0.33mmの半径の背面面取りされたエッジを有する背面と、
前記前面を前記背面に接続する背面部分と、
前記背面部分の反対側にあり、肩部及び背面遷移部分を介して前記背面部分に接続された一対の歯と、
前記背面部分と前記前面から前記背面に延びる前記一対の歯との間の前記リンク本体によって画定される一対のピン穴と、
一対の歯の間に股座。
【請求項2】
前記半径が0.20mmである、請求項1に記載のチェーンリンク。
【請求項3】
前記半径は、研磨材で転倒することによって形成される、請求項1に記載のチェーンリンク。
【請求項4】
リンク本体を有するチェーンリンクであって、前記リンク本体は、次のものを含む:
前面面取りされたエッジを有する前面と、
背面面取りされたエッジを有する前記正面の反対側の背面と、
前記前面を前記背面に接続する背面部分と、
前記背面部分の反対側にあり、肩部及び背面遷移部分を介して前記背面部分に接続された一対の歯と、
前記背面部分と前記前面から前記背面に延びる前記一対の歯との間の前記リンク本体によって画定される一対のピン穴と、
前記一対の歯の間の股座、
前記背面部分及び前記前面の前記背面遷移部分は、前面面取りされたエッジを有し、前記背面部分及び前記背面の前記背面遷移部分は、背面面取りされたエッジを有し、
前記前面面取りエッジ及び前記背面面取りエッジはそれぞれ、0.14 ~ 0.33mmの半径を有する。
【請求項5】
前記半径が0.20mmである、請求項4に記載のチェーンリンク。
【請求項6】
サイレントチェーンであって、
行に形成された複数のリンクプレートであって、前記リンクプレートのそれぞれが、
半径0.14~0.33 mmの前面面取りエッジを有する前面、
半径0.14~0.33 mmの背面面取りエッジを有する背面、
前記前面を前記背面に接続する背面部分と、
前記背面部分の反対側にあり、肩部と背面遷移部分とを介して背面部分に接続する一対の歯と、
前記背面部分と前記前面から前記背面に延びる前記一対の歯との間の前記リンク本体によって画定される一対のピン穴と、
前記一対の歯の間の股座、
を含む、
リンク本体を有するリンクプレートを備える、
前記複数のリンクプレートは、前記一対の歯とピン孔が厚さ方向と長手方向に積み重ねられ、それぞれ連結ピンを介して回動可能に連結されるように配置されている、
サイレントチェーン。
【請求項7】
前記半径が0.20mmである、請求項6に記載のサイレントチェーン。
【請求項8】
前記複数の行のリンクプレートの外側エッジ上に配置された複数のガイドチェーンをさらに含む、請求項6に記載のサイレントチェーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チェーンリンクに関し、より具体的には、チェーンリンクとプラスチック固定ガイド部材およびテンショナー面との間の摩擦を低減する、丸みを帯びた角縁を有するチェーンリンクに関する。
【0002】
関連技術の説明
動力伝達チェーンは、自動車、自転車、及びオートバイ産業を含む様々な産業において有用である。チェーンの位置決めまたは引張りの目的のために、固定ガイド部材およびテンショナーは、チェーン操作中にチェーンがこれらのガイド部材およびテンショナー面とスライド接触するようにチェーンと接触するように配置される。自動車産業では、タイミング駆動は、典型的には、クランクシャフトおよびカムシャフトに固定された歯付きスプロケットによって、エンジンクランクシャフトから1つまたは複数のカムシャフトに動力を伝達する動力伝達チェーンを含む。エンジン効率および騒音低減のために、潤滑油フィルムは、典型的には、チェーンの動作中にチェーンがガイド部材を通過してスライドするときに生成される摩擦を低減するために塗布される。
【発明の概要】
【0003】
本発明の一実施形態によれば、丸みを帯びた面取りされたエッジを有するチェーンリンクを含むチェーンは、チェーンリンクとタイミング駆動のプラスチック面との間の摩擦損失を低減するために使用される。丸みを帯びた面取りされたエッジは、0.14 ~ 0.33mmの範囲の半径を有することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1図1は、一実施形態のリンクの正面図を示す。
図2図2は、図1のリンクの側面図を示す。
図3図3は、図2の詳細図を示す。
図4図4は、面取りされたエッジを有するリンク及び面取りされたエッジを有さないリンクを含むチェーンの両方について、1000Nの引張荷重を有する表面損失トルク対速度のグラフを示す。
図5図5は、面取りされたエッジを有するリンク及び面取りされたエッジを有さないリンクを含むチェーンの両方について、500Nの引張荷重を有する表面損失トルク対速度のグラフを示す。
図6図6は、プラスチックテンショナー面と接触している リンクの側面図を示す。
図7図7は、プラスチックテンショナー面と接触する本発明の一実施形態のリンクを含むチェーンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0005】
図1図3および図6は、本発明の実施形態のリンクを示す。図7は、本発明の一実施形態のリンクを含むチェーンを示す。
【0006】
チェーン300は、インターリーブされたリンク101およびガイドリンク130の行またはセットから形成される。ガイドリンク130は、ガイド行に存在し、リンク101の非ガイド行を取り囲む。
【0007】
リンク101のそれぞれは、一対のピン穴またはアパーチャ102を画定する本体120と、スプロケット(図示せず)と噛み合う第1の歯103aおよび第2の歯103bからなる一対の歯103とを有する。リンク101は、チェーン長方向及びチェーン幅方向に配置される。リンク101は、ピン穴またはアパーチャ102に挿入されるピン125をリンクすることによって互いを中心に旋回することができるようにリンクされる。リンク101の歯103a、103bは、股座104によって連結される。リンク101は、背面部分105を有する。背面部分105は、半径または平坦であり得る。背面部分105は、背面遷移部分113、114を通って、歯103に接続された肩部115、116に遷移する。リンク101は、前面106および前面106の反対側の背面107を有する。
【0008】
ガイドリンク130のそれぞれは、一対のアパーチャ121を画定する平板の本体123を有する。ガイドリンク130は、インターリーブされたリンク101の列の横方向の外縁上に配置される。ガイドリンク130は、歯を含まないが、インターリーブされたリンク101の歯103の間の領域に隣接して延びる。ガイドリンク130は、ガイドリンク130のアパーチャ121およびリンク101のアパーチャ102に 挿入されたリンクピン125 によってリンク101に枢動可能に接続される。
【0009】
使用中、リンク101の背面部分105は、プラスチックガイドまたはテンショナー面200と接触する。また、背面遷移部113、114とプラスチックガイドまたはテンショナー面200とのいくつかの接触があり得る。一実施形態では、フィレットまたは面取りされたエッジ110は、背面部分105のいずれかの側の前面106と背面107との間の遷移の間で、前面106全体の周囲に存在する。また、背面107全体にフィレットまたは面取りエッジ111が存在していてもよい。 これにより、フィレットまたは面取りされたエッジ110,111は、前面106の周囲および背面107の周囲を含み得ことができ、周囲は、背面部分105、背面遷移部分113、肩部115、第1の歯103a、股座104、第2の歯103b、肩部116、および背面遷移部分114を含む。
【0010】
別の実施形態では、フィレットまたは面取りされたエッジ110は、プラスチックガイドまたはテンショナー面200に接触するリンクの前面106および背面107の背面部分105、背面遷移部分113および背面遷移部分114にのみ必要である。
【0011】
1つの実施形態では、フィレットまたは面取りされたエッジ110,111は、打ち抜き工程によって生成された鋭利な角または表面を除去するために研磨材を使用する転倒プロセスによって生成され、リンクを形成する。フィレットまたは面取りされたエッジ110、111は、リンク101の前面106および背面107全体の周りに存在するが、フィレットまたは面取りされたエッジ110、111は、テンショナアームまたはガイド201のプラスチック面200とインターフェースする少なくとも任意の表面上に存在することが好ましい。テンショナアームまたはガイド201のプラスチック面200とインターフェースするリンク101の表面は、背面部分105および肩表面113、114の少なくとも一部である。任意の鋭角を除去することによって、リンク101の要素または表面は、テンショナアームまたはガイド201のプラスチック面200に掘り下げたり、過度の摩耗を引き起こしたりすることができず、リンク101の面取りされたエッジ110、111の縁荷重およびリンク101とテンショナまたはガイド201のプラスチック面200との間の接触の摩擦を低減する。リンク101とテンショナーまたはガイド201のプラスチック面200との間の摩擦の低減はまた、摩擦の結果としてのトルク損失を低減する。
【0012】
面取りされたエッジ110、111の半径は、0.14~0.33mmの半径を有することが好ましい。より具体的には、x寸法は0.14~0.33mmであることが好ましく、y寸法は変化し得る。別の実施形態では、面取りされたエッジ110、111の半径は、0.20mmである。
【実施例
【0013】
プラスチック面テンショナまたはガイドと接触する面取りされたエッジを含むリンクを含む単一ストランドチェーンは、ブレイクインサイクルのためにエンジン上で慣らしサイクルを走行する。ブレイクインサイクルが完了した後、チェーンは、ベンチ試験スタンド上でさまざまな速度で、500 Nと1000 Nの2つの異なる張力負荷下で実行されました。
【0014】
プラスチック面テンショナ又はガイドに接触する面取りされたエッジを含まないリンクを含む単一ストランドチェーンを、面取りされたエッジを有するリンクを含むリンクと同一条件で走行させる。
【0015】
図4は、チェーンが1000Nの引張荷重下にあるときの表面損失トルク(Nm)と速度の関係を示す。菱形は、面取りされたエッジを含まないリンクを含むチェーンを表し、円は、本発明に示すように、面取りされたエッジを有するリンクを含むチェーンを表す。表面損失トルクは、リンク、好ましくは背面部分と背面遷移部分と、テンショナーまたはガイドのプラスチック面との間の摩擦によるトルク損失である。
【0016】
見ることができるように、少なくとも1つの面取りエッジを含むリンクからなるチェーンは、面取りエッジを含まないリンクからなるチェーンよりも1000Nの荷重下で0~3000rpmの間で表面トルク損失が少なかった。少なくとも1つの面取りエッジを含むチェーンは、面取りエッジを有さないチェーンと比較して、平均0.07 Nmの改善(例えば、表面損失トルクが小さい)を有する。面取りエッジを含まないチェーンと比較して、少なくとも1つの面取りエッジを含むチェーンは250 rpmで0.14 Nmの最大改善を有する。
【0017】
図5は、チェーンを500 Nの張力荷重下に置いた場合の表面損失トルク(Nm)と速度の関係を示している。菱形は面取りエッジを含まないリンクを含むチェーンを表し、円は、本発明に示すように、面取りされたエッジを有するリンクを含むチェーンを表す。
【0018】
見ることができるように、少なくとも1つの面取りエッジを含むリンクからなるチェーンは、面取りエッジを含まないリンクからなるチェーンよりも500Nの荷重下で0~3000rpmの間で表面トルク損失が少なかった。少なくとも1つの面取りエッジを含むチェーンは、面取りエッジを有さないチェーンと比較して、平均0.03 Nmの改善(例えば、表面損失トルクが小さい)を有する。面取りエッジを含まないチェーンと比較して、少なくとも1つの面取りエッジを含むチェーンは250 rpmで0.17 Nmの最大改善を有する。これにより、チェーンの効率を向上させるとともに、燃費を向上させることができる。
【0019】
したがって、本明細書に記載された本発明の実施形態は、本発明の原理の適用例にすぎないことが理解されるべきである。本明細書において示された実施形態の詳細への参照は特許請求の範囲の範囲を限定することを意図するものではなく、それら自体が本発明に不可欠であるとみなされる特徴を列挙している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】