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特表2024-520583ランキンサイクルシステムおよびランキンサイクル方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】ランキンサイクルシステムおよびランキンサイクル方法
(51)【国際特許分類】
   F01K 25/10 20060101AFI20240517BHJP
   F01K 7/32 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
F01K25/10 E
F01K25/10 A
F01K7/32
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574111
(86)(22)【出願日】2022-06-02
(85)【翻訳文提出日】2023-11-29
(86)【国際出願番号】 CN2022096903
(87)【国際公開番号】W WO2022257856
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】202110632511.5
(32)【優先日】2021-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505072650
【氏名又は名称】浙江大学
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】肖 剛
(72)【発明者】
【氏名】王 征
(72)【発明者】
【氏名】紀 宇軒
(72)【発明者】
【氏名】倪 明江
(72)【発明者】
【氏名】岑 可法
【テーマコード(参考)】
3G081
【Fターム(参考)】
3G081BB07
3G081BC04
3G081BD01
(57)【要約】
本発明はランキンサイクルシステムを提供する。当該ランキンサイクルシステムは、ヒーター1と、稼働装置2と、冷却器3と、加圧装置4とが順に連通して形成された媒体回路を備える。循環媒体は、媒体回路の内部を循環するように流れている。ヒーター1から流出した循環媒体は、超臨界状態である。循環媒体は、稼働装置2においてその三重点圧力よりも若干高い気体になるまで十分に膨張する。冷却器3から流出した循環媒体は、飽和液体であり、その温度は循環媒体の三重点温度よりも0~20℃高い。循環媒体は、高温高圧の超臨界状態から、その理論上の最大限の仕事量を有する状態、すなわち三重点圧力付近まで徐々に膨張することにより、循環媒体の仕事をする能力を十分に発揮する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒーターと、稼働装置と、冷却器と、加圧装置と、が順に連通して形成された媒体回路を備え、かつ循環媒体が前記媒体回路の内部を循環するように流れるランキンサイクルシステムであって、
前記循環媒体の三重点の温度は、0℃未満であり、
前記循環媒体の三重点圧力は、標準大気圧より高く、
前記ヒーターから流出する前記循環媒体は、超臨界状態であり、
前記稼働装置から流出する前記循環媒体は、気体であり、
前記冷却器から流出する前記循環媒体は、飽和液体であり、
温度T1が、前記循環媒体の三重点温度Tglsより0℃~20℃高く、前記稼働装置から流出する前記循環媒体の圧力P1は、前記循環媒体の温度T1における飽和蒸気圧力と等しい、ことを特徴とするランキンサイクルシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のランキンサイクルシステムにおいて、
前記媒体回路は、再生器を備え、
前記再生器の加熱側入口は、前記稼働装置の媒体出口に連通し、前記再生器の加熱側出口は、前記冷却器の加熱側入口に連通し、前記再生器の冷却側入口は、前記加圧装置の媒体出口に連通し、前記再生器の冷却側出口は、前記ヒーターに連通する、ことを特徴とするランキンサイクルシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のランキンサイクルシステムにおいて、
前記再生器は、高温再生器と低温再生器と、を備え、
前記高温再生器の加熱側入口は、前記稼働装置の媒体出口に連通し、前記高温再生器の加熱側出口は、前記低温再生器の加熱側入口に連通し、前記高温再生器の冷却側出口は、前記ヒーターに連通し、前記低温再生器の冷却側入口は、前記加圧装置の媒体出口に連通しており、
前記ランキンサイクルシステムは、第一三方弁と、第二三方弁と、圧縮機と、を備えており、
前記第一三方弁は、前記圧縮機出口、前記低温再生器の冷却側出口および、前記高温再生器の冷却側入口にそれぞれ連通し、
前記第二三方弁は前記圧縮機入口、前記低温再生器の加熱側出口および、前記冷却器の加熱側入口にそれぞれ連通していることを特徴とするランキンサイクルシステム。
【請求項4】
前記請求項1に記載のランキンサイクルシステムであって、
前記稼働装置は、超臨界状態の前記循環媒体のエンタルピーの値の変化を利用して外部に仕事をする第一タービンと、
前記第一タービンからの超臨界状態の前記循環媒体を受け取り、前記循環媒体の超臨界状態から気体への相転移を利用して外部に仕事をする第二タービンと、
前記第二タービンから気体である前記循環媒体を受け取り、気体である前記循環媒体のエンタルピーの値の変化を利用して外部に仕事をする第三タービンと、を備えることを特徴とするランキンサイクルシステム。
【請求項5】
請求項1~4のうちいずれか1項に記載のランキンサイクルシステムであって、
前記循環媒体はCOであることを特徴とするランキンサイクルシステム。
【請求項6】
請求項1~4のうちいずれか1項に記載のランキンサイクルシステムであって、
前記ランキンサイクルシステムが、外部冷熱源と、外部熱源と、有機媒体ランキンサイクル回路とを備え、
前記有機媒体ランキンサイクル回路は、有機媒体ヒーターと、有機媒体冷却器とを備え、
前記外部熱源が、前記ヒーターを流れた後、前記有機媒体ヒーターに入り、
前記外部冷熱源が、前記冷却器および前記有機媒体冷却器にそれぞれ連通していることを特徴とするランキンサイクルシステム。
【請求項7】
請求項6に記載のランキンサイクルシステムであって、
前記外部冷熱源の温度は、-162℃~0℃であることを特徴とするランキンサイクルシステム。
【請求項8】
請求項6に記載のランキンサイクルシステムであって、
前記外部熱源はガスユニットであり、前記外部冷熱源は液化天然ガス貯蔵タンクであることを特徴とするランキンサイクルシステム。
【請求項9】
ランキンサイクル方法であって、
外部熱源と循環媒体を提供し、前記外部熱源により前記循環媒体を加熱し超臨界状態に昇温させる加熱ステップと、
超臨界状態の前記循環媒体が外部に仕事をし、その三重点圧力に近い気体状の前記循環媒体になるまで十分に膨張する稼働ステップと、
外部冷熱源を提供し、前記外部冷熱源により気体循環媒体を冷却し降温させ、飽和液体状の前記循環媒体とする冷却ステップと、
液体状の前記循環媒体を加圧する圧縮ステップと、を含むことを特徴とするランキンサイクル方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電システム分野のランキンサイクルシステム(Rankin cycle system)およびランキンサイクル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業生産において、一部の燃焼機関の排気温度は比較的高い場合が多い。排気の高位熱源を更に利用するため、燃焼機関の下層に蒸気ランキンサイクルを組み合わせることで、効率的なコンバインドサイクル発電を実現するのが一般的である。従来の蒸気ランキンサイクルは、下記4つのプロセスを有する。
【0003】
水が、ボイラー内で加熱されて蒸気になる加熱プロセス。当該加熱プロセスは、定圧可逆吸熱プロセスであることが理想的である。
【0004】
蒸気が、蒸気タービンにおいて膨張する稼働プロセス。当該稼働プロセスは、可逆断熱膨張プロセス、すなわち等エントロピー膨張プロセスであることが理想的である。
【0005】
蒸気が、凝縮器において冷却され飽和水となる冷却プロセス。当該冷却プロセスは、可逆定圧冷却プロセスであることが理想的である。
【0006】
水ポンプが昇圧することで、水が圧縮される加圧プロセス。当該加圧プロセスは、可逆断熱圧縮プロセス、すなわち等エントロピー圧縮プロセスであることが理想的である。
【0007】
ここで、カルノーの定理によれば、可逆熱機関の効率は、循環媒体の最高温度および最低温度にのみ関連する。しかしながら、従来の蒸気ランキンサイクルにおいて、水は、加熱プロセスにおいて気体になるまで加熱され、冷却プロセスにおいて周囲の温度に近い液体まで冷却されるため、ランキンサイクルシステムの作業効率が一定程度制限される。そこで、当技術分野において、ランキンサイクルシステムの作業効率をさらに向上させることが、喫緊の課題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来技術の上記欠陥に対して、より作業効率の高いランキンサイクルシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
当該ランキンサイクルシステムは、ヒーターと、稼働装置と、冷却器と、加圧装置とが順に連通して形成された媒体回路を備え、循環媒体は、媒体回路の内部を循環するように流れており、ヒーターから流出する循環媒体は超臨界状態であり、循環媒体の三重点の温度は0℃未満であり、循環媒体の三重点圧力は標準大気圧より高く、冷却器から流出する循環媒体は飽和液体であり、その温度T1は循環媒体の三重点温度Tglsより0℃~20℃高く、稼働装置から流出する気体循環媒体の圧力P1は循環媒体の温度T1における飽和蒸気圧力と等しい。
【0010】
当該技術案によれば、まず、本発明が提供するランキンサイクルシステムにおいて、循環媒体は加熱装置において超臨界状態に達し、循環媒体が超臨界状態にある場合、密度が高く、その膨張による仕事に必要なタービン段数が相対的に少ないので、本発明において、タービンデバイスは従来の蒸気ランキンサイクルにおけるタービン構造よりずっとコンパクトになる。より小さいタービンデバイス体積はより小さい工場面積、よりコンパクトな循環フローに繋がる。
【0011】
次に、熱力学的観点から見れば、循環プロセスにおける熱源の温度を向上させることと循環プロセスにおける冷熱源の温度を低下させることで、循環効率をさらに向上させることができる。ただし、温度が三重点より低い場合、定圧冷却により循環媒体が液相領域を通らずに気体から固体へ変化する、凝華を起こす。しかし、固体の循環媒体が流動できないため、ランキンサイクルにおける循環媒体による冷却器によって供給された冷熱源への利用効率は、循環媒体の三重点の温度によって制限されるため、カルノーの定理により、本発明において、循環媒体を、気体を越えた超臨界状態に加熱するとともに、循環媒体を冷却器において三重点よりも若干高い温度(すなわち、三重点0℃-20℃より高い)まで冷却する。この温度に対応する循環媒体飽和蒸気圧力は、最後段の稼働装置の排気圧力である。以上により、ランキンサイクルシステムの作業効率を最大限に高めることができる。さらに、循環媒体の三重点の温度が0℃より低いことで、循環媒体をより低い温度に下げることができ、三重点圧力が標準大気圧より高くなることで、凝縮プロセスにおいて外部デバイスを介して凝縮器内の真空を維持する必要がなく、凝縮器内への空気の漏れも回避する。このように、良質な低温冷熱源を併用することで、熱力学上、循環効率を大幅に向上させることができる。
【0012】
当該ランキンサイクルシステムは、再生器をさらに含み、再生器の加熱側入口が稼働装置の媒体出口に連通し、再生器の加熱側出口が冷却器の加熱側入口に連通し、再生器の冷却側入口が加圧装置の媒体出口に連通し、再生器の冷却側出口がヒーターに連通しているのが好ましい。
【0013】
当該技術案によれば、当該ランキンサイクルシステムにおいて、再生器が追加され、稼働装置出口の気体循環媒体が再生器に入って再生器で冷却圧縮された液体循環媒体と熱交換することにより、気体循環媒体は再生器において事前に冷却された後、冷却器に導入されて冷却され、加圧装置により加圧された液体循環媒体は、ヒーターに入る前に再生器において事前に加熱されることにより、稼働装置からの循環媒体の余熱を利用し、ヒーターと冷却器による必要なエネルギーを低減し、ランキンサイクルの作業効率を向上させることができる。
【0014】
そのうち、再生器は高温再生器と低温再生器とを備えることが好ましい。高温再生器の加熱側入口は稼働装置の媒体出口に連通し、高温再生器の加熱側出口は低温再生器の加熱側入口に連通し、高温再生器の冷却側出口はヒーターに連通し、高温再生器の冷却側入口は低温再生器の冷却側出口に連通し、低温再生器の冷却側入口は加圧装置の媒体出口に連通し、低温再生器の加熱側出口は冷却器に連通するのは好ましい。
【0015】
そのうち、ランキンサイクルシステムは、第一三方弁と、第二三方弁と、圧縮機とをさらに備えることが好ましい。第一三方弁は圧縮機出口、低温再生器の冷却側出口、高温再生器の冷却側入口にそれぞれ連通し、第二三方弁は圧縮機入口、低温再生器の加熱側出口、冷却器の加熱側入口にそれぞれ連通するのが好ましい。
【0016】
当該技術案によれば、再生器をさらに高温再生器と低温再生器とに設置することにより、稼働装置から流出した作動媒体の余熱をさらに利用することができる。また、低温再生器から流出した循環媒体を分岐させ、一部が冷却器を通過せずに圧縮機により直接的に圧縮されてから冷却加圧された液体循環媒体と合流した後加熱装置に流すことにより、ランキンサイクルシステムの冷熱源損失を低減し、ランキンサイクルシステムの作業効率をさらに向上させることができる。
【0017】
そのうち、稼働装置は、第一タービンと、第二タービンと、第三タービンと、を備えることが望ましい。第一タービンは、超臨界状態の循環媒体のエンタルピーの値の変化を利用して外部に仕事をし、第二タービンは、第一タービンからの超臨界状態の循環媒体を受け取り、循環媒体の超臨界状態から気体への相転移を利用して外部に仕事をし、第三タービンは、第二タービンからの気体循環媒体を受け取り、気体循環媒体のエンタルピーの値の変化を利用して外部に仕事をするのが好ましい。
【0018】
当該技術案によれば、稼働装置を多段タービンに設置することにより、ヒーターにおいて循環媒体に伝送された熱エネルギーを多段タービンにより機械的エネルギーに十分に変換し、循環システム全体の作業効率を向上させる。そのうち、多段タービンが三段タービンである場合、第一タービン内の循環媒体は超臨界状態に維持され、この時、循環媒体の密度が高く、第一タービンの構造がよりコンパクトになり、循環媒体が第二タービン内でさらに断熱膨張した後、超臨界状態から気体になってから第三タービンに入り、第三タービンにおいて循環媒体の余熱をさらに利用することで、循環システム全体の作業効率を増加させる。
【0019】
そのうち、当該ランキンサイクルシステムの循環媒体はCOであるのが好ましい。
【0020】
当該技術案によれば、現在COが循環媒体として主に超臨界CO(S-CO)ブレイトンサイクルに適用しており、S-COブレイトンサイクルは高温熱源循環効率が高く、圧縮エネルギーの損失が小さく、タービンデバイスの構造がコンパクトでフットプリントが小さく、腐食性が小さいなど多くの利点があり、ガスタービン排ガス余熱による効率的な発電の潜在的な選択肢の1つである。しかし、超臨界CO(S-CO)ブレイトンサイクルでは、冷熱源温度がCO臨界温度(31.1℃)を下回らず、この冷熱源温度は、超臨界CO(S-CO)ブレイトンサイクルシステムの作業効率を制限している。
【0021】
さらに、HOの三重点は0.01℃かつ610.75Paであり、その冷却端の温度を0℃以下に低減させることができなく、またHOの三重点の圧力が低すぎて(1kPa未満)、開放循環であるため、これを三重点に近い圧力に低下させるには、真空ポンプを用いて抽気して仕事を行う必要があり、循環効率の向上には限界がある。これに対し、COの三重点は-56.6℃かつ0.52MPaであり、その冷熱源の温度をより低い温度に低減させることができ、且つ三重点の圧力が大気圧以上にあり、循環形態がクローズド循環で、真空ポンプを用いて真空引きする必要がないことで、循環全体が大気圧以上にあり、循環の低圧部に不凝縮ガスが浸透することを回避する。このように、良質な低温冷熱源を組み合わせて利用した後、熱力学的観点から見れば、循環効率を大幅に向上させることができる。
【0022】
最後に、CO循環媒体の腐食性はHO蒸気に比べてかなり弱いため、高温部品の部材に対する耐食要求を大幅に緩和することができる。
【0023】
そのうち、当該ランキンサイクルシステムは、外部冷熱源と、外部熱源と、有機媒体ランキンサイクル回路とをさらに含み、有機媒体ランキンサイクル回路は、有機媒体ヒーターと有機媒体冷却器とを備え、外部熱源は、前記ヒーターを流れた後、有機媒体ヒーターに入り、外部冷熱源は、冷却器および有機媒体冷却器にそれぞれ連通するのが好ましい。
【0024】
当該技術案によれば、ランキンサイクルと有機ランキンサイクルとを結合した循環形態を採用することにより、より高い循環効率を実現することができる。同じ熱源に対して、本発明のコンバインドサイクルシステムを用いる場合の方が、より多くの発電量を実現し、エネルギー利用率を向上させることができる。
【0025】
そのうち、外部冷熱源の温度は-162℃~0℃であることが好ましい。当該技術案によれば、比較的低温の冷熱源を用いることで、気体循環媒体を迅速に三重点付近まで降温させることができる。また、冷熱源の温度が低いことは、ランキンサイクルシステムの作業効率の向上に有利である。
【0026】
そのうち、外部熱源はガスユニットであり、外部冷熱源は液化天然ガスであるのが好ましい。
【0027】
当該技術案によれば、ガスユニットを熱源とし、すなわち、ガスユニットの発生した余分な熱(例えば、高温ヒューム)を再利用する。また、液化天然ガスの冷熱源の温度が-162℃程度であるため、気体循環媒体を迅速に降温し三重点付近の飽和液体とすることができるとともに、冷熱源の温度が低いことは、ランキンサイクルシステムの作業効率の向上に有利である。さらに、液化天然ガスは、冷熱源として冷却器に導入されて循環媒体と熱交換した後、引き続き燃料としてガスユニットに導入することができ、ガスユニットにより発生した余分な熱は、外部熱源としてサイクルに熱を供給することができるため、冷熱源材料を最大限に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施形態に係るランキンサイクルシステムの構造模式図である。
図2】本発明の別の実施形態に係るランキンサイクルシステムの構造模式図である。
図3】本発明の別の実施形態に係るランキンサイクルシステムの構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下の具体的な実施例および図面を参照して、本発明について、さらに詳細に説明する。本発明が実現する内容は、下記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて当業者が備える知識の範囲内で行われる様々な変形、変換、組み合わせおよび改良すべてが、本発明の保護範囲に属する。
【0030】
全体の構成。図1に示すように、本実施形態に係るランキンサイクルシステムは、ヒーター1と、稼働装置2と、再生器5と、冷却器3と、加圧装置4とが順に連通して形成された媒体回路を含む。循環媒体は、媒体回路の内部を循環するように流れており、具体的には、循環媒体の三重点の温度が0℃未満であり、循環媒体の三重点圧力が標準大気圧より高い。循環媒体は、ヒーター1において熱エネルギーを吸収して超臨界流体となり、その後、稼働装置2に流入して膨張し仕事をすることにより、熱エネルギーをより利用されやすい機械的エネルギーに変換する。稼働装置2を通過した気体の循環媒体は、再生器5に入り、循環媒体の余熱を再利用した後、冷却器3に入って降温する。気体循環媒体を循環媒体の三重点温度Tglsより少し高い温度T1(Tgls<T1<Tgls+20℃)の飽和液体で冷却した後、循環媒体は、加圧装置4に入り加圧される。加圧された液体循環媒体は、再生器5に入り、稼働装置の排気の余熱を吸収し、再びヒーター1に入って新しい循環を行う。このようにして、繰り返し熱エネルギーを機械エネルギーに変換する。
【0031】
なお、本実施形態において、各装置又はデバイスの構造を限定しない。例えば、該稼働装置2は、一部の実施形態において、回転タービンであってもよく、他の実施形態において、該稼働装置2は、伝動ロッドを有するシリンダ装置であってもよい。同様に、本発明の技術案に反しない前提で、本発明における装置又はデバイスに対する簡単な置き換えはいずれも本発明の保護範囲を超えていないものとする。
【0032】
なお、本実施形態において、再生器5は稼働装置2からの余熱を再利用するための装置である。すなわち、本実施形態において、再生器5を追加したランキンサイクルの好ましい態様を例として説明したが、当業者によって認識されるように、本発明に係るランキンサイクルシステムは、再生器を含まず、そのままヒーター1、稼働装置2、冷却器3および加圧装置4によって順次接続されて構成されてもよい。
【0033】
本実施形態において、まず、循環媒体の三重点の温度が0℃より低いため、より低温の冷熱源媒体を利用することができる。また、三重点圧力が標準大気圧より高いことにより、凝縮器における真空を維持する必要がなく、省エネでありながら、循環システムへの外気の侵入を回避する。このように、良質な低温冷熱源を組み合わせて利用した後、カルノーの定理により、循環効率を大幅に向上させることができる。
【0034】
次に、循環媒体は、加熱装置において超臨界状態に達するが、循環媒体が超臨界状態にある場合、密度が高く、膨張し仕事を行うのに必要なタービン段数が相対的に少ないため、本実施形態における高圧タービンデバイスは、従来の蒸気ランキンサイクルにおけるタービン構造よりずっとコンパクトになる。より小さなタービンデバイス体積は、より小さな工場面積、よりコンパクトな循環フローに繋がる。
【0035】
最後に、超臨界状態の循環媒体の温度は気体循環媒体よりも高いため、カルノーの定理によれば、冷却器3が提供する冷熱源が固定である場合、本発明に係るランキンサイクルシステムにおける循環媒体は、より高い初期温度に達することができる。すなわち、本発明におけるランキンサイクルシステムの作業効率が従来よりも高くなる。
【0036】
ここで、当該ランキンサイクルシステムの循環媒体は、COであるのが好ましい。
【0037】
本実施形態において、現在、COが循環媒体として主に超臨界CO(S-CO)ブレイトンサイクルに適用している。S-COブレイトンサイクルは、高温熱源循環効率が高く、圧縮エネルギーの損失が小さく、回転タービンデバイスの構造がコンパクトであり、フットプリントが小さく、腐食性が小さい、などの多くの利点を有し、ガスタービン排ガス余熱による効率的な発電の潜在的な選択肢の1つである。しかし、S-COブレイトンサイクルでは、冷熱源温度がCO臨界温度(31.1℃)を下回らない。この冷熱源温度がS-COブレイトンサイクルシステムの作業効率を制限している。
【0038】
さらに、HOの三重点は0.01℃、610.75Paであり、その冷却端温度を0℃以下に低減させることができず、またHOの三重点圧力が低すぎて(1kPa未満である)、循環形態は開放循環であるため、三重点に近い圧力に冷却するには真空ポンプを用いて抽気し仕事を行う必要があり、余分なエネルギー消費が増加し、循環効率の向上には限界がある。これに対し、COの循環形態はクローズド循環であり、真空ポンプを用いて真空引きする必要がなく、COの三重点が-56.6℃、0.52MPaであり、その冷熱源の温度をより低い温度に低減させることができ、かつ三重点圧力が大気圧以上にあり、凝縮器における外部の凝縮性空気の循環内部への浸透を回避する。このように、良質な低温冷熱源を組み合わせて利用した後、熱力学的観点から見れば、循環効率を大幅に向上させることができる。
【0039】
また、CO循環媒体の腐食性は、HO蒸気に比べてかなり弱いため、高温部品の部材に対する耐食要求を大幅に緩和することができる。
【0040】
最後に、CO循環媒体の比容積は、HOよりはるかに小さいため、稼働デバイスのサイズを大幅に減少させ、工場面積を節約することができる。
【0041】
以下、本実施形態に係るランキンサイクルの装置についてより詳細に説明する。
【0042】
ヒーター。本実施形態において、ヒーター1は、循環媒体を加熱することができる任意の装置であってもよい。具体的には、当該ヒーター1は、外部熱源6を利用して循環媒体を加熱する熱交換器であってもよい。当該熱交換器の一端は、外部熱源6の導入に供し、他端は循環媒体の導入に供することによって、循環媒体は熱交換によって外部熱源6の熱を吸収して昇温し相転移する。よって、後で仕事をすることを容易にする。当該外部熱源6は太陽エネルギー、原子力エネルギーおよび化石燃料などであるのが好ましい。さらに、当該外部熱源6はガスユニットであるのが好ましい。それによりガスユニット内で燃焼した後の高温ヒュームの余熱を再利用し、資源を節約することができる。
【0043】
稼働装置2。本実施形態において、稼働装置2は、循環媒体の膨張による仕事を利用して熱エネルギーを機械エネルギーに変換することができる装置、例えば、気体膨張により伝動ロッドを往復運動させるシリンダ構造、又は気体膨張、回転により仕事をする回転タービン構造であってもよい。本実施形態は、稼働装置2が回転タービンであることを例としてさらに説明する。
【0044】
回転タービンは、第一タービン21と、第二タービン22と、第三タービン23とを含むのが好ましい。第一タービン21は、超臨界状態の循環媒体のエンタルピーの値の変化を利用して外部に仕事をする。第二タービン22は、第一タービン21からの超臨界状態の循環媒体を受け取り、循環媒体の超臨界状態から気体への相転移を利用して外部に、膨張による仕事をする。第三タービン23は、第二タービン22からの気体である循環媒体を受け取り、気体循環媒体のエンタルピーの値の変化を利用して外部に仕事をする。
【0045】
本実施形態において、稼働装置2を多段タービンに設置することにより、ヒーター1において循環媒体に伝送された熱エネルギーを多段タービンにより機械的エネルギーに十分に変換し、循環システム全体の作業効率を向上させる。当業者によって認識されるように、単一又は他の数のタービンを設置しても稼働装置2内で循環媒体により仕事を行うという効果を実現することができる。これらは、本発明の保護範囲を超えていない。ここで、多段タービンが三段タービンである場合、第一タービン21内の循環媒体は、超臨界状態に維持される。この時、循環媒体の密度が高く、第一タービン21の構造がよりコンパクトになり、循環媒体が第二タービン22内でさらに断熱膨張して超臨界状態から気体になってから第三タービン23に入り、第三タービン23において循環媒体の余熱をさらに利用することで、循環システム全体の作業効率を増加させる。
【0046】
再生器5。本実施形態において、再生器5は、冷と熱の2本の流路を有し、2本の流路内の媒体を熱交換する装置であってもよい。具体的には、再生器5の加熱側入口は、稼働装置2の媒体出口に連通し、再生器5の加熱側出口は、冷却器3の加熱側入口に連通し、再生器5の冷却側入口は、加圧装置4の媒体出口に連通し、再生器5の冷却側出口は、前記ヒーター1に連通している。
【0047】
本実施形態において、稼働装置2の出口の気体循環媒体は、再生器5に入り再生器5で冷却圧縮された液体循環媒体と熱交換することにより、気体循環媒体が再生器5において事前に冷却された後、冷却器3に導入されて冷却される。加圧装置4により加圧された液体循環媒体は、ヒーター1に入る前に再生器5において事前に加熱されることで、稼働装置2からの循環媒体の余熱を利用し、ヒーター1と冷却器3による必要なエネルギーを低減し、ランキンサイクルシステムの作業効率を向上させる。
【0048】
さらに、図2に示すように、再生器5は、高温再生器51と低温再生器52と、を含み、高温再生器51の加熱側入口は、稼働装置2の媒体出口に連通し、高温再生器51の加熱側出口は、低温再生器52の加熱側入口に連通し、高温再生器51の冷却側出口は、ヒーター1の冷却側入口に連通し、高温再生器51の冷却側入口は、低温再生器の冷却側出口に連通し、低温再生器52の冷却側入口は、前記加圧装置4の媒体出口に連通している。ランキンサイクルシステムは、第一三方弁91と、第二三方弁92と、圧縮機8とをさらに含み、第一三方弁91は圧縮機8出口、低温再生器52の冷却側出口、高温再生器51の冷却側入口にそれぞれ連通し、第二三方弁92は圧縮機8入口、低温再生器52の加熱側出口、冷却器3の加熱側入口にそれぞれ連通している。
【0049】
動作例として、図2に示すランキンサイクルシステムのように、循環媒体はまず、ヒーター1の冷却側入口に入り、ガスユニットの高温排気は、ヒーター1の加熱側入口に入り、2つの気流は、熱交換器において熱交換を行い、降温したヒュームは、熱交換器の加熱側出口から排出され、昇温した循環媒体は、熱交換器の冷却側出口から流出し、引き続き稼働装置2に入り膨張し仕事をする。稼働装置2は、3つのタービンを有し、第一タービン21の出口と第二タービン22の出口の循環媒体は、再びヒーター1に入って昇温した後、第二タービン22、第三タービン23にそれぞれ入り、再び膨張し仕事をする。第三タービン23の出口の循環媒体は高温再生器51の加熱側に入り、高温再生器51の冷却側の循環媒体と熱交換し降温され、一回降温した循環媒体は再び、低温再生器52の加熱側に入り、低温再生器52の冷却側の気流と熱交換し降温され、次に、二回降温した循環媒体は第二三方弁92によって二つに分岐され、主分岐の循環媒体は冷却器3によって液体に冷却され、加圧装置4に入って加圧された後、再び、低温再生器52に入り、復熱、昇温され、副分岐の循環媒体は直接に圧縮機8に入り加圧される。次に、2つ分岐の循環媒体は、第一三方弁91によって合流して一つの気流となり、さらに高温再生器51の冷却側に入って復熱、昇温し、その後、ヒーター1に入って吸熱し、循環プロセスを続ける。
【0050】
本実施形態において、さらに、再生器5を高温再生器51と低温再生器52と、に設置することで、稼働装置2から流出した作動媒体の余熱をさらに利用することができるとともに、低温再生器52から流出した循環媒体を分岐させ、一部が冷却器3を通過せずに圧縮機8によって直接的に圧縮されてから冷却圧縮した液体循環媒体と合流した後加熱装置に流すことで、ランキンサイクルシステムの冷熱源損失を低減し、ランキンサイクルシステムの作業効率をさらに向上させる。
【0051】
本実施形態において、冷却器3は、循環媒体を冷却することができる任意の装置であってもよい。具体的には、当該冷却器3は、外部冷熱源7によって循環媒体を冷却する熱交換器であってもよく、当該熱交換器の一端は外部冷熱源の導入に供し、他端は循環媒体の導入に供することによって、気体循環媒体は熱交換によって自身の熱が外部冷熱源に吸収され、その三重点付近に降温される。よって、後続の吸熱を容易にする。また、ランキンサイクルの冷却端と加熱端との温度差を高め、循環効率を向上させる。
【0052】
ここで、外部冷熱源の温度は-162℃~0℃であり、比較的低温の冷熱源を使用すると、気体循環媒体を迅速かつ十分に三重点付近まで降温させることができ、また、冷源温度が低いことはランキンサイクルシステムの作業効率の向上に有利である。外部冷熱源7は液化天然ガスであるのが好ましい。液化天然ガスの冷源温度は-162℃程度であり、ランキンサイクルシステムの作業効率を向上させるのに有利である。また、液化天然ガスは、冷却器3において循環媒体と熱交換した後、引き続き燃料としてガスユニットに導入することができ、生成された高温のヒュームを外部熱源6として使用可能であるため、液化天然ガスという良質な外部冷熱源材料のリサイクルを実現できる。
【0053】
加圧装置4。本実施形態において、加圧装置4は液体ブースターポンプであってもよい。具体的には、加圧装置4は、冷却器3から流出した、循環媒体の三重点付近の温度の飽和液体循環媒体を加圧するものである。循環媒体の圧力がその三重点に近いため、一次ランキンサイクルシステムにおいて循環媒体が稼働装置2で膨張し仕事を行うことで変換できたエネルギーをできる限り活用する。
【0054】
図3に示すように、当該ランキンサイクルシステムは有機媒体ランキンサイクル回路をさらに含み、有機媒体ランキンサイクル回路は有機媒体ヒーター1aと有機媒体冷却器3aを含み、外部熱源6はヒーター1を流れた後、有機媒体ヒーター1aに入る。外部冷熱源7は冷却器3および有機媒体冷却器3aに連通しているのが好ましい。
【0055】
さらに、当該有機媒体ランキンサイクルは、上記ランキンサイクルシステムにおける他の装置を含んでもよい。図3に示すように、当該有機媒体ランキンサイクルは、有機媒体稼働装置2a、有機媒体加圧装置4aおよび有機媒体再生器5aをさらに含む。循環媒体の有機媒体ランキンサイクルにおける流れの仕組みは、本発明に係るランキンサイクルシステムの流れの仕組みと一致するため、ここでは説明を省略する。
【0056】
本実施形態において、ランキンサイクルと有機ランキンサイクルとを結合した循環形態を採用することで、より高い循環効率を実現することができる。同じ熱源に対して、本発明のコンバインドサイクルシステムを適用する場合の方が、より多くの発電量を実現し、エネルギー利用率を向上させることができる。
【0057】
なお、本実施形態に係る上記ランキンサイクルシステムに適用されるランキンサイクル方法は、外部熱源6と循環媒体を提供し、前記外部熱源6により前記循環媒体を加熱し超臨界状態に昇温させる加熱ステップと、超臨界状態の循環媒体が外部に仕事をし、循環媒体の三重点圧力に近い気体に変化する稼働ステップと、外部冷熱源7を提供し、前記外部冷熱源7により気体循環媒体を冷却し降温させ、0℃より低いかつ三重点温度に近い飽和液体循環媒体を取得する冷却ステップと、液体循環媒体を加圧する圧縮ステップとを含む。
【0058】
各実施形態における具体的な技術特徴を適応的に分割または合併することができることは、当業者により認識される。具体的な技術特徴に対する上記分割又は合併によって、技術案が本発明の原理から逸脱することはないため、分割又は合併後の技術案はいずれも本発明の保護範囲内に含まれる。
【0059】
また、「第一」、「第二」のような用語は、単に目的を説明するためのものであり、相対的な重要性を指示又は暗示する、又は指示された技術特徴の数を暗黙的に示すものと理解できない。よって、「第一」、「第二」と限定した特徴は、明示的または暗黙的に1つ以上の該特徴を含んでもよい。本出願の説明において、「複数」は、特に明記しない限り、2つ以上を意味する。
【0060】
以上、図面に示された複数の実施形態に基づいて本発明の技術案を説明したが、本発明の保護範囲はこれらの具体的な実施形態に限定されないことは当業者にとって明白である。本発明の原理を逸脱しない前提で、当業者は関連の技術特徴に対して同等の変更又は置換を行うことができるが、これらの変更又は置換後の技術案はいずれも本発明の保護範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0061】
1‥ヒーター、2‥稼働装置、21‥第一タービン、22‥第二タービン、23‥第三タービン、3‥冷却器、4‥加圧装置、5‥再生器、51‥高温再生器、52‥低温再生器、6‥外部熱源、7‥外部冷熱源、8‥圧縮機、91‥第一三方弁、92‥第二三方弁、1a‥有機媒体ヒーター、2a‥有機媒体稼働装置、3a‥有機媒体冷却器、4a‥有機媒体加圧装置、5a‥有機媒体再生器。
図1
図2
図3
【国際調査報告】