(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】細胞採取能力を強化したバイオリアクターシステム、および関連方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/071 20100101AFI20240517BHJP
C12M 3/04 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
C12N5/071
C12M3/04 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574123
(86)(22)【出願日】2022-06-03
(85)【翻訳文提出日】2024-01-17
(86)【国際出願番号】 EP2022065264
(87)【国際公開番号】W WO2022254039
(87)【国際公開日】2022-12-08
(32)【優先日】2021-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520355596
【氏名又は名称】ユニバーセルズ テクノロジーズ エス.エー.
【氏名又は名称原語表記】UNIVERCELLS TECHNOLOGIES S.A.
【住所又は居所原語表記】Chemin de la Vieille-Cour 56/1,1400 Nivelles Belgium
(74)【代理人】
【識別番号】100079980
【氏名又は名称】飯田 伸行
(74)【代理人】
【識別番号】100167139
【氏名又は名称】飯田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ドラグマンド,ジャン-クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】メレス,バスティアン
(72)【発明者】
【氏名】カスティーリョ,ジョゼ
(72)【発明者】
【氏名】ダモント,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス,セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】フーベルト,アントワーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ペレイラ チリマ,タニア
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029AA11
4B029BB11
4B029CC02
4B029DF05
4B029DG06
4B029DG08
4B065AA90X
4B065BC50
(57)【要約】
【構成】本発明の細胞採取システムおよび方法は固定床構造体などの細胞閉じ込め/付着および細胞増殖を行う構造体を備えたバイオリアクターを有する。細胞採取機構によって、例えば固定床を振動または振盪するなどしてバイオリアクターを撹拌し、このバイオリアクターのフラッシュ処理および充填処理を反復するなどしてこの構造体に対して液体レベルを移動させる。塊状物や凝集物を発生することなく、細胞を分離する酵素カクテルなどの細胞分離溶液をバイオリアクターに添加する。本発明のバイオリアクターの場合、別なバイオリアクターの上流側に前培養容器を設けることが可能である。
【選択図】
図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞の閉じ込めまたは細胞付着および細胞増殖を可能にする固定床構造体を有するバイオリアクターを設け、
培地を介して前記バイオリアクターに細胞を添加し、
これら細胞を前記固定床構造体に閉じ込めおよび/または付着させて、前記バイオリアクター内で増殖させ、
酵素カクテルを含有する細胞分離液を前記バイオリアクターに導入し、
前記バイオリアクターの一部を撹拌し、そして
前記固定床構造体に対して前記細胞分離溶液の液体レベルを移動させて、
細胞の実質的部分に塊状物や凝集物を発生することなくこの細胞の実質的部分を前記固定床構造体から分離する
ことを特徴とする細胞採取方法。
【請求項2】
前記撹拌工程および移動工程を同時に行う請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記移動工程において、前記細胞分離溶液を前記バイオリアクターから少なくとも部分的に排液する請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記移動工程において、前記液体レベルを前記固定床構造体の上部の上またはこの上部に近接する部分から前記固定床構造体の底部の下またはこの底部に近接する部分に移動させる請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記移動工程において、流体を前記バイオリアクターに添加する請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記添加工程において、細胞分離溶液を前記バイオリアクターに追加添加する請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記移動工程に先立って、前記液体レベルを前記固定床構造体の上に設定する請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記移動工程において、前記液体レベルを複数回上下させる請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記撹拌工程において、約20~約300ヘルツの周波数および約0.5~約5mmの振幅で前記固定床構造体を直接的または間接的に振動させる請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記導入工程において、インテグリンを裂開する酵素および細胞外マトリックスを裂開する異なる酵素を酵素カクテルとして導入する請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
細胞閉じ込め/細胞付着および細胞増殖を行う構造体を備えたバイオリアクター、
前記バイオリアクターを撹拌しかつ前記構造体に対して液体レベルを移動させる細胞採取機構、および
前記バイオリアクターに流体連絡する細胞分離溶液を含有する容器、を有し、この細胞分離溶液は、塊状物や凝集物を発生することなく、細胞閉じ込め/細胞付着を行う前記構造体から細胞を分離する酵素カクテルを有する
ことを特徴とする細胞採取システム。
【請求項12】
前記の細胞閉じ込め/細胞付着および細胞増殖を行う構造体が3Dプリント固定床などの固定床を有する請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記の細胞閉じ込め/細胞付着および細胞増殖を行う構造体が積層形状または螺旋形状の複数の細胞固定層を有する固定床を有し、これら細胞固定層が隣接層間のスペースに直接的に、あるいは間接的に接触する請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記細胞採取機構が前記バイオリアクターを振動または振盪させる装置を有する請求項11~13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記細胞採取機構が前記液体レベルを移動させるポンプを有する請求項11~14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記細胞採取機構が前記バイオリアクター、特に前記の細胞閉じ込め/細胞付着および細胞増殖を行う構造体に振動エネルギーを印加する装置を有する請求項11~15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
前記細胞採取機構が前記バイオリアクターのドッキングステーションの一部を形成する請求項11~16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
前記バイオリアクターが別なバイオリアクターに導入する細胞を採取する採取容器を有する請求項11~17のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項19】
前記バイオリアクターが水平面に対して傾動して、前記の細胞閉じ込め/細胞付着および細胞増殖を行う構造体からの排液を促進する請求項11~18のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
さらに前記の細胞閉じ込め/細胞付着および細胞増殖を行う構造体を内部的にあるいは外部的に圧縮するコンパクターを有する請求項11~19のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項21】
前記酵素カクテルがインテグリンを裂開する酵素および細胞外マトリックスを裂開する異なる酵素を含有する請求項11~20のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項22】
前記細胞採取装置が前記バイオリアクターに対して前記の細胞閉じ込め/細胞付着および細胞増殖を行う構造体を移動させて、前記液体レベルを移動させる作動装置を有する請求項11~21のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項23】
さらに前記細胞採取機構を制御して、前記バイオリアクターを撹拌し、前記の細胞閉じ込め/細胞付着および細胞増殖を行う構造体に対して液体レベルを移動させる制御装置を有する請求項11~22のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項24】
前記制御装置によって前記酵素カクテルの前記バイオリアクターへの搬送を制御する構成の請求項11~23のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項25】
細胞閉じ込め/細胞付着および細胞増殖を行う構造体を有するバイオリアクター、
このバイオリアクターを撹拌する構成の撹拌装置、
前記の細胞閉じ込め/細胞付着および細胞増殖を行う構造体に対して液体レベルを移動させる作動装置、および
前記バイオリアクターに流体連絡する細胞分離溶液を含有する容器を有し、この細胞分離溶液が塊状物や凝集物を発生することなく細胞閉じ込め/細胞付着および細胞増殖を行う構造体から細胞を分離する酵素カクテルを含有する
ことを特徴とする細胞採取システム。
【請求項26】
前記撹拌装置が振動装置を有する請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記作動装置が線形作動装置を有する請求項25または請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記作動装置がポンプを有する請求項25または請求項26のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項29】
さらに前記作動装置を制御する制御装置を有する請求項25~28のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項30】
細胞閉じ込め/細胞接着および細胞増殖を行う構造体を有するバイオリアクター、
このバイオリアクターを液体で充填処理およびフラッシュ処理を行っている状態で、前記バイオリアクターを撹拌する構成の細胞採取機構、および
前記バイオリアクターに流体連絡する細胞分離溶液を含有する容器を有する
ことを特徴とする細胞採取システム。
【請求項31】
前記細胞分離溶液が塊状物や凝集物を発生せずに細胞を分離する酵素カクテルを含有する請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
前記細胞採取機構が前記バイオリアクターを撹拌または振盪する装置を有する請求項30または31に記載のシステム。
【請求項33】
前記細胞採取機構が前記バイオリアクターの部分的な、または完全な充填処理、空処理およびフラッシュ処理を行う装置を有する請求項30~32のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項34】
前記の充填処理、空処理およびフラッシュ処理を行う装置が一つかそれ以上のポンプを有する請求項30~33のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項35】
前記細胞採取機構が前記バイオリアクターに、特に前記の細胞閉じ込め/細胞接着および細胞増殖を行う構造体に振動エネルギーを印加する装置を有する請求項30~34のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項36】
前記細胞採取機構が前記バイオリアクターのドッキングステーションの一部を形成する請求項30~35のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項37】
塊状物や凝集物を発生することなく細胞の分離を行う酵素カクテルを固定床バイオリアクターに添加し、そして
このバイオリアクターが振動する状態で前記固定床バイオリアクター内の液体レベルの位置を調節する
ことを特徴とする固定床バイオリアクターから細胞を分離する方法。
【請求項38】
前記調節工程において、液体を使用して前記バイオリアクターを充填処理およびフラッシュ処理する請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記調節工程において、液体を使用して前記バイオリアクターを繰り返し充填処理およびフラッシュ処理する請求項37に記載の方法。
【請求項40】
さらに前記バイオリアクターから別なバイオリアクターに分離細胞を搬送する工程を有する請求項37~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
さらに前記バイオリアクターを傾動させる工程を有する請求項37~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
さらに前記バイオリアクター内で固定床を圧縮する工程を有する請求項37~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記調節工程において、前記固定床を前記バイオリアクターに対して移動させる請求項37~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
バイオリアクターを振動させ、そして
このバイオリアクターを傾動させ、かつ排液する
ことを特徴とするバイオリアクター内で細胞を分離する方法。
【請求項45】
前記振動する工程、前記傾動する工程、および前記排液する工程を同時に行う請求項44に記載の方法。
【請求項46】
付着細胞増殖を行う固定床を有するバイオリアクター、および
この固定床を圧縮する圧縮装置を有する
ことを特徴とする細胞採取システム。
【請求項47】
さらに前記バイオリアクターまたは前記固定床を振動させる振動装置を有する請求項46に記載のシステム。
【請求項48】
前記圧縮装置を前記固定床内か前記固定床外に設ける請求項46または請求項47に記載のシステム。
【請求項49】
付着細胞増殖を行う構造体を有する前培養容器、
バイオリアクターを振動させて、細胞をこの構造体から分離する振動装置、および
前記前培養容器の下流側にあり、分離細胞を受け取るバイオリアクターを有する
ことを特徴とする細胞採取システム。
【請求項50】
液体を前記前培養容器に送り込むか、あるいはこの前培養容器から送り出して前記構造体に対して液体レベルを移動させるポンプをさらに有する請求項49に記載のシステム。
【請求項51】
さらに前記ポンプを制御する制御装置を有する請求項50に記載のシステム。
【請求項52】
前記制御装置が前記振動装置を制御する請求項51に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は全体としては細胞採取能力を強化したバイオリアクターシステムおよび関連方法に関する。
【背景】
【0002】
バイオマニファクチュアリングを使用対象とする一部の高細胞密度バイオリアクターの場合、細胞閉じ込め/付着および細胞培養を促進するための構造体例えば固定床(構造化床あるいは充填式床など)を有する。固定床の素材構成は局所的な流体、熱および物質移動に影響する。多くの場合、固定床は所定のスペース内で細胞培養を最大化するために密度がきわめて高い。
【0003】
一部のバイオマニファクチュアリング用途では、固定床内で増殖する細胞は増殖ステージ後にバイオリアクターからそれ自体を採取する。これは細胞採取をシードトレインとして使用して、別な(例えば産生用の)バイオリアクターに接種するための細胞を培養するケースか、あるいは細胞自体が(例えば細胞バンクを設立するか、あるいは細胞治療に使用するための)目的産生物であるケースに相当するといえる。固定床から生きた状態の細胞を採取するためには、トリプシン酵素などの化学製剤を使用することができる。なお、この化学製剤を単独で使用すると、限られた量の細胞分離が生じる。主な理由は一般的なバイオリアクター内の固定床の構成物質が密に充填されているためであり、固定床全体に化学製剤を循環させることが、また細胞採取収量の増量がさらに困難になる。
【0004】
細胞もインテグリンと呼ばれている小さなケーブル状の蛋白質を介して固定床に付着する。加えて、細胞がコラーゲンやグルコサミノグリカン類などの他の蛋白質を産生し、これがネットに似た細胞外マトリックスを形成する。トリプシンなどの分離溶液を使用して構造体から細胞を分離する時でさえ、これら蛋白質によって採取細胞が塊まり、これは回収するという目的にはそぐわず、細胞収量が目的未満になる。
即ち、バイオリアクターから採取される細胞の収率を改善する方法が求められている。
【概要】
【0005】
本発明の一つの態様は細胞の採取方法に関する。この方法では、細胞閉じ込めまたは細胞付着および細胞増殖を可能にする固定床構造体を設置し、培地によってバイオリアクターに細胞を加え、細胞を閉じ込め、および/または固定床に付着(接着)させ、このバイオリアクター内で増殖させることができる。この方法では、さらに、バイオリアクターを撹拌し、固定床構造体に対して液体レベルを移動させ、酵素カクテルを有する細胞分離溶液をバイオリアクターに導入し、固定床構造体から細胞の一部を、この細胞部分を塊状化または凝集させずに分離する。
【0006】
一つの実施態様では、撹拌工程および移動工程を同時に行う。移動工程では、例えば固定床構造体の上部隣接部から固定床の下部隣接部へ液体レベルを移動させるなどによってバイオリアクターから少なくとも部分的に排液を行うことができる。移動工程では、例えば細胞分離溶液をバイオリアクターに追加するなどによって液体をバイオリアクターに添加することができ、また細胞の閉じ込め/付着および培養を行う構造体をバイオリアクターに移動させて、液体レベルの位置を移動させることができる。
【0007】
移動工程に先立って液体レベルを固定床構造体より高くし、(例えば固定床構造体の上部から固定床構造体の底部へ)液体レベルを複数回(一回限りでもよい)上下させてもよい。撹拌工程では、バイオリアクターを振動させてもよい。導入工程では、インテグリンを裂開する酵素、および細胞外マトリックスを酵素カクテルとして裂開する異なる酵素を導入することができる。
【0008】
本発明のさらに別な態様は細胞を採取するシステムを提供するものである。このシステムは細胞の閉じ込め/付着および培養を行う構造体、バイオリアクター内を撹拌し、かつこの構造体に対して液体レベルを移動させる細胞採取機構、およびバイオリアクターと流体連絡する細胞分離溶液を有する容器を有するバイオリアクターを備える。細胞分離溶液は一旦分離した細胞の部分に塊状物または凝集物を発生することなく細胞の閉じ込め/付着および増殖を行う構造体から細胞の一部を分離する酵素カクテルを有する。
【0009】
一つの実施態様では、細胞の閉じ込め/付着および増殖を行う構造体は3Dプリンター固定床などの固定床を有する。細胞の閉じ込め/付着および増殖を行う構造体は例えば積層構造または螺旋構造の複数の細胞固定化層を有し、これら細胞固定層が隣接層間のスペースに直接的にあるいは間接的に接触する。細胞採取機構はバイオリアクター(特に細胞の閉じ込め/付着および増殖を行う構造体)を振動または振盪する装置および/またはポンプを有する。この細胞採取機構は細胞を採取して、別なバイオリアクターに導入する採取容器を備えることができるバイオリアクター用のドッキングステーションの一部を形成することができる。
【0010】
これらの、あるいは別な実施態様では、バイオリアクターは水平面に対して傾動(tilt)できるように構成して、細胞の閉じ込め/付着および増殖を行う構造体からの排液を促進することができる。細胞の閉じ込め/付着および増殖を行う構造体を内部において、あるいは外部において圧縮するコンパクターを設けることができる。酵素カクテルはインテグリンを裂開する酵素および細胞外マトリックスを裂開する異なる酵素を有する。
【0011】
細胞採取装置はバイオリアクターに対して細胞の閉じ込め/付着および増殖を行う構造体を移動させて、液体レベルの位置を移動させる作動装置(アクチュエータ)を備えることができる。細胞採取機構を制御してバイオリアクターを撹拌し、かつ細胞の閉じ込め/付着および増殖を行う構造体に対して液体レベルを移動させる制御装置を設けることができる。この制御装置は酵素カクテルのバイオリアクターへの搬送を制御できる構成である。
【0012】
本発明のさらに別な態様は細胞の閉じ込め/付着および増殖を行う構造体を有するバイオリアクター、このバイオリアクターを撹拌する撹拌機、細胞の閉じ込め/付着および増殖を行う構造体に対して液体レベルを移動させる作動装置(アクチュエータ)、およびバイオリアクターと流体連絡する細胞分離溶液を有する容器を備えた細胞採取システムに関する。細胞分離溶液は塊または凝集物を発生することなく細胞の閉じ込め/付着および増殖を行う構造体から細胞の一部を分離する酵素カクテルを有する。
【0013】
一つの実施態様では、撹拌機は振動装置を有する。作動装置(アクチュエータ)は線形作動装置(アクチュエータ)およびポンプを備えていればよい。作動装置(アクチュエータ)および/または撹拌機を制御する制御装置を設けることも可能である。
【0014】
本発明のさらに別な態様は細胞採取システムに関する。このシステムは細胞の閉じ込め/付着および増殖を行う構造体を有するバイオリアクターを備える。細胞採取機構はバイオリアクターに液体を充填し、かつこれでフラッシュ処理を行っている状態で、バイオリアクター内を撹拌できる。容器はバイオリアクターと流体連絡する細胞分離溶液を有する。
【0015】
一つの実施態様では、細胞分離溶液は塊状物や凝集物を発生せずに細胞を分離する酵素カクテルを含有する。細胞採取機構はバイオリアクターに、特にバイオリアクターおよび/構造体、および/またはバイオリアクターを部分的にまたは完全に充填し(充填処理)、空にし(空処理)、およびフラッシュ処理する装置に振動エネルギーを与える装置を備えることができる。充填処理、空処理、そしてフラッシュ処理を行う装置は一つかそれ以上のポンプを備えることができる。細胞採取機構はバイオリアクター用のドッキングステーションの一部を形成することができる。
【0016】
本発明のさらに別な態様は固定床バイオリアクターから細胞を分離する方法に関する。この方法では、塊状物や凝集物を発生することなく細胞分離用酵素カクテルを固定床バイオリアクターに加え;そしてバイオリアクターを振動状態で固定床バイオリアクター内の液体レベルの位置を調節する。調節工程では、例えばバイオリアクターの液体充填および液体フラッシュ処理を繰り返すなどによってバイオリアクターの液体充填および液体フラッシュ処理を実施することができる。さらに、本発明方法ではバイオリアクターからの分離細胞を別なバイオリアクターに搬送する工程を有する。加えて、本発明方法ではバイオリアクター内の固定床の傾動および/または圧縮化を実施することができる。調節工程ではバイオリアクターに対して固定床を移動させることができる。
【0017】
本発明のさらに別な態様はバイオリアクター内の細胞を分離する方法に関する。この方法では、バイオリアクターの振動、傾動および排液を実施する。振動工程、傾動工程および排液工程については同時に実施することができる。
【0018】
以上に加えて、本発明は細胞の採取システムにも関する。本発明システムは付着細胞増殖を行う固定床および、この固定床を圧縮し細胞の分離を促進する圧縮装置(コンパクター)を有するバイオリアクターを備える。前記バイオリアクターまたは前記固定床を振動させる振動装置を設けることもできる。前記圧縮装置は前記固定床内か前記固定床外に位置することができる。
さらに加えて、本発明は細胞の採取システムにも関する。本発明システムは付着細胞増殖を行う構造体を有する前培養容器、および、バイオリアクターを振動させて、細胞をこの構造体から分離する振動措置を有する。この前培養容器の下流側にあるバイオリアクターは、分離細胞を受け取るためである。この前培養容器から液体を送り出し、前記構造体に対して液体レベルを移動させるポンプを設けることもでき、また、振動装置と同様に前記ポンプを制御する制御装置を設けることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1は本発明の一態様に係るバイオリアクターシステムを示す概略図である。
図2は本発明の別な態様に係るバイオリアクターシステムの実施例を示す詳細図である。な
図2Aは振動台などの撹拌装置にバイオリアクターを接続する接続装置の実施例を示す図である。
図2Bは本発明に係るバイオリアクターシステムの使用例を示すフローチャートである。
図3はバイオリアクターを示す図で、液体が振動時に対応する固定床内で移動またはパルス印加を行って細胞採取を改善する方法を示す図である。
図3A、
図3B、
図3C、
図3D、
図3E、および
図3Fは本明細書に開示する発明性のある各種態様から作用効果を得ることができるバイオリアクター構成の他の各種形態を示す図である。
図4は本発明の別な態様に係るバイオリアクターシステムの別な実施態様を示す概略図である。
図4A、
図4B、および
図4Cは振動台を備えたドッキングステーションに組み込んだバイオリアクターを示す図である。
図5は機械的エネルギーを印加して固定床を排液する異なる方法を示す図である。
図6および
図7は排液時にバイオリアクターを傾動させて、流体回収を促進する状態を示す図である。
図8、
図9、および
図10は固定床を圧縮する圧縮装置(コンパクター)の各種実施態様を示す図である。
図11~
図16は動的固定床を備えたバイオリアクターを示す図である。
図17~
図19はバイオプロセシング操作の各種の制御態様の実施例を示す図である。
図20~
図24は本発明の各種態様に従って実施する例示的な実験を示す詳細図である。
【詳細な説明】
【0020】
本発明の一つの態様は細胞採取能力を強化したバイオリアクターに関する。
図1を参照して説明すると、このバイオリアクターは固定床14(fixed bed)などの付着細胞増殖または懸濁細胞増殖用構造体などのバイオリアクター12を備えるシステム10によって実現できる。固定床14は例えば構造化固定床、3Dプリントマトリックス、あるいは介在しているスペーサ、ビーズ、中空糸に直接接触する物質からなる一つかそれ以上のシート、または付着細胞増殖や閉じ込めによる細胞増殖を促進するその他の好適な細胞培養構造を備えていればよい(例えば以下の
図3A~
図3Fの説明を参照)。固定床14については、例えば3D多孔質モノリス、積層(例えば本明細書に援用するU.S.Patent No.11,111,470を参照)、垂直に配設した平行層、螺旋状や巻き線状の層や充填床(例えば本明細書に援用するU.S.Patent No.8,137,959を参照)を始めとする任意の所望形状、配向または形態で設計することができる。
【0021】
さらに、システム10はバイオリアクター12から採取される細胞の収量を改善する細胞採取機構16を備える。細胞採取機構16にはバイオリアクター12を組み込んでもよく、あるいは細胞の採取が望ましいときにのみバイオリアクターへの接続や相互作用によって細胞採取機構16を接続し、この状態で使用してもよい。以下の記載でさらに説明するように、採取機構16はバイオリアクター12のドッキングステーションに組み込んでもよく、あるいは一体化システムの外部に設けてもよい。
【0022】
図2に示す一つの実施例では、細胞採取機構16はバイオリアクター12を撹拌する第1装置18および一つの実施例では液体化学カクテルをバイオリアクター12に充填することによってバイオリアクター12内の液体レベルを移動または変更する第2装置20を備えるため、液体レベルを固定床の上部の位置に、あるいはそれより上に設定し、バイオリアクター12から排液を行って、液体レベルを充填レベルから固定床14の底部またはその下に下げることができる。あるいは、またはこれに加えて、第2装置20によって固定床バイオリアクター12の内部と外部との間で液体の一部を往復動作即ち“前後”動作させてもよい。この液体の前後動作を一つかそれ以上のポンプなどの作動装置(アクチュエータ)によって行うと、液体を部分的に排液してから、バイオリアクターに部分的に導入するさいにパルス動作を発生できる。あるいは、バイオリアクター12の完全な排液および完全な再充填を行うことができる。このため、バイオリアクター12には入り口24、出口または排液口26を設けることができ、いずれも好適なポンプ22a、22b、およびベント28に対応させることができる。バイオリアクター12は硬質な容器で構成してもよく、あるいは使い捨て容器またはバックで構成してもよい。
【0023】
第1装置18は例えば撹拌エネルギーをバイオリアクター12から固定床14に印加する任意の手段で構成することができる。バイオリアクター12のエネルギーを印加する部分については、細胞が分離するのに十分な態様で固定床14が振動している間これと一体化していればよい。第1装置18は例えば振動台の形を取る撹拌機、ボルテックス装置、振盪装置、あるいは機械的エネルギーをバイオリアクターに印加できる別な装置および/または固定床14などの付着細胞増殖/細胞閉じ込めを行う構造体であればよい。第1装置18はバイオリアクター12に対して内部にあってもよく、あるいは外部にあってもよい。振動運動としては振動でもよく、往復動でもよく、周期動でもよく、いずれも調和動またはランダム動の形を取ることができる。周波数については20~100ヘルツであればよく、より具体的には50~80ヘルツであればよい。振幅については低くてよく、例えば0.5~5.0mm、より具体的には2~3mmであればよい。
【0024】
第2装置20は例えば双方向ポンプや可逆ポンプ22a、22bなどの一つかそれ以上の液体移転装置であればよく、流体をバイオリアクター12に送り出し、あるいはバイオリアクター12から送り込む他の手段であってもよい。第2装置20によって排液モード時に排液された流体を充填モード時にバイオリアクター12に再循環させることができる。あるいは、充填モード時に未使用の流体をバイオリアクター12に導入することができる。この第2装置20も排液サイクル、空にするサイクル、または充填サイクルのみを行うことができ、一回限りのサイクル(例えば一回の排液または充填)を行ってもよく、複数サイクルを行ってもよい。
【0025】
第2装置20を第1装置18と一体化すると、タンデム動作または平行動作を実施することができる。あるいは、装置18、20は単独装置の一部で構成してもよい。いずれの場合も、制御装置(コンピュータまたはプロセッサなど)を使用して、撹拌および液体のバイオリアクター12への、あるいはバイオリアクター12からの前後運動のアルゴリズムまたはプロセスを自動的に、あるいはオペレータ指令の結果として管理する。
【0026】
本発明システム10はさらに採取容器30、廃棄物容器32、および細胞分離溶液例えば(場合によっては、以下の記載において概略を説明する酵素カクテルを含有する)酵素を含有する細胞分離溶液を収容した供給容器34を有する。なお、各容器はバイオリアクター12に流体連絡する。洗浄溶液および不活性化用溶液を供給するために適宜設ける容器36、38、40もバイオリアクター12に流体連絡していればよい。例えば、供給容器34は(37℃に加温することができるTrypsin/PBS/EDTAなどの酵素および/または化学細胞分離溶液を供給することができ、容器36は適宜使用する(PBS/EDTAなどの)洗浄溶液を供給することができ、容器38は別な形態の適宜使用する(PBSなどの)洗浄干渉溶液を供給することができ、また容器40は適宜使用する(STI血清などの)不活性化用溶液を供給することができる。これら容器(および内部の溶液)のいずれかは、あるいはすべては撹拌することができ、またバイオリアクター12への再循環を可能にし(細胞を分離するために必要なトリプシンなどの酵素の量をバイオリアクターの公称容量よりも大きくできるからである)、場合によってはリザーバ44への再循環を可能にする再循環ループ42の一部を構成することができる。特に、採取容器30は撹拌することができ、また場合に応じて温度を制御できるため、上流に設けることができる(例えば
図4を参照)別なバイオリアクターに植え付けるために使用する前などにおいて採取細胞が沈降することがなくなる。本発明システム10の場合、予め分離溶液を加熱することができ、および/または細胞分離溶液の温度を(通常は37℃に)維持することができる。
【0027】
上記システムを使用して、バイオリアクター12に作用する撹拌をバイオリアクター12内部の液体の動きと併用して、細胞採取を強化する。例えば本システム10の場合、液体のパルス動または前後動を伴う外部ポンプによって分離溶液を循環させた状態で、バイオリアクター容器の振動、パルス動または振盪を行う。あるいは、(撹拌装置などによって)バイオリアクターの内部循環によって、または外部再循環-循環または潅流によって分離溶液の内部運動を惹起できる。例えば、振動は所定の周波数(60~80Hzを含む20~300Hz)で行うことができ、また液体のパルス動を複数サイクル(例えば0.1~5L/分の流量で1~10サイクル)行うことができる。
【0028】
このような撹拌を行うと、バイオリアクター12の気相付近にある液体レベルでのエネルギー転移が最大化する。例えば第2装置20(ポンプなど)を使用することによって、バイオリアクター12内の液体レベルを振動/振盪/撹拌作用時(バイオリアクター2の固定床14の底部付近にある
図3のLを参照)に固定床14にそって動的に調節する(例えば上下動など、
図3の矢印を参照)ことによって、細胞がより効果的に固定床物質から分離する。この結果、バイオリアクター12の細胞の収量または採取量が簡単な上に比較的安価な方法で改善でき、余計なコストや複雑性も必要ない。
【0029】
撹拌時バイオリアクター12の完全性を維持するために、接続装置46を使用してバイオリアクター12をシステム10、特に第1装置18に取り付けることができる。この接続装置46は装置18をバイオリアクター12に連結する機械的構造を有していればよいが、バイオリアクター12に機械的エネルギーを伝達するために十分な剛度を有している必要がある。機械的な損傷を防止するために、接続装置46はバイオリアクター12に正しく篏合する必要があり、存在するバイオリアクターの脆い部分(例えばpHおよびDOプローブPなど)を維持しかつ損傷から保護する必要がある。
【0030】
図2Aに図示する実施例では、接続装置46は環状部分46aを有し、これの垂下部分46bがバイオリアクター12の蓋またはカバーに係合する。これら垂下部分46bは(クランプ46cなどによって)支持体46dに解除自在に接続する。撹拌時にバイオリアクター12の安全を維持した状態で、機械的エネルギーの伝達を可能にするようにこれら支持体46dを直接装置18に取り付ける。
【0031】
一例として、本システム10の動作を以下に示す。
バッチモード(トリプシンなどの)濃縮酵素を使用する(酵素の量はバイオリアクター12の公称容量に等しい);
酵素の潅流モード(入口および出口);および
(酵素を循環させる外部ループなどを使用する)再循環。
【0032】
図2Bのフローダイヤグラムを参照して別な態様を説明する。
図2に示すシステム10の一つの使用例では、接種/細胞増殖フェーズに続いて以下の工程を実施する。
(1)固定床内に細胞を閉じ込め、増殖させたバイオリアクターの増殖フェーズの完了後、ドレーン(ボトムラインなどで示す)を使用したバイオリアクター12の中身を例えば廃棄物容器(
図2の容器32など)に空ける。
(2)洗浄用緩衝液を添加し、これを混合し、洗浄用緩衝液を空けることによって適宜バイオリアクター12の洗浄する(この工程は数回、例えば1~5回行うことができ、またバイオリアクターを連続的に充填し、かつ空にすることによって潅流形態でも実施できる)。
(3)分離溶液をバイオリアクターに添加し、その液体レベルを固定床の高さ(または長さ)に設定するか、あるいはこれ以上に設定する。なお、この固定床は潜在的に予備加熱でき、また(例えば潜在的にキレーターを含有する)適正な緩衝液で希釈できる)。
(4)適宜所定の時間(例えば1~60分)待機し、再循環ループ内の液体の温度を潜在的に8℃から37℃に維持する。
(5)例えばバイオリアクターから溶液を排液するか、さもなければポンプを使用して溶液を取り除いて(適宜分離溶液をバイオリアクター12に前後循環させ、固定床14の充填および空処理(1~10回の数サイクルで流量は0.1~5L/分に設定)を行い、適宜(再循環ループなどで)分離溶液を循環させて液体レベルを移動させる。この工程の実施時、固定床14に対して液体レベルを移動させた状態で、(振動振盪または他の撹拌からなどの)機械的エネルギーをバイオリアクター12に加える。溶液の排液/空処理の回数は一回でもよく、あるいは細胞の分離をより効果的に行うために充填/空処理回数を増やすことができる。
(6)細胞をバイオリアクター12から採取する(例えばドレインラインを使用してから処理を行う)。
(7)適宜バイオリアクター12を洗浄し、洗浄液を採取物と合わせる。
(8)適宜(血清、大豆トリプシン阻害剤などの)酵素阻害剤を採取物に添加する。
【0033】
上述したように、分離酵素の容量はバイオリアクター12の公称容量よりも大きければよい。例えば、床面積が30m2で、古典的なトリプシン濃度が0.023ml/cm2(CS/CF10の推奨濃度150ml/6600cm2)のバイオリアクター12の場合、バイオリアクター内に添加すべきトリプシンの量は約7Lである必要がある。このため、トリプシン処理は再循環モード、潅流モードまたは数回の工程(工程3~6、上記を参照)で実施する必要がある。公称容量がほぼ3Lの場合、トリプシン処理は2工程で実施でき、洗浄処理効果が改善する。
【0034】
本発明のさらに別な態様は本発明の任意の態様に従って固定床式バイオリアクターから採取される細胞に細胞分離溶液を酵素カクテルの形態で使用することに関する。この態様では、細胞採取時に固定床に酵素カクテルを導入し、この酸素カクテルはインテグリンを裂開し、細胞外マトリックスによって高収率で細胞を分離することができる上に、トリプシンなどの酵素の単独使用の場合に発生する凝集問題が生じない。酵素カクテルの例としては(1)セリンプロテアーズ、例えばトリプシン(優先裂開:Arg‐|‐Xaa、Lys‐|‐Xaa);および/または(2)以下のうちの一種:(a)キモトリプシン(優先裂開:Leu-(‐Xaa、Tyr‐|‐Xaa、Phe‐|‐Xaa、Met‐|‐Xaa、Trp‐|‐Xaa、Gln‐|‐Xaa、Asn‐|‐Xaa;(b)エラスターゼ(優先裂開:一般にP1に嵩張った疎水基をもつ、エラスチン、コラーゲンタイプIIIおよびIV、フィブロネクチンおよびイミュノグロブリンAを始めとする蛋白質の加水分解);(c)コラゲナーゼI(優先裂開:α-1(I)鎖の775-Gly‐|‐Ile-776においてN-端子から分子の長さの約4分の3にある3重らせんの裂開、および/または(d)システインプロテアーゼ(パパインなど)である。(以下の活性:トリプシン、キモトリプシン、エラスターゼ、コラゲナーゼタイプIを有する異なる酵素カクテルを含有する)市販例はAccutaseおよびAccumax(Innovative Cell Technologiesの製品)である。DNaseも裂開/抗凝集剤として使用できる。
【0035】
このような酵素カクテルを使用すると、塊状物や凝集物の形成がなくなり、また細胞に対する攻撃性が強すぎる単独酵素の溶液(例えば細胞の生存率を引き下げる酵素など)を使用する必要がなくなる。酵素カクテルは単独溶液の形で使用でき、あるいは酵素混合物(酵素量はバイオリアクターの公称容量に等しい)を使用するバッチモード、潅流(入口および出口)モード、または再循環モードなどでバイオリアクターに順次添加できる。
【0036】
細胞採取時に使用することができるプロトコルは接種/細胞増殖フェーズに続く以下の工程を有する。
(1)廃棄物容器への(ボトムラインなどの)ドレンを使用してバイオリアクター12を空処理する。
(2)場合に応じて、洗浄緩衝液を添加し、混合を行い、洗浄緩衝液を除去する(この工程は複数回実施してもよく、また潅流モードで実施してもよい)。
(3)酵素カクテル(酵素混合物)を含有する分離溶液をバイオリアクターに添加して、予め加熱することができる固定床の高さ(または長さ)かそれよりも上にその液体レベルを設定する。
(4)温度を22℃から37℃に維持した状態で、所定の時間(例えば2~30分)待機する(この工程はバッチモードおよび再循環モードの両モードで実施できる)。
(5)溶液の液体レベルを移して、固定床を介して固定床の他端部の下かあるいはそれを超えるまで移動させるか、あるいは完全な再循環などによって液体レベルを転移させて、固定床を充填および空処理(1~10サイクル)し、場合に応じて(再循環ループなどによって)酵素カクテルを循環し、低振幅の10~200Hzで振動(振盪/撹拌)をバイオリアクター12に印加し、固定床14内部の前後方向のパルス動作によって細胞を分離する。
(6)(ドレン管を使用するなどして)バイオリアクターから細胞を採取する。
(7)バイオリアクター12を洗浄し、採取物とともに洗浄生成物をプールする。
(8)場合に応じて、(血清、大豆トリプシン抑制剤、キレート剤、希釈剤などを使用して)採取物に酵素抑制剤を添加する。
【0037】
本発明のさらに別な態様では、機械的エネルギー印加(振動式など)装置を併用した状態で、好適には上記の液体レベル転移工程前および工程時に酵素または酵素のカクテルを使用して固定床バイオリアクターから細胞を回収する。回収後または採取後に、試薬または(マイクロフルイダイザーやホモジナイザーなど)機械的作用を使用してバイオリアクターの外部で細胞の溶菌処理を行って、細胞間ウィルスまたは細胞関連ウィルスを放出する。この態様では、酵素または酵素のカクテルを振動装置と併用して細胞を固定床から回収し、第2反応装置において電気窄孔法よって移入も行う。
【0038】
本発明のこれら態様いずれも、あるいはすべても単独で実施可能であり、あるいは他の形態の固定床と併用することも可能である。例えば、
図3Aおよび
図3Bを参照して説明すると、固定床14は図示のように螺旋状に巻いた一つかそれ以上の固定化層122aを有する(付着またはその他の細胞などの)細胞用構造化固定床122で構成することができる。これらの一つかそれ以上の固定化層122aが線形あるいは規則的な流入液(矢印A)からの曲がりくねった流入チャネル(矢印B)を構成するが、余計なスペーサ層を必要としない。なお、これらスペーサ層は望ましい場合には使用可能である。このためには、
図3Cに示すように、繊維織物かフィラメント織物からなり、流れを乱す層123、125を設ければよい。
【0039】
図3Dに示すように、このためには、細胞固定化層122aとして不織布素材を使用すればよい。液体が通過し、再び戻ることができる開口127を備えた網目状構造体(例えば3Dプリント法)として固定化層122aを形成すればよく、均質性が強化し、かつ液体に気泡がある場合にはこれら気泡を剪断または分割する曲がりくねったチャネルが形成する。この機能はスペーサ層を追加しても、あるいは追加しなくても実現可能である。
【0040】
構造化固定床122の配向については、流れが垂直流れのバイオリアクターの12の場合(
図3の実施例では下から上に)、図示以外の配向でもよい。例えば
図3Eに示すように、水平バイオリアクター100の場合、一つかそれ以上の水平素材層からなる構造化固定床122を有する第1室120を備えていればよい。これら一つかそれ以上の固定化層は
図3Cおよび
図3Dに示すように、織物素材か網目状素材で構成することができるが、
図3Eに示すように、隣接スペーサ層122b(なお、図示を明瞭するために垂直方向の間隔は誇張して示す)によって挟んだ一つかそれ以上の細胞固定化層122a(3つの層を示すが、任意の層数を使用できる)で構成することができる。従って、液体は側部から側部へ(左から右へ、あるいは右から左へ)流れ、(複数の)素材層(スペーサ層やその他の層)が線形や規則的な流入液(矢印A)から網目状流れ(矢印B)を形成し、液体に何らかの気泡が存在する場合にはこれらを分割するチャネルを形成する。ポンプ作用は第1室120の流入端部に設ける撹拌装置かその他のポンプによって得ることができ、経路Rによって概略を示す戻り経路は流出端部に設けることができる。望む場合には、スペーサ層も細胞固定化層122aの間に付設することができる。
【0041】
図3Fを参照して説明する別な実施態様では、構造化固定床122は細胞が付着する層を有する、複数の相互接続ユニットまたはオブジェクト124aから形成したスキャホルド(scaffold)や格子状の形態を取る三次元(3D)モノリスマトリックス124で構成する。マトリックス124は使用時に流体および細胞が流れる曲がりくねった経路を備えていればよい。一部の実施態様では、マトリックス124は3D配列、格子、スキャホルディング、またはスポンジの形で使用することができる。このマトリックスは使い捨て形式が好ましく、バイオプロセシング基準に従うクリーニング処置に係るコストおよび複雑さを回避することができる。
【0042】
本発明のさらに別な態様では、
図4を参照して説明すると、システム100は(シードトレインなどの)前培養容器112としてのバイオリアクターを有し、この前培養容器は産生バイオリアクター128などの別な容器に接種するために使用する細胞を産生する。前培養容器112は
図3Aに示すように、一つかそれ以上の螺旋状層を有する構造化固定床122で構成することができる。あるいは、
図3Eに示すように(流れの方向は垂直方向ではなく水平方向にある)、水平に積層した形態で設計することも可能であり、本明細書に開示する他の形態を始めとする他の公知形態で設計してもよい。
【0043】
図4A、
図4Bおよび
図4Cに示すように、前培養容器112(または本明細書に開示するその他のバイオリアクター)としてのバイオリアクターについては、ドッキングステーションに150に対応させることができる。このドッキングステーション150は容器112を載置することができる一体型振動台152を備えることができる。細胞培養システムの一部を構成する液体搬送を行う一体型ポンプ154および搬送ライン156は望む場合には付加的なバイオリアクター(複数の場合もある)を使用して下流側および上流側処理(プロセシング)を行い、また場合に応じて前培養容器への細胞分離溶液の搬送を行う。
【0044】
図5を参照して本発明のさらに別な態様を説明すると、システム200は固定床222および撹拌装置を有するバイオリアクター212を備えていればよい。撹拌装置としては培養容器212を載置する台240などの外部振動装置あるいはバイオリアクター212内部に載置する内部振動装置250のいずれか、あるいは両者を有するものを使用して、振動を固定床222に伝達することができる。一般に固定床222は疎水性素材で形成するため、細胞採取時に液体を保持する傾向がある。細胞採取時バイオリアクター212の排液前、排液中または排液後に振動を印加すると、固定床222内部に液体がある場合には、これが放出され、捕捉された液体内に細胞が残存している場合にはこれも回収できるので、回収率がさらに向上する。
【0045】
図6および
図7を参照して説明する本発明のさらに別な態様はバイオリアクター310、特にバイオリアクターの固定床322を傾動(tilting or slanting)させて、採取時の液体回収を強化する技術思想に関する。固定床322を傾動させると、重力が垂直方向に働き、抗力(F_Drag)の大きさが小さくなる。液量に加わる重力の大きさが同じであるが、残留F_Dragが小さくなり、重力の大きさは抗力F_Dragより大きくなる。所定量の液体が(不織織物などの)細胞固定化層322aから流出し、スペーサ層322b(例えばメッシュ-矢印Eを参照)に流入する。メッシュスペーサ層322b内では、加わる抗力が最小化(最終的にはゼロになる)し、スペーサ層全体にそって所定量の液体が流れる。
図7に示すように、水平面Hに対する傾動角度αは例えば30~45度であればよい。傾動については、固定床322を有するバイオリアクター312全体を傾動させればよく、あるいは固定床322のみを傾動させる場合には、バイオリアクター312内部で行えばよい。
【0046】
細胞採取を改善する本発明のさらに別な態様では、固定床を圧縮するか、あるいは圧密(compacting)する。
図8を参照して説明すると、バイオリアクターの固定床422を内部圧密装置に対応させて、固定床を圧密すればよい。一つの実施例では、圧密装置はラジアル方向において相対的に動作できる交互に篏合した部材(interdigiated members)452、454を備えた円筒壁450で構成することができる。図示例では、円筒壁450は固定床422の内部にあるが、外部にあってもよい。
【0047】
圧密装置はさらに固定床に対して動作を行って、圧密力をこれに加える作動装置を有する。この作動装置は駆動装置462(モータまたはハンドクランクを有することができる)に接続して、部材452、454に係合して、ラジアル方向運動を発生するリンク装置460を備えていればよい。固定床422の位置を固定すると、固定床422に圧縮作用または圧密作用が加わって、(振動の結果としてまたは分離溶液の導入の結果として、あるいは両方の結果として)分離細胞を含有する保持液体がある場合にはこれが強制的に放出される。この絞り出しを必要に応じて繰り返すと、液体の放出を最大化することができる。
【0048】
図9は固定床522を圧縮する構成の別な態様を示す図である。この構成では、直線運動作動装置を備えることができる伸縮部材556に接続した対向部材552、554を備えていればよい。この伸縮部材556はバイオリアクター512の内壁558を通過することができる。作動すると、対向部材552、554が固定床522を外向きに押し出し、バイオリアクター512の外壁562の結果としてこれを絞り出す。
【0049】
図10にさらに別な態様を示す。この態様では、例えば(直線状でもよく、あるいは湾曲してもよい)回転可能な部材656などの内部作動装置に接続した固定床622内に対向部材652、654を設けることができる。部材656を作動し、これが回転すると、部材652、654に力が作用し2つの部材が離れ、この結果固定床622を圧縮し、内部の液体が放出する。
【0050】
本発明のさらに別な態様では、バイオリアクター700は容器712を有し、流体培地に接続する細胞を培養または増殖する固定床714を備えていればよい。液体レベルを変更するために、固定床714は容器712に対して移動することができる。
図11および
図12に例示するように、容器712は第1位置において所定容量の流体および固定床714を受け取る主体部分712aおよび第2位置において所定容量の流体の一部(液体培地M)および固定床を受け取る補助部分712bで構成することができる(なおここでの用語“主体”および“補助”は容器のそれぞれの部分の形状や大きさに関係せず、また図示の実施態様では補助部分は小さく円筒形であるが、主体部分は大きく立体形である)。
【0051】
容器712の補助部分712bは固定床714を受け取り、かつ容器712の主体部分712aに移動する構成であればよい。従って、
図13に示すように、固定床714を有する補助部分712bを容器712の主体部分712aに下げることができるため、固定床714(高さH2)を介して流体が流れ、固定床714の上にある補助部分712bの(高さH1が形成する)一部に流入する(従って容器712の全容積を変更できる)。次に、動作を逆にすると、流体が固定床714に逆流し、容器712の主体部分712aに流入する。上下動については線状作動装置などの作動装置716を使用して実施することができる。
【0052】
このように構成すると、固定床714は動作時ずっと浸水したままであり、発生した流れの作用によって流体(培地)が固定床714を前後に通るため、細胞生存性および増殖を改善することができる。(垂直方向などの)相対運動の速度は固定床714に目的の流れが発生するように制御することができる。なお、この流れは部分的には構成の多孔度または密度に依存する。流量のバラツキについても、バイオプロセスの性質(例えば細胞採取時の均質な細胞循環を保証する高い流量や剪断に弱い細胞を保護する低い流量)に応じて制御することができる。いずれの場合も、循環を使用することなく、例えば内部撹拌装置によって目的の流れを発生し、容器全体に流体を行き渡すことができ、容器712に対する固定床714の作動は必要ない。
【0053】
図14は容器712の補助部分712bの位置を主体部分712aに対して固定したままに置く構成を示す概略図である。この構成では、固定床714は補助部分712b内の位置間で移動する(なお、第1位置即ち下がった位置714´は
図14の左側にあり、そして第2位置即ち上がった位置714´´は右側にあり、同じまたは異なる補助部分(複数の場合もある)712bを表す)。固定床714の昇降を行う作動装置とともに蓋またはカバー718を設けることもでき、作動装置は容器712の内部にあってもよく、外部にあってもよい。
【0054】
いずれの場合も、第1位置から固定床714を補助部分712b内で持ち上げることができるため、その経路内の流体が補助部分に流れることになる。なお、流量が比較的小さいため、
図15の右手側に示すように、流体の一部が補助部分712b内の前に空処理したスペース内に流入する。容器712の部分712aおよび712bが接続する結果、流体が最終的に平衡に達し、この過程で固定床712を流体が通過する。次に、矢印Aで示すように固定床714の動作を逆にし、補助部分712b内を移動できるようにすると、固定床の前にある流体がこの動作時に補助部分を通過する。この動作を繰り返し、速度を調節すると、目的量の流体(液体培地M)が流れ、細胞培養を促進し、かつ細胞生存性を強化できる。
【0055】
上記補助部分712bは、可動式であっても、あるいは非可動式であっても固定床を受け取ることができる円筒形で中空の、全体として剛性を示す素材で形成することができる。
図15および
図16を参照して説明すると、容器の補助部分712bは折り畳み可能か、あるいは可撓性を示す素材で形成することができる。このように、
図16に示すように、補助部分712bは伸縮性であり、複数の(一緒にはまり込むスライディングチューブなどの)伸縮部を有するため、固定床714を折り畳み、容器の主体部分712aの流体内で動かすることができ(位置712bvs712b´に留意)、またこの動きによって主体部分から引き込まれた流体を収めることも可能になる。
図16に(蛇腹やアコーディオンなどのように)可撓性の補助部分712bが、固定床714が補助部分712bとともに動いている間に折りたたまれる状態を示す。
【0056】
図17にバイオリアクター802のドッキングステーション800を示す。このドッキングステーション800は実施中のバイオプロセシング操作に対応する各種のパラメータを表示するディスプレー806を有するとともに、入力を行ってバイオプロセシング操作の各種態様を制御する制御装置804を備えることができる。例えば、ドッキングステーション800は導管によって接続したポンプ810に対応する各種の補助容器808を備えることができる。この制御装置804によってこれらポンプを制御し、バイオリアクター802への流体やこれからの流体の流れを制御するだけでなく、内部の撹拌装置(図示省略)を制御するなどしてバイオリアクター内の流体の混合を制御することができる。なお、撹拌装置の駆動装置はドッキングステーション800の一部を構成することができる。
【0057】
図18に示すように、ドッキングステーション800は採取モジュール801に対応していればよく、このモジュールは図示のように振動台812の形を取る外部撹拌装置を有する。図示のように、バイオリアクター802はドッキングステーション800から振動台812まで移動でき、本明細書の教示に従って細胞採取を補助することができる。振動台812は独立制御してもよく、あるいは制御装置804によって制御してもよく、ドッキングステーション800に一体的に形成することができる。
【0058】
図19を参照して説明すると、ドッキングステーション800に対応する制御装置804を使用して、細胞の採取操作を制御することができる。例えば、一旦目的の細胞密度に達した後は、細胞採取マニホルド813はバイオリアクターに接続しても良い。バイオリアクター802を空処理し、容器814からの緩衝液で洗浄してから、酵素カクテルを対応する容器816などから導入すればよい。バイオリアクター802への、またこれへの流体のポンプ供給については、同様に制御装置804によって制御することができるドッキングステーション800に対応するポンプ810を使用して実施すればよい。
【0059】
次に、バイオリアクター802を撹拌装置または振動台812に移せばよい。振動は採取物を好適な容器818に移した時点で終了すればよい。複数回の洗浄については、制御装置804を使用することによってドッキングステーション800に対応し、かつマニホルド813に接続するポンプ810を使用してバイオリアクター802への流体を送り込み、あるいはこれからの流体の送り出しを制御するなどして終了すればよい。このようにして、(本明細書に開示するプロセスなどの)細胞増殖/採取プロセス全体を制御装置804によって制御することができる。
【実施例】
【0060】
実験を行って、本発明に係る細胞採取技術における細胞生存性を評価した。すべての実験において凍結保存細胞バンク(18H003、ECACC)から入手した付着HEK293細胞を使用した。5%牛胎児血清を追加補給したDMEM(4.5g/Lグルコース)中でプラスチックフラットウェア/バイオリアクター培養を行った。すべての条件において濃度20,000~25,000細胞/cm2で接種を行った。バイオリアクター中で細胞培養を行う前に、必要な接種源を得るためにT-フラスコ/複数のプラスチック容器内で細胞を前培養した。3~4日毎に継代培養を行った(中間指数関数増殖フェーズ)。
【0061】
スケール-Xハイドロ(2.4m
2)、カーボ10m
2および30m
2バイオリアクターに細胞を接種し、再循環ループ(0.17mL/cm
2)を使用する培地培養を開始する前にバッチモードで細胞を4時間維持した。バイオリアクター培養条件を表1に詳しく記載する。
培地および固定床のサンプルを(サンプリングキャリヤによって)毎日取り込み、それぞれサンプリングキャリヤのグルコースプロファイル/ラクトースプロファイルおよび直接細胞係数によって細胞増殖を評価した。
【0062】
膨張4日~6日後にバイオリアクターからの採取を実施した。採取に先立って、バイオリアクターを空処理し、予め37℃に加熱した、5mMのEDTA含有DPBS溶液(DPBS-EDTA)で洗浄した。次に、予め37℃に加熱した分離溶液をバイオリアクターに添加し、撹拌しつつ(0.5cm/秒)かつ温度制御(37℃)しつつ20分~25分接種を行った。次に、バイオリアクターを採取モジュールに移し、振動を行うと同時に容器排液を行った。振動周波数および振動時間については各種の組み合わせを利用した。詳細を
図22に示す。
【0063】
場合に応じて、初回採取後に酵素溶液を使用して複数回洗浄を行った。ただしいずれの場合も採取にDPBS-EDTAでバイオリアクターを洗浄した。場合に応じて、一部の洗浄工程時に、あるいは全洗浄工程時に振動を加えた。固定床キャリヤおよび上澄み液のサンプルを採取プロセスの各工程時に取り込み、採取効率および細胞生存性を求めた。本実施例では2種類の酵素溶液を試験した。即ち、TrypLETMSelect、1Xまたは5X(Gibco)のいずれか、およびAccumax(Innovative Cell Technologies)、1XまたはDPBS-EDTA1:3希釈のいずれかを使用した。
【0064】
細胞採取プロトコルの概要を
図20に示す。端的に説明すると、(1)再循環構成における対応する容器803からの培地を使用し、バイオリアクター802内で4日~6日間細胞を膨張させた。採取日に、(2)容器814からの緩衝液を使用してバイオリアクター802を洗浄してから、対応する廃棄物容器815に容器816からの酵素溶液を充填し、20分~25分間接種を行った(3)。次に、バイオリアクター802を排液して内容物を採取容器818に移すと同時に、振動を行った(4)。最後に、緩衝液814を使用して洗浄を行い、細胞回収を容易にした(5)。図示から理解できるように、工程1~3はバイオリアクター802を制御装置800に設置した状態で実施した。工程4および5はバイオリアクター802を採取モジュール801に設置した状態で行った。
【0065】
血球計算器を使用するトリパンブルー染料排除方法によって採取細胞における細胞密度および細胞生存性を測定した。細胞溶菌(スケールX細胞計数キット、Univercells Technologies)によってサンプリングキャリヤによるバイオマス評価を行った後、クリスタルバイオレット染色、および血球計算器による細胞核計数を行った。固定床繊維による細胞核計数を使用して、バイオリアクター内部の全細胞数を評価した。細胞採取後、バイオリアクターを解体し、固定床の一部を代表的な位置から取り込み、固定床に残留する細胞密度を評価した。
【0066】
スケール-Xハイドロ(n=5)、カーボ10(n=1)およびカーボ30(n=1)バイオリアクターから採取した細胞をT-フラスコに接種し、第1経路による平板効率、細胞形態および細胞回収を評価した。プラスチックフラットウェアから採取した細胞を対照として集団倍加時間(PDT)および細胞形態を評価した。ある一つの場合には、スケール-Xハイドロバイオリアクターから採取した細胞を使用して、第2ハイドロを接種し、“固定床対固定床”シードトレインの概念実証を行った。ハイドロ採取細胞を使用する接種条件は前記と同じであった。
【0067】
第1フェーズにおいて、分離溶液としてTrypLE 1Xおよび5Xを使用して試験を行った。なお、これら試験条件では、細胞が大きな凝集物部分とともに放出され、細胞の全体回収に影響を及ぼす傾向が認められた(データ省略)。対照的に、Accumaxを使用すると、試験条件下単独の細胞懸濁液が発生することが認められた。従って、本明細書に記載するすべての実験は1Xか、あるいは1:3溶液に希釈したAccumaxを使用して行った。
【0068】
上記のスケール-Xハイドロの標準バージョンを使用して細胞採取実験を5回行った。すべての実験では、本明細書の材料および方法の項で説明したように、Accumax接種を行った後に、採取工程を実施し、次に洗浄工程を数回実施した。異なる採取方法を評価した結果、いずれも50~70Hzの変動幅で、1回の採取サイクルの後にAccumaxを使用した2回洗浄サイクルを行うことが最も効率の高い細胞回収であることが判明した(
図22)。DPBS-EDTAを用いる洗浄工程を数回追加すると、適度な細胞の追加放出が可能になった。洗浄時に振動を加えると、細胞回収量がさらに増えた。
【0069】
すべての実験において、採取の前後のサンプリングキャリヤを分析した結果、細胞の90%以上が固定床素材から分離したことが判明した(
図21および
図22)。細胞懸濁液単体の形でスケール-Xハイドロバイオリアクターから合計で2.7~5.1×10
9の細胞を採取できた。いずれも50~70Hzの変動幅で、Accumaxを使用した後にAccumaxを使用した2回の洗浄サイクルを行った場合には、個別の細胞採取率が最高になった。中間指数関数増殖フェーズ(200~300×10
3細胞/cm
2)および合流(400~500×10
3細胞/cm
2)に近い状態の両者でバイオリアクターから細胞を採取でき、これは採取時に細胞数を最適化することは最も高い採取収率を実現するために重要であることを示す。特に、プラスチックフラットウェアでの細胞採取は一般に200×10
3細胞/cm
2の細胞密度で行われているため、より高い密度の細胞採取を可能にする固定床バイオリアクターの作用効果が際立つ所以である。
【0070】
ハイドロスケールでの概念実証および最適化に続いて、カルボ10(n=1)および30バイオリアクター(n=1)への拡張可能性を検討するために細胞採取の追加実験を行った。いずれの採取でも、固定床素材からの細胞分離率は>98%であった。個別細胞懸濁液の形でスケール-Xカーボ30から51×109もの細胞を回収した。これは8,500細胞/cm2でのスケール-Xニトロ600の接種には十分な細胞数であった。ハイドロ実験に示すように、450×103細胞/cm2までの細胞密度を効率よく採取でき、これは10,000細胞/cm2でニトロ600を接種できる能力に相当する。特に、2回のカーボ実験では、手動で上下反転を行い、バイオリアクター排液を促進し、スケール-Xハイドロデータと比較対照した。この反転を行わないフル採取では、本実験で示したよりも2回余計な洗浄工程(合計では5回の洗浄)が必要になると考えられる。
【0071】
本研究(ハイドロ、カーボ10および30)のために行った全実験では、採取した細胞はすぐれた生存性を示した(84~96%、
図21および
図22)。希釈Accumaxを使用した実験ランでは、回収懸濁液に凝集物は認められなかった。
【0072】
すべてのスケールで回収した細胞を使用して再播種実験を行った。結果は(T-フラスコから再播種した対照細胞での29~39時間に匹敵する、
図23)29~37時間のPDT使用T-フラスコでのすぐれた再播種であることを示す。あるケースでは、スケール-Xハイドロから採取した細胞を使用して、第2ハイドロを接種した。この場合、適正な増殖が認められた(
図24)。次に、第2ハイドロから細胞を採取できた。これは固定床対固定床接種トレインの概念を実証するものである。
【0073】
以上の結果はスケール-Xカーボ30m2からの採取物は10,000HEK293細胞/cm2でのスケール-Xニトロ600m2の接種に十分であることを実証している。重要なことは、スケール-Xカーボ30は12の40層プラスチックフラットウェア容器に相当するものであることである。この容器の場合、一般に大型のインキュベーター、自動式マニピュレータやシェーカーなどの専用装置を使用して運転を行う。プラスチックフラットウェアを使用するシードトレインとスケール-Xカーボを比較する単純な評価でも後者の場合、設置面積は劇的に小さくなる(95%)。
【0074】
本研究の試験条件では、Accumaxでは適正な細胞回収率を得るためには洗浄を複数回行う必要がある。洗浄を複数回行う必要があるにも拘わらず、酵素の全使用量は従来のプラスチックフラットウェアプロセスよりも少量で済む(スケール-Xカーボ30m2の場合9.0Lで済むが、12×CF40の場合は9.6Lである)。さらに、最適化を行なった表面当りの酵素量も小さく抑えることができる。
【0075】
採取容量を考慮すると、スケール-X30cm2の場合接種細胞密度を高くでき、接種容量を小さく抑えることができる。即ち15L(3Lを三回採取し、3Lを二回洗浄)に対して従来のフラットウェア12CF-40では28.8Lである(以下の推奨容量:20ml酵素+25mlの培地および層当りの洗浄量15mlに留意)。
【0076】
スケール-Xバイオリアクターの場合、閉鎖システム内で一人のオペレータによって2時間以内で採取を実施できるが、複数のCF-40から細胞を採取する場合、LAFに従って2人以上のオペレータを必要とし、無菌接続を必要する。
【0077】
以上の初期評価はスケール-Xカーボを使用するシードトレイン発生のコストが大幅に低下することを明示するが、コストモデル化をより完全にすると、仕事量、全操作面積、無菌リスク、培地利用などによるより大きな差異化を図ることができる。
【0078】
以下に、本発明に関する各項目、あるいは任意の構成で併用する項目を記載する。
【0079】
[項目1]
細胞の閉じ込めまたは細胞付着および細胞増殖を可能にする固定床構造体を有するバイオリアクターを設け、
培地を介して前記バイオリアクターに細胞を添加し、
これら細胞を前記固定床構造体に閉じ込めおよび/または付着させて、前記バイオリアクター内で増殖させ、
酵素カクテルを含有する細胞分離液を前記バイオリアクターに導入し、
前記バイオリアクターの一部を撹拌し、そして
前記固定床構造体に対して前記細胞分離溶液の液体レベルを移動させて、
細胞の実質的部分に塊状物や凝集物を発生することなくこの細胞の実質的部分を前記固定床構造体から分離する
ことを特徴とする細胞採取方法。
【0080】
[項目2]
前記撹拌工程および移動工程を同時に行う項目1に記載の方法。
【0081】
[項目3]
前記移動工程において、前記細胞分離溶液を前記バイオリアクターから少なくとも部分的に排液する項目1または項目2に記載の方法。
【0082】
[項目4]
前記移動工程において、前記液体レベルを前記固定床構造体の上部の上またはこの上部に近接する部分から前記固定床構造体の底部の下またはこの底部に近接する部分に移動させる項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
【0083】
[項目5]
前記移動工程において、流体を前記バイオリアクターに添加する項目1~4のいずれか一項に記載の方法。
【0084】
[項目6]
前記添加工程において、細胞分離溶液を前記バイオリアクターに追加添加する項目1~5のいずれか一項に記載の方法。
【0085】
[項目7]
前記移動工程に先立って、前記液体レベルを前記固定床構造体の上に設定する項目1~6のいずれか一項に記載の方法。
【0086】
[項目8]
前記移動工程において、前記液体レベルを複数回上下させる項目1~7のいずれか一項に記載の方法。
【0087】
[項目9]
前記撹拌工程において、20~300ヘルツの周波数および0.5~5mmの振幅で前記固定床構造体を直接的または間接的に振動させる項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
【0088】
[項目10]
前記導入工程において、インテグリンを裂開する酵素および細胞外マトリックスを裂開する異なる酵素を酵素カクテルとして導入する項目1~9のいずれか一項に記載の方法。
【0089】
[項目11]
細胞閉じ込め/細胞付着および細胞増殖を行う構造体を備えたバイオリアクター、
前記バイオリアクターを撹拌しかつ前記構造体に対して液体レベルを移動させる細胞採取機構、および
前記バイオリアクターに流体連絡する細胞分離溶液を含有する容器、を有し、この細胞分離溶液は、塊状物や凝集物を発生することなく、細胞閉じ込め/細胞付着を行う前記構造体から細胞を分離する酵素カクテルを有する
ことを特徴とする細胞採取システム。
【0090】
[項目12]
前記の細胞閉じ込め/細胞付着および細胞増殖を行う構造体が3Dプリント固定床などの固定床を有する項目11に記載のシステム。
【0091】
[項目13]
前記の細胞閉じ込め/細胞付着および細胞増殖を行う構造体が積層形状または螺旋形状の複数の細胞固定層を有する固定床を有し、これら細胞固定層が隣接層間のスペースに直接的に、あるいは間接的に接触する項目11又は12に記載のシステム。
【0092】
[項目14]
前記細胞採取機構が前記バイオリアクターを振動または振盪させる装置を有する項目11~13のいずれか一項に記載のシステム。
【0093】
[項目15]
前記細胞採取機構が前記液体レベルを移動させるポンプを有する項目11~14のいずれか一項に記載のシステム。
【0094】
[項目16]
前記細胞採取機構が前記バイオリアクター、特に前記の細胞閉じ込め/細胞付着および細胞増殖を行う構造体に振動エネルギーを印加する装置を有する項目11~15のいずれか一項に記載のシステム。
【0095】
[項目17]
前記細胞採取機構が前記バイオリアクターのドッキングステーションの一部を形成する項目11~16のいずれか一項に記載のシステム。
【0096】
[項目18]
前記バイオリアクターが別なバイオリアクターに導入する細胞を採取する採取容器を有する項目11~17のいずれか一項に記載のシステム。
【0097】
[項目19]
前記バイオリアクターが水平面に対して傾動して、前記の細胞閉じ込め/細胞付着および細胞増殖を行う構造体からの排液を促進する項目11~18のいずれか一項に記載のシステム。
【0098】
[項目20]
さらに前記の細胞閉じ込め/細胞付着および細胞増殖を行う構造体を内部的にあるいは外部的に圧縮するコンパクターを有する項目11~19のいずれか一項に記載のシステム。
【0099】
[項目21]
前記酵素カクテルがインテグリンを裂開する酵素および細胞外マトリックスを裂開する異なる酵素を含有する項目11~20のいずれか一項に記載のシステム。
【0100】
[項目22]
前記細胞採取装置が前記バイオリアクターに対して前記の細胞閉じ込め/細胞付着および細胞増殖を行う構造体を移動させて、前記液体レベルを移動させる作動装置を有する項目11~21のいずれか一項に記載のシステム。
【0101】
[項目23]
さらに前記細胞採取機構を制御して、前記バイオリアクターを撹拌し、前記の細胞閉じ込め/細胞付着および細胞増殖を行う構造体に対して液体レベルを移動させる制御装置を有する項目11~22のいずれか一項に記載のシステム。
【0102】
[項目24]
前記制御装置によって前記酵素カクテルの前記バイオリアクターへの搬送を制御する構成の項目11~23のいずれか一項に記載のシステム。
【0103】
[項目25]
細胞閉じ込め/細胞付着および細胞増殖を行う構造体を有するバイオリアクター、
このバイオリアクターを撹拌する構成の撹拌装置、
前記の細胞閉じ込め/細胞付着および細胞増殖を行う構造体に対して液体レベルを移動させる作動装置、および
前記バイオリアクターに流体連絡する細胞分離溶液を含有する容器を有し、この細胞分離溶液が塊状物や凝集物を発生することなく細胞閉じ込め/細胞付着および細胞増殖を行う構造体から細胞を分離する酵素カクテルを含有する
ことを特徴とする細胞採取システム。
【0104】
[項目26]
前記撹拌装置が振動装置を有する項目25に記載のシステム。
【0105】
[項目27]
前記作動装置が線形作動装置を有する項目25~27のいずれか一項に記載のシステム。
【0106】
[項目28]
前記作動装置がポンプを有する項目25~27のいずれか一項に記載のシステム。
【0107】
[項目29]
さらに前記作動装置を制御する制御装置を有する項目25~28のいずれか一項に記載のシステム。
【0108】
[項目30]
細胞閉じ込め/細胞接着および細胞増殖を行う構造体を有するバイオリアクター、
このバイオリアクターを液体で充填処理およびフラッシュ処理を行っている状態で、前記バイオリアクターを撹拌する構成の細胞採取機構、および
前記バイオリアクターに流体連絡する細胞分離溶液を含有する容器を有する
ことを特徴とする細胞採取システム。
【0109】
[項目31]
前記細胞分離溶液が塊状物や凝集物を発生せずに細胞を分離する酵素カクテルを含有する項目30に記載のシステム。
【0110】
[項目32]
前記細胞採取機構が前記バイオリアクターを撹拌または振盪する装置を有する項目30または31に記載のシステム。
【0111】
[項目33]
前記細胞採取機構が前記バイオリアクターの部分的な、または完全な充填処理、空処理およびフラッシュ処理を行う装置を有する項目30~32のいずれか一項に記載のシステム。
【0112】
[項目34]
前記の充填処理、空処理およびフラッシュ処理を行う装置が一つかそれ以上のポンプを有する項目33に記載のシステム。
【0113】
[項目35]
前記細胞採取機構が前記バイオリアクターに、特に前記の細胞閉じ込め/細胞接着および細胞増殖を行う構造体に振動エネルギーを印加する装置を有する項目30~34のいずれか一項に記載のシステム。
【0114】
[項目36]
前記細胞採取機構が前記バイオリアクターのドッキングステーションの一部を形成する項目30~35のいずれか一項に記載のシステム。
【0115】
[項目37]
塊状物や凝集物を発生することなく細胞の分離を行う酵素カクテルを固定床バイオリアクターに添加し、そして
このバイオリアクターが振動する状態で前記固定床バイオリアクター内の液体レベルの位置を調節する
ことを特徴とする固定床バイオリアクターから細胞を分離する方法。
【0116】
[項目38]
前記調節工程において、液体を使用して前記バイオリアクターを充填処理およびフラッシュ処理する項目37に記載の方法。
【0117】
[項目39]
前記調節工程において、液体を使用して前記バイオリアクターを繰り返し充填処理およびフラッシュ処理する項目36又は37に記載の方法。
【0118】
[項目40]
さらに前記バイオリアクターから別なバイオリアクターに分離細胞を搬送する工程を有する項目37~39のいずれか一項に記載の方法。
【0119】
[項目41]
さらに前記バイオリアクターを傾動させる工程を有する項目37~40のいずれか一項に記載の方法。
【0120】
[項目42]
さらに前記バイオリアクター内で固定床を圧縮する工程を有する項目37~41のいずれか一項に記載の方法。
【0121】
[項目43]
前記調節工程において、前記固定床を前記バイオリアクターに対して移動させる項目37~42のいずれか一項に記載の方法。
【0122】
[項目44]
バイオリアクターを振動させ、そして
このバイオリアクターを傾動させ、かつ排液する
ことを特徴とするバイオリアクター内で細胞を分離する方法。
【0123】
[項目45]
前記振動する工程、前記傾動する工程、および前記排液する工程を同時に行う項目44に記載の方法。
【0124】
[項目46]
付着細胞増殖を行う固定床を有するバイオリアクター、および
この固定床を圧縮する圧縮装置を有する
ことを特徴とする細胞採取システム。
【0125】
[項目47]
さらに前記バイオリアクターまたは前記固定床を振動させる振動装置を有する項目46に記載のシステム。
【0126】
[項目48]
前記圧縮装置を前記固定床内か前記固定床外に設ける項目46または47に記載のシステム。
【0127】
[項目49]
付着細胞増殖を行う構造体を有する前培養容器、
バイオリアクターを振動させて、細胞をこの構造体から分離する振動装置、および
前記前培養容器の下流側にあり、分離細胞を受け取るバイオリアクターを有する
ことを特徴とする細胞採取システム。
【0128】
[項目50]
液体を前記前培養容器に送り込むか、あるいはこの前培養容器から送り出して前記構造体に対して液体レベルを移動させるポンプをさらに有する項目49に記載のシステム。
【0129】
[項目51]
さらに前記ポンプを制御する制御装置を有する項目50に記載のシステム。
【0130】
[項目52]
前記制御装置が前記振動装置を制御する項目51に記載のシステム。
【0131】
本明細書に使用する各用語を定義する。
単数表現や限定表現は特に逆のことを明示しない限り、単数または複数を意味する。例えば、“ある一つの区分”は一つの区分か、あるいは1つ以上の区分を指す。
【0132】
本明細書で使用するパラメータ、量、時間的期間などの測定可能な値の前にある“約”、“実質的に”、“全体として”または“およそ”は±20%またはそれ以下、好適には±10%またはそれ以下、より好適には±5%またはそれ以下、いっそう好適には±1%またはそれ以下、よりいっそう好適には±0.1%またはそれ以下を意味する。ただし、このような変動幅が本発明の実施に適性をもつ限りである。なお、“約”で修飾された値はそれ自体が具体的に本明細書に開示した値である。
【0133】
本明細書で使用する“有する”あるいは“備える”などは“もつ”、“含む”や“含有”するなどの述語と同義であり、以降に続くものの存在を具体的に示す包括的な、あるいは制約のない述語である。例えば“成分は含有する”という表現は付加的な上に記載していない、いずれも公知な成分、特徴的な機能、要素、部材の存在を排除するものではない。
【0134】
好適な実施態様を示し、説明してきたが、これら実施態様はいずれも例示のみを目的とする。当業者ならば、本発明から逸脱することなく多くの変更や置換を実施できるはずである。また、本発明を実施するさいに本明細書に記載した本発明の実施態様に各種の選択肢を採用できるはずである。本明細書冒頭の特許請求の範囲は適用可能な法律に従う保護の範囲を定義し、これによって請求項およびこれに準じる項目の範囲内にある方法および構造をカバーするものである。
【国際調査報告】