(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】ポリブタジエン系ポリマーとポリノルボルネン系ポリマーとのブレンドを含む電極バインダー、それを含む電極ならびに電気化学におけるその使用
(51)【国際特許分類】
H01M 4/62 20060101AFI20240517BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20240517BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240517BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240517BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20240517BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240517BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240517BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20240517BHJP
H01M 10/0565 20100101ALI20240517BHJP
H01M 10/056 20100101ALI20240517BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20240517BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240517BHJP
H01M 10/054 20100101ALI20240517BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/139
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/58
H01M4/36 C
H01M4/13
H01M10/0566
H01M10/0565
H01M10/056
H01M10/0562
H01M10/052
H01M10/054
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574153
(86)(22)【出願日】2022-06-03
(85)【翻訳文提出日】2024-01-23
(86)【国際出願番号】 CA2022050890
(87)【国際公開番号】W WO2022251969
(87)【国際公開日】2022-12-08
(32)【優先日】2021-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CA
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513138072
【氏名又は名称】ハイドロ-ケベック
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】フルート, ブノワ
(72)【発明者】
【氏名】ガリット, エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】ダイグル, ジャン-クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ジラール, マリ-クロード
(72)【発明者】
【氏名】フォラン, アメリ
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AJ11
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029AM12
5H029AM16
5H029DJ08
5H029DJ09
5H029EJ03
5H029EJ05
5H029EJ06
5H029EJ07
5H029EJ08
5H029EJ11
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ04
5H029HJ11
5H050AA07
5H050AA14
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA09
5H050DA11
5H050DA13
5H050EA11
5H050EA12
5H050EA13
5H050EA14
5H050EA15
5H050EA22
5H050EA28
5H050FA17
5H050FA18
5H050GA10
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA11
(57)【要約】
本技術は、電気化学的適用、特に全固体バッテリーなどの電気化学蓄電池における使用のためのバインダー組成物およびバインダーであって、ポリブタジエン系ポリマーと、必要に応じて置換されたノルボルネン系モノマーの重合に由来するノルボルネン系モノマー単位を含むポリノルボルネン系ポリマーとを含むブレンドを含む、バインダー組成物およびバインダーに関する。前記バインダーまたはバインダー組成物を含む電極材料、および電気化学セルにおける、例えば電気化学蓄電池における、特に全固体バッテリーにおける、それらの使用も記載する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリブタジエン系ポリマーと、式I:
【化14】
[式中、
R
1およびR
2は、それぞれの出現において独立して、水素原子、カルボキシル基(-COOH)、スルホン酸基(-SO
3H)、ヒドロキシル基(-OH)、フッ素原子、および塩素原子から選択される]
の化合物の重合に由来するノルボルネン系モノマー単位を含むポリノルボルネン系ポリマーとを含むブレンドを含む、バインダー組成物。
【請求項2】
前記ポリノルボルネン系ポリマーが、式II:
【化15】
[式中、
R
1およびR
2は、請求項1において定義された通りであり;
nは、前記式IIのポリマーの質量平均分子量が、上限および下限を含めて、約10000g/mol~約100000g/molであるように選択される整数である]
のポリマーである、請求項1に記載のバインダー組成物。
【請求項3】
前記式IIのポリマーの前記質量平均分子量が、上限および下限を含めて、約12000g/mol~約85000g/mol、または約15000g/mol~約75000g/mol、または約20000g/mol~約65000g/mol、または約25000g/mol~約55000g/mol、または約25000g/mol~約50000g/molである、請求項2に記載のバインダー組成物。
【請求項4】
R
1およびR
2が、それぞれの出現において独立して、水素原子および-COOH基から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載のバインダー組成物。
【請求項5】
R
1が-COOH基であり、R
2が水素原子である、請求項4に記載のバインダー組成物。
【請求項6】
R
1およびR
2が、両方とも-COOH基である、請求項4に記載のバインダー組成物。
【請求項7】
前記ポリブタジエン系ポリマーが、ポリブタジエンである、請求項1から6のいずれか一項に記載のバインダー組成物。
【請求項8】
前記ポリブタジエン系ポリマーが、エポキシ化ポリブタジエンから選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載のバインダー組成物。
【請求項9】
前記エポキシ化ポリブタジエンが、式III、IVおよびV:
【化16】
の繰り返し単位ならびに2つのヒドロキシル末端基を含む、請求項8に記載のバインダー組成物。
【請求項10】
前記エポキシ化ポリブタジエンが、式VI:
【化17】
[式中、
mは、式VIのエポキシ化ポリブタジエンの質量平均分子量が、上限および下限を含めて、約1000g/mol~約1500g/molであるように選択される整数である]
のものであり;
エポキシド等価重量は、上限および下限を含めて、約100g/mol~約600g/molである、
請求項9に記載のバインダー組成物。
【請求項11】
前記式VIのエポキシ化ポリブタジエンの前記質量平均分子量が、約1300g/molである、請求項10に記載のバインダー組成物。
【請求項12】
前記エポキシド等価重量が、上限および下限を含めて、約210g/mol~約550g/molである、請求項10または11に記載のバインダー組成物。
【請求項13】
前記式VIのエポキシ化ポリブタジエンが、約1300g/molの質量平均分子量、ならびに上限および下限を含めて約400g/mol~約500g/molのエポキシド等価重量を有するPoly bd(商標)600E樹脂である、請求項10から12のいずれか一項に記載のバインダー組成物。
【請求項14】
前記式VIのエポキシ化ポリブタジエンが、約1300g/molの質量平均分子量、ならびに上限および下限を含めて約260g/mol~約330g/molのエポキシド等価重量を有するPoly bd(商標)605E樹脂である、請求項10から12のいずれか一項に記載のバインダー組成物。
【請求項15】
ポリブタジエン系ポリマー:ポリノルボルネン系ポリマーの重量比が、上限および下限を含めて、約6:1~約2:3の範囲内である、請求項1から14のいずれか一項に記載のバインダー組成物。
【請求項16】
前記重量比が、上限および下限を含めて、約5.5:1~約2:3、または約5:1~約2:3、または約4.5:1~約2:3、または約4:1~約2:3、または約6:1~約1:1、または約5.5:1~約1:1、または約5:1~約1:1、または約4.5:1~約1:1、または約4:1~約1:1の範囲内である、請求項15に記載のバインダー組成物。
【請求項17】
前記重量比が、上限および下限を含めて、約4:1~約1:1の範囲内である、請求項16に記載のバインダー組成物。
【請求項18】
少なくとも1種の溶媒をさらに含む、請求項1から17のいずれか一項に記載のバインダー組成物。
【請求項19】
前記溶媒が、非プロトン性溶媒である、請求項18に記載のバインダー組成物。
【請求項20】
前記非プロトン性溶媒が、ジクロロメタン(DCM)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、炭酸ジエチル(DEC)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジオキソラン、ジオキサン、トルエン、ベンゼン、メトキシベンゼン、ベンゼン誘導体、テトラヒドロフラン(THF)、およびそれらの少なくとも2種の混和性組合せからなる群から選択される、請求項19に記載のバインダー組成物。
【請求項21】
前記非プロトン性溶媒が、THF、THFおよびメトキシベンゼンを含む混合物、トルエンおよびTHFを含む混合物、トルエンおよびDECを含む混合物、トルエンおよびDMACを含む混合物、p-キシレンおよびTHFを含む混合物、m-キシレンおよびTHFを含む混合物、o-キシレンおよびTHFを含む混合物、p-キシレンおよびDECを含む混合物、m-キシレンおよびDECを含む混合物、o-キシレンおよびDECを含む混合物、またはトルエンおよびメトキシベンゼンを含む混合物である、請求項19または20に記載のバインダー組成物。
【請求項22】
前記非プロトン性極性溶媒が、THF、またはTHFおよびメトキシベンゼンを含む混合物である、請求項19から21のいずれか一項に記載のバインダー組成物。
【請求項23】
請求項1から22のいずれか一項に定義されるバインダー組成物を含むバインダー。
【請求項24】
前記バインダーが、電極材料において使用される、請求項23に記載のバインダー。
【請求項25】
電気化学的活性材料、および請求項1から22に定義されるバインダー組成物または請求項23に定義されるバインダーを含む、電極材料。
【請求項26】
前記電気化学的活性材料が、金属酸化物、金属硫化物、金属オキシ硫化物、金属リン酸塩、金属フルオロリン酸塩、金属オキシフルオロリン酸塩、金属硫酸塩、金属ハロゲン化物、金属フッ化物、硫黄、セレン、およびそれらの少なくとも2種の組合せから選択される、請求項25に記載の電極材料。
【請求項27】
前記電気化学的活性材料の金属が、チタン(Ti)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、およびそれらの少なくとも2種の組合せから選択される、請求項26に記載の電極材料。
【請求項28】
前記電気化学的活性材料が、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、およびマグネシウム(Mg)から選択されるアルカリ金属またはアルカリ土類金属をさらに含む、請求項26に記載の電極材料。
【請求項29】
前記電気化学的活性材料が、リチウム金属酸化物である、請求項26から28のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項30】
前記リチウム金属酸化物が、リチウム、ニッケル、マンガンおよびコバルトの混合酸化物(NMC)である、請求項29に記載の電極材料。
【請求項31】
前記電気化学的活性材料が、リチウム化金属リン酸塩である、請求項26から28のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項32】
前記リチウム化金属リン酸塩が、リチウム化鉄リン酸塩である、請求項31に記載の電極材料。
【請求項33】
前記電気化学的活性材料が、非アルカリ金属または非アルカリ土類金属、金属間化合物、金属酸化物、金属窒化物、金属リン化物、金属リン酸塩、金属ハロゲン化物、金属フッ化物、金属硫化物、金属オキシ硫化物、炭素、ケイ素(Si)、ケイ素-炭素複合体(Si-C)、酸化ケイ素(SiO
x)、酸化ケイ素-炭素複合体(SiO
x-C)、スズ(Sn)、スズ-炭素複合体(Sn-C)、酸化スズ(SnO
x)、酸化スズ-炭素複合体(SnO
x-C)、およびそれらの少なくとも2種の組合せから選択される、請求項25に記載の電極材料。
【請求項34】
前記電気化学的活性材料が、ドーピング元素をさらに含む、請求項25から33のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項35】
前記電気化学的活性材料が、粒子形態である、請求項25から34のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項36】
前記電気化学的活性材料の粒子が、被覆材料をさらに含む、請求項35に記載の電極材料。
【請求項37】
前記被覆材料が、Li
2SiO
3、Li
4Ti
5O
12、LiTaO
3、LiAlO
2、Li
2O-ZrO
2、LiNbO
3、他の類似の材料、およびそれらの少なくとも2種の組合せから選択される、請求項36に記載の電極材料。
【請求項38】
前記被覆材料が、LiNbO
3である、請求項37に記載の電極材料。
【請求項39】
前記被覆材料が、電子伝導性材料である、請求項36に記載の電極材料。
【請求項40】
前記電子伝導性材料が、炭素である、請求項39に記載の電極材料。
【請求項41】
電子伝導性材料をさらに含む、請求項25から40のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項42】
前記電子伝導性材料が、カーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイト、グラフェン、炭素繊維、炭素ナノ繊維、カーボンナノチューブ、およびそれらの少なくとも2種の組合せからなる群から選択される、請求項41に記載の電極材料。
【請求項43】
前記電子伝導性材料が、カーボンブラックである、請求項41または42に記載の電極材料。
【請求項44】
前記電子伝導性材料の表面が、式VII:
【化18】
[式中、
FGは、親水性官能基であり;nは、1~5の範囲内の整数であり、好ましくはnは1~3の範囲内であり、好ましくはnは1もしくは2であり、またはより好ましくはnは1である]
の少なくとも1個のアリール基でグラフト化されている、請求項41から43のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項45】
前記親水性官能基が、カルボン酸官能基またはスルホン酸官能基である、請求項44に記載の電極材料。
【請求項46】
前記式VIIのアリール基が、p-安息香酸またはp-ベンゼンスルホン酸である、請求項45に記載の電極材料。
【請求項47】
添加剤をさらに含む、請求項25から46のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項48】
前記添加剤が、イオン伝導性材料、無機粒子、ガラスまたはガラス-セラミック粒子、セラミック粒子、ナノセラミック、塩、およびそれらの少なくとも2種の組合せから選択される、請求項47に記載の電極材料。
【請求項49】
前記添加剤が、フッ化物、リン化物、硫化物、オキシ硫化物または酸化物系の、セラミック、ガラス、またはガラス-セラミック粒子を含む、請求項47または48に記載の電極材料。
【請求項50】
前記添加剤が、結晶形態および/または非晶質形態の、LISICON、チオ-LISICON、アルジロダイト、ガーネット、NASICON、ペロブスカイト型化合物、酸化物、硫化物、オキシ硫化物、リン化物、フッ化物、およびそれらの少なくとも2種の組合せから選択される、請求項47から49のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項51】
前記添加剤が、式:
- MLZO(例えば、M
7La
3Zr
2O
12、M
(7-a)La
3Zr
2Al
bO
12、M
(7-a)La
3Zr
2Ga
bO
12、M
(7-a)La
3Zr
(2-b)Ta
bO
12、およびM
(7-a)La
3Zr
(2-b)Nb
bO
12);
- MLTaO(例えば、M
7La
3Ta
2O
12、M
5La
3Ta
2O
12、およびM
6La
3Ta
1.5Y
0.5O
12);
- MLSnO(例えば、M
7La
3Sn
2O
12);
- MAGP(例えば、M
1+aAl
aGe
2-a(PO
4)
3);
- MATP(例えば、M
1+aAl
aTi
2-a(PO
4)
3);
- MLTiO(例えば、M
3aLa
(2/3-a)TiO
3);
- MZP(例えば、M
aZr
b(PO
4)
c);
- MCZP(例えば、M
aCa
bZr
c(PO
4)
d);
- MGPS(例えば、M
10GeP
2S
12などのM
aGe
bP
cS
d);
- MGPSO(例えば、M
aGe
bP
cS
dO
e);
- MSiPS(例えば、M
10SiP
2S
12などのM
aSi
bP
cS
d);
- MSiPSO(例えば、M
aSi
bP
cS
dO
e);
- MSnPS(例えば、M
10SnP
2S
12などのM
aSn
bP
cS
d);
- MSnPSO(例えば、M
aSn
bP
cS
dO
e);
- MPS(例えば、M
7P
3S
11などのM
aP
bS
c);
- MPSO(例えば、M
aP
bS
cO
d);
- MZPS(例えば、M
aZn
bP
cS
d);
- MZPSO(例えば、M
aZn
bP
cS
dO
e);
- xM
2S-yP
2S
5;
- xM
2S-yP
2S
5-zMX;
- xM
2S-yP
2S
5-zP
2O
5;
- xM
2S-yP
2S
5-zP
2O
5-wMX;
- xM
2S-yM
2O-zP
2S
5;
- xM
2S-yM
2O-zP
2S
5-wMX;
- xM
2S-yM
2O-zP
2S
5-wP
2O
5;
- xM
2S-yM
2O-zP
2S
5-wP
2O
5-vMX;
- xM
2S-ySiS
2;
- MPSX(例えば、M
7P
3S
11X、M
7P
2S
8XおよびM
6PS
5XなどのM
aP
bS
cX
d);
- MPSOX(例えば、M
aP
bS
cO
dX
e);
- MGPSX(例えば、M
aGe
bP
cS
dX
e);
- MGPSOX(例えば、M
aGe
bP
cS
dO
eX
f);
- MSiPSX(例えば、M
aSi
bP
cS
dX
e);
- MSiPSOX(例えば、M
aSi
bP
cS
dO
eX
f);
- MSnPSX(例えば、M
aSn
bP
cS
dX
e);
- MSnPSOX(例えば、M
aSn
bP
cS
dO
eX
f);
- MZPSX(例えば、M
aZn
bP
cS
dX
e);
- MZPSOX(例えば、M
aZn
bP
cS
dO
eX
f);
- M
3OX;
- M
2HOX;
- M
3PO
4;
- M
3PS
4;および
- M
aPO
bN
c[式中、a=2b+3c-5である];
[式中、
Mは、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、またはそれらの組合せであり、Mがアルカリ土類金属イオンを含む場合には、Mの数は、電気的中性を達成するように調整され;
Xは、F、Cl、Br、I、またはそれらの少なくとも2種の組合せから選択され;
a、b、c、d、eおよびfは、ゼロ以外の数であり、それぞれの式において独立して、電気的中性を達成するように選択され;
v、w、x、yおよびzは、ゼロ以外の数であり、それぞれの式において独立して、安定な化合物を得るように選択される]
の無機化合物から選択される、請求項47から50のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項52】
Mが、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、およびそれらの少なくとも2種の組合せから選択される、請求項51に記載の電極材料。
【請求項53】
MがLiである、請求項52に記載の電極材料。
【請求項54】
前記添加剤が、式Li
6PS
5X[式中、Xは、Cl、Br、I、またはそれらの少なくとも2種の組合せである]の無機アルジロダイト型化合物から選択される、請求項47から53のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項55】
前記添加剤が、Li
6PS
5Clである、請求項47から54のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項56】
集電体上に請求項25から55のいずれか一項に定義される電極材料を備える電極。
【請求項57】
請求項25から55のいずれか一項に定義される電極材料を含む自立電極。
【請求項58】
負極、正極および電解質を含む電気化学セルであって、前記正極または前記負極の少なくとも1つが請求項56もしくは57に定義される通りであるか、または請求項25から55のいずれか一項に定義される電極材料を含む、電気化学セル。
【請求項59】
前記電解質が、溶媒中に塩を含む液体電解質である、請求項58に記載の電気化学セル。
【請求項60】
前記電解質が、溶媒および必要に応じて溶媒和ポリマー中に塩を含むゲル電解質である、請求項58に記載の電気化学セル。
【請求項61】
前記電解質が、溶媒和ポリマー中に塩を含む固体ポリマー電解質である、請求項58に記載の電気化学セル。
【請求項62】
前記電解質が、ポリマー-セラミックハイブリッド固体電解質である、請求項58に記載の電気化学セル。
【請求項63】
前記電解質が、無機固体電解質材料を含む、請求項58に記載の電気化学セル。
【請求項64】
前記無機固体電解質材料が、フッ化物、リン化物、硫化物、オキシ硫化物または酸化物系の、セラミック、ガラス、またはガラス-セラミック粒子を含む、請求項63に記載の電気化学セル。
【請求項65】
前記無機固体電解質材料が、結晶形態および/または非晶質形態の、LISICON、チオ-LISICON、アルジロダイト、ガーネット、NASICON、ペロブスカイト型化合物、酸化物、硫化物、オキシ硫化物、リン化物、フッ化物、およびそれらの少なくとも2種の組合せから選択される、請求項63または64に記載の電気化学セル。
【請求項66】
前記無機固体電解質材料が、式:
- MLZO(例えば、M
7La
3Zr
2O
12、M
(7-a)La
3Zr
2Al
bO
12、M
(7-a)La
3Zr
2Ga
bO
12、M
(7-a)La
3Zr
(2-b)Ta
bO
12、およびM
(7-a)La
3Zr
(2-b)Nb
bO
12);
- MLTaO(例えば、M
7La
3Ta
2O
12、M
5La
3Ta
2O
12、およびM
6La
3Ta
1.5Y
0.5O
12);
- MLSnO(例えば、M
7La
3Sn
2O
12);
- MAGP(例えば、M
1+aAl
aGe
2-a(PO
4)
3);
- MATP(例えば、M
1+aAl
aTi
2-a(PO
4)
3);
- MLTiO(例えば、M
3aLa
(2/3-a)TiO
3);
- MZP(例えば、M
aZr
b(PO
4)
c);
- MCZP(例えば、M
aCa
bZr
c(PO
4)
d);
- MGPS(例えば、M
10GeP
2S
12などのM
aGe
bP
cS
d);
- MGPSO(例えば、M
aGe
bP
cS
dO
e);
- MSiPS(例えば、M
10SiP
2S
12などのM
aSi
bP
cS
d);
- MSiPSO(例えば、M
aSi
bP
cS
dO
e);
- MSnPS(例えば、M
10SnP
2S
12などのM
aSn
bP
cS
d);
- MSnPSO(例えば、M
aSn
bP
cS
dO
e);
- MPS(例えば、M
7P
3S
11などのM
aP
bS
c);
- MPSO(例えば、M
aP
bS
cO
d);
- MZPS(例えば、M
aZn
bP
cS
d);
- MZPSO(例えば、M
aZn
bP
cS
dO
e);
- xM
2S-yP
2S
5;
- xM
2S-yP
2S
5-zMX;
- xM
2S-yP
2S
5-zP
2O
5;
- xM
2S-yP
2S
5-zP
2O
5-wMX;
- xM
2S-yM
2O-zP
2S
5;
- xM
2S-yM
2O-zP
2S
5-wMX;
- xM
2S-yM
2O-zP
2S
5-wP
2O
5;
- xM
2S-yM
2O-zP
2S
5-wP
2O
5-vMX;
- xM
2S-ySiS
2;
- MPSX(例えば、M
7P
3S
11X、M
7P
2S
8XおよびM
6PS
5XなどのM
aP
bS
cX
d);
- MPSOX(例えば、M
aP
bS
cO
dX
e);
- MGPSX(例えば、M
aGe
bP
cS
dX
e);
- MGPSOX(例えば、M
aGe
bP
cS
dO
eX
f);
- MSiPSX(例えば、M
aSi
bP
cS
dX
e);
- MSiPSOX(例えば、M
aSi
bP
cS
dO
eX
f);
- MSnPSX(例えば、M
aSn
bP
cS
dX
e);
- MSnPSOX(例えば、M
aSn
bP
cS
dO
eX
f);
- MZPSX(例えば、M
aZn
bP
cS
dX
e);
- MZPSOX(例えば、M
aZn
bP
cS
dO
eX
f);
- M
3OX;
- M
2HOX;
- M
3PO
4;
- M
3PS
4;および
- M
aPO
bN
c[式中、a=2b+3c-5である];
[式中、
Mは、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、またはそれらの組合せであり、Mがアルカリ土類金属イオンを含む場合には、Mの数は、電気的中性を達成するように調整され;
Xは、F、Cl、Br、Iまたはそれらの少なくとも2種の組合せから選択され;
a、b、c、d、eおよびfは、ゼロ以外の数であり、それぞれの式において独立して、電気的中性を達成するように選択され;
v、w、x、yおよびzは、ゼロ以外の数であり、それぞれの式において独立して、安定な化合物を得るように選択される]
の無機化合物から選択される、請求項63から65のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項67】
Mが、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、およびそれらの少なくとも2種の組合せから選択される、請求項66に記載の電気化学セル。
【請求項68】
MがLiである、請求項67に記載の電気化学セル。
【請求項69】
前記無機固体電解質材料が、式Li
6PS
5X[式中、Xは、Cl、Br、I、またはそれらの少なくとも2種の組合せである]のアルジロダイト型無機化合物から選択される、請求項63から68のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項70】
前記無機固体電解質材料が、Li
6PS
5Clである、請求項63から69のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項71】
前記負極が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、少なくとも1種のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属、非アルカリ金属および非アルカリ土類金属を含む合金、合金または金属間化合物を含む電気化学的活性材料を含む、請求項58から70のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項72】
前記負極の前記電気化学的活性材料が、金属リチウムまたは金属リチウムを含む合金を含む、請求項71に記載の電気化学セル。
【請求項73】
前記負極の前記電気化学的活性材料が、上限および下限を含めて、約5μm~約500μmの範囲内の厚さを有するフィルムの形態である、請求項71または72に記載の電気化学セル。
【請求項74】
前記負極の電気化学的活性材料の前記フィルムの厚さが、上限および下限を含めて、約10μm~約100μmの範囲内である、請求項73に記載の電気化学セル。
【請求項75】
前記正極が、予めリチウム化されており、前記負極が、リチウムを実質的に含まない、請求項58から70のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項76】
前記負極が、前記電気化学セルのサイクリングの間にその場でリチウム化される、請求項75のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項77】
請求項58から76のいずれか一項に定義される電気化学セルを少なくとも1つ含む電気化学蓄電池。
【請求項78】
前記電気化学蓄電池が、リチウムバッテリー、リチウムイオンバッテリー、ナトリウムバッテリー、ナトリウムイオンバッテリー、マグネシウムバッテリー、およびマグネシウムイオンバッテリーから選択されるバッテリーである、請求項77に記載の電気化学蓄電池。
【請求項79】
前記バッテリーが、リチウムバッテリーまたはリチウムイオンバッテリーである、請求項78に記載の電気化学蓄電池。
【請求項80】
前記電気化学蓄電池が、全固体バッテリーである、請求項78に記載の電気化学蓄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、適用法の下において、2021年6月3日に出願されたカナダ仮特許出願第3,120,992号に基づく優先権を主張するものであり、その内容は、すべての目的のために、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本出願は、ポリマー、および電気化学的適用におけるそれらの使用の分野に関する。より具体的には、本出願は、ポリマーバインダー、それらを含む電極材料、それらの製造方法、および電気化学セルにおける、特に全固体バッテリーにおけるそれらの使用の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
ポリマーおよび/またはセラミックス系の固体電解質の開発は、液体電解質の使用に基づくそれらの対応物よりも、実質的に安全で、軽く、柔軟で、効率的である全固体電気化学システムを設計することを可能にしている。
【0004】
理想的な全固体電気化学システムは、負極、固体電解質、ならびに電気化学的活性材料、固体電解質、および必要に応じて電子伝導性材料から構成される複合正極からなる。これらのすべてが、モノリス単位を形成する。
【0005】
全固体電気化学システムの重要な要素の1つは、その成分のそれぞれの分散である。実際に、固体要素は、バインダーと混合するステップの間に凝集する傾向があり得、電極材料を不均一にし得る。この問題を解決するために用いられる戦略のうち、本発明者らは、それらの分散を改善するための、被覆材料によるシステムの異なる成分の粒子の封入を見出している。これらの分散の問題はまた、粒子分散を改善するバインダー、添加剤または分散媒の使用により著しく低減され得る。
【0006】
ノルボルネン系のポリマーは、WO2020/061710号(Daigleら)で公開されたPCT特許出願において添加剤として記載されており、これらは、ポリマーバインダーに添加されている。ポリノルボルネンは、例えば、炭素-フッ素(C-F)結合の分解から生じるフッ化リチウム(LiF)およびフッ化水素酸(HF)の形成のような寄生反応を抑制または低減するために添加される。
【0007】
KR10-2193945号で公開された韓国特許およびWO2019/004714号で公開されたPCT特許出願は、硫化物系固体電解質を含む固体電解質フィルムを製造するための方法、ならびに非晶質から結晶状態への結晶化によって、固体電解質粒子間、および固体電解質粒子と活性材料粒子との間の分散、密度、およびイオン伝導性を改善することを可能にする複合電極フィルムを記載している。これを行うために、ノルボルネン系コポリマー、特にポリ(エチレン-co-プロピレン-co-5-メチレン-2-ノルボルネン(PEPMNB)が使用されている。
しかしながら、改善された性質を有する全固体電気化学システムにおける使用のための新たな材料の開発についての必要性が依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2020/061710号
【特許文献2】韓国特許出願公開第10-2193945号明細書
【特許文献2】国際公開第2019/004714号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
概要
ある態様によれば、本技術は、ポリブタジエン系ポリマーと、式I:
【化1】
(式中、
R
1およびR
2は、それぞれの出現において独立して、水素原子、カルボキシル基(-COOH)、スルホン酸基(-SO
3H)、ヒドロキシル基(-OH)、フッ素原子、および塩素原子から選択される)
の化合物の重合に由来するノルボルネン系モノマー単位を含むポリノルボルネン系ポリマーとを含むブレンドを含む、バインダー組成物に関する。
【0010】
ある実施形態では、ポリノルボルネン系ポリマーは、式II:
【化2】
(式中、
R
1およびR
2は、本明細書に定義される通りであり;
nは、式IIのポリマーの質量平均分子量が、上限および下限を含めて、約10000g/mol~約100000g/molであるように選択される整数である)
のポリマーである。
【0011】
別の実施形態では、式IIのポリマーの質量平均分子量は、上限および下限を含めて、約12000g/mol~約85000g/mol、または約15000g/mol~約75000g/mol、または約20000g/mol~約65000g/mol、または約25000g/mol~約55000g/mol、または約25000g/mol~約50000g/molである。
【0012】
別の実施形態では、R1およびR2は、それぞれの出現において独立して、水素原子および-COOH基から選択される。ある例によれば、R1は-COOH基であり、R2は水素原子である。別の例によれば、R1およびR2は、両方とも-COOH基である。
【0013】
別の実施形態では、ポリブタジエン系ポリマーは、ポリブタジエンである。
【0014】
別の実施形態では、ポリブタジエン系ポリマーは、エポキシ化ポリブタジエンから選択される。ある例によれば、エポキシ化ポリブタジエンは、式III、IVおよびV:
【化3】
の繰り返し単位、ならびに2つのヒドロキシル末端基を含む。
【0015】
別の例によれば、エポキシ化ポリブタジエンは、式VI:
【化4】
(式中、
mは、式VIのエポキシ化ポリブタジエンの質量平均分子量が、上限および下限を含めて、約1000g/mol~約1500g/molであるように選択される整数である)
のものであり;
エポキシド等価重量は、上限および下限を含めて、約100g/mol~約600g/molである。
【0016】
別の例によれば、エポキシ化ポリブタジエンは、約1300g/molの質量平均分子量、ならびに上限および下限を含めて約400g/mol~約500g/molのエポキシド等価重量を有するPoly bd(商標)600E樹脂である。
【0017】
別の例によれば、エポキシ化ポリブタジエンは、約1300g/molの質量平均分子量、ならびに上限および下限を含めて約260g/mol~約330g/molのエポキシド等価重量を有するPoly bd(商標)605E樹脂である。
【0018】
別の実施形態では、ポリブタジエン系ポリマー:ポリノルボルネン系ポリマーの重量比は、上限および下限を含めて、約6:1~約2:3の範囲内である。例えば、重量比は、上限および下限を含めて、約5.5:1~約2:3、または約5:1~約2:3、または約4.5:1~約2:3、または約4:1~約2:3、または約6:1~約1:1、または約5.5:1~約1:1、または約5:1~約1:1、または約4.5:1~約1:1、または約4:1~約1:1の範囲内である。目的の変形によれば、重量比は、上限および下限を含めて、約4:1~約1:1の範囲内である。
【0019】
別の態様によれば、本技術は、本明細書に定義されるバインダー組成物を含むバインダーに関する。ある例によれば、バインダーは、電極材料において使用される。
【0020】
別の態様によれば、本技術は、電気化学的活性材料および本明細書に定義されるバインダーを含む電極材料に関する。
【0021】
ある実施形態では、電気化学的活性材料は、金属酸化物、金属硫化物、金属オキシ硫化物、金属リン酸塩、金属フルオロリン酸塩、金属オキシフルオロリン酸塩、金属硫酸塩、金属ハロゲン化物、金属フッ化物、硫黄、セレン、およびそれらの少なくとも2種の組合せから選択される。例えば、電気化学的活性材料の金属は、チタン(Ti)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、およびそれらの少なくとも2種の組合せから選択される。ある例によれば、電気化学的活性材料は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、およびマグネシウム(Mg)から選択されるアルカリ金属またはアルカリ土類金属をさらに含む。
【0022】
ある実施形態では、電気化学的活性材料は、非アルカリ金属または非アルカリ土類金属、金属間化合物、金属酸化物、金属窒化物、金属リン化物、金属リン酸塩、金属ハロゲン化物、金属フッ化物、金属硫化物、金属オキシ硫化物、炭素、ケイ素(Si)、ケイ素-炭素複合体(Si-C)、酸化ケイ素(SiOx)、酸化ケイ素-炭素複合体(SiOx-C)、スズ(Sn)、スズ-炭素複合体(Sn-C)、酸化スズ(SnOx)、酸化スズ-炭素複合体(SnOx-C)、およびそれらの少なくとも2種の組合せから選択される。
【0023】
別の実施形態では、電気化学的活性材料は、ドーピング元素をさらに含む。
【0024】
別の実施形態では、電気化学的活性材料は、粒子の形態である。例えば、電気化学的活性材料の粒子は、追加して、被覆材料を含む。ある例によれば、被覆材料は、Li2SiO3、Li4Ti5O12、LiTaO3、LiAlO2、Li2O-ZrO2、LiNbO3、他の類似の材料、およびそれらの少なくとも2種の組合せから選択される。別の例によれば、被覆材料は、電子伝導性材料である。
【0025】
別の実施形態では、電極材料は、電子伝導性材料をさらに含む。例えば、電子伝導性材料は、カーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイト、グラフェン、炭素繊維、炭素ナノ繊維、カーボンナノチューブ、およびそれらの少なくとも2種の組合せからなる群から選択される。目的のある例によれば、前記電子伝導性材料の表面は、式VII:
【化5】
(式中、
FGは、親水性官能基であり;nは、1~5の範囲内の整数であり、好ましくはnは1~3の範囲内であり、好ましくはnは1もしくは2であり、またはより好ましくはnは1である)
の少なくとも1個のアリール基でグラフト化されている。
【0026】
ある例によれば、親水性官能基は、カルボン酸官能基またはスルホン酸官能基である。別の例によれば、式VIIのアリール基は、p-安息香酸またはp-ベンゼンスルホン酸である。
【0027】
別の実施形態では、電極材料は、添加剤をさらに含む。例えば、添加剤は、イオン伝導性材料、無機粒子、ガラスまたはガラス-セラミック粒子、セラミック粒子、ナノセラミック、塩、およびそれらの少なくとも2種の組合せから選択される。ある例によれば、添加剤は、フッ化物、リン化物、硫化物、オキシ硫化物または酸化物系の、セラミック、ガラス、またはガラス-セラミック粒子を含む。別の例によれば、添加剤は、結晶形態および/または非晶質形態の、LISICON、チオ-LISICON、アルジロダイト、ガーネット、NASICON、ペロブスカイト型化合物、酸化物、硫化物、オキシ硫化物、リン化物、フッ化物、およびそれらの少なくとも2種の組合せから選択される。別の例によれば、添加剤は、式MLZO(例えば、M7La3Zr2O12、M(7-a)La3Zr2AlbO12、M(7-a)La3Zr2GabO12、M(7-a)La3Zr(2-b)TabO12、およびM(7-a)La3Zr(2-b)NbbO12);MLTaO(例えば、M7La3Ta2O12、M5La3Ta2O12、およびM6La3Ta1.5Y0.5O12);MLSnO(例えば、M7La3Sn2O12);MAGP(例えば、M1+aAlaGe2-a(PO4)3);MATP(例えば、M1+aAlaTi2-a(PO4)3);MLTiO(例えば、M3aLa(2/3-a)TiO3);MZP(例えば、MaZrb(PO4)c);MCZP(例えば、MaCabZrc(PO4)d);MGPS(例えば、M10GeP2S12などのMaGebPcSd);MGPSO(例えば、MaGebPcSdOe);MSiPS(例えば、M10SiP2S12などのMaSibPcSd);MSiPSO(例えば、MaSibPcSdOe);MSnPS(例えば、M10SnP2S12などのMaSnbPcSd);MSnPSO(例えば、MaSnbPcSdOe);MPS(例えば、M7P3S11などのMaPbSc);MPSO(例えば、MaPbScOd);MZPS(例えば、MaZnbPcSd);MZPSO(例えば、MaZnbPcSdOe);xM2S-yP2S5;xM2S-yP2S5-zMX;xM2S-yP2S5-zP2O5;xM2S-yP2S5-zP2O5-wMX;xM2S-yM2O-zP2S5;xM2S-yM2O-zP2S5-wMX;xM2S-yM2O-zP2S5-wP2O5;xM2S-yM2O-zP2S5-wP2O5-vMX;xM2S-ySiS2;MPSX(例えば、M7P3S11X、M7P2S8XおよびM6PS5XなどのMaPbScXd);MPSOX(例えば、MaPbScOdXe);MGPSX(例えば、MaGebPcSdXe);MGPSOX(例えば、MaGebPcSdOeXf);MSiPSX(例えば、MaSibPcSdXe);MSiPSOX(例えば、MaSibPcSdOeXf);MSnPSX(例えば、MaSnbPcSdXe);MSnPSOX(例えば、MaSnbPcSdOeXf);MZPSX(例えば、MaZnbPcSdXe);MZPSOX(例えば、MaZnbPcSdOeXf);M3OX;M2HOX;M3PO4;M3PS4;およびMaPObNc(式中、a=2b+3c-5である);
(式中、
Mは、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、またはそれらの組合せであり、Mがアルカリ土類金属イオンを含む場合には、Mの数は、電気的中性を達成するように調整され;
Xは、F、Cl、Br、I、またはそれらの少なくとも2種の組合せから選択され;
a、b、c、d、eおよびfは、ゼロ以外の数であり、それぞれの式において独立して、電気的中性を達成するように選択され;
v、w、x、yおよびzは、ゼロ以外の数であり、それぞれの式において独立して、安定な化合物を得るように選択される)
の無機化合物から選択される。
【0028】
目的の変形によれば、添加剤は、式Li6PS5X(式中、Xは、Cl、Br、I、またはそれらの少なくとも2種の組合せである)の無機アルジロダイト型化合物から選択される。例えば、添加剤は、Li6PS5Clである。
【0029】
別の態様によれば、本技術は、集電体上に本明細書に定義される電極材料を含む電極に関する。別の態様によれば、本技術は、本明細書に定義される電極材料を含む自立電極に関する。
【0030】
別の態様によれば、本技術は、負極、正極および電解質を含む電気化学セルであって、正極または負極の少なくとも1つが本明細書に定義される通りであるか、または本明細書に定義される電極材料を含む、電気化学セルに関する。
【0031】
別の実施形態では、電解質は、溶媒中に塩を含む液体電解質である。
【0032】
別の実施形態では、電解質は、溶媒および必要に応じて溶媒和ポリマー中に塩を含むゲル電解質である。
【0033】
別の実施形態では、電解質は、溶媒和ポリマー中に塩を含む固体ポリマー電解質である。
【0034】
別の実施形態では、電解質は、ポリマー-セラミックハイブリッド固体電解質である。
【0035】
別の実施形態では、電解質は、無機固体電解質材料を含む。ある例によれば、無機固体電解質材料は、フッ化物、リン化物、硫化物、オキシ硫化物または酸化物系の、セラミック、ガラス、またはガラス-セラミック粒子を含む。別の例によれば、無機固体電解質材料は、結晶形態および/または非晶質形態の、LISICON、チオ-LISICON、アルジロダイト、ガーネット、NASICON、ペロブスカイト型化合物、酸化物、硫化物、オキシ硫化物、リン化物、フッ化物、およびそれらの少なくとも2種の組合せから選択される。別の例によれば、無機固体電解質材料は、式MLZO(例えば、M7La3Zr2O12、M(7-a)La3Zr2AlbO12、M(7-a)La3Zr2GabO12、M(7-a)La3Zr(2-b)TabO12、およびM(7-a)La3Zr(2-b)NbbO12);MLTaO(例えば、M7La3Ta2O12、M5La3Ta2O12、およびM6La3Ta1.5Y0.5O12);MLSnO(例えば、M7La3Sn2O12);MAGP(例えば、M1+aAlaGe2-a(PO4)3);MATP(例えば、M1+aAlaTi2-a(PO4)3);MLTiO(例えば、M3aLa(2/3-a)TiO3);MZP(例えば、MaZrb(PO4)c);MCZP(例えば、MaCabZrc(PO4)d);MGPS(例えば、M10GeP2S12などのMaGebPcSd);MGPSO(例えば、MaGebPcSdOe);MSiPS(例えば、M10SiP2S12などのMaSibPcSd);MSiPSO(例えば、MaSibPcSdOe);MSnPS(例えば、M10SnP2S12などのMaSnbPcSd);MSnPSO(例えば、MaSnbPcSdOe);MPS(例えば、M7P3S11などのMaPbSc);MPSO(例えば、MaPbScOd);MZPS(例えば、MaZnbPcSd);MZPSO(例えば、MaZnbPcSdOe);xM2S-yP2S5;xM2S-yP2S5-zMX;xM2S-yP2S5-zP2O5;xM2S-yP2S5-zP2O5-wMX;xM2S-yM2O-zP2S5;xM2S-yM2O-zP2S5-wMX;xM2S-yM2O-zP2S5-wP2O5;xM2S-yM2O-zP2S5-wP2O5-vMX;xM2S-ySiS2;MPSX(例えば、M7P3S11X、M7P2S8XおよびM6PS5XなどのMaPbScXd);MPSOX(例えば、MaPbScOdXe);MGPSX(例えば、MaGebPcSdXe);MGPSOX(例えば、MaGebPcSdOeXf);MSiPSX(例えば、MaSibPcSdXe);MSiPSOX(例えば、MaSibPcSdOeXf);MSnPSX(例えば、MaSnbPcSdXe);MSnPSOX(例えば、MaSnbPcSdOeXf);MZPSX(例えば、MaZnbPcSdXe);MZPSOX(例えば、MaZnbPcSdOeXf);M3OX;M2HOX;M3PO4;M3PS4;およびMaPObNc(式中、a=2b+3c-5である);
(式中、
Mは、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、またはそれらの組合せであり、Mがアルカリ土類金属イオンを含む場合には、Mの数は、電気的中性を達成するように調整され;
Xは、F、Cl、Br、I、またはそれらの少なくとも2種の組合せから選択され;
a、b、c、d、eおよびfは、ゼロ以外の数であり、それぞれの式において独立して、電気的中性を達成するように選択され;
v、w、x、yおよびzは、ゼロ以外の数であり、それぞれの式において独立して、安定な化合物を得るように選択される)
の無機化合物から選択される。
【0036】
目的の変形によれば、無機固体電解質材料は、式Li6PS5X(式中、Xは、Cl、Br、I、またはそれらの少なくとも2種の組合せである)のアルジロダイト型無機化合物から選択される。例えば、無機固体電解質材料はLi6PS5Clである。
【0037】
別の態様によれば、本技術は、本明細書に定義される少なくとも1つの電気化学セルを含む電気化学蓄電池に関する。
【0038】
別の実施形態では、電気化学蓄電池は、リチウムバッテリー、リチウムイオンバッテリー、ナトリウムバッテリー、ナトリウムイオンバッテリー、マグネシウムバッテリー、およびマグネシウムイオンバッテリーから選択されるバッテリーである。
【0039】
別の実施形態では、電気化学蓄電池は、全固体バッテリーである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図1は、実施例4に記載される、(A)においてフィルム1のSEM画像、ならびに(B)において元素NiおよびSの分布の分析を可能にする対応するEDSマッピング画像を示す。スケールバーは、それぞれ、300μmおよび100μmを表す。
【0041】
【
図2】
図2は、実施例4に記載される、(A)においてフィルム2のSEM画像、ならびに(B)において元素NiおよびSの分布の分析を可能にする対応するEDSマッピング画像を示す。スケールバーは、100μmを表す。
【0042】
【
図3】
図3は、実施例4に記載される、(A)においてフィルム3のSEM画像、ならびに(B)において元素NiおよびSの分布の分析を可能にする対応するEDSマッピング画像を示す。スケールバーは、100μmを表す。
【0043】
【
図4】
図4は、実施例4に記載される、(A)においてフィルム4のSEM画像、ならびに(B)において元素NiおよびSの分布の分析を可能にする対応するEDSマッピング画像を示す。スケールバーは、100μmを表す。
【0044】
【
図5】
図5は、実施例4に記載される、(A)においてフィルム5のSEM画像、ならびに(B)において元素NiおよびSの分布の分析を可能にする対応するEDSマッピング画像を示す。スケールバーは、100μmを表す。
【0045】
【
図6】
図6は、実施例4に記載される、(A)においてフィルムの異なる層を観察することを可能にするフィルム7のSEM画像、および(B)において同じフィルムの上面SEM画像を示す。スケールバーは、100μmを表す。
【0046】
【
図7】
図7は、実施例4に記載される、(A)においてフィルムの異なる層を観察することを可能にするフィルム8のSEM画像、および(B)において同じフィルムの上面SEM画像を示す。スケールバーは、100μmを表す。
【0047】
【
図8】
図8は、実施例4に記載される、(A)においてフィルムの異なる層を観察することを可能にするフィルム9のSEM画像、および(B)において同じフィルムの上面SEM画像を示す。スケールバーは、100μmを表す。
【0048】
【
図9】
図9は、実施例5(b)に記載されるセル1(四角形)およびセル2(三角形)についてのサイクル数の関数としての放電容量(mAh/g)およびクーロン効率(%)のグラフを示す。
【0049】
【
図10】
図10は、実施例5(b)に記載されるセル1(四角形)およびセル2(三角形)についてのサイクル数の関数としての平均充電および放電電位(V)のグラフを示す。
【0050】
【
図11】
図11は、実施例5(b)に記載されるセル3(四角形)、セル4(丸)、およびセル5(三角形)についてのサイクル数の関数としての放電容量(mAh/g)およびクーロン効率(%)のグラフを示す。
【0051】
【
図12】
図12は、実施例5(b)に記載されるセル3(四角形)、セル4(丸)、およびセル5(三角形)についてのサイクル数の関数としての平均充電および放電電位(V)のグラフを示す。
【0052】
【
図13】
図13は、実施例5(b)に記載されるセル6(四角形)、セル7(三角形)、セル8(丸)、セル9(逆三角形)、およびセル10(星)についてのサイクル数の関数としての放電容量およびクーロン効率(%)のグラフを示す。
【0053】
【
図14】
図14は、実施例5(b)に記載されるセル6(四角形)、セル7(三角形)、セル8(丸)、セル9(逆三角形)、およびセル10(星)についてのサイクル数の関数としての平均充電および放電電位(V)のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
詳細な説明
本明細書で使用されるすべての技術および科学用語および表現は、本技術の分野における当業者によって一般に理解されるものと同じ定義を有する。しかしながら、使用される一部の用語および表現の定義を下記に提供する。
【0055】
「約」という用語が本明細書で使用される場合、これは、およそ、範囲内、またはおおよそを意味する。例えば、「約」という用語が数値に関連して使用される場合、これは、その名目上の値から10%の変動だけその数値を上下に改変する。この用語は、例えば、測定するデバイスの実験誤差または丸めも考慮し得る。
【0056】
値の範囲が本出願で言及される場合、その範囲の下限および上限は、他に指示されない限り、常に定義内に含まれる。値の範囲が本出願で言及される場合、すべての介在する範囲および下位範囲、ならびに値の範囲内に含まれる個々の値は、定義内に含まれる。
【0057】
冠詞「a(1つの)」が本出願における要素を導入するために使用される場合、これは、「唯一」の意味ではなく、むしろ「1つまたは複数」の意味を有する。当然ながら、特定のステップ、成分、要素または特性を含んで「いてもよい」または含む「ことができる」ことを本記載が述べる場合、その特定のステップ、成分、要素または特性は、それぞれの実施形態に含まれる必要はない。
【0058】
より明確にするために、「に由来するモノマー単位」という表現および同等の表現は、本明細書で使用される場合、重合可能なモノマーの重合から得られる繰り返しポリマー単位を指す。
【0059】
「アリール」という用語は、本明細書で使用される場合、置換または無置換芳香環を指し、寄与原子は、1個の環または複数の縮合した環の形成を可能にする。代表的なアリール基としては、6~14個の環員を有する基が挙げられる。例えば、アリールは、フェニル、ナフチルなどを含み得る。芳香環は、1個または複数の環の位置で、例えば、カルボキシル基(-COOH)またはスルホン酸基(-SO3H)、アミン基、および他の類似の基で置換されていてもよい。
【0060】
「親水性官能基」という表現は、本明細書で使用される場合、水分子に引き付けられる官能基を指す。親水性官能基は、一般に、帯電し得、および/または水素結合を形成することが可能であり得る。親水性官能基の非限定的な例としては、ヒドロキシル、カルボキシル、スルホン酸、リン酸、アミン、アミド、および他の類似の基が挙げられる。この表現は、適用可能な場合、これらの基の塩をさらに包含する。
【0061】
「自立電極」という表現は、本明細書で使用される場合、金属集電体なしの電極を指す。
【0062】
本明細書に記載される化学構造は、本分野の慣習に従って描かれる。また、描かれている炭素原子などの原子が、不完全な原子価を含むように見える場合、原子価は、水素原子が明白に描かれていないとしても、1つまたは複数の水素原子によって充足されていると見なされる。
【0063】
本技術は、ポリマーのブレンドを含む電極バインダー、より具体的には、全固体電気化学システムにおける使用のためのポリマーのブレンドを含む電極バインダーに関する。
【0064】
より詳細には、本技術は、ポリブタジエン系ポリマーと、式I:
【化6】
(式中、
R
1およびR
2は、それぞれの出現において独立して、水素原子、カルボキシル基(-COOH)、スルホン酸基(-SO
3H)、ヒドロキシル基(-OH)、フッ素原子、および塩素原子から選択される)
の化合物の重合に由来するノルボルネン系モノマー単位を含むポリノルボルネン系ポリマーとを含むブレンドを含む、電極バインダーに関する。
【0065】
ある例によれば、R1またはR2の少なくとも1つは、-COOH、-SO3H、-OH、-F、および-Clから選択され、これは、R1またはR2の少なくとも1つは、水素原子とは異なることを意味する。
【0066】
別の例によれば、R1は、-COOH基であり、R2は、水素原子である。
【0067】
別の例によれば、R
1またはR
2の少なくとも1つは、-COOH基であり、ノルボルネン系モノマー単位は、カルボン酸官能化ノルボルネン系モノマー単位である。目的の変形によれば、R
1は-COOH基であり、R
2は水素原子である。目的の別の変形によれば、R
1およびR
2は、両方とも-COOH基である。
本技術は、ポリブタジエン系ポリマーと、式II:
【化7】
(式中、
R
1およびR
2は、上記に定義された通りであり、nは、式IIのポリマーの質量平均分子量が、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定して、上限および下限を含めて約10000g/mol~約100000g/molであるように選択される整数である)
のポリノルボルネン系ポリマーとを含むブレンドを含む、電極バインダーにも関する。
【0068】
別の例によれば、式IIのポリノルボルネン系ポリマーの質量平均分子量は、GPCによって決定して、上限および下限を含めて、約12000g/mol~約85000g/mol、または約15000g/mol~約75000g/mol、または約20000g/mol~約65000g/mol、または約25000g/mol~約55000g/mol、または約25000g/mol~約50000g/molである。
【0069】
目的の変形によれば、R1およびR2は、-COOH基である。
【0070】
別の例によれば、ポリノルボルネン系ポリマーは、式II(a):
【化8】
(式中、
R
2およびnは、上記に定義された通りである)
のポリマーである。
別の例によれば、ポリノルボルネン系ポリマーは、式II(b):
【化9】
(式中、
nは、上記に定義された通りである)
のポリマーである。
【0071】
別の例によれば、式II、II(a)、またはII(b)のポリノルボルネン系ポリマーは、ホモポリマーである。
【0072】
別の例によれば、式Iのノルボルネン系モノマーの重合は、任意の公知の適合する重合法によって行われ得る。目的の変形によれば、式Iの化合物の重合は、Commarieu,B.ら(Commarieu, Basile, et al. "Ultrahigh Tg Epoxy Thermosets Based on Insertion Polynorbornenes", Macromolecules, 49.3 (2016): 920-925)に記載されている合成プロセスによって行われてもよい。例えば、式Iの化合物の重合はまた、付加重合プロセスによって行われてもよい。
【0073】
例えば、付加重合プロセスによって生成されたポリノルボルネン系ポリマーは、厳しい条件(例えば、酸性および塩基性条件)下で実質的に安定であり得る。ポリノルボルネン系ポリマーの付加重合は、安価なノルボルネン系モノマーを使用して行われ得る。この重合経路によって生成するポリノルボルネン系ポリマーにより得られるガラス転移温度(Tg)は、約300℃に等しいか、またはそれよりも高く、例えば、350℃程度の高さであってもよい。
【0074】
別の例によれば、ポリブタジエン系ポリマーは、式II、II(a)、またはII(b)のポリノルボルネン系ポリマーのものよりも実質的に高い弾性もしくは柔軟性、および/またはそれよりも実質的に低いガラス転移温度(Tg)によって特徴付けられ得る。
【0075】
別の例によれば、ポリブタジエン系ポリマーは、ポリブタジエンであってもよい。あるいは、ポリブタジエン系ポリマーは、官能化ポリブタジエンまたはポリブタジエン由来ポリマーであってもよい。例えば、非官能化ポリブタジエンと比較して、官能化ポリブタジエンまたはポリブタジエン由来ポリマーは、実質的により高い弾性もしくは柔軟性、および/または実質的により低いガラス転移温度(Tg)によって特徴付けられてもよく、ならびに/あるいは電極バインダーの機械的性質または接着性を改善してもよい。
【0076】
別の例によれば、ポリブタジエン系ポリマーは、エポキシ化ポリブタジエン、例えば、反応性末端基を有するエポキシ化ポリブタジエンから選択される。例えば、反応性末端基は、ヒドロキシル基であってもよい。エポキシ化ポリブタジエンは、式III、IVおよびV:
【化10】
の繰り返し単位、ならびに2つのヒドロキシル末端基を含んでいてもよい。
【0077】
別の例によれば、式III、IVおよびVの繰り返し単位を含むエポキシ化ポリブタジエンの質量平均分子量は、GPCによって決定して、上限および下限を含めて約1000g/mol~約1500g/molであってもよい。
【0078】
別の例によれば、式III、IVおよびVの繰り返し単位を含むエポキシ化ポリブタジエンのエポキシド等価重量は、GPCによって決定して、上限および下限を含めて約100g/mol~約600g/molである。エポキシド等価重量は、1molのエポキシド官能基を含有する樹脂の質量に対応する。
【0079】
目的の変形によれば、エポキシ化ポリブタジエンは、式VI:
【化11】
(式中、
mは、式VIのエポキシ化ポリブタジエンの質量平均分子量が、GPCによって決定して、上限および下限を含めて約1000g/mol~約1500g/molであるように選択される整数である)
のものであり、
エポキシド等価重量は、GPCによって決定して、上限および下限を含めて約100g/mol~約600g/molである。
【0080】
別の例によれば、式III、IVおよびVの繰り返し単位を含むエポキシ化ポリブタジエン、または式VIのエポキシ化ポリブタジエンの質量平均分子量は、GPCによって決定して、上限および下限を含めて、約1050g/mol~約1450g/mol、または約1100g/mol~約1400g/mol、または約1150g/mol~約1350g/mol、または約1200g/mol~約1350g/mol、または約1250g/mol~約1350g/molである。目的の変形によれば、式III、IVおよびVの繰り返し単位を含むエポキシ化ポリブタジエン、または式VIのエポキシ化ポリブタジエンの質量平均分子量は、GPCによって決定して約1300g/molである。
【0081】
別の例によれば、式III、IVおよびVの繰り返し単位を含むエポキシ化ポリブタジエン、または式VIのエポキシ化ポリブタジエンのエポキシド等価重量は、GPCによって決定して、上限および下限を含めて、約150g/mol~約550g/mol、または約200g/mol~約550g/mol、または約210g/mol~約550g/mol、または約260g/mol~約500g/molである。目的の変形によれば、式III、IVおよびVの繰り返し単位を含むエポキシ化ポリブタジエン、または式VIのエポキシ化ポリブタジエンのエポキシド等価重量は、GPCによって決定して、上限および下限を含めて、約400g/mol~約500g/mol、または約260g/mol~約330g/molである。
【0082】
例えば、式VIのエポキシ化ポリブタジエンは、Cray Valleyによって販売されているPoly bd(商標)600Eまたは605E型の市販のヒドロキシル末端エポキシ化ポリブタジエン樹脂である。これらの樹脂の物理化学的性質を表1に提示する。
【表1】
【0083】
電極バインダーが、少なくとも1種の第1のポリマーおよび少なくとも1種の第2のポリマーを含むポリマーブレンドを含むことが理解される。第1のポリマーは、ポリブタジエン系ポリマーであり、第2のポリマーは、式Iの化合物の重合に由来するノルボルネン系モノマー単位を含むポリノルボルネン系ポリマー、または式II、II(a)、もしくはII(b)のポリマーである。
【0084】
別の例によれば、「第1のポリマー:第2のポリマー」比は、上限および下限を含めて、約6:1~約2:3の範囲内である。例えば、「第1のポリマー:第2のポリマー」比は、上限および下限を含めて、約5.5:1~約2:3、または約5:1~約2:3、または約4.5:1~約2:3、または約4:1~約2:3、または約6:1~約1:1、または約5.5:1~約1:1、または約5:1~約1:1、または約4.5:1~約1:1、または約4:1~約1:1の範囲内である。目的の変形によれば、「第1のポリマー:第2のポリマー」比は、上限および下限を含めて、約4:1~約1:1の範囲内である。
【0085】
別の例によれば、前記電極バインダーのポリマーブレンドは、少なくとも1種の溶媒に可溶化されてもよい。例えば、溶媒は、ポリマーブレンドを可溶化し、それらと効率的に混合するその能力のために選択されてもよい。例えば、溶媒は、有機溶媒、例えば、極性非プロトン性溶媒であってもよい。例えば、溶媒は、ジクロロメタン(DCM)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、炭酸ジエチル(DEC)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジオキソラン、ジオキサン、トルエン、ベンゼン、メトキシベンゼン、ベンゼン誘導体、テトラヒドロフラン(THF)、およびそれらの少なくとも2種の混和性組合せからなる群から選択されてもよい。目的の変形によれば、溶媒は、THF、THFおよびメトキシベンゼンを含む混合物、トルエンおよびTHFを含む混合物、トルエンおよびDECを含む混合物、トルエンおよびDMACを含む混合物、p-キシレンおよびTHFを含む混合物、m-キシレンおよびTHFを含む混合物、o-キシレンおよびTHFを含む混合物、p-キシレンおよびDECを含む混合物、m-キシレンおよびDECを含む混合物、o-キシレンおよびDECを含む混合物、またはトルエンおよびメトキシベンゼンを含む混合物である。しかしながら、前記溶媒は、好ましくは、電気化学セルの他の要素と組み立てられる前に、バインダーが見出される電極から除去される。
【0086】
本技術は、電極材料における本明細書に定義される電極バインダーの使用にも関する。実際に、本明細書に定義される電気化学的活性材料および電極バインダーを含む電極材料を含む電極材料も企図される。
【0087】
ある例によれば、本明細書に定義される電極材料は、電子伝導性材料をさらに含む。電子伝導性材料の非限定的な例としては、炭素源、例えば、カーボンブラック(例えば、Ketjen(商標)カーボンおよびSuper P(商標)カーボン)、アセチレンブラック(例えば、ShawiniganカーボンおよびDenka(商標)カーボンブラック)、グラファイト、グラフェン、炭素繊維(例えば、気相成長炭素繊維(VGCF))、炭素ナノ繊維、カーボンナノチューブ(CNT)、およびそれらの少なくとも2種の組合せが挙げられる。
【0088】
別の例によれば、電子伝導性材料は、電極材料中に存在する場合、WO2019/218067号(Delaporteら)で公開されたPCT特許出願に記載されているものなどの改変電子伝導性材料であってもよい。例えば、改変電子伝導性材料は、式VII:
【化12】
(式中、
FGは、親水性官能基であり;
nは、1~5の範囲内の整数であり、好ましくはnは1~3の範囲内であり、好ましくはnは1もしくは2であり、またはより好ましくはnは1である)
の少なくとも1個のアリール基でグラフト化されていてもよい。
【0089】
親水性官能基の例としては、ヒドロキシル、カルボキシル、スルホン酸、リン酸、アミン、アミド、および他の類似の基が挙げられる。例えば、親水性官能基は、カルボキシル官能基またはスルホン酸官能基である。式VIIのアリール基の好ましい例としては、p-安息香酸およびp-ベンゼンスルホン酸が挙げられる。
【0090】
目的の変形によれば、電子伝導性材料は、少なくとも1個の式VIIのアリール基で必要に応じてグラフト化されたカーボンブラックである。目的の別の変形によれば、電子伝導性材料は、少なくとも1種の改変電子伝導性材料を含む混合物であってもよい。例えば、少なくとも1個の式VIIのアリール基でグラフト化されたカーボンブラックと、炭素繊維(例えば、気相成長炭素繊維(VGCF))、炭素ナノ繊維、カーボンナノチューブ(CNT)、またはそれらの少なくとも2種の組合せとの混合物である。
【0091】
別の例によれば、前記電極材料は、正極材料であり、電気化学的活性材料は、金属酸化物、金属硫化物、金属オキシ硫化物、金属リン酸塩、金属フルオロリン酸塩、金属オキシフルオロリン酸塩、金属硫酸塩、金属ハロゲン化物(例えば、金属フッ化物)、硫黄、セレン、およびそれらの少なくとも2種の組合せから選択される。別の例によれば、電気化学的活性材料の金属は、チタン(Ti)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、および適合する場合にはそれらの組合せから選択される。電気化学的活性材料は、必要に応じて、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、またはマグネシウム(Mg)をさらに含んでいてもよい。
【0092】
電気化学的活性材料の非限定的な例としては、リチウム金属リン酸塩、複合酸化物、例えば、LiM’PO4(式中、M’は、Fe、Ni、Mn、Co、またはそれらの組合せである)、LiV3O8、V2O5、LiMn2O4、LiM’’O2(式中、M’’は、Mn、Co、Ni、またはそれらの組合せである)、Li(NiM’’’)O2(式中、M’’’は、Mn、Co、Al、Fe、Cr、Ti、もしくはZr、またはそれらの組合せである)、および適合する場合にはそれらの組合せが挙げられる。
【0093】
目的のある例によれば、電気化学的活性材料は、上記に記載された酸化物またはリン酸塩である。
【0094】
例えば、電気化学的活性材料は、リチウムマンガン酸化物であり、ここで、マンガンは、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)のように、第2の遷移金属で部分的に置換されていてもよい。ある代替によれば、電気化学的活性材料は、リチウム化鉄リン酸塩である。別の代替によれば、電気化学的活性材料は、上記に記載されたものなどのマンガン含有リチウム化金属リン酸塩であり、例えば、マンガン含有リチウム化金属リン酸塩は、リチウム化鉄およびリン酸マンガン(LiMn1-xFexPO4;式中、xは、0.2~0.5である)である。
【0095】
別の例によれば、前記電極材料は、負極材料であり、電気化学的活性材料は、非アルカリ金属および非アルカリ土類金属(例えば、インジウム(In)、ゲルマニウム(Ge)、およびビスマス(Bi))、金属間化合物(例えば、SnSb、TiSnSb、Cu2Sb、AlSb、FeSb2、FeSn2、およびCoSn2)、金属酸化物、金属窒化物、金属リン化物、金属リン酸塩(例えば、LiTi2(PO4)3)、金属ハロゲン化物(例えば、金属フッ化物)、金属硫化物、金属オキシ硫化物、炭素(例えば、グラファイト、グラフェン、還元型酸化グラフェン、ハードカーボン、ソフトカーボン、膨張グラファイト、および非晶質カーボン)、ケイ素(Si)、ケイ素-炭素複合体(Si-C)、酸化ケイ素(SiOx)、酸化ケイ素-炭素複合体(SiOx-C)、スズ(Sn)、スズ-炭素複合体(Sn-C)、酸化スズ(SnOx)、酸化スズ-炭素複合体(SnOx-C)、および適合する場合にはそれらの組合せから選択される。例えば、金属酸化物は、式M’’’’bOcの化合物(式中、M’’’’は、Ti、Mo、Mn、Ni、Co、Cu、V、Fe、Zn、Nb、またはそれらの組合せであり;bおよびcは、比c:bが2~3の範囲内にあるような数である)(例えば、MoO3、MoO2、MoS2、V2O5、およびTiNb2O7)、スピネル酸化物(例えば、NiCo2O4、ZnCo2O4、MnCo2O4、CuCo2O4、およびCoFe2O4)、およびLiM’’’’’O(式中、M’’’’’は、Ti、Mo、Mn、Ni、Co、Cu、V、Fe、Zn、Nb、またはそれらの少なくとも2種の組合せである)(例えば、チタン酸リチウム(Li4Ti5O12など)またはリチウムモリブデン酸化物(Li2Mo4O13など))の化合物から選択されてもよい。
【0096】
別の例によれば、電気化学的活性材料は、必要に応じて、少量の他の包含元素でドープされて、例えば、その電気化学的性質が調節または最適化されてもよい。電気化学的活性材料は、他のイオンによる金属の部分的置換によってドープされてもよい。例えば、電気化学的活性材料は、遷移金属(例えば、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、またはY)、および/または遷移金属以外の金属(例えば、Mg、Al、またはSb)でドープされてもよい。
【0097】
別の例によれば、電気化学的活性材料は、新たに形成され得るか、または商用起源由来であり得る、粒子(例えば、マイクロ粒子および/またはナノ粒子)の形態であってもよい。例えば、電気化学的活性材料は、コア-シェル型構成の被覆材料の層で被覆された粒子の形態であってもよい。被覆材料は、電子伝導性材料、例えば、伝導性炭素被覆であってもよい。伝導性炭素層はまた、必要に応じて、少なくとも1個の式VIIのアリール基でグラフト化されていてもよい。あるいは、被覆材料は、電気化学的活性材料と電解質、例えば、固体電解質、特に硫化物系セラミック型固体電解質(例えば、Li6PS5Cl系)との間の界面で界面反応を実質的に低減することが可能であり得る。例えば、被覆材料は、Li2SiO3、Li4Ti5O12、LiTaO3、LiAlO2、Li2O-ZrO2、LiNbO3、適合する場合にはそれらの組合せ、および他の類似の材料から選択されてもよい。目的の変形によれば、被覆材料は、LiNbO3を含む。
【0098】
別の例によれば、本明細書に定義される電極材料は、添加剤をさらに含む。例えば、添加剤は、イオン伝導性材料、無機粒子、ガラスまたはガラス-セラミック粒子、ナノセラミックを含むセラミック粒子(例えば、Al2O3、TiO2、SiO2、および他の類似の化合物)、塩(例えば、リチウム塩)、およびそれらの少なくとも2種の組合せから選択される。例えば、添加剤は、結晶形態および/または非晶質形態の、LISICON、チオ-LISICON、アルジロダイト、ガーネット、NASICON、ペロブスカイト型化合物、酸化物、硫化物、ハロゲン化硫黄、リン酸塩、チオリン酸塩、およびそれらの少なくとも2種の組合せから選択されるイオン伝導体であってもよい。
【0099】
目的の変形によれば、添加剤は、電極材料中に存在する場合、結晶形態および/または非晶質形態の、セラミック、ガラス、またはガラス-セラミック粒子であってもよい。例えば、セラミック、ガラス、またはガラス-セラミック粒子は、フッ化物、リン化物、硫化物、オキシ硫化物、酸化物系、またはそれらの少なくとも2種の組合せであってもよい。セラミック、ガラス、またはガラス-セラミック粒子の非限定的な例としては、式MLZO(例えば、M7La3Zr2O12、M(7-a)La3Zr2AlbO12、M(7-a)La3Zr2GabO12、M(7-a)La3Zr(2-b)TabO12、およびM(7-a)La3Zr(2-b)NbbO12);MLTaO(例えば、M7La3Ta2O12、M5La3Ta2O12、およびM6La3Ta1.5Y0.5O12);MLSnO(例えば、M7La3Sn2O12);MAGP(例えば、M1+aAlaGe2-a(PO4)3);MATP(例えば、M1+aAlaTi2-a(PO4)3);MLTiO(例えば、M3aLa(2/3-a)TiO3);MZP(例えば、MaZrb(PO4)c);MCZP(例えば、MaCabZrc(PO4)d);MGPS(例えば、M10GeP2S12などのMaGebPcSd);MGPSO(例えば、MaGebPcSdOe);MSiPS(例えば、M10SiP2S12などのMaSibPcSd);MSiPSO(例えば、MaSibPcSdOe);MSnPS(例えば、M10SnP2S12などのMaSnbPcSd);MSnPSO(例えば、MaSnbPcSdOe);MPS(例えば、M7P3S11などのMaPbSc);MPSO(例えば、MaPbScOd);MZPS(例えば、MaZnbPcSd);MZPSO(例えば、MaZnbPcSdOe);xM2S-yP2S5;xM2S-yP2S5-zMX;xM2S-yP2S5-zP2O5;xM2S-yP2S5-zP2O5-wMX;xM2S-yM2O-zP2S5;xM2S-yM2O-zP2S5-wMX;xM2S-yM2O-zP2S5-wP2O5;xM2S-yM2O-zP2S5-wP2O5-vMX;xM2S-ySiS2;MPSX(例えば、M7P3S11X、M7P2S8X、およびM6PS5XなどのMaPbScXd;MPSOX(例えば、MaPbScOdXe);MGPSX(例えば、MaGebPcSdXe);MGPSOX(例えば、MaGebPcSdOeXf);MSiPSX(例えば、MaSibPcSdXe);MSiPSOX(例えば、MaSibPcSdOeXf);MSnPSX(例えば、MaSnbPcSdXe);MSnPSOX(例えば、MaSnbPcSdOeXf);MZPSX(例えば、MaZnbPcSdXe);MZPSOX(例えば、MaZnbPcSdOeXf);M3OX;M2HOX;M3PO4;M3PS4;およびMaPObNc(式中、a=2b+3c-5である);
(式中、
Mは、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、またはそれらの組合せであり、Mがアルカリ土類金属イオンを含む場合には、Mの数は、電気的中性を達成するように調整され;
Xは、F、Cl、Br、I、またはそれらの少なくとも2種の組合せから選択され;
a、b、c、d、eおよびfは、ゼロ以外の数であり、それぞれの式において独立して、電気的中性を達成するように選択され;
v、w、x、yおよびzは、ゼロ以外の数であり、それぞれの式において独立して、安定な化合物を得るように選択される)
の無機化合物が挙げられる。
【0100】
例えば、Mは、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、およびそれらの少なくとも2種の組合せから選択される。目的の変形によれば、Mは、Liを含み、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Baの少なくとも1種、およびそれらの少なくとも2種の組合せをさらに含んでいてもよい。目的の変形によれば、Mは、Na、K、Mg、またはそれらの少なくとも2種の組合せを含む。
【0101】
例えば、添加剤は、電極材料中に存在する場合、硫化物系セラミック粒子、例えば、式Li6PS5X(式中、Xは、Cl、Br、I、またはそれらの少なくとも2種の組合せである)のアルジロダイト型セラミック粒子であってもよい。目的の変形によれば、添加剤は、アルジロダイトLi6PS5Clである。
【0102】
例えば、本明細書に定義される電極材料の調製方法は、溶媒、例えば、有機溶媒の使用をさらに含む。例えば、溶媒は、約10,000cPの電極材料を被覆するための最適な粘度を提供してもよく、被覆後の乾燥するステップにおいて実質的に除去されてもよい。例えば、溶媒は、THFまたはメトキシベンゼン(またはアニソール)であってもよい。
【0103】
本技術は、本明細書に定義される電極材料を含む電極にも関する。ある例によれば、電極は、集電体(例えば、アルミニウム箔または銅箔)上にあってもよい。あるいは、電極は、自立電極であってもよい。
【0104】
本技術は、負極、正極、および電解質を含む電気化学セルであって、負極または正極の少なくとも1つが、本明細書に定義される通りである、電気化学セルにも関する。
【0105】
目的の変形によれば、負極は、本明細書に定義される通りである。例えば、電気化学的負極材料は、本明細書に定義される電気化学セルの異なる要素とのその電気化学的適合性のために選択されてもよい。例えば、負極材料の電気化学的活性材料は、正極の電気化学的活性材料のものよりも実質的に低い酸化還元電位を有していてもよい。
【0106】
目的の別の変形によれば、正極は、本明細書に定義される通りであり、負極は、すべての公知の適合性の電気化学的活性材料から選択される電気化学的活性材料を含む。例えば、負極の電気化学的活性材料は、本明細書に定義される電気化学セルの異なる要素とのその電気化学的適合性のために選択されてもよい。負極の電気化学的活性材料の非限定的な例としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、少なくとも1種のアルカリ金属またはアルカリ土類金属、非アルカリ金属および非アルカリ土類金属(例えば、インジウム(In)、ゲルマニウム(Ge)、およびビスマス(Bi))を含む合金、ならびに金属間合金または金属間化合物(例えば、SnSb、TiSnSb、Cu2Sb、AlSb、FeSb2、FeSn2、およびCoSn2)が挙げられる。例えば、負極の電気化学的活性材料は、上限および下限を含めて、約5μm~約500μmの範囲内、好ましくは約10μm~約100μmの範囲内の厚さを有するフィルムの形態であってもよい。目的の変形によれば、負極の電気化学的活性材料は、金属リチウムまたは金属リチウムを含む合金のフィルムを含んでいてもよい。
【0107】
別の例によれば、正極は、予めリチウム化されていてもよく、負極は、最初に(すなわち、電気化学セルのサイクリングの前に)、実質的にまたは完全にリチウムを含んでいなくてもよい。負極は、前記電気化学セルのサイクリングの間に、特に最初の充電の間に、その場でリチウム化されてもよい。ある例によれば、金属リチウムは、電気化学セルのサイクリングの間に、特に最初の充電の間に、その場で集電体(例えば、銅集電体)上に配置されてもよい。別の例によれば、金属リチウムを含む合金は、電気化学セルのサイクリングの間に、特に最初の充電の間に、集電体(例えば、アルミニウム集電体)の表面で発生してもよい。負極は、電気化学セルのサイクリングの間に、特に最初の充電の間に、その場で発生してもよいことが理解される。
【0108】
目的の別の変形によれば、正極および負極は両方とも、本明細書に定義される通りである。
【0109】
別の例によれば、電解質は、電気化学セルの異なる要素とのその適合性のために選択されてもよい。適合性のある任意の種類の電解質が企図される。ある例によれば、電解質は、溶媒中に塩を含む液体電解質である。ある代替によれば、電解質は、溶媒および必要に応じて溶媒和ポリマー中に塩を含むゲル電解質である。別の代替によれば、電解質は、溶媒和ポリマー中に塩を含む固体ポリマー電解質である。別の代替によれば、電解質は無機固体電解質材料を含み、例えば、電解質はセラミック型固体電解質であってもよい。別の代替によれば、電解質は、ポリマー-セラミックハイブリッド固体電解質である。
【0110】
別の例によれば、塩は、電解質中に存在する場合、イオン性塩、例えばリチウム塩であってもよい。リチウム塩の非限定的な例としては、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウム2-トリフルオロメチル-4,5-ジシアノイミダゾレート(LiTDI)、リチウム4,5-ジシアノ-1,2,3-トリアゾレート(LiDCTA)、リチウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド(LiBETI)、ジフルオロリン酸リチウム(LiDFP)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBOB)、硝酸リチウム(LiNO3)、塩化リチウム(LiCl)、臭化リチウム(LiBr)、フッ化リチウム(LiF)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiSO3CF3)(LiOTf)、フルオロアルキルリン酸リチウムLi[PF3(CF2CF3)3](LiFAP)、テトラキス(トリフルオロアセトキシ)ホウ酸リチウムLi[B(OCOCF3)4](LiTFAB)、ビス(1,2-ベンゼンジオラト(2-)-O,O’)ホウ酸リチウムLi[B(C6O2)2](LiBBB)、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBF2(C2O4))(LiFOB)、式LiBF2O4Rx(式中、Rx=C2~4アルキルである)の塩、およびそれらの少なくとも2種の組合せが挙げられる。
【0111】
別の例によれば、溶媒は、電解質中に存在する場合、非水性溶媒であってもよい。溶媒の非限定的な例としては、環状カーボネート、例えば、炭酸エチレン(EC)、炭酸プロピレン(PC)、炭酸ブチレン(BC)、および炭酸ビニレン(VC);非環状カーボネート、例えば、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸エチルメチル(EMC)、および炭酸ジプロピル(DPC);ラクトン、例えば、γ-ブチロラクトン(γ-BL)およびγ-バレロラクトン(γ-VL);非環状エーテル、例えば、1,2-ジメトキシエタン(DME)、1,2-ジエトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン(EME)、トリメトキシメタン、およびエチルモノグリム;環状エーテル、例えば、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、およびジオキソラン誘導体;ならびに他の溶媒、例えば、ジメチルスルホキシド、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、プロピルニトリル、ニトロメタン、リン酸トリエステル、スルホラン、メチルスルホラン、炭酸プロピレン誘導体、ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0112】
別の例によれば、電解質は、ゲル電解質またはゲルポリマー電解質である。ゲルポリマー電解質は、例えば、必要により、ポリマー前駆体および塩(例えば、上記に定義された塩)、溶媒(例えば、上記に定義された溶媒)、ならびに重合および/または架橋開始剤を含んでいてもよい。ゲル電解質の例としては、限定されないが、WO2009/111860号(Zaghibら)およびWO2004/068610号(Zaghibら)で公開されたPCT特許出願に記載されているものなどのゲル電解質が挙げられる。
【0113】
別の例によれば、上記に定義されたゲル電解質または液体電解質はまた、セパレーター、例えばポリマーセパレーターに含浸されていてもよい。セパレーターの例としては、限定されるものではないが、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、セルロース、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、およびポリプロピレン-ポリエチレン-ポリプロピレン(PP/PE/PP)セパレーターが挙げられる。例えば、セパレーターは、Celgard(商標)型の市販のポリマーセパレーターである。
【0114】
別の例によれば、電解質は、固体ポリマー電解質である。例えば、固体ポリマー電解質組成物は、任意の公知の固体ポリマー電解質組成物から選択されてもよく、電気化学セルの異なる成分とのその適合性のために選択されてもよい。固体ポリマー電解質組成物は、一般に、塩、および必要に応じて架橋される1種または複数種の固体極性ポリマーを含む。ポリエチレンオキシド(POE)系のものなどのポリエーテル型ポリマーが使用されてもよいが、いくつかの他の適合性ポリマーも、固体ポリマー電解質の調製のために公知であり、これも企図される。ポリマーは、架橋されていてもよい。そのようなポリマーの例としては、WO2003/063287号(Zaghibら)で公開されたPCT特許出願に記載されているものなどの分枝状ポリマー、例えば、星形ポリマーまたはくし形ポリマーが挙げられる。
【0115】
別の例によれば、固体ポリマー電解質組成物は、少なくとも1種のリチウムイオンを溶媒和するセグメント、および必要に応じて少なくとも1種の架橋可能セグメントから構成されるブロックコポリマーを含み得る。好ましくは、リチウムイオン溶媒和セグメントは、式VIII:
【化13】
(式中、
Rは、水素原子、およびC
1~C
10アルキル基または-(CH
2-O-R
aR
b)基から選択され;
R
aは、(CH
2-CH
2-O)
yであり;
R
bは、水素原子およびC
1~C
10アルキル基から選択され;
xは、10~200000の範囲から選択される整数であり;
yは、0~10の範囲から選択される整数である)
の繰り返し単位を有するホモポリマーまたはコポリマーから選択される。
【0116】
別の例によれば、コポリマーの架橋可能セグメントは、照射または熱処理によって複数次元で架橋可能である少なくとも1個の官能基を含むポリマーセグメントである。
【0117】
別の例によれば、電解質は、イオン電導性無機固体電解質材料を含み、セラミック、ガラス、またはガラス-セラミック粒子を含んでいてもよい。例えば、フッ化物、リン化物、硫化物、オキシ硫化物、酸化物系の、セラミック、ガラス、またはガラス-セラミック粒子、またはそれらの少なくとも2種の組合せ。目的の変形によれば、電解質は、上に記載されたセラミック、ガラス、またはガラス-セラミック粒子を含む。
【0118】
別の例によれば、電解質は、ポリマー-セラミックハイブリッド固体電解質であり、例えば、上記に定義された固体ポリマー電解質に予め分散された、本明細書に定義される無機材料の粒子を含んでいてもよい。あるいは、ポリマー-セラミックハイブリッド固体電解質は、上記に定義された固体ポリマー電解質の2層の間に上記に定義されたセラミック電解質の層を含む。
【0119】
別の例によれば、電解質はまた、必要に応じて、添加剤、例えば、上記で定義されたイオン伝導性材料、無機粒子、ガラスまたはセラミック粒子、および同じ種類の他の添加剤を含んでいてもよい。別の例によれば、添加剤は、WO2018/116529号(Asakawaら)で公開されたPCT特許出願に記載されているものなどのジカルボニル化合物であってもよい。例えば、添加剤は、ポリ(エチレン-alt-無水マレイン酸)(PEMA)であってもよい。添加剤は、すべての公知の電解質添加剤から選択されてもよく、電気化学セルの異なる要素とのその適合性のために選択することができる。ある例によれば、添加剤は、電解質中に実質的に分散されていてもよい。あるいは、添加剤は、別々の層中に存在してもよい。
【0120】
ある例によれば、本明細書に定義されるポリマーブレンドを含む電極バインダーは、正極材料の異なる成分、特に固体成分の分散を著しく改善することができる。例えば、本明細書に定義されるポリマーブレンドを含む電極バインダーは、電気化学的活性材料、電子伝導性材料、および/またはセラミック型固体電解質材料の分散を著しく促進することができる。例えば、前記バインダーのポリマーブレンドのポリノルボルネン系ポリマーのR1および/またはR2基は、これらの材料のうちの1種の分散を促進することができる基であってもよい。例えば、カルボキシル基(-COOH)は、これらの材料のうちの1種の分散を促進することができる基であり得る。理論に縛られることを望まないが、例えば、前記材料のポリマーブレンドに関連する反発相互作用は、分散液中の正極成分のより良好な分散を可能にし得、これは、この種類の相互作用を可能にする他の成分を改変するまたは改変しないことによってであり得る。例えば、反発相互作用は、π-πおよび/または極性型のものであってもよい。
【0121】
別の例によれば、正極材料の異なる成分は、前記バインダーのポリマー混合物との反発相互作用を実質的に増加させるために、およびこのようにしてそれらの分散を促進するために、改変することができる。例えば、正極の異なる成分は、それらを、反発相互作用、例えば、π-πおよび/または極性型相互作用を促進する被覆材料で被覆することによって改変することができる。ある例によれば、電気化学的活性材料、電子伝導性材料、およびセラミック型電解質材料の少なくとも1種を、反発相互作用を促進する被覆材料で被覆することができる。例えば、被覆材料は、10~50個の炭素原子を有し、少なくとも1個の炭素-炭素二重または三重結合を有する、少なくとも1種の分枝状または直鎖状の不飽和脂肪族炭化水素を含んでいてもよい。例えば、そのような被覆材料は、前記不飽和脂肪族炭化水素および追加成分を含む混合物であってもよい。追加成分は、アルカン(例えば、10~50個の炭素原子を有するアルカン)、またはアルカン(例えば、本明細書に定義される通り)および極性溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、またはそれらの少なくとも2種の混和性組合せ)を含む混合物であり得る。目的の変形によれば、追加成分は、デカン、またはデカンおよびテトラヒドロフランを含む混合物である。伝導性材料、例えば、炭素もまた、グラフト化基によって、例えば、WO2019/218067号で公開されたPCT特許出願に記載されているようにして、改変することができる。ある例によれば、正極材料の電気化学的性能は、これらの改変およびそれらの相互作用によって実質的に負の影響を受けない。イオンおよび電子伝導現象はさらに増強され得、電気化学二重層は、改善された安定性を提示し得る。
【0122】
本技術は、本明細書に定義される少なくとも1種の電気化学セルを含むバッテリーにも関する。例えば、バッテリーは、一次バッテリー(セル)または二次バッテリー(蓄電池)であり得る。ある例によれば、バッテリーは、リチウムバッテリー、リチウムイオンバッテリー、ナトリウムバッテリー、ナトリウムイオンバッテリー、マグネシウムバッテリー、マグネシウムイオンバッテリー、カリウムバッテリー、およびカリウムイオンバッテリーからなる群から選択される。目的の変形によれば、バッテリーは、全固体バッテリーである。
【実施例】
【0123】
以下の実施例は例示目的のものであり、企図される本発明の範囲をさらに限定するものとして解釈されるべきではない。これらの実施例は、添付の図面を参照することによって、より良好に理解される。
(実施例1)
式Li6PS5Clのアルジロダイト型セラミック粒子の調製
a)ヘプタンおよびジブチルエーテルの混合物(体積で50:50)によるLi6PS5Cl粒子の被覆
【0124】
Li6PS5Cl粒子の被覆を、湿式粒子製粉プロセスによって行った。
【0125】
Li6PS5Cl粒子の被覆を、PULVERISETTE(商標)7遊星マイクロミルを使用して、湿式製粉の間に行って、粒子径を低減した。被覆材料は、ヘプタンおよびジブチルエーテルの混合物(体積で50:50)を含んでいた。4gのLi6PS5Cl粒子を、80mLの酸化ジルコニウム(またはジルコニア)粉砕ジャーに入れた。13mLのヘプタンおよび13mLの無水ジブチルエーテル(体積で50:50)を含む混合物、ならびに2mmの直径を有する粉砕ビーズを、ジャーに添加した。Li6PS5Cl粒子、ならびにヘプタンおよびジブチルエーテルの混合物を、約300rpmの速度で約7.5時間粉砕することによって混ぜ合わせて、ヘプタンおよびジブチルエーテルの混合物で被覆されたLi6PS5Cl粒子を生成した。次いで、得られた粒子を、約80℃の温度で、真空下乾燥させた。
b)デカンおよびスクアレンの混合物(体積で75:25)によるLi6PS5Cl粒子の被覆
【0126】
Li6PS5Cl粒子の被覆を、湿式製粉およびメカノ合成プロセスによって行った。
【0127】
Li6PS5Cl粒子の被覆を、PULVERISETTE(商標)7遊星マイクロミルを使用して行った。4gのLi6PS5Cl粒子を、80mlの酸化ジルコニウム粉砕ジャーに入れた。20mlの無水デカンおよび7mlのスクアレンを含む混合物(体積で75:25)、ならびに2mmの直径を有する粉砕ビーズを、ジャーに添加した。Li6PS5Cl粒子ならびにデカンおよびスクアレンの混合物を、約300rpmの速度で約7.5時間粉砕することによって混ぜ合わせて、デカンおよびスクアレンの混合物で被覆されたLi6PS5Cl粒子を生成した。次いで、得られた粒子を、約80℃の温度で、真空下乾燥させた。
c)デカンおよびスクアレンの混合物(体積で90:10)によるLi6PS5Cl粒子の被覆
【0128】
Li6PS5Cl粒子の被覆を、湿式製粉およびメカノ合成プロセスによって行った。
【0129】
Li6PS5Cl粒子の被覆を、PULVERISETTE(商標)7遊星マイクロミルを使用して行った。4gのLi6PS5Cl粒子を、80mlの酸化ジルコニウム粉砕ジャーに入れた。デカンおよびスクアレンの混合物(体積で90:10)、ならびに2mmの直径を有する粉砕ビーズを、ジャーに添加した。Li6PS5Cl粒子ならびにデカンおよびスクアレンの混合物を、約300rpmの速度で約7.5時間粉砕することによって混ぜ合わせて、デカンおよびスクアレンの混合物で被覆されたLi6PS5Cl粒子を生成した。次いで、得られた粒子を、約80℃の温度で、真空下乾燥させた。
(実施例2)
改変電子伝導性材料の調製
a)少なくとも1個の式VIIのアリール基による電子伝導性材料の粒子のグラフト化
【0130】
電子伝導性材料の生成のための以下のプロセスを、カーボンブラックに適用した。
【0131】
5gのカーボンブラックを、200mlの0.5Mの硫酸(H2SO4)の水溶液に分散させ、次いで親水性置換基(-SO3H、これはその後水素をリチウムで交換するためにリチウム化された)でp置換された0.01当量のアニリンを混合物に添加した(すなわち、カーボンブラックに対して0.01当量のアニリン)。次いで、混合物を、アミンが完全に溶解するまで、激しく撹拌した。
【0132】
カーボンブラックに対して0.03当量の亜硝酸ナトリウム(NaNO2)(例えば、アニリンに対して3当量のNaNO2)の添加後、対応するアリールジアゾニウムイオンを、その場で発生させ、カーボンブラックと反応させた。このようにして得られた混合物を、室温で終夜、そのまま反応させた。
【0133】
反応が終了したら、混合物を、真空濾過アセンブリー(ブフナー型)および0.22μmの細孔サイズを有するナイロンフィルターを使用して、真空下で濾過した。次いで、このようにして得られた改変カーボンブラック粉末を、中性pHに達するまで脱イオン水で、次いでアセトンで、連続的に洗浄した。最後に、改変カーボンブラック粉末を、次いで、使用前に少なくとも1日間、100℃で、真空下乾燥させた。
b)デカンおよびスクアレンの混合物(体積で75:25)による電子伝導性粒子の被覆
【0134】
電子伝導性材料の粒子の被覆を、湿式粒子製粉およびメカノ合成プロセスによって行う。
【0135】
カーボンブラック粒子の被覆を、PULVERISETTE(商標)7遊星マイクロミルを使用して行う。4gのカーボンブラック粒子を、80mlの酸化ジルコニウム粉砕ジャーに入れる。無水デカンおよびスクアレンの混合物(体積で75:25)、ならびに2mmの直径を有する粉砕ビーズを、ジャーに添加する。カーボンブラック粒子ならびにデカンおよびスクアレンの混合物を、約300rpmの速度で約7.5時間粉砕することによって混ぜ合わせて、デカンおよびスクアレンの混合物で被覆されたカーボンブラック粒子を生成する。次いで、得られた粒子を、約80℃の温度で、真空下乾燥させる。
(実施例3)
正極フィルムの調製
【0136】
正極フィルムの組成を表2に提示する。
【表2】
*NBR:アクリロニトリル-ブタジエンゴム;SBS:スチレン-ブタジエン-スチレン;PB:ポリブタジエン;PNB:式II(b)のポリノルボルネン。
a)正極フィルム(フィルム1)の調製
【0137】
約4μmの平均直径を有する、市販起源由来のLiNbO3で被覆された1.55gのLiNi0.6Mn0.2Co0.2O2(NMC 622)粒子を、乾燥粉末の混合物を形成するために、約200nmの平均直径を有する、実施例1(a)において調製された0.40gの被覆されたLi6PS5Cl粒子および0.5gのカーボンブラックと混合した。乾燥粉末を、ボルテックスミキサーを使用して約10分間混合した。
【0138】
ポリマー溶液を、0.05gのアクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)を1.187gのp-キシレンに溶解することによって、別途調製した。ポリマー溶液を、乾燥粉末混合物に添加した。このようにして得られた混合物を、自転公転ミキサー(Thinky Mixer)を使用して、約5分間混合した。追加量の溶媒(p-キシレン)を、被覆のための最適な粘度、すなわち、約10000cPを達成するために、混合物に添加した。このようにして得られた懸濁液を、ドクターブレード被覆法を使用して、アルミニウム箔に被覆して、集電体上に塗布された正極フィルムを得た。次いで、正極フィルムを、約120℃の温度で約5時間真空下で乾燥させた。
b)正極フィルム(フィルム2)の調製
【0139】
約4μmの平均直径を有する、LiNbO3で被覆された1.55gのNMC 622粒子を、乾燥粉末の混合物を形成するために、約200nmの平均直径を有する、実施例1(a)において調製された0.40gの被覆されたLi6PS5Cl粒子および0.5gのカーボンブラックと混合した。乾燥粉末を、ボルテックスミキサーを使用して約10分間混合した。
【0140】
ポリマー溶液を、0.04gのポリブタジエンおよび0.01gのポリノルボルネンを0.94gのTHFに溶解することによって、別途調製した。ポリマー溶液を、乾燥粉末混合物に添加した。このようにして得られた混合物を、自転公転ミキサーを使用して、約5分間混合した。追加の溶媒のメトキシベンゼンを、被覆のための最適な粘度、すなわち、約10000cPを達成するために、混合物に添加した。このようにして得られた懸濁液を、ドクターブレード被覆法を使用して、アルミニウム箔に被覆して、集電体上に塗布された正極フィルムを得た。次いで、正極フィルムを、約120℃の温度で約5時間真空下で乾燥させた。
c)正極フィルム(フィルム3)の調製
【0141】
約4μmの平均直径を有する、1.55gのLiNbO3被覆NMC 622粒子を、乾燥粉末の混合物を形成するために、約200nmの平均直径を有する、実施例1(b)において調製された0.40gの被覆されたLi6PS5Cl粒子および0.5gの改変カーボンブラックと混合した。乾燥粉末を、ボルテックスミキサーを使用して約10分間混合した。
【0142】
ポリマー溶液を、0.05gのSBSを0.94gのメトキシベンゼンに溶解することによって、別途調製した。ポリマー溶液を、乾燥粉末混合物に添加した。このようにして得られた混合物を、自転公転ミキサーを使用して、約5分間混合した。追加量のメトキシベンゼンを混合物に添加して、被覆のための最適な粘度、すなわち、約10000cPを達成した。このようにして得られた懸濁液を、ドクターブレード被覆法を使用して、アルミニウム箔に被覆して、集電体上に塗布された正極フィルムを得た。次いで、正極フィルムを、約120℃の温度で約5時間真空下で乾燥させた。
d)正極フィルム(フィルム4)の調製
【0143】
約4μmの平均直径を有する、1.55gのLiNbO3被覆NMC 622粒子を、乾燥粉末の混合物を形成するために、約200nmの平均直径を有する、実施例1(b)において調製された0.40gの被覆されたLi6PS5Cl粒子および0.5gの改変カーボンブラックと混合した。乾燥粉末を、ボルテックスミキサーを使用して約10分間混合した。
【0144】
ポリマー溶液を、0.05gのポリブタジエンを0.94gのTHFに溶解することによって、別途調製した。ポリマー溶液を、乾燥粉末混合物に添加した。このようにして得られた混合物を、自転公転ミキサーを使用して、約5分間混合した。ある量のメトキシベンゼンを混合物に添加して、被覆のための最適な粘度、すなわち、約10000cPを達成した。このようにして得られた懸濁液を、ドクターブレード被覆法を使用して、アルミニウム箔に被覆して、集電体上に塗布された正極フィルムを得た。次いで、正極フィルムを約120℃の温度で約5時間、真空下で乾燥させた。
e)正極フィルム(フィルム5)の調製
【0145】
約4μmの平均直径を有する、1.55gのLiNbO3被覆NMC 622粒子を、乾燥粉末の混合物を形成するために、約200nmの平均直径を有する、実施例1(b)において調製された0.40gの被覆されたLi6PS5Cl粒子および0.5gの改変カーボンブラックと混合した。乾燥粉末を、ボルテックスミキサーを使用して約10分間混合した。
【0146】
ポリマー溶液を、0.04gのポリブタジエンおよび0.01gのポリノルボルネンを0.94gのTHFに溶解することによって、別途調製した。ポリマー溶液を、乾燥粉末混合物に添加した。このようにして得られた混合物を、自転公転ミキサーを使用して、約5分間混合した。追加量の溶媒のメトキシベンゼンを混合物に添加して、被覆のための最適な粘度、すなわち、約10000cPを達成した。このようにして得られた懸濁液を、ドクターブレード被覆法を使用して、アルミニウム箔に被覆して、集電体上に塗布された正極フィルムを得た。次いで、正極フィルムを、約120℃の温度で約5時間真空下で乾燥させた。
f)正極フィルム(フィルム6)の調製
【0147】
約4μmの平均直径を有する、1.55gのLiNbO3被覆NMC 622粒子を、乾燥粉末の混合物を形成するために、約200nmの平均直径を有する、実施例1(c)において調製された0.40gの被覆されたLi6PS5Cl粒子および0.5gの改変カーボンブラックと混合した。乾燥粉末を、ボルテックスミキサーを使用して約10分間混合した。
【0148】
ポリマー溶液を、0.05gのSBSを0.94gのメトキシベンゼンに溶解することによって、別途調製した。ポリマー溶液を、乾燥粉末混合物に添加した。このようにして得られた混合物を、自転公転ミキサーを使用して、約5分間混合した。追加量のメトキシベンゼンを混合物に添加して、被覆のための最適な粘度、すなわち、約10000cPを達成した。このようにして得られた懸濁液を、ドクターブレード被覆法を使用して、アルミニウム箔に被覆して、集電体上に塗布された正極フィルムを得た。次いで、正極フィルムを、約120℃の温度で約5時間真空下で乾燥させた。
g)正極フィルム(フィルム7)の調製
【0149】
約4μmの平均直径を有する、1.55gのLiNbO3被覆NMC 622粒子を、乾燥粉末の混合物を形成するために、約200nmの平均直径を有する、実施例1(c)において調製された0.40gの被覆されたLi6PS5Cl粒子および0.5gの改変カーボンブラックと混合した。乾燥粉末を、ボルテックスミキサーを使用して約10分間混合した。
【0150】
ポリマー溶液を、0.04gのポリブタジエンおよび0.01gのポリノルボルネンを0.94gのTHFに溶解することによって、別途調製した。ポリマー溶液を、乾燥粉末混合物に添加した。このようにして得られた混合物を、自転公転ミキサーを使用して、約5分間混合した。追加量の溶媒のメトキシベンゼンを混合物に添加して、被覆のための最適な粘度、すなわち、約10000cPを達成した。このようにして得られた懸濁液を、ドクターブレード被覆法を使用して、アルミニウム箔に被覆して、集電体上に塗布された正極フィルムを得た。次いで、正極フィルムを、約120℃の温度で約5時間真空下で乾燥させた。
h)正極フィルム(フィルム8)の調製
【0151】
約4μmの平均直径を有する、1.55gのLiNbO3被覆NMC 622粒子を、乾燥粉末の混合物を形成するために、約200nmの平均直径を有する、実施例1(c)において調製された0.40gの被覆されたLi6PS5Cl粒子および0.5gの改変カーボンブラックと混合した。乾燥粉末を、ボルテックスミキサーを使用して約10分間混合した。
【0152】
ポリマー溶液を、0.035gのポリブタジエンおよび0.015gのポリノルボルネンを0.94gのTHFに溶解することによって、別途調製した。ポリマー溶液を、乾燥粉末混合物に添加した。このようにして得られた混合物を、自転公転ミキサーを使用して、約5分間混合した。追加量の溶媒のメトキシベンゼンを混合物に添加して、被覆のための最適な粘度、すなわち、約10000cPを達成した。このようにして得られた懸濁液を、ドクターブレード被覆法を使用して、アルミニウム箔に被覆して、集電体上に塗布された正極フィルムを得た。次いで、正極フィルムを、約120℃の温度で約5時間真空下で乾燥させた。
i)正極フィルム(フィルム9)の調製
【0153】
約4μmの平均直径を有する、1.55gのLiNbO3被覆NMC 622粒子を、乾燥粉末の混合物を形成するために、約200nmの平均直径を有する、実施例1(c)において調製された0.40gの被覆されたLi6PS5Cl粒子および0.5gの改変カーボンブラックと混合した。乾燥粉末を、ボルテックスミキサーを使用して約10分間混合した。
【0154】
ポリマー溶液を、0.030gのポリブタジエンおよび0.020gのポリノルボルネンを0.94gのTHFに溶解することによって、別途調製した。ポリマー溶液を、乾燥粉末混合物に添加した。このようにして得られた混合物を、自転公転ミキサーを使用して、約5分間混合した。追加量の溶媒のメトキシベンゼンを混合物に添加して、被覆のための最適な粘度、すなわち、約10000cPを達成した。このようにして得られた懸濁液を、ドクターブレード被覆法を使用して、アルミニウム箔に被覆して、集電体上に塗布された正極フィルムを得た。次いで、正極フィルムを、約120℃の温度で約5時間真空下で乾燥させた。
j)正極フィルム(フィルム10)の調製
【0155】
約4μmの平均直径を有する、1.55gのLiNbO3被覆NMC 622粒子を、乾燥粉末の混合物を形成するために、約200nmの平均直径を有する、実施例1(c)において調製された0.40gの被覆されたLi6PS5Cl粒子および0.5gの改変カーボンブラックと混合した。乾燥粉末を、ボルテックスミキサーを使用して約10分間混合した。
【0156】
ポリマー溶液を、0.025gのポリブタジエンおよび0.025gのポリノルボルネンを0.94gのTHFに溶解することによって、別途調製した。ポリマー溶液を、乾燥粉末混合物に添加した。このようにして得られた混合物を、自転公転ミキサーを使用して、約5分間混合した。追加量の溶媒のメトキシベンゼンを混合物に添加して、被覆のための最適な粘度、すなわち、約10000cPを達成した。このようにして得られた懸濁液を、ドクターブレード被覆法を使用して、アルミニウム箔に被覆して、集電体上に塗布された正極フィルムを得た。次いで、正極フィルムを、約120℃の温度で約5時間真空下で乾燥させた。
(実施例4)
実施例3(a)~3(j)において調製された正極フィルムのキャラクタリゼーション
【0157】
異なる正極フィルムの形態学的研究を、エネルギー分散X線分光分析(EDS)検出器を備えた走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して行った。
【0158】
図1は、(A)において、実施例3(a)において調製された正極フィルム(フィルム1)のSEM画像、ならびに(B)において、元素NiおよびSの分布の分析を可能にする対応するEDSマッピング画像を示す。スケールバーは、それぞれ、300μmおよび100μmを表す。
【0159】
図1(A)において、この正極フィルムの乾燥するステップ後に、フィルム1の表面におけるウェーブの存在を観察することが可能である。
図1(B)により、正極(LiNbO
3-NMC 622)の電気化学的活性材料におけるニッケル(緑色)および固体電解質(被覆されたLi
6PS
5Cl)における硫黄(赤色)の存在が確認される。
図1は、フィルム1の表面における硫化物凝集体の存在も示す。これは、懸濁液におけるp-キシレンに溶解したNBRの溶液の使用が、固体電解質粒子を分散させないことを示す。
【0160】
図2は、(A)において、実施例3(b)において調製された正極フィルム(フィルム2)のSEM画像、ならびに(B)において、元素NiおよびSの分布の分析を可能にする対応するマッピング画像を示す。スケールバーは、100μmを表す。
【0161】
図2(A)において、この正極フィルムの乾燥するステップ後に、フィルム2の表面におけるウェーブの非存在を観察することが可能である。
図2(B)により、ニッケル(緑色)および硫黄(赤色)の存在が確認される。
図2は、フィルム2の表面における硫化物凝集体の非存在も強調する。これは、懸濁液におけるTHFに溶解したポリブタジエンおよびポリノルボルネン(-COOH基を有する)のブレンド(重量で80:20)を含む溶液の使用が、固体電解質粒子を適切に分散させることを示す。
【0162】
図3は、(A)において、実施例3(c)において調製された正極フィルム(フィルム3)のSEM画像、ならびに(B)において、元素NiおよびSの分布の分析を可能にする対応するEDSマッピング画像を示す。スケールバーは、100μmを表す。
【0163】
図3(A)において、この正極フィルムの乾燥するステップ後に、フィルム3の表面におけるわずかなウェーブの存在を観察することが可能である。
図3(B)により、ニッケル(緑色)および硫黄(赤色)の存在が確認される。
図3は、フィルム3の表面における硫化物凝集体の存在も強調する。これは、懸濁液におけるメトキシベンゼンに溶解したSBSの溶液の使用が、固体電解質粒子を適切に分散させないことを示す。
【0164】
図4は、(A)において、実施例3(d)において調製された正極フィルム(フィルム4)のSEM画像、ならびに(B)において、元素NiおよびSの分布の分析を可能にする対応するEDSマッピング画像を示す。スケールバーは、100μmを表す。
【0165】
図4(A)において、この正極フィルムの乾燥するステップ後に、フィルム4の表面におけるわずかなウェーブの存在を観察することが可能である。
図4(B)により、ニッケル(緑色)および硫黄(赤色)の存在が確認される。
図4は、フィルム4の表面における硫化物凝集体の存在も強調する。これは、懸濁液におけるTHFに溶解したポリブタジエンの溶液の使用が、電極材料において固体電解質の粒子を適切に分散させないことを示す。
【0166】
図5は、(A)において、実施例3(e)において調製された正極フィルム(フィルム5)のSEM画像、ならびに(B)において、元素NiおよびSの分布の分析を可能にする対応するEDSマッピング画像を示す。スケールバーは、100μmを表す。
【0167】
図5(A)において、この正極フィルムの乾燥するステップ後に、フィルム5の表面におけるウェーブの非存在を観察することが可能である。
図5(B)により、ニッケル(緑色)および硫黄(赤色)の存在が確認される。
図5は、フィルム5の表面における硫化物凝集体の非存在も強調する。これは、懸濁液におけるTHFに溶解したポリブタジエンおよびポリノルボルネン(-COOH基を有する)のブレンド(重量で80:20)を含む溶液の使用が、固体電解質粒子を適切に分散させることを示す。理論に縛られることを望まないが、これは、-COOH基で改変されたポリノルボルネンの使用の効果に関連し得る。分散液は、この種類の基によって、およびポリノルボルネン構造それ自身に連結された炭素架橋によって、実質的に好ましいように見える。二重または三重結合を有する分子による硫化物粒子の被覆は、π-π相互作用および/または極性反発を介して分散を実質的に改善するように見える。
【0168】
図6~8は、(A)において、実施例3(g)~3(i)においてそれぞれ調製された正極フィルム(フィルム7~9)のSEM画像、および(B)において、同じフィルムの上面SEM画像を示す。スケールバーは、100μmを表す。
【0169】
図6~8は、これらの正極フィルムにおける成分の良好な分散を示す。これは、THFに溶解したポリブタジエンおよびポリノルボルネン(-COOH基を有する)のブレンドを含む溶液の使用が、π-π相互作用および極性反発により、被覆されたLi
6PS
5Cl粒子および電子伝導性材料を適切に分散させることを示す。
(実施例5)
電気化学的性質
【0170】
実施例3(a)~3(j)において調製された正極フィルムの電気化学的性質を研究した。
a)電気化学セルの構成
【0171】
電気化学セルを、以下の手順に従って組み立てた。
【0172】
直径10mmのペレットを、実施例3(a)~3(j)において調製された正極フィルムから取った。Li
6PS
5Cl硫化物系のセラミック型無機固体電解質を、正極フィルムの表面に80mgのセラミックを置くことによって調製した。次いで、無機固体電解質層を備えた正極フィルムペレットを、プレスを使用して、2.8トンの圧力下で圧縮した。次いで、それらを、グローブボックス内で、銅の集電体上の直径10mmの金属リチウム電極に面するCR2032型ボタン電池ケースにおいて組み立てた。電気化学セルを、表3に提示される構成に従って組み立てた。
【表3】
b)正極フィルムの挙動
【0173】
この実施例は、実施例5(a)に記載された電気化学セルの電気化学的挙動を示す。
【0174】
実施例5(a)において組み立てられた電気化学セルを、Li/Li+に対して4.3V~2.5Vでサイクルした。セル1~5を、50℃の温度でサイクルし、セル6~10を、30℃の温度でサイクルした。形成サイクルを、C/15の一定の充電および放電電流で行った。次いで、4サイクルを、C/10の一定の充電および放電電流で、それに続いて4サイクルを、C/5の一定の充電および放電電流で行った。最後に、長期サイクリング実験を、C/3の一定の充電および放電電流で行った。
【0175】
図9は、セル1(四角形)およびセル2(三角形)についてのサイクル数の関数としての放電容量(mAh/g)およびクーロン効率(%)のグラフを示す。セル1およびセル2について容量維持率の実質的な相違が存在しないことを観察することが可能である。実際に、曲線は、セル1およびセル2の50℃でのサイクリングについて実質的に重ね合わされる。
【0176】
図10は、セル1(四角形)およびセル2(三角形)についてのサイクル数の関数としての平均充電および放電電位(V)のグラフを示す。バインダーとしてのポリブタジエンおよびポリノルボルネン(-COOH基を有する)のブレンド(重量で80:20)を含むセル2が、50℃の温度での長期サイクリング実験、ならびにC/3の一定の充電および放電電流の間に、より低い分極を得ることを可能にすることを観察することが可能である。ポリブタジエンおよびポリノルボルネン(-COOH基を有する)のブレンド(重量で80:20)による良好な放電安定性を観察することも可能である。このように、このポリマーブレンドは、電極の成分の良好な分散、ならびにしたがって、電荷移動に実質的に影響を及ぼすことなく、前記成分の良好なイオンおよび電子透過を確保する。
【0177】
図11は、セル3(四角形)、セル4(丸)、およびセル5(三角形)についてのサイクル数の関数としての放電容量およびクーロン効率のグラフを示す。ポリブタジエンを、バインダーとしてスチレンまたはポリノルボルネンと組み合わせて使用する場合に、50℃の温度およびC/3での容量維持率が改善されることを観察することができる。実際に、スチレンおよびブタジエンのコポリマー(スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS))、ならびにポリブタジエンおよびポリノルボルネンのブレンドをそれぞれ含むセル3およびセル5は、ポリブタジエンを含むセル4と比較して、容量維持率の改善を提示する。
【0178】
図12は、セル3(四角形)、セル4(丸)、およびセル5(三角形)についてのサイクル数の関数としての平均充電および放電電位のグラフを示す(
図11と結び付けて)。セル3およびセル5が、セル4と比較して、長期サイクリング実験の間に改善された分極を得ることを可能にすることを観察することが可能である。これには、スチレンまたはポリノルボルネンによって提供される接着効果が寄与し得、したがって、ポリノルボルネンの使用に関連する正のおよび分散効果が確認される。より弾性のポリマーとのその相補性は、このようにして、システムの空気透過性を可能にしながら、サイクリングの間の接着を確保する。
【0179】
図13は、セル6(四角形)、セル7(三角形)、セル8(丸)、セル9(逆三角形)、およびセル10(星)について、サイクル数の関数としての放電容量およびクーロン効率のグラフ、ならびに(B)において、サイクル数の関数としての平均充電および放電電位のグラフを示す。
【0180】
図14は、セル6(四角形)、セル7(三角形)、セル8(丸)、セル9(逆三角形)、およびセル10(星)について
図13に関連する、サイクル数の関数としての平均充電および放電電位のグラフを示す。
【0181】
C/3および30℃でのサイクリングにおける容量の維持率は、接着効果を提供することができるポリマー(スチレンまたはポリノルボルネン)が存在するという点で、配合の変化によってわずかに影響を受ける。
【0182】
より低い分極は、特に充電において、バインダーとしてポリブタジエンおよびポリノルボルネンのブレンド(重量で60:40)を含む正極フィルム(フィルム9)について観察することができる。これは、極性基で改変された炭素の反発およびπ-π相互作用、ならびに二重または三重結合を有する有機種による硫化物粒子の被覆と組み合わせた、ポリノルボルネンが持つ-COOH基および炭素架橋を介したポリノルボルネンの分散効果に起因し得る。ポリノルボルネン対ポリブタジエン比の増加によって提供される接着性は、ポリブタジエンがサイクリングの間に活性材料の体積変動を吸収しながら、粒子およびこれらの粒子間の接触を維持しながら、サイクリングの間の安定性を確保する。
【0183】
企図される本発明の範囲から逸脱することなく、いくつかの改変を上に記載した実施形態のいずれかに対して行うことができる。本出願で参照される参考文献、特許または科学文献は、すべての目的で、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】