(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】埋込型強磁性マーカーにおけるまたはそれに関する改良
(51)【国際特許分類】
A61B 90/10 20160101AFI20240517BHJP
A61B 5/055 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
A61B90/10
A61B5/055 390
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574162
(86)(22)【出願日】2022-11-03
(85)【翻訳文提出日】2023-11-30
(86)【国際出願番号】 GB2022052780
(87)【国際公開番号】W WO2023079293
(87)【国際公開日】2023-05-11
(32)【優先日】2021-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517421390
【氏名又は名称】エンドマグネティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】ウデイル,ロビンソン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィラル,ガブリエル
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AA18
4C096AB18
4C096AD19
4C096FC20
(57)【要約】
外科用ガイドに使用される埋込型サセプトメトリーマーカー(1001)は、1つまたは複数の強磁性要素(1004a、1004b、1004c)、および少なくとも1つの反磁性要素(1003)を含み、前記1つまたは複数の強磁性要素は、少なくとも約10,000の比初透磁率および約1.5T未満の飽和誘導Bsを有する少なくとも1つの強磁性材料から形成され、前記少なくとも1つの反磁性要素は、少なくとも約-0.16×10-4の体積磁化率を有する少なくとも1つの反磁性材料から形成され、マーカー内の前記反磁性材料の総体積は、前記強磁性材料の総体積よりも約100~10,000倍大きい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素を含む、外科用ガイドにおいて使用するための埋込型サセプトメトリーマーカーであって、
前記1つまたは複数の強磁性要素は、少なくとも約10,000の比初透磁率および約1.5T未満の飽和誘導Bsを有する少なくとも1つの強磁性材料から形成され、
前記少なくとも1つの反磁性要素は、少なくとも約-0.16×10
-4の体積磁化率を有する少なくとも1つの反磁性材料から形成され、
前記マーカー内の前記反磁性材料の総体積は、前記強磁性材料の総体積よりも約100~10,000倍大きい
ことを特徴とする、埋込型サセプトメトリーマーカー。
【請求項2】
前記反磁性材料は、約-0.16×10
-4~約-3×10
-4の範囲の体積磁化率を有することを特徴とする、請求項1に記載の埋込型サセプトメトリーマーカー。
【請求項3】
前記マーカー内の強磁性材料の総体積は、約1×10
-12m
3~1×10
-10m
3であることを特徴とする、請求項1または2に記載の埋込型サセプトメトリーマーカー。
【請求項4】
前記マーカー内の反磁性材料の総体積は、約1×10
-9m
3~約1.5×10
-7m
3であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の埋込型サセプトメトリーマーカー。
【請求項5】
前記1つまたは複数の強磁性要素および前記少なくとも1つの反磁性要素は、同位置に配置されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の埋込型サセプトメトリーマーカー。
【請求項6】
前記1つまたは複数の強磁性要素は、1つまたは複数のワイヤまたはストリップを備えることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の埋込型サセプトメトリーマーカー。
【請求項7】
前記1つまたは複数のワイヤまたはストリップは、少なくとも約50の全長対直径(またはワイヤまたはストリップの断面積の幅または平方根)比を有することを特徴とする、請求項6に記載の埋込型サセプトメトリーマーカー。
【請求項8】
前記強磁性材料および反磁性材料は、それぞれの体積で存在し、MRI磁場において、前記1つまたは複数の強磁性要素および前記少なくとも1つの反磁性要素が対向する磁気モーメントを生成し、その小さい方の振幅は、より強い方の振幅の少なくとも約25%であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の埋込型サセプトメトリーマーカー。
【請求項9】
前記強磁性材料および反磁性材料は、それぞれの体積で存在し、前記1つまたは複数の強磁性要素および前記少なくとも1つの反磁性要素のそれぞれのうちの少なくとも1つにより生成される磁気モーメントの振幅が、少なくとも2つの異なるMRI磁場の下で、前記少なくとも1つの反磁性要素および前記1つまたは複数の強磁性要素のそれぞれのうちの他方により生成される磁気モーメントの振幅の約75%以内であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の埋込型サセプトメトリーマーカー。
【請求項10】
前記少なくとも1つの強磁性材料は、コバルト系アモルファス金属、マンガン-亜鉛セラミックフェライト、ニッケル-鉄系軟質強磁性合金およびニッケル-亜鉛セラミックフェライトから選択されることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の埋込型サセプトメトリーマーカー。
【請求項11】
前記少なくとも1つの反磁性要素の反磁性材料は、熱分解グラファイト、グラファイト、特に実質的に等方性の粒子構造を有するグラファイト、およびビスマスから選択されることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の埋込型サセプトメトリーマーカー。
【請求項12】
前記1つまたは複数の強磁性要素は、前記少なくとも1つの反磁性要素の長さの少なくとも80%に沿って個々にまたは集合的に延在することを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の埋込型サセプトメトリーマーカー。
【請求項13】
前記少なくとも1つの反磁性要素の長さは、前記1つまたは複数の強磁性要素の全長とほぼ同じであることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の埋込型サセプトメトリーマーカー。
【請求項14】
前記少なくとも1つの反磁性要素の直径は、前記1つまたは複数の強磁性要素の全体直径とほぼ同じであることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の埋込型サセプトメトリーマーカー。
【請求項15】
前記1つまたは複数の強磁性要素のうちの少なくとも1つは、螺旋ワイヤコイルを備えることを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載の埋込型サセプトメトリーマーカー。
【請求項16】
前記マーカーは、多重螺旋として構成される複数の強磁性要素を含むことを特徴とする、請求項15に記載の埋込型磁気マーカー。
【請求項17】
前記少なくとも1つの反磁性要素は、円筒の形態を有することを特徴とする、請求項1~16のいずれか一項に記載の埋込型サセプトメトリーマーカー。
【請求項18】
前記1つまたは複数の強磁性要素は、螺旋または複数の螺旋の形態で円筒の外面の周りに巻き付けられる1つまたは複数のワイヤまたはストリップを備えることを特徴とする、請求項17に記載の埋込型サセプトメトリーマーカー。
【請求項19】
外科手術で使用するための埋込型サセプトメトリー磁気マーカーを製造する方法であって、
少なくとも10,000の比初透磁率および約1.5T未満の飽和誘導Bsを有する少なくとも1つの強磁性材料から1つまたは複数の強磁性要素を形成する工程、
少なくとも1つの反磁性材料から少なくとも1つの反磁性要素を形成する工程であって、前記少なくとも1つの反磁性材料が少なくとも約-0.16×10
-4の体積磁化率を有し、前記反磁性材料の総体積が前記強磁性材料の総体積よりも約100~10,000倍大きい、工程;および
その後、前記1つまたは複数の強磁性要素および前記少なくとも1つの反磁性要素を組み立てる工程であって、前記少なくとも1つの反磁性要素は、前記1つまたは複数の強磁性要素と同位置に配置され、MRI磁場において、前記1つまたは複数の強磁性要素によって生成されるアーチファクトのサイズおよび形状に実質的に一致するサイズおよび形状を有するアーチファクトを生成するように構成される、工程
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項20】
埋込型マーカーの位置を特定するためのサセプトメトリー測定検出システムであって、
請求項1~18のいずれか一項に記載の埋込型サセプトメトリーマーカー;
交番磁場で前記埋込型マーカーを励起するように配置された少なくとも1つの駆動コイルおよび前記励起されたマーカーから受信された信号を検出するように配置された少なくとも1つの感知コイル;
前記少なくとも1つの駆動コイルを介して交番磁場を駆動するように配置された磁場発生器;および、
前記感知コイルから信号を受信し、受信された信号内の駆動周波数の1つまたは複数の高調波を検出するように配置された少なくとも1つの検出器
を備えることを特徴とする、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、外科用ガイドにおいて使用するための埋込型マーカーに関する;特に、磁場を放出するサセプトメトリープローブを用いて検出可能な1つまたは複数の強磁性要素を有する埋込型マーカーに関する。本開示はまた、そのようなマーカーを製造する方法および少なくとも1つのそのような埋込型マーカーを含む検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マーカーは、外科手術中に関心領域に外科医をガイドするために使用され、関心部位は、物理的に視認または触知できない、例えば切除が必要な小さい腫瘍である。好適には、そのようなマーカーは、患者への外傷を低減するために、例えば18G~12Gの細いゲージの針を通して展開可能である必要がある。典型的には、そのようなマーカーは、目立たないように、かつ外傷を最小限にするように、長さが10mm未満である。マーカーは、体内の関心部位、例えば癌病変の生検またはその他の外科手術中に配置できる。マーカーは、超音波またはX線/マンモグラフィー等の撮像によるガイドの下で配置される。その後の手術中、マーカーは、聴覚、視覚、またはその他のフィードバックを外科医に提供するハンドヘルドプローブを用いて、検出および位置決定され、手術をガイドする。典型的には、マーカーは周囲の組織と共に切除される。
【0003】
既知のアプローチは、ハンドヘルドガンマ線検出プローブを用いて検出できる、ヨウ素125等の放射性同位体を含有するマーカーを使用することである。しかしながら、放射性物質の使用は厳密に規制されているため、最大規模の大学病院センターを除いて、放射性シードプログラムをセットアップすることは困難である。
【0004】
参照により本明細書に組み込まれる特許文献1、2および3により異なるアプローチが例示されており、これは、磁場および高い磁化率を有する強磁性マーカーを使用する。ハンドヘルドサセプトメトリープローブは、プローブによって検出される応答磁場を生成する磁気応答性マーカーを励起する交番磁場(「感知磁場」)を生成する。好適には、プローブは、約0.2mT~約1.2mTの発生源での強度を有する感知磁場を生成するように構成され、プローブの約5mm以内に約40μT~約400μTの磁場強度を生じさせる。このアプローチは、典型的には約20mm未満の直径を有する腫瘍を局在化するためのより深いセンシングに非常に効果的であることが見出されており、RFアプローチの欠点を回避する。しかしながら、例えば、1.5Tまたは3Tのはるかに強い磁場を使用するMRI設定では、このアプローチは、マーカー自体と比較して大きく、MRI画像を不明瞭にし得る、望ましくないアーチファクトが生成されることにつながり得る。
【0005】
MRIは、浸潤性乳癌の超音波またはマンモグラフィーでは見えない病変を画像化するために使用され、MRIモニタリングは、外科的切除前のネオアジュバント療法の評価のためにますます使用されており、ネオアジュバント療法後および手術前に腫瘍のサイズを追跡することを可能にする。そのようなマーカーのMRIアーチファクトは、腫瘍のサイズの減少が癌患者の管理において肯定的な選択肢を提供するので、医療従事者による腫瘍のサイズの評価を損なうものであってはならない。この点において、乳癌ステージは、典型的には、腫瘍サイズ、腫瘍がリンパ節に広がっているかどうか、および癌が身体の他の部分に広がって(転移して)いるかどうかなどのいくつかの基準を使用して評価される。腫瘍摘出術を使用する乳房温存手術が想定され得る初期ステージの癌では、好ましくは、腫瘍サイズは2cm以下である。非特許文献1は、より小さい腫瘍サイズが良好な予後因子を表すことを示し、>2cmの残存腫瘍は、ネオアジュバント化学療法後の高い局所腫瘍再発率と関連する。非特許文献2は、サイズが2cm以下である腫瘍がT1として分類され、典型的には乳房温存手術が想定され得る場合である癌ステージ1または2に対応することを示す。より大きな腫瘍は、乳房切除術などのより根本的な手術が必要になる可能性が高い。したがって、直径が2cmを超える場合にMRI下で腫瘍をサイズ決定することができ、腫瘍が乳房温存手術を可能にするサイズに縮小したかどうかの評価を可能にすることが非常に望ましい。
【0006】
強磁性材料は、MRI歪みを生じることが知られており、これらは科学文献に広く記載されている。例えば、非特許文献3は、一部の強磁性材料がMRIに対して安全であり得るが、依然として重大なアーチファクトを生じることを説明している。アーチファクトは、以下により詳細に説明されるように、MRI装置によって生成される主y軸磁場と同じ方向にある、強磁性物体によって生成される磁場の成分(By)によって主に生成される。Byの効果は、物体の近くのプロトンの局所的なラーモア周波数をシフトさせることであり、そのシフトが十分に大きい場合、それらのプロトンは、MRI装置によって再構成されたx-z平面内の正しいスライスに現れない。
【0007】
金属インプラントを反磁性材料でコーティングすることによって、円筒形股関節および動脈瘤クリップなどの常磁性材料で作られた金属インプラントによって引き起こされるMRIアーチファクトのサイズを低減するための選択肢が、非特許文献4によって研究されている。
【0008】
Plewesらの特許文献4は、MR、USおよびX線イメージングで均一に良好なコントラストを示す、ゲルマトリックス中のガラスおよび鉄含有アルミニウム微小球から構成されるイメージングマーカーを開示している。これらの材料の磁化率は全て、組織のものに適度に近いが、さらに、MRにおける特に望ましいT1およびT2特性のために選択される強磁性または常磁性材料により制御されたドーピングを含むことができる。特許文献4は、マーカーが小さく、12ゲージの生検針を通して組織に容易に導入できることを開示している。ガラス微小球の濃度およびサイズは、USイメージングのコントラストを決定する。磁化率損失から生じるMRIにおいて見られるコントラストは、鉄含有アルミニウム微小球の数によって決定される;しかし、マーカーのアーチファクトは、その形状、向きおよびエコー時間にも依存する。特許文献4はまた、サイズ、鉄濃度およびゲル結合を最適化することによって、3つのイメージングモダリティすべてで明確に見える埋込型組織マーカーが作製されることも開示している。
【0009】
一方、Rahmerらの特許文献5は、マルチモーダルデータの登録のためのマルチモーダル基準マーカーを開示し、このマルチモーダル基準マーカーは、磁気粒子イメージング方法によって得られたMPIデータにおいて視認可能な磁性材料を含む第1の部分と、別のイメージング方法によって得られた画像データにおいて視認可能な第2の材料を含む第2の部分とを含み、この画像データは、前記MPIデータと共に登録される。第1の部分および第2の部分は、第1の部分が他の撮像方法およびその画像データに悪影響を及ぼさず、第2の部分がMPI方法およびMPIデータに悪影響を及ぼさないように構成されるか、または追加の手段が設けられる。一実施形態では、マルチモーダル基準マーカーは、第1の部分と第2の部分との間または第2の部分内に配置された第3の部分をさらに備える。したがって、この第3の部分は、第1の部分と第2の部分とを分離して、相互の悪影響を回避する。好ましくは、前記第3の部分は、第1の部分を第2の部分から分離する反磁性シェルとして構成される。したがって、マーカーの外側磁場がゼロであること、すなわち、第1の部分の磁性材料の常磁性が相殺されることが達成される。さらに、前記第3の部分は、好ましくは反磁性材料、特にビスマスまたはグラファイトから作られる。
【0010】
これらの選択肢は、常磁性および反磁性材料が同等の大きさの磁化率を有するという事実に依存する。しかしながら、これらは、典型的には、反磁性材料の1000万~10億倍の大きさである磁化率を有する強磁性材料を含む、埋込型磁気マーカーと共に使用することは見込みがない、なぜならば、マーカーの正味磁気モーメント、したがってMRIアーチファクトサイズの任意の有用な低減を達成するためには、実現不可能なほど大量の反磁性材料の使用を必要とするからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2011/067576号
【特許文献2】国際公開第2014/013235号
【特許文献3】国際公開第2013/140567号
【特許文献4】米国特許出願公開第2006/0293581号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2015/0011861号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Shashla(Neoadjuvant chemotherapy in breast cancers, September 2016, DOI: 10.1177/1745505716677139)
【非特許文献2】Koh et al. (Introduction of a New Staging System of Breast Cancer for Radiologists: An Emphasis on the Prognostic Stage, January 2019, DOI: 10.3348/kjr.2018.0231)
【非特許文献3】Hargreaves et al. (Metal Induced Artifacts in MRI, August 2017, DOI: 10.2214/AJR.11.7364)
【非特許文献4】Gao et al. (Reduction of artefact of metallic implant in magnetic resonance imaging by combining paramagnetic and diamagnetic materials, May 2010, DOI: 10.1063/1.3352582)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
様々な形状の磁性材料がMRIアーチファクトのサイズに影響を与えることも知られている。したがって、当技術分野では、感知応答の等方性が良好で、感知範囲が長く、小さいMRIアーチファクトを示す、小型の強磁性マーカーが必要とされている。本開示は、上述の欠点の少なくともいくつかを克服するか、または少なくとも軽減する、MRIアーチファクトが低減された、改良された磁気マーカーを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって、本開示の第1の態様によれば、外科用ガイドにおいて使用するための埋込型マーカー、特に、サセプトメトリーによって検出可能な埋込型マーカーが提供される。埋込型マーカーは、1つまたは複数の強磁性要素と、少なくとも1つの反磁性要素とを備える。1つまたは複数の強磁性要素は、少なくとも約10,000の比初透磁率および約1.5T未満の飽和誘導BSを有する少なくとも1つの強磁性材料から形成される。少なくとも1つの反磁性要素は、少なくとも約-0.16×10-4の範囲の体積磁化率を有する少なくとも1つの反磁性材料から形成される。好適には、反磁性材料は、約-0.16×10-4~約-3×10-4の範囲の体積磁化率を有する。マーカー内の反磁性材料の総体積は、強磁性材料の総体積よりも約100~10,000倍大きい。
【0015】
本明細書に記載されるように、強磁性材料は、高い比初透磁率を有し、閾値印加磁場を上回る誘導の飽和に達する。本開示のマーカーの1つまたは複数の強磁性要素は、少なくとも10,000の比初透磁率を有する。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の強磁性要素は、50,000を超える比初透磁率を有し得る。一方、反磁性材料は、強磁性材料の比初透磁率よりも少なくとも7桁低い比初透磁率を有することができ、飽和しない。典型的な反磁性材料は、約1×10-4未満の(負の)体積磁化率を有する。本開示によれば、適切な相対量の強磁性材料および反磁性材料を使用することによって、これらの材料の上記の特性を有利に利用して、以下の埋込型マーカーを提供することができることが見出された:感知磁場において、1つまたは複数の強磁性要素が少なくとも1つの反磁性要素よりも実質的に強く磁化され、ハンドヘルドプローブを用いてマーカーを組織内で検出するのに十分な大きさの応答磁場を生成する;および、MRI磁場において、1つまたは複数の強磁性要素は飽和し、それによってそれらの磁化が飽和誘導BSに制限されるが、その磁化が飽和によって制限されない少なくとも1つの反磁性要素は、1つまたは複数の強磁性要素の誘導磁化の少なくとも実質的な割合を相殺するのに十分に強い磁化の程度を有し、これにより、マーカーによって生成されるアーチファクト、特にMRIスキャナのx-z平面上のMRI画像に生成されるMRIアーチファクトのサイズを最小限に抑える。
【0016】
したがって、感知磁場において、1つまたは複数の強磁性要素によって生成される磁気モーメントの振幅は、少なくとも1つの反磁性要素によって生成される磁気モーメントの1,000~100万倍であり得る。
【0017】
本開示によれば、反磁性材料の量は、強磁性材料を「過剰補償」することなく、MRI磁場におけるマーカーの正味磁化を最小限に抑え、それによって反磁性材料に起因する許容できないほど大きなアーチファクトを生成しないように選択されるべきであることが理解されよう。これを書いている時点で、MRI装置は様々な磁場強度で利用可能である;典型的には、約0.5T~約3Tの範囲である(しかし、最大約7Tの磁場が臨床適用のために知られている)。したがって、本開示のいくつかの実施形態では、マーカーは、2つ以上の異なるMRI磁場強度;特に約0.5~10T、好ましくは約1~5Tの範囲内;例えば、約1.5Tおよび約3Tにおいて、許容可能な小さいアーチファクトを共に生成する相対量の強磁性および反磁性材料を含んでもよい。例えば、マーカーは、あるMRI磁場強度では正味磁化をほぼ有さない一方で、別のMRI磁場強度で正味磁化を有し依然として許容可能な小さいアーチファクトを引き起こす、強磁性および反磁性材料の量を含むことができる。あるいは、マーカーは、2つ以上の異なるMRI磁場強度で許容可能な小さいアーチファクトを生じさせるように最適化された相対量の強磁性および反磁性材料を含んでもよい。本明細書において「許容可能な小さい」とは、特にMRI装置におけるx-z平面上のMRI画像において、約30mm未満、好ましくは約20mm未満を意味する。
【0018】
好適には、MRI磁場において、1つまたは複数の強磁性要素または少なくとも1つの反磁性要素によって生成される対向する磁気モーメントのうちの小さい方の磁気モーメントは、少なくとも1つの反磁性要素または1つまたは複数の強磁性要素によって生成される磁気モーメントのうちの大きい方の磁気モーメントの振幅の少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%の振幅を有することができる;それによって、MRI磁場内のマーカーによって生成されるアーチファクトは、その最長寸法において約30mm未満;好ましくは約20mm未満であり得る。
【0019】
したがって、本開示の第2の態様によれば、埋込型マーカーは、少なくとも約10,000の比初透磁率を有する少なくとも1つの強磁性材料から形成される1つまたは複数の強磁性要素と、少なくとも1つの反磁性材料から形成される少なくとも1つの反磁性要素とを含み得る;1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素は、同位置に配置され、少なくとも1つの反磁性材料は、見かけの磁化率を有し、MRI磁場において、1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素は対向する磁気モーメントを生成し、そのうちの小さい方の振幅が他方の大きい方の振幅の少なくとも約25%である。
【0020】
本明細書において「同位置に配置」されるとは、例えば、1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素が、マーカー内の実質的に同じ空間(または体積)を占有し、それにわたって延在するように構成および配置され得ることを意味する。
【0021】
本明細書に開示されるように、1つまたは複数の強磁性要素によって生成される対向する磁気モーメントの振幅の少なくとも75%以内である振幅を有する磁気モーメントを生成するために、十分な体積の反磁性材料が使用されてもよい。すなわち、反磁性材料によって生成される磁気モーメントは、1つまたは複数の強磁性要素によって生成される対向する磁気モーメントの振幅の約25%~約175%の範囲内である振幅を有する。
【0022】
いくつかの実施形態では、マーカーは、少なくとも2つの異なるMRI磁場の下でそれらのうちの少なくとも1つによって生成される磁気モーメントが、それぞれ別個に、他方によって生成される対応する磁気モーメントの約75%以内、好ましくは約50%以内にあるように、相対量の強磁性および反磁性材料を含んでもよい。したがって、いくつかの実施形態では、反磁性材料によって生成される磁気モーメントは、少なくとも2つの異なるMRI磁場の下で、1つまたは複数の強磁性要素によって生成される対向する磁気モーメントの対応する振幅の約25%~約175%の範囲内、好ましくは約50%~約150%の範囲内にそれぞれ別個にある振幅を有し得る。したがって、好適には、少なくとも2つの異なるMRI磁場の下で少なくとも1つの反磁性要素によって生成される磁気モーメントは、それぞれ別個に、1つまたは複数の強磁性要素によって生成される対応する磁気モーメントの少なくとも25%以上であり得る。このようにして、マーカー中の強磁性および反磁性材料の量は、2つ以上の異なるMRI磁場の下で、特に約0.5~10T、好ましくは1~5Tの範囲、例えば1.5Tおよび3Tである、許容可能な小さいアーチファクトを標的とするように最適化され得る。
【0023】
上述のように、感知磁場は、好適には、発生源において約0.1mT~約2.0mT、好ましくは約0.2mT~約1.2mTの強度を有してもよく、プローブの約5mm以内に約40μT~約400μTの電界強度を生じさせる。好都合には、これにより、マーカーがプローブから最大約50mm、約60mm、約70mm、またはさらには最大約80mmの範囲で検出されることが可能になる。
【0024】
したがって、本開示の第3の態様によれば、埋込型マーカーの位置を特定するための検出システムが提供され、このシステムは、本開示による少なくとも1つの埋込型マーカー;交番磁場でマーカーを励起するように配置された少なくとも1つの駆動コイル;励起されたマーカーから受信された信号を検出するように配置された少なくとも1つの感知コイル;少なくとも1つの駆動コイルを介して交番磁場を駆動するように配置された磁場発生器;および、感知コイルから信号を受信し、受信された信号内の駆動周波数の1つまたは複数の高調波を検出するように配置された少なくとも1つの検出器、を備える。特に、検出システムは、サセプトメトリー検出システムであってもよい。
【0025】
一方、MRI磁場は、典型的には、1.5Tの強度を有してもよい。好適には、1つまたは複数の強磁性要素は、本明細書に開示されるように、MRI磁場よりも少なくとも200,000倍弱い、好ましくは少なくとも400,000倍弱い、いくつかの実施形態では最大800,000倍以上弱い感知磁場において、ハンドヘルドサセプトメトリープローブを用いて組織内でマーカーを検出することを可能にするのに十分な大きさの応答磁場を生成するように構成および配置され得る。
【0026】
好適には、1つまたは複数の強磁性要素は、約1.5T未満、好ましくは約1T未満の飽和誘導BSを有し得る。したがって、いくつかの実施形態では、1つまたは複数の強磁性要素は、本明細書に開示されるように、1つまたは複数の強磁性要素のBSよりも少なくとも1,000倍弱い感知磁場において、ハンドヘルドサセプトメトリープローブを用いて組織内でマーカーを検出することを可能にするのに十分な大きさの応答磁場を生成するように構成および配置され得る。
【0027】
好適には、少なくとも1つの反磁性要素は、1つまたは複数の強磁性要素の体積よりも約100~10,000倍、好ましくは約500~3,000倍大きい総体積を有し得る。
【0028】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の強磁性要素は、約1×10-10m3未満、好ましくは、約5×10-11m3、3×10-11m3、または1×10-11m3未満の総体積を有し得る。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の強磁性要素は、約1×10-12m3という小さい総体積を有し得る。
【0029】
典型的には、少なくとも1つの反磁性要素の総体積は、約1×10-9m3~1.5×10-7m3、典型的には最大約1×10-8m3であり得る。
【0030】
有利には、これらの範囲内の強磁性および反磁性材料の体積を含むマーカーは、典型的には注入による移植に適した寸法を有する形態で提示され得ることが見出されている。例えば、マーカーは、約0.8mm~約3mm、好ましくは約1~1.5mmの範囲の幅を有してもよい。マーカーは、約2~10mmの長さを有し得る。
【0031】
その内容が参照により本明細書に組み込まれる、英国特許出願第2115827.4号明細書は、少なくとも約50、好ましくは少なくとも約650の全長対直径比、および約1×10-10m3未満、好ましくは約5×10-11m3未満の総体積を有する強磁性材料の1つまたは複数の断片を含む埋込型マーカーを開示する。そこに開示されるように、少なくとも1つの強磁性材料片の長さ対直径比を増加させることによって、マーカーの感知応答が改善され、それによって、所与の応答磁場に対してより少ない体積の強磁性材料を使用することが可能になり、より小さいMRIアーチファクトを生じさせることが見出された。好適には、本開示によれば、したがって、1つまたは複数の強磁性要素は、少なくとも約50の全長対直径比を有し得る。
【0032】
英国特許出願第2115827.4号明細書はまた、強磁性材料の1つまたは複数の断片が、マーカーによって生成される応答磁場の等方性を最適化するようにどのように構成され得るかを開示する。本開示のマーカーの1つまたは複数の強磁性要素は、7未満、好ましくは5未満の磁束異方性の比を達成するように、本出願の開示に従って構成され得る。好適には、本開示のマーカーの1つまたは複数の強磁性要素は、本明細書に開示されるように、例えば螺旋または多重螺旋として構成され得る。
【0033】
当業者は、1つまたは複数の強磁性要素の磁化に匹敵するMRI磁場における磁化を有する十分な体積の反磁性材料の使用から最大の利益を得るために、少なくとも1つの反磁性要素は、有利には、1つまたは複数の強磁性要素によって生成されるアーチファクトと同様の形状を有するが反対の極性を有するアーチファクトをMRI磁場において生成するように構成および配置され得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素は、同位置に配置され得る。
【0034】
強磁性および反磁性要素の適切な構成および配置は、例えば、Comsol AB(スウェーデン)からCOMSOL Multiphysics(登録商標)という商標で入手可能なもの、またはAnsys,Inc.(Canonsburg,PA)からANSYS(登録商標)という商標で入手可能なものなどの適切な数学的モデリングまたはコンピュータ支援エンジニアリング(CAE)ソフトウェアを使用することによって経験的に決定して、MRI磁場において1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素によって生成されるそれぞれのアーチファクトのシミュレートされた等高線図を生成し、等高線図が実質的に一致するまで要素の構成および配置を反復的に調整することができる。
【0035】
好適には、少なくとも1つの反磁性要素は、本明細書に開示されるように、例えば円筒として構成され得る。1つまたは複数の強磁性要素は、本開示のいくつかの実装形態では、螺旋または複数の螺旋として円筒の外面の周りに巻き付けられ得る。
【0036】
したがって、本開示の第4の態様によれば、外科手術で使用するための埋込型磁気マーカーを製造する方法が提供され、これは、以下を含む:少なくとも10,000の比初透磁率および約1.5T未満の飽和誘導BSを有する少なくとも1つの強磁性材料から1つまたは複数の強磁性要素を形成する工程;少なくとも1つの反磁性材料から少なくとも1つの反磁性要素を形成する工程であって、少なくとも1つの反磁性材料が少なくとも約-0.16×10-4の体積磁化率を有し、反磁性材料の総体積が強磁性材料の総体積よりも約100~10,000倍大きい、工程;および、その後、1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素を組み立てる工程であって、少なくとも1つの反磁性要素が1つまたは複数の強磁性要素と同位置に配置され、MRI磁場において、1つまたは複数の強磁性要素によって生成されるアーチファクトのサイズおよび形状に少なくとも部分的に一致するサイズおよび形状を有するアーチファクトを生成するように構成される、工程。
【0037】
好適には、MRI磁場において少なくとも1つの反磁性要素によって生成されるアーチファクトは、1つまたは複数の強磁性要素によって生成されるアーチファクトと少なくとも部分的に重なり得る。
【0038】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素は、対向する磁気モーメントを生成することができ、その小さい方の振幅は、他方の大きい方の振幅の少なくとも25%である。
【0039】
1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素は、感知磁場において、1つまたは複数の強磁性要素が少なくとも1つの反磁性要素よりも実質的に強く磁化されるように選択されるそれぞれの体積の強磁性材料および反磁性材料を含むことができ、ハンドヘルドサセプトメトリープローブを使用してマーカーを組織内で検出することを可能にするのに十分な大きさの応答磁場を生成する。MRI磁場において、少なくとも1つの反磁性要素は、1つまたは複数の強磁性要素の磁化の少なくとも実質的な割合を相殺するのに十分に強い磁化の程度を有し、それによって、本明細書に開示されるように、マーカーによって生成されるアーチファクトのサイズを最小化する。
【0040】
好適には、1つまたは複数の強磁性要素は、感知磁場に応答して生成される応答磁場の強度および等方性を最大にするように構成および配置され得る。
【0041】
少なくとも1つの反磁性要素は、例えば上記で開示したように、特に主磁場がy軸に沿って配向されるMRI装置によって画定されるx-z平面において、1つまたは複数の強磁性要素によって生成されるアーチファクトのアーチファクトサイズおよび形状に十分な程度まで合致するサイズおよび形状を有するアーチファクトをMRI磁場において生成し、マーカーによって生成されるアーチファクトの最大寸法を約30mm未満に低減するように構成および配置され得る。
【0042】
その内容が参照により本明細書に組み込まれる国際特許出願第PCT/GB2022/052775号明細書に開示されているように、上述の特性を有するマーカーの製造は、(反磁性材料に関して)比較的高い(負の)磁化率を有する反磁性材料の使用によって促進され得ることが見出された。したがって、本開示のいくつかの実施形態では、少なくとも1つの反磁性要素は、有利には、約0.16×10-4超、または約1×10-4超の(負の)体積磁化率を有する反磁性材料から形成され得る。いくつかの実施形態では、反磁性材料は、約1×10-4~約3×10-4またはそれ以上の(負の)体積磁化率を有し得る。好適な反磁性材料としては、熱分解グラファイト、グラファイトおよびビスマスを挙げることができる。熱分解グラファイトは、約2.7×10-4の(負の)体積磁化率を有し得、生体適合性であり、機械加工またはロッドに直接堆積され得る。ビスマスは、約1.6×10-4の(負の)体積磁化率を有し得、非毒性であり、ワイヤに鋳造または押出成形され得る。
【0043】
驚くべきことに、実質的に等方性の結晶粒構造を有するグラファイトは、1つまたは複数の強磁性要素を並置して配置した場合、約1.2×10-4の見かけの(負の)体積磁化率を有し得ることが見出された。さらに、実質的に等方性の粒子構造を有するグラファイトは、許容可能な等方性感受性を提供するが、安価で形状に容易に機械加工可能であり、良好な生体適合性特性を有する。実質的に等方性の粒子構造を有するグラファイトは、静水圧プレスによって形成され得る。
【0044】
好適には、グラファイトは高純度を有するべきである。静水圧プレスグラファイトは、好都合には、300ppm未満の好適なグレードで製造可能である。いくつかの実施形態では、グラファイトは、5ppm未満の不純物を有し得る。
【0045】
有利には、等方性黒鉛は、その感受性を増加させることが分かっている高密度を有し得る。したがって、いくつかの実施形態では、グラファイトは、少なくとも約1.75g.cm-3、例えば、約1.85g.cm-3の密度を有し得る。いくつかの実施形態では、グラファイトは、最大約1.95g.cm-3の密度を有することができる。この範囲の密度は、低い多孔率を意味する。
【0046】
いくつかの実施形態では、グラファイト材料の適合性は、約2,200℃を超える温度での熱処理によってさらに高められ得る。熱処理は、プレスと同時に、またはプレスの後に行うことができる。熱処理は、有利には、グラファイト中の、常磁性粒子を含み得る空隙または不純物の数密度を低減し得る。
【0047】
したがって、第5の態様によれば、本開示は、1つまたは複数の強磁性要素を含むサセプトメトリーによる検出のための埋込型マーカーにおける実質的に等方性の粒子構造を有するグラファイトの使用を包含し、MRI磁場におけるマーカーの正味磁気モーメントを低減し、それによってマーカーによって生成されるアーチファクトのサイズを最小限に抑える。
【0048】
したがって、本開示のこの態様によれば、埋込型マーカーは、1つまたは複数の強磁性要素と、実質的に等方性の粒子構造を有するグラファイト、例えば静水圧プレスグラファイトから形成される少なくとも1つの反磁性要素とを含み得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、有利な磁化率を有し得る、例えば反磁性メタマテリアル等の代替的な反磁性材料が使用されることが想定され、これによって、マーカー内で使用される反磁性材料の体積がより小さくなる。
【0050】
本開示の一態様に関して本明細書で説明する特徴は、本開示の他の態様に組み込まれ得ることが理解されよう。例えば、本開示の方法は、本開示のマーカーを参照して記載される特徴を組み込むことができ、逆もまた同様である。
【0051】
以下は、本開示の実施形態の添付の図面を参照して、単なる例としての説明である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1(a)】主磁場のy軸上の磁場B勾配を示す、MRIスキャナに横たわる人の概略側面図
【
図1(b)】画像スライスがy軸に沿ってどのように切断されるかを示し、x軸、y軸、およびz軸の向きを示す、MRIスキャナの別の概略側面図
【
図2(a)】典型的な強磁性材料についての磁場Hの関数としての磁化を示すヒステリシス曲線1
【
図2(b)】典型的な強磁性材料についての磁場Hの関数としての磁束Bを示す
図2(a)と同様のヒステリシス曲線
【
図2(c)】磁場H1印加時に強磁性材料に発生する磁気モーメントの方向を示す概略図
【
図3(a)】典型的な反磁性材料についての磁場Hの関数としての磁束Bを示すグラフ
【
図3(b)】磁場印加時に反磁性材料に発生する磁気モーメントの方向を示す概略図
【
図4】本開示の一実施形態による、少なくとも1つの強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素を含むマーカーについての印加磁場による磁気モーメントの変化を概略的に示す図
【
図5】本開示の第1の実施形態による、円筒形の反磁性コアと、コアの縦軸に実質的に平行に延在し、コアの外面と並置される、3つの離間した強磁性ワイヤとを備える、埋込型マーカーの概略斜視図
【
図6(a)】
図5の埋込型マーカーの磁場中の存在の結果として、Bがy軸に沿って印加されるMRI磁場B
0からどのように逸脱するかを示す、
図1(a)および/または
図1(b)に示される種類のMRIスキャナのx-z平面における磁束密度Bの等高線図
【
図6(b)】
図5に示されるものと同じ構成の強磁性ワイヤが磁場内に存在するが反磁性コアが存在しない場合に、BがMRI磁場B
0からどのように逸脱するかを示す、MRIスキャナのx-z平面における磁束密度Bの比較等高線図
【
図7】本開示の第2の実施形態による、円筒形の反磁性コアと、各々がその縦軸に実質的に平行に反磁性コアを通って延在する、3つの離間した強磁性ワイヤとを備える、埋込型マーカーの概略斜視図
【
図8】
図7の埋込型マーカーの磁場中の存在の結果として、BがMRI磁場B
0からどのように逸脱するかを示す、
図1(a)および/または
図1(b)に示される種類のMRIスキャナのx-z平面における磁束密度Bの等高線図
【
図9】本開示の第3の実施形態による、円筒形の反磁性コアと、反磁性コアの外面の周囲に延在する強磁性ワイヤ螺旋とを備える、埋込型マーカーの概略斜視図
【
図10(a)】
図9の埋込型マーカーの磁場中の存在の結果として、BがMRI磁場B
0からどのように逸脱するかを示す、
図1(a)および/または
図1(b)に示される種類のMRIスキャナのx-z平面における磁束密度Bの等高線図
【
図10(b)】
図9に示されるものと同じ構成の強磁性ワイヤの磁場内に存在するが反磁性コアが存在しない場合に、BがMRI磁場B
0からどのように逸脱するかを示す、MRIスキャナのx-z平面における磁束密度Bの比較等高線図
【
図11】本開示の第4の実施形態による、円筒形の反磁性コアと、反磁性コアの外面の周囲に延在する強磁性ワイヤから形成される三重螺旋とを備える、埋込型マーカーの概略斜視図
【
図12(a)】
図10の埋込型マーカーの磁場中の存在nお結果として、BがMRI磁場B
0からどのように逸脱するかを示す、
図1(a)および/または
図1(b)に図示される種類のMRIスキャナのx-z平面における磁束密度Bの等高線図
【
図12(b)】
図10に示されるものと同じ構成の強磁性ワイヤの磁場内に存在するが反磁性コアが存在しない場合に、BがMRI磁場B
0からどのように逸脱するかを示す、MRIスキャナのx-z平面における磁束密度Bの比較等高線図
【
図13】本開示の第5の実施形態による埋込型マーカーの製造方法を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0053】
定義
磁束密度Bは、磁石または電流の周囲の磁場の強度および方向を測定するベクトル場である。
【0054】
磁場強度または磁場Hは、移動する電荷、電流、および磁性材料に対する磁気的影響を記述するベクトル場である。
【0055】
磁化または磁気分極Mは、磁性材料における永久または誘導磁気双極子モーメントの密度を表すベクトル場である。
【0056】
誘導の飽和とは、印加された外部磁場Hの増加によって材料の磁化Mをさらに増加させることができないときに到達する状態である。この状態では、生じる全磁束密度は飽和誘導BSと呼ばれ、磁化は飽和磁化MSである。
【0057】
磁化率χは、印加磁場中で材料がどの程度磁化されるかの指標であり、χ=M/Hとして定義される。
【0058】
体積磁化率は、磁場中に置かれたときのそのバルク形状における材料の磁化率の指標である。
【0059】
見かけの体積(反磁性)磁化率は、1つまたは複数の成形強磁性材料の存在下で磁場中に置かれたときの、そのバルク形状における反磁性材料の磁化率の指標である。
【0060】
透磁率μは、磁場の形成に対する材料の抵抗の指標であり、μ=B/Hとして定義される。
【0061】
相対透磁率(μr)は、自由空間の透磁率(μ0)に対する透磁率の比である;すなわち、μr=μ/μ0)である。μr=1+χという式でχと関係付けられる。
【0062】
初期磁化率(χ
i)は、無限大の材料が、小さな印加磁場においてどれだけ磁化されるかの指標である。これは、小さいH(例えば0.01mT未満)についてχ
i=M/Hと定義される、または同等に以下である。
【数1】
【0063】
見かけの磁化率は、磁場中に置かれたときの特定の形状を有する材料の磁化率の指標である。
【0064】
見かけの初期磁化率(χapp)は、実効磁化率としても知られ、小さい印加磁場における特定の幾何学的形状の材料の初期磁化率である。すなわち、消磁係数を考慮した後のχiである。
【0065】
比初透磁率(μr,i)は、小さいHに対するμrの値であり、μr,i=1+χiによって初期磁化率に関係付けられる
【0066】
見かけの相対透磁率(μapp)は、特定の形状の材料の相対透磁率である。すなわち、消磁係数を考慮した後のμrである。
【0067】
強磁性材料は、磁場に対して最大まで増加する可変透磁率μを有する。多くの強磁性材料は、100,000を超え得る最大透磁率を有する。
【0068】
常磁性材料は、1よりもわずかに大きい一定の透磁率μを有する。
【0069】
反磁性材料は、1よりわずかに小さい一定の透磁率μを有する。反磁性は、外部から印加される磁界に対抗して小さな磁界を生成することによって反発効果を引き起こす。
【0070】
保磁力は、磁性材料を完全に消磁するために必要な磁場Hである。
【0071】
硬磁性材料または永久磁石は、高い保磁力を有する。
【0072】
軟磁性材料は、低い保磁力を有し、したがって容易に磁化および消磁される。
【0073】
減磁場または漂遊磁場は、磁性材料の磁化Mによって生成される磁石内部の磁場Hである。これは、単一の磁区を有する強磁性体において形状異方性を生じさせ、より大きい強磁性体において磁区を生じさせる。
【0074】
減磁係数は、減磁場を決定するために使用されなければならない量である。任意の形状の磁性物体は、物体内の位置によって変化する全磁場を有し、計算が複雑になり得る。これにより、例えば、材料の磁化が磁場によってどのように変化するかなどの材料の磁気特性を決定することが困難になる。
【0075】
磁気異方性は、材料配向に応じた磁気特性の変化を表す。
【0076】
磁気異方性比は、プローブに対するマーカーの異なる配向において、一定の距離でマーカーによって生成される最も強い磁気シグナルと最も弱い磁気シグナルとの比である。
【0077】
磁気モーメントは、磁場を生成する磁石または他の物体の磁気強度および配向である。
【0078】
磁気双極子モーメントは、電流ループの磁気特性に関連するベクトル量である。
【0079】
磁気共鳴イメージング(MRI)は、三次元の詳細な解剖学的画像を生成する非侵襲的イメージング技術である。典型的なMRIスキャナ10は、
図1(a)および1(b)に概略的に示されている。均一な主磁場11、B
0は、スキャナの長手方向y軸12と整列する。
図1(a)に示すように、RFパルス13、B
1を印加して、スキャナ内に横たわる患者14の組織内の原子核の正味磁化Mを瞬間的に摂動させる。このRF励起は、磁化をy軸(すなわち、信号を検出することができないB
0と平行)から横方向x-z平面(すなわちy軸に直交する)に一時的に傾け、そこで適切な受信コイルによって検出することができる。RFパルスがオフにされた後、原子の磁化は緩和し、熱平衡構成に戻る際に歳差運動を示す。処理磁化の横方向成分が受信コイルに起電力を誘起するので、磁化を検出することが可能である。これをNMR信号として検出する。受信された信号は、
図1(b)に示されるように、主磁場に重畳される磁場勾配15の印加によって空間的に符号化される。
【0080】
MRI金属アーチファクトは、組織と、局所磁場に外部磁場を歪ませる異なる磁化率を有する金属との界面で生じる。この歪みは、組織内の歳差運動周波数を変化させ、情報の空間ミスマッピングにつながる。B
critは、金属によって引き起こされるアーチファクトが生成されるMRI装置によって生成される主磁場の方向における磁束Bの臨界変化として定義され、ボクセルがMRI装置によって撮像された不正確なスライスにマッピングされる。
図1(a)および
図1(b)に示す種類の典型的なMRI装置では、主磁場は、y軸12と位置合わせされ、スライス16
1、16
2、16
3、...16
nは、主y軸12に直交するそれぞれのx-z平面である。したがって、MRI画像におけるアーチファクトは、概してx-z平面におけるアーチファクトである。
【0081】
本開示の目的は、埋込型マーカー、特にサセプトメトリーによる検出に適合されたマーカーを提供することであり、これは、ハンドヘルドサセプトメトリープローブによって放出される駆動磁場にさらされたときにプローブにおいて検出可能な応答磁場を生成し、MRIスキャナにおいて、特にスキャナのx-z平面において、はるかに強い磁場にさらされたときに最小サイズのアーチファクトを生成する、1つまたは複数の強磁性要素を含む。
【0082】
したがって、一態様では、本開示は、外科用ガイドで使用するための埋込型マーカーを提供する。埋込型マーカーは、1つまたは複数の強磁性要素と、少なくとも1つの反磁性要素とを備える。1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素は、それぞれの量の強磁性および反磁性材料を含み、(発生源における)約0.5mT未満の感知磁場において、1つまたは複数の強磁性要素が少なくとも1つの反磁性要素よりも実質的に強く磁化され、ハンドヘルドプローブを用いてマーカーを組織内で検出するのに十分な大きさの応答磁場を生成する;および、0.5T以上、典型的には1.5T以上のMRI磁場において、少なくとも1つの反磁性要素は、1つまたは複数の強磁性要素の誘導磁化の少なくとも実質的な割合を相殺するのに十分に強い磁化の程度を有する。このようにして、本発明のマーカーは、反磁性材料を全く含まない同量の強磁性材料を含むマーカーよりも小さいMRIアーチファクトを生じ得る。したがって、所与の体積の強磁性材料について、MRIアーチファクトのサイズは、許容可能なサイズに低減され得る。
【0083】
以下でより詳細に説明するように、1つまたは複数の強磁性要素は、有利には、約1×10-11m3未満の強磁性材料の総体積を含み得る。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のピースの強磁性材料の総体積は、約5×10-11m3未満であり得る。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のピースの強磁性材料の総体積は、約5×10-11m3未満、約3×10-11m3未満、または約1×10-11m3未満であり得る。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の強磁性要素は、約1×10-12m3の低い総体積を有することができる。
【0084】
感知磁場における磁化を最大化するために、1つまたは複数の強磁性要素は、英国特許出願第2115827.4号明細書に開示されるように、少なくとも約50の全長(すなわち、複数の強磁性要素が存在する場合に全ての強磁性要素の長さの合計)対直径(または断面積の平方根)比を有し得る。したがって、いくつかの実施形態では、1つまたは複数のピースの強磁性材料の全長対直径(または断面積の平方根)比は、少なくとも約100、少なくとも約200、少なくとも約300、少なくとも約400、少なくとも約500、少なくとも約650、または少なくとも約750であり得る。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のピースの強磁性材料の全長対直径(または断面積の平方根)比は、少なくとも1000、少なくとも2000、または少なくとも3000であり得る。
【0085】
一例として、1つまたは複数のピースの強磁性材料は、約50mmの全長および約15μmの直径を有することができる。そのような例では、1つまたは複数のピースの強磁性材料の全長対直径比は約3,300であってもよく、体積は約9×10-12m3であり得る。別の実施形態では、1つまたは複数のピースの強磁性材料は、約36mmの全長および約15μmの直径を有してもよい。そのような例では、1つまたは複数のピースの強磁性材料の全長対直径比は約2,400であってもよく、体積は約6.4×10-12m3であり得る。
【0086】
いくつかの実施形態では、マーカーは、少なくとも約3mm、約6mm、約10mm、約30mm、50mm、または約100mmの長さを有する強磁性材料のワイヤまたはストリップを含んでもよい。ワイヤは、約100μm未満、または約50μm以下、約30μm以下、約15μm以下または約10μm以下の直径を有し得る。マーカーは、約3mm、約6mm、約10mm、約30mm、約50mm、または約100mm以下の長さの全長を有する強磁性材料のワイヤまたはストリップを含んでもよい。好適には、ワイヤまたはストリップは、本明細書に記載されるように、1つまたは複数のピースに形成され得る。
【0087】
好適には、強磁性材料は、少なくとも約10,000の比初透磁率を有し得る。いくつかの実施形態では、強磁性材料は、少なくとも約50,000または少なくとも約70,000の比初透磁率を有し得る。いくつかの実施形態では、強磁性材料は、約100,000以上の比初透磁率を有し得る。
【0088】
さらに、後述するように、強磁性材料は、非典型的なMRI磁場よりも弱い飽和誘導を有し得る。したがって、好適には、強磁性材料は、約1.5T未満、好ましくは約1.0T未満;より好ましくは約0.7T未満の飽和誘導BSを有し得る。
【0089】
少なくとも1つの反磁性要素は、好適には、1つまたは複数の強磁性要素の強磁性材料の総体積よりも約100~10,000倍大きい、好ましくは約500~3,000倍大きい、例えば、約950~1,050倍大きい、または約500~950倍大きい、または約500~1,050倍大きい反磁性材料の総体積を含み得る。したがって、少なくとも1つの反磁性要素は、約1×10-9m3~1.5×10-7m3の間の総体積を有し得る。強磁性材料および反磁性材料のそれぞれの量をこれらの比率および/または体積内で選択することによって、およびMRI磁場における強磁性材料の誘導の飽和によって、MRI磁場における1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素によって生成される対向する磁気モーメントの振幅は、同じオーダーの大きさであり得る。好ましくは、1つまたは複数の強磁性要素または少なくとも1つの反磁性要素によってMRI磁場において生成される磁気モーメントのうちのより小さいものの振幅は、少なくとも1つの反磁性要素またはそれぞれ1つまたは複数の強磁性要素によって生成されるより大きい磁気モーメントの振幅の少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%であり得る。このようにして、特に本明細書で定義されるMRIスキャナのx-z平面において、MRI磁場におけるマーカーのアーチファクトサイズは許容可能であり得る、すなわち、その最長寸法が約30mm未満、好ましくは約20mm未満であり得る。さらに、強磁性および反磁性材料の総体積により、例えば18G~12Gの狭いゲージ針を通して展開可能であるように十分に小さいマーカーを製造することが可能になる。
【0090】
1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素は、印加磁場の存在下で相互に対向する磁気モーメントを生成するように適切に構成および配置され得る。特に、マーカーが印加磁場H内に配置されると、1つまたは複数の強磁性要素は磁気モーメントmferromagnetを生成し、少なくとも1つの反磁性要素は対向する磁気モーメントmdiamagnetを生成する。したがって、マーカーの正味磁気モーメントmtotalは、mtotal=mferromagnet-mdiamagnetによって与えられる。(発生源における)約0.5mT未満の感知磁場において、マーカーによって生成される正味磁束は、マーカーによって生成される信号の強度を決定する。MRI磁場において、マーカーによって生成される磁束は、MRI画像において生成されるアーチファクトのサイズに影響を与える。
【0091】
当業者が認識するように、MRI磁場は、典型的には0.5T~10T以上、特に約1.5T~7Tの強度を有する。
【0092】
本開示の分野において、ハンドヘルド感受性プローブは、移植後にマーカーを検出および位置特定するために外科医によって使用され得る。好適には、プローブは、その内容が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2014/140566号に記載されるプローブであり得る;例えば、英国のEndomagnetics Ltdから市販されているSentimag(商標)プローブである。
【0093】
プローブは、約0.1mT~約2.0mT、好ましくは約0.2mT~約1.2mT、例えば約0.3mTの発生源における強度を有する感知磁場を生成し得る。これは、プローブの約5mm以内に約25μT~約500μT、好ましくは約40μT~約400μTの磁場強度を生じさせることができ、これは、1つまたは複数の強磁性要素のBSよりも少なくとも1,000倍弱くなり得る。典型的には、感知磁場は振動磁場であり得る。したがって、感知磁場は、0.1mT~2.0mT、好ましくは約0.2mT~約1.2mTの発生源における振幅で振動し得る。
【0094】
使用中、感知プローブがマーカーに近接しているとき、感知磁場は強磁性材料内に磁気モーメントを生成し、マーカーは検出可能な応答磁気信号を生成する。記載される種類の感知磁場の下では、マーカーが容易に検出可能であることが望ましい。マーカーは、比較的強い正味磁気モーメントを有し、感知磁場の範囲内において比較的高い磁束密度(B)を生成することが望ましい。磁束は適切に等方性であり(実際には、7未満、好ましくは5未満の磁気異方性比が十分であり得る)、マーカーが適度に遠い距離から、かついかなる方向からも一貫して検出され得ることが望ましい。以下により詳細に説明されるように、感知磁場の下では、マーカーによって生成される磁気信号は、少なくとも1つの強磁性要素によって支配される。前の段落に記載された大きさの場は、典型的には、本開示のマーカーが、プローブから最大約50mm、約60mm、約70mm、または約80mmの範囲で検出されることを可能にし得る。
【0095】
図2(a)は、典型的な強磁性材料について印加磁場Hの関数としての磁化Mを示すヒステリシス曲線1である。強磁性材料は典型的には高い初期磁化率を有し、破線3で示すように、低い印加磁場Hにさらされると、強い磁化Mを展開する。
図2(b)は、典型的な強磁性材料について印加磁場Hの関数としての磁束密度Bを示す同様のヒステリシス曲線101である。強磁性材料は、典型的には、比較的低い印加磁場(H)の下で磁気飽和(飽和誘導B
Sで)105に達する。強磁性材料7の磁気モーメントは、
図2(c)に示すように、印加磁場9と同じ方向である。
【0096】
感知磁場における1つまたは複数の強磁性要素の磁気モーメントm
ferromagnetは、m
ferromagnet=χ
app.ferromagnetH・V
ferromagnetとして定義される。マーカー内の全強磁性材料によって生成される磁束密度(B)または磁場は、近似的に次式で与えられる:
【数2】
式中、χ
app.ferromagnetは、1つまたは複数の強磁性要素の見かけの磁化率であり、これは、各強磁性要素のサイズおよび形状、特にアスペクト比に依存し、V
ferromagnetは強磁性材料の総体積であり、μ
0は古典的真空における透磁率であり、yはマーカーからの距離である。1つまたは複数の強磁性要素によって生成される磁気信号は、1つまたは複数の強磁性要素によって生成される磁束密度に比例し、したがって、磁性材料の総体積(V
ferromagnet)、印加磁場の強度(H)、および磁性材料の見かけの磁化率(χ
app.ferromagnet)に依存するであろう。磁性材料の見かけの磁化率は、長く薄い強磁性要素について著しく大きく、少なくとも1つの強磁性要素によって生成される磁気信号の強度は、要素から距離yが離れるにつれて(距離の3乗に反比例して)減少する。
【0097】
図3(a)は、典型的な反磁性材料について磁場Hの関数として磁束Bを示すグラフ201である。
図3(a)に示すように、反磁性材料は、典型的には、低い初期磁化率を有し、飽和に達することなく、比較的高い磁場まで磁化211の直線的な増加を示す。反磁性材料として、磁束Bは、誘導磁化が磁場Hに対向するので、参照のために示されている破線203によって示されるように、自由空間のものよりも小さい。
図3(b)に示すように、反磁性材料が印加磁場にさらされると、印加磁場209の方向に対向する磁化または磁気モーメント207が誘導される。本明細書に記載されるように、本開示の少なくとも1つの反磁性要素は、0.01mT未満の磁場にさらされた場合、1×10
-3未満、典型的には約3×10
-4未満の大きさの初期(負の)磁化率を有し得る。感知磁場における少なくとも1つの反磁性要素の磁気モーメントm
diamagnetは、m
diamagnet=χ
app.diamagnetH・V
diamagnetとして定義される。反磁性要素によって生成される磁束密度(B)は次式で与えられる:
【数3】
式中、χ
app.diamagnetは、少なくとも1つの反磁性要素の見かけの磁化率であり、少なくとも1つの反磁性要素のサイズおよび形状、特にアスペクト比に依存し、V
diamagnetは反磁性材料の総体積であり、yは要素からの距離である。本開示の少なくとも1つの反磁性要素は、1つまたは複数の強磁性要素よりも著しく小さい見かけの磁化率を有する。
【0098】
感知磁場において、1つまたは複数の強磁性要素の磁気モーメントは、少なくとも1つの反磁性要素の対向する磁気モーメントに対して高い。1つまたは複数の強磁性要素の磁気モーメントは、少なくとも1つの反磁性要素の対向する磁気モーメントよりも少なくとも1,000~100万倍の大きさであり得る。
【0099】
MRI装置で一般に使用される磁場は、上述の感知磁場よりも数桁強く、これを書いている時点で、最も一般的な臨床MRI装置は、1.5Tまたは3Tである。したがって、本開示のいくつかの実施形態では、MRI磁場は、典型的には1~5Tであり得るが、いくつかの実施形態では、7T以上の高さであり得る。
【0100】
上述のように、1つまたは複数の強磁性要素は、典型的なMRI磁場強度をはるかに下回る磁場強度で誘導の飽和に達することができる。本開示の1つまたは複数の強磁性要素は、1.5T以下の飽和誘導B
Sを有し得、したがって、MRI磁場にさらされたときに飽和され得る。この場合、双極子近似を使用すると、比較的強いMRI磁場を受けたときの1つまたは複数の強磁性要素の磁気モーメントm
ferromagnetは、以下である:
【数4】
式中、μ
0は自由空間の透磁率であり、M
sは飽和における1つまたは複数の強磁性要素の磁化であり、V
ferromagnetは強磁性材料の総体積である。したがって、有利には、本開示によれば、MRI磁場における1つまたは複数の強磁性要素の磁気モーメントは、強磁性要素のB
Sにおける誘導の飽和によって制限される。1つまたは複数の強磁性要素の磁気モーメントは、英国特許出願第2115827.4号明細書の開示に従って、使用される強磁性材料の体積を最小化することによってさらに最小化され得る。例として、1つまたは複数の強磁性要素の総磁気モーメントは、1.5TのMRI磁場下で約2×10
-6A.m
2のオーダーであり得る。
【0101】
MRI磁場にさらされる場合、1つまたは複数の強磁性要素の飽和による磁化の上限、および、少なくとも1つの反磁性要素に使用される反磁性材料のかなり大きい体積を考慮すると、少なくとも1つの反磁性要素の誘導磁気モーメントもまた重要であり得る。少なくとも1つの反磁性要素の単位体積当たりの磁気モーメントは、典型的には、1つまたは複数の強磁性要素の磁気モーメントよりもはるかに弱いが、強磁性材料の体積に対する反磁性材料の体積が大きいと、強磁性材料の磁気モーメントを有意に打ち消す磁気モーメントを生成し得る。典型的なMRI磁場にさらされると、少なくとも1つの反磁性要素からの磁気モーメントm
diamagnetは、以下である:
【数5】
式中、χ
app.diamagnetは、少なくとも1つの反磁性要素の見かけの磁化率である。
【0102】
一例として、1.5TのMRI磁場下の少なくとも1つの反磁性要素の総磁気モーメントは、約-1×10-6A.m2のオーダーであり得、ここで負の符号は、磁気モーメントがMRI磁場と反対方向にあることを示す。
【0103】
少なくとも1つの反磁性要素からの磁気モーメントが1つまたは複数の強磁性要素の磁気モーメントに対抗するので、少なくとも1つの反磁性要素からの磁気モーメントは、MRI磁場にさらされるとマーカー全体の正味磁気モーメントを低減する。したがって、好適には、マーカーは、MRI磁場にさらされたときに約1×10-6A.m2未満の正味磁気モーメントを有することができる。特に、マーカーは、0.5T~7T、好ましくは約1T~5Tである;より好ましくは約1.5T~3Tの磁場にさらされたときに約1×10-6A.m2未満の正味磁気モーメントを有し得る。
【0104】
図4は、本開示の一実施形態による、1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素を備えるマーカーの印加磁場Hによる磁気モーメントの変化を概略的に示す。印加磁場の関数としての磁気モーメントが、1つまたは複数の強磁性要素301、少なくとも1つの反磁性要素303、およびマーカーの総磁気モーメント305について示されている。典型的なMRI磁場の強度を下回るが、感知磁場の強度を上回る中間磁場強度では、1つまたは複数の強磁性要素は飽和307に達しており、1つまたは複数の強磁性要素の磁気モーメントm
ferromagnetは比較的高い。一方、少なくとも1つの反磁性要素は、感知磁場下では1つまたは複数の強磁性要素の磁気モーメントよりも非常に実質的に小さいが、印加場とともに直線的に増加する、対向する磁気モーメントを有する。そのような中間磁場では、1つまたは複数の強磁性要素の磁気モーメントは、依然として総磁気モーメントm
marker305を支配するが、MRIスキャナで使用される種類のより大きい磁場強度では、少なくとも1つの反磁性要素の対向する磁気モーメントは、1つまたは複数の強磁性要素のより大きい磁気モーメントのかなりの割合、例えば、少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%を表し得る。
【0105】
いくつかの実施形態では、点Aによって示される、ある印加磁場強度において、少なくとも1つの反磁性要素の(負の)磁気モーメントの振幅は、少なくとも1つの強磁性要素の(正の)磁気モーメントに実質的に等しくてもよく、したがって、マーカーの合計または正味磁気モーメントは、ゼロまたはゼロに近くてもよい。さらに高い印加磁場では、少なくとも1つの反磁性要素の磁気モーメントの振幅は、1つまたは複数の強磁性要素の磁気モーメントの振幅よりさらに大きくてもよく、マーカーの合計または正味磁気モーメントは負であってもよい。
【0106】
本開示のマーカーに関する制約を、そのサイズおよび形状、ならびに利用可能な材料の磁気特性、1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素内で誘起される磁気双極子をそれらが少なくともある程度互いに打ち消し合うように一致するように同位置に配置する必要性、およびMRI磁場の強度について考慮すると、実際には、1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素の磁気モーメントは、互いに完全に相殺しなくてもよいことが理解されよう。しかしながら、1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素の磁気モーメントが、MRI下でマーカーによって引き起こされるアーチファクトを許容可能なサイズ、好ましくはその最長寸法が約30mm未満、より好ましくは25mm未満、さらにより好ましくは約20mm未満に低減するのに十分に互いに相殺する限り、本開示の目的を満たすことができる。
【0107】
したがって、MRI磁場において、1つまたは複数の強磁性要素または少なくとも1つの反磁性要素によって生成される対向する磁気モーメントのうちのより小さいものは、少なくとも1つの反磁性要素または1つまたは複数の強磁性要素によって生成されるより大きい磁気モーメントの振幅の少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%の振幅を有することができる。いくつかの実施形態では、MRI磁場において少なくとも1つの反磁性要素によって生成される磁気モーメントは、1つまたは複数の強磁性要素によって生成されるより大きい磁気モーメントの振幅の少なくとも27%、好ましくは、1つまたは複数の強磁性要素によって生成される磁気モーメントの振幅の少なくとも50%の振幅を有し得る。
【0108】
MRI磁場にさらされると、1つまたは複数の強磁性要素は、MRI画像上にアーチファクトを生成し、この要素はMRI装置内の磁場に局所的な変化を引き起こす。アーチファクトは、MRI装置によって生成される主磁場と同じ方向(本明細書ではy軸と呼ばれる)にある強磁性要素Byによって生成される磁束の成分によって主に引き起こされる。Byの効果は、マーカー付近の組織におけるプロトンの局所的なラーモア周波数をシフトさせることであり、そのシフトが十分に大きい場合、それらのプロトンは、MRI装置によって再構成された正しいスライスに現れない。すなわち、|By|≧Bcritとなる点は、予想されるスライスに現れず、式中、Bcritは、ボクセルが別のスライスにマッピングされる磁束密度Bのy成分の大きさであり、その値はMRI走査パラメータに依存する。
【0109】
強磁性材料の量、飽和誘導B
S、および1つまたは複数の強磁性要素のサイズおよび形状は、アーチファクトのサイズに影響を及ぼす。1つまたは複数の強磁性要素のサイズと比較して大きい距離において、1つまたは複数の強磁性要素によって生成される磁束密度は、双極子モデルによって近似され得る。磁化の軸に沿って、そのモデルの下で、強磁性要素によって生成される磁束密度は、次式によって与えられる:
【数6】
式中、m
ferromagnetは、1つまたは複数の強磁性要素の磁気双極子モーメントであり、yは、物体から関心点までの距離である。上記で説明したように、MRI磁場における1つまたは複数の強磁性要素の磁気モーメントm
ferromagnetは、次式によって与えられる:
【数7】
これらの2つの式を組み合わせると、
【数8】
式中、B
ferromagnet,MRIは、MRI磁場において1つまたは複数の強磁性要素によって生成される磁場である。この方程式から、マーカーがMRI装置内に配置され、したがって強い磁場にさらされる場合、1つまたは複数の強磁性要素からの磁場の強度は、強磁性材料の総体積、その飽和誘導、およびそこからの距離に依存することが分かる。
【0110】
MRIアーチファクトのエッジを考慮する場合、その時点で、
【数9】
であり、yは、アーチファクトの中心からそのエッジまでの距離を表す。その時点で、上記の式を使用して、
【数10】
が得られ、したがって、
【数11】
式中、B
critは、アーチファクトが生成される臨界磁場を定義するMRI走査パラメータである。y軸に沿ったアーチファクトの「直径」(円形でない場合もある)を、その広がりの指標としてD
artefact,y=2yとして定義する場合、以下のようになる:
【数12】
【0111】
本開示によれば、マーカーの正味磁気モーメントが少なくとも1つの反磁性要素の存在によって少なくとも低減されるので、マーカーによって生成されるアーチファクトのサイズは、少なくとも1つの反磁性要素の存在によって低減され得る。マーカー全体について、MRI磁場にさらされる場合、生成されるアーチファクトのサイズは、以下のように計算することができる:
【数13】
マーカーによって生成されるアーチファクトの総直径は、以下によって与えられる:
【数14】
【0112】
この方程式から、マーカーによって生成されるアーチファクトの直径を低減または最小化するために、BMRI・χ・VdiamagnetはBS・Vferromagnetと同等である必要があることが理解される。典型的な例示的な値を考慮すると、BMRI=1.5T、BS=0.6T、およびχ=5×10-4の場合、アーチファクトの直径を最小にするために、少なくとも1つの反磁性材料の体積は、1つまたは複数の強磁性要素の体積よりも少なくとも約1000倍大きい必要がある。しかしながら、以下でより詳細に論じるように、1つまたは複数の強磁性要素の磁気モーメントのバランスをとるために必要な反磁性材料の体積は、より強いMRI磁場、例えば3Tの下ではより小さくなる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の強磁性要素の体積よりも約10,000倍未満、例えば5,000倍未満または2,500倍未満、例えば約1,000倍大きい反磁性材料の体積が好適であり得る。
【0113】
MRI撮像中に生成される大きなアーチファクトは問題であり、空間情報のミスマッピングにつながり得る。したがって、MRI磁場においてマーカーによって生成されるアーチファクトのサイズを最小限に抑えると同時に、依然としてマーカーが感知磁場において感知されることを可能にすることが重要である。
【0114】
マーカーが感知磁場において感知されるために、1つまたは複数の強磁性要素の磁気モーメントは、マーカーが感知磁場にさらされるときの正味の磁気モーメントを支配する必要がある。
【0115】
典型的なMRI磁場においてマーカーによって生成されるアーチファクトが比較的小さくなるように、少なくとも1つの反磁性要素の磁気モーメントは、マーカーの正味磁気モーメントが可能な限り小さくなるように、1つまたは複数の強磁性要素の磁気モーメントを少なくとも部分的に相殺すべきである。さらに、1つまたは複数の強磁性要素のみによって生成されるアーチファクトのサイズおよび形状は、少なくとも1つの反磁性要素のみによって生成されるアーチファクトのサイズおよび形状に少なくとも近似すべきであり、したがって、マーカー内で近接して互いに組み合わされると、本明細書で説明するように、それらは重なり合い、したがって少なくともある程度互いに相殺される。
【0116】
MRI磁場にさらされたときに本開示のマーカーによって生成されるアーチファクトのサイズは、1つまたは複数の強磁性要素の体積および形状、ならびに少なくとも1つの反磁性要素の体積および形状に依存する。大量の強磁性材料を使用することは、望ましくない大きいアーチファクトをもたらし得る。反磁性材料の体積を増加させることは、より小さいアーチファクトにつながり得る。
【0117】
しかしながら、強磁性材料の体積を相殺するために必要とされるよりもはるかに大きい反磁性材料の体積が使用される場合、少なくとも1つの反磁性要素によって生成される「負の」アーチファクトは、1つまたは複数の強磁性要素によって生成されるアーチファクトよりも支配的であり得、これは、マーカーチファクトサイズの望ましくない増加につながり得る。したがって、所与のMRI磁場強度に対するマーカーチファクトサイズのサイズを低減するために、1つまたは複数の強磁性要素と少なくとも1つの反磁性要素との間の体積比を最適化することが望ましい場合がある。
【0118】
MRI磁場において生成されるアーチファクトのサイズもまた、1つまたは複数の強磁性要素のBSに依存するので、より低いBSを有する強磁性材料が使用される場合、より大きな体積の強磁性材料が使用され得る。いくつかの実施形態では、強磁性材料は、0.25T~1.5Tの範囲のBSを有し得る。
【0119】
MRI磁場における1つまたは複数の強磁性要素の磁化を相殺するために必要な反磁性材料の体積は、MRI磁場の強度に依存し得る。特に、より強力な磁場における1つまたは複数の強磁性要素の飽和磁化を相殺するために、より少量の反磁性材料が必要とされ得る。MRIスキャナは、異なるMRI磁場強度で利用可能であり、これは、1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素を備えるマーカーの対向する磁気モーメントが、ある強度のMRI磁場の下で実質的に等しい大きさであり得るが、異なるMRI磁場では等しくないことを意味する。好適には、本開示のマーカーにおける強磁性材料および反磁性材料のそれぞれの体積は、MRI磁場の範囲にわたって許容可能なサイズ、例えば、0.5~10T、好ましくは1~7T、より好ましくは1.5~3TのMRIアーチファクトを生じ得る。
【0120】
いくつかの実施形態では、マーカー中の強磁性材料および反磁性材料のそれぞれの体積は、1つのMRI磁場、例えば1.5Tの下で実質的に等しい振幅の磁気モーメントを生成し、それによってアーチファクトサイズを最小にする一方で、異なるMRI磁場、例えば3Tの下で許容可能な小さいアーチファクトを依然として生じさせるようなものであり得る。好ましくは、マーカーに使用される材料の体積を最小限に抑えるために、存在する反磁性材料の量は、少なくとも1つの反磁性要素によって生成される磁気モーメントの振幅が、第1のMRI磁場、例えば3Tの下で1つまたは複数の強磁性要素によって生成される磁気モーメントの振幅と実質的に等しいが、第1のMRI磁場よりも弱い第2のMRI磁場、例えば1.5Tの下で許容可能なサイズのアーチファクトを依然として生成するような量であり得る。
【0121】
いくつかの実施形態では、マーカー内の強磁性材料および反磁性材料のそれぞれの体積は、2つ以上の異なるMRI磁場において異なる振幅の磁気モーメントを生成するようなものであり得るが、各異なるMRI磁場の下でのアーチファクトサイズは許容可能なサイズである。したがって、いくつかの実施形態では、マーカーは、少なくとも1つによって生成される対向磁気モーメントが、少なくとも2つの異なるMRI磁場下で他方の約75%以内、好ましくは、他方の約50%以内であるように、相対量の強磁性および反磁性材料を含んでもよい。この意味で、マーカー中の強磁性材料および反磁性材料のそれぞれの量は、2つ以上の異なるMRI磁場、特に約0.5~10T、好ましくは1~5Tの範囲、例えば1.5Tおよび3Tの下で、許容可能な小さいアーチファクト、を標的とするように最適化され得る。各強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素の形状および寸法はまた、アーチファクトのサイズおよび形状ならびにマーカーを感知することができる容易さに影響を及ぼし得る。
【0122】
英国特許出願第2115827.4号明細書に開示されるように、所与の体積の強磁性材料に対して、大きいアスペクト比を有する強磁性要素は、感知磁場においてより容易に検出可能であり得る。磁気要素のアスペクト比(L/D、例えば、式中、Lは要素の長さであり、Dは、直径または幅あるいは非円形断面を有する要素の場合の断面積の平方根である)を増加させることは、その長軸の方向におけるその感知性能を増加させ得る。比が増加するにつれて、要素の見かけの透磁率μappも増加し、この結果、感知される距離が増加され得る。この現象は減磁効果によるものである。
【0123】
好適には、前記または各々の1つまたは複数の強磁性要素は、少なくとも1つのワイヤまたはストリップを備えることができる。ワイヤは、略円形断面を有する円筒形ワイヤを備えてもよい。あるいは、ワイヤは、フラットワイヤまたはストリップであってもよい。1つまたは複数の強磁性要素は、複数のワイヤおよび/またはストリップを備えることができる。
【0124】
いくつかの実装形態では、複数のワイヤまたはストリップの形態の1つまたは複数の強磁性要素は、本明細書および英国特許出願第2115827.4号明細書で説明するように、マーカーの磁気応答の等方性を最適化するために、個々にまたは組み合わせて、いくつかの異なる方向に延在する、および/または、ねじれ、屈曲、または曲がりを含む、1つまたは複数の蛇行経路を画定するように構成され得る。
【0125】
本開示のマーカーの1つまたは複数の強磁性要素は、好適には、少なくとも50、好ましくは少なくとも約650または少なくとも約1000の長さ対直径(または幅/断面積の平方根)(L/D)比を有し得る。
【0126】
1つまたは複数の強磁性要素は、好適には、1×10-10m3未満、好ましくは、上述のように約5×10-11m3未満の総体積を有することができる。
【0127】
明示的に別段の記載がない限り、「長さ」という用語は、個々の磁気要素の文脈において本明細書で使用される場合、要素が直線的に延在している場合の要素の長さを意味する。例えば、螺旋状の強磁性要素の場合、要素の長さは、螺旋を形成するワイヤの長さである。対照的に、「全長」という用語は、本明細書では、特に明記しない限り、1つまたは複数の磁気要素がマーカー内に形成される構成における1つまたは複数の磁気要素の長さを意味するために使用される。後者の文脈では、「長さ」は、一般に、マーカーの最長寸法の方向における1つまたは複数の要素のサイズを指す。一方、「全直径」または「全幅」は、それぞれ、最長寸法を横断する方向における1つまたは複数の磁性要素のアセンブリの直径または幅を意味する。
【0128】
高アスペクト比および低体積を有する強磁性要素は、有用な感知応答と許容可能な小さいMRIアーチファクトとのバランスをとろうとする;強磁性材料の体積を低減することにより、強磁性要素によって生成されるMRIアーチファクトを低減することができる。一方、所与の体積の強磁性材料に対する少なくとも1つの強磁性要素のアスペクト比を増加させることは、マーカーの感知応答を改善することができる。
【0129】
いくつかの実施形態では、強磁性要素または各強磁性要素のアスペクト比は、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも650、または少なくとも750であり得る。いくつかの実施形態では、前記または各強磁性要素のアスペクト比は、少なくとも1000、少なくとも2000または少なくとも3000であり得る。これにより、強磁性材料の体積、したがってMRIアーチファクトサイズが低減されながら、感知応答を維持することが可能になる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の強磁性要素は、1×10-11m3未満の総体積を有し得る。
【0130】
強磁性要素の材料のアスペクト比を増加させることは、その最長寸法の方向におけるその感知性能を劇的に増加させ得る。アスペクト比が増加するにつれて、マーカーの見かけの透磁率μappも増加し、これは、消磁効果の結果としてマーカーを感知することができる距離を増加させる。
【0131】
直線状の強磁性ワイヤは、高いアスペクト比を有し、その長手方向軸の方向に強い磁束密度を生成する。これは、この軸に平行な方向の感知磁場における実用的な感知性能につながり得る。しかしながら、そのような要素は、長手軸に垂直な方向で検出するのがより容易でない場合がある、すなわち、異方性感知応答を有する場合があり、感知磁場に対するその配向に応じて、要素の磁気応答におおきいばらつきが生じる場合があり、これによって、プローブによって検出される磁気応答をマーカーへのその近接度に較正することが困難になり得る。大きなアスペクト比を有する1つまたは複数の強磁性要素を使用することは、比較的小さい体積の強磁性材料を使用する良好な感知性能をもたらすことができ、これはMRI画像において小さいアーチファクトを生成する利点を有する。
【0132】
感知磁場の下での感知応答および強磁性要素のMRIアーチファクトサイズは、異なる変数に依存し得る。Sentimag(商標)プローブによって生成されるような感知磁場の下では、感知性能は、強磁性材料のアスペクト比および体積にほぼ排他的に依存し得、比初透磁率μr,i(B-μ0H曲線の初期勾配)へはあまり依存しないことが認識されている。対照的に、MRI磁場にさらされたときに強磁性要素によって生成される磁場の大きさ、したがってMRIアーチファクトサイズは、飽和誘導BSおよび強磁性材料の体積に依存し得る。これは、非常に薄い低飽和誘導強磁性材料片であるが十分な距離で依然として感知され得るものを使用することによって、MRIアーチファクトのサイズを制限することが可能であることを意味する。
【0133】
コイル状の強磁性ワイヤは、低い体積および高いアスペクト比を依然として有しながら、直線状ワイヤよりも感知磁場においてより等方性の応答を有し得ることが見出されている。したがって、コイル状の強磁性ワイヤは、MRI磁場において許容可能な小さいアーチファクトをもたらし得るが、感知磁場に対する配向に伴うその磁気応答の変化が少ない、改善された範囲の方向から感知磁場において検出可能である。
【0134】
したがって、いくつかの実施形態では、1つまたは複数の強磁性要素は、コイル状の強磁性ワイヤまたはストリップ、または相互に実質的に同軸であり得る複数の離間されたリングを備え得る。任意選択で、1つまたは複数の強磁性要素は、コイルまたはリングを通って延在する1つまたは複数の直線ロッドをさらに含むことができる。いくつかの実装形態では、少なくとも1つの強磁性要素は螺旋状ワイヤコイルを備え得る。
【0135】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の強磁性要素は、少なくとも1つの単一の螺旋を含んでもよい;任意選択的に、螺旋の長手方向軸に実質的に平行に配置された1つまたは複数の直線ワイヤと組み合わされてもよい。
【0136】
いくつかの実施形態では、2つ以上の強磁性要素は、多重螺旋、例えば、2重螺旋、3重螺旋、または4重螺旋として構成され得る。
【0137】
単一の螺旋の形態を有する強磁性要素と、螺旋の長手方向軸に実質的に平行に位置合わせされた直線状ワイヤまたはストリップの形態を有する1つまたは複数の強磁性要素との組み合わせの場合、マーカーの横方向磁気応答は主に螺旋から生じ、長手方向応答は主に1つまたは複数の直線ワイヤまたはストリップから生じ得る。
【0138】
マーカーが複数の強磁性要素を含む場合、個々の強磁性要素は、要素間の破壊的相互作用を回避するために互いに接触しないように配置することができる。いくつかの実施形態では、強磁性要素は、1つまたは複数のスペーサによって、または少なくとも1つの反磁性要素またはマーカーの別の構成要素、例えばハウジングまたは他の非磁性支持体に固定されることによって、離れて保持され得る。したがって、多重螺旋配置では、例えば、各個々の螺旋状の強磁性要素は、1つまたは複数の他の螺旋状の強磁性要素の巻きによって画定される螺旋ギャップ内に配置され得る。
【0139】
コイル状磁気ワイヤによって生成されるMRIアーチファクトの形状およびサイズは、ワイヤのコイルピッチおよび/またはコイル直径に依存し得ることが分かっている。より大きなピッチは、典型的には、より長く、より薄いアーチファクトを生成し得るが、より短く、より広いコイルは、典型的には、より厚く、より短いアーチファクトを生成し得る。
【0140】
好適には、ワイヤは、約100μm、50μm、30μm、15μm、または10μm未満の直径を有し得る;好ましくは、ワイヤは約15μmの直径を有することができる。
【0141】
強磁性ワイヤから形成される螺旋状強磁性要素は、約0.8mm~3mm、好ましくは約1.0mm~1.5mm、より好ましくは約1.15mm~1.30mmの螺旋直径(すなわち、螺旋の直径)を有し得る。より大きいコイル直径は、感知磁場においてより強い横方向感知応答を生成し得ることが分かっている。
【0142】
好適には、螺旋状強磁性要素は、約0.5mm~3mm、好ましくは約1.0~2.0または1.0~1.5mm、例えば約1.6mmのピッチを有し得る。より大きいピッチは、その軸方向における螺旋の感知応答を改善し得る。これは、螺旋状コイルの長さが長いほど軸方向に突出しているためであると考えられる。
【0143】
好適には、螺旋のピッチは、螺旋の直径にほぼ等しくてもよい。いくつかの実施形態では、螺旋のピッチは、螺旋の直径の1.0~2.0または1.0~1.5倍、例えば、約1.33倍であってもよい。これは、感知磁場における螺旋の横方向応答を最大にするのに役立ち得る。
【0144】
螺旋状強磁性要素のピッチを減少させ、巻き数を増加させることは、マーカーの横方向感知性能を増加させ得るが、その軸方向感知性能を減少させ得る。これらはまた、使用されるワイヤの全長を増加させ、これによって、所与のゲージのワイヤに対するMRIアーチファクトサイズが増加し得る。一方、螺旋状強磁性要素のピッチを増加させ、巻き数を減少させると、マーカーの横方向感知性能が低下する可能性があるが、その軸方向感知性能は増加する可能性がある。これはまた、所与のワイヤゲージのために使用されるワイヤの総体積を減少させ、これによって、有利には、マーカーのMRIアーチファクトサイズを減少させる働きをし得る。各タイプの多重螺旋マーカーに対して等方性感知性能を生み出すための最適なピッチが存在し得ることが見出されている。3重螺旋の場合、約15μmの金属ワイヤを使用する約1.15mmの直径のマーカーに対して、各個々の螺旋に対して約2.0mmのピッチが最適であり得る。
【0145】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の強磁性要素は、約2mm~10mm、好ましくは約6mm~8mm、例えば約4mmまたは約5mmの螺旋長(すなわち、螺旋の端から端までの長さ)を有する少なくとも1つの螺旋状強磁性要素を含んでもよい。より長い螺旋は、マーカーのアスペクト比を増加させ、改善された感知応答をもたらし得ることが見出されている。好適には、螺旋状強磁性要素は、少なくとも約3mm、6mm、10mm、30mm、50mm、または100mmの全長を有するワイヤから形成され得る。
【0146】
上述のように、少なくとも1つの反磁性要素は、MRI磁場におけるマーカーの正味の磁気モーメントを最小化するように構成および配置され得る。少なくとも1つの反磁性要素は、MRI磁場において「負の」アーチファクトを生成し得る。少なくとも1つの反磁性要素によって生成されるアーチファクトは、上述のように、好ましくは2つ以上のMRI磁場強度において、マーカー全体によって生成されるアーチファクトのサイズを低減するように計算され得る。好適には、少なくとも1つの反磁性要素は、MRI磁場において、1つまたは複数の強磁性要素によって生成されるアーチファクトと同様の形状およびサイズを有する「逆」アーチファクトを生成するように構成および配置され得る。
【0147】
少なくとも1つの反磁性要素が、1つまたは複数の強磁性要素からの場を最も効果的に打ち消し、したがって、結果として生じるMRIアーチファクトのサイズを低減するために、強磁性および反磁性要素は、(i)MRI磁場において同様の強度の(しかし反対方向の)磁場を生成し;(ii)可能な限り近接して同位置に配置されるべきである。
【0148】
上記の目的(i)は、MRI磁場における2つの誘導場強度が同様となるように、本明細書に開示されるようなそれぞれの体積の強磁性および反磁性材料を使用することによって、本開示に従って達成することができる。本明細書に開示されるように、少なくとも1つの反磁性要素は、典型的には、1つまたは複数の強磁性要素よりも著しく大きい体積の材料を含み得る。強磁性材料の総体積と比較して有意に大きい反磁性材料の体積を使用することは、マーカーの総磁気モーメント、したがってマーカーによって生成されるアーチファクトのサイズが低減され得ることを意味する。
【0149】
少なくとも1つの反磁性要素の体積は、1つまたは複数の強磁性要素の総体積の約100~10,000倍、好ましくは1つまたは複数の強磁性要素の総体積の約500~3,000倍、例えば約1,000倍大きくてもよい。
【0150】
1つまたは複数の強磁性要素を形成する強磁性材料の総体積は、5×10-11m3、3×10-11m3、または1×10-11m3未満であり得る。
【0151】
典型的には、少なくとも1つの反磁性要素の体積は、約1×10-9m3~1.5×10-7m3であり得る
【0152】
目的(ii)は、1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素を同様の方法で空間内に分散させることによって達成することができる。概して、所与の体積の反磁性材料によって生成される磁場は、同じ体積の強磁性材料によって生成される磁場よりも弱く、したがって、より大きい体積の反磁性材料が必要である。このため、また、2つの材料を完全に同位置に配置することが不可能であり得るため、2つの材料によって生成される磁場は、典型的には、MRI磁場において互いに完全に相殺されない場合がある。2つの磁場の双極子成分を整合させることが最も有益であり得るが、より高次の成分(四極子、八極子など)を整合させることは、収穫逓減をもたらし得る。強磁性および反磁性要素の適切な構成および配置は、適切なコンピュータ数学モデリングプログラムを使用して1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素によってMRI磁場において個々に生成される磁束変化の等高線図を生成し、等高線図が実質的に一致するまで要素の構成および配置を反復的に調整することによって、経験的に決定することができる。MRI磁場において強磁性または反磁性材料の1つまたは複数のピースによって生成されるアーチファクトの形状およびサイズは、Bcritの等高線によって表すことができ、これは、上述のように、所与のMRI磁場について、磁場内の1つまたは複数のピースの存在によりボクセルが異なるスライスにマッピングされる磁束密度Bの変化のy成分の大きさである。
【0153】
1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素は、好適には、1つまたは複数の強磁性要素および/または少なくとも1つの反磁性要素によって画定され得る共通の空間内で互いに並置され得る。上述のように、これは、実質的に等方性の結晶粒構造を有するグラファイトが反磁性材料として使用される場合に特に有利であり得、これは、1つまたは複数の強磁性要素の近接が、グラファイトの見かけの感受性を増加させることが驚くべきことに見出されたためである。好適には、1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素は、1つまたは複数の強磁性要素によって生成される理論的アーチファクトの中心、例えばボックス中心(すなわち、物体の周囲にできるだけ密接に適合する概念的な矩形ボックスの中心)または幾何学的中心が、少なくとも1つの反磁性要素によって生成される理論的アーチファクトの中心、例えばボックス中心または幾何学的中心と一致するように構成および配置され得る。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の強磁性要素の質量中心は、少なくとも1つの反磁性要素の質量中心と実質的に一致してもよい。
【0154】
いくつかの実装形態では、少なくとも1つの強磁性要素は、少なくとも1つの反磁性要素の外面に沿ってまたはその周囲に延在し得る。いくつかの実装形態では、少なくとも1つの強磁性要素は、少なくとも1つの反磁性要素の周りに巻き付けられ得る。
【0155】
好都合には、少なくとも1つの反磁性要素は、マーカーのコアを形成し得る。少なくとも1つの反磁性要素は、外面を有する細長い本体を備えることができる。好適には、細長い本体は実質的に円筒形であってもよい。細長い本体は、1つまたは複数の強磁性要素のうちの少なくとも1つのための支持体またはマンドレルを形成することができる。いくつかの実装形態では、1つまたは複数の強磁性ワイヤのうちの少なくとも1つは、上述のように、反磁性要素の細長い本体の周りに巻き付けられて、単一または複数の螺旋を形成することができる。あるいは、少なくとも1つの反磁性要素は、1つまたは複数の強磁性ワイヤのうちの少なくとも1つによって形成される単一または複数の螺旋に並置され得る;例えば、螺旋の長手方向軸に実質的に平行にまたは中空円筒の形態の螺旋の周りに延在する細長いロッドの形態である。
【0156】
マーカーによって生成されるアーチファクトのサイズは、1つまたは複数の強磁性要素の全長が少なくとも1つの反磁性要素の全長と同じであるかまたは同様である場合に、および/または、1つまたは複数の強磁性要素の全体直径または幅が少なくとも1つの反磁性要素の全体直径または幅と同じであるかまたは同様である場合に、有利に最小化され得ることが見出されている。
【0157】
したがって、好適には、1つまたは複数の強磁性要素は、少なくとも1つの反磁性要素の全長の少なくとも80%に沿って個別にまたは集合的に延在することができる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの反磁性要素は、約2mm~10mm、好ましくは、約4mm、5mmまたは6mm~8mmの全長を有し得る。いくつかの実装形態では、少なくとも1つの反磁性要素の全長は、1つまたは複数の強磁性要素の全長とほぼ同じであり得る;例えば、1つまたは複数の強磁性要素が螺旋を形成する螺旋の長さである。少なくとも1つの反磁性要素の全長は、1つまたは複数の強磁性要素の全長の5%以内であってもよい。少なくとも1つの反磁性要素の全長は、1つまたは複数の強磁性要素の全長の約2%以内であってもよい。
【0158】
好適には、マーカーは、特定の針ゲージ内、例えば12G~18G、好ましくは16Gまたは18Gの間に適合するようにサイズ決定されてもよい。したがって、いくつかの実施形態では、マーカーは、約0.514mm~約1.803mmの範囲、好ましくは、約0.838mm~約1.194mmの直径を有し得る。強磁性材料および反磁性材料に必要な総体積が決定されると、マーカー内の各材料の割合を計算することができる。次いで、1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素の直径、長さ、および空間配置は、強磁性要素および反磁性要素のためのハウジングまたは外側コーティングを収容する必要性をいくつかの実施形態において考慮に入れて、特定の針ゲージ内の利用可能な直径に基づいて決定され得る。
【0159】
概して、少なくとも1つの反磁性要素は、約0.03~3mmの全体直径または幅を有し得る。前の段落で論じたように、特定の針ゲージの内径を考慮し、ハウジングまたは外側コーティングのための十分な空間を残すと、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの反磁性要素は、約0.45mm~1.8mm、より好ましくは、約0.80mm~1.2mmの全体直径または幅を有し得る。多くの場合、1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素の全体直径を可能な限り互いに類似させると、最良のアーチファクトサイズの低減につながり得ることが分かっている。したがって、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの反磁性要素の全体直径は、1つまたは複数の強磁性要素の全体直径とほぼ同じであり得る;例えば、1つまたは複数の強磁性要素が螺旋を形成する螺旋直径である。少なくとも1つの反磁性要素の全体直径は、1つまたは複数の強磁性要素の全体直径の約5%以内であってもよい。少なくとも1つの反磁性要素の全体直径は、1つまたは複数の強磁性要素の全体直径の約2%以内であってもよい。しかしながら、非常に強力な反磁性材料(例えば、熱分解炭素)が使用される場合、またはワイヤ直径が非常に細い場合、強磁性磁気モーメントのバランスをとるために少量の反磁性材料のみが必要とされ得る。そのような場合、少なくとも1つの反磁性要素の全体直径は、1つまたは複数の強磁性要素の全体直径より小さくてもよい。好ましくは、反磁性材料のアスペクト比と1つまたは複数の強磁性要素との類似性は、反磁性要素の直径が小さい場合に保存される。
【0160】
したがって、1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素は、MRI磁場においてマーカーによって生成されるアーチファクトが最大長さで約30mm未満、好ましくは最大長さで約20mm未満であるように、本明細書に開示されるように構成および配置され得る。MRIアーチファクトのサイズは、MRI磁場の強度に応じて変化し得る。MRI磁場においてマーカーによって生成されるアーチファクトは、3T未満の磁場において長さが20mm未満であり得る。MRI磁場においてマーカーによって生成されるアーチファクトは、5T未満の磁場において長さが20mm未満であり得る。MRI磁場においてマーカーによって生成されるアーチファクトは、7T未満の磁場において長さが20mm未満であり得る。
【0161】
本開示の実施形態によるマーカーに関して、1つまたは複数の強磁性要素が、低い飽和誘導(BS)、例えば1.5T未満を有することが、上述のように有利であり得る。さらに、1つまたは複数の強磁性要素は、高い比初透磁率、例えば、0.1mT~0.5mTの磁場に対して10,000超を有してもよい。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の強磁性要素は、50,000超またはさらには100,000超の比初透磁率を有し得る。
【0162】
前記または各強磁性要素は、好適には、強磁性金属を含み得る。少なくとも1つの強磁性要素は、アモルファス金属を含んでもよい。少なくとも1つの強磁性要素は、セラミックフェライトを含むことができる。好適な強磁性材料は、例えば、商品名Yshield MCE61(商標)、Metglas 2705M(商標)およびMetglas 2714A(商標)で販売されている、コバルト系アモルファス金属を含む。好適な強磁性材料はまた、例えば、商品名Fair-Rites 31(商標)、76(商標)および78(商標)で販売されているマンガン-亜鉛セラミックフェライトを含む。好適な強磁性材料は、例えば、商品名Mu-metal、Permalloy 80、Permalloy C、PermalloyおよびSupermalloyで販売されている、ニッケル-鉄系軟質強磁性合金をさらに含む。他の好適な強磁性材料は、例えば、Fair-Rites 15(商標)、20(商標)、および43(商標)の商品名で販売されている、ニッケル-亜鉛セラミックフェライトを含む;好ましくは、コバルト系アモルファス金属、例えばYshield(商標)およびMetglas 2714A(商標)である。しかしながら、セラミックは、低い飽和誘導を有するが、ワイヤまたはフラットワイヤへの形成があまり容易ではなく、したがって、本発明によるマーカーにはあまり適していない。いくつかの実施形態では、金属強磁性材料は、高いアスペクト比を有するワイヤに延伸するためのそれらの延性、およびリング、螺旋などに成形するための柔軟性の観点から好ましい場合がある。
【0163】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの反磁性要素は、約0.16×10-4より大きい負の体積磁化率を有する反磁性材料から形成され得る。例えば、グラファイトは約-0.16×10-4の体積磁化率を有する。これは、約-0.91×10-5である水の磁化率と比較される。しかしながら、有利には、少なくとも1つの反磁性要素は、強反磁性、すなわち、約1×10-4を超える大きさの強い負の磁化率を有し得る。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの反磁性要素は、少なくとも約-1×10-4の体積磁化率を有し得る。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの反磁性要素は、最大約-3×10-4の体積磁化率を有し得る。したがって、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの反磁性要素は、約-0.16×10-4~-3×10-4の体積磁化率を有し得る。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの反磁性要素は、最大約-7×10-4の体積磁化率を有し得る。高い(負の)磁化率を有する反磁性要素は、MRI磁場における1つまたは複数の強磁性要素の(正の)磁化を相殺するために必要とされる反磁性材料が少ないことを意味するので、有利であり得る。
【0164】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの反磁性要素はグラファイトを含むことができる。有利には、グラファイトは、微細で実質的に等方性の粒子構造を有することができる。例えば、静水圧プレスグラファイトは、押出成形または圧縮成形から形成されたグラファイトより高い密度、より高い強度およびより微細な粒子構造を有し得る。さらに、静水圧プレスグラファイトは、有利には、押出成形または圧縮成形によって形成されたグラファイトよりも等方性の磁気特性を有し得る。静水圧プレスグラファイトはまた、安価であり、容易に機械加工可能であり、良好な生体適合性特性を有し、300ppm未満の不純物を有するグレードで製造可能であり得る。したがって、好適には、グラファイトは、99.9%超の炭素を含有する高純度であり得る。いくつかの実施形態では、グラファイトは、5ppm未満の不純物を有し得る。グラファイトは、少なくとも約1.75g/cm3、例えば約1.85g/cm3の密度を有することができ、これは低い多孔性に対応し得る。いくつかの実施形態では、グラファイトは、最大約1.95g/cm3の密度を有していてもよい。驚くべきことに、高密度、高純度の静水圧プレスグラファイトは、1つまたは複数の並置された強磁性元素の存在下で、約-1.2×10-4の見かけの体積磁化率を有することが見出されている。
【0165】
したがって、異なる態様によれば、本開示は、MRI磁場におけるマーカーの正味の磁気モーメントを低減し、それによってマーカーによって生成されるアーチファクトのサイズを最小限に抑えるための、1つまたは複数の強磁性要素を含む埋込型マーカーにおける実質的に等方性の粒子構造を有するグラファイトの使用を包含する。この態様によれば、本開示の埋込型マーカーは、1つまたは複数の強磁性要素と、例えば静水圧プレスによって実質的に等方性の粒子構造を有するグラファイトから形成される少なくとも1つの反磁性要素とを含んでもよい。好適には、グラファイトは高純度であってもよい。グラファイトは、例えば少なくとも約2,200℃の温度で熱処理されてもよい。
【0166】
他の実施形態では、少なくとも1つの反磁性要素は、熱分解炭素から作製され得る。熱分解炭素は生体適合性であり、機械加工するか、またはロッドに直接蒸着させることができる。熱分解炭素、約2~2.5g/cm3、例えば約2.25g/cm3の密度を有していてもよい。熱分解炭素は、約2.7×10-4の体積磁化率を有していてもよい。
【0167】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの反磁性要素は、約-1.6×10-4の体積磁化率を有するビスマスから作製され得る。ビスマスは非毒性であり、ワイヤに成型または押出成形することができる。
【0168】
他の好適な強反磁性材料は、当業者に利用可能であり得る。例えば、反磁性メタマテリアルの使用は、より少量の反磁性材料の使用を可能にし得る。
【0169】
別の態様によれば、本開示は、磁気マーカーを製造する方法を提供する。本方法は、1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素を形成する工程、および、その後、1つまたは複数の強磁性要素を少なくとも1つの反磁性要素と組み立ててマーカーを形成する工程を含むことができる。1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素は、本明細書に開示されるように選択される強磁性材料および反磁性材料のそれぞれの体積を含むことができ、それにより、感知磁場において、1つまたは複数の強磁性要素は、少なくとも1つの反磁性要素よりも実質的に強く磁化され、ハンドヘルドプローブを使用してマーカーを組織内で検出可能にするのに十分な大きさの応答磁場を生成する一方、MRI磁場において、少なくとも1つの反磁性要素は、1つまたは複数の強磁性要素の磁化の少なくともかなりの割合を相殺するのに十分に強い磁化の程度を有し、それによってマーカーによって生成されるアーチファクトのサイズを最小化する。
【0170】
好適には、強磁性材料は、少なくとも10,000の比初透磁率および約1.5T未満の飽和誘導BSを有し得る。反磁性材料は、少なくとも約-0.16×10-4の体積磁化率を有し得る。
【0171】
1つまたは複数の強磁性要素は、感知磁場に応答して生成される応答磁場の強度および等方性を最大にするように構成および配置され得る。少なくとも1つの反磁性要素は、少なくとも、マーカーによって生成されるアーチファクトの最大寸法を約30mm未満、好ましくは約20mm未満に低減するのに十分な程度まで、1つまたは複数の強磁性要素によって生成されるアーチファクトのアーチファクトサイズおよび形状に合致するサイズおよび形状を有するアーチファクトをMRI磁場内に生成するように構成および配置されてもよい。
【0172】
本開示のさらに別の態様では、方法は、印加磁場の存在下で相互に対向する磁気モーメントを生成するように、1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素を構成し配置する工程を含むことができる。少なくとも1つの反磁性要素によって生成される磁気モーメントの強度は、1つまたは複数の強磁性要素によって生成される磁気モーメントの強度に対して、少なくとも1つの強磁性要素によって生成される磁気モーメントがプローブによって検出されることを可能にするように感知磁場においてごく少量であってもよく、MRI磁場において1つまたは複数の強磁性要素によって生成される磁気モーメントの強度と同程度の大きさであってもよく、それによって、少なくとも1つの強磁性要素の磁気モーメントを相殺または実質的に均衡させることにより、MRI画像上でマーカーによって生成されるアーチファクトのサイズを最小にする。
【0173】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの反磁性要素は、本明細書に開示される種類の等方性粒子構造を有する黒鉛から形成されてもよい。好適には、グラファイトは、本明細書に開示されるように高純度および高密度であり得る。
【0174】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素を構成および配置する工程は、少なくとも1つの反磁性要素から形成されるコアまたはマンドレルの周囲に1つまたは複数の強磁性要素を巻き付ける工程を含んでもよい。したがって、本開示の一態様では、1つまたは複数の強磁性ワイヤまたはストリップのコイル内に受け入れられる反磁性コアを備えるマーカーを製造するための方法が提供される。コアは、単一のマーカーの長さの数倍の初期長さを有し得る。1つまたは複数の強磁性ワイヤまたはストリップは、反磁性コアの周りに巻かれ得る。ワイヤまたはストリップの端部は、巻き付けの開始時および終了時に、例えば接着剤を使用して、コアに都合よく固定することができる。次いで、結果として生じるアセンブリは、2つ以上のセグメントに分割されてもよく、各セグメントは、マーカーの長さに対応する長さを有する。セグメントは、例えば、ブレード、ウォータージェットまたはレーザーを用いて、例えば、機械的、圧力的、または熱的手段による切断によって互いに分割されてもよい。あるいは、反磁性コアは、コイル巻線の前に別個のセグメントに切断されてもよい。
【0175】
図5は、本開示の第1の実施形態による埋込型マーカー401の概略図である。マーカー401は、反磁性コア405の外側に沿って延びる鉄-コバルト系合金403a、403b、403cから形成された3つの概ね直線状の強磁性ワイヤを含む。この実施形態の変形例では、より少ないまたはより多い強磁性ワイヤが使用され得ることが理解されよう。反磁性コア405は、χ=-1.66×10
-4の体積磁化率値を有する円筒である。円筒は、静水圧プレスグラファイトを含み、約1mmの直径および約8mmの長さを有する。強磁性ワイヤ403a、403b、403cは、約72,000の初期体積磁化率値を有する。各ワイヤ403a、403b、403cは、約16μmの直径および約8mmの長さを有し、ワイヤ403a、403b、403cは、ワイヤの長さが反磁性コア405の長さに実質的に一致するように、コア405の長手方向軸に実質的に平行な方向に延在する。強磁性ワイヤの存在下では、反磁性コアは、約-1.2×10
-4の見かけの体積磁化率値を有することが見出される。
【0176】
約0.5mT未満の感知磁場において、ワイヤ403a、403b、403cのそれぞれによって生成される磁場は、ワイヤの見かけの帯磁率χapp,wireにワイヤの体積Vwireを乗じたものに比例し、反磁性コア405によって生成される磁気モーメントは、コア405の見かけの帯磁率χapp,coreにその体積Vcoreを乗じたもの比例する。ワイヤ403a、403b、403cの組み合わせに対する量χapp,wire.3.Vwireは、約4.6×10-8m3であると計算することができ、反磁性コア405に対する量Xapp,coreVcoreは、約-1.0×10-12m3であると計算することができる。したがって、感知磁場において強磁性ワイヤ403a、403b、403cによって生成される複合磁場は、反磁性コア405によって生成される磁気モーメント(これは比較すると無視できる)よりも約45,000倍大きい。
【0177】
1.5TのMRI磁場にさらされると、強磁性ワイヤ403a、403b、403cの各々は、誘導の飽和に達した。したがって、3つのワイヤ403a、403b、403cの複合磁気モーメントは、以下の式で与えられる:
【数15】
式中、B
Sはワイヤの飽和誘導であり、μ
0は自由空間の透磁率であり、V
wireは強磁性ワイヤの1つの体積である。この実施例では、各ワイヤは0.55TのB
S値を有し、3m
ferromagnet=2.1×10
-6Am
2である。反磁性コア405は飽和せず、その磁気モーメントは、以下の式で与えられる:
【数16】
式中、B
0はMRI磁場であり、χ
appは反磁性コア405の見かけの磁化率であり、V
coreは反磁性コアの体積である。このマーカー405について、m
diamagnet=-1.2×10
-6Am
2である。1.5TのMRI磁場下で反磁性コア405と強磁性ワイヤ403a、403b、403cの磁気モーメントとを比較すると、反磁性コア405の磁気モーメントは、強磁性ワイヤ403a、403b、403cの磁気モーメントの約57%である。
【0178】
図6(a)は、等高線
図507であり、MRIスキャナのx-z平面にわたる3TのMRI磁場B
0からの磁束B
yにおける偏差|B-B
0|
yを示し、これは、MRI磁場中に
図5のマーカー401が存在することに起因する。等高線は、マーカー401の近傍における一定の磁束密度偏差の線を表す。上述のように、B
critは、|B-B
0|
yの大きさであり、それより上では、ボクセルがMRI画像の不正確なスライスにマッピングされる。したがって、B
critにおける等高線は、MRI磁場における
図5のマーカー401に対してx-z平面において生成され得るアーチファクトの輪郭を表し、マーカー401の軸方向長さはy軸に沿って配向される。等高線509によって示される0.6μTのB
critの値は、理論的予測と実験データとの間の合理的に良好な一致を与えることが見出されているが、当業者は、B
critが特定のMRI装置の構成(例えば、スライス厚)に依存することを理解するであろう。したがって、
図6(a)は、B
critの異なる値についてアーチファクトサイズがどのように変化するかを示すために、|B-B
0|
yの異なる値における他の等高線を示す。
【0179】
比較のため、
図6(b)は、等高線
図511であり、反磁性コア405が存在しない場合の強磁性配線403a、403b、403cの同じ構成について、同じMRI磁場B
0において生成される磁束密度B
yにおける偏差|B-B
0|
yを示す。等高線513はB
crit=0.6μTを表す。
図6(a)のx-z平面におけるアーチファクトのサイズの低減に対する反磁性コアの効果は自明である。
【0180】
図7は、本開示の第2の実施形態による異なる埋込型マーカー601の概略図である。上述の
図5のマーカー401と同様に、マーカー601は、3つの強磁性ワイヤ603a、603b、603cを含むが、変形例では、より少ないまたはより多いワイヤが使用され得る。しかしながら、この実施形態では、強磁性ワイヤ603a、603b、603cは、反磁性コア605を通って軸方向に延在する。反磁性コア605は、
図5の反磁性コア405と実質的に同じサイズおよび形状であり、実質的に同じ特性を有する。したがって、コア605は、χ=-1,66×10
-4の体積磁化率値を有する静水圧プレスグラファイトの円筒である。円筒は、約1mmの直径および約8mmの長さを有する。強磁性ワイヤ603a、603b、603cは、
図5に示すワイヤ403a、403b、403cと実質的に同じ長さおよびゲージである。したがって、強磁性ワイヤ603a、603b、603cは、約72,000の初期体積磁化率値を有する。各ワイヤ403a、403b、403cは、約16μmの直径および約8mmの長さを有し、ワイヤの長さは反磁性コア405の長さに実質的に一致する。
【0181】
図8は、
図6(a)と同様の等高線
図707であり、MRI磁場中に
図7のマーカー601が存在することに起因するMRIスキャナのx-z平面にわたる3TのMRI磁場B
0からの磁束B
yにおける偏差|B-B
0|
yを示し、マーカー601の軸方向長さは、y軸に配向される。
図6(a)および6(b)におけるのと同様に、B
critに対応し得る0.6μTにおける等高線709は、したがって、MRI磁場におけるマーカー601のx-z平面において生成され得るアーチファクトの輪郭を表す。
図6(a)のアーチファクトと
図8のアーチファクトとを比較することによって、x-z平面におけるアーチファクトの全体的なサイズおよび形状は、強磁性ワイヤ403a、403b、403c;603a、603b、603cが反磁性コア405の外側に配置されるかまたは内側に配置されるかに応じて有意に変化しないことが分かる。
【0182】
図9は、本開示の第3の実施形態による別の埋込型マーカー801の概略図である。マーカー801は、本明細書に開示されるように、静水圧プレスグラファイトまたは別の好適な反磁性材料の実質的に円筒形の反磁性コア805を備え、約1.15mmの直径および約8mmの長さを有する。反磁性コア805は、約-1.2×10
-4の磁化率を有する。マーカー801は、鉄-コバルト系合金の単一の螺旋コイルワイヤ803からなる強磁性要素をさらに備える。本明細書に開示されるように、他の強磁性材料が使用されてもよいことが理解されるであろう。ワイヤ803は約15μmの直径を有し、螺旋は約8mm(すなわち、コア805とほぼ同じ長さ)の長さを有する。螺旋は約1.2mmのピッチを有する。この実施形態の変形例では、複数の強磁性ワイヤが、多重螺旋、たとえば二重螺旋または三重螺旋の形態で反磁性コア805の周りに巻き付けられ得る。これにより、本明細書に開示されるように、同量のワイヤが使用される場合でも、マーカーの感度を増加させるためにピッチをより長くすることが可能になる。
【0183】
図10(a)は、
図6(a)および
図8と同様の等高線
図907であり、MRI磁場中に
図9のマーカー801が存在することに起因するMRIスキャナのx-z平面にわたる3TのMRI磁場B
0からの磁束B
yにおける偏差|B-B
0|
yを示し、マーカー801の軸方向長さは、y軸に配向される。
図6(a)、6(b)および8におけるのと同様に、B
critに対応し得る0.6μTにおける等高線909は、したがって、MRI磁場におけるマーカー801のx-z平面において生成され得るアーチファクトの輪郭を表す。比較のために、
図10(b)は、反磁性コア805が存在しない場合の、同じ強磁性螺旋803に対する同じMRI磁場B
0において生成される磁束密度B
yにおける偏差|B-B
0|
yを示す。等高線913はB
crit=0.6μTを表す。
図10(a)のx-z平面におけるアーチファクトのサイズの低減に対する反磁性コアの効果は自明である。
【0184】
図11は、本開示の第4の実施形態によるさらに別の埋込型マーカー1001の概略図である。マーカー1001は、静水圧プレスグラファイトの実質的に円筒形の反磁性コア905を有し、約1.15mmの直径および約8mmの長さを有する。反磁性コア1005は、約-1.2×10
-4の磁化率を有する。反磁性コア1005は、3つの強磁性要素1004a、1004b、1004cを支持する円筒形の外面1006を有する。各強磁性要素1004a、1004b、1004cは、強磁性鉄-コバルト系材料のワイヤのコイルを含み、ワイヤは約15μmの直径を有する。
図11に示すように、コイルは、それぞれのワイヤ1004a、1004b、1004cが互いに接触しない三重螺旋1003を形成するように配置される。好適には、ワイヤは、外面1005上の所定の位置に接着されるか、または他の方法で保持されてもよい。三重螺旋の各コイルは、約1.80mmのピッチを有する。三重螺旋1003の各コイルは、約4.4ターンのワイヤを含み、三重螺旋1003の総ターン数は約14.2である。三重螺旋に使用される強磁性ワイヤの全長は約52mmである。
【0185】
約1.5TのMRI磁場において、3つの強磁性ワイヤ1004a、1004b、1004cの総磁気モーメントは、約2.1×10
-6A.m
2であると計算される。一方、反磁性コア1005の磁気モーメントは、約-1.2×10
-6A.m
2である。したがって、1.5TのMRI磁場における本実施形態のマーカー1001の正味磁気モーメントは、約8.7×10
-7A.m
2である。
図12(a)は、等高線
図1107であり、MRI磁場中に
図11のマーカー1001が存在することに起因するMRIスキャナのx-z平面にわたる3TのMRI磁場B
0からの磁束密度B
yにおける偏差|B-B
0|
yを示す。等高線は、マーカー1001の近傍における一定の磁束偏差の線を表す。上述のように、B
critは|B-B
0|
yの大きさであり、それを超えるとボクセルがMRI画像の不正確なスライスにマッピングされる。したがって、B
critにおける等高線は、MRI磁場における
図11のマーカー1001に対してx-z平面において生成され得るアーチファクトの輪郭を表し、マーカー1001の軸方向長さは、y軸に沿って配向される。等高線1109によって示される0.6μTのB
critの値は、理論的予測と実験データとの間の合理的に良好な一致を与えることが見出されているが、当業者は、B
critが特定のMRI装置の構成(例えば、スライス厚)に依存することを理解するであろう。したがって、
図12(a)は、B
critの異なる値についてアーチファクトサイズがどのように変化するかを示すために、|B-B
0|
yの異なる値における他の輪郭を示す。
【0186】
比較のために、
図12(b)は、反磁性コア1005が存在しない場合の、同じ構成の強磁性ワイヤ1004a、1004b、1004cについて、同じMRI磁場B
0において生成される磁束密度B
yにおける偏差|B-B
0|
yを示す。等高線1113はB
crit=0.6μTを表す。
図12(a)のx-z平面におけるアーチファクトのサイズの低減に対する反磁性コアの効果は自明である。
【0187】
三重螺旋1003を使用する場合、螺旋のコイルがマーカーの軸方向長さに沿ってその方向のより大きい成分を有するので、所与の軸方向長さ内で単一の螺旋と同量のワイヤが使用される場合でも、マーカーの軸方向感度を増加させるためにピッチをより長くすることが可能になる。約1.80mmのピッチは、より長いピッチに起因する良好な軸方向感知性能を有しながら、十分な横方向感知性能を提供することが見出されている。この実施形態では、マーカーの軸方向の感知距離は約34mmであり、横方向の感知距離は約34mmである。
【0188】
図13は、本開示の第5の実施形態による、マーカーを製造する方法1100を示すフローチャートである。第1の工程1101において、本方法は、少なくとも1つの強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素を提供する工程を含む。第2の工程1103において、本方法は、1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素を、印加磁場の存在下で相互に対向する磁気モーメントを生成するように、互いに並置して構成および配置する工程を含む。少なくとも1つの反磁性要素によって生成される磁気モーメントの強度は、少なくとも1つの強磁性要素によって生成される磁気モーメントの強度に対して、約0.5mT未満の感知磁場において相対的に非常に低く、それによって、少なくとも1つの強磁性要素によって生成される磁気モーメントがプローブによって検出されることが可能になり、1.5T以上のMRI磁場では相対的に高く、それによって、少なくとも1つの強磁性要素の磁気モーメントを相殺することによってMRI画像上でマーカーによって生成されるアーチファクトのサイズが最小になる。
【0189】
次いで、必要とされる形状に構成された強磁性材料は、円筒形ハウジング内に封入され得る。円筒形ハウジングは、マーカーの配置を可能にするために注入可能であることが好ましい。したがって、好適には、ハウジングは、上記で開示したように、例えば18G~12Gの狭いゲージの針を通して展開可能であるような最大直径を有することができる。マーカーは、他の材料内に包装されてもよく、またはマーカーにコーティングを施して、マーカーが生体適合性かつ堅牢性であることを確保してもよい。マーカーは、例えば、ニチノール、チタン、ステンレス鋼、または他の生体適合性合金から作製された管内に封入されてもよく、材料は、好ましくは、非磁性であり、比較的低い導電率を有する。低導電率は、106シーメンス未満の導電率を含んでもよい。適切なコーティング材料としては、Invar(登録商標)、FEP、Parylene(登録商標)、PTFE、ETFE、PE、PET、PVCまたはシリコーンなどのポリマーコーティング、またはエポキシ系封入剤が挙げられる。
【0190】
当業者は、上述の実施形態の特徴が、本開示の範囲内にある他の実施形態において組み合わされ得ることを理解するであろう。
【0191】
前述の説明では、既知の明らかなまたは予測可能な等価物を有する整数または要素が言及されているが、そのような等価物は、個々に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。本開示の真の範囲を決定するために特許請求の範囲が参照されるべきであり、特許請求の範囲は、任意のそのような均等物を包含すると解釈されるべきである。また、有利、便利などとして説明される本開示の整数または特徴は任意選択であり、独立請求項の範囲を限定しないことも、読者によって理解されるであろう。さらに、そのような任意選択の整数または特徴は、本開示のいくつかの実施形態において有益であり得るが、望ましくないことがあり、したがって他の実施形態には存在しないことがあることを理解されたい。
【国際調査報告】