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特表2024-520616交流電場とトラスツズマブの組合せを用いて処置するための組成物及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】交流電場とトラスツズマブの組合せを用いて処置するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240517BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240517BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240517BHJP
   A61K 41/00 20200101ALI20240517BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240517BHJP
   A61K 51/10 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K41/00
A61P1/00
A61K51/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574240
(86)(22)【出願日】2022-05-31
(85)【翻訳文提出日】2023-11-30
(86)【国際出願番号】 IB2022055092
(87)【国際公開番号】W WO2022254340
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】63/195,655
(32)【優先日】2021-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519275847
【氏名又は名称】ノボキュア ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ウン・ホ・キム
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4C084AA11
4C084NA05
4C084ZA661
4C084ZA662
4C084ZB261
4C084ZB262
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB11
4C085EE01
4C085HH11
4C085KA03
4C085LL18
(57)【要約】
交流電場を、ある周波数で一定期間、それを必要とする対象の標的部位に印加する工程;及びトラスツズマブを、それを必要とする対象の標的部位に投与する工程を含む、それを必要とする対象を処置する方法が開示される。交流電場を、ある周波数で一定期間、それを必要とする対象の標的部位に印加する工程;及びトラスツズマブを、それを必要とする対象の標的部位に投与する工程を含み、交流電場を印加することなく標的部位にトラスツズマブを投与する場合と比較して、トラスツズマブの蓄積が標的部位で増加する、それを必要とする対象の標的部位でトラスツズマブの蓄積を増加させる方法が開示される。交流電場を、ある周波数で一定期間、それを必要とする対象の標的部位に印加する工程;及びトラスツズマブを、それを必要とする対象の標的部位に投与する工程を含み、がん細胞の増殖が阻害される、又はがん細胞のアポトーシスを増加させる、それを必要とする対象の標的部位でがん細胞の増殖を阻害する、又はがん細胞のアポトーシスを増加させる方法が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)交流電場を、ある周波数で一定期間、それを必要とする対象の標的部位に印加する工程;及び
b)トラスツズマブを、それを必要とする対象の標的部位に投与する工程
を含む、それを必要とする対象を処置する方法。
【請求項2】
a)交流電場を、ある周波数で一定期間、それを必要とする対象の標的部位に印加する工程;及び
b)トラスツズマブを、それを必要とする対象の標的部位に投与する工程
を含む、それを必要とする対象の標的部位でトラスツズマブの蓄積を増加させる方法であって、
交流電場を印加することなく標的部位にトラスツズマブを投与する場合と比較して、トラスツズマブの蓄積が標的部位で増加する、方法。
【請求項3】
a)交流電場を、ある周波数で一定期間、それを必要とする対象の標的部位に印加する工程;及び
b)トラスツズマブを、それを必要とする対象の標的部位に投与する工程
を含む、それを必要とする対象の標的部位で乳がん細胞又は胃がん細胞の増殖を阻害する方法であって、
乳がん細胞又は胃がん細胞の増殖が阻害される、方法。
【請求項4】
乳がん細胞又は胃がん細胞の増殖の阻害の増加が、交流電場が単独で投与される場合、抗体が単独で投与される場合、又は処置が対象に施されない場合の標的部位の乳がん細胞又は胃がん細胞の増殖と比較される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
a)交流電場を、ある周波数で一定期間、それを必要とする対象の標的部位に印加する工程;及び
b)トラスツズマブを、それを必要とする対象の標的部位に投与する工程
を含む、それを必要とする対象の標的部位で乳がん細胞又は胃がん細胞のアポトーシスを増加させる方法であって、
乳がん細胞又は胃がん細胞のアポトーシスが増加される、方法。
【請求項6】
乳がん細胞又は胃がん細胞のアポトーシスの増加が、交流電場が単独で投与される場合、トラスツズマブが単独で投与される場合、又は処置が対象に施されない場合の標的部位の細胞アポトーシスと比較される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
標的部位が、1つ又は複数の乳がん細胞又は胃がん細胞を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
交流電場が、抗体の投与前、投与後、又は投与と同時に印加される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
交流電場を印加する工程が、所与の時期の少なくとも1時間前に開始する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
抗体が検出可能な薬剤を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
検出可能な薬物がフルオロフォアである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
交流電場の周波数が100から500kHzの間である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
交流電場の周波数が150kHzである、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
交流電場が0.5から4V/cm RMSの間の場の強度を有する、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
交流電場が0.9V/cm RMSの場の強度を有する、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
トラスツズマブが、腫瘍内に、頭蓋内に、脳室内に、くも膜下腔内に、硬膜外に、硬膜内に、血管内に、静脈内に(標的化若しくは非標的化)、動脈内に、筋肉内に、皮下に、腹腔内に、経口で、鼻腔内に、腫瘍内注射(例えば、手術若しくは生検の際のコンピュータ断層撮影ガイド下)を介して又は吸入を介して、投与される、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
トラスツズマブが医薬組成物中で投与される、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
それを必要とする対象が、乳がん又は胃がんから選択されるがんを有する、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
がんが乳がんであり、対象がトラスツズマブ耐性を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
がんがHER2陽性がんである、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
pAKT、pERK、及びpHER2の発現が低減される、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
トラスツズマブが、交流電場の印加前、印加と同時、又は印加後に投与される、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
化学療法剤を対象に投与する工程を更に含む、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
トラスツズマブが治療有効量で投与される、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電場を、ある周波数で一定期間、それを必要とする対象の標的部位に印加する工程;及びトラスツズマブを、それを必要とする対象の標的部位に投与する工程を含む、それを必要とする対象を処置する方法に関する。また、本発明は、交流電場を、ある周波数で一定期間、それを必要とする対象の標的部位に印加する工程;及びトラスツズマブを、それを必要とする対象の標的部位に投与する工程を含み、交流電場を印加することなく標的部位にトラスツズマブを投与する場合と比較して、トラスツズマブの蓄積が標的部位で増加する、それを必要とする対象の標的部位でトラスツズマブの蓄積を増加させる方法に関する。更には、本発明は、交流電場を、ある周波数で一定期間、それを必要とする対象の標的部位に印加する工程;及びトラスツズマブを、それを必要とする対象の標的部位に投与する工程を含み、がん細胞の増殖が阻害される、又はがん細胞のアポトーシスを増加させる、それを必要とする対象の標的部位でがん細胞の増殖を阻害する、又はがん細胞のアポトーシスを増加させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米国女性における死亡率増加の理由の1つは、乳がん症例が増え続けていることである。米国がん協会の2015年人口調査によれば、約60,290例の乳癌症例(非浸潤性)が確認されていると推定された。更に、すべての悪性腫瘍のうち、乳がんは7~10%を占めており、中国では毎年約3~4%増加している。また、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)チロシンキナーゼ受容体遺伝子の活性化の増加は、早期リンパ節陽性乳がんの原因となるマイナスの予後因子であることが確認されている。したがって、HER2遺伝子の機序及び作用の解明が進むと、この疾患の分類、予後、並びに処置の再構築につながる可能性がある。更に、細胞の生存、増殖、血管新生、浸潤及び転移を含む様々な細胞プロセスをモジュレートする傾向がある様々な乳がんで15~20%高発現されたHER2遺伝子が確認されている。最近、早期及び進行性HER2陽性乳がんの臨床転帰を有意に改善する、トラスツズマブ(ハーセプチン)として知られるヒト化モノクローナル抗ERBB2抗体が発見された。トラスツズマブは、HER2の二量体化を阻害することによりHER2に影響を及ぼし、その結果、成長シグナルに影響を与えて、最終的にHER2受容体遺伝子の発現を遮断する。この薬物はまた、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)/AKT/mTOR経路及びRAS/RAF/MEK/MAPキナーゼ(MAPK)経路を標的とする。この他に、トラスツズマブのFc部分は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)機能に関与している。この抗体は高い初期有効率を示したが、転移性乳がんのステージに罹患している患者は、抗体に対する一次耐性を生じた。したがって、この処置は、この症例では効果がなかった。このため、この欠点がHER2陽性乳がん患者の処置において、より大きな課題となっている。
【0003】
腫瘍治療電場(TTFields又はTTFと適切には略される)は、体内のがん細胞の増殖を抑制するために低強度電場とともに用いられる交流電場を含む治療である。この治療は、ヒト体内に電場を誘導し、がん性細胞の増殖及び浸潤を抑制することを目的としている。この処置はアポトーシスを誘導することにより、がん性細胞を死滅させる能力を示す。FDAは、再発性多形神経膠芽腫又はGBMに罹患している患者の処置にTTFieldsを印加することを承認した。この技術は、患者の平均寿命を延ばすことが判明している。新たに診断されたGBMの症例の場合、この技術は、手術前にテモゾロミドを組み合わせることができる(www.accessdata.fda.gov/scripts/cdrh/cfdocs/cfpma/pma.cfm?id=P100034)(www.accessdata.fda.gov/scripts/cdrh/cfdocs/cfpma/pma.cfm?id=P100034S013)。米国臨床腫瘍学会(ASCO)は、この処置を、その斬新なアプローチ、有効性、低毒性プロファイルから、がん処置における進歩であるとみなしている。全米総合がんネットワーク(National Comprehensive Cancer Network (NCCN))は、新たにGBMと診断され、パフォーマンス状態が良好な患者に対するカテゴリー2Aの処置として、TTFieldsを推奨している(www.nccn.org/professionals/physician_gls/f_guidelines.asp)。典型的に用いられている方法(化学療法及び放射線治療)とは対照的に、TTFは、痛み、吐き気、疲労、又は下痢等の副作用を引き起こさない。それでもなお、この技術には、長期間の電極使用により引き起こされる局所的皮膚発疹を含む、試験で指摘されたいくつかの欠点を伴う。しかし、TTFの有効性は、化学療法又は放射線治療と同程度であると考えられている。その後、HER2陽性乳がんの代表的細胞株に対するTTFとトラスツズマブの組合せ抗腫瘍効果が、腫瘍異種移植片モデルと並んで研究された。その結果は、TTF治療がトラスツズマブによって誘発される成長阻害を有意に増強できることを示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7,565,205号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】www.accessdata.fda.gov/scripts/cdrh/cfdocs/cfpma/pma.cfm?id=P100034
【非特許文献2】www.accessdata.fda.gov/scripts/cdrh/cfdocs/cfpma/pma.cfm?id=P100034S013
【非特許文献3】www.nccn.org/professionals/physician_gls/f_guidelines.asp
【非特許文献4】Remington: The Science and Practice of Pharmacy (19th ed.) ed.A.R.Gennaro、Mack Publishing Company、Easton、PA 1995
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
交流電場を、ある周波数で一定期間、それを必要とする対象の標的部位に印加する工程;及びトラスツズマブを、それを必要とする対象の標的部位に投与する工程を含む、それを必要とする対象を処置する方法が開示される。
【0007】
交流電場を、ある周波数で一定期間、それを必要とする対象の標的部位に印加する工程;及びトラスツズマブを、それを必要とする対象の標的部位に投与する工程を含み、交流電場を印加することなく標的部位にトラスツズマブを投与する場合と比較して、トラスツズマブの蓄積が標的部位で増加する、それを必要とする対象の標的部位でトラスツズマブの蓄積を増加させる方法が開示される。
【0008】
交流電場を、ある周波数で一定期間、それを必要とする対象の標的部位に印加する工程;及びトラスツズマブを、それを必要とする対象の標的部位に投与する工程を含み、がん細胞の増殖が阻害される、それを必要とする対象の標的部位でがん細胞の増殖を阻害する方法が開示される。
【0009】
交流電場を、ある周波数で一定期間、それを必要とする対象の標的部位に印加する工程;及びトラスツズマブを、それを必要とする対象の標的部位に投与する工程を含み、がん細胞のアポトーシスが増加される、それを必要とする対象の標的部位でがん細胞のアポトーシスを増加させる方法が開示される。
【0010】
開示される方法及び組成物の追加的有利点は、続く記載に一部記載され、一部は記載から理解される又は開示される方法及び組成物の実行によって得ることができる。開示される方法及び組成物の有利点は、添付の特許請求の範囲に特に示される要素及び組合せの手段によって理解され、達成される。前述の概要及び続く詳細な記載の両方は例示であり、説明のためのみであり、特許請求される本発明の限定ではないことは理解される。
【0011】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付の図は、開示される方法及び組成物のいくつかの実施形態を例示し、開示される方法及び組成物の原理を記載と共に説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】HER2陽性細胞の生存率に対するトラスツズマブ処置の効果を示す図である。図1A:TRZはHER2陽性細胞の生存率を用量依存的に抑制した。
図1B】HER2陽性細胞の生存率に対するトラスツズマブ処置の効果を示す図である。図1B:指定した量のTRZで処置したJimt1細胞とBT474細胞について、MTTアッセイを使用して細胞生存率を評価した; * p<0.05。
図2A】HER2陽性細胞の生存率に対するTTFを用いたトラスツズマブ処置の効果を示す図である。図2A:Jimt1細胞をジメチルスルホキシド(DMSO、ビヒクル)、TRZ(5μg/ml)、TTF(1.5V/cm)の組合せで48時間処置し、形態学的変化を位相差顕微鏡(倍率X400)で観察した。
図2B】HER2陽性細胞の生存率に対するTTFを用いたトラスツズマブ処置の効果を示す図である。図2B:細胞生存率をトリパンブルー排除アッセイにより確認した。
図2C】HER2陽性細胞の生存率に対するTTFを用いたトラスツズマブ処置の効果を示す図である。図2C:コロニー形成アッセイは、指定した処置で7~9日間処置したJimt1細胞を使用して実施した(n=3);* p<0.05, ** p<0.01, *** p<0.001。
図3A】BT474細胞株ヒト乳がん異種移植片モデルにおけるTTFの抗トラスツズマブ耐性腫瘍効果を示す図である。図3A:異種移植片としてBT474R細胞を有するヌードマウスを、対照(生理食塩水、「CTL」)、トラスツズマブ(「TRZ」)、TTF、又はトラスツズマブとTTFの組合せ(「TTF+TRZ」)を使用して処置した。
図3B】BT474細胞株ヒト乳がん異種移植片モデルにおけるTTFの抗トラスツズマブ耐性腫瘍効果を示す図である。図3B:腫瘍体積に対する処置効果。
図3C】BT474細胞株ヒト乳がん異種移植片モデルにおけるTTFの抗トラスツズマブ耐性腫瘍効果を示す図である。図3C:Ki-67の代表的なヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色。データは平均値±平均値の標準誤差で示す(n=5)、*P<0.05。
図4A】組合せ処置がトラスツズマブ耐性HER2陽性細胞株において細胞アポトーシスを誘導することを示す図である。図4A:Jimt1細胞をDMSO、TRZ(5μg/ml)、TTF、又はその組合せで48時間処置した。免疫ブロット法(又はウェスタンブロット法)は、pHER2、HER2、切断型PARP、Bcl-2、及びβ-アクチンに対する抗体を用いて細胞溶解物(30μg)に対して実施した。
図4B】組合せ処置がトラスツズマブ耐性HER2陽性細胞株において細胞アポトーシスを誘導することを示す図である。図4B:代表的なTUNEL。データは平均値±平均値の標準誤差で示した(n=10)、*P<0.05。
図4C】組合せ処置がトラスツズマブ耐性HER2陽性細胞株において細胞アポトーシスを誘導することを示す図である。図4C:TUNEL陽性細胞を染色し、In cell Analyzerを使用して10Xの対物レンズで画像化した。アポトーシス細胞は薄い灰色で示されている。
図5】ヒト表皮の成長因子受容体2及び下流シグナル伝達経路に対するTTFの影響を示す図である。異種移植片におけるpAKT、pERK、及びpHER2の発現は、免疫組織化学を使用して検査した。* p<0.05、** p<0.01。
図6】TTFがトラスツズマブの浸透を増加させることを示す図である。蛍光画像は、In cell Analyzerを使用して、10xの対物レンズを用いて得た。チャネルは以下のとおりである:核についてはDAPI(青色で表示)、Alexa 488-TRZ(緑色で表示)、及び血管検出用のローダミンレクチン(赤色で表示)。腫瘍血管からのTRZの浸透は、各腫瘍の周辺領域及び中心領域からの様々なROI内の血管から強度測定することによりラインプロファイリングでプロットした。更に、曲線下の面積は、2つの群のそれぞれの腫瘍について3つの腫瘍の10切片から算出した。* p<0.05。
【発明を実施するための形態】
【0013】
開示される方法及び組成物は、本明細書に含まれる具体的な実施形態及び実施例の続く詳細な記載、並びに図面及びそれらに先行する及び続く記載の参照によって更に容易に理解される。
【0014】
開示される方法及び組成物が、他に別段の規定のない限り、具体的な合成方法、具体的な分析技術又は特定の試薬に、それらが変更する場合があることから限定されないことは理解される。本明細書において使用される用語は、具体的な実施形態を記載するのみの目的のためであり、限定することを意図しないことも理解される。
【0015】
本開示の方法及び組成物のために使用され得る、それと併せて使用され得る、その調製において使用され得る又はその産生物である材料、組成物及び成分が開示される。これら及び他の材料は本明細書において開示され、これらの材料の組合せ、サブセット、相互作用、群等が開示される場合に、これらの化合物それぞれの種々の個々の及び集合的な組合せ及び並べ替えの具体的な言及が明確に開示されない場合があるが、それぞれが具体的に検討され、本明細書に記載されることは理解される。それにより、分子A、B及びCのクラスが分子D、E及びFのクラスと共に開示され、分子A~Dの組合せの例が開示される場合に、それぞれが個々に列挙されていなくても、それぞれは個々に及び集合的に検討される。それによりこの例では、組合せA~E、A~F、B~D、B~E、B~F、C~D、C~E及びC~Fのそれぞれは、具体的に検討され、A、B及びC; D、E、及びF;並びに組合せ例A~Dの開示から開示されるとみなされるべきである。同様にこれらの任意のサブセット又は組合せも具体的に検討され、開示される。それにより例えばA~E、B~F、及びC~Eのサブグループは、具体的に検討されA、B及びC; D、E及びF;並びに組合せ例A~Dの開示から開示されるとみなされるべきである。この概念は、これだけに限らないが、開示される組成物を作製する及び使用する方法における工程を含む本出願のすべての態様に適用される。それにより、実施され得る種々の追加的工程がある場合、これらの追加的工程それぞれが開示された方法の任意の具体的な実施形態又は実施形態の組合せと共に実施され得る、及びそのような組合せのそれぞれが具体的に検討され、開示されたとみなされるべきであることは理解される。
【0016】
A.定義
開示される方法及び組成物は、それらが変化する場合があることから、記載される特定の方法、プロトコル及び試薬に限定されないことは理解される。本明細書において使用される用語が特定の実施形態を記載するのみの目的のためであり、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図しないことも理解される。
【0017】
本明細書において及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上明確に示されていない限り複数の参照物も含むことは注目されるべきである。それにより、例えば「抗体(an antibody)」に言及することは、複数のそのような抗体を含み、「細胞(the cell)」に言及することは1つ又は複数の細胞及び当業者に周知のその等価物に言及することである等。
【0018】
本明細書において使用される場合「標的部位」は、対象又は患者内にある又は存在する特定の部位又は位置である。例えば「標的部位」は、これだけに限らないが、細胞(例えば、がん細胞)、細胞の集団、器官、組織又は腫瘍を指し得る。したがって、句「標的細胞」は、標的部位を指して使用されてよく、ここで標的部位は細胞である。一部の態様では、「標的細胞」はがん細胞であり得る。一部の態様では、標的部位であり得る器官として、これだけに限らないが、腹部器官(例えば、胃、腸)又は乳房が挙げられる。一部の態様では、標的部位又は標的細胞であり得る細胞又は細胞の集団として、これだけに限らないが、乳房組織細胞又は腹部の細胞が挙げられる。一部の態様では、「標的部位」は、腫瘍標的部位であり得る。
【0019】
「腫瘍標的部位」は、1つ若しくは複数のがん細胞を含む若しくはそれに隣接する、1つ若しくは複数の腫瘍細胞を以前含んだ、又は1つ若しくは複数の腫瘍細胞を含むと疑われる対象又は患者内にある又は存在する部位又は位置である。例えば、腫瘍標的部位は、転移する傾向がある対象又は患者内にある又は存在する部位又は位置を指し得る。追加的に標的部位又は腫瘍標的部位は、対象又は患者内にある又は存在する原発腫瘍の切除の部位又は位置を指し得る。追加的に標的部位又は腫瘍標的部位は、対象又は患者内にある又は存在する原発腫瘍の切除に隣接する部位又は位置を指し得る。
【0020】
本明細書において使用される場合、1つ又は複数の「交流電場」は、対象、対象から得られた試料又は対象若しくは患者内の特定の位置(例えば、細胞等の標的部位)に送達される非常に低い強度の方向性(directional)中間周波数交流電場を指す。一部の態様では、交流電場は、単一方向性又は複数方向性であってよい。一部の態様では、交流電場は、標的部位内に垂直場を発生させる2対のトランスデューサーアレイを通じて送達され得る。例えばOptune(商標)システム(交流電場送達システム)について、1対の電極は標的部位の左及び右(LR)に配置され、他方の対の電極は標的部位の前側及び後側(AP)に配置されるこれらの2方向(すなわち、LR及びAP)で場を循環させることは、最大範囲の細胞方向を標的化することを確実にする。
【0021】
本明細書において使用される場合、腫瘍標的部位に印加される「交流電場」は、「腫瘍治療電場」又は「TTField」と称され得る。TTFieldsは、分裂中期の際に正確な微小管アセンブリを妨害し、分裂終期、細胞質分裂又は続く静止期に細胞を最終的に破壊することから、抗有糸分裂がん処置様式として確立されている。TTFieldsは、固形腫瘍を標的化し、TTFieldsの教示についてその全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,565,205号に記載されている。
【0022】
in-vivo及びin-vitro研究は、TTFields治療の有効性は、電場の強度が増加するにつれて増加することを示している。したがって、標的部位又は標的細胞における強度を増加させるために対象のアレイ配置を最適化することは、Optuneシステムのための標準的技法である。アレイ配置の最適化は、「経験則」(例えば、できるだけ標的部位又は標的細胞の近くで対象にアレイを置くこと)、患者の身体の形状、標的部位の大きさ及び/又は標的部位若しくは細胞位置を表す測定によって実施され得る。インプットとして使用される測定値は、画像データ由来であってよい。画像データは、例えば、単一光子放射断層撮影(SPECT)画像データ、X-線コンピュータ断層撮影(X線CT)データ、磁気共鳴画像法(MRI)データ、ポジトロン断層撮影(PET)データ、光学機器(例えば、写真用カメラ、電荷結合素子(CCD)カメラ、赤外線カメラ等)によって取り込まれ得るデータ等の任意の種類の映像データを含むことが意図される。ある特定の実行では、画像データは、3Dスキャナー(例えば、点群データ)から得られた又はそれによって生成された3Dデータを含み得る。最適化は、アレイの位置の関数として電場が標的部位又は標的細胞内でどのように分布しているかの理解に依存する場合があり、一部の態様では、様々な患者の頭部内での電気的特性の分布における多様性を考慮する。
【0023】
用語「対象」は、投与の標的、例えば動物を指す。それにより、開示される方法の対象は、哺乳動物等の脊椎動物であってよい。例えば対象は、ヒトであり得る。用語は、特定の年齢又は性別を意味しない。対象は、「個体」又は「患者」と互換的に使用され得る。例えば、投与の対象は、交流電場のレシピエントを意味する場合がある。例えば、投与の対象は、早期及び進行性HER2陽性乳がんを有する対象であり得る。
【0024】
「処置」によって、乳がん若しくは胃がんを有する、又は乳がん若しくは胃がんを発症する易罹患性が増加しているヒト又は他の哺乳動物(例えば、動物モデル)等の対象に、疾患若しくは感染の影響を予防する若しくはその悪化を遅らせる、又は乳がん若しくは胃がんの影響を部分的に若しくは完全に元に戻すために、交流電場及びベクター等の治療を投与する又は印加することが意味される。例えば、乳がん又は胃がんを有する対象を処置することは、対象の細胞に治療を送達することを含み得る。
【0025】
「予防」によって、対象が乳がん又は胃がんを発症する機会を最小化又は減少させることが意味される。
【0026】
本明細書において使用される場合、用語「投与する」及び「投与」は、標的部位又は対象にトラスツズマブを提供するための任意の方法を指す。そのような方法は、当業者に十分周知であり、これだけに限らないが:経口投与、経皮投与、吸入による投与、鼻腔投与、局所投与、腟内投与、点眼、耳内投与、脳内投与、直腸投与、舌下投与、頬側投与、並びに静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与及び皮下投与等の注射剤を含む非経口投与が挙げられる。投与は、継続的又は断続的であってよい。種々の態様では、調製物は治療的に投与されてよい;すなわち、乳がん又は胃がんを処置するために投与される。更に種々の態様では、調製物は予防的に投与;すなわち、乳がん又は胃がんの予防のために投与されてよい。一態様では、当業者は対象を処置するために投与の有効な用量、有効なスケジュール又は有効な経路を決定できる。一部の態様では、投与することは曝露すること又は印加することを含む。したがって、一部の態様では、標的部位若しくは対象を交流電場(alternating electrical field)に曝露すること、又は標的部位若しくは対象に交流電場を印加することは、標的部位又は対象に交流電場を投与することを意味する。
【0027】
本明細書において使用される場合、「治療有効量」とは、個体又は対象に、治療上の利益を提供する組成物、又はトラスツズマブの量である。例えば、トラスツズマブの治療有効量は、乳がん又は胃がんの症状の処置、緩和、改善、軽減、緩和、発症の予防、遅延、進行の抑制、重症度を軽減、及び/又は発生率の軽減を行う量である。一実施形態では、治療有効量のトラスツズマブは、本明細書に記載されるもの等、乳がん又は胃がんの1つ又は複数の指標若しくは症状の改善をもたらす、又は悪化を予防若しくは遅延させる。本明細書において使用される場合、乳がん又は胃がんを有する対象を「処置する」ことは、治療有効量のトラスツズマブを投与することを含む。
【0028】
「任意選択」又は「任意選択で」は、続いて記載される事象、環境又は材料が、生じる又は存在する場合としない場合があり、記載が事象、環境又は材料が生じる又は存在する場合及びそれが生じない又は存在しない場合を含むことを意味する。
【0029】
範囲は、本明細書において「約」ある特定の値から及び/又は「約」別の特定の値として表される場合がある。そのような範囲が表される場合、ある特定の値から及び/又は他の特定の値までの範囲が、文脈上特に明記されていない限り、同様に具体的に検討され、開示されたとみなされる。同様に、先行する「約」の使用によって値がおよそとして表される場合、文脈上特に明記されていない限り、開示されるとみなされるべきである別の具体的に検討される実施形態を特定の値が形成することは理解される。範囲の各端点は、文脈上特に明記されていない限り、他方の端点との関連において及び他方の端点とは独立に、の両方で重要であることは更に理解される。最終的に、明確に開示された範囲内のすべての個々の値及びそれに含まれる値の部分的な範囲も、文脈上特に明記されていない限り、具体的に検討され、開示されているとみなされるべきであることは理解されるべきである。特定の場合においてこれらの実施形態の一部又はすべてが明確に開示されているかどうかに関わらず、前述のことは適用される。
【0030】
他に定義されない限り、本明細書で使用するすべての技術的及び科学的用語は、開示される方法及び組成物が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似の又は等価の任意の方法及び材料は、本方法及び組成物の実行又は検査において使用され得るが、特に有用な方法、デバイス及び材料が記載される。本明細書において引用される刊行物及びそれらが引用する材料は、本明細書に参照により具体的に組み込まれる。本明細書の記載は、先行する発明を理由に本発明が、そのような開示に先行する権利がないことの承認として解釈されない。いかなる参考文献も先行技術を構成すると承認されない。参考文献の考察はそれらの著者が主張することを述べており、出願人は引用された文献の正確性及び妥当性を検証する権利を保持している。多数の刊行物が本明細書において参照されているが、これらの文献のいずれかが当技術分野における共通の一般的知識の一部を形成することの承認をそのような参考文献が構成しないことは明白に理解される。
【0031】
本明細書の記載及び特許請求の範囲の全体を通じて、語「含む(comprise)」及び「含んでいる(comprising)」及び「含む(comprises)」等の語の変化形は、「これだけに限らないが含む」を意味し、例えば他の添加物、成分、整数又は工程を除外することを意図しない。特に、1つ若しくは複数の工程又は操作を含んでいるとして述べられている方法において、各工程が列挙されているものを含む(工程が「から構成される(consisting of)」等の限定する用語を含まない限り)ことが具体的に検討され、各工程が工程において列挙されていない、例えば他の添加物、成分、整数又は工程を除外することを意図しないことを意味する。
【0032】
B.交流電場
本明細書において開示される方法は、交流電場を含む。一部の態様では、本明細書において開示される方法において使用される交流電場は、腫瘍治療電場である。一部の態様では、交流電場は、交流電場が印加される細胞又は状態の種類に応じて変動し得る。一部の態様では、交流電場は、対象の身体に置かれた1つ又は複数の電極を通じて印加され得る。一部の態様では、2対以上の電極がある場合もある。例えば、アレイは、患者の全面/背面及び側面に置かれてよく、本明細書において開示されるシステム及び方法を用いて使用され得る。一部の態様では、2対の電極が使用される場合、交流電場は対の電極の間で交流であってよい。例えば、第1の対の電極は対象の前面及び背面に置かれてよく、第2の対の電極は対象のいずれかの側面に置かれてよく、次いで交流電場は印加されてよく、前面及び背面の電極の間に、次いで側面から側面の電極の間で交替してよい。
【0033】
一部の態様では、交流電場の周波数は、100kHzから1MHzの間である。一部の態様では、交流電場の周波数は、100から500kHzの間である。交流電場の周波数は、これだけに限らないが50から500kHzの間、100から500kHzの間、25kHzから1MHzの間、50から190kHzの間、25から190kHzの間、180から220kHzの間又は210から400kHzの間であり得る。一部の態様では、交流電場の周波数は、50kHz、100kHz、150kHz、200kHz、250kHz、300kHz、350kHz、400kHz、450kHz、500kHz又はこれらの間の任意の周波数での電場であり得る。一部の態様では、交流電場の周波数は、約200kHzから約400kHz、約250kHzから約350kHzであり、約300kHzであり得る。
【0034】
一部の態様では、交流電場の場の強度は、0.5から4V/cm RMSの間であり得る。一部の態様では、交流電場の場の強度は1から4V/cm RMSであり得る。一部の態様では、様々な場の強度が使用され得る(例えば、0.1から10V/cmの間)。一部の態様では、場の強度は1.75V/cm RMSであり得る。一部の実施形態では、場の強度は少なくとも1V/cm RMSである。一部の態様では、場の強度は、少なくとも0.9V/cm RMSであり得る。他の実施形態では、例えば、2つ以上の周波数を同時に組み合わせて、及び/又は2つ以上の周波数を異なる時期に印加して、場の強度の組合せが印加される。
【0035】
一部の態様では、交流電場は、0.5時間から72時間の範囲の様々な間隔で印加され得る。一部の態様では、様々な持続時間が使用され得る(例えば、0.5時間から14日間の間)。一部の態様では、交流電場の印加は、定期的に反復され得る。例えば、交流電場は、2時間の持続時間で毎日印加され得る。
【0036】
一部の態様では、曝露は、少なくとも6時間、少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも36時間、少なくとも48時間又は少なくとも72時間又はそれ以上持続し得る。
【0037】
本開示の方法は、1つ又は複数の交流電場を細胞に又は対象に印加することを含む。一部の態様では、交流電場は、標的部位又は腫瘍標的部位に印加される。交流電場を細胞に印加する場合、これは、細胞を含む対象に交流電場を印加することをしばしば指し得る。したがって、対象の標的部位に交流電場を印加することは、細胞に交流電場を印加することを生じる。
【0038】
C.トラスツズマブ
それを必要とする対象の標的部位に投与されるトラスツズマブ抗体が開示される。一部の態様では、トラスツズマブは、交流電場を用いた組合せ治療又は処置として投与される。
【0039】
1つ又は複数のトラスツズマブ抗体を含む組成物が開示される。
【0040】
一部の態様では、本組成物は、有効成分として、本明細書に記載のトラスツズマブ、及び薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤を含む、又はそれらから本質的になる、又はそれらからなる医薬組成物(例えば、製剤、調製物、医薬)であり得る。
【0041】
薬学的に許容される担体又は希釈剤を含むトラスツズマブの組成物及び製剤が開示される。例えば、トラスツズマブ及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が開示される。
【0042】
例えば、本明細書に記載の組成物は、薬学的に許容される担体を含み得る。「薬学的に許容される」によって、活性成分のいかなる分解も最小化しかつ対象におけるいかなる有害な副作用も最小化するように選択される、当業者に周知である材料又は担体が意味される。担体の例として、ジミリストイルホスファチジル(DMPC)、リン酸緩衝生理食塩水又は多胞性リポソームが挙げられる。例えば、PG:PC:コレステロール:ペプチド又はPC:ペプチドは、本発明において担体として使用され得る。他の好適な薬学的に許容される担体及びそれらの配合物は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy (19th ed.) ed. A.R. Gennaro、Mack Publishing Company、Easton、PA 1995に記載されている。典型的には、適切な量の薬学的に許容される塩は、配合物において配合物を等張にするために使用される。薬学的に許容される担体の他の例として、これだけに限らないが、生理食塩水、リンゲル溶液及びブドウ糖溶液が挙げられる。溶液のpHは、約5から約8又は約7から約7.5であり得る。さらなる担体として、組成物を含有する固形疎水性ポリマーの半透性マトリックス等の徐放調製物が挙げられ、そのマトリックスは、成型品の形態、例えば、フィルム、ステント(血管再建術手順の際に血管に埋入される)、リポソーム又は微小粒子の形態である。ある特定の担体が、例えば投与の経路及び投与される組成物の濃度に応じて更に好ましい場合があることは当業者に明らかである。最も典型的にはこれらは、滅菌水、生理食塩水及び生理学的pHの緩衝液等の溶液が挙げられる、ヒトへの薬物の投与のための標準的担体である。
【0043】
医薬組成物は、本発明のポリペプチド、ペプチド、核酸、ベクターの意図する活性が損なわれない限り、担体、増粘剤、希釈剤、緩衝液、保存剤等も含み得る。医薬組成物は、抗菌剤、抗炎症剤、麻酔剤等の1つ又は複数の活性成分も(本発明の組成物に加えて)含み得る。本明細書に記載される方法において、本開示の組成物の細胞への送達は、種々の機序を介してであってよい。医薬組成物は、局所又は全身性処置が望ましいかどうか、及び処置される領域に応じて多数の方法で投与され得る。
【0044】
1.組成物の送達
非経口投与の調製物として、滅菌水性又は非水性溶液、懸濁剤及び乳剤が挙げられる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油等の植物油及びオレイン酸エチル等の注射可能な有機エステルである。水性担体として、生理食塩水及び緩衝媒体を含む、水、アルコール性/水性溶液、乳剤又は懸濁剤が挙げられる。非経口ビヒクルとして、塩化ナトリウム溶液、リンゲルブドウ糖、ブドウ糖及び塩化ナトリウム、乳酸リンゲル又は固定油が挙げられる。静脈内ビヒクルとして、補充液及び栄養補充薬、電解質補充薬(リンゲルブドウ糖に基づくもの等)等が挙げられる。例えば抗菌剤、抗酸化剤、キレート薬剤及び不活性ガス等の保存剤及び他の添加物も存在してよい。
【0045】
最適な投与のための配合物として、軟膏、ローション剤、クリーム剤、ゲル剤、滴下剤、座薬、スプレー剤、液剤及び粉剤が挙げられる。従来の医薬用担体、水性の、粉末の又は油性の基材、増粘剤等が必要である又は望ましい場合がある。
【0046】
経口投与のための組成物として、粉剤若しくは顆粒剤、水若しくは非水性媒体中の懸濁剤若しくは溶液、カプセル、サシェ(sachet)又は錠剤が挙げられる。増粘剤、香味剤、希釈剤、乳化剤、分散補助剤(dispersing aid)又は結合剤は望ましい場合がある。一部の組成物は、塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硝酸、チオシアン酸、硫酸及びリン酸等の無機酸、並びにギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸及びフマル酸等の有機酸との反応によって、又は水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム等の無機塩基並びにモノ-、ジ-、トリアルキル及びアリールアミン及び置換エタノールアミン等の有機塩基との反応によって形成された薬学的に許容される酸又は塩付加塩として投与される可能性もある。
【0047】
D.処置方法
交流電場を、ある周波数で一定期間、それを必要とする対象の標的部位に印加する工程;及びトラスツズマブを、それを必要とする対象の標的部位に投与する工程を含む、それを必要とする対象を処置する方法が開示される。
【0048】
一部の態様では、標的部位は細胞を含む。例えば、細胞は、これだけに限らないが、がん細胞であり得る。一部の態様では、がん細胞は、これだけに限らないが、乳がん細胞又は胃がん細胞であり得る。
【0049】
一部の態様では、交流電場は、トラスツズマブの投与前、投与後、又は投与と同時に印加される。一部の態様では、トラスツズマブは、交流電場の印加前、印加と同時、又は印加後に投与される。トラスツズマブを投与する前の交流電場の印加は、トラスツズマブの投与の数秒前、数分前、又は数時間前を含み得る。トラスツズマブの投与後の交流電場の印加は、トラスツズマブの投与の数秒後、数分後、数時間後、又は数日後を含み得る。トラスツズマブの投与と同時の交流電場の印加は、トラスツズマブの投与前又は投与後の数秒又は数分を含み得る。一部の態様では、交流電場とトラスツズマブを同時に印加することは、交流電場が印加されている間にトラスツズマブを投与することを含み得る。一部の態様では、交流電場を印加する工程は、所与の時期の少なくとも1時間前に開始する。
【0050】
一部の態様では、トラスツズマブは検出可能な薬剤を含む。本明細書において使用される場合、検出可能な薬剤又は標識は、トラスツズマブと直接的又は間接的に結合することが可能であり、直接的又は間接的に測定可能で検出可能なシグナルをもたらす任意の分子である。抗体にコンジュゲート又はカップリングするための多くのこうした標識は、当業者に周知である。検出剤の例は、これだけに限らないが、放射性同位体、蛍光分子(フルオロフォア)、リン光分子、酵素、抗体、及びリガンドであり得る。
【0051】
場合によっては、標識は、これだけに限らないが、同位体マーカー、比色バイオセンサー、又は蛍光標識であり得る。例えば、蛍光マーカーは、これだけに限らないが、緑色蛍光タンパク質(GFP)又はローダミン蛍光タンパク質(RFP)であり得る。他の標識は、ビオチン、ストレプトアビジン、西洋ワサビペルオキシダーゼ、又はルシフェラーゼを含み得る。適切な蛍光標識の他の例は、これだけに限らないが、フルオレセイン(FITC)、5,6-カルボキシメチルフルオレセイン、テキサスレッド、ニトロベンゾ-2-オキサ-1,3-ジアゾール-4-イル(NBD)、クマリン、塩化ダンシル、ローダミン、4'-6-ジアミジノ-2-フェニリノドール(DAPI)、並びにシアニン色素Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5及びCy7を含む。好ましい蛍光標識は、フルオレセイン(5-カルボキシフルオレセイン-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)及びローダミン(5,6-テトラメチルローダミン)である。コンビナトリアル・マルチカラーコーディング(combinatorial multicolor coding)に好ましい蛍光標識は、FITC及びシアニン色素Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5及びCy7である。これらの蛍光の吸収極大及び発光極大は、それぞれ、FITC(490nm;520nm)、Cy3(554nm;568nm)、Cy3.5(581nm;588nm)、Cy5(652nm;672nm)、Cy5.5(682nm;703nm)及びCy7(755nm;778nm)であるため、それらを同時に検出することができる。蛍光標識は、オレゴン州ユージーンのMolecular Probes社及びオハイオ州クリーブランドのResearch Organics社を含む、様々な発売元から入手することができる。
【0052】
一部の態様では、交流電場の周波数は、本明細書に記載のいずれかの周波数である。一部の態様では、交流電場の周波数は、100から500kHzの間である。例えば、一部の態様では、交流電場の周波数150kHzである。
【0053】
一部の態様では、交流電場は、本明細書に記載されるもののいずれかの場の強度を有する。一部の態様では、交流電場は、0.5から4V/cm RMSの間の場の強度を有する。例えば、一部の態様では、交流電場は、0.9V/cm RMSの場の強度を有する。
【0054】
一部の態様では、トラスツズマブは、腫瘍内に、頭蓋内に、脳室内に、くも膜下腔内に、硬膜外に、硬膜内に、血管内に、静脈内に(標的化若しくは非標的化)、動脈内に、筋肉内に、皮下に、腹腔内に、経口で、鼻腔内に、腫瘍内注射(例えば、手術若しくは生検の際のコンピュータ断層撮影ガイド下)を介して又は吸入を介して、投与される。一部の態様では、トラスツズマブは、医薬組成物中で投与される。例えば、医薬組成物は、本明細書に記載されるもののいずれかであり得る。
【0055】
一部の態様では、それを必要とする対象は、がんを有する。一部の態様では、がんは、乳がん又は胃がんであり得る。例えば、がんは、HER2陽性がんであり得る。
【0056】
一部の態様では、pAKT、pERK、及びpHER2発現のうちの1つ又は複数は、交流電場とトラスツズマブを用いた処置の結果として低減される。
【0057】
交流電場を、ある周波数で一定期間、それを必要とする対象の標的部位に印加する工程;トラスツズマブを、それを必要とする対象の標的部位に投与する工程を含み、第2の治療剤を対象に投与する工程を更に含む、それを必要とする対象を処置する方法が開示される。例えば、第2の治療剤は、化学療法剤であり得る。化学療法剤は、これだけに限らないが、アルキル化剤、代謝拮抗剤、アントラサイクリン、抗腫瘍性抗生物質、モノクローナル抗体、白金、又は植物アルカロイドであり得る。
【0058】
一部の態様では、トラスツズマブは、治療有効量で投与される。
【0059】
E.抗体の蓄積を増加させる方法
交流電場を、ある周波数で一定期間、それを必要とする対象の標的部位に印加する工程;及びトラスツズマブを、それを必要とする対象の標的部位に投与する工程を含み、交流電場を印加することなく標的部位にトラスツズマブを投与する場合と比較して、トラスツズマブの蓄積が標的部位で増加する、それを必要とする対象の標的部位でトラスツズマブの蓄積を増加させる方法が開示される。
【0060】
一部の態様では、トラスツズマブの蓄積の増加は、交流電場を印加しない標的部位でのトラスツズマブの量よりも多い任意の量である。一部の態様では、トラスツズマブの蓄積の増加は、交流電場を印加しない標的部位でのトラスツズマブの量よりも1倍、2倍、3倍、又はそれ以上の量である。
【0061】
一部の態様では、標的部位は細胞を含む。例えば、細胞はがん細胞であり得る。一部の態様では、がん細胞は、これだけに限らないが、乳がん細胞若しくは胃がん細胞、又は任意のHer2陽性細胞であり得る。
【0062】
一部の態様では、交流電場は、トラスツズマブの投与前、投与後、又は投与と同時に印加される。一部の態様では、トラスツズマブは、交流電場の印加前、印加と同時、又は印加後に投与される。トラスツズマブを投与する前の交流電場の印加は、トラスツズマブの投与の数秒前、数分前、又は数時間前を含み得る。トラスツズマブの投与後の交流電場の印加は、抗体の投与の数秒後、数分後、数時間後、又は数日後を含み得る。トラスツズマブの投与と同時の交流電場の印加は、トラスツズマブの投与前又は投与後の数秒又は数分を含み得る。一部の態様では、交流電場とトラスツズマブを同時に印加することは、交流電場が印加されている間にトラスツズマブを投与することを含み得る。一部の態様では、交流電場を印加する工程は、所与の時期の少なくとも1時間前に開始する。
【0063】
一部の態様では、トラスツズマブは検出可能な薬剤を含む。本明細書において使用される場合、検出可能な薬剤又は標識は、トラスツズマブと直接的又は間接的に結合することが可能であり、直接的又は間接的に測定可能で検出可能なシグナルをもたらす任意の分子である。抗体にコンジュゲート又はカップリングするための多くのこうした標識は、当業者に周知である。検出剤の例は、これだけに限らないが、放射性同位体、蛍光分子(フルオロフォア)、リン光分子、酵素、抗体、及びリガンドであり得る。
【0064】
場合によっては、標識は、これだけに限らないが、同位体マーカー、比色バイオセンサー、又は蛍光標識であり得る。例えば、蛍光マーカーは、これだけに限らないが、緑色蛍光タンパク質(GFP)又はローダミン蛍光タンパク質(RFP)であり得る。他の標識は、ビオチン、ストレプトアビジン、西洋ワサビペルオキシダーゼ、又はルシフェラーゼを含み得る。適切な蛍光標識の他の例は、これだけに限らないが、フルオレセイン(FITC)、5,6-カルボキシメチルフルオレセイン、テキサスレッド、ニトロベンゾ-2-オキサ-1,3-ジアゾール-4-イル(NBD)、クマリン、塩化ダンシル、ローダミン、4'-6-ジアミジノ-2-フェニリノドール(DAPI)、並びにシアニン色素Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5及びCy7を含む。好ましい蛍光標識は、フルオレセイン(5-カルボキシフルオレセイン-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)及びローダミン(5,6-テトラメチルローダミン)である。コンビナトリアル・マルチカラーコーディングに好ましい蛍光標識は、FITC及びシアニン色素Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5及びCy7である。これらの蛍光の吸収極大及び発光極大は、それぞれ、FITC(490nm;520nm)、Cy3(554nm;568nm)、Cy3.5(581nm;588nm)、Cy5(652nm;672nm)、Cy5.5(682nm;703nm)及びCy7(755nm;778nm)であるため、それらを同時に検出することができる。蛍光標識は、オレゴン州ユージーンのMolecular Probes社及びオハイオ州クリーブランドのResearch Organics社を含む、様々な発売元から入手することができる。
【0065】
一部の態様では、交流電場の周波数は、本明細書に記載のいずれかの周波数である。一部の態様では、交流電場の周波数は、100から500kHzの間である。例えば、一部の態様では、交流電場の周波数150kHzである。
【0066】
一部の態様では、交流電場は、本明細書に記載されるもののいずれかの場の強度を有する。一部の態様では、交流電場は、0.5から4V/cm RMSの間の場の強度を有する。例えば、一部の態様では、交流電場は、0.9V/cm RMSの場の強度を有する。
【0067】
一部の態様では、トラスツズマブは、腫瘍内に、頭蓋内に、脳室内に、くも膜下腔内に、硬膜外に、硬膜内に、血管内に、静脈内に(標的化若しくは非標的化)、動脈内に、筋肉内に、皮下に、腹腔内に、経口で、鼻腔内に、腫瘍内注射(例えば、手術若しくは生検の際のコンピュータ断層撮影ガイド下)を介して又は吸入を介して、投与される。一部の態様では、トラスツズマブは、医薬組成物中で投与される。例えば、医薬組成物は、本明細書に記載されるもののいずれかであり得る。
【0068】
一部の態様では、それを必要とする対象は、がんを有する。一部の態様では、がんは、乳がん又は胃がんであり得る。例えば、がんは、HER2陽性がんであり得る。
【0069】
一部の態様では、pAKT、pERK、及びpHER2発現のうちの1つ又は複数は、標的部位でのトラスツズマブ蓄積の増加の結果として低減される。
【0070】
交流電場を、ある周波数で一定期間、それを必要とする対象の標的部位に印加する工程;及びトラスツズマブを、それを必要とする対象の標的部位に投与する工程であって、交流電場を印加することなく標的部位にトラスツズマブを投与する場合と比較して、トラスツズマブの蓄積が標的部位で増加する工程;及び対象への第2の治療剤を投与する工程を更に含む、それを必要とする対象の標的部位でトラスツズマブの蓄積を増加させる方法が開示される。例えば、第2の治療剤は、化学療法剤であり得る。化学療法剤は、これだけに限らないが、アルキル化剤、代謝拮抗剤、アントラサイクリン、抗腫瘍性抗生物質、モノクローナル抗体、白金、又は植物アルカロイドであり得る。
【0071】
一部の態様では、トラスツズマブは、治療有効量で投与される。
【0072】
F.がん細胞の増殖の阻害方法
交流電場を、ある周波数で一定期間、それを必要とする対象の標的部位に印加する工程;及びトラスツズマブを、それを必要とする対象の標的部位に投与する工程を含み、がん細胞の増殖が阻害される、それを必要とする対象の標的部位でがん細胞の増殖を阻害する方法が開示される。
【0073】
一部の態様では、がん細胞の増殖の阻害の増加は、交流電場が単独で投与される場合、トラスツズマブが単独で投与される場合、又は処置が対象に施されない場合の標的部位のがん細胞の増殖と比較される。一部の態様では、がん細胞の増殖は、交流電場を印加しない場合のトラスツズマブの投与と比較して、阻害される。一部の態様では、がん細胞の増殖の阻害における増加がある。例えば、がん細胞増殖の阻害における増加は、交流電場を印加せずに標的部位にトラスツズマブを投与した場合と比較される。一部の態様では、がん細胞増殖の阻害における増加は、交流電場を印加しない標的部位でのがん細胞増殖の阻害の量よりも多い任意の量である。一部の態様では、がん細胞増殖の阻害は、交流電場を印加しないがん細胞増殖の阻害の量よりも1倍、2倍、3倍、又はそれ以上の量である。
【0074】
一部の態様では、標的部位は細胞を含む。例えば、細胞はがん細胞であり得る。一部の態様では、がん細胞は、これだけに限らないが、乳がん細胞又は胃がん細胞であり得る。例えば、一部の態様では、標的部位はがん細胞である。
【0075】
一部の態様では、交流電場は、トラスツズマブの投与前、投与後、又は投与と同時に印加される。一部の態様では、トラスツズマブは、交流電場の印加前、印加と同時、又は印加後に投与される。トラスツズマブを投与する前の交流電場の印加は、トラスツズマブの投与の数秒前、数分前、又は数時間前を含み得る。トラスツズマブの投与後の交流電場の印加は、トラスツズマブの投与の数秒後、数分後、数時間後、又は数日後を含み得る。トラスツズマブの投与と同時の交流電場の印加は、トラスツズマブの投与前又は投与後の数秒又は数分を含み得る。一部の態様では、交流電場と抗体を同時に印加することは、交流電場が印加されている間にトラスツズマブを投与することを含み得る。一部の態様では、交流電場を印加する工程は、所与の時期の少なくとも1時間前に開始する。
【0076】
一部の態様では、トラスツズマブは検出可能な薬剤を含む。本明細書において使用される場合、検出可能な薬剤又は標識は、トラスツズマブと直接的又は間接的に結合することが可能であり、直接的又は間接的に測定可能で検出可能なシグナルをもたらす任意の分子である。抗体にコンジュゲート又はカップリングするための多くのこうした標識は、当業者に周知である。検出剤の例は、これだけに限らないが、放射性同位体、蛍光分子(フルオロフォア)、リン光分子、酵素、抗体、及びリガンドであり得る。
【0077】
場合によっては、標識は、これだけに限らないが、同位体マーカー、比色バイオセンサー、又は蛍光標識であり得る。例えば、蛍光マーカーは、これだけに限らないが、緑色蛍光タンパク質(GFP)又はローダミン蛍光タンパク質(RFP)であり得る。他の標識は、ビオチン、ストレプトアビジン、西洋ワサビペルオキシダーゼ、又はルシフェラーゼを含み得る。適切な蛍光標識の他の例は、これだけに限らないが、フルオレセイン(FITC)、5,6-カルボキシメチルフルオレセイン、テキサスレッド、ニトロベンゾ-2-オキサ-1,3-ジアゾール-4-イル(NBD)、クマリン、塩化ダンシル、ローダミン、4'-6-ジアミジノ-2-フェニリノドール(DAPI)、並びにシアニン色素Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5及びCy7を含む。好ましい蛍光標識は、フルオレセイン(5-カルボキシフルオレセイン-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)及びローダミン(5,6-テトラメチルローダミン)である。コンビナトリアル・マルチカラーコーディングに好ましい蛍光標識は、FITC及びシアニン色素Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5及びCy7である。これらの蛍光の吸収極大及び発光極大は、それぞれ、FITC(490nm;520nm)、Cy3(554nm;568nm)、Cy3.5(581nm;588nm)、Cy5(652nm;672nm)、Cy5.5(682nm;703nm)及びCy7(755nm;778nm)であるため、それらを同時に検出することができる。蛍光標識は、オレゴン州ユージーンのMolecular Probes社及びオハイオ州クリーブランドのResearch Organics社を含む、様々な発売元から入手することができる。
【0078】
一部の態様では、交流電場の周波数は、本明細書に記載のいずれかの周波数である。一部の態様では、交流電場の周波数は、100から500kHzの間である。例えば、一部の態様では、交流電場の周波数150kHzである。
【0079】
一部の態様では、交流電場は、本明細書に記載されるもののいずれかの場の強度を有する。一部の態様では、交流電場は、0.5から4V/cm RMSの間の場の強度を有する。例えば、一部の態様では、交流電場は、0.9V/cm RMSの場の強度を有する。
【0080】
一部の態様では、トラスツズマブは、腫瘍内に、頭蓋内に、脳室内に、くも膜下腔内に、硬膜外に、硬膜内に、血管内に、静脈内に(標的化若しくは非標的化)、動脈内に、筋肉内に、皮下に、腹腔内に、経口で、鼻腔内に、腫瘍内注射(例えば、手術若しくは生検の際のコンピュータ断層撮影ガイド下)を介して又は吸入を介して、投与される。一部の態様では、トラスツズマブは、医薬組成物中で投与される。例えば、医薬組成物は、本明細書に記載されるもののいずれかであり得る。
【0081】
一部の態様では、それを必要とする対象は、がんを有する。一部の態様では、がんは、乳がん又は胃がんであり得る。例えば、がんは、HER2陽性がんであり得る。
【0082】
一部の態様では、pAKT、pERK、及びpHER2発現のうちの1つ又は複数は、標的部位でのトラスツズマブ蓄積の増加の結果として低減される。
【0083】
交流電場を、ある周波数で一定期間、それを必要とする対象の標的部位に印加する工程;トラスツズマブを、それを必要とする対象の標的部位に投与する工程であって、がん細胞の増殖が阻害される工程;及び第2の治療剤を対象に投与する工程を更に含む、それを必要とする対象の標的部位でがん細胞の増殖を阻害する方法が開示される。例えば、第2の治療剤は、化学療法剤であり得る。化学療法剤は、これだけに限らないが、アルキル化剤、代謝拮抗剤、アントラサイクリン、抗腫瘍性抗生物質、モノクローナル抗体、白金、又は植物アルカロイドであり得る。
【0084】
一部の態様では、トラスツズマブは、治療有効量で投与される。
【0085】
G.がん細胞のアポトーシスを増加させる方法
交流電場を、ある周波数で一定期間、それを必要とする対象の標的部位に印加する工程;及びトラスツズマブを、それを必要とする対象の標的部位に投与する工程であって、がん細胞のアポトーシスを増加させる工程を含む、それを必要とする対象の標的部位でがん細胞のアポトーシスを増加させる方法が開示される。
【0086】
一部の態様では、がん細胞のアポトーシスの増加は、交流電場が単独で投与される場合、トラスツズマブが単独で投与される場合、又は処置が対象に施されない場合の標的部位の細胞アポトーシスと比較される。
【0087】
一部の態様では、がん細胞のアポトーシスの増加は、交流電場を印加しない場合のトラスツズマブの投与と比較して、阻害される。一部の態様では、がん細胞のアポトーシスの増加がある。例えば、がん細胞のアポトーシスの増加は、交流電場を印加せずに標的部位にトラスツズマブを投与した場合と比較される。一部の態様では、がん細胞アポトーシスの増加は、交流電場を印加しない標的部位でのがん細胞のアポトーシスの増加の量よりも多い任意の量である。一部の態様では、がん細胞のアポトーシスの増加は、交流電場を印加しないがん細胞のアポトーシスの増加の量よりも1倍、2倍、3倍、又はそれ以上の量である。
【0088】
一部の態様では、標的部位は細胞を含む。例えば、細胞はがん細胞であり得る。一部の態様では、がん細胞は、乳がん細胞又は胃がん細胞であり得る。例えば、一部の態様では、標的部位はがん細胞である。
【0089】
一部の態様では、交流電場は、トラスツズマブの投与前、投与後、又は投与と同時に印加される。一部の態様では、トラスツズマブは、交流電場の印加前、印加と同時、又は印加後に投与される。トラスツズマブを投与する前の交流電場の印加は、トラスツズマブの投与の数秒前、数分前、又は数時間前を含み得る。トラスツズマブの投与後の交流電場の印加は、トラスツズマブの投与の数秒後、数分後、数時間後、又は数日後を含み得る。トラスツズマブの投与と同時の交流電場の印加は、トラスツズマブの投与前又は投与後の数秒又は数分を含み得る。一部の態様では、交流電場と抗体を同時に印加することは、交流電場が印加されている間にトラスツズマブを投与することを含み得る。一部の態様では、交流電場を印加する工程は、所与の時期の少なくとも1時間前に開始する。
【0090】
一部の態様では、トラスツズマブは検出可能な薬剤を含む。本明細書において使用される場合、検出可能な薬剤又は標識は、トラスツズマブと直接的又は間接的に結合することが可能であり、直接的又は間接的に測定可能で検出可能なシグナルをもたらす任意の分子である。抗体にコンジュゲート又はカップリングするための多くのこうした標識は、当業者に周知である。検出剤の例は、これだけに限らないが、放射性同位体、蛍光分子(フルオロフォア)、リン光分子、酵素、抗体、及びリガンドであり得る。
【0091】
場合によっては、標識は、これだけに限らないが、同位体マーカー、比色バイオセンサー、又は蛍光標識であり得る。例えば、蛍光マーカーは、これだけに限らないが、緑色蛍光タンパク質(GFP)又はローダミン蛍光タンパク質(RFP)であり得る。他の標識は、ビオチン、ストレプトアビジン、西洋ワサビペルオキシダーゼ、又はルシフェラーゼを含み得る。適切な蛍光標識の他の例は、これだけに限らないが、フルオレセイン(FITC)、5,6-カルボキシメチルフルオレセイン、テキサスレッド、ニトロベンゾ-2-オキサ-1,3-ジアゾール-4-イル(NBD)、クマリン、塩化ダンシル、ローダミン、4'-6-ジアミジノ-2-フェニリノドール(DAPI)、並びにシアニン色素Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5及びCy7を含む。好ましい蛍光標識は、フルオレセイン(5-カルボキシフルオレセイン-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)及びローダミン(5,6-テトラメチルローダミン)である。コンビナトリアル・マルチカラーコーディングに好ましい蛍光標識は、FITC及びシアニン色素Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5及びCy7である。これらの蛍光の吸収極大及び発光極大は、それぞれ、FITC(490nm;520nm)、Cy3(554nm;568nm)、Cy3.5(581nm;588nm)、Cy5(652nm;672nm)、Cy5.5(682nm;703nm)及びCy7(755nm;778nm)であるため、それらを同時に検出することができる。蛍光標識は、オレゴン州ユージーンのMolecular Probes社及びオハイオ州クリーブランドのResearch Organics社を含む、様々な発売元から入手することができる。
【0092】
一部の態様では、交流電場の周波数は、本明細書に記載のいずれかの周波数である。一部の態様では、交流電場の周波数は、100から500kHzの間である。例えば、一部の態様では、交流電場の周波数150kHzである。
【0093】
一部の態様では、交流電場は、本明細書に記載されるもののいずれかの場の強度を有する。一部の態様では、交流電場は、0.5から4V/cm RMSの間の場の強度を有する。例えば、一部の態様では、交流電場は、0.9V/cm RMSの場の強度を有する。
【0094】
一部の態様では、トラスツズマブは、腫瘍内に、頭蓋内に、脳室内に、くも膜下腔内に、硬膜外に、硬膜内に、血管内に、静脈内に(標的化若しくは非標的化)、動脈内に、筋肉内に、皮下に、腹腔内に、経口で、鼻腔内に、腫瘍内注射(例えば、手術若しくは生検の際のコンピュータ断層撮影ガイド下)を介して又は吸入を介して、投与される。一部の態様では、トラスツズマブは、医薬組成物中で投与される。例えば、医薬組成物は、本明細書に記載されるもののいずれかであり得る。
【0095】
一部の態様では、それを必要とする対象は、乳がん又は胃がんから選択されるがんを有する。例えば、がんは、HER2陽性がんであり得る。
【0096】
一部の態様では、pAKT、pERK、及びpHER2発現のうちの1つ又は複数は、標的部位でのトラスツズマブの蓄積の増加の結果として低減される。
【0097】
交流電場を、ある周波数で一定期間、それを必要とする対象の標的部位に印加する工程;トラスツズマブを、それを必要とする対象の標的部位に投与する工程であって、がん細胞のアポトーシスを増加させる工程を含み、第2の治療剤を対象に投与する工程を更に含む、それを必要とする対象の標的部位でがん細胞のアポトーシスを増加させる方法が開示される。例えば、第2の治療剤は、化学療法剤であり得る。化学療法剤は、これだけに限らないが、アルキル化剤、代謝拮抗剤、アントラサイクリン、抗腫瘍性抗生物質、モノクローナル抗体、白金、又は植物アルカロイドであり得る。
【0098】
一部の態様では、トラスツズマブは、治療有効量で投与される。
【0099】
H.キット
上に記載される材料及び他の材料は、本開示の方法を実施する、又は実施を補助するための有用なキットとして任意の好適な組合せで併せて包装され得る。所与のキットにおけるキットの構成要素は、本開示の方法における合わせた使用のために設計され、適合される場合に有用である。例えば、抗体及びOptuneシステム等の交流電場を送達するための1つ又は複数の材料を含むキットが開示される。
【実施例
【0100】
(A.実施例1)
腫瘍治療電場はトラスツズマブ耐性乳がんの増殖を効果的に克服することができる
ヒト上皮成長受容体2、すなわちHER2は、女性の悪性乳がん性腫瘍の約15~20%を構成する、最も発現された陰性受容体の1つである。HER2の保有率は、乳がん及びその根底のがん性細胞のプロセス、構造及び増殖に対して都合が悪く好ましくない結果をもたらす。トラスツズマブは、比較的最近の根拠に基づいたヒト化抗体であり、HER2陽性乳がんに対する処置の構築において有効であることが判明している。この薬物は、放射線治療又は化学療法と組み合わせて、体内のHER2遺伝子を調節解除する。しかし、がんの進行ステージにある進行腫瘍に罹患している患者は、単独使用されるトラスツズマブ処置に対して相当の耐性を示す。逆に、腫瘍治療電場(TTFields又はTTF)をがん治療に組み入れると、HER2遺伝子を薬物に感作させることにより、トラスツズマブ処置の計画の機能が復活する。その結果、トラスツズマブが処置中のがん性細胞の増殖及び毒性レベルを制限し続けることが促進される。この研究は、BT474細胞を介したin vivoとin vitroの両方で、このペアリングの状況及び効果を評価している。TTFieldsは電磁境界を伝導し、正弦波の放射を発生させてHER2遺伝子構造を操作する。この実施例で従った方法はまた、トリプトファンブルー又はクリスタルバイオレット等の溶液によって遺伝子細胞培養物及びその生存率を検査し、これによってある特定の被験者を実験に送る場合と送らない場合がある。ウェスタンブロット試験及びIHCは、BT474細胞における抗体及び陰性受容体の存在を確認する。これらの手順は、本質的に研究の目的である、腫瘍のトラスツズマブ耐性の性質を克服する処置計画の策定に貢献する。この実施例は、TTFsとラスツズマブの健全な組合せが、危険性のある遺伝子構造の二量体化及び発現を阻害することができることを示している。
【0101】
1.材料及び方法
i.電場の実験装置
TTFsは、高電圧の機能的発生装置と増幅器に取り付けられた一対の絶縁ワイヤーを介して生成され、0~800Vの範囲の正弦波信号が発生した[17]。その結果、0.9V/cmの場の強度が印加され、周波数は150kHzであった。場の強度は、臨床現場での使用のため、0.9V/cmに保持した。次に、細胞を100mmの皿にプレーティングし、照射処置の目的のために、湿度及び5% CO2雰囲気下の37℃で、70~80%コンフルエントに達するまでインキュベートした。
【0102】
ii.細胞培養
BT-474乳管がん細胞及びJIMT-1(ACC-589)乳管がん細胞は、American Type Tissue Culture Collectionから入手した。BT-474細胞及びJIMT-1細胞は、10%熱不活化ウシ胎児血清(FBS)、2mmol/L-グルタミン、及び1%ペニシリンG-ストレプトマイシンを補充したDMEM-F12中で維持した。細胞を、5% CO2で37℃の温度に維持した。
【0103】
iii.細胞生存率アッセイ
細胞生存率は、トリパンブルー排除アッセイによって測定した。等量のトリパンブルー試薬を細胞懸濁液に添加し、生細胞のパーセンテージを顕微鏡によって評価した。アッセイは三連で実施した。
【0104】
iv.コロニー形成アッセイ(CFA)
細胞を、最終濃度5μmol/Lでのトラスツズマブ曝露の6時間後にTTFieldsに供し、その後、細胞を48時間インキュベートした。14~20日後、コロニーを0.4%クリスタルバイオレット(Sigma社、セントルイス、ミズーリ州、米国)で染色した。プレーティング効率(PE)は、特定の培養条件下でコロニーを形成した特定細胞株の播種細胞のパーセンテージを示す。照射の関数として表される生存率は、以下のように計算した:生存率=カウントしたコロニー/(播種した細胞×PE/100)。
【0105】
v.ウェスタンブロット分析
プロテアーゼ阻害剤(1mM PMSF、1μg/ml アプロチニン、1μg/ml ロイペプチン、及び1mM Na3VO4)を補充したRIPA緩衝液(50mM Tris-Cl、pH7.4、1% NP-40; 150mM NaCl、及び1mM EDTA)を使用してOS細胞から全タンパク質を抽出し、定量にはブラッドフォード法を用いた。SDS/ポリアクリルアミドゲル電気泳動を使用してタンパク質試料(30μg)を単離し、次いでこれをニトロセルロース膜に移した。非特異的抗体結合部位をブロッキングした後、膜をマウスモノクローナル抗体とともに4℃で一晩インキュベートした。ペルオキシダーゼ結合二次抗体とともに37℃で1時間インキュベートした後、タンパク質バンドを、増強化学発光試薬(GE Healthcare Biosciences社、ピッツバーグ、ペンシルバニア州、米国)によって可視化し、Amersham Imager 680(GE Healthcare Biosciences社)を検出に使用した。
【0106】
vi.免疫組織化学
免疫組織化学的評価の目的において、パラフィンで包埋した厚さ4μmの乳房切片を、コーティングしたスライドガラスにマウントし、調査対象のタンパク質を調査し、続いて内因性ペルオキシダーゼのブロッキング、抗原の回収、及び非特異的タンパク質結合を行った。次いで、まず一次抗体(Cell Signaling Technology社[ダンバーズ、マサチューセッツ州、米国]から購入)を使用してスライド切片をインキュベートし、次に西洋ワサビペルオキシダーゼ結合抗体を二次抗体に使用した。すべてのスライドを、3,3'-ジアミノベンジジンを使用して発色させ、ヘマトキシリンで対比染色した後、ブラインド分析を実施した。
【0107】
vii.Alexa Fluor 488のトラスツズマブへの結合
Alexa 488-NHS Ester(Invitrogen社、ウォルサム、マサチューセッツ州、米国)の溶液は、DMSOを使用して調製した。これは、pH8.4の1M炭酸水素ナトリウム溶液中の500μL TRZ溶液(10mg/mL)に溶解した1%酢酸を含んでいた。得られた反応物を室温で1時間インキュベートした後、サイズ排除PD-10カラム(GE Healthcare Bio-Sciences AB社、ウプサラ、スウェーデン)に通して精製し、最大波長517nmに設定した紫外/可視検出器に接続した。非結合型のアリコート(100μg/μL、PBS、pH 7.2)を、Nano Drop分光光度計(ThermoFisher Scientific社、ウォルサム、マサチューセッツ州、米国)を使用して、結合型のAlexa 488-TRZとともに測定した。高速液体クロマトグラフィープロファイルを使用し、TRZを取り囲むAlexa 488分子を、結合型のAlexa 488-TRZとAlexa 488非含有溶出溶液の間のピーク強度を比較することにより推定した。
【0108】
viii. in Vivoでの抗体浸透試験
BT-474細胞(5×106個)をオスBALB/ヌードマウス(各群n=6)に皮下注射により投与した。デジタルノギスを使用して腫瘍のサイズを測定し、体積の計算については、以下の式を適用した:幅2×長さ×0.5。マウス(5~6週齢;体重18~20g)に関連するすべての実験は、韓国放射線医学研究所(Korea Institute of Radiological and Medical Sciences (KIRAMS))の施設内動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committee (IACUC))によるプロトコル(KIRAMS番号2018-0016、承認日:2018年5月15日)に従った。
【0109】
腫瘍サイズが約200mm3に達した時点で、150μgのAlexa 488-TRZを静脈内注射し、TTFied(0.9V/cm)を5日間曝露し、その後、マウスを心臓穿刺により失血死させ、解剖した。単離した腫瘍を直ちにパラホルムアルデヒド(4%)で固定し、4℃で一晩保存した。その後、腫瘍組織を最適切断温度(OCT)化合物に包埋し、更に使用するまで-70℃で凍結した。凍結した組織試料をLeica CM 1850クライオスタット(Leica microsystems社、米国)で8μm厚部分に分割し、PBSを使用して再水和し、DAPIで染色し、蛍光顕微鏡(In cell Analyzer 2200、GE Healthcare社、米国)で観察した。TUNEL陽性細胞をClick-iT(登録商標) TUNEL Alexa Fluor(登録商標) 647 Imaging Assayキット(Invitrogen社、カールズバッド、カリフォルニア州、米国)で染色した。更に、アポトーシス細胞をTUNELアッセイにより算出した。
【0110】
ix.組織学的画像の取得
In cell Analyzerは、蛍光顕微鏡及びモザイクステッチング・ソフトウェア(In cell developer toolbox、GE Healthcare社、米国)を備えた特注品であるため、蛍光画像は、3つの独立したチャネルを使用して10×対物レンズで得た。更に、核画像(青色で示す)、Alexa 488-TRZ画像(緑色)にはDAPIを、血管(赤色)画像の検出にはローダミンレクチンを使用した。オフセットは、オートフォーカスによって決定した。
【0111】
x.腫瘍におけるAlexa 488のトラスツズマブ蓄積の画像解析
画像解析には、MATLAB (Math Works社、ナティック、マサチューセッツ州、米国)、ZEN(blue)、及びMIPAV (NIH、米国)で作成された社内プログラムを利用した。個々のチャネルは、ZEN(blue)からTIFFファイルにエクスポートされた。ライン強度対ライン距離を示す派生グラフは、社内のMATLABプログラムとMIPAVアプリケーション(アメリカ国立衛生研究所、ベセスダ、メリーランド州、米国)を使用して読み取った。TRZシグナル強度は、腫瘍血管から60μmと記録された。ラインプロファイリングは、各腫瘍について、末梢領域及び中心領域の血管からの様々なROIの強度を測定することによって腫瘍血管からのTRZ浸透をプロットするために使用した。更に、曲線下の面積は、2つの群のそれぞれについて、3つの腫瘍の10切片から算出した。
【0112】
xi.統計分析
統計的有意性は、スチューデントのt検定を使用して決定した。P値が0.05、0.001、又は0.001未満の場合、差は有意であるとみなした。(*p<0.05; **P<0.01; ***P<0.001)。
【0113】
2.結果
i.TTFによる処置はin vitroでトラスツズマブ耐性BT474細胞株を感作する
トラスツズマブ耐性を制御するTTFの能力を確認するため、2つのHER2陽性細胞株(Jimt1及びBT474)を1~100μg(4倍希釈)で48時間処置した。
【0114】
取得したデータは、細胞がトラスツズマブに対して用量依存的に感受性を示すことを示した(図1A)。更に、トラスツズマブを用いた処置は、トラスツズマブ耐性細胞における細胞増殖を有意に阻害し(図1B)、がん細胞株は両方とも、様々な投与量に応じて細胞生存率が低下し、100μgでは約10%の生存率阻害が観察された。
【0115】
ii.TTF処置後のin vitroでのトラスツズマブ耐性HER2陽性ヒト乳がん細胞における細胞増殖の阻害
次に、Jimt1細胞を固定用量のトラスツズマブで処置し、細胞形態及び3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)アッセイ及びコロニー形成アッセイにおける乳がん細胞に対するその効果を評価した(図2A図2C)。Jimt1細胞をTTFs(0.9V/cm)、TRZ、又はこの2つの組合せで処置し、組合せ処置群における形態に関連する変化を、位相差顕微鏡を使用して観察した。また、100μgのトラスツズマブで48時間処置した後、細胞増殖が有意に阻害されることも記録された。これらのデータは、TTFが、トラスツズマブ耐性HER2陽性ヒト乳がん細胞におけるトラスツズマブ感受性を増加させたことを示している。
【0116】
iii.トラスツズマブはin vivoでTTFields感受性を促進する
in vivoでの乳がんの増殖に対するTTFとトラスツズマブの組合せ効果を調べるため、マウスにヒトBT474細胞を注射することによって得られた皮下HER2陽性乳がんモデルを利用した。図3Aに示すように、TTFとトラスツズマブを組み合わせて処置した異種移植片は、対照群及びいずれかの処置を受けた群と比較して、増殖の低下を示した。したがって、単剤処置群の腫瘍は、組合せ処置群の腫瘍よりも顕著に大きかった。同時に、腫瘍の体積は、いずれかの処置を受けたマウスの体積と比較して、組合せ処置マウスにおいて減少した(図3A)。
【0117】
いずれかの処置を受けたマウスの異種移植片は、組合せ処置マウスよりも強い増殖マーカーKi-67染色を示した(図3B図3C)。総合すると、これらのデータは、トラスツズマブと組み合わせたTTFがin vivoでの乳がんの増殖を抑制することを示している。
【0118】
iv.TTFとTRZを用いた処置はin vitroでP-HER2発現を阻害し、アポトーシスマーカーレベルを上昇させる
p-HER2の発現レベル及びアポトーシスマーカーの切断型PARP、並びに抗アポトーシスマーカーのBcl-2を、ウェスタン(又はタンパク質免疫ブロット)ブロッティング技術によって調べた。TTF+TRZで24時間処置した後のJimt1細胞株において、p-HER2及びBcl-2の発現レベルはダウンレギュレートされ、切断型PARPはアップレギュレートされた(図4A)。in vivoでアポトーシスを誘導する組合せ治療の能力を計算するため、アポトーシス率を末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼdUTPニック末端標識(TUNEL)アッセイにより評価した。注目すべきことには、組合せ処置によってアポトーシス細胞の細胞死が増加した(図4B)。TTFは、TUNELアッセイにより算出されたアポトーシス領域を増加させた(図4C)。
【0119】
v.TTFを用いた処置はin vivoでP-HER2とその下流メディエーターであるAKT及びMAPKの発現レベルを阻害する
病理組織学的研究により、TTFを用いて処置された腫瘍は、対照群と比較して低レベルのHER2を発現することが示された。更に、トラスツズマブと組み合わせたTTFを使用して処置した腫瘍は、対照群と比較して、低レベルのpAKT、pERK、及びpHER2を発現した(図5)。
【0120】
vi.TTFを用いた処置はin vivoで腫瘍血管からのAlexa 488-トラスツズマブの浸透を増加させる
抗体の蓄積は、腫瘍切片の蛍光強度を分析することによって決定した。結果は、Alexa 488-TRZ(緑色)の蓄積がTTFを用いて改善されたことを示している。全腫瘍切片における腫瘍血管からのTRZの浸透は、TTFを組み合わせて処置した腫瘍において約33%大きかった(p=0.0211)(図6)。TTFは、腫瘍血管から60μm以内でTRZの血管外漏出を有意に改善した。
【0121】
3.考察
本研究は、生命に関わるHER2陽性乳がん性遺伝子を制御するために使用される一般的なトラスツズマブ薬を、腫瘍電場治療を用いてサポートすることにより、そのようなトラスツズマブ耐性細胞の阻害が増幅され得るという仮説を検証する。本研究はまた、関与するトラスツズマブ耐性のHER2陽性乳がん細胞株に対するTTFieldシステムの働きを特定し、解明することも目的としている。そうすることによって今後の研究において使用するためのTTFの価値が高まる。1998年9月、FDAはトラスツズマブの使用と、稀な悪性腫瘍であるGBM又は多形膠芽腫の処置計画の立案においてトラスツズマブを組み込むことを承認した。トラスツズマブの治療への適用が必要とされているのは、HER2チロシンキナーゼ受容体遺伝子の活性が過剰になることによる。増殖に対応して、乳がんが二次ステージに進行する速度は驚くほど速度を増す。したがって、トラスツズマブは、ヒト化抗HER2モノクローナルIgG1抗体として働くと予測された[18]。しかし、この研究及び過去の他の例では、一次ステージを過ぎたHER2遺伝子はトラスツズマブの影響を受けないことが明らかに証明されている。このため、乳がんの処置療法は、トラスツズマブ耐性に直面していることにより非常に不利な境遇にある。トラスツズマブがHER2に作用しないことの一因となる機序は精力的に研究されており、以下の一般的な知見が挙げられる:i)トラスツズマブがHER2に結合する際に障害に直面している;ii)シグナル伝達経路のアップレギュレーションはHER2ダウンストリームを引き起こす;iii)トラスツズマブは代替経路によってシグナル伝達する傾向がある;及びiv)腫瘍細胞を破壊する免疫介在性機序を誘発することができない[6]。
【0122】
この研究は、がん性遺伝子のトラスツズマブ耐性性質がTTFによって補正され得ることを示している。この研究は、トラスツズマブ抗体を使用し、十分に構築された電磁TTF内で感作させることによってがん性細胞を破壊するという、初めての独自の研究である。この知見により、Alexa 488-TRZトラスツズマブの浸透及び取り込みがTTF処置後に増強されたことが確認された。図4は、TTFieldがTUNELアッセイによって測定されたアポトーシス領域を増加させたことを示す。アポトーシス領域の増加は、間質圧の低下を誘発し得る。Alexa 488-TRZの浸透及び取り込みの増強は、TTF処置後の間質圧の低下によるものと説明することができる。
【0123】
これらの適用の結果は、HER2受容体細胞を抑制するという成功の可能性が高いものである。この研究は、腫瘍学が、化学療法とトラスツズマブの組合せを腫瘍細胞に対処する最も的確な方法とみなしている現在の状況とは対照的なものである。この公表にも関わらず、HER2過剰発現の乳がん患者の多くは、そのような方法に対して新規耐性又は後天性耐性を発現する。しかし、この研究の結果は、トラスツズマブを用いたTTF統合溶液がHER2療法を促進し得ることを示した。
【0124】
この目的は、トラスツズマブ耐性乳がん細胞においてTTFが果たす状況依存的な役割を分析することにより達成される。一般的なコンセンサスは肯定的な結果である。
【0125】
この目的は、TTFがGBMの停止に関与し、サイクリンに依存するキナーゼ発現を調節解除し、カスパーゼ-3活性化を誘導し、in vitroで細胞死とともに紡錘体形成を誘導するという、これまでの研究により裏付けされている[20、21]。TTFはまた、GBMの増殖及び浸潤を阻害する役割も担っている[3、21]。更に、in vivo実験及びin vitro実験[16]は、がん性細胞を特異的に標的し、従来のがん処置に代わる魅力的な処置として提示される、TTFieldsの理想性に一致している。数多くのin vivo実験により、抗腫瘍活性の遂行におけるTTFの有望な結果が指摘されている。更に、TTFはまた、異種移植モデル及びGBMモデル又はGBM患者由来幹細胞腫瘍担持モデルにおいて実証されたように、ヒト肺腫瘍を阻害し得る[22、23]。
【0126】
HER2陽性乳がんにおけるトラスツズマブと組み合わせたTTFの治療可能性を議論するために研究及び試験されなければならない開示されたデータは、TTFにより示される明確な陽性のアウトラインを示している。この研究では、BT474細胞株をin vivo実験及びin vitro実験に用い、それらの結果生じる変化を記録し、分析する。観察から、TTFieldの使用が初代トラスツズマブ耐性細胞株の感作をもたらすことが示された。その結果、これはカスパーゼ3/7アッセイの発現を増加させることによってアポトーシスを促進する。更に、TTFは、HER2陽性BT474細胞におけるHER2、p-AKT、及びp-MAPKの発現レベルのリン酸化を阻害することができる。次に、これは細胞の遊走及び浸潤を抑制し、in vivoモデルにおいて腫瘍細胞の増殖を順調に阻害する。この経路を評価することにより、この研究はまた、トラスツズマブのような抗体による化学療法に耐性のある患者への代替解決策としてのTTF療法を特定している。
【0127】
結論として、本明細書で示したデータは、TTFがin vitro及びin vivoでトラスツズマブ耐性を克服することができることを示している。
【0128】
当業者は、日常的な実験を使用するだけで、本明細書に記載される方法及び組成物の具体的な実施形態についての多数の等価物を認識する又は確認することができる。そのような等価物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5-1】
図5-2】
図6-1】
図6-2】
【国際調査報告】