(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】薄膜の蒸着方法
(51)【国際特許分類】
C23C 16/455 20060101AFI20240517BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
C23C16/455
H01L21/205
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574280
(86)(22)【出願日】2022-06-03
(85)【翻訳文提出日】2023-11-30
(86)【国際出願番号】 KR2022007898
(87)【国際公開番号】W WO2022255833
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】10-2021-0072554
(32)【優先日】2021-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504210651
【氏名又は名称】ジュスン エンジニアリング カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】パク イル ヒャン
(72)【発明者】
【氏名】パク チャン キュン
(72)【発明者】
【氏名】オォ ウォン ジュ
(72)【発明者】
【氏名】リ トン ファン
(72)【発明者】
【氏名】リ ヨン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】リ ジュン ソク
(72)【発明者】
【氏名】リム ビュン グヮン
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4K030AA14
4K030AA16
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5F045EF05
5F045EF09
5F045EH05
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(57)【要約】
本発明は、薄膜の蒸着方法に関し、より詳細には、基板の上に薄膜を蒸着するための薄膜の蒸着方法に関する。
本発明の実施形態に係る薄膜の蒸着方法は、工程空間に設けられた基板の上に、第1の拡散ガスとともに原料ガスを供給するステップと、前記原料ガスを供給するステップと連続するように、前記基板の上に第2の拡散ガスとともに反応ガスを供給するステップと、を含み、前記第1の拡散ガス及び原料ガスと、前記第2の拡散ガス及び反応ガスとを互いに異なる経路にて前記基板の上に供給する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程空間に設けられた基板の上に、第1の拡散ガスとともに原料ガスを供給するステップと、
前記原料ガスを供給するステップと連続するように、前記基板の上に第2の拡散ガスとともに反応ガスを供給するステップと、
を含み、
前記第1の拡散ガス及び原料ガスと、前記第2の拡散ガス及び反応ガスとを互いに異なる経路にて前記基板の上に供給する、薄膜の蒸着方法。
【請求項2】
前記第1の拡散ガスは、前記原料ガスを供給する経路内において前記原料ガスと混合され、
前記第2の拡散ガスは、前記反応ガスを供給する経路内において前記反応ガスと混合される、請求項1に記載の薄膜の蒸着方法。
【請求項3】
前記原料ガスを供給するステップにおいて、前記第1の拡散ガスの供給量が前記第2の拡散ガスの供給量とは異なるように制御する、請求項1に記載の薄膜の蒸着方法。
【請求項4】
前記原料ガスを供給するステップにおいて、前記第1の拡散ガスの供給量を前記第2の拡散ガスの供給量よりも相対的に少なめに制御する、請求項3に記載の薄膜の蒸着方法。
【請求項5】
前記原料ガスを供給するステップにおいて、前記第2の拡散ガスを前記第1の拡散ガス及び原料ガスとともに前記基板の上に供給し、
前記反応ガスを供給するステップにおいて、前記第1の拡散ガスを前記第2の拡散ガス及び反応ガスとともに前記基板の上に供給する、請求項1に記載の薄膜の蒸着方法。
【請求項6】
前記原料ガスを供給するステップ及び前記反応ガスを供給するステップにおいて、前記第1の拡散ガスの供給量が互いに異なるように制御する、請求項5に記載の薄膜の蒸着方法。
【請求項7】
前記原料ガスを供給するステップにおいて、前記第1の拡散ガスの供給量を前記反応ガスを供給するステップにおける前記第1の拡散ガスの供給量よりも相対的に少なめに制御する、請求項6に記載の薄膜の蒸着方法。
【請求項8】
前記反応ガスを供給するステップにおいて、前記工程空間にプラズマを生じさせるように電源を供給する、請求項1に記載の薄膜の蒸着方法。
【請求項9】
前記原料ガスを供給するステップ及び前記反応ガスを供給するステップを含む工程サイクルは、複数回行われる、請求項1に記載の薄膜の蒸着方法。
【請求項10】
前記第1の拡散ガス及び第2の拡散ガスは、不活性ガスを含む、請求項1に記載の薄膜の蒸着方法。
【請求項11】
前記原料ガスは、インジウム(In)、ガリウム(Ga)及び亜鉛(Zn)のうちの少なくとも1種を含有するガスであり、
前記反応ガスは、酸素を含有するガスである、請求項1に記載の薄膜の蒸着方法。
【請求項12】
ガス噴射部に形成された第1のガス供給経路を介して第1の拡散ガス及び原料ガスを供給し、前記ガス噴射部に形成された第2のガス供給経路を介して第2の拡散ガスを供給する第1のステップと、
前記第1のガス供給経路を介して前記第1の拡散ガスを供給し、前記第2のガス供給経路を介して前記第2の拡散ガス及び反応ガスを供給する第2のステップと、
を含み、
前記第1のステップと第2のステップとが連続して行われる工程サイクルは、繰り返し行われる、薄膜の蒸着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜の蒸着方法に関し、より詳細には、素基板の上に薄膜を蒸着するための薄膜の蒸着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属酸化物薄膜、例えば、有機金属酸化物薄膜は、低消費電力及び高い移動度という優れた特性を有することから、半導体素子、ディスプレイ装置もしくは太陽電池などにおいて基板の上に形成される保護層、透明導電層、又は半導体層として用いられている。
【0003】
金属酸化物薄膜は、インジウム(In)及びガリウム(Ga)のうちの少なくとも一方がドープされた亜鉛(Zn)酸化物、例えば、インジウム亜鉛酸化物(IZO:Indium Zinc Oxide)、ガリウム亜鉛酸化物(GZO:Gallium Zinc Oxide)、インジウムガリウム亜鉛酸化物(IGZO:Indium Gallium Zinc Oxide)などから形成でき、このような金属酸化物薄膜は、インジウム(In)、ガリウム(Ga)及び亜鉛(Zn)の組成比に応じて様々な特性を有することになる。
【0004】
従来には、金属酸化物薄膜を原子層蒸着(ALD:Atomic Layer Deposition)工程により蒸着していた。原子層蒸着工程では、インジウム(In)、ガリウム(Ga)及び亜鉛(Zn)を含有する原料ガスを供給するステップと、原料ガスをパージするステップと、酸素(O)を含有する反応ガスを供給するステップ、及び反応ガスをパージするステップを含む工程サイクルを複数回で行うことで、基板の上に金属酸化物薄膜を形成することになる。
【0005】
しかしながら、このように、原子層蒸着工程によって金属酸化物薄膜を蒸着する場合、原料ガスをパージするステップ及び反応ガスをパージするステップによって薄膜を蒸着するのに長時間がかかるという問題があった。すなわち、原料ガス及び反応ガスをそれぞれパージするのにかかる時間と、原料ガス及び反応ガスのパージの後に、基板の温度を再び調節するためにかかる時間によって、薄膜を蒸着する工程時間が非常に長引いてしまい、これは、生産性の低下につながるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】大韓民国特許公開第10-2009-0099140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、工程速度を向上させることのできる薄膜の蒸着方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態に係る薄膜の蒸着方法は、工程空間に設けられた基板の上に、第1の拡散ガスとともに原料ガスを供給するステップと、前記原料ガスを供給するステップと連続するように、前記基板の上に第2の拡散ガスとともに反応ガスを供給するステップと、を含み、前記第1の拡散ガス及び原料ガスと、前記第2の拡散ガス及び反応ガスとを互いに異なる経路にて前記基板の上に供給する。
【0009】
前記第1の拡散ガスは、前記原料ガスを供給する経路内において前記原料ガスと混合され、前記第2の拡散ガスは、前記反応ガスを供給する経路内において前記反応ガスと混合されてもよい。
【0010】
前記原料ガスを供給するステップにおいて、前記第1の拡散ガスの供給量が前記第2の拡散ガスの供給量とは異なるように制御してもよい。
【0011】
前記原料ガスを供給するステップにおいて、前記第1の拡散ガスの供給量を前記第2の拡散ガスの供給量よりも相対的に少なめに制御してもよい。
【0012】
前記原料ガスを供給するステップにおいて、前記第2の拡散ガスを前記第1の拡散ガス及び原料ガスとともに前記基板の上に供給し、前記反応ガスを供給するステップにおいて、前記第1の拡散ガスを前記第2の拡散ガス及び反応ガスとともに前記基板の上に供給してもよい。
【0013】
前記原料ガスを供給するステップ及び前記反応ガスを供給するステップにおいて、前記第1の拡散ガスの供給量が互いに異なるように制御してもよい。
【0014】
前記原料ガスを供給するステップにおいて、前記第1の拡散ガスの供給量を前記反応ガスを供給するステップにおける前記第1の拡散ガスの供給量よりも相対的に少なめに制御してもよい。
【0015】
前記反応ガスを供給するステップにおいて、前記工程空間にプラズマを生じさせるように電源を供給してもよい。
【0016】
前記原料ガスを供給するステップ及び前記反応ガスを供給するステップを含む工程サイクルは、複数回行われてもよい。
【0017】
前記第1の拡散ガス及び第2の拡散ガスは、不活性ガスを含んでいてもよい。
【0018】
前記原料ガスは、インジウム(In)、ガリウム(Ga)及び亜鉛(Zn)のうちの少なくとも1種を含有するガスであり、前記反応ガスは、酸素を含有するガスであってもよい。
【0019】
一方、本発明の実施形態に係る薄膜の蒸着方法は、ガス噴射部に形成された第1のガス供給経路を介して第1の拡散ガス及び原料ガスを供給し、前記ガス噴射部に形成された第2のガス供給経路を介して第2の拡散ガスを供給する第1のステップと、前記第1のガス供給経路を介して前記第1の拡散ガスを供給し、前記第2のガス供給経路を介して前記第2の拡散ガス及び反応ガスを供給する第2のステップと、を含み、前記第1のステップと第2のステップとが連続して行われる工程サイクルは、繰り返し行われてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の実施形態によれば、基板の上に薄膜を蒸着するための工程速度を向上させることができる。
【0021】
すなわち、既存の原子層蒸着工程において、原料ガスをパージするステップと反応ガスをパージするステップを省略して、工程時間を最小限に抑えることができる。
【0022】
また、原料ガスをパージするステップと反応ガスをパージするステップを省略しながらも、既存の原子層蒸着工程によって形成される薄膜と同等のレベルの品質を有する薄膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態に係る蒸着装置を概略的に示す図。
【
図2】本発明の実施形態に係る薄膜の蒸着方法を概略的に示す図。
【
図3】本発明の実施形態に係る薄膜の蒸着方法の工程サイクルを説明するための図。
【
図4】本発明の実施形態に係る第1の拡散ガス及び第2の拡散ガスの供給量を示す図。
【
図5】本発明の実施形態に従い製造された薄膜トランジスターの様子を概略的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態をより詳しく説明する。しかしながら、本発明は以下に開示される実施形態に何ら限定されるものではなく、異なる様々な形態に具体化されることが可能なものであって、以下の実施形態は、単に本発明の開示を完全たるものにし、通常の知識を有する者に発明の範ちゅうを完全に知らせるために提供されるものである。発明を詳細に説明するために図面は誇張されて示されていてもよく、図中、同じ参照符号は、同じ構成要素を示す。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係る蒸着装置を概略的に示す図である。
【0026】
図1を参照すると、本発明の実施形態に係る蒸着装置は、素基板の上に薄膜、例えば、金属酸化物薄膜を蒸着するための装置であって、チャンバー10と、前記チャンバー10内に設けられ、前記チャンバー10内に与えられる基板Sを支持するための基板支持部20と、前記基板支持部20と対向配置されるように前記チャンバー10内に設けられ、前記基板支持部20に向かって工程ガスを噴射するためのガス噴射部30、及び前記チャンバー10内にプラズマを生じさせるように電源を供給するRF電源50を備える。
【0027】
また、前記蒸着装置は、ガス噴射部30に原料ガス及び第1の拡散ガスを提供するための第1のガス提供部50、及びガス噴射部30に反応ガス及び第2の拡散ガスを提供するための第2のガス提供部60をさらに備えていてもよく、前記第1のガス提供部50及び第2のガス提供部60をガス噴射部30とつなぐためのそれぞれ供給配管40をさらに備えていてもよい。これらに加えて、前記第1のガス提供部50から提供される原料ガスと第1の拡散ガスの供給量、前記反応ガス提供部60から提供される反応ガスと第2の拡散ガスの供給量及びRF電源50を制御する制御部(図示せず)をさらに備えていてもよい。
【0028】
ここで、ガス噴射部30には、第1のガス、例えば、原料ガス及び第1の拡散ガスを第1のガス提供部50から提供されて基板Sの上に供給するための第1のガス供給経路と、第2のガス、例えば、反応ガス及び第2の拡散ガスを第2のガス提供部60から提供されて基板Sの上に供給するための第2のガス供給経路と、が分離されて形成される。
【0029】
チャンバー10は、所定の工程空間を設け、これを気密に保持する。チャンバー10は、概ね円形状又は四角い形状の平面部及び平面部から上向きに延びた側壁部を備えて所定の工程空間を有する胴体12と、概ね円形状又は四角い形状に胴体12の上に位置してチャンバー10を気密に保持する蓋体14と、を備えていてもよい。しかしながら、チャンバー10は、これに何ら限定されるものではなく、基板の形状に対応する様々な形状に作製されてもよい。
【0030】
チャンバー10の下面の所定の領域には排気口(図示せず)が形成され、チャンバー10の外側には排気口と連絡される排気管(図示せず)が設けられてもよい。また、排気管は、排気装置(図示せず)と連絡されてもよい。排気装置としては、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプが利用可能である。したがって、排気装置によりチャンバー10の内部を所定の減圧雰囲気、例えば、0.1mTorr以下の所定の圧力まで真空引きすることができる。排気管は、チャンバー10の下面のみならず、後述する基板支持部20の下側のチャンバー10の側面に配設されてもよい。また、排気される時間を短縮させるために、多数本の排気管及びそれに付随する排気装置がさらに配設されてもよいということはいうまでもない。
【0031】
一方、基板支持部20には、薄膜の形成工程のためにチャンバー10内に与えられた基板Sが載置されてもよい。ここで、基板Sとしては、透明基板が使用可能であり、例えば、シリコン基板、ガラス基板又はフレキシブル(flexible)ディスプレイを実現する場合にはプラスチック基板が使用可能である。また、基板Sとしては、反射型基板が使用可能であり、この場合、メタル基板が使用可能である。メタル基板は、ステンレス鋼(SUS)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)又はこれらの合金から形成されてもよい。一方、基板Sとしてメタル基板を用いる場合、メタル基板の上部に絶縁膜を形成することが好ましい。基板支持部20は、このような基板が載置されて支持できるように、例えば、静電チャックなどが設けられて基板を静電力により吸着保持してもよいし、あるいは、真空吸着や機械的な力により基板を支持してもよい。
【0032】
基板支持部20は、基板Sの形状と対応する形状、例えば、円形状又は四角い形状に設けられてもよい。基板支持部20は、基板Sが載置される基板支持台22及び前記基板支持台22の下部に配置されて基板支持台22を昇降動させる昇降器24を備えていてもよい。ここで、基板支持台22は、基板Sよりも大きく作製されてもよく、昇降器24は、基板支持台22の少なくとも1つの領域、例えば、中心部を支持するように設けられ、基板支持台22の上に基板Sが載置されれば、基板支持台22をガス噴射部30に近づくように移動させてもよい。また、基板支持台22の内部にはヒーター(図示せず)が配設されてもよい。ヒーターは、所定の温度にて発熱して基板支持台22及び前記基板支持台22に載置された基板Sを加熱して、基板Sに均一に薄膜が蒸着されるようにする。
【0033】
供給配管40は、チャンバー10の蓋体14を貫通するように配設されてもよく、ガス噴射部30と第1のガス提供部50及び第2のガス提供部60をつなぎ合わせるように延設されてもよい。ここで、供給配管40は、後述する上フレーム32の上面と蓋体14との間の空間と第1のガス提供部50とをつなぐ第1の供給配管42、及び後述する下フレーム34の上面と前記上フレーム32の下面との間の空間と第2のガス提供部60とをつなぐ第2の供給配管44を備えていてもよい。
【0034】
第1のガス提供部50は、第1の供給配管42を介してガス噴射部30に第1の拡散ガスとともに原料ガスを提供する。ここで、第1のガス提供部50は、原料ガスを提供するための原料ガス提供部52、及び第1の拡散ガスを提供するための第1の拡散ガス提供部54を備えていてもよい。このとき、原料ガス提供部52は、第1の供給配管42の一方の端に連結されてもよく、第1の拡散ガス提供部54は、ガス噴射部30と原料ガス提供部52とをつなぐ第1の供給配管42の延長経路の上に連結されてもよい。一方、原料ガスは、金属酸化物薄膜を形成するための原料ガスを含んでいてもよく、例えば、インジウム(In)、ガリウム(Ga)及び亜鉛(Zn)のうちの少なくとも1種を含有するガスであってもよい。また、第1の拡散ガスは、原料ガスを拡散させるための不活性ガスを含んでいてもよく、例えば、アルゴン(Ar)又は窒素(N
2)ガスを含んでいてもよい。
図1においては、説明のしやすさのために、1つの原料ガス提供部52が設けられる様子を示しているが、原料ガス提供部52は、必ずしも1種のガスを提供するとは限らず、インジウム(In)を含有するガス、ガリウム(Ga)を含有するガス及び亜鉛(Zn)を含有するガスをそれぞれ提供してもよいし、あるいは、複数種のガスのうちから選択されたガスを提供するように構成されてもよい。
【0035】
第2のガス提供部60は、第2の供給配管44を介してガス噴射部30に第2の拡散ガスとともに反応ガスを提供する。ここで、第2のガス提供部60は、反応ガスを提供するための反応ガス提供部62、及び第2の拡散ガスを提供するための第2の拡散ガス提供部64を備えていてもよい。このとき、反応ガス提供部62は、第2の供給配管44の一方の端に連結されてもよく、第2の拡散ガス提供部64は、ガス噴射部30と反応ガス提供部62とをつなぐ第2の供給配管44の延長経路の上に連結されてもよい。一方、反応ガスは、金属酸化物薄膜を形成するための反応ガスを含んでいてもよく、例えば、酸素(O)を含有するガスであってもよい。また、第2の拡散ガスは、反応ガスを拡散させるための不活性ガスを含んでいてもよく、例えば、アルゴン(Ar)又は窒素(N2)ガスを含んでいてもよい。
【0036】
ガス噴射部30は、前記チャンバー10の内部、例えば、蓋体14の下面に配設され、ガス噴射部30の内部には、原料ガス及び第1の拡散ガスを基板Sの上に噴射して供給するための第1のガス供給経路と、反応ガス及び第2の拡散ガスを基板Sの上に噴射して供給するための第2のガス供給経路と、が形成される。前記第1のガス供給経路及び第2のガス供給経路は、互いに独立して、しかも互いに分離されて形成されて、前記第1のガス及び前記第2のガスがガス噴射部30の内において混合されないように分離して基板Sの上に供給することができる。
【0037】
前記ガス噴射部30は、上フレーム32及び下フレーム34を備えていてもよい。ここで、前記上フレーム32は、前記蓋体14の下面に着脱自在に結合されるとともに、上面の一部、例えば、上面の中心部が前記蓋体14の下面から所定の距離だけ離れている。これにより、前記上フレーム32の上面と前記蓋体14の下面との間の空間において第1のガス提供部50から提供される原料ガス及び第1の拡散ガスが拡散することが可能になる。また、前記下フレーム34は、前記上フレーム32の下面に一定の間隔だけ離れて配設される。これにより、前記下フレーム34の上面と前記上フレーム32の下面との間の空間において第2のガス供給部60から提供される反応ガス及び第2の拡散ガスが拡散することが可能になる。前記上フレーム32と前記下フレーム34は、外周面に沿って連結されて内部に離隔空間を形成して一体に形成されてもよいし、あるいは、別途の密封部材によって外周面を密閉するような構造となっていてもよいということはいうまでもない。
【0038】
前記第1のガス供給経路は、第1のガス提供部50から提供される原料ガス及び第1の拡散ガスが前記蓋体14の下面と前記上フレーム32との間の空間において拡散して、前記上フレーム32及び前記下フレーム34を貫通してチャンバー10の内部に供給されるように形成されてもよい。また、前記第2のガス供給経路は、第2のガス供給部60から提供される反応ガス及び第2の拡散ガスが前記上フレーム32の下面と前記下フレーム34の上面との間の空間において拡散して前記下フレーム34を貫通してチャンバー10の内部に供給されるように形成されてもよい。前記第1のガス供給経路及び前記第2のガス供給経路は、互いに連通していなくてもよく、これにより、原料ガス及び第1の拡散ガスと、反応ガス及び第2の拡散ガスとは、ガス噴射部30を経て前記チャンバー10の内部に互いに異なる経路にて供給されることが可能になる。
【0039】
前記下フレーム34の下面には第1の電極38が配設されてもよく、前記下フレーム24の下側及び第1の電極28の外側には、所定の間隔だけ離れて第2の電極36が配設されてもよい。このとき、下フレーム34と第2の電極36は、外周面に沿って連結されて形成されてもよいし、あるいは、別途の密封部材によって外周面を密閉するような構造となっていてもよいということはいうまでもない。
【0040】
このように、第1の電極38及び第2の電極36が配設される場合、原料ガス及び第1の拡散ガスは、第1の電極38を貫通して基板の上に噴射されてもよく、反応ガス及び第2の拡散ガスは、第1の電極38と第2の電極36との間の離隔空間を介して基板の上に噴射されてもよい。
【0041】
ここで、下フレーム34と第2の電極36のうちのどちらか一方にはRF電源50からRF電力が印加されてもよい。
図1においては、下フレーム34が接地され、第2の電極36にRF電力が印加される構造を例にとって示している。下フレーム34が接地される場合、前記下フレーム34の下面に配設された第1の電極38もまた接地される。したがって、第2の電極36にRF電源50が供給される場合、前記ガス噴射部30と前記基板支持部20との間には第1の活性化領域、すなわち、第1のプラズマ領域が形成され、前記第1の電極38と前記第2の電極36との間には第2の活性化領域、すなわち、第2のプラズマ領域が形成されることが可能になる。
【0042】
したがって、反応ガス及び第2の拡散ガスが第1の電極38及び第2の電極36との間の離隔空間を介して噴射される場合、反応ガスは、ガス噴射部30の内部に相当する前記第1の電極38と前記第2の電極36との間、すなわち、第2のプラズマ領域から第1のプラズマ領域までの領域にわたって活性化される。したがって、本発明の実施形態に係る蒸着装置においては、反応ガスをガス噴射部30の内部において活性化させて基板の上に噴射することができる。また、原料ガス及び第1の拡散ガスを供給するための第1のガス供給経路と反応ガス及び第2の拡散ガスを供給するための第2のガス供給経路とが分離されて形成されることにより、原料ガス及び反応ガスがガス噴射部30内において反応することを防ぎ、原料ガス及び反応ガスを薄膜を蒸着するための最適な供給経路に振り分けて噴射することができる。
【0043】
以下では、
図2及び
図3を参照して本発明の薄膜の蒸着方法について詳しく説明する。本発明の実施形態に係る薄膜の蒸着方法についての説明に際して、前述した蒸着装置に関する説明と重複する説明は省略する。
【0044】
図2は、本発明の実施形態に係る薄膜の蒸着方法を概略的に示す図である。また、
図3は、本発明の実施形態に係る薄膜の蒸着方法の工程サイクルを説明するための図であり、
図4は、本発明の実施形態に係る第1の拡散ガス及び第2の拡散ガスの供給量を示す図である。
【0045】
図2から
図4を参照すると、本発明の実施形態に係る薄膜の蒸着方法は、工程空間に設けられた基板Sの上に、第1の拡散ガスとともに原料ガスを供給するステップ(S100)、及び前記原料ガスを供給するステップ(S100)と連続するように、前記基板Sの上に第2の拡散ガスとともに反応ガスを供給するステップ(S200)を含む。ここで、本発明の実施形態に係る薄膜の蒸着方法は、前記第1の拡散ガス及び原料ガスと、前記第2の拡散ガス及び反応ガスとを互いに異なる経路にて前記基板Sの上に供給する。また、前記原料ガスを供給するステップ(S100)及び前記反応ガスを供給するステップ(S200)を含む工程サイクルは、複数回で行われてもよい。
【0046】
すなわち、本発明の実施形態に係る薄膜の蒸着方法は、既存の原子層蒸着(ALD:Atomic Layer Deposition)工程において、原料ガスをパージするステップと反応ガスをパージするステップを省略して、原料ガスを供給するステップ(S100)と反応ガスを供給するステップ(S200)とから構成される工程サイクルを複数回で行うことで、基板Sの上に所望の膜厚の薄膜を形成する。
【0047】
このとき、既存の原子層蒸着工程において、単に原料ガスをパージするステップと反応ガスをパージするステップのみを省略する場合、原料ガスが基板Sの上に均一に吸着できず、その結果、蒸着均一性が低下してしまうという問題が生じ、反応ガスを供給する最中に反応ガスがガス噴射部30内に残留する原料ガスと反応して、ガス噴射部30内において多量のパーティクル(particle)を生じさせてしまうという問題が生じる。
【0048】
このため、本発明の実施形態においては、原料ガスを移動させるための第1の拡散ガスとともに原料ガスを基板Sの上に供給し、反応ガスを移動させるための第2の拡散ガスとともに反応ガスを基板Sの上に供給するが、前記第1の拡散ガス及び原料ガスと、前記第2の拡散ガス及び反応ガスとを互いに異なる経路にて前記基板の上に供給して、原料ガスと反応ガスとが予め反応することを防ぎ、基板Sの上に原料ガスの吸着と反応ガスによる反応とが行われるようにして、既存の原子層蒸着工程によって形成される薄膜と同等のレベルの品質を有する薄膜を形成することができる。
【0049】
すなわち、前述したように、ガス噴射部30には、原料ガス及び第1の拡散ガスを基板Sの上に供給するための第1のガス供給経路と、反応ガス及び第2の拡散ガスを基板Sの上に供給するための第2のガス供給経路と、が分離されて形成される。このため、原料ガス及び反応ガスは、ガス噴射部30から噴射される前には、互いに分離されていて反応しない。また、第1のガス供給経路を介しては原料ガス及び前記原料ガスの移動を制御する第1の拡散ガスが供給され、第2のガス供給経路を介しては反応ガス及び前記反応ガスの移動を制御する第2の拡散ガスが供給される。したがって、原料ガスを供給するステップ(S100)において、原料ガスは、第1の拡散ガスによって工程空間を経て速やかにチャンバー10の外部に排出され、反応ガスを供給するステップ(S200)において、反応ガスは、工程空間を経て速やかにチャンバー10の外部に排出されることにより、ガス噴射部30から噴射された後にも、原料ガスと反応ガスとが工程空間内に同時に残留して反応してしまうことを極力抑えることができる。以下では、上記の技術的な効果を成し遂げられる本発明の実施形態に係る薄膜の蒸着方法についてさらに詳しく説明する。
【0050】
原料ガスを供給するステップ(S100)の前に、基板Sを設けるステップが行われてもよい。基板Sを設けるステップにおいては、基板Sを前述した蒸着装置のチャンバー10内に搬入して基板支持部20の上に載置する。ここで、基板Sは、薄膜トランジスターを製造するための基板であってもよく、例えば、シリコン基板、ガラス基板又はプラスチック基板を含み得る。このように、設けられた基板Sを用いて製造された薄膜トランジスターに関しては、
図5を参照して後述する。
【0051】
原料ガスを供給するステップ(S100)においては、チャンバー10内の工程空間に設けられた基板Sの上に第1の拡散ガスとともに原料ガスを供給する。ここで、原料ガスは、前述した蒸着装置の原料ガス提供部52から提供されてガス噴射部30に設けられた第1のガス供給経路を介して基板Sの上に供給される。また、第1の拡散ガスは、第1の拡散ガス提供部54から提供されて、ガス噴射部30に設けられた第1のガス供給経路を介して基板Sの上に供給される。
【0052】
ここで、原料ガス提供部52は、第1の供給配管42の一方の端に連結されてもよく、第1の拡散ガス提供部54は、原料ガス提供部52とは別途に、ガス噴射部30と原料ガス提供部52とをつなぐ第1の供給配管42の延長経路の上に連結されてもよい。これにより、第1の拡散ガスは、第1のガス供給経路内において原料ガスと混合されて基板Sの上に供給されることが可能になる。このように、第1の拡散ガスを第1のガス供給経路の途中において原料ガスと混合して基板Sの上に供給することにより、原料ガスと予め混合されて単に原料ガスを搬送する役割しか果たさないキャリアー(carrier)ガスとは異なり、第1の拡散ガスは、原料ガスの移動を制御することができるだけではなく、基板Sの上において原料ガスを拡散させるための役割を果たすことが可能になる。
【0053】
ここで、原料ガスは、金属酸化物薄膜を形成するための原料ガスを含んでいてもよい。例えば、原料ガスは、インジウム(In)、ガリウム(Ga)及び亜鉛(Zn)のうちの少なくとも1種を含有するガスであってもよい。また、第1の拡散ガスは、原料ガスを拡散させるための不活性ガスを含んでいてもよく、例えば、アルゴン(Ar)ガス又は窒素(N2)ガスを含んでいてもよい。一方、原料ガスは、必ずしも1つの原料ガス提供部52から提供されるとは限らず、インジウム(In)を含有するガス、ガリウム(Ga)を含有するガス及び亜鉛(Zn)を含有するガスがそれぞれ提供されてもよいし、あるいは、複数種のガスのうちから選択されたガスが提供されるように構成されてよいということは前述した通りである。
【0054】
原料ガスを供給するステップ(S100)においては、第1の拡散ガスとともに原料ガスを基板Sの上に供給して、原料ガスの移動を制御しながら基板Sの上に原料ガスに含まれている原料物質を吸着させる。このとき、原料ガスを供給するステップ(S100)は、電源を供給せずに行われてもよい。
【0055】
反応ガスを供給するステップ(S200)においては、前記原料ガスを供給するステップ(S100)と連続するように、基板Sの上に第2の拡散ガスとともに反応ガスを供給する。すなわち、原料ガスを供給するステップ(S100)の後には、原料ガスをパージするステップが行われずに、原料ガスを供給するステップ(S100)と連続して反応ガスを供給するステップ(S200)を行う。
【0056】
反応ガスを供給するステップ(S200)においては、原料ガス及び第1の拡散ガスが噴射された基板Sの上に第2の拡散ガスとともに反応ガスを供給する。ここで、反応ガスは、前述した蒸着装置の反応ガス提供部62から提供されてガス噴射部30に設けられた第2のガス供給経路を介して基板Sの上に供給される。また、第2の拡散ガスは、第2の拡散ガス提供部64から提供されて、ガス噴射部30に設けられた第2のガス供給経路を介して基板Sの上に供給される。
【0057】
ここで、反応ガス提供部62は、第2の供給配管44の一方の端に連結されてもよく、第2の拡散ガス提供部64は、反応ガス提供部62とは別途に、ガス噴射部30と反応ガス提供部62とをつなぐ第2の供給配管44の延長経路の上に連結されてもよい。これにより、第2の拡散ガスは、第2のガス供給経路内において反応ガスと混合されて基板Sの上に供給されることが可能になる。このように、第2の拡散ガスを第2のガス供給経路の途中において反応ガスと混合して基板Sの上に供給することにより、反応ガスと予め混合されて単に反応ガスを搬送する役割しか果たさないキャリアー(carrier)ガスとは異なり、第2の拡散ガスは、反応ガスの移動を制御することができるだけではなく、基板Sの上において反応ガスを拡散させるための役割を果たすことが可能になるということは、第1の拡散ガスの場合と同様である。
【0058】
ここで、反応ガスは、原料ガスと反応して金属酸化物薄膜を形成するための反応ガスを含んでいてもよい。例えば、反応ガスは、酸素(O)を含有するガスであってもよい。また、第2の拡散ガスは、反応ガスを拡散させるための不活性ガスを含んでいてもよく、例えば、アルゴン(Ar)ガス又は窒素(N2)ガスを含んでいてもよい。
【0059】
このとき、反応ガスを供給するステップ(S200)においては、反応ガスに含まれる酸素(O)成分を亜鉛(Zn)成分と効果的に反応させるために、反応ガスを活性化させてプラズマが生じるように工程空間にRF電源50を供給してもよい。このように、反応ガスを供給するステップ(S200)において反応ガスを活性化させて供給することにより、供給される酸素含有ガスを酸素ラジカルで活性化させて亜鉛成分と反応させ、基板の上に酸化亜鉛薄膜をさらに低い工程温度において形成することが可能になる。
【0060】
一方、本発明の実施形態においては、原料ガスを供給するステップ(S100)において、第1の拡散ガスの供給量が第2の拡散ガスの供給量とは異なるように制御してもよい。すなわち、基板Sの上に薄膜を蒸着するに際して、薄膜の膜厚などは、原料物質が基板Sに吸着される度合いによって決定されるため、基板Sの上に供給される原料ガスの供給速度は、薄膜の膜厚を制御するために、工程条件によって異なるように制御される必要がある。このため、本発明の実施形態においては、原料ガスを供給するステップ(S100)における第1の拡散ガスの供給量が反応ガスを供給するステップ(S200)における第2の拡散ガスの供給量とは異なるように制御してもよい。
【0061】
また、原料ガスを供給するステップ(S100)における第1の拡散ガスの供給量は、第2の拡散ガスの供給量よりも相対的に少なめに制御されてもよい。すなわち、本発明の実施形態においては、原料ガスを供給するステップ(S100)における第1の拡散ガスの供給量を反応ガスを供給するステップ(S200)における第2の拡散ガスの供給量よりも少なめに制御してもよい。
【0062】
すなわち、
図4に示されているように、本発明の実施形態に係る原料ガスを供給するステップ(S100)における第1の拡散ガスの供給量は、M1に制御されてもよい。また、本発明の実施形態に係る反応ガスを供給するステップ(S200)における第2の拡散ガスの供給量は、M1よりも多めのM2に制御されてもよい。
【0063】
一般に、原子層蒸着工程においては、原料ガスを供給した後、原料ガスをパージする過程において原料ガスが拡散して基板Sの上に均一に吸着される。しかしながら、原料ガスを供給した後、原料ガスをパージする過程を行わなければ、原料ガスが基板Sの上において均一に拡散せず、基板Sの中心部において多量の原料物質が吸着され、基板Sの周縁部において相対的に少ない量の原料物質が吸着されて蒸着均一性が低下してしまうという問題が生じる。
【0064】
このため、本発明の実施形態においては、原料ガスを供給するステップ(S100)における第1の拡散ガスの供給量M1を反応ガスを供給するステップ(S200)における第2の拡散ガスの供給量M2よりも相対的に少なめに制御する。このように、第1の拡散ガスの供給量M1を反応ガスを供給するステップ(S200)における第2の拡散ガスの供給量M2よりも相対的に少なめに制御することにより、原料ガスは、基板Sの上において相対的に低い速度にて拡散することになり、これにより、原料ガスが基板Sの周縁部まで均一に拡散して均一な厚さに基板Sに原料物質が吸着されることが可能になる。すなわち、基板Sの上に蒸着される薄膜の膜厚は、原料物質の吸着の度合いによって決定されるため、第1の拡散ガスの供給量M1を相対的に少なめに制御することにより、蒸着均一性を向上させることができる。一方、反応ガスは、基板Sに既に吸着された原料物質と反応するための反応物質を提供するためのものであって、基板Sの上に原料物質と反応するための反応物質を速やかに提供するために、第2の拡散ガスの供給量M2は、原料ガスを供給するステップ(S100)における第1の拡散ガスの供給量M1よりも多めに制御してもよい。
【0065】
一方、原料ガスを供給するステップ(S100)において、第2の拡散ガスは、前記第1の拡散ガス及び原料ガスとともに前記基板Sの上に供給されてもよく、反応ガスを供給するステップ(S200)において、第1の拡散ガスは、前記第2の拡散ガス及び反応ガスとともに前記基板Sの上に供給されてもよい。すなわち、本発明の実施形態に係る薄膜の蒸着方法は、ガス噴射部30に形成された第1のガス供給経路を介してチャンバー10の工程空間に第1の拡散ガス及び原料ガスを供給し、前記ガス噴射部30に形成された第2のガス供給経路を介して前記工程空間に第2の拡散ガスを供給する第1のステップ、及び前記第1のガス供給経路を介して前記工程空間に前記第1の拡散ガスを供給し、前記第2のガス供給経路を介して前記工程空間に前記第2の拡散ガス及び反応ガスを供給する第2のステップと、を含んでいてもよい。ここで、前記第1のステップと第2のステップとは、連続して行われて一つの工程サイクルをなし、前記第1のステップと第2のステップとが連続して行われる工程サイクルは、繰り返し行われてもよい。
【0066】
これについてさらに詳しく述べると、原料ガスを供給するステップ(S100)において、第1の拡散ガス及び原料ガスは、第1のガス供給経路を介して基板Sの上に供給され、これと同時に、第2の拡散ガスは、第2のガス供給経路を介して基板Sの上に供給される。また、反応ガスを供給するステップ(S200)において、第2の拡散ガス及び反応ガスは、第2のガス供給経路を介して基板Sの上に供給され、これと同時に、第1の拡散ガスは、第1のガス供給経路を介して基板Sの上に供給されてもよい。
【0067】
このように、第2のガス供給経路を介して反応ガス及び第2の拡散ガスを供給する最中に、第1のガス供給経路を介して第1の拡散ガスを供給することにより、反応ガスが第1のガス供給経路に流れ込むことを防ぎ、第1のガス流込み経路内において原料ガスと反応ガスとが反応してパーティクルが生じることを防ぐことができる。すなわち、第1のガス供給経路を介して原料ガス及び第2の拡散ガスを供給する最中に、第2のガス供給経路を介して第2の拡散ガスを供給することにより、原料ガスが第2のガス供給経路に流れ込むことを防ぎ、第2のガス流込み経路内において原料ガスと反応ガスとが反応してパーティクルが生じることを防ぐことが可能になる。
【0068】
また、第2のガス供給経路を介して反応ガス及び第2の拡散ガスを供給する最中に、第1のガス供給経路を介して第1の拡散ガスを供給することにより、第1のガス供給経路内に残留する原料ガスを速やかに排出することができる。すなわち、原料ガスを供給するステップ(S100)において供給された原料ガスは、反応ガスを供給するステップ(S200)においては供給が中断されるものの、原料ガスを供給するステップ(S100)において既に排出された原料ガスは、第1のガス供給経路内に残留する可能性がある。このため、本発明の実施形態においては、第2のガス供給経路を介して反応ガス及び第2の拡散ガスを供給する最中に、第1のガス供給経路を介して第1の拡散ガスを供給することにより、第1のガス供給経路内において、又は工程空間内において原料ガスと反応ガスとが互いに反応して不純物が形成されることを極力抑えることができる。これは、第1のガス供給経路を介して原料ガス及び第1の拡散ガスを供給する最中に、第2のガス供給経路を介して第2の拡散ガスを供給する場合にも同様に適用可能である。
【0069】
この場合、結果的に、第1の拡散ガスは、原料ガスを供給するステップ(S100)及び反応ガスを供給するステップ(S200)において基板Sの上に供給され続ける。このとき、原料ガスを供給するステップ(S100)及び反応ガスを供給するステップ(S100)における第1の拡散ガスの供給量は、互いに異なるように制御されてもよい。すなわち、前述したように、原料ガスを供給するステップ(S100)における第1の拡散ガスは、第2の拡散ガスの供給量であるM2よりも相対的に少なめのM1の供給量にて供給されてもよいが、これは、原料ガスを基板の上において均一に拡散させるためである。これに対し、反応ガスを供給するステップ(S200)における第1の拡散ガスは、原料ガスを均一に拡散させるためではなく、反応ガスが第1のガス供給経路に流れ込むことを防ぐためのものである。したがって、反応ガスを供給するステップ(S200)における第1の拡散ガスは、M1よりも多い量にて供給されることができ、例えば、反応ガスを供給するステップ(S200)における第2の拡散ガスの供給量であるM2の供給量にて供給されるように制御されて、反応ガスが第1のガス供給経路に流れ込むことを効果的に遮断することが可能になる。
【0070】
図4においては、第1の拡散ガスが原料ガスを供給するステップ(S100)及び反応ガスを供給するステップ(S200)においてそれぞれM1及びM2の量にて供給され、第2の拡散ガスが原料ガスを供給するステップ(S100)及び反応ガスを供給するステップ(S200)においてM2の量にて供給される場合を例にとって説明した。しかしながら、第1の拡散ガスの供給量と第2の拡散ガスの供給量は種々に制御可能であるということはいうまでもない。例えば、反応ガスを供給するステップ(S200)における第1の拡散ガスの供給量は、M1よりも大きな範囲内においてM2よりも少なめにまたは多めに制御されてもよい。また、第1の拡散ガスの供給量及び第2の拡散ガスの供給量は、原料ガスを供給するステップ(S100)又は反応ガスを供給するステップ(S200)において必ずしもM1又はM2に一定に保たれる必要はなく、工程条件によって増加又は減少するように種々に変化させてもよいということはいうまでもない。
【0071】
このように、原料ガスを供給するステップ(S100)及び反応ガスを供給するステップ(S200)を含む工程サイクルは、所望の膜厚の薄膜が蒸着されるまで複数回で行われてもよい。すなわち、本発明の実施形態に係る薄膜の蒸着方法は、反応ガスを供給するステップ(S200)の後に、反応ガスをパージするステップを行わず、原料ガスを供給するステップ(S100)及び反応ガスを供給するステップ(S200)を一つの工程サイクルとして、前記工程サイクルを複数回で行うことで薄膜を蒸着してもよい。
【0072】
図5は、本発明の実施形態に従って製造される薄膜トランジスターの一例を示す図である。
【0073】
図5を参照すると、本発明の実施形態に従って製造される薄膜トランジスターは、ゲート電極100と、前記ゲート電極100の上部又は下部に配置され、水平方向に互いに離れ合うソース電極400及びドレイン電極500と、前記ゲート電極100とソース電極400及びドレイン電極500の間に配置される活性層300と、前記ゲート電極100と活性層300との間に配置されるゲート絶縁膜200と、を備える。
【0074】
ここで、本発明の一実施形態に係る薄膜トランジスターは、
図5に示されているように、基板Sの上に形成されるゲート電極100と、ゲート電極100の上に形成されるゲート絶縁膜200と、ゲート絶縁膜200の上に形成される活性層300と、活性層300の上に互いに離れ合うように形成されるソース電極400及びドレイン電極500と、を備えるボトムゲート(bottom gate)型薄膜トランジスターであってもよいが、これとは異なり、ゲート電極100が上部に配置されるトップゲート(top gate)型薄膜トランジスターにも同様に適用可能であるということはいうまでもない。
【0075】
ここで、基板Sとしては、透明基板が使用可能であり、例えば、シリコン基板、ガラス基板又はフレキシブル(flexible)ディスプレイを実現する場合にはプラスチック基板が使用可能である。また、基板Sとしては、反射型基板が使用可能であり、この場合、メタル基板が使用可能である。メタル基板は、ステンレス鋼(SUS)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)又はこれらの合金から形成されてもよい。一方、基板Sとしてメタル基板を用いる場合、メタル基板の上部に絶縁膜を形成することが好ましい。
【0076】
ゲート電極100は、導電物質を用いて形成してもよいが、例えば、アルミニウム(Al)、ネオジム(Nd)、銀(Ag)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)及び銅(Cu)のうちの少なくともいずれか1種の金属又はこれらを含む合金から形成してもよい。また、ゲート電極100は、単一層のみならず、複数の金属層からなる多重層に形成してもよい。すなわち、物理化学的な特性に優れたクロム(Cr)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)などの金属層と比抵抗の小さなアルミニウム(Al)系、銀(Ag)系又は銅(Cu)系の金属層を備える二重層に形成してもよい。
【0077】
ゲート絶縁膜200は、少なくともゲート電極100の上部に形成される。すなわち、ゲート絶縁膜200は、ゲート電極100の上部及び側部を含む基板Sの上に形成されてもよい。ゲート絶縁膜200は、金属物質との密着性に優れており、しかも、絶縁耐圧が抜群であるシリコンオキシド(SiO2)、シリコンナイトライド(SiN)、アルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)を含む無機絶縁膜のうちの一つ又はそれ以上の絶縁物質を用いて形成してもよい。
【0078】
活性層300は、ゲート絶縁膜200と、ソース電極400及びドレイン電極5000の間に形成され、少なくとも一部がゲート電極100と重なり合うように形成される。活性層300は、金属酸化物薄膜を備えて形成されてもよいが、このような金属酸化物薄膜は、前述したように、工程空間に設けられた基板Sの上に、第1の拡散ガスとともに原料ガスを供給するステップ(S100)、及び前記原料ガスを供給するステップ(S100)と連続するように、前記基板Sの上に第2の拡散ガスとともに反応ガスを供給するステップ(S200)を含む薄膜の蒸着方法により形成されてもよい。このとき、前記原料ガスを供給するステップ(S100)及び前記反応ガスを供給するステップ(S200)を含む工程サイクルは複数回で行われ、前記第1の拡散ガス及び原料ガスと、前記第2の拡散ガス及び反応ガスとを互いに異なる経路にて前記基板Sの上に供給することは、本発明の実施形態に係る薄膜の蒸着方法において説明したところと同様であるため、重複する説明は省略する。
【0079】
一方、活性層300は、単一の金属酸化物薄膜から形成されてもよいし、あるいは、複数の金属酸化物薄膜から形成されてもよい。このとき、活性層300は、金属酸化物薄膜の電気伝導度を各金属酸化物薄膜に含有される金属元素の種類及び含量を制御して調節してもよい。すなわち、インジウム(In)は、バンドギャップ(band gap)が相対的に低く、標準電極電位(standard electrode potential)が相対的に高い金属により抵抗を低め、電気伝導度を増加させて移動度を向上させるという特徴がある。これに対し、ガリウム(Ga)は、バンドギャップが相対的に高く、標準電極電位が相対的に高い金属により抵抗を高め、電気伝導度を減少させて安定性を向上させるという特徴がある。したがって、単一の金属酸化物薄膜又は複数枚の金属酸化物薄膜にそれぞれ含まれるインジウム(In)及びガリウム(Ga)の含量を制御して活性層を形成することができる。このような金属酸化物薄膜は、インジウム-亜鉛酸化物(IZO;In-Zn-O)薄膜、ガリウム-亜鉛酸化物(GZO;Ga-Zn-O)薄膜及びインジウム-ガリウム-亜鉛酸化物(IGZO;In-Ga-Zn-O)薄膜のうちの少なくとも1つの薄膜を備えていてもよい。
【0080】
ソース電極400及びドレイン電極500は、活性層300の上部に形成され、ゲート電極100と一部重なり合ってゲート電極100を挟んでソース電極400とドレイン電極500とが互いに離れ合うように形成されてもよい。ソース電極400及びドレイン電極500は、互いに同一の物質を用いた同一の工程により形成してもよく、導電性物質を用いて形成してもよいが、例えば、アルミニウム(Al)、ネオジム(Nd)、銀(Ag)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)及びモリブデン(Mo)のうちの少なくともいずれか1種の金属又はこれらを含む合金から形成してもよい。すなわち、ゲート電極100と同一の物質から形成してもよいが、ゲート電極100とは異なる物質から形成してもよい。また、ソース電極400及びドレイン電極500は、それぞれ単一層のみならず、複数の金属層の多重層に形成してもよいということはいうまでもない。
【0081】
このように、本発明の実施形態によれば、基板の上に薄膜を蒸着するための工程速度を向上させることができる。
【0082】
すなわち、既存の原子層蒸着工程において、原料ガスをパージするステップと反応ガスをパージするステップを省略して工程時間を最小限に抑えることができる。
【0083】
また、原料ガスをパージするステップと反応ガスをパージするステップを省略しながらも、既存の原子層蒸着工程によって形成される薄膜と同等のレベルの品質を有する薄膜を形成することができる。
【0084】
以上、本発明の好適な実施形態が特定の用語を用いて説明及び図示されたが、これらの用語は、単に本発明を明確に説明するためのものに過ぎず、本発明の実施形態及び記述された用語は、特許請求の範囲の技術的思想及び範囲から逸脱することなく、種々の変更及び変化が加えられるということは明らかである。これらの変形された実施形態は、本発明の思想及び範囲から個別的に理解されてはならず、本発明の特許請求の範囲内に属するものといえるべきである。
【国際調査報告】