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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】ブレーキ粒子の吸引方法
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/00 20060101AFI20240517BHJP
【FI】
F16D65/00 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574326
(86)(22)【出願日】2022-05-31
(85)【翻訳文提出日】2024-01-05
(86)【国際出願番号】 FR2022051031
(87)【国際公開番号】W WO2022254142
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】2105771
(32)【優先日】2021-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514287580
【氏名又は名称】タラノ・テクノロジーズ
(71)【出願人】
【識別番号】507063735
【氏名又は名称】アクウェル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・ロッカ-セラ
(72)【発明者】
【氏名】ロイク・アダムザック
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AA43
3J058AA48
3J058AA53
3J058BA78
3J058CA42
3J058DB20
3J058DB21
3J058DE17
3J058FA01
3J058FA11
3J058FA21
(57)【要約】
ブレーキ粒子吸引システムを制御するための方法であって、負圧源(1)と、摩擦界面の近傍または摩擦部の内部に配置され、空気圧ラインによって負圧源に接続された吸引口(83)と、負圧源を制御するように構成された制御ユニット(6)と、を備えており、制御ユニットは、
a)現在のブレーキ作動情報に従ってブレーキ吸引シーケンス(51)を制御し、ブレーキが作動するとすぐに吸引が確実に適用され、
b)ブレーキシーケンスの外で、洗浄吸引条件を確立し、
c)洗浄吸引条件が所定の基準を満たすとすぐに、所定の期間の間、空気圧ラインの洗浄シーケンス(52)のために負圧源を制御している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩擦ブレーキシステムのブレーキ粒子吸引システムを制御するための方法であって、該ブレーキ粒子吸引システムは、
少なくとも1つの負圧源(1)と、摩擦界面の近傍または摩擦部の内部に配置され、少なくとも1つの空気圧ラインによって前記負圧源に接続された少なくとも1つの吸引口(83)と、前記負圧源を制御するように構成された制御ユニット(6)と、現在のブレーキ作動情報を供給する手段とを備えており、
前記制御ユニットは、
a)ブレーキ吸引シーケンス(51)のために、前記現在のブレーキ作動情報に従って前記負圧源を制御し、ブレーキが作動するとすぐに吸引が確実に適用され、
b)ブレーキシーケンスの外で、少なくとも1つの洗浄吸引条件を確立し、
c)少なくとも1つの洗浄吸引条件が所定の基準を満たすとすぐに、所定の期間(TN)の間、少なくとも1つの空気圧ラインの洗浄シーケンス(52)のために前記負圧源を制御する、
ように構成されており、
前記方法は、前記ステップb)において、洗浄吸引条件の決定が、以下の変数のうちの少なくとも1つを考慮する論理/アルゴリズム計算である:
- 車両の現在の速度、特に車両の現在の速度が第1の速度閾値(V1)を超える場合、
- 最後の洗浄シーケンスからの経過時間、
- 最後の洗浄シーケンス以降の走行距離、
- 最後の洗浄シーケンス以降に実施された動的ブレーキ動作の回数、
- 保守モード(ガレージモードまたは診断モード)の頻度、
である、方法。
【請求項2】
前記洗浄シーケンスは、前記車両の現在の速度が第1の速度閾値(V1)より大きい場合にのみ、保守モード外でトリガされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップc)において、前記負圧源が最大出力まで作動される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記所定の時間(TN)は、3秒から15秒の範囲内で選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の速度閾値(V1)は、50km/hより大きく、好ましくは70km/hに等しい、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記洗浄シーケンス(52)は、保守モード中に診断装置によってなされる要求に応答してトリガされる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記負圧源は、電気モータ(11)によって駆動されるタービンによって形成され、前記制御ユニット(6)は、前記電気モータを制御するように構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記制御ユニット(6)は、前記洗浄シーケンス中に、前記吸引口の近くの前記空気圧回路上に配置されたベントソレノイドバルブ(59)を制御するように構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
摩擦ブレーキシステムのブレーキ粒子吸引システムであって、少なくとも1つの負圧源(1)と、摩擦界面の近くまたは摩擦部の内部に配置され、少なくとも1つの空気圧ラインによって前記負圧源に接続された少なくとも1つの吸引口(83)と、前記負圧源を制御するように構成された制御ユニット(6)と、現在のブレーキ作動情報を供給する手段と、を備え、
前記吸引システムは、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法を実施するように構成されている、ブレーキ粒子吸引システム。
【請求項10】
吸引された粒子を回収するための少なくとも1つのフィルタ(2)を更に備えている、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
4つ以上の吸引口に接続された集中型フィルタ及び集中型タービンを備えている、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
ベントソレノイドバルブ(59)が、前記空気圧回路上で且つ前記吸引口の近くに設けられている、請求項9に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦ブレーキシステム(friction braking system)におけるブレーキ粒子吸引システム(braking particle suction system)に関する。かかる摩擦ブレーキシステムは、道路車両または鉄道車両に取り付けることができる。このような摩擦ブレーキシステムは、風力タービン又は産業機械のような静止ロータベースの機械(stationary rotor-based machine)にも取り付けることができる。
【背景技術】
【0002】
このようなシステムでは、例えば、特許文献1に記載されているように、吸引タービン及び粒子収集フィルタ(particle collection filter)が提供されている。従って、摩耗による粒子は、徐々に収集フィルタ内に蓄積される。その結果、フィルタ及びフィルタに通じる空気圧ラインの目詰まりが進行する。摩擦パッドが使用される場合、例えば、特許文献2において出願人によって教示されているように、摩擦材料に吸引溝を設けることができる。
【0003】
特許文献3は、ブレーキング中のタービン制御を最適化し、フィルタの目詰まり状態を示すように適合された制御ソリューションを提供した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第4240873号明細書
【特許文献2】仏国特許第3057040号明細書
【特許文献3】仏国特許第3088395号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、本発明者らは、徐々に蓄積するブレーキ粒子の小さな堆積物(small deposit)のために、空気圧ラインが経時的に詰まる傾向があることに気付いた。
【0006】
本発明の目的は、空気圧ラインを満足な状態に維持するための改善された解決策を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のために、摩擦ブレーキシステムのブレーキ粒子吸引システムを制御するための方法が提案され、当該吸引システムは、
少なくとも1つの負圧源と、摩擦界面(friction interface)の近傍または摩擦部の内部に配置され、少なくとも1つの空気圧ラインによって負圧源に接続された少なくとも1つの吸引口(suction mouth)と、負圧源を制御するように構成された制御ユニットと、現在のブレーキ作動情報(current braking activation information)を供給する手段と、を備えており、
前記制御ユニットは、
a)ブレーキ吸引シーケンスのために、現在のブレーキ作動情報に従って負圧源(例えば、タービンの回転)を制御し、ブレーキが作動するとすぐに(及びブレーキが作動している間)、吸引が確実に適用され、
b)ブレーキシーケンスの外で、少なくとも1つの洗浄吸引条件(cleaning suction condition)を確立し、
c)少なくとも1つの洗浄吸引条件が所定の基準を満たすとすぐに、所定の期間(TN)の間、少なくとも1つの空気圧ラインの洗浄シーケンスのために負圧源(例えば、タービンの回転)を制御する、
ように構成されている。
【0008】
これらの構成により、高い空気圧流を有するシーケンスを提供することができ、これにより、空気圧ラインを洗浄することが可能になる。運転中、この操作による気流ノイズ(whistling noise)は、車両が閾値速度を超えて走行しているときにこの操作が行われることを考えると、転動ノイズ(rolling noise)によってカバーされている。洗浄シーケンスは、保守の理由または診断条件のために要求されることもある。
【0009】
吸引口における気流制限断面積(airflow-limiting cross-sectional area)を増加させることにより、ブレーキ吸引シーケンスは低流量で実行され、一方、逆に洗浄シーケンスは高流量で実行されることに留意されたい。
【0010】
「摩擦界面」という用語は、“ディスクに対するパッド”の界面または“リムに対するパッド”の界面を指し、全ての摩擦ブレーキ構成が対象となる。更に、「近傍(close to)」とは、吸引が上記の界面に近接して起こることを意味している。
【0011】
また、摩擦パッドを使用する場合には、摩擦材に形成された吸引溝が吸引口を形成し、この吸引口が摩擦パッドを構成する摩擦部の内部に配置されている。
【0012】
この方法に関する本発明の様々な実施形態では、以下の構成のうちの1つまたは複数を、個別にまたは組み合わせて追加的に利用することが可能である。
【0013】
一の態様によれば、ステップb)において、洗浄吸引条件の決定が、以下の変数のうちの少なくとも1つを考慮する論理/アルゴリズム計算である:
- 車両の現在の速度、特に第1の速度閾値(V1)を超える速度、
- 最後の洗浄シーケンスからの経過時間、
- 最後の洗浄シーケンス以降の走行距離、
- 最後の洗浄シーケンス以降に実施された動的ブレーキ動作(dynamic braking action)の回数、
- 保守モード(ガレージモードまたは診断モード)の頻度(prevalence)。
【0014】
このようなマルチパラメータ、マルチ基準条件は、可能な限り最も最適化された方法で洗浄シーケンスをトリガすることを決定するために使用され、言い換えれば、ラインを良好な状態に維持する際の所望の効率に対する洗浄シーケンスの数が最小化されている。
【0015】
動的ブレーキとは、車両がゼロ速度でないときに実施されるブレーキングを指すと理解される。
【0016】
一の態様によれば、ステップc)において、負圧源(例えば、タービンの回転)が最大出力まで作動されることが提供され得る。これにより、ライン内に堆積した可能性のある粒子を除去する際の高流量吸引の効果を最大化している。
【0017】
また、前記所定時間(TN)は、3秒以上15秒以下の範囲内で選択されても良い。この時間は、ラインの適切な洗浄を確保するために十分且つ必要である。
【0018】
一の態様によれば、洗浄シーケンスは、車両の現在の速度が第1の速度閾値よりも大きい場合にのみ、保守モード外でトリガされる。従って、洗浄シーケンスは、その音量レベルが転動ノイズによってカバーされるので、車両の乗員または通行人に聞こえにくい。
【0019】
一の態様によれば、洗浄シーケンス(52)は、保守モード中に診断装置によってなされる要求に応答してトリガされる。従って、ラインが切断され、パッドが無い状態でブレーキパッドを交換するとき、診断ツールを使用して、パッド領域で気流制限の無い吸引シーケンスを生成することができる。
【0020】
一の態様によれば、負圧源は、電気モータ(11)によって駆動されるタービンによって形成され、制御ユニット(6)は、電気モータを制御するように構成されている。これは、タービンの速度を吸引要件に従って調整することができるので、使用するための柔軟な解決策である。
【0021】
一の態様によれば、制御ユニットは、洗浄シーケンス中に、吸引口の近くの空気圧回路上に配置されたベントソレノイドバルブを制御するように構成することができる。これにより、洗浄シーケンス中に空気圧ライン内の空気流を更に増加させることが可能になる。前記ベントソレノイドバルブが作動すると、摩擦界面側には気流制限部が無くなる。
【0022】
本発明はまた、摩擦ブレーキシステムのブレーキ粒子吸引システムに関し、吸引システムは、少なくとも1つの負圧源(1)と、摩擦界面の近くまたは摩擦部の内部に配置され、少なくとも1つの空気圧ラインによって負圧源に接続された少なくとも1つの吸引口(83)と、負圧源を制御するように構成された制御ユニット(6)と、現在のブレーキ作動情報を供給する手段とを備え、吸引システムは、上述の方法を実施するように構成されている。
【0023】
一の態様によれば、システムは、吸引された粒子を回収するための少なくとも1つのフィルタ(2)を更に備えることができる。
【0024】
一の態様によれば、システムは、4つ以上の吸引口に接続された集中型フィルタ(centralized filter)及び集中型タービン(centralized turbine)を含む。この構成では、空気圧ラインはある程度の長さであり、従って、時々それらを洗浄することができるという利点がある。
【0025】
一の態様によれば、ベントソレノイドバルブ(59)は、空気圧回路上で且つ吸引口の近くに設けられても良い。このようなソレノイドバルブは、洗浄シーケンス中に空気圧ライン内の気流を実質的に増加させることを可能にし、該ソレノイドバルブは、空気圧パイプが吸引口側の大気(フリーエア)と連通することを可能にしている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】摩擦ブレーキ部材の一例を示す断面図である。
図2】ホイールまたはアクスルに対する局所的なブレーキ粒子吸引システムの概略図である。
図3】複数のホイールまたはアクスルに対する集中化されたブレーキ粒子吸引システムの概略図である。
図4】ブレーキ粒子吸引システムの機能図である。
図5】ブレーキ粒子吸引システムの構成部品の物理的説明を提供している。
図6】システムの少なくとも1つの機能を示すタイミング図である。
図7】より長い時間スケールでのタイミング図である。
図8】空気圧ラインを示す機能図である。
図9】ベントソレノイドバルブを有する空気圧ラインを示す別の機能図である。
図10】摩擦ブレーキ粒子吸引システムの変形例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の他の態様、目的、及び利点は、非限定的な例として与えられる本発明の実施形態の以下の説明を読めば明らかになるであろう。本発明はまた、添付の図面を参照してより良く理解されるであろう。
【0028】
様々な図において、同じ参照符号は、同一または類似の要素を示している。説明を明確にするために、特定の要素は必ずしも一定の縮尺で表されていない。
【0029】
一般的なレイアウト
図1は摩擦ブレーキ部材を模式的に示している。図示の例では、ブレーキディスク9は車輪(又は鉄道設備の車軸)と一体に回転するように形成されている。ディスク9は軸Aを中心に回転するが、従来技術では、キャリパー7がディスクにまたがって配置され、キャリパー支持体に取り付けられている。更に、キャリパーは、サンドイッチ状にディスクを把持するために摩擦パッドに作用するように構成されたピストンを含む。摩擦パッドは、バッキングプレートに取り付けられている。これらは全て既知であり、ここでは詳細には説明しない。パッドには19という参照符号が付され、特定の図では点線で表されている。
【0030】
ディスクブレーキの図が示されているが、本発明はまた、ドラムブレーキ、またはホイールリムに直接適用されるブレーキパッドシステムにも適している。
【0031】
摩擦パッドの位置には、それらから放出される粒子を捕捉するための装置8が設けられている。具体的には、各摩擦パッドに対して吸引口83を設けることができる。例えば、本出願人によって提出された特許文献2には、粒子が摩擦材料に形成された溝に捕捉される例が見られる。吸引口は、摩擦ライニングのバックプレートの貫通孔に接続され、(フィルタに通じる)下流通路と連通する溝自体によって形成することができる。
【0032】
吸引口83は、空気圧回路によって負圧源に接続されている。空気圧回路は、図5に概略的に示すように、第1のライン3及び第2のライン30を含むことができる。もちろん、フィルタとタービンが関連付けられている場合は、単一のライン3が存在しても良い。
【0033】
一般的に言えば、吸引口は、粒子がパッドと回転部材(ディスク、ドラム、リム等)との間の界面を出るときの粒子の経路に配置することができる。良好な捕捉に寄与するのは、この位置で作成される負圧または流れである。
【0034】
他の構成では、カバーを設けることができ、その場合、吸引口は、該カバーによって覆われた空間からの出口によって形成されている。
【0035】
従って、本発明は、吸引口83の構成に拘わらず適用できることを理解されたい。
【0036】
典型的には、ディスクブレーキ構成の場合、図1に示すように、ディスクの各側に吸引口83がある。
【0037】
吸引口(場合によっては複数の吸引口)は、図2に例示されるように、ここでは第1のライン3と呼ばれる流体ラインによってフィルタ2に接続されている。第1のライン3は、パイプの形態であっても良いが、これは、部品(例えば、キャリパーの本体)を通るトンネルの形態の通路を排除するものではない。第1のラインは、図3に示されるような集中型フィルタリング構成において、数十センチメートル、例えば50cmから数メートルまでの範囲の、多かれ少なかれ広範囲の長さを有することができる。
【0038】
一般的に言えば、吸引口とフィルタ2との間の流体接続は、1つまたは複数の分岐、T字型またはY字型コネクタ等を含むことができる。空気圧回路という用語は、流体ライン/空気ホースを指すためにも使用することができる。
【0039】
吸引口とフィルタ2との間の流体接続は、剛性部分及び可撓性ライン部分を含むことができる。
【0040】
吸引口、フィルタ、及び負圧源の間には、異なる構成があり得る。すなわち各吸引口にフィルタを設けること(分散化を最大化する構成)、または各対の吸引口にフィルタを設けることもできる(図2)。しかしながら、複数対の吸引口に対して単一のフィルタを設けること(図3)(集中型構成と呼ばれる)、または車両全体に対して単一のフィルタを設けることもできる。この選択は、車両のタイプ、フィルタが目詰まりする前に必要とされる寿命、車両への取り付けに関する様々な制約等によって決定され得る。
【0041】
図2図6及び図7では、負圧下の構成が示されており、第1のライン3と、外部周囲圧力に対して負圧下にあるフィルタを通して粒子を吸引する負圧源1との間にフィルタが配置されている。しかし、図10に示す構成では、負圧源(ここではタービン1)は、第1のライン3とフィルタとの間に介在させることができ、その場合、タービンは粒子を吸い上げ、次いで、第2のセンサ23(任意)を有する参照符号3’で示される下流ラインを介して粒子をフィルタに吹き込む。この場合、フィルタ2は負圧ではなく正圧である。
【0042】
典型的な実施形態において、フィルタ2は、空気を通過させるが、吸引口からの流れに含まれる小粒子を捕捉する、紙または他のタイプ等の濾過媒体を含むことができる。
【0043】
「フィルタ」という用語は、ここでは広く理解されるべきであり、この用語は、遠心フィルタによる解決策(「サイクロン」型)、電磁捕捉技術を有するフィルタによる解決策、及び静電捕捉技術を有するフィルタによる解決策を包含している。「フィルタ」という用語は、粒子が乗員室のエアフィルタ等の既存のフィルタに方向付けられる、または触媒コンバータのフィルタに方向付けられる解決策も含まれる。
【0044】
粒子フィルタ2は、ナノメートル、マイクロメートルまたはミリメートルの寸法を有する固体粒子を含む吸引口から来る空気を濾過するように構成されており、粒子が濾過媒体を通過せず、その中に捕捉されている間に、空気が濾過媒体を通過することを可能にしている。濾過媒体に捕捉された粒子の量は時間と共に増加するので、フィルタ2は粒子の堆積につれて機能し、濾過媒体を通る空気の通過は徐々に困難になる。
【0045】
時間の経過と共に、また一連のブレーキ動作から、粒子が空気圧ライン内に堆積する。堆積する量は、時間及びブレーキ動作と共に増加する。この堆積は、摩擦材料の性質及び品質、遭遇する気候条件等によって変化する。
【0046】
図示の例では、負圧源1は、電気モータ11によって駆動される吸引タービン10によって形成されている。
【0047】
図示の例では、電気モータを備えたタービンは、フィルタとは別のエンティティを形成している。これらの条件下で、第2の空気圧流体ライン30が、タービンをフィルタに接続するために設けられる。
【0048】
なお、タービンとフィルタとが一体となった構成も可能である。
【0049】
1つの任意の構成によれば、第1のライン3内に存在する圧力を測定するように構成された圧力センサ22を設けることもできる。図2の概略図において、圧力センサ22は、少なくとも1つの吸引口とフィルタ2との間の第1のライン3の経路上に配置されている。
【0050】
しかし、別の同様に好ましい構成では、圧力センサ22は、図5に示すように、フィルタ2に隣接して配置されるか、またはフィルタ2と一体化されている。
【0051】
制御ユニット
吸引システムは更に、タービンを制御するように構成された制御ユニット6を含む。
【0052】
制御ユニット6は、ゼロ速度と最大可能速度との間の任意の値に従って、タービンを駆動するモータの速度を制御するための制御信号を生成することができる電子ユニットである。
【0053】
一例によれば、電気モータ11は、DC電圧によって給電され、制御ロジックは、PWM信号(パルス幅変調)を使用することが可能である。使用されるDC電圧は、粒子吸引システムの適用分野に依存しても良く、例えば、従来の自動車では12ボルト、トラックまたはバスのような大型貨物車両または産業車両では24ボルト、または鉄道機器(路面電車、列車)では72ボルトである。
【0054】
ここで、負圧源は、吸引タービンの代わりに、車両内に予め存在していても良く、特に、自動車分野の場合には、車両のエンジンの作動によって、例えば、空気取入口から迂回することによって、又は別の例では、例えば、排気ガスのようなガスの流出ストリームに対するベンチュリ効果の利用によって誘起される負圧源であっても良いことに留意されたい。鉄道セクターの場合、負圧源は、当該鉄道車両の空気圧式ブレーキ装置またはその他の補助装置から得ることができる。
【0055】
1つの構成によれば、負圧の目標値は、周囲圧力より20~100ミリバール低い範囲内で選択され、言い換えれば、絶対圧力スケールでは、第1のライン内の絶対圧力設定点は、吸引システムの近傍に存在する大気圧の90%~98%であり得る。センサ22は、タービンの回転速度設定点を制御するために使用することができ、従って、タービンを必要な程度だけ回転させることができる。
【0056】
有利には、現在のブレーキ作動情報を供給するための手段60が設けられる。
【0057】
特定の道路車両タイプの構成では、ブレーキペダル68と相互作用する単なる全か無かのバイナリスイッチが存在する。このスイッチは、情報67を吸引システムの制御ユニット6に直接送るか、またはブレーキング機能を制御する制御ユニット63、例えばABS機能を管理するものを介して送ることができる。
【0058】
別の構成によれば、アナログまたはデジタルのより豊富な情報を提供することができ、この情報は、ブレーキペダルの現在位置を正確に反映し、従って、制御ユニット6が、一方ではブレーキング強度を知ることを可能にし、他方では、ユーザまたは運転者のブレーキペダル上での動作が開始する非常に早い時期に動作することを可能にしている。この場合、アナログまたはデジタルのポテンショメータ69が設けられ、吸引システムの制御ユニット6に豊富な情報66を送る。
【0059】
なお、道路車両に自動運転や緊急ブレーキング機能等の運転支援機能が搭載されている場合には、実際にペダルを踏んでいなくてもブレーキを作動させることができ、その情報をコンピュータがまとめて吸気系の制御ユニット6に送っている。
【0060】
従って、制御ユニット6は、バイナリまたはより詳細な現在のブレーキ作動情報を自由に使用することができる。
【0061】
鉄道のような別の状況では、現在のブレーキ作動情報は、上述の摩擦ブレーキを制御するブレーキアクチュエータから得ることができる。ブレーキアクチュエータはスロットルであっても良い。ここでも、ブレーキはスロットルを操作すること無く作動させることができ、その場合、情報をまとめて吸引システムの制御ユニット6に送るのはコンピュータである。
【0062】
また、制御部6は、現在の車速に関する情報を受信している。この現在の車両速度情報は、ブレーキコンピュータ63又は図4において参照符号96で示された他の任意のコンピュータによって提供することができる。
【0063】
「車速」情報は、有線接続またはデータバス型接続によって受信することができる。CANまたはJ1939バスは、道路車両に使用することができる。
【0064】
「車速」情報は、定期的に受信され、例えば、ほぼリアルタイムで更新されている。例えば、1秒間に少なくとも10回のリフレッシュが予想される。
【0065】
図4には、診断ツールが制御ユニット6と通信することを可能にする診断装置4が示されている。診断装置4は、診断ツール41と、車両に恒久的に取り付けられたプラグ43と、診断ツール41を車両のコンピュータに一時的に接続することを可能にする診断ツール41に連結された嵌合コネクタ42とを備えている。診断ダイアログ内のメッセージは、必要に応じて、通信ゲートウェイ44を通過することができる。
【0066】
診断ツール41は、ワイヤ無しで「無線」モードで接続することができる。
【0067】
制御ユニット6は、車両から供給される直流電圧によって電力を供給されている。しかし、バッテリーによる電力供給は除外されない。
【0068】
操作
図6は、第1の時間スケール(典型的には、数十分または数時間)のタイミング図を示し、図7は、数時間または数日の第2のより長い時間スケールのタイミング図を示す。
【0069】
まず一般的に言えば、運転中、ブレーキが作動するとすぐに(図6の上部のタイミング図)、制御ユニット6は、ブレーキ吸引シーケンス51のためにタービンを制御している。
【0070】
換言すれば、ブレーキ吸引シーケンス51は、現在のブレーキ作動情報に従って実行され、ブレーキが作動するとすぐに、ブレーキが作動する限り、車両が移動している限り、吸引が確実に適用されるようにしている。
【0071】
例外として、車両速度がゼロである場合、制御ユニット6は、タービンの制御をやめることができる。
【0072】
運転中、8つのブレーキ吸引シーケンス51のセットは、全体として図6の参照符号5として示されており、空気圧ライン3を移動する粒子の一部は、吸引段階中にその中に堆積する可能性がある。時間T1、T2、及びその後にトリガされるブレーキ吸引シーケンスの期間は、非常に可変的であり、特にブレーキの作動期間に依存することに留意されたい。
【0073】
有利なことに、この提案によれば、いかなるブレーキ作動とも無関係に、空気圧ライン3、30を洗浄することを目的とした、洗浄シーケンス52とも呼ばれる洗浄吸引シーケンスSeqNを実行することが計画されている。タービンは、制御ユニット6によって最大可能出力に制御されている。洗浄コマンドは、所定の時間TNだけ印加されている。TNは、3秒から15秒の範囲で選択されている。例えば、TN=5秒、TN=8秒、またはTN=10秒を選択できる。
【0074】
洗浄シーケンスをトリガするための条件は、以下に説明される。
【0075】
洗浄シーケンスは、パッドがディスクにしっかりと押し付けられていないときに実行されることに留意されたい。図8に示すように、ブレーキをかけていないときに、パッド19はディスク9にしっかりと押し付けられていない。実際には、ブレーキをかけていないとき、幅Eの小さな空隙がある(その寸法は、図8及び図9では意図的に誇張されている。)。鉄道ブレーキの場合、この自由空間はわずかに大きくなる。
【0076】
パッドに形成された吸引口の場合、この空隙の存在は空気の通路を形成している。従って、気流の観点から見た制限断面(restricting cross-section)は、パッドがディスクにしっかりと押し付けられた場合よりも大きい。
【0077】
実際、パッドがディスクにしっかりと押し付けられると、気流制限断面積は、空気抜きがあっても小さな寸法のパッドに作られた溝によって決定されている。ブレーキ吸引シーケンスは、本質的にパッドがディスクに対してしっかりと適用されたときに実行されるので、ブレーキ真空シーケンス(braking vacuum sequence)は、小さな気流制限断面積の領域によって低い気流で実行されている。
【0078】
逆に、上述の空隙の存在により、パッドがディスクに対してしっかりと適用されていない場合、洗浄シーケンスは高い気流で行われる。これにより、空気圧ラインの内壁に付着した可能性のある粒子の除去が促進される。洗浄シーケンスは、空気圧ラインの内壁を汚れの無い状態に保つことを可能にしている。従って、数年及び/または数十万km走行した長い使用寿命の後でも、空気圧ラインは著しく遮られることは無い。
【0079】
洗浄吸引条件の決定は、以下に述べる変数の1つ以上を考慮する論理的/アルゴリズム的計算である。
【0080】
車両の現在の速度が主な変数である。運転中、車両速度VVが第1の速度閾値V1より低い場合には、洗浄シーケンスはトリガされない。V1=70Km/hを選択することができる。あるいは、V1=50Km/hを選択することができる。
【0081】
更に、最後の洗浄シーケンス以降の移動距離も考慮される。例えば、洗浄シーケンスは、車両が最後の洗浄シーケンスからDD1=50km走行した後にトリガされる。言い換えると、洗浄シーケンスの後、制御ユニット6は、次のDD1km(DD1は所定の閾値)の間、新たな洗浄シーケンスを命令することをやめている。移動距離DDは正確に知る必要は無い。走行距離は、車速を積分することによって求めることができる。あるいは、ダッシュボード等の別のコンピュータから受信することもできる。
【0082】
最後の洗浄シーケンス以降に実施された動的ブレーキ動作の回数が考慮される。例えば、車両に対してN1回の吸引シーケンスが実行された後に、洗浄シーケンスがトリガされる。N1には50~200の値、例えばN1=100を選択することができる。
【0083】
単純なブレーキング数の代わりに、各ブレーキングに重み付けが加えられる累積ブレーキングスコアSCFを計算することができる。ブレーキを強くかけるほど、重み付けが大きくなる。ブレーキ力は、速度勾配(時間の関数としての速度低下)から推定することができる。
【0084】
洗浄シーケンスをトリガする基準については、ロジックによって定義された基準[SCF>SCF1またはDD>DD1]及びVV>VV1を選択することができる。
【0085】
最後の洗浄シーケンスから経過した時間が考慮される。例えば、洗浄シーケンスは、N2日が経過した後にトリガされる。N2には、10~30日の値を選択することができる。
【0086】
図7に示すように、速度がV1よりも高い間に、時間T21で洗浄シーケンスがトリガされる。上述の基準を考慮すると非常に長い場合がある一定の時間の後、再び車両速度がV1より大きいときに、別の洗浄シーケンスT22がトリガされる。
【0087】
洗浄シーケンスは、保守フェーズ中にも使用できる。この場合、洗浄シーケンス52は、診断装置41によって行われる要求に応答してトリガされる。
【0088】
ここでは、例えばガレージでの保守作業中のパット交換作業に関するものである。
【0089】
一般的に、車両は動いておらず、エンジンは作動していない。
【0090】
制御ユニット6は、診断ツールからアドホック診断要求(ad-hoc diagnostic request)を受信し、診断要求によって規定された洗浄シーケンス中にタービンをその最高速度に制御している。期間はTN以下にすることができる。期間TNは、診断要求のパラメータとすることができる。整備士は、タービンの回転から聴覚フィードバックを得て、その適切な作動を検証することができることに留意されたい。
【0091】
図9に示すように、任意選択的に、空気圧回路に流体的に接続され、吸引口の近くにあるベントソレノイドバルブ59を設けることができる。このようなソレノイドバルブは、洗浄シーケンス中に空気圧ライン内の気流を実質的に増加させることができる。
【0092】
制御ユニット6は、洗浄シーケンス中に、吸引口の近くの空気圧回路上に配置されたベントソレノイドバルブ59を制御するように構成することができる。
【0093】
図4において、制御ユニット6によって制御されるベントソレノイドバルブ59のオプションが示されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】